迷宮災厄戦④〜スーパーきぐるみ決戦
●グリモアベースにて
「きぐるみを着たことはあるか?」
第一声。
変事の只中にあるアリスラビリンスに向かってほしいと呼ばれた猟兵たちへの、プルート・アイスマインドの第一声がそれだった。
「いや、もちろん経験の有無を知りたいわけではないぞ。話のとっかかりというやつだ。
今からおまえたちに向かってもらう不思議の国では『愉快な仲間がきぐるみ化してしまう』らしいのでな」
おほん、と咳払いしたプルートが説明を始めた。
グリモア猟兵の彼いわく、その不思議の国においては、愉快な仲間は背中にチャックのついたきぐるみになってしまうらしいのだ。しかも身長が2倍になるおまけ付きで。
「背中のチャックをひらけば、彼らに乗りこむこともできるぞ。きぐるみだからな」
着用できるらしい。
「あと乗りこむと戦闘力が数倍になる」
パワーアップするらしい。
これまた随分と楽しげな国だぜ……と思うしかねえ猟兵たちである。
が、きぐるみ愉快な仲間たちがわいわい暮らしてるのを想像し、のほほんとしてばかりもいられなかった。
「猟書家たちやオウガ・オリジンにも繋がるこの不思議の国には、すでにオウガが送りこまれている。当然、奴は愉快な仲間のきぐるみに乗りこんでいるはずだ。なにせ数倍もの強さを得られるのだからな」
急に真剣なノリになって話し出すプルート。
それは厄介な話だと猟兵たちも一瞬だけ、対策を考えるべく頭をひねった。
けれど一瞬だけである。
猟兵たちがあっさり察しただろうことを感じると、プルートはフフッと笑った。
「そう! 向こうがきぐるみでパワーアップするのなら、こちらもきぐるみでパワーアップすればいいのだ! なあに戦いのダメージとかそーゆーのはすべて中にいる着用者にのみ影響する。巻き添えにする心配はないから遠慮なく乗りこんでしまえ!」
高笑いしながら言いきるプルート。
目には目を、というやつである。乗りこんだところで実害がないのであれば現地にいる愉快な仲間に協力を頼まない理由はないだろう。とんでもなく失礼な態度で頼んだりしなければたぶんOKしてくれると思うし。
「やるべきことはわかったな? では頼んだぞ、猟兵たちよ!」
プルートがババッ、と猟兵たちにグリモアをかざす。
きぐるみを着るのかぁ……と自分の姿を想像しながら、一同はアリスラビリンスへと旅立った。
●ずどーんどかーん
煉瓦造りの家々が並ぶ、のどかな通り。
住人がみな大きいために家も通常の2倍ぐらい巨大になっているそこは、平時ならばきぐるみ愉快な仲間たちがのんびりと往来していた。
だが、今は違った。
「わーーっ、な、何をするんだー!?」
「どうしたんだい、テディラビットー!?」
「ははっ! 本当にパワーアップしてるじゃないか!」
慌てふためき、あちらこちらへと遁走するきぐるみ愉快な仲間たち。そんな彼らを追い回すのは剣を鋭く振り回す、テディラビットと呼ばれたきぐるみ――白くてもふもふしたウサギきぐるみだ。
彼が剣を一度振るうたびに、煉瓦の家がスッパリと斬られ、豪快に崩れ去る。
さながらバターにナイフを落とすように、テディラビットは易々とすべてを斬った。愉快な仲間たちが斧やら鍋やら木箱やらを投げつけるが、テディラビットが切っ先を向けると空間に亀裂が走り、投擲された尽くが巻きこまれて容易く四散する。
テディラビットは――テディラビットに無理やり乗りこんだオウガの剣士『悪の王子ライオネル』は、己が放った攻撃の威力に昂揚した。
「いいね。今なら何でも斬ってやれそうな気がするよ。相手が猟兵だろうと何だろうとね……見た目が締まらないのが玉に瑕だけど」
「だ、誰か助けてー!?」
「だーーれーーかーー!?」
じろりとライオネルに睨まれた愉快な仲間たちが、怯え竦んで助けを求める。
猟兵たちが転移してきたのは、ちょうどそんな瞬間だった。
星垣えん
というわけで、星垣えんでございます。
今回は迷宮災厄戦のシナリオとなっております。
本シナリオでは『きぐるみ愉快な仲間の許可を得て、乗り込んで戦う』ことでプレイングボーナスを得られます。
猟兵たちが転移した戦場では、オウガから逃げているきぐるみ愉快な仲間たちがわーきゃー叫んでるので、そこらへんに頼んでみましょう。
なお、この不思議の国では、愉快な仲間なら猟兵だとしてもきぐるみ化します。
なので、一緒に参加した猟兵仲間に乗りこむとかもできますな!
それでは、皆様からのプレイング、お待ちしております!
第1章 ボス戦
『悪の王子ライオネル』
|
POW : 殺戮の魔剣
自身の【魔剣】が輝く間、【魔剣ダインスレイヴ】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : ワールド・エンド
レベル×5本の【切断】属性の【空間の断裂】を放つ。
WIZ : 魔鏡剣アンサラー
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【魔法を反射し、術者へと返す剣】で包囲攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
ケルスティン・フレデリクション
わわ、たいへん!みんなだいじょーぶ?
…あれが、てき、だね。
みんなのなかまをこうげきするのは、かわいそうだけど…なかのひとをたおさなきゃいけないもんね。
えっと、おてつだい、してくれる?わたしのぬいぐるみのレシィによくにてるくまさんに、おねがいしてみるね。
のりこむと、がんばってたたかうよ!
わるいことしちゃ、いけないんだよー!
こうげきには【ひかりのまもり】 ぜったいこわれない、むてきのひかりのたてなんだよ!
それから、こうげきは【属性攻撃】【全力魔法】【範囲攻撃】でこおりのまほう!あしもとをこおらせるよ
それから、こおりのあめもいっぱい!
ルルもおてつだいしてねっ
【アドリブ&連携OK】
水鏡・怜悧
詠唱:改変・省略可
人格:アノン
UDCを纏って黒狼の姿になる
「こいつも喰ってや…って、うわ」
野生の勘で避けたが毛並みを数本刻まれる
「液体金属だってのに…着ぐるみに乗るしかねェか」
狼に並走して交渉
「乗らせろ」
って怖がるのかよ
「あー…肉分けてやるから」
肉喰わねェのかよ
「えーと…ぬいぐるみの肉…ってか肉のぬいぐるみならイイか?」
交渉成立
乗ったら斬撃を回避、カウンターで噛み…喰うのはぬいぐるみに嫌がられたので渋々体当たりして前足で踏みつけて倒す
倒したらソッコーで着ぐるみ脱ぐぜ
…約束したから仕方ねェか
UDCも解除してレイリに交代
人格:レイリ
UCのアートでお肉のぬいぐるみを作るよ
他の子にも色々作ってあげよう
メメ・ペペル
ボクはぱんだのきぐるみさんにのりたいですー!(はねる)
いささかなりともおてつだいいたします!あ!いまのは「いささか」と「笹」をかけたぎゃぐです!
ぶきがあったほうが、ゆうりですよね!【ガジェットショータイム】で、ぶきをしょーかんし、きぐるみさんにもってもらいます!
「操縦」できぐるみさんをそうさし、「属性攻撃」のたまを「クイックドロウ」でれんしゃします!てきさんのこーげきはやっかいなので、てかずでしょーぶしたいです!もし、てきさんにすきができたら、「誘導弾」を「一斉発射」しますよ!
これ、あいてのきぐるみさんは、ぶじなんでしょうか……?せんとーがおわったら、てあてしてあげたいです……!
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
わわわっ、みんな大変だ!早く助けてあげなきゃ!
きょろきょろと見渡して着ぐるみに乗り込ませてくれそうな子を探すよ!
あの熊さんがよさそうかも!「コミュ力」で話しかけて協力してもらうね♪
やっつけたら秘蔵の「はちみつ」をご馳走しちゃうぞ☆
熊さんに乗り込んだらシャキーンとポーズ!くまくまフェアリー・ティエル参上だ!
相手の放つ空間の断裂を、くまっ!くまっ!くまっ!と【スカイステッパー】で飛び越えて
頭上からくまくまプレスで押しつぶしちゃえ♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
パイロットになるの憧れるよね!
ロボじゃないのが残念だけどしかたないね。
という訳で
「ヘイ、そこのきぐるみさん。今でも後でも芋煮奢るから協力してほしいな」
こうして完璧な交渉を成功させた後は『純金のゴボウ』を装備していざ出陣。
きぐるみを追いかけてる悪いきぐるみに奇襲で『芋煮グレネード』を投げつけるよ。
その後は、そんなかわいらしー姿で悪い事して恥ずかしくないのかーって交戦開始するよ
切結びつつアンサラーを【芋煮ビット】で迎撃!芋煮のお鍋は魔法剣なんかへっちゃらへー。イモニ―タイプはオブリビオンなんかに負けない!
ピキーンとルエリラの勘で敵の攻撃を避けながらゴボウをチェスト―!
「逃げろー!」
「ころされるーー!?」
容赦なく剣を振るうライオネルから逃げようと、愉快な仲間たちが四方へ走る。
道いっぱいに大きなきぐるみが入り乱れる光景に、ケルスティン・フレデリクションとティエル・ティエリエルは目をぱちぱちと瞬かせた。
「わわ、たいへん! みんなだいじょーぶ?」
「早く助けてあげなきゃ!」
「じゃあ、のせてもらわないと、だね……」
「そうだね! 乗せてくれそうな子を探そう!」
視線を交わして頷き、少女たちがきょろきょろと辺りを見回す。
住人は実に多彩だった。犬や猫が四つ足で素早く駆けていたかと思えば、頭に葉を茂らせた木がのそのそ這っていたり、丸っこい岩がごろごろ転がっていったり。
そんな中、ケルスティンは薄紫色をした熊さんを見つけて目を輝かせた。お気に入りのぬいぐるみ『レシィ』によく似ていたのだ。
「えっと、おてつだい、してくれる?」
「僕? ……まぁ、いいよ。小さい女の子の頼みは断れないもんね」
少女のトパーズのような瞳に見上げられ、承諾する熊さん。
背中を向けた彼にケルスティンが「おじゃまします」と入りこむ。その横ではティエルがこれまた熊さんに猛アタックを仕掛けていた。
「そこの熊さん! ボクを乗せてくれないかな? あとで秘蔵の『はちみつ』をご馳走するから!」
「ヤッター!! もちろん協力するよ!」
快諾。背中を向けて歓迎する熊さんへ飛びこむティエル。体が馴染んできぐるみを動かせるようになると、ティエルはぴょーんと跳んで着地ざまにビシッとポージングした。
「くまくまフェアリー・ティエル、参上だ!」
「あーずるいです! ボクもぱんだのきぐるみさんにのりたいですー!」
「私も乗りたい。パイロットになるのって憧れるよね!」
堂々と胸を張るきぐるみティエルを見て興奮するのは、メメ・ペペルとルエリラ・ルエラである。子供のように爛々としたメメはすぐに辺りにパンダを探し、愛らしい白黒のそれを見つけるとぴょこぴょこスキップで迫っていった。
「ボクもいささかなりともおてつだいいたします! あ! いまのは『いささか』と『笹』をかけたぎゃぐです!」
「え? あぁっ!?」
とうっ、とパンダきぐるみのバックに取りつくメメ。無邪気さが半端ないテレビウムはそのまま言葉巧みにチャックを開け、ばたばたと頭から潜りこんだ。
「ヘイ、そこのきぐるみさん。今でも後でも芋煮奢るから協力してほしいな」
「芋煮……っていうのが何だかわからないけど、俺は構わないぜ!」
ルエリラも自信満々のウインクで里芋のきぐるみを引っかけて――当人いわく『完璧な交渉術』であった――しれっときぐるみ装着。
並び立つパンダと里芋は、それぞれ得物を取り出した。
メメの手にはユーベルコードで生み出したパンダ柄の自動小銃が、ルエリラの手には眩しい純金のゴボウが!
「さあ、てきさんをとめてみせますよ!」
「ちゃちゃっと済ませちゃおうか」
走り出す二人。
魔剣を振りかぶって愉快な仲間を追い立てるライオネルへ、ルエリラは芋煮ハンドグレネードを投げつけた。着弾したグレネードがもくもくとスモークを発する。
「これは……煙幕か?」
視界を遮る煙(と芋煮の匂い)に眉をひそめるライオネル。
そこへ、メメは自動小銃をぶっ放した。
「かりょくたかめでいきますよ!」
「くっ、不意打ちか!!」
猛烈な銃火が閃き、メメの放つ属性弾が煙幕の上からライオネルに浴びせられる。数発の弾がテディラビットの四肢を貫き、ライオネルはたまらず跳びあがって煙幕の外に脱出。
上方から猟兵たちの姿を捕捉した剣士が、腕を横薙ぎに振るう。
「やってくれるね猟兵……これはこっちもちゃんと歓迎してやらないと、ね!」
テディラビットの目がぎらりと光り、中空に何百という剣が召喚される。鋭く精確に宙を飛び交う剣の群れは、獲物を見つけた猛禽類のようにメメたちめがけて滑空した。
ルエリラが、手をかざす。
「芋煮のお鍋は魔法剣なんかへっちゃらへー。イモニ―タイプはオブリビオンなんかに負けないよ!」
「なっ!?」
「チェストーー!!」
ルエリラの背後の空間が歪み、芋煮入りの土鍋が次々と射出される。差し向けた魔法剣のことごとくを相殺されたライオネルが吃驚すると、ルエリラは抜け目なく純金ゴボウを投擲した。
「ぐっ!? ……ふざけた攻撃をしてくれるじゃないか!!」
声に怒気を滲ませたライオネルが魔剣を振り下ろす。
刹那、空間が割れた。
宙に奔った無数の亀裂はそのままメメに突き進んで、一斉に襲いかかった。
「わーーっ!?」
属性弾をまき散らして応戦するメメだが、空間の断裂はその弾すらも切断して殺到してくる。メメは覚悟を決めてきゅっと目を瞑った。
――が、いくら経っても体に痛みはない。
メメが恐る恐る目をひらくと……。
「メメ、だいじょうぶ?」
「ケルスティンさん! ありがとーございます!」
薄紫色の熊さんが、熊さんきぐるみを着たケルスティンが光の防壁を張っていた。ライオネルの操る飛翔剣は純白の光壁に跳ね返され、ケルスティンにもメメにも傷ひとつつけられない。
ならば、とライオネルは己が手の魔剣を握りこんだ。
「俺が手ずから、始末してやるよ!!」
妖しく輝く魔剣、ダインスレイヴが光壁に振り下ろされる。
――けれど、刀身が壁を破ることはなかった。振るった魔剣が跳ね返されたライオネルは反動で不格好にバランスを崩す。
「このひかりはね、ぜったいこわれない、むてきのたてなんだよ!」
「馬鹿な……そんなことがあるものかッ!」
視認すら危うい速度で、斬撃を連続させるライオネル。しかしその太刀筋は光の向こうのケルスティンを捉えることはない。まるで木刀で巨岩を叩いているようだ。
と、そのときである。
「ふふーん、隙ありー!」
「!?」
ライオネルの背後に回っていたきぐるみティエルが、空中を飛んできた。ふよふよと浮遊する熊さんに、反射的に振り返ったライオネルが剣を振り上げる。
空間が裂かれ、幾筋もの亀裂が飛ぶ。
だがティエルは自身めがけて飛んでくる斬撃に怯むことなく――。
「くまっ! くまっ! くまっ!」
「空中を……跳んで
……!?」
ぴょんぴょんと大気を蹴りつけ、舞うようにステップを踏むティエル。飛来する断裂を軽々と飛び越えてみせると、ティエルは最後に力いっぱい跳躍した。
ライオネルの、ちょうど頭上へ。
「押し潰しちゃうぞー☆」
「っ……! 馬鹿め! そう簡単に当たら――」
落下しようとするティエルを避けるべく横へ跳ぼうとしたライオネルが、止まる。
足元が凍りついていた。びっしり凍結した地面と足裏が離れない。
「にがさないよ! わるいことしちゃ、いけないんだから!」
見れば、ケルスティンが両手をかざしていた。頭に乗っかっている丸っこい鳥――氷の精霊『ルル』とともに、凍結魔法でもってライオネルの動きを封じていた。
「貴様っ……!」
「へんなまねはさせませんよ!」
ライオネルがケルスティンへ攻撃しようとした瞬間、ひょこっと顔を出したメメが誘導弾を撃ちこむ。見事に命中させて反撃を抑えたメメは「ふぅ」と額を拭った。
「あしがこおってるのにこうげきしてくるなんて、すごいまけんきですね! あ! いまのは『負けん気』と『魔剣』をかけたギャグ――」
「いっくぞー! くまくまプレスー!」
「ぐああああっ!?」
メメを華麗にスルーして、ライオネルにフットスタンプをぶちこむティエル。容赦なく頭を蹴られたライオネルはびたんと地面に打ちつけられた。
その舌に砂や土の味を感じた剣士は、わなないた。
「貴様……らァァァァァァァァァ
!!!!」
屈辱を振り払わんと、起き上がったライオネルが魔剣を振り回す。
狙いなどない。
自分以外のすべてを切り刻まんとする斬撃が、空間の断裂が四方へ走る。暴風のように当たり散らかすそれを、地を駆けていた黒狼は紙一重で避けた。
「……ちっ」
ぱらりと舞う己の毛束を見て黒狼が、否、UDCを纏って黒狼に変貌していた水鏡・怜悧が舌打ちする。
きぐるみを纏わずとも、と戦おうとした怜悧――の一人格であるアノンだったが、どうやら敵の斬撃を掻い潜るのは難しいと肌で理解したのだ。
「液体金属だってのに……着ぐるみに乗るしかねェか」
じろり、と周囲に目配りするアノン。逃げ遅れているらしき狼(の着ぐるみ)を見つけると、シュタタタッとその隣まで走っていった。
で。
「乗らせろ」
「ひいっ
……!?」
ほぼ恫喝だった。
目つきやら声の迫力やらが恫喝すぎて、狼さんがビビるのも仕方なかった。
しかしアノンとて引き下がるわけにはいかない。背中のチャックから入らせてもらうために、アノンは少し考えた。
「あー……肉分けてやるから」
「お肉を食べるだなんて……可哀想だよ……」
「狼じゃねェのかよ。えーと、じゃあ……ぬいぐるみの肉……ってか肉のぬいぐるみならイイか?」
「それならまあ」
「OKなのかよ」
ツッコミながらもごそごそと狼さんの中に入りこむ黒狼さん。スピードもパワーも数段にアップしたきぐるみ姿になったアノンはすぐさまライオネルへ疾走した。
「ケモノ風情が……!」
自分へ向かってくるアノンの姿に気づいたライオネルが再び断裂を繰り出すが、アノンは無数のそれを縫うようにかわし、駆けこんだ勢いのまま体ごと突撃した。
そしてライオネルを押し倒し、前脚で胸を踏みつける。
「ぐくっ
……!?」
「じゃあな」
逆の前脚で、顔面を踏み砕くアノン。
それからライオネルはかすかに動きつづけたが、やがてぴくりとも動かなくなると、アノンは「ふん」と鼻を鳴らしてきぐるみを脱ぎ去るのだった。
オウガが去った。
それを知らされた愉快な仲間たちは、ほっと胸をなでおろしていた。
「よかったぁ……」
「テディラビットも無事なんだね……」
「うん、たいへんだったけど、もうだいじょーぶだよ」
「協力ありがとうね。助かったよ☆」
住人たちの間を行き来して、混乱を落ち着かせるケルスティンとティエル。二人は愉快な仲間たちの一人ひとりに声をかけ、通りの一角へと案内していた。
そこでは――。
「ヘイ、いらっしゃい。美味しい美味しい芋煮だよ。こっちにはお肉のぬいぐるみもあるよ」
「~~♪」
ルエリラが大鍋で作った芋煮をせっせと配っていた。隣ではアノンと入れ替わりに表出した人格『レイリ』がユーベルコードで肉ぐるみを大量生産している。
完全に炊き出しだった。
「ルエリラさん! いもにをふたつおねがいします!」
「ヘイ、お待ち」
ぴょこっと寄ってきたメメにサッと芋煮を手渡すルエリラ。熱々のそれを持ってメメは道の端に座っているウサギ――テディラビットのもとへ。
「きょうはさいなんでしたね! あったかいものをどうぞ!」
「あ、ありがとう……! 今日はみんなのおかげで本当に助かったよ……!」
「えへへー」
テディラビットの感謝の念に、てれてれと頭をかくメメ。
もふもふきぐるみの国での戦いは、かくして平和に幕を閉じた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