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忘却歪曲カタストロフ

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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 ――知っているのに、分からない。
 ――分かっているのに、出てこない。

 消えたのは……そう、名前だけ。

 隣にいるのがどういう人かも、自分にとってどんな存在かも、分かっているし。
 握る武器と共に重ねて来た戦果だって、覚えている。
 一緒に居る相棒とどう出会ってどんな冒険をしてきたかも、話せるのに。

 でも――その名を、呼ぶことができないのだ。

 『名前』……それは幽世から消えてしまったものだから。
 名前なんて単なる記号でしかない、って。
 そう思うかもしれないし、その通りかもしれないけれど。
 でも……いくらその名を呼びたくても。自分の名を名乗りたくても、出来ないのだ。
 そして、知っているのに分からないというそんな歪が。
 じわじわと日常を蝕み、歪ませて。

 そして――世界を滅亡させました。

●忘れじ幽世
「皆も聞いているだろうし、既に赴いた者も沢山いると思うが……新たに発見された世界、カクリヨファンタズムでの予知を視た」
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は集まってくれた礼を皆に告げた後。
 視た予知の内容を語り始める。
「オブリビオンの企みにより、幽世から消えてしまったものがあるという。今回消えたそれは……『名前』だ。まるでカクリヨファンタズムの世界全てからその概念が奪われ、世界の終わり――カタストロフが訪れたかのような光景が広がっているという」
 そして『名前』を奪われた幽世には無数の骸魂が飛び交い、妖怪達が次々と飲み込まれ、オブリビオン化しているという。急いで解決しなければ、世界は滅亡してしまう。
「なのでまずは、飛び交う骸魂によってオブリビオン化した妖怪達を倒し、助けてあげまてから。事件の元凶であるオブリビオンを倒し、幽世の世界を元に戻して欲しい」

 単に『名前』が消えても、大した問題には一見感じないかもしれない。
 けれど今回消えたのは、『名前』のみ。
 自分のことも、隣にいる人のことも、大事な武器やアイテムも、精霊やペットも。
 ちゃんと覚えていて、どんな人かどんな存在かどんなものか、分かっているのに。
 その『名前』だけ、消えてしまって。
 その名を呼びたくても――決して、呼ぶことができないのだ。
 それがいくら大事な人でも、大切なものでも、例外なく。
 知っているのに、分からない。それはとても不自然で歯痒く、歪だ。

「ひとりで赴いても、己の名が消えてしまっており、愛用している武器や共にある精霊や使役等の名も忘れてしまっているし。同行者がいれば、隣のその人の名を呼べず、自分の名を名乗ることもできない。それだけではない、地名も店も物なども……ありとあらゆる全てのものの『名前』が消えてしまっている。それは思っていたよりも不便で、違和感やもどかしさを感じるかもしれない」
 名前は単に記号だと思う人もいるだろう。
 けれど、その記号がなくなれば、思いのほか違和感が生じる。
 そしてその歪みが無数の骸魂を呼び、妖怪達を飲み込んで。
 世界を滅亡させるというのだ。
「まずは、彩り鮮やかな人鳥一体の肉体を持ち、滅びの美声をさえずるオブリビオン『迦陵頻伽』の群れを倒して欲しい。迦陵頻伽は体内に弱い妖怪を飲み込んでいるが、飲み込んだ妖怪が弱いので、そこまで強くはない。妖怪達はオブリビオンを倒せば救出できるので、取り逃がさず退治して妖怪達を救って欲しい」
 勿論その際、皆もありとあらゆるものの『名前』を忘れている。
 けれど、名のない違和感を払い除けてもいいし。
 便宜上の渾名等で呼び合うのもいいだろう。
 付けた仮名もじきに消えてしまうだろうが、少しの間なら呼び合えるだろう。
「『迦陵頻伽』の群れを倒せば、元凶が現れる。そのオブリビオンは人魚のようであり、『名前』だけでなく、言葉や思い出、自己を忘却させる能力を持つという。けれど倒せば、名前も、忘却したそれらも元に戻るだろう」

 そして、そんな世界の滅亡の危機が訪れている場所の傍には。
 妖怪横丁――妖怪たちの暮らす妖怪商店街があるのだという。
「妖怪横丁では、色々な美味であったり珍しいものを食べ歩きできたり。九十九古物商店やおどろかし道具屋などさまざまなお店があるので、買い物も楽しめるようだ。事が解決すれば帰還までの間、そんな妖怪たちの暮らす妖怪商店街でのひとときを楽しめる」
 横丁の醍醐味と言えば、やはり食べ歩き。
 けれど此処はカクリヨファンタズムの世界。
 今までの世界とはまた、一味も二味も違う食べ歩きが楽しめるだろう。
 他の世界にあるような、出来立てのコロッケやメンチカツや唐揚げやたこ焼き等の食べ歩き定番メニューも、アイスやパフェやたい焼き等のいろんな種類の甘味も、ゆっくり座って一服できる妖怪茶屋のメニューも、この世界ならではなものとなっているのだという。中には、揚げ人魂屋などの珍しいものもあるようだ。この世界で流行っている人気メニューも見逃せない。
 そして、雑貨屋や日用品、装飾品や嗜好品を売っている店も、アヤカシ仕様。九十九古物商店やおどろかし道具屋は、見てみるだけでもとても楽しいだろう。妖怪紙芝居などの催しもやっているという。
「事件解決後、俺も新しい世界の横丁を見て廻ろうかと思う。何があるか楽しみだな」
 清史郎はそう微笑み、もう一度、よろしく頼むと皆に頭を下げてから。
 満開桜のグリモアをその掌に咲かせ、猟兵達を妖達が跋扈する世界へと導く。


志稲愛海
 志稲愛海です。
 よろしくお願いします!

 ※ご連絡※ 第1章のプレイングは、6/30(火)朝8:31より受付開始します。
 それ以前に送信のものは流れる可能性があります。

 今回の依頼内容は以下です。

 第1章:迦陵頻伽(集団戦)
 第2章:水底のツバキ(ボス戦)
 第3章:妖怪横丁へ寄っといで(ボス戦)

 第1章は、『名前』が消えた世界での戦闘となります。
 自分の名前、同行者の名前、武器や使役等の名前等。
 あらゆるものの名前が消えています。
 大切な相手や大事なものの名を、呼びたくても呼べない。
 そんなもどかしさや違和感を抱えながらの心情中心でも。
 それぞれの特徴などから、便宜上の名を付け合ったりしたり、賑やかにでも。
 名前に関する思いや行動などを紡いだり等。
 消えた『名前』に関する思いや行動中心の戦闘軽めの方針です。

 第2章は、名前だけでなく、想いも何もかも忘却させようとする敵との戦闘です。
 此方も心情寄りの内容となるかと。

 第3章は、名前も平和も戻ってきた『妖怪横丁』で過ごせる日常です。
 妖怪横丁グルメや、妖怪横丁ショッピングや妖怪催事が楽しめます。
 具体的にどのようなものが楽しめるかの詳細は断章にて改めて掲載いたします。
 お声掛けあれば、この第3章のみ、清史郎もご一緒させていただきます。

 公序良俗に反する事、他の人への迷惑行為、未成年の飲酒は厳禁です。
 第2章第3章の詳細は、前章の結果を受け、追加OPを記載します。
 締切等はMS個別ページやTwitterでお知らせします。

●お願い
 同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)と、fからはじまるID】又は【グループ名】のご記入お願いします。
 ご記入ない場合、相手と離れてしまうかもしれませんのでお忘れなく。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何人ででもどうぞ!
 ですが複数人の場合は失効日の関係上、同行者と送信タイミングが離れすぎていたり、ご指定の同行者が参加していない場合は返金となる可能性もあります。

 可能な限り皆様書かせていただきたく思っています。
 どうぞお気軽にご参加ください!
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第1章 集団戦 『迦陵頻伽』

POW   :    極楽飛翔
【美しい翼を広げた姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【誘眠音波】を放ち続ける。
SPD   :    クレイジーマスカレイド
【美しく舞いながらの格闘攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    迦陵頻伽の調べ
【破滅をもたらす美声】を披露した指定の全対象に【迦陵頻伽に従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※訂正※
 マスターコメントの記載に誤りがあります。
 『第3章:妖怪横丁へ寄っといで』のフラグメントは、ボス戦ではなく日常です。
 戦闘はありません、完全なお遊びパートとなっております。
 日常パートのみ等、お好きな章のみのご参加も歓迎です。
西條・東
グループ名:柴と雀

名前…名前…やっべ~!
本当に思い出せない…これ、なんか寂しいな…口に出したいのに出せねぇって…折角あんのに…
「わっ、落ち着こうぜ!!えーっと、えっと、名前が思い出せるまで俺が柴犬で、お前が…雀な!」


庇ってくれた人が怖がりだけど強い…大切な友達だ
「名前は思い出せないけど、
俺を守ってくれる雀を助けたいって言う気持ちは忘れてねぇ!」


【念動力】で敵の動きを止めて少しでも雀の攻撃を当てられるようにするぜ
そんでやり返されないようにUC発動
金魚達に雷の【属性攻撃】を頼むぜ!


「守ってくれてありがとう!次も頑張ろうぜ」
今は思い出せないけど
思い出したら名前付きでお礼を言う為に頑張んないとな!


オスカー・ローレスト
【柴と雀】

……あ、あれ、名前……俺も、言えなくなっ、……ぴ、ぴゅっ……?!(名前を認識できなくなってることに気づき文字通りぴぃぴぃ鳴きパニくる小雀

柴犬……わ、わかった……
今は、君をそう、呼ぶことに、する、よ……

柴犬を【かばい】ながら、【暴風纏いし矢羽の乱舞】を発動。【一斉発射】して、弾幕を張って敵を近づけないようにする、し……敵に意識を向けちゃうのを防ぐ為に視覚的に遮るよ……

名前を思い出せないのは不安、だけど……彼を……柴犬を放っておけない子供だと思ってることや、守らなきゃって思う気持ちは、まだ、無くしてない……敵に従うよりも、彼を守ることが大切だって、敵の与えてくる感情を振り切る、よ……!



 此処は、どこか郷愁を抱かせる妖しの世界。
 そして――『名前』という概念が消え去った世界。
「名前……名前……やっべ~!」
 右に左に首を何度も傾げてみるけれど。
 やはり、西條・東(生まれながらの災厄・f25402)には思い出せない。自分のも、他の人の名前も。
「本当に思い出せない……これ、なんか寂しいな……口に出したいのに出せねぇって……折角あんのに……」
 そう、むう、と思わず唸る東。
 知っているのに分からない、呼びたいのに呼べない。それはやはり、とてももどかしい。
 いや、思い出せないのは当然だ。忘れているわけではないのだ。
 この世界から『名前』というものが全て、消えてなくなってしまっているのだから。
 そして、オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)も。
「……あ、あれ、名前……俺も、言えなくなっ、……ぴ、ぴゅっ……!?」
 名前を認識できなくなっていることに気付いて。
 何度も瞳を瞬かせ、パニくって、ぴぃぴぃ。
 そんなぴぃぴぃ鳴く連れに、東は慌ててこう口を開く。
「わっ、落ち着こうぜ!! えーっと、えっと、名前が思い出せるまで俺が柴犬で、お前が……雀な!」
 ――柴犬と雀。
 確かに、目の前の人懐っこそうな彼は犬っぽいし。自分も、雀っぽい。
 オスカーはそう、小さな雀の羽を一度だけ、ぱたりとさせてから。
「柴犬……わ、わかった……。今は、君をそう、呼ぶことに、する、よ……」
 こくこくと頷いて同意すれば。
 刹那現れたのは、鳥の様な妖――迦陵頻伽。
 雀は柴犬を庇うように立ち回りつつも、背に携える雀をぱたぱた羽ばたかせて。
 ――ち、小さい羽だって、こうすれば……!
 風と共に巻き起こすのは、切れ味を得た数多の羽。
 それを一斉発射し、弾幕を張って敵を近づけないようにしながらも。敵に意識を向けてしまうのを防ぐ為に視覚的に遮る。
 その様子は相変わらず何処かおどおどはしているけれど。
 柴犬は、よく知っているから。
(「庇ってくれた人は怖がりだけど強い……大切な友達だ」)
 だから、自分も彼のために。
「名前は思い出せないけど、俺を守ってくれる雀を助けたいって言う気持ちは忘れてねぇ!」
 念動力で迦陵頻伽の動きを止め、少しでも雀の攻撃を当てられるように柴犬は動きながらも。
 やり返されないようにと戦場へと喚ぶのは、水中も空中も泳げる黒いと白い金魚。
 ……雷の攻撃を頼むぜ!
 そう声を掛ければ、ゆうらり戦場を泳ぐ金魚たちが放つは、轟くような雷属性の衝撃。
 消え失せてしまっているのは、名前だけ。
(「名前を思い出せないのは不安、だけど……彼を……柴犬を放っておけない子供だと思ってることや、守らなきゃって思う気持ちは、まだ、無くしてない……」)
 そして破滅をもたらすという敵の美声が響く中、雀はその声に導かれ湧き出てくる感情を振り切り、一部ちぎられた小さな雀の羽で風を生み出す。
 ……敵に従うよりも、彼を守ることが大切だ、って。
 逆に、柴犬の喚んだ白と黒の金魚の雷が、敵の翼を捥いで。
「守ってくれてありがとう! 次も頑張ろうぜ」
 敵を退けた彼はそう、ぴぃっともうひと鳴きし雀へと笑む。
 今は思い出せないけど……思い出したら名前付きでお礼を言う為に頑張んないとな! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘムロック・ストレンジャー
【ストレンジャー】
思い出せない
焦がれるほどにお慕いしていたのに、隣に立つ女性の名前が
どうしても僕には思い出せないでいました

思い出せなくなることは知っていましたし、覚悟もしていたはずです
それなのに、思い出せないだけで僕は狂おしいまでに焦燥感に駆り立てられてしまいます

オブリビオンの美声が僕を恐怖に駆り立てます
本当に従いたい方はあなたではない
僕の隣に立つこの方こそが、真に従うべき主

膨れ上がる猜疑心と恐怖心がバロックレギオンを呼び起こし、鳥人どもへと襲いかかります

…今は何も、仰らないで下さい
これが終われば、きっと元通りですから


テレサ・ストレンジャー
【ストレンジャー】

…あれ?おかしいな
隣にいてくれる彼を、どう呼べばいいんだっけ
そもそも彼のことは初めて出逢ったときに自分が名付けた筈なのに

自分の名前さえも思い出せなくて、自分を自分と呼ぶことができないもどかしさにモヤモヤ
「私」って呼ぶなんて、らしくないもん…

「ひえっ…あの、だ、大丈夫!? です、か…?」
危険な戦いの最中なのに、彼につい他人行儀で接しちゃう
こんなの良くない…だって、目の前の彼は大切な存在なんだもの―

―助けなきゃ!

薔薇の風を呼び起こして、彼に害をなす鳥人を眠らせちゃう!
従いなんてしないわ、寧ろ従わせるの
彼は……大切な従者なのだから!!

―でも、ね
あなたのことを、なんて呼べば…



 ――思い出せない。
 よく知っているし、よく分かっているのだ。
 隣に立つ女性は、焦がれるほどにお慕いしている人だと。
 なのに、どうしても……ヘムロック・ストレンジャー(生き餌・f19477)には、彼女の名前が思い出せないでいた。
 いや、それは予知を聞いて知っていたことであるし、覚悟もしていたはずだ。
 でも――それなのに。
 彼は思い出せないだけで駆り立てられてしまう。狂おしいまでの焦燥感に。
 そして名前という概念が消え失せたのは、テレサ・ストレンジャー(あっぱらぱー・f19478)も同じ。
(「……あれ? おかしいな。隣にいてくれる彼を、どう呼べばいいんだっけ」)
 青い瞳で見上げる隣の彼の横顔は、いつだって見ているものなのに。
 やはり、彼の名前を呼ぶことが、テレサにもできないでいた。
(「そもそも彼のことは初めて出逢ったときに自分が名付けた筈なのに」)
 花壇の世界で手を引いて引かれて、そして互いに付け合った名前。
 それが消えてしまっているという事実は、ふたりにとって、分かっていても平然となんてしていられなくて。
 それに、彼の名前だけでない。
「「私」って呼ぶなんて、らしくないもん……」
 自分の名前さえも思い出せなくて、自分を自分と呼ぶことさえもできないのだ。
 そんなモヤモヤしてしまうもどかしさを感じていれば――現れたのは、迦陵頻伽の群れ。
 普段ならば容易く抗えたかもしれない敵の美声に、ヘムロックの心は恐怖のいろに染め上げられて。
「ひえっ……あの、だ、大丈夫!? です、か……?」
 危険な戦いの最中であるのに、彼につい他人行儀で接してしまう。
 けれどすぐに顔を上げて、彼女は丈の短いエプロンドレスをひらりふわり靡かせる。
「こんなの良くない……だって、目の前の彼は大切な存在なんだもの」
 ――助けなきゃ!
 刹那、戦場に巻き起こった心地よい風に舞うのは、薔薇の花弁。
 そして彼女は、彼に害をなす鳥人を眠らせながらもはっきりと紡ぐ。
「従いなんてしないわ、寧ろ従わせるの」
 ――彼は……大切な従者なのだから!!
 そう……忘れているのは、名前だけ。
 だから、ヘムロックもよく分かっている。
「本当に従いたい方はあなたではない」
 ――僕の隣に立つこの方こそが、真に従うべき主。
 己がいつまでも傍に付き従うべき主が、誰なのかを。
 そして、彼の膨れ上がる猜疑心と恐怖心がバロックレギオンを呼び起こして。
 愛しき薔薇の花弁が舞う中、鳥人どもへと襲いかかり、その翼を容赦なく捥ぐ。
 それから、敵を蹴散らせたことにホッとしつつも。
「――でも、ね。あなたのことを、なんて呼べば……」
 ふともう一度……従者である彼を見上げた青の瞳が、不安気に揺れる。
 けれど、そっと人差し指をその口元へとあてるように添えながらも。
 ふるりと、ヘムロックは小さく首を横に振りながら紡ぐ。
「……今は何も、仰らないで下さい」
 消えない焦燥感に、いまだ駆られながら……己にも言い聞かせるかのように。
 ――これが終われば、きっと元通りですから、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

遙々・ハルカ
》人格:トヲヤ

――名前、名前
それは、言うまでもなく重要だ
在る事の認知
在る為の証明

幼い彼が――この肉体の“本来の”持ち主である彼が
俺に名を与えてくれたから
だから俺は赦されているのに
息が苦しい
その名こそ、彼から与えられた最も貴いものだというのに

銃弾を装填する先は手に馴染んだ自動式拳銃
あまり身体を動かすと筋肉痛になる、と彼が言うから
先制攻撃、クイックドロウ、暗殺、だまし討ち、2回攻撃、呪殺弾、零距離射撃、敵を盾にする、早業――
兎角、射撃の腕を総動員し、舞う鳥たちを撃ち落とす

或いは平時であったなら
その彩や声を美しいと、思えたかも知れないが

翼を、頭を、胴を
今は撃ち抜くことでしか
この業苦から逃れられず、



 いくら思い返してみても、全く思い出せない。
 遙々・ハルカ(DeaDmansDancE・f14669)は……いや、彼の躰に潜む『トヲヤ』は、ふるりと小さく首を横に振る。
(「――名前、名前。それは、言うまでもなく重要だ」)
 それは、在る事の認知、在る為の証明。
 だって彼にとって名前は、幼い彼が――この肉体の“本来の”持ち主である彼が与えてくれたもので。
 だからこそ、彼が名を与えてくれたから……赦されているのに。
 それが消え失せ、思い出すことさえできない今。
(「息が苦しい」)
 ぎゅっと、彼は名も分からぬ己の胸を掴む。
 ――その名こそ、彼から与えられた最も貴いものだというのに。
 そんな彼の金の瞳が捉えたのは、妖の世界の空を飛び交う迦陵頻伽の群れ。
 それを見遣り、銃弾を装填する先は手に馴染んだ自動式拳銃。勿論その名も分からないが。
 ……あまり身体を動かすと筋肉痛になる、と彼が言うから、と。
『ギャアッ!』
 美しい声は何処へやら。
 射撃の腕を兎角総動員し撃ち出される銃弾に、撃ち墜とされる鳥人たち。
 けれどそれでも、名前を忘れ不安定に揺れるその心を従えんと、戦場に声を響かせる鳥の群れだけれど。
(「或いは平時であったなら、その彩や声を美しいと、思えたかも知れないが」)
 この業苦から解き放ってくれるのは、美しく広げられた翼でも美しい声でもない。
 その翼を、頭を、胴を――撃ち抜くことでしか、今は逃れられないから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリル・スプリング
ふわ……キレイだけど、こわそうなてきなのです……

ぎゅっとテディベア抱き締めて
その名を呼ぼうとして思い出せないことに気付く

んん……なまえ、せっかくおしえてもらったのに……わすれちゃったです
おなまえ、わからないと……力かしてもらえないです……

戸惑いながらテディベアを見つめる
ずっと一緒にいて、やっと名前を教えてもらったばかりなのに
(テディベア本人に聞いた、とメリルは思っている)

寂しくて涙を浮かべたら、ふわり手を離れるテディベア

……んう?力、かしてくれるですか?

名前を呼ばなくても、動いてくれた
そのことが嬉しくて、ふわっと笑顔

ありがと、なのです
おわったら、ぜったいおなまえでまたよぶのです!

UCで攻撃



 妖しい月の照る空に広げられた翼の彩は、確かに鮮やかだけれど。
「ふわ……キレイだけど、こわそうなてきなのです……」
 うんと背伸びするようにそれを見上げたメリル・スプリング(アリス適合者のプリンセス・f25271)は、いつも一緒のテディベアをぎゅっと抱きしめる。
 けれど刹那、エメラルドグリーンの円らな瞳を思わずぱちくり。
 そう、彼女は気付いたのだ。いつだって一緒にいるその名を呼ぼうとして、思い出せないことに。
 いや、自分の名前さえも忘れているのだけれど。
 今の彼女にとっては、それよりも。
「んん……なまえ、せっかくおしえてもらったのに……わすれちゃったです」
 ――おなまえ、わからないと……力かしてもらえないです……。
 そうしゅんとしつつ、戸惑いながらもテディベアをじっと見つめる。
 ……ずっと一緒にいて、やっと名前を教えてもらったばかりなのに、って。
 テディベア本人に聞いたと彼女自身が認識しているその名は、やっぱりどう考えてみても、思い出せなくて。
 寂しくて、じわりと涙を浮かべてしまうけれど。
 ……その時だった。
「……んう? 力、かしてくれるですか?」
 ふわり、手を離れるテディベア。
 そんな、名前を呼ばなくても動いてくれたことが、嬉しくて。
「ありがと、なのです」
 ごしごしと頑張って涙を拭きながら、ふわっと笑顔を宿した後。
 こくこくと力強く頷いて、テディベアと約束げんまん。
 ――おわったら、ぜったいおなまえでまたよぶのです! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日東寺・有頂
心結(f04636)と

こん子は、俺の大切なひと
ある日あん店に来てな
八重歯が可愛らしい、良う笑う娘っ子で
話して 仲良くなって じゃれて
むくれたり、はしゃいだり、照れたりして
照らしてくれる
たった今もすぐ隣で
俺の欲望を浄めてくれるたった一人の、女の子

失くすのか?
名前を無くしたなら
この子との繋がりを失くすのか?
許さねえ 絶対に
許す訳にいかないんだよ
そんな運命は

なあ、そばにいて
声にならん声で呼ぶよ
ここにあるんだずっと、この胸に
俺と君の心を結びつける 
その名が

神経を侵して己を覚ます
この武器を、飛翔する敵ば何体でも相手どる形にして
骸魂から この運命から
妖怪達を救い出し
君の名前を取り戻す


音海・心結
有頂(f22060)と

数えきれないくらい名前を呼んだ彼
楽しい時も、照れた時も、怒った時も
どんな表情も見せられた
なんで、思いつかないのでしょうか
考えても考えても、出てこない
……ねぇ、なんで?

手を伸ばせば触れられる距離にいるのに
辛い、苦しい、……寂しい
湧き上がるのは負の感情

名前を忘れただけなのに
彼との記憶が、もし消えたら……?
そんな未来、二人で壊してやりましょう

ずっとそばにいるのです
例え名前を呼べなくても
ここで、心で繋がっているのですから

決意を決め、勇気を奮い起こす
怖いものなんてない
二人揃えば、なんだって出来るのです
悲しい運命は辿らさせない
いつものように
いえ、いつもより強く照らしてあげましょう



 ……ねぇ、なんで?
 思わずそう零してしまうのは。いくら考えても考えても、出てこないから。
 音海・心結(ゆるりふわふわ・f04636)の見上げる視線の先には、よく見知った彼の顔。
 数えきれないくらい名前を呼んだ彼。
 楽しい時も、照れた時も、怒った時も……どんな表情だって見せられた。
 なのに――。
「なんで、思いつかないのでしょうか」
 よく知っているから。
 だから余計に、彼の名前だけが抜け落ちた今が、不安で仕方がない。
 そしてそれは、彼――日東寺・有頂(手放し・f22060)も一緒。
 有頂も、自分を見つめる彼女のことを、よく知っている。
 ――こん子は、俺の大切なひと、って。
 共に過ごした時間だって……初めて出会った時のことだって、ちゃんと言える。
「ある日あん店に来てな。八重歯が可愛らしい、良う笑う娘っ子で」
 話して、仲良くなって、じゃれて。
 むくれたり、はしゃいだり、照れたりして――照らしてくれる。
 ……たった今もすぐ隣で。俺の欲望を浄めてくれるたった一人の、女の子。
 それが、分かっているのに。
 こんなにも近くにいる彼女の名前を、呼べないのだ。
 手を伸ばせば触れられる距離にいるというのに。
 ――辛い、苦しい、……寂しい。
 そしてふたりに湧き上がるのは、負の感情。
(「名前を忘れただけなのに。彼との記憶が、もし消えたら……?」)
(「失くすのか? 名前を無くしたなら、この子との繋がりを失くすのか?」)
 でも……名前を呼べぬ今は、確かに苦しくて寂しいけれど。
「許さねえ、絶対に」
 彼の口から零れ落ちる言の葉。
 ――許す訳にいかないんだよ、そんな運命は、って。
 耳に届いた彼の声に、彼女もこくりと強く頷く。
「そんな未来、二人で壊してやりましょう」
 そして琥珀色の瞳が、大切な少女の姿を映して。
「なあ、そばにいて」
 声にならない声で、彼は彼女を呼ぶ。
 呼び合っていたその名前は、消え失せてしまったかもしれないけれど。
(「俺と君の心を結びつける、その名が」)
 ――ここにあるんだずっと、この胸に、って。
 そんな彼の声に、彼女も答える。
「ずっとそばにいるのです」
 だって、例え名前を呼べなくても。
「ここで、心で繋がっているのですから」
 そしてふたりは顔を見合わせ、頷きあう。
 妖世界の空を舞う迦陵頻伽を倒す為に。再び、互いの名前を呼び合う為に。
 決意を決め、勇気を奮い起こす。
 刹那、彼が神経を侵して己を覚ませば、飛翔する敵を何体でも相手どれる形を成す得物。
 美しい翼を広げ、誘眠音波を繰り出さんとする鳥人の妖をばさりと墜とすべく、握るそれを振るう。
 妖怪達を救い出す為に……骸魂から、そしてこの運命から。
「怖いものなんてない。二人揃えば、なんだって出来るのです」
 名前を呼べなくても、すぐそばにいるのだから。
「いつものように……いえ、いつもより強く照らしてあげましょう」
 彼女は己の血液を代償に己を強化させながら、彼の隣に立って、共に敵へと立ち向かう。
 ――悲しい運命は辿らさせない、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

六島・椋
【骸と羅刹】

名を失くしたくらいで滅ぶとはなんとまあ
元より記憶力の乏しい身、普段と然程変わらない
人形達につけるのを許してもらった名も、元はと言えば此方の我儘
なくなった今、本来の姿に戻ったと言える

些事ではない、真摯に考えた名だ
だが、名の有無でその存在に変わりはない
――ああ、やはり骨(きみ)は美しい

美しい声と聞いたが、相棒の子守唄との違いがわからん
骨のぶつかるあの乾いた音ならなァ
何言ってんだ君

敵の攻撃はUCで回避
予想通りの動きをしてきたなら
【早業】でカウンター
人形たちに動いてもらい(【範囲攻撃】)、
翼の付け根や相棒が掴んだ奴の喉を裂いてしまうか

自分の相棒は君の他にいない
相棒で問題あるまい

一人称:自分


エスタシュ・ロックドア
【骸と羅刹】
おう、だから連れてきた
お前ならそんな手間取らずに戦えんだろ、――。
あー、マジで相棒の名前すら出て来ねぇ腹立つ
なるほどな、お前普段こんな感じか?
ほーん、お前にとっちゃ愛するものの名前すら些事なんだな
俺ぁ最愛の愛車の名前すら出てこねぇことに戦慄してんだが
おう、美しさに浸ってるとこ悪ぃが奴さん来たぜ

あれと同レベルか
泣く子もスヤる俺の子守歌もなかなかのモンだろ(どや)

相棒がカウンターかましたら、
【怪力】でコレ(フリント)振るって【なぎ払い】【吹き飛ばし】

誘眠にゃ【呪詛耐性】で対抗
えーっとアレ(半可神通)発動
いい気になって飛び回ってるその翼をひっつかんでやろうか

ところで相棒、俺の名前は?



 あちこちで世界の終わり――カタストロフが起こっているという妖の世界。
 そしてまた『名前』という概念が消えた為、世界が滅亡へと向かっているのだというが。
「名を失くしたくらいで滅ぶとはなんとまあ」
「おう、だから連れてきた。お前ならそんな手間取らずに戦えんだろ」
 六島・椋(ナチュラルボーンラヴァー・f01816)が呟いたその言の葉は、エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)にとっては予想通りのもの。
 普段から3文字程度の名前しか覚えられない彼女が、名前に執着するようには到底思えなかったから。
 けれども、連れて来た彼の方が、もどかしそうな声で続けて。
「……あー、マジで相棒の名前すら出て来ねぇ腹立つ」
 それから青い瞳をその相棒へと向ける。
 ……なるほどな、お前普段こんな感じか? って。
「元より記憶力の乏しい身、普段と然程変わらない。人形達につけるのを許してもらった名も、元はと言えば此方の我儘。なくなった今、本来の姿に戻ったと言える」
「ほーん、お前にとっちゃ愛するものの名前すら些事なんだな」
 ――俺ぁ最愛の愛車の名前すら出てこねぇことに戦慄してんだが、と。
 続けた彼に、彼女はふるり微かに首を横に振る。
「些事ではない、真摯に考えた名だ。だが、名の有無でその存在に変わりはない」
 そして愛と敬意を以て紡ぐ――ああ、やはりきみは美しい、と。
 そんな予想通りな、名前が消えても何ら変わらない様子を見遣った後。
 彼はふと、空を仰いで。
「おう、美しさに浸ってるとこ悪ぃが奴さん来たぜ」
 我が物顔で妖の世界の空を舞い、美しいと言われている声で聞く者を魅了せんとするけれど。
「美しい声と聞いたが、相棒の子守唄との違いがわからん」
 骨のぶつかるあの乾いた音ならなァ、と。
 骨を何よりも愛し優先にする彼女の呟きを聞きながら。
「あれと同レベルか。泣く子もスヤる俺の子守歌もなかなかのモンだろ」
「何言ってんだ君」
 どや顔をしてみせた彼だけれど、あっさりと相棒にツッコまれました。
 それからふと彼女の瞳に映る光景は、10秒先の未来。
 いくら超高速の美しく舞いながらの連撃でも、予想した通りならば避けるのは容易。
 相棒がすかさず向けられた攻撃を躱し反撃の一撃をかました直後、彼も怪力をもって己の得物を振るう。
 勿論、錆だらけの短剣の名前も出てはこないが、使い方は握る手や身体が自然と覚えている。
 そんな敵をなぎ払い吹き飛ばしていく彼と共に、彼女も人形たちに動いてもらい広範囲に衝撃を繰り出して。
 美しい翼をバサリと広げた敵の、誘眠音波に対抗しつつも。
 ――いい気になって飛び回ってるその翼をひっつかんでやろうか。
 やはり名前は覚えていないアレを彼が発動させれば。
 刹那、放たれるは見えない神通力。 
 そして鮮やかな翼の付け根や相棒が掴んだ敵の喉を狙い、容赦なく彼女が引き裂いて。
 空を飛び回る敵を片っ端から引き摺り下ろしながらも。
「ところで相棒、俺の名前は?」
 彼がふともう一度、そう訊ねてみれば。
 返ってくるのはやはり、さして問題ではないという様子の声。
「自分の相棒は君の他にいない」
 ――相棒で問題あるまい、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーベ・メル
――どうしよう
名前が、ない

ボクの名前、ボクの憧れが
ぽっかりと空いている
なくなって、しまった?

名前、なまえ、なんだったっけ
ボクが欲しかったもの
心から焦がれたものはなんだったっけ

息が苦しい、立っているのもままならない
まるで名前ごと存在意義を奪われたような

独りだったボクには何もなかった
貴族に奴隷として拾われてからも
何も与えてもらえなかった

だから自分でつけたんだ、名前を
この名前は姉兄達が、あの娘が
呼んで、笑いかけてくれるものなんだ
なのに思い出せない
ボクは何を求めて、何の為に生きていたんだっけ

ボクから大切なものを奪ったのは――お前? それとも、別のナニカ?

許さない、絶対に
返して!!!



 何も持っていなかった。だから、自分でつけたのに。
 ――どうしよう。
「名前が、ない」
 ぽつりと落とされるのは、唖然とした響きを宿すリーベ・メル(Anti Liebe・f27075)の声。
 そう、ぽっかりと空いているのだ。
(「ボクの名前、ボクの憧れが……なくなって、しまった?」)
 緑色の瞳に宿るそのいろは、大きな戸惑いと動揺。
 それは、心から焦がれたもの。欲しかったもの。
 なのに……わからないのだ。
 ――名前、なまえ、なんだったっけ。
 そう思えば、息が苦しくて。
 立っているのさえもままならなくて。
 そう、それはまるで――名前ごと存在意義を奪われたような。
(「独りだったボクには何もなかった。貴族に奴隷として拾われてからも何も与えてもらえなかった」)
 ……だから自分でつけたんだ、名前を。
 なのに、それが思い出せなくなったら……なくなってしまったら。
 また、独りぼっちで何も与えて貰えなかったあの時に戻ってしまうような感覚さえ覚えて。
「この名前は姉兄達が、あの娘が。呼んで、笑いかけてくれるものなんだ」
 それを振り払おうと、そう口にするけれど。
 ……なのにやっぱり、思い出せない。
 そして、くらりと回る世界に何とか足を踏みしめながら、彼はおもむろにふるりと首を横に振る。
 ――ボクは何を求めて、何の為に生きていたんだっけ、って。
 それから、鮮やかな翼を広げ、美しい声で揺れ動く心を従わせようとする鳥人の群れへと、視線を向けて問う。
「ボクから大切なものを奪ったのは――お前? それとも、別のナニカ?」
 刹那、ぐっと握りこんだ拳が震えて。
 戦場に大きく爆ぜるのは、美しきセイレーンが生み出す数多の水泡。
 そして、その大きな翡翠の瞳に不安や怒りを滲ませ、彼は必死に声を上げる。
 ――許さない、絶対に。返して!!! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
「名前、ねえ。私にとってはただの識別のための道具だけど…」
それでも、無くなったら無くなったでやっぱりさみしいものなのかもしれないわね。

美声が聞こえてくるららしいけど、こちらも歌でも歌って音をかき乱してあげましょう。
讃美歌とか皮肉っぽいかしら?
まあそもそも私の心を震わせるのはなかなか難しいわよ?

敵の声に耐え抜いたのなら反撃ね。
ところで…これってユーベルコードも名前を忘れたのかしら?
使えるのなら問題ないけど、なるべく多くの敵を範囲内に収めて雨のような弾丸の嵐を打ち込んであげるわ。



 妖の世界に踏み込めば、消え失せてしまった概念。
 けれど、元々モノであったヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)にとって、それがどれほどの意味を成していたかといえば。
「名前、ねえ。私にとってはただの識別のための道具だけど……」
 認識のための記号のようなものだ。
 とはいえ、ひとと成ってからこれまで、名乗って来たものであることも確かだから。
 あったものがなくなってしまったらと、そう思えば。
(「無くなったら無くなったでやっぱりさみしいものなのかもしれないわね」)
 識別のための道具でも、使っていればそんな情も湧いてくる。
 とはいえやはり、なくなったからといって動揺したり、取り乱すようなものではないから。
「美声が聞こえてくるららしいけど、こちらも歌でも歌って音をかき乱してあげましょう」
 名前を奪い心を揺さぶり、できた隙へと入り込まんとする歌声にも彼女は惑わされない。
 ――讃美歌とか皮肉っぽいかしら?
 逆にそう、いつものように少し皮肉めいた言の葉を紡ぐだけ。
 そして金の髪を微かに揺らし、色の違う両の目を細めて。
「まあそもそも私の心を震わせるのはなかなか難しいわよ?」
 迦陵頻伽の群れを見遣りつつも首を傾け、ふと思う。
「ところで……これってユーベルコードも名前を忘れたのかしら?」 
 そして思い出してみるも、その名前は出てこない。
 けれど――名前は思い出せないけれど、忘れているのはそれだけだから。
『ギャアアッ!』
 ――遠慮しないで受けてみなさい。
 身体が確りと覚えている、雨のような雷の弾丸の嵐を。
 多くの敵を巻き込む様に降らせ、問題なく撃ち込んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジョン・フラワー
【花簪】
いやあ、奇遇だね! 僕も名前はわからないんだ!
僕はオオカミで、僕じゃないのはみんなアリス
確かにアリスはいっぱいいるけど、それぞれ違うことは見てわかるからね!

でもみんなは名前を忘れると困るのかな
世界が滅亡しちゃうんでしょ? 何も変わらないのになんだか不思議
例えばほら! あのきれいな羽がきれいなあの子! いっぱいいて楽しいね!
名前なんてわからなくても世界は楽しいんだよ! だから元気出して!

えっ、あれ悪いやつなの?
それはちょっと困るなあ。やっつけなきゃだめかなあ
狂気耐性で音波と美声はなんとかなるね
あとはなんかひらひらしてるやつ……うん、きれいだ!
でもやっつけなきゃだから、だいぶ強めに叩くね!


月舘・夜彦
【花簪】
ありとあらゆる名前を失うとは困りましたね
戦うだけならば問題はありませんが
私達が呼び合う「オオカミ殿」と「アリス」も言葉に出せぬとは
連携は困難ですね

ですが敵は待ってくれません
往きましょう……えぇと……はい
言葉が出せないので敵を指差す

視力にて敵の数を確認
敵の多い所へダッシュにて駆け込み、早業の抜刀術【陣風】
2回攻撃となぎ払いを併せて多くの敵を巻き込みましょう
誘眠音波は継戦能力にて眠らぬよう、刃を向ける覚悟を以て向かう

物理攻撃は見切りにて動きを読み、残像にて回避
隙があれば、そのままカウンター

味方も、己の刀も、頭に飾っているものも……あれ、これ、それ
……まるで言葉を忘れた老人のようですね



 此処は、頻繁に世界の滅亡が起こっている妖の世界。
「ありとあらゆる名前を失うとは困りましたね」
 そう真剣な表情で言った月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)に。
 ジョン・フラワー(まごころ・f19496)はいつも通りご機嫌な様子で口を開く。
「いやあ、奇遇だね! 僕も名前はわからないんだ!」
 この世界では、誰だってみんな名前を忘れちゃっているから。
 それにジョンにとっては、自分はオオカミで、自分じゃないのはみんなアリス。
「確かにアリスはいっぱいいるけど、それぞれ違うことは見てわかるからね!」
 だから彼にとっては、名前などそんなに大した問題ではないようだ。
 けれどやはり夜彦には、名を呼べぬことは不都合に感じて。
「私達が普段呼び合う名前も言葉に出せぬとは……」
 連携は困難ですね、とそう呟いた刹那。
「みんなは名前を忘れると困るのかな。世界が滅亡しちゃうんでしょ?」
 ……何も変わらないのになんだか不思議。
 そう呟いたジョンは、真剣な表情を宿す彼を元気付けるかのように続ける。
「例えばほら! あのきれいな羽がきれいなあの子! いっぱいいて楽しいね!」
 ――名前なんてわからなくても世界は楽しいんだよ! だから元気出して! って。
 それは、色鮮やかな翼をはばたかる迦陵頻伽の群れ!?
 ですが敵は待ってくれません、そう夜彦は敵の群れを見遣ってから。
「往きましょう……えぇと……はい」
 言葉が出ないので、仕方なく敵を指差す夜彦。
 そんな指先を辿ったジョンは、思わずピンクの瞳をぱちくり。
「えっ、あれ悪いやつなの?」
 ……それはちょっと困るなあ。やっつけなきゃだめかなあ。
 なんて、最初は言っていたけれど。
 誘眠音波と美声は持ち前の耐性で往なして。
「……うん、きれいだ!」
 あとはなんかひらひらしてるやつに、そう笑むけれど。
 ――でもやっつけなきゃだから、だいぶ強めに叩くね!
 そうジョンがひらひら色鮮やかな敵へと見舞うは、上がったテンションを乗せた怪力まかせの強烈な一撃。
 夜彦も、確りと敵の数を確認し、多くの敵を巻き込めるよう踏み込めば――放つは、早業の抜刀術『陣風』。
 美しき翼が広げられ繰り出される誘眠音波も、今は名を忘れた愛刀を握り、覚悟を以って向かって。
 名前は覚えていなくても、感覚や身体が覚えているから。
 敵の隙へ目掛け、すかさず反撃の刃を見舞う。
 それからふと、ぐるりと周囲を見回しつつも小さく苦笑してしまう。
「味方も、己の刀も、頭に飾っているものも……あれ、これ、それ」
 ……まるで言葉を忘れた老人のようですね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レザリア・アドニス
ここは、『あの新たに発見された世界』…
そしてこの『美しい鳥たち』は、今回の敵ですね…

奪われた色んな『名前』が、喉に詰まって、言い出したくても言えなくて、
どこかもどかしくて、歯痒くて、不便も感じたけど
それも目の前の敵を倒してからの話

高速に移動する敵を狙うのは難しそうなので
『白い花が舞う風』を起こし、纏めて一掃
声を聞こえて、従いたくなっても
胸にジンジンする痛みで、我を保つ
悪いけどもう先約あるから、お前らには付き合いたくない
ですよね、私の…『死霊ちゃん』
元々名前のないものだから、奪われることも失うこともない
むしろ、名前があってもなくても、私は私であり、かれはかれである
絶対見失わないんだからね



 妖しい月が空に浮かぶ、どこか郷愁を抱かせる景色。
 そんな幽世の世界へとぐるり、緑色の視線を巡らせながら。
「ここは、『あの新たに発見された世界』……そしてこの『美しい鳥たち』は、今回の敵ですね……」
 そう呟いたレザリア・アドニス(死者の花・f00096)が見つけたのは、鮮やかな彩りの鳥の様な群れ。
 それは、この世界の妖怪を呑み込んでいるという骸魂、オブリビオン。
 迦陵頻伽と呼ばれる敵の名前さえ、その概念が消え失せているこの場にはなく。
 レザリアはどこかもどかしいような、歯痒さを感じる。
 喉に詰まって、言い出したくても言えなくて、不便も感じる――そんな、奪われた色んな『名前』たち。
 けれど、今は思い出せないことを嘆いている時ではない。
(「それも目の前の敵を倒してからの話」)
 ちゃんと彼女は分かっているから……まだ、それらを取り戻せると言うことを。
 妖の世界の空をその鮮やかな翼で高速に飛び回る、そんな敵を捉えるのは難しそうだと。
 そう判断したレザリアが戦場に巻き起こすのは、敵を一掃するべく放たれた『白い花が舞う風』。
 その花の名前さえも、今は忘れてしまっていて。
 忘れたものに対し生まれた不安や動揺につけこまんと、戦場に響く美しい鳥人の声。
 耳に聞こえ響くそれに従いたくなっても……けれど、我を保つべく意識するのは、胸にジンジンする痛み。
 そしてその声をバサリと切り捨てるように、彼女は言い放つ。
「悪いけどもう先約あるから、お前らには付き合いたくない」
 ――ですよね、私の……『死霊ちゃん』、って。
 自分にはもうこいつらしかない、って。そう思う存在は、元々名前のないもの。
 だから、奪われることも失うこともないし。
(「むしろ、名前があってもなくても、私は私であり、かれはかれである」)
 そう思えるから……名前が思い出せないことなんて関係ないから。
 名も無き『死霊ちゃん』へと、彼女は紡ぐ。
 ――絶対見失わないんだからね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キアラ・ドルチェ
母から受け継いだ大切な称号「ネミの白魔女」
祖母から受け継いだ名前「キアラ」
…名前を思い出せない、それがこんなに心細い物だったなんて

名は存在自体を表す、ではその存在を見失ってしまった時はどうすれば…
「自分を信じるしか、ない。私は私だから」
名前を忘れても、称号を忘れても、私を形作るものは、私が信じるものは、揺るぎはしないっ!

迦陵頻伽、植物を操る魔女の系譜、生命使いの一人たる『私』が御相手致しましょう
さあ顕現せよ、植物の槍よ!

妖怪たちを助け出したら、怪我とか弱ってる子がいたら【医術】で手当てします
「…ええと、妖怪さんの名前分かんない。たぬきさん提灯さん目いっぱいさん…」適当に名前つけて呼んどきます…



 月が妖しく照る幽世の世界に降り立って、ふと気が付く。
 純粋にして神に愛されし魔女たる母から受け継いだ大切な称号も。
 偉大なる森王であった祖母から受け継いだ名前も。
 予め聞いていたけれど――全く思い出せない。
(「……名前を思い出せない、それがこんなに心細い物だったなんて」)
 キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)の心に生じるのは、不安。
 名は名は存在自体を表すという。
 けれど今、その存在を見失ってしまっている。
 どうすれば……そう、少女は言の葉を落とすけれど。
 すぐにぐっと顔を上げ、やはり名前を失っている鮮やかな翼と美声を持つという敵の群れを見遣り紡ぐ。
「自分を信じるしか、ない。私は私だから」
 名前を忘れても、称号を忘れても。それは寂しくはあるけれど。
 ――私を形作るものは、私が信じるものは、揺るぎはしないっ!
 そしてその青き瞳で、人鳥一体の肉体を持つ敵を捉え、言い放つ。
「美しき翼と滅びの美声をさえずるオブリビオン。植物を操る魔女の系譜、生命使いの一人たる『私』が御相手致しましょう」
 ――さあ顕現せよ、植物の槍よ!
 刹那戦場へと現れるは、万物を自然に還す想い貫く槍。
『ギャアアッ』
 そんな数多の植物の槍が鮮やかな敵の翼を穿ち、天から貫き墜として。滅びの歌など、歌わせない。
 そして倒した鳥人から、呑み込まれていた妖怪達を救い出せば。
「……ええと、妖怪さんの名前分かんない。たぬきさん提灯さん目いっぱいさん……」
 怪我をしていたり弱ってる気配のある子から、医術を駆使し手当てをしつつ。
 銀の髪をそっと揺らし、首を傾けながらも。
 やっぱり名前が分からないから……とりあえずは、適当につけて呼んでおくことに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

名前が無くなるか。子供達を育ててる身となっては凄いペナルティだ。アタシ達家族の連携は声掛けあってこそだから。しょうがない、身振り手振りでなんとかするしかないか。

前の抑えは娘・・・名前呼べないの不便だね。全く。に任せ、フォローを息子・・・まどろっこしいね、本当に。に任せ、【オーラ防御】【見切り】【残像】で攻撃を凌ぎ、狙いを定めて【破魔】【串刺し】【怪力】を併せた真紅のゲイボルグを投げ、【槍投げ】【衝撃波】で追撃。このとんでもない現象を早く終わらせる為に、先に進ませて貰うよ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

大切な母さんと兄さんの名前が呼べないなんて・・・耐えられません!!この現象、一刻も早く終わらせましょう。

はい、母さん、前の抑えはお任せください。(足元の狛犬に話しかける)名前呼べませんけど、呼びかければわかってくれる子ですので。サポート頼むよ。【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御を固めながら【衝撃波】で牽制しながら狛犬と一緒に接近。接近したら【二回攻撃】【怪力】【破魔】を併せた彗星の一閃で攻撃。追撃として狛犬に体当たりして貰います。この気分が悪い現象は即急に終わらせましょう!!道を開けてください!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

母さんと奏の名前が呼べないのですか・・・絆が失われるようでいい気分はしません。母さんと義妹の名前を呼んで過ごすのが僕の幸せですから・・この悪夢、終わらせましょう。

名前が呼べない分、ハンドサインや目配せで連携を成立させます。式神使いで鴉・・・名前呼べないと不便ですね・・・を飛ばして牽制攻撃すると同時に【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】で攻撃し、裂帛の束縛と共に【破魔】【結界術】で完全に動きを封じます。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぐ。さあ、名前を取り戻す為に!!邪魔者は退場してください!!



 世界の終わり……カタストロフを迎えんとしている幽世の地にて。
 失われた概念は、そう『名前』。
 それは当たり前の様に、毎日呼び合っていたものなのだけど。
 すっぽりと、それだけが抜け落ちている。
「名前が無くなるか。子供達を育ててる身となっては凄いペナルティだ」
 ――アタシ達家族の連携は声掛けあってこそだから。
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)は、そういつも共に在る娘と息子の顔を順に見つめるも。
 あれだけ呼び合っていたのに……やはり、名前だけどうしても出てこない。
 それは母である響だけに起こっている現象ではない。
「大切な母さんと兄さんの名前が呼べないなんて……耐えられません!!」
「母さんと奏の名前が呼べないのですか……絆が失われるようでいい気分はしません」
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)と神城・瞬(清光の月・f06558)にとっても、同じ事が起こっていて。
 ふたりとも、ふるりと首を横に振るけれど。
 でも……それを嘆いているばかりの性分でもないから。
「しょうがない、身振り手振りでなんとかするしかないか」
「この現象、一刻も早く終わらせましょう」
 母の声に、娘もそう頷いて。息子も同意するように続く。
「母さんと義妹の名前を呼んで過ごすのが僕の幸せですから……この悪夢、終わらせましょう」
 そして刹那、3人の前に現れたのは、美しい翼と声を持つという鳥人の群れ。
「前の抑えは娘……名前呼べないの不便だね。全く。に任せたよ。フォローを息子……まどろっこしいね、本当に。頼んだよ」
 そう呼びかける際は慣れぬ様子ながらも、今失くしているのは名前のみ。
 母はすかさず子供たちにそう声を掛けて。
「はい、母さん、前の抑えはお任せください」
 娘はそう頷いた後、足元の狛犬にサポートをお願いする。
 名前は呼べないけれど、呼びかければわかってくれる子だから。
 そして息子も、名前が呼べない分、ハンドサインや目配せを駆使し、母や妹と連携をはかりつつも。
「式神使いで鴉……名前呼べないと不便ですね……」
 やはり不便さは感じるけれど、式神の鴉へと声を掛け牽制攻撃を。
 同時に、敵の守りを無視した痺れる様な誘導弾で目潰し攻撃を仕掛け、裂帛の束縛と共に破魔を纏う結界術で鳥人の動きを封じれば。
「さあ、名前を取り戻す為に!! 邪魔者は退場してください!!」
「この気分が悪い現象は即急に終わらせましょう!! 道を開けてください!!」
 前へと出た娘も、守りの気を纏い防御を固めながら、握る得物で敵の格闘攻撃を受け、放つ衝撃波で牽制。
 狛犬と共に敵前へと躍り出れば、怪力をもって見舞うのは、破魔の力宿した気合いの彗星の一閃。
 さらに体当たりした狛犬の追撃が敵へと繰り出されて。
『ギャアッ!』
 狙いを定め、怪力を駆使し敵を串刺しにせんと投じられたのは、破魔を宿した真紅のゲイボルグ。
 さらに母が放つ衝撃波の追撃が、敵を空から撃ち墜としていく。
 早く子供たちの名前を、再び呼ぶためにも。
 ――このとんでもない現象を早く終わらせる為に、先に進ませて貰うよ!! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
俺の名前…
元々、本当の名前は奪われて残ってねぇ
今の名前は師匠が付けてくれた大切な物
俺が師匠から初めて貰った物
名前が分かんねぇと不便だろ
なんて言いながら一字くれた
その一字も思い出せやしねぇ

その前の
本当の名前も
多分
俺が俺の本当の親から生命と一緒に初めて貰ったもんで
けど全部奪われちまってて
郷愁とか…そういう気持ちも分かんなかったから
全然気にもならなかったけど

今は
ない事が…少し怖ぇ

本当の名前は取り戻せねぇけど
師匠から貰ったもんは
それだけは
…取り返さねぇと
覚悟決め

ああうっせぇ鳥だな…
少し黙れ
UC起動
残像纏いダッシュも乗せて追いかけグラップル
拳で殴る

それにもし
他の人達も同じ気持ちなら

ぜってぇ
…負けらんねぇ



 名前を奪われたのは、これが初めてではない。
(「俺の名前……元々、本当の名前は奪われて残ってねぇ」)
 けれど、その後に付けて貰った今の名前も、陽向・理玖(夏疾風・f22773)にとっては大切なもの。
 名前が分かんねぇと不便だろ、なんて言いながらくれた一字。
 今の名は師匠が付けてくれたもので、彼が師匠から初めて貰った物。
 ……でも。
「その一字も思い出せやしねぇ」
 いつも当たり前の様に名乗り、皆に呼んで貰っていた名前。
 大切で身近なものだったのに……完全に、抜け落ちているのだ。
 今の名前も勿論だけれど、きっとその前の本当の名前だって、多分。
(「俺が俺の本当の親から生命と一緒に初めて貰ったもんで、けど全部奪われちまってて」)
 郷愁とか…そういう気持ちも分かんなかったから、全然気にもならなかったけど。
 でも、今は。
 ――ない事が……少し怖ぇ。
 湧き上がる得体の知れぬ不安に、夕焼けの様な橙の髪を僅かに揺らし首を振り、彼はそう思わず青い瞳を伏せてしまうけれど。
 まだ完全に、失ったわけではない。
「本当の名前は取り戻せねぇけど。師匠から貰ったもんは、それだけは……取り返さねぇと」
 そう覚悟決め、天を仰げば。
 瞳に映るのは、美しい翼を広げた鳥人の群れ。
 そして戦場へと、囀る様に誘眠音波を放ってくる。
 その滅びの美声に、彼は微かに眉を顰めて。
「ああうっせぇ鳥だな……」
 ――少し黙れ。
 ぐっと拳を握れば、心に灯した覚悟を力に変えて。
 刹那、全身を覆うのは、七色に輝く眩い龍の気。
 そして残像を纏い戦場を駆け、敵を追従する様に天へと大きく地を蹴って。
『グギャアア!』
 煩い敵を黙らせるべく、墜ちろ、と。
 振り上げ繰り出した硬い拳を、鳥人へと叩き込み捻じ込む。
 名前を失った不安や恐怖。
 それを感じているのは自分だけではないかもしれない。
 ……だからもし、他の人達も同じ気持ちなら。
 彼は複雑な思い生じる己の胸を、ぎゅっと握り締めた後。
 再び覚悟を乗せた拳を強く握りしめ地を蹴り、戦場を駆ける。
 ――ぜってぇ……負けらんねぇ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、名前が無くなったら大変ですよ。
ア・・・、どうしましょう。
ふえぇ、ア・・・、のことも呼ぶことができないなんて大変ですよ。
ア・・・のことを呼ぼうとすると言葉が詰まってしまいます。
名前を早く取り戻しましょうね、ア・・・。
ふええ、とにかく行きましょう。

あのオブリビオンさん達は動きが速いからお・・・。
ふええ、ユーベルコードの名前もダメなんですね。
えっと、私がユーベルコードで時間を遅らせるのでア・・・、は隙を見て攻撃してください。



 妖しい月の照る、幽世の世界に降り立って。
 被っている大きな帽子をぎゅっと握りしめつつも、おどおど視線を巡らせながら。
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、己が失ったものに気付く。
「ふええ、名前が無くなったら大変ですよ」
 そう、それは名前。
 無くなったら大変なのに、無くなってしまったもの。
 そして彼女は、そっと傍らにいる鳥さん型のガジェットへと視線を向けて。
「ア……、どうしましょう」
 ふえぇ、と不安気な声を上げる。
 無くなったのは自分の名前だけではなくて。
「ア……、のことも呼ぶことができないなんて大変ですよ」
 此処は、名前という名前全てが消失してしまった世界。
 どうにかして、鳥さんのその名を口にしようとしても。
「ア……のことを呼ぼうとすると言葉が詰まってしまいます」
 やっぱり、無理みたいだから。
 思い出すことができないのならば――。
「名前を早く取り戻しましょうね、ア……」
 そう、取り返せばいい。
 ……ふええ、とにかく行きましょう、と。
 おどおどびくびくしながらも、彼女と鳥さんが先へと進もうとした刹那。
 その行く手を阻む様に天に舞うのは、鮮やかな翼を持つ鳥人の群れ。
 そんな敵は、超高速で攻撃してくることは聞いているから。
「あのオブリビオンさん達は動きが速いから、お……。ふええ、ユーベルコードの名前もダメなんですね」
 まずはその速度を遅くしようと試みるも、魔法の名前すら分からない。
 けれど忘れているのは、名前だけだから。
「えっと、私がユーベルコードで時間を遅らせるのでア……、は隙を見て攻撃してください」
 名前を忘れた技で敵の動きを鈍らせて。
 あとは、やっぱり名前の思い出せない、ア……、にお任せ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携歓迎

ムムム…ほんとだ!名前が出てこない!
なんこう…のど元まで出かかってる感じがしてむずむずする!
確かにこれは不便かなー……でも、うん
これはこれで新鮮だ!
世の中にはまったく同じ出来事なんてないものだけど、それでも類型の経験の少ない出来事ってボクにしてみればとても新鮮で……楽しい

まあやることも変わらないしね!
さーてきゃあきゃあと鳴かれる前に先手を取って球体くんたちで地面にたたき落として打ち下ろしのUC(やることはただの全力グーパン)でドーンッ!
うん、やっぱり戦う分には不便しないね最中には一々名前なんて意識しないし
っていうか考えてみたら技の名前って考えたこともなかったな



 話には聞いていたけれど、実際に訪れた幽世の新世界で。
「ムムム……ほんとだ! 名前が出てこない!」
 金の左瞳を大きく見開き、ぱちくりとさせているのは、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)。
 失った概念『名前』以外のことは普通に覚えているから。
「なんこう……のど元まで出かかってる感じがしてむずむずする!」
 落ち着かない、むずむずするような違和感も大きくて。
 これまでごく当たり前に名乗り、呼んで貰っていたものが無くなれば。
「確かにこれは不便かなー……でも、うん。これはこれで新鮮だ!」
 ちょっぴり不便だけど――こんなこと、なかなか体験できることではないから、新鮮にも感じて。彼にとっては、楽しくさえも思えるのだ。
 世の中にはまったく同じ出来事なんてないものだけど。
 それでも、類型の経験の少ない出来事は目新しくて、わくわくしちゃうから。
 けれど楽しいとばかり思っているわけにもいかないのは、ちゃんと分かっている。
「まあやることも変わらないしね!」
 そう天を仰げば、鮮やかな翼を羽ばたかせた敵の群れが。
 そして鳥人たちは我が物顔で天を飛び交いながら、滅びの美声の誘眠音波を発しようとしてきたが。
 ……さーてきゃあきゃあと鳴かれる前に先手を取って、と。
 まずは敵の群れを空から叩き墜とさんと、ロニは放つのは浮遊する球体くんたち。
 それから翼を捥がれ地へと墜ちた敵へと。
 ぐっと握りしめ振り上げた拳を、全力でドーンッ!
 神撃というただの全力グーパンを、敵へと振り下ろし捻じ込んで。
 次々と、単純で重くて神々しいその拳で、墜ちて来る敵をぼこりながらも。
「うん、やっぱり戦う分には不便しないね。最中には一々名前なんて意識しないし」
 また一撃、敵にひょいっと馬乗りになって、どーんっ。
 地に衝撃痕が刻まれるほどのぐーぱんを敵へと容赦なく叩き込みつつも。
 ふと、こてんと首を傾ける。
 ――っていうか考えてみたら技の名前って考えたこともなかったな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫崎・宗田
【狼兎】

嫌がらせ、の言葉に深く息を吐き
ったく面倒くせぇ事しやがる
あれだな、端的に言ってムカつく

…ふん、珍しいな
チビがこの手のノリに同意を示すたぁ
仕方ねぇだろ、他に呼びようもねぇし

んだそりゃ
ただの悪口じゃねぇか
熱血馬鹿と言われ一瞬眉を潜めるが
挑発するような言葉にニヤリと笑みを返し

一理あるな
悪口上等
お前もわかってきたじゃねぇか

お前もちゃんとついて来いよ!

チビの歌で敵が鈍化したところに
【属性攻撃】を宿した武器のフルスイングで放つ【衝撃波】で
炎の鎌鼬を放ち
敵の翼を燃やす【継続ダメージ】で地に落とす【範囲攻撃】
誘眠は【気合い】で耐えつつ
炎を抜けて突っ込んでくる相手は【指定UC】で迎え撃ち
トドメは任せたぜ


栗花落・澪
【狼兎】

新手の嫌がらせかな
…ふふ、今回は同意

またその呼び方ー?
僕チビじゃないんですけどー

文句を言うも正論を返され肩を竦め

ま、そうなんだけど
じゃあ僕は熱血馬鹿とでも呼んどこうか?
悪口上等、でしょ
今更気を使う中でもあるまいし

恋人としては未熟でも
お互いに軽口は慣れっこだし
そもそも、僕達の間には要らないよ
表面上の名前なんて

さて、じゃあ行こうか?
熱血馬鹿

もう相方の行動くらい読める
彼が導き、僕が合わせる
それだけ

【催眠】を乗せた【歌唱】で敵の動きを鈍らせ
風魔法の【高速詠唱、属性攻撃】で彼の炎を煽り強化
動きを封じ【破魔】を乗せた【指定UC】の【範囲攻撃】
破魔は味方には効かないからね
まとめて浄化してあげるよ!



 ひとたび、幽世の世界へと降り立てば。
 いつの間にか、すっぽりと抜け落ちている感覚。
 他はちゃんとあるのに……それだけが、ないのだ。
 どうしても思い出せないのは、そう――『名前』。
「新手の嫌がらせかな」
 ふいに呟かれた栗花落・澪(泡沫の花・f03165)のその言葉に、深く息を吐いて。
「ったく面倒くせぇ事しやがる」
 ……あれだな、端的に言ってムカつく、と。
 紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)が続ければ。
 毛先に至るにつれ橙へと色を変える髪をこくりと揺らしながら、澪は琥珀の瞳を細める。
「……ふふ、今回は同意」
 そんな言葉に、意外そうに瞳を瞬かせてから。
「……ふん、珍しいな。チビがこの手のノリに同意を示すたぁ」
「またその呼び方ー? 僕チビじゃないんですけどー」
「仕方ねぇだろ、他に呼びようもねぇし」
 むぅっと文句を言う彼に、正論を返す宗田。
 そんな正論に……ま、そうなんだけど、と肩を竦めて。
「じゃあ僕は熱血馬鹿とでも呼んどこうか?」
 チビと呼んだ彼から呼ばれ返された仮名は、熱血馬鹿。
 そう言われ、一瞬眉を潜めるけれど。
「悪口上等、でしょ」
 ――今更気を使う仲でもあるまいし。
 そう続いた挑発するような言葉に、ニヤリと笑みを返して。
「一理あるな。お前もわかってきたじゃねぇか」
 ――悪口上等。
 そんな挑発に愉快気に乗る、熱血馬鹿の名に足り得る熱血馬鹿。
 恋人としてはまだ未熟でも……こんな軽口は、お互いに慣れっこ。
 抜け落ちたのは名前だけ。あとは全部、残っているのだから。
 チビと呼ばれるのは、慣れてはいるとはいえ文句を言いたいところだけれど。
 隣の見慣れた横顔を見上げ、チビといつも通り呼ばれる彼は、失ったものに心揺れ動かない。
 ……だって。
(「そもそも、僕達の間には要らないよ」)
 ――表面上の名前なんて、って。
 それは、隣の彼もきっと同じで。 
「お前もちゃんとついて来いよ!」
 現れた敵目掛け地を蹴る、そんな相方の行動を読むことなど造作もない。
(「彼が導き、僕が合わせる」)
 そう……それだけで十分。
 天に飛ぶ鳥人の群れはその美声を駆使し、誘眠音波を放ってくるけれど。
 そんな弱い旋律など、掻き消してしまうかのように。
 戦場に響き渡るは、催眠を乗せた歌唱。その歌声が敵の動きを鈍らせれば。
 すかさず唸りをあげ繰り出されるのは、フルスイングから放たれる炎の鎌鼬。
『ギャアアッ!』
 さらに巻き起こる風魔法がその炎を煽り、煌々とより燃え上がらせて。
 その炎が燃やし続けるのは、鮮やかな色をした敵の翼。
 それに、例え炎を抜けて突っ込んでくる敵がいたとしても。
 ――武器なんざ無くても戦えんだよ!
 ぐっと掴みさえすれば、それでいい。
 持ち上げぶん回し、どのみち地に叩きつけるまで。
 そして熱血馬鹿は敵を叩き落しながらも、チビへと託す――トドメは任せたぜ、って。
 それは言葉で紡がずとも、一瞬だけ合わさった視線だけで伝わるから。
「破魔は味方には効かないからね」
 ――まとめて浄化してあげるよ!
 刹那、翼を焦がされ地に叩きつけられた鳥人達へと見舞われるのは。
 全ての者に光あれ……戦場に満ち溢れる、魔を浄化する光。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【朔夜】

うつしよ、かくりよ
噫、此処が何処かは理解っている
滅びゆくものを救うために

――、さあ、往こう、と
いつも調子で掛ける言葉のきみの名前だけ
欠けたまま
腐れ縁で、俺を子供扱いする、気の置けないひと
名だけが喉につかえる歪

探るように俺の単語を並べ立てる君
ちょっとチビは項目から外してよ、
相変わらず口が悪いんだから
ぷん、としつつ、宵遊は反芻して紡ぐ

まるで月が永遠に満ちぬ様な違和感と
何処か声に出せば馴染むおと
「おぼろ、」
ぽろり、転がる、仮初の呼び名
彼に似つかわしいと想うんだ

朧、ゆくよ、早く互いの名を取り戻すために
忘れてしまった相棒の刀
けれど縋るのはこの手に握る一本のみ

桜が舞う
噫、漸く月が満ちてゆくようだ


飛白・刻
【朔夜】

…黒、夜、店主、猫、チビ、月、桜…
思い出せるもの、連想させるものを一並べて
…どれがいい。宵遊(よあそび)
振りながらもまた違う名を付ける

現象がわかっていても
――落ち着かないのだ
呼び慣れたその名が出て来ぬことも
交えた刃の名を思い出せぬことも
何時かの幽世から己の名を呼び戻したその声は
憶えているというのに

そこにあってそこにない
こうまでも心を揺さぶるのか

おぼろ、
何故か。それはすとんと落ちる
呆けた思考を覚ます針のよう

振るう己刃は識っている
その宵遊ぶ切先の軸跡を
幾度、背を預けたと思っている

さあ、その名を返してもらおうか

足りぬ酒坏を満たすには
足りぬ逆月を満たすには

連ねた一並べが、隙間を埋めて行くように



 ――うつしよ、かくりよ。
 降り立ったのは、どこか郷愁を抱かせる迷宮の世界。
 ……噫、此処が何処かは理解っている。
 何の為に、此の幽世へと参じたのかも。
 それは……滅びゆくものを救うために。
 そして宵鍔・千鶴(nyx・f00683)は、共に歩む連れへと視線を向けて。
「――、さあ、往こう」
 いつも調子で言葉を掛けるけれど。
 ――きみの名前だけ、欠けたまま。
 千鶴はよく知っているのだ。
 すぐ傍らをゆく飛白・刻(if・f06028)が、どんな『きみ』なのかを。
(「腐れ縁で、俺を子供扱いする、気の置けないひと」)
 けれど、それなのに、噫……名だけが喉につかえる歪。
 その歪は、千鶴だけに生じているのではない。
「……黒、夜、店主、猫、チビ、月、桜……」
 連れに対し、思い出せるもの、連想させるものを刻も一並べ。
 並べ立てられた単語たちはまるで、彼を探るように。
 けれど、その一部に異議あり。
「……どれがいい。宵遊」
「ちょっとチビは項目から外してよ、相変わらず口が悪いんだから」
 そう、ぷん、としつつも――振りながらもまた違う名を己へと付けたその声を、ふと反芻して紡いでみる。
 ……宵遊、よあそび。
 そして宵遊と呼んだ彼の姿を見つめる藍の彩に映しながら。
 たったひとつだけ欠けた歪に、そうっとふるり、微かに首を横に振る。
 現象がわかっていても――落ち着かないのだ。
(「呼び慣れたその名が出て来ぬことも、交えた刃の名を思い出せぬことも」)
 抜け落ちているのは、彼の名だけ。
 ……何時かの幽世から己の名を呼び戻したその声は、憶えているというのに。
 当たり前の様に口にしていたものが、なくなってしまった感覚。
(「そこにあってそこにない、こうまでも心を揺さぶるのか」)
 それはまるで、欠けた月が永遠に満ちぬ様な違和感。
 けれど、ぽろりと零れ転がったのは。
「おぼろ、」
 ……彼に似つかわしいと想うんだ、って。
 宵遊が呼んだ、『きみ』の仮名。
「……おぼろ」
 すとんと落ちるのは、何故だろうか。
 それは呆けた思考を覚ます針のように、心に刺さって残る響き。
 そして刹那、月が照る幽世の空に、鮮やかな翼広げた鳥人の群れが迫るのを見遣れば。
「朧、ゆくよ」
 ――早く互いの名を取り戻すために。
 そう相棒の刀を、宵遊は握りしめるけれど。
 その刃の名も忘れてしまった。紡ぐことが、できない。
 けれど……忘れたのは、その名だけ。縋るのは、この手に握る一本のみ。
 そして朧も、振るう己刃は識っている。その宵遊ぶ切先の軸跡を。 
「幾度、背を預けたと思っている」
 戯れの如く仮名を付け合うのも、思ったほど悪くはないのだけれど。
 ――さあ、その名を返してもらおうか。
 欠けた歪を、其の儘にしておく気はない。
 ……足りぬ酒坏を満たすには。
 ……足りぬ逆月を満たすには。
 ひとつ、またひとつ並べてゆく、『きみ』のこと。
 隙間を埋めて行く、連ねた一並べ。
 そして、朧に照る月がはらり。まるで桜色の涙を零すかの様に。
 舞う桜が朧宵に遊び、振るう一閃が、鳥人たちの鮮やかな翼を斬り伏せ、妖を地に墜としてゆけば。
 噫――漸く月が満ちてゆくよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユヌ・パ
『名前』のない世界なんて、おあつらえ向きじゃない
あたしの名は、とっくにオウガにくれてやって
あと3音しか残ってないのよ

それに、ねえ
あたしたち、もとから呼びあうような仲じゃないもの
いまさら、なんの感慨もありはしないんだわ

――さあ、相棒
『食事』の時間よ
のこさず喰いつくしなさい


ほどいた「髪の毛」を複数の手の形に変え
迦陵頻伽の脚なり翼なりを捕まえ、地面に引きずり下ろす
捕まえたら真っ先に羽根を折り、喉を潰し技を無効化

隙をつくるくらいなら、誘眠音波は避けない
それより攻勢に出てさっさとケリをつけたいわ

眠ることがあっても
この身に取り憑いたオウガが
あたしの身体を使って好きに戦うでしょう

※アドリブ、連携共闘自由に



 幽世の世界に足を踏み入れれば。
 いつの間にかするりと――奪われたもの、抜け落ちたもの。
 けれど、零れ落ちたそれは。
「『名前』のない世界なんて、おあつらえ向きじゃない」
 ユヌ・パ(残映・f28086)にとっては今更、なくなったところで、何てことのないもの。
 ――だって。
「あたしの名は、とっくにオウガにくれてやって、あと3音しか残ってないのよ」
 その3音だって、今は思い出せなくなっているけれど。
「それに、ねえ。あたしたち、もとから呼びあうような仲じゃないもの」
 ……いまさら、なんの感慨もありはしないんだわ、って。
 やっぱり、彼女たちにとっては、それをなくしたって、大した問題ではないのだ。
 刹那、幽世の空を我が物顔で飛び交うのは、鮮やかな翼をもった鳥人の群れ。
 妖怪を呑み込んだ鳥人の骸魂は、名をなくし歪に心揺らぐ者達を、その美声で惑わさんとするけれど。
「――さあ、相棒。『食事』の時間よ」
 ……のこさず喰いつくしなさい。
 逆に彼女たちは、迫る輩を青白き炎で焼き尽くし喰らってやる。
 はらり、ほどいた紫の髪が複数の手と成り、飛び交うその脚なり翼なりを捕まえれば。
『ギャアアッ!』
 天から引きずり下ろし真っ先に羽根を折って、二度と空にはかえれぬ様、地を這わせて。
 誇る美声を囀れぬようにと、その喉を潰す。
 けれどそれでも、新手の鳥人が戦場に誘眠音波を響かせるけれど。
 ……隙をつくるくらいなら、避けない。
「それより攻勢に出てさっさとケリをつけたいわ」
 躱す素振りを彼女は全く見せない。
 だって、例え眠る事があったとしても。
 きっと、この身に取り憑いたオウガが、己の身体を好きに使って戦って。
 そして青白き炎が――煩い鳥人たちを全て、喰らうだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『水底のツバキ』

POW   :    届かぬ声
【触れると一時的に言葉を忘却させる椿の花弁】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    泡沫夢幻
【触れると思い出をひとつ忘却させる泡】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    忘却の汀
【次第に自己を忘却させる歌】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠黎・飛藍です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※お知らせ※
 第2章プレイング送信の受付は、【7/10(金)朝8:31】より開始いたします。
 それ以前に送信された分は流れてしまう可能性が高いのでご注意ください。
 追加情報を記載したOPを受付開始前日迄に掲載いたします。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。


●玉響の心、忘却のツバキ
 すっぽりと抜け落ちた概念は、最初は『名前』だけであった。
 けれど現れた比丘尼『水底のツバキ』は、名前だけでは飽き足らず。
 遭遇した相手の様々なものを『忘却』させようと、椿を咲かせ夢幻の泡を成し歌をうたう。
 言葉も、思い出も、自己さえも――その想いも、何もかも。
 飲み込んだ妖怪『玉響』という名の人魚の力を使って。
 いや……『忘却』こそが救いだと。
 骸魂である比丘尼はそう信じているのだ。
 その『忘却』が歪を生み、この世界を滅亡へと導いていることも構わずに。
『貴女だって、忘れれば楽になるのよ、玉響』
 比丘尼は歌うようにそう語り掛け、玉響自身の自己をも奪わんとしている。
 そして椿を咲かせ彼女の言の葉を奪い、ぷくりと浮かばせた泡でまたひとつ、思い出を忘れさせる。
『辛かったでしょう? 酷い裏切りや騙された悲しい恋のことはもう忘れて。そしてみんなみんな、忘却させましょう』
 そうすれば、何にもなかったことになるから。
 だって誰ひとり――そんなことがあったなんて、その存在があったことさえ、ましてや自分のことすらも……覚えてなんかいないのだから。
『だから、忘却は救いなの。忘れましょう、忘れさせましょう』
 骸魂の比丘尼はそう、呑み込んだ人魚を唆し続ける。
 そして、はらりと誰かの何かが抜け落ちてゆくたびに……また一歩、滅びへと進む世界。
 けれど、忘却した『名前』を取り戻す為に、この世界を滅亡から救う為に。
 猟兵達は比丘尼へと手にした得物を向ける。
 例え、紡ぐ言の葉も、重ねた思い出も、己の事さえも……忘れてしまうかもしれないと、分かっていても。
 それを乗り越え立ち向かい、骸魂である比丘尼を倒せば。
 また取り戻せることを、知っているから。


●マスターより
 第2章は、様々なものを『忘却』させる比丘尼『水底のツバキ』との戦闘です。
 その際に指定いただいたUCやプレイングによって、以下の様な現象が起こります。

 POW:大切な言葉や、声そのものが失われます
 SPD:貴方にとって印象深い思い出を忘れます
 WIZ:自分が何者なのかすら忘れます

 個人差がありますので、大体の方向性という意識でご自由に設定いただいて構いません。
 何を失い、どう感じ、どのような思いを抱いて『水底のツバキ』と戦うか。
 プレイング次第ですが、戦闘よりも心情寄りのリプレイとなるかと思います。
 『水底のツバキ』に飲み込まれた妖怪は『玉響』という名の人魚です。
 過去に、酷い裏切りを受け騙された恋の辛さ等が重なり、飲み込まれたようです。
 骸魂『水底のツバキ』を撃破すれば『玉響』も助けられますが。
 何か声をかけてみるのもいいかもしれません。
 その他に関しましては、OPやOP公開時のマスターコメントをご確認ください。
 第2章では名前はまだ戻っていませんが、元凶『水底のツバキ』を倒せば戻ります。
真宮・響
【真宮家】で参加

比丘尼・・・人魚の肉を食べて不老になった娘の名だが・・・まさかね。大事な事を忘れるのは恐怖を感じるが、この娘さんを救う為に必要ならば。

警戒するが、泡を喰らって、夫と初めて出会った出来事が頭から抜けて行く。馬車で出掛けて、暴漢共に襲われたところを暴漢を叩きのめしてたすけてくれた戦士の逞しい背中・・・恋に落ちる理由は充分だった。

何故アタシはここにいる?運命の人とどうやって出会ったんだっけ・・渦巻く思いを振り払うように全力で【怪力】で飛竜閃を力任せに振り回す。一応【オーラ防御】はしておくが、気持ちに振り回されてるから防御は疎かになるかもね・・・


真宮・奏
【真宮家】で参加

人魚さんが骸魂のせいで悲しみに沈んでいます・・・今恋してるものとしてはぜひ助けてあげたいですが、まずは攻撃を凌がなければいけないのですね・・

反射的にトリニティエンハンスで防御力を上げてから即花弁に当ってしまいます。母さん、瞬にいさん、だいじょう・・・声が出ない?え~と、これから何をしようとしていたのでしょう?私が一番大切にしてた事は・・(「護る」という言葉を忘却)何だが気持ち悪いです!!いつもするべき事柄を思い出せないので、夢中で武器を振り回して【衝撃波】で攻撃します!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

人魚の肉を食べて不老になった娘さんを比丘尼といいますが・・・関連があるかは確定ではないですが、骸魂になるのは切なさを感じますね・・・

警戒しますが、泡を喰らって、何故この場にいるか疑問を感じます。失われるのは生まれ故郷を滅ぼされた日、母さんと奏と出会った記憶。何故僕は母さんと奏の傍にいるんだろう?どんな日を辿って、どんな道を歩んでここまで来た?

何か不安が胸を支配します。その不安を振り払うように月光の狩人を発動。狩猟鷲の攻撃と共に【誘導弾】を乱射。気持ちが騒いでいるので【オーラ防御】をするのが精一杯で細かな動きは出来ないかも・・・



 ――忘却は救いよ。
 まるで歌うかの様に、戦場に響く人魚の声。
 ――全部、何もかも忘れてしまえば、心の痛みも忘却して消えてなくなるの。
 比丘尼『水底のツバキ』はそう、己が呑み込んだ彼女にそっと微笑む。
 ……そうでしょう? 玉響、って。
 そんな人魚の姿をした骸魂を見遣り、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は思う。
(「比丘尼……人魚の肉を食べて不老になった娘の名だが……まさかね」)
(「人魚の肉を食べて不老になった娘さんを比丘尼といいますが……」)
 神城・瞬(清光の月・f06558)も響と同じ様に、比丘尼という存在に関し思考を巡らせる。
 聞いた話によれば、骸魂に呑み込まれているという妖怪は、玉響という名の人魚だという。
 それが、比丘尼と呼ばれる水底のツバキに呑まれているということは、気になるが。
 瞬は改めて敵を見遣り、その姿に思う。
(「関連があるかは確定ではないですが、骸魂になるのは切なさを感じますね……」)
(「大事な事を忘れるのは恐怖を感じるが、この娘さんを救う為に必要ならば」)
 忘却することに関し、水底のツバキが言うような救いどころか、響は何処か恐怖を感じるけれど。
 この場へと赴いた目的を果たすべく、滅亡せんとしている世界とそして骸魂に呑まれた彼女を助ける為に、退くという選択はない。
(「人魚さんが骸魂のせいで悲しみに沈んでいます……」)
 忘却は救いだと言う水底のツバキであるが……忘却させているその姿をみれば、救いだとは思えない。
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)が彼女を見て感じる感情は、救いではなく、悲しみだから。
 それからふと、隣に立つ義兄へと一瞬視線を向けた後。
(「今恋してるものとしてはぜひ助けてあげたいですが、まずは攻撃を凌がなければいけないのですね……」)
 奏は、呑まれている人魚・玉響へとその瞳を移す。
 恋する気持ちを知る立場として、彼女を助けてあげたい。
 そのためには……骸魂を倒さなければいけないから。
 そう、並び立つ3人が、それぞれの思いを宿し得物を握っている刹那。
『かなしい思い出は、忘却して夢まぼろしに。水のあわにしてしまいしょう』
「……!」
 水底のツバキが放つのは、泡沫夢幻――数多の泡。
 勿論、警戒して構えていたけれど。比丘尼の成した泡をその身に浴びてしまう響と瞬。
(「何故アタシはここにいる? 運命の人とどうやって出会ったんだっけ……」)
(「何故僕は母さんと奏の傍にいるんだろう? どんな日を辿って、どんな道を歩んでここまで来た?」)
 忘却するのは――思い出。
 響の頭からするりと抜け落ちていくのは、夫と初めて出会った出来事。
 馬車で出掛けたあの日、暴漢共に襲われたけれど。そんな輩を叩きのめしてたすけてくれた、戦士の逞しい背中。
 そう……恋に落ちる理由は充分だった、そんな思い出。
 そして瞬も忘れてゆく。生まれ故郷を滅ぼされた日、母や妹と出会った記憶を。
 忘れたのは過去の記憶だけれど。それは、ふたりの今を語るに外せない思い出だから。
 その心に渦巻くのは、不安。
 けれど、それを振り払うように。
 ――確実に当てて見せるさ!!
 ――さあ、獲物はそこですよ!! 容赦は不要です!!
 守りの気は纏ってはいるものの、防御をする心の余裕もないままに。気持ちに振り回され、細かな動きも出来そうにはないが。
 響が怪力を駆使し全力で素早い一撃、飛竜閃を力任せに振り回せば。瞬も戦場に狩猟鷲を喚び、同時に誘導弾を撃ち放つ。
 そして奏も、魔力を以って防御力をあげていたけれど。
 ひらり、水底のツバキが無差別に舞わせた椿の花弁に触れてしまえば。
 護りを施していたから、ダメージこそ大して負わなかったけれど。
 ――母さん、瞬にいさん、だいじょう……声が出ない?
 口を開くも、それは声にならずに。
 さらに奏は忘却する。
(「え~と、これから何をしようとしていたのでしょう? 私が一番大切にしてた事は……」)
 ……そう、「護る」という言葉を。
 いつもするべき事柄を、思い出せない。
(「何だが気持ち悪いです!!」)
 声も出せず、大切な言の葉も分からない。
『忘れてしまえばいいわ、何もかも』
 色々なものを忘却させた3人を見て、水底のツバキはふふっと笑むけれど。
 救いどころか、違和感で心が落ち着かないから。
 奏は声を出せぬまま、視線を母や兄に向けながらも。
 その気持ち悪さごと払うかのように夢中で武器を振り回し、衝撃波を繰り出す。
 比丘尼を倒せば……きっとこの歪な違和感から、皆と共に解放されるだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
あら、思い出を忘れさせてくれるなんてとっても素敵。
だって確かに
「ロクな思い出がないからね」
残念だけど嫌な思い出はどうやっても忘れることはないの。
傷として血を流し続けるのよ。

自嘲しつつ、泡の攻撃は銃で受け止めて、ユーベルコード【因果応報の鏡】
同じ泡を浴びせてあげる。

「貴女はどんな思い出を忘れるのかしら?」
「教えてくれるのならとっても興味があるのだけれど」

もっともそのまま始末しちゃうんだけどね。
こんなことしていれば確かに、嫌な思い出ばっかりになるわよね?



 戦場にぶくぶくと揺蕩うのは、儚く消えゆくかの如き夢幻の泡。
『思い出なんて、忘れてしまえばいいの。救われましょう?』
 そう紡ぐ骸魂――水底のツバキに、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は色の異なる藍と紫の瞳を細める。
 ……あら、思い出を忘れさせてくれるなんてとっても素敵、って。
 だって確かに――。
「ロクな思い出がないからね」
 忘却したくてもできない、嫌な思い出。それは一種の呪いのようで。
 それに、ヴィオレッタには痛い程よく分かっている。
 だからそれを、戯言を口にする比丘尼に教えてあげる。
「残念だけど嫌な思い出はどうやっても忘れることはないの」
 ――傷として血を流し続けるのよ、って。
 それはどうやったところで、いつまでも塞がる事のないもの。
 けれど忘れたくても、そう易々と妖しい泡には囚われない。
 ヴィオレッタは自嘲しつつも、戦場に浮かび迫る涌現の泡を銃で受け止めて。
 ――これは貴方の罪。
「貴女はどんな思い出を忘れるのかしら?」
『……!』
 写し取ったそれを返すかのように、引き金を引く。
 忘却が救いだと唆す比丘尼は、何を忘れるのか。
「教えてくれるのならとっても興味があるのだけれど」
 でも、もう忘れちゃうから、それを聞くのはきっと叶わないし。
 それに、何よりも。
「もっともそのまま始末しちゃうんだけどね」
 還るべき海へと、お引き取り願うだけ。
 そしてヴィオレッタは、再び銃口を骸魂を向けて。
 ――こんなことしていれば確かに、嫌な思い出ばっかりになるわよね?
 因果応報な比丘尼の罪を、まるで鏡に写すかの様に……再び、そっくりそのまま返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キアラ・ドルチェ
私が誰かすら思い出せない
自分の土台が全て崩れ去った気分です…心細い、怖い

…でも。その感情を抱いている私は確実に存在する
そして湧き上がる怒りが、私を支えてくれる

忘却が救い?
それは一面的です
だって…どんな辛い悲しい事も、「今の私」を形成する一部だから
「それは、なくしちゃいけないものです」
何より忘却は他者から与えられるものではない!
「その呪いを祓いましょう、比丘尼」
UCの名すら忘れましたが、私にあるこの植物を操る力は変わらないっ!
貫け、植物の槍よ!

玉響さん、思い出して
貴方の生は本当に辛い悲しいしかなかったんですか
楽しいは、なかったんですか
もしそうだとしても。今度は私と、私たちと楽しいを紡ぎませんか?



 滅亡へと近づく幽世の世界に響くのは、優しいフリをした誘惑の歌。
『忘却は救い。だから貴女も、忘れればいいの』
 その歌声が耳を擽れば――するりと何かが、いとも容易く零れ落ちる。
(「私が誰かすら思い出せない」)
 それは……キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)の自己。
 歌をうたう比丘尼は、忘れることこそ救いだというけれど。
 けれど、キアラの心に瞬間生じるのは、救われるような感情では決してなく。
「自分の土台が全て崩れ去った気分です……」
 ――心細い、怖い。
 まるで救いとは、真逆の感情。
 それでも、だからこそ。キアラは銀の髪をふるりと揺らし、首を横に振りながらも実感する。
 確かにやはり、自己を失うことは、心細くて怖いけれど。
 ……でも。
(「その感情を抱いている私は確実に存在する」)
 そしてキアラを支えてくれるのは、湧き上がる怒り。
 刹那、忘却を唆す骸魂に、真っ直ぐな青の視線を向けて。
「忘却が救い? それは一面的です」
 はっきりと、彼女はその心を紡ぐ。
 嫌なことを忘れることは、その一瞬だけ見れば救いなのかもしれないけれど。
 キアラはちゃんと知っているから。
 ――だって……どんな辛い悲しい事も、「今の私」を形成する一部だから、って。
 だから、教えてあげる。
「それは、なくしちゃいけないものです」
 ――何より忘却は他者から与えられるものではない!
 それにいくら頭の中からその名が消えてしまっても。
「その呪いを祓いましょう、比丘尼」
 ……私にあるこの植物を操る力は変わらないっ!
 自分が紡ぎ編み出せるヤドリギの魔法は、この身に確りと染みついているから。
 ――貫け、植物の槍よ!
『……!』
 問題なく放たれた森王の槍が、骸魂を貫かんと唸りを上げて。
 鋭撃を受け上体を揺らす水底のツバキへと……いや、その内にいる玉響へと、キアラは声を響かせる。
「玉響さん、思い出して。貴方の生は本当に辛い悲しいしかなかったんですか。楽しいは、なかったんですか」
 忘れたい思い出が沢山、彼女にはあるのかもしれない。
 けれど……もしそうだとしても。
 ならば、忘れたくない思い出を、その上に積み重ねてゆけばいい。
 それをキアラはよく知っているから。玉響へと、その手を差し伸べる。
 ――今度は私と、私たちと楽しいを紡ぎませんか? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【花簪】SPD
霞むように消えていく
ヤドリガミとなったきっかけを
好いた者の命の灯が消える時を
初めて知った悲しみを

忘却は救い?忘れれば楽になる?
――そんなはずはない
ならば、何故こんなにも胸が苦しい

私が存在するのは、その悲しみがあったからこそ
生まれた意味も忘れたからこそ、取り戻さなければと本能が叫ぶ

――返せ
何人たりとも「私」を奪うことは許さぬ
幾重にも重なる想いの末に存在する私を否定するな

視力と第六感にて気配を確かめ、オオカミ殿の安否を確認
……精神に左右され難い所は彼の強みでしょうな
浄化の力を込めた抜刀術『断ち風』にてツバキ本体を狙う
辛さも悲しみも、軈て糧になる
それさえ忘れて繰り返す方が苦しいものです


ジョン・フラワー
【花簪】
僕も作戦を考えてきたんだ!
もしも戦うのを忘れちゃったら遊んじゃうから
だから忘れる前にがんばる! これだね!
何を忘れるかわからないけどきっと解決!

言葉と声?
あー、えーっと

やあお嬢さん! 早速だけどさようなら!
出会いと別れはいつだって突然さ。まるで流れ星のようにね
キミが流れ星役だよ。ロマンチックだろう?
隕石みたいに地面に叩きつけられるのはロマンチックじゃない?
そういう見方もあるかもね
でもみんなのたのしいを忘れさせるのはよくないなって僕思うんだ
だからさようなら! さようなら!
もう会わないようにさようなら!

なんてことも言わずにただただ無言で振り回すよ
お喋りできればもっとたのしいのに、勿体ないな



 まず忘れさせるのは、名前。
 それから徐々に、言葉や思い出を奪って。
 忘却による救いを与えんとしてくる、水底のツバキ。
 けれど勿論、たとえ忘れても……それは、救いなどではない。
 だから、ジョン・フラワー(まごころ・f19496)は事前に聞いた敵の能力に対して。
(「僕も作戦を考えてきたんだ!」)
 対策を考えてみた結果。
 もしも戦うのを忘れちゃったら遊んじゃうから。
 ――だから忘れる前にがんばる! これだね!
 そうこくりと大きく頷き、ご機嫌に敵へと視線を向ける。
 ……何を忘れるかわからないけどきっと解決! って。
『さあ、忘れましょう。全部忘れて、救ってあげる』
 刹那、戦場へとひらり数多舞うのは、忘却を促す椿の花弁。
 そして、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は感じる。
 そんな花弁舞う風景に、霞むように消えていくものたちを。
 ……ヤドリガミとなったきっかけを。
 ……好いた者の命の灯が消える時を。
 ……初めて知った悲しみを。
 それらは決して、楽しい思い出などではない。
 むしろ、思い返すたびに心が締め付けられるようなものも沢山あるけれど。
(「忘却は救い? 忘れれば楽になる?」)
 声さえも奪われても尚、はっきりとその心にこう紡げる。
 ――そんなはずはない、と。
 忘れることで救いとなるのであれば、この心も軽くなるだろうのに。
(「ならば、何故こんなにも胸が苦しい」)
 楽になるどころか、苦しい。
 だから、たとえそれらを忘れてしまっていても。
 夜彦の本能が叫ぶのだ。
(「私が存在するのは、その悲しみがあったからこそ」)
 ……生まれた意味も忘れたからこそ、取り戻さなければ、と。
 そして声は無くとも、開かれた口が紡ぐ。
 ――返せ、と。
(「幾重にも重なる想いの末に存在する私を否定するな」)
 今の自分があるのは、楽しいことも悲しいことも辛いことも……そんな沢山の想いが織り重なり成してきたもの。
 それを全て忘れてしまうことは、救いでは決してない。
 むしろ、自分というものを否定されたも同じ。
 だから夜彦は、それを奪った比丘尼を斬る。
 ……何人たりとも「私」を奪うことは許さぬ、と。
 そんな夜彦の隣で、ぱちくりと瞳を大きく瞬かせるジョン。
(「言葉と声? あー、えーっと」)
 やはりジョンも、思うように声や言葉が出せなくなっているけれど。
 でも動じる事もなく、あくまでご機嫌に。
 ――やあお嬢さん! 早速だけどさようなら!
 ジョンはそう比丘尼を見遣り、続けて心の中で紡ぐ。
 ――出会いと別れはいつだって突然さ。まるで流れ星のようにね。キミが流れ星役だよ。ロマンチックだろう?
 そしてゆらり揺れるその尾鰭を瞬間、掴んで持ち上げれば。
『……!』
 ――隕石みたいに地面に叩きつけられるのはロマンチックじゃない?
 そう、思い切りびたんっと敵を振り回し、地に叩き伏せる。
『この酷い仕打ちだって……忘れれば、いいのよ。忘却は救いだもの』
 ――そういう見方もあるかもね。
 ジョンは比丘尼の言うことに、こくこくと頷くけれど。
(「でもみんなのたのしいを忘れさせるのはよくないなって僕思うんだ」)
 だから――さようなら! さようなら!
 もう会わないように――さようなら!
 ……なんてことも、声が出せないから言えないのだけれど。
 言えないから、ジョンは振り回す。ただただ無言で。
(「お喋りできればもっとたのしいのに、勿体ないな」)
 そうは、ちょっぴり思うのだけれど。
 でもどのみち、そう思ったことも、きっとすぐ忘れちゃうだろうから。
 夜彦は戦場に翡翠の視線を巡らせ、第六感にて気配を頼りに、彼の安否を確認して。
(「……精神に左右され難い所は彼の強みでしょうな」)
 言葉や声を失っても変わらずご機嫌な様子に、瞳を細めてから。
 ――喰らえ、嵐。
 声にはならぬが、その心で紡げば。
 浄化の力を込め素早く抜刀した霞瑞刀 [ 嵐 ]の刃が斬るのは、水底のツバキ……骸魂本体。
『……くっ』
 そして夜彦は表情を険しくする骸魂へと、ジョンと共に仕掛けていきながらも。
 改めて心から抜け落ち生じた歪を払うべく、前へと踏み出す。
(「辛さも悲しみも、軈て糧になる」)
 ――それさえ忘れて繰り返す方が苦しいものです、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エスタシュ・ロックドア
【骸と羅刹】

忘却が救いたぁ片腹痛ぇ
俺自身はおろか――サマすら忘れ去ろうと、
この背に蔓延る地獄が消えるこたねぇんだ
腹立たしい宿業を忘れてなお締め上げられる苦痛を味わうのは御免こうむるぜ
ま、覚えてても剥ぎ取りてぇくらいなんだがな

相棒の愛しいヤツがやる気のようだ
そんじゃ俺もちょいと気合入れるかぁね
尼サンだからって容赦はしねぇよ
全身の傷痕から業火を噴くぜ(『群青業火』発動)
【範囲攻撃】椿を焼いて泡を蒸発しつくそうか
それでも触れちまったモンはしょうがねぇ

言葉が口から出る前に霧散しちまう
こんなにもどかしいたぁ思わなかった
だがまぁ問題はねぇ
鉄塊は振るえる、業火は燃える
相棒は、そこにいる
十分だ


六島・椋
【骸と羅刹】
忘却なぞ自分には日常茶飯事
名も思い出も忘れたとて、あまり変わらん
頭がものを忘れようが、この身が愛するものを違うことなどないのだから
……だが、こちらの美しき君は、どうにもお前が嫌いなようでな(UC発動)

かれは忘れ去られ、弔われなんだものたちの集合体
忘れられたその怨念が、忘却を呼ぶお前を見て唸りをあげている
そうだな、対価には自分の情をあげよう
尽きることなき、きみたちへの情を

派手な相棒の炎に【目立たない】よう紛れ隠れて近づき、
【早業】で仕掛けていく

相棒と動くのはこれが初めてじゃあない
さて……お前の忘却とやらは、体が覚えたものにも効くのかね



 滅亡へと向かう幽世の地で、比丘尼は妖しく歌うように紡ぐ。
『忘れれば、何もかもなかったことになるわ。そしてみんな、救われるのよ』
 全部、何もかも忘れる事――それが、救いであると。
 けれど、そんな骸魂の言の葉を、エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)は鼻で笑う。
「忘却が救いたぁ片腹痛ぇ」
 いくら記憶を忘れたところで、消える事はないのだ。
 それを彼は知っているから。
「俺自身はおろか――サマすら忘れ去ろうと、この背に蔓延る地獄が消えるこたねぇんだ」
 喰われたこの身の内に成り代わった炎は。この背に這う荊蔓が刻む地獄は。
 だからエスタシュは、比丘尼の唆す忘却には縋らない。
「腹立たしい宿業を忘れてなお締め上げられる苦痛を味わうのは御免こうむるぜ」
 ……ま、覚えてても剥ぎ取りてぇくらいなんだがな、って。
 忘却、それは六島・椋(ナチュラルボーンラヴァー・f01816)にとっては、然して物珍しくもないもの。
「忘却なぞ自分には日常茶飯事。名も思い出も忘れたとて、あまり変わらん」
 故に、それほど問題視することでもなく、動揺することも微塵もない。
 椋も知っているから――頭がものを忘れようが、この身が愛するものを違うことなどないということを。
 けれど、椋は特段思うことは特にないけれど。
「……だが、こちらの美しき君は、どうにもお前が嫌いなようでな」
 ――きみよ、力を貸してくれるかい。
 椋は愛と敬意を宿したその声で、愛しきひとを喚ぶ。
 忘却に救いを求める比丘尼に憤るように、がたがたと嗤うがしゃどくろを。
「相棒の愛しいヤツがやる気のようだ。そんじゃ俺もちょいと気合入れるかぁね」
 ――尼サンだからって容赦はしねぇよ。
 エスタシュは、比丘尼が成した椿の花弁や夢幻の泡を焼いて蒸発させていく。灰すらも残さずに、全身の傷痕から噴く地獄の業火を以って。
 そんな群青色の炎が戦場に猛り、派手に燃え盛る中。
 目を惹く鮮やかないろで気を引く間、身を隠し潜ませて。
『――!』
 刹那、目立たぬようその間隙を縫い接敵した椋が、素早く仕掛ける。
「かれは忘れ去られ、弔われなんだものたちの集合体。忘れられたその怨念が、忘却を呼ぶお前を見て唸りをあげている」
 そして愛して止まぬ骨と合体を果たす代わりに、椋はその対価を差し出す。
「そうだな、対価には自分の情をあげよう」
 ――尽きることなき、きみたちへの情を、と。
 エスタシュは群青の炎獄を成し、忘却の花を燃やしては散らせていくけれど。
 ひらりとそのひとひらに触れれば、一瞬苦笑する。
(「言葉が口から出る前に霧散しちまう」)
 ……こんなにもどかしいたぁ思わなかった、と。
 けれども、声を失くしたところで。
(「だがまぁ問題はねぇ」)
 鉄塊は振るえる、業火は燃える。
 燧石と名付けた無骨な刃を握り、迷うことなく前へと出るエスタシュ。
 ――相棒は、そこにいる。十分だ、と。
 そして椋も、彼と共に一気に踏み出して。
(「相棒と動くのはこれが初めてじゃあない」)
 もしも忘れたって何の問題もないし、いつもと何も変わりはしない。
 勝手に動く己の身体に動きを委ね、彼の鉄塊の刃や業火と同時に、左手で操る骨格人形を差し向ける。
 ――さて……お前の忘却とやらは、体が覚えたものにも効くのかね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レザリア・アドニス
忘れることは前もあって、そう怖くとは思わない
どう足掻いても忘れさせられてしまうなら、
ここは絶対に信頼できる相棒に任せましょう

ある程度距離を取って、
蛇竜を呼び出して、敵に絡みつけて攻撃するように指示する
かれがいる限り、私は迷わない
仮にも『』…ああ、ここでは『』と呼ぶものですね
この絆、奪えるものなら奪ってみよう

そこにいるあなた、聞こえる…?
あなたは過去にどんな辛いことにあって、忘れたくなるほどに傷つけられたかは、私は想像できないんですけど…
忘れさせられることは、決して救いではないと思います
全てを否定して、無に返すと、その空白は、もう二度と満たせなくなるよ…



『忘れましょう。それがただひとつ、救われる道よ』
 誘惑するように響く比丘尼の声。
 忘却は救い……そう囁き、骸魂は全てを忘却させんとするけれど。
「忘れることは前もあって、そう怖くとは思わない」
 レザリア・アドニス(死者の花・f00096)にとっては、その感覚は未知のものではないし。
 忘れるという事に対しての恐怖はない。
 それに、何よりも。
(「どう足掻いても忘れさせられてしまうなら、ここは絶対に信頼できる相棒に任せましょう」)
 揺るがない信頼が、いつもすぐ傍にあるのだから。
 刹那、戦場に忘却の歌を響かせる水底のツバキであったが。
「絡みついて攻撃して……!」
 そうはさせまいと、喚んだ死霊蛇竜に指示をしてから。
「かれがいる限り、私は迷わない」
 レザリアは何かが抜け落ちる感覚にも関わず、敵前へと送り出したかれを映す緑色の瞳を細める。
「仮にも『 』……ああ、ここでは『 』と呼ぶものですね」
 ――この絆、奪えるものなら奪ってみよう、って。
 それからふと、水底のツバキにではなく。
「そこにいるあなた、聞こえる……?」
 比丘尼に呑まれた『彼女』へと、レザリアは声を向ける。
「あなたは過去にどんな辛いことにあって、忘れたくなるほどに傷つけられたかは、私は想像できないんですけど……忘れさせられることは、決して救いではないと思います」
 忘却は、決して救いなんかではない。
 その苦しさや痛みの記憶を忘れ、一時的に目を逸らせても……きっと心と体がそれを覚えているし。
 忘却の末に訪れるのは救いではなく、虚無。
 レザリアはそれを教えてあげる。
 骸魂に呑まれている、玉響という人魚に。
 ――全てを否定して、無に返すと、その空白は、もう二度と満たせなくなるよ……と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西條・東
グループ名:柴と雀

『…俺は誰?』
欠損した記憶の穴から何か悪い事をしたかもしれない不安溢れる
『怖い……なのに思い出せねぇ…』

すがる様に雀を見たら、雀は必死に戦ってるのがわかる
『…怖いけど、雀にちゃんとお礼を言う為に頑張るぜっ!』
『雀?俺はここにいるからな?喋るようになったら沢山話しようぜ!』

俺と雀を【元気】に【鼓舞】しながら【念動力】で敵をギュっと圧縮して固定
そんでUCで【貫通攻撃】だ!

玉響?忘却ってあったかもしれないって気持ちで苦しくなるだけで無くならないんだぜ
俺も俺の事、雀の名前とか思い出せねぇのが凄く苦しいんだ!
だから忘れて苦しくなるより向き合って前に進もうぜ?

アドリブ歓迎


オスカー・ローレスト
【柴と雀】

……っ?!?!
(声が出せなくなり鳴くことすら出来なくなる小雀)

(以下心の中の声)

声は出せないけど……俺のやることに、変わりはない、から……
(柴犬の声掛けにはコクコク頷き)
……俺なんかと話したいって言ってくれる、彼の、為に。

【小夜啼鳥の真似事】、発動……木属性の矢から芽吹く茨で【生命力吸収】の【継続ダメージ】を与えて、動きを鈍らせる、よ……これで、少しでも柴犬に向く歌が弱まればいいん、だけど……

忘れることは、誰かにとっては救いかもしれない、けど
俺はそんな救いはいらない、から……
自分のした事、忘れるなんてことは、しちゃダメ、だから……

だから、今度は血を流しても、守らない、と……



 戦場に響くのは、魅惑的な甘い声。
『さぁ忘れましょう。だって、忘却は救いですもの』
 そして比丘尼は唆すように囁き歌いながら、椿の花弁をはらり舞わせる。
 全てのものに、救いを。
 忘却という、滅亡へとこの世界を導く救いを。
 ……最初は、名前だけだったのに。
 比丘尼の歌が耳に響く中、西條・東(生まれながらの災厄・f25402)が失くしたもの。
(「……俺は誰?」)
 それは――自己。
 そして欠損した記憶の穴から溢れる感情は、不安。
 何か悪い事をしたかもしれない、って。
 けれど、いくらどんなに考えても。
(「怖い……なのに思い出せねぇ……」)
 自分の事が、分からないのだ。
 そんな不安気な表情を宿す彼の隣で。
「……っ!?!?」
 赤く滴る様に散る椿の花弁が舞う中、オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は、薄布の奥の瞳を思わずぱちくりと瞬かせる。
 ぱくぱくと只開くだけの口。
 言の葉を紡ごうと思っても……声が、出ない。
 これでは、ぴぃぴぃ鳴く事すらも出来ない。
 けれど――声すら失った雀は、忘却を撒き散らす比丘尼へとそうっと視線を向けて。
(「声は出せないけど……俺のやることに、変わりはない、から……」)
 声を奪われ、名前を忘れても、戦う意味と意思は失ってはいない。
 そしてすがる様に、自己を失った柴犬は、雀へと視線を向けたけれど。
 彼を見て、ハッとする。雀が必死に戦っているのがわかったから。
「……怖いけど、雀にちゃんとお礼を言う為に頑張るぜっ!」
 自分が誰なのか分からないのは、やはり不安ではあるけれど。
 思い出したら名前付きでお礼を言うって、そう柴犬は決めていたし。
 それに、全部取り返したら。
「雀? 俺はここにいるからな? 喋るようになったら沢山話しようぜ!」
 話したい事が、いっぱいあるから。
 そんな柴犬から向けられる元気な鼓舞の言葉に、雀はコクコクと首を縦に振って頷いて。
(「……俺なんかと話したいって言ってくれる、彼の、為に」)
 失ったものを早く取り戻したいって、そう思う。
 話したいって言ってくれる柴犬と、言葉を交わし合う為に。
 だから雀は、小夜啼鳥の真似事をやめることはしない。
 声が出なくたって、腕の木製のクロスボウにはちゃんと咲くのだから。
(「……これで、少しでも柴犬に向く歌が弱まればいいん、だけど……」)
 己の血を代償に……絡みついて芽吹く茨と、彩る赤い薔薇は。
『……!』
 そんな生命力を吸収し動きを鈍らせんとする衝撃に、比丘尼は一瞬歌うのを止めて。
 柴犬はさらに念動力を駆使し、敵をギュっと圧縮して固定してから。
 ――その者を串刺しにせよ!
 まるで怒った女王がそう命じたかの様に。
 比丘尼を包囲するように飛び交うトランプ模様の槍が、比丘尼を貫かんと飛翔し放たれる。
 それから柴犬は声を掛ける。
 水底のツバキにではなく、彼女に呑まれた玉響に。
「玉響? 忘却ってあったかもしれないって気持ちで苦しくなるだけで無くならないんだぜ」
 忘れる事は、救いなんかじゃ決してない。逆に苦しいものだと、そう教えてあげる。
 だって……今の自分が、そうなのだから。
「俺も俺の事、雀の名前とか思い出せねぇのが凄く苦しいんだ!」
 ――だから忘れて苦しくなるより向き合って前に進もうぜ? って。
 そんな彼の言葉に、雀もコクコク懸命に頷く。
(「忘れることは、誰かにとっては救いかもしれない、けど。俺はそんな救いはいらない、から……」)
 いまだ夢にまで見るくらい、忘れられないことだってあるけれど。
 でも、それでも。
(「自分のした事、忘れるなんてことは、しちゃダメ、だから……」)
 雀は再び、木属性の矢から芽吹く茨を骸魂へと向けて。
 ――だから、今度は血を流しても、守らない、と……。
『……ッ!』
 刹那、矢で貫かれた彼女の身にも、茨や木が生え絡みつく。
 まだ足りないとばかりに――その血を糧として。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
言葉を…声を奪っちまう程辛かったのか?

俺には愛だの恋だのよく分かんねぇ
けど
本当に
嫌な言葉や悲しい言葉ばっかだったのかよ?

俺は…
いつも照れくさくて
師匠に感謝の気持ちも
大好きだって気持ちも
素直に伝えらんなかった

いなくなってから
それをすごく後悔した

好きの違いもよく分かんねぇ
けど
好きって気持ちは幸せじゃなかったのか?

なくしちまって
奪っちまっていいのかよ

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波撒き散らし残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る

奪わせねぇ
結末が辛かったからって
全部が辛い思い出な訳がねぇ

花弁衝撃波で散らしUC
スピード上げ見切り避ける

そんな奴の言葉を聞くな
負けんなよ
手を繋ごうと



『忘れたいでしょう? 辛い事も、他の事も……全部忘れて、楽になりましょう』
 忘却こそ救い。
 全て忘れてしまえば、痛かったり苦しかったりする必要もなくなるから。
 けれど聞こえるのは、比丘尼の唆す声ばかりで。
 呑み込まれた人魚の声は聞こえない。
「言葉を……声を奪っちまう程辛かったのか?」
 陽向・理玖(夏疾風・f22773)はひたすら忘却という救いを与えんとする骸魂へと、問い掛ける。
「俺には愛だの恋だのよく分かんねぇ。けど」
 ……本当に、嫌な言葉や悲しい言葉ばっかだったのかよ? って。
 別に声が奪われてなくたって、思いを言葉にするということは、案外難しいもので。
「俺は……いつも照れくさくて。師匠に感謝の気持ちも、大好きだって気持ちも、素直に伝えらんなかった」
 そして、伝えたい相手がいなくなってから。
 それができなくなってしまったことを、理玖はすごく後悔した。
「好きの違いもよく分かんねぇ。けど、好きって気持ちは幸せじゃなかったのか?」
 辛い事や忘れたい事も、確かにあったかもしれない。
 けれども、誰かを好きだという気持ちは、どんな種類の好きにしろ、きっと幸せなものだったに違いないだろうから。
 理玖は水底のツバキに、そして人魚の玉響に声を投げる。
 ――なくしちまって、奪っちまっていいのかよ、って。
 いや……そんなこと、させない。
 刹那、龍珠弾いて握り締め、ドライバーにセットして。
 ――変身ッ!
 舞う椿の花弁を吹き飛ばすように、風の様に衝撃波を撒き散らし、花霞に紛れるかの如く残像を纏い。
 一気に間合いを詰めた理玖は、握りしめた拳を振り上げて。
「奪わせねぇ」
『……ッ!』
 思い切り躯魂へと叩きつけ、捻じ込む。
 ……結末が辛かったからって、全部が辛い思い出な訳がねぇ。
 そう信じたいし、そうであるだろうから。
 ――フォームチェンジ! ライジングドラグーン!!
 だから理玖は、全力でその拳を揮うのだ。
 七色に輝く眩い龍のオーラに、覚悟の力を乗せて。
 忘却させんと舞い吹雪く花弁を全部散らし、ぐんと上がったスピードを以って身を躱す。
 そして地を蹴り大きく跳躍しながらも、言葉を紡ぐのは止めずに。
「そんな奴の言葉を聞くな」
 理玖は彼女のものと繋ぐべく、ぐっとその手を伸ばす。
 ――負けんなよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音海・心結
有頂(f22060)と
POW

これが無なのですか?
声を忘れ、言葉を忘れ
愛しい彼に甘く囁くことすら許されない
でもね、みゆは負けないのですよ

たった一つの我儘で
この世界も
みゆたちの想いも
潰すことなんてできない
覚えていることがどれだけ素晴らしいか
その身に刻んであげるのです

……ねぇ
何度忘却させようと
どんな困難が憚ろうとも
みゆは、みゆたちは
何度でも塗り替える
その名を呼びために
想いを伝えあうために

攻撃を覚悟した瞬間、彼の温もりを感じた
安心する腕の中
伝わってるのですよ
みゆの王子さま
言葉を交わさなくても
心で、ここで繋がっているのですから

光だと慕い
隣で微笑んでくれる
彼の笑顔を守るために
みゆは負けるわけにはゆけない


日東寺・有頂
心結(f04636)と
POW

嗚呼俺は
ついに音と言う音すら失った
この子の名を発し
求める為の呼び声も

尼さんよ
そいでも俺は潰されん
忘却で自分を
こん子を塗りつぶしたりしねえ
人魚さんや
聴こえねえよな
ばってん、俺は伝えるぜ
あんたに伝えるため
尼さん屠る最良の武器を向けて

忘却が救いなら
俺はとっくに涅槃におると
忘れる事は 繋がりを手放す事よ
恋を知り恋で傷めたそんお顔
いっとう綺麗だ
無くすなよ

敵からの一撃
この子を咄嗟に横抱きして跳ぶ
王子様になる言うたよね
誰にも渡さん言うたよね
俺の声、覚えてる?

俺の求めを受け容れて
心を結び
光をくれた
この子のすべてを奪い返す
さあ今、迎えに行こう



 ひらり、はらりと赤が舞う。
 忘却という名の救いを与えるために。
 ぽとりと落ちて散る椿の花が――名前だけでなく、その声をも奪い去ってゆく。
 開いた口から漏れるのは、ただ無音の吐息だけ。
(「嗚呼俺は、ついに音と言う音すら失った」)
 そう声までも失った日東寺・有頂(ぷてぃんぐ(心結様寄贈)・f22060)の瞳が映すのは、ひとりの少女の姿。
 名前だけではない、遂には音まで失くしてしまった。
 ……この子の名を発し、求める為の呼び声も。
(「これが無なのですか?」)
 声を忘れ、言葉を忘れ――愛しい彼に甘く囁くことすら許されない。
 響く声さえも失ってしまった世界、それは無という滅びを齎すものなのか。
 音海・心結(ゆるりふわふわ・f04636)は、大切なものが次々と零れ落ちる様な感覚に陥りながらも。
 けれど、ふるりと首を横に振る。
 ――でもね、みゆは負けないのですよ、って。
 それは、彼女のすぐ傍に在る有頂だって同じ。
 忘却の椿を咲かせ散らせる比丘尼へと、有頂は視線を向けて。
(「尼さんよ、そいでも俺は潰されん」)
 ……忘却で自分を、こん子を塗りつぶしたりしねえ、と。
 声を失った今、この想いは言葉として紡ぐことはできない。
 口を開いても、何も告げることはできないかもしれないけれど。
(「人魚さんや、聴こえねえよな。ばってん、俺は伝えるぜ」)
 ――あんたに伝えるため。
 そう得物を握る刹那、激しい痛みを伴う神経侵食が有頂を襲うけれど。
 手にしたそれは、魔力は高いが非力な人魚を屠る、メイスへと変化して。
 それを有頂は比丘尼へと向ける。伝えるために。
 忘却とは救い。そう骸魂は囁き続けるけれど。
 でもそれは、比丘尼の勝手でしかないから。
(「たった一つの我儘で、この世界も、みゆたちの想いも、潰すことなんてできない」)
 忘却とは無。どんな記憶だって、積み重なれば大切な生きる糧となるし。
 忘れないからこそ、沢山の大切なものが増えてゆくのだから。
(「覚えていることがどれだけ素晴らしいか、その身に刻んであげるのです」)
 心結も赤い椿の齎す忘却になんて、決して縋る事はない。
(「忘却が救いなら、俺はとっくに涅槃におると」)
 ……忘れる事は、繋がりを手放す事よ。
 そう心に紡ぐように、有頂にとって忘却に縋るということは、己自身を無に帰すもの。
 それに、眼前の人魚を見遣り思うのだ。
(「恋を知り恋で傷めたそんお顔、いっとう綺麗だ」)
 ――無くすなよ、って。
 何も無いよりもずっと、感情の滲むそのいろは美しい。
 心結はそんな比丘尼に、……ねぇ、と。
 語り掛けるかの様に視線を向け、心に想いを描く。
(「何度忘却させようと、どんな困難が憚ろうとも。みゆは、みゆたちは、何度でも塗り替える」)
 ……その名を呼ぶために。
 ……想いを伝えあうために。
『忘却は、救いよ。忘れた方が幸せよ』
 瞬間、比丘尼がそう口を開くと同時に。
 再び戦場に真っ赤な椿が咲き誇り、ふたりを包まんと渦を巻く。
 けれど、咄嗟に有頂はその腕を伸ばし、大きく地を蹴って。
「……ッ!」
 確りと心結を掴まえ、横抱きにして跳ぶ。
(「王子様になる言うたよね。誰にも渡さん言うたよね」)
 ――俺の声、覚えてる?
 重なり合い混ざり合う温もりを感じながら、有頂がそう腕の中の彼女を映した瞳を細めれば。
 ――伝わってるのですよ、みゆの王子さま。
 心結も、身を挺し守ってくれた彼に、そう微笑みを返して。
 そうっと彼の胸に小さなその手で触れる。
 だって、言葉を交わさなくても……心で、ここで繋がっているのですから、って。
 それからもう一度、ふたりで微笑み合った後。
 心結は改めて、眼前の骸魂を見遣る。
(「光だと慕い、隣で微笑んでくれる、彼の笑顔を守るために」)
 ――みゆは負けるわけにはいかない、と。
 有頂も、倒すべき敵を見据えて。
(「俺の求めを受け容れて、心を結び、光をくれた。この子のすべてを奪い返す」)
 握る獲物を、大きく振り回す。
 名前も声も言葉も、全部――さあ今、迎えに行こう、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

遙々・ハルカ
》人格:トヲヤ

忘却すれば――嗚呼、それは幸せであるかも知れない
つらい事も、悲しい事も、慈しんだものに不要とされ棄てられた事も
忘れてしまえば、

己の中から『己』が剥がれ落ちていく
抗い難い眠りが、俺であったものを失わせる
これは
これは、喪失だ
濘るむような睡魔に奪われ、それが穴になっていくのだ
これを俺は知っている
否――
俺ではないこれは
『彼』だ

この空虚を
虚無を
睡魔に震える手で銃爪を引く
《濘る夜》を――お前にも教えよう
内側から“無くなる”ことを

楽になろうと思う事は、決して悪ではないのだろう
苦しむ事よりいいのかも知れない
けれど俺は

喩え忘れても、無かった事にはならないのなら
俺を積み上げ意味するものを
大切にしたい



 忘れることが、救い。
 そう囁き歌う比丘尼の言葉に、遙々・ハルカ(DeaDmansDancE・f14669)は思う。
(「忘却すれば――嗚呼、それは幸せであるかも知れない」)
 いや、彼はハルカではなくトヲヤ……名を忘れた今となっては、然して問題ではないが。
 そしてトヲヤは、耳に響く比丘尼の歌を聴くたびに感じる。
(「つらい事も、悲しい事も、慈しんだものに不要とされ棄てられた事も、忘れてしまえば、」)
 ――己の中から『己』が剥がれ落ちていく。
 最初は、名前だけであった。
 けれどそのひとつの歪が、徐々に他のものもぽろぽろと剥いでいって。
 遂には――自己さえも、なくなってしまった。
 そして抗い難い眠りが、彼であったものを失わせる。
 ――これは。これは、喪失だ。
(「濘るむような睡魔に奪われ、それが穴になっていくのだ」)
 揺蕩う揺り籠の様な甘い響きはずるりと、身を委ねたくなる様な眠りへと誘うけれど。
 その泥濘に奪われてしまえば、何れ全て崩れ落ちる穴となる。
 そしてそれを、トヲヤは知っている。
 ……いや、違う。
 ふるりと黒髪を微かに揺らし、トヲヤは微かに首を横に振る。
(「否――俺ではないこれは」)
 ――『彼』だ、と。
 そんな心に抱く、空虚を、虚無を。
 トヲヤは銃爪を引く。睡魔に震えるその手で。
「《濘る夜》を――お前にも教えよう。内側から“無くなる”ことを」
 ――消えて失くなれ。
『……!』
 刹那、比丘尼に与えるのは、躰心を蝕む空虚の綻び。
 そしてその綻びにさらに生じるのは、身の裡一切を喰らい尽くす“虚無”。
 忘却は救い。その考え全てを否定するわけではない。
「楽になろうと思う事は、決して悪ではないのだろう。苦しむ事よりいいのかも知れない」
 けれどトヲヤは、それに縋る気はない。
 だって、それは喪失だと知っているし。
 喪失しても、跡形なく消えてなくなるわけではない。
 それに色々な思いを重ねてきたからこそ、今の自分が在るとも思うから。
 トヲヤは、忘れたい忘れさせたいと嘆く比丘尼へと再び銃爪を引く。
「喩え忘れても、無かった事にはならないのなら」
 ――俺を積み上げ意味するものを、大切にしたい、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫崎・宗田
【狼兎】

互いに熱血馬鹿とチビの呼び方継続

俺は正直チビと違って
他人にゃ興味無ぇし優しくもねぇ
だからかけてやる言葉なんざ持ち合わせてねぇが…
まぁ、そうだな
チビの言葉はよく覚えとけ
そんで…俺達を相手にした事、後悔するんだな

ニヤリと笑みを浮かべ
俺とお前…最悪に相性悪そうだぜ?

敵の花弁は炎の【属性攻撃】を纏わせた武器で焼き尽くし
【カウンター】で【薙ぎ払い】をぶつけては
燃焼による【継続ダメージ】
俺の声なんざ奪ったところで意味無ェがな
物理だから

【指定UC】で狼化
炎を操り纏いながら敵に噛み付きに行く事で意識をこちらに向けさせ
チビに攻撃の隙を作ってやる

チビのカタがついたら
ちゃんとチビの回収もするぜ


栗花落・澪
【狼兎】

忘却が救いになる事も否定はしないけど
それを決めるのはあんたじゃない
本当の貴方だよ

本当に全部忘れてもいいの?
このまま逃げ続ける?
それとも乗り越える?
貴方の幸せはどっち?

敵の歌を少しでもかき消すつもりで
【歌唱】で自身と紫崎君の眠気を妨げ
翼の【空中戦】で一定距離を保ちながら

自分なんて忘れたって構わない
元々…そんな物持ってなかった僕だ
少し昔に戻るだけ
それに、もし忘れたとしても、僕は…

何度だって、好きになるよ

敵の注意が紫崎君に向いた瞬間【指定UC】
敵に急激に接敵し、声を物理的に奪うためにキスを贈りましょう
同時にその体を抱きしめて
威力を上げた氷魔法の【属性攻撃、全力魔法】で凍結を

…ごめん、ね



 忘れたい過去、それは誰にだってあるものかもしれないし。
 忘れれば、心が解放されるかもしれない。
 ……けれど。
「忘却が救いになる事も否定はしないけど、それを決めるのはあんたじゃない」
 ――本当の貴方だよ、と。
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、眼前の水底のツバキに……骸魂に呑まれた玉響に、声を投げ掛ける。
『忘却は救いよ。苦しいこと悲しいことを、忘れるんですもの』
 そんな澪の言葉を届かせぬかのように、すかさずそう紡ぐ比丘尼。
 でも、澪は言葉を掛けるのを決して止めない。
 呑まれた玉響が骸魂に唆されぬ様に。
 ツバキに決められるのではなく、彼女自身が自分で道を選べる様に。
 忘れることで救われることもある、澪はそれを否定はしないけれど。
「本当に全部忘れてもいいの?」
 ……このまま逃げ続ける?
 ……それとも乗り越える?
 忘れるということは、その分、様々なものを失うことでもあるから。
 だから、こう改めて問う。
「貴方の幸せはどっち?」
 そして澪のすぐ傍らに立つ紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は、言葉を掛ける彼を見守っていたが。
『忘却こそ、幸せよ』
 頑なにそう囁き続ける比丘尼に、口を開く。
「俺は正直チビと違って、他人にゃ興味無ぇし優しくもねぇ。だからかけてやる言葉なんざ持ち合わせてねぇが……まぁ、そうだな」
 それから一瞬、ちらりと澪を見つめた後、宗田は続ける。
 ――チビの言葉はよく覚えとけ、と。
 その過去を知り、此処まで一緒に歩んできたから……紡がれる言葉が決して軽いものではないことを、よく知っているから。
 けれど宗田は、嘆く比丘尼に同情する気もないし。
 己が成すべきことを、躊躇なく行なえるから。
 ぐっと、得物を握りしめて。
「そんで……俺達を相手にした事、後悔するんだな」
 ニヤリと笑みを浮かべ、続ける。
 ――俺とお前……最悪に相性悪そうだぜ? って。
 刹那、戦場に響くのは、忘却へと誘う眠りの歌。
 それは名前だけでなく、自己をも奪わんとするけれど。
 澪はバサリと幽世の空に大きく翼を羽ばたかせて。
 己も、熱血馬鹿な隣の彼も……眠りにも忘却にも屈しない、屈しさせないと。
 忘却の歌を少しでもかき消す様に、天から歌声を降らせる。
 そして自己を奪えぬのならと、比丘尼が戦場に赤い椿の花弁を数多舞わせれば。
「俺の声なんざ奪ったところで意味無ェがな。物理だから」
 それを最後に、宗田は声を奪われるけれど。
 全くもって、彼にとってそれは問題ではない。
 その手に握る漆黒の巨大斧が纏うのは、刻まれた狼の紋様と同じ赤き炎。
 刹那、反撃とばかりに、敵へと炎纏う得物が大きく振るわれれば。
 薙ぐ衝撃が椿の花吹雪とぶつかり、払い燃やして焼き尽くす。
 そして宗田は姿を変える。
 ――本物の肉食系ってやつ、見せてやろうか。
 炎を操る黒狼に。
 そんな炎を操り纏う狼は大きく地を蹴り、敵へとその牙を剥いて。
 完全に炎狼と化した彼へと意識が向いた比丘尼へと一気に接敵し、そしてその体を抱きしめ、澪は贈る。
 体内に封じた魔力の器を解放し、膨れ上がった魔法力を彼女へと注ぐべく。
 その声を物理的に奪うための、キスを。
 骸魂の歌が耳に響けば、自分のことをひとつ、またひとつ失ってゆくけれど。
「自分なんて忘れたって構わない。元々……そんな物持ってなかった僕だ」
 ……少し昔に戻るだけ、と。
 そう呟きを落とした後。
 澪の琥珀の視線がただひとつ捉えるのは、戦場を駆ける炎狼。
 今は名も忘れてしまっている、そんな熱血馬鹿な彼だけれど。
 名だけではなく、たとえ自分が自己を失っても。
 澪は自信をもってこう言える。
「それに、もし忘れたとしても、僕は……」
 ――何度だって、好きになるよ、って。
 瞬間、威力を上げた全力の氷魔法が、比丘尼を凍結させんと解き放たれて。
「……ごめん、ね」
 意識を手放す前に、そう呟きを落としてから。
 ゆらり崩れ落ちる澪の身体を、確りと宗田は危なげなく支え回収する。
 名前も声も、自己さえもいらない。
 それらを奪われても、決してなくならないものがある。
 何度だってめぐり逢い繋がる想いが――ふたりにはあるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユヌ・パ
生前、家族から掛けられた言葉を忘却
己の肉を代償に、オウガの拳で戦う

ねえ
あなたは、何を怖がってるの
何にもなかったことになる、なんて
そんな風に思いこんで、自分を騙してるだけでしょ
見たくないモノにフタをするような行為よ

苦しい記憶がなんでダメなの
辛い記憶のなにが悪いのよ
心が血を流したって
そのひとにとっては、大切な記憶かもしれないじゃない

忘れたつもりになっても、タマシイが憶えてる
大事なものは
どれだけ投げ捨てたって、身体に刻まれているのよ

痛いなら痛いって言うの
泣いて叫ぶの
それ位、赤子だって知ってるわ

あたしみたいなコドモに言われて
悔しくないの
だったら
その気持ち、最期まで手放さないでよ

全部抱えて、生きなさいよ



 ひらり、まるでその記憶をそっと攫うかの様に。
 戦場に数多舞うのは、椿の花が散らす赤。
 その花弁たちは、少女から名前だけでなく。
 生前、家族から掛けられた言葉をも奪い去る。
 けれども、元々名前はオウガにくれてやって、あと3文字しかなかったし。
 奪われたものに対する喪失感よりも、ユヌ・パ(残映・f28086)が今感じているのは、怒りの感情。
 少女は己の肉を代償にオウガの拳を振るい、赤の花弁を青白き炎で焼き尽くしながらも問う。
『忘却は救いよ。救ってあげる』
「ねえ、あなたは、何を怖がってるの」
 そして、忘れる事は救いだと。
 そう何かを恐れるかのように言い続ける比丘尼に教えてあげる。 
「何にもなかったことになる、なんて。そんな風に思いこんで、自分を騙してるだけでしょ」
 ――見たくないモノにフタをするような行為よ、と。
 眼前の比丘尼に、骸魂に呑まれた玉響に、どのような過去があったかは分からないけれど。
「苦しい記憶がなんでダメなの。辛い記憶のなにが悪いのよ。心が血を流したって、そのひとにとっては、大切な記憶かもしれないじゃない」
 辛いこと、苦しいこと、悲しいこと……泣いたり憤ったり叫んだり、心が血を流すかの如く引き裂かれるような感情。
 それが必ずしも悪いこと、忘れるべきことだとは、少女には全く思えないのだ。
 いや、忘れたいと、たとえ思ったとしても。
「忘れたつもりになっても、タマシイが憶えてる。大事なものはどれだけ投げ捨てたって、身体に刻まれているのよ」
 ユヌはよく知っているから。
 そして刻まれたそれを忘れるということが、決して救いではないということを。
 だから彼女の心に湧き出すその感情は、絶望感でも焦りでもなく、怒りなのだ。
『全部忘れれば、楽になれるわ。痛くだってないの』
「痛いなら痛いって言うの。泣いて叫ぶの。それ位、赤子だって知ってるわ」
 まだ忘却に縋ろうと、縋らせようとする比丘尼の言葉を、ユヌはきっぱりとぶった切る。
「あたしみたいなコドモに言われて、悔しくないの。だったらその気持ち、最期まで手放さないでよ」
 忘却は救いではない。忘れたとしても、決して消えない。
 だから分かって欲しいのだ。それは救いなんかではなく、ただ苦しいだけだから。
 ――全部抱えて、生きなさいよ、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、こ、声が出ません。
これでは詠唱ができないからユーベルコードも使うことができません。
どうしましょう。

あれ、ア・・・、どうしたんですか?
ふええ、ア・・・、いきなり飛び出したらユーベルコードに巻き込まれてしまいます。
こんな時、あのユーベルコードが使えれば・・・。
あれ?あのユーベルコードって詠唱がありましたっけ?
飛び出したア・・・の道を切り開くようにサ・・・で椿の花弁をどかしていきます。



 はらりはらりと舞い踊るのは、真っ赤な椿の花弁。
 大きな帽子のつばをぎゅっと握りつつもおどおど、そうっと。
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)がその赤に触れれば……名前だけでなく、またひとつなくしてしまう。
(「ふええ、こ、声が出ません」)
 言葉を紡ぐ、その声を。
『忘れればいいの、全部。そしたら救われるわ』
 眼前の骸魂……水底のツバキは、そう言うけれど。
 フリルは救われるどころか、おたおたと動揺してしまう。
(「これでは詠唱ができないからユーベルコードも使うことができません」)
 ――どうしましょう。
 そう、赤の瞳をきょろりと巡らせれば。
(「あれ、ア……、どうしたんですか?」)
 急に飛び出した、傍に在るけれど名前を忘れてしまった鳥型のガジェットに目を向けて。
(「ふええ、ア……、いきなり飛び出したらユーベルコードに巻き込まれてしまいます」)
 果敢にも舞う椿の中、くわっと飛び込んでいく鳥さんに、再びフリルは慌てるけれど。
(「こんな時、あのユーベルコードが使えれば……」)
 そう思った刹那、はたと気が付く。
 ――あれ? あのユーベルコードって詠唱がありましたっけ? って。
 いや、詠唱が思い出せないのではなくて……。
 フリルは、飛び出したア……の道を切り開くように。
 己の名前も分からぬ、けれど詠唱など元から無かったユーベルコードを発動する。
 ア……に迫る椿の花弁を、見えないその衝撃でどかすために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

ここに来た時から違和感があった
誰かの名前、自分の名前…思い出せない
そして今、忘却の波は「わたくしの全て」を飲み込んでゆく

甦る悪夢
自我を悪意に壊される感覚
怖い……もうやめて!

再び開いた瞳に映る、わたくしを守る蒼き狼騎士の背中
かつて別の世界の別の場所で、敵に記憶を奪われ心を壊された時も
いついかなる時も『彼』は
揺るぎない強さと優しさで支えてくれた
いと尊き救い主

なればこそ今わたくしはここにいる

胸の内、不安を溶かす暖かな想い
その覚悟に応え、わたくしも彼を支えよう
今は思い出せなくても
無から積み重ねてゆく確かな願い

祈り、勇気、優しさを込め
寂しき心を慰めて

聖なる光よ
この人を守り給え


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

大切な者と分かっていても、その名を思い出せない
歯がゆさを覚えつつ傍らの白き娘に声…が出ない?

見れば彼女は、敵に自我を奪われる恐怖に怯えている
二度と繰り返すものか、あの悪夢、忌まわしい過去を
言葉はなくとも、この身一つで彼女を庇い守ることはできる

命短き人狼の定め
彼女の笑顔と幸福の為にこの身を捧げると立てた【守護騎士の誓い】
彼女への攻撃を庇い己の記憶を削られたとしても
胸の奥の優しさと情熱は最後まで手放さぬ

破魔の一撃
俺の『彼女』はかつて敵に記憶を奪われ心を壊された
比丘尼の甘言に騙されるな!

辛いことばかりではなかったはずだ
傷を乗り越え、互いを支え
そうして俺たちは生きてゆく……!



 はらりひらり、赤き椿が咲いては散る中。
 ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の瞳に映るのは、そんな花の彩ではなく、すぐ隣にいる白き娘の姿。
 よく知っているし、分かるのだ。
 彼女が自分にとって、大切な者なのだということが。
 けれど、大切で愛おしいと分かっていても……その名を、思い出せない。
 そんな歪さに歯がゆさを覚えつつも、彼は彼女に声を――掛けようとするが。
(「声……が出ない?」)
『忘却こそ、救いよ』
 微睡みと忘却へと誘う椿の花は、名前だけでなく、彼から声をも奪う。
 そしてヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)も、此処に来た時から感じている違和感に、ふるりと小さく首を横に振る。
(「誰かの名前、自分の名前……思い出せない」)
 名前という概念が消え失せ、その綻びに侵食された世界は、滅びを迎える。
 いや、忘れてしまうのは、名前だけではない。
 彼女は今、耳に聞こえる歌に揺蕩いながらも感じる。
 響く歌は、忘却の波は――「わたくしの全て」を飲み込んでゆく、と。
 それと同時に甦るのは、あの時の悪夢……そしてはじめてではない、自我を悪意に壊されるこの感覚。
 ――怖い……もうやめて!
 思わずぐっとその瞳を閉じ、蒼いミスミソウの花咲く白の髪を大きく揺らす彼女。
 そんな恐怖に怯えている姿を見つめ、彼は心に紡ぐ。
(「二度と繰り返すものか、あの悪夢、忌まわしい過去を」)
 そして前へと踏み出し、盾となる。
 ――言葉はなくとも、この身一つで彼女を庇い守ることはできる、と。
 それから改めて、その心に立てる。
 命短き人狼の定め、彼女の笑顔と幸福の為にこの身を捧げると――守護騎士の誓いを。
(「己の記憶を削られたとしても、胸の奥の優しさと情熱は最後まで手放さぬ」)
 歌が齎す眠りも忘却も恐れずに、彼は握る刃を振るう。
 大切な彼女を庇い、護るために。
 そしてそっと瞳を開いた彼女の目の前には、自分を守る蒼き狼騎士の背中。
 彼女はその心に覚えている。
(「かつて別の世界の別の場所で、敵に記憶を奪われ心を壊された時も。いついかなる時も『彼』は、揺るぎない強さと優しさで支えてくれた」)
 ――いと尊き救い主、と。
 眼前の愛しくて大きなその背中に、幾度となく守られてきたことを。
(「なればこそ今わたくしはここにいる」)
 名前も、自己さえも奪われても……自分の在る場所は此処、彼のすぐ傍で。
 彼の事を癒し、守りたいと。
 けれどそんな彼女の心を揺さぶらんと、言葉を紡ぐ比丘尼。
『全部忘れれば、怖くないわ。救われるのよ』
 だが刹那、骸魂へと向けられるのは、強烈な破魔の一撃。
(「俺の『彼女』はかつて敵に記憶を奪われ心を壊された」)
 でももう、そんなことは決してさせないから。
 声にならぬ声で、彼は叫ぶ――比丘尼の甘言に騙されるな! と。
 そしてそれは、彼女の胸の内……不安を溶かす暖かな想いとして伝わって。
 恐怖に苛まれ目を瞑っていた彼女は、青い瞳を確りと開きその顔を上げる。
 ――その覚悟に応え、わたくしも彼を支えよう、と。
 それから馳せるのは、確かな願い。
 祈り、勇気、優しさを込めて、寂しき心を慰めて。
 今は思い出せなくても、無から積み重ねてゆくことだって、ふたりならきっとできるから。
「聖なる光よ。この人を守り給え」
 そしてその輝きを背に受け、癒しを受けながらも。
(「辛いことばかりではなかったはずだ」)
 彼も彼女を護るべく、改めて抱く誓いを胸に、再び握る獲物を敵へと叩きつける。
 ――傷を乗り越え、互いを支え、そうして俺たちは生きてゆく……! と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーベ・メル
ボクは一体何者?
何がボクを形作っていたの?
何もわからない、思い出せない

正直、少し気が楽だ
路地裏で震えていた頃
貴族の奴隷だった頃
孤児院で虐げられた頃
きっとボクには悲しい記憶があって
もうそれを背負わなくてもいいんだって

けど、それと同時に
何か大切なことを
大切な人達を忘れている気がする
だってこんなにも、虚しい

忘却が救いな訳がない
嫌な記憶も消したい過去も
それがあるから、憧れはより輝く
それがあるから、周りの人達を愛せるんだ

だからさ、玉響さん
恋が辛いなら愛を探そうよ
そんな所にいないでこっちにおいで

さっきから余計なことをしてるのはお前なの?
最大限の怒りで全力魔法の準備を
もうこれ以上、ボクらから何も奪わせない!



 それは海の様な、けれど確実に違う光景。
 ぷくぷくと揺れる数多の泡に触れ、ぱちりとそれが弾ければ。
(「ボクは一体何者? 何がボクを形作っていたの?」)
 ――何もわからない、思い出せない。
 リーベ・メル(Anti Liebe・f27075)は、またひとつ失う。
 名前だけでなく……思い出さえも。
 けれど憧れて自分で付けた、大切な名前はともかく。
(「正直、少し気が楽だ」)
 彼は忘れることに、暫しその思考を委ねる。
 ……路地裏で震えていた頃。
 ……貴族の奴隷だった頃。
 ……孤児院で虐げられた頃。
 弾けた泡の様に、次々と儚く消えてゆく過去。
 そしてそれを彼が心地良く感じるのは。
(「きっとボクには悲しい記憶があって、もうそれを背負わなくてもいいんだって」)
 忘れても、それがなんとなく分かったから。
 ――でも。
『忘却は救い。救われましょう』
 比丘尼の言葉には、どうしても素直には頷けない。
 確かに少し心は軽くなった気はする。
 けれど、心に今あるのは、それだけではなくて。
 それと同時に……何か大切なことを、大切な人達を忘れている気がしてならないのだ。
(「だってこんなにも、虚しい」)
 だから、リーベは否定する。
「忘却が救いな訳がない」
 嫌な記憶だって、消したい過去だって、いっぱいある。
 でも、だからこそ、リーベは知っている。
 ――それがあるから、憧れはより輝く。それがあるから、周りの人達を愛せるんだ、って。
「だからさ、玉響さん。恋が辛いなら愛を探そうよ」
 愛。それはリーベにとっても、求め探している憧れ。
 けれど全部忘れてしまったら、それを探すことさえできないから。
 ――そんな所にいないでこっちにおいで。
 骸魂に呑まれた彼女に、そう声を掛けるけれど。
『忘却は救いよ。全て忘れれば、解放されるのよ』
「……さっきから余計なことをしてるのはお前なの?」
 そう紡ぐ骸魂へと視線を投げ、刹那リーベが編み出すのは迸る魔力。
 ――もうこれ以上、ボクらから何も奪わせない!
 最大限の怒りをもって、全力魔法を邪魔者へと思いっきり、ぶつけるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【花守】
はてさて、ぽっぽさん(仮)
俺は普段どんな感じで戦ってたっけ
懐を漁ると何故か武器以上にお菓子が入っていてねぇ
これは一体…ねぇ聞いてる?ちゅんこさん(仮)?
え、そんな感じだったかな?
まぁ良いか
あれを何とかすれば良いという事は――あとぴより(仮)がへたれなりにやる時はたぶんやるという事だけは、覚えているから

ああ、でも、やはり――これまでの俺を形作ってくれたであろう人々や日々の事を思うと、此の儘ではならないか

玉響さん
辛苦以上に楽しい記憶を思い出して――そして更に作り上げに帰りましょう
辛いからと何もかも消しては、幸いすらももう得られなくなるから

浄化の狐火で骸魂を鎮め、玉響さん自身を照らし出す様に


呉羽・伊織
【花守】
大事な思い出があった事は覚えてるのに、其が何だったか分からない―

…ちょい黙って油揚げ(仮)、色々追い付かないから!
ああもう、お前はもっとクールで真面目な男だったよ
だからもっとキリッとして!
…いや色々良くないし変な事だけ覚えてんな!?
あと名前の韻は近付いてなくもないがちがうそうじゃない(遠い目)

…コホン
楽しい思い出は勿論、辛苦とか、裏切りとか―俺も消えた記憶の中に散々あったと思う
でも忘れたって事は、良くも悪くも印象深い…って事で
其の経験すらも、今の俺を形成す大事なもので
抱えて、進みたいものなんだ

玉響も、そう思える時が来るように―また歩み出せるように、願ってる

花明振るい、全てを取り戻しに



 名前という概念を失い、妖しくも優しい歌声が響く幽世の世界に。
 ぷかり、数多揺蕩うのは泡沫の泡。
 その夢幻の泡粒はひとつ、またひとつ、忘却させてゆく。触れた者の印象深い思い出を。
 呉羽・伊織(翳・f03578)には分かっている。自分には大切な思い出があることを。
 ……けれど。
(「大事な思い出があった事は覚えてるのに、其が何だったか分からない――」)
 そう隣をふと見遣れば。
 大きく首を傾けている、千家・菊里(隠逸花・f02716)の姿が。
「はてさて、ぽっぽさん。俺は普段どんな感じで戦ってたっけ」
 名前という概念がないから、とりあえず自分へと視線を向けた連れをぽっぽさん(仮)と命名してから。
 がさごそと懐に入れたその手が、次々と取り出すものは。
「懐を漁ると何故か武器以上にお菓子が入っていてねぇ」
 出しても出してもまだ出て来る、大量の甘味……!?
 それをしれっとたまに口に運んでみたりしながらも。
「これは一体……ねぇ聞いてる? ちゅんこさん?」
「……ちょい黙って油揚げ、色々追い付かないから!」
 再び首を傾げる油揚げ(仮)に、どこからどうツッコめばいいのかもう分からない、ちゅんこさん(仮)。
 だが自己を奪われ、出て来た饅頭をはむりと口にする彼に教えてあげる。
「ああもう、お前はもっとクールで真面目な男だったよ。だからもっとキリッとして!」
「え、そんな感じだったかな?」
 心なしか少し減った甘味を前に、まぁ良いか、と油揚げ(仮)は呟いてから。
『ふふ、忘れれば楽になるわ』
 そう歌をうたい泡を生み出す比丘尼と連れへと交互に視線を向け、続ける。
「あれを何とかすれば良いという事は――あとぴより(仮)がへたれなりにやる時はたぶんやるという事とこけしと友達な事は、覚えているから」
「……いや色々良くないし変な事だけ覚えてんな!?」
 というか、元の名前は今、忘れてしまってはいるけれど。
「あと名前は近付いてなくもない気がするがちがうそうじゃない」
 何かそうツッコまなければいけない感覚に従い、遠い目をしながら息継ぎなしで口にするぴより(仮)。
 そんな彼の、きっといつも通りな反応に、油揚げ(仮)こと菊里は瞳を細めて。
 ああ、でも、やはり――と言の葉を紡ぐ。
『忘却こそ、救いよ』
 そう囁き唆す比丘尼の声に、惑わされることなく。
 ……これまでの俺を形作ってくれたであろう人々や日々の事を思うと、此の儘ではならないか、って。
 ぽっぽさんでちゅんこさんでぴより(仮)な伊織も……コホン、と気を取り直した後。
 己の失った思い出をもう一度、振り返ってみれば。
 やはり、どう考えてもそれは浮かんではこないけれど。
「楽しい思い出は勿論、辛苦とか、裏切りとか――俺も消えた記憶の中に散々あったと思う。でも忘れたって事は、良くも悪くも印象深い……って事で。其の経験すらも、今の俺を形成す大事なもので」
 だから伊織は、比丘尼に……いや、その中に呑まれている玉響へと声を投げる。
 ――抱えて、進みたいものなんだ、って。
 そして、その心に願う。玉響も、そう思える時が来るように……また歩み出せるように、と。
 菊里もそんな伊織に続き、玉響へと言葉を向ける。
「玉響さん。辛苦以上に楽しい記憶を思い出して――そして更に作り上げに帰りましょう」
 辛い事や悲しいことも、確かに彼女には沢山あったのかもしれない。
 けれど……辛いからと何もかも消しては、幸いすらも、もう得られなくなるから。
 菊里は骸魂を鎮め、灯してあげる。玉響自身を照らし出す、浄化の狐火を。
 そして、陣風の如く――何処までも飄々と。
 名前や思い出さえも、やはり今は抜け落ちているのだけれど。
『……!』
 桜纏う懐の匕首を迷わず手にした伊織は、その刃を骸魂へと振るう。
 全てを、取り戻すために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メリル・スプリング
んぅ、かなしそうな、人魚さんなのです
わすれたいこと、あるですか?
でも、ぜんぶわすれちゃったら、もっともっとかなしいのです
ぜんぶおぼえてなくてもいいけど、だいじなものは……

そこまで言って、記憶の欠落に気付く
数少ない思い出。テディベアと歩いた、いろんな世界のこと

やだ、やなのです……
それまでわすれたら、ひとりぼっちになっちゃうのです……!

記憶喪失のアリス、新しく得た記憶もなくなるのが怖くて

UC使用、人魚の泡をテディベア使って無効化し、
そのままテディベア操り、パンチで攻撃

人魚さんにも、さびしくなってほしくないのです
いっしょに、だいじなこと思い出すのです!

懸命に呼び掛け、骸魂のみ狙う気持ちで攻撃する



 ぷくぷくと、まるで昏い海の底かの様に。
 幽世の夜空に浮かぶのは、数多の夢幻の泡。
『忘れましょう、救われたいの』
 そう紡ぎ続ける眼前の比丘尼を、円らなエメラルドグリーンの瞳でそろりと見遣って。
「んぅ、かなしそうな、人魚さんなのです」
 メリル・スプリング(アリス適合者のプリンセス・f25271)は、彼女に訊ねてみる。
 ――わすれたいこと、あるですか? って。
 けれど、忘却は救いだと言い続ける声に、ふわふわな髪を揺らしながら。
「でも、ぜんぶわすれちゃったら、もっともっとかなしいのです。ぜんぶおぼえてなくてもいいけど、だいじなものは……」
 そこまで紡いだ刹那、メリルはハッと気づく。
 そして、じっとテディベアを見つめ、一生懸命うんうんと考えてみるけれど。
 浮かぶ泡が彼女に齎したのは、記憶の欠落。
 それは、数少ない思い出。テディベアと歩いた、いろんな世界のこと。
 メリルにとって、とっても大切なもののはずなのに。
「やだ、やなのです……」
 何も、思い出せない。
 だって、それがなくなってしまったら。
「それまでわすれたら、ひとりぼっちになっちゃうのです……!」
 また、ひとりぼっちな永遠の迷子になってしまう。
 忘却は救い……それは決して違うと。
 ぎゅうっとテディベアを抱きしめている、記憶喪失のアリスは知っているから。
 だから折角作ってきた思い出が……新しく得た記憶すらなくなるのが、怖くて。
 ぷかりと浮かぶ泡を、ふにゃりと力を抜いたその身で受ければ。
 思い出こそ今はなくなってしまっているけれど……ちゃんとテディベアが、人魚の泡を消してくれて。
 ひとりぼっちは、もういやだから。
『……!』
 戦場に躍らせたテディベアの拳を、骸魂へとえいっと叩きつける。
 呑まれた人魚の玉響が傷つかぬよう、唆し忘却させようとする水底のツバキだけを狙って。
 いや、勿論自分もひとりはいやだけれど。
「人魚さんにも、さびしくなってほしくないのです」
 だから、ひとりではなくみんなで。
 頑張って懸命に、メリルは呼び掛ける。
 ――いっしょに、だいじなこと思い出すのです! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘムロック・ストレンジャー
【ストレンジャー】
忘却は決して救いではありません
アリスラビリンスに迷い込んだ僕たちだからこそ、そう思います
けれど、そう考えている自分すらも掻き消えてしまったならば――

僕は、一体誰になってしまうのでしょう

眠りに誘う歌の中、僕は手中にあったものを握り締めます
薔薇の棘が突き刺さり、紅い血が流れ出して――

あなたは、テレサ
赤薔薇の、テレサです

大丈夫。もう、思い出しました
あなたも、僕も、なすべきことも

――さあ、僕の死神。その鎌を、僕たちのために振るって下さい


テレサ・ストレンジャー
【ストレンジャー】
生まれも、本当の名前も喪ってその上
何者でもない自分に逆戻りになるなんて正直こわいよ

アリスラビリンスに迷い込んだとき、『あなた』と初めて出逢った
そのとき、新しい名前をつけてくれた

そうよ、『あなた』が授けてくれたその名だけは、取り戻したいの

――微睡みの中、赤薔薇の嵐を巻き起こす
眠りに負けじと、敢えて薔薇の棘を肌に突き刺して
血を流しながら、彼を思い出す

――毒ニンジンの花言葉は『死をも惜しまぬ人』
あなたは、ヘムロック
そうでしょう?

よかった
テレサの名前も、思い出してくれて……嬉しい
テレサは、ロックの傍で咲くお花だもん



 幽世の空に響き渡るのは、美しくも悲しき歌声。
 その歌声は聞く者の耳を甘く侵して、優しく唆し誘う。微睡みと忘却の淵へと。
『全部、何もかも忘れれば、救われるわ』
 歌声とともに紡がれるのは、そんな比丘尼の声。
 でも、ヘムロック・ストレンジャー(生き餌・f19477)は知っている。
「忘却は決して救いではありません」
 ……アリスラビリンスに迷い込んだ僕たちだからこそ、そう思います、と。
 救いだなんてむしろ真逆。忘れたことの恐怖を、不安を、歯痒さを、知っているから。
 ――けれど。
(「そう考えている自分すらも掻き消えてしまったならば――」)
 最初はふたりで付け合った名前。
 そして歌に微睡み、ぽろぽろいつの間にか脳内から零れ落ちてゆくのは、自己。
 忘却が救いではないと知っている自分が、なくなってしまったら。
 彼は眠りに揺蕩わんとする意識の中、紡ぐ。
 ――僕は、一体誰になってしまうのでしょう、って。
 テレサ・ストレンジャー(あっぱらぱー・f19478)も、よく知っている。
(「生まれも、本当の名前も喪ってその上、何者でもない自分に逆戻りになるなんて正直こわいよ」)
 自分は何処から来たのか、何という名前だったのか。
 考えても考えても分からない、忘れてしまった時の、あの怖さを。
 けれど彼女は、比丘尼の歌が齎す眠りと忘却に囚われるその前に。
 隣に在る彼の顔を見上げ、思い返す。
(「アリスラビリンスに迷い込んだとき、『あなた』と初めて出逢った。そのとき、新しい名前をつけてくれた」)
 何者でもなくなった自分に、名前を付けてくれた彼。
 だからもう……大切なそれを、失くしたくはない。
 ――そうよ、『あなた』が授けてくれたその名だけは、取り戻したいの。
 甘く唆す歌に身も心も委ねれば、心地良い眠りの世界に溺れられるかもしれない。
 けれど……名前を、結び築き上げて来た大切を、返して欲しいから。
 彼女が微睡みの中、巻き起こすのは――赤薔薇の嵐。
 それは眼前の比丘尼だけではない。
 戦場に咲き誇った薔薇の棘は、眠りに負けじと戦う彼女自身の肌をも突き刺し、さらに深い赤を咲かせて。
 己の赤が流れる中、骸魂の歌に抗い……そして、思い出す。
 ――毒ニンジンの花言葉は『死をも惜しまぬ人』。
 そう、だから彼にその名を付けたのだ。
「あなたは、ヘムロック」
 彼女は紡ぎ、彼だけを見つめる。
 ……そうでしょう? って。
 そして彼も、眠りに誘う歌が響く中、ぐっと強く握りしめる。
 その手の中にあったもの――赤く愛しき薔薇を。
 薔薇の棘が刹那、握ったその掌に突き刺さり、滴り落ちる紅い血。
 けれど、そんな血の流れる手の傷よりも。
 彼――ヘムロックは、いつもの様に穏やかな笑みを讃え、自分を見つめる彼女へと紡ぐ。
「あなたは、テレサ」
 ――赤薔薇の、テレサです、と。
 そんな彼の言葉に、彼女……テレサは、よかった、って。
「テレサの名前も、思い出してくれて……嬉しい」
 ……テレサは、ロックの傍で咲くお花だもん。
 そうぱっと咲かせたのは、いつも通りの笑顔。
 従事する執事はそんな主人へと笑み返し、赤に染まっていない掌を伸ばして。
 そっと優しく金の髪を撫で、紡ぐ。
「大丈夫。もう、思い出しました」
 ……あなたも、僕も、なすべきことも、って。
 だからもう、思い出したから。
 ヘムロックは、忠誠を誓った主人のために、なすべき事のために。
 ――さあ、僕の死神。その鎌を、僕たちのために振るって下さい。
 己の肉を食らわれることを厭わない。
『忘却は救い……、ッ!』
 刹那、呪詛に囚われた比丘尼は歌うのを止める。
 そして振り下ろされるのは、無慈悲な死神が放つ大鎌の鋭い閃き。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携歓迎

はらはらと落ちる花弁に触れれば
喉まで出かかっているということもなく、言葉が出ない
あれやこれや、思索や感情がこぼれて言葉という像を結ぶこと無く散逸していく
想いが形にならない原始の感覚
愉快
確かに、確たる形を得なければ思い出も自分もすぐに溶けてしまうのかもしれないね
それはそれで可愛げがあると思うのだけれど……

餓鬼球くんたちをけしかけて骸魂を追い出して吸い出して食べてもらおうか

あ~あ~……あ~や~っとしゃべれたよ!
まあ忘れるのもいいと思うけどさ、それまでは……忘れるまでは覚えてなよ
それが自然の成り行きってものでしょ?



 妖の世界に咲いては散りゆくは、椿の花。
 そして、はらはらと落ちるその花弁に触れれば。
『忘却は救い。だから、忘れればいいわ』
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はそんな比丘尼の声が響く中、金の右瞳をぱちくりと瞬かせる。
 ――喉まで出かかっているということもなく、言葉が出ない。
 あれやこれや、思索や感情がぽろぽろと零れ落ちて。
 言葉という像を結ぶこと無く散逸していく。
 そう、これは……想いが形にならない原始の感覚。
 けれどそれは、本質や源に立ち返っただけの話で。
「確かに、確たる形を得なければ思い出も自分もすぐに溶けてしまうのかもしれないね」
 ――愉快。
 楽し気に笑み浮かべ、呟きを落とすロニ。
 でも、まっさらで純粋なこんな感覚も、楽しくはあるし。
「それはそれで可愛げがあると思うのだけれど……」
『……!』
 刹那、吸い出して食べてもらおうか、って。
 骸魂を追い出さんとロニがけしかけたのは、餓鬼球くんたち。
 そして凶暴な餓鬼球くんたちが、その牙を剥き比丘尼に次々と齧りつけば。
 ぐらりと揺らいだ骸魂の散らせていた椿が一瞬、全て消え失せて。
「あ~あ~……あ~や~っとしゃべれたよ!」
 ロニは取り戻した声を、あ~あ~と数度出した後。
『忘れれば……救われる、はずだわ』
 よろめきながらも尚、忘却に縋らんとする比丘尼へと視線を向け、紡ぐ。
 だって彼は、神様だから。
「まあ忘れるのもいいと思うけどさ、それまでは……忘れるまでは覚えてなよ」
 ――それが自然の成り行きってものでしょ? って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【朔夜】

ツバキが揺れる、うたが聴こえる
泡と沈みゆくはきみと過ごした記憶の欠片
歪にゆっくり侵されて

背を預けた者と出逢いはいつか、
俺は如何して君と共に居るのか
虚ろ、抜け落ち、縋るは最早仮初に決めた名だけ

朧、ごめん、

幾度失くす怖さに耐えれば良いのだろう

見上げた月光にいつか、ふたりで斃れた景色が交われば
刀は滑るように彼の喉元へ切先が触れ
噫、そうだ、前にもこうして遊んだか
この身をゆるり絞めあげた感覚は鮮明に
躊躇いなく赫い花を咲かせ首紐へ滲んでゆく

忘れることなど出来るものか

りんと、耳飾りが揺れる
あかく、あかく
燃えるように
滴る雫、染まれ、朧宵に
酔い痴れ、遊べ
呼応するよう九つ桜は舞い上がり椿を裂いて喰らわんと


飛白・刻
【朔夜】

蠱惑に誘う花歌が耳を蕩かしていく
ぐらり酔うてまた抜け落ちていく
曖昧になりゆく記憶は絣模様のよう

これが初の背合わせか、否
ならば何故こうして此処に居る
宵遊、そう呼ぶに至るまで交え重ねた記憶が有る筈で

脳裏に咲くは幻朧の桜、見上げ月
嗚呼、己は此れを識っている
あの純粋に愉しいひとときだ
お子様のその細首に痕を付けたっけか
月燿う夜の切先をこの身が憶えている
忘れさせてなるものか

視界の先で朱い華が揺れた
月灯りを帯びて一際に燿う

己が首筋に赫い絲が雫が鮮明に、一筋、一滴と
己刃にぽたり、首筋から赫い雫が流るる
わざと赫を塗った切先は疾く、椿の懐へ
返さぬならばーー奪い返すまで

朧からも宵遊からも
これ以上何も奪わせぬ



『忘れる事こそ……救い、そうでしょ?』
 そう囁き続ける比丘尼の声が、何処か揺らいでいるのは。
 猟兵達が与えてきた衝撃の所為か、彼女の内に呑まれたものの抵抗か……はたまた、その何方ともか。
 けれど、甘く優しく。そして妖しさを孕み蠱惑に誘う花歌が耳を蕩かし侵してゆく中。ツバキが揺れ、戦場に浮かび上がるは、泡沫の夢幻。
 響くその花歌に、ぐらり酔うて。飛白・刻(if・f06028)――朧から、絣模様の如くまたするり抜け落ちて曖昧になりゆくは、自己を支えていた記憶。
 そして宵鍔・千鶴(nyx・f00683)――宵遊が触れた泡が、ぷくりと生じて弾ける度に。夢幻に沈みゆき歪にゆっくり侵されていくのは、彼と過ごした思い出の欠片。
 されど、ごく自然に合わせた背から感じる相手の熱。
(「これが初の背合わせか」)
 それは――きっと、否。
(「ならば何故こうして此処に居る」)
 朧に、その答えは分からない。
 けれども、これだけは分かる。
 ……宵遊、そう呼ぶに至るまで交え重ねた記憶が有る筈で、と。
(「背を預けた者と出逢いはいつか、俺は如何して君と共に居るのか」)
 ――朧。宵遊。
 虚ろ、抜け落ちてゆくものを、今は掬い上げることはできなくて。
 縋るは最早、仮初に決めた名だけだけれど。
「朧、ごめん、」
 宵遊の口から、不意に零れ落ちる言の葉。
 忘却は救いだと、比丘尼は唆し囁き続ける。
 でもそれが決して救いなどではないことを、彼は知っている。
 ――幾度失くす怖さに耐えれば良いのだろう、と。
 けれども、幽世の天に浮かぶ月の光を見上げた刹那。
 瞼の裏に焼き付いた景色が、そのいろが、冷たい閃きと手の感触……ふたりの脳裏に咲き誇る。
 それは、ふたりで斃れた桜舞う景色。あの時も、同じ様に共に月を見上げた。
 滑るように喉元に触れた冷たい切先。
(「噫、そうだ、前にもこうして遊んだか」)
(「嗚呼、己は此れを識っている。あの純粋に愉しいひとときだ」)
 ……お子様のその細首に痕を付けたっけか。
 伸ばしたその手でぐっと掴んだ、彼の細首。
 ゆるり絞めあげ滲み咲いた赫い花、月燿う夜の切先……嗚呼、憶えているとも。
 ――忘れることなど出来るものか、忘れさせてなるものか。
 だから今宵も、朧の空に遊ばせる。
 冷え色の首筋に飛沫き咲いた、朱い華を。
 月灯りを映し、一際に燿う赫い絲。
 それは鮮明に、一筋、一滴と。刃にぽたり、流れ滴って。
『忘れましょう、忘れさせてあげる』
(「返さぬならば――奪い返すまで」)
 ――朧からも宵遊からも、これ以上何も奪わせぬ。
 わざと己の赫を塗ったその切先に。
 りんと、その耳元であかくあかく燃えるように揺れている朱華に。
 椿の懐へと疾く鳴る残花ノ戯に、朧は託す。
 ……滴る雫、染まれ、朧宵に。酔い痴れ、遊べ――。
『! な、忘却こそ、救いのはず……、ッ!!』
 ひとつは、落涙の如く滴る塗られた赫。
 刹那、椿を裂いて喰らうは、呼応するように舞い上がる九つ桜。
 ツバキに向けられしその切先は、戯れのものではない。
 そして己が散らした椿の如き赤に塗れながら、幽世の空に消えゆく骸魂を後目に。
 ふたりは、取り戻したその名を口にする。
 ――おかえり、ただいま。
 欠けていたものが今満ちたような、美しい月の照る朧宵の空に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『妖怪横丁へ寄っといで』

POW   :    妖怪横丁グルメを楽しむ

SPD   :    妖怪横丁ショッピングを楽しむ

WIZ   :    妖怪横丁催事を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●妖怪商店街
 何だか、懐かしくてホッとするような。
 そんな郷愁誘う、賑やかで元気な横丁商店街。
 其処彼処から美味しそうな匂いがふわり漂い、様々な商品が雑多に並ぶ店先、趣向の凝らされた催し物等、見ているだけで心躍る。
 けれど勿論、此処は幽世の世界だから。
 妖怪たちが営み行き来する妖怪横丁は――ちょっぴり、何処か面白可笑しくて摩訶不思議。

「いやぁ、参った参った。名前がなくなったら自分の店の名前すら分かんないし、商売も成り立たなかったよ」
「あんたたちが取り戻してくれたんだって? 有難うな! あ、うちの店に寄ってかないかい? 1個おまけするよ!」
 猟兵達のウワサは、この横丁でも持ち切り。
 そして、寄ってらっしゃい、見てらっしゃいと。
 妖怪たちは、商売魂もサービス精神も旺盛。

「甘い物食べたくないかい? なら、うちの店『目玉屋』に寄っといで!」
 早速声を掛けて来た、一つ目小僧の店主が営むのは『目玉屋』。
 この店の一番人気は、まんまる一つ目まん。
 黒の目玉まんはあんまん、橙はカレーまん、緑は抹茶あんまん、ピンクは苺餡、赤は激辛まん!?
 さらに青の目玉まんの中身は、食べてからのお楽しみな――ロシアンまん!?
 その他にも、様々な色と中身の一つ目まんがあるという。
 一つ目まんの他に、餡やみたらしやよもぎなど、ころんと可愛い目玉団子も美味しいらしい。
「お腹すいたなら、うちの店『たましい庵』においでませ!」
 顔はつるんとのっぺらぼうだけど、愛想の良い声でそう誘うのは、『たましい庵』の店主。
 ちょっと変わった人魂のカタチをしたコロッケやメンチカツや唐揚げは、ほっくほくのさっくさく。
 さらに、この店のイチオシは――揚げ人魂!?
「ふふ、本物の人魂かって? それは食べてからのオタノシミ。大丈夫、魂とったりしませんから」
 本物かニセモノかどうかは、ご想像にお任せ。
 どうやら普通に美味しく食べられるものらしいが……さっくりぷるるん、不思議な食感らしい!?
「うちは今日は、餡子ぎっしりな妖怪たい焼きが半額だよ!」
「私の店は、輪入道の高火力で焼いた焼き鳥が自慢さ。自分で一度、たれをツボにつけて食べられるんだ」
「蛸入道のたこ焼きもいかが? 小さいのや普通のもいいけど、巨大たこ焼きも食べ応えがあるよっ」
 話を聞くだけでも、存分に食べ歩きが楽しめそうだし。
「食べ歩き用のお持ち帰りも可能ですけど、散策の休憩にでも、是非うちの『雪山カフェ』にもいらしてくださいね」
 そう微笑むのは、『雪山カフェ』の看板娘という美しい雪女。
 食べ歩きでも店内ででも食べられる、『雪山カフェ』の雪女が作るかき氷は、ふわふわなのにシャッキシャキ。
 そんな雪女にしか作れない極上の氷に、好きなだけ、好きなシロップを何種類でもかけていいようだ。
 白玉や餡やさくさくカラフルなあられ菓子などのトッピングも可能だという。
 そしてアイスも不思議、なかなか溶けない、食べ歩きにはうってつけな仕様。
 アイスも沢山の色があるし小さいサイズでも頼めるので、沢山の味を重ねてみてもいいだろう。
 そして店内限定ではあるが、カフェの名にもなっている名物が――巨大な『雪山パフェ』!
 どどんと聳え立つ冷たいパフェを数人で制覇してみるのもよし、ひとりで挑戦しても良し。
 もしも食べきれなくても、周囲の妖怪さんたちが手伝ってくれるかも?

 そんな食べ歩きは勿論、この横丁は妖怪たちの日用品や雑貨、ちょっと変わった掘り出し物を扱っている店も沢山。
 九十九古物商店は、妖怪たちが日頃使う日用品や物珍しいがたくさん。
 一つ目小僧用の眼鏡に、唐傘お化け風の傘、よく砥がれた包丁、謎の御札、人魂のような青白い炎が灯るレトロランプ等々。
 それにアヤカシメダルも扱っているので、運が良ければ、レアなアヤカシメダルとも出会えるかも……!?
 おどろかし道具屋は、様々な種類のおどろかしグッズが豊富。悪戯好きさんの心も踊るだろう。

 ――そして。
「あの……どうも有難うございました。私の店にもよかったら立ち寄ってください。御礼をしたいの」
 そう声をかけてきたのは、骸魂に呑まれていた人魚・玉響。
 そんな彼女が営んでいる店は――宝石屋。
「私の涙は、願えば真珠のような宝石になるんです。でも……それには私の心が映るから。ずっと、哀しいいろのものしかできなくて、暫く店を閉めていたんですけど。皆さんのおかげで、色々ないろのものをまた沢山作れそうです」
 楽しいいろ、嬉しいいろ、切ないいろ、少し哀しいいろ――様々な色をした真珠の様な宝石と、それを使った装飾品が売っているのだという。
 本来それは高価なものであるが、助けてくれた猟兵には御礼に一粒、希望のいろのものをくれるというし、希望の装飾品への加工サービスもしてくれるようだ。一粒では物足りない場合も、かなりの破格で提供してくれるという。

 他にも、賑やかな横丁は盛り上がる催しものも沢山。
 土管のある広場では、妖怪紙芝居が楽しめるし。
 一番人気の催しは――本物の妖怪たちによる、お化け屋敷!
 妖怪たちは、おどろかすのが大好き。きっと、わーきゃー楽しめるの間違いなしだろう。

 名前を取り戻した、そんな愉快で摩訶不思議な妖怪横丁で。
 さあこれから、楽しいひとときを過ごそう。


●マスターより
 第3章は、日常章です(OP時のマスターコメントが誤りです)
 勿論戦闘はありません、完全なお遊びパートとなっております。
 概ねできることは、上記断章にある通りですが。
 妖怪横丁にありそう、できそうなものやことでしたら、お好きにご指定も可能です。
 いくつでもやりたい行動かけていただくことは可能ですが。
 やりたいことが多いほど、ひとつの事に関する描写は薄くなりますので。
 浅くでも沢山の事を描写希望するか、ひとつのことを掘り下げるか等は、お好みで。

 グループ参加の人数制限はありません、お一人様~何名様ででもどうぞ!
 OP公開時のマスターコメントも再度ご確認いただければと。
 問題のない内容のプレイングは全て採用の予定です。
 お声掛けあった場合のみ、清史郎もご一緒させていただきます。
 面識などお気になさらず、必要であればお気軽に声を掛けて頂ければ嬉しいです。

 第3章プレイング送信の受付は、【7/20(月)朝8:31】より開始いたします。
 それ以前に送信された分は流れてしまう可能性が高いのでご注意ください。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。
真宮・響
【真宮家】で参加

玉響は無事だったようだね。良かった。え?奏は食べ歩きしたい?まあ、胃袋ブラックホールの奏には堪らない街並みだろうね。ん、存分に食べ歩きしようか。

黒の目玉まんを食べながら、ロシアンまんに挑戦する奏を見守る。酷い目に遭っても奏の食欲は衰えないようで、たい焼き、たこ焼き、焼き鳥を買っていく。最後は巨大な雪山パフェ!?おとなしく小さいパフェ(白玉と餡のトッピング付き)を食べながら、奏が果敢に挑戦してるのを見学するよ。全く、どんな世界でも奏の無限の食欲は健在のようだね。


真宮・奏
【真宮家】で参加

玉響さん、無事だったようですね。良かった。平和が戻ったところで・・いい匂いします!!食べ歩きしたいです!!お腹空きました!!(目をキラキラ)

まずは青の一つ目まんから頂きます!!なんか変わった味しますね?(首傾げ)妖怪さんが作ったたい焼きも焼き鳥もたこ焼きもおいしいです!!最後は雪女さん特製の特大雪山パフェ頂きます!!幾らでも食べれますから、雪山級のパフェでも問題ありません!!苺シロップと練乳かけて、残さず頂きます!!幸せです~


神城・瞬
【真宮家】で参加

玉響さんは無事助け出されたようですね。良かった。奏は食べ歩きしたいと。胃袋ブラックホールの奏には魅力的過ぎる街並みですよね。僕も妖怪さんが作る食べ物に興味があります。

緑の一つ目まんを食べながら奏のロシアンまん挑戦を見学。家族で食べ歩きしながら食べ物店の主の妖怪さんを興味深そうに観察。妖怪さんが持つ生来の素質を料理に活かすのはなかなか勉強になります。雪女さんが作るパフェも美味しそうですね。なにしろ氷のプロですし。僕の氷の精霊術でも作れるかな、と思いつつ、黒蜜と白玉をトッピングしたパフェを頂きながら、雪山パフェに挑戦する奏を見守ります。



 名前も自分も声も、全部元に戻って。
 猟兵達のおかげで滅亡を免れた妖の世界。
 そして救われたのは、世界だけでなく。
「玉響は無事だったようだね。良かった」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)の言うように、骸魂に呑まれていた人魚・玉響も無事で。
「玉響さんは無事助け出されたようですね。良かった」
 神城・瞬(清光の月・f06558)もそう頷いた――刹那。
「平和が戻ったところで……いい匂いします!!」
 同じ様に、玉響の無事を良かったと紡いだ後、真宮・奏(絢爛の星・f03210)はふわり鼻を擽る良い匂いにつられて。
「食べ歩きしたいです!! お腹空きました!!」
 目をキラキラ、沢山の店が並ぶ横丁をきょろきょろ。
 そんな逸る心を抑えきれない様子の奏に、一瞬だけ瞳をぱちくりさせるけれど。
「え? 奏は食べ歩きしたい? まあ、胃袋ブラックホールの奏には堪らない街並みだろうね」
「奏は食べ歩きしたいと。胃袋ブラックホールの奏には魅力的過ぎる街並みですよね」
 響も瞬も、ふと周囲を見回せば……底なし胃袋な奏が目を輝かせるのも納得の、美味しそうなものが売っている店がずらり。
 しかも此処は、妖怪たちの世界。
「僕も妖怪さんが作る食べ物に興味があります」
 何だか知っているものとちょっぴり違いそうな不思議な妖怪たちの食べ物に、瞬も興味をそそられて。
 響はそんな子供達の言葉に、こくりと頷いて歩き出す。
「ん、存分に食べ歩きしようか」
「どの店から行きましょうか!! どれも美味しそうで迷います!!」
 そわそわきょろりと視線を巡らせ、奏は店を吟味して。
 ふと見つけ、足を運んだのは。
「まずは一つ目まんから頂きます!!」
 一つ目小僧が営むお店の、一つ目まん!
 一つ目まんと言っても、いくつもの色と味があるけれど。
 奏が選んだのは――。
「青の一つ目まんをください!!」
 中身の分からない、青に挑戦!?
 そんな最初からエンジン全開な奏を、それぞれ黒と緑の一つ目まんをいただくふたりは見守って。
 はむりと、ひとくち奏が青の一つ目まんを頬張ってみれば。
「なんか変わった味しますね?」
 そう、こてんと首を傾げる。
 その中身は――めっちゃ酸っぱい、レモンまん!?
 けれど、罰ゲームの様な中身に当たっても、奏の食欲は衰えずに。
「妖怪さんが作ったたい焼きも焼き鳥もたこ焼きもおいしいです!!」
 追加で、たい焼きも焼き鳥もたこ焼きも、全部買っちゃいます!
 そんな奏や響と一緒に食べ歩きをしながら、瞬もそれぞれの店を訪れては興味深そうに店を営む妖怪たちを観察して。
「妖怪さんが持つ生来の素質を料理に活かすのはなかなか勉強になります」
 感心したように、そう口にする。
 それは、ようやく最後の締めだと言って入った『雪山カフェ』でも一緒。
「雪女さんが作るパフェも美味しそうですね。なにしろ氷のプロですし」
 雪女が作る冷たいスイーツは、ひんやり美味しそうで。
 早速、それぞれ注文をするけれど――。
「特製の特大雪山パフェ頂きます!!」
「最後は巨大な雪山パフェ!?」
 白玉と餡のトッピングを乗せた小さいパフェを食べながら、響は娘の前にうず高く盛りつけられたパフェを見て驚きの声を上げるけれども。
「雪山級のパフェでも問題ありません!!」
 ――幾らでも食べれますから!
 苺シロップと練乳かけて、残さず頂きます!!
「全く、どんな世界でも奏の無限の食欲は健在のようだね」
 響はそう言いながらも、幸せです~と至福の表情でパフェを平らげていく奏の様子を眺めて。
 瞬も黒蜜と白玉をトッピングしたパフェを頂きながら、雪山パフェに挑戦する奏を見守りつつも、ふと思うのだった。
 ――僕の氷の精霊術でも作れるかな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
アヒルさん、アヒルさん、アヒルさん、アヒルさん、アヒルさん、・・・。
ふえぇ、アヒルさん痛いですよ。
アヒルさんの名前が呼べるのがこんなに幸せなことだったなんて
って、アヒルさん突かないでくださいよ。
今日ぐらいアヒルさんの名前をいっぱい呼んだっていいじゃないですか。
アヒルさんも私のことをいっぱい呼んでくれて構わないですからね。
ね、アヒルさん。



 なくしていた名前を取り戻して、滅亡から救われた世界。
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)も、無事に自分の名前も声を取り戻せたけれど。
 でも、自分のもの以上に。
「アヒルさん、アヒルさん、アヒルさん、アヒルさん、アヒルさん、……」
 ひたすら連呼するのは、すぐ傍に在るアヒルさんの名前。
「アヒルさんの名前が呼べるのがこんなに幸せなことだったなんて」
 普段、何気なく呼んでいる名前。
 けれどそれを思い出せなくなって、声が出なくなって。
 はじめてフリルは、アヒルさんの名前を呼べることが嬉しいことに気付いて。
「アヒルさん、アヒルさん、アヒルさん……ふえぇ、アヒルさん痛いですよ」
 やっとなくしていた名前を思い出して以来、ずっとひたすら呼び続けるフリルに。
「って、アヒルさん突かないでくださいよ」
 くちばしでツンツンするアヒルさん。
 でも、そんな結構痛いくちばし攻撃にもめげずに。
「今日ぐらいアヒルさんの名前をいっぱい呼んだっていいじゃないですか」
 フリルは大きな帽子のツバを押さえつつも、ちらりとアヒルさんへと視線を向けてから。
 アヒルさんへと、こう続ける。
「アヒルさんも私のことをいっぱい呼んでくれて構わないですからね」
 そして、もう一度。
 ――ね、アヒルさん、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
甘いものは別腹。
特にヤドリガミの私ならそもそも本体のお腹がどこにあるやら全くわからないわ。

ということで。

グルメを制覇するわよ!…全部に妖怪とか人魂とかくっついているのが微妙に引っかかるけど。

基本、甘いものを食べて歩くわ。
たい焼きから始まって雪山かき氷と普通サイズのアイスをいただくわね…。
巨大なのはどこかのお山で聞いたような気もするけど、パスタに乗っていたりしないだけ普通なのかしら?

あと食べながら周囲に視線を流す。
妖怪がいっぱいいるなら、あれもいるんじゃないかしら。
ほら、もふもふでにゃーって鳴くあれ。

いたらなでなでしたいなー、いないかしらねー?



 郷愁を思わせる独特の空気感を纏う、幽世世界の妖怪横丁。
 無事に名前やその他のものも全部取り戻し、活気溢れる商店街へと訪れて。
 ふわり鼻を擽る良い匂いに誘われるかの如く歩きながら、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は再認識する。
 ――甘いものは別腹。
(「特にヤドリガミの私ならそもそも本体のお腹がどこにあるやら全くわからないわ」)
 別腹どころか、お腹とか胃袋すら、何処にあるのかという疑問さえあるくらい。
 ……ということで。
「グルメを制覇するわよ!」
 そうぐっと、気合十分! なのだけれども。
「……全部に妖怪とか人魂とかくっついているのが微妙に引っかかるけど」
 此処は妖怪達の世界、何だか知っているものとはちょっぴり違う感じに、少々不安要素はあるとはいえ。
 呼び込みの声は活発で、漂う匂いも美味しそうなものだから。
 ヴィオレッタは基本、甘いものを中心に横丁を食べ歩く。
 まずは、頭から尻尾のさきまで、ぎっしり餡が詰まったたい焼き。見目がちょっとおどろおどろしい妖怪の魚風だけど、味は間違いなし。
 そして色々と見ながら歩きやってきたのは――『雪山カフェ』。
 やはりここでも、注文するのは甘い物。
 いや……甘いだけでなく。
「お待たせしました! ご注文の、雪山かき氷と普通サイズのアイスです!」
 そう、とても大きな。
(「巨大なのはどこかのお山で聞いたような気もするけど、パスタに乗っていたりしないだけ普通なのかしら?」)
 ヴィオレッタはそんなことなど考えつつも、はむりとかき氷を掬ったスプーンを口に運んで。
 ふときょろり、周囲に視線を流してみつつも呟く。
「妖怪がいっぱいいるなら、あれもいるんじゃないかしら」
 ――ほら、もふもふでにゃーって鳴くあれ。
 そして……いたらなでなでしたいなー、いないかしらねー? なんて。
 そわりと色の違うふたつの瞳で探してみれば――。
「……!」
 瞬間、足にすりすりとじゃれついてきたこの感触は。
 もしかして――もふもふでにゃーって鳴くあれ、かも!?

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
嵐吾さん(f05366)と

幽世、変わってて面白いこといっぱいあるし
俺は結構好きですよ
嵐吾さんはこの世界で遊んだことあります?
ふふ、じゃあ思いっきり楽しみましょ

のっぺらぼうに声を掛けられ
えっと、たましい?
嵐吾さん、なんか上げ人魂とかいうのが…
いやまさか本物ってことは…
――食べてみます?
不安そうな顔に笑って
じゃあ俺が。あ、うまい
だいじょうぶ!

清史郎さんいた!
探してたんですよ
だって一緒に楽しみたいし――
今回は、ネ?と嵐吾さんに笑いかけ

いっちゃいましょう
おっきなかき氷!
こないだは苦戦したケド
…清史郎さんがいれば百人力でしょ、絶対!

かき氷はキーンてするもの…
…嵐吾さん、大丈夫デス?
(途中で脱落する)


終夜・嵐吾
あや君(f01194)とせーちゃんにも声かけて

幽世は初めてなんじゃ
しかし、楽しそじゃね!
と、きょろきょろ視線巡らせつつ

揚げ人魂?
揚げられておるなら叫び声でも聞こえよう
それもなかったしの…普通の食べもんじゃろ、多分
……大丈夫、じゃろ?(ふあん)

お、せーちゃん
案内お疲れじゃよと声かけて
うん、一緒に色んなとこ楽しみにいこ!
せーちゃんの力を絶対に借りねばいけぬものもあるしの!
頼りにしておるよ(きりっ)

そう、かき氷!
去年、あや君と苦戦したからの
その時にせーちゃんがおればと思っておったんじゃ
今度は三人で挑も…大きない?
…がんばろ!

っ…!
きーん…!くっ、負けぬ…!
じゃが…いざという時はせーちゃん、頼む…!



 訪れた妖怪横丁は、何処か懐かしいレトロ感溢れる情景が広がっていて。
 何よりもとても活気に溢れていて、賑やか。
 それに――。
「幽世、変わってて面白いこといっぱいあるし、俺は結構好きですよ」
 浮世・綾華(千日紅・f01194)の言うように、目に映るのはどれも、何だか知っているものとはちょっぴり違った妖怪仕様。
 そんな物珍しい店先を眺めつつも、綾華は、終夜・嵐吾(灰青・f05366)に訊ねてみる。
「嵐吾さんはこの世界で遊んだことあります?」
「幽世は初めてなんじゃ」
 嵐吾はそうきょろきょろ視線を巡らせながらも。
 ……しかし、楽しそじゃね!
 灰青の尻尾と耳を、ゆらゆらぴこり。
 そんな嵐吾の様子に、綾華は思わず笑みを零して。
「ふふ、じゃあ思いっきり楽しみましょ」
 いざ、横丁散策に出発!
「そこのお兄さんたち。カクリヨならではなたましいの揚げ物『揚げ人魂』を、食べてみないかい?」
 そう声をかけてきたのは――揚げ物屋『たましい庵』の店主の、のっぺらぼう。
「えっと、たましい?」
 綾華はそう瞳をぱちくりさせて。
「嵐吾さん、なんか揚げ人魂とかいうのが……いやまさか本物ってことは……」
 嵐吾に声を掛けつつも、そっと店主の表情を見遣るけれど。
 何せ、のっぺらぼう。その顔を見たただけでは、何を考えているのか全く窺い知れず。
「揚げ人魂? 揚げられておるなら叫び声でも聞こえよう」
「そうですね、本物なら声とか聞こえそうですよね」
 ふたりして、そうっと暫く耳を澄ましてみるけれど。
「……何も聞こえんの……普通の食べもんじゃろ、多分」
「――食べてみます?」
 嵐吾の狐耳を澄ましてみても何も聞こえないのなら、本物の人魂ではなさそう……?
 ということで、注文してみたものの。
「……大丈夫、じゃろ?」
 ちょっぴり不安そうな声と、ゆうらり揺れる尻尾。
 綾華は、そんな嵐吾の不安そうな顔に笑って。
「じゃあ俺が。……あ、うまい」
 はむっと口にしてみれば、さくっとした歯ごたえと美味しさが。
 ――だいじょうぶ!
 そうこくりと頷く綾華を見て。
 嵐吾もそうっと、端っこをちょっぴりはむり。
 瞬間、耳をピンと立てて。
「ん、確かに、これは美味しいの」
 もう一口、食べてみながらも。
「しかし……これは何を揚げておるんじゃろ」
 ちらりと店主を見てみても、やっぱりのっぺらぼう店主のその表情は読めない。
 そうこう、色々と歩いて楽しんでいれば。
「お、せーちゃん。案内お疲れじゃよ」
「清史郎さんいた! 探してたんですよ」
 見つけたのは、よく見知った雅な姿。
「おお、らんらんに綾華。俺を探してくれていたのか?」
 そう瞳細める清史郎に、ふたりはこくりと首を縦に振って。
「うん、一緒に色んなとこ楽しみにいこ!」
「だって一緒に楽しみたいし――」
 ……今回は、ネ? って。
 笑いかける綾華に、嵐吾は再び大きく頷く。
「せーちゃんの力を絶対に借りねばいけぬものもあるしの!」
 ……頼りにしておるよ、と、きりり。
 そう、ふたりには、今回こそとリベンジに燃えているものがあった。
 昨年の夏、あっさりと屈し白旗を上げてしまったアレ。
「いっちゃいましょう、おっきなかき氷!」
「そう、かき氷! 去年、あや君と苦戦したからの。その時にせーちゃんがおればと思っておったんじゃ」
「おお、かき氷か。それは良いな」
 そんなえぐいくらい甘い物が好きな彼の微笑みに、ふたりは心強く思う。
「こないだは苦戦したケド……清史郎さんがいれば百人力でしょ、絶対!」
 そしていざリベンジを果たすべく、『雪山カフェ』で特大かき氷を注文すれば。
「今度は三人で挑も……大きない?」
「え、これ、無理じゃないですか……?」
 どどんとテーブルに置かれた時点で、その大きさに一瞬怯んでしまった綾華と嵐吾であったが。
「とても甘くて美味しそうだな、ではいただこうか」
 涼し気な笑みですちゃりとスプーンを構え、雅な所作で食べ始めた清史郎に続いて。
「……がんばろ!」
「……がんばりましょう!」
 今年こそ、巨大かき氷の制覇に挑む!
 ――けれども。
「かき氷はキーンてするもの……嵐吾さん、大丈夫デス?」
「っ……! きーん……! くっ、負けぬ……!」
 やっぱり途中で脱落する綾華と、例のキーンに超苦戦している嵐吾。
 けれど、そんな抵抗も空しく。
「せーちゃん、頼む……!」
「清史郎さん、あとは任せました……」
 もう無理、限界です!
 そんなふたりを、清史郎はきょとりと見つつも。
「ふたりとも、もう食べないのか? では有難くいただこう」
 キーンとなっている様子もなく、しゃくしゃく平然と食べ続けるその姿を後目に。
 また今年もキーンに、頭を抱えることになる綾華と嵐吾のふたりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レザリア・アドニス
妖怪横丁に食べ歩きする
見たことのない、食べたことのないものがたくさんで、
どれもこれも興味津々に見て、目が忙しすぎる

腕の中の死霊ちゃんもはしゃいてるように見える
いろいろ買って、死霊ちゃんと半分っこ
一つ目まんに揚げ物に焼き鳥にタコ焼き、最後はかき氷でしめる
見た目や説明は少々こわ…ふ、不思議だけど、どれも美味しいです
死霊ちゃんも…ん?雪山パフェに挑戦したいの…?
しょうがないですね…
と、とりあえず頼んでみる
ゆっくり味わう横に、死霊ちゃんもゆっくり食べるように見えるけど
パフェがどんどんどんどん消えていく
しかし死霊ちゃんの体は元のまま
あんな量のパフェは、いったいどこに消えたんでしょう…



 何だか不思議でちょっぴり奇妙な、幽世の風景。
 この世界に住む妖怪達をはじめ、並ぶ店や商品、街並み。
 レザリア・アドニス(死者の花・f00096)にとって、そのどれもこれもが珍しくて。
(「見たことのない、食べたことのないものがたくさんで、目が忙しすぎる」)
 きょろきょろとあちこち巡らせる円らな緑色の瞳は、とっても忙しい。
 それはどれも興味深々で、わくわくもするから。
 ちらりとレザリアは、自分の腕の中へと視線を落とし、思う。
(「腕の中の死霊ちゃんもはしゃいてるように見える」)
 そんなレザリアの目的は、死霊ちゃんと食べ歩き。
 いろいろ買ってみて、それを半分っこするつもりで。
 横丁を歩いていたら……沢山飛び交う、呼び込みの声。
「どうだい、お嬢さん。一つ目まんはいかが?」
「揚げ人魂もおすすめさ!」
 一つ目まんに揚げ物に焼き鳥にタコ焼き――勧められたそれらを一通り購入して。
 死霊ちゃんと分け合い一緒に、そうっとはむり、口へと運べば。
「見た目や説明は少々こわ……ふ、不思議だけど、どれも美味しいです」
 口いっぱいに広がる美味しさに安堵しつつも、存分に堪能して。
 次は何を食べようかと、再び周囲を見回せば。
「死霊ちゃん……?」
 腕の中の死霊ちゃんが、何だかそわり。
 その理由は――すぐ目の前にある『雪山カフェ』。
「死霊ちゃんも……ん? 雪山パフェに挑戦したいの……?」
 ――しょうがないですね……。
 レザリアは死霊ちゃんの要望通り、店内へと足を踏み入れて。
「と、とりあえず頼んでみる」
 注文するのは、勿論!
 死霊ちゃんも食べてみたがっている、すごいボリュームらしき雪山パフェ。
 それが運ばれてくれば、どどんとした大きさに、思わず瞳を瞬かせるけれど。
 スプーンで掬ってはむはむ、ゆっくりと味わうレザリア。
 けれど――その横で、同じ様にゆっくり食べているように見えるのだけれど。
「パフェがどんどんどんどん消えていく……」
 死霊ちゃんの口に運ばれては消える、甘いパフェ。
 そしてそんな様子を見つつ、レザリアはふと首を傾ける。
(「しかし死霊ちゃんの体は元のまま」)
 大きかった眼前のパフェも、随分ちっちゃくなったというのに。
 ――あんな量のパフェは、いったいどこに消えたんでしょう……って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【花簪】
幽世の世界は数える程しか訪れておりませんが
何処か懐かしい気持ちになりますね
皆名前を取り戻したようですしオオカミ殿と見て回ります

食べ物を買って頂きつつ、足を止めたのは助けた人魚の店
彼女の様子も気になりますので寄りましょう
……と言う前にオオカミ殿が行動していました
相変わらず彼らしいです
玉響殿も驚かれてしまうのではないでしょうか

彼の様子を微笑ましく眺めつつ真珠の装飾品を眺めます
色々な色なのは彼女の心を映しているのですね
目に留まったのは琥珀色の真珠
光の当たり具合によって朝焼けにも夕焼けにも見える陽の色
これを頂けますか?お土産にしたいのです

いいこと?
オオカミ殿と楽しめるならばお付き合いしますとも


ジョン・フラワー
【花簪】
名前が戻ってみんな嬉しそう
嬉しいのが一番だよね! 名前は嬉しい! きっとそうなんだ!
知らないものもたくさんあるな。いっぱい見ていかなきゃ!

ここはアクセサリ屋さんかな。はじめましてお嬢さん!
人魚のアリスだなんて素敵だね。僕は陸のおおかみさ
お魚とおおかみが出会うなんて運命?
これはもういいことするしかないね!

キミの涙はとってもきれい。でも僕は涙じゃなくてキミの笑顔が欲しいな
どう? 僕と一緒に街で楽しまない?
きっと忘れたくない思い出にしてみせるさ!

あっ簪のアリス。お嬢さん驚いてる? それは失礼!
だってあんまりにも可愛いんだもの。それにお喋りできるの楽しいよ!
簪のアリスも一緒にいいことしようね!



 賑やかな妖怪横丁の郷愁溢れた風景。
「幽世の世界は数える程しか訪れておりませんが、何処か懐かしい気持ちになりますね」
 店が並ぶ商店街を歩きながら、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は翡翠の色を湛える瞳を細めて。
「名前がなくなって焦ったな、店の名前すらわからなかったからな」
「ああ、でも思い出せてよかったよかった!」
 聞こえてくるそんな妖怪達の会話に、皆名前を取り戻したようですし、と微笑めば。
「名前が戻ってみんな嬉しそう、嬉しいのが一番だよね!」
 ……名前は嬉しい! きっとそうなんだ!
 ジョン・フラワー(まごころ・f19496)はそう、ぐるりと視線を巡らせて。
「知らないものもたくさんあるな。いっぱい見ていかなきゃ!」
「では一通り見て回りましょうか、オオカミ殿」
 ふたり並んで、いざ横丁巡りに。
 ジョンにとっては、自分をオオカミで、他はみーんなアリス。
 みんなアリスで済んじゃうから、名前を覚える気はないのだけれど。
 名前を取り戻して嬉し気なアリスたちを見ると、とってもそれはいいことなんだとは思う。
 そんないつもの様にご機嫌な彼と、食べ物を買って頂きつつ。
「彼女の様子も気になりますので寄りましょう」
 夜彦がふとその足を止めたのは――足を止めたのは助けた人魚・玉響が営む店。
 けれどそう夜彦が言う前から。
「ここはアクセサリ屋さんかな。はじめましてお嬢さん!」
 すでに店に入り、中にいる玉響へとそう声を掛けていたジョン。
「人魚のアリスだなんて素敵だね。僕は陸のおおかみさ。お魚とおおかみが出会うなんて運命?」
 ――これはもういいことするしかないね!
 そう笑むジョンに夜彦は、相変わらず彼らしいです、とその後に続いて。
 店に飾られた真珠の様な宝石へと、ぐるりと視線を巡らせてみる。
「助けていただいて有難うございます、オオカミさんと剣士様」
 玉響はふたりにぺこりと丁寧に頭を下げつつ、礼を告げるけれど。
「キミの涙はとってもきれい。でも僕は涙じゃなくてキミの笑顔が欲しいな。どう? 僕と一緒に街で楽しまない?」
 ……きっと忘れたくない思い出にしてみせるさ!
 そんな彼の言葉や勢いに、瞳をぱちくり。
 その玉響の様子に、夜彦は気付いて。
「オオカミ殿、玉響殿も驚かれてしまうのではないでしょうか」
「あっ簪のアリス。お嬢さん驚いてる? それは失礼!」
 ――だってあんまりにも可愛いんだもの。それにお喋りできるの楽しいよ!
 そうご機嫌に続ければ。
「私もお喋りできて嬉しいです、有難う」
 にこりとふたりに笑みを向ける玉響。
 夜彦は、人魚のアリスに嬉々と話しかけるジョンの様子を微笑ましく眺めつつ真珠の装飾品を眺めて。
「色々な色なのは貴女の心を映しているのですね」
 ふと翡翠の瞳に飛び込んできたのは――琥珀色の真珠。
 それは、何処か愛し気な……光の当たり具合によって朝焼けにも夕焼けにも見える陽の色。
「これを頂けますか? お土産にしたいのです」
「ええ、勿論」
 そう玉響に、選んだ琥珀の真珠を包んで貰っている夜彦の、その柔い表情を見つめて。
 ジョンはやはりご機嫌に笑うのだ。
「簪のアリスも一緒にいいことしようね!」
「いいこと?」
 夜彦は彼の言葉に、ふと首を傾けるけれど。
 すぐに瞳を細め、笑みを返す。
 ――オオカミ殿と楽しめるならばお付き合いしますとも、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

六島・椋
【骸と羅刹】
ウマイ(消えていくたこ焼き)

情……緒……(怪訝な顔のつもり)
蝶々の種類もわからなそうなくせして
まあ自分もわからないんだが
……オウム……(オオムラサキが覚えられない)

おや、揚げ人魂
……ふむ、罪人をカラッとフライにする折檻とかどうだ獄卒よ
塩とか添えて
衣付きで揚げる折檻が既に存在するとは恐れ入る

しかし、妖怪の世だけあって見慣れないものが多いな
古物商店ねえ、何か見ていくかい
煙草……臭いのない煙草なら構わないんだが
煙草の臭いはあまり好まん
……あそこのとかどうだ、黒地に青の鳥模様入りのケース

もし骨格標本に縁があるならば、うちに迎えたいんだがなあ
でなければ、手入れに使えるブラシだとかその辺り……


エスタシュ・ロックドア
【骸と羅刹】
巨大たこ焼きたぁどんなもんかと思ったが名に偽りなしだな
獄卒になっちまったとは言え、
元のブレキャリで補ったはらわたが生身になるでもなし
底なしの【大食い】発揮してるぜ
これなら結構もつ……早ぇよ椋

相棒と食べ歩きしつつ横丁をぶらつくぜ
ウマいモンも良いがたまにゃ食い気から離れてみっか
なんだその顔は、俺ぁ情緒の分かる男だぜ?
そーだな蝶々は骨ねーもんな
ちな俺ぁ蝶ならオオムラサキが良い
あのナリでメチャ強ぇんだよ

地獄にゃ罪人を食う折檻はフツーにあるからなぁ
カリッと揚げる処はどうだったか

そーさな、変わり種の煙草とかシガレットケースがねぇか見てぇ
ほう、悪くねぇな

そんじゃそーいうの探してみっか



 飛び交う声は賑やかで、でも同時に何処か郷愁を抱かせるような。
 そんな様々な不思議が入り混じる、妖の世界。
 一時は名前が失われ、滅亡しかけたけれど。
 取り戻した『旨たこ』という名の店で威勢よくたこ焼きを焼くのは、ねじり鉢巻き締めた蛸入道。
 蛸入道が8本の手足で巧みにくるくる焼いていく人気のたこ焼きは、バイトの怪火の高火力で、外はカリッ中はとろり。
 そして店長おすすめは、拳大程の巨大サイズ!
「巨大たこ焼きたぁどんなもんかと思ったが名に偽りなしだな」
 巨大でも、カリッととろーり絶妙な焼き具合。
 どどんと舟からはみ出る姿はボリューム満点だけれども。
 ……獄卒になっちまったとは言え、元のブレキャリで補ったはらわたが生身になるでもなし、と。
 エスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)は底なしの大食いを発揮、はふっと巨大たこ焼きを胃袋に収めていくけれど。
「ウマイ」
「これなら結構もつ……早ぇよ椋」
 巨大、熱々、なんのその。たこ焼きを瞬く間に消していく相棒に、ツッコミを入れるのも忘れない。
 そんな相棒、六島・椋(ナチュラルボーンラヴァー・f01816)と共に。
 暫く横丁を食べ歩きしつつ、ぶらりとしていたエスタシュだけれど。
「ウマいモンも良いがたまにゃ食い気から離れてみっか」
 そうふと口にしてみれば、すぐ横を歩くその顔は何処か訝し気。
「なんだその顔は、俺ぁ情緒の分かる男だぜ?」
「情……緒……」
 ちらり、怪訝気なつもりの表情で彼を見遣ってから。
 こう続ける椋。
「蝶々の種類もわからなそうなくせして」
 ……というか、そうは言っても。
「まあ自分もわからないんだが」
 蝶々のことは、実のところ椋も分かりません。
 けれども、彼女が知らないのも納得。
「そーだな蝶々は骨ねーもんな」
 相棒の一番にして人生ですらある骨が蝶々にはないですから。
 そして始まる、エスタシュの蝶々談義。
「ちな俺ぁ蝶ならオオムラサキが良い。あのナリでメチャ強ぇんだよ」
 瑠璃色の美しい翅を持つ見目からは想像できない程、飛翔能力も力も強いオオムラサキ。
 蜂をも倒すその強さは惚れ惚れしてしまうけれど。
「……オウム……」
「それ蝶々じゃなくて鳥じゃねぇか」
 3文字程度しか名前が覚えられず呟く椋に、そう返す。
 そして……いや、食い気から離れてみようかと思ったのですが。
 これはやはり気になる一品。
「おや、揚げ人魂」
 椋がふと視線を向けるのは、のっぺらぼうが売っている、揚げ人魂とやら。
 本物の人魂かどうか、その中身が何なのかは分からないけれど。
「……ふむ、罪人をカラッとフライにする折檻とかどうだ獄卒よ」
 ……塩とか添えて、と続ければ。
「地獄にゃ罪人を食う折檻はフツーにあるからなぁ。カリッと揚げる処はどうだったか」
「衣付きで揚げる折檻が既に存在するとは恐れ入る」
 でも正直あまり、食べたくはないかも。
 そんなことを話しながらも、何だかんだ横丁の風景をぐるり眺めてみる椋。
 こういった商店街のような場所は、他の世界にもあるのだけれど。
「しかし、妖怪の世だけあって見慣れないものが多いな」
 ――古物商店ねえ、何か見ていくかい、って。
 ふと目についた店の看板を見遣り、気紛れに足を向けてみれば。
「そーさな、変わり種の煙草とかシガレットケースがねぇか見てぇ」
「煙草……臭いのない煙草なら構わないんだが、煙草の臭いはあまり好まん」
 煙草、という単語を耳にして微かに顔を顰めるも。
 ……あそこのとかどうだ。
 椋が巡らせた視線がふと捉えたのは、黒地に青の鳥模様が入ったケース。
「ほう、悪くねぇな」
 エスタシュはそれを手に取って品定めしつつも、満足気に頷いてから。
 椋は何見るんだと相棒に訊ねてみれば。
「もし骨格標本に縁があるならば、うちに迎えたいんだがなあ」
 でなければ、手入れに使えるブラシだとかその辺り……と。
 きょろりと、がらくただらけに見える面白商品の山に再び瞳を戻せば。
「そんじゃそーいうの探してみっか」
 やはり骨な相方に頷き、エスタシュもいざ宝探しを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

西條・東
グループ名:柴と雀

『へへっ、すっかり賑やかになったな!』
『えと、オスカーはもう話せるか?』
オスカーが元気な事が分かったら一緒に食べ歩きするぞ!
『袖掴んで良いか?えっ、手…い、良いのかな…』
手を握ると悪い事が起こるかもしれない…でもはぐれるのは嫌だから【手をつなぐ】ぜ


『たい焼きだ!オスカーも食う?甘くて温かいぞ!』
って笑顔で勧めるぜ
『へへ、気に入ってくれて嬉しい!あっ、次あっち行こうぜ!』

帰る頃に思い出した!忘れちゃだめなやつを忘れるところだった!
『今日はありがとうオスカー!
へへ、やっと名前が言えた』
あだ名も良いけどやっぱり名前を呼ぶって大切だな!

アドリブ歓迎


オスカー・ローレスト
【柴と雀】
【アドリブ歓迎】

う、うん……もう、ちゃんと声は出る、みたい……

食べ歩き……俺は、いっぱい食べれないけど、それでも、いいなら……

東がはぐれるの、心配だから……袖は掴んでもらっても俺は、平気……抵抗なく掴まれる、よ……本当は、手の方が安心なん、だけど……袖が良いなら、それでも……え、手……い、いいのかい?

ぴ? たい焼きって……?
……中に入ってるもの、なんか、砂糖やチョコとかとは違う甘さ、で……(あんこの甘みに目をぱちくりさせる。あんこを初めて味わうが故に
でも、嫌な感じじゃないから……ちょっとずつだけど、食べ続ける、よ……

どう、いたしまして……東(嬉しそうに名前を呼ばれるのは慣れない小雀



 名前という概念が消え失せ、滅亡寸前であった幽世の世界。
 けれど失われていたものが戻ってきた喜びに溢れ、活気が戻って来た妖怪横丁を歩きながら。
「へへっ、すっかり賑やかになったな!」
 西條・東(生まれながらの災厄・f25402)は嬉し気にそう笑んで周囲を見回した後。
 隣を歩くオスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)へと視線を向ける。
「えと、オスカーはもう話せるか?」
 最初は名前を失って。次に、自己や声まで失いかけたけれど。
「う、うん……もう、ちゃんと声は出る、みたい……」
 ピィ、と小さく鳴いてみてそっと確認した後、こくりと頷いて答えるオスカー。
 そんな、自分をちらり見つめる彼が元気な事が分かったから。
 ……一緒に食べ歩きするぞ!
 そう東は、横丁に並ぶ店をぐるりと見回して。
「食べ歩き……俺は、いっぱい食べれないけど、それでも、いいなら……」
 返って来た言葉に笑み返し、行こう! と促すけれど。
 ふと立ち止まり、オスカーにこう訊ねてみる。
「袖掴んで良いか?」
「東がはぐれるの、心配だから……袖は掴んでもらっても俺は、平気……」
 そして伸ばされた手に抵抗なく掴まれながらも。
 オスカーはそうっと、こう続ける。
「本当は、手の方が安心なん、だけど……袖が良いなら、それでも……」
 そんな声に、東はぱちくりと瞳を瞬かせて。
「えっ、手……い、良いのかな……」
 手を握ると悪い事が起こるかもしれない……とも思ったけれど。
 でも、はぐれるのは嫌だから。
「え、手……い、いいのかい?」
 自分と同じことを言ったオスカーに笑いながら。
 袖を掴んでいた手を、彼の手と繋ぐ。
 そして繋いだ手から温もりを感じながらも、ふと見つけたのは。
「たい焼きだ! オスカーも食う? 甘くて温かいぞ!」
 ちょっぴり見た目が妖怪仕様な、たい焼きを売っているお店。
 そんな、東から笑顔で勧められた甘味へとオスカーは目を向けて。
「ぴ? たい焼きって……?」
 未知なる食べ物に、首を小さく傾けるけれども。
 手渡され、東が食べる様に倣い、尻尾の端っこを恐る恐るちまっと口にしてみれば。
「……中に入ってるもの、なんか、砂糖やチョコとかとは違う甘さ、で……」
 尻尾の先までぎっしり入っているあんこの甘みに、目をぱちくり。
 それは初めて味わう、ほわり優しい甘さ。
 けれど嫌いじゃないから……ちょびっとずつ、ちまちまと口に運ぶオスカー。
 そんな様子に、東は嬉しそうに笑んで。
「へへ、気に入ってくれて嬉しい! あっ、次あっち行こうぜ!」
 次に見つけた店へと、彼と一緒に歩き出す。
 それから、充分に横丁散策をあれもこれもと楽しんで。
 もうそろそろと、帰る時間が近づいた頃。
 東は刹那、ハッと顔を上げてオスカーを見つめる。
 ――思い出した! 忘れちゃだめなやつを忘れるところだった! って。
 それは、彼と約束した大事なこと。
「今日はありがとうオスカー! へへ、やっと名前が言えた」
 柴犬や雀ってあだ名も、良いのだけれど。
 ……やっぱり名前を呼ぶって大切だな!
 そう少し何処か照れつつも、嬉しそうに隣の彼の名前を呼んで礼を告げる東。
 そして、嬉しそうに名前を呼ばれるのは慣れないし、何だか擽ったいけれど。
 さっき食べた優しい甘さのあんこみたいに、嫌じゃ全然ないから。
 オスカーはそっと彼を見つめ、こう返すのだった。
 ――どう、いたしまして……東、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

気になるものばっかりで目移りしちゃうなぁ
筧さんもご一緒しよ!

僕かき氷食べたい!
あっでもお腹びっくりしちゃうから
その後に焼き鳥食べたいな!

ご機嫌笑顔でこの後の予定を指折り話し
でも一番最初に行きたいところ
やっぱり気がかりだもんね

玉響さん、お話に来たよー
改めて見ると凄いなぁ
心が綺麗だから素敵な色になるんだね

折角だし三人で選びっこしよ
僕は紫崎君の選ぶから、紫崎君は筧さんの選んでね
やっぱり楽しい赤…明るめの色あるかなー?
…ん、決めた。これにする!

わぁ、筧さんが選んでくれたのも綺麗な色ー!
嬉しい!大切にするねっ!!

ね、玉響さん
もう大丈夫?
未来は、切り開けるよ

さーて、美味しいものめぐりも楽しむぞー♪


紫崎・宗田
【狼兎】

まるで一足早いハロウィンだな…
おう、チビがお前も一緒がいいって煩ぇんだ
厄介なのに懐かれたもんだな

敢えて茶化すように言いながらも優しさを感じる口ぶりで
甘味は不得意だがまぁ…たまにはいいか
澪お前小食なんだから変な食い方は気を付けろよ?

予定は立ててもメインで行くのは玉響の店
俺は普段もっぱら銀アクセだから、真珠だのは詳しくないんだが…
俺が筧の分なら筧がチビのか
あー…そうだな
筧はなんとなく青とピンク混ざったようなイメージがあんだよな
桜っつーか…
丁度いい色味のがありゃいいんだが
加工は…イヤリング辺りにでもしてみるか?
案外似合うと思うんだが

玉響は俺から言うことは特に無ェが、まぁ…
自分を大事にしろよ



 まるで、先程まで滅亡しかけていたとは思えない程に賑やかな妖怪横丁を歩きながら。
「気になるものばっかりで目移りしちゃうなぁ」
 立ち並ぶ色々な店を見つめる栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の隣で、紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は妖怪だらけの光景に思わず呟く。
「まるで一足早いハロウィンだな……」
 そんな妖怪達が闊歩する中で、澪はよく見知っている彼の姿を見つけて。
「あ、筧さんもご一緒しよ!」
「おお、澪と宗田。俺の予知した事件を解決してくれて有難う」
 声を掛けられた清史郎は礼を言った後、ふと微笑みながら続ける。
「もしもお邪魔でなければ」
「おう、チビがお前も一緒がいいって煩ぇんだ」
 ……厄介なのに懐かれたもんだな、と。
 そう続けた宗田に笑み返し、ではお言葉に甘えて、と清史郎も共に歩き出す。
 そして鼻を擽る色々な美味しそうな匂いに、やはりきょろりと視線を巡らせつつ。
「僕かき氷食べたい! あっでもお腹びっくりしちゃうから、その後に焼き鳥食べたいな!」
「甘味は不得意だがまぁ……たまにはいいか。澪お前小食なんだから変な食い方は気を付けろよ?」
 ご機嫌笑顔でこれからの予定を指折り話す澪に、宗田は言うけれど。
「かき氷か、良いな。甘いものはとても好きだ」
 何気にとんでもない甘党で健啖家な清史郎が一緒だから、恐らく分け合えば大丈夫そう……?
 けれど、美味しいものを食ベ歩くその前に……一番最初に、行きたいところ。
 ――やっぱり気がかりだもんね、って。
 そう、3人がまず訪れたのは。
「玉響さん、お話に来たよー」
 骸魂に呑まれていた人魚・玉響が営む宝石店。
「改めて見ると凄いなぁ。心が綺麗だから素敵な色になるんだね」
「色々ないろの真珠がまた作れるようになったのも、皆さんのおかげです。有難う」
 そして玉響は、助けてくれたお礼にひとつ、好きな真珠をくれると言うから。
「折角だし三人で選びっこしよ。僕は紫崎君の選ぶから、紫崎君は筧さんの選んでね」
「俺は普段もっぱら銀アクセだから、真珠だのは詳しくないんだが……俺が筧の分なら筧がチビのか」
「選び合いっこか、それも楽しそうだな」
 3人で互いに合いそうなものを、じっくりと眺めてみれば。
「やっぱり楽しい赤……明るめの色あるかなー?」
 澪は一瞬確認するようにちらりと宗田を見てから。
「……ん、決めた。これにする!」
 炎の様な、仄かに橙混ざる赤の色味のものを選んで。
「あー……そうだな。筧はなんとなく青とピンク混ざったようなイメージがあんだよな。桜っつーか……」
 詳しくないながらも、丁度いい色味のがありゃいいんだが、って。
 ひとつずつ色を確認しつつ呟く宗田に、玉響は一粒の真珠を勧めて来る。
「青とピンク……これはどうですか?」
「いい感じだな、それにするか。加工は……イヤリング、いや筧はピアスか、その辺りにでもしてみるか?」
 案外似合うと思うんだが、と自分を見る宗田に、お任せしよう、と清史郎は笑んでから。
「澪のイメージも明るい色だな。金蓮花の様な、橙寄りの赤という感じか」
 そして清史郎が澪のイメージで手にしたのは。
「わぁ、筧さんが選んでくれたのも綺麗な色ー! って、あれ? 同じ?」
 自分が宗田に選んだものと、とても似た色味。
 そう首を傾ける澪に、玉響は微笑んで告げる。
「あ、そのふたつは、双子の真珠ね。同じ時に対で生まれたの」
 そして清史郎に、どうだろうか、と問われれば。
「嬉しい! 大切にするねっ!!」
 琥珀の瞳を細め、そう澪は笑み返す。
 それから加工をして貰っている間。
 邪魔にならない程度に、そっと澪は訊ねてみる。
「ね、玉響さん。もう大丈夫?」
 そんな声に、玉響は迷いなくこくりと頷いて。
「ええ、もう大丈夫。皆さんのおかげです」
 そう笑む彼女に、澪は笑顔で続ける――未来は、切り開けるよ、って。
 そして、俺から言うことは特に無ェが、まぁ……なんて呟きつつも、宗田も彼女に声を。
「自分を大事にしろよ」
 けれど今の玉響を見ていたら、きっと大丈夫だとそう思えるから。
 それぞれの真珠を受け取り、店を出た澪は。
 楽しそうに隣のふたりを見上げ、笑顔を咲かせる。
 ――さーて、美味しいものめぐりも楽しむぞー♪ って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

遙々・ハルカ
》人格:トヲヤ

実のところ、猟兵としての仕事以外で外出する事は殆ど無い
主人格の彼が嫌がるし、特段必要性も感じない為だが――

賑やかさや活気とは縁遠い
その空気に圧倒されほうと溜息吐き
落ち着きなく色々な場所を見聞しては
食べ物にも興味はあれど、彼、の少食を思い出しぐっと我慢

ようやく辿り着いた人魚の店
けれどもやはり困り顔で
…贈り物を選んだことが、ないもので
いや、彼は…俺からの贈り物を喜ばないかも知れないが
ピアスは、着けているし
それが好いかとは…

歯切れ悪く困り果てれば
視界の端に覚えある藍色
嗚呼、君…清史郎
済まない、俺の代わりに色を選んでくれないか
彼の好きな色さえ知らないんだ
どうか俺の…“彼の顔”に似合う色を



 平和と活気を取り戻した、沢山の声が溢れる妖怪横丁。
 けれども、その空気に圧倒され、ほうと溜息を吐くのは、遙々・ハルカ(DeaDmansDancE・f14669)。
 いや、今の『彼』はいまだ、ハルカではなくトヲヤである。
(「実のところ、猟兵としての仕事以外で外出する事は殆ど無い。主人格の彼が嫌がるし、特段必要性も感じない為だが――」)
 賑やかさや活気とは縁遠いことは、自分でも分かっている。
 普段であれば、出掛けるということを必要だとは思わないのだけれど。
 トヲヤはそわりと落ち着きなく、色々な場所を見聞しては喧騒の中、歩みを進めて。
 鼻を擽る食べ物の良い匂いには、興味を惹かれはするけれど。
 ぐっと我慢する……彼、の少食を思い出して。
 そんなトヲヤがようやく辿り着いた場所。
 それは――泪の宝石を売るという、例の人魚の店。
 この店を訪れる為に、トヲヤは慣れぬ賑わいを歩んできたのだけれど。
 けれども此処でも、やはり困り顔。
 そんな彼に、何をお探しですかと、人魚……玉響は訊ねるけれど。
「……贈り物を選んだことが、ないもので。いや、彼は……俺からの贈り物を喜ばないかも知れないが」
 そして彼のことを懸命に思い返してみるけれど。
「ピアスは、着けているし。それが好いかとは……」
 そう歯切れ悪く紡ぎながらも、困り果て途方に暮れてしまう。
 けれどもその時、視界の端に揺れる、覚えある藍色に気付いて。
 自分をこの世界へと送った彼へと、トヲヤは声を掛ける。
「嗚呼、君……清史郎。済まない、俺の代わりに色を選んでくれないか」
 ――彼の好きな色さえ知らないんだ、と。
「ああ、俺で良ければ」
 そう振り返り、困っている様子の自分へと微笑んで、快く頷いた清史郎に。
 トヲヤはこう、頼むのだった。
 ――どうか俺の……“彼の顔”に似合う色を、と。
 そして、清史郎が選んだ一粒は。
 派手過ぎず控えめな色合いの、薄い桜色を纏った金の真珠。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日東寺・有頂
心結(f04636)と

心結ん全部取り戻したもんね〜〜〜
もう好きなだけみゆみゆ呼べっとよ
賑わう横丁をこの子とさるき(歩き)ながら
玉響さんの宝石店目指そう

いうてあの
泣いてもらわんといかんのか
あんたには勝手なこつ言うてもうたな
傷ついた顔がいっとう綺麗なんてさ
ばってん恋を知ったあんたは、やはり美しい思うとよ

傍らの君を見下ろす 
心結もいつかは、
いや うむ
そう 君に贈るひと粒はこんな色がいい
温かく甘く、凛として優しい日の色
心結のここの色だな そう君の瞳を指した

お、心結んハムスターのうっちょくんにもアクセサリーにひと粒頼んます!
や〜〜最近のハムスターはおしゃればいネ!
などと気恥ずかしさを誤魔化す俺なのでした


音海・心結
有頂(f22060)と

もう、何回呼んでるのですかっ!
照れちゃうみゆなのですが、それが嬉しかったり
寄り添う形で隣を歩いて
宝石楽しみですねぇ

……む
有頂が人魚さんを口説いてるのです
ちょっとだけもやり
でも、優しい想いやりが彼らしくて
ちょっと誇らしい えへへ

きょとり見上げる
うん? どうしたのですか?
って、目で訴える
有頂から見た、みゆの瞳
すごく綺麗で優しい色
嬉しくて、思わずむふふ

大好きで、放っておけない彼にお返し
あれ、みゆと似てませんか?
瞳を覗き込んでじぃからのにやり

うっちょくんもっ! やりましたねっ!
ハムちゃんのお鼻をつんつん どこか嬉しそう
かわゆかわゆ 
最後はありがとって
これからも傍にいてくださいねぇ



 ――みゆみゆ、って……そう何度でも。
「心結ん全部取り戻したもんね〜〜〜」
 ……もう好きなだけみゆみゆ呼べっとよ。
 日東寺・有頂(ぷてぃんぐ(心結様寄贈)・f22060)は賑わう横丁を歩きながら、隣を歩く彼女の名をまたもう一度呼んで。
「もう、何回呼んでるのですかっ!」
 そう照れたように返す音海・心結(ふよふよくらげ・f04636)だけど……でもやっぱり、それが嬉しくて。
「宝石楽しみですねぇ」
 寄り添う形で彼と足を運ぶのは、骸魂に呑まれていた人魚・玉響の宝石店へ。
 そして好きな色の真珠をひとつ、お礼にくれると言う彼女を、有頂は見つめて。
「いうてあの、泣いてもらわんといかんのか。あんたには勝手なこつ言うてもうたな」
 ――傷ついた顔がいっとう綺麗なんてさ、って。
 そんな彼の言葉に、玉響はふるりと首を振ってから。
「嬉しいとか楽しいとか、そんな感情だけだと、宝石も似た色になるから。そうではない色を綺麗って言われるのも、嬉しいです」
 有頂はそう微笑む彼女へと、続けて告げる。
「ばってん恋を知ったあんたは、やはり美しい思うとよ」
 そしてその様子を見ていた心結は、ちょっとだけもやり。
(「有頂が人魚さんを口説いてるのです」)
 けれどすぐに、えへへ、と笑みを零してしまう。
 だって……優しい想いやりが彼らしくて。ちょっと誇らしいから。
 そう思っていれば――ふと今度は自分へと向けられた、彼の瞳。
(「心結もいつかは、」)
 けれど……いや、うむ、としか声には出さなくて。
 ――うん? どうしたのですか?
 彼をきょとりと見上げ、目で訴える心結。
 そんな彼女を優しい眼差しで見つめて。
 ……そう、君に贈るひと粒はこんな色がいい。
「温かく甘く、凛として優しい日の色。心結のここの色だな」
 そして指したのは、どの宝石にも負けない煌めきを宿す彼女の瞳。
(「有頂から見た、みゆの瞳」)
 ――すごく綺麗で優しい色。
 彼が手にしたその彩に、心結は嬉しくて、思わずむふふ。
 それから、大好きで、放っておけない彼に。
「あれ、みゆと似てませんか?」
 瞳を覗き込んでじぃからのにやり、お返しを。
 まるでお揃いのような、似た色を手に。
 そんな彼女から、不意に有頂はハムスターのうっちょくんへと視線を移して。
「お、心結んハムスターのうっちょくんにもアクセサリーにひと粒頼んます!」
 イエローグレーのうっちょくんに映える白の真珠を誂えて貰った有頂は。
「や〜〜最近のハムスターはおしゃればいネ!」
 洒落とうね、って気恥ずかしさを誤魔化すように言えば。
「うっちょくんもっ! やりましたねっ!」
 心結はそんな彼の恥ずかし気な心知らず、ハムちゃんのお鼻をつんつん。何だかどこか嬉しそうで。
 かわゆかわゆ、と満足そうに有頂は笑んでから。
 ふと、有頂の姿を見つめ、微笑む。
「これからも傍にいてくださいねぇ」
 最後は――ありがとって。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニーナ・アーベントロート
菫さん(f14101)と
あたし、玉響さんの真珠屋さんが見てみたいな
…ほら、もうじき浴衣コンテストの受付始まるでしょ?
髪を纏める綺麗な簪がほしいなーって
せっかくだし、お揃いで買おう
えへへ、菫さんみたく大人っぽいお洒落に挑戦したくて

青も、金も、桃色も
わぁ…みんな素敵で迷っちゃうな
菫さんはどの色が好き?
って顔を上げた先に見つけたのは
好奇心にきらめくアメジストみたいな瞳
…よし、決めた
紫の一粒真珠が付いた簪、ください
神秘的な色と光を掌に納めて
「すみれ」の色だよ、とふんにゃり笑う
隣で彼女が手にした黄昏の色も
優しい笑顔によく似合ってる

そーだ、浴衣もお揃いにしちゃお
あたし、菫さんの浴衣姿、ぜーったい見たい!


君影・菫
ニーナ(f03448)と

ふふ、奇遇やねえ
うちも真珠屋さん気になってたんよ
浴衣いうのも興味あるんやけど
あんな、今は
ニーナが簪に興味持ってくれたのえろう嬉しい

うちも本体の簪しかあらへんから新しいのええなあ
しかもお揃いやなんて、心踊ってまう
色んないろ見てゆうるり迷うけれど
真っ直ぐに覗き込む黄昏の色の瞳に童女のように笑って
好き…今、うちの瞳に映るいろかなあ、て

うちはオレンジの一粒真珠がついた簪お願いするなあ
やさしくて、あたたかな色を手のひらに置いたなら
「たそがれ」の色
――ニーナの色やよってつられてふにゃり

浴衣もお揃いなんて、まあまあ
楽しみしかないやないのて瞳輝かせて
うちもニーナの浴衣姿、見てみたいわあ



 活気に満ち溢れ、美味しそうな食べ物の匂いが食欲をそそるけれど。
 何処か郷愁の念を覚える風景を歩くニーナ・アーベントロート(埋火・f03448)のお目当ての店は、もう決まっている。
「あたし、玉響さんの真珠屋さんが見てみたいな」
 けれどそう思っていたのは、ニーナだけではなくて。
「ふふ、奇遇やねえ。うちも真珠屋さん気になってたんよ」
 隣でそう思わず笑み零してしまう、君影・菫(ゆびさき・f14101)も一緒。
 そんな菫の髪を飾る、綺麗な彼女自身をふと見つめながら。ニーナはこう続ける。
「……ほら、もうじき浴衣コンテストの受付始まるでしょ? 髪を纏める綺麗な簪がほしいなーって」
 ――せっかくだし、お揃いで買おう、って。
「えへへ、菫さんみたく大人っぽいお洒落に挑戦したくて」
 そんな耳に届いた言の葉に、菫はとても嬉しくなる。
 浴衣というものにも興味があるし、褒めてくれた言葉やお揃いと言ってくれたのもすごく嬉しいけれど。
「……あんな、今は」
 そう紡いだ後、菫は微笑みと共にこう返す。
 ――ニーナが簪に興味持ってくれたのえろう嬉しい、って。
 そして人魚の宝石屋へと足を踏み入れたふたりの瞳にも映るのは、沢山の彩り。
「うちも本体の簪しかあらへんから新しいのええなあ」
 ……しかもお揃いやなんて、心踊ってまう、って。
 色んないろ見ては、ゆうるり目移りしてしまう菫と一緒で。
「青も、金も、桃色も。わぁ……みんな素敵で迷っちゃうな」
 ニーナも、どれも綺麗でなかなかきめられないから。
「菫さんはどの色が好き?」
 そう、彼女へと訊ねてみる。
 そんな声に、ふと菫が顔を上げれば。
 目に飛び込むのは、真っ直ぐに覗き込む瞳の、黄昏の色。
 そして菫も、童女のように笑って答える。
「好き……今、うちの瞳に映るいろかなあ」
 それと同時に、ニーナも見つける。
 好奇心にキラキラと煌めく、アメジストみたいな瞳を。
 その彩りを見ればもう、すぐに。
「……よし、決めた。紫の一粒真珠が付いた簪、ください」
 そしてころんと艶やかな紫のいろを掌で転がし、その彩りと光を手中に納めてから。
 ふんにゃり笑って、ニーナは紡ぐ。
 ――「すみれ」の色だよ、って。
 菫も同じく、心に決めたいろを玉響に告げる。
「うちはオレンジの一粒真珠がついた簪を」
 菫の掌にそっと置かれたその一粒は、やさしくて、あたたかいいろ。
 そう――「たそがれ」の色、ニーナの色やよ、って。
 彼女につられて、笑みをふにゃり。
 そんな黄昏の色と目の前の微笑みに、ニーナは思う。
(「優しい笑顔によく似合ってる」)
 それからふと、ぽんっと何かを思いついたように手を打って。
「そーだ、浴衣もお揃いにしちゃお。あたし、菫さんの浴衣姿、ぜーったい見たい!」
 咲いた笑顔と共に紡がれた提案に、菫もぱっと瞳輝かせて笑み綻ばせる。
「うちもニーナの浴衣姿、見てみたいわあ」
 互いに選んだいろの真珠が揺れる簪だけでも、嬉しいのに。
「浴衣もお揃いなんて、まあまあ」
 ――楽しみしかないやないの、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アオイ・フジミヤ
りっちゃん(f01013)と

流れる”流星”のような貴女
バイクさんに乗って駆け抜ける姿は凛々しくて
クールでボーイッシュな姿が多いから
ひかえめでシンプルなブレスレットに

宝石屋さんへ
玉響さん、救われてよかったね
小さな深い翠の涙をひとつください
どうか対価も支払わせてね

その色を見た人が元気になれるような
りっちゃんのイメージそのもののような

華奢な2連のゴールドの地金に小さめの雫をつけて
シンプルだけれど手を動かすときにもさりげなく光るから
それを手渡してまた遊ぼうねと笑って
嬉しい気持ちを「こちらこそいつもありがとう」と

ねえりっちゃん、青い目玉まんが食べてみたいの
どんなお味かなぁ
一つ目小僧さんにお任せしましょう


硲・葎
アオイさん(f04633)と。
アクセサリーを選んでくれるの!?
じ、じゃあ私もお返しに!
玉響さんが救われて、これからも素敵なお仕事ができますように。応援の意味も込めて、代金はお支払いするからね。

海のようで清廉な美しいひと。そんなアオイさんに。美しい海の色の青い宝石のついたブレスレット。
私も、もちろん!また遊んでほしいな、と笑って。
「ありがとう!」とお礼を告げて。

私も目玉まん、食べてみたいな!
緑色!……抹茶味とかするのかなあ?不思議。意外な味かもね!
飲み物も買ってみようかな!

アドリブ歓迎です!



 賑わいを取り戻した妖怪横丁を、一緒に並んで歩きながら。
 アオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)は、すぐ隣にいる硲・葎(流星の旋律・f01013)へとふと海色の瞳を向ける。
 そんな海のいろに流れるのは、一筋の”流星”。
(「バイクさんに乗って駆け抜ける姿は凛々しくて、クールでボーイッシュな姿が多いから」)
 だから、アオイは思う。
 そんな葎には、ひかえめでシンプルなブレスレットがきっと良く似合う、って。
 そう告げて人魚の宝石屋へと向かう彼女と並んで。
「アクセサリーを選んでくれるの!?」
 葎はアオイへと向けた瞳を思わずぱちくりさせて、声を上げるけれど。
 やって来た宝石屋の店内をぐるりと見回しながら、こう言葉を返す。
「じ、じゃあ私もお返しに!」
 それから猟兵達に助けて貰った玉響は、一粒お好きないろをと、ふたりにも告げるけれど。
「玉響さん、救われてよかったね。どうか対価も支払わせてね」
 ――小さな深い翠の涙をひとつください。
 そうアオイがお願いしてみれば。
「応援の意味も込めて、代金はお支払いするからね」
 ――玉響さんが救われて、これからも素敵なお仕事ができますように、って。
 葎が願う思いも、アオイと同じ気持ち。
 そして葎は、隣の彼女を映す瞳をそっと細める。
 ……海のようで清廉な美しいひと。
 だから、そんなアオイにと選んだブレスレットに揺蕩う宝石の輝きは――美しい海の青。
 そしてアオイも。
(「その色を見た人が元気になれるような、りっちゃんのイメージそのもののような」)
 華奢な2連のゴールドの地金に寄り添わせるのは、玉響が差し出した深い翠の涙。
「シンプルだけれど手を動かすときにもさりげなく光るから」
 クールでボーイッシュで、そして元気でキュートな彼女に、ぴったり。
 それから、選んだブレスレットを手渡しつつアオイは笑む――また遊ぼうね、って。
 そんな言葉に勿論、葎もすぐに頷いて。
 笑い返し、お礼を紡ぐ――ありがとう! って。
 けれどもそれは、アオイだってやっぱり同じだから。
 ゆらり彼女の手首で揺れる翠に、嬉しい気持ちと一緒に添える。
 ――こちらこそいつもありがとう、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュナ・メル
【Melty】

僕達の大切な家族。
ヒナ、リーベを迎えに行こう。
1人で帰るのは寂しいよ。

がんばったね、リーベ
安心するまで名前を呼ぶよ。

ここは随分賑わってるね
せっかくだから楽しもうか
お化け屋敷?僕はかまわないよ。
お化けっていっても本物じゃないんでしょ?

ふふ、了解だよ、リーダー
そうだ、怖いなら手を繋いでいく?
子供の頃みたいだね
う、うん。離さないよ。
リーベ、あんなに平気そうだったのに
(思ってたよりも、僕は平気だな)
ーーーっ!…最後のは…ううん、なんでもない。

ここ、色んなものが売ってるね。
なーちゃん達だけずるいーって拗ねちゃうから
ティアにお土産買っていこうか
なにかいいのある?
帰ったらみんなで食べようか


リーベ・メル
【Melty】

二人がボクの名を呼ぶ声と、優しい言葉
滲む安堵の涙はぐっと拭って
よかった
ボクにはちゃんと、名前も、大切な人も――

え、そこ入るの……?
やだよそんなの、バカバカしい
う……もう、入るならさっさと入るよ!

はいはい、リーダー
……怖くないけど、手は繋いであげる
ボクは霊を使役する立場なんだし
こんなのなんとも……うひゃあっ!
い、いいいまの、何……!? 
ヒナは何でそんなに笑ってられんの!?
うわっわ、そ、そこにも! わああ!
リュナ、手離したら絶対許さないから……!!

はぁ、やっと終わった…
お土産?
そうだね、何か喜びそうなの……あっ
ふふふ。いいもの見っけ
ロシアンまんとかどう?
誰が当たっても恨みっこなし!


ヒナ・メル
【Melty】

家族で弟
1人頑張った彼の元へ
えへへ おれもついてく
どうせなら、みんなでわいわいしたいね

りぃちゃんりぃちゃん
おかえりなさい
怖くなかったの?

人をかき分け、目に映るはお化け屋敷
ここ、気になるかも
一緒に入ろうよー
きらきらと光る目で二人におねだり

今日はおれがリーダー
先導するのはおれの役目
リーダーって呼んでくれる?
あはは やっぱり本物なんていないよ~
楽しそうにからから笑う
あの時を乗り越えたおれたちに怖いものなんてない

……りぃちゃん、なーちゃん
付き合ってくれてありがとう

お土産買って帰ろう?
3人で来た記念に、てぃちゃんのために
ロシアンまん?
よく分かんないけれど、美味しそう
おれ、お会計してくるっ



 郷愁の風景を駆け抜け向かうのは、頑張った大切な家族の元。
「ヒナ、リーベを迎えに行こう」
 リュナ・メル(あまい劇薬・f27073)の声に、勿論すぐにこくりと頷くのは、ヒナ・メル(青花畑の遣い・f27074)。
「えへへ、おれもついてく」
 家族で弟――ひとり頑張った彼の元へ、逸るようにふたりは向かう。
 ひとりで帰るのはきっと寂しいし。
 それにどうせなら、みんなでわいわいしたいから。
 そしてリーベ・メル(Anti Liebe・f27075)の姿を見つければ。
「がんばったね、リーベ」
「りぃちゃんりぃちゃん。おかえりなさい」
 リーベの名前を、ふたりはいっぱい呼んであげる。大切な彼が、安心するまで。
 そんな名を呼んでくれるふたりの声と、優しい言葉に。
 大きな翡翠の瞳が、思わず潤むけれど。
 ……怖くなかったの?
 そう訊ねられれば、滲む安堵の涙はぐっと拭って。
 ――よかった。
 そうリーベは心からホッとして……大丈夫、ってちゃんと返せる。
 だって、ふたりが教えてくれているから。
(「ボクにはちゃんと、名前も、大切な人も――」)
 どれも、なくなってなんかないよって。
 それから、仲良く3人並んでやってきたのは。
「ここは随分賑わってるね。せっかくだから楽しもうか」
 ずらりと様々な店が軒を連ね、沢山の声がそこかしこから聞こえる妖怪横丁。
 そんな活気ある中、人をかき分け進んで。
 きょろりと巡らせた、透んだ空色を湛えるヒナの瞳に映ったのは。
「ここ、気になるかも。一緒に入ろうよー」
 そう――お化け屋敷!
 きらきらと光る目でおねだりする彼に、ふたりの反応はそれぞれ。
「お化け屋敷? 僕はかまわないよ」
 ……お化けっていっても本物じゃないんでしょ?
 ヒナのおねだりに、こくりと首を縦に振ったリュナの隣で。
「え、そこ入るの……? やだよそんなの、バカバカしい」
 ふるりと首を横に振るリーベ。
 けれども、キラキラ輝くヒナの瞳を向けられれば、強くイヤとは言えなくなって。
「う……もう、入るならさっさと入るよ!」
 いざ、お化け屋敷へ!
 そして言い出しっぺなヒナは、えっへん胸を張る。
「リーダーって呼んでくれる?」
 ――今日はおれがリーダー、先導するのはおれの役目、って。
「ふふ、了解だよ、リーダー」
「はいはい、リーダー」
 ふたりはそう一足早く進み勇むリーダーに続き、お化け屋敷へと足を踏み入れて。
「そうだ、怖いなら手を繋いでいく?」
「……怖くないけど、手は繋いであげる」
 リュナの提案に、そうっと彼女と手を繋ぐリーベ。
 ……そして。
「ボクは霊を使役する立場なんだし、こんなのなんとも……うひゃあっ!」
 すうっと何かが横切ったような感覚に、思わず声を上げるリーベだけれど。
「い、いいいまの、何……!?」
「あはは やっぱり本物なんていないよ~」
「ヒナは何でそんなに笑ってられんの!?」
 楽しそうにからから笑うヒナへと視線を向ければ。
「うわっわ、そ、そこにも! わああ!」
 ぼうっと浮かび上がる悪戯好きな妖怪達の姿に、瞳を見開いて叫んでしまう。
「リーベ、あんなに平気そうだったのに」
 そんなひとり驚きまくる彼の姿に、リュナは瞳をぱちくりさせて。
「リュナ、手離したら絶対許さないから……!!」
「う、うん。離さないよ」
 こくりと頷くも、心の中でそっと思う。
(「思ってたよりも、僕は平気だな」)
 もしかしたら、他の人が驚いているのを見れば自分は不思議と冷静になれる、というものか。
 ……けれど。
 あともう少しでお化け屋敷の出口……という、その時。
「――っ!」
 びくりと大きく身を震わせるリュナ。
 そんな様子に、びびりまくりつつ視線を向けるリーベと、きょとりと首を傾けるヒナ。
 リュナはふたりを交互に見遣って、ふっと心を落ち着かせるように小さく息を吐いて。
「……最後のは……ううん、なんでもない」
 何か物凄くぞくりと鳥肌が立つようなモノを見た気がするけれど……気のせい、ということに。
 そして無事にお化け屋敷から脱出して。
「……りぃちゃん、なーちゃん。付き合ってくれてありがとう」
 ヒナは安堵の溜息を思わずつくふたりを映した瞳を、そっと細める。
 お化け屋敷は怖いって聞いていたけれども。
 ――あの時を乗り越えたおれたちに怖いものなんてない、って。
 それからお化け屋敷を出た後、再び賑やかな横丁の店を見て歩く3人だけれど。
「ここ、色んなものが売ってるね。なーちゃん達だけずるいーって拗ねちゃうから、ティアにお土産買っていこうか」
「はぁ、やっと終わった……お土産?」
「お土産買って帰ろう? 3人で来た記念に、てぃちゃんのために」
 そう、周囲をぐるりと見回してみれば。
「なにかいいのある?」
「そうだね、何か喜びそうなの……あっ」
 ――ふふふ。いいもの見っけ。
 そうリーベが思わず笑み零す、その視線の先には。
「ロシアンまんとかどう?」
 一つ目小僧の店主が売っている、青いロシアンまん!
「ロシアンまん? よく分かんないけれど、美味しそう。おれ、お会計してくるっ」
「帰ったらみんなで食べようか」
 リュナもヒナも、リーベの提案に賛成!
 中身が分からないロシアンまんは、帰って皆で食べればまた、ドキドキワクワクできっと楽しいから。
 早速購入するヒナを見守りながらも、リーベは笑み零す。
 ――誰が当たっても恨みっこなし! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

平和を取り戻した横丁を、ヴォルフと二人そぞろ歩く
向かう先は玉響さんの宝石屋

とてもきれいな石……
真珠のように清廉な白、淡い虹を帯びるように光を映して
優しくて、それでいて曇りなき清らかさは
きっと悲しみを乗り越えた玉響さんの心を映した輝き

わたくしも本当は怖かったの
記憶を、自己を奪われる
それは心を殺されるに等しい恐怖

それでも絶望を超えて、無から新しい未来を築き上げる
彼の勇気がそれを教えてくれたから
だから玉響さんも、きっと大丈夫

どうかおひとつ、わたくしたちにもくださいな
わたくしの分は、耳元を彩る真珠のイヤリングにして
またひとつ、新たな絆が刻まれた、今日の良き日の思い出に


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

彼女と共に向かう先は玉響の店

あの時のことは気にしなくていい
君はただ悲しみを骸魂に利用されただけだ
多くの仲間が君のために力と言葉を尽くしてくれた
その思いは、これからの君を支えてくれるだろう

(かつてヘルガが記憶を奪われ心を壊されたあの事件…
僅かでも敵の討伐が遅れていたら、彼女は死んでいた
俺が彼女を守れなかった、唯一の屈辱
二度と繰り返さぬと思えば、考える前に体が動いていた
偽りの幸福で人を謀り心を踏み躙る輩を、俺は許さない
その悪意に虐げられた人々を、これからも救い続けると誓おう…)

ヘルガ、綺麗だ…とてもよく似合っている
悲しみを乗り越えた強く優しい笑顔が、何よりの幸せなのだから



 名前と言う概念が奪われ、滅亡への道を辿っていた幽世の世界。
 けれどももう、奪われていたものも、平和も取り戻して。
 賑やかな声で包まれた妖怪横丁を、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は彼と共にそぞろ歩く。
 いつも隣に在るヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)と、今日も共に並んで。
 そして向かう先は、玉響の宝石屋。
 視線巡らせる店内は、色々な彼女の感情を映した彩りが沢山並べてあるけれど。
「とてもきれいな石……」
 青の瞳に飛び込んできた宝石は、淡い虹を帯びるように光を映した――真珠のように清廉な白。
 そしてヘルガはその彩に思う。
(「優しくて、それでいて曇りなき清らかさは、きっと悲しみを乗り越えた玉響さんの心を映した輝き」)
 それから玉響は、ご迷惑おかけしました、と二人にも頭を下げるけれども。
「あの時のことは気にしなくていい。君はただ悲しみを骸魂に利用されただけだ」
 ヴォルフガングは彼女の顔を上げさせ、そして続ける。
「多くの仲間が君のために力と言葉を尽くしてくれた」
 ――その思いは、これからの君を支えてくれるだろう、って。
 そんな彼の言葉に続いて、ヘルガも己の胸の内を吐露する。
「わたくしも本当は怖かったの。記憶を、自己を奪われる」
 ……それは心を殺されるに等しい恐怖、そうヘルガは知っているから。
 ヴォルフガングはそんな彼女の声を聞きながら、やはりふと思い出してしまう。
(「かつてヘルガが記憶を奪われ心を壊されたあの事件……僅かでも敵の討伐が遅れていたら、彼女は死んでいた」)
 そう、それは――ヴォルフガングが彼女を守れなかった、唯一の屈辱。
(「二度と繰り返さぬと思えば、考える前に体が動いていた。偽りの幸福で人を謀り心を踏み躙る輩を、俺は許さない」)
 だから彼は誓うのだ。
 ――その悪意に虐げられた人々を、これからも救い続けると。
 そして何より、隣で柔らかに微笑む、大切な人を護ると。
 けれどもヘルガも、恐怖に俯いたままではなかった。
 だって、知っているから。
「それでも絶望を超えて、無から新しい未来を築き上げる。彼の勇気がそれを教えてくれたの」
 ――だから玉響さんも、きっと大丈夫、って。
 そしてヘルガは、彼女の様々な想いが詰まった泪のいろをもう一度見回して。
 彼女へとこうお願いする。
「どうかおひとつ、わたくしたちにもくださいな」
 そんな申し出に、玉響も笑みと共に言の葉を返す。
「ええ、勿論。それに私も、皆さんに教えて貰いました。色んな気持ちを乗り越える勇気を」
 ……だからもう、大丈夫と。
 そしてヘルガの耳元を彩るのは、先程目を奪われた清廉な白き真珠が揺れるイヤリング。
 それはまたひとつ、新たな絆が刻まれた……今日の良き日の思い出に。
 ヴォルフガングはそんな清らかなる白に飾られた美しい彼女へと紡ぐ。
「ヘルガ、綺麗だ……とてもよく似合っている」
 それに彼も、よく知っているから。
 悲しみを乗り越えた強く優しい笑顔が、何よりの幸せだということを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キアラ・ドルチェ
一仕事終えた後の買い食いは格別なのです(両手いっぱいに食べ物抱え
名物色々…どれも美味し♪

なんだろ…多分今回の事件を経たからなんですけど。色んな名物の『名前』があって。その『名前』だからこそ余計美味しいなとか、何か良いなって思うのってあるかなあ、って。
唐揚げとかもですけれど、例えば一つ目まんとか、揚げ人魂とか「え、何それ面白そう、どんな味かな」みたいなのもあるかなあって思いました。
やっぱり名前は大切、ですねっ♪

あ、玉響さんのお店も行きますよ
ケルト十字の中心に温かい色の宝石嵌めたペンダント、作ってもらいます
玉響さんが、こんな色の宝石が一杯作れるような日々が続きますようにって心の中で祈りながらっ♪



 名前という概念を失い、滅亡への道を辿っていた世界を。
 そして失っていた自分の名前を、ちゃんと取り戻して。
 ――仕事終えた後の買い食いは格別なのです。
 そうほくほくと両手いっぱいに美味しい食べ物を抱えて。
「名物色々……どれも美味し♪」
 妖怪横丁を巡るのは、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)。
 そして、美味しい物を満喫しながらも、ふと思う。
 普段何気に意識せずに口にしている、名前というもの。
(「なんだろ……多分今回の事件を経たからなんですけど」)
 色んな名物の『名前』があって。
 キアラは抱えている戦利品を見つめ、改めてこう感じるのだ。
 ――その『名前』だからこそ余計美味しいなとか、何か良いなって思うのってあるかなあ、って。
 それは、唐揚げとかもだけれど……例えば一つ目まんとか、揚げ人魂とか。
(「え、何それ面白そう、どんな味かな――みたいなのもあるかなあって思いました」)
 だから今、キアラははっきりと言える。
 ――やっぱり名前は大切、ですねっ♪ って。
 それから沢山の美味しい物を堪能した後、キアラはある店へと向かう。
 そう……骸魂に呑まれていた人魚・玉響が営む宝石店へ。
 今回の御礼に、彼女が流した真珠の涙を貰えるのだという。
 そしてキアラは、もう何を作って貰うか決めている。
(「ケルト十字の中心に温かい色の宝石嵌めたペンダント、作ってもらいます」)
 そして訪れた彼女の店に並ぶ美しい真珠のいろは、彼女の心のいろだから。
 キアラは玉響に、ぽかぽか森の陽だまりの様ないろをした真珠でペンダントを作って貰いながらも、心の中で祈る。
 ――玉響さんに、こんな色の宝石が一杯作れるような日々が続きますように♪ って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリア・アクア
メリル様(f25271)と

手を引かれ、雪山カフェへ
どのメニューもおいしそうで迷いますね……
ふと見れば、雪山パフェのメニューを見つめるメリル様

ふふ、こちらが気になりますか?
確かに、とっても大きそうですけど……
だからこそ、見てみたいですよね
ええ、二人で挑戦しましょう!

この色は何味か、想像しながら食べましょう
ああっ、メリル様、かき氷は一気に食べたらだめです!
大丈夫ですか?ふふ、焦らず参りましょう!

とってもおいしいですけど、やっぱり私達には量が多いですね……
は、清史郎様、いいところに!力を貸してください!
どうぞどうぞ、お好きなところを!

完食できれば笑顔で
ふふっ、おいしくて楽しい思い出ができました!


メリル・スプリング
アリア(f05129)と

知ってる人の顔を見つけ、名前もわかってほっと一息
雪山カフェへ

……んー……(じーっと雪山パフェのメニューを凝視)
すごいのです、大きそうなのです、いろんなトッピングがのってるのです
でも、メリルひとりじゃこんなにたべられないからたのめないのです……
……んう、アリア、なぜそれを
ん、ありがとなのです
メリルもがんばってたべるのです!

目の前に置かれたパフェに瞳輝かせ

すごいのです……!ゆめみたいなのです!
んんっ……あたまがキーンってしました

夢中で食べるけど、やっぱり食べきれず

んん、清史郎、たすけてほしいのです

いっぱいいっぱい、おいしいものたべたのです
メリル、とってもたのしかったのです!



 なくなっていた名前や自分のことも、全部ちゃんと取り戻して。
 ぎゅっと抱きしめるアレキサンダーのことだって思い出せたけど。
 メリル・スプリング(アリス適合者のプリンセス・f25271)は、アリア・アクア(白花の鳥使い・f05129)の姿を見つけて、ほっと一息。
 知ってる人の顔を見つけて、名前もわかったから。
 そしてアリアの手を引いて向かったのは――雪女たちが営む『雪山カフェ』。
 案内された席で、アリアはぱらりとお品書きを眺めつつ、色々なメニューについ目移りしてしまうけれど。
「どのメニューもおいしそうで迷いますね……」
 そう顔を上げ、ふと見れば。
「……んー……」
 どーんと大きな雪山パフェのメニューを凝視しているメリル。
(「すごいのです、大きそうなのです、いろんなトッピングがのってるのです」)
 そうキラキラとメニュー見つめる瞳を輝かせるけれど。
 すぐに、ちょっぴりしょぼん。
 ――でも、メリルひとりじゃこんなにたべられないからたのめないのです……って。
 そんなメリルの様子に、アリアは瞳細めて笑んで。
「ふふ、こちらが気になりますか?」
「……んう、アリア、なぜそれを」
 彼女の言葉に、おめめをぱちくり。
 そしてアリアは続ける。
「確かに、とっても大きそうですけど……だからこそ、見てみたいですよね」
 ――ええ、二人で挑戦しましょう! って。
 そんな言葉に、メリルは顔を上げて、こくこく何度も頷いてから。
「ん、ありがとなのです。メリルもがんばってたべるのです!」
 ぐっと気合十分、念願の雪山パフェをオーダー!
 そしてどどんと目の前に置かれ聳え立つパフェ―に。
「すごいのです……! ゆめみたいなのです!」
 再びそう瞳を輝かせて。
「この色は何味か、想像しながら食べましょう」
 アリアに頷いて、パフェをスプーンで掬って、ぱくぱくと口に運ぶけれども。
「ああっ、メリル様、かき氷は一気に食べたらだめです!」
「んんっ……」
 アリアの声掛けも一歩遅く、メリルの頭がキーンに襲われて。
「大丈夫ですか? ふふ、焦らず参りましょう!」
 メリルも一生懸命、でもキーンってまたならないように、一生懸命食べ進めていくけれど。
「とってもおいしいですけど、やっぱり私達には量が多いですね……」
 眼前の雪山は、食べても食べてもなくならない。
 けれど、その時。
「は、清史郎様、いいところに! 力を貸してください!」
 見かけた彼に、そうヘルプ!
「んん、清史郎、たすけてほしいのです」
 メリルもそう円らな瞳で清史郎を見つめ、お願いしてみれば。
「いいのか? 俺は甘いものがとても好きだ。助太刀しよう」
「どうぞどうぞ、お好きなところを!」
 そう言ってくれたアリアに笑んだ後、清史郎は涼しい顔でパフェを食べ始める。
 あくまで雅に、けれどもとんでもない甘党で健啖家な彼は、何処か嬉々としていて。
 あの例のキーンにならない彼のことを不思議に思いながらも、一緒に雪山制覇を目指す。
 そして――最後のひとくちを、メリルが満を持してはむりと頑張って食べれば。
「いっぱいいっぱい、おいしいものたべたのです」
 ――メリル、とってもたのしかったのです!
 そう紡ぐ彼女に、清史郎は笑顔を向けて。
「よかったな、メリル」
 頑張った彼女を労う様に、そっと大きな掌で頭を撫でてあげる。
 そんな様子を微笑まし気に見つめながら、アリアは笑顔の花を咲かせる。
 ――ふふっ、おいしくて楽しい思い出ができました! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・絡みも歓迎!

へ~!妖怪の子たちってこんなにいるんだね~
ボクが欲しいのはもちろん甘いもの!
コンプリートを目指し…はしないけど薦められるままに食べてこうっと♥
お~これが雪山パフェだね!
これは食べがいがありそう!いくつ食べれるかな~♥

一つ目まん?そんなもの売りにするから世間から忘れられるんだよ君ら……
あ、でも味はいいね♥おかわり!

ここは楽しいけど、どこか懐かしくて、物悲しい感じもするね
なくなるには惜しいって……そう誰かが思ってくれてるから、こうして残っていられたんだね



 賑やかな店が立ち並ぶ妖怪横丁の光景を、ぐるりと興味深そうに見つめながら。
「へ~! 妖怪の子たちってこんなにいるんだね~」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は幽世の地を闊歩するその姿を眺めた後。
 鼻を擽る良い匂いに誘われるかのように、うきうきと店先へと金の瞳を向ける。
 この商店街には、色々な食べ物があって、どれも美味しそうではあるのだけれど。
「ボクが欲しいのはもちろん甘いもの!」
 やはり、甘いものは外せません!
(「コンプリートを目指し……はしないけど薦められるままに食べてこうっと♥」)
 とりあえず呼び込みの声にふらり誘われつつも気の向くまま、甘い物をちょいちょいっと摘まんで。
 やって来たのは、雪女が経営している『雪山カフェ』。
 そして当然の如く、ロニが注文するのは。
「お~これが雪山パフェだね!」
 どどんっと眼前に聳える、巨大な雪山パフェ!!
 そんな甘味を前に、ロニはわくわくスプーンをすちゃりと手にして。
「これは食べがいがありそう! いくつ食べれるかな~♥」
 ぱくぱくと、どんどん雪山を攻略していきます!?
 そして控えめに3つほど雪山パフェを堪能したロニが次に見つけたのは。
「一つ目まん? そんなもの売りにするから世間から忘れられるんだよ君ら……」
 思わずそうツッコミを入れられずにいられなかったのは、一つ目小僧の店主が売る一つ目まん!
 けれどロニはとりあえず一通りの色や味を買ってみて。
 ひとつ、ぱくりと食べてみれば。
「あ、でも味はいいね♥ おかわり!」
 さらに追加注文を!?
 そんな一つ目まんをもぐもぐしながらも。
 ロニは郷愁の風景の中をいきながら、ふと思うのだった。
(「ここは楽しいけど、どこか懐かしくて、物悲しい感じもするね」)
 なくなるには惜しいって……そう誰かが思ってくれてるから。
 だから――こうして残っていられたんだね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【朔夜】

活気のある声が響く横丁を
ふわふわ闊歩して
在るべき姿を戻した妖怪達の
痛快愉快、独特は己が識る幽世と

……何か気になるもの?
玉響が魅せる美しい涙のいろ、
真珠が輝く夜、
桜は淡く舞い踊り縁を結ぶ
ーー噫、きみの落涙を
どうか俺達に分けては貰えないだろうか
朧宵に咲いた景色を傍らに
朧宵遊を葬送りだす

真珠を翳してゆうるり
咲みを零して
ねえ、『刻』
遊ぶも唯一無二が在ればこそ

さあて、あまやかに
呼ぶ理由はもうひとつ
…あのね、さっきちらと見えた…あ、何その顔。
なら話は早いよね
そうだよ、欲は隠せない
当然、餡子ぎっしりたい焼き食べて帰らなきゃ

ほら行こうといつかみたいに
また裾を引いて

御満悦な締め括りは
いつもの君のとなりで


飛白・刻
【朔夜】

未だ馴染み浅い世界には
愉快に奇怪が立ち並ぶ
陽気も妖気、食べ物までが化け出るか

掛かる声に立ち止まれば、心のいろが並ぶ
…いろ、
桜を映した朧宵、曖昧が過ぎるか
あの時のいろが玉響に映ったかは解らぬけれど
真珠を月に見立て、根付か武器飾りか
揃いの物をふたつと頼めるか?
忘れるも忘れさせもせぬその縁を

翳し真珠の向こう側
なんだ、『千鶴』
戯れ事も相の手ありてこそ
さて、どんな強請りを隠しているやら

声に欲が出ているぞ、とは良く言ったもの
鯛焼きを見逃すのも千鶴ではないな
ああ、また胸焼けがしそうだ
裾引かれ出た言葉はどこか弾み乗せて呆れ笑む

当たり前であってこそ
その時間がいとおしい
またひとつと心刻み
その傍らにあろうと



 ふと視線を巡らせれば、郷愁の景色を照らす円描く月。
 飛白・刻(if・f06028)はそんな愉快に奇怪が立ち並ぶ、未だ馴染み浅い世界を歩く。
 隣に在る、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)と並んで。
 それから妖怪達が営む店々へと目を遣れば――陽気も妖気、食べ物までが化け出るか、と。
 そんな刻と、活気のある声が響く横丁をふわふわ闊歩しつつも。
 名前、声、思い出、自己……その全てを取り戻し、在るべき姿を戻した妖怪達を千鶴は見つめる。
 それは痛快愉快、独特は己が識る幽世と――。
 そんなふたりが足を向けたのは、心のいろが並ぶ人魚の店。
 ……いろ、
 零れ落ちる声と共に脳裏を染めるのは、桜を映した朧宵。
 けれど刻は、曖昧が過ぎるか、と眼前の彩たちを見遣ってから。
「揃いの物をふたつと頼めるか?」
 揺蕩う玉響の涙は、根付か武器飾りかに。
(「あの時のいろが玉響に映ったかは解らぬけれど」)
 忘れるも忘れさせもせぬその縁を――朧宵の月に見立てて。
「……何か気になるもの?」
 そして千鶴も、そうっと微かに首を傾けながら。
 思い描くそのいろは――玉響が魅せる美しい落涙、真珠が輝く夜、舞い踊り縁結ぶ桜の淡色。
「――噫、きみの落涙を、どうか俺達に分けては貰えないだろうか」
 朧宵に咲いた景色を傍らに……葬送りだすは朧宵遊。
 そして、はらり落とした己の一粒を人魚は差し出す。恩人である、彼らの掌に。
 それを翳してゆうるり咲みを零して。
 ――ねえ、『刻』。
 千鶴はその名を呼ぶ。
 遊ぶも唯一無二が在ればこそ、と。
 そんな淡く照る、艶やかな翳し真珠の向こう側。
 ――なんだ、『千鶴』。
 戯れ事も相の手ありてこそ……そう映す彼の姿に思う。
(「さて、どんな強請りを隠しているやら」)
 刻にはもう分かっている。
 己を呼ぶ声が、あまやかな響きを纏うもうひとつの理由を。 
「……あのね、さっきちらと見えた……あ、何その顔」
 ――なら話は早いよね。
 向けられるのは心踊らせた、そわりとした笑み。
「声に欲が出ているぞ、とは良く言ったもの。鯛焼きを見逃すのも千鶴ではないな」
 そんな声に、千鶴は頷く。
「そうだよ、欲は隠せない」
 ――当然、餡子ぎっしりたい焼き食べて帰らなきゃ、って。
 そして、ほら行こうとまた裾を引く。いつかの、あの時みたいに。
 耳に響く裾引かれ出た言葉はどこか弾み乗せて呆れ笑む。
 ――ああ、また胸焼けがしそうだ、と。
 けれどもそれもまた、共に在れば常なこと。
 当たり前であってこそ、その時間がいとおしくて。
 賑やかな幽世の世界を歩み行く御満悦な締め括りは――そう、いつもの君のとなりで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【花守】
ええ、ばっちり思い出しましたとも
俺は食道楽で、ぴより(決定)は潤いに飢えた可哀想な子だと
という訳で食べ歩きで腹も心も幸せに満たしに行きましょう、清史郎さん(突然声掛け)

目玉は饅頭も団子も全部試したいですよねぇ
清史郎さん、半分ずつ分けて攻略しますか?
はいはい、ぴよりは甘いのが当たると良いですねぇ(青目玉渡し)
後は何といっても、揚げ人魂も外せません
これは新感覚で良いですね

食後のデザートは雪山パフェで決まりですよね、清史郎さん
おや、ぴよりはお疲れですか?
なら特別に、商店で売っていたこれをあげましょう
――毎朝突然耳元で囁く様にあやしい笑い声をあげ、優しく起こしてくれるこけし目覚ましらしいですよ


呉羽・伊織
【花守】
無事に戻って良かったな
…いやお前は記憶が混濁し過ぎだろ、そんなコトないからホント!
オレは玉響や可愛い看板娘サンの店を見に行…まって突然の無視からの放置!
嗚呼…清史郎も楽しそーで何よりダヨ

さっきも戦闘中に間食してたのに本気?(デスヨネー)
いやもう腕一杯幸せ一杯ですみたいな顔で二人の世界に入らないで、目眩く食道楽わーるどに入り込む自信がない!
くっ、オレはどうせならやっぱ女の子とあまい時間を…いや悪い意味で大当たりだろコレ!
何か口直しがホシ…え、ソレいっちゃう?(人魂)

今までのがデザートじゃなかったの!(しってた)
オレは疲れた色々を癒すべく看板娘サンを楽し…余計なお世話も土産も要らない~!



 滅亡へと向かっていた幽世の世界に、名前を、賑やかな声を取り戻して。
 失っていたものを、全て取り戻した……はずであるけれど。
「無事に戻って良かったな」
 そう活気に満ちた横丁の光景を眺める呉羽・伊織(翳・f03578)に、千家・菊里(隠逸花・f02716)は笑顔で頷く。
 ……ええ、ばっちり思い出しましたとも、と。
「俺は食道楽で、ぴよりは潤いに飢えた可哀想な子だと」
「……いやお前は記憶が混濁し過ぎだろ、そんなコトないからホント!」
 いや、これから潤いを求めに行くのです!
「オレは玉響や可愛い看板娘サンの店を見に行……」
「という訳で食べ歩きで腹も心も幸せに満たしに行きましょう、清史郎さん」
「とても楽しみだな、菊里」
「……まって突然の無視からの放置!」
 いつの間にかいた清史郎と、放置からの食べ歩きへと向かうご機嫌な狐尻尾を後目に。
「? どうした、伊織。食べ歩きを楽しまないのか?」
「嗚呼……清史郎も楽しそーで何よりダヨ」
 伊織は一応声を掛けてくれたわくわくしている様子の友をそう見遣る。
 というわけで、いざ妖怪横丁の食べ歩きへ!
「さっきも戦闘中に間食してたのに本気?」
 ……デスヨネーと、結局こうなった現状に遠い目になる伊織に構わずに。
「目玉は饅頭も団子も全部試したいですよねぇ。清史郎さん、半分ずつ分けて攻略しますか?」
「それは良いな。どの味も試したいところ。それから土産も吟味したいな」
「いやもう腕一杯幸せ一杯ですみたいな顔で二人の世界に入らないで」
 ――目眩く食道楽わーるどに入り込む自信がない!
 きゃっきゃ活き活きしているふたりに、どんどん置いて行かれている感半端ないけれど。
「はいはい、ぴよりは甘いのが当たると良いですねぇ」
「くっ、オレはどうせならやっぱ女の子とあまい時間を……いや悪い意味で大当たりだろコレ!」
 差し出されたのは、青いロシアン目玉まん!
 食べてみればある意味、甘いひとときが待っているかもしれません……?
 それからいつの間にか、菊里と清史郎の手にあるのは。
「後は何といっても、揚げ人魂も外せません」
「ふむ、外はサクサク、中はちゅるん、か」
「これは新感覚で良いですね」
「何か口直しがホシ……え、ソレいっちゃう? いや、ちゅるんってナニ!?」
 そして、伊織もどうだ? と揚げ人魂を笑顔で差し出す友に。
 いやダイジョウブ……と、とりあえず遠慮しておく。
 けれども――まぁ知っていましたけれど。
「食後のデザートは雪山パフェで決まりですよね、清史郎さん」
「ふふ、どの様な美味な甘味なのだろうか。とても楽しみだ」
「今までのがデザートじゃなかったの!」
 もう付き合っていられないと言わんばかりに、伊織は大きく溜息をつきつつも。
「オレは疲れた色々を癒すべく看板娘サンを楽し……」
 ……もうかと、思った刹那。
「おや、ぴよりはお疲れですか? なら特別に、商店で売っていたこれをあげましょう」
 菊里が笑顔で差し出すのは――優しく起こしてくれる、こけし目覚まし!
 毎朝突然耳元で囁く様にあやしい笑い声をあげて起こしてくれる逸品らしいです。
「おお、これはうってつけだな」
 そして謎にそう笑み言った清史郎に、最早ツッコむ気にもならず。
 渡されたこけしさんを手に、ぴよりは幽世の空の下、訴えるのだった。
 ……余計なお世話も土産も要らない~! と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
【PZ】
セイシロウ、たべあるきだよっ
ごーごーっ

パフェ、パフェたべたいっ
両手を挙げてリクに大賛成

わああ、おっきい
わたしねえ、みーんなすきっ

トキジはどこたべる?
スプーン渡し
皆が選ぶのを待って

アカネ、きーんてなっちゃった?
上にのってたクッキーをあげるね
雪のけっしょう柄だけど、つめたくないからきーんてしないよ
ディアナもたべる?
リクにも、はいっ

リル、あとでかきごおりもたべようね
去年リルがたべてみたいって言ってたけど
いっしょにたべられなかったから

シオ、かきごおりのトッピングえらぼうっ
わあ、さくらいろ
わたしもしらたますきっ

ほうせきやさん?
きれい
アカネはなに色がすきなの?
ふふ、あったかい思い出の色、すてきだね


檪・朱希
【PZ】
わ、とても賑わってるね。色んなお店があるなぁ。
丸一日見て回っても、回りきれないかも?
UDCアースの商店街とはまた違うかな。

雪山パフェ、凄いね……トッピング、何にしよう?
迷いに迷って、緑のシロップと餡にしてみようかな?
あ、理玖、私も一緒に写真に入っていい?
うん、美味しい。幾らでも食べられそう。
た、食べ過ぎた…頭がキーンってする……

一つ目まん? 美味しそうだね。
青色、食べてみようかな?

どれも綺麗だね、志桜。
私は……赤は少し苦手だけど、どの色も好きだよ。
今日皆と一緒に来られた、楽しい思い出として残したいから、出来れば黄色が良いな。


陽向・理玖
【PZ】
計7名
おお清史郎兄さんもぜひだ
声掛け

うおー商店街すげぇ
見てるだけで面白いな
どこ行くよ?


雪女がかき氷作るのか!
どうする?入ってみるか?
この人数だし雪山パフェ行けんじゃね?

でけぇ!
あっ写真撮ってもいいか?
スマホ出し
確かに大きさ比較できるしな
さすが十雉兄さん
志桜姉さんもディアナ姉さんも入れ入れ
てかみんなで撮るか!

凄ぇなぁ
みんなどの辺食う?何味が好き?
俺苺がいいかなぁ

氷が違うわ

あーそれも美味そう
オズ兄さん俺もクッキー分けてくれ

…冷えた
後で温かいもんも食っていい?
一つ目まんとか

朱希人魚の店気になるのか?
女子だなぁ
ディアナ姉さんと志桜姉さんは?
いやそういうのは女子…
リル兄さんも似合いそうだな?


荻原・志桜
【PZ】
にひひ、こういう雰囲気わたしも好き!

わわっ大きいパフェだね
でもこのメンバーなら大丈夫でしょ
なんと言っても甘いもの大好きと噂の清史郎くんがいる!

実物の大きさすごい――あ、写真わたしも!
ねえねえ、十雉くん一緒に映らせてほしいな
ディアナちゃんも!お隣きてきて!

いただきます!
シロップも種類が多くて迷うね、苺味にしようかなぁ
あまりない変わったものもいいけど、リルくんは何にした?

トッピングもたくさんあって目移りしちゃう…!
んー…あ、オズくん、桜色の白玉がある!
あっちには黄色も!あれもいいね

わあ、きれいだね朱希ちゃん
せっかくだからひとつどう?
ん? もちろん好きだよ。理玖くんは?
気になるいろはあるかな


リル・ルリ
【PZ】

わー!すごいね、賑やかな妖の商店街!
どんなのが売ってるのかな
はやる心に尾鰭をぴるり、皆の笑顔を見返してもひとつおまけに笑顔が浮かぶ

雪山ぱへ!皆で登山するみたいに食べようよ
清史郎は甘いのが好き、僕も好き
うん!オズ
かき氷たべよう!楽しみにしてたんだ

ディアナと志桜の仲良しな様子にほっこりする
志桜、僕は練乳にするんだ
甘くて美味しいんだよ
皆は何味かな?
並べると雪山に虹がかかったようだね
受け取ったすぷん、ですくって
たくさんお口に頬張って理玖に向かってぴーす
皆で写った写真にご満悦

十雉、どこどこ僕の仲間!
わぁ本当だ
朱希の教えてくれたあのお店…人魚だ!
あのお店行ってみたいな
僕の泪も真珠になればいいのに


宵雛花・十雉
【PZ】
よ、清史郎
よけりゃあアンタも一緒にどうだい?
甘いもん好きなら丁度よかった

へぇ、変わった街並みだなぁ
なんでか不思議と懐かしい心地がするよ

雪女の雪山パフェ?
いいねぇ、本格的なのが出てきそ
オレも賛成だぜ

お、写真撮んの?
こっちも撮ってくれよ、理玖
パフェと一緒にさ
よっしゃ、んじゃあ志桜たちもおんなじポーズで写ろうぜ

オレはこっちの横の方から食うわ
お、スプーンさんきゅーオズ
気が効くじゃん

うん、美味い
…けどやっぱ冷えてくんなぁ
ディアナ、こっちに水くんねぇか?
これくらいの温度が丁度よくってさ

そういや朱希の言ってた店も気になるよな
人魚がやってんのか、もしかしてリルのお仲間かい?
後でそっちも寄ってみっか


ディアナ・ロドクルーン
【PZ】
中々の大所帯ですね、ですがそれもまた良き。
筧さんは甘い物がお好きなのですね、それでしたら是非一緒にパフェを楽しみましょう

志桜の隣にちゃっかり席を取って
すごく大きいパフェね
ん?理玖君写真取るの?私も良いの?
えっとそしたら(みんなと合わせて同じポーズ

トッピングするなら白玉が良いな、もちもちして好きなの
檪さんは何にするか決めました?
わあ、可愛い雪の結晶のクッキーね。ありがとうオズさん

はいお水をどうぞ十雉さん、温かいお茶じゃなくていいのかしら

綺麗な石ね、檪さんは何か気に入った色のは見つかった?
ルリさんも似合う石はありそうね。ふふ、貴方の泪も宝石になれば数多の色を産み出せればとても素敵ね



 活気に溢れた商店街は、今日もてんやわんや大盛況。
 けれど此処は只の横丁ではない。
 郷愁を抱くような風景に妖怪達が営む店がずらりと立ち並ぶ、ちょっぴり面白奇妙な妖怪横丁。
 無事に名前を取り戻し、ひと仕事終えた陽向・理玖(夏疾風・f22773)は皆と合流して。
「うおー商店街すげぇ。見てるだけで面白いな」
 ――どこ行くよ?
 そう見遣るのは、わいわいと賑やかな面々。
「中々の大所帯ですね、ですがそれもまた良き」
 ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)も共に行く皆を映す紫の瞳を細める。
 今回一緒に横丁散策するのは、総勢7名。
 ……いや、もうひとり追加で。
「よ、清史郎。よけりゃあアンタも一緒にどうだい?」
「おお、清史郎兄さんもぜひだ」
 宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)と理玖の声に立ち止まったのは、転送の任務を終えた清史郎。
 清史郎もまた、皆と同じ旅団の一員だから。
「セイシロウ、たべあるきだよっ」
 ごーごーっ、って手を上げて張り切るオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)や皆に微笑む。
「食べ歩きか、それは良いな。俺も同行させて貰おう」
 旅は道連れ、食べ歩きも道連れ。
 さらに賑やかになった面々に瞳細めてから。
「へぇ、変わった街並みだなぁ。なんでか不思議と懐かしい心地がするよ」
「にひひ、こういう雰囲気わたしも好き!」
 ぐるりと幽世独特の光景を見回す十雉に、ディアナと並んで歩く荻原・志桜(桜の魔女見習い・f01141)も頷いて。
「わ、とても賑わってるね。色んなお店があるなぁ」
「わー! すごいね、賑やかな妖の商店街!」
 同じ様に興味深そうに視線を巡らせるのは、檪・朱希(旋律の歌い手・f23468)とリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)。
 朱希は終わりの見えない長い商店街の道の先を見遣って。
「丸一日見て回っても、回りきれないかも? UDCアースの商店街とはまた違うかな」
 知っているものに似ているけれど、やっぱり何処か妖怪達が闊歩する世界は摩訶不思議。
「どんなのが売ってるのかな」
 リルも、はやる心に尾鰭をぴるり。
 向けた薄花桜の瞳いっぱいに皆の笑顔を咲かせれば、もひとつおまけに笑み咲き綻ぶ。
 そして暫く横丁を歩いてみれば。ふと理玖が足を止めた、視線のその先。
「お、雪女がかき氷作るのか!」
 ――どうする? 入ってみるか?
 そう皆に提案してみれば、早速客の気配を感じた店員の雪女がすかさず皆を勧誘に。
 この店のお勧めは、どどんと巨大な『雪山パフェ』なのだという。
 その名の通り、雪山の如く聳え立つのだというが。
「この人数だし雪山パフェ行けんじゃね?」
 理玖が言えば、オズも両手を挙げて大賛成!
「パフェ、パフェたべたいっ」
「雪山ぱへ! 皆で登山するみたいに食べようよ」
 リルも瞳を輝かせ、こくこく頷いて。
「雪女の雪山パフェ? いいねぇ、本格的なのが出てきそ。オレも賛成だぜ」
 十雉も勿論、雪山パフェに皆と挑む気満々。
 ということで入店し、皆で席に着いてわいわい待っていれば。
「わわっ大きいパフェだね」
 志桜はその予想外の大きさに、思わず一瞬瞳を瞬かせるけれど。
 でもこのメンバーなら大丈夫でしょ、とにこにこ笑む彼へと視線を向ける。
「なんと言っても甘いもの大好きと噂の清史郎くんがいる!」
「ああ、甘い物はとても好きだな」
 雅な微笑みや所作からは想像がつかないが、実はとんでもない甘党で健啖家だという清史郎。
「筧さんは甘い物がお好きなのですね」
 それでしたら是非一緒にパフェを楽しみましょう、と続けたディアナに。
 リルは、清史郎はチョコのちゃんぴょんなんだよ! と皆に教えてあげた後。
「清史郎は甘いのが好き、僕も好き」
「甘いものは正義だからな」
 そうにこにこ笑むふたりから、十雉は思いのほか大きかったパフェに目を遣り紡ぐ。
「甘いもん好きなら丁度よかった」
「わああ、おっきい。トキジはどこたべる?」
 そんな十雉にオズは、はいっ、とスプーンを渡して。
「お、スプーンさんきゅーオズ。気が効くじゃん」
 十雉はそう皆が選ぶのをわくわく待つオズに笑んでみせた後。
「オレはこっちの横の方から食うわ」
 すっとパフェをひと掬い……しようとしたけれど。
「でけぇ! あっ写真撮ってもいいか?」
「お、写真撮んの?」
 やはり映えるパフェは、写真に撮っておきたいところ!
 理玖はスマホ出して、雪山パフェへと向けてみれば。
「あ、理玖、私も一緒に写真に入っていい?」
「確かに大きさ比較できるしな」
 朱希も一緒に、まずは1枚ぱしゃり。
「こっちも撮ってくれよ、理玖。パフェと一緒にさ」
「実物の大きさすごい――あ、写真わたしも! ねえねえ、十雉くん一緒に映らせてほしいな」
 ――ディアナちゃんも! お隣きてきて!
 そう手招きする志桜の隣に、ディアナはちゃっかり席を取って。
「すごく大きいパフェね。ん? 理玖君写真取るの? 私も良いの?」
「よっしゃ、んじゃあ志桜たちもおんなじポーズで写ろうぜ」
 十雉がそう提案すれば、えっとそしたら……と、みんなと合わせて同じポーズ!
 そして身体寄せあうディアナと志桜の仲良しな様子に、リルもほっこり。
 理玖はそんなポーズを取る面々へとカメラを向けながら。
「さすが十雉兄さん。志桜姉さんもディアナ姉さんも入れ入れ」
 ――てかみんなで撮るか!
 折角だから、雪女の店員にシャッターはお願いして。
 全員で、とっても映える記念撮影!
 そしてリルは、オズに渡され受け取ったスプーンでパフェを掬ってから。
 はむりとたくさんお口に頬張って、甘い物好き仲間の清史郎と一緒に、理玖に向かってもう一度ぴーす!
 それからいっぱい撮った皆で写った写真に、ふふっと笑んでご満悦。
 理玖はそんな皆やパフェを沢山撮影してから。
「凄ぇなぁ。みんなどの辺食う? 何味が好き?」
 いざ、雪山パフェにスプーンを向けて。
「わたしねえ、みーんなすきっ」
「俺苺がいいかなぁ」
 ひとくちぱくりと食べてみれば。
 ――旨、氷が違うわ、と思わず漏れる呟き。
「雪山パフェ、凄いね……」
 朱希もそうっとスプーンでパフェをひとくち掬ってから。
「うん、美味しい。幾らでも食べられそう」
 その美味しさに、ふたくち、みくちと食べ進めてみるけれど。
「た、食べ過ぎた……頭がキーンってする……」
「アカネ、きーんてなっちゃった?」
 オズはキーンとなって頭を抱える朱希に差し出す。
「上にのってたクッキーをあげるね。雪のけっしょう柄だけど、つめたくないからきーんてしないよ」
「あーそれも美味そう。オズ兄さん俺もクッキー分けてくれ」
「リクにも、はいっ。ディアナもたべる?」
「わあ、可愛い雪の結晶のクッキーね。ありがとうオズさん」
 オズは、キーンとしない雪の結晶をふたりにもお裾分け。
 それからリルに視線を向けて、笑みながら紡ぐ。
「リル、あとでかきごおりもたべようね。去年リルがたべてみたいって言ってたけど、いっしょにたべられなかったから」
「うん! オズ、かき氷たべよう! 楽しみにしてたんだ」
 リルは大きく首を縦に振って、こくり。
 そして雪山パフェをきっちり皆で制覇した後、雪女特製のふわっふわなかき氷も食べます!
「シオ、かきごおりのトッピングえらぼうっ」
「トッピングもたくさんあって目移りしちゃう……! んー……あ、オズくん、桜色の白玉がある!」
「わあ、さくらいろ。わたしもしらたますきっ」
「あっちには黄色も! あれもいいね」
 志桜はそうオズと、桜色や黄色の白玉をトッピングしていきつつ。
「トッピングするなら私も白玉が良いな、もちもちして好きなの」
 ……檪さんは何にするか決めました?
 ディアナがそう眼前で悩んでいる様子の朱希に訊ねれば。
「トッピング、何にしよう?」
 迷いに迷って、緑のシロップと餡に決定。
 そして――いただきます!
「シロップも種類が多くて迷うね、苺味にしようかなぁ。あまりない変わったものもいいけど、リルくんは何にした?」
 志桜がそうリルへと視線を向ければ。
「志桜、僕は練乳にするんだ。甘くて美味しいんだよ」
 リルは笑みと共に返した後、もう一度ぐるりと周囲を見回して。
「皆は何味かな?」
 それぞれ個性溢れたかき氷に瞳を細める。
 ――並べると雪山に虹がかかったようだね、って。
 そしてぱくりとそんな甘味を口にはこんでいきながらも。
「うん、美味い。……けどやっぱ冷えてくんなぁ」
「……冷えた」
 十雉と理玖は、同時にぶるり。
「ディアナ、こっちに水くんねぇか?」
「はいお水をどうぞ十雉さん、温かいお茶じゃなくていいのかしら」
 十雉はディアナから受け取った水を飲んでから、口にする。
「これくらいの温度が丁度よくってさ」
 それから理玖も、思わずこんな次の提案を。
「後で温かいもんも食っていい? 一つ目まんとか」
「一つ目まん? 美味しそうだね。青色、食べてみようかな?」
 その誘いに乗った朱希が食べようとしている青の一つ目まんは、なんとロシンアンまん。チャレンジャーです。
 そしてパフェやかき氷を十分堪能し食べ終わった後。
「朱希人魚の店気になるのか?」
 理玖は出発前に、彼女が気になっていると言っていた人魚の宝石店のことを思い出して。
 女子だなぁ、と呟きつつも、他の女子にも訊ねてみる。
「ディアナ姉さんと志桜姉さんは?」
「ん? もちろん好きだよ。理玖くんは? 気になるいろはあるかな」
 志桜に逆にそう訊ねられ、理玖は一瞬瞳をぱちくりさせるけれども。
「いやそういうのは女子……リル兄さんも似合いそうだな?」
 そう、リルに視線を。
 そして十雉も。
「そういや朱希の言ってた店も気になるよな。人魚がやってんのか、もしかしてリルのお仲間かい?」
 そんな言葉に、リルは大きく瞳を見開いて。
「十雉、どこどこ僕の仲間!」
 皆と共に、人魚の宝石店へと足を運んでみれば。
「わぁ本当だ。朱希の教えてくれたあのお店……人魚だ!」
 そして、ふとぽろりこう零す。
 ――僕の泪も真珠になればいいのに、って。
 そんなリルに、ディアナは笑って。
「リルさんも似合う石はありそうね。ふふ、貴方の泪も宝石になれば数多の色を産み出せればとても素敵ね」
 そう彼へと告げて。
「どれも綺麗だね、志桜」
「わあ、きれいだね朱希ちゃん。せっかくだからひとつどう?」
 朱希は志桜と、色とりどりの真珠を眺めて。
「きれい。アカネはなに色がすきなの?」
「綺麗な石ね、檪さんは何か気に入った色のは見つかった?」
 そう訊ねるオズの隣で、ディアナも真珠を眺めながら彼女にもう一度問うてみれば。
「私は……赤は少し苦手だけど、どの色も好きだよ」
 朱希は言った後、ふとその手を伸ばして。見つけた真珠を掌にそっと転がし、眺めてみる。
 出来れば黄色が良いな、って――今日皆と一緒に来られた、楽しい思い出として残したいから、と。
 そんな朱希の掌でゆらりと揺れる、思い出の色彩を見つめてから。
 オズは皆を映したキトンブルーの瞳を優しく細める。
 ――ふふ、あったかい思い出の色、すてきだね、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月27日
宿敵 『水底のツバキ』 を撃破!


挿絵イラスト