迷宮災厄戦②~はいかぶりのゆめ(作者 犬塚ひなこ
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●王子様を求めて
 其処は宛ら、迷宮のように広がる図書館の国。
 数多の書棚や様々な本が並び、古びた紙の香りが広がる不思議な世界だ。
「ふふ、楽しみね。本当に楽しみだわ!」
 青いドレスを身に纏う少女は踊るようにステップを踏み、硝子の靴を鳴らす。
 そして、彼女は周囲の配下達に笑顔を向けた。
 時計ウサギや眠りネズミめいた姿をしたオウガ達は彼女に言われるがままに奇妙な魔方陣を描き続けている。
「ウサギさんにネズミさん、そのまま儀式を続けてね」
 現在、此処にはオウガの大軍団が集い、他の世界から『アリス』を大量に召喚する儀式を行っている。召喚儀式の首謀者となっているのは硝子の靴を履いた少女――灰被り、或いはシンデレラと呼ばれるひとりのオウガだ。
「きっとね、アリスがたくさん集まったら、ひとりくらいは私の王子様になってくれる子も見つかるはずよ!」
 嘗て王子様を失ったシンデレラは期待に満ちていた。
 どうして王子様が居なくなったのか、何故失くしたはずの硝子の靴がきちんと両方揃っているのかなんて、もうどうだっていい。
 少女はただ新たなアリスを待ち侘びている。
 シンデレラはどんな苦境が訪れても諦めはしない。だって、今度こそ素敵な王子様を見つけて――幸福な夢に浸りたいから。

●儀式阻止戦
「たいへんだ! たいへんだ! アリスラビリンスが危機でいっぱいだ!」
 遅刻しそうになって急いでいる白兎のように、グリモア猟兵のひとりであるメグメル・チェスナット(渡り兎鳥・f21572)が仲間の元に駆けてきた。
 この世界で戦争が始まるのだと語った少年は猟兵達に協力を願う。
 今回、向かって欲しいのは或る不思議の国。
「砕かれた書架牢獄って呼ばれてる国があってさ、その名の通り本だらけの国なんだ」
 其処ではアリス召喚儀式が行われているという。
 それを阻止しなければオウガ・オリジンにアリスの血肉が捧げられ、無辜の命が犠牲になるだろう。そのうえ此度の司令官であるオウガ、シンデレラが新しい王子様として少年のアリスを攫ってしまう。
「誰ひとりだってアリスは食べさせたくないし、シンデレラの王子様っていう幻想の存在にあてがわれる子だって生みたくないんだ。だから皆、力を貸して!」
 メグメルはシンデレラと配下達が陣取っている区域を示し、転送の準備を整えた。
 敵の数は多いうえに首魁のオウガもそれなりの強さを誇っている。しかし、全力で向かえば勝利も得られるはず。
 頼むよ、と仲間に信頼の眼差しを向けたメグメルは転送陣を展開する。
「それじゃあ、いくぜ。ゲート・アンロック!」
 そして――淡い光が瞬いたと同時に、書架牢獄への路がひらかれた。


犬塚ひなこ
 こちらはアリスラビリンスの戦争、『迷宮災厄戦』のシナリオです。
 戦場は『砕かれた書架牢獄』となります。

 今回は少数(四~六名様前後)採用予定で執筆致します。
 描写は先着順ではありません。少数採用の分だけ早期完結を目指しておりますので、頂いたプレイングに何も問題がなくてもお返ししてしまうこともあります。どうかご了承の上でご参加頂けると幸いです。

●プレイングボーナス
『オウガの群れを潜り抜け、司令官に素早く接近する』

 戦場にはサバイバルで登場するような集団戦の敵がひしめいています。
 その司令官であるシンデレラが中心にいるので、集団敵を倒して進み、首魁を倒してください。集団への対策、ボスへの戦法の両方が入っていると良い感じです!
 また、このシナリオ成功ひとつにつき、戦争サバイバル🏅2万が加算されます。
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第1章 ボス戦 『シンデレラ』

POW ●カボチャキャバリア
自身が操縦する【カボチャの馬車に乗り、そ】の【UC耐性を持つ馬車の重装甲】と【轢き逃げ攻撃の威力・速度】を増強する。
SPD ●魔性の硝子細工
【ガラスの靴】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、ガラスの靴から何度でも発動できる。
WIZ ●ビードロキック
【防御貫通効果を持つ、蹴り】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


ケルスティン・フレデリクション
ほんがいっぱいのくに…てきがいなければ、よんでみたかったなぁ。
…うん、がんばろう。

いっぱいの敵にはルルにお手伝いしてもらうよ
【範囲魔法】【属性攻撃】で氷の雨を降らせるね
つめたいあめ、いっぱい!ルル、おてつだいおねがーいっ

おうじさまをさがしてるの?
…おうじさまをみつけて、どうするの?
なんてお話ししてから、【ひかりのしらべ】
きらきら。あなたのおうじさまにはだれにもなれないの。ごめんなさい。
せめて、あまりいたくないように。

てきのこうげきは当たらないように後ろに下がっておくね。
当たるようなら【オーラ防御】をつかうよ。

【アドリブ連携OK】


●本の世界
 其処は砕かれた書架牢獄と呼ばれる場所。
 本ばかりの世界が檻だというのなら、囚えられてもずっと退屈はしなさそうだ。
 自分が幽閉されていた時とほんの少しだけ状況が似ていると感じて、ケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)は想像を巡らせた。
「ほんとうに、ほんがいっぱいのくに……」
 書架の国に降り立ったケルスティンは辺りを見渡し、思ったままの言葉を零す。
 敵が居なければひとつずつ手に取って、どんな物語が綴られているのか読んでみたかった。しかし今は予断を許さない状況だ。
「……うん、がんばろう」
 ケルスティンは視線の先にある様々な魔方陣を瞳に映した。
 それはもう少し向こう側にいる時計ウサギや、眠りネズミめいた姿をしたオウガ達が描いたものらしい。
 魔方陣は所々が歪んでいたが、アリスを召喚する儀式というだけあって不思議な力が満ちている。ケルスティンは身構え、数多の配下オウガの奥に控えているという首魁――シンデレラについて思った。
 彼女は王子様を探しているというけれど、どうしてなのだろう。
「まずは、いかなきゃ」
 その理由を問うためにもあの配下達をどうにかしなければならない。
 ルル、とケルスティンが名前を呼ぶと、鳥型の氷の精霊がちいさく囀った。いくよ、と呼びかけた彼女の髪に揺れる花を一度啄んだルルは、その声に応じる。
 白い小鳥が翼を広げれば、周囲に氷の魔力が満ちた。
「つめたいあめ、いっぱい! ルル、おてつだいおねがーいっ」
 ケルスティンの声と共に氷は鋭い雨となり、周囲に降りそそいでいく。わあわあと叫んだ眠りネズミが書架の影に隠れ、時計ウサギが慌てて駆けていった。
 立ち向かってくる者もいたが、掌を翳したケルスティンが光を降らせる。
 氷の雨にひかりのしるべが反射してきらきらと煌めいた。
 光に貫かれたオウガ配下達が倒れていく中、ケルスティンはぱたぱたと駆けていく。そして――少女はシンデレラの元に辿り着いた。
「あなたは私の王子様? ……じゃないみたいね」
 灰被りのオウガはくるくると陽気にステップを踏み、ケルスティンを迎える。しかし此方が王子ではないと知ると、なぁんだ、と肩を落としてみせた。
「……おうじさまをみつけて、どうするの?」
「聞きたい? それはね、幸せになるためよ!」
「――しあわせ?」
「そう、物語のハッピーエンドに辿り着くの。今までは失敗ばかりしてきたけど、今度こそは出来そうな気がするわ。でも、あなたは邪魔ね!」
 シンデレラは明朗に、しかし確かな敵意を持って蹴撃を見舞ってきた。
 ルルが鳴いたことではっとしたケルスティンは、何とかその硝子の靴による蹴りを避ける。明るいお姉さんに見えても相手はオウガなのだ。分かり合えないと察したケルスティンは何処か哀しげに瞳を伏せた。
「あなたのおうじさまにはだれにもなれないの。ごめんなさい」
 だからせめて、あまりいたくないように。
 シンデレラにケルスティンの指先が向けられた刹那、天からの光がオウガを貫いた。
「きゃあ! なかなかやるわね!」
 相手から悲鳴があがったが、戦いは未だ始まったばかり。
 ルルと一緒にしっかりと身構えたケルスティンは敵を見つめ、此処から更に巡りゆく戦いへの思いを強めていった。
 
大成功 🔵🔵🔵

花邨・八千代
ハァイ!美人な鬼の王子様一丁お待ちィ!
硝子の靴履いた物騒ガールじゃねーの、かぁいい顔してんなぁ

王子様を自ら引きずり出す気概は嫌いじゃねェよ
ただし、望み通りの王子様がくるかは別の話だがな!

蹴りが得意か!俺も結構得意だぜ!
ちっとお披露目してやろうか?
――そこに跪いてみろ

ごり、と足元の地面を一度踏み詰ってから【壊神】だ
不意打ちでバキバキに地面ぶっ壊して姿勢崩させて、そこから一気に集団を切り崩すぞ
武器は黒塚、片っ端から薙ぎ払ってやらぁな!

集団を切り捨ててシンデレラに突っ込む!
砕けた地形に相手が慣れる前に全力で攻撃を叩きこむぞ

あぁ、そういや物騒ガールよ
髪は上げときな、じゃねェと首ごとちょん切っちまうぜ


●お転婆姫と南瓜の馬車
「ハァイ! 美人な鬼の王子様一丁お待ちィ!」
 威勢の良い声と共に書架の牢獄に現れたのは、赤い双眸を鋭く細めた花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)だ。
 書架が並び立つ不思議な国の中、彼女が目指すのはシンデレラのもと。
 しかし、物語とは違って硝子の靴を履かせるためではない。既に彼女は自分の靴を取り戻しているし、お淑やかに王子を待つ儚い少女でもなかった。
「硝子の靴履いた物騒ガールじゃねーの、かぁいい顔してんなぁ」
 八千代は配下オウガ達の向こう側に見える少女を見遣り、喉を鳴らして笑った。
 王子様を自ら引きずり出す気概は嫌いではない。ただし、こうして自分が訪れたように望み通りの王子がくるかはまた別の話。
「さってと、まずはアイツらを蹴散らさないといけないか」
 黒塗りの薙刀を片手で回した八千代は、ごり、と足元の地面を一度踏み詰った。図書館めいた床の踏み心地は悪くはない。
 見れば、敵の元に辿り着いた猟兵がシンデレラの蹴撃を受けそうになっていた。それに気付いた八千代は、成程、と頷く。
「蹴りが得意か! 俺も結構得意だぜ! ちっとお披露目してやろうか?」
 楽しげに笑った八千代は其処から一気に踏み込み、時計ウサギや眠りネズミのようなオウガが犇めく真正面の通路へと駆けた。
「――そこに跪いてみろ」
 八千代の言葉と共に巡りゆくのは壊神の力。
 単純で重い踏鳴の一撃が響き渡った瞬間、地面が見る間に破壊されていく。わー! とオウガ配下達が逃げ惑っていった様子を見遣り、八千代は駆けていく。
 地面はそれはもうバッキバキのボロボロだ。されど彼女は足場を難なく飛び越え、ひといきに黒塚を振るいながら敵を散らしていった。
「片っ端から薙ぎ払ってやらぁな!」
 敵の集団を切り崩した八千代は瞬く間にシンデレラの眼前にまで辿り着く。
「あらあら、随分と暴力的ね!」
 対するシンデレラは身を翻し、召喚したカボチャの馬車に乗り込んだ。御者になど頼らずに自身が操縦する馬車を乗り回すシンデレラもまた、随分とアレな感じだ。
 しかし、カボチャの馬車は上手く走れない。
 何故なら周囲の道を八千代が崩してしまったからだ。きゃあ、という声が響いたかと思うと馬車からシンデレラが転がり落ちてきた。
 どうやら荒れた道に車輪が挟まり、カボチャごと転倒したらしい。
「隙あり!」
 その好機を狙った八千代はシンデレラを狙って刃を振り下ろした。はっとした相手はそのまま転がることで此方の攻撃を躱す。
「ふ、ふふ……不覚を取ったけれど、私にだって反撃させて頂戴!」
 体勢を立て直したシンデレラは八千代を睨み付ける。
 あなたは美人だけど王子様じゃない、と付け加えたオウガは八千代の懐に入る勢いで駆け、全力の蹴りを放った。
 咄嗟に黒塚の柄で受け止めたが、その衝撃は重い。
 それでもシンデレラを力の限り押し返した八千代は口の端を歪めて笑った。
「あぁ、そういや物騒ガールよ」
「なあに?」
「髪は上げときな、じゃねェと首ごとちょん切っちまうぜ」
「ふふん、それはあなたの方かもね!」
 腕っ節も気も強い二人の視線が真っ向から重なって交差した。
 そして――其処から更に戦いは巡る。激しい攻防が繰り広げられる最中、周囲には再びオウガの配下が集まりはじめていた。
 
大成功 🔵🔵🔵

ノエル・フィッシャー
【SPD】
王子様をご所望だね。なればボクが赴こう。
されどボクは死の国の王子様。残念ながらオウガの姫君に与えられるのは死の接吻だけさ。

謳いしUCは【我が王道に轍無し】。召喚した純白のユニコーンに跨り、アリスランス【魁一番槍】を構えてダイナミック入牢。
狙いしは大将首、即ち首魁のシンデレラのみ。立ち塞がる集団敵のみをユニコーンによる蹂躙やランスによる払いで排除し、強行突破を図るよ。

シンデレラを発見したら白馬の王子様ムーブを取りつつ魔法陣を蹂躙しながら騎馬突撃で接近。一瞬だけでも王子様の到来を予期させて隙を作れる事を狙いつつ、すれ違い様にランスの一突きを放つよ。

アドリブ・共闘歓迎だよ。


●白馬の王子は夢を謳う
 シンデレラは王子様を探している。
 本当に結ばれるはずだった彼は何処に行ってしまったのか。そもそも、あのシンデレラは物語のような悲劇のヒロインだったのだろうか。
 一度王子様に逢ったならば片方しか無いはずの硝子の靴。
 それを両足に履いたシンデレラは召喚儀式を続行しようとしている。オウガという存在であるゆえだが、どうやら彼女は物語の中の存在とはまったく違うらしい。
 不思議だね、と言葉にしたノエル・フィッシャー(呪いの名は『王子様』・f19578)は白手袋をした掌で飾緒を整え、華麗にマントを翻した。
「姫君は王子様をご所望だね」
 見遣る先には王子を待ち侘びる、夢に溢れた少女がいる。
 其処に出向くのが王子様というもの。
「なればボクが赴こう」
 されどノエルは自分が彼女の求める相手ではないと知っている。
 犇めく配下の向こう側を見つめ、ノエルは肩を竦めた。そして、ノエルは純白のユニコーンを召喚する。
 ――我が王道に轍無し。
 謳うような凛とした言葉を紡ぎ、白馬の背に乗ったノエルは馬上槍を構えた。
 往くべき道を邪魔する配下の相手を一体ずつしていたらきりがない。それゆえにユニコーンで駆け抜け、直線上の敵を魁一番槍で蹴散らす。
 まさにダイナミック入牢と呼ぶに相応しい形でノエルと白馬は駆けていった。
 馬の嘶きが響き、振るわれた槍が眠りネズミを貫く。
 更に時計ウサギが馬に蹴られて弾け飛び、わあ、と悲鳴があがった。ごめんね、と呟きはしてもそれらに一瞥もくれず、ノエルは疾く進む。
 狙うのは大将首。
 即ち、首魁であるシンデレラのみ。
 駆けるユニコーンが床に描かれていた召喚儀式の魔方陣を蹂躙し、ノエルが手にした細くしなやかなアリスランスが煌めく。そうして、時間にすること数秒後。
「まあ、王子様ね!」
 シンデレラは白馬に乗って現れたノエルを見つめ、瞳を輝かせた。
 物語ならば片方の硝子の靴を差し出して――という浪漫に満ちた展開が待っていたのだろう。しかし、此処から始まるのは力の応酬だ。
「ボクは死の国の王子様。残念ながらオウガの姫君に与えられるのは死の接吻だけさ」
「そう、あなたは私の王子様じゃないのね」
 それならば邪魔なだけだと告げ、シンデレラは床を蹴った。
 此方がユニコーンに騎乗していようと怯まず向かってくるシンデレラ。その姿をしかと見据えたノエルは白馬に突撃するよう願った。
 蹴りで以てユニコーンごとノエルを打ち破ろうとする少女。
 ランスの切っ先を差し向けて、白馬と共に吶喊する王子。
 二人がすれ違った刹那。
 甲高い嘶きが響き、シンデレラから痛みに耐える苦しげな声があがった。
「きゃ! 流石は死の国の王子様ね。でも……!」
 私は負けない。諦めない。
 無理矢理に明るく笑ったシンデレラは体勢を立て直し、ノエルを強く見つめた。
「なかなかの豪胆さだね。それじゃあ、最後まで踊ろうか」
 ノエルはダンスに誘うかのように片手を差し出して優雅に微笑んでみせる。
 この先に巡るのは激しい攻防だけ。それでもせめて、王子様として硝子の靴の姫君に夢を魅せよう。そう心に決めたノエルは馬上槍を構え直した。
 そして、戦いは更に続いていく。
 
大成功 🔵🔵🔵

ユヴェン・ポシェット
頼む、タイヴァス。
巨大な大鷲に捕まりオウガの群れへ上から飛び込む。
ロワ…!
その瞬間UC「ライオンライド」使用。空中から落下しそのまま召喚したロワへ飛び乗りオウガの達を薙ぎ倒す。手には槍となったミヌレ。ロワに跨りミヌレを振るい、群がるオウガ達を引き寄せ纏めて串刺しに。俺を乗せた状態でもロワは爪や牙で応戦。タイヴァスは空中から飛びかかり、俺達の援護を。仲間と共に敵を複数纏めて攻撃を行いつつシンデレラを目指す。

シンデレラ相手には脚を使われる前にダークネスクロークのテュットが、その身の布で巻き付き動きを奪う。ロワに乗ったまま、加速しシンデレラの元へ槍を突き立て一気に近付き、勢いつけたまま貫く。


●共に往く者達
 時計ウサギに眠りネズミ。
 不思議の国らしさを感じさせる姿をしたオウガ達は今、書架牢獄に集っていた。
 首魁に命じられるがままに召喚の魔方陣を描く数多のオウガ。かれらの数は多く、無策の正面突破はおそらく難しいだろう。
 ユヴェン・ポシェット(opaalikivi・f01669)は書架が並ぶ世界を見渡し、天高く伸びる本棚を見上げてみた。
「流石に上空にまでオウガはいないか。……よし」
 片腕を掲げたユヴェンは頼もしき大鷲を呼ぶ。雄々しき翼を広げたタイヴァスは高く鳴き、彼が望むことを感じ取って飛来した。
「頼む、タイヴァス!」
 呼びかけが響いた刹那、ユヴェンを捉えた鷲が大きく羽撃いた。
 その脚に捕まったユヴェンはオウガの群を飛び越え、一気にシンデレラの居場所へと飛び込む心算だ。
 狙い通り、上空まで追いかけてくる敵はいない。
 素早く敵の位置を把握したユヴェンはタイヴァスを振り仰ぎ、硝子の靴を履いた少女の元に飛ぶよう伝えた。
 返事代わりに翼を何度か羽撃かせた大鷲はひといきに滑空する。
 此処からは疾さの勝負だ。
 タイヴァスの脚から手を離したユヴェンはシンデレラの頭上に落下する。
 それと同時に黄金の獅子を喚んだ。
「ロワ……!」
 召喚された獅子の背に飛び乗り、ユヴェンはミヌレの槍を握る。配下を飛び越えたと言ってもシンデレラを守らんとして動いた何体かの相手はしなければいけない。
 引き寄せ、纏めて串刺しに。
 勢いに乗せて竜騎士の槍を振るったユヴェンは、一気にオウガ達を蹴散らす。
「まあ、白馬じゃなくて獅子に乗った王子様?」
 そのことに気付いたシンデレラは低い書架の上に飛び乗り、ロワが振るおうとしていた爪を避けた。
 既に他の猟兵と交戦していたシンデレラだが、ユヴェンが厄介だと察したらしい。
「残念ながら、俺は王子という柄ではないな」
 首を振って答えたユヴェンはロワと共にオウガの首魁との距離を詰める。
 近付かせない、と口にしたシンデレラは書架から飛び降りた。だが、オウガが相手取ることになるのはユヴェンだけではない。
 空中から飛び掛かったタイヴァスがシンデレラの髪を掠めながら低く跳んだ。
「きゃあっ! 何よ、あの鳥!」
 驚いたシンデレラは髪を整え、鋭く身構える。
 されどそれだけで十分な隙を作ることができた。次の瞬間にはユヴェンが纏っていたダークネスクロークがひらりと舞う。
「テュット!」
 ユヴェンの声に応えるように布がシンデレラに巻き付き、視界と動きを阻んだ。踠くオウガが此方を見失ったことを察し、ユヴェンはロワに乗ったまま、鋭く加速していく。
「ちょっと! 総攻撃なんてずるいわ!」
「悪いな、これが俺達の戦い方だ。――行くぞ、ミヌレ!」
 タイヴァスの援護、ロワの突撃と爪と牙、テュットの妨害。そして、ユヴェンとミヌレの槍による串刺しの一閃。
 ユヴェンはすべての力を以てして、シンデレラへと槍を突き立てる。
 その一閃はオウガたる少女の身を傾がせ、形勢を揺らがせる大きな一手となった。
 
大成功 🔵🔵🔵

須藤・莉亜
「本がいっぱい…。良いね、お酒持って籠りたくなる感じ。」
本の匂いってのはわりと好きなんだよねぇ、僕。

不死者の血統のUCを発動し吸血鬼化して戦う。
オウガの群れは、彼らの生命力を全力で奪い弱体化させて足止めしつつ、一気に突破する。
奪った生命力で自身を強化し続けながら、ガンガン敵さん目掛けて走り抜ける事にしよう。血を吸える相手を見逃すのは、ちともったいないけど。

敵さんまで辿り着けたら、敵さんからも生命力を奪い弱体化させ、強化された力で全力で殴る。近づいちゃダメっぽいし、動きを見ながら大鎌で攻撃して行こうかな。
吸血もしたいとこだね。こんだけ生命力奪ったら、傷もすぐ治るし多少無茶しても良いかも?


●命の揺らぎ
「本がいっぱい……」
 砕かれた書架牢獄にて、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は立ち並ぶ数々の本棚を見渡した。
「良いね、お酒持って籠りたくなる感じ」
 本の匂いは割と好きだ。古びた紙の香りは歴史を感じさせてくれる。
 同じ時代を重ねた酒と共に本を読み耽るのも悪くはない。もっとも、この世界に蠢くオウガ達が居なければ――という前提で。
「さて、行こうかな」
 莉亜は不死者の血統を発動し、己の身を吸血鬼化してゆく。
 首魁に会うためにはまず目の前の配下をどうにかしなければならない。莉亜は敵の群れを見遣り、軽く地を蹴った。
 宿したオーラが周囲に巡り、オウガ達の生命力が瞬く間に奪われていく。
 力が抜ける、どうして。
 そんな言葉が時計ウサギめいたオウガから零れ落ちたが、莉亜は容赦などしない。次に邪魔になった眠りネズミのような敵に狙いを定め、莉亜は力を振るい続ける。
 全力で生命力を奪えば、見る間に敵は弱体化していく。
 効率くよく足止めをしつつ、一気に敵群を突破していく莉亜は前方に青いドレスを纏う少女を見つけた。
「あれがシンデレラかな」
 彼女は既に別の猟兵と交戦しているようだ。
 莉亜はその戦いに加わる事を決め、これまでに奪った生命力で自身を強化していく。
 途中、シンデレラの元までは通さないというように時計ウサギのオウガが駆けてきたが、今の莉亜には彼らなど眼中にない。
 ひといきに敵目掛けて走り抜けた莉亜はシンデレラを捉えられる距離まで辿り着く。
「血を吸える相手を見逃すのは、ちともったいないけど……今はこっちが優先だからね、仕方ないか」
 ちらりと振り向いた莉亜は弱って倒れた配下達に名残惜しさを感じた。
 しかし、すぐにシンデレラへと視線を向ける。すると相手は莉亜に気付き、吸血鬼となっている彼を見遣る。
「あなた、怪しい雰囲気ね。もしかして悪い魔法使い!?」
「残念、違うよ。フェアリーゴッドマザーでもないけどね」
 少しばかり冗談めかした莉亜は更に駆けた。
 それは此方に迫ってきたシンデレラの蹴撃を避けるためだ。ひらりと身を翻した莉亜は拳を振り上げ、お返しの一閃を叩き込んだ。
 それと同時に生命力を奪う。
「え、あれ……力が入らない……?」
「魔法使いじゃないところを見せてあげようか」
 ふらついたシンデレラに近付き、莉亜は吸血を行う。されど相手はすぐにはっとして莉亜を振り払った。刹那、莉亜の身が蹴りによって穿たれる。
「痛……流石はオウガ、なかなかだね」
 それでも莉亜は怯まない。その理由は奪ってきた生命力に余裕があるからだ。
 周囲には猟兵が次々と集まっている。
 傷もすぐ治るゆえ、多少は無茶しても良いかもしれない。莉亜は薄く片目を眇め、シンデレラへと更なる攻撃を打ち込む機を窺った。
 きっと彼女が大きく揺らぐのも、もうすぐだと感じながら――。
 
大成功 🔵🔵🔵

逢海・夾
何であろうと、全部壊してやるよ
力で捻じ伏せようとする奴も、
なんでも思い通りになると思ってるような奴も、オレは嫌いだ

司令官の首まで、一直線だ
【梅華・幻煙奇譚】で幻の中に消してやる
間にあるもの全てを斬り倒して、最短で行くぜ
惜しむものもねぇんだ、オレもお前等も
何もねぇってのは悪いもんじゃない、脚を止めるものもねぇんだからな
動けなくなるような怪我だけは避けて、前へ

いいユメだろうがなんだろうが幻想だ、何の救いにもならねぇ、けどな
現実が見えないなら、きっとオレも、誰も見えないだろ
全部全部、消えちまえ
救われなくたって、どうせ何も残せねぇんだ
壊される前に、壊してやるよ


●夢の軌跡
 書架の牢獄には不思議な雰囲気が満ちている。
 犇めくオウガ。規則的に並べられた書棚。辺りに散らばった本。そして何より奇妙なのは床に描かれた召喚の魔方陣だ。
 書架の世界に降り立った逢海・夾(反照・f10226)はそれらを軽く見遣り、左右非対称の色彩を宿す双眸を鋭く細めた。
 時計ウサギめいたもの。眠りネズミのようなもの。
 魔方陣を描いているオウガ達は夾に気付き、戦闘態勢を整えた。
「何であろうと、全部壊してやるよ」
 力で捻じ伏せようとする奴も、なんでも思い通りになると思っているような奴も、夾にとっては忌むべきものだ。
 オレはそんなもの嫌いだ、と言葉にした夾は地を蹴った。
 配下オウガ達は戦う気満々のようだが、かれらに興味などない。今はただ司令官の首まで一直線に駆ければいい。
 敵が襲ってこようとも梅香の煙で惑わせてやればいいだけだ。
 幻煙は周囲の敵を包み込み、まやかしを見せることで煙に巻いていく。
「ほら、幻の中に消えればいい」
 望むものを視ているらしいオウガの横を抜けた夾は、すれ違い様に鉄塊剣を大きく振るった。それによって敵が斬り裂かれて倒れ伏す。
 幻で敵の目を晦ませ、間にあるものは全てを斬り倒して進む。
 それが最短ルートだと知っている夾は遠慮などせず全力で向かっていく。
「惜しむものもねぇんだ、オレもお前等も」
 何もないこと。
 それはきっと悪いものではない。何故なら脚を止めるものもないのだから。
 されど幻を見ながらも何とか攻撃してくる敵もいた。その動きを見極めた夾は素早く身を翻すことで敵の攻撃を避けた。
 そして、お返しに刃を振るい返すことで時計ウサギのような敵を斬り伏せる。
 その先には交戦するシンデレラがいた。
 別の猟兵からの攻撃を避けながら、首魁のオウガは夾の接近を悟る。数が多いわね、と呟いたシンデレラは召喚したカボチャに乗り込み、自ら馬車を操縦していった。
「私の夢が叶いそうなのに、みんな邪魔ばっかり!」
「ユメ、ねぇ……」
 馬車に轢かれぬよう立ち回りながら、夾は片目を軽く閉じる。夢を叶えると語るシンデレラはまさに夢みる乙女だと思えた
 それは褒めているのではなく、夢しか見えていないという意味でもある。
「いいユメだろうがなんだろうが幻想だ、何の救いにもならねぇ」
 夾は迫りくる馬車を避けて跳躍し、剣を大きく振るいあげた。そして彼は書架を足場にして更に高く跳んだ。
「けどな」
 落下の勢いに乗せ、一気に解き放つのは幻を見せる煙。辺りに燻った煙が梅香を広げていく最中、重力に従って落ちていく夾はシンデレラの馬車に狙いをつけた。
「現実が見えないなら、きっとオレも、誰も見えないだろ」
 全部全部、消えちまえ。
 シンデレラが、或いは自分が救われなくたって、どうせ何も残せない。
「壊される前に、壊してやるよ」
 言葉と共に振り下ろされた斬撃がカボチャの馬車を貫いた。
 そうすれば、ほら――舞踏会へ向かう夢の道は閉ざされてしまうはずだから。
 
大成功 🔵🔵🔵

エドガー・ブライトマン
王子様っていうのは、生まれながらに決まっているものさ。
そう定められた者だけが王子様として生きる。
例えば、――私とか。

王子様っていうのは結構大変なんだ。一朝一夕にはなれない。
そのへんの少年には無理ってコトだよ。
だから私が救ってあげよう。

敵の数が多いのなら、私がそのぶん攻撃すればいいハズさ。
“Eの誓約” 9倍の攻撃回数を以て、オウガの群れを突き進もう。
多少怪我もするだろうけれど、気にしないさ。
あまり痛くないよ。

ねえ、来たよシンデレラ君。
ごきげんよう、私が正真正銘の王子様だ。
でもキミのものにはなってやらない。
ガラスの靴で攻撃を受け止めさせた隙に《早業》で《捨て身の一撃》
キミにその靴は似合わないよ。


ライラック・エアルオウルズ
夢見る御姫様、――いや
幸せな夢を見続ける御姫様か
停滞する物語、終わらぬ悲劇に
終止符を打つのも作家の役目かな

白馬の王子様に至るまいが、
魔導書で喚ぶ獅子の背に騎乗し
配下達を、爪先薙いで、駆けて
揺られる間も魔導書捲れば、
《属性攻撃:氷》で放ち露払い

やあ御機嫌よう、御姫様
ああ、悲しき哉、僕は唯の作家さ
君の望む終わりを与えられない
酷く意地悪な――三流作家だ

姫の元に至れたら、複製されぬよう
魔法の氷で足元凍らせ《武器封じ》
封じれずとも、《オーラ防御》で靴弾き
美しい身に爪を立て、切り裂いて

ああ、本当にすまないね
ハッピーエンドと綴りたかったが、
君の王子様はきっと――もう居ない
運命を追うよう、終わりを迎えておくれ


●物語の宿命
 古びた紙の香りがする迷宮書架。
 今は牢獄と呼ばれる本だらけの不思議の国に降り立った、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は手帳を口許に当てた。
 成程ね、と言葉にした彼は手帳を仕舞い込む。書架の国に所蔵された数々の物語の本も気になったが、今はそれよりも御伽噺の姫の方に興味が向いた。
「夢見る御姫様。――いや、幸せな夢を見続ける御姫様か」
 この領域の中心に立つシンデレラは、まるで終わったはずの物語から抜け出した来た存在のようだ。同様に書架牢獄に訪れたエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)も、ライラックと共に姫君を見つめる。
 新たな王子を求める彼女は気儘に振る舞っていた。
「王子様っていうのは、生まれながらに決まっているものさ」
 そう定められた者だけが王子様として生きるのだと語ったエドガーは片目を閉じ、そっと笑みを浮かべた。
「例えば、――私とか」
「本当に王子様が訪れるなんてね」
「そういうキミは作家かい? キミも私も、姫を迎えにいくのに相応しいのかもね」
 自分達は相性が良さそうだと話したエドガーに頷き、ライラックは前方を見遣った。其処には時計ウサギや眠りネズミめいたオウガが犇めいている。
 姫を迎える役割を担うのが王子ならば、停滞する物語、或いは終わらぬ悲劇に終止符を打つのも作家の役目だろう。
「それじゃあ行こうか、王子様」
「エドガーで構わないよ。まず彼らを蹴散らしてしまおうか」
 ライラックの呼びかけに応え、エドガーは駆ける。矜持を宿したレイピアを向ける先は姫君への道を閉ざすオウガ達だ。
 先陣を切ったエドガーに続き、ライラックは魔導書から勇敢なる獅子を喚ぶ。
「白馬の王子様に至るまいが、御付きの者くらいにはなれるさ」
 獅子の背に騎乗した彼は配下達を飛び越え、邪魔する者は爪で薙がせた。獅子が駆ける間もライラック自身が魔導書を捲り、エドガーに横手から迫るオウガを氷の一閃で貫いた。
 エドガーも行く手を阻む時計ウサギを斬り払う。
「王子様っていうのは結構大変なんだ。一朝一夕にはなれない。つまりは、そのへんの少年には無理ってコトだよ」
 徐々にシンデレラとの距離を詰めながら、エドガーは前を見据える。
 きっとアリスの少年ではあの姫の相手は荷が重い。
 だから、私が救ってあげよう。
 胸に抱く思いを刃に乗せたエドガーは、獅子に乗るライラックと共に敵軍を突破する。
 途中、多少の怪我はあったが大したことはない。
 大丈夫かな、とライラックから心配が向けられたが、エドガーはあまり痛くはないのだと答えて静かに笑った。
 そして――二人はシンデレラの元に辿り着く。
「やあ御機嫌よう、御姫様」
「ねえ、来たよシンデレラ君」
「あら? あなた達が私の王子様なのかしら」
 礼儀正しく挨拶をしたライラックとエドガーの方に振り返り、シンデレラは明るい笑みを咲かせた。
 既にシンデレラは別の猟兵と交戦していたが、未だ元気なようだ。
 対するライラックは頭を振ってみせる。
「ああ、悲しき哉、僕は唯の作家さ。君の望む終わりを与えられない。酷く意地悪な――三流作家だ」
 けれど、とライラックは隣に立つエドガーを示す。
 彼の視線を受けたエドガーは掌を胸に当てて恭しく礼をしてみせた。まさに王子様といった仕草を見たシンデレラは瞳を輝かせる。
「王子様だわ!」
「ごきげんよう、私が正真正銘の王子様だ」
「ふふ、これで夢が叶うわ。お城に私を連れて行って!」
 少女は硝子の靴を鳴らして駆けてくる。その姿だけを見れば可憐な姫君候補だが、エドガー達は知っていた。彼女がオウガであるという真実を。
「でも、残念だけどキミのものにはなってやらない」
「そんな、ひどいわ!」
 エドガーの言葉を聞き、シンデレラはそれならば力尽くでも手に入れるという姿勢を見せた。ライラックは獅子に願って駆け、魔法の氷でその足元を凍らせた。
 きゃ、という悲鳴があがると同時にシンデレラの体勢が崩れる。
 其処へエドガーが向かった。消えぬ聖痕が輝き、鋭い斬撃がシンデレラに見舞われていく。その何撃かは硝子の靴で受け止められたが、エドガーはそんなことなど構わないと感じていた。何故なら、今はライラックが共に戦ってくれているからだ。
「ああ、本当にすまないね」
 ライラックはエドガーの動きに合わせ、シンデレラが力を発動できぬよう氷で阻んでいく。本当ならば物語の主人公にはハッピーエンドを綴ってやりたかった。
 しかしそれは叶わない。
「君の王子様はきっと――もう居ない」
 ライラックが氷で靴を弾けば、獅子が彼女の美しい身に爪を立てて切り裂いた。
 その隙を狙ったエドガーが剣戟をひといきに叩き込む。
「キミにその靴は似合わないよ」
「運命を追うよう、終わりを迎えておくれ」
「そう、“運命”だよ」
 エドガーとライラックが連撃を叩き込んだ、刹那。シンデレラの靴に罅が入り、透き通った硝子に映る景色が割れて歪んでいく。
 きっと彼女の運命は此処で定められた。
 求める王子は現れず、書架の牢獄で果てるという哀しき終幕が――。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

夏目・晴夜
シンデレラって案外武闘派なんですねえ
悪くないです

まず妖刀の斬撃から【衝撃波】を放って周辺の本を斬り刻み、『喰う幸福』の高速移動を発動
舞う本を目眩しに、邪魔な配下は蹴りつけ【踏みつけ】斬り裂き一気に群れを抜けます
本は後で修繕します。このハレルヤの根気があれば可能です
不可能でも可能にしてみせますよ、ヒールを扱える御方に頭を下げるとかして

司令官は、要はガラスの靴で受け止められなければいいのですよね
ならば受け止められない超ギリギリまで接近し、呪詛を纏わせた刀身で【串刺し】にします
申し訳ないですが、私は王子様でもなければ王子様にもなれません
ハレルヤという至高の存在に王子様という枠はあまりにも狭すぎるので


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
王子を迎えに行く姫は大いにオッケーだけど…
でも、嫌がる相手に実力行使で無理やり
そんなの姫でもなんでもないのだ!

これは一気に駆け抜けて
一気に倒しちゃうのが一番だな
そのためには、まず駆け抜けるための舞台が必要
敵たちの周囲一帯を『雪娘の舞台』で凍らせ、スケートリンクに

《トゥーフリ・スネグラチカ》で集団まで滑っていき
打刀の《凜然》ですれ違いざまに【範囲攻撃】での居合斬り!
広範囲の斬撃で一気に敵を斬り裂き、一網打尽にしてやるのだ!

ここは俺の舞台、独壇場のスケートリンク
シンデレラは氷の上を滑れない

敵の鋭いキックも
寸でのところで背を逸らし、イナバウアーでかわす
好きができたら、今度はこっちが蹴りを入れてやる!


●氷と刃の王子様
 書架の牢獄に馬車が駆ける音が響く。
 犇めく時計ウサギと眠りネズミの向こう側でカボチャの馬車を乗り回し、硝子の靴で全力で蹴り込むシンデレラ。その姿を見遣った夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は可笑しそうに目を細め、口の端を緩めた。
「シンデレラって案外武闘派なんですねえ」
 悪くないです、と言葉にした晴夜は悪食の名を抱く妖刀を構える。
 ちょうどそのとき、彼の近くに転送されてきたのはヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)だ。
 軽い身のこなしで書架牢獄に降り立った少女も、奥のシンデレラを見据える。
「あれがシンデレラか」
「そのようですね。随分とお転婆な姫みたいですが」
「うむむ、王子を迎えに行く姫は大いにオッケーだけど……でも、嫌がる相手に実力行使で無理やりなんて、そんなの姫でもなんでもないのだ!」
「確かに、王子様がいないなら物語上ではまだ姫でもないわけですし」
 ヴァーリャが憤りを見せる中、頷いた晴夜は彼なりに納得する。形は違うがあれが姫ではないという意見は一致したらしく、二人は視線を交わした。
 そして、晴夜とヴァーリャは前を見据える。
 何はともあれ、目の前の配下オウガ達を突破しなければ始まらない。
「これは一気に駆け抜けて倒しちゃうのが一番だな」
「そうしましょうか」
 協力しあう方が良いと判断したヴァーリャは地を蹴り、ひといきに跳躍した。同意を示した晴夜も彼女の後に続く。
 疾く駆け抜けるならば舞台が必要だ。
 ヴァーリャは氷の靴を鳴らし、霧に似た冷気の塊を生み出した。
 次の瞬間、戦場全体がスケートリンクめいた氷の床に変わる。靴裏に氷のブレードを生成したヴァーリャは一気に氷上を滑っていった。
 同時にオウガ達が慣れぬ床に四苦八苦しはじめる。はっとしたヴァーリャは、そっちは大丈夫か、と晴夜に呼びかける。
「滑りにくかったら引っ張っていくからな!」
「いいえ、このハレルヤが華麗に滑れないはずがありません」
 晴夜は問題ないと答え、妖刀を振り上げた。その勢いに乗せて駆けていく彼は振るった斬撃から衝撃波を解き放つ。
 周辺の本を斬り刻みながら素早く移動した彼は、どうですか、と胸を張った。
 おお、と感心した声をあげたヴァーリャは安堵する。
 晴夜の斬撃によって既に何体かが倒れていた。負けてはいられないと感じたヴァーリャは凛然の柄を強く握る。
「邪魔するなら、一網打尽にしてやるのだ!」
 上手く滑れずに慌てふためいている敵。相手とすれ違い様に素早く刃を抜いたヴァーリャは居合の一閃を叩き込んだ。
 複数を巻き込んだ斬撃は見事に巡る。
 行く手を阻む敵が次々と伏していく中、晴夜は更に本を切り払った。
 彼は舞う本を目眩しにして身を翻す。そして、邪魔な配下を蹴りつけた勢いで跳躍して、頭上から敵を踏みつけた。
「本は後で修繕します。このハレルヤの根気があれば可能ですから」
「それなら俺も手伝うぞ!」
 晴夜が落とした言葉を聞き、ヴァーリャは良い気概だと笑った。でしょう、と答えた晴夜は着地地点に降り立つと同時に悪食を振るい、オウガを斬り裂く。
 そうして二人は群れを突破した。
 硝子の靴が煌めいたかと思うと、シンデレラの声が二人の耳に届いた。
「もう、誰もかれも王子様じゃないなんて!」
 他の猟兵と戦っていたらしいシンデレラの姿を瞳に映し、ヴァーリャは頬を膨らませる。やっぱりあの子は姫なんかじゃない、と感じた少女は強く宣言した。
「こんな所に王子なんていないのだ!」
「まあ! あなた達は?」
「王子様ではないことは確かですね」
 シンデレラの意識が此方に向いたことで晴夜は肩を竦めて答える。するとシンデレラは彼の容姿を見遣り、残念そうに呟いた。
「可愛い王子様だと思ったのに……」
「申し訳ないですが、私は王子様でもなければ王子様にもなれません」
 そして、晴夜はヴァーリャに目配せを送る。
 頷き返した少女は更に氷の領域を広げていった。
「これからここは俺達の舞台だ!」
 瞬く間に舞台は整えられ、彼女達の独壇場となるスケートリンクと化していく。
 シンデレラは硝子の靴を履いている。ならばきっと氷の上は滑れないはず。
 それに猟兵の攻撃によって片方の靴が罅割れていた。ヴァーリャは攻め込むなら今だと感じ、晴夜と共に氷上を滑り駆けてゆく。
「俺が引きつけるから、後は頼む」
「はい、お任せください」
 シンデレラの懐に飛び込む勢いで向かったヴァーリャは凜然の打刀を横薙ぎに振るった。対するオウガは硝子の靴でそれを受け止める。
 きっとすぐに斬撃のような反撃が来るだろう。そのように察したヴァーリャは敵の動きを見切った。既の所で背を逸らし、イナバウアーの姿勢でシンデレラの蹴りを躱す。
「きゃ、滑っちゃう!」
「今なのだ!」
 勢い余ったシンデレラが大きく体勢を崩した瞬間、ヴァーリャが呼びかけ、応えた晴夜が一気に斬り込む。
 その間、ヴァーリャは素早く蹴りを入れることで注意を自分に向けた。晴夜は呪詛を刃に纏わせ、渾身の力を込めた斬撃を突き放つ。
 刃の軌跡が氷と硝子に映った。
 晴夜の姿は凛としており、冴え冴えとした剣閃はオウガを鋭く貫く。
「なんで、そんなに二人とも王子様らしいのに……」
「それは光栄ですね。ですが、ハレルヤという至高の存在に王子様という枠はあまりにも狭すぎるので」
「俺はどちらかといえばお姫様が……いや、何でもないのだ!」
 晴夜が刃を下ろし、ヴァーリャが頭を振った時、シンデレラが片膝を付いた。
 ヴァーリャは自分達の連撃が完璧だったと感じながらも、敵から距離を取る。追い詰められた敵は何をするか分からず、これまで以上に危険だからだ。
 晴夜もそれを理解しており、刀を構えたまま後方に下がった。
 おそらく間もなく決着が付く。
 終焉を感じ取った二人は鋭い眼差しを向け、この戦いを見届けることを決意した。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

蘭・七結
本に満ち満ちた不思議の国
まるで物語のなかへと落ちたよう

焦がれて求むあなたへと問う
『あなたの求める王子様は?』
如何なるひとを求めているのかしら
あなたの心のうちをしりたいわ

わたしならば、そうね
待つのではなく、逢いに往くわ
ただ求めるだけでなくて
そのひとの元へと駆けてしまうでしょうね

問うた言葉があかいあかい糸を成す
あなたと配下を結いで留めましょう
あかい波を潜り抜けて
お姫様の元へと駆けてゆくわ

彩を放つ硝子の靴から放たれるあか
糸には糸を。針には針を
絡めて結んで、あなたを手繰る橋にしましょう

わたしは王子様ではないけれど
お迎えにきたわ、お姫様
あなたの心を教えてちょうだいな
そして終わらせましょう、この物語を


アンリエット・トレーズ
道を開けてもらいましょう
オウガたちが倒れなくても
その足を地に縫い付ければ通れます
《十二時六分の嗚咽》
女の子の涙に足を止めないなんて
そんなひとはいないでしょう?

――可哀相なシンデレラ
御伽噺の一節のよに唱え

王子様を失って、あなたは完璧なお姫様になってしまったのですね
アンリエットと逆に
いいえ、或いは
わたしと同じように

同じように彼女へも時針を放ち
二、三ヵ所、集中して撃っておきましょう
馬車に傷がつくように
つまり本命は、ええ、そうですね
刻印から出る触手の最大数を束ね極大の槍のように
傷付けた箇所のうち最も狙いやすい場所を
さあ、貫きましょう

だってもう、終わってしまったのでしょう?
あの夢の日々は
二度と戻らない


●ゆめの終わりに
 時計を掲げたウサギに眠たげな眼をしたネズミ。
 不思議の国を思わせるオウガ達が魔方陣を描いている、書架の牢獄。其処は何処を見ても書棚ばかりで、数多の本で埋め尽くされていた。
 本に満ち満ちた不思議の国。
 まるで物語の最中に落とされたようで、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)はふわふわとした心地を覚えた。
 けれども此処は騒乱の渦中。
 七結が見つめる先には行く手を阻むオウガが犇めいている。
 その奥には青のドレスを翻し、硝子の靴で蹴り込んで戦うシンデレラの姿が見えた。
 彼女が焦がれて求むのは王子様だと聞いている。
 相見えて問いかけてみたいのは、『あなたの求める王子様は?』ということ。如何なるひとを求めているのか。七結は彼女の心の裡を知りたいと願っていた。
 その隣で、蹄の音が響く。
 視界の端に映ったのは牝鹿めいた足先。振り向いた七結が見たのは、今まさに転送されてきたアンリエット・トレーズ(ガラスの靴・f11616)の姿だ。
「あなたも愉快なおなかま?」
「いいえ、アンリエットはアンリエットといいます」
 首を傾げた七結が問うと、少女は垂れた犬耳を軽く揺らして答えた。同じ猟兵だと知った七結はごめんなさいねと告げたが、アンリエットは気にしていないと告げる。
 そして、ふたりはオウガ達を見つめた。
 シンデレラのもとまで辿り着くにはウサギやネズミを越えていかなければならない。
「道を開けてもらいましょうか」
「いきましょう」
 アンリエットが踏み出すと、七結もその横に並び立った。
 多くの相手を蹴散らしていくのならば共に進んだ方が良い。七結の視線を受け取ったアンリエットは背の触手を蠢かせた。
 それを合図にしてふたりは駆け出し、それぞれの力を揮っていく。
 シンデレラまで一直線。
 此処には十二時を報せる時計はなくて、舞踏会だってひらかれない。その分だけ意地悪な継母も義姉もいないのだけれど――。
 王子様も何処にもいない。
 アンリエットは触手で以て迫りくるオウガを跳ね除け、掌を胸の前に掲げる。
 すると其処に雨のように煌めく硝子の時針があらわれた。きらきらと輝いて、周囲に降りそそいだ針は時計ウサギを穿っていく。
 女の子の涙に足を止めないなんて、そんなひとはいないから。
 涙の雨が降る。
 その様子を見た七結は、おそろいね、とアンリエットに語りかけた。
 何が揃いなのか示すために、七結はふたくれなゐの留針を少女に見せた。其処にあかい糸を紡いだ七結は、近付いてくる眠りネズミに狙いを定める。
 時針と留針。
 かたちは違っても、それらが成すことはよく似ていた。
 結いで、留めて、縫い付ける。そうすれば邪魔をする配下達は見る間に引いていき、硝子の靴の姫君までの道がひらいていった。
 あかい波を涙の雨を潜り抜けて、お姫様の元へ――。
 其処には罅割れかけた硝子の靴を履き、息を切らせたシンデレラの姿がある。
「わたしは王子様ではないけれど、お迎えにきたわ、お姫様」
「新手ね。……まだ、戦わなきゃ」
 七結はゆるりと語りかけたが、相手は苦しげに片目を眇めただけ。既に別の猟兵と交戦していたらしい彼女は随分と疲弊しているようだ。
「――可哀相なシンデレラ」
 御伽噺の一節のように哀れみを唱え、アンリエットは空海を思わせる双眸を細めた。
 きっと彼女は王子様を失って、完璧なお姫様になってしまった。
 アンリエットとは逆に。
(いいえ、或いは……わたしと同じように)
 裡にだけ浮かべた思いは沈め、アンリエットは七結と共に敵に向かってゆく。
 間もなく終わりが訪れると感じている七結もまた、最初に決めていた問いをシンデレラに投げかけていった。
「あなたの求める王子様は?」
 どうか、その心を教えてちょうだい。
 そんな風に七結が告げると、シンデレラは唇を噛み締めながら答えていく。
「素敵な、とても素敵なひとのはずよ。もう逢えないけれど……次に逢う時は――」
 七結の声を聞き、顔をあげたシンデレラの呼吸は乱れていた。
 しかし、今度こそ結ばれるために王子様を待っている、と彼女は語る。すると七結は静かに頷いてみせた。
「わたしならば、そうね。待つのではなく、逢いに往くわ」
 ただ求めるだけでなく、そのひとの元へと駆けてしまうだろうと七結は話す。
 そして七結はあかい糸を成した。
 それを受け止めたシンデレラは七結に反撃を放とうと狙う。罅割れながらも彩を放つ硝子の靴から、あかいいろが滲み出した。
 果たしてそれは七結の糸を真似たものか、それとも血の紅か。
 糸には糸を。針には針を
 絡めて結んで、七結はシンデレラの身を穿っていく。合わせてアンリエットも時の針を放つことで姫君を縫い止めた。
 もう馬車は崩れた瓦礫となってしまっている。
 望む場所へ走るカボチャの馬車は毀れ、姫君を彩るはずの魔法も解けていた。
 アンリエットは七結が紡ぐあかい糸に併せ、本命たる行動に移っていく。刻印から出る触手の最大数を束ね、アンリエットはそれを極大の槍のように紡いだ。
 針と糸が絡めた一点を狙い、少女は呼びかける。
「さあ、貫きましょう」
 ええ、と応えた七結も自分が持てる最大の力を迸らせた。鼓動を穿つ留針がシンデレラの胸を穿ち、刻槍が針を目印にしてひといきに突き放たれる。
「終わらせましょう、この物語を。いえ……屹度、」
「もう、終わってしまったのでしょう?」
 七結の言葉を継ぎ、アンリエットがシンデレラに問いかけた。
 きっと、そう。
 あの夢の日々は、二度と戻らないから。
 そして――針と糸、槍がオウガとしての少女の胸を貫く。
 同時に硝子の靴が砕けて割れる音が響いた。
「ああ……!」
 戦う力を失ったシンデレラはその場に膝を付き、力なく伏した。
 嫌よ、嫌なの。倒れたオウガは虚空に手を伸ばしながら一筋の涙を流していた。
 もう灰被りには戻りたくない。
 今度こそ幸せになれると思ったのに。今度こそ夢を叶えられるはずだったのに。
 しかし、彼女も本当は分かっていた。
 王子様を自ら“たべてしまった”オウガたる自分に明るい未来などないのだと――。


●書架の海
 やがて、シンデレラの身体は不思議の国の底に沈むように消えていった。
 骸の海に還っていく彼女を見つめ、猟兵達は書架牢獄に満ちる空気を確かめる。此処に落とされた物語はきっと、最初から砕かれていたのだろう。
 然し今、牢獄で行われていた召喚儀式のひとつは見事に阻止できた。

 そして――灰被りの夢もまた、静かな終幕を迎えた。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年08月04日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