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迷宮災厄戦⑰〜心、未来を超えて

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦


●闘技場
 そこには誰かが立っていた。
 そこには君が立っていた。
 そこには昨日が立っていた。

●グリモアベース
「グリモアが呼んでいる! 今、過去を超え、未来へ進めと!」
 グリモア猟兵、雷陣・通(ライトニングボーイ・f03680)が左手のグリモアを輝かせ、その場に集う猟兵達へと叫んだ!
「というわけで、本題だ。今回行く戦場は古代ローマを思わせる闘技場の国だ。ここでみんなはオブリビオンと戦うんだけど――相手はみんなの『昨日の姿』として現れる」
 手近な椅子に座り、行儀悪く胡坐をかくと、少年は話を続けた。
「簡単に説明すると昨日の自分に勝てってことなんだけど、これ……どういうわけかわかるよね?」
 頬を掻きながら、グリモア猟兵は問いかけた。

 相手は自分自身、数年前ならいざ知らず、そこにいるのは昨日の自分。
 実力、思考は勿論、自分と同じ。
 となると……。

「慢心、不安、過剰な自身や低すぎる自己肯定感、つまり心惑うものが負ける……普通ならね」
 そして少年は椅子から降りて、皆へ近づく。
「みんなはそうじゃないだろう? 新しい武器を今日作ったかもしれない、新しい技を今日身に着けたかもしれない。昨日まで特訓の筋肉痛に悩んでいたかもしれない――どちらにしても今日という日を進み未来へ歩いていく俺達なら勝つ方法はあるはずだ」
 左手の紋章が輝き、開かれる道の先は過去の自分。
「俺が言えるのはここまでだ。昨日の自分、それを打ち破り、岩に穴を穿つ水の一滴のような未来への一歩――みんなならきっと出来るさ!」
 そう告げるグリモア猟兵の目には未来への希望に満ちていた。


みなさわ
 過去が質量をもつのなら、自らの姿と相対する時が来るかもしれない。

 こんにちは、みなさわです。
 今回は昨日の自分との戦いを。

●戦場
 古代ローマの闘技場を思わせる場所にて、昨日の自分がオブリビオンとして現れます。
 皆様は昨日の自分と戦い、勝利しなければなりません。

●プレイングボーナス
「昨日の自分」の攻略法を見出し、実行する。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 それでは皆様、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『昨日の自分との戦い』

POW   :    互角の強さであるのならば負けない。真正面から迎え撃つ

SPD   :    今日の自分は昨日の自分よりも成長している筈。その成長を利用して戦う

WIZ   :    昨日の自分は自分自身であるのだから、その考えを読む事ができるはず。作戦で勝つぞ

👑7
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白斑・物九郎
●POW



不敬ですわな
嵐の行軍(ワイルドハント)の先頭を張る王が、昨日と同じ所に留まってるモンだと――マジで思ってるんスか?

・己の似姿へ真正面から歩んで接近、真っ向立ち向かう
・敵が己だと言うのなら奴も「王の矜持」に拘る筈、この近接戦闘正面対決にはノッて来よう


●戦闘
・予見に【野生の勘】を、四肢に【怪力】を滾らせ、全ての格闘攻撃に【灰燼拳】発動

・牽制にロー
・ジャブに慣らさせてからガードの隙間を射貫く縦拳(串刺し)
・ステップインと見せ掛けて足甲を踏み潰しに行く(だまし討ち)
・五本指の背を【なぎ払い】目打ち
・相手の側頭部を通り越して後頭部まで届かせるブーメランフック(気絶攻撃)

・直々に、素手で屠らん



●行軍は未だ止まらず

「不敬ですわな」
 甚平姿の白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)の前に立つのは同じ甚平姿の白斑・物九郎。
 これがアニメやゲームなら非対称を表すかのように白髪だったりするだろうが、視界に入る髪は黒く、風貌は鏡の様。
 だからこそ、悟るのだ。

 ――そこにいるのが昨日の自分だと。

「嵐の行軍(ワイルドハント)の先頭を張る王が、昨日と同じ所に留まってるモンだと――マジで思ってるんスか?」
 下駄を鳴らし、近づく物九郎。
 対する昨日の王は何も答えずに拳を握る。
 履物の歯が砂を噛むと二人の片足がしなるように放たれた。
 嵐が始まった。

