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ボムボム・ショコラ

#スペースシップワールド

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#スペースシップワールド


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●スペースシップワールド
 居住可能な惑星を探す旅を続ける宇宙船に、故郷のスペースコロニーから補給物資と共に荷物が届いた。
 家族へ、友人へ、そして恋人へと贈られた――チョコレート。
 バレンタインという風習は、この広い宇宙世界にも存在するのだ。
 すこしばかり時期は早いが、次に補給船が来るのは二ヶ月後。
 コロニーへの帰還は半年後になる為、今回の便に合わせて届けられたのだろう。

 通信でのやりとりはできても、こうして直に手で触れられる贈り物はまた別格だ。
 乗組員たちは、盛り上がる。

「くっ、こんなもん貰ったら惚れちまうだろうが!」
「あいつ……そんな素振りなかったくせに……」
「んー。お返し考えねえとなあ」
「ウオオ! 妻と五才の娘の手作りチョコレェェェト!」
 感極まって様々な思いを叫ぶ乗組員たち。
 小包を大事に抱えた青年も、隠しきれない笑みをこぼし。
「こんど故郷に帰ったら、あいつに――」

 その言葉の先をかき消すように、閃光が、熱風が、衝撃が襲いかかる。
 チョコレートの箱が爆発したのだ。


「リア充が爆発してしまう」
 クック・ルウはキリッとした顔で言った。
 集まった猟兵達に礼を述べると、説明を始める。

 宇宙船に届けられたバレンタインチョコが、爆弾とすり替えられている。
 思いを込めて贈ったチョコが、愛する者の命を奪う、そうなる前に止めてほしい。
 そのためには、乗組員たちからチョコレートを没収し、爆弾を処理しなくてはいけない。

 緊急事態のため、事前の警告は間に合わない。
 事情を知らない乗組員の中には、チョコを渡さず、抵抗する者もいるだろう。

「敵は混乱に乗じて、スペースコロニーのデータを手に入れるつもりだと思われる。この船を壊滅したら、次は彼等の故郷が狙われるだろう」

 爆弾が通用しなければ、相手は強硬手段にでると予想される。
 戦闘準備は忘れずに、くれぐれも気を付けてほしい。

「すり替えられた本物のチョコは、事件解決後に見つかる筈だ」
 右手を掲げ、サムズアップをつくる。GOサインだ。
「なので遠慮なく、チョコレートを狩ってくれ」

 全ては人の命を救うためなのだから。


鍵森
 鍵森です。
 ネタ依頼です。

 第1章。
 チョコを持った乗組員を探し、片っ端からチョコを取り上げて下さい。
 第2章。
 醜き嫉妬との集団戦です。ドロドロしています。
 第3章。
 美少女アイドルは幸せなカップルが許せないようです。

 だいたい勢いがあればなんとかなるかと思います。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『宇宙船危機一髪』

POW   :    爆弾を船外に放り投げて爆発させる

SPD   :    爆弾を解体する

WIZ   :    爆弾を探し出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

蓮・紅雪
同行者:アイビス(f06280)

愛する人への贈り物を爆弾とすり替えるなんて悪質だわ。
私がアイビスに贈りものをして、それが爆発してアイビスが怪我を……考えるだけでも犯人をズタズタにしたくなるわね(と無表情で言いながら手当たり次第に乗組員からチョコレートを取り上げていく。抵抗されても妖刀の峰打ちで容赦なく黙らせる)
この人たち、しつこいわ。これは爆弾だって言ってるでしょう?
(アイビスに爆弾対処について指摘され)爆弾の解体?斬ればいいかしら。……嘘よ、外に投げ捨てるわ。

もし爆発が起きてしまったら、爆風を衝撃波で相殺するわ。


アイビス・ライブラリアン
同行者:紅雪(f04969)
何故チョコを爆弾にするという非効率なことをするのか、分かりかねますが…
ただ贈り物を攻撃の道具にするのはよろしくありませんね

私はエレクトロレギオンで手当たり次第爆弾を探しますので、それを紅雪が処理するということで

「ですので、乗組員を沈めたら爆弾の対処をしなければなりませんよ、紅雪」
「それと先程ですが、愛する人、と言ってくれてありがとうございます。私も好きですよ、紅雪」



 ウォールライトの白い光に照らされた合金製の通路を二人の少女が走る。
 アイビス・ライブラリアン(新米司書人形・f06280)のエレクトロレギオンによって召喚された無数の小型機械兵器が、爆弾を探索し、彼女たちを先導していた。

「何故チョコを爆弾にするという非効率なことをするのか、分かりかねますが……ただ贈り物を攻撃の道具にするのはよろしくありませんね」
 アイビスの言葉に、蓮・紅雪(新雪・f04969)は、淡々と頷く。
「愛する人への贈り物を爆弾とすり替えるなんて悪質だわ」
 それを想像するだけで。
 胸の奥底から強い感情がこみ上げてくるようだ。
 まるで察したかのように、アイビスが視線を向けてくる。
 紅雪は表情を変えず、少しだけ心の内を零した。
「私がアイビスに贈りものをして、それが爆発してアイビスが怪我を……考えるだけでも犯人をズタズタにしたくなるわね」

 二人が行き着いたラウンジでは、休憩中らしき乗組員たちが思い思いにくつろいだ一時を過ごしていた。
 その手に、受け取ったばかりらしきチョコの包みを持つものもいる。
 いきなり現れたアイビスと紅雪を見て、乗組員たちは何事かと身構えた。
 二人は手短に事情を説明した。そのただならぬ様子を見れば、それが冗談ではないことがわかっただろう。
 それでも素直に包みを渡す者はいなかったため、紅雪は戸惑う乗組員たちから次々とチョコの包みを取り上げる。
『あっ』
『待って!』
『それだけは!』
 少女とはいえ、彼女たちは猟兵なのだ。その手に掛かってはひとたまりもない。
 没収したチョコの包みは、アイビスと小型機械兵器に渡される。
 紅雪から距離を取るように、じりじりと後ろに後退する男の一人が、懇願するように叫んだ。
『いやいやいや! 待ってお願い人生初のチョコなんです! 手放すのにも心の準備が』
 一応こちらの要求を聞くつもりはあるようだが、往生際が悪い。
 残念ながら、その心の準備とやらを待つ猶予はなく。
 紅雪は刀の鯉口を切り、身をかがめた。迷うことなく刀身を閃かせ、乗組員たちの間を俊敏さと優雅さですり抜ける。
 一瞬のことだった。
 妖刀を鞘へ収めると同時に、包みを持った乗組員たちは糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
「峰打ちよ」
 だが、意識を刈り取られ、それでもまだ手を放さない者もいるようだ。
「この人たち、しつこいわ。これは爆弾だって言ってるでしょう?」
『……ぐううぅ人生初の本命かもしれないチョコ……』
 うわ言だ。紅雪は小さくため息をつく。
 アイビスの小型機械兵器が、気絶した乗組員たちからチョコの包みを回収した。
「乗組員を沈めたら爆弾の対処をしなければなりませんよ、紅雪」
「爆弾の解体? 斬ればいいかしら」
 たしなめるようにアイビスが首を傾ぐ、紅雪は肩をすくめてみせた。
「……嘘よ、外に投げ捨てるわ」
 制御パネルを操作し、設定を船外排出に切り替えたダストシュートに放り込む。
 これでひとまず、安心だろう。

