ぼとり。
何の音だろう。
下を見ると、誰かの腕が落ちている。
シュウシュウと。
ジュウジュウと。
薬臭い泡を立てて。
誰かが笑う。楽しいねと。
誰かが笑う。楽しいねと。
何故か、その子がどんな顔をしているか解らない。
こんなに目の前にいるのに。
どの子もどんな顔をしているのか解らない。
少し前までは、違う顔だったから。
どさり。
脚がもげた。
あるけない。
でも良いの。誰かが代わりに足になってくれるから。
誰かが嗤う。楽しいねと。
私も嗤う。楽しいねと。
嗚呼
........こんなに気持ち良かったんだ....ひとつになるって
....。
●邪神の胃袋
その日のグリモアベースは、紅かった。
【Emergency】の文字が表示された真紅の警告ウインドウが、耳に響く不快な警報音と共に宙を埋め尽くしていく。
猟兵達に背を向け、泡沫の如く次々現れる情報画面を手で操作するピンク髪の少女はグリモア猟兵ミア・ウィスタリアの様だが……?
彼女は大量の情報画面を宙に整頓すると改めて猟兵達に振り返った。
「ようこそ皆さん、いつも妹がお世話になっています。私はユノ・ウィステリア。ミアの双子の姉に当たります。」
成る程容姿こそ瓜二つだが、よく見ると瞳の色が違う。
和かな挨拶とは裏腹に、彼女の顔は険しい。
「残念ですがそう悠長にもしていられません。UDCアースの市街地で邪神が復活する事件が起きています。既に犠牲者も多数出てしまっている様で……」
そう言うと彼女は背後に浮かぶホログラムウインドウの一つを手元に寄せると猟兵達の前で拡大した。
映っているのは球根……だろうか。
聳え立つ開花直前の花の蕾の様な、ふっくらした赤い物体だった。表面が時折不気味に蠕動し、鋭角に窄まった頂点から水蒸気を噴き上げている。
気になるのは縮尺がおかしい事だ。これがジオラマの類でなければ、どう見てもコレは10階建のビルに相当する大きさがあることになる。
「これは「邪神の胃袋」と言われる結界の一種です。その名の通り復活した邪神が力を蓄える為の巣として利用する物で、人間を触媒として発現します」
ユノが別のウインドウを呼び寄せ、内部映像なのだろう画像を見せる。
最も、風景と言うよりは、胃カメラの検査結果ですと言った方がまだ猟兵達も納得出来たかもしれない。
そこは、サーモンピンクのぶよぶよした肉の壁が絶え間なく蠢き、止め処なく粘液が滴る名状し難い回廊だった。
「この回廊は、内部に取り込んだ生物を消化して邪神の眷属に作り変えます。そして、中が眷属で一杯になると、破裂して外に彼らを撒き散らすんです。最悪な事に
........今回の発生場所は、とある女子高校でした」
一人の猟兵が喉を鳴らした。
つまり、もし内部で、その眷属とやらに遭遇した場合……。
「はい。……結界は、学校全体を丸ごと飲み込む様に広がっています……十中八九、校内にいた生徒か、教職員の成れの果てでしょう
........残念ですが、倒すしかありません」
しかし今なら。
今ならまだ、外部に飛び散るのは防げるかもしれない。
MAPが表示された新たなウインドウが現れ、矢印で内部へのルートが示される。
突入が可能なのは球根の真下にある生物を吸い込む口に当たる部分と、頂点にある水蒸気の噴出口の様だ。
「既に私の方で内部への突入ルートは確定しておきました。皆さんには即刻この「邪神の胃袋」内部に潜入して頂き、この事態を引き起こした元凶の排除をお願い致します………正直、辛い戦いになるかもしれませんが……皆さんの御武運を、お祈りします」
ユノがそう締めくくると、掲げた天球儀型のグリモアが激しく回転を始め転送が始まる。
噎せ返る様な甘い匂いが、猟兵達の鼻を突いた。
龍眼智
エロ依頼だと思った? 残念だったな! グロ画像だよ!(下衆顏。
龍眼智です。
さぁ皆様! 楽しい楽しいSANチェックのお時間でございます!!
邪神の住処に押し入ったが最後、何が現れようと前に進まなければなりません。
最奥部の邪神を倒すまでは!!
皆様の正気度が尽きるのが先か!シナリオが完結するのが先か勝負と行きましょう!
因みに、本シナリオは基本的にシリアス物になる予定ですが、状況的に服や防具が破壊されるラッキースケベ展開になる事はございます。その辺りもお覚悟を。
※防具が破壊されても装備としてのアイテムには影響を与えません。
それでは、ご参加をお待ちしております。
フフ……フフフフ………フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ。
第1章 冒険
『溶解粘液滴り触手蠢く邪神の住処を突破せよ』
|
POW : 溶解液と触手を切り払いつつ強引に突破する
SPD : 溶解液が落ちてきたり触手に捕まったりする前に急いで突破する
WIZ : 溶解液や触手の動きを観察して避けながら突破する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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ゾーク・ディナイアル
「キャハ…ぐっちゃぐっちゃのヌッチョヌチョ、堪んないなぁ…これは楽しく遊べそうだよねぇ!」
☆戦術
SPD勝負
「もうこんなにぐちゃぐちゃだからさぁ、何したって構わないだろぉ!?」
溶解液、触手、ボクを害し犯そうとするものは全て『見切り』と強化兵戦技《予測回避》で華麗に躱して妖剣を『怪力』で振るい『二回攻撃』でぶった斬って道を拓くよ。
「邪魔するとさぁ、真っ二つになっちゃうよぉ!」
立ち塞がるのがどんなカタチをしてようが、構わず斬って、時には『傷口を抉って』、楽しみながら奥へ奥へと進軍するよ。
「キャハハ!身体がアツ区なっちゃうなぁ、もっとグチョグチョにしてあげるよぉ!」
※アドリブ大歓迎、エログロOK!
レンズ・リンド
「被害者から眷属を作り出す邪神の胃袋、最っ高の...いえ、なんと卑劣な邪神でしょうか
。............っひひひひひ。でも...もう眷属になってしまっているなら仕方ないですよね倒すしかないですよね。なんなら1体を私のペットにしても良いですよね!...今日こそはオレの可愛いペットを増やすぞ~!!」
と新しいペット(使役UDC)を増やすべく作戦に参加しました。
周囲の触手に目移りしながら、小さな身体を活かして触手と溶解液を避けて進みます。
●蠢く肉蛇の小径
「キャハ…ぐっちゃぐっちゃのヌッチョヌチョ、堪んないなぁ…これは楽しく遊べそうだよねぇ!」
にちゃっ…ぐちゃっ…ぶじゅるっ……
白濁に染まる粘液に塗れたぶよぶよの地面を踏みしめながら、いの一番に深淵へと飛び込んだのは銀髪のエルフ、ゾーク・ディナイアル(強化エルフ兵の出来損ない・f11288)。
胃袋の下側から突入する事を選択した彼女の様な者たちをまず待ち受けていたのは粘液が雨の様に滴る細長い通路だった。
壁を走るボコボコと脈打つ肉瘤や血管、フジツボのような細かい繊毛でビッシリと埋め尽くされ、ジクジクと汚らしい膿が絶えず湧き出る粘膜の床。
サウナもかくやと言うほどの濃密な湿気に満ちた大気は、甘い匂いと腐った卵の様な臭いが入り交じり、息をするだけで吐き気を催しそうだ。
しかしゾークはそんな様子など気にも止めず、剣を構えたまま意気揚々と歩を勧めて行く……と、その瞬間。
ぐにゅる……じゅる……じゅるるるるるる!
突如、通路全体が大きく脈打ち形を変える。
壁の到るところが盛り上がり、内臓を思わせるぬらぬらと粘液でコーティングされた触手がゾークに向かって全方位から伸びてきた!
「アハァ……お出ましかなぁ? で、も……邪魔するとさぁ、真っ二つになっちゃうよぉ!」
彼女は、まるで初めからそこに触手が伸びてくるのが解っていたかの様に身体を捻り触手の第一撃を躱すと、そのまま回転の勢いを載せて周囲の触手を一斉に切り払った!
断面から黄色い汚汁を噴き出しながら床に落ちる触手の残骸は、陸に打ち上げられた魚めいた動きでビチビチと跳ね回る。
ゾークは凶悪な笑みを浮かべると剣を逆さに持ち替え、切り落とされた触手の残骸を剣でめった刺しにした!
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
!!!!!
「キャハッ!キャハハハッ!もうこんなにぐちゃぐちゃだからさぁ、何したって構わないだろぉ!?嗚呼……困ったなぁ…身体がアツ区なっちゃうなぁ、もっとグチョグチョにしてあげるよぉ!」
新たに壁から伸びてくる触手も、そちらに眼すら向けずに切り払い、彼女はひとしきり触手と戯れるのであった……触手の汚汁で服が溶け始めている事にも気付かず……
「まぁ……お楽しみの様で……ひひひひ……」
その様子を……遠巻きに見つめている小さな影がある。
UDCエージェントのレンズ・リンド(陰鬱なフェアリーのUDCエージェント・f05600)だ。
触手は今の所此方には向かってこない。一応周囲を警戒しつつも、既に彼女の頭の中は未知なる自分のコレクションとの対面の瞬間で頭が一杯だった。
「ひひっ……どうやらアレの後ろを付いていけば楽が出来そうですね……被害者から眷属を作り出す邪神の胃袋、最っ高の...いえ、なんと卑劣な邪神でしょうか。
............っひひひひひ。でも...もう眷属になってしまっているなら仕方ないですよね倒すしかないですよね。なんなら1体を私のペットにしても良いですよね!...今日こそはオレの可愛いペットを増やすぞ~!!」
通路に反響する声に、肉の天井から粘液の塊がずるぅりと滲み出し、いやらしく糸を引いてレンズの頭上に降ってきた。
間一髪、身体一つ分横にずれて回避する。
「おっと!?……ひひ、危ない危ない…動けなくなるところでした」
こんな所でリタイアなんてもったいなさすぎる!
レンズは、満足したのか再び奥へと歩を進めるゾークをこっそりと追いかけるのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
須藤・莉亜
「おお、グロいねぇ。中はもっとヤバいのかな?」
中々スリルがあって楽しそう。
頂点の水蒸気の噴出口から、眷属の腐蝕竜さんを召喚して突入。
腐蝕竜さんの下に隠れてつつ急いで突破を目指す。
最悪、僕は腐蝕竜さんの口に隠れて、腐蝕竜さんに強行突破してもらう。
「さて、どこ行けば敵さんに会えるのかな?血を吸えるヤツだったら良いけど。」
アドリブ歓迎
●烟る魔の山嶺
上空を流線型の影が征く。
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は自身の召喚した腐蝕竜の足に捕まり、眼下にて口を開ける邪神の胃袋を見下ろしていた。
パクパクと不気味に蠕動しながら濛々と水蒸気が立ち昇る噴出孔は宛ら噴火前の火山とでも言おうか。
「おお、グロいねぇ。中はもっとヤバいのかな?」
スリルがあって楽しそうだと口端を歪めながら内部の様子に思いを馳せる。
「さて……流石に素通り出来るって事もないだろうけど……なんかあるとしたらあの煙かな?」
触手がわんさと待ち構えていた地上側入り口と違い、頂点の噴出孔には別段障害になりそうなものは見当たらない。
莉亜は限界まで水蒸気の柱に近付くと、ポケットから一匹の拳大の蜘蛛を取り出した。掌に蜘蛛を乗せると水蒸気に向かって翳す。
蜘蛛から更に小型の子蜘蛛達がバラバラと排出され、風に乗って水蒸気の柱に突入した。
ジュゥゥゥゥ……
果たして子蜘蛛達は、蒸気に触れた瞬間炭酸が弾ける様な音を立てながら溶け崩れて消えた。口笛を吹く莉亜。
「なるほどね……迂闊に飛び込むと僕もこうなるわけだ」
ならばと彼は作戦を変える。
腐蝕竜の身体をよじ登り首の上に到達。そのまま竜に口を開けさせると素早く口内に身体を滑り込ませた。
「よし、じゃあ行こうか。全速力で頼むよ」
口が閉じられ莉亜の姿が完全に口内へと消える。竜はそのまま一度高度を上げると高高度からの急降下に転じた!
弾丸と化した竜の影が一直線に噴出孔に突き刺さる!
宛ら大気圏に突入した宇宙船の如く、瞬く間に竜の鱗が爛れて剥がれ、尾を引いて宙に投げ出されていった。
後少しで骨まで剥き出しになろうかと言う所でようやっと溶解霧の領域を抜けた。
ブヨブヨと蠢く肉の床に胴体着陸を敢行し、そのまま動かなくなる腐食竜。
固く閉じられた牙の間からヌッと莉亜の手が現れると竜の口をこじ開け這い出してきた。
「さて、どこ行けば敵さんに会えるのかな?血を吸えるヤツだったら良いけど。」
成功
🔵🔵🔴
ナハト・ダァト
WIZ行動
[世界知識][情報収集]によって計算
更に、[地形の利用][罠使い]の技能も駆使しテ
パターンを想定しておこウ
一応、危険の際にハ
[オーラ防御]の準備ダ
[激痛・呪詛・毒耐性]で何とかなるかナ?
駆け抜ける時は
[ダッシュ][早業]を使うヨ
【バウンドボディ】で俊敏性を上げテ[武器改造]で体を自在な形に変化させておこウ 突破しづらい道がある可能性も捨てきれないからネ
【一ノ叡智・王冠】ハ耐久力を向上させるヨ
【三ノ叡智・理知】を併用させておけバ、回避の可能性も上げられるかナ
※アドリブ歓迎
イクス・ヴェルデュール
…平穏な日常にあっていいもんじゃねぇよなぁ
巻き込まれた側の事を思うとホントやるせない
元凶とやらに言いたい事はごまんとあるが、今はぐっと堪えて
起きちまった以上、やることは一つだけ
この悲劇はここで止める、絶対にだ!
俺は球根の真下からの突入を目指す
電脳ゴーグルを展開して、
予め突入口まで最短で辿り着けるルートは割り出しておくぞ
今は一秒でも時間が惜しいからな
触手の動きや場所はしっかり観察
気付かれずに通るのが難しい場所とかがあるなら、
物陰で【翠の指先】を使ってから静かに通り過ぎれねぇか試す
もし近くに困ってそうな仲間がいるなら声かけてみるかな
効果がないようなら…まぁ仕方ねぇな
一気に駆け抜けて強行突破だ!
●貫く漆黒の槍
所変わって再び地上組。
イクス・ヴェルデュール(春告のひかり・f01775)は電脳ゴーグルを展開し通路の先を油断なく観察していた。
視線の先では今も濃密な腐臭が漂い、蛆の様な繊毛が騒々と蠢いている。
(…平穏な日常にあっていいもんじゃねぇよなぁ)
頭の中で悪態を付きつつルート検索と触手の行動予測の手は止めない。今は一秒でも時間が惜しいのだ。
しかし、現状問題なのは通路の触手だ。
「パターンが解んねぇ……」
「そうだネ……当初の想定としてハ、予め生えている沢山の長い奴が一定のパターンで動いていルのを想定していたガ……アレは違うネ。恐らく近付くものに反応シ、何処からでモ、無限に湧き出してくル……」
頭を掻き毟るイクスにそう返すのは、同じく触手のパターンを観察していたナハト・ダァト(聖泥・f01760)だ。
「クソっ……やっぱり強行突破しかないのか……」
「まァ話は最後まで聞き給えヨ。近付くと生えてくるという事はつまリ、素早く駆け抜ける事が出来れバ、襲われる前に抜けられるかもしれなイと言う事ダ」
「………この足場をか?」
言うとイクスは自らの足元を踏みしめた。
まるでイカかタコでも踏んでいるようなブヨブヨとした粘液に覆われた肉の床はお世辞にも足場が良いとは言えない。先程一足先に入っていったフェアリーの様に空でも飛べと言うのだろうか。
しかしナハトは自信たっぷりに胸を張った。
「そこは私に任せてくれ給エ。君は只、私を思いっきり投げてくれれば良いんだヨ」
イクスの目が点になった。
ナハトの作戦はこうである。
まず自身がフック付きロープの様な細長い形状に変身し、先端を誰か(この場合はイクス)に投げてもらう。そして先端が触手地帯を抜けた所まで到達出来れば、後は投擲者を引き上げる要領で身体を元に戻せば良い。
斯くして今、20m越えの長大なフック付きロープに変形したナハトをイクスが鎖分銅の様に振り回していた。
イクスのユーベルコード【翠の指先】の効果で二人共透明になっているので、相手がもし視覚に頼っていても大丈夫だ。
「良いかイ、チャンスは一度だけダ。あの壁を一度刺激してしまうと何が起こるか解らないヨ」
「任しとけよ、コントロールにはちょっとばかし自身があるんだ。まぁ、紐付きは初めてだけどな」
イクスは先端部のフックを勢いよく振り回しながら慎重に狙いを定めた。
狙うのは通路奥に天井の肉の出っ張り部分だ。
「いっっっけぇぇぇぇーーー!!」
投擲!
遠心力で勢いを付けたナハトロープが猛スピードで通路を突き抜け通路内の天井に突き刺さった!
同時に先端部の耐久を上げていたナハトが肉壁をガッチリホールドしてアンカーになる。
「上手く言ったようだネ。さてと、では此方に来てもらおうか」
ナハトが変身を解くため外まで長く伸びた腕を一気に縮める。
「うおっ!?うおおおおおおおおおお!?」
先端を握っていたイクスは反動で矢のように宙を舞うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳩麦・灰色
【SPD】
恐らく二十歳にもなってない子達がもう被害に……絶対許されない
すぐに動こう。これ以上の惨劇は、私達が阻止する
……にしても、溶けるんかー。上着パーカーだけやけど大丈夫やろか
いや、溶けても目的は変わらんし意思は変えんから大丈夫やろ。うん。
◆
侵入後、目視による確認と【第六感】を信じて【ダッシュ】、【地形の利用】で奥へと駆け進む
溶解液や触手を確認でき次第、手を鳴らしてUCを使用、回避を試みる
回避し難いモノがあれば、【武器改造】された鉄パイプを用いて【衝撃波】、【範囲攻撃】による相殺を試みる
「よし、上手くいった。これなら進めそうですねー」
「うわあっつ! キモい液体かかってもうた!」
●滑る鉄錆の残響
そして、ここにも又、深淵へと降り立った一人の女がいた。
パーカーにジーンズと言うカジュアルスタイル。
手にした鉄パイプを耳に当て、拳で軽く叩きながら音の反響を確認している。
名を、鳩麦・灰色(音使いおおかみ・f04170)と言った。
「よっしゃ……大体解った」
鉄パイプを額から離すと通路の奥へと視線を送る。
恐らく、この奥にいる。
根拠はない、しかし彼女の直感がそう告げていた。
(かわいそうになー……まだ二十歳にすらなっていなかっただろうに…)
故に、これ以上の惨劇は絶対に許されない。
彼女は鉄パイプを再度担ぐと、爆発的な加速で粘液の飛沫を上げながら通路を駆け出した。
グボッ、ジュバアアアッ
急な衝撃に驚いたように通路全体が波打つように蠕動し、壁や天井から次々と汚らしい湯気を立てた触手が現れ、灰色を拘束するべく襲いかかってくる!
「掻い潜れ、"三番"!」
通路内に響くフィンガー・スナップ。
次の瞬間、灰色の世界が止まった。
秒速360mで広がる大気の波紋は襲い来る触手の位置を一つ残らず正確に感知する事を可能にしていた。
視えてはいない、だが、見えている。
後は、それに従って避ければいいだけ。
左、右上、背後、上、右下、前方斜め。
身を捻り、身体を反らし、触手と粘液の嵐をくぐり抜ける。
いつの間にか、触手は追ってこなくなっていた。
「よし、上手くいった。これなら進めそうですねー」
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『不定形少女』
|
POW : あたまはこっちにもあるよ
自身の身体部位ひとつを【自分が擬態している少女】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD : みんなとかしちゃうよ
【触手状に伸ばした腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【衣服を溶かす溶解液】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : いっしょになろうよ
【全身を不定形に変形させて】から【相手に抱きつくために伸ばした身体】を放ち、【少しずつ溶解させていくこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
通路を抜けると、広大な空間に出た。
どうやら本格的に邪神の胃袋内部へと侵入した様である。
粘液の量が通路の比ではない。
宛ら洪水で冠水した路面の如く、猟兵達の足首を覆う水位で床を埋め尽くしている。
天井から滝の様に滴り、壁は流れ落ちる粘液でコーティングされ、ぬらぬらといやらしく光っている。
ーーだが、決定的に違うところが一つ。
ーーーー粘液の濃密な甘い臭いに混じり、通路には存在しなかったものがある。
即ち、獣臭。ニクノニオイ。
そして床を覆い尽くす粘液に混じっている破片
......あれは服の残骸ではなかろうか。
猟兵の一人がそれに気付いた、その瞬間。
床の粘液が【目を開けた】。
まるで泥の柱が吹き上がる様に、何本も、何本も、柱が増えていく。
その表面は汚らしく濁り、至る所から人体のあらゆる部位が絶えず浮き出ては溶解され沈んでいく。
目が、耳が、口が、鼻が、顎が眉が乳房が手が足が咽頭が耳小骨が食道が胃が肺が心臓が膵臓が腎臓が肝臓が小腸が大腸が十二指腸が脾臓が陰茎が女陰が軟骨が脊髄が胆嚢が下垂体が松果体が甲状腺が前立腺が■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■し過ぎて、もう、わからない。
「フフフ....フフフフフフフフフフフフフフフフフフ
.....」
肉塊が笑う。
肉塊が嗤う。
猟兵達は悟った。
これが、眷属だと。
これが、花も恥じらう少女の成れの果てだと。
この瞬間も、泥の柱は増えつつあった....
須藤・莉亜
「流石にこれの血は吸えないなぁ。お腹壊しそう。」
さっさと終わらせてあげよう。
戦闘の邪魔にならなそうな場所に、地獄の門を召喚。門を開き、悪魔大王さんに力を貸してもらう。
敵さんを彼の右腕で薙ぎ払ってもらってこちらに近寄らせないようにする。
僕は対物ライフルのLadyに血を上げつつ、【スナイパー】の技能を使いつつ敵さんを狙撃。
「全部バラすのはちと根気がいるかねぇ」
手早く手堅くバラさないと。
ナハト・ダァト
よく見る物ダ
いずれモ、医術をやっていれば見ない経験などないヨ
寧ろ、素材がわかった分弱点や構成も分析しやすくて助かるヨ
世界知識、医術、情報収集
取り込まれた人体が敵のどの部分に使用されているか把握するヨ
激痛・毒・呪詛耐性で汚染から身は守れる
味方の援護にハ光を放って目潰し、かばうを使おうカ
全体が柔らかけれバ、弱点を探す攻撃も手を抜かずに済ム
武器改造、バウンドボディ、一ノ叡智
で身体強化、弾力、俊敏性の向上
2回攻撃も併せテ
触手を用いた解体術をお見せしよウ
属性攻撃、傷口をえぐる
弱点攻撃を行うヨ
元は肉体ダ…熱や電気にハ弱いだろウ?
※アドリブ歓迎
ゾーク・ディナイアル
「キャハ、すげぃ…こんな最高の楽園なかなかないよぉ!もうたまんない!」
☆戦術
SPD勝負
「もっとぐちゃぐちゃのニチャニチャにしてあげるからねぇぇぇ!」
肉塊の群れに突っ込んで強化筋肉『怪力』を起動、そして強化兵戦技《高速剣》始動!
衝動のままに『二回攻撃』も駆使して肉塊をぶった斬りまくり、隙あらば苦悩の梨を突っ込んで魔力を送り肉塊を中から壊して『傷口を抉る』よ。
「あはぁ…気持ちいい…これ元は女の子なんだよねぇ…えへ、えへへ…イケナイ気分になってきちゃう」
反撃が来たら『見切り』で躱してすかさず『カウンター』して、ボクのお愉しみは誰にも邪魔させないよ。
「んひひひひ!」
※アドリブ歓迎、エログロOK!
「アァあァあァあ……あ…アハ……あはひはあはあ」
ぐちゃぐちゃと、ずるずると、アメーバの様に這いずりながら猟兵達へと襲いかかってくる肉塊達。
それは怨嗟に塗れた、魑魅魍魎と化した今尚苦しみにのたうつ苦悶の声。
ひしりあげ、重なり合う慟哭に、湿気に満ちた蒸し暑ささえ感じる周囲の気温が急激に下がった気がした。
対する猟兵達の反応は三者三様だ。
「流石にこれの血は吸えないなぁ。お腹壊しそう。」
取り出した煙草に火を付けながら気怠げにつぶやくのは須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)。
「なるほド……そういう事かネ」
寧ろ構成素材が解って助かると無表情で言い放つのはナハト・ダァト(聖泥・f01760)。
ゾーク・ディナイアル(強化エルフ兵の出来損ない・f11288)に至ってはヨダレをたらさんばかりの歓喜の表情を浮かべていた。まるで遊園地の入り口をくぐり抜けた童女のそれである。
「キャハ、すげぃ…こんな最高の楽園なかなかないよぉ!もうたまんない!」
しかし、それでも三人に一つだけ共通する事があるとすればーーー
ーー彼女達を、早いところ楽にしてあげようと言うことだ。
「道は開くから、後宜しく。開門。んでもって第九圏へ直結。さあ、今だけは僕に従ってもらうよ」
戦端を開いたのは莉亜が肉塊達の真横に開いた地獄の門からの一撃だ。
黒々とした巨大な腕が水面を擦るように薙ぎ払い、数体の肉塊が湿った音と共に飛び散った。
蛆が断末魔を上げるかの様に粘液の中をのたうち回る大腸を軍靴が踏み付ける。
莉亜の対物ライフル【Lady】の援護射撃を受けながら、妖剣《ガディス》を振りかぶったゾークが敵陣のど真ん中に突っ込んだのだ。
ドクンと脈拍が激しさを増し、ゾークの強化筋肉に大量の血液を送る。
彼女は全力疾走の勢いを殺さず正面の肉塊を袈裟斬りに斬り捨てると、返す刀で肉塊の頭部と思われる辺りに深々と剣を突き立てる。そのままもう片方の手で肉塊を掴むと力任せに刺した部分から上を引き千切って捨てた。
飛び散る粘液と膿、細切れになって吹き飛ぶ臓物。血と汚泥の暴風雨の真っ只中で銀髪のエルフが踊る。粘液を全身に浴びた彼女の軍服は、瞬く間に薬臭い泡を立てて腐り落ちた。褐色の豊満な肢体が露わになる。
「あはぁ…気持ちいい…これ元は女の子なんだよねぇ…えへ、えへへ…イケナイ気分になってきちゃう……もぅ、最高じゃないかぁ!!」
しかしいくら人体の部位で出来ているとはいえ、相手は液体生物だ。切られようが潰されようが飛び散って粘液の海に沈めば、直ぐ様他の個体と再統合され泥の柱として立ち上がる。
ゾークの片足を肉塊の一つが伸ばした触手で捕縛する。
そのまま彼女を引き倒して覆いかぶさらんとしたその瞬間、眩い閃光が空間を灼いた。
「AHIH」
漆黒の影の様だったナハトの身体が真っ白に輝き目潰しの役割を果たしていたのだ。
「ギキィィィィヤァァァアァァア!!」
閃光を嫌がるように肉塊達の表面が蠢き、浮き出た目が閉じられる。
「なぁにやってるんだよ…僕のだぞ!」
お楽しみを邪魔されたのが気に入らなかったか、ゾークがナハトの首目掛けて斬撃を繰り出す。
仰け反って刃を回避しつつ解説を始めるナハト。
「おっと、危なイ危なイ、物騒な人だ。剣で幾ら斬ろうとモ無駄だヨ。彼ラ……否、彼女らハ、複数の人間の生体器官が、出鱈目に組み合わさって構成さレているようダ。だガ、個体ごとニ独立するなラ脳が必要……そこハ……混ぜられなかっタみたいだネ」
言うと彼の両腕が金属質な音と共に鋭利な先端へと変化する。
そのまま音もなく一体の肉塊に忍び寄ると、一瞬の早業で表面を切開し内部を露出させていた。
ヘドロの様に蠢く内臓を一つ一つより分けて縛り、掻き分けていくと中央に脳髄が姿を現す。
「オヤ、読みどおリダ……さテ、これヲ……」
躊躇なく触手で貫くと触手の先端から激しい電流が流れる!
肉塊が飛び跳ねる勢いで激しく痙攣した。
【LEBENS BAUM】。普段の彼は、小さな診療所を営む医者だ。
五臓六腑、骨、筋肉。よく見る物だ。
いずれも、医術をやっていれば見ない経験などない。
勿論ーーーーその壊し方も、熟知している。
「元は肉体ダ…熱や電気にハ弱いだろウ?」
全身から黒煙と共に肉の焦げる臭いを噴き上げて、肉塊はボロボロと崩れ去った。
今度こそ、起き上がってはこなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
鳩麦・灰色
これは中々、キツいもんがあるな
でも躊躇いも容赦もせえへん。それはウチらの為にも、あの子達の為にもならんって思うから
さて、行きましょうか
◆
目標:
「敵集団中央にてUCを効率よく使い、距離をとる」を繰り返す
行動:
足下の液体から敵が出るのなら、【クライミング4】【ダッシュ4】【地形の利用8】でとにかく止まらない
そのまま無理はせず敵集団中央へ向かう
その際【見切り2】【第六感2】【残像1】にて回避重視
隙があれば【衝撃波5】を込めた【武器改造4】鉄パイプで攻撃または防御しつつ走り抜ける
出来る限り中央へ侵入後【範囲攻撃4】のUCを使用し素早く離脱する
「悪いけどあんたらは、君達はここで止まるべきだ」
アドリブ歓迎
嗚呼――これは中々……キッツい奴やわ……
続々と目の前で増殖する蠢く赤黒い汚泥の群れ。
這うように動き、絶えず表面が蠢き、湿った音を立てて臓物が絡み合うように互いを擦り合わせる。
隙間から覗く濁った目が訴えていた。
オイデヨ……オイデヨ……キモチイイヨ……アナタモイッショニナリマショウ……
鉄パイプを担いだ紫髪の女、鳩麦・灰色(音使いおおかみ・f04170)は、何かを振り切る様に首を振ると、真っ直ぐに彼女らと相対した。
――躊躇いはしない。
―――容赦もしない。
それはきっと、自分たちの為にも、彼女達の為にもならないから。
「悪いけどあんたらは、君達はここで止まるべきだ」
肉塊達が触手を伸ばしてくるのと、灰色が飛び出すのは同時だった。
蛇の様な軌道で襲いかかってくる触手に対し彼女が取った策とは……【とにかく止まらない事】。
身体を捻って触手をかわし、肉塊達の外周をすり抜ける!
飛び散った粘液の飛沫が服を溶かしボロ布と化していくが、最早構って等いられない。
何より――服が溶ける程度、生きながらに身体を溶かされ化物にされた彼女達の苦痛に比べれば……足元にも及ばない。
すれ違いざまに鉄パイプの一撃を入れそのまま離脱。壁を蹴り、三角跳びの要領で壁面を駆け上がる。
勢いのままに天井近くまで来ると、壁を蹴り、眼下の肉塊達の中央目掛け矢の様に急降下を仕掛ける!
触手達がここぞとばかりに一斉に触手を伸ばしてきた。空中ならば回避は不可能と踏んだか。
しかし如何なる体重移動の妙技か!彼女は最小限の動きで次々と触手をかわすと肉塊達の中心に瀑布の如き粘液の波を立て着地した。
この一瞬が、運命を決めた。
「広がれ、"四番"!」
着地の反動で低い姿勢を取っていた彼女は、急降下の勢いを殺さず、その場で体ごと鉄パイプを一回転。
一瞬遅れて、放射状に水面が波立ち、甲高い音が空間に鳴り響いた。
「ギッ!ギィィィィィィィィィ!!」
それは、物理的な衝撃すら伴う音波の壁。
肉塊達の身体が不気味に膨らむと、巨大な水風船となり、汚物を撒き散らした。
成功
🔵🔵🔴
ウィーリィ・チゥシャン
知り合いのシャーリー(f02673)と一緒に悲劇に飛び込む。
悲劇を、終わらせるために。
前に出て、大包丁の『二回攻撃』で眼前の眷属たちを切り払い、炎の『属性攻撃』と『神火の竈』で眷属たちを焼き払って道を拓き、先を急ぐ。
少しでも傍にいる知り合いの負担を減らせるように。
犠牲者を出さないため、かつての犠牲者たちを殺す。
わかってる。こいつは偽善かも知れないって。
……それでも。
目を逸らさずに、
耳を塞がずに、
痛みから逃げずに、
ただ、前に進む。
シャーリー・ネィド
ウィーリィくん(f04298)とペア
覚悟はしていたつもりだったけど、甘かった
一体どれだけの悪意があったらこれだけの地獄を作れるの?
一人だったら逃げていた
でも、ボクたちは一人じゃない
だから、逃げない
そばにいるもう一人のために
【バトル・インテリジェンス】を起動させて震える手と心を抑え、【スナイパー】と【援護射撃】、【2回攻撃】で前方の敵を薙ぎ払って道を切り開く
畏れを、この奥にいる元凶への怒りへと変えて
レンズ・リンド
「げっ...不定形かぁ。ペットたちとは相性が悪そうだ...そのうち対策しないとなぁ。さて、となると...私は援護に回るとしますか。回復ついでに、切れ端とか回収してペットにできないかなぁ。」
と呟きながら戦場を飛び回ります。
戦闘中、ダメージを受けて本体から離れた不定形の一部を捕獲できないか試しながら、UC『生まれながらの光』でダメージのある猟兵を回復して回ります。
※アドリブ、エログロ歓迎です。
「げっ...不定形かぁ」
胃袋の天井付近、正に戦場の隅っこでレンズ・リンド(陰鬱なフェアリーのUDCエージェント・f05600)の独り言が大気に溶けて消えた。
これは困った、我が家のペット達とは余り相性が良くなさそうである。その内何らかの対策を講じる必要があるかもしれない。
と、頭の中で自身の新しいお友達捕獲計画に区切りを付けると、眼下の戦況を改めて見下ろした。
「さて、となると...私は援護に回るとしますか。回復ついでに、切れ端とか回収してペットにできないかなぁ」
彼女の目がふと、一組の少年少女を捉えた。
彼らの眼前には今、地獄が広がっている。
濃厚な腐臭と血臭をはらんだ蒸し暑い大気、にちゃにちゃとぬかるんだ粘液の海、その上をのたうち回る様に這い回る臓物と粘液の塊が、触手を振り回して先行した猟兵達と戦っている。
斬られ、潰され、焼かれて粘液の海に沈み、再び汚泥の柱となって再生するアレらは、全てが、元は人間だったのだと言う。
それも、自らとほぼ歳の変わらない、青春真っ盛りの少女達。
「ッッッッ
!!!!」
少女は耐え難い光景に強烈な吐き気を覚え、蹲る。
覚悟はしていたつもりだった。
だが甘かった。
一体どれだけの悪意があったら、これだけの地獄を作れる?
「………立てシャーリー……目を逸らしちゃダメだ……」
血を吐く様な声。
傍らの少年が蹲る少女、シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)を叱咤する。
そうだ、自分には彼がいる。
一人だったら、きっと逃げていた。
でも、ボクたちは一人じゃない。
だから、逃げない。
そばにいるもう一人のために。
「ありがとウィーリィくん……もう大丈夫」
「見ただけでそれじゃ、この先持たないぞ……何つったって、今からアレを倒して先に進まないといけないんだからな」
少年――ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は、厳しい表情でバンダナを締め直すと、巨大な包丁を抜き放った。
そう、これから、アレを殺す。
犠牲者を出さないため、かつての犠牲者たちを殺す。
解っている。こいつは偽善かも知れないって。
―――でも、誰かがやらなければいけない事だ。
シャーリーの召喚したドローンが彼女の背中に張り付き外骨格を形作った。マスケット銃型ブラスター【シューティングスター】を構えると、ウィーリィに目配せを送る。
ウィーリィは頷きを返すと、包丁を構えてタイミングを見計らう。
乱戦の中にいる肉塊の一体が、此方を向いた。
浮き上がる目。振り上げられる触手。金切り声。
ブラスターの熱戦が、肉塊の目を貫通した。
すかさずウィーリィが飛び出す!
「人類で最初に火を手にした人間はこう叫んだ!! 我こそは料理人なりィィイイイーーーッッ」
焔をまとった包丁を振りかぶり肉塊へ突撃すると一気に数体、袈裟斬りに斬り捨てた。切断と同時に断面を焼いているからか、汚泥や膿の跳ね返りはない。
「ギィィィッ!ギィィィィィィィィッ!!」
新たな肉塊達が跳ねる様な動きで襲いかかってきた。表面から巨大な口…否、歯型が形成されると大口を開けて噛み付こうとしてくる!
「させないっ!」
一匹はシャーリーが撃ち落とす。もう一匹はウィーリィが斬った。
―――もう一匹は?
「グッ!?」
背後から襲いかかった最後の一匹が、ウィーリィの二の腕の肉を服ごとごっそり抉り取った。塊のような血が粘液の海に落ちる。
「ケキャキャキャキャキャ!」
ゲタゲタと笑いながら咀嚼する肉塊。
激痛に思わず膝を付きそうになるウィーリィに、突如頭上から眩い光が降り注いた。
レンズの放つ聖なる光が、ウィーリィの傷を癒やしているのだ。
胸元には、先程彼が斬り捨てた触手の切れ端をちゃっかり抱えている。
「あ、ありがとう……」
「まぁ、んなもん後でいいさ。それよりいいのかい?目の前、なんかヤバい事になってるけど?」
「ッ!?」
釣られて目の前を見たウィーリィの目に飛び込んできたものは
―――肉塊達の共食い現場だった。
先程ウィーリィの腕に深手を負わせた奴が他の肉塊達に喰われている。
何故いきなりそんな事になったのか。それを考えるより先にウィーリィの手が包丁を肉塊達に向けた。
迸る業火が肉塊の一体に引火する。
燃え広がる焔は、やがて肉塊達を包み込む巨大な火柱と化した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『『灰霞の剣』ヴォル・ヴァ・ドーズ』
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POW : 焔を焚く者
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【灰色の焔 】で覆われる。
SPD : 灰霞の剣
【灰霞の剣 】が命中した対象を燃やす。放たれた【霧とも霞とも見える灰塵の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 焔・灰・剣(BLAZE ASH BLADE)
【焔か灰か剣】が命中した対象を切断する。
👑11
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Ave……Maria…… Jungfrau……mild,
Erhöre einer…… Jungfrau……Flehen,
Aus……diesem Felsen……starr und wild
Soll mein Gebet……zu dir……hinwehen.
ブスブスと肉の焦げる臭いが胃袋の中に充満する。
黒煙を上げ燃え盛る火柱の中から聞こえてくるのは……声だ。
男の様な、女の様な、青年の様な、老婆の様な、老若男女あらゆる声質が出鱈目に輪唱している様な名状し難き不協和音。
そして、立ち昇る煙が徐々に形を持ち始めた。
それは綿飴の様な軽さと柔らかさを持ちながら、著しい不潔さを感じさせる瘴気を滲み出させている。
恐らくこの中にはこの世のありとあらゆる汚物がぎっしりと詰まっているのだろう。
真下で今も燃え盛る肉塊達のキャンプファイヤーの照り返しを受けて尚、漆黒に染め抜かれた表面は一切の光沢を発していない。
暗黒である。
これは正に、形を持った暗黒なのだ。
ぞわぞわと歌う様に微細な振動を繰り返しながら輪郭を蠢かせるその様は、どこか耳元で飛び回る羽虫の不快さを思い起こさせる。
否、実際これは極小の何かが寄り集まった集合体と言った方が正しい。
そう、例えば……昆虫の様な。
目に見えぬほどの大きさの蚊、蝿、蛆、虻、蜂や百足、蜘蛛、ゴキブリと言った生理的嫌悪感を催す諸々。
その身を構成する一微粒子に至るまでが汚らわしい何かであり、見ているだけで目が腐りそうだ。
「ゲゲ……ゲゲゲゲゲ……ゲキャカヤアアキャアヤアハアアアアハハハハハ!!!」
今や遠目にも辛うじて人型と解る程度に肥大化した漆黒の影が、およそ生物に発声が可能とは思えない奇声を上げる。
無貌と言っていい外見ながら、それでも相手が「笑っている」と解るのは、影の中央にブツブツと幾つも浮かび上がった青い目が愉悦の色に染まっているから。
ゾワゾワと蠢く輪郭が、全てを嘲っているのだと主張しているから。
総身から垂れ流される邪念の波動が、新たな贄の到来に歓喜しているからに他ならない。
嗚呼……これは、ダメだ。
この期に及んで説得が通じる等と思ってはいないし、そんなつもりもなかったが。
どうやらこれは……意思の疎通すら出来る相手ではないらしい。
ゾーク・ディナイアル
「なんだコイツぅ…ヤバそうな気配がビンビン来るねぇ!愉しい戦いになる気配だねぇ!」
☆戦術
SPD勝負
「当たらなきゃあ、どうという事は無いんだってさぁ!」
『見切り』で精度を更に増した【強化兵戦技《予測回避》】で敵の攻撃を躱して『カウンター』を入れていくスタイルで戦おう。
「ただの剣じゃないぞぉ!お前の存在ごと削り取る妖の剣だ!」
妖剣を『怪力』で振るい『二回攻撃』でぶった斬り、突き刺して『傷口を抉る』ような戦い方でダメージを与えていくよ。
「お前だいぶ楽しんだだろぉ!?ここにいた女の子達をぐしゃぐしゃにしてさぁ!
ボクだって我慢してるのに!お前ばっかりズルいんだよぉ!」
※アドリブ、エログロ歓迎
レンズ・リンド
「あ"ーーーーーー!!また不定形じゃないか!何処を叩けば捕まえられるんだコレ!?……こうなったら手当たり次第だ、可愛いペット共!!」
と少し発狂しながらUCを発動させます。
発動した位置に固定され、背後の空間にヒビのような亀裂を走らせてそこから使役UDC(の一部である触手や手足)を召喚します。
「掴み取りだーーーー!!何処でも良いから掴んだら引きずり込め!あ、さっきの一部分も入れておけ…ひひひ、再生でもしてペットに加わってくれると良いなぁ。あぁ、オレのペットは暴れさせるから猟兵共は勝手に利用しな…巻き込まれても文句は聞かないぜ!」
アドリブ、連携楽しみにしてます。
ペットは囮や壁にでも使ってください。
須藤・莉亜
「また血が無さそうな敵さんかぁ。」
さっさと終わらせよう。
伝承顕現【首なし騎士】でデュラハン化、さらに首なし馬を召喚して、彼に騎乗して戦う。
武器は大鎌を24本に複製して周囲に展開、20本を攻撃用にして残りは防御用に。
高速移動で一気に近づいて攻撃用の大鎌で一斉に衝撃波を放ち攻撃。
敵さんの炎は防御用の大鎌で【なぎ払い】【範囲攻撃】を使いつつ防ぐ。
味方の攻撃に合わせて大鎌で追撃出来るなら、それも狙っとこう。
「お腹いっぱいで満足でしょ?じゃあ、死ね。」
「あ"ーーーーーー!!また不定形じゃないか!!」
レンズ・リンド(陰鬱なフェアリーのUDCエージェント・f05600)は気が狂いそうだった。せっかく!態々!クソみたいな通路をくぐり抜けて、ゴミみたいな化物を焼き払って、目の前のコイツをぶっ殺せばおしまいだと言うのに!
蓋を開けてみればどうだ。
自分好みの使えそうな奴が何処にもいやしない!
しかし、しかしである。ここまで来たのだ。手ぶらで変えるのはもっとありえない。
「あぁーもー何処を叩けば捕まえられるんだコレ!?……こうなったら手当たり次第だ、可愛いペット共ォォ!!」
苛立たしげに髪を掻き毟っていた両手を勢いよく左右に広げた。
次の瞬間、レンズの背後を不気味な光が覆う。
激痛に絶叫する空間の亀裂。
それを喰い破るように現れたのは、触手に塗れた巨大極まる爬虫類じみた瞳だった。
目にするだけで心身を凍りつかせ、脳髄を引き千切らんばかりの邪悪さを垂れ流す眼光たるや凄まじく、目の前の暗黒の霧にも全く引けを取らない。
今見えている部分が全体のたった一欠片に過ぎない事こそ、その証明だろう。
そう、これは世界の壁に開いた僅かな解れから、まるでドアの覗き窓から外を伺う様に覗き込んでいるだけに過ぎない。巨大過ぎるのだ。
「掴み取りだーーーー!!何処でも良いから掴んだら引きずり込め!!」
Guuuuoooouuuuooooooooooooo
!!!!!
瞳が、弾けた。
亀裂を引き裂くように広げながら土石流の如く流れ出たのは人の胴程の太さがある触手の群れ、青黒く腐り落ちた無数の腕だった。
中央で燃え盛りながらのたうち回る肉塊も、その周囲を逃げ惑うように這い回る肉塊も、手当たり次第に掴みかかると引き裂き、千切り、すり潰して、亀裂の中に放り込む。
「よぉしよし、そいつらも忘れずにな。…ひひひ、再生でもしてペットに加わってくれると良いなぁ……あ?」
勿論、目の前の暗黒がそれを黙って見ている訳もない。ザワザワと不快な音を立てて黒い霧が凄惨極まる肉塊の狩猟現場を通り抜けると、諸共に触手と腕が細切れにされてボトボトと粘液の海に落ちた。
目が合った。
十を超える揺らめく青い瞳が亀裂の前に陣取るレンズをジィっと見つめている。やがてその全てが、弓形に細められると、暗黒は一層の歓喜に輪郭を震わせた。
「オ……ンナ……オンナダ……」
「チチガホシイ……シリガホシイ……ハラ……アシ……ワタ…ワタ…ワタ……」
「ち……チ……血だ……血をくれ……血だああああアハおあえらあハアアア嗚呼ハハハ母はぎゃはははハハハはは
!!!!」
「チッ!何サカッてやがんだ糞の塊がよおおおお!!!」
汚れた黒い焔がレンズに向かって殺到する!
負けじと亀裂から新たに出現した触手で焔を迎え撃つレンズ!
「はいドーン。お腹いっぱいで満足でしょ?じゃあ、そろそろ死ね」
その時である。
トンネルでも掘るかの様に、視界を埋め尽くす触手と腕の津波を焼き尽くして周囲に撒き散らしながら猛然とレンズに迫る暗黒の霧を、横薙ぎに両断した者がいる。
切断され上半身らしき部分が宙を舞う。
そこに四方八方から襲いかかるのは凶悪な形状の大鎌。その数、実に二十。
袈裟斬りに断ち、別の刃が下から食い込みV字に裂き、更に四分割されその全てに深々と刃が突き刺さる。
「ギャギャギャギャギャギャ!!!」
だがそれで終わりではない。
欠片すら許さぬと滅された筈の暗黒は、一度天井付近を渦の如く這い回ると、再び寄り集まり元に戻った。
今、何かしたのかとでも言いたげに哄笑を上げる。
「マジか。めんどくさー。こいつも血が無さそうだしなぁ」
気怠げに呟くのは今し方斬撃の嵐を見舞った馬上の騎士。
鈍色に輝く板金鎧を纏った屈強な体躯はしかし、人間であれば、否、脊椎動物であれば無ければならない筈の部位が無い。
――デュラハン。
古くは北欧に伝わる死を告げる首なしの妖精。
首なし馬コシュタ・バワーを駆り、粘液の上を征くのは須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)の変身した姿だ。
「灰……霞nんんnんnんnんん剣んんんんんn!!!」
暗黒が腕を振り、煤けた霧を莉亜に向かって放出した!
彼の周囲を守る様に展開していた四本の大鎌がプロペラの如き回転で霧を押し返す!
しかし長引けば不利だ。無尽蔵に湧き出る汚らわしい飛沫に対し、此方は人力で棒を回転させ弾いているに過ぎない。
回る大鎌の一つが弾き飛ばされ宙を舞った。
「クッ!」
鎧の合間からギリッと莉亜の歯軋りの音が漏れる。
しかし、ここで暗黒の霧が見落としていた物が一つだけある。
弾き飛ばした大鎌が、その後どうなったのか。
この時、宙を舞う大鎌を足場に、暗黒の上を飛び越して背後に回った者がいる。
「アァハ?」
音も無く、唐突に、暗黒の霧の胸から蒼いオーラを纏った片刃の長剣が飛び出た。
ゾーク・ディナイアル(強化エルフ兵の出来損ない・f11288)の妖剣《ガディス》である。
今や粘液に濡れ、ほぼ全裸といっても良い様相でありながら、本日一番の恍惚とした表情で彼女は突き刺した剣でグリグリと傷を抉る。
「ズルいなぁ〜皆楽しそうでさぁ〜、ボクはこんなに我慢してるって言うのに……えぇ?お前だってだいぶ楽しんだだろぉ!?ここにいた女の子達をぐしゃぐしゃにしてさぁ!ズルいんだよぉ!」
そのまま、天に掲げる様に強引に切っ先を持ち上げる。
暗黒の胸から上が華でも咲いた様に拡がった。
衝撃で青い眼球が幾つか引き千切られて宙を舞う。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
初めて、明確に悲鳴と分かる声を暗黒の霧が上げた。
頭を抑えのたうち回り出鱈目に焔を振り回す。
「アハハハハハ!!ただの剣じゃないぞぉ!お前の存在ごと削り取る妖の剣だ!」
ゾークが喜悦を上げ更なる斬撃を加えていく。
「あれ……何か今チャンスっぽい?」
「ヒヒヒ……そうみたいだなぁっと!!」
レンズは、水音を立て粘液の海に沈んだ暗黒の青い眼球を、すかさず伸ばした触手で拾い上げる。亀裂に放り込むと、ようやく一仕事終わったとばかりに額の汗を拭った。
「フゥ……何とか収穫ゼロは避けられたな。あぁ、オレのペットは暴れさせるからてめぇも勝手に利用しな…巻き込まれても文句は聞かないぜ!」
そう言うと再び亀裂から触手や手足を溢れさせるレンズ。
黒々と滑った触手が、青黒く腐った巨大な腕が、津波めいて暗黒の霧に殺到する!
「そう、じゃあ遠慮なく」
その津波の足場にして暗黒への階段を駆け上がる首なし騎士は莉亜だ。
その軌跡たるや池の飛び石を足場に駆け回る極東武者の妙技、八双飛びを再現しているかの様だ!
馬ごと宙に飛び出した彼は、暗黒霧の邪神「ヴォル・ヴァ・ドーズ」の蠢く青い目に向かって、手にした大鎌の刃を突き立てる。
「ギィィィィエエエエエエエエエエエエエエエエエ
!!!!」
およそこの世の物とは思えぬ絶叫が、胃袋の中に響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウィーリィ・チゥシャン
知り合いのシャーリー(f02673)と一緒に、
「終わらせるぞ、この悲劇を」
『トリニティ・エンハンス』と『属性攻撃』で炎の魔力を大包丁に宿らせ攻撃力増強。奴の灰色の炎を、俺の紅蓮の炎で切り裂く。
そして『盾受け』で鉄鍋で敵の攻撃を受け流し(鉄鍋が炎に包まれたらすかさず手放し延焼を防ぐ)、『カウンター』+『二回攻撃』でその隙を付いて攻撃を叩き込む。
シャーリィと呼吸を合わせ、ある時は時間差でのピンポイント攻撃、ある時は多方向からの同時攻撃で敵を攻め立てる。
こいつはここで喪われた命への手向けだ。
シャーリー・ネィド
ウィーリィくん(f04298)とペア
もう、いいんだよね?
この怒りも、悲しみも、全部解き放っても
みんなの夢と青春、そして自由を奪ったお前だけは絶対に許せない!
この世界から一欠けらも残すもんか!
いつも通り、フォワードはウィーリィくんでボクはバック
いいね?
戦場を駆け巡り相手の狙いを分散させながら【クイックドロウ】と【スナイパー】、【援護射撃】で前衛のウィーリィくんに合わせて攻撃
ウィーリィくんへの攻撃は【スナイパー】でブロック
終わったら、全部出しきってその場にへたり込む
鳩麦・灰色
アヴェ・マリア。救いを求める祈りの歌やな
今までの犠牲者が歌ってるんやろか、それともあの黒いのか...いや、考えても意味無いわな
大丈夫、ウチらが救ったる。やからもうちょっと、そこで待ってて
◆
味方と協力し、UCでの攻撃を狙う
【クライミング5】【ダッシュ5】【地形の利用8】で素早く動きつつ、
味方に合わせて【衝撃波5】を込めた【武器改造5】鉄パイプにて攻撃
【見切り4】【第六感5】【残像2】で回避重視、【呪詛耐性1】で気を保つ
【視力1】【暗視1】【情報収集4】で相手の隙を見定め、多少の被害は無視しつつ肉薄し、至近距離からUCを使用
「援護するよ」
「ウチのは、邪気にはよう効くで」
協力、アドリブ歓迎
嗚呼
いったいどこでまちがえたのだろう。
わたしは、ひとをまもるべきかみだったはずだ。
わからない。
わからない。
でも、ひとつだけわかるのは……かのじょをたべてしまったのがいけなかったのだろう。
どうしてかはわからない。
でも。
ああ……わたしのマリア……いとしい、いとしい、わたしのマリア
きみは…………とても、とてもとてもとても
……………オ イ シ カ ッ タ
「アガッ!がアガアアッがガガガがガガガが!!!ギィィィィィィィィィ!!!」
目の前で、大鎌の一撃が深々と青い目に突き刺さった暗黒の霧が絶叫する。
最早誰の目にも悶え苦しんでいるのは明らかだ。
シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は、涙と共に込み上げる義憤なのか、哀悼なのか、恐怖なのか、よくわからないぐちゃぐちゃな感情を抑えきれなくなっていた。
血が滲みそうな程に強く握りしめた手元の銃を眼前の暗黒に向ける。
「ウィーリィくん……もう、いいんだよね?この怒りも、悲しみも、全部解き放っても……」
傍らに並び立つ少年、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)が手にした大包丁に炎の魔力を宿らせ、答えた。
「あぁ、言ってやれシャーリー。終わらせるぞ、この悲劇を」
「せやな……アヴェ・マリア。アレは救いを求める祈りの歌や。歌ってるのが今までの犠牲者なのか、あの黒いのなのかは解らへんけど。援護するわ。ウチらが救ったる」
ウィーリィに同調する様に鉄パイプを担ぐの鳩麦・灰色(音使いおおかみ・f04170)。
「ウゴ…っっあああがあああああああ!!!!灰イィィィィィ霞ァァんんnンんnん剣んnンんんんn!!」
暗黒の纏うどす黒い色の汚らわしい焔が一気に燃え盛ると、ぐじゅりと音を立てて全身から粘液に塗れた灰色の剣が現れる。
「みんなの夢と青春、そして自由を奪ったお前だけは絶対に許せない!!この世界から一欠けらも残すもんか!!」
「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」
シャーリーのブラスターが火を噴くのと、暗黒の剣が全方位に放たれたのはほぼ同時だった。
「オォォォ!!ウラァァッ!!」
胃袋の中を焔と炎と剣と刀が鬩ぎ合う。
暗黒の霧が出鱈目に撒き散らす焔を、ウィーリィの炎の魔力を宿らせた大包丁が斬り裂く。
手負いの獣程恐ろしいと言うが、これは謂わば手負いの邪神か。
勿論、脅威度から鑑みて獣など比較にもならない事は言うまでもない。
蠢く輪郭から全方位に雨あられと灰色の剣が飛び出し、床に、壁に、天井に突き刺さり灰色の焔が汚染していく。
「クゥゥゥッ!」
此方や、ウィーリィや、灰色に向かってくる剣の尽くを、ブラスターで撃ち落とすシャーリー。それを成すために常に全体に目を配り、擦り減らしていく神経の量は如何ほどか。
「チィッ、暴れ過ぎやろ自分!」
縦横無尽に駆け巡りながら絶妙に焔を避け、衝撃波を伴う鉄パイプで本体に打ち掛かる灰色。既に衣服が原型を保っていない彼女には、僅かな狂いが致命傷になりかねない。
三者三様、総じて極限状態。
一瞬の緩みが即座に形勢逆転に繋がると理解しているからこそ、この崖っぷちの均衡から抜け出せない。
「おいお前、このままじゃジリ貧だ。合わせてくれ!」
ウィーリィが鉄鍋を盾の様に構えると灰色に檄を飛ばした。
「そらかまへんけど……どないするん!?」
身体を捻り襲い来る焔をかわしながら灰色が応じる。
しかし、その答えに彼が取った行動とは……
「簡単だ……こうするんだよ!!」
一直線に暗黒の霧へと突撃を仕掛ける事だった。
「なぁー!?あぁーもぅ!無茶する子やなぁ!!」
「ギギギギギギゲェぇエエエエエェェエエ
!!!!!」
ウィーリィの行先に現れたのは剣林とでも言うべき全方位から襲う灰色の剣だった。
「オォォォォォォォォ!!」
驟雨の如く襲いかかる剣を鉄鍋を盾の様に否していく。鍋に纏わり付いた灰色の焔が鍋を熱し、取っ手を持つウィーリィの掌からも煙が上がり始める。
彼我の距離は既に白兵戦の間合いだ。
自らの腕に宿した焔で直接殴りかかってこようとする暗黒の霧に対し、彼は完全に焔に包まれた自らの鍋を眼前の邪神目掛けて投げ付けた!
極限状況に似合わぬ間抜けな金属音が響き、暗黒の霧が仰け反る。
「今だシャーリー!!」
そう、射線は開いている。
狙いすましたブラスターの三連バーストが邪神の残りの目を穿った。
そしてウィーリィと入れ替わるように邪神の眼前に現れる紫影。
「おまけや、コイツも持っていき。去れ 、"一番"。」
風船が破裂したような快音一閃。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア
!!!!!」
邪神、『灰霞の剣』ヴォル・ヴァ・ドーズは、文字通り、風に吹き消されたかの如く全身を消し飛ばされ果てたのであった。
●
煙を立てて、急速に地面に溜まっていた粘液が蒸発して消えていく。
ぬらぬらとテカっていた壁も、瞬く間に乾燥すると砂の様に崩れて朽ち果てていく。
崩壊は留まることなく、やがて大穴の開いた天井から煌めく陽光と澄み渡る冬の空が姿を現した。
「終わった……の?」
呆然とした表情で地面にへたり込むシャーリー。
目線の先で振り返った赤バンダナの少年は、満面の笑みでVサインを返すのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