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紫陽花の気まぐれ(作者 志羽
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●紫陽花の気まぐれ
 雨が上がれば――きらきらと輝く雫が美しい。
 雲間から陽光が柔らかに差し込むサンルームで女は絵を描くための道具を並べて、男を呼ぶ。
「これが僕? だいぶ描きあがったよねー」
 絵のことは詳しくはわからないけど、この僕は綺麗ーなんて男は言う。
 そしてふ、と笑み浮かべて。
「どう? 添い遂げたい絵は描けそう?」
 その言葉に、女はどうかしらと瞳を伏せた。
 それはまだ、描きあがってみないとわからないと。
「そっかー」
 ま、簡単に描きあがるわけはないよねーと言って、男はいつもの場所へと座る。
 サンルームに置かれたテーブルと椅子。そこに腰掛けて、傍らに男は己の一等大切なものを置く。
「最後までみたかったけど」
 そろそろ飽きちゃったし、潮時かなーと小さく零し、笑み浮かべる。
 女はその姿を見て、絵に筆を入れていく。
「ま、面白いものも見れたしもうちょっとだけ付き合ってあーげよ」
 男が零した言葉は女には届いていない。
 女の視線はキャンバスの中だけに向いている。そこに描く――己が唯一求める者の姿を追いかけて。
 女は男が何者か知らない。それはこの紫陽花と幻朧桜で作られた迷路の奥で外界から離れしばらく過ごしているからもあるのかもしれない。
 必要なものは家の者が届けてくれる。ここでずっと、絵を描いているだけ。
 その紫陽花の迷路も男によって――影朧によって、今はひとびとを惑わせ狂わせる迷宮となっている。
 それも、女は知らないのだ。そして男が己が唯一求める者でない事もわかっている。
 だってあの人はもういない。
 死してしまった――幼馴染。幼馴染と言っても身分の差もあったのだから女の一方通行だったのかもしれない。
 それでも、その想いは揺らぐことなく。秘めて守ろうとしていたのというのに、彼は死んでしまった。
 泣いて喚けばわかってしまう。だから涙流さず心の奥底にしまい、しばらく絵を描くのだと洋館に引きこもった。
 そして現れた、影朧。
 影朧が彼にそっくりというわけではない。けれど、雰囲気が似ていると感じるのだ。
 そして男の言葉は女の心を無聊し、幼馴染から貰いたかったものをくれた。
 女は今、分からなくなっている。己が幼馴染を想っているのか、それとも影朧を想っているのか。
 心は気まぐれに移ろうもの――女は、男の甘やかで優しい言葉を心地よく感じ、この洋館に匿ったのだった。

●予知
「雨上がりの紫陽花を楽しむついでに、ひとつ解決してきてくれんかな」
 場所はサクラミラージュじゃよ、と終夜・嵐吾(灰青・f05366)はゆるり笑って、集う猟兵たちへと切り出した。
 匿われた影朧がいる。それを退治してきてほしいのだと。
「その影朧がどんな姿なんかは、わしにはちょーっと見えんかったんじゃけど」
 紫陽花で作られた迷路。その先にある小さな洋館にて匿われているのだ。
 その洋館はある絵描きの女のアトリエだ。
 彼女はそこで絵を描いていることだろうと嵐吾は続ける。
「わしが送れるのは、紫陽花路の近くまでじゃな。そこから先はちょっと不思議な……きっと影朧の力じゃろうが迷宮になっておる」
 それも、ただ人を迷わせるだけならばいいのだが――不思議な力を宿しているのだ。
 そこは人の心をうつろわせるのだ。
 恋人同士でいったのならば、その気持ちはほかの者に向いてしまうかもしれない。
 また一途に思っている相手がいたとしても、その気持ちが萎れてほかの誰かに向かうかもしれない。
 己が持っていた情が揺らぐのだ。けれどそれも、迷宮を通る間だけのこと。
 ひとときの気の迷いに惑わされてしまうのか、それとも惑わされぬのか。それは各々次第だろう。
「それと、女の事が知りたければ最寄りの紫陽花カフェーに行くと良い」
 それは件の洋館近くにある。女の実家がしているカフェーであり、紫陽花見事な庭園の一角にあり、この紫陽花の季節しか開かぬ店でもあるのだ。
 カフェーの席からは紫陽花を眺めつつ、甘味をいただく事ができる。手土産用の菓子もあり賑わっているのだという。
「絵描きの女もその店を訪れていたようじゃ。絵も飾ってあるようじゃしなんか、掴めることもあるかもしれんの」
 例えば、影朧と訪れたこともあるかもしれん。飾られている絵から得られる情報もあるじゃろうし、後々の助けとしてほしいと嵐吾は紡ぐ。
「ま、情報収集はできたら程度でカフェー楽しむのもええと思うんよ」
 では、頼むと――嵐吾は手の内でグリモアを輝かせ猟兵たちを送るのだった。





第2章 冒険 『うつろひの迷宮』

POWとにかく進んで踏破する
SPDなんらかの規則性を見つけて進む
WIZマッピングしながら進む
👑11

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。