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忘却歪曲カタストロフ(作者 志稲愛海
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 ――知っているのに、分からない。
 ――分かっているのに、出てこない。

 消えたのは……そう、名前だけ。

 隣にいるのがどういう人かも、自分にとってどんな存在かも、分かっているし。
 握る武器と共に重ねて来た戦果だって、覚えている。
 一緒に居る相棒とどう出会ってどんな冒険をしてきたかも、話せるのに。

 でも――その名を、呼ぶことができないのだ。

 『名前』……それは幽世から消えてしまったものだから。
 名前なんて単なる記号でしかない、って。
 そう思うかもしれないし、その通りかもしれないけれど。
 でも……いくらその名を呼びたくても。自分の名を名乗りたくても、出来ないのだ。
 そして、知っているのに分からないというそんな歪が。
 じわじわと日常を蝕み、歪ませて。

 そして――世界を滅亡させました。

●忘れじ幽世
「皆も聞いているだろうし、既に赴いた者も沢山いると思うが……新たに発見された世界、カクリヨファンタズムでの予知を視た」
 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は集まってくれた礼を皆に告げた後。
 視た予知の内容を語り始める。
「オブリビオンの企みにより、幽世から消えてしまったものがあるという。今回消えたそれは……『名前』だ。まるでカクリヨファンタズムの世界全てからその概念が奪われ、世界の終わり――カタストロフが訪れたかのような光景が広がっているという」
 そして『名前』を奪われた幽世には無数の骸魂が飛び交い、妖怪達が次々と飲み込まれ、オブリビオン化しているという。急いで解決しなければ、世界は滅亡してしまう。
「なのでまずは、飛び交う骸魂によってオブリビオン化した妖怪達を倒し、助けてあげまてから。事件の元凶であるオブリビオンを倒し、幽世の世界を元に戻して欲しい」

 単に『名前』が消えても、大した問題には一見感じないかもしれない。
 けれど今回消えたのは、『名前』のみ。
 自分のことも、隣にいる人のことも、大事な武器やアイテムも、精霊やペットも。
 ちゃんと覚えていて、どんな人かどんな存在かどんなものか、分かっているのに。
 その『名前』だけ、消えてしまって。
 その名を呼びたくても――決して、呼ぶことができないのだ。
 それがいくら大事な人でも、大切なものでも、例外なく。
 知っているのに、分からない。それはとても不自然で歯痒く、歪だ。

「ひとりで赴いても、己の名が消えてしまっており、愛用している武器や共にある精霊や使役等の名も忘れてしまっているし。同行者がいれば、隣のその人の名を呼べず、自分の名を名乗ることもできない。それだけではない、地名も店も物なども……ありとあらゆる全てのものの『名前』が消えてしまっている。それは思っていたよりも不便で、違和感やもどかしさを感じるかもしれない」
 名前は単に記号だと思う人もいるだろう。
 けれど、その記号がなくなれば、思いのほか違和感が生じる。
 そしてその歪みが無数の骸魂を呼び、妖怪達を飲み込んで。
 世界を滅亡させるというのだ。
「まずは、彩り鮮やかな人鳥一体の肉体を持ち、滅びの美声をさえずるオブリビオン『迦陵頻伽』の群れを倒して欲しい。迦陵頻伽は体内に弱い妖怪を飲み込んでいるが、飲み込んだ妖怪が弱いので、そこまで強くはない。妖怪達はオブリビオンを倒せば救出できるので、取り逃がさず退治して妖怪達を救って欲しい」
 勿論その際、皆もありとあらゆるものの『名前』を忘れている。
 けれど、名のない違和感を払い除けてもいいし。
 便宜上の渾名等で呼び合うのもいいだろう。
 付けた仮名もじきに消えてしまうだろうが、少しの間なら呼び合えるだろう。
「『迦陵頻伽』の群れを倒せば、元凶が現れる。そのオブリビオンは人魚のようであり、『名前』だけでなく、言葉や思い出、自己を忘却させる能力を持つという。けれど倒せば、名前も、忘却したそれらも元に戻るだろう」

 そして、そんな世界の滅亡の危機が訪れている場所の傍には。
 妖怪横丁――妖怪たちの暮らす妖怪商店街があるのだという。
「妖怪横丁では、色々な美味であったり珍しいものを食べ歩きできたり。九十九古物商店やおどろかし道具屋などさまざまなお店があるので、買い物も楽しめるようだ。事が解決すれば帰還までの間、そんな妖怪たちの暮らす妖怪商店街でのひとときを楽しめる」
 横丁の醍醐味と言えば、やはり食べ歩き。
 けれど此処はカクリヨファンタズムの世界。
 今までの世界とはまた、一味も二味も違う食べ歩きが楽しめるだろう。
 他の世界にあるような、出来立てのコロッケやメンチカツや唐揚げやたこ焼き等の食べ歩き定番メニューも、アイスやパフェやたい焼き等のいろんな種類の甘味も、ゆっくり座って一服できる妖怪茶屋のメニューも、この世界ならではなものとなっているのだという。中には、揚げ人魂屋などの珍しいものもあるようだ。この世界で流行っている人気メニューも見逃せない。
 そして、雑貨屋や日用品、装飾品や嗜好品を売っている店も、アヤカシ仕様。九十九古物商店やおどろかし道具屋は、見てみるだけでもとても楽しいだろう。妖怪紙芝居などの催しもやっているという。
「事件解決後、俺も新しい世界の横丁を見て廻ろうかと思う。何があるか楽しみだな」
 清史郎はそう微笑み、もう一度、よろしく頼むと皆に頭を下げてから。
 満開桜のグリモアをその掌に咲かせ、猟兵達を妖達が跋扈する世界へと導く。





第2章 ボス戦 『水底のツバキ』

POW ●届かぬ声
【触れると一時的に言葉を忘却させる椿の花弁】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD ●泡沫夢幻
【触れると思い出をひとつ忘却させる泡】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ ●忘却の汀
【次第に自己を忘却させる歌】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠黎・飛藍です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※お知らせ※
 第2章プレイング送信の受付は、【7/10(金)朝8:31】より開始いたします。
 それ以前に送信された分は流れてしまう可能性が高いのでご注意ください。
 追加情報を記載したOPを受付開始前日迄に掲載いたします。
 送信締切等のお知らせは、MS個別ページ等でご確認ください。