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小さな涙、大粒の星

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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●或る酒場にて
 その日、陽も高いうちから賑わう或る宿場町の酒場の中に、まさか此処で聞こうとは誰も思わぬ程の幼い声が響き渡った。

「いらい、って言うんでしょ! ここでおねがいすれば、ぼうけんしゃさんが叶えてくれるってきいた!」
「おいおい嬢ちゃん。ここは嬢ちゃんみたいなちびっこが来るところじゃねぇぞー?」
「ロレッタ、チビじゃないもん!」

 外見・言動から察するに、齢は恐らく五~六歳くらいだろうか。ロレッタと名乗る少女の長い赤毛はその若さゆえに艶々と柔く癖無く背中へ落ちて、大きな金色の瞳は真剣さが窺える強い光を宿している。

「お金ならちゃんとはらうから! ほら!!」

 やがて少女が目いっぱい広げ差し出した手の上には、酒代一杯分にもならない古ぼけた銅貨が一枚。思わず顔を綻ばす者、苦笑して見守る者、構おうとする者――大人達の反応は様々だったが、誰も邪険にしないのは、少女が懸命だったからだ。
 さあ、懸命に願う、その理由を聞かせて欲しい――微笑ましく様子を見ていた大人達は、しかし続く少女の言葉にその表情を一変させることとなる。

「おねがい、ぼうけんしゃさん! やくそくの星まつりがもうすぐなのに……このままだと、おじいちゃんがまものさんに食べられちゃうかもしれないの!」

 ――ガタン!
 必死の少女が最後に叫んだ言葉の不穏に、幾人かが立ち上がる。内の一人、少女をからかっていた体格の良い日に焼けた男は、少女の更なる説明を求め、ずい、と身を乗り出した。

「嬢ちゃん、それじゃわからねぇ。じいちゃんは今何処に――ああ、星祭りってことは『星の村』か? 魔物ってのは何体だ?」
「そんな凄んだら怖いでしょ、こんな小さな子に。……ねぇロレッタ。その魔物さんが何処に居るのか、ロレッタは知っているの?」

 男を諌めて前へ出たのは、肩に大きな弓を掛けた細身のエルフの女性だった。長い脚を折り畳み、視線を少女と同じ高さまで落として柔らかく問えば、……こくりと頷いた少女の瞳から、小さな光が零れ落ちた。
 ひとつ、またひとつと。寂しく頼りなく落ちていく、それは少女の不安の涙。

「……あのね、おじいちゃん、星の村にすんでるの。あさって、星まつりで、あそびにおいでって、おてがみきたの。……でも、とちゅうの道にまものさんがたくさんいた、星の村の方にむかってたって、さっき商人さんがおはなししてて……ひっ……」

 嗚咽混じりのその言を確認するなり、情報を持つ商人を探しに数人の男達が酒場を飛び出して行く。テーブルには手つかずの酒瓶が置かれたままだったが、恐らく今日、それらが購入者達の喉を潤すことは無い。
 何故なら――此処は冒険者の酒場。

「承ったわ、ロレッタ。星の村もおじいちゃんも必ず助ける。……私達もね、星祭りを楽しみに此処へ来たのよ」

 少女の依頼は仕事として請け負うには、報酬があまりにも小さい。しかし、エルフの女性は少女の手からそっと銅貨を受け取ると、にこりと柔く微笑んだ。
 魔物の脅威と人の生死――ましてそれが一刻を争う状況と理解すれば、動き出すことに躊躇う戦士はそこに一人として居なかった。

●大粒の星を目指して
「――といった経緯で、酒場では今、有志冒険者による討伐隊が組まれている所なんだが……俺の予知に掛かってしまった。この案件、オブリビオンが関わっている」

 つまり、一般の冒険者では対応が難しい――グリモアベースの一角でそう語るアルノルト・クラヴリー(華烈・f12400)は、持ち込んだ地図を指差し酒場のある宿場町と山中の村とをそれぞれ示した。
 そして、町と村との中間に――最後にとん、と指を落とす。

「森を開拓して作られた宿場町の周辺は、嘗ての名残で木々が多い。だがやや離れたこの辺りは、見晴らしの良い草原帯だ。そして標高が高いこの村――カガイの村に近づく程に再び木々が深くなってくる。商人が魔物を見たのはこの草原を渡っていた時だ。カガイの村を囲う山林の手前に、石化能力で知られる無数の鶏が居たそうだ」

 空こそ飛べないとのことだが、石化能力――身体に石化袋を持ち、吐くブレスで相手を石に変える鶏の様な魔物の存在は、この地域では農作物や家畜を石化させる害獣として馴染みのものであるという。
 世界違えば似た様な魔物として『バジリスク』『コカトリス』などが知られているが――今回のこれはそれらの亜種、それらのアックス&ウィザーズ版とでも捉えれば良いだろう。

「そして俺が予知で視たのは、カガイの村に至ったこの鶏を村ごと襲うオブリビオン『ランナーズイーター』の群れだ。つまり、放置すれば鶏は村へ到達し、やがてはその鶏を捕食するためランナーズイーターも村へ至る。……防ぐには、まだ草原帯に鶏が居る内に速やかにこれを掃討し、その血の匂いで以ってランナーズイーターを誘い出して叩くしかない」

 鶏自体は現地の魔物であり、これだけならば冒険者達でも対処は可能だったろう。だがランナーズイーターはオブリビオンだ。対峙して倒せるのは猟兵を措いて他になく、鶏を倒したその先にオブリビオンが居る以上、冒険者達を戦いへ介入させるわけにはいかない。
 故に今回は、冒険者達が草原帯へ至らぬ内の、速やかな討伐が求められる。

「――カガイの村は、古くから『星の村』と呼ばれるそうだ。標高がやや高い位置にあるせいかもしれないが、その夜空は余所よりも星が近くに感じられる、とそう言われているらしい」

 ふと、戦いの話を一度止め、アルノルトは少女ロレッタが言っていた『星の村』『星祭り』について語り出した。
 大粒の星を見る村。それにちなんで年に一度行われている星祭りは、どういう巡りかは解らないが一年の内で最も星粒が大きく見える日に行われているという。
 その日、大粒の星は空から零れ、まるで降る様に流れていく。その日を割り出す占術が村には代々継がれており、その精度は確からしいとアルノルトは微笑んだ。

「お前達を送る今日――正に今夜が、その星祭りの夜なんだ。アックス&ウィザーズは殊更空が美しいと俺自身は思っているが、その空をして余所には無い大粒の星空が流れる様とは、一体どんなものなのだろうな。……戦いが終わったら楽しんで来ると良い」

 告げてふ、と柔らかく笑むと、アルノルトの胸前へ掲げた手中にグリモアが碧く輝き出す。
 大粒の星を目指して――先ずは朝。明るい早朝の青空へ向かうべく、猟兵達は転移の光を受け入れた。



 蔦(つた)がお送りします。
 宜しくお願い致します。

●構成
 以下の章構成でお送りします。

 第一章:『石にする鶏を捕まえろ!』(冒険/対多数戦闘あり)
 草原帯、石化鶏の群れの元へ向かいます。
 自生する草花は高さ様々ですが、腰くらいまでのものもあります。鶏達の体は小さく、また広範囲に散開していますので、捜索し出来るだけ多く撃破してください。一個体はさほど強くはありません。
 ここでの鶏の血の匂いを察知してオブリビオンが現れます(第二章)。出来るだけ斬る・裂くなど出血を誘う戦法を選びますと、高い戦果をあげられるかもしれません。

 なお、この鶏の肉は美味らしいですが、第三章のお祭りにて振る舞われる予定ですのでこの時点では食べずにおきましょう。

 第二章:対『ランナーズイーター』(対複数/集団戦)
 詳細は第二章導入にて。
 『ランナーズイーター』はボスでこそありませんがオブリビオン、かつ戦闘が一対一とは限りません。ご注意ください。

 第三章:『星降る夜に』(非戦闘)
 星の村カガイ、時間は夜。大粒の星空の下でのお祭りです。
 詳細は第三章導入部にて。食べるも星を眺めるも遊ぶも良し、世界観に合う範囲で自由にお楽しみください。但し公序良俗に反する行い、著作権や商標に触れるものは描写できません。

 ロレッタは祖父と二人でお祭りに参加しています。あまり難しくない言葉で声を掛けてあげれば応えてくれることでしょう。
 グリモア猟兵のアルノルトも、プレイングにてお声掛けがあればこの章に限り参じますのでお気軽に。

●ご注意ください
 各章、プレイングに受付時間を設けさせていただきます。蔦のマスターページにて都度告知致しますので、確認の上ご参加ください。
 第一章のプレイング受付は7月7日(火)午前9時開始といたします。

 全採用をお約束は出来ませんが、極力多くのプレイングを採用したく思っております。
 参加人数次第ではプレイングの再送が必要となります。各章最大でも二回までを再送限度とし、この時間の許す限りで描けるだけ頑張ります。
 上記をご了承いただいた上で、参加を検討いただければ幸いです。

 それでは、猟兵の皆様の参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『石にする鶏を捕まえろ!』

POW   :    モンスターが出てくるまで張り込み

SPD   :    モンスターを必死に追いかける

WIZ   :    足跡や聞き込みからモンスターの場所をたどる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●輝く緑の海原で
 ――ざあ、と届く葉擦れの音と、深緑の香が心地よい。

 閉ざしていた瞳を開くと、先まで包まれていた転移のそれとは異なる光の眩さに、再度猟兵達は瞳を細めた。
 咄嗟に手で目元に影を作ると、眩さは緩和されて少しずつ目が慣れていく。しかしそれでも、視界の中にキラリ、キラリと明滅する小さな光には僅かに目のくらむ心地がした。
 煌く光の正体は、朝の陽射しを受けては放つ、草葉を濡らす朝露達。
 そして漸く慣れた瞳が映すは、一面緑の大海原だ。早朝の清々しい風が吹く度、花や草達が揺れる度に、爽やかな香りと共に朝露達がキラリと光って、緑の美しさを際立たせている。
 此処は、アックス&ウィザーズ。
 先に群竜戦役を乗り越えた剣と魔法と竜の世界は、今日も早朝の美しい草原の景色を猟兵達へと齎した。
 ああ、綺麗だと――無意識に目元の覆いをそっと取れば、新たに受け入れた光が、頭上いっぱいの澄んだ蒼をその瞳に映し出す。早朝の空――だが今日猟兵達が目指すのは、陽が落ちたのちにこそ輝く、無数の星が空を翔けて流れる光景だ。
 カガイの村の星祭り。草原の東、今は遠く高台に見えるその村が無事に祭りを執り行うには、今日村を襲うという脅威を全て排除しなければならない。

「……ココッ………コケ―ッ」
「ココッ、ココッ」

 ――早朝であればこそ、耳に届いたその鳴き声に、誰も違和感は感じなかった。
 だが、猟兵達は知っていた。この声こそが、カガイの村への脅威の一つ。石化を齎す魔物鶏――討伐隊を編成しているという冒険者達と、この鶏だけなら共に討伐しても良かった。
 だが、これらを倒したその先に、オブリビオンとの戦いがある。やがて討伐隊が来ることを思えば、この鶏達は多少討ち漏らしても問題は無かろうが――オブリビオンとの戦いとなれば、例え冒険者達であってもその身の無事は保証できない。

「……行くぞ」

 だから――ザザ、と鳴るは先とは異なり、猟兵達が葉を掻き分けて進む音。
 宿場町の冒険者達が来る前に。鶏、そしてオブリビオンを片付けるべく――猟兵達は、早朝の広き草原へと散開する。
オリオ・イェラキ
リュカさま【f02586】と

星のお祭り気になりますの
でも先ずはすべき事を
それで…あれが石化鶏かしら

ええ、では二手に
遠くからでも支援致しますわ
わたくしの影薔薇を、周囲の石化鶏の影に咲かせましょう
捕まえた鶏の首を刎ねて行けば効率良いと思いますの
リュカさま、あちらも捕らえましたわ

石化のブレスは大剣で叩き斬りましょう
風圧で散らせるかしら
後は返り血ごとヴェールのオーラで防御を
勿論リュカさまも確り護りますの
ブレス等の危機には翼を広げて飛んでいきますわ

それと仕留めた鶏は影薔薇の蔓で逆さ吊りに
血抜きも出来ますし村の方が調理し易いと思いますの
ふふ、石化毒が使えたら狩りがしやすそうですわね
にこやかに会話を楽しんで


リュカ・エンキアンサス
オリオお姉さんf00428と
うん、気になるね、そのお祭り
だから楽しみにしつつもまずは探索だね
場所、広いらしいし、二手に分かれようか
お姉さん、あっち行った
とか
何か吐きそう。あれがブレスかなあ
って、それ斬れるの!?
とか
声をかけつつ
お姉さんに捕縛してもらったら、そのまま接近してダガーで仕留める
あんまり気持ちのいいものでもないから、即後退して返り血はなるべくかからないようにしたいです
多分銃よりは派手なことになるでしょう
捕まえられそうになかったら撃つけれども、
その時も成るべく、血が出るように意識するよ

…石化袋って、解体したら取り出せると思う?
や、毒として使えたら楽しそうかな
効率も上がるし
なんて話しながら



「ふふ、星のお祭り、気になりますの」

 吹く風、深緑の香を含むそれに波打つ豊かな黒髪を揺らし、オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)は空を仰いだ。
 見上げるそこにまだ夜空は無く、ただただ高き一面の青。それでも、オリオの瞳には夜空が如き黒がまるで星含む様に煌いて、紡ぐ声音には未だ見ぬ夜空への期待がありありと浮かんでいる。
 その瞳がきれいだったから。頷き応じた少年、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)の口元も、自然笑みに弧を描いた。

「うん、気になるね、そのお祭り」
「ええ、ですから」

 振り向いたオリオの視線が、柔く笑んだ少年の遠き空宿す瞳と重なる。伝わる、今宵を待ち侘びる心――願いが二人同じならば、そのために今何をすべきか、その目的も同じだった。

「うん。楽しみにしつつもまずは探索だね。広いし、二手に分かれようか」

 今一度頷いて、リュカは前へと足を踏み出す。探索範囲の広大さは目に見えて知れている。情報の共有と、互いの援護を約束して――二人は一時分かれて探索を開始した。
 視線を草葉の影へと巡らせ、がさりとそれらを掻き分けて。……すると程なく、先に発見を報せたのはオリオ。

「……もしかして、あれが石化鶏かしら」

 声に振り向き面を上げたリュカが彼女の指差す先を見遣ると――前方のやや高い草花の中に、ちらりと覗く赤と銀の色彩。

「すごい。お姉さん、大当たりだ」

 素直な称賛を告げたリュカは、顎先へ指を添えてこの先を考える。
 見付けた場所に鶏はそれなりに数が居そうだ。二人でただ突撃するでは、対応しきれず討ち漏らしも出かねない――どうしようかと今一度オリオへ振り向いた少年は、その先に待っていた光景にはっとして息を呑んだ。

「お任せください。捕らえますわ」

 オリオが柔らな笑みで紡ぐ声は、魔力を帯びた不思議な響き。その足元には、流星が如き黄金の魔力線がぐるり陣描き大地を滑る――複数の鶏へ二人でどう対応するかというリュカの問いへの、オリオの答えがそこにあった。
 ユーベルコード、『影咲く夜薔薇(インシャドウガーデン)』。

「わたくしの影薔薇を、周囲の石化鶏の影に咲かせましょう」

 にこりと笑み深めた刹那、鶏達の足元から無数に漆黒の茨が伸び、その体を搦め獲った。
 それは、影から生まれし真夜中の色彩帯びた蔓薔薇。闇艶めく花を咲かせ敵を戒めるこの好機に――直後、リュカの姿がふっとオリオの視界から掻き消える。

「あとは任せて、お姉さん」

 ――否。消えたかに見えたリュカの体は、風の様に軽やかに前方、鶏達目指して駆けていた。襟元包む夜更けの空を映した薄布が、風に沿うて背へふわりと靡いて――しかしその柔らかさに反し、懐から引き出し手回されたのは光鋭き無骨な短剣。
 リュカはそれを、自身の最速で到達した鶏の頸部へ宛がい、通り抜けるその勢い殺さず振るって首を斬り飛ばした。

(「銃を使うよりも、飛び散るよね……必要なことだし、やむなし、だけど」)

 跳ね散り咲くは血花。赤く辺りへ飛沫く光景に少しだけ苦い心地を覚えながら、リュカはそれらが肌や纏に触れるを許さず、次々獲物を仕留めて進む。
 やがて――とん、と。茨が捕えた全ての鶏を斬り伏せて、駆け抜けたリュカは再びオリオの前へ脚を下ろした。

「……石化袋って、解体したら取り出せると思う?」
「リュカさま?」
「や、毒として使えたら楽しそうかなって。効率も上がるし」

 鶏達を斬り裂く道中、リュカは漂う灰銀の霧か煙か、黒き茨が触れた瞬間石化するのを目にしていた。
 直接受けることは無かったが、あれが恐らく話に聞いた石化のブレスなのだろう――どうにかして手に入れられたなら、狩りの場でも戦いでも武器の一つになるかもと、リュカはそう思ったのだ。

「吐いたのは見てないけど、あれがブレスかなあ」
「ふふ、石化毒が使えたら狩りがしやすそうですわね。でももし、今後吐き出されてしまったら……」

 にこやかに会話に応じながら、オリオは暫し続く戦いを思い、石化ブレスへの対処を模索する。
 広い草原帯だ、まだまだ鶏は潜んでいることだろう。もしもブレスを吐き出されたなら――大剣を使えば、風圧で散らせるだろうか?
 いや、それともいっそのこと――。

「……ふふ。叩き斬りましょう」
「って、あれ斬れるの!?」

 穏やかに、そして冗談交じりにオリオが言えば、リュカから返るは素直な突っ込み。
 戦いの緊張を、何気ない会話で適度に緩めて――やがて笑みを交わした二人は、更なる敵の討伐目指して草原を進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アネット・レインフォール
▼静
ふむ…状況から察するに長引けば冒険者達と
鉢合わせする可能性も否定できない、か。

彼らが現地入りする前に片を付けたいし
必要なら単車を出そう。

…しかし件の味は気になる所だな。

メシには少し気を使ってるし
折角なら新鮮な状態で届けたいものだ。

▼動
あまり時間を掛けられないし、先ずは炙り出すか。

葬剣を無数の鋼糸状にし木々に展開。
鳴き声や草木の動きがあれば手掛かりに。

鋼糸を足場に上空から【流水衝】で仕掛けよう。
一刀毎に闘気を込めた範囲攻撃で炙り出しと攻撃を。

…確か敵を誘い出す事も兼ねているのだったな。

このままだと肉に臭みが残る可能性もあるし、
下ごしらえも兼ねて剣で裂き血抜きぐらいはしておこう。

アドリブ歓迎



(「状況から察するに、……長引けば冒険者達と鉢合わせする可能性も否定できない、か」)

 光の世界の中に立つ、その身は衣から髪、瞳まで全て漆黒。静かな視線を草原に巡らせ、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は愛剣『葬剣【逢魔ガ刻】』を引き抜いた。

「彼らが現地入りする前に片を付けたいし、あまり時間は掛けられない。……先ずは炙り出すか」

 銀翼を刻む美しい剣だ。朝陽受け、重厚な剣身の意匠は黄金色に輝くけれど――ひとたびアネットが呟くと、その姿はすうと透いて空へと消える。
 ――否。透いて見えるほど細く幾重にも割け、拡がっていっただけだ。
 鋼糸への変形。アネットの望む通りに在り方を変えた愛剣は、蜘蛛糸の様に木々へ絡んで見えぬ網を張り巡らせる。
 その目的は、先ず上空への足場作り。高所に張った糸を辿り、空から獲物・石化鶏の位置を探るため。
 そしてもう一つは――低所に張った糸に触れる存在を、振動で察知し炙り出すため。

「声は……向こうか」

 耳澄まし、敵の大まかな位置にあたりを付けると、アネットはそちらへ向かう糸の上へと飛び乗る。
 駆ける足は音すら立てず軽やかにその身を運ぶが、同時に――感じる。何かがくん、と微細に糸揺らす手応えを。

(「――掛かった」)

 思った時には、既に体が動いていた。体重で糸を軋ませ反発で前へと駆る速度を上げると、その間にも指は糸を操作し、振動元の獲物を逃さず捕らえ拘束する。

「ギャッ!?」
「コッ、コケ――ッ!!」

 捕らわれた一羽が騒げば付近の鶏達も騒ぎ出し、慌ただしく草葉が揺れる。即ち、狙うべきはその一角だ。
 例え草葉に隠れ敵の姿が見えずとも、位置さえ知れれば纏めて葬り去る術をアネットは持っていた。

「――『弐式・流水衝』」

 鈴鳴る様に声が渡ると、直後、張り巡らせた鋼糸を蒼き闘気が伝い巡った。
 それらは浮かび上がり、空に無数の闘気の刃を成した。やがて、アネットの合図と同時――流るる水、とその名の通り、闘気の刃は一斉に標的の元へ降り注ぐ。
 全ての流れが凪ぐと――血臭が満ちる地表には、絶命した鶏達の屍。

「……確か敵を誘い出す事も兼ねているのだったな」

 とん! と軽やかに地表へ降りると、アネットは亡骸を一つずつ確かめた。
 ここでの血臭は、オブリビオンを誘い出すために重要だ。だからアネットは標的の確かな絶命と出血量を確かめながら――しかし亡骸に傷みがないか、その程度の確かめる。
 この肉は今宵の星祭りで、調理し振る舞われるという。

「味が気になる所だな。メシには少し気を使ってるし……折角なら、新鮮な状態で届けたいものだ」

 戦いのため、されど下拵えも兼ねて。アネットは鶏を掴むと剣でその身をざくりと裂き、血抜きの処理を施していく。
 表情こそ平時のままだが――今宵の祭りを想う時、アネットの纏う空気はどこか柔らかさを帯びていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリエラ・レイクベア
農村を襲う…見過ごせませんよね!

目立たないよう腰を低く、草むらの中で息を潜めて…今!
投げナイフを鶏の首に投擲、まず一羽!鶏はささっと首を切り、野営道具のロープで足を縛って、吊り下げて持ち歩きます

血抜きとおびき寄せが出来て一挙両得!
お祭りが楽しみですね!

しかし、広い草原をあてどなく探しては効率が悪いですね。

『創造武器』クリーピングコイン(初期技能:範囲攻撃)
意志もつ幻影の金貨さん。お願いは二つです
一つ、この辺で鶏を見つけたら速攻頭を打って気絶攻撃
二つ、気絶させたら鶏の上でキラキラ輝いてください
以上、お願いしますね!

バッと抱え込んだ金貨をばら撒き範囲攻撃
これなら私じゃなくても誰か気付いてくれる筈!



「……今!」

 ――ザン! 掛け声と同時、飛来したナイフによって首を斬られた石化鶏が、ばさりと草原の地へ落ちた。
 ごぼりと喉を流れる血に、鶏は苦しそうに藻掻いた後、やがて動かなくなる――そこへそっと近付いたのは、風に散る灰の髪を押さえる少女、マリエラ・レイクベア(駆けだしマリー・f26774)であった。

「よし、まず一羽! 農村を襲うなんて……見過ごせませんよね!」

 身を低く、背の高い草の中へと潜んでナイフを投擲した彼女は、撃ち落とした鶏の絶命を確認すると、胴から首を斬り落とし、野営用のロープで丁寧にその足を縛って吊った。
 農村に生まれただけあって、狩りの心得があるのだろうか、その手つきは手慣れたものだ。逆さに吊り下げて持ち歩けば、斬った首からの血抜きに加え、オブリビオンを血臭で誘う今日の目的にも沿うだろう――一挙両得、と満足気に頷くと、マリエラは広い草原内を、再び獲物求めて歩き出す。

「お祭りが楽しみですね! この肉も振る舞われるようですし、大粒の星も故郷とどう違うものか……!」

 故郷とて星空は美しいが、『星の村』と呼ばれる程だ、カガイの村の星空もきっと美しいことだろう。思えば自然と口元は緩み、草を掻き分け進む足取りも軽やかなものとなる。

「――しかし、広い草原をあてどなく探しては効率が悪いですね」

 思い至れば、マリエラは一度足を止め思索する。
 耳を澄ませば、全方位から甲高い鶏の声がする。ただでさえ広大な草原帯であるというのに、どうやらまだまだ相当数、鶏は潜んでいるらしい。

「ここで時間を掛けてもいられませんし、やり方を変えましょうか」

 ふむ、と思考を纏めるや、マリエラは左手を眼前へと突き出した。
 灰の瞳を閉ざして集中、すると手の平から金に輝く魔力が溢れ、空へと散らばり寄り集まる。小さく固結したその光が形作るは無数のコイン。
 ユーベルコード『創造武器(イマジン・ウェポン)』――今日マリエラが生み出したるは、意志持つ金貨・クリーピングコイン。

「幻影の金貨さん。お願いは二つです! 一つ、『この辺で鶏を見つけたら速攻頭を打って気絶攻撃』。二つ、『気絶させたら鶏の上でキラキラ輝いてください』――以上、お願いしますね!」

 通る声で宣言し、腕の中に収まったコイン達をマリエラは空へばら撒いた。するとそれらはぐるぐるとマリエラの周囲を旋回した後、一斉に空へ散開した。
 弾丸が如き凄まじい速さで草葉の中へ突撃するもの、辺りを探る様に大きく蛇行しながら進むもの、その動きの個性は様々だ。しかし程なく、見付けた目印とばかりキラキラ輝くコインが無数、草原の空に浮かび上がった。
 思い描いた通りの結果に、マリエラは二ッと笑みを深める。

「これなら、私じゃなくても誰か気付いてくれる筈! さあ狩りの時間です!」

 マリエラは声を上げると、迅速に狩りを終えるべく、投げナイフを手に駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルムル・ベリアクス
人々も、村も、お祭りも守ってみせましょう!意気込みと共に辺りを見回しますが……。如何せん眩しさと草花のせいで、私の目で探すのは厳しそうですね。
UCでアクシピターを召喚。なるべく大きくなってもらい、その背に乗って空中から千里眼で探してもらいます。ついでに世界知識で急所も教えてもらいます。
見つけた石化鶏の急所めがけて鋭いフォーチュンカードを【投擲】し、切り裂いていきます。なんだか戦闘機のパイロットにでもなった気分です。
沢山働いてくれたアクシピターには、お祭りのときに石化鶏の肉を捧げましょう。そのためにも、オブリビオンを打ち倒さないといけませんね!



 眩く、眩い光の世界。転移の光より解き放たれ、舞い降りたルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)は遠く空見つめ僅かに笑んだ。

「……人々も、村も、お祭りも守ってみせましょう!」

 朝陽に照るルムルの白肌は、生気希薄でいっそ不健康そうとすら見える。しかし、その声には確かな意志があった。
 目的は必ず達する、オブリビオンを討ち果たす――意気込むルムルという男は、端麗な顔を面立ちを覆う仮面こそが本体である。
 鳥の頭骨を模した様な仮面の下から覗く赤瞳は、静かに、そしてやはり生気に乏しく光の世界に僅かに細んだ。

「しかし、如何せん眩しさと草花のせいで、私の目で探すのは厳しそうですね……」

 纏う朝露が陽光を弾く今朝の草原の景色は、ルムルの目には眩むほどであったのだ。だから男は考える。この目に頼らず、最初の標的を見出す確実な勝利の一手――。
 懐から、ぱらり、と一枚男はカードを引き抜いた。

「――千里の眼。この目が世界を映さなくとも、果てまでを見る視界が隣にあれば、それは見えると同じことでしょう。……『闇翔ける鷹の悪魔よ!』」

 告げる声が、魔力を孕み二重三重に分かれ響いた。同時ルムルが掲げたタロット『フォーチュンカード』が朝空の明るさとは相反する暗き闇夜の色彩を纏うと、そこに描かれた絵がまるで陣の様に赤く明滅、やがて羽ばたく大きな鳥をルムルの眼前に召喚する。
 『サモン・アクシピター』――現れしそれは、千里の眼と広き世界の知識を持つ、知性の悪魔アクシピター。

「お祭りのときに、石化鶏の肉を捧げましょう。私に助力を。あなたの背と知恵、全てを見通す千里眼を、どうか私に貸してください」

 それは美しい鷹であった。しかし悪魔である以上、その力を十全に引き出すためには強さに応じた交渉が必要とされていた。
 美味と聞く石化鶏の肉――肉食、かつ知性あるアクシピターならば、価値の違いも味の差もきっと解るのではないかと、ルムルの読みはどうやら的を射たらしかった。
 アクシピターが、ルムルが背に乗るだけの大きさへと体を拡張させていく。そしてその背に跨り、ルムルは空から草原に潜む石化鶏の捜索を開始した。

「弱点は――首ですか、成る程。確かに頸部から斬り落とせれば、あまり体の肉も傷つけずに済みますね。……あれですか、アクシピター」

 知性の悪魔から、討伐における有効な情報までをも得て。生気無き赤い瞳がやがて赤と銀の羽根が覆う小さな鶏を捉えた時、その手が懐より引き出すは、またも昏きタロットカード。
 だが、その縁は――暗き闇夜の色彩纏うと、鋭き刃へと変質する。

「沢山働いてくれるアクシピターには、褒美の肉を増量しなくてはいけません。……出来るだけ多く狩りましょう!」

 告げて複数枚、ルムルが投擲したフォーチュンカードは――スパン! 小気味よい音を響かせ、狙った鶏達の首を次々一撃のもとに両断する。
 まるで、狙い逃さぬ戦闘機のパイロットにでもなった気分だ。

「全てを守る、そのためにも――オブリビオンを打ち倒さないといけませんね!」

 今日の頼りある相棒と共に。吼えてルムルは、尚も空翔け狙うべき標的を探る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

へぇ、星祭りかぁ…たまにははそういうのでゆっくりするのもいいわねぇ。
そのためにも、邪魔な連中はブッ飛ばさないとねぇ?…あの可愛い依頼人さんのためにも。

見通し良くない草むらに石化能力持ちの鶏がわらわら、かぁ…ちょっとめんどくさいわねぇ。…それじゃ、こうしましょうか。
あたしも石にはなりたくないし、ソーン(退魔)とエオロー(結界)で〇オーラ防御を展開。ミッドナイトレースに○騎乗して●黙殺を発動させつつ走り回るわぁ。黙殺の射程はあたしを中心に半径83m、端から塗り潰すように草を刈り掃ってけば見通しもよくなるし追い込めるわよねぇ?
〇範囲攻撃で草諸共ぶった斬っちゃいましょ。



「背の高い草むらに、石化能力持ちの鶏がわらわら、かぁ……」

 朝の陽射しに、平時黒く見える長い髪が透いて夜の青を纏う――長く編まれたそれを手でとさりと背へ払うと、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は外見からは想像もしない甘い声で呟いた。

「ちょっとめんどくさいわねぇ。あたしも石にはなりたくないし」

 常に閉じられた瞼によって中の瞳は窺えず、故にその心中は、表情からは到底読めない。喰えない印象を抱かれがちなティオレンシアだが、少なくとも今この時は、最善の立ち回りを考えていただけだった。
 生来の糸目で草原一帯を見回し、高低様々な草葉の様子を確かめて――しかし実態どうあれひとたび口元が綻べば、空気華やぐ美しさが妖艶な大人の女性を演出する。

「……それじゃ、こうしましょうか」

 やがてその唇が紡いだ声は、容姿にはアンバランスな、あまりに甘く幼い音色。
 だが頭の回転が速いティオレンシアの脳内には、次の行動が既に組み立てられていた。魔力帯びた指先が手首を軸に陣を描くと、生じた光から現れしは、夜を駆る二輪の愛車。
 『ミッドナイトレース』――バイク型のUFOだ。

「舗装された道じゃないけど、飛ばすわよ。どんなに広い場所に隠れてたって、端から塗り潰すように草を刈り掃ってけば――見通しもよくなるし追い込めるわよねぇ?」

 標的隠れるほど草が生い茂るなら、標的ごと全て刈ってしまえばいい。力技だが、押し通してしまえるだけの力と手段をティオレンシアは持っていた。
 射程は自分から半径83m。愛車で駆ける女の周囲中空に展開された魔術文字から無数自在に解き放たれるは、光の矢と空翔ける刃。
 ユーベルコード、『黙殺(デザイア)』。

「コケッ!?」
「ギャッ!!」」

 先行する矢刃が生む草原の道を、愛車は真っ直ぐ突き進む。時折悲鳴と赤い飛沫が上がれば、鼻腔を掠める鉄の匂いに目的が無事果たされていることをティオレンシアは理解した。

(「星祭り、かぁ。たまにはそういうのでゆっくりするのもいいわよねぇ」)

 最中にふと、心に過るは今日の果て。大粒の星空――その瞬間を想う時、ティオレンシアの口元には、それまでの喰えないそれとは異なる温かな笑みが浮かぶ。

「邪魔な連中はブッ飛ばさないとねぇ? ……可愛い依頼人さんのためにも」

 ただ祖父の無事を願って酒場を訪れたという、無垢で小さな依頼者・ロレッタ。
 その愛しき願いをきっと叶えてあげたくて、今ティオレンシアは駆けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

石化の鶏って聞くとコカトリスだっけ?ああいうの連想したけど、こう、サイズは思ってたより小さいんだな。別種だからなのかもしんないけど。

数多く〆る必要あるってんなら伽羅と陸奥にも手伝ってもらおう。
二人に捜索を手伝って貰い、時に追い込んでもらって、UC五月雨で仕留めていこう。
血の匂いにひきつけられるってんなら、刃で切り裂いたほうがいい。
陽氷や炎陽じゃ燃やしてしまうし、草原では延焼の危険がないとも言い切れないしな。
直接とびかかってくるなら胡で応戦。
陸奥はもともと足も速いし風を操るのも得意だから大丈夫だろうし、伽羅も空中から雷撃で仕留めて貰えば多くを〆られるだろう。



「――居たか? ……そうか、陸奥、お手柄だ」

 とん、と肩へ降り頬に擦り寄るは、羽根の様に軽い白虎の仔。風纏う小さな精霊をよくやったと指で撫で、黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は草原を歩く。
 より多くの討伐が求められる今日の戦い――鶏の探索の効率化を図るべく、瑞樹は相棒の力を借りていた。
 先ずは肩に乗る相棒、風の精霊・白虎の陸奥。そして、その陸奥の誘導に従い進んだ先の空――黒鱗が覆う肌に、額の蒼貴石が映えて輝く飛竜。
 水司る竜神・伽羅。

「伽羅も、見張っててくれたか。……しかし、石化の鶏って聞くとコカトリスだっけ? ああいうの連想したけど、サイズは思ってたより小さいんだな」

 そして、相棒達が見つけ出した石化鶏達を視界に捉えた瑞樹は、率直な感想を述べながら左手に刃黒きナイフを、右手に腰から刀を抜いた。
 『黒鵺』、そして『胡』。これからこの二つを駆使して、オブリビオンを誘い出すため無数の斬線を標的に刻む。

「……伽羅、陸奥、回り込んで一所へ追い込んでくれ。全部まとめて俺がやる」

 返事こそない、しかし竜神と精霊は、瑞樹の言葉を聞くなりそれぞれ左右へ翔け出した。
 風操り、自らも風が如く地表を疾走する陸奥と、大気中の水分・草葉が帯びる朝露すらも操って、雷纏わせた無数の水弾を空から振らせて鶏達の進路を誘導する伽羅――次第に「コケ―ッ!」「ギャッギャ!」とあがる悲鳴の様な鶏の声は、無数が一所に集まっていく。
 その間に――二刀を構える瑞樹の周囲大気には、清浄にして膨大な魔力が編まれ、幾つもの光を成した。

「血の匂いにひきつけられるってんなら、刃で切り裂いたほうがいい。――仕留めるぞ」

 空に浮かぶ無数の光は、次第に刃のかたちを成すと空にずらりと一線に並んだ。その姿は二つに分かれる。瑞樹の両手にそれぞれ収まる『黒鵺』、そして『胡』の複製――。
 ユーベルコード『五月雨』。

「喰らえ!」

 強き声で命じた瞬間、一所に集まる鶏達目掛け、空から二種の刃が降った。
 五月雨、正に雨の様に――肉裂き、突いて地表へ突き刺さっていくドドド、という音の後、吹く風は、鉄の匂いを乗せて遠くへ渡っていく。
 瑞樹の魔力が生んだ刃も――その全てが、風と共に空へ溶けて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァルダ・イシルドゥア
ヴェルさま(f05027)と
風切り乍ら駆け抜ける
星の降る日に溢れる涙は
等しく、よろこびのいろであってほしいから

ヴェルさま、『さがしもの』ならば
私がお力になれるかもしれません

母なる翠よ、慈しみ深きものたちよ
――其は戒めの鎖となりて!

臥籠守を用いて『翠の網』を敷き
散開する鶏たちを捉えるための助けを
個を、群れを補足出来たなら
彼が舞えるだけの猶予が出来る筈

……ヴェルさま、其方に!

竜槍を廻し石化のブレスを武器受けで受け流し
彼へ届かせんとする攻撃を庇い
刺し貫くことで以ってオブリビオンへの呼び水となれば

一閃、散る朱がまるで
刃と共に舞う彼の一部のよう

せめて、出来得る限り苦しめぬように
彼に続いて、穂先を躍らせた


ヴェル・ラルフ
ヴァルダ(f00048)と

間に合うように、駆け抜ける
その中で思うのは
祖父を想うひとりの少女と、その少女のために組まれた討伐隊
この世界のやさしい煌めきを繋ぎたい

より多くの探し物を捕らえるために、赫々天鼠で探索、猟する
いっておいで、…僕の一部

やあ、ヴァルダは本当に頼りになる
キミが伸ばす翠の羂が、鶏を捉えたならば
追い込めるように、黒炎の蝙蝠で追い立てて

キミが伸ばした網のその先、キミの声が掛かるや否や、明けと暮れの両刀構えて躍りかかる
──ごめんね

石化のブレスは速度で以て対抗しよう
貴女の手助けと心遣いに笑みが溢れる
たとえ誘き寄せるためだとしても
優しい貴女が心を痛めぬように
首の数散らすは確かなひとさしで



 ザザ、と絶えず耳に届く葉擦れの音は、風が起こすそれではなく、この身が草原を駆ける音色。
 ただただ、間に合う様にと己に課して。最速で草原を行くヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)がその心中に思うのは、祖父の無事を願い涙したひとりの少女と、その少女のため、そして命を守るために組まれた冒険者達の討伐隊。

(「こんなにも、胸を温める。――この世界の、やさしい煌めきを繋ぎたい」)

 そっと胸へ右手を置いて、守りたいものを心へ刻んで。地を蹴る度に、青空に映える赤い髪が跳ねるヴェルの後ろ姿を――同じく最速の足で追うは、注ぐ朝陽色の髪の娘。優しきヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)。

(「星の降る日に溢れる涙は、等しく、よろこびのいろであってほしいから」)

 どうか、もう泣かないで、と。少女を想ってヴァルダは往く。ひとつでも多くのいのちに、この手が救いを齎せるように――強く願うその心に、強く握る竜槍『Anarríma』が応えて薄翠色の光を帯びた。

「……ヴェルさま。『さがしもの』ならば、私がお力になれるかもしれません」
「――ヴァルダ?」

 後方から届いた知る声に、ヴェルはふいと顔を向けた。
 暮れ刻近付く空の様なヴェルの琥珀に彩る視線と、真昼の太陽を石にし留めた様なヴァルダの黄金の視線が重なる。ヴァルダが槍に込めた魔力も、時と共に少しずつその濃度と色彩を高めていて――共に戦う、と告げるよりも真っ直ぐに伝わる彼女の意志に、ヴェルはふ、と微笑むと、明けと暮れ、名に対を為す二刀の短剣を両手に掴み引き出した。

「うん、一緒に行こうヴァルダ。……鶏を、先ずは見つけ出さなければね」

 告げたヴェルは、左右二刀の短剣にそれぞれ異なる魔力を込める。
 総身白き『明け』の刃にはその白が輝く光の力を。そしてその光が総身黒き『暮れ』の刃に触れた時、伸びた影から溢れ出るは、闇の力を纏いし黒炎。
 舞い上がり羽ばたく姿は蝙蝠。――ユーベルコード、『赫々天鼠』。

「いっておいで、……僕の一部」

 勢いよく飛び立った黒炎の蝙蝠達は、広き草原へ散開すると、潜む鶏達をより多く捕らえんと、草葉の中へ潜っていく。やがて「ギャアッ!」と怒りの声が耳に響けば、バサバサと強い羽ばたきと共に見慣れぬ赤と銀の羽根が草葉の中から空へと舞った。
 飛べぬ鳥だと聞いている。ならば飛んで逃げぬあれこそが、標的たる石化鶏――。

「……母なる翠よ、慈しみ深きものたちよ。――其は戒めの鎖となりて!」

 判断するや、ヴァルダの動きは速かった。魔力込めし竜槍を掲げ、詠唱閉じた瞬間にその柄尻で大地を叩けば、赤銀の羽根が舞う場所を中心に空へと翠光の蔓が伸びた。
 ユーベルコード『臥籠守』。無数の光蔓は、組まれ編まれて大きな翠の網を成すと、ばさりと草原へ覆い落ちて、鶏達を群れで捕捉する。

「……ヴェルさま、其方に!」
「やあ、ヴァルダは本当に頼りになる」

 捕捉魔術の規模の大きさに、感心し称賛するヴェルの声は随分遠くからヴァルダに届いた。既に駆け出し、捕らわれの鶏へ両手の刃を向けるヴェルの足を、翠網が阻害することはないから――軽やかに戦いに舞う真紅の青年は、眩い朝陽に照らされて、その表情までよく見えた。
 少しだけ、悲しい瞳。斬り付けるその瞬間に呟く音は聞こえずとも、彼が何を思ったのか紡ぐ唇は確かにヴァルダに見えていて。

「……──ごめんね」

 命狩ることへの懺悔。守るべきものがあり、必要なことと知っても尚――その垣間見えた痛いほどの優しさに、ヴァルダは即座駆け出した。 
 ヴェルが二刀の刃振るう度、ばっと空へ散る朱がまるで彼の一部の様に見えたから。美しかった。刃と共に舞う彼に、朱も応えるかの様だったけれど――彼が抱く切なさを見出した時、ヴァルダにはそれがまるで彼の心の傷から溢れた様に思えたのだ。
 だから、……せめて、分かち合いたいのだと。ヴェルと鶏の間へ割り入り、手回す竜槍で吐き出された石化のブレスを受け流すと、ヴァルダは即座に穂先突き入れ、刺し貫いて命を狩った。

「せめて、……出来得る限り苦しめぬように」

 必死に駆けた、故にヴァルダの息は切れ、言葉は途切れ震えて揺れた。しかしその悲痛な声を聞けば、ヴェルは目を見開いて――その手助けと優しき心に、思わず優しい笑みが溢れる。
 ――この痛みは、決して一人のものではない。そう思わせてくれる温かなひとが、隣で共に戦ってくれる。

(「たとえ誘き寄せるためだとしても、……優しい貴女が、その心を痛めぬように」)

 思えば、確かなひとさしで、ヴェルは次なる命を屠る。
 どれ程胸が痛もうとも、護りたいものがある――人を想い、命を悼む人の優しき心のために、ヴェルとヴァルダは戦っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユウイ・アイルヴェーム
守るために、剣を取ったのです
この風景を汚してしまうとしても
私は、選んだのです

音や草の動きを確かめながら、歩いて鶏を探します
いつもより少しだけ足を速めて
急ぐと気付けなくなるものは多い、と言われたことがあるのです
見つからないように、気を付けて
動けなくなれば、役に立たない人形になってしまいますから

石化のブレス、ということは、息ができなければいいのです
首を狙って攻撃します。苦しまないように、一撃で
きっと、血もたくさん出るでしょう
…命であることに変わりはなくても、それでも、私は決めたのです
足は止めません、ひとつでも多く、少しでもはやく
誰も来ないうちに、誰にも届かないうちに、終わらせなければいけないのです



(「守るために、剣を取ったのです。……それがたとえ、この風景を汚してしまうとしても」)

 自ら、そう選んだのだと。風に揺れ、金にも銀にも陽光の色を素直に透く長い白の髪を押さえ、ユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)はひとり、光の草原に立っていた。
 この自然の煌きも、人が人を想う心もそのどちらもが美しい。命狩ることに胸を痛める今日の仲間達だって――近付くほどに美しいその心を知りたくて、守りたくて、今ユウイは此処に居る。
 それも確かに、誰か何かを想う優しく美しい心なのだと、そうユウイが答えを知るのは今この時ではなかったけれど。胸奥から前へ進まんと自身を突き動かす力の正体と存在を自覚しないまま、ユウイは強く剣を握り、鼓膜に世界のざわめきを、陽色の瞳には光を映す。
 ――やや遠くに、甲高い鶏の鳴き声が聞こえた。

「……見つからないように、気を付けて。動けなくなれば、役に立たない人形になってしまいますから」

 密やかにそう呟いて、僅かに身を低くしながら進む足取りはいつもより僅かに速い。
 しかし、決して焦らない。

(「急ぐと気付けなくなるものは多い、と言われたことがあるのです」)

 人形たるユウイの記憶は、願い抱くほどにころころと、飴玉の様に簡単に零れ落ちていくけれど。それでも、今この時にこの記憶を引き出せたことは、何か意味がある様な気がして、ユウイはそれに従った。
 吹く風に沿うて揺れる草の動きを確かめて、次第に近付く鶏の鳴き声と葉擦れの音に耳を澄ませて――やがて自身の射程に鶏を収めれば、目で確かめるその数は三。

(「注意すべきは石化のブレス、です。……でもブレス、ということは、息ができなければいいのです」)

 だから、狙うべきは首。決めれば即座、ユウイは潜む草葉の影から鶏の元へと飛び出した。
 密かに大気に溶かした魔力が、甘い香りを放っていた。吹く風の中にはビワの花弁も――それはこの草原由来のものではない。鶏達を優しき眠りへと誘う力。
 命断つ瞬間は、せめて安らかであって欲しいと――願うユウイの力の名は、ユーベルコード『木陰に臥す者の手(ハクジノユビ)』。

「きっと、血もたくさん出るでしょう。……命であることに変わりはなくても、それでも、私は決めたのです」

 言葉は音色の抑揚も浅く、いつもの調子で小さく動く唇から空へと溶ける。『白蓮』――純白の長い剣身で真横に鶏の首を刎ねれば、柔き眠りにある中で苦しむことも無かっただろう、悲鳴すら無く一体目の鶏が地へ伏した。

(「足は止めません。ひとつでも多く、少しでもはやく――」)

 ユウイの身体は思考に沿って、流れる様に白剣を振るう。即座に二体目の首を刎ねると、新たな鮮血が空舞って――ぱしゃりと白肌を打っても、ユウイは決して躊躇せずに三体目へと斬線を伸ばした。

「……誰も来ないうちに、誰にも届かないうちに、終わらせなければいけないのです」

 呟き脳裏に浮かぶのは、グリモア猟兵が語っていた、酒場の少女と冒険者達。
 胸の奥に少しだけ、仄かに熱が灯るのを感じながら――ユウイは無意識、剣握る手に力を込めると、守るべく三体目の鶏の首へと白剣を深く突き刺した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラリス・ポー
【WIZ】
小柄な私は追いかけるには不利とみて
聞き耳と動物と話すを活用した情報収集
世界知識と第六感で判断しながら鶏の足取りを追います
追跡中は足場習熟と忍び足を使い分け
ジャンプして、傘を広げて空中浮遊は
背の高い草に囲まれた際の視野確保に役立つでしょうか

わたし
今の家族に会うまでは野山を駆け回る生活だったんです
狩人としては未熟だと思いますが
晩御飯の為に兄弟たちと鶏を追いかけたこともあります
息止めで気配を殺して
慎重に慎重に…
風下から一息に勝負を仕掛けるのがコツだと
鶏を見つけたら
父さん、兄さん達の教えを思い出します

鶏の注意が他へ向いたタイミング
今だ!と思った瞬間
『空のダンス』で一気に距離を詰めて攻撃します



 草むらの中、クラリス・ポー(ケットシーのクレリック・f10090)は、ポン、と頭上に傘を広げた。
 太陽目指して伸びる草花は美しくはあったけれど、ケットシー故小柄なクラリスには視界を遮る壁でもあった。しかし捜索中の鶏達は、背の高い草むらにこそ隠れよう。
 つまり、クラリスが地上で鶏を捜索するには、自分より背の高い草むらへ入る必要があった。

(「小柄なわたしは、追いかけるには不利でしょうか」)

 だから――考えた末の傘。ひとたび跳ねれば、白い雲羊を模した傘が空気抵抗で重力緩和し、クラリスの小さな体はふわりとその一時浮遊する。
 加えて『空のダンス』――幾度と空中を蹴ることで空高くまで跳ね上がれば、結果得るのは長い滞空と見下ろす広い視野。
 それは、クラリスだからこそ持てた索敵手段に他ならない。

(「わたし、今の家族に会うまでは野山を駆け回る生活だったんです。狩人としては未熟だと思いますが、晩御飯の為に兄弟たちと鶏を追いかけたこともありました」)

 思い出すのは幼き日々。糧を得んと、父や兄と共に野を駆け多くのことを教わった。
 狩りに於いては、如何にして獲物を見付け、追い立て、如何にして捕らえるか――考えること。その教えを心の中で反芻し、クラリスは空を漂う。
 飛来する小鳥たちへと時折声を掛けながら。

「魔物が潜んでいると聞いて捜しています。皆さんも気を付けてくださいね」

 魔物にとっては小鳥とて獲物。注意促す声を掛ければ、小鳥たちから『ありがとうシスター!』と感謝が返る。
 加えて――この草原帯を寝床にしている小鳥から、少し気になる情報も。

「『あっちで見たことない色を見たよ! お花にしては動いてて変だなって思ったんだ!』」
「! ありがとうございます!!」

 感謝を告げて身を翻し、向かうは風上。一度地上に降りたクラリスは、空から把握した草原の地形、その中でも草の背が低い場所を選んで最速で駆けていく。
 身に纏う修道服のスカートは裾が長くも、スリットが機能して動くに苦は一つもなかった。急ぐけれど慎重に、可能な限り速く向かい、でも気付かれぬ様呼吸乱さず足音は最小限に――駆ける最中にも考えて、クラリスは進路前方へ金に煌く目を凝らす。
 まだ距離はあるが、やや草の背が高い一角がかさかさと蠢いている。耳を澄ませばコケコケと――中から聞こえるのは鶏の声か!

(「父さん、兄さん達は何て言ってた? 息を止めて気配を殺して、慎重に慎重に……」)

 クラリスは足を止め、息を潜めてその場で待った。風下から一息に勝負を仕掛けるのがコツだと、言った父兄を思い出して――気付かれぬ様注意を払えば、やがてガサリと音を立て、草葉の影から鶏が出て来る。
 その視線は――クラリスを見ていない。

「――今だ!」

 慎重に慎重を期した少女は、遂に獲物目掛けて駆けた。タタン! とまるで舞うが如く空を蹴ったクラリスは――カランと金のベルの音色も高く、杖形の獣奏器を振り下ろす。
 蒼きその一閃に――鶏は大地へ倒れ伏すと、そのまま動かなくなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
【煌】

一等大粒の星たちが流れるという今宵のこの世界の夜空は、さぞ美しいだろうな
ああ、少女は勿論、彼女の祖父も、星の村の人々も、冒険者達も
皆で憂いなく特別な星の夜を楽しめる様に
この美しき緑の大海原で、魔物の群れを確りと食い止めてみせよう

UCにて強化後
草花の中、鶏たちの気配やその動きを見切り見極め
刀の斬撃や連撃、広範囲に及ぶ鋭き衝撃波を以って
皆と連携し囲む様に、出来る限り討ち漏らさず刀で斬っていこう

この鶏の肉は美味だそうだ。楽しみだな、菊里
依頼を完遂した暁には、美味な肉で星空の宴というのはどうだろう、伊織

後の楽しみの為にも、まずは確りと鶏たちを仕留め
人々の脅威となるオブリビオンを誘き出すとしようか


呉羽・伊織
【煌】
俺らの故郷も丁度七夕や天川の風情が好い時期だが、異世界の星祭ってのもまた実に趣深くて楽しみだよな
――そんな目映い夜や幼気な娘の心に影が落ちぬよーに、確と憂いを晴らそーか

UCで技強化
聞き耳や第六感で警戒と情報収集
鳴声・物音・気配等から数や位置割出して隙突き先制攻撃
麻痺呪詛宿す風切投げ牽制しつつ、風切で斬り伏せ血の香を
早業と2回攻撃で手早く上記重ね掃討

連携し死角助け合いつつ
敵を囲い込み進攻や打ち漏らし阻止

楽しみは多いに越した事は無いが――相変わらずの食気だな!
いやまぁ清史郎の案に大賛成だ!
この面子なら何の憂いもない――村に満ちる笑顔と星空の下での宴こそ、貨幣より何より輝かしい報酬になるだろう


千家・菊里
【煌】
今の青空でも此程の壮観
それはもう見事な星夜となるのでしょうね
朝露や流星が零れ落つ様は幾らでも眺めていられます
然し――幼子の涙は見ていられぬもの
誰もがその瞬間を晴れやかに迎えられるよう、心曇らすものは吹き飛ばしましょう

万華の式に偵察や追跡依頼
己も聞き耳や第六感で鶏情報収集
敵数や挙動に注意し見切り
草属性霊符で敵の足絡め取る範囲攻撃
後は早業で刀捌き次の下拵えを

皆で連携し進攻阻止や死角補助の布陣
浄化霊符でオーラ防御や結界張り石化対策

普段なら狐火で焼鳥ですが、偶には剣士の本分を
ええ、清史郎さん
活きも良くて狩り甲斐がありますね
でも味見は我慢して全ては後のお楽しみに
ふふ、色々と豪勢な宴になりそうですね



「――一等大粒の星たちが流れるという今宵のこの世界の夜空は、さぞ美しいだろうな」

 空仰ぎ風に靡く、髪は光明るき夜の闇色。腰よりも長いそれが陽光透いて流れる様は、晴れた日の銀河を思わせる――筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)の声に、伴う二つの人影も同意を示して空を見上げた。

「今の青空でも此程の壮観。それはもう見事な星夜となるのでしょうね……朝露や流星が零れ落つ様は、幾らでも眺めていられます」

 真っ直ぐ蒼空を見つめる赤瞳は、その先に星を見るかの様に遠くへ。のちにぐるりと草原を見渡し、千家・菊里(隠逸花・f02716)はほう、と今日の世界へ称賛と感嘆の吐息を溶かした。

「然し――幼子の涙は見ていられぬもの」

 ――それでも、続けた言葉には声の温度を僅かに低める。赤瞳を細め、菊里がぴりりとした空気を纏えば、隣に歩み出た男もまた――見目整い、風流を纏い美しくはあるのだけれど、どこか喰えぬ様子の笑みで空仰ぐ赤瞳を閉ざした。

「俺らの故郷も丁度七夕や天川の風情が好い時期だが、異世界の星祭ってのもまた実に趣深くて楽しみだよな。――そんな目映い夜や幼気な娘の心に影が落ちぬよーに」

 言うを終えるより早く、男は開眼すると同時、腰に提げた黒刀をすらりと前へ抜き去った。呉羽・伊織(翳・f03578)――愛刀『烏羽』の刃先を草原へ向け止めた男は、喰えない中にも芯窺える力ある眼差しで、光の世界の影を見据える。
 影――即ち草原に潜む魔物。そして、その先に居るオブリビオン。

「――確と憂いを晴らそーか」
「ああ。少女は勿論、彼女の祖父も、星の村の人々も、冒険者達も――皆で憂いなく特別な星の夜を楽しめる様に」

 頷く清史郎もまた、伊織に倣うかの様に腰から一振りの刀を抜いた。
 まるで、刀が纏ってでもいたかの様。蒼き刀身と共に現れた桜の花弁が、風に流れ刀身を滑った。その様に、僅かに伏せた瞳を閉じて――すう、と深く息を吸い、清史郎は言葉を続ける。

「この美しき緑の大海原で、魔物の群れを確りと食い止めてみせよう」
「ええ。誰もがその瞬間を晴れやかに迎えられるよう、心曇らすものは吹き飛ばしましょう。――『さぁ、おいで』」

 その口上に笑んだ菊里が、今手に抜くは刀ではなかった。懐より引き出したるは無数の霊符――それを扇の様に手中で広げ、ばっと高く空へ放てば、魔力を灯した一つ一つは風にも流れず空へ留まる。
 ユーベルコード『万華』。ぼっと蒼き炎を灯し、次第に狐の姿を成す――それらは全て式神だ。

「先ずは、見つけるところから。……さぁ、狩りを始めましょう」

 命じれば、四つ足で駆け出した式達は魔物を捜索・追跡すべく草原の中に消えていく。だがその居場所は、術者である菊里には見えずとも伝わっていた。
 行先の一つを追って菊里が前へと歩き出せば、姿勢よく伸びた背に、長い黒髪が艶めき揺れた。

「――便利なものだな、式神というのは」

 その背に続いて歩き出した清史郎は、警戒の構えは解かぬまま、菊里へと声を掛ける。

「ええ、確かにこういう場面では重宝します。……清史郎さんは符術は?」
「今の所心得がなくてな。……菊里の様にはいかないだろうな」
「へぇ? 清史郎なら符じゃないにしろ近いこと出来そうだけどな。よく出してるだろ、桜花弁」

 菊里の問いに応えれば、苦笑を浮かべた清史郎へと笑みの伊織から激励が飛んだ。
 確かに清史郎の周囲を舞う桜花弁を操れたなら、今日の菊里の式に近い動きも出来るかもしれない。思いながらも清史郎は、次いで胸に抱いた想いにやはり苦笑するしかなかった。
 自由に舞う花弁の美しさは、それはそれで捨てがたい――油断はなくも、こうして三者が何気なく続く会話に和む心地を覚えた時。

「ああ――見付けました。九時の方角、複数いる様ですね」

 散開していた菊里の式から、早くも標的発見の報せ。その声に、伊織の赤瞳が再び強い光を帯びた。

「居たか!」

 笑んで伊織が即座に駆け出せば、菊里と清史郎も続いて脇目も振らずに突き進む。しかしその最中にも――勝気な伊織の笑みの口から、緩く零れるは友への軽口。

「さァて菊里。この先に鶏肉が待ってるぜ」

 その言葉には清史郎も思わず笑った。

「はは。今日の鶏の肉は美味だそうだ。楽しみだな、菊里」
「ええ、清史郎さん。どうやら活きも良いようで――」

 にっこりと、穏やかな笑みでそれに応える菊里には今、発見した標的を追う式を介して鶏の姿が視えていた。
 数は五羽。だが、それ以上の数で追う式神達をものともせずに石化ブレスで反撃する様子を見るに――見付けた敵は中々に気性の荒い性質の個体と言えそうか。

「……狩り甲斐がありますね。でも味見は我慢して、全ては後のお楽しみに」

 笑みこそ穏やか、しかし狩る、の言葉には一時声の温度が下がった。
 そこから敵との接触が近いことを察した伊織は、握る愛刀『烏羽』へと、その刀身の色彩を更に深く闇へ寄せる暗き魔力を注ぎ込む。

「楽しみは多いに越した事は無いが――相変わらずの食気だな!」

 軽口連ねる間にも、魔力は刀を覆い溢れ、握る手越しに伊織の体へどくりと再び流れて戻る。ユーベルコード『陣風(ハヤテ)』――それは、伊織の中の秘めたる力を奥底より引き出し、技能を高める強化の技。
 水や雲、或いは風の様に捉え難い性質を持つ彼らしく、引き出す力は何者にも囚われぬ為の敏捷性――。

「先駆けは任せろ!」

 告げれば、ザザ、と前行く伊織の駆ける速度が速まった。
 進むにつれて耳に届く鶏の声を頼りに――僅かに身を低くした直後、伊織の姿は清史郎の前から掻き消える。
 捉えきれぬ疾風の動き。次の瞬間、草斬り裂かれて拓けた清史郎の視界に――五羽の鶏と、内一羽へ斬りかかる伊織の姿が映り込んだ。

「――ああ、頼りにしている。俺も俺の役割を果たそう」

 頼もしい友の勇姿に、応え清史郎も構えを取った。
 先に友が言った様に、桜花弁をその身に纏って。溢れる力に渦巻く風が清史郎を中心に流れると、ざあ、と音立て花弁も舞い、春の日の様に当たりへ散った。
 『開花桜乱』――飄々として掴めぬ性質の伊織が引き出すが速さならば、この技で清史郎が引き出すは、桜花弁が如き自在の動きと桜意匠の刀の切れ味。

「依頼を完遂した暁には、美味な肉で星空の宴というのはどうだろう、伊織」

 軽口混じりの己が言に、ふ、と微かな笑みを零して。清史郎の姿もまた拓けた草原の中心へ至ると、目前の鶏目掛けて真っ直ぐ蒼刀を振り下ろす。
 只一閃で一羽の鶏の首を落とせば、その背中にとん、と触れるは場を先駆けた伊織の背。

「いやまぁ清史郎の案に大賛成だ! なぁ菊里! この面子なら何の憂いもない――村に満ちる笑顔と星空の下での宴こそ、貨幣より何より輝かしい報酬になるだろう」

 背を任せる今日の友らへの信を吼えた彼もまた、黒刀で対した一羽の血花を咲かせ、尚も手に鈍く光る闇色の刃を握る。
 暗器『風切』。麻痺呪詛を宿すそれを牽制にと投擲すれば、菊里の戦場へ仕込んだ霊符が草で標的の足を捕らえ、確かな刃の命中精度を必殺のものへと更に高めた。

「ふふ、色々と豪勢な宴になりそうですね。……さて。普段なら狐火で焼鳥ですが、偶には剣士の本分を」

 言葉に伊織への同意を示し、笑む菊里は符より握り替えた一振りの刀を前へ突き出す。
 呪念抱く昏き刃。一突きで鶏を串刺すと、鋼の刀身をつうと伝い、鮮血が滑り落ちた。
 これは、次ぐ戦いへと誘う血。オブリビオンを誘い出し――戦うその結末は必ずや、数多くの笑みが咲く幸せなものでありたい。
 だから。清史郎は決意を友と共有すると、続く戦いを見据える赤瞳で、再度振るった蒼刀に倒れる鶏の最期を見送る。

「後の楽しみの為にも――まずは確りと鶏たちを仕留め、人々の脅威となるオブリビオンを誘き出すとしようか」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロード・ロラン
魔物が人を襲い、オブリビオンが魔物を襲う、か
弱肉強食って言えばそれまでだけど
俺らはオブリビオンを狩る者だからな
全て始まる前に、狩り切ってやろうぜ!

狩場は草原……草が邪魔だな
かと言って草を刈ってたら音で逃げられそうだし
ここは、穀物を撒いて誘い出すか

まんまと現れたら、大鋏で首を狙おう
血も出てランナーズイーターを誘えるし、
後で食うなら体は傷付けねぇ方がいいしな

って、結構素早いな、こいつ!
くっそ、逃げるなって……!

何とか取り押さえて首切り落とし、それでもバタバタ動く足に狼狽える
えっ、鶏ってこういうもんなのか!?
慌てて足で押さえて動かなくなるのを待ち、一仕事終えてため息

よし、同じ要領でどんどんやるぜ!



(「――魔物が人を襲い、オブリビオンが魔物を襲う、か」)

 漆黒の髪、狼の耳も尻尾も衣装にも黒を纏い、しかし金を湛えた瞳だけは、今日の空が戴く陽光の様に明るく煌く――佇むクロード・ロラン(黒狼の狩人・f00390)は今、介入しなければ起こるという今日の未来を思っていた。

(「弱肉強食って言えばそれまでだけど……」)

 命の蹂躙を許容はしないが、クロードとて理解はしている。この世界の生態系に属する魔物が人里を襲う、それ自体は自然摂理の内の事象であることを。
 しかし、その先に続くオブリビオンは、自然どころか世界の枠組みから外れた不条理の存在だ。

「俺らはオブリビオンを狩る者だからな。全て始まる前に、狩り切ってやろうぜ!」

 ――パン! 気合の声と共に顔の前で軽く拳と手の平とを合わせれば、渇いた小気味よい音が鳴った。勢いづいた心に従い、クロードは広い草原に潜む魔物をどう見出すか、その手段を模索する。
 隠れ場所の草を刈りとるだけでは、音で察知され逃げられてしまう――。

「ここは、穀物を撒いて誘い出すか」

 決めるや、クロードは腰に下げた巾着から掴み出した雑穀を、撒き餌として辺りへ散らした。
 一掴み分が手を滑り落ちれば、後は草の中に身を隠して待つだけだ。その間も忙しなく働く狼耳が、獲物の声から数や位置、その接近を聞き分ける。
 二羽居る――それらが撒いた雑穀をぱちりと啄んだ瞬間が、攻撃仕掛ける最大の好機。

「コケ―ッ!?」
「って、結構素早いな、こいつ!」

 飛び出したクロードの身軽な体は、忽ち鶏へと追い付くけれど。対して逃げ出す鶏の反応も想像以上に素早かった。

「くっそ、逃げるなって……!」

 咄嗟にクロードは鶏の首の付け根を掴むと、バタバタと飛べぬ羽や足を振るって全力で藻掻き抗う鶏を、大地へと圧し付けた。
 頸部抑えつける両手を何とか左手一本に纏め、余る右手で身の丈程の大きな銀鋏を引き寄せる。薔薇の装飾着飾る刃身を鶏の頚部へ宛がうのは、挟むではなく――片刃押し付け、圧して頸部を斬り落とすため。

「ギャッ!?」

 直後、鶏の胴と頭部が首から分かたれ、鮮血が広く飛び散った。
 美しい草原が血に汚れるのは残念だが、クロードの狙い通りだ。漂う血の香はオブリビオンを誘い出す餌となるし、一見残虐な首刈りの一撃には、後で食する鶏の肉を極力傷付けない意味もある。
 命狩る以上、無駄にはしない――だが、確かに首は斬り落としたのに、鶏の体はバタバタと変わらぬ抵抗を続けていて。

「――えっ、鶏ってこういうもんなのか!?」

 慌てて大鋏から右手を離し、狼狽えながらクロードはその足を押さえた。
 首落としてまだ動くとか、流石に想定していなかった――考える間に次第に鶏の抵抗は弱まり、やがて脱力して動きを止める。
 クロードから、意図せず重たい溜息が落ちた。

「――よし、同じ要領でどんどんやるぜ!」

 少々動揺したけれど、そういうものだと知ってしまえば、想定して対応出来る。切り替えた少年が次にすべきことと言えば、繰り返していくだけだ。
 立ち上がったクロードは、横たわる銀薔薇の大鋏を掴むと――新たな獲物を探し求め、草原の中へと駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・多摘
ああ、この世界もこのような人々の営みは変わらぬか。
懸命に日々を生き、そしてそれに降りかかる災難を打ち破る為に立ち上がる人々がいる。
それが悲劇的な結末に終わるのはこのように成り果てた我にとっても少々心苦しい。
一つ一つ脅威を潰してやろうぞ。

UC発動して変身、高空を高速で飛翔しながら鶏達に雷の雨を降らせよう。
広範囲に降り注ぐ雷、隠れていようと問題はない。
そして仕留めきれずとも動きは鈍る、空から見下ろしそんな鶏の姿を探り、急降下し爪で引き裂いて血とその匂いを周囲にまき散らす。
その際ブレスを浴びぬように注意、背中側から首に一撃喰らわせ仕留めよう。
…血抜きもした方がいいのじゃろうか。

※アドリブ絡み等お任せ



 眼鏡の奥の翠の瞳が、今映すは眩き世界。例え悪霊と成り果てても――水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)の眼差しは、生きる人を慈しみ見守る優しき竜神のものだ。

(「――ああ、この世界も、このような人々の営みは変わらぬか」)

 懸命に日々を生き、迎える苦難や困難は決して少なくないものだ。しかし打ち破らんと立ち向かう人の姿は、この光の景色の様に眩く、また神であった多摘にとっては慈しむべき愛おしいものに違い無かった。
 今日、星の村を襲うという悲劇。祖父を案じて涙する少女。そして命の蹂躙を阻止せんと立ち上がる優しく強き人々も――その在り様はこんなにも愛おしく、この胸を温める。しかし多摘は同時に今、胸突く痛みも感じていた。
 脳裏に過るは嘗ての悔恨。多摘には、護れなかったものがあった――。

(「立ち上がる、強き人々。それが悲劇的な結末に終わるのは、このように成り果てた我にとっても少々心苦しい。……一つ一つ脅威を潰してやろうぞ」)

 今度こそ、というわけではない。何より慈しんだ愛し子達は、とうに竜鱗覆う手から滑り落ちてしまったから。
 それでも、眩く生きる人の営みを――護りたくて、今多摘は決意する。
 今日起こり得る理不尽な悲劇を、必ずや祓おうと。

「この世界に神が在るかは解らぬが――暫し許されよ。この蒼穹を少し荒らす」

 低い音色で呟くと、多摘の荘厳な竜の体が紫色の魔力を纏った。
 高貴の色と、所によっては言われる色――だが、既に悪霊へ堕ちた多摘の纏う色彩には、どこか仄暗い淀みがある。
 それはやがて鱗へ、爪へ、竜たる体へ染み渡る。力となって――巡り、やがて満ちた場所から体を真竜へと替えていく。
 完全竜体への変化――ユーベルコード『竜神飛翔』だ。

「雷の雨を降らせてくれよう。……例え隠れていようと逃さぬ」

 一見で畏怖すら覚える、神々しき竜の真体。潜む敵へと低く言葉を吐き捨てて、多摘の体は蒼穹へと舞い上がった。
 高速の飛翔で空から草原を見下ろすと、竜鱗覆う指先が、不意に地表を指し示す。
 直後その指先から、金の閃光が火花散らして地上目掛け解き放たれた。

「――ゲッ!?」
「ギャァアッ!?」

 鶏一羽への、狙い澄ました一撃ではない。だが、多摘の指先から放つ雷は幾重にも分かたれて、雨の如く地表に降った。
 これで仕留めきれずとも、その上がる悲鳴によって場所が知れれば此方のものだ。

「動きは鈍ろう? ――贄としてくれような」

 長く鋭き竜爪構え、多摘は痺れ震える鶏の背面へと急降下する。
 この鶏達との戦い終えれば、次に続くはオブリビオン。誘うためには、鶏のその内に流れる血が必要と聞いている。
 だが、この狩りは無駄にはならない。オブリビオンを打倒した先に――その肉は生きる糧として、人々へ振る舞われるのだから。

「……血抜きもした方がいいのじゃろうか」

 浮かんだ光景に僅かに笑んで、柔く呟いた竜神は、絶命の竜爪を振り下ろす。
 斬り裂かれた小さな鶏は、その鋭さに血花を散らすと――溢れる血の池の中で、やがて動かなくなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローズヴィトニル・ヒースハイデ
【野良犬】
(己の呼ばれ方は『ヒース』
ルフの事は『フレスベルグ』と呼ぶ
アドリブ、マスタリング歓迎)

_
フレスベルグの巻き起こす血の嵐を背に、刹那目を閉じる。

『アンタ達だって、そうでしょ?』

フレスベルグのその言葉に、感情の抑揚も無く一つ同意を示した。
…己は軍籍に身を置く者。散々血に塗れ、数多の命を屠り、骸の道を築いてきた。
──そうとも。慣れている。…もう慣れた。

再び開いた眼に感情は無く、唯冷たい光のみを宿して
──剣を、抜く。

_

(抜剣と同時に戦場を蹂躙する一閃。
暴嵐の如きそれに、血は赤き花弁の様に舞い上がり…やがてこの男の顔を彩る。
この男の為に誂えた紅であるが如く、
──妖艶に。)


_
(…俺を、恨めよ。)


ファング・ロー
【野良犬】
2人からの呼ばれ方は「ロー」
アドリブ諸々大歓迎
大狼の姿で戦場を駆け巡る

フレスベルグが狙った鶏を一匹キャッチ
血を垂れ流したままの鶏を咥えて
戦場に血をまくのを手伝う
もちろん、身近に新しい獲物を見つけたら追跡して、首を狙って”部位破壊”
狩猟する狼のように素早く鶏を狩り取る

血に汚れる事を決して恐れてはいねェよ
俺は命を扱う医者だ
この赤を恐れていたら、何も救えやしねェだろ?

ただまぁ…
(この鶏たちが殺されていいかと言われれば…
この戦いが終わったら、しっかり祭りでその命は頂く
なにも無駄にはしねェからな)

連れの2人の様子を見ながら
石化鶏が誘き出されるのをジッと待つとしよう


ルフ・ジャナーフ
【野良犬】で参加
2人の前ではフレスベルグと名乗るよ
アドリブ、アレンジは大歓迎だからね

翼に宿る偽神細胞を励起し、
一枚一枚の羽へ集中
片っ端から見つけた鶏の心臓を狙って
羽を飛ばして仕留めてしまおう
目標が死に至ったら、ストームランページで翼を巨大化させ、
風を送り込むことで鶏を刻んで風に乗せて血を撒き散らせよう

汚れ仕事だ
血に塗れるくらい、どうってことないよ
アンタ達だって、そうでしょ?

僕は嵐の王となるもの
この犠牲は必要な犠牲だ
この命は僕が背負って生きていく



 銀紫に陽透かす大狼が、草原の中を駆け抜けていく。

「……よっ……と。人遣い荒ぇなァ? ったく」

 高く跳躍。深緑の草原に、くっきりと浮かんだ影の主はファング・ロー(救牙・f27275)。人とは異なるすっと伸びた口吻は、飛来した鶏を掴むと着地するなり悪態を吐いた。

「後で食う肉だろうがよ。ポンポン軽快に飛ばすンじゃねぇよ」

 物申す先へファングがくるりと振り向けば、銜える鶏の亡骸からは鮮血が滴り、パタパタと大地へ散らばる。
 そこに問題は全く無かった。寧ろこうして血が撒ければ、オブリビオンを誘き寄せるという今日の目的の一つも果たせる。しかし――今零れ落ちるそれは、ファングの牙に引き裂かれた傷からのものではなかった。
 その傷口には、心臓へと達する刃が如き硬い白羽根――。

「……人遣い? 犬遣いの間違いじゃない?」

 ファングの言葉に軽口で返す、小柄な少年の褪紅の瞳は、眩き陽光の光を通して妖しくも印象的に光る。ルフ・ジャナーフ(翼供の王・f27276)――朝の陽射しに浅黒の肌を晒して立つルフの姿は、何処か近寄りがたくもある冷たい威厳を帯びている。
 その左腕は、数々の歪みを重ねた果てに、辿り着いた異形の白翼。

「回収を頼んだ覚えはないよ、ロー。数が多いんだ、効率良く倒すに越したことはないし、はなから派手に立ち回れば、それだけで辺りに血を撒き散らせる。今はあくまで前哨戦だよ。肉を有効活用するのは良いけど、優先すべきはそこじゃない――人命に勝るものはないでしょ?」

 そして、ファングへと続けた言葉は自信に満ちて、齢を思えばあまりに早熟したその思考を露わにする。
 カガイの村へ向かうという魔物を草原で留めて斬り裂き、その血臭で以って次いで出て来るオブリビオンを村ではない場所に誘い出す――確かに今最も重視すべきは、この作戦通りにつつがなく事を進めることだ。
 そこさえ確実に達成されれば、関わる村の住人達や冒険者達は救われ、星祭りも行われるという結果が後からついてくる。鶏の肉は副産物であり、ルフにとっては始めから優先すべきことでは無いのだ。
 だから、遠慮など欠片もしない――異形の翼に宿る偽神細胞を励起して、ルフは刃と化した羽根一枚一枚を鶏達の心臓目掛けて飛ばす。
 血に塗れても、標的を仕留める――戦いとは、綺麗事ではないのだから。

「僕は嵐の王となるもの。この犠牲は必要な犠牲だ。……この命は、僕が背負って生きていく」

 痛みは決して語らない。ただこう決意をルフが告げると、胸抱く様に撓らせた異形の白翼が突如ぶわ、と膨らんだ。
 偽神細胞の活性化――今ルフの中では、内に秘める体内魔力が倍々に膨れ上がっていた。その高まりに比例して巨大化していく白き翼は、ばさりと只の一払いで荒れ狂う竜巻を引き起こす。
 ユーベルコード『ストーム・ランページ』。

「汚れ仕事だ。血に塗れるくらい、どうってことないよ。――アンタ達だって、そうでしょ?」

 ごう、と激しき強風が、巨大化した白い翼から羽根を一帯へ撒き散らした。
 羽根は背の高い草葉を刈り、隠れる鶏の姿を晒し、防御失ったその体へと無数の傷を刻み付ける。噴き出した血は、強風によって空へと煽られ、巻き上がって散らばった。
 それは、まさに血の嵐――。

(「──そうとも。慣れている。……もう慣れた」)

 その血が吹き荒れる光景は、幾度と戦場にて自らが繰り返したものと似ていた。嵐の蹂躙に背を向けて立つフローズヴィトニル・ヒースハイデ(涕溟・f27274)は、ルフの問い――『アンタ達だって、そうでしょ?』とそれに、満ち月の光が如き金の瞳の瞑目一つで同意を示す。

(「戦果を要する今この時に、血の流れるを厭うには――この手は血に染まり過ぎた」)

 冬纏う様なフローズヴィトニルの美しい銀髪は、嵐吹き荒ぶ中を不規則に踊るけれど、その表情に窺える感情は抑揚もなく凪いで静かだ。自身の在り方を憂うでも、誇る様でもなくただただ無。
 軍籍に身を置く者として遍く戦場を蹂躙し、数多の命を骸と変え、「戦場に悪魔ありき」「冬の剣帝ヒースハイデ」と言わしめ恐れられて生きて来た男。故国護らんと振るうその剣は、感情纏わず冷酷無比――。
 その評を、フローズヴィトニルはただ事実として淡々と受け入れていた。この手と剣はとうに多くの血に塗れ、更なる血の雨を降らすことに今更何の感慨も無い。
 そう、感慨は――無い筈だ。だから、男は腰に提げた愛剣の柄に、魔力帯びる手を伸ばした。

「――斬る」

 端的に呟いて、開かれしフローズヴィトニルの双眸が宿すはただただ冷たき眼光のみ。
 朝明けの空に差す光は温かく眩いのに、その光の中に立つフローズヴィトニルが纏う空気は見る者の心を凍て付かせる様に冷たい。放つ闘気は身が竦む程の恐怖を標的へと齎し、その動きの自由を奪う。
 抜くは黒剣『アラドヴァル』。冷気の魔力を纏いし剣身が光の景色を斬り裂いた時――その一振りが解き放つは、戦場を蹂躙する暴嵐の一閃。
 ユーベルコード『戦禍(ベルヴェルク)』。

「……俺を、恨めよ」

 仄かに、本当に僅かな熱を帯びて呟いた声は、薙いだ剣の音に掻き消された。斬線は激しき風を伴いながら、真っ直ぐと草原を駆け――しかしあくまで第一波。
 冷気の魔力を纏う剣身は、フローズヴィトニルを中心にごう、と激しい渦を周囲へ齎し、吹き荒ぶその力が光の世界の大気を揺らす。
 それらは全てが無数の斬撃。風に追い付かれし鶏達は――体表に不規則な傷を刻みながら、空に舞い上がり血を噴いた。

「……血に汚れる事を、決して恐れてはいねェよ」

 まるで、赤き花弁だ。飛沫き舞い上がるその赤を、何処か遠くを見る目で見つめ――ぽつりと呟いたのはファング。
 正に狩猟する狼の如く、二度の暴風を逃れた鶏の首を牙で捕らえて裂いた人狼は、更に肉裂いて血を抜きながら――その亡骸掴んだ手を降ろす。

「俺は命を扱う医者だ。……この赤を恐れていたら、何も救えやしねェだろ?」

 命の脈動。生きる全ての者の中へと流れるそれを、ファングは決して恐れない。そして今、ただ立つだけで冬纏う様な凜の空気を帯びるフローズヴィトニルに――きらきらと降る赤い花吹雪は、相応しく美しいと思う。
 その血がぴしゃりと男の頬へ飛沫けば、その透く白肌に誂えた紅であるが如き妖艶さにはぞくりとした。浮世離れしているな、などとと何気なく思いながら――だが、次いでファングが視線を落とすは、地に倒れ伏す鶏達の亡骸。

(「恐れはねェさ。……ただまぁ、この鶏たちが殺されていいかと言われれば……」)
 
 ファングとて識っている。生きることは戦いであり、また戦いとは綺麗事ではない。鶏達は魔物であり、今日この命を屠らなければカガイの村に生きる人の命が喪われていただろうことも、解っている。解っているのだ。
 だが、鶏達は人の脅威にはなろうとも、この世界に生きる命だ。世界の枠組みの外から現れ無法に命を蹂躙するオブリビオンとは異なるもの――ならばその命の最期は、例えどんな理由があろうと意味のあるものであって欲しい。
 あらゆる命を救いたい、なんて傲慢な幻想は抱いていない。ただ、目の前にいる誰かを救えるのならば、何処まででも駆けて行ける救い手で在りたいと――ファングはそういう医者であったから。

「この戦いが終わったら、しっかり祭りでその命は頂く。……なにも無駄にはしねェからな」

 その亡骸へと誰に聞こえぬ声で呟き、ファングは再び空を見上げる。
 紫紺の瞳に、映るは舞い上がった無数の屍。その全ては難しくとも、一つでも多く地へ落ち肉が傷む前に回収せんと――命と向き合う銀紫の大狼は、血臭満ちる草原を全力で駆け抜けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
ほほう、何とも健気な娘ではないか
私とて童の涙には弱くてな
…少しばかり力添えをしてやるとしよう

無様に石に変えられては元も子もない
…否、元々我が身は石ではあるが
ならば、吐息の餌食となる前に血祭りにあげれば良かろう
魔方陣を描き、高速詠唱を行使
召喚するは【暴虐たる贋槍】
――ほれ、此奴を呉れてやる
広範に降り注ぐ風の刃にて魔物を屠った暁には
さぞ派手な血飛沫があがる事だろう

獣風情が、我が死角を狙おうと無駄ぞ
常に聞き耳を立て、慢心せず周囲を警戒
魔物が近付く音を察知したならば
高速詠唱を用いて串刺しにしてくれよう
ふふん、獣肉を食する場合
血抜きの良し悪しが味を左右すると云う
…貴様の味は、如何様な物になるであろうな?



「無様に石に変えられては元も子もない。……否、元々我が身は石ではあるが」

 呟くアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の、その体はスターサファイア。
 その肌も、星宿す瞳も黎明の髪も、今日の朝陽を存分に吸ってキラキラと煌いている――美しきクリスタリアンの男は、一人往く道すがらに今日の敵が吐くという石化ブレスを考察し、呟いた自身の言葉にコホンと咳払いをした。

「――ならば、吐息の餌食となる前に血祭りにあげれば良かろう」

 即座に気を取り直せば、その整ったかんばせはふふん、と尊大な笑みを湛える。しかし決して慢心もしない。その耳は常に注意深く周囲の音を探り、瞳は忙しなく辺りを巡って警戒の網を張っていた。
 その理由は――酒場で必死の助力を請うたという、ロレッタなる幼い少女。

(「祖父を思い、不慣れな酒場へ駆け込むか。……何とも健気な娘ではないか」)

 姿かたちこそ見えずとも、少女のその健気さは、ただ伝え聞いた話にも充分に滲み出て。愛おしさからふ、と笑むと、アルバは少女の涙に報いんとする心を原動力に進む。

「私とて童の涙には弱くてな。……少しばかり力添えをしてやるとしよう」

 誓うアルバは――その時不意に感じた複数の気配に、進む足をぴたりと止めた。
 ザザザザ、とアルバの周囲、草原が風とは違う何かによって揺れている。次第に近付くそれらの一部から少しの殺気も感じれば――囲まれた、と判断し、アルバは不快げに舌打った。

「……獣風情が。我が死角を狙おうと無駄ぞ」

 呟いて――とん、と。その手に握り地を突くは、杖に擬した流麗なる一振り『星追い』。
 瞳閉ざして高速詠唱。進むに伴い杖先では、金色に輝く魔力線が自動で陣を描いていく。
 やがて全ての線が繋がると、陣の中から立ち上るは、無数の激しく渦巻く風。
 自在に空舞う風の槍――ユーベルコード『暴虐たる贋槍(ワイルド・ハント)』。

「――ほれ、此奴を呉れてやる。串刺しにしてくれような!!」

 猛りアルバが吼えた瞬間、風槍は空を翔けた。
 アルバ囲い迫っていた鶏が幾つ居ようが関係無かった。それを圧倒的に上回る数の刃は全方位へと降り注ぎ、姿を現した鶏達からは悲鳴と高い血飛沫が上がる。
 やがて全ての風が凪げば――術振るう前と違うのは、むせ返る様な血臭だけ。

「……ふふん、獣肉を食する場合、血抜きの良し悪しが味を左右すると云う」

 アルバは幾分落ち着いた様子で鼻を鳴らすと、血溜まりに横たわる鶏の屍の一つを無造作に引き上げた。
 のちに食する肉を傷めぬ様、加減したつもりだが――少々苛烈が過ぎたかもしれない。地に溜まる血の量を見ても、如何に深く激しい傷を刻んだものかが即座に解る。
 だが、それがオブリビオンを誘い出すのだからと納得することにして、アルバはやはり尊大な様子で掴んだ肉をふるりと振るった。

「血は存分に抜いてやったが……さて。祭りで振舞われる貴様の味は、如何様な物になるであろうな?」

 その答えは、戦いの果てに待っている――だからアルバは肌に触れた血を払うと、再び草原を歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
小さな依頼者の為に、ねぇ
気のいいヤツらなら
なおさら張り切って助けてやんねぇと

やっぱおびき寄せんのが早いだろ
何だよアレス
そんな顔してっけど、側にいてくれるんだろ?
なら平気じゃん

…守るだけじゃなく、斬るのも手伝ってくれよ
何だかアレスが嬉しそうで
それが嬉しくて軽口を
機嫌よく歌うは【囀ずる籠の鳥】
さぁ、夢中になりやがれ

アレスの背中を守る様に
星の瞬きに風の属性を纏わせ
向かってくる鶏を厄介なブレスごと押しきる
その間も歌は止めず…って、ちょっとおびき寄せすぎたか?
まあでも、アレスがいるし
手を引かれるままにぐるっと回って立ち位置を変え
剣を一閃
信じてたぜ、ありがとう
言葉の代わりに握る手を強めた


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
村も小さなレディと冒険者達の想いも
僕達が守ろう

セリオスの作戦には…正直少し心配だった
その後の言葉に一瞬目を見張る
同時に嬉しさもあって
…君からそう言ってくれるなんてね
―ああ、君の側にいる
僕がいる限り、君の邪魔はさせないし守ってみせるよ
彼の軽口には
任せて、と笑顔で応えよう
君は思い切り歌ってくれ

彼の背を守るように背中合わせに
麻痺狙いの雷の範囲攻撃で援護しよう
悪いが村の方へは行かせないよ
ブレスはマントにオーラを纏わせ防ぐ
セリオスの方へ鶏が集中しだしたら彼の名を呼び
手を引き、回って入れ替わり
視認する全てを狙うように【天破空刃】の斬撃を!
君の邪魔はさせないし守ってみせる…と言っただろう?



 光透き、その色は青にも紫にも風に躍る度変化する――瑞々しく艶めく髪を吹かれるがままに空へ泳がせ、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)は草原の中、思索に長い睫毛を伏せる。

「んー、やっぱおびき寄せんのが早いだろ」

 状況と、使える手札。それらを総合的に鑑みて、今日の作戦を立案する――振り向き様に結論述べたセリオスに対し、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)からの返答はいつになく歯切れが悪かった。

「……それしかないか。今は考える時間も惜しいからね」

 朝陽に輝く金の睫毛はやや物憂げに伏せられて、誠実さ滲む整った顔は曖昧な笑みを浮かべている。
 何が彼にこんな顔をさせるのか――セリオスには、心当たりが在り過ぎた。
 
(「まぁなぁ……おびき寄せるってーと、大概引き付け役は俺だし」)

 無茶を重ねて来たこれまでの記憶が、次々と脳裏を過る。引き付けに適した能力を有していることも理由の一つではあるけれど――装甲が薄い自分が引き付け役を担う度にアレクシスが不安を抱いていたことは、セリオスとて理解していた。
 それでも、状況の悪さを打開するため、アレクシスを出し抜いてまで我を通したこともある。勿論、彼を危険に晒したくない一心でのことだけれど――その想いはアレクシスとて同じだということも知っている。解っていた。
 だってアレクシスはいつだって、我が身よりも先ずセリオスを護ろうとするひとだから。

「――ったく。おいアレス!!」

 しかし、今は状況が違うのだ。心配なんて必要ないのに――呆れた様に、だけどその心配は嬉しくて思わず頬緩めたセリオスは、笑み誤魔化す様に目を細めると、白く細い指先をアレクシスの顔へと伸ばした。
 むにっとその指で摘まむは、アレクシスの通った鼻筋。

「っ!? セリオスっ!?」
「何だよアレス。そんな顔してっけど、側にいてくれるんだろ? なら平気じゃん」

 驚きに丸くなったアレクシスの蒼穹の瞳に、ニッと勝気な、でもその瞳はとろりと何処か嬉しそうなセリオスの笑みが映る。
 瞬く星海を封じた様な、青みの深い澄んだ瞳。見掛けによらず脳筋で、自信家の型破り。だけど時に儚くて、放っておけない幼馴染――セリオスの言葉からは、『お前がいるから戦えるんだ』とそんな想いが見えた気がして。
 
「……君からそう言ってくれるなんてね」

 ふっと相好を崩したアレクシスの、肩の力がすとんと抜けた。

「――ああ、君の側にいる。僕がいる限り、君の邪魔はさせないし守ってみせるよ」

 決意を語るアレクシスが、嬉しそうに瞳を細めた。その優しい笑顔が、何だか嬉しかったから――つられてセリオスも微笑むと、茶化す様に紡ぐ声には軽口を乗せて拳を掲げた。

「守るだけじゃなく、斬るのも手伝ってくれよ?」
「勿論、任せて。村も小さなレディと冒険者達の想いも、必ずや僕達が守ろう。……君は思い切り歌ってくれ」

 こつん、と、互いに拳と拳を合わせる。それにもふふ、とまた笑んで、互いの意志確認が済めば、――いよいよ戦いの時間だ。
 再び体を草原へ向け、笑んだセリオスは声高に吼えた。

「――さぁ、とっておきを聞かせてやるよ! 俺に夢中になりやがれ!!」

 すうと肺いっぱいに息吸えば、空でも飛べそうな軽やかさでセリオスの喉奥から旋律が溢れ出た。
 吹く風に乗って遠くどこまでも草原を渡っていく、歌の名は『囀ずる籠の鳥(レイド・セレナーデ)』。
 聴く者を惹き付け、視線縫い留める――セリオスの魔性の歌だ。

「――来るがいい! どれ程の脅威が群れ成し彼へ迫ろうとも、僕が傍に居る限り、絶対に彼は傷付けさせない!」

 そしてその歌声に負けじと凜と響くは、セリオスの背を護る様に立つアレクシスの咆哮だ。吼えて直後、抜いた白銀の剣身にはバチン! と激しき火花が散る。
 穏やかな陽光すら弾く輝度のそれは、――纏わせた魔力の雷。

「コッ……コケ―ッ!!」
「キャーッ、ケケッ!!」

 眼前には、既にセリオスの歌声に惹かれて姿現した鶏達が居る。それらを蒼穹秘める瞳でぐるりと一瞥した騎士は、バチバチと激しく火花散らす雷剣を大きく薙いで迎え撃った。

「悪いが、この後ろへは抜かせないし――村の方へも行かせないよ」

 告げて――一閃。描いた光の斬線が軌道上で激しく爆ぜた。
 ただの一振りから幾重にも分かれ放たれたのは雷だ。アレクシスが姿見せる鶏へ次々と振る舞うそれは、痺れで以って鶏達の侵攻を止める鎖。

「お前らの視線、――もっともっと俺に寄越せ!!」

 そして、その背に守られながら、逆にアレクシスの背を守る今日のセリオスは絶好調だ。迫る鶏を愛剣『星の瞬き』に纏わせた風で吹き飛ばしながら歌い続ける――その伸びやかな歌声は、新たな敵を惹き付けながら草原を渡っていた。
 隙見て鶏が迫っても、剣に纏わせた風が石化のブレスごと押し切っていく。だがしかしその剣撃は、意識を歌と二手に分けた分、一撃で止めを刺せる威力に達していないのも事実で――。

(「……って、ちょっとおびき寄せすぎたか?」)

 気付いた時にはセリオスの前には、背を合わせたアレクシス側とは比にならない数の鶏達が群がっていた。一人で討ち果たすには少々骨の折れる規模――しかしその数を前にしても、セリオスの心に焦りはなかった。
 大丈夫だと信じられる。だって、――――此処には。

「セリオス!!」

 自身を呼ぶ声と同時、ぐい、と背後から腕引く手に、セリオスは身を任せた。
 開戦当初から全く同じだ。守る様にセリオスを己が背に回し位置入れ替えたアレクシスは、繋ぐ左手はそのままに、右の手に握る剣へ極光纏わせ群れを薙いだ。
 『天破空刃』――視認する対象全ての位置へ斬撃起こすこの技は、一閃したその瞬間に、遠くに見える鶏達までをも全て斬り裂き大地へ沈める。
 無数の悲鳴と血飛沫と共に――全てを斬り払い沈めた後には、……静けさを取り戻した朝の草原が残るのみ。

「……君の邪魔はさせないし、守ってみせる。……そう言っただろう?」

 全ての敵の沈黙を確認し、アレクシスは剣を収めた。
 戦い終えて柔らかに笑む蒼き騎士の左手は、先に掴んだセリオスの手をずっと握って離さない。それはまるで守り抜いたと、そしてこれからも守り抜くと告げられている様にセリオスには思えた。

(「……ありがとな、アレス」)

 心で呟くセリオスは、いつだって支えられていると知っている。アレクシスの献身は時に泣きたくなるほど嬉しくて、この温もりを手離せないのは自分の方で――しかし込み上げたこの想いは、きっと言葉で言い表せない。
 だから、感謝と精一杯の愛しさ込めて、セリオスは手を握り返す。
 強く、強く。不器用で、言葉以上に饒舌なその手の意味を――アレクシスも、解ってくれていると信じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ランナーズイーター』

POW   :    スニークイーター
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【牙】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
SPD   :    ハングリーランナー
全身を【硬質な鱗】で覆い、自身の【食欲】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    ハンティングタイム
【別集団のランナーズイーター】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●捕食者を誘う戦場で
 ――緑の海原を照らす陽は、少しだけ高くなっていた。

 今、草原にはそれはもう沢山の鶏の亡骸達が、一箇所に山と積み上げられている。これは、カガイの村を襲う魔物――石化鶏を無数に狩り、村への襲撃阻止に成功した猟兵達が、草原中に横たわるその亡骸を拾い集め纏めたものだ。
 無数に狩ったその肉は、全てがカガイの村で今宵執り行われる星祭りで調理され、無償で振る舞われるという。
 ならば傷みは少ない方が、村人達にも喜ばれることだろう。討伐の最中にもそれを気にかけ、血抜きなどの処理を積極的に行った猟兵もいたが――その最後の下処理として、猟兵達は全てを集めることを選んだ。
 それは、草原に散らしたままではいけない理由があったからだ。……それが温度管理や運びやすさといった平和的な理由であるならどんなにか良かったか。
 猟兵達は知っている。あんなにも光煌いて眩かった草原は今、濃くむせ返る様な血臭に満ちていて――それが更に激しい戦いをこの大地へ齎すことを。

 ……ズシン、ズシン。
 ……ズゥン……ズン……。

 ――ふと。足から大地揺らす律動を感じて、猟兵達は手を止めた。
 決して自然に由来される地震と呼べるものではない。規則的に刻まれるそれは遠くから、少しずつ、少しずつ近付いて――その原因、その姿かたちを猟兵達が早々に発見出来たのは、此処が見通しの良い草原帯であったからか。
 ――否。そもそもあの姿は、ある程度見通しが良ければ見出すことは容易であろう。果たして今まで何処に居て、何故目に留まらなかったのか――不思議に思うほど、その影は大きくて。
 恐らく、体長は個体差あれど3~5メートル。翼を持たず、大地を活動領域とする雑食性の赤きドラゴン――その名はランナーズイーター。
 一般の冒険者達が見ても、恐らくその外見だけならば『剣と魔法と竜の世界』と呼ばれるこの世界に違和感なく思えただろう。……しかし、猟兵達には違いが解る。
 あれは、その存在全てが異質。失われた過去の化身、世界の敵、オブリビオン。

「――ギャゥウウウウ!!!」

 その咆哮は歓喜の色帯びて、血臭の大気を通して鼓膜をビリビリと震わせる。ズン、ズン、と足沈める度巻き起こる振動が次第に速度を増しているのは、石化鶏達の血の臭いに誘われているためであろう。
 それが、実に有難くないことに複数だ。大多数の集団で生活するというドラゴンは今、やはり大多数の集団で此方へと迫っている。
 猟兵達を視認しているか――それはこの距離では解らない。

「……まだ、少し距離がある。今の内に走って行って迎え撃てれば、この肉の山や村の方へ近付くことはないだろう」
「そういえば、ランナーズイーターは動くものを獲物とする、と聞いたことがあります。特に、動きの早いものを、と」
「――なら尚更だ。さっさと向かって終わらせようぜ」

 得た情報を整理し、或いは知る情報を共有し――猟兵達はそれぞれに、戦いの方針を決定する。
 戦場は変わらず草原。標的は巨大かつ数が多いが、駆けて引き付けること叶えば、村や集めた鶏肉に影響出ることは無いだろう。

「……早々に終わらせる。行くぞ!!」

 心を決めた猟兵が一人、先陣切って前へと飛び出す。
 ――それが合図。猟兵達は、巨大な今日の獲物を目指して一斉に駆け出した。
ルムル・ベリアクス
……これはまた、随分な群れですね。村にこれ以上近づけるわけにはいきません!
まずは、敵を引き付けるのが最優先。UCで悪魔の軍団を召喚し、二手に分かれさせます。
敵の、動きの早いものを獲物とする習性を活かして、悪魔の一部には空から敵を引き付け、足止めしてもらいます。その間に残りの悪魔を突撃させましょう。空の悪魔に気を取られている敵を、横や後ろから攻撃します!隙があれば眼も狙わせましょう。
敵と悪魔の両方に気を配るため、わたし自身は悪魔の肩に乗り、基本的に指揮に徹します。
必要があれば、フォーチュンカードを【投擲】【乱れ撃ち】して【挑発】することで敵を引き付けて誘導し、こちらに有利な態勢に持っていきます。


アネット・レインフォール
▼静
ふむ…動く者を追う習性か。
だが、速過ぎてもいけない気がするな。

帝竜ほどではないにしても、腐っても竜種だ。
それなりの威力でないと意識を刈り取れないだろう。

…しかし、だ。通常の敵は倒すと消える。
消えないケースもあるが…
もし残るなら鶏肉の足しにでもしようか。

村の新名物になるかもだし。
…まあ、美味いかどうかは分からないが。

▼動
敵の付近まで単車で移動。
必要なら旋回し敵を戦い易い場所へ誘導もしよう。

本来の用途とは若干異なるが、
誓斧を手に【無刀閃】で複数を巻き込む形で
範囲攻撃を叩き込む。

霽刀に戻し足を狙う事で機動力を削ぐか
UCを地面に放ち、地形破壊を行い足止めも視野に入れておく。

連携、アドリブ歓迎



「……これはまた、随分な群れですね……」

 群れ成す陸竜――想像を超えた光景に、前へと駆けるルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)は本体たる仮面の奥で、やや生気に欠けた赤き瞳を辺りへ巡らせ思索する。
 数は、恐らく今居る猟兵達よりも多いだろう。ただでさえあれだけの巨体だ、一人一体でも手が足りないとは中々に骨の折れることだが――だからと言って止まれない。オブリビオンであるあれを倒せるのは猟兵達だけなのだ。

「……まずは、敵を引き付けるのが最優先。動きの速いものを追うと言いましたか」
「ふむ……動く者を追う習性か。だが、速過ぎてもいけない気がするな」

 呟きには後方から、低い男の声が応えた。
 ルムルの短くも波打つ黒髪が、人影が横を抜けた瞬間風圧でふわりと浮いた。とっさに影を視線で追えば、草原という凹凸ある足場をものともせぬ直線軌道――駆け抜けていくのは鋼の体躯、大型二輪『三頭黒狼』。
 首巻く長布をはためかせ、愛車に跨るアネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)。

「必要なのは目に留まり、あれらが追従出来る程度の速さだ。……まずは近付く」

 全身黒纏う男の背中は、たちまち先駆け陸竜の足元へと近付いていく。足で駆けるより機動力あるその走行と男が持つ存在感に、気付いた陸竜の群れの中がざわりと俄かに騒めいた。

(「成る程……攪乱からの誘導術ですか。上手いですね」)

 群れの足元に至って走行軌道を直線から周囲旋回へと切り替えたアネットの立ち回りに、ルムルは内心舌を巻く。
 直線走行による加速が齎したのは、陸竜達に気付かれない、気付いても即反応が難しい所謂目にも留まらぬ速さだ。しかし、足元に至った瞬間それは旋回により勢いを落とし、陸竜達の注目と反応を適度に集め誘導を計っている。
 ぐるぐると複数の陸竜を纏める様に周回することで、少々散開していた群れは、次第に一所へと集まりつつある――。

(「帝竜ほどではないにしても、腐っても竜種だ。それなりの威力でないと意識を刈り取れないだろう」)

 そして、深い黒染めるアネットの瞳は、落ちて来る陸竜の爪を回避しながら油断なく次手を探っていた。
 一対一であるならば、一撃で落とす算段もある。ただ、やはり敵の数は多い――。

「『異界の門よ、開け! 悪魔の力を見せる時だ!』」

 その時。後方より突如響いた声の主はルムルだ。
 つい数秒前のこと。これも一つの占術と、懐に差し入れたルムルの手が引き出した『フォーチュンカード』。無造作に引いた一枚に描かれたものを確かめると、ルムルは口元へ薄らと笑みを浮かべた。
 そこに描かれていたのは、正に対多数戦に相応しい――無数に現れ空を蹂躙する、人型の悪魔達であったのだ。

「さあ、悪魔よ!」

 男が前へと差し出したカードの上、喚び声に呼応して、描かれし絵の輪郭を闇色の魔力がなぞった。
 直後、噴き出したのは闇色の霧。美しい今日の青空にその色彩ははっきりと拡がり、やがてそこに無数の影――カードに描かれた絵そのままの、屈強なる人の影をかたち作る。
 その皮膚は、全身闇色。纏う火と硫黄の鎧は、強きものを焼き滅ぼす為に在る――ユーベルコード『インファーナル・トループス』。
 
「……オブリビオンを焼き尽くすがいい!」

 術者ルムルの声に応じて、顕現せし悪魔たちは二手に分かれ、一斉に空を翔けた。
 一方はその自在の高速飛行で敵を引き付け、足止め、残る悪魔達はその間に側面・背面から敵へと迫り攻撃を仕掛けている。群れとして統率の取れた悪魔達を指揮するのは当然ルムルだ。その使役する悪魔の数に、奪われる魔力量には玉の汗が次々男の頬を滑り落ちていく。
 それでも、対多数への有効打をルムルに見出したアネットは――跨る愛車へ手を添わすと、その内に秘めるある機構を起動した。

(「……本来の用途とは若干異なるが」)

 ボディを叩く指に従い、愛車はガチャリと音を立てて中から一振りの刀を差し出した。
 青の漣を帯びた滄溟晶が美しい――霽刀『月祈滄溟』だ。しかし、アネットがそれを掴み引き抜いた瞬間、その刀身は光を帯びてその在り方を一変させる。
 十三ある武器の一つ、誓斧『蒼刻乃輩』。そして、疾走止まらぬ愛車を蹴って飛び上がったアネットが、空から叩き落とすは大地破砕の一撃。

「――伍式・無刀閃」

 遠隔操作に従い走る愛車に視線縫い留められたままの陸竜達へと、その頭上からアネットは不意にして強烈な斧の一撃を叩き込んだ。
 本来ならば、相手からの攻撃威力を上乗せ放つカウンター技。無論、己が剣気のみで振るおうとも力強いものではあるけれど――アネットのこの一撃は今、仕留めるためではなく足場崩すために振るわれた。
 アネット、そして悪魔達の誘導によって一所に集合していた陸竜達が、足場の崩壊にバランスを崩して折り重なる様に倒れ込む。堪えようとするものもあるけれど、アネットはそれらを打ち倒す追撃の手にも隙が無かった。
 再び空から疾走中の愛車の上へ舞い降りた男の手、誓斧が光を纏いまたその姿かたちを変え――やがて、零れた光の中より覗くは、青の漣を帯びた滄溟晶。

「肉が残るなら、鶏肉の足しにでもしようか。村の新名物になるかもだし……まあ、美味いかどうかは分からないが」

 ――スパン! と、滑らかな刃の音が男の手元で宙を裂いた。
 愛車で駆け抜ける最中、振るった蒼き一閃は立とうとした陸竜の脚を深く斬り付け、その機動力を奪う。ズン、と巨体が大地へ沈む振動を感じれば、アネットは黒き視線を不意に頭上、空高くへと上げた。
 そこには、バサ、バサ、と勇壮な音立て羽ばたく美しき巨鷹が居る。

「……いいでしょう、村にこれ以上近づけるわけにはいきません! 二度願おう、『闇翔ける鷹の悪魔よ!』」

 今日二度目の、千里眼と知識の悪魔――その背より、ルムルが虚ろなる赤い瞳で竜伏す大地を見下ろしていた。
 二度の召喚に応じてくれた『アクシピター』には、今宵の祭りで肉を山盛り捧げねば――心中僅かに苦笑したのは喚んだつい先ほどの話。知恵の美鷹の千里の眼は二手も三手も先を読み、どう戦うかを模索するルムルを空へと促した。
 そして結果、男は是よりアネットの生んだ好機を継ぐ。

「確かに――これは最高の一手となりそうですよ、アクシピター」

 ルムルが鷹へと呟いたその瞬間、掲げ振り下ろした手に従い、悪魔達が地上へ向け一斉に急降下した。
 炎と化して突撃するもの、鋭き爪で斬り裂くもの、喰らい付くもの――それは千差万別全方位からの激しき攻撃の嵐雨だ。ドドド、と激しく大地を打ってやがて再び空晴れた時、そこには何も残らない。
 攻撃対象を失って、異界へと消えた悪魔と共に――陸竜達もまた跡形もなく、全て消え失せていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クラリス・ポー
ランナーズイーター!?
とても大きい
凄い足音で髭がビリビリします…怖い
でも、退くなんて出来ない!
ダッシュで村と反対方向へおびき寄せましょう

ライオンさん…頑張ってっ!

召喚したライオンさんに騎乗
地形の利用と逃げ足で更にスピードを上げ挑発
足が止まらぬようオーラ防御と激痛耐性で防御
野生の勘とジャンプで飛翔能力での襲撃に備えます

十分に引き離せたらUターン
草むらや物陰、目立たないを利用して不意打ち出来る様に
可能なだけ側面から全力魔法を乗せてタックル
イーターは二足歩行ですから
バランスを見切って崩させる事で時間を稼ぎます
成功したら即退き何度でも試みましょう

小さいには、小さいの戦法があるんですニャ!

共闘希望


マリエラ・レイクベア
戦いです、さぁ、行きますよ~ッ!

ダッシュで敵の集団に突っ込んでいき、早業で敵の数を確認後、ぐるりっと回転し、噛みついてきた個体の横顔にシールドバッシュ!

まず一体!っとぉ!
倒れた個体に剣で止めを刺す。
剣を手放して横合いから噛みついて来た奴を怪力でジャンプし回避、そいつの背中を蹴って再度跳び【湖幻の怪】

呼び出したるは幻影のドラゴン!その子の背に乗って空へ!
小さくて弱そうと思いましたかね!?良い感じにおびき寄せられました!さぁて、仕上げッ!

大弓を構え、属性攻撃。
空に逃げられ此方を見上げる集団に雷の矢をお見舞いして差し上げましょう!

よし、空からなら、一方的に射れますね。
この調子でいっちゃいましょう!



「……あれがランナーズイーター……とても大きい……」

 まだ、やや遠巻きではあるけれど。地上おおよそ40センチの人より低い視線から大きな赤い陸竜を見上げ、クラリス・ポー(ケットシーのクレリック・f10090)はその身をふるりと震わせた。

(「凄い、足音……髭がビリビリします……」)

 怖い、と、心は素直に感じていた。揺れる大地に響く咆哮、そして何よりあの巨体――ヒトにとっては二倍、三倍といった大きさだろうが、クラリスにとってはもっと巨大だ。

「――でも、退くなんて出来ない!」

 強い心でそう吼えて、構わず駆け出したクラリスの横を、不意にザザザと音立てながら大きな影が一つ抜けた。

「戦いです、さぁ、行きますよ~ッ!」

 雲の様な白い外套をはためかせ、飛び出したのはマリエラ・レイクベア(駆けだしマリー・f26774)。気合の声はやや間延びしても響くけれど、しかしよく伸びた足はタタタと軽やかな速回転で前へと駆り、敵群へと突撃する。
 そのまま敵後方へ抜ける道を突き進みながら、マリエラは灰の視線を巡らせる。一見強襲を狙ったとも取れるマリエラの突撃だが、その目的は他にあった。

(「七、八、九……思ったより数がいますかね」)

 ――少なくとも見える範囲。倒すべき敵群の規模、その数の把握だ。そして理解した現実はといえば、恐らく敵の全体数は猟兵側より大分多い――。

「一人一体でも骨が折れそうなところ、こんなに沢山恐れ入りますよ! ……でも私には武功のチャンスです!!」

 ニッと深く笑んだマリエラは、突如敵群の中でザザ、と足を踏みしめ立ち止まった。
 右横から、その静止を把握したランナーズイーターが一体、噛み付かんと迫って来る。しかしぐるりっと右足を軸に回転して敵に向き直ったマリエラは、その突撃をひらりと身を躱して回避し反転、大きな陸竜の側顔面へと胴の盾を叩き付けた!

「ギャァアアアア!!!」
「――まず一体! っとぉ!」

 強烈なシールドバッシュに倒れ込んだ陸竜へと、マリエラは追撃を仕掛け畳み掛ける。盾と逆の手に掴む幅広の片手半剣を深く眼球へ突き刺すと、そこから真横に剣を力いっぱい振り抜いて斬り裂いた。

「――っ、硬いですね……!」

 その感触、その硬さは腕に痺れを感じる程だ。鱗の内こそ柔らかいが――見れば陸竜の体表面、赤い鱗がビキビキと音立て次第に硬質化していくのが解った。
 今、この陸竜達にとってマリエラは獲物なのだ。飢える赤き陸竜は、その飢えこそを力として今マリエラを狩らんとしている――。

「ライオンさん……頑張ってっ!」

 だが直後、愛らしくも凜と響いた声と同時、マリエラが刻んだ傷の上に黄金に輝く獅子が噛み付いた。
 ユーベルコード『ライオンライド』――見ればその勇猛なる獅子の背には小さなケットシーの少女が居た。
 震え立っていた先程が嘘の様に、大きな金の瞳の中に戦意と勇気を灯したクラリス――。

「村と別方向へおびき寄せましょう! わたしも請け負います!!」

 視線こそ陸竜を見ていても、クラリスのその呼び掛けはマリエラへと向けたものだ。理解したマリエラは、陸竜へ食い込むライオンの牙の隙間から剣を更に深く沈めて陸竜の命を刈り取ると、横合いから噛み付こうと迫った新たな陸竜を高い跳躍で回避した。
 自身の倍以上の敵をも容易く飛び越え、その背中をもう一度蹴って――より高く舞い上がった空の中、マリエラの体周囲に突如バチリと電撃が迸る。
 ユーベルコード『湖幻の怪(レイク・ウェンディゴ)』。

「いいでしょう。こいつは私にお任せください!」

 ニッと笑みに口角を上げ、空高くから敵を見下ろすマリエラの前で――迸る雷の黄金の光が集束してかたちを成した。
 ランナーズイーターと比較すれば体こそ小さいけれど、実体を持ち、マリエラを背に乗せたそれは翼持つ飛竜・幻影ドラゴン。
 雷を纏い、青空を統べるもの。

「さあドラゴン! 行きますよ!!」

 マリエラの命じる声に、幻影の飛竜は空を翔けた。移動範囲を空へ拡大したマリエラは、その速さで陸竜の視線を引き付けながら、意図して草原を挟む二つの町と村とは異なる方角へと誘導する。

「わたしはこっちです! さあ、ついて来てくださいね!!」

 一方、地上のクラリスもまたマリエラと同じ方角へと別の陸竜を誘導していた。
 先の戦いで把握した地形を活用、少しでも移動速度を上げんと下りの傾斜を選んで進む。跨る黄金の獅子は、言葉なくともクラリスの思い描いた場所を目指して草原を進んでくれていた。
 速度上げ、次第に陸竜を引き離しながら――至ったそこは、クラリスよりも背の高い草が生い茂る場所。

(「隠れるには都合が良いんです」)

 くるり、と草むらの中で身を返し、クラリスは物思う。そこは、石化鶏と戦う際には障害にもなった場所。考えて考えて克服したその場所が、今は自分に有利な戦場となっている。
 『狩りに於いては、如何にして獲物を見付け、追い立て、如何にして捕らえるか――考えること』。父や兄の教えを胸に最善を考え抜いたクラリスは、遂に不利を味方へ付けて、大きな敵と向かい合う。

「――今!!」

 目標見失い彷徨う陸竜の不意を突き、全力魔力を身に纏ったクラリスのタックルが側面からその大きな足を取った。二足歩行、片足上げたタイミングを見計らい見舞われた一撃に、ぐらりと陸竜の巨体は傾ぎ、バランス崩して倒れ込む。
 ズゥン……、と激しく大地を揺らした振動に、もうクラリスは震えない。

「小さいには、小さいなりの戦法があるんですニャ! ――マリエラさんっ!!」
「ええ、この子も小さくて弱そうと思いましたかね!? 良い感じにおびき寄せられてくれました!」

 強く吼えたクラリスが見上げた先――そこには、やや遅れて到着したマリエラの姿があった。
 小さな飛竜の背に跨り、高低自在に空翔けるマリエラを追う陸竜の表情は、獲物捕えきれず随分と焦れて見えた。赤い鱗は硬質化が進み、陸駆ける巨体の背中には少しずつだが翼の様なものが育っている様子も見える。

「さぁて、空に逃げられ未だ飛べず此方を見上げている内に!」

 告げてマリエラが手に掴むは、ふわりと幻の様に現れた大弓。
 確かに実体はあるのに、その存在は虚ろに見えた。ぐっとマリエラが弦を引けば、番えていなかった筈の矢が突如そこに現れる。
 バチバチと、火花散らす雷の矢――その眩い光に透いたマリエラの灰の髪が、銀色にも輝き揺れた。

「お見舞いして差し上げましょう! 仕上げですッ!」

 勝利を確信したと解る、マリエラの誇らしいまでの笑みの声が辺りへと響き渡った。
 空から誘導した陸竜達が、クラリスのタックルによって横倒れた仲間の在る草むらへ入った。直後、放つは光の矢の雨――ドドド、と降り注いだそれが陸竜達へ殺到すると、光は鱗を焦がして砕き、肌を暴いて裂き貫く。
 光消えた先にあったのは、如何に敵の体が大きくとも、その装甲が堅かろうとも――自分達の武器を正しく理解し駆使した二人の猟兵の勝利であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ザハ・ブリッツ
これだけの血臭だ、空腹であれば尚更興奮していそうだ…
素直に倒されてはくれないだろうが、それは此方も同じ事
大きな敵を目の前に、柄にもなくワクワクしてきた…

相手の的は大きく、此方に注目させる意味でもアイスタイタンで迎え討つ
向かって来る攻撃は武器受け、オーラ防御でいなし
なぎ払いで体勢を崩せれば重量攻撃で叩き斬る
衝撃波で怯ませ、懐に入れば氷結の属性攻撃
一体一体を確実に倒し、頭数を減らすに努める
攻撃範囲に手負いや止めを刺せそうな個体が居ればそれらを優先
慈悲なく、油断なく

数で囲まれてしまわぬ様、自身の立回りにも注意する
逆に、囲まれそうな状況の猟兵が居ればフォローに回ろう
牙以外にも爪や尻尾からの攻撃も注意を



「……素直に倒されてはくれないだろうな。これだけの血臭だ、空腹であれば尚更興奮していそうだ……」

 呟く声は、凍て付く冬の夜の静寂。その寒さを思わせるような低音で言葉を落として――ザハ・ブリッツ(氷淵・f01401)は今一人、紅き竜を仰ぎ見る。
 翼は無く、陸の魔物。自由闊歩する脚は、地に落ちた瞬間に大地を沈めて巨体の重量で揺るがしている。だがそれだけの大きさは、戦うにはいい的だ。狙い易いことこの上ないと――ザハは緩く口角を上げる。
 常ならば静けさを好み、昂ることなどそうないのに。

「柄にもなくワクワクしてきた……」

 巨大な敵を前にして、猛るのは戦士の血。その熱を冷ます様に肩に担いだ無骨な愛斧『絶』を片手で軽く振って下ろすと――ズン! 落とした刃突き立つ大地が、ピキ、ピキリと鳴き声を上げた。
 晴れ渡る青葉の草原が、やがて斧より拡がった魔力によって、その一角のみ凍り付く。

「『……永久凍土より戦士よ、来たれ』」

 そして、その閉ざされし氷の大地は、白い息と共に吐き出されたザハの静かなる詠唱によって突如砕けてせり上がった。
 長身のザハの背丈を超え、空目指し高く大きく育ったそれは土塊ではなく氷塊だ。ユーベルコード――注ぐザハの魔力に反応、次第に人型を成していくそれは、射す今日の陽の温かさにも決して溶けぬ『絶対零度の戦士(アイスタイタン)』。

「……気付いたか。まあ、流石にね」

 背丈3.5mを超える氷の巨人の突然の登場に、群れる紅き陸竜達が何事かと騒ぎ出した。しかし、その注目は望む所――ザハが今一度大地より引き抜いた愛斧を肩へ担ぐと、倣って動いた巨人の手にも同じかたちの氷塊が生まれる。
 即ちこの氷の巨人は、術者たるザハの動きをトレースして戦う分身。

「おいで。……但し、素直に倒れないのは此方とて同じ事」
「ギャァアアアアアアッ!!!」

 呟くザハの言葉までも、巨人がトレースするわけではない。つまり、まるで降る雪の様に静かで温度低いザハの声が、竜達へ届いているわけではないだろう――しかしまるでその挑発に乗るかの様に、巨竜はその強靭な脚で一気に巨人の元へ迫った。
 その数二体。先ず一体から振り下ろされた爪の腕を氷の手で掴み捻ると、次いで迫った大口に覗く牙は、瞬時に纏ったザハのオーラのトレースによって弾き返す。
 捻った腕は掴んだままで、今度は弾き返しバランス崩した一体の足元を空いた手に持つ氷の巨斧で薙ぎ払えば――たまらず倒れた一体が、重力乗せて下ろした斧の刃先で頭部を二つに割った。
 高く激しく噴き出す鮮血――その傷口に沈む斧を引き抜けば、再び掲げた巨斧を下ろすは、腕掴んだままの巨竜の首。

「ギャァアアアアアアアアアッ!?」

 斜めに深く沈んだ斧刃に、竜はたまらず、痛みの絶叫を響かせる。

(「囲まれぬ様に。――そうなる前に慈悲なく、油断なく」)

 巨竜の絶叫に大気が激しく揺らごうとも、如何に血が飛沫こうとも――氷の巨人を操る男の新雪の髪から覗く瞳は、絶えず冷静の青を宿して戦いの先を見据える。
 酒場の少女の願いに応えた、心強き冒険者達。彼らが此処へ至る前にと、急く気持ちは確かにあれど。
 それでも今は――確実に頭数を減らすべく。

(「それでいい。それが終わりへの近道だ。……きっと、そう言うだろうから」)

 一人で立つ戦場にも、ザハの心には開始よりずっと、鼓舞する言葉が絶えず響いて往く背中を押している。
 だから、足は絶対に止めない――早々に二体を屠ったザハは、戦いが果てる瞬間まで、草原の奥、更なる巨竜を目指して進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
ヴァルダ(f00048)と

響き渡る足跡
大気の振動すら感じる巨きな生き物

必ずここで食い止めよう
そのために、ここにいる

キミならきっと、後ろを任せられるから

ヴァルダ、僕が囮になるよ

凶暴そうな見た目に怯むことなく飛び出す
素早く近づきながら詠唱
──舞い散る朱、煙に巻け

巨体だけれど素早いハンター
ひらり回避しながら油断なくその動きを見切って
狩るは下顎骨

巨きなものは壮観だ
けれど小さきものにも利点はあるんだよ
大きな口を避け巨体の陰へ滑り込み
身を翻し渾身の力で下顎へ蹴撃
くらり一時動きを止めたならば

──ヴァルダ、

空中のキミが捉えるだろう
彼女たちの舞う姿は天空の太陽
見惚れて襲撃食らう前に、次なるハンターへと向き直ろう


ヴァルダ・イシルドゥア
ヴェルさま(f05027)と

それは幼い頃から傍にいてくれた
気高き隣人たちとは異なるもの
理性なき牙、飢餓に狂うものの足音

臆病な私は戦いに赴くたび足が竦んで仕舞うけれど
心が凪いでいるのを感じる
それは、信を預けて先を駆けてくれるひとが居るから

息を、吸う

常は張る事のない声を
夕映えの君、其の跳躍の瞬間に合わせ

──アイナノア!

名を、呼ぶ
翼ある者の名を

舞い降りた飛竜の背に飛び乗り空中戦に持ち込む
ヴェルさまが作り出してくれた隙を突き、滑空からの貫通攻撃を
刺し貫いたならば、空を翔け次へと狙いを見定めて

ヴェルさま、次は私が

暴竜の目に留まるよう
目線の高さに合わせ宙を舞う

……我が身は焔
決して捉える事叶わぬと知り給え!



 大地を揺るがすその歩みも、咆哮も、そもそもの敵の巨大さも――きっと、いつもの自分であれば足を止めてしまっていた。

「ヴァルダ、僕が囮になるよ」

 ――だから、隣に立つヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)から真っ直ぐとそう告げられた時、いつになく心が凪ぎ落ち着いている自分に気付いてヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)は金の瞳を見開いた。
 今目の前で対峙する、討伐すべき標的は竜だ。それは幼き頃からずっとヴァルダの傍にいてくれた気高き隣人たちと種を同じくしながら、しかしオブリビオンという、本質の全く異なるもの。
 自由に振るう理性なき牙も、飢餓に狂う強大な足音も――その違い、それらが持つ凶悪に、臆病を自覚するヴァルダは戦いに赴くたび足が竦むこともある。
 しかし、今日は違う。今こんなにも心が凪いでいると感じるのは。

(「……それは、信を預けて先を駆けてくれるひとが居るから」)

 理由はひとつしかなかった。隣にヴェルが在るからだ。
 真っ直ぐ前を見つめる琥珀の瞳は陽光の様に柔らかな色彩なのに、その言葉も心も強くヴァルダの手を引いて――やがて僅かに柔く笑みを見せると、前向いた視線は力強く、決意を帯びて駆け出した。

(「必ずここで食い止めよう。――そのために、ここにいる」)

 ヴェルとて確かに感じている。響き渡る足跡。その度大気にさえ揺れを感じる、凶悪にして巨きな生き物――しかし怯むこともなく往けるのは、ヴェルとてヴァルダと理由は同じ。
 ――キミならきっと、後ろを任せられるからと、そう。

「……『舞い散る朱、煙に巻け』」

 だから、振り向かない。暮れ時の空の様な温かなオレンジの瞳が見守り、共に在ってくれるなら――駆る足は一層軽やかに身軽なヴェルの身体を前へと運び、伴い紡いだ詠唱には、足に加速を促す魔力が紅く朱く、光と熱を注ぎ込む。
 そして、その疾走が遂に陸竜――ランナーズイーターの足元へ到った時、獲物と見て落ちて来る大きな巨きな陸竜の口を、ヴェルは残像留まる速度で回避した。

「巨きなものは壮観だ。……けれど、小さきものにも利点はあるんだよ」

 ユーベルコード『反照舞踏脚』――既に足に展開した紅光の魔力を存分に利用して大振りな陸竜からの攻撃を躱すと、ヴェルはその大地食む顔面を真横から力強く脚で打った。

「……ギャァアアッ!?」

 突如悲鳴を上げた陸竜に、傍近くの陸竜達の視線が一斉に此方を向くが、ヴェルは即座に巨体の影に隠れてそれらを上手くやり過ごした。
 対巨敵における小さい側のメリットとは、総じて小回りが利くことだ。かつ、身軽故の速度を持つヴェルは、油断なく相手の反応を窺いながら、その靭やかな脚を駆使して蹴り叩き弾き返し、時に隠れて己が身を守りながら、決定的な攻めの好機を待っていた。
 狙いは既に定まっている。もう一度、この巨大な竜が大口を大地へ落としたら――。

「ッガァアアアア!!!」

 敢えて敵正面に構えたヴェルの誘いに見事に嵌り、陸竜の大顎がガパリと開かれ落ちて来る。それをあえて蹴らずにひらりと回避したヴェルは、すいと巨体の懐へ滑り込むと、その両脚を地表へ下ろし深く膝折って身構えた。

 ──アイナノア!

 瞬間、遠くに聞こえた聞き慣れた、でもいつもと異なる強き声には、そっと穏やかに微笑んで。

(「……あとは君に任せるよ」)

 心に呟き――パァン! 硬鱗叩く乾いた音が、標的逃して大地を食んだ陸竜の頭を高く空へと打ち飛ばした。

「グァッ……!!?」

 それは陸竜の懐で身を翻したヴェルの、渾身の蹴撃一打。下から上へ、重力に逆らい振り上げられた長い脚は、紅き光を帯びながら地から垂直に空へと伸び、巨大な竜の下顎骨を打って空へと押し上げた。
 衝撃が脳に達したのだろう、バランス感覚を失って中空でぐらりと傾いだその巨体を、青空の眩さが故に目を細めて見上げるヴェルは――直後、不意に頭上に差した影に相好を崩して呟いた。

「──ヴァルダ、」

 柔き琥珀色の瞳に映る――そこには、空翔けるヴァルダの姿があった。
 ヴェルがよく知るつつましく控えめな愛らしさとは印象を違え、勇ましく凜とした美しさを帯びて。ヴァルダが今跨るは、勇壮なる美しき飛竜だ。
 バサ、と羽ばたく大きな翼で美しき青空を横切るそれは、地を揺らす今日の陸竜とは全く性質の異なるもの――蒼焔の飛竜。
 聖なる太陽との意味を持つ、気高きその名は『アイナノア』。

「――ヴェルさま、次は私が!」

 やはり凜の声が大気揺らして駆け抜ければ、その決意の声に応えてアイナノアも空を翔けた。
 大地揺らす陸竜達の猛進以上の素早さで――狙うはヴェルが空へと高く蹴り上げた陸竜。
 打ち上げの最高点に達して墜ちる、その瞬間を逃さずに。ヴァルダは滑空の勢い乗せた竜槍の穂先を、陸竜の胸へ突き立てる。
 硬き鱗を貫いて、ぶつりと皮、そして肉断つ音がした。

「――ゥグッ!?」

 溢れ出た陸竜の血が、刺し貫いた穂先からバタバタと空へ落ちる。
 ずしりと槍へ感じる重みに陸竜の絶命を悟ったヴァルダは、下へ仲間が居ないことを確認して槍を陸竜から引き抜いた。
 穿った穴から鮮血が噴き出す頃には、既にそこに彼女は居ない。まるで少女が血に汚れるを避ける様に――空を翔けたアイナノアの羽ばたきの風に髪押さえると、ヴァルダの夕空色の瞳は次なる標的を狙い定める。
 大地へと墜ちた陸竜、その墜落に怒りを吼える、新たなる暴竜へと。

「……我が身は焔! 決して捉える事叶わぬと知り給え!」

 新たな標的の目に留まらんと、声に乗せた覇気も鋭く暴竜の視線を遮る様に目線の高さを高速滑空する飛竜、そしてヴァルダ――その堂々たる舞い姿に天空の太陽を見て、ヴェルは見上げる目元を手の影で覆い眩さを緩和する。
 ランナーズイーターばかりではない。あの凛とした美しさには、自分こそ見惚れてしまいそうだ――。

「……見惚れて襲撃食らう前に、次なるハンターへと向き直ろう」

 ふ、と今一度微笑んだヴェルは、呟き一度瞼閉ざすと、再び開いた琥珀の瞳に鋭き戦意の光を宿す。
 此処は戦場。敵はまだ多数在り――再び戦いへと心を切り替えたヴェルは、空翔けるヴァルダに伴い更なる討伐を進めるべく、たん、と軽やかに駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK
右手に胡、左手に黒鵺(本体)の二刀流

恐竜出てきた。…あぁ、一応竜種になるのか、な?

動きの素早いものをというのなら…陸奥、囮を頼めるか。足の速さじゃ負けないだろうけど、数も多いし念のため伽羅は陸奥のサポートを。
俺は隙をついて攻撃を仕掛ける。

存在感を消し目立たない様に死角に回り、可能な限りマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃。
マヒは通れば他猟兵の助けにもなるだろうし。
一撃入れたら再度気配を消し奇襲をかける。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。



「恐竜出てきた。……あぁ、一応竜種になるのか、な?」

 巨体見上げる黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は、ぽつりとそう呟いた。
 目の前で群れるランナーズイーターは、世界違えば世間一般で語られる「恐竜」のイメージがぴったりと当て嵌まる。もっとも、その姿かたちがどういうものであったとしてもオブリビオンなら倒すべきと、その点に変わりはないけれど。
 ただ、これを竜と呼ぶのは――思う瑞樹がすい、と視線を上げた先には、陽光に黒鱗輝く美しい飛竜の姿。
 水司る竜神・伽羅。神々しく勇壮なその出で立ちこそ、瑞樹にとっての竜である。

「……何でもいいか。始めよう。動きの素早いものを追う、という話だったな」

 即座に思考を戦いへ切り替え、瑞樹は再び赤き陸竜、その全身をくまなく目で追い確かめる。
 素早い物を追う習性。それは一目で解る発達した健脚で追う故に叶うことだろう。その脚で獲物を追い立て捕食する――つまり敵の敏捷性はそれなりということだ。
 ならば確実に攻撃を当てるには――速さ勝負か、速さを奪うか、不意を打つかのいずれかとなる。

「……陸奥、囮を頼めるか」

 選択し、瑞樹は肩に乗る小さな白虎へ声を掛けた。風纏う精霊の仔、陸奥。声に反応して首を傾げれば、その一動作だけで大気が揺れ、瑞樹の長い銀髪がふわりと空へ舞い上がる。

「俺は隙をついて攻撃を仕掛ける。足の速さじゃ負けないだろうけど――数も多いし念のため伽羅は陸奥のサポートを」

 命じるではない瑞樹の静かな問い掛けに、蒼い瞳をじっと見つめ返した陸奥はやがてふわりと空中へ浮かび上がった。
 陸竜の群れへ向かい空を翔け出したその小さな背を、支えるべく伽羅もまた空を泳いで後を追った――確かめた瑞樹は僅かに笑むと、直後その姿が草原の中から気配ごと掻き消える。

(「死角が多くて助かる。……大きさが仇となったな」)

 陸奥と伽羅が空翔け回り陸竜の群れを攪乱する中――上体落として身を低め、瑞樹は敵の死角目指して草むらの中を駆けた。
 陸奥の巻き起こす自由な風は草揺れる音を掻き消し隠密行の一助となるが、恐らくこれは打算ではない。まだ小さい陸奥の無意識が、たまたまなのか戦う本能から来るものなのかは解らないが――結果瑞樹は陸竜達に悟られずに、至近への接近を果たして構えた。
 背の高い草の中に、身は低く、息を潜め気配を殺して。両の手がそれぞれ握るは、右手に古めかしくも重厚なる一振り『胡』、そして左手に、ヤドリガミたる己が本体、大振りな黒き刀身が鈍く光る硬刃『黒鵺』。

「……仕留めるぞ」

 瞬間、一閃――死角から突如現れた二つの刃が陸竜の胴体を奥深くまで斬り付けた。
 『剣刃一閃』――一撃必死を狙ったけれど、魔力込めた斬撃でも硬い鱗の反発は激しく、切断までは叶っても胴の両断には至らない。
 瑞樹は小さく舌打ちし、即座にその身を草むらへ引いた。

「……グアァアアアア!?」

 直後、頭上に視線奪われていた巨体の主が、一瞬遅れて脳へ届いた激痛の情報に混乱の悲鳴を上げた。
 慌てて視線を落とすけれど、そこにはどくどくと溢れる己が血と草原が広がるばかり。しかしその視界を遮る様に小さな虎がすいと眼前を翔ければ、貴様の仕業かと言わんばかり、陸竜の怒りの眼は頭上の陸奥へと注がれる。
 怒りに血圧も上がったのだろう、傷口から更なる鮮血がどぷりと多量に溢れ出るが――刃に仕込んだ麻痺毒によって、傷の深さと出血量に陸竜は恐らく気付けていない。

(「あの個体はもういい。いずれ失血死するだろうし、麻痺が通っていれば他の猟兵も討伐はしやすいだろう」)

 再び草むらに隠れ息潜め、瑞樹はそう判断する。陸奥と伽羅、頼れる相棒との共闘ではあるけれど――それだけではない。この戦場下には、他にも無数の猟兵達が今も戦っているのだ。
 いずれ此処へ到る冒険者達。その無数の人々の命と営みを守るために。

(「……少しでも速く、一体でも多く狩らないと」)

 人を愛し、人が残したものを愛するヤドリガミは、決意新たに両手の得物を握り締めると、次なる獲物へ狙いを定める。
 ギリ、と立った僅かな音に、気配が零れ出たのは一瞬のこと。――直後その草むらに、人の影は既に無かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
早いヤツを狙うなら、また俺が囮か?
アレスに言えば…まぁた押してもきかない頑固そうな顔だ
クスクスと肩を揺らし
ちゃんとついてこれんのか?
口の端をあげる

そんじゃ、最初っから全開だ
歌で身体強化して
靴に風の魔力を
アレスと挟み撃ちを狙って
最初の敵の前で飛び上がり
振り向き様に一閃
二人ダンスを踊るように
素早く動いて惹き付ける

あとは派手に狩るだけだ
歌い上げるは【暁星の盟約】
こんだけ近くにいて、アレスが俺の動きを見失うなんて
万に一つもねぇだろう
陣のなか、縦横無尽で跳び回り
剣に風の属性をまとわせて
勢いのままに叩き斬る

アレスの死角の敵はその爪が、牙が届く前に俺が
見失わねぇのはアイツだけじゃねーんだよ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

動きが早いものを、か
彼の言葉に首を横に振る
…いや、行くなら僕も一緒だ
二人でも惹きつけられる。…僕達二人なら
彼の挑発には同じように強気に笑って応えよう
勿論

さあ―征こう!
脚鎧に光の魔力を充填
迎え撃つように地を駆ける
セリオスの速さに負けないくらい…疾く!
彼の攻撃に合わせて一閃を
そして、二人で敵を惹きつけよう
君とのダンスは得意だから

ある程度惹きつけられたら
包囲するように【天聖光陣】を展開
セリオスが飛び回ろうと僕は見失わない
彼がどこに光の柱を求めてるか予測し、援護を
彼の死角の敵には障壁のように光の柱を放とう

今は盾がなくとも僕は彼の盾だ
守りがついてるのは…僕だって同じ
そうだろう?セリオス



「だって速いヤツ狙うんだろ? だったら、また俺が適任じゃねぇか?」
「いや、行くなら僕も一緒だ」

 白き甲冑に身を包む騎士は、頑として首を縦に振ろうとしない――既に草原各所で戦闘が始まっていく中、譲らぬアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)を相手に、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)は苦笑して、指先でとん、と甲冑を小突いた。

「重い甲冑着てるだろ、アレスは。身軽さは俺の売りだぜ? 大体囮なんて今までも散々してきただろ。さっきだって」
「風魔法があるだろう? 甲冑で空を飛ぶことも出来た。それは君も知っている筈だ」

 何に揉めているかと言えば、ランナーズイーター戦で二人が取る戦略についてだ。動きが速いものを狙う習性――その情報を得た瞬間、セリオスの脳内には「自分が早駆けをして敵を引き付け、アレスと二人でそれを討つ」という、ある意味いつも通りの手順が組み上がっていたのだが。
 ここへ来て、セリオス単独での陽動をアレクシスが固辞したのだ。

「二人でも惹きつけられる。……僕達二人なら」
「――ったく、仕方ねえなぁ、アレスは」

 それでもセリオスがクスクスと笑みに肩を揺らすのは、こうなった時のアレクシスが絶対に退かないことを理解しているからだ。怒るというより少し拗ねても見えるアレクシスの表情は、幼い頃の面影残る押してもきかぬ頑固な顔。
 そして、今その顔を浮かべる理由だってセリオスは解っている。またしても自分を心配してのことだと――それは酷く嬉しくて、くすぐったくて、もう少しだけ浸っていたくて。
 つまりこの遣り取りは、最初から困難と分かり切った説得だ。意図せず笑う顔を何とかして誤魔化そうと、実はセリオスも必死だった。

「解ったよ、アレス。でも……ちゃんとついてこれんのか?」

 だから、わざと肩を竦めて見せたセリオスは、仕組んだその口論の終わりを挑発的な言葉で締めた。
 見上げる顔は、ニッと口の端上げて笑んで。すると少し驚いた表情ののちにアレクシスの顔に浮かぶのも、強気、かつ何処か満足気な笑み。

「――勿論。君に遅れは取らないよ」
「そんじゃ、最初っから全開だ!!」

 吼えた直後、深く息吸ったセリオスの喉奥から溢れ出たのは、深層より魔力を引き出す力強き攻めの歌声。
 『青星の盟約(オース・オブ・ディーヴァ)』。歌が進むに伴って、体奥底に眠る根源魔力が湧き上がり全身に満ちていく。すると向かい合うアレクシスも、心の清廉と高貴表す様な白銀と金の脚鎧に、内より輝く光の魔力を溢れさせて待っていた。
 力爆ぜる、その瞬間を――やがて蒼穹と星夜、笑む二つの瞳が重なった時が、互いに準備万端の合図。
 
「さあ――征こう!」

 アレクシスの宣言と同時、二人共の足元が強い光と風を放って体を前へと押し出した。
 目指すは、最も近い紅き巨竜――瞬間的な風の放射で空蹴り翔けるセリオスに対し、アレクシスの足は風ではなく光を纏って大地を蹴る。
 光はアレクシスの足元に消えることなく輝いて、駆けた後の草原に真っ直ぐな軌道線を描き残した。加速する程に長く、長く――それはセリオスに追いつきたかったアレクシスが、苦心の末に見出した力。
 二人同じ速度で駆けようとした場合、セリオスと同じ手段を用いる、ではアレクシスには足りないのだ。何故なら細く身軽なセリオスに対し、鍛えた肉体に甲冑を纏うアレクシスには、重量という決定的な不利がある――。

(「速く……疾く! セリオスの速さに負けないくらい……もっと疾く!」)

 だから目指したのは、風速よりも速い光速――そうあれと、足元より放つ光に乗って、アレクシスは前へと進む。
 セリオスに先駆けて、敵の背後に回り挟み込む様な立ち回り――思い掛けないアレクシスの速度に、セリオスは舌を巻きながら愉し気な笑みを零した。

「何だぁ? アレス、速いじゃん! ――ははっ、ならあとは派手に狩るだけだな!」

 紅き竜の脚元目前、心のままに叫んだ瞬間――ドン! 一段強い魔力を注いだ足元に風が強く爆ぜ、セリオスは空高くへと跳躍する。

「――っらぁ!!」

 跳躍の最頂点で巨竜と擦れ違った直後、セリオスは振り向き様に竜の後首を薙ぐ剣で斬り付けた。
 スパン! 確かな手応えと同時、切っ先に鳴る軽やかな音が心地よく耳を打った。そのまま空より見下ろす視界には、地上を駆けるアレクシスが反対側面から巨竜の胴部を白剣で斬り付ける姿が映る。
 互い違いの動きは息もぴったりで――まるでダンスでも躍るかの様。

「二人で敵を惹きつけよう。君とのダンスは得意だから」
「――っはは! 言ったな? ……ならちゃんとついて来いよ!」

 考えていたのは同じこと。笑んだアレクシスのその言葉に、嬉しくなったセリオスは息吐き出して破顔する。だが、和やかな空気流れたのは、そのほんの一瞬のことで。
 
「ギャアアアアア!!!」

 斬り付けたその痛みへの絶叫、憎悪を仲間へと知らせる声――直後、辺りに激しい咆哮がびりびりと響き渡った。
 紅き巨竜のその叫びに、周囲からも無数の雄叫びが上がる。ズン、ズシリと小刻みに揺れる大地が知らせるのは――仲間の怒りに群れ集う、多数の巨竜達の接近。
 気付けば二人の周囲には、ずらりと六体程が迫り、咆哮重ねて威嚇する――。

「……輝ける今日の世界よ! いと高き蒼穹よ――『払暁の聖光を今此処に!』」

 だが、アレクシスは怯まなかった。惹き付けが成ったと判断、眼前へと構えるは美しき騎士剣『赤星』。
 詠唱進めば白銀の剣身にはやがて暁の光が宿った。するとアレクシスの足元に、突如金色の魔力線が走って大地へ弧を描き出す。
 二人を包囲する全ての巨竜を、その中へと収める様に――大きく大きく弧を描く金の光の先端がやがてその端と重なると、騎士章の様な複雑な文様が円の中へと浮かび上がった。
 『天聖光陣』――それは敵撃ち砕く光の柱にして、唯一人、セリオスにだけ無敵の空間を生み出す結界。
 陣の中に立つ限り、セリオスの負う傷は刻まれた瞬間忽ち消え去り、また彼が歌を重ねることで戦う力を強化する――。

「この歌声に応えろよ! 『暁を知る星よ――深奥に眠る光を我が手に!』」

 セリオスの強気の詠唱に陣は輝き、歌う声は伸びやかに世界を渡る。『暁星の盟約(オース・オブ・アンタレス)』――その歌は、光の陣と対を成すもの。
 盾たるアレクシスと剣たるセリオス、二人共が居て初めて使える、攻防一体のユーベルコード。
 歌に輝きを増したセリオスの剣は、陣の中に在る全ての敵を次々と斬り裂いていく。跳んでは振るう一閃毎に、纏う風も嵐の如く吹き荒れて――彼らしい縦横無尽なその様を、広く展開した陣を維持するアレクシスは絶えず目で追い掛ける。

(「セリオスがどんなに飛び回ろうと、僕は彼を見失わない。例え今は盾がなくとも――僕は彼の盾だから」)

 盾構えることは叶わなくとも、陣を維持し続ける限りセリオスは守られる。勿論、自由に動くセリオスの死角には先程から敵を焼く光の柱が幾度となく立ち上り、癒す以前にそもそもセリオスにかすり傷一つ許さない。

(「こんだけ近くにいて、アレスが俺の動きを見失うなんて、万に一つもねぇだろう」)

 アレクシスのその支えを、セリオスは知っているし絶対的に信じてもいる。だからこそ、自在な攻勢の傍ら――アレクシスへと向かわんとする巨竜の動きを察知すれば、例え目前の敵があと一撃で倒れそうでもセリオスはそちらへ剣先を向けた。
 見失わないのは、此方も同じ。アレクシスに迫る敵は――その爪、牙、どんな攻めも許さず全て自分が刈り取るのだと。
 その心は、――確かに、アレクシスに届いている。

(「守りがついてるのは……僕だって同じ。そうだろう? セリオス」)

 互いに背を預けて、支え合って――ふたりで強くなるのだと。あの日の願いをかたちにしようとするセリオス。
 微笑むアレクシスの蒼穹宿す優しき瞳に、空にて剣を振るう彼は――とても眩しく、何よりも愛しく映った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリオ・イェラキ
リュカさま【f02586】と

まぁ、なんて大きな獲物達
リュカさまあれが恐竜ですの?
わたくしも狩るのは初めてかもしれませんわ
ふふ。お揃いですわね
勿論急いで参りましょう
わたくしも楽しみですの

あら大きいのによく動きますのね
リュカさまわたくしの後ろに、前はお任せを
戦法は…わたくしの花嵐で撹乱させましょう
花弁を操り敵の視界に纏わり付いて混乱させますの
その隙に一体ずつ仕留めるの、如何かしら
舌を?確かに色鮮やかで良い的ですわね
でしたらわたくしは剣で大きな足を斬り付けてひととき動きを止めますの
狙い撃ち、お任せしますわ

いつもながらお見事な狙撃…?
確かに、竜と名が付くならステーキになりそうな
筋肉ばかりで硬いのかしら


リュカ・エンキアンサス
オリオお姉さんf00428と

すごい。……すごい
恐竜だよ、あれ、お姉さん
ドラゴンはいっぱい倒したけど、恐竜は初めてかも
ほら、お姉さんいこう。行こう。倒そう
(若干いつもよりはしゃいでいる
…うわ、飛んだ
でっかいのに飛んだよ
鱗がごつくなったみたいだし
面白い
…ねえ、
舌って鱗はえると思う?

うん、とりあえず狙ってみようか
何だか色が毒々しいの、面白いから
鱗がなければめっけものだし…。あっても集中的に狙っていけば倒れるだろ
お姉さんがそうやって対処してくれたら、外すことなんてまずありえないだろうから

ところで、この恐竜はドラゴンステーキにしないのかな
…いや、ちょっと気になって
ああ、確かに硬いのかも…
何だか勿体ないね



「すごい。……すごい。恐竜だよ、あれ、お姉さん」

 ぽかんと無意識に口を開け、見上げるその表情は年相応に幼く見える――今日の敵の巨体を前に、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は丸く見開かれた瞳をぱちぱちと瞬かせた。
 陸駆ける竜・ランナーズイーターの外見は、違う世界では『恐竜』と呼ばれる太古に生きたもののそれだ。まだまだ未知なる点も多い――世界を渡る旅人であるリュカにとっても、興味尽きない存在の様で。
 そんな友の様子を垣間見て、密かにふふ、と笑んだのちにオリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)も紅き竜を仰ぎ見た。
 硬き鱗、発達した脚。太く長い尾は力強く大地を薙ぎ、吠えれば大気が激しく震え――どこを見ても強そうだ。

「なんて大きな……リュカさま、あれが恐竜ですの?」
「うん。ドラゴンはいっぱい倒したけど、恐竜は初めてかも」
「わたくしも狩るのは初めてかもしれませんわ。……ふふ。お揃いですわね」
 
 お揃い、なんてリュカへ嬉しそうに微笑み掛けるオリオに、まだ戦いの緊張感は感じられない。すらりと華奢で、とても美しい女性だが――その本質は、意外と豪快であるらしかった。
 そしてリュカとて、表情に乏しく分かりにくいが、今の様子は幾分はしゃいだ年相応の少年のもの。

「ほら、お姉さんいこう。行こう。倒そう」
「あらあら……ふふ。勿論急いで参りましょう。わたくしも楽しみですの」

 急かす様にくい、とリュカに手を引かれれば、お姉さんらしい優しい笑顔でオリオもそれに伴った。
 いざ、紅き陸竜の足元へ。目指して駆ける最中にも、近付く程に興味深くその雄姿を見上げていたリュカは――ふとその身体へ生じた変化に、えっ、と声上げて目を瞠った。
 紅き鱗に触れる空気。そこに今、一瞬だったが僅かな魔力の揺らぎを見た。
 そして直後、全身の鱗が艶めいたと思ったら――巨体がミシミシと音を鳴らして空へ浮き上がり始めたのだ。

「……うわ、飛んだ。でっかいのに飛んだよ」
「あら、大きいのによく動きますのね。……リュカさま、わたくしの後ろに。前はお任せを」

 リュカが驚きとも呆れとも思える呟きをぽつりと落とすと、オリオはすかさずリュカの前へ立ち臨戦の構えを取った。
 この状況の変化は即ち、陸竜が臨戦態勢を取ったと見て相違ない。オリオ達の戦闘はまだ始まってもいないが――何しろこの戦場に在るのは、オリオ達だけではないのだ。
 広い草原の各所から、激しい戦いの轟音は既に幾つも耳に届いている。そしてあの紅き竜が、もしも他で起こった戦闘の空気に中てられて動き出したのだとすれば。
 あれが戦う仲間の元へ加勢に向かってしまう前に、此処で何とか仕留めなくては。

「リュカさま。戦法は……わたくしの花嵐で撹乱させましょう。花弁を操り、敵の視界に纏わり付いて混乱させますの」
「ああ、うん、いいね。……じゃあ、俺はこれで」

 背を向け守るリュカへと肩越しに戦略を提案したオリオへ、頷いたリュカはぐいと肩掛ける紐を外し、提げていた長銃を軽く掲げた。
 アサルトライフル、名を『灯り木』――つまり狙撃だ。オリオが空往く紅き竜へと攪乱術を仕掛けたのち、リュカが一体ずつ狙撃して仕留めるのだ。

「……では、参りますわ」

 にこりと華やかな笑みを返すと、オリオはすう、と息を吸った。
 瞑目して集中すれば、体中を魔力が巡り、瞼の裏には一つ、また一つと瞬き煌く光が次第に浮かび集まっていく。星の様なその一つ一つが、オリオに流れる魔力の粒だ。
 粒はやがて集まって、次第に眩さを増していく。その間足元から起こる風は、黒染めの絹糸の様な美しい長い髪をふわりと空へ巻き上げた。
 ああ、風が渦巻き、光が集まる――その流れの中心に立つオリオは、力の集合を理解して、その手に絢爛なる大剣『γ:Bellatrix』の柄を握った。

「さぁ……お往きなさい、わたくしの星達!」

 白く華奢なオリオの腕が大剣を空へ掲げた瞬間、闇色の剣先はひとたび輝き、幾重にも解け空へと舞った。
 ユーベルコード『夜彩と流星花(メテオリオ)』――無数空に踊る花弁は、星の煌き纏う黒薔薇。オリオの絢爛なる愛剣は今、剣身全てを花弁と化して草原の空を渡り、空へ向かう紅き竜の顔に手足に纏わりついた。

「――ギャァアアッ!?」」

 突然の花弁の奇襲に、竜は混乱きたしてそれらを引き剥がさんとする。しかし自由なる花弁達は優美に風の中に舞い、その一つ一つが意思持つ様に竜へ絡みつき離れない。
 空に藻掻く、翼無き竜――その不思議な光景を、スコープ越しの少年の蒼い瞳が興味深そうに見つめていた。

「鱗もごつくなったみたいだ、……面白い」

 裸眼より少々拡大して見える紅き竜の体表の鱗は、先に魔力で艶めいた瞬間からどうやら強度を増したらしい。姿かたちは恐竜で、何でもありのオブリビオンとはいえ翼が無いのに空を飛び、そしてあの鱗――その存在は興味深くはあるけれど。

「……さて、と」

 戯れは、ここまで。強化された鱗を破って撃ち抜く為に何処を狙うか、実はリュカには既に考えがあった。
 スコープ越しに見た全身真っ赤な体の中に、一際目に付く色彩がある。酷く毒々しいその色彩は、ギャアギャアと叫ぶ最中に口内から覗く舌。

「……ねえ、舌って鱗はえると思う?」

 ――ぽつりと問うたリュカの声に、オリオは術を維持しながらにこりと笑んで頷いた。

「舌を狙うんですの? 確かに色鮮やかで良い的ですわね」
「うん、とりあえず狙ってみようか。何だか色が毒々しいの、面白いから」
「でしたら、わたくしは剣で補佐しますわ」

 狙い撃ちは任せると。暗にそう笑顔で告げて、オリオは剣身なき大剣の柄へと更なる魔力を注ぎ込む。
 紅き竜の周囲に纏わりついていた花弁の一部が、突如強き光を放って竜の体表へと突き刺さった。

「ギャァアアアアアアア!!!」

 突然体を奔った痛みに、竜が今日一番の絶叫を上げ、その口を大きく開いた。狙い易い大きな隙――好機逃さず、リュカは構える銃の照準を舌へと合わせ固定する。
 魔術と蒸気の力で動く銃身内部に、圧縮されたリュカの魔力が弾丸として装填される。やがてそれらは許容を超えて溢れ出し、リュカの周囲の大気へ漏れ出てキラキラと煌いた。
 引金引いて放たれるは、あらゆる装甲や幻想を打ち破る星の弾丸。ユーベルコード――『届け、願いの先へ(バレット・オブ・シリウス)』。

「鱗がなければめっけものだし……あっても集中的に狙っていけば倒れるだろ」

 誰に言うともなく呟けば、直後長き銃身の先から流星の如き光の弾丸が真っ直ぐと飛び出した。
 竜の口内、青い舌を撃ち抜いたそれはそのまま喉、皮膚と鱗を貫通して空へと抜けて伸びていく。強烈な一射――しかし叫ぶ舌を持たない竜は、声も無く立ち尽くして。
 ……やがて、ズン、と音立て大地へ伏した。

「いつもながらお見事な狙撃、で……?」
「ところで、この恐竜はドラゴンステーキにしない、のか、な……?」

 ――しばしの間の後、その声は二人同時に放たれた。
 リュカを称えたオリオの声に、重なったリュカの問いは「倒した恐竜の肉について」。実に見事な狙撃の後の何とも締まらない展開に、リュカは少しばかり気恥ずかしくなりぽりぽりと頬を掻いた。

「……いや、食べないのかなって、ちょっと気になって」

 少し照れが浮かぶその表情は、やはりその年相応の少年のもの。いつも大人びて見える友人の少年らしいその様子に、オリオはまたくすくすと笑い出す。

「ふふ……確かに、竜と名が付くならステーキになりそうな。筋肉ばかりで硬いのかしら」
「ああ、確かに硬いのかも……何だか勿体ないね」

 結局この後、紅き竜の体は大気に溶けて消えてしまうのだが――それはまた別のお話。
 互いの無事を確かめ合い、言葉を交わす二人の間には、今日の空の様に穏やかで温かな風が吹いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

さぁて、いよいよ本命のお出ましねぇ。さっさと全部ブッ潰して、心おきなく星祭りを楽しみましょ。

ミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ。●轢殺とグレネードの〇投擲による○爆撃で機動戦仕掛けるわぁ。
相手の体長は3~5m、おまけに遮蔽物もない見通しのいい草原。上からなら見逃しも少なくなるでしょうし、爪も牙も届きにくい…やらない理由はないわよねぇ?この子はこんなナリでもUFO、ホバリングもVTOLもお手の物。○空中戦ならこっちの領分よぉ?
イサ(停滞)・ソーン(障害)・ニイド(束縛)のルーンも併用すれば、〇援護射撃にもなるかしらねぇ。片っ端からブチ貫いて〇蹂躙してやりましょ。



「さぁて、いよいよ本命のお出ましねぇ。どう料理しましょうか」

 にこり、と浮かべる笑顔は大人の艶帯びて穏やかに、声はふわりと幼く甘やかに――相反する魅力を携えて立つティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、瞑ると見紛う細き瞳で巨大なる竜を仰ぎ見る。
 ギャルソン服、つまりバーマスターの装いをしたティオレンシアが調理する、と呟く様子は、流石本職、それらしく実に様になっていた。しかし、その言葉の意味するところは平和には程遠く――更に連ねた言葉には、明確な闘志が露わとなる。

「さっさと全部ブッ潰して、心おきなく星祭りを楽しみましょ」

 含み笑いを浮かべれば、――ギャン! と響き近付くはモーターの様な激しい駆動音。
 ティオレンシアの真横を突如高速で抜けた鋼鉄は、彼女が背に下ろす青みの黒髪、編み束ねた長いそれをぶわりと煽って肩へと巻いた。
 品良くそれを白い手で背へ払って戻したティオレンシアは、そのまま降ろさぬ白い手で、眼前の――正に今彼女の髪を乱して停まった鋼鉄のボディへ触れる。
 バイク型UFO、名を『ミッドナイトレース』。

「ふふ、お待たせ。それじゃ行きましょうか。……走りましょ? 存分にねぇ」

 無人でエンジン吹かす今日の相棒は、ひらりとその背に跨ったティオレンシアが幼声にも蠱惑的な口説き文句を囁いた瞬間、一気に前へと走り出した。

「――ギャァアアウウウア!!!」

 目指すは巨竜。迫る速さに反応して、ティオレンシアへと照準定め咆哮したランナーズイーター――しかし、ミッドナイトレースの向かう先は、その巨竜の足元ではない。
 加速して進むほどに、ティオレンシアの視線は次第に巨竜の胸、牙、やがて頭を超えて蒼き空へと高く高く昇っていく――。

「空中戦ならこっちの領分よぉ? ――この子は、こんなナリでもUFOだもの!」

 見晴らしの良い草原の空より、緩く甘くとろみあるティオレンシアの声が巨竜目掛けて降り注いだ。
 見上げる形となった巨竜の瞳には動揺の色が浮かんでいる。何しろ、今ティオレンシアが居るのはただでさえ大きな竜達にさえも手の届かぬ上空だ。
 晴れた空の陽射しは眩しく、瞼すら堅そうな竜達の瞳は不器用に細められている。――敵追う目がその有り様では、ティオレンシアの変化にも、声以外にも空より降り落ちる脅威の存在にも気付けない。

「上からなら見逃しも少なくなるでしょうし、爪も牙も届きにくい……やらない理由はないわよねぇ?」

 ぽそりと呟くティオレンシアの、いつもと変わらぬ細く開く瞼の隙間に――覗く赤く彼女の瞳が、どこか冷たく妖しく光った。
 直後――ドォン!! ミッドナイトレースの足元遥かに下、地上で巨竜達が突然爆ぜた。

「ギャァアアアアアアッ!!」
「グアッ!? ギャアアアウウ!!?」

 爆発は無数、連鎖する様にあちらこちらで次々と発生し、巨竜達の群れ一つを混乱に陥れる。仲間が突然爆ぜていく、果たして何が起こっているのか――その答えは、やはり上空のティオレンシアが持っていた。

「――ルーンも併用すれば楽よねぇ、味方の援護射撃にもなるでしょうし」

 上空、駆けるミッドナイトレースに進路と操舵を全て任せて――ティオレンシアが腰のガンベルトのポーチから引き出しては投げる無数の弾丸、それらは全て擲弾だ。
 イサ(停滞)・ソーン(障害)・ニイド(束縛)――ルーン刻まれしグレネードは、ティオレンシアの求めに応じて放たれては役目を果たす。空に留まり降下のタイミングを計るもの、爆ぜてのち巨竜達を阻害するもの――贅沢なそれらの弾を的も選ばず無造作に投擲する左手に対し、的を狙う右手に握るは射出専用のクレインクィン『アンダラ』。
 遠目の距離、しかも空翔け続けるミッドナイトレースの速度の中でも、その狙撃は的確だ。巨竜の眉間、叫び開く口内――狙う場所で弾爆ぜるのは、狙撃の右手と赤く冷たく覗く瞳に赤き魔力が巡るから。
 ユーベルコード『轢殺(ガンパレード)』。

「草原を蹂躙するのは楽しかった? でもちょっと騒がしかったわねぇ……片っ端からブチ貫いて蹂躙してやりましょ」

 やはり笑顔は大人の艶帯びて穏やかに、声はふわりと幼く甘やかに、ティオレンシアは空を往く。
 ただ、瞑ると見紛う細き瞳だけは――群れ一つ狩り尽くすまで、冷たく巨竜を見下ろしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユウイ・アイルヴェーム
どれだけたくさん来たとしても、全て止めます
そのために、私ができることをするだけなのです

もう、進ませません
敵が私を見つけられる距離まで近づき、【天仰ぐ五百枝】で攻撃します
もう、動かないで。今は斬(さわ)りたくないのです
それでも止まれないというなら、どうか私を狙ってください
【覚悟】を持ちながら、全速力で近付き【おびき寄せ】【切り込み】ます
私は人形、命をもたないもの。痛みも、恐れも、ないのです
だからこそ、何が起きても戦えるのです。命あるものの役に立てるのです
空を飛ぶことはできなくても、私を狙わせることはできます
そうでなければ、ここにいてはいけなかったのです

役に立たない人形なんて、いてはいけないのです



(「……どれだけたくさん来たとしても、全て止めます。そのために、私ができることをするだけなのです」)

 吸い込む空気に鉄の香りを感じれば、胸の奥に在る何かが何故だかつきりと痛む気がする。
 その痛みの正体が何なのかを突き止められぬまま、戦う決意だけを抱えてユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)は駆けていた。次第に近付く巨大なる竜――ランナーズイーターの視線を、早くこちらへと繋ぎ止めたくて。

(「もう、進ませません。生きているもの、命ある、心あるものを守るために」)

 時に足を取られそうな程草の背高い草原を、白肌に傷刻むのにも構わず進むユウイの胸の内には、命への敬意と憧れ、そして今を生きる人への深い深い愛情がある。祖父を想って泣いた少女と、その涙に動いた冒険者達――心ない筈のこの胸に熱を呼び起こした人達を、人形たるこの身で、この手で、何に変えても守りたくて。
 そして、少女が願った祖父との時間を、きっと叶えてあげたいから。

「――もう、動かないで。今は斬(さわ)りたくないのです」

 その強い強い意思もまた、心なのだとは知らぬままに――呟くユウイは握る白剣『白蓮』を、大地へ強く突き立てた。
 瞬間、剣から注いだユウイの魔力が地表に輝く陣を描いた。ミレナリィドール――美しく造られたその瞳を飾る温みの色と同じ色彩の魔力線は、ユウイが目指す赤き竜の脚元にも陣を描いた。
 そこから無数に孤立するは、何物にも染まらぬ『白蓮』の様な、白き無数の光刃達。地表より出でて竜を突き刺し、その足を繋ぎ止める――。
 ユーベルコード『天仰ぐ五百枝(カナエダテ)』。

「――ギャァアッ!?」

 突然足元に生じた痛みに、竜が甲高い悲鳴を上げた。
 だが、傷は思ったより浅い――地表より突き出す無数の刃を尾の一振りで一蹴し、顔を上げた巨竜の鋭き視線は、使用した魔力残滓を辿りユウイの視線と重なって――。

「ギャァアアアアアアアア!!!!!」
「……! それでも止まれないというなら、どうか私を狙ってください……!」

 明確な敵意の咆哮に、しかしユウイが抱いたのは、あまりにも悲しい覚悟だ。
 傷みも恐れも、自分には無い――そんなミレナリィドールであるユウイの当たり前は、人には当たり前ではない。理解するユウイにとって、今を生きる命ある誰かの代わりに自分の身を投げ出すことは、何らおかしなことではなかった。
 ユウイは語る。私は人形、命をもたないもの――だからこそ、何が起きても戦える。存在全てで、命あるものの役に立てる。……そんな覚悟を、例え生きる人が嘆くとしても。
 ユウイは守りたい。――だって、そうでなければ。

「そうでなければ、ここにいてはいけなかったのです。役に立たない人形なんて、いてはいけない、のです」

 言葉にすれば瞬間、ずきりと、胸の奥に絶えずあった痛みが一際強くなった。打ち消す様に首を振ると、『白蓮』構えて迎え撃つは、足負傷した巨竜一体。
 竜は全身に魔力を帯びて、赤き鱗を硬質化させながらミシリと巨体を浮き上がらせる。翼はないが、飛翔能力――空飛ぶ手段を持たないユウイには、間違いなく苦戦が予想された。
 ――でも。例え一撃で倒せずとも、あの強靭な脚の機動力を奪えた。
 戦える。負けられない、守りたいと願う意志が、ユウイにはあったから。

「空を飛ぶことはできなくても、私を狙わせることはできます。……止めてみせます。そうでなければ、私はここにいてはいけない」

 存在意義を、命守ることに見出して。悲しくも強き人形の少女は、今、戦うために剣を握る。
 やがて傷だらけになったユウイが、勝利を掴み剣収める瞬間は――まだ暫く、先のことと思われた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ルフ・ジャナーフ
【野良犬】で参加
2人の前ではフレスベルグと名乗るよ
アドリブ、アレンジは大歓迎だからね

あーあー、煩いなぁ
でもあれだけ生を叫べるのは種として喜ばしい事だね

おじさん2人は置いといて、先に行っちゃおう
【Unlock:lisia】を起動
血族の屍の上に立つこの身から、
翼の力を励起
高速移動を使って敵を引き付けよう!
さあ君達の獲物は此処だ!寄っておいで!
支配者として君臨していた君達は気が付かないだろう!
僕こそが!君達を屠る者だ!
集まった間抜けに向かって白い羽を一斉掃射さ!

僕疲れちゃった
あとはおじさんに頼むよ、宜しくね


フローズヴィトニル・ヒースハイデ
【野良犬】
ルフのことは『フレスベルグ』と。
ファングのことは『ロー』と。
己のことは『ヒース』と名乗る。
アドリブ、マスタリング歓迎

_

フレスベルグが囮を買って出ている間はその補佐を務める。
彼の背後を狙う者は斬り斃す。
フレスベルグやローとの連携を意識し、無駄のない動きを。

フレスベルグの白羽の嵐が吹き荒れたなら、間髪入れず交代。
元よりフレスベルグばかりに危険な目に遭わせるつもりはない。

──刃を天に掲げる。
魔力が我が剣へ渦巻くように集中し、やがてそれは戦場を蹂躙する災厄となる。

_
(…己の中で、小さく何かに亀裂の入る音が聴こえた。
その正体が、"心"と呼ばれるものであろうとも
俺は、躊躇なく──嵐を、振るう)


ファング・ロー
【野良犬】
自分は「ロー」とのみ名乗り
2人の呼称はその通りに
アドリブ歓迎だ
大狼の姿で戦場を駆ける

それをいうなら…とっとと先攻するテメェも十分イキがいいんじゃねェか?

先に行くフレスベルグを見送りながら
自分は2人の支援や回復を重点に行動
治療が必要な時はUCを使用
狼の咆哮はどこまでも遠く響き渡る
攻撃的なものじゃない
まるで鼓舞するかのような声

俺はコイツらより戦闘派じゃねェが
後ろを支えて戦場を守る事はできる

俺がいる限り、コイツらが倒れると思うなよ?

治療がいらない時は
バスタードソードを咥えて走り
防御に徹し【武器受け】
もちろん隙があるならば【部位破壊】で敵の態勢を崩す

デッケェ大技くらわしてやれ、ヒース!



 草原各所に、戦いの気配。響く耳を劈く咆哮は、ビリビリと煩わしい。

「あーあー、煩いなぁ。でも、あれだけ生を叫べるのは種として喜ばしい事だね」

 頭の後ろでヒトの右手と左腕と思しき白い翼を組む少年――ルフ・ジャナーフ(翼供の王・f27276)は溜息落とすと、巨竜眺める瞳を細めて気楽な様子で呟いた。
 年相応、まだ幾分か幼い響きを残す少年の放った声に、前より振り返る影は二つ。銀紫の美しい毛並みが波打つ大狼は獣ではなくファング・ロー(救牙・f27275)。そしてその隣にてルフを見つめる何処か無機質な満ち月の金瞳は、或国にその名轟く騎士、フローズヴィトニル・ヒースハイデ(涕溟・f27274)。

「――あァ? それをいうなら……」

 立ち止まり何事か言い掛けたファングの声は、しかし二人の間を割って通ったルフによって遮られる。
 光纏う様な白髪と、ふわりと辺りに纏う白羽を揺らして――とん、と軽やかに過ぎ行く様は、まるで、左腕の翼で空でも舞うよう――。

「……お先に。おじさん二人は置いといて、先に行っちゃおう!」

 しかしその唇が紡いだ言葉は、いかにも少年らしい生意気なもの。ニィと喰えぬ笑みを見せつけ、そのまま一人で前へと駆け行く背中に――狼牙の口から溜息落とし、ファングは悪態を声に乗せた。

「とっとと先攻するテメェも十分イキがいいんじゃねェか?! なぁ、フレスベルグ!!」

 しかしファングのその声は、既に臨戦のスイッチが入ったルフの耳にはもう届いていなかった。
 先駆ける足は次第に加速し、目指す巨竜を見据える瞳は、生来染むる褪紅色が妖しき光を帯びている。仄かに白い光を纏って進むルフの姿を見れば、その進軍に気付いた巨竜がズシン、と重い足で一歩を下ろす。

「さあ、君達の獲物は此処だ! 寄っておいで!」
「――ギャゥウウウアアア!!!」

 声で挑発を加えれば、更なる赤き巨竜達も咆哮上げて大地を蹴った。ズシン、ズシン、と足打つ度に大地は大きく揺れ動いて――その数無数。
 しかし腕に翼持つルフの行軍は、その程度では止まらない。

「教えてあげるよ。……今、君達が誰を見下ろしているのかを!!」

 鋭き威圧の声と同時、大きな瞳を見開いて――笑んだ時、ルフの左肩より伸びし翼が、眩いまでの白光纏いてぶわりと大きく膨らんだ。
 この翼を得る為に、血族の無数の屍が積み上げられたことを少年は知っている。嵐を越えて飛ぶ白翼――その代償が命だったというのなら、その命に報いるまでこの生は終われない。
 使いこなしてみせよう。この異形なる力に、守れるものがあるならば。

「支配者として君臨していた君達は気が付かないだろう! ――僕こそが! 君達を屠る者だ!!」

 選ばれた、上に立つ者が放つ覇気を纏いルフが強く吼えた瞬間、異形の白き大翼から、無数の白羽根が巨竜ら目掛けて矢の様に射出された。
 ユーベルコード『Unlock:lisia(アンロック・リーシャ)』。

「ギャァアアアアアアアア!!?」

 白き異形のオーラを纏ったルフの身は、更に前行く速度を増して、まるで低く滑空する大鳥。絶えず羽根を飛ばす翼は、放射する傍から新たな羽根を生やしてその攻勢を止めない。

「残念だったね、簡単に釣られちゃって、随分間抜けな竜達だ! ……解ったかい? 勝てないって」

 不遜不敵に笑む唇は、年相応の声の中に時々鋭き威圧を放つ。――しかし今のこの圧倒も、命絶えればそこまでだ。
 誰が知る筈もないけれど、この膨大過ぎる力は、術者であるルフの命を確実に蝕むのだから――。

「――その辺にしとけ、フレスベルグ。顔面蒼白に呼吸の乱れ。……それ使うの相当しんどいだろ、アンタ」

 ――誰も知る筈のなかったこと。それなのに理解した様に届いた声に、驚き即座にルフは振り向いた。
 直ぐ隣。倒れれば手を差し伸べられる距離のそこに駆けていたのは四足の獣。美しき銀紫の大狼――。

「誤魔化せると思ったかァ? 翼生えようがそれがヒトなら俺には診れるし解ンだよ。医者なめンな」

 何を知っているわけでもない。ただ、診て理解した――そう告げたのはファングであった。医師として告げられたその言葉に、ルフは反論出来ず黙り込む。
 即座に否定したかった。しかし、乱れる呼吸も僅かに血の気の引く感覚も、自覚するから今これ以上は無理出来ない――。

「……あーあ。僕疲れちゃった。あとはおじさんに頼むよ、宜しくね」

 だから、まるで興がそがれた様に再び頭の後ろに手と翼を組むと、くるりとその場で踵を返し、ルフは後方へと引き下がる。
 すたすたと歩いて行くその背中を見送れば、ファングははぁ、と一つ溜息を落とした。

「ったく、素直じゃねェなァ……ま、退いただけいい。さァてヒース。俺はアンタらより戦闘派じゃねェんだが――、……任せられるか?」

 少年見送る視線を前へと返し、ファングはそこに立つ黒衣纏いし大柄の男へ問い掛けた。
 先までルフが立った位置へと、今立つはフローズヴィトニル――。

「――愚問だ。元よりフレスベルグばかりを危険な目に遭わせるつもりはない」
「そーかァ。……んじゃデッケェ大技くらわしてやれ、ヒース!」

 ファングの声にも動じずに立つ、男の白銀の豊かな髪は、風に揺れてキラキラと瞬く様に陽光を弾く。……その後ろ姿には、一目で歴戦の兵と解る程の圧倒的なオーラがあった。
 面立ち美しい男の視線は、声掛けられても目の前の巨竜を捕らえて揺れず、真っ直ぐ見つめるその眼光には巨竜達も気圧されている。先駆けたルフの背を守り補佐し、無駄なく暗躍していた男――そこから遂に戦線の表に立ち、フローズヴィトニルは剣を掲げた。

「何であろうと、――立ち塞がるならば斬り斃すまで」

 低い凍て時の声で呟いた瞬間、天に掲げた愛剣『アラドヴァル』が魔力を帯びて輝き出した。
 フローズヴィトニルの全身を、魔力が激しく駆け巡る。それは次第に腕から剣へと伝わり、天へ切っ先向けたアラドヴァルの剣身を軸に大気が蠢き渦を巻いた。
 その時――ぱきん、とフローズヴィトニルの胸の奥、小さく何かに亀裂が入る音がした。今日の広い戦場を蹂躙するほどの絶大なる力を振るう、その代償となるそれが、何なのかは解らない。
 しかし、男は躊躇わない――例えその正体が、冷酷無比と言われる自身に残った僅かな"心"であったとしても。

「──嵐を、振るう」

 それは誓いか、それとも決意か――冷たき声が落ちた瞬間、振り下ろされた剣身から、激しく渦が前へと伸びて巨竜の群れを巻き上げた。
 『逆光(ギョッル)』――その激しき嵐の中には雷までが轟いて、舞い上がる竜達を撃って鱗を焦がして砕いていく。
 吹き荒れる風は大地に散らばる礫も巻き上げ、美しきフローズヴィトニルの白き面立ちに触れては深く傷を刻んだ。
 しかし佇む男の表情は不変。溢れ出る赤は白肌に映え、その決して溶けぬ氷の彫像の様な男の周囲を、その鮮やかさで彩って――。
 ……しかし、直ぐに。その蹂躙する嵐の中にも鼓膜を力強く揺らす咆哮によって、全身を熱が巡り傷を次々と消していく。

「―――――――――!!」

 その声を、音を、どう表現したら良いのだろう。戦場にあっても攻撃的ではない、鼓舞する様な温かい響き。
 大狼の姿で空を仰ぎ、高く吼えるファングの力――ユーベルコード『Salvation(キミシニタマフコトナカレ)』。

(「確かに俺は戦闘派じゃねェ。だが、後ろを支えて戦場を守る事はできる」)

 医者であるファングらしい、それは生を奮い立たせる力だ。鼓膜から、或いは肌から。咆哮によって揺れた大気はファングの癒しの魔力を帯びて、僅かでもその振動に触れたものの自然治癒力を活性化させる。
 ただ、与えるだけの癒しではない。自ら立ち上がるための力を引き出す――遠くどこまでも響くそれは、今癒しを必要とするルフにも届いている筈だ。

「……俺がいる限り、コイツらが倒れると思うなよ?」

 癒し支える、それこそが今日の自分の戦いと。誇らしく笑んで呟くファングの前に、蠢く巨竜は今は遠い。
 一つの群れ成す巨竜を片付け――しかし戦いは終わらない。男達は今は遠き次なる獲物を目指して、血臭漂う草原を更に奥へと進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【煌】
ええ――この先の場所と時間に齎すは、幸いのみと致しましょう
美味しく楽しく舌鼓打つ一時が待ち遠しいですよね、ふふ
その為にも――何より平穏の為にも、肉も命も彼等には欠片もくれてやりません
それにしても大物が山盛で
御馳走なら兎も角、敵の山等願い下げ…いえ、やはり竜焼肉もありですかね?

本気か冗談か分からぬ儘、早速UCで範囲攻撃
燃やすは顔中心に目潰し
隙見て早業で2回攻撃
地には再び草属性霊符や麻痺齎す妖刀走らせ、ご自慢の足封じに
皆で連携し畳み掛ける、速度を不規則にしフェイント掛ける等、隙与えぬ立回りを
数が増えても手分けし牽制と撃破に努め、抜かりなく狩り尽くす迄

晴れ晴れと白星をあげ、輝ける星の下で祝杯を


呉羽・伊織
【煌】
爽やかな草原が、酷く血腥くなったな―こんな空気を村まで運ぶ訳にゃいかない
ああ、穏やかな村と夜に届けるのは、吉報と戦利品の山だけにしよう!
…いやお前、アレはホントやめとけよ!
兎も角!応とも、頼りにしてる!

話ながらも早業や二回攻撃駆使し、極力多数の敵へ先制UC
毒で足の部位破壊、闇で目潰しを狙い牽制
さて随分と群れてるようだが、やはり憂いもなければ恐れもない―あちら以上の連携を見せてやれば良いだけの事
駆ける速度を皆と調整&残像やフェイント見せ撹乱しつつ、死角助け合い連携
合間にUCも重ね更に敵動作阻害し、見切り易い状態を作る

奴等の狂宴なんざ許しやしない
星と笑顔が明るく輝く、楽しい時間を掴み取ろう!


筧・清史郎
【煌】

さて、首魁のお出ましか
折角の美味な鶏が痛んではいけないからな
後顧の憂いなく星祭りを楽しむ為にも、早急に片を付けよう
ふふ、ご馳走を頂くのが楽しみだな、菊里
後の宴の為にも、確りと血臭に滾る竜を討ち果たそう
さあ、いざ参ろうか伊織

刀でも良いが、やはり狩りの得物といえば此方だろう
二人を支援するように、敵の急所を見切り水龍の矢で射抜いていく
複数の敵が仲間に迫れば声を掛けよう
自身に迫る敵の動向にも細心の注意を払い
攻撃を確りと瞳凝らし見切り、残像を駆使しつつ身を翻し躱し
抜き放った刀で叩き斬る
増援が来たところで何ら問題はない、全て狩るのみ

この後、楽しみが待っているからな
一体残らず巨大な獲物を仕留めようか



 見渡す草原は、各所より巨大な怒号と咆哮が響いて――爽やかで光満ちていた筈のそこに齎された不快な変化に、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は眉を顰め、起こる戦いを遠くに見つめる。

「……さて、首魁のお出ましか」
「爽やかな草原が、酷く血腥くなったな。……こんな空気を村まで運ぶ訳にゃいかない」

 思うより低く響いた清史郎の声に対し、返った声は幾分明るさを帯びて耳と心を和ませた。ポン、と後ろから清史郎の背を軽く叩いた呉羽・伊織(翳・f03578)は、重い戦場の空気を払拭するかの様に、努めて笑顔で言葉を綴る。

「穏やかな村と夜に届けるのは、吉報と戦利品の山だけにしよう!」
「ええ――この先の場所と時間に齎すは、幸いのみと致しましょう。……美味しく楽しく舌鼓打つ一時が待ち遠しいですよね、ふふ」

 その意図を汲み取ってか、笑みで言葉を次いだのは、千家・菊里(隠逸花・f02716)だ。
 長く落ちる黒髪を傾げた首に揺らし、にこりと笑み浮かべる顔は、纏う衣も相俟って上品にそこに佇んでいる。しかし、続いた食欲にあまりにも正直な言葉には、苦笑する伊織の隣で堪え切れず清史郎も笑みを零した。

「はは、菊里……そうだな、折角の美味な鶏が痛むのもいけない。後顧の憂いなく星祭りを楽しむ為にも、早急に片を付けよう」
「ええ、その為にも――何より平穏の為にも、」

 そこまで紡いだ言葉を断って、菊里が腰より抜くは妖刀。
 未だ遠くに見えるランナーズイーターの中心へと刃先を向ければ、笑みに細い紅瞳の奥には冷たく鋭い光が覗いた。

「……肉も命も、彼等には欠片もくれてやりません」

 ビリ、と一瞬空気がひりついたのは、この一瞬男が内に秘める敵意が滲み出たためか。
 しかし直ぐににこりと笑めば、鋭き気配は瞬時に場から掻き消える。残るはいつもの穏やかな空気だ。次ぐ菊里の言葉にも、冷たさなど欠片もなかった。

「それにしても大物が山盛で。御馳走なら兎も角、敵の山等願い下げ……」

 そこまで言って、菊里ははたと再び言葉を止める。

「……いえ、やはり竜焼肉もありですかね?」
「いやお前、流石にアレはやめとけよ!」

 全力で止めにかかる伊織に対し、菊里は果たして本気なのかどうなのか。先程の一瞬の緊張感が嘘の様に、鼻歌でも歌い出しそうな身軽な様子でころころ笑うと、前差し出した手へと浮かぶは肉を香ばしく焼き上げる――ではなく、妖狐たる菊里が内より喚び出す、幽鬼刈り取る妖かしの炎。
 ユーベルコード『フォックスファイア』。

「いずれにせよ、抜かりなく狩り尽くしましょう。……ふふ、本当に楽しみです」

 語らう間にも炎は辺りへぼう、と広く散らばって、草原はぶわりと熱気に包まれた。用意が出来たとばかり駆け出した菊里に、清史郎は微笑むと――自らもまた武器を取って、隣立つ伊織へと語り掛ける。

「……ふふ、ご馳走を頂くのが楽しみだ。後の宴の為にも、確りと血臭に滾る竜を討ち果たそう――さあ、参ろうか伊織」

 向けられた男の笑みは、平時の品のある穏やかなものではなく、戦いを前に昂るそれで。先程の菊里との応酬に少々毒気を抜かれた伊織も、その笑み見れば、切れ長の紅瞳をニィと細める。

「――応とも、頼りにしてる!」

 互いの笑みを足掛かりに――清史郎と伊織も、菊里を追って駆け出した。
 肉も宴も、語るは自由だが未だ早い。そこへ至るには目の前の障害――巨大なるランナーズイーターを全て排除せねばならないのだから。
 そして、接して見上げる敵の大きさは、猟兵の力をもってしても――流石に一撃で狩るには難そうだ。

「さて随分と群れてるようだが、……一人はそんなに自信が無いか。デカい図体は飾りかねぇ?」

 しかし呟く伊織の胸の内には、憂いもなければ恐れもなかった。長い濡羽色の髪を背に散らして全力の疾走を見せると、懐に差し入れた手で触れるは、脈所に突き立つ闇色の牙、自在に空翔ける暗器『風切』。
 ユーベルコード『変眩』。

「別に焦る必要なんざねぇさ。――アンタら以上の連携を見せてやれば良いだけの事」

 抜く手すら見えない。気付けば差し入れていた懐より真横へと伸びていた伊織の手から放たれた暗器は、巨竜の足と目元に突き立ちばっと赤き華を咲かせた。
 しかしそれはただの傷ではない。目眩ましの闇、腐蝕の毒――突いて即座に刃が帯びた魔力は傷口から内へと入り込み、やがて巨竜の身体を内側よりじわじわと侵し壊す。
 そして、次第に奪われゆく視界を遮りごう、と竜の全身を覆い包むのは菊里の青き狐火だ。赤ではなく、青。灯火の様な揺らめきは柔く弱くも見えるのに、その色彩が表すのは苛烈なまでの高温だ。
 巨竜の鱗へと延焼すれば――巨竜の体表面は、忽ち高熱を帯びて赤化する。

「――舞い降れ、桜雨」

 そしてその高温の領域へと、更なる追撃は空高くから降って来た。ふわりと桜花弁が炎にも燃えず熱波の中を躍った後、瀑布が如く降り注ぐのは、魔力を帯びた無数の水針。
 ユーベルコード『水龍桜雨』――清史郎の追撃だ。

「刀でも良いが、やはり狩りの得物といえば此方だろう」

 桜花弁を身にも纏う美しき男の手には、摩訶不思議にもさざめく水が大弓のかたちを成していた。魔力で編まれた今が為の武器――常ならば刀を握り前へ駆る清史郎は、今日この一時は後方にて、前行く友の支援に立つ。
 良く伸びた背筋ですうと再び弦を引けば、弓柄より細く伸びるは水龍の加護受けた青透く矢だ。
 それが、放たれ高く空へと昇った後、爆ぜて無数に分かれて落ちる。高熱に晒されていた竜の鱗は、降る水矢が齎す急激な温度変化に脆く崩壊し砕けて割れて――。
 それだけでも傷深いのに、晒された肉身へずぶり、と深く黒き刃が差し入れられる。

「いいねぇ、炎に水の大弓に桜に雨とは何とも贅沢で風流だ! 俺も折角だから何か披露したいんだが、――生憎と、俺が降らすのは血の雨でね」

 軽快に語られた伊織の言葉は、その最後に温度を落とす。
 引く刃が、激しく飛沫いた鮮血によって大きな花を辺りへ散らした。とん、と巨竜の身体を蹴って伊織が軽やかに地上へ降りれば、次いで、ズン、と大地を揺らして赤き竜が大地へ伏せる。
 絶命確かめるまでもない、その身体は――次第に透いて消えていく。

「ああ、消えてしまった……お肉……」
「いやお前、アレはホンットやめとけよ!?」

 菊里が思わず呟いた言葉に、再び掛かる伊織の全力の静止の声が戦場の空気をこの一時和ませる。
 しかし、それも僅かな時間だ。――ズシン、と。再び大地揺るがす足音が辺りに響けば、談笑止めて見上げた先には新たに現れた巨竜の群れ。
 明確な敵意の視線と、憤怒と威嚇の咆哮が、男らへと注がれる。

「ギャァアアアアアウ!!!」
「……やれやれだ。死ぬ前に追加を喚んだか? 別に頼んじゃいねぇんだが」

 首の後ろを片手で押さえ、少々気怠げな様子で伊織は一つ溜息を落とした。しかし直ぐに顔を上げると、刀身黒き愛刀『烏羽』を再び構えて先駆ける。
 清史郎もまた、さざめく水の大弓をぱしゃんと散らして手を空けると、蒼き桜花の一振りを抜いて、共に戦う二人の友へと継戦の覚悟を告げた。

「この後、楽しみが待っているからな。一体残らず巨大な獲物を仕留めようか」

 増援が来たところで何ら問題はない、全て狩るのみ――穏やかに、しかし強かな闘志を帯びたその声に、伊織は強き笑みの声で応える。

「ああ、奴等の狂宴なんざ許しやしない。星と笑顔が明るく輝く、楽しい時間を掴み取ろう!」
「ええ、必ずや」

 その熱き会話の最後を締め括ったのは、柔く顔に笑み湛えて敵を見据える菊里であった。
 まるで先の戦いの様。菊里が空へと放った霊符たちは、魔力を通して輝いたのち――潜る様に大地へ降りて、翠に輝く陣を描く。
 足を捕らえる草の陣。その灯が定着し消えるを見守ると、菊里は迫る巨竜へと上げた視線を、更に高く空へと伸ばした。
 戦いはまだ続く。しかし見上げたそこには、戦いなど知らぬとばかりに高く佇む蒼き空――。

「この空の様に、晴れ晴れと白星をあげ――輝ける星の下で祝杯を」

 この戦いの果てに迎える穏やかな時を願い、菊里は再び戦地に駆けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水鏡・多摘
ああ、よく見える。
乱戦で見逃しが出るのが少々不安じゃが…なんとかせねばな。
幸い状況は此方にとってやり易い。
一匹も残すことなくこの草原を墓標としてやろうぞ。

引き続きUCで飛翔、神罰の雷を降らせつつ低空を高速で飛行し敵群の隙間を潜りつつ気を惹きつける。
囲まれそうになった場合は上昇し一旦仕切り直し、また隙を見て急降下して堅実に攻めていく。
視界外からの奇襲が強烈じゃろうし、一度攻撃を受けて動きを止められれば数を頼りにした袋叩きを喰らう危険もあるからのう。
後は上昇した時に逃れようとする個体がいないか確認、居るならば禍根を残さぬよう空から襲撃、祟り縄で締め上げ爪で引き裂いてくれよう。

※アドリブ絡み等お任せ


クロード・ロラン
来やがったな、オブリビオン!
俺らの本命はお前らなんだよ!

動きの早いものを狙う、と
なら俺の得意分野だ
身軽さを活かして草原駆け敵に迫り、こちらに注意を引き付けよう

へっ、腹が減ってるみたいだな?
こっちに来いよ、簡単に食われる気はねぇけどな!

追いかけてきたら、逃げるようにして数頭を誘い出し
邪魔な草があれば大鋏で刈りながら進もう
多少は目眩ましにもなるかな
飛んで向かってくる可能性もあるから気を付けよう

うまく引き付けたところで、UC使用
対象に刃を降らせる
でかい図体してるけど、俺にとっては的がでかくて助かるだけだ!

残念だな、狩られるのはお前らの方だ!
人の命も、鶏も、お前らにやれるものなんてひとつもないからな!



「――来やがったな、オブリビオン! 俺らの本命はお前らなんだよ!」

 ひゅっ、と空裂く快音立てて駆け、巨大なる竜の群れに接近するやクロード・ロラン(黒狼の狩人・f00390)は声を張った。
 隠れるつもりなど毛頭ない。その体こそ小さくとも、クロードの全身黒い出で立ちは晴れた世界にくっきり映えて、ぐんぐん前へと進む少年の存在を草原にありありと示す。加えて、耳に心地よく通る声――。
 巨竜の耳がどこにあるかは知れないが、これで気付かない方がどうかしている。

「――ギャァアアアアウウウウ!!!」

 そして、獲物と認識するや即座に、飢える今日の竜達から豪速の爪手が降って来る。咄嗟にクロードは身丈程の巨大な銀鋏をその手の中へ喚び出すと、丸柄の中へと腕通し、手首を軸に振り回した。

「へっ、腹が減ってるみたいだな? ――こっちに来いよ! 簡単に食われる気はねぇけどな!!」

 降る爪手に向け鋏通した手を掲げれば、回転する巨大な刃は弾き返す盾ともなる。ヒトの数倍大きな腕や爪をも弾くその奇策は、振るう刃の長さ故に見た目も音も少々派手だ。
 だが、目立つ分には望むところ。

(「動きの早いものを狙う、と。……なら俺の得意分野だ!」)

 出来るだけ多くの敵の注意を此方へ引き付ける――遠心力も伴う刃の回転にはかなりの膂力を要する筈だが、クロードの脚は止まらない。
 攻防一体の盾を振りかざし、地響き鳴らして追って来る巨竜から逃れる様に前へと進む黒き人狼の少年は、頭部に戴くふかふかの耳を時折ピクリと動かして――。
 ――高き高き空に在る、仲間の姿を待っていた。

(「……ああ、よく見える。乱戦で見逃しが出るのが少々不安じゃが……なんとかせねばな」)

 それは、ヒトより遥かに利く耳を持つクロードだからこそ気付けた位置。今、遥かな高き空を泳ぐは、真竜たる水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)。
 『竜神飛翔』――石化鶏との戦いより既に完全竜体の姿を取り、多摘は空より大地を見守っていた。今日の脅威、オブリビオンが乱戦下で逃れることのない様に。
 逃れようとするものあらば、地上近くへ一気降下し、神罰の雷で敵を屠って。

(「幸い状況は此方にとってやり易い。……一匹も残すことなくこの草原を墓標としてやろうぞ」)

 慈しむべきものを守らんと、高きの空より眺むる世界は嵐に雷、剣斬射撃――人ならざる力の応酬にも負けることなく輝き保って佇んでいる。一方、無数在ったランナーズイーター達は、猟兵達の奮戦によって今や群れ成すものは多くない――。

「……ならば、そろそろ殲滅といくか」

 呟くと、一度ぐるりと世界を見回し、悠々と長き真竜の体はぐんと頭から高度を落とした。
 完全竜体故の速度。地上へ向け下降する多摘の速度は時速6400kmにもなる。しかしその速さの中にも――目標地点は老眼鏡残す竜眼に確と見えていた。
 ふかふかの黒き長尾は上衣の長裾と共に後ろへ靡き、頭部に戴く黒き耳は音を探って忙しく揺れる――今、この草原で最も多き赤竜に追われる、小さな人狼の少年の姿。

「――! 来たか!!」

 耳に届く微かな音で上空の気流の変化を察知し、クロードはばっと顔を上げた。
 見上げた先には、ぐんぐんと速度を増して降りて来る翠の真竜――陽を透かす大きな金瞳にその雄姿を映した瞬間、重なる視線にニッと笑んで、クロードは駆け続けてきた足を止める。
 立ち止まれば、無数の紅き竜の群れがドドドと一気に迫るけれど。しかし今のクロードに、もう逃れる必要は無かった。
 ――敵討つ準備は整ったのだ。

「人の命も、鶏も、お前らにやれるものなんてひとつもない! ……残念だったな! 狩られるのはお前らの方だ!!」

 少年らしい強気で勝気な笑みを浮かべ、クロードは迫る敵へと向き合った。睨む眼光は今日の陽透かす美しい金色――しかし強く吼えたその時、瞳の奥に明滅するは、少年が手繰る魔力の光。
 ユーベルコード『咎狩り刃』。

「でかい図体してるけどな、俺にとっては的がでかくて助かるだけだ!」

 直後、迫り来る巨竜の群れへと頭上より無数の刃が落ちた。
 視認対象へギロチンの刃を雨と降らせる少年の技。逃れるばかりだった少年からの突然の反撃は、敵群の中へ痛みと悲鳴と混乱を起こし、激しく叩いて尚も止まない。
 ドドド、と音立て落ちた刃は血を纏いながらも陽を反射して銀に輝く。――その光を空より見開く翠眼に映した多摘は、瞬時に少年の意図を察した。
 ああ、よく見える――我が身に纏う雷を呼び込む、無数の銀の避雷針。

「――墜ちろ」

 僅かの声で短く命じ、瞬間、閃光――地を裂くばかりの激しき音立て、眩き光は空より落ちた。

「ギャァアアアアアアアアアア!!!!」

 甲高き悲鳴は一斉に、高低重なり放たれた。しかし雷の音の方が上だ。耳砕きそうな轟音の一撃には、その存在も、断末魔すら掻き消える。
 やがて、――しゅるり。地上を前に降下速度を落とした多摘がクロードの元へ舞い降りた時には、そこには敵も悲鳴も何も残されてはいなかった。

「……若者が中々に無茶をするのう。耳、痛いじゃろう?」
「……ちょっとな。うぅ、頭がぐわんぐわんする……」

 頭部の耳を押さえてうずくまるクロードに、多摘は労いの声を掛けた。
 度々空より降下して雷落とす多摘の姿を、クロードは目にしていたのだろう。耳を澄まして位置を知り、自身の技を起点としたこの作戦に組み込んだ――そこまでは良かったが、その轟音が自身の耳に齎す影響にまでは思い至らなかったのか。
 それはまるで、少女の涙に無条件で動こうとした今日の冒険者達の様――心で動く人の愛おしむべき拙さに、真竜の口元には無意識に笑みが浮かんだ。

「うぅう……まだ戦わなきゃなんねぇのに……」
「――いや、その必要はなさそうじゃ」

 下降の空より草原を見ていた多摘は、あらかたの竜が猟兵の手により伏す様子を確認していた。だからもう大丈夫だと――告げながらも再度確かめるべく、多摘は短くクロードへ告げると、ふわりと再び空へと浮かぶ。
 ぐるりと見渡す今日の世界は、射す陽射しに煌いて――大地揺るがす轟音はなく爽やかな風が吹いている。しかし――ふと。遠くにガチャガチャと何やら金属鳴らして近付く複数の気配に気付いて、多摘はその視線を向けた。

「さっき雷落ちたよな? 天気良いのにおかしいな……魔法か?」
「あれだけの雷で魔法はないだろ、どんな上級冒険者だ。……新手の魔物かな。ヤバいかな」
「ぐずぐずしないで行くよ! 夜に間に合わせなきゃ、あのお嬢ちゃん泣かす気かい!?」

 その意気揚々とした行軍に、多摘は口元の笑みを深める。
 ああ、人を想い慈しんで立ち上がる、愛おしきもの達が見える。宿場町より、石化鶏の討伐にと集い出て来た冒険者達――彼らの今日の出撃は、残念ながら徒労に終わってしまうけれど。
 彼らの命も、町も村も。何一つ失わずに、何事も起こらずに、この場を収めることが出来た。

「営みは、続いてゆく。……星祭りも、無事に迎えることが出来ようよ」

 今は悪霊と鳴り果てても、生きる人を慈しみ見守る優しき竜神であった多摘。
 その温かな呟きは空へと溶ける。――やがて陽が傾き闇に染まれば、今宵大粒の星が瞬く空へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『星降る夜に』

POW   :    流れる星々を楽しむ。

SPD   :    望遠鏡で覗いてみる。

WIZ   :    流星に祈りを捧げる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●小さな涙、大粒の星
 ――戦いを終えて、夜。草原を東に抜ければ、やや高台、山林に囲まれた位置にひっそりとその村はあった。
 カガイの村――古くから周辺地域で『星の村』と呼ばれるそこは、住む民もそう多くない、静かで穏やかな村である。
 しかし、今日はいつもと趣が異なっていた。

「――すげぇよな! ありゃかなりの熟練冒険者達だぜ! ツイてたよなぁ」
「そうだね。僕達だけじゃあの鶏をあの数全部はちょっと無理だったかも……」
「そう自信なさげに言わないの。……作戦会議の時は、アンタもちょっとカッコ良かったよ?」
「ガハハ! 労働の後の酒は美味いが、みんな無事で呑み交わせる以上の幸せはねぇってな! さぁ乾杯だ、乾杯!!」

 村の中心にある円形の広場。中央に大きな焚火を配し、夜闇の中にも煌々と明るいそこには今日、無数の冒険者と村人達の笑顔があった。
 『星の村』の『星祭り』――広場には様々な料理や飲料、酒を振舞う屋台が並び、それらを手に入れた人々が用意されたテーブル席や地べたにも自由に腰掛け賑やかに歓談している。
 人々の話題の中心は、カガイの村を襲うとして討伐隊が組まれた魔物を討伐隊の到着前に一掃した、謎の凄腕冒険者達についてだ。
 彼らが倒した大量の魔物鶏の肉は無償で振舞われているとあって、どうやら今宵の屋台料理の一番人気であるらしい。村特製のハーブをすり込んだ 肉厚の香草焼きは、肉本来の甘みを生かした素朴で優しい味わい。
 一方、油で揚げたものの方は酒を呑む大人に人気だ。パリッとした表面に対し中は柔らかくジューシーで、味付けに使われた香辛料がピリッと程よく利いている。希望があれば、辛みなしでも揚げてくれているようだ。
 勿論、他にも料理は様々。それらを思い思いに購入し、席について――人々賑わう村の中には、今宵、広場の大きな焚火以外に灯りと呼べるものはほぼない。
 村道を照らす最低限と、円形広場で飲食のために用意されたテーブル席のランタンくらいだ。これは年に一度、最も大きく見えるという星粒を楽しんでもらう為に極力灯りを落としているのだという。
 占術を伝えてまで今に残ったこの行事が、元々村の活性化を目的としたものであったのかは定かではない。しかし確かに今宵、村は賑わい、人々は笑っていた。
 そして、その歓談と笑顔の最中にふと見上げる空には――闇色のそこへ砕けたガラスか宝石でも散りばめたかの様に大粒の星が瞬いて、人々を見守っている。

「おじいちゃん! 火、すごいねぇ! 近くでみてもいい?」
「ああ、いいともロレッタ。だが一人では危ないから、じいちゃんと手を繋いで、だ。いいかい?」
「うん!! えへへ」

 ――そんな、星が見守る広場の中に、一人の少女の姿があった。
 齢は恐らく五~六歳くらい。ロレッタと呼ばれた赤毛の少女は、優しく微笑む老人に満面の笑みを向けると、老人と手を繋いで広場中央の焚火へと近付いていく。 
 背に癖無く落ちる長い赤毛は今、煌々と燃える火に照らされて穏やかな橙色。とても嬉しそうに炎を見上げる大きな金色の瞳は、キラキラと輝いている。

「おっきいねぇ……」 

 背丈も体もまだまだ小さな少女が感嘆の溜息を落とした時――その大きな瞳が映した炎の向こう、闇色の空に一筋、金色の光が奔った。

「……わぁっ!!」

 少女の上げた歓声に、広場中の人々が空を見上げて息を呑んだ。
 一筋、また一筋と。空を流れる光は次第にその数を増して、空いっぱいに散らばっていく。広場にはパチ、パチと爆ぜる薪が耳に優しく鳴るのみで、空に音など一つもないのに――何故だか、キラキラと星流れる美しい音色が聞こえる気がした。
 零れ、降る様な流星群――届くはずもないのだけれど、思わず手を伸ばす人があるのは、流れる粒の一つ一つがあまりに大きいからだろう。

「……始まったな。今年も凄ぇもんだ」
「これは……綺麗ですね、初めてみましたが……はるばる来た甲斐がありました」
「ハハッ、星見酒とは洒落たもんだ! さぁもう一度乾杯だ、乾杯!!」
「さっきからそればっかりじゃない。……ふふ、でもそうね、私も乾杯」

 感嘆は次第に笑顔と歓声、歓談の声へと変わる。――この賑わいの影に、オブリビオン討伐という猟兵達の活躍があったことを知る人はいないけれど。
 それでも、密かに守られたからこそ人々は笑っている。
 カガイの村の星祭り――賑やかで温かな人の営みと、眩き光の空の祭典は、今正に始まったばかりだ。
黒鵺・瑞樹
アドリブOK
POW

香草焼きと揚げ物はもちろん、他食事の類は伽羅と陸奥も食べるだろうから大目に。
特に陸奥は普段は成猫サイズだが見た目にそぐわず食べるし。
もちろん酒も貰うがこれは自分用。
呑兵衛ではあるけど絡まれるのも苦手だし、なにより自分が絡み酒するのも嫌。二匹もいるから少し離れるような場所で星見酒。
この世界だとこの見目で酒飲んでもあんまり絡まれにくいのがいい。UDCだと法整備しっかりしてる分、年齢確認ちゃんとしてるし(思い出し苦笑い)

しかしすごい流星群。
流れ星に願いをとは言うけれど、願いをかけた星をその手にしたら…願いは叶うんだろうか?
それとも流れるままにした方が叶うんだろうか。



「待たせたな、伽羅」

 円形広場、賑わいから少し離れた一角――空に水竜・伽羅が待つそこへと到って、黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は見上げる顔を笑みに緩めた。
 両手の大きな木皿の上に、一人分とは思えぬ量の屋台料理を積み上げて。友の分も、と伝えれば給仕に遠慮する屋台はなく、むしろ大盤振る舞いされたのだ。

「冷めない内に食べよう。……伽羅、陸奥は?」

 空から降りて来る伽羅は、瑞樹の言葉に身体を捻ってくるりと回転して見せた。するとその背中には、しがみ付いて楽しそうにクルクルと鳴く小さな白虎・陸奥の姿。
 幼い陸奥を、背に乗せ見ていてくれたのだ――察して料理を置いた瑞樹は、感謝を告げてそっと伽羅の黒鱗を撫でた。

「ありがとな、伽羅。陸奥も今日はお疲れ様。メシにしよう」

 料理を並べた席へ着く瑞樹につられて、二匹は地上へふわりと降りる。「いただきます」と瑞樹が言えば、言葉の代わりにぺこりと頭を下げ嬉しそうに喰らい付いた。

「多めに貰って来たけど、足りるか? 特に陸奥は見た目にそぐわず食べるからな……」

 普段は成猫サイズの陸奥だが、日頃からその食欲は体格に見合わず旺盛だ。一方の伽羅はといえば、竜たるその大きな口があまり咀嚼に向かないのか、口に入れたものをぐいぐいとあっという間に飲み干していく。
 それでも肉はやはり格別なのか、今日共に討伐した魔物鶏の香草焼きには二匹とも目を輝かせていた。厚い肉を噛み切ろうとガジガジ齧る陸奥は解りやすいが、伽羅も心なしか咀嚼がいつもより多い気がして。
 くす、と小さく笑んだ瑞樹が、一人木製のカップへ注ぐは酒だ。

(「この世界だと、この見目で酒飲んでもあんまり絡まれにくいのがいい。……UDCだと法整備しっかりしてる分、年齢確認ちゃんとされるし」)

 齢あとひと月もせず二六になろうというのに、見た目は十代。故に酒を買うにも確認の入った日のことを思い出し――苦笑いしながら瑞樹はカップの中の酒を呷る。

(「――……果実酒か? 飲みやすいけど、喉に来る強さだ」)

 地酒と聞いたそれは、果実の優しい甘さが程よく、いくらでも飲めそうだ。しかし、程なく喉に熱さを感じる辺り、酒としての強さは中々だろう。
 そして呑兵衛の瑞樹だが、酔いを理由に絡まれるのは得意ではないし、まして自分が絡み酒をするのも当然嫌で。
 今夜はゆっくりと呑んで、しかし程々にしておこうと――己に言い聞かせてまた呷ると、瞬間見上げた視界を埋め尽くすは、大粒の星が煌く夜空。

「……すごい流星群だ」

 呟く瑞樹の瞳が追うは、瞬く大粒の星達の中を駆け抜けていく流星たちだ。自ら強く光放って行く路を照らす様は力強くて、手を伸ばせば掴めそうに大きくて――そんな思考の最中にふと、流星に纏わる逸話を思い出せば瑞樹はふ、と小さく笑った。

「流れ星に願いをとは言うけれど、願いをかけた星をその手にしたら、願いは叶うんだろうか? ……それとも流れるままにした方が叶うんだろうか」

 手に掴める筈もない。けれど――手に持つ酒の水面にも映る眩き今日の星を見つめると、摑まえたとでも言いたげに、瑞樹はそれを飲み干した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
ヴァルダ(f00048)と

少女と祖父の互いを想う姿
討伐隊の明るい声音
少しでも、誰かの役に立てたこと
心から、幸せに思う

星たちが降りてくる
遠い存在と──近づけない存在と、思っていたのに
憧れの存在は、今日、殊更美しい

ヴァルダのかあさまは、素敵なことをご存じなんだね
そっか、あんなに美しい星でも地上に焦がれることがあるんだ
その姿を見せてくれるだけでも充分だけど、願いまで叶えてくれるなら

ヴァルダは何を願う?
口が緩むかもしれない
美しい竜たちと共に戦う勇壮なるキミと
ともだちになれたことが、嬉しくて
少しだけ、誇りたくて

僕はもう一度、この星空が見たいな
…これってちょっとずるいかな

星を間近に感じる空の旅
次もきっと!


ヴァルダ・イシルドゥア
ヴェルさま(f05027)と
よかった、無事におじいさまと会わせて差し上げられて
そらを仰ぐ人々もみな笑顔で
自分たちがその架け橋になれた事が誇らしかった

朝露を葉が弾くように
満ちて、溢れて
零れ落ちる星の雫が
ひとつ、ふたつ……すごいわ、こんなに!

ヴェルさま、ご存知ですか?
大地に焦がれ、そらを飛び出した星にねがいを告げれば
近付く距離の分だけ届く声を聞いて
ひとつだけ叶えてくれるのだとか
うふふ、これは母さまに教わったのです

私のおねがいは、もう叶ってしまっていて
『おともだちがほしいです』と
……まあ、もう一度?
それなら……ふふ!

星あかりがそらを覆う夜
また、このカガイへ訪れましょう
――今度は、そらの旅路で以って!



「ひとつ、ふたつ……すごいわ、こんなに!」

 それは、まるで朝露を葉が弾くように。闇色の空に光満たして、溢れて、零れ落ちる星の雫を柔い暁の瞳で追いかけ、ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)は感嘆の声を上げた。
 常控えめなヴァルダだが、突如湧き上がった感動には思わず体が動いたのだろう――その白い手がきゅっと掴んだのは、この感動を共有したい、隣に立つ友人の袖布。
 見上げる丸く見開かれた琥珀の瞳が、天上の光を映して輝く――共に空仰ぐヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)。

「これは……本当に凄いね、ヴァルダ。星たちが、降りて来る……」

 遠い、近づけない存在と――そう思っていたのに。呟くヴェルが見上げる今日の星たちは随分と友好的なようだ。探す必要もない程無数、自ら此方へ手を伸ばすかの如くぐんぐんと近付いてくる。
 憧れの存在。大粒で瞬く星たちは――今日、殊更美しい。

「ねぇおじいちゃん、おほしさま、こんなにいっぱい落ちたらなくなっちゃわないかな?」
「心配かい? なら、また来年もってお願いしてごらん、ロレッタ。お星様はきっと会いに来てくださるよ」

 ふと、届いた声にヴェルが見上げる視線を落とせば、そこには長い赤毛の少女と、隣に屈んで少女と同じ目の高さから空を見上げる老人の姿があった。
 孫に星を見せたかった祖父と、祖父を救うため不慣れな酒場へ駆け込んだ少女ロレッタ――幸せな時を過ごす二人の様子は、どうやら広場中の冒険者達に見守られているようだ。
 報酬は皆無と言っていい。しかし少女の切なる願いを叶えんとした強く優しき冒険者達。今は星に酒にと賑わう彼らが、ロレッタの声に空から下ろし向ける視線はとても穏やかで温かい。

(「少女と祖父の互いを想う姿、討伐隊の明るい声音も。……少しでも、誰かの役に立てたこと、心から、幸せに思う」)

 老人と少女の想い、そして応えようとした温かな人達を救えて良かった――そう、ヴェルが微笑んでそっと瞳を伏せた時。

「……よかった、無事におじいさまと会わせて差し上げられて。そらを仰ぐ人々も、みな笑顔で」

 全く同じ事を考えていたのだと、驚いて顔上げた先には広場を優しく見つめるヴァルダの横顔があった。多くを護り抜いて、迎えた今宵――自分たちがその架け橋になれた事が誇らしいと、ヴァルダは誰よりも幸せそうな花咲く笑みを美しい面に湛えている。
 今宵の星よりも眩い笑顔――それはやがて、自分を見つめる視線に気付いて嬉しそうにヴェルへと向けられた。

「――ヴェルさま、ご存知ですか? 大地に焦がれ、そらを飛び出した星にねがいを告げれば、近付く距離の分だけ届く声を聞いて、ひとつだけ叶えてくれるのだとか」

 それは、様々な世界で語り継がれる星の逸話。流れる星へ願いをかける――伝わり方こそ様々だが、古来より空に瞬く星々に、人は様々な物語を思い描き、祈りを重ね伝えてきた。
 ヴァルダが語ったのも、そのひとつ。その由来を、ヴァルダは胸に手を合わせてとても嬉しそうに語った。

「うふふ、これは母さまに教わったのです」
「ヴァルダのかあさまは、素敵なことをご存じなんだね。……そっか、あんなに美しい星でも地上に焦がれることがあるんだ……」

 記憶愛おしむ様に語るヴァルダが、微笑ましくてヴェルは笑むと、もう一度空を仰いだ。
 無数に降り注ぐ今日の星たち。光強く、夜空に存在を主張するようでありながら流れては消えゆくその姿は、このカガイの村に伝わる占術によって割り出された、今宵だけ見せる勇姿だという。
 その姿を見せてくれただけでも、ヴェルには充分だったけれど――友と思う少女の言葉に、少しだけ欲が出る。

「……ヴァルダは? ヴァルダなら何を願う?」
「私ですか?」

 一瞬過ったそれを振り切る様に、ヴェルはヴァルダへと問い掛けた。こんなに綺麗な星空に願うには、ちょっと狡い自分の願い――語るには少し恥ずかしくも思えたから、先にヴァルダの願いも聞いてみたくて。
 悩ませてしまうかな、なんて思いも少しだけあったけれど。しかしヴァルダは少しだけ照れた様な笑みを浮かべると、ヴェルが予想だにしなかった嬉しい答えを見上げる空へと解き放つ。

「私のおねがいは、実はもう叶ってしまっていて。……『おともだちがほしいです』と」
「ともだち……」

 それは、あまりにも予想の外の答えであったから。復唱するように呟いたヴェルに、ヴァルダは気恥ずかしそうに頬を赤くして俯いた。
 ヴェルもまた、照れが伝染したかの様に僅かに頬を赤く染める。しかし緩む口元を自覚すると、何とか誤魔化そうとして慌てて左手で口を覆った。
 美しい竜たちと共に戦う、勇壮なる少女ヴァルダ――戦い終えた今はとかく愛らしい様子の彼女が、自分をともだちだと言ってくれたこと、ともだちになれたこと、それがとても嬉しくて。
 ――少しだけ、誇りたくて。だからヴェルは、一度隠した自分の願いを友にならと打ち明ける。

「……ヴァルダ。僕はもう一度、この星空が見たいな」

 少しだけ、告げる声音には照れが滲んでいたから。顔を上げたヴァルダの瞳に、まだほんの少し頬の赤いヴェルの笑みが映り込む。

「……これってちょっとずるいかな」
「まあ、もう一度? それなら……ふふ!」

 気恥ずかしいのはお互い様。だけど、自分が告げた『ともだち』と否定せず、自らも打ち明けてくれたヴェルの願いをきっと叶えてあげたくて――ヴァルダは薔薇色に染まったままの頬を柔らかく緩めると、少しだけ大胆に、流れ星へ向け願いを捧げる。

「星あかりがそらを覆う夜、また、このカガイへ訪れましょう! ――今度は、そらの旅路で以って!」

 叶えてあげたい、なんて思いながら、それはもう既に自分の願いになっていた。きっとまた一緒にこの星空を見上げ、この星空へと旅立とう、と――ヴァルダにしては張った声に思わず目を見開いたヴェルは、しかし重なる願いが嬉しくて、二度目の星空を決意する。

「そうだね、ヴァルダ――次もきっと!」

 思い描くは、今日よりもっと星を間近に感じる空の旅。
 また、きっと一緒にと――二人分の強い願いに、新たに生まれた大粒の星が、頷く様に流れて消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水鏡・多摘
これにて危機は去った。
そしてこれから星祭りか、ふむ。
成れ果てた我には少々眩し過ぎるが少しばかりひとを見、空気に身を浸すのも悪くはないじゃろう。
どこでも人々は営み、平穏に過ごす。今は亡きあの地を思い出しながら。

とはいうものの少々見た目が特徴的過ぎるか…?
猟兵は大丈夫とは聞くが少々恐る恐る祭を歩く。
特に問題ないと実感出来たら酒と香草焼きを頂きつつゆっくりと祭の雰囲気を楽しむ。
悪霊になる前に在った地での人々と祭を思い出しながら静かに星を見上げ、その美しさについ見惚れてしまう。
ロレッタと言う少女の声を聞けば祖父との楽しげな様子に護ったものを実感したり。
矢張り人々はいい、そう思う。

※アドリブ絡み等お任せ



「おじいちゃん! ねぇ、いっしょに踊ろう!!」

 空に光駆ける円形広場中央の焚火の前で、赤毛の少女が老人の両手を取ってくるくると楽しそうに踊り出す。その平和な光景に、護ったものを実感し――水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は自らも笑むと、眼光鋭き竜眼を緩め、穏やかに視線を辺りへ巡らせた。

(「危機は去った。皆いい笑顔じゃ。……どこでも人々は営み、平穏に過ごす」)

 その時、多摘の翠の竜眼の奥に僅かな寂しさと哀しみが過ったのは、今日の人々が浮かべる笑顔が在りし日の愛しき面影達に重なったからだ。

(「……そうじゃ、かの郷に生きた愛し子達も。こうして笑って、時には泣き、哀しみ、喜んではまた笑っていた」)

 嘗て多摘が失ってしまったもの。護れなかったと後悔は心奥に今も複雑に根を張って、取り戻せないと識っていてもなお胸焦がすほどに愛おしい。
 今眼前で笑う彼らが、そんな愛し子達と違う人々であるとは始めから知れたことだ。だけど、重なる。人の営み。互いを想い、苦難を分かち合って立ち向かい、乗り越えようとする人の性――。
 その温かさを、多摘は愛した竜神であったから。

(「成れ果てた我には少々眩し過ぎるが、……もう少しばかり」)

 その胸を温める懐かしさにもう少し浸りたくて、多摘はゆるりと歩き出す。
 特徴的な竜の姿。猟兵は大丈夫と聞くものの、人と掛け離れた己が容姿には幾分不安も抱きつつ。最初は恐る恐る進んだが、出店並ぶ一角へ到ればその不安は吹き飛んだ。

「あっ、おにーさん呑めそうな顔してんね。この村の地酒。どう?」
「此方はつまみにいかがですか? 噂の凄腕冒険者達が倒した魔物の肉なんですよ」
「おっと。つまみってんなら兄さんも聞くかい? 今日俺が草原で出会った凄腕の冒険者達の話を! ……ん? アンタもしかしてじいさんか? へぇ、カッコいいナリしてんねぇ!」

 誰もかれもが種族の違いなど気にも留めずに笑顔で声を掛けて来る。安心して、同時に嬉しく思えた多摘は笑顔でその輪に加わった。
 調子よく応じていたら、今宵の祭りの戦利品は抱える程になっていたけれど。噛む程肉汁溢れる鶏の香草焼きを頬張り、冒険者達と酒を注ぎ合う瞬間はどうしようもなく楽しくて。
 ああ、やはり人とは、そして人が生む祭りとはこんなにも楽しいものか。嘗ての愛し子達と、全く同じではないけれど――矢張り人々はいい、と、浮き立つ心に従って、多摘はなみなみと注がれた酒を、語り部の声を肴にぐい、と一息に呷った。
 瞬間、見上げた視界に天いっぱいの星空が映る。
 空に戴く無数の光粒は、一つ一つがとても大きくて――そして闇夜に留まるそれらの間を、無数の光芒が駆け抜けては消えていく。
 賑わいの最中に身を置きながら、しかし見惚れるその一瞬、多摘の耳から全ての音が遠のいた。

(「――ああ、美しいのう」)

 星空見上げ、微笑む多摘は今は悪霊。
 しかしこの一時浮かべる笑みは、今宵の星空と人々の在り方を美しいと慈しむ竜神のものに違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユウイ・アイルヴェーム
皆様の心に、星が映る。光が落ちて、流れる
そう、これでいいのです

ただ、私がどこへ行くべきなのか分からないだけなのです
食べる必要はない体なのですし、もっと星の近くへ行くべきなのでしょうか
人の心を見てみたいのなら、きっと皆様の近くへ行くべきなのですが
…なぜか、広場の音が聞こえる、光が見えるここから動けないのです
星はきらきらと輝いていて、でも、あちらも気になって。どちらつかず、ですね
それでも、私を導く星がたくさん増えて、選ばなければならないことが増えたことは、いやではないのです

それでも星空は温かくて、皆様は喜びの中にあるのなら
少しでもそのお役に立てたのなら
ここへ来てよかったと、思ってもよいのでしょう



 無数の星が煌いている。夜空に、見上げる人の瞳に、そして星映した人の心に。
 星空に沸き、今日の強き冒険者の噂に沸き、祭りに沸く人々を――ユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)はひとり、広場の片隅から見つめている。
 そこは、辛うじて広場の中と言えるだろうか。あと数歩下がったならば広場を出て、暗がりの村の居住区に入る。
 星灯りだけを堪能するための、灯り乏しい静かな場所――しかし何故だかユウイは今、それ以上広場から離れることが出来なかった。

(「皆様の心に、星が映る。光が落ちて、流れる。……そう、これでいいのです。……いいのです、けれど……」)

 人につくられた人形として、生きる人を、命を守らんと。そのために今日この場に立ったユウイ。目的は叶い、守り切れて迎えた今、ユウイにはこの夜の自分の立ち位置が解らない。
 動かぬ足。どうやら伝達系が壊れてしまったわけではないと、それだけは確かめられたけれど。

(「ただ、私がどこへ行くべきなのか分からないだけなのです。食べる必要はない体なのですし、もっと星の近くへ行くべきなのでしょうか」)

 手を引く人がいたならば、それに従い行くだけだった。だが、今はひとり。行く先は自分で選ばなければならなくて――そんなユウイが硝子の様な澄んだ温み色の瞳で見るは、先ず星空、そして明るき広場の灯火。
 中央の大きな焚火ではなく――その炎が明るく照らす、生きる人々の笑顔だ。

(「人の心を見てみたいのなら、きっと皆様の近くへ行くべきなのです。ですが……」)

 判断が、出来なかった。星を見るならば暗がりの居住区の方がはっきりと見える筈で、人々の心に触れたいならば広場の中心へ踏み込むべきだ。分かっているのに――ユウイは何故か、広場の音や光が届き、暗がりほど明瞭ではないながら星が見えるこの場所から動けない。
 これではまるで――迷子の様だ。

(「星はきらきらと輝いていて、でも、あちらも気になって、……どちらつかず、ですね」)

 それでも、ユウイは決して沈んだりしてはいなかった。今、彼女の胸の内を満たすのは、悲観でも、困惑でもなく――何故だか、ぽかぽかとあたたかな熱で。
 人知れぬ場所から、無数の笑顔と星々を見守る顔に笑みが浮かんでいたことを、彼女は果たして自覚していたのだろうか。

(「私を導く星がたくさん増えて、選ばなければならないことが増えたことは、いやではないのです」)

 やがてその場から動くことを諦めたユウイの足は、いとも簡単に動き出し、円形広場を縁取る大きな丸石、その一つへと腰掛けた。
 後ろに両手をつき空を仰げば、どんな光も透く白い髪がぱさりと石の上へ散らばるけれど。汚れてしまうとは考えもせず、ただユウイは星を見つめて今日の光景を自身の記憶領域へと焼き付ける。
 空に瞬くは大粒の星。降る様に流れる銀の光も。他では見られないという光景を具に見つめる間にも――絶えず人の賑わいが、耳を優しく擽っている。
 今宵星空の下に咲くあの無数の命の笑顔を、今日、ユウイは守ったのだ。

(「どちらつかずのわたしですが、それでも星空は温かくて、皆様は喜びの中にあるのなら。少しでも、そのお役に立てたのなら」)

 「此処へ来てよかった」「守れてよかった」と――胸に込み上げ、温めるものの正体がユウイ自身の心であると、誰かが隣に在ったのならば、きっと教えてくれただろう。
 だって、星を見上げるユウイの顔には――「嬉しい」と言わずとも伝わる様な、情持つ人と同じ笑顔が、柔らかく咲いていたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クリストフ・ポー
クラリス(f10090)と一緒

振舞われる料理はどれも新鮮な素材の味を活かす料理だから
一通り貰ってクラリスを迎え、労ってあげよう
さぁ、クラリスはどれにする?

祖父と孫娘に会ったら
僕は祖父に
ご招待ありがとう、支え合っている良い村だねと話しかける
うん?構わないよ、クラリス
料理はまた貰ってくればいいんだしさ♪
そう笑って料理を受け渡す

新しい料理を貰ったら
焚火から程良く離れた場所で二人で並んで食事にしよう
スパイシーな揚げ鶏も上々の美味しさだよ!

降る様な星空も地上の命も
サイクルは違っても
滔々と流れ巡ってゆくね
そうして僕等は日々を生きている

寝入った娘を膝に抱き告げた誕生日おめでとう
朝食にはオムライスを作るよ


クラリス・ポー
クリストフ義母さま(f02167)と一緒

わぁ、お料理貰ってきてくださったんですね!
香草焼きも、辛みなしの揚げ鶏も美味しそうで
目移りします…

ロレッタちゃんと眼があったら
こんばんわのご挨拶をして
良かったら、お薦めを教えてくださいニャ!とお願いしてみます
ロレッタちゃんとおじいさんもお食事がまだなら
義母さま、お礼にお薦めしてくれた料理を差し上げてもいいですか?
…ありがとうございます

命が糧として受け継がれていくことも
分け合って温かい気持ちになれることも
人々の笑顔を星たちが変らぬ静けさで見守っていることも
とても嬉しい、幸せです
尻尾も揺れます

お料理をお義母さまといただいて
お腹が満ちたらすやすや
おやすみなさい



「さぁ、クラリスはどれにする?」
「わぁっ、義母さま、お料理貰ってきてくださったんですね!」

 広場の中央、一際明るい炎の足元。にこりと笑んで迎えてくれた少年の様な出で立ちのクリストフ・ポー(美食家・f02167)へと駆け寄って、クラリス・ポー(ケットシーのクレリック・f10090)は彼女が抱える無数の料理に歓声を上げた。

「どれも新鮮な素材の味を活かす料理だったから、好きだろうと思ってね。一通り貰って来たんだ」
「香草焼きも、辛みなしの揚げ鶏も美味しそうで、目移りします……」

 今日の戦いの労いにと、クリストフの両手の木皿は屋台料理を全制覇していたが――どうやら正解だった様だ。
 見える様に低く差し出された皿の上を嬉しそうに行ったり来たりするクラリスの大きな金瞳は、クリストフの背後の炎を映して今は柔らかなオレンジ色だ。爛々としてはいるけれど、その奥にはほんの少しだけ疲れも見えて――まだ戦いの報告こそ聞いていないが、いつだって一生懸命なクラリスのこと、さぞ頑張ったに違いない。
 察したクリストフは、すい、と下げた姿勢を戻すと、赤く光る茶眼を柔く緩め、出来るだけ早く労うべくクラリスに移動を促した。

「さあ、折角の料理が冷めてしまう前に席に着こう」
「はいっ!!」

 笑顔で答えたクラリスは、クリストフの持つ皿の一つを請け負おうと手を伸ばす。しかし、いいから、と返した明るい笑顔に、義母の優しい意図を察して――ふふ、と小さくはにかんだのは、とても嬉しかったからだ。
 優しさが、何だかくすぐったい――笑うその時、ふと自分よりは幾分高い、しかし随分低い位置からの誰かの視線に気が付いた。
 くるりと振り返ってみれば、そこには老人と手をつなぐ長い赤毛の小さな少女。出で立ちから直ぐに解った――彼女こそ、酒場へ駆け込み涙したという、幼き少女ロレッタだ。

「こんばんは、ロレッタちゃん!」
「ひゃっ」

 きゅっとクリストフの外套の裾を掴んで前行くその歩みを止めると、クラリスは少女へ近付き、にっこり笑んでお辞儀をした。
 しかし、挨拶受けたロレッタは、頬を赤らめぴゅっと手繋ぐ老人の後ろへ隠れてしまう。行ったこともない酒場へ単身突撃してみせた辺り、物怖じしない人懐こい子と思ったのだが――しかし老人の足からひょこりと顔を出した少女は、もじもじと恥ずかしそうにしながらもクラリスをとても気にしていて。

「これ、ロレッタ。ご挨拶は?」
「こ、こんばんは……」

 老人に窘められて挨拶を返した少女は、声にぴくりと動いたクラリスのケットシーたる猫耳に、金瞳を大きく見開いてキラキラと輝かせる。幼子らしいその様子がいじらしくて可愛くて――クラリスは更に笑みを深めると、再度クリストフにお皿を乞うて、ロレッタの前に差し出した。

「ふふ、ねぇロレッタちゃん。良かったら、今日のお料理のお薦めを教えてくださいニャ!」

 明るく語り掛けるその声は、いかにもお姉さんといった響き。ロレッタよりも低い視線なのに、安心誘う声での問いにはロレッタも照れを忘れて「ええとね」と料理を選び始める。
 それを更に穏やかに見守るのは彼女の祖父――クラリスへも優しい視線を向ける彼へと、クリストフは感謝を込めて声を掛けた。

「今日はご招待ありがとう。……此処は、支え合っている良い村だね」
「そう思ってくれるかい? ありがとう。楽しんでいっておくれ」

 この穏やかな語らいは、暫しの時続いた後、幾つかの料理を選んだロレッタによって遮られた。
 目の前に並んだ料理の匂いに、ぐう、と小さく鳴ったお腹――やはりとても幼子らしい素直な少女の反応には、クラリスもクリストフも彼女の祖父も顔を見合わせ、声立てて笑うしかなくて。

「あの、義母さま。お礼にお薦めしてくれた料理を差し上げてもいいですか?」
「うん? 構わないよ、クラリス。料理はまた貰ってくればいいんだしさ♪」
「……ありがとうございます」

 選んだくらいだ、きっと好きに違いないと。少女のお腹を満たすべく問うたクラリスへ、クリストフは勿論とばかり頷いた。
 二つある木皿から、クラリスが少女の選んだ料理だけを片方の木皿にまとめると、クリストフはそれを受け取り、感謝を告げる少女の祖父へと手渡した。

「ありがとう、おねえちゃんたち!」

 感謝の笑顔を咲かせてばいばい、と手を振るロレッタは、祖父に手を引かれ去って行く。それを手と共にふよふよと猫尾揺らして嬉しそうに見送っている義娘を見つめて――クリストフは、そのふかふかの頭へそっと手を伸ばして撫でた。
 他の誰が知らないとしても。平和で、穏やかな今の光景が、クラリス達の奮闘によって齎されたものだと知っているから。

「……降る様な星空も地上の命も、サイクルは違っても、滔々と流れ巡ってゆくね。そうして僕等は日々を生きている」

 撫でる手と穏やかに降る声に顔を上げたクラリスは、見上げるクリストフの微笑みの向こうに、闇夜に瞬く幾つもの光を見た。
 カガイの村の大粒の星。流れる星も美しいけれど、空に留まりチカチカと時に強く瞬くそれは、地上に生きる人々を見守る様に温かい。
 そう、それはまるで、大好きな義母の瞳の様だと――思った時、ふと。クラリスは、赤く光るクリストフの瞳が自分の尾を追い掛けているのに気が付いて。
 ふふ、とまた小さく笑って、クラリスは自らも想いを口にする。

「命が糧として受け継がれていくことも、分け合って温かい気持ちになれることも、人々の笑顔を星たちが変らぬ静けさで見守っていることも。とても嬉しい、幸せです。……尻尾も揺れます」

 最後に添えた言葉には、一瞬きょとんと目を丸くしたクリストフも、やがてクスリと苦笑して。そのまま一つになった木皿を抱えて今度は二人で屋台を巡ると、今度は三つに増えた木皿には山盛りの料理が乗っていた。
 湯気立つそれを、二人は並んで座って幸せそうに平らげていく。

「ふふ、スパイシーな揚げ鶏も上々の美味しさだよ! って、……おや」

 満天の星空の下、温かく美味しい食事にすっかり夢中になっていた。勿論、クラリスが語る今日の冒険をわくわくして聞いたり、他にも互いに色んな話を楽しく交わしていたけれど――気付けば隣に座っていた小さな義娘は、丸くなって寝入っていた。
 お腹が満たされ、疲れが一気に出たのだろう――すやすやと眠るその表情は、あどけなくてまだまだ幼い。
 冷えぬ様にと羽織っていた外套でふわりとその小さな体を包むと、そのままそっと膝の上へと抱き上げて、クリストフはふ、と微笑む。

「今日はよく頑張ったね、クラリス。目が覚めたら、朝食にはオムライスを作るよ」

 慈しむ様な、優しく密やかな声の最後に――少年の様なクリストフの唇から零れ落ちたのは、確かな義母としての、家族としての愛情の言葉。

「――誕生日おめでとう」

 優しい声が降った時、眠るクラリスの口元は――嬉しそうに微笑んで見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリエラ・レイクベア
【POW】テーブル席について御飯を頂きます

一仕事後の御飯は美味しい。
それが人助けの後ともなればなおさらですね!んん~♪
香草焼きを頂きつつ、飲み物を呷る。くは~!

一息ついて空を仰ぎ見る。
満天の星空、故郷の星空を眺めるのも好きでしたが、此処のは格別!
確かに、思わず手を伸ばしてしまいそうです。はぁ~

(星を掴む、私の夢もそんな物でしたが、しかし私には力がある。
空想ではなく、この手に星を掴むのです!その為にも頑張らないと!)

さて…まずは御飯御飯!沢山たべて明日もがんばろう!
追加のお肉と飲み物を貰いに席を立つ。



「んん~♪ 一仕事後の御飯は美味しいです!」

 賑わうテーブル席の一つで、マリエラ・レイクベア(駆けだしマリー・f26774)は感嘆の声を上げた。
 左手添えた膨れる頬の中に今日討伐した魔物鶏の香草焼きを咀嚼し、溢れる肉汁の甘みには蕩けそうな笑みが浮かぶ。
 そんなマリエラの着くテーブルには、目の前に置かれた肉厚の香草焼きの他に、丸パンに野菜とスパイスの利いた粗挽きソーセージを挟んだサンドイッチや、小さな丸野菜が沢山入った温かなスープ、フルーツジュースなど沢山の料理が並んでいて。

「それが人助けの後ともなればなおさらですね! んっ、……っくは~!!」

 やがて咀嚼からごくりと鶏肉を飲み込んだ口内へと、マリエラはさっぱりとした柑橘のフルーツジュースを流し込み飲み干して、幸せな溜息を空へ吐き出した。

「ふふ、いい飲みっぷりねぇ。こっちまで元気出ちゃうわ」
「あ、どうも~」

 不意に掛かった声に振り向けば、革のアーマーを身に着けた女性冒険者の姿。
 ひらりと笑顔で手を振って、通り過ぎて行くだけだけれど――知り合いである無いを問わず、テーブル席の周囲では多くの冒険者達が言葉を交わし、笑顔を交わして行き交っている。
 その様子も、歓談の声も心地よくて、御飯はどれも美味しくて――マリエラは満たされた気持ちで笑むと、今度は心落ち着かせる様に、ふー、とゆっくり息を吐いた。

(「良かったです。ちゃんと村を守れました!」)

 この平和な光景を、守り切ることが出来た――幾分誇らしい気持ちになって、嬉しそうに頬緩めると、マリエラは空を仰ぎ見る。
 そこには、満天の星空。故郷でも当たり前に見上げていた筈なのに、今日のそこには他の何処でも見たことのない、大きな大きな星粒達が居て。
 それらの隙間を埋めるかの様に、次々と光の線が降る様に流れ落ちては消えている。

「故郷の星空を眺めるのも好きでしたが、此処のは格別! 確かに、思わず手を伸ばしてしまいそうです。はぁ~……」

 三度目の溜息は、仰ぐあまりにも美しい星空へと感嘆の声乗せ溶けた。
 降る星が零れ落ちてきそうにも思えて、掴めるものでもないと知っていてもマリエラは空へ手を伸ばす。
 視界を自分の手の甲が遮るけれど、開いた指の隙間からは絶えず流れる星々が見える。やっぱり掴めそうに思えて咄嗟にぐっと手を握ると、その中は空の筈なのに、不思議と優しい熱を感じた。

(「星を掴む、私の夢もそんな物でしたが、しかし私には力がある。空想ではなく、この手に星を掴むのです!」)

 嘗て騎士に憧れ、騎士を夢見て故郷を飛び出したマリエラ。ただ憧れた、何も知らなかった少女は今、知識を得て、経験を積み――今日此処で笑う人々を守れるだけの力を得た。
 憧れはもう、空想し語るだけの夢物語では決してない。必ず実現して見せると――心に誓う、現実的な目標なのだ。

「……その為にも頑張らないと!」

 気合十分。ニッと笑んだマリエラは、今日の星に誓いを立てるとガタン! と椅子から立ち上がる。

「さて……まずは御飯御飯! 沢山たべて明日もがんばろう!」

 精をつけて、また明日から頑張るために。マリエラは空になった皿とカップを手に取ると、追加の肉と飲み物を貰いに屋台目指して歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルムル・ベリアクス
よかった……。村の皆を守れて。お祭りに集まった村人の楽しげな姿を見て安堵します。
早速、魔物鶏の肉を楽しむとしましょうか、アクシピター。
たっぷりの料理とエールを手に入れたら、屋根の上でゆったりと楽しむとしましょう。
賑やかな広場の様子と流星群を眺めつつ、鶏料理とお酒を楽しみます。
油で揚げた鶏は、香辛料の風味がエールとよく合いますね!幾らでも食べられそうです。
アクシピターは、山盛りの香草焼きを平らげていきます。影のような姿故、表情は分かりませんが……味わって食べている様子。アクシピター、今日は沢山働いてくれてありがとうございます。……え、もっと食べたいって?満天の星の下、宴はまだまだ続きそうです。



 両手の大きな木皿の上に、無数の料理と酒を乗せて。男――ルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)は暗がりの村居住区、或る屋根の上へと降り立った。

「感謝します、アクシピター。……早速、魔物鶏の肉を楽しむとしましょうか」

 緩く笑んで告げるルムルは、自身を背に乗せてここまで運んでくれた黒き大鷲を労う様にそっと撫でる。するとその手が離れた瞬間、アクシピターと呼ばれたそれは、人乗せるほどの大きさから野生の鷹らしいサイズへ縮んでいった。
 屋台にて手に入れてきた料理は、また行けば貰えこそするが此処に在る量は有限だ。今体を小さくしたのは、往復せずとも腹いっぱい食べるためのアクシピターの知恵だろうか――世界知識と千里眼を持つこの悪魔の先を読んだ行動には、ルムルも今日、幾度となく助けられた。
 だから、ルムルは微笑んで、山と積んだ鶏の香草焼きを感謝を込めて差し出した。

「どうぞ、約束の鶏肉です。……多めに、とは頼みましたが、まさかこんなに盛ってくださるとは」

 くつくつ、と小さく笑い出したルムルの脳裏に蘇るのは、屋台でこの香草焼きを注文した時のことだ。

「――オニーサン血色悪くない? 駄目よ、男はしっかり食べて稼がないと!」
「ほら、凄腕の冒険者達がばっさばっさ倒して置いてった鶏肉だよ! 食べたらオニーサンもあやかって逞しくなれるかもしれないよ?」
「まだまだ! 盛りが足りないっ!」

 女三人で姦しいとはよく言ったものだ。屋台に立っていた女性たちは、気圧されるルムルの皿にこれでもかと大量の鶏肉を積み上げていった。
 語る『凄腕の冒険者達』の一人がルムルであるとは知りもせず――しかし、屋台に訪れる誰にも等しく振る舞われる山積みの鶏肉と、交わされる人々の楽しそうな笑顔には、今宵の祭りを作らんとする活力が漲っていて。

(「よかった……村の皆を守れて」)

 安堵に赤き瞳を穏やかに細め、ルムルは口へと揚げ鶏肉を放り込む。
 これも今日討伐した鶏だ。噛んだ瞬間パリリと香ばしい食感ののち、じゅわっと甘い肉汁が溢れて口いっぱいに広がった。遅れて届く香辛料がピリッと舌を刺激すれば、食欲をそそるその風味には、次いで流し込む冷えたエールがまた格別に味わい深くて。

「これは……香辛料の風味がエールとよく合いますね! 幾らでも食べられそうです!」

 軽快に揚げ鶏肉を口へ放り込みながら、ルムルはアクシピターの様子はどうかと徐に視線を落とした。
 黙々と食べる大鷹の前、山盛りあった香草焼きは当然まだ山と在ったが、予想より遥かに早いスピードで皿から姿を消していた。影のような姿故に、味わう表情は解らないが――その減り様を見れば解る、大変口に合ったのだろう。
 この調子では早めにお代わりを追加せねばならないかもと、苦笑してルムルは今はやや遠く、屋台の在った広場を見遣る。
 明るく賑やかな広場からは、やや距離のあるこの場所までも笑う無数の人の声が響き届いて決して止まない。時折わぁっと高く歓声が上がれば、見上げる空が光に溢れて一際沢山の流星が落ちた。
 大粒の星――今宵この村だけの星の祭典は、ルムル達が護り抜いた人の笑顔と共にある。

「……アクシピター、今日は沢山働いてくれてありがとうございます」

 この光景が嬉しくて、そしてまた自分も楽しくて――ルムルは、助力をくれた今日の相棒へ今一度感謝を告げる。
 しかし、同時に視線を落とした時――つい先ほどまで鶏肉が山盛り存在していたアクシピターの皿は、綺麗に空になっていた。

「……え、もっと食べたいって?」

 足りない、とついっと手を突くアクシピターの嘴に、ルムルはやはり苦笑して、頷いたのち立ち上がる。
 満天の星の下――今宵の宴は、相棒の腹が満足するまでどうやら暫く続きそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

呉羽・伊織
【煌】
輝くは星々と笑顔のみ、と―さて、報酬は見事大儲け、万々歳の光景だな!
オマケに肉まで大盤振舞いとか、身も心も満たされるとはこのコトってか

いやまぁ、揃って平和と料理を噛み締めるに否やはないとも!
(ふと輝く星と、両隣を交互に見)…ああ、例え両手に野郎でも今は最高の気分だとも…!

冗談はさておき、聞きしに勝る光景だよな
あの子の歓声も尤もだ(少女の姿に安堵して)
ホントに一味も二味も違うなこりゃ―星も、肉もな!
舞台裏は誰知らずとも、最後にこうして幸い分かち合う一時が在ったなら、其が何より嬉しい事

ああ、誰もがこーして明るく笑って過ごして―幾星霜経ても絶えぬ輝きが続くよーに

幾度でも願い、幾度でも乾杯を!


千家・菊里
【煌】
待ち望んだこの一時、晴れて皆笑顔で迎えられ幸いですね
無事に守れた、心温まる平穏な光景と――そして勝ち取った心踊るお肉の宴を、目一杯腹一杯に満喫致しましょう

ふふ
清史郎さん、焼いても揚げても美味しそうですねあれ
いやぁ、両手に肉だなんて最高ですねぇ(笑顔で料理広げ)

ああ勿論、目で楽しむ事だって忘れてはいません
(眸輝かせる少女をそっと微笑ましく見守り――その視線を追い、更に笑みを深め)
――正しく絶景、ですね
他では味わえぬ大粒の星と、大盛の肉
そして楽しい仲間や明るい人々に囲まれた饗宴とは、何と贅沢な

此処にこうして星と笑顔が輝き続けるよう祈り、乾杯を

絶景と共に楽しむ歓談や乾杯は何度重ねても最高ですね


筧・清史郎
【煌】
憂いも全て払い、星祭りを平和に迎えられて何よりだ
満天の星の下で鮮やかに燃える炎、そして人々の笑顔
この風景を友と共に守れてよかったと、心から思う

そして一仕事の後の宴やご馳走はまた、一等楽しみだな(微笑み
ふふ、香草焼きも揚げ物も、勿論両方存分に頂こう、菊里
両手に肉や野郎も良いものだろう?伊織(くすりと

ロレッタのその姿見れば微笑み宿し、そっと見守るだけに
流れる星に少女の幸せを願おうか
ああ、確かに贅沢だな
沢山の美味な肉に、美しい流星群
あれだけ星が流れれば、願い事も沢山馳せられるな
数多の輝きに杯を掲げ、皆と乾杯を

アルノルト見かければ歩み寄り
彼ともお疲れ様と感謝の乾杯や雑談を
共に守った景色を楽しもう



「輝くは星々と笑顔のみ、――さて、報酬は見事大儲け、万々歳の光景だな!」

 詠う様に語る言葉は、どこか舞台の口上めいて。広場の一角に敷いた敷布の上にどかりと腰掛け満足気な笑みを浮かべる呉羽・伊織(翳・f03578)に、向かいに座り頷く筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)も笑みを零した。

「憂いも全て払い、星祭りを平和に迎えられて何よりだ。満天の星の下で鮮やかに燃える炎に、人々の笑顔――この風景を友と共に守れてよかったと、心から思う」

 心から、満たされていると――嬉しさを隠し切れない清史郎の様子には、隣で千家・菊里(隠逸花・f02716)も微笑む。労い込めて清史郎に屋台で借りた硝子のコップを手渡すと、とくり、と傾けた大瓶から白く濁った酒を注いだ。

「待ち望んだこの一時、晴れて皆笑顔で迎えられ幸いですね」
「オマケに肉まで大盤振舞いとか、身も心も満たされるとはこのコトってか!」

 はは、と声も高らかな笑みが絶えない伊織は、敷布の上に置かれたままの菊里のコップに酒を注ぐと、次いで自らのコップにも注いだ。どうやら今宵の友との宴の開宴を今か今かと待っている様子だが――しかし先急ぐ無粋はしない。
 男三人の手で運んだ、沢山の屋台料理。大きな木皿に乗ったそれらは、既に宴席に相応しく、食べ易い様に広げられていたけれど。

「一仕事の後の宴やご馳走はまた、一等楽しみだな」
「ええ。無事に守れた、心温まる平穏な光景と――そして勝ち取った心踊るお肉の宴を、目一杯腹一杯に満喫致しましょう」

 続いた清史郎と菊里の声――笑みと会話に花が咲くのは宴席始まっても同じであろうが、今はこの穏やかな空気を、もう少し味わって居たくて。
 浸る様に、伊織はそっと、艶めく赤瞳に瞼を落とす。

「ふふ。清史郎さん、焼いても揚げても美味しそうですねあれ。いやぁ、両手に肉だなんて最高ですねぇ」
「ふふ、香草焼きも揚げ物も、勿論両方存分に頂こう、菊里」

 ……しかし、二人の会話が料理、主に肉に偏って来た辺りで、伊織はすうと瞳を開いた。
 浸れない――これはどうやら早々に乾杯するが正しいと、伊織はすかさず酒で満たしたコップを手に取る。
 その様子に宴の開宴を感じ取った清史郎と菊里も、同じ様にコップを掲げた。

「今宵の勝利に――そして降る星空に! 乾杯!!」
「乾杯」
「ふふ、乾杯」

 三人ともの故郷の流儀に則って、一度目の乾杯にガラス打ち合う音は鳴らない。
 ぐい、と三人同時に呷った白い酒は、幾分とろりとした口当たりと舌に乗る仄かな甘みが少し故郷の濁酒に似ていた。ああ、美味い――満足気に伊織が笑めば、清史郎はくすりと小さくその口元で微笑う。

「――両手に肉や野郎も良いものだろう? 伊織」
「いやまぁ、揃って平和と料理を噛み締めるに否やはないとも!」

 思い掛けない清史郎の振りに、答える伊織の放った声は、少々上擦って辺りに響いた。
 咄嗟の反応を褒めて欲しい。そしてそのまま目前の二人を交互に見遣れば、菊里、清史郎、両者とも顔の造作は美しく、正しく眼福と言えるだろう。
 そして夜空。瞬く星は此処でしか見られないと言われる大粒。美しいものに囲まれて呑んだ酒は、当然ながら格別に美味いものだった。
 ――但し、共にいる美しい二人は花ではなく、両者ともが男である。

「……ああ、例え両手に野郎でも今は最高の気分だとも……!」

 震え、絞り出す様な声ののち、ぐい、と再び酒を呷って――しかしその伊織の一連の動きは勿論、宴席の愉快な戯れだ。自らの振りに見事に応えた伊織にはは、と声立てて笑った清史郎は、酒瓶傾け、伊織のコップに二杯目の酒を注いだ。
 勿論、早速鶏肉の香草焼きを頬張り幸せそうに笑う菊里のコップに、二杯目を注いでおくことも忘れない。

「……と、まあ冗談はさておき」

 注がれた二杯目を飲み干して、ふう、と一つ息を落とした伊織は、呟く声とくい、と自ら見上げる視線で友の視線を高き空へと促した。

「――聞きしに勝る光景だよな」

 先の冗談の最中にも、一度見上げた今日の空。ただ星空というだけであれば多くの世界で眺めることが叶うけれど、カガイの村で見上げるそれは、砕いたガラスか宝石でも散りばめた様な無数の光があまりにも強く大きくて、息を呑む程美しい。

「ああ勿論、目で楽しむ事だって忘れてはいません。……本当に、何て綺麗な……」

 それだけで、充分に美しいのに。ほう、と溜息交じりに菊里が呟いた次の瞬間、光の隙間を縫う様に流れた強く眩き光芒に、三人共が目を瞠った。

「――わぁっ!!」

 不意に幼い歓声が耳を擽れば、その歓声に相応しく、闇色の空を光の線が無数流れ落ちて行く。幾つも、幾つも、流れては消え、尚も流れて――これこそが、年に一度闇夜を照らす、星の村の星祭り。
 光降るその光景は、夜空から一時闇を奪い、美しき男達のかんばせをくっきりと明るく照らし出す。

「――正しく絶景、ですね」
「ああ。……あの子の歓声も尤もだ」

 ぽつり、と呟いた菊里に同意を示すと、伊織は視線を広場へ落として、そこに立つ小さな影に眼差しを柔く緩めた。
 何を見るかと清史郎と菊里も見遣れば、炎も高き広場中央に、老人と手を繋いで嬉しそうに空を見上げる一人の小さな少女が居た。逆光で分かりにくいが、猟兵の目ならば難なく見える、少女の長い髪は赤毛で、爛々と星見上げ輝く瞳は星光にも劣らぬ金色。
 間違いなく――彼女こそが今日多くの人の心を動かした、愛らしき少女ロレッタ。

「……流れる星に、少女の幸せを願おうか」

 ふ、と穏やかに微笑みを宿して、しかし清史郎は動かない。彼女に声を掛けるよりも、あの幸せそうな笑顔を、ただ穏やかに見守ろうと――不意に視線を菊里へ向ければ、気付いてにこりと返る笑みには同じ思いが浮かんでいて。
 菊里はそのまま――今一度少女を見ると、その視線を追い掛けて、更に柔く笑みを深める。

「他では味わえぬ大粒の星と、大盛の肉。そして楽しい仲間や明るい人々に囲まれた饗宴とは、――何と贅沢な」
「ああ、確かに贅沢だな。沢山の美味な肉に、美しい流星群……あれだけ星が流れれば、願い事も沢山馳せられるな」

 今一度、乾杯、と言いたげにコップを掲げた清史郎に、菊里と伊織も笑って応えた。交わす二度目の乾杯は――今度はこの世界の流儀で。
 カチン! とガラス合わせる高らかな音が鳴れば、ふはっ、と伊織は楽し気に笑う。

「ホントに一味も二味も違うなこりゃ――星も、肉もな!」

 また、一息にぐい、と酒を呷って。結果遂に空いてしまった酒瓶を一先ず敷布の隅に除け、清史郎は次の酒を取りに立った。
 温くなってしまわぬ様にと、氷を張った木樽に差しておいた果実酒――手を伸ばそうとしたその時、通り掛かった人影は、この世界によく馴染んだよく知る人のもので。

「――清史郎?」
「ああ、アルノルト。今回もお疲れ様だ」

 グリモア猟兵、アルノルト・クラヴリー(華烈・f12400)。戦いこそしなくとも、予知に転移と独自に動いた彼に労いの声を掛けると、清史郎はそうだ、と掴んだ酒を掲げて微笑み掛けた。

「アルノルトも、一緒にどうだ? 共に守った景色を、良ければ共に楽しもう」
「いいのか? 招かれても。……見るに、仲間との団欒だろう?」

 ちらりとアルノルトが宴席を見遣れば、気付いた菊里と伊織は笑顔で空いた席を勧める。清史郎も改めて笑顔で是非にと同席を勧めれば、アルノルトも笑顔で頷き、空いた場所へと腰掛けた。
 四つに増えたガラスのコップは、酒を変えるため新しく。三度目の乾杯の音頭は、立ち上がった菊里が取る。

「さあ、今回はアルノルトさんに合わせ、この世界流でよろしいでしょうか? ――此処にこうして星と笑顔が輝き続けるよう祈って」
「ああ、誰もがこーして明るく笑って過ごして――幾星霜経ても絶えぬ輝きが続くよーに!!」
「はは、伊織。まるで伊織が音頭を取ってるみたいだぞ?」
「ははっ、いーんだよ、清史郎!」

 三度目は多少酔いが回ったか、自由に言葉が飛び交って、締まらぬ様子にはなったけれど。再びカチン! とガラスのコップが高らかな音を立てれば、恐らくは林檎酒だろうか、透く金色の果実酒がぱしゃん、と心地よい音を立てて光溢れる空へと跳ねる。
 それに構わず――ぐい、とまた飲み下して口元を拭った伊織は、果実の芳醇な甘さにニッと笑みを深めると、グラスをコン! と敷布へと置き、清史郎へ言葉を続けた。

「――何度でもやりゃあいい! 何度でも願い、幾度でも乾杯を!」

 無数の魔物、そして無数のオブリビオンと繰り広げた猟兵達の今日の戦い。
 その舞台裏を例え誰も知らずとも、最後にこうして幸い分かち合う一時が在ったなら、それが何より嬉しい事と――幸福噛み締める彼らの宴席では、こののちも時間の許す限り幾度と、乾杯の声が響き渡る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フローズヴィトニル・ヒースハイデ
【野良犬】
アドリブ、マスタリング歓迎

_

…村人たちや、子どもたち、冒険者たちの笑顔に、僅か気が抜けた。これを人は『安堵』と呼ぶのだろう。
血に塗れ、泣いて、叫ぶ者は此処にはいない。

──誰も、傷つかなくてよかった。

そう思うのは、俺には赦されぬことだろう。
数多の戦場を駆け、蹂躙し
そしてオブリビオンを誘き出す為とは言え、無辜の鳥らを屠ったこの手が赤に塗れている俺には。
だが後悔は無い。それだけはしてはならない。


独り、輪から外れる。
広場から少し離れた場所にて、溜息

だが気配に気がついて振り向き
避けることも出来たが今夜は好きにさせた。
二人に、そうだな、と短い相槌を打つ。

──俺たちの背に、星が流れている。


ファング・ロー
【野良犬】で参加
「ロー」と名乗って過ごす
アドリブ等大歓迎

おー…どいつこいつも幸せに満ちてやがる
誰も怪我ァ、してねぇな?
ああ…それなら何よりだ
医者というのは、他者を治す事だけじゃない
他者が傷つかない事を確認する事が一番の安心だ

…連れの2人の使命と因果に比べりゃァ
どうも平和な願いと安心だが…

フレスベルグがヒースの口に肉を突っ込んだところをみると、思わず吹き出した

「おいおい、フレス坊
ヒースの口が裂けちまうぞ?
――だが、折角の賑わいだ
ありがてェ肉を、喰いながら
賑わいを見守ってやれ
それが狩りをした猟兵の務めでもあるだろ」

尻尾でヒースの背中を叩く
楽しめ、と

やってたら口に肉が
…わふ(もごもごっ)
ありがとよォ


ルフ・ジャナーフ
【野良犬】で参加
2人の前ではフレスベルグと名乗るよ
アドリブ、アレンジは大歓迎だからね

民の暮らしを守り、国を守ること
それが僕、僕たちの一族へ与えられた使命
なればこの賑やかさも…悪くはないね

星の軌跡を追えば、そこにはおじさん
……ヒース
何を後悔してるんだか、
僕には全く分からない
なぁに?その顔
口に肉を突っ込んでやろう
ねえ?今アンタ生きてる?
美味しいでしょ?生きてるんだよ

ワンちゃんのお口にも肉を入れてあげよう
…後方からの回復には多少助けて貰ったからね
ほら労いのお肉だよ、ロー
口開けて?ほらほらほら



「おー……どいつこいつも幸せに満ちてやがる」

 賑わいの広場、飛び交う声と笑顔の只中にて――横断せんと歩くファング・ロー(救牙・f27275)は、騒がしさにククッと喉を鳴らして笑う。
 銀紫の豊かな被毛を纏う大狼だ。本来、その姿は人の中では魔物か動物かと思われる所であろうが、猟兵である彼をそうと認識する者はいない。四つ足で歩いていても、掛かる声は「お兄さん、どう、一杯呑まない?」とか「美味い肉あるよ、持ってって!」といった、屋台に立つ商売人の逞しい言葉ばかりだ。
 何とも平和で、当たり前で――故に尊く、心地よい。

「うん、……悪くはないね」

 隣を行くルフ・ジャナーフ(翼供の王・f27276)も、ファングの言葉に共感示して大きな薄花色の瞳を緩く細める。表現する言葉こそ端的だが、人々を見つめる視線は見守る様な温かさを帯びておおらかだ。

「国を、民の暮らしを守ることが僕へ……僕たちの一族へ与えられた使命だ。なればこの賑やかさも悪くない」

 どこか達観した様子で語るルフの眼差しは、あまりにも大人びて凡そ16歳の少年のものとは思えない。
 彼がその背に年齢には不相応な程重い役を負っていることは、ファングとて把握している。だからこその表情であろうけれど――しかしファングは、同時に一つ理解もしていた。
 ルフは、少年なのだと。時にどんなに大人びて見えようとも――何気ない遣り取りの中で時折垣間見せる無邪気さこそが、彼の本質だと信じている。
 だから、ファングは言葉の重みを敢えて軽やかに受け止め、笑った。

「ああ。――誰も怪我ァ、してねぇな? ハハッ、何よりだ」
「失業しちゃう?」

 ――ほら。嬉しそうに笑うファングの視界に横からひょこりと顔を覗かせる今のルフは、ニヤリと悪戯を思い付いた子供の様な年相応の笑顔だ。
 大人をからかい笑う顔に、少年心が覗くから――ファングはどんな子にもそうするようにひょいをルフを足元から掬い上げると、背の上できょとんとするルフを「ばぁか」と笑いとばして見せた。

「医者なんてのはな、仕事がねぇのが一番なんだよ。本当はな」

 これは、ファングの信念だ。医者というのは、他者を治すだけが仕事ではない。他者が傷つかない事を確認する事こそが、重要にして一番の安心なのだと――ファング自身の益を度外視したその言葉は、聞き手によっては綺麗事と思われる内容だ。
 事実、人の上に立つ責を担うルフの耳に、それは酷く綺麗でまた遠いことの様に思えた。しかし、当たり前の様にそれを言ってのけるファングに――感じるのは少しの羨望、そしてこの男の真っ直ぐな本質への好感。

「――何それ。食いっぱぐれても知らないよ? おじさん」

 しかし、笑んだその口からは皮肉を零して。跨る大狼の背から降りることはせず、てしてし、と左肩から腕の代わりに映える白翼でファングの背を叩くルフを――少し賑わいを外れた後方から、男が一人見つめていた。

(「村人たち、子どもたち、冒険者たちは皆無事だった。……些か、気が抜けた」)

 賑わいの中に在る、人々は皆笑顔だ。共に戦ったルフとファングも――それを一線引いた遠くより見つめていたのはフローズヴィトニル・ヒースハイデ(涕溟・f27274)。
 同じ空間に立つというのに、男の周囲は広場の熱気が嘘の様に凜と冷たい空気を纏い、頭部に戴く本来鋭い筈の狼耳は静寂に満ちていた。

(「誰も、傷つかなくてよかった。――そう思うのは、俺には赦されぬことだろう」)

 血に塗れ、泣き叫ぶ者は此処にはいない。平和な世界には当たり前の光景である筈のそれが、戦場を居場所としてきたフローズヴィトニルには随分遠い。
 だから、感じた想いが『安堵』と呼ばれるものだと理解は出来ても――その感情を自分のものだと受け入れることは出来なくて。

(「赦される筈もない。数多の戦場を駆け、蹂躙し、そしてオブリビオンを誘き出す為とは言え無辜の鳥らを屠ったこの手が赤に塗れている俺には――」)

 男は、多くを傷付け生きて来た。そう在ることが必要だったのは事実で、そう在れと求められていたのも事実で、だからこそその在り方をフローズヴィトニルは決して否定はしていない。
 しかし、そう生きたからこそ思うのだ。血に塗れた我が身に、屠るために獲物を追う眼に、今を生きる人々の笑顔はやはりあまりにも眩く遠い――。

(「後悔は無い。……それだけはしてはならない」)

 悔いはない、しかし自分はこの温かな世界に相応しくない――だから敢えてルフとファングから離れて独りを選んだフローズヴィトニルは、誰にも気づかれぬ様にそっと広場の賑わいを辞した。
 輪を外れ、目指すは村の居住区に落ちる暗がり。灯り無き無色彩の世界こそが自分には相応しかろうと――普段のフローズヴィトニルならばこの時、離れて行く自分の背を絶えず視線が追っていたことにきっと気が付けた筈だった。
 気付けなかったのは、無意識抱く迷いのためか、それとも余裕の無さ故か。もう少しで広場を出ようという場所で、漸く落ち着いた心地がして男が溜息を落とした時――。

「……ヒース」

 聞き慣れた声が思いがけず近くから届いたことに、驚いてフローズヴィトニルは振り返る。真後ろだ。気配にすら気付けなかった――襲撃への警戒は要らない相手と、声に察してはいるけれど。
 
「……なぁに? その顔」

 瞬間――ズボッと。不満げな声と共に、口内へと強引に突き入れられたのは、酷く熱い鶏肉の塊。

「――ぶはっ! ……おいおい、フレス坊! それじゃヒースの口が裂けちまうぞ?」

 それは、はたから見れば、振り向いた男の美しい顔に似合わぬ愉快な光景であっただろう。事実、やや後方から近付いてくるファングは思わず噴き出し、笑いに腹を引き攣らせている。
 しかし、当事者たちに笑みは無い。長身故に、フローズヴィトニルが見下ろすそこに立っていたのは――薄花色の瞳を不満げに細めた少年・ルフ。

「ねえ? 今アンタ生きてる?」

 単刀直入なルフの問いに、フローズヴィトニルは答えられない。口を塞がれるからではない。呼吸し此処に立つ以上、生きていると、そう応えれば良いだけなのに――ルフの問う『生きる』は違うと、胸の内で何かが告げていたから。

「味解る? 美味しいでしょ? 生きてるんだよ」

 問いを重ねるルフの声が少々苛立った様に響いたのは、目の前の男の不器用さに事実苛立っていたからだ。戦場に立てば一騎当千、死角無き立ち回りで敵を薙ぎ払っていくというのに――その胸の内に独りで何を抱えているのか、何を後悔しているのか、ルフには全く分からない。
 もとより、この男が自分語りをすること自体稀なことではあるけれど。それでも――語られぬ故に解らぬながらも、ルフの目にも確かなことが一つある。
 事実として、この男は多くを傷付け生きて来たのだろう。……男自身の心までも。

「生きてるんだったら、何考えてんだか知らないけど素直に楽しめって言ってんの! こんな綺麗な空なのに、見上げもしないで溜息なんかついちゃってさ」

 笑え、とも、共に騒げ、ともルフは言わない。心を殺して戦いに生きてきたフローズヴィトニルに、恐らくそれは今は酷なことだろう。
 しかし、美味しいものを美味しいと味わい、綺麗なものを綺麗と感じる――心にその自由を許すことまで、否定するのは間違っていると。
 信じるがままに伝えた少年は、鶏肉が噛み切られたのを確認すると、手に持つ紙に包まれたそれをフローズヴィトニルの胸へ押し付け、居住区の暗がり目指して歩き出す。

「――折角の賑わいだ。ありがてェ肉を、喰いながら賑わいを見守ってやれ。……それが狩りをした猟兵の務めでもあるだろ」

 次いで横を抜けていくファングは、穏やかな笑みの中にそう語ると、ポン、とフローズヴィトニルの背を叩いた。
 最後に小さく「楽しめ」と。呟かれたその一言の、何と難しいことか――思いながらも、咀嚼した肉は噛む程熱い肉汁の旨味が口の中いっぱいに広がり、徐に視線を真上へ上げれば、男の満ち月色の瞳に星々の煌きが映り込んだ。
 その場に留まり瞬く星達も、急いて流れ行き消える星達も、それぞれの立ち位置で強い光を放っている。美しい、と、素直にそう感じた自分に驚いたフローズヴィトニルは――ふと、その光に今宵の祭りの賑わいに在る人々の笑顔を見た。
 あの光一つ一つを、あの生きて眩く咲く笑顔だとするなら――生きている筈の自分は、あの星光の様に絶えず命を燃やし続けているだろうか?

「――ほら! ワンちゃんのお口にも肉を入れてあげよう。口開けて? ほらほらほら」
「……え、ちょ、待っ……!」

 未だ背を向ける後方では、ルフとファングが何をしているか容易に解る楽しそうな声を上げている。もごもごとファングが言葉を失ったあたり、ルフにいい様にやられたのだろう――理解すれば、フローズヴィトニルは振り向いて、二人の元へと歩き出した。

「労いのお肉だよ、ロー。……後方からの回復には多少助けて貰ったからね」
「っ、熱いんだぜ、この肉! 礼ならもうちょい……ん、でも、ありがとよォ」

 広場に賑わう人々と同じだ。フローズヴィトニルの目の前には、よく知る二人の織りなす平和な光景が広がっている。辺り照らす光こそ乏しいけれど――その穏やかさは、どんな暗がりでも変わらない。
 そして、暗がりと言って見上げた空には、光在る広場で見上げるよりも輝きを増した大粒の星。

「……そうだな。……楽しめ、か……」

 それは、誰に聞こえもしない小さな小さな声であったけれど。
 美しいな、と。瞳を細めたフローズヴィトニルは――表情乏しきその口元に、微かな笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザハ・ブリッツ
ロレッタが笑顔で安心したよ
おじいさんが大好きなんだね。2人でとても楽しそうだ
俺はアルノルトを誘って星見をしよう
うまい料理があれば、やはりアレも必要だろう?(酒を提供する屋台を指さして)

鶏肉へ豪快に齧り付く姿にはもう慣れた
初めは驚いたけれど、アルノーの気質や普段の会話で納得したよ
「そんな君だから、こうして酌み交わす事がとても楽しい。有り難う」
洩らした様に告げてみる
知り合って、友と言ってくれた日からそんな事は口に出した記憶が無くて
君はどんな風に反応するだろうか
「…たまには、こんな風に感謝を伝えるのも悪くないと思ってね」

この綺麗な星空がそうさせたのかな
「…酔った?まさかね。まだまだ付き合って貰うよ」



「ロレッタが笑顔で安心したよ。おじいさんが大好きなんだね。……二人でとても楽しそうだ」

 広場を満たす賑わいの中、炎の前に立つ少女を見つめて呟くザハ・ブリッツ(氷淵・f01401)の低い声は、あまり響かず落ちて消える。しかし、そういうものと知っているアルノルト・クラヴリー(華烈・f12400)は、その音を逃すことなく耳に捉え、ふ、と小さく笑みを返した。

「俺は戦えなかったからな、応えてくれた全ての猟兵に感謝しているが――お前もな。感謝するよ、ザハ」

 さらりと感謝を声で綴って、アルノルトは並ぶ屋台で次々と料理を注文していく。こういう時、人との関わり不得手なザハは随分と助けられるが――奢ると言われ任せてばかりも少々申し訳なく思えて。
 きょろ、と屋台を見回せば――まだ頼んでいない良いものが目に入った。

「……アルノー。うまい料理があれば、やはりアレも必要だろう?」

 二人の食事に欠かせないもの――ザハが指差す先には、酒を提供する屋台が在った。
 結局、料理はアルノルト、酒はザハ。互いに負担し合う形で食事の用意を整えると、二人は広場に用意されたテーブル席へと移動し腰を落ち着けた。

「――さて。冷める前に食べよう、ザハ」

 アルノルトは紙に包まれた鶏の香草焼きを素手で掴むと、とても行儀が良いとは言えない様子で豪快に齧り付く。
 育ちの良さは、一目見れば解るのに――しかし、その姿はザハにすればもう慣れたもので。

「……? 食べないのか?」
「ああ、いや、ごめん。いただくよ。……アルノーのその食べっぷり、初めは驚いたけれど……気質や普段の会話ですっかり納得したなと思って」

 猟兵として、友として。関わっていく内に解った、アルノルトは身分や作法を必要がない場面に持ち出さない。
 身に着けているものや所作から自然滲み出てしまうものはある。しかし――それを気にする必要は無いと、接する中伝わるのだ。
 事実、今目の前の友人は、「何を今更」といった顔で此方を見ているのだから。

「こういうのは、その地の流儀で食べるのが一番美味い。前に言っただろう、『郷に入っては――」
「『郷に従え』、だよね。……そんな君だから、こうして酌み交わす事がとても楽しい。有り難う」

 ふ、と小さく笑んだザハは、アルノルトの言葉を遮ると、洩らした様に素直な感謝を告げてみる。
 知り合って、友と言ってくれた日から、こんな事を口に出した記憶は無い。いつも躊躇せず思いを伝える友に、同じように伝えたならどう応じるか知りたくて、ザハはアルノルトの言葉を待つけれど。

「――それこそ今更だ、ザハ。別に言葉にしなくても、お前が楽しんでくれていることは解る」

 返ってきたのは、やはり彼らしい真っ直ぐな感想と、「らしくないな?」と浮かべる笑顔。でもそこにほんの少し嬉しそうな響きが混ざれば、理解してザハも笑った。
 『別に言葉にしなくても』、――こういうことだ。二人は声や表情、纏う空気で互いの思いが伝わる友なのだと。

「……たまには、こんな風に感謝を伝えるのも悪くないと思ってね」

 ――この綺麗な星空がそうさせたのかな、なんて。不慣れな言葉に僅かに覚えた照れを、同じく不慣れな言葉で誤魔化せば、友人からは「らしくないな」と今度は言葉と笑顔が返る。
 二人声を立てて笑うと――いつしか空になっていたアルノルトと自分の樽ジョッキに、ザハはなみなみと酒を注いだ。

「……酔った? まさかね。まだまだ付き合って貰うよ」

 まだまだ二人、楽しく語らう夜の時間は終われない――だからザハは、負けないとばかり挑戦的に呟くと、自ら注いだ酒を一息に飲み干した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
ん~うまい!
次からあの鳥見ると
揚げた姿を思い出しそうだ
人々から少し離れた場所で
アレスとふたり星を見る
星と、僅かばかりの炎が綺麗で
ああ…守れてよかったな

ふと、込み上げる思いに目を閉じた
再び開いてアレスに向き
アレス、すきだ
星を背に
笑って言う

きっと、そのままは伝わらない
まだ言わなきゃいけない事はたくさんある
今はそれでいい
それでも、今口にしたのは
――星が、綺麗だったから
だから、積み重なった思いのひとつを少しこぼすくらい
許される気がしたんだ

それでも…やっぱちょっとドキドキすんな
酒もつまみもきれちまったな!
ちょっと貰ってくる
誤魔化すように立ち上がる

この明るさじゃ
頬の色まで見えちまいそうだ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

食いしん坊だなぁ、なんて思いつつ
ふたりで星を観る
村の灯り達と隣で笑うセリオスを見て
彼らを、この時間を、守れてよかったと深く想う
本当に…綺麗な星だ

…セリオス?
告げられた言葉に
彼の瞳を真っ直ぐ見つめる

あ、セリオス…!
…。
…一人残され
どさりと後ろに倒れる
―すきだと言われた時、とても驚いたけど
嬉しかった
でも…彼の瞳を見たら
言おうとした「僕も」という言葉を飲み込んでしまった
いつもの彼とは少し違う気がしたから
…君の頬が赤く見えたのは、僕の気のせいかな
僕自身も頬が熱くて
思考がうまく纏まらない
…。
…星、
こんなに眩しかったっけ
…セリオス
呟いた一瞬、僕の中でも何かが瞬いたような
不思議な心地がした



 ――だってこんなにも美しい空なのだ、それを理由に込み上げ、溢れ、零れ落ちる想いの数などきっと星より多くある。

(「本当に……綺麗な星だ」)

 常なら高き蒼穹の瞳も、星粒瞬く夜空を映して今は輝き帯びる夜色。それを細く優しく緩めて、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は微笑んだ。
 円形広場の一角だ。炎の温もりや人の賑わいからは幾分引いて、僅かに闇と静けさも漂う場所――敷布広げて座ったそこは、人が起こした灯りの中に咲く笑顔がよく見える。
 あの笑顔の全てが今日、アレクシスが守ったものだ。思えば幸福感は胸を満たして、誠実なる騎士の心は彼らを、そしてこの穏やかな時間を守れてよかったと深く想う。

「……ん~っ、うまい! 次にあの鳥見たら、揚げた姿を思い出しそうだ」

 そして、今アレクシスの隣には、夜空をそのまま嵌め込んだ様な大粒の瞳を満足気に細めるセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)の笑顔が在った。
 無償で振る舞われている魔物の揚げ肉を、笑みの声上げて堪能している――平和なその様子には、穏やかに弧を描くアレクシスの唇から思わず違った笑みも零れて。

「はは、食いしん坊だなぁ、セリオス」
「アレスも食えって! 癖になるぜこの辛さ!!」

 この何気ない遣り取りに返る笑顔もまた、アレクシスが守ったものだ。大切な幼馴染、セリオス――その幸せを、十年離れる遥かに前からアレクシスはずっと願ってきた。
 いつでも笑っていてほしい。それはただただ、彼が大切な幼馴染だから――。

「ああ……よかったなぁ……」

 思う最中に――ふと。
 ぽつり、柔く穏やかに落ちた声に、アレクシスは視線を戻した。つい今まで明るく笑って、通る声を響かせていたのに――再び見たセリオスは、昔より随分大人びた笑みを浮かべて広場を遠く見つめていた。

「……守れて……よかったな……」

 広場中央に煌々と燃える焚火を除けば、灯りと呼べるものは星と僅かばかりの炎のみ。それがすごく、凄く綺麗で――ぼんやりと見つめるセリオスの双眸は今、遠い遠い景色を映していた。
 ――遥かな故郷。二度と取り戻すこと叶わない温かで穏やかな景色の中には、生きる人の起こす灯りが沢山沢山揺れていた。
 多くを失ったあの日のことは、幾度となく夢に見た。守りたかったと思い出す度、あの日の無力が悲しく、哀しく、悔やまれて――思えば胸に込み上げてくる想いに、セリオスはそっと瞳を閉ざす。
 悔やまない日なんて無かった。だけど――それでも、今笑顔で居られる理由は。立ち上がって戦えた理由は。

「――セリオス?」

 その時――そっと、セリオスの左手を籠手に包まれた手が取った。
 ……ああ、瞼を開かなくても、この手を自分は知っている。白銀が覆うそれは、触れればどうしたって硬質で冷たいのに、いつだって必要な時にこの手を掴んで凍える心を温めてくれる。
 全てを失ったと思った自分が、唯一失っていなかったもの――開いても揺れる視界に映ったのは、泣けるほどに温かな、繋がれたアレクシスの大きな手。
 心配そうに覗き込む、大好きな優しい蒼穹の瞳。

「……アレス、すきだ」

 ぽつりと、ただ一言。セリオスのかたち良い唇から笑んで零れ落ちたのは、セリオスの想いの欠片。
 きっとただこの一言だけでは、熱く胸焦がすこの想いを伝えきることなんて出来ない。もっと相応しい言葉を探して、もっと言葉を重ねなければアレクシスには届かないだろう。解っている。
 でも、今はこれで良い。だって、今想いを口にしたのは――星が、綺麗だったから。
 零れ落ちる流星と一緒に、積み重なった思いのひとつを零すくらい、許される様な気がして。

「…………セリオス……?」

 覗き込むアレクシスの瞳が、丸く大きく見開かれる。
 セリオスの真っ直ぐな眼差しには、今日の夜空にも負けない輝く星が煌いていた。目尻を緩く下げた表情は、幼い頃の甘い物に蕩けた愛らしい笑みの様でもあり――アレクシスも知らないセリオスの、大人びた美しい微笑みとも思えた。
 今日の星を背にしたその微笑みには、何故だか酷く胸が詰まって、アレクシスはそれ以上、掛けたい言葉を声に出来ない。

「――酒もつまみもきれちまったな! ちょっと貰ってくる!」
「……あっ」

 しかし、それもほんの刹那のこと。直ぐにぱっといつもの明るい笑顔に戻ったセリオスは、すくっとその場に立ち上がると、くるりと背を向け走り出した。
 ぱらり、と長く背に下ろす闇色の髪が、空を流れる光を受けて揺れる度艶めいている。広場の光の元へと向かう、その後ろ姿を見送って――一人残ったアレクシスはやがて、どさりとそのまま後ろへ倒れた。

「……、…………」

 大地に敷いた敷布の上、寝転がって星空を見上げて――思うのは、声の出なかった先の自分。

(「……すきだと言われた時、とても驚いたけど――嬉しかった。「僕も」って言おうとした。……でも、彼の瞳を見たら」)

 まるで今日の星空の様に、深い色をしたセリオスの瞳。その眼差しは誰よりよく知るセリオスのものに違いないのに――何故だかあの瞬間だけ、アレクシスは気圧された。

(「言おうとした言葉を、飲み込んでしまった。……いつもの彼とは少し違う気がしたから」)

 そう答えることが、正しいと思えなかった。その笑顔をいつでも願う、大切な幼馴染の筈なのに――。
 しかし考えるほど熱くなる頬に、思考はもうこれ以上はうまく回りそうになくて。

「……君の頬も赤く見えたのは、僕の気のせいかな。……セリオス」

 去り行く瞬間の彼を思い、その名を呟いた瞬間――不意にアレクシスの胸にとくん、と温かな鼓動が響く。

「…………星、こんなに眩しかったっけ…………」

 何かが、変わろうとしている。不思議とそんな予感だけ、その胸に抱きながら――横たわるアレクシスが仰ぐ空に瞬く大粒の星達は、先程までより強く輝き、何故だかもっと美しく見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリオ・イェラキ
リュカさま【f02586】と

楽しみの始まりですわ
狩り得た肉の香草焼き…美味しそう
それとわたくしも暖かな珈琲を
リュカさまと手頃な所へ移動して頂きましょう

香草の香りが肉の豊かな食感に華を添えますの
甘みと優しい味が舌を楽しませて…?
ふふ、でしたらリュカさま
わたくしと一緒に食べて下さるこの時間は、お嫌かしら
違うのでしたら…それがきっと、おいしいと言う事ですわ

とても素敵な星空ですこと
流れまして?どこかしらと楽しげに
わたくしも昔は星夜を何処までも飛んで行きたいと思ってましたの
猟兵に成った今なら流星の先も征けそうですわね
夜空と同じ、冒険に果ては在りませんもの

ねぇリュカさま
次はどの世界の星を観に行きましょうか


リュカ・エンキアンサス
オリオお姉さんf00428と

ご飯にでもしながら星を見よう
お肉を頂いて、齧りながらのんびり空を眺めるかな
…んー。味のことはよくわからないから、お姉さんと同じのを頂くとして
珈琲があればついでに購入して
その辺座れそうなところに腰を下ろして星を眺める

こういうの、お嬢様には合わなさそうだけど、
不思議とお姉さんは似合ってるね。美味しそうに食べる
だから…そうだね。うん、俺もおいしいかな

あ、流れた
あそこ
とか言ってたら、次も
…見事だね
あの星たちは流れたら、どこへ消えていくんだろうな
…あんな風に空を飛べたら、きっと楽しいだろうな

うーん。そういえばあの星よりも遠くにも行けるかもしれない
そうだね。また綺麗な星が見たい



「……何がいいかな。ねぇ、お姉さん。何か気になる?」

 屋台立ち並ぶ広場の一角。今宵の賑わう広場の中でも商いの声盛んなそこで、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は少し困った様に呟くと、背に立つ女性へ振り返った。

「お肉を頂いて、齧りながらのんびり空を……って思ったんだけど。種類もここの熱気も凄くて、正直、圧倒されてる」
「お肉、良いと思いますわリュカさま。あ、ほら、あちらに今日狩り得たお肉の香草焼きが。……ふふ、美味しそうですわ」


 まさしく姉の様な温かく上品な微笑みで、応えたのはオリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)。
 無数に並んだ屋台の中から魔物鶏の香草焼きを振る舞う店を見付けると、白く細く長い指で差して、行きましょう、とリュカを促す。
 嬉しそうに笑う頬が、少しだけ上気した様子を見るに――もしかしたら、この屋台をずっと探していたのだろうか。

「実はちょっと楽しみでしたの。ふふ。リュカさまこそ、気になるものはありませんの?」
「……んー。味のことはよくわからないから、お姉さんと同じのを頂くとして。……あとは、もし珈琲があれば」

 一方のリュカはポーカーフェイス。食に深い拘りがないのか、気質的にそう見えるだけか――進む最中にも淡々としながら、しかし屋台に至れば自分とオリオ、二人分の肉を注文する。

「紙に包むか、木皿かを選べるみたい。俺は食べやすいから紙にするけど、お姉さんはお皿がいいかな」
「同じもので大丈夫ですわ。わたくしの分までありがとうございます、リュカさま。……珈琲でしたら、先ほど来る道で見掛けましたの。帰り道にいただいていきましょう」

 互いが欲しいものを揃える買い物。リュカが二人分の肉を、オリオが二人分の温かな珈琲を持って――夕食準備が整うと、二人は屋台群を離れた。
 進む道の中見つけたのは、ほんの少し祭りの喧騒遠のく、円形広場を縁取る様に所々置かれた大きな丸石。

「座るのにちょうどいいよね。ベンチみたい。……ここでいいかな?」
「ええ。――ふふ、楽しみの始まりですわ」

 選んだ同じ石の上へ、すとん、と並んで腰掛けて。倒れない場所へ珈琲を置くと、二人は紙に包まれた鶏肉の香草焼きを中から出してぱくりと噛んだ。

「美味しい……!」
「わ、凄いね、肉汁」

 溢れた肉汁に驚いたリュカだが、隣から上がった感嘆の声には思わず視線をそちらへ向けた。
 いつも上品で、貴婦人然としたオリオ。しかし今の彼女はどうだろう。紙に包んだだけの肉厚の鶏肉を、直接食んでは幸せそうに頬を緩めて――美味しいと上げる声は、少女の様に無邪気に響いてその喜びを伝えて来る。
 正直、肉をカトラリーなど使用せずに直接食べる今日の食事スタイルも、彼女に馴染まないのではとリュカは思っていたのだけれど。違和感のない様子が意外で、リュカは思わず呟いた。

「……こういうの、お嬢様には合わなさそうだけど、不思議とお姉さんは似合ってるね。美味しそうに食べる」
「うふふ、香草の香りが肉の豊かな食感に華を添えますの! 甘みと優しい味が舌を楽しませて……?」

 感想を問われたと思ったオリオは、正直で幸せな感想を夢中になって述べたけれど。一方で淡々と呟くリュカの「美味しそう」の言葉には、何か引っ掛かるものを感じて語る声をそっと止めた。
 ああ、そうだ。この少年は、料理求めて歩いた先ほどは「味のことはよくわからない」とそう言っていたのではなかったか――思えばオリオは、口近くへ運んだ半分紙が包む鶏肉を一度膝の上へと降ろす。
 そのまま、にこりとリュカへ微笑み掛けた。

「ふふ、でしたらリュカさま。わたくしと一緒に食べて下さるこの時間は……お嫌かしら?」

 思い掛けないオリオの問いに、リュカは蒼穹宿す瞳をきょとん、と驚きに丸くした。
 そんなことあるわけない、と否定の言葉は口に咀嚼する肉の存在によって咄嗟に声に出なかった。だから即座に首を横に振って――伝えようとするリュカの様子に、オリオは嬉しそうに笑みを深める。
 やがて、美しい夜空込めた様な双眸を、長い睫毛の下へと伏せて。そっと胸へ手を当てたオリオは、大丈夫だと微笑んだ。

「違うのでしたら……それがきっと、おいしいと言う事ですわ」

 美味しさとは、味がすべてではきっとない。独りいただく食事をどんなに味気なく感じたとしても、同じものを誰かと共に笑顔分かち合って食べれば、それは体にも心にとっても、かけがえない栄養となるのだ。
 今宵のこの食事だって、リュカがいてくれるから、こんなにも心に染みるのだと――言葉にはしない。でも、笑顔でそう語るオリオ。
 その笑顔に、リュカはごくりと肉を飲み込むと――少しくすぐったそうに、でも満たされた様にほんの少しだけ微笑んだ。

「そっか。……そうだね。うん、俺もおいしいかな」

 互いに笑みを交わし合って。穏やかに語らいながら進む食事は、様々に話入り乱れてとても楽しい時間となっていく。『美味しい時間』――やがてそれが完食のもとに終わりを告げると、不意にオリオが見上げた空には、大粒に瞬く星々。

「――とても素敵な星空ですこと」

 呟くオリオにつられる様に、リュカも視線を夜空へ向けた。
 動かず瞬く大粒の光。星が近くに感じられる空――それはそれは美しかったけれど、不意にその星々の間を光芒がすうと落ちれば、リュカは少し肩を揺らした。

「あ、流れた」
「流れまして? どこかしら」
「もう消えちゃったけど、あそこ……あ、次も」
「まあ……凄い、次々と……!」

 指差す先に、次々と現れては流れる光――二人夢中で追う間にも、強く眩き光芒達は次第にその数を増やして、闇夜を明るく照らしていった。
 探す必要がないくらい――降る様に落ちて、迫って、そして消えて行く光を見つめ、思わず息を呑んだリュカは、空仰いだまま座る丸石に背中を預けて横たわった。

「……見事だね。あの星たちは流れたら、どこへ消えていくんだろうな……」

 自分もあんな風に空を飛べたら、きっと楽しいだろうなと――感動したのか少々ぼんやりとした様子で空を見つめて呟くリュカへ、微笑むオリオは記憶の中に同じ感情を見付けて答える。

「……わたくしも、昔は星夜を何処までも飛んで行きたいと思ってましたの。猟兵に成った今なら流星の先も征けそうですわね。夜空と同じ、――冒険に果ては在りませんもの」

 記憶の中の自分は幼く、ただ思い馳せるだけの力なき少女であったけれど。猟兵となった今なら、夢物語であったそれすら叶えることもできるものと――再び空を見上げるオリオが語るは夢物語の更に先。

「ねぇリュカさま? 次はどの世界の星を観に行きましょうか」

 きっとまた一緒に星を見よう、と。願って笑うオリオの瞳は、未だ見ぬ冒険へときめく心にキラキラと輝いている。
 その眩しい程輝く思いに――リュカはむくりと起き上がると、一つこくりと頷いて、もう一度空を仰ぎ見た。

「……そうだね。また綺麗な星が見たい」

 仰ぎ願うその先には、小さな涙が導いた、満天にして大粒の星空。
 呟くリュカが見つめる先――その願いに応える様に、一際眩い流星がすうと流れて消えて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月18日


挿絵イラスト