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林檎祭りを守れ!

#サムライエンパイア


●林檎祭り開催のお知らせ
「よかったよかった。今年は無事に林檎祭りができそうだなぁ」
「去年は台風で林檎が全滅だったからな。祭りも中止になったが、今年は豊作だから祭りが楽しみだ」
 忙しい、忙しいとせわしなく働く村人だが、どの顔も祭りの準備をとても楽しそうに行っている。
 ここはサムライエンパイア北部に位置するとある小さな村。
 名前を知る者も少ない村だが、ここはある名産品で名が通った村だった。
 それは、赤くて丸い、シャキシャキと甘い果物――林檎である。
 その林檎の収穫を祝う『林檎祭り』は村の人々が一年で最も楽しみにしているといっても過言ではない行事だ。この林檎祭り、目玉は林檎を使った創作料理大会。その他、林檎の定番料理ということで、甘く煮込んだ林檎を軽くあぶった餅につけて食べるものも来場者たちに振る舞われる。
「おーい、林檎料理の準備はどうだ?」
「林檎の煮込みの下ごしらえは終わったぞ。あとはじっくり煮込むだけだ。餅は?」
「今年は100用意したぞ」
「なんだよ、それじゃ足りねぇな、200……いや、300用意しろ!」
 楽し気な笑い声を交えながら、村人たちは祭りの準備に精を出すのだった。

●祭りを邪魔する不穏な輩
「こんにちわっ、ユニでーす! みんな、集まってくれてありがとうなのねー!」
 ユニ・エクスマキナ(ハローワールド・f04544)と名乗った少女は金色の髪をふわりと揺らし、グリモアベースに集まった猟兵たちをぐるりと見回した。そして、困ったようにふぅと小さなため息をつく。
「あのね、サムライエンパイアのとある村にオブリビオンの一揆が迫ってるみたいなの」
 その村は名産品である林檎の収穫を祝う祭りの準備で現在大忙しだった。そんな村を骸の海から蘇ったオブリビオンの一揆は襲い、全てを奪い、打ち壊そうとしている。襲い来るオブリビオンたちを討伐し、村の人々と祭りを守って欲しいとユニは告げた。
「一揆の群れはね、棍棒鬼と呼ばれる鬼たちだよ」
 棍棒鬼は村の近くのかつての古戦場から現れ、村に向かっているという。
 猟兵たちは村の近くに転移するので、急げば古戦場と村の中間の田園地帯で迎撃が可能だが、ここは足場が悪い。
 もしも、そのまま待機していれば村の周囲の林檎園で迎え撃つことになるのだが……。
「これから収穫する予定の林檎がまだあるんだけど、それは諦めなきゃダメかも……」
 とはいえ、村人が避難をするまでの時間はない。人命を優先するため仕方がないと少女は表情を曇らせた。出来れば、林檎は守ってあげたいよね……と、誰に言うでもなく呟くユニだったが気持ちを切り替えたのか、パッと顔をあげると笑顔で口を開く。
「すべての敵を倒せば無事に林檎祭りが開かれるわけだけど……その場合、みんなもお祭りに参加してみたら?」
 何しろこの村の林檎はとても美味しいというから、食べてみる価値はあるだろう、と。
「みんなが迎撃に出れば棍棒鬼の集団なんてなんとかできるはずだよ。村の人たちを助けるためにも、祭りを守るためにもみんなだけが頼りなのねー!」
 よろしくお願いしまーす、と彼女はペコリと頭を下げるのだった。


春風わかな
 はじめまして、またはこんにちは。春風わかなと申します。
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。
 このシナリオの成功条件は、襲い来るオブリビオンたちから人々を守り、祭りを無事開催させることです。

●オブリビオンとの戦いについて
 敵の襲撃が迫っており、村人たちを避難させる時間はありません。
 迎撃可能な場所は下記のうちどちらかです。
 ・田園地帯:古戦場と村の中間の場所。足場が悪い。
 ・村の周囲:近くに林檎園があるので収穫前の林檎が犠牲になる可能性が高い。

●その他
 全ての敵を倒し、村を守ることができた場合、第3章は林檎祭りのシーンを予定しています。
 祭りだけの参加も大歓迎です!
 お友達とお誘いあわせの上、お気軽にご参加ください。

 以上、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『棍棒鬼』

POW   :    鬼の金棒
単純で重い【金棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    怨念疾駆
自身の肉体を【怨念の塊】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    死武者の助太刀
【落ち武者】の霊を召喚する。これは【刀】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
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アポリー・ウィートフィールド
林檎の餅……だと?我の知らぬ料理だ。これは守護らねばならぬ……!そしてぜひ御相伴に与らねば!

当然、田園地帯へと急行し、早期迎撃を図る。
我としては田園地帯でこのような力を発動するのはやや気が引けるが……貪食の黒き靄でもって射程範囲内全ての鬼どもに片っ端から攻撃をかけ、戦力を削ぎつつ注意を引き付けさせる。遠距離攻撃故金棒での反撃に対する対処もしやすかろう。地形の破壊も我一点を狙うのであれば最低限に済むであろうしな……


ソラスティベル・グラスラン
むむっ、なんとおいしそうなお祭り……で、ではなくっ!
人々の楽し気な催事と食を横取りしようなどと不届き千番!
異界と言えど勇者の出番です、がんばりますよぉ!
無辜の民を守り、林檎を美味しく頂くため、勇気ある誓いをここに!
それではみなさん、いざ鬼退治と参りましょう!うおー!(気合)

(林檎に)犠牲を出すわけにはいきません、ここは田園地帯で迎え撃ちます!
足場が悪いなどそれは敵も同じこと。
とはいえ足場が悪ければ力が出しにくいのも当然、ここは【ドラゴニアン・チェイン】です!
竜のオーラで爆破、繋いだ鎖を引っ張り、しっかりと鬼を叩き斬る!
棍棒の一撃は厄介ですね、オーラは射程外から当て、確実に一体ずつ倒しましょう。


黒金・華焔
「林檎祭りか、悪くねぇな。美味いもんの為なら奮起する奴も多いだろうが、私も一枚噛ませてもらおうか」

喰える林檎が減るのはよろしくねぇ、戦闘場所は『田園地帯』で行くぜ
現地に着いたら、まずはあんま動かなくても戦えそうな所を探すぜ
戦闘知識はある方だ、どの辺が有利な場所かある程度見当は付くだろ
どうやら敵は召喚術の類を使う様だが、そんなもんは関係ねぇ
愛用の『黒焔呪月』で鬼も落ち武者の霊も纏めてなぎ払ってやる
遠距離にいる奴は『フォックスファイア』で対処する
複数いるならそれぞれに狐火を、数が少ないなら狐火を合体させたヤツをお見舞いしてやろう
「来いよ雑魚共。纏めて相手になってやるぜ?」


ブライトネス・フライハイト
ほほぉ、林檎祭り!
中々興味深いにゃぁ!
となればそれを邪魔する棍棒鬼とはゆるせぬ!
我輩が出汁にしてくれるにゃぁ!

そしてせっかくの林檎をだめにするわけにもいかないにゃ…
まぁ美味のためなら多少のぬかるみや不利は必要経費にゃ。

もし他に田園まで行く猟兵がいるにゃら、乗せていくにゃ。

SPDとゴッドスピードライドで田園地帯に向……ふと、運転しながら思いついたことがあるにゃ。
宇宙バイクで急行するのは構わないが…別に、オブリビオンをそのまま引いてしまってもかまわにゃいにゃ?

というわけで、ドーン!にゃー!
ミンチになるにゃー!!!



