Intense Zombeat!!
●
「よしよし、今年も順調に育っているな」
一人の男が首に巻いたタオルで顔の汗を拭く。
アポカリプスヘルの大地は基本的に荒廃して痩せた土地ばかりである。
しかし、そんな荒れ果てた場所にも希望はあった。
拠点の存在と、農場の存在だ。
オブリビオン・ストームの前には全てが無に帰ってしまうが、人類が生き残るために必要な衣食住の内の『食』を支える大切な生産地帯は紛れもなく希望そのものなのであった。
特に今の季節ならキャベツやモロヘイヤ、キュウリやナス、ピーマンといった夏野菜なども収穫できる大事な時期である。
「一旦休憩に――ん? あれはなんだ?」
農家の男が目を細めて見やると何かが近づいて来るのが分かる。
爛れた肉体、歪んだ表情、そして明らかにヒトのものではない右腕……紛れもないゾンビの群れだ。
それも一人や二人でない、何十という数が大挙を成して農場を目指し近付いて来ている。
「おい! 拠点に避難するぞ!」
農具をその場に放り捨て準備する間も無く大慌てで走り出す農家達。
農場は今まさに害獣ならぬ害ゾンビによって食い荒らされようとしていた。
●
「ゾンビって野菜も食べるんですね。一つ勉強になりました!」
こんな時でもカマル・アザリー(永遠の月・f16590)はのんきだった。
痛い視線を感じたのかすぐに面持ちを固くすると言葉を続けていく。
「今回は先輩達にはアポカリプスヘルでのゾンビ掃討をお願いしたいと思います」
今回の舞台は遮蔽物の少ない大きな菜園。
土壌の関係か、拠点からは少し離れた場所で開かれている。
このだだっ広い菜園に大量の強化ゾンビが出現する、これを撃破するのが今回の内容である。
「ゾンビは手を加えられてるらしくて触手や麻痺毒を使うこともあるそうです。距離には気をつけてください」
ゾンビは基本的に例外なく菜園を荒らそうとする。
猟兵が攻撃を仕掛ければ注意を引くのは簡単だが殆どの場合は戦闘の余波で農場が多少の被害を被ることになるだろう。
「なのでゾンビを倒した後は皆さんで農業をやりましょう!」
復興も兼ねた初心者歓迎農業体験コースもおまけで付いてくる。
わからなければ現地の人間に聞けば教えてくれるだろう。
「ではゾンビ退治頑張ってくださいね、先輩!」
畑と食と希望を守るために、彼らは荒れ果てた戦場へと送り込まれていくのであった。
ぷっさん
お久しぶりです!
通常シナリオはアルダワ戦争以来のぷっさんです。
今回はアポヘルでゾンビと戦うシナリオです。
敵はゾンビばかりなので遠慮なく倒しちゃってください。
舞台になる菜園もオブリビオン・ストームが通れば跡形もなく消えてしまうので故意でなければ多少荒らしてしまっても怒られないと思います。
ゾンビの集団、そして主犯格を討伐した後は農場の整備をしてください。
簡単な畑仕事でOK! 人手が欲しければプレイングで指定いただければカマルがお手伝いします。
それでは素敵なプレイングをお待ちしております!
第1章 集団戦
『改造屍人『インテグラルアーム』』
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POW : 暴虐たる捕縛者
【巨大化能力】を使用する事で、【全身に触手】を生やした、自身の身長の3倍の【第二形態】に変身する。
SPD : マルチプルインテグラル
【無数】【の】【触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : ポイズンテンタクルス
【触手】から【粘液】を放ち、【それに含まれる麻痺毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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地を這う様な呻き声を鳴らしながらゾンビがノロノロと歩み寄ってくる。
動きこそ遅いものの、放置すればいずれ数の暴力によって全てが破壊し尽くされてしまうだろう。
「ガァァァァァァ!」
触手に絡め取られた柵が捻り折られて捨てられる。
ゾンビによるゾンビの為の饗宴が始まろうとしていた。
好き勝手などさせてはならない。
この雑音を止められるのは猟兵だけなのである。
ラブリー・ラビットクロー
あれがゾンビ?ノロノロしてるぞ簡単だな
ラビットブレスでやっつけちゃえば……
あ
お野菜
しょーがねーのん
今回はチェーンソーで戦うぞ
あぇ
けっこー重いんだ?翼を使って空から頑張ろー
おえー
なんかニョロニョロ生えてる
チェーンソーで触手を払いながら戦うのん
出来るだけ野菜を傷付けないよーに頑張るぞ
でも多分血飛沫が掛かっちゃったら
きゃおっ!
って吃驚してチェーンソーを落としちゃうかも
そーしたらしょーがねーなん
バットに持ち替えてぶっ飛ばすん
テッテレー
アポカリプスナイン(自分が考えたさいきょーの球団名!野球ルール知らないぞ)の力を見せてやるんだ
おいマザー
ゾンビ来てるか?
『ゾーンエレキテルと言う曲は見つかりませんでした』
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「あれがゾンビか。ノロノロで簡単そうだな。このラピッドブレスで……」
ガスマスクを纏った少女、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)が火炎放射器。取り出して迎え撃とうとするが、ふとラブリーはこの農場に沢山あるであろう野菜のことを考えた。
折角作った物を一瞬で消してしまうのは忍びないと思った彼女は極力畑に被害の出ない方法を選択することにしたのだった。
「……しょーがねーのん。今回はこれで頑張るぞっと」
ふらふらとした手付きで重そうにチェーンソーを取り出し、六枚の羽をぴこぴこ動かして浮遊したかと思えばおぼつかない動きでブンブン振り回して行く。
インテグラルアームは緩慢な動きでラブリーを捉えようとするが、代わりにその腕に機械鋸の刃が食らい付いた。
「ぁえ? けっこー……重い。そぉーれ」
振り回す度にドゥルンドゥルンと唸りを上げた刃が触手を裂き、肉を裂いて、赤黒く生暖かい体液をぶち撒けながら汚い華となって荒野に咲き乱れる。
「きゃおっ!?」
血飛沫が返り血となってラブリーに降り掛かる。
ガスマスクをしているため問題はないが、驚きの余りチェーンソーを放り投げてしまう。
宙を舞ったチェーンソーがまた別のゾンビに刺さって一人でに頭からその肉体を掻っ捌いて行く。
「グオオオォ! アアアアアアッ!」
痛みか、怒りか、インテグラルアームが触手を伸ばしてラブリーの翼を押さえ込もうとするが最早まともな視界を確保出来ないゾンビの攻撃はただウネウネと空を掴むばかりであった。
「あー、落としちゃった。そしたら次はこれを使うのん。テッテレー」
ラブリーがまたもやゴソゴソと取り出すと今度は少しデコボコになった金属バットが顔を覗かせる。
素振りをしてみるとブォンブォンと空気を切る音が繰り返される。
「これがアポカリプスナインの力、見せてやるんだ!」
力を込めて大振りの一発。
激しいスイングがインテグラルアームの腹に叩きつけられる。
ゾンビは吹っ飛び、また別のゾンビにぶつかっては雪崩れ落ちて行った。
「おー、吹っ飛んだ。おいマザー、他にゾンビ来てるか?」
『検索……ゾーンエレキテルと言う曲は見つかりませんでした』
マザーと呼ばれた電子プログラムがスマートフォンからチグハグな答えを返す。
周囲を警戒してみると、起き上がったゾンビか新しいゾンビかは分からないがその姿がガスマスク越しからもよく見える。
ラブリーはバットを握る手を強くして次のゾンビにさいきょーの球団を教え込みに向かうのであった。
成功
🔵🔵🔴
石守・舞花
野菜畑を襲うゾンビを喰らえば、実質野菜を食べてるのと同じですよね
ヘルシーです。ナイスです
最近ジャンクフード食べすぎて少し太ったいしがみさんには朗報です
というわけで今日のいしがみさんは食欲全開モードです
【ブラッドガイスト】で魔切り包丁を殺戮補食態にして、至近距離に飛び込んでいきます
巨大化した敵にとって、間近にいる小さい人は逆に狙いにくいことでしょう
ちょこまかと走り回りながら触手を【部位破壊】して戦力を削ぎ落としながら、急所を突けるタイミングを見計らいます
ダメージを受けたら【激痛耐性】で耐えます
……やっぱりゾンビを直接食べるのはなんか嫌なので、エネルギーだけ【生命力吸収】で済ませておきます
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎
何処の世界も害獣は悩みの種じゃのう。いや、害ゾンビじゃったか?
故郷でも害獣退治はよくやっているでな、わしに任せるがよいぞ
まずは農場の被害を食い止めねばなるまい、囮になって彼奴らの足を止めるかの。
【巨狼マニトゥ】に【騎乗】しゾンビの配置に注意して囲まれないように注意を引くのじゃ
『ポイズンテンタクルス』の粘液は弾道を【見切って】回避、当たりそうなものは羽織で打ち払ったりしつつ農場から引き離し、頃合を見て敵の周囲の空間より【氷の鎖】を呼び出して束縛と凍結で動きを封じてやるわい
動きが止まったら周囲の地の精霊に呼びかけて、人型に実体化させた精霊の格闘攻撃で凍り付いた敵を粉砕するのじゃ
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「一つ良いですか? あのゾンビは野菜を食べてますね」
「そうじゃのう、ここは菜園じゃからな」
「つまりアレを食べたら実質野菜を食べているのと同じですよね」
野菜を貪る一部のゾンビを見て石守・舞花(神石の巫女・f17791)が『牛や豚は草を食べてるから野菜理論』を展開する。
「その理屈じゃと肉という食べ物が無くなりそうだがの。とりあえず害ゾンビ退治とゆくぞ。マニトゥ!」
エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)が使役する巨大な狼であるマニトゥに騎乗し、耕された柔らかい土を踏んでゾンビの群れへ飛び込んでいく。
ゾンビは動きを止めて一斉にエウトティアのいる方向へと振り返る。
「アァァ……アアアア!」
何を食べるか等関係ない、ただ獲物を見つければ無差別に喰らうだけの肉の塊が一人と一匹の獲物を視界に入れ、地の底を這うような叫びを吐き出していく。
ゾンビはマニトゥごと拘束しようと触手を動かし、ヨロヨロと進行方向を変えて囲い込みを仕掛けようとする。
「今日のいしがみさんは食欲全開モードですよ。ゾンビの肉は実質野菜、ヘルシーです」
がら空きのゾンビの背中に刻まれる舞花の【魔切り包丁】による一撃がゾンビを喰らう。
爛れた肉体を引き裂き、赤黒い血飛沫をあげる。
捕食衝動が強めの舞花ですら流石にゾンビをそのまま食べるのは躊躇したのか、包丁はゾンビの中に残る僅かなエネルギーを吸収するに留めた。
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「ウゥ……アァァァァッ!!」
骨の軋む音、筋肉が肉体の内側で激しく動き回るとゾンビの身体が巨大化し、全身が触手に覆われていく。
増えた触手が舞花を襲う、麻痺毒による粘液に包まれた触手が対象の自由を奪おうと唸り、伸ばし、捕らえにかかる。
「大きいのも困り物ですね。最近ジャンクフードを食べ過ぎて少し太ったいしがみさん的にはもっと太った相手がいて安心出来るのでナイスですが」
舞花が襲い来る触手を右に左に走り回り、時々後ろへステップしながらいなしていく。
体格差が大きく開いてしまい、ゾンビの攻撃が舞花へ及ぶにはかなり緻密な操作が必要となってしまっていた。
当然ゾンビにそこまでの器用さはなく、空ぶった触手が目の前を通るたびに包丁の鋭い一閃が削ぎ落とす。
「充分な時間が整ったぞ。水の精霊よ……咎人を搦め捕るのじゃ」
農場を駆け回っていた舞花に対してエウトティアが静かに言を紡げば冷たい空気が辺りをなぞる。
同時に氷の鎖がゾンビの周囲に現れ、その身体に絡み付いていった。
「ガァァァァァァ! グオオオオオ!」
舞花に気を取られ、鎖に縛られたゾンビは次第に物言わぬ氷像となって果てていく。
エウトティアは更に術式を展開、人型に成した精霊の拳と舞花の包丁を突き刺す一撃が固まったゾンビに次々と降り掛かる。
「巨大になっても動けぬのであれば置物と変わらぬのう」
バラバラに砕け小さな水滴となって溶けていく氷を破片を眺めながらエウトティアは巨狼と共に未だ湧き続けるゾンビを迎え撃つのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ウィリアム・ブリンガー
【ゾンビ】
アポカリプスでの害獣駆除、慣れた仕事だ
今回の仕事は頼れる仲間もついているし、楽…とは言わんが、問題なく仕事は完遂できるだろうな
接敵と同時に『魔導式音響閃光弾』を投げ敵を怯ませ、ルチアが突入する隙を作る
彼女が突入した後は、『麻痺弾』を装填した『スナッピング・タートル』の『援護射撃』でルチアに集まる群れの行動を鈍らせよう
…10も年下の少女に前線を任せるのもどうなのかと仕事前は考えていたが、無駄な心配だったな
猟兵に年齢は関係ないということか、ならば遠慮なく頼らせてもらおう
ルチアの活躍で態勢を崩した敵を見つけ次第、『レイジング・ブル』から放つ《爆龍弾》で敵を仕留めていく
※アドリブ歓迎
ルチア・クチンスカ
【ゾンビ】でウィリアムと…
[POW]
ん…化物殺しなら任せて…
マリヤ以外の人と…一緒に戦うことは初めてだけど…精一杯頑張るから…
ウィリアムが作ってくれた隙をつき…敵集団に突入する…
敵からの攻撃は…退魔剣の【武器受け】で防いで…反撃で…退魔剣での…光属性の【属性攻撃】を加える…
ウィリアムに攻撃が行かないように…暴れて引き付ける…
ある程度敵が集まったら…選択UC発動…退魔剣をメイスの形に変形させて…叩きつけて…敵を纏めて光に還す…
ん…こんな感じかな…
[アドリブ歓迎]
●
(ひい、ふう、みい……敵の位置、距離共によし)
ウィリアム・ブリンガー(奪還者・f27467)は遠くで無秩序に彷徨いているゾンビを数え、筒状の兵器に異常が無いかを今一度確かめる。
「準備はいいか?」
「ん……大丈夫。しっかり前に……でるから」
少女の言葉を受けたウィリアムは武器の安全ピンを引っこ抜き、ゾンビの群れの中へとソレを投擲した。
一瞬の静寂の後に白い閃光とけたたましい金属音が荒野に炸裂する。
音と光が退くと同時にルチア・クチンスカ(太陽と月・f27535)が前へと躍り出る。
ゾンビに肉体的ダメージこそないものの視覚と聴覚を唐突に奪われ、ゾンビ集団は混乱に囚われていた。
「動きが単純……これなら……いける」
めちゃくちゃに振り回される触手が【退魔剣アヴァタル】の剣の腹にぶつかる。
触手はぐにゃりと曲がり引っ込んでいくが、ゾンビの元に戻る頃にはルチアの反撃によって切断、光属性の効果によって浄化され灰になって消えていく。
ゾンビの感覚器官が戻ってくる、しかしその時は全てが手遅れとなっていた。
「化物よ、塵に……帰れ!」
メイスへと形を変えた退魔剣が大地に激しい打撃として刻まれていく。
メイスの一撃が地面を抉り取って形を変えたのとゾンビの姿が一瞬にして粒子レベルで消滅するのはほぼ同時であった。
●
「10も歳下の少女に前線を任せるのもどうかと初めは思ったが……無駄な心配だったな」
少し離れた位置でウィリアムが独りごちる。
そろそろゾンビも感覚を取り戻し、ある程度はルチアに狙いをつけて動き始めてくる頃合いを感覚から察知していた。
ルチアのユーベルコードによる派手な一撃の発動を確認するとウィリアムは己の身の丈くらいはあるだろう巨大な銃を両手で支える様に構え、狙いを定めていく。
【レイジング・ブル】、別名『怒れる雄牛』と呼ばれる兵器が今か今かと睨みをきかす。
「コイツは効くぞ」
ウィリアムの引き金を引く手に力がこもるのと同時に怒り狂う雄牛の激情が放たれる。
強烈な反動にウィリアムの筋肉が一瞬強張るが、構わずに二発、三発とその怒りを叩きつけていく。
爆音が鼓膜を突き刺し激しく震わせる。
肉が爆ぜて散りゆく様は巨大な花火の様にさえ見えるのであった。
ルチアのユーベルコードによってバランスを崩していたゾンビにとっては全てが致命打となる。
焦げ臭いニオイとバラバラに散った肉と千切れた触手、そして血液がそこにゾンビがいたであろう痕跡がどこまでも広がっていたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エルザ・メレディウス
アド◎ 絡み◎
なにかを守るための戦い...私がこれから心がけなければいけない戦い。。。
復讐者ではなく、民を守るものとして今日は戦わせて頂きます
なるべく農場には被害を出さないように注意が必要ね...
敵の注意を惹くように、大胆に動き回って相手が私に向くように【誘惑】致します
私へ相手が向いたら、なるべく農作物の少ない方へ敵を誘導します
仲間の猟兵様がいらっしゃったら【集団戦術】も活かしながら、相手を上手く【だまし討ち】できるように動いてみようかしら...?
戦いの際には、【残像】を複数作り出して、回避率↑
隙を見て、剣刃一閃で一体づつ敵のゾンビを切り倒していきます
多少の触手による攻撃は【覚悟】して受けます
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「この戦いは何かを守るための戦い。私は……」
エルザ・メレディウス(太陽を目指して・f19492)は刀を構えて走りだす。
ゾンビの群れは慣らされて柔らかくなった土の上を跋扈していた。
エルザは抜いた刀でゾンビの脇腹を横から撫でてその体を二分割にしては、別のゾンビに向かっていく。
「グオオオォ!!」
ゾンビも一体ずつ斬られて気付いたのか、体躯を巨大化させて触手で包んだ身体を揺らしながらエルザの方向へと向かっていく。
「触手が増えましたね。でしたらこれで……!」
触手の塊が次々と絡めとろうとした瞬間にエルザが自身の残像を生み出す。
目の前で残像を生み出せば目の鋭い者や動きについていけるものであれば見破ることも可能であろうが、ゾンビにはその動きについていけるものが誰一人としていなかった。
エルザは分身に紛れて再度ゾンビに接近を試みる。
触手が残像の身体を貫かれ霞となっては無に帰っていく。
一人、一人と残像が消えていく度に触手の精度が上がっているのかエルザの頬を何度も気味の悪い感触が掠めていた。
「剣刃一閃!」
刀を振る度に触手が、ゾンビが切断されては動かなくなる。
白銀の刃が一体仕留めると血を浴びて赤黒くその刀身を染めていく。
しばらくするとゾンビの声が何も聞こえなくなる。
後には返り血と触手のぬめりを全身に纏ったエルザが刀を血を振り払っている姿だけが畑に残っているだけだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『ドクター・デストルドー』
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POW : 死霊のおもてなし
【自身が改造手術を施したゾンビ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : ホスト・オブ・ザ・デッド
【任意の数のゾンビホスト達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 悪夢の毒々パーティー
【散布装置】から【ゾンビ化ウィルス】を放ち、【ゾンビ化とゾンビ操作能力】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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「あーあ、困るなぁ。僕の大切な道具をこんなにしてくれちゃってさ」
ゾンビの残骸が広がる血生臭い農場に新たな声がやってくる。
その姿こそまだ年端もいかない少年の様な面立ちだが、その瞳の内側は明らかに好奇心と加虐心に支配された狂気そのものであった。
「そうだ、代わりに君達をゾンビに変えちゃえばいいんだ。そうしよう! 弁償ってやつだね」
少年…… ドクター・デストルドーと呼ばれるオブリビオンはニタリと薄気味悪い笑みを浮かべた。
放っておけばこの辺りの人間全てがゾンビ取り込まれてしまうだろう。
そんなことをさせてはいけない、猟兵の魂の鼓動を動く死者に見せつけるのだ。
ラブリー・ラビットクロー
連携歓迎
んな?
らぶもゾンビになっちゃうのか?
あんなノロノロにょろにょろになっちゃうんだ?
ぇぇ…
そんなのやー…
らぶはもっとセカイの為がんばりたいん
マザー。らぶゾンビになっちゃう
【健康管理に気をつけましょう】
ぐす
気をつけるのん
バット、ぬるぬるになっちゃったな
らぶもーあれ使いたくなーい
しょーがねーのん
よいしょっ
チェーンソーまた使うのん
ゾンビになるのとっても怖い
だかららぶもよーしゃしない
返り血も怯まないんな
今のらぶは、いつもより沢山(6倍)強いんだから
(約62秒後)
なんだか眠くなっちゃった
らぶ、ゾンビになっちゃうのか?
後はみんなに任せるのん…
ししょー
ごめん
なさ
💤
(ウィルスはガスマスクで対策します)
エルザ・メレディウス
アド◎絡み◎傷や苦戦◎
覚悟はいつもしているのに...相手が子供の姿をしていると迷ってします。私は本当にだめですね。それでも、農場は守るため...あなたをここで斬ります
【覚悟】を決めて、剣を握り相手の元へ
【残像】を作り出しながら、『死霊のおもてなし』で生み出されたゾンビの攻撃をそちらへ【誘惑】いたします
邪魔になるゾンビは白王煉獄で一気に倒して、ドクター・デストルドーへ攻撃できるように
自分が傷つくことで相手を斬ることを正当化しようとしているのでしょうね、私は。ドクター・デストルドーの攻撃は受ける【覚悟】でございます。
自分を危険にさらした上で、【捨て身の一撃】で・・・敵を斬ります...
●
「んな? らぶもあんなノロノロにょろにょろになっちゃうのん?」
デストルドーが操るゾンビを見たラブリー・ラビットクローのガスマスク越しに涙が溢れる。
自分もゾンビになってしまうのかという恐怖が脳裏にしがみついて離れない。
「マザー……らぶ、ゾンビになっちゃうよ」
『健康管理に気をつけましょう』
気休めになるのかならないのか分からないAIの返答、だがそれを信じて前を向く他ない。
「いっそゾンビになっちゃえば? その方が楽だし怖がることも無くなるよ!」
デストルドーがケラケラ笑いながら怪しげな機械のスイッチを入れ、ゾンビの何体かをけしかける。
「そんなのやー……」
「そんなことはさせません。白王煉獄!」
その直後にゾンビが縦から裂け、燃え盛っては灰となって消えた。
「覚悟はいつだって出来ているつもりでしたが……どうしても迷ってしまいますね」
エルザ・メレディウスの刀の炎がふっと消え、滴る血すらも浄化してみせる。
「じゃあ準備が整うまでの間はコイツらで遊んでてもらおうか!」
デストルドーが自分で改造を施したゾンビ達を無数に操り、戦意を見せるエルザを襲うよう指示を出すのだった。
●
エルザは【白王煉獄】の炎で一体ずつゾンビを斬り伏せては捨てていく。
しかし、数を重視したゾンビの面々に次第に押されていった。
ゾンビの動きこそ緩慢で攻撃方法も単純な引っ掻きや噛み付きなのだが、数がその単調さをカバーしていた。
「くっ……流石にこの数は厳しいわね」
次第に増えていく傷や噛み跡。
エルザを取り囲むゾンビの数が増えれば増えるほど刀を振るう手が鈍くなっていく。
戦うと決めたのに、オブリビオンの姿を見て戦うことを躊躇いそうになって。
流れる血が恐怖よりも無念に近い情念を吐き出させていた。
「らぶ、ゾンビになるの怖い……」
一方でラブリーは震える手を抑えて武器を取り出す。
今度はもう驚かない、返り血だって気にするもんか。
「だからよーしゃしない! 今のらぶは沢山強いんだから!」
冴え渡る頭脳、どこを攻撃してからどちらへ避ければ良いのか的確にかつ瞬時に判断してチェーンソーを振り回す。
【アルジャーノンエフェクト】によって六倍の処理能力を得たラブリーは周りの想定を遥かに凌駕していた。
エルザを取り囲んでいたゾンビは次々と肉片に変わり、ゾンビ化の元となる可能性があると真っ先に踏んだデストルドーの後ろにある散布装置をデストルドーごと叩き壊そうとブンブン振り回す。
「うわっとと! 危ないなぁ! 僕にも傷がついちゃったじゃないか!」
ゾンビを盾にして直撃を避けるも、機械は鉄屑となり、自身に害なす意外な一撃にデストルドーは少し慌てていた。
「あなたをここで……斬ります!」
そして燃え盛る一太刀、ゾンビに灯された炎はデストルドーへと燃え移り、火ダルマとなってはのたうち回る。
「なんだか眠たいな……ししょー、ごめん、なさ」
ラブリーはユーベルコードの反動で混濁する意識の中で夢か幻か、己が『ししょー』と慕う人物の姿を垣間見て暗闇へと沈むのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウィリアム・ブリンガー
【ゾンビ】
話に聞いていた通り、所属旅団の団長とよく似た顔をした敵だ
多少やり辛さは感じるが…ルチア達が見ている前で、無様は晒せん
…仕留めさせて貰うぞ
ゾンビの群れに突撃するルチアを「信頼」し、前線を任せる
彼女を『スナッピング・タートル』の【援護射撃】で後方から支援しよう
ルチアがマリヤへとバトンタッチしたのを見たら、『スナッピング・タートル』を投げ捨て『レイジング・ブル』を構え、マリヤとタイミングを合わせ《爆龍弾》をドクター・デストルドーに撃ち込もう
【砲撃】を、ヤツが倒れるまで、何度でも撃ち込む
消えろ、俺の前から
俺の知る顔で、外道を働くんじゃぁない…!
ルチア・クチンスカ
【ゾンビ】
[POW]
あれが敵の親玉…でも…問題ない…
こっちには…マリヤも…ウィリアムも…いる…
さっきと同じように…ウィリアムに後方を任せて…私が前に出る…
ボスのUCにより…現れたゾンビに対しては…こっちの選択UCによる…対UC特効の【退魔剣】の一撃を振るい…無力化する…
そして…ボス本体に隙が出来たら…
(瞬間、ルチアからマリヤの姿へと服装や装備ごと変わる)
あたし(マリヤ)の[拳銃](弾は爆発【属性攻撃】の弾)とウィリアムの銃による、銃弾のフルコースよ
知り合いに似た顔で悪さする輩には、たっぷりサービスして、蜂の巣にしてあげるわ
[アドリブ連携歓迎]
●
「あれが敵の親玉……」
ルチア・クチンスカは前へと飛び出し退魔剣を強く握りしめる。
目の前には無数の強化されたゾンビが腕を伸ばしてひしめいていた。
それをユーベルコードの【魔を断つ剣】が同じくユーベルコードで生まれたゾンビを消していく。
『自分一人だけ』だったならどうなっていたのだろう、ルチアの脳裏には剣を振る傍でそんな思考も顔を出していたり
だがそんな『もし』を考えることすら野暮だろう、何故なら――。
「今はマリアも……ウィリアムもいる……」
――共に戦える仲間がいるから。
「アハハハ! 無駄無駄、コイツらは幾らでも湧いてくるよ! 数なら沢山いるからねぇ!」
事実、個体性能を下げた分を数に回したのかゾンビの量は触手のものとは比べ物にならない程溢れかえっている。
「私は……負けない……!」
剣だけでは倒しきれない数の腕がルチアの目前まで伸びる。
しかし、ルチアが処理しきれなかったゾンビの額に何かが貫通し、小さな穴を開けてその場に崩れ落ちる。
「確かに話に聞いた通り、うちの団長とよく似た顔をした敵だ」
ウィリアム・ブリンガーの援護射撃がルチアの届かない部分をカバーしていく。
連射に優れた自動小銃『噛みつき亀』こと【スナッピング・タートル】の弾丸が何度も何度も食らい付く。
アクション映画さならがに呻き声をあげて倒れていくゾンビ、そしてその奥には自分の見知った顔そっくりのオブリビオン。
「多少のやり辛さは感じるが……」
しかし今は大切な仲間と共にいる、自分だけが惑わされるわけにはいくまいと強く胸の内に檄を飛ばす。
「仕留めさせてもらうぞ!」
次に小銃が火を噴いた時、デストルドーの周りにゾンビがいなくなる瞬間が生まれたのだった。
●
「なんだって!? あれだけいた僕の道具が……」
焦りと憤りが生まれるデストルドー、まさかここまでの速さでゾンビが一蹴されるとは思わなかったのだろう。
「そんなこと言ってる場合じゃなくて?」
そして目の前にいるのは先程までゾンビ相手に剣を振り回していた黒髪の少女とは別の少女が立っていた。
いや、『切り替わった』と表現する方が正しいのかもしれない。
髪型も服装も話し方もまるっきり違うが、確かにルチアのいた場所に置換される形で銃を構えたその少女はそこにいたのだ。
「俺も続くとしよう」
ウィリアムがスナッピング・タートルを投げ捨て代わりに触手ゾンビ戦でも使用した大型兵器【レイジング・ブル】を構える。
「知り合いに似た顔で悪さする輩は」
「消えろ、俺たちの前から……!」
二人が同時に発砲を始める。
自動小銃の実弾が豆鉄砲に思えるレベルの轟音と爆発。
艦砲射撃と見間違うかと思う程の一斉射撃がデストルドーに襲いくる。
もはやデストルドーの声すら爆音に溶けて聞こえない、二人の猟兵はただ知り合いの顔にそっくりの外道に天誅を下すのみであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎
小わっぱがよく吠えよるわ。償いと言うのならば、こちらは農場への被害とわしらの手間賃を補償してもらおうかのう?
世間にご迷惑をかけるいたずら小僧にお仕置きじゃ。
(『悪夢の毒々パーティー』に対して)
まずはその邪魔な玩具からお片付けからじゃな。
【精霊石】の力を借りて辺り一帯の精霊を呼び集め、赤く輝く破壊の光で『散布装置』を消し飛ばすのじゃ。
放たれた『ゾンビ化ウィルス』は炎の精霊に請うて清めてもらうかの。
『ドクター・デストルドー』本人には【巨狼マニトゥ】を嗾けて追い回して貰うのじゃ。
ほれ、マニトゥに遊んでもらうがよいぞ、子供は外を駆け回って遊ぶものじゃ。
ノウェム・ノインツィヒ
SPD/連携・アドリブ有
【挑発めいた意味のない会話で時間を与え】
玩具同然であるガラクタの片付けまで猟兵がしないといけないのか。億劫だ。それに道具を散らかすだけ散らかし、その責任を転嫁するとは恐れ入る。研究者気質は整理整頓が苦手と聞くが、汝もその類か?
【UC使用・味方には下がるよう警告】
打ち止めのようだし、掃討開始だ。数の優位性は質量で崩れると知っているか?何体かは逃れるだろうが、誤差の範囲だ。
【灰降る足場にて】
各種武器を使い分け、焔と雷、衝撃波が荒れ狂う蹂躙劇を繰り広げる。
●
「こんなはずじゃ……チクショウ、チクショウ!」
デストルドーが地面を叩きつける。
あれだけ浴びてもなお生きているのは彼が生身ではないオブリビオンたる証拠ではある。
しかしそのダメージ量は明らかに許容範囲を超えていた。
「小わっぱがよく吠えるわ。それと、なんじゃ。償いとか言っとったか、それならこちらも農場への被害やわしらへの手間賃も補償てもらおうかの」
エウトティア・ナトゥアが更に挑発する様に言い放つ。
「だったらもう一度これをくれてやるよ!」
デストルドーはまた小型の機械のようなものを取り出しそのスイッチを入れる。
真空状態から解き放たれたかのような音を立ててガス状のウイルスが空気中へと解き放たれる。
「そもそもこんな玩具同然のガラクタの片付けまで猟兵がしないといけないのか」
面倒くさい、億劫だとノウェム・ノインツィヒ(白壁ノ嫗・f24561)がぼやく。
同時にノウェムの周囲に熱が迸る、大きな力が溢れてしまいそうな勢いだがすぐには出さず待機させている。
「それがわしらの仕事だからじゃ。ほれ、さっさと終わらせるとするかの」
そういってエウトティアはマニトゥをけしかけデストルドーを追いかけ回させた。
「この僕をこんな目に合わせやがって!お前たちみんなこのウイルスでゾンビになるんだからな!」
巨狼に追い回されるデストルドーはさながら子供が巨大な犬に小突き回されているような絵面となり哀れにさえ思えるのだった。
●
「ではその隙にあの邪魔な玩具をお片付けじゃ」
エウトティアの持つ【精霊石】が淡く光ると彼女の前方に小さな光が集まり始める。
光は徐々に大きく育ち、直視するのも躊躇う程の強い輝きが空中に留まり続けた。
「天地に満ちる精霊よ。我が敵を討ち滅ぼせ!」
次の瞬間、光が赤く変化する。
それは破壊をもたらす光、【天穹貫く緋色の光条】による光線放射であった。
圧縮された力場が限定された周囲を震わせていく。
柵が折れ、土は吹き飛び、そしてウイルスを垂れ流していた機械も赤い光に呑まれて粉々に砕け散っていった。
「よし、あの研究者が残した汚い細菌は我がやろう。危険だから下がれ」
エウトティアがマニトゥを下がらせるとノウェムが代わりに前に出る。
邪魔なものも消えた、あとはただ目の前の標的を破壊するだけ……そこには情も何も存在しない。
「息をする愚かさを思い知れ。……欠片も残さず灰と化すがいい」
それは炎の津波と表現するのが最も近しいだろう。
ノウェムの前方から膨大な熱エネルギーが発生、火山から噴火した溶岩が大地を流れる様に農場周辺の大地を焼き払って潰していく。
【狂焔の牢檻】で発生した熱波が通り過ぎる頃にはデストルドーも、大地も、全てがまっさらな荒地に変わっていた。
後にはデストルドーの焼け残りなのか、しんしんと灰が降るだけであった。
成功
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第3章 日常
『アポカリプスで農業を』
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POW : 力仕事を担当する
SPD : 丁寧な仕事を心掛ける
WIZ : 技術指導などを行う
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戦いが終わった後、元々この農場で耕作をしていた男達の一人が猟兵達の元へやって来た。
「いやぁー! 助かりました! おかげ様でこの農場も……」
男は降り積もる灰に包まれた農場に目をやってから向き直る。
「ちょっと荒れちゃったけど大丈夫! ここの野菜は灰の中でも育つからな! それだけ丈夫じゃなきゃここじゃ廃れちまうからな!」
アハハと豪快に笑う男。
どうもその辺りは気にしなくてもいいらしい。
「俺はコサクっていうんだ。もし良ければこの農場の建て直しを手伝ってくれると助かるんだが……」
農場は戦いの後で大分痩せてしまっている、土からいじり直しても効果はあるだろう。
戦うこと以外でも猟兵にやることはある。
彼らは最後の仕事へと取り組むのであった。
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎
農場は無事に守れたようじゃな。…まあ、少し灰がかかってしまったようじゃが…
彼らのこれからの生活もあるじゃろうし戦闘で荒らしたお詫びも兼ねて少しお手伝いをしていくとするかの。
ここの空いているスペースを開墾して耕作面積を増やすのじゃ。
まずは有り合わせの材料で作った鋤を【巨狼マニトゥ】に引いて貰って土を起こしてから、精霊にお願いして石などの障害物を取り除いたら狼の群れを呼び出して土を耕すのじゃ。
うむ、このくらいの広さで良いかのう。
それでは仕上げじゃ、精霊よ、恵みの雨を辺り一帯に降らせてわしの故郷と同じふわふわの土にして欲しいのじゃ!
うむ、これで次の収穫が楽しみじゃな。
ククリネ・タンザール
はぁ……道に迷ってたけどやっと着いた……さて、敵は…………終わってるじゃねーか……うん、まぁ平和になったようでなによりね。それじゃ、あたしはこれで……やっぱ駄目?
力仕事はあまり得意じゃないから、あたし自身じゃなくて【邪神の手】で作業させてもらうわ。実質あたしだから問題ないわよね。……え?めっちゃサボってるように見える?……気のせいだから、それ。
※アドリブ・連携可です。
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「灰が少し被ってしまったが、無事農場は守れたようじゃの」
少し白がかった農場を見渡してエウトティア・ナトゥアが言葉を漏らす。
守るために仕方がなかったとはいえ、農場を荒らしてしまったことに多少の罪悪感を感じていた彼女は耕作できる面積を増やすべく、木と竹の廃材から即席で鋤を作っていた。
「さてマニトゥ。これを使って土を起こしてくれんかの」
鋤とロープを使い巨大な狼にくくり付けていく。
結び終わったことを確認すると、マニトゥはゆっくりと歩き出し、土を掘り起こしていく。
順調に作業が進んでいるのを見守るエウトティア。
その視線の先に小さな人影が歩いて近寄って来るのが見えた。
「はぁ……道に迷ってたけどやっと着いた……」
どうやら道に迷って到着に遅れたらしいククリネ・タンザール(頭脳明晰型脳筋・f26110)が息を切らしてやってきていた。
「さて、敵は……」
灰まみれになった農場、本来避難していなければならない現地人が普通に作業している、その光景を目にした所でククリネは悟った。
既に戦いが終わってるじゃねーか、と。
「よく来たのう。じゃが少しばかり遅かったようじゃな」
「まぁ、平和になったのはなによりだから……」
なんだ骨折り損かとククリネは目を細める。
エウトティアがまぁまぁと宥めるが、元々低いテンションが更にダウンしているのは誰の目から見ても明らかであった。
「それじゃ、あたしはこれで……」
「待つのじゃ、折角じゃからお主も手伝って行くのじゃ」
ククリネは逃げ出した。
しかし、この作業からは逃げられないぞ。
がっしり肩を掴まれ諦めて手伝うことを決めるククリネ。
「ちょうど今土を起こしてる所じゃ。何か道具は無いかの」
「道具はないけど……代わりのものならある……」
ククリネが何か呪文を唱えると、魔法陣から【邪神の手】と呼ばれる巨大な禍々しい腕が土を掘り起こしていく。
巨大な鋤の代わりとしてマニトゥが起こし切れていない場所や障害物を取り除く作業を手当たり次第進めていく。
「後は邪神に任せるわ……力仕事は得意じゃないし」
やる気があるのかないのか、後は全自動でやってくれるだろうとククリネ自身は特に何もせず、せいぜい邪神の手が誤作動を起こさないようにたまに様子を見にくるくらいの労力で済ませることにしていたのだった。
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「さて、このくらいの広さで良いかのう」
土を起こし、その中に混ざっていた石などを取り除き、狼と腕が共同作業で土を耕す。
二人の作業によって土を柔らかくするのにさほど時間はかからなかった。
「仕上げじゃ、精霊よ、恵みの雨を辺り一帯に降らせてわしの故郷と同じふわふわの土にして欲しいのじゃ!」
エウトティアの言葉に応じるように精霊が天に昇っていく。
すると空は曇り、乾いた大地に雨が優しく降り注いだ。
土は水分と精霊のもたらす加護を吸収し、みるみるうちに元気な土へと変化を遂げていく。
このまま続けていけば今まで以上に土壌が豊かになるだろう。
「あー……楽だわ……めっちゃ楽だわ……」
「お主、途中からサボってなかったかの?」
「邪神の手は実質あたしだからセーフ……それは気のせいよ」
顔色一つ変えずいけしゃあしゃあと言い放つククリネにエウトティアは苦笑いを浮かべつつ、次の収穫に向けて期待を胸膨らませていた。
農場に活気が戻るのもそう遠い未来ではないだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラブリー・ラビットクロー
ん…ふわあぁー
んぐぐ
よく寝たー…ぎゃっ
周りが真っ白になってるん!
マザー!もしかして“雪”ってやつなんな?
雪が降ったん!
わーい
らぶ初めて見るのん(カシャカシャッ)
ばえー
あぇ?お野菜はどーなったんだ?
【写真情報を解析。これは灰です】
??
無事なお野菜も沢山あった
よかったー
ここまで作るのきっと大変だったんだ
みんな頑張ったん
らぶも頑張ってみんなでセカイをもっと良くできたらきっと居なくなったヒト達も戻ってきてくれるん
そーすればらぶが目覚める前までらぶを育ててくれたヒトも
かーまるん
一緒にお野菜のお世話したいなん
どーしたらいーんだ?
土いじり?
らぶに任せて
こーゆーのは初めてだけど絶対一生懸命するのん
あはは
楽しー
エルザ・メレディウス
*【医術】を活かして応急処置を...自分に施して、それから私もコサク様のお手伝いをさせて頂きます
★農場再建のお手伝い:POWを使用します
・可能なら、カマルも誘って、農場のお手伝いを。。。
戦いの中で壊れてしまったものがあったら運んだり、他にも農場に散らかっている灰をお掃除したり、コサク様の指示に従って農場を綺麗にいたします。他にも、必要なことがあったら適宜、指示に従っててきぱきと行動いたします。
・いつか、この農場で出来た野菜や果物を...この目で食べて味わってみたいですね。そんな未来のために今日は日が暮れるまでお手伝い頑張らせて頂きますね...
●
「ふわあぁー、よく寝たー……」
ラブリー・ラビットクローが大きなあくびと共に気怠げに起き上がる。
ユーベルコードの効果が切れ、いつもののんびりとした調子に戻った彼女はキョロキョロと辺りを見回してその変貌ぶりに驚く。
まだ暑いにも関わらず、時計の針を何百周と進めたかのように一面が銀世界……いや灰世界となっていたのだ。
「うわぁー! マザー、凄いの! 真っ白になってるん!」
雪が降ったと大はしゃぎのラブリー。
実際は雪ではなく灰なのだが知識の乏しい彼女にとってはこれが初めて目にする雪と思しきものなのである。
「あぇ? そういえばお野菜はどーなった?」
銀世界だと思い込んでいる雪景色を一生懸命写真に納めていると、ずっと気になっていた考えがようやくラブリーの頭の中で顔を覗かせてくれた。
土を触って見ると大半は焼けたりボロボロになったりしたものばかりではあったが無事に残っている野菜も残っていた。
それを確認できてホッと一安心するラブリー。
この野菜一つ一つに努力が詰まっているんだと、みんな生きる為に頑張って作ったんだと彼女の心の中に刻まれていく。
自分も頑張ればもっとセカイは良くなるだろうか、もし良くなったら故郷の居なくなったヒト達も、目覚める前まで育ててくれたヒトも戻ってきてくれるだろうか。
難しいことはラブリーには分からない、それでもセカイを良くしていこうと頑張ればきっと前に進める気がする。
拾い上げたニンジンを見つめながら少女はセカイのために、未来のために『頑張る』決意を固めたのだった。
●
「(これが灰だとは少し言い辛いですね……)」
そんなラブリーのあまりに無邪気な姿にエルザ・メレディウスが苦笑する。
自分にとっては一回り近く小さな子供でさえ世界のために戦っているということを痛感しながらもまずは灰を掃除するついでに壊れたものの撤去を始めることにした。
「そしたらエルザさん、灰はあちら側へ集めてください」
「わかりました。……ありがとう、カマル。手伝って貰っちゃって」
「いえいえお安い御用ですー!」
エルザの申し訳なさそうな声とは対照的にハキハキ応えるカマル・アザリー。
二人はコサクの指示に従ってテキパキと作業をこなしていく。
今はまだ荒れた土地だが将来この土地が再び豊かになり、作物が収穫できるであろう未来に想いを馳せるエルザ。
元来彼女はささやかな幸せの中に包まれて過ごすことが好きであった。
しかし今では彼女の中には炎が消えず燻り続けている。
そしていつかは過去の私利私欲のためではなく、本当の意味で未来のために戦いたい……彼女の中に植えついて育ち続ける悩みはある。
「いつか、この農場で出来た野菜や果物を食べてみたいですね」
「先輩……はい! 先輩は新しく出来た自分の土地でも稲作してますもんね」
そうね、とエルザは笑い、つられてカマルもふふっと笑う。
温かな心に絆されてつい見失いそうになる。
己を惑わす悩み……その思いを振り払うようにエルザは畑仕事へと打ち込むのであった。
●
「ところでかーまるん。お野菜のお世話ってどーしたらいーんだ?」
「そうですね……土はもう耕されてますから種を撒きましょうか」
ラブリーは手の空いたカマルを誘って二人で野菜の種を植え始める。
初めての経験だったが新しい命がここから生まれてくることを思うとラブリーの心は畑に積もっている柔らかな雪を溶かす日差しのような暖かい気持ちになるのだった。
「あはは、楽しーのん」
『――写真情報の解析が完了しました。この物体は……灰です』
やっぱり難しいことはラブリーには分からない。
例え雪だと聞いていたものが『ハイ』というものだったとしてもセカイの為に頑張るのであった。
大成功
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