 牽制のローキック。
 けれど互いに踏み込んだゆえに威力は殺され、その目的を失う。
 すぐに二発目の蹴り。
 今日の王は軸足を刈り込むように狙い、昨日の王は肩口を貫くように打ちこんだ。
 二人の間合いが開く。
 その一撃、一つ一つが相手を殺しうる破壊力を持ち、さらに間合いをコントロールし、時に相手の足を潰そうとせん。
 だが、それは互いに望み臨んだ闘いであった。

 ジャブが交わされる。
 足を踏み込み打ち込む、最速の拳。
 受け捌くに足を使うのは流れを取られるも同然、自然と二人の顎が下がり額が前にせり出す。
 そこへ――物九郎の拳が伸びた。

 順突き縦拳。

 踏み込んだ足と同時に打ち込まれる拳はジャブのような速さはないが、簡略化されたモーションがガードの隙間を抜く貫通力を生み出す。
 オブリビオンの頭がのけぞり、直後、猟兵の顎をカウンター狙いの膝が叩き込まれた。
 砂に血が滴る、口を、鼻を、切って流れるは赤いもの。
 けれど行軍は止まらない。

 少しだけ開いた間合い。
 今日の王は運足を前に、追撃を警戒した昨日の王が荷重を前にかけ、一撃に備える。
 直後、オブリビオンの足が縫い留める。
 前に進むステップインはフェイント――本命は足甲への踏み付け。そして――意識が下へ向いたところへのロシアンフック!
 物九郎の拳甲が相手の後頭部を揺らした。
 直後、相打ち狙いのショートアッパーが再び顎を撃ち抜く。
 脳が揺れ、二人の脚は意志の紐を断ち切り、粘りを失う。
 だが、だが……

 どちらも下がること無し!

 昨日の王が大地を蹴り、捻転を開放して放つのはボディフック。
 これを決め、体重を乗せた一撃を以って決着をつけんとしたその時――視界から光が消えた。
 それは五指の背。スナップを効かせ薙ぎ払うように動かせばその目を潰す。
 打撃戦で目を潰すのに指は要らない。
 目打ちこそが速く、確実に、視界を奪うのだ。
 ハンドスピードの差が勝負の差。
 視界を封じられ、フックが空を切るオブリビオン。
 近接間合い十寸足らず。
 そこに叩き込む一撃は――

 灰燼拳!

 物九郎の一撃により昨日の彼は躯の海へと葬られた。

「ま、こんなモンでさ」
 口の端から零れる血を拭い、嵐の王は消えた過去へ背を向けて次の戦場へと歩いて行った。
 今はまだ振り返る時ではないのだから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
場が凪いだ

情報演算も戦術レベルも同じ
胸中に抱く想いも同じなら……、

「「今を生きる誰かの明日の為に」」

動いた方が負ける……ハズなんだ
そう。同じ条件ならね

昨日、ボクはバーチャルキャラクターである
自身の情報構造にハッキングし、バックドアを仕掛けた
モチロン今日には対処済みだけど

それに、一日分の情報演算とシミュレーション結果が
最大のアドバンテージになる

故に、先手必勝
フェイントの一撃から、相手のカウンターに完璧に合わせて、
UC【光神の権能・百芸反撃】!

消えゆく情報残滓は取り込もう
「キミもボクなら、一緒に行こう。明日へ紡ぎ、託していくから」



●一日分のアドバンテージ

 ――場が凪いだ。

 リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が立つ闘技場には彼女と彼女を模したもう一人。
 違うと言えば、リアが今を生きるもので、もう一人が昨日の彼女の姿を模したオブリビオン。
 情報演算及び戦術レベルは同等。
 もし、胸に抱く想いも同じなら……

「今を生きる誰かの明日の為に」

 リアの言葉に過去の唇が重なった。
『誰か』は違うのかもしれない、けれど明日を願うのは過去も現在も同じ。
 
 繰り返そう――場が凪いだ。

 この勝負、常道なら先に動いたものが負ける。
 そう、常道なら。

 先に動くのはリア。
 銀虎猫の3Dキャラが姿を変え、デバイスとして右手に備えられれば大地を蹴る。
 同じくオブリビオンも右手に魔剣を携えて、待ち受ける。
 互いに狙うは――銀閃・次元斬!
 万物に干渉し次元ごと断絶する星間斬鉄剣。
 使う武器が同じで技量も同じなら、後は情報演算が勝負を分ける。
 初見なら先手有利であろう。
 だが、これは双方が持つ技。
 待ち受ける過去がこれまでのログから軌道を導き出し、そしてカウンターを合わせる――はずだった!

「動いた方が負ける……ハズなんだ」
 次元斬を魔剣で受け止めて、リアが呟く。
「そう。同じ条件ならね」
 その表情にはわずかながら笑みが浮かんでいた。

 昨日行った、一つのハッキング。
 自分へ通じる『裏口』つまりはバックドアがリアの身体には仕込まれていた。
 そしてそれは今日、既に対策済み。
 つまりは――オブリビオンのカウンターモーションは筒抜け、故にユーベルコードで受け止められる。
 
 Counter skills Evolution
 光神の権能・百 芸 反 撃

 ヌァザによって受け止められた銀閃・次元斬はリアによって中和相殺され、そして過去の魔剣は切断される。
 進化した神王の刃によって!

 Airget-lamh
 銀閃・次元斬

 未来を得たのは、現在のリア・ファルであった。

「……おいで」
 消えゆく過去にリアが手を伸ばす。
「キミもボクなら、一緒に行こう。明日へ紡ぎ、託していくから」
 胴を薙がれ、事象を切断された身体が残すのはもはや情報の残滓のみ。
 大気ごと切断された影響で失った場所に空気が入り込み、風が吹く中、過去の残滓は現在へと手を伸ばし、そしてその手が繋がれた時――一つとなった。

 風が止み、再び場が凪ぐ中、リア『達』は未来へと歩き始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
護る為ではなく破壊の為に暗黒を使うというのであれば許しはしません。
……それが自分自身であるならばなおさらです。

日進月歩とは言うものの技術や肉体の強さが昨日の自分に勝っているとは思えません。
ですが暗黒は違います。私の命を糧に日々その強さを増しているはず。
僅かな差ではありますが……暗黒の力を信じましょう。

UC【闇の解放】を発動。恐らくあちらも同じ姿になるのでしょうが……力の限り戦うのみです。
【重量攻撃】【武器受け】といった剣技を駆使しつつ、【怪力】や【念動力】といった暗黒に由来する技能を使用しながら戦います。
まだ足りないのであれば更に生命を暗黒にくべましょう。私は絶対に勝たねばならないのです!



●暗黒は生命という名の薪を燃やし

「護る為ではなく破壊の為に暗黒を使うというのであれば許しはしません」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)の双眸に燃える炎は白銀。
「……それが自分自身であるならばなおさらです」
 言葉の通り、視線の先に立つのは黒き鎧を纏った暗黒の女騎士。
 すなわちは自分自身。

 ここは闘技場の国。
 昨日の自分が刃を向ける戦いの国。

 闇が……解放された。
 それは命を糧に現れる化身の姿。
 外套に覆われし鎧をその姿を見せ、主であるセシリアを侵食せんとその身を覆う。
 そして、それは目の前の過去も同様。
 血に瞳を染めた二人の暗黒騎士が雄叫びと共に巨大な暗黒剣をぶつけ合った。

 金属がぶつかり合い、遅れて烈風が吹き荒れる。
 重く膂力に満ちた一撃を受ければ、その足元は陥没し、薙ぎ払えば剣ごとその身を持っていかれる。
 外見に見合わない重量級の戦い。
 勿論蛮勇のみではない。
 昨日の騎士が刺突を狙う。
 剣は寝せ、横に避ければ振り回し、刀身の重さで薙ぎ倒す。
 横に広い圧力の中、今日の騎士は真正面から潜り抜け、その胸元へ手を添える。
 念動が力に変わり、斥力がオブリビオンを吹き飛ばした。
 体勢が崩れたところを好機と見たセシリアが一歩踏み込み暗黒剣を袈裟に振り下ろす。
 だが、昨日の騎士は足を大地へ突き刺し、その場にとどまれば声なき叫びと共にその剣を撃ち落とした。

 日進月歩とは言うものの技術や肉体の強さが翌日に反映されることは稀だ。
 それを得るためには切っ掛けと伸び代が必要なのだから。
 だが、今はその機会に恵まれてはいない。
 故に差はなく、故に違いは暗黒にあった。
 セシリアの命を糧に力を増していく『それ』
 一日の魂をくべた焔はどのような燃えていくか。
 それが勝負の分かれ目となった。

 暗黒剣同士がぶつかり合い、鍔迫り合いとなる。
 力は互角、技量は同等、戦術はもはや千日手。
 けれど、暗黒は違う。
「私は!」
 一日くべた生命の差。
「絶対に!」
 それは暗黒という力の受け皿を大きくし。
「勝たねば!」
 さらなる力を魂と引きかえに引き出していく。
「ならないのです!!」
 強大な闇の奔流が万物を打ち砕く漆黒の刃と化し、オブリビオンの剣を叩き折る。
 瞬間、切り返したセシリアの剣が昨日の騎士の肩から胴にかけて一気に寸断した。

 刃が振りぬかれ、オブリビオンが闇となって霧散していくのを見届けても暗黒の騎士はその場を動かない。
 焼きつけているのだ、その風景を。
 いつか自分がそうなりうるかもしれない未来の一枝を。

 やがて闇が消えるとセシリアは剣を収め、その場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア


昨日のあたし、かぁ…クライング・ジェネシスが似たようなことしてきたわねぇ、そういえば。
あれは「ちょっと前のあたし」だったけど。

小細工しても早撃ち一閃、は「知ってる」し。…となれば、〇決闘スタイルでいざ尋常に、かしらぁ?じゃ、それに乗りましょうか。
お互いに●封殺一閃、たぶん刹那だけあたしのほうが早いけど…それじゃ相討ち不可避だし、もう一つ仕込み。ゴールドシーンにお願いして眉間にエオロー(結界)の防壁を展開、ラグ(幻影)で隠蔽しておくわぁ。他のところは散々色々仕込んであるって「知ってる」もの、狙うならここでしょ?
これ仕込んだのはここに来る直前だもの。「昨日のあたし」は「知らない」わよねぇ?



●High Rune

 オブシディアンに込めた六発の45口径。
 ホルスター越しに伝わる重みが、今のティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)には心強かった。
「昨日のあたし、かぁ……クライング・ジェネシスが似たようなことしてきたわねぇ、そういえば」
 けれど視線の先に立つのは
「あれは『ちょっと前のあたし』だったけど」
 昨日のティオレンシア・シーディア。
 ガンプレイもルーンも知り尽くした相手であった。

 だからこそだろうか、どちらが申し出るわけでもなく、ある間合いに入ると立ち止まり、互いにホルスターへと手を伸ばす。
 この時代にはもう骨董品だろうその仕草は――決闘。
 けれど、二人にとってはこれ以上にない流儀であった。

 砂地の闘技場にタンブルフィードは走らない。
 ただ風と砂の大地を踏みしめる音のみ。
 大気に乗って伝わるのは息吹く歌。
 吸って、吐いて、そして止める。
 たったそれだけの三拍子。
 やがて、音が消え――反動に備えるために二人の膝へ重さが乗った。

 ホルスターから抜かれた時点でトリガーに指がかかる。
 手首のスナップとプルが連動し、二人のリボルバーが火を噴く。
 時間は0.11秒!

 『ᚺ』――崩壊!

 額に弾丸を受け、ルーンを刻まれたティオレンシアの頭が仰け反った。
 時間はほぼ同じ、刹那の差で今日の女が速かった。
 だが距離がその差を埋めてしまい、そして撃たれた。
 闘技場の大地に倒れるガンマン一人。
 そして……立ち上がるはティオレンシアが一人。
「たぶん刹那だけあたしのほうが速いと思ったから……」
 頭を振り、呟いた今日の女。
 その額に刻まれたルーンが砕ける。

『ᛚ』――それは幻影。そして幻が隠した文字は

『ᛉ』――結界! 全てを守る秘密の言語。

「仕込ませてもらったわぁ」
 紫煙が立ち上る45口径をホルスターにしまい、糸目の女は背を向ける。
「これ仕込んだのはここに来る直前だもの」
 背後に立つ昨日の女の額には
「『昨日のあたし』は『知らない』わよねぇ?」
 鉛で穿った孔一つ。
 白目をむき、仰向けに倒れたオブリビオンの躯が衝撃で黒い塵となって風に攫われる。

 Sealed
 封 殺

 過去は躯の海へ封印され、そして今日は明日へ歩く。
 弾丸はまだ五発残っている。
 ならば戦うのが当然の選択なのだから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソラスティベル・グラスラン
昨日のわたし
いつもと変わらず、ただ勇者を志して戦っていたわたし
気付けば勇者どころか世界の敵になり、
胸に宿るは【勇気】でなくオブリビオンとしての破壊衝動

そのまま堕ち、無辜の民に仇成すことは死より辛いでしょう
…同じ『わたし』です、わかりますとも
故に今ここで『勇者』として
貴女に引導を渡します!

此処に誓うは不退転の意思
勇者とは…明日の暁に希望を見る者
これがわたしの、【勇者理論】ッ!!

勇者理論は正しき【勇気】・【気合い】・根性からなる力!
正しきを失った貴女に全力を出せる道理はなく
大斧を振るい、正面から迎え撃ちます!

最後に、他ならぬ貴女に訊きたいんです
貴女から見てわたしは…ちゃんと、勇者足り得てましたか?



●勇者たるは

「昨日のわたし」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)の前に立つのは偉大なる竜を祖に持つ一人の勇者。
「いつもと変わらず、ただ勇者を志して戦っていたわたし」
 斧を構える姿は鏡を見る様。
「気付けば勇者どころか世界の敵になり、胸に宿るは勇気でなくオブリビオンとしての破壊衝動」
 違いがあるとすれば猟兵とオブリビオンという差。
「そのまま堕ち、無辜の民に仇成すことは死より辛いでしょう……同じ『わたし』です、わかりますとも」
 だからこそ分かっていた、彼女の苦しみが。
「故に今ここで『勇者』として貴女に引導を渡します!」
 だからこそ、分かっていた。
 オブリビオンの勇者が自分に立ち向かうことを。
 これは二人の勇者による勇者としての戦いである。

「此処に誓うは不退転の意思」
 過去に誓うは不退転の意志

「勇者とは……明日の暁に希望を見る者」
 勇者とは……昨日の黄昏に安らぎを見る者

「これがわたしの」
 これがわたしの

 Modig teori
 勇者 理論!

 大斧がぶつかり合った。
「勇者理論は正しき勇気、気合い、根性からなる力!」
 ソラの言葉が力となり過去の勇者の斧を跳ね上げる。
 直後、オブリビオンの蹴りが現在の勇者の腹に叩き込まれ、ソラのブーツが大地から離れる。
 現在の勇者の言葉が真実ならば、過去の勇者は何を以って勇者理論を構築するのか。
 それはやはり――
 オブリビオンとしての正しき勇気、過去の勇者は逆襲を恐れずに大斧を真横に振るう。
 そして気合、声なき叫びと共に一撃を避けたソラへと追撃の刃を振るう。
 最後に根性、現在の勇者が振るう逆襲の一撃を受け止め、歯を食いしばり、顔を近づける。
 拮抗する鍔迫り合い、そして互いの力がわずかにそれ、二人は大きく舞い、そして間合いが開く。

「最後に、他ならぬ貴女に訊きたいんです」
 短き攻防の中、荒い息を整え、ソラが問う。
「貴女から見てわたしは……ちゃんと、勇者足り得てましたか?」
 その答えにオブリビオンは大上段に振りかぶった構えで応えた。
「――ですよね」
 少女の顔に自然と笑みが浮かんだ。
 証明するのだ、昨日の自分を乗り越えて。
 同じく大上段に大斧を構えるソラ。
 二つの武器が同時にぶつかり、そして跳ね上がるのは過去の斧。
「――えいッ!」
 一歩踏み込んでの繋ぎの一撃がオブリビオンの首を刎ねた。

『ソラスティベル・グラスランは勇者足りえる』

 それは塵となって消えゆく過去の勇者が浮かべる笑みに勇者は力強く頷いた。

 ――これは勇者が決意を新たにする物語である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
自分だから行動はよく分かります。
小細工は無しです、真っ向から闘って勝ちます!

