びちゃ、と厭な音をたてて、何かが地に倒れ臥した。その音は水のはねる音では無い。どろどろとした、血がはねる音だ。
倒れたもの……憐れな生贄から流れ出す赤黒い血と、既に床に満ちている、既に捧げられていた他の生贄達から流れ出した血が混ざりあっていく。
先ほどまで部屋中に響いていた悲鳴も今は無く、血の香り等死の気配が残るのみ。
この狂気の宴の中央。一ヶ所だけ乾いた地面に描かれるは歪な魔方陣。
回りを囲む血塗れの狂信者達が何事かを一心に唱えだし、その斉唱がピタリと止んだ瞬間。
食欲という、ある意味では最も生命力に満ちた感情の塊である「それ」は魔方陣より巨大な口を現した。
「ニイメンハオ!」
黒髪の、鋭い眼をした男が、集まった猟兵達を一瞥するなり鋭い声を上げた。
その男は淡々と名前は馮・志廉であること、人間の剣豪であること、グリモア猟兵であることを語る。
眉尻のはね上がった濃い眉は、その強い意思を感じさせる。
そして本題とばかりにぐっと眉を寄せて語り始めた。
「UDCアースで、邪神復活の儀式が行われようとしているのが見えた。俺と共に現場に向かい、甦った邪神を討ち果たして欲しい」
志廉の予知によると、邪神復活の儀式が行われるのは、とある片田舎の寂れた村落。近頃、怪しげな集団が出入りしているとの話も聞こえてくるらしく、邪神教団との関係も予想される。しかし、この村のどこで儀式が行われるのかまでは見えなかったと志廉は言う。
「邪神の復活には多くの生贄を必要とする。集めた生贄達を邪神の供物として惨殺するというのだ」
反吐が出るな、と志廉は吐き捨てる。
あまり表情の出ない男だが、悪と思われる事への強い感情は垣間見える。
「それほど大きな村では無い。教団が生贄を集めたり、儀式の場所を確保するにも、それなりに目立つのは避けられないだろう。必ずどこかに兆しは有るはずだ」
とはいえ、こういった村落は概して閉鎖的、排他的なものである。ふらりと現れた余所者である猟兵達の事は当然警戒心をもって迎えるだろうし、そう簡単に口を開くとも思えない。
足を使って、村役場等の村の要所に忍び込み情報を入手する。
知恵を使って、村人から有益な情報を引き出す。
あるいは怪しいやつを絞り上げて、強引な力業で口を割らせるというのも一つの手ではある。
いずれにしても、少々工夫を考える必要が有るだろう。
「無論、やり方は任せる。上手く儀式の場所を割り出してくれ」
しかし、と志廉は続ける。
「首尾よく見つけたとしても、狂信者共が黙って君達を見過ごすとは思えない。それなりの抵抗が有ると考えておくべきだろうな」
今回の儀式で呼び出されようとしているのは、暴食の怪物である「牙で喰らうもの」。身体中にある、牙を持つ口でひたすらに生物を喰らい、際限無く成長を続ける邪神の一柱だ。
かつて一度だけ現れた百もの口を持った「牙で喰らうもの」は、都市一つを瞬く間に喰らい尽くしたと言われる。
「それに、子どもを好んで喰うという、鳥人間型の眷族の姿も見えた。油断は出来ないな。」
志廉は一息つくと、改めて猟兵達を見据える。
「今回、俺は君達を運ぶ役目だ。その役目は、無事にここまで帰ってくる事で果たされる。」
必ず全員で帰還しよう。
そういって、志廉は踵を返し、歩き出した。
鉄錆
はじめまして。
第六猟兵で初めてマスターに登録させていただきました、鉄錆(てつさび)と申します。
プレイヤーとして、マスターとして、第六猟兵の世界をより楽しいものにしていくお手伝いが出来ればと考えております。
筆は遅いと思いますが、頑張らせて頂きたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『閉鎖的な村』
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POW : 腕力などの力を誇示する事で情報を引き出す
SPD : 村の要所に忍び込む等して情報を調査する
WIZ : 村人との会話で必要な情報を引き出す
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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エレアリーゼ・ローエンシュタイン
村役場を調査
オルタナティブ・ダブル使用、主人格が人目を引き付ける間
裏の少年人格が役場に侵入
「ふふっ、…エルくん、お願いね」
「ああ。…子供を食う例の眷族も、もしかしたら釣れるかもな」
◆
「お父さん…お父さん、どこぉ?」
村役場の前で泣いて、誰かが来たら
山に連れてきてもらったけど、はぐれちゃってここまで歩いて来たって言うの
お父さんを知らない?って
他に見知らぬ人を見なかったか聞いてみたいわ
役場の中にいるエルくんから離れすぎないよう、気を付けてね
◆
エルが囮になる間、
オレは外部の人間の出入りの記録とか、
儀式と関係ありそうな情報を片っ端から掻き集める
見つかりそうだったり、状況がやばかったら無理はせず一旦退く
日中とはいえ、既に冷え込みは厳しい。もっとも、人の気配が少ないのは寒さのせいばかりではなく、やはりこの村は寂れているのだ。
村の中心部とも言うべき村役場ですら、活気と呼べるほどのものはなく、建物も質素なものである。
そんな村役場の陰に、一つ――いや、二つの影があった。
「ふふっ、…エルくん、お願いね」
「ああ。…子供を食う例の眷族も、もしかしたら釣れるかもな」
それは、邪神教団の消息を探るべく、村役場に忍び込もうとするエレリアーゼ・ローエンシュタイン(飢え渇くオルドローズ・f01792)と、『エルくん』と呼ばれる少年……即ち、『オルタナティブ・ダブル』によって現れた、もう一人の人格。
二人は目で合図をすると、二手に別れた。
「お父さん……お父さん、どこぉ?」
迫真の演技と言うべきだろう。エレリアーゼは村役場の前で、声を上げて泣いていた。
建物に入っていく村人も、声をかけないまでも不憫そうな目で見て行く。
そうする内に、様子を見に来たのだろう、数人の役人らしき男達が現れ、エレリアーゼに声をかける。
「お嬢ちゃん、どうしたの」
「お父さんに山に連れてきてもらったの……でもはぐれちゃって……」
「山から?ここまで歩いて来たのかい?」
「うん……お父さんを知らない?」
役人達は互いに顔を見合わせるが、心当たりは当然無い。
「うーん。すまないなぁ、分からないが、確認はしてみよう」
しぶしぶ、といった様子ながらも、それぞれの職員がその場で携帯電話を取り出し、何処かへ電話をかけ始めた。
その頃、『エルくん』は村役場の窓口の奥に忍び込んでいた。エレリアーゼが騒ぎを起こして職員が席を外した隙を突いたのだ。
自分がエレリアーゼと離れる事が出来る距離は半径100メートル程度か。役場の規模から言えば問題ないが、職員が全く居なくなった訳では無い。慎重に姿を隠しながら、事件に関係の有りそうな情報を探していた。
最近住民が新たに転入してきた訳では無さそうだ。他には……と探していると、『エルくん』は気になる書類を発見した。
それは、村はずれにある廃寺に人の気配があり、浮浪者でも住み着いているのでは無いか、という苦情のメモ。
詳しく確認しようとするが、この机の主が戻る気配を感じた『エルくん』は、引き際と見定めて素早くその場を後にした。
一方――
「うーん……それらしい情報は無いなぁ。お嬢ちゃん、ごめんな」
ひとしきり電話を終えた職員達がエレリアーゼに顔を向ける。
しかし、ついさっきまで悲しげに泣いていた可憐な少女の姿はどこにも無い。一体何だったのか?と職員達は困惑した顔を見合わせるばかりだった。
成功
🔵🔵🔴
エレノア・リリーホワイト
【WIZ】
「今回もまたぞろ血腥い事件のようね~」
儀式場の条件を考えると、目的地は絞られてくるが──今そこに向かってもできることは少ない。
儀式場の特定はさておいて、まず村人から有益な情報を引き出す。
余所者は警戒されると言うが──子どもはまだ幼いから、警戒心は薄いだろう。子供を食らう眷属を予知で見たということは、食料である子どももいるということ。
公園など幼い子どもが遊ぶ場所をターゲットにし、情報収集を行いたい。
余裕があったら小さな女の子といっしょに遊ぶが、これは警戒心を解くため。断じて私情は関係ない。
「今回もまたぞろ血腥い事件のようね~」
そう言いながら公園に佇むのは、エレノア・リリーホワイト(凍てつく色欲・f03846)。予知に見えたという子どもを喰らう怪物から村には子どもが必ず居ると読んだのだ。
小規模な村である。公園は簡単に見つかったが、肝心の子どもの姿が無い。子どもが遊ぶには丁度良い時間帯のはず……と不審に思っていた所、ようやく子どもが一人、公園に走ってきた。見たところ、10才には届かないと見える、愛らしい少女である。
来たは良いものの、公園に友達の姿が無いことに少女はがっかりしたらしい。見て分かる程に肩を落としていたが、直ぐにエレノアに気づいた。その視線には、警戒と興味の色が見える。
それと見てとったエレノアは、優しく微笑みかける。
「こんにちは~。今日はお友達が居ないのねぇ」
「……うん。つまんないの」
退屈している子どもを惹き付けるのは、やはり遊びである。エレノアは言葉巧みに少女を誘い、公園の遊具で共に遊び始める。エレノアの優しく、楽しい笑顔に少女の心も解れて行く。エレノアの微笑みは、事件解決のためのものか、はたまた――
「楽しい!お姉ちゃんありがとう!……でも、ちぃちゃんがいたらもっと楽しいのに」
「ちぃちゃん?お友達かしら?」
「うん。でも、この前から居なくなっちゃったの」
少女――サチコと言うらしい――の話では、『ちぃちゃん』はサチコと同じ年の女の子で、中が良い。しかし、3日ほど前の夜、隣の祖母の家に一人で歩いて出た後、姿を消したという。隣と行っても畑を挟む程の距離は有るが、決して迷うような距離では無いのに――
「ママは他にも居なくなっちゃった子が居るから、外で遊んじゃダメだって……」
母親の目を盗んで遊びに来たらしいサチコは照れくさそうに笑う。
「ママは『知らない人には気をつけて』って言うけど、お姉ちゃんは優しいから大丈夫だよね」
一通りの話を聞くと、エレノアはサチコに帰宅を促した。
「うん、お姉ちゃん、ありがとね」
来た時と同じように走って帰ろうとするサチコだったが、思い出したように振り向く。
「あ、そうだ。お姉ちゃんじゃ無い、知らない人。見たこと無いおっきな車が、この公園の前を行ったり来たりしてるんだ」
帰っていくサチコを見送り、エレノアは車が向かうという道の先を見つめた。
成功
🔵🔵🔴
イオアン・イーリディウム
「食欲は人間の原始的な欲求の1つ、だとは言うけれど邪神もそうなのかな。……いや、今はそれどころじゃない、か」
「子供を狙う眷属の存在も気がかりだけど、まずは儀式場を探さないとね」
海外からの観光客を装い、道に迷って辿り着いてしまった体で村人に接触する。
「すみません、道に迷ってしまったみたいで……」
「地図を見てもここがどこだかわからなくて、すみませんが、教えてくださいませんか?」
隙を見て村長や村の老人達などから<催眠術>をつかって情報を聞き出そうと試みる。女性の村人がいれば自分のダンピールとしての美貌を利用して、情報収集のため友好な関係を気付き、最近変わったことやおかしな噂などがないか聞き出す。
「食欲は人間の原始的な欲求の1つ、だとは言うけれど邪神もそうなのかな。……いや、今はそれどころじゃない、か」
地図を片手に、村人から情報を引き出そうと歩いているのは、イオアン・イーリディウム(寒血機構・f01319)。
邪神に思いを馳せつつも、儀式が行われる場所を特定しようと、道に迷った観光客を装い尋ね歩いているのだ。
既に幾人かに尋ねた後、村の情報が集まる所として、その古老の家を探り当てていた。
「どちらさまですか……あっ……」
「すみません、道に迷ってしまったみたいで……」
玄関に出てきたのは、二十代と思われる女性。最初こそ不審な目を向けていたものの、イオアンの美貌に息を呑む。その顔の半分以上を覆う火傷の痕ですら、その美貌を損なうとは言えなかった。
女性はイオアンに尋ねられるままに地図を使って場所を示し、近隣の情報を話して行く。
スムーズに話が進むのは、催眠術によるものか、その美貌、話術によるものか。いずれにせよ、鮮やかな手並みと言えた。
「ありがとうございます。先程も言われたのですが、最近僕のような観光客が多い様ですね?」
お兄さんみたいなら歓迎なんだけど、と言いつつ、女性は語り始める。
最近この村に、地元住民では無い人間が出入りしているのは間違い無いと言う。しかし、この村には本来観光になるようなモノは無いはずである。
「もしかしたらあれかしら?この村の外れに、今は誰も居ない古いお寺があるんだけど、ほら、廃墟マニアってヤツかしら」
実際、見知らぬ車が、そちらの方向に向かうのを見たとも言う。
「近頃子どもが行方不明になったって話を何人も聞くし……皆気味悪がっているの」
イオアンにその場所を問われた女性は、山の中だから詳しくは分からないんだけど、と前置きしつつ、簡単な地図を描く。
その地図を手に、女性の絡みつくような視線を背に受けながら、イオアンは歩き去った。
大成功
🔵🔵🔵
エグゼ・ノイマン
「誰もいないはずの古い寺ってのは怪しいよねえ。実際そうなのかは忍び込んでみないとわからないけどさあ。」
周辺に人気がないことを確認してからバーチャルレイヤーの迷彩機能を用い古いお寺にこっそり忍び込む。寺の内部に忍び込んだら怪しい箇所がないか調査、もしかしたらどこか壁や床に秘密部屋への入口があるかもしれないしね。どっか動かすと開くとかさ。それにもし子供がいるなら助けなきゃ。
あ、怪しい人物に見つかりそうになったら身を隠して一時やり過ごすかそれも無理なら残念ながら一時退却。
リリィ・アークレイズ
【POW】
片田舎に質の悪い大喰らい…ね。
ま、大喰らいならオレの方が上だケドよ。
村っつっても話によれば規模は小さいンだろ。
明らかに怪しい奴ぐらい見れば分かるぜ。
…そういう奴は大抵後ろを気にして歩くんだよな。
誰かに目をつけられて無ェか、見られて無ェか気にしてな。
見つからねぇように建物の屋根で村を見張ってるかねェ。
怪しい奴は見つけ次第絞り上げてやるよ。
普通の人間相手なら逃がさねェ。
喉掴んじまえば下手に動けねーしな。
捕まえた奴がお利口で物分かりの良い奴だと良いなァ?
威嚇に右手で小石を砂にでも変えるか?
「五体満足で生きてたいなら全部吐いちまいな。」
「テメェの頭がスイカみてーに弾け飛ばないのを祈るぜ。」
「片田舎に質の悪い大喰らい……ね」
この村としては高い建物の屋上に姿を潜め、道に警戒しながら一人ごちるのは、リリィ・アークレイズ(SCARLET・f00397)。
リリィはこれまで他の猟兵達が集めた情報を基に、怪しいと思われる廃寺近辺の道路を張り込んでいた。怪しい人物を見つけ次第、強引に口を割らせようという腹だ。
『怪しい』というのをどう判断するかと言えば、言ってしまえば勘である。勘ではあるが――事実リリィは怪しい人物を見逃さなかったのである。
廃寺に続く道を、キョロキョロと視線を散らしながら歩く若い男。リリィは素早く身を踊らせて男の前に立ち、男があっと反応する間もなく、左手で男の喉元を掴んだ。
「アンタ、教団の関係者だろ。五体満足で生きてたいなら全部吐いちまいな」
「ガッ……ぐぅ……し、知らねぇ、知らねぇよ!」
リリィはニヤリと笑い、足下の小石を蹴り上げ、右手で掴み取る。拳をゆっくりと開くと、小石だったものは、サラサラと零れ落ちる。そしてその右手は唖然とする男の頭に置かれたのだった。
「テメェの頭がスイカみてーに弾け飛ばないのを祈るぜ」
「ままま、待て!待った!しゃべる、全部しゃべるから勘弁してくれぇ!」
その男が洗いざらい話した所では、結局男は信者では無く、下っ端であること。詳細は知らないが、伝令をしていたこと。そして、これからその廃寺に報告をしに行く所だったということ。
リリィが更なる脅しをかけて廃寺に案内させ、山道を進んでいた時、一人の猟兵が合流してきた。
「この先は監視カメラが有る。気をつけて進んだ方が良いぜ」
同じく他の猟兵の情報を基に、廃寺に当たりをつけていた、エグゼ・ノイマン(電脳の支配者・f05018)である。
彼はバーチャルレイヤーの迷彩昨日を活かし、近辺を探っていた。しかし具体的な場所にたどり着かずにいた所、リリィ達が来たという訳である。
監視カメラによって信者達の助けが来ることを期待していたらしい下っ端の男は絶望と共に全てを諦め、カメラに写らずに廃寺までを案内する事となった。
「俺は入り口までしか知らねぇよ」
それに嘘は無いと見てとったリリィは、一打ちで男を気絶させる。
「中がどうなっているか、忍び込んでみればわかるよねえ」
迷彩機能を使いつつ、エグゼは塀を乗り越え廃寺に侵入した。
既に夕刻。それなりに広い境内は、荒れ果ててはいる。しかし、落ち葉を踏み荒らした痕跡などから、人の出入りは間違い無いと判断できた。そして、何か重機等を入れた様子は確認できない。であれば、隠し部屋や地下等、大掛かりな改造は無いとエグゼは読む。
慎重に歩みを進めるエグゼは、僧堂だったと思われる建物から人が出てくる気配を感じとり素早く身を隠した。
「アイツめ、何をやっている。もうとっくに時間は過ぎているぞ」
「何かあったのかも知れん。アイツ等を準備して置くか」
「ああ。次の生け贄が来れば、儀式は完成だ。念を入れなければ……」
姿を現したのは二人の中年男。先程下っ端男の話をしていると見える。
拠点らしき建物は発見したものの、二人の男はエグゼの居る方に歩いてくる。このままでは見つかると判断したエグゼは、一時退避を決意する。
しかし、その情報は他の猟兵達に一斉にもたらされる。
場所は特定出来た。いよいよ強襲の時である。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
調査の末、儀式が行われる場所を特定した猟兵達。
件の廃寺に集結した猟兵達は、事前に確認できているセキュリティを潜り抜け、僧堂に迫る。しかしその時。
「助けて!」
「ママ!」
「いやぁ!」
静かな境内に、子どもの声が響いた。そして、巨大な鳥の羽音も――。
猟兵達の前に姿を現したのは、邪悪な鳥人間の姿をした怪物。それも、十数体は居る。今しがたの子どもの声は、この怪物達の発したものだった。
しかし、猟兵達は意志の見えぬ様子から直ぐに理解する。言葉を話している訳では無い。オウムの様に、人間の声を真似ているのだ。己が喰らった、子ども達の悲鳴を。断末魔の叫びを。
近頃起きていたという、子どもの行方不明事件。その元凶を突破せねば、儀式の行われる僧堂にはたどり着けない。
猟兵達は、邪神の眷族『嘲笑う翼怪』に対峙した。
第2章 集団戦
『嘲笑う翼怪』
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POW : 組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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調査の末、儀式が行われる場所を特定した猟兵達。
件の廃寺に集結した猟兵達は、事前に確認できているセキュリティを潜り抜け、僧堂に迫る。しかしその時。
「助けて!」
「ママ!」
「いやぁ!」
静かな境内に、子どもの声が響いた。そして、巨大な鳥の羽音も――。
猟兵達の前に姿を現したのは、邪悪な鳥人間の姿をした怪物。それも、十数体は居る。今しがたの子どもの声は、この怪物達の発したものだった。
しかし、猟兵達は意志の見えぬ様子から直ぐに理解する。言葉を話している訳では無い。オウムの様に、人間の声を真似ているのだ。己が喰らった、子ども達の悲鳴を。断末魔の叫びを。
近頃起きていたという、子どもの行方不明事件。その元凶を突破せねば、儀式の行われる僧堂にはたどり着けない。
猟兵達は、邪神の眷族『嘲笑う翼怪』に対峙した。
タイタス・レイヴン
「加勢する!状況はどうなっている?」
「子供達はいなかったのか?いや違うなこれは・・・まさかこれは怪物め!許さんぞ!子供達の無念は晴らす!」
「戦闘モード レッツ!モーフィング!出し惜しみはしない!全力で刈り尽してやる。プログラムド・ジェノサイド起動!!」
戦闘形態に変身し、仲間達に加勢。プログラムド・ジェノサイドによる超高速連続攻撃で攻め立てる。それはクランケヴァッフェで翼をはぎ取り飛ぶことを阻むかのように。
勝利出来たならばはUDC組織に連絡を取り、適切な情報統制と処理を行うように依頼する。
「子供たちの供養をしなければな。親たちが不憫でたまらない。」
古高・花鳥
なんて酷いことを……
情報を集めてくださった皆さん、本当にありがとうございました。今からわたしもお力添えできることに感謝いたします。
惨状に涙ぐんでる暇はありませんね、もうこれ以上の犠牲は出しません。絶対に……
組みつきが来ることを考え、敵の手足を狙い「月下抜刀流・花鳥一閃」を。なるべく動きに支障が出るように、根元や関節を斬ることを心がけますね。この技は縮地のような足捌きで迅速に相手に近付けます、他の方に組みつかれる前に斬らなければ。
断末魔模倣がきた場合には耐えられる自信がありません。腕や足を自ら斬りつけてでも正気を保ちたいと思います。
子ども達を思うと言葉も出ません。わたし達が、必ずや断ち切ります!
「加勢する!状況はどうなっている?」
まさに戦闘が始まらんとした時、やや遅れたタイミングで合流してきた猟兵がいた。タイタス・レイヴン(復讐の大鴉・f06435)と、古高・花鳥(月下の夢見草・f01330)だ。
「なんて酷いことを……」
「これは……怪物め!許さんぞ!」
瞬時に状況を悟った二人は、それぞれの想いとともに、即座に戦闘体制に入る。
「戦闘モード レッツ!モーフィング!」
高らかな変身コールと同時に、完全戦闘形態へと変形するタイタス。元より出し惜しみをするつもりは無い。
プログラムド・ジェノサイドを起動し、タイタスのクランケヴァッフェによる超高速の連撃が『嘲笑う翼怪』を襲う。
タイタスの攻撃で翼をはぎ取られた『嘲笑う翼怪』は甲高い叫びを上げると、どす黒いオーラを纏い、タイタスのプログラムド・ジェノサイドにも迫る速度で応戦する。その力の源は、邪神の呪い、夜の闇、そして――喰らった子どもの怨念。
「子ども達の無念は晴らす!」
その邪神の加護を前に、更なる闘志を燃やすタイタス。
激しい攻撃の応酬を制したのは、タイタスだった。この戦いに勝利した暁には、子ども達の供養をする事を誓うのだった。
一方、花鳥は『嘲笑う翼怪』達が意味も分からずに発し続ける、子ども達の悲鳴に思わず涙を滲ませていた。
(もうこれ以上の犠牲は出しません。絶対に……)
もはや言葉は要らない。断ち切るのみだ。ぐっと涙を拭った花鳥は、飛びかかって来る『嘲笑う翼怪』を正面から見据え、花鳥に掴みかかろうとする羽毛に覆われた怪腕を逆手抜刀で斬り裂く。
今そこに居たと思えば、次の瞬間には反対側へ。他の猟兵達のサポートも兼ね、次々とその手足に斬りつける。
その様子を見た『嘲笑う翼怪』の一体は、距離の有るうちに空中へと飛び立つべく、その大きな翼を羽ばたかせた――はずだった。実際には、その翼の片方を斬り落とされた『嘲笑う翼怪』は、無様にバランスを崩して転倒していた。
この程度の距離は、無いのと同じ。それが「月下抜刀流・花鳥一閃」なのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エレアリーゼ・ローエンシュタイン
・裏の少年人格で行動
…助けられなかった
オレも、エルも村の子供と同じだった
何も分からず犠牲にされて
だから今度は…喰われる前に喰らってやる
自分を狙った敵へ、捨て身の一撃でカウンターを狙うように
咎力封じでの拘束を試みる
まずはその鬱陶しい翼から封じて、叩き落としてやる
ユーベルコードまで封じた奴は一先ず放置
当座の目的は、動ける敵を確実に減らす事
殲滅はその後だ。それか攻撃役に任せる
…あぁうるさい、うるさい、喚くな!
貴様等こそ、喰われる側の恐怖を思い知ればいい!!
リリィ・アークレイズ
メインディッシュの前の害鳥駆除かよ!
良いぜ、全員纏めてミンチにでもしてやらァ!
機械化してる右脚に収納してた相棒(ORANGE LIB)の出番だな。
オレのユーベルコードを撃ち込んでやるよ鳥頭。
狙いは空中に居るアホヅラの敵のみだ。味方が射線上に出てくんなよ?
空から向かってくるなら射程内に入った時点で返り撃ち。
降りて来ない臆病チキンならこっちから敵陣に飛び込んで殺る。
隙あらば追い打ち(2回攻撃)は戦闘のキホンだろ?
追加の弾薬はサービスだ。腹一杯喰らって死にな!
「弾のおかわり要りますゥ? 要らねェ? あっそ」(発砲)
「癪に障る声出してんじゃねェよ!耳イカれちまうだろ!」
「終わりだ鳥頭」
「良いぜ、全員纏めてミンチにでもしてやらァ!」
リリィは機械化されたその右足から、ダブルバレルショットガンを取り出す。これがリリィの橙色の相棒、『ORANGE LIB』だ。
リリィをその羽毛に覆われた怪腕にて掴もうと、『嘲笑う翼怪』達が襲いかかる。
しかし、リリィの半径12メートルの範囲内に入った瞬間、『ORANGE LIB』が火を吹く。
「癪に障る声出してんじゃねェよ!耳イカれちまうだろ!」
子どもの悲鳴など問題にならぬ、ショットガンの轟音を響かせ、次々と『嘲笑う翼怪』を打ち緒として行く。
(……助けられなかった)
エレアリーゼ、いや、今は苛烈な少年人格の『エル』。エルは、怪物達に無惨に食らわれた子ども達に、自分達の境遇を重ねる。
同じなんだ。だから今度は……
「喰われる前に喰らってやる」
邪神の加護によって大幅にその力を増した個体が、エルを喰らわんと嬉々として躍りかかる。なにせ、大好物なのだ。
それに対してエルは……何ら迎撃をしようとしない。あまりにも無防備な姿。
『嘲笑う翼怪』が、その口を大きく空けてエルの頭を噛みちぎる。その刹那。
血塗れの歯は、エルに触れる事は無かった。流れるような動きで身をかわしたエルが、その羽をロープで拘束したのだ。
翼の自由を失い、地面に叩きつけられた事で動揺して逃げ出さんとする『嘲笑う翼怪』を、更に手枷、猿轡で瞬時に拘束する。確実に動きを封じるため、ギリギリまで引き付けたのだ。
ここまで封じれば、差し当たっては驚異にはならない。まずは、動ける敵を減らして行くのだ。
猿轡で拘束されているためにキィキィと不明瞭にわめき散らす『嘲笑う翼怪』を横目に睨み、エルは次の標的に向かった。
「貴様等こそ、喰われる側の恐怖を思い知ればいい!!」
哀れにも取り残された『嘲笑う翼怪』。なんとか脱出しようともがき転げ回るうちに、その後頭部にゴリ、と押し付けられたものがある。
「弾のおかわり要りますゥ? 」
じたばたともがき逃げようとする『嘲笑う翼怪』が、何とかその口から発した鳴き声は。
「イヤァ!イヤァ!」
「要らねェ?あっそ」
……結局何の躊躇もなく、その引き金は引かれたのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルノーン・プライジエ
「加勢いたします!」
前線に加わるべく敵へ吶喊します。
「最善を尽くし、犠牲になった方々の無念を晴らします!」
パワーとスピードを活かし戦闘を参加します。
有効打を生み出すべく強化合体をタイミングを見て行い、敵の殲滅を図ります。
エト・ルカス
あ、調査ありがとうございました……
あの、僕も加勢しますね……微力ですけど。頑張ります。
こういう時は、えーと。僕の死霊騎士と蛇で。
……ルカスはこういう敵だと絶対出てこないから。
僕は攻撃食らう訳にはいかないんで、ちょっと下がってますね。
他の人の陰に隠れられないかな……僕痛いの苦手なんですよ。
その鎌さ、いいだろ
騎士も、まんま死神って感じのスタイルでさ、持ってる鎌も僕のと同じなんだよ、いいだろ?
処刑用の鎌だよ、お前の首を落とすの
子ども食う奴なんか、首晒して無残に死んだほうがいいだろ?
で、蛇に内臓食い破られてさ。
な、死んじまえ、死んじまえって
羽根撒き散らして汚らしく死んじまえよ、な?
なぁ?
蛇塚・レモン
(物陰から様子見)
あとひとふんばりだねっ!
よーし、あたい“たち”の出番!
って、蛇神様? 別に変わっていいけど……?
(以後、裏人格:蛇神オロチヒメで行動)
ふんっ、ここは蛇神たる余が貴様等へ引導を渡す
優しいレモンには奴らの攻撃は堪えるであろう
サモニング・ガイスト!
ゆけ、古代の戦士よ
古代の戦士を先行させ、槍と炎で対空攻撃させる
余は物陰で様子を窺う
敵の攻撃、動きを封じられるのは余だけである
霊体である古代の戦士には効かぬはず
念のため耳は塞いで周囲警戒
余は充分に敵が古代の戦士へ注意が向いたと判断次第、物陰から飛び出て背後から黒剣で確実にトドメを刺す【だまし討ち】を敢行
その際に【衝撃波】を起こし一網打尽だ!
「加勢いたします!」
凄まじいパワーとスピードを以て、前線に吶喊すふルノーン・プライジエ(ウォーマシンのガジェッティア・f03967)。外見こそ古めかしい趣だが、その性能は最新型に何ら劣るものでは無い。
更に、ルノーンに随伴するのは、自身が開発した『強襲用強化機体』。半自律的に行動し、ルノーンとともに『嘲笑う翼怪』達を蹴散らして行く。
その力を驚異と見た怪物達は、二体がかりでルノーンに組みつき、怪腕をもって引きずり倒そうと試みる。流石に不利か、と見えたその時、ルノーンは『強襲用強化機体』を呼ぶ。
「自機強化プロトコルを開始します」
ルノーンに急接近した『強襲用強化機体』はそのボディを展開させ、ルノーンのボディと合体。当初の二倍ものサイズとなる。当然そのパワーも推して知るべきである。
合体とともにはね除けた二体の怪物を、今度は捻り潰したのだった。
前線で大暴れするルノーンが作り出した隙を利用し、エト・ルカス(mirrors・f05965)は安全に『死霊騎士』と『蛇』を呼び出す事に成功する。
『死霊騎士』――騎士と言うよりは死神の方が相応しい姿だが――は、その鎌で怪物を斬り裂いて行く。しかし、騎士と蛇を操るのがエトと見抜いた一体が、恐怖と狂気に陥れんと、身の毛もよだつ叫び声をあげる。
「ママァ!ママァ!イヤァ!」
しかし。
「マ……」
怪物の背後から近づいた騎士が、その首に鎌をかけて叫び声を止めた。その呪詛の声は、エトには然程の効果をもたらさない。同じく呪詛の力を持つ故か?
「その鎌さ、いいだろ」
騎士に抑えつけられた『嘲笑う翼怪』に近寄りもせず語りかけるエト。
「まんま死神って感じのスタイルでさ、いいだろ?」
ズルズルと怪物の腹に這い寄る蛇。
「子ども食うやつなんかさ」
ギラリと鈍く輝く死神の鎌。
狂気を塗り潰すことが出来るのは、それ以上の狂気なのかも知れない。
ルノーンを挟んで対角線上。同じく隙を突こうと建物の陰から機会を窺うのは蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)。
「よーし、あたい“たち”の出番だねっ!……って、蛇神様?」
そう、彼女“たち”は一人では無い。その身に宿す『蛇神』と常に共にある。
次の瞬間には、元気溢れる『レモン』から、荘厳な『オロチヒメ』へとその貌は変わる。
そして、彼女によって呼び出された古代の戦士が、物陰で隙を窺うオロチヒメに代わって『嘲笑う翼怪』に向かう。
槍や炎で空中の怪物達を追い立てる古代の戦士に、怪物達は断末魔の模倣を浴びせかける。
「痛いよお!さっちゃぁん!」
しかし、元より例体である古代の戦士には、恐怖も狂気も無縁のものである。そのおぞましい叫び声を身に受けながらも、淡々と攻撃を繰り出すのみ。
(優しいレモンには、堪えるであろう)
いくら距離を取っているとはいえ、その叫び声を完全に耳に入れずに済む訳では無い。主人格のレモンを子の様に可愛がるオロチヒメは、やはり自分が出てきて良かったと深く息を吐く。
自らの鳴き声が効果無しと悟った怪物達は、肉弾戦に切り替えて古代の戦士を組み伏せようと地面に降り立った。これこそが、オロチヒメが待っていた絶好の機会。
「ふんっ、蛇神たる余が貴様らに引導を渡す」
一気に怪物達との距離を詰めたオロチヒメは、背後から黒剣を一閃。
剣を直接受けたモノは無論、それに伴う衝撃波は周囲の怪物達をも薙ぎ払った。
成功
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第3章 ボス戦
『牙で喰らうもの』
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POW : 飽き止まぬ無限の暴食
戦闘中に食べた【生物の肉】の量と質に応じて【全身に更なる口が発生し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 貪欲なる顎の新生
自身の身体部位ひとつを【ほぼ巨大な口だけ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 喰らい呑む悪食
対象のユーベルコードを防御すると、それを【咀嚼して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑17
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猟兵達に襲いかかった『嘲笑う翼怪』も、一体を残すのみとなった。形成が絶望的となった怪物は、儀式の場である僧堂へと逃げ去った。
それを追い、儀式を中断させようとする猟兵達の耳に――
「イヤァァアァア!」
断末魔の叫びが飛び込んできた。
僧堂に踏み込んだ猟兵達は、充満する血の匂いに包まれる。窓から射し込む夕陽は、血が染み込み、乾いたと見える床を照らし出す。そしてまたそこに、新たな血が。
それは、倒れた信者達の死体から流れ出していた。生け贄の不足を、自らの命で補ったのだ。つまり。
「ゴオォアァア!」
薄暗かった僧堂の奥から、それは姿を現した。
体中に鋭い牙を持つ口。腹の口からは、大きな翼が覗く。満ち足りるという事を知らぬ、暴食の邪神。
『牙で喰らうもの』
エレアリーゼ・ローエンシュタイン
とうとう出てきてしまったのね
ああ、あんなにお腹をすかせて可愛そうに
でもね、パンの一切れだってあなたには渡せないし、
エルたちだって食べられるのはまっぴら
だから——
「食べられる前に、食べてしまいましょう!」
「喰われる前に、喰らってやるよ」
オルタナティブ・ダブルで、常に挟み撃ちにするよう位置取り
片方を狙った攻撃の動作の隙を突くように、もう一方が攻撃を加える
だまし討ち、傷口をえぐる技能も活用
手数で敵の注意を逸らし続け、仲間の攻撃を助ける
距離を取る際も、二人同時に離れるように
拷問具は、主人格が棘の鞭、裏人格が鉄の杭
古高・花鳥
ここで決着をつけなければ……!
相手が何も食べないように、距離を保ちつつ妨害をします。
足の部分の関節や筋のようなものがあれば、そこを攻撃して移動を妨げられます。
他にも、口になっている部分や、その繋ぎ目なんかは比較的斬りやすいのではないかと。
肉を食べさせてしまうと更に強化される性質です、下手に囮はできません。
代わりに衣服や刀の鞘なんかだったら、敵の撹乱の為にわざと食べさせて隙を生み出せるのではないかと思います。
この戦いでは支援や妨害に尽くしたいと思います。今のわたしでは確実に仕留められる技がありません。
平穏の為に、わたしが必ず道をつないで見せます。絶対に退きません!
甦った暴食の邪神。
『牙で喰らうもの』は、一声咆哮を上げると、猟兵達に襲いかかる。活きの良いエサがたくさん。こんなにも喜ばしい事は無い。
エルは、エル“達”は、二人で挟み撃ちをかけるように邪神に挑む。一方は棘の鞭。一方は鉄の杭。それぞれの拷問具を用い、互いの攻撃の隙を埋めるように立ち回る。
ああ、あんなにお腹をすかせて可愛そうに――
飢えというものは、誰にも平等に訪れる。人間であろうと、猟兵であろうと、そしてこの邪神にも。
喰う、喰われるは本能のぶつかり合いだ。エル達は、邪神にパンの一切れだって与えることも出来なければ、喰われるつもりも無い。ならば。
「食べられる前に、食べてしまいましょう!」
「喰われる前に、喰らってやるよ」
彼女等には当然の結論を述べて、更に苛烈に攻める。
エレアリーゼの鞭が邪神の皮膚を抉り、それを嫌がる邪神は腕で防ごうとするも――思ったように腕が上がらない。
鞭に気をとられる内に、鉄の杭が邪神の腕を地面に釘付けにしていた。
「オキャアア!」
その叫びは、痛みに依るものか、怒りに依るものか。
杭に貫かれた腕が動かないのも構わず、力の限り腕を引くと――腕が千切れた。
しかし、その千切れた断面が突如上下に裂けたかと思うと、そこには牙が現れる。それは巨大な口をもつ、邪神の頭部と同じ。
その牙がエルに襲いかかる!
すんでのところで腕の変じた口を切り落としたのは、花鳥の一閃だった。
この怪物を、必ずここで止める。その決意が、その太刀に更なる鋭さを加える。
そして花鳥の技の真髄は、その足捌きにある。縦横無尽に邪神の回りを駆け巡り、すれ違う度に一太刀浴びせて行く。
二人はその連携により。一人はその速度により。いずれも邪神を翻弄し、狙いを絞らせない。
焦りを見せた邪神が全身の口を大きく開き叫んだ時、腹の口に飛び込んできたものがある。
元より空腹である。それが何かも録に確認せず、その本能は喰らうことを選ぶ。しかし、一瞬の滞り。
腹に飛び込んできたのは花鳥の放った鞘。鞘がつっかえ棒のように、その腹に引っ掛かる。
しかし、それも一瞬の事。全てを喰らう牙はすぐにバキバキと音を立てて鞘を砕き、問題なく腹の口は閉じる。
しかし、その一瞬があれば十分。
その切っ先は、口が閉まりきる前に、口の端から胸にかけてを裂き、鮮血があがった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルノーン・プライジエ
「間に合いませんでしたか」
邪神を見つめ、もしこれがこの場所から
解き放たれた事を想像し目を細める。
邪神の口が飢えを訴え、蠢くのを見て。
「そんなに喰らいたいなら、私の攻撃でもくらいなさい!」
遠距離から邪神へ砲撃を行い、隙を見て距離を詰めつつ
格闘戦を行い足止めを図ります。
もし状況が悪ければ緊急要請を行い、
絶対に邪神の討伐をします。
ルノーンは、荒れ狂う邪神の姿を見つめていた。
復活を止められなかっただけではなく、こんなものを取り逃がし、世に放ってしまったらどうなるか。
今も、邪神の口は食糧を求めて醜く蠢いているのだ。断じて逃す訳には行かない。
「そんなに喰らいたいなら、私の攻撃でもくらいなさい!」
すぐさま距離を取る。己の武装を最も有効に使うことができる距離だ。
背部の『超重量大砲』を邪神に向けると、轟音を響かせながら砲撃を行った。
着弾。
ダメージは感じられるが、必殺とは行かない。ルノーンの大砲を驚異と認めた邪神は、その巨体に似合わぬ跳躍力でルノーンに飛びかかる。
大砲を有効に使える距離を潰されたルノーンは正体したまま後退し、サブアームである『大口径対物狙撃銃』を撃ち込む。本来の距離では無いが、とにかくありったけの弾丸を叩き込むのだ。
しかし、下がるルノーンよりも追う邪神が速い。今にも追い付くかと見えたとき、ルノーンはむしろ懐に飛び込む事を選んだ。
重量物同士が衝突する激しい音が響き――立っていたのはルノーン。
『超重装甲盾』とともに全速で、傷ついた腹の口に激突したのだ。邪神もたまらず怯む他ない。
成功
🔵🔵🔴
嶋野・輝彦
狂信といったらそれまでなんだが
こんな気持ち悪いモンの為に命をかけるってのはなぁ
なんて言っている場合でもないか
実戦も慣れてないしな
余計な事を考えてたら怪我じゃ済まんわな
戦闘
【POW】
アサルトウェポンで攻撃
零距離射撃、捨て身の一撃を重ねて相手に密着してラッシュ
攻撃を喰らっても覚悟、激痛耐性で耐えながら攻撃
こちとらついぞこの間まで一般人、劣るものってのは大変なんだよ
多少の無茶も必要だろう…っても痛ってぇんだよ畜生
死にかけたら戦場の亡霊
死にかけたら発動とかホント勘弁しろよ
俺が出来る事、ユーべルコードとスキルのシナジーはこれが一番割が良いんだろうな
割はいいが俺に対して全く優しくないんだよなぁ
勘弁しろよ
嶋野・輝彦(人間の戦場傭兵・f04223)には、目の前の光景をにわかには信じる事が出来なかった。目の前の邪神の姿や、激しい戦闘にではない。
この邪神を呼び出した、はた迷惑な邪神教団の信徒達を、輝彦は理解できない。もっとも、理解などしたくも無いが――
そんな事を考えている間にも、邪神は自分に目をつけている。直ぐに作戦を考えなければ。
考えなくても体が動く。自分はそんな歴戦の戦士なんかじゃ無い。考えて、考えて、生き残るために戦うのだ。
考えた末、輝彦はアサルトウェポンを連射しながら邪神に肉薄する事を選択した。有効な攻撃を確実に繰り出すには、近距離、出来れば零距離だ。
邪神の大口が輝彦に迫る。ギリギリでしゃがみ、と言うよりは前に転ぶようにして、相手の股の下をくぐる。泥臭くても、無様でも、出来ることは何でもやる。何でもだ。
背中側に回り込んだ輝彦は、密着状態で弾丸を撃ち込む。しかし邪神はその腕をぐるりと後ろに回し、密着する輝彦を力の限り抱き締めた。全身の骨が軋み、いくつかの砕ける音が聞こえる。
だらりと力の抜けた輝彦を吊り上げた邪神が大口を開けて頭から喰らおうとする。
その時、油断した邪神の背中の口に銃口を捩じ込み、体内に銃弾を流し込むものがあった。
それは、輝彦の呼び出した、戦場の亡霊。
「ったく、割に合わねぇよな……」
いや、割には合っている。分かってやっている事だ。その成果として、邪神は内部をズタズタにされた痛みにのたうち回っている。
「ホント、勘弁しろよ」
言いつつも、輝彦は体を引き起こした。
その銃口はまだ邪神を狙い続ける。
成功
🔵🔵🔴
リリィ・アークレイズ
よーーーう、ずっと会いたかったぜファングイーター。
ようやくお目覚めのとこ悪いがよォ、さっさと死んで貰うぜ!
相棒(ORANGE LIB)出番だぜ。
散弾銃ってのは弾がバラけるんだがよ、
弾が全部散らばりきる前に当たったら痛ェだろ?
だから至近距離でブッ放してやるよ(零距離射撃)
オマケにもう一発だ。遠慮すんなって!(2回攻撃)
足下に転がってる信者の死体をアイツから遠ざけてェ。
うざってェ口が増えんのはゴメンだからな。
他のヤツ(猟兵)戦力削いでくれんだろ。
蹴っ飛ばすなり何なり出来るぜ。
「マナーもへったくれも無ェな。落ちたモン喰うなよ…」
「腹減ってんのかよ?良いぜ、コイツを喰らいな!」
「コレで終い…っと」
ここに至って、『牙で喰らうもの』は猟兵達に対する認識を改めていた。
コイツらは単なるエサでは無い。己と互する『敵』だ。その本能は、生きたエサではなく、例え死肉でも、喰らい、力を増す事を選んだ。
信者達の死体を喰らおうと振り向くも、そこには有るはずの死体が無い。
「マナーもへったくれも無ェな。落ちたモン喰うなよ……」
そこに立つのはリリィ。他の猟兵達が戦う間に、邪神が喰らうことの無いよう、信者達の死体を遠ざけておいたのだ。乱暴に蹴り出すという方法で。
人間でも、空腹時はイライラするものだ。それが際限無く喰らい続け、満たされる事を知らぬ邪神であればどれ程のものか。
狂乱の叫び声をあげた邪神は、リリィを喰らわずにはいられない。その巨体を舞わせ、大口を開いてリリィに襲いかかる。
「腹減ってんだろ?良いぜ、コイツを喰らいな!」
ギリギリまで引き付けられた邪神の口中で、リリィの相棒、『ORANGE LIB』が火を吹いた。
本来なら散弾として分散されるはずの威力をその体内で全て受け止めることになる。流石の巨体も弾いた様に転がった。
「おいおい、まだ喰ってくだろ?遠慮すんなって!」
会いたくて堪らなかった“ファングイーター”だ。全弾召し上がって貰わなければ。
起き上がろうとする邪神の腕に零距離射撃。その腕は、根本から弾け飛んだ。
大成功
🔵🔵🔵
田抜・ユウナ
回避の拍子にお気に入りの伊達メガネがポケットから落ち、取り返す余裕もないことに舌打ち一つ。
最前線の経験は浅く、武器と言えばフック付ワイヤーが一本、真の姿は使用不可。邪神を相手に対抗策など一つとして…ないこともない
「…喰べていいわよ」
敵に、ではなく背中の妖刀に向かって囁いた。封じ込めていた怨念を解き放つ。直後、爆発的な妖気をまとって高速機動。
瞬き一つの間に敵の背後に回り込み、
「チェェエエストオオオォォォォォォォッッ!!」
薙ぎ払うように両腕を左右に振るって衝撃波攻撃。
「――田抜流無刀、熊手薙ぎ」
しかし、技の代償で吐血。…は、はやく再封印しないと。
●ユーベルコード
刃物は使えない代わりに自前の爪で斬撃
コロッサス・ロードス
「邪なる神よ、死を以て汝を無限の飢餓から救おう。無論慈悲からではない。我ら猟兵の都合でだ」
基本的に『武器受け』『盾受け』『オーラ防御』等の防御技能を活かす為、また仲間を『かばう』事で被害を抑える為にも、敵に肉薄して『おびき寄せ』攻撃を誘う
但し闇雲に突出する愚は冒さず、他の猟兵とも連携
攻撃は『鎧砕き』と『2回攻撃』で相手の防御力を奪いつつ、
【飽き止まぬ無限の暴食】等に対しては、敵の形態変化を素早く『見切り』、その動きの隙を突くために相討ち『覚悟』で敵の懐に飛び込み、腹部にある口に目掛けて『捨て身の一撃』【黎明の剣】を放つ
「もはや貴様に喰わす肉……否、命はない。最後の晩餐は我ら猟兵の刃と心得よ」
「あっ……」
田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)は、際どいところで邪神の牙を避けたものの、苦悩の声を上げた。伊達メガネをその拍子にポケットから落としてしまったからだ。
この命懸けの最中にも、案外日常的な感覚というのは残っているものだ。出来れば拾いたいな、という思いと、次の攻撃が来るぞ、という思いが同時に頭をよぎり、理性はやはり迫り来る牙から身をかわす事を選択する。
「チッ……そんな暇、とても無いわね」
激しくなるばかりの、手負いの邪神の攻撃に、あわや、と言うとき。
邪神の巨大な口を、その剣で正面から受け止めた者がある。
「もはや貴様に喰わす肉……否、命はない。最後の晩餐は我ら猟兵の刃と心得よ」
それは、コロッサス・ロードス(金剛神将・f03956)。その堂々たる体躯は、邪神の圧力にも退かぬ威容を備えている。
コロッサスは、ユウナが体勢を立て直す隙を稼ごうと、邪神の牙を振り払うと、その進行方向を誘導するように移動する。
コロッサスの剣撃は鋭い。次々と斬りつけ、邪神の強靭な肉体を傷つけて行く。『死神をも退かせる武』を目指す身で、このような邪神に遅れを取ってはいられない。
しかし、致命傷を与えるにはあと一歩――
眼前で激しく繰り広げられる戦いに、ユウナは一つの決意を固めていた。
自分は戦闘で最前線に立つ経験も浅い。武器も、フック付きのワイヤーロープ位なもの。そんな自分が邪神に対抗する手段など……一つしか無いではないか。
「……喰べていいわよ」
それは、生存を諦めて暴食の邪神への降伏を表明したものではない。その背に負う、妖刀への囁き。
その瞬間、滲み出る、等というようなものではない。爆発的な量の妖気がユウナを包んだ。
先ほどまでとは桁違いの速度で、ユウナは邪神の後ろに回り込む。
コロッサスと撃ち合っていた邪神が、それに釣られて視線を動かした時。まさに、狙っていた隙だ。
コロッサスは剣を振るい邪神に斬りつける。が、その剣は邪神の腕が変じた口に受け止められる。しかし、コロッサスはいとも簡単にその剣を手放し、力を込めた邪神の腕は反動で外へと開く。
瞬時に、無手となったコロッサスの手に、紅き神火と払暁の輝きを湛える剣が顕現した。
「邪なる神よ、死を以て汝を無限の飢餓から救おう」
コロッサスは、その巨躯からは信じられぬ敏捷性を以て邪神の懐に踏み込み、腹の口にその神剣を突き入れる!
ユウナもまた、その妖刀から溢れ出る妖気に体を蝕まれながら、邪神の背後から必殺の一撃を放とうとしていた。
正面のコロッサスの対処に手間取り、背後の自分には対応できていない。今だ。
「チェェエエストオオオォォォォォォォッッ!!」
交差させた腕を、裂帛の気合いとともに左右に振るう。それは、爪による『残撃』。その爪は邪神には届いて居ないが――その真価は、その衝撃波だ。
その鋭い衝撃波は、邪神の背を直撃した。
「――田抜流無刀、熊手薙ぎ」
元より、これまでの猟兵達の攻撃により、邪神は腹と背の口に深手を負っていた。それに加えて、前後より同時に、同箇所に攻撃を受けたのだ。流石の邪神も、力無い、声にもならぬ声を上げて崩れ落ちる。
その邪神の肉体は、まるで時間を速めているかの様に、ぐずぐずと腐り、崩れ去ってゆく。結局、この邪神はこの世の生物を喰らうこと無く、極限の餓えの中で消えたのだ。
技の反動で吐血し、かろうじて妖刀に再び封印を施したユウナは、その無情を眺めるのだった。
邪神はこの世から姿を消したが、それがこの世にもたらしたものは、消える訳では無い。
儀式のために集められた哀れな生け贄達の遺体は、境内に粗雑に埋められていた。
邪神の眷属達に喰われた子ども達は、その遺体すら残ってはいない。
さらにその親や友人達には、ただ、悲しみだけが残るのだ。
如何にUDC組織がその後始末に奔走した所で、具体的な記憶を消した所で、その悲しみばかりは、どうしようも無いものだ。
大成功
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