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迷宮災厄戦⑱-2〜悲しみの消えぬ間に

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン


●悲しみは滴り落ちて
 ひたひたと、波が寄せ来る。
 静謐に。穏悼に。冥亡に。暗澹に。
 かの場所こそは、いくつもの嘆きが満ちて生まれた如き海。
 惑わしきそこに佇む者こそは、はじまりのアリスにしてはじまりのオウガなる存在。
 その姿は静かに……海のなかへと沈んでいく。

●悲しみの消えぬ間に
「戦争、お疲れ様ね。……まだ終わっていないけれど」
 せめて話す間だけでも安らいでくれたらと、エリューシア・カトレイン(セイレーンの冒険商人・f27125)は微笑んだ。
 しかしすぐにその表情が翳る。
「キミたちに向かってほしいのは、涙の海の国。オウガ・オリジンが現実改変ユーベルコードで作り上げた涙の海の国で、オウガ・オリジンを倒してほしいの」
 その言葉に、猟兵たちの幾人かは早速に対抗手段を考察し始める。
 迷宮災厄戦も佳境である。既にオウガ・オリジンと相対した者もいるだろう。
「だけれどね、この海の水に触れると、自然に涙があふれて、過去の悲しい思い出が次々と蘇ってくるんですって。僕はよく分からないのだけれど、きっとそれは、とてもつらいのでしょうね」
 かすか、不思議そうに首を傾げる。
 それは多くを知るためにもグリモア猟兵として歩みはじめた人生経験の少ない彼ゆえに。
 相対的に、猟兵のなかには顔をしかめた者もいる。
「オウガ・オリジンは海のなかに潜っているから、どうしても海に入らなければならないの。だから、過去の思い出に潰されることのないように、克服しつつ戦わなければならないわ。だけれど、オウガ・オリジン自身は悲しくなることはないんですって。ちょっとずるいわね」
 少しだけでも場を和ませようと思ったか、冗談めいて言う。
 それがなんの意味もないとすぐに気付いて、そっと咳払いをした。
「ねえ。僕はそんなにもつらい悲しみを経験したことがないから思うのだけれどね」
 ふと。エリューシアはグリモアキューブである羅針盤へと視線を落とす。
 美しく輝くそれは、過去ではなく未来を指し示すもの。
「未来へ進むために悲しみを乗り越えるのは、重要なのかもしれないわ。だけれど、だからといって忘れる必要はあるのかしら? だって、乗り越えることと忘れないことは矛盾しないでしょう? 悲しみを抱いたまま、前へ進むことだってできると思うのよ」
 口にするのは、経験の少なさからくる無知ゆえの理想。
 無責任に言って、ふいと目を伏せる。
「いつか僕も、大切にしておきたい悲しみを経験することがあるのかな」
 どこか望憧めいた表情でつぶやき、それから顔を上げた。
「それでは、お願いするわね。どうかよき冒険と、よき幸運を」


鈴木リョウジ
 こんにちは、鈴木です。
 今回お届けするのは、悲しみと涙の海の国。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●涙の海の国とオウガ・オリジン
『オウガ・オリジン』が現実改変ユーベルコードで作り上げた、「涙の海の国」で、オウガ・オリジンと戦います。
 海の水に触れると自然に涙が溢れ、過去の悲しい思い出が次々と蘇ってきます。
 しかしオウガ・オリジンは海のなか、その水底に潜っているので、海のなかへ入り過去の思い出に潰されることなく、克服しつつ戦わなければなりません。
 オウガ・オリジンは非情にして鬼畜なので、海のなかにいてもまったく悲しくなりません。

 また、このシナリオには以下のプレイングボーナスがあります。

=============================
 プレイングボーナス……過去の悲しみを克服しつつ戦う。
=============================

 但し、「自分には過去の悲しみはない」といった内容は「自身の悲しみを認められず克服もできない」と判断します。

 なお、🔵が成功数に達すると判断して以降のプレイングの採用を見送らせていただく場合があります。
 また、同日にプレイングが集中した場合は、可能な限り失効に間に合わせるよう努力しますが、再送をお願いする可能性があります。
 ご了承ください。
 それではよろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と嘆きの海』

