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小さな涙、大粒の星(作者
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●或る酒場にて
 その日、陽も高いうちから賑わう或る宿場町の酒場の中に、まさか此処で聞こうとは誰も思わぬ程の幼い声が響き渡った。

「いらい、って言うんでしょ! ここでおねがいすれば、ぼうけんしゃさんが叶えてくれるってきいた!」
「おいおい嬢ちゃん。ここは嬢ちゃんみたいなちびっこが来るところじゃねぇぞー?」
「ロレッタ、チビじゃないもん!」

 外見・言動から察するに、齢は恐らく五~六歳くらいだろうか。ロレッタと名乗る少女の長い赤毛はその若さゆえに艶々と柔く癖無く背中へ落ちて、大きな金色の瞳は真剣さが窺える強い光を宿している。

「お金ならちゃんとはらうから! ほら!!」

 やがて少女が目いっぱい広げ差し出した手の上には、酒代一杯分にもならない古ぼけた銅貨が一枚。思わず顔を綻ばす者、苦笑して見守る者、構おうとする者――大人達の反応は様々だったが、誰も邪険にしないのは、少女が懸命だったからだ。
 さあ、懸命に願う、その理由を聞かせて欲しい――微笑ましく様子を見ていた大人達は、しかし続く少女の言葉にその表情を一変させることとなる。

「おねがい、ぼうけんしゃさん! やくそくの星まつりがもうすぐなのに……このままだと、おじいちゃんがまものさんに食べられちゃうかもしれないの!」

 ――ガタン!
 必死の少女が最後に叫んだ言葉の不穏に、幾人かが立ち上がる。内の一人、少女をからかっていた体格の良い日に焼けた男は、少女の更なる説明を求め、ずい、と身を乗り出した。

「嬢ちゃん、それじゃわからねぇ。じいちゃんは今何処に――ああ、星祭りってことは『星の村』か? 魔物ってのは何体だ?」
「そんな凄んだら怖いでしょ、こんな小さな子に。……ねぇロレッタ。その魔物さんが何処に居るのか、ロレッタは知っているの?」

 男を諌めて前へ出たのは、肩に大きな弓を掛けた細身のエルフの女性だった。長い脚を折り畳み、視線を少女と同じ高さまで落として柔らかく問えば、……こくりと頷いた少女の瞳から、小さな光が零れ落ちた。
 ひとつ、またひとつと。寂しく頼りなく落ちていく、それは少女の不安の涙。

「……あのね、おじいちゃん、星の村にすんでるの。あさって、星まつりで、あそびにおいでって、おてがみきたの。……でも、とちゅうの道にまものさんがたくさんいた、星の村の方にむかってたって、さっき商人さんがおはなししてて……ひっ……」

 嗚咽混じりのその言を確認するなり、情報を持つ商人を探しに数人の男達が酒場を飛び出して行く。テーブルには手つかずの酒瓶が置かれたままだったが、恐らく今日、それらが購入者達の喉を潤すことは無い。
 何故なら――此処は冒険者の酒場。

「承ったわ、ロレッタ。星の村もおじいちゃんも必ず助ける。……私達もね、星祭りを楽しみに此処へ来たのよ」

 少女の依頼は仕事として請け負うには、報酬があまりにも小さい。しかし、エルフの女性は少女の手からそっと銅貨を受け取ると、にこりと柔く微笑んだ。
 魔物の脅威と人の生死――ましてそれが一刻を争う状況と理解すれば、動き出すことに躊躇う戦士はそこに一人として居なかった。

●大粒の星を目指して
「――といった経緯で、酒場では今、有志冒険者による討伐隊が組まれている所なんだが……俺の予知に掛かってしまった。この案件、オブリビオンが関わっている」

 つまり、一般の冒険者では対応が難しい――グリモアベースの一角でそう語るアルノルト・クラヴリー(華烈・f12400)は、持ち込んだ地図を指差し酒場のある宿場町と山中の村とをそれぞれ示した。
 そして、町と村との中間に――最後にとん、と指を落とす。

「森を開拓して作られた宿場町の周辺は、嘗ての名残で木々が多い。だがやや離れたこの辺りは、見晴らしの良い草原帯だ。そして標高が高いこの村――カガイの村に近づく程に再び木々が深くなってくる。商人が魔物を見たのはこの草原を渡っていた時だ。カガイの村を囲う山林の手前に、石化能力で知られる無数の鶏が居たそうだ」

 空こそ飛べないとのことだが、石化能力――身体に石化袋を持ち、吐くブレスで相手を石に変える鶏の様な魔物の存在は、この地域では農作物や家畜を石化させる害獣として馴染みのものであるという。
 世界違えば似た様な魔物として『バジリスク』『コカトリス』などが知られているが――今回のこれはそれらの亜種、それらのアックス&ウィザーズ版とでも捉えれば良いだろう。

「そして俺が予知で視たのは、カガイの村に至ったこの鶏を村ごと襲うオブリビオン『ランナーズイーター』の群れだ。つまり、放置すれば鶏は村へ到達し、やがてはその鶏を捕食するためランナーズイーターも村へ至る。……防ぐには、まだ草原帯に鶏が居る内に速やかにこれを掃討し、その血の匂いで以ってランナーズイーターを誘い出して叩くしかない」

 鶏自体は現地の魔物であり、これだけならば冒険者達でも対処は可能だったろう。だがランナーズイーターはオブリビオンだ。対峙して倒せるのは猟兵を措いて他になく、鶏を倒したその先にオブリビオンが居る以上、冒険者達を戦いへ介入させるわけにはいかない。
 故に今回は、冒険者達が草原帯へ至らぬ内の、速やかな討伐が求められる。

「――カガイの村は、古くから『星の村』と呼ばれるそうだ。標高がやや高い位置にあるせいかもしれないが、その夜空は余所よりも星が近くに感じられる、とそう言われているらしい」

 ふと、戦いの話を一度止め、アルノルトは少女ロレッタが言っていた『星の村』『星祭り』について語り出した。
 大粒の星を見る村。それにちなんで年に一度行われている星祭りは、どういう巡りかは解らないが一年の内で最も星粒が大きく見える日に行われているという。
 その日、大粒の星は空から零れ、まるで降る様に流れていく。その日を割り出す占術が村には代々継がれており、その精度は確からしいとアルノルトは微笑んだ。

「お前達を送る今日――正に今夜が、その星祭りの夜なんだ。アックス&ウィザーズは殊更空が美しいと俺自身は思っているが、その空をして余所には無い大粒の星空が流れる様とは、一体どんなものなのだろうな。……戦いが終わったら楽しんで来ると良い」

 告げてふ、と柔らかく笑むと、アルノルトの胸前へ掲げた手中にグリモアが碧く輝き出す。
 大粒の星を目指して――先ずは朝。明るい早朝の青空へ向かうべく、猟兵達は転移の光を受け入れた。





第3章 日常 『星降る夜に』

POW流れる星々を楽しむ。
SPD望遠鏡で覗いてみる。
WIZ流星に祈りを捧げる。
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。