 気絶した乗組員たちは他の乗組員に任せ、二人はラウンジを出た。
 通路を進みながらアイビスが「紅雪」と声を掛ける。
「先程ですが、愛する人、と言ってくれてありがとうございます。私も好きですよ、紅雪」

 紅雪は足を止めて、アイビスを見上げた。その顔には仄かに笑みが浮かぶ。
 アイビスも立ち止まり、二人は束の間、たがいに見つめ合った。

 船外から遠く、爆音が鳴る。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイチェル・ケイトリン
爆弾さがし

船長さんたちに「解放軍の再来である猟兵です」っていって事情を話しておてつだいをおねがいするね。

ハッキングと念動力と情報収集の技能でサイコリンクデバイスつかってユーベルコード「サイコクラック」を発動して船内ネットのニュースとかをかきかえてデマをながすよ。

「チョコレートの材料カカオから突然変異の病原体が発見されました。
感染力が高く難治性の男性機能障害を引き起こします。
先日の補給船のチョコレートからもすでにいくつか発見されました。
微量採取で検査できますから、お心当たりのある方はふれないよう
袋に包んで医務室に提出を。問題なければ返却されます」

おしえてもらったんだけど男性機能障害ってなにかな?



レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)はこの宇宙船の船長に協力を仰ぐべく、ブリッジへ向かった。
 ブリッジに続く扉は関係者意外立入禁止となっていたが能力を使って操作し、分厚い扉を開けてレイチェルは中へ入った。
 ブリッジは半円形型の司令室となっており、各セクションの首脳陣他、数名の通信士が配置され業務を行っているようだ。中央の奥にある席に座っているのが船長だろう。
 突然現れたレイチェルに、困惑と警戒の目が向く。
 純白を思わせる幼き少女は、誠実な態度で彼等に話しかけた。
「わたしはレイチェル・ケイトリン。解放軍の再来である猟兵です。話をきいてください」
 普通なら突拍子もない話だったが、船内の異常を船長たちも何か感じていたのだろう。猟兵の存在が知られている世界だったことも大きい。
 異世界を渡り、この船を救いに来たのだと説明するレイチェルの言葉に耳を傾け、年配の船長は頷く。
『猟兵には君のような子もいるのだな』
「なんでしょう?」
『……いや、失礼。故郷に君ぐらいの孫がいるのだ』
 船長の言葉に、レイチェルは瞳を瞬いた。

『それなら、すぐに緊急警告すべきですよ』事情を知った若い通信士が驚きの声を上げる。
 レイチェルは首を横に振った。
「いいえ、てきは作戦が失敗したとしれば強硬手段にでると、きいています。だから、船員のみなさんに自分からチョコレートをさしだしてもらえるように、フェイクニュースを送信したいと思います」
 レイチェルは瞳を閉じると念じ、サイコリンクデバイスを使って船内のデータベースにアクセスする。
「おしえて。わたしの心に」
 強力な念動力で情報を読み込み、各船員が持つ携帯端末に配信される最新のトップニュースの情報を塗り替えていく。そして同じものをブリッジの正面にある巨大モニターへ、表示する。

 部屋に居た全員がモニターに注目し、映し出されたメッセージを読んだ。

 ※緊急ニュース※
 チョコレートの材料カカオから、突然変異の病原体が発見されました。
 感染力が高く、難治性の 男 性 機 能 障 害 を引き起こします。
 先刻の補給船のチョコレートからもすでにいくつか発見されました。
 微量採取で検査できますから、お心当たりのある方はふれないよう、
 袋に包んで医務室に提出を。問題なければ返却されます。

 ブリッジに、気まずい沈黙が降りた。

 これが年相応の大人がしたことなら、まあ、わかる。
 だが、10才の子供がこれを書いたのというのは、控えめに言って。えぐい。

「おしえてもらったんだけど男性機能障害ってなにかな?」
 こてん、とレイチェルは見た目に相応な幼い仕草で首を傾ぐ。
 言葉の意味は意味を知らなかったらしい。通信士が一人、天を仰いだ。
「船長さん?」
『…………』
 船長は答えなかった。
 しかし、だからこそ長年苦楽を共にしてきた船長の胸中を、その場に居た船員たちは感じ取っていた。
 即ち、いたいけな子供に露骨な言葉を吹き込んだのは何処のどいつだ馬鹿野郎。だ。
『医務室に連絡だ。爆弾処理ができるよう手配をしろ。これより我々は、猟兵のバックアップ及び敵との交戦に備える』
『ハッ、ハイ!』
「あの?」
 レイチェルの疑問に答えられる大人は、残念ながらいなかった。

 一方、医療室には沈痛な表情を浮かべた男性船員が列をなし、実に穏便(?)かつ大量にチョコの包みを回収することが出来た。

 だが無垢なる少女の爆弾発言により、ブリッジは異様な空気に包まれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイチェル・ケイトリン
爆弾さがし

すごくこわい病気だったのかな、船員さんたちごめんなさい。

でも、どんどんだしてくれてるの。

ハッキングと念動力と情報収集の技能でサイコリンクデバイスつかってユーベルコード「サイコクラック」をまた発動して補給船の宛先データからリストつくってチェックするね。
もちろんほかの猟兵さんたちにもおしえてもらってね。

そして、あつまった爆弾とまだチェックできてない宛先のことをほかの猟兵たちにもおしらせするね。

わたしの力は心の力。

ぜんたいをしっかりみながら、船員さんたちみんなのことぜんぶたすけてあげたい。

プレゼントしたひとたちのためにも。

それがいまのわたしの心だから。



 ブリッジでレイチェルは、船員たちの間に張り詰めた空気が漂うのを感じていた。
 爆弾やオブリビオンの存在によるものだけではないのだろう。
 もしかしたらフェイクニュースの内容で、怖がらせてしまったのかもしれない。

「すごくこわい病気だったのかな、船員さんたちごめんなさい」
 しゅん。としたレイチェルの言葉にブリッジにいた船員たちは慌てふためく。彼女が謝ることなんて何もないのだ。
 レイチェルや猟兵達のおかげで一体何人の命が救われ、悲劇が防ぐことが出来ただろうか。それに比べれば、男性機能がどうのこうの。ささいな事ではないか。
「でも、どんどんだしてくれてるの」
 そうだね。と船員たちは優しく頷いた。
 チョコレートを持った船員たちが医務室に詰めかけているという報告は絶えない。彼女はその話をしている。もやりと擡げかけた下世話な連想は、各自理性の奥底に沈めた。

 話をしながらもレイチェルの意識は、サイコリンクデバイスの操作に集中している。
 強力な念動力による操作は、ただコンピューターを操るのと違い、彼女の心に宿る意志が大きく影響した。

 だからこそ。
 彼女の力はテクノロジーや理屈を超えた動きを可能にした。

「わたしの力は心の力」
 強く、はっきりと、声にして。レイチェルは意識を研ぎ澄ませた。

 ハッキングを駆使してデータベースに入り込み、補給船の宛先データをリスト化し、医療室にチョコの包みを渡した船員の情報を照合。
 全体をしっかりみながら、0と1の羅列から必要なものを掬い取り並べていく。データの奥に、人がいる。大勢の生きる命が。また会おうと約束を交わした者達が。