POW   :    嘆きの海の魚達
命中した【魚型オウガ】の【牙】が【無数の毒針】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    満たされざる無理難題
対象への質問と共に、【砕けた鏡】から【『鏡の国の女王』】を召喚する。満足な答えを得るまで、『鏡の国の女王』は対象を【拷問具】で攻撃する。
WIZ   :    アリスのラビリンス
戦場全体に、【不思議の国】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
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地籠・陵也
【アドリブ連携歓迎】
ああ、ああ……思い出したくなくても嫌でも目に浮かぶ。
あの時、俺たちが帰ってきた時既に先生は物言わぬ屍になっていて。
まだ息があった小さな弟妹たちは目の前で……

今でも思い出して、辛くて泣いてしまう夜がたくさんある。
――でも、だからって立ち止まりたくない。
向き合えないからと逃げ続けたら本当に大事なモノも護れない!
決めたんだ!弟と一緒に立ち向かうと……!

【指定UC】を起動する。エインセル、俺を導いてくれ。
出口を出るまでに【高速詠唱・多重詠唱】で術式を展開し、敵の姿が見えたら即座に【破魔・浄化・属性攻撃(光)】の乗った【全力魔法】を解き放つ!

お前はここで倒す!もう何も奪わせない!



 ひたとその身を海に浸して、地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)の心に過去が去来する。
 ああ、ああ……思い出したくなくても嫌でも目に浮かぶ。
 まるで映写機が映し出すかのように揺れて、彼を迷路へと閉じ込める。
 あの時、俺たちが帰ってきた時既に先生は物言わぬ屍になっていて。
 まだ息があった小さな弟妹たちは目の前で……。
 それは、今の猟兵としての彼を形作る悲劇。
 今でも思い出して、辛くて泣いてしまう夜がたくさんある。
 ザザ……ザザザザ…………。
 波が打ち寄せるに似た音を重ねて、陵也の目の前で迷路がより複雑化していく。
 それは混迷。彼自身が途方に暮れる心の迷路。
 すべてが遠くなっていく錯覚に、ポロポロと涙がこぼれて海に混ざって。
「お前たちが間に合っていたとしてもただ死体が増えただけだろうに。今は救世の英雄気取りで過去の非力な自分から目を逸らすのか?」
 青年の悔恨を、水底からオウガ・オリジンが嘲笑する。
 今でもそうなのかもしれない。あの頃より強くなれたと錯覚しているだけなのだろう。
 ――でも、だからって立ち止まりたくない。
 己の無力を嘆き、悲しみに膝を屈するにはまだ早い。
「向き合えないからと逃げ続けたら本当に大事なモノも護れない!」
 たとえ何度も立ち止まりそうになっても、何度だって前へ進んでいく。
「決めたんだ! 弟と一緒に立ち向かうと……!」
 ぐっと唇を噛み締めて、前へと進む。
 己を惑わす迷路のその先へと。
『術式展開――』
「エインセル、俺を導いてくれ」
 精気が凝縮し、白い子猫が羽を羽ばたかせて現れた。
 迷路を進む速度を次第に早めていく間に高速詠唱と多重詠唱で術式を展開し、オウガ・オリジンの姿が見えたその瞬間、即座に全力魔法を解き放つ!
「お前はここで倒す! もう何も奪わせない!」
 ザアアアアッと海を裂いて、オウガ・オリジンへまっすぐに迸る。
 闇を照らし討つ破魔と浄化の光に貫かれ、オウガ・オリジンはぎりと歯を軋らせた。
「たかが一撃入れた程度で、このわたしの上に立ったつもりか!」
「一撃で駄目なら、何度でも攻撃するだけだ!」
 思い出すたびに覚悟と決意を強めていくように。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユスミ・アルカネン
アド歓迎連携不可
トラウマは悪魔フォルネウスによる家族の消失

パパもママも、お爺様もお婆様もいない
暗く狭い地下室でパパが迎えに来るのを待ってた
ママが扉を開けてくれるのを待っていた
だけど、扉を開けたのは、迎えに来たのは、海魔

「………Äiti…。……Isä……」

感情が、人格が塗り替えられる
家族の幸せを、恋人の幸せを知る人格『柚澄』
「大丈夫、もう一人のボク。ちゃんとパパとママに出逢えたでしょう?」
至上の魔女が詠唱を綴る
『大いなる冬よ来たれ』
海の中に雪が降る、深深と、光を消して、昏い冬へと塗り替えていく

『ユスミ』が目を開いてオウガを見据える
【氷葬】を振り翳す、氷精よ、斬り裂いて
「大丈夫、パパとママはいる」



 狭く複雑な迷路に、ユスミ・アルカネン(Trollkvinna av Suomi・f19249)は過去の記憶を呼び起こされる。
 パパもママも、お爺様もお婆様もいない。
 暗く狭い地下室でパパが迎えに来るのを待っていた。
 ママが扉を開けてくれるのを待っていた。
 扉の向こうにいるのは、扉を開けて迎えに来てくれるのは、そうだと信じていた。
 だけど、扉を開けたのは、迎えに来たのは、海魔。
 彼女の家族を奪った、悪魔フォルネウス。
「………Äiti…。……Isä……」
 呼んでも、来ない。
 呼んでも、いない。
 だって、ママもパパも……。
「お前の大切な家族は、お前のためにいなくなった。お前がいなければ、お前の家族は幸せだったろうにな」
 耐えかねて閉じた目の端に涙をにじませた少女を、オウガ・オリジンが責め苛む。
 迷路を突破するためのはずが彷徨に変わり、悲しみに染まりかけたその時。
 感情が、人格が塗り替えられる。
 内気な少女を支える、もうひとりの自分。
 家族の幸せを、恋人の幸せを知る人格……『柚澄』。
「大丈夫、もう一人のボク。ちゃんとパパとママに出逢えたでしょう?」
 だから、あなたは迷わず進める。
 強く押し出すのではなく、優しく寄り添うようにその背を押して。
 オウガ・オリジンの姿を認めると、至上の魔女が詠唱を綴る。
『大いなる冬よ来たれ』
 太陽を喰み、月を呑み、星を撫ぜて、海の中に雪が降る。
 深深と、光を消して、昏い冬へと塗り替えていく。
 音なき世界で、『ユスミ』が目を開いてオウガ・オリジンを見据える。
 少女の揺るぎない表情を、オウガ・オリジンは一笑に付した。
「は! 虚勢を張ったところですぐに気付くだろう。お前にはもう家族などいないということを」
 哄笑への応えは、刃だった。
 幾振りもの凍てついた剣が、凍てついた世界を砕いて敵へと降り注いだ。
 氷精よ、斬り裂いて。
「大丈夫、パパとママはいる」
 世界の砕ける音と悲鳴を払って、少女はそれを確かめる。

成功 🔵​🔵​🔴​

神羅・アマミ
ぐぅうッ!
妾の心を駆け巡る悲しみ…!
いつものアレ…いつものアレが来た!
三桁にも満たぬ投稿動画の再生数…にも関わらず何故かつく「つまんね」「やめちまえ」のクソコメ!

絶望的に才能がないと言われればそれまでかもしれぬ…わかっちゃいる…わかっちゃいるが!
もっと許せねえのはオウガ・オリジンよ!

あやつ、五歳児の如く怒り、笑い、崇めよ讃えよと煽ればいくらでも信者が湧いてくると思ってやがる…
そいつはめちゃ許せんよなァ~!
貴様を物理的にブチのめし妾は精神的に成長しちゃる!

ここが涙の海だというのなら!
UC『板付』のコークスクリューブローで並み居る魚諸共【範囲攻撃】で【吹き飛ばし】てやる!
そのまま一撃をブチ抜けろ!



「ぐぅうッ!」
 悲しみのフラッシュバックに神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)が呻く。
「妾の心を駆け巡る悲しみ……!」
 いつものアレ……いつものアレが来た!
 三桁にも満たぬ投稿動画の再生数……にも関わらず何故かつく「つまんね」「やめちまえ」のクソコメ!
 投稿してしばらくは「ま、まあまだ投稿したばかりですし? これからが本番ですし?」と虚勢を張ってみるが、次の日になっても増えているのはクソコメだけ!
「絶望的に才能がないと言われればそれまでかもしれぬ……わかっちゃいる……わかっちゃいるが!」
 毎回クソコメばかりつくというのもある意味では才能かもしれない。だがいらない才能だ!
「もっと許せねえのはオウガ・オリジンよ!」
 ダンッ!!
 怒り任せに拳を振り下ろすと、海中なのに鈍い音がした。
「あやつ、五歳児の如く怒り、笑い、崇めよ讃えよと煽ればいくらでも信者が湧いてくると思ってやがる……」
 この気配をアマミは知っている。
 動画を投稿したその瞬間に3桁どころか4桁再生だって超余裕、あっという間に称賛のコメントがびっしりつくのが当然と思っているタイプの××××だ。
 で、それが当然だから再生数が少ない奴に対して「えぇ〜? どうしてそんなに少ないんですかぁ〜?」とか言ってくるんだ!
「そいつはめちゃ許せんよなァ~!」
 彼女がギリギリと睨みつける敵は、信者もとい魚型のオウガをはべらせて弱小動画配信者を鼻でせせら笑った。
「動画再生数たったの2桁か……雑魚め」
 嘲笑とともにオウガ・オリジンは、腕を薙ぐ仕草でオウガをアマミへ向けてけしかける。
 牙を剥く魚が襲いかかるのを前にして、猟兵は不敵に笑った。
 いい機会だ!
「貴様を物理的にブチのめし妾は精神的に成長しちゃる!」
 力強く握りしめた拳を、ぐっと脇を締めて構える。
「ここが涙の海だというのなら!」
 固く握った拳での抉り込むようなコークスクリューブローで並み居る魚諸共範囲攻撃で吹き飛ばしてやる!
「そのまま一撃をブチ抜けろ!」
「ぐあーッ!!」
 まともに正面から食らったオウガ・オリジンが錐揉みして吹き飛ぶ!
 海中でも響いたそれは、実にサツバツとした怒声と叫声であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

冬原・イロハ
私、過去の記憶がないのです
猟兵として歩き始めて、私がいます
本当の名前も分かりませんし、私はイロハで良いのですが――

「おとうさん」と「おかあさん」がどんな方なのか
見てみたくて…

私と同じ白い毛並でしょうか
二人との思い出が見えるでしょうか
本当は、色々と知りたいことが沢山あって
沢山の親子を見るたびに、本当は、気になっていました
これは私の過去の悲しみになるのかな…寂しいの気持ち

手を振ったら
思い出の中の二人が振り返してくれるといいな

ほわわと心が温かくなって
頑張ろうって思いました

オリジンさんへUCを叩きこみ!
水属性のドラゴンのアタックからの吹き飛ばしで魚型オウガを弾く
ドラゴンが消える前に乗って緊急離脱します



 冬原・イロハ(戦場の掃除ねこ・f10327)は、寄せては返す波を見つめる。
(「私、過去の記憶がないのです」)
 猟兵として歩き始めて、私がいます。
 本当の名前も分かりませんし、私はイロハで良いのですが――。
 おっとりと日々を過ごす彼女にも、しかし陰りがあった。
 いつも仲のよい優しい人たちに囲まれているけれど、本当に会いたい人たちはそこにはいない。
 「おとうさん」と「おかあさん」がどんな方なのか、見てみたくて……。
 ゆっくりと、海に足をひたす。
 私と同じ白い毛並でしょうか。
 二人との思い出が見えるでしょうか。
 けれどどこを見てもその姿は見えず、過去のかけらはどこにも見つからない。
 その代わりに見えてしまったのは、寂しさ。
 なんでもないように振る舞っているけれど。
 本当は、色々と知りたいことが沢山あって。
 沢山の親子を見るたびに、本当は、気になっていました。
 だって私には、あんなふうにそばにいてくれる人がいないから。
(「これは私の過去の悲しみになるのかな……寂しいの気持ち」)
 藍色の瞳から、ほろほろと涙がこぼれる。
 あんまりにつらくて目を閉じたらまぶたの裏にいろいろな風景が浮かんで。
 ――不意に。
 ぽふりと頭が撫でられた。
 視線を巡らせても、イロハのそばに誰もいない。だけど、その温かさは心のどこかが知っている。
 手を振ったら、思い出の中の二人が振り返してくれるといいな。
 ほわわと心が温かくなって、頑張ろうって思って。
 ちょっとだけ、ふふっと顔をほころばせてしまい……。
「!」
 油断していたところに、魚型オウガが鋭い牙を向いて飛びかかってくる。慌てて戦斧を掲げ、その牙を受け止めた。
 温かさにひたるのは、またあとで。
「一撃、叩きこみます!」
 戦斧を一息に振るい、オウガ・オリジンめがけて投擲する。
 ダメージが蓄積されつつある身では完全にかわしきることができず、刃に裂かれて苦鳴をこぼす主を、魚型オウガが護るように位置取り襲いかかってきた。
 ず、っと。海中がうねりドラゴンが現れ、今まさにイロハへその牙を穿とうとするオウガへとアタックして吹き飛ばしていく。
「おのれ貴様……貴様ら……!!」
 ドラゴンが消える前に乗って緊急離脱するイロハの後ろから、オウガ・オリジンの怨讐が迫った。

成功 🔵​🔵​🔴​

シホ・エーデルワイス
以前
私に助けを求めてきた人を助けようとしたら
公の場で非難された事を思い出す


私にとって誰かを助ける事は使命だけでなく
純粋な意志による物でした

話せば分かり合えると思っていた
一度分かり合えなかったぐらいでは諦めず
何度も言葉をかけた

けど…

分かり合う事はできなかった
寧ろ私はその人にとても共感し過ぎていて…
その人の言葉に心は傷つき悲しく折れそうになった


絶望で心が折れなかったのは親友が支えてくれたから
親友は忙しい中
時間を割いて私の話を聞き励まし私を擁護して
私が悲しみの海に沈み壊れる前に私を引き上げてくれた

そう…

私を必要としてくれる人がいる以上
泣いてなんかいられない!
私を必要とする人がいる限り
私は挫けません!



 ゆっくりと涙の海に身を沈めながら、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は回顧する。
 以前、助けを求めてきた人を助けようとしたら、公の場で非難された事を思い出す。
(「私にとって誰かを助ける事は使命だけでなく、純粋な意志による物でした」)
 もちろん、見返りや称賛がほしかったわけではない。恩を売りたかったわけでもない。
 話せば分かり合えると思っていた。
 一度分かり合えなかったぐらいでは諦めず、何度も言葉をかけた。
 心からの言葉なら、きっと通じると信じていた。
(「けど……」)
 そんなものは幻だった。
 分かり合う事はできなかった。
 寧ろ私はその人にとても共感し過ぎていて……。
 その人の言葉に心は傷つき悲しく折れそうになった。
「浅はかな! 誠心誠意を込めれば分かり合えると? そんなものを信じて、裏切られなかったことがあったか? 幾度絶望に叩きのめされたか忘れたか?」
 懊悩の反復に涙をこぼすシホに、オウガ・オリジンの哄笑が刺さる。
 だが、違う。
 絶望で心が折れなかったのは親友が支えてくれたから。
 親友は忙しい中、時間を割いて私の話を聞き励まし私を擁護して。
 私が悲しみの海に沈み壊れる前に私を引き上げてくれた。
 この海のように、私の心が悲しみで満ちる前に。
「そう……」
 悲しみに負けていられない。
 だって、私の手を取ってくれる人がいるから。
 私の助けを必要としている人がいるから。
「私を必要としてくれる人がいる以上、泣いてなんかいられない!」
 じらりと2丁の聖銃を抜き放ち、マシンピストル機能を起動する。
 その銃口を敵へと向けるその瞳に、もはや悲しみはない。
「無駄なあがきを……!」
 オウガ・オリジンが攻撃を阻止しようと動くが遅い。
 先程まで悲しみに暮れていた少女が奏でる連射は、正確に敵を撃ち抜いた。
「私を必要とする人がいる限り、私は挫けません!」

成功 🔵​🔵​🔴​

鎹・たから
海の味はしょっぱくて
涙と同じ味がします

瓦礫に埋もれて
見えなくなった先生

はやく帰ると言って
帰らなかったあの人

飼えないと言われて
だけどこっそり餌をやっていて
道路に出てきてしまった子犬の
動かない姿

ぜんぶ
たからは、まもりたかった

だけど
彼らがくれた思い出は
悲しい物ばかりではありません

初めて食べた「ヒト」の食事
抱きあげてくれた大きな腕
あたたかい、ちいさないのち

全部、覚えています
それが今のたからを育ててくれました

零れる涙は拭わない
悪鬼を降ろした代償も怖くない

無理難題ではありません
たからは、泣いているこども達を救います
【覚悟、勇気、情熱

ダッシュでアリスへと駆け
攻撃を残像で潜り抜け
玻璃の刃をアリスへ
【2回攻撃



「海の味はしょっぱくて、涙と同じ味がします」
 鎹・たから(雪氣硝・f01148)の唇に、雫が触れる。
 その味を、彼女は幾度も知っていた。
 瓦礫に埋もれて見えなくなった先生。
 はやく帰ると言って帰らなかったあの人。
 飼えないと言われて、だけどこっそり餌をやっていて。
 道路に出てきてしまった子犬の動かない姿。
 ぜんぶ。
 たからは、まもりたかった。
 たからは、まもれなかった。
 そのたびに、たからは涙を零した。
 思い出して再び涙があふれる少女を、オウガ・オリジンは傷つきながらも嘲弄する。
「悲しい思いばかりを重ねていくのに、それでもお前は戦うのか?」
 砕けた鏡に少女の姿が映る。そして現れた『鏡の国の女王』の姿は、どこも少しも似ていないのにたからに似ていた。
 問いかけるのは自分自身。
「彼らがくれた思い出は、悲しい物ばかりではありません」
 初めて食べた「ヒト」の食事。
 抱きあげてくれた大きな腕。
 あたたかい、ちいさないのち。
 この手が、この身体が、失うのではなく与えられたもの。
「全部、覚えています」
 重ねていくのは、悲しい思いばかりではないから。
「それが今のたからを育ててくれました」
 零れる涙は拭わない。
 悪鬼を降ろした代償も怖くない。
 だって、彼らもまた傷ついて守ってくれているのだから。
「傷ついて、自分すら守れない者に誰かが守れると? それこそ無理、無謀と言えるだろうに」
「無理難題ではありません」
 完璧でなくていい。そのせいで、きっと誰かを心配させてしまうけれど。
 それでもきっと、彼らはしょうがないなと笑って許してくれるだろう。
「たからは、泣いているこども達を救います」
 たとえ、傷つこうと。血を流そうと。涙を流そうと。
 それは覚悟。勇気。そして、果たすべき情熱。
 『鏡の国の女王』が姿を消すのも意に介さず、ダッシュでアリスへと駆ける。
 オウガの餌食となる哀れなアリスではなく、アリスにしてオウガであるアリスへ。
 彼女が零した涙の海よりもなお深くへと。
「綺麗事を……!」
 激昂して繰り出す攻撃を残像で潜り抜け、たからは玻璃の刃をアリスへ向けた。
「どれだけ傷ついてでも、護りたいのです」
 一閃、返す手でもう一閃。その身を斬り裂く。
 深く傷つき反撃することもままならず、少女の姿をしたオウガ・オリジンは、もがくように……或いは掴むように拳を掲げ。
 涙の海へと溶けていく。
 まるで――こぼれた涙が、海ににじんでいくかの如くに。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月25日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト