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紫陽花の気まぐれ

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●紫陽花の気まぐれ
 雨が上がれば――きらきらと輝く雫が美しい。
 雲間から陽光が柔らかに差し込むサンルームで女は絵を描くための道具を並べて、男を呼ぶ。
「これが僕? だいぶ描きあがったよねー」
 絵のことは詳しくはわからないけど、この僕は綺麗ーなんて男は言う。
 そしてふ、と笑み浮かべて。
「どう? 添い遂げたい絵は描けそう?」
 その言葉に、女はどうかしらと瞳を伏せた。
 それはまだ、描きあがってみないとわからないと。
「そっかー」
 ま、簡単に描きあがるわけはないよねーと言って、男はいつもの場所へと座る。
 サンルームに置かれたテーブルと椅子。そこに腰掛けて、傍らに男は己の一等大切なものを置く。
「最後までみたかったけど」
 そろそろ飽きちゃったし、潮時かなーと小さく零し、笑み浮かべる。
 女はその姿を見て、絵に筆を入れていく。
「ま、面白いものも見れたしもうちょっとだけ付き合ってあーげよ」
 男が零した言葉は女には届いていない。
 女の視線はキャンバスの中だけに向いている。そこに描く――己が唯一求める者の姿を追いかけて。
 女は男が何者か知らない。それはこの紫陽花と幻朧桜で作られた迷路の奥で外界から離れしばらく過ごしているからもあるのかもしれない。
 必要なものは家の者が届けてくれる。ここでずっと、絵を描いているだけ。
 その紫陽花の迷路も男によって――影朧によって、今はひとびとを惑わせ狂わせる迷宮となっている。
 それも、女は知らないのだ。そして男が己が唯一求める者でない事もわかっている。
 だってあの人はもういない。
 死してしまった――幼馴染。幼馴染と言っても身分の差もあったのだから女の一方通行だったのかもしれない。
 それでも、その想いは揺らぐことなく。秘めて守ろうとしていたのというのに、彼は死んでしまった。
 泣いて喚けばわかってしまう。だから涙流さず心の奥底にしまい、しばらく絵を描くのだと洋館に引きこもった。
 そして現れた、影朧。
 影朧が彼にそっくりというわけではない。けれど、雰囲気が似ていると感じるのだ。
 そして男の言葉は女の心を無聊し、幼馴染から貰いたかったものをくれた。
 女は今、分からなくなっている。己が幼馴染を想っているのか、それとも影朧を想っているのか。
 心は気まぐれに移ろうもの――女は、男の甘やかで優しい言葉を心地よく感じ、この洋館に匿ったのだった。

●予知
「雨上がりの紫陽花を楽しむついでに、ひとつ解決してきてくれんかな」
 場所はサクラミラージュじゃよ、と終夜・嵐吾(灰青・f05366)はゆるり笑って、集う猟兵たちへと切り出した。
 匿われた影朧がいる。それを退治してきてほしいのだと。
「その影朧がどんな姿なんかは、わしにはちょーっと見えんかったんじゃけど」
 紫陽花で作られた迷路。その先にある小さな洋館にて匿われているのだ。
 その洋館はある絵描きの女のアトリエだ。
 彼女はそこで絵を描いていることだろうと嵐吾は続ける。
「わしが送れるのは、紫陽花路の近くまでじゃな。そこから先はちょっと不思議な……きっと影朧の力じゃろうが迷宮になっておる」
 それも、ただ人を迷わせるだけならばいいのだが――不思議な力を宿しているのだ。
 そこは人の心をうつろわせるのだ。
 恋人同士でいったのならば、その気持ちはほかの者に向いてしまうかもしれない。
 また一途に思っている相手がいたとしても、その気持ちが萎れてほかの誰かに向かうかもしれない。
 己が持っていた情が揺らぐのだ。けれどそれも、迷宮を通る間だけのこと。
 ひとときの気の迷いに惑わされてしまうのか、それとも惑わされぬのか。それは各々次第だろう。
「それと、女の事が知りたければ最寄りの紫陽花カフェーに行くと良い」
 それは件の洋館近くにある。女の実家がしているカフェーであり、紫陽花見事な庭園の一角にあり、この紫陽花の季節しか開かぬ店でもあるのだ。
 カフェーの席からは紫陽花を眺めつつ、甘味をいただく事ができる。手土産用の菓子もあり賑わっているのだという。
「絵描きの女もその店を訪れていたようじゃ。絵も飾ってあるようじゃしなんか、掴めることもあるかもしれんの」
 例えば、影朧と訪れたこともあるかもしれん。飾られている絵から得られる情報もあるじゃろうし、後々の助けとしてほしいと嵐吾は紡ぐ。
「ま、情報収集はできたら程度でカフェー楽しむのもええと思うんよ」
 では、頼むと――嵐吾は手の内でグリモアを輝かせ猟兵たちを送るのだった。


志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。
 プレイング締め切り、受付方法などはお手数ですがマスターページの【簡易連絡】をご確認ください。

 また、この依頼は志稲愛海MSの『紫陽花の通い路』とふんわり合わせとなっております。
 時間や場所はまったく別ですので、同時参加も問題ありません。

●シナリオについて
 第一章:日常『雨上がりの紫陽花路』
 第二章:冒険『うつろひの迷宮』
 第三章:ボス戦『???』
 以上の流れとなっております。

●一章について
 こちらは問題ないプレイングはすべて採用します。
 お遊びタイムです。
 紫陽花カフェーでの一時となります。
 見た目紫陽花な感じのスイーツが楽しめます。お持ち帰り用もあり。
 店内には影朧を匿っている者情報もちらほら。情報収集しなくとも問題ありません。
 詳細は追加される冒頭をご覧ください。

●二章について
 紫陽花の迷宮では、己の気持ちが『うつろい』ます。
 簡単に言うと一途な心を持っていてもほかの人が気になったり、気持ちが突然覚めてしまったり。
 己の抱く核たるものが揺れ動いたり。そんなことが起こります。
 それに流されるも、乗り切るも皆様次第。
 詳しくは冒頭にて。

●お願い
 複数人数でのご参加の場合は、ご一緒する方がわかるように互いに【ID】は【チームタグ】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。(続けて二章、三章参加の場合、IDについては必要ありません)
 ご協力よろしくお願いします。

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 日常 『雨上がりの紫陽花路』

POW   :    全てを満喫して楽しむ

SPD   :    おいしいとこどりで楽しむ

WIZ   :    ゆるりと穏やかに楽しむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●雨上がりの紫陽花を眺めて
 雨が上がった。紫陽花はその雨粒をきらきら輝かせながら咲き誇る。紫に青、桃、白とその色合いはさまざまだ。
 そんな移り変わる色の紫陽花路を進んだ先――こじんまりとした洋館があった。
 それはこの紫陽花の季節だけ開かれるカフェー。この辺りの地主が道楽のように開いているカフェーなのだ。
 そのカフェーは何処の席からも美しい紫陽花の光景が眺められるように店内は誂えられている。
 落ち着いた色合いの赤い絨毯ひかれ、上質な調度品で整えられていた。流れる音楽は気を削がぬ程度の音量の優雅なクラシック。
 どうやらオーナーの好みで彩られているようだ。
 その中でこの場に少し不釣り合いな絵が、いくつかある。
 それはオーナーの娘が描いた絵だという。上手くはある。けれどそれで食べていけるかといえばそれはわからぬのだ。
 カフェーに飾られた絵は紫陽花を描いたものもあれば――人物を描いたものもある。
 その人物は様々だ。小さな子供もあれば、家族の肖像画のような絵も。そして――紫陽花と、青年の絵もある。
 カフェーの店員に訊ねれば知っている話をしてくれるだろう。あの絵のモデルは、とか――ここにきてどう過ごしている、とか。
 仕事の邪魔にならぬ程度に聞くくらいなら問題なく答えてくれるはずだ。
 ほかにも――常連であれば、娘の話は知っているかもしれない。
 座り心地の良いソファに腰を下ろし、愛読書をひたすら読み。時折窓の外の紫陽花を眺め、一口珈琲を含み本に目を戻すという贅沢な時間楽しむものは毎年ここにきている常連のようだ。
 常連もいれば、初めて来たというような女学生たちも。
 紫陽花にちなんだパフェーは目も楽しませてくれる。細く背の高いグラスの一番底は抹茶ぜりぃ。その上に抹茶の生くりーむ。抹茶のぱうんどけぇきの上には葉っぱの形した薄い焼き菓子と、ぱたりと金平糖まとうそふとくりぃむがそびえ、紫陽花を模した和菓子が添えられているパフェー。
 それからしゅわしゅわ心地のサイダーには紫陽花のようなゼリーが踊っていた。
 そんなにたくさんはと思えば抹茶と紫陽花模した和菓子だけのセットもある。
 こそこそとお喋りする、少しくすぐったいような静けさの中で、良い香りに満ちたカフェー。
 腰を下ろす者もいれば、持ち帰り用の菓子を求める者もいる。金平糖を紫陽花のように包んだものや小さなツボに入った抹茶ぷりん。それはくりぃむと花のようなゼリーで紫陽花のように彩られていた。
 焼き菓子ではかっぷけぇき。それを彩るクリームは紫陽花のように色付いている。
 それらももちろん店内で食べることはできる。
 此処で暫し情報を得れば、娘がどうして影朧を匿っているのかもわかるかもしれない。
 それは絶対に知らなければならないことではないけれど――少しでも良き終わりを迎える可能性を見出したいなら耳にして損となることはきっとないだろう。
歌獣・苺
わぁ…!綺麗な紫陽花に美味しそうなスイーツ!お土産も素敵!団のみんなにも買って帰ろっと♪

…そういえば、なんだかご老人の様な話し方を人に例の絵かきさんの情報収集するよう言われてたような…?
…よし!お菓子のお土産をいっぱい買って、パフェでも食べながら店員さんと、それから…うん!あのコーヒー飲んでる人にもお話聞いてみよっと♪

話を終えたら
ゆっくり味わってご馳走様。
紫陽花の景色と口の中の甘い余韻に浸りながら、無意識に最愛の『彼』を思い出す。

こんな綺麗な景色
もっと一緒にみたかったなぁ。

それは、とある戦場で
二人の【本当の幸せ】のために
再会を約束して
私がこの手で『殺した』まーくん

――愛する唄舞くん



 落ち着いたたたずまいの洋館――そこはこの季節だけ開かれる紫陽花カフェーだという。
 歌獣・苺(苺一会・f16654)が足踏み入れて、最初に目に入ったのは様々なスイーツだ。
「わぁ……! 綺麗な紫陽花に美味しそうなスイーツ!」
 店に入ってすぐのショーケースには持ち帰り用のスイーツが沢山並んでいる。それらを目にして、苺の心は踊るばかり。
「お土産も素敵! 団のみんなにも買って帰ろっと♪」
 どれにしようかな、と選びながら苺は思い出す。
(「……そういえば、なんだかご老人の様な話し方を人に例の絵かきさんの情報収集するよう言われてたような……?」)
 苺は視線を巡らせる。ふと顔を上げれば――絵があった。ひとつ、ふたつ。そのどの絵にも同じサインがしてあるのだ。
 そこでよし! と苺は頷く。
(「お菓子のお土産をいっぱい買って、パフェでも食べながら店員さんと、それから……うん! あのコーヒー飲んでる人にもお話聞いてみよっと♪」)
 どうぞ、と案内された席は幸運なことに先程視線向けた珈琲を飲んでいた初老の男性の隣。
 注文をして、それを待つ間にくるりと視線回せばふと、その隣の席の男性と目があった。小さく会釈すると、同じように返してくれ。
「こちらは初めてですか、お嬢さん」
 そんな風に声を掛けられたので世間話のように色々と聞いていく。
 ここはこの季節のみの店なのだとか、時折オーナーもやってくるとか。
 絵は、オーナーの娘が描いたもの。植物から人物と様々な絵を描いているのだと教えてくれた。
 彼女はこの近くに住んでいるのだとか。
 そうしているとパフェーが運ばれてくる。それを見てごゆっくり、と彼は自分の手元の本へと視線を向けた。
 苺はひとくちずつ、ゆっくり味わっていく。
 外を見れば――紫陽花の景色。それと共に口の中に広がる甘い余韻に浸る――その中で、無意識に思い出す。
 無意識に最愛の『彼』を思い出していく。
(「こんな綺麗な景色、もっと一緒にみたかったなぁ」)
 彼は、いないのだ。
 とある戦場で――二人の、本当に幸せのために再開を約束して。
(「私がこの手で『殺した』まーくん」)
 ――愛する唄舞くん、と。
 一口運んだパフェーのアイスが冷たく、口の中に甘さ運んで溶け落ちていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
品書きを端から端まで眺めても
一向に決まらないものだから

お手上げです、

吐息と共に椅子の背に凭れ込む
台詞とは裏腹、嬉し気な声

意を決して身を正し
給仕さんを招く

間違いなく味わいも見目もうつくしいでしょうし
ひとつに絞れません
お勧めの品を全部くださいな

イタダキマスは満面の笑みで
小気味よく拍手をひとつ

本体が虚ろに欠けた器故か
幾ら食べても身にならぬのを幸いに
次々平らげていく健啖家ぶり
一口一口大切に
(甘味描写お任せ)

素材の組み合わせや味に感心の声をあげたりして
正に至福のひととき

綺麗に完食した後は感謝の一礼

食後の一服に紅茶を頂きながら
庭の紫陽花を眺め遣る様は一見優雅だけれど
卓にずらり並んだ空の器は何処かユーモラス



 端から端まで眺めても――一向に心は定まらない。
 お手上げです、と都槻・綾(糸遊・f01786)は吐息と共に零して、椅子の背に凭れ込んだ。
 困っているには困っているけれど、これは贅沢で幸せな困り事。
 言葉とは裏腹、嬉し気なものがそこには滲んでいた。
 しかしずぅっと悩んでいるわけにもいかない。
 意を決して、綾はきちんと身を正し、そして手をあげて給仕を招く。
「ご注文はお決まりになりましたか?」
 その声に綾はにこりと微笑んで。
「間違いなく味わいも見目もうつくしいでしょうし、ひとつに絞れません」
 お勧めの品を全部くださいな、と微笑めばあら、と給仕の者は笑って。
「紫陽花のパフェーと、ぷりんはやはり外せぬお勧めでございます。それから、季節のフルーツたっぷりのタルトもお持ちいたしましょう」
 今日のタルトはイチジクのタルトでございますと告げる。そして運ばれてくるそれらはやはり目にも楽しいもの。
 イタダキマスは満面の笑みで、小気味よく拍手をひとつ。
「まずは……やはり」
 紫陽花のパフェーだろう。溶けてしまってはもったいないと、金平糖を纏うそふとくりぃむをひとすくい。
 ひんやり、そしてかりっと金平糖の食感が楽しいもの。
 そして紫陽花の和菓子は、一口で食べてしまえるものだ。上品な餡の甘味はまた綾の舌を唸らせる。
 そふとくりぃむがわずかに溶けて染みこんだパウンドケーキはしっとりとして。
 一口一口大切に――パフェーをぺろりと平らげて次はぷりんと手を伸ばす。
 持ち帰り用だというそれも紫陽花の様。掬い上げた花はゼリーだ。それもまたすぐに空になっていく。
 本体が虚ろに欠けた器故か――幾ら食べても身にならぬ。年頃の娘が聞いたらなんとうらやましいということだろう。
 それ幸いに、次々と平らげていく健啖家ぶり。
 そして一口ごとに美味しいと表情に滲むものだから――給仕の者も嬉しかったのだろう。
「お客様、どうぞこちらも。サァビスでございます」
 まだ余裕のありそうな様子に持ち帰り用の金平糖のつつみが添えられた。
 綾は微笑んで、その好意を受け取り最後のイチジクのタルトを口に運び始める。
 さくりとしたタルト生地。程よい甘さのかすたぁどくりぃむに旬のイチジクがたっぷり乗っている。
「これは……」
 一口。まさに至福のひとときと言える――旬のものはあっという間に皿の上から消えていく。
 そして食べ終わったならご馳走様でしたと感謝の一礼を。
 食後の一服は紅茶。
 温かなそれを香り楽しみながら口に運び、庭の紫陽花を眺め遣る様は優雅だけれど――綾の前には空の器がずらりと並んで何処かユーモラス。
 その器がなければ、一枚絵になりそうな光景だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千々波・漣音
ちぃ/f28195と

ちぃはカフェー初めてか
仕方ねェな、オレがエスコートしてやろう(ふふん
てか、滑って素っ転ぶなよ
って、おい!…おわっ(庇い転ぶ
はァ!?いやオレ、助け…何その溜息!?
まぁちぃに怪我ねェならいーけど…

ちぃは何にする?(世話焼きつつ
俺もパフェかなー美味そうだし映えそうじゃね?
あとプリンな!
撮影いいなら映え写真撮る(ミーハー

ん、美味いな!
って!?あっ、俺の白玉…っ!
最後の楽しみに取っ…まぁいっか…
プリンも食うか?ほら(器渡し
美味いか?そりゃよかった(微笑ましく見つつ

絵、か
てかちぃ、この絵の野郎よりオレ様の方がイケメンだろ…って聞けよ!?
…そっか、こういう野郎好きじゃねーか(密かに嬉し気


尾白・千歳
さっちゃん(f28184)と

かふぇーって何?
私、初めて行くー
むっ、転んだりなんかしないもん!
あ、ここ濡れて…きゃっ(足滑らせ
…さっちゃん何してるの?
はしゃぎすぎだよー(溜息

すごーい!
いろんなのがあるんだねぇ
いっぱいあって迷っちゃうな
うーん…私、ぱふぇーっていうのがいい!
写真撮ってないで早く食べようよー

いただきまーす!
おいしい…!
これ、おいしいねぇ!
特にこの白くて冷たいのがすごくおいしい!
そふとくりぃむっていうんだ…幸せ~
さっちゃん、それいらないの?
じゃぁ私が貰ってあげる!
そのプリンもおいしそう~(じぃ
わーい、ありがとう!おいしい~(ほにゃ

絵?
ねぇこの人イケメン?
でも私はあんまり好きじゃなーい



 尾白・千歳(東方妖怪のどろんバケラー・f28195)はこてんと首を傾げて、千々波・漣音(漣明神・f28184)に問いかける。
「かふぇーって何? 私、初めて行くー」
「ちぃはカフェー初めてか」
 カフェーは何か、と問われれば――説明はできそうだが見せた方が早い。
 そこで漣音はふふんと胸張って。そして濡れた道へと目をやりつつ。
「仕方ねェな、オレがエスコートしてやろう。てか、滑って素っ転ぶなよ」
「むっ、転んだりなんかしないもん! あ、ここ濡れて……きゃっ」
 雨上がり、ちょっと足が滑って――なんてこともあるかもしれない。
 千歳は僅かにバランスを崩した。
「って、おい! ……おわっ」
 それを庇おうとして漣音が大きく踏み込めば、派手に足を取られて転んだ。
 そして庇おうとした千歳は踏みとどまってこけてはいなかったのだ。
 地面とこんにちはして、いてぇ、と零す漣音を見下ろし千歳は溜息一つ。
「……さっちゃん何してるの? はしゃぎすぎだよー」
「はァ!? いやオレ、助け……何その溜息!?」
 その言葉にばっと顔あげ、漣音は立ち上がりながら彼女の姿を確認してぽそりと。
「まぁちぃに怪我ねェならいーけど……」
 世話焼き心を持つ男は幼馴染が無事ならそれでいい。ちぃ、行こうぜと漣音は言って示す。カフェーはもうすぐそこなのだからと。
 こじんまりとした洋館。
 その扉開けばいらっしゃいませ、とふかふかのソファ席へと案内される。
 そしてお品書きを一緒に開けば千歳の瞳は輝き尻尾は揺れる。。
「すごーい! いろんなのがあるんだねぇ」
「ちぃは何にする?」
「いっぱいあって迷っちゃうな」
 けれど、お品書きにある手書きの絵――それを見ればやっぱり、と目は止まる。
「うーん……私、ぱふぇーっていうのがいい!」
「俺もパフェかなー美味そうだし映えそうじゃね? あとプリンな!」
 注文決まれば早速お願いして。今まで置いていたお手拭きで手をふけよ、なんて漣音は世話を焼く。
 そして運ばれてきたパフェーに二人は小さく声あげる。
 漣音はすちゃっとスマホ取り出して映える、と写真を撮る。こっちの角度のがいいか、と言っていると。
「写真撮ってないで早く食べようよー」
 焦れてきて早く、と千歳からの声。もうちょっと撮りたい気持ちもありつつスマホしまって、いざ。
「いただきまーす! おいしい……!」
 一口運んでぱぁ、と千歳の表情は華やぐ。
「これ、おいしいねぇ! 特にこの白くて冷たいのがすごくおいしい!」
「ん、美味いな!」
 それはそふとくりぃむっていうんだぜ、と漣音が教えると、千歳はもう一掬い。
「そふとくりぃむっていうんだ……幸せ~」
 両頬挟む様に手を当てて、ふにゃりと幸せの笑み零す千歳の目に、はたとそれが映った。
 美味しいのだから最初に食べるはずのそれが残っている。
 まっしろでまぁるい、おいしいもの。千歳の尻尾はゆらりと踊っていた。
「さっちゃん、それいらないの? じゃぁ私が貰ってあげる!」
 千歳はしゃっとスプーン伸ばしてそれを掬い取りぱくり。
「って!? あっ、俺の白玉……っ! 最後の楽しみに取っ……まぁいっか……」
 真っ白もちもちも白玉。最後の楽しみを持っていかれた時はちょっとショックだったのだが――目の前で幸せそうに食べている顔に、漣音は笑みプリンを一口。ほんのり抹茶の香りがしてこれも美味いなと思っているとじぃ、と視線感じた。
「そのプリンもおいしそう~」
 それは千歳の視線。それに笑って、漣音はずいと前に寄せてやる。
「プリンも食うか? ほら」
 器渡せばほにゃと千歳は嬉しそうに。
「わーい、ありがとう! おいしい~」
「美味いか? そりゃよかった」
 幸せ~と言葉にせずとも分かるその表情を漣音は微笑ましく見つつ、ふと視線を巡らせた先に絵を見つけ。
「絵、か」
「絵?」
 その視線を千歳も追う。そしてむーんと唸った。
 紫陽花の中に立つ男の姿。その表情はわざとだろうか、ぼかしてあるような描写だった。
 それはまだ描くものを定められていないような、そんな姿。
「ねぇこの人イケメン?」
「てかちぃ、この絵の野郎よりオレ様の方がイケメンだろ」
「でも私はあんまり好きじゃなーい」
「……って聞けよ!? ……そっか、こういう野郎好きじゃねーか」
 そっけなく言って。けれどその言葉にひそかに嬉し気にする漣音。
 イケメンより、その絵より今はぷりんの方が魅力的。
 千歳は一口食べてまた幸せ笑顔。漣音はその表情をまた微笑んで眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

遙々・ハルカ
よしのりサン(f05760)と

よしのりサンは好き嫌いないもんなァ~?
俺もこーいう場所はデート以外、縁無ェかな
ツレの下見に付き合うくらい?
最後まで楽な仕事なら最高だったけど

メニューを眺めるだけで腹の膨れてきた顔
造形に興味はあっても食事に興味がない所為
ウ~ン…
まァ~そこは頼りにしてンのよ、確かにね
とはいえ~?
じゃあ~…
ぷりん…

注文の品が来れば案外愉快そうな顔
コレ映えってヤツじゃ~ん
外に見える紫陽花と見比べて

スローペースで少しずつ口に運び

もういいや
別に多分美味いと思うけど
よしのりサンは?
美味しー?ワハハ

なんだっけ、手掛かり?
ハイハイ
ね、この絵で一番最近のってどれスか?
ほーん
色合いとかいい感じスねェ


鹿忍・由紀
ハルカ(f14669)と

甘いものが得意ってわけでもないけど
折角だから店自慢の菓子は頂いておく
普段こんなとこに入ることないしね
ゆっくりするのも仕事のうちってのはありがたいもんだよ

気になるやつ頼めば?
残しそうなら俺が代わりに食べたげるし
メニューを眺めつつ、色々検討
甘さ控えめそうなのを適当に

運ばれてきた菓子の細やかさに感心
これが映えってやつなんだね
食が進まないハルカにはお構いなしで
表情も変えずに黙々と口へ運んでく
うん、美味いよ
残ったプリンへ手を伸ばして

何か手掛かり見つけてね
俺は食べるの忙しいから
プリンを頬張りつつ絵画を眺めてハルカにお任せ
おざなりだなぁ、なんて考えながら
ハルカの分まできっちりご馳走様



「よしのりサンは好き嫌いないもんなァ~?」
「甘いものが得意ってわけでもないけど」
 折角だから、と鹿忍・由紀(余計者・f05760)は向かう先の店へと視線向ける。
「普段こんなとこに入ることないしね」
「俺もこーいう場所はデート以外、縁無ェかな。ツレの下見に付き合うくらい?」
 遙々・ハルカ(DeaDmansDancE・f14669)は笑って、一人では絶対こないとこだなと歩み進める。
「ゆっくりするのも仕事のうちってのはありがたいもんだよ」
「最後まで楽な仕事なら最高だったけど」
 影朧がいるのだから、楽なままでは終われないことはわかっている。
 店に入り、席へ案内される。窓からは今まで歩んできた紫陽花の庭園がよく見えた。
 お品書きを開いて、ハルカはぱたりとそれを閉じた。
 もう決めたのかな、と思うがそうではない様子。どうしたのというように由紀が視線向ければ。
「メニュー眺めるだけで腹の膨れてきた……」
 造形に興味はあるけれど、食事に対しては興味がなく。
「気になるやつ頼めば? 残しそうなら俺が代わりに食べたげるし」
「ウ~ン……まァ~そこは頼りにしてンのよ、確かにね」
 ハルカはもう一度お品書き開く。その間に由紀は甘さ控えめそうなものを見つけていた。さっぱりしたお味、と書かれたゼリーは良さそうだ。
「とはいえ~? じゃあ~……ぷりん……」
 注文すればすぐに給仕がすぐに持ってくる。
 砕かれたゼリーがのった由紀のも、ぷりんの上にくりぃむが乗って紫陽花の形のゼリーのるハルカのも。
「コレ映えってヤツじゃ~ん」
 外に見える紫陽花と見比べて、ハルカは案外愉快そうな顔。
 由紀はその出来栄えに感心をしている。
「これが映えってやつなんだね」
 なるほど、と頷いて由紀は早速とゼリーを一口。
 ほどほどに甘く、けれど甘すぎず。葡萄のゼリーっぽい、ともう一口。するとカリっとした食感。小さな金平糖が隠れていたようで、それも少し面白い。
 そしてハルカもゆっくりとぷりんを少しずつ口に運んでいく。
「……もういいや」
 けれど、ひとくち、ふたくち目でもうギブアップ。
 美味しい。多分、美味しいと思うけれどそれとこれとは別なのだ。
「よしのりサンは? 美味しー? ワハハ」
「うん、美味いよ」
 ゼリーの器は空っぽ。由紀はぷりんに手を伸ばして、これも美味いと平らげていく。
 ぷりんを半分ほど口にしたところで、ふと。
「何か手掛かり見つけてね、俺は食べるの忙しいから」
「なんだっけ、手掛かり? ハイハイ」
 ぷりん頬張りつつ由紀は絵画を眺めつつハルカに言う。
 言われたハルカはひらりと手を振っておねーさーんと給仕を呼んで。
「ね、この絵で一番最近のってどれスか?」
 その問いに、彼女はあちらですと示す。
 それは紫陽花と、ひとりの男の絵。
「絵はこのカフェーのオーナーのお嬢様が描かれたものなのです。あちらは最近見つけられたモデルさんだとか」
「ほーん、色合いとかいい感じスねェ」
 ふんわりとした色合い。紫陽花と、その中に硯箱を持った男の姿が描かれている。
 最近、ということはあれがきっとと瞳細めて。
 その様子をおざなりだなぁ、と考えながら由紀も共に耳にしつつ、最後の一口を救う。
 ハルカの分まできっちりご馳走様。
 ゆるりとした時間のあとに、二人は紫陽花の庭園へとまた足を向ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈍・しとり
雨上がりならではの咲き様ね
あまり、長居したら悪いか知ら

小さく零しながら窓辺の席に浅く腰かけ
氷たっぷりのアイスティーと
一番小ぶりな紫陽花の金平糖を注文

人の心などどうせわからないのだからと
推理はヒトに任せ
己は束の間の雨宿り気分で
ぼんやりと庭園や店内の絵を眺める


小皿にまいた砂糖の花をひろいあげてはまた落とし
聴き慣れない楽の音に無意識に甘い雨音を重ねながら
紅茶の氷を溶かし寛ぐ

最後にだけ一枚の青年の絵を目のはしにとめ
まあ、一番好い顔ね
ただぞんざいに評してお終いに

窓硝子越しに爪先で紫陽花をひとなでして席を立つ
せっかくの花の煌めきが
洗い流されてしまわぬ様



 雨の上がったその先に、鈍・しとり(とをり鬼・f28273)はいる。
 雨神の妖崩れ、雨女であるしとりはその足取り軽やかに、件の洋館――この時期のみ開かれるカフェーへと向かって。
「雨上がりならではの咲き様ね」
 あまり、長居したら悪いかしら、と小さく零しながらしとり店内へ。
 給仕がどこでもお好きな席にご案内いたします、という。
 どこがいいかとしとりはさらりと店内を見て、あそこと示した。
 それは窓辺の、外が良くよく見える席。
 その席へと浅く腰掛けたしとりはお品書きを見つめる。
「ご注文はもう少し後で伺いましょうか?」
 その声に、もう決まっているわとしとりは小さく微笑む。
 氷たっぷりのアイスティーと、一番小ぶりな紫陽花の金平糖だ。
 視線をくるりと向ける。絵があるが、ふぅんと思う程度。
(「人の心などどうせわからないのだから」)
 そこを探って、真を見つけるのはヒトに任せる事。
 しとりは束の間の雨宿り気分でぼんやりと店内を眺め、そして外の紫陽花へと目を向けていた。
 しばらくすると、大きなグラスにたっぷりの氷のアイスティー。
 そして小さな金平糖の包みと皿。
 そのさらにころりころりと砂糖の花をまいて。
 一粒ひろいあげては、また落とし。
 それは聞きなれない楽の音。無意識に、甘い雨音を重ねながら紅茶の氷を溶かして寛ぐ。
 花は全部、口の中で解けるように溶けてなくなって。
 空のグラスの中で氷も小さく。
 ふ、と最後にだけ一枚、しとりは青年の絵を目のはしにとめ。
「まあ、一番好い顔ね」
 ぞんざいに評してしとりの興味はもうそこにはない。
 そっと、窓硝子越し爪先で紫陽花をひとなでして、しとりは席を立つ。
 せっかくの花の煌めき――それが、洗い流されてしまわぬ様に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
アドリブ歓迎

俺は機械だから、別に……
いや、カフェで注文をしないのもおかしな話か
俺も珈琲、それと紫陽花の甘味でお勧めがあれば
緑色のゼリー?ライナス、珍しいな
赤色や薄紅を選ぶかと……とまでは言えず、黙っておこうと

情報収集は基本ライナスに任せようと
ただ、飾られている絵が何かのヒントになるならば
作風に何かしらの変化がないか、分析を試みる
……今日はイレギュラーな行動が多いな、ライナス

珈琲と甘味を楽しみつつ
ライナスの言葉には思わず食べる手が止まるかもしれない
髪なんて食べたら、腹を壊すだろうが
何を言っているんだお前は、と
呟く声は思わず、感情が籠もってしまった気がするが……気のせいだ


ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

注文は俺は珈琲な…と、あんたはどうすんだよと声を投げつつも注文の間
リカルドの髪色に似た緑の紫陽花ゼリーを見ればこれも頼むわと追加を
…んだよ?意外かよ?

注文が来たら絵について尋ねてみるぜ
家族らしき肖像画と共にこの青年も家族なのか鎌を掛けつつ話を引き出せれば…と
あ?あんたの事だからな。転生させてやりてえとか考えんだろ?
それに…弱点つくにも情報は大事だからな

その後は珈琲とゼリーを口に運び楽しむか
はは、あんたの髪もこんな味がすんのかもな…って
馬ぁ鹿。んとには食わねえよ
それに血だけでも充分美味いからな、あんたと揶揄うような笑みを
ま、偶にはこういう時間も悪くねえんじゃねえの?



 注文は、とライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)は紡いで。
「俺は珈琲な……と、あんたはどうすんだよ」
 そう声投げつつもお品書きを捲れば――ライナスの目を引き寄せる手書きの絵。
 それは目の前に座る、リカルド・アヴリール(遂行機構・f15138)の髪色に似た緑の紫陽花ゼリーだ。それを指さして、これも頼むわと給仕に追加。
「俺は機械だから、別に……」
 と、リカルドは小さく零す。けれど、此処はカフェーだ。
「いや、カフェで注文をしないのもおかしな話か。俺も珈琲、それと紫陽花の甘味でお勧めがあれば」
 そう言いながらリカルドの目は、ライナスが頼んだものを視ていて。
「緑色のゼリー? ライナス、珍しいな」
 赤色や薄紅を選ぶかと――とまでは言えず、リカルドは黙っておこうと口を閉じた。
「……んだよ? 意外かよ?」
 お勧めはやはり紫陽花パフェー。それが多ければぷりんと言われぷりんを。
 給仕はすぐにお持ちしますと言って、離れていく。そちらへ視線向ければ、いくつかの絵が目に留まった。
 情報収集はライナスに任せる所。けれど、飾られる絵が何かしらのヒントになるならば、とリカルドも作風に何かしらの変化がないか、分析を試みる。
 作風に――変わりはないようだ。柔らかなタッチの絵。
 それを見詰めているとお待たせいたしましたと注文したものが運ばれてくる。
 珈琲が二つ。緑色の紫陽花ゼリーと、ツボに入ったぷりん。それはクリームと紫陽花のようなゼリーで飾られていた。
 と、ライナスは少し聞きたいんだが、と絵を示して給仕に問いかける。
「あれは家族、の肖像画か? あっちのモデルもそうなんだろうか」
「お揃いの絵はそうでございます。あちらは、お嬢様の幼馴染でございます」
 こちらにもいらしたことはあり、仲がよさそうな様子で、と言ったところで。給仕ははっとしたように紡ぐのを止めた。
 そして困ったように、今お嬢様は違う方に夢中のようで、と違う絵を示した。
 最近はあちらの方を描いてばかり――と。それは、背格好は先の男と似ているようだが顔のあたりは明確には描かれていないようだ。
 さらりと鎌をかけつつ情報を得る様をリカルドは見詰めて。
「……今日はイレギュラーな行動が多いな、ライナス」
「あ? あんたの事だからな。転生させてやりてえとか考えんだろ?」
 わかってるんだよ、というようにリカルドは笑って。
「それに……弱点つくにも情報は大事だからな」
 そう言って、食べようぜと珈琲をまず一口。
 香り高く、すっきりとした味わいだ。
 そしてゼリーを口に運べばとろりと口の中で溶けていくような心地。
「はは、あんたの髪もこんな味がすんのかもな……って」
 美味い、と笑いながら冗談めかしていう。けれどそれを、リカルドは真正面から受け取って、食べる手を止めると。
「髪なんて食べたら、腹を壊すだろうが」
「馬ぁ鹿。んとには食わねえよ」
 それに、とライナスはゼリー掬う匙をひらりとリカルドへ向けて。
「それに血だけでも充分美味いからな、あんた」
 揶揄う様な笑みを向ければ、それをまたリカルドは真っすぐ受け取る。それをわかって、ライナスは言っているのだ。
「何を言ってるんだお前は」
 呟く声は思わず、感情が籠ってしまった気がする。それを気のせいだとリカルドは振り払うのだ。
「ま、偶にはこういう時間も悪くねえんじゃねえの?」
 美味い物にゆっくりと流れる時間。
 ほら紫陽花も綺麗だろ、と窓の外を示す。
 ライナスの言葉にリカルドはふ、と息吐いて――そうだなと小さく頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・絡み歓迎

ん~~~!おいしい~~~っ💕
じゃあねえじゃあねえ
ボク、次はこれがいい!

とか愛想を振り撒いて甘味を堪能しよう
そんな和気藹々とした雰囲気を出してれば色々話も聞きやすいだろうしね!
計算計算!
あ、これもおいし~!

ふ~ん、絵がたくさんあるね?
誰が書いたの?
あれは誰?
それはどこの絵?
これを書いたのその子はどんな子?
一番新しいのは?
へ~そうなんだ~!

ああ、後は何かそれっぽい噂話とか無いか耳をそばだてたり、聞いたりもしておこうっと



 あーんと口をあけて、ぱくり。
 ひんやりと口の中で溶けていく美味しさにロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はふにゃりと頬緩めて。
「ん~~~! おいしい~~~っ💕」
 もう一口、さらにもう一口とぱくぱくと口に運んでいけば、あっという間にパフェーの器は空っぽだ。
 でもまだおなかに余裕がある。お品書き開いて――給仕の娘を手招いて。
「じゃあねえじゃあねえ。ボク、次はこれがいい!」
「ぷりんでございますね」
 そう! とロニは頷いて、愛想を振りまき甘味を堪能する。
 和気藹々とした雰囲気――これも作戦。色々と話も聞きやすくなるだろうと思いつつ、口に運ぶ甘味は。
「あ、これもおいし~!」
 そう思っていると、どうぞと温かい茶を娘が持ってきてくれた。
「心地よくお過ごしいただけてますか?」
 そんな他愛ない話。ロニは頷いて今が聞き時と切り出した。
「ふ~ん、絵がたくさんあるね? 誰が描いたの?」
 問いかければ、このカフェーのオーナーの娘だと彼女は応えてくれた。
 じゃあじゃあ、とロニは次々と絵を指さして。
「あれは誰? それはどこの絵?」
 娘は――あれは幼馴染の方ですねと言う。紫陽花の世話をしている光景だ。そして場所は、この庭園のどこかだろうと言う。
「これを描いたのその子はどんな子? 一番新しいのは?」
 一番新しい絵は、あちらと示す。先ほどの幼馴染と背格好は似ているが――別の男だ。硯箱を傍に、紫陽花を眺めている絵。
「あちらですね。お嬢様が最近見つけてきたモデルを描いているようです」
 お嬢様はとても優しい方でこちらにもよく足を運んでいました、と娘は言うのだ。
 けれどそれも――幼馴染の彼がいなくなってからはとため息と共に零してはっとする。なんでもありません、と笑って。
「へ~そうなんだ~!」
 そのことは深く聞かず、教えてくれてありがととロニは言って、何か噂話など無いか耳をそばだてる。
 離れていった給仕の娘が、他の給仕からいけませんよと注意されているのが聴こえた。
 お客様に、亡くなったものの話をするなんてと。
 それはきっと――お嬢様とやらの幼馴染の事なのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

甘渼・アメ
🌈焔璃/f28226

な、なんだかアメの知ってるカフェとはまた違うオシャレさで、緊張してきた……
大丈夫?アメ浮いてない?!なんでこんな田舎っぺが都会のカフェに居るんだべとか思われてない?!

うん!焔璃と一緒なら大丈夫よね!
アメだってお洒落してきたのよ

みてみて、可愛いプリン!
紫陽花のプリン!オシャレ
食べるのがもったいないわ
ねぇ知ってる?焔璃
この世界のおかしは動かないんだって
アメ、驚いちゃった。
焔璃は何食べるの?
いいなー
一口ちょーだい!

窓の外の紫陽花も綺麗…なによりこの絵
とても想いがこめられてるようにみえるわ
好きな人なのかな
アメ、恋はしらないけれど…
美味しい好意の香りがするの

彼女の気持ちがしりたいわ


波紫・焔璃
アメ(f28092)

うーわぁ…すっごいおしゃれだねぇ
あはは、だいじょぶだいじょぶ!
浮いてないしそんなん思われないよ

むしろあたしの方が怪しいかもー?
うん!今日のアメもキラキラしてて可愛いよ

ひゃー!どれもキラキラしてて選ぶのが大変…
わ、すっごいこれ本当にプリン?
ん?なにをー?
え?嘘…
これ口の中でバタバタしないの!?

えっとねー
やっぱりこのパフェかな!
うわぁ!食べるのが勿体ない
うん、いいよー…はい、あーん
ね、ね!あたしもプリン一口ちょーだい?

お庭も絵もいろーんな色がそれぞれ輝いてて綺麗だよね
何か、明るいのも暗いのも色んな想いが混ざってる気がする
恋かー、いつかあたしもしてみたいな

どんな人なんだろね?



「な、なんだかアメの知ってるカフェとはまた違うオシャレさで、緊張してきた……」
 落ち着いた佇まいの洋館――そこへ足を踏み入れた甘渼・アメ(にじいろ・f28092)は、一歩目で固まってしまった。その傍らで波紫・焔璃(彩を羨む迷霧・f28226)は笑って。
「うーわぁ……すっごいおしゃれ」
「大丈夫? アメ浮いてない?! なんでこんな田舎っぺが都会のカフェに居るんだべとか思われてない?!」
「あはは、だいじょぶだいじょぶ! 浮いてないしそんなん思われないよ」
 小さな声でこそこそ、と尋ねるアメ。焔璃は笑ってむしろあたしの方が怪しいかもー? と零す。
 けれど、一人ではないから――そう思うと、此処がどこだって大丈夫な気もしてくる。
「うん! 焔璃と一緒なら大丈夫よね! アメだってお洒落してきたのよ」
「うん! 今日のアメもキラキラしてて可愛いよ」
 そんな二人をどうぞこちらへと席へご案内。
 その間も少しだけそわそわしてしまうのも仕方ないこと。
 二人でお品書き開けば、どれにしようと目移りするばかりだ。
「ひゃー! どれもキラキラしてて選ぶのが大変……」
「みてみて、可愛いプリン! 紫陽花のプリン! オシャレ」
「わ、すっごいこれ本当にプリン?」
 手書きのイラスト。つぼに入ったぷりんはその上にクリームを乗せて紫陽花のゼリーで飾られていた。
 それは絵であるというのに、アメはもう自分の前にやってきた心地。
「食べるのがもったいないわ。ねぇ知ってる? 焔璃」
「ん? なにをー?」
 その声に、アメは声を少し潜めて。
「この世界のおかしは動かないんだって」
「え? 嘘……これ口の中でバタバタしないの!?」
「アメ、驚いちゃった」
 ずずいと二人で顔突き合わせて、そんなひそこそ話も楽しいもの。
 自分たちの世界、その外でのことは新鮮な事ばかりなのだ。
「焔璃は何食べるの?」
「えっとねー、やっぱりこのパフェかな!」
 焔璃が示したのは紫陽花のパフェー。紫陽花の和菓子にそふとくりぃむ。ほかにも色々、楽しみ詰まったものだ。
 そして、楽しみにしていたパフェーとぷりんが二人の前に。
「やっぱりかわいい……!」
「うわぁ! 食べるのが勿体ない」
「いいなー、一口ちょーだい!」
「うん、いいよー……はい、あーん」
 どこ食べる? そふとくりぃむ? と冷たい一口をお裾分け。
「ね、ね! あたしもプリン一口ちょーだい?」
 あーんと口あけて、焔璃はアメがぷりんをひとくち、運んでくるのを待っている。
 それもまた、美味しくて。
 二人で甘いものを堪能して――ふと、アメの視線は窓の外の紫陽花へ。
「綺麗……なによりこの絵」
 そして、その紫陽花からくるり、視線を回して一枚の絵を見止めた。
「とても想いがこめられてるようにみえるわ。好きな人なのかな」
「お庭も絵もいろーんな色がそれぞれ輝いてて綺麗だよね」
 何か、明るいのも暗いのも色んな想いが混ざってる気がする、と焔璃もじっとその一枚の絵を見詰めた。
 それは、紫陽花の世話をするひとりの青年の絵。
「アメ、恋はしらないけれど……美味しい好意の香りがするの」
「恋かー、いつかあたしもしてみたいな」
 それはいったいどんなものか。
 まだ、アメと焔璃の知らぬ感情であるのだろう。
「彼女の気持ちがしりたいわ」
 ぽつり、紡いだ声に焔璃は頷いて。
「どんな人なんだろね?」
 あってみれば、わかるかなと――絵だけでは測れぬものを感じて零した。
 目を惹いたのは、紫陽花を世話する青年。そして彼と似た背格好の、硯箱をもった男の絵。
 似てはいるけれど――その絵からは、暗いものが感じられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

姫城・京杜
持ち帰り用の菓子が目当てだけど
折角だから、カフェーも楽しみたいよな
勿論、猟兵の仕事も忘れてねェぞ!

紫陽花の菓子、って言ってた主の土産をまず買う
甘さ控えめなのはどれか、店員に訊いてみるか
あと一緒に、絵の事も
この絵、すげー印象的だけど…何ていう画家が描いたんだ?
絵のモデルも見た事ある気するけど、有名人とかだろうか?
…みたいに訊いてみる
てか…何か普通に、誰かに似てる気するけど…

買い物後は、カフェーで一服する!
喉乾いたから、サイダーにしよう
おー紫陽花みたいなゼリー乗ってて綺麗だな!
写真撮っても大丈夫そうなら、撮影して画像を主に送る(ぽち
依頼だけど、雰囲気のいいカフェーでのんびりするのもオサレでいいな



 つい先日――紫陽花の菓子、と主が言っていた。
 その主のための土産を、姫城・京杜(紅い焔神・f17071)はまず最初に選んでいた。
「どれにしよう……あんま甘いの得意じゃないし……」
 と、主の好みを思い出し京杜は店員へと尋ねることに。
 するとゼリーなどはさっぱりしていてよろしいのでは、と教えてくれた。ほかにも、ぷりんもそんなに甘くはない、大人の味わいとのこと。
「なら、ゼリーとぷりんで」
 喜んでくれるかな、きっと褒めてくれると見えない尻尾を振って。
 そして京杜は折角だからとカフェーも楽しむことに。勿論、猟兵の仕事も忘れてはいない。
 飾られた絵に視線を向けて。
「この絵、すげー印象的だけど……何ていう画家が描いたんだ?」
「オーナーのお嬢様です。お名前は、佐々明世様でございます」
「へー。絵のモデルも見た事ある気するけど、有名人とかだろうか?」
 あの絵、と京杜は示す。目についたそれは硯箱を持った男の絵だ。
「てか……何か普通に、誰かに似てる気するけど……」
 僅かに瞳細めて、うーんとその絵を見つめる。
 ぼんやりと、顔のあたりはぼかしてあるようなその絵。どこかでみたような、けれど知らないような――そんな姿。
 それに、そちらは最近お嬢様が見つけてきたモデルですね、と店員が応える。
 しかし小説家先生のようで、とも言って。
 そうなのか、と言いながら包みを受け取って京杜も一服するべく席へ。
 喉乾いたからと選んだのはサイダーだ。珈琲の良い香りもするが、それは一人で飲む気にはならなくて。
「おー紫陽花みたいなゼリー乗ってて綺麗だな!」
 これを主に見せたい。写真とっても大丈夫そうだな、とそっと撮って。主へと見てくれと画像を送る。きっと既読はそのうちつくだろう。
 依頼ではあるのだが――雰囲気のいいカフェーでのんびりする。
 それもたまにはオサレでいいなと思いながら、京杜は紫陽花の庭へと視線を向けたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フルラ・フィル
これが外の世界のお菓子か……
紫陽花を模しているなんて洒落ているね

でもシィ、キミは食べられないようだよ?
なんて黒猫のシィに話しかける

甘いお菓子はいっとうに好きだな
紫陽花の砂糖細工も、梅雨色のゼリーが飾る白いクリームもどれも美味しそうだ
キミはどんな蜜でできている?
いつもの様にケーキに話しかける

沈黙を守ったまま

シィがにゃあと鳴いて、気がつく
おやここのケーキは歌わないのか
変わっているね
この世界の常識なのか

ひとくち食めば甘やかな美味しさに笑みが綻ぶ
美味しいな
こんな綺麗な絵を見ながら食べられるんだ
この絵はどんな絵?
気軽に尋ねる
わたしはこの世界にまだ不慣れでね
教えて欲しい
甘い蜜にとかされた、苦いにがい物語を



「これが外の世界のお菓子か……紫陽花を模しているなんて洒落ているね」
 フルラ・フィル(ミエルの柩・f28264)は初めて向き合う外の世界の菓子に僅かに微笑みを。
 傍らで自分も興味もあるのだというように黒猫のシィがテーブルの上を見詰めてゆらり、尻尾を揺らめかせる。
「でもシィ、キミは食べられないようだよ?」
 それに、残念そうに小さな一声。
 甘いお菓子はいっとうに好きだなと、言葉向ける。
「紫陽花の砂糖細工も、梅雨色のゼリーが飾る白いクリームもどれも美味しそうだ」
 キミはどんな蜜でできている? といつものように――話しかけるフルラ。
 けれど、しぃんと静かなまま。
「にゃあ」
「おやここのケーキは歌わないのか」
 何もお喋りしないなんて、恥ずかしがりや? なんて思ったのだけれどもシィの一声に気が付く。
「変わっているね、この世界の常識なのか」
 いままでのフルラの当たり前が、この世界ではそうではない。
 何もおしゃべりしないそれをそうっとひとすくい。
 ひとくち、口に運べば――甘やかな美味しさにフルラは笑みを零した。
「美味しいな」
 それに、とフルラは目を向ける。
 こんな綺麗な絵を見ながら食べられるんだ、と。
 紫陽花と、穏やかに笑う青年の絵がある。ほかにも家族の肖像や、風景だけのものも。
 フルラはひらりと手を振って、給仕を呼び。
「この絵はどんな絵?」
 訊ねれば、そちらは日常の絵でございました、と紡ぐ。
 あちらはご家族の揃われた絵、それから最近はあちらの絵と硯箱持った男の絵を示して。
「わたしはこの世界にまだ不慣れでね」
 教えて欲しい、甘い蜜にとかされた、苦いにがい物語をと、請う。
 その言葉に給仕のものは言葉をふと止めて。
 小さな声で教えてくれたのだ。
 あちらの青年は、この絵を描いた――このカフェーのオーナーの娘の幼馴染で、おそらく想い人だったのだと。
 けれど、彼は不慮の事故で亡くなって。彼女は笑わなくなりそれからずっと、近くの洋館で絵を描いているという。
 新たにモデルの男を見つけてきたというけれど、似た背格好に皆やはりと思っているのだと。
 その声色には彼女を心配するその心が滲んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヒマワリ・アサヌマ
【まいご】

ジョウくん見て見て~~!!!紫陽花がい~~っぱい咲いてるよ!!!かわいい~~~~!!!!
わあ~~~きれ~~~……こんなにあったら一本ぐらいもらえないかな~~……ダメかな?ダメか……

紫陽花のパフェーだって!!
わぁ~~これもきれ~~~…食べるのがもったいないぐらいだねぇジョウくん
そっちはなぁに?和菓子?ジョウくん渋いんだねぇ~~~……
あ、そんなことない?ごめんごめんっ、一口あげるからさ!
はいっ!あ~~~ん!

綺麗な絵………って私、綺麗しか言ってない?そんなことないよ~~~
……なんかね、この絵さ
寂しい……ううん、違うなぁ…なんか、そういう……気持ちが…ある…気がする……


ジョウ・デッドマン
【まいご】

(行きたがる割にどーにもフワフワ危なっかしいから
"ただの顔見知り"のよしみでついてきてやったけどさあ!)
はいはい見えてる
あのなヒマワリ、アンタ今日は猟兵仕事なんだろーが
だいたいそんなすぐに枯れる物何になんだよ
…この程度で凹んでんじゃねー!
ほらあっち、パフェだってよ
…アンタの機嫌マジ安いな…

ほっとけよ、和菓子好きなんだよ…懐かしいから
あ、あーん!?
(いつも、こいつの笑顔から目が離せなくなる
何だってんだよクソ)
…おいしい。

アンタ、見るもの全部キレイなんだな
…おめでたくて羨ましいよ
僕にはただの絵にしか見えねーけどな



 わぁ、と声零して。
「ジョウくん見て見て~~!!! 紫陽花がい~~っぱい咲いてるよ!!!かわいい~~~~!!!!」
 雨上がり、咲き誇る紫陽花の間をくるりと回りながら歩むヒマワリ・アサヌマ(陽和・f25473)はぱっと後ろを振り向いた。
 そこにはゆっくりとついてくる人影がひとつ。
(「行きたがる割にどーにもフワフワ危なっかしいから"ただの顔見知り"のよしみでついてきてやったけどさあ!」)
 ジョウ・デッドマン(異世界蘇生・f27582)はその様子を溜息零しつつ見つめ。
「はいはい見えてる」
 おざなりに言葉返す。
「わあ~~~きれ~~~……こんなにあったら一本ぐらいもらえないかな~~……ダメかな?」
「あのなヒマワリ、アンタ今日は猟兵仕事なんだろーが」
 だいたいそんなすぐに枯れる物何になんだよと、ジョウが言えば、ヒマワリはしゅんとして。
「ダメか……」
「……この程度で凹んでんじゃねー!」
 そう言って、ジョウは店の方を指さしてきっと元気の種になるものを示す。
「ほらあっち、パフェだってよ」
 ヒマワリはその言葉にぱっと顔あげて、パフェ! と楽しそうに声弾ませた。
「……アンタの機嫌マジ安いな」
 予想はしていたが、しかしその変わり身の早さにため息まじり、ジョウは一緒に店へ。
「紫陽花のパフェーだって!!」
 そして注文した紫陽花のパフェーを前にヒマワリのテンションはさらに上がっていた。
「わぁ~~これもきれ~~~……食べるのがもったいないぐらいだねぇジョウくん」
 そして、ヒマワリはぱちり瞬いてジョウの前にあるものに視線止めた。
「そっちはなぁに? 和菓子? ジョウくん渋いんだねぇ~~~……」
「ほっとけよ、和菓子好きなんだよ……懐かしいから」
 ぽそりと、思わずといったように零れる言葉。ヒマワリはその言葉尻に被せるように言って。
「あ、そんなことない? ごめんごめんっ、一口あげるからさ!」
 はいっ! あ~~~ん!
 と、ひとすくいしてその口元へ。
「あ、あーん!?」
 ほらほら、とずずいと差し出されたひとすくいと、ヒマワリの顔をジョウは交互に見て。
(「いつも、こいつの笑顔から目が離せなくなる。何だってんだよクソ」)
 心の中で、どうしてなのかわからないと零しつつ運ばれたものに口付ける。
「……おいしい」
 冷たく溶けていく一口に零して、でしょでしょ! と笑うヒマワリは、今度は自分の口へとパフェーを運んでいく。
 そうしながらくるりと、店内をその視線は追って一枚の絵で止まった。
「綺麗な絵……」
「アンタ、見るもの全部キレイなんだな」
「……って私、綺麗しか言ってない? そんなことないよ~~~」
「……おめでたくて羨ましいよ。僕にはただの絵にしか見えねーけどな」
 ジョウはヒマワリの視線を追いかけて。絵は絵だろ、と言う。
「……なんかね、この絵さ」
 けれどヒマワリは、じぃと絵を見て。少し声のトーンを落とすのだ。
「寂しい……ううん、違うなぁ……なんか、そういう……気持ちが……ある……気がする……」
 家族の絵はそういうのは感じない。紫陽花と青年の絵は、慈しみのような。
 けれど硯箱を持った男の絵は――何かほかの絵とは違っている気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最上・もな
来る途中の紫陽花もとっても綺麗だったけど
カフェーのなかもとっても綺麗なのです
絵がたくさん飾られているのですね
買い取ってお店に飾ってみたいけど……、むずかしいでしょうか

どの席でも紫陽花が見れるのですね
案内してもらった席に座るのです
わあぁ、メニューを見ているだけでも楽しくなっちゃう
パフェーもサイダーも欲しいし、和菓子のセットも食べたいのです
もなはいっぱい食べられるから大丈夫なのです。全部頼んじゃいます

ほあー……甘くておいしくてしあわせなのです
お持ち帰り用のお菓子もあるのですね
おばあさんとおともだちに買っていきたいのです
席から見える紫陽花のお写真も撮って行きます
お写真を一緒に見る時間も楽しみなのです



 最上・もな(とってもちからもち・f22766)はそして店内をくるりと見回す。
「来る途中の紫陽花もとっても綺麗だったけど、カフェーのなかもとっても綺麗なのです」
 そしてやはりよく目に留まるのは絵だ。
 紫陽花、家族だろうか。それから青年、硯箱を持った男――ほかにも、いろいろな絵が飾られている。
 それをひとつずつもなは見詰めて、ふと。
「買い取ってお店に飾ってみたいけど……、むずかしいでしょうか」
 どうぞこちらへ、と案内された席。
 どの席からも紫陽花が見れるのですね、と零せばそうでございますと給仕が微笑む。
 席に座って、開いたお品書き。
「わあぁ、メニューを見ているだけでも楽しくなっちゃう」
 絵のついたお品書きはそれがどんなものなのかわかりやすい。
 だから一層、迷ってしまうのだ。
「パフェーもサイダーも欲しいし、和菓子のセットも食べたいのです」
 唸りながら一つに決められなくて。でもこれくないなら、食べられる。
 注文すると、おひとりで大丈夫でございますか、と問われ。
「もなはいっぱい食べられるから大丈夫なのです。全部頼んじゃいます」
 すると給仕は笑って、ではお持ちしますねと頷く。
 そしてもなの前に運ばれてくるスイーツたち。
 紫陽花のパフェーはどうぞそふとくりぃむが溶けないうちにと添えられて。
 それは目にも楽しませてくれるものばかりだ。
「ほあー……甘くておいしくてしあわせなのです」
 そして味ももちろん、美味しい。
 サイダー飲めばしゅわりとして、その中で踊る紫陽花のゼリーが可愛らしい。
 そしてふと、持ち帰り用を頼んでいる者の姿を見つけて。
「お持ち帰り用のお菓子もあるのですね」
 おばあさんとおともだちに買っていきたいのですと、もなはお土産もあとで選ぶことを決める。
 そして窓の外に目を向ける――あ、と思って写真を一枚。
 窓越しに見える紫陽花もまた風情があって素敵な風景。
 一枚、二枚。この撮った写真を、一緒に見る時間も楽しみなのですと、柔らかに笑み零していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢海・夾
【永歌】
情報は大切だ。あるに越したことはねぇ
買い物ついでに店員から聞き出すぜ
画家と最近の同行者…は怪しいか、最近入った絵についてか?
甘い物は得意じゃねぇが、仕方ねぇ…いや、アイツ等への土産にするか
そうだ、ついでに様子も確認すりゃいい

見覚えはある、が…あぁ、あの時の
「あの時は助かった、ありがとな」
大丈夫だったか、なんてあの場にいた奴には聞けねぇな
こういう…普通の人間には、特に
「優歌か。…そういや名乗ってなかったな、逢海夾だ」
芸名か、まぁ深くは聞かねぇよ

茶だけ頼むとするぜ、後は匂いで十分だ
客からの情報も聞こえりゃ最高だが

礼?この程度、誰でもできるだろ
…と突き返すのは簡単だが、気が収まらねぇだろうな


雛瑠璃・優歌
【永歌】
(参考シナリオID:21531)
お店に入ったら見覚えのある姿があって思わず近づく
「あの、お久しぶりです、その節はお世話になりましたっ」
あ、あれ?人違いじゃないと思うけど…
「あ、そっか」
懐から蝶の髪飾りを取り出す
「これ、見覚え無いですか」
思い出してくれたらまたそっと仕舞う
「あの姿では芸名使ってて、出来れば同一人物なのは秘密に…えと、あたしの名前は優歌です。雛瑠璃優歌」
よかった、名前聞けた
酷い怪我で…心残りだったの

「もしもう情報を集めてたら聞かせて貰えませんか?」
店員さんにお茶と持ち帰り用でお菓子のセットを2つお願いして
1つは逢海さんに
情報のお礼
不要なら大切な方に差し上げてもいいと思います



 情報は大切だと、逢海・夾(反照・f10226)は思う。
 買い物ついでに店員から聞き出せれば、と世間話のように夾は話を振る。
(「画家と最近の同行者……は怪しいか、最近入った絵についてか?」)
 そう思って、絵がたくさんあるなと話を振り、一番最近の絵はどれなんだと訊ねた。
 すると店員は、あちらの絵でございますと手で示して。。
「当館のオーナーのお嬢様が描かれたものでございます。時折、こちらにもいらっしゃいますよ。あの方は最近見つけられたモデルの方だとか」
 それは、硯箱を持った男の絵だった。ふぅん、と眺め一緒にここに来たりするのか、と問えば一度いらっしゃいましたと店員は返す。
 そしてどれにいたしますかと問われ、夾はわずかばかり困った。
(「甘い物は得意じゃねぇが、仕方ねぇ……いや、アイツ等への土産にするか。そうだ、ついでに様子も確認すりゃいい」)
 と、考えまとまったところで――扉の開く音に振り向いた。 
 そこには雛瑠璃・優歌(スタァの原石・f24149)の姿。
 優歌は、店に入ったら見覚えのある姿に、足を止めて。そして思わず近づいた。
「あの、お久しぶりです、その節はお世話になりましたっ」
 その言葉に夾は、見覚えがあるが――と僅かに眉を寄せ記憶の糸を手繰っていく。
 優歌はその表情にぱちりと瞬く。
(「あ、あれ? 人違いじゃないと思うけど……」)
 そう思って、ふと気づいた。
「あ、そっか」
 優歌は懐から蝶の髪飾りを取り出して、夾へと見せる。
「これ、見覚え無いですか」
 それを目にして夾も、あぁと零した。
 あの時の、とダークセイヴァーでの戦いのことを思い出す。
 それは、決してやさしい戦いではなかったことも記憶の端から引き上げられる。
「あの時は助かった、ありがとな」
 大丈夫だったか、なんてあの場にいた奴には聞けねぇな――と、夾は思う。
(「こういう……普通の人間には、特に」)
 じっと見つめていると、優歌は髪飾りをそっと仕舞って微笑み。
「あの姿では芸名使ってて、出来れば同一人物なのは秘密に……えと、あたしの名前は優歌です。雛瑠璃優歌」
「優歌か。…そういや名乗ってなかったな、逢海夾だ」
 芸名か、と夾は思うもそれ以上は深くは聞かない。
 今ここで、また出会えて無事であったことがわかる。
 いくつもの戦いを駆け抜ける猟兵であるのだから、それだけでも十分であることをわかっているのだから。
 優歌はよかった、とほっとする。
(「名前聞けた。酷い怪我で……心残りだったの」)
 ここで出会えたのもきっと何かの縁と笑って。
 折角だから、と優歌は席に誘う。
 店員にお茶と持ち帰り用のお菓子のセットを二つお願いして。
 そして夾も茶だけ頼む。あとは匂いで十分なくらいだからだ。
「もしもう情報を集めてたら聞かせて貰えませんか?」
 それに軽く頷き、席へ。
(「客からの情報も聞こえりゃ最高だが」)
 だが客は、今はそれぞれ静かに楽しんでいるようだ。話しかければ、他愛ない話には応じてくれそうな感じもするのだが。
 最近の絵はあれ、と教え。そしてほかにも店員から聞いた話を教えていく。
 その情報にありがとうございますと優歌は言って、受け取ったお菓子のセットをひとつ、夾の方へと寄せる。
「情報のお礼です。不要なら大切な方に差し上げてください」
「礼? この程度、誰でもできるだろ」
 突き返すのは、簡単なこと。けれどそれでは、気が収まらねぇだろうなと夾は受け取っとく、と貰う。
 優歌は、はいと頷き笑み向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『うつろひの迷宮』

POW   :    とにかく進んで踏破する

SPD   :    なんらかの規則性を見つけて進む

WIZ   :    マッピングしながら進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 カフェーを出た先に広がる庭園。
 この奥に、ひっそりとまた洋館があるという。そこは、絵描きの女が住む屋敷。
 今は、彼女と――件の、影朧。それから最低限の世話をできるもののみがひっそりと住んでいるらしい。
 彼女の名前は佐々明世という。
 幼馴染の男を亡くした、とう事は店で聞いたり、得た情報からわかった。
 そしてきっと、その男が好きであったのだろうということも。
 今は、彼に背格好の似た硯箱を持った男をモデルとして迎えているのだということも。
 それらを情報として得つつ、猟兵たちは庭園へと足を踏み入れた。
 紫陽花で作られた迷路。
 どこへ進んでもその光景は変わらないような、そんな気さえするのだが色だけは変わっていく。
 そしてなぜだろうか、心をあおるような不安感。
 そばにいる相手が大切であり、目的をもって共にいても何故だろうかと、突然すっと気持ちが冷えていくような。
 己が抱えているものがうつろう。
 それは胸に秘めたひとつことか、誰かに向けるものかはひとそれぞれ。
 けれどそれも、この紫陽花路を通り抜ける間だけのこと。
 そのうつろいを、影朧はどこからか見て楽しんでいるのだろう。
鈍・しとり
もとより常にうつろう身
迷い路とて慣れたものと、特に気負わず庭園へ

立ち止まったら前も後ろもわからなくなりそうね
道の境を滲ませる様に咲く紫陽花を眺め
とにかく右へと決め進む

長く続いた白い道は次第に薄紅に染まり
花の色は朽ちるような紫から
色あせるように水色へ、
はなのいろはみず色へ、
うつりにけりな、

ーああそう言えば。

情が揺らぐのだったか知ら

ふと口にしかけた台詞をさしかえて一時足を留め

うつろうものか
神にさえ儘ならぬものを。

まして高みの見物とは笑わせる

ゐわせて
烏滸がましいわ
『もう直ぐあかいあめがふる』
「もう直ぐ其処へ、辿り着く」
見世物は其方の方なのだから

待ちきれず刀を抜きながら、
出口へと『直進』する



 その花はうつろっていく。雨上がり、その雫を纏ってきらきらと輝いている紫陽花。
 それは鈍・しとり(とをり鬼・f28273)を誘うように、呑み込む様にその色を変えていくのだ。
 もとより常にうつろう身と、しとりの足は何時もとかわらぬ軽やかさだ。
 迷い路とて慣れたものと、特に気負わず庭園へと進んでいく。
 紫陽花が視界を徐々に覆っていくように背が高くなっていっても問題はない。
 しとりの足は、止まりそうで止まらない。立ち止まったら、前も後ろもわからなくなりそうねと、小さく零して。
 道の境を滲ませる様に咲く紫陽花を眺め、その瞳は細められる。
 とにかく右へ、右へとしとりは歩みを進めていた。
 今は白い紫陽花の路。その色が次第に、薄紅に染まっていく。
 そして朽ちるような紫から、色あせるように水色へ。
 その様にしとりの唇が震えて音を生み出す。
「はなのいろはみず色へ、うつりにけりな、――ああそう言えば」
 情が揺らぐのだったか知ら――と、口に仕掛けた言葉をさしかえて、しとりは一時足を留めた。
 うつろうものか、と零れ落ちる。その口端には僅かに笑みが宿るがそれは、喜色というわけではない。
 神にさえ儘ならぬものを。
 まして高みの見物とは笑わせると――しとりは紡ぐ。
「ゐわせて」
 烏滸がましいわと神の残骸、妖崩れの雨女は言って。
『もう直ぐあかいあめがふる』
「もう直ぐ其処へ、辿り着く」
 見世物は其方の方なのだからとその瞳はまっすぐ――うつろう紫陽花の、その花の咲きを見詰めていた。
 けれど、待ちきれず刀を抜きながら、また一歩踏み出した。
 出口はどこか、なんて問題ない。
 ただ真っ直ぐ進先がそれになる。紫陽花の花から跳ねた雫を、その刃に滑らせて、切り伏せて。
 しとりは紫陽花の中を進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

歌獣・苺
娘さんは…幼馴染さんを…
私と同じだ。もし会えたら何か力になれること出来たらいいな

紫陽花の迷路を歩くと
妙な違和感を覚えた
一途な気持ちが
何処かへ行ってしまうような
今まで感じたことの無い気持ち

何?この気持ち
まーくんが……

離れていく
このまま一生帰ってこないような
そんな気持ちに襲われる

やだ、やだよ
まってよまーくん
私、あなたがいなきゃ…


――なんてね。


『これは、皆を希望へ導く謳』

花弁を散らし高く飛び立つと
その先でドラゴンへと姿を変える

……私、
もう貴方がいなきゃ生きていけない自分じゃなくなったの
だからね、早く帰ってこないと
別の人のところに行っちゃうよ…♪

そうぽつりと呟くと空から見えた迷路の先の小屋へ向かった



 その一歩ずつの歩みは小さなものだった。
 けれど、だからこそ知った事を色々と思って、考えてしまう。
(「娘さんは……幼馴染さんを……」)
 私と同じだ、と歌獣・苺(苺一会・f16654)は零す。
 影朧を匿っているという、絵描きの女。
 もし会えたら何か力になれること出来たらいいなとその胸に抱きながら苺は紫陽花の迷路を歩む。
 己の背より高くなっていく紫陽花――その色の移り変わりのせいだろうか。
 一歩ずつ進むごとに妙な違和感を苺は覚えていた。
 苺はきゅ、と自分の胸元を抑える。
 身の内にある心が――一途な気持ちが、何処かへ行ってしまうような。
 今まで感じたことの無い気持ちがそこにあった。
 奇妙で、居心地の悪い何かが居座ろうとしているような。
(「何? この気持ち。まーくんが……」)
 離れていく。
 自分からこの気持ちが離れて、このまま一生帰ってこないような――そんな気持ちに襲われる。
 苺は首を横に振った。
「やだ、やだよ」
 まってよまーくん、と細い声を零し僅かに俯く。
 私、あなたがいなきゃ……――なんてね、と苺は顔を上げた。
「これは、皆を希望へ導く謳」
 その唇を動かして、花弁を散らし高く飛び立つ姿を思い描く。
 苺の姿はドラゴンへと、変わってその瞳は紫陽花の迷路の先へと向けられた。
(「……私、もう貴方がいなきゃ生きていけない自分じゃなくなったの」)
 だからね、早く帰ってこないと――別の人のところに行っちゃうよ……♪
 ぽつりと、紡ぎ落された。
 苺のその言葉には様々な感情が含まれているのだろう。
 そして、向かうべき洋館を見つけ、そちらへと向かって羽ばたいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

尾白・千歳
さっちゃん(f28184)と

紫陽花の迷路だ!
これ、出口には何があるのかな?
私、ちょっと見に行ってくるね!

紫陽花を横目に右に左にずんずん進み
なんか色が違う
ねぇ、さっちゃん見て…って
あれ?いなーい
いつもだったら、まぁいいかーって思うけど
今はすごく不安な気分
私、このまま独りになっちゃったらどうしよう
大人しくここで待ってたらいいのかなぁ
…早く迎えに来てほしい
ポロポロと零れた涙を慌てて拭い
泣いてちゃダメ
そっか、ここは迷路だし…出口まで行けばきっと会えるはず
気持ちを奮い立たせて歩き出せば
名前を呼ぶ声が聞こえて
あ、さっちゃん!もう、遅ーい!
え?…泣いてないってば!やだ、見ないで!
早く行こう!(手を引っ張り


千々波・漣音
ちぃ(f28195)と

一番大切な存在は、隣にいるちぃ
…そんな事、絶っ対言えねーけどっ
でもそれが揺らぐとか想像できなかったのに

あ、おいっ!?また先に…迷子になったらどーするんだ
いつもの様に考えなしに飛び出すちぃを、いつもの様に追おうとしたけど

…まぁいっか
何故かそう足を止めてしまう
それより、例の絵を描いたお嬢様は美人だろうか、なんて
そんな事までふらり考えつつ、ふとちぃが目に入れば
…え、泣いてる?

その顔見たら、自分がうつろってたのも忘れ振り切り、ちぃの元へ
…おい、ちぃ!
何泣いてんだよ、お前
てか…遅くなって、悪かったな(そっと頭ぽん

うう、何かすげー罪悪感
…浮気心とか、ろくなもんじゃねェな(手引かれつつ



 雨上がりの路は心も弾む様。それが紫陽花の迷路なら、なおさらと言う様に楽し気に尾白・千歳(日日是好日・f28195)は飛び出していく。
「紫陽花の迷路だ!」
 咲き誇る紫陽花――千歳は尻尾揺らしてぱたぱたと迷路の中へと走っていく。
 そして、足を止めてぱっと後ろを振り返った。
「これ、出口には何があるのかな? 私、ちょっと見に行ってくるね!」
 千々波・漣音(漣明神・f28184)へと告げて、楽しそうに千歳は先に進んでいく。
「あ、おいっ!? また先に……迷子になったらどーするんだ」
 いつもの様に飛び出していく千歳。いつもの様に、漣音は追おうとしたのだけれど。
「……まぁいっか」
 なぜか、そう思って足を止めてしまう。いつもなら慌てて追いかけていただろうに。
 一番大切な存在は、となりにいるちぃ。
(「……そんな事、絶っ対言えねーけどっ」)
 けれどそれが、揺らぐなんて想像できなかったのに――今は、何かが希薄になっていく。
 漣音はゆるゆると紫陽花の迷路へと足を踏み入れていく。
 その頃、紫陽花を横目に右に左にずんずん進んでいた千歳。
 なんか色が違う、とくるりと視線を回して。
「ねぇ、さっちゃん見て……って」
 千歳はぱちぱち、その瞳を瞬かせる。
「あれ? いなーい」
 振り返ればいると思ったのに。
 いつもだったら、まぁいいかーと思うのに――今は、すごく不安な気分だ。
 ひとり。
 傍に漣音がいない。それが心を揺らしているのだろうか。
(「私、このまま独りになっちゃったらどうしよう」)
 大人しくここで待ってたらいいのかなぁと零す。
 人の声も何もしない。僅かに風が紫陽花の花を、葉を揺らす音がするだけ。
(「……早く迎えに来てほしい」)
 ポロポロとその瞳から涙が零れ落ちていく。
 それに気づいて千歳は慌てて拭う。拭って、ふるふると首を横に振った。
「泣いてちゃダメ」
 そう言葉にして、千歳は前を見詰めた。
「そっか、ここは迷路だし……出口まで行けばきっと会えるはず」
 大丈夫、と自分に言い聞かせ。気持ちを奮い立たせて。
 けれどまた少しだけ零れた涙を拭って――その様を、紫陽花の迷路をゆうゆうと。
 例の絵を描いたお嬢様は美人だろうか、なんて考えながら歩んでいた漣音はふと目にして。
「……え、泣いてる?」
 ちぃが泣いている。
 それが漣音の中に落ちてきたとともに、傍にいかなきゃいけないのだと思うのだ。
 その一歩はとても大きく、漣音の歩みは早くなる。
「……おい、ちぃ!」
 その声にぱっと千歳は顔をあげて。ぱっと、その表情には笑みが滲む。
 抱えていた不安も、その姿見えたらもう消えていた。
「あ、さっちゃん! もう、遅ーい!」
「何泣いてんだよ、お前」
「え? ……泣いてないってば! やだ、見ないで!」
 言われて、その顔見せないように背中向けてこしこしと目元を拭う千歳。うう、と唸りながら泣いてない! ともう一度。
「てか……遅くなって、悪かったな」
 漣音は千歳の頭にそっと、ぽんと手を乗せる。
「早く行こう!」
 すると千歳はその手をとって、この迷路を抜けようと手を引っ張り歩み始める。
 漣音はそれに笑って、ついていくのだけれども。
(「うう、何かすげー罪悪感」)
 それはこの、紫陽花の迷路のせいだとはわかっている。
 わかっているのだけれども、やはり心は僅かに疼く。
(「……浮気心とか、ろくなもんじゃねェな」)
 手を引っ張って、手を引かれて。二人の歩みを揃えて、出口へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雛瑠璃・優歌
【永歌】
偶然会っただけだし
お店を出たら別行動…のつもりだったんだけど
「…あの、この後もご一緒していいですか」
方向音痴とかじゃないの、でも
「影朧絡みの迷路って、上手く抜けられるか…」
うう、悲しいけど弟にも残念扱いされる身だから…
逢海さんが優しい人でよかった
迷惑かけない様に頑張ろう

花に見惚れてるだけじゃ迷っちゃう
曲がり角で足元に進む方向の矢印でもタクトで書こうかな
戻ってきちゃうかも
「戻る…」
何処へ?
(『私』はもう進むしかないのに?)
でも
「…痛い」
湿気が痕も無い古傷の痛みを呼ぶ
全部放り出して子供の様に甘えて愛され守られたい
逢海さんを見る
でも何か言う前に手を引かれて
転ばないのが精一杯で
何も言えなかった


逢海・夾
【永歌】
さて、簡単に抜けられ…ねぇだろうな
向こうがどう出てくるか、だが
「ん?最初からそのつもりだったんだが。よろしく頼むぜ」
迷わねぇための策はないんだけどな
ま、二人でいればどうにかなるだろ

見通せねぇってのも不便だよな、警戒するにも限度があるんだが
…おかしい。来た、か?
「優歌、どうし、た…」
これが仕掛け、かよ
ただ、冷える、どこかは分からねぇが
駄目だ、止まるな、早く抜けねぇと
置いてはいけねぇ、手を引いていくぜ

オレは前に進んで、人間を助けて、…なぜ、助けなきゃいけない?
それしか知らない、そのための存在は、壊れて当たり前なのか
今この手を離せば、オレは…
いや、自由になるどころか余計囚われるだけ、か



 偶然出会っただけだしお店を出たら別行動――の、つもりだった。
 けれど進む先は同じ。
 雛瑠璃・優歌(スタァの原石・f24149)は逢海・夾(反照・f10226)へと視線向ける。
(「さて、簡単に抜けられ……ねぇだろうな。向こうがどう出てくるか、だが」)
 夾は紫陽花の作る迷路を見詰めていた。そこへ優歌から声がかかる。
「……あの、この後もご一緒していいですか」
 方向音痴とかじゃないの、でもと優歌は言葉続ける。
「影朧絡みの迷路って、上手く抜けられるか……」
 うう、悲しいけど弟にも残念扱いされる身だから……と優歌は溜息まじり。
 と、夾は瞬いて。
「ん? 最初からそのつもりだったんだが。よろしく頼むぜ」
 迷わねぇための策はないんだけどなと夾は思う。
「ま、二人でいればどうにかなるだろ」
 行こうぜ、と夾が一歩先を行く。
 優歌はふわりと、小さく笑みを浮かべ。
(「逢海さんが優しい人でよかった」)
 迷惑かけない様に頑張ろうとその後をついていく。
 紫陽花は進むほどに深くなっていく。
 見通せねぇってのも不便だよな、警戒するにも限度があるんだが、と夾は零し、瞳細めた。
(「……おかしい。来た、か?」)
 優歌も、華に見惚れてるだけじゃ迷っちゃうと呟いて、曲がり角で足元に、進む方向の矢印でもタクトで書こうかな、と提案する。
 そこでふと、戻ってきちゃうかもと笑って――その言葉が、心に重く響く。
「戻る……」
 戻る、それは――何処へ?
(「『私』はもう進むしかないのに?」)
 でも。
「……痛い」
一体どこが痛いのか――心のか、それとも身体か。
ああ、痛いのはと優歌は知る。湿気が、痕も無い古傷の痛みを呼んでいた。
 全部放り出して子供の様に甘えて愛され守られたい――そんな気持ちが、優歌の胸中に広がって、この場所から動けなくなってしまうのだ。
 その異変を夾は感じて目を向ける。
「優歌、どうし、た……」
 途端に理解するのだ。
(「これが仕掛け、かよ」)
 ただ、冷える。冷えていく。それがどこかは分からない。
 けれど――これはダメだと、長居していたらいけないと己の何かがいっている。
(「駄目だ、止まるな、早く抜けねぇと」)
 そして、優歌と視線が合う。
 置いてはいけねぇ、と夾はその手を取って足早に歩み始めた。
 優歌はそれに何か言うこともできない侭、手を引かれる。
(「オレは前に進んで、人間を助けて、……なぜ、助けなきゃいけない?」)
 それしか知らない、そのための存在は、壊れて当たり前なのかと心の中で渦巻いて。
(「今この手を離せば、オレは……」)
 繋がれたその手は、まだ冷えてはいない。
 いや、自由になるどころか余計囚われるだけ、か――夾はそう思って。
 優歌は転ばないのに精一杯。足を動かして引っ張られるままに進んでいく。何も言えない侭、手を引かれてついていくだけ。
 夾は、ただただ前を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

へえ、紫陽花って色々な種類があんのな?
緑から青、そして紫と様々に咲き誇る道を歩きながら緑色のその花へ手を伸ばしてみるぜ
己が唯一執着する隣に居る相手の、色
今迄誰か独りに執着したこと等なかったっつうによ…って
否、あったか。幼馴染の少女は大事に、思ってはいたな
けれど今はもう鈍い痛みを伴いはするもあの時感じた思いは過去と呼べるもので
ならば…今感じる執着もいつか冷えて消えるのだろうかと揺れる心と共に隣に居るだろうリカルドへ視線を向けてみる
あんたもどうせ今は隣に居やするけどよ。望みを叶えてくれる奴が現れたら…、…
…別に。なんでもねえよ
あんたこそ呆けてんじゃねえよ。…ほら、先進むぞ


リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
アドリブ歓迎

……ああ、そうだな
緑色の紫陽花に手を伸ばす様子を見つめながら
周囲への警戒だけは怠らない

依頼を遂行する為だけの、機械
そうで在ろうと、依頼を遂行する為だけの生だと
あの日からずっと、其れだけを考えて生きてきた筈なのに
揺らいではならない
今も強く思っている筈なのに、心が軋む音がする

ライナスの視線が己に向けられていない事が
寂しいと、悲しいと感じてしまう
嗚呼、こんなにも気まぐれな男を
勝手に想い、焦がれるだけ、無駄だったのかもしれない
……どうせ己は、機械なのだから

呆けているつもりはないが?
何を考えているか知らないが……
任務遂行を妨げるつもりならば、独りで行かせてもらう



 足を踏み入れた紫陽花の庭園。
 手入れされたその庭は散歩するにはもってこいの場所なのだろう。
 ライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)は視線を巡らせる。
「へえ、紫陽花って色々な種類があんのな?」
 緑から青――そして紫と様々に咲き誇る。その道を歩みながらライナスは緑色の花へと手を伸ばした。
「……ああ、そうだな」
 その様を視界に収めつつ、リカルド・アヴリール(遂行機構・f15138)は周囲への警戒を怠らない。
 その様子にライナスは小さく笑って、再びその色を、緑の紫陽花を見詰めた。
 その色は――己が唯一、執着する隣に居る相手の、色。
(「今迄誰か独りに執着したこと等なかったっつうによ……って」)
 否、あったかとライナスは思う。
 それは――幼馴染の少女。
(「大事に、思ってはいたな」)
 けれど今はもう鈍い痛みを伴いはするもあの時感じた思いは過去と呼べるもので――ならば、と。
 ライナスはリカルドへと視線向ける。
 ならば――今感じる執着もいつか冷えて消えるのだろうか、と。
 揺れる心と共に、隣に居るだろうリカルドへと視線を向けるライナス。
 リカルドは――依頼を遂行する為だけの、機械と己を定義していた。
 そうで在ろうと、依頼を遂行する為だけの生だと。
(「あの日からずっと、其れだけを考えて生きてきた筈なのに」)
 揺らいではならないと強く思う。
 今も強く思っている筈なのに、心が軋む音がするのだ。
 ライナスの視線が、己に向けられていない事が寂しいと、悲しいと感じてしまう。
(「嗚呼、こんなにも気まぐれな男を」)
 勝手に想い、焦がれるだけ、無駄だったのかもしれない――ふ、とリカルドは息を吐く。
(「……どうせ己は、機械なのだから」)
 それは、事実でリカルドの心の中にうずくまっているものだ。それはどうにも揺らぎようのないものとしてあるのに、今――自分に向けた男に抱く想いは僅かに軋んで、揺れて。
 どちらともなく、歩みを止めていた。
 互いが近くにいるというのに、互いを探るような空気。
 ライナスの、その唇が動くのをリカルドはただ見つめていた。
 その唇は――何かを紡ごうとして、止まる。
(「あんたもどうせ今は隣に居やするけどよ。望みを叶えてくれる奴が現れたら……、……」)
 ライナスは今は、と思うのだ。けれどそれが何時までか――ずっとなのか、それはわからなくて。
 リカルドはそんなライナスへどうしたと視線を投げかけた。
「……別に。なんでもねえよ。あんたこそ呆けてんじゃねえよ」
「呆けているつもりはないが?」
 何を考えているか知らないが、とリカルドは僅かに眉根寄せ、任務遂行を妨げるつもりならば、独りで行かせてもらうと――歩み進めようとした時だ。
「……ほら、先進むぞ」
 ライナスの声に、リカルドは頷いて。
 まだその色を変えていく紫陽花の中を二人で進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・絡みも歓迎!

●愛がゆらぐ
みんなを愛してる
みんなに愛されたい

嘘だ
本当はみんなどうでもいいと思っている
目垢(視線)を擦り付けられるだけで怖気に鳥肌が立つ
消えて
消えろ
そうだ
みんなみんな消してしまえ

●条件を満たしたためUC発動
時は巻き戻り、それはなかったことになり、幻惑耐性を得る

……あれ?ここどこ?ああそうだ!この迷路を抜けなくちゃいけないんだった
段々わかってきたよ!
この行き止まりはさっき見たから……出口はこっちだ!
フフーン、こんな迷路じゃボクは止められないよ!
これが終わったらもっかいあのパフェを食べて帰るんださっさと終わらせよう
フフ、あれは美味しかったな~
よーしやる気が出てきたぞ~!



 紫陽花の庭園を、歩んでいく。
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の足取りは軽やかなものだった。
 色のうつろい――その中でロニの心も揺れ動いていく。
 愛が――ゆらぐ。
 みんなを愛してる。
 みんなに愛されたい。
 ロニの視線が紫陽花の上を撫でていく。
 愛している、愛されたい――嘘だ、と小さくロニの唇は動いた。
「本当は」
 本当は――みんなどうでもいいと思っている。
 目垢を、己へ向けられる視線を擦りつけられるだけで怖気に鳥肌が立つ。
 いくつもの視線を思い出しロニは零す。
 消えて――消えろ。
 その言葉は弱弱しいものから強いものへと変わって。
「そうだ、みんなみんな消してしまえ」
 それがいい、そうしなければいけない――それはロニにとって歪み。
 歪んではいけない――それは修正されるべき事だ。
 ロニの表情からは色が消えて、その歩みは止まる。
 ここも消えてしまえばいいのではないかと思いながら。
 しかし、時が――巻き戻る。
 巻き戻り、無かったことになり、同じことが起きぬ様耐性を得て、ロニはぱちりと瞬いた。
「……あれ? ここどこ?」
 そう言ってきょろきょろとあたりを見回す。
 紫、青、白と移り変わっていく紫陽花の色。
 それを見て、自分がどうしてここにいるのか思い出す。
「ああそうだ! この迷路を抜けなくちゃいけないんだった」
 段々わかってきたよ! と、軽やかにその足がふたたび動き始める。
「この行き止まりはさっき見たから……出口はこっちだ!」
 たたっと走り、左右に分かれる道は右を選ぶ。
「フフーン、こんな迷路じゃボクは止められないよ!」
 紫陽花の色が変わるさまを楽しみながら、ロニが思い出したのは先程食べたパフェの事だ。
 これが終わったらもっかいあのパフェを食べて帰るんだ、とロニは楽しみを見つける。
 そして、さっさと終わらせようと足早に。
「フフ、あれは美味しかったな~、よーしやる気が出てきたぞ~!」
 その歩みは跳ねるように。紫陽花の迷路を抜けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫城・京杜
紫陽花の迷路か
綺麗なんだけど、何か落ち着かねェな…

買った紫陽花の菓子は確り持って帰らないとな、とか思ってたら
…?
あんなに、喜んでくれるかなってウキウキしてたのに
急に心が冷めるような感覚

主の事は…大事な人の事は、今度こそ絶対に護るって
絶対揺るがねェと思ってたけど
でも、ふと考えてみる
もしも、死んだあいつが生きてたら…?
俺の主は、一体誰になってたんだろうか
てかそもそも、主はすげー強いし
俺が守護する必要とか、なくねェか…

なんて思ってたら
…おわっ!
買った菓子を危うく斜めにしそうに
…いや、でもこれは、誰でもない主好みのをって、選んで買ったやつだからな
さっさと終わらせて帰って、土産話しながら一緒に食べるぞ!



 紫陽花の迷路か、と姫城・京杜(紅い焔神・f17071)は零して。
 その瞳が紫陽花の上をなぞっていく。
「綺麗なんだけど、何か落ち着かねェな……」
 色が移り変わっていく様。先ほど買った紫陽花の菓子がその手にはあった。
「確り持って帰らないとな」
 買った時は、やっぱ珈琲と一緒にかな、とか。美味いって言ってくれるかな、と色々な想いが巡っていたというのに。
「……?」
 あんなに、喜んでくれるかなってウキウキしてたのに――急に心が冷めるような感覚が京杜の心を浸していく。
 それと共に、その歩みはのろのろと遅くなりやがて止まってしまった。
 心が冷めて、色褪せていくような。朽ちていくような感覚さえある。
 主の事は――大事な人の事は。
(「今度こそ絶対に護るって」)
 絶対、その想いは揺るがないと思っていたのだけれど――ふと、その姿が浮き上がってしまった。
 考えてしまう。
 もしもはないというのに、もしも――
(「死んだあいつが生きてたら……?」)
 俺の主は、一体誰になってたんだろうか――と、渦巻くように心の中に浮かんでくる。
 もしもの世界の中で、いったいどうなっていたのか、その答えは誰も知らぬものだ。
 今の主は、主であっただろうか。それとも、守れなかった彼が主としていただろうか。
「てかそもそも、主はすげー強いし」
 俺が守護する必要とか、なくねェか……と、弱弱しく京杜は零した。
 ふ、とその身から力が抜けてしまうような――けれど。
「……おわっ!」
 その手に合った菓子を危うく斜めにしそうになる。
 この菓子も、買わなくてよかったのかもしれないなんて――思ったのだ。
 けれど、食べたいと――主が言っていた覚えもある。
「……いや、でもこれは、誰でもない主好みのをって、選んで買ったやつだからな」
 此処で落として駄目にするわけにはいかない、と京杜はしっかりとその手に持ち直した。
 そしてその手のものを視て、ふるふると首を横に振り前をしっかりと見つめる。
「さっさと終わらせて帰って、土産話しながら一緒に食べるぞ!」
 声色は上向きに明るく。己のやるべきことを思い出したかのように京杜は大きく一歩踏み出した。
 まだ心の中で何かは、蹲っているけれどそれを振り払うように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【花守】
うーん、それこそ気紛れとか気の迷いというものですかね?
まぁ俺は両手に甘味で幸せなので何でも良いです(いつの間にか土産菓子提げ笑顔)

さて、楽しい場所なら兎も角、流石に此処でまた迷子まっしぐらは俺も勘弁願いたいですねぇ――何せ、心の方が多少迷子になる場所の様ですから

ああそれに、俺達から、もとい現実から逃げても、伊織は獣道やら茨道やらに迷い込んで行く節がありますからねぇ?
まぁ、それはそうとして――(亀さんに笑み)伊織なんてやめてやっぱり俺にしときます?

(そうして――親兄弟の遺志を守らんという密やかな決意に響くものを、騙し騙し紛らわし)

俺も元々の気質はさておき
この妙な感覚は何とも――

では足早に


呉羽・伊織
【花守】
あーあ…なんでまた俺はこんな連中と此処に来てしまったんだろう(真顔)
両手に花どころか狐とか有り得ない!

愚痴りつつもすたすた先へ
いっそコイツらと逸れてしまった方が楽なんじゃないか――と思う心は、特に影響を受けた訳でなく、まだ至って正常

…喧しいわ!
俺にはぴよこ達がいるし――は?待ってぴよこー!そんな狐野郎のどこが良いの!
えっ、亀まで??
やっぱ尻尾か!?毛並だけは良いもんなくそー!

嗚呼…色んな意味でくらくらしてきた
早く抜けよう

(決して本気にはならない
特別に思うものは作らない
それでも、得た信念は守りたい
――そんな奥底の核が、本気で移ろってしまう前に)

…元より唯一も堅実も無い流者だ
解ってるっての


佳月・清宵
【花守】
また面白いもんを拝めそうなんでついてきてやった訳だが、さて、迷路に入る前から本当に血迷ったもんだなぁ?(対照的に笑み浮かべ)

おい、先々行って迷子になってくれるなよ
まぁそれだけなら笑えるが、笑えねぇ迷子になられちゃ困るからな
(足が迷う分にはどうとでもなるが、気が迷えば酷く手のかかる――)

――否、そもそも移ろおうにも、それ以前の問題か
拠の相手もいねぇんじゃ世話ねぇよな?
おう、雛なら俺の手元で遊んでるぜ(残念だったなと、揶揄い尽くす様に笑み深め)

(ゆらゆらと、嘗て或る女に馳せたものが移ろう心地を遊び半分に化かして――ああ、揺らぐって事ぁ、未だ残ってやがる訳か)

――儘ならずとも、上手くやれよ



 呉羽・伊織(翳・f03578)は右、左と傍らにいる者たちに視線をやって真顔で紡ぐ。
「あーあ……なんでまた俺はこんな連中と此処に来てしまったんだろう」
 両手に花どころか狐とか有り得ない! と伊織の表情はあっという間に崩れる。
 その言葉に千家・菊里(隠逸花・f02716)は扇で口元隠し。
「うーん、それこそ気紛れとか気の迷いというものですかね?」
 まぁ俺は両手に甘味で幸せなので何でも良いです、といつの間にか買った土産菓子提げ笑顔を浮かべる。
 そして佳月・清宵(霞・f14015)は揶揄う様に――というか揶揄い含めて笑み浮かべ。
「また面白いもんを拝めそうなんでついてきてやった訳だが、さて、迷路に入る前から本当に血迷ったもんだなぁ?」
 そんな様子に、愚痴りつつも先へと進んでいく伊織。
(「いっそコイツらと逸れてしまった方が楽なんじゃないか――」)
 なんて、思うのはいつもの事。
「さて、楽しい場所なら兎も角、流石に此処でまた迷子まっしぐらは俺も勘弁願いたいですねぇ――何せ、心の方が多少迷子になる場所の様ですから」
 菊里はそう言って瞳を眇める。
 紫陽花の路に入ってから――心を擽るこれはなになのか。
「おい、先々行って迷子になってくれるなよ」
 清宵の声も聞こえないというようにすたすた歩いていく伊織。
「まぁそれだけなら笑えるが、笑えねぇ迷子になられちゃ困るからな」
 と、追いかけて清宵が向ける言葉。
(「足が迷う分にはどうとでもなるが、気が迷えば酷く手のかかる――」)
 清宵はその心の内を紡がずに。
「ああそれに、俺達から、もとい現実から逃げても、伊織は獣道やら茨道やらに迷い込んで行く節がありますからねぇ?」
「――否、そもそも移ろおうにも、それ以前の問題か。拠の相手もいねぇんじゃ世話ねぇよな?」
 そんな言葉にばっと伊織は振り向いて。
「……喧しいわ! 俺にはぴよこ達がいるし――」
 と、ぴよこに視線向けると、いない。はぐれたのかと視線をくるりと巡らせると――清宵の掌の上だ。しかも嬉しそうにしている。
「おう、雛なら俺の手元で遊んでるぜ」
「は? 待ってぴよこー! そんな狐野郎のどこが良いの!」
 そんな叫びに残念だったな、と揶揄い尽くす様に笑み深める清宵。
 まぁ、それはそうとして――菊里は亀さんに微笑み。
「伊織なんてやめてやっぱり俺にしときます?」
 そう声かけると、どうしようかなと視線がちらちら菊里へと向けられて。
 笑って言って――親兄弟の遺志を守らんという密やかな決意に響くものを、騙し騙し紛らわす菊里。
 しかしとうの伊織はというと。
「えっ、亀まで?? やっぱ尻尾か!? 毛並だけは良いもんなくそー!」
 心の底からの叫びを響かせていた。
 うつろいというのはこれなのか、というように。
「嗚呼……色んな意味でくらくらしてきた。早く抜けよう」
 これは全部、この紫陽花の路のまどわしのせいと。
 そして何より――
(「決して本気にはならない。特別に思うものは作らない。それでも、得た信念は守りたい――そんな奥底の核が、本気で移ろってしまう前に」)
 伊織の足は出口へと向いて。
「……元より唯一も堅実も無い流者だ。解ってるっての」
 小さく、呟き落とす。その声は細く、二人には向かず己にだけ響く。
 そしてふたりも、ゆるりとそれを追うのだ。
 その中で清宵はふと――己の心の揺れ動きを感じて。
(「――ああ、揺らぐって事ぁ、未だ残ってやがる訳か」) ゆらゆらと、嘗て或る女に馳せたものが移ろう心地を遊び半分に化かして、かわして。
 けれど気付いてしまってふと口端に笑み零す。
 ――儘ならずとも、上手くやれよ、と思いながら。
 何かしらの、違和感。変な心地をもたらしているのはこの紫陽花の迷路だとは、わかっている。
 それを楽しむような――それも、多少はあったのだが。
「俺も元々の気質はさておき、この妙な感覚は何とも――」
 心を、擽られているのか――歪めようとしているのか――なんとも言えず。
 けれど、何かが変わっているのは確かだ。
 では足早に、と菊里は紡ぐ。
 早くこの紫陽花の迷路から出てしまいましょうと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヒマワリ・アサヌマ
【まいご】

わあ今度は紫陽花の迷路〜〜!?
行こう行こう!ほらほらジョウくん早く早く〜〜〜〜!!

色が変わっていく紫陽花の迷路
花が一つしかなくても、こうして綺麗なものは作れるんだなあ

あんなに浮き足立っていたのに、徐々に勢いがなくなって
なんだか、胸がざわざわ

これは、なんだろう
大好きなのに、大好きなはずなのに

──じゃあ、どうしてママは、私を置いて行ったの?

ぽろぽろ。ぽろぽろ。
あれ、どうして、なんで、

……なんで。

おねがい、ジョウくん
もう少しだけ、一緒にいて

この手すら離してしまったら、駄目になってしまいそうだから

熱を、ちょうだい。


ジョウ・デッドマン
【まいご】

だから引っ張るなっての!
(青。紫。赤紫。
きれいだけど、寒々しいとも思う)
…あー、紫陽花の花の色、土で変わるんだっけ
なんか土に埋まってる、とか…

(死体。)
(僕は死体だ。こいつバカだから多分気づいてねーけど)
(知ったらきっと、僕から離れていく)

(凍える心で隣を見たら
黄色い花が、雨粒みたいに泣いていた)

…お前、何、泣いてんだよ
(自分の顔は帽子で隠して、何でも無いみたいに)
冷たくて悪いけど、ほら
(この手で助けになるのなら、今は触れていよう)
歩けねーなら抱えて走って迷路を抜けてやる
だから、笑ってくれよ

…黄色い紫陽花もあったら、良かったな
きっと、鮮やかで明るくて、楽しい気分になるから



「わあ今度は紫陽花の迷路~~!?」
 ヒマワリ・アサヌマ(陽和・f25473)は紫陽花の花が咲き誇る路へと足を踏み入れ――そしてぱっと踵返しジョウ・デッドマン(異世界蘇生・f27582)の元へと戻ってきた。
「行こう行こう! ほらほらジョウくん早く早く~~~!!」
「だから引っ張るなっての!」
 ジョウを引っ張るヒマワリ。ジョウはそんなに引っ張らなくても行くと、ヒマワリの後ろをついていく。
 綺麗だねとヒマワリは自分の背よりも高くなっていく紫陽花を見上げる。
 色が変わっていく紫陽花の迷路。
「花が一つしかなくても、こうして綺麗なものは作れるんだなあ」
 その色を――ジョウの視線も撫でていく。
(「青。紫。赤紫。きれいだけど、」)
 寒々しいとも思うのだ。
「……あー、紫陽花の花の色、土で変わるんだっけ。なんか土に埋まってる、とか……」
 そう言って、ジョウはふと思う。
(「死体――僕は死体だ。こいつバカだから多分気づいてねーけど」)
 知ったらきっと、僕から離れていく――そう思い、心が冷えていく。冷えていく儘にジョウは、ヒマワリへと視線を向けた。
 すると、そのヒマワリの左の瞳――黄色い花が、雨粒みたいに泣いている。
 あんなに浮き足立っていたのに、徐々に勢いがなくなって――ヒマワリは胸のざわつきを感じていた。
(「これは、なんだろう。大好きなのに、大好きなはずなのに」)
 大好きなはずなのに──じゃあ、どうしてママは、私を置いて行ったの?
 ヒマワリの胸中に浮き上がってきたもの。
 それがその瞳より、ぽろぽろと雫を零させる。
「……お前、何、泣いてんだよ」
「あれ、どうして、なんで、……なんで」
 ぽろぽろと零れていく涙。
 どうしてと、ヒマワリはその意味がわからないのだ。
「おねがい、ジョウくん。もう少しだけ、一緒にいて」
 そして、隣にいるジョウにそっと視線向けて。
 ジョウは帽子を深く被り、自分の顔を隠し何でもないみたいに、自分の手を差し出した。
「冷たくて悪いけど、ほら」
 差し出されたその手に、ヒマワリは自分の手を重ねる。
 この手すら離してしまったら、駄目になってしまいそうだから。
 熱を、ちょうだい――ヒマワリは繋いだ手から、指からその温もりを得る。
 ジョウは、この手で助けになるのなら、今は触れていようと僅かに指先に力を込めた。
「歩けねーなら抱えて走って迷路を抜けてやる」
 だから、笑ってくれよと――それは言葉にせず。
 手を繋いで、進んでいく。
 さっきまでは先を進んでいたのはヒマワリだけれども、今はジョウの方が一歩先をいく。
 そしてふと、紫陽花の花を見て呟いた。
「……黄色い紫陽花もあったら、良かったな」
 その色があったなら――きっと、鮮やかで明るくて、楽しい気分になるからと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

遙々・ハルカ
よしのりサン(f05760)と

UDCでもよく見っけどね、花とか緑の迷路
紫陽花てアレ思い出すわ
花の下に死体埋めたらそこに咲く花の色が変わっちゃってバレるやつ~

別人囲うのは不毛だよなァ~
でも人が死ぬっつーのは
手鞠咲の萼花を一つ毟り取り
―ほい
一つ分穴の開いた紫陽花
こーいう感じらしーよ?
埋めたくなっちゃうんでしょ
他者は所詮環境の一要因に過ぎない
他人の死に感じる何をも持たないが
花を道に捨てて笑い

ン~
よしのりサンが死んでも
やっぱ別人は要らねェな
自然に彼へ伸ばした指先は自身の開けた穴、贈ったピアスへ
裡に滲む何かがある
紛れもない違和感を生むもの
触れる耳朶

な~んか前にもやったなァ
コレ

『何か』をひどく違えている


鹿忍・由紀
ハルカ(f14669)と

わざわざ迷路にしてあるって事は何か仕掛けてあるのかな
立派に咲いたから見てくれ、っていうだけなら良いんだけど

似てるだけの別人でも囲っちゃうなんてよくわかんないな
人に情を移さず自分の為だけに生きてきた故に想像も乏しく
興味があるわけではなかったけれど
彼の説明は明解だった
パーツとして埋めたくなるんだね
欠けてても問題はないのに

もしハルカがいなくなったら
似た姿を探してしまうんだろうか
…なんでこんな事考えてるんだろ
ひとりごちた心の内、ゆらめく思考への違和感
誰かとの未来なんて思い描いた事などないのに

俺も、別人は要らないかな
不意に自分に向かって伸ばされた手を
振り払わないのもどうしてだろう



「わざわざ迷路にしてあるって事は何か仕掛けてあるのかな」
 立派に咲いたから見てくれ、っていうだけなら良いんだけどと鹿忍・由紀(余計者・f05760)は紡ぐ。
 遙々・ハルカ(DeaDmansDancE・f14669)は、UDCでもよく見っけどねと笑って。
「花とか緑の迷路。紫陽花てアレ思い出すわ」
 その言葉にアレ? と由紀は聞き返す。するとハルカはそうアレと頷き返して。
「花の下に死体埋めたらそこに咲く花の色が変わっちゃってバレるやつ~」
 ハルカはけらりと笑って、行こ~と歩み始める。
 紫陽花さく路――色が移り変わっていく。その様見つつ。
「別人囲うのは不毛だよなァ~」
「似てるだけの別人でも囲っちゃうなんてよくわかんないな」
 人に情を移さず自分の為だけに生きてきた故、由紀には想像できぬことだ。
 興味があるわけでは、ないのだけれども。
 その様子にハルカは、でも人が死ぬっつーのは、と手鞠咲の萼花を一つ毟り取る。
「――ほい」
 一つ分穴の開いた紫陽花――それを指し示して。
「こーいう感じらしーよ?」
 埋めたくなっちゃうんでしょ、と言う。
 他者は所詮環境の一要因に過ぎないと、笑って。
 けれどこのハルカの説明は明解だった。
「パーツとして埋めたくなるんだね。欠けてても問題はないのに」
 ハルカは他人の死に感じる何をも持たない。
 さっき毟り取った花を道に捨て、それを由紀の視線が追いかける。
 もし、ハルカがいなくなったら――似た姿を探してしまうんだろうか、と由紀は考える。
(「……なんでこんな事考えてるんだろ」)
 心の内でひとりごち、ゆらめく思考への違和感がある。
 これはなんだろうか――誰かとの未来なんて思い描いた事などないのに、と由紀が思っていると。
「ン~、よしのりサンが死んでも」
 やっぱ別人は要らねェな、とハルカは言う。その声が耳に飛び込んできた。
 そして、ハルカが自然に由紀へ伸ばした指先は、そっと自身の開けた穴――そこにある、贈ったピアスへと触れた。
 これはなんだろうか、裡に滲む何かがある。
 紛れもない違和感を生むもの――触れる耳朶から何が伝わるということもあるのか、ないのか。
「俺も、別人は要らないかな」
 伸ばされたその手を、触れるその指を振り払わないのもどうしてだろうと、由紀は僅かに瞳細める。いつもならそっとかわすのだろうか、それとも――と、どうであるのかも今はあいまいな心地。
「……な~んか前にもやったなァ、コレ」
『何か』をひどく違えていると思いながら、ハルカはその手を引いた。
 紫陽花の色が移り変わっていく中で――いつもとは違う何かを、二人抱いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

君影・菫
ちぃ(f00683)と

隣の保護者のようなキミ
親をしらんうちに親を感じさせてくれるキミ
そんなキミから気持ちが揺れるのは
なんやろ、知らん感覚
ええと、これ反抗期いうの?
それとも、もう巣立ち?

――心が、うつろうなんて。

ああ、ああ
なんやまるでうち、ヒトみたいやないの

ちぃも何か揺れとる?
辛くないやろうか
この気持ちもうつろうの?
ちぃが呼んでくれる名前、おと
ああ、離れるんは、少し、さみしいかな

紫陽花たちの迷宮はきっとひと時やけど
なあ。手、繋いでもええかなあ?
あんね、
繋いだぬくもりだけはきっと、うつろったりせえへん気いするから

あたたかいぬくもり
やっぱり大切なんはうつろわなくて
もう少しでも、キミの“子”で居たいわ


宵鍔・千鶴
菫(f14101)と

眸に映る景色の紫陽花は
何処までも同じ筈なのに
識らず心が思考が冥々としてゆく

隣りに添うのは自分を真似、
雛鳥、或いはヒトの仔宛ら慕ってくれる
可愛い我が子、その筈なのに

揺れる、惑う、
俺はこの子の傍に在って良いのだろうか
漠然とした不安に苛まれ気づく
――噫、きみも巣立ちたいと感じている?
子離れをしなきゃ、
でも、寂しい。
其れはうつろう想いの中で確かなもの

此れではどちらが親代わりか
解らないね
せめて装う平静をと柔い笑みを浮かべて
音にならぬおとできみの名を紡ごう

触れた手は温かくて
そうと握り返して
うつろいなど、冷えるものなど
このぬくもりより大切なものは無い

あともう少し、俺も親の真似事をさせて



 眸に映る景色の紫陽花は、何処までも同じ筈なのに――色は移り変わり。
 それと共に識らず心が、思考が冥々としてゆくと宵鍔・千鶴(nyx・f00683)は感じていた。
 隣に、誰がいるのか。
 隣に寄り添うのは自分を真似、雛鳥――或いはヒトの仔宛ら慕ってくれる君影・菫(マリオネテス・f14101)だ。
 可愛い我が子、その筈なのに――なんだろうか。
 揺れる、惑う。
 千鶴の心は足元失ったように揺れていた。
(「俺はこの子の傍に在って良いのだろうか」)
 漠然とした不安に苛まれ千鶴は気付いた。
(「――噫、きみも巣立ちたいと感じている?」)
 子離れをしなきゃ、でも――寂しい。
 其れはうつろう想いの中で確かなものだ。
 千鶴の心、その中心にある想い。
 その千鶴を、菫は傍らからそっと見つめる。
 隣の、保護者のようなキミ、と。
(「親をしらんうちに親を感じさせてくれるキミ」)
 けれど、菫もまた――気持ち揺れていた。
 こんな風に気持ちが揺れるのは。
(「なんやろ、知らん感覚。ええと、これ反抗期いうの?」)
 それとも、もう巣立ち?
 そう思うと溢れてくる――言葉にはできぬもの。
 ――心が、うつろうなんて。
 ああ、ああと菫は零した。この揺らめきは、簪である菫にとっては。
「なんやまるでうち、ヒトみたいやないの」
 小さく零し、ふふと菫は笑い零す。
 そして千鶴を見詰めて。
「ちぃも何か揺れとる?」
 辛くないやろうか、この気持ちもうつろうの?
 そう思いながら、菫は首を傾げていた。
 その視線を受けて千鶴はふと表情和らげる。
(「此れではどちらが親代わりか」)
 解らないね、とせめて装う平静をと柔い笑みを浮かべて――音にならぬおとで紡ぐのは名だ。
(「ちぃが呼んでくれる名前、おと」)
 ああ、離れるんは、少し、さみしいかなと菫は思う。
 そして、紫陽花たちの迷宮はきっとひと時やけどと手を差し出して。
「なあ。手、繋いでもええかなあ?」
 そっと、触れる。
「あんね、繋いだぬくもりだけはきっと、うつろったりせえへん気いするから」
 あたたかい――千鶴はそうと握り返す。
 うつろいなど、冷えるものなどと思うのだ。
 このぬくもりより大切なものは無いと微笑んで。
 伝わってくる、それに菫も笑い零す。
「やっぱり大切なんはうつろわなくて」
 もう少しでも、キミの“子”で居たいわとその唇はゆっくりと動くのだ。
 そして千鶴も、あともう少し、俺も親の真似事をさせてと瞳細めて――紫陽花の路を、手を繋いで進んでいく。
 紫陽花の色の移り変わりにつられるように心は揺れたけれども、ふたりのほだしは揺るぐ事は無く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

甘渼・アメ
🌈焔璃/f28226

わぁ綺麗な紫陽花ね!紫陽花のトンネルっていうの?
うつろう色彩が神秘的ですごくきれい
雨粒に虹がうつったらもっと!
そう思うよね、焔璃!
となりを振り向いて、ちいさく声を落とす
…焔璃はアメの大事なお友達
一人ぼっちだったアメが、桜の館で出会った
アメのことをちゃんとアメ自身としてみてくれる
焔璃の前ではアマビエさまじゃなくていい
アメでいい
癒さなくていい
祈らなくていい

『ほんとうに?』

本当よ!
頭をぶんぶんふって雑念を振り払って
焔璃の手をぎゅっと握って紫陽花の道をずんずん進む
心の奥から黒い光が溢れてくる
本当ね
捻くれた不味いものがたくさん

焔璃!駆け抜けんべ!
おら達はこんなんに負けちゃならねぇ!


波紫・焔璃
🌪️アメ/f28092

ね、すごい!
紫陽花ってトンネルにもなるんだー
うんうん!
いろんな色の紫陽花に、虹も加わったら極彩色ってやつだね!

アメは大切な友達
桜の館で出会って、お話しして、一緒にお菓子を食べて
一緒にいて楽しい
あたしのことが見える
大切な…

《一人でもいい》
ん?
《誰からも見えなくても大丈夫》
んん?んー?
紫陽花の道を進めば心がザワザワ
普段ならこんなこと絶対思わないのに
首を傾げ、腕を組み、うぅんと唸る

ううぅ…美味しくない想いだらけ!
気付けば、ねじ曲げられたモノがそこかしこに
嘘の想いは美味しくないから好きじゃない

アメ、早くここを抜けよう
このままだと変になっちゃう!
あは!そうだね、負けられなーい!



 紫陽花は最初は自分たちよりも低かったはずなのに、いつの間にか背丈を超えて大きなものばかりに。
 それと共に、紫陽花の花も大きく、そして様々な色を見せてくれる。
「わぁ綺麗な紫陽花ね! 紫陽花のトンネルっていうの?」
 周囲へと視線を向けた甘渼・アメ(にじいろ・f28092)は、波紫・焔璃(彩を羨む迷霧・f28226)へとぱっと顔向ける。
「ね、すごい! 紫陽花ってトンネルにもなるんだー」
 焔璃は見上げて、アメもその視線を追い、うつろう色彩が神秘的ですごくきれいと零す。
「雨粒に虹がうつったらもっと! そう思うよね、焔璃!」
「うんうん! いろんな色の紫陽花に、虹も加わったら極彩色ってやつだね!」
 焔璃は大きく頷いて、笑み深める。
 アメは大切な友達だ。
 桜の館で出会って、お話しして、一緒にお菓子を食べて――共に過ごす時間、一緒にいて楽しい。
(「あたしのことが見える、大切な……」)
 そう思うものの、焔璃の心に浮かんでくる言葉があった。
『一人でもいい』
(「ん?」)
『誰からも見えなくても大丈夫』
(「んん? んー?」)
 ザワザワ、心がざわめいていく。
 普段ならこんな事絶対思わないというのに。
 首を傾げ、腕を組みうぅんと唸る焔璃。
 その心ざわめかせるものは、アメにも生まれていた。
 焔璃の表情見つつ、アメはちいさく声落とす。
「……焔璃はアメの大事なお友達」
 一人ぼっちだったアメが、桜の館で出会ったひと。
 アメのことをちゃんとアメ自身としてみてくれる焔璃。焔璃の前ではアマビエさまじゃなくていい――それは、アメにとって大切なことだ。
 アメでいい。
 癒さなくていい。
 祈らなくていい。
 それは――『ほんとうに?』
 誰かが心の中で問いかける。それは自分かもしれない。
 アメは頭をぶんぶんふって、その雑念を振り払う。
 本当よ! と、強く心の中で思って――焔璃の手をとりぎゅっと握った。
 焔璃は、ぎゅっと握られたその手を見て、そして歩み始めた彼女と共に進んでいく。
(「ううぅ……美味しくない想いだらけ!」)
 焔璃は気付く。ねじ曲げられたモノがそこかしこに。
 嘘の想いは美味しくないから好きじゃないと焔璃は言う。
「本当ね。捻くれた不味いものがたくさん」
「アメ、早くここを抜けよう。このままだと変になっちゃう!」
 そしてアメも心の奥から黒い光が溢れてくるのを感じていた。
 けれどそれを溢れ返すことはない。
 だってひとりでは、ないのだから。
「焔璃! 駆け抜けんべ! おら達はこんなんに負けちゃならねぇ!」
「あは! そうだね、負けられなーい!」
 アメの声に焔璃は笑い返して、紫陽花の路を二人で走り始める。
 この場所を、早く抜けてしまうために。
 走って、走って――紫陽花の迷路、その先が開ける。
 ふたりが走り抜けたその先には洋館がひとつ。そこが、件の絵描きがいるという館だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『或る作家の残影』

POW   :    蒼桜心中
【心中用に持ち出した桜の意匠が凝らされた刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    心中遊戯
【甘く蕩ける桜色の毒物】【切腹できる桜模様の短剣】【桜の木で首を吊る為の丈夫なロープ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    乱桜吹雪
自身の装備武器を無数の【原稿用紙と乱れ舞い散る桜】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠筧・清史郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 紫陽花の迷路を抜けて――猟兵たちがやってくる。
 その気配を感じ、口端をわずかに上げ男は微笑んだ。
「あー、お客さんきちゃったー」
 その声に、動かした絵筆をぴたりと止める女。絵描きの女はこの館の主である佐々明世だった。
 彼女はその声にサンルームの外へと視線を向ける。
 外――紫陽花の向こうに確かに人影があるようだと。
「客? 今日は誰もここに来るなんて」
「ああ、違うよー。僕の、客」
 そろそろ来ちゃうかなと思ってたんだよねーと笑いながら、男は――櫻居・四狼という作家の残影は立ち上がり――じゃあね、と明世へと言う。
 そして彼女の横を通り過ぎて――足を止め。
「そうそう、最後にちゃんと見せてもらっとこ」
 そう言って彼女の後ろへと回り込む。
 もうほぼ完成と言ってもいいほどの絵を眺め、へぇと零す。上手上手と、続けて。
 その絵は――明世が望んで描き始めたものだった。
 悲しみの中で、薄っすらと途切れそうになるその姿を自分で絵として閉じ込めて。
 これが描きあがったら、この絵を抱いて死のうと彼女は思っていることを男は知っている。
 だから、どうなるのかと今まで興味を持ってみてきたのだ。
 時には彼女の心に沿う様に恋人ごっこをして甘い言葉を向けたり、ただ傍にいたりと――望む様に。
 己の描いたものを、想っている男の代わりにして――いや、それは彼女にとって想っている男と同じなのかもしれないが――心中しようと思っている。
 そんな想いを抱える女は、どんな女なのだろうかと。
 結局は、ただ一人を想う女かというところに落ち着いて興味が失せてきたところだったのだが。
「最後の一筆を描いて死ねたら、望み通りの心中ができたかもしれないんだけど」
 最後まで付き合うのはできなさそうだねー、なんて人好きのする笑みを浮かべる。
 そう、興味を失ったが、未だ彼女へと向けた想いもあるのだ。
 少しだけ、期待していた。心中を目の前で見せてくれることを。
 君はその絵と心中できる――かも、しれない。
 僕も『桜の君』とできたらいいなぁと心の中で紡いで、男はその手にある美しい硯箱を撫でた。
 そして――猟兵と遊ぶために、サンルームから庭へと続く扉を開けて外へでた。
 明世はサンルームの、その扉で立ち尽くし、これから何が起こるのか――わからぬままに来訪者たちを迎える。
歌獣・苺
あなたが
佐々明世さんだね
ごめんね、貴方のこと
少しだけ聞いたの
幼馴染さんの事も。
貴方は…泣かなかったんだね
強い人なんだね
私もね、同じ。『泣けなかった』
泣いたら他の人まで不幸にしちゃうと思ったから

なのに私の仲間は
皆『泣け』っていうの
おかしいでしょ?
でも、仲間があまりにも暖かく抱きしめてくれるものだから我慢できなくなって、大声で泣いちゃった。そしたらね、大切なことに気づけた。
危うく後悔する所だった。貴方は…

『後悔』してない?

絵は途中でいい?泣かなくていい?
あそこの彼に言うことはない?

少しでも『後悔』があるなら
それを乗り越える強さをあげる

さあ、うたおう
戦う皆にも届けよう

『これは、皆を勝利へ導く詠』



 ドラゴンの姿から、元の姿へ。歌獣・苺(苺一会・f16654)はとんと、地に足をつけた。
 そして、向かったのは――影朧のもとではなく。
「あなたが、佐々明世さんだね」
 この屋敷の主、絵描きの女のものだった。
 名前をしられているのは、よくあることなのかそうよと彼女は動じている様子はない。
「ごめんね、貴方のこと、少しだけ聞いたの」
 幼馴染さんの事も、と苺が続ければ明世は僅かに震えて反応を示した。
 その表情がどんなものか、まるで凍り付いたかのようなものだった。
「貴方は……泣かなかったんだね。強い人なんだね」
 苺は、真っ直ぐ明世の瞳を見詰めた。
 私もね、同じ――泣けなかった、と紡いで。
「泣いたら他の人まで不幸にしちゃうと思ったから」
 明世は僅かに瞼を震わせた。
 この人も――私と同じなのだろうか。同じ境遇にあったのだろうかと、興味をもったのか。
 それとももっと他の感情を、抱いたのか。
「なのに私の仲間は、皆『泣け』っていうの」
 苺は困ったように、おかしいでしょ? と小さく首を傾げた。
 泣けないのに、泣けと言うのだから。
「でも、仲間があまりにも暖かく抱きしめてくれるものだから我慢できなくなって、大声で泣いちゃった」
 そしたらね、と苺は言葉切って。
 大切なことに気づけた、とゆっくり紡いだ。
「危うく後悔する所だった。貴方は……」
『後悔』してない? と、尋ねる。
 絵は途中でいい? 泣かなくていい?
「あそこの彼に言うことはない?」
 穏やかに笑っている影朧を示して苺は問う。
 影朧は、倒してしまう相手だけれどもそうなる前に。
「少しでも『後悔』があるなら」
 それを乗り越える強さをあげると、苺は明世の背中を少しだけ押すのだ。
 明世は、一歩、二歩と歩んで立ち止まる。
 影朧がどうしたのというようにただ微笑み掛けていた。
 明世は瞳を伏せる。
「あなたが違う人なのは、わかっているのよ。けれど、」
 似ていたから――途切れかける言葉を涙と一緒に零し、ありがとうと小さく落とす。
 それは影朧に向けられた言葉だった。
「お礼を言われるようなことは何もしてないんだけどねー」
 僕は興味があったから、ここにいただけだしと影朧は言うのだ。
 すべて、己の為なのだと。
 誰だって己のために、ということはあるのだ。
 けれど向けられた言葉に苺は――影朧はやはり影朧なのだと、思う。
 さあ、うたおう――戦う皆にも届けようと苺は息を吸って。
『これは、皆を勝利へ導く詠』
 何があっても最後まであきらめない、その感情をこの場にいるものたちへと、鼓舞として贈る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈍・しとり
泣いて喚けば良いものを
心持つものの特権でしょうに
人とは本当にややこしい

絵やまやかしで代わりになるのなら
好きにすれば良いわ

ただーー悪い男にひっかかって
せっかくの想いが勿体無いこと
首を突っ込むのが好きなようだけれど
斬り落とされてしまわないようにね
言い捨て、露滴る刀で斬りかかる

随分綺麗な、雅な刀
何を斬るためのものなのか知ら
『あかいあめがふる』
身を斬り裂く俄雨を降らせながら相対して
「刃こぼれするわよ」
軋ませるように刃に刃を重ねて攻撃を

わたしは
死ぬほど辛かろうが追うほど寂しかろうが
それも戀の味ではないか知らと
思うのだけれどね



 その、明世の姿を鈍・しとり(とをり鬼・f28273)は静かに見つめていた。
 泣いて喚けば良いものを――しとりは、そう思うのだ。
 だってそれは、心持つものの特権であるから。
 けれど、そうできないでいる。
 人とは本当にややこしい、と神の残骸であり妖崩れの雨女は思うのだ。
 絵を描いている女。影朧を、亡くした男の代わりとしていた女。
(「絵やまやかしで代わりになるのなら、好きにすれば良いわ」)
 それで満たされるなら――幸せならそれはその女の得たものだ。
 ただ――この、目の前の影朧の男はしとりの感覚の何かを逆撫でる。
 この影朧は、悪い男。そんな気がするのだ。
「悪い男にひっかかって、せっかくの想いが勿体無いこと」
 その言葉を耳にしたのか、影朧の言葉は誉め言葉だね! なんて笑うのだ。
 ああ、本当に悪い男のようとしとりは、ため息と共に零す。
「首を突っ込むのが好きなようだけれど、斬り落とされてしまわないようにね」
 言い捨てて、一足――露滴る刀でしとりは斬りかかる。
 その一刃を影朧は桜の意匠が凝らされた刀でもって受け止めた。
 その、刃をしとりの視線がなぞる。
「随分綺麗な、雅な刀――何を斬るためのものなのか知ら」
「これはね、心中のための刀だよ」
 だから刃は美しく、その一瞬を確実にとらえるためのもの。
 常は使わず、仕舞われているその刃。
 しとりは『あかいあめがふる』と唇震わせた。
 身を斬り裂く俄雨が降る――その雨の中で刃をかみ合わせ、対しているのだ。
 その雨が、あかを得て血に落ちる。
「刃こぼれするわよ」
 軋ませるように刃に刃を、しとりは力を込めて重ねて攻撃をかけた。
 重い、と思わず影朧は零す。そして、僅かに刃毀れしたのは影朧の刃だ。
 綺麗な刃なのに、と影朧は残念そうに。けれど、まだ心中出来る刃だ、なんて続けて。
「ねぇ、君は一緒に死ねるって、幸せだと思わない?」
 僕はそれが幸せだと思うんだよねと影朧は言う。
 だから、絵を彼として死にたいと思っていた彼女が――幸せになれるか、見ていたかったんだけれどと続けて。
 その言葉にしとりは、わたしはと零して。
「死ぬほど辛かろうが追うほど寂しかろうが」
 それも戀の味ではないか知らと――思うのだけれどねと紡ぐ。
 終わってしまっては何も、残らないのだから。
 その言葉に僕とは相容れなさそうーと、打ち解ける気もない笑みを影朧が返した。
 君とは心中、できなさそーなんて冗談めかして言いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫城・京杜
お使いも影朧退治も、確りとこなすぞ!
って、この色男、知り合いに何か似てるな…
…いや、似てねェか(言動見聞きし
てか、俺だってイケメンなんだからな!(対抗心

心中が美しい?
俺には分かんねェな…
だって――生きるなら一緒で、でも死ぬなら俺一人でいい
って、口の減らない影朧だな!?
…有名作家ならサイン貰っとくべきか?
いや、翻弄されてねェし!

今日は守るべき主がいないから、攻勢でいくぞ!
でも明世が怪我しないよう、彼女の動きに注意し確り守りつつ
桜の刀の斬撃を天来の焔で受け、焔紅葉で刃振るわせねェよう絡め取って
焔連ね握った炎の拳でぶん殴る!

紫陽花は確かに綺麗だったけど、俺の心は移ろわねェ
俺の主は、あいつだけだからな



 紫陽花の迷路の終わりを迎える。
 お使いも、と手の内を見て。影朧退治も、確りとこなすぞ! と姫城・京杜(紅い焔神・f17071)は思いながら影朧の姿を目にし、足止めた。
「って、この色男、知り合いに何か似てるな……」
「あ、またお客さん。人が訪ねてくれるなんて僕もてもてだよね~。イケメンだから仕方ないか」
「……いや、似てねェか」
 見知った知り合いに似ている――様な気はしたのだが。
 その言動はまったく違う。顔の良いあの涼やかに笑む男と、この目の前の男は別のものだ。
「てか、俺だってイケメンなんだからな!」
 と、影朧の言葉拾って京杜は対抗心を燃やす。
「そだねイケメン! ねぇ、君は心中って考えたことない?」
 美しいと思わない? ――その問いに京杜は僅かに眉上げて。
「心中が美しい? 俺には分かんねェな……」
 だって――とその唇は音を生み出す。
 生きるなら一緒にと描く姿は主一人だ。
 生きているなら、ずっと傍らに、傍に。
「でも死ぬなら俺一人でいい」
「ひとり? なんで~?」
「――って、口の減らない影朧だな!?」
 共にと思うほど想い傾けた相手いるんだよね? と影朧は面白がるように問う。教えてほしいな、と笑いながら。
 けれど京杜はそれに応えるつもりはもちろんない。
 溜息ついて意識切り替えるように。
「……有名作家ならサイン貰っとくべきか?」
「サイン? いいよ、どこにする?」
 してあげるよ、と影朧は距離詰めて、これにしよっか~とお使いの包みを奪い取る。
 京杜は油断したと舌打ち一つ。すぐ返せと手を伸ばすとはい、と影朧はそれを笑って返した。包みにさらっとサインをかいて。
「翻弄されすぎじゃない?」
「いや、翻弄されてねェし!」
 けど、ありがとな! と律儀に礼を言うさまに影朧はそろそろ戦う? と誘いかける。
 その言葉に乗ってやるというように、京杜はその拳に炎を躍らせた。
 今日は守るべき主がいないから――思う侭に、戦う。
 でも、と京杜はちらりと視線向ける。
 影朧を匿っていた明世が怪我をしないように、動きには注意していようと。今の所、動く様子はないようだが。
「余所見?」
 そちらに視線向けている間にひゅっと風切る音がして、刀の先が降りてくる。
 その斬撃を、炎の盾で受け止めて焔の如き紅を密かに帯びた鋼糸でもって絡めとる。
 紫陽花は確かに綺麗だったけど、俺の心は移ろわねェ――ぐっと、握りしめた拳にその想いを乗せて向ける。
 絡め取った刃、それを鋼糸引けば影朧は引き寄せられ、向けられた焔灯る拳はその顔に向けられていた。
 ただただ力の儘に、ぶん殴るだけ。
 その拳は頬にあたり、影朧は吹き飛ばされる。
「俺の主は、あいつだけだからな」
 ここでその刃にも倒れることはないと京杜は影朧を見つめる。
 影朧は痛いなぁとその頬さする。顔狙いなんてひどいと言って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遙々・ハルカ
よしのりサン(f05760)と

お、アレが噂の色男ってヤツ~?
カフェの絵を思い出しつつ
自然な動作で喚び出す《泥濘の白》
やっぱ絵の顔がぼやけてたのってさァ
どっちを描きたいか判んなくなったからだと思う?

ワハハ、原稿用紙も飛んでんじゃん
当たり前のように“天使ちゃん”の影に隠れ
舞う大小の白を泥と変え地に墜とさせながら

自分以外の何者かに心の全てを預けてしまうような
そんなものを
恐らく永遠に感じないのだと判っていた
知識としてしか持つことは出来ない
それを惜しんだこともないが

花も泥も価値は変わらないなどと

――まァ~でもホラ
溶けたら一緒じゃん?
ねェと隣に同意を求め

人生が自分だけのものならば
『それ』は所詮ただの錯覚


鹿忍・由紀
ハルカ(f14669)と

お出迎えしてくれるみたいだよ
あんな顔をしてたんだ
ポケットに手を突っ込んだまま
日常会話のような気軽さで
さあ、そうだとしたらますます不毛だね

ここには色んな花があるんだね
舞い散る桜を鬱陶しそうに払い除けながら
止めるなら本体を狙うのが早いかと『影繰』
バラまいてくれてありがと
原稿用紙と花びらの影も利用して多方面から串刺しに

女がどんな想いを抱いていたか
影朧がなぜ匿われていたのか
そんな事はどうでも良い
興味もないし、どうせ理解も難しい
うつろう心など持ち合わせていなかったのだから

隣からの声に
そうだね、と
何にも感じない顔して
花も泥も踏み潰す

人型であっても
いつかぼやけて溶けて
それでおしまいだ



 紫陽花を抜けた先――すでに戦いの気配がする。
 お出迎えしてくれるみたいだよ、と鹿忍・由紀(余計者・f05760)は影朧の姿を見止めた。ポケットに手を突っ込んだまま、いつもの如くの自然な体で。
「あんな顔してたんだ」
「お、アレが噂の色男ってヤツ~?」
 どれどれ~と物見遊山のように遙々・ハルカ(DeaDmansDancE・f14669)も目を向けつつカフェーにあった絵を思い出す。
「やっぱ絵の顔がぼやけてたのってさァ、どっちを描きたいか判んなくなったからだと思う?」
 あの男か、それとも。ハルカは笑って由紀に問う。由紀は僅かに肩を竦めて。
「さあ、そうだとしたらますます不毛だね」
 二人の体はいつもの日常会話だ。戦いの中にあっても。
 ハルカはよろしく、天使ちゃんと身体が汚泥に溶け崩れ続ける天使に似た生物の霊を喚び己の前へ。
 それに気づいた影朧はなにそれと興味津々の様子。
 面白そうだから書き留めておこうと原稿用紙を広げた。それがぶわりと、桜の花弁と共に舞い散る。
 そのひとひらが由紀の頬を撫でて。
「ここには色んな花があるんだね」
 舞い散る桜を鬱陶しそうに払い除けながら、止めるなら本体を狙うのが早いかと、由紀は視線向ける。
「ワハハ、原稿用紙も飛んでんじゃん」
 当たり前のように“天使ちゃん”の影に隠れ、ハルカは笑う。天使ちゃんは舞う大小の白を、泥と変えて地に墜としていく。
 何が面白いの、と由紀は聞きながらその視線に魔力を込める。
「バラまいてくれてありがと」
 その原稿用紙に花弁の影、どっちもありがたいものとその影も使って――複数の棘が影朧を串刺しにすべく伸びる。
 貫かれる、ぼたりと影朧の身から落ちる血はその原稿用紙を赤に染めて。
「いった……は~、こんな痛いのは嫌なんだけどなー」
 影朧は本当に痛いのかというような表情で笑っていた。
 由紀の視線は別段何かを得るものはなく。
 ちらりと視界の端に収めた――女が、どんな想いを抱いていたか。
 影朧がなぜ匿われていたのか――そんな事はどうでも良いのだ。
(「興味もないし、どうせ理解も難しい」)
 うつろう心など持ち合わせていなかったのだから、由紀にとって耳にしたらふぅんと流しきくような遠い世界で起こっていることと同じようなものだ。
 熱の無い視線。
 ハルカはそれを追って、まァ俺もそんな感じかなと思う。
 自分以外の何者かに心の全てを預けてしまうような――そんなものを、恐らく永遠に感じないのだと判っていた。
 いったいどんな感情なのか、感覚なのか、知識としてしか持つことは出来ない。
 体験にはならないのだ。
(「それを惜しんだこともないけどね」)
 花も泥も、価値はかわらない――などと、思うのだから。
「――まァ~でもホラ」
 溶けたら一緒じゃん? とあっけらかんとした声響かせて。
 ねェ、とハルカは由紀へと同意求める。
 ちらり、由紀は視線を僅かに返してそうだね、と何も感じない顔して一歩前へと進む。
 花も泥も、踏み潰して。
「人型であっても、いつかぼやけて溶けて」
 それでおしまいだと由紀は言う。
 その様に、言葉にハルカは口端あげて笑って返すのだ。
 人生が自分だけのものならば、『それ』は所詮ただの錯覚と。
 あの影朧はいろいろ上手なんだろうね~とハルカは零す。
 だから、きっと上手に匿われて過ごしてきたのだろうと。
 けどそれも、今日でおしまい。
 天使ちゃん、と紡げば原稿用紙の間を縫って攻撃しかけ、その影を追って由紀の一瞥がまた棘を生み出していく。
 影朧は痛いのは遠慮とばかりに、かわすほうに注力し始めていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尾白・千歳
さっちゃん(f28184)と

あ!さっきの絵の人がいる
モテ?オーラ?
さっちゃんには見えるの?
うーん、私にはよく見えないけど…近くに行ったら見えるかな
イケメンさん、オーラ見せて!

なぁに?遊ぶ…鬼ごっことかしたいのかな?(ナンパを勘違い
あーっもうっ!ウルサイなぁ
さっちゃんってば耳元で大声出さないでよ(耳を塞いでぷんすか
は…!?もしかしてこのイケメンさんのこと好きなの?
さっきからずっと気にしてるもんね~
アタリでしょ~?

うーん、心中ってなんか怖くない?
さっちゃんとどうぞ!(背中をぐいっと押し
だって、私まだ死ぬのヤダもん!

イケメンさん、もっとお話したそうだったよ
お話聞いてあげればいいのに
可哀そう~(溜息


千々波・漣音
ちぃ(f28195)と

何かモテオーラ半端ねェ野郎だな(うぐぐ
…でもまァ、ちぃは好きじゃねェって言ってたしな
ちぃ、やっぱりオレの方がイケメン…って!?
不用意に近づくなっての!(内心超心配

は?ちぃはお前なんて好みじゃねェんだ、この軟派野郎(間に入り
…って!遊ぶって鬼ごっことかじゃねェから!?
いや、オレはこいつの事…わー!言うなァ!!(影朧に恋心揶揄われ慌て
はァ!?なんでそうなる!?

心中?
は、お前の様な軟派野郎は閻魔に舌抜かれるぜ?
って、押すなよな!?
まァお前は俺の後ろで大人しくしてろ

閻魔に代わってオレ様が裁いてやる(UC
軟派野郎には効果大だろ?

どうだ、ちぃ見たか?オレの神力!
え、何その変な誤解!?



「ゴール!」
 紫陽花の迷路の終わりが見えて、尾白・千歳(日日是好日・f28195)はぴょんとそこから飛び出した。
 その後ろを千々波・漣音(漣明神・f28184)はちぃ、待てよと慌ててついていく。
「あ! さっきの絵の人がいる」
 千歳の言葉に漣音は顔向けて、その姿を見て――うぐぐと唸った。
「何かモテオーラ半端ねェ野郎だ」
「モテ? オーラ? さっちゃんには見えるの?」
 それってどんなの? 私も見えるかな、なんて尾を揺らして興味はあるようだ。オーラの方に。
 その様子に漣音はほっとしていた。
「……でもまァ、ちぃは好きじゃねェって言ってたしな」
 大丈夫だろう、と思っている横で千歳は瞳を細め、目を凝らしてじぃと影朧を見詰めていた。
「うーん、私にはよく見えないけど」
 やはり、オーラは見えなくて。
「……近くに行ったら見えるかな。イケメンさん、オーラ見せて!」
「ちぃ、やっぱりオレの方がイケメン……って!?」
 ぴょんと飛び出していく千歳。
「不用意に近づくなっての!」
 内心超心配な漣音は慌ててそれを追いかける。
 近づけば見えるかなと向かえば、影朧は千歳に気づいて。攻撃かわしてそのまま、近寄ってくる。
 さっきまで攻撃受けていたのなんて気にしていないかのように溌剌と。
「かわいいこ、僕とあそぶ? 楽しいこといーっぱいあるよ」
「は? ちぃはお前なんて好みじゃねェんだ、この軟派野郎」
 千歳がそれに応える前に漣音はその間に割って入る。
 すると影朧は、君はいいよ~とその後ろを覗き込もうとするが漣音はさせねェ! と邪魔をする。
「なぁに? 遊ぶ……鬼ごっことかしたいのかな?」
「……って! 遊ぶって鬼ごっことかじゃねェから!?」
 こてんと千歳が首を傾げて零した言葉拾った漣音は、ばっと千歳の方を振り向く。
「あーっもうっ! ウルサイなぁ」
 その勢いのままの声は大きくて、千歳は自分の耳を塞いでぷうと頬膨らませた。
「さっちゃんってば耳元で大声出さないでよ」
 と、言って――千歳はなんでこんなに突っかかってくるのかと考えて。
「は……!? もしかしてこのイケメンさんのこと好きなの?」
「いや、オレはこいつの事……」
「はっ! 僕もわかっちゃった……君、もがっ」
「わー! 言うなァ!!」
 面白い事みつけたというように影朧が口端あげて紡ごうとする。それを慌ててその口押さえて漣音は止めた。
 その姿に、やっぱり! と千歳は思ってしまうのだが。
「さっきからずっと気にしてるもんね~。アタリでしょ~?」
「はァ!? なんでそうなる!?」
 それは違う、違うからなと漣音は必死だ。
 影朧はその様子に笑って、好きなら心中すればいいんだよ、と言う。
「心中しちゃえば、ずっと一緒にいられるし?」
「心中? は、お前の様な軟派野郎は閻魔に舌抜かれるぜ?」
 するわけがない、というように漣音は言う。千歳はうーんと唸って、心中ってなんか怖くない? と言いながら漣音の背中をぐいっと押して。
「さっちゃんとどうぞ!」
「って、押すなよな!?」
「だって、私まだ死ぬのヤダもん!」
「まァお前は俺の後ろで大人しくしてろ」
 言って、漣音はそのままそこにと千歳を隠すように背中に庇う。
 『漣神社前』と書かれたのレトロなバス停を手にして構えれば、影朧も刃を構え。
「閻魔に代わってオレ様が裁いてやる」
 言って、振り下ろす――バス停を受け止めた影朧へと向けて漣音はニッと笑み向けて。
「神罰を受けろ」
 影朧の身から棘が映える。そして、今まで話した嘘などの悪意の言葉の重ね、そのあおりを痛みとして影朧へと与えるのだ。
 いくつ重ねてきたか、それは影朧自身にもわからぬものだろう。
「軟派野郎には効果大だろ?」
 走る痛みは大きく、影朧はその場に膝をついた。
「どうだ、ちぃ見たか? オレの神力!」
 漣音は千歳へとぱっと振り向く。けれど、すごいとか、褒めるような言葉は向けられず。
「イケメンさん、もっとお話したそうだったよ」
 お話聞いてあげればいいのに、さっちゃん優しくな~い、と言われて。
「可哀そう~」
「え、何その変な誤解!?」
 溜息まじりの千歳の言葉に、なんでだよ! と漣音は声あげる。
 目の前の影朧よりも千歳のほうが、手強い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・アヴリール
ライナス(f10398)と
アドリブ歓迎

屋敷に着いた所で
先程までの思考が晴れて、目を瞬かせる
勝手に想い、焦がれていた
その考えは何故か、残り続けていたけれど

ライナス、俺は……
勝手に独りで先に進もうとした事に対しての後悔
悩みながらも、自分を呼ぶ声に従って近付こうと
何を考えているか、時折分からない主だが
せめて、傍に居たいと思うから

首筋を抉られるような痛みに眉を顰めながら
以前の様に喰らわれる事に、安堵を
痛みは【激痛耐性】で堪えて、Moiraiを構える

好きな様にやってやれ、と言うのなら
ライナス――この影朧を倒して、早く帰るぞ
UC:光を使い、撃ち抜こうと
避けられたとしても……肉の分は動いてくれる、だろう?


ライナス・ブレイスフォード
リカルドf15138と

屋敷につくと同時
脳裏に侵食するような靄が晴れれば軽く頭を振りつつリカルドへ視線を
何らしくねえ事考えてたんだか

…何離れたとこいんだよ
あんたが居んのは此処だろがと、顎を引き呼ぶような声を

…ま、俺は俺の思うが侭にしか生きられねえからな
あいつが離れようとしても離さなきゃいいんだろ?…俺からは離れられんわけ無えんだからよ
そう腹を括れば大きく口を開きリカルドの首筋の肉を噛みつつ【偉大なる糧】
強化した足で地を蹴り手にしたソードブレイカーにて敵の刀を『武器受け』
肉の分は確り足止めといてやっからよ。ま、好きな様にやってやれって、な!
その後は加勢するようソードブレイカーを敵へ振るいつつ行動を



 やっと、紫陽花の迷路も終わりを迎え、洋館が見えた。
 リカルド・アヴリール(遂行機構・f15138)は、一つ息を吐いた。
 先ほど、紫陽花の中を進む間ずっと感じていたものが――己の思考が晴れて。その瞳を大きく瞬いた。
 何を、抱いていたのか――勝手に想い、焦がれていた。
 その考えは何故か、残り続けていたけれど――リカルドは、ライナス・ブレイスフォード(ダンピールのグールドライバー・f10398)へと視線向けた。
 ライナスも、脳裏に侵食するような靄が晴れ、軽く頭を振りつつリカルドへと視線向ける。
 そしてその表情みて、はっと笑い捨てる。
(「何らしくねえ事考えてたんだか」)
 それは自分へ向けた想い――ライナスはリカルドへと視線向けた。
「ライナス、俺は……」
「……何離れたとこいんだよ。あんたが居んのは此処だろが」
 ライナスは顎を引き呼ぶような声を向ける。
 勝手に独りで先に進もうとした事に対しての後悔をリカルドは抱いていた。
 悩みはここにある。だがその呼ぶ声に従って近付こうと足を動かす。
(「何を考えているのか、」)
 時折分からない主――けれど、せめて。
 せめて、傍に居たいと思うから。
 そんな様子に肩竦めてライナスは思うのだ。
「……ま、俺は俺の思うが侭にしか生きられねえからな」
 あいつが、と目の前にいるリカルドを見つめる。
 簡単な事なのだ。離れようとしても――離さなきゃいい。
(「……俺からは離れられんわけ無えんだからよ」)
 そう、腹を括ればもう何も迷う事などなかった。
 ライナスは手を伸ばし、リカルドのベルトを掴んで引き寄せた。
 ライナスが口を大きく開く、その様がリカルドの目にはいやにゆっくりと映っている。
 その首筋に、歯を立て噛みつく――これは糧だ。リカルドの首筋の肉に噛みついて、ライナスは己の力とする。
 熱い。熱が灯る――それは、お互いにだ。
 熱のような、痛み。その肉を抉られていく痛みにリカルドは眉を顰めた。
 けれどその痛みは以前のように喰らわれている、印。
 そのことに安堵する。
 思い切り噛みつかれたならば、その痛みは軽くかわせるものではない。
 痛みは凌いで、そしてリカルドは人の運命を司る三女神が彫刻されたリボルバーを手に構えた。
 そしてライナスは、強化した足で地を蹴り、その手の霧の如く霞む刀身したソードブレイカーを向ける。
 迫るその姿に影朧は己の持つ刃を向けた。面白いなぁと先ほどまで戦っていた相手を笑って観察していた男。
 けれど向けられた敵意には敏感で、すぐさま対応してきたのだ。
 影朧の振るう刃をライナスは受け止め、払ってリカルドへと僅かに視線向けた。
「肉の分は確り足止めといてやっからよ。ま、好きな様にやってやれって、な!」
 好きな様にやってやれ、と言うのならとリカルドは僅かに笑みを口端にのせて。
「ライナス――この影朧を倒して、早く帰るぞ」
 拳銃『Moirai』を構えリカルドは素早く撃ち放つ。
「避けられたとしても……」
 肉の分は動いてくれる、だろう? とリカルドは視線向ける。
 それはもちろんと、加勢するようにライナスは動いて影朧へとその刃を振り下ろした。
 ライナスに動き留められ、リカルドからの銃弾を避けようとすればまた刃が落ちる。
 まいっちゃうなぁと笑って影朧はその攻撃を最小限の痛手とするように動いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雛瑠璃・優歌
【永歌】
「はぁ…はぁ…」
上がった息を整えようとすると体に段々酸素が回ってきて
霞がかってた意識が戻ってくる
あたしは何をしてたんだっけ
「逢海、さん…?」
取られていた手から伝う様に見上げた
瞳の色が左右で違うのに初めて気づく
猫みたいで
「綺麗…」

だけどやっぱり見惚れてちゃだめみたい
影朧は、倒さなくちゃ
桜の精じゃないし、人を弄ぶ存在を改心させられる言葉も持ってない
あたしは…誰かを笑顔にしたいという望みに狂っただけの、スタァ見習いだから
「それでもあたしは…“私”に出来る事をする!」
手早く髪を結い上げて蝶の髪飾りを飾ってUC発動
全部は無理だけど出来るだけ原稿用紙を切り裂いて衝撃波を飛ばして逢海さんを援護するよ


逢海・夾
【永歌】
抜けたか。とはいえ、気を抜いてる暇はねぇ
…んだけどな、無理に突っ込めばそれだけ危険が増える
優歌は…怪我はなさそう、か
気を使う余裕はなかったとはいえ、無理させたか
なんだ、じっと覗き込んで
…は、突然どうした、なんて言ってる場合じゃねぇか
「悪かった、大丈夫か」

さて、準備はできた。目的を果たすとするか
【梅華・幻煙奇譚】。この煙に、お前は何を視る?
ま、オレには関係ねぇ。聞く必要も、答える必要もねぇな
幻が見えてりゃ隙になるし、見えてねぇなら…ま、いつも通りだ
オレに出来るのは敵を倒すことだけだ、守るのは柄じゃねぇ
何が飛んでこようが関係ねぇ、首を掻き切りに行く
「オレは、人の心を操ろうとする奴は嫌いだ」



 走っていた。
 走り抜けるために――この、こころを移ろわせてくる紫陽花の迷路を抜けるために。
 そして、逢海・夾(反照・f10226)は雛瑠璃・優歌(スタァの原石・f24149)の手を引いてこの場所を抜けたのだ。
「抜けたか」
 とはいえ、気を抜いてる暇はねぇと夾は零す。
(「……んだけどな、無理に突っ込めばそれだけ危険が増える」)
 そしてそれに、と傍らに視線向けた。
「はぁ……はぁ……」
 傍らで優歌は荒れた息を整えようと深く息を吸っている。
 だんだん酸素が回ってきて、靄がかかっていた意識が戻ってきた優歌はぱちぱちと瞬いていた。
 あたしは何をしていたんだっけ――と視界に入った自分の手、その先へとゆっくり視線を向けていく。
「逢海、さん……?」
「優歌は……怪我はなさそう、か」
 夾は優歌の様子を確認して、一つ息をつく。
 気を使う余裕はなかったとはいえ、無理させたかと思っているとじぃと優歌から向けられる視線に気づいて。
「なんだ、じっと覗き込んで」
 優歌が捕まっていたのは、夾のその瞳だった。
 瞳の色が左右で違う。それに初めて気づいたのだ。
 その様が、猫のようで。
「綺麗……」
「……は、突然どうした、なんて言ってる場合じゃねぇか」
 と、夾は笑って気遣いの色を見せる。
「悪かった、大丈夫か」
 その言葉に優歌は大丈夫ですと頷く。
 見惚れてちゃだめみたいと、今は気持ちを切り替えて。
「影朧は、倒さなくちゃ」
 優歌は影朧の姿を捉える。
 自分は、桜の生じゃない。そして人を弄ぶ存在を改心させられる言葉も持ってないと優歌は思う。
 優歌自身はわかっているのだ。自分がどんな在り様をかかえているかを。
(「あたしは……誰かを笑顔にしたいという望みに狂っただけの、スタァ見習いだから」)
 けれど、それでも。
「それでもあたしは……“私”に出来る事をする!」
 優歌は手早く髪を結い上げて、青から碧を纏う蝶の髪飾りをそこへ。
 そして手にした、鈴蘭水仙の花宿す蒼玉製の両刃の細剣をその手に。
 それは、優歌の手からブルーデージーの花びらに変えて、躍らせる。
「全部は無理だけど出来るだけ、援護するよ」
 向かってくる原稿用紙の嵐を斬り裂いて、夾が前にすすめるようにと
 その言葉に夾は笑って。
「さて、準備はできた。目的を果たすとするか」
 梅香の煙を夾は放ちながら、優歌が切り開いていく原稿用紙の中を歩んで。
「この煙に、お前は何を視る?」
 その問いかけに影朧は――笑うのだ。
 そこに何をみているのか。心中に興味があるようだ。
 その中で、影朧は誰かとそうなる様をきっとみているのだろう。
「ま、オレには関係ねぇ。聞く必要も、答える必要もねぇな」
 幻が見えているなら隙になる。見えてないならば。
「……ま、いつも通りだ」
 オレに出来るのは敵を倒す事だけだ、守るのは柄じゃねぇと夾はその手に刃を持ちて。
「オレは、人の心を操ろうとする奴は嫌いだ」
 何が飛んでこようが関係ねぇ、と狙うのは敵の首だ。
 そこを掻き切りに一歩踏み込んで刃を走らせた。
 幻に心囚われているかと思ったが――影朧は深く食い込むのを避けた。
 けれど首筋にはひとつ、赤の一閃。
「いいもの見せてくれて、ありがとう。募っちゃうよね」
 ああ、本当に心中いいなぁと影朧は紡ぐ。
 僕も『桜の君』としたいなぁと笑って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
参ったな、全く
ヒトの心ってのは一応分かるようになってきたが、複雑極まる乙女心ってのは常々難しく――気の利いた言葉一つ、分かりやしない

でも、一人残った側の心地だけは多少なり分かるモンで(俺は恩人だったが――)
――分かっててこういう事言うのもどうかとは思うんだが、な

君もいつかまた梅雨曇を抜け出して、心晴れる日を迎えられるといいな

…叶うなら、その未来を絶たないでほしい
願わくは、過去の影に決別を

あ、作家先生?
まぁ思う所はなくもないが、話す事はもう特にないな
でも女心を徒に弄ぶのは――そう、ぴよこ達を惑わしてくれた礼はしないと!

UCの技で遊戯いなし、一太刀返礼へ
アンタの方もそろそろ、一区切りつくといいな?


千家・菊里
ずかずかお邪魔してすみませんねぇ?

でも、ええ、その影朧と最後まで一緒に――というのは、個人的に寝覚めが悪いので
それに傷を抱えたまま散れば、貴女も影朧となりかねず――出来るなら、違う形で、癒しを見出だして頂きたいので

勝手ながら筋書きは修正させて頂きますね、先生?

絵の中、物語の中
思い描いた結末を迎えられるなら、それも本人には一つの幸いなのかもしれませんが――俺はどうしてもそれで良いとは言い切れず
かといって大した事も言えぬ能天気で、申し訳ないのですが
せめて影の一つは――晴らしましょう

舞うものは炎で燃やし、早業で斬り込み
貴方も晴れて、来るべき時を迎えられるといいですね
――其までは、何度でも送り返すだけ



 参ったな、全くと呉羽・伊織(翳・f03578)は髪かき上げて零す。
「ヒトの心ってのは一応分かるようになってきたが」
 複雑極まる乙女心ってのは常々難しく――気の利いた言葉一つ、分かりやしない。
 でも、わかることは――多少なり、わかるものはある。一人残った側の心地を。
(「俺は恩人だったが――」)
 そう思いながら、ひとつ息吐いて。
「――分かっててこういう事言うのもどうかとは思うんだが、な」
 伊織は、残されている女の方へと足を向ける。
「君もいつかまた梅雨曇を抜け出して、心晴れる日を迎えられるといいな」
 その言葉に、そうなればいいのだけれどと。
 女の心はやはり簡単には変わらない。
「……叶うなら、その未来を絶たないでほしい」
 願わくは、過去の影に決別をと告げて伊織は向かう。
 そこへ千家・菊里(隠逸花・f02716)はたどり着いて。
「ずかずかお邪魔してすみませんねぇ?」
 菊里は駆け出していった伊織の背へとちらり視線を投げて、そして女へと向けるのだ。
「でも、ええ、その影朧と最後まで一緒に――というのは、個人的に寝覚めが悪いので」
 それに、と柔らかな声で菊里は続ける。
「傷を抱えたまま散れば、貴女も影朧となりかねず――出来るなら、違う形で、癒しを見出だして頂きたいので」
 柔和な笑顔で菊里は告げる。
「勝手ながら筋書きは修正させて頂きますね、先生?」
 菊里は思うのだ。
 絵の中、物語の中――思い描いた結末を迎えられるなら、それも本人には一つの幸いなのかもしれない。
 けれど。
(「――俺はどうしてもそれで良いとは言い切れず」)
 かといって、大した事も言えぬ能天気で、申し訳ないのですがと小さく笑い零して。
「せめて影の一つは――晴らしましょう」
 走り抜けて、影朧の前に立つ。
 その顔を目にし伊織はぱちくり瞬いた。
「あ、作家先生?」
 紡ぐと、僕の事しってるんだ、と影朧は笑う。
 その姿に、伊織は――まぁ思う所はなくもないが、話す事はもう特にないな、と零して。
 でも。
「女心を徒に弄ぶのは――そう、ぴよこ達を惑わしてくれた礼はしないと!」
 それは先程の迷宮でうけたものへの憤りでもある。
 飛び込んでくる伊織へと元気だね~と笑って桜模様の短剣とロープ、毒物を投げ放った。
 伊織はそれを、己の持つ技量高めて躱す。
 けれど全てはよけきれず――と思ったが、菊里が放った狐火がそれを燃やし落とした。
 そして、伊織も菊里も刃をその手に踏み込んだ。
 伊織は一太刀――返礼と向ける。
「アンタの方もそろそろ、一区切りつくといいな?」
 伊織の向けた一刀を己の刃で影朧は受けた。
 そしてふふと笑い零している。一区切りなんて、まだまだ楽しんでいたいんだけどねと。そして次の攻撃を払ってしまおうと動く、その動きを制するように他方からも菊里が迫るのだ。
「貴方も晴れて、来るべき時を迎えられるといいですね」
 ――其までは、何度でも送り返すだけと閃いた刃が影朧の身を深く斬り裂いた。
 それをかわすことはできず、影朧の身には深い傷が。
 痛いなぁとその傷抑え込んだ影朧は、此処で遊ぶのもそろそろおしまいかなと紡いでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヒマワリ・アサヌマ
【まいご】

最後に一度涙を拭って、頬を叩けば
よし!もう大丈夫!行けるよジョウくん!!
私が後ろ、ジョウくんが前
届けよう、貰った分の、その熱を
せーのっ、
がんばれっ!!!!

私はどうしても、誰かを傷つけることが出来ないから
まるで彼が傷つくことが、間接的に自分が傷つけているように感じてしまって
もどかしくて、たまらない。

もしかしたら、一撃くらいは、
この右腕で、止められるんじゃないか、って。
信じてるから、怖くないよ。
あとは、おねがい。

ほら、これで一緒だね。なんて
「んなわけあるか」って、言われちゃうかな。


ジョウ・デッドマン
【まいご】

死にたがりたちには興味はない
あれを殺せば仕事は終わり、それだけだ

けど生憎、僕はそんなに戦える方じゃない
ヒマワリを後ろにかばいながら
刀を腕で受け【激痛耐性】で耐えて【限界突破】
「デッドマンズ・スパーク」
刺さった刃から電流を流し、刀諸共アンタをブッ壊す。
アンタの刀の腕がいいことを祈るよ。
死体だって痛いもんは痛いんだ。
……応援の声が聞こえるから、もう少し頑張れる。
弱いとこ見せたくねーんだよ!

戦いが終われば、少しすれば腕は復元させられる
……それまでヒマワリには傷口見せたくねーな。頑張って隠す。
絶対うるせーし。
……カッコ悪いし。



 瞳から零れる涙を、もう一度拭って。
 ぱん! と乾いた音させたのはヒマワリ・アサヌマ(陽和・f25473)だ。
 自分の頬を叩けば、その気持ちはもう切り替わっている。
「よし! もう大丈夫! 行けるよジョウくん!!」
 その声にジョウ・デッドマン(異世界蘇生・f27582)はああと頷いた。
 死にたがりたちには興味はない。
 ただ、ひとつ確かなこと。
(「あれを殺せば仕事は終わり、それだけだ」)
 ジョウにとっては今、それだけあればいい。
 私が後ろ、ジョウくんが前とヒマワリは言う。
 届けよう、貰った分の、その熱をと――すぅと息すって。
「せーのっ、がんばれっ!!!!」
 生憎、そんなに戦える方じゃないとジョウは己を見ている。
 ヒマワリを後ろにかばって戦うのだ。その声を背中に受けながら。
 ジョウは影朧へと向かう。それに気づいた影朧も視線投げてよこし、その背中に庇う姿に微笑んだ。
 仲良しさんなんだね、と。そしてジョウの庇うという意志を感じたのか、踏み込んでくる。
「ちょっと意地悪したくなっちゃうよね」
 その手にある刃が振り下ろされる。ジョウはそれを腕で受けようとしていた。
 ヒマワリはどうしても、誰かを傷つけることはできない。
 けれど、ジョウが傷つくことが、間接的に自分が傷つけているように感じてしまう。
 もどかしい――ヒマワリの心は決して穏やかなものではなかった。
 けれどふと思ってしまった。
(「もしかしたら、一撃くらいは、」)
 この右腕で、止められるんじゃないか――そう思うと身体は動いていたのだ。
 けれど、ジョウにあったのは直感か。
 その動きを抑え込んで一撃を片腕に受けた。
 痛みは――ある。けれどそれを耐えて、己の限界を突破するのだ。 
 そしてヒマワリへと何してんだと視線向けた。
 信じてるから、怖くないよとヒマワリは言う。
 ジョウは、なら信じてそこにいろと返した。
「あとは、おねがい」
 もし、もしここで怪我をして。
 ほら、これで一緒だね――なんて、言ったら。
(「『んなわけあるか』って、言われちゃうかな」)
 刺さる、その痛みにジョウは笑っていた。
「アンタの刀の腕がいいことを祈ってたんだ」
 死体だって痛いもんは痛い。だから綺麗にやってくれるほうがいいと。
 けれど――ヒマワリの声が聴こえるから、もう少し頑張れる。
「弱いとこ見せたくねーんだよ!」
 言って、その片腕代償に放つ膨大な電流の波。それは刃を伝って影朧へと向かった。
「~~~っ!! 痛っ」
 影朧は身を引いて、けれど潰れたジョウの腕に目をやる。
「それじゃもう戦えないんじゃない?」
 そんなことは、と思う。
 戦いが終われば、少しすれば腕は復元させられる。
(「……それまでヒマワリには傷口見せたくねーな」)
 絶対うるせーし、とその傷をジョウは隠す。
 それに。
(「……カッコ悪いし」)
 影朧はその様子に瞬いてふぅんと笑って見せた。
「君はここで倒しちゃだめだね」
 かわいいこ泣かせちゃだめだよと笑って、後ろへと引いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

迷惑な話だなあ
でも人の心に惹かれて寄り添おうとするのが影朧っていうものなのかな?
ボクは、生きている間は生きている方が楽しいと思うんだけどな
……あれ?ていうか絵と心中って心中ってより自殺じゃあ?

まあどう生きるかは自由さ!好きにしたらいい!だからボクが君たちにどう干渉するかも自由にさせてもらう!
ボクはこの後、カフェーで運動後のおやつを食べて帰るんだから食欲がなくなるようなことはやめてよね!

球体くんたちを繰り出して、必要なUCも使ってドーンッ!とやるよ

後はお気に入りのおやつを食べて帰るよ!
さっきも食べたでしょって?知らないの?おやつはいくら食べてもいいんだよ!



 傷を重ねられた影朧はよろめいていた。あれ、そろそろやばいかな~と呟いて。
 もう逃げちゃおうかな~、なんて思うのだが行く手はロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)によって塞がれていた。
 ロニはその影朧を前にして迷惑な話だなあと零す。
「でも人の心に惹かれて寄り添おうとするのが影朧っていうものなのかな?」
 ボクは、生きている間は生きている方が楽しいと思うんだけどなとロニは言って、ん? と考え深めていた。
「……あれ? ていうか絵と心中って心中ってより自殺じゃあ?」
 それじゃあ死ぬのはひとり……とロニは唸って――けれど、人それぞれかと切り替える。
「まあどう生きるかは自由さ! 好きにしたらいい!」
 ひとは好きに生きればいい。けれどそれは自信にも言えることなのだ。
「だからボクが君たちにどう干渉するかも自由にさせてもらう!」
 ここで君を倒さなきゃ、とロニは思う。
 どうしてかというと――このあとの楽しみを見つけているからだ。
「ボクはこの後、カフェーで運動後のおやつを食べて帰るんだから食欲がなくなるようなことはやめてよね!」
 その言葉を向けたのは、球体くんと呼んで繰り出すものたち。
 その球体はがちがちと歯音鳴らしながら影朧へと向かい、ロニも追いかけるようにその拳を向ける。
 球体群の動きで影朧がどうするか、予想して。
「どーんっ!」
 ロニの向ける拳を刃滑らせて影朧は逸らしたが、拳は地を割って周囲を破壊する。
「うわ、まともにくらったらやばそう~」
 なんて、呑気な声を影朧は響かせるが内心は焦っているのだろう。
「お気に入りのおやつを食べて帰るよ!」
 そういうと、カチカチと歯音ならす球体群の言葉に耳傾けて。
「さっきも食べたでしょって? 知らないの? おやつはいくら食べてもいいんだよ!」
 その為に影朧も倒さなきゃ――と視線向けると、今の間に距離とっている。
 影朧としてはあの攻撃は絶対に喰らいたくないというところ。
 ロニは待て待てー! とそれを追いかけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

甘渼・アメ
🌈焔璃/f28226

あらまぁ!カッコイイわ!
キミが渦中の画家さんかな
うん!どの絵もおいしい香りがしてよかったよね!
でも、最近のは苦いわ
絵と一緒に心中だなんて
それでいいの?

泣けばいいのに
泣けるのはしあわせなこと

代わりにアメが泣いたって、きっと解決にはならないんだわ
戀をしらないアメだけど
あなたの戀したひとは、ほんとうにそれを望むのかな

ありがと、焔璃!
アメだってキミを守るんだから!アマビエの祈りよ。鼓舞も忘れない
虹のオーラ防御で焔璃を守って、破魔こめて全力魔法!
痛い思いなんてさせないわ!
「生まれながらの光」で焔璃を癒すからね

2人で立ち向かお!
アメたちなら、悲しい終わりを笑顔の続きに変えられるべさ!


波紫・焔璃
🌪️アメ/f28092

へぇ、此処が…
あ、貴女がかふぇに飾ってあった絵を描いた人ね!
どれもとても綺麗で色んな想いが込められてたよ
ただ、そうだな…最近のはちょっとだけ苦い感じだった

そんで…あなたはだぁれ?
暗いものを背負ってる…んーん、寄り添わせてる貴方
彼女を何処に誘おうとしていたの?

そうそ!泣ける時に泣いとかなきゃ
感情はね、抱いたその時に外に出した方がいいんだよ

あたしがいるのにアメに手出すとか…ありえないから!!
破魔を宿した爍華で武器受けし、受け流す
ふふふ、アメの虹は温かいね
残像を残して闇に紛れ、至近距離に潜り込めたら鎧砕きの要領で攻撃

うんうん、悲しみはここまで
ここから先は笑顔で彩れるように!!



 紫陽花の迷路も終わり、波紫・焔璃(彩を羨む迷霧・f28226)と甘渼・アメ(にじいろ・f28092)も洋館へとたどり着く。
「あらまぁ! カッコイイわ!」
 アメはそこで、影朧の姿を目にするも――足を向けたのは、もう一人。
 女の、絵描きの娘の方だった。
「キミが渦中の画家さんかな」
「あ、貴女がかふぇに飾ってあった絵を描いた人ね!」
 焔璃も、此処が……と見回して、その姿見つけて足向ける。
「どれもとても綺麗で色んな想いが込められてたよ」
「うん! どの絵もおいしい香りがしてよかったよね!」
 焔璃の言葉にアメは大きく頷いた。
 褒められて、彼女も悪い気はしないのだろう。ありがとうと僅かに頭を下げた。
「ただ、そうだな……最近のはちょっとだけ苦い感じだった」
 けれど、続いた言葉に彼女の表情は固まるのだ。
「苦い……?」
「うん、最近のは苦いわ」
 絵と一緒に心中だなんて、それでいいの?
 アメは――彼女の心に触れるべく、言葉向ける。
 泣けばいいのに。
 泣けるのはしあわせなこと。
 彼女は、僅かには涙を零していたみたいだ。けれど心の底から――それはきっと、まだ。
(「代わりにアメが泣いたって、きっと解決にはならないんだわ」)
 そう思うからこそ、声を向けるのだ。
 戀をしらないアメだけど――
「あなたの戀したひとは、ほんとうにそれを望むのかな」
 それは、と彼女は言葉を飲んで――瞳を歪める。涙を滲ませて、それでもまだ堪えているようだ。
「そうそ! 泣ける時に泣いとかなきゃ。感情はね、抱いたその時に外に出した方がいいんだよ」
 と、焔璃も後押ししていると――ひどく明るい声で。
「かわいいこがいる! 僕とあそぼ!」
 傷は痛いし、気分は最悪。酷い攻撃には飽きちゃった~と言いながら影朧がやってくる。
 けれど、焔璃はアメたちの前にたって。
「……あなたはだぁれ?」
「僕? 僕は物書き、作家だよ」
 あっけらかんと笑っている。
 けれど、これは影朧だ。焔璃はじぃ、と見つめて。
「暗いものを背負ってる……んーん、寄り添わせてる貴方。彼女を何処に誘おうとしていたの?」
「誘う? あはは、どこにも。行きつく先がどこになるか、僕は見てただけかなぁ」
 ね、と影朧は女へと笑いかける。僕はモデルしてただけだもんねと。
「それより、楽しいことしようよ。一緒に紫陽花巡りとかしちゃう?」
 それとも、やっぱり戦わなきゃダメ? と影朧は遊びに誘う様なノリでいう。
 その様に焔璃はぱっと影朧との間に立って。
「あたしがいるのにアメに手出すとか……ありえないから!!」
 焔璃の表情に、影朧は仕方ないかーと刃を向ける。
 それを紅玉髄と橄欖石が嵌め込まれた重いロッドで弾いて受け流す焔璃。
「ありがと、焔璃! アメだってキミを守るんだから!」
 アマビエの祈りよ、と鼓舞も忘れない。
 そして虹のオーラを走らせて、焔璃を守るのだ。
「ふふふ、アメの虹は温かいね」
 焔璃は小さく笑って、残像生み出し動く。もう一歩深く踏み込んで、思い切りロッドを振りぬいた。
 そしてアメも続けて、魔を破る力込めて全力で魔法を。
「痛い思いなんてさせないわ!」
 傷を負ったなら、持てる力で焔璃を癒すからねと紡いで。
「2人で立ち向かお!」
「うんうん、悲しみはここまで」
「アメたちなら、悲しい終わりを笑顔の続きに変えられるべさ!」
 ここから先は笑顔で彩れるように!!
 そう、思い重ねて。
 攻撃受けた影朧は、仲が良くて妬けちゃうねと言う。僕のことは仲間に入れては、くれなさそうだと。
 それに重なった痛みが響いて。
「ん~、まぁいっか」
 かわいい子にやられるのはそれはそれでと影朧は笑う。
 もう還っちゃうといいよと、アメの守りを受けて焔璃が再び飛び込む。
 その一撃受けて、影朧の姿は砕けていく。
 結局心中はできなかったけど、見ることも――なかったけれど。かわいい子たちにやられちゃうならいっかな~と紡いで。



 その心にそうっと――ただの興味で付け入った影朧は消えていく。
 残った絵描きの女にとって影朧は本当の想い人ではなかったのだ。
 彼女は猟兵たちからの言葉に、心をまた動かされ完成していない絵に筆を走らせるのだろう。
 そこに描くのは、影朧ではなく、想い人の姿を――弔いとして。
 涙とともに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月24日
宿敵 『或る作家の残影』 を撃破!


挿絵イラスト