●
「皆様、迷宮厄災戦お疲れ様です!」
慌ただしく人が行き交うグリモアベースの一角。オオカミ耳をぴこぴこさせながら、甘利・梓(腹ペコ乙女・f12881)が手作りのプレートを掲げていた。
プレートには「ウォータースライダーは好きですか!!」とカラフルに書かれている。
「世界を救う戦いを頑張るのも勿論ですが、息抜きも忘れないのが猟兵さんかと思います。というわけで、夏本番ですよ! グリードオーシャンのビーチにいきましょー!」
梓は元気いっぱいに飛び跳ねた。
今回梓が案内するのは、猟兵たちの活躍によってオブリビオンの脅威から解放された、自然いっぱいの島だ。
カリビアンブルーの海はどこまでも青く広がって、吹き抜ける風は火照る肌を心地よく滑っていく。白い砂浜は死んだ珊瑚が砕けて流れついた証。
潜ってみれば、その海の透明度の高さにきっと驚くだろう。100m先まで見渡せる圧倒的に透明な碧の中では、太陽の光がまるでカーテンのように水中でゆらゆらと煌いている。
そんな海を泳ぐだけでも勿論楽しいけれど、ここにはもうひとつ大きな目玉スポットがある。
「あのですねあのですね、めっちゃ大きくて、めっちゃ早くて、めっちゃ楽しいウォータースライダーがいっぱいあるのですよ!」
いっぱい!を両手を振り回して梓は強調する。
ビーチの近くには海に流れ込む川がある。その川の清流を利用したウォータースライダーがあるのだ。
小さな子ども用に短く流れの緩いもの。まっすぐ海に飛び込むもの。長さも早さも様々いくつもあるけれど、やはり一番の目玉は一番長くて一番早いウォータースライダーだろう。
浮き輪で流れ始めれば、まるで急流下り。チューブの中を左右に揺られ、時に一回転なんかしたりして。そしてそのウォータースライダーのラストは――。
「あのですね、チューブが途切れてるんです。なので、ぽーんと投げ出されて飛びます!」
飛びます?
思わず聞き返した猟兵に、梓はこくこくと頷いた。
急流下りのような勢いのまま、ラスト近くで途切れたチューブからぽーんと空中に投げ出され。束の間の空と海の青の間を飛んだあと、ざばーんと海に飛び込む。澄んだカリビアンブルーの海は、飛び込む皆を歓迎してくれるだろう。
「疲れたら浜辺に抜群に美味しいジェラテリアがありますよ! 味は甘利のお墨付き。どれも美味しいですが、おススメはやっぱりチョコレートですね、めっちゃ濃厚ですよ!」
既にゲート展開も終えて準備ばっちりな梓が、ゲートの中から見えるジェラートショップを指差した。数十種類ものジェラートを取りそろえたジェラテリアは、まるで宝石箱のよう。
「というわけで、夏を満喫しましょー!」
片手を突き出して満面の笑みを浮かべる梓は、もう自分も遊ぶ気満々だ。
ゲートの向こうで、きらきらに輝く海が待っている。
花雪海
このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。ご注意ください。
閲覧頂きありがとうございます。花雪 海で御座います。
戦争中では御座いますものの、夏はまだまだこれから。今回は、カリビアンブルーの海へと皆様をご案内致します。
またこのシナリオは既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島となります。
●出来ること
海で遊ぶ。
ウォータースライダーで遊ぶ(飛び出すスライダーか普通のスライダーかはお好きにお選び下さい)
ジェラートを食べる。
この三つです。あれもこれもと取り入れるよりは、一~二場面くらいに絞ってプレイングなさることをおすすめいたします。
ジェラートは大体どんなフレーバーでもありますので、プレイングでご指定下さい。
●お連れ様について
お連れ様がいらっしゃる場合は、【グループ名】もしくは【お相手様の名前とID】を冒頭にお書き添え下さい。
なお、本シナリオではお声がけがあれば甘利・梓が同行致します。
同行を希望される場合は、お手数ですがプレに【同行希望】とお書き添え下さい。
●プレイングに関しまして
プレイングの受付は、【8/5朝8:31より8/6夜23時まで】を予定しております。
受付期間外に頂いたプレイングは、問題がなくとも流してしまいますのでお気をつけください。
それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
|
POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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満月・双葉
【虹花】
栗花落さん…これは…何と言うかその…
凄いですね
絶叫系とは何か解らないのですが、これだけ豊富な水があれば、電気経路があったとしても爆発したりはしないでしょう
さすれば結論は一つ
乗りましょう
二人乗り可能な浮き輪があるのですか?
ならば念の為それで
人生初絶叫系…
これはすご…
最後まで感動を吐けずにすっぽ抜けていき海に突っ込む
そして泳げず沈むのでそのまま海底へご挨拶
栗花落さんに救出されたらば礼を言い、アホ毛はブンブンと感動を示し水を散らす
羽を乾かさねばオラトリオ泣きっ面というものです
身体が冷えましたから何か温かいものを食べるのも良いかもしれませんね
栗花落・澪
【虹花】
見て見て双葉さん、すごいよ!
聞いてた通り、ウォータースライダーがいっぱい!
去年初めて乗った時は3人乗りしたんだっけなぁ…
双葉さんはこういうの初めて?
絶叫苦手じゃなければすっごい楽しいよ!一緒に乗ろ!
乗るならやっぱり一番目玉のやつがいいな
もし浮き輪の二人乗りができるならそれで!
きゃあきゃあと楽しそうにはしゃぎながらスライダーを滑り降りる
あっ、今見えた景色すっごい綺麗だったー!
なんて余裕も見せたり
でも浮き輪が飛んだ瞬間双葉さんも飛んだー!?
わー双葉さ(ざっぷーん
綺麗な海を泳ぎ慌てて双葉さんを回収
びっくりしたよぉ
あははっ、でも楽しかったね!
羽濡れちゃったし、乾かしついでに何か食べにいこっか
●
青い海に青い空。心地よい風と白い砂浜。本日、抜群に晴天なり!
「見て見て双葉さん、すごいよ! 聞いてた通り、ウォータースライダーがいっぱい!」
太陽のような笑み咲かす栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が振り返れば、虹色の羽根を揺らした満月・双葉(時に紡がれた星の欠片・f01681)の茫然とした様子が目に入る。
「栗花落さん……これは……何と言うかその……凄いですね」
「ね!」
双葉の視線の先には、何本ものウォータースライダーがあった。くねくねと曲がりくねったコースからは、既にひっきりなしにきゃあきゃあと楽しむ声が聞こえている。
「去年初めて乗った時は3人乗りしたんだっけなぁ……。双葉さんはこういういの初めて? 絶叫系苦手じゃなければすっごい楽しいよ!」
「絶叫系とは何か解らないのですが、これだけ豊富な水があれば、電気経路があったとしても爆発したりはしないでしょう。さすれば結論は一つ。乗りましょう」
「うん、一緒に乗ろ!」
川を利用したスライダーは水量も十分で、電子制御な部分はスライダー部分にはない。何故か電子機器や火器を爆発させてしまう謎特性持ちの双葉であっても、これは安心して乗れるもの。心配はなにもいらない。
ならば、あとは楽しむだけ!
スライダーのスタート地点はなんと崖の上だった。係員に誘導された二人は、まずは浮き輪を選びにいく。
「乗るならやっぱり一番目玉のやつがいいな。もし浮き輪の二人乗りが出来るならそれで!」
「二人乗り可能な浮き輪があるのですか? では念の為それで」
双葉が係員に首を傾げれば、笑って二人の利用の浮き輪を用意してくれた。
「人生初絶叫系……」
「余裕があれば取っ手から手を離すのも楽しいですよ。ま、タイミング気を付けないと浮き輪から放り出されますけども」
爽やかな笑顔で聞き捨てならないことを言う係員のお兄さんを二度見した頃には、いってらっしゃーいと浮き輪を押し出される。
滑り出したら、もう止まらない。
チューブの中を、急流下りのようにぐんぐんスピードをあげて滑っていく。カーブで思い切り振られたり、急な下り坂を落ちるように滑ったり、勢い余って一回転したり。
澪はきゃあきゃあと楽しそうにはしゃいでスライダーを滑り降りる。途中、チューブの上部が開けた。二人の目の前に真っ青な海と空、そしてビーチが広がる。
「あっ、今見えた景色すっごい綺麗だったー!」
「これはすご……」
景色を見る余裕も出てきた澪だったが、スライダーはどんどん加速していく。そして双葉が感想を紡ぎきる前に、遂に――。
ぽーん。
チューブが途切れた。
浮き輪が蒼と青の間を舞う。
ついでに、あまりの勢いに耐え切れず浮き輪から双葉がすっぽ抜けた。
「あっ」
「双葉さんも飛んだー!? わー双葉さ」
二人とも羽を広げる間もない。
束の間のフライトはすぐに終わりを告げて、二人は仲良く海面に突っ込んだ。
高く水飛沫があがる。
「びっくりしたよぉ。……って双葉さーん!
浮き輪ごと海面に着水した澪は、」泳げなくてそのまま沈んでいく双葉を追いかける。海底に挨拶をしかけた双葉を慌てて回収し、必死に泳いで双葉と共に二人はやっと海面へと顔をだした。
「ぷはっ、栗花落さんありがとうございます……」
「あははっ、でも楽しかったね!」
浮き輪に掴まって頭を下げる双葉。そのアホ毛はまるで生き物のようにブンブンと感動を示して水を散らした。降りかかる水飛沫を手で防ぎながら、澪は楽し気に笑う。二人の近くでまた別の水飛沫が上がった。別の誰かが投げ出されて飛んできたのだろう。それもまた楽しくて笑って、双葉もこくこくと頷いて。
浮き輪を担いで海から上がれば、背がやたらと重いことに気付いた。大きな虹の翼が水に濡れて、なかなか悲しいことになっている。
「羽を乾かさねばオラトリオ泣きっ面というものです」
「うん、羽濡れちゃったし、乾かしついでに何か食べにいこっか」
「身体が冷えましたから何か温かいものを食べるのも良いかもしれませんね」
浮き輪を持って手を繋いで、二人は海の家へと向かっていく。
心躍る夏は、まだ始まったばかり。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミラ・パーチェ
梓ちゃんと【同行希望】よ!
我ら、腹ぺこフレンズ
どれも興味深いけれど、目指すは勿論――ジェラテリア!
梓ちゃーん!一緒に沢山食べましょう!(ぐっ!)
とっても美味しそう……!
宝石の様なジェラートの数々を眺めながら
どれにしよう、なんて悩みつつ
やっぱり、梓ちゃんのオススメは外せない!
チョコレート!
あ、でも!ミックスとか出来るなら、季節のおすすめも是非!
美味しい甘味は欲張ってこそ!カロリーは(以下省略)
近くのベンチに腰掛けて
二人で一緒にいただきまーす!
んーっ!おいひい!
梓ちゃんも一口食べる?
シェアをしながら、美味しいジェラートを楽しんで
次は海へレッツ――
と思ったけれど!美味しいから、やっぱりもう一個だけ!
●
白い海辺に二人のレディ。互いに駆け寄って、両手を広げ、二人は……。
「梓ちゃーん!」
「ミラちゃーん!」
ぎゅーー!っとハグしあう。ミラ・パーチェ(夢追い人・f09057)と梓は親友だ。ハグして手を繋いだら、もう行くべきところは相談しなくたって決まっている。
「我ら、腹ペコフレンズ。どれも興味深いけれど、目指すは勿論――」
「「ジェラテリア!」」
顔を見合わせれば声も揃う。そう、二人の前には梓おすすめのジェラテリアがある。ウォータースライダーだって海だって勿論気になるけれど、それはお腹を満たしたあとでだって構わない。
「梓ちゃん、一緒に沢山食べましょう!」
「勿論ですよ! ミックス大盛余裕です!」
ぐっと胸の前で拳を握ってにししと笑って、そうしたら腹ぺこフレンズ二人、手を繋いでいざジェラートの宝石箱へ!
ジェラテリアには梓の事前情報通り何十種類ものジェラートが並べられていた。ストロベリーにピスタチオ、バニラにミルク、チョコレートにベリーミックス。どれもキラキラと輝いて、まるで宝石のよう。
「とっても美味しそう……! どれにしよう」
「梓のおすすめはチョコレートですが、本当にどれも美味しかったですよ。抹茶や、スイカや甘酒なんて変わり種もあって全然飽きません!」
「梓ちゃんまさか制覇してる?」
てへ。
片眼を瞑ってぺろりと舌を出す梓に、ミラは思わず吹き出した。
「やっぱり、梓ちゃんのオススメは外せない! チョコレート! あ、でもミックスとか出来るなら、季節のオススメも是非!」
「じゃあ今のオススメはやっぱり桃ですよ! チョコレートはホワイトにしてみるとよいと思うのです!」
美味しい甘味は欲張ってこそ。カロリーなんて文字は知らないのだ。だってオイシクナイモノ。
二人できゃいきゃいとはしゃぎながら、ジェラートを注文する。ミラはホワイトチョコレートとピーチ。梓はピスタチオとティラミスを選んで、二人仲良くベンチに座る。
「「いただきまーす!」」
二人仲良く唱和したら、遠慮なくぱくりと口にする。濃厚な甘さ、そして果実の瑞々しさが広がって、喉を通る時に甘美な香りが鼻を抜けていく。
「んーっ! おいひい! 梓ちゃんも一口食べる?」
「でしょでしょ! ってわあ是非! じゃあ私のもどっちも味見、どうぞ!」
美味しいジェラートを二人でシェアをし合えば、幸せも二倍。美味しいものはいつだって腹ペコフレンズを幸せにしてくれるのだ。
「はーっ、ご馳走様でした! 美味しかったですね!」
「ええ! 次は海へレッツ――」
「……ミラちゃん?」
「……と思ったけれど! 美味しいから、やっぱりもう一個だけ!」
てへ、と舌を出したミラの提案に、梓が否と言うわけもない。次はどれにしようなんて笑い合いながら、二人はもう一度ジェラテリアへと駆けて行った。
大成功
🔵🔵🔵
ルーシー・ブルーベル
【苺夜】
海、だーーっ
苺と手をつないで
見上げれば初めて見る、これが
うぉーたーすらいだ?
あれがそうなの?
いいわ、行ってみましょう
上ると予想外の高さで
自然と繋ぐ手に力が入る
こ、こわくないわ、へいきよ
だって苺と一緒なのでしょう?
少し頼りなく思える浮き輪に乗って、右へ左へ
あの、スピードは速すぎない?
あのカーブは本当に大丈夫?
なんて、きゃあきゃあ叫んで
突然の無重力
おち……っ!
――……て、ない?
ぎゅっと閉じた目を開けば
海があんなに遠くまで見通せる!
ありがとう、苺
あなたの翼はすごいのね
チョコアイス?
それを聞いたら少しお腹が空いちゃった
3段アイスはまるで花束みたい
え、チョコついてる?どこ?
……でも、ふふ
苺もよ?
歌獣・苺
【苺夜】
うーみだーーー♪
(大好きな少女と手を繋ぎながら)
ねぇねぇルーシー!あれ行こう!!?うぉーたーすらいだー!とっても楽しそうだよ♪
…こわい?
ふふ、もちろん!
ぎゅってしながら一緒に滑ろ♪♪
れっつ、ご……!?
えっ!速!?
えっえっえええええ!!?
(驚いている間に空へ放り出される)
……!ルーシー!!!
(一瞬離れた少女の身体を抱きしめ高く飛ぶ)
わぁ…びっくりした…
…あれ。これって
落ちるのが正解だった…?
まいっか!
このまま飛んで
あいす食べに行っちゃお♪
ちょこれーとのあいす、
有名なんだって!
わぁ!美味しそうな3段あいす…!
いただきます♪
あ!ルーシー、ちょこついてる!
え?私も?あはは!『おそろい』だね♪
●
目の前に広がるのはどこまでも広くて、どこまでも青くて、どこまでも深い――
「うーみだーーー♪」
「海、だーーーっ」
歌獣・苺(苺一会・f16654)とルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は、二人仲良く手を繋いで、海を前に叫んだ。
青い海、青い空、白い砂浜とぴっかぴかの太陽。夏を満喫するに相応しい、最上のロケーションに二人のテンションはどんどん上がっていく。
「ねぇねぇルーシー! あれ行こう!!? うぉーたーすらいだー!」
苺に誘われるままにルーシーが見上げてみれば、そこにはルーシーが初めて見るたくさんのまがりくねったチューブ。崖からスタートして、どれも海へと辿り着くそれらが――。
「これが、うぉーたーすらいだ? あれがそうなの?」
「うん、とっても楽しそうだよ♪」
ウォータースライダーからはひっきりなしに楽しそうな声がきゃあきゃあと聞こえてくる。皆咲いているのは笑顔の花。きっと、怖いことは何もない。
「いいわ、行ってみましょう」
苺と握る手をしっかりと握りなおして、ルーシーが頷いた。
とはいえ。
ウォータースライダーが設置してあるのは崖の上。スタート地点に向かうため昇って来たものの、予想外の高さに自然と苺と繋いだルーシーの手に力が入る。表情も何処か固くなっているような気がして、苺はふんわり笑いかけた。
「……こわい?」
「こ、こわくないわ、へいきよ。だって苺と一緒なのでしょう?」
「ふふ、もちろん! ぎゅってしながら一緒に滑ろ♪♪」
苺を見上げて、あんまりにもルーシーが可愛いことを言う。言葉にルーシーの信頼を感じ取った苺は、苺色の瞳をへにゃりと蕩けさせた。
二人乗り様の大きな浮き輪を借りて、前にルーシー、後ろに苺が座り、ルーシーを約束通りぎゅっとしたら準備はOK.
係員にいってらっしゃーいと押して貰ったらスタートだ。
「れっつ、ご
……!?」
片手を突き上げようとした苺の言葉が途切れた。
速いとは聞いていたが、滑り出してみたらもはやジェットコースターのようだった。乗っている浮き輪が少々頼りなく思えてしまう。
「えっ! 速!?」
「あの、スピード速すぎない?」
カーブに差し掛かればぐいんと、しかもしょっちゅう右に左に振られる。浮き輪を掴む手にも力が入るというものだ。なんて言っていたら、目の前にやたらと急なカーブが見える。
「あのカーブは本当に大丈夫?」
「えっえっえええええ!!?」
一回転するかと思った、というくらいに天上近くの壁を滑り、二人を乗せた浮き輪はどんどん加速していく。二人がきゃあきゃあ叫んでいる間にも加速して、加速して――。
ぽーん。
遂にチューブが途切れて、二人は空と海の狭間に飛び出した。突然の無重力。遠く遠くまで広がる青と蒼。一瞬だけ鳥になったような気分。けれどもそれは、一瞬だけ。
「おち……っ!」
「ルーシー!!!」
一瞬浮き輪からも離れたルーシーの身体を、苺が慌てて引き寄せて抱き締める。このフライトの時間は短い。今に高い水飛沫と共に海に飛び込んで――。
「――……て、ない?」
待てど暮らせど衝撃が来なくて、ルーシーはぎゅっと閉じた瞳を恐る恐る開いた。目の前に広がっているのは空と海。背に温かい温度と、自分をしっかりと抱き締める感触がある。
「わぁ……びっくりした……」
苺だ。咄嗟に翼を広げた苺は、ルーシーに怖い思いをさせまいという一心で、飛び出した勢いのまま高く高く飛び上がったのだ。思わず後ろを振り返ってみては、自分たちが飛び出したであろうチューブを眺めて茫然と言葉を紡いでいる。
「ありがとう、苺。あなたの翼はすごいのね」
対するルーシーは、きらきらとした表情で苺を見上げている。だって海があんなにも遠くまで見通せる!
飛ぶことの出来ないルーシーにとって、今苺が見せてくれている光景は心が踊るようだ。照れ臭そうに笑った苺がふと、次の組がぽーんとチューブから飛び出して海にざぱーんと着水するのを見た。
「……あれ、これって落ちるのが正解だった……?」
慌てて飛んでしまったけれど、このまま着水すればよかったのか。けれども、ルーシーが笑っているからそんなことはすぐにどうでもよくなった。
「まいっか! このまま飛んでアイス食べにいっちゃお♪ チョコレートのアイス、有名なんだって!」
「チョコアイス? それを聞いたら少しお腹が空いちゃった」
笑い合って、二人はそのままお勧めされたジェラテリアへと向かう。注文したアイスはまるで花束のように、華やかで可愛くて芳しい香りがした。
「わぁ! 美味しそうな3段アイス……! いただきます!」
アイスを口にすれば、爽やかな冷たさ、そして濃厚な甘さと香りが二人を満たしてくれる。
「あ! ルーシーチョコついてる!」
「え、チョコついてる? どこ? ……でも、ふふ。苺もよ?」
「え? 私も? あはは!『おそろい』だね♪」
快活に笑う苺に、ルーシーも柔らかに目を細めた。こんな『おそろい』も、ウォータースライダーも空と海の蒼も。きっと素敵な二人の思い出になる気がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と
ウォータースライダーだーっ
いちばんながくて、いちばんはやいやつっ
いこう、いこうっ
みんなのってるからあんぜんだよ
れっつごーっ
加速していくのがたのしくて
リュカ、はやくなってきたっ
だいじょうぶだよ、穴あかないよ
左右に揺られてたのしくて笑い
すごい速さでぐるんと回転すれば
わあっ
思わず両手挙げて
そしてそのまま
空だ
下になにもない
ユーべルコードにつつまれることもない
ひゅ、と放り出された浮遊感に
わあと口を開けたまま、どぼーん
ぷは
リュカっ
姿を見つけて泳いで
すごい、すごいねっ
空もおよげちゃいそうだったっ
空およぐ鯨を思い出し
たのしいっ
うんうん、あっという間
ジェラート食べたら、もういっかいのろっ
リュカ・エンキアンサス
オズお兄さんf01136と
うん、ウォータースライダーに挑戦だ
…一番長いの。なんだか、危なくない?
と、言いつつもしっかり浮き輪を確認して突入
って、思ったより早い早い。お兄さんこれ大丈夫。この浮き輪穴空いたりしない!?
お兄さんがそういうのなら大丈夫なのかな…
とか、若干いらぬ心配をするけれども慣れたらスピードが出るのは楽しくて、存分にはしゃぐ
回った…っ、て、わ…っ(飛んだ
海綺麗だなーとか
お兄さん楽しそうだなーとか
そんなことを考えてたらもう落下のお時間です
(ざばん
…ぷは
う、うん
あっという間の、すごい景色だったね
楽しかった
…ああ。楽しい
一息ついたらもう一回行こう
今度はもうちょっとうまく着水できるといいな
●
青くて何処までも広い海。高く澄んだ青い空。そして、かのウォータースライダーは海の傍の崖の上!
「ウォータースライダーだーっ」
「うん、ウォータースライダーに挑戦だ」
リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)とオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は、ウォータースライダーのスタート地点で浮き輪を選んでいた。目の前にはいくつものスライダーのチューブが並んでいる。
「いちばんながくて、いちばんはやいやつっ。いこう、いこうっ」
「……一番長いの。なんだか、危なくない?」
オズが指差す先、此処で一番目玉のスライダーを見ながらリュカは少しだけ訝し気。
それもそのはず。まずスタート地点での水量が他と全然違う。スピードも水量に比例して他のスライダーの比ではなく、しかも途切れたチューブの先からはぽんぽん人が飛び出て海に着水している。リュカの懸念は最もではある。
けれどもそれと同時に、聞こえてくるのは楽し気な悲鳴だ。飛び出して海に投げ出された皆の顔には笑みが溢れているし、何よりスライダーに列が途切れないのが一番の安心の証拠だろう。
「みんなのってるからあんぜんだよ。れっつごーっ」
それもそうか、なんてリュカも頷いて。身を任せる浮き輪をしっかり確認し、オズと共にスライダーへと向かった。
二人乗り用の浮き輪に乗り込めば、力強い水流が二人を運び出した。チューブに入れば浮き輪は一気に加速を開始する。
「リュカ、はやくなってきたっ」
徐々にスピードが増してきているのを感じ取って、オズが浮き輪の取っ手をしっかり掴む。どれ程早くなるのか、わくわくが止まらない――。
「って、思ったより早い早い。お兄さんこれ大丈夫。この浮き輪穴空いたりしない!?」
急流下りのようとは聞いていたが、実際に滑り出してみたらもはやジェットコースターのようだった。カーブに差し掛かれば想像していた以上にチューブの側面上部まで振られるし、ていうかカーブの量が多い。右に左にぐいんぐいん曲がりくねって、そのたび水がざぱんざぱん言いながら浮き輪を振り回す。あまりのスピードとカーブに、リュカが思わず心配を口にした。
「だいじょうぶだよ、穴あかないよ」
「……お兄さんがそういうのなら大丈夫なのかな」
楽し気に笑うオズの様子に納得し、その瞬間また左に大きく揺られる。慣れて来ればスピードが出るのもまた楽しくなってきて、リュカとオズは思い切りはしゃいだ。助走をつけるように加速して、左右に充分に振られて、勢いのまま一回転なんかしたりして。
「わあっ」
「回った……っ、て、わ……っ」
けれどそんなスライダーも永遠ではない。むしろ唐突に終わりを告げるものだ。ぐるんと回転した拍子にオズが楽しくて思わず両手を挙げて――、そしてそのまま、二人は途切れたチューブから空へと飛び出した。
空だ。
下にはなにもない。ユーベルコードに包まれることもない。
飛び出した世界は眩しかった。
空の蒼と海の青が、水平線で混じり合っている。なんだか飛んでいるみたいな景色だ。
そんなオズの様子を眺めながら、
(「海綺麗だなー。お兄さん楽しそうだなー」)
なんて、のんびりリュカが考えている間に視界に海が広がって――。
ざばーん!!
二人は勢いよく海水に着水した。
「……ぷは」
「ぷは。……リュカっ」
浮き輪から投げ出されたリュカとオズは、二人同時に海面に顔を出した。少し離れたところに着水したオズが、リュカを見つけて泳ぎ寄る。
「すごい、すごいねっ。空もおよげちゃいそうだったっ」
「う、うん。あっという間の、すごい景色だったね。楽しかった」
「うんうん、あっという間。たのしいっ」
興奮冷めやらぬオズが、一気にまくしたてて笑う。彼の脳裏には、空を泳ぐ鯨が思い描かれていた。空がとてもとても青い日に、海だと思って空まで泳いでいく鯨。例えば今日みたいな空なら、彼は泳いでいるだろうか。
「……ああ、楽しい。一息ついたらもう一回行こう。今度はもうちょっとうまく着水できるといいな」
「ジェラート食べたら、もっかいのろっ」
浮き輪を回収したリュカにも、楽し気な笑みが控えめに咲いていた。
楽しい一日ははじまったばかり。二人の笑い声がまたスライダーが響いたら、海も空も優しく迎え入れてくれるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
かれと色違いの水着を着用し手を繋いで浜辺を歩きましょう
ふふ、海も悪くはないでしょう?
ということで、あれに乗りましょう!とウォータースライダーを指さして
ええ、もちろんです。海に慣れるには海に親しまねば
繋いだ手を引いて二人乗りの浮き輪に乗り込み
浮き輪の前席に座りチューブの内側を流れる水に乗り滑り落ちれば 肩で感じる風とぴしゃり肌を打つ水飛沫に思わず声をあげましょう
チューブが途切れ海に投げ出されれば笑い声をあげながらかれの腕の中海へどぼんと落下
あはは、とても楽しいですね、ザッフィーロ!
水面から浮き上がれば同じく浮き輪を掴み
ええ、楽しかったです
……えー、駄目ですか?
なんて
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
宵と色違いの水着を着用し手を繋ぎ浜辺を歩く
本当に美しい島だな…!
潜るのは少々苦手だが海を見るのは楽しみになってきて居…
…うぉーたーすらいだー…だと…?
宵…その、なんだ。本当に行くのか?
そう腰が引けながらも二人乗りの浮輪を見れば覚悟を決めて乗り込もう
宵は前に乗るのか?ならば落ちぬよう確り後ろで支えよう…と
…は、早いな?!?ブレーキなどはな、無いのか…宵…!?
勢いよく空中に投げ出されれば身を強張らせ背後から宵を確り抱きしめ耐えてみせよう…!
海に落ちたならば浮輪につかまり固まるも、笑う宵を見れば肩からゆっくりと力を抜いて行こう
…宵、楽しかったか…?…だがもう一度はせんぞ?せんからな!
●
白い砂浜とカリビアンブルーの海。陽の光を反射してきらきらと輝く波。島は夏に相応しい姿で猟兵たちを招き入れる。
「ふふ、海も悪くないでしょう?」
そんな島に到着したザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)と、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は、目の前に広がる光景に感歎の言葉を零した。同じ花の柄で色違いの水着を着用し、手を繋ぎ浜辺を仲睦まじく歩く。陽を弾く浅黒い肌のザッフィーロと、日焼けなど知らないかのような白皙の肌の宵は対照的で、なのにはじめから一つのように自然と溶け合っている。
「本当に美しい島だな……! 潜るのは少々苦手だが海を見るのは楽しみになってきて居……」
「ということで、あれに乗りましょう!」
このまま海辺の散歩もきっと気持ちがよいだろうと頷くザッフィーロの言葉を遮って、元気に、そして笑顔で宵がウォータースライダーを指差した。海沿いの崖に設置された何本ものスライダーは、どこからも豪快な水の音と楽し気にきゃあきゃあとはしゃぐ声が聞こえてくる。
「……うぉーたーすらいだー……だと……?」
潜るのは苦手ってたった今言ったよね?
なんて表情をするザッフィーロだが、宵のにこにこキラキラ笑顔は眩しいまま。恋人の頼みとあらば聞いてあげたいザッフィーロだが、今回ばかりは少々及び腰。手を引いて歩き出す宵に、ザッフィーロは控えめに声をかける。
「宵……その、なんだ。本当に行くのか?」
「ええ、もちろんです。海に慣れるには海に親しまねば」
そんな小声の問いにも、宵は笑顔で答える。ザッフィーロに逃げ場はなかった。
実際に崖の上に行ってみれば、その水流の激しさにザッフィーロの腰が引けそうになった。すぐそばを流れる川の水を存分に使ったスライダーは、何と言っても勢いが凄い。
とはいえ楽し気に二人乗りの浮き輪を選んだ宵を見て、ザッフィーロも遂に覚悟を決めた。まずは前に宵が。その手にひかれてザッフィーロが後ろに乗り込んで、片手で浮き輪の取っ手を掴み、もう片方の手を宵の腰に回す。
「落ちぬよう確り後ろで支えよう……ん?!」
二人が乗り込んだの確認して、係員が思いっきり浮き輪を押した。浮き輪は二人を乗せて、すぐにチューブの中を滑り落ちていく。入り口で見た水の勢いそのままに、急流下りのように左右にざっぷんざっぷん振り回されながらぐんぐん加速していく。
「……は、早いな?! ブレーキなどはな、無いのか……宵
……!?」
「ないですねぇ……!」
頬を引きつらせてがっしりと取っ手と宵を掴むザッフィーロとは対照的に、宵はとても楽しそうに笑っている。肩で感じる風と、ぴしゃりと肌を打つ水飛沫。ぐんぐん速度をあげるスライダーで、左右に振られて滑り落ちる感覚。腰に愛し人の手。宵も思わず、そして自然と声をあげてしまうのだ。
そんな楽しい(そしてドキドキが最高潮に達する)スライダーも、いつまでも終わらないわけではない。むしろ唐突に終わりを告げて、光の中へと二人は飛び込んだ。
空と海が広がっていた。どこまでも続く青は美しい。
勢いよく空中に投げ出された二人は、束の間の鳥の視界を目にする。
けれどもそのフライト時間は短い。
浮き輪が落下をはじめる瞬間、ザッフィーロは身を強張らせながらも咄嗟に背後から宵を確り抱き締める。そしてそのまま、勢いよく海へと飛び込んだ。
高い水飛沫があがる。
さして間を置かずして二人同時に海面に顔を出した二人は、漂っていた浮き輪に掴まった。
「あはは、とても楽しいですね、ザッフィーロ!」
ふんわり浮き輪に掴まって楽し気に笑う宵とは対照的に、ザッフィーロは浮き輪に掴まって青褪めた顔で固まっている。ちょっと荒療治だったかもしれない。
けれども宵が無事だったこと。そして何より楽しそうに笑みを咲かす宵を見れば、そんなザッフィーロの緊張もゆっくり、ゆっくりと解けて行って。
「……宵、楽しかったか……?」
ようやく笑みが浮かべられるまでに解れたザッフィーロが、宵に穏やかに笑いかける。そんな様子が、宵にも嬉しい。
「ええ、楽しかったです」
二人笑い合えば、また誰かが飛び出して近くで大きな水柱を作った。間近で飛び出す様子を見ると、それはそれで結構な勢いで結構飛んでるんだな、ということがよくわかる。それを見たザッフィーロがまたちょっと青褪めた。
「ザッフィーロ」
「……だがもう一度はせんぞ? せんからな!」
「……えー、駄目ですか?」
宵が何か言いかける前に、ザッフィーロがすかさず先手を打つ。当然もう一度と言いたかった宵が、ほんのり唇を尖らせた。
浮き輪に掴まってビーチに戻る間、二人は「そんなこと言わずに、ね?」「いいや…!」なんてやりとりが続いていた。
浮き輪に掴まるその手は、自然と重ねられている。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
銀砂・樹里
飛び出すスライダーで遊ぶ
アド連携歓迎
年齢制限とか身長制限とかないよな?保護者もいなくて平気なんだな!?
用心深く確認した上で一番長くて一番早いスライダーに行く
ワンピース型の水着とドーナツ模様の浮き輪で参戦
順番が来たら指示を守ってスタート。もみくちゃにされる感覚が楽しい!
「(空中に投げ出されて)飛んでる…」
とっさに体を丸めて回転しながら着水。猫のようだが狼だぞ(区分上は)
興奮で瞳孔全開、耳と尻尾がぱたぱた暴れ回っています
「もう一回…いいか?」
OKなら何回も並び直して遊ぶ
●
カリビアンブルーの海と白い砂浜。美しいビーチにあるスライダーの管理所で、係員を前に銀糸の少女が一生懸命に確認を取っていた。
「年齢制限とか身長制限とかないよな? 保護者もいなくて平気なんだな!?」
銀砂・樹里(森の銀狼・f27544)である。11歳という幼さと134㎝の身長は、もしかしたら今まで苦汁を飲んだ時でもあったかもしれない(なかったかもしれない)。けれども、心配ご無用。このスライダーは大丈夫。
「あ、猟兵さんですか? でしたら何も問題ないですよ、ぜひ楽しんでいってくださいね!」
用心深く確認する樹里に、係員がにこやかに笑ってスライダーへと案内してくれる。猟兵だから、という理由で基本的に何でもパスになるらしい。猟兵であれば小さな子であっても大きな力を発揮しているのを、この島の人々は一度目の当たりにしているが故だろう。
問題がないことを確認して、樹里はまっすぐに一番長くて一番早いスライダーへ向かった。
近づいてみると、川の流れをそのまま利用したスライダーはかなりの勢いがある。けれどもひっきりなしに人が訪れて列を為し、楽し気にきゃあきゃあとはしゃぐ声が聞こえるから、表情変化の薄い樹里の心の中でもワクワクとドキドキがどんどん高まっていくのだ。
可愛らしいワンピースの水着を着て、ドーナツ模様の浮き輪を浮かべてしっかりと掴まる。係員に押し出してもらったらスタートだ。
スタートしてすぐに急流に押し流されるように、水が力強く浮き輪を押し流す。カーブのたびに左右に大きく振られ、まるでもみくちゃにされているみたいだ。スリル満点で、それがとても楽しい!
ぐいんぐいん振られ、スピードはどんどん加速していく。硝子張りになった天上では、景色がびゅんびゅん飛んでいく。スピードが遂に最高潮に達したかという、その時――。
光が弾けた。
チューブが途切れて、樹里は浮き輪ごと空へと飛び出したのだ。
「飛んでる……」
空は高く、海は足元からどこまでも広がって、水平線でひとつになっている。カリビアンブルーの海にはところどころ色が濃くなっているところがあって、それが珊瑚礁だと知る。
今、樹里はカモメだった。
とはいえこのフライトは大変短い。落下の感覚を感じ取って、受理は咄嗟にまるで猫のように身体を丸めて、回転しながら海面に着水した。なお彼女は猫ではなく狼であるが。区分上は。
小さな水柱が上がる。
ぷはっと海面に顔を出せば、目の前には大きな空が広がっていた。葡萄色の真ん丸な樹里の瞳は今、瞳孔を全開にして、耳と尻尾がぱたぱたと暴れまわって海を叩いている。
興奮が冷めやらない。心と体全部が、楽しかった!と叫んでいる。
樹里はドーナツ柄の浮き輪と共に海を泳ぎ、先程の管理所へ向かった。
「もう一回……いいか?」
「もちろん、何度だってどうぞ!」
その返事を聞くや否や、樹里は駆けだした。
今日は何度だって滑ろう。何度だって楽しもう。そして、夏の思い出にしよう。
大成功
🔵🔵🔵
乱獅子・梓
【不死蝶】
数十種類もあるというジェラートに惹かれ
ジェラテリアへ向かう
そういえば綾は激辛料理が好きだったな
ハバネロフレーバーとかが無くて残念だったな?
えー、まずはバニラ
更にイチゴとソーダのフレーバーも
トリプルじゃなくて、それぞれ別のコーンに入れてくれ
手が足りないから1つは綾に持ってもらう
いや、全部俺が食うわけじゃないぞ?
ほら、やっぱり出てきた
タイミングを測ったように出てくる焔と零
どうせ食べたがるのは目に見えているから
先手を打ってこいつらの分も買っておいた
二人と二匹、ベンチに並んで座り
焔と零も器用に前足でコーンを
ホールドしながら食べている姿が可愛い
よし、食べ終わる前に写真撮っておこう(親ばか発動
灰神楽・綾
【不死蝶】
バリエーション豊かなジェラートを前に
何にしようかなとうーんと悩み
いやいやいや、辛いものは好きだけど
ゲテモノ好きというわけではないからね?
甘いのも普通に好きだからね?
笑って軽口を言い合いつつ
俺が選んだのは真っ赤な色が魅力的のラズベリー
3つも頼む梓に随分食いしん坊だね?と思ったけど
直後に顔を覗かせた焔と零を見て、ああ、と納得
そうだね、皆で食べようか
涼しげな木陰のベンチでジェラートを堪能
この甘酸っぱさがクセになる
視線を隣に移せば
可愛らしいポーズで一生懸命食べる仔竜達と、
片手にジェラート、片手にスマホを持って
その姿を熱心に撮影する梓
ねぇ、ジェラート溶けちゃうよ?
と声かけつつ微笑ましく見守る
●
波の音と人々の楽し気な笑い声が、ビーチに響いている。
それをBGMに聞きながら、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)と灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は浜辺にあるジェラテリアを訪れていた。
数十種類あるというジェラートに心惹かれてきてみたわけだけれども、確かにジェラテリアには数多くのフレーバーがそれぞれ宝石のように煌いて並べられていた。
フルーツにチョコレート、バニラに抹茶。ベリーミックスにごろごろナッツ。モカにヨーグルト。バリエーション豊かなジェラートを前に、綾は何にしようかなと悩んでいた。
「そういえば綾は激辛料理が好きだったな。ハバネロフレーバーとか無くて残念だったな?」
「いやいやいや、辛いものは好きだけど、ゲテモノ好きというわけではないからね? 甘いのも普通に好きだからね?」
梓が茶化して口の端をあげれば、ショーケースを眺めていた綾が手をひらひらさせて返す。それを聞いていた店員が「でしたら次にいらっしゃる時までに激辛もご用意させて頂きますね!」と意気込んでいたが、二人でいやいやと笑ったり。
笑い合い、軽口を言い合いながら、二人はショーケースの中の宝石との出会いを楽しんでいた。
「お待たせしました、こちらご注文の品です」
無事に注文も決まり、店員さんが手渡してきたジェラートは四つ。一つは綾の真っ赤な色が魅力的のラズベリーなのだが。つまり、必然的に残りは梓のものとなるわけで。バニラビーンズがふわりと香るバニラに、可愛らしいピンクと甘酸っぱい香りのストロベリー。それから爽やかな青のソーダ味。それぞれ別のコーンに入れてもらったため梓だけでは手が足りず、綾にも一つ持ってもらう。
「三つも頼むなんて随分食いしん坊だね?」
不思議そうに首を傾げる綾に、いやいやと梓は首を横に振った。
「いや、全部俺が食うわけじゃないぞ?」
じゃあ誰が……。
そう思ったと同時に、ひょこり、ひょこり。タイミングを見計らったかのように炎竜の焔と氷竜の零が顔を出した。
「ほら、やっぱり出てきた。どうせ食べたがるのは目に見えているから、先手を打ってこいつらの分も買っておいた」
「ああ」
二匹の興味は既にジェラートに釘付けで、梓と綾を見上げて「いいの? いいの?」と言わんばかりに目をきらきらと輝かせている。その微笑ましい様子に、綾は緩く笑みを浮かべて頷いた。
「そうだね、皆で食べようか」
美味しいものは、皆で食べればきっともっと美味しいから。
涼し気な木陰にベンチを見つければ、二人と二匹はそこに並んで腰を下ろす。待っていましたとばかりに焔と零もジェラートに飛びつけば、いざ仲良く「いただきます」だ。
「うん、この甘酸っぱさがクセになる」
綾は色眼鏡の下の目を細め、ラズベリーのジェラートを堪能する。隣に視線を移せば、前足で器用にコーンをホールドした可愛らしいポーズで、一生懸命にジェラートを食べる仔竜たち。そして――。
「よし、食べ終わる前に写真を撮っておこう」
あまりの我が子可愛さにすかさず仔竜たちにカメラを向けて、様々な角度から写真を撮っている梓。その熱心な様子は、まるで親馬鹿だ。
前から二匹一緒に。零の横顔をアップに。口の周りをアイスだらけにした焔の満足そうな笑顔。
だが、写真に熱心になりすぎて、どうやら梓はひとつ大切なことを忘れているよう。
「ねぇ、ジェラート溶けちゃうよ?」
くすりと笑って、綾は溶けはじめた梓のジェラートを指差した。慌てて自分のジェラートに頬張る梓と、口の周りをジェラートでべたべたにしながらも嬉しそうな仔竜たち。
微笑ましい光景をのんびりと見守るこの時間もまた、夏の思い出の一ページを彩るのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
都槻・綾
海へ飛び出すスライダー
興味津々で着いて来た翼猫の惺は
最初こそ腕の中で瞳を煌かせていたものの
やがて
速度を増し暴流になるにつれ
慌てて腕に、肩に、ついには顔に、
しがみついて離れないものだから
其の様子が大層可愛く
何より――惺が目隠しになってしまった所為で
前が見えないという予想外の展開に
いつ空へ投げ出されるか分からぬ緊張感が
却って素敵なスパイスみたい
ふ、と
水路は唐突に途切れ
引きはがした猫と共に
眩い空と海の狭間を游ぐ
――やぁ、爽快ですねぇ
なんて暢気な口調で
まるで翼が生えた如く重力からの解放を喜ぼう
けれど当然
勢いよく落下
ずぶ濡れの身を起こし
一人と一匹
頭を振ってふるふると水を弾けば
飛沫がきらきら
宝石めいて綺麗
●
海へ飛び出すスライダー。
豪快な水音と、ひっきりなしに聞こえるはしゃぐ声。
グリードオーシャンにある島の一つに作られたそれは、都槻・綾(糸遊・f01786)とそのウィングキャットである惺の興味を惹くには充分だったようだ。
崖の上にあるスタート地点で浮き輪に乗り、惺を腕に抱けばその瞳は興味津々に煌いている。
川の水を使った豪快な水量は、そのまま勢いよく綾と惺を乗せていざスライダーへとご招待!
チューブの中を滑り出せば、ぐんと速度が上がっていく。急流下りのようとはよく言ったもので、右に左に大きく振られながらチューブの中を滑っていく。
速度はどんどん上がり、豊富な水量も相まってまるで暴流だ。はじめは綾の腕の中で目を煌かせていた惺だったが、慌てて綾の腕に、振られて肩に、がくんと急降下して遂には頭にしがみついて離れない。
綾にとっては其の様子は大変可愛らしいのだが、恐らく惺は尻尾の先まで毛を逆立たせている気がするし――、何より。
頭にしがみつく惺が目隠しなってしまった所為で、綾は全く前が見えなくなってしまった。
「これは予想外……」
右に左に、見えないおかげで次にどうなるか全くわからないという状態は、否応にもスリルのボルテージを高めてしまう。
いつ空へ投げ出されるかわからない緊張感。けれどそれが、却って素敵なスパイスになっているような気もして、綾は浮き輪の取っ手を掴む手に力を籠めた。
速度はどんどん増していくのが、肌に当たる風でわかる。惺の緊張感もスピードも頂点に達したと思われた、その瞬間に。
ふ、と。
チューブの水路が唐突に途切れて、身体が浮く感覚。
頭からようやく引き剥がした惺と共に、青く眩い空と蒼く揺蕩う海の狭間を綾は遊ぐ。
真っ青な景色が水平線にまで続いて、境目を曖昧にしている。吹き抜ける風と水飛沫が心地よい。
「――やぁ、爽快ですねぇ」
口をついて出たのはそんな暢気な口調。
まるで翼が生えた如く、重力から解放された歓びが綾の胸を満たす。
今一時だけ、綾は鳥だった。
だが翼で飛んだわけではない綾は、当然、そのまま勢いよく海に落下した。
ざぱん!!と、水飛沫が高く飛んだ。
ずぶ濡れになった身を起こせば、視界は青と水に染まっている。
綾と惺、一人と一匹が頭を振ってふるふると水を弾けば飛沫が舞った。夏の陽光を存分に取り込んだ水飛沫はきらきらと煌く様は、まるで宝石のよう。
アクアマリンのような光と水の粒に、柔らかに微笑む綾の姿が映っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ニナ・グラジオラス
リナ(f04394)と
もちろんだよ、リナ
よし、カガリも別のを頼めば最低でも3種類行けるぞ
チョコなら、海だしバナナでトロピカルな感じも美味しそうだよな
リナがチョコ系なら私はミルクとマンゴーで行こうかな。ああでも、桃も捨てがたい
…いっそ、全部行ってしまおうか
そう、食べた分は動いて消費すれば問題ない。
カガリはシーウォーカーのヘルメットがあれば水中もいけるかな?
そんなインスタントカメラもあるのか?それなら心置きなく使えそうだ
(いつも写真を撮るのにいっぱいいっぱいになる機械苦手なリナを思い出して穏やかに笑い)
ああ、いっぱい撮って二人で分けっこしよう
後でアルバムも作ればきっと写真選びも楽しいしな
木槻・莉奈
ニナ(f04392)と
ね、ニナ、シェアしましょ
こんなにあるんだもん、色々試してみたいわ
カガリも食べるでしょ?どれがいい?
お勧めだって言ってたし、何よりチョコは外せないわよね
濃厚なのだとさっぱりしたのも食べたくなるし、相性考えるとベリー系か柑橘系…
あぁでも、ヨーグルトとかそういうのも美味しいわよね(真剣に悩み
大丈夫、食べた分はしっかり動けばいいんだもの
食べたらまた泳ぎに行きましょ!
そう言えば、水中でも撮れるインスタントカメラあるって教えてもらって買ってきたんだけど…
私写真下手だし、ニナの分も一緒に買ってきたから撮ったの見せてもらいたいな―、なんて…ダメかな?
ありがと!ふふ、アルバム作りも楽しみ!
●
女の子の好きなもの。
綺麗なもの。可愛いもの。大好きな友達。そして、おいしいもの!
宝石箱と名付けられたジェラテリアの前では木槻・莉奈(シュバルツ カッツェ・f04394)とニナ・グラジオラス(花篝・f04392)、そしてそしてニナの相棒である焔竜カガリがジェラートを吟味していた。
「ね、ニナ、シェアしましょ。こんなにあるんだもん、色々試してみたいわ」
「もちろんだよ、リナ。よし、カガリも別のを頼めば最低でも三種類行けるぞ」
二人と一匹の前には、たくさんのフレーバーが並んでいる。数十種類も取りそろえたジェラートは、氷の粒に陽光を反射させて煌いている。思わずショーウィンドウに張り付いてジェラートを眺めるカガリを、笑いながら莉奈が覗き込んだ。
「カガリも食べるでしょ? どれがいい?」
「……!」
選んでいいの!と言わんばかりにカガリが目を見開く。一層真剣にジェラートを眺めるカガリに笑いながら、ニナと莉奈もジェラートの宝石箱と睨めっこ。
「お勧めだって言ってたし、何よりチョコは外せないわよね。濃厚なのだとさっぱりしたのも食べたくなるし、相性考えるとベリー系か柑橘系…」
「チョコなら、海だしバナナでトロピカルな感じも美味しそうだよな」
「あぁでも、ヨーグルトとかそういうのも美味しいわよね」
とても真剣に悩んでいる莉奈に微笑みつつ、ニナもまたじっとショーケースの中の冷たい宝石たちと睨めっこ。
「リナがチョコ系なら私はミルクとマンゴーで行こうかな。ああでも桃も捨てがたい……いっそ、全部行ってしまおうか」
ダブルも出来ますよーと笑う店員さんにすかさずミルクとマンゴーダブルでとお願いしつつ、桃のジェラートも追加でひとつ。
とはいえちらりとカロリー表記に目を遣る。乙女としてはカロリーも気になるところではあるけれど。
「大丈夫、食べた分はしっかり動けばいいんだもの。食べたらまた泳ぎに行きましょ!」
「そう、食べた分は動いて消費すれば問題ない」
視線を察した莉奈がすかさずフォローを入れれば、ニナも力強く頷いた。
これで万事問題なし!
ジェラテリアのテラス席で涼みながら、ジェラートを頬張る。素材の味を最大限詰め込んだジェラートは濃厚で、鼻を近づければ濃厚に香る。チョコレートのカカオの香り。マンゴーの果肉溶け込んだ瑞々しい色。一口食べれば爽やかな甘さが広がり、余韻を残しながらすっと溶けていく。
「そう言えば、水中でも撮れるインスタントカメラあるって教えてもらって買ってきたんだけど……」
そうしてジェラートを堪能しながら、莉奈が鞄からカメラを二つ取り出した。防水ケース付きカメラは、透明度の高いこの海では最大限力を発揮してくれるだろう。スライダーを滑っている最中だって、勿論撮影可能だ。
「そんなインスタントカメラもあるのか? それなら心置きなく使えそうだ」
うんうんと頷きながら珍し気にカメラを見るニナだったが、カメラが二つという点に莉奈を見上げ。その視線に気づいた莉奈が、眉を下げて笑った。
「私写真下手だし、ニナの分も一緒に買ってきたから撮ったの見せてもらいたいなー、なんて……ダメかな?」
上目に伺いながらニナを見るジェードの瞳に、ニナが「ああ」と思い当たる。そういえば莉奈はいつも写真を撮るのにいっぱいいっぱいになる。機械操作が苦手なことを思い出して、ニナは穏やかに笑う。
「ああ、いっぱい撮って二人で分けっこしよう。後でアルバムも作れば写真選びも楽しいしな」
「ありがと! ふふ、アルバム作りも楽しみ!」
カメラを分け合って太陽みたいに楽し気な笑み二つ。焔竜のカガリが海をじっと眺めていたけれど、ニナはぽんとその頭に手を当てて。
「カガリはシーウォーカーのヘルメットがあれば水中もいけるかな?」
ニナの素敵で優しい提案に、カガリは目を煌かせて嬉し気に高く鳴いた。
アイスを食べ終わり、カガリを連れた二人のアルバムにはきっと、楽しく煌く夏の思い出がたくさん並べれることだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リオネル・エコーズ
星鍵
自分のメロン&バニラをスマホで撮ってから一口
うわ美味しい、遊んだ体にしみる…!
折角だしアルベルトの写真も撮ろう
でも何でジェラート食べながら悩んで…?
いつもと違うのは眉間の皺が教えてくれる
ああ、成程そういう
俺のを一口あげると差し出してお礼の一口をぱくり
じゃあ食べ終わったらまた買いに行こうか
まだ食べられるんだよね?
だったら食べよう
3時のおやつは1日一度しか訪れないけど
これは何回楽しんだっていいんだよ
だから、気になるやつ全部楽しもう
飛び出すスライダーで思い切りドボン
鼻が痛いですって無表情でスンスン泣いて
テンションガタ落ちしてたけど…
初めての夏を楽しめてるなら良かった
そうだね
俺も次の夏が楽しみだよ
アルベルト・エコーズ
星鍵
初ウォータースライダー後は初ジェラート
楽しいの次は美味しい
そこに困難が待っていようとは
…リオネル様
他のフレーバーも食べたい時は、どうすれば
(バニラ&オレンジ手に無表情&眉間に皺
チョコとヨーグルト
苺やバナナ
チョコ尽くしもきっと美味な筈
一口頂けるとの事なのでお礼に私のを差し出して
ああ
頂いたもので食べたいフレーバーが増え、全く決まらない
そこに示された提案はまさに天啓
無論、腹には余裕あり
楽しんでいいという言葉に心が軽くなる
水に乗って風になる爽快さを知り
鼻に水が入る斬新な体験もして
今は、冷たく甘い幸せが増える予感に心が躍る
…リオネル様
夏とはこんなにも眩しく、そして楽しいのですね
次の夏が、楽しみです
●
初めてのウォータースライダーは楽しかった。水にもみくちゃにされて、最後に空を飛んで海へ落ちた。
その後は初ジェラートだ。人生で初めて食べるジェラートはきっと素敵な体験になるはずだ。
けれど、誰が予想しただろう。そこにまさか困難が待っていようとは!
「うわ美味しい、遊んだ体にしみる…!」
注文したメロン&バニラのジェラートは、それぞれがクリソプレーズやミルキークォーツのように美しい。一口食めば、メロンの果汁を最大限使った芳しくも瑞々しい甘さや、バニラの優しい甘さが喉を通って染みわたる。
リオネル・エコーズ(燦歌・f04185)はスマホでジェラートを撮影して、満足げに頷いた。折角だから隣に入るはずのアルベルト・エコーズ(ひかり・f25859)の写真も撮ろうと振り返ると、そこには――。
「何でジェラート食べながら悩んで……?」
鋭い眼光と冷たい無表情には変わりない。だがいつもと違うと、アルベルトの眉間の皺が教えてくれている。さて、冷たくも美しい執事が何を悩んでいるのかと思えば。
「……リオネル様。他のフレーバーも食べたい時は、どうすれば」
至極真面目に、そして超絶真剣に、アルベルトは、持ち主たるリオネルに問いかけた。
三月に人の姿を得たばかりのアルベルトは、大きな体であっても赤子同然。「三時のおやつ」が一日一回しか訪れないことに絶望してしまう純粋な彼は、バニラ&オレンジのジェラートを手に眉間にしわを寄せ、無表情に困っているのだ。
「ああ、成程そういう」
「チョコとヨーグルト。苺やバナナ。チョコ尽くしもきっと美味な筈……」
名残惜し気にメニュー表の眺めているアルベルトにくすりと笑って、リオネルは自分のジェラートを差し出した。
「俺のを一口あげる」
「頂けるのですか? ありがとうございます、では私のも」
リオネルの好意に甘えて、一口ずつ交換する。オレンジの甘酸っぱさとは違った甘さが口に広がれば、それもまた幸せにアルベルトを満たしてくれるけれど。
「ああ。頂いたもので食べたいフレーバーが増え、全く決まらない……」
アルベルトはついに項垂れた。
「じゃあ食べ終わったらまた買いに行こうか。まだ食べられるんだよね? だったら食べよう」
苦笑しながら、リオネルがそのしょぼくれた背をぽんと叩いた。驚いたようにほんの少し目を見開いたアルベルトに、リオネルは眼鏡の奥の淡いオールドオーキッドを優しく緩ませる。
「三時のおやつは一日一度しか訪れないけれど、これは何回楽しんだっていいんだよ。だから、気になるやつ全部楽しもう」
アルベルトにはリオネルが天使に見えた。
その言葉はまさに天啓。楽しんでいいという言葉に、あれ程までに悩み沈んでいたアルベルトの心が一気に軽くなった。
「無論、腹には余裕があります」
アルベルトは基本無表情だからわかりにくいけれど。
リオネルには、そわそわとショーウィンドウの中のジェラートたちを選ぶアルベルトの背で、大型犬のような尾が元気に振られているような気がした。
ウォータースライダーで水に乗って激流を滑り、風になる爽快さを知った。途切れたチューブから見事に空を舞い、思い切り海に落ちて、鼻に水が入る斬新な体験もして。
「鼻が痛いです」と無表情でスンスン泣いて、テンションがガタ落ちしてしまったけれど。
そして今、冷たく甘い幸せが増える予感にアルベルトの心が躍る。
「……リオネル様。夏とはこんなにも眩しく、そして楽しいのですね」
「初めての夏を楽しめてるなら良かった」
改まってリオネルに向き直るアルベルトに、リオネルは柔和な笑みを浮かべて頷く。
「次の夏が、楽しみです」
「そうだね。俺も次の夏が楽しみだよ」
青く高い空。遠く蒼い海。心焦がす陽射し。楽し気な人々の声。美味しいジェラート。
初めての夏が素敵な思い出に変わるのなら、次の夏も、その次の夏もきっと、そうなりますよう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
千代野・蓮
トリf24393と
海なあ…?
あれだろ?其の侭じゃ飲めねえ上にオブリビオンに追い詰められたら終わりのでけえ水
危険だからあんま近づいた事ねえけどまあこの世界の奴らが楽しいっつうなら行って見るかと来てみたけど…よ
…んだよ、この綺麗なとこ
なあトリ、綺麗すぎじゃねえ?
そう呆然と煌めく海を見つめながらもトリを振り返ればにっと笑みを向けてみる
此処は安全みてえだしな、俺達も泳がねえ訳…ねえよな?
そう言いながら海にダイブしつつも、人が飛んでくる遊具を見れば行って見るかと声を
あれって速さ競ってんのかね?なら、買った方がジェラート奢るっつうんでどうよ?
ま、負けるつもりはねえんだけどな!(勝負結果はお任せします!)
神鳥谷・弥
チヨ(f24395)と
うみ……?
んなトコ、オブリビオンにが出てきたらまさに背水の陣になっちまうじゃねぇか
それにアレだろ、海の中にゃこわーい人喰い魚がいんだろ?
んな恐ろしい水たまりに、誰……が……
……おいチヨ、海なんてのは逃げ場のねえ底なし沼じゃなかったのか?
目の前に広がる広大で美しい水たまりに茫然と声を返して
……そうだな、危害はねぇみてーだし、遊んでやるか!
筒の先から人が海に吐き出される遊具を見たならあれ行くか、と走り出して
おう、誰に勝負を持ちかけてんだ
アポヘルの流れ星と呼ばれたこのおれ様が負けるわけねぇだろ!
おれはバニラとチョコレート二段乗せのやつな!
(勝敗お任せします)
●
「うみ……?」
「海なぁ……?」
ゲートを潜る前、千代野・蓮(千代に、八千代に・f24395)と神鳥谷・弥(零落パラディースス・f24393)は訝し気に首を傾げていた。。
「あれだろ? 其の侭じゃあ飲めねえ上にオブリビオンに追い詰められたら終わりのでけえ水」
「んなトコ、オブリビオンが出てきたらまさに背水の陣になっちまうじゃねぇか」
「危険だからあんま近づいた事ねえけどまあこの世界の奴らが楽しいっつうなら行って見るかと来てみたけど……よ」
二人とも『海』という言葉は聞いたことがある。ある程度は概要も知っている。だが、『見たこと』がない。
アポカリプスヘル出身ならば覚えのある者もいようが、荒廃世界で暮らす上での判断基準のひとつは「危険」か「危険でないか」だろう。その点、蓮にとっても弥にとっても海とは『危険なもの』であった。
「それにアレだろ、海の中にゃあこわーい人喰い魚がいんだろ? んな恐ろしい水たまりに、誰……が……」
だがまあ百聞は一見に如かず。ひとまず見てみるかと二人はゲートを潜り抜けた。
そこは、美しきカリビアンブルーだった。
空から零れ落ちた青がそのまま水を染めたかのような、どこまでも広がる透明な青。波は陽の光を受けて煌いて、遠くでイルカが楽し気に遊んでいる。
「……おいチヨ、海なんてのは逃げ場のねえ底なし沼じゃなかったのか?」
「……んだよ、この綺麗なとこ。なあトリ、綺麗すぎじゃねえ?」
目の前に広がる広大で美しい“水たまり”に、弥と蓮が茫然と立ち尽くした。想像とあまりに違っていて、またあまりに想像以上であった。
弥を振り返り、蓮はにっと笑う。蓮の笑みに、弥も口の端を上げて。
「此処は安全みてえだしな、俺達も泳がねえ訳……ねえよな?」
「……そうだな、危害はねえみてーだし、遊んでやるか!」
蓮と弥は頷き合うなり波打ち際へと駆けだした。
ざばざばと波をかき分けて、頭から思い切り潜ってみる。目を開けば、海の中とは思えぬ程の圧倒的な透明度の中で魚が泳ぎ、光のカーテンが揺らめいていた。
ひとしきり水をかけあって泳いで、ふと弥が高く昇る水飛沫を見つけた。見れば長い筒の遊具から歓声をあげて人が飛び出しているではないか。
「チヨ、あれ行くか」
「おう、行ってみるか」
楽し気な気配を敏感に察知し、二人は崖の上にある筒――ウォータースライダーのスタート地点へと駆けだした。
順番を待つ間、蓮が「なあ」と声と弥に声をかけた。
「あれって速さ競ってんのかね? なら、買った方がジェラート奢るっつうんでどうよ?」
「おう、誰に勝負を持ちかけてんだ。アポヘルの流れ星と呼ばれたこのおれ様が負けるわけねぇだろ! おれはバニラとチョコレート二段乗せのやつな!」
「はいはい。ま、負けるつもりはねえんだけどな!」
不敵に笑って、二人はボード型の浮き輪にそれぞれ飛び乗った。隣り合う別レーンで互いに同時に飛び出して――。
「ちょ、早い早い早い!!」
「うおぉぁぁぁぁ
!??!」
滑り出したら、正しくそれは急流下りのようだった。隣のレーンがどうなっているかよりも、浮き輪から飛び出さないことに必死だ。
想像以上に加速しながら盛大にチューブの中を振り回され、インコースを取るとか体のバランスを取るとかそういった技を使わせてもらえる余裕もない。チューブの中を一回転し、スピードが最高潮に達した瞬間――。
二人仲良く同時にチューブから飛び出して空を飛び、そして海へと落下する。水面に顔を出した弥と蓮は互いの顔を見合わせ、そして笑った。飛び出したのが同時なら、もう一回!
勝負と楽しいことは、何度やったっていい。夏の時間は、まだはじまったばかりなのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
亜儀流野・珠
【ミケタマ】で、今年の水着を着ての参加だ!
青い海、青い空!
いやこれは素晴らしい景色だ!
普通に海で遊ぶのもいいが、やはり名所を楽しまんとな。
行くぞウォータースライダー!
二人用の浮き輪類があればそれに、
無ければ大きめの浮き輪に二人で乗ろう。俺が後ろだ。
……ミケ。勘違いしてるようだがこれ激しい奴だからな?
降りたい? まあ大丈夫だ俺がついている。
一緒に吹っ飛んでやるから安心しろ!
まあ吹っ飛ぶのは変わらんがな。ははは!
この綺麗な青空に向かって投げ出され、
済んだ青い海に吸い込まれる!
何とも気持ち良さそうじゃないか!
ジェラートを美味しく食べる為にもしっかり疲れて行かんとな!
もう一回やっとくか、ミケ?
舞音・ミケ
【ミケタマ】で参加するよ。水着で。
海、きらきらしててきれい。
あまり泳ぐの得意じゃないけど海で遊ぶの好き。涼しいし気持ちいいから。
けど何か面白いものがあるんだっけ?
ウォータースライダー。
風を受けて景色を楽しみながら水と一緒に流れる……。
涼しそうだし楽しそう。やる。
泳いだり走り回ったりで遊ぶのもいいけど、たまにはのんびり流れるのもいいかもね。
……え、これのんびりじゃないやつ?
速い? 回る? 飛ぶ?
ねえ珠、これ降り……られない。もう始まってる。
……もう諦めよう。
そら、うみ、きれい……(硬直しながら)
ジェラート食べたい……生きて帰る……。
もう一回はやだ……。
●
「青い海、青い空! いやこれは素晴らしい景色だ!」
もふもふ尻尾にさらりと伸びた銀の髪。真っ赤な瞳と同じ色のチャイナ風の水着で、亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)は思いっきり伸びをした。今日は絶好の海日和だ。
「海、きらきらしててきれい」
ふわふわ三毛色の髪に尻尾。リボンとレースが愛らしいセーラー風の水着に不思議な模様が描かれた青い布を纏い、舞音・ミケ(キマイラのサイキッカー・f01267)は眩し気に目を細める。波が眩しい。潮風が波音を連れて、火照る肌を心地よく撫でていく。
「あまり泳ぐの得意じゃないけど、海で遊ぶの好き。涼しいし気持ちいいから。けど何か面白いものがあるんだっけ?」
「普通に海で遊ぶのもいいが、やはり名所を楽しまんとな。行くぞウォータースライダー!」
ビシッと珠が指差したのは、このビーチの名物。崖から川の水と共にチューブの中を勢いよく統べるウォータースライダー群。
「ウォータースライダー。風を受けて景色を楽しみながら水と一緒に流れる……」
ミケが見上げた先には何本ものスライダーがある。それらからはひっきりなしにきゃあきゃあとはしゃぐ声が聞こえている。
「涼しそうだし楽しそう。やる」
「そうこなくては!」
楽し気な雰囲気を感じ取って頷いたミケの手を取って、珠は一緒に駆けだした。
目指すはスライダーのスタート地点!
二人乗り用のひょうたんのような形の浮き輪を受け取って、珠とミケは一番長くて一番早いスライダーのスタート地点へと立った。係員に手伝ってもらって浮き輪を浮かべたら、まずはその後ろの方に珠が座る。ミケも浮き輪の前へと座り、のんびりと浮き輪に背を預けた。
「泳いだり走り回ったりで遊ぶのもいいけど、たまにはのんびり流れるのもいいかもね」
「……ミケ。勘違いしてるようだがこれ激しい奴だからな?」
「……え、これのんびりじゃないやつ?」
珠の言葉にぴくりとミケの耳が動いた。恐る恐る珠の顔を振り返る。
「速い? 回る? 飛ぶ?」
ミケの問いに、神妙に珠が頷いた。ミケの尻尾の毛がぞわわわわっと逆立つ。
「ねえ珠、これ降り……」
引き攣った笑みで頼んでみようと思ったのだが、時既に遅かった。二人が無事乗り込んだのを確認して、浮き輪を抑えていた係員たちが手を離したのだ。
「……られない。もう始まってる」
流れ始める浮き輪。暢気に手を振る係員。徐々にチューブの中へと流れていく浮き輪の後ろで、珠がからからと快活に笑う。
「降りたい? まあ大丈夫だ俺がついている」
その笑みは大変頼もしく――、
「一緒に吹っ飛んでやるから安心しろ! まあ吹っ飛ぶのは変わらんがな。ははは!」
楽し気に笑う笑みがちょっぴり恨めしくもあり。
とはいえもう浮き輪はもうチューブの中に入り込むところ。今更降りてしまうわけにもいかない。
「……もう諦めよう」
「この綺麗な青空に向かって投げ出され、澄んだ青い海に吸い込まれる! 何とも気持ちよさそうじゃないか!」
悲しくもその選択肢しかないことを理解したミケは、浮き輪の取っ手を掴む手に力をこめる。その背をぽんと叩いて楽し気に珠が笑い、遂に浮き輪はチューブへと滑り込んだ。
それはまさに急流下りのようだった。もの凄い勢いでチューブの中を下り、カーブのたびに左右に大きく振られていく。硝子張りの天井の景色は飛ぶように流れ、勢いはどんどん増していくばかり。そして遂に、チューブが途切れて二人を乗せた浮き輪が宙を舞った。
「そら、うみ、きれい……」
「いやっほーーーっ!!」
ミケは硬直しつつ最早どこか茫然と。珠は楽し気に片手を突き上げて空を舞った。
視界が青に染まり、空と海の間を鳥のように飛ぶ。
それはとても綺麗な光景だったけれど――鳥ではない珠とミケは、当然のように海に落下した。
浮き輪ごと海面に着水すれば、水飛沫が大量に飛んだ。雨のように降る水滴を全身に受けてびしょ濡れになって、二人はようやく顔を上げる。珠がにししと笑ってミケを見た。
「ジェラートを美味しく食べる為にもしっかり疲れて行かんとな! もう一回やっとくか、ミケ?」
「ジェラート食べたい……生きて帰る……。もう一回はやだ……。」
笑う珠にふるふるとミケが頭を横に振る。
ならば次は何をしよう。何だってきっと楽しいだろう。
海も空もきらきらに煌いて、二人の笑い声を待っている。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
飛ぶ…のは少し気になるけど
折角水着に着替えたんだ
うん、一緒に行こうか
セリオスと二人乗り用の浮き輪に乗って
初めての(飛び出す)スライダーへ
想像以上に速いな…!
でも、はしゃぐ彼の声を聞くと
僕まではしゃいでしまいそうだ
…っと、あそこかな
覚悟と共に投げ出されるも…浮いている…?
風が吹く先には得意げな彼がいて
全く…悪戯っ子かい
空もいいけど、今日は海にも来たから
セリオス!
一緒に飛び込もう、と手を差し出す
素直な手に何処か嬉しさを感じながら
離れないようにぎゅっと握り
海の中へ
―っ
目を開ければ澄んだ青
それと…水の中で揺蕩う
僕の好きな星空色と、笑顔
彼の額に自分の額を寄せて
僕も笑顔を
ああ…楽しいね!
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
なぁアレス、せっかく途中で飛ぶなら一緒に飛ぼうぜ
キラキラの笑顔で誘って
アレスと二人スライダーに乗る
ははっ!こんなスピード出るもんなんだな!
風を使って走るのとまた違う感覚に笑い声をあげる
なあアレス!あれ
先に見える空に続く場所を指さして
空に放り出される直前
小さく歌を口ずさみ
風を呼んだ
せっかくの空も楽しみたくて
長く距離を飛ぶようにしながら
アレスをみて得意げに笑う
ちゃんと通じてる様子がまた楽しくて
伸ばされた手を素直にとる
ああ、アレス!
繋いだ手を握り返し
海の中へ
…っ!
目を開ければ澄んだ青
それに…ゆらゆらと水に溶ける
俺の太陽
顔は自然に笑みをつくる
近づく額にコツンと額を合わせ
ああ、楽しいな
●
青い海と空、白い砂浜。夏を楽しむ準備は万端と水着に着替えたアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)とセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)は砂浜を仲睦まじく歩く。
やがて目当てのウォータースライダーが見えれば、セリオスはとびっきりキラキラな笑顔を咲かせた。
「なぁアレス、せっかく途中で飛ぶなら一緒に飛ぼうぜ」
孔雀のようでもある豪奢な水着も相まって、セリオスのキラキラは普段の3倍増しだ。夏の太陽にだって負けはしない。
「飛ぶ……のは少し気になるけど。折角水着に着替えたんだ。うん、一緒に行こうか」
飛ぶ、という普通のスライダーであれば聞く事のない単語に若干の悩ましさを感じつつも、キラキラ笑顔のセリオスの誘いを断るアレクシスでもない。白と青い星空で纏めた爽やかな水着でアレクシスもまた、人好きのする柔和な笑みで頷いた。
ならば善は急げと早速スライダーのスタート地点に向かい、二人乗り用の浮き輪を手にしたら準備はOK。
ワクワクとドキドキの、初めての(飛び出す)スライダーへ、いざ!
浮き輪に乗ったらすぐに水流が二人を押し流していく。チューブの中を滑り出したらもう止まらない。急降下で一気に加速し、カーブのたびにぐいんぐいんと左右に振られながら加速して滑っていく。まさに急流下り。
「想像以上に速いな……!」
「ははっ! こんなスピード出るもんなんだな!」
浮き輪に乗っていることでコントロールもままならず、予測が出来ない動きがこのスライダーの魅力の一つだろう。放り出されないよう思わずがっちりと浮き輪の取っ手を握ったアレクシスだが、前のセリオスから聞こえるはしゃいだ声が、アレクシスの心まで湧き立たせていく。セリオスが楽しければ、アレクシスだって嬉しいのだ。
「なあアレス! あれ」
「……っと、あそこかな」
セリオスが指差す進行方向の先に、光が見えた。チューブの外には青が広がっている。みるみる近づいていくそれはまさに、チューブの途切れ。スライダーの終着点とジャンプ台だ。
アレクシスは飛び出す覚悟を携え、取っ手を持つ手に力を籠める。そして浮き輪がまさに光の中へと飛び出す瞬間――、セリオスが小さく歌を口遊んで風を呼んだ。
――。
瞼に差す陽の光は確かに外に投げ出された感覚を伝えるのに、いつまでも落下する気配がない。
「……浮いてる?」
アレクシスは首を傾げ、風が吹く先には得意げに笑うセリオスが居た。それだけで、アレクシスは全て理解して笑みを零す。
「全く……悪戯っ子かい」
セリオスが笑みを深める。せっかくの空だって楽しみたくて、浮き輪が長く距離を飛ぶよう風に乗せていたのだ。そのことを何も言わずともきちんと通じて理解してくれているアレクシスの様子が嬉しくて、楽しくて。
けれど、空だっていいけれど、今日は海にも来たから。
「セリオス! 一緒に飛び込もう!」
太陽のように眩しい笑みでアレクシスが手を差し出した。セリオスが大好きな太陽。己の盾。その笑みが咲いたなら。
「ああ、アレス!」
セリオスはしっかりとその手を握り返した。離れないようにぎゅっと握り合ったなら、二人はせーのでカリビアンブルーへと飛び込んだ。
「……っ!」
「――っ」
着水の衝撃と共に、身体が海に包まれる。心地よい冷たさの海は、透明で澄んだ青で二人を迎え入れた。
目を開ければ、アレクシスの前には水の中に揺蕩う大好きな星空色と笑顔がある。同じようにセリオスの前には、ゆらゆらと水に溶ける己の太陽。
自然と微笑みを浮かべ合った二人は、そっと額を寄せて、コツンと合わせる。それだけで嬉しさと幸せが溢れ出して、笑みは大輪と咲くのだ。
「ああ、楽しいな」
「ああ……楽しいね!」
繋いだ手を離さずに二人、海に揺蕩う。
水の中で光が、カーテンのように優しく揺れて二人を照らしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
萬場・了
夏に映えるだろう蛟羽(f04322)を誘って
俺と首のUDCにとっては恐怖が好物だ
とんでもねえスライダーに挑んで、最高の瞬間を撮ってやるぜ!
事前の下調べ、注意事項の確認、飛び込み方のイメージトレーニングはした
トカゲに似た「まるいの」の表情も変わらねえ様子
ふひひ、頼もしいメンツじゃねえか
蛟羽にも一言……ん?ああああああああ!
あー演出全部忘れた
あれ、落ちるのも忘れてんのか俺
空にしては賑やかな光景にそこが水中だと気が付いて
こりゃあ息を抜ききり過ぎだッ……!
光の強い方が水面だな、空気を取り返えすべく手足を動かす
あの飛沫が蛟羽かー?
離れた位置で上がった飛沫を目印に泳ぎ寄る
そうだな、何度でも飛ぼうぜ……!
未不二・蛟羽
了さん(f00664)と
夏だ、海だ、遊ぶっすー!
ウォータースライダー…めーっちゃ楽しそうっす!
高いし速いし、ジェットコースターみたいっす!なら絶対カッコいいしきらきらっす!
大はしゃぎしながら了さんを引っ張り、飛び出すスライダーへ
なんか色々確認してるけど…こういうのは思いきりって聞いたっす、はいどーん!
続くように自分も出発、スピードを楽しんで
きらきらのおひさま、このまま跳べば届きそう、なんて
飛び出すと同時に羽を広げ、滑空の要領でどこまで遠くまで跳べるか、なんて挑戦してみたり
着水後、様子を見に来た了さんへ尻尾の蛇ちゃんが水を吹きかけ、ドッキリを仕掛け
あははっ、もう一回じゃーんぷっ、しに行こうっす!
●
きっと夏に映えるだろう彼――未不二・蛟羽(花散らで・f04322)を誘い、共にゲートを潜ればそこは夏真っ盛りの欲望の海。太陽も空も海も風も、全てが遊ぼうと誘ってくるけれど、萬場・了(トラッカーズハイ・f00664)の今日の目当ては――。
「夏だ、海だ、遊ぶっすー!」
蛟羽は真っ白なビーチで片手を突き上げた。水着に着替えてもう準備万端。今すぐにでも遊びに駆けだせる。けれど了はニヤリと口の端を上げる。
「俺と首のUDCにとっては恐怖が好物だ。とんでもねえスライダーに挑んで、最高の瞬間を撮ってやるぜ!」
撮影者魂が盛大に刺激されるスライダーがあるのならば、それを撮らずに何を撮る!崖の上を流れる川を利用し海へと至るウォータースライダー。長さも速さもそれぞれ違うスライダーの中で、狙うは頂点ただ一つ。一番早くて一番長いウォータースライダーだ。
「ウォータースライダー……めーっちゃ楽しそうっす!」
そして楽しいことが大好きな蛟羽が首を縦に振らぬわけがない。ウォータースライダーとは楽しいものだけれど、一番長くて一番早くて、しかもラストはチューブが途切れて空に投げ出され、海へと落ちるだなんて。
「高いし速いし、ジェットコースターみたいっす! なら絶対カッコいいしきらきらっす!」
きっと最高の動画になるし、きっときらきらで楽しい今になる。蛟羽は大はしゃぎしながら了を引っ張り、飛び出すスライダーへと駆けだした。
浮き輪を手にしたら列に並ぶ間、了は入念に事前の下調べを開始する。チューブから予想出来るコースや係員からの注意事項をしっかりと確認をする。飛び出した時の飛び込み方のイメージトレーニングも既に頭の中では何度もシュミレート済。全ては最高の映像の為!
連れてきた、トカゲに似た「まるいの」の表情も変わらない様子。
「ふひひ、頼もしいメンツじゃねえか。そうだ、蛟羽にも一言……」
「こういうのは思い切りって聞いたっす、はいどーん!」
蛟羽にカメラを向けた瞬間、蛟羽がにこやかに了の乗った浮き輪を勢いよく押した。
「……ん?ああああああああ!」
何やら色々確認しているのは蛟羽にもわかっていたが、ものは勢い。そして度胸。滑ってしまえばどうにかなる!の精神――かもしれない。
叫び声をあげながら予定外のタイミングでチューブの中へと吸い込まれていく了を追って、蛟羽もすぐに浮き輪に飛び乗って後を追った。
中はもうもみくちゃだった。急流下りのようとは聞いていたが、滑ってみれば蛟羽の言う通りジェットコースターのようだ。想像以上に加速する水流を浮き輪というコントロールも儘ならないもので滑り降り、カーブのたびに左右に大きく振られていく。
(「あー演出全部忘れた」)
おかげさまで了は入念な事前準備の甲斐なく、シュミレートした演出を全て忘れてもみくちゃにされながら滑り降りていた。
後方からは水流の音に混じって蛟羽の楽しそうな歓声が聞こえてくる。きっと満喫しているのだろう。
などと思っている間にチューブは途切れ、充分に加速しきった了の浮き輪は遂に空へと投げ出された。
嗚呼、空が高くて海が綺麗だ。
呆然と目の前の景色に見惚れていた了だったが。
「あれ、落ちるのも忘れてんのか俺」
そう口にした瞬間、了は勢いよく海へと落ちた。
続いて蛟羽もまたチューブから高く跳び出した。跳ねて陽の光を浴びてきらきら輝く水滴が、青と蒼の世界が美しくて。きらきらのおひさま、このまま跳べば届きそうだなんて思い、蛟羽は飛び出すと同時に翼を広げた。滑空の要領でどこまで遠くまで跳べるだろうなんて、挑戦だ。
了が目を開けば、賑やかな光景が広がっていた。色とりどりの魚が泳ぎ、海藻がゆらゆらと揺れて――、そしてそこでようやく、自らが居る場所が海中だと気が付いた。
(「こりゃあ息を抜ききり過ぎだ…!!」
光の強い方が水面だろう。了は慌てて手を動かして、空気を取り返すべく水面へと手足を動かした。
ようやく海面に顔を出せば、少し離れた場所で高い水飛沫があがった。
「あの飛沫が蛟羽かー?」
上がった飛沫を目印に泳ぎ寄れば、丁度蛟羽も海面へと顔を出す。了が手を振って泳ぎ寄れば、にゅっと水面へと顔を出した蛟羽の尻尾の蛇ちゃんが思い切り水を吹きかけた。
「うわっ!」
「あははっ、もう一回じゃーんぷっ、しに行こうっす!」
見事ドッキリ大成功。可笑しそうに尻尾の蛇ちゃんと笑いながら、蛟羽は太陽のようににぱっと笑ってもう一度を誘う。
「そうだな、何度でも飛ぼうぜ……!」
了もまた、「まるいの」と共ににかっと笑った。
何度だって楽しもう。何度だって遊ぼう。だって今は、楽しい夏なのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
清川・シャル
f08018カイムと
海だ〜!!シャルはアルビノさんなのであまり長い時間太陽の下という訳には行かないのですが、今日はオーラ防御しましょう。これで紫外線もバッチリOK!(多分)
カイム〜シャルスライダーやりたい〜行ってくるね!泳げないからキャッチしてね!
言うだけ言って走っちゃいます。やっぱりはしゃぐよね、海ってたーのしーい!
高いところ大好き!順番待ちして、勢いよくスライダー滑ります!膝蹴りしないようにカイムにダイブ
えっこのまま落ちるの?えっうそ!海に落っことさないでね?ほんとに泳げないから…めっちゃしがみついてます
目を開けられないから瞑ったままだし、わかるのはお日様と海のにおいと体温だけ
こ、こわっ!
カイム・クローバー
f01440シャルと行動。
透き通るような海と何処までも晴れ渡った快晴。
風は心地良い最高のロケーションだ。
そんな夢見心地の空の下、サーフボードに体を預けて、シャルが飛び出して来るのを待っている。
返事も聞かずに飛び出したシャル。放り出されるの海の真ん中だぞ。泳げねぇだろうに…。
とはいえ、楽しそうな笑い声が響いて来るのには笑みを隠せなくて。
彼女が放り投げられた瞬間、サーフボードを起点にUCで空まで迎えに行くか。
太陽の光を遮るように身体で隠し、空中でお姫様抱っこで抱き止めて。
少し潜るぜ?息を止めて俺に捕まってろ。そのまま、海中に落ちて――海面へと引き上げる。
ったく…ホント無茶しやがるぜ。(頭撫でる)
●
透き通るようなカリビアンブルーの海と、何処までも晴れ渡った快晴。風は心地よく、まさに最高のロケーションだ。
「海だー!」
海賊娘風の元気な水着で、清川・シャル(無銘・f01440)は瞳を煌かせた。シャルはアルビノであるが故、あまり長い時間太陽の下にはいられない。けれども今日のシャルは一味違う。オーラを重ねて身に纏い、肌を太陽光という危険から防御しているのだ。これで紫外線対策はばっちりOK! ……多分。
「カイム〜シャルスライダーやりたい〜行ってくるね!泳げないからキャッチしてね!」
言うだけ言って、シャルは返事も聞かずにスライダーのスタート地点へと走り去っていく。快晴と海の煌き、そして波の音に、やはりどうしても心がはしゃいで沸き立ってしまうのだ。
「海ってたーのしーい!」
思わず飛び跳ねたシャルの背を、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は困ったように笑いながら見送った。
スライダーのスタート地点は崖の上だ。海と空をいっぺんに見渡せるこの景色は、それだけでも高いところが大好きだというシャルの目を楽しませる。
浮き輪を手にして列に並び、順番が来たら待ちきれない様子でスタートプールに浮き輪を浮かべて飛び乗った。係員の合図で水を蹴ったらスタート!
シャルを乗せた浮き輪がチューブの中へと吸い込まれるや否や、いきなりの急角度で一気に加速した。カーブのたびに右に左に豪快に振り回され、時に一回転したりして滑り落ちていく。急流下りのようだとはよく言ったもの。まさに水のジェットコースターだ。チューブの中で予測不可能な動きに歓声をあげ、飛ぶように過ぎる景色と弾ける水飛沫がシャルに笑みを咲かせていく。
さてカイムはといえば、夢見心地の晴れ渡る空の下、サーフボードに体を預けてシャルが飛び出してくるのを待っていた。返事も聞かずに飛び出したシャルを思い出して、カイムはほんのり眉を下げる。
「放り出されるの海の真ん中だぞ。泳げねぇだろうに……」
シャルも言っていた通り、彼女は泳げない。それでもスライダーを楽しみ飛び出してくることを迷いなく選択できるのは、カイムという信頼を置いた婚約者が共に居るからだろう。気兼ねなくそれを頼めるのもまた、彼女に最も近しい人物だからということもあるかもしれない。
いずれにせよどんな心配も、シャルの楽しそうな歓声や笑い声が聞こえてくればカイムの唇にもまた笑みを咲かせて隠せないのだ。なんであれ、シャルの「嬉しい」や「楽しいはカイムにだって嬉しくて楽しいのだから。
歓声がどんどん近づいてくる。
そして途切れたチューブからシャルが飛び出した瞬間、カイムは体を預けていたサーフボードを起点に空へと跳んだ。
「カイムー!」
膝蹴りしないように気を付けながら、シャルがカイムを見つけて手を伸ばす。その手を取って、カイムは見事空中でシャルをお姫様抱っこでしっかりと抱きとめた。太陽により近づいたことでシャルの肌を傷つけるかもしれない太陽の光を、自らの体で覆い隠してカイムはにっと笑う。
「少し潜るぜ? 息を止めて俺に掴まってろ」
「えっこのまま落ちるの? えっうそ!」
シャルが慌ててカイムの首にがっしりとしがみついた。カイムが発動したユーベルコードは空中浮遊。空中を指定回数蹴って飛べるものであって、空を飛ぶわけではない。跳ね終われば当然、落ちる。
「海に落っことさないでね? ほんとに泳げないから……」
「俺を信じろって」
怖くて思わず目を瞑ったシャルに、カイムの優しく、そしてどこか笑みを含んだ声がすぐ傍で響いて――、そうして二人一緒に、海へと落ちた。
ざばん!!と、高く水飛沫が舞った。
すぐさま海面へと顔を出したカイムは、腕の中で必死にしがみついているシャルを海面へと引き上げた。
「こ、こわっ!」
目を開けられなくてまだ目を瞑ったままだし、今のシャルにわかるのはお日様と海のにおいと、カイムの体温だけ。けれど、その体温が在る。
「ったく……ホント無茶しやがるぜ」
そう言ったカイムが優しくシャルの髪を撫ぜた。
波音は二人を包み込んで穏やかに揺らす。そうしてまたシャルが目を開いて笑ってくれたら、カイムもまた笑みを咲かすのだろう。
海の青が、空の青が、陽の光に煌いている。
その夏の思い出を振り返る時、きっとこの日はいつだってきらきら輝いているのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