 船員さんたちみんなのことぜんぶたすけてあげたい。
 プレゼントしたひとたちのためにも。
 それがいまのわたしの心だから。

 そのためにも、ともに戦う猟兵達の協力が必要なのだ。
「あつまってない爆弾と受取った人のデータを、ほかの猟兵さんたちにもおしらせするね」
 レイチェルは情報の共有ができるように作成したリストを猟兵達に発信し、随時更新されるように設定した。
 データを受け取ったものがいれば、十分活用できるだろう。
 他の猟兵たちの動きも、船内の情報から把握し情報を収集すれば、またたく間にリストが埋まっていく。
 
 一つ、また一つ。

 ブリッジのモニターに映し出されたリストに回収済みのチェックがつく度に船員たちは活気づく。
「おねがい」
 レイチェルの青い瞳は託すような思いをたたえて、残りの人数を見つめる。

 全てのチョコレートが集まるまであと少し。

成功 🔵​🔵​🔴​

弥刀・一二三
別人の物と入れ替わったと情報流し、全員から回収出来次ホンマモンを渡す誓約書と交換で収集。爆弾は解体。
「偽モンでええんどすか?ホンマモンやないと、渡した方と意見食い違うて嫌われまっせ?」
この日の野郎のチョコに対する妄執は異常どすが、ホンマモンやないと意味ない事を悟らせんと。
レイチェルはんのデータからまだチョコを持っとるやつを説得。
データに過去無かった物質データも組み込み、隠しとらんかもチェック。
「…別人からのモン、後生大事に守っとると知ったらホンマモンくれたヤツ、どない思いますやろな…あ、データで相手は分かっとるんで、連絡しときますわ『てめえのなんぞいらんわ!こっちのがええ!』言うとったて」



 レイチェルが作成しデータを元に、弥刀・一二三(サイボーグのスターライダー・f10459)は船内を移動する。
 瞳に装着されたサイバーアイを通して、視覚情報から船内の過去データと現在の状態とを比較し、船員が隠し持とうとしているチョコをも見逃さず押収していた。
 説得すれば素直に包みを渡す者もいたが、中には強情な者もいる。
 居住スペースにある船室で、一二三は抵抗する男と対峙することになった。

『近よるなー! 病気がなんだってんだ! このチョコは渡さねえ! 食べずに飾って家宝にするじゃーい!』
 まるで崖っぷちに追い詰められた犯人のごとく、壁に背をつけて決死の覚悟でチョコを守る男、なにが彼をそうさせるのか。むろん愛ゆえにである。
 騒ぎを聞きつけて集まった他の船員たちは扉の中を覗き込みながら、呆れ顔ながらに説得の言葉をかけたり、取り押さえようとする者もいた。
 しかし一二三は野次馬を静かに下がらせて、一人、男に話しかける。
「それは偽モンどす」
 一二三は真実を告げた。
 偽物。衝撃的な言葉にその場にいた船員たちは騒然となる。
 真心込もったプレゼントと殺意の込められた偽物。その違いは大きい。しかし、確かめるすべはない。
 けれど、違和感はあったのだろう。うろたえたように男の目が泳いだ。
「偽モンでええんどすか? ホンマモンやないと、渡した方と意見食い違うて嫌われまっせ?」
 嫌われる。それを聞いた男は体を震わせた。
「……別人からのモン、後生大事に守っとると知ったらホンマモンくれたヤツ、どない思いますやろな……あ、データで相手は分かっとるんで、連絡しときますわ」
 はったりではない、一二三がその気になれば、相手のデータは本当に手に入るだろう。
 ひたり、相手を射抜くような鋭い目が男を見据える。
「あんたが『てめえのなんぞいらんわ!こっちのがええ!』言うとった……て」
 その言葉が、決定打となった。
 男の顔からみるみる内に血の気が引いていく。
『や、やめとくなはれ! それだけは後生や、堪忍したってんか!』
 (何故か関西弁になりながら)男は首を何度も横に振って、抵抗を止めた。
 一二三は近寄って男の肩を軽く叩き、チョコの包みを受け取る。
 ついでに、【ホンマモンを渡す誓約書】にもサインを貰った。

 情報が広まったことにより、居住スペース内に残されていたチョコは次々と回収される。
 だがそれは、一二三の説得があってこそのものだろう。
 そして集められた爆弾は、その場でメカニックである一二三の手で解体されたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アーサー・ツヴァイク
※飛び入りだけどアドリブ協力大歓迎

リア充リアルに爆発しろってこと? そんな考え方だから余計にモテないんだよなー

さて、割と解体…というか爆破処理は進んでるようだが、まだ持ってる奴が残ってるっぽいな。
なら船内をライドランに【騎乗】して走り回りながらチョコ回収の呼び掛けだ!
【失せ物探し】の技能で、慌ててそこら辺に捨てたりしていないかの確認もしておくか。
集められるだけ集めたら、船外に放って、レイシューターでぶっ壊す!

見とけよ、銀河帝国のモテない野郎共! お前らの歪みまくった野望こそ、俺達が木っ端微塵に爆破してやるぜ!



「リア充リアルに爆発しろってこと? そんな考え方だから余計にモテないんだよなー」
 アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)はぼやき。バイクを飛ばした。
 運搬用の通路を使って、人が少ない船の下層部を目指す。
 進む先には機関室がある。通信で受け取ったデータによれば、医務室に提出をしていない船員がこの先にいる筈だった。

 機械の駆動音が響く廊下に出ると、作業服を来た二人の機関士の姿があった。
『おやっさん、いいんですかね。チョコを医務室に届けなくて、船内ニュースでさっきから何度も警告してますよ?』
『馬鹿野郎! 見回りが先だ、機関室は船の心臓なんだぞ!』
 若い船員を怒鳴りつけたのは、この船の機関長だ。今時珍しい職人気質の頑固親父と評判の男は、自分の身よりも船の安全を優先しようとしていた。
 機関士はその五感で、データに現れないような機器の異常を確認する。それが現場を任された者の務め。しかしその吟侍により、彼は自分を後回しにしてしまった。

「そこの二人、待ってくれ!」
 アーサーは進路を妨げるようにバイクを乗り付けた。降りる暇も惜しく、そのままの姿勢で単刀直入に事態を説明する。
「――という訳だ。チョコを渡してくれ。他は回収した。あんたで最後だ」
『……』
 機関長は黙ったまま、アーサーと彼が乗るライドランを見つめる。
 アーサーは溜息を吐いた。
「まあ、急にこう言われても、信用出来ないのはわかるけど」
『……いや、持っていきな。向こうのロッカーだ』
 すんなりと聞き入れられ、やや拍子抜けだったが機関長は鼻を鳴らした。
『手入れされたいいバイクだ。マシンを大事に使うやつに悪いのはいねえ』
「それはどうも」アーサーはニヤリと笑った。

 チョコの包みを引っ掴み、バイクを発進させようとするアーサーへ、後ろから機関長の大きな声が掛かる。
『処分するなら、この先の船内ドックに耐爆防護仕様のコンテナがあるぜ』
「なるほど、それじゃそこに突っ込んでくるよ」
 軽く手を上げて答え、握るハンドルを回す。エンジン音が唸りを上げた。
 一人と一機は竜が翔ぶが如くの猛スピードで船内を駆け抜け、船内ドックへ乗り込んだ。
 周囲をざっと見回すと、分厚い金属で出来た大型の箱を見つける。
「これがコンテナか」
 アーサーは制御パネルを操作し、開口部に集めた偽物の爆弾チョコを放り込んだ。
 扉が閉まり、二秒後にくぐもった爆音とわずかな振動が走る。
 間に合った。だが、終わりではない。
 アーサーは爆発を確認すると、息を吸った。
「見とけよ、銀河帝国のモテない野郎共! お前らの歪みまくった野望こそ、俺達が木っ端微塵に爆破してやるぜ!」
 宣戦布告と共に、アーサーは振り向きざまにレイシューターを抜いた。
 熱線が、死角にいた影に撃ち込まれる。
 泥のような奇妙なモノが、衝撃に爆発四散した。

 敵が、動き出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『醜き嫉妬の生命体』

POW   :    妬心の暴虐
【対象の優れた部位を狙う触手】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    精巧贋物
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【喉から手が出るほど欲しい他者の所持品】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ   :    縋る腕
【醜い羨望】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【粘着性の高いぶよぶよした黒い塊】から、高命中力の【対象の所持品を奪おうとする触手】を飛ばす。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『ラブリーマリー特製チョコレート♡ 喜んでくれたかしら♡』
 船内にキャピキャピした声が響き渡る。
 女の声だ。場違いな言葉にも聞こえるが、そこには深い憎悪が込められている。
 一時的に船内のスピーカーを乗取ったのか、船内の何処にいてもその声は届いただろう。
『邪魔が入ったみたいだけど、実はみんなにもう一つプレゼントがあるの♡ ありがたく受け取ってネ♡』

 プレゼント――その正体はすぐにわかっただろう。

 猟兵達の行く手を阻むように、どろりと粘り気のある液状の生命体達が船内の各場所で、あるいは扉の隙間や、床や天井から、あらゆる隙間から溢れ出ていた。
 オブリビオン。それも獲物を殺すための意思持つ生命体だ。
 泥のような体にまるで危険信号のように無数の赤い瞳を光らせて、人間へ這い寄る。
 ぐちゃり。ぬちゃり。粘り気のある音の中に、呻くような声が交じる。
『モテル……ウラヤマシイ…モテルヤツクウ……オレモ……モテルヤツナル』
 聞いた者は、なんだか悲しいことを言っているような気がしたかもしれない。

 船内放送の回線が復旧したのか、ハウリング音とノイズの後に続いて鬼気迫る声が響いた。
『緊急警告! 船内に侵入者アリ! 各船員は戦闘配置につけ!』
『敵の位置を確認! 敵は第1倉庫に潜伏中! 繰り返す! 敵は第1倉庫に潜伏中!』
『第1倉庫付近にいる船員は、直ちに退避せよ!』

『――頼んだぞ、解放軍の再来達よ!』

 最後の声は猟兵たちに向けられたものだ。
 猟兵たちは襲いくる『醜き嫉妬の生命体』を迎え撃ち、第1倉庫を目指した。


●第1倉庫
 女はマイクを置いて、不敵な笑みを浮かべていた。
『……さあ、ステージにいらっしゃい♡ みんなまとめて始末してあげる♡』
蓮・紅雪
同行者:アイビス(f06280)

【WIZ】
今度は嫉妬?醜いわね。
私が後方からリザレクト・オブリビオンで死霊たちをぶつけるから、アイビスは私に攻撃が通らないように立ち回ってほしいわ。
私が攻撃されると死霊たちが消えてしまうの。

(触手が伸びて来たら)アイビスに触るな(と静かに怒る。リザレクト・オブリビオンを解除して、刀を用いた殺気+衝撃波の近距離戦へ移行)

気まぐれに後衛なんてやるものではないわね。
反省しているわ。


アイビス・ライブラリアン
同行者:紅雪(f04969)
嫉妬とは人らしくて良いものだと思いますが、過ぎるのはいかがなものかと考えさせられますね

【WIZ】
紅雪。私に前衛、ですか
やれるだけはやってみましょう
ミレナリオ・リフレクションで攻撃を防いでいきます
また学習力で精度を上げつつ時間稼ぎをいたしましょう

(怒る紅雪を見て)嬉しいですがあまり感情に囚われすぎてはだめですよ
さて、前に出た紅雪のサポートを行いましょうか



 通路の奥から、醜き嫉妬の生命体たちの波が押し寄せていた。
 狙われたのは、美しい二人の少女。

「今度は嫉妬? 醜いわね」
 紅雪は冷々とした目の色で、迫りくる醜き嫉妬の生命体を眺めた。

『……ホシイ……カノジョ……ホシイ……』
 濁り、汚らわしささえ感じるような泥々とした生き物は、人間の形を模そうとしてそのまま崩れたような姿で唯ぶつぶつと不明瞭な音を呟く。
 嫉妬が命を得れば、このような姿になるのだろうか。
 黒くうねるそれが、形なく胸の中に生まれる事は、誰にでもあるのだろう。
 しかし、とアイビスは思う。
「嫉妬とは人らしくて良いものだと思いますが、過ぎるのはいかがなものかと考えさせられますね」
 この生命体をはたして人と定義しても良いのかは、計りかねるが。
 生命あるものが感情を持つということは、不思議なことではないから。

 狙いを定めた醜き嫉妬の生命体は、スピードを上げて襲いくる。
 迎え撃ったのは、死霊の騎士と蛇竜だ。
 騎士は敵を斬り裂く剣をふるい恐れのない猛攻を見せ、蛇竜の鋭い牙は通路を埋め尽くすような泥のような生き物の進行を喰らい止めた。
 召喚主たる紅雪の意のままに、彼等は恐れることなく攻撃を続ける。
「アイビスは私に攻撃が通らないように立ち回ってほしいわ。私が攻撃されると死霊たちが消えてしまうの」
 紅雪の動きに合わせて、アイビスは立ち塞がるように前へ出た。
「紅雪。私に前衛、ですか……やれるだけはやってみましょう」
 静かに意識を集中しながら、アイビスは醜き嫉妬の生命体をジッと見つめる。
 双眼が、つぶさに観察する。動きを、技を。
 二人の勝利を確実なものにする為に。

 大量に現れた醜き嫉妬の生命体の中には、死霊の攻撃をかいくぐって二人へ襲いかかろうとするものもいた。
 だが射程距離に入ればその瞬間、アイビスのミレナリオ・リフレクションが発動する。
 黒く粘り気のある触手が双方からぶつかり合い、相殺されて弾けた。

 こうなれば、叶うはずもない。
 醜き嫉妬の生命体は、あっという間に消滅していた。
 この場での戦いはこれで終わりかと思った、その時。
 配管に忍び込み生き延びていた一体が、黒い触手を飛ばした。
 それは、死角からアイビスを狙っている。
 気づくと同時に、紅雪は居合の構えを取っていた。

「アイビスに触るな」

 殺気が、触手を縫い止めるように怯ませる。
 激情が、まるで血を焼くように湧き上がった。
 けれど静かに。深く。
 凪いだ表情の奥にだけその感情を走らせて。
 紅雪は目にも留まらぬ素早さで刀を抜いた。
 アイビスに触れようとする汚れを文字通り、斬って捨てる。
『……マモリアウ…フタリ…トウトイ……ウツクシイ……』
 配管ごと両断された醜き嫉妬の生命体は、死に際にもごもごと何事かを言い残し、そのままドロリと溶けて、召されたようだ。
 けれど、紅雪にはそんなものは気にも止まらない。
 アイビスは、そんな彼女の様子を目の当たりにして、嬉しいような、しかし憂うようにもみえる微笑みを浮かべた。

「嬉しいですがあまり感情に囚われすぎてはだめですよ」
「……気まぐれに後衛なんてやるものではないわね。反省しているわ」

 淡くため息を吐きながら、紅雪はアイビスに怪我はないか確かめた。
 もし、この少女にアレが髪の毛一本でも触れていれば許さない。
 表情の動きは少なくとも、その気持はきっと仕草からも伝わるかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイチェル・ケイトリン
よかった、ぜんぶあつめてくれた……

そして、船長さんたちは敵との戦い、
それからわたしたちへのバックアップ、
もう準備してくれてて、敵の場所まで教えてくれた。

第1倉庫だね。急がないと。

念動力と吹き飛ばし技能でサイコエッジを使って
敵を斬り裂き、ふっとばして突破するよ。

敵からの攻撃も斬り裂いてふっとばしてふせぐよ。

ほかの人たちへの攻撃も斬り裂いてふっとばしてふせぐよ。
かばう技能もつかえるから。

自由がほしいわたしの心、その力で未来も道も切り開くよ。


アーサー・ツヴァイク
※引き続き協力アドリブ大歓迎

…整備のオッサン、ゴメン! 俺のライドラン、アルダワ製だから宇宙バイクとはそもそも違うんだよね…でも褒めてくれてサンキューな!

さーて、ヒーローらしく戦闘で活躍するとしますかね!
レイシューターだと流石に倉庫に大穴空きそうだし、ここはウェポン・アーカイブを使う! 攻撃回数を重視するために、連射の利くマシンピストルを召喚だ! 弾切れなんか気にしねーぜ、呼べばいくらでも出せるからな!

嫉妬でドロドロとか言う心底気持ち悪い奴なんか、片っ端からぶっ飛ばしていくぜ!


セット・サンダークラップ
相手の言葉が悲しすぎて醜い羨望の感情を抱く余裕などないっす……
ともあれ、浮遊して射撃できるエレクトロレギオンを展開して、第1倉庫に向かいながら『醜き嫉妬の生命体』を攻撃して道を開くっす!
相手はいろんな場所の隙間から出てくるわけっすから、見つけ次第、手当たり次第に攻撃っす。
第1倉庫につくまでに相手を戦闘不能まで追い込めるように、どんどん撃っていくっすよー!



「よかった、ぜんぶあつめてくれた……」
 ブリッジのモニターに映し出されたCOMPLETEの表示に、レイチェルは安堵の表情を浮かべた。
 ここで出来る事は全て、やり終えた。だから、彼女はブリッジを去る。

 そして、船長さんたちは敵との戦い、
 それからわたしたちへのバックアップ、
 もう準備してくれてて、敵の場所まで教えてくれた。

 これだけの支援があれば、この船を襲う敵にもスムーズに挑むことが出来るはずだ。
 けれどこうして船員たちが猟兵と協力し合うことが出来たのも、レイチェルの呼びかけと、活躍があってこそのものだろう。

「第1倉庫だね。急がないと」

 扉の向こうへと飛び出していくレイチェルへ、船員たちは口々に猟兵への激励や感謝の言葉を掛け、そして敬礼でもって戦いへ赴く彼女を見送るのだった。



「さーて、ヒーローらしく戦闘で活躍するとしますかね!」

 アーサーは船内ドックを飛び出して、来た道を引き返す。
 そこに危機迫る人あるならば、駆けつけるのがヒーローだから。

 機関室の近くで、彼は物音を聞いた。
 右手に召喚した武器を構え、バイクを走らせながら狙いを定める。
 4時の方向に一体。
 息を止め、その一発に集中する。

 うねる泥に襲われているのは、先程の機関長と機関士だ。
 機関室に立ち入らせまいと応戦する二人に、醜き嫉妬の生命体は大きく体を伸ばして襲いかかる。一巻の終わり。その時だ。
 マシンピストルの射撃が醜き嫉妬の生命体を撃ち抜く。
 無数の赤い目が後ろを見た。
 男はバイクに跨り、遠くからこちらを見据えている。
 この距離で。この速さで。守ったのか。間に合ったというのか。
 『ヒーロー……カッコイイ……』羨望と感嘆が入り混じった言葉を吐いて、泥のような体は事切れた。

「……整備のオッサン、ゴメン!」
 アーサーは大きな声で、目を丸くしている機関長に呼びかけた。
「俺のライドラン、アルダワ製だから宇宙バイクとはそもそも違うんだよね……でも褒めてくれてサンキューな!」
『そうかい! そいつは間違えて悪かった! 何度も助けてくれてありがとよー!』
 ぶんぶんと大きく手を振って、機関長は笑った。
 その声を背に、赤いマフラーを翻しアーサーはバイクで走り去る。



『……ゥウウ……モテタイ……アイサレタイ……』
「相手の言葉が悲しすぎて醜い羨望の感情を抱く余裕などないっす……」
 セット・サンダークラップ(青天に光を見る・f05234)は、哀れみのこもった目で醜き嫉妬の生命体を見る。
 第1倉庫へ続く廊下を塞ぐように立ちはだかる泥の軍勢。
 ぬっちゃりした触手を伸ばそうとしたり、ぶよぶよした黒い塊を投げつけるものの、セットにはまったく効果がなく、それがまた哀れさを増した。

『ア・ア……サイバー……カッコイイ……』
『……ドラゴン……イカス……』
 むしろ羨望の眼差しを向けられるセット。
 言いようのない居心地の悪さを感じながら、エレクトロレギオンを展開し攻撃する。
 浮遊した小型機械兵器は、縦横無尽に飛びまわり、無数に湧いてくる醜き嫉妬の生命体を迎撃した。
 あたりに火花が散り、射撃の音が続く。
「相手はいろんな場所の隙間から出てくるわけっすから、見つけ次第、手当たり次第に攻撃っす」
 順調に通路を進むセットだったが、向こうから激しく壁を撃つような音が響いた。
 それは断続的に、何度も続く。
 セットの顔は引き締まり、走るスピードをぐんと上げた。
「誰かが戦ってるみたいっす! 今行くっすよ!」



 一際巨大な醜き嫉妬の生命体とそれに連なる醜き嫉妬の生命体達の群れ。
 赤い無数の瞳を爛々と光らせて床や天井を埋め尽くし、群がるようにレイチェルを包囲していた。
『カワイイ……スキトオルヨウナウツクシサ……ステキ……』
 それは、優れた部分を欲しがった。
 暴虐のままに触手を繰り出し、レイチェルの体を奪おうとする。
 その黒い泥のような手の中にある萎れた花が、その手で触れた者の末路を現していた。
「動かないで……!」
 触手を念力で弾き、吹き飛ばし、切り裂く。
『ツヨイ……ネンリキ……ホシイ……!』
 しかし何度レイチェルが念力で対抗しても敵の数が多く、倒してもまた無尽蔵に増えていく。
 だがそれは本拠地が近いという証拠だ。
「自由がほしいわたしの心、その力で未来も道も切り開くよ」
 ここで引く訳にはいかない。
 決して自分が一人ではないことを、レイチェルは解っていた。

