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いわれのない罪

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●余興
 それは男にとってはただの気まぐれだった。別に誰であろうと問題はない。只の見せしめであり、道楽でしかないのだから。
 男が目を向ける先にあるのは、何の変哲もない一組の家族。ただ、普段と様相が異なるとすれば、彼らが皆、さらし台に固定されているというところだろうか。
 その周囲に集まるのは野次馬と思しき町人たち。だが、彼らとてここ居ることは本意ではない。呼び出されたこの場から逃げ出せば明日は我が身と、その体を震わせる。目の前の惨状から目を背けるものは多い。だが、異を唱えようとするものは誰一人としていなかった。
 程無くして現れる、刀を携えた執行人。だが、その身なりはそこらにいる人々となんら変わりはない。ただ、選ばれてしまったがためにその場に駆り出された町人。人など斬ったことなどあろうはずもない男の顔は、遠目から見てもわかるほどに青ざめていた。
 渡来の鎧を身にまとった武者に連れられてきた男は、齢10にも満たぬ幼子の前で立ち止まる。程なくして出された合図とともに、剣先の震える刀が天高く振り上げられた。

●冤罪
「十両盗めば死罪という言葉もあるぐらいだからな。重罪と言えは重罪なのだろう。だが、この問題の本質はそこではない。そもそも窃盗を行ったとされる事実も無く、犯人すら存在しないのだからな。」
 セゲル・スヴェアボルグ(ドラパラ・f00533)は顎に蓄えた髭をいじりながら、この案件がそもそも起こってすらいない冤罪であることを猟兵たちに告げた。
「別に今回が初めてというわけではない。所詮、奴にとっては自身の欲求を満たす、遊びでしかないのだからな。そんな輩を野放しにしておくわけにはいかないだろう?」
 だが、まずは目の前で起ころうとしている惨劇を回避することが先決となる。猟兵たちが到着するのは刑が執行される前となるため、家族を救うことはもちろん可能だ。
「刑の執行は一斉に行われるそうだ。つまり、順に救出しようとしても、全員を救出することは叶わない。執行人以外にも首を落とせるやつは周囲にいるのだからな。」
 救助を悠長に待ってくれるほど、敵側が甘くないということは重々承知しておかねばならない。西洋の武器防具を包んだ武者たちや、この場を取り仕切る役人たち。そして、それを静観することを強要されている町人たち。それだけの人込みを避けての救出は、なかなか骨が折れるだろう。
「どのような状況に転ぶかわからない切迫した状況ではあるが、今ならまだ間に合うことは確かだ。貴殿方の健闘を祈る。」


弐呉崎
 それでも僕はやってない。どうも、弐呉崎です。

 さて、一章では皆様には冤罪家族の救出をしていただきます。ただし、OPでに記載されているように、全員を同時に救うことはできません。そのため、今回は救出対象を選択していただきます。

 プレイングの頭に【男】【妻】【長男】【長女】【次男】【祖母】のいずれか一つを記載してください。

 大成功、成功判定が出た場合は救出が可能です。なお、一章完結までは誰が救出されたかは明かにしません。全員を救出できるかどうかは皆様の選択次第となります。

 救助対象が選択されていない場合や、複数選択している場合はプレイング選考の対象外とさせていただきますので、ご注意ください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。

●スケジュールの都合でプレイングをお返しする場合があります。その場合はマスターページの方でお知らせさせていただきますので、一度ご確認いただければ幸いです。
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第1章 冒険 『彼の者の陰謀』

POW   :    警備を強行突破して助け出す

SPD   :    騒動を起こして役人たちの注意を引きつける

WIZ   :    無実の証拠を突きつける、綿密さに欠ける役人の調べを指摘する、民衆を味方につける

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

指矩・在真
【次男】くんを助けるよ!

えっとえっと、ホントは悪い人を懲らしめるのが役所の仕事で、この家族は何も悪くないんだよね?
じゃあ今の状況はエラーが出てるんだから、正しく直さないと!

【ライオンライド】でウィンドウからレオくんを呼ぶよ
召喚コマンド展開!
レオくん、ぼくに力を貸して!

次男くんを縛る晒し台に体当たりだ!
うまく壊せたら次男くんもレオくんの背中に乗っけて、安全確保だね
処刑役の町人さんは無理やりだったみたいだし…レオくんにとびきり怖い声で吠えてもらって、やる気を削っちゃおう
見慣れない生き物の咆哮だ、結構怖くない?
手を出すのは次男くんに手を出す人限定、最後の手段だよ

絡みアドリブ等大歓迎


ステラ・チェスロック
【次男】

バッカじゃ無いの!?こんな事を許したら今と明日は誤魔化せても、明後日には我が身だわ!なんでそんな簡単なことがわかんないのよ!

アタシは力が無いから【念動力】を使って強引にみんなに道を開けてもらうわ!次男を助けに行くの。さらし台から解放してあげて、手を引いて逃げましょ。一緒に助けに来た人がいたら逃すのはその人に任すわ。

アタシが一度に「直接助けに」行けるのは1人だけ。ーーでも、執行人や役人の「邪魔をする」なら一度にたくさん出来るでしょ!?シャッフル・タイムで複製したトランプを総動員して、家族救出を邪魔する奴らを多く巻き込む様に目眩しにするわ。

ギリギリまで粘って、それから逃げるわよ。


ダーシャ・アヴェンダ
【次男】
【POW】警備を強行突破して助け出す

理不尽な暴力程恐ろしいことはないわ。
だから私も執行人に対して理不尽を働くわ。悪く思わないことね。
これは貴方達が招いた事なのだから。

『死操演舞』でサイファーを増やして、警備している人と執行人を仕込み武器で【吹き飛ばし】で【なぎ払う】。複数人居るだろうけど要救助者の今回は次男が貼り付けにされたさらし台を斬り飛ばし人形に仕込んだワイヤーの【ロープワーク】で次男を巻き付かせ【救助活動】で【早業】回収よ。

「ほら、泣かないの。男の子でしょう?」

アドリブ歓迎


斬島・切乃
【次男】

【SPD】
あらぬ罪なのでしょう?
であれば迅速に、刃向かう者を斬り捨てるのみ。
実に単純で明快な解決法です。

そんな引けた腰で刀を振り下ろしても首は落とせませんよ。
――斬首とは、こうやるのです。
執行人のそばにいる西洋武者を抜刀術で不意討ち。
【剣刃一閃】を乗せた【斬華一輪】で首を狙う。

意に添わず、恐怖で従わされている者は助けましょう。
その旨を伝え、軽く【殺気】を撒いて威圧。
執行人がこちらに従ってくれれば少年を彼に任せる。
もし間違いがあれば、分かりますね?
武士の生首を示して、その様に。にっこりと。

周りの敵が多い時は、さすがに一般人に任せるのは不安なので私が護衛しましょう。

アドリブ歓迎



●次男
「もうすぐ、御天道様は天頂へと登りきっちまうなぁ……。」
 太陽が昇り切る時は、すなわち処刑の刻限。差し迫る時を憂いながら、町人たちは空を見上げていた。すると、先ほどまで雲一つない空にさんさんと輝いていた太陽が、突然その姿を隠してしまった。天と地を分断したのは大量のトランプ。ステラ・チェスロック(リトル・ディーラー・f12374)がShuffle timeによって放った、1000枚程のカードが処刑場を覆っていたのだ。
「本当は直接言いたいことは沢山あるけど、アタシには誰かを押さえつけるような力はない。でも、助けに向かうみんなのために、私にしかできないことがきっとあるから……!」
 彼女の言葉を皮切りに、緩やかに漂っていたトランプたちが、一斉に西洋武者や役人へと向かっていく。周囲一帯は喧騒に呑まれ、町人たちも突然暴れだしたカードに慌てふためきだした。しかし、この状況こそ彼女の臨んだ展開。ステラはカードを操り続けながらも、その念動力の対象を町人たちへと拡大させた。見えない力によってその場を押し出された町人たち。流石に数が多く、大きく移動させることは叶わなかったが、捕らわれの少年へと続く、一筋の道を作り出すことに成功する。
「召喚コマンド展開!レオくん、ぼくに力を貸して!」
 斬島・切乃(一刀繚乱・f13113)の言葉に呼応し、ウィンドウから顔をのぞかせる金色の影。大気を振るわせる咆哮をあげながら飛び出してきたのは、3m近い大きさのライオンだった。その背中に切乃とともに跨ったのはダーシャ・アヴェンダ(人形造形師・f01750)。ステラの作り出した、決して広いとは言えないその隙間を、二人の猟兵を乗せた黄金の獅子が次男をめがけて一直線に駆け抜けていく。町人たちにとっては見慣れない物体、当然、そのような生物の咆哮に怯まないはずはなく、執行人達は腰を抜かすと共にその手から刀が抜け落ちた。しかし、オブリビオンである西洋武者は、まるで意に介しておらず、その姿にたじろぐ様子は微塵もない。だが、猟兵達も引くわけにはいかない。眼前の障害を排除しなければ、次男の元にたどり着くことはできないのだから。すると、ダーシャの指に結ばれていた繰糸が次第にその本数を増していく。死操演舞により、サイファー――からくり人形を大量に複製したのだ。
「理不尽な暴力程恐ろしいことはないわ。だから私もあなた達に対して理不尽を働くわ。悪く思わないことね。」
 様々な武器を内包した人形達は、その仕込み武器を惜しげもなく振るい始める。武器が直接触れたわけではない。だが、西洋武者は執行人諸共、見えない何かに薙ぎ払われ、次男の周りから吹き飛ばされた。程なくして、金色のライオンがその巨体をさらし台へと激突させた。その衝撃によって、さらし台はばらばらに弾け飛んだが、男の子もそのまま宙へと投げ飛ばされた。ダーシャはすかさず数体のからくり人形を構える。男児に繋がったままとなっていた余計な拘束具を切り落とすと同時に、人形に仕込まれたワイヤーを伸ばして次男を絡めとった。後はあの子を引き寄せるだけ。しかし、間に割り込んできた西洋武者の一人が、その命綱を切り落とさんと刀を振り上げた。ワイヤーを断ち切られてしまえば、男の子は地面へとたたきつけられ、大怪我は免れないだろう。
「レオくん!!」
 その叫びを合図に、金獅子は少年との距離を即座に詰めるために駆けだした。しかし、いくらワイヤーを引き寄せながらであっても、この距離では間に合わないのは明らかだ。振り下ろされた刀がワイヤーに触れる。だが、獅子の眼が狙っていたのは、少年ではなく主に仇成す西洋甲冑。ほんのわずかな差ではあったが、その歯牙が西洋武者を捕らえる方が一手早かった。黒塗りの兜ごと西洋武者の頭部は噛み砕かれ、そのまま沈黙した。寸刻、ワイヤーによって引き寄せられた少年を、小柄な少女が何とか受け止めた。
「ほら、泣かないの。男の子でしょう?」
 泣きじゃくる次男坊をあやすダーシャ。だが安心するにはまだ早い。西洋武者たちが猟兵達の逃走を良しとするはずはなく、すぐさま追跡の体制に入った。しかし、そんな彼らの後ろに、刀を携えた一人の少女が立っていた。
「そんな引けた腰で刀を振り下ろしても首は落とせませんよ。――斬首とは、こうやるのです。」
 斬島・切乃(一刀繚乱・f13113)の放つ殺気を西洋武者たちはすぐさま感じ取った。しかし、気づいたその時にはすでに手遅れ。完全に不意を突かれた西洋武者達が、振りぬかれた一刀を躱すことは不可能だった。斬華一輪――花弁のように血飛沫が舞うと同時に、いくつかの兜が地面へと転がり落ちた。
「さて、私達はこの後もあの西洋武者たちを掃討しなければなりません。なので、あの少年をあなた方に任せたいのですが……」
 もし間違いがあればと、生拾い上げた生首を見せつけにっこりと微笑みかけた。執行人たちは僅かにたじろいだが、自らの首を勢いよく縦に振り、肯定の意を示した。切乃による護衛の下、執行人たちは金色のライオンを追いかけ始める。その様子を見届けたステラもここが限界であると判断し、辺りに散らばったトランプを回収しつつ、その場をあとにした。他の猟兵達が残りの家族も救出してくれることを信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベルクト・ドラケンスバーグ
【祖母】の救出を試みる。
POW。捕らえられている祖母の元へ一気に飛行して強行突破、救出を試みる。
このような理不尽が許されていい訳がない。必ず打ち砕いてやる。


ヴィゼア・パズル
既に仲間が救助を選んでいる…ならば選ばれ難そうな者を選択しようか。女子供は優先されているとして…
救助対象は【祖母】更に可能な限りの露払いを行おう

【WIZ】使用 絡みアドリブ歓迎
「すまないが路を空けてくれないか?」【空中戦】使用。風を纏い空を飛び現場へ
【地形を利用、敵を盾にする】事で攻撃回避し【カウンター】にて【なぎ払い・範囲攻撃】を併用。一度に複数体へ【マヒ、二回、属性、範囲攻撃】の【鎧砕き、全力魔法】を叩き込む
連携が可能であれば合わせよう


ウーゴ・ソルデビラ
【祖母】【POW】犯人はお前だ!・・って言うのは、他の頭の良い連中に任せた。

ケッ、人を玩具扱いする奴なんて今まで散々見て来たけどな。見慣れたからって頭に来ない訳じゃあねーんだぜ、クソ共がよォ。

「悪ィけど通してくれ」って、野次馬のフリして最前列まで行って、そのまま突っ込むぜ。時間がねえなら突き飛ばす。奴らが動く前に【先制攻撃】。【ダッシュ】でばーちゃんの所まで行って縄とかをダガーで斬る。【捨て身の一撃】を入れるつもりで多少斬られようがシカトして駆けつけるぞ。ばーちゃんを他の猟兵と支えながら逃げるけど、危ない時は俺が【かばう】ぜ。役人とか普通の人間は手加減するけど、鎧の連中は遠慮なくブッ飛ばすぞ。



●祖母
「悪ィけど通してくれ。」
 何事かと一人の男が振り返ると、ひっ……!と小さな悲鳴がこぼれだす。町人に対してメンチを切っていたのはウーゴ・ソルデビラ(吸血鬼マイラ・f09730)。何度も見慣れていた光景ではあっても、イライラせずにはいられない。そんな彼の様子を察したのか、自然と町人たちの間に隙間ができる。これ幸いと、ウーゴはそのまま最前列へ向かった。先頭へと到達すると、目に入ったのは一人の老婆。その様子を捉えた瞬間、考えるよりも先に体が動いていた。ダガーを持った男が突如として迫る。あまりに突然の出来事に、西洋武者たちはわずかに反応が遅れる。だが、これから処刑が行われる場所に飛び込んできた男を見過ごすほど、西洋武者達も甘くはない。捨て身の突撃が功を奏し、彼らがたどり着く前になんとか拘束具を外すことには成功するも、老婆を背負った時には既に黒い甲冑たちに囲まれていた。すると、先程まで風邪がそよとも吹いていなかった処刑場に突風が吹き荒れる。相応の重量があるであろう、重厚な鎧をまとった西洋武者達が、数人吹き飛ばされていった。
「無策な上に単独突入か。少々無謀だな。」
 その風の主はヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)。戦場に舞い降りた風を纏う猟兵に西洋甲冑たちが迫る。ヴィゼアは身を護るために先ほど転がした甲冑の陰に隠れようと試みる。しかし、仲間であろうと敵はためらうことなく、その刀を愚直に振り切った。しかし、その刃が通ることは叶わず、見えないなにか――圧縮された大気の層によって阻まれ、程なくして西洋武者は刀もろとも後方へ弾き飛ばされた。
「すまないが路を空けてくれないか?」
 再びヴィゼアの周囲に風が収束する。そして、その風は次第に圧縮されていき、数百もの弾丸となって目の前に迫る西洋武者たちに向けて放たれた。着弾すると同時に彼らの纏う鎧が砕かれていく……いや、キリオと荒れていくといった方が正しいだろうか。圧縮された鎌鼬そのものであるヴィゼアの【爆轟】は、西洋武者たちを薙ぎ払いながら、老婆救出のための最短ルートを作り出していく。致命傷というわけではないはずだが、西洋武者たちは立ち上がることができないようだった。
「さて、露払いは任せてもらおう。奴らが痺れている今がチャンスだな。老婆は君に任せよう。」
 ヴィゼアを先頭に、老婆を背負ったウーゴが戦場を駆け抜ける。しかし、後方はいまだに隙だらけだ。先ほどの攻撃を躱した武者の一体が老婆めがけて刀を突き出した。老婆を庇うため、ウーゴは振り返ってなんとか刀をいなすが、このままでは埒が明かない。己の体力も考えれば、じり貧であることは明白だった。そんなことを考えていると、再び空から何かが接近してくる。急接近する物体から放たれた一本槍は、西洋武者の脳天を寸分たがわず貫いた。その槍の元に、鷹を思わせる鋭い風貌を持つ一人の竜人が着地する。ベルクト・ドラケンスバーグ(ドラゴニアンの竜騎士・f05011)はちらりと老婆を見やる。
「このような理不尽が許されていい訳がない……後ろは任せてもらおう。近寄るものは必ず打ち砕いてやる。」
二人の猟兵に彼は己の役割を端的に伝える。多くを語る必要はない。今この状況でなすべきことは明々白々なのだから。ベルクトは後方より迫りくる西洋武者たちをその手に携えた槍と剣で薙ぎ払っていく。これで工法を心配する必要はなくなった。猟兵達は安全な場所を目指して、再び戦場を駆け始めた。しかし、出口は目前といったところで、一人の男が立ちはだかる。だが、その男は西洋武者ではない。額には冷や汗を垂らした恰幅の良い男。おそらく、この場を仕切る役人の一人だろう。
「ここを通りたければ、この私を倒してから……うぼっ!?」
「邪魔すんじゃねぇ!」
 猟兵は急に止まれない。ウーゴが先頭を走るヴィゼアを追い越すと勢いそのままにフーゴは頭を低くして役人へと突っ込んでいくと、頭突きが鳩尾に決まる。悶絶する役人を尻目に、ベルクトがぽつりとつぶやく。
「自らの矜持を重んじるのは悪くはないと思うが、やはり分相応というのは大事であるな。」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

桜伽咲・凛
【男】

不当な理由で人の道が閉ざされて良いものか。
私は守ることを信条とする以上、このような行いは到底許せん!

しかし、私には皆に何かを証明できるだけの言葉は持たぬ、目を引くようなことも出来ぬだろう。故に私はこの身一つで強行突破しかあるまい!

使用するユーベルコードは剣刃一閃。刀一つ振れば済むのでな、救出にも迎撃にも使いやすかろう。
邪魔をするものは全て斬り捨てる。この際、致し方ない。

さて、救出対象の理由も一つ。
他の子供などであればおそらく他の者が優先して助けるだろう。ならば一番助けに入りにくいであろう大人を私はあえて選ぶ。
これがうまく行けば良いのだがな…。


上月・衒之丞
【男】
……珍しくもない、見慣れた光景でありんす。
ここは、昔からそう、全く変わりんせん。
変わったのはあちきでありんすな。
どれ、人肌脱ぎんしょ。

あちきは忍びなんせば、派手に騒ぐのは好かねえ事でありんすが。
どれ、わずかに手を貸さんす。

外れにいる鎧武者か役人を一人、鋼線で首を刎ねて【暗殺】して、わざと目立つように叫ぶ。
「きゃあ!人殺し!」
……人殺しが自分なんだから滑稽この上ないのだが。

後は集った役人や警備のものがこちらに気を向いている隙に他のものが助けるのを待とう。
誰も助けに入らないようなら、神無月で視線を切りながら抜けるしかないが。
「そんに見つめささんせば照れなんし。
……で、次は誰が散りなんしや?」



●男
「きゃあ!人殺し!」
 突如、処刑場周辺にこだまする悲鳴。その声の主は妖狐女性――いや、女性には見えるが彼はれっきとした男なのだが――上月・衒之丞(泡沫の遊女・f11255)は地面に転がる西洋武者の首を眺めていた。何者かに殺されたかのようなそぶりを見せるが、その首を刎ねたのはほかならぬ彼自身。それがわかっている者からしたら、彼の悲鳴はなかなか滑稽に見えるだろう。その上、派手に騒ぐのは好きではないと誰が思うだろうか。だが、暗殺者たる衒之丞の手際は見事なものであった。数分前、彼の指に絡まる鋼線は、周囲の人々に一切気付かれることもなく、西洋武者の首を切り落とした。無明弦月流・師走――隠れ里で会得した絃術をこのような場面で使うなど、衒之丞自身も想定はしていなかっただろう。そう、このような状況は昔から見慣れた光景。今更とやかく言うほどのことではないはずなのだ。
「……変わったのはあちきでありんすな。まぁ、救助は他の者に任せるとしましょか。」
 騒ぎに集まってきた周囲の役人や西洋武者たちに向き直ると、衒之丞は一言だけつぶやいた。
「そんに見つめささんせば照れなんし。……で、次は誰が散りなんしや?」
 衒之丞が敵を引き付けているうちに、一人の猟兵が、捕らわれの男に向かって駆けだしていた。桜伽咲・凛(守るが為の刀・f04547)が戦場を駆けるその後ろ姿は、その高身長も相まってか男と見紛われることもしばしばあったが、彼女はれっきとした女性である。
凛はこの状況に強い憤りを覚えてはいたが、彼女は皆に何かを証明できるだけの言葉は持たず、目を引くようなことも出来ぬだろうという自覚があった。だが、それを悲観することも決してなかった。
「故に私はこの身一つで強行突破しかあるまい!」
 己にできることを成せばいい。刀一つ振ればことが収まるのであれば、ただ斬り捨てるのみ。しかし、いくら先程の騒ぎに西洋武者たちが引き付けられているとは言っても、それは一部の話。捕らわれた男の周りには数人の武者が当然残っていた。だが、立ち止まるわけにはいかない。不当な理由で人の道が閉ざされようとしている、救うべき存在が目の前にいるのだから。故に、彼女は致し方ないとは思いつつも、ためらうことなく刀を振るった。剣刃一閃――その一撃は周囲に立つ西洋武者諸共、さらし台を両断した。狙った対象のみを切り捨てる、無銘の刀から放たれた一閃は守るべき対象を傷つけることはなく、捕らわれていた男は地面に倒れこんだ。
「用は済んだな。ならば、彼を連れて早々に立ち去らねばな。」
 男の無事を確認すると、凛は周囲を見渡した。衒之丞の引き付けによって、こちらに割かれている戦力は多くはない。予想以上に派手に暴れてくれているのだろう。いったい、いくつの首が飛ばされたのだろうか。だが、そんなことは彼女のあずかり知らぬところ。追手が増える前に彼女は男を引き連れ、その場をあとにした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

結城・蓮
【長男】
【POW】

やってもいない罪で子供の命を刈り取ろうなど、良い為政者じゃないか。
虫唾が走るね。
そういう者たちから弱者を守るのがボク達猟兵の仕事だからね、本領発揮させてもらうよ。

強行突破は華だからね、《幻想の跳躍》で上から飛び込もう。
「悪いね、この子は貰っていくよ!」
使える技はなんでも使っていこうか。
《泡沫の鏡像》を使って鏡像を生み出して、《炎熱の手札》で【パフォーマンス】をさせている間に、本体のボクは《幻影の姫君》で抱きかかえた次男を連れて《幻想の跳躍》で一気に脱出するよ。
「ちょっと我慢しててね、他のみんなも今助けるから!」



●長男
 処刑場周辺を包む混乱の渦は次第にその大きさを増していった。だが、結城・蓮(チキチータ・マジシャン・REN・f10083)にとっては僥倖であった。周囲の警戒に多くの西洋武者が駆り出され、家族の周りの警備がわずかに手薄になっていたのだ。
「強行突破するなら今しかないね。」
 蓮は町人たちの群がる壁に駆け寄ると、そのままの勢いで飛び跳ねた。本来であれば、町人たちに激突してしまうところだが、彼女はまるでそこに見えない足場があるかのように、跳躍を重ねていき、程なくして捕らわれの少年の元へと着地した。蓮は即座に拘束具を取り外しにかかる。だが、空からの来訪者に気づかないはずはなく、西洋武者たちは距離を詰めにかかる。
「悪いね、この子は貰っていくよ!君たちの相手は彼女だ。」
 だが、西洋武者が動き出した時には、既に拘束具は取り外されていた。目にもとまらぬ早業、同時に、先程まではいなかったはずの、蓮と瓜二つの少女が隣に現れていた。異なるところがあるとすれば、瞳の色が左右逆ということぐらいだろうか。鏡像たるもう一人の蓮は、おもむろにトランプを取り出すと、宙に向けてばらまいた。すると、トランプは突如発火し、真紅の炎に包まれる。
「後は任せるね。」
 鏡像は僅かにうなずく。だが、その視線は罪もない命を刈り取ろうとする為政者から離されることはなかった。一方で、蓮の本体は少年を抱えると、【幻影の姫君】によって徐々にその姿を消していく。その姿が完全に消え切ると、鏡像の合図により宙を舞っていた【炎熱の手札】は火球となって西洋武者たちを襲い始めた。その隙に彼女は再び跳躍し、その場を脱出することに成功した。
「ちょっと我慢しててね、他のみんなも今助けるから!」
未だ救出されていない家族を見やりながら、彼女は少年に声をかける。だが、この騒ぎを聞きつけたのであろう、次第に西洋武者はその数を増していた。果たして、他の家族を救うことは叶うのか。一抹の不安を抱えながらも、蓮はひとまず戦場をあとにした。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『切支丹武者』

POW   :    騎馬突撃
自身の身長の2倍の【軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    後方支援
【切支丹女武者】の霊を召喚する。これは【鉄砲による援護射撃】や【一斉掃射】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    主の裁き
【ハルバード】を向けた対象に、【天からの雷】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※第二章について
プレイングの受付はスケジュールの都合で1月31日(木)の8:30以降とさせていただきます。
このあと、二章に関する補足情報も追加いたしますので、そちらをご確認の上、ご参加いただければ幸いです。
 一通り救助を終えた猟兵達は、一度戦場を離れ安全な場所で合流を果たした。救い出したのは4人……残る2人はいまだ捕らわれたままだった。男が2人を助けてくれと猟兵達に泣きすがる。しかし、新たな増援が到着した今の状況において、2人の救出を行うことは非常に困難であると、猟兵達は直感的に察していた。だが、いずれにしても西洋武者――切支丹武者は殲滅しなければならない。猟兵達は家族を執行人であった町人たちに任せ、再び戦場へと向かうのであった。

※第2章の追加ルールについて

 第2章でも同様に、以下の3つの選択肢から1つをプレイングの頭に記載してください。残りの2人を救助することができるチャンスは、これで最後となりますので、そのあたりも加味した上で選択してください。

 救助を優先する場合 【妻】【長女】
 殲滅を優先する場合 【武者】

 なお、救助については第1章と同様に成功と大成功で可能となりますが、増援や警戒度の上昇によって、救出そのものが非常に困難となっています。そのため、成功度の判定は通常の数値の「1/10」で行います。
 ただし、殲滅を優先した人が多ければ、その分、敵の数が減少し、救出の手助けとなるでしょう。つまり、【武者】を対象に選んだプレイングの数とその成功度に応じて、救出優先選択者の成功度が緩和されます。

 第1章と同様に、救助対象が選択されていない場合や、複数選択している場合はプレイング選考の対象外とさせていただきますので、ご注意ください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
ウーゴ・ソルデビラ
【武者】ちっ、不味い事になったぜ。とにかく時間がねえ。急がなきゃ手遅れになっちまうぞ。
さあ、来やがれ。あいつらの邪魔はさせねえからな!【ダッシュ】で味方の巻き添えを避けながら【露悪々汚武紅腐棲】をぶっ放す。巻き添えを避けられない時はシルバーフィッシュで【2回攻撃】。他の猟兵と攻撃を集中させて確実に数を減らしてく感じだな。なるべく派手に立ち回って囮になる【覚悟】で敵を【おびき寄せ】る。【後方支援】を使われたら女武者の撃破を優先。この状況で飛び道具はヤバすぎるぜ。敵からの攻撃は【野生の勘】と【見切り】で躱す。突破されそうなら、回り込んで家族を背にする事で【かばう】つもりだぞ。絶対に通さねえからな。



「ちっ、不味い事になったぜ。とにかく時間がねえ。急がなきゃ手遅れになっちまうぞ。」
 妻と娘、二人の救出を失敗した状況に、焦るウーゴ・ソルデビラ(吸血鬼マイラ・f09730)は、迷わず敵の集団へと突っ込んでいった。死琉罵悪腐威朱を握る手に力がこもる。リボルバー型の記憶消去銃を敵に向けて乱射しながらも、ウーゴはその足を止めることなく戦場を駆け抜ける。他の猟兵達の援護もあり、程なくしてウーゴは敵集団の中心地へとたどり着いた。
「耳の穴かっぽじってよく聞きな!テメェら鼓膜をブチ破ってやるぜ!」
 もはや遠慮などは必要ない。彼の体内に埋め込まれた刻印が大きく脈動すると、それを介しては彼がこれまで喰らってきたUDC達のけたたましい奇声が放たれる。それは周囲一帯の切支丹武者達の兜の中で反響し、次々に昏倒していく。
 だが、その奥から切支丹女武者が姿を現した。本能的に危険を察知したウーゴは、咄嗟にその場を離れた。直後、そこに大量の銃弾が着弾する。あと数秒遅れていればハチの巣になっていただろう。そして、幸か不幸か移動した彼の背後には未だ捕らわれている親子の姿。次の銃撃もかわしてしまえば、彼女達がどうなるかはわからない。彼は覚悟を決める。
「さあ、来やがれ……ここは絶対に通さねえからな!」
 女武者達の銃口が、再びウーゴへと向けられた。

成功 🔵​🔵​🔴​

坂上・半
【武者】

なるほどなるほど
つまりあれだろ?

切り倒す敵いっぱい
褒美いっぱい
おぜぜいっぱい
俺嬉しい

わかりやすくていいな、おい

地形の利用に忍び足、先制攻撃のだまし討ちから始めて八艘跳びに至るまで、俺についてこれるかよ

召喚とか大好きだぜ
背丈ちっけぇから盾が選り取り見取り
残像に見切り、何でも使って早着替えで武器を変えつつカウンター
乱戦上等、同士討ちさせてやんよ

霊?
その程度の呪詛なんて効くか

殺気と呪詛に恫喝を併せて叩き返してやるぜ

羅刹なめんなよ


と、ひたすら暴れて敵を呼び寄せてさらに同士討ちに発展させてを繰り返していくぜ
八艘跳びを使えばどこだって足場にできるし捕まえさせねえよ



 引き金が引かれようとしたその時、女武者達のそばを1つの影が横切った。音もなく忍び寄ってきたそれが通り過ぎると、数体の女武者の首が飛び、そのまま霧散した。
「なるほどなるほど、つまりあれだろ?」
 その影の正体――坂上・半(羅刹の妖剣士・f06254)は眼前に立ち並ぶ大量の武者達を見て、今回の報酬に思いを巡らせる。これだけの数を屠れば、相応の報酬が得られるだろうとの目算だ。
「わかりやすくていいな、おい。」
 ならば、少しでも多くの敵を狩らねばなるまいと、半は剣を構え、再び武者の群れへと切り込んだ。それに反応するかのように女武者達は一世影射撃を放つ。銃撃は寸分違わず命中したかのように思われた。だが、銃弾は半にではなく、背後にいた切支丹武者や別の女武者へと直撃する。いつの間にか、女武者の頭上に位置取っていた半は、その脚で宙を蹴り、女武者達めがけて急降下する。
「俺の道を阻むには、遅いんだよ!」
 半は八艘跳びにより急接近すると、次弾を構える隙を与えることなく、手に持つあざ丸で女武者の首を切り落とした。そして、半は留まることなく再び跳躍する。鬼切、獅子王、敵を切り倒すたびに武器を持ち替えながら戦うその様は、その動きは繊細かつ正確でありながらも、さながら演舞のようであった。
「霊?その程度の呪詛なんて効くか。質の悪いものの寄せ集めで勝負しようなんて考えが甘いな。羅刹なめんなよ?」
 そんな半の猛攻を見てか、切支丹武者達は先程とは異なる、不穏な動きを見せていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

マリアブリレ・ニネヴェマスナガ
【武者】を討つぞ。
救助も焼き鳥も、一段目を無視して二段目は食えん。
救出への下ごしらえは私に任せると良い。

騎馬突撃は確かに強力だが、その機動はとても愚直だ。
だからこそ、相打ちを恐れぬ胆力さえあれば痛打を与えることは可能。
挑発で引きつけ、ヤツの槍が我が身に届く瞬間――射出した5000兆円の衝撃力で吹き飛ばしてくれる!

「見世物が如く、人を殺めて喜ぶか。実に俗っぽく、本能的で、幼稚だ。お前らの神も程度が知れている!」
「みすぼらしき庶民の肉で満足する点は分相応でかわいげがあるがな」
「ときに、私は女王である……下賤なる者よ、己が槍で我が血の色を確かめてみたくはないか? こんな機会は二度と無いぞ!」



 一部の切支丹武者達が召喚し始めたのは女武者ではなく軍馬。武漆黒の鎧をまとった馬に跨ると、武者達は猟兵めがけて突撃してきたのだ。彼らの構える槍が迫る中、その状況に臆せず一人の猟兵がメガネをクイッとしながら前に出る。マリアブリレ・ニネヴェマスナガ(サイバー都市SABAEに降り立った最後の眼鏡女王・f02341)だ。
「見世物が如く、人を殺めて喜ぶか。実に俗っぽく、本能的で、幼稚だ。お前らの神も程度が知れている!」
 騎馬突撃は強力である一方、その機動はあまりにも愚直。そう感じ取った彼女は敵を誘導するため、挑発を始める。
「みすぼらしき庶民の肉で満足する点は分相応でかわいげがあるがな。」
 彼女の挑発が聞いているのだろうか。軍馬の足が徐々にその速度を増していく。
「ときに、私は女王である……下賤なる者よ、己が槍で我が血の色を確かめてみたくはないか? こんな機会は二度と無いぞ!」
 血を望む武者の本能か。あるいは主を愚弄された怒り湯だろうか。挑発に乗った武者達の矛先が彼女へと向き、急接近する。その切先が届こうとした瞬間、人類最強の共同幻想とも呼べる存在が眼前に現れた。
「お前に投資してやる。有難く受け取るといい。」
 5000兆円――重さにして約50万トンもの紙幣が騎馬武者のみならず、背後に位置していた女武者達をも飲み込んでいった。そんな資本主義の荒波に流されていく仲間を見て、残る切支丹武者達はその物量に対抗するため、再び大量の軍馬と女武者を召喚し始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

斬島・切乃
【武者】

さて、どうしたものか。
そうですね……
やはり救出は他の猟兵に任せて、私向きの仕事といきましょうか。

【妖剣解放】し、敵の只中に吶喊。
召喚された女武者に狙いを定められないよう、足を止めずに高速移動で動き回る。
時に武者の陰に回って射線を遮り、斬撃に伴う衝撃波で女武者を纏めて薙ぎ払う。
武者に距離を詰め、必要ならば『残像』を伴う『フェイント』をかけて隙を作り、【剣刃一閃】と『鎧無視攻撃』を併せた【斬華一輪】で確実に斬り伏せていく。
『殺気』と『第六感』の危機感知は無視せず従いましょう。
乱戦ではそういった物ほど命を救ってくれますから。

――さて、あっちは今どうなってるのでしょうね。

アドリブ歓迎



 その混乱に乗じて武者達のなかに佇む猟兵が一人。斬島・切乃(一刀繚乱・f13113)は無銘の業物の怨念をまとい、鍔に手を掛ける。
「貴方の斬り心地はどうでしょうね。少しは楽しめるといいのですけど。」
 再び舞い込んできた侵入者に女武者達は銃口を向けるが、絶え間なく移動を続け、武者達を壁として立ち回る切乃に狙いを定めることができない。そんな武者達を尻目に、鬼が宿る刀が宙を薙ぐ。至近の武者は刀身本体に切り伏せられ、距離のあった武者は衝撃波により吹き飛ばされた。
「遅いですね。少々斬りがいに欠けます。」
 しかし、攻撃直後というのは、否応にも隙が生まれる。武者達にもその心得はあるようで、わずかな隙を狙って切乃へと斬りかかる。だが、それは彼女とて同じこと。攻撃の際に発せられる僅かな殺気。彼女は本能的にそれを感じ取り、振り切った刀をそのまま背面へ返し、迫る槍斧を斬り払った。斬華一輪――再び、血飛沫の花びらが戦場に舞った。
「救出は他の猟兵の方々に任せましたが――さて、あっちは今どうなってるのでしょうね。」
 武者達はさらに追撃を試みるが、既にそこに彼女の姿はなく、突き出されたハルバードが空を切る。次の瞬間、武者の頭は地面へと転がり落ちていた。そんな様子を意に介することもなく、彼女が視線を向けるのは、捕らわれの母と娘。彼女達の救出にはまだまだ時間がかかりそうだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ダーシャ・アヴェンダ
【武者】
全員救ってみせるわ。その為には役割分担ね。
私は武者を一人残らず殲滅してあげるわ。
さっきも言ったけど理不尽は嫌いなの。だから消えて頂戴。

『死操演舞』でサイファーを増やし、隊列を組んでガトリングガンによる【一斉発射】【2回攻撃】の【鎧無視攻撃】で穴だらけにしてあげる。
サイファーは【毒使い】の私が作った代物だから仕込み武器には全て毒が塗ってあるから掠り傷一つが毒【マヒ攻撃】になるわ。

「何の罪もない人を恐怖に陥れたのだから、貴方達も同じ恐怖を味わいなさい!そして二度としない事ね。二度目があるならだけど」



 猟兵達の猛攻により、かなりの数の武者が撃破された。だが、召喚による増員もあったためか、その数は未だに健在だ。
「さっきも言ったけど理不尽は嫌いなの。だから消えて頂戴。」
 そんな武者達を一人残らず殲滅しようと息まくのは、ダーシャ・アヴェンダ(人形造形師・f01750)。彼女の周りに集うのは、戦闘用のからくり人形達。死操演舞によって増やされたサイファー達は低列を組み整然と並ぶ。そして、彼女の指が動かされると、人形達の口から武者の群れへとめがけて弾丸の雨が放たれた。頑強な鎧が、まるで紙切れのように貫かれていく。そして、隊列の中から数体のサイファーが武者達をめがけて飛び出した。剣や鎌、鞭、丸鋸といった様々な仕込み武器を取り出した人形達は、武者の鎧と鎧のわずかな隙間を切り裂いていく。
「私は毒使い。当然、その人形達の仕込み武器にも毒が塗ってあるわ。それがどういうか……わかるわよね?」
 彼女がサイファー達に仕込んだのは神経毒。僅かな傷口から入り込んだ毒は急速に武者達を侵し、麻痺させていった。
「何の罪もない人を恐怖に陥れたのだから、貴方達も同じ恐怖を味わいなさい!そして二度としない事ね。二度目があるならだけど」
 動きを封じられた武者達に、ダーシャは容赦なく追撃する。辺りに鉄と火薬と肉の焼ける匂いが広がり、武者達の数は急速に減少していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

上月・衒之丞
【殲滅】
既に血塗れでありんすが……ようざんしょ、まだ牡丹も桜も咲き足らぬと見えささんす。
儚く、可憐に。咲き乱れなんしや。

手繰った糸を放ち、敵の視線を「斬る」。無明弦月流の極意、神無月。
「やはり見つめられなんせば照れなんしな。あちきは隠れさせてもらいいす」
姿が見えぬなら、どれだけ明るい場所でもそこは暗殺場だ。
相手が人間ならば、最小限で首を刎ねていく。
オブリビオンで首くらいでは止まらないのなら、さらに四肢をバラしていく。
「今日はほんに、牡丹も桜も見頃でありんすなぁ。どれ、次の花は、と……」

常に優美に立ち振る舞う。
駆けることなく歩みを進め、血の花を浴びながら次の花を咲かせてゆく。



 だが、切支丹武者達もられたままで黙っているわけもなく、辺りを見渡し一人の猟兵を見つけると、ハルバードの切先を向けた。その先にいたのは、上月・衒之丞(泡沫の遊女・f11255)。直後、天から眩い閃光が迸り、轟音と共に落下してきた。雷により地面は焦げ、先ほどまでいた芸妓の男は、その一撃で消し去られたかのように思われた。
「やはり見つめられなんせば照れなんしな。あちきは隠れさせてもらいいす。あちきの姿が捉えられんし?」
 否、衒之丞は確かにそこにいた。だが、武者達は彼を視認できなくなっていたのだ。無明弦月流の極意、神無月――姿が見えなくなってしまえば、そこは彼の独壇場だ。一人、また一人と確実に武者達の首を刎ね、彼の居場所を探す視線を斬り落としていく。辺りに響くのはくぐもった断末魔。だが、首を刎ねられてもなお動く鎧が数体。既に意思をなくした体など、放っておけばいずれ力尽きるであろう。
「しつこい男というのも難儀やなぁ。のぶとい男は嫌われますよって。」
 だが、衒之丞は容赦などする気はない。武者を糸で絡めとると、躊躇いなくその糸を手繰り寄せた。先程まで五体満足であったそれは、瞬く間に物言わぬ肉塊と化した。
「今日はほんに、牡丹も桜も見頃でありんすなぁ。どれ、次の花は、と……」
 戦場を彩るのは血濡れの花。歩みを止めることのない芸妓は、その歩を進めるたびに儚く、可憐に、新たな花を咲かせていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天秤棒・玄鉄
【武者】
 胸糞わりぃ話だ。
 ま、奴さんら好き勝手やってんだ、おれも好き勝手邪魔させてもらうか。

 否が応にも、意識がおれに向くように暴れるぜ。
 天秤棒に【喧嘩棒術、熾】で炎を灯し、殴り掛かる。
【捨て身の一撃】が如く、反撃も【覚悟】の上、生傷の慣れで得た【激痛耐性】で堪え【武器受け】で防ぎつつ、救出に向かう奴の邪魔になる奴を優先的にぶっ叩く。
 五感だけじゃねえ。【第六感】つうか勘にも従って暴れまわってやらあ。
 腕の一本二本、死ななきゃ安い。そら痛えが、無茶して得られるもんがあんならやってみるのも一興だろうよ。

 救出に間に合ってりゃ惨めな思いさせずに済んだかもしれねえが、代わりに精一杯暴れてやらあ。



 他の猟兵達が暴れまわる中、一人の男が騒ぎを聞きつけて戦場へと駆け込んできた。天秤棒・玄鉄(喧嘩魂・f13679)は目を細めると、遠目に見える親子を視認した。
「胸糞わりぃ話だ。ま、奴さんらも他の猟兵も好き勝手やってんだ、おれも好き勝手邪魔させてもらうか。」
 玄鉄は敵陣へと歩を進めながら、喧嘩棒術、熾により黒い天秤棒に火を灯す。愚直に突き進む男に、武者はハルバードを合わせ、突き出され槍斧が玄鉄の左腕を掠める。だが、彼はそれを意に介することなく前へ、さらに前へと踏み込み、天秤棒を振るい続けた。飛んで火にいる夏の虫。火の灯る天秤棒に誘われるかのように、武者達は彼へと矛先を向けていった。彼の思惑通り、敵の意識は玄鉄の方へと向いていた。だが、その数が増えれば当然、捌き切ることは困難だ。己の直感を信じ、ある程度は武器で受け流すことは出来たが、歩を進めるたびに、玄鉄の体に切り傷と雷による火傷が増えてゆく。
「腕の一本二本、死ななきゃ安い。そら痛えが、無茶して得られるもんがあんならやってみるのも一興だろうよ。火事と喧嘩は江戸の華ってなぁ!」
 救出に出遅れた自分にできるのは、代わりに精一杯暴れること。ならば、怪我などにかまっている暇はない。そんな彼の覚悟に呼応するかのように、天秤棒灯された炎が激しく燃え盛る。そこから放たれる一撃は、武者達の堅牢な鎧を容易く突き破り、叩き伏せていった。

成功 🔵​🔵​🔴​


 猟兵達の奮闘により、相当数の切支丹武者たちが撃破され、その数を大きく減らしていた。まだ、万全な状況とは言えないが、取り残された親子を救出する目も出てきたであろう。しかし、いつ彼女達の命が奪わ
ステラ・チェスロック
【長女】

見捨てられるわけ……ないじゃない……!

シャッフル・タイムを周囲の目眩まし兼牽制攻撃に使うわ。その間に【早業】の【盗み】で素早く長女を誘拐していくわよ!
アタシ達への攻撃は戦闘用トランプを空中に固定して【武器受け】するわ。トランプを一箇所に集めれば鉄砲でも簡単には打ち抜けないはずよ!

もしアタシが怪我をして長女を連れて逃げるのが難しくなったら、長女に此処を生き延びれば家族に会えるから頑張って、って【鼓舞】しましょう。いざとなったら、アタシも母親も置いて逃げなさい。生きるの!何がなんでも!


エムピースリー・シャローム
【妻】

さて、救助に回りましょう
騒ぎが起きるタイミングを計って強襲しましょう
大事なのは初手
身長とパワーを活かして大きく跳ねて一気に奥方の近くへ飛び下ります
オブリビオンを踏みつけていく勢いで行きましょう

奥方を装甲の奥、収納スペースへかくまい盾を構え電磁バリアを張ります
雷にしろハルバードにしろ、大変得意分野ですよ

さぁ、盾を構え乗り越えましょう

今を生きぬものに裁かれる筋合いはありません


もしもこちらに他の方がこられていたら、盾として時間稼ぎを行います
この巨体、それでこそ役に立てるというものです


ヴィゼア・パズル
――全く、まさか先に救出されそうな相手が救出されていないとはな… 似た様な考えの者が多いのか…?
「…今後、救出は女子供から…ですね。」

【妻】の救出
真の姿解放
色白の肌に漆黒の長髪、長い尾を持つ身長190cm程人型の人狼

【WIZ】使用 絡みアドリブ歓迎

偽翼を翻し【空中戦】技能にて側迄飛翔
敵へ【なぎ払い・範囲攻撃】を併用。一度に複数体へ【マヒ、二回、属性、範囲攻撃】の【鎧砕き、全力魔法】を叩き込む
連携が可能であれば合わせよう

「…幼子に母親は必要です。気をしっかりと持ちなさい。」
真の姿なら軽々抱えられる。

さて、弾丸の雨は通用するのか…可能な限り挑みましょう。


ウィズ・ザー
【SPD】使用
【長女】救出狙い

可能性に賭けよう。…挑み叶わぬならば、それまでの運命故に

大量に犇く敵の影に溶けそのまま進む。仲間が騒ぎを起こし注意を引いた所で長女救出を狙う
【かばう】技能を使用し長女を護り保護、バウンドボディの反動を利用し脱出を試みる
跳べ跳べ、闇の球体は跳ねて転がり安全地帯を目指そう

未だ弱きこの身
せめて、仲間の居る場所迄


結城・蓮
【長女】
あの子に助けるって言った手前、絶対に助け出すよ。
子供に手を掛けようなんて許せるわけないからね!

やる事は同じ。
さっきは飛び込んでから《幻影の姫君》を使ったけど、今回は敵に視認される前から透明化して一気に救出と行くよ。
体力が厳しいからね、短期決戦だよ!
《幻想の跳躍》で飛び込み、他に救出中の人がいたら敵を【だまし討ち】してサポート。
他の人が手こずってるのならそのまま駆け寄って救出だよ。
【早技】で拘束具を解除、そのまま長女も透明化させて抱きかかえながらその場を離れる。
「怖かったね、もう大丈夫だよ」
追っ手が来るなら《泡沫の鏡像》で呼び出した鏡像に相手してもらうよ。



●長女
「見捨てられるわけ……ないじゃない……!」
「可能性に賭けよう。……挑み叶わぬならば、それまでの運命故に。」
 少女を救出すべくステラ・チェスロック(リトル・ディーラー・f12374)とウィズ・ザー(闇蜥蜴・f11239)の二人が戦場を掛ける。
「いや、あの子に助けるって言った手前、絶対に助け出すよ。」
 いや、正確には三人。結城・蓮(チキチータ・マジシャン・REN・f10083)は幻影の姫君によりその姿を透明にして他の二人に並走していた。子供に手を掛けようなど許せるはずはない。その気持ちは皆同じだった。他の猟兵達によって多くの武者が撃破されていたこともあり、3人は然したる障害もなく、晒し台へと接近していった。しかし、その周囲にはまだ相当数の武者達が残っていた。それを突破しなければ少女を救出することは叶わない。間もなく、接敵しようとしていたその時、大量のトランプが再び宙を舞った。
「まずは、アタシがあいつらを引き付ける。その隙に素早く長女を誘拐していくわよ!」
 一枚一枚が意思を持つかのように、1000枚近いカードが武者達の周囲を目まぐるしく浮遊し、敵を翻弄していく。何よりもまずは少女の解放を優先するため、作り出されたわずかな隙を突き、武者の集団を抜けていく。当然、武者達も黙ってはいない。わずかに視認で来た乱入者を排除しようと、その手に持つ槍斧をステラに向けて振るう。だが、それも計算のうち。かく乱用のトランプとは別のトランプが、一つの塊となりその攻撃を凌いだ。ウィズもその流動的な体を駆使して、武者達の攻撃をいなしていった。程なくして、3人は少女の元へと到着する。そして、そこには少女の首を落とさんと刀を振り上げる武者が一人。
「させない!」
 幻想の跳躍を使い跳躍した蓮が、手にした杖で斬りかかる。突如現れた猟兵に対処することは出来ず、武者は杖から顔を出した刃先によって切り倒された。他武者達がこちらへと向かってくる前に解放するため、3人は手早く拘束具を取り外していった。解放され、泣きじゃくる少女を蓮が抱きかかえた。
「怖かったね、もう大丈夫だよ。」
「感傷に浸るのは……後だ。」
ウィズが言うように、ここで立ち止まっている時間はない。周囲を警戒していた無武者達が彼らめがけて接近してきている。先ほどは機転を利かせて突破してきたが、今は少女もいる。青の集団を突破するのは中々骨が折れるだろう。
「2人は彼女を連れて先に行って。」
突如として、ステラは自ら囮になることを告げる。2人が逸れに異を唱えるよりも先に、彼女を口を開き、それを遮る。
「ここを生き延びれば家族に会えるから。だから逃げなさい。生きるの!何がなんでも!」
 強い言葉を少女に投げかけつつも、ステラはその頬を優しくなでる。
「……任せてもいいんだな?」
ウィズの言葉にステラは精一杯の笑顔でうなずく。彼女の決意は変わらない。それならばと、蓮は泡沫の鏡像により自らの分身を生み出し始めた。彼女の護衛とするためだ。
「分身が維持できるのは、ボクからせいぜい500mぐらいが限度だ。焼け石に水かもしれないけど、少しは役に立つだろう。」
 ステラが首を縦に振ることを確認すると、蓮は少女を抱えてその姿を透明化する。
「一気に突破するぞ。……二人とも、俺に掴まれ。」
ウィズはその体を収縮し始める。すると、先ほどまでのトカゲの姿から、徐々に球体へと形を代えていく。そのまま、透明化した二人を徐々に包み込んでいく。そして、収縮した球体が、それを押さえつけていたタガが外れたかのように、急速に膨張する。
「未だ弱きこの身。せめて、仲間の居る場所迄。」
それぞれが自身の使命を果たすため、一人の猟兵を残し、少女を連れた二人がその場をあとにした。

●妻
「……今後、救出は女子供から…ですね。」
女性や子供が先に救助されるとヴィゼア・パズル(風詠う猟犬・f00024)踏んでいたのだが、結果的に女性二人が取り残される結果となってしまった。
「ですが、もはや後の祭りです。今度こそ救出すれば問題はないでしょう。」
 エムピースリー・シャローム(ウォーマシンのシンフォニア・f01012)の言葉にヴィゼアは静かに肯定の意を示す。すると、先ほどまで2m以上あった二人の身長差が徐々に縮み始め、その顔も大きく変貌していく。数十秒後には、先程までそこにあった小柄な猫獣人の姿はなく、代わりに立っていたのは身長2m近い、色白の人狼だった。
「さて……行こうか。」
 その言葉を皮切りに、二人は捕らわれの女性をめがけて、大きく跳躍する。その巨体を持ち上げるだけのパワーはすさまじいもので、着地地点にいた武者はその重量に耐えきることができず圧殺され、地面が大きく振動する。
「おやおや、案外脆いものですね。ならば、この古風な技術も役に立ちそうです。」
エムピースリーは着地後、即座に盾を構え電磁バリアを展開すると、その巨躯を女性と武者の間に割り込ませ、彼女を守る壁となった。女性を守る壁があるのならば容赦をする必要はない。風を纏い、宙を舞うヴィゼアは、その長い黒髪をなびかせながら、精霊銃、零虚を構えた。
「さて、弾丸の雨は通用するのか……可能な限り挑みましょう。」
まるで意思持つかのような圧縮された大気の弾丸が武者たちめがけて降り注ぐ。ゲリラ豪雨のような高圧気弾の雨が止んだころには、そこに立っているのはエムピースリーだけとなっていた。周囲の安全を確保すると、二人はすぐさま女性を解放した。
「……幼子に母親は必要です。気をしっかりと持ちなさい。」
女性を労うのも束の間、騒ぎを聞きつけた武者達が猟兵達を討ち取らんと駆けてくる。
「壁役は私に任せてもらいましょう。なに、雷にしろハルバードにしろ、大変得意分野ですよ。それに――」
エムピースリーは再び盾を構え、電磁バリアを発生させる。勢いに任せ、愚直に突っ込んできた武者達が弾き飛ばされる。金属の鎧であれば彼にとって好都合。強電磁場は武佐y達の全身に影響を及ぼし、その行動を阻害していた。
「今を生きぬものに裁かれる筋合いはありません。」
その言葉に頷くと、ヴィゼアは女性を抱え、再び風を纏い跳躍。その場をあとにした。その様子を見てエムピースリーも頷き返す。
「この巨体、それでこそ役に立てるというもの。」
迫る武者の攻撃を一身に受けながら、エムピースリーは遠く離れていく二人を見守った。彼らの安全を願って。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『悪代官』

POW   :    ええい、出会え出会えー!
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【部下の侍オブリビオン】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    斬り捨ててくれる!
【乱心状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    どちらが本物かわかるまい!
【悪代官そっくりの影武者】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの活躍により、辛くも家族全員の救出に成功した。華族を安全な場所へ避難させた猟兵たちは、3度戦場へと舞い戻る。切支丹武者の多くは倒れ、あれほどいた町人たちも喧騒にまぎれてどこかに消えてしまった。処刑場に残るのは、わずかな武者と鉄と鉛の匂い。
「詰まらぬなぁ。実に詰まらぬ。」
 そんな様子を始終眺め続けていた一人の男が、ついにその重い腰を上げた。
「徳川の犬どころか、子供一人すら討ち取れんとは。南蛮の兵と言っても、所詮はこの程度か。」
残る武者たちを呼び寄せ、その数を数えると、落胆したのように大きく肩をすくめる。
「まぁよいわ。見せしめなどいつでもできる――そうか、そこにおる徳川の犬どもを使おう。まだまだ数はある。駄犬の首輪にはちょうどいいだろうな。」
 壊れたさらし台を指さすと、悪代官は不敵な笑みを浮かべ、猟兵たちへと向かって歩を進め始めた。
エムピースリー・シャローム
真の姿を解放
奏甲を広げ電磁を纏います

大きく広げ遮蔽を作りその背後にエレクトロレギオンを呼び出します
機会を見計らい影武者もまとめて掃討しましょう

ここから先は通しません
誰一人、傷つけさせません

過去は過去へ還りなさい


坂上・半
真の姿を解放――しない

世界またいでいくより状況がわかりやすくていいわぁ
手柄首がわかりやすい
首おいてけ、って言いたいとこだが下ごしらえからかね

派手さはいらない
必要なのは静かに張り巡らす罠
理性がトばしてると嵌められっぜ

【忍び足】でうまい位置とって【騙し討ち】の【先制攻撃】
じわりじわりと【忍び寄るは地獄蜘蛛】
巣を張り巡らして理性トバしてる代官の足元を掬うぜ

ごろごろ転がしたらそのまんま張り巡らせた妖糸でぐるぐる巻きにしちまおう

あー、もし味方と一緒に行動してたら
味方の援護に生き残った敵配下を【敵を盾にする】ために乱心状態の代官のところへぶん投げるぜ
味方への攻撃の回避にゃちょうどいい



「下ごしらえをするにも、まだまだ距離があるな。」
 岩陰に隠れて代官が歩み寄って来る様子を眺めていた、坂上・半(羅刹の妖剣士・f06254)は、敵を確実に仕留めるための算段に思考を巡らせていた。派手さは必要ない。理性を手放した男など鰐にはめるなど造作もないことだ。だが、それを実行するためには、あと数百メートルは互いの間を詰めねばならない。当然、周囲にいる武者がそれを遮る可能性もある。
「……歩いて来るのを待っているわけにはいかないよな。おっと。」
 そんな状況を知ってか知らずか、一人のロボット兵――エムピースリー・シャローム(ウォーマシンのシンフォニア・f01012)が前柄と歩み出る。すると、彼の纏っていた強化装甲が、徐々にその機構を展開させていく。それと同時に彼の背後に集い始めたのは、戦うために作りだされた機会兵。ガガガ――とノイズのような起動音を立てながら、一体、また一体とその数を増していく。やがて、エムピースリーの奏甲が広がり切ると、機械達と連動するかのように通電し、その体に電磁を纏った。元から大きな存在感を放っていた身体は、周囲の風景さえも遮蔽する巨躯となった。すると、先程まで雑音が入り混じる不協和音だった起動音が、戦場を揺るがす旋律へと変貌していく。
「ここから先は通しません。誰一人、傷つけさせません」
「ふん。からくり人形風情がずいぶんと息巻いておるな。」
 そんな様子を眺めていた代官の隣に、彼と振り二つ名男が突如として現れる。影武者を利用して、猟兵達をかく乱しようという魂胆なのだろう。
『はっはっは!これでどちらが本物かわかるまい。』
 2人の代官の声が重なり、エムピースリー達を挑発する。乱戦となれば、当然見分けはつかなくなる。だが、距離を詰めねば、攻撃を当てることすら叶わない。機械の軍勢と二人の代官、そして、切支丹武者達による乱戦が始まった。
「ちょうどいい遮蔽物がたくさんあるじゃねぇか。」
 これ幸いと半は岩陰から飛び出し、代官へと向けて走り始める。エムピースリーの展開した戦闘機械の後ろに、その小柄な体を活かして隠れながら、徐々にその距離を詰めていく。代官達までの距離が400m程となったところで手頃な遮蔽物を見つけると、半は再びその身を隠した。すると、彼の手から細く透明な糸が伸び始め、一本、また一本と代官達の周辺へと貼り巡らされていく。周囲に糸を張り終えると、半をその糸を勢いよく引き寄せた。
「百鬼の領域へようこそ。――さようなら。」
 その時、日光の反射によって、わずかに僅かに糸が視認される。すると、代官の片方がもう一方の代官を糸の範囲外へと突き飛ばした。糸により足元を掬われた庇った方の代官がその場にその身を転がすと、貼り廻らされた妖糸にまかれ、その動きを封じられた。突き飛ばされた方の代官は、その状況を見ると顔を赤くし、突如として激昂しはじめた。先ほどまでの悠長な歩みとは異なり、おおよそすり足とは思えぬ速度で、エムピースリーへと急速に接近していった。
「一人取り逃したが、つまりこっちが本物ってことでいいんだな?」
 半は手近な場所にいる武者の腕をつかむと、その小さな体をひねりながら、自分よりもはるかな大きな体と重さを持つ武者を代官に向けて投げつけた。乱心状態の代官は、味方である武者を容赦なく切り捨てる。だが、その隙をエムピースリーは逃さなかった。
「過去は過去へ還りなさい」
 展開されていた奏甲が眩く発光したかと思うと、前方へ放射状に放たれた。強力な電磁の波が、乱心状態の代官と切支丹武者達、そして、糸に巻かれ転がされている、もう一人の代官を飲み込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウーゴ・ソルデビラ
けっ、ダイカンだかダイコンだか知らねえが、勿体つけて出て来やがって。てめえのくっだらねえお遊びをぶっ潰すのはマジで骨が折れたぜ。あの家族の分と、ついでに俺らの怒りも込めてきっちり成敗してやるぜ!!
【先制攻撃、ダッシュ】で間合いを詰めて、【部下の侍オブリビオン】や【悪代官そっくりの影武者】は【露悪々汚武紅腐棲】で纏めてブッ飛ばす。味方を巻き込みそうなら【ダガー/早業、2回攻撃、フェイント】で一体ずつぶった斬る。合体した侍オブリビオンや、後から出た影武者は邪魔くさいから優先して殺す。攻撃は【早業、見切り、野生の勘】で避ける。



 強力な電磁力により、その波に呑まれた者達は地面へと吸い寄せられるように倒れ込んでいた。どうやら、転がされていた代官は、呼び出された侍たちが合体して壁となったらしい。だが、好機であることには変わりはないと、ウーゴ・ソルデビラ(吸血鬼マイラ・f09730)は、倒れた敵の軍勢をめがけて一気に駆け込んでいった。
「けっ、ダイカンだかダイコンだか知らねえが、勿体つけて出て来やがって。遊びは終わりだ!とっとと引導を渡してやるよ!」
 まずは手近にいる代官へと短刀を突き立てた。代官はわずかに身じろぎをするも、体が麻痺して回避することは叶わない。ダガーの先端が代官の急所へと直撃する。しかし、どうしたことだろうか。貫かれた代官は出血をするでもなく、わずかなうめき声だけを残して霧散した。奥に転がされている代官が不敵に笑う。それを見た、ウーゴは倒した代官が影武者であったことを察した。
「おいおい、庇った方がむしろ本物かよ。てめえのくっだらねえお遊びはぶっ潰すのはマジで骨が折れそうだな?」
 だが、ウーゴがその足を止めることはない。あの家族の分、そして自分達の怒りを込めて、彼の首を討ち取らんと奔走する。当然、それを阻もうとする武者が、彼の行く手を阻む。そんな武者達の攻撃をいなし、一体一体ずつ確実に仕留めていく。そんなに様子を見た代官は、再び影武者を召喚するも、簡単に判別のできる今の状況においては、その行動には然したる意味はない。ウーゴは構うことなく、召喚された影武者に、勢いに任せた拳を叩き付ける。吹っ飛ばされた影武者を合体侍が受け止めると、程なくしてユーゴがその場へと到着する。
「今度こそ、終わりだ!この、ダイコン野郎ーーーーー!!」
 ウーゴの体内にある刻印が再び脈動すると、UDC達の叫び声が轟音となって響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・チェスロック
アンタね、こんな胸の悪くなるようなことしたの……!これ以上、あんなことさせるものですか!

【情報収集】で相手の観察をして、速く動く物を無差別攻撃し続けるっていうのがわかったら、シャッフル・タイムで戦闘用トランプを速く動かしたり遅く動かしたりして敵の動きをアタシの都合のいいようにしてやるわ!【念動力】の扱いは得意だからまかせなさい!

敵が超耐久力を持っていようと、敵を振り回して体力を消耗させたり、死角から攻撃をしたりしてじわじわ体力を削ってやるわ。敵から攻撃を受けそうになったらトランプをいっぱい周りに集めて【武器受け】するわよ。


天秤棒・玄鉄
 いや、良かったじゃねえの、お代官様よ。
 何がって、町民に今から晒す無様見られねえんだからよ。

 代官より、召喚された侍を優先。
天秤棒振るって【鎧砕き】で【なぎ払い】ながら、【捨て身の一撃】さながら暴れまくってやらあ。
 手裏剣の【投擲】【忍び足】や【空中戦】の【だまし討ち】も織り混ぜて、敵の攻撃は【第六感】で【見切り】、【武器受け】。【衝撃波】を起こして吹き飛ばす「喧嘩棒術、崩」で【カウンター】を取りながら、立ち回る。

 そりゃあ、退屈だろうよ。手前で労せず過程だけ呆けて見てりゃなあ。
 これでちったあ、退屈は紛れたかよ。

アドリブ、絡み描写歓迎です



 音の爆心地にいた代官は、侍と武者諸共弾き飛ばされた。敵の多くは消滅し、その周囲には数体の武者と代官が残っているだけであった。
「いや、良かったじゃねえの、お代官様よ。」
そんな様子を目の当たりにした天秤棒・玄鉄(喧嘩魂・f13679)がその口を開いた。
「……何がだ?」
「何がって、町民に今の状態、そして晒す無様見られねえんだからよ。」
 そんな玄鉄の言葉に、代官はくくくと不敵な笑みをこぼす。すると、先ほどの影武者同様、その姿は跡形もなく霧散していった。
「なっ!?」
 どうやら、あの現場を眺めていた代官も影分身だったらしい。何処からともなく現れたもう一人の代官は、懲りる様子もなく、再び影分身を作り出した。
「……またどっちも影分身なんじゃねぇのか?」
「うーん、それはないと思うな。」
 これまでの様子を具に観察していたステラ・チェスロック(リトル・ディーラー・f12374)は、代官のわずかな変化も見逃していなかった。
「片方はアタシたちが何もしていないのに消耗しているよ。」
 影武者作成には体力ないし精神的にもかなりのエネルギーを使うのであろう。だが、武者達が集まり、先ほどよりも多くの侍が召喚され、先程までより代官を守る壁が厚くなっているのが、どの猟兵達にも見て取れた。しかし、この機を逃すわけにはいかない。そのためにも、取り巻きを倒し、代官への道筋を作り出さねばならない。玄鉄は敵陣めがけて駆けだしていた。手裏剣で牽制しながらも、近づいてきた武者や侍を天秤棒で容赦なく薙いで行く。派手に暴れまわりながらも、敵の攻撃に注意を払い、既の所で攻撃を回避していく。否応にも武者や侍達の攻撃が彼へと攻撃が集中する。その隙に、ステラが2人のが代官へと攻め込んでいく。
「これ以上、あんな腹立たしいことをするアンタを野放しにはできない!」
『それはこちらの台詞よ!』
 2人の代官が、声を荒げながら乱心状態となってステラへと迫る。すると彼女は、おもむろにトランプを宙へと放り投げた。【Shuffle time】により操られたカードたちが、代官達の周囲を繰り返しかすめていく。あの状態の代官は素早く動くものに執着するということに気づいた彼女は、トランプを囮として攪乱しながら、自らも死角へと踏み込み、トランプで切り付けていった。当然、その動きが目に入れば、ステラ自身にも刀が振り下ろされることは明白だ。だが、彼女にとってはそれも想定の範囲内。攻撃した直後には周囲のトランプを集め、攻撃を凌いでいた。
『小娘風情が、小癪な真似を……!』
「その小娘に追いつめられる気分はどうかしら?」
 2人の代官を相手に、引けを取らないステラの猛攻。一撃一撃の威力は大きくはないが、確実に代官の体力を消耗させていった。オブリビオンとは言えども、寄る年波には勝てないのだろうか。ふぅふぅ――と次第にその息を荒げていく。だが、代官は怯む様子を見せることはなく、自分が未だに有利であるかのような振る舞いを改めることはなかった。
『ははっ!いくら細かい傷を重ねたところで、致命傷などにはなり得んぞ?』
「そうね……アタシには一気に押し切れるような強い力はない。できることと言ったら、上手にカードをカットすることぐらいよね。」
 斬り落とされずに残ったトランプが、再び宙へふわりと舞う。そして、一斉に代官たちめがけて飛んでいくと、彼らの視界を遮り、死角を確実に増やしていく。
「でも、ここにいるのは――アタシだけじゃないから!」
 すると、その言葉に呼応するかのようにステラの後方より黒い巨躯の弾丸が雄叫びを上げながら飛び出した。迫り来る何かを感じとった代官は、それを寄せ付けまいと乱雑に刀を振り回した。だが、対象の定まらない陳腐な攻撃を、玄鉄は黒い天秤棒により容易くいなしていく。そして、黒い天秤棒を力任せに振るうと、それは大気をも割く強烈な衝撃波となって、代官達の肥えた腹部へと直撃し、後方へと吹き飛ばした。
「そりゃあ、退屈だろうよ。手前で労せず過程だけ呆けて見てりゃなあ。これでちったあ、退屈は紛れたかよ。」
「これ以上、あんなことさせるものですか!」
 先程召喚された影武者はこれまでと同様に霧散したが、もう一人の本物の代官は、腹部を抱えながらうめき声をあげ、うずくまっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

上月・衒之丞
まぁまぁ、御大名様でありんすな。
見せしめになりなんすは主でありんすな。
オブリビオンに道理は無用、疾く散りなんせ。

邪魔な武士らは先ほど同様、視線を殺し視界を断ち、全て解体していこう。
だが、代官からは身を隠さない。
武士らが華と散るのを目の当たりにしてもらおう。
「ひらり胡蝶が舞い踊らせば、あとは真紅の華が咲く。あらいやだ、見世物ではありんせんよ?」

残るは代官と偽代官だけ。
事ここに及び、真偽を問う必要はあるまい。
どちらも殺せば良い話だ。
糸を張り巡らせ動きを阻害し、張り終えたら背を向け、二人とも地面に縫い付ける。
「咲いたはななら散らねばならぬ。華を咲かせて刃鳴散らす。終いでありんす……無明弦月流、睦月」


結城・蓮
話に聞き及ぶようなわかりやすい悪代官だ
これなら遠慮など必要ないね、終幕を派手に始めようか!

さっきまでは隠れてばっかりだったけど、ボクは実は派手な方が好みなんだよね
だから、華やかに始めよう
《虚実の山札》で千枚を超えるトランプを錬成し、《炎熱の手札》と同時に一度にばらまいて敵を焼きながら切り刻もう
「さぁ、ショウタイムだ。お代は君たちの命で手を打とうじゃないか。答えは聞いてないけど!」

ところで
マジックの基本はディレクションだ
その効果は「派手な動きで意識を引いて、本当の仕掛けに気づかせない事」
そう。カードトリックに目を向けさせている間に《無明の絃》で拘束させてもらうよ
「仕込みは上々、ってね。今だよ!」



 蹲っていた代官がよろめきながら立ち上がると、懲りることなく影武者を召喚する。だが、その質が先程よりもはるかに劣化していることはだらが見ても明らかだった。そんな代官を庇うためか、残された武者たちがすべて代官の周りに集まろうとしていた。
「いよいよクライマックスって感じだね。さぁ、ショウタイムだ。お代は君たちの命で手を打とうじゃないか。答えは聞いてないけど!」
 結城・蓮(チキチータ・マジシャン・REN・f10083)の周りに数多のトランプが集い始める。虚実はその形を炎熱へと変え、数千の朱色に輝くトラップが彼女の周囲を華やかに舞い始めた。
「さっきまでは隠れてばっかりだったけど……ボクは実は派手な方が好みなんだよね。」
 その言葉を皮切りに、ばらまかれた手札たちが、武者達を容赦なく切り刻み、そして焼いていく。戦場に響く悲鳴と金切り音。そんな音の数々に紛れるようにして、金属の擦れる音が少しずつ戦場へと広がっていく。武者たちの死角から伸びる鋼線は上月・衒之丞(泡沫の遊女・f11255)の張り巡らしたもの。武者達がその鋼線に触れると、衒之丞は容赦なく糸を手繰り寄せる。武者達は仇敵を視認することもかなわず、その体を解体されていく。
「ひらり胡蝶が舞い踊らせば、あとは真紅の華が咲く。あらいやだ、見世物ではありんせんよ?」
 言葉とは裏腹に、衒之丞は武士達が華と散る様子と己の姿をを代官へと見せつけるように振舞った。消耗が激しいのだろうか、浅く速い息を繰り返す代官は、影武者を呼び出したものの、いまだに動く様子はない。そんな状況の中、一人、また一人と武者たちはその命を散らしていき、とうとう代官達を守るものはなくなってしまった。
「ところでさ。マジックの基本はディレクションだ。」
 突然、蓮が放った横文字に、代官がわずかに困惑の表情を見せる。 
「あぁ、君たちに横文字は難しかったかもしれないね。方向性――要は『派手な動きで意識を引いて、本当の仕掛けに気づかせない事』。今回の場合、ミスディレクションといってもいいかもね。」
「見せしめになりなんすは主でありんすな。」
 無明の絃と無明弦月流、睦月。無名の名を持つ絃と弦。二つの糸が張り巡らされた空間には、動く余地などどこにも残されてはいなかった。慌てて侍を召喚するも、その瞬間に糸に切り刻まれ霧散する。もはや彼らに打つ手は残されていない。
「仕込みは上々、ってね。今だよ!」
もはやこの状況において、どちらが本物であるかなどの是非を問う必要はない。どちらも断ち切ってしまえばそれでことは終わる。彼の男は自ら前へ出ることを良しとしなかった。保身がもたらしたのは哀れなほどにあっけない幕切れ。一歩でも踏み出せばこの未来は変わったのだろうか。あらゆる思考を巡らせながら、男はらしからぬ最後の雄叫びをあげる。
「咲いたはななら散らねばならぬ。華を咲かせて刃鳴散らす。終いでありんす……無明弦月流、睦月。せめて華やかに散りなんせ。」
 オブリビオンに道理など無用。衒之丞が代官へと背を向け、その小指をたたむ。寸刻、人2人分の余地があった空間は閉じられた。首を飛ばす側であったはずの男の首が宙を舞い、その体は物言わぬ肉塊となり散り果てた。やがて、町の隅にある荒れた処刑場には血と火薬、肉の焼ける匂いだけが残り、転がる骸はすべて露と消えていった。まるで最初から猟兵以外誰もいなかったかのように。

 騒動の収束を聞きつけた町人たちが町へと舞い戻ってきた。幸いにも、死者はなく町人たちの目には活気があふれていた。この町がかつての様相を取り戻すのには、そう時間はかからないだろう。猟兵達は感謝に頭を下げる家族を背に、村を後にした。謂れなき罪により、再びこの町が――あの家族が禍乱に呑まれてしまわぬようにと願って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月13日


挿絵イラスト