迷宮災厄戦⑬〜断頭台の雲の国
● 赤と白の雲の国
そこは、無数の雲の国だった。
住人たちはかつてふかふかな雲に乗り、雲でできた家に住み、雲の上で生活をしていた。
だがいつの頃からか。オウガによって占領され、オウガ・オリジンに食事を饗するための断頭台の国と化していた。
一つの雲に一つの断頭台。召喚されたアリスはすぐに首を刎ねられて、そのまま厨房までふわふわ飛んでいく。
もちろん雲の上だから、勢い余って飛んでいくこともある。
そんなおこぼれや、断頭台の「おそうじ」の為のオウガもまたそこにいた。
赤い雲は使用済み。白い雲はお掃除済み。
その世界の雲は今、全ての雲が白かった。
「Niii……」
「I’m Hungry……」
雲の間をふわふわと飛ぶはらぺこねこばるーんは、断頭台を覗き込むとため息をつく。今まではアリスがどんどんやってきては、はらぺこねこばるーんもおこぼれを頂戴できていた。
だが、今は戦争に注力するためにアリスの召喚は止まったまま。
はらぺこねこばるーんも、はらぺこのまま。
雲間を漂うはらぺこねこばるーんは、アリスの召喚を今か今かと待っていた。
● グリモアベースにて
「仕事だよアンタ達」
集まった猟兵を見渡したパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は、アリスラビリンスの一角を指差すと冷静に告げた。
「アリスを直接断頭台の上に召喚する、胸糞悪い国がある。この国に巣食うオウガどもを蹴散らしておくれ」
ここは「断頭台の雲の国」。空中を漂う雲の上に設えられた断頭台の国だった。
この世界に地上は無く、普通ならば大きな不利に晒されることになる。だが。
「人が一人か二人乗れる大きさの雲が、この世界の隅に隠されていてね。乗り手の意思に従って動くよ。おそらく前の住人たちが残したものだろう。ありがたく使わせて貰いな」
もちろん、ユーベルコードや種族技能で空を飛ぶことも可能だ。
現れるのははらぺこねこばるーん。黒猫みたいな風船だが、「おこぼれの」アリス達を食べてでっぷりと太っている。戦闘力も高い。普通に戦えば倒すのに苦労するが、断頭台におびき寄せて首を落とせば一撃で殺すことができる。
「アンタ達が乗る雲があったガレージに残された記録によると、好物は甘いもので頭からかじるのが好きなんだそうだ。アンタたちの働きに期待しているよ」
パラスは頷くと、グリモアを発動させた。
三ノ木咲紀
オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
今回は戦争シナリオとなります。
1章で完結して戦況に影響を与えます。
今回の戦場は、空中戦です。
基本的に、猟兵たちは猟兵の意思を感じ取って動く雲に乗って戦うことになります。
この戦場には、以下のプレイングボーナスがあります。
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プレイングボーナス……オウガを断頭台に乗せる。
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オープニング公開直後から受付を開始します。
ほぼリアルタイム執筆で、できる限りすぐにお返しさせていただくため、予告なく受付終了することがあります。
ご了承くださいませ。
それでは。良き空中戦を。
第1章 集団戦
『はらぺこねこばるーん』
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POW : I’m Hungry
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : I’m Angry
【口から刺し貫く棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : I’m Lonely
【犠牲になったアリス】の霊を召喚する。これは【武器】や【呪い】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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月夜・玲
うーんまさか雲に乗って空を飛ぶとは…
メルヘンとしか言えないけど、原理気になるー
解析したら割と儲け話に繋がりそうじゃない?
そんな場合じゃない?
まあそうだよねえ
●行動
うーん、甘い物…頭からかじるのが好き…
アレかな、たい焼き
とりあえずたい焼きでおびき寄せてみようか
先ずは《RE》Incarnationを抜刀
【神器複製】を起動して複製剣を精製
複製剣の半分にたい焼き突き刺して、『念動力』で飛ばそう
私は断頭台の上空辺りで残りの剣と待機
『念動力』で飛ばしたたい焼き剣でばるーんを誘い出してみようかな
頭の方を目の前に突き出してみたりして挑発して食べられないよう断頭台まで誘き出そう
そして誘き出したらズドーンだね!
● 謎な原理は謎のまま
どこまでも続く青い空。のんびり動く白い雲。
のどかでのんびりとした景色に浮かぶ雲は、風もないのに好きな方へと飛んでいく。
そんな雲の一つに乗った月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、自分を乗せたふわもこの雲を軽く撫でた。
音もなく滑るように飛ぶ雲は、試しにと動かす玲の意思に従ってどんな風にも動いてくれる。これがハイパーなメカだというのならば話も分かるが、見た目は雲だし手触りは真綿そのもの。
「うーんまさか雲に乗って空を飛ぶとは……」
見た目も手触りもメルヘンとしか言えないが、原理が気になって仕方ない。
動力は何なのか。何で意思を読み取っているのか。そもそも何でできているのか。疑問が次々湧いてくるのはUDCメカニックの悲しい性か。それに、この空飛ぶ雲の原理が解析できたなら。
「割と儲け話に繋がりそうじゃない?」
確かに、思考を読んで無音で空飛ぶ白い雲など、どの世界でも引っ張りだこだろう。特許でも取ろうものなら、もう一生研究費に悩まなくて済むというものだ。
色んな使いみちを想像していた玲は、ふと我に返ると苦笑いをこぼした。
「そんな場合じゃない? まあそうだよねえ」
一つ肩を竦めた玲は、黒い染みのようなバルーン飛び交う空へと飛び立った。
● 空中追いかけっこ
戦場へ到着した玲は、雲の陰に隠れながら考えを巡らせる。ふわふわ空飛ぶはらぺこねこばるーんも、危険な断頭台は避けて飛ぶだろう。何とかおびき寄せなければ。
「うーん、甘い物……頭からかじるのが好き……」
腕を組んだ玲は、一つのスイーツに行き着いた。UDCアースではおなじみの、魚の形をした餡やクリームが挟まった冬のお菓子。
「アレかな、たい焼き」
たい焼きならば、頭から齧れるしとっても甘い。条件にピッタリだ。作戦を決めた玲は、《RE》Incarnationを鞘走った。
顕になる刀身を空に投げ、落下と同時に詠唱開始。
「さあ、私の研究成果のお披露目だよ!」
声と同時に複製された82本の剣が、玲の周囲に漂う。切っ先を下にした剣は危険な輝きを放ちながら、敵へ放たれる時を待っている。
冴え冴えとした刀身に、魚が刺さった。いい匂いのするたい焼きは香ばく焼けていて、見た目でも美味しそうと思わせる。
41本の剣にたい焼きを刺した玲は、断頭台の上空で普通の雲のふりをしながら待機しながらはらぺこねこばるーんの登場を待つ。
「Nii……」
いい香りのたい焼きに釣られたのか。はらぺこねこばるーんが現れると鋭い歯の生えた大きな口を開く。
「I’m Hungry!」
叫びながら口を閉じたはらぺこねこばるーんはしかし、噛んだ空間にたい焼きを睨みつけた。再び口を大きく開けて食べようとするが、その度にヒラリヒラリと躱されてしまう。
食べたくても食べられないもどかしさに苛立ったはらぺこねこばるーんは、大きな口を空に向けて180度開くと回転しながら鋭い棘を放った。
「I’m Angry! I’m Angry!」
癇癪を起こしたような攻撃に、玲は咄嗟に防御姿勢を取る。こちらに気付かれた様子は無いが、突き刺さる棘の痛みに眉をひそめて堪える。
玲の存在に気付いたのか。空を見上げたはらぺこねこばるーんは、凶悪な口を開け閉めしながら玲を追いかけてくる。
「I’m Angry! I’m Hungry! Eat you!」
「鬼さんこちら!」
咄嗟に回避した玲を、はらぺこねこばるーんが追跡する。怒りと空腹に我を忘れたはらぺこねこばるーんの目の前にたい焼きを吊るしてやると、そちらの方に意識を向ける。
断頭台の直前で、たい焼きを放り投げる。ギリギリのところで垂直回避した玲は、たい焼きを追って断頭台へと突き進むはらぺこねこばるーんを見下ろした。
「I’m Angry! I’m Hungry! I'm……」
「はいズドーン!」
たい焼きを追ったはらぺこねこばるーんの身体が、真っ二つに割れる。真っ黒な断面を空気に晒したはらぺこねこばるーんが、遥か下方へと落ちていく。
それを見送った玲は、次のばるーんを探して空へと飛び出した。
大成功
🔵🔵🔵
ライカ・ネーベルラーベ
いいよ、相手になってあげる
空はわたしの戦場だ!
【舞え、勝利を誓うは鋼と雷の翼竜】!
霊体を降ろしたバイクに騎乗し、グロ風船共に空中戦をしかけるよ
縦横無尽のヒットアンドアウェイで攻撃と挑発を仕掛けてこう
ふわふわ漂う風船如きが、わたしたちの機動力について来れるとは思わないで欲しいな!
ギロチンの近くまで追いかけてきたら
チェーンガンブレードに雷を纏わせ(【マヒ攻撃】)
一時的に動きを封じた上で【左腕射出機構】で捕獲
そしてそのまま機械の腕力でギロチン台に投げ込むよ
「あはははは!空中キャッチボールだ!あはははははは!」
「じゃあね、クソ猫共。真っ二つにしてあげる」(ギロチン作動)
● 竜騎士と黒猫のダンス
迫りくるはらぺこねこばるーんの姿を前にしたライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)は、乗っていた雲を蹴り空中へと踊り出た。
「いいよ、相手になってあげる。空はわたしの戦場だ! 【舞え、勝利を誓うは鋼と雷の翼竜(スピリット・オブ・フルメタルドラグーン)】!」
重力に惹かれて落下するライカを受け止めるように、ミリタリースタイルの二輪車が現れる。飛竜の翼を得た二輪車に騎乗したライカは、凶悪な口を開いて丸呑みにしようと迫るはらぺこねこばるーんの口の中にチェーンガンブレードの銃口を向けた。
直後に響く無数の銃声。口の中に鉛を飲み込んだはらぺこねこばるーんが怯んだ隙に上昇したライカは、銃弾を吐き出し憎々しげな目で睨みつけてくるはらぺこねこばるーんに向けて鋸剣を構えチャージを仕掛けた。
「Yucky! Hate it! Eat you!」
「ならこれはどう?」
ギザギザの歯をギロチンのように噛み合せながら迫るはらぺこねこばるーんを鋸剣で斬りつける。カウンターの要領でライカに噛み付いたはらぺこねこばるーんは、至近距離で放たれる四対の鋸剣の片割れにたまらす腕を吐き出す。
「I’m Hungry! I’m Angry! Eat you!」
「遅い!」
食らいつかれて動きの鈍くなった生きた義肢のハンデを感じさせない軽やかさで、凶悪な歯を回避。同時に繰り出す弾丸を喰らい身体を大きくのけぞらせたはらぺこねこばるーんは、焦点の合わない目でライカを見つめた。
「Nii……」
「ふわふわ漂う風船如きが、わたしたちの機動力について来れるとは思わないで欲しいな!」
「I’m Lonely!」
ライカと鋼と雷の翼竜の連携に孤独を思ったのか。はらぺこねこばるーんは大きく泣き叫ぶと、犠牲となったアリスの霊を召喚した。
現れたアリスの霊に首はない。声を発することもなく、何かを見ることもなくオウガ・オリジンに饗されてしまったアリス達は、ライカに救いを求めるように腕を伸ばす。犠牲になったアリスの霊達の攻撃を回避したライカは、逃げ出すようにその場を飛び去った。
● 追いかけっこの行く末は
空を駆けるライカ達を、霊が追いすがる。
物も言わずに手にした武器を振り上げ、振り下ろすがライカ達には届かない。霊たちの後ろからは、はらぺこねこばるーんが凶悪な歯を打ち鳴らしながら猛然と追いすがった。
「I’m Hungry! I’m Angry! Eat you!」
耳障りな声を上げるはらぺこねこばるーんの声を背中で聞きながら、逃げに徹する。まるでアリスの霊は攻撃できない、というように逃げるライカ達の姿に、狩猟本能を刺激されたのか、はらぺこねこばるーんは無慈悲に追いすがった。
逃げるライカは、目の前に迫る断頭台に目を見開いた。はらぺこねこばるーんはライカ達を断頭台で始末しようと追いかけていたのだ。
ギラリと光る鋭い刃には、血が一滴もついていない。まるで綺麗に舐め取られたかのようなギロチンは日の光を浴びて輝き、犠牲者の到着を今か今かと待ち受けている。
ギロチンの刃が迫る。勝利を確信したかのようなはらぺこねこばるーんの声が、高らかに響いた。
「I’m Hungry! I’m Angry! Eat you!」
「追いかけっこはもうおしまい!」
追い詰められたかに見えたライカは、翼竜の翼を軸に急反転するとチェーンガンブレードをはらぺこねこばるーんに向けた。
断頭台を恐れたかのように立ち止まったアリスの霊が、はらぺこねこばるーんの視界を塞ぐ。できた一瞬の隙を突きチェーンガンブレードに雷をまとわせたライカは、翼を軸に振り返ることで生まれた回転の力を使いはらぺこねこばるーんに叩きつけた。
「Ni……gyaooooou!」
「鬼さん捕まえた!」
放物線を描きながらはらぺこねこばるーんの背後に回り込んだライカは、麻痺して反転できなくなったはらぺこねこばるーんに左腕射出機構を叩き込む。
はらぺこねこばるーんを受け止めようと立つアリスの霊の姿に、ライカは笑い声を上げた。
「あはははは! 空中キャッチボールだ! あはははははは!」
ライカの声を受けたはらぺこねこばるーんは、射出機構の圧力とアリス達の霊の誘導に導かれるように断頭台へ飛ぶ。
「Ginyaaaooooou!」
「じゃあね、クソ猫共。真っ二つにしてあげる」
冷徹に見下ろすライカの視線の下で、はらぺこねこばるーんは真っ二つになるとゆっくりと落ちていった。
大成功
🔵🔵🔵
雛月・朔
【SPD】
武器:ヤドリガミの念動力、提灯
乗り手の意志に従い動く雲、ですか。ちょっと乗ってみたいですけど私はいつも通り自前の念動力で宙を飛んで移動することにします。
さて、まずはオウガを断頭台の下におびき寄せなくては。周囲を警戒しながらこっそり断頭台に近づき、火を灯した『ヤドリガミの提灯』を配置してオウガを【おびき寄せ】て…あとは甘い物が好き…ねぇ…。
うーん…そうだ、あのユーベルコードで餌を…。
と、いうわけでUCで1mくらいの水まんじゅうに変身して断頭台にオウガをおびき寄せる餌に自らなります。
オウガが来たらタイミングを見計らって【念動力】で身体を動かして回避し、断頭台の刃を落とします。
● 作戦は断頭台の上で
ふわもこの雲に乗って戦場へと近づいた雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)は、その乗り心地と柔らかさを確かめると立ち上がった。
乗り手の意思に従う雲だが、全くタイムラグ無く動かすには相応の練習をしてコツを掴む必要がある。戦闘において、このタイムラグは命取りになりかねない。
「これはこれで楽しいですが、私はいつも通り自前の念動力で宙を飛んで移動することにしましょう」
一つ頷いた朔は、雲を蹴ると空へと飛び立った。幸いこの周囲にははらぺこねこばるーんはいないようだが、それはそれで倒すことができない。周囲を警戒しながら断頭台の支柱の上に降り立った朔は、断頭台の高さや位置関係をじっくりと見極める。
「ここが一番いいですね。百年経た桐箪笥は……」
ベストな位置を決めた朔は、ユーベルコードの詠唱を開始する。
同時に多くの長提灯を断頭台の周囲に浮かせると、朔は静かにその場で好機を待った。
● 人ならざる者を導くは、長提灯と水まんじゅう
断頭台の周囲に、提灯が灯った。
円筒形の古風なデザインの長提灯がいくつも浮かび上がり、中に灯された火の光で断頭台をぼんやりと映し出している。
念動力で浮かび上がった長提灯は、断頭台を柔らかく妖しく映し出す。なんだか怖い。怖いけど見たい。見たいけど怖い。
そんな狭間で揺れ動くような不安定な光に導かれるように、人魂が集まった。ここで殺されたアリス達の魂なのだろう。どこへも行けずに漂っていたアリス達の魂は、浮かぶ提灯の光の周囲をくるくると回る。
癒やしを求めるように集まった魂たちが、一斉に消えた。
提灯の光が導くのは、霊魂だけではない。オウガもまた、この妖しい光に惹かれるように現れるのだ。
「Myaou……。I’m Hungry……」
口の中で切なげな唸り声を上げたはらぺこねこばるーんは、目の前にある水まんじゅうに目を輝かせた。
1メートルほどの大きさだろうか。透き通った皮に包まれた黒い餡は涼しげで、小豆餡だけでは出せない黒みは黒すり胡麻のお陰か。
表面はつややかでなめらかで。でももちもちした存在感は頬張った時の柔らかい感触を口の中に思い起こさせる。
何故そんなところに水まんじゅうがあるのか。そんな疑問が浮かんだかも知れないが、ずっとアリスのおこぼれにありつけていないはらぺこねこばるーんにとって、それはどうでも良いことだった。
「Oh! Sweets! I’m Hungry!」
大好物の甘いものを見つけたはらぺこねこばるーんは、嬉々として鋭い歯を噛み合わせる。刃物同士を打ち合わせたような鋭い音を立てながら猛然と迫るはらぺこねこばるーんの歯が食らいつく直前、水まんじゅうが消えた。
はらぺこねこばるーんの歯が宙を噛む。食われる寸前に念動力で回避した朔は、水まんじゅうから腕をにゅっと伸ばすと断頭台の軸を掴んだ。
腕を軸にした朔は、断頭台上空まで舞い上がると辺りを見渡すはらぺこねこばるーんに向けて宙を蹴った。
「モチモチのぉ……」
振り子のように勢いを付けた朔の身体が、はらぺこねこばるーんの背後に迫る。気配に気付いたはらぺこねこばるーんが攻撃に移ろうとするがもう遅い。
「水まんじゅうです!」
水まんじゅう姿になった朔の体当たりが、はらぺこねこばるーんに直撃する。突然の攻撃に身体を押されたはらぺこねこばるーんは、そのまま勢いよく断頭台へと飛んでいく。
目を白黒させたはらぺこねこばるーんは、迫る断頭台に慌てて身を捩る。だが、勢いは止まらなかった。周囲に集まっていたアリス達の霊が、体勢を整えようとするはらぺこねこばるーんを抑え込む。
そのままの勢いで飛んでいったはらぺこねこばるーんは、迫る断頭台の刃に叫び声を上げた。
「Gi,myaaaaaaaaoouu! Help! Help me!」
「助けを求めるアリス達を食べてきたのでしょう? 次はあなたの番ですよ」
幾人ものアリス達の首を落としてきた断頭台が、はらぺこねこばるーんを真っ二つに切り裂く。その姿を見下ろした朔は、ユーベルコードを解除すると腕を組んだ。
「まあ、あなたを食べようなんていう酔狂な人は、どこにもいませんけれどね」
真っ二つになったはらぺこねこばるーんが、ゆっくりと落ちていく。その姿を見守る朔の周りを、アリスの霊たちが礼を言うようにくるくると回った。
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
ふかふか、ふわふわ
なんだか足元がおぼつかなくて
不安になってしまうわね?
あぁ、だけれど
ちょうどいい足場があるみたい
【ヴォーパルの獣】に変身し
動く雲から【ジャンプ】して
敵を【踏みつけ】て跳び回る
慌てて無差別攻撃してくるのなら
同士討ちも狙えるかしら?
オウガと言っても猫なんかじゃ
狼を喰い殺すのは無理かしら!
悔しかったら捕まえてごらんなさい?
自慢のお尻を叩いて【誘惑】しながら
【逃げ足】活かして断頭台の方へと誘い込む
怒りと食欲のままに追いかけて来たのなら
獣の反応速度でひらり躱してみせた後
断頭台で、首を落としてあげるから!
……あら、ところであなたの首ってどこかしら?
● 狼と猫の追いかけっこ
空飛ぶ雲に乗ったメアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)は、ふわもこの雲をもふもふ撫でた。
残されていた空飛ぶ雲は柔らかく、乗り込んだメアリーの意思に反応して右へ左へ自由に動く。だが元が雲なだけに、なんとなく落ち着かない気持ちになってしまう。
「ふかふか、ふわふわ。なんだか足元がおぼつかなくて、不安になってしまうわね?」
キョトンと首を傾げたメアリーは、宙に浮かぶ黒い後ろ姿に楽しそうな笑みを浮かべた。あのはらぺこねこばるーんは、まだこちらに気付いていない。断頭台の雲と自分の雲、そしてはらぺこねこばるーんの位置関係を確認したメアリーは、雲の上に立ち上がると詠唱を開始した。
「あぁ、だけれど。ちょうどいい足場があるみたい。……さぁ、素敵な夜を始めましょう?」
詠唱が終わると同時に、狂月の徴が輝く。狂月病の狂気が身体中を満たし、メアリーの姿を半獣半人へと変えていく。
身体中にみなぎる力と狂気を手なづけ、雲を蹴る。一足飛びにはらぺこねこばるーんの頭上に飛び乗ったメアリーは、勢いのまま踏みつけた。
「Migyaoooou!」
不意打ちを食らったはらぺこねこばるーんの頭が、深く歪む。そのまま突き破ってしまいそうな勢いの踏みつけだったが、はらぺこねこばるーんの身体は自身の弾性でメアリーを弾き出す。空中に放り出されたメアリーは、優雅に一回転するとギロチンの雲の端へと降り立った。
「あら。意外と柔軟なのね。さすがは風船といったところかしら?」
「I’m Angry! I’m Angry!」
怒り狂ったはらぺこねこばるーんは、大きな口を180度開くと刺し貫く棘を放った。自身を回転させながら放つ無差別な棘はメアリーにも襲いかかる。それを読んでいたメアリーは断頭台の支柱の陰に隠れると、はらぺこねこばるーんの攻撃をやり過ごした。
攻撃が収まったのを確認したメアリーは、雲を蹴り刺さった棘を蹴ると再びはらぺこねこばるーんの頭上を蹴りつけた。不意打ちほどの威力を与えられずに自分が乗ってきた雲に着地したメアリーは直後、再び大きくジャンプ。一瞬前までメアリーがいた空間に噛み付いたはらぺこねこばるーんの背中を蹴り飛ばしてはまた断頭台の雲へと戻る。
軽やかにジャンプするメアリーの姿に、はらぺこねこばるーんは憎々しげな視線を向けた。
「Nii……I’m Hungry」
「オウガと言っても猫なんかじゃ、狼を喰い殺すのは無理かしら!」
小馬鹿にしたように微笑むメアリーは、自慢のお尻を殊更目立つようにはらぺこねこばるーんに向けると、お尻のほっぺたをペチペチと叩いた。
「悔しかったら捕まえてごらんなさい?」
狩られる者の服がヒラリと揺れて、はらぺこねこばるーんの狩猟本能をくすぐる。最初の攻撃ははらぺこねこばるーんを突き破ってしまいかねないほどだったが、その後はそこまで大きなダメージを与えられていない。メアリーを弱者と見たはらぺこねこばるーんは、鋭い歯をジャキジャキ噛み合わせると猛然とメアリーに噛み付いた。
「I’m Hungry! I’m Angry! Eat you!」
「ほらほこっちよ、猫さんこちら!」
鋭い歯がメアリーを噛み付く寸前にジャンプして回避。はらぺこねこばるーんの頭を蹴りつけて断頭台の軸の上に立ったメアリーは、下から追いすがるはらぺこねこばるーんの歯を後ろに倒れ込むように回避すると断頭台の雲の端へと降り立った。
逃げ足を駆使し、常に「あと一歩」のところで攻撃を回避するメアリーに、はらぺこねこばるーんは目の色を変えて追いすがる。メアリーの身体は肉感的で柔らかそうで、食べたらさぞ美味しいだろう。ずっと食にありつけていなかったはらぺこねこばるーんは、もはやここが危険な場所であるということも忘れて追いすがった。
挑発で翻弄したメアリーは、断頭台の前に立つと再びお尻をぺたりと叩いた。
「まだ食べられないの? ダメな猫さん。そんな猫さんは……」
「Myaou! I’m Hungry! I’m Angry! Eat you!」
メアリーに追いすがったはらぺこねこばるーんが、猛突進してくる。タイミングを見計らったメアリーは、大きくジャンプすると大きく弧を描いた。
「断頭台で、首を落としてあげるわ!」
はらぺこねこばるーんの後ろに回り込み、そのままの勢いで蹴り込む。背中を突き飛ばされたはらぺこねこばるーんは、落ちてくる断頭台の刃に叫び声を上げた。
「Help! Help……」
「……あら、ところであなたの首ってどこかしら?」
はらぺこねこばるーんが言い終わる前に、鋭い刃がはらぺこねこばるーんの口元を切り裂く。折れた歯が周囲に飛び散るのを見たメアリーは、納得したように手を叩いた。
「これは断頭台だもの。あなたの頭はそこなのね。一つ勉強させて貰ったわ。ありがと」
ゆっくりと落ちていくはらぺこねこばるーんに投げキッスを飛ばしたメアリーは、雲に乗って帰還した。
大成功
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ミレア・ソリティス
この世界は本当に不思議なことが多いのですね
雲は最初の足場とし、UC【コード・テンペスト】で空戦用サブユニットと合体し戦闘機形態に変形、機体下部にもう一組の可変翼「グライフフリューゲル」を備え飛び立ちます
敵オウガに対し挑発を交えつつ飛行、ジャミングによる認識の阻害と、ビットでの攻撃も交えこちらを追わせます
ある程度誘導できれば反転後下部の可変翼をクロー装備の副腕へと変形させ突撃、怪力任せにクローによるグラップルで捕縛、そのまま断頭台の下へと高速で強制連行し斬首を狙います
逃亡を図るならば多少のダメージは耐性で無視して逃さぬよう押さえつけ『私ごと』斬首を
「ミレア」は此処に居る私だけではありませんから
● 『ミレア』は一人じゃないから
青い空に浮かぶ白い雲を見下ろしたミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は、眼下に広がる景色を特別な感慨もなく見渡した。
いくつもの雲が飛び交っていて、その上には文明らしき痕跡も見える。だがほぼ全てが破壊され、まともな形を残しているのは断頭台のみ。それが彼女が起動した時に見た廃墟と重なるようだが、感傷に浸ることはない。
「この世界は本当に不思議なことが多いのですね」
大きく頷いたミレアは、雲の上に立ち上がるとユーベルコードの詠唱を開始した。この世界に残ったはらぺこねこばるーんも後少し。掃討してしまわなければ。
ふわもこの雲を操り空の世界を探索してしばし。アリスを探して断頭台の周囲をうろうろ飛び回るはらぺこねこばるーんを発見したミレアは、気付かれないようそっと詠唱を開始した。
「サブユニット転送……コード・テンペスト、いきます」
詠唱と同時に空戦用サブユニットを召喚したミレアは、戦闘機形態に変形する。人型から戦闘機へ。見事な変形を成し遂げたミレアは、機体下部にもう一組の可変翼「グライフフリューゲル」を備え空へと飛び立つ。
その瞬間、場の空気が変わった。認識阻害ジャミングが戦場を包み込み、激しいノイズが空間全体を切り裂き走る。ノイズを発生させる誘導攻撃端末が、はらぺこねこばるーんに向けて認識阻害ジャミングを一斉に放てば、はらぺこねこばるーんはそれを振り払うように大きく身を捩る。
「Nii!」
大きく叫んだはらぺこねこばるーんはミレアの姿を認めると、腹立たしげに詠唱を開始した。
「I’m Hungry! I’m Hungry! Eat you!」
叫びと同時に、はらぺこねこばるーんの身体がどんどん膨張する。見る見る間に大きくなるはらぺこねこばるーんは、鋭い歯をジャキジャキ言わせるとミレアを食べようと追いかけてくるが、ジャミングに邪魔をされて空を噛む。
「I’m Hungry! I’m Hungry! Eat you!」
「目標接触。これより誘導に入ります」
確認するように言ったミレアは、わざとスピードを緩めると凶悪な歯の前を飛行する。ジャキン! と噛み付く攻撃を紙一重で回避すると、小馬鹿にするように八の字飛行。
挑発による怒りと空腹による苛立ちに、はらぺこねこばるーんは歯をギリギリと鳴らす。神経を引っ掻くような音だが、所詮は音。ミレアの行動には何の支障もない。
ジャミング装置に足止めさせながら飛行。やがて巨大化したはらぺこねこばるーんさえ切断可能な大きな断頭台を視界内に収めたミレアは、狂ったように追いかけてくるはらぺこねこばるーんに反転・攻勢を掛けた。
逆噴射を掛け急速反転。宙返りの要領ではらぺこねこばるーんの背後を取ったミレアは、下部の可変翼をクロー装備の副腕へと変化させると一気に加速した。
「目標補足。これより作戦を第二段階へ移行する」
「Nigyaaaaa! I’m Angry!」
狙いを悟ったはらぺこねこばるーんが大きく身をよじり、ミレアの副腕から逃れようとする。それを怪力で抑え込んだミレアは、更に固定するべくクローではらぺこねこばるーんを固定する。
グラップルで捕縛されたはらぺこねこばるーんは、逃れようと大きく身を捩る。高速強制連行によりものすごいスピードで近づいてくる断頭台の姿に、ミレアのセンサーデバイスが非常のアラームを鳴らす。アラーム音をカットしたミレアは、視界の端に映る赤いランプを無視するとまっすぐに断頭台へと向かった。
「断頭台まで距離3……2……1……」
「Nigyaaaaaaaaaaa!」
叫び声を上げたはらぺこねこばるーんの頭に、断頭台の刃が落下する。全てを両断する鋭い刃ははらぺこねこばるーんを真っ二つに裂き、重力に惹かれて遥か下方へと落ちていく。
諸共真っ二つにされるのを厭わずに加速したミレアは、落下した刃の上部を通り抜けると断頭台を振り返った。
今まで幾人ものアリスの生命を奪ってきた断頭台の刃が、ゆっくりと元の位置へと戻る。断頭台はその性質上、一体の首を刎ねた後刃を戻さなければ次の切断はできない。計算通りだ。
大きな音を立てて元に戻った刃を見たミレアは、助かったという感慨もなく落ちていくはらぺこねこばるーんを見下ろした。
自己複製とデータ同期により一機居れば“ミレア”の維持は可能なのだ。今回は運良く破壊を免れたが、今後もしこんな状況があれば、ミレアは躊躇なく己の破壊を実行するだろう。
何故ならば。
「「ミレア」は此処に居る私だけではありませんから。……任務完了。これより帰還する」
冷静に呟いたミレアは、静かになった断頭台の空の国を後にした。
大成功
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