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星空の花時島

#グリードオーシャン #お祭り2020 #夏休み #花時島(S05W07) #挿絵


 今年の水着コンテストは『眠らぬ宴の島』を会場としているが。
 グリードオーシャンには他にも、猟兵達によって解放された島が多々あって。
「以前に案内した『花時島』で海を楽しむのはどうだい?」
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)が示したのは、サクラミラージュから落ちてきたと思しき、桜の木で薄紅色に染まった島だった。
 案内するのはもちろん鉄甲船『彩雲丸』。
「誰かが島に来たら宴で歓迎! って風習のところだからね。
 住民はまた広場で宴会の真っ最中なんだが……まあ、夜の海を楽しんでから参加しても遅くはないだろう?」
 強制参加の宴じゃないんだし、と夏梅は苦笑した。
 花時島の海は、島ゆえに様々な地形があって。
 ただただ砂浜が広がっているところもあれば。
 岩場となって入り組んでいるところもある。
 もちろん、彩雲丸が停泊している小さな港など、整備された場所も。
 そして最大の特徴は、そのどこからでも桜が見えることか。
 砂浜の端には、ヤシの代わりに桜が並び。
 岩場の上には、松の代わりに桜が生える。
 月のない夜ではあるが、宴のためか、ほとんどの桜にラムプが灯されていて。
 不思議な光景を浮かび上がらせているという。
「さすがに夜の海で泳ぐのは危ないが、泳がなくとも色々楽しめそうだろう?」
 昼間とはまた違う顔を見せる、夜の海。
 夏梅はゆっくりと猟兵達を見回して、ふっと微笑を零した。
「桜咲く夜の海を、静かに過ごすといい」


佐和
 こんにちは。サワです。
 夜桜と夜の海です。

 時間帯は夕暮れ~空が暗くなってしばらくした頃まで。
 あまり夜更かしはしないようにどうぞ。
 行動はご自由に。フラグメントの選択肢に縛られる必要はありません。
 天気は快晴。星がよく見えます。月は見えません。
 サクラミラージュの島、にありそうなものなら、島民は快く用意してくれます。
 もちろん持ち込みも可能。

 島民は広場で宴の真っ最中ですので、指定がない限りは海には来ません。
 特に指定がなければ、宴に関する描写は入りません。

 花時島(S05W7)には様々な海の地形があります。
 海水浴には定番の砂浜の他、岩場とか、小さな港や桟橋、断崖絶壁も!?
 ご希望の地形がありましたら、明記してください。

 基本、島のあちこちに散らばって別々に行動している、と設定します。
 そのため、指定がない限りはお1人ずつの描写となる予定です。
 ご一緒の描写を希望される場合は、プレイングの冒頭に【相手のお名前(ID)】または【グループ名】の記載をお願いします。
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)はお声がけがあればお邪魔させていただきます。

 尚、このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。ご了承ください。

 それでは、満開の夜の海を、どうぞ。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りを楽しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
荒珠・檬果
ふふふ、水着はスクール水着な私ですよ。
夜でも水着な理由。万が一濡れても大丈夫にしたかったからですね!!
ゲームは置いてきました!

昼間の海は、結構みてきましたが。夜桜の在る海は見たことがなかったんですよねえ。
だから、ここに来ました。普通の砂浜だけれど、桜の咲くここに!

下戸でお酒呑めないのが惜しいですね。
こういうところで呑むのは美味しいでしょう!日本酒とか!
…呑めないの私は、お茶とイカ焼きで楽しみましょう。
シートを引いて、そこに座って静かに。
いやー…こういう静かなひとときもいいですねぇ…癒される…。
…故郷のUDCアースも、新たにわかった事実がありますが。それでも私はひたすらに戦いますよ。



 陽が落ちて暗くなってきた砂浜に、ふわりとシートを引いて。
 温かいお茶を入れた急須と、白地に下半分だけ青海波模様が描かれた湯呑茶碗。
 そしてこんがり焼き上がった、肉厚のイカ焼きが並べられる。
「ふふふ、準備万端ですね」
 整った場を見て胸を張るのは、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)。
 満足そうに頷いてから、では早速、とシートの上に腰を下ろした。
 その恰好は、夜には少し寒そうなスクール水着。
 別に夜の海に泳ぎに行こうなんて危ないことを考えているわけではなく。
 今の今まで泳いでいたという元気一杯なわけでもなく。
 単純に、万が一濡れても大丈夫なように、という予防策で。
 同じ理由で、普段持ち歩いているゲーム機もこの場に持ち込んでいない。
 とはいえ、急な大波が襲ってくるとか。
 急に大蛸に襲われるとか。
 そんなお約束のような酷い展開が起こることはなく。
 黒くなった波が、夜闇に陰る砂浜に打ち寄せる音が、一定間隔で響くのみ。
 そして、ぽつぽつと灯るラムプが淡く照らし出すのは、満開の桜の花。
 昼間よりも白く見える薄紅色が、夜の海に浮かび上がる。
「お酒呑めないのが惜しいですね」
 その光景に湯呑を掲げて、檬果は少しだけ苦笑した。
 夜闇に輝く桜の花に、その灯りを反射して妖しく輝く黒い海。
 こんな光景を前に、下戸で呑めないのは何だか損した気分で。
 それでも、温かなお茶を啜り、その芳醇な香りと渋みとをゆっくり味わう。
「いやー……こういう静かなひとときもいいですねぇ……」
 宴が開かれているという広場からは離れているからか、聞こえるのは波音と、風に揺れる桜の枝花の重なる音だけで。
 昼間の強い陽光とは違う、淡い灯りも穏やかに。
 檬果は自然と全身の力を抜いていた。
「癒される……」
 桜の花は見たことがあった。
 昼間の海も結構見てきた。
 でも、夜桜のある海というのは、これが初めてで。
 だからこそ、この花時島に来たのだけれども。
 思っていた以上に綺麗で穏やかで静かな時間を、檬果は堪能していく。
 イカ焼きを一切れ摘み上げ、ゆっくりと噛みしめながら。
 ゆるりと過ごす一時の休息。
 でもその最中でも、頭を過ぎるのは、戦いの日々。
(「……UDCアースも、新たにわかった事実がありますが」)
 故郷の動向を思い出し。
 続く戦いへの決意も新たに。
「それでも私はひたすらに戦いますよ」
 檬果はぐっとイカ焼きを握り締めて。
 でも今はゆるりと、波音響く夜闇の中で、夜桜の海を噛みしめ味わっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

枢囹院・帷
晴夜(f00145)と浜辺でBBQを行う

肉と野菜を交互に挟んだ串と
日中ニッキーくんが銛獲してくれた魚を網で焼き
大量の蛸……は大鍋で柔らか煮にしよう
ニッキーくんは豪勢な夜食をありがとう
焼魚を解して食べさせてあげよう
寝る時には物語を読んであげるからな(とことん甘やかす)

立ち昇る湯気と煙を追って星空を眺める
常闇に覆われた故郷では余程見られぬ燦然だ
今頃は西に私の獅子座が、南寄りに君の乙女座が見えるんだが
果してこの世界でも見られるだろうか

燈照る桜の儚さと星の悠久の燿いに
短命を強いられた晴夜と、長く生きるであろう半魔の己を重ねる
君が死ねば人形らが哀しむ
どうか彼を招いてくれるなと星に願い
晴夜の前では頬笑みを


夏目・晴夜
帷さん(f00445)とBBQを

串に指して焼くのは私にもできますのでお任せを!
本当に凄く美味しそうで豪勢な…って、
またそうやってハレルヤでなくニッキーくんばかり甘やかして!
そんな甘やかしてたらダメな奴になってしまうでしょうが
まあ、そもそもニッキ-くんは食べも寝もしないですけど

ああ、本当に素晴らしい星空ですね
星の知識はさっぱりですけど、滅多に見られぬ美しさである事はわかります
しかしやはり乙女座よりも獅子座のほうがカッコ良い響きでいいですねえ

あれ、帷さんは哀しんで下さらないんですか?
なんて冗談ですよ。わかってますから、帷さんは長生きして下さいね
それでこのハレルヤを忘れないでいて下されば、それだけで



 こちらの砂浜では、ラムプに加えて、篝火も兼ねた火をおこし。
 昼間程ではなくとも十分に明るいそこで、網や大鍋が食材を迎え入れていた。
 魚を網の上に乗せながら、大鍋の中の蛸の様子も覗き込むのは、枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)。
 その向こうでは、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)が肉と野菜を串に刺していて。
「肉ばかり刺さないように」
「そんなことはしません多分。このハレルヤにお任せを」
 肉好きな晴夜に釘をさしておけば、ちゃんと串には肉と野菜が交互に挟まれていた。
 最初と最後が必ず肉という微妙な偏りはご愛敬かと、帷はそっと苦笑して。
 その出来栄えを褒め称えれば、準備ができた串は次々と火にかけられていく。
 肉に魚に、蛸の柔らか煮にと、浜辺のBBQはどんどん出来上がっていき。
「本当に凄く美味しそうで豪勢な……」
 串の焼き加減を見ていた晴夜が、帷の手元も見て呟いた。
 肉と野菜はあらかじめ準備していたものだけれども。
 そこに、魚と、ものすごく大量の蛸が加わったのは、晴夜の隣でパタパタと団扇を仰いでいる存在のおかげだったから。
「ニッキーくん、豪勢な夜食をありがとう」
 帷の謝辞に、オーバーオールにゴム長靴ゴム手袋の巨体が顔を上げた。
 その顔は兎の様で兎でない、歪な動物のような造形をしており。
 ムッキムキで大柄な身体の上に、それがちょこんと乗る様はどう見ても悪趣味だが。
 ニッキーくん自身に比べて格段に小さい団扇をちまちまと動かし、晴夜の手元の火加減を調整し続ける姿は、どこか愛らしさを感じさせている。
 そんなニッキーくんは、昼間に大活躍を見せ、その巨体に似合った大きな銛で、次々と魚を獲得していた。
 そう。今、帷が焼いているそれである。
 そしてさらに、ニッキーくんは何故だか蛸に大人気だったようで。
 海から上がったその顔が蛸まみれになっていたことがあり。
 その大量の蛸は、今、帷が煮込んでいる大鍋を埋め尽くしている。
 尚、頭が見えないくらい幾重にも蛸を張り付け、墨まみれにもなっていたニッキーくんには、さすがの晴夜もちょっと引いた目を向けていました。
 そんなわけで、文字通り身体を張ったニッキーくんのおかげで豪勢になったBBQ。
「焼魚を解して食べさせてあげよう。
 ああ、寝る時には物語を読んであげるからな」
 そのお礼に、と帷が申し出れば。
「またそうやってハレルヤでなくニッキーくんばかり甘やかして!
 そんな甘やかしてたらダメな奴になってしまうでしょうが」
 晴夜がそこに待ったをかける。
 けれども。
「まあ、そもそもニッキーくんは食べも寝もしないですけど」
 しれっと晴夜が付け足せば、からくり人形のニッキーくんが、ムキッと筋肉を見せつけるようにポーズを取りました。
「ですから、甘やかすならハレルヤをどうぞ」
 結局それが言いたかったらしい晴夜に、帷は穏やかに微笑んだ。
 馴染みのやり取りと、美味しい夕餉。
 燃え盛り、辺りを煌々と照らす炎の上から、湯気が生み出され、煙が立ち昇る。
 ふと、帷は白いそれらを赤い瞳で追いかけて。
 見上げた先には、星空が広がっていた。
 闇夜の中できらきらと無数に光り輝く幾千もの星々。
 常闇に覆われた故郷では余程見られぬ燦然に、帷は赤瞳を細めて。
「今頃は西に私の獅子座が、南寄りに君の乙女座が見えるんだが」
 果してこの世界でも見られるだろうか、と呟く。
 澄んだ夜空には煌めきを遮る光も雲もなく、暗い星も小さな星も良く見えるから。
 瞬く星が多すぎて、星座を結ぶのも一苦労。
 でも、そんな形を見いだせなくとも、星の知識が皆無でも。
「ああ、本当に素晴らしい星空ですね」
 滅多に見られぬ美しさであることは変わりないから。
 倣うように夜空を見上げた晴夜も、その煌めきに紫の瞳を向けた。
「しかしやはり乙女座よりも獅子座のほうがカッコ良い響きでいいですねえ」
 少し不満気な声色に、くすりと微笑み、帷は隣へと視線を落とす。
 乙女座は、剣を手にした正義の女神の姿だとする話もあると、それならば美しく戦う晴夜に似合いの『カッコいい響き』ではないかと、伝えようとして。
 その言葉が、止まった。
 夜空に広がる燿う星の悠久と。
 地上に広がる燈照る桜の儚さ。
 その美しい光景が。
 ヴァンパイアの血を引き、長く生きるであろう半魔の己と。
 人狼病により短命を強いられた晴夜。
 2人の姿に重なって見えてしまったから。
「……君が死ねば人形らが哀しむ」
 零れた声は違う言葉を紡いでいた。
 唐突な話に、晴夜も驚いたように振り向いて。
 真っ直ぐにこちらを見据える帷に、真面目に表情を引き締める。
 でもすぐに、その顔はいつもの不敵な、どこか意地の悪い笑みに変わり。
「あれ、帷さんは哀しんで下さらないんですか?」
 返された言葉に今度は帷が驚いた。
「なんて冗談ですよ」
 その答えを求めることなく、晴夜は矛先を収めると。
「わかってますから、帷さんは長生きして下さいね。
 それでこのハレルヤを忘れないでいて下されば、それだけで」
 いつもの不敵な、でもどこか嬉しそうな笑みを浮かべるから。
 ……帷は穏やかに微笑んだ。
 その答えは、晴夜が不日の死を当然のように受け入れているからこそのもので。
 帷の望まない答えではあったけれども。
 無言のまま、帷はただ、微笑みを作り、返す。
「おや、そろそろ肉が食べ頃ですね」
 そして、串焼きの元へと戻っていく晴夜の楽し気な様子を見つめてから。
(「星よ」)
 帷は再び夜空を見上げた。
(「どうか彼を招いてくれるな」)
 少しでも長く共に過ごせることを。
 残される哀しみが、残し逝く哀しみが、訪れないことを。
 切に、願って……
 島からの風が長い銀髪を揺らし、ふわりと夜闇に薄紅色が舞い上がると。
 すっと一筋の星が、流れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、結局お昼はアヒル船長に付き合わされて宝探しをしていたから水遊びができませんでした。

