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チョコレートも溶けるほどの、熱い嫉妬を胸に抱いて

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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●チョコレートファウンテンって映えますよね
 キマイラフューチャー、とある広場にて。
 将来的には噴水が建設される予定でいるものの、未だ外枠のブロックと三分割する仕切りしか積まれていないその中で、一人の少年キマイラが地面をコンコンしていた。
「ふっふっふーん、こっこはなーにが出るのかニャー♪」
 猫をベースに鮫の背びれと尾びれを生やしたキマイラ、周囲のイタイ子を見るような視線などお構いなしに、コンコンコン。
 コンコンしてたら、俄かにその手が黒褐色でねっとりとした液体に包まれる。
「わわっ!?なんニャ!?」
 慌てて飛び退く鮫猫の少年、足元に広がっていく液体から逃れようとぴょんぴょん。
 なんとか縁まで逃げ切るや、その縁に囲まれた区画がどろりとした液体で覆われる。
 そして周囲に立ち上る、甘くてまったり、香ばしくてほんのり苦い香り。その香りを嗅ぎつけた周囲のキマイラたちが、どんどん噴水予定地の周りへと集まってくる。
 騒ぎの真っただ中で、同じ匂いが自分の手からもしていることに気が付いた鮫猫の少年は、手についた黒褐色をぺろりと舐めた。
 途端に彼は、カッと目を見開く。
「これは……チョコレートニャ!!!」
 チョコレート。その言葉を聞いた観衆から歓声が上がった。
 1月下旬に、チョコレートの池。ならばやることは一つしかない。
 そう誰もが確信したその瞬間に。
「ならーーーん!!!」
 唐突に野太い声が広場に響き渡った。
 いつの間にそこにいたのやら、広場を取り囲む建物の一つの屋根、その上に仁王立ちする、頭がハートの形をした怪人が一人。
「こんな時期にチョコレートの泉などと……そんなことをしたらバレンタインの時期に、格好のデートスポットになってしまうではないか!!
 されば、バレンタインにチョコレートを貰えない敗北者が枕を涙で濡らすは必至!!
 そんな悲しい事態は、このハートブレイク・チョコレート怪人が断じて許さーん!!」
 怪人の怒声に合わせて、建物の上から飛び降りる形で、不自然に大きな被り面を被った中華風の服装をした集団が広場に躍り出る。
 突如現れた謎の集団に慄くキマイラたちを背に庇うようにして、猫鮫の少年は震えながら口を開くのだった。
「横暴な上に被害妄想が酷いニャー!!」

●嫉妬は醜いものだと思います
「キマイラフューチャーの怪人ってさ、たまにバカなんじゃね?って思うことあるよな」
 グリモアベースにて、梯・剛士(ヴァリウードの随伴者・f12919)はいっそ清々しく怪人の行動をぶった切ってみせた。
 最近グリモア猟兵としての活動を開始した彼が予知して曰く、噴水予定地でコンコンしていたキマイラがチョコレートの泉を引き当てたのだが、その泉を破壊しようとする怪人が現れたのだという。
 何でも、「バレンタインにチョコレートを貰えない者が悲しむ事態を許さない」と宣っているそうだが、自分で敗北者と言ってしまっている辺り、色々と台無しである。
「相手はなんとも度し難い愚か者ではございますが、これを放置しては無辜の民が傷つくことでしょう。そうなる前に皆様のお力で、彼の者を撃退していただきたい」
 剛士に寄り添う、胸から上と両手首のみを実体化させた巨大な狼獣人モンスター・ヴァリウードもまた、事態解決のためにと猟兵たちに頭を下げた。

 戦いの舞台となるのはキマイラフューチャー世界のとある広場。背の低い建物で囲まれた円形の広場の中心に、件のチョコレートの池がある。
 掘り当てた鮫猫のキマイラ少年を含め、観衆のキマイラたちは広場を取り囲むような形で退避している。彼らに被害が及ばないよう、注意して戦う必要があるだろう。
「チョコレート怪人だけど、最初っから降りてきて戦う様子はねーみたいだ。まずは配下のなんか頭が大きい怪人を相手取っての集団戦になる。名前は……えー……」
「大頭頭ズ、です。我が主」
 ヴァリウードの助け舟に、そうそれ!と剛士は手を打った。
 大頭頭ズは中華服を身に纏い、中国拳法によく似た攻撃を繰り出してくる怪人だ。
 様々な生物、機械、自然現象を模した拳法による攻撃、健康体操にも見える動作で怒涛の連続攻撃を仕掛ける攻撃を繰り出してくる。また、完全な脱力動作で受けた相手のユーベルコードを大地に逃がす防御術も会得しているようだ。
「大頭頭ズは頭にでっかい被り面を被ってる。そいつが弱点だから、頭を狙って面を壊せば手っ取り早いと思うぜ」
 大頭頭ズを全て片付ければ、チョコレート怪人も自らの手で泉を破壊せんと降りてくる。ここからが第二ラウンドだ。
 チョコレート怪人は頭部がチョコレートだ。このチョコレートから嫉妬の炎を噴き出したり、嫉妬の感情を与えた相手に、狙った相手を追尾する触手を伸ばして攻撃してくる。
 また、戦闘中に食べた義理チョコの数と質に応じて、自らの戦闘力を増加させることも出来るようだ。
 この怪人を倒さない限り、広場に平和は訪れないだろう。
「怪人の撃破が終わったら、件の泉でチョコレートファウンテンを楽しんでくると良いでしょう。ミルクチョコレートの他にも、ホワイトチョコレート、ストロベリーチョコレートの泉が湧き出るようです」
 ヴァリウードの説明によると、噴水として区切られた仕切りのそれぞれの区画で、違ったチョコレートが湧き出るそうな。仕切りのブロックをコンコンすることで、チョコレートが高く噴き出すギミックもあるらしい。
 チョコレートファウンテンに浸すためのマシュマロやフルーツ、クッキーなどは、観衆のキマイラたちが沢山持ち寄っている。勿論、自分たちで好きな食べ物を持ち寄ってチョコに浸してもいいだろう。
 なんなら湧き出るチョコレートの泉の中に飛び込んで泳いでもいいらしい。細かいことは気にしないキマイラたちだ、誰かが直接入った後でも別にいいのだろう。
「戦闘が終わったら俺も合流するからさ、皆で一緒に楽しもうぜ、チョコレートファウンテン!その為にも、お仕事頑張んないとな!」
 剛士はそう締めくくって、にっこりと笑うのだった。


屋守保英
 シナリオをご覧くださりありがとうございます。
 やもりさんです。
 ここ数年は専ら、自分でデパートの催事場に行って自分のために有名ブランドのチョコを買っています。

●目標
 ・ハートブレイク・チョコレート怪人×1体の撃破。

●舞台・戦場
(第1章)
 キマイラフューチャーの一区画にある広場です。
 背の低い建物に囲まれた直径100m程度の円形のエリアで、中心に直径4mほどのチョコレートの泉があります。
 この広場の外周を取り囲むようにして、一般住民のキマイラが合計50人程集まって、怯えつつも観戦しています。

(第2章)
 第1章と同様です。
 ハートブレイク・チョコレート怪人はチョコレートの泉を破壊しようとしていますが、まずは邪魔な猟兵たちを排除してからと考えています。

(第3章)
 第1章、第2章と同様です。
 チョコレートの泉はミルク、ホワイト、ストロベリーの三種類があります。
 縁をコンコンしたら勢いよくぶわーっと噴き出します。
 浸す食べ物は持ち込み自由ですが、公序良俗に反しない範囲でお願いします。
 観衆のキマイラも基本的な浸すもの(マシュマロ、各種フルーツ、クッキー)を沢山持参しています。

 それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『大頭頭ズ』

POW   :    x形拳
【様々な生物や機械、自然現象等を模した拳法】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    i極拳
【健康体操のようにも見える連続した攻撃動作】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    n卦掌
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【大地の中を走る気の流れの噴出点(龍穴)】から排出する。失敗すると被害は2倍。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴木・志乃
サイッテー!!!

と叫んで全員の注意を引きつつ、キマイラの群れから飛び出し敵の前に現れる
他に被害が及ばない為の一手です!

「チョコレートの泉なんてベストプレイス!
それを潰すなんて、マジでありえない!
嫉妬して他人の恋路邪魔するなんてどーゆーつもり!?」

敵との距離をどんどん詰めながら煽る煽る煽る!
「どーせチョコの泉壊した所であんたらは一生モテないよ!
この顔面偏差値マイナス!!」
マイクで顔面狙いで殴る【衝撃波】
「家帰って鏡にでも告白してろ嫉妬怪人!
顔も出せない性格ネクラー!」
罵詈雑言で怒らせながら戦闘
【オーラ防御】しながら回避に重点を置く
敵が相当力んだ所で、ユーベルコード発動!



「ホァァーーーッ!!」「アチョォォーーーッ!!」
 中華服を身に纏った、巨大な被り面で顔をすっぽり覆った怪人が、広場で逃げ遅れたキマイラたちを妙なポーズと奇声で威嚇していた。
 威嚇されて震えるキマイラたちの姿を、屋根の上からハートブレイク・チョコレート怪人は満足そうに眺めつつスマートフォンを構えている。動画を撮影でもしているのだろうか。
「いいぞいいぞ、その調子でリア充どもを怯えさせるのだ、大頭頭ズ!
 そしてこの動画をリア充撲滅動画としてようつ○にアップすれば、非リアの皆が大喜び、いいねがいっぱいついて俺様大喜び!はーっはっはっは!」
「サイッテー!!!」
 高笑いするチョコレート怪人の声に被せるようにして、広場に響き渡る女性の叫び声。動きを止めて声の出所をキョロキョロと探す大頭頭ズの目の前に、キマイラの集団から飛び出す影があった。
「チョコレートの泉なんてベストプレイス!それを潰すなんて、マジでありえない!
 嫉妬して他人の恋路邪魔するなんてどーゆーつもり!?」
 ボーイッシュな服装をした鈴木・志乃(生者・f12101)が、そう啖呵を切りながらずかずかと大頭頭ズへと詰め寄っていく。
「どーせチョコの泉壊した所であんたらは一生モテないよ!この顔面偏差値マイナス!!そんなブッサイクな面で顔を隠したって、あんたらの内面はブッサイクなままなんだから!!」
 気迫に負けて両手を目の前にかざしながら後退る大頭頭ズの顔面に、志乃の罵倒がマイクと共に物理的に突き刺さった。
 後方にぐらりと傾ぐ大頭頭ズの頭部。だが志乃の罵声は止まらない。
「家帰って鏡にでも告白してろ嫉妬怪人!顔も出せない性格ネクラー!」
「ぐぬぬぬ……黙って聞いていれば好き勝手宣いおって、このリア充女子めが!!お前ら、やってやれ!!」
 好き放題煽られてチョコレート怪人はまさに怒髪天。ハートの顔面を真っ赤に染めながら地団駄を踏んでいる。その怒りが伝播した大頭頭ズが志乃を取り囲むが。
「ふん、大勢で寄ってたかって、無様だよね!」
 その身にオーラを纏いながら繰り出される拳法を、志乃は防ぎつつ躱していく。
 そして程よく大頭頭ズがひと固まりになり、動きが止まったところで。
「そこだっ、【鈴蘭の嵐】!」
 志乃の手にしたコードレスマイクが、スズランの花弁となって風に舞った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィズ・ザー
綴りはwith

――― 貰いたければ、関係を作れば良かろう?…ヒト型の考える事はよく分からん。
フシュルと呟き陰に溶け走るブラックタール
バウンドボディを使い死角より棘を生やす形でダメージを稼ぎ、仲間の援護に徹する
基本無口、淡々と敵を倒す
さり気無くチョコレートを舐めれば、フシュルルと舌鼓を打つだろう。



 舞い踊るスズランの花弁にまかれ、たたらを踏む大頭頭ズの足元。落ちる影がたぷんと揺らめいた。
「―――貰いたければ、関係を作れば良かろう?…ヒト型の考える事はよく分からん」
 影に溶けつつ広場に潜伏していたウィズ・ザー(闇蜥蜴・f11239)が、フシュルと呟きながらその身体を棘のように突き出した。
 全くの死角から身体を貫かれ、混乱する大頭頭ズたち。しかし攻撃をしてきた方向には、ただ自らの影があるばかり。
 混乱する怪人が辺りを見回すも見つかるものはなく、また別の所から棘が伸びては消えていく。
 ウィズの隠密行動と奇襲攻撃は、大頭頭ズの行動を乱すのに大きく役立っていた。
「すげー、なんだあれ!?」
「なんか地面からにゅって伸びてたよな!」
 大頭頭ズに脅かされてびくついていたキマイラたちも、既に観戦モードに入ったのか志乃とウィズにやんやの喝采を送っている。
 そんな歓声に何の反応を返すこともなく、ウィズはそっとチョコレートの泉に近寄った。
 影に紛れ、黒褐色の液体に自らの身を一部浸す。
「――フシュルル。甘い」
 新鮮なチョコレートの甘さを堪能したウィズは、再び広場に落ちる影へと溶け込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レイチェル・ケイトリン
チョコレート、おいしそうだけど、デートスポットとかにするのって
とってもたいへんそうだとおもうんだけど……


念動力と吹き飛ばし技能をつかって攻撃して敵をふっとばすね。
サイコキネシスはつかったりつかわなかったり、きまぐれにするね。

念動力だけの吹き飛ばしはユーベルコードじゃない。
だから敵は無効化できないの。
脱力してるなら思いっきりふっとばせるんだよ。

念動力だけの吹き飛ばしを警戒して身構えてたら脱力に失敗しちゃう。
そこにサイコキネシスの吹き飛ばし攻撃あてたら二倍だよね。

敵は攻撃してたら脱力できないから
サイコキネシスでふっとばしてふせぐね。

ほかの猟兵さんへの攻撃もかばう技能もつかってふっとばしてふせぐよ。



 ウィズの棘に貫かれて次々に地面に膝をついていく大頭頭ズを見て、レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)はその手を前方にスッとかざした。
 手をかざしながらも、後方のチョコレートの泉へと、ちらと視線を投げる。
「(チョコレート、おいしそうだけど、デートスポットとかにするのってとってもたいへんそうだとおもうんだけど……)」
 思っても、口には出さないレイチェルである。
 多分、猫鮫の少年を含めて、キマイラたちはそこまで深いことは考えていない。楽しくてバズれば正義なのだ。
 自分らに向けて手をかざすレイチェルを見て、大頭頭ズは次々に両腕をだらりと垂らして攻撃に備える。脱力した状態で攻撃を受け、その攻撃を受け流す拳法、n卦掌。
 しかしレイチェルはその行動さえも見越していた。
「サイコキネシスだけが、遠距離から吹き飛ばす力じゃないんだよ」
 そう言って口元を歪めながら、ぐぐっと腕を持ち上げるレイチェルりそれに伴い一体の大頭頭ズの身体が、中に浮き上がる。
 抵抗したつもりなのに抵抗できず、忙しなく顔を動かす大頭頭ズ。それもそのはず、レイチェルが使ったのはユーベルコードではない。【念動力】の技能だ。
「甘く見ないで、ね?」
 宙に浮いた大頭頭ズに向かって、使用する技能は【吹き飛ばし】。技能の合わせ技によって、敢え無く大頭頭ズの身体が高速で宙を舞った。
 宙を舞った瞬間に、ユーベルコードのサイコキネシスも使用してダメージを上乗せしたことは、彼女だけしか知らない。

成功 🔵​🔵​🔴​

二本木・アロ
それ(頭の面)貸して貸して!
いやちょっと被らせて貰うだけだからさー、貸せって。
……寄越せっつってんだよゴルァアアア!【恫喝】

鬱陶しい絡みと脅しで脱力状態にさせないスタイル。
借りられたら頭に被ってマジあげみざわイェエイ。
貸してくれなかったらキレて顔面に拳か跳び蹴りぶち込んで壊す。
複数居たら【グラップル】【怪力】で後頭部掴んで、大頭頭ズ同士ぶつけさせて割る。頭と頭がごっつんこー♪(棒)

x形拳には戦闘人形使った【武器受け】で対応するけど、
i極拳は避けた方が敵の隙をつけそうだな?
【ダッシュ】【フェイント】辺りの活用で回避を狙い、
背後に回り込んで至近距離で灰燼拳。
見た目濃すぎて胸やけしてきた。殴らせろ。


ステラ・チェスロック
えー!いい歳してチョコレート貰えなくて悔しがってんの?だっさーい!
しかもそれで他人に迷惑かけるの?自分が情けなくならない?大丈夫?

シャッフル・タイムを使って、合計18セットのトランプをバラバラに操って敵と戦うわ。トランプは53枚のセットよ。まともに動けない様にトランプをまとわりつかせてやろうかしら?

敵からの攻撃は空中にトランプを固定することで【武器受け】するわよ。敵の動きを止めたら両手でトランクを持ってゴンッて頭を叩いてやろうかしら。ちょっと背が足りないかもだけど、トランプで足場を作れば届いちゃうんだから馬鹿にしないでよね!



 吹き飛んで地を滑る大頭頭ズ。その仰向けに倒れ込んだ一人に、二本木・アロ(羅刹の人形遣い・f02301)が喜色満面、ズンズンと近づいていった。
 身体をびくりと震わせる大頭頭ズの被った被り面を指さして言うことには。
「ギャハハハ、間近で見るとめっちゃ変なのー!それ貸して貸して!いやちょっと被らせて貰うだけだからさー、貸せって」
 突然の「貸せ」に、大頭頭ズは困惑した。状況とアロの行動に恐怖しながらも、自身のアイデンティティを奪われまいと、巨大な頭をふるふると横に振る。
「ホォァ……」
 力なく、しかしほんのり否定のニュアンスを滲ませて声を出した途端に。
「……寄越せっつってんだよゴルァアアア!!」
 アロの拳が被り面のど真ん中に突き刺さった。
 顔面を見事に破壊された大頭頭ズが、そのまま力なく倒れ伏す。あんまりにあんまりな状況に、屋根の上のチョコレート怪人までもがビビっていた。
 そんな怯えに追い打ちをかけるように、ステラ・チェスロック(リトル・ディーラー・f12374)が怪人たちを煽りにかかる。
「いい歳してチョコレート貰えなくて悔しがってんの?だっさーい!しかもそれで他人に迷惑かけるの?自分が情けなくならない?大丈夫?」
「大丈夫なわけがなかろうがーーー!!情けない、ダサいなど百も承知、しかしそれでも、俺はバレンタインの盛り上がりを許すわけにはいかんのだー!!」
「ホァァァァァーー!!」
 チョコレートの涙を撒き散らしながら吼えるチョコレート怪人と共に、まだ動ける大頭頭ズが気合の籠もった叫びをあげた。ゆらり身体を揺らめかせ、拳法の構えを取る。
「あれ【i極拳】じゃね?」
「それなら、タイミングよく避けた方がいいわね!」
 相手の構えを見たアロが、ステラに目配せした。頷いたステラが、懐からトランプを取り出す。
 束の間、静寂が広場を満たした途端に。
「アチョォォォーッ!!」
 大頭頭ズが目にもとまらぬ素早い動きで、アロ目掛け高速の拳撃を繰り出してきた。
 それと同時に地を蹴って、相手の斜め前方に踏み込むアロ。その彼女を援護するように、トランプの束が壁のようにずらり、空中に留まった。
「上手なカットは、レディーの嗜みよ?」
 ステラの操る18セット、合計954枚のトランプが、壁となり枷となり、大頭頭ズの攻撃を無効化しにかかる。初撃を防がれた大頭頭ズは無言のまま慌てた。
 動きを止められないまま足元にトランプを押し付けられて、一人ゆらゆらと健康体操のように動き回る大頭頭ズの後ろに回り込んだアロは。
「見た目濃すぎて胸やけしてきた。殴らせろ」
 ぽつり零して振るうのは灰燼拳。武器も持たないただの拳と思われるそれは、大頭頭ズの背中に轟音と共に突き刺さった。
 衝撃で外れる被り面。がらんと音を立てて地面に落ちたそれを、アロは拾い上げた。そして徐に頭に被る。
「はっはっはー、マジあげみざわイェエイ」
「何やってるのよ……」
 スマートフォンを取り出して自撮りを始めるアロを、変なものを見るかのような目で見つめるステラだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

山梨・玄信
とりあえず、チョコの泉にツッコミを入れたいんじゃが…。キマイラフューチャーじゃからのう、何でもアリか。

【SPDを使用】
いきなり褌一丁で現れるぞい。シーブズギャンビットの効果を最大限にするためじゃ。何かデートスポットをぶち壊しにしてる気もしなくもないが、気にしてはいかんぞい。
i極拳と真っ向からスピード勝負じゃ。
敵の攻撃を聞き耳(風切り音を聞く)と第六感で予測し、見切りとシーブズギャンビットのスピードで躱すのじゃ。
攻撃を躱したら、カウンターで相手の背中からナイフで連続攻撃するぞい。
「カップルの邪魔をするより、真剣勝負の方が楽しいぞい。さあ、どっちが早いか勝負じゃ!」

アドリブ、絡み歓迎じゃ


レーヴェ・ナハトシッフ
はぁー……チョコレートがもらえない事がそんなに悲しい事か?
……毎年くれてた家族から貰う事は生きてる間もう二度と無いとかなら俺は泣いたが、そういう理由が無いなら頭部を遠慮なく破壊する。
ちょっと感傷的な気持ちになった八つ当たりだ。

戦闘は風の悪戯による素早い一撃や残像で敵の攻撃を避けながら2回攻撃するつもりだ。
i極拳の方が速ければ、隙を見て早着替えで身軽になるか、服を破いて更に加速する。
勇気を出して敵の脇を通り抜けながら風の悪戯で斬りつけて、背後へ移動、一旦止まって敵の様子を確認
相手が攻撃しながら方向転換できるならまた脇を通り抜けながら攻撃、
方向転換できないなら後ろからざっくりやれるといいんだが……



 着実に数を減らされる大頭頭ズと相対しながら、山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)はちらりと後方のチョコレートの泉に視線を向けた。
「チョコの泉にツッコミを入れたいんじゃが…。キマイラフューチャーじゃからのう、何でもアリか」
 後ろで歓声を上げるキマイラたちをチラリと見て、玄信は思考からそれを追い出した。考えたら負けなのです。何故ってここはキマイラフューチャー。
 それに。
「そもそも、目の前のこいつらの方がツッコミどころ満載じゃしのう」
「言えてる……チョコレートがもらえない事がそんなに悲しい事か?」
 玄信の隣に並ぶようにしたレーヴェ・ナハトシッフ(バンダナマフラーが風になびく・f04940)が、ダガーナイフを手に握って目を細めた。
 レーヴェの物言いに、チョコレート怪人が屋根の上で地団駄を踏んでいる。
「悲しいだろう!周囲のキマイラどもが、本命チョコだの友チョコだの渡してキャッキャしている中で、我々は貰えて数十粒一袋何百円の義理チョコなのだぞ!!これが悲しくなくてなんとする!!」
「……毎年くれてた家族から貰う事は生きてる間もう二度と無いとかなら俺は泣いたが、そういう理由が無いなら頭部を遠慮なく破壊する」
「あっ……それは!ごめんね!」
 ちょっぴり感傷に浸ったレーヴェに、怪人もいたたまれない気持ちになったのだろう。全力で謝った。
 見れば大頭頭ズも、胸の前で両手を合わせている。謝っているつもりなのだろうか、彼らも。
 しかして感傷に浸る時間は終わり、戦闘再開。二人まで数を減らされた大頭頭ズが揃ってi極拳の構えを取る。
「素早い攻撃か」
「なら、真っ向勝負じゃ!」
 玄信もダガーナイフを取り出して構えを取った。そして二人と二人が、同時に地面を蹴って前方へ飛び出す。
「ホァァァァ!」
「キェェェェ!」
「くっ……」
「チッ……速いな!」
 玄信もレーヴェも、初撃を躱すには至らなかった。数度、その身を拳が撃ち、蹴りが鼻をかすめてゆく。
 しかしやられっぱなしの二人ではない。玄信が攻撃のタイミングを『第六感』で察知して見切ると共に、レーヴェが大頭頭ズの側面へと飛びこんでいった。
 そして、ダガーが一閃、二本の弧を描く。
「アイヤー……」
 被り面の下の首をパックリ裂かれた大頭頭ズは、鮮血を散らしながらゆっくり倒れ伏していった。
 前哨戦は、見事に猟兵たちの勝利。キマイラたちから一等大きな歓声が沸き上がった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ハートブレイク・チョコレート怪人』

POW   :    ジェラシックフレイム
【チョコレートの頭部から噴き出す嫉妬の炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【嫉妬の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    センチメンタル・ギリチョコワールド
戦闘中に食べた【義理チョコ 】の量と質に応じて【過去の悲しみを糧として】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    ジェラシック・ラブイーター
【嫉妬 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【とろけるチョコの塊】から、高命中力の【愛を食らう触手】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠滝舘・穂刈です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ぐぬぬぬ、配下の大頭頭ズが全滅だと……!ならば仕方あるまい、俺自らお前たちの相手をしてやろう!
 チョコレートの泉を破壊するのは、邪魔者たるお前たちを排除してからだ!とうっ!!」
 屋根の上でそう啖呵を切るハートブレイク・チョコレート怪人が、思い切り屋根を蹴った。
 飛び出した身体はくるくると空中で回転し、回転し――チョコレートの泉へと一直線。
 ドボーンと泉に飛び込んで数瞬後。チョコレートまみれになった怪人が泉から上がってくる。
「あまぁい……くっ、猶更この泉は破壊しないとならんようだな!!」
 チョコレートのついた自分の指をしゃぶりながらもう片方の手をぐっと握る怪人を見て、観戦エリアから猫鮫のキマイラ少年の声が飛んだ。
「説得力が皆無だニャー!!」
 さもありなん。猟兵たちは心の中で頷いた。
鈴木・志乃
(震えている)

【WIZ】

なぜお前がその泉に入った

言え
謝罪しろ
さもなくばぶちのめすぞ

UC発動
あまぁい、じゃねえぞ怪人が
一人でドボンしてチョコ食ってんじゃねえよ
そのくせここをぶっ壊す?
お前今旨いって言ったじゃねえか!!!

足を狙って光の鎖を投げつける
転べば上々 縛れればもっと良い
敵の体力が奪われ始めたら、頭のひび割れ狙ってマイクで殴る【衝撃波】
敵が同じ場所で戦い続けるなら地面に手持ちの毒水撒いてやる【毒使い】

言っとくけど、私は100%ぜってー嫉妬しねえ!
なぜなら ! あたしは!
この世界(キマイラフューチャー)全てを愛してるから!!

故に愛するものを脅かした
お前は絶 対 許 さ ん!
裁きよ下れ!【祈り】



 志乃は、一人震えていた。
 拳をぐっと握りしめ、その手の爪が掌に食い込むことも厭わず、震えていた。
 そして、未だチョコレートの泉に浸かる怪人に告げる。
「なぜお前がその泉に入った」
「何っ……」
 底冷えするほどの怒気を孕んだ声色に、チョコレート怪人が後ずさる。
 泉の中で、チョコレートがパシャリと鳴った。
 怪人を追い詰めんと、志乃はずんずん歩を進めていく。
「言え。謝罪しろ。さもなくばぶちのめすぞ」
「謝罪だと?馬鹿な、何故俺様がお前などに」
 泉の底を蹴って広場に降り立つチョコレート怪人に、志乃はびしりと指を突きつけた。
「あまぁい、じゃねえぞ怪人が。一人でドボンしてチョコ食ってんじゃねえよ。そのくせここをぶっ壊すだ?お前今美味いって言ったじゃねぇか!!」
「何を世迷い言を!チョコレートが甘くて美味いのは世の道理!それがこの泉が罪深く、破壊に値することとは両立するだろうが!!」
「ゴタゴタ屁理屈こねてんじゃねぇ!!」
 突きつけた志乃の手から、光の鎖がしゃらりと伸びた。怪人の足へと巻き付くやいなや、その身体がふわりと浮き上がる。
「ちょっ、待っ」
「愛するものを脅かしたお前は絶対許さん!裁きよ下れ!!」
 鎖で拘束したチョコレート怪人を、志乃は思い切り地面へと叩きつけた。
 これぞまさしく、キマイラフューチャー世界を愛するものによる裁きの一撃。怒りの表情を顔に貼り付けて、志乃は地面にへばりつく怪人を睨みつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

レイチェル・ケイトリン
「え、ええっとね、おんなのこはすきなおとこのこに『とくべつなチョコレート』をあげたいっておもうの」
「いっしょうけんめいてづくりしたり、おみせをあちこちまわってすっごくなやんでえらんだりね」
「ここですくってかけただけのチョコをあげるとか、あんまりしないとおもう」

「ここはね、もらえないおとこのこたちがチョコレートをたべにくるとこになるんじゃないかなっておもうよ」

そういって念動力技能でサイコキネシスをつかって敵を攻撃するね。
敵の炎は空気をおしのけて酸欠にして消してふせぐよ。
ほかの猟兵さんをほのおがおそったらかばう技能もつかってふせぐね。

「チョコレートもらえないおとこのこたちのためにここをまもるよ!」



「え、ええっとね、おんなのこはすきなおとこのこに『とくべつなチョコレート』をあげたいっておもうの」
 打ちのめされる怪人に、レイチェルが戸惑い気味に言葉を投げかけた。
「いっしょうけんめいてづくりしたり、おみせをあちこちまわってすっごくなやんでえらんだりね」
「ここですくってかけただけのチョコをあげるとか、あんまりしないとおもう」
「そんなこと……そんなこと、俺だって分かりきっておるわ!!」
 両手を胸の前に据えて真剣に言葉を選んで呼びかけるレイチェル。その発言に、チョコレート怪人は地面の石畳をぐっと掴みながら、ハートの頭を持ち上げて吼えた。
「こんなタダで苦労せずに手に入るチョコレートファウンテンで、喜ぶ男子がどこにいる!本当に好いている相手には、別途心を籠めて選んだり作ったりしたチョコレートを渡しているに決まっているだろうが!
 俺がこの場所を破壊しようとしているのは『デートスポットになるから』だと言っておろうが!デートってそういうもんじゃないだろう!?ないだろう!?」
 そう宣いながら、手を翳して嫉妬の炎を具現化させるチョコレート怪人。自身に吹き付けられる炎を、レイチェルは空気を持ち上げて防ぎにかかる。
「ここはきっと、チョコレートをもらえないおとこのこたちのつどうばしょになるはず……チョコレートもらえないおとこのこたちのためにここをまもるよ!」
「それもそれで敗北者が集う形にぶべらっ」
 周りの空気と共に持ち上げられたチョコレート怪人は、レイチェルのサイコキネシスによって顔面から地面に叩きつけられた。哀れ。

成功 🔵​🔵​🔴​

山梨・玄信
とりあえず、突っ込んでおくかの。
お主食べる気満々じゃろ!

【POWを使用】
先ずは敵の攻撃を躱す事に集中するぞい。焼きドワーフになりたくはないからの。炎の射線を見切りと第六感で予想して、全力で避けるのじゃ。
カウンターで衝撃波をハートの頭にブチかまし、一気に距離を詰めて灰燼拳をお見舞いするぞい。
避けられない時は、オーラ防御と火炎耐性で耐えるのじゃ。
その場合は、範囲攻撃で足止めしてから灰燼拳を使うぞい。

「先ずは言っておこう。リア充なぞに憧れるから嫉妬するんじゃ。リア充は爆破して笑った後、自分も自滅するのが通の生き方じゃ」
「今度は力勝負じゃ。ハートなぞ完全に叩き割ってやるわい」

アドリブ歓迎じゃ。



「全く……お主チョコレート食べる気満々じゃろ!」
 地面に顔面から突っ込んだチョコレート怪人に、玄信は容赦なくツッコんだ。
 傍から見ていればチョコレート怪人は自分もチョコレートを食べたい、一緒にリア充の空気を味わいたい、と言わんとしているようにしか見えないわけで。
「先ずは言っておこう。リア充なぞに憧れるから嫉妬するんじゃ。リア充は爆破して笑った後、自分も自滅するのが通の生き方じゃ」
「自分も自滅するだと!?そんな刹那的で即物的な在り方が許されるとでもぶばっっ」
 持論を語りながら接近していく玄信に、対抗しようと構えるチョコレート怪人。
 だが、その構えが成される前に玄信の拳が顔面にめり込む。
 ハートの顔面を醜く歪めながら吹き飛ばされるチョコレート怪人に、玄信はゆるりと体勢を整えつつ口を開いた。
「今度は力勝負じゃ。ハートなぞ完全に叩き割ってやるわい」
 先程はスピードで怪人を凌駕した玄信。しかし彼はそのスピードのみを強みとする猟兵ではない。
 真っ向勝負からの必殺の一撃を繰り出して、玄信は改めて構えを取るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・チェスロック
あら、力勝負をするの?それなら面白いことしたげる。

【掌握者の見えざる手】で怪人とアタシのPOWを入れ替えるわ。
離れた所から、怪人が気がつく前に【早業】ですり替えてあげる!

交換したPOWがかなり高かったら【掌握者の優雅な手】でPOWを使って戦う味方に渡してあげるわよ。

成功したら煽るわよ、めちゃくちゃ。
ねえねえ、どんな気持ち?自分の力で殴られて、自分はかよわーい女の子みたいな力になっちゃってどんな気持ちー?

それで、自分は掌握者の優雅な手で自分の摩擦抵抗を減らしてるから、スケートみたいにすいーって動き回って攻撃を避けようと思うわ。



 両足を踏ん張り、なんとか倒れまいと身体を支えたチョコレート怪人の姿を、ステラは広場のほぼ反対側から捉えた。
 その姿にびしりと指を突きつけて、高らかに宣言する。
「“この戦い(ゲーム)の間だけ”、全てはアタシの思うままよ!面白いことしたげる!」
 声に気付いた怪人がステラの方を振り向いた時には、既にその眼前に漆黒の影が大きく手を開いて迫っていた。
「なんっ、ぶわっ!?」
 影の『手』に顔をがしりと掴まれ、後方に傾ぐチョコレート怪人の身体。そのまま強かに地面に後頭部を打ち付けさせると、影は音もなく霧散していった。
 地面に手をつき、ゆらり身体を起こそうとしたチョコレート怪人は、自分の身体に感じる違和感に否が応にも気付かされることとなる。
「なんだ……力が……!?」
 身体の力が、入らない。入らないことはないのだが、ひどく弱弱しいのだ。
 何とか顔だけを起こした怪人は瞠目した。自身が倒れ伏す間に距離を詰めて来たステラの腕に、幼女のそれとはとても思えないほどの力が籠もっているのだ。
「ねえねえ、どんな気持ち?自分の力で殴られて、自分はかよわーい女の子みたいな力になっちゃってどんな気持ちー?」
 チョコレート怪人の膂力と自身の膂力を綺麗に入れ替えてみせたステラは、にっこり笑いながら拳を振りかぶる。
 刹那、自身の力で殴り飛ばされたチョコレート怪人が観戦するキマイラのいない方、建物の壁に猛スピードで激突した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ブリッツ・エレクトロダンス
食べ物依存系ユーベルコード…!
そんなの使わせねえよ!
『埒外』を使うにはまだ足りねえが、四の五の言ってられねえぜ!
衣服全損なんざ前提だ!どうせ下手すりゃチョコで汚れるんだからな!
突撃で義理チョコを狙う!うまくいけば奪取、うまくいかなくても喰わせるのを妨害するぜ!
疾風神雷(しっぷうじんらい)、シュトルムブリッツ!

…バレンタインって、別に女から男にチョコをあげるだけのイベントじゃないだろ?
日々世話になってる奴らに、感謝の気持ちとしてチョコをあげる、…そういうイベントじゃないのか?
(このキマイラ、男女どっちでもイケる派なので男女どちらにもチョコあげたり貰ったりしている。リア充の雰囲気があるかも?)


レーヴェ・ナハトシッフ
……まさか全力で謝られるとは。少し良心が痛むが、
来世は怪人以外になれることを祈りながらぶっ倒させてもらう

戦闘中に食べた義理チョコの量で強化されるなら
食おうとしてるところを妨害するように近接戦闘
数十粒一袋何百円のチョコなら質は低そうだから
いっぱい食べる時間を与えないよう二回攻撃で腕を狙う
敵の攻撃は残影や野生の感で対処

隙があるか、攻撃を無視してチョコを食べようとするならガチキマイラでナイフを持ってない方の手から出したライオンさんで怪人が持ってる義理チョコを食べる
袋に入ったままや包み紙で包装されたままでも気にせずガブっと食べる

ライオンが食べた物の味が自分に伝わったりしないだろう。たぶん

アドリブ歓迎



 家屋の壁に激突した衝撃で、もうもうと上がる土煙。
 その煙の中からゆらり、とふらつきながらハートブレイク・チョコレート怪人は現れた。
 既にその身は満身創痍、頭のチョコレートもちょっぴり欠けている。しかし、彼の心はまだ折れていなかった。
「おのれリア充ども……しかし俺の手にはまだ、こいつがある!!」
 そう叫びながら取り出したのは、フィルムパックされたチョコレートの大袋が開封されたものだ。
 一口サイズのミルクチョコレートが20粒入り、キマイラフューチャー印のスーパーで一袋250円、の開封済みの袋。誰が見ても一目瞭然のレベルで義理チョコだ。
「まさかあのチョコレートしか貰えなかったニャ?」
「いっそ自分で買った方が建設的だろ……」
 観戦するキマイラたちから同情の声が上がる中、レーヴェとブリッツ・エレクトロダンス(DJ.Blitz・f01017)は同時に地を蹴った。
「食べ物依存系ユーベルコード……!そんなの使わせねえよ!」
「……少し良心が痛むが」
 レーヴェとブリッツが共に狙うのは、怪人が手に持つ義理チョコだ。袋に右手を突っ込んでチョコレートを一粒取り出そうとする怪人に、風と雷を纏って摩擦熱すら起こす勢いのブリッツが突撃する。
 怪人がチョコレートを口に突っ込むより早く、ブリッツの右手がフィルムで個包装されたチョコレートを掠め取る。しかして怪人のどこにあるかも分からない歯が空を切った。
「あまぁ……くない!?貴様、俺様のチョコレートをよくも!!」
 憤慨したチョコレート怪人がブリッツに対して怒りをあらわにしながら、左手に持った大袋のチョコレートを一気食いしようと袋の底に右手を添えた。
 その右手を。否、その先の大袋を丸ごと。

 追いついたレーヴェの手から出現したライオンさんが、ガチリと噛み切った。

 束の間の沈黙ののちに。
「あ……あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!?俺様の、なけなしの、チョコレートぉぉぉぉぉぉぉ!?」
 チョコレート怪人は痛みと悲しみに大粒の涙を流しながら、ゴロンバタンとのたうち回った。
 これには観客のキマイラも同情を禁じ得ない。あまりにも救われないチョコレート怪人に涙を流す者もいた。
「……来世は怪人以外になれることを祈る」
 自らのしたことながら、少し申し訳ない気分になったレーヴェが地面に転がる怪人を踏みつけると。
「バレンタインって、別に女から男にチョコをあげるだけのイベントじゃないだろ?
日々世話になってる奴らに、感謝の気持ちとしてチョコをあげる……そういうイベントじゃないのか?」
 怪人から奪い取ったチョコレートを口の中に放り込んだブリッツが、チョコレート怪人の胸元目掛けて拳を一発振り落とした。

「それを、望めたら……俺様だって、こんな……」
 虚しい言葉を零しながら、チョコレート怪人の身体はどろりと溶け崩れ、やがて世界に食べられたように消え去っていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『ビッグチョコレートファウンテン』

POW   :    チョコレートの池を泳ぐ

SPD   :    噴水のチョコレートを利用してお菓子を作る

WIZ   :    材料を用意してチョコレートフォンデュをする

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「皆、お疲れさん!」
「仕事の完遂、お疲れ様でございます」
 戦闘が終わり、オブリビオンが消滅したことを確認した剛士とヴァリウードが、チョコレートの泉がある広場へと姿を見せた。
 それと同時に観戦していたキマイラたちが、わっと歓声を上げて猟兵たちの周りを取り囲む。
「すごいかっこいい戦いだったぜ!」
「写真撮ったけどさ、これSNSにアップしてもいい?」
「私動画撮った!ようつ○にアップさせて!」
 やいのやいのと、キマイラたちの興奮が冷めやらぬ中、剛士がおもむろに噴水予定地の縁を乗り越えた。
「ま、とりあえずさ。折角のチョコレートの泉だろ?チョコレートファウンテン、始めようぜ!皆もさ!」
 そう言いながら、剛士が泉の何もない区画の真ん中をコンコン。ヴァリウードがもう一ヶ所の区画でコンコン。
 ごぽりと、二ヶ所同時に溢れ出す白色と淡いピンク色。一等濃くなるチョコレートの甘い香りが広場を満たす。
 それを目にした猫鮫のキマイラ少年が、大声で叫んだ。
「ホワイトチョコレートにストロベリーチョコレートも出てくるのニャー!?何でそれを知ってるニャー!!」
 まさか予知だとは言えず、笑ってごまかす剛士なのだった。


●補足
 剛士とヴァリウードは、プレイングの中でお誘いいただいたら描写します。
 観客のキマイラたち(猫鮫のキマイラ少年含む)も言及があったら同様に描写します。
 一緒にチョコレートファウンテンを楽しむのでも、ぼっちの時に絡む相手にでも、お好きにどうぞ。
ステラ・チェスロック
本当にチョコレートなのね、わっ、すごーい。でもアタシ、なんにも持ってないのよね。ねぇねぇ、誰か……アタシに、果物とかちょーだい?

近くの観客とか、剛士にお願いしてみようかしら?ね、いいわよね、ねっ?

もし貰えたなら間違いなくご満悦でチョコレートフォンデュをするわ。いろんな味を楽しみたいの。貰えなかったら……こっそり【盗む】で失敬しちゃおうかしら?だめ?


二本木・アロ
【WIZ】
面かぶって遊んでたら怪人居なくなってたとかまさかそんな事は。
……おう、マジで終わってんな。なんつーかみんなお疲れ様。

「おーい、たけちゃんヴァリちゃーん」
チョコフォンデュ用に色々持ってきたから剛士達にも分ける。その辺のキマイラ達も好きに食うとイイぞ。
かすてらだろ、ビスカウトだろ、求肥とういろうと……うん、この辺はちょっと変わり種だから好き嫌いありそうだな。
「求肥にチョコ……意外とイケるな?!」

お、ヴァリウード用のアイテムも持ってきたぞ。大型犬用おやつ、牛骨!
……え? チョコと骨の組み合わせはない? そうか、合わねーのか……


鈴木・志乃
はー …
つかれだー…(のび~ん)

あー…余りに腹立ちすぎて生配信すんの忘れちゃったなあ
まあいいか、皆撮ってるみたいだし
勝手にアップしてもらおう

さて、お餅持ってきたからチョコ付けてたーべよっ
もちチョコおいしーんだよねー
(のびーーーーーーーーーん)
(餅を伸ばして遊んでる)

……ん?
君も食べる?(ずいっ)

※絡み
アドリブお任せします


レイチェル・ケイトリン
いろんな生地でクッキーを焼いてみるね。
いろいろ型も用意してかわった形に。

かわった形だと火のとおりにムラができちゃうけど、
わたしの焼き方は念動力でもちあげてのパイロキネシス。

思いのままに熱を加えられるから、焦げ目のつけかたまで
わたしの好きなようにできるの。

「チョコレートフォンデュには果物とかもいいですけど、
クッキーもおいしいですよ」

そして、つづけるね。

「お好きな形にした生地もおなじように焼きます。
『あなただけの想いをこめた
チョコレートフォンデュクッキー』
いかがでしょうか?」って。

よろこんでくれるかな。

いそがしくなったら剛士さんたちに
おてつだいおねがいします。

もちろん剛士さんたちのも焼くからね。


山梨・玄信
ポリタンクを持って来るぞい。
「わしはこんなリア充イベントの為に来た訳ではないのじゃ。…店の仕入れの為に来たんじゃよ」
ポリタンクに泉からチョコを汲んだら、そそくさと帰るぞい。
この場に止まると精神衛生上良くないのでな。


ブリッツ・エレクトロダンス
【路地裏奥家】
泳ぐのかよお前らッ!?と、レーヴェとセットに俺は呆れつつ。
(まあ、俺もジーンズの下に水着を着こんでるからあまりとやかく言えないけどな)
とりあえず、あいつらにチョコしぶきかけられるかもだし俺もジャケットとジーンズをちゃちゃっと脱いどくか。 ※《早着替え》

先の戦闘での疾風神雷による服のダメージを確認。
…摩擦熱すら起こす勢いの、というか実際摩擦熱でジャケットとジーンズにだいぶダメージが行ってるな。
で、持ってきたものは…あ、板チョコが溶けかけてる。マシュマロは…焦げてるけど大丈夫だ、むしろ少し焦げ目が付き過ぎたぐらいか。

あいつらが十分泳いだ辺りで呼んで、マシュマロタイムと行こう。


セット・サンダークラップ
【路地裏奥家】で参加

チョコレートの池で泳ぐっす!
少しもったいない気もするっすが、他の世界ではそうそうできないっすし体をきれいにしてからダイブ!
レーヴェさんと一緒に滅多にない体験を楽しむっす。
ブリッツさんも来ればいいっすのにー。

毛につくと大変なのでチョコレートかけは超手加減。
こっちは鱗なので楽に落ちると思うっすが、レーヴェさんの申し出は嬉しいので泳いだ後は滴が落ちない程度に身繕いをお願いするっす。

上がった後は、お二人ともマシュマロにチョコバナナといういい感じのお菓子を作ってくださってるっすので、遠慮なくごちそうになるっす。
料理とか作れないんでこういうの憧れるっすよー!


レーヴェ・ナハトシッフ
【路地裏奥家】アドリブ歓迎
さて、怪人さんの分もチョコレートを全身で満喫するために
ホワイトチョコレートの池で泳ぐか

チョコしぶきで迷惑が掛からないようゆっくり池に入るが
入ったら一緒に泳ぐセットにホワイトチョコを掛け合って遊ぶか
ドバっとかけると後が面倒だから、顔に少し掛かるぐらいで
バシャバシャと

池から上がる時は
そのままだとチョコでべとべとだから自分でなめれる所は
獅子の毛づくろいでなめておく
セットも手足ぐらいはなめておこうか?水場使うのに不便だろ?

それでブリッツのは……焼きマシュマロか甘い匂いが広がっていいな
お返しに池に入る前に汲んでおいたチョコレートにバナナを付けたチョコバナナをあげよう



「はー……つかれだー……」
 そう零しながら、志乃はチョコレートの泉の縁に座ってがっくりと項垂れた。
 無理もない、チョコレート怪人に迸る怒りを余すところなくぶつけて、叫んで、物理的に怪人を叩きのめしたのだ。
 腹立ちのあまりいつもやっている動画の生配信を忘れてしまったほどだ。そのことを思い出して、ハッとした表情になる志乃。
 だが、周囲のキマイラたちがどんどん撮影した動画をようつ○やらニコニ○やらにアップをしているわけで、志乃が自らアップしなくても動画は出回るだろう、自分の配信を期待しているリスナーの皆はがっかりするかもしれないが。
「まあ、いいか。チョコ食べよチョコ」
 そう言って志乃が鞄の中から取り出したジップロック。中に入っているのは柔らかな丸餅だ。
 一つ一つラップにくるんでいた餅を取り出し、チョコレートの泉に浸す。そう、餅チョコである。
 柔らかくてもっちもち、そしてまったりと甘い餅チョコを、垂れるチョコレートをこぼさないようにしながら伸ばす志乃を、ステラはまじまじと見つめていた。
「餅……!?」
「……ん?そう、お餅。君も食べる?」
 信じられないものを見るような目つきのステラに、志乃は手持ちの丸餅を一つ差し出した。チョコレートは自分の好きなのを付けろ、という言葉を添えて。
「わぁ、ありがとう!他の皆が持ってきてくれるだろうって思って、何も持ってこなかったのよ」
「あー、なるほど」
 ニコニコ笑顔で餅を受け取り、ミルクチョコレートの泉に浸すステラに、首肯する志乃。確かに、観客のキマイラたちがマシュマロやらフルーツやら、沢山持ってきている。それを当てにしたところで誰も責めはしないだろう。
「誰にも貰えなかったら、こっそり盗んじゃおうかとも思ってたのよね」
「いや盗むなよ。フツーに頼んで分けてもらえばいいだろ」
 マシュマロやカットフルーツを山盛りにした大皿を持った剛士が、容赦なくツッコミを入れていった。盗み、よくない。
 そんなツッコミに人差し指を合わせて目を逸らしつつ、ステラは剛士の傍に近寄った。お目当ては無論、剛士の持つカットフルーツである。
「そうよねやっぱり……ねぇ剛士、今運んでるカットフルーツ、いくつか分けてくれない?」
「ん、オッケー。そっちに紙皿とピック置いといたから、それに入れてくれな」
 そう言いつつ剛士が視線で指し示した泉の傍には、テーブルが置かれてその上に皿とピック、それに浸すための食材を乗せた大皿が所狭しと並べられていた。
 ちなみに大皿の食材はキマイラたちが次々に取っていっているため、軽く争奪戦の様相を呈していた。食材を運ぶ係の剛士もヴァリウードもフル回転である。
 それを見てステラもテーブルへと駆けていった。折角のチョコレートファウンテン、色々な味を楽しみたいのだ。その為には同じ食材を複数は確保しなくては。
 無事に皿とピックを確保したステラが、ほくほく顔でチョコレートの泉にイチゴを浸すのは、この数分後のこと。

 ちなみにチョコレートファウンテンの具材としてはピックに挿しにくいためにお店ではあまり採用されないが、かなり安定して美味しいのがビスケット、クッキーなどの焼き菓子である。
 家庭で行うチョコレートフォンデュなど、手で具材を持ってそのままチョコレートに浸す形を取る際には、非常に人気の具材だ。
 そんなクッキーを、レイチェルは大量に生産して減り行く具材の補充に一役買っていた。
「パイロキネシスを使って焼けば、思いのままに熱を加えられるから、焦げ目の付き方までわたしの好きなように出来るのよ。複雑な形でも大丈夫」
「はえー、猟兵ってすっごいニャー……!!」
 普通にオーブンで焼いたら確実に焼きムラが生じるような複雑な形のクッキー生地を、【念動力】で宙に持ち上げて焼き上げるレイチェルの超絶技巧に、鮫猫のキマイラ少年が瞳をキラキラさせて見ていた。
 周囲のキマイラたちも歓声を上げながら、クッキーが焼き上げられる様子を見ている。そして焼けたクッキーはすぐさまチョコレートの泉の中へ。
 たちまち出来上がるチョコディップクッキーに、キマイラたちも大満足である。

 大頭頭ズから奪った被り面を被って遊んだり、キマイラたちの写真撮影に応じたりしていたアロが、大皿に乗せた大量のお菓子を両手に現れた。
 一気に上がるキマイラたちの歓声。ちょうど具材の追加をしに来た剛士とヴァリウードの表情も和らいだ。
「おーい、たけちゃんヴァリちゃーん。チョコフォンデュ用に色々持って来たぞー、お疲れ様」
「サンキューな、アロ。なんか色々あんなー」
「カステラ、ビスケット、求肥……これは、ういろうですか?変わり種でございますね」
 サムライエンパイア出身のアロである。持ち込んだ菓子類はいずれも日本で生まれた菓子や、舶来ものと呼ばれる菓子であった。
 物珍しい菓子の数々に、キマイラたちの手が次々に伸びた。アロも求肥を一つ手に取り、ピックに挿してホワイトチョコレートに浸した。
 真っ白な求肥に、淡い白色のホワイトチョコ。口に含むと仄かな酸味と強い甘味が広がっていく。そこに加わる求肥の優しいふにふに感と、自然な甘さ。
「求肥にチョコ……意外とイケるな!?」
「イケるんだよなー、求肥とか餅とかって。お、カステラでフォンデュもうめーな!」
 剛士がストロベリーチョコレートに浸したカステラを頬張りながら笑顔を見せた。その後ろでヴァリウードも主を微笑ましげに見ている。
 そんなヴァリウードに、ずいと差し出される物体が一つ。
「これは……」
「ヴァリウード用のアイテムも持ってきたぞ。大型犬用おやつ、牛骨!」
 いかにも噛み応えがありそうな牛の大腿骨を差し出して、にこりと笑うアロ。
 ヴァリウードは頭を下げて受け取るも、牛骨を眺めながらぽつりと零す。
「チョコレートに合わせるというよりは……これ単体で齧るものでございますね、これは」
「というかヴァリウード、貰ったところで食うも何もないだろ?そういうの」
「胃腸などの消化器官まで作り込まれておりませんからね。口の中こそモデリングされておりますが」
 そうしてチョコレートを横目に見ながら牛骨を齧り始める、本質はゲームキャラクターのヴァリウードである。口の中を過ぎればデータの海、心臓すら存在しないのが彼だ。
 その様子を見て、ちょっとがっかりするアロであった。

 さて、これだけ大きなチョコレートの泉である。具材を浸けて食べるだけが楽しみ方ではない。
 そう言わんばかりに【路地裏奥家】のレーヴェとセット・サンダークラップ(青天に光を見る・f05234)はしっかり身を清めてからチョコレートの泉に飛び込んだ。
「レーヴェさん、泳ぐっすよー!」
「怪人さんの分もチョコレートを、全身で満喫しないとなー」
「……って、泳ぐのかよお前らッ!?」
 ホワイトチョコレートの泉に飛び込んでチョコレートを掛け合うレーヴェとセットに、ブリッツは呆れ顔だ。
 そう言いながらもジャケットとジーンズをさっさと脱ぎ去って、チョコレートの飛沫をかけられることに備える辺り、やはり仲間である。
 ともあれ脱いだ服のチェックを始めるブリッツだ。先の戦闘で使用した疾風神雷によって、幾ばくかのダメージが服や持ち物に行っていることは想像に難くない。
「えー……ジャケットとジーンズは、だいぶ摩擦熱でダメージ入ってるな。帰ったら補修するか」
 そう零しながらジャケットのポケットを漁ると、中から現れたのは溶けかけて再度固まった板チョコが一枚、そして一部が焦げて変形したマシュマロだ。
「まぁ、この程度なら大丈夫か。むしろ少し焦げ目が付きすぎたくらいかな」
「ブリッツさん、何やってるっすかー?一緒に来ればいいっすのにー」
「うるせー、お前らみたいにはしゃいでられないんだよ、俺は」
 すげなく断られて尻尾を垂らすセットに、身体のあちこちにホワイトチョコをつけたレーヴェが肩を叩いた。
「セット、そろそろ出るか。ブリッツの方も準備できたみたいだし」
「あ、そうっすね」
 セットが頷くと、二人はチョコレートを跳ね散らかさないようにゆっくり泉の外に出た。そして身体についたチョコレートをレーヴェは舐めとり始める。
「セットも手足くらいは舐めておこうか?水場を使うのにそれじゃ不便だろ」
「こっちは鱗なんで楽に落ちると思うっすが……申し出は嬉しいっす。適当に身繕いをお願いするっす」
 そうしてレーヴェによって始まる獅子の毛づくろい。ペロペロと高速で身体のチョコレートを舐めとられ、くすぐったそうに顔を歪めるセットだが、それも一瞬のこと。
 まるでチョコの泉に入った後と言うのが嘘のように、二人の身体は綺麗になっていた。
 そこにブリッツが、焼けたマシュマロを挿したピックを手にやって来る。焦げたマシュマロの甘い匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。
「さぁ、マシュマロタイムと行こうか」
「甘い匂いが広がっていいな、ブリッツ。お返しに、はいこれ、チョコバナナ」
「いいっすねー、料理とか作れないんでこういうの憧れるっすよー!」
「焼きマシュマロもチョコバナナも、料理って言えるほどのもんじゃないだろ……」
 そう苦笑しながらも、レーヴェの差し出したチョコバナナを受け取るブリッツである。
 やがて始まる楽しいマシュマロタイム。そうして友人三人、甘い時間を過ごすのであった。

 やがて、泉の周辺の喧騒が落ち着いた頃。
 玄信が未だ滾々と湧き出すチョコレートの泉に、ポリタンクを持って現れた。
「わしはこんなリア充イベントの為に来たわけではないのじゃ……店の仕入れの為に来たんじゃよ」
 そう独り言ちながらポリタンクに新鮮なチョコレートを汲んでいく玄信。
 三種類のチョコレートをしっかりポリタンクに収めた玄信は、タンクを乗せた台車を押してそそくさと去っていった。
「……ま、リア充が集う場所になるというのなら、それはそれでいいことじゃ。わしの精神衛生上は良くないがな」
 そう言い残して口角を持ち上げつつ、一人去っていく玄信。
 その背中を押すように、甘い香りを含んだ風が一陣、ふっと通り抜けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月30日


挿絵イラスト