迷宮災厄戦⑬〜断頭台にきえるもの
●夕焼けの広場にて
カーンカーンと鐘が鳴る。
それは夕餉の時間を告げる音だ。
その場所は、石畳が丁寧に敷かれた街の一角だ。北側には教会のような建物がある――鐘の音はここから発せられているようだ。
その前に面した広場を中心に大通りが東西と南に計3本伸びていた。通り沿いにはレンガ造りの家が立ち並び、上空から見れば計画的な都市建設がなされた事が窺えるであろう。
あちらこちらに設置されている、断頭台から目を背ければ……の話であるが。
特に大きなものは広場に設置されていた。夕日を受けて、断頭台の刃は赤く光をかえしていた。
断頭台の周囲を徘徊するのは飢えたオウガたち。でっぷりと肥え太ったオウガたちは、獲物が来るのを今か今かと待ち望んでいた。
●グリモアベースにて
「迷宮災厄戦お疲れ様です、慌ただしい中来てくれてありがとう。早速だけど今回の戦場の話をするね」
猟兵達が集まってきた事を確認すると、グリモア猟兵アリステル・ブルーは感謝を述べて一礼した。
「今回の舞台は断頭台のある絶望の国だ。この国ではかつてオウガ・オリジンの『食事』とするため、アリスを直接断頭台の下に召喚していたようなんだ……酷いよね」
現在は戦争に集中するためアリス召喚機能自体は停止しているようだ。だが、この絶望の国に住うオウガ達は「食事のおこぼれ」に預かってきたようで、今も獲物を求め国中を徘徊している。
「その断頭台は国中のあちこちにある」
例えば中央の広場にあるとても目立つ断頭台。それ以外にも大通り沿いや、教会らしき建物のテラス、大きな家の庭や屋根の上といった具合にあちらこちらに設置されている。グリモア猟兵が述べたもの以外にもそこかしこに存在するようだ。
「それから今回の敵なんだけど、もしかしたら『ジャバオウガ』って敵を見た猟兵さんもいるかもしれないね」
ジャバオウガ――それは『アリスを喰う』という衝動に忠実なオウガらしいオウガである。人間大ないし少々小柄な個体が多く、一般的な獣とほぼ同程度の知能をもつ。
――本来ならば。
「だけど同じだと思わない方がいいよ。要するに……どれだけ食べたのやら、とぉっても太っていてね脂肪のおかげで攻撃も通りにくい上に、戦闘力もその分高いんだ。おまけに翼を持ってるからね、空中戦やビームを使った遠距離までできちゃう」
とはいえ猟兵たちにとって幸いなのは、まるまる太っているせいで機動力に難があることだろう。そのせっかくの翼も十分に活かす事はできまい。
「ああそうだ、数もいるからまともに相手するのは難しいと思っていいよ。1匹倒したところですぐ次がやってくる。……召喚機能は停止していると言ったよね? あいつら、今とっても飢えてるんだ。アリスじゃなくても直接食事にするか、それか捕まえて他の『食事』を誘き出す餌にしようと考えてるようだよ」
普段ならアリスを食うオウガも、今は贅沢を言っている場合ではないらしい。先に獲物に目をつけた1匹が独占するようだが、なんとか倒したとしても、すぐ別のオウガがやってくる。相手をしていてはキリがないと言えるだろう。
「だからね。あちこちにある断頭台を利用してほしい。断頭台で首を落とせば一撃必殺、ってね。敵は飢えているんだ、だから猟兵の存在に気づけば真っ直ぐに追いかけてくる。それを利用して欲しい。言い方はとても悪いんだけど、オウガに自分がいる事を気づかせて断頭台を利用した鬼ごっこをすればいいんだよ」
このグリモア猟兵が担当する場所の断頭台はかなり大型で通り抜ける事もできるだろう。普段は枷として使う板も設置されておらず、5メートルほど上にギロチンがあるのみ。断頭台は特に操作せずとも、その刃の下に獲物がいれば一定の時間の後、自動的に落ちる仕組みになっている。またロープを切れば猟兵の好きなタイミングで刃を落とす事もできるだろう。
「だからね、君たちには断頭台を利用してほしい。いいかい、断頭台で斬られるのは君たちじゃなくてオウガたちだ。――危険な場所に送り出して言う事ではないけど、僕は『全員生還』って報告書に書きたい。だからお願い、足を止めないで」
グリモア猟兵は猟兵たちに深く頭を下げてそう願った。そして顔を上げるとグリモアの力を使い転移ゲートを展開しはじめた。
「準備ができた人からどうぞ。出来る限り周囲に敵影がない場所を選んだけど、ゲートの向こうは戦場だ。君たちの無事と幸運を祈るよ」
いつき
こんばんは、いつきです。
暑さが続きますがみなさまお体にお気をつけてお過ごしくださいませ。
さて……予兆でブックドミネーターが言っていたように、何を守り誰と戦うか、とても悩む戦争ですね。
ひとまず出来る事から少しずつやっていきたいです。
今回は、ボス戦1章のみで構成される「戦争シナリオ」となります。
『戦力=完結数』のため、当シナリオは早期完結(8/10-11夜)を目指します。
そのため、OP公開後は断章の追加やプレイング送信期日などを設定しません。気が向かれましたらすぐにプレイングを送信していただいて構いません。執筆や採用状況についてはマスターページでお知らせ致します。
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●目的
オウガ『ジャバオウガ』の撃破。
●プレイングボーナス
オウガを断頭台に乗せる。
●概要
OPに記載されているように、オウガにはあまり攻撃が通りません。ですので転送先で見つけたオウガを、素敵なアイデアで断頭台まで誘い出して下さい。
舞台は『広場を中心とした街の一角』です。
また断頭台はOPに記載された場所以外にもあちこちにありますので、特に指定がなければ手近なものを利用したことにします。文字数削減にご利用ください。「◯◯にある断頭台」と指定いただいてもかまいません。
なおUCは使用しなければオウガも使用してきませんので戦闘なしも可能です。
●執筆ペース
10日以降の夜執筆を行い早期の完結を目指します。
成功、大成功の方優先に採用し完結を優先します。……余力があればがんばります。申し訳ないです!
以上です!
猟兵の皆様のご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『ジャバオウガ』
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POW : 喰らいつく顎
【噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : かきむしる爪
【爪】による素早い一撃を放つ。また、【翼を限界まで酷使する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 燃え光る眼光
【視線】を向けた対象に、【額のクリスタルから放たれるビーム】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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アラン・スミシー
成程、この作戦は私向きだね。
任せるといい、この戦いでは少しばかり銃の出番が少なくてね。
号砲を上げてからのスタートにしようか。
まずは音に反応した相手から逃げつつギロチンの位置を確認しよう。これが今回の戦いの肝だからね。彼らをなるべく引きつけてギロチンの前へ一直線に並ぶように誘導しよう、まるで人気のハンバーガーショップのようにね。
誘導したらその場で足止め、そう彼らの上に素敵なゲートが来る位置で。
応射して固まったら紐を撃ち抜いて光るアクセサリーを落とせば中々に壮観だろう。
何、一回では物足りないからね。繰り返していくよ。
さて食事の時間は終わりさ。鉛は甘いと聞くけれどどうだったかい?
「成程、この作戦は私向きだね」
夕暮れの街に降り立ったアラン・スミシー(パッセンジャー・f23395)はそう零して周囲を確認した。
石畳の敷かれた通りの向こうには、たしかに断頭台と徘徊するでっぷりと太ったオウガ――ジャバオウガの姿がある。
「任せるといい、この戦いでは少しばかり銃の出番が少なくてね。号砲を上げてからのスタートにしようか」
彼は黒い双眸を瞬かせると、手にした銃を空へ向けて発砲する。乾いた音が夕焼け空に響き渡ると、徘徊していたオウガたちの視線が慌ただしく彷徨い、やがてアランを捉える。飢えた獣たちは『食事』を前にその瞳をギラギラと輝かせる。
(反応は上々のようだね)
アランはその様子をみやると、素早くその身を翻した。アランの視線が探すのはギロチンの位置だ。自身とそこまでの距離を確認すると、オウガたちを引きつけるように駆け出す。
(これが今回の戦いの肝だからね)
時折速度を落としながら、捕まりそうで捕まらない絶妙な距離感を維持し、アランはオウガたちを誘導する。さながら人気のハンバーガーショップに並ぶ客たちのように、一直線となるように……。
だがその鬼ごっこもすぐにおしまいだ。
アランはギロチンのそばに身を滑り込ませ、ユーベルコード【足止め(インターセプター)】を使用した。
大型のギロチンはアランの全身を上手く隠し通し、彼は銃を構え――追い付いたオウガたちは『食事』を求めて鋭い顎を開く。その頭上に輝くのは、夕日を受けて赤く染まったギロチンだ。
アランは腕を真っ直ぐに伸ばし、ギロチンを固定しているロープに狙いを定め引き金を引いた。銃弾は狙ったとおりロープを打ち抜きオウガたちをめがけてギロチンが落ちていく。
刃が地面とぶつかり重い音を立てるのと、殺到していたオウガたちが消滅するのはほとんど同時だった。
「中々に壮観だねぇ」
さて、とアランは周囲を見回す。これで終わってしまうのは物足りなかった。
幸いにも今の発砲を聞きつけたオウガが集まってきているようだった。アランは先程のように、オウガたちを引きつけギロチンの元へと誘導していく。
「さて食事の時間は終わりさ。鉛は甘いと聞くけれどどうだったかい?」
再びロープを撃ち抜いて問うたけれども、それに答えられるものは既にその場にいなかった。
大成功
🔵🔵🔵
岩戸・御影
鬼ごっこ、シンプルなのに楽しいよね
僕は美味しくないと思うけど、食べられるのは御免だからしっかり逃げるよ
こちらに気付き向かってきた敵から対処
鬼さんこちら、と挑発を交えながら断頭台を探して走る
空飛んだ方が有効なら[拾った掃除機]に乗って逃げる
ふふ、捕まったら食べられちゃうのに楽しい
断頭台を見つけたらその中を通過
即座に振り向き掃除機の端を持って敵を吸引し動きを止める
これ業務用だから吸引力すごいんだよ
同時に[哭廻]を操りロープを切断
広場の断頭台が仕えそうなら数匹纏めて鬼ごっこ
僕が通過した直後に[結界術]で障壁を張るね
当たってつかえたところをロープ切断
鬼を処刑する鬼の図かな
あれ、僕ってそういえば鬼だっけ
「鬼ごっこ、シンプルなのに楽しいよね」
転送された先、夕焼けの街中で岩戸・御影(赫鬼面・f28521)は小さく呟いた。
この戦場での『ルール』は非常に明確だった。鬼ごっこのようにオウガ――ジャバオウガから逃げて、そして断頭台へ誘導する、たったこれだけだ。
事前情報の通りにオウガたちは街中を徘徊していて、すぐに御影の存在に気がついたようだ。血走った目が、御影を見つめている。
「僕は美味しくないと思うけど」
だが、美味しかろうとなかろうと、食べられるのは御免である。
銀の瞳が断頭台を探すように油断なく周囲を探り、目当てのものをみつけると彼は根付サイズのそれを手にした。今がその時とばかりに本来の姿を取ったそれは、アップライト型業務用掃除機だ。
御影は飛行可能な掃除機に乗って、上空へ素早く逃れた。当然オウガたちもその後を追おうとするのだが、悲しいかな、その小さな翼では丸々太ったその体はたいして持ち上がることができない。
その様子を目に、鬼さんこちらと挑発を交えながらも、彼は『鬼』からしっかり逃げる。断頭台の方へ導くように。
「ふふ、捕まったら食べられちゃうのに楽しい」
呟き、御影は迫った断頭台を高度を落とし通り抜け、即座に地面に降り立つと振り返る。掃除機の端をしっかり持ち追いかけてくるオウガたちに向け――その業務用の吸引力を存分に発揮しその足を止めた。同時に刀剣『哭廻』を自在に繰り、断頭台と刃を繋ぎ止めるロープを切断する。
夕日を受けて赤く照り返していた刃が落ち重たい音を立てるのと、刃を受けたオウガたちが消えるのは同時だった。
「これならもう少しいけそうだね」
掃除機に乗り、先程見つけた広場の断頭台目掛けて空を飛び始める。
道中待ち構えるジャバオウガたち数匹を挑発し注目を集めると、再び鬼ごっこをしながら、まっすぐに断頭台を目指した。今度は刃の下を通り抜け、直後に結界術で障壁を張る。
先頭にいたオウガは障壁にぶち当たり、それに反応できず後続がぶつかり、断頭台の真下で団子のように密集してしまう。御影は冷静に哭廻を操ると、ロープを鮮やかに切り落とした。
その光景はまるで鬼を処刑する鬼のようで。
「あれ、僕ってそういえば鬼だっけ」
夕日を受けて地面に伸びた彼の影には、片方が欠けた双角がくっきりと浮かび上がっていた。
大成功
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クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
……此処でどれだけのアリスが犠牲になったのか、正直考えたくもない
とにかくこんなふざけた国は、この場で終わらせてしまいましょう
【祟り呪いし邪眼の主】でバジリスクの能力を宿す
最初は適当な断頭台の陰に『目立たない』ように隠れて、付近にいる敵を石化の魔眼で動きを鈍らせていく
動きを鈍らせた所で鎖を敵に巻き付けて『体勢を崩す』と共に『ロープワーク』の要領でを拘束
敵が抵抗出来ないようにした上で、『怪力』任せに引き摺って『運搬』。手頃な断頭台に放り込んで倒していく
こんな事で今までの犠牲者が報われる訳ではないけれど、せめて安らかに眠って欲しいと思う
夕日に照らされた街中には、事前情報通りあちこちに断頭台が設置されていた。恐らくは、召喚されたアリスたちはわけが分からぬうちに処刑されていたのだろうか……。ジャバオウガは未練の隠せぬ様子で断頭台の周囲をうろついていた。
「……此処でどれだけのアリスが犠牲になったのか、正直考えたくもない」
クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)はその光景に吐き捨てるようにそう呟いた。
おこぼれに預かっていたという話が本当であるならば、このオウガたちは一体どれほどのアリスを犠牲にしてきたのであろうか。クロス自身も何度かジャバオウガの姿を目にしてるが、記憶している姿よりも二回りほど丸々としている。
(とにかくこんなふざけた国は、この場で終わらせてしまいましょう)
ユーベルコード【祟り呪いし邪眼の主】を用いて、クロスは自身の黒い瞳にバジリスクの魔眼の能力を宿す。これにより、彼はバジリスクの持つ石化と猛毒の血の特性を得るのだ。
クロスは近くにある断頭台の陰に目立たないようにその身を滑り込ませた。闇に紛れるように身を潜め、その付近にいるオウガをターゲットに選ぶと、宿した魔眼による石化の力で動きを鈍らせていく。
じわじわと石化が進み動きを鈍らせた所で、クロスは自身が装備する【冥装】罪茨の鎖をオウガの体に放った。ロープワークの要領で鎖を自在に操り敵にぐるぐると鎖を巻き付けて、引き倒すようにしてオウガの体勢を崩し拘束する。往生際悪く逃れようと暴れるその巨体には、抵抗する気も起きないように鎖で強く締め上げる。
グエと聞くに堪えない悲鳴が上がるのも気にせず、持ち前の怪力任せに引き摺って行き、断頭台の真下にオウガを放り込んだ。
状況をよく把握できていない様子のオウガに、自業自得だと言い捨てて断頭台の仕掛けを作動させる。この国に呼ばれたアリスもきっと似たような状況だったのだろう。
「こんな事で今までの犠牲者が報われる訳ではないけれど、せめて安らかに眠って欲しいと思う」
断頭台の刃が落ちると共に消滅していくオウガを見送り、クロスは心からそう祈った。
この召喚機能がこの先も復活しないことを願い、それを実現するために。
そして、せめてもの報いとばかりに、視線は次の獲物を探すのであった。
大成功
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佐藤・和鏡子
牽引のユーベルコードを使って牽引ロープを敵に引っ掛けて断頭台まで救急車で引きずって行きます。
抵抗するようでしたら、大人しくなるまで救急車で轢いたり、牽引ロープで引きずる際に振り回して壁や岩などの固いものに叩きつけます。
(運転で正確に狙いを付けて、吹き飛ばし・蹂躙・重量攻撃を乗せてさらに威力を高めます)
噛みつきは運転技術でかわしたり、救急車の車体で防ぎます。(武器受け)
救急車の馬力なら重いオウガも簡単に運べますし、せっかく買った救急車ですから、有効に使わないともったいないですから。
「…………」
佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)は考えた。
あそこにいる太ったオウガをどう運ぶのが効率的だろうかと。
小柄なこの体でもきっと運ぶことはできるだろうけれど、暴れられた場合が面倒である。万一逃して仲間でも呼ばれると更に困ったことになるだろう。相手にできないことはないだろうけれども。
それを避けつつ、一番効率が良いのもといえば――。
「ええそうですね、これを使いましょう」
和鏡子は救急車に乗り込んだ。
それは年代物でかなりのボロではあるが、まだまだ動く良い車である。
もちろん、和鏡子はこの救急車を運転するための免許証を所持している。
合わせてユーベルコード【牽引】を使用し、フック付き牽引ロープを利用して丸々太ったジャバオウガを一体捕らえたのだ。
オウガは当然抵抗し、ロープから逃れようとその巨体で暴れている。
「これは警告です、抵抗をやめてください」
優しさから――もちろんこれからその首を刎ねに行くのだが――警告をするも無視され、和鏡子は無言でアクセルを踏み込んだ。
その高い運転技術で正確に狙いを付け、救急車の重量を利用し轢いたり、牽引ロープで引き摺る際に強く振り回し、建物の壁へ強く叩きつける。
オウガもただされるがままではなく反撃として噛みつきにくるのだが、和鏡子の巧みなハンドル捌きの前には虚しく、攻撃はあっさりとかわされ、あるいは救急車の車体によって遮られ彼女まで届かせることができない。
「救急車の馬力なら重いオウガも簡単に運べますし、せっかく買った救急車ですから、有効に使わないともったいないですから」
そう口にしながら、彼女は断頭台のもとへ車を走らせるのである。
道中も轢いたり叩きつけたりと蹂躙を繰り返し、断頭台の元へ辿り着く頃にはオウガは随分と大人しくなっていた。
断頭台の下へオウガを放り込み、救急車から降りた和鏡子はそのそばへ立つ。仕掛けを操作し刃が落ち、オウガが消滅したのを確認すると、再び救急車へと乗り込んだ。
「やはりこの方法が一番ですね」
一匹ずつの相手となるだろうが、暴れられても問題なく対処できそうである。そう考えた彼女は車内から周囲を見回し、次なるオウガを探すのであった。
大成功
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ベルナデット・デメジエール
人間の恐怖という感情は我々の格好の食糧ですが、
この世界は流石に「濃すぎ」ますわね…
特にここは酷い。胸焼けがしそうですわ
そう言っている内に討伐対象を見つけましたが、
これはもはや食肉用の家畜と言っても良いのでは…?
ともかくアリステルさんの説明通りなら、
わたくしの豊満な体を見せつければすぐに食いついて来るでしょう
不本意ですが、とても美味しそうに映るでしょうから
そうしたら断頭台まで逃げるふりをして誘い出し、
奴らがわたくしに襲い掛かる瞬間、使い魔の蝙蝠達を放ち目くらましですわ
怯んだ一瞬の隙をついて断頭台に放り込み、首を刎ねて差し上げます
うーん、やはり肥らせすぎですわね
この血はわたくしの口には合いませんわ
「人間の恐怖という感情は我々の格好の食糧ですが、この世界は流石に『濃すぎ』ますわね……」
特にこの国は酷い。
あちらこちらに点在する断頭台を見やれば、そこには犠牲となったアリスたちが抱いたであろう恐怖や絶望の残滓が感じられ、ベルナデット・デメジエール(孤高なる夜の女王(自称)・f28172)は胸焼けがしそうだと思った。残滓であるはずなのに、それはとても深く濃くそこにあるのだから。
(そう言っている内に討伐対象を見つけましたが、これはもはや食肉用の家畜と言っても良いのでは……?)
食肉――もといジャバオウガと呼ばれるその種は、背中に生えた翼の形状からして、恐らく元はとてもスマートな姿だったのだろう。
今や丸々と肥え、そのせっかくの翼もあまり役に立ちそうにない有様であるが。
(ともかくアリステルさんの説明通りなら、わたくしの豊満な体を見せつければすぐに食いついて来るでしょう。不本意ですが、とても美味しそうに映るでしょうから)
周囲を見回し近くの断頭台までの移動経路を確認すると、飢えに苦しんでいるであろうオウガの前に、ベルナデットはその豊満な身を惜しげもなく晒してやる。
召喚機能が停止してもう何日目になるのだろうか。オウガはベルナデットの思惑通りに食いついたようだ。
それを確認した彼女は、まるでオウガに怯え逃げ惑うように断頭台目指して走りだした。
きっとオウガは思っているだろう、とてもいい『食事』を見つけられたと。このまま追い詰めて食ってしまえばいいだろうと。その実、ベルナデットの掌に踊らされ誘い出されていることにも気づかずに。
断頭台のそばに辿り着いたベルナデットは追い詰められたように装い、思惑通りに事が進んだと油断したオウガが彼女に襲い掛かろうとした瞬間――使い魔の蝙蝠たちを放つ。
ベルナデットが従える蝙蝠たちは、主たる彼女の意のままにオウガの目くらましとなる。
「今ですわ! 首を刎ねて差し上げます」
怯んだ一瞬の隙をついてオウガを断頭台の下に放り込み、その仕掛けを作動させる。ロープという支えを失った刃は、その重さで勢いをつけオウガの首を一撃で刎ね飛ばす。
「うーん、やはり肥らせすぎですわね、この血はわたくしの口には合いませんわ」
飛び散った血をぺろりと口にして、ベルナデットは実に嫌そうにそう零した。
* * *
こうして猟兵たちは断頭台を逆手に取り一撃でオウガを仕留めていくのであった。アリスの召喚機能と主を失った絶望の国では、オウガの数は減る一方である。
駆逐されるのも時間の問題であろう。
そうして訪れるのはひとときの平穏だ。その平穏を永遠とするべく、猟兵たちは前に歩んでいくのだろう。
この戦争を勝利へ導くために。あるいは、犠牲となったアリスたちの魂の無念を晴らすために。
大成功
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