 力を振り絞り、醜き嫉妬の生命体達を念力で動きを止める。
 そこへ現れた二つの影。
 エレクトロレギオンを引き連れたセットと、ライドランに乗ったアーサーだ。

「いくっすよ!」
「一斉にやるぞ!」
「わかった!」

 エレクトロレギオンの一斉射撃、マシンピストルが火を噴き、念力が空気を揺らした。
 セットが、アーサーが、レイチェルが、その力を振るい同時に巨体を攻撃する。
 撃ち込まれた攻撃に、醜き嫉妬の生命体の体が中心から弾け飛ぶ。嫉妬の大爆発だ。
『ナカマ……イイナ……イイナ……ウラ、ヤマシイ……』

「第1倉庫につくまでに相手を戦闘不能まで追い込めるように、どんどん撃っていくっすよー!」
「嫉妬でドロドロとか言う心底気持ち悪い奴なんか、片っ端からぶっ飛ばしていくぜ!」

 快活な声が響きわたる。
 猟兵達は力を合わせ、残った醜き嫉妬の生命体達を蹴散らしていった。
 そしてついに、第1倉庫へ辿り着くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『キャプテンラブリーマリー』

POW   :    今、乙女に対してなんて言ったオメェ?
【年齢を言われる等してガチギレモード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ラブリー♡スレイブショット
【ウィンク♡】【投げキッス♡】【可愛いポーズ♡】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ラブリー♡オンステージ
【渾身の自作ラブソング】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は暴星・メテオです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 広々とした第1倉庫は、ライブ会場に様変わりしていた。
 知識がある者や解析に長けた者、違和感を感じた猟兵達は、
 それがすぐにホログラムだと気がつくだろう。

 舞台も客席も、なにか仕掛けがあるという訳でもなく、ただの舞台装置でしか無い。
 スポットライトを浴びて、舞台に立つのは一人の女だ。
 他に人影がないことから、あれがこの事件の首謀者なのは間違いない。

『アイドルはエンターテイナーなの』
 ピンク色のツインテールを揺らし、
『ただ船を落とすなら、誰でもできるわ。ありふれたニュースで終わり』
 ウィンクを投げ、
『でも幸せの絶頂で引き裂かれたカップルは、アタシの事を永遠に忘れないわ!』
 初々しさの代わりにベテランの風格を醸し出し、
『鮮烈に、残酷に、永遠に人の記憶に刻み込んであげるの♡』
 決めポーズを取る。

『アタシは、マリー! キャプテンラブリーマリー! 歌って踊れて、略奪し殺す! 最高最悪のアイドル!――邪魔するヤツはブッ殺す☠』
レイチェル・ケイトリン
え?

このままだと船員さんたちがいちばんおぼえてそうなのってわたしのような気がするんだけど……

うーんと、このひともそうしたいみたいだし写真とってあげていうね

「え、えとえと、じゃ、これ、ニュースにながしておきますね。
『このひとがチョコレートをすりかえて
爆弾と男性機能障害の病原体をばらまいた
帝国軍のとってもわるい人です』って。
みんなきっとずっとおぼえててくれると思います」って。

それで、念動力と吹き飛ばしと目潰しの技能で刹那の想いをつかって敵に目潰し攻撃してふっとばすね。

敵からの攻撃もクイックドロウと早業もつかって目潰しとふっとばしですぐふせぐよ。

ほかの人への攻撃もふせぐね。
かばう技能もつかえるから。



 きょとん。とレイチェルは瞳を瞬いた。

「え?」
『え?』ラブリーマリーも思わずオウム返しに聞き返した。
 少し困ったような、申し訳ないような。
 そんな表情を浮かべたレイチェル。
 ててて。と小走りにラブリーマリーへ近づき、話しかける。
「このままだと船員さんたちがいちばんおぼえてそうなのってわたしのような気がするんだけど……」
 船内を騒がせたフェイクニュースを作成したレイチェルは、まちがいなくこの事件を知るもの達の間ではずっと語り草になるだろう。
 話題まで奪われたのかと、ラブリーマリーは目を吊り上げて怒り出した。
『クッソムカつく! アンタ達のせいでアタシの計画は滅茶苦茶よ! どうしてくれんのよ!』
 ラブリーマリーの怒りは自分勝手な怒りであり、八つ当たりでしかない。
 しかし、レイチェルはその怒りを受け止め、一生懸命考えた。

「うーんと、それじゃあ写真撮ってあげます」
『は?』
「はい、チーズ」
『えっ、ちょ、キャ――キャプテンラブリーマリー♡』
 急な撮影だったが、決めポーズをバシッと決めたラブリーマリー。パシャリとその姿をカメラに収めたレイチェルは、画面を確認して頷いた。
 小さなレイチェルに合わせてラブリーマリーも身をかがめて画面を覗き込む。
『なんなのよ。……あら、よく撮れてるじゃない♡』
「え、えとえと、じゃ、これ、ニュースにながしておきますね」
『ん?』
「『このひとがチョコレートをすりかえて
 爆弾と男性機能障害の病原体をばらまいた
 帝国軍のとってもわるい人です』って。
 みんなきっとずっとおぼえててくれると思います」
 レイチェルは、これで大丈夫だと微笑んだ。
『……そう』
 ニュースの内容は過激なものだったがラブリーマリーは、ほんの一瞬だけ瞳を揺らし。意外にも満足そうな笑みを浮かべる。
『アンタ、ゴシップの才能があるわね♡ お騒がせアイドルの素質があるわ♡』
「そうですか?」
 ゴシップとはどういう意味だろうか。
 レイチェルは疑問に思ったが、尋ねるよりも前にラブリーマリーが囁いた。
『覚えておくのよ。ここに写ってるのは『アタシ』だってね』

 少女は、どこか寂しげな、疲れた大人だけが持つ悲しみを感じた気がした。
 だが、それはそれとして戦いの手は抜かない。

 ぎゅっと掌に意識を集め、レイチェルは集中力を高める。
「ニュースちゃんとながします」
『頼んだわよっ……て、ちょい待ち!』
 至近距離から念動力を放つと、ラブリーマリーを吹き飛ばした。
 念入りに目潰しを喰らわせているあたり、ヤる時はヤる感じがある。
 ちょっとほのぼのしてしまった分、その効果は抜群だ。

『んぎゃあああァァァァァ!!! 容赦ねえなあこのクソガキ!!!』
 ラブリーマリーはアイドルがしちゃいけない感じの野太い悲鳴を上げながら、顔を抑えながらもんどりをうって床を転げ回った。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 吹き飛ばされ目潰しを食らったラブリーマリーだったが、意地と執念でホログラムのステージに戻っていった。
『シャッオラァ! 気を取り直していくわよ! カモンミュージック♡』
 目頭を押さえつつラブリーマリーが叫ぶ。どこかにあるらしい機材が音声入力に反応しているのか、何処からともなく曲が流れてくる。
 ある程度の年齢の人が、ちょっと懐かしく感じるようなメロディは、バレンタインデーをイメージしたアイドルソングのようだ。
 立体映像で映し出された文字が流れる。そこにはこう書かれていた。

 『ボムボム・ショコラ』
 作詞作曲︰キャプテンラブリーマリー♡
    歌︰キャプテンラブリーマリー♡

 もはやいや予感しかしない。
 ラブリー♡オンステージを止めるべく、猟兵達はステージへ登る。
蓮・紅雪
同行者:アイビス(f06280)

私、あの歌があまり好きではないわ。
早く黙らせましょう。

最初から全力でいくわね。
妖剣解放の高速移動を駆使して肉薄し、殺気と呪詛を乗せた衝撃波をお見舞いしてやるわ。
声が出せないようにマヒ攻撃で黙らせてからの方が良かったかしら?

ああ、歌ではなくてあの声が苦手みたいね。
生まれつき持ったものをどうこう言うのは失礼だとは思うけれど、あなたの声を聞くよりアイビスの声を聞いている方が良いの。
ごめんなさいね。


アイビス・ライブラリアン
同行者:紅雪(f04969)

熱量は凄いのですが…
一体どこへ向かっているのでしょうか…
ともあれ倒してしまいましょうか

【WIZ】
この歌はどこに向けられているのかよくわかりませんね…
なのでサイキックブラストで止めてしまいましょう
私のフォローは紅雪に任せて、隙があれば機材も破壊する方向で

…まぁ、歌であるなら紅雪の歌で間に合っておりますので



「私、あの歌があまり好きではないわ」
 紅雪は不愉快そうに眉根を寄せた。

 それは、ラブソングのようだった。
 愛し合う二人が出会い、惹かれ合い、そして結ばれる。
 どこにでもありふれるような、その歌詞には心に響くものがない。
 歌い手も曲も陳腐で、まったく中身がない。

 とても耳障りだ。

 紅雪の隣に立つアイビスは茫洋として掴みどころのない面持ちで首を傾げた。
「熱量は凄いのですが……一体どこへ向かっているのでしょうか……」

 ラブリーマリーはあらん限りの声を張り上げて、歌っていた。
 誰かを愛したことも、愛されることもない。
 それどころか、愛を憎み嫉妬し壊そうとしていた女が、どうしてラブソングを歌うのか。

「この歌はどこに向けられているのかよくわかりませんね……」
 アイビスは、純粋に疑問に思った。
 けれどそれは、追求するほどのことでもない。

「ともあれ倒してしまいましょうか」アイビスは、戦闘への予備動作を開始する。
「ええ、早く黙らせましょう」
 でないと、アイビスの声に雑音が入ってしまう。
 刀の柄に手を掛けて、紅雪は殺気を漲らせて、地を蹴った。

 ステージの上からも、二人の動きは見えていた。
 けれど、反応できる速度ではなかった。
『ぐっ!』歌う事を止めて、ラブリーマリーは目を見張る。
 一足飛びに敵へ肉薄した紅雪は、居合斬りを見舞った。
 纏う妖刀の怨念は、目にも留まらぬスピードと斬撃による衝撃波を可能とする。
 ラブリーマリーは自身の歌で強化した身体でそれを受けたが、それで防ぎきれる攻撃ではない。
『この……! なによこの声……やめろ! うるさいうるさい! アタシは!』
 重ねて喰らわせた呪詛がラブリーマリーに、何事かをささやくのか。
 ラブリーマリーは髪を振り乱し、錯乱した悲鳴を上げた。
 刀を振りながら、紅雪は顔をしかめる。

「ああ、歌ではなくてあの声が苦手みたいね」
 聞こえてはいないでしょうけれど、と紅雪は呟いて。
「生まれつき持ったものをどうこう言うのは失礼だとは思うけれど、あなたの声を聞くよりアイビスの声を聞いている方が良いの」
 刀身が一閃し、ラブリーマリーの体を突き飛ばした。
「ごめんなさいね」

 衝撃波をまともに受けて、ラブリーマリーは後ろへよろめく。
 そこへ、雷光が走った。
 紅雪の動きに合わせて放たれたアイビスのサイキックブラストは、ラブリーマリーを撃ち抜いてその動きを封じた。
 これでもう、彼女が歌うことはあるまい。

「……まぁ、歌であるなら紅雪の歌で間に合っておりますので」
 アイビスはほんの少しだけ甘い音の交じる声で、誰にも聞かれぬようそっと呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

江戸川・律
佐之上・権左衛門とチームで参加

艦長と仕掛け罠と防衛システムの連動の打合せして遅れたけど、今から参戦だ!

まずはハッキング
ホログラムとスポットライトの管理権取り上げる

(はぁ、マジ無いわーと言う表情を浮かべ)

本当さコレで4回目だ…
毎回言ってけど
マジで全てがキツイんだよ!!
歳考えろクソババァ!!

あっ?永遠に人の記憶に刻み込んで?
全力でお断りするわ!!
寝言は墓で言え!!

本物のチョコは返して貰うからな!!

全船員の怒りを代弁するため、ユーベルコードの先読みと罠使いと戦闘知識の応用で遠隔で機銃や隔壁など防衛システムを操作してマリーの行動をことごとく嫌がらせのように邪魔します

アドリブ大歓迎です


佐之上・権左衛門
江戸川・律(f03475)とチーム組んで参加。アドリブ可)・・・あれ、こいつ何回か見・・・やっぱきっつぃわー(と心底げんなりした表情でこれいつまで続くのかなぁと思いつつも)。お呼びでないので、本物のチョコ置いてとっととお帰り下さい。出口はあちらですよ、『ばばぁ』。と「挑発・おびき寄せ・釣り」を使い、こちらに気を引き付ける。逆上してこっちにきたら「先制攻撃」で左腕に内臓されてるスクリューウイップで「グラップル」してそのまま「なぎ払い・傷口をえぐる・怪力・鎧無視攻撃」という名前の振り回しをしつつ「投擲・吹き飛ばし」をした挙句、空中で受け身がとれない状態でUC【揺らめく人型の何か】で更にぶっとばす。



 第1倉庫へ到着した男たちは、舞台上の敵を見て嫌な顔をした。
 ピンク色のツインテールに、むっちりと着こなされたフリフリのアイドル衣装。

「あれ、こいつ何回か見……やっぱきっつぃわー」
 うんざりとした溜息を吐きながら、佐之上・権左衛門(見た目はおっさん、中身もおっさん・f00239)は、見るに堪えんというように目を眇めてみせた。
「本当さコレで4回目だ……毎回言ってけど」
 江戸川・律(摩天楼の探求者・f03475)は、権左衛門に同意しながら、深く息を吸い込む。4回目の会合は彼にとって望ましくしないものなのだろう。
 あらんかぎりの嫌悪感をぶつけるように、
「マジで全てがキツイんだよ!! 歳考えろクソババァ!!」
 律は、凄まじい声で叫んだ。
 その声は反響し、エコーまで掛かっていた。

 だがあくまでこれは挑発のための言葉。
 望むと望まざるに拘わらず、彼等はラブリーマリーの逆鱗がどこにあるかを知っていた。
 だからこそ、それはラブリーマリーによく届いた。
 電撃を喰らって動けなくなっていたラブリーマリーの体がゾンビのように動き出し、ぎ、ぎ、ぎ、と錆びついたような動きで今の暴言を放った者へと頭を向く。

『あ゛?』地の底から響くようなドスの利いた声。『――今、乙女に対してなんて言ったオメェ?』
 あまりの怒りに理性は消え、仮にもアイドルがお見せしてはいけない感じの顔をしている。しかし、ラブリーマリーの凄まじい形相を物ともせず、律は鼻を鳴らした。

 挑発は、なおも続く。
 権左衛門は親指で出口を指し示してみせた。
「お呼びでないので、本物のチョコ置いてとっととお帰り下さい。出口はあちらですよ、『ばばぁ』」
 プツーン。と何かが切れる音がした。
『おっさんに言われたくないわオラア! テメェ等だけはブチのめす!!』
「あっ? 永遠に人の記憶に刻み込んで? 全力でお断りするわ!! 寝言は墓で言え!!」
『言ったなコラァ!』
 完全に権左衛門と律をターゲットへと変えたラブリーマリーが、ステージを飛び降り、怒れる闘牛のごとく猛突進する。
『こちとらその墓から出てきてんだっつーの!世間から忘れ去られたアイドルが返り咲こうとしたら普通のことやってられねえのよ!時代劇の大御所が金ピカサンバ踊るからインパクトがあるんでしょうが!演歌歌手が動画デビューしたから面白いんでしょうが!ゴシップでも何でも利用してやるぐらいの気持ちじゃないとこの業界やっていけないのよーーーー!!!!!』

 まさに売り言葉に買い言葉だ。
 しかし、買い言葉が長い。
 理性なく早口で捲し立てられた言葉の意味は殆ど意味不明なもの。
 これいつまで続くのかなぁ。と律と権左衛門はげんなりと思った。

 なにを言おうとも、そこにいるのは、過去に捨てられた怪物だ。
 アイドルですらなく、ただその化身として現れた。
 人を殺し、悲劇を生むだけの怪物。

「こっちだぜ『ばばぁ』」
 権左衛門は突進してきたラブリーマリーを自分へ引き付けると、左腕に内臓されたスクリューウイップを展開し、ワイヤーで相手を拘束した。
「頭に血が上り過ぎなんだよ」
『離せ、この!』
 ぐ。と足を踏み込んで権左衛門は腕を引く。ワイヤーが食い込んだラブリーマリーの体がギシリと悲鳴を上げた。
 怪力によって、そのまま彼女を空中へと放り上げた権左衛門は、揺らめく人型の何かを使ってぶちのめした。
 ラブリーマリーの体は倉庫の隅まで吹き飛んで、壁に当たって大きな音を立てる。

「本物のチョコは返して貰うからな!!」
 船員たちの怒りを代弁するために律は怒鳴った。

 手の中で、律のスマホからアラームが鳴っていた。
 それはハッキングにより、倉庫内の管理権が律に渡った合図。
 ホログラムも、スポットライトも、隔壁や機材の全てが律の手の中にある。
 命を脅かされ、翻弄された人々を思えば、何一つとして、彼女の思い通りにさせるつもりはなかった。
 律は、倉庫内で作動していたまやかしを終了させる。

 ラブリーマリーは動けないままそれを見ていた。
 ハリボテが消え去り、曲が止まり、薄暗い倉庫の埃にまみれた景色が現れる。
 きらびやかな夢を見る資格なんて彼女にはない。
 それは怪物にふさわしい末路だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アーサー・ツヴァイク
※最後までアドリブ協力大歓迎

最高最悪ってどこの魔王だよ。平成も終わるってのに、時代遅れなアイドル像だな。

気に障ったか? 悪いがオブリビオンとなれば、男女平等に厳しく行くぜ!

向こうの攻撃は激しそうだな。なら真っ正面から受けずにライドランに【騎乗】して、スピードで撹乱するか。速い動きに食いつくみたいだし、囮になりそうだ!

おっ、ライドランも褒めてくれたからかいつになく張り切ってるみたいだな! ここは一発、派手にぶちかましてやろうぜ!
散々追っかけてきたアイツに向かって、槍に変形させたライドランを【槍投げ】を駆使して投げ飛ばす! 当たれば、お前が大爆発だぜ!

どうだ、宇宙バイクに負けないカッコ良さ…だろ?



「最高最悪ってどこの魔王だよ。平成も終わるってのに、時代遅れなアイドル像だな」

 アーサーは、赤いマフラーをなびかせて不敵に笑った。
 猟兵達の攻撃でボロボロのラブリーマリーは、忌々しげにアーサーを睨みつける。
 立ち上がる力もないのか、項垂れたまま荒々しく息を吐く、壁にもたれかかったその身体は戦慄くのみ。

「気に障ったか? 悪いがオブリビオンとなれば、男女平等に厳しく行くぜ」
 ラブリーマリーは舌打ちをした。『……そうよ。アタシはオブリビオン。だからアンタ達が憎くて、妬ましい』
「生きてる奴らが妬ましいから殺すのか?」
 アーサーは先程まで戦っていた醜き嫉妬の生命体を思い出す。

 誰も愛せず、誰にも愛されない。
 だからこそ愛を憎み、奪おうとした。
 愚かな嫉妬に狂ったオブリビオン。

『アタシが『アタシ』なのよ』ラブリーマリーは低くうめいた。
『他のラブリーマリーが何人いてもアタシは『アタシ』!! どんな事をしてでも、この世に『アタシ』を刻みつけたいのよ!! そうでなきゃ『アタシ』はなんのために生まれたの?』

 馬鹿馬鹿しくも残酷なこの事件も、派手なだけのステージも、陳腐な歌も。
 ここにいるラブリーマリーが、浅はかにもなにかを残そうとした証。
 無数の人々の心を傷つけ弄ぼうとしたその罪は、決して許されるものではない。
 だが、アーサーは。

「アタシが『アタシ』ね……じゃあ、訊くぜ。お前は誰だ?」

 言葉の意味がわからずに、顔を上げてラブリーマリーはアーサーを見た。
 青い瞳が真っ直ぐに彼女を見据える。
 名乗れ。とその目が言っていた。

 最後の力を振り絞るようにして、ラブリーマリーは立った。
 ここにはもうステージもスポットライトもない。

 その時、薄暗い倉庫の中で眩い光が起こった。
 ライドランのライトが、ラブリーマリーを照らし出したのだ。
 ライトの中で彼女はアイドルとして笑ってみせた。

『アタシは、マリー! キャプテンラブリーマリー! 歌って踊れて、略奪し殺す! 最高最悪のアイドル!』
「俺はアーサー・ツヴァイク! 邪悪なオブリビオンから人々を守る猟兵! そしてこいつはライドラン! 宇宙バイクに負けないカッコ良い相棒だ!」

 アーサーが調子を合わせて名乗りを上げると、ライドランのエンジンが再び唸りその姿を槍へと変えた。最高最悪のアイドルを名乗る者に、ふさわしい最後を与えようと竜は吠えているのかもしれなかった。
「【Select…DRIVE ACTION!】行くぜ、ライドラン! 俺たちの一撃…受けてみやがれ!!」
 アーサーは槍を掴んで投げつける。ラブリーマリーは真っ向からそれを迎え撃った。

 倉庫内に大爆発が起こった。




 隠されていたバレンタインチョコレートは事件後、猟兵達に発見された。
 それは戦いがあった第1倉庫とは別の場所に合ったため、傷一つ付いてることもなく。
 無事、チョコレートは全て元の受取人達の手へ届けられたのだった。

 家族へ、友人へ、そして恋人へと贈られた――チョコレート。
 今度こそ本物のそれを受け取った人たちの顔は、大きな喜びにあふれていた。

 船を去る猟兵達は、見送ろう駆け付けた船員たちから、
 恐るべき敵と勇敢に戦った猟兵達への、深い感謝の言葉を聞いたかもしれない。

 こうしてこの事件は幕を閉じたのだった。



 いや、最後に一つ。
 船内のニュースにどのような記録が残ったのか、それは猟兵と船員たちのみぞ知るだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月11日


挿絵イラスト