そういえば、前にここへ来たときにアヒルさんは・・・。
やっぱり、羽目を外してました。
でも、こういうのんびりとした1日もいいですね。



「ふええ、もう日が暮れてしまいました」
 昼から夕へ、そして夜へと色合いを変えた砂浜に、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)はぺたんと座り込んでいた。
「宝探しをしていたから、結局、水遊びができませんでした……」
 項垂れ、落ち込むフリルの頭を隠すのは、いつものつばの広い大きな帽子ではなく、青い海色の大きなバンダナ。
 黒色のセパレートタイプの水着は、丈の短いタンクトップのようなトップスと、ホットパンツにも見える程短いスカートのボトムスで。
 上から着た白と青の横縞ボーダーシャツも、お腹の上できゅっと結んで活動的ではあるものの、泳ぐよりも水遊びに向いたもの。
 黒いサンダルも、腰で揺れる青いリボンも、わくわく海遊びの期待に弾んでいたフリルの心を映すかのようだったけれども。
 結局、フリルができたのは、宝探しのみ。
 海賊を思わせるフリルの服装に合わせて船長の装いをした、アヒルちゃん型のガジェットに付き合わされているうちに、眩しかった陽光はあっさりと沈んでいた。
 はう、と息を吐いて、フリルは座り込んだまま顔を上げる。
 赤い瞳に映るのは、星の瞬く夜空と、波が煌めく黒い海。
 そして淡いラムプの灯りに浮かび上がる、白に近い薄紅色。
 昼間見た、青色と薄紅色とは違う。
 つい先ほどまで見ていた、夕焼けの赤色と濃く染まった紅色とも違う。
 静かな夜の島。
「そういえば、前にここへ来たときにアヒルさんは……」
 フリルが思い起こすのは、初めてこの花時島に来た時の事。
 島のメガリスを狙うコンキスタドールを倒す為に、まずは島のことを知らなければと、住民達との交流を持つことになって。
 都合のいいことに、この島には、来訪者は宴でもてなす風習があったから。
 他の猟兵達と共にフリルも歓迎の宴に参加した。
 もちろん、フリルのガジェットであるアヒルさんも。
 というか、引っ込み思案なフリルよりも先に、アヒルさんが島民達の輪の中に入り込んでいて。
 料理に突撃し、お酒を文字通り浴び、酔っ払いの男達と一緒に盛り上がって。
「……やっぱり、羽目を外してました」
 思い出したフリルは、そのみっともなさに、いつものように帽子のつばを引き寄せようとしてそれがないことに気付き、代わりに両手で顔を覆った。
 改めて島を訪れた今日も、あの宴は開かれている。
 海遊びを堪能したら、途中からでもいいからいつでもおいでと招かれてもいたけれど。
 フリルは砂浜に座ったまま、夜の海と夜の桜を眺めていた。
 人との交流は苦手だけれども。
 楽しんでいる人達を見るのは好きだから。
 折角の歓迎の宴に顔を出すのもやぶさかではない、とも思う。
 だけど、やっぱり。
 打ち寄せる波の音を。
 瞬く星の輝きを。
 ラムプの灯りに浮かび上がる桜の花を。
 1人ただ見ているだけの時間も、心地よかったから。
 フリルは穏やかに微笑んで。
「こういうのんびりとした1日もいいですね。アヒルさ……あれ?」
 振り向いた傍らに、さっきまであったガジェットの姿が消えていた。
 慌ててきょろきょろ周囲を見回し探すけれども、どこにも船長スタイルのアヒルさんは見当たらず。
 どうしたのかと首を傾げたそこに、遠くから聞こえてきたのは賑やかな宴の音。
「まさか、また……」
 フリルは、はっと顔色を青くして。
「ふえぇ、アヒルさん羽目を外さないでって言ったじゃないですか」
 以前と同じセリフで嘆きながら、波音を背に、夜の砂浜を走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイッツァ・ウルヒリン
ティア(f26360)さんと

夜桜と海の組み合わせかぁ、中々乙なものだね
星の光と桜が海に反射して綺麗だなぁ

花見酒に星見酒、更に可愛い子ちゃんに酌をしてもらえるときた
ぼく、幸せすぎて刺されないかな? なんてね
ふふ、かんぱーい!(かちん、グラスを鳴らす)
日本酒ってあんまり飲まないけど、これ美味しいね

ティアさんの頭が肩に触れたなら、そこに自分の頭を寄り添わせて
「ね、楽しいね。こういうの、なんて言うんだろう…幸福、かな」
自分でも分からない感情。でもこの気持ちはきっと特別だ

僕はバーチャルな存在。体温なんて本当はないけれど
君の温度は、確かに感じるよ
交わるのは体温だけじゃない、心の芯もきっと――


ティア・メル
レイッツァ(f07505)

レイッツァちゃん、すっごーく綺麗っ
海に星空色の桜が揺蕩ってて幻想的だね

砂浜に座って持ち込んだ日本酒を取り出す
杯になみなみと注げば表面に花弁ひとひら

にゃはは
それを言うなら刺される時は一緒だね

レイッツァちゃん、かんぱーい
美味しいっ
君との時間そのものの美酒だ

月がなくたって隣に君が居る
ことりと君の肩に体を凭れて
重なる体温に瞼を閉じる
静かな漣の音は鼓動みたい

いつもより熱い肌は酔ってるから
君の香りがほんの少し違う気がするのは装いが違うから?

んふふ
楽しいね
ずっとこうしていたいくらい胸がいっぱいだよ
これが幸福っていうのかな

電子の海とソーダの海
確かに交わってるのをぼく達は知ってるから



 夜闇が降りた砂浜を輝かせるような満面の笑顔で、くるりと振り返ったティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)は大きく両腕を広げて笑った。
「みてみてレイッツァちゃん、すっごーく綺麗っ」
 漆黒に染まった海は、寄せて返す波音と共にキラキラと煌めいている。
 それは、空に瞬く無数の星を映したものであり。
 桜の木の元で揺れるラムプの淡い輝きを受けたものであり。
「海に星空色の桜が揺蕩ってて幻想的だね」
 ひらりと舞い降りた無数の花弁を浮かべたものであったから。
「夜桜と海の組み合わせかぁ」
 暗い海に浮かぶ小さな花を、ラムプに照らし出された雲のような花を。
 レイッツァ・ウルヒリン(紫影の星使い・f07505)も眺めて微笑む。
「中々乙なものだね」
「おつだねっ」
 レイッツァの言葉を繰り返し、ティアは尚もくるくると楽し気に踊っていた。
 ふわふわした桜色のようなピンクの髪を肩口で揺らし。
 ラムプの灯りに白い肌が輝くように映えて。
 胸元にもスカートにもフリルを重ねた淡い紫色の水着がひらりひらりと舞う様は。
 ティアこそが桜の花であるかのように、美しく儚く夜の砂浜を彩る。
「綺麗だなぁ……」
「うん、綺麗っ」
 零れた言葉をまたティアが繰り返すけれども。
 その意味の違いには気付かないまま。
 ティアはレイッツァの元へと駆け戻ると、ずいっと日本酒を掲げて見せた。
「あとは美酒だよね」
「……賛成」
 屈託のない笑顔に苦笑して、レイッツァはさっと辺りを見回すと。
 夜空の星と夜桜が、ばっちり眺められる場所を見つけて腰を下ろす。
 誘うまでもなく、隣にティアがちょこんと座り。
 早速、日本酒が小さなグラスに注がれた。
 注ぎ手を交代して、もう1つの同じグラスにもなみなみと注いでいけば。
 ひらり、とそこに舞い降りる花弁ひとひら。
「花見酒に星見酒、更に可愛い子ちゃんに酌をしてもらえるときた」
 花弁が浮かぶグラスと、空の星を映すグラス。
 2つを見つめたレイッツァは、おどけたようにそっと肩を竦めて。
「ぼく、幸せすぎて刺されないかな?」
 なんてね、と笑えば、にゃはは、とティアの笑顔も弾けた。
「それを言うなら刺される時は一緒だね」
 美しい酒は隣に君が居ればこそ。
 それはティアも、レイッツァと同じなのだから。
 満ち満ちた美酒が零れないようにそっと2つのグラスを重ねると。
「レイッツァちゃん、かんぱーい」
「かんぱーい!」
 かちん、と小さな音が鳴った。
「美味しいっ」
「日本酒ってあんまり飲まないけど、これ美味しいね」
 ぱあっと顔を輝かせたティアに、レイッツァも驚くように微笑んで。
 またそっとグラスを傾ける。
 のどを潤す美味しいお酒と。
 グラスに映る夜の星。
 顔を上げれば、どこまでが海でどこまでが空か分からない黒の中で。
 数えきれない程の星が、絶えず打ち寄せる白い波が、浮かびそして舞う花弁が。
 きらきらと瞬き輝いて。
 そして、ラムプに照らされた淡い薄紅色が潮風に揺れ、また花弁が舞う。
 月が出ていたならば、月見酒も楽しめただろうか。
 でもやっぱり、月よりも、星よりも桜よりも。
 他の何よりも必要なのは。
(「隣に君が居ること」)
 無言のまま静かに過ぎる時間は。
 2人でいる、ただそれだけでとても大切な時間になるから。
 これ以上の美酒は、ない。
 ティアはまたグラスを少し傾けて。
 ことり、と隣の大きな肩に体をもたれかけた。
 重なる体温に、そっと瞳を閉じる。
 いつもより熱い肌は酔ってるから?
 君の香りがほんの少し違う気がするのは装いが違うから?
 さざなみと高鳴る鼓動が音を重ねていくのを聞きながら。
「んふふ。楽しいね」
 ふわりと微笑を浮かべると。
「ね、楽しいね」
 頭の上にこつんと優しい重さが寄り添った。
 ふわふわしたピンク色の髪に、さらりとした紫色の髪がそっと絡み合い。
 応えてくれた声に、重なる動きに、ティアの笑みが深くなる。
「胸がいっぱいだよ。ずっとこうしていたいくらい」
 その心のままに零れた望みに。
「こういうの、なんて言うんだろう……」
 同じ感覚を抱いたレイッツァは、少し戸惑いながらも考える。
 自分でも分からない感情。
 でもこの気持ちはきっと特別なもので。
 とても大切なものだから。
 もたれかかって来るティアの存在を改めて感じながら、思う。
 バーチャルキャラクターであるレイッツァには体温なんて本当はないけれど。
 優しく寄り添わせた頭から。
 水着ゆえに多く触れる白い肌から。
 確かに感じる、ティアの温度。
 伝わる想い。伝える想い。
 交わる、心。
 これは……
「……幸福、かな」
「きっと、そう」
 思い浮かべていたのと同じ答えに、んふふ、とまた微笑んだティアは。
 自身を形作るソーダ水の海と、電子の海が交わる一時を、愛おしく感じて。
 閉じていた瞳を開き、見上げる。
 気付いた赤い瞳も開かれると、優しく温かく微笑んで、ティアを見つめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
■POW
■ワンダレイ
船長(アルフレッド)、番長(星群)、ネージュと
女性人格で参加

(普段別の人格だし、遊ぶのなんて記憶に残る限り初めてなのだわ!)

砂浜にテンションが上がるわね ちょっと波を追いかけてみたり逃げたり
って冷たっ
あはは!ネージュったらもう! えいっ
私もお水かけたりするのだわ

知ってても私がした訳じゃない事、色々体験したいのだわ!

番長が花火で何かをするみたいね!カメラ?わかったのだわ


すごいけれど…危なくないかしら?
平気なら良いのだけれど…
へぇ
写真で取ると文字になって見えるのだわ…不思議ねぇ

流石にこの格好で試したら火傷すると思うからやらないけれど…
線香花火はしてみたいのだわ
船長火を下さる?


アルフレッド・モトロ
【ワンダレイ】の皆で夏休みを満喫するぞ!

島といったらヤシの木が定番だが
この島には桜が生えてるんだな
サムライエンパイアで見たことはあるが
海とセットってのははじめてだ!きれいだなあ…

夜の海か!夜光虫いないか夜光虫!と言いながら夜の海辺を探索しつつ
砂浜で楽しそうにしている夜野(f05352)とネージュ(f01285)を微笑ましく眺めたり……

おお、番長(f01648)が何やら面白そうなことをしているな!
俺も俺も~!と一緒に光文字を書くぞ!
尻尾の炎でエイのイラストを描いたり、「W」を描くんだ。
ふふふ「W」はワンダレイの「W」だぜ!

ネージュの桜茶も味わって…
最後は皆で花火だー!
あっ火要る?溟獄の炎だけど!


ネージュ・ローラン
【ワンダレイ】で参加。
水着イラスト2020を着ていきます。
艦長はとても格好いいですし、ヒカルさんもかわいいですし、夜野さんは綺麗です。

海と桜の組み合わせは初めて見ましたが、これは絶景ですね。
夜ですので泳ぐのは危険ですが、浅い場所で走ったり水を飛ばしたりならできるでしょうか。
海から見ると水面に映る桜も素敵です。
夜野さんの女性人格さんともこの機会にお話しながら遊んでみたいですね。
その後は花火を眺めながら、桜のお茶を淹れて皆さんに振る舞いましょうか。
艦長やヒカルさんの描く文字も綺麗ですね。
ちゃんと見えますよ!
あ、もちろんここで拾ったものではありませんよ?
塩漬けにして準備してきた桜です。

アドリブ歓迎


星群・ヒカル
【ワンダレイ】で参加
おれはセーラー水着で参加 ふふふ、似合っているだろう?(自慢げ)
さあ、この夏も楽しむとしようぜ!

夜野先輩……いや、姐さんとネージュがはしゃいでるの見るとなんか嬉しくなるんだよなぁ(ほっこり)
そうだ姐さん、おれが合図をしたらこのカメラをおれに向けて、このボタンを押しっぱにしてくれ!
手持ち花火を露光し続けたカメラに向けて、光の文字を書くって方法だ。すごいだろ!(☆などの文字を書く)
おーい、艦長もこれやってみろよ!面白いぜッ!

そのあとネージュが入れてくれた桜茶を堪能するぞ
やっぱ夜は地味に冷えるからありがたいッ
さあ、花火を皆で楽しむぞ!いろいろ持ってきたからなッ!



 空の色が紅から黒に変わり。
 星が瞬く空を映して、海も黒く輝く。
 静かなその変化は、初めて見るものではなかったけれども。
「島といったらヤシの木が定番だが、この島には桜が生えてるんだな」
 そこに咲き誇る花が加わるだけで、初めての夜の海が生み出されていたから。
 アルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)は、きれいだなあ、と呟きながらその光景に見入っていた。
 もちろん桜も、サムライエンパイアで見たことはある。
 でも、潮風を受けても咲ける桜などなかったから。
「初めて見る組み合わせですが、これは絶景ですね」
 ネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)も、普段の落ち着いた様子から明らかに頬を紅潮させて、青い瞳を輝かせていた。
 淡いラムプに照らし出された薄紅色の花は、頭上の空を覆うように広がり。
 足元に広がる漆黒の海にも映りこんで、波と共に花を揺らして咲き誇る。
 上に下に広がっていく、淡く輝く桜の花。
「素敵です……」
 ほう、と熱いため息と共に呟きが零れた。
 その横を、尾守・夜野(墓守・f05352)が走り行く。
 引いていく波を追いかけて海の方へ向かったかと思うと。
 寄せて返す波に今度は追われて、ネージュの元へと帰って来て。
「ふふ。初めてばかりで、テンションが上がるわね」
 楽しそうに笑う夜野は、もう一度、と波を追いかけ駆け出した。
 夜野が海に来たのは今日が初めてではない。
 しかし、多重人格者である夜野の、今表に出ている『彼女』にとっては、記憶に残っている限りこれが初めての海遊びだったから。
 桜の花よりも何よりも、海そのものを楽しむ姿に、ネージュはくすりと微笑むと。
 ふと思いついて海の水を掬い上げ、夜野へと飛ばした。
「……って、冷たっ」
 足元の波ばかりを見ていた夜野は、不意打ちに驚き顔を上げる。
 出迎えたのは、ネージュの誘うような笑顔。
「夜ですので泳ぐのは危険ですが、こうした遊びはできるのですよ」
 そうしてまた掬った海の水を夜野に見せるように差し出せば。
 夜野の笑顔もぱあっと弾けた。
「あはは! ネージュったらもう! えいっ」
「あら。ではこちらもっ」
 そして始まる水辺の攻防。
 ヒールのついた黒いサンダルと、海色に編み上げたレースアップサンダルが、波しぶきをさらに跳ね上げて、艶やかな2対の繊手が次々と海を舞い上げる。
 重厚な赤いベルベットのドレスを思わせる、オフショルビキニとパレオが。
 セーラー服のように襟のついた短い上着とスカートを上から重ね着て、腰の後ろから長く短くリボンを揺らす、青色の三角ビキニが。
 周囲のラムプの灯りを返して光る水しぶきと、落ちて来る花弁と一緒に踊るように。
 きらきら、きらきらと輝いていたから。
「夜野先輩……いや、姐さんとネージュがああしてはしゃいでるの見ると、なんか嬉しくなるんだよなぁ」
 その様子を眺めていた星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)は、ほっこりと呟いた。
 そんなヒカルも、セーラー服をイメージした水着姿。
 オレンジ色のスカーフとラインを添えた、紺色の襟がついた上着を羽織り。
 裾が広めのショートパンツも同じ意匠の紺色で揃え、縁に引かれたオレンジラインと腰の部分を飾るボタンが目を惹く。
 いつもの学生帽を被れば、元気一杯の水兵さんといった雰囲気で。
 どこか学生っぽい可憐なネージュとはまた違った味わいを見せていた。
「そうだなぁ」
 ヒカルの隣に並んだアルフレッドも、戯れる2人を微笑ましく見つめ、深く頷く。
 尚、アルフレッドの水着は、えらのような模様が太腿部分に入った、腰から足首までを覆うロングスパッツタイプ。
 太めに額に巻いたバンダナが、精悍な身体に刻まれた傷をファッションのようにカッコよく魅せています。
 去年は自分達が男同士でやっていた光景を眺めてしばし。
「そうだ! 夜の海といえば!」
 はっと思い出したアルフレッドが、唐突にそんな声を上げると。
「夜光虫だ! 夜光虫いないか夜光虫!」
 夜の海辺をきょろきょろ見回しながら走り出した。
 こちらも楽しそうなその様子に、ヒカルは思わず吹き出して。
「さあ、この夏も楽しむとしようぜ!」
 ぱしっと目の前で拳を掌に叩きつけると。
 にかっと笑って早速、足元に用意してあった花火へと手を伸ばした。
 ごそごそと準備をしてから顔を上げたヒカルは。
「姐さん姐さーん」
 そろそろ水遊びを切り上げようとしていた夜野を呼ぶ。
「おれが合図をしたらこれをおれに向けて、このボタンを押しっぱにしてくれ!」
「え、カメラ? ……わかったのだわ」
 きょとんとした夜野は、でもしっかりカメラを受け取り頷いて。
 構えたその先で、ヒカルは手持ち花火に火をつける。
「姐さん!」
「はいっ」
 合図を送ったそこから、綺麗に燃える花火を大きく動かして。
「……危なくないかしら?」
「大丈夫大丈夫! それよりしっかり頼むぜ!」
「わかったのだわ」
 露光し続けたカメラは、大きく動く光を続けて捉え、シャッターを閉じると。
 ヒカルのサインと星型模様を浮かび上がらせた。
「すごいだろ!」
「へぇ。写真で撮ると文字になって見えるのだわ……不思議ねぇ」
「ちゃんと、ヒカル☆、って見えますよ!」
 えへんと胸を張るヒカルの前で、感心する夜野の手元を覗き込んだネージュも、ぱちぱちと小さく手を叩いて。
「何やら面白そうなことをしているな!」
 夜光虫を探していたアルフレッドも気付いて戻ってくる。
「おーい、艦長もこれやってみろよ! 面白いぜッ!」
 花火を差し出し誘うヒカルに、だがアルフレッドは首を横に振ると。
 くるりと背を向け、にっと笑った。
「俺はコレだ」
 そこで揺れるのは、エイのような細い尻尾と、そこで燃える蒼い炎。
 花火要らずのブレイズキャリバーに、ははっ、と笑ったヒカルの前で。
 今度は、エイを象ったような絵とアルファベットのWが描かれる。
「ふふふ。ワンダレイの『W』だぜ!」
「ではこちらは飛空戦艦ワンダレイだわね」
「なるほどッ。さすが艦長!」
「艦長もヒカルさんも、綺麗ですね」
 ちょっと危ない光のアートに盛り上がる一同の中で。
 ネージュはそっと夜野のカメラを受け取り。
「夜野さんも挑戦されます?」
 手持ち花火を指差して問いかける。
 初めてのことは何でもやってみたいだろうと思って。
 予想通りに夜野は好奇心に表情を輝かせ。
 でもすぐに苦笑すると長いパレオを手で摘まみあげた。
「流石にこの格好で試したら火傷すると思うから……」
「そうですね」
 ひらりひらりとスカートのように揺れる布地に、ネージュも小さく苦笑い。
 自身のリボンも持ち上げて、こちらも無理かと肩を竦めてから。
「では、こちらはいかがでしょう?」
 差し出したのは、そっと用意していた白い湯飲み茶碗。
 口の大きなそれをネージュから受け取った夜野は不思議そうに覗き込み。
「わあ。お花が浮いているのだわ」
「おっ、桜茶か」
 アルフレッドも夜野の上から茶碗の中を見て、言い当てる。
 それは、桜の花を塩漬けにして、お湯を注いだもの。
「もちろんここで拾ったものではありませんよ?」
 念のためにと添えたネージュの言葉を裏付けるように、茶碗の中で広がる桜は花弁が幾重にも重なった八重桜。
 砂浜の近くで主に咲いている桜とは違うものだったから。
 興味津々、夜野は茶碗の中から目を離せないまま、そっと口へも運んでみる。
 広がる塩味も、仄かに香る桜の風味も、初めてのものだから。
 感想も忘れて輝く赤い瞳に、ネージュの青い瞳が細められた。
「やっぱ夜は地味に冷えるからありがたいッ」
 元気に一気飲みしたヒカルは、空になった茶碗をネージュに返すと。
「さあ、温まったところで、まだまだ花火を楽しむぞ!
 いろいろ持ってきたからなッ!」
 再び花火を手にし、今度は皆に見せるように広げだした。
 先ほど絵を描くのに使った定番の細い筒状の手持ち花火から。
 棒に練り火薬を巻きつけたものや、持ち手の紙に絵が描かれたもの。
 手筒花火に線香花火、ねずみ花火もあれば、小さな打ち上げ花火まで。
 様々な種類の玩具花火に、夜野だけでなく、ネージュとアルフレッドも楽し気に手を伸ばしていく。
「線香花火はしてみたいのだわ」
「いいですね。是非、一緒に」
 わくわく弾んだ夜野の提案に、ネージュも微笑み頷いて。
 早速、細い紙縒りのような花火を取り上げ、渡していく。
「あっ、火要る? 溟獄の炎だけど!」
「いただけるかしら? 船長」
 ユーベルコードを火種に差し出すアルフレッドへ、夜野が花火の先を差し出した。
 ヒカルは両手に持てるだけ持って、一気に火を点けて見せれば。
 打ち寄せる波に、舞い踊る花弁に。
 花火の光が乱反射して、きらきらと輝いていく。
 ネージュと2人、静かに線香花火の火花を眺めていた夜野は。
 儚いその終わりを見届けてから顔を上げ。
 元気に走り回るヒカルと、ごそごそ打ち上げ花火を仕掛けるアルフレッドを眺める。
 次は何が見れるのだろう。
 次は何が出来るのだろう。
 期待にどんどんと胸は弾んで。
「知ってても私がした訳じゃない事、もっともっと、色々体験したいのだわ!」
「いいぞ姐さん!」
「色々やっちまおうぜ!」
 輝いた笑顔に、振り向いたヒカルとアルフレッドも満面の笑みを見せ。
 くすりと微笑んだネージュが、あ、と目で追った先の空に、小さな火の花が咲いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
見晴らしの良い断崖絶壁があるという情報を
島民から聞いてそこに訪れてみる
なんだろう、ここに立つと
「あなたが犯人です」とか
「私がやりました」なんて台詞が浮かんでくるよ