「昨日の自分」より強くなれているのか
今だって迷う事もある。けれど、このUCだけは…!
【想撚糸】を発動し
「昨日の自分」へ放つ

空っぽだった人形の自分に
薄い紙のように積み重ねられていった思い出や生まれた想い、
これは自分ひとりだけの力ではないから

だからこの「糸」は過去の自分よりも強いと、信じられる
楽しい事も悲しい事だって、みんなと出会う度により守りたいと思いが強くなるから
同じようにUCを使っても、負けない自信がある。
互いの糸を絡め、相手の糸が切れるまで引っ張ります

相手のUCを破ったら、そのまま【早業】で一気に攻撃をしかけます。



●いと、寄り合わせて。

 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)の選択は真っ向勝負。
 もとより相手は自分自身。
 行動は分かっていた……故に小細工は無用。
 互いに間合いを詰める、カイとオブリビオン。

 ――昨日の自分より強くなれているか?

 今だって迷うことがある。
 けれど、このユーベルコードだけは……。
 想いが念糸に伝われば、それは業となり、そして昨日の自分へと絡みつかせる。
 そう、過去のカイが同じことをしたように。

 絡まりあうは想撚糸。
 思い、記憶を寄り合わせたそれは道筋。
 昨日と今日、一日違いの生き方が二人を縛っていく。
 いや……繋いでいるのだ、糸と糸で。

 空っぽだった人形の自分。
 薄い紙のように積み重ねられていった思い出や生まれた想い、これは決して自分ひとりだけの力ではない。
 だからこの『糸』は過去の自分よりも強いと、信じられるのだ。
 楽しい事も悲しい事だって、みんなと出会う度により守りたいと思いが強くなるから。
 同じように糸を使っても、負けない自信がカイにはあった。

 たった一日。
 たった一日を示す一本の糸が他の糸に寄り合わさり、強く、そして人形に彩を与えていく。
 想いを寄り合わせた糸、それこそが――想撚糸なのだから。

 二人が同時に糸を引けば、切れるのは昨日の撚糸。
 それは当然の結果だった。
 昨日で終わった糸ならば、その先は無いのだから。

 カイがオブリビオンを手繰り寄せる。
 糸に引き寄せられる昨日の自分は抗う素振りすら見せない。
 断ち切れた時点で分かっていたのだ、自分が明日を見れないということを。
 ゆっくりと近づくオブリビオンの首に四色精扇が当てられる。
 四大元素の精霊が封じられた鉄扇を真横に振れば、過去の自分は首を失い。
 その場に立つのは今を生きる桜雨・カイ一人となった。

 過去は消え去り、場に残るのは切れた糸。
 オブリビオンが残したその撚糸をカイは拾い上げると、懐へとしまい込んだ。
 振り返った過去は新しい想いとして今を繋ぎ、そして未来へと伸びていくのだから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
…この時間ですね
(電子頭脳内で時刻を確認し戦場に入り)

格納銃器による至近距離での射撃交えながらの近接戦
盾と剣を攻撃と防御にフルに使用
同じ電子頭脳が弾き出した演算結果である以上、千日手は不可避…

いいえ

この『昨日の私』は既にアリスラビリンスの戦場で戦っているのです
残弾、装備及び駆動部の消耗状態、細かな損傷箇所…今から24時間前の状態はデータベースから●情報収集済み
そして此方はSSW工場で整備は完了

『今』を生きる人々が居るからこそ、私は騎士でいられるのです

限界迎えた盾持つ左腕を破壊、それから順に四肢を
最後は胴の電子頭脳

……御伽の騎士なら未来の自分が相手でも勝てるのでしょうか

私もそうでありたいものです



●戦闘経過時間01:09

 ――23:25

「……この時間ですね」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は視覚デバイスに表示された時刻を確認すると闘技場へと足を踏み入れる。
 待っていたのは薄汚れた白金の戦機にして歴戦の騎士。
 名はトリテレイア・ゼロナイン。
 オブリビオンの兜を象った頭部の奥が緑色に光り、刃こぼれした大剣と盾を構えれば、今日の騎士はそれに習って研ぎ澄まされた剣と磨かれた盾を構えた。

 ――23:30

 戦いが始まった。
 砂地は戦機の重さにとって泥と同様と判断した双方がスラスターを噴射し、滑るように動く。
 両者の頭部が展開し機銃が弾丸を発射すれば、それを牽制に距離を詰める。
 重厚な装甲と盾でそれを受け止めた二人のトリテレイア。
 お互いの盾がぶつかり合い、ギアが鳴くように音を立て、衝撃が伝わる。
 剣が振りあげられる。
 盾はぶつかり合い、互いに優位を取ろうと圧力をかけている。
 ならば発生するのは鍔迫り合い。
 金属音が響き渡り、金属片が舞う。
 直後、肩の単装銃がバレルを伸ばすと、騎士達は距離を取り円を描くように移動しながら銃弾を回避した。

 まったくの互角。
 同じスペックの機体に装備、そして同じ電子頭脳が弾き出した演算結果。
 当然導き出されるのは千日手。
 此処から始まるのは長い長い演算の証明。
 正しい式を出したものが勝利を掴む。

 ――だが、それは同じ状態で戦っての話。

 昨日の戦機が足を止める。
 スラスターが噴射を続けるが推進剤の量が足りず、不完全燃焼に終わる。
 昨日と今日の違い。
 それは24時間前にトリテレイアがアリスラビリンスで戦っていたということ。
 斬弾は少なく、燃料はわずか。装甲も傷つき、そして戦塵が駆動部を汚し、機能を十全に発揮させない。
 対するトリテレイアは工場にて整備を済ませ、そして戦闘における損耗データは後の禍根となりうるため、常に記録済み。
 彼を支えるものが居るからこそ、戦機は騎士足りえて。
 オブリビオンは戦機のままであった。

 ――24:03

 なおも昨日の戦機は戦う、抗う、それは何のためか分からない。
 刻まれた騎士であろうとするメモリー故か、それとも――。
 そんな命題すらも斬り飛ばすようにトリテレイアの剣が左腕へ走った。
 盾が空を舞い、砂に突き刺さる。
 オブリビオンが全ての銃口を今日の騎士に向ける。
 だが、弾は既に尽き、銃身は焼き付き、撃針は稼働せず雷管を叩かない。
 戦機の右腕がへし折れ、剣が落ちた。
 トリテレイアが剣先を胸へ向ける。
「……御伽の騎士なら未来の自分が相手でも勝てるのでしょうか?」
 儀礼剣が貫くのはコアユニット。
 動力炉と電子頭脳を破壊されたオブリビオンは機能を停止し、その場に崩れ落ちた。

「私も……いや、私はそうでありたいものです」

 ――24:34

 状況終了。
 騎士は戦場を離れ、帰還した。
 明日、また戦野に立つために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
【紫電逸戦】(呼称:魔術師)
己と云えど過去として立ち塞がるなら斃す迄
さて一流演出家からOKが出るかは解らんが
任されたとあらば――篤と御覧じろ

「私」ならば己が斬る為に前に出ると見るだろうが
生憎と其れに乗ってやる気は無い
此れは昨日の「私」には無い手だ――翼使招来、命に従え
『散って攪乱しろ、集中させるな』
攻撃として当たらずとも構わん、注意を引き続けろ
勿論傍観する気は無い
「過去の魔術師」含め、衝撃波で以って削って呉れよう
「私」は兎も角、素の「お前」では躱すには難いぞ

舞台準備が整った処で「今日」の主役に登場願おう
一日の長と云う言葉の意味、其の身に刻んで潰えろ
過去に脚を捕らわれている暇なぞ我等には無い


ヴィクティム・ウィンターミュート
【紫電逸戦】

さーて、今回はちょいとばかし趣向が変わってるぜ
昨日の自分に勝つには、やることを変えればいい
俺はいつも、後方支援だが…今回は特別、スピンオフだ
ちょっとだけスポットライトを貰うぜ?嵯泉、脚本は譲る

この札はな、『今日作った』ものだ
さぁ──過去より来れ、悉くを食い尽くせ
因果よ歪め──『Distortion』
ロックを5段階解除、生命力転化

嵯泉の撹乱で、向こうは正常に動けない
避けられるか?やってみるといい
よしんば避けたとして──86秒前の出来事を、俺は改竄できる
嵯泉の脚本に、俺が合わせるだけなんだ
俺は演じるのも上手いぜ?

所詮は昨日の俺達に過ぎない
毎日アップデートし続ける存在が、昨日に敗けるかよ



●人、一日たりとも立ち止まらず

「さーて、今回はちょいとばかし趣向が変わってるぜ」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)がふるまう姿は端役のそれでは無い。
「昨日の自分に勝つには、やることを変えればいい」
 目の前にいる自分ともう一人に対して視線を向け、こちらへ視線を向けさせるために一歩前に進む。
「俺はいつも、後方支援だが…今回は特別、スピンオフだ。ちょっとだけスポットライトを貰うぜ? 嵯泉、脚本は譲る」
 話を振られた鷲生・嵯泉(烈志・f05845)が頷き、見えない照明から外れるように一歩下がった。
「己と云えど過去として立ち塞がるなら斃す迄」
 だが、その手には刀は無く、黒符も無い。
「さて一流演出家からOKが出るかは解らんが任されたとあらば――篤と御覧じろ」
 ただ印を結べば翼使――烏天狗が招来された。
 意識をヴィクティムへ向けていたオブリビオンは一瞬、虚を奪われた。

 だが、昨日までの魔術師と陰陽師も黙ってはいない。
 即座に我を取り戻どすと隻眼の男は抜刀による衝撃波で天狗を散らし、その間に端役がプログラムを組む。
 完成し、毒となる時間は秒に満たないだろう。
「散って攪乱しろ、集中させるな」
 だからこそ、嵯泉は攻撃ではなく、攪乱を命じた。
 衝撃波に対しての回避行動は欺瞞、最初から距離を取っての牽制が狙い。
 それが『秒』を作り上げた。

 衝撃が全てを襲った。
 昨日の陰陽師は跳躍し、昨日の魔術師はその場に縫い付けられる。
「『私』は兎も角」
 嵯泉の右手には
「素の『お前』では躱すには難いぞ」
 秋水一振り。
 オブリビオンがやってみせた抜刀による衝撃波を逆に手本とばかりに撃ち放ったのだ。
「――待たせた」
「ああ」
 今日生きる陰陽師の言葉にヴィクティムが応えた。
「ギャラリーには不足があるがミュージックに不足はないぜ」
 役者は代わり、舞台は変わる。

「この札はな、『今日作った』ものだ」
 魔術師が嘲笑う。それすらカードの一つだと言わんばかりに。
「さぁ──過去より来れ、悉くを食い尽くせ、因果よ歪め」
 左腕のサイバーアームに躯の海が流れる。
 充血した瞳、浮かび上がる毛細血管。
 削り取るのは命、エッセンス、人間として尊ぶべき小さな何か。
 解除したロックは五段階を超え、命をくべた左腕から虚無の散弾が吐き出される。

 Distortion
 時ヨ――歪メ

 即座に昨日の端役がプログラムを起動させる、それはユーベルコードを無効化し、英雄の剣を作り上げる。銘はデュランダル。
 だが、散弾は無効化されることなく、オブリビオンへと降り注ぐ。
「どうした? 避けてみろよ」
 虚無が自分を貫く中、愉悦に似た笑みを浮かべる。
「よしんば避けたとして──86秒前の出来事を、俺は改竄できる」
 カードを見せる時が来た、今にも死にゆく昨日の魔術師に対し現在の端役はナイフを一本、右手に。
「嵯泉の脚本に、俺が合わせるだけ」
 振り下ろすと同時に
「そして俺は演じるのも上手いぜ?」
 こみ上げる何かをこらえて、ヴィクティムはヴィクティム・ウィンターミュートを演じ続けた。
「所詮は昨日の俺達に過ぎない」
 笑みは消さない、ショーはまだ終わっていない。
「毎日アップデートし続ける存在が、昨日に敗けるかよ」
 役者は最後まで役者であり続けた。

「傍観する暇はないぞ」
 倒れゆく同胞を眼一つに刻むオブリビオンの背後で声がした。
 咄嗟に飛べば、そこに立つのは現在の姿――鷲生・嵯泉。
 昨日の陰陽師が黒符を左手に持てば、その手は砂地に落ちる。
 初速と刀の重さを利用し、腕のスナップのみで手首を斬り落としたのだ。
 元あったものを失い、わずかに右へ傾くオブリビオン。
 たたらを踏む様にその場に踏みとどまるが、それが命取りだった。
「一日の長と云う言葉の意味、其の身に刻んで潰えろ」

 ――袈裟

 肩口から斜めに振り下ろされた斬撃が肉を、骨を、そして臓を立つ。
「過去に脚を捕らわれている暇なぞ我等には無い」
 納刀する嵯泉の目には昨日の姿が入ることは無かった。

 魔術、武術、科学、人を支える英知と技。
 過去を知ることでそれは止まることを知らず、今を知ることで未来へ進む。

 昨日は消え、今日は終わり、明日が始まる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月14日


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト