28
迷い路ノスタルジア

#カクリヨファンタズム #童話調

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
#童話調


0




 ――どこまでも伸びていく影法師を追いかけて、夕暮れの路地裏に足を踏み入れてしまえば。
(「ほぉら、おいで。こっちにおいで」)
 不思議とこころをくすぐる甘ぁい声が聞こえてきて、更に奥の、誰も知らない細い道へと手招きをします。ああ――お豆腐売りのラッパも、カラスの鳴く声も、あっという間に遠ざかって聞こえなくなって。
(「帰り路は気にせずに、どこまでも進んでおいで」)
 お化けみたいな電信柱を、おっかなびっくり越えていきながら、足は声のほうへ――まるで魔法にかかったように、ふらふらと進んでいってしまうのでした。
(「だいじょうぶだよ、だってね、」)
 ――そろそろ夜がやって来るのに、おうちに帰らないといけないのに、もう幾つ角を曲がったのでしょう。茂みからぎらりと覗いた不吉なまなざしは、化け猫なんかじゃなく、もっと恐ろしい妖怪のもののようです。
(「……もうあなたに、帰る場所はないから」)
 ぼぉっ――今まで手招きをしていた甘ぁい声が、其処で冷ややかな呟きを漏らした直後。背後に生じた篝火が、今まで歩いてきた道を燃やして、瞬く間に消し炭に変えてしまいます。
(「道は消えた、道は消えた。ここは全ての道が朽ちた『迷子の世界』――」)
 見渡す限りどこまでも――気づけば足元にも道は無くなって、夕陽に照らされる景色はどこかでみたような、けれどどこかは分からない場所なのです。
(「あなたはどこへも、帰れない」)
 ――突然ですが、世界は滅亡してしまったようでした。

「新しい世界で事件が起こりますのー!」
 どたばたと駆けこんで来た、レイン・ドロップ(みずたま・f14853)が言うには、妖怪たちの世界であるカクリヨファンタズムが、いきなり滅亡してしまうとのこと。何でも幽世からひとつの概念が消え、まるで世界の終わりが訪れたかのような光景が広がってしまっているようなのです。
「奪われたものは『道』ですのよ。夕暮れの街を歩いていると、不思議な声に誘われるようにしてふらふらと……気づけば見知らぬ路地裏に立っていて、進む道も戻る道も無くなってしまっているのですわー!」
 ともだちと遊んで、そろそろおうちに帰る時間――そんな時に迷子になってしまって帰れなくなる心細さは、ちっちゃいレインだけでなく、きっと誰もが一度くらいは経験したことがあるでしょう。
「今、そんな幽世には無数の骸魂が飛び交っていて、とっても危険な状態ですのよ! これは、急いで解決しないといけないですの!」
 ぶるぶる震えながらそう主張するレインの肩の上では、かえるのけろちゃんもファイティングポーズを取っています。かたつむりのまいまいさんは――まだのんびりしているようですが、急いで解決しないと手遅れになってしまうでしょう。
「まずは、道なき迷子の世界へ『えいや』と飛び込んで、飛び交う骸魂に呑み込まれた妖怪さんを助けてあげてくださいですの。普通にぶん殴って大丈夫ですけど、一緒に帰ろうって伝えられるように……お友達みたいに振る舞ったり、帰る道を示してあげたりすれば、うまく骸魂から引き離すことが出来ると思いますのよ!」
 ――どうやらちょっぴり過激にぶつかりつつ、妖怪さんのことも考えて戦うと、上手く行きそうな気配です。伝承とは逆に『大いなる災い』をもたらすと言う麒麟ですが、呑み込んだ妖怪が弱いからか、そんなに強くはないようです。ただ、数は結構いるので注意が必要そうでした。
「ある程度配下を片付けると、元凶のオブリビオンが姿を現す筈なので、こちらも倒して世界を元に戻して下さいですの。無事に『道』を取り戻せば、夕暮れの街角をのんびり散策して、晩ご飯までのひと時をわいわい楽しめると思いますのよ!」
 その幽世はどこか郷愁を抱かせる、昭和の空気を色濃く宿した場所のようです。田舎町の路地裏をどこまでも、童心に帰って駆け抜けて――懐かしい遊びを楽しんだり、駄菓子屋や骨董屋、古本屋などが軒を連ねる通りを散策するのも良いでしょう。店主の猫又さんには、かつおぶしを差し入れしてあげると、ちょっとおまけしてくれたりレアな商品を見せてくれるかも知れませんね。
「もう一度、あの頃へ……その為にも、失われた道を元に戻して、妖怪さんを助けてあげるのですわー!」
 ――さあ、用意が出来たら幽世へ。絢爛豪華妖怪絵巻のはじまりです。


柚烏
 柚烏と申します。こちらは新世界カクリヨファンタズムを舞台に、ちょっぴり懐かしくほのぼのした雰囲気で進めて行けたらと思っております。新規PCさんでもお気軽に、プレイングボーナス多めの予定ですので、レベルやアイテム、技能などを気にせず参加して下されば嬉しいです。

●シナリオの流れ
 オブリビオンによって『道』が奪われ、『迷子の世界』となってしまった幽世を元に戻してください。骸魂のみを倒せれば、飲み込まれた妖怪を救い出すことが可能です。元凶のボスを倒せれば、夕暮れの街でのんびり過ごすことが出来ます。
 第1章:集団戦『麒麟』
 第2章:ボス戦『口寄せの篝火』
 第3章:日常『もう一度、あの頃へ』

●第1章について
 迷子の世界のなかでの集団戦です。声に誘われ、気づけば其処は道なき世界……どこへ向かえば良いのかも分からない状態で、あちこちから現れる麒麟の群れを倒して下さい。
 方向感覚、冒険や探索に役立ちそうな技能があればボーナスがつきます。また、敵に向かって一緒に帰ろうと伝えられるよう、お友達みたいに振る舞ったり、帰る道を示してあげたりする行動があれば、ボーナスがついて妖怪を上手く引き離すことが出来ます。

●プレイング受付につきまして
 お手数かけますが、マスターページやツイッターで告知を行いますので、そちらを一度ご確認の上、送って頂けますと助かります。此方のスケジュールの都合などで、新しい章に進んだ場合でも、プレイング受付までにお時間を頂く場合があります。

 オープニング文章のように、ゆるっとした童話っぽいリプレイになると思います。タイミングが合えば、サポートやお任せも採用したいなあと思っておりますので、ご縁がありましたらよろしくお願いします。
235




第1章 集団戦 『麒麟』

POW   :    カラミティリベンジ
全身を【災厄のオーラ】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【攻撃】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD   :    因果麒麟光
【身体を包むオーラ】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、身体を包むオーラから何度でも発動できる。
WIZ   :    キリンサンダー
【角を天にかざして招来した落雷】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を災いの雷で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

七枷・むつき
猟兵としての初仕事
まだまだ全部は理解できませんが、することは一つ
出来ることから、ですね

それにしても迷子の世界…ですか
なるのは得意、ですけど迷子仲間ならすぐ見つかったりは…
念のため、名も無き鴉の使い魔さんに周囲の偵察をお願いしましょうか

見つかったなら、晩御飯が冷めてしまいますから、早く帰りましょう…と呼びかけ手を差し出して
私には鴉さんがいましたけど、やっぱり一人で迷子になるのは心細いですからね…

戦闘中はユーベルコードを使用して、少しでも多くの敵を減らすことに注力することにしましょう
ちょっと痛いのは我慢していただくしかありませんが…
あと、他の猟兵さんに迷惑になるようなことはしないよう気を付けて


糺・葵
あなた、迷子なの?
私もよ

帰り道をなくしてしまったのね
いいわ、連れて行ってあげる
だから、その物騒な気配はしまってくださる?

呼びつけた死霊に諌めて貰おうかしら
蛇竜は護衛を兼ねて防戦寄りに、騎士は攻撃的に
攻撃が飛んできた時は、蛇竜に庇って貰えるような立ち位置に

そろそろ帰りたくなったかしら
それとも、まだ遊び足りないかしら

昔、子供の頃、家を飛び出して迷子になった時、お兄様が探しに来てくれたわね
結局、二人で帰り道が分からなくてしばらく途方に暮れたのだけれど

……あら、次の道はどちらだったかしら……
大丈夫、大叔母様が言っていたわ
「道は必ずどこかへ繋がっている」と


※アドリブ歓迎です!


イージー・ブロークンハート
おっすおっす、こんにちは。お前も迷子?オレも。
気軽に話しかけよう。剣はギリギリまで抜かない。攻撃は見切りで避けたいけど、あえて受けてもいいな。警戒されちゃうもんな。

オレもある日家出たら突然世界超える迷子になっちゃってさ、オレずぅっとそのままなんだ。帰れなくなっちゃったの。
…時々、無性にしょーもなく寂しくなるよ。帰れないけど。

引きつけたらささやかなお裾分け。条件はこうだ。

だからさ。

『うちへ帰ろうぜ。

――これで妖怪は無傷で敵の部分だけ傷つけられりゃ万々歳。
…な?帰ろ?
迷わないようにオレも一緒に行くから、さ。
帰りたいと思ってるうちにさ
(アドリブ・ピンチ・協力歓迎です)



 ひとびとに忘れられたものが誘われる場所、カクリヨファンタズム。だからなのでしょうか――過去の思い出が積み上げられたその世界は、不思議と懐かしい気配がして。
「ここ、は……?」
 夕闇に浮かび上がる街並みを見つめていると、こころの奥がつんと痛みを訴えて、七枷・むつき(六花の魔女・f28060)の瞳が灰色の記憶を映し出そうとします。
(「あの街とは、違う……でも」)
 けれど、はっきりした像を結ぶこともなく消えていったその景色を振り払って、むつきは目の前に広がる『迷子の世界』をゆっくり見渡したのでした。
「まだまだ全部は理解できませんが、することは一つ」
 そう、幽世の滅びを止める――それが、猟兵となった彼女の初仕事です。出来ることから、と頷いたむつきが使い魔を偵察に向かわせると、名も無き黒鴉は夕暮れの空をぐるぐる飛び回って、道なき道を指し示そうと頑張り始めました。
「迷子なら……なるのは得意、ですけど」
 ぐるり見渡す幽世の街は、オブリビオンの迷宮化もあって、何処までも似たような景色が続いています。炭みたいに朽ちた道は、前へ進むのか上へ登っていくのかも分からない有り様で――ふっと視線を逸らした時には、さっきと辺りの景色が変わっているような気がして、自分が何処にいるのか分からない心細さが、繰り返し襲ってくるのでした。
「迷子仲間なら、すぐ見つかったりは……」
 ――と、そろりと顔を上げたむつきに向かって、黒鴉がばさばさと翼を広げて合図を送ります。どうやら、のっぽの電信柱を幾つか越えた先には、不吉な稲光がばちばちと迸っているようなのです。
「……あなた、迷子なの?」
 やがて、たおやかな蝶が優雅に空を舞うような――そんな綺麗な声が響いて、駆けつけたむつきを優しく出迎えてくれました。
「私もよ」
 そう言いつつも、オブリビオンと化した骸魂と向き合っている糺・葵(蟲姫・f22440)は、超然とした雰囲気を纏いつつ、恐ろしげな死霊を従えています。
 帰り道をなくしてしまったのね、と――囁く葵の指先が、夕焼けの空にひっそり瞬く一番星を捉えれば、護衛の蛇竜も弾けた雷を噛み砕いて「キシャァ」と頷いたようでした。
「いいわ、連れて行ってあげる。……だから、その物騒な気配はしまってくださる?」
 角を天にかざし、落雷を招こうとしている麒麟たちへ上品に問いかける葵ですが、クールビューティなその美貌は靜かな迫力に満ちています。
「おっすおっす、こんにちは。お前も迷子? オレもオレも」
 そんななかで、気さくに声を掛けたのはイージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)であり――彼は剣の鞘に手をかけること無く、ちょっぴり殺気立った麒麟の元へ近づいていったのでした。
「……オレも、な。ある日家出たら、突然世界超える迷子になっちゃってさ、ずぅっとそのままなんだ」
 ――指先まで覆うひとつなぎの革鎧は、遠い異世界で作られたものでしょうか。帰れなくなっちゃったの、とさらっと続けるイージーですが、快活な瞳はほんのちょっぴり、故郷を懐かしむように揺れています。
「時々……無性にしょーもなく、寂しくなるよ。帰れないけど」
 災厄のオーラを纏い、ハリネズミみたいに毛を逆立てた麒麟を前にしても、臆する素振りを見せないイージーは、ちょっとぐらいの攻撃なら受けてもいいと覚悟しているようでした。
(「警戒されちゃうもんな、それに……帰れないのは、こいつらも同じだ」)
 呑み込まれた妖怪も――そして、幽世に辿り着けず死んでしまった骸魂も。今もこうして帰る道を探して、迷子の世界を彷徨っているのです。だから――。
『うちへ帰ろうぜ』
 災いの雷が迸るなか、引きつけた麒麟に硝子片を埋め込んだイージーは、ささやかなお裾分けによるルールを宣言したのでした。
 ――うちへ、帰る。この約束を破ったら、硝子の欠片が食い込んでダメージを与えるのですが、上手く行けば無傷で呑み込まれた妖怪を助けることが出来そうです。
「……な? 帰ろ? 迷わないようにオレも一緒に行くから、さ」
 ぽんぽんと優しくたてがみを撫でるイージーの近く、燐光とともに空へ飛び散っていったのは骸魂だったのでしょう。未だ駄々をこねるように落雷を招く麒麟たちへも、むつきと葵がしっかり対応し、氷の槍と騎士の剣が災いを斬り伏せていったのでした。
「ちょっと痛いのは、我慢していただくしかありませんが……」
「そろそろ帰りたくなったかしら。それとも、まだ遊び足りないかしら」
 幾何学模様を描いて飛翔する氷の槍が、災いの地にうつくしき鎮魂華を描いていくと――狙いを定めた死霊の剣が、骸魂のみを貫いて妖怪を救出していきます。
「さあ、晩御飯が冷めてしまいますから、早く帰りましょう……」
 六花散らすむつきの繊手が、優しい呼びかけと一緒に麒麟へ差し出されるなかで、葵は子どもの頃――家を飛び出して迷子になった時のことを思い返していました。
(「あの時は、そう、お兄様が探しに来てくれたわね」)
 結局、二人で帰り道が分からなくてしばらく途方に暮れたのだけれど、ひとりじゃないと言う気持ちは、どれ程心強かったことでしょう。
「私には鴉さんがいましたけど、やっぱり一人で迷子になるのは心細いですからね……」
「ああ、帰りたいと思っているうちにさ、帰ろう?」
 むつきもイージーも、其々に言葉を掛けて麒麟たちから上手く妖怪を救っていくと、いつしか辺りは平穏を取り戻して、進むべき道がうっすらと見えてきたようでした。
「……あら、次の道はどちらだったかしら……」
 しかし――未だ『迷子の世界』は元に戻っていないようで。細かいことは気にしないとばかりに、葵は胸を張ってこう告げたのでした。
「大丈夫、大叔母様が言っていたわ……『道は必ずどこかへ繋がっている』と」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リゲル・ロータリオ
いきなり世界が大ピンチっす!?
新しく見つかった世界、やばいところっすね…
とはいえ面白そ…いやいや困ってる妖怪はほっとけないんで、えいやと飛び込んでやるっすよ

知らない道で迷子、新しい発見ができるのはいいっすけど、
ちゃーんと帰れる家があるから楽しめるんすよね
たくさん遊んでカラスが鳴いたら帰りましょ、また明日
明日に続く道を用意してやるっす、そんで俺とも遊ぶっすよ♪
どーんな遊びがあるんすかね? 俺ベーゴマとかめっちゃ強いんすよ

【空中戦】で飛び回りながら、腕をライオンに変えた『ガチキマイラ』でがぶりとやってやるっすよ
麒麟とライオン、どっちが強いっすかねー?

※アドリブ、絡みはお任せご自由に


榛・琴莉
『鳴菅』を起動して電脳空間を展開、UCを発動します
Ernest、周囲の【情報収集】をしてください
UDCの貴方には電脳も幽世も大差ないでしょう?
道が消えたとは聞いていますが、何事も完全に消去するなど早々出来ませんし、少し位は手掛かりがあるかと

迷子、多いですねぇ
掃射で【範囲攻撃】、まとめて【なぎ払い】ます
囲まれたくはありませんし、相手の動きを【見切り】ながら適度に距離を保っていたいところ
接近してきたらHaroldで【武器受け】しつつ、【カウンター】で氷の【属性攻撃】を撃ち込みます

ただいま帰路を捜索中ですので、暫くお待ち下さい
私もこんな場所に長居したくありませんしね
よろしければ、道案内しましょうか?


アリステル・ブルー
「お家に帰れないのは辛いよね、僕なら…」
やはり悲しくなるだろう、貧しくとも優しい場所に帰れないならば。

迷子の子には目線合わせて「敵じゃないよ! そうだこれ食べない?」と鞄からいつも持ち歩いてる色とりどりの飴や金平糖を差し出して敵意はないアピールをするね。
その後手を差し出して、一緒に帰る為に【手をつなぐ】ことを提案するね。
「ひとりより2人の方が寂しくないよ!」
それから【追跡】【偵察】で帰り道の手がかりがないか調べるよ。

他の猟兵さんが何かやりたそうにしていれば積極的にサポートするね。

(もしも説得できずどうしてもだめそうならUCを使いますが可能な限り説得にまわります)
アレンジ連携おまかせします


清川・シャル
帰りたい場所に帰れないのは辛いことだと思います。道が無くなるなんて大変!
解決のお手伝いが出来たらいいのですが。

情報収集で道を詮索、地形の利用で地理確認、あとは第六感、野生の勘で帰り道を確保出来たらいいですね
コミュ力と礼儀作法を使って丁寧に対応します
おうち、一緒に帰りませんか?シャル一緒に行きますから。

戦闘は、そーちゃん片手に走ります
なぎ払い攻撃です
敵攻撃には武器受け、カウンターで対応
あんまり怪我させたくないのですけど、手を抜く訳でもないです
ね、帰りましょう?



 ――新しく見つかった世界は、骸の海と地球の狭間に位置する不思議な世界。そんな立地条件が影響しているのか、しょっちゅうカタストロフが起きそうになっていると言う、何とも刺激的な世界のようです。
「いきなり世界が大ピンチっす!?」
 黒い翼をばさばさ羽ばたかせて、幽世へ「えいや」と飛び込んでみたのは、リゲル・ロータリオ(飛び立て羽ばたけどこまでも・f06447)ですが――直後、天地がぐるりとひっくり返るような感覚がして、気付いた時には足元に夕焼け空が広がっていたのでした。
「え、道が……上にあるっすか? これはやばいところっすね……」
 朽ちた道をどうにか手探りで見つけつつ、逆立ちをする要領で天井に張り付いてみれば、ようやくいつもの視界がリゲルに戻ってきます。
「とはいえ、面白そ……いやいや、困ってる妖怪はほっとけないっす!」
 それでも――この何でもありの世界は、元いた世界に通じるものがあるなあと思い、つい以前のクセでブロック塀をコンコンしてみるリゲルでした。
「はい、どうぞ」
「って、うわ、飴ちゃんが出て来たっすよ」
 と、其処でひょっこり飛びだしてきたのは、色とりどりのキャンディや金平糖――見れば、塀の影から覗いているのは狼の耳で、姿を現した彼はアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)と名乗ります。
「……うーん、知らない道で迷子。新しい発見ができるのはいいっすけど、それもちゃーんと帰れる家があるから楽しめるんすよね」
「うんうん、お家に帰れないのは辛いよね」
 貰った飴玉を口のなかで転がしながら、迷子の世界を見渡すリゲルに、人の良さそうな顔で頷くアリステルもきっと、懐かしい故郷のことを思い出しているのでしょう。
(「僕なら……」)
 やっぱり悲しくなるだろうな、と彼は思うのです。貧しくても優しい場所に帰れないならば――貧民街育ちのアリステルですが、街の皆に助けられて大きくなったのです。そう言えば目の前のリゲルみたいな、やんちゃな仲間も居たかも知れません。
「だから――たくさん遊んで、カラスが鳴いたら帰りましょ」
 ――茜色の空を切り裂く、不気味な稲光。飛び交う骸魂が麒麟の姿に変わって、災いを振り撒いていくのを止めてやろうと、ひらりとリゲルが空に羽ばたいていきました。
「また明日、っす」
「――Ernest」
 伸ばした腕がライオンの頭部に変わり、弱肉強食の掟とばかりに噛みついていくなかで、冬を思わせる冷たい吐息が辺りを凍えさせていきます。
「周囲の情報収集をしてください。……貴方なら、電脳も幽世も大差ないでしょう?」
 息をひそめる因果のひかりを、感情の窺えぬ瞳で見つめる榛・琴莉(ブライニクル・f01205)の傍――青白く輝く鳥のアバターが、名前の主なのでしょう。ガスマスクに内蔵された鳴菅が、電脳空間を展開して現実に投影していけば、迷子の世界のあちこちに潜む麒麟の姿が明らかになっていきました。
「道が消えたとは聞いていますが……何事も完全に消去するなど早々出来ませんし」
 そうして、麒麟たちが『道』を朽ちさせていることを見抜いた琴莉が、アサルトライフルの掃射を辺りにお見舞いすると――微かに浮かび上がった道を、清川・シャル(無銘・f01440)が一気に駆け抜けていきます。
(「……帰りたい場所に帰れないのは、辛いことだと思いますから」)
 ――夕陽を受けてきらきら輝く金の髪に、ぱっちり愛らしい青の瞳は、繊細なお人形さんのよう。なのに、片手で軽々と振り回す金棒は、荒ぶる麒麟さんをなぎ払ってちょっぴりきついお灸を据えていったのでした。
「それにしても、道が無くなるなんて大変!」
 そーちゃんと名付けた金棒が、ぶぉんと唸りを上げるたびに、シャルに群がった麒麟の群れが吹き飛んでいきます。あんまり怪我はさせたくないけど、災厄を纏う彼らに手を抜く訳にはいかず――ぐにゃりと塀の真横に伸びた細い道を上手く伝いながら、シャルは帰り道を探していきました。
「……迷子、多いですねぇ」
 次々に返り討ちに遭う仲間を目の当たりにして、麒麟たちも反撃に移ろうとしますが、そうはいかないと動いたのは琴莉です。麒麟光が模倣した獣の頭を、コートに潜む水銀の鳥がするすると受け流した直後、吹き荒れる雪華の魔力が辺り一帯を凍らせていきました。
「ただいま帰路を捜索中ですので、暫くお待ち下さい。私も、こんな場所に長居したくありませんしね」
 かちこちに固まった麒麟を、涼しげなまなざして一瞥した彼女の隣では、天の光を呼ぶアリステルが落雷の相殺を行いつつ、懸命に声を掛けています。
「僕達は敵じゃないよ! そうだ、これ食べない?」
 ――目線を合わせて鞄から取り出すのは、さっきリゲルにも差し出した飴と金平糖。敵意が無いことを伝えるように、一緒に帰ろうと差し伸べた手が、麒麟の蹄を優しく包み込んでいきます。
「ひとりより、ふたりの方が寂しくないよ!」
「そうそう、明日に続く道を用意してやるっす、そんで俺とも遊ぶっすよ♪」
 次第に災いの雷が収まっていくなか、ライオンと麒麟の力比べを続けるリゲルも、呑み込まれた妖怪を救出しようと勝負に出たようでした。
「どーんな遊びがあるんすかね? 俺ベーゴマとか、めっちゃ強いんすよ」
 骸魂に囚われた自分たち妖怪を、助けようとしてくれる猟兵――その存在に励まされ、オブリビオンが怯んだ瞬間に放たれたのは、シャルの鬼神斬です。
「……おうち、一緒に帰りませんか? シャルも一緒に行きますから」
 無秩序な迷路の街並みごと、一気に吹き飛ばすように――空に消し飛ぶ骸魂を見送って、「ね?」とお行儀よく微笑んだシャルの隣では、地形の解析を終えた琴莉も、僅かな笑みを浮かべて指を立てていました。
「よろしければ、道案内しましょうか?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九々麗・吟
此度はどれ程眠ったのか
開いた眼が捉えた世の有り様は散り散りと
巡ってしまった輪廻ならば
此度も戯れに、永らえてみようか

麒麟よ
妾と戯ぼうか

真っ赤な紅引く口元引き上げ
銀の眼に黒い睫毛の影が差す
風も無いまま艶やかな濡羽色の髪がゆうらり揺れて

重ね着た袖を振ると、ぽつりぽつり
化術で産んだ、赤い狐火が浮かび游ぐ
愛い赤子の篝火のようであろう?

さあさ
さあさ
お出で、お出で

まあるい狐火追いかけて
さあさ
さあさ
此方へお出で

宵に紛れて声ばかり
探してごらん
見つけてごらん
ほうら妾は此方に居るよ

狐火の中に提灯ひとつ
妾は此処じゃ
此方へおいで──

そうやって麒麟を宵路へと招いて往こうか


揺・かくり
ふよ、ふよと宙を揺蕩う
地に足を着けずに先を往こうか
この躯での歩みはぎこちないのさ
一度は死んでいる屍人
記憶が抜け落ちている魂
不完全な目覚めゆえに儘ならない

道をなくした迷子になるどころか
消えてゆく道に飲まれそうだ
それに、宙に浮かぶのは心地よい

濁った金の瞳でその姿を捉える
君は迷子なのかい

私には、かえる場所がない
だからこうして彷徨っているのさ

帰り方を忘れてしまったのなら
共にこの世を彷徨っていようか
ああ、それがいい
そのうちに君の居場所が見つかるだろう

まずは、君を骸魂から切り離そうか
私は見ての通り躯の自由がきかない
宿した呪詛を糧に、彼らの力を拝借する

左手に嵌った指輪をそっと撫でよう
死霊の君、よろしく頼むよ


東雲・咲夜
守姫の役目は幽世、又は境界の平穏を管理する事
此の世界に限っては
猟兵で無く、『御務め』として在りましょう

はて…うち、何方から来たんやろか
成程。まるで神隠しやね

電流のうねり
弾けたる火花
御機嫌よう…『守姫』の咲夜どす

櫻花の楯にて防御を張りつつ
絶対零度の氷柱に納めます
噫、苦しませて堪忍です

だいじょうぶ、だいじょうぶ
うちはあんさんの帰り路を捜しにきたんどす

懐より取り出したる鈴の根付
ちりぃん……清哲の音を響かせれば顕れたる羅針盤
古より髪には神が宿る云いますさかい
桜銀糸を一筋、捧ぎまひょ

感じるやろか、あんさんの帰り路…
さぁ、うちと一緒に参りまひょ

骸魂から抜け出せたなら
苦痛を与えた事を詫びそっと抱きしめて



 ちりん、ちりぃん――いつか、どこかで見たような路地裏を、澄んだ鈴の音が通り抜けていきました。
(「此処、は」)
 彼岸と此岸をゆらゆらと、追憶に揺られて微睡んでいたような気がしましたが、九々麗・吟(艶美・f27960)のまなこが捉えた世の有り様は、全ての道が断たれ滅びのときを迎えようとしているようです。
「……どれ程、眠ったのか」
 ――浮かび上がった意識と同時に、紡がれる言の葉は古めかしい響きを帯びていて。夜空の月を思わせる瞳が妖しく瞬くと、道なき道に伸びた吟の影法師が、狐の尾のように揺れて骸魂を手招いていきます。
「されど、巡ってしまった輪廻ならば。此度も戯れに、永らえてみようか――」
 ちりぃぃん――一際高い鈴の音は、もしかしたら幽世へと来訪者を招く為の、合図なのかも知れません。そう、祓うのでは無く、こころを引き寄せるように。
「……ほう」
 そのことを良く知っている東雲・咲夜(桜妃*水守姫・f00865)は、だからでしょうか――彩舞の羽衣をふわりと茜空に舞わせ、苔むした石段にゆっくりと降り立ったのでした。
「はて……うち、何方から来たんやろか」
 はんなりと微笑む仕草は、ちょっぴり夢ごこちのようでもありましたが、「成程」と辺りを見回すたびにふわりと、桜の花びらが護りの盾に変わっていきます。
「おやおや、君も迷子なのかい」
「ええ、まるで神隠しやね……って、あや?」
 幽世の空に迸る稲妻と、弾ける火花に目を細める咲夜の元へ、不意に声を掛けたのは此の世界の住人――揺・かくり(うつり・f28103)でした。
「ああ、失礼。……この躯での歩みはぎこちないのさ」
 ふよ、ふよと宙を揺蕩い、地に足を着けずに歩を進める彼女は、どろりと濁った金の瞳のなか、迫る麒麟たちを捉えています。
「私には、かえる場所がない」
 小刻む首を傾げるかくりは、一度は死んでいる屍人であり――記憶が抜け落ちている魂、悪霊であると言うのです。
「だからこうして、彷徨っているのさ」
 ――不完全な目覚めゆえに、儘ならず。道をなくした迷子になるどころか、消えてゆく道に飲まれそうで。けれど、そんな物の怪を身近に感じることも多々あった巫女の咲夜は、頼もしい仲間に頷きながら厄災に立ち向かっていったのでした。
(「……『守姫』の役目は幽世、又は境界の平穏を管理する事」)
 猟兵としては勿論のこと、『御務め』として在るのだと言い聞かせて、咲夜の振るう氷晶の刃が災厄のオーラを鎮めていきます。
「面白い、……さぁ麒麟よ、妾と戯ぼうか」
 そうして――きらきら舞い散る氷の華を指先で追いつつ、真っ赤な紅引く口元を引き上げた吟もまた、因果を操る麒麟目掛けて、妖しの力を解き放っていくのです。
「さあさ、さあさ――」
 銀の眼を縁どる黒い睫毛が、化粧のように影を落としていくなかで、風も無いのにゆうらり揺れるのは、艶やかな濡羽色の髪であり。
「お出で、お出で。まあるい狐火追いかけて」
 重ね着た袖を彼女が振ると、ぽつりぽつり――化術が産んだ赤い狐火が、夕闇に浮かんでふよふよと游いでいったのでした。
「……愛い赤子の篝火のようであろう?」
 ――さあさ、さあさ、此方へお出でと。狐火に魅入られた麒麟たちが吟の姿を求めても、宵に紛れた彼女の姿は既に掻き消えていて、声ばかりが辺りに響くのです。
「探してごらん、見つけてごらん。……ほうら、妾は此方に居るよ」
 やがて、ばちばちと路地に広がる電流のうねりも、麒麟たちの意志に呼応し勢いを失っていけば――ふぅわりと宙を往くかくりが、仮初の肉体を揺らして甘美な囁きを落としていきました。
「……帰り方を忘れてしまったのなら、共にこの世を彷徨っていようか」
 ああ、それがいい。そのうちに、君の居場所が見つかるだろう。けれどまずは、君を骸魂から切り離さなくてはならないから――。
「見ての通り私は、躯の自由がきかない。だからね、」
 ――そっと撫でたかくりの左手に、嵌った指輪は色褪せた黒。よろしく頼むよと微かに呟けば、宿した呪詛を糧にして召喚された死霊たちが、剣と牙を以て麒麟を打ち倒し、囚われた妖怪を救い出していくのです。
「御機嫌よう……『守姫』の咲夜どす」
 そうしてひとり、またひとりと災厄の雷から解放されていくなかで、未だ頑固に抵抗を続ける麒麟の元へ向かっていったのは咲夜でした。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ……うちは、あんさんの帰り路を捜しにきたんどす」
 蹄を鳴らして暴れる麒麟へ「苦しませて堪忍な」と声を掛けながら、彼女が懐から取り出したのは鈴の根付です。ちりぃん――こころを引きつけるような清哲の音を響き渡ると、現れた羅針盤が失せ物の在処を指し示すように回り始めました。
「古より髪には、神が宿る云いますさかい」
 ――やがて宇迦之御魂神の加護のもと、桜銀糸の髪を一筋捧げた咲夜には、迷子の世界を抜け出す道がうっすらと見えてきたようです。
「感じるやろか、あんさんの帰り路……。さぁ、うちらと一緒に帰りまひょ」
 繋がる縁を確かに感じて、呑まれた妖怪を労わるように帰り路を指させば――浄化の力に包まれた骸魂が、弾け飛ぶようにして夕焼けの彼方へと消え去っていったのでした。
「妾は此処じゃ、此方へおいで──」
 ――ちりん。いつしか狐火の中に揺れる、提灯がひとつ。変化の術で姿を変えた吟もまた、報われぬ骸魂を宵路へと招いていくのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎本・英
声が聞こえた気がしたのだが……。
もしかして、君かな?嗚呼。違うようだね。
しかし、いつの間に迷い込んだのか。
此処は一体、どこなのだろうね?

やあ、君はどこの誰かな?
この世界の者なのだろう?
私は迷子になってしまってね……。
嗚呼。もしかして君も迷子なのかい?
もし、良ければ一緒に此処から脱出しないかい。

此処は迷路のような場所で居心地が悪いだろう。
私も、流石にこれだけ入り組んでいると頭を悩ませてしまう。
確かあちらの方に出口のような場所があったような……。

私は君たちのように有能ではないからね
のんびりと出口まで向かうよ。

もし失敗をしたら情念の獣が彼らを何とかしてくれよう。


陽向・理玖
記憶がねぇから迷子の記憶もねぇな…
けど
帰りたい場所に帰れない気持ちは…分かる
探してやんねぇとな

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波飛ばしダッシュで距離詰めグラップル
UC起動
拳で殴る
迎えに来たぜ
ほら帰るぞ
手を伸ばし繋ごうと

一回殴れば動きは見切れる
コピーされてもその前に倒せば問題なしだ
攻撃避けて足払いでなぎ払い
追いかけっこか?
もう帰る時間だぜ
帰り道なら俺も分かんねぇが
みんなで探せばきっと見つかる
ねぇなら作ればいい
簡単だぜ
鼓舞しつつ

それにほら
何かわくわくすんだろ
こんな時間まで遊んだ事あるか?
俺は
首傾げ
…ねぇと思う
多分な

さぁもうちょい遊んでやる
そしたらみんなで帰るんだ
残像纏い拳の乱れ撃ち


都槻・綾
幼少時を持たぬ宿り神の身であれど
見知らぬ筈の路地裏が
どうしてか懐かしい

掌には道中で拾った小石がひとつ
幼子は時に
何の変哲もない石が宝物に見えるという
どんな物にも喜びを見出す子供達は
遊びの天才に違いなく

――ね、
夕さりの色はとてもあたたかいのに
あたたかいからこそ
帰りたい何処かへ帰れないのは――寂しいですね

出会った妖しに柔く微笑みかけ
夕陽の色を映した小石を掲げて見せよう

一緒に石蹴り遊びしながら、帰りましょ

大丈夫
あなたは独りではない、と告げる代わり
はい、と小石を差し出す
手の温もりが小石から伝わって
迷子の妖しへ安堵を齎せたらいいな

憐れな骸魂へも
高速詠唱の鳥葬にて
彼方の海への帰り道を標しましょう

さぁ
お帰りよ



(「おいで、こっちにおいで――……」)
 榎本・英(人である・f22898)の耳朶をくすぐる甘ぁい声は、彼の懐かしい記憶を呼び覚ますようにささめいて、夕暮れの路地裏へと誘っていきます。
「……ふむ」
 物語のはじまりとしては、なかなか興味深い――彼岸花みたいな火の粉を散らし、今来た道がめらめら燃えて朽ちてしまっても、英の歩みは止まることはありませんでした。
「声、は」
 ――気づけば、自分を手招く声は聞こえなくなって。生き物の声も木々の音色も、ぴたりと止んだ奇妙な静寂のなかで、ころころとちいさな小石が転がってきます。
「……もしかして、」
 錆の浮いた赤いポストの影で、ゆらゆら揺れているのは、時代がかった狩衣でしょうか。あやかしか――と眼鏡を押し上げた英の向こうで、夕陽に煌めいたのは鴉羽の髪のようです。
「君かな? 嗚呼。違うようだね」
「……生憎、幼少時を持たぬ宿り神の身でして」
 誰そ彼の薄闇で、優美に会釈を交わした都槻・綾(糸遊・f01786)も、不思議な声に導かれてここまでやって来たのだと言います。道中で拾ったらしい小石を掌に忍ばせて、溜息を吐く綾に英も「ふぅ」と、煙草屋の格子戸に寄りかかって空を仰ぐのでした。
「されど……見知らぬ筈の路地裏が、どうしてか懐かしい」
「此処は一体、どこなのだろうね?」
 と――茜色の空にぴか、ぴかと稲妻が奔るや否や、飛び交う骸魂が麒麟の姿を取って襲い掛かってきます。迷宮化に呑まれ、ぐにゃぐにゃとねじ曲がっていく路地からは道が消えて、どこが足場なのか分からない有り様でしたが、そんななかを一直線に駆け抜けていくのは陽向・理玖(夏疾風・f22773)でした。
「記憶がねぇから、迷子の記憶もねぇな。……けど」
 右腕に絡まった龍珠を弾きつつ、英たちの居る路地へと跳躍――追い縋る麒麟の群れへは、衝撃波を飛ばして牽制を行います。
「帰りたい場所に帰れない気持ちは……分かる」
 変身ッ! の掛け声も勇ましくドライバーに龍珠をセットすると、理玖の姿が装甲を纏ったヒーローに変わっていったのでした。
「探して、やんねぇとな――!」
 そうして振り向きざま一気に加速して、迫る麒麟の元へと距離を詰めた理玖は、因果のひかりが瞬くより先に掴みかかって、強烈な拳の一撃を食らわせます。
「迎えに来たぜ、ほら」
 ――帰るぞ、と。暴れる麒麟すらも手玉に取りつつ、彼は力強い手を伸ばして、一緒に帰り路を探そうと促していくのでした。
「やあ、君はどこの誰かな? 私は迷子になってしまってね……」
 一方の英は、自分も同じなのだと柔らかな口調で語り掛け、一緒に此処から脱出しないかいと提案します。此処は迷路のような場所で、居心地が悪いから――そう、オブリビオンと化した彼らは、否応なしに周囲を迷宮へと変えていってしまうのです。
 ――帰りたい、辿り着きたいと幾ら願っても。だからこそ、英はこころを落ち着けるような声音で、ゆっくりと迷子の世界を見渡して告げるのでした。
「私も、流石にこれだけ入り組んでいると頭を悩ませてしまう」
 心細さで苦しんでいるのか――がむしゃらに角から落雷を呼ぶ麒麟の元へは、五行の鳥を羽ばたかせる綾が向かって行きました。厄災に汚染された大地も何のその、掌で転がす小石はぴかぴか夕陽に輝いていて、麒麟たちの眼が吸い寄せられていきます。
「……幼子は時に、何の変哲もない石が宝物に見えるという」
 どんな物にも喜びを見出す子供達は、遊びの天才に違いなく。きっと幽世の路地でも、妖怪の子らが楽しい遊びに興じていたに違いありません。
「――ね、夕さりの色はとてもあたたかいのに」
 柔い微笑みと共に、綾が掲げた小石は夕陽のいろを映し込んで、トパーズみたいに輝いています。
「あたたかいからこそ、帰りたい何処かへ帰れないのは――寂しいですね」
 だから、一緒に。石蹴り遊びしながら、帰りましょと。まだまだやんちゃな麒麟たちを、明鏡止水の極意で上手く見切って倒していく理玖も「もう帰る時間だぜ」と告げて、追いかけっこを終わりにしていきました。
「帰り道なら俺も分かんねぇが、みんなで探せばきっと見つかる。……ねぇなら作ればいい」
「ああ、確かあちらの方に出口のような場所があったような……」
 情念の獣を召喚した英はと言えば、無数の手で麒麟たちを押さえながら、「あちら」の方を指さすと言う離れ業をやってのけます。のんびりと出口まで向かうよ――とまで言われてしまえば、彼らだってそわそわしてしまうのです。
 ――帰りたいな。そんな想いに応えるように、はいと小石を手渡したのは綾でした。
(「大丈夫、あなたは独りではない」)
 告げる代わりに差し出す手のぬくもりが、じんわりと小石を通して呑み込まれた妖怪に伝わっていけば。安堵の気配が辺りに満ちて、骸魂との分離を行える、絶好の機会が巡ってきたのでした。
「それにほら、何かわくわくすんだろ。こんな時間まで遊んだ事あるか? ……俺は」
 残像を纏い、止めの拳を繰り出す理玖の脳裏にふと過ぎったのは――彼を救い、導いてくれた師匠の姿だったのかもしれません。
「……ねぇと思う、多分な」
 けれど、そう言って首を傾げてみせた理玖の頭上では、綾の呼び出した鳥たちが、彼方の海への帰り路を標すように、力強く羽ばたいていたのです。
「さぁ、もうちょい遊んでやる。そしたら、みんなで――」
「……あぁ、お帰りよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スイカ・パッフェルベル
帰りたい。私には一張羅と杖くらいしか無いというのに
麒麟どもと来たら、雁首揃えて一丁前に着飾っているのだ
そんなに強くないと聞いて来てみればこの絵面…私は死ぬのかな

なんだ、迷っているのか君は。少し遊んでみろ
白線や点字ブロック、石畳…模様を辿るのだ
途切れたら10秒以内に他の場所に移るのだぞ。10秒経ったら死ぬ!
帰り道では、誰もがそうするものだろう?

戦闘も考えねば。敵のユベコ、落雷には予備動作がある
それを見て回避するか、杖に込めた魔法で怯ませ対処…
災いの雷を利用しようと動けばそこが肉挽き機の出番だ
指を鳴らし大量生産。地形を杖に
貴様は読んで字の如く、足元を掬われる
妖怪救助故、全力魔法は無しだ。全杖発動


フリル・インレアン
ふえぇ、アヒルさん、私、ここに来ちゃいけなかったと思います。
だって、道があっても迷子のアリスなんですよ。
ずっと、迷い続けている私が道が無くなろうとしている世界を救うなんて無理ですよ。
ふぇっ、アヒルさん何をするんですか。
ヘッドライトをこっちに向けないでくださいよ。
眩しいじゃないですか。
ふえ、道が無くなろうとしているなら、こうして道を照らし続けるって、
アヒルさん、なんだか勇気が出てきました。
まずは麒麟さん達の目を覚まさせないといけませんね。
なんだか危険な災厄のオーラはお洗濯の魔法で落としてしまいましょう。


雨谷・境
アドリブ連携歓迎

皆が道に迷っちまうなんて放っておけないっす
迷子の道案内、やってやるっすよ

敢えて「お祭りニャンコ」のメダルを自分に貼り付けて麒麟達を呼び寄せるっす
これなら麒麟のオーラでコピーされても互いに怪我しないで済むし
麒麟達を引き寄せたら友好的に接するっす
みんなで帰ろう!

……と言いつつどこに帰ればいいかは分かんねーすけど
とりあえず歩いてみるっす
弱気になってる麒麟がいたら励ますし
逆に興奮してる子がいたら宥める
皆で歩けばいつかは道も見えてくるっす

麒麟達から上手く骸魂が剥がれ始めたら、骸魂だけバス停でホームランしてやるっす
これでもう怖くない!
また骸魂が取り憑かないように守ってあげつつ進むっす!



 ――迷子の世界は、道なき世界。通った道は既に潰えて、向かう先は何処へやら。ただ、不気味な稲妻だけが空に轟き、足を竦ませ身動きを取れなくしてしまうのです。
「……皆が道に迷っちまうなんて、放っておけないっす」
 そんな幽世の滅びに立ち向かう、勇ましい妖怪の名は雨谷・境(境目停留所の怪・f28129)――掠れた文字がかろうじて見て取れる、オンボロのバス停を「よいしょ」と担いで、彼は災いの中心へと飛び込んで行きました。
「迷子の道案内、やってやるっすよ」
 そう、彼の持つバス停は道標。そして、彼岸と此岸の境目を区切る象徴でもあるのです。これ以上、骸魂に妖怪たちが呑み込まれたりしないように――どうやら境は、思い切った手段を取ることにしたようです。
「ここは……敢えて、このあやかしメダルを使ってみるっす」
 しゅぱーんと取り出したメダルには、可愛い『お祭りニャンコ』が描かれており、何と彼はそれを自分に貼り付けたのでした。
 やること全てが、皆の注目を集める効果――それにより麒麟たちを呼び寄せるだけでなく、能力をコピーされても、お互い怪我を負うこともない。脳筋っぽい雰囲気とは裏腹に、実はとってもクレバーな境です。
「さあ、皆で帰ろう! ……と言いつつ、どこに帰ればいいかは分かんねーすけど」
 ――ちょっぴり最後が締まらないですが、そうこうしている内に麒麟さんも彼に注目し始めた様子。因果のひかりをぴかぴかさせながら、恐ろしい蹄の音が近づいてきました。
「とりあえずは……弱気になってる麒麟がいたら、励ますことにするっすかね?」
「ふぇぇぇぇ……!」
 おや、早速気弱そうな声が――いやいや、これは麒麟じゃなくて人間の声。首を傾げて辺りを見回す境の視界に、その時ぼろぼろの道を駆けてくる少女の姿が飛び込んできました。どうやら彼女は、手にしたものにしきりに話しかけているようです。
「ふえぇ、アヒルさん、私、ここに来ちゃいけなかったと思います……」
 おどおどした様子で、それでも朽ちた足場を上手く利用して落雷を躱しているのですから、只者ではありません。幽世に舞い降りた、少女の名はフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)――只今お供のアヒルさんと一緒に、逃走の真っ最中のようでした。
「だって、道があっても迷子のアリスなんですよ。ずっと迷い続けている私が、道が無くなろうとしている世界を救うなんて無理ですよ……ふぇっ」
 大きな帽子に隠された、ルビーみたいな瞳を潤ませて身を竦ませるフリルでしたが、ガジェットのアヒルさんはぴかっと瞳を光らせて主のほうに向き直ります。
「アヒルさん何をするんですか。ヘッドライトをこっちに向けないでくださいよ。……眩しいじゃないですか」
 ぱちぱち瞬きを繰り返すフリルの後ろでは、彼女に襲い掛かろうとしていた麒麟が、ライトの直撃を受けて悶絶しているようでしたが――まだまだピンチは続いているようです。
「……帰りたい」
 ――災厄が荒れ狂う幽世に、ぼそりと響く不安な声。見れば、黒いスーツをびしっと着こなしたスイカ・パッフェルベル(思索する大魔道・f27487)が、魔女帽片手に青い顔をしていました。
「私には……一張羅と杖くらいしか無いというのに。なのに、麒麟どもと来たら」
 そう、綺麗な飾りをぶら下げて、ふさふさした腰みのみたいなあれも着けて、お洒落をしているのです――雁首揃えて、一丁前に着飾っていたのです。
「そんなに強くないと聞いて来てみれば、この絵面……」
 私は死ぬのかな、と呟くスイカの気持ちも、分からない訳ではありません。格好いいですよね、ボスキャラの風格が漂っていますよね、麒麟。
「……むう、地獄の鬼までお出ましか。私の魂と引き替えに、払う代償は大きいのだぞ」
「いや、確かに地獄の獄卒ではあるっすけど……」
 と、其処で――ものすごい存在感を放っていた境を見て取ったスイカでしたが、興奮している麒麟を宥めている彼の姿はちょっぴり恐ろしげで、ヤンキーが絡んでいるようにも見えてしまいます。
「ふぇぇ、アヒルさん、カツアゲの現場を見ちゃいました……! 私もジャンプさせられて、小銭を巻き上げられてしまいますっ」
「ち、違うっすよ! これはその、真似をしてこんな格好をしてるだけっす」
 更に、フリルからもあらぬ誤解を受けてしまいそうになりつつも――境たちは協力して、麒麟に囚われた妖怪を救い出そうと奮闘していったのでした。
「なんだ、迷っているのか君は。少し遊んでみろ」
 朽ちた道で右往左往している麒麟へは、スイカが子どもならではの遊びを教え、一緒になって白線を渡っていきます。
「そう、白線や点字ブロック、石畳……模様を辿るのだ。途切れたら、十秒以内に他の場所に移るのだぞ」
「とりあえず歩いてみるっす、皆で歩けばいつかは道も見えてくるっす」
「……ちなみに、十秒経ったら死ぬ!」
「マジっすか」
 びくっと足を止めた境と麒麟さんに向かって、何てことのないように呟いたスイカは、帰り路では誰もがそうするものだろうと言って胸を張ります。
「ふえ、道が無くなろうとしているなら、こうして道を照らし続けるって……」
 そんななか、フリルに抱っこされたアヒルさんは、ヘッドライトで行く先を照らし続けてくれており――そうすると不思議なことに、無くなった道の先も見えてくるようなのです。
「アヒルさん、なんだか勇気が出てきました」
 そうしていると、荒ぶる麒麟たちもいつしか大人しくなっていって。骸魂と妖怪の継ぎ目を何となく感じ取れるようになったところで、三人が動きました。
「危険な災厄のオーラは、お洗濯の魔法で落としてしまって……」
「そこで、肉挽き機の出番だな」
 頑固な汚れもはたき落とす連撃を、フリルが繰り出した直後――指を鳴らしたスイカによって、周囲の地形が魔法の杖へと変わっていきます。
「貴様は読んで字の如く、足元を掬われる――」
 災いの雷が消え去り、麒麟たちが体勢を崩した其処へ、唸りをあげて叩きつけられたのは境のバス停でした。
「骸魂だけ、ホームランしてやるっす……!」
 これで、もう怖くない――お空の星になった骸魂を見送って、境たちは救出した妖怪の無事を確かめます。
 また、骸魂が取り憑かないように。彼らを守ってあげつつ進むことにしましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴久名・惟継
紡(f27962)と参加

迷子の世界とな
そうひねくれた事を言うな、紡
この者達は好んで迷子になっているのではないのだからな
かわいそうに、皆連れて帰らせてやらねば!

麒麟には竜神飛翔
青竜へと姿を変え、天候操作による天罰の雷を振らせてやろう
紡よ、麒麟は俺が引き受けた!今の内に救出してやってくれ
雷で弱らせた所を七支刀でトドメを

雷の光は道を照らす
音ばかりは驚いてしまうが、お前さん達には向かわないぞ
それよりも先程に比べて明るくて賑やかだろう?
暗い所では場所さえも分からなかっただろうが今ならば往ける

帰りたい所はないか?待つ者は居ないか?
そこで何か思い当たるのならば、往かねばならないぞ

さて、もう一仕事!


鈴久名・紡
惟継(f27933)と

帰る場所はない?
帰れない?

そんなの、俺には今更な気がするけど
でも、こいつらは違うはずだ
そうだろ?惟継

存在証明使用
幼少時の自分自身に変身して友達として振る舞う
攻撃は惟継がどうにかするだろうから
妖怪を引き剥がす事を重視で行動

なぁ!もっと遊ぼうよ
ちゃんとまた明日!ってしてさ!
お家に帰って、美味しいご飯を食べてさ!
明日、もっと遊ぼうよ
だから、一緒に帰ろ?

手を差し伸べて、そう誘おう

誰だって、帰れる場所があるなら帰った方が良い

あぁ、そいつが邪魔をするのか
少し痛いかもだけど我慢しろよ?

葬焔を振りかぶってぶん!と一撃
場外ホームランは無理でもそれなりにダメージが入ればいい

親父殿、〆は任せた



 空を飛び交う骸魂は、幽世へ辿り着けなかった妖怪たちの成れの果て――彼らは縁を辿るようにして嘗ての仲間を呑み込んで、災厄の化身へと変わっていきます。
「ふむ、迷子の世界とな」
「帰る場所はない? 帰れない? ……そんなの、俺には今更な気がするけど」
 迷宮と化した街並みは既に道も断たれていましたが、麒麟の群れを仰ぎ見た、鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)は強くあたたかな眼差しで、傍らの甥っ子に声を掛けます。
「そうひねくれた事を言うな、紡。この者達は、好んで迷子になっているのではないのだからな」
 きらきらと夕陽を弾く白灰の髪は、惟継とは色合いを異にしていますが、その瞳には面影があるでしょうか。複雑そうな顔で叔父を見上げる、鈴久名・紡(境界・f27962)でしたが、彼だって分かっているのでしょう。ただ素直になれないだけで――きっと惟継との身長差に、劣等感を感じている訳ではないのです。
「かわいそうに、皆連れて帰らせてやらねば!」
「……ああ。そうだな、惟継」
 ――さて、先ずはふたりへ襲い掛かって来る麒麟たちを、ちょっぴり懲らしめて弱らせなくてはなりません。雷を纏って飛翔する彼らに対抗するべく、惟継は完全な竜神に変身して空に舞い上がっていきました。
「紡よ、麒麟は俺が引き受けた! 今の内に救出してやってくれ」
 その姿は正に、嘗て邪神を滅ぼした強き竜の神――信仰を失った今は、力の殆どを失ったと言いますが、それでも惟継は再び人の為に戦えるようにと、鍛錬を続けてきたのです。
「雷の光は、道を照らす――」
 そうして夕焼け空に奔る稲妻が、麒麟の持つ災厄のオーラに狙いを定めて、天罰の如く降り注いでいくと。高速で飛翔する惟継は、七支刀の神器を振りかざし、すれ違いざまに次々と麒麟に斬りつけていったのでした。
「音ばかりは驚いてしまうが、お前さん達には向かわないぞ」
「……なぁ! もっと遊ぼうよ」
 その一方で――変化の術を操る紡は、幼少時の自分に姿を変えて、麒麟から妖怪を引き剥がすべく声を掛けていきます。
「ちゃんとまた明日! ってしてさ! お家に帰って、美味しいご飯を食べてさ!」
 それは幽世のどこかで、当たり前のように繰り返されてきた光景なのかも知れません。紡も――母親の姿を知りませんが、父親代わりの惟継が今も傍にいるのです。
「明日、もっと遊ぼうよ。……だから、」
 ――幼い頃の姿になっている所為でしょうか。何だか本当に子どもの頃を思い出すような、胸の奥がちょっぴり切なくなるような心地がして、紡は声を振り絞りました。
「一緒に帰ろ?」
 誰だって、帰れる場所があるなら帰った方が良いのだと。手を差し伸べてそう誘えば、空を泳ぐ惟継も雷を放って頷きます。
「ほら、先程に比べて明るくて賑やかだろう? 暗い所では、場所さえも分からなかっただろうが……」
 ――今ならば往ける、と惟継は告げました。帰りたい所はないか? 待つ者は居ないか? そこで何か思い当たるのならば、往かねばならないぞ、と。
 すると麒麟の力が弱まってきたのか、すぅっと行く手に道が生まれてくると、紡は呑み込まれた妖怪たちの気配を、はっきりと感じ取っていったようです。
「……あぁ、そいつが邪魔をするのか。少し痛いかもだけど我慢しろよ?」
 しつこく絡みつく骸魂に狙いを定め、葬焔の一振りをお見舞いすれば――ぶぅんと唸りをあげた場外ホームランが、夕焼け空にきらりとアーチを描いていきました。
「親父殿、〆は任せた」
「さて……もう一仕事!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
嵯泉/f05845と

帰るところがないの、寂しいよなあ
道、見付けないとな
私たちも帰れる道をさ
うん――ようやく見付けたんだし、失くすのは勘弁だ

背中は任せるよ、嵯泉
流石に呪詛で苦しめたくはない
私たちは助けに来たんだ
幻想展開、【済生】
雷は苦手だけど
嵯泉がどうにかしてくれるって信じてる
私は突っ込んで蹴散らす方だ!

キンコクモク。雷って打ち消せるんだ
陰陽師ってか嵯泉って本当、器用だよなー……

殴って衝撃を与えて分離して
そしたら手を伸ばしてやれば良い

帰りたい奴はこっちにおいで
待ってる奴が心配して探しに来る前に、うちに帰ろう
遊びはおしまいだ。本当に戻れなくなるより前に手を取ってくれ
――きっと、旨い飯が待っているよ


鷲生・嵯泉
ニルズヘッグ(f01811)同道
道を見失った不安は殊辛かろう
辿る先を見つけ、連れて行ってやらねばな
帰る場所を失くす訳にはいかん
――ああ、全くだ

任された、お前は前だけ見て行け
先ずは此方の言葉が「聞こえる」様に成って貰わねばな
木気の雷には金気の刃で以って応じよう
殲遍萬猟――金克木の理に従え
ニルズヘッグへと向かう雷全て、カウンターで弾き落として呉れる
信に応えらねば此処に在る意味が無いというもの
中の妖には少々痛い思いをさせる事に為るが
骸魂の食餌なぞにする訳にはいかん、残らす吐き出せ

帰る道を探しているのだろう
待つ者の事を忘れてしまった訳ではあるまい
ならば此方へおいで
暗いならば灯を点し、標と成して導こう



 夕焼け空に轟く雷は、夏の夕立を思い起こさせてちょっぴり胸がざわめきます。激しい雨に打たれながら、家路を急ごうと駆けていって――なのに帰り路が無くなってしまったのなら、どんなに心細いことでしょう。
「……帰るところがないの、寂しいよなあ」
「そうだな、道を見失った不安は殊辛かろう」
 死してなお空を彷徨う骸魂は、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)にとって、恐ろしいと言うよりも親しみを感じる存在なのかも知れません。死者の怨嗟を力に変える彼のことをよく知る、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)もまた、眼帯に覆われた瞳越しに何かを想い、静かに刀を抜いていきます。
「道、見付けないとな」
「ああ。辿る先を見つけ、連れて行ってやらねば……帰る場所を失くす訳にはいかん」
 そして――自分たちも、帰れる道を探さなくては、と。呟くニルズヘッグが済生の力を解放すれば、黒き蛇竜も長槍に姿を変えて、主の手の中でぶるりと震えました。
「背中は任せるよ、嵯泉」
「任された、……お前は前だけ見て行け」
 鱗を持つ竜人と化した盟友が、その背の翼で大空に羽ばたいていくなかで、嵯泉は刀身に指を滑らせながら陰陽術の詠唱に入ります。
(「先ずは、此方の言葉が『聞こえる』様に成って貰わねばな」)
 ――落雷を次々に召喚して、周囲を災いの雷で包み込んでいく麒麟たちに対抗するべく、彼が用いたのは金気の属性でした。
「殲遍萬猟――金克木の理に従え」
 五行相剋の相性のもと、木気の雷には金気の刃で以って応じていく。印を結んだ嵯泉が直後に放った、殲遍萬猟の斬撃は刃の雨となり、ニルズヘッグに向かっていく雷を片っ端から弾き落としていったのです。
(「信に応えらねば、此処に在る意味が無いというもの」)
 ――戦での高揚もありますが、それ以上に骸魂の食餌なぞにはする訳にはいかない、と強く決意して。呑み込まれた妖怪には少々痛い思いをさせるかも知れませんが、膿を出し切るつもりで一気にやってしまいます。
「残らず吐き出せ……!」
「流石に呪詛で苦しめたくはない、私たちは助けに来たんだ」
 そんな嵯泉の器用な戦い方に、感嘆の息を吐きつつも――幻想展開をしたニルズヘッグは、怯んだ麒麟のもとへと一気に距離を詰めていきました。苦手な雷は、嵯泉がどうにかしてくれたのです。後は自分が突っ込んで、思う存分蹴散らしてやる番なのだと、槍を握る手に力を籠めていきます。
「殴って、衝撃を与えて分離して――」
 ――ようやく見付けたんだし、失くすのは勘弁だ。そう呟いたニルズヘッグに「全くだ」と頷いた嵯泉の想いも一緒に、麒麟にぶつけていって。
「そしたら、手を伸ばしてやれば良い……!」
 弾けて飛び散っていく骸魂を、ちょっぴり寂しそうに見つめたニルズヘッグは、かたちを失い始めた麒麟たちに向けて、優しく手招きをしていきました。
「帰りたい奴はこっちにおいで。……待ってる奴が心配して探しに来る前に、うちに帰ろう」
 帰る道を探しているのだろう――続ける嵯泉も、待つ者のことを思い起こさせるように、その貌にほんの僅かな笑みを浮かべて家路へ誘います。
「……ならば此方へおいで。暗いならば灯を点し、標と成して導こう」
 もう、遊びの時間はおしまいなのです。本当に戻れなくなるより前に、手を取ってくれと。呟くニルズヘッグの向こうからは、いつしかカラスの鳴き声が聞こえてきたのでした。
「――きっと、旨い飯が待っているよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

祇条・結月
……帰り道がない
何処に居ればいいのかわからない
それは誰だって怖いことだって思う
行こう、出来ることをしに

古事に倣って銀の糸を垂らしながら進む
その間も警戒は怠らない
麒麟が現れたら、落ち着いて対処

攻撃の【見切り】に専念しながら別の銀の糸を素早く錬成して、【ロープワーク】で動きを封じて
雷の攻撃は実体のないものを刺すための咎人の鍵で【武器受け】して受け流す

「○○みーつけた。かくれんぼはお仕舞い」
「帰ろ? 帰り道? ふふ、大丈夫。僕は迷子じゃないし君もちゃんと、知ってるだろ」

って。
【手を繋ぐ】風に古びた鍵を差し出して、

≪家へ帰ろう≫

気持ちを強く持ってれば、きっと大丈夫
後は麒麟がまだ抵抗するなら止めをさす



 ――黄昏のなかできらきらと、不思議な輝きを放つのは銀の鍵。閉ざされた誰かのこころを、そっと開いていくような、そんな神器を伴にした祇条・結月(キーメイカー・f02067)は、迷子の世界をしっかりした足取りで進んでいくのです。
「……行こう、出来ることをしに」
 焼け落ちた本の頁のように、黒ずんで消えてしまった道を前にしても、指先から垂らした銀の糸が行くべき道を指し示してくれるようでした。
(「帰り道がない。何処に居ればいいのか、わからない」)
 それは誰だって怖いことだと、結月は思うのです。地方の小さな町で、ごく普通の高校生として過ごしてきた彼にとって、そんな不安は日常の傍で息を潜めているものでもあって。
 ――自分が出来ること。それが何なのか、分からなくなる時もあるけれど。今はどうにか、失われた道の先がうっすらと見えるような気がするのです。
「……っ」
 警戒を続ける結月の傍で、その時ばちりと光ったのは災いの雷でした。素早く跳び退って追撃をやり過ごした向こうから、続々と麒麟の群れが姿を現しましたが、落ち着いて対処しようと深呼吸します。
(「大丈夫」)
 もう片方の指で、更に銀の糸を錬成しつつ――電線に糸を絡めて、地面を奔る稲妻を一気に飛び越えて。宙を舞う銀糸が麒麟の動きを次々に封じ込めていけば、咎人の鍵が降り注ぐ雷を弾き返していきました。
「……みーつけた」
 ――夕焼けの空に消えていった、結月の姿を求めて辺りを見回す麒麟たち。その背後から聞こえてきた声はどこか懐かしい、友達のように楽しげな声でした。
「かくれんぼはお仕舞い。帰ろ?」
 帰り道? と問うように伸ばされた首を、ふふとくすぐるような笑い声が響いていきます。大丈夫、僕は迷子じゃない――そんな言葉とともに、そっと差し出す手に握られていたのは、どこかの家の古びた鍵でしょうか。
「それに、……君もちゃんと、知ってるだろ」
 ――家へ帰ろう。そんな魔法のことばとともに目の前に広がっていったのは、記憶のなかの思い出の場所でした。
(「気持ちを強く持ってれば、きっと大丈夫」)
 そうして、呑み込まれた妖怪だけを安全に救い出すことに成功した結月はそのまま、彷徨える骸魂を骸の海へと返していったのです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

甘渼・アメ
🌈虹櫻

迷っちまっただ……おらどうしたら……
このままじゃいけねぇ、誰かひとさ見つけねぇと…
道無くして闇の中、もう虹が見られないなんて嫌

ひぇん!
躓き転ぶ
差し伸べられたのは綺麗な手
誰?
お…じゃなくて!アメは妖―アマビエよ
櫻宵、というの?綺麗
あは!アメと櫻宵は迷子仲間
…よかった、優しそうなひとに巡り会えて―気配からして竜神かな
頼もしいわ!一緒にいこう、櫻宵

ご機嫌に歩き出す
アメは独りじゃない―あ、きた
待って
あの子達も帰りたがってる
アメは祈るわ
帰れるように
笑顔で話しかけるの!
一緒に帰ろ!って
そしたらアメ達と麒麟も友達よ!
ねぇ信じて
皆で帰ろ!

通じなかったら…任せるわ
櫻宵が怪我したらアメの光で癒してあげる!


誘名・櫻宵
🌸虹櫻

あら…ここはどこかしら?
どこか懐かしい気配に誘われて訪れてみれば
もう帰り道もわからない
私のただ一つの帰る場所に
たったひとつの居場所に
―私の館はどこかしら?

目の前で派手に転んだ少女に少し笑って手を差し伸べる
大丈夫?あなた、妖ね
アマビエ?
アメというのね!私は櫻宵
よろしく迷子仲間さん
楽しくなりそうだわ
『呪華』の蝶飛ばして索敵と帰り道の探索を
折角だから一緒にゆきましょう、アメ

妖…麒麟ね
アメ、下がってて
全部殺してあげるわ
斬って潰して破魔で焼いて蹂躙して―綺麗に咲かせてあげ――え?友達?

妖など狩るものだと思っていたけれど…良い子もいるのねぇ

でもあなたに手を出したら
纏めて神罰―「喰華」
喰らってやるわ



「あら……ここはどこかしら?」
 どこか懐かしい気配に誘われて訪れてみれば、天地がくるりと回っていって、其処はいつしか迷子の世界。
(「もう、帰り道もわからない」)
 私のただ一つの帰る場所、たったひとつの居場所はどこに、と――懐かしい景色に面影を見出そうとするけれど、桜霞の瞳に映る街並みからは、道だけがぽっかりと失われているのです。
「――私の館は、どこかしら?」

 ――てく、てく、てく。色褪せた道を歩いていくのは、空から落ちてきた虹がかたちを成したかのような、可愛らしい女の子です。
(「迷っちまっただ……」)
 不安そうに辺りを見回す瞳のなかにも、よく見れば色んなひかりが揺れているように見えます。慣れ親しんだ筈の空には、ひっきりなしに閃光が瞬いていて――それが甘渼・アメ(虹始見・f28092)のこころを、益々不安にさせていってしまうのでした。
(「おら、どうしたら……」)
 このままじゃいけねぇと、誰かひとを見つけるべく道なき道を進んでいこうとするアメですが、足を踏み出しても一体どこに向かっているのやら――ぐるり見渡す街並みは、さっきとは景色が違っているような気がして、藤の瞳にじんわり雨雫が滲んでいきます。
「もう虹が見られないなんて、嫌……ひぇん!」
 ――ああ、涙で濡れた視界のせいか、着物の裾を引っかけて転んでしまったようです。派手に地面に突っ伏したアメでしたが、その時ころころと微かな笑い声が聞こえてきて、彼女に向かって綺麗な手が差し出されたのでした。
「大丈夫? ……あなた、妖ね」
「誰?」
 おでこをさすりさすり――ゆっくり顔を上げたアメを覗き込んでいたのは、桜枝の角を生やした綺麗なひとのようです。ふんわりと薫る春のにおいに、とくんと胸が高鳴るまま、思い切ってアメは自己紹介をしていました。
「お……じゃなくて! アメは妖――アマビエよ」
「アマビエ? ……アメというのね!」
 誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)、と名前を教えてくれたそのひとは、何だか優しそうな気配がしてほっとします。気配からして竜神みたいですが、櫻宵と言う名前は良く似合っているな、とアメは思いました。
「よろしく迷子仲間さん、楽しくなりそうだわ」
「……あは! アメと櫻宵は迷子仲間」
 ――頼もしい仲間に巡り合えて、うきうき気分で探索と行きたいところですが、ご機嫌なふたりの前に襲い掛かってきたのは、恐ろしい麒麟の群れのようです。
「アメ、下がってて、……全部殺してあげるわ」
「待って、」
 斬って潰して破魔で焼いて蹂躙して――即座に屠桜の太刀を取り出して、おっかない顔に変貌した櫻宵の袖を引っ張りながら、アメは必死になってかぶりを振りました。降り注ぐ落雷にも負けないように、あの子達も帰りたがっているのだと訴えていきます。
「綺麗に咲かせてあげ――え? 友達?」
「アメは祈るわ、帰れるように。笑顔で話しかけるの!」
 ――自分は独りじゃないんだと、櫻宵が教えてくれたように。一緒に帰ろ、と声を掛けながら、生まれながらの光で迷子の闇を照らしていくのです。
「そしたら、アメ達と麒麟も友達よ! ねぇ信じて、皆で帰ろ!」
(「妖など、狩るものだと思っていたけれど……良い子もいるのねぇ」)
 麒麟に呑み込まれた妖怪たち――彼らと骸魂の境界を、アメの光が浮き上がらせていくと、其処へ狙いを定めた櫻宵のひと睨みが、桜獄の呪となって吸い込まれていきました。
「でも、あなたに手を出したら……喰らってやるわ」
 桜花と化し散っていった骸魂を横目に、にっこりアメに微笑んだ櫻宵ですが――少女は未だ知りません。
 ――櫻宵の正体が、実は綺麗なオネェさんであることを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘇摩・瞬華
うーん、迷子になっちゃったなぁ。
でも、ここで道を見つけて世界の終わりを止めるのが、わたし達のお仕事なんだよね。
なら、頑張って道を見つけないとっ。

【第六感】頼りに頑張ってあちこち道を探すよ。当てずっぽうとも言うけど!
オブリビオンが出てきたら…えっと、骸魂だけやっつけて妖怪さんは助けてあげるんだったね。
みんな、お迎えに来たよっ。わたしと一緒に、元のところに帰ろう。大丈夫、道は頑張って見つけるから!

という感じで呼びかけつつ、命喰ホムラダマで攻撃。炎は敵の数に合わせて合体させた上で。
妖怪さんまで巻き込まないように気をつけて操るよ。
「あなた達も、あるべき処に帰ろう、ね?


ヘルガ・リープフラウ
※アドリブ歓迎

ああ、道に迷ってしまったのね
でも、わたくしは決して諦めません
愛する旦那様のもとへ、必ず帰って見せますわ

まずはあの子たちを落ち着かせないと
讃美歌はご存じ?
【主よ、哀れみ給え】と歌いかけ

もしかして心配なのかしら。帰りが遅れたらお父さんお母さんに叱られるかもって
でも大丈夫、わたくしが一緒に謝ってあげます
ただ道に迷っただけでこの子は悪くないと、だからもう許してあげてと

寂しい心を慰めるように、優しく手をつないで
第六感を働かせて、失せ物探しの要領で、懐かしい道を辿りましょう
きっと、きっと大丈夫
あなたが大切だからこそ心配で、きっと帰りを待っているはず
家族の団欒は、何よりも暖かいものなのだから



 ――道と言う道が朽ちてしまった幽世の路地に、ふぅと零れた溜息はふたつありました。さっきから似たような景色ばかりで、進む道さえ見えなくなってしまった、と。
「うーん、迷子になっちゃったなぁ」
 薄絹を靡かせながら、銀の尻尾を魅惑的に揺らして呟く蘇摩・瞬華(蒼篝・f25151)は、その口ぶりに反してどこか楽しそうにも見えます。大人びた肢体には不釣り合いな、無邪気な笑顔でにこりと笑いかけると――真剣な表情で看板とにらめっこをしていたヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)も、ちょっぴり肩の力を抜いたようでした。
「でも、ここで道を見つけて世界の終わりを止めるのが、わたし達のお仕事なんだよね」
「……ええ、道に迷ったのだとしても」
 うんうんと頷く瞬華の人なつっこい仕草は、妹が居たらこんな感じなのかなあ、なんてヘルガは思ってしまいます。元は令嬢として、厳格な教育を受けてきた彼女なので、瞬華の奔放な様子にはちょっぴりひやひやしてしまったりもするのですが。
「わたくしは決して諦めません。……愛する旦那様のもとへ、必ず帰って見せますわ」
「うんうん、なら頑張って道を見つけないとっ」
 ――追われる身になっていたヘルガを、颯爽と助けてくれた騎士が、今の彼女の旦那様なのだと言います。そんなロマンチックな馴れ初めに、「きゃあ」と胸を弾ませる瞬華もまた、蒼き焔を踊らせながら道を探していくのでした。
「まぁ、勘頼みの……当てずっぽうとも言うけど!」
「……ともあれ、お出ましのようですね」
 やがて、気が付けば――災いの雷が辺りに降り注いできて、ふたりの元へと麒麟たちが襲い掛かってきます。殺気立った様子で落雷を呼ぼうとする彼らを前に、顔を合わせて戦いの手順を確認するのは瞬華です。
「えっと……骸魂だけやっつけて、妖怪さんは助けてあげるんだったね」
「その為にも、まずはあの子たちを落ち着かせないと」
 襲い掛かる雷を、白き翼を羽ばたかせてひらりと躱していくヘルガは、天使の歌声と称賛された声を響かせながら、麒麟たちへと呼びかけを行っていきました。
「……讃美歌はご存じ? ああ、もしかして」
 心配なのかしら、と囁くヘルガに、荒々しい蹄の音が返ってきます。そう、迷子になって帰りが遅れたら――もしかしたら、お父さんお母さんに叱られるかも知れないのです。
「でも大丈夫、わたくしが一緒に謝ってあげます」
 ――主よ、哀れみ給えと歌いかけて。そうすれば天使の翼からは、神聖なオーラが煌々と辺りに降り注いで、哀れみの心が荒ぶる麒麟たちの動きを封じ込めていきました。
「ただ道に迷っただけでこの子は悪くないと、だからもう許してあげてと」
 そうして――彼らに呑み込まれてしまった妖怪の、寂しい心を慰めるように優しく手を繋いでいけば、仙狐の瞳をきらりと輝かせた瞬華も、豊かな胸を反らしてにっこり笑います。
「みんな、お迎えに来たよっ。わたしと一緒に、元のところに帰ろう!」
 大丈夫、道は頑張って見つけるから――そう言った彼女に頷くヘルガも、失せ物探しの要領で、懐かしい道を辿ってみせるのだと頷きました。
「……きっと、きっと大丈夫」
 妖怪と骸魂をしっかりと分けるように。蒼い人魂のようなホムラダマを、上手く合体させて麒麟の群れへと向かわせたのは瞬華で――命喰の炎がみるみる魂を喰い尽くしていくと、後には呑み込まれた妖怪が、すやすや眠るようにして地面に残されていたのでした。
「あなたが大切だからこそ心配で、きっと帰りを待っているはず」
 ――家族の団欒は、何よりも暖かいものなのだから、と。懐かしいラッパの音が夕暮れに響いていけば、もう晩ご飯の時間なのです。
「あなた達も、あるべき処に帰ろう、ね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【和気藹々】
大禍時とは言いますが、何と災難な
俺も嘗ては故郷を失い、途方に暮れたりもしましたが――彼らはまだ、その道も未来も取り戻せるなら、此処で立ち尽くしてはいられませんね
ええ、では仲良く手を携えて参りましょう

厄祓いに魂鎮めならばお任せたれ
彷徨える骸魂には海へ還る送火を
囚われの迷子には家へ帰る灯火を

UCに破魔込め、結界張る様に広げ雷相殺
早業で麒麟にも浄化の炎向け2回攻撃
災いのみを焼き祓い、妖怪さんの封印を解きましょう

そうだ、ここを抜け出したら、後で美味しい駄菓子店を教えてくれませんか?
大丈夫、必ず送り届けますよ
等、心が前向く様に声を掛け

ええ――皆で巡れば、何事も明るく楽しい道が見出だせる筈


呉羽・伊織
【和気藹々】
俺も昔は散々彷徨ったり、行く先も帰る所も失ったり、まぁ色々あったモンで――迷子の心細さは、相応に
ってか未だに迷走しがちな身だったりもするケド――でも今は心強い珍道中仲間がいるし、な?
道無き道を切り開いて突き進む面子が揃い踏みとくりゃ、何も恐れる事はない

皆で力合わせて帰るとしよう!
宣言と共に第六感で失せ物探し――囚われた妖怪達や帰路の情報収集しつつ、UCで麒麟だけを牽制
拐かす災いのみを絶ち切り滅す

大丈夫、ひとりぼっちじゃないからな
顔上げて、前向いて、一緒に踏み出そう
そしたら自ずと道も開ける筈

ああ、迷子すらも一興と笑い飛ばして進み――故郷に着いたら、是非色々案内してくれると嬉しいな!


筧・清史郎
【和気藹々】

迷子はよく俺もなるのだが(実は方向音痴
その際は、慌てても仕方がないし、何とかなるものだと思っている
それに今は、皆も一緒に迷子だから心強いしな(くすりと
けれど、呑み込まれた妖怪さんたちが不安だというのならば
導いてあげたいところだ

伊織や菊里の言葉や炎を心強く思いつつ
俺もUCを展開し安心させるよう、妖怪さん達へ声を
迷子になってしまい心細かったな
だがもう安心だ、帰る道は俺達が取り戻す
なので此方へおいで(微笑み

引き離せたら、麒麟へと刀の斬撃を見舞おう
数も多いようなので、皆で手分けできればと

俺達は皆の友達だ、さあ一緒に帰ろう
ああ、そうだな
この世界の事や、お勧めのものや場所を教えてくれ(微笑み


鳳来・澪
【和気藹々】
皆の珍道中遍歴かぁ…何や色々と興味深いね
ふふ、でもまぁそんだけ迷子になりながらも、今ちゃんとこうして此処に揃ってるぐらいの仲間なら、ほんまに何とかなりそやね

さて、そしたら――皆に意地悪する困った子とは、此処でお別れしよか
そんで帰り道を、一緒に見つけ出そね

UCやオーラで防御高め、破魔の衝撃波で雷の災いを打ち消してく
妖怪さんを見つけ出せたら、手を繋いで引き戻して、もう迷ったりはぐれたりせんよう守るね
大丈夫、皆ついてるよ

まずは骸魂を海に、それから妖怪さんを家に、ちゃんと在るべき場所に送り帰して――心落ち着く場所と、心弾む時間を、取り戻してみせよう

無事に済んだら一緒に遊ぶのもええね!



 誰かの思い出がかたちになった、追憶の路地をそぞろ歩くのは、艶やかな着物を纏った四人の若者でした。ちょっぴり浮世離れした、不思議な彼らの佇まいは、幽世の世界にも馴染んでいたのですが――交わすことばはどこかほっこり、滅亡もなんのそのと言った風情です。
「……大禍時とは言いますが、何と災難な」
 黄昏の空に轟く稲妻を見遣り、ふさふさの狐耳をぴくりとそばだてる千家・菊里(隠逸花・f02716)は、その口ぶりに反して泰然と構えているようでした。
 ――己も嘗ては故郷を失い、途方に暮れたりもしたのだと。そんな過去をさらりと告げたのに、悲壮感をまるで感じさせないように微笑むのですから、何だか狐に化かされたような気分になってしまいます。
「まぁ俺も、昔は散々彷徨ったり、行く先も帰る所も失ったり、まぁ色々あったモンで――」
「ふむ、迷子はよく俺もなるのだが」
 そんな菊里の生き方と、相通じるものがあったのでしょうか――呉羽・伊織(翳・f03578)が、懐かしそうに目を細めてしみじみ呟けば、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)も真剣な顔でうんうんと頷いています。
「ああ、そっちの道は行き止まりのようですよ」
 そうして気紛れに、路地の奥へと足を向けようとした清史郎に、すかさず菊里が待ったをかけると――鳳来・澪(鳳蝶・f10175)が快活な笑い声をあげて、かろうじて残っていた細い道を指し示しました。
「あはは、皆の珍道中遍歴かぁ……何や色々と興味深いね」
「……迷子の心細さは、相応に。ってか」
 千切れかけた道も、ひょいとひとっ飛びで越えていきながら、妹分の澪に手を差し伸べた伊織は、微かな吐息を吐き出します。未だに、迷走しがちな身だったりもするけれど――でも今は。
「心強い珍道中仲間がいるし、な?」
「ふふふ、せやね」
 ――顔を合わせて一緒に頷くと、迷子の世界も何とかなりそうな気がするのですから頼もしいです。今ちゃんとこうして、此処に揃ってるぐらいの仲間なら、と。
「うむうむ。皆も一緒に迷子だから、心強いしな」
 迷子なのに自信満々な清史郎の頭の上で、ひよこのポポ丸も一緒になって胸を張っているのを微笑ましく見つめながら――すらりと薙刀を構えた澪は、直後に飛来してきた落雷を、電光石火の速度で叩き落としていたのでした。
「さて、そしたら――皆に意地悪する困った子とは、此処でお別れしよか」
 ――その深紅の瞳に映るのは、災厄のオーラを纏って押し寄せる麒麟の群れであり。間髪入れずに放たれた稲妻へは、菊里が破魔の炎を操って対抗していきます。
「……厄祓いに魂鎮めならば、お任せたれ」
 結界のように辺りに広がっていく狐火が、雷を呑み込んで相殺していくと――早業で繰り出された二撃目が、今度は麒麟本体に狙いを定めて燃え上がります。
「災いのみを焼き祓い、妖怪さんの封印を解きましょう」
「そうだ、道無き道を切り開いて突き進む面子が揃い踏みとくりゃ……何も恐れる事はない」
 出鼻を挫かれながらも、災厄のオーラを揺らめかせて反撃を試みる麒麟たちですが、牽制を行う伊織によって禍殃のみを上手く断ち切られていくのですから、何とも分が悪いようでした。
「皆で力合わせて帰るとしよう!」
 拐かす災い――骸魂の呪詛が凝るそれを、絶ち切り滅していく伊織たちを心強く思いながら。桜花の加護を得た清史郎も、囚われた妖怪を安心させるように、優しく声を掛けていくのです。
「迷子になってしまい心細かったな、……だが、もう安心だ」
 ――もし、迷子になったとしても。慌てても仕方がないし、何とかなるものだと言うのが清史郎の体験談です。それでも不安なら、自分たちが導いてあげたい。微笑む彼の指先から、ふぅわりと桜の花びらが舞い散っていくなかで、澪も妖怪さんを引き戻すように手を差し伸べていったのでした。
「そんで帰り道を、一緒に見つけ出そね。もう迷ったり、はぐれたりせんように」
 ――大丈夫、皆ついてるよ。ひとりぼっちじゃないからな。
 彼らはまだ、その道も未来も取り戻せるのです。だったら此処で立ち尽くしてはいられないと、其処へ伊織や菊里の手も加わっていけば、妖怪と骸魂の境界が露わになって、引き離す好機が巡ってきました。
「彷徨える骸魂には海へ還る送火を、囚われの迷子には家へ帰る灯火を――」
 迷子の道を明るく照らす、菊里の狐火が辺りを幻想的に浮かび上がらせていくなかで、麒麟目掛けて振るわれるのは翳喰の刃。肉体を傷つけぬ一撃によって、あちこちで解放されていった妖怪たちを、澪と清史郎が手分けして回収していきます。
「俺達は皆の友達だ、さあ一緒に帰ろう」
「……そうだ、ここを抜け出したら、後で美味しい駄菓子店を教えてくれませんか?」
「あ、無事に済んだら一緒に遊ぶのもええね!」
「だな、故郷に着いたら、是非色々案内してくれると嬉しいな!」
 和気藹々と、迷子すらも一興と笑い飛ばして進みながら――心落ち着く場所と心弾む時間を、取り戻してみせると決意したのは澪でした。
(「顔上げて、前向いて……一緒に踏み出そう」)
 そうしたら、自ずと道も開ける筈。そんな伊織のことばに頷く菊里も、皆で巡れば道は見出せる筈だと、仲間たちに手を伸ばしてゆるりと告げたのでした。
「ええ、では――仲良く手を携えて参りましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐々・夕辺
有頂さん【f22060】と

気付けばカクリヨ……
これ、何処に行けばいいの?
どちらからきたかも全く判らないわね…
有頂さんは……判らないわよね
お屋敷でも迷子になってたものね?
大丈夫よ、置いていったりしないわ

有頂さんの後方から彼の位置を確認しつつ
妖狐疾走で氷の属性攻撃、鎧無視攻撃
オーラによる反撃を察知したら前に出て有頂さんを庇うわ
…うるさいわね、黙って庇われてなさい
言ったでしょう、貴方を置いていったりしないって

夕焼け小焼け、遊びは終わり
もう帰る時間よ!

私は口下手だから
説得は有頂さんに任せきり
其の分、精霊の聲を叩きつけて骸魂を引きはがすので
頑張って頂戴

…「置いていかないで」は、私の台詞だわ


日東寺・有頂
夕辺さん(f00514)と
<ハヤいやつ(SPD)>

行きはよかよか帰りは怖か
帰り道よか夕辺さんが怖… うそです
うむ オイ、すぐ迷子になってしまうけん
先行かんでな

第六感働かせ失せ物である道ば探り
麒麟に会うたら兎に角、妖しゃん助けんばな
敵の挙動ば見切り、オーラ展開される前に早業でUC発動
女ん子の前やけんキリッとキメてぺぺぺは言わん
毒手裏剣の範囲攻撃みだれ撃ちばお見舞いよ 
夕辺しゃん、ちいと待たんね
アンタを護るんが俺の役目だ

攻撃ん合間に
迷子ん妖怪さん
オイどん道ば分かっとーばい
もう大丈夫やけん一緒に帰ろ
やら声かけて骸魂から引き剥がす 
妖怪にもコミュ力は有効やろ?



「行きはよかよか、帰りは怖か……」
 夕暮れの路地に伸びる影法師を追いかけるようにして、どこか物悲しいわらべ歌が響いていきます。けれど声の主である日東寺・有頂(手放し・f22060)は、楽しそうな足取りで「ぽん」と、朽ちた道を飛び越えていって――。
「帰り道よか夕辺さんが怖……」
「これ、何処に行けばいいの?」
 一緒に迷子になっていた佐々・夕辺(凍梅・f00514)に、絶対零度のまなざしを向けられると「うそです」と呟いて、慌てて途切れた道の先を探し始めたのでした。
「どちらからきたかも、全く判らないわね……」
 ――気が付けば幽世の、何処とも知れぬ街に佇んでいたのです。何だか記憶をくすぐるような、不思議な声を聞いたような気もしましたが、同じような景色をぐるぐる回っているうちに、夕辺の感覚も惑わされていったのかも知れません。
「有頂さんは……判らないわよね」
「うむ。オイ、すぐ迷子になってしまうけん」
 第六感を働かせる有頂が、電信柱の近くのゴミ箱を漁っているのを複雑な表情で見守りながら、夕辺は彼との日常を何とはなしに思い返します。
「……お屋敷でも迷子になってたものね?」
「先行かんでな」
 ちょっぴり変わった響きを持つ有頂の喋り方は、ささくれだった夕辺のこころを、優しく宥めてくれるみたいです。大丈夫よ、と返して足元の小石を蹴れば、微かにそよいだ風が梅の馨りを運んでいってくれました。
「置いていったりしないわ……っと、お出ましのようね」
 と――遠雷の音に耳を立てていた夕辺は、落雷の気配を感じ取って、素早く水宝玉の短剣を構えます。そうして、舞い降りた敵よりも先に精霊の囁きを己に纏うと、凍てつく青銀の刃が辺りを極寒の地に変えていったのでした。
(「一気に攻めるわ……!」)
 因果の輝きが己を捉えるよりも早く、疾走し――麒麟たちの身体を包むオーラの向こう側へと、外持雨の切っ先が届くように。
「……夕辺しゃん、ちいと待たんね」
 その一方で、毒手裏剣の乱れ撃ちで牽制を行っていた有頂でしたが、自分を庇うように前へ出ていく彼女の背に、慌てて声を掛けます。
「アンタを護るんが俺の役目だ」
「……うるさいわね、黙って庇われてなさい」
 麒麟光が模倣し、発動していく衝撃波を弾き返しながら、振り返ること無くそう呟いた夕辺の頬は、夕陽を受けて仄かな色に染まっていました。
「言ったでしょう、貴方を置いていったりしないって」
 ――私は口下手だから、と。だから説得は任せて、其の分骸魂を引きはがすことに集中するからと。覚悟を決めたらしい夕辺に頷き、有頂もキリッと真剣な顔になれば、麒麟がオーラを展開するより先に手裏剣を飛ばして、囚われの妖怪に呼びかけを行います。
「迷子ん妖怪さん、オイどん道ば分かっとーばい」
 女子の前なので、無意識の「ぺぺぺ」の掛け声は無しです。持ち前のコミュ力で気さくに声を掛けながら、くいくいと手招きをして、有頂はにっこり微笑むのです。
「もう大丈夫やけん、一緒に帰ろ」
「夕焼け小焼け、遊びは終わり――」
 ――其処で、妖怪たちが意志を取り戻したのでしょうか。動きの鈍った麒麟のなかに、骸魂の核のようなものを捉えた夕辺は、それ目掛けて精霊の聲を思いっきり叩きつけたのでした。
「もう帰る時間よ!」
 やがて、無事に妖怪たちを救い出していった有頂が、いつの間にか彼らに懐かれているのを見つめながら――誰にも聞こえない位のちいさな声が、夕暮れの路地に吸い込まれていきます。
「……『置いていかないで』は、私の台詞だわ」
 ――蜂蜜を流し込んだような髪とは裏腹に、その声はほろ苦く、ほんのちょっぴり涙の味がしました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『口寄せの篝火』

POW   :    甘美な夢現
【対象が魅力的と感じる声で囁く言霊】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象の精神と肉体を浸食する炎】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    怨嗟の輩
【吐き出した妖怪の亡霊】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    蠱惑の怨火
レベル×1個の【口や目】の形をした【魅了効果と狂気属性】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシエル・マリアージュです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


(「……おいで、おいで」)
 ――迷子の世界を我が物顔で飛び交う、麒麟の群れを上手く倒していくと、朽ちた道の先で「ぼぉっ」と鬼灯みたいな炎が生まれました。
(「道は断たれて、行き止まり。みぃんな迷子なら、寂しくないね」)
 夕闇に響くその声は、こころをくすぐる魅力的なもの。子どもの頃に一緒に遊んだような、懐かしい誰かの声のように感じて、ついふらりと引き寄せられてしまいそうになるのです。
 ――でも。踏み出した足に忍び寄るのは、精神と肉体を侵食する夢現の炎。甘美な夢を見せようと迫る炎には、いつしか無数の口や目が蠢いていて、くすくす笑いながら世界を呑み込んでいこうとします。
(「あなた、に……わたしに」)
 そのあやかしの名は、口寄せの篝火――閉ざされた道の上でふわりと浮かんでいるのは、おかっぱ頭の女の子で。お人形さんみたいな貌を、真珠みたいな涙がはらはらと伝って、女の子は哀しそうに声を震わせるのです。
(「もう、帰る場所はないの」)
 もしかして、彼女は座敷わらしなのでしょうか。お家の守り神とされる妖怪ですが、座敷わらしの去った家は不幸に見舞われてしまう――そんな言い伝えもあります。赤い小袖は凶事の前触れで、不幸を招いたからこそ家に居られなくなったのかも知れません。
(「わたしはどこにも、帰れない――」)
 だけど――オブリビオンに取り込まれ、次の獲物を狙う為の囮になった彼女を助けたなら、本体が弱体化して倒しやすくなりそうです。
 目と口が浮かぶ、不気味な赤い塊こそが本体でしょう。それに上手く狙いを定めるように、工夫して戦うことが出来れば勝ち目はありそうですね。
 さあ、もうひと頑張りです。帰り路を見つけ出して、一緒にもう一度――あの頃へと帰ることにしましょう。


⛩️⛩🏮⛩️⛩🏮⛩️⛩🏮⛩️⛩🏮

●第2章補足
・カタストロフを引き起こそうとする、オブリビオンとのバトルです。呑み込まれた妖怪(座敷わらし)は囮にされており、本体の塊は彼女を盾にしてきますので、上手く本体に狙いをつける工夫があればボーナスがつきます。
・もしくは、妖怪に呼びかけを行うことでも、本体の動きを鈍らせることが出来てボーナスがつきます。囚われの妖怪は、お家へ帰りたいと思って泣いているようです。
・敵のユーベルコードの「魅力的な声」や「魅了」では、過去の懐かしい記憶がふっと蘇るかも知れません。もし具体的なイメージがありましたら、プレイングに盛り込んでみてください。

 第2章プレイング受付は『6月30日 朝8:31~』からの受付と致します。成功数に達した辺りで締切日の告知をしますので、ゆっくりプレイングを考えてみて下さいね。
🦍🦍🍌🦍🦍(ウホホッ)🦍🦍🍌🦍🦍
七枷・むつき
心を刺激するこの声は、きっと幻のはずで

帰れないというのは…皆といても寂しいですよ、やっぱり
だから、否定すると致しましょう

ふと、浮かび上がったのは
何の変哲もない街で、黄昏時に友人と帰路に着く少女の姿
その後ろ姿は…
頭を振って、しっかり前を見ないと 

帰る場所がないなんて、そんなこと言わないで
此処はカクリヨファンタズム、貴女が帰りたいと望めばきっと見つかりますから
だから…私達と一緒に帰りましょう?

戦闘では難しくとも本体を狙って
鴉さん(鴉の使い魔)に隙を伺ってもらいながら、見つかるまでは耐えて
鴉さんが攻撃を当てれたなら、後は私の仕事
UCを使用、帰りたいものと帰したくないものの我慢比べと行きましょうか


イージー・ブロークンハート
…寂しいよな。
迷子でみいんな一緒だろうがなんだろうがさ、帰れないんだもんな。
寂しいよ、わかる。
胸にぽっかり穴が空いたようになるよな。
じゃあ帰ろう。
おうちのとこまで行ってみよう。
おうちが無くなってたら一緒に泣いてやっから。

…囮にしてくれてんならちょうどいいや。
座敷わらし、ごめんな、ちょっと痛いかもだけど、耐えてくれな。

取り付く重い硝子片を座敷童に当てる。
隠れる相手が動けないんじゃお前も動けないよな、骸魂。
残り2種の硝子を骸魂を狙って放つ。
当てられればコード封じれて万々歳だし
避けられても構わない。
避けるってことは、動けない座敷わらしのそばから動くってことだもんな?

出てきたところを――叩っ斬る。


ヘルガ・リープフラウ
守りたかった家の人たちを、守ることが出来なくて
だけど本当は寂しくて、もう一度会いたくて
そのかなしい気持ち、痛いほど分かります

だから、不安に負けないで
一人で抱え込んで押しつぶされそうな迷いも
一緒ならきっと乗り越えられる

祈り、優しさ、慰めを込めて
歌うは【marchenlied】懐かしい童謡
母が子に、きょうだいに、友だちに
歌い継ぐ想い

「大切な人との思い出を決して忘れない」
その思いがあれば、呪詛や狂気にだって耐えられる
怖い骸魂になんか、絶対に負けやしない

わたくしも、必ずあの人のところに戻るの
孤独だったわたくしに勇気をくれた騎士、今の旦那様に

笑顔と共に手を差し伸べ
そっと手をつなぐ
さあ、一緒に帰りましょう



(「おいで。こっちに、おいで――……」)
 断たれたはずの道の先から、七枷・むつき(六花の魔女・f28060)を手招く声は、彼女が知らない――けれど不思議と懐かしい、誰かの姿を思い起こさせるものでした。
「これは……いいえ、きっと幻のはず」
 霞がかった記憶のなかで、灰色の街が黄昏に包まれていけば、友達と一緒に帰路に就く少女の姿が、目の前に浮かび上がってくるようです。
(「あの、後ろ姿は……」)
 ――それでも、無意識にその背を追いかけそうになってしまうのを、頭を振って制止したむつきは、青の瞳に映る現実と改めて向き合っていきました。
「しっかり、前を見ないと」
 先ほどの光景は、怨火が齎した魅了の力だったのでしょう。口寄せの篝火の放つ炎が、道を燃やして帰り路を失わせていって――そうして囚われの妖怪も、迷子の寂しさを抱えたまま、囮として操られているのです。
 ――みぃんな迷子なら、寂しくないね。あやかしの少女は先ほど、そんなことを囁いていたようですが。
「帰れないというのは……皆といても寂しいですよ、やっぱり」
「……ああ、寂しいよな」
 その言葉をはっきりと否定した、むつきの隣――ひとの良い笑みを浮かべて呟いたのは、イージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)でした。亡霊の動きを捉えようと硝子剣を振るいながらも、彼は座敷わらしの少女に向かって、偽りのない気持ちを届けていくのです。
「迷子でみぃんな一緒だろうがなんだろうがさ、帰れないんだもんな」
 ――寂しいよ、わかる。胸にぽっかり穴が空いたようになるよな、と。呼びかけるイージーはちゃんと、彼女の浮かべた涙の意味を分かっているようでした。
 そう、例え亡霊と化し、意のままに操られているとしても。帰る場所がないと言う言葉は、本心からのものであると、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)にも感じ取ることが出来たのです。
「……守りたかった家の人たちを、守ることが出来なくて」
 凶事のきざしである、紅――その不吉ないろに染まった小袖が翻って、蠱惑の怨火がヘルガの元へと襲い掛かりますが、祈りのかたちに組まれた手は身じろぎもしません。
「だけど本当は寂しくて、もう一度会いたくて……そのかなしい気持ち、痛いほど分かります」
 けたたましい笑い声と共に、炎の口が全てを呑み込もうと広がっても、紡がれるヘルガの歌声は優しくも力強く、幽世の隅々まで響き渡っていくのでした。
「……だから、不安に負けないで」
 雪のような白い髪がさらさらと流れていくなかで、青玉を思わせる澄んだ瞳が、ゆっくりと開いていきます。それは童話のお姫様が、呪いから目を覚ましていくかのようであり――懐かしい歌を口ずさむヘルガによって、迷子の世界はいつしか、あたたかで優しい世界へと姿を変えていくのです。
「一人で抱え込んで押しつぶされそうな迷いも、一緒ならきっと乗り越えられる……!」
 ――指先からふわりと舞い上がっていくのは、彼女の髪を飾るカスミソウの花びらでしょうか。幼き日の純粋さと希望に満ちたその世界は、オブリビオンに立ち向かう者たちの力となり、呪詛や狂気に立ち向かう意志を奮い立たせてくれたのでした。
「『大切な人との思い出を決して忘れない』、その思いがあれば」
 絶対に負けやしないのだ、と顔を上げたヘルガの向こう――鴉の使い魔と一緒に戦うむつきも、妖怪の少女に声を掛けながら、本体を狙う隙を伺っているようです。
「ねぇ……帰る場所がないなんて、そんなこと言わないで」
 此処はカクリヨファンタズム。貴女が帰りたいと望めば、きっと帰る場所は見つかるから。そうして鴉さんが囮を牽制しているところに、すっと距離を詰めていったイージーは、革手袋に包まれた指先を突きつけて、魔法の硝子片を生み出していきました。
「……囮にしてくれてんならちょうどいいや。ごめんな、ちょっと痛いかもだけど」
 耐えてくれなと前置きしつつ、イージーが先ず放ったのは、とりつく重い硝子片です。それが座敷わらしの少女の胸に突き刺さった直後――残るふたつの硝子片が狙いを定めたのは、篝火の本体である赤の塊でした。
「隠れる相手が動けないんじゃ……お前も動けないよな、骸魂」
 ――ありふれた羨望。攻撃力を奪う三つの欠片は、全て命中すると相手の能力を封じることが出来るのですが、別に避けられても構わないのだとイージーは告げます。
「だって、避けるってことは、動けない座敷わらしのそばから動くってことだもんな?」
 えっ、それずるくね? とオブリビオンが思ったかはさておき、躱すか囮を盾にするかで迷いが生じたその瞬間を、むつきは見逃したりしませんでした。
「行きましょう、鴉さん。……帰りたいものと帰したくないものの、我慢比べと行きましょうか」
 ――燃え上がる篝火を鎮めるように、彼女が放ったのは葬送六花。赤い塊に根を下ろした氷花は、むつきが近くに居る限り、侵食する茨と狂い咲く冷気によって標的の生命を奪い続けるのです。
「だから……貴女は、私達と一緒に帰りましょう?」
 そうして――じわじわと熱を奪われていく本体を横目に、涙に濡れた妖怪へと手を差し出すむつきに頷いて、イージーとヘルガも次々に手を伸ばし、迷い路を共に行こうと笑顔を浮かべたのでした。
「おうちのとこまで行ってみよう。おうちが無くなってたら、一緒に泣いてやっから」
「ふふ……わたくしも、必ずあの人のところに戻るの。孤独だったわたくしに勇気をくれた騎士、今の旦那様に」
 母が子に、きょうだいに、友だちに――歌い継ぐ想いの歌が、辺りに響いていくなかで。まだもぞもぞとしつこく蠢く本体を、イージーが硝子の剣で叩き斬っていけば、ヘルガは座敷わらしの少女とそっと手をつないで、童話の世界に架かる虹のような道へと誘っていったのでした。
「さあ……一緒に帰りましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

揺・かくり
ああ、その通りだとも
私には帰る場所なぞ存在しない
この世を彷徨い続けているのさ

君の帰る場所を示すことは不可能だ
けれど、共に彷徨うことならば出来るだろう
共に往くかい?
先ずは君と骸魂を分かつ必要があるね

念力を纏う縄で君を引き寄せよう
その肌を切り裂くのは本心ではない
背後の煩わしい声を止めようか

私はこのとおり屍人のひとさ
この躯の源ならば好きに持っていくといい
指に嵌った環へと呪詛を注ごう
此処に君たちを呼び起こす
よろしく頼んだよ

獰猛なる者たちに静止は届かないだろう
常は利口な君たちだ
各々好きにやるといいさ
但し、上手く切り離しておくれよ
君たちの獲物は其方の声たちだ

君のかえる場所は
希うほどの地は、何処なのだろうね


榛・琴莉
『鳴菅』は稼働状態のまま、『CODE:スカジ』を使用
Ernest。状況を分析、有効な魔弾の準備を
魔弾が整うまでは防戦です
基本は【見切り】回避に尽力しますが、避けきれないものは【武器改造】でHaroldを分散させ【武器受け】で凌ぎましょうか
余裕があったら、少女を撃つ事を躊躇しているフリでもしておきましょう
実際、呑み込まれただけの彼女を撃ちたくはありませんし
彼女が囮として十分機能していると思っていただければ幸い
…そろそろ出来ます?Ernest

弾倉の中には、地を這う様に飛び、目標目掛けて打ち上がる魔弾
狙いはもちろん赤い本体
少女の足元をすり抜け、あの目ん玉を撃ち抜く一撃を

迷子はおうちに帰さなくては


祇条・結月
帰れないのか、帰るなっていわれたのか
帰る資格がないって思うのか
君は、どれ?

―――多分、そう疑問を懐いたから

名前を呼んでくれる声
僕が家族って思ってる、たった一人の人
……じいちゃん

こんな声は、ほんとじゃないって知ってる
だって。きっと二度と、こんな優しい声はかけてもらえないと思うから

一瞬、躊躇うけど
炎を逃げない【覚悟】で受け止めて
【激痛耐性】と【継戦能力】で堪えたまま
慌てず惑わされず、召喚した苦無で篝火本体だけを狙う

……大丈夫
帰れるよ

帰れない、って言ってても君は帰りたいって思ってるから
勇気を出して、手を取ってくれたら大丈夫

なんて。それこそ僕がそんなこと言える資格ない
……でも、いつかは

きっと

絶対



「Ernest。状況を分析――」
 迷い路の果てで、ゆらゆらと揺れる炎を凍えさせるような、酷く冷静な声が辺りに響いていきました。
「……有効な魔弾の準備を」
 鳴管が展開させた電脳空間と、周囲の光景を重ね合わせながら、吐き出される怨嗟に対処していくのは榛・琴莉(ブライニクル・f01205)です。どうやら、現在の状況に適した弾丸を導き出すまでの間、彼女は防戦に回ることにしたようですが――そんなことはお構いなしに、亡霊をけしかけてくる篝火本体は、一気に琴莉を仕留めるつもりのようでした。
「……っ」
 ――亡霊と化した妖怪が、呪詛を振り撒き迫るなか、琴莉のコートから顔を覗かせた水銀の鳥たちが、その身を盾にして呪いから庇っていきます。
 咄嗟に反撃を行おうとする琴莉でしたが、銃の引き金にかけた手は躊躇しているようで、それを知った本体がにんまりと嗤ったような気配がしました。
(「実際、呑み込まれただけの彼女を撃ちたくはありませんし……ね」)
 それに琴莉の狙いは、座敷わらしの少女が囮として十分機能しているのだと、相手に思わせること。躊躇いを見せたのはあくまでフリでしたが、本体が調子づいた様子から、作戦は見事に成功したようです。
 とん、とん――と路地を飛び越えながら、追い縋る怨嗟の輩を躱していく琴莉。そうして、篝火本体とある程度の距離が生まれたところで、揺・かくり(うつり・f28103)の操る祟り縄が、妖怪と骸魂を一気に引き離しにかかったのでした。
「その肌を切り裂くのは、本心ではない――ああ、少々黙っていて欲しい」
 ――それは、現世と常世を隔てる結界のように。神域に入れず喚き散らす本体を、屍者の瞳でひと睨みして黙らせると、かくりは囚われた妖怪と向き合っていきます。
「帰る場所がない、だったね。……ああ、その通りだとも」
 さめざめと涙を流し続ける少女に向かって、そっと伸ばしたかくりの指に嵌まる環は、此の世と繋がる縁なのでしょうか――或いは、呪いなのでしょうか。
「私には帰る場所なぞ存在しない。この世を彷徨い続けているのさ」
 だから、君の帰る場所を示すことは不可能なのだ、と続ける彼女は――けれど、共に彷徨うことならば出来るだろうと、追憶に沈む幽世の景色を見渡します。
「……共に往くかい?」
 ――やがて、妖怪の少女が何かを呟くように唇を震わせた瞬間、本体が怨火を生み出して、彼女の行く手を阻もうとします。目や口のかたちをした炎は、懐かしい声やまぼろしで此方を惑わし、祇条・結月(キーメイカー・f02067)も確かに、自分の名前を呼ぶ声を聞いたように思ったのでした。
(「……じいちゃん」)
 その声は、ほんとじゃないと知っているのに。彼が家族だと思っている、たった一人のひとからは――きっと二度と、こんな優しい声はかけてもらえないと知っているからこそ、躊躇ってしまうけれど。
(「僕は、逃げない」)
 蠱惑の炎を真っ向から受け止めた結月は、身体と精神を焼いていく痛みに耐えつつ、魅了の力に惑わされないように深呼吸をしました。
「……ねぇ、帰れないのか、帰るなっていわれたのか。帰る資格がないって思うのか」
 ――後ろに居る、迷子の女の子にそう声を掛けたのは、結月も疑問を懐いたからなのかも知れません。
「でも、……大丈夫。帰れるよ」
 たとえ彼女がどうであれ――本当に帰れないのだとしても、彼女自身が帰りたいと思っていれば。後は勇気を出して手を取ってくれたら、大丈夫なのだと結月は繰り返すのです。
 召喚した苦無に霊符を巻き付け、破魔の力を籠めた一撃で本体を狙い撃って。そんな鬼月神楽の刃が舞い踊るなか、呪詛を注いだかくりの環からは、獰猛なる死霊たちが呼び起こされて、目の前に居るものを貪り尽くそうと襲い掛かっていきました。
「私はこのとおり屍人のひとさ。……この躯の源ならば、好きに持っていくといい」
 ――暴虐の代償に、自身の肉体を捧げようとも。よろしく頼んだよ、と声を掛けて死霊を解き放てば、囮を支配する力が弱まった本体は、怒涛の連撃の前に成す術もない様子でした。
「常は利口な君たちだ、各々好きにやるといいさ。但し、上手く切り離しておくれよ」
 獲物は、そう――其方から聞こえる声なのですから。そうして、上手い具合に本体が無防備な姿を晒したところへ、魔弾の準備が整った琴莉も冷ややかな銃口を向けていくのです。
「……そろそろ出来ます? Ernest」
『CODE:スカジ』――地を這う様に飛び、目標目掛けて打ち上がる氷の魔弾が狙うのは勿論、口寄せの篝火本体の赤い塊です。
「迷子はおうちに、帰さなくては」
 呼び戻されそうになる少女の足元をすり抜けて、本体の目ん玉を撃ち抜く一撃をぶっ放しながら――ちょっぴり誇らしげに告げた琴莉の隣では、かくりも遠い目をして、記憶の向こうの地に想いを馳せているようでした。
「君のかえる場所は……希うほどの地は、何処なのだろうね」
 ――帰れるよ、と。先ほど声を掛けた結月でしたが、それこそ自分は、そんなことを言える資格なんてないのだと、掌で輝く銀の鍵を握りしめて溜息を吐きます。
(「……でも、いつかは」)
 きっと――絶対。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

日東寺・有頂
夕辺さん(f00514)と

友達皆帰っけん
わらしさんもかーえろ!
んでそこの悪趣味赤団子
ワイ(お前)は消えい

開幕オーラ防御張って夕辺さんば護るとよ
こん人勢い良う飛び出しよーけん
強か女やが危なっかしい
傷ついていくのを、俺に見てろっての? 

おっ管狐しゃんでオイば守ってくれっと?
ほいじゃあ一緒にカウンター仕掛けよかクダさんや
ナイフや蹴りでいなしつつ生命力吸収

赤団子さんそろそろシビレてきたかしらん
ワイん目や口に針ば忍ばせよったけん
よう童子さん
狐姉さん言う通り
迷子んアンタちゃんオイどんみっけたけん
失くしてしもうたと思うとんなら
この手ば取ってくれや
帰り道も、帰る家も、一緒に探しちゃるけんね


佐々・夕辺
有頂さん【f22060】と

有頂さん、知ってる?
どんな迷路でも、壁に手をついて歩くといずれは出口に着くそうよ
まあ何が言いたいかというと
もう帰る時間だという事
悪いものは夕日と一緒に掻き消してしまいましょう

って、有頂さん!?
無茶しないでよ!危なっかしいわね!
怪我したらどうするの!

管狐を一斉射
氷の属性を纏わせて、敵の炎や亡霊を掻き消すわ
数匹は無属性で、有頂さんの周りに
彼に攻撃が来たらカウンターを仕掛けて頂戴

帰る場所がないなら、作ればいいのよ
私にもなかった
育った森も見失ってしまった
でも、今は帰る場所を見つけたの
自分の力…かは、判らないけど

もう大丈夫よ
私たちが、貴方を見つけた
貴方だって帰れる!



 未だしぶとく妖怪の女の子を捕らえたまま、口寄せの篝火は怨火を操って、日東寺・有頂(手放し・f22060)達を炎に呑み込んでいこうとします。
「――有頂さん、知ってる?」
 幽世の道を絶やし、狂気と魅了を齎す邪悪な炎を、あたたかなオーラの守護で防いでいく有頂ですが――彼が守ろうとしたのは自分ではなく、隣で管狐の筒を構えていた佐々・夕辺(凍梅・f00514)の方でした。
「どんな迷路でも、壁に手をついて歩くといずれは出口に着くそうよ――って、有頂さん!? 無茶しないでよ!」
「おう、出口な。出口」
 どうやら夕辺は傷ひとつないようでしたが、虚空に向かって手をついている有頂は、魅了の力にあてられてしまったのでしょうか。首根っこを掴んでがくがく揺さぶりながら、つい夕辺は語気を強めて、彼にきつく当たってしまうのです。
「危なっかしいわね! 怪我したらどうするの!」
「……傷ついていくのを、俺に見てろっての?」
 ――さらさらと流れ落ちる灰色の髪のなかでは、金混じりのひと房がきらりと光っていて。その輝きに紛れた有頂の瞳には、ふだんの彼とは違う真剣なひかりが宿っているように見えて、夕辺はそれ以上何も言えなくなってしまいました。
(「こん人、勢い良う飛び出しよーけん。……強か女やが、危なっかしい」)
 先ほど、配下の麒麟たちと対峙した時も。夕辺は有頂を庇おうと、自分が囮になって敵の元へと飛び込んでいったのです。だから今度は、こちらが守ろうとしてみたのですが――もしかしたら、きつい当たり方をしたことを、夕辺も後悔していたりするのでしょうか。
「友達皆帰っけん、わらしさんもかーえろ!」
「……ま、まあ何が言いたいかというと、もう帰る時間だという事よ」
 そんな訳でいつものようにのんびりと、有頂が妖怪さんに呼びかけを行っていけば――続く夕辺も、手にした竹筒から管狐たちを召喚して、ふたりの距離が戻ってきます。
「……んで、そこの悪趣味赤団子。ワイは消えい」
「そうね、悪いものは夕日と一緒に掻き消してしまいましょう」
 ――悪趣味赤団子と称したオブリビオン本体のことも、さらっと受け入れているのは流石です。それはともかく、冷気を纏った管狐を一気に放つ夕辺が、燃え広がる蠱惑の怨火を掻き消すべく動いていくと。
「おっ、オイば守ってくれっと?」
 残る数匹は有頂の周りに向かわせて、怨嗟の輩からの攻撃に備えておくことも忘れません。操られて亡霊と化した妖怪を、適度にナイフでいなしつつ――素知らぬ顔で本体を見つめる有頂でしたが、彼の仕込んだ毒はじわじわと本体を蝕んでいったようでした。
「赤団子さん、そろそろシビレてきたかしらん」
 ――その言葉通り。戦いが進むにつれて、本体の動きが目に見えて鈍くなっていきます。どうやら有頂は、妖怪とやり合うかに見えて、その合間に忍ばせた麻痺の針で、本体に狙いを定めていたようなのです。
「……帰る場所がないなら、作ればいいのよ」
 やがて――支配の力が弱まった座敷わらしの少女に向かって、思い切って声を掛けたのは夕辺でした。
「私にもなかった。育った森も見失ってしまった。でも、」
 口下手だから説得は任せると言っていた彼女が、自分のことばを選んで、しっかりと語り掛けている――その姿を目にした有頂の口許がほわりと綻んで、嬉しくてつい、赤団子にも追加の針を突き刺したりします。
「今は帰る場所を見つけたの。自分の力……かは、判らないけど」
「……よう童子さん。この狐姉さん言う通り、迷子んアンタちゃんオイどんみっけたけん」
 だから――失くしてしまったと思っているのなら、この手を取ってくれと。有頂も夕辺も、そして皆も、歩いていくことが出来るのです。
「帰り道も、帰る家も、一緒に探しちゃるけんね」
 ――もう大丈夫。私たちが、貴方を見つけたから。例え置いていかれそうになっても、きっと誰かがちゃんと待ってくれているから。
「貴方だって帰れる!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴久名・惟継
引き続き、紡(f27962)と

ただ力でねじ伏せるだけならば誰にもできよう
そうした戦い方ではいかんよな、紡?

ふふ……いやなに、お前さんがそうして気遣ってやれるのが嬉しくてな
そうだ、家に帰りたくて泣いておるのだ
泣いている子はあやして元気にして帰してやらねばな

得物を構えてオブリビオンを見据えるも、聞こえた声は何かを思わせる
嘗て俺を呼んでいた人々の声
竜の神と呼び、笑って俺を迎えた人々の声
懐かしい、楽しい日々を送っていた時のことを思い出す

――だが、もう昔々の話

七支刀を構え、振り払う
狙うは本体、視力で赤い塊を確認
居座る悪へ神罰を下す剣刃一閃

敵の攻撃は視力で動きを読み、残像で回避


鈴久名・紡
引き続き、惟継(f27933)と

本体を狙うのは出来なくもないと思うけど
でも……あんなふうに泣いたままなのは、嫌だな

さっきもそうだけど
帰れる場所があるなら、帰った方が良いだろう?

……なんで、そんなに嬉しそうなんだ、惟継?
俺、立派に成人なんだけど?

魅力的な声
あぁ、母さん……なのかな?
覚えてないから本当はどうか判らないけど
俺を甘やかす優しい声

ふるりと頭を一つ振って
でも違うと俺は知っている
実際に俺を育てたのは惟継だから

煉獄焔戯使用
小柄状態の禮火を模した神力で攻撃
攻撃対象は『本体』のみ
座敷わらしにはかすり傷ひとつ付けたりしない

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避が間に合わない場合は煉獄焔戯の神力で相殺を狙う



「本体を狙うのは、出来なくもないと思うけど……」
 白銀の小柄を握りしめて、口寄せの篝火と向き合う鈴久名・紡(境界・f27962)は、本体の盾にされている妖怪を見据えてそう告げました。
「でも……あんなふうに泣いたままなのは、嫌だな」
 囚われ、囮にされた座敷わらしの女の子は、今までの呼びかけもあり、支配が弱まっているようですが――やはり本体を倒さない限り、自由になることはないのでしょう。
「さっきもそうだけど。帰れる場所があるなら、帰った方が良いだろう?」
「うむ、ただ力でねじ伏せるだけならば誰にもできよう」
 それでも、囚われの妖怪を思いやる言葉を発した紡の様子を、叔父である鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)は目を細めつつ、うんうんと頷いて見守っているようでした。
「そうした戦い方ではいかんよな、紡?」
「……なんで、そんなに嬉しそうなんだ、惟継?」
 何だかそのまなざしがくすぐったくて、気まずそうに目を逸らした紡ですが、もう彼だって立派に成人しているのです。まあ神様である竜神となれば、人間とは年齢の捉え方も違うかも知れないのですが、惟継にとっての紡は、ずっと可愛い甥っ子なのでしょう。
「ふふ……いやなに、お前さんがそうして気遣ってやれるのが嬉しくてな」
 そうだ、と――七支刀の神器を手に、口寄せの篝火が生み出す炎を豪快になぎ払った惟継は、紡の方へ振り返ってきっぱりと告げます。
「家に帰りたくて泣いておるのだ。……泣いている子はあやして、元気にして帰してやらねばな」
「っと、惟継……!」
 と、その時、篝火本体から発せられた言霊が、魅力的な声となってふたりに降りかかってきたのでした。誰かは分からないけれど、不思議と懐かしい――それは確かに自分を愛してくれるのだと分かる、ひどく優しい声なのです。
「あぁ、母さん……なのかな?」
 ――紡の、彼自身すら覚えていないような根っこの記憶のなかで、甘えても良いのだと囁いてくれるような。けれど、その声にふるりと頭ひとつ振った彼は、その曖昧な記憶を振り払い、煉獄の神力を纏うのです。
「でも、違う。……実際に俺を育てたのは、惟継だから」
 その声にふと顔を上げた惟継の方も、懐かしい声に誘われていたのかも知れません。紡が生まれるよりも、ずっとずっと昔、未だ竜神の信仰がひとびとに根付いていた頃の声が。
「懐かしい、楽しい日々――」
 嘗て、惟継のことを竜の神と呼び――笑って彼を迎えてくれたひとびとの声。しかし、今の彼にははっきりと分かっているのです。
「――だが、もう昔々の話」
 甘美な夢現は、既に消え去っていました。言霊が齎す侵食の炎も、微かな尾を引いて夕闇に消えていくなかで、惟継は迷いを振り切るようにして七支刀を一閃させていきます。
(「狙うは本体――」)
 居座る悪へ神罰を下す剣刃が、囮の動きを捉えたまま真っ直ぐに吸い込まれていくと――禮火を模した紡の神力も、赤塊を灰燼に帰そうと唸りをあげました。
(「そう、座敷わらしにはかすり傷ひとつ付けたりしない」)
 ――それは範囲内の、彼が指定する全てのものを灼き尽くす煉獄焔戯。荒れ狂う神の炎が篝火を呑み込んで、夕焼けを益々うつくしく燃え上がらせていきます。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
連携アドリブ歓迎

必要なら他の猟兵さんたちに手を貸すよ。

妖怪には「もう泣かなくていいんだよ」と呼びかけます。
みんなそう思ってるとは限らないけどハッタリかまして「お家に帰ろう。みんな君を迎えに来たんだ、だからみんなでお家に帰ろう」と繰り返し呼びかけます。
これで諦めないでくれたらいいなぁ。

そんな敵ささっと倒してしまって、捕まった子連れて帰りたいね。

もし敵の動きが鈍ったら【ジャッジメント・クルセイド】で敵本体を狙うよ。接敵できそうなら黒の細剣でも攻撃。
絶対に妖怪には攻撃を加えない。


リゲル・ロータリオ
あー、帰る家が物理的ないパターンっすか
家出した俺的にはちょっとヘヴィっすけど、そんな俺だからこそいい考えがあるっすよ
家がないなら作ればいいんすよ!
楽しいトコ行って、好きなモン並べて、お気に入りの自分の場所ができたらそこがもう家っす!

『グラフィティスプラッシュ』で篝火を撃ち落とすっすよ
他の猟兵もいたなら【援護射撃】でバシューンっとね
こうやって地面を塗りつぶしたら……ほら!
【アート】でカラフルでいい感じに地面も世界も塗り替えたら、もうここが俺の家っす!
座敷わらしちゃんはどんなデザインがお好みっすかねー?
女の子は笑顔の方が絶対可愛いんで、笑ってもらえるまで続けてやるっすよー?

※アドリブ絡み大歓迎です


雨谷・境
アドリブ連携歓迎

声が聞こえる
まだ現世にいた頃に聞いてた声
俺の住んでたところの近くにいた人達の声が

学生さん達は毎日ワイワイ騒いでて
勉強とか部活とか、友達とか好きな人の話で盛り上がってて
時々俺のところに肝試しに来る人もいたっすね
冷やかしでもなんでも誰かの存在が感じられるのは嬉しかったっすよ

またあの人達のところに帰れるなら
それなら俺は……

……駄目っす
今の俺の居場所は幽世っす
自分の頬をひっぱたいて気合を入れる
バス停に妖力を籠めて、まずは自分自身をぶった切る
浸食してくる炎だけを消し飛ばすっす!

そしてそのままバス停を振るい座敷わらしを殴る……
と見せかけて、塊だけを断ち浄める!!
大丈夫っす、一緒に帰るっす!


スイカ・パッフェルベル
フン、古典的な…
攻めあぐねる。最中、炎に見える光景

大規模核シェルターの一室
黒の長髪、黒い瞳色の少女が幸せそうに誕生日を祝われていた
…"元の持ち主"か。興味はあるが…

今はこちらだ。おい、君
うまく行かなくなり得るものは、何でもうまく行かなくなる
不運は必ず起きるものだ
その点を気に病んでいるのなら…そうだな…
書き置きでも何でもいい。家主に素直な気持ちを伝えてみたまえ
きっと許しくれるさ
さあ、レディ。こちらへ。君の道を作ってあげよう
私は魔法使い。そのくらいならお安い御用だ

I1魔杖を抜き、オブリビオンに全力魔法…最大出力の幻覚魔法を掛け
すかさずユベコでM1魔杖を大量生産
魔法の矢の雨霰は、ただ一点に降り注ぐ



 ぼぉっ――と夕闇に炎が立ち昇っていけば、不気味に浮かび上がった目や口が、蠱惑のまぼろしを炎のなかに映し出していきます。
「フン、古典的な……」
 妖怪の少女を盾にしつつ、此方を惑わして攻撃させないつもりなのでしょうが――スイカ・パッフェルベル(思索する大魔道・f27487)の瞳にも確かに、ここではない何処かの光景が、ぼんやりと見えてきたのでした。
(「……あれは、シェルターで」)
 ――それは、過去の遺物で組み上げられた幽世とは違う、遠いとおい未来の建造物。崩壊した世界に遺された、大規模な核シェルターの一室では、長い黒髪を伸ばした少女がささやかなお祝いをされているようです。
(「……『元の持ち主』か」)
 スイカとは違う黒色の瞳が、嬉しそうに細められると――遠くから微かに聞こえてきたのは、バースデーソングでしょうか。その一方で、雨谷・境(境目停留所の怪・f28129)の耳に聞こえてきたのは、彼が未だ現世に居た頃の、何気ない日常の喧騒でした。
(「声が、聞こえる。……そう、学生さん達は毎日ワイワイ騒いでて」)
 ――どこかの町の、どこかのバス停で。ちょっぴり怖い噂も生まれて、境が居た場所まで肝試しに来るひともそれなりに居て。
(「……勉強とか部活とか、友達とか好きな人の話で盛り上がってて」)
 見た目はヤンキーっぽいひとが多かったですが、それでも彼らは楽しそうで、彼らと一緒に騒いでみたいなあ――なんて思ったりもして。
(「冷やかしでも、なんでも。誰かの存在が感じられるのは、」)
 嬉しかったっすよ、と呟いて視線を落とせば、バス停の『雨谷』の文字が微かに滲んで揺れていました。ああ、またあの人達のところに帰れるなら。そんな想いがふっと過ぎって、境の周りに夢現の炎が生まれていきましたが――次の瞬間、彼は手にしたバス停を振りかぶって、精神と肉体を侵食するその炎を一気に断ち清めていったのでした。
「それなら俺は……いや、……駄目っす」
 ばっちーんと派手な音とともに、頬をひっぱたいて気合を入れ直した境は、未だ内部に燻る炎を祓うべく、尚もバス停を自分目掛けて叩きつけていきます。
「今の俺の居場所は幽世っす! だから!」
 豪快な力技のように見えますが、妖力を籠めたその一撃は、浸食してくる炎のみを消し飛ばす清めの技――しかし、肉体を傷つけないとはいえやっぱり痛そうです。
「ああ、今はこちらだ。……おい、君」
 そして、炎を前に攻めあぐねていたスイカもまた、アリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)らの力を借りて、夥しい怨火の群れを纏めて片付けていったのでした。
「うまく行かなくなり得るものは、何でもうまく行かなくなる。不運は必ず起きるものだ」
 その合間に、囚われた妖怪の少女に呼びかけつつ――炎のなかのまぼろしに興味はありましたが、今は思い出に浸っている時ではないと、自分に言い聞かせます。
「……そうだね。そんな敵はささっと倒してしまって、捕まった子を連れて帰りたいね」
「でも、あー……物理的に帰る家がないパターンだとすると、ちょっとヘヴィっすよね」
 魅了と狂気を齎す怨火に向かい、塗料を飛ばして応戦するリゲル・ロータリオ(飛び立て羽ばたけどこまでも・f06447)もまた、アリステルと同じ気持ちのようでした。しかし、家出した身であり、豊かな気持ちを求めて気ままに旅をしているリゲルだからこそ、少女に掛けられる言葉があるはずなのです。
「そう、そんな俺だからこそいい考えがあるっす! 家がないなら作ればいいんすよ!」
 ――色とりどりの塗料が、色褪せた路地裏をカラフルに染め上げて、辺りをポップで明るい雰囲気に変えていけば。もう此処はさっきとは違う、リゲルの世界に変わっていったのです。
「楽しいトコ行って、好きなモン並べて、お気に入りの自分の場所ができたら……そこがもう家っす!」
 そうすれば、いつしか炎に浮かんだ目や口も消え去っていて。尚もしつこく燻っている炎には、黒の細剣を変形させたアリステルが向かって、しっかり鎮火に当たっていきます。
「お家に帰ろう。みんな君を迎えに来たんだ」
 ――彼の言葉はハッタリでも何でもなく、この場に居る仲間たち皆の想いでした。もう、泣かなくていいんだよ、と。声を掛けるアリステルの手に、魔法のように金平糖が現れていくなかで、少女が後ろめたさを抱えているかも知れないと考えたスイカは、ひとつ提案をすることにしました。
「もし、気に病んでいるのなら……そうだな。書き置きでも何でもいい、家主に素直な気持ちを伝えてみたまえ。きっと許してくれるさ」
 そう――怖がって何もしないでいるより、先ずは一歩を踏み出すことです。それはたぶん、魔法を学ぶうえでも大切なこと。
「さあ、レディ。こちらへ。君の道を作ってあげよう」
 即席魔杖を抜き、全力で放つ魔法はイリュージョン――周囲の無機物までをも複製の杖と化して、魔法の矢の雨霰が、篝火本体ただ一点に向かって降り注いでいくのでした。
「……私は魔法使い。そのくらいならお安い御用だ」
 魔女の帽子をくいっと上げ、格好良くポーズを決めたスイカに続いて、アリステルも繰り返し「帰ろう」と妖怪の少女に呼びかけます。
(「これで、諦めないでくれたら」)
 絶対に少女を傷つけないと誓いながら、彼の指先から放たれた裁きの光が、本体の赤い塊目掛けて吸い込まれていくと――リゲルは次々に地面を塗りつぶして、仲間たちを上手く援護していきました。
「ほら! もうここは俺の家っす! さてさて、座敷わらしちゃんは、どんなデザインがお好みっすかねー?」
 ――女の子は、笑顔の方が絶対可愛いから。だから、笑って貰えるまで続けてやるのだと。塗料片手に笑うリゲルの姿に、少女の瞼がそっと和らいだ瞬間を、境は見逃したりはしませんでした。
「囮を殴る……と見せかけて、魂だけを断ち清める!!」
 妖怪に振り下ろされるかに思われたバス停は、直後に軌道を大きく変えて本体の元へ。その急な動きに追いつけず、囮を盾にすることも叶わなかった赤い塊に、彼岸と此岸の境目である標識が叩きつけられていきます。
「大丈夫っす、一緒に帰るっす!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
英先生f22898と

変身状態維持

英先生は…
ちゃんと帰って作品書かねぇとだもんな
守れよ?自分の事
俺も帰って次の奴読みたい

ダッシュで間合い詰め接敵
前に立ち敵の意識自分に向くよう立ち回る
UC起動し武器受けで攻撃受け
動き見切り座敷童に声掛け

帰る場所…俺ももうないと思ってた
けど
今は別の場所だけど
ちゃんとあるって知ってる

帰る場所一緒に探してやる
なくなったなら作ってやる
だから帰れないなんて言うな!
手を繋ごうと

盾にするなら敢えて攻撃するよう見せかけフェイント
拳で殴る前に寸止め本体回し蹴り

さすが先生いい事言うな
確かにこの子も幸せの方が断然いい
動き鈍ったら本体狙い
拳の乱れ撃ち

先生はハッピーエンド好きか?
俺は好きだ


榎本・英
理玖/f22773

そうだね。私たちには帰るべき場所がある。
しかし、この子には帰る場所が無い。

嗚呼。盾にしてしまうなんて、いけないね。
座敷童を盾にするなど以ての外。
幸福を呼び込む童なのだから。

戦は得意では無い
だから君に任せよう。

さて、問おう。
「私たちと共に帰らないかい?」
満足のいく答えが返ってくれば
私はこれ以上、傷つける事はしない。

君は、帰りたいのだろう?
場所がなければ探せば良いのだ。
嘗ての場所に帰りたいと云うのなら
それは難しい事かもしれないが

しかし、幸福は皆平等に、与えられるべきだ。
もちろん帰る場所が無いと嘆く君にもね。
幸福な締めくくりは好ましいね。
嗚呼。では、新たな家族を見つけようではないか



 ――口寄せの篝火に操られている妖怪は、帰る場所がないのだと言って涙を流します。その言葉の真意がどうであれ、先ずは此方へ意識を向けさせることが必要でしょう。
「……そうだね。私たちには帰るべき場所がある。しかし、」
 焼けた書物を思わせる、焦げ付いた石段をゆっくりと昇りながら、榎本・英(人である・f22898)の靴音が夕暮れのなかに響いていきました。
「この子には帰る場所が無い」
「英先生は……ちゃんと帰って、作品書かねぇとだもんな」
 その背をゆっくりと追いかけていく、陽向・理玖(夏疾風・f22773)はと言えば、既にバックルへ龍珠を嵌め込んで、全身装甲形態に変身しているようです。
「守れよ? 自分の事。……俺も帰って、次の奴読みたい」
「戦は得意では無いのだけどね。まぁ、君が上手くやってくれると信じよう」
 そんな、次回作を楽しみにしてくれている読者のひとりに、悠然と微笑みながら――英が取り出したのは和綴じの書物でした。残念ながら新作と言う訳ではなく、ましてや人でもない普通の文庫本なのですが、その著作に籠めた情念は獣となり、英の周りを今もゆらゆらと漂っています。
「嗚呼。盾にしてしまうなんて、いけないね」
 ――やがて。怨嗟の輩と化した妖怪と向き合い、彼女が操られて襲い掛かってくるよりも早く、一気に石段を駆け上がっていったのは理玖でした。
「……先生、頼んだ!」
 虚を突かれた敵本体が、ふたりを交互に見遣る間にも――その真正面に立った理玖は、拳で怨嗟の一撃を受け流しつつ、座敷わらしを組み伏せて身動きを取れなくしていきます。
「座敷童を盾にするなど以ての外。幸福を呼び込む童なのだから。……さて」
 ――その息の合ったふたりの連携は、囮を無理矢理盾にする篝火とは違う、とても洗練されたものでした。そうして情念の獣を召喚した英は、妖怪の少女に静かに問いかけていくのです。
「問おう。『私たちと共に帰らないかい?』」
 がくん、と理玖の掴んだ少女の肩が、その問いかけと同時に激しく震えていきました。もしかしたら、意思を取り戻しかけた彼女を支配するために、本体が力を強めていったのかも知れません。
「……満足のいく答えが返ってくれば、私はこれ以上、傷つける事はしない」
 あくまで冷静に、忍び寄る無数の手を従えたままで英は続けますが、これも賭けです。向こうだって囮をちらつかせて、此方を動揺させようとしているのです――捉われ過ぎるのも危険に違いありません。
「君は、帰りたいのだろう? 場所がなければ探せば良いのだ」
 ――嘗ての場所に帰りたいと云うのなら、それは難しい事かもしれないが、と。その言葉に反応したのか少女の腕が動いて、何かを探すように辺りを彷徨います。
「帰る場所……俺も、もうないと思ってた。けど」
 ほんの少し爪を立てれば、理玖を傷つけてしまうかも知れない死霊の手ですが、彼は落ち着いて動きを見切りつつ、妖怪の少女に声を掛けていきました。
「今は別の場所だけど、ちゃんとあるって知ってる。それに、帰る場所なら一緒に探してやる」
 なくなったら作ってやる、だから――意を決して伸ばした理玖の手が、その手を掴んで握りしめたその時。先ほどの英の問いかけに頷くように、少女の首がこくりと頷きました。
「だから、だから帰れないなんて言うな!」
(「――……っ!!」)
 直後――支配が緩み、怨嗟の輩を呼び戻せなくなった瞬間を狙って、理玖の回し蹴りが鮮やかに本体を捉えていきます。
「……しかし、幸福は皆平等に、与えられるべきだ。もちろん帰る場所が無いと嘆く君にもね」
 ぐしゃりと地面に叩きつけられる塊を、興味深そうに見つめながら、呟く英が帳面に書きつけているのは、新作の草稿だったりするのでしょうか。
「さすが先生、いい事言うな。……確かにこの子も、幸せの方が断然いい」
 そうして拳の乱れ撃ちをBGMにして、すらすらと筆を走らせていく英のぶれなさを、流石だなあと思ったのかどうなのか――ふと理玖は、彼に向けて尋ねていました。
「なぁ、先生はハッピーエンド好きか?」
 俺は好きだと呟けば、幸福な締めくくりは好ましいね、なんて答えが返ってきます。何だか次の作品がますます楽しみになった理玖に、ぱたんと帳面を閉じた英は、途切れた道の先をすっと指さしてこう告げたのでした。
「嗚呼。では、新たな家族を見つけようではないか」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
ニルズヘッグ(f01811)同道
最後まで責任を持って帰してやろう
そして拐かしの罪は重い事、確と教えてやらねばな

今は少しばかり見え難いやもしれんが、帰り道はきっとある
……泣かずとも良い、迎えに行くから手を伸ばせ

流石に致命に至るだろう攻撃だけはカウンターの衝撃波で弾き護る
何処から襲われたか解らんか……だが其れこそが狙い目
晒した隙を逃しはせん――弩炮峩恢、逃さず砕け
捕らえる縛めの隙間を縫い
怪力乗せた斬撃で以って総て叩き割ってくれる

ふと意識を掠めて行く、遠い記憶
夕陽の向こう、耳朶を擽る呼び声は誰のものだったか――
懐かしさは在っても今はもう、あの声に応える事は無い

いや
私の帰る場所は過去ではなく此処に在る


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
嵯泉/f05845と

あれが原因――で、あいつが最後の帰れない奴か
……なら、帰らせてやらなきゃな

丸腰で前に出て声を掛けよう
皆、ちゃんと帰れたようだぞ、レディ
一緒に帰ろう
私たちが道案内をしてやるから

この身は攻撃に晒されるまま
それこそが狙いだ――起動術式、【欺瞞の鏃】
本体の後方から切り裂いてやる
知覚出来ないなら盾にしようもあるまい
隙を晒したが最後、嵯泉が貴様を殺してくれるさ
貴様にも還る場所があるであろう?骸の海って名前のな

もうない故郷の白詰草を、懐かしいとは思うけど
十年以上も経ってるし、帰る場所っていうには遠すぎる
私の帰るところは、今にあるよ

……嵯泉。ちょっと帰りたいって思った?
――そっか!



 ――迷子の時間も、そろそろ終わりが近づいてきたようです。囚われの妖怪も、今まで掛けてもらった言葉によって支配から脱しつつあり、このまま上手く倒せば骸魂との分離も可能になるでしょう。
「あれが原因――で、あいつが最後の帰れない奴か」
 迷い路の奥、道なき道のはじまりに立って、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)がぽつりと呟けば、亡霊と化したあやかしがゆらゆらと寂しげに宙を漂っていきます。
「……なら、帰らせてやらなきゃな」
「ああ、最後まで責任を持って帰してやろう」
 そうして彼の隣で、静かに刀を抜いた鷲生・嵯泉(烈志・f05845)も、苛烈な熱を冷たい刃のなかに閉じ込めて、幽世の滅びを止めようと駆け出しました。
「そして……拐かしの罪は重い事、確と教えてやらねばな」
 ――その紅の瞳が捉えているのは、口寄せの篝火本体です。追い詰められながらも、怨嗟の輩を操ってふたりを迎え撃つ本体ですが、その動きは精彩を欠きつつあるようでした。
「今は少しばかり見え難いやもしれんが、帰り道はきっとある」
 涙を流し、此方へと襲い掛かってくる妖怪の少女に、そう声を掛けながら――強烈な呪詛を纏った一撃を、嵯泉は太刀の衝撃波を以て弾き返します。
「……泣かずとも良い、迎えに行くから手を伸ばせ」
(「――……ぁ、ああ」)
 その間際に、そっと零された彼の言葉が聞こえたのでしょうか。座敷わらしの女の子が袖で顔を覆う仕草を見せて、激しい攻撃が一瞬止みます。
「皆、ちゃんと帰れたようだぞ、レディ」
 そうして一歩、前に踏み出したニルズヘッグもまた、少女のこころを取り戻そうと声を掛けたのですが――武器を収めて丸腰になった彼の姿を見て、本体は絶好のチャンスと捉えたようでした。
「一緒に帰ろう。私たちが道案内をしてやるから――」
 無防備なニルズヘッグ目掛けて、泣いていた少女の片方の手がそろそろと伸びていき、生気を啜ろうと一気に蠢きます。ああ、こんなことをしたくないと言うように、少女がぶんぶんとかぶりを振りますが、ニルズヘッグは攻撃に晒されるままで――否。
「それこそが狙いだ――起動術式」
 ――怨嗟の手が触れるか、触れないかと言うところまで迫ったその時。突如として生まれた刃が、本体の背後から一気に襲い掛かり、その赤い塊を真っ二つに切り裂いていったのでした。
「『欺瞞の鏃』……知覚出来ないなら、盾にしようもあるまい」
 その一撃は魂を阻み呪詛を纏う、ニルズヘッグの刃。武器を手放すという代償を払い、更に加速したことで、本体よりも先に動くことが出来たのです。
「何処から襲われたか解らんか……だが其れこそが狙い目」
 気づけば傷を負って混乱し、怨嗟の輩を支配する力も緩んでしまい――そんな本体が晒した隙を突いて、直ぐに反撃へと移ったのは嵯泉でした。
「――弩炮峩恢、逃さず砕け」
 そう、嵯泉ならばきっと、口寄せの篝火本体を殺してくれるでしょう。立ち塞がる妖怪の少女の隙間を縫い、彼が怪力とともに振るうのは、氣を纏わせた豪快な刃です。
「貴様にも還る場所があるであろう? ……骸の海って名前のな」
 ――総てを叩き割る一撃が、迷子の路地を大きく震わせていった刹那。ふたりの意識を掠めていった遠い記憶が、一瞬篝火の向こうに映し出されたような気がしました。
(「夕陽の向こう、耳朶を擽る呼び声は誰のものだったか――」)
 懐かしさは在っても今はもう、あの声に応える事は無いのだと。思い出を振り切った嵯泉が顔を上げると、ニルズヘッグのほうも何だか、いつもとはちょっと違う顔で瞬きをしていました。
「……嵯泉。ちょっと帰りたいって思った?」
 ――既にない、彼の故郷の白詰草。懐かしいとは思うけど、十年と言う時は余りにも長くて、帰る場所と言うには遠すぎるのです。
「いや。私の帰る場所は過去ではなく、此処に在る」
 私の帰るところは、今にあるよ――そんなニルズヘッグの想いに頷くように、嵯泉が返した言葉。それにはいつしか、弾ける笑顔が重なっていきました。
「――そっか!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘇摩・瞬華
…そ、か。あなたも、迷っちゃったんだね。
大丈夫、きっと帰れるよ。あなたも、わたしも。
だから、まずは…ここから連れ出してあげないと、ね。

命喰ホムラダマを発動、複数に分けて多方向から敵へ向けて飛ばしていくよ。
妖怪さんを盾にして防ごうとすると思うから、幾つかを囮にして突破させようとする動きを見せておいて、守りの意識をそちらに向けたところで別方向から向かわせた鬼火を本体へぶつけに行くよ。
他の猟兵さんと連携してるなら、そっちの攻撃を通すお手伝いにも。

過去の記憶…お里(山間の集落)で姉様達に可愛がってもらってた記憶、とかかな。
でも、甘えてばかりいられないの。今は、わたしが頑張らなきゃ!


三嶋・友
帰れない大切な場所
切ないし、苦しいし、すごく寂しいよね
それが大切な人たちを守れなかったからなら尚更

出来るならその涙をそっと指で拭ってあげたい
女の子を泣かせたままになんかしておけないからね!…なんて

もう泣かなくても良いよ
悪い奴は私達がやっつけるから、一緒に帰ろう

もし本当に帰る場所がなくなってしまっていたとしても
きっと出来るよ、帰る場所
世界の迷子な私が、母さんに拾って貰えたように
連れて行けるのならうちの守り神になってほしいくらいだよ!
だから、一緒に探しに行こう?

…っ、母さん?ううん
この救いを求める瞳を前に、偽りに何か惑わされない
攻撃は全て本体だけを狙う
例え自分が傷ついても囮の彼女は絶対傷つけないよ


フリル・インレアン
ふえぇ、アヒルさん、なんでヘッドライトの電池を新しいものにしてなかったのですか。
というよりも、動力がなんで電池なんですか。
アヒルさんと同じガジェットだったらこんなことにはならなくて済んだのでは?
あ、ライトが消えかかっています。
急がないと。

ふええええ、目の前に女の子がいますけど、止まれませーん。
何か言っているみたいですけど、まずは避けてください。

ふええ、結局、女の子と衝突してしまい、そのまま二人で後ろに転がって行ってしまいました。
そして、アヒルさん変なモノローグは入れないでください。
私達は女の子同士だから恋に落ちたりはしません。


清川・シャル
懐かしい声…覚えてはいないけどあれは母様の歌声だと思います。
よく歌ってくれていたと、家の人に聞いたことがあります。
柔らかい、あったかい綺麗な声…
けれど私は猟兵なんです、なんでも乗り越えていかなくちゃ。
母様を超えていかなくちゃ。
きちんと前を見なきゃ行けない。
そう思うんですよ。だから帰りましょう?お手伝いしますから。
邪魔する敵はこうして…倒しますから!
修羅櫻を抜刀してのUC起動です
破魔、2回攻撃、串刺し、恐怖を与える、切り込みで攻撃を仕掛けます
敵攻撃は見切り、残像を使ってカウンターで反撃します



(「……懐かしい、声」)
 それは――こころが引き付けられるような、ちょっぴり切なくて優しい歌声でした。もし迷子になってしまったとしても、ちゃんと自分の名前を呼んでくれて。
(「覚えてはいないけど、あれは」)
 母様、と微かに震えた唇は、無意識のものでしたが――清川・シャル(無銘・f01440)には、何となく分かっていたのです。よく歌ってくれていたのだと、前に家の人に聞いたことがあったから。
(「柔らかい、あったかい綺麗な声……」)
 きっと、シャルの貌にはちょっぴり面影があるのかも知れませんが、既に鬼籍に入った母様と触れ合う術はないのです。だから――これは甘美な夢で、決して現のものにはならなくて。
(「そう、それに……私は、猟兵なんです」)
 なんでも乗り越えていかなくちゃと頷いて、ぱちりと開いたシャルの眼は、青空のように澄んでいました。一族では異端とされるその色を、誇らしげに夕闇のなかで輝かせて、少女は形見の二刀を手に言霊を『斬る』のです。
「母様を、超えていかなくちゃ」
 ――その為には迷いを振り切り、きちんと前を見なきゃいけない。咲き誇る修羅櫻の刃が、血の如く艶やかな花びらを舞わせて、かたち無きものを断ち切っていけば。シャルを浸食しようとしていた炎は瞬く間に鎮火して、辺りに静寂が戻っていきます。
「私は、そう思うんですよ。だから――」
「……そ、か。あなたも」
 ぼぅ、と青白い炎が幾つも夕闇に浮かび上がるなか、路地に揺れるのは白銀の尾。初撃を外してしまった口寄せの篝火に向かい、多方向から一気にホムラダマを発動させたのは、蘇摩・瞬華(蒼篝・f25151)でした。
「迷っちゃったんだね。……大丈夫、きっと帰れるよ」
 尚も本体に束縛され、怨嗟の輩として使役されている妖怪の少女――無垢な声で彼女に呼びかける瞬華も、今は故郷を飛び出して旅の途中にいるのです。
(「あなたも、わたしも」)
 再度放たれた言霊が、懐かしい記憶を蘇らせようとしますが、瞬華だっていつまでも甘えてばかりはいられないのです。
「……今は、わたしが頑張らなきゃ!」
 瞬華が操る命喰の蒼き焔たちは、そのひとつひとつが意志を持つかのように本体へと向かっていきます。勿論向こうだって、囮の妖怪を盾にして防ぐでしょうが――それだって彼女にはお見通しなのです。
「こっちだって、囮を使うんだから……!」
 ホムラダマの幾つかを、強引に突破するための囮にして、本体の守りの意識を此方の方へと向けさせて。その代わり手薄になった方向から、突如上がった可愛らしい声はと言えば――。
「ふえぇ、アヒルさん、なんでヘッドライトの電池を新しいものにしてなかったのですかっ」
 がさがさと茂みを掻き分けながら、ひょっこり顔を覗かせた、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、もしかしたらまた迷子になっていたのかも知れません。
「というよりも、動力がなんで電池なんですか。アヒルさんと同じガジェットだったら、こんなことにはならなくて済んだのでは……あああ」
 ――ここぞと言うチャンスを狙っているうちに、バッテリー切れを起こしたのでしょうか。アヒルの形をしたガジェットの照明は不規則に明滅を繰り返していて、このままだと薄暗い道で転んでしまいそうです。
「ライトが消えかかっています、急がないと」
 そんな訳で、勇んで戦場へと飛び出していったフリルでしたが――茂みの外は段差になっていて、運の悪いことに踏み出した足場は朽ちていたのでした。
「ふええええ、目の前に女の子がいますけど、止まれませーん!!」
 ああ、アヒルさんを抱えたまま加速して、ごろごろと石段を転がり落ちていくフリルです。よりにもよって向かう先に居たのは、本体によって盾にされた妖怪の女の子でした。
(「な、何か言っている気がしますけど……!」)
 ゴッ、とその亡霊っぽい姿とぶつかり、痛そうな音を立てて尚も後ろに転がり落ちていくふたり――出会い頭の衝突はラブコメの王道ですが、実際に見てみると物凄く痛そうです。
「う、うわあ……大丈夫……?」
 女の子同士がぶつかって、ちょっぴり甘酸っぱい出会いをするなんて聞けば、萌えるものがあるなあと三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)は思っていたのですが、さっきの衝突音の生々しさを聞くに、ちょっぴり考えを改めなくてはならないかも知れません。
『衝撃? 的な出会いから始まる、恋? 物語――』
「ふえぇ……アヒルさん、変なモノローグは入れないでください。私達は女の子同士だから、恋に落ちたりはしません……!」
 地面に突っ伏し、頭にお星さまを浮かべたフリルが何やらぶつぶつ呟いていますが、あれが彼女のユーベルコードだったのでしょう。しかし、転倒のお陰で本体とは大分距離が引き離されていて、今ならゆっくり呼びかけを行うことが出来そうでした。
「お、女の子同士の恋……ッ! いや、待って。ここで『出来るなら、その涙をそっと指で拭ってあげたい』なんて言ったらまさか、三角関係のフラグがッ!」
「うふふ、わたしもね、故郷のお里では姉様達に可愛がって貰ってたんだよ♪」
 ちょっぴり百合の花が咲きそうになって、慌てふためく友の元へ、先ほどの夢現の風景を思い出したのか、にこにこと瞬華も話に加わってきます。
 ――仙狐の一族の、お姉様がた。瞬華のスタイルを見るに、きっと綺麗な大人のおねーさんなのでしょう。
「ま、まぁ……女の子を泣かせたままになんかしておけないからね! なんて」
 もう、泣かなくても良いよと言って、ゆるりとした笑みを浮かべながら、友は涙を流す座敷わらしの少女へ手を差し伸べました(頭に出来たたんこぶは見ないようにします)
「……悪い奴は私達がやっつけるから、一緒に帰ろう」
 帰れない大切な場所がある、それは切ないし、苦しいし――すごく寂しいことです。大切な人たちを守れなかったのなら、尚更のこと。
「でも、もし本当に……帰る場所がなくなってしまっていたとしても」
 その手に握られた水晶の剣が、纏う魔力を通して色合いを変えていくなかで、友は自分の境遇についてふっと想いを過ぎらせていました。
「きっと出来るよ、帰る場所」
 ――世界の迷子だった自分が、母さんに拾って貰えたように。連れていけるのなら、うちの守り神になってほしいくらいだよ、と。何気ないそんな言葉が、妖怪の少女に意思を取り戻させていきます。
「……だから、一緒に探しに行こう?」
「じゃあ、まずは……ここから連れ出してあげないと、ね」
「ええ。私も、お手伝いしますから」
 そんな友の言葉に、いつしか瞬華やシャルの声も重なっていけば。蒼い鬼火が乱れ舞い、本体が惑わされた隙を突いて、艶やかに舞う修羅櫻が破魔の太刀を繰り出していくのです。
(「……っ、母さん? ううん」)
 水の魔力を宿した友の剣が、本体に狙いを定めたその時――ふと耳を掠めたのは、懐かしい声だったような気がしましたが。
(「この救いを求める瞳を前に、偽りに何か惑わされない」)
 そう、倒すべき相手は、口寄せの篝火本体なのです。例え自分が傷ついても、絶対に囮の少女を傷つけない――そんな誓いと共に、三位一体の魔法剣が赤い塊に吸い込まれていきました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
泣いているの、あなた
帰る道を、家を、
失くしてしまった?
其れは心細いですねぇ

縫によく似た娘子を
見過ごすことは出来なくて
じっと涙を見詰める人形の
ちいさな頭を柔らに撫でる

座敷童子にも
縫にも
大丈夫と伝えるよう
穏やかに語りかけ

一緒に帰る家を探しましょうか
無ければね、
作ってしまえば良いのです

茶目っ気たっぷりに笑んだなら
きょとんと此方に気を向けてくれるかしら
そうして
囮に利用しようとする悪い子の
動きを鈍らせられるだろうか

好機を逃さず高速詠唱
篝火に向け
邪な焔を鎮火する水の羽搏きの鳥葬を贈ろう

火遊びはいけないよと
教わりませんでしたか
そのまま彼方の海まで流れていきなさいな

さぁ
座敷童子さんの
お家を探しに行きましょうか



 ――泣いているの、と囁く声は、夜宵の闇にひそりと佇む、木々のざわめきを思い起こさせます。
「帰る道を、家を、失くしてしまった?」
 鳥たちの眠る静かな森は、羽ばたきひとつ聞こえやしないでしょうに、瞬くその声は星のよう。亡霊と化して彷徨う少女は、涙に濡れた顔を上げて辺りを見渡しますが――其処でふと、自分と良く似た雰囲気の愛らしい人形を見つけます。
「……其れは心細いですねぇ」
 縫、と名を呼ばれた少女人形が、あやかし娘の涙をじぃっと見つめれば。そのちいさな頭を柔らに撫でる、都槻・綾(糸遊・f01786)は、ゆっくり彼女の方へと近づいていくのでした。
(「大丈夫」)
 ――ただの人形ではない、式神の縫が感じ取った『何か』に、あるじの綾も気づいているようで。着物の裾をゆるりと靡かせながら、彼は穏やかな口調で座敷わらしに向かって声を掛けます。
「一緒に帰る家を探しましょうか」
 縫とよく似た娘子は、内面も彼女と似てお喋り好きだったりするのでしょうか。ふとそんなことを考えてしまえば、見過ごすことは出来なくて――少女と目線を合わせながら、綾は茶目っ気たっぷりに微笑むのです。
「無ければね、作ってしまえば良いのです」
 ――ああ、そうすれば。きょとんとして此方に気を向けて、くれるかしら。
(「……そうして」)
 ――囮に利用しようとする悪い子の、動きを鈍らせることが、出来るだろうか。
 其処でカタリと、からくり仕掛けの少女人形が首を巡らせれば、妖怪を差し向けた篝火の本体が、怨火を放とうとしている様子が見て取れました。
「ああ、いけない」
 それに先んじて、高速で詠唱を終えた綾が呼び出したのは、水行の色彩を纏う清らかな鳥たちです。邪な焔を鎮火する、その水の羽搏きが鳥葬となって押し寄せていけば、蠱惑の怨火が齎す狂気も魅了も掻き消えて、邪悪な赤塊に浮かんだ口が苦悶の声を上げていきました。
「……火遊びはいけないよと、教わりませんでしたか」
 そのまま、彼方の海まで流れていきなさいなと呟けば、綾の貌には先ほどの笑みがふんわり戻ってくるのです。
「さぁ、……座敷童子さんの、お家を探しに行きましょうか」

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
【和気】
俺は多くの人の手に渡ってきた箱で在った為
帰りたい場所は直ぐには思い当たらない

だが、帰りたい思いが君にあるのならばきっと探せるはず
けれど此処に留まっていてはそれも探せない
俺達と共に、一歩を踏み出そう
さぁ、おいで

懐かしき過去は、常に俺を持ち歩いていた自由気侭な主との日々
手入れされ宝物庫に大事に仕舞われる日々よりも
様々な所へ連れ出してくれた主は誰よりも俺を大切にしてくれたと
だから俺は恐らくこの姿であるのだろうし
何れは、俺の手で―
その為にも、友と共に歩むべき道を拓こう

皆と連携、炎は広範囲への水属性の衝撃波で相殺
敵の動向確り見切り、抜いた花映でUC
赤き塊を叩き斬る

ああ、仲良く楽しく帰ろう、皆でな


呉羽・伊織
【和気】
居た堪れない―嗚呼、こんな所に留まってて良い訳がない
また笑って生きていける道が開けるまで
何度だって手を伸ばし続けよう

嘗ては俺もそうして手を引かれ、背を押され―幾度迷って失っても、また落ち着く場所を見つけ出せたから
次はこの手で、君が再び穏やかに過ごせる場所も必ず在ると示そう

炎が一瞬その嘗ての恩人を魅せても、迷わない
その人で惑わそうなんて皮肉は、許さない
それに傍には道標が、仲間の姿が在る―失くすなどもう御免

過ったものは別でも
目指す先と懐く心は同じ

覚悟と耐性で己を強め
仲間の意志と連携に応え
水属性UCで炎相殺
隙狙い早業で花明振るい敵のみを断つ

後は心一つで、道は広がる筈
さ、仲良く揃って帰ろーか!


鳳来・澪
【和気】
涙も悲しみも、拭ってあげたいね
皆で必ずあの子を連れ戻して、道も取り戻そう

童ちゃん
こんなにも沢山の皆が、貴女の無事の帰りを待ってるよ
骸魂とさよならして、どうか一歩踏み出して
貴女を温かく迎えに来た皆の元へ、帰っておいで

どこにもないと言わようと、うちらはどこまでも諦めへんよ
安心出来る場所に辿り着くまで、一途に尽くすから

――過去はほんまに興味深く、懐かしくもあるけど
炎に彼岸のおばあちゃんがちらついても
今成すべき事も、向かうべき先も、見失わへん
うちも皆で帰るって想いを、手離しはせんよ

その覚悟で心を、UCと技能で身を強めて
隙見て足並揃え薙刀で破魔の一閃
骸魂と少女を別つ

どうか笑ってただいまとお帰りを


千家・菊里
【和気】
帰る場所――貴女の居場所は、少なくとも此処ではない筈
この行き止まりと貴女を苛む者にこそ別れを告げ、もう一度、帰る場所を探しに行きましょう

ないというのなら――我らの手で、貴女が笑顔で歩める路を開くまで
その為に、俺達は迎えに来たのですから

炎の奥には懐かしい母の俤
“さぁ夕飯ですよ、帰っておいで”と
―けれど、母も故郷も、其こそ今はもうなきもの

親の声で拐かそうとは酷いですね
なんて持前の性分と耐性で流し、迷いなく狐火で相殺と浄化

耳を傾けるべきは皆と童さんの声
本体鈍れば連携し霊符で破魔

此処に断たれるは道に非ず
彼女を繋ぎ蝕む鎖こそ

さて、皆で帰って遊びましょうか
一服がてら思い出話や未来の話も一興ですね



 ぱち、ぱちと爆ぜる炎に浮かんだ目や口が、次々に懐かしいものを蘇らせていくなかで。呉羽・伊織(翳・f03578)は涼やかな水を纏いながら、笑顔の裏に秘めた鋭い刃を一息に振り下ろしていきます。
(「居た堪れない――嗚呼、」)
 相反する属性が互いを貪り、激しい蒸気となって消滅していけば、炎が魅せるまぼろしもかたちを失っていくようでした。
(「こんな所に留まってて良い訳がない」)
 そんな伊織の眼にも、嘗ての恩人の姿が過ぎっていましたが、僅かな迷いも覚悟と共に飲み干します。そう、迷ったりはしない――その人の姿で、惑わそうなんて皮肉は決して許さないのだと、匕首を握る手にぎゅっと力を籠めていきます。
「ね、涙も悲しみも、拭ってあげたいね」
 ――放たれる水刃と足並みを揃えて、辺りに吹き荒れる衝撃波は、鳳来・澪(鳳蝶・f10175)の生み出す神薙ぎの一振りでした。邪悪なものを祓い清める風が、骸魂と少女を別かつように叩きつけられていくと、千家・菊里(隠逸花・f02716)の放つ破魔の霊符も、未練がましい蠱惑の聲を掻き消していくのです。
「皆で必ずあの子を連れ戻して、道も取り戻そう……!」
「……ああ。また笑って生きていける道が開けるまで、何度だって」
 手を伸ばし続けようと頷いた伊織に、大らかな笑みで応えた菊里にも、懐かしい誰かの声が聞こえているのかも知れません。しかし耳を傾けるべきは、皆と童の声であるのだと――持ち前の性分で流していく彼は、更に狐火も操って、忌むべき怨火の浄化に勤しんでいきました。
「帰る場所――貴女の居場所は、少なくとも此処ではない筈」
 ――口寄せの篝火の勢いが削がれ、囚われた妖怪の少女にも、声が届くようになってきたのでしょうか。呼びかけに呼応して少女も足掻くなか、変わらず穏やかに響く菊里の声は、何だか不思議な安心感を与えてくれるようです。
「この行き止まりと、貴女を苛む者にこそ別れを告げ……もう一度、帰る場所を探しに行きましょう」
 ――帰る場所、と。その言葉を舌の上で転がす筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は、その場所が何処であるのか、直ぐには思い当たらない様子でした。
(「……そう、俺は」)
 百年、否もしかしたらそれ以上――多くの人の手に渡ってきた硯の箱は、その始まりが何であったのかも定かではないのです。
「だが、帰りたい思いが、君にあるのならば」
 ああ――漂う言霊が彼に魅せる、懐かしい過去に過ぎったのは、嘗ての清史郎の主のひとりで。自由気儘なその主人は、常に硯箱を持ち歩いていて、様々な所へ彼を連れ出してくれました。
(「だから、俺は恐らくこの姿であるのだろう」)
 ――手入れをされ、宝物庫に大事に仕舞われる日々よりももっと、主は清史郎のことを大切にしてくれたと分かるから。だから彼は胸を張って、はっきりと少女に伝えることが出来たのです。
「きっと探せる。……けれど此処に留まっていては、それも探せない」
 甘美な夢現に囚われて、ずぅっと足を止めている訳にはいかない――清史郎の護刀に散った桜が、蒼いひかりを纏って夕闇を斬り咲けば、炎の向こうに潜む本体が悲鳴を上げて跳び退ります。
「俺達と共に、一歩を踏み出そう。さぁ、おいで」
 そのまま、拘束に抗う少女に向かって手を差し伸べると、押し寄せる怨火を払いのける菊里や伊織も、其々に頷いてその背中を押していきました。
「もし、帰る場所がないというのなら――我らの手で、貴女が笑顔で歩める路を開くまで」
 ――その為に、俺達は迎えに来たのですから、と。何てことない様子でさらりと告げる菊里に苦笑しつつ、早業で暗器を放つ伊織も、頼もしい仲間たちの存在に助けられたことを思い返していたのでしょう。
「嘗ては俺もそうして手を引かれ、背を押され――幾度迷って失っても、また落ち着く場所を見つけ出せたから」
 ――過ぎる過去や、通ってきた道は別だとしても。目指す先と懐く心は同じだと、信じることが出来るのです。それを失くすなどもう御免だと言うように、誓いを宿した花明の刃が、本体を真っ直ぐに貫いていきました。
「……次はこの手で。君が再び穏やかに過ごせる場所も、必ず在ると示そう」
「童ちゃん。こんなにも沢山の皆が、貴女の無事の帰りを待ってるよ」
 じりじりと、右目に奔った痕を灼く炎――其処へ彼岸の懐かしい存在がちらついても、澪は薙刀から手を離したりはせず、妖怪の少女に向かって呼びかけを続けます。
「骸魂とさよならして、どうか一歩踏み出して。……貴女を温かく迎えに来た皆の元へ、帰っておいで」
 ――懐かしく、こころ惹かれる光景に、つい「おばあちゃん」と声を掛けたくもなってしまうけれど。今成すべき事も、向かうべき先も見失ったりはしないと、澪は神霊体を維持し、心を奮い立たせていくのです。
「どこにもないと言わようと、うちらはどこまでも諦めへんよ……!」
 安心出来る場所に辿り着くまで、一途に尽くして――皆で帰ると言う想いを、決して手離したりはしないのだと。直後、囮の動きを封じられた本体目掛けて、一気に振り下ろされたのは、破魔の力を籠めた澪の薙刀でした。
『さぁ夕飯ですよ、帰っておいで――……』
 ああ、赤き塊が放つ絶叫に紛れて、そんな懐かしい声が菊里の元に届いたような気がしましたが、迷うことなく彼は狐火で浄化を行います。
「親の声で拐かそうとは、酷いですね」
 ――母も故郷も、其こそ今はもうなきものであると、改めて突きつけられたのに過ぎないのですから。
「此処に断たれるは道に非ず。彼女を繋ぎ蝕む鎖こそ……さて」
 これからのことに想いを馳せる仲間たちの声を聞きながら、やがて彼もその道に加わって、一緒に歩いていこうとするのです。
「皆で帰って、遊びましょうか」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

甘渼・アメ
🌈虹櫻

そうだべ……じゃなくてそうなのよ!
アメは今ね、横丁に住んでるの
賑やかで美味しいものも沢山あるのよ?今度、櫻宵も遊びにきてね!コロッケ、美味しいよ!
歓迎するわ!
盛り上がる話が楽しいの
櫻宵は淑やかで綺麗で……アメの憧れの大和撫子そのものだわ!
ついつい憧れな眼差しを向けてしまうわ

悪い子ね!座敷わらしを捕らえるなんて
幸せがみーんな逃げちゃうんだから!
でも帰りたい気持ちは伝わってくるから
鼓舞と慰めの虹を光らせて、祈るわ
ちゃんと、君が帰りたい場所に帰れるように!
攻撃はオーラの虹で防いで、声をかけ続けるの

大丈夫、皆一緒よ!
帰りたいなら、帰れるわ!
アメたちが帰してあげる……だから……!
一緒に帰ろうよ!


誘名・櫻宵
🌸虹櫻

へぇ!アメは横丁に住んでるのね
コロッケにドロップ、動くケーキなんて素敵だわ
私も今度遊びに行ってもよい?
私達、迷子友達だもの!
今度私の館にも遊びに来て頂戴
歓迎するわ!
華やぐ女子トークも楽しきこと
アメと笑みかわしながら先行けば、あら行き止まりだわ
座敷わらしを盾にするだなんてなんて罰当たり
あの子を助け出せばよいのね

破魔の桜を吹雪かせなぎ払い
「祓華」
負の心だけを斬る

声に誘われ思い浮かぶは懐かしい桜の館
迎櫻館ではなく私の生家、誘七の地
帰ってくるなと言われてる
けれど、私は

帰るべき場所は
自分で見つけるもの
彷徨う果てに辿り着く場所
私だって見つけられたのだから…きっと見つかるわ
あなたの帰りたい場所も、ね



 相も変わらず道は朽ちて、ぐねぐねと歪む景色は堂々巡りを繰り返しているようでしたが、一緒に歩くひとがいれば、迷子だって寂しくはありません。
「へぇ! アメは横丁に住んでるのね」
 幽世に迷い込んだ、誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)とすっかり仲良くなった甘渼・アメ(にじいろ・f28092)は、自分のお家についてひとつひとつ、丁寧に話をしているようです。
「そうだべ……じゃなくてそうなのよ!」
 ――ちょっぴり興奮したアメからは、ときどき故郷の訛りが覗いたりもしていますが、それも何だか可愛らしい感じがして、櫻宵もうっとりと聞き役に回っています。
「あのね、賑やかで美味しいものも沢山あるのよ? 今度、櫻宵も遊びにきてね!」
「……コロッケにドロップ、動くケーキなんて素敵だわ。じゃあ、今度遊びに行ってもよい?」
「歓迎するわ! コロッケ、とっても美味しいよ!」
 迷子友達だもの、と顔を見合わせるふたりは、盛り上がる話にぱああと花を咲かせて、早速次の予定を立てているようですね。
「なら、今度私の館にも遊びに来て頂戴。……歓迎するわ!」
「わあ、楽しみだべ……じゃない、楽しみね!」
 ああ――此処が迷子の世界なら、横丁へと続く鳥居が何処かにふらりと、迷い込んでいそうな気もしましたけれど。それでもこうして、思う存分女子トークが出来るのは、素敵な体験なのかも知れません。
(「それに、櫻宵は淑やかで綺麗で……」)
 話をしつつ、そっと櫻宵の横顔を仰ぎ見るアメのまなざしは、憧れいっぱいにきらきら輝いていました。すらっと背が高くて、髪はさらさら――白く綺麗な肌は、日焼けひとつしていないようです。
(「アメの憧れの大和撫子そのものだわ!」)
 ――彼がオネェだとは露程も思っていないアメが、うつくしさの秘訣を尋ねようとしたその時、角を曲がった櫻宵の気配がふっと険しくなりました。
「……あら、行き止まりだわ。それに、」
 其処に居たのは、傷を負って逃げてきた口寄せの篝火で――本体は未だ、囮の妖怪を使って獲物を狙うことを諦めていないようです。
「座敷わらしを盾にするだなんてなんて、罰当たり」
「ほんと、悪い子ね! 幸せがみーんな逃げちゃうんだから!」
 妖怪の少女を盾にしたまま、蠱惑の怨火を生み出していく本体に、アメも頬を膨らませて怒っているようでした。それでも、彼女の帰りたいと言う気持ちは伝わってきて――けれど、炎が邪魔をして行く手を阻んでいるのが分かったから、もうアメは迷ったりはしないのです。
「……祈るわ。ちゃんと、君が帰りたい場所に帰れるように!」
「そう、あの子を助け出せばよいのね」
 ――それは、雨上がりの空に架かる虹のように。たくさん涙を流した後には、綺麗なひかりが射し込んでくれるから、と。アメの生むオーラの虹が、七色のヴェールに変わって蠱惑の炎を防いでいけば、櫻宵は破魔の桜吹雪を呼んで、甘美な囁きを一気に掻き消していきました。
「大丈夫、皆一緒よ! 帰りたいなら、帰れるわ!」
 邪悪な言霊を弾き返すように、アメの可愛らしい声が路地裏に響いていくなかで――櫻宵の目の前にふと過ぎったのは懐かしい、今の住処とは違う桜の館です。
(「ああ、あれは……誘七の地。帰ってくるなと言われてる、けれど」)
 ――行ってはいけないと思うのに、無意識のうちに一歩を踏み出そうとする足が、恨めしい。そんな櫻宵の迷いを断ち切ったのは、虹のひかりとアメの声でした。
「アメたちが帰してあげる……だから……! 一緒に帰ろうよ!」
(「私は――……」)
 ああ、帰るべき場所は、自分で見つけるもの。彷徨の果てに辿り着いた場所を、そっと瞼の裏に思い浮かべながら――櫻宵の振るう祓華の太刀が、口寄せの篝火本体を、現世への執着に凝り固まった負の心のみを、一気に斬り祓っていきます。
「私だって見つけられたのだから……きっと見つかるわ」
 ――そう、あなたの帰りたい場所も、ね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九々麗・吟
廻るは輪廻
抜け出せぬ
生も老いも許されぬ
死も幸いも奪われる
妾を縛り貪る呪い

妾となり在るもの全て
囚われるのは歪な愛(のろい)
愛紡ぐ唇であやつは呪いを施した
赤い紅を攫っていった

わらしよ
お主も抜け出せぬのか
絡み縺れ動けぬ籠の中で
その落涙は何処へ往くのじゃ

さあさ
妾に聲を聴かせよ
そちらへ妾を導いておくれ

嗚呼、嗚呼…
ほんに邪魔な形骸じゃ
わらしを盾に逢瀬を邪魔する輩など
消炭にしてやろうか

わらしよ、おいで
妾の呪いは死ねぬ輪廻
幾ら身を裂こうと絶える事許されぬ
其の呪いの中であれど帰りたいと望むなら
さあさ、おいで、妾の元へ

共に幽世へと還ろうか



(「……廻るは輪廻」)
 見上げた空に沈みゆく夕陽は、一体何度目に見たものだったのでしょうか。どこかの言い伝えでは、日ごとに死んで生まれ変わっている――そんな話も聞いたような気がしましたが、九々麗・吟(艶美・f27960)にはもう、それが何時のことだったのか覚えていないのでした。
(「抜け出せぬ、生も老いも許されぬ」)
 ――九つのいのちを持つのは猫。ならば、妖しの狐は幾ついのちを潰せば、巡り続ける輪廻から逃れることが出来るのでしょう。
(「死も幸いも奪われる」)
 ああ、呪いだ――と、艶やかな唇が吐息を漏らします。未来永劫、吟を縛り貪り続けるもの。彼女となり在るもの全てが、囚われる其れ。
 歪な、のろい――それに愛という文字を宛てるのが、恐ろしくも切なく、憎らしくていとおしい。
(「愛紡ぐ唇で、あやつは呪いを施した」)
(「赤い紅を攫っていった」)
 黄泉の底からふつふつと浮かび上がる想いに、白い指を絡めようとして。其処で吟は、妖怪の少女が零す涙をそっと掌で受け止めました。
「……わらしよ、お主も抜け出せぬのか」
 ――その、絡み縺れ動けぬ籠の中で。数多の言の葉の祝福を受け、静かに微笑む座敷わらしのまなじりからは喜びの涙がすぅっと伝って、夕陽のなかできらきらと輝いているのです。
「その落涙は何処へ往くのじゃ」
 さあさ、妾に聲を聴かせよと。迷い路を往く吟は、手探りで道のおわりを目指して進んでいきますが、揺らめく怨火の向こうから、無数の目と口が浮かび上がって彼女を惑わします。
「そちらへ妾を導いておくれ、嗚呼……」
 ――狂気と、魅了。繰り返す生と死のなかで、いつしか慣れ親しんでいったもの。
「嗚呼、ほんに邪魔な形骸じゃ。わらしを盾に逢瀬を邪魔する輩など、消炭にしてやろうか」
 直後、銀色の瞳が妖しい輝きを帯びていけば、悪霊が齎す呪いが連鎖していって、僅かに残っていた篝火のいのちを吹き消していきました。
「……わらしよ、おいで。妾の呪いは死ねぬ輪廻」
 そうして癒えない傷が積み重なって、醜い塊がついに物言わぬ骸と化して消えていけば――ああ、と吟が羨望のまなざしを向けて、解放されたあやかしの少女を手招きます。
「幾ら身を裂こうと、絶える事許されぬ。……其の呪いの中であれど、帰りたいと望むなら」

 さあさ、おいで、妾の元へ――それは渦を巻くようにして元に戻っていく、迷子の世界のどこか。木漏れ日に抱かれて佇む昔ながらの日本家屋からは、かまどの煙が立ち昇って、晩ご飯の美味しそうな匂いが漂ってきます。
「共に幽世へと、還ろうか」
 軒先に吊るされた風鈴が、ちりんと澄んだ音を立てて来訪者が来たことを教えると、土間の向こうから「おかえり」と優しい声が響いてきたのでした。
 ――それはどこか郷愁を感じる、懐かしい田舎の光景で。おかっぱ頭の少女は足早に、真っ白な小袖を靡かせながら、自分の帰る場所を見つけて駆け出していったのです。

「ただいま」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『もう一度、あの頃へ』

POW   :    全力で遊びを極め尽くす

SPD   :    あれこれ欲張りに楽しんでみる

WIZ   :    のんびりとマイペースに遊ぶ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――幽世に忍び寄っていた、滅びの気配がすぅっと消えて。断たれた道が蘇り、目の前の視界が開けていけば、其処にはどこか懐かしい田舎の街並みが広がっていました。
(「……にゃあ」)
 柔らかな夕陽に照らされる、昭和のころの思い出をぎゅっと閉じ込めたような街。通りの商店では、お座布団の上でごろんと猫たちが微睡んでいますが、彼らが店長の猫又さんでしょうか。
 ――二股の尻尾のほかは、普通の猫さんと変わらないようですが、お年を召した猫又はこの街の長老格。きっと、平和を取り戻してくれた猟兵さん達を歓迎してくれるでしょう。
(「うにゃーう」)
 あ、異世界のひとが珍しくて、かつおぶしをねだっている猫又さんも居るようです。ちなみに、もうおじいちゃんおばあちゃんなので、またたびはちょっぴり刺激が強いのだと言います――何でも酔っぱらって、ただの猫みたいになってしまうのだとか。
(「にゃー、なーう」)
 ふむふむ、この通りのお店はみんな猫又さん達がやっていて、駄菓子屋や古本屋、骨董屋に雑貨屋などなど、色々なお店があるようです。
 ただし、そろそろ晩ご飯の時間ですから、間食はほどほどに。梅ジャムをつけたお煎餅やくじ付きのキャンディ片手に、紙風船を転がすくらいなら大丈夫でしょうか。お店には懐かしい玩具も置いてあって、メンコやヨーヨーなど懐かしい遊びを体験することも出来そうです。

 ――おや、何だか辺りにはきらきらした光が舞っています。ありがとう、と囁く声が遠くから聞こえてきたことから、助けて貰った座敷わらしの少女が恩返しをしてくれたみたいですね。
 幸運を齎すと言う謂れから、街を散策している間はちょっぴり素敵なことが起きるみたいです。アイスを買えば『当たり』を引きやすくなったり、欲しいなあと思っていたものと巡り会えたり、何気なく拾った石が綺麗な硝子の石だったり――そんな些細な、けれども嬉しい出来事と出会えそうです。
 遠くには緑なす野山が広がり、澄んだ川がうつくしいせせらぎの音を奏でるなかで、晩ご飯までの時間を無邪気に遊んでみることにしましょう。

 ――大丈夫。帰り路は、すぐに見つかるのですから。


⛩️⛩🏮⛩️⛩🏮⛩️⛩🏮⛩️⛩🏮

●第3章補足
・平和を取り戻した懐かしい街並みを、のんびり散策したり遊んだり、買い物を楽しんだり出来ます。
・オブリビオンから救出された、妖怪の座敷わらしの祝福で、ほんのちょっぴり幸運な出来事が起こりやすくなっています(プレイングに書いて頂ければ、大体希望通りのことが起きたりします)
・お店の店主の猫又さんは、かつおぶしを差し入れして貰うと喜んで、更にサービスをしてくれるかも。ただしまたたびは酔っぱらってしまい、普通の猫みたいになってされるがままの状態になるようです。
・その他、空き地や神社など、昭和の懐かしい街並みにありそうな場所なら、自由に指定しても大丈夫です。遊ぼうと誘えば、近くに居る妖怪さんも興味津々にやって来ると思います。

 第3章プレイングは『7月11日 朝8:31~』から『7月14日一杯まで』の受付と致します。期間に余裕がありますので、ぜひゆっくりプレイングを考えてみて下さいね。

🦍🦍🍌🦍🦍(ウホホッ)🦍🦍🍌🦍🦍
都槻・綾
f01543/イアさん

見知らぬ筈の街並みなのに懐かしい
此の気持ちを郷愁感と呼ぶのだと、

イアさんもそんな感覚を、御存知?

彼の生まれも故郷も知らないけれど
佇む情景に同じく懐古を感じるのだろうか

ふらり立ち寄った雑貨屋
いっとう目を惹いたのは
うつくしき色の硝子玉、ビー玉とおはじき

陽に翳せば
きらきら煌く宝石のよう
或いは、

…飴玉みたいね

悪戯っぽく笑んで
でも本当に食べてしまいたくなるくらい美味しそう

袋からさらさらと手のひらへ転がしてみると
一回り大きなビー玉が、ころん

やぁ、当たりかしら

ささやかな幸運に
ふわふわ咲う

猫又店長に鰹節をお裾分けしたなら
返礼にほんものの飴玉ふたつを頂いて

イアさんの手にも
おひとつ
召し上がれ


イア・エエングラ
綾(f01786)と

靴音鳴らしてあなたの隣
伸びる影踏み背伸びして
――おや、綾、そんなことを仰って
どこかへ連れ去られてしまいそだから

そうな、景色を染める黄昏は
どこかへ招くと、知ってはいるかしら
僕には知れぬ空の色だけども
綾が攫われてしまわぬよに裾を摘んで

見つけたお店は宝箱のよう
錻力の玩具に硝子玉、紙風船
こどもの顔したあなたの手元
口にしたら甘くて冷たいよう

笑って見返すあなたのお顔に
透ける光が落ちたらまるで
星が降るようとは内緒の話
思わず緩む頬では隠せない

店長さんは頂けないのね
ふわふわ心地にご挨拶して
猫又さんなら尻尾の幸せも倍かしらと
傾げればころりと僕の掌にも幸せ一つ

やあ、ほんとに甘かったねえ



 そこには――見知らぬ筈の街並みが広がっているのに、何故だか懐かしい気持ちが湧き上がってきて。もしかしたら、誰もがこころの奥に秘めている『帰りたい場所』と言うものが、数多の追憶と混ざり合ってそっとかたちを成したのかも知れません。
「此の気持ちを、郷愁感――ノスタルジアと呼ぶのだと、」
 夕暮れの空にぽつ、ぽつと流れていく黒い影は、ねぐらへ帰る鴉たちでしょうか。そんな茜と紺が彩なす彼方へと、切なそうに手を伸ばした都槻・綾(糸遊・f01786)でしたが――彼はそのまま、振り返ること無く背後の友人に声を掛けたのでした。
「イアさんもそんな感覚を、御存知?」
「――――おや、綾、そんなことを仰って」
 夕闇に揺れる装束が、密やかな夜の気配を連れてくるなかで、イア・エエングラ(フラクチュア・f01543)の靴音は軽快に、綾の隣に追いついて長い影を踏んでいきます。
「どこかへ、連れ去られてしまいそだから」
「おやおや」
 そっと背伸びをして、影踏み鬼を楽しむイアの髪や肌には、ひととは異なる宝石のひかりが煌めいていて。異種族である彼の生まれも、故郷も綾は知りませんでしたが、佇む情景に同じく懐古を感じるのだろうか――そんなことを、ふと考えてしまうのでした。
「そうな、景色を染める黄昏は」
 自分には知れぬ空の色、けれどもイアの瞳は意味ありげにきらきらと、星屑みたいなひかりを散らしてうっとりと細められていきます。
「……どこかへ招くと、知ってはいるかしら」
 ――もしかしたらイアは、そんな不思議な景色を目にしたことがあったのかも知れません。綾が攫われてしまわぬよにと服の裾を摘まみながら、ふたり並んで歩く向こうには、やがて古めかしい雑貨屋さんが見えてきました。
「やあ、まるで宝箱のようね」
 うにゃあ、と微睡みつつ出迎えてくれた猫又の店主に挨拶をしてから、ちょっぴり埃のかぶった商品を眺めてみれば――昔どこかで見たことがあるような、錻力の玩具や紙風船、きらきら輝く硝子玉が袋いっぱいに詰め込まれているようです。
「これは、宝石……或いは、」
 とりわけ、綾の目をいっとう惹いたのは――うつくしき色をしたビー玉とおはじきで、まるでこどもみたいな顔になって硝子玉を陽に翳す彼の姿を、イアも楽しそうに見守っています。
「……飴玉みたいね」
「口にしたら、甘くて冷たいよう」
 透明な硝子のなか、複雑なマーブル模様を描く色硝子は、そのひとつひとつが違っているようです。けれども、本当に食べてしまいたくなるくらい美味しそうだと、悪戯っぽく微笑んだ綾は、袋のひとつを手に取ってみたのでした。
 ――さらさら、ころん。やがて手のひらへ転がってきたのは、周りのものよりも一回り大きなビー玉です。
「やぁ、当たりかしら」
「にゃーう」
 そんなささやかな幸運を受け止めて、ふわふわ咲う綾の傍では、猫又店長も「これは珍しい」と言うように尻尾を揺らしていました。
「ふふ、猫又さんなら、尻尾の幸せも倍かしら」
 店長さんのお持ち帰りは出来ないぶん、ふわふわの毛並みを堪能させて貰うことにしたイアも、幸運のお裾分けに預かろうと、その背中を撫でているようです。
(「ああ、透ける光が落ちたら、まるで――」)
 そんななか、店長さんに鰹節を差し入れして微笑む、綾の横顔を仰ぎ見れば――硝子の煌めきに照らされたその姿は、まるで星が降っているみたいだと思ってしまって。
「はい、イアさんも。おひとつ召し上がれ」
 知らず知らずのうちに緩む頬を、イアがそっと手のひらで隠そうとした其処へ、綾の手からころりと幸せがひとつ零れ落ちていきます。
「……やあ、ほんとに甘かったねえ」
 ――鰹節のお礼に店長がくれた、ほんものの飴玉を口で転がしながら、そうしてふたりは「ふふ」と顔を見合わせて笑ったのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

祇条・結月
ちょっとだけ、故郷の街と似てる気がするのはここがそういう場所だからか、うちも大概田舎だったからか……
なんて

少しだけ歩き回ってみるよ
高台の神社へ歩を向けて
境内から街の景色をしばらく眺めていようかな

……小さい頃はこんな風に、神社の境内で遊んだっけ
あの頃は街が小さく見えて。こうしてたら、なんでも出来るような気がしてた
今は、どうだろう?

……なんて。
ここは居心地いいけれど、いつまでもはいられないよね

帰りに境内の社務所前の自販機で飲み物でも……

……こういうので当たりを引くのは久しぶりじゃない?
お礼ってことなら。遠慮なくもらっておく、ね

じゃあ、ね
また遊びに来るから
今度はかくれんぼ以外も、さ。



(「……ちょっとだけ、うん」)
 古めかしい神社の石段を、とんとんと軽やかに昇っていくのは、祇条・結月(キーメイカー・f02067)です。幽世の街並みからちょっと離れた、木々が生い茂る高台は、辺りの景色が一望出来る隠れた名所――そんな結月の予感は当たったようで、一気に此処まで上がってきた彼の背筋を、ひんやりとした初夏の風が優しく撫でていきました。
(「似てる、かな」)
 ――結月が今まで過ごしてきた、故郷の街と。夕暮れが近づいても、こうして神社の境内で遊んでいて、見下ろす街が世界の全てのように感じて。
「ここがそういう場所だからか、それとも――」
 ふわりと揺れる黒髪と、人懐っこい雰囲気の赤い瞳と――その首元できらきらと夕陽に輝いているのは、不思議な存在感を放つ銀の鍵のようです。
「うちも大概田舎だったからか……なんて」
 昔のことを思い返しながら、ぽつりぽつりと己のこころに問いかけてみれば、当時の気持ちが次々に蘇ってきて、ほんの少し切なくなるようでした。
(「あの頃は、街が小さく見えて。……こうしてたら、なんでも出来るような気がしてた」)
 やがて――高台の手すりに寄りかかって、溜息と同時に空を見上げてみると、山の向こう側に沈んでいく夕陽の煌めきが、消せない記憶のように結月の瞼に焼きついていってしまいます。
「今は、どうだろう?」
 ――なんて。追憶に浸ってしまうくらいに、ここは居心地いい場所でしたが、いつまでもはいられないと結月はもう一度、歩き始めることにしたのでした。
「……おや」
 その帰り路。境内の社務所前にあった自販機で、飲み物を買おうとボタンを押してみれば――珍しいことに当たりのランプがぴこぴこ点滅して、ジュースがもう一本ごとんと落ちてきます。
「……こういうので当たりを引くのは、久しぶりじゃない?」
 かっぱの顔がデザインされた、変わったメーカーの缶ジュースはひんやり冷えていて、石段を下りる足取りも軽くなりそうです。
「お礼ってことなら。遠慮なくもらっておく、ね」
 迷子の妖怪も、無事に家へと帰ることが出来たのだと、結月にも分かったから。彼は振り返ること無く、自分の帰る場所へと歩みを進めていくのです。
「じゃあ、ね。また遊びに来るから」
 ――今度はかくれんぼ以外も、さ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
英先生f22898と

すっげぇ!
英先生猫又が店主だぜ
へぇ…そうなんだ
猫又も猫と一緒なんかな?
撫でても怒んない?
駄菓子屋の店主に鰹節渡しつつ

折角だし土産買おうかと思ってよ
みんなで摘まめるような奴
英先生的におススメはどの辺?
だってプロじゃん
首傾げ

袋に入った奴ね
どれがいいんかな
やっぱ目移りして決めらんねぇ…
あれこれ買ってってくじ引きみてぇにしちまおうかな
それも面白そうだよな?

くじ付きキャンディくわえつつ玩具も物色
悪ぃ
これじゃ子供と変わんねぇな
この平べったい紙がメンコ?コレかっけー
こっちは独楽か
やってみてぇなぁ
英先生はどっちもやった事ある?強い?
期待に満ちた眼差し

マジか!ああ是非
どれにしよ

あっ
飴当たった


榎本・英
理玖/f22773

嗚呼。猫又の店主か。
失礼、煮干しは入り用かな?
私の家に住み着く猫も、味噌汁の出汁をとった煮干しが好きでね。
猫又も好きかと思ったのたが。

会計の時にでも渡してみよう。
私は駄菓子のプロでは無いが、みんなでつまめるような食べ物か。
それなら袋に沢山入った物が良いかもしれないね。

小袋に入った物を沢山買ってみんなで分けると言うのも良いのではないかな?
嗚呼。お菓子ではなく玩具に夢中だね?

メンコはそんなに強くないよ。
あれは力と技が必要らしい。
独楽ならばそこそこかな。後で勝負でもしてみるかい?

飴が当たったのだね
猫又の店主に言えばもう一つ貰えるかもしれないよ。
行っておいで。



 ――ちりん。駄菓子屋の軒先に吊るされていた、金魚の風鈴が涼しげな音色を鳴らしていくと、座布団に寝転がっていた三毛猫が、ぴくんと跳ね起きてお客さんを出迎えていきます。
「すっげぇ! 英先生、猫又が店主だぜ」
「……失礼、煮干しは入り用かな?」
 と、幽世では滅多に見かけない、異世界の客人たちの姿に興味を惹かれたのでしょうか。ふたつに分かれた尻尾をゆらゆら揺らして「うにゃあ」と鳴いた猫店長は、お店に入ってきた陽向・理玖(夏疾風・f22773)に向かって、ぴっと前脚を立てて招き猫のポーズを決めてみせたのでした。
「私の家に住み着く猫も、味噌汁の出汁をとった煮干しが好きでね……っと」
「へぇ、猫又も猫と一緒なんかな?」
 おや――理玖の隣に居る、榎本・英(人である・f22898)の懐から、ふんわり漂ってくる煮干しの香りに、猫又さんは早くも鼻をひくひくさせているようです。
「……撫でても怒んない?」
「にゃあ」
 おお、理玖の方からは香ばしい鰹節の匂いもしてくるようで、猫又さんの顔が理玖と英の間を行ったり来たりしています――そんなこんなで、「にゃあ」の鳴き声に「存分にもふもふするが良い」との意味が込められていると納得したふたりは、店長さんと触れ合いつつ色々な駄菓子を見て回ります。
「折角だし土産買おうかと思ってよ、みんなで摘まめるような奴。……ちなみに、英先生的におススメはどの辺?」
「私は駄菓子のプロでは無いが、みんなでつまめるような食べ物か……」
 プロでは無いと言う発言を受けて、不思議そうに首を傾げている理玖を横目に、駄菓子を見繕う英の姿はどことなく楽しそうですね。
「……それなら、袋に沢山入った物が良いかもしれないね。あと、小袋に入った物を沢山買ってみんなで分けると言うのも良いのではないかな?」
「やっぱりプロじゃん。……えっと、袋に入った奴ね」
 そんな英のアドバイスを受けて、袋詰めの駄菓子が並ぶ棚の方へと向かった理玖ですが――スナック菓子やお煎餅、飴玉にラムネの詰め合わせなどなど種類も沢山あるようです。
「どれがいいんかな。やっぱ目移りして決めらんねぇ……」
 そうして、人参みたいな袋に入ったポン菓子とにらめっこをしているうちに、悩むのならいっそのこと――と、理玖は両手に菓子を抱えてこう宣言したのでした。
「あれこれ買ってって、くじ引きみてぇにしちまおうかな。……それも面白そうだよな?」
 そう、ひとつひとつがお手ごろな価格なのも駄菓子の良いところです。沢山買ってもお財布に優しくて、何だか得した気持ちになってしまうのです。
「って、悪ぃ。これじゃ子供と変わんねぇな」
「……嗚呼。お菓子ではなく玩具に夢中だね?」
 ――そんな訳で、買い物かごにたっぷり駄菓子を詰め込みつつ、次に理玖が向かったのは玩具の棚でした。ふふ、と柔らかな英の笑みに気恥ずかしさを覚えても、やっぱり昔懐かしい遊びには心惹かれてしまいます。
「この平べったい紙がメンコ? コレかっけー」
 けれど、懐かしいとは言え、実際に遊んだことがある訳ではなく――強そうな妖怪の描かれた紙片を手にした理玖に向けて、英が丁寧に遊び方をレクチャーしていっているようですね。
「で、こっちが独楽か。英先生は、どっちもやった事ある? 強い?」
「いや、メンコはそんなに強くないよ。あれは力と技が必要らしい」
 そう言いつつ独楽を手にした英は、器用に紐を巻き付けていって、慣れた様子でしゅるりと回してみせたのです。
「……独楽ならばそこそこかな。後で勝負でもしてみるかい?」
「マジか! ああ是非。やってみてぇなぁ」
 期待に満ちたまなざしで頷く理玖でしたが、その時ふと、くわえていたキャンディの棒に文字が浮かんでいることに気づいて、目を瞬かせました。
「……あっ、飴当たった」
 ――くじ付きキャンディに書かれてあったその文字は「当たり」、どうやらささやかな幸運が舞い降りてくれたようです。
「店主に言えば、もうひとつ貰えるかもしれないよ」
「にゃーう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
ニルズヘッグ(f01811)同道
商店街か……正直馴染みは薄いが
楽しそうで何よりだ……いや待て、少し落ち着け

そうだな、古本骨董の類を見るのは割合と好きだ
お前とて其の辺りも嫌いではあるまい?
いや、流石に喰った事が無い
私が子供の頃の菓子とは違う物ばかりで味の想像も付かんな
ああ、構わんよ。ゆっくり見ると良い

店主の猫又へと挨拶1つ、咽喉を撫で
色鮮やかな物が多いな
菓子と云う位だからどれも甘いだろうが……
此の辺りのスナック菓子はどうだろう
正直解らんから、手当たり次第に喰うのも手だな
折角だから種類を楽しむ事にしただけだ

友達と一緒に日暮れまで、か
どういたしまして……では、帰ろうか
夢ではない、暖かい場所へ一緒に


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
嵯泉/f05845と

わー!凄え!
こういうとこって初めて来るや
嵯泉、早く行こう!

古本、骨董。嵯泉こういうの好きそう
うん、歴史っての?感じるよな
駄菓子屋……駄菓子ってどんな味するか知ってる?
甘くないのもあるかな?見て来て良い?

お、お前が店主かー(どこからともなく鰹節を取り出す)
猫又の頭を撫でる
わー、このゼリー甘そー
ニホンの煎餅みたいな奴なら食えるかな
嵯泉はどういうのが良い?
いや、同じのにしたら良いかなって
おまえも甘いの苦手だろ
ははは、意外と力づくだよな

紙風船とか水ヨーヨーとか買い込んで
日が暮れるまでこうやって遊んでさ
暖かいとこに帰るの夢だったんだ
付き合ってくれてありがとな
うん――帰ろう、一緒に



「わー! 凄え!」
 夕暮れの街に響くのは、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)の無邪気な歓声です。灰色の髪にオレンジ色の輝きをきらきらと纏いながら、彼は元通りの道を取り戻した幽世を、どこまでもずんずんと進んでいくのでした。
「こういうとこって、初めて来るや」
「ふむ、商店街か……正直馴染みは薄いが」
 そんなニルズヘッグの後を追いかけていくのは、共に滅びへと立ち向かっていった、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)なのですが――ちょっぴり温度差を感じないでもありません。凍てついた氷の如きニルズヘッグと、苛烈な炎の闘気を宿した嵯泉、戦いの際のふたりの立場がそっくり入れ替わったような、そうでもないような。
「嵯泉、早く行こう!」
「まぁ楽しそうで何よりだ……いや待て、少し落ち着け」
 ぶんぶんと、音が聞こえてきそうな位に手を振っている相棒に、ちょっぴり頭を抱えつつ嵯泉がストップをかけますが、ニルズヘッグは聞こえているのかいないのか、大声で彼の名前を連呼しているのです。
 ――ああ、通りを歩く妖怪さん達が、興味津々と言った様子で此方を見つめてきます。迷子とは違う居たたまれなさを感じながら、嵯泉は目についたお店にささっと、ニルズヘッグの首根っこを掴んで飛び込んでいったのでした。
「……古本、骨董。嵯泉こういうの好きそう」
 と、そのお店はどうやら内部で一続きになって、隣のお店と繋がっているようです。昔の巻物や掛け軸に混ざって、漬物の壺や駄菓子が並んでいる光景は、何でもありの大らかな時代を感じますね。
「そうだな、古本骨董の類を見るのは割合と好きだ」
「うん、歴史っての? 感じるよな」
 お前とて、其の辺りも嫌いではあるまい――と、ニルズヘッグに頷く嵯泉の元へは、店長の白猫又さんが「すすす」と近づいてきました。
「お、お前が店主かー」
「にゃあ」
 どこからともなく鰹節を取り出したニルズヘッグに、すりすりと顔を寄せる猫又さんは、甘えるコツを上手く知っているようです。
「こっちの方は駄菓子屋か……駄菓子ってどんな味するか知ってる?」
「いや、流石に喰った事が無い。私が子供の頃の菓子とは違う物ばかりで、味の想像も付かんな」
「甘くないのもあるかな? 見て来て良い?」
 構わんよ、と猫の咽喉をごろごろ撫でつつ嵯泉が促すと、ニルズヘッグは早速見つけた駄菓子を手に取って、ちょっぴり昔の空気を味わい始めたのでした。
「わー、このゼリー甘そー」
「色鮮やかな物が多いな。菓子と云う位だから、どれも甘いだろうが……」
 今では余り目にしない原色バリバリのお菓子たちは、からだに悪いとか言って、お母さん達が怒ったりしたかも知れません。でも、隠れてこっそり食べるお菓子は美味しくて、つい手が伸びてしまうものですよね。
「……ニホンの煎餅みたいな奴なら食えるかな。嵯泉はどういうのが良い?」
「ふむ、此の辺りのスナック菓子はどうだろう。正直解らんから、手当たり次第に喰うのも手だな」
 ――そう言って嵯泉の手が掴んだのは、ゆるっとしたタコの絵が描かれた菓子袋でした。『酢だこ味』と大きな文字が書かれてありますが、これは果たして珍味なのかスナックなのか、意見が分かれるところです。
「と、お前もそれを買うのか」
「いや、同じのにしたら良いかなって。おまえも甘いの苦手だろ」
「……折角だから種類を楽しむ事にしただけだ」
「ははは、意外と力づくだよな」
 タン塩味、するめ味、わさび味――お酒のおつまみみたいな味の駄菓子を一杯に買い込んで、それから紙風船や水ヨーヨーなど、懐かしい遊び道具も一緒にカゴの中に入れていけば、猫又さんもふたりの上客っぷりにほくほくした様子でおまけをしてくれました。
「……日が暮れるまでこうやって遊んでさ、暖かいとこに帰るの夢だったんだ」
 ――そうして買い物を終えて、木戸を開いて。先ほどよりも傾いた夕陽のなか、足を踏み出したニルズヘッグの顔は、翳が射していてよく見えませんでしたが。
「友達と一緒に日暮れまで、か。どういたしまして……では、帰ろうか」
 嵯泉は微かな笑みを浮かべて、何でもないことのように、彼に向かって帰路を促したのでした。
「夢ではない、暖かい場所へ一緒に」
「付き合ってくれてありがとな、うん」
 ――帰ろう、一緒に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴久名・惟継
引き続き紡(f27962)と

よしよし、街並みが元に戻ったようで何よりだな
うん?どうした、紡?
理由を聞く前に向かった所を見て理解した
氷菓か!うむ、頂こう

氷菓を食べながら
駄菓子とは懐かしいな
食べ終わったら古本屋や骨董屋へ行こう
掘り出し物が見つかるやもしれんぞ?
様々な店を見て紡へ投げかける

晩飯……そうだなぁ、此処の猫又達と混ざって食うか?
賑やかな食事の時にはまたたびが出てくるかもなぁ

他愛ない話をしていれば氷菓は食べ終わり、棒には「あたり」
紡ははずれか、一本貰ったらやろうか?
はっはっは、冗談だ
では古本屋に付き合うとしよう

店に入る前に気配に振り返る
姿は見えないが、その光に願う

今度は彼に良い事があるように


鈴久名・紡
惟継(f27933)と

のんびり散策……の前に駄菓子屋の店先でアイスを買う
ふたつに割れるやつ
割って、片方を惟継に

アイス喰い終わるまでは
古本屋とかは無理だから割とどうでもいい話をしながら散策
惟継とはいつだって
割とどうでもいい話しかしてない気もするけど

そう言えば、晩飯
特に決めてなかったな

惟継の応えには笑って
親父殿はすぐにそういう事を言う
そういうところだよ、本当

うん?
どうやらアイスでの幸運はカミサマだった歴の長い惟継の方みたいだ
俺のははずれ
いや、うん
アイスの当たりバーを欲しがる程子供じゃないからな?

さてっと、アイス喰い終わったなら
古本屋、行って良いか?
多分、そこでちょっといいことがあるんだろ、俺にはさ



「よしよし、街並みが元に戻ったようで何よりだな」
 さっきまで滅亡の最中にあった幽世にも、ふんわりと長閑な雰囲気が戻っていけば――鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)は通りを歩く妖怪たちに挨拶をしながら、龍の尾でしっかりと道を踏みしめて感慨に浸ります。
「……うん? どうした、紡?」
 と、一緒に居た筈の、鈴久名・紡(境界・f27962)の姿が見えなくなっているのに気づいた惟継でしたが、数軒先の駄菓子屋の前に立っているのを見て合点がいったようです。
「ああ、のんびり散策……の前に」
 ――やがて、戻ってきた紡が袋から取り出したのは、棒つきのアイスのようで。そう言えば甘いものが好きだったなあと思いながら、しみじみ頷く惟継の前にも、ひんやり美味しそうな片割れが差し出されたのでした。
「……ふたつに割れるやつ、の片方」
「氷菓か! うむ、頂こう」
 真ん中で割れるようになっているアイスバーは、ふたりで分け合うのにぴったりですね。そうして駄菓子屋さんの店先を眺めていれば、何だか懐かしさがこみ上げてきて、ふたりはアイスを口にしつつ取り留めのない話をしていきます。
「折角だ、食べ終わったら古本屋や骨董屋へ行こう。掘り出し物が見つかるやもしれんぞ?」
「まぁ、食べ終わるまでは無理だからな、汚れるし」
 うきうきと甥っ子を買い物に誘う惟継でしたが、紡の方はちょっぴり冷めた様子で――けれども、そんな何気ない会話も、彼は嫌いではないようでした。
 ――割とどうでもいい話をしながら、のんびり夕暮れの街を散策していく。
(「まぁ……惟継とはいつだって、そんな話しかしてない気もするけど」)
 遠くから聞こえてくるお豆腐売りのラッパの音が、物悲しさを運んでくるなかで、紡はふと思い立って隣の惟継に声を掛けます。
「……そう言えば、晩飯。特に決めてなかったな」
「そうだなぁ……此処の猫又達と混ざって食うか?」
 賑やかな食事の時には、またたびが出てくるかもなぁ――なんて言って豪快に笑う叔父の様子に、つい紡は吹き出してしまうのです。
「親父殿はすぐにそういう事を言う。そういうところだよ、本当」
「だがな、紡」
 と、真面目な顔で惟継が指さしたお店の看板には、古い書体で『またたび食堂』なんて書かれてあって、釣られて紡も真顔になってしまったりもして。
 ――そんな他愛のない話をしているうちに、ふたりのアイスも食べ終わり、棒に『当たり』があるかどうかのドキドキの瞬間がやって来ました。
「うん? どうやらアイスでの幸運は、カミサマだった歴の長い惟継の方みたいだ」
「……紡ははずれか、一本貰ったらやろうか?」
「いや、うん。アイスの当たりバーを欲しがる程、子供じゃないからな?」
 はっはっは、と笑う惟継の手には『当たり』の文字が書かれたアイスの棒があって、残念ながら紡の方ははずれだったみたいですね。
「さてっと、アイス喰い終わったなら。……古本屋、行って良いか?」
「ああ、付き合うとしようか」
 そうして古本屋の入口に立った時、惟継はふと背後に感じた気配に振り返って、青い瞳を和らげました。姿は見えないけれど――微かに瞬く光を感じて、彼は紡の為に願うのです。
(「今度は彼に、良い事があるように」)
 ――多分、きっと。紡にとってのささやかな幸運は、此処で訪れるに違いありません。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリステル・ブルー
アドリブ連携おまかせ

そうだなぁ。
小さい頃あんまりゆっくりできなかったから、食べ物たべつつ、古本屋さんや雑貨屋さんいきたいなあ。つまり今の僕は欲張りモードなのである!

あまり裕福ではなかったからね。食べ歩きした事がないんだ。駄菓子屋さんでキャンディの補充しておきたいなぁ。
あと猟兵生活記録できそうな日記ほしいんだよね。
丈夫なやつ。

時間があれば神社に行きたいね。
故郷のみんなや旅団のみんなが元気に健やかに過ごせますようにってお願いしておきたいかな。


フリル・インレアン
ふえぇ、さっきはひどい目に遭ってしまいました。
いきなり飛び出した私もいけないのですが
はぁ、このたんこぶ、帽子で隠れない位置にあるから気になってしょうがないです。
あ、アヒルさん
『運命的な再会から紡がれる恋?物語』
【衝撃?的な出会いから始まる恋?物語】が命中した対象を爆破し、更に互いを【お揃いのたんこぶから始まる恋?物語】で繋ぐ。
なんて考えてませんか?
さっきも言ったように、私達は女の子同士だから恋に落ちたりはしません・・・よね?


リゲル・ロータリオ
世界の大ピンチも無事救えて、座敷わらしちゃんもお家に帰れて万々歳っすね!
んじゃ、折角なんで遊んでいくっすよー!

こういう町並み、俺んトコにもあるっすけど、やっぱ作り物と違って本物はいいっすね~
こういの、田舎のおばあちゃんち、みたいな感じなんすかね?
そんな感じで買ったお菓子を食べながらあっちこっち見て回るっす

あ、メンコ! 俺ベーゴマも得意っすけど、メンコも結構行けるんすよ!
なんか面白い柄とかないっすかね? こう、煌めけ流星! みたいな
よさげなメンコをゲットできたら妖怪さんたちもみんなも集まって一緒に遊びたいっすねー♪

※アドリブ絡みお好きにどうぞ!


宝海院・棗
まさにレトロな街並みって感じだねー。

店主の猫又さんたちに渡すかつおぶしはできるだけ用意しておかないとね

まずはゲームセンターへ!
あ、これはいわゆるメダルゲームかな?ちょっとやってみよーっと・・・ん、当たりが結構来てる!

よーし、今度はこのシューティングゲームにも挑戦してみよう!

ひとしきりゲームセンターで遊んだら今度は駄菓子屋にお邪魔

シガレット菓子、ひも飴、カルメ焼き、ビッグカツ、麦チョコ、ラムネ・・・色々食べたい!
あっ、もんじゃもあるのかな?可能なら餅チーズカレー味(+卵&牛スジ)のが食べてみたいな

コミュニケーション時は【優しさ】で接して、可能ならお誘いなどで楽しみのシェアもしたい



 世界の大ピンチも無事に救って――そうして、元凶のオブリビオンに囚われていた座敷わらしの女の子も、追憶のなかにあった家を見つけ、笑顔で帰っていくことが出来たようです。
「これなら万々歳っすね! んじゃ、折角なんで――」
 夕暮れの空の向こう側、きらきら光る幸せの欠片に手を伸ばしながら、黒い翼を元気いっぱいに羽ばたかせたのは、リゲル・ロータリオ(飛び立て羽ばたけどこまでも・f06447)でした。
「遊んでいくっすよー!」
「「おー!」」
 ぐっと拳を突き上げれば、近くに居た妖怪さん達も「何だか面白そう」とばかりに、リゲルの周りに集まってきます。そろそろ暗くなる頃合いですが、彼らも平和になった幽世で、猟兵たちと遊びたいようですね。
「……そうだなぁ。僕は食べ物たべつつ、古本屋さんや雑貨屋さんにいきたいなあ」
「おお、たっぷり遊ぶっすね!?」
 と、商店街に並んだお店を指折り数えて、ふんわり笑みを浮かべるアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)は、自分の小さい頃のことを思い返しているようでした。
(「……あんまりゆっくり出来なかったし、裕福でもなかったからね」)
 人狼病に罹り、生きていくので精一杯――食べ歩きなんて贅沢も、思えばアリステルはした事がなかったのかも知れません。でも、今なら不思議な幽世の街で、童心に帰って楽しむことが出来そうなのですから――。
「つまり今の僕は欲張りモードなのである!」
 ――鞄に詰めているキャンディの補充をしたり、猟兵生活の記録をする日記帳も欲しいのです。持ち運びに適した、丈夫な素材だと尚良さそうですね。
「……こういう町並み、俺んトコにもあるっすけど。やっぱ作り物と違って、本物はいいっすね~」
 そうして早速、お店に向かっていったアリステルを見送ると、リゲルもお煎餅片手にあっちこっちを見て回ります。塀にチョークで落書きをしている妖怪さんに混ざって、カラフルなアートを披露してみたり――地面に描かれた丸い輪っかを、軽やかにぴょんと飛び越えてみたり。
「こういうの、田舎のおばあちゃんち……みたいな感じなんすかね?」
「うんうん、まさにレトロな街並みって感じだねー」
 そんななか、故郷を思わせる賑やかな電子音にリゲルが顔を上げると、駄菓子屋さんの店内にゲームの筐体が置かれてあるのが目に入りました。先ほど声を掛けて来た宝海院・棗(もち・ぷに・とろり。・f02014)は、どうやらアーケードゲームに挑戦しているようです。
「あ、ずいぶん懐かしい感じのメダルゲームっすね」
「……ん、結構当たりが来てる!」
 ぴこぴこ点滅するルーレットを押していく棗の傍には、ゲームのメダルが小さな山を作っていました。店長の猫又さんも、鰹節をカリカリしながらギャラリーに加わっていて、フィーバーが出る度に妖怪さん達の間からどよめきが起こります。
「よーし、今度はこのシューティングゲームにも挑戦してみよう!」
 そうしてその勢いのまま、レトロなドット絵の宇宙人を撃ち落とすゲームに向かう棗の向かいで、リゲルは妖怪たちとメンコ遊びをしていくのでした。
「俺ベーゴマも得意っすけど、メンコも結構行けるんすよ!」
 ――妖怪たちが住まう幽世ならでは、だからなのでしょうか。メンコの絵柄は妖怪が描かれたものが多いようです。面白い柄がないかと周囲を見回すリゲルでしたが、ぬりかべの絵が描かれたものはとっても強そうです。
「煌めけ、流星ッー!」
 ばしーん! と駄菓子屋に木霊していく戦いの音。その音に、びくっと身を竦めたフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、まだ先ほどの戦いでこしらえたたんこぶが痛いようで、ちょっぴり目じりに涙を浮かべているようでした。
「ふえぇ、さっきはひどい目に遭ってしまいました……」
 大きな帽子で隠れないかと、色々工夫をしてみたのですが、どうしてもたんこぶが覗いてしまうのが気になってしまい――今も無意識に、額をさすってしまうフリルです。
(「いきなり飛び出した私もいけないのですが……」)
 腕のなかでぱっちりお目目を開いている、ガジェットのアヒルさんは果たして、そんな主人の苦悩を知っているのかいないのか。溜息を吐くフリルの元へ、その時おいしそうな匂いが漂ってきました。
「……はっ、これは」
 じゅわーと香ばしいソースの香りと共に、鉄板の上で焼かれていくのは、駄菓子屋の定番もんじゃ焼き――しかも、蕩けそうなチーズにカレーの風味も加わって、何とも贅沢なトッピングがされているようです。
「ひも飴、カルメ焼き、ビッグカツ、麦チョコ、ラムネ……色々食べたい!」
「うにゃあ」
 ――其処ではシガレット菓子を口に咥えた棗が、メダルの景品でゲットした駄菓子を小脇に、いそいそともんじゃを焼いている光景が展開されていたのです。
「アヒルさん、もしかして……」
 一緒に食べよう、と手招きをする棗や猫又店長を横目に、アヒルさんに視線を落としたフリルの脳裏では、何だか意味深なフレーズが過ぎっていました。
『運命的な再会から紡がれる恋? 物語』
 ――それは、【衝撃? 的な出会いから始まる恋? 物語】が命中した対象を爆破し、更に互いを【お揃いのたんこぶから始まる恋? 物語】で繋ぐユーベルコード。
「……なんて考えてませんか?」
 ささっと額のたんこぶに手を当てて、つぶらな瞳のアヒルさんに問いかけてみますが、彼は何も言うことなく棗たちの方を見つめています。
「さっきも言ったように、私達は女の子同士だから恋に落ちたりはしません……よね? よね!?」

 ――そんな賑やかな街並みからちょっと離れた、高台にある神社では。無事に目当ての買い物を終えたアリステルが、今日の締めに願掛けを行っていました。
(「故郷のみんなや旅団のみんなが、元気に……そして健やかに過ごせますように」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐々・夕辺
有頂さん【f22060】と

これが…!駄菓子…!
思ったよりいっぱい。目移りしそうだわ!
…あれ? このガム、包装が開いて……(ばっちん)痛い!?
とか言ってる間に有頂さんが選んでくれた駄菓子に興味は移り
猫又さんに手を振って

あら、有頂さん知らないの?
お稲荷は紅い鳥居で……って、もう!

頬膨らませながらも境内に腰かけて駄菓子を頂く
…!(瞳キラキラ)
美味しい!すっごく美味しいわ!
煙カードには思わず尻尾が膨らむ 相手の手を覗き込んだりして

…うん
置いていかないで
ずっと一緒にいて、有頂
…私も、置いていかないから
何処に行ってもいいよ
貴方は自由なのが眩しいもの
だけど必ず、此処に戻ってきて

相手の手を握る
縋るように


日東寺・有頂
夕辺さん(f00514)と

猫又んばあちゃ〜ん
こん夕辺さんと神社デートするけん
良か菓子見繕うてくれっと?
酢漬けイカよかね!
魚ばのした焼肉味のこいと
最後に小型のドーナツば選んで。
おう又さんよあんがとうてお徳用鰹節進呈。

神社に入れば
お狐さんはおると?
隣見て、あ。ここにおった
境内んどっかに腰掛けてまったりしよか
菓子を珍しげに食うとー夕辺さんを眺める
どがんよ うまか?
ホレ言うて煙カードつこうて驚かせたりもしたろうか

なあ俺さ
夕辺を置いてったりしないからな
握られた手を引き寄せて
あんたは俺を待っててくれる
俺はあんたに抱かれて生きる
共に生きよう
今も これからも
俺達の涯まで 



「これが……! 駄菓子……!」
 ほんの少し故郷の風景に似た、青々とした山を遠くに臨みながら。佐々・夕辺(凍梅・f00514)は駄菓子屋さんにずらりと並ぶ、色とりどりのお菓子に目を奪われていました。
「思ったよりいっぱい。目移りしそうだわ!」
 箱にぎゅっと詰め込まれているのは、一口サイズのチョコレートで――硝子瓶のなか、宝石みたいにきらきら輝いているのはゼリーとキャンディでしょうか。
「猫又んばあちゃ~ん、こん夕辺さんと神社デートするけん、良か菓子見繕うてくれっと?」
 ――猫又店長さんの座っているほうからは、日東寺・有頂(ぷてぃんぐ(心結様寄贈)・f22060)が「でーと」だとか言っている声もしたのですが、感激中の夕辺までは届いていなかったようです。
「……あれ? このガム、包装が開いて……」
 そんななか、普通っぽい板ガムを手に取った夕辺でしたが――すっと伸ばした指先が、急にばっちんと何かに挟まれて悶絶してしまいました。
「痛い!?」
「うにゃ」
 と、慌ててやって来た店長さんが、肉球で夕辺の手を撫で撫でしてケアをしてくれます。よくよく見てみるとそれはガムの形をした玩具で、中に仕込まれたバネが指に襲い掛かると言う、ちょっぴり危険なトラップアイテムのようでした。
「酢漬けイカよかね! 魚ばのした焼肉味のこいと……って、夕辺さんどうしたと?」
「……な、何でもないわよ!」
 更に悲鳴を聞きつけた有頂も、ちょっぴり心配そうな表情で此方を覗き込んできましたが、流石に「ガムに指ばっちんされた」とは言えず、そっぽを向いてしまう夕辺です。
「あ、その……ドーナツ、小さくて可愛いわね」
「おう、ばあちゃんがおまけしてくれたんばい」
 ――そうこうしている間にも、夕辺の興味は有頂が買い込んだ駄菓子に移っていったようで。袋に入った一口サイズのドーナツは、猫又おばあちゃんからのサービスのようでした。
「おう、又さんよあんがとう」
「にゃあ」
 差し入れの鰹節に頬ずりをしながら、有頂に向かってグッと前脚を立てる猫又さんは「しっかりやれよ、若いの」と言っていたのかも知れません。
 ――それはさておき、手を振って駄菓子屋を後にしたふたりは、街外れの神社に向かってゆっくり石段を上っていきました。
「そう言や、お狐さんはおると?」
「あら、有頂さん知らないの? お稲荷は紅い鳥居で……って、もう!」
「あ。ここにおった」
 そんな何気ない会話をする間も、有頂はじっとしていられないようで――境内にあった狐の像へと駆け出していったかと思えば、座るのに手頃な場所を見つけたらしく手招きをします。
「さてと、まったりしよか。……どがんよ、うまか?」
「……!」
 そうして、ふたり並んで腰かけて――先ほど買った駄菓子をひとつ摘まんでみると。頬を膨らませていた夕辺の、その瞳もいつしかキラキラと輝いて、有頂の声にもすぐには反応出来ないくらい感動していったのです。
「……美味しい! すっごく美味しいわ!」
「ホレ、こっち見てみんね」
「え、……って、っっ!?」
 その一方で、楽しそうにお化けのカードを手にした有頂の指先から、白い煙が漂って来ると、流石の夕辺も狐の尻尾を膨らませて驚いたりもしましたが。
「……なあ、俺さ」
 やがて、その煙も夕陽の向こうに消えていくと――普段とは違う真剣な表情になった有頂は、己の手に添えられた夕辺の手をぎゅっと握りしめて、迷子の世界で口ずさんだ言葉を、今度は彼のほうから繰り返していったのでした。
「夕辺を置いてったりしないからな」
「……うん」
 ――そんな自分を引き寄せてくれる手が、強くて頼もしくて。そっと彼に身体を預けてみれば、夕辺のほうからも素直な言葉が、ぽつりとぽつりと零れていきます。
「置いていかないで。ずっと一緒にいて、有頂」
 私も、置いていかないから、と――そう言って浮かべた笑顔は、ぎこちないけれど今の彼女に出来る、精一杯のものだったから。
「何処に行ってもいいよ。貴方は自由なのが眩しいもの。だけど――」
 縋るようにぎゅっと握り返した手に、ありったけの想いを籠めて。迷い路の果てで見つけた大切な存在へ、夕辺はそっと、誓いの言葉を投げかけるのです。
「だけど必ず、此処に戻ってきて」
 ――あんたは俺を待っててくれる。俺はあんたに抱かれて生きる。それは、偽りなき有頂の想いでもありました。だから、
「……共に生きよう。今も、これからも」
 俺達の涯まで――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
セト(f16751)と

駄菓子屋ハジメテ?
セトが楽しそうな姿に微笑んで

どれが気になる?
嗚呼、竹とんぼな?
ふふ。じゃあそれ買っちゃおう
んで、妖怪くんたちにも声かけて遊ぼーぜ
俺は綾華。そっちの元気な子は友達のセトだよ
ん、よろしくよろしく
投げるなんて聞いてるセトにくすくすするも
おお、セト上手じゃん

ね、みてみて
さっき買ったカードの薬を指につけて擦ればゆらゆら浮かぶ煙
これは妖怪けむり
そうそう、俺も実は妖怪の仲間なんだよ
あはは、なんてネ。じょーだんっ
いーよ、やってみ

後さっきねえ、ガムを買ったんだ
これ、みんなで食べよ
一個だけ超すっぱいんだってよ
セトもほら。どれがいい?
あ、すっぱいの苦手?
うし、じゃあせーの!


セト・ボールドウィン
綾華(f01194)と

へーっ。これが「だがしや」?
うん、初めて!

棚も壁もいろんなものがぎゅってしてて
何かわくわくする

俺、さっき外で妖怪たちが遊んでた…
棒に羽根みたいなのが付いたやつ
あ。竹とんぼって言うの?俺もやってみたい

妖怪と!うんっ。竹とんぼの飛ばし方、教えてもらうんだ
ね。俺らも一緒に遊んでいい?
これ、どうやったら高く飛ばせるかな
回すの?投げるんじゃなくて?
えっと…あ!飛んだ飛んだ!

綾華の声に振り向くと
指先から上る煙にびっくり
綾華も妖怪だったの?マジか!
え。へーっ…じゃあ俺も出来るかな。やりたい!

ガム。一個だけハズレってことか…
ううん、全然ビビってないし!
それじゃ俺これにする
へへ。せーの!



 ――一歩足を踏み入れると、其処には小さい頃に憧れた、色とりどりのお菓子や格好いい玩具たちが、所狭しと詰め込まれていました。
「へーっ。これが『だがしや』?」
「セトは駄菓子屋ハジメテ?」
「うん、初めて!」
 雑多でいながら、壁にも棚にもいろんなものがぎゅっと詰め込まれている光景は、何だか秘密の宝箱を見つけたかのよう――瞳をきらきらと輝かせて、早速近くの駄菓子の箱を手に取ったセト・ボールドウィン(木洩れ陽の下で・f16751)を、浮世・綾華(千日紅・f01194)はお兄ちゃんみたいに微笑んで見守っているようです。
「何かわくわくする」
 猫又さんがうとうとと微睡んでいるなか、セトの視線はあっちこっちへ揺れ動いて、やがて壁にぶら下がっているくじの袋越しに、綾華と目が合いました。
「どれが気になる?」
「俺、さっき外で妖怪たちが遊んでた……」
 ――どうやらセトは、幽世で目にした玩具を探していたようですね。棒に羽根みたいなのが付いたやつ、と身振り手振りで伝えてみれば、綾華のほうも合点がいったようです。
「嗚呼、竹とんぼな?」
「あ。竹とんぼって言うの? 俺もやってみたい」
 そうして――ふふ、とふたり揃って、棚に置いてあった竹とんぼを手に取ると、猫又店長に声を掛けて会計を済ませます。通りの方からは、妖怪たちの賑やかな声が聞こえてきますから、彼らにも声を掛けて遊んでみようと綾華はセトを誘うのでした。
「妖怪と! うんっ。竹とんぼの飛ばし方、教えてもらうんだ」
 ――夕暮れの時間ももうわずか。長く伸びる影を追いかけて近くの空き地へ向かってみると、妖怪たちが集まって遊んでいるようです。
「ね。俺らも一緒に遊んでいい?」
「俺は綾華。そっちの元気な子は友達のセトだよ」
 すると――自分たちの姿が見えるふたりに、とっても感激した妖怪たちは「きゃあきゃあ」「もけもけ」と歓声を上げて、遊びの輪に誘ってくれました。
「ん、よろしくよろしく」
 そんな訳で、駄菓子屋で買った竹とんぼを取り出したセトは、これをどうやって飛ばせばいいのか早速尋ねてみることにします。
「……え? 回すの? 投げるんじゃなくて?」
「もけけ」
 すると新しい妖怪と思しき、ちょっぴりキモかわいい妖怪が、竹とんぼの軸を手にしつつレクチャーしてくれました。――投げる、と言ったセトの様子に、すみっこの方で綾華がくすくす笑っていたのは見なかったことにしましょう。
「えっと……あ! 飛んだ飛んだ!」
「おお、セト上手じゃん」
 それでもどうにか見よう見まねで回してみると、茜色の空に向かって、勢いよくセトの竹とんぼが舞い上がっていきました。
「……ね、みてみて」
 おおおー、と空き地に上がる妖怪たちの歓声に紛れて、セトの肩を突くのは綾華です。何かと思って振り返ってみれば、何と彼の指先からゆらゆらと煙が上がっているではありませんか。
「え、どうしたのそれ?」
「これは妖怪けむり。……俺も実は、妖怪の仲間なんだよ」
「! 綾華も妖怪だったの? マジか!」
 ――思いっきりセトが信じてしまいそうだったので、ここで種明かしです。これは駄菓子屋で買ったカードを指で擦れば、そこから煙が出てくると言うもの。お化けや妖怪の絵が描かれてあるのが、それっぽいですね。
「あはは、なんてネ。じょーだんっ」
「え。へーっ……じゃあ俺も出来るかな。やりたい!」
 いーよ、と頷いてカードを渡す綾華は、更に駄菓子屋で買ったというガムを取り出してセトを驚かせます。何でもこのガムは、一個だけ超すっぱい味のものが混ざっているのだとか。
「セトもほら。どれがいい? あ、すっぱいの苦手?」
「一個だけハズレってことか……ううん、全然ビビってないし!」
 みんなで食べよ、と妖怪たちも交えながら、誰が超すっぱい味のガムを食べてしまうのか運試し――晩ご飯までの楽しい時間は、まだまだ続いていくのです。
「それじゃ俺、これにする」
「もけもけ」
「うし、じゃあせーの!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
平和になりましたね、良かった!
折角なのでコミュニケーション取ってみましょう。
猫又さん、そう、猫又さんです…
猫ちゃん!!シャルは無類の猫好きなのです。
UDCの猫ちゃんに大人気のチューブタイプのおやつ持ってますよ、猫又さん、如何ですか?(袖から出す)
ゴロゴロしてくれるんですか?嬉しいゴロゴロ(喉を撫でる)
猫じゃらしで遊びましょう。右、左、上ですよ〜
ふふ、楽しいですね!
折角なので袖から一眼レフカメラ取り出して猫ちゃんの写真撮ろう
猫又さん、こっち向いて〜かわいいね〜〜
存分に撫でさせてもらって、はぁ、満足です。


七枷・むつき
※アドリブとかは歓迎でっ

あぁ、助けることが出来てよかった
…ふふ、こんな幸せな気持ちになれるなら。猟兵と言うものに目覚められて良かったと思いますね
人間ではなくて猫又さんですけれど、温かな鳴き声が心地よい気がして思わず顔も綻んでしまいます
折角ですし、掘り出し物が無いか探してみるとしましょう

まずはアイスをお一つ下さいなっ、と
このひんやり感が大好きで落ち着いて…もしかすると好物なのかも?
ぱくりと一口、幸せ気分で訪れたいのは古本屋さん
妖怪にまつわる本とか文献とか、何か自分へのヒントになるような物はないかなと店主さんに聞いてみたり
どんな妖怪って?
アイスが好きな妖怪、とか…いるのかなぁ


三嶋・友
あの子が無事に帰れて良かった
(辺りを舞う光を見て微笑み)…なんだか素敵な光も残してくれたみたいだし?
目一杯楽しんでから帰らなきゃね!
あ、アイスキャンディ一本くださーい♪
良いなあ、この郷愁を感じる街並み!
実際の自分の故郷の姿とは違うはずなのに、こういう街並みに何となく懐かしさを感じちゃうのはなんでだろうね?
…って、は!?当たり!?何気に生まれて初めてかも!?
後で貰いにいこーっと♪
猫又さんのおねだりにはかつおぶしをプレゼント!
ふっふっふ…その代わりと言っては何だけど
撫でて良い?ねぇ、撫でて良いかな??乱暴にはしないから!
お歳も考えて(?)、いたわるように優しく撫でて
もふもふ夕暮れ、幸せだなぁ…♪



「……あぁ、助けることが出来てよかった」
 ふっと辺りを見渡す、七枷・むつき(六花の魔女・f28060)の瞳に映し出されたのは――郷愁をかき立てつつも、あたたかくて優しい街並みで。
(「……ふふ」)
 それは迷子の世界を彷徨っていた時とは違う、踏みしめた道が、ちゃんと何処かへ続いているのだと信じられるような、ほっとする気持ちを彼女に与えてくれたのでした。
「これで平和になりましたね、良かった!」
「うんうん、あの子も無事に帰れたみたいだし」
 ――黄昏時の空も、寂しいのでは無く「また明日」と手を振ってくれているようですね。そう言って頷く、清川・シャル(無銘・f01440)の白金の髪がさらさらと、夕陽を受けてオレンジ色の輝きを辺りに振り撒いています。
「……なんだか、素敵な光も残してくれたみたいだし?」
 そんななか、空に掲げた三嶋・友(孤蝶ノ騎士・f00546)の指先では、夕陽とは違う金色のひかりがふわふわ舞っているようでした。おや、いま座敷わらしの女の子の笑い声が聞こえたような――幸せのお裾分けかな、なんて思いながら、友の顔に笑みが浮かんでいけば、釣られてむつきの胸もぽかぽかしてくるのです。
(「こんな幸せな気持ちになれるなら。……猟兵と言うものに目覚められて、良かったと思いますね」)
「あ、猫又さん、猫又さんがいますよっ」
 と――のんびり路地を進んでいけば、角の向こうから「にゃあにゃあ」と猫の鳴き声が聞こえてきました。何だか、日向ぼっこを楽しんでいるような幸せそうな声に反応して、シャルがぱっと弾かれたように駆け出していきます。
「猫ちゃん!!」
「うにゃあ」
「……あ、駄菓子屋さんがあったんだね」
 お店には『たばこ』と書かれたホーロー看板が掛けられていて――錆混じりでよく判りませんが、売り物の広告みたいな看板も一杯並んでいるようでした。
「ふふふ、シャルは無類の猫好きなのです」
 お出迎えしてくれた猫又店長さんと、早速コミュニケーションを取っているシャルは、袖からごそごそと何かを取り出して、おっとりした笑みを浮かべます。
「これは……UDCアースの猫ちゃんに大人気の、チューブタイプのおやつですよ」
「ふにゃ!」
 ――幽世では馴染みの無い、そのナウなおやつに大興奮している猫又さん。キジトラの猫は警戒心が強い、なんて話も聞きますが、早くもシャルに懐いてしまったみたいですね。
「猫又さん、如何ですか? ……え、ゴロゴロしてくれるんですか?」
(「ごろごろごろ」)
「おおおお、羨ましい……!」
 シャルの膝に乗っかりつつ、されるがままに喉をゴロゴロさせている猫又さんの様子に、猫好きの友も悶絶しています。それでも目一杯、夕暮れの時間を楽しんでいこうと、彼女はまずアイスキャンディーを味わうことにしたようでした。
「あ、私もアイスをお一つくださいなっ」
 ――そうして掘り出しものを探す予定のむつきも、軒先のベンチに一緒に座って、暫し至福の時間を過ごすことに。甘さとひんやり感が同時に楽しめるアイスは、一口食べるたびに幸せな気分が溢れてきます。
(「このひんやり感、大好きで落ち着いて……もしかすると、好物なのかも?」)
「うーん、良いなぁ。この郷愁を感じる街並み!」
 昭和の頃を思わせる風景――となると、友の故郷の姿とは違う筈なのに、どうしてか懐かしさを感じてしまうのです。猫の鳴き声を近くで聴きながら、そろそろ蝉も鳴く頃かななんて思いつつ、心地良い雰囲気にむつきの顔も緩んでしまうのでした。
「……って、は!? 当たり!? 何気に生まれて初めてかも!?」
 やがて――アイスを食べ終わった友が、棒に刻まれた『当たり』の文字に歓声を上げると。
(「……当たりをくれー」)
 何処からか切実そうな声が聞こえてきた気がして、むつきはきょろきょろと辺りを見回したのでした。
(「アイスが好きな妖怪、とか……いるのかなぁ」)
 猫又さんに聞いてみたところ、新しい妖怪なら変わったのも随分いるとのことでしたが、近くの古本屋にならば妖怪図鑑も置いてあるでしょうか。
「ふふ、楽しいですね!」
 ――と、シャルの猫じゃらしに跳び回っていた猫又さんも、お年のせいかちょっぴり疲れた様子です。ごろんと寝転がった彼に鰹節を差し入れしつつ、今度は友の手がわきわき動いてスキンシップに挑戦し始めました。
「ふっふっふ……かつおぶしの代わりと言っては何だけど。撫でて良い? ねぇ、撫でて良いかな?? 乱暴にはしないから!」
「にゃーう」
 お年も考えて、労わるように優しく撫でて。もふもふ手触りにふにゃりと揺れる尻尾を追って、シャルの構えた一眼レフが次々にベストショットを撮影していきます。
「猫又さん、こっち向いて~かわいいね~!」
「もふもふ夕暮れ、幸せだなぁ……♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
カスカ(f00170)と

カスカ、ここがだがしやさんだよっ
なぜだかとくいげに言いながら
お店をぐるり見渡してわくわく

ねこまたさんがやってるんだね
いっしょにあそびたいけどまずは

棚の上から下まであれもこれも気になって
ちいさな籠がいっぱいに
いまぜんぶ食べなきゃだいじょうぶだよ
あっ、カスカこれだよ
いっしょに食べると味がかわるガムっ
あとでいっしょに食べようね、と籠へ

わたしくじびきしたいっ
カスカもやろっ
ええとね、これっ
幸運の恩恵でおおきな苺のキャンディ
わあ、やった

ヨーヨーを手に
店主さんもいっしょにあそぼっ
はじめてだからやり方がよくわからないけど
店主さんや妖怪のみんながきっと教えてくれる
カスカ、カスカ
できたよっ


朽守・カスカ
オズ君(f01136)と

なるほど、此処が駄菓子屋、か
ひと目で見渡せる店内には
お菓子、おもちゃが所狭しと並んで
何だかお祭りに来たような気分だね

見たこともないお菓子ばかりで目移りしてしまう
店内のお菓子を制覇したい気持ちを何とか抑え
一つ一つ吟味……していたはずなのに
いつの間にか、手に持つ籠はいっぱいに
ああ、これが味の変わるガムなんだね
迷うことなく山となった籠の1番上に乗せてご機嫌さ

くじ引きか、楽しそうだ
私も一つ引いてみれば
…あたり。
ピーピーと鳴る、ラムネ菓子を頂こうかな
さっき、買おうか迷っていたんだ

おやオズ君、いつの間にヨーヨーを?
遊び方を知らないので、店長さんも巻き込んで
尋ねながら遊ぼう、か



 夕陽が照らす帰り路を、並んで歩く影がふたつあります。ひとりは、元気いっぱいに靴音を鳴らしながら――もうひとりの方は、落ち着いた足取りでゆったりと。
「カスカ、ここがだがしやさんだよっ」
「なるほど、此処が……」
 そうして緩やかな坂道を駆け上がって、赤い郵便ポストが見えた向こうに、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)達が目指していた駄菓子屋さんが、のんびり『営業中』の札を出して佇んでいたのでした。
「何だか、お祭りに来たような気分だね」
 何故だか得意げになって案内をするオズに、朽守・カスカ(灯台守・f00170)の方も、好奇心に満ちた瞳を瞬かせて店内を見渡しているようです。
「あっ、そう言えば……そんなかんじかも?」
 小さな棚や机、それに壁にまでぎゅっと一杯のお菓子や玩具が並べられている光景は、お祭りの屋台が続いているみたいでわくわくしますね。
「ふにゃあ」
「ねこまたさんがやってるんだね」
 と――売り物に紛れて、ごろんと寝転んでいた猫又の店主へ挨拶をしたオズは、一緒に遊びたい気持ちを我慢して、まず買い物をすることにしたようです。
「えっと、この籠に入れて……」
「……ふむ、見たこともないお菓子ばかりで目移りしてしまう」
 ――ぐるりと見渡す店内は、オズやカスカが普段目にすることのない、カラフルでちっちゃなお菓子で溢れていました。ちょっぴりチープで、けれどもそれが愛おしいような。棚の上のほうにある、日焼けしたプラモデルの箱は、一体いつからお店にあるのでしょうか。
「どれ位の種類があるのかな」
 何気なくカスカが目にしたガムの棚だけでも、キャラクターの絵が描かれたものから小さな箱に入ったもの――紐みたいにぐるぐる巻きになったものなどなど、色々な種類があるようです。
(「こうなれば、店内のお菓子を全制覇……いやいや」)
 ひとつひとつの値段がお手頃なこともあって、ついそんな考えも浮かんでしまいますが、ちゃんと一つ一つ吟味しなければと思い直すカスカです。
「……あっ、カスカこれだよ」
「ああ、これが味の変わるガムなんだね」
 そんななか――駄菓子屋に来る前にオズが教えてくれた、一緒に食べると味が変わると言うガムを見つけ、迷うことなく籠の一番上に乗せたりしていると。
「……もう籠がいっぱいになってしまったようだ」
「でもでも、いまぜんぶ食べなきゃだいじょうぶだよ」
 おやつにしてはボリュームたっぷりの買い物になってしまったふたりは、お揃いのガムを手にしつつ「あとでいっしょに食べようね」と微笑んで、猫又店長の元へと向かうのでした。
「にゃーう」
「あ、わたしくじびきしたいっ。カスカもやろっ」
 ――おや、いっぱい買い物をしてくれたふたりに、店長さんがサービスでくじを引かせてくれるようです。三角のくじが入った箱を、早速がさごそやっていたオズは『いちご』と書かれた当たりを引いて「わあ」と澄んだ瞳を輝かせていました。
「やった、幸せのおかげ……かな?」
「……こっちも、あたりだね」
 一方で、カスカの引いたくじには『ラムネ』の文字が書かれており、笛の形をしたラムネ菓子が景品のようです。ピーピーと可愛い音を鳴らすラムネと、オズの当てたおおきな苺のキャンディ――どちらも素敵で、良い思い出になりそうですね。
「さっき、買おうか迷っていたんだ。……おやオズ君」
「これはヨーヨーだよっ、店長さんもいっしょにあそぼっ」
 ――と、オズの興味はまだまだ尽きないようで。今度はヨーヨーを手にして、近所の妖怪さん達も巻き込んで一緒に遊ぼうとしているようです。
「尋ねながら遊ぼう、か。ふふ、面白そうだね」
 ――はじめてだから、やり方はよくわからない。けれどみんなに教えてもらえば、きっと。
「カスカ、カスカ、……できたよっ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘇摩・瞬華
(アドリブ・他PC様との絡み歓迎)

ここがみんなの故郷…なのかな?
なんだろ、初めて見る風景なのに、なんだか懐かしい気持ちになる…ね。

ちょっと喉も渇いたし、駄菓子屋さんで瓶のラムネを買ってみようかな。
…でも、このビー玉どうやって外すんだろ…?
(誰かに教えてもらうまで悪戦苦闘しているものと思われます)

なんとか外せたし、早速飲んでみるね。
…ん、しゅわっときた。でも、甘くて美味しい。すぐに全部飲んじゃいそう…

飲みきった後の、瓶の中のビー玉。なんとか取り出す方法ないかな…?
…そうだ。
(惑乱マホラマイでビー玉だけを蛍光色のスライムに変化。手の上で元に戻す)
今日の思い出に、持って帰らせて…ね。


スイカ・パッフェルベル
…こうして見ると、文明のモザイクが如き世界なのだな
種族も多種多様で、実に面白い

古本屋は何処かな
なんだ、鰹節?幽世の地形は大体内地のものでは?
あるとは思えな…エッあるのか
フム…これも何かの縁だ。一つ奢ってやろう

狙い通り…古い魔導書だ
魔法は発想の数だけ存在する。出来る限り覚えておかねばな
…それにしても……詠唱が冗長だな。使う時は省略しよう

菓子と飲み物でも買って帰るか。ラムネはあるな、よし
ヨーグル、たばこ状ラムネ菓子…
レイン嬢の分もだ。他猟兵と協同出来るよう気を遣ってくれたようだしな
指輪型キャンディに、ドリンクグミ
…駄菓子は買い溜めしないとな。アポヘルじゃあ甘味は希少品だ
少しずつ愉しもうじゃないか


雨谷・境
散歩するっす!
幸せな気分になるのはあの座敷わらしのおかげっすかね?

散策の前に猫又さんと遊ぶっす
ほーれほれ、かつおぶしっす
いっぱい集まってくると可愛いっすねー
頭とか撫でるっす
またたびもあげたい気持ちはあるんすけど、今日はこのくらいで勘弁してやるっす

そんで駄菓子屋に行くっすよ!
せっかくだからなんか食べるっす!
いっぱい動いたからアイスとか美味い……ん、当たり?
これも座敷わらしのおかげっすかね
ありがたく当たりを交換してもう一本食べるっす!

2本目のアイスを食べつつぼんやり
良い町並みっす
ここって本当はこんなところだったんすね
……帰り道もちゃんと分かるっす
きっと皆お家に帰っていくんすね
めでたしめでたしっす!



 ――幽世。其処は、隣り合う世界で失われた『過去の遺物』で組み上げられた世界なのだと言います。
「ここが、みんなの故郷……なのかな?」
「……ふむ。こうして見ると、文明のモザイクが如き世界なのだな」
 郷愁を誘う夕陽のひかりが、蘇摩・瞬華(蒼篝・f25151)の白銀の髪や尾を、きらきらとうつくしく彩っていくなかで、スイカ・パッフェルベル(思索する大魔道・f27487)の艶やかな黒髪は、薄闇のなかでもくっきりとした存在感を放っています。
「種族も多種多様で、実に面白い」
 妖怪――と一口に言っても色々いるようで「ヒッヒッヒ」と薄ら笑いを浮かべて歩く、ちっちゃいおっさんみたいな種族は、ひょうすべと言うらしいです。
(「確か、笑い声につられると死ぬ……とか言う伝承もあるらしいが」)
 尚も、スイカ達の方を見つめて「ヒッヒ」と笑っている東方妖怪は、単なる変質者にしか見えないような――セクハラで訴えられてもおかしくない光景でしたが。瞬華は至ってのんびりと、妖怪たちに手を振って挨拶をしていました。
「なんだろ、初めて見る風景なのに、なんだか懐かしい気持ちになる……ね」
 ――夕暮れの空にひらひら飛んで行く、一反木綿の集団を見送って溜息を吐けば、故郷のことを思い出してきゅっと瞬華の胸が切なくなります。
「でも、幸せな気分になるのは……あの座敷わらしのおかげっすかね?」
 その一方で雨谷・境(境目停留所の怪・f28129)は、紫が混じり合う空の向こうに、助けた妖怪の感謝の煌めきを見つけたようで、白い歯を覗かせて「にぃっ」と笑みを浮かべていたのでした。
「ささ、散歩するっす! でもその前に猫又さんとも遊ぶっす」
 通りには駄菓子屋さんや古本屋さんなど、幾つもの商店が軒を連ねていて――店長さん以外の猫又たちもちらほらと姿を覗かせる、猫の集会場を兼ねた場所のようですね。
「ほーれほれ、かつおぶしっす」
「なんだ、鰹節? あるとは思えな……」
 そう言って目を瞬かせるスイカの隣では、境がスカジャンのポケットから早速かつおぶしを取り出して、道行く猫又さんから熱い視線を注がれています。
「いっぱい集まってくると可愛いっすねー」
「うにゃあ」
「……あ、お店にも売ってるみたいだよ」
「エッあるのか」
 ――そうして『雨谷』のバス停が、猫たちのたまり場になっていくと。瞬華の指さす先に『花がつお』の看板を見つけたスイカも、これも何かの縁と彼らに奢ってあげることにしたのでした。
「……またたびもあげたい気持ちはあるんすけど、今日はこのくらいで勘弁してやるっす」
「にゃーう」
 こっちへすりすり頬を寄せてくる猫又さんの頭を、わっしゃわっしゃとワイルドに撫でてあげつつも、境たちは本命の駄菓子屋さんへと足を運びます。
「せっかくだからなんか食べるっす! いっぱい動いたからアイスとか……」
「わたしはちょっと喉も乾いたし……この、瓶のラムネを買ってみようかな」
 と、ひんやり冷えた冷蔵庫から、面白い形をしたラムネ瓶を取り出した瞬華でしたが、飲み口の所にビー玉が詰まっていて蓋を開けられません。
「……このビー玉どうやって外すんだろ……?」
 逆さまにしてみたり、瓶を振ったりもしてみましたが、うんともすんとも言わず――瞬華が悪戦苦闘していた所へ、やって来たのはスイカでした。
「ヨーグル、たばこ状ラムネ菓子……それに瓶のラムネもあるな、と……どうした」
 駄菓子を買い込むことにしたらしい彼女ですが、難しい顔をして瓶とにらめっこをしている瞬華を見たところで、合点がいったようです。
「ああ、これは……思い切ってこう、押す!」
「わっ!!」
 蓋の出っ張りを掌で包み込むようにして、一気に――すると「すぽん」と気持ちいい音を立てながら、ビー玉が底に落ちていって、しゅわしゅわの炭酸が飲み口目掛けて押し寄せてきたのでした。
「……ん、んん。しゅわっときた。でも、甘くて美味しい」
 それでも、どうにかラムネを零すことなく飲んでいった瞬華は、爽やかな喉越しにご満悦のよう。これなら、すぐに全部飲んでしまいそうです。
「お、当たり? これも座敷わらしのおかげっすかね」
 ――その隣では、『当たり』が書かれたアイスの棒を交換して貰った境が、そのまま二本目のアイスにかぶりついていて。
「……良い街並みっす。ここって、本当はこんなところだったんすね」
 ひんやりしたアイスの冷たさが、夕陽に火照った境の頬をそっと冷ましてくれるなかで、遠くの方からは妖怪たちの笑い声が、風に乗って此方まで届いてきます。
「……帰り道もちゃんと分かるっす。きっと皆、お家に帰っていくんすね」
 これで、めでたしめでたし――目当ての魔導書を無事に手に入れたスイカも、案内役のグリモア猟兵に指輪のキャンディを買いながら、ふと空を見上げていました。
「魔法は発想の数だけ存在する。出来る限り覚えて……ついでに、駄菓子も買い溜めしないとな」
 ――彼女の故郷では、魔導書も甘味も希少品なのですから、少しずつ愉しむことにしましょう。けれど、冗長な魔法の詠唱は、使う時には省略をすることにして。
(「……あ」)
 おや、瞬華はと言えば、飲み切った後のラムネ瓶を手にしたまま、何やら考え込んでいる様子です。
(「瓶の中のビー玉。なんとか取り出す方法はないかな……?」)
 そうだ、とその直後に何やら閃いたらしい彼女は、ふわり蒼き焔を舞い踊らせてマホラマイの術を発動させました。惑乱の力は、ビー玉だけを蛍光色のスライムに変えて――そのままするりと手のひらに落ちたのなら、瞬く間に元のビー玉へと戻っていきます。
「今日の思い出に、持って帰らせて……ね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

迎えに来てくれた彼の姿を見つけ
心配かけてごめんなさいね
大丈夫、必ずあなたのもとに帰ると決めていたから
何も怖くなかった

せっかくだから二人でこの街を散策しましょう
懐かしい歌を口ずさみながら
行き交う人々もみんな楽しそう
あの子がくれた幸運のおかげね

……今にして思えば、あの子の気持ち、少し分かるような気がします
敵に捕らわれたり、あなたに庇われて傷つけてしまったり
たくさん迷惑をかけてしまったのに、と
それでもあなたは許してくれた
これ以上自分を責めなくていいと

不安を慰め、温かく寄り添えるように
それが、聖者としての救世のかたち

最後は神社にお参りしましょう
わたくしが帰る場所は、あなた


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

遠くにヘルガの姿を見つけ
疾く駆け寄り、もう離さぬとばかりに強く抱きしめる

お前が一人でこの世界に向かったと聞いて心配していた
探せど探せど見つからず、不安にかられもした
その様子だと無事なようだな、安心した

迷惑だなんて、そんなことは気にしなくていい
お前が傷つき涙に暮れることに比べれば、どうということはない
お前だって、助けた座敷わらしの娘に、そんなことは微塵も思わなかっただろう?

俺にとって、お前の笑顔が最上の幸福
お前が俺を案じ、世界の平和を願うように
世に笑顔と幸福が満ちよと願う

最後に二人で神社に寄り、夫婦円満と無病息災を願おう
大丈夫だ。お前の帰る場所は、いつだってここにある



 それは――何処かの街の片隅で繰り広げられた、ささやかな再会の物語です。
「――ヘルガ!」
 緩やかな坂道の向こうに、大切な存在を認めたヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は、無意識のうちに駆け出して、彼女を腕のなかに抱きしめていました。
「ヴォルフ……心配かけて、ごめんなさいね」
 夕暮れの世界で、鮮やかに花開いたミスミソウ――その蒼の色彩を溶かした瞳を、ほんのちょっぴり潤ませながら。ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)もまた、愛しい伴侶のぬくもりを感じながら、そっとその胸に寄り添っていくのです。
「お前が一人で、この世界に向かったと聞いて……心配していた」
 ――ああ、もう離さぬとばかりに強く抱きしめた様子からも、ヴォルフガングの想いが伝わってくるようで。
「探せど探せど見つからず、不安にかられもした」
「……大丈夫、」
 カタストロフの危機にあった幽世は、道が失われ迷子の世界に変わっていたのです。ひとりぼっちで彷徨い続ける恐ろしさを、もしかしたらヴォルフガングも感じていたかも知れない――そう思ったヘルガは、優美な笑みを浮かべつつ、彼の手をぎゅっと握りしめたのでした。
「必ずあなたのもとに帰ると決めていたから。何も怖くなかった」
「ああ、……その様子だと無事なようだな」
 安心した、と吐き出したヴォルフガングの吐息に、確かな安堵が混じっていたことに頷くと、ヘルガは一緒にこの街を散策しましょうと誘います。
(「大切な人との、思い出――」)
 ――口ずさむのは、懐かしい歌。それは涙を流していた女の子へ、不安に負けないでと歌い継いでいった音色でした。
「……今にして思えば、あの子の気持ち、少し分かるような気がします」
 平穏を取り戻した幽世で、行き交う人々はみんな楽しそうにしていて。これも、あの子がくれた幸運のおかげかしら――なんて思いながら、ヘルガはヴォルフガングとの思い出を手繰り寄せて、自身の想いをひとつひとつ言葉にしていきました。
「敵に捕らわれたり、あなたに庇われて傷つけてしまったり……たくさん迷惑をかけてしまったのに、と」
「……迷惑だなんて、」
 そんなことは気にしなくていい、ときっぱり告げたヴォルフガングの姿は優しくて頼もしく――彼に縋り、甘えたくなる気持ちを、ヘルガは懸命に押しとどめていきます。
「お前が傷つき涙に暮れることに比べれば、どうということはない」
「ええ……そう、それでもあなたは許してくれた。これ以上自分を責めなくていい、と」
 それでも――犠牲のうえに成り立つ世界の在り方を、かつてのヘルガは目にしてしまっていたから。絶望の淵で出会ったヴォルフガングは、彼女の奇跡に救われたと言うけれど、本当に彼の献身に応えられているのか、時折不安になってしまうのです。
「……それに、お前だって。助けた座敷わらしの娘に、そんなことは微塵も思わなかっただろう?」
「それは――ええ、勿論よ」
 ――だけど、こんな風に。ヴォルフガングはヘルガに、改めてほんとうの想いを気づかせてくれるのでした。ああ、彼にとって、ヘルガの笑顔が最上の幸福であるのならば。
(「わたくしは不安を慰め、温かく寄り添えるように」)
(「お前が俺を案じ、世界の平和を願うように」)
 世に笑顔と――幸福が満ちよと願う。それが、聖者としての救世のかたちだと、ヘルガはヴォルフガングと共に誓いの言葉を交わしていくのです。
「大丈夫だ。……お前の帰る場所は、いつだってここにある」
「……ええ。わたくしが帰る場所は、あなた」
 ――ふたりが最後に向かう場所は、街外れの神社。願うのは無病息災と、夫婦円満です。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【和気】
よし、無事に珍道中完了だな―否、本番はこっからか!
道案内交代だな、改めてヨロシク!(妖怪にも笑いかけ)

ホント色とりどりで見てるだけでも楽しいな~
サイズも価格も手頃で、こりゃオレも思わず色々買っちゃいそ…って言い切る間もなく、君らの食気はやっぱそーなるよネ!
ああでも上等だ、此処はオレも全力で乗っかろう!

幸いな時間の礼には、オレからも菓子と鰹節と―そっともふもふを!
…!嗚呼、至福…!(いつも猫にすらフラれるので感激)
アイスも…やった!貧乏籤以外で当たるなんて…!アリガト!
童と、皆にも感謝だな!
皆仲良く幸せ一杯で何よりだ

嗚呼、無性に何か込み上げる様な―こーいう雰囲気、良いよな
きっと、またな!


鳳来・澪
【和気】
ふふ、そしたら後は約束通り、皆で心弾む時間を楽しみ尽くそっか!

一風変わった駄菓子揃いで可愛えね!
一つ一つ、夢と遊び心で満ち溢れてるみたい
オススメは絶対欲しいし、色違いのも纏めて楽しみたいし…はーい、皆でわけっこと大人買いに賛成!
ふふ、皆ええの見つけたね
帰ってからの楽しみもまた増えたねぇ

あ、うちもお礼!店主さんには鰹節と、皆には瓶ラムネを!
夏の風物詩、此処やと一層映えるよね
…わ、うちも当たり!
童ちゃんにも幸いが戻ってほんまによかった
(幸せそうに店主さんを撫で――嗚呼、またおばあちゃんを思い出すなぁなんて少ししみじみしつつも和やかに)

――こういう時はまた遊ぼね!って締め括るんが一番やっけ!


筧・清史郎
【和気】
案内をよろしく頼む、と童の妖怪さんに笑み
興味深いこの世界を皆と暫し楽しもうか

やはりまず目を惹かれるのは駄菓子
…おとながい、とは?
成程、纏めて頂くという事か、良いな
妖怪さんや店長のおすすめ聞きつつも
菊里と共に、おとながいし順にいただこう(微笑み

もふもふ撫でさせて貰いつつ、店長には鰹節を
妖怪さんには大きく愛らしい動物さん棒キャンディを御礼に

皆とアイスを味わえば
ん?当たり、と書いてあるがこれは…?
おお、菊里と澪の棒にも記されているな
もう一本貰えるのか、それは幸運だ
伊織も、今日ばかりは良かったな(一等微笑まし気に肩ぽむり

この風景も菓子も味わい深く
皆と和気藹々過ごすひとときは、やはり楽しいな


千家・菊里
【和気】
救出した妖怪さんも改めて誘い
明るく楽しく駄菓子巡りへ

俺達の世界とはまた似て異なる、不思議な彩りで溢れていますよね
ふふ、どれもこれも見るからに味わい深い風情で、目移りが止まりません
妖怪さんや店主さんのお勧めは勿論、後程仲良く頂くとして――お土産用も皆で手分けして大人買いするしかないですよね?
(籠一杯に煌めく駄菓子に負けず劣らずの輝く笑顔で頷き)

一頻り買物満喫後は店主さんに鰹節を差入れたり早速駄菓子を広げたり、お礼と一休みを和気藹々と

(アイス結果に笑顔深め)
おや、更なる幸運が――皆さんは如何でした?
ふふ、最後まで仲良く楽しめましたね

この街並も駄菓子の味わいも、ほのぼのした心地になりますねぇ



「よし、無事に珍道中完了だな――否、」
 堂々巡りの迷路は消え去って、踏みしめる道もちゃあんと何処かへ続いているのだと感じられる――そんな、いつも通りの風景を取り戻した幽世を眺めながら、呉羽・伊織(翳・f03578)は頼もしい仲間たちへ、更なる冒険に行こうと誘うのです。
「本番はこっからか!」
「ふふ、せやね。そしたら後は約束通り、皆で心弾む時間を楽しみ尽くそっか!」
 ――そう、皆で笑って、仲良く楽しい帰り道を歩いていくことにしましょうと。一途な思いで滅びに立ち向かった鳳来・澪(鳳蝶・f10175)も、救出された妖怪さん達に向けて手招きをしていったのでした。
「くわー、くわー」
「クルッポー」
 麒麟に呑み込まれていた、黒と白の双頭の鳥はヨゲンノトリと言うらしく、流行病を予言したとされる縁起の良い妖怪です。鳴き声を聞くと、鴉なのか鳩なのかちょっと分かりませんね。
「いつまでー」
 一方で、人間みたいな声で鳴いているのは、以津真天と言う妖怪で。こちらは凶兆を告げるとされており、ヨゲンノトリさんと火花を散らしているようです。
「……なんで、鳥の妖怪ばっかりこんなに集まったんだ?」
「はっはっは、興味深いこの世界を皆と暫し楽しもうか」
 そんな和気藹々の顔ぶれに、伊織は首を傾げている様子でしたが、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)の方は優雅に扇を開きつつ、いつも通りの雅な笑みを浮かべていたのでした。
(「あ、何となく理由が分かったかも」)
 そんななかで、澪は清史郎の頭に乗っかっている、ふわふわひよこのポポ丸を見上げて、彼が妖怪たちの熱い視線を集めていることに気が付いたようです。ポポ丸と仲良くなりたい――もしくは、あんな風に頭の上に乗っかってみたい、なんて思ったのでしょうか。
「さ、道案内交代だな、改めてヨロシク!」
「うむ、案内をよろしく頼む」
 と――そんな風にわいわいと騒いでいる傍らで、電信柱の影からこちらを覗いている少女の様子に、伊織も清史郎もとっくに気づいていたようです。
「あ、童ちゃんもおいでおいで」
 金色のひかりをきらきら散らし、ちょっぴり恥ずかしそうに佇む座敷わらしへ、澪も一緒に遊ぼうと声を掛ければ――彼女は小走りに駆けよって来て、みんなと一緒に駄菓子屋へ向かうことにしたのでした。
「……俺達の世界とはまた似て異なる、不思議な彩りで溢れていますよね」
 並んで優しく手を繋ぎながら、夕暮れの街をゆっくり散策する。そんな何気ない日常を楽しむ、千家・菊里(隠逸花・f02716)のまなざしは、未だ目に見ぬ駄菓子を想ってか、興味深そうに細められています。
「うにゃあ」
 やがて――猫又店長さんの間延びした声に迎えられて、小さな駄菓子屋に足を踏み入れていけば。其処には可愛い宝物がぎゅっと詰め込まれたような、魅惑の空間が広がっていたのでした。
「わぁ、一風変わった駄菓子揃いで可愛えね!」
「ホント、色とりどりで見てるだけでも楽しいな~」
 サイズも価格もお手頃な駄菓子は、子ども達の夢がひとつひとつ形になったかのよう。そんな、夢と遊び心に満ち溢れたお菓子をひとつ手に取った澪が、色違い同士を見比べて迷っていると――これなら自分でも色々買っちゃいそうだと、伊織もマーブルチョコの眼鏡を翳してうんうん頷いています。
「ふふ……どれもこれも見るからに味わい深い風情で、目移りが止まりません」
「オススメは絶対欲しいし、後は後は――」
「……お土産用も皆で手分けして、大人買いするしかないですよね?」
 目を輝かせている澪に向かって、大らかに微笑んだ菊里の方は、既に買い物かごへ駄菓子を山のように積み上げているようでした。勿論、店主や妖怪たちのお薦めも後で仲良く頂くことにして、と――彼のミステリアスな笑みは、煌めく駄菓子にも負けず劣らず、きらきらと神々しく輝いています。
「はーい、皆でわけっこと大人買いに賛成!」
「……ああ、君らの食気はやっぱそーなるよネ!」
 ――こんな流れになっていくのは、何となく分かってはいたものの。ついでに「おとながい、とは?」と真面目な顔をして尋ねてくる清史郎も、余りにいつも通りだったから。伊織は何だか楽しくなって、半ばやけっぱちのようにしてこう叫んだのでした。
「でも上等だ、此処はオレも全力で乗っかろう!」
「……成程、纏めて頂くという事か、良いな」
 こうなればもう無礼講、お店のなかは「クルッポー」「いつまでー」「くわー」と大騒ぎです。
「ふふ、皆ええの見つけたね。……帰ってからの楽しみもまた増えたねぇ」
 ――そうして、幸せな時間はあっと言う間に過ぎていって。たっぷりの買い物を終えた一行は、駄菓子屋に置かれたベンチに腰掛けて、思い思いに寛ぎつつ今日一日を振り返っていきました。
「そっと、もふもふを……! 嗚呼、至福……!」
「にゃーう」
 皆から鰹節を差し入れして貰った猫又店長さんは、すっかり猫そのものと言った様子で、ごろごろと気持ち良さそうに喉を鳴らしています。いつもは猫にフラれている伊織も、これには大感激のようで――一方の妖怪さん達の方はと言えば、清史郎に買って貰った動物型の棒キャンディを巡って、「くわー」「いつまでー」と再び火花を散らしているようでした。
「……夏の風物詩、此処やと一層映えるよね」
 ――冷えた瓶のラムネをお供にして、しみじみと澪がそう呟けば。早速駄菓子を広げつつ、棒アイスを齧っていた菊里は、何かに気づいたらしく瞬きを繰り返しています。
「おや、更なる幸運が――皆さんは如何でした?」
「ん? 当たり、と書いてあるがこれは……?」
「……わ、うちも当たり!」
 すると、次々に幸運の連鎖が起こったようで『もう一本』の当たりが出たのだと、清史郎や澪もアイスの棒を夕陽に翳して声をあげます。
「……やった! 貧乏籤以外で当たるなんて……! アリガト!」
 そう言って、ちょっぴり涙ぐんでいる伊織は、普段どれ程の不運に見舞われていたのでしょうか――「今日ばかりは良かったな」なんて、肩を叩く清史郎の優しさが切なさを掻き立てていきますが、皆が仲良く幸せ一杯であるなら何よりです。
「ふふ、最後まで仲良く楽しめましたね」
(「……童ちゃんにも幸いが戻って、ほんまによかった」)
 和気藹々と過ごす皆を、にこにこした様子で眺めている座敷わらし――そんな彼女もまた、帰るべき場所を見つけられたのだと。懐かしいおばあちゃんのぬくもりに似た、あたたかな空気を感じていく澪は、しみじみしつつ和やかな時間を楽しんで、幽世でのひとときに別れを告げていくのです。
「――こういう時はまた遊ぼね! って締め括るんが一番やっけ!」
 ――無性に何かがこみ上げてくるような、懐かしい雰囲気に心地良さを感じつつ。やがて伊織も猫又の店主や妖怪たちに向けて、元気いっぱいに手を振ってこう叫んだのでした。
「きっと、またな!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

甘渼・アメ
🌈虹櫻

さ!遊ぼ!
櫻宵にこの世界を案内したげる!
笑顔満開、懐かし通りをてくてく歩く
雨上がりの空みたいに心も晴れやか!

わ、いいね
アイス!
櫻宵がくれたアイスを片手に空き地に座って
櫻宵と一緒にぱくり
アイスで祝杯なんて素敵

空を見上げれば、虹がかかってアメ達を祝福してくれてるよう!
ちなみにアイスも当たり
ついてるべ!なんてガッヅポーズ

アメが可愛い?なんて照れるべさ
でも悪くねぇ
素のオラを褒められるのは……って、笑ったーー!!
少し頬を膨らませ
綺麗な笑顔に何故か頬が赤くなる

櫻宵って綺麗で可愛くて、大和撫子って感じで憧れちゃう!
アメも櫻宵みたいな綺麗な女性になるわ!!

え??

え、おと、え????

えーーーー!!??!


誘名・櫻宵
🌸虹櫻

ええ!案内して頂戴
迷子仲間から紡がれた縁に綻んで
知らぬのに懐かしいと感じる不思議の街をとも歩き
殺すばかりだった妖と一緒に散策なんて新鮮だわ
アメの虹色笑顔に心も華やいで
美味しそうなアイスを見つけたものだから、はいと彼女に手渡すわ

素敵な出会いを改めて、アイスで乾杯しましょうよ

冷たい氷を楽しめば、空に虹がかかってたわ
それにアイスも当たり!
やったわね、アメ
元気な少女に心が和む

その田舎言葉がホントのあなた?
とっても素朴で可愛くて素敵だと思うわよ!
私は好きだわ
なんてくすくす笑んでみせ

うふふ
大和撫子だなんて嬉しいわね
あなたの言う通り、そうありたいわ
……噫、でも私

男よ?

アメの叫びに、今日一番笑ったわ!



 世界の終わりが迫っていたときは、何だか空も重たげな感じがしていましたが――全てが元通りになった今は、吸い込む空気もすっきりとして、ひかりの粒が優しく降り注いでくるような気がします。
「さ! 遊ぼ! 櫻宵にこの世界を案内したげる!」
「ええ! 案内して頂戴」
 夕陽を浴びて、淡いピンクの髪にオレンジ色の輝きを纏った甘渼・アメ(にじいろ・f28092)は、ぱぁっと笑顔を満開にして、誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)を幽世の街へと誘っていきました。
(「……ふふ」)
 ――これは、迷子仲間同士で紡がれた縁なのです。偶然、此処へ迷い込んでしまったからこそ、ふたりは出会うことが出来た。それを思えば、案外迷子と言うものも悪くないのかも知れません。
(「それに……殺すばかりだった妖と、一緒に散策なんて」)
 知らない筈なのに、何故だか懐かしさを覚える通りをてくてく歩く櫻宵の隣では、アメがのんびりと鼻歌を響かせているようです。陰陽師を生業としていた、櫻宵の生家――其処に蔓延っていた魑魅魍魎の類とは、厳密には違う種なのかも知れませんが、ひとびとに友好的な彼女らの存在には、新鮮な感じを覚えたのでした。
「ああ、雨上がりの空みたいに心も晴れやか!」
 それに何より、くるくると虹みたいに色彩を変えていくアメの表情を見ていると、櫻宵のこころも華やいでいくのです。
「――あら?」
 そんななか――不思議の街で見つけた屋台で、美味しそうなアイスを見つけた櫻宵は、ちょっと行ってふたつぶん買ってくると「はい」と言ってアメに、その片方を手渡しました。
「素敵な出会いを改めて、アイスで乾杯しましょうよ」
「わ、いいね、アイス!」
 棒状のアイスキャンディーは、ストロベリーとバニラ味が混ざった二色のアイスのようです。立ったまま食べるのは、大和撫子っぽくなさそうだと言うことで、空き地にあった土管に腰掛けながら――ふたり一緒にぱくりと一口齧ってみると、ひんやり甘くて冷たい氷が口いっぱいに広がっていきました。
「……うん、アイスで祝杯なんて素敵!」
「それに……あら、見て」
 ――ふと見上げた空の彼方には、ふたりを祝福するみたいに薄っすらと、七色の虹が架かっていたのです。もしかしたら、きらきらと零れ落ちる金色のひかりが雫となって、虹を呼んでくれたのでしょうか。
「それにアイスも当たりだわ!」
「あ、アメのも。ふふー、ついてるべ!」
 更に、食べ終わったアイスの棒に書かれた『当たり』の文字を同時に見せ合えば、嬉しくなったアメは虹に向かってガッツポーズを決めます。
「やったわね――……で、その田舎言葉がホントのあなた?」
「……うっ」
 ――直後、興奮のあまり地が出てしまったアメに向けて、何とはなしに櫻宵が問いかけてみると。彼女は拳を天に突き上げたまま、「しまった」とばかりに硬直してしまったのでした。
「とっても素朴で可愛くて素敵だと思うわよ! 私は好きだわ」
「え、え、アメが可愛い? そ、そんな照れるべさ」
 けれども、優雅に微笑んだ櫻宵の方は、そんなアメの姿に心が和んだのだと言って――素直に褒められたアメもまた、くすぐったさを感じつつ誇らしげに胸を張ってみせるのです。
「……ええ、うふふふふ」
「でも悪くねぇ。素のオラを褒められるのは……って、笑ったーー!!」
 ああ、こちらを二度見して、その見た目とのギャップに櫻宵が噴き出しそうになっています。その様子に気づいたアメが少し頬を膨らませてみるものの、櫻宵の綺麗な笑顔を目にすると、何故だか頬が赤くなって――。
「櫻宵って綺麗で可愛くて、大和撫子って感じで憧れちゃう!」
「……うふふ、大和撫子だなんて嬉しいわね」
「アメも、櫻宵みたいな綺麗な女性になるわ!!」
「あなたの言う通り、そうありたいわ。……噫、でも私」
 ――そんな内心のどきどきを悟られないよう、力いっぱい宣言をしたアメですが、直後に櫻宵から放たれた言葉は、彼女の想像を遥かに超えるものでした。
「男よ?」
「え??」
 え、おと、え??? ――移ろい揺れる虹色が、雨雲を巻き込みながら、空一杯に広がっていくと。
「えーーーー!!??!」
 その叫び声に、あはははははと――艶やかな桜の花がぱぁっと散って、黄昏の空をうつくしく彩っていったのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九々麗・吟
人の世の懐かしきも妾にとってはほんの瞬きの時
幼き世の賑わう路をからんと下駄ならし
すり寄る猫に指滑らせて

店先よりの景気良い鳴き声に招かれ目にする並ぶ品
猫の主人よ、髪を飾る櫛をひとつ見繕ってはくれぬか
戯れに交わす言葉遊び

再び通りを歩けば身を囲み舞う光にやわらな視線を向けて
無事、家に帰れたのじゃな
差し出した手には先程買った半月型の本つげ櫛
赤塗りに金箔の猫が黒髪によく映える事だろう
生んだ狐火で櫛を燃やす
昇る煙

届くかどうかなど知らぬ
然して此処は幽世、摩訶不思議の世
起こりえぬ事も起こる世
ならば面白い方が、よいであろう?

土産じゃ
もう迷子になるでないぞ
次は妾が手招き隠してしまうかもしれぬよ

化かす狐に
──御用心



 ――りぃん、りぃんと響く鈴の音が、黄昏に忍び寄る宵闇を誘っていきます。ひとつ鳴るたび空の月が、その銀色の輝きを妖しく強めていくかのようで。
(「ああ、人の世の懐かしきも」)
 からん、からんと下駄をならして、妖怪たちが行き交う路地をすり抜けていく九々麗・吟(艶美・f27960)は、果たして此の世の存在であったのでしょうか。
(「妾にとっては、ほんの瞬きの時――」)
 すり寄る猫に、戯れに滑らせていく指先もまるで、微かな風がそよいだように見えながら――彼女はふと、店先から聞こえてくる猫又さんの、景気の良い鳴き声にそっと顔を上げたのでした。
「……猫の主人よ、髪を飾る櫛をひとつ見繕ってはくれぬか」
「ふにゃあ」
 骨董品を並べていた老店主は、目をしょぼしょぼさせつつ吟のほうを見て一声鳴きます。果たして、彼の目に吟の姿は、どんなふうに見えていたのでしょうか――戯れに言葉をひとつふたつ交わした後で、再び通りに足を向けてみれば、ふわりふわりと彼女の元へ、金色のひかりが舞い降りて辺りに散っていきます。
「無事、家に帰れたのじゃな」
 ――まるで、吟の身を囲み祝福していくかのようなそれに、やわらな視線を向けて呟けば。差し出した手に、先ほど店で買った櫛をそっと乗せながら、吟は静かに狐火を生んで炎を舞わせていくのでした。
(「きっと、黒髪によく映える事だろう」)
 その――半月型の本つげ櫛は赤塗りに、愛らしい金箔の猫があしらわれているものです。おかっぱ頭をした少女はもう涙に濡れることも無く、笑顔で幽世のどこかを駆け回っているでしょうから。
(「届くかどうかなど知らぬ、……然して」)
 ――ぼぉっ、と勢いを増す幻惑の炎が、瞬く間に櫛を呑み込んで立ち昇っていく煙を、黄昏の向こうまで見届けながら。吟は面白そうに、こんなことを思うのです。
(「此処は幽世、摩訶不思議の世。……起こりえぬ事も起こる世じゃ」)
 ――ならば面白い方が、よいであろう? からんと鳴らした下駄の音に、ころころ笑う鈴の音が重なっていけば、もう夕暮れの時間も終わりを迎えます。
「土産じゃ、もう迷子になるでないぞ」
 次は妾が手招き隠してしまうかもしれぬよ――そんな虚とも真ともつかぬ吟の囁きが路地裏を震わせていくと、見つめた路の先が不意にぐにゃりと歪んで、何処か見知らぬ風景がふっと映し出されたように見えました。

「化かす狐に──御用心」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月18日


挿絵イラスト