高さも恐れず崖の先っぽに腰掛けて星を眺める
この場所を選んだのはね
浜辺よりも星に近付けるかなと思ったからだよ

ダークセイヴァーでは夜は当たり前だけど
こんなに満天の星空は見たことがあったかな
なんて故郷に想いを馳せてみる
いつかあの世界でも見られるようになるといいね
…うん、そうだね。梓は頼もしいな

梓に引っ張られてわわっと素っ頓狂な
声を上げつつ焔に乗り込む
なるほど、空の旅と洒落込むわけか
星空の海を泳ぐ、そんな夢のような時間


乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
まさか断崖絶壁に来たがるとはな…
まぁここなら誰も来ないだろうし
誰にも邪魔されずに過ごすならありかもしれないが
おい、テレビドラマの見過ぎじゃないか
軽く笑いながら返す

気を付けろよと綾に注意しつつ
その後ろに立ち、共に星空を眺める
この場所まではラムプの光も届かないから
星の光だけがより際立って見えるな

バァカ、「なるといいね」だなんて
他人任せの希望系みたいな言い方をすると
いつまでも夢物語で終わるぞ
「俺がそうしてやる」という気概で行けば
いつか絶対叶うもんだ

さて、星に近付きたいならもっといい方法があるぞ
ドラゴンの焔を成竜に変身させ
綾を引っ張って共に乗る
さぁ焔!思うままに飛べ!



「まさか、こんなところに来たがるとはな……」
 吹き上げて来る強い風に白い上着を煽られながら、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はどこか呆れたように呟いた。
 その前に座る灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)も黒い上着をはためかせ、いつもの人畜無害そうな笑顔を浮かべて。
「見晴らしがいいって聞いてね」
「そりゃ間違いないが」
 苦い顔で頷いた梓は、座る綾のその向こうへと視線を向ける。
 そこにもう地面はない。
 あるのは、星の瞬く夜空と、波が煌めく黒い海。
 まるで暗い空と海の間に立っているかのような錯覚すら起こすその場所は。
 海へと突き出た崖の上。
 ほぼ垂直に切り立った断崖絶壁の端だった。
 宴に混じって島民から聞き出した、この島で一番見晴らしの良い場所。
 それゆえに辿り着くまでの道は険しく。
 島のいたるところに生えている桜の木すらもまばらで。
 あまり人も近づかない、穴場スポットになっているらしい。
(「誰にも邪魔されずに過ごすならありかもしれないが」)
 小さくではあるが、思わずため息をついた梓に。
 崖の先っぽに腰掛けたままの綾は、笑みを含んだ声を零した。
「なんだろう。ここにいると、あなたが犯人です、とか、私がやりました、なんて台詞が浮かんでくるよ」
「おい、テレビドラマの見過ぎじゃないか」
 梓も軽く笑いながら指摘すれば、さらに楽し気にくすくすと響く笑い声。
 そのまま綾は、後ろにひっくり返りそうなほど背を反ると、後ろ手についた両腕で倒れた上半身を支えるようにして大きく大きく上を見上げる。
 砂浜などで座り込んだ時には珍しくない体勢だが。
 今は、少しズレただけで眼下の海へと落下しかねない、不安定な崖の上。
「気を付けろよ」
 思わず注意する梓に、綾は恐れの欠片も見せず、糸の様な目でにっと笑った。
「この場所を選んだのはね、浜辺よりも星に近付けるかなと思ったからだよ」
 梓を振り仰いだような視線が、そのまま真上へと向いたのが分かる。
 それを見下ろしていた梓も、その視線を追うように顔を上へと上げて。
 そこには無数の光が瞬いていた。
 周囲に桜も少ないから、島を照らすラムプの光もこの崖にはほとんど届かず。
 ゆえに、夜空はより暗く。
 瞬く星はより際立って見える。
「……夜は当たり前だけど、こんなに満天の星空は見たことがあったかな」
 足元から聞こえる綾の声。
 どこで、とは言わなくとも伝わる。
 ダークセイヴァー。
 2人の故郷。
 暗い印象のあるその地に、明るい星など見えた覚えは、ない。
 もしかしたら、空に星はあったかもしれない。
 けれども、夜と闇に覆われた過酷な世界では、それを綺麗と思う心はなかったから。
「いつかあの世界でも見られるようになるといいね」
 視界いっぱいに広がる瞬きに焦がれるように、綾は想いを馳せた。
 だが。
「バァカ」
 梓の声が降って来たと思うと、にっと不敵に笑った顔が綾を見下ろして。
「なるといいね、だなんて他人任せの希望系みたいな言い方をすると、いつまでも夢物語で終わるぞ」
 満点の星空を背景に、銀色の髪が、右耳についた黒い羽根飾りが揺れる。
「俺がそうしてやる! という気概で行けば、いつか絶対叶うもんだ」
 そこからがばっと勢いよく顔を上げた梓は、また星空を見上げた。
 きらきら、きらきらと。
 星が瞬き。希望が輝く。
「……うん、そうだね」
 綾もまた、星空を見上げて。
(「梓は頼もしいな」)
 その口元に淡い笑みが浮かんだ。
「さて、星に近付きたいならもっといい方法があるぞ」
「わわっ」
 そして梓は、綾の腕を掴み引っ張り上げると。
 肩に乗っていた炎属性の仔ドラゴンを、成竜へと変身させる。
 バランスを崩したままの綾をどこか引きずるようにして、ドラゴンの大きな背へと乗った梓は、ぽんぽんっと炎色の巨体を軽く叩いて。
「さぁ、焔! 思うままに飛べ!」
「キュー」
 崖から空へと飛び上がった。
 星の瞬く夜の空と。波が煌めく夜の海。
 大地から離れれば、夜闇の中でその境目は曖昧になり。
 空を飛んでいるのか、海を泳いでいるのか。
 空を泳いでいるのか、海を飛んでいるのか。
 だんだん分からなくなっていく。
 そこに、崖を駆け上るように吹いた風が、桜の花弁を舞い上げて。
 薄紅色の欠片は、暗い闇の中で、淡く光っているかのよう。
 遠くに輝く星と波を眺めながら。
 近くに煌めく桜の花を巻き込み踊る。
 美しく儚い、夢のような時間。
 だけどこれは夢ではなく、そして夢で終わらせたくないから。
「いつかあの世界でも見るよ」
「ああ、2人で見てやろう」
 星空の海へと誓うように、決意を込めた声を上げれば。
 応えるようにドラゴンの鳴き声も響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月28日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト