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?!まさかさかさま!?

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #籠絡ラムプ

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#サクラミラージュ
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#籠絡ラムプ


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●『「たった今飛ぶ」と舞い立った』
 瓦斯の要らない瓦斯灯に、文字を書き直せる電信機。ガンガン鳴るモダンなメロディ、絢爛豪華なアクセサリ。そして空には、何と言っても見るも巨大な飛行船。
 此処は技術博覧会。人間の手が新たに届いた新天地を誇り、称え、楽しむ為の、年に一度の大イベントだ。
 そんな大地を踏み締めて、緊張した面持ちの少女が一人。ぎゅっと唇を結んで、大きな声で呼びかける。

「さあさあ皆さんお立合い! 世紀の奇術師[卯月・ナユタ]の奇妙奇天烈な反重力ショウ! 見なきゃ損、見なきゃ損だよーっ!」

 右手に掲げたランプを揺らし、吸い込まれそうな青空に向かって叫ぶのだった。

●『危機来ると軽く聞き』
「『天地がひっくり返っても在り得ない』なんて言いますけど……どうやら別の慣用句が必要みたいですね」

 集まった猟兵の面々に、月見里見月(幼き彼女の悩み・f27016)は困ったような顔をして見せる。

「今回の舞台は帝都が誇る一大イベント、『先端技術博覧会』! 先端技術と銘打ってはいますが、機械に乗り物や小噺まで、兎に角素敵で文化的な物を詰め込んだブームの発信地ですね。そこでショウを開こうとした奇術師見習いの女の子、[卯月・ナユタ]さんが今回の下手人です。本人の動機は純粋に『人々を笑顔にしたい』だけなのですが、いかんせん……」

 グリモワベースのプロジェクターに、快活そうな少女の写真が映し出される。右目の下に赤いハートのマークを描いているのが印象的だった。どうやらトランプカードを使った奇術を披露しているようだが、袖から同じ柄のトランプがはみ出してしまっている。
 そして、画像が切り替わる。現れたのは非常に年季の入った、むしろ灯した方が暗くなるような気すらする黒塗りのランプ。

「これが、最近市井に出回り始めた“絡繰ラムプ”……影朧の力を封じていて、疑似的なユーベルコヲドの使用を可能にする代物です。だけど……お判りですよね」

 影朧……オブリビオンの力を利用すること自体は、猟兵たちにとって珍しいことではない。しかしそれは、訓練を積んだ彼らが、多大な犠牲を払って手にするものなのだ。一般人に扱えるものではない。
 事実この装置は、幻朧戦線と呼ばれる秘密結社が帝都に混乱を齎す目的でばら撒いたものなのだ。異能に憧れた一般人が公衆の面前で披露するタイミングで、観客たちを巻き込んだ惨事を起こすために。

「卯月さんは自分の奇術に自信が持てずにいたところを、戦線の人間に付け込まれたようですね。本人は自分が持っているものが何なのか、知らない可能性が高いです。能力は“反重力”……ですが、封じられた影朧が展覧会で暴走を始めます。結果だけ言うと、展覧会場が丸ごと反重力で飛んで行くことに」

 右手を、ふわふわーっ、と言いながら勢いよく持ち上げて見せるグリモア猟兵。被害の量は想像を絶するだろう。

「で、皆さんにやって頂きたいことは二つです。まず、展覧会の人たちを一か所に集めること。避難誘導の円滑化のためですね。皆さん思い思いの素敵な出し物を披露して、バッチリ心を掴んじゃってください」

 卯月さんが異常を察して逃げてしまえばもっと面倒なことになるため、あくまで展覧会は続けなければなりません、と少女は付け加えた。

「そして卯月さんが奇術を披露し始めたら、それが彼女を捕まえる絶好のタイミングです。支柱にしがみついて身動きが取れなくなっていますからね。で、暴走して出て来る影朧を取っちめていただく、と」

 予知によると、封じられた影朧はかつて戦争兵器を作っていた狂気の科学者。自身は自前の装置で飛んでいるらしい。最善手を突き詰めても反重力は発動されるため、基本的にアウェーでの戦いになる。
 だけど、皆さんならできると信じています、とグリモア猟兵は叫んだ。それから、会場に設置された足場として使えそうなもののリストを差し出してくる。

「兎に角、博覧会で“浮かれて”空に落ちるのだけは絶対に気を付けてくださいね。真っ逆さまで、引き攣る笑みが見える月日……なんてことじゃ済みませんから!」

 あと、終わった後の奇術師さんにも何か、何か対処をお願いしますね……そう言い残して、グリモア猟兵は転移を開始した。

(足場備考)

●『床』
 かつて床だった天井。固定された柵や屋台にしがみつきながら、下に見える影朧を上から攻撃することになる。

●『タワー』
 展覧会場で一番『低く』なる建物。階層が分かれており、天井に位置取ることで様々な高さから安定した攻撃を行えるが、影朧からは距離がある。

●『日時計』
 三メートルほどの巨大な支柱。卯月が奇術を披露し、しがみ付くのもここ。そのため影朧との距離は一番近いが、掴む部分は殆どない。

●『飛行船』
 日時計の上空を飛ぶ巨大飛行船。反重力の影響を殆ど受けない。乗る程度ならビクともしないが、余りに強い攻撃を受けると破れてしまうだろう。


眠る世界史教師
 こんにちは、眠る世界史教師です。逆から読んでも、シウョ騎士行かせる旨。
 天地無用な展覧会で、影朧退治です。反重力という異常事態を切り抜けてください。
 第一章は日常です。展覧会の人々の目を引くような斬新な道具やパフォーマンスで、展覧会を盛り上げましょう。会場には科学者や企業家、陰気臭いラジオパーソナリティなど様々な人がいるので、プレイングに使用していただいても構いません。能力RPは参考程度に。
 第二章はボス戦です。満を持してひっくり返った重力の中、落ちないように影朧を退治してください。足場は参考例です。突然一反木綿が飛んできたりするわけではありませんが、俺はあえてこれを足場にするぜとか、私はそもそも飛んでいますとかもオールオッケーです。展覧会の新技術に負けない奇想天外な発想で、常識をひっくり返しましょう。
 第三章は日常です。絡繰ラムプの後始末として、自分がしでかしたことに呆然自失となった見習い奇術師を再起させましょう。
 受付開始は6/6(金)の午後十時からとさせていただきます。詳しくはマスターページをご覧ください。それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
 最後に、章タイトルを付けるにあたってコミュニティサイト『回文21面相』さんのお力をお借りしました。この場でお礼をさせていただきます。
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第1章 日常 『新たな流行をつくりだせ』

POW   :    こんなスポーツも競技になるんだ。やってみない?

SPD   :    料理は技能の集大成。こんな味のアレンジや、調理法もあるよ。

WIZ   :    好きなカードゲームやボードゲームを流行らせたい!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『よう、空照らそうよ!』

「文化ってのは……血であり……酸素であり……神経だ……如何に優れた能力があろうが、文化がなきゃ繋がりは絶たれ、端から腐り、壊死し、やがて社会が死ぬ……素敵だよなァ、文化ってのはよォ……」

 血のように真っ赤なワイングラスを傾けながら、女は言う。

「オレは文化を愛してる、新鮮な血液と同じくらい……だからさァ……その文化を脅かす……無価値で……無意味でェ……無思慮で無粋なカスどもはよォ!」

 突然激昂すると、ナイフを逆手で持ち上げ鋭い動作で壁に投げ付ける。
 放たれた刃は、混凝土の壁に完璧に直角に突き立った。

「さっさとォ……掃除、しなくっちゃあなァ……」

 その為にアンタらが居るんだろう……そう言うと、彼女はまた落ち着きを取り戻したようにグラスを揺らし始める。
 彼女はこの展覧会の運営責任者だ。過去の文化を守り、新たな文化を作り出す為に、日々尽力している。

「取り敢えず、外の展示には落ちないよう支えをつけさせた……或いは内側に移動させた……観客の誘導もこっちと別行動の猟兵で終わらせるから、アンタらはその時が来たら、思う存分……文化破壊者のカスを、擦り潰して切り刻んで燃やし尽くして血の一滴も残らないようにしろ……! 泣いて命乞いするのを、指、いや関節から一本ずつ——」

 どうやら相当頭に来ているようだが、このままでは話が進みそうにない。
 猟兵の誰かが嗜めると、主催者は再び冷静さを取り戻す。

「あァ……とにかく、よろしくな。それまでは、色んな世界の文化を見せておいてくれ……場所は取ってあるから。ここにいる奴らは全員新しい物が大好きだ、アンタらみたいなのは大歓迎ってこと。オレのむ……じゃなくて、世間知らずの奇術師のケツ持たせんのは気が引けるが……頼む」
「アソギ様! そろそろ中央広場でスピィチのお時間だ、ブチ飛ばして行こうぜ!」

 突然部屋に入ってきた白衣の男が、彼女を呼びつけた。

「あァ分かったすぐ行く。じゃあ兎に角、宜しくな。何かあったらいつでもオレを呼んでいいから。名前は……まあいいか、責任者出せって言や良い」
「何ィ、さてはお前達が、あの異世界を渡るという猟兵! うおォーッ、俺の知的好奇心が”仏恥義理”で疼きやがる! なァ色々聞かせてくれ、解かせてくれ明かさせてくれ!」
「黙れコウガ。客人が驚いてんだろうが、テメエの研究発表だけ観客全員學府の性悪教授にすんぞコラ。……悪い、じゃ頼むわ」

 運営管理者と、その側近の科学者と思われる男は、二人でぎゃあぎゃあ言い合いながら部屋を出て行った。
 それを見送って、猟兵たちも展覧会の運営本部を後にする。
 眼前に広がるは、科学技術に大衆文化、そして笑顔と足音に満ちた展覧会。
 君たちは今、まさに帝都の流行の最前線にいるのだ。
ホール・マン
 俺様不勉強だしタダのマンホールの蓋だからよくわかんねぇんだけどよぉ、そもそも文化ってなんだよ。文字化けの略かよおい。最近の若ぇ奴は何でもかんでも省略したがるからいけねぇや。

 客寄せパンダにもなんねぇ賑やかし色付きマンホールとか見てるとため息が出ちまうぜ、俺様はあんな仮装ひっくり返ってもやんねぇからな。以前にひっくり返らねぇのが俺様の仕事なんだがなガハハハ!タダの蓋だから当然だろ。
 再生産され続ける文化、毎分60ml消費される文化、ちょっとつねったら痛ぇと喚く文化。上澄みを賛否する文明、くせぇ物には蓋をしろってな。怪文書なんてどーでもいいってな。そんなんだから、俺は唯そこにある蓋でいいんだ。



「へェ、マンホール。猟兵の方々の御姿というのは本当に様々なのですねェ」
「唯のマンホールだけどな。駄々滑りの色付きマンホールとか、見てられねえんだよ、俺様的には。客寄せパンダにもなりゃしねえ」
「成る程。ところで、どのような物を見せていただけるので?」
「はぁ? てめぇマンホールに何期待してんだ、あるわけねぇだろそんなもん」

 ホールに対して文化的な何かを期待していたらしい、黒コートの男の表情が凍り付いた。
 マンホールの蓋に変化した状態で床に張り付いたホールの饒舌は、なお止まる事がない。

「展覧会のテーマは文化文化言ってるけど、そもそも文化ってのは何なんだ、文字化けの略かよ? 俺様不勉強だし唯のマンホールの蓋だからよく分かんねえけどよぉ、最近の若い奴は何でも略したがるからいけねえよな」
「えェ……」
「御大層なこと言っても、マンホールの蓋に色塗ったりするのが精々。俺様はあんな仮装ひっくり返ってもやんねぇからな」
「おい」
「以前にひっくり返らねぇのが俺様の仕事なんだがな! 蓋なんだから。いやでも、あの馬鹿馬鹿しさには驚きでひっくり返りそうで——」
「おい、そこのマンホール」

 いつの間にか、黒コートはどこかに居なくなっていた。
 その代わりにホールを見下ろし、冷え切った声を投げてくるのは……

「これは主催者様。ご機嫌麗しゅう?」
「ああ最高だ。最高にヒートアップしてるぜ、お陰様でな」
「そりゃ良かった。再生産され続ける文化に振り回され続ける淑女にひと時の安らぎをってな」
「そうかそうか」

 彼女は笑顔だ。
 笑顔のまま、側に控えた科学者の男に向かって右手を差し出すのだ。

「コウガ。ドリル。後防塵マスク」
「どうぞ! でも何に使うつもりなんだ?」
「こうすんだよォォッ!!」

 言うが早いが、地面に手持ちドリルを突き立てた。
 オーバーテクノロジーで作られた回転力が、展覧会の煉瓦と擦れ合って、祭りの場にとんでもない音を立てる。

「吹き抜けにしてやるゥゥ!!」

 しかしそこは百戦錬磨の猟兵。ホールは既にその身を別な地面に横たえていた。

「排水口でも掘りたかったのか?」
「掘りたかったのは……テメェの墓穴だよ……」

 息を切らせながら、女性はドリルを手放す。
 その荒い息のまま、苦しそうに呻くと、握り拳で地面を叩いた。

「ちょっとつねったら痛えと喚く文化……いつまでも臭い物に蓋してんだろ?」
「分かってるよ……クソッ。百年前の遺物は護れても、自分の娘一人護れやしないんだ」

 主催者の掌から血が滲む。その姿に、ホールはデジャブを覚えた。
 いつだってそうだ。人は自分の無力を悟った瞬間、地面を叩く。まるで自分自身を打擲するかのように、やり場のない怒りを自らの内で爆発させるかのように。

「おい……絶対に何とかして見せろよ。ここまでコケにしてくれたんだ……無事に済まなかったら承知しねえからな」
「唯の蓋に預けるには、重過ぎる命運じゃねえか?」
「るっせえ。人が一人落ちていくから、止めて見せろってんだ。蓋なんだろ」

 吐き捨てるように言って立ち上がると、ドレスの埃を払い落とし……今までの惨状が嘘のような笑顔を浮かべて、ドリルの音に集まった客たちに呼びかけた。

「さあ、幸運な皆様! 現在主催者の私自ら、特別展示室をご案内しております! 機会は今だけですよ!」

 強引にそう言いくるめて、十数名を建物の中へと誘導していった。
 後に残されたホールは、一人呟く。

「……ま、蓋するのは俺の仕事さ」

 それが、マンホールであり……”世界の番人”でもある彼の、矜持だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スプラ・プルトーイ
異界の技術博覧会……興味をそそられる物がたくさんだね。見て回りたい所だけど、そんな余裕はないかな?
サメ型フロートのパフォーマンスはぜひ披露したいと思っていたのさ!
垂らした体の一滴が一気に膨らみ、サメ型フロートが出現する。どんどん生み出しぽいぽい投げて、イルカショーのように活き活きと空中を泳がせてジャンプパフォーマンスをするんだ!
観客の皆様も上に跨がり空中を泳げるよ!幻想的な体験を楽しんでいってくれ!



「わあ、色んなものがある……! これが異国の技術博覧会か!」

 澄み渡る空を映したかのような青色の少女は、その光景に目を輝かせる。
 好奇心に任せて見て回りたかったが……そこをぐっとこらえ、自分の仕事へと取り掛かるのだった。

「さあさあみんな見ていってくれ、世にも珍しい鮫魔術ショーだよ!」

 グリードオーシャンではごくありふれた鮫魔術だが、サクラミラージュではその存在は一般的ではない。他の世界の人間にとっては悪乗りの極みのようなそれも、海の民にとってはしっかりと体系立てられた技術であり……スプラ・プルートイという少女にとっては、自らの身を委ね得る相棒と言っても良い。
 鮫と魔術、似つかわしくない言葉の並びに惹かれたと見える数名が、彼女の前で足を止めた。

「鮫魔術……? あァ、猟兵の方ですか。道理で」
「ふむ、非常に興味深い。外つ国には海に囲まれた世界があると聞く、きっと儂が見たこともない海鮮の幸が在るのだろう」
「そこのお二人! 少し体験していかないかい?」

 その中から、黒いコートの男と髪を結んだ老人の二人連れに声をかけた。彼らは一瞬だけ辺りを見回すと、自分のことだと気が付いたように前に進み出る。
 彼女は人差し指の先を、水に変える──正確には水に戻すのだが──当然、二人はその時点で目を丸くした。しかし、パフォーマンスはここからが本番だ。
 滴り落ちた雫が中空に静止したかと思うと、その体積を何倍にも膨れ上がらせる。見る見るうちに巨大になり、色が付き……水のような透明度の、鮫を模した風船が出来上がった。

「へェェ、こんな業もあるのですねェ」
「これは……正に奇妙奇天烈。水を操るは料理人の悲願、羨ましいものだのう……」
「まだ終わらないよーっ!」

 身体のあちこちから水が滴り続け、その度に鮫型フロートは増え続ける。風も無いのに浮き上がり、まるで本物のサメが海の中を泳いでいるかのように自在に空中を舞った。
 更にその内の一体が素早く黒コートの足元に潜り込み、慌てる男をその背に乗せて見せる。

「うわわわわわっ」
「月詠殿、強きが弱きを喰らうは世の理です。どうか悲しまれぬよう」
「いや、そういうのじゃないから」

 そのまま浮かび上がった。初めのうちは慌てていた男も、暫くするとすぐに慣れたのかその叫びを歓喜に変える。
 抜けるような空は、その時海となった。自由と解放を体現するかのように、数多くのフロートが飛び交う海であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『殺人者』狂気ノ科学者』

POW   :    トリニティの消えぬ太陽
【膨大な熱量を発生させる3個の石】を向けた対象に、【熱量を集束させた、大地すら焼き尽くす閃光】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    ダイナマイトノーベル
【特大の超爆発を発生させる薬剤(複数個)】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    不死身の軍勢
【殭屍兵(不死身の肉体を持ち、噛み付き、】【毒爪で攻撃する)をレベル×100体を召喚】【し、数的戦力を確保する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「さあさあ皆さんお立合い! 世紀の奇術師[卯月・ナユタ]の奇妙奇天烈な反重力ショウ! 見なきゃ損、見なきゃ損だよーっ!」

 右手に掲げたランプを揺らし、吸い込まれそうな青空に向かって叫ぶ少女がいる。
 今回の騒動の中心人物、ただ笑顔を願った一人の奇術師……手にした力の大きさも、その代償も知らずに、太陽のように明るく笑う少女が。
 反重力、との言葉に惹かれた観客たち——内半分ほどは猟兵だが——が集まるのを見て、彼女は日時計の支柱と自分の身体を縄でしっかりと結んだ。それから、ランプをズボンのベルトに括り付ける。
 そのランプが黒い闇色に光り……

「よっ!」

 少女が床を軽く蹴ると、その身体がふわり、と宙に浮かんだ。
 上向きの加速度は増し続け、やがて彼女は勢い良く空に向かって落ち始め……

「とっ!」

 る前に、日時計の頂点近くで速度を緩め滞空、そのまま地面に着地する。
 普段重力のもとで活動しているとは思えないほど、その動きは自然だ。どうやら相当に練習を積んできたらしい。
 浮かび、落ち、時に花吹雪を舞わせ……ショーは恙無く続き、その度に拍手が起こる。少女は周囲の人間が笑顔なことに、自分まで笑顔になっている。
 だから……

『会場にお越しの神無月様、お伝えしたい事がございますので、至急中央棟まで……』
「ん、何だ? 落とし物でもしたかな……」

 展覧会中に鳴り響くサイレンによって、その観客が、一人。

『只今より、タワー内部で鉄十字の国の料理展が開催されます。更に今から三十分以内なら試食が……』
「む。帝国の料理、是非とも味わねばなるまい」
「このショウも名残惜しいですが……行きましょうか、長月さん」

 また一人と、消えて行くことにまでは、気がつけなかった。
 やがて、周囲に猟兵だけが残った時……

「さあフィナァレはあの飛行船まで……あれ? おかしいな、降りられない。えい! えいや!」

 サイレンが、一斉に緊急事態を告げた。
 全ての客に、至急建物に入るよう命令する。スタッフも総出で、安全地帯への避難が遂行された。

「え、ええ、どうなってるの! ちょっと降ろして! 降ります! すみません!」

 ただ一人、全く状況を理解できていない少女を残して。
 やがて、放送が鳴り止む……否。
 放送を鳴らしていたサイレンが、一つ、また一つと地面から引き抜かれるように浮かび上がり……勢い良く空へ落ちているのだ。
 煉瓦の床が、食べ物が、照明が……視界内の全てが、逆さまに落下し始める。

『そう! この瞬間を待っていた、この瞬間をだ!』
「だだだ、誰!」

 ランプから、女の声が響き渡る。
 一際大きな闇を吐き出すと、それは一人の人間の形を取った。

『技術はお楽しみの為にあるんじゃない……生を汚し! 神秘を冒涜する為に!』

 時計塔の頂点から、巨大な針が二つ。浮かび上がると、突き刺さるように空へと落ち……

『常識をひっくり返すのは、この私、私だ!』

 狂った重力の中での、戦いの始まりを告げた。
スプラ・プルトーイ
みんなの楽しみを邪魔する者には、お仕置きが必要だね!【空中戦】は得意!望むところさ!サメ型フロートに【騎乗】し、空を飛ぶよ!防御用のサメ型フロートも追随させよう!
僕のユーベルコード【ウィー・アー・シャークフロート】は、防御用サメ型フロートに触れた相手をサメ型フロートに変化させてしまう。不死身の兵といえど、フロートに変化してしまえば何もできまい?近接攻撃しか持たぬ兵では、即座に補充されるサメ型フロートの守りは崩せないよ!科学者にレイピアの突撃を食らわせようじゃないか!



「はははははは! 流石私、これこそ科学の超越だ! 天上の神に重力の刃を突き立てるのはこの私、私だ!」

 澄み渡る空が万物を呑み込んでゆく地獄絵図に、科学者は大層満足げだ。
 顔を真っ青にして足をばたつかせている奇術師のことなど気に留めることもなく、巨大な建造物が少しずつ解体される様を眺めて悦に入っている。

「ちょっと! 貴方……影朧でしょう! どうしてこんなことするの!」
「どうしてってェ?」

 悠然と空に漂いながら、振り子時計のように揺れる少女に視線を移す。

「科学も技術も、進歩の果てに破滅を見る為にあるんですよ! 貴女が望んだ笑顔なんてのは、ただの精神のバグ、故に無価値!」
「そんなっ!」
「大体、こんなことになった原因はそもそも……」

 その言葉を言い終わる前に、蒼天から飛び来る一つの影があった。

「たあああっ!」
「くっ!?」

 それは勢いよく科学者に突撃すると、それを護らんと飛び出してきた不死者の軍勢を貫く。
 反重力をものともせず、空を海のように泳ぐ玩具の鮫……そしてそれに跨る少女が。手にしたレイピアをビシッと突きつけて、高らかに宣言する。

「みんなの楽しみを邪魔する者は、許さない! スプラ・プルトーイ、見参!」
「チッ、異常者のお出ましですか」

 忌々しげに舌打ちをした影朧は、指を鳴らして自分の親衛隊を呼び出した。
 虚空より現れる、不死者たち。その壁に守られている限り、彼女は無敵なのだ。顔に再び、歪んだ笑顔を浮かべ……

「やっ!」

 それが更に歪むまでに、時間はかからなかった。
 プルトーイの周囲を守るように遊泳する鮫の数が減らない。それどころか、黒雲が空を覆うように、その数は加速度的に増しているのだ。それと反対に、永遠であるはずの不死者の軍勢は目に見えて減っている。

「ふふふ……愛らしい姿になったじゃないか」

 原因は、彼女の異能だ。科学者に改造された不死者たちは、死ぬ事はない。レイピアで貫かれても、砲撃を受けてバラバラになっても……しかし、プルトーイはその全てを、鮫型の愛らしい玩具に変えて行くのである。
 随分と様変わりした彼らは、或いは自由を得たことを喜ぶかのように泳ぎ去り、或いは猟兵を守る盾となる。

「隙あり!」
「うわっ!」

 呆気に取られている隙をついて、レイピアによる打突が決まった。影朧が抱えていた薬剤が何本か、虚空に吸い込まれる。

「り、猟兵さん!」
「笑顔は無価値なんかじゃない! いいかいナユタ、もう少しだけ待っているんだ!」

 そう微笑むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ホール・マン
 あぁ、どっち向きだ!?⋯⋯まぁどぉでもいいや、俺様は変わらねぇ。人は、ヘルメット被った勇者様と迷子のガキしか通さねぇ、燃え尽きた塵と天の河の光は勝手に下に向かって、下に向かって流れてく、そんだけだ。

 !だ様星おはに上ぁやいてっ下足が陽太!も界世も様俺!ぁらてっまちっ返りくっひ!!ハハバカ

 是非面白いもん見せてくれよなぁ、先払いしてそこらへんのゴミ屑ぶん投げてやるからよぉ。いや、俺様がやってるわけじゃねぇぞ、勝手に流れてくるんだ、タダのマンホールの蓋から覗く流れ星みたいになぁ。

 !だんなはい願ぶ叫にリコホた出れ溢らかみ営の下の日!だ杯乾に界世る降星なれたっそく
 !に全安ご日一も日今ハハバカ



 影朧の暴走によって、重力が反転した展覧会で……

「ああ、どうなってんだこれは~?」

 地面に張り付いていたホールは、さして慌ててもいない様子で叫んだ。
 彼にとって、初めから重力の向きはあまり関係がないのだ。

「まあいいか。お空の天蓋から高みの見物と洒落込もうぜ」

 天地がひっくり返っても、彼の皮肉じみた軽口は変わらない。
 天井に張り付いた蓋がズズズ、と重たい音を立てて動く。その向こうには、穴……のようなものが広がっていた。
 どれだけ覗いても、深淵なる穴……彼の向こう側に広がっているものだ。その最奥に何があるのか、誰も知らない。彼自身もだ。
 そこから、数々の塵が空に向けて降り注ぐ。

「今日も一日、ご安全に~!」

 逆さになった重力に従う様で、あちこちへと散らばる大粒の塵が、或いは不死者の兵を、或いは邪悪な科学者を打ち付ける。その中に含まれていないのは唯一人、日時計にしがみついた奇術師の少女だけだ。

「馬鹿が、何をするんだ!」

 舌打ちをした科学者が、床を睨み付ける。が、彼に対して行動を起こすことはできないでいた。
 天井のようになった床に張り付いたそれに対して爆弾や薬剤による攻撃を仕掛ければ、彼女自身が引き起こした重力によりそれらは全て自分へと降り注ぐ。かと言って近づけばどうなるのかは明らかだった。差し向けた不死者の数名が、すでに哀れにも空の彼方へと消えている。

「俺様は変わらねぇ。人は、ヘルメット被った勇者様と迷子のガキしか通さねぇからな」

 感謝しろよ? と言うと、一つ高笑いをするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
鵜飼くん(f03255)と

空なんて飛べやしないし、ごく普通に自由落下する
ま、折角だから楽しもうかな
楽しんでほしかった筈だものね

そのラムプ、君には過ぎた力らしいぜ?
この力だって十分『過ぎてる』と思うんだけどね
だから、僕と大して違わない、凡庸な君の味方をしにいくよ

って偽善を貫けなきゃ、このまま文字通り流れ星ってわけ
夏報さんらしいギャンブルだろ?

『放課後から逢魔まで』
卯月くんの隣に出現できたら、飛来物や戦闘の余波から彼女をかばうのに徹しよう
音を怖がって暴れられても押さえこんで、落っこちるまでは粘る
この音は影朧にも隙を作ってくれるはず

鵜飼くんは、もしかしてこの音が平気なのかな
……確かめてる余裕もないか


鵜飼・章
臥待さん(f15753)と連携
二人共アドリブ歓迎

大変だ…避難誘導とパニックの収拾を兼ねタワーへ移動する
あれ臥待さんがいない
歪んたチャイムを【狂気耐性】でやりすごし外を見れば
…うわあまた無茶してるな
でも好機だ

臥待さんのチャイムで敵が混乱した隙に
UC【万有引力】で昆虫針を投げ【目潰し】をかける
これで僕に気づくのはまず不可能だろう
念の為素早く階層を移動

敵の攻撃精度も下がるといいけど
日時計が壊れるのは時間の問題かな…
二人を助けるのは図鑑から出した鴉の群れに頼む

空へ落ちる時は僕も入れてよね

二度目のチャイムが聴こえたら
再び万有引力で急所狙いの猛攻を
重力に引力で勝つのも不思議でしょう
二人共…無事だったかな?



『夏の地の命の綱』

「クソッ、馬鹿どもが鬱陶しい! この私、この私の道を邪魔して何が楽しいんだ!」

 続く猛攻によって、影朧は明確に弱っていた。と同時に、初めの頃見せていた余裕が無くなっている。
 その双眸が、じろり、と睨み付けたのは、身体に縄を結びつけた状態でバタバタと踠いている少女だ。このまま縄が外れれば彼女は空に落ち、良くて飛行船に墜落、最悪の場合宇宙の藻屑となるのだが、そこまで頭が回っていないらしい。

「降ろしてー!」
「……わかりました!」

 それを、影朧も理解してしまったのだ。
 最後の足掻きか、ただ興が乗っただけか……浮遊したまま、ゆっくりと日時計に近づき始める。

「落第実験と行きましょうか、行こうか……」
「……え!? ま、まって! 嫌、いや——」

 やっと慌て始めるも、もう遅い。その手が、か細い命綱にかけられる……

「夏報さんの時間だよ」

 瞬間。天地が狂った世界に、新たなる狂気を振りまく鐘の音が響いた。
 神経を直接爪弾くような、高いとも低いとも付かない金属音が、影朧も人間も、その精神を等しく狂わせる。科学者は苦痛に顔を歪め、

「っがああああ!? み、耳が!」
「来ちゃったよ。ごめんね、解ってるんだけどなあ」

 音と共にその場に現れた女性にとっても、これは賭けだった。自由な位置にテレポートすることは出来るが空を飛ぶ術は持たない彼女にとって、状況は奇術師の少女と変わらないのだ。
 綱を握り締めながら、遠く……タワーの方を振り返る。もう一人の仲間が、この状況を終わらせることを願って。命綱は今までより更に揺れ、不安定になっている。

「お、お母さん! ナイフは止めて! ナイフは!」

 そちらの方は、奇術師が鐘の音のせいでおかしくなったためなのだが。暴れる彼女を無理に押さえ込んで、期を待った。


「……うわあ、臥待さんまた無茶してるな」

 天頂を差し示す塔の天井に立ち、窓から時計等の様子を眺めていた男性、鵜飼章は、半ば呆れたように呟いた。

「ううっ……ごめんな、不甲斐ない母さんでごめんな」
「インピーダンスは……漢の勲章だぁ!」
「……まあ、これは好機か」

 狂気に耐性のある彼を除いて、塔の中に避難していた人間は全員がマトモに動けなくなっている。故に、窓からうっかり身を乗り出す人間などいないだろう。
 更に、それは影朧にも言える。彼は昆虫標本キットから素早く数本の巨大な昆虫針を取り出すと、些か乱雑にそれらを窓の外へと放った。
 当然、それらは全て反転した重力に従って空へと真っ逆さまに落ちる……ことはなかった。その先端が、時計塔の科学者を差し示す。

「君に引力が働くのは普通のこと……重力が逆さになっても。それが万有引力だ」


「……アア……馬鹿……馬鹿ばかりだ……どうしてこうも馬鹿ばかりなのだ……」
「凡庸なだけさ、夏報さんも、この子も。"過ぎた力"に手を染めた、ただの人間」

 十数本の針が、白衣を真っ赤に染め上げる。
 それでもなお、影朧はその邪悪な生命を失っていなかった。狂気に満ちた瞳が、二人を見据え。

「落ちろ……苦痛に歪んだ表情で、苦しみながら空に落ちろ!」

 命綱を燃やそうとする——

「いや、どうせなら楽しんでくるよ」

 前に。
 飛来する昆虫針の一本を掴み取った彼女は、それで自分から命綱を断ち切った。
 狂った重力に従って、二人の姿は瞬く間に永遠に続く青い空へと消えて行く。
 呆然とその様を眺めていた影朧が、

「……はは、ハハハ……」

 暫くの後高笑いを始める。

「馬鹿が! 恐怖に駆られて狂ったか……馬鹿! 馬——」
「それほどでもないよ」

 鐘が鳴った。
 狂気に囚われる暇もなく、影朧は上を見上げる。たった今そこに現れた彼女は、奇術師の少女を支えるのと逆の手に昆虫針を持っている。
 際限なき自由落下による加速度は、テレポートしても変わらず……影朧の全身を刺し貫く力となった。
 その姿が黒く変色し、塵となって青い空へと吸い込まれて行った。臥待はそれを確認すると、満足そうに一つ微笑む。

「で、これからどうしようかな」

 支えを完全に失った彼女の体は、初めは逆さに落ち、暫くして止まり、結構な高さから地面に向かって自由落下し始めた。
 数刻の後、二人は哀れにも地面に叩きつけられて……

「……全く、無茶しすぎだよ」
「待ってたよ、鵜飼くん」

 その前に、無数の鴉を従えた男が、二人を抱きとめる。

「で、自由落下はどうだった?」
「やっぱり地に足をつけて生きるのが一番かな」

 互いに軽口を叩き合って、地面に降り立つのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『籠絡ラムプの後始末』

POW   :    本物のユベルコヲド使いの矜持を見せつけ、目指すべき正しい道を力強く指し示す

SPD   :    事件の関係者や目撃者、残された証拠品などを上手く利用して、相応しい罰を与える(与えなくても良い)

WIZ   :    偽ユーベルコヲド使いを説得したり、問題を解決するなどして、同じ過ちを繰り返さないように教育する

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 影朧は討たれ、邪悪なランプは力を失った。
 空から降り注ぐ瓦礫の対処も終わり、犠牲者無く終わった事件の中心。変わらず天を指す日時計で……

「わ、私……」

 奇術師の少女は、泣くことも出来ずに茫然自失としていた。

「私、ただ笑顔にしたくて……みんなを……お母さんみたいに……」
「ナユタッ!」

 展覧会の主催者……もとい、少女の母である[卯月・アソギ]も側近を従えてその場に駆けつける。が、掛ける言葉が見つからなかったのかその場に立ちすくんでしまった。

「と、とんでもないことを……私のせいで……!」

 悪意がないとはいえ、異能に憧れて大きな被害を出してしまった彼女。
 それを導けるのは、自らの身に異能を宿す者だけだろう。
スプラ・プルトーイ
(【コミュ力】【優しさ】、必要に応じて【手をつなぐ】を用いよう。)
大変な目に遭ったね。とりあえずこのちょうどいい大きさのやわらかサメ型フロートでも抱っこして落ちつくといい。今回は影朧を封じたランプのせいで危ないことになってしまったけど……君は人々を楽しませたかっただけなのだろう?その気持ちに嘘偽りはないはずだ。楽しませる気持ちを持ち続ければ、あのような危ない物に頼らなくても自分のパフォーマンスを見つけられるはずさ。君が本当に人々を楽しませる日……楽しみにしてるよ。



「卯月君!」

 誰もが掛ける言葉を失って立ちすくむ中で、真っ先に声をあげたのは鮫魔術師の少女だった。
 青空のような顔に太陽のような笑顔を浮かべ、やはり彼女は目の前の相手を全力で励ますことに躊躇いがない。

「とりあえず、このちょうどいい大きさのフロートでも抱っこして落ち着くと良い。まずは、落ち着いて」
「……はい」

 卯月は割合あっさりと頷いて、促されるままにふわふわした風船を抱え込んだ。
 その瞬間、思い出したかのように涙を流し始める。それは、彼女に感情を発露するだけの余裕が生まれた事を意味した。
 その涙を見届けると、プルトーイは両手で少女の右手を包み込んで言う。

「今回、危険なことになってしまったのは確かだ……けど、それはみんなを楽しませようとしてしたことだろう?」
「だけど……どんな理由があったって、私のしたことは……」
「それは、影朧のせいだよ。……僕はね、行動や結果そのものよりも、その人の心が大切なんだと思うんだ」

 さもすれば、感情論とも取れるような言葉。だが、現実が感情を凌駕してしまった奇術師の心には、それが響くのだった。

「その気持ちを持ち続けていれば、きっとあんなものに頼らずとも、みんなを笑顔にできるはずさ、そう信じてる」
「楽しませたい、気持ち……」

 少女はそう呟くと、目を伏せてぎゅっとフロートを抱きしめた。その目に、もう涙は無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
臥待さん(f15753)と
二人共アドリブ歓迎

まあまあ
大した被害も出なかったしいいじゃない
少なくとも僕らは楽しませて貰ったし

僕の両親は平凡だから
憧れるお母さんがいて羨ましいな
ね、お母さんのどんな所が好き?
照れるかもしれないけどこの機会に言っちゃおう

うん…親子も色々だけど
アソギさんはきみを想ってる筈
はいここで催眠術をかけます
アソギさんも段々素直になるよ…
ねっ、仲直り

臥待さんの手品…?
存在が手品って感じなのに…しかも宴会芸…
会社員は大変だね…怖い怖い
よし試しに見てあげよう
ハードル上げてないよ
社会貢献だよ
覚束ない手つきも微笑ましく見守って

僕ね、面白い事にしか興味ないんだ
笑わせられたら天才だよ
間違いない


臥待・夏報
鵜飼くん(f03255)と

うちもまあ普通の家庭だし
仲良くも悪くもなく、最近とんと疎遠だし
ましてや親の側の気持ちなんて一生わかる気もしないけど……

うん
誰かに憧れて、何かを好きになれるのは、それだけで素敵だと思うな

というわけで卯月くん
謝るのはいいからさ、ちょっと奇術を教えてくれない?
写真になるのも転移するのも単なるタネ無し手品だから、夏報さん超初心者なんだ
酒の席でウケをとれる、簡単なやつをひとつ頼むよ
それでおあいこってことで

……観客が鵜飼くんかあ、それはハードル高くない?
うわあ芸術家は言うことが違う
習いたての手品が上手くいくかはわからないけれど
卯月くんには笑って「ありがとう」を言おう
楽しかったよ!



『世界を崩したいなら泣いた雫を生かせ』

「だけど……私があんなラムプを使ったせいで、皆さんにもご迷惑を……」
「まあまあ、大した被害も出なかったから良いじゃない」

 未だ心の整理がつかない少女の肩を叩き、章は優しく彼女を慰める。

「影朧に対処するのは僕らの仕事、気に病むことは無いんだよ。幸い、すぐに倒せたし」
「夏報さんのおかげでね」
「そんなことよりも、お母さんについて教えて欲しいな」

 話題を変えるためか、臥待と共に、少女を質問責めにし始めた。
 突然話の的にされたのを感じたのか、遠巻きに様子を伺っていた主催者が驚いたような顔をしていた。と同時に、いつの間にかその後ろに回り込んでいた怪奇人間の片割れがその背を日時計まで押して行く。

「な、何すんだおい!」
「お、お母さん」
「鵜飼くんも夏報さんも、普通の家に生まれたからさ。尊敬できる親が居るってのは、とっても良いことだと思うんだよね」
「そう。だから、この機会にお母さんの好きなところを教えて欲しいな」

 突然の提案に、ナユタはぎょっとした顔で彼の方を見上げ……その瞳を覗き込んだ。
 薄く細められたオッドアイを見つめ、少女はみるみるうちにボーっとしたような顔になってしまう。

「オレのナユタに何してくれた!」
「素直になるおまじない」
「お母さんは……」

 怒るアソギと、ことも無さげに応える鵜飼の会話に割り込んで、奇術師は声を出す。

「毎日、文化を守るために頑張っていて……演劇もとっても素敵で……何より、ナイフの扱いが上手なのが……大好き」
「っクソ………」

 突然に素直な感情をぶちまけられることに慣れていなかったのだろう。主催者は明らかに顔を真っ赤にして、天を仰いだ。

「皆の笑顔を護る、私のヒーロー……」
「ああ分かった! 分かったからもうやめてくれこっ恥ずかしい!」

 手で顔を覆って叫んだ女性は、吹っ切れたかのようにずかずかと娘の元に駆け寄るとその右手を取った。
 正気に戻ったのか、少女の瞳に光が戻る、……と同時に、顔が分かりやすく真っ赤になった。

「わわわ……私、何を……?」
「よーく分かった。お前は洗脳とかにはすこぶる弱いんだ、純粋だから。だから今度からはもう少し人を疑うことを覚えろ、いいな」
「さっき私何を言って──」
「いいな!」

 少女が慌てたように何度も首を振るのを見届けて、アソギは娘の手を取ったまま立ち上がった。
 母親が猟兵たちに向けて深々と頭を下げると、娘もそれに倣って頭を下げる。

「今回は、オレたちを助けてくれて、展覧会を護って……ナユタを助けてくれて、本当にありがとう。心の底から礼を言わせてもらう」
「わ、私もありがとうございました。もうこんなことないように、気を付けるけど……いつか立派な奇術師になってみせますから! 本当に、どうお礼したらいいか……」
「あー、それならさ、ちょっと奇術を教えて欲しいんだよね」

 先ほどまで空中に突然現れたりしていた人間の台詞とは思えないが、少女は喜んでそれに応じた。

「で……ここでこのカードを……捲るときに……」
「ほうほう」
「楽しそうだなあ、夏報さん」

 二人を遠巻きに眺めながら、鵜飼は呟く。
 すると、隣で同じように娘を見守る母親が話を始めた。

「あいつはアンタの彼女なのか?」
「違いますね。ただ馬が合うから、よく一緒にいるんです」
「そうかよ。それにしちゃ随分と……」
「おーい鵜飼くん、完璧にマスターしたよ!」

 銀髪の女性は、一セットのカードを片手に黒髪の男性に駆け寄る。

「すごいね。それじゃ、見せてよ」
「そう来ると思ったよ……ハードル高いよ、やるけどさ」

 言葉とは裏腹に割合楽しそうに、臥待は奇術を始めた。
 カードをよく切って、観客の選んだカードに印をつけ、それを真ん中に差し込む。それから、指を一つならすと……

「じゃーん! ダイヤの6は一番上にやって来ました!」
「すごいね。最初にカードを伏せる時に二枚重ねにして見えないようにしたとこなんか……」
「おい!」

 一瞬で種を見破られ、奇術師は驚き、怪奇人間は憤る。

「そこは気づかないふりをするとこだろ、空気読んだらそうなるだろ!」
「僕は本当に面白いことじゃないと笑わないよ、天地がひっくり返っても」
「シビア!」

 子供のようにぎゃあぎゃあと言い合いを始める二人を、互いに打ち解け合った母子が微笑ましく眺めていた。
 展覧会を、西に沈む太陽が照らしている……非日常の世界が消え、日常へと帰って行く。しかし、そこには確かに残るものがあった。奇術師はいつか、目の前の男性を笑わせて見せると宣言し。そんな些細な変化を残して、今回の事件は終わりを告げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月29日


挿絵イラスト