迷宮災厄戦⑱-7〜他人(じぶん)の力でいいもの食べたい
●赤ばら白ばらの花園迷路~いっぱいの独白
わたしが。はじまりの『アリス』であり『オウガ』が。花咲く園でたった一人待ち人を思う。
それはそれで、最も可憐で尊いわたしらしい気はするのだが。
大人しく待っていられるほど、わたしは良い子ではない。
待てないほどに、わたしは怒り、腹が減っている。
ああ、忌々しい猟書家どもめ。小うるさい猟兵どもめ。一息に喰らってしまいたい。
効率よく喰らう為には。……そうだ、『わたし』が増えればよいのだ。
花園いっぱいの『わたし』が『わたし』に傅いて、猟兵どもの肉を献上してくれる筈。
そうと決まれば、久々に使おう。
折角わたしの『現実改変ユーベルコード』が、少しとはいえ手元に戻ってきたのだから。
●グリモアベースにて
「……うーん、『自分が一番カワイイ』っていうのも、度が過ぎたら邪悪だね~」
ぴこり、と耳を動かした少年、伊能・為虎(天翼・f01479)はグリモアの映像を見ながらそんなことを呟いていた。猟兵達に気がつくと、向き直って元気よくお辞儀をする。
「やっほう、みんな!『迷宮災厄戦』も結構進んできたみたいだね! というわけで、『オウガ・オリジン』との決戦のご案内、だよー!」
そう説明を切り出して、為虎はグリモアの映像を猟兵達に見せる。
薔薇の咲き誇る庭園、といった様子の不思議の国。水色のエプロンドレスをまとい、頭のリボンをゆらしながら迷路を歩く、顔のない少女達――オウガ・オリジン。
それが、赤薔薇の角にも、白薔薇の咲くアーチの下にも。行き止まりにも、そこかしこにも……大量に、存在している。いがみ合いながら、同じ顔で罵声を飛ばし合いながら。
「ビックリするほどめっちゃいるよね? これって、『現実改変ユーベルコード』の力なんだって。いっぱい増えた状態で、こっちを待ち構えているみたい」
フォーミュラ級のオブリビオンの、無限増殖。だが、突破口はあると為虎はいう。
「どんどん増えたら、そのぶん弱体化したみたい。それでも普段の集団戦よりは強いって考えた方がいいんだけれど……。見ての通り、めっちゃ仲悪いんだ、オウガ・オリジン達。連携してくるってのは無いんじゃないかな?」
ぎゃあぎゃあと口喧嘩をするさま、掴みかかるさま、ユーベルコードでの殴り合いまで。自分であっても一切の容赦がないその様は、ある種の狂気をもって映し出される。
「オウガ・オリジンは鬼畜で、自己中心的。みーんな楽しておにく食べたいって言っているみたい。……そんな考えがいっぱい増えたんだから、足の引っ張り合いがすごいのなんの。そこをうまく利用したら、普通に倒していくより楽に数を減らせるはずだよ」
わいわいと映像内で喧嘩を繰り広げるオウガ・オリジンの声に、ぺたりと狼耳を塞ぎながら。為虎はグリモアを組み替え、転移のためのゲートをつくる。
「くさっても鯛、増えてもフォーミュラってやつ。油断しないで、がんばってね!」
薔薇の芳香と、少女の怒声が漏れ聞こえてきた。
佃煮
自分がいっぱい居たらいいな、とは思えども。絶対全員アイス食ってるとも思う今日この頃。
どうも、佃煮です。
オウガ・オリジン関連のシナリオにご案内いたします。
●本シナリオについて
このシナリオは「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結する、特殊なシナリオとなります。
めっちゃ増えたオウガ・オリジンと、バラ咲く庭園での集団戦となります。
普通に集団で出てくる敵よりは強く、一体だけのオウガ・オリジンよりは少し弱い、そんな食べるラー油みたいな彼女ら。
めっちゃ仲が悪いので、いがみ合いを利用することで効率的な対処が可能です。
プレイングボーナスがあります。ご参考ください。
●プレイングボーナス
オウガ・オリジンの性質を利用して、群れに対処する。
第1章 集団戦
『『オウガ・オリジン』と無限増殖』
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POW : トランプストーム
【鋭い刃のような縁を持つ無数のトランプ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : わたしをお前の血で癒せ
自身の身体部位ひとつを【ライオン型オウガ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : フラストレーション・トルーパーズ
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【トランプ兵】が召喚される。トランプ兵は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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イリス・アンリリンキッシュ
ユーベルコードで殴り合いですか…という事はトランプが大量に落ちているはずでしょうから…使わせてもらいますね?
鋭い刃のような縁を持つ無数のトランプをこの場だけ装備して…UCを発動、「迷彩」「忍び足」「闇に紛れる」等を併用しつつ効果を加えたトランプを薔薇の迷路からオリジン達に投げつけます。
私のUCは肉体を傷つけないけど対象の【霊魂、呪詛、怨念、邪念、概念】のみを攻撃します。そこでオリジン達が使うトランプで欠片程はありそうな信頼関係の「概念」を崩してみましょうか?
自滅するにしろしないにしろ、お互いの潰しあいに巻き込まれる前に撤退しましょうか。
おや…一枚余っていたので投げときますね?
●
バラ咲き誇る庭園の片隅に、足を踏み入れる。石畳に散らばる、花弁とはまた違うなにかが目に映った気がして、イリス・アンリリンキッシュ(私は「いつも笑顔」です!・f21317)は落ちているその一枚……ぶちまけられたトランプに手を伸ばした。
縁は鋭い刃になっており、少しでも指を滑らせれば切り傷ができるだろう。傷がつかないよう、慎重に。されどオウガ・オリジンに見つかる前に、素早く。イリスはトランプを拾い集めると、コートにしまって隠し持つ。
ふと一枚を見てみれば、水色の布片がくっついていた。元はふわふわとしたエプロンドレスの一部のようで、切り裂いた際に残っていたであろうその布に、転移前に見た映像が連想される。トランプの竜巻を同じ顔にぶつけていた、オウガ・オリジン。ユーベルコードでの殴り合い。その様を正式に描写するなら、ぶつけ合い。切り合い……? だろうか。それとも。
(同じ存在同士での潰し合い……ですか)
オウガ・オリジンは、どれほど自分本位なのだろうか。むしろ心底から自己中心的だからこそ、自分であっても邪魔をする者は許し難いのかもしれない。狂気にしか見えないような在り方を思って首を傾げていた時。
イリスの耳が拾ったのは、複数の足音……ではなく。
「……いくら切り刻まれてもわからん、わたしにあらざる愚か者め!お前が先に捕まえろと言っているのだ! わたしに猟兵の肉を献上せよと!」
「尊いわたし自らが何故動かねばならんのだ!? お前が猟兵を探せばよいではないか!」
複数の、口喧嘩の声だった。
ぎゃんぎゃんと響き、数秒後には物理的な喧嘩になるであろう声の主……オウガ・オリジンらが来る前に、イリスは薔薇の生垣迷路の影に身を潜める。コートの電磁迷彩も併用すれば、彼女の姿はすぐさま景色に溶けていった。
(自分はとにかく楽がしたい。彼女らの言うことは、そういう趣旨のようですね。他人がきっと持ってきてくれるはずという期待。指の先……いいえ、先程の布ぐらいはありそうな、一方的な信頼)
赤バラの花に、非実在の蝶がとまる。
(それを、崩させていただきます)
景色に溶け込むような、ふわりとした実体をもった蝶々が、花弁に葉にと増えていく。その一羽が、トランプの束に溶け込んだ。イリスはそのトランプを複数枚構えると、近くのオウガ・オリジンに向かって素早く投げる。
「……匂うな?肉の匂いがする」
「む、トランプ!?」
とっさに腕で防御態勢を取るオウガ・オリジンだったが。トランプは彼女の身体を二度傷つけることなく当たって落ちていく。場所を勘づかれそうになったイリスは別の生垣へ身を隠すと、後ろから聞こえてくる声がいっそう苛烈なものになった。
「ああ、もう我慢ならん! 使えぬやつがわたしの顔をしているなど!」
「虫唾が走るわ! 先程の匂いの時だってお前抜け駆けしようとしただろう!」
「お前がすっとろいからだ!」
辛うじて言語の形をもって聞こえたのはそれくらい。直後は物理的な喧嘩だった。ごう、とトランプの嵐が吹き荒れる中、イリスは身を潜めながら撤退の準備をはじめる。
成功
🔵🔵🔴
ミア・ウィスタリア
醜い。嗚呼なんて醜さかしら。
嫌よね独善的な女の罵り合いって。
もう最高❤️利用してくれっていってる様なもんよね。
UC展開。今からこの国のルールを変更するわ!
【概念条文:思考は相手に伝わる】
ほーら、これで誰も彼も頭の中で考えてる事はみぃ〜んな筒抜け!
勿論アタシもね。
だから最低限の反撃だけして逃げ回りながら、オリジンになりすまして偽の思念をばら撒いてあげる。
オリジン達の対立と疑念がより激しくなる様にね。
例えば
アイツが邪魔しようとしている。
ソイツとソイツは結託して自分を潰そうとしている。
コイツは偽の情報を流して抜け駆けするつもりだ。
アハハハッ! 最高に不様よアンタ達!
SNSの炎上みたいね!
●
(醜い。嗚呼なんて醜さかしら。 嫌よね、独善的な女の罵り合いって)
大抵初めは難癖から始まって、言い争い。掴み合い。――そうして、最後は大抵潰し合い。
その様を見ていたましいと思うより、理解しがたいと呆れるより。なんと無様だろうと、笑ってしまう。
(もう、最っ高❤ こんなの利用してくれっていってる様なもんよね)
ミア・ウィスタリア(天上天下唯画独尊・f05179)は、滲む笑みを隠さなかった。 遠くから聞こえてくる怒鳴り声に、うきうきとした足取りで身を隠す。あわよくばオウガ・オリジンらの自滅で数を減らしていかないものかとも考えたが、映像を思い返す限りは、小競り合いでの数の減りは小さいもの。そこらへんは猟兵が手を加え、自滅を加速させたほうがいいらしい。
(と、なると。ルールはそうねぇ……こうしましょっ)
ほくそ笑んだ悪戯っ子の顔のまま、発動したユーベルコードは玉虫色の狂想法典。ミアが信じる限り物理法則や概念を書き換えるその力を持って、花園の国のルールに一筆加える。
(今から、この国のルールを変更するわ!)
その言葉と共に書き換えた一文は、【概念条文:思考は相手に伝わる】。
それと同時。さわさわとした葉擦れに乗って……というよりも、葉擦れの音を我で踏みつぶすように、花壇を踏み荒らすように。オウガ・オリジンらの声がなだれ込んでくる。
(アリスの血肉、猟兵の肉)
(あのわたしは使えぬ、さっきのわたしもこのわたしに命令をしおった)
(ああ空腹だ、なのにわたしは何をしている)
(怠け者どもめ、同じわたしだとは思えぬほど使えない)
言葉もさることながら、思考に至るまで真っ黒で、独善を煮詰めたような無数の言葉。SNSの暗黒面にも似たそれを聞き流しながら、ミアは襲い来るオウガ・オリジンから距離をとる。不意をうったように降り注ぐトランプを間一髪回避して、牽制を返しながら逃げる、逃げる。互いの思考が共有されたとはいえ、オウガ・オリジンのそれは大部分が独善的なノイズである。そのため、利用した連携も発生しない様子。
これだけオウガ・オリジンらの大量の思考が入り乱れれば、パターンもある程度把握されてくる。
ひとつ模造品を混ぜ込んだって、バレやしない。
思考の濁流にミアが投げ込むのは、とあるオウガ・オリジンの思念。いがみ合いを加速させ、対立を激しくさせる偽物の思考。
(そこを負傷した猟兵が通ったぞ、なぜ取り逃がしたのだわたしよ)
(あのわたしは、抜け駆けしようとしたようだな? 百万回首を刎ねても足りない重罪だな)
(結託してわたしを潰そうとする不届き者がいる)
一度でも疑念が全員に届いてしまえば、あとは波紋のように勝手に広がり、おひれがついて。あっという間に対立は激化して、そこらじゅうでトランプの刃嵐が巻き起こった。
攪乱を終えて転移するミアは、耐えきれなかったようで手を叩いて笑いだす。
「最高に不様よ、アンタ達!SNSの炎上みたいね!」
ぎゃあぎゃあと飛び交う喧嘩腰の声が妙に面白くて、ミアは笑い涙をぬぐうのだった。
成功
🔵🔵🔴
セシリア・サヴェージ
無数のオウガ・オリジンがいるだけでも大変な事態ですが、その全てが互いに憎しみ合っているとは……なんとも悍ましい光景です。
トランプ兵が表れたら逃げる振りをして彼らを【おびき寄せ】ます。
どこへ逃げてもオウガ・オリジンはいる様ですが好都合です。【見切り】でトランプ兵の攻撃を寸前で回避し、その攻撃がオリジンに当たるよう仕向けます。
そうして憤慨したオリジンに「やったのは別のオリジンです」と【言いくるめ】て仲違いを煽ります。
これを繰り返せば相当の騒ぎになるでしょう。苛立ちの対象も私から別のオリジンへと移るはず。
後は【目立たない】様にしつつUC【闇を抱く黒紫の剣】の詠唱を開始。【範囲攻撃】で纏めて倒します。
黒柳・朔良
自己中心的で傲慢な彼女達が多数集まればこのような事態になることなど容易に想像出来そうなものだが
その様子は『連携』と言うものをまるで知らない、いがみ合うばかりの有象無象といったところか
ならばこちらもそれを最大限に利用させてもらおう
選択UCで召喚した影人形の数は80体
それぞれが一人の彼女達に対して、他の彼女達に疑心暗鬼になるような心の声(もどき)を囁いてもらう
内容は「あいつら(他の『わたし』)は猟兵共をここに招いて奴らの肉を独り占めしようとしているのでは」というのはどうだろう
上手く行けばきっと面白いこと(さらなる乱闘)になるはず
傲慢や自己中も過ぎると身を滅ぼす、という典型だな
私も気をつけねば
●
猟兵達の活躍により、オウガ・オリジンら増える早さを減る早さが追い抜いた。だが、なおも迷路の各所に散らばっている者はまだまだいるようだ。
他の『わたし』(誰か)が猟兵を仕留めてくれるだろうという、押しつけじみた傲慢な期待。それが双方同じであるがゆえの、問い詰めと逆上と。晴れやかな空とは不釣り合いな、大物(フォーミュラ)たる冷静さの欠片もない声。それを断片的に拾い、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は溜息をついた。理解しがたさよりも、どこか不憫さが勝るからだろう。同じ顔で憎しみ合うという有様に、底は無い。
「……なんとも、悍ましい光景ですね」
「『連携』と言うものをまるで知らない、いがみ合うばかりの有象無象といったところか」
零れる呟きに、冷静な返答が返ってくる。
その答えの主、近くに転移してきた黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)は、白薔薇のアーチがつくる影に溶け込むように立っていた。そこからセシリアの元へ一歩進み出れば、さわさわと揺れる花の影から小さな人形が現れる。影を固めて練り上げたような彼らは足首ほどの大きさで、その数ゆうに80体。
「折角の突破口だ、最大限に利用させてもらおう」
「ええ、そうですね。ならば……こうしませんか?」
いつ発見されるかもわからない。その前に増えたオウガ・オリジンを倒すべく、簡単に作戦を話し合った二人はアーチを抜けて、別方向へ。
ところかわって、一人がやっと通れるような、細く入り組んだ生垣迷路。壁自体の背は低く白薔薇が縁を彩るその場所を、セシリアは駆ける。
容易に道が塞ぎやすい場所を隠れる様子も無く走り抜けようとすれば、当然……
「のこのこやってくるとは、余程わたし主導で解体してもらいたいようだな!」
空腹を拗らせた頃に肉が丸ごと飛び込んできたような、苛立ちと嬉しさの混じった少女の声色。道を塞ぎ武器を構えるトランプ兵と共に、オウガ・オリジンがセシリアの行く手に現れる。
「……!」
くるり、壁を飛び越えて別の道へ。このぶんだと別個体がいずれ襲ってくることはセシリアも予測しており、それを誘発するように迷路を駆ける。オウガ・オリジンによく似た少女のちいさな声に、内心で安堵の息を吐いた。
(独り占めだ)
(あいつらは猟兵達をここに招いて、肉を独り占めしようとしているのでは)
響く声に、顔がなくともオウガ・オリジンはきっと目を見開いたのだろう。そんなこと考えるはずがないとも言い切れない疑念が、波紋のように広がってゆく。
(わたしは働き損になる)
(現に、見かけたときだって食えやしなかったじゃないか)
不安と疑心を零すかのような声は、オウガ・オリジンではなく。朔良の放った影人形だ。セシリアを追う個体だけではなく、ほぼ全域を移動しながら心の声に似たものを囁いて、オウガ・オリジンの互いの疑心を煽り立てている。
その声を背にトランプ兵たちの武器を躱し、セシリアが向かう先は……別個体が発見しやすいような、白薔薇咲く迷路の行き止まり。そうして、そこにいた喧嘩中のオウガ・オリジンらの前に躍り出ると、反撃に出られる寸前で生垣を跳び越える。
今の今までセシリアを追っていた、トランプ兵の槍の穂先がオウガ・オリジンの背中に突き刺さった。
「……なんだ!誰がやった!不届き者はどいつだ!!」
「別の『あなた』ですよ」
後ろ向きのまま痛みに耐えかね、怒りのままにがなり立てるオウガ・オリジン。それに一言返して、セシリアは一旦その喧噪から距離を取る。
(ほら、やっぱり)
(働き損で食えずじまいで、わたしはわたしの手で骸の海に還される)
同時、偽物の心の声がオウガ・オリジンの間で響いた。
(傲慢や自己中も過ぎると身を滅ぼす、という典型だな。……私も気をつけねば)
遥か後方で影人形を操る朔良が、うまくいったぞとセシリアと視線を交わす。
「……働き損になる前に、お前を殺ってやるー!!」
そう声が上がったのはどちらが先だったのだろう。今や分かるはずもないのだが。トランプ兵の一団が向かい合い、主の別個体を串刺しにせんと突撃を始めた。
生垣に穴を開け、枝葉を圧し折るほどの兵隊の質量と怒声に紛れ、闇を抱く黒紫の剣の詠唱が紡がれる。
「――其は彼方の色を宿す守護の剣。全てを護る為に、はだかる敵を撃滅する!」
オウガ・オリジンを複数捉えるよう狙いをつけた破壊光線が、兵隊も主も巻き込んでいく。
大成功
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アイリス・レコード
オウガ・オリジン!あなたを倒し……
あの、…多くないですか?
極力一度に一人を相手取るように、足を止めずに動き続けます
私だって「アリス」です(※オウガ憑きの自覚なし)、なら食い殺そうとする本能には抗いがたいはず……!痛みは激痛耐性で耐え、ランスで足を狙い、敵攻撃へは同士討ちを誘うように……
『それだけじゃ足りないウサ』
突然、UC【断章「妄想の沼に溺れた色ボケ兎」】により現れた三月兎娘がオウガ達の欲望・執着の矛先を「お互い」へと向けさせ、互いに攻撃しあうように仕向けます
『やるなら徹底的ウサ、アリス!さあこれから始まるはニッチもニッチ、オリジン×オリジンの同一人物グロ寄りヤンデレ愛憎劇場ウサ!誰得!』
●
「オウガ・オリジン!あなたを、倒、し……」
勇ましく響いたアイリス・レコード(記憶の国の継ぎ接ぎアリス・f26787)の声は、周囲に散らばるオウガ・オリジンらを見るやいなや驚きと共にしぼんでしまう。
「……あの、多くないですか?」
転移前の映像で見たよりは減ってきたものの、確かに多い。
強さそのままに複製されたわけではないことは分かっていても、迷宮災厄戦の中核を担うオウガが沢山いるのはついぎょっとしてしまう。
「アリスだ」
「アリスの猟兵だ」
「っ!……さあ、アリス(わたし)はここにいますよ!」
声に気がついたオウガ・オリジンの呟きには、いっそうの飢餓と殺意が乗っていた。それにたじろぐことも無く、アイリスは槍を構えて向かっていく。
「……そうだ、ミックスジュースもいいな」
「食前に飲むには最適だ……!」
食い殺そうとするオウガの本能が、ひりつく狂気となって満ちて行く。
その中。オウガ・オリジンの誰かの呟きが、他の個体の声に掻き消された。
……アリスのミックスジュース。その言葉は、アイリスの内に潜むオウガを嗅ぎ取ったが故なのだろうか。
アイリスはトランプ兵の槍を跳ね飛ばし、返す穂先でオウガ・オリジンの足を狙う。庇うように入り込んだトランプ兵を切り払って、平たい身体を蹴り飛ばす。
そうして乱戦に持ち込めば、背後に他のオウガ・オリジンの気配を感じた。
「抜け駆けは万死に値するぞ、そこのわたし」
「……!」
後ろから肩口を狙い突き出された槍を躱せば、眼前まで迫っていたトランプ兵……背後をとったオウガ・オリジンとは別部隊の誰かに穂先が突き刺さった。
「わたしの兵隊になにをするのだ、わたしよ!」
「ふーんっ、チンケな指揮をするからだろう」
怒号と共に、槍が降る。それをどうにか切り抜けて生垣に身を隠しながら、アイリスは必死で思考した。
(もう一手、もう一手何か……)
『そうそう、まだ足りないウサよ?やるなら徹底的にやっちゃうウサ』
背後から、明るい声が響いた。振り向いたアイリスに三月兎娘が笑いかけ、ぐっと親指を立ててみせる。
「えっ、……えっ?」
目を白黒させるアイリスに、おまけの一言。
『アリスにあのカプ相手は地ら……げふんっげふん。折角増え散らかしたあいつらには、ニッチ極まりない同一人物シチュがいいウサ』
「えぇ……?」
銀のカトラリーを構え、三月兎娘は不敵に笑う。
そうして、腕を一振り。フォークにナイフ、フリスビーの要領で投げられた銀皿までもがオウガ・オリジンの乱戦に降り注いだ。
『……さあさあ、これより始まりますのはニッチもニッチ、オリジン×オリジンの同一人物グロ寄りヤンデレドロドロ愛憎劇場でございまーす!ウサっ!』
ふらり、と顔を向けたオウガ・オリジンが、別のオウガ・オリジンに掴みかかる。 別のオウガ・オリジンらはトランプ兵を操って、また別の個体に襲いかかる。
「そうだ、何故考えつかなかったのだろう!」
「わたしを食べればいいのではないか!」
「食べられるなぞ許さない、わたしが食べてこそだろう!」
愛憎と食欲の入り混じり、殺意と執着が入り乱れる。それを少し離れたところで、ぽかんとしながら見ているアイリスと三月兎娘。
「わーあ……」
『The 誰得ウサね』
ヤレヤレ、と肩を竦める三月兎娘が見る前で、加速度的にオウガ・オリジンは数を減らしていくのだった。
成功
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ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK
ふむ、分身同士の仲が悪いねえ。
それならまあ、ちょっとしたいたずらでも仕掛けようか。
まず【如意伸躯】で体を小動物くらいに小さくして、
庭園の土にトンネルを掘ってこっそりオウガ・オリジンに近付こうか。
目立たないようオウガ・オリジンの足元から顔を出したら、
その辺の小石をオウガ・オリジンに投げつけて、すぐに穴に引っ込むよ。
それを何度か繰り返したら誰が投げたと言い争ったり、
喧嘩になって同士討ちを始めるんじゃないかな。
飛び交うトランプは地面の下に潜ってれば多分当たらないし。
いい感じに争って疲弊したら穴から出て今度は巨大化して、
尻尾でまとめてなぎ払おうか。
ボスのいない群れは脆いもんだねえ。
●
ボスがいない群れは、早々と壊滅してしまうことが多い。明確な指針もなく、好き勝手に行動するばかりで、責任の在処や役割分担なんてあったものじゃない。統制らしい統制もなく、ふとしたことで崩れ去る。
(……なんというか、脆いもんだねぇ)
ボスがいない群れも、ボス『しか』いない群れも。だいぶ同じところにあるものだな、とペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は黄と青の目を細めた。もう少しかき回せば終わりが訪れるだろう。
(最後の一押しに、ちょっとしたいたずらでも仕掛けようか)
そう考えをまとめると、ペトニアロトゥシカ……ペトは目を閉じて、しゅるしゅると自らの身体を縮める。もう一度目を開ければ、見上げんばかりの生垣に、抱えられそうな赤バラの一花弁が彼女を出迎えた。
地を走れるよう、踏みつぶされぬよう。そうしてなにより、オウガ・オリジンに食われぬよう。小さくなったペトは、生垣の根本にトンネルを作りだす。
手足と尻尾をうまく使い、鋭敏な感覚で辺りを探りながら掘り進め、顔を出せばオウガ・オリジンの靴が見えた。踏みつぶされてしまいそうなその靴の主は、足元のペトに気付く様子はないようで。
「一人たりとも探せないとは……わたしにあらざるバカ者ばかりとは」
「空腹のわたしをこれ以上放置するか、何をしておるわたし!」
「それはこっちのセリフだ!」
ちくちくと他の個体と言い合っているようであった。
売り言葉に買い言葉、少し足元が動いたところで気づくはずもなく。いいや、気づいたとしても踏みつぶせばいいという慢心もあるのだろう。
ペトは手近な小石を拾うと、オウガ・オリジンの後ろにまわり。ぽいぽいっ、と投げつける。一個は靴の中を狙い、もう一個は直接頭にいくように高く。
「よーし、潰されないうちに引っ込みますか」
さっとトンネルに戻って、次を掘り始めたあたり。オウガ・オリジンが振り返った。だがペトの姿は無く、怪訝な目できょろきょろと見回し、そうして。
「いっったぁ!?小石!?」
靴内で棘のようになった小石が、足の裏に突き刺さったのだろう。ざまあみろ怠け者、と笑う別個体に逆上し、怒号とトランプの刃が乱れ飛ぶ。
その音を地中で聞きながら、ペトは更に別のオウガ・オリジンがいるところへ。
数度小石をぶつけるのを繰り返せば、元から責任を押し付け合っていたオウガ・オリジンらはあっという間に同士討ちを始めていく。誰が石を投げた、誰が靴に入れた。愚弄と怒号、そしてユーベルコード。
「よおし、効いてる効いてる。仕上げもやっちゃおうか」
如意伸躯は、なにも小さくなる為だけに使ったわけではない。
……今度は、逆にオウガ・オリジンをまとめてなぎ払えるほど、大きく、大きく。
「……む、いつ侵入を!」
「だがいい的ではないか……いや、大きすぎる!」
オウガ・オリジンらの放つトランプの刃嵐で切り傷を作りつつも。巨大化したペトの尻尾が全てをまとめてなぎ払った。
喧噪は静まり、もう怒声も聴こえることはない。
風に吹かれる薔薇の香にのって、オウガ・オリジンの群れの、ひとまずの崩壊は終わったのだ。
成功
🔵🔵🔴