ハッピィエンドはとうに絶え
度重なる『予兆』。
動き出したアリス・オリジンと、謎めいた「猟書家」たちの姿。
それは、何か大きな――大きな異変の前触れに他ならない。
ゆえにその日のグリモアベースは、いつもよりも緊張に包まれていた。
そんな折、ムルヘルベル・アーキロギアは猟兵たちを呼び集め、こう言った。
「タイミングがいいと言うべきか悪いと言うべきか、微妙なところなのだが……。
アリスラビリンスで、「猟書家」どもが事件を引き起こす予知を得たのである」
そう言ってから、ムルヘルベルは首を振った。
「といっても、我らが予知で垣間見たあの強大な猟書家たちが姿を表すわけではない。
すでに何度も観測されている、「本の世界」に住人が取り込まれるというものだ」
つまり、猟書家の目的、正体、具体的な活動――それらは相変わらず不明だ。
だが、グリモアが予知した以上、ましてやこのタイミングである。
看過できない。そう考え、ムルヘルベルは猟兵たちに声をかけた……と語る。
「念のため、「猟書家」たちがいかなる事件を引き起こすのかをまとめておこう。
……彼奴らはとある不思議の国に現れ、その国の住人たちを「本」の中に閉じ込める。
当然、転移するオヌシらも、彼奴らが展開した「本の中の世界」に転移する」
猟兵たちを見渡した上で、ムルヘルベルは説明を続けた。
「この「本の中の世界」では、"ページ"を進むごとに物語が進んでいくというわけだ。
本の中の世界は多種多様だが、常に「太陽の矢印」が頭上に見えているはずである。
それを目印に先へ進めばよい。……というより、"そうせねばならない"のだ」
ムルヘルベルは嘆息した。
「もしも矢印の方向から外れた場合、その者は「本の中の世界」に取り込まれる。
本の世界の住人……もっとわかりやすくいえば、その物語の「登場人物」になるのだ」
猟兵ならばある程度は抗えるだろう。だが、愉快な住人たちはそうもいかない。
だからこそ、この謎めいた「本の中の世界」を打破し、彼らを救う必要がある。
「どうやら今回の「世界」は、古典的な童話の数々を模した物語になっているようだ。
……ただし、おとなしく従ったところで、最後には破滅が……オウガが待っておる」
ムルヘルベル曰く、本の中の物語は一見すると古典的な物語そのものなのだという。
登場する物語はページによってばらばらで、脈絡なく物語が入れ替わる。
まるで、複数の物語を無理矢理に接合したような、いびつな「本」なのだ。
「オヌシらには、物語に溶け込んだ上で、上手く住人たちを足止めしてもらいたい。
彼らが無邪気にページを進めてしまえば、おそらくオウガに先んじられてしまう」
物語=ページを進めつつ、それとなく物語に沿った形で住人らを救う。
いささか難しい条件だが、特定のページに至るまでオウガは襲ってこないようだ。
「オウガはオヌシらを明後日の方向に投げ飛ばし、生命力を失わせようとするだろう。
もしも住人たちの足止めが出来ていなければ、当然戦闘中に彼らをかばう必要もある。
決戦に至るまでの間に、どれだけ「らしい」動きが出来たかが決め手となるぞ」
そう言って、ムルヘルベルは持っていた本を閉じた。
「ある詩人に曰く、こんな言葉がある。
"書物そのものは、人に幸福をもたらすわけではない。
ただ書物は、読み手がその人自身の心の中へ帰るのを手助けしてくれる"……とな」
禁書に通じた魔術師として、その面持ちは複雑そうなものだ。
「ワガハイも、彼奴らに思うところはある。
今はひとつでも彼奴らの暗躍を食い止めたい……オヌシらの健闘を祈る」
その言葉が、転移の合図となった。
唐揚げ
車輪です。なんだか何かが起きそうな気配がしますね!
でもこのシナリオは、ごく普通のアリスラビリンスシナリオです。
謎めいた猟書家たちの企みを、今のうちに叩き潰しましょう!
●シナリオの進行とプレイング受付期間について
当シナリオは、完結を最優先にして執筆していくつもりです。
その関係上、採用できるタイミングでササッとプレイングを採用していきます。
採用数は普段より絞るかもしれません。ご参加をお考えの方はお早めにどうぞ。
第1章 冒険
『不思議の国の即興童話』
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POW : 主役は自分だ! 真正面から物語に介入する
SPD : 目指せいぶし銀! サポート役で物語に介入する
WIZ : 背景ですが何か? 裏から物語に介入する
👑7
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●1ページ目:物語の入り口
猟兵たちが転移したのは、まるでパッチワークめいた光景だった。
深い森、雪降る街、長く伸びた豆の木、アラビア風の町並み、エトセトラエトセトラ。
いくつもの物語に連なる風景がまだらに混ざりあった、奇妙な風景。
『そこはいくつもの物語が重なり合う場所。とっても楽しく不思議な世界』
訝しげにする猟兵たち、そしてきょとんとした愉快な仲間たち。
彼らの頭の中に、謎めいたナレーションが響いてきた。
『さあ、ページを進めてみましょう。次はどんな物語が見れるでしょう?
ガラスの靴のお話? お菓子の家の話? それとも大冒険のお話でしょうか。
楽しい楽しい物語巡りの、始まり、始まり……どうぞ、心ゆくまでお楽しみを』
おそらくこれは、この「本」を展開した猟書家の声だろう。
導き手のつもりか何かか、まったく腹に据えかねる輩である。
だが今の時点では、奴らの喉元に手を伸ばすことはできない。
「なんだかわからないけど楽しそうだなあ、行ってみようよ!」
「どんな物語があるんだろう、気になるわ1」
人形めいた容姿の住人たちは、我先にと次の「ページ」へ走っていく。
ページをめくるたびに、現れる物語はまったく異なるだろう。
彼らをうまく足止めするには、その物語に倣う必要がある――。
●プレイングについて
一体どんな物語のページが出てくるか、をよければ考えてみてください。
その上で介入方法を考えてもらえるとわかりやすいのではないかと思います。
(もちろんこちらのおまかせでもOKです。うまくプレイングに合わせます)
なお、物語は実在のものでもそれっぽいふわっとしたものでもOKです。
カタリナ・エスペランサ
アタシが介入する物語は――嗚呼、ここならよく知っている
押し寄せる吸血鬼の軍勢、無辜の民を守り戦う騎士団。騎士たちは戦いの果てに斃れ、けれど彼らの勇気により多くの民が救われたのです……ってね
何度も聞いた、よくある昔話だ
今はまだ敵役も住人が担当するのかな? オウガの類なら蹴散らすんだけど、そうじゃないなら安全にも配慮しないとだね
元々騎士様は最後には敗れる役回りだ、彼らが負けないよう助ければ時間稼ぎには十分だろう
折角の介入だ、物語も最後は騎士団の勝利に書き換えるけどさ!
【天下無敵の八方美人】で演じる姿は騎士役の皆を支えるお供の小天使。
《祈り》《鼓舞》して戦いを助け、《料理》《医術》で心と体を癒そう
●2ページ目:勇ましき騎士英雄譚
騎士道物語といえば、かつてのヨーロッパにおける"王道"とまで言われた。
かのドンキホーテからわかる通り、それほどまでに一世を風靡したのである。
カタリナ・エスペランサが到着した"物語"は、どうやらそういうものらしかった。
『恐るべき邪鬼の軍勢が、地平線を埋め尽くしていました。
まるでそれは、大地を飲み込む黒いわだちのよう。民草は震え上がります』
どこからともなく謎めいたナレーションが聞こえてくると、カタリナは嘆息する。
「けれども無辜の民を守らんと奮い立った騎士団の尊い犠牲により、
多くの民が救われたのです。彼らの勇気は今も忘れられていません……って?
……ありふれた昔話だね。まあ、それ自体は悪くないよ。むしろ好みだね」
暗澹たる空のもと、蠢く蝗の群れめいた軍勢が怒涛をあげて襲い来る。
愉快な仲間たちは、どうやら「騎士団」の役割をあてがわれているようだ。
彼らはみな、白銀の鎧に高揚し、武器を掲げて盛り上がっていた。
だが――この物語は、"騎士たちの犠牲に成り立っている"のである。
(なるほど。こうやって、彼らを亡きものにしてしまうというわけか)
カタリナは猟書家の邪悪なやり口に辟易しつつ、ばさりと翼を広げた。
いよいよ邪鬼の軍勢と騎士団がぶつかり合うという寸前に、彼女は言ったのだ。
「勇ましき騎士たちよ! どうか忘れないで。私も一緒にここにいることを。
神様は皆の戦いぶりを見てくださっています。必ず、無事に生き残りましょう!」
やや演技めかした、いかにも「お供の天使」らしい台詞である。
「天使さまだ!」
「きれいだなあ!」
「そうだよね、ちゃんと勝たなきゃ「めでたしめでたし」じゃないや!」
愉快な仲間たちは呑気に言いつつも、あらためて戦いの決意を固めたようだ。
そこへ邪鬼の軍勢が来る。おそらくあれはオウガの変種だろう。
「どうか恐れないで! 傷は私が癒やしましょう。その背を支えましょう。
魔物たちを倒し、"皆で一緒に"朝陽を迎えるんですよ! さあ、戦って!」
どうあれ、この物語は騎士たちが邪鬼の軍勢を討ち倒すことで終結する。
そこにイレギュラーな天使の加護が加われば、趨勢は一瞬にして決した。
邪鬼の軍勢の剣が人形たちを傷つければ、すぐさまカタリナの光がそれを癒やす。
"ありふれた犠牲"は、誰一人として払われることなく戦いが終わったのだ。
『……こうして勇気ある騎士たちは、約束通り皆で揃って朝を迎えました。
その姿に感動を憶えた人々は、彼らを称え、長く幸せに暮らしたそうです……』
謎めいた語りが空から聞こえてくる。
黎明の空を見上げ、カタリナは不敵に微笑んでみせた。
「心なしか、語りに力が感じられない気がするね? せっかくの大団円なのに」
挑発的な言葉に、謎めいた声が答えることはない。
だがカタリナは胸を張り、"勇ましき騎士"たちとともに凱旋するのだった。
成功
🔵🔵🔴
カイム・クローバー
本ってのは苦手だ。文字が多い本は眠くなる。欠伸無しじゃ見られやしねぇ。…枕には丁度良いんだが。ま、今回はその心配は無さそうだ。身体動かす方が性に合ってる。
物語は勇者がドラゴンを倒すファンタジー物語。流石に口から臭い硝煙の匂いを放つトカゲ相手じゃ、愉快な仲間の足も止まるだろうぜ。
追い掛け回すのは好きじゃねぇし、俺としては都合がいい。剣と魔法?ハハッ、(二丁銃をガンスピンして)これでも味わいな。
【二回攻撃】に【クイックドロウ】でUC。本の中の紛いモンだ。それほど苦労も無いだろ。
トカゲ討伐したら愉快な仲間と共に財宝でも探してみるか。ページをめくる前に本の中とはいえ、金銀財宝の山っての見てみたいだろ?
●7ページ目:ドラゴンスレイヤー
ぺらり、とどこからか音がして、一瞬にして風景が様変わりした。
そこは、硫黄の臭い立ち込める不気味な洞窟。汗ばむほどに熱気がたちこめる。
「ふぁ~あ……っと。少しは俺向きのが出てきたかね?」
どうにも本というのが合わない性分のカイム・クローバーだったが、
洞窟の暗がりから感じる強い敵意ににやりと笑い、勇んで一歩前に出た。
『そこは、とても恐ろしいドラゴンの住処だったのです。なんということでしょう!
勇者たちは果敢に戦い、何人もの犠牲を出しながらも、ついには悪しき竜を……』
「おいおい、そんな"ありふれた話"、ついこないだ覆したばっかだぜ?」
どこからか聞こえる(彼からすれば)眠たい謎めいた語りを一笑に付す。
然り。カイムは歴戦の猟兵。あの帝竜ヴァルギリオスすら討ち果たした男。
物語の中に生まれたかりそめの竜なぞ、何するものぞ。
「勇者様よ、どうかお下がりください。ここは私めにお任せを! ――なあんてな」
"犠牲を払って竜を討ち倒す勇者"の役割をあてがわれた住民らを一瞥し、
カイムはことさら演技ぶった調子で言うと、一瞬で魔銃を取り出した。
ずしん、ずしん……暗がりの奥から現れたるは、見上げるほどの赤き竜!
「「「ひゃああああ
!!」」」
「剣と魔法(ソード・アンド・ソーサリー)なんてもう古いぜ?」
くるくるとガンスピンし、魔銃を構える。不敵な笑みを浮かべ、発砲!
「今の時代は「銃と色男」さ――さあ、これでも味わいな!」
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
生半可な竜では、カイムが放つ『オルトロス』の魔弾を防ぐことなど出来まい。
いわんや、目の前にそびえるのは畢竟ただの"物語"の断片に過ぎない。
その焔のブレスが放たれるより先に、魔弾は心臓と逆鱗とを同時に貫いた。
魔竜は雄叫び――否、断末魔をあげて、やがてどう、と倒れ伏す。
「「「わあ、すごいや!」」」
「こうして勇者たちと色男は、クールに竜を退治しました……ってな?
どうだい、この幕切れはお好みじゃねえかな? どっちでも構わないがね」
歓声を上げる愉快な仲間たちを見つつ、カイムは姿なき猟書家に向かって言った。
声なきその気配から、たしかな渋面が伝わりカイムは笑いを噛み殺す。
「ようし! ドラゴンの巣窟と来たら、財宝が眠っているのがお約束ってもんだ。
金銀財宝の山を見たくはないかい? いっちょ宝探しといこうじゃねえか!」
カイムの言葉に愉快な仲間たちはいよいよ沸き立ち、探検が始まる。
たとえそれが「物語」の進行によってなくなってしまうとしても、
財宝を得るところまでが「冒険」というものだ。
成功
🔵🔵🔴
フェルト・フィルファーデン
それじゃあわたしはお姫様の役でいきましょうか!
色んな物語にお姫様は出てくるもの。自然に溶け込めると思うわ!
騎士を引き連れて街の中を視察したり、国民達を労ったり、こっそり抜け出してお忍びで冒険したり……なんてね?昔はよくやっていたっけ……
服装は状況に合わせてUCの蝶が見せる幻覚で変えて合わせるわ。
姫という立場のある立ち位置を利用し愉快な住人達を言葉巧みに誘導して本の中に取り込まれないようにするわ。どんな状況でも対応してみせる。全てを守るためにね!
フォーミュラーだろうと、猟書家だろうと、勝手な真似はさせない。全ての世界を救う。そのハッピーエンドを邪魔するのなら、容赦はしないわ。
●15ページ目:お姫様の休日
物語のなかのお姫様と言えば、おてんばで元気な少女と相場が決まっている。
そしておしゃまなお姫様は、兵士や爺やの目を盗んで街に繰り出すのだ。
貧しい人々の暮らしを目にし、孤児院の子供たちをあやしてやり、
馴染みの店を巡っては暖かな言葉をもらい、時には冒険にだって繰り出す。
もちろん毎度の如くに見つかって、大目玉を食らう日々。
それでも、お姫様を蛇蝎のごとく嫌ったり、厭うような民はいない。
城の人々も、街の国民たちも、みんな元気なお姫様のことを愛している……。
「……昔は、よくこうして遊び回っていたっけ」
煉瓦で舗装された路地を歩きながら、フェルト・フィルファーデンは呟いた。
物語のなかに再現されたヨーロッパ風の町並みは、生国と似ても似つかない。
そもそもサイズ感が違う。なにせフィルファーデンは妖精の国だ。
大きさが違えば雰囲気も違う。言語化は難しいが「空気」が異なるのだ。
けれども……物語のなかの人々は、在りし日の故国と同じで暖かかった。
だが、その暖かさに甘えれば、フェルトはたちまち物語に取り込まれるだろう。
そうはさせない。誰も犠牲になど、させない。ましてやオブリビオンになど。
「ハッピーエンドはここにあるのよ。いつだって、いつまでだって」
きっと今もこの状況を盗み見ているであろう猟書家に、言い放った。
「――さあみんな! お姫様のお通りよ! 今日はかくれんぼがしてみたいわ!
わたし、いまとっても退屈なの。一緒に遊んでくれないとひどいんだから!」
フェルトは深呼吸して「お姫様」の皮を被ると、愉快な仲間たちに言った。
「わあ、本物のお姫様だ!」
「何をして遊ぶの?」
「ぼく、鬼ごっこがいいなあ!」
人形の姿をした愉快な仲間たちは、楽しい提案にあっさりと引っかかる。
平和な街も、無邪気な子供たちからすれば冒険の舞台に早変わりだ。
フェルトはわざとわがままなお姫様を演じて、彼らを遊びに引き込んだ。
鬼ごっこ、かくれんぼ、はたまた通りの店を冷やかしたり。
大きなお城の兵士をからかったり、きゃあきゃあと声をあげて遊んで回る。
どこまでも続く楽しい時間――だがこれこそが、この物語の陥穽か。
「平和な日常」に耽溺するあまり、結果として物語に取り込まれてしまうのだ。
それに気付いたフェルトは、中天に輝く太陽を指差してこう言った。
「もう街の中は飽きちゃったわ。お外へ冒険の旅に出ましょう!」
「「「ええ~!? お外は危ないよ!」」」
声を揃えて言う愉快な仲間たちを振り返り、フェルトは胸を張る。
「だいじょうぶよ。だってわたしは、お姫様だもの! 誰にも負けないのよ!
さあ、一緒に旅立ちましょう? きっときっと、楽しい冒険が待ってるわ!」
愉快な仲間たちは顔を見合わせて、おずおずとその手を取った。
そして彼らは、街の外――つまり、太陽の矢印を目指して進む。
『お姫様は、楽しい楽しいお城を抜け出し、街をあとにしてしまいました。
ずっとずっと楽しく過ごせる国を離れて、きっと寂しかったことでしょう』
「寂しくなんてないわ」
あげつらうような猟書家の語部に、フェルトは言い返した。
「わたしは、後悔なんてしてない――だって」
振り返りはしない。振り返れば、きっと足を止めてしまう。
あれは物語の中の国だ。フィルファーデンとは何もかも違う。けれども。
「……わたしの帰る場所は、もう、あそこではないんだから」
お姫様は前へ進む。ありふれた大団円を掴み取るために、前へと。
成功
🔵🔵🔴
アルトリウス・セレスタイト
演じろということらしいな
良かろう
介入する物語は迷いの森
進むたび、何故か来た道が解らなくなり、その都度何かの危険が密やかに現れる
彼らが囚われれば死は免れ得まい
ならば回避させるべきか
絢爛を起動
起点は目の前の空気
全知と因果の原理を以て空間を支配
内部にいるオブリビオンでない者に、潜む危険に気付く程度の知覚を齎し、「偶然」それに気付く痕跡を見い出させる
自身は影から助力する謎の人物あたりで
自身への危険は『絶理』『刻真』で異なる時間に己を置いて回避
気付かれそうなら『無現』で自身の存在を一時的に否定し潜む
飽くまで彼らが自分で気付いて進む形に
彼らが主役の「物語」ならばその方が普通だろう
※アドリブ歓迎
●20ページ目:迷いの森
「あれぇ……?」
暗い暗い森を進んでいた愉快な仲間は、きょとんとした顔で首を傾げた。
「また元の場所に戻っちゃってる。うーん、さっきとは別の方角を選んだのに」
「ええっ、また? これで五度目だよ……」
見上げるべき空は見えず、それゆえに矢印の方角もままならない。
どうやらこのページの「物語」は、出口のない迷宮らしい。
『そして森に閉じ込められた哀れな人形たちは、まったく気付かなかったのです。
草むらから、恐ろしい獣が自分たちをじいっと睨んでいることに……!』
どこからか謎めいたナレーション――猟書家の声が響き渡る。
愉快な仲間たちは震え上がった。まさか、本当に獣が潜んでいると?
「す、進もう! 今度こそ出口にたどり着けるはずだよ!」
声を張り上げた人形の提案で、急いでその場をあとにする愉快な仲間たち。
だが――そんな彼らの前に、謎めいた隠者がうっそりと現れた。
「「「ひぃいいええええ
!!」」」
「……迷いの森を抜け出さんとする者たちよ。その木立をまっすぐと進むがよい」
隠者は右手にある木立を指差して言った。
「けして振り返らず、足を止めずに走り抜けよ。それが正しき道である」
「「「…………」」」
愉快な仲間たちは顔を見合わせた。はたして、この隠者の言葉を信じるべきか?
「さあ、行け。獣に喰らわれたくなければな」
背後から獣の唸り声。愉快な仲間たちは悲鳴をあげて木立を走り抜けた。
……だが、それを追って獣が出てくることはない。
なぜならば――その隠者こそが、アルトリウス・セレスタイトだったからだ。
「おおよそ、こんなところか」
彼の目には、木々に隠された太陽の矢印がはっきりと見えていた。
あの木立が正解の道だ。そして、獣=オウガは「ここには辿り着けない」。
"絢爛"の原理で支配されたこの森は、もはや彼のテリトリーだからだ。
「わざわざ迂遠な方法で犠牲者を出そうとするとは、陰気な連中も居たものだ。
まだ出し物があるならば、早めに用意しておけ。じきに必要なくなるからな」
アルトリウスは己を見下ろしているであろう猟書家に言い、姿を消した。
彼の介入により、犠牲者はひとりも出ることなく回避されたのである。
大成功
🔵🔵🔵
アリステル・ブルー
●SPD/アドリブ連携色々おまかせします
「予兆、気に食わないもんね、これが何かの助けになれば…」
戦争も近いし、敵にダメージが与えられたら素敵だね。
そうだな、笛吹男がパレードする話、あんな世界だったりしないかな? 行先に矢印があればいいな。
指定UCでもう1人の僕と僕、使い魔のユールを呼んで手分けして『仲間たち』をパレードの列に加えていくよ。
ユールには上空からパレードの様子を見てもらって、はみ出す人がいたら教えてもらって、僕たちではみ出す人がいたら戻す!
地道な作業だけど!
「そこの君、こっちに」
「歌って踊ってパレードしない?」
とか声をかけていくね。
●31ページ目:笛吹き男とパレードの列
"ハーメルンの笛吹き男"と言えば、約束を破られた笛吹きの男が、
報酬の代わりに街中の子どもたちを連れ去り姿を消すという寓話だ。
しかしこのページで再現された物語は、少々趣が異なっていた。
「すごい、あっちにはお城があるよ!」
「あそこにはお菓子の家が見えるわ!」
道端にはとてもわくわくするような建物やサーカスがいくつも連なっていた、
道行く愉快な仲間たちを誘惑する。しかしそれは「矢印からそれる方向」だ。
つまり、道々に仕掛けられた罠に釣られてしまえば……という物語。
正しい矢印の方向へ導くのは、怪しいフルートを奏でる笛吹き男というわけだ。
「ああ、ダメだよ。いまはパレードの真っ最中なんだから」
「ぱれえど?」
「そうさ。あの楽しい笛の音についてみんなで歩くんだ。面白そうでしょ?」
「うん、わかった!」
アリステル・ブルーの説得に応じ、少女人形の姿をした住民がてとてと歩く。
無邪気な住民たちは子供そのもので、気を抜くとすぐ矢印から逸れてしまう。
「そこの君、こっちに」
「歌って踊ってパレードをしようよ」
アリステルは"影身"を呼び出し、使い魔も動員して愉快な仲間たちを勧誘する。
たちまち笛吹き男のパレードは長蛇の列となり、街路は騒がしくなった。
『楽しい楽しいパレードは、笛吹き男に続いてどこまでも伸びていきます。
歌って、踊って、みんな嬉しそう。道行く人々も笑顔で拍手しています』
謎めいた語部は柔らかな声音で言うが、実のところ狙いは真逆だろう。
あちらはどうにかして住民を「本の世界」に取り込みたいはずだ。
(それでも、猟書家ですら物語は捻じ曲げない――いや、捻じ曲げられない、か)
アリステルはパレードの列に並びながら、淡々と考えていた。
この知識と経験は、必ず来るであろう大きな戦いの役に立つはず。
いまは対処療法的なことしか出来ずとも、必ずその野望を打ち砕けると信じる。
そのためには、この先に待っているであろうオウガの襲撃も防がねばならない。
「童話の真実は残酷だというけれど、そんな胸糞悪い物語は僕は御免かな」
アリステルは誰にも聞こえぬように呟いて、愉快な仲間たちを導くのであった。
成功
🔵🔵🔴
ニール・ブランシャード
ここは…古いお城?
(城主らしき吸血鬼が歩いてくるのが見え、咄嗟に衛兵のふりをする)
舞台は夜の古いお城、吸血鬼の城主…
ダークセイヴァーの童話かな
召し上げられた主人公が一生懸命働いて、見初められ領主と結婚する
領主に尽くせば幸せになれるっていう「教訓」のお話…
(液状の体から出す音の高さを調節し苦労して渋い声を作る)
ぼく…私は長く務めている衛兵です
お嬢さん、甘い言葉に騙されてはいけません
あなたの前にも領主には何人も奥様がいたのです
しかし皆「結婚」してから忽然と姿を消しました
(今考えた事をさも昔から知っているように不穏な様子で言う)
いいですか、例え「矢印」が導いていても領主の誘いに乗ってはいけませんよ
●33ページ目:青い髭の領主様
『暗い暗いお城の廊下を、青いお髭を生やした領主様がそぞろ歩きます。
実はその領主様は、夜の世界を統べる恐ろしい吸血鬼だったのです……』
「……!」
ニール・ブランシャードは、その外見を生かして咄嗟に衛兵のふりをした。
いましたが聞こえた謎めいた語部の言葉がたしかならば、
目の前を通り過ぎるあの"青髭"は吸血鬼であるらしい。
『領主様は、美しい娘を召し上げては、些細なことで怒り狂い妻を殺しました。
ですが、誰も恐ろしい吸血鬼を止めることなど出来ません。そしてまたひとり……』
(これは……ダークセイヴァーの童話ですね)
本来その物語は、滅私奉公によって幸運を得るありふれた寓話なのだろう。
だが猟書家が生み出した物語は、花嫁の死によって幕を締めくくる。
そしてまさしく、その「花嫁」に選ばれた愉快な仲間が城にやってきた。
吸血鬼はにたりと笑みを深め、衛兵に娘を連れてくるよう命令する。
(……ぼくが行くしかない。どうにかして物語に介入しなきゃ)
ニールはがしゃりと一歩前に出て、娘を案内する役に志願した。
物語の一部でしかない吸血鬼は、特にそれを訝しむ様子もない。
ニールはそのまま、あくまで自然に娘のいる応接室へと向かう。
「まあ。領主様がお目通りを許してくださったのですね?」
「えー……あ、あー、んんっ」
嬉しそうに立ち上がった娘に対し、ニールはわざとらしい渋い声で言った。
「……お嬢さん、甘い言葉に騙されてはいけません」
「えっ?」
「ぼ……私は、この城に長く務めていました。だから、知っているのです。
あなたが嫁ごうとしている領主には、前に何人も奥様がいたことを」
ニールは続ける。
「しかし……みな、"結婚"してから忽然と姿を消しました」
花嫁役になりきっていた愉快な仲間の顔が、さあっと青ざめた。
「今ならば間に合います。さあ、あちらの裏口からお逃げなさい」
「で、でも、それじゃああなたは」
「ご安心なさい。私は……強いのですよ」
ニールの言葉に、娘はこくりと頷いて城の裏口から出ていく。
これで、"娘は親切な衛兵に助けられた"という物語が成り立つだろう。
つまり、最後に己が成し遂げるべきことは……。
「貴様……娘を逃したのか? 愚か者めが!!」
「……たとえ、ここが物語の世界だとしても」
恐ろしい大音声を響かせる吸血鬼のほうを振り向き、ニールは戦斧を構える。
「健気に生きている誰かを、犠牲にさせたりなんかしないよ!」
この物語の締めには、きっとこう記されることだろう。
勇気ある騎士は、邪悪なる吸血鬼を討ち滅ぼし、城をあとにした。
太陽が指し示すほうへ向かい、誰かを救うための旅に出たのです――と!
成功
🔵🔵🔴
ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
――ストーリーテラー気取りか?どんでん返しが起きて脚本が台無しにならない様努努気をつけるといい。警句代わりに言っておいてやろう。
――聞こえてるかどうかは知らないが。
(ザザッ)
――さて、純粋な主人公を襲うのは大抵狼と決まってるが、敵が出てくるとすればその様な処か?
SPDを選択。
光学迷彩(目立たない×迷彩)で誰にも見えない黒子となりつつ――主人公達に害を為さんとする存在は"クイックドロウ"で早々に御退場願うとしよう。
生憎主役を気取るのが似合う性質ではない。密やかに舞台裏から主演達をサポートするとしよう。(援護射撃)
本機の作戦概要は以上、実行に移る。オーヴァ。(ザザッ)
●49ページ目:狼と狩人
赤ずきん、七匹の子ヤギ、三匹のこぶた……。
様々な童話において、"狼"は脅威と殺意の象徴として登場する。
このページにあつらえられた物語でも、それは同じだった。
「ねえおじいさん、大丈夫? 怪我をしちゃったの?」
愉快な仲間たちは、森の中で怪我をしている老人に出くわした。
心配そうな彼らに対し、老人はこのように言う。
「そうなんじゃよ。家には熱を出した孫が待っているというのに……」
老人の手には摘まれたばかりの薬草。愉快な仲間たちは声をあげた。
「まあ、たいへん! じゃあ、私たちがそのお薬を届けてあげる!」
「本当かい? これは親切な人たちに出会えたものだ。ありがとう」
老人は感謝を述べて、薬草を手渡した。
そして愉快な仲間たちは、熱に苦しむ孫の待つ家へと向かう……。
それがこの物語のあらすじ。
だが猟書家は、その道筋に罠を仕掛けていた。
実はおじいさんなど最初から存在しない。あれ自体が狼の化けた姿だったのだ。
見当違いのほうへ進み、森に入り込んだ愉快な仲間たちをまるごと食らう。
そのために狼は、草むらに先回りしてぐるぐると喉を鳴らしていた……。
だが。
《――いささか知識が古いな、狼よ》
狼は、背後から聞こえた声に驚いて振り向いた。
そこにはバチバチと稲妻を纏う黒い獣――否、ジャガーノート・ジャック。
《――残酷な童話は長い時間をかけて、大団円へと筋書きを書き換えられた》
「誰だ、お前は。俺様の狩りを邪魔するなあっ!!」
《――たとえば赤ずきん。最後には狩人が現れ老婆と少女を救うのが"今風"だ》
飛びかかってきた狼に物怖じすることなく、ジャガーノートはトリガを引く。
ZAP!! 神速のクイックドロウ。レーザーファンネルが狼を撃ち抜いた!
「が……ッ」
《――物語は"めでたしめでたし"で終わる。狼よ、お前の出る幕はどこにもない》
さらに一撃。狼の頭部が消し飛ぶ。愉快な仲間たちが気付くことはない。
ジャガーノートはうっそりと気配を消し、光学迷彩で森に溶け込んだ。
長い時間をかけて、残酷な寓話はハッピーエンドの童話に様変わりした。
現実はそうはいかない。華々しい幕切れも、悲劇的な終わりも訪れない。
たとえ年若い少年であろうとも、そう語れるだけの経験を彼はしてきた。
だからこそ。せめてこの仮初の物語は、大団円で終わってもいいだろう。
《――親切な旅人たちは、狼の溜め込んだ宝を見つけて幸せになった、というところか》
沸き立つ愉快な仲間たちを見送り、ジャガーノートは矢印の示す先へと急ぐ。
この結末は騎士を目指した鋼の獣のものであり、"彼"のものではない。
それも悪くない――そう思えるくらいには、少年も成長していたのだ。
成功
🔵🔵🔴
リサ・ムーンリッド
【SPD】
ユーノ(f10751)さんと二人で
ほー、これはまた統一感のない愉快な場所だ
え、バーベキュー?
●観察やサポート
ユーノさんの出したひよこに相乗りして移動
…あのうさぎ耳をバタつかせて浮いてる…
食べ物は毒や魔術的な罠の確認をしておけば大丈夫かな…いちおう、念の為私は食べずにいておこう
進む方向さえ逆らわなければ、それ以外は乗らなくても問題ないはずだし
もし追加で必要な道具があれば質は荒いけど『レプリカクラフト』でパッと作ることもできるよ
そして好奇心に誘われて、バーベキューの材料の一部をサンプルとして拝借し空の瓶に入れるなど
あとで他の世界の肉との違いでも調べてみよう
ユーノ・エスメラルダ
【WIZ】
リサ(f09977)さんと二人で
●物語
わわ、ツギハギな感じの場所ですね
空に浮かんだ水のボールにお魚さんが泳いでいますし、見えない階段や道が空に浮いてます
空をお散歩しているみたいです
空を歩いて、耳で飛ぶうさぎさんがいて、猫さんは逆立ちして歩いてます!
逆立ち猫さんはあの先にある小さなお月さまでバーベキューをするそうです
お肉とお野菜の食べ放題…ごくり
あ、バーベキューセットさんが精肉済みのお肉を抱えながら歩いてますね
あの方についていけば良いのでしょうか?
●移動
電脳ヒヨコさんにリサさんと二人で【騎乗】して進みます
●51ページ:(色んな意味で)夢のような世界
そこはまるで、要素をランダムにつなぎ合わせたような場所だった。
空にはいくつもの水の玉が浮かび、その中には魚が悠々と泳いでいる。
透明なガラスを磨き上げたような、見えない階段や道が空高くへと続く世界。
しかもその空には、耳で飛ぶ(!)ウサギがふよふよ舞っているのだ。
「……うん、これはなんというか、実に統一感のない世界だな……」
リサ・ムーンリッドは、横を通り過ぎた逆立ちの猫を見て肩をすくめた。
まさに"夢のような"世界である。風邪引いたときとかに出てきそうな感じの。
「なんだここ、面白いなー!」
「お空に登っていけるなんて素敵だわ!」
「どこからかお肉の臭いがします、ごくり……!」
はしゃぐ愉快な仲間たち……と、そこに混ざったユーノ・エスメラルダ。
ユーノの嗅覚は伊達ではない。どうやら本当にバーベキューパーティが開催されるらしい。
しかもバーベキューセットが自分で肉を抱えて……えっなんだそれ?
「ユーノさん? お肉はいいけど、仕事を忘れちゃダメだよ?」
「えっ? も、ももももちろんです! お肉につられて忘れたりなんて……」
(……口の端からよだれを垂らして言っても説得力がないんだけどなあ)
心優しいリサは、指摘するのだけはやめておくことにした。
はっと我に返ったユーノは、ハンカチで口元をいそいそと吹く。
「こ、こほん。とにかく、矢印はあのお月さまを指し示しているようです!」
「逆立ち猫たちも、階段を登って月に向かうみたいだね、なるほど……」
愉快な仲間たちも、さっそく美味しそうな気配につられて階段を上る。
こうしてはいられない。リサは慌てて透明な階段に足をかけようとした。
「あっ、待ってください! 私の電脳ヒヨコさんを使って移動しましょう!」
そこでユーノはリサを止め、2メートルほどの電脳ヒヨコを召喚する。
ひょいっと飛び乗り、ニコニコ笑いながらリサに手招きした。
「では、遠慮なく」
「それでは出発進行ですよ! 愉快な仲間さんたちに先回りしましょう!」
もしかすると、向かった先に邪悪なトラップがあるかもしれない。
そう考えたふたりは、ひよこでふわふわと空を飛び月へと急ぐ。
え? お肉が食べたいだけ? そんなわけないですよ、ないったら。
……ほどなくして。
現実とは異なる距離感を持つ物語の世界では、月までも一瞬で到着する。
あたりは夜空めいて暗い空に変わり、あちこちではばたき兎が餅を突いていた。
「日本の昔話みたいだね。こんなところでバーベキューとは……」
「お肉が待っていますよ、もちろんお野菜もです、ごくり……!」
「……ユーノさん? もう一度聞くけど、仕事の内容は忘れてないよね……?」
「(はっ)も、ももももちろんです! ええと、ですからつまり……」
ユーノは考えた。ここでパーティを開くのが物語の流れなのだとしたら、
つまり愉快な仲間たちが先へ進まないよう、パーティを盛り上げればいいはず。
そしてパーティを盛り上げる、となれば……!
「全力で、食べて食べて食べまくるしかない、ですね!」
(……ものすごく我欲に振り切ってる気がするけど、まあいいか)
リサは苦笑しつつ、念のため食事の材料に毒が仕込まれてないかを確かめた。
この物語は比較的平和なようで、食事そのものに毒は含まれていない。
むしろ警戒すべきは、いかにも愉快な仲間たちの注意を惹きそうな周りの動物たちだ。
おそらく、動物たちに混ざって遊ぼうとすると、物語に取り込まれてしまうのだろう。
「「「美味しそうなにおいだー!」」」
やや遅れて到着した愉快な仲間たちは、香ばしいお肉の匂いに夢中である。
ユーノは一番にお肉を食べるため……もとい、彼らをパーティに釘付けにするため、自ら率先して肉や野菜を焼き、話を盛り上げた。
「お月さまの上で、みんなで楽しくパーティだなんてとっても愉快ですね!」
「そうだね。これが猟書家の物語じゃなければ、もっとよかったかな」
リサは食事には手を付けず、手慰みの遊び道具などをユーベルコードで生成する。
誤った方向に進むことなくこのページにとどまっていれば、
愉快な仲間たちが戦闘に巻き込まれる心配はないだろう。
元凶のオウガを倒し、物語の世界そのものを破壊すれば、彼らも自由だ。
「それにしても、アリスラビリンスのお肉か……ちょっと気になるね」
「リサさんは食べないんですか?」
「ん。まあ、気が向いたらね」
ぱくぱくと無邪気に箸をすすめるユーノの様子に苦笑しつつ、
リサは採取した肉を空の瓶に放り込んだ。
脳天気な雰囲気のままパーティは続く。
彼女らが静かにそこをあとにしたのは、ユーノがたらふくご飯を食べて満足してからのことだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
物語の細部お任せ
”太陽”を目指して進むのは、
現実世界でも簡単なように思えて難しい
不思議な世界に揺蕩うのも面白そうだが…一生は御免だな
・内容
場所は高天原
和風世界
草木豊かで鳥の囀りが聞こえ
睡蓮が池に浮かぶ
或る二人の異能者がいた
Aは寵愛を受ける銀髪長髪の聖人君主の男
Bは有能だが性格に難あり。周囲と壁を作る黒髪短髪の男
BはAを好敵手、人に言えぬ感情を抱く
彼らがそれぞれ念を込めて鏡を作った
一つは黄金の鏡で本物
一つは今にも壊れそうな古ぼけた鏡の紛い物
二つで一つ
片方が欠けても成り立たない
BはAの力にも羨望した
後にこの鏡らが物語を動かす
妖が出てきて創り手が退治したり
(…他人事とは思えねェ世界だ)
鏡を伝って介入
●54ページ目:ふたつの鏡
『……その世界には、ふたりの異能持つ者が住んでいました』
どこからともなく響く謎めいた語り部が、物語を綴る。
『ひとりは数多の寵愛を受け、聖人君子と呼ぶべき心優しい男のひと。
ひとりは反対に、誰に対しても壁を作り軋轢を生む気難しい男でした』
和の雰囲気を感じさせる世界には瑞々しい草木が生い茂り、鳥が歌う。
静かな池には睡蓮が浮かび、まさしくこの世の楽園と呼ぶべき風景である。
『何もかも鏡合わせのようなふたりの男は、ふたつの鏡を生み出しました。
ひとつは黄金にまばゆく輝く力ある鏡。神鏡と呼ぶべき宝物。
もうひとりの男は、いまにも壊れそうなほど古く、まがい物の鏡を』
「…………」
楽園めいた物語のなかを、杜鬼・クロウはひとり静かに歩く。
その風景は、彼にとって不気味に感じられるほど"馴染み"があった。
『どちらが欠けても成り立たない、表裏一体のようなふたつの鏡。
どちらかだけでもいけない、男たちはふたりでひとりだったのです』
「……だが、男は羨望を抱いた」
クロウは呟き、かり、と指先を噛んだ。
滴る血は地面に落ちるとぞぞぞ、と形を変え、濡れ羽色の翼持つ八咫烏となる。
八咫烏はげえ、と高く鳴き、光そのものと化して空に飛んでいく。
「男は己にないものをすべて持つもうひとりの男に、言いしれぬものを抱いていた。
だからその男は、羨望と、妬みと嫉みと、そして――……ハッ」
クロウはひとりごちて、そして自嘲した。
「いや、これは"物語"だ。"過去"じゃねェ。物語ってのは終わるモンだ」
ぽたり、ともう一滴、指先から血が滴る。
"鏡のように"艷やかな水滴の表面には、鏡の中に囚われた住民らの姿が映る。
光と化した八咫烏は鏡越しの世界に辿り着き、そして戒めを壊した。
ぱきん、と音を立てて、なにもない場所に光の円いゲートが生まれる。
「「「わああっ!」」」
どさどさ、と元の世界へ雪崩込んできた愉快な仲間たちの姿を一瞥し、
クロウはまた歩き出した。その肩に八咫烏が舞い降り、太陽の方向を示す。
「悪ィが、いまの俺は忙しいンだ。こんな場所に揺蕩う暇はねェのさ」
そしてクロウはひとり、太陽を目指して歩み続ける。
役目を終えた鏡の破片が、男の背中を静かに映し出していた……。
大成功
🔵🔵🔵
矢来・夕立
竹林。竹取物語でしょうか。
「竹が光ってても、それが矢印の方向に沿っていなければ行かせてはならない」という理解でいいんですかね。
…地味にめんどくさいな。《闇に紛れて》先に偵察をしてきます。
広そうなら『幸守』と『禍喰』も使って、光る竹を探す。
もしあって、その場所が進行方向と違うなら式紙で目隠しを作る。
無論それだけでは万全ではない。
現地の方には「あっちに光る竹があった」とウソをついておきましょう。
有耶無耶のまま矢印の方へ進ませます。
竹取物語は詐欺師どもの物語ですよ。オレにとってみれば干渉なんか易いものです。
猟書家だかなんだか知りませんけれど、作り話の世界でオレに勝てると思わないことですね。
●63ページ目:竹取の翁
ひとりの翁が、鬱蒼と竹の茂る林をひとり歩いていた。
なぜだか此処に来なければならない、そんな気がしていたのだ。
「……はて、この竹林はこんなに薄暗かったかのう」
だが翁は、よく憶えていたはずの景色と違うことを訝しむ。
ここは己の庭も同然だ。目を瞑っていても外に出られるだろう。
ゆえにわかる。今日はなぜか妙に暗く、そして道も変わっているように思える。
「はて、なんぞか化かされているのか、あるいは……」
「おじいさん。こっちは危ないですよ」
闇の中から、聞き覚えのない声がした。
翁はナタを手にあたりを見渡す。だが、声はすれど姿は見えない。
「ここには"よくないもの"が出ます。今日は、奥に入らないほうがいい」
「……誰じゃ?」
「さあ。親切な旅人か、謎めいた隠者とでも思ってください」
声は言う。
「どうせ向かうならあちらがいいでしょう。きっと安全です」
「……"よくないもの"が、お前さんではないという保証はあるまい」
闇の中から嘆息の気配がした。
「"そういうもの"は、奥へ奥へ招き入れるものでしょう。オレの場合は逆です。
あなたは"あちらのほうへ行くべきではない"。老婆心というやつですよ」
「…………」
翁はしばし訝しげに闇を睨んでいたが、やがて嘆息した。
「まあよい。若者の言うことを疑うのはよくないからのう」
「…………」
「感謝するよ。親切な方」
翁は踵を返し、別の方角へ……すなわち、もと来た方角へと戻った。
あれは物語に囚われかけた、本来のこの不思議の国の住人だ。
だがこの竹林=物語の世界からドロップアウトすれば、問題はあるまい。
その間に自分がオウガを滅ぼせば事態は解決する。少なくとも、戦闘の邪魔にはならない。
「……オレは思うんですが」
闇から滲み出るように現れた矢来・夕立は、ちらりと空を見上げた。
太陽の矢印が指し示す方角は、まさしく翁が最初に向かおうとしていた方角だ。
あちらに行ってしまえば、物語に取り込まれずともオウガの牙が彼を襲う。
それは困る。戦いに邪魔が入るのは、好ましくない。
「竹取物語って詐欺師どもの物語ですよ。翁も、姫も、帝も、全員がそうです。
不死の霊薬が本当に投げ捨てられたかどうかだって疑わしい。人間ですからね」
夕立は眼鏡の位置を直した。
「猟書家、でしたか。――作り話の世界で、オレに勝てると思わないことですよ」
謎めいた語り部の声は返ってこない。だが夕立は感じている。
どこからか、この事態を企てた張本人が己を見下ろしていることを。
じきにその喉元にも手が届く。いわば、これは宣戦布告だ。
「残りの仕掛けも片付けてあげましょう。まあ、オレは戦いとか苦手なんですが」
息を吐くように嘘をつき、夕立は影となって太陽を目指した。
太陽の真下にこそ、もっとも色濃い影は生まれるものである。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『アルプトラオム』
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POW : 劈く嘶き
命中した【悲鳴】の【ような嘶き声に宿る苦痛の記憶や感情】が【対象に伝わり想起させることでトラウマ】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : 狂い駆ける
【自身を構成する恐怖の記憶や感情をばら撒く】事で【周囲に恐怖の記憶や感情を伝播させる暴れ馬】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : もがき苦しむ
攻撃が命中した対象に【自身を構成する記憶や感情から成る黒紅の靄】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【かつてのアリス達が抱いた絶望の記憶や感情】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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●77ページ目:"戦闘番地"
お菓子で出来たファンシーな国の街路に、突如として"それ"が現れた。
名を、悪夢(Alptraum)と云う。
知性らしきものは持たない、一種の自動的な災害だ。
アリスたちが抱いた絶望、恐怖、苦痛、哀しみ――あらゆる悪感情。
それらが凝り固まり、そしてオウガの走狗として使役される存在ども。
此度に現れた"それら"は、「物語の一部」として取り込まれてもいた。
自意識を持たぬ災害めいた魔物の群れが、一様に云う。
『やあ、お菓子の国へようこそ! 一緒に遊ぼうよ!』
『追いかけっこがいい? それとも力比べ? かくれんぼだってお手の物さ!
苦しんで、絶望して、恐怖して、とびっきりの泣き声を聞かせておくれ!』
もはや猟兵たちへの殺意を隠すことなく、魔物どもが迫りくる!
"戦闘番地"と名付けられたこの領域の戦いは、ページをまたぎながら繰り広げられる。
お菓子の国の次は海の中の王国、はたまたページをめくれば雲の上の楽園。
地上、空、時には宇宙、はたまた謎めいた揺らめく色彩のなかの世界。
無秩序でグロテスクなまでに意味不明の世界そのものが、猟兵たちを襲う。
そして魔物どもと対峙する猟兵たちの精神に、語り部の声が響いた。
『さあ、ついに邪魔者どもと魔物の殺し合いの始まりです。
物語を邪魔する愚かな邪魔者どもは、底なしの絶望に呑まれ苦しむのです。
誰一人として生きて出ることは出来ず、怨嗟も悲鳴もどこへも届くことはありません……』
猟兵の最期を予言するかのようなふざけたナレーションに、今こそ抗うときだ。
猟兵たちの機転により、愉快な仲間たちはここまで辿り着いていない。
彼らに先んじ、ページを進め。物語をたぐり、悪夢を倒し、エンドマークを目指せ!
カタリナ・エスペランサ
そうさ、アタシたちはこの悪趣味な筋書きを書き換えに来た邪魔者だ
絶望も悪夢も望むところ、全部纏めて祓ってあげる!
【暁と共に歌う者】で召喚した不死鳥と共に響かせる歌声で《歌唱+結界術+拠点防御》の領域を形成
味方には《鼓舞+ドーピング》の加護を、魔物には《破魔+慰め+浄化》で負の感情を癒す事による弱体化の効果を発揮するよ
《空中戦》で縦横無尽に飛び回れるから《地形耐性・環境耐性》は万全さ
不死鳥の炎の体と相性が悪い空間に出たら合体と《オーラ防御》の強化で対応しようか
魔物の攻撃は《見切り》回避、動きが鈍った隙を見計らい零距離から《精神攻撃+ハッキング》で干渉
その身を構成する負の感情を《吹き飛ばし》鎮めよう
●78ページ目:お菓子の国・王城
ビスケット、クリーム、そしてキャラメルとチョコレート。
甘いお菓子でできた王城が、不死鳥の劫火によって溶け崩れる。
戦場に似つかわしくない甘い匂いのなか、飛翔するのはカタリナ・エスペランサ。
「まったく、わざわざ"天使"なんてものになりきった甲斐があったものだ!
いよいよ馬脚を表したな猟書家。もはや物語の体を成してないじゃないか!」
カタリナは姿見えぬ語り部をあざ笑い、焔を以て暴れ馬どもを滅ぼす。
その叫びは歌であり、つまりは恐怖と絶望を払う暁の輝きそのもの。
熱によってこじ開けられた竪穴を、カタリナは螺旋飛翔する。
そのあとを追って疾走する漆黒の悪夢(ナイトメア)。数は十以上!
「そうとも、アタシたちはこの悪趣味な筋書きを書き換えに来た邪魔者だ。
絶望に悪夢も望むところ、全部まとめて祓い、何もかも書き換えてあげる!」
羽ばたきが焔を生み、焔は不死鳥となりて暴れ馬と格闘する。
絶望と希望の戦い。それは、猟兵とオブリビオンの終わらぬ戦いにも似る。
「キミたちはいつだってそうだ。お仕着せの悲劇を声高に叫び、世界を壊す。
けれどね、アタシたちはもう何度だって、その絶望を灼き尽くしてきた!」
透明の天蓋を突き破り、空へ。暴れ馬どもは空中を蹴ってそれに追従する。
空から見下ろせば、物語の世界はいかにもファンタジックだった。
けれどもそれは、かりそめのものだ。醜悪な本質を覆い隠す甘い虚偽。
『遊ぼうよ! 僕らと遊ぼうよ!』
『絶望の悲鳴を聞かせておくれ!』
『苦しみの断末魔を響かせてよ!』
「――けれども、その暗闇はアタシに届かない」
カタリナは大きく翼を広げ、そしてぐるりと高速回転した。
羽ばたきが風を……空間をも断ち切るプラズマの斬撃波動となり荒れ狂う!
それは嵐だ。悲劇と終焉を否定し、生命の輝きを謳う高らかなる嵐!
「絶望と苦痛から生み出された獣たちよ。もう、キミたちは眠るときだ。
誰からも望まれないモノでも、せめて眠りは安らかにあるべきだろう?」
福音をもたらす御使いめいて羽ばたく不死鳥たちが、暴れ馬たちを焼き尽くす。
しかしそこに痛みはなく、ただ悼みと慈悲深き安らぎだけがあった。
絶望も悪夢も、暁の運び手には届かない。闇は光のなかに融けていく。
「――見えているだろう? 猟書家。この焔は、いずれキミたちのもとに届く。
いいや、届かせてみせる。そしてアタシたちは、何度でも世界を救うのさ」
カタリナは謳うように言った。そのかんばせを、聖なる炎が照らし出す。
中天に輝く太陽のもとに羽ばたくその姿は、祝福された聖女のようだった。
あいにく彼女は、その神をこそ厭い嫌っているのだが。
成功
🔵🔵🔴
カイム・クローバー
背景が凝ってるんだ。煌びやかな王城にありそうなダンスホールを舞台にしたダンス・パーティってのはどうだい?此処で殺されるんだろ?最後の願いぐらい叶えてくれよ?(笑い【挑発】の意図を込めてナレーションへと)
馬だから踊りは初めてか?ハッ、良いぜ。リードしてやる。格安でな。
二丁銃を引き抜き【二回攻撃】に【クイックドロウ】。距離を空けつつ、銃弾を放ち会場へ誘うぜ。
距離を詰められてからが本番だ。魔剣を顕現。周囲一帯の悪夢をUCで悉く斬り捨てるぜ。周りの観客には怪我をさせず、尚且つ、観客の視線を集めよう。
ダンスが終われば拍手に合わせて胸に手を当てて一礼。
皆様に置かれましてはどうかお愉しみ下さいますよう――
●82ページ:クリスタル・キャッスル
透き通った水晶を削り出して建てられた、幻想的な王城。
その大広間はいま、暴れ馬と伊達男が踊る荒々しいパーティ会場と化していた。
「ハッ、ずいぶん洒落た世界もあるもんじゃないか! だが物騒な物語だな。
こんなところで死ぬのも悪くはないが、あいにく俺は王子様じゃあないんでね」
BLAMN!! 魔銃オルトロスが火を吹いて、暴れ馬の頭部を撃ち抜いた。
「流れの便利屋にこんなデカい墓標は似合わない。つまりあんたの物語は、
こっちとしちゃ願い下げってわけだ。さあ、どうする猟書家さんとやらよ?」
謎めいた語り部は、カイム・クローバーの軽口には決して答えない。
カイムは肩をすくめ、背後から襲い来た暴れ馬をノールック射撃で抹殺。
「どうやらおしゃべりも嫌いらしい。俺たち、性格合わないかもな」
最初から反応は期待していない。カイムは何かとおしゃべりなタイプなのだ。
そしてこれは、姿を表さずことを進めようとする陰険野郎への挑発でもあった。
"俺たちはお前らの仕業を知ってるぞ。首を洗って待っていろ"。
月次な台詞にすればそんなところだ――だがカイムは諧謔家でもあった。
小洒落た言い回しにちくりと皮肉を込めて、弾丸とともにくれてやる。
それが便利屋Black Jackのスタイルであり、誰にも曲げられない信念なのだ。
「しかしまあ、苦痛や絶望から生まれた悪夢とは! 陰気な怪物もいたものだ!」
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
マズルフラッシュがクリスタルの床や天井に反射し大広間を派手に照らす。
銃声が響き渡るたびに澄み渡った音叉が反響し、怪物の断末魔があとに続いた。
カイムはブレイクダンスめいた激しい動きで怪物どもを翻弄し、
意表を突いたクイックドロウで脳天を撃ち抜く。さながら映画のカウボーイだ。
「さて――そろそろ仕上げといこう! こいつが"死の舞踏"ってやつだ!」
カイムはオルトロスを上空に放り投げ、魔剣を振り抜いた。
そしてくるりと華麗にステップを踏み、がりがりと床に円弧を刻む!
ぎゃりりり!! と切っ先が水晶を円く焦がし、遅れて剣風が吹き荒れた!
「ハ! 残念だね。ファースト・ステップで音を上げちまうなんざ」
襲いかかった暴れ馬どもは一刀のもとに吹き飛ばされ、バラバラに四散した。
その残骸も剣風に吹かれて消えていく。絶望の残滓すらも遺さない。
観客席に座る顔なき観客たちは、わっと声をあげてスタンディングオベーション。
カイムは自身に満ちた指揮者のように大きく手を広げ、慇懃に一礼した。
「皆様におかれましては、どうかお楽しみくださいますよう――」
新たな悪夢の気配。カイムは不敵な笑みを浮かべ、落ちてきた魔銃を掴み取る。
「ダンスパーティはまだまだ続くのさ。いくらでもかかってきな!」
そして魔銃の咆哮が、またひとつ悪夢を喰らい尽くす!
成功
🔵🔵🔴
フェルト・フィルファーデン
ふふっ、なんとも下らない筋書きね?……馬鹿馬鹿しいにも程があるわ。
さあ、茶番はここまでよ。ここからは、逆転劇といきましょうか!
あの子達が辿り着くまでに、速攻で終わらせましょう。
ええ、わたしはお姫様。守られて助けられる無力な存在。
……なんてね?そんなありきたりなシナリオなわけないでしょう?
わたしの騎士人形よ、この命を糧に全ての敵を討ち滅ぼす力を!
恐怖なんて無い、なんて言えないわ。このちっぽけな体で無数の命を背負い戦うことが怖くないなんて嘘になる。
でもね、だからこそ全身全霊を尽くすの。負けるわけにはいかないから。……もう、何も失くさないために。
その程度の恐怖で、わたしの歩みを阻めると思わないで!!
●85ページ:燃え盛る都
燃えている。家が、人が、国そのものが燃えている。
「助けてくれえ!」
「死にたくない!」
「苦しい……苦しいよお!」
そこらじゅうから悲鳴と怒号が聞こえ、混乱と絶望があたりを支配していた。
絶望と恐怖から生まれた怪物が暴れまわるのに、これ以上ない場所である。
そしてフェルト・フィルファーデンにとっては、目をそらせない景色。
「――それで? 偽りの滅びを見せて、わたしの心を挫けると思ったの?」
だが暴れ馬を迎え撃つその双眸は、気高くも怒りに燃えていた。
「ええ、ええ、アナタたちというものがよくわかったわ。猟書家たち!
わたしは許さない。いたずらに命をもてあそぶものを、そのすべてを!」
フェルトが両手を打ち振るえば、勇ましき騎士人形たちがその御前に侍る。
暴れ馬は蹄を鳴らし、燃え盛る退路を轡を並べて暴走した!
「守られて助けられて、ただ震えて怯えて閉じこもる。それがお姫様。
……そんなありきたりなシナリオも、悲劇も、わたしはごめんだわ!」
アーマーリングが光を放つ。それはフェルトの命を受けて燃える篝火だ。
「わたしの騎士人形よ。この命を糧にすべての敵を討ち滅ぼす力を!
愉悦と退屈のもとに悲劇と滅びを撒き散らし、嘲笑するものを討つ力を!!」
その輝きは、常よりもひときわ強く強くきらめいていた。
恐怖などない――とは、言えない。彼女は己の闇を知っている。
恐怖があり、絶望があり、諦観があり、そしてどうしようもない郷愁があった。
帰りたい場所。帰ってこない人々。過ぎ去ったときへの後悔が。
けれどもう、彼女はそれを知っている。そう、フェルトは強くなった。
たとえふたたび、世界を巻き込んだ大きな戦いが起きるとしても。
「――わたしはもう何も取りこぼさない。いのちも、ひとも、何もかも!」
フェルトは飛翔した。騎士人形は壁となり暴れ馬の突撃を受け止める。
そして激烈な刃が嵐となる! たちまち絶望の悪夢は微塵に切り裂かれた!
竜巻の如き剣舞は凄烈な風となり、都を灼かんとする炎すらも吹き飛ばす。
たとえこれが、滅びの物語というかりそめのものだとしても。
悲鳴をあげて逃げ惑うモノたちが、物語の一部でしかないとしても。
目の前の悲劇を否応なく叩き潰す。彼女はその過酷な道を選んだのだ。
覚悟を決めた。命すらも犠牲にして決意を形にしてみせると!
「絶望も恐怖も見飽きたわ。その程度で、わたしの歩みを阻めると思わないで!!」
決然と駆け出す姿は、まるで颯爽たる物語の英雄のようである。
彼女は震えて待つだけのお姫様ではいられない。そんな役柄はお断りだ。
綺羅星のような命を煌めかせ、滅びを滅ぼす少女が夜闇に舞い踊った。
成功
🔵🔵🔴
ユーノ・エスメラルダ
リサ(f09977)さんと二人で
●戦闘(?)
怪我を『聖痕』で癒しながら、あらゆる攻撃を好意的に解釈してUCを発動
敵が無力化されるまでの【時間稼ぎ】をします
さらに【激痛耐性】と共に痛みを引き受ける【覚悟】で微笑み、敵の安息を【祈り】悪感情の【浄化】も試みます
この先で戦いの音がします…
わわ、怖い感じのお馬さんが暴れてます…!
(そしてリサに言いくるめられ)…え?そうだったのですか?と、UC発動
この先がもっと危ないから、がんばってやりたくも無い攻撃をしたり怖い思いをさせようとしてくれているのですね
ほら大丈夫、ユーノたちはけっこう丈夫ですから
心配して傷つけようとしなくても、良いんですよ
リサ・ムーンリッド
ユーノ(f10751)さんと二人で
●作戦
【精神攻撃】と【医術】に対する知見、そして先に始まっていた戦いを【偵察】する【情報収集】で得た内容や【読心術】、ナレーションの煽りから、敵の原動力が恐怖や不安っぽいと確信
よしユーノさんを【言いくるめ】るか
「あの馬は実はいい馬で、この先が危険だって教えてくれてるみたいだね」って感じで
絶望や不安や恐怖は物事を悪く捉えることで加速する…だからその逆のポジティブをぶつけよう
●戦闘
【精神攻撃】への知見から対策をとり、【演技力】も交えて耐える
敵の動きが止まったり弱体化したりしたらUCの睡眠薬で眠らせて戦闘不能に
それじゃ、先に進ませてもらうよ
●92ページ:太陽昇らぬ廃墟
闇に溶け込む黒い靄……それは形を得た絶望そのもの。
なぜならばこのアリスラビリンスとは、アリスを苦しめるための牢獄。
そこに希望はなく、最期には彼らはオウガの血肉となる。
ときには絶望のあまり、アリスはオウガそのものに変じることすらあるという。
その絶望を苗床に生まれた怪物どもは、"仲間"を増やすことを好む。
絶望に諦め、苦痛に悶え、哀しみに膝を突く敗残者を。
邪悪なその靄を見た瞬間、リサ・ムーンリッドは確信した。
(……なるほど。アリスの絶望を媒介とした精神攻撃というわけね)
一見すると悪夢の怪物の攻撃は、その猛々しい突撃が危険に思える。
それこそが陥穽なのだ。リサの慧眼は見事にその虚構を見抜いた。
「ユーノさん、怖がらないで。あれは、悪い怪物じゃないわ」
「えっ? で、でも、なんだかとてもよくない気配が……」
ユーノ・エスメラルダは不安げに言うが、リサはかぶりを振った。
「あの馬はじつはいい馬で、この先が危険だってことを教えてくれてるみたいだ。
だから、全部私たちのためなんだよ。痛くしたり苦しくするのも、ね」
リサの見立てでは、絶望や恐怖は負の感情によって加速する。
ならばその根本を切り替えてしまえば、精神攻撃は通用しないというもの。
普通の猟兵ならば、何をそんなと彼女の言葉を一蹴したかもしれない。
だが純粋なる――そう、危ういほどに純粋なユーノは、その言葉を信じた。
それが彼女の美徳でもあり、友たちが恐れる危うさでもあるのだ。
「そうだったんですね……! でも、ユーノたちは止まれません」
「ええ。悪いオウガをやっつけるために、この先へ進まないとだもの」
黒い靄を纏い、暴れ馬が襲いかかる。ユーノは靄に手足を絡め取られた。
ぞっとするような冷たい感触。心そのものに染み込むような違和感。
けれどもユーノはにこりと微笑み、聖者の輝きを纏って言った。
「だいじょうぶですよ。ユーノたちは、悪いオウガになんて負けません。
もう、あなたたちがやりたくもない攻撃をしたりしなくていいんです。
わたしたちはきっと、この本の物語を正しく終わらせてみせますから……」
暖かな輝きは黒い靄をすら抱きとめた。悪夢の怪物どもは困惑する。
そしてその赤黒い眼はゆったりとふせられ、完全に閉じた。
密かにリサが放った、臭気性の特殊な催眠薬の効果だ。
(……これでいい。真実を伝えるのが最善手とは限らないもの)
リサは思う。ユーノの純粋さは、強い武器でもあるがひどく脆くもある。
世界の残酷さに対して、彼女はどこまでああしていられるだろうか。
底なしの悪意を前にしたとき、善意はひどく脆いものなのだから。
「……いこうか、ユーノさん。先を急がないとね」
「はい、そうですね。……あのお馬さんたち、大丈夫ですよね?」
眠りについた怪物たちを見て、ユーノは呟いた。
リサは何も言わず歩き出す。ユーノは戸惑いがちにそのあとに続く。
やがて、絶望の靄が眠れる怪物どもを飲み込んだ。
看取られることなく消えていく恐怖は、はたして救いと呼べるのか。
問われたとて、リサがその答えを出すことはないだろう……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
矢来・夕立
苦痛に絶望に…恐怖でしたっけ?
最後のはあまり感じたことがないです。
ゼロではない。でも、恐れを教わったひとからは《勇気》ももらいました。
オレの中にあるおそれは、誰にも動かせない。
自然現象ごときがオレを恐怖させようなんざ、烏滸がましいんですよ。
【紙技・否無】。
馬を殺すのは少し大変なんですけど、かたちだけでしょう。
斬っても絞めても刺しても消せそうな気がします。
まだ見てるんでしょう。
あなた、少なくとも文芸でご飯を食べていくのは諦めたほうがいいですね。
劇中のナレーションでネタバレを挟まれたらフツーに萎えます。
まあご覧の通り、結果的にネタバレにはなりませんが。
コレが前哨戦でよかったですね。
●94ページ目:無数の杭が突き立つ戦場
恐怖。それはヒトがヒトである以上、けして克服出来ない永遠の陥穽。
たとえどれほど勇ましい戦士でも、恐怖を殺すことは出来ても無視は出来ない。
恐れないのではなく、己のなかの恐れとどう付き合うかが重要なのだ。
「――オレの中にあるおそれは」
無数の杭が突き立つ戦場。
その中心で、矢来・夕立は天を見上げていた。
乱立する杭には無残な死体が突き刺さっている。
そして夕立の足元には、まさしく屍の山。
人間ではない――それは、悪夢の名を持つ暴れ馬どもの死骸だ。
「誰にも動かせない。オレは、恐れと一緒に勇気をもらいましたから」
夕立は眼鏡の位置を直し、一筋こぼれた汗を拭う。
醒めた顔で淡々と殺しをこなす夕立でも、これほどの数は当然堪える。
だが、表情は崩さない。何があろうとも、冷徹な忍で在り続ける。
それが彼の戦い方であり、反抗であり、維持であり、スタイルなのだ。
「自然現象ごときが、"たかが悪夢ごときが"オレを恐怖させようなんざ」
新たな暴れ馬が出現した。出現からコンマ五秒、脳天に苦無が突き刺さる。
夕立は影めいた速度で滑るように走り、突き刺した苦無を回収。
後続出現。飛び石のように蹴り渡り、一体一体丁寧に、迅速に殺していく。
「おこがましい。一万年早い。身の程を知らない。そして、目障りです」
ずぶりと、眉間に深く深く苦無が突き刺さった。
暴れ馬が悶える。
抉りこむ。
獣が暴れる。
深く、深く抉りこむ。
どう、と倒れる音。そして静寂。
「まだ見てるんでしょう」
新たな屍の山の上で、また夕立は空を見上げた。
答える声はない。あるのはただ、荒涼とした戦場の風景だけ。
中天に輝く太陽は、何も言わず静かに進むべき方角を指し示していた。
だが、夕立は構わず続ける。
「あなた、少なくとも文芸でご飯を食べていくのは諦めたほうがいいですよ。
ナレーションでネタバレなんてフツーに萎えます。といってもまあ――」
眼鏡の位置を直す。
「残念ながら、ネタバレにはなりませんでしたが」
常と変わらぬ平易な声音。
だがそこには、明らかに皮肉と挑発の意図があった。
「コレが前哨戦でよかったですね。クライマックスならオチが迷子ですよ。
それとも小説書くの初めてですか? ハウツー本とか読みましょうよ」
新たな獣が来る。夕立は殺す。殺し続ける。ひたすらに。
殺すことしか出来ぬ。
殺すことなら出来る。
恐怖も、
絶望も、
苦痛も、
すべて殺してしまえばよい。
「事実は小説より奇なり、って言いますよね。取材とか大事だと思いますよ。
――そのうち、あなたに恐怖を味わわせてあげましょう。オレ、優しいので」
夕立の瞳は、カタナのように鋭かった。
大成功
🔵🔵🔵
ニール・ブランシャード
ダークセイヴァーに似た陰鬱な景色の中を歩いていく。
積み上がった死と灰、泥に沈む手、蟲の巣になった肉
これは現実じゃない。助けられなかった人はいない。進むしかないんだ
馬の嘶きが聞こえる
…嫌な思い出が浮かんでくる。
無力、孤立、恐怖、「個」の喪失…
もーー!!うるさいなぁ!さっきから人の頭の中に話しかけたり干渉したり!
ぼくは…他のイェーガーに比べたら頼りないかもしれないけど…
怖くたって君たちの思い通りに泣き叫んだりしないよ。【勇気】を持てば、乗り越えられる。
やることは単純だ。
武器を強く握る、力を出す【怪力】、思いっきりぶつける。
体が波打って手が震えたって武器は持てるし力も出せる。
そこをどいてもらうよ。
●99ページ:太陽なき世界
……そこは、ダークセイヴァーに酷似する闇の世界だった。
路端には死体が積み上がり、ぶんぶんと蝿が唸っている。
傍らにうず高く積もった灰は、きっと死体を燃やした残骸だろう。
けれども、積み上がる死体を燃やす者はもう誰もいない。
そんなことに使えるほど、余裕がない。ただの火種ですらも。
もう一方を見れば、ごぼごぼと泡立つ泥沼から腕がひとつ生えていた。
飲み込まれた哀れな犠牲者の悪あがきか、はたまた誰かが腕を投げ捨てたか。
わざわざ引き上げてやる必要もあるまい。どのみち、死体しかないのだ。
蛆虫が新鮮な肉を求めてさまよい、意地汚いネズミがちゅうちゅうと鳴く。
ここは滅びだ。滅びの景色だ。太陽すらも我らを見放したか。
「…………」
呪われた景色のなかを、ニール・ブランシャードは淡々と歩く。
道筋にすべき太陽がない以上、彼の歩みは完全に賭けだった。
それでも彼は、いまのところ生命力を失うことなく前に進めている。
より死の濃密な方角に進んでいるからだ。代償は胸のむかつきと嫌悪感。
(これは現実じゃない。これは現実じゃない。これは現実じゃない……)
何度も何度も己に言い聞かせ、死体の山から目を背ける。
これは物語だ。ダークセイヴァーによく似た、ありふれた滅びの景色。
……けれどもきっと、あの世界でもう何度も繰り返された景色。
そして自分も。そうだ、自分はけっきょく誰も助けることは出来ないのだ。
母体より離れた「個」たる己には、才能もなければ経験も技術もない。
道具も、伝手も、何も。張るべき意地すらも、信念も……。
あるのは恐怖と絶望だけ。そして諦観。諦めてしまえという誘惑。
ニールはぶるりと身を震わせた。闇の靄が、その体を飲み込んでいく――。
「……ああ、もお!! うるさいなあッ!!」
ニールは、どっしりと重たくのしかかる恐怖を怒りで振り払った。
戦斧を勢い振り回し、周囲を取り囲む暴れ馬どもを吹き飛ばす!
然り。それは彼の自然の思考ではない。すべてはユーベルコードによるものだ。
触手めいて絡みつく闇の靄を切り捨てて、ニールは吠えた。
「ぼくは……ぼくはたしかに、他の猟兵に比べれば頼りないかもしれない。
経験だって十分に積んじゃいないし、生まれ持った才能や技術もないよ。
怖いことばかりさ。勇ましく胸を張って戦うことなんてまだまだ慣れない!」
けれど、と若者は叫ぶ。
「たとえ怖くたって! 君たちの思い通りになんかさせてやるもんか!!
ぼくは弱いさ。けれど、そんなぼくにだって、少しくらいの勇気はあるんだ!!」
怒りとは爆薬のようなものだ。強力だが、長続きはしない。
怒り続けることのなんと難しいことか。だから、せめて身体を動かせ。
闇に抗え。絶望に抗え。お仕着せの悲劇を、諦観を否定しろ!
「そこを――どいてもらうよ。ぼくは、前に、進むんだッ!!」
豪斧一閃! 闇をも断ち切る斬撃は地を割り、そして天にも届いた!
裂け目から見えた太陽の導きに従い、ニールは敵を薙ぎ払いながら駆け出す。
恐怖を忘れることなど出来ない。それはいつだって死のようにそばにある。
それをわかっている者こそが、きっと本当の勇者になれるのだ。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『牛頭の屠殺者』
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POW : 心を喰らう
【アリスが抱えた恐怖や苦痛】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : 喰い意地の張った剣
【高速回転する異形の刃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【身体をぐちゃぐちゃの挽肉にする事に愉悦】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 屠殺迷宮
戦場全体に、【暗く死角が多い内部構造と悪意に満ちた罠】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
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●100ページ目:屠殺場
かくして物語はついにクライマックスへとやってきた。
もはやファンシーさも、物語らしい幻想もどこにも在りはしない。
血塗られた屠殺場。出口の存在しない行き止まり。呪われた袋小路。
そこに待ち構える牛頭の屠殺者こそが、この物語の『仕上げ役』なのだ。
『……猟兵……オレ達ノ邪魔スル猟兵、殺ス……』
ブフー、と鼻息荒く、たどたどしい人語で亜人は言った。
ともすればそれは、どこか無邪気な子供のように思えなくもない。
だが無邪気であるということは、それだけ残酷であるということだ。
子供に読み聞かせる童話の原型が、血も涙もない残酷物語だったように。
『オ前達、何処ニモ行ケナイ。此処デ死ヌ。死ネ! ソレデ、物語ハ終ワル!!』
いびつな刃がぎちぎちと軋むような音を立てて回転を始めた。
これが物語の終わり? そして猟兵たちはみな死に絶えると?
なるほど、猟書家は三流以下の脚本家のようだ。
そんな結末はありはしない。なぜならば君たちは奴を打倒するからだ。
きっと語り部は言うだろう。"そんなことは不可能なのだ"と。
辿るべき太陽はどこにもなく、ただ死の暗闇だけが横たわっている。
地の利は敵にあり、複雑怪奇な迷宮は世界そのものが牙を剥く。
だとしても。
その先にある大団円を目指すからこそ、
お仕着せの悲劇を否定するからこそ、
君たちは此処に居る。
そして戦う。
さあ――猟書家を名乗る思い上がった奴らに思い知らせてやれ。
猟兵の底力、これより奴らを猟る者の力量を!
ユーノ・エスメラルダ
リサ(f09977)さんと二人で
●
UC『赦しの祈り』を使いこれまでの道中やバーベキューで出会った方たちや、他にもこの本の中に閉じ込められているあらゆる存在へ【祈り】の言葉をかけます
リサさんの援護の魔法も電脳魔術で【ハッキング】して音と映像の伝達効率を上げましょう
疲労と不安には【慰め】を、恐れには【勇気】を。声の届いた方たちを【鼓舞】出来たら良いのですが
●
ここで、何人もの方が犠牲になったのですね…
それはとても悲しいことです
牛さんに、これ以上罪を重ねさせるわけにはいきません
本の世界から出るため、怖くて悲しい結末を無くすため、どうか皆さんの力を貸してください
『オウガを倒して外に出る』と願ってください
リサ・ムーンリッド
ユーノ(f10751)さんと二人で
猟書家たちはこうやって本を作っていたのだろうか?
●作戦
拾い集めて【運搬】していた肉や植物に加え、血肉などが転がる【地形の利用】をしてUC『命の錬成』を使おう
複製体を戦わせて時間を稼ぎ、その間に『マジック・メモリー』に保存していた「会ったことのある人と通信できる魔法」で、声と映像をどこかのページにいる愉快な仲間たちへ届けて仲間のUCの援護をするよ
●【ブームの仕掛け人】
怪物を押し止めるもう一人の怪物
その背中に守られた呼びかけと祈り
これを見聞きした住人たちの声が、やがて集まるだろう
私達はこの短い旅で、確かに積み重ねた
これまでの出会いは無駄ではなかったということさ
●物語の世界の物語
『ブオオオオオオオッ!! 殺ス、猟兵、殺スッ!!』
屠殺者は憎悪と殺意を撒き散らし、ユーノ・エスメラルダに襲いかかる。
すさまじい速度の突撃だ。しかも屠殺場が一瞬にしてその形を変え、
リサ・ムーンリッドも含めたふたりを袋小路に閉じ込めてしまった!
「迷宮化のユーベルコード
……!?」
「ユーノさん、下がるんだ! 私が時間を稼ぐ!」
リサは守る手段を持たないユーノを無理やり後ろに下がらせると、
ひそかに回収していた肉や植物、あるいはその他の素材を媒介として、
暴走特急めいて突撃してくる屠殺者そのもののコピーを高速錬成した。
『AAARGH!!』
かりそめの命から形作られた複製体は、鏡合わせのように突撃を仕掛ける。
恐るべき速度で質量がぶつかり合い、ずしんっ!! と迷宮が大きく揺れた。
「た、助かりました……! でもこのままだと、逃げる先が……」
「……そうだね。あの複製体も、おそらく長くは保たないだろう」
リサの自己分析のとおり、"命の錬成"による複製体は一時的なものだ。
今回は十分な素材を代償にしたとは言え、制限時間はどうしようもない。
付け加えて、ここは猟書家の世界。屠殺者はまさしくその下僕である。
世界そのものが味方している以上、敵の力はリアルタイムに増大していく。
拮抗しているかに見えた衝突は、やがて徐々に屠殺者が勝り始めた。
「……私たちの力だけでは打開は難しい。なら、他のヒトの力を借りよう」
「えっ? それって、もしかして……?」
怪訝そうなユーノを見返し、リサは頷いた。
「――この本の世界に住む、他ならない物語の住人たちにね」
そしてリサは、メモリーからある魔法を呼び出し術式を再生した……。
……猟兵たちの足止めを受けた愉快な仲間たちは、
死闘が繰り広げられていることにも気付かずあちこちの物語で過ごしていた。
幸い物語に取り込まれている者は居ない。だが彼らは猟兵たちの戦いを知らない。
そんな愉快な仲間たちのもとに、リサとユーノの声が届いたのだ。
『不思議の国に住んでいた皆さん、そしてこの本で暮らしていた人たち。
ユーノは、そしてリサさんは、この物語を終わらせるためにやってきました』
愉快な仲間たちは、空に映し出された恐ろしい映像を見上げる。
『ここではきっと、何人もの人々が犠牲になってきたのでしょう……。
それは、とても悲しいことです。ユーノは、この悲しい結末を変えたい』
ユーノは胸元で両手を握りしめ、魔法を通じて祈り続ける。
『物語は、みんなが笑顔で幸せになれるような結末が一番だと思います!
だから――どうか、皆さんの力を貸してください。その祈りを、願いを……!』
オウガを倒し、囚われた人々は幸せな日常に戻った。
それがこの「物語」のあるべき結末で、ユーノが願うことだった。
愉快な仲間たちは、映像を見上げて、心の限りに彼女の祈りに応えた。
恐ろしい魔物を倒し、もとの世界へ帰る。
狂った屠殺者の苦しみを、ここで終わらせる。
そして、誰もが笑顔になれる大団円で結末を迎える――!
「私たちの旅は、本一冊にまとまるくらいの短いものだったかもしれない」
映像を通じて届いた祈りは、崩れかけた複製体を立ち上がらせる力となる。
リサは自らの魔力もその背中に送り込みながら、オウガに――猟書家に言った。
「けれども、たしかに積み重ねたものがある。出会った縁があるんだ。
これまでもこれからも、私たちはそうやって物語を紡いでいくのさ!」
『……これは
……!!』
その力は、静観を決め込んでいた猟書家ですら驚愕せざるを得ないものだった。
かりそめの複製体が、世界そのものを味方につけた屠殺者を押し返していく!
「どうか……どうか、幸せな結末を……!」
『グ……ウ、オォオオオオ……ッッ!?』
そしてついに、複製体はオリジナルの屠殺者に打ち勝った!
屠殺者は吹き飛ばされ、迷宮と化した屠殺場の壁をぶち破り転がっていく!
「私たちはただの登場人物じゃない。自らの意志で未来を掴む――猟兵だからね」
リサは不敵に笑った。そう、ここからが反撃の時間なのだ!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルトリウス・セレスタイト
勝者を望むなら
骸の海くらいは飲み込んでから出て来るが良い
受ける攻撃は『絶理』『刻真』で自身を異なる時間へ置き影響を回避
此方の行動は目標が存在する時間へ向け実行
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる
破界で掃討
対象はオブリビオン及びそのユーベルコード
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
高速詠唱を『刻真』で無限加速
多重詠唱を『再帰』で無限循環
「瞬く間もなく」天を覆う数の魔弾を生成、全てに『解放』を通じ全力で魔力を注ぎ干渉力を最大化
射出の瞬間を『再帰』で無限循環させ、正面から間断無い斉射で砕く
此度はユーベルコードも対象内
迷宮も構わず内部から消し飛ばす心算
火力と物量で圧殺する
※アドリブ歓迎
●迷宮を穿つ魔弾
屠殺場の世界が揺らぎ、一瞬にしてその構造を変化させる。
共通しているのは、血まみれの壁と無数の拷問具、そして不気味な気配。
ただ猟兵を抹殺するためだけに急ごしらえされた、三文小説の大舞台である。
「ハリボテにも劣る。この程度で勝者を望むなど、片腹痛いぞ」
アルトリウス・セレスタイトの言葉は、猟書家に向けたものである。
答える声はない。だがきっと、この事態を見下ろすそいつは苛立っていることだろう。
アルトリウスは構うことなく、迫りくる屠殺者を睨みつけた。
「たとえどれだけ巨大な迷宮を構築しようと、俺の力を縛ることは出来ん。
――本などという閉じた世界に固執する輩に、世界の"外"を教えてやろう」
『ブオ
……!?』
突撃を仕掛けようとしていた屠殺者は、迫りくる魔弾に驚愕した。
直後、大量の魔弾は壁のように弾幕を張り、屠殺者を吹き飛ばす。
いや、それどころの話ではない。
アルトリウスの逃げ場を奪おうと構築された迷宮そのものが、
青く輝く魔弾によってパンチシートめいて穴だらけになり、崩れていくのだ!
『ナンダ、ソノ力ハ……!? "見エナイ魔弾"ダト
……!?』
「それは認識が異なるな」
アルトリウスは不動。だが"またたく間もなく"生まれた大量の魔弾が飛来する。
屠殺者は壁を生み出そうとする――その壁をも越えて魔弾が炸裂。閃光!
『オオオオオッ!?』
「壁を作ろうが、道を作ろうが、もはやお前はどこにも行けん。
ここがお前の"行き止まり"だ。物語を記述する必要もあるまい」
世界の外、原理によって編み上げられた魔弾は一瞬にして出現、炸裂する。
因果をすら超越した攻撃は、屠殺者にとっては抗いようのない暴威と同義。
閉じた本の世界をすら貫きながら、天の光めいた魔弾は降り注ぐ。
「骸の海くらいは飲み込んでから出てくるがいい。お前たちは、"力不足"だ」
屠殺者は見た。
滅びそのものの原理によって編み上げられた、恐るべき魔弾の光を……!
成功
🔵🔵🔴
フェルト・フィルファーデン
もう物語の体裁も取り繕わなくなったわね……そんな下らないバッドエンドを、本気で認めると思っているのかしら……!
ねえ、アナタ。これまでこの場所で、どれほどの罪無きアリスや愉快な仲間達を殺めてきたの?……ええ、最初からまともな答えは期待していないわ。
さあ、今からその答え合わせをしましょうか!
UC発動。ふふっ……これはね?アナタがこれまで与えた恐怖の数。
そしてこれからアナタを貫く呪われし剣よ!
ええ、肉塊になるのはアナタ。皆の苦しみをその身で味わいなさい……!
さあ、次はアナタ達よ。猟書家、そしてオブリビオン・フォーミュラー。
全ての世界を救ってみせる。もう、誰にも侵させはしないわ。
●すべてを救うために
壁や天井、床に至るまでに赤黒い痕跡がこびりついている。
フェルト・フィルファーデンは、そのひとつひとつから悲嘆と苦悶を感じた。
虐げられたアリスたちの残滓。亡霊にすらなれなかった者たちの残響。
「……ねえ、アナタ。これまでこの場所で、どれほど"屠殺"をしてきたの?」
身構える屠殺者に対し、フェルトは言った。
「どれほどの罪なきアリスや、愉快な仲間たちを苦しめ、殺めてきたの?
この、何も存在しない空虚な場所で。何も産まない行為をどれだけ続けたの?」
『……ソンナコトハ、ドウデモイイ』
無邪気なる残酷な屠殺者は言った。
『アリスモ、国ノ住人モ、全テハ我々ノ為ニ存在スル獲物ニ過ギナイ。
ソシテコノ"世界"ハ、"ソウイウ物語"ナノダ。ジキニ、オ前モソウナル』
「――……そう。ええ、そうね。アナタはオウガ、"そういうもの"よね」
フェルトは自嘲した。我ながら、なんと愚かな質問を投げかけたものか。
もとより、まともな答えが返ってくるわけもない。期待していたとでも?
……いいや。どれだけ問答を繰り返しても、失われたものは帰ってこないのだ。
「いいでしょう。ならアナタの答えと、わたしの答え。どちらが正しいか!
答え合わせをするとしましょうか? アナタ自身を使ってね……!」
『ホザケェッ!!』
屠殺者が仕掛けた! 巨体に由来するすさまじい速度のチャージ!
さらに異形の螺旋刃をランスめいて突き出し、フェルトを串刺しにせんとす!
いわんや彼女はフェアリー、かすめるだけでも全身ミンチの悲惨が待つ……!
二秒となく、その異形の刃はフェルトに到達する『はず』だった。
だが見よ。ねじくれた鋒は、突如現れた呪いの剣にがっちりと阻まれている。
『何
……!?』
「呪剣よ。苦しみと恐怖から編み上げられた憎悪の刃よ」
フェルトの口訣に呼応し、赤黒い呪剣はふわりと舞い上がった。
屠殺者は瞬時に理解する。これは、血痕から作られたものだ。
すなわち――己が与えてきた、アリスの恐怖そのものをかたちにしたもの!
「いまこそ応報のときよ。復讐の舞踏を踊りなさい1」
はたして、呪剣の群れは鋒を屠殺者に向け、その全身に突き刺さった。
絶叫。耳障りな雄叫びに眉根を寄せながら、フェルトは残酷に笑う。
「どうしたのかしら? アナタは言っていたでしょう、"どうでもいい"と。
そう言い捨てた犠牲者の恐怖に突き刺されて、アナタは痛みに悶えるというの?」
そして、笑みが消える。
「――どこまでも愚かね。味わいなさい、アリスたちの慚愧を!」
『オ、オオオオオオ……ッ!!』
呪剣は螺旋を描いて深く深く突き刺さり、屠殺者を苦しめる。
その恐怖と苦悶の悲鳴は、本の外にも当然届いているだろう。
これは、宣戦布告だ。猟書家への、そしてオウガの始原への。
「わたしは、すべてを救ってみせる。すべての世界、すべての人々を」
その言葉に込められた思いは、たとえ万の文字を綴っても尽くしがたい。
彼女の背負う物語は、それほどまでに苛烈で悲壮なものなのだ。
成功
🔵🔵🔴
ニール・ブランシャード
屠殺場に怪物かぁ。さっきまでは物語の体になってたのに、もうなりふり構ってられないんだね。
相手の武器…ぼくは挽肉にはならないけど当たりどころが悪ければ死んじゃうのは同じ。
死んであげるつもりは全然ないけどね!
敵は猪突猛進タイプみたいだし、戦いながら壁際に誘導して、敵の刃を壁に突き刺せないかな
上手くいかなければ、ぼくの体に刃を突き刺させて、その状態で思いっきり体を硬化して(【怪力】)捕まえる!
ぼくタールだしどうってことないよ!…当たり所が良ければだけど
敵を捕まえられたら左腕を変形させてUCを発動。
猟書家さん…聞こえてる?こんな物語じゃぼく達は絶望しないよ
次の機会があれば、今度はちゃんと顔を見せてね。
●弱虫の意地
全身を呪剣に貫かれ、恐怖に支配された屠殺者が迷宮を逃げ回る。
立場は逆転していた。屠殺者が追われ、そして逃げる側に。
だが彼奴は当然満足していない。その怒りは膨れ上がっていた。
『猟兵、殺ス……!! 引キ裂イテ、バラバラニシテヤルッ!!』
血まみれのありさまで、しかし屠殺者はその執念で生きながらえていた。
そして奴は見つけるのだ――新たにこのページに踏み込んできた猟兵を。
その者の名を、ニール・ブランシャードと言った。
「!!」
一方ニールは、己を突き刺すほどににらみつける殺気に瞬時に気付いた。
臆病者の危険感知能がゆえか、あるいは彼もそれなりに経験を積んだがためか。
「……来る!」
ニールが言った直後、バゴォン!! と轟音を立てて目の前の壁が砕ける。
現れたのは血まみれの屠殺者。そしてその手には、ぎゅるぎゅると唸る螺旋剣!
『貴様ノ!! 血ヲ!!! 味ワワセロォ
!!!!』
「ぼくはタールだから、その頼みは聞けないかな……っ!!」
弾丸じみた突進をバックステップで回避し、繰り出された螺旋剣を戦斧で受ける。
ねじれた刃は生半可な刀剣をへし折る機構を持つ。ポールウェポンなのが幸いした。
(この力、真正面からじゃ受けきれない……バラバラになりそうだ!)
ニールはあえて背を向けて全力疾走し、迷宮を逃げに逃げた。
それが屠殺者の嗜虐欲を刺激する。どっし、どっしと暗闇から足音。
『死ネ! 死ネェ!! 猟兵ァアアアアアアッ!!』
「……っ!!」
そして追いついた屠殺者の刃が、ニールの脳天を捉え――た、かに見えた!
……がぎんっ!!
『!?』
しかしてその刃は、ニールの背後の壁に突き刺さっている。
"人体ではありえない角度に曲がった頭"が、かろうじて刃を避けたのだ。
鎧の隙間から、うぞりと黒い粘体が覗いた。ブラックタール……!
「言ったでしょ? ぼくはタールだから、その頼みは聞けないってね!」
ニールの反撃! 刃を引き戻すよりも先に粘体が鎧の関節から噴き出した!
それは異形の頭部へと変じ、がっしりと屠殺者の足に噛み付く!
『ブオォオオオオオッ!?』
「君の中身、少しもらうよ……っ!」
べきり、ごきごき。肉が骨を巻き込んでえぐられ、持っていかれた。
血を吹き出して転がる屠殺者を見下ろし、ニールは言った。
「こんな、物語の体裁もなしていないような終幕じゃ、ぼくらは絶望しないよ。
聞こえてるでしょう? 猟書家さん。次はその顔を見せてもらうからね!」
決意の言葉とともに、戦斧が振り下ろされた――!
大成功
🔵🔵🔵
矢来・夕立
猟書家というヤツ、もう少し知性がなければなれないものだと思っていました。
【紙技・影分身】。分身ともども《闇に紛れる》。
知能テストですよ。本物に一発当てられたら褒めてあげます。
表に出すのは分身だけですから、見えるのだってニセモノですがね。
マトモな正解なんて用意してあげません。おとりを殺してるところへ不意打ち。
…どうでした?やる気は出ました?
挽肉っていうか、シュレッダーじゃありません?
そいつをズタズタにしても紙の味しかしないんじゃないですか。
しかし刃物の通りが悪そうな体をしてますね。
似合いの道具があればソイツで解体してあげます。
大丈夫ですよ。屠殺の童話だってありますから、そういう物語ということで。
カタリナ・エスペランサ
未来を閉ざすもの、絶望を齎すもの。そういう悪意を打ち払ってこその“お約束”って奴さ
ああ、魅せつけてやる舞台には上等だ!
《情報収集+念動力》の力場をセンサー代わりにして《第六感+戦闘知識+見切り》を合わせた戦術構築で敵の攻撃を受けないように立ち回ろう
雷羽の《属性攻撃+弾幕》による牽制で《高速詠唱+魔力溜め》の《時間稼ぎ》をして【異聞降臨】を発動。
今回並行世界から召喚する化身は炎天に君臨する光輝、砂漠を統べる紅き竜王だ
その存在を以て世界に《ハッキング・天候操作》、支配領域を割り込ませる
動きが制限されるなら流砂と砂嵐で世界の方を動かしてやればいい
――太陽は此処にある
当て馬の脚本は燃え尽きる時だ!
カイム・クローバー
牛頭の殺人鬼が物語のフィナーレを締めるのかい?センスの欠片もない場所で、ダサいエプロンを纏った化物がラストとは。やっぱ三流脚本家に期待は出来ねぇな。
デカくなるのか?良いねぇ、三流脚本家らしいアイディアだ。ま、それでも脳ミソ空っぽに負ける気はしねぇけどよ?
腰を落として手を叩いて【挑発】。来いよ、とばかりに。
UCを発動させ、【見切り】ながら、【怪力】を使って魔剣で叩き斬っていく。
思う存分、斬れるのは悪くねぇ。下品な吠え声には耳を塞ぎたくなるがな。
ラストは跳躍からの頭蓋狙いで叩き伏せる。
下らない物語にしちゃ、盛り上げ過ぎちまったか?ま、俺が登場人物の時点でもう少し派手な物語を用意するべきだな。
杜鬼・クロウ
※剣は折れた儘なので無
俺も物語を終わらせに来たがその結末は違うぜ
テメェは運が無かったなァ
俺が此処に立っている時点で
はっぴぃえんど以外は認めねェよ
太陽は沈むがまた昇る
猟書家を名乗るならば、
もう少しマシな噺を描いてから出直せや
【贋物の器】を80枚召喚
(主ならもっと上手く”俺”を扱えてただろうが、
俺は物理は跳ね返せねェ
ただ)
敗ける気はしねェわ
鏡重ねて刃の勢い減らし防御(武器受け・かばう
刺さった刃を鏡で抜けなくする
刃の一部へし折り俺の武器に
刃短ェが…貰うぜ
ジャンプし反動つけて地道に体力削る
鏡を盾に敵の心臓部へ部位破壊
その油断が命取りだ
絶体絶命からの怒涛の巻き返しは王道
最高に滾るだろッ!
破片は流星の如く
これは、どこにでもあるくらいありふれた話。
悪い魔物が倒されて、勇ましいひとたちが幸せになっただけの話。
何万も、何億も、そしてきっとこれからも語られる物語の中のたったひとつ。
――けれどもきっと、"ありふれた物語"はなくならない。
●ハッピィエンドはとうに絶え
もはや、迷宮を制御する力は失われていた。
屠殺者は、己が負った傷を塞ぐために理性を捨てることを選んだからだ。
『オオオオオオ……』
めきめきと音を立てて、ただでさえ巨大な体がさらに膨れ上がっていく。
壁という壁を壊された屠殺場は、まるで決闘場のような空間に変じていた。
「追い詰められたら巨大化ってか? いいねぇ、三流脚本家らしいアイディアだ。
センスの欠片もねぇ場所に、ダサい怪物。とことん陳腐でいっそ惚れ惚れする!」
カイム・クローバーは魔剣を肩に担ぎ、見上げるほどの巨体をあざ笑った。
伊達男はいつだって余裕を棄てない。ましてやこんな物語のなかでは。
きっと彼は否と言うだろうが、その姿はまさしくヒーローめいていた。
「そして、邪悪な魔物は何もなせず、完膚なきなまでに討ち滅ぼされる。
それが"お約束"ってやつだろう? 魅せつけてやる舞台としては上等さ」
大きく翼を広げ浮遊するカタリナ・エスペランサもまた、不敵に笑う。
神すらも嫌う傲慢なる女は、ありふれた悲劇をあげつらうのだ。
この程度の障害で、己のエゴイズムを阻もうなどとは身の程知らずなり。
翼がはばたくたびに起こるぱちぱちとした小さな火花は、
まさしく尽きぬ戦意の現れ。彼女はいつだって、勝つつもりなのだから。
「まったく、猟書家とやらも運のねェこった――なにせ捉えたのが俺らなンだぜ」
ふたりの姿を一瞥し、杜鬼・クロウもまた口元を笑みに歪めた。
猟兵。世界を救うもの。生命の祝福者。
義務だ使命だ、そんな大仰なものを掲げるつもりはない。そう、己はただ。
「俺は"はっぴぃえんど"以外認めねェよ。だから此処に立ってンだ。
……さァ、かかってこいよ暴れ牛。悪役ってのァ派手に散るモンだぜ!」
クロウは掌を上向けて、ちょいちょいと挑発してみせた。
その隣で、カイムはわざとらしく腰を落として手を叩いてみせる。
もはや屠殺者の巨体は、屠殺場の天井にすら衝くほどだというのに。
拳を振るえば暴風が巻き起こり、刃を突き立てれば地割れが起こるだろう。
当たれば必殺。そんな巨敵を前にして、男たちはむしろ好戦的なのだ。
……いや、訂正しよう。女もまた同じ。カタリナは言った。
「当て馬の脚本は燃え尽きる時だ――見ているがいい、猟書家!!」
彼女の体から猛烈な熱波が放たれた瞬間、巨体が弾かれたように動いた!
――ズシンッッ!!
巨石の如くに握りしめられた拳が、無造作に床を叩き砕く。
予想されたとおり、その一撃は床を砕きクレーターを生み出した。
あちこちの傷口から熱血を噴き出しながら、屠殺者は雄叫びをあげる。
『猟兵ァアアアッ!! 貴様ラヲ、殺スゥウウウッ!!』
「それしか言えねえのか? 台詞のバリエーションぐらい考えときな!」
『黙レッ!! マズハ貴様カラダ、潰レテ挽肉トナレイッ!!』
カイム単体を狙って二度目の拳撃。敵の巨体は全身これ筋肉である。
フィクションで大男といえば、パワーの代償に鈍重だというのが定番だ。
しかしあいにくここは本物の戦場。筋肉の量はイコール速度に繋がる。
つまり、破壊力と速度は比例する。繰り出された拳の速度は音の壁を叩いた!
……しかし!
「遅い遅い。あくびが出ちまうぐらい遅いんだよなぁ」
『……!?』
カイムは、すでに屠殺者の背後に立っていた。
わざとらしくあくびをしてみせ、魔剣に付着した血を無造作に払う。
……血? 一体誰のだ? まさか、自分を斬ったとでも?
否。その答えは、確かめるまでもなく屠殺者にもたらされた。
強烈な痛み。そして手首から噴き出す鮮血。……斬られていたのだ!
『ブォオオオオッ!? イ、イツノ間ニ……ッ!?』
「お前が気付かぬうちにだよ、牛野郎」
片眉を吊り上げて言い放ったカイムの体を、紫電がばちりと走った。
"紫電を纏う者"――それが彼のユーベルコードであり、今のカイムを指す。
敵をあげつらい挑発し、冷静さを奪えば奪うほど紫電は速さをもたらす。
一瞬で巨体の背後を取るなど朝飯前。回避しながらの斬撃で手首を斬ったのだ。
『オノレ……!! コノ程度ノ傷ナドッ!!』
「筋肉で締めて止血とか、いつの時代の筋肉バカですかあなた。
それで治癒とか言い張られてもムカつくので、"こじ開けさせて"もらいますよ」
闇から声がした。わざと真正面に姿を表したのは、矢来・夕立である。
いや、"真正面と側面に"だ。まったく同一の青年が、同時に三人!?
「オレはここですよ」
『ガ……ッ!?』
四人目が手首に飛びついていた。その手には拷問用の巨大なエンマ。
これも分身か? いや、これこそが本体なのか? 判断は二度遅れる。
夕立は平然とした無表情のまま、閉じたエンマを傷口に叩き込んだのだ。
そして、開く。めきめきと音を立てて、疵跡が"こじ開けられる
"……!!
『ウ、オオオオオッ!! 離レロォッ!!』
「屠殺者はとっさに腕を振り回した。夕立は無残に壁のシミとなる。
だがよく見れば、それは丁寧に人型に折り曲げられた折り紙であった。
「はい、不正解。罰ゲームはそうですね――いや、オレがやらなくてもいいですね」
背後に現れた五人目の夕立は、嫌味な語調でそう言った。
レンズに映るのは、巨体の頭上を取ったはばたくもの――カタリナ!
「天井なんて必要ない。太陽は此処にあり。……と、言ってもだ。
いちいちアタシたちに方向指示してきたあの太陽じゃあないよ」
カタリナの体が燃え上がる。高まった熱は、もはや光輝そのものであった。
炎天と砂漠を統べる紅き竜王の力を、その身に降ろしたのである。
「キミには"らしい"晴れ舞台をあげよう! 吹けよ嵐、揺れよ大地!!」
がごぉん!! と、壁を砕いてなだれ込むのは大量の流砂。
異界の王の名のもとに、閉塞した物語の世界そのものが書き換えられていく!
それは、そう……異界の竜王が君臨する熱砂の世界そのものではないか!
「へえ! こいつは派手でいいねえ、化け物にゃもったいないステージだ!」
「あんまり明るくされると、オレは隠れる場所がなくなって困るんですよね」
快活に笑うカイム、「まあ、ウソですが」と眼鏡を掛け直す夕立。
巨躯が両足を流砂に取られた瞬間、ふたりはそれぞれ別方向に跳んでいた。
夕立は分身をけしかけ、もがいて脱出しようとする屠殺者に苦無を突き立てる。
だが分厚い筋肉の鎧は生半可な刺突では貫けない。重要なのは妨げることだ。
ばちり、と紫電が煌めいた――カイムによる斬撃が、足の腱を叩き斬った!
「ハ! なンだか久方ぶりに見上げた気がするぜ、太陽をよォ!」
光輝を浴び、クロウはノッていた。なにせ彼は神鏡の化身。
そして太陽の使者たる八咫烏・閃墨(せんぼく)を従えるもの。
血より編まれし三本足の鴉が、高く鳴いて空に舞い上がった。
濡れ羽色の翼が空を貫くさまは、閃く一筋の黒墨の如し。
太陽が力をもたらす。クロウの周囲に八十の黄金鏡を一瞬にして現れた!
「――敗ける気がしねェわ。だってよ、こいつはクライマックスだぜ?」
クロウは微笑んだ。脳裏によぎる過去の風景は時のように過ぎ去っていく。
我が身は器なれど、かつての主のようには己を扱えまい。
だが、それでよい。人生とはエンドマークもなく続いていくものなのだ。
ならば、一瞬ごとに過去の己を超えればよい。迷いは晴れた!
『愚カ者ガッ!! コレガ、貴様ラノ終幕ダッ!!』
螺旋の刃が突き出される。クロウはその刃に神鏡をまとわりつかせた。
巻き込まれて砕けた破片すらも念動力によって蠢き、刃を覆い隠してしまう。
太陽の光を乱反射して渦巻く鏡の嵐が、刃を飲み込み――圧し砕いた。
『莫迦ナ!?』
「こっちァ得物ナシでよォ。ちと、借りるぜ」
くるくると吹っ飛んだ刃の一部をつかみ取り、クロウは飛んだ。
狙うは敵の心臓部。何人ものアリスを苦しめた螺旋の剣が"刃向かう"!
屠殺者は、咄嗟に無事なほうの腕をかざしてその刺突を防ごうとした。
……動かぬ。視線を動かす。指のひとつひとつに杭が打ち込まれていた。
誰の仕業だ? 夕立である。どうやら、彼はとことん"仕返し"するつもりらしい。
慈悲なき瞳が見返した――屠殺者はそこで、はじめて恐怖を憶えた。
「"天の裁き"ってぇやつだ! 食らっときなァ!!」
そして螺旋刃が心臓を貫いたのと同時に、カイムの兜割りが頭蓋を砕いた!
どちらかだけでも無事であったならば、屠殺者は戦闘を続けていただろう。
しかし脳と心臓を同時に潰されては、さしものオウガも命を保てぬ!
ましてやその体を、砂の嵐が飲み込んでいくならば……!
「何も遺さず微塵に砕けるがいい。"それが、キミの終幕さ"」
『ア、アアアア……オオオオオオ……ッ!!』
血まみれのけものは、助けを求めるように傷ついた手をさまよわせた。
けれども届くことはない。それが、ヤツのピリオドなのだから。
「結局、ネタバレはガセになりましたね。オレら、生きてますし」
ずしん、と倒れ伏す巨体を見やり、形代を回収した夕立は言った。
本の世界がほぐれていく。箱庭が崩れ、もとの不思議の国に戻るのだ。
「猟書家ってヤツは、もう少し知性がなければなれないものだと思ってましたが」
「臆病者だけの特権らしいよ。もう気配を感じないからね」
カタリナはふわりと降り立ち、肩をすくめる。
「いいじゃねェか。だったら――今度はソイツに届かせてやるだけだぜ」
クロウは言って、バラバラになった刃の残骸を投げ捨てた。
かくして戦争前夜の戦いは終わる。
それはありふれた物語。何億と繰り返されてきた陳腐な締めくくり。
けれども人々は、昔もいまもこれからも、ずっと"それ"をねがう。
そうあれかし。
そうあろう。
そうなればよいと。
だから今回も、結びはこうして終わるのだ。
――すなわち、"めでたしめでたし"と。
大成功
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