迷宮災厄戦⑫〜それは俺の卵だ
●蛋白質は足りているか
「リョーヘーとかいう奴ら、そろそろ来るんジャバ……?」
「なんか大勢で襲い掛かって来ては好き放題していくらしいジャバ、恐ろジャバ……」
のどかな田園を思わせる広大な麦畑の間を、オウガの一団が肩を落として歩いていた。
猛獣のような姿形に反して足取りもおぼつかなく、見れば見るほど頼りない。
「でももし逃げたりしたら、オウガ・オリジン様が……そりゃもうジャバっと」
オウガの一体がぶるぶるっと身体を震わせる。どうやら少し前にジャバっとされちゃった所を見てしまったらしい。
震えは他のオウガ達にまで伝わり、まるで生まれたての小鹿のようだ。
「いったいどうしたらい……ジャバ?」
一段と深く肩を落として俯くオウガの視線の隅に、ガチョウが1匹座り込んでいた。
「グワッ」
オウガ達の視線に気が付くや否や、さっと立ち上がり駆け去っていく……と、ガチョウの座っていた場所に卵が1つ産み落とされていたことに気が付く。こんな時だが景気のいい金色だ。
「せめて腹ごしらえしておくジャバ」
よく考えたらもう何日も食べていない。卵をつまんで、丸ごと飲み込んだ。すると。
「フオオオオオオオッ!!」
「ど、どうしたジャバ?お腹痛いジャバ?」
突然の叫びに振り向いた仲間のオウガは、同胞の変貌に目を見開いた。
膨れ上がる筋肉、自信に満ちた眼差し。さっきまでパサパサだった毛皮もワセリンよろしくツヤッツヤだ。
「ち、力が!力が溢れジャバ……!最早何人もジャバを止めることはできねえ!リョーヘーでもカンペーでもどんっとこいジャバ!」
「な、なに言ってるのかわかんないけどすごい自信ジャバ……!」
周りを見れば、先程と同じダチョウがあちこちで金色の卵を産みまくっている。
「こ、これは……!」
●生卵は5個
「あと生肉だよな、一頭丸ごとをペチペチっとよ!」
その場の半数がきょとんとした顔をしたことに、ガン・ヴァソレム(ちょっと前流行ったアレ・f06145)と残り半分は深い悲しみを抱いた。
「ま、まあ悪いが今回は生卵じゃねえんだがよ」
気を取り直して戦場の画像を展開する。広大な麦畑のようだ。
特に地形の障害もなく、行動を妨げる者はないように見える。
強いて言うなら……なんか妙に鳥が多い。アヒル?
「ガチョウらしいぜ、そいつらが今回のキモだ。足元見てみな」
拡大すると、ほとんどのガチョウが足元に金色の卵が落ちている。
「中身まで純金の高級品だが、こいつは持ち主の力を増幅するらしい。しかも数揃えるほど効果大だ。敵のオブリビオンは元々大して強くないが、こいつをかき集めて対抗してくる」
画像の端には卵を手にしたらしいオウガが1体写っている。確かに他のオウガと同種とは思えない程に大型化し、凶悪な顔つきになっている。
「ただこの卵な、俺様達の方にも効くんだとよ」
戦場は広大な田園、金の卵を産むガチョウはそこらじゅうにいる。
つまり、卵を多く保持している方が有利に戦いを進められるというわけだ。
「あ、お前らは丸呑みやめとけよ?生卵の人だって保険入ってたんだから」
純金の卵なら、比重を考えると1個でも約2キロ。胃もたれどころではない。
胃薬を後ろ手に隠し、猟兵達は卵争奪戦に備えた。
荒左腕
荒左腕(あれさわん)です。よろしくお願いします。
最新作も好きだけど古典もいいですよね、おうち時間にどうぞ。
アリスラビリンスでの戦争となります。
特殊な環境のため、プレイングボーナスの比重が高くなります。
●「プレイングボーナス」について
本シナリオでは以下の行動に基づく行動をとることで有利な結果を得ることができます。
プレイングボーナス……『黄金の卵をオウガに取らせず、自分達が取る。』
OPの通り、敵も味方も卵を持っている数に応じてパワーアップします。
(この戦場限定の効果となりますので、ご注意ください)
ガチョウはそこかしこにいてポンポン卵を産むので、その場その場で取り合いが発生することになるでしょう。
また、敵は卵を丸呑みしていますが、猟兵がやるには結構な危険が伴うため、持ち運び方も大事なポイントです。
※具体的には「どんなUC・技能を使って対処」より「どんな理屈(既存のルール・物理法則である必要は全くありません!)で対処」の方が活躍できると思います。
敵については、OP及びオブリビオンのデータをご確認ください。
数は多いですが元々大した敵ではないため、卵の取り合いに勝利できれば苦も無く倒せるはずです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『ジャバオウガ』
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POW : 喰らいつく顎
【噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : かきむしる爪
【爪】による素早い一撃を放つ。また、【翼を限界まで酷使する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 燃え光る眼光
【視線】を向けた対象に、【額のクリスタルから放たれるビーム】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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フィルマリナ・ガラクシア
アドリブ連携歓迎
黄金の卵……?それはつまり、お宝では?
お宝なら私の物と言っても過言ではないのだわ、海賊的に!
お宝ある所に海賊あり、逆もまた然りね。
ガチョウさん達も折角産んだ卵をジャバオウガに丸呑みされるのは嫌でしょ?
[動物と話す]でガチョウさん達に卵の保護を約束するわ。ええ、これは保護よ、保護!
わぁ凄い、お宝の山が出来てる……って産みすぎなのだわ?!
こんなの両手じゃ持ちきれないし、ジャバオウガは寄って来るし、近くの猟兵に持てない分は預けてジャバオウガのお腹をぶん殴って卵を吐き出させてあげる!
……預けただけだから、後でちゃんと返してよ!
(ガチョウさん達の視線が痛い)
「折角生んだ卵を丸呑みされるのは嫌でしょ?だ・か・ら!私が保護してあげるのだわ!」
フィルマリナ・ガラクシア(銀河の落とし子・f26612)は身振り手振りを加えてガチョウを説き伏せていた。
当のガチョウと言えば、方々に散らばった金の卵を見てテンションの上がりきった彼女が
「お宝あるところに海賊あり!つまりはお宝だったら私の物と言っても過言ではないのだわー!」
と叫んでいる所から見ているので冷めた顔である。と言って、卵の次は自分を食べようとしているオウガにやるよりずっとましだ。
「グワッ」
YESかNOかも曖昧な返事をすると、足元の卵をフィルマリナに蹴飛ばした。
「やったあ!さぁお宝お宝あといくつ……ってめちゃめちゃいっぱいなのだわ!」
卵の大きさは拳大。両手に抱えても数個が限度だろうし、そもそもそれでは戦えない。
「ようし、ジャバもモリモリマッチョになってハクいスケとムチュムチュするジャバ!」
フィルマリナが頭を抱えだしたその時、視線の隅で心底頭の悪そうなジャバオウガが卵を1つ拾い、ごくんと丸呑みするのが見えた。
「こら!あんたに私のお宝をやる気はないのだわ!ついでに食べた分もいただきなのだわ」
それはそれ、これはこれ。天才的な切り替えの早さでジャバオウガに向かったフィルマリナは、片手に卵を持ったままその右拳を繰り出した。
「北斗七剣星(セブンス・シグナル)……ゴーッ!!」
海を往く者が持つ3つの導き、星と波と自身の勇気が拳に宿り、障害を打ち砕く力となる。
「あごッ!?……オろろろろろ」
純金を握りこんだ重い一撃を鳩尾に受け、胃の中身(リプレイでは画像を虹色に加工してあります)をぶちまけるジャバオウガ。
「あぅ……ちょ、これ誰か持っといて!後でちゃんと返してよ!」
(虹色に加工してあります)に塗れた卵を近くの猟兵に蹴り出し、フィルマリナは次のお宝を探し始めた。できれば綺麗な奴を。
成功
🔵🔵🔴
箒星・仄々
語尾が可愛らしいですけれど
人喰のオウガさんなら情けは無用ジャバ(笑
骸の海へお還りいただきましょう
摩擦抵抗減じ
高速滑走でどんどん卵を集めます
空中遊泳のランさん伴走
卵はランさんの両脇にぶら下げた籠へ
沢山持てますよ
敵襲撃時ランさんは回避行動
爪をつるっと鱗で受け流し:UC
華麗なドリフト&魔法の残像分身で回避
取り合い時は卵をぺろ
これで持てないジャバ
勿論自分が持つ時は解除
大型化オウガさんの懐に潜り込みぺろ
お腹の摩擦抵抗がなくなったら
食べたものを留められませんよね
卵を吐き出してもらうジャバ
因みに涎や胃液まみれの卵は
三魔力の洗浄乾燥で清潔にしてから籠へ
戦闘後は麦畑で爪弾き
オウガさんたちの冥福を願います
よい夢を
「はいはい、お預かりしま……洗ってからに欲しいなあ」
卵を受け取ったのは箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)である。
傍らに浮かぶソードフィッシュ、ランさんこと「カッツェンランツェ」に持たせた籠に――さすがにあんまりなので水の魔法で丸洗いしてから――卵を放り込む。
「それではこちらも」
靴を脱いで裸足になると、後ろ脚の先をぐいとつまんでぺろぺろと舐め始める。
ただの毛づくろいに見えても立派なユーベルコードだ。こうして手入れした部位は摩擦抵抗がほぼゼロになる。
「さぁ、いきましょう」
豊かな田園をスケートよろしく滑りながら、仄々は卵を拾い始めた。
見つけた卵を前脚でえいっと弾き、すぐ上を並走するランさんが受け取る。
息の合った動作で僅かな間に数個の卵をかごに入れた仄々の前に、巨大なジャバオウガが立ちはだかった。
「卵を探しに来たら猫とお魚まで!今日はごちそうジャバ!」
既に卵を飲み込んだのか、他より二回りは大きな体を機敏に動かしながらとびかかってくる。
「いいえ、今日でお還りいただきます」
仄々は滑るように爪の一撃を躱し、すれ違い様に敵の足元にもぺろりとユーベルコードを舐めこんだ。
「何を……ジャバっ!?」
綺麗に半回転して頭から転ぶジャバオウガ。仄々と同じように摩擦がなくなり、片足とはいえ立ち上がるのも一苦労だ。
「あなたの卵もいただきましょうか……」
このユーベルコードはなかなか融通が利く。例えば、消化器官の摩擦をなくせば、食べたものを留められずにそのまま出すことだってできるだろう。が。
(よしましょう)
そのためにどこをペロペロしなくてはならないかを考え、仄々は被りを振った。
これ以上美しい田園を虹色にするわけにもいかない。
「ランさん」
傍らのソードフィッシュに呼びかけ、ジャバオウガへ鋭い一刺しを繰り出す。
しかし、仄々が失念していた事がひとつある。金の卵は全てランさんが持っているのだ。
「ジャバッ!?」
ランさんは既に通常の数倍の長さを備え、陸上とは思えない程脂の乗り切った、まさに大海の王者であった。
狙い違わずジャバオウガの腹部を貫いたランさんは、溢れるパワーのままにジャバオウガを四散させる。
「……ランさん?」
そのままかっ飛んで行った相棒の姿を見て、仄々はこれから卵運びどうしようかな、とずれた感想を抱いていた。
成功
🔵🔵🔴
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
黄金の卵を生むガチョウですか。何とかという物語にそういう存在が書かれていたような覚えはありますが……まあ、それは今気にする事ではないでしょう
卵を探しながら敵に近付いていく
見つけた卵は右腕の腕輪から鎖を伸ばし、『ロープワーク』の要領で巻き付けて『運搬』。『怪力』任せで引き摺っていく
右手が使いづらくなるが、その分パワーアップできるなら良し
敵は左手の黒剣で攻撃
もし卵の重量で動きが遅くなるなら、要所で【死を告げる暗影】を使用
敵の背後に瞬間移動することで移動と回避、攻撃を一気に行う
敵の攻撃はできる限り回避、避けられないなら『オーラ防御』で防ぎ、此方の攻撃時に『生命力吸収』でダメージを回復
別の場所では、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)も違和感を感じ始めていた。
散らばった卵を拾い、右腕の腕輪に備わった鎖を浮き球の要領でぐるりと縛る。
複雑だが頑丈な縛り方にも慣れ、卵の数が10を超えた頃。
「……軽い?」
既に子供1人分の重量を引きずっているはずの右手が、全く重さを感じない。
それどころか、普段より体が軽くなるのを感じていた。
「これが金の卵の効果ですか……」
だが違和感はこれに留まらない。卵の数が増えるごとに体中から力が沸き上がり、さらには身体がほんのり光り出している気がする。
(なんだ……なんだこの感覚は!?ハチャメチャが押し寄せてくる!)
「あっコイツ、卵いっぱい持ってるジャバ」
「全部奪って食べちゃうジャバー」
能天気に向かってくるジャバオウガ達に対し、クロスの身体は咄嗟に反応した。
「逃さない、これが、俺……お!?」
左手を大きく開いて放つクロスの魔弾……がいつもの数倍でかい。
派手な光や音と共に炸裂し、周囲が爆煙に巻き込まれた。
「ジャバッ!?奴はどこジャバ!?」
慌てふためくジャバオウガの背後に、ヴンッ……と残像を残してクロスが現れる。
「波ァーッ!!」
いつも通りに振ったはずの黒剣から、大きな衝撃波が発生する。
その衝撃に呑まれ、2匹のジャバオウガは剣に触れることなくまとめて吹き飛んだ。
「フッ、てぇした事ねぇ……ハッ!?」
威力とかの問題じゃない。明らかに別の技になっている。
(過ぎた力が身を滅ぼす、こういうことだったのですか……!)
違うけど多分合ってる。気が付くと逆立ち始めた髪の毛を必死に撫でつけつつ、クロスは次のオウガを探し始めた。早く片をつけなければ、このままでは強ェ奴を見てワクワクしてしまう。
成功
🔵🔵🔴
フェルト・ユメノアール
うーん、卵の確保と相手の妨害
両方やらないといけないのが難しい所だね
でも、大丈夫!道化師に不可能はないんだよ!
ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!
カモン!【SPタンブルタイガー】!
『トリックスター投擲』でジャバオウガを妨害しつつ
『動物使い』でタンブルタイガーを華麗に操り、ガチョウを威嚇したり、進路を塞いだりすることで
敵の方にいかないよう誘導&卵を確保しやすいよう一ヶ所に集める
そして、タンブルタイガーのマフラーを風呂敷のように使って見つけた卵をその中に素早く収納していく
ちょっと重いだろうけど我慢してね?
十分に卵を集めてパワーアップしたらジャバオウガを攻撃!
喰らえッ!必殺の黄金十字斬!
しかし、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は、自身のアイデンティティ危機に揺れ動くクロスを見ていたくワクワクしていた。
「いいなー!ボクも限界突破したいなー!」
そのためには卵の確保、そしてジャバオウガ達の妨害だ。
フェルトはソリッドディスクを展開すると、カードを装填する。
「ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!カモン!【SPタンブルタイガー】!」
ソリッドディスクを介して真っ赤なマフラーを巻いた白虎が出現し、くるりとトンボ返りを打った。
「さぁ、ショータイムだ!」
白虎は麦畑を軽々跳びまわり、次々と卵を咥えて首のマフラーに包んでいく。
フェルト自身もナイフを投げながらジャバオウガ達を牽制し、その場の卵はほぼランブルタイガーが独占する形となった。
「生意気な猫ジャバ!俺様がペシャンコにしてやるジャバ」
慌てふためくジャバオウガ達を蹴散らして、二回りは大きなジャバオウガがフェルトの前に現れる。どうやら他の場所で卵を溜め込んできたようだ。
だが、フェルトは動じない。懐の布をランブルタイガーに被せると、道化らしく恭しくお辞儀のポーズをとった。
「レディースアンドジェントルマーン!たっぷり卵を抱えたこちらのタイガーちゃん、布を取ったら果たしてどうなっているでしょう?それでは発表、スリー・ツー・ワン……」
合図とともにぱっと布を外すと、
「……あっ、思ったより大きく」
そう、虎だ!鍛え上げた鋼の肉体を金色のマントに包み、ランブルタイガーは今、四角いジャングルの虎となったのだ!
「大きさの問題じゃないジャバ!一体どうなってるジャバ!?」
「こっちが聞きたいよ!まあいいや、やっちゃえ!」
ジャバオウガの身体を駆け上がって跳んだランブルタイガーが、急降下からのかかと落とし……と共に横から頭部を挟み込むように膝を叩きこむ!
「決まったァーッ!
強襲からの多段攻撃、これがタイガーの新フェイバリット・黄金十字斬だーッ!!」
頭蓋を砕かれ、崩れ落ちるジャバオウガ。
そういう技だったっけ?とフェルトは解説しながら素に戻ったが、深く考えない事にした。
成功
🔵🔵🔴
シンシア・コレット
あらあら、ジャックと豆の木のガチョウさんかしら、可愛らしいわね
折角だし、うちの子になってくれたりは…しないわよね?ふふ
ああ、でも私あまり争い事は得意じゃないし
ジャバオウガちゃんをお仕置きするのは他の方にお任せしちゃっても、いいかしら?
その代わり、荷物持ちはお任せしてね、きちんと集めてお届けするわ
私ね、素敵なもの持ってきたのよ(にこり)
ああ、そうだ…ご一緒する方々、少ぉし前方にはご注意してね?
――手折らば手折れ 思い出草 浄玻璃の花よ 導となりて乱れ咲け
※見えない蔦薔薇で見えない迷路を作り出すUCで敵の行動阻害をしながら
持参した小さめの木製のフラワーワゴンで金の卵を集めていく
フィリア・セイアッド
絵本に出てきそうな風景ね
どこか目をきらきらさせ 辺りを見渡した後、頬をぺちぺち
…だめだめ、お仕事なんだから
卵を集めて オウガをやっつけなくちゃ、ね
【SPD】
「青星の輝き」で天狼を召喚
卵を運んで と相棒につげて
シンシアねえ様(f05300)と協力して卵集め
できるだけ 周りに被害が出ないよう
卵は運ぶわ あなた達は避難を
ガチョウたちに声をかけながら
田畑の卵へ向かいそうなオウガの前に ふわりと着地
こっちはダメよ あなた達はおうちに帰りなさい
オーラ防御も使い通せんぼ
ライアを爪弾きながら歌を歌う
破魔の力を上乗せし
薔薇の独唱曲で攻撃
人も花も動物も 皆が穏やかに暮らせる
そんな世界になるように
「あらあら、皆さん大変ね」
他所の騒ぎをまるで意に介さないように、シンシア・コレット(密香・f05300)は卵を拾い集めていた。
――手折らば手折れ 思い出草
浄玻璃の花よ 導となりて乱れ咲け――
口ずさむように紡がれる呪歌。
転送されてすぐに展開した彼女のユーベルコードによって、彼女の周囲には不可視の蔦薔薇が張り巡らされている。
「あいてっ!またチクってなったジャバ……」
「目の前にあるのに届かジャバ……」
広がり続けるそれはやがて麦畑全体を迷宮と化し、ジャバオウガとガチョウ達を分断。
堅牢な壁に阻まれた結果戦闘すら起こらず、彼女は悠々と卵集めを続けていた。
「金の卵のガチョウさん。まるでジャックと豆の木ね」
持参したフラワーワゴンに、卵を1つ。
「折角だし、うちの子になってくれたりは…しないわよね?ふふ」
少し歩いて、もう1つ。邪魔がない分作業も順調だ。
「もう少し集めたら、誰かにお届けしないとね」
経験の少ないシンシアは今回支援に徹し、戦闘は誰かに任せるつもりでいた。
しかし彼女もまた他の猟兵と同じく、卵の効果を見誤っていたのだ。
「でも、皆さん足が速いわね。さっきから全然見えないわ」
ワゴンには既に山のような卵。無意識のうちにすっかり限界突破していたシンシアは、お散歩気分で音速を超え、自身の迷宮と数匹のジャバオウガを跳ね飛ばしながら広大な麦畑を横断していた。
「シンシアねえ様
……!?」
永遠に広がる田園に一瞬目を奪われていたフィリア・セイアッド(白花の翼・f05316)は、風をつんざき地を抉るシンシアのフルアクセルぶらり旅を見て我に返った。
早く事態に収拾をつけなければ、明日からシンシアのあだ名が地獄の新幹線とかになってしまう。
「導きの星よ、私に力を!」
抱えたライアを爪弾くと、遥か星辰の青星と共鳴した旋律が星の回廊を開き、精悍な体躯を誇る天の黒狼を遣わした。
「お願い、ねえ様を追って!」
黒狼はフィリアを背に乗せると低い唸りで応え、凄まじい速度でシンシアを追う。
「ねえ様!」
途中方向転換した(ついでにソニックブームも起きた)シンシアの動きを読んでショートカット。空気の壁を旋律で相殺しながら、ついにフィリアはシンシアに追いついた。
「こんにちは、フィリア。私もうこんなに卵を集めたのよ」
未だ驚異的な速度で「歩き」ながらころころと笑うシンシアに、彼女は何とも言えない表情を返しながらどうにか言葉を絞り出した。
「……ありがとうねえ様、最後は私が」
速度を合わせた天狼からワゴンの上に飛び移り、自身が卵の上に降り立った。
残りのジャバオウガは数体だが、場所が離れている。素早く片をつけるには、この卵の力を借りる必要があった。
脇に抱えたライアを再び爪弾き、フィリアは歌い始める。
――手折れば気づく 君に纏わる紅に
永久に香りし花の香に――
卵の力は等しく無作為に発揮されている。制御するにははっきりしたイメージが必要なはずだ。
魔を払い、再び田園が穏やかな姿を取り戻す光景を思い描き、フィリアは歌い続ける。
先程の衝撃波とは異なる、柔らかだが力強い波動が金の卵に増幅され、麦畑いっぱいに広がっていった。
「……ジャバ
……!?」
方々に散らばっていたジャバオウガ達の誰もがそれを感知していたが、その速度と大きさを避けることのできたものはいなかった。
麦の一穂も揺らすことなく、だが邪悪な存在に滅びをもたらす破魔の大爆発。
既に屠られた骸も逃げ惑う個体も関係なく、ジャバオウガ達は白い爆発に包まれて蒸発した。
「……あら?なんだか重く」
シンシアの引くワゴンの速度が徐々に落ちていく。
卵のもたらす力すら、オブリビオンによる歪みであったということだろうか?
ともあれ金の卵からの力が失われたことは、ライアを通してフィリアにも理解できた。
ずっしりと重い金の卵を満載したワゴンは、数秒もたたずに停止する。
「お疲れ様。もう終わったわ、ねえ様」
戦いは終わり、田園には静寂が戻った。
力を失うことで自分を取り戻した猟兵と、静かに卵を産めるようになったガチョウには、同じ安堵の顔が浮かんでいたという。
成功
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