迷宮災厄戦⑭〜ダウナーな猫耳イケメン☆バジャパ
アリスラビリンスには、とってもふわふわな夢の国『おやすみなさいの国』が存在する。
この国に滞在すると、凄まじい睡魔に襲われ、まともに戦闘することができないのだ。
そんな国で、ダウナーな猫のオウガ青年達が、揃いも揃ってパジャマパーティーをしていた。パジャマパーティーをすることで睡魔に打ち勝ち、ずっと起き続けられるため、彼らは猟兵を足止めすべく張り込んでいるのだ。
「……眠いねぇ」
「……それな?」
「……猟兵が来ても寝ていたいよね」
「……わかりみ」
「……てか、猟兵ってパジャパしてなければ即寝落ちじゃね?」
「……やっべ、おまえ、天才じゃん?」
「……まぁ、もし殴られたらブッコロだけどね」
「……いぇーがー、マジkillingっしょ?」
「……あ、今日さ、アリスから没収したお菓子持ってきたよ。食べる……?」
「「……あざっーす」」
ただし、猫イケメンのオウガ達に迎撃する気はゼロのようだ……。
「みんなっ! 『迷宮災厄戦』の戦場になる新たな国へ行けるようになったよっ!」
蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)は、裏集まってくれた猟兵達に『おやすみなさいの国』の詳細と予知を伝達する。
「猛烈な睡魔に対抗するためにも、猟兵のみんなもパジャマパーティーの準備をしてねっ! お菓子やスイーツを持ち込んだり、お気に入りのパジャマを着込んで出向いたり、あと恋バナしたりっ! つまり、あらゆる手を尽くしてパジャマパーティーを楽しんでほしいなっ!」
猟兵達は、あまりにもやる気のないオウガ達に訝しみながらも、この国を制圧するべくパジャマパーティーの準備に取り掛かる。
「そうそう、敵対する猫オウガの青年達なんだけど、どうやら『アリスの肉よりお菓子と睡眠が大好きなダウナー系猫型イケメン』なんだってっ!」
なんだ、その属性のキメラ合体したオウガは……。
レモンはつまり、と言葉を継ぐ。
「もしかしたら、一緒にパジャマパーティーを楽しむことが出来たら、戦闘せずに見逃してくれるかも……っ? どうも、このオウガ達は極度の面倒臭がりで、猟兵側が攻撃しない限り襲ってこないっぽいっ! だから、お菓子をたくさん食べて満足すれば、この不思議の国から出て行ってくれる、かも……っ?」
要するに、此方の対応次第では戦闘を回避できる可能性があるわけだ。
勿論、オウガなので実力で排除してもいいとのこと。
判断はそれぞれの猟兵に委ねる、とレモンは告げた。
「ちょっと趣が変わった不思議の国だけど、みんなが最善だと思う手段でオウガを追い払ってほしいな~って。頑張ってねっ!」
猟兵達は世界を救うべく、全力でパジャマパーティーを開催するのであった!
七転 十五起
アリスラビリンス戦争シナリオ第2号です。
なぎてんはねおきです。
今回は特殊なシナリオです。
●プレイングボーナス
このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。
『プレイングボーナス……パジャマパーティーをしながら戦う』
これを怠ると、たちまち睡魔に負けて行動不能になりますので、ご注意下さい。
●このシナリオについて
オープニングでレモンが述べた通り、皆様の対処次第では平和的解決が可能です。
皆さんのプレイングによって、ダウナー系猫型イケメン青年達とパジャマパーティー(略してパジャパ)が実現すれば、彼らは猟兵達を攻撃することなくパジャパを満喫して何処かへ去ってゆくでしょう。
つまり、低レベルの猟兵の皆さんでも、安心してご参加できます。
勿論、猟兵側がパジャパを満喫しつつ、オウガ達を殲滅しても成功です。
●余談
コンビ、チームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずお相手の呼称とID若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能です)
なお、本シナリオは速度重視のため、全てのプレイングを採用できない可能性があります。予めご了承くださいませ。
それでは、世界の存亡を賭けたパジャマパーティーを是非とも満喫して下さい。
皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『微睡み・ダウナーキャット』
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POW : …煩い、邪魔するなら容赦しないよ…
自身が【眠りやダラダラの妨げられ】を感じると、レベル×1体の【両手ダガーナイフを持った自分の分身】が召喚される。両手ダガーナイフを持った自分の分身は眠りやダラダラの妨げられを与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD : …お布団くん達、ふかふかで気持ち良いよ…?
【眠りたい、ダラダラしたい】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【重ねられた干したての布団と枕の山】から、高命中力の【ふかふかの布団と枕、更にはクッション】を飛ばす。
WIZ : …ネズミくん、よろしく…
無敵の【催眠術と菓子召喚が得意なネズミの魔法使い】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11
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秋山・軍犬
※パジャマ着用
アリスからお菓子パチってんじゃねぇ!
菓子ぐらい自分が奢ってやる!
とりあえず揚げ菓子や焼き菓子作ってきたから
あと、お茶やジュースや酒と酒や酒もあるよ
…で、話は変わるけど…オウガ・オリジンっているやん
あの日焼けに壮絶に失敗した感じのアリスっぽい子
そのオリさんとの決戦場が此処だったら…どう?
パジャマ姿で修学旅行よろしく
お菓子を摘み恋バナに興じるオリさん
最終決戦は当然、枕投げ…ブッフォ(笑)
で、実際どうなん(笑) オリさんって面白い人?(笑)
…な、感じで
有益な情報は無いかもだけど
駄弁りながらオリジンの情報を探ってみるっす
ま、平和的に情報収集して穏便に躯の海に
還ってもらう作戦という事で…。
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎
ほうほう、つまりオウガと共に怠惰に過ごしたらよいのじゃな?
任せよ、ぐうたらするのは得意なのじゃ。
寝間着とまくらを持参していざ参加!
(【巨狼マニトゥ】に【騎乗】…もといマニトゥの上で寝そべりながら)
やあやあ、よいお昼寝日和じゃのう。わしもお隣失礼するぞ。
(もふもふふかふかのマニトゥの毛並みを堪能)
ふー…こうしていると戦争とかどうでもよくなってくるのう。
お、お菓子かわしも木の実やチョコレートを持ってきたから交換して欲しいのじゃ。
うむ、アリスラビリンスのお菓子もよいものじゃな。
さて、お腹もくちくなった事じゃし、本格的にお昼寝するのじゃ。
あ、マニトゥ、もし戦闘になったら後は任せたぞ?
上野・イオナ
そんなに属性突っ込んでもイケメンが強くてイロモノにならないってなかなかやばくない?とりあえず イイネ!
さてと争わずに済むのはいい事だしね一緒にパジャパやろうか、
とりあえず着替えよう
(ルームウェア用のメンズワンピース 白に空色のストライプ 胸元に虹のマーク)
あとはキマイラフューチャーに戻ってからコンコンでお菓子集めてきたらいいかな?
そんな余裕なかったっけ?まぁいいか!
キマイラフューチャーは楽しく暮らすにはいい所だよ
一度おいでよキマイラフューチャー
英雄 地元 大事 する
初対面の人とパジャパするとは思わなかったから自分でも何言ってるか分からないな
※アレンジ・連携大丈夫です
稷沈・リプス
アドリブ歓迎。
人間モードでパシャパ楽しむ気満々。
いやー、色んな国があるっすね!
アリスラビリンス、初めて来るんすけど!
パジャマは、裾が長くてもはやワンピースになってる半袖シャツ(中央に三日月プリント)っすよ。どんだけ長いんすかね、これ。
オウガには「食べ物ばかりじゃ喉乾くっしょ?」って、ジュースや紅茶差し入れ。
なんなら、特製クッキー(プレーン。美味しい)もつけるっす!
引きこもってた頃、凝った一つがお菓子作りだったんすよね。
材料は何だかんだであったっすし(貢ぎ物や他神からのお裾分け)
害意ないのにこちらから攻撃するの、なーんか気が引けるんすよね。
ちょっと気が合いそうなダウナー系ってのもあるっすけど。
ルリララ・ウェイバース
WIZ
互いを姉妹と認識する四重人格
末妹で主人格のルリララ以外序列なし
「ふむ、戦わずに済むなら、それに越したことはないな」(ルリララ)
「パーティなら、二人で行こうよ」
『ララ、行くんなら、パジャマは着ろよ』(リラ)
『寝たら交代すれば、大分持つでしょ』(ララ)
農園(自旅団)の近所に自生していた山葡萄や野苺などで作ったドライフルーツを持ち込む
普段はララが裸族で寝巻を身に付けないが、流石に不味いので、涼しい麻布を体に巻いて帯で止めた寝巻で参戦
普段着とあまり変わらないとか言ってはいけない
恋ばなになると、四人の好みがずれているのが大変そうだなと言うのはすぐ分かる
最低限4人を平等に愛しつつ、浮気はしないって
アリスラビリンスの『おやすみなさいの国』の片隅で、ダウナーな猫型イケメンのオウガ青年達が、切り株の周りでゴロゴロとダラけまくっていた。
彼らは『微睡み・ダウナーキャット』という個体のオウガ達なのだが、上役のオウガに言い渡された此処の守備と猟兵の足止めの任務など最初から放棄していた。
「……眠いね」
「……もう寝ちゃう?」
一斉にあくびをするイケメンオウガ達。
そのまま全員が横になって目を閉じてしまう。
「……イェーガー来ないし、寝ちゃおうか」
「……あ、でも、このアリスから没収したお菓子食べてから寝ない?」
「……お菓子は大事だね」
「……それな?」
再びむくっと起き上がると、切り株に置いてあったお菓子に手を伸ばそうとした。
と、その時、彼らの耳に怒号が突き刺さった!
「アリスからお菓子パチってんじゃねぇ!」
ミリタリーな寝間着姿のキマイラこと秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)が、パンパンに膨れ上がった袋を両脇に抱えて登場!
「菓子ぐらい自分が奢ってやる!」
切り株テーブルの上に、ドサッと置かれた袋の中身には、ドーナツやクッキーなどのお菓子が詰め込まれていた。
「とりあえず揚げ菓子や焼き菓子作ってきたから。あと、こっちの袋にはお茶やジュースや酒と酒や酒もあるよ」
「……それ、完全にメインが酒だよね」
「……いや、逆に酒、アリ寄りのアリかも」
「……イェーガー、めっちゃイイ奴だね?」
イケメン達は秋山を切り株の輪の中に混ぜ、仲良くパジャマパーテイーを続行。
そこへ遅れてやってきたのは、他の猟兵達だ。
「ほうほう、つまりオウガと共に怠惰に過ごしたらよいのじゃな? 任せよ、ぐうたらするのは得意なのじゃ」
寝間着姿のまま相棒の巨狼マニトゥのモフモフな背中の上で揺られているのはエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)だ。
「やあやあ、よいお昼寝日和じゃのう。わしもお隣失礼するぞ」
マニトゥの毛並みを天然のベッドにして、持参したマイ枕に頭を乗せて早速ごろーん……なエウトティア。
イケメンは新たなネマキストの登場に、思わず声を唸らせた。
「……到着して3秒で寝転ぶとか……できるね」
「……ネマキストの逸材オブ逸材だね」
「……てか、フワフワな狼の背中、気持ちよさそう」
「……あ、触っちゃった。すごいフワフワ……」
猫なのに自分達にモフみがないためか、巨狼マニトゥの存在感にイケメン達は急にソワソワしだす。
「ふむ? マニトゥの毛並みに注目するとは、オウガたちよ、なかなか見所があるのう? もっとマニトゥの毛並みを褒め称えよっ! ふんすふんす!」
相棒を称賛されて得意満面なドヤ顔を披露するエウトティア。
実はこれ自体がユーベルコードであり、イケメンオウガ達や猟兵達は、毒気を抜かれてめちゃくちゃ和んだ。
そのマニトゥの後ろから、ひょっこり顔を出したのは上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)である。
上野はたむろするイケメン達を見遣るやいなや、心から漏れる声を口にした。
「そんなに属性突っ込んでもイケメンが強くてイロモノにならないって、なかなかやばくない?」
オウガ青年達はダウナーや自堕落といった、残念な属性の塊にも関わらず、最終的にイケメンだから許されてる感が強かった。
上野はその事をストレートに主張してみせた。
「とりあえず、イイネ!させてもらおう」
「……あざーす」
「……なんか褒められたくさい?」
「……僕たちヤバいってさ」
「……まじウケんだけど」
ダウナーなので表情筋は仕事していないイケメン達だが、上野の言葉に気恥ずかしそうに頬を赤らめている。
イケメン達を褒め称えた上野は、白生地に空色のストライプかつ胸元に虹のマークという意匠のメンズワンピース姿だ。これが彼の普段から愛用するルームウェアだ。
「僕もお菓子を用意してきたんだ。故郷のキマイラフューチャーでは、地面をコンコンコンと叩くと無限にお菓子が出てくるからね。いいかな?」
この時、イケメン達に電流が走る……っ!
「……そマ? 地面からお菓子無限湧き?」
「……この国、アリスから没収しないとお菓子食べられないよ?」
「……つか、この国以外にもそんな世界があるんだね」
「……ちょっとASAPで詳細求ム」
イケメン達はキマイラフューチャーの世界に興味津々の様子。
上野はドヤ顔で故郷の魅力を語り尽くし始めた。
「……という感じで、キマイラフューチャーは楽しく暮らすにはいい所だよ。一度おいでよキマイラフューチャー。僕 英雄 地元 大事 する」
とあるゲームの主人公のような英雄像に憧れ続ける上野は、目の前のイケメン達に優しくキマフュー産コンコンコンお菓子を進呈した。
「本当、キマフューはいいところっすよ!」
その話を聞いていた秋山は、酒を飲み干しながらお菓子作りの真っ最中だった。
「ほら焼き立てパンケーキっすよ! 熱々のうちにバターとメープルシロップを掛けて召し上がれっす!」
これに猟兵もオウガも目を輝かせて飛び付いた。
「いやー、色んな国があるっすね! アリスラビリンス、初めて来るんすけど! お菓子も食べ放題で良いこと尽くしっす!」
ケラケラと上機嫌に笑い転げているのは稷沈・リプス(明を食らう者・f27495)。
初のアリスラビリンスでの任務のくせに、めちゃくちゃ順応性が高い自称・人間の稷沈。
「あ、見てくださいっす、このパジャマ。裾が長くて、もはやワンピースになってる半袖シャツっすよ。胸元の三日月が可愛くないっすか? てか、どんだけ長いんすかね、これ?」
完全に裾を引きずっている稷沈のパジャマ姿に、イケメン達は急に笑いを堪え始めた。
「……なにそれ。ウェディングドレスなの?」
「……裾の長さの圧が強すぎる問題」
「……もはや裾が本体説、あるよね?」
「……ネマキストの新星、現る」
どうやら、稷沈のパジャマ姿が笑いのツボに入ったらしい。
その稷沈のパジャマ姿を眺めている2人の瓜二つの黒髪少女が溜息を吐いた。
ルリララ・ウェイバース(スパイラルホーン・f01510)と、姉妹と認識し合う3人の別人格だ。
そのうちのひとり、ララをユーベルコード『オルタナティブ・ダブル』で受肉化させ、パジャマパーティーに参加しているのだ。
「ウェディングドレスか。いつかルリララたちもあの様な花嫁衣装に身を包んで、まだ見ぬ夫と共に婚礼の儀に臨みたいものだな」
「ララはもっと動きやすい格好がいいなぁ~! ねぇ、やっぱりこのパジャマ動きづらいし、脱いじゃ駄目?」
『ララ、任務のためだ、パジャマは着てろよ』
『リラの言うとおりよ? あまり言うこと聞けないと私がララと代わるわよ? ねぇ、ルリララ?』
「ララ、ルリと交代ね」
「そんなぁ~!?」
ルリララの肉体には、主人格で地を司る末妹のルリララに、悲観的な水のルリ、攻撃的な火のリラ、楽観的な風のララの3人の姉が同時存在している。普段は布で覆っている入れ墨を露出させることで、部位ごとに人格を発露させやすくなるのだ。
分身で入れ代わり立ち代わり人格を交代してはパジャマパーティーを楽しんでいるのだが、ララは普段から寝る時は素肌に何も身に着けない裸族スタイルのため、他の3人の姉妹が説得して寝間着を着させていたのだが、どうやら限界のようだった。
「はぁ、もう少しララは節度を知ってほしいわね」
ルリは物憂げに目頭を押さえた。
「ふむ、その件に関しては、おいおい姉妹会議を開くとして。それにしても、戦わずに済むなら、それに越したことはないな」
『もし誰かが寝ても、交代すれば、大分持つでしょ』
人格同士の会話を済ませたルリララ達。その寝間着姿は涼しい麻布を体に巻いて帯で止めた格好であった。
「その野性的なパジャマ、イイネ!」
上野はルリララのパジャマ姿にグッと親指を立ててみせた。
これにルリララとルリは気恥ずかしそうにはにかんだ。
「ありがとう。実はこれ、普段着とあまり変わらないんだがな?」
「故郷では一般的な服装なのだけども、猟兵になって色々と巡ったら物珍しがられるのよね、この格好」
いかにも精霊術士らしいアニミズム感満載の民族衣装風の寝間着に、イケメン達も珍しそうにチラチラと横目で盗み見ている。
「……あれ、暑い季節にはもってこいじゃない?」
「……布巻いてるだけだからね」
「……あの格好なら、僕達も大自然の一部になっちゃう?」
「……てかこの服、黒一色で、太陽光を吸収しまくりだからな」
意外とルリララ達の原始的パジャマは、イケメン達に好感触である。
と、ここでイケメン達がパジャパを更に楽しむためにユーベルコードを使用する。
「……お布団くん達、ふかふかで気持ち良いよ……?」
今、猟兵達は眠りたい、ダラダラしたいという気持ちで満たされている。そんな猟兵達へ、イケメン達がユーベルコードで用意したのは、干したてのふかふかの布団と枕である。
「……良かったら、使ってね……?」
「こ、これは……! マニトゥの毛並みに負けず劣らずの素晴らしい手触りじゃな……!」
エウトティアはイケメンが引いてくれたオフトォンにINッ!
本来はこのユーベルコード、戦場で猟兵を足止めするために使われるのだが、今はパジャパの真っ最中。奇しくも効果が最大限に活用されてしまうという奇跡が起きていた。
「わーい! おひさまの匂い! ふっかふかだー!」
「ララ、はしゃぐ気持ちはわかるが、毛羽立つからやめてくれないか?」
ルリララがテンション爆上げなララを諌めている。
「これは気持ちがいいっすね! あ、枕代わりに太陽神から借りたまま返しそびれたライオン君になってもらうっす」
ユーベルコード『ライオンライド』で召喚した黄金のライオンを自分の頭の横へ侍らせると、稷沈はライオンのお腹に頭を預けた。
「リプスさまー? 今日はお昼寝ですかー?」
「そうっすよー。まぁ、オウガに害意ないのにこちらから攻撃するの、なーんか気が引けるんすよね。ちょっと気が合いそうなダウナー系ってのもあるっすけど」
「わーい、お昼寝だー。おやすみなさーい」
ライオンくんは即座に就寝してしまった。そのまま枕と化してしまうだろう。
稷沈が布団とライオンに体を委ねながら、イケメン達へ声を掛けた。
「食べ物ばかりじゃ喉乾くっしょ? 俺もジュースや紅茶の差し入れを持ってきたっす。何なら特製クッキーも付けるっすよ!」
プレーンの美味しいクッキーを差し出されたイケメン達は、素直にそれを口に運んだ。
「……そマ? 美味しいんだけど……?」
「……このお兄さん、気前良すぎて神なんですけど」
「……クッキーの神様じゃね?」
「……つか、フツーに神々しいよね?」
イケメン達がハムスターのようにポリポリとクッキーを貪る姿は、本当にキミ達はオウガなのかと疑わしく思えてしまう。
でも、しれっと稷沈の正体が神様だって気が付く辺り、ただのダウナー系イケメンオウガというわけではないらしい。
「引きこもってた頃、凝ったひとつがお菓子作りだったんすよね。材料は何だかんだであったっすし」
いわゆる、お供え物である。
「そういえば、お前さんも料理が得意そうっすね? 何でも作れるっすか?」
稷沈に尋ねられた秋山は仰々しく頷いてみせた。
「勿論っす! 酒に合うアテなんかも得意っすよ!」
もはや独りで酒盛りをおっ始めている秋山。
唯一の40代は、若者とは違う大人のパジャパを披露していた。
「お、お菓子か。わしも木の実やチョコレートを持ってきたから交換して欲しいのじゃ」
エウトティアが持参した木の実とチョコレートは、イケメン達が持っていたチーズタルトと交換された。
チーズタルトを頬張ると、濃厚な口溶けに思わずエウトティアの表情が綻ぶ。
「うむ、アリスラビリンスのお菓子もよいものじゃな」
「ルリララ達もお菓子を頂こう。リラは何が食べたい?」
「色々あるわね。どれにしようかしら?」
いつの間にかリラがもう一人の自分の肉体に現れていた。
猟兵達とオウガは、互いの持ち寄った飲食物を仲良くシェア。
「ふー……。こうしていると戦争とかどうでもよくなってくるのう」
「……あ、僕もそれ考えてた」
エウトティアの言葉に同意を示したイケメンを皮切りに、彼らは今回の戦争についての愚痴を漏らし始めた。
「……てか、戦争だるくない?」
「……聞いた話だと、もしアリス・オリジン様が猟兵に勝ったら、この世界がまるごと消えるらしいよ?」
「……え、それすげー迷惑なんですけど」
「……だよね。なんで残してくれないんだろう?」
「……僕達の居場所がなくなっちゃうよね……」
この話の流れを敏感に秋山が察知!
「……で、話は変わるけど……オウガ・オリジンっているやん? あの日焼けに壮絶に失敗した感じのアリスっぽい子」
「日……焼、け……ぶふぉっ……!」
「……ちょ、ディスり加減ハンパないんだけど」
「……一周回ってアリだよね、そのパワーワード」
「……もうアリス・オリジン様をそういう風にしか見れないじゃん……」
イケメン達が一斉に笑い転げてしまった。
秋山、優勝の瞬間である。
「えーっと、話進めるっすよ? で、そのオリさんとの決戦場が此処だったら……どう?」
「「……チョー迷惑」」
初めて、イケメン達の心が1つになった。
「……それは本当にマジ勘弁だよね?」
「……僕達はただゴロゴロしていたいだけなのに、無理矢理に戦わされて痛い目に遭いそう」
「……つか、此処にもっと大勢のイェーガーが来るってことでしょ、それ?」
「……ナイわー。絶対にナイわ、それ……うるさくて寝られなさそう……」
ダウナーでも全力否定されるオウガ・オリジンという存在が不憫に感じてきた秋山であった。
「いやでも、パジャマ姿で修学旅行よろしく、お菓子を摘み恋バナに興じるオリさんとかどうっすか? この世界、オリさんだって睡魔に負けないためにパジャパをする必要があるっす。つまり、最終決戦は当然、枕投げ……ブッフォ……!(笑)」
酒を口から吹き出して、自ら差し出したツボに嵌る秋山であった。
その傍らでは、イケメン達が呼び出したネズミの魔法使いが、沢山のお菓子を召喚してはエウトティアがパクパクと食べているではないか。
「さて、お腹もくちくなった事じゃし、わしは本格的にお昼寝するのじゃ。あ、マニトゥ、もし戦闘になったら後は任せたぞ?」
そう告げると、エウトティアはたちまちスヤァ……と静かな寝息を立てて入眠してしまった。
彼女は一番、パジャパを満喫していた。
「というか、“恋ばな”はしないの?」
おずおずと表に出てきたルリが皆に尋ねた。
「そうっす! 恋バナっす!」
何故か秋山は急にテンションが上った。
「恋バナ、イイネ! 凄く興味あるよ!」
上野も目を輝かせている。
「恋バナっすかー? 俺は聞き役専門てことで」
いち早く稷沈は“静の構え”に入った。
「それでは、私達姉妹の理想の男性像をまずは告白してゆくぞ」
「え、い、いきなりっ?」
ルリララの発言に、ルリは思わず狼狽していた。
そして、代わる代わる、4人の人格の理想の男性像が語られてゆく。
……のだが、4人とも見事に好みの男が違っていた。
「肉体は増えても2つなのに、全員の好みが違うって大変そうだな」
上野はまさかの告白に戸惑うことしか出来ない。
ルリララが言葉を継ぐ。
「確かに、4人の好みが違うので苦労するだろう。けど、いちばん重要なことは、最低限4人を平等に愛しつつ、浮気はしないってことだ」
「……それって、見た目はひとりだけど、実際は4人の女の子と同時に恋人になれるの……?」
「……ヤバい。合法ハーレムじゃん」
「……でも難易度高そうだね」
「……とはいえ、時々、2人に増えるのが良き……」
イケメン達がルリララ達の話にわかりみを示すと、秋山が再び突っ込んだ内容で攻めてきた。
「で、実際どうなん?(笑) オリさんって面白い人?(笑)」
「……えー、実物を見たのは奇跡的に1回だけだったし」
「……面白っていうか、怖いよね?」
「……オーラが禍々しいんだよな」
「……オリジン様が彼女? いや無理だわー」
「なんか、オリさんって人望なくね?」
秋山は思い返していた。
騙されたとはいえ無様にユーベルコードを奪われて、つい最近まで幽閉されていたオブリビオン・フォーミュラ。それがオウガ・オリジンだ。最初から割と不憫な立ち位置であった。
こうして、時間はあっという間に過ぎてゆき、次第に猟兵もオウガもまぶたが重たくなっていった。
「ふあぁ……っ! 初対面の人とパジャパするとは思わなかったから、自分でも何言ってるか分からなかったな」
上野が背伸びをすると、イケメン達もつられて背筋をぐっと伸ばした。
「……大丈夫、僕達もその場のノリで生きてたから」
「……まさか敵とお菓子食べて恋バナするとか思ってなかった」
「……キミ達、凄くイイ奴らばっかで良かった」
「……んじゃ、一眠りしたら、この国から僕達は立ち去るから」
「待ってくれ。このあと君達はどうするつもりだ?」
上野の言葉に、イケメン達は顔を突き合わせる。
「……特に考えてなかったよ」
「……僕達はアサイラム?って言うのはよく分からないし」
「……まぁ、どっか争いのない世界を見付けて、のんびりしようかなって」
「……それを見付けるのが面倒くさいんだけども」
「……ひとまず、寝よっか?」
フカフカお布団とネズミの魔法使いの入眠用の催眠術で、オウガも猟兵も関係なく、揃いも揃ってぐっすりと熟睡。
「あぁふぅ……ま、穏便に骸の海に還ってもらうという事で……自分も眠いっす」
秋山は食べかけのお菓子をテイクアウトできるようにラップやタッパーで保存した後、万全を期した上で寝落ちした。
「うぅん……おやすみなさーい」
「ララ、お腹を出して寝ると風邪引くぞ? ああ、こっちも限界だ……」
ルリララ達も素直にお布団に包まっていた。
そして、エウトティアは幸せそうな顔で完全に寝入っていた。
相棒のマニトゥも、彼女を守るよう丸まって眠りこけてしまった。
そして、猟兵達が起きた頃には、本当にイケメン達は全員何処かに消えていた。
ただひとつ、置き手紙だけを残して。
『パジャパ、まじ楽しかった。ありがとう』
『マジヤバイパジャパ、略して“バジャパ”だった』
『アリスラビリンス、消滅させないでね?』
『また遊ぼうね』
猟兵達はイケメン達から想いを託され、今後の戦いへ覚悟を定めるのだった。
大成功
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