転移してきた猟兵たちを出迎えたのは赤く色づき旬を迎えた林檎たちだった。
 近くの集落からは祭りの準備に勤しんでいるのであろう村人たちの作業に励む音に交じり明るい笑い声が風に乗って聞こえてくる。
 村人を守ることはもちろん、林檎も傷つけないようにと猟兵たちは宇宙バイクにまたがったブライトネス・フライハイトを先頭に急ぎ村から離れてのどかな田園地帯へと足を速めた。
「林檎祭りか、悪くねぇな」
 ブライトネスのバイクに乗せてもらい狐の耳をぴょこりと揺らして独りごちる幼い少女――黒金・華焔にソラスティベル・グラスランが全力で同意する。
「はいっ! なんとおいしそうなお祭り……で、ではなくっ! 人々の楽し気な催事と食を横取りしようなどと不届き千番!」
 ここは異界と言えど勇者の出番。
 ソラスティベルが自らを奮い立たせるべくぐっと拳を握りしめると同時にバイクはぐらりとバランスを崩しそうになり。
「危ないにゃ! 運転中は静かにするのがお約束にゃぁ。暴れないでほしいにゃ!」
 ブライトネスに注意されてソラスティベルは慌てて両手を合わせてすみませんと頭を下げた。
 その一方で。
「林檎の餅……か」
 初めて聞くこの料理はいったいどんな料理なのだろうか。
 アポリー・ウィートフィールドは未知の料理に想いを馳せ、赤く色づき収穫を待っている林檎にちらりと視線を向ける。
「これは絶対に守護らねばならぬ……!」
 今、実っている林檎は一つたりとも傷つけることはさせない。
 そしてぜひ御相伴に与らねば!
 そう、心に誓うアポリーに声をかけたのは華焔。
「喰える林檎が減るのはよろしくねぇ。その話、私も一枚噛ませてもらおうか」
 大人びた笑みを浮かべている華焔に続き、ブライトネスもこくこくと頷いた。
「せっかくの林檎をだめにするわけにもいかないにゃ……まぁ美味のためなら多少のぬかるみや不利は必要経費にゃ……にゃっ!?」
 尻尾の毛を逆立てたブライトネスが見つめている方角から棍棒鬼の集団がこちらへと猛スピードで迫ってくる。
「いたにゃ! 棍棒鬼にゃぁ!」
 ブライトネスの言葉に彼のバイクからぴょんと飛び降りたソラスティベルはふぅっと大きく深呼吸を一つすると仲間たちをぐるりと見回し、口を開いた。
 ――無辜の民を守り、林檎を美味しく頂くため、勇気ある誓いをここに。
「それではみなさん、準備はよろしいですか? いざ鬼退治と参りましょう!」
 自らを勇気づけるかのよう、気合を込めて高らかに戦闘開始を宣言するソラスティベルの台詞とともに最初に動いたのはブライトネスだった。
「にゃー! ミンチになるにゃー!!!」
 彼は自らの宇宙バイクで棍棒鬼の群れへドーン! と勢いよく突っ込んでいく。
「興味深い林檎祭りを邪魔するとはゆるせぬ! 我輩が出汁にしてくれるにゃぁ!」
 ブライトネスの突撃に続き、猟兵たちは一斉に棍棒鬼に攻撃を始めた。
「我としては田園地帯でこのような力を発動するのはやや気が引けるが……」
 林檎を守るためには仕方がない。アポリーは全てを貪り食う異形の蟲の群れをオブリビオンの群れに向かって放つ。
「我の忌むべき欲望の片鱗、今解き放たん!《貪食の黒き靄》!」
 漆黒の霧が棍棒鬼たちを包みこむように襲い掛かった。触れたもの全てを食い尽くさん勢いで蟲は棍棒鬼に嚙り付く。
 ぐわぁぁぁ……!
 蟲の群れをなんとかすべきと思ったのか、鬼たちはアポリーに的を絞ったようだ。
 アポリーは思惑通り敵の注意を引き付けることに成功したことに安堵しつつ、再び異形の蟲たちを飛ばす。
 ゆらり、ゆらり。
 それでも蟲に嚙り付かれたまま、大きな体を不自然に揺らしながら鬼たちはアポリーに近づいてゆく。そして、一匹の鬼が渾身の力を込めてアポリーに向かって金棒を振り下ろそうとした、その時。
「危ないっ!」
 ソラスティベルの放ったドラゴニアンオーラが金棒を握った鬼の右腕を爆破させる。すぐさまオーラの鎖をぐっと手繰り寄せ、サンダラーでその腕を叩き斬った。蒼空の色の巨大な斧が響かせるその大きな轟音はまるで雷鳴が鳴り響いたのかのよう。
「なかなかやるじゃん」
 愛用の黒焔呪月を握り、華焔は素早くアポリーに接近していた敵の懐へと潜り込む。そして、鬼の足を狙って黒焔の力を宿した薙刀を大きく薙ぎ払うと同時に後ろに飛びのき距離をとるとともに態勢を整えた。ドーンという大きな音とともにうつぶせに倒れた鬼をブライトネスがバイクで轢いて一丁上がり。
「来いよ雑魚共。纏めて相手になってやるぜ?」
「まだ見ぬ料理を食するためにも、我の行く手を阻むことは許さん」
 華焔が放った狐火の炎が猟兵たちに近づこうとしていた鬼たちを纏めて燃やす。炎に焼かれ、苦悶の表情を浮かべた鬼たちにアポリーの黒い蟲が喰らいつくす。
 それでもまだ倒れずにフラフラと覚束ない足取りで近づいてくる敵がいればソラスティベルが確実に狙いを定めて竜のオーラでとどめをさしていった。
「お見事にゃ!」
 手を叩いて喜ぶブライトネスの声援を受け、仲間たちは一匹、また一匹とと鬼を撃破してゆく。しかし、その数はようやく半分まで減らしたというところ。
「この調子では時間がかかってしまいますね」
 考えあぐねるソラスティベルは華焔、アポリーと視線を交わす。二人も同じことを考えているようだ。やはり、敵の懐に飛び込むしかないのか、だが……。
 ――林檎を守るための戦いは、もう少し続きそうだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

月隠・望月
田園地帯で棍棒鬼を迎撃

食べ物は大切。祭りも、大切
収穫前の林檎もだが、もし林檎の木が駄目になってしまったら。名産品が無くなったら、生活に支障が出てもおかしくない
林檎も祭りも、村のために必要。だから、村も林檎もまとめて守るのが、最善

《サムライブレイド》を使って【剣刃一閃】で敵の足を斬りつける
田園地帯は足場が悪い。だが、それは敵にとっても同じ、はず
足払いなどは効きやすい、と推測する
敵が怨念疾駆で伸縮性を得ていても、刃物なら断ち斬れるだろう
死武者の助太刀で落ち武者を召喚されたら、《破魔1》で補助しながらその霊も斬ろう
鬼の棍棒はなるべく避けたい。足場が悪く動きづらそうなので、《残像1》で回避の補助を


カチュア・バグースノウ
リンゴね!好きよ!
村人たち…できればリンゴにも被害が出ないように注意したいわ

戦闘場所は、田園地帯にする
前衛に出て勝負よ
あらかじめブーツを履いておく
攻撃は外れたら賢者の影
質問は「リンゴは好き?」

村人が残っているなら、避難を優先して守りながら声かけ
「村の方に逃げて!」
リンゴの被害は戦闘中は気にしない
気にしてられないわよね…
本当は気にしたいけど
リンゴを守ろうとする村人がいたら
「今は命が大事よ!」
と背中を押す

敵は一体ずつ確実に倒していく
他に猟兵がいたら、声を掛けて弱っている敵を中心に
あたしが前線だったら襲いかかってきたやつを優先するわ


夜神・静流
命を護るのは当然として、彼らの笑顔もまた護るべき物です。
林檎も無事に終わらせたいものですね。
よって、田園地帯で迎え撃ちます。

足場が悪いので、相手も棍棒による攻撃はやりにくいと思われます。
……こちらも、少々戦いにくくなりそうなので気をつけねばいけませんが。
そうなると、相手の●怨念疾駆か●死武者の助太刀に対して、一ノ太刀・隼をぶつけるのが中心になるでしょうか。

早業の技能も使い、●怨念疾駆が届く前に、●死者の助太刀が発動する前に、●鬼の棍棒の間合いに入る前に、神速の一刀で斬り捨てるのが理想ですね。
まあ完全に上手くいくかは分かりませんが……とにかく、鬼共はここから先には進ませません。


シシィ・オクトニーア
村の皆さんだけではなく林檎祭りも守りたいですね。
まずは田園地帯で敵を迎撃します。
私だけではなく他の参加者の皆さんと協力して戦いたいです。
生まれながらの光でのサポートを主に頑張りたいです。
対象は最も傷付いている味方、次に前線で戦っている味方を優先して回復いたします。
足場が悪いので前線から少し離れた場所でサポートしつつ、敵が近くに来たらグルメツールを使って攻撃に転じます。
敵の怨念疾駆や落武者の助太刀などの遠距離からの攻撃には要注意ですね。
「林檎祭りを楽しみにしている皆さんを守るためにも、頑張りますね」
「林檎の創作料理……楽しみですよね」
「守りだけではなく、攻撃も出来るんですからね!」



猟兵たちの遠距離を中心とした攻撃によって、鬼棍棒たちは確実にその数を減らしていく。
 ――前線に出るなら、今ね。
 この好機を逃すまいと先陣を切って走り出したのはカチュア・バグースノウだ。足元のぬかるみも気にすることなくブーツで駆け抜け、揺れる彼女の白い髪はまるで戦場に咲いた一輪の花を思わせる。
(「村人たちのためにも、林檎は絶対に守るわ……」)
 うがぁぁぁ。
 眼前に飛び出してきた竜騎士を敵とみなした鬼が金棒を地面に叩き割る勢いで撃ち付けた。カチュアは寸でのところで手にした槍で鬼の攻撃を受け流すが無傷とはいうわけにはいかない。
「くっ……」
 金棒に打ち据えられた左肩がズキズキと痛む。だが、村人のためにも、この鬼たちを村へ近づけるわけにはいかない。
 ――その時。
 キッと鬼を睨みつけていたカチュアの横を衝撃波がすり抜けていった。
 そして、その後を追うように人影が駆け抜けて行ったかと思うと刀で空を薙いだ瞬間、鬼の体がすてんと転がる。
「下がって」
 刀を構えた月隠・望月が彼女を一瞥したと思ったのも束の間、すぐに鬼の懐に飛び込むと再び刀で敵の足を狙って薙ぎ払ってゆく。
「今のうちに急いで傷の手当をなさってください」
 失礼、と黒髪の女性――夜神・静流もまたカチュアに声をかけると望月を追うように鬼たちの方へと駆けていく。
「少々お待ちください。すぐに傷を癒しますね」
 シシィ・オクトニーアがカチュアの傍らに膝をつき、聖なる光でカチュアの身体を包み込む。みるみるうちに肩の傷が治っていくが、同時に気怠さがシシィの身体を襲った。自身の疲労は隠し、シシィはおっとりとした笑みを浮かべてカチュアに言う。
「もう大丈夫だと思います」
「どうもありがとう」
 助かったわ、と告げるカチュアにシシィは柔らかく微笑み口を開いた。
「林檎祭りを楽しみにしている皆さんを守るためにも、頑張りましょうね」
「ええ、もちろん。村人はもちろん、林檎一つにだって傷つけることはさせないわ!」
 戦場で初めて会った仲間ではあるが、二人の思いは同じ。
 再び前線へと向かうカチュアと共に仲間の傷を癒すために透き通った長い髪をなびかせてシシィもまた走り出した。

 襲い掛かる敵の猛攻を素早く望月が交わしながらその足を斬り付ければ、間髪入れずに静流の愛刀・十六夜から放った衝撃波がバランスを崩した鬼を狙う。
(「思った通り」)
 足場が悪いのは猟兵たちにとって不利な条件ではあったが、それは敵である鬼たちにとっても同じこと。
 とはいえ、2人では少々分が悪いのも事実。疲労が重なり、いつの間にか望月たちの刀の動きが鈍くなったことに鬼たちも気が付いてしまったようだ。
 唇をぎゅっと噛み締め、じりじりと鬼たちと間合いをとる望月と静流だったが、柔らかな光に包まれたかと思った瞬間、ふっとその身体から痛みが消えていくのを感じ、慌てて後ろを振り返る。
「お待たせしました……!」
 急いで来たのだろうか。大きく肩で息をしているシシィに視線で感謝の意を伝えると望月は鬼が召喚した落ち武者たちが放つ弓矢を交わしながら素早く近づくと破魔を纏った刀で斬りかかってゆく。
 カチュアも加わって猟兵は3人。シシィが持った生まれながらの光によって静流たちの傷は癒され、鬼は1匹、また1匹と動かなくなった。
「ねぇ、そこのあなた。リンゴは好き?」
 彼女の問いかけと同時に魔法で伸ばした影が鬼の腕を絡めとる。だが、鬼は質問に答えることはない。無言のまま影に飲み込まれていく。
「あと、2匹」
 望月の刀がきらりと閃いて足を斬り裂けば、鬼はうめき声をあげて膝をついた。そこをシシィがぷすっとグルメツールでとどめをさして残りは1匹。
「守りだけではなく、攻撃も出来るんですからね!」
 度重なる仲間の傷を癒したことで彼女の疲労は限界に達していたが、これで祭りが守れると思えば疲れなんて吹き飛んでしまう。
 ――残る鬼は1匹。
 ふぅ、と額の汗をぬぐいながらシシィが最後の鬼へと視線を向けるとその行く手を阻むかのように静流が立ちふさがっていた。
「ここから先には進ませません」
 静流はすっと姿勢を正して十六夜を構えるとじっと鬼を見つめる。
 呼吸を整え、一撃を放つ瞬間を見定め――。
「参ります。一ノ太刀・隼!」
 目にも止まらぬ速さの抜刀術が生み出す衝撃波。
 最後に立っていた鬼もまた、ゆっくりと地面に倒れ伏せた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『仮面の武僧』

POW   :    末世読経
予め【読経を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    狛犬噛み
自身の身体部位ひとつを【狛犬】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    金剛力士の招来
戦闘用の、自身と同じ強さの【金剛力士(阿形)】と【金剛力士(吽形)】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
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田畑に倒れ伏す鬼棍棒たちを見つめ、猟兵たちは無言で安堵の笑みを交わす。
 これで、村人を、祭りを守ることが出来る――。
 そう、思った時。
 ――シャラン、シャラン。
 重い音色を響かせて近づいて来る影に気づき、猟兵は慌てて視線を向けた。
 その視線の先に立っていたのは燃えるような髪に鬼のような面をつけ、錫杖を手にした一人の武僧。
 仮面の武僧は動かぬ鬼棍棒を気に留めることなく踏みつぶし、猟兵たちの前に立ちはだかる。
 ――シャシャン。
 ドン、と錫杖で地面をつくとビリビリと空気を振るわせるような咆哮をあげて猟兵へと襲い掛かってきた。
華切・ウカ
この敵を倒せば、素敵な林檎祭りが無事行えるのですね。
そのためにも、ウカもお力添えしましょう!
憂い晴らして楽しく過ごす為にも。
決して林檎にそわっとしているわけでは……いえ多少はしているのですけれど。

『錬成カミヤドリ』で攻撃を。
複数構え、敵の動き止めるように放ち、他に戦う皆さんの助けにもなれば。

これはウカの分け身。戯れに鍛えられた刃はそのあたりの花鋏よりも鋭い切れ味。
草花の命を貰い受け続けた刃は人を傷つけた事もありましたけれど……今は、悪しきを断つ刃。
決してお前は知らぬでしょう、花鋏は――腕程の枝でもやり様によっては断ち切るのですよ!


アポリー・ウィートフィールド
ほう、汝がこの鬼どもの親玉といったところか。
彼奴が扱うユーベルコードの中でもおそらく厄介なのは手数と頭数が増える金剛力士の招来。誘発のリスクはあるが、我は【焦熱の赫き蛍】を発動する。誘導可能なこの炎の蛍で敵の攻撃の隙間を縫ってダメージを与えれば封じ込めることができるはずだ。燃えやすそうなその法衣を火達磨に変えてくれる!


月隠・望月
あの仮面の武僧は棍棒鬼の頭か、関係ない通りすがりか
どちらでもいい、か。敵なら斃すだけ
もう一踏ん張り

【羅刹旋風】で《無銘刀》を振り回して、なるべく目立つように立ち回る
わたしの攻撃は見破られやすいけど、敵がわたしに注目すれば味方の攻撃は当たりやすくなる、はず
目立つのが目的だから、武器を振り回す時間は長くなくていい。派手な攻撃方法で、敵の気を引きたい
敵は目を引く鬼の面を付けているから、試しに面を攻撃してみよう。もしかしたら、敵の気を引けるかもしれない

敵がユーベルコードを使ったら、攻撃を《見切り1》つつ《残像1》を残すことで、可能な限り回避するよう試みる
回避が難しければ、《無銘刀》で攻撃を受ける



鋼の錫杖を手に猟兵たちの前に立ちはだかる鬼の面をつけた一人の武僧。
 彼が発するプレッシャーに押しつぶされそうになるのは対峙する猟兵たちの気のせいではないだろう。
 だが、その無言の圧力を跳ね除けアポリー・ウィートフィールドは口を開いた。
「ほう、汝がこの鬼どもの親玉といったところか」
 アポリーの言葉に武僧は何も返さない。
 返事を期待していたわけではなかったが、再びアポリーが口を開くよりも早く傍らの少女がぽつりと呟いた。
「そんなこと、どうでもいい」
 さらりと黒髪を揺らし月隠・望月はじっと武僧を見つめる。
「わたしたちの敵であることは、間違いない。ならば、すべきことは、一つだけ」
 ――敵なら斃すだけ。
 淡々と紡ぐ彼女の言葉にアポリーもそうだな、と同意を示した。
「この敵を倒せば、素敵な林檎祭りが無事行えるのですね」
 軽やかな口調は緊迫したこの場には少々不似合いではあったが、華切・ウカの認識に齟齬はない。
「村の方々の憂いを晴らして楽しく過ごしていただくためにも。ウカもお力添えしましょう!」
 手にした花鋏をパチンと鳴らすウカは心なしかどこかソワソワしているようにも見える。村の名産品である林檎や楽しい祭りが村人たちにとって大切なものであることは望月にもわかるが、『祭りを楽しむ』という発想のない彼女にはピンとこない。
 望月は心躍らせるウカを不思議そうに見つめていたが、敵の視線に気づき慌てて無銘刀に手を添える。
 武僧は右手で握った錫杖でブンと大きく空を薙ぐと地に突き立て僧服の袂から分厚い経典を取り出してバサリと広げた。
(「……来る」)
 武僧が読み上げる重々しい読経の声が戦場に響き渡る。どのようにして敵の注意を自分に向けるか――。一瞬、望月が考えを巡らせた時。
 ナイフのような鋭利な刃物が空を薙ぎ、武僧が手にしていた経文を真っ二つに斬り裂いた。ナイフのように見えたものは、鋭く尖った刃を持つ花鋏。ヤドリガミであるウカの本体だ。
 読経の声を止め、武僧は花鋏を投げた主であるウカへと虚ろな目を向けた。
「たかが鋏、されど鋏――ウカの鋏はそのあたりの花鋏よりも鋭い切れ味です。もう一度、その身で確かめますか?」
 言うや否や、ウカは再び念を込めて花鋏を飛ばす。宙に舞う花鋏は武僧に向かって真っすぐ飛ぶと、その手に、その足に一斉に突き刺さった。
 グワ――――ッ!
 武僧が思わず耳を塞ぎたくなるような大きな咆哮をあげると、彼を守るかのように二体の金剛力士――阿形と吽形が出現する。阿形と吽形は己の拳を振り回し、猟兵たちに襲い掛かってきた。
 ウカが吽形の腕を狙って花鋏を放つのを横目に、望月は素早い動きで阿形の攻撃を交わす。敵の一撃は重そうではあるが、ゆえに動きは単調。何度か攻撃を交わすうちに、望月にはだんだんとその動きが予測できるようになってきた。
 タタンと軽くステップを踏んで体制を整えた望月は無銘刀を頭上に掲げるとぐるぐると回し始める。
 動きが大きく、見破られやすいため攻撃が当たることは最初から期待していない。だが、これで敵の攻撃を引き付けることが出来れば、それで良い。彼女の思惑通り、阿形だけでなく吽形もまた望月を狙おうと執拗に攻撃を繰り返す。
(「今のうちに、誰か」)
 望月の視線に気づき、動いたのはアポリー。仲間たちが阿形と吽形の気を引いている隙をつき、アポリーは赤い蛍を召喚した。十を超える数の蛍たちは小さな炎玉のように赤々とアポリーの周囲を照らす。
(「誘発のリスクはあるが、止むを得ん」)
 敵の死角を突いてアポリーは炎の蛍を武僧に向かって放った。
「料理の命、即ち火力也! 舞え、《焦熱の赫き蛍》!」
 アポリーが放った蛍を払いのけようと武僧は錫杖を振り回す。だが、一つの蛍が僧服に付いた瞬間、勢いよくばっと炎は燃え広がっていった。
「燃えやすそうなその法衣、火達磨に変えてくれる!」
 アポリーの言葉通り炎に包まれる武僧だったが、ガァッと気合いで一瞬にして炎を消す。しかし、攻撃を受けたことで阿形と吽形の身体はしゅるんと煙のように消えた。
 その好機を逃さず、無銘刀を構えた望月は低い姿勢のまま一気に武僧との距離を詰めると鬼の面に斬りかかった。攻撃をかわそうとバランスを崩しよろけた武僧にウカの花鋏が降り注ぐ。
「花鋏は――腕程の枝でもやり様によっては断ち切るのですよ!」
 鈍く輝く鋼色のそれは、悪しきを断つ刃。
 バチンという大きな音と共に、武僧の左腕を斬り落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コロッサス・ロードス
田園地帯で戦闘か……村人にとって大切な祭りを守る為、全て承知の上で己が不利となる状況を受け入れる。
村人の命と希望を共に守る決断、猟兵として見事也。

さて、遅参ながら俺も戦列に加えてもらおう。
残るは鬼の仮面を付けた僧か…個の武力で奴の方が上かもしれぬが我らは連携を以て奴を仕留めん。

基本的に『武器受け』『盾受け』『オーラ防御』等の防御技能を活かす為、また仲間の被害を抑える為にも、敵に肉薄してより多くの攻撃を自分に向けさせる。

敵の【末世読経】に対しては、事前動作である読経の所作(掌を合わせる、経文を開く等)を『見切り』、相打つ『覚悟』で敵の懐に飛び込み『捨て身の一撃』ユーベルコード【黎明の剣】を放つ。


夜神・静流
「護ってみせます。村も、人も、お祭りも。全て」
討ち死にした配下を一顧だにせず、その亡骸を踏みつぶすような外道には絶対に負けません。
「破邪の炎よ、我が剣に集え!悪を討ち滅ぼす力を!」
「我が剣は焔、焼き払え!二ノ太刀・紅!」

相手に肉薄し、二ノ太刀・紅で攻撃します。
早業・先制攻撃・属性攻撃の技能を使用。
●末世読経や●金剛力士の招来は、早業および投擲技能を使って装備の鉄礫を投げ、妨害します。
●狛犬噛みは見切り・残像技能で回避。

また、真の姿を一部開放。背中に純白の羽が生える。


ソラスティベル・グラスラン
なんという覇気!彼が鬼を率いている存在ですか!
こんな時、英雄譚の彼らならばどうするか……考えるまでもありませんね。
勇気を持って、討ち倒すのです!

召喚された2体の人型!攻略法は知っていますよ!
勇気・気合・根性を、中でも気合(守り)を重視し全身を滾らせます
ここに誓うは不退転の意思!これがわたしの【勇者理論(ブレイブルール)】!
わたしが片方を抑えます、もう片方を誰か!
その隙に皆さんで本体を、早く!そう長くは持ちませんよ!
無茶?いいえ、出来るに決まってます
何故ならわたしたちは……勇者なのですから!!

2体の分身が消えた後は、耐えている間に【力溜め】をしていた一撃を!
最後に勝つのは、勇気あるものです!!


黒金・華焔
ははッ、こっちが本命だったって訳だ
面白くなってきやがった
「林檎祭り前のいい余興になるぜ。盛り上げるか」

今回の敵は近接攻撃と召喚術がメインっと
基本は敵の様子を見つつ、戦闘知識を活かして堅実に立ち回っていくぜ
仮面の武僧が金剛力士どもを呼び出し始めたらこっちも『フォックスファイア』を使う
高速詠唱や属性攻撃、二回攻撃の技術も活かす
半数を金剛力士に向かわせて陽動しつつ、もう半数で仮面の武僧に攻撃
逃げ道を無くすように前後左右、そして上空から包囲するように狐火を操るぜ
多少威力は弱くても、一撃当てれば敵の召喚術は中断出来るだろ
「さぁ、どうやって避ける?頑張らないと燃えちまうぜ!」



左腕を斬り落とされたにもかかわらず、武僧の攻撃は衰えることはなかった。
 グワ――――ッ!
 片腕ながらも錫杖を振るい、武僧は猟兵たちに襲い掛かる。
「なんという覇気! さすがは鬼を率いている存在ですね!」
 敵ながらあっぱれ、と言わんばかりにソラスティベル・グラスランは感嘆の声をあげた。
 こんな時、英雄譚の彼らならばどうするか。
 考えるまでもない、とソラスティベルは首を横に振る。
 ――勇気を持って、打ち倒す。ただ、それだけだ。
 二体の金剛力士が召喚されれば、誰かがその攻撃を引き付けつつ隙をついて武僧を攻撃して金剛力士を消滅させ、狛犬が現れればそれに一早く気づいた猟兵の声かけで回避を試みる――相手は強敵ではあったが、同じ戦場に居合わせた者同士、猟兵たちは自然と連携をしながら戦いを続けていた。
「ははッ、面白くなってきやがった」
 相手に不足はねぇ、と不敵な笑みを浮かべる黒金・華焔は召喚した狐火を弄びながらもその蒼い瞳はじっと見定めるかのように敵の動きから逸らされることはない。
 何か敵の動きに規則性はないか。次の攻撃が予測できる動きはないか。
 華焔は攻撃の手を緩めることなく、その動きから読み取れることはないかと武僧の一挙一動を余すことなく観察していた。
 武僧は左肩を狛犬へと変形させると錫杖を手に一気に猟兵たちへと距離を詰める。
 その視線の先にいたのは――夜神・静流。
 狛犬が静流の首筋に喰らい付いたと思ったが、その牙が捉えた静流は緩やかに宙へと溶けていった。
「何度も同じ攻撃が通用すると思ったら甘いですよ」
 残像が残るほどの速さで攻撃を交わした静流を守るようにコロッサス・ロードスが前に出る。
 足場の悪い田園地帯での戦闘という不利な状況を受け入れ、村人にとって大切な名産品と祭りを守るという先ほどの戦いで見せた猟兵たちの判断。
「村人の命と希望を共に守る決断、同じ猟兵として実に見事也」
 2メートル近い長身の偉丈夫は豪快な笑い声をあげると愛用の剣を構えた。
 武僧はコロッサスを一瞥すると右手で経典を取り出し、何度目かの読経を上げ始める――が。
「その動き、見切った!」
 相打ちをも辞さない覚悟でコロッサスはその大きな身体に似合わないスピードで一気に武僧の懐に飛び込む。そして、紅い炎のような神々しい輝きを放つ神剣で武僧に斬りかかった。
「我、神魂気魄の閃撃を以て獣心を断つ」
 暁を思わせる輝きを持ったその美しい剣が放った一撃は捨て身の一撃。渾身の力を込めた黎明の剣を避けることも出来ず、武僧は読経を止めて錫杖で受け止める。
(「この流れだと、きっと次は金剛力士たちが出てくるんだぜ」)
 戦闘知識を生かして次の攻撃に備える華焔の予想通り、読経を邪魔された武僧は苛立った様子で金剛力士たちを呼び出した。そして、阿形と吽形の攻撃の狙いは、読経の邪魔をした相手、即ちコロッサス。
 だが、敵の攻撃を予測していた華焔はにやりとほくそ笑むと狐火を召喚した。そして、逃げ道を無くすように前後左右、そして上空から包囲するように狐火を操り、金剛力士を追い詰める。
「さぁ、どうやって避ける? 頑張らないと燃えちまうぜ!」
 楽しそうに狐火を操る華焔とは対照的に阿形と吽形は苛立った様子で狐火をかわそうと闇雲に拳を振り回す。だが、武僧に攻撃が当たらないので金剛力士たちが消滅するには至らない。
「大丈夫! 攻略法は知っていますよ!」
 胸を張ってずいっと金剛力士たちの前に出てきたのはソラスティベルだった。
「勇気で攻め! 気合で守り! 根性で進む! 我ながら一部の隙も無い、完璧な作戦ではないですか!」
 気合を全身に滾らせ、絶対に退きはしないという決意を胸にソラスティベルは臆することなく敵を――阿形を見つめる。阿形は突然前に出てきた少女に向かって振り上げた拳を渾身の力を込めて振り下ろそうとした。
 避けろ! 無茶だ! と言ったのは誰か。
 だが、ソラスティベルは退かなかった。だって、これが彼女の勇者理論(ブレイブルール)だから。
「無茶? いいえ、出来るに決まってます。何故ならわたしたちは……勇者なのですから!!」
 ソラスティベルは阿形が振り下ろした腕をバシッと頭上で受け止める。敵の力に押され膝が付きそうになるのを必死に堪えながら、仲間たちに視線を送った。
「早く! そう長くは持ちませんよ!」
 そんな彼女の勇気を見せられては応えないわけにはいかない。
「貴様の相手は俺だ」
 コロッサスは吽形の前に躍り出ると目にも止まらぬ速さで金剛夜叉を素早く振るい、渾身の力を込めた一撃を放つ。吽形はその攻撃を両手で受け止めようとするが、コロッサスの力に押されじりじりと後ろへと下がっていった。
「とっとと消えやがれ!」
 ソラスティベルとコロッサスが金剛力士を抑えている隙をつき、華焔の狐火が武僧を襲う。と、同時に静流もまた素早く胸元から鉄礫を取り出すと武僧の腕を狙って投げつけた。
 二人の攻撃が命中したことで、金剛力士たちが姿を消す。
 鉄礫が命中した腕を押さえ、攻撃した主を睨みつける武僧を静流がキッと睨み返した。
 討ち死にした配下を一顧だにせず、あまつさえもその亡骸を踏み潰すなんて。
「そんな――外道には絶対に負けません」
 帯刀した十六夜に手を添えた静流の背中に純白の羽が生える。――これは、彼女の真の姿の一片。
「破邪の炎よ、我が剣に集え! 悪を討ち滅ぼす力を!」
 静流は武僧へと踏み込むと同時に目にも止まらぬ速さで十六夜を鞘から抜き放った。炎を纏ったその刀身が武僧の鬼の仮面を斬り付ける。魔を浄化する聖なる炎があっという間に武僧を包み込んだ。
 ギャァァァァ……!
 炎に飲まれ武僧は苦しみの声をあげる。しかし、まだしぶとく武僧は立っていた。
「潔く、倒れなさい!」
 ぐっと溜めていた力を全て開放し、ソラスティベルはサンダラーを武僧の仮面を叩きこむ。鬼の面が割れると同時に武僧はゆっくりと地面に倒れこんだ。
「最後に勝つのは、勇気あるものです!!」
 勝利を素直に喜んだソラスティベルは嬉しそうに共に戦った仲間たちを振り返ると口を開く。
「さぁ、みなさん! 急いで村へ帰りましょう! 林檎祭りが待ってますよ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『祭りだ祭りだ』

POW   :    力仕事に加わる、相撲などの興行に参加する

SPD   :    アイデアを提案する、食事や飲み物を作る

WIZ   :    祭りを宣伝する、歌や芸を披露する

👑11
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村へ戻った猟兵たちを出迎えたのは笑顔の村人たちと、山積みにされた大量の林檎だった。
「ようこそ、我らの林檎祭りへ!」
 祭りの準備も無事に終わり、1年ぶりの林檎祭りが無事開催できたことに猟兵たちもほっと胸を撫で下ろす。
「おや、そこのお人。よかったら祭りを楽しんでいっておくれよ」
 村人に声を掛けられ、ふっと顔をあげると、視線の先には山積みにされた林檎がどーんと鎮座していた。
「うちの村の林檎はそのまま食べても美味いよ! 試しに一つ食べてみるかい?」
 何個食べることが出来るかな? と笑う村人に勧められるまま綺麗に紅く色づいた林檎へ手を伸ばそうとすると今度は甘い香りが鼻をくすぐる。
「あっちにあるのは去年の創作料理大会の優勝料理だ」
 何でも煮詰めた林檎を餅にのせて食べる料理だという。林檎餅、とでもいえばよいのだろうか。
 初めて見る料理に興味があったが、先程の村人の台詞の中に気になる単語があったので問い返した。
 ――創作料理大会?
「あぁ、この祭りのメインともいえる企画でなぁ。林檎を使ったオリジナルの料理を作ってもらうんだ。林檎はうちの村で採れたものを使ってもらうが、その他の材料や調味料なんかの持ち込みは自由だ」
 あんたも挑戦してみるかい? と問われ、うーんと暫し考え込む。
 時間も限られている中、一番気になるものに挑戦したいが果たしてどれが良いか。

 ――楽しい祭りは、まだ始まったばかりである。
ガタリ・フラックハート
林檎だいすき。

無事に林檎祭が開催できて良かったです。
ぱーっと賑やかに楽しみましょう。
おっとこれは林檎の山積みですね。
何個食べることができるかなと言われると
修行中の身として
挑戦せざるを得ないですね!ええ!
味わって食べたいので数は控えめに、
歳の数だけチャレンジします。
あ、はい、17歳です。年上に見られがちだから驚かれるかもしれないです。
食べ方はわりと綺麗な方ですよ
(芯ごとむしゃむしゃ)
すごく美味しいですと村の人に感想を伝えて
「お土産にいくつかもらっていいですかね」とマジな目で頼み込みます。
お代は体で払いますから(力仕事の申し出)


ソラスティベル・グラスラン
はむっ、あむっ!おいしいっ、林檎おいしいです!
こんなに林檎が採れるなんて、改めて素晴らしい村ですね!
ふふふ、こんなにも歓迎されてしまっては無下には出来ません…!

しかし歓迎されっぱなしというのも、少々心苦しいですね…
民を救うのは勇者としては当然、謂わば奉仕。
であれば!林檎の対価に体を動かすのは当然でしょう!
何かいい切欠は……むっ、相撲ですか?
ほう、ならばここはわたしに任せてください!皆さんを楽しませてみせましょう!

相撲に飛び入り参加、自慢の怪力が火を吹きます!えーい!
誰が来ようと負けはしませんよ!何人同時でも大丈夫です、相手が猟兵でも!
誰の挑戦でも受けますともっ、なぜならわたしは勇者ですから!!


月隠・望月
村も、林檎も、守れた。これで、任務完了。おつかれさま
林檎祭り、無事に開けてよかった、ね

この祭りの食べ物は、変わったものがたくさん
戦ったあとだから、お腹が空いている……そのままの林檎に林檎餅、色々食べてみたい
創作料理大会で作られる料理も、美味しそう
いろいろな料理を作れるのは、すごい、ね
わたしは料理はしたことがないけど、林檎を運ぶ手伝いならできる
羅刹は《怪力1》、このくらいはお安い御用
……林檎を運ぶ代わりに、料理を分けて欲しいとか、そういう下心はない、よ。ほんとう。大会の料理が食べられたらいいな、とは思ってるけど

帰る前に、家族にお土産を買いたい
林檎に創作料理、いろいろ持って帰れば、家族もきっと喜ぶ



村も、林檎も、祭りも。全てを守れたことに月隠・望月はほっと胸を撫で下ろす。
「林檎祭り、無事に開けてよかった、ね」
 ぽつぽつと喋る彼女に村人たちは嬉しそうに頷いた。
「何しろ1年ぶりの祭りだからねぇ。とはいえ、今年はこんなに林檎がたくさん採れるとは思っていなかったけど……」
 振り返る村人の背後には大量に積み上げられた林檎の山。
 村人は林檎を一つ手に取ると、どうぞ、と望月に渡す。
 礼を言った望月はそっと一口、林檎を齧ってみた。シャリっという心地良い音と共にすっきりとした甘さが口いっぱいに広がる。
「甘い。おいしい、ね」
 抑揚のない声や表情に変化は見られなかったが、望月が喜んでいることは村人にもちゃんと伝わったようだ。
 村人は嬉しそうに好きなだけお食べ、とどんどん勧めると同時に通りがかった人たちを呼び止めては林檎を勧め始めた。
「そこのお兄さんも。そっちのお嬢さんも。よかったら林檎食べていかないかい?」
「私……ですか?」
「ありがとうございます! 喜んでいただきます!!」
 賑わう祭の雰囲気を楽しんでいたところを呼び止められたガタリ・フラックハートは怪訝そうな顔で足を止め、一方ソラスティベル・グラスランは嬉しそうに村人へと駆け寄り林檎に手を伸ばす。
「おいしいっ、林檎おいしいです!」
 はむっ、あむっと幸せそうに林檎を齧るソラスティベルの傍らで、ガタリもまた柔和な笑みを浮かべて幸せそうに林檎に嚙り付いていた。
「すごく美味しいです。幾らでも食べることが出来そうです」
「そうかい、そう言ってもらえると嬉しいねぇ。いっぱい食べておくれよ!」
 村人たちが勧めるままに、ガタリとソラスティベルは欲望の赴くままに林檎に手を伸ばす。
 元々果物全般好きなガタリだったが、この村の林檎は特に気に入ったらしい。固い芯まで残すことなく全て食べていた。
 ――こんなに美味しい林檎、残すなんて勿体ない!
 むしゃむしゃと大好きな林檎を食べる彼は、結局17個(これは彼の年齢の数である)平らげたところでストップ。
 と、ふと林檎を齧る手を止め、ソラスティベルは眉根を寄せて考え込む。
「それにしても、歓迎されっぱなしというのも、少々心苦しいですね……。」
 民を救うことは勇者としては当然の行為であり、いわば奉仕のようなもの。村人たちへの好意に対するお礼として何か良いことはないか。
 ソラスティベルの呟きに望月やガタリも一緒に考え込んだ。
 村人たちへのお礼がしたいという気持ちは彼らも同じ。
「貰うばかりでは失礼ですね。お代――は、体で払いましょう」
 力仕事を申し出るガタリに続いて望月も林檎を運んでいた村人を手伝うために駆け出してゆく。
「わたしは……」
 きょろきょろと辺りを見回すソラスティベルの目に飛び込んできたのは、相撲に興じる人々の姿だった。
「あれは?」
「村の若い衆たちが、酒が入るとみんな相撲をやりたがるんでねぇ」
 飛び入り参加も歓迎だけど、と村人が最後まで言うのを遮り。
「ほう、これはピッタリじゃないですか!」
 ソラスティベルはぐっと拳を握りしめて嬉しそうに口を開いた。
「ここはわたしに任せてください! 皆さんを楽しませてみせましょう!」

 宣言通り、ソラスティベルは屈強な村人たちをばったばったと投げ飛ばす。
 可愛らしい見た目の少女だと思って油断していた村人たちは悔しがり、観衆は大いに盛り上がっていた。
「誰の挑戦でも受けますともっ! 何人同時でも大丈夫です、相手が猟兵でも!」
 次なる挑戦者を求め、立ち上がるソラスティベルの前に出てきたのは、ガタリだった。村人に出場を勧められた彼は断れなかったのだ。
(「相手も同じ猟兵だけど、女の子だし、年下みたいだし……」)
 本気を出すべきかどうか、ガタリが迷っている一瞬の隙をソラスティベルは見逃さない。
 あっと思った瞬間にはガタリの身体は宙を舞い、気が付いた時には地面に倒れ空を見上げていた。
 わぁっと盛り上がる村人たちの声を背に、ガタリはすぐさま立ち上がる。
「――失礼。本気でお相手をしないといけないね」
「望むところですっ! でも、わたしも負けませんよ。なぜならわたしは勇者ですから!!」
 この日一番の大歓声を受け、再びソラスティベルとガタリは真剣な表情でがしりと組み合った。

(「相撲大会、大盛況」)
 沸き立つ人々の声を聞きながら、望月は村人を手伝って創作料理大会の会場へと材料の林檎を運ぶ。
 創作料理大会ではどんな料理があるのだろうか。料理はしたことのない彼女だったが、先程食べた林檎餅もとても美味しかった。この村のおいしい林檎を使った料理はきっとどれも美味しいに違いない。
 ソワソワと気になる素振りを見せる望月に、村人はそういえば、と声をかけた。
「創作料理大会は終わった後に料理の試食ができるんだよ。興味があるなら、お嬢ちゃんもどうだい?」
(「大会の料理が食べられたらいいな、とは思ってたけど。嬉しい」)
 願ってもない誘いを断る理由などない。
 料理大会が終わったら、林檎や林檎餅をみんなにお土産に買って帰ろう。
 そして、今回の任務の報告をしよう。
 鬼の群れの話、鬼面をつけた武僧の話、それからとても林檎が美味しい村の話。
(「きっと、あにさまも、喜んでくれる」)
 大好きな兄の喜ぶ顔を思い浮かべ、心なしか足取りも軽く望月は村人と一緒に創作料理大会の会場へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シシィ・オクトニーア
村人の皆さんがご無事でとても嬉しいです!
肝心の仮面の武僧との戦いには参加できませんでしたけど、お祭りに参加して楽しみつつお役に立ちたいですね。
私は作るより食べるほうが得意なので、お祭りの宣伝に助力しますね。
村人の方々からいただいた林檎を食べて、すっごく美味しいということをアピールします。
林檎でも品種が異なるのもあるかも?
可能であれば、林檎を一口サイズに切り分けて試食会みたいなことをしてみたいですね。
酸味や香り、食感など違っていれば、人それぞれのお気に入りの林檎を見つけることもできるかも?
もちろん、創作料理大会の宣伝もしますよ!
さあさあ、先程おすすめした林檎を使った創作料理が出ますよー!


ミル・リトン
あまーいにおいにつられちゃった!
林檎祭り?すてきすてき、ミルも楽しむの!

林檎をそのまま、しゃくっと齧って
おいしー!あまいー!
しゃくしゃくしゃく、食べる勢いはとまらない!

そっちのスイーツもおいしそうなの
ねぇ村人ちゃん、ミルにもくれる?
お餅はいろんな食材に合うウルトラハイパー万能食だけど
煮詰めた林檎との相性もばっちりなのね!

林檎餅をもういっこもらって、創作料理大会を見ていくの
味見できないかぁ……したいなぁ……


キトリ・フローエ
り・ん・ご……!

ウカ(f07517)と一緒!
あたしは小さい妖精だから
大きいみんなみたくたくさんは食べられないけど
でも、いっぱい楽しみたいわ!

山積みにされた真っ赤でつやつやしてる林檎の山に目を輝かせつつ
林檎餅……!? 食べたい!
あっ、でも、そうね、さすがに一個はあたしが3人?4人くらいいないと食べきれないかも……

!!
あーんのお誘いにぱっと顔を上げ、いそいそとあーん、からの、ぱくり。
甘い林檎の味とお餅の触感に幸せな顔をして
うん、とっても美味しい!
きっとウカと一緒だからもっと美味しいのね

炬燵の上に林檎、その光景を想像して幸せそうに笑って
あたし、あれが見てみたいの。うさぎりんご!


華切・ウカ
キトリちゃん(f02354)と一緒に、林檎祭り!

えへへ、とっても楽しみにしていたのです!
ウカは自分で参加するよりも……食べたいのです!
林檎餅…!噂の林檎餅を…!

ほわぁ、これが林檎餅なのですね!(掲げて見せて)
キトリちゃんも食べ……一個は大きいですね……
ウカのをどうぞ、わけっこして食べましょ!
はい、あーん!

美味しいですねぇ。林檎、買って帰ってまた皆で食べましょ。
こたつの上にみかん、ならぬ林檎。
ウカはチョキンと切るしかできないのですが…きっと誰かが切ってくれるはずです!
うさぎりんご!ウカも見たいです!作ってもらいましょうね!


カチュア・バグースノウ
力仕事を手伝うわ!お祭りなんだから飲食してる人がいるわよね
だったら、給仕を!
任せて、こう見えてウェイター歴は長いの
ビールジョッキだって両手に抱えて持ってけるわよ

せっかくリンゴ祭りなんだから、リンゴ料理やリンゴの飲み物も飲みたいわよね…

落ち着いてきたら、リンゴのお酒いただこうかしら!
食べ物はアップルパイを!
知らない人と乾杯して、いいご機嫌
なーに、あたしの酒が飲めないっていうの〜?
あははは!冗談冗談!タチの悪い酔っ払いにはならないわよ〜


二神・マ尾
林檎の祭りと聞いて美味いもん食べに。
まあ気が向いたらダチにお土産買って帰ってもいいかなー
なんて考えてたら、創作料理大会への挑戦を問われて目をぱちくり。

俺は参戦しねぇよ、なんて逃げようとしたら
視界の隅にアイデアが浮かびませんって顔した料理人が見えた気がして立ち止まる。
気まずそうに頭をがしがしかきながら、浮かんだアイデアを紙に書いて、こっそり机にポン。

林檎とカスタードの餃子レシピ。
餃子の皮に林檎ジャムとカスタードを挟んで揚げる。
冷めたら林檎のソフトクリームを添える。
ソフトクリームにはワッフルコーンを砕いたやつ入れねえ?
うっは美味そ。

料理人が作ってくれたなら、いくつかもらって帰りてえな。


アポリー・ウィートフィールド
おお、これがこの村の、この世界の林檎か。
まずはそのままで一つ。そして待望の林檎餅に始まり、皆の作った創作料理を試食していこうではないか。
機密情報に反さないのであれば、食レポ動画をスマホで撮影してあとでキマイラフューチャーに帰ったらアップロードせねばな…未知の創作料理、是非世界の垣根を超えて分かち合いたいものだ。



「おお、これがこの村の、この世界の林檎か」
 赤く色づいた美味しそうな林檎を目の前に掲げ、アポリー・ウィートフィールドはしげしげと眺める。
 見た目は自分が知っている林檎と大差はない。やや小ぶりに思えるくらいか。
「では、さっそく」
 いただきます、と丁寧に手を合わせ、アポリーはさっそくガブリと景気よく嚙り付いた。
 口にした瞬間、心地良い上品な香りが口いっぱいに広がる。
 他にも色々な品種があるらしい。アポリーは勧められるままに次々と林檎を食していった……ところで彼は突然ハッと手を止めた。
「我としたことがしまった。本題を忘れていた」
 いそいそとスマホを取り出すと、アポリーは食レポ動画の撮影を始める。
 まずは、今回の主役の林檎餅。一口頬張ると、甘酸っぱい林檎とほんのり炙った香ばしい餅の絶妙なハーモニーが口いっぱいに広がった。
 煮詰めた林檎はもっとトロリとしているかと思っていたが、意外にしゃきしゃきと林檎本来の食感が残っている。
 餅もまた、表面はカリっと香ばしいが、中はもちもちとして柔らかく弾力があるのがまた良い。
 見た目以上にボリュームのあるスイーツだが、何個でも食べることが出来てしまいそうなのが恐ろしい。
 林檎餅を平らげたアポリーはご馳走様、と行儀よく手を合わせた
 世界の垣根を越えて、美味しいものを発信し、皆と分かち合う。
 慣れた手つきで動画を撮りつつ、アポリーは誰に言うでもなくポツリと呟きを漏らした。
「美味しいは、正義だな」
 ――さて、次なる目的は創作料理だが……大会開始まで少し時間があるようだ。
 創作料理は全て食するためにも、少し身体を動かした方がよいだろう。
(「今のうちに腹ごなしをしておくか」)
 他にもまだ見ぬ料理があるかもしれない。
 アポリーは未知なる料理を求め人々で賑わう村の中心へと歩き出した。

「り・ん・ご……!」
 つやつやと輝くまっかな林檎たち。
 山積みにされた林檎に囚われてしまったかのようにキトリ・フローエの藍色の瞳は微塵も動かない。
 美味しそう! と林檎を見つめて声を弾ませるキトリの傍らでは華切・ウカは辺りをきょろきょろと見回していた。ソワソワしながら彼女が探していたのは――。
「林檎餅……! 噂の林檎餅はどこでしょう……!」
 話を聞いた時からずっと気になっていた、林檎餅。これを食べずに帰るわけには――と探すウカの髪をツンツンとキトリが引っ張った。
「ウカ、あれじゃないかしら?」
 キトリが指さす先にあったのは、まさしくウカが探していた林檎餅。
「ほわぁ、これが林檎餅なのですね!」
 うっとりとした表情で林檎餅を掲げるウカは早速キトリにも一つ勧め……ようとしてはたと気づく。
 ――この餅はフェアリーのキトリが一人で食べるには大きすぎる。
「さすがに一個はあたしが3人? 4人位いないと食べきれないかも」
 ですよね、と頷くウカに名案が閃いた。
 ポンと手を叩き、ウカは嬉しそうにキトリに向かって口を開く。
「では、ウカと一緒に分けっこしましょう」
 ウカは器用に林檎餅を切り分けるとあーん、とキトリの口元に差し出した。
 キトリは嬉しそうに林檎餅をぱくりっと頬張れば、しゃっきり甘い林檎ともちもちしたお餅の食感に無意識のうちに顔が綻んでいく。
「うん、とっても美味しい! ねぇ、ウカも早く食べてみて!」
「はい、いただきますね!」
 キトリに急かされながらウカもぱくりと林檎餅を頬張った。
 これが、噂の林檎餅。念願の林檎餅は香ばしいお餅と甘くて、ちょっと酸味もある林檎ジャムのような餡が絶妙にマッチした、とても美味しいお餅だった。
 お餅を食べた二人は試食用の林檎をしゃくしゃくと食べながら幸せ気分に浸る。
「美味しいですねぇ。これ、お土産に買って帰って、また皆で食べましょうか」
 ウカの言葉にキトリは二つ返事で大賛成。
 こたつの上にみかん、ならぬ林檎を乗せて。
 皆で一緒に食べたら、どんなに幸せなことだろう。
 ねぇねぇ、とキトリはウカの耳元でそっと囁いた。
「ウカ。あたし、あれが見てみたいの」
 何ですか? と微笑むウカにキトリは嬉しそうに告げる。
「うさぎりんご!」
「わぁ、ウカも見たいです!」
 残念ながらウカはチョキンと切るしかできないが……でも、きっと誰かが上手に可愛く切ってくれるはず。
「帰ったら、誰か作って、ってお願いしてみましょうね」
 ――とっておきの美味しい時間は、大切な仲間と分け合いたいから。
 美味しい思い出をお裾分けするため、ウカとキトリはお土産用の林檎と林檎餅を買いに行こうと、再び人々で賑わう雑踏を駆けていった。

 口いっぱいに広がる、甘い甘い林檎の果汁。
 村人から勧められた林檎を一つ食べ、シシィ・オクトニーアはまぁ! と驚き口元に手を添える。
「わ、本当に美味しい……! すっごく、すっごく美味しいです!」」
 ぐっと両手を握って力説するシシィに村人も嬉しそう。
 幸せな気分で林檎を食べるシシィだったが、ふと擦れ違う人が持っている林檎が自分の食べているものと別の品種であることに気づいた。
「これ、品種の異なる林檎もあるんですか?」
 小首を傾げて尋ねるシシィに村人は気前よくどうぞ、と違う品種の林檎を差し出す。
シシィは有難くその林檎を頂戴してさっそく食べ比べ。やはり品種が異なると同じ林檎も味や印象が全然違う。
「皆さんにもぜひ食べ比べていただきたいですね」
 例えば、林檎を一口サイズに切り分けて試食会とか。
 シシィの提案をその場で採用し、村人は試食会の準備に取り掛かった。
 瞬く間に品種ごとに一口サイズに切られた林檎が皿に並ぶ。
「さぁさぁ、皆さん、お一ついかがですか?」
 キラキラと輝く白い髪を揺らし、にっこり笑顔でシシィが林檎の宣伝を行えば、彼女の声に誘われて一人、また一人と試食用の林檎に手を伸ばした。
 あっという間に林檎は一つ減り、二つ減り……みるみるうちにお皿の林檎は空っぽに。
「た、大変! 試食用の林檎、追加お願いします!」
 シシィの声に村人が新しい試食用の林檎を追加する。
「是非お気に入りの林檎を探してくださいね」
 行き交う人々に林檎を勧めながら、こっそりとシシィもお気に入りの林檎を頬張った。
 シャリシャリと噛むたびに、幸せな気持ちで心が満たされる。
(「この村を、この林檎祭を守れて本当に良かった――」)
 そして、林檎祭を楽しませてもらったお礼のために再び彼女は声を張り上げた。
「さあさあ、この林檎を使った創作料理大会も始まりますよ! そこの貴方、よろしければ大会に参加してみませんか?」

 時刻は少し前へと遡る。
 甘い林檎の匂いに誘われるがままに、ミル・リトンはひらひらと村の中を飛び回っていた。
「うわぁ、美味しそうなスイーツがいっぱいあるのー!」
 キラキラと輝くミルの琥珀色の瞳は皿いっぱいに盛られた林檎餅に釘付け。
「ねぇねぇ、村人ちゃん。そのスイーツ、ミルにもくれる?」
 ミルの可愛らしいおねだりを断るような無粋な村人などいるわけない。
 食べやすいように小さく切ってもらった林檎餅を一口齧り、ミルは満面の笑みを浮かべて相好を崩す。
(「お餅はいろんな食材に合うウルトラハイパー万能食だけど、林檎との相性もばっちりなのね!」)
 パクパクと美味しそうに林檎餅を頬張るミルの前に、すっと林檎が一つ出てきた。
「可愛らしい妖精さん。甘い林檎、お一ついかがですか?」
 シシィが差し出した試食林檎はフェアリーのミルが食べるのにぴったりなサイズ。
「ありがとう! いただきまーす♪」
 林檎を手に取り、しゃくっと齧ってみれば思った通り甘くて、美味しくて。
 しゃくしゃくしゃくしゃく。ミルの食べるペースは止まらない。
「さあさあ、この林檎を使った創作料理大会も始まりますよ!」
 宣伝の声にミルは食べる手を止めパッと顔をあげた。
「え? 創作料理? いいなぁ、味見したいなぁ……」
 ミルの呟きを聞いた宣伝の声の主――シシィは彼女と目線を合わせてさらに魅力的な誘いを告げる。
「ふふ、試食の時間があるそうですよ。よろしければ、一緒に行ってみませんか?」
「ほんと!? 行く行くー!」
 その前に、っとミルはもう一つ林檎餅を貰い二人は急ぎ創作料理大会の会場へと向かうのだった。

「そこの貴方、よろしければ大会に参加してみませんか?」
 突然、創作料理大会への参加を誘われ、二神・マ尾はパチパチと2回瞬きを繰り返した。
「は!? 俺!!??」
 唐突な誘いに戸惑いつつも、マ尾はパタパタと顔の前で手を横に振る。
「俺はそーいうのはいいから。参戦しねぇよ」
 じゃぁな、とマ尾は手に持っていた林檎を一口しゃりりと齧りながらくるりと踵を返した。
 この祭へ遊びにきたのは、美味いもんが食べられそうだからというシンプルで明快な理由。
 創作料理大会への出場なんて……と思っていたマ尾だったが、視界の隅に映った人物を見て思わず足をとめる。
 彼の視線の先にいたのはこの創作料理大会の出場者だろうか。
 アイディアが浮かばないのか、困ったような泣きそうな顔をした料理人を見た瞬間、マ尾の頭にあるレシピが思い浮かんだ。
 例えば、餃子の皮に林檎ジャムとカスタードを挟んで揚げた林檎餃子なんてどうだろうか。砕いたワッフルコーンの入った林檎のソフトクリームを添えたら絶対に美味いスイーツの出来上がりじゃねぇ?
(「ったく、しょーがねぇなぁ」)
 手近にあった紙にふっと浮かんだアイディアをメモ……しようとして、はたとマ尾の手が止まる。
「この時代、餃子の皮とか、あんのか……?」
 粉はあるだろうから、水を加えてよく捏ねたものを薄く丸い形に延ばせば出来るだろう。
 林檎ジャムはさっき食べた林檎餅に使ってた餡がほぼ同じだからこれで良し。
 問題はカスタードクリームだ。
「卵と、牛乳と、砂糖……あんのか? 甘い……甘酒とか代用できるか……?」
(「ちょっと待て。俺、なんでこんなの頑張ってんだ!?」)
 ガシガシと頭を書きながら試行錯誤の末、思いついたレシピをメモに纏め、ネタに詰まっていた料理人が気付くようにポンと机の上に置いて。
「これは……素晴らしい!」
 マ尾の提供したアイディアのおかげでさっきまで暗かった料理人の顔は嘘のように輝いた。そして、彼はすぐさま料理に取り掛かる。
「美味しいの出来たら、俺にも分けてくれよな」
 ダチへのお土産にするか、とマ尾はスイーツの完成を楽しみにしながら創作料理大会の会場をもう一回りするのだった。

 今年の創作料理大会は、小麦粉を練った薄皮で林檎と豆乳の餡を包んだ揚げ菓子が優勝して幕を閉じる。
 発想が斬新だと審査員一同大絶賛した料理をぜひ食べたいと村人たちや祭の来訪者だけでなく、猟兵たちも皆こぞって手を伸ばした。
 そして、そのまま大会会場では宴会が始まるのは必然といえよう。もちろんお酒も欠かせないのは言わずもがな。

「はーい、今、持っていくわよー!」
 村人たちに交じって給仕を手伝うカチュア・バグースノウの明るい声が会場に響く。
 ウェイターとしての経験を活かし、カチュアは複数の徳利をお盆に載せてお酒のおかわりを所望する村人たちの元へ、酒を次々と運んでいった。
「お姉さん、うちの村の林檎はもう食べたかい?」
「ええ、さっきいただいたわ! 話には聞いていたけど、本当にとても美味しいのね」
 今回の給仕はその林檎のお礼。
 村人の問いに、にこりと微笑むカチュアに今度は別の村人が声を掛けた。
「じゃぁ、この酒はどうだい?」
 飲むか? と村人が掲げた徳利を見てカチュアの目の奥がキラリと光ったのは気のせいではないはずだ。
「あら、もしかして林檎のお酒かしら?」
 味見のつもりで1杯だけ……とカチュアは勧められるままに杯を受け取るとぐっと勢いよく煽る。
「美味しい!!」
 すっきりとした辛口の日本酒はカチュアの良く知るビールやワインとはまた違った味でとても飲みやすい。
 村人たちもまた、カチュアが酒のいける口だと知るや否や、わっと取り囲んであれやこれやと酒を勧めだした。
「いえーい、乾杯~!」
 次々と杯を空け、すっかり上機嫌になったカチュアは周りの人たちとカチャン、カチャンと杯をぶつけては次々と酒を飲み干していく。……と、ここでカチュアはふっと甘いものが欲しい気分になってきた。
「ちょっとお腹がすいてきたわね……ねぇ、アップルパイ、ない?」
「あっぷるぱい??」
 カチュアの問いに、村人たちはきょとんとした顔で酒を飲む手を止め、互いに顔を見合わせる。
「あなたたち、アップルパイ知らないの!?」
 驚きを隠せないカチュアだが、よく考えればこの時代にアップルパイはないかもしれない。
 どんな料理なのかと矢継ぎ早に質問を投げかける村人たちに、カチュアはアップルパイについて説明しようとしたが……止まらぬ質問に答えるのがだんだん面倒になってきた。
「仕方がないわねぇ、今度持ってきてあげるわよ!」
 カチュアの言葉に村人たちは大喜びでわぁぁっと歓声が沸き上がる。
(「あら? アップルパイを食べたかったのは私のはずなのに……」)
 まだ見ぬ料理に期待を寄せ、はしゃぐ様子の村人たちを横目にカチュアは一人首を傾げるが、すぐにまぁいいかと思い直す。
 そして、すっかり村人たちと意気投合したカチュアは景気よく杯を空けた。
「さぁ、まだまだ飲むわよ~!」

 すっかり日も暮れて、ぽつりぽつりと提灯の火が灯り始めたころ、お土産の林檎やお菓子を抱え、猟兵たちもまた家路へ着く。
 この林檎の里で、また来年も楽しくて美味しい祭が開かれることを祈って。
 ――ご馳走様でした!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月25日


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#サムライエンパイア


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト