迷宮災厄戦⑯〜はらぺこなあおむしに憧れて
●貪食の進軍
その世界は、大きな一つの林檎だった。
「りんごだぁ」
「りんりんごりんごりんりりりんりんご」
「たべたべよう、たべようようようよう」
林檎にうぞうぞと取り付いているのは、無数のスライムじみた半透明物質の群れ。
水色のゼリー状に見える体には、グロテスクな一対の大きな眼球がぎょろりと蠢く。そんな名状し難い物体が大小様々、くっつきあったり離れたり、一つに溶けては分離したりを繰り返しながら、集団で巨大林檎を食い進んでいく。まるでお伽噺のあおむしのように。
「おいし、おいしおいしおいし」
「でもおなかへった。へったへった」
「あまあまあまあまいみつつつつ、どこ?」
いくら食べても満たされぬ、出来損ないのあおむしもどき達は、食っても食いつくせぬ巨大林檎に無軌道なトンネルを掘り進めていく。
奥へ奥へと、どこまでも貪欲に。
●グリモアベース:ゲネ
「迷宮災厄戦、第十六経路が現れた! オウガ・オリジンに直接繋がる経路じゃないが、今は一種の準備段階だ、戦争の選択肢を増やすため、オウガ・オリジンの戦力を少しでも減らすため、参戦願う!」
ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)は猟兵達に訴えながら、ホロモニターに巨大な林檎を映し出した。
「アップル・バトル・フィールド。世界全体が巨大な林檎で構成されている不思議の国だ」
このとてつもなく巨大な林檎は、食べればトンネルを掘り進むことができる。
そうして内部に入り込んだ大量のオウガが、内部に洞窟を築き続けているのだ。
「諸君に対峙してもらいたい敵は、『たのしいおとぎばなし』というスライムもどきの集合体だ。コイツらはとにかく貪欲で、林檎を縦横無尽に食べまくって、種付近の蜜を目指して驀進している」
敵が食い進んだ洞窟を進めば、いずれ敵の元にたどり着くのは難しくはない。
食欲の権化である『たのしいおとぎばなし』の築いたトンネルは、人一人通り抜けるに十分な広さがある。さらに蜜のあるところを重点的に食い荒らすので、敵のいる深部には戦うのに適した広場も点在しているだろう。
だが敵は群体であり、個々の境界が曖昧な生物だ。一部が襲われれば他の集団が一斉に反応し、テレポートで飛んでくる。
普通に洞窟を進んで一部に襲撃をかけると、たやすく接近を見破られるうえに、他の集団が一斉に救援に現れて数の暴力を振るってくるというわけだ。そうなってしまうと、なかなかにきつい戦いになるだろう。
「そこでおススメなのが、この世界の「食べればトンネルを掘れる」という性質を利用するやり方だ」
敵の掘った洞窟をある程度進んだのち、良きところで自分なりのトンネルを食べ進むのだ。そして個々に食べ進んでいる個体や少数の集団に奇襲をかけて一気に倒し切る、ということを繰り返せば、敵の救援を許さずに全滅へと追い込めるという算段である。
「この経路を開くにはオウガの戦力を大幅に後退させる必要がある。特にこの『たのしいおとぎばなし』の食い荒らし方は危険だ。──てなわけであおむし狩りだ、早急な退治を頼むぞ!」
ゲネはモニターに転送術式を輝かせ、迷宮災厄戦のさなかにあるアリスラビリンスへの扉を開いた。
そらばる
迷宮災厄戦、アップル・バトル・フィールド。
巨大林檎を食い進むスライムもどきの大群を退治してください!
●プレイングボーナス
このシナリオでは、特別なプレイングボーナスが発生します。
=============================
プレイングボーナス……林檎を食べ進み、奇襲する。
=============================
上記に基づく行動をすると有利になります。
●基本ルール
不思議の国全体が巨大な林檎で構成されています。
この林檎は食べることでトンネルを掘り進めることができます。
敵群も林檎を食べ進めて、種の周囲にある蜜の辺りに点在しながら食い荒らしています。
敵の掘ったトンネルを進むことは可能ですが、そのまま敵を襲撃しようとすると接近を見破られ、救援に現れた大群との戦いになります。
林檎を食べ進み、新たなルートを開拓して奇襲することで、救援を呼ぶ暇を与えずに個体もしくは少数の集団を殲滅して回ることができるでしょう。
●集団戦『たのしいおとぎばなし』
謎の生物。はらぺこなあおむしになりたかったらしい。今の姿はお気に入り。食べる音は結構うるさい。
自身の味方の元に瞬時にテレポートする能力があり、簡単に一ヶ所に集結してしまいます。
敵対するとユーベルコードを使うほか、耳から入り込んできたり、そのまま脳に黒曜石の針を埋め込んできたりするかもしれません。
執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にどうぞ。
それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
第1章 集団戦
『たのしいおとぎばなし』
|
POW : 残飯
レベル×1体の、【眼球】に1と刻印された戦闘用【人体模型】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD : たすたすけたすけたすけにきたよ
【王子様と白馬の成れの果て】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。
WIZ : おいしかったもの
【プリンセス】の霊を召喚する。これは【恐怖を呼び覚ますけたたましい悲鳴】や【【溶ける体を見せつける事】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
ワーブ・シートン
大きなりんごを食いながら進む…
なんていい世界なんですかねぇ。
蜜があるところってのも、気になるですよぅ(甘いもの好き)
とにかくぅ、食いながら進むですよぅ(あと、前足でも掘っていく)
青虫ぃ、どこにいるんですかねぇ。
あ、みぃつけたですよぅ。
(おっと、逃さないですよぅ!)
ここで、即、クマの一撃を右前足でぶちかます。
おいらの一撃はぁ、生き物を狩る一撃ですからねぇ。
●猛進クマさん
「大きなりんごを食いながら進む……なんていい世界なんですかねぇ。蜜があるところってのも、気になるですよぅ」
大きな体躯のグリズリーことワーブ・シートン(森の主・f18597)はウキウキだった。クマは雑食、林檎も美味しく頂ける。なによりワーブは甘いもの好きでもある。
「とにかくぅ、食いながら進むですよぅ」
ワーブはだしぬけに前肢を振るって林檎の壁を大きく削り取った。
新鮮な断面から漂う甘くて爽やかな香り。ワーブはとろけそうに破顔すると、大きな口で林檎に食いついた。
「いただきますよぅ」
口内で林檎の甘みを存分に堪能しつつ、大きな手で泳ぐように実を掻き出しながら、やみくもに、しかし頼もしい突進力と食欲で林檎の内部を突き進んでいく。
「青虫ぃ、どこにいるんですかねぇ。……あ、このへん甘い」
次第に強まる香りと増していく甘みに引き寄せられて、ワーブは種子の付近にまでたどり着いた。
……しゃくしゃく、しゃくしゃく。うまままうまうまい。
猛然とした咀嚼音と耳障りな声が、分厚い壁の向こうから聞こえる。
「あ、みぃつけたですよぅ」
ワーブは進路を変更し、しゃくしゃく音に合わせて道を食べ開いていった。音は徐々に近くなり、声も明瞭になってくる。
林檎の壁が薄くなり、向こう側のシルエットがぼんやりと見え始めた時。
「たべた、たべたたべた」
「つぎのみつ、つぎのみつ」
スライム達が身を翻し、新たな掘削を開始した気配。
すなわち、こちらに背を向けた、ということ……
(「おっと、逃さないですよぅ!」)
ワーブは即座に、気合いを籠めて右前肢を振りぬいた。
「──ヴォアァアアアアッ!!」
鋭い獣の爪が最後に残った薄い壁をあっけなく砕き割り、その勢いのままに『たのしいおとぎばなし』の塊を一気に貫き潰した。
ミギャッ、ギャッギャッ。短い悲鳴が連鎖して、粘つくスライムはさらさらとしたただの水へと変じ、最後に残った目玉も干上がるように消えていった。
「おいらの一撃はぁ、生き物を狩る一撃ですからねぇ」
ご満悦で戦果を見下ろすと、ワーブはさらなる敵と蜜を求めて奥への道を食い開いていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
ホント不思議の国っぽいな
林檎は好きだし
オウガを海へ還してやるぜ
行動
当初は敵の掘ったトンネルを行く
食べる音が聞こえてきたら別ルートへ
林檎は健康にいいって言うし
楽しみながら喰い進むぜ
時々耳を澄ませ
敵の咀嚼音を確認
途中で炎で炙って焼き林檎も楽しむ
柔らかくてサクサク進めるかも
戦闘
咀嚼音が近くなったらそろそろだな
小さく穴を空け覗き
配置や数を確認
一気に林檎を燃やして
飛び出しざま焔摩天を薙ぎ払う
炎で溶解焼却
人体模型も炎渦で滅する
もし耳から入りこまれても
俺の裡の獄炎で灰に変えてやるぜ
オウガ
喰いすぎは
あおむしみたいに腹を壊すぜ?
紅蓮に抱かれて眠れ
事後
犠牲になったと思われるアリスと
オウガへ鎮魂曲
安らかに
ヤニ・デミトリ
りんごでかっ もう全容がわからん
不思議の国だけあって、不思議なものがいくらでも出てくるっスねえ…
敵の開けた穴はここっスか
気配を近くに感じた所でルート分岐と行きましょう
UCで捕食形態にした尾…魚骨で食べ進むっス
そのうち音や、尾が敵の気配を嗅ぎ取る筈
あっ、あれスかね。めっちゃ食ってる…
何者かへと望んで食らう不定の塊、その姿に1ミリ親近感を覚えつつも
形態を保ったままの尾で壁ごと一息に【捕食】っス
おっと、複数敵がいたり模型を召喚してくるなら
粘る泥を張り巡らせ【捕縛】、足止めするっスよ
か弱い猟兵一匹に多勢に無勢は遠慮願いたいっスからね
泥刃でまとめて【なぎ払い】ながら、尾で食い荒らしていくっス
ニオ・リュードベリ
気持ち悪いオウガだね……
あんなのに集団で囲まれるなんて絶対嫌だ
気をつけていかないとね
最初は開いてるトンネルへ
ある程度進んだら聞き耳を立てつつ別のルートを開拓しよう
林檎を削るのはアリスランスでも大丈夫かな
上手く削って食べていきたい
……林檎は普通に美味しいんだね
奇妙な物音がしたらそちらの方へ警戒しつつ近づくよ
【視力】で先も見通して
敵の数が少ないならUCを発動しつつ奇襲しよう
プリンセスの霊を呼び出されて悲鳴をあげられたら危ないもんね
敵を倒したらすぐにその場から離脱するよ
これを繰り返してひたすら敵を倒していくね
林檎は美味しいからなかなか飽きないのが幸いかな
……オウガと一緒じゃなきゃもっと良かったなぁ
●それぞれの戦い
「りんごでかっ。もう全容がわからん」
世界そのものが巨大な林檎というスケール感に、ヤニ・デミトリ(笑う泥・f13124)は呆れとも感心ともつかない声を上げた。
「不思議の国だけあって、不思議なものがいくらでも出てくるっスねえ……」
「ホント不思議の国っぽいな。ま、林檎は好きだし、オウガを海へ還してやるぜ」
同意しつつ、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)はやる気を見せた。
「お、敵の開けた穴はここっスか」
辺りを見回していたヤニが、林檎の横っ腹に開けられたトンネルを見つけて他の面々に示してみせた。
貪欲な敵が食い荒らした洞窟は、人間一人が不自由なく通り抜けられる見事な筒型になっていた。その巨大さを除けば、まさに青虫の食べ跡そのもの。
猟兵達は揃って洞窟をしばし進んだ。三人とも耳を澄ませて気配に神経を研ぎ澄ませ……最初にウタが音に気づき、ヤニが一拍遅れて気配を察知し、一同は足を止めた。
響いてくるのは大量の生物の咀嚼音、ねちねちみちゃみちゃとした流体の蠢く音、人ならざるものどもの甲高く耳障りに重なり合う囀り……
名状し難い異音に、グリモアベースで見せられた敵の画像を思い返して、ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)は顔を曇らせる。
「気持ち悪いオウガだね……。あんなのに集団で囲まれるなんて絶対嫌だ。気をつけていかないとね」
猟兵達は頷き合い、敵に気配を悟られる前に散開して新たなルートの開拓に乗り出した。
「削るのはアリスランスでも大丈夫かな」
適度な壁を見つけて、ニオは軽く穂先を突き刺してみた。食べ進められるというだけあって、果肉はほどよく柔らかい。これなら労せず進めそうだ。
一度槍を引き抜いて深呼吸。気合いを入れて連撃を壁に放つと、スライス状やペースト状の林檎が増産され始めた。
ぱくりと一口摘まんでみると、爽やかな香りと甘さが口の中に広がった。
「……林檎は普通に美味しいんだね」
敵は名状し難い生物だが、味の好みは全うらしい。
林檎を槍で掻き出し、適度に食べて消費し、順調に奥へ奥へと掘り進むニオ。
ぺちゃ、みちゃ。最初に耳についたのは特徴的な水音。
次に「ここほろー」「たべるるるるー」と甲高い鳴き声と、しゃくしゃくうるさい掘削音兼咀嚼音だ。
ニオは警戒を強め、より慎重に掘削を重ねた。壁が薄くなってくると、うっすらと敵のシルエットが浮かび上がる。
敵は集合体が二塊程度。一気に殲滅できる規模だ。
(「プリンセスの霊を呼び出されて悲鳴をあげられたら危ないもんね」)
ニオが胸に手を当てると、その全身を眩い輝きが包み込み始めた……
「むにゃ?」
「なになになに──ミギャァ!?」
壁の向こう側が発光していることに気づいた『たのしいおとぎばなし』達は、次の瞬間爆発的な衝撃に爆ぜ砕けた林檎の欠片を浴びて悲鳴を上げた。
動転しているその隙に飛び込んできたのは、無敵の鎧を身に纏ったニオ。アリスランスから繰り出される鋭い連撃が、あおむしもどき達を一気に突き潰していく。
槍の穂先で粘性生物が水と蒸気になって消えていく様に軽く胸を撫でおろし、ニオはすぐに踵を返した。先ほどの音を聞きつけて大群が集まってきてはたまらない。
それに、倒すべき敵はこの程度の数ではないはずだ。
「林檎は美味しいからなかなか飽きないのが幸いかな……オウガと一緒じゃなきゃもっと良かったなぁ」
ぼやきつつも、ニオは新たな標的へと向かった。
一方、ウタもまた別のルートを取り、林檎の味を楽しみながら奥へと突き進んでいた。
「林檎は健康にいいって言うしな」
得意の炎で林檎を炙れば焼き林檎も楽しめる。壁も柔らかく進みやすくなって一石二鳥というものだ。
もちろん警戒も忘れない。耳を澄ませば、遠くにあおむしもどき達の咀嚼音が聞こえる。
音源を求めて、奥へ奥へと進んでいくウタ。炙り林檎掘削法のおかげで、かなり奥まで時間をかけずにたどり着いた。咀嚼音も間近だ。
ウタは敵が食い開いた空洞の天井付近に小さな穴を開け、内部を窺った。数はそれなり、配置は悪くない。
(「──行くぜ!」)
気合いと共にあふれ出す獄炎。天井は瞬時にして消し炭と化し、ウタはド派手に敵陣中央に降り立った。
「喰いすぎはあおむしみたいに腹を壊すぜ?」
あおむしもどき達がぎょっとして身構える隙も与えず、焔摩天が三百六十度を一気に薙ぎ払った。
「紅蓮に抱かれて眠れ」
洞内の気温が一挙に跳ね上がりし、あおむしもどきの粘性の肉体が溶解焼却されていく。反射的に召喚されかけた人体模型も炎渦に呑まれて瞬く間に滅した。
「……ミ、ミギャーーーーーっ!!」
たまたま炎禍を逃れたらしい一個体が弾丸の如く跳ね飛び、ウタの耳から体内に侵入した。
が、ブレイズキャリバーの体内には獄炎が充ちている。侵入した個体はウタの裡に溢れる炎にあっけなく蒸発し、無害な水分となって耳から排出されていった。
「コイツの犠牲になったアリスもいるんだろうな……安らかに」
焼ける林檎の香ばしい香りに包まれながら、ウタは静かにアリスとオウガへの鎮魂曲をつま弾いた。
最後の一人、ヤニもまた、新たな道へのアプローチを試みていた。
「この辺でいいっすかね……よっと」
ユーベルコードを開放して、スクラップの尾『魚骨』を捕食モードへと変化。尾の先端が、くわ、とあぎとを開くが如く二股に裂け、猛然とした勢いで林檎の壁を食い荒らしてトンネルを食べ開いていく。
しばし進んだのち、器用に伸ばして先行させた尾が何かの気配を察知した。仲間のものではない咀嚼音や、独特な異音も聞こえる。そちらに向けて慎重に掘り進めると……
「あっ、あれスかね。めっちゃ食ってる……」
ヤニが掘り当てたのは、敵が食い広げた大きな空洞の横っ腹だった。シルエットも見えない厚さの壁越しにも、大量のスライム達が蠢いている気配がはっきりとわかる。都合の良いことに、こちらへと食い進んできているようだ。
何者かへと望んで食らう不定の塊。その姿に一ミリほどの親近感を覚えつつ。
「いただきます、っス」
魚骨がだしぬけに壁に突撃した。林檎の壁ごと一息に敵群を捕食し、みちゃみちゃとした食感を丸呑みにしていく。
「ミギャッ!? てきてきてきしゅ──」
「おっと、か弱い猟兵一匹に多勢に無勢は遠慮願いたいっスよ」
遭遇したのは中規模の群れだった。気配からその規模を予測していたヤニは、食い損じた他の個体が動き出すより速く、粘る泥を一気に放出して張り巡らせた。
ギャッ、ギャギャギャッ! 模型を召喚しようとしていた個体や仲間を呼び寄せようとした個体が諸共、粘性の泥に囚われて一瞬全ての動作を停止した。
その瞬間を一閃する泥刃。スライムは真っ二つにされたそばから魚骨に飲み込まれ、声もなく、粘液一滴残さず食い荒らされていく。
敵は瞬く間に平らげられ、そこに残ったのは綺麗な林檎の洞窟のみ。
「はい、ごちそうさん、っス」
ころりと足元に転がった最後の目玉を魚骨に食わせて、ヤニは律儀に手を合わせた。
●あおむしもどきははらぺこのまま
ミギャー、ミミミミギャー、ギャッギャギャー……ギャッ。
巨大林檎の深部で、散発的に上がる奇妙な悲鳴。
異常な食欲で林檎を食い荒らしていた『たのしいおとぎばなし』達は、あちこちの袋小路で猟兵の奇襲を受けて次々に消滅していった。
「おな、か……おなかかなかなかなかかかカカカカカへっ──」
脳の裏側をひっかくような鳴き声を上げながら、最後の個体が水と蒸気へと変じた。
これをもって、林檎の不思議の国を牛耳る勢力の一つの排除が完了した。
しかし迷宮災厄戦はまだ半ば。猟兵達はさらなる戦場を求めて、一度帰投することだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