迷宮災厄戦⑲〜それが紳士好みの展開
●ある紳士の午後
「ヒーローVSヒーローのコミックを、何篇知っていますか?」
煤けた森の片隅にひっそりと建つ、古めかしい屋敷。
その書斎の片隅で、初老の紳士は分厚い本を弄ぶようにページをめくっていた。
「主義主張など、その場のお題目でしかない。
立ち向かう敵のいない世界で自身を示すために、正義を愛する者達が戦わなければならない。なんと不幸なことでしょう」
やがて紳士――「サー・ジャバウォック」は手にした本を広げ、朗々と謡い出した。
「「秘密結社スナーク」は彼らを救うもの。ありもしない悪の化身!
どこにもない街を襲い、いるはずもない人々を殺め、あるはずもない狂気へ人々をいざなう!
これは正義に燃える者たちへの贈り物、永遠にヒーロー達が戦う世界!」
興が乗ったのか、拍子をとるように手先を振り、高らかに謡い上げる。
やがて詩は焦げた木々の洞を通り、煤けた森にゆっくりと染み込んでいった。
●ある中年の夕方6時
「まあこんな時期の朝9時になるとよ、興奮したオタクに絡まれてキレ散らかした女の子がよく吠えてたもんさ」
猟兵達は努めてガン・ヴァソレム(ちょっと前流行ったアレ・f06145)の昔語りを聞き流した。僕たちティーンだからわかんない的な顔には全員ちょっとした自信ありだ。
「さて、いよいよボス軍団のお出ましだぜ」
展開された画像には身なりの良い紳士と、彼の持つ本「侵略蔵書」が表示されている。
架空の悪の組織によって世界に悪の種を撒くという侵略蔵書「秘密結社スナーク」。
今のところは見えない怪物をけしかける程度ではあるが、疑念そのものを力とする怪物の力は徐々に戦うものの精神を蝕んでいくのだろう。
「ぱっと見は顔がいいだけのヒーローこじらせおじさんだが、その実態はやけに強いヒーローこじらせおじさんだ」
侵略蔵書自体の力は然程でなくとも、サー・ジャバウォック自身が見た目に似合わぬ戦闘力を持っている。竜の力をその身に宿しながらも、竜を殺すために与えられる剣を振るい敵を薙ぐ。剣の一閃、竜の翼ともにすさまじい速度を誇る。
「おじさん自身はここを前哨戦だと思ってるが、俺様達にとっちゃ正念場だな」
サー・ジャバウォックはアリスラビリンスで得た侵略蔵書の力を以てヒーローズアースへの侵攻を企てている。ここでけりをつけられないときは、再びかの世界をオブリビオンとの戦いに巻き込んでしまうだろう。
「そうなる前に、おじさんには最近の流行りを叩きこんでお帰り願おうぜ。グリム&グリッティは10年以上前に廃れてんだ」
作戦概要を把握しつつも、猟兵達にはひとつの疑念が浮かんでいた。
……おじさんおじさん言ってるけど、お前も結構いってるよな?
荒左腕
荒左腕(あれさわん)です。よろしくお願いします。
アリスラビリンスでの戦争となります。
ヒーローズアース、いいですよね。
●「プレイングボーナス」について
本シナリオでは以下の行動に基づく行動をとることで有利な結果を得ることができます。
プレイングボーナス……『敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。』
敵の攻撃については、OP及びオブリビオンのデータをご確認ください。
常に敵の攻撃からとなるため、戦闘自体は攻撃を受ける・いなすといった対策が軸となります。
※具体的には「どんなUC・技能を使って対処」より「どんな理屈(既存のルール・物理法則である必要は全くありません!)で対処」の方が活躍できると思います。
また、「悪の首魁」たらんとするサー・ジャバウォックはヒーローとの熱くウェットな語らいを熱望している節が見え隠れしています。恥ずかしがらずに正義の塊をぶつけ合えば、おじさん嬉しくてうっかりひるんじゃうかもしれませんね。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『猟書家『サー・ジャバウォック』』
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POW : 侵略蔵書「秘密結社スナーク」
見えない【架空の怪物スナーク】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : ヴォーパル・ソード
【青白き斬竜剣ヴォーパル・ソード】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : プロジェクト・ジャバウォック
【人間の『黒き悪意』を纏いし竜人形態】に変身し、武器「【ヴォーパル・ソード】」の威力増強と、【触れた者の五感を奪う黒翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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御堂・茜
そこな御方!正義をお求めですね!
ならばこの御堂茜がお相手致します
剣士としても相手に不足なし!
いざ尋常に参ります!
不可視の怪物による攻撃とはなんと卑怯な…!
しかしその虚構、御堂には通用致しません!
起動せよ、ジャスティスミドウ・アイ!
わたくしのサイバーアイは悪の気配を探る事ができます
視えますわ、負のジャスティスエナジーの塊が!
其処にスナークとやらが居るのでしょう
位置さえ解れば【気合い】で避けるのみです!
溢れる元気勇気情熱覚悟、そして気合いを胸に!
熱き正義の前に斃れる事がお望みならば
貴方の悪の美学…いえ、正義
この御堂が背負うて参りましょう
参ります!
UC【完全懲悪】!!
虚構の怪物諸共断ち斬りますッ!!
深淵なる悪の舞台には、パイプオルガンがよく似合う。
様式と美学を尊ぶサー・ジャバウォックの居所には当然のように礼拝堂が備えられ、その奥に鎮座するパイプオルガンから葬送曲が鳴り響く。
対して、演奏するサーの顔には年甲斐ない快活な笑顔が浮かび、今にも狂騒曲に変わってしまいそうな指先を必死に押さえつけているかのようだった。
「そこな御方、正義をお求めですね!ならばこの御堂茜がお相手致します!」
荘厳な悪の序曲は、御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)が蹴り開けたドアの破壊音で中断した。
「ようこそ正義の徒、お待ちしておりました。……正直言うとこの曲はここまでしか知らないのでね、助かりましたよ」
パイプオルガンから離れて傍らの本をぱらぱらとめくる。
その瞬間、茜のすぐ横を冷たい気配が通り過ぎた。
「私から心ばかりのもてなし。「存在しない怪物・スナーク」をどうぞ」
茜の首筋に何度もちりちりとした感覚が走る。
言葉通り一切姿は見えないが、確かな殺意が近づいていることだけは理解できた。
「しかしその虚構、御堂には通用致しません!起動せよ、ジャスティスミドウ・アイ!」
サイバーアイを起動すると、常人と異なる知覚によって自分と同程度の体躯を持つ何かが浮かび上がる。
「視えますわ、負のジャスティスエナジーの塊が!」
「ああ、もう「見て」しまったのですね!どうぞゆっくりご覧ください、スナークの正体!」
サイバーアイの効果で攻撃を受け止めた茜の眼前に、「スナーク」の姿がはっきりと映る。
「これは
……!?」
大振りの太刀、揺れる髪、桃色の瞳。茜と寸分違わず同じ姿がそこにあった。
正義の名のもと力を振るう、喜びに満ちた笑顔までが生き写しだ。
「対するものを邪悪とみなし、同じ暴力を以て正義を為す矛盾。
これこそ貴方の内より生まれた「スナーク」!さあ、貴方は……」
「【完・全・懲・悪】ッ!!」
サーの問いに答える事すらなく、茜は自分と全く同じ顔を正面から両断した。
「相手が自分でも正義の前には斃れるのみ、そして御堂は365日オールタイム正義!!」
「……素晴らしい!一瞬たりとも疑いを知らない、それが貴方の正義!」
サーは満面の笑顔で拍手を送った。「スナーク」と同じ、彼女の笑顔に。
成功
🔵🔵🔴
ナギ・ヌドゥー
ヒーローズアースの歴史は戦いの歴史……
だがヒーロー達は正義に酔って戦った訳じゃない。
今あの世界に求められている正義は戦争の歴史を繰り返さない事、だ。
アンタはもうお呼びじゃないんだよ、大人しくここで果てろ。
ドでかい剣だ
一撃でも喰らったらもう立てないだろう
だが巨大すぎる故にその軌道は【見切り】易い
そして奴の攻撃範囲内で最も安全な場所……
それはあの巨剣の上だ!
【第六感】にて斬撃を【見切り】剣の上に乗る
UC「オーバードース・トランス」発動
超加速し巨剣上を一瞬で走り抜け奴を斬る!【早業・切り込み】
フェルト・ユメノアール
悪いけど、キミの脚本に付き合う気はないよ!
この物語はボクたちがハッピーエンドにするんだから!
相手は最強、普通に戦ったら勝ち目はないね
なら……搦め手を使うよ
反撃をする為にも、まずは初撃を防ぐ!
『ハートロッド』を体の正面に構え、急所をガード
ダメージは覚悟の上、致命傷を受けないように防御の事だけを考える
そして、ここからが勝負所、攻撃によってハートロッドが弾かれたように『演技』
相手の意識がハートロッドから外れた所で本来の白鳩姿に戻し、纏わりつかせる事で行動を妨害
この瞬間、ボクはカウンタースペル、【光の拘束鎖】を発動!
拘束鎖を相手に放ち、絡める事で動きを封じ、その隙を突いて『トリックスター』で攻撃する!
「悪いけど、キミの脚本に付き合う気はないよ!
この物語はボクたちがハッピーエンドにするんだから」
フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)はサーの背後に降り立ち、パイプオルガンの鍵盤に爪先立ちしていた。「ねこふんじゃった」を弾くにはまだ柔術の功夫が足りないようだ。
「それは困ります。道化師(ジェスター)の仕事は物語の進行ではありませんか」
サーはおどけるように「道化師」の礼を取る。
「仕事のできない道化師には、ご退場いただく他ありませんね」
「……えっ!!?」
生暖かい風が一瞬通り過ぎると、フェルトの視界が暗闇に包まれた。
――否。フェルトから、「視覚」が失われたのだ。
「ああ、目を奪われてしまったのですね。申し訳ありません、私と違い「この身体」は
情緒を解してくれないのです」
見えないフェルトには知る由もないが、一瞬のうちにサーの身体には驚くほどの変化が起きていた。全身を赤黒い鱗で覆い、漆黒の翼を広げた竜の魔人だ。
変化と同時に翼がフェルトを襲い、呪いの力が五感の1つ――視覚を奪ったのだ。
「すぐに見えぬ恐怖から解放して差し上げますので」
精緻な衣装の鞘から白く輝く刀身が抜き放たれ、斬竜剣ヴォーパル・ソードの切っ先がフェルトを指し示した。
だが、フェルトは言われるまでもなく自身の役割を理解している。
自分は恐怖に怯える民衆ではなく、笑顔を作る道化師だ。
靴や下着より自分の体に馴染んだソリッドディスクを瞬時に展開し、手探りだけでカードを2枚セットする。
「この瞬間……ボクはカウンタースペル、【光の拘束鎖】を発動!」
生命力を削って放つ光の鎖がサーの剣を弾き、反動でフェルトを後ろへ突き飛ばす。
「ほう?しかしそれで」
「そしてダメージを受けた瞬間、もう1つのカウンタースペル【エマージェンシー・ボックス】を発動!!」
光りの鎖を素早く捌いたサーだったが、突然現れた巨大な箱に虚を突かれた。
「さてお立合い!ワン・トゥー……スリー!」
開け放たれた箱の中身は……空だ。
「失敗ですか?」
「……いや、大成功さ」
サーの背後上空にナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)が出現する。
カウンタースペル【エマージェンシー・ボックス】には出現場所の指定がない。
間に合うかは賭けでもあったが、ナギの刃は無事にサーの剣を受け止めることが出来た。
「お見事。では此方もアクセルをかけていきましょう」
モノクル奥の左目に光を灯すと、携えた剣が突如5倍ほどの大きさになる。
だが大木のような大物ながら、サーの剣は一切鋭さを失うことがなかった。
一撃目を受け、二撃目を躱し……三撃目が見えない。
「……バカ、な?」
ナギの脇腹に穴が開いている。急激に血を失い、崩れ落ちるナギ。
「おや、急所を外れている?申し訳ありません、私も急いでいたもので。
早くかの世界へ、ヒーロー達へ新しい戦いを届けなければと。気ばかり焦っている」
言葉に反し、サーの口調はティータイムのように穏やかだ。
だがあやすようなその言葉に抗うように、ナギは血を吐いて立ち上がった。
「ふざけるなよ……ヒーロー達は正義に酔って戦った訳じゃない。
今あの世界が求める正義は、戦争の歴史を繰り返さない事だ……!
アンタは、もう、お呼びじゃないんだよ……!」
「静かながらも真っすぐに伸びた清い怒り。……素晴らしい!
ならば示してごらんなさい、私の前でその「正義」を!」
何故か喜びに震えるような顔で再度剣を振りかぶるサー。
対するナギは強化剤の注射を3本取り出し、まとめて打ち込んだ。
オーバードース・トランス。強化剤の過剰投与で肉体の限界を超えるためのユーベルコード。
痛みは消え去り視界もクリアになったが、目は血走り、呼吸も荒い。
今の状態ではもって数秒という所だろう。
「……構わん!」
ナギは真っすぐに駆け出し、サーの剣――巨大化したヴォーパルソードへ狙いを定めた。
サーの剣は確かに速い。異常な大きさで尚見えない程に。
だが、長さの増したそれは剣より槍に近い。懐に飛び込めれば、必ず隙をつけるはずだ。
「意気やよし!速さを証明してみるがいい!」
1撃目、2撃目を連続して回避。半分は直観のなせる業だ。
だが3撃目、クリアになった思考が何度となく警告を上げる。どう動いても心臓を狙った突きを躱せない。懐に入るにも、あと1歩だけ足りない。
「……ここで、【光の拘束鎖】もう1つの効果を発動!カードを除外して、フィールドの敵1体をする束縛する!」
ぎりぎり立ち上がったフェルトがまだ見えぬ目でカードを手繰ると、光の鎖がヴォーパルソードに絡みつき、その動きを縛る。ナギが渇望していた1歩分の隙間をこじ開けたのだ。
「……届いた!」
ナギの刃が剣の柄を滑り、サーの身体をさかのぼる。
「これは……見事……!」
胴と左頬を大きく切り裂かれ、苦悶の声を上げながらも、サーの声はさらに喜色を上げていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
楊・宵雪
(竜人形態は近接攻撃手段しか持たないようね。それなら…
剣または翼で攻撃を仕掛けてくる瞬間に反撃を狙う
咄嗟の一撃でUC起動、多重詠唱と範囲攻撃を重ねて
大量の狐火を合体させて自分の周囲に大規模な火炎球を発生させる
自身は残像をのこし離脱しておく
可能であれば部位破壊も付与しておき翼の破壊を狙う
倒しきれていなければ弾幕を敵の進行方向に置きつつ逃げて戦う
空中浮遊でランダムな速度と軌道で敵の攻撃を回避
五感が奪われていれば誘導弾で弾道をオートにすることで対応しつつ
オーラ防御で固め、生命力吸収で自身を回復
「次はわたくしが!」
楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)は懐から無数の呪符を撒き、炎の呪力を纏わせてサーへ投げつける。これ見よがしの牽制ではあるが、とにかく瀕死に近い仲間から遠ざけておく必要があった。
「今度は、お嬢さんがお相手を?」
大きな傷跡もそのままに、竜の魔人が翼を広げた。興奮の為か、深手を負って尚その速度は衰えない。
(やはり、竜人形態は近接攻撃手段しか持たないようね。それなら)
宵雪は手元の呪符をさらにばら撒きながら、宙を蹴ってサーから距離を取る。だが彼女の予想を上回り、竜の翼はひと飛びで宵雪に肉迫していた。
「散歩の時間でもないでしょう?」
黒い翼のひと薙ぎが宵雪を包み、五感の1つを奪う。その瞬間、宵雪は周囲の全て――自分自身すらも――が抵抗のない水に包まれたような感覚に陥る。奪われたのは、触覚だ。
「ええ……そのつもりよ」
手先や肌から伝わる感触は、戦闘において時に視覚情報より雄弁となる。
何の気もないふりをしながらも、宵雪は焦りを隠せない……が。
(……!)
残された視覚の片隅に映った呪符から全ての仕込みが終わったことを確信し、宵雪はサーの懐へ飛び込んだ。
「捨て身の攻撃が好きな方々だ……」
「そうでもないわ」
そのまますれ違うようにサーの身体を躱し、直進する。
「ッ!?」
サーが振り向くよりも早く、宵雪は仕込みの引金――上空に展開した80枚の呪符を起動した。
炎の呪力が狐火を宿し、隣り合った狐火が重なり合って大きさを増す。
そしてこの時、80枚の呪符はサーの周囲を取り囲んでいた――というより、取り囲まれた場所へサーを誘導していたのだ。サーが気づかなかったのは、戦闘の高揚によるものか、あるいは。
「これで!」
次々に溶け合う狐火はやがてサーを覆う巨大な火の玉となり、その翼を焼き焦がした。
成功
🔵🔵🔴
神羅・アマミ
なるほどなるほど。
大型クロスオーバーイベントだと「またあいつら内輪で揉めてる…」って話多かったりするしのー。
しかァーし!
ヒーローの同士討ちを仕向ける影のフィクサー気取りがノコノコ出てくるならば、その先はやはり王道展開のフィナーレなのでは?
奴さん不可視の怪物を放ってくるらしいが、致死率は低いと見た!
【野生の勘】と【ダッシュ】で回避、組み付かれるなら【怪力】で脱出を試みる。
満を持して放つはUC『板付』!
ただし…狙うは怪物がいると思しき周辺の地面!
地形破壊効果で舞い散る瓦礫や埃がたちまち姿を浮き彫りにしてくれよう。
あとはもう一発、おっさん本体を巻き込んでブチ当たるよう狙って怪物を思いっきりブン殴る!
「最後は……妾じゃ!」
翼を失い地に落ちたサーの前で挑発的なスーパーヒーロー着地を決めたのは神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)だ。
「おお、様式美……!」
「あっうん……じゃろ?」
先方がいたく喜んでいるので、実は受け身とか失敗して超痛いことは黙っておくことにした。
「ならば、私も最後にお贈りしましょう!貴方だけの、「姿なきスナーク」!」
傷だらけの懐にしまい込まれていた侵略蔵書。今一度そのページを開くと、アマミの周囲に突如複数の気配が出現した。
「ネタが割れておるなら、やりようも!」
見えない「炎」を、見えない「槍」を、「音符」を、「巨腕」を、「大矢」を、「鋼糸」を、まるで「知っているかのように」躱し、いなしていく。
「これは……どうした事か?」
不可視への対策自体は諸々あろう。だがそれにしても、アマミのやり方は「手慣れ過ぎている」。
「言ったであろうよ、ネタが割れていると!」
大きく振り上げた拳が地面を砕く。土埃を舞い上げる程度であったが、少々力を込めすぎた。亀裂が水脈に到達すると、泥水が吹き上がって「スナーク」達の姿を露わにする。その顔はやはり、全てアマミのものだった。
「御明察です、お嬢さん。……ほんの少し立場や経験が違う貴方。ボタンを掛け違えた貴方。
<そうなっていたかもしれない貴方>、それがスナークの本質」
「うん、そこまではすごいよくわかる。わかるが……」
アマミは酷く穏やかな声で一つ息をつき、
「ディテールが甘いんじゃーーい!!」
隣のスナーク――勿論アマミの顔をした――をぶん殴って星に変えた。
さらに次々スナークのアマミをぶっ飛ばしていく。ゴルフの練習場のようだ。
「妾もっとおっぱい大きいし!足長いし!
それに!どんだけ糞みたいなことになっても……そんな顔せんわい!!」
何より気に入らなかったのは、泥で露わになったスナーク達の表情だった。
一様に何かに怯え、苛立ち、焦る、焦点のない瞳。何も見ようとしない連中の顔。
「妾の地元じゃあのう!心に愛がないと、スーパーヒーローにはならんのじゃあ!!」
憤りのままに固めた拳をスナークごとサーにぶつける。
「……ああ、その通り。その通りだとも……!」
サー・ジャバウォックの身体が、スナーク諸共砕けていく。
その拳を避けないことすら、アマミにはなんだかわかっていた気がした。
――少し後。
煤けた森に光が差し、猟兵達に戦いの終わりを告げる。
半壊した館を見つめながら、アマミはひとりごちた。
「……ヒーローの同士討ちを仕向ける影のフィクサー気取り。出てくるならもう終盤じゃろ?その先は王道展開のフィナーレがお約束じゃよ」
西の彼方。既に霧散して久しい彼の欠片へ、別れの笑みを送る。
「次のリランチは、お前さん好みの設定だといいの」
大成功
🔵🔵🔵