萌芽を火に焚べ、煌々と燃えよ
●不吉な足音
手にした望遠鏡は薄汚れ、少し罅が入っていた。
問題ない。拡大して見ると言う望遠鏡の機能が維持されていれば使わない理由はない。
年季の入ったソレを覗き込み、青年は溜息をついた。
遠くに見える街道。
常闇の世界では、『遠くに見える』こと自体が珍しいそれが、今ははっきりと眺めることができる。
それはなぜか?
火が灯っていたからだ。
ゆらゆらと揺れ動く数多の火が、街道を往くのが見える。
隊商か?
いや違う。いくら人類の生存圏が拡大しつつあるとはいえ、この世界での集落の移動がどれほど危険を伴うものか、知らぬ旅商がいるとは思えない。
こんな堂々と火を焚いていては、見つけてくださいと言っているようなものだ。
であるならば、可能性はひとつ。『見つけられても問題無い者』……即ち、力ある者。支配者の側だ。
「なぁ、辺境伯の話、聞いた事あるか?」
「あぁ……あの噂、本当に……」
後ろで声を潜めた話し声が聞こえた。
別段、この場の誰かに聞かれて困るような内容でもない筈なのだが、それでも声を絞ってしまうのはこの絶望感と緊張感に溢れた空気がそうさせてしまうのだろう。
咎める気はない。気持ちはわかる。
だが、この一団を束ねる者として、青年がこの空気に浸ることは許されない。
あの集団が我々の存在に気付いているかは定かでない。だが、道筋を見る限り、遠からずここに辿り着くのは明白だった。
「村中全員叩き起こせ。すぐに荷物を纏めさせろ、ありったけの食糧と猟具だ」
その意味が解らぬほどこいつらは馬鹿ではない。
ひそひそ話をしていた片方が、即座に踵を返し駆けていく。
「ユライア、戦える奴は戦闘準備を優先させれば?」
「あぁ」
頷く。護衛にしろ迎撃にしろ、絶対に必要になる。
こうなってしまった以上、村を棄てることは――最悪、命すらも――覚悟はせねばならない。
……望遠鏡を降ろしたときには、既に二人は行動に移っていた。
独りになったユライアと呼ばれた青年は、誰にも聞こえぬのをいいことに、再び溜息をつく。
「……ようやく、形になり始めてきたのにな」
振り返れば、小奇麗に整えられた墓所。
向き直って眼下を見やれば、未だ多くが朽ちながらも復興の兆しが見え始めた家々が、目に飛び込んできた。
●蹂躙する火を吹き消せ
「ダークセイヴァーに動きがありました」
グリモアベース。
アックス&ウィザーズでの大戦争の終結を経ても、数多の世界を渡る猟兵に休みは無い。
情勢はすべての世界で、等しく揺れ動いていた。
「我々猟兵の活動により、あの世界にもオブリビオンの支配の及ばない人類の生活圏が増えつつあるのはご存知かと思いますが……当然、オブリビオンも黙ってはいないようですね」
シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)の言葉に頷いた猟兵も幾つか見受けられる。
『辺境伯』。
ここ数日、存在が確認されるようになったオブリビオンの名だ。
特定の一個人を指すものではないが、いずれも強力な個体である彼らが、支配から解放された土地を捜索しているというのだ。
「その辺境伯の一体に、人類砦(※闇の救済者の活動圏の事)が捕捉されたようです。彼らも抵抗を試みるようですが、辺境伯の軍勢には到底敵うものではありません」
今回予知に引っかかった人類砦は、元は吸血鬼の手によって滅ぼされた廃村だった。
それを、根無し草であったとある闇の救済者の一団が目をつけ、彼らの拠点として復興を進めている場所らしい。
元々が小規模な集団だったことに加え、場所自体も到底整っているとは言い難い。
オブリビオンの攻撃にさらされてしまえば、再び崩れ去るのは容易な事であることは想像するまでもない。
「幸い、辺境伯の軍勢が到着する前に現着することが可能です。敵の情報は残念ながらつかめていませんが……やろうと思えば交戦前に偵察くらいは可能かと」
他にも交戦ポイントの選定や、人々の避難など。時間は多いとは言えないが、やれることは決して少なくはないはずだ。
「闇の救済者の皆さんにどうしてもらうかは皆さんに一任しますが……どうか、守ってあげてください。
せっかく芽生え始めた希望を、ここで摘み取らせるわけにはいきません」
――どうか、お願いします。
シャルの真剣な瞳を背に受けて、猟兵はダークセイヴァーへとつながるグリモアの門をくぐる……。
ふねこ
○○卿とか○○伯って響きが好き。
ふねこです。帰ってきたダークセイヴァーです。
見返してみれば半年以上ご無沙汰だったことにちょっとびっくりしてます。
例によって、更新タイミング等の大雑把な目安はマスター自己紹介にも随時書いていこうと思いますので、そちらもよろしければご確認くださいませ。
以下、補足情報になります。
※今回の舞台は以前の拙作『ホーム・カミング』での舞台と同一ですが、当時を知らなくても全然問題ありません。
『廃村に闇の救済者がやってきて立て直してるところだよ』とだけ理解してくれれば大丈夫です。
村の北西部の高台にある墓地が転送地点、敵は南東の街道をこちらに向かって進軍しているようです。
闇の救済者の皆さんは、リーダーのユライアと呼ばれる青年に率いられた剣や槍で武装した戦闘員が10人ほど、後は戦えない女子供や傷病人が多いようです。
戦える者も戦闘力は大したことありません(少なくともボス戦では歯が立たないでしょう)が、村の状況や周辺の案内くらいはできるでしょう。
敵の構成はOP時点では内緒ですが、辺境伯は『辺境伯の紋章』と呼ばれる寄生虫型オブリビオンによって強化されているようです。
1章はそのまま、2~3章では断章投下後からの募集開始となりますのでご留意くださいませ。
それでは、皆さんのご参加お待ちしております!
第1章 冒険
『辺境伯迎撃準備』
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POW : 襲撃を行うポイントに移動し、攻撃の為の準備を整える
SPD : 進軍する辺境伯の偵察を行い、事前に可能な限り情報を得る
WIZ : 進路上の村の村びとなど、戦場に巻き込まれそうな一般人の避難を行う
👑7
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叢雲・凪
アドリブ・共闘歓迎
まずはこの世界の住人と猟兵仲間にアイサツだ。礼儀は大事
「どうも… ジンライ・フォックスです」(奥ゆかしくお辞儀)
ボクはSPDで偵察と斥候を行おう。疾雷+ジャンプ+情報収集+忍び足+目立たない を用いて高速で移動だ。ただ疾雷を使った際、雷光が出てしまうから注意。曇りの日にできたら理想的だ(自然の雷だと思わせる)
調べるのは敵の規模・武装・進行ルート予想。特に 指揮官のような存在がいれば要注意だ。
仲間に写真を撮れるような人がいれば人類砦と偵察ポイントの行き来はボクがしよう。飛脚的役割だ。速さには自信がある。
疾雷で腕を雷にしてワイヤーアンカーのようにして使うのもアリだな。
クロス・シュバルツ
連携、アドリブ可
最近は吸血鬼の動き方も変わってきたように感じます
何かが動き始めているのは間違いなさそうですが……
敵軍の情勢を偵察する為に前線へ
進路上に人がいた場合は避難するように指示
自身に『迷彩』を施し『闇に紛れる』事で『目立たない』ように行動
『忍び足』近づき、遠目から目視できる距離でUCを発動
鼠と鴉など、この辺りにいそうな獣の影を召喚して接近
時折、警戒されない程度の数をわざと発見させて、適当に『時間稼ぎ』を行いつつ、敵の数や装備、推測される戦い方などの情報を集める
適当に情報を集めたら、獣に敵を追跡させて位置を把握しつつ、自分は撤退、情報共有
敵の接近を察知したら、奇襲を仕掛ける為に備える
「どうも……ジンライ・フォックスです」
「どうも、ジンライ・フォックス=サン。ユライアです」
村を一望できる高台で、叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)と闇の救済者のリーダーが挨拶を交わしていた。
……なんでその挨拶知ってるのかって?
古事記にも書かれている有名な作法だよ。知っててもおかしくないよきっと。
まぁそれは置いておくとして、挨拶は大事である。
敵同士で挨拶することもあるがそれ以上に、助けるべき対象や他の仲間とのコミュニケーションは非常に大事だ。
特に今回の場合『救援が来た』という精神的な余裕がもたらすものは非常に大きいだろう。
これから行うのは偵察と言えど、最初に時間を割いておく価値は十分にある。
それではと、彼が村の指揮に戻っていくのを見届けて、凪は遠くを見やる。
火が、揺らめいている。
遠目に見ても煌々と燃える火は、この暗い世界では貴重な光源としてよくわかるものだが、流石にこの距離ではそれ以上の事はわからないか。
――ならば。
「――疾雷」
バチリ、凪の足元に雷が奔る。
ジンライ・フォックスの名に偽りなし。その姿はまさに稲妻。
大地を踏みしめ、一歩踏み出せば、その姿は暗雲の立ち込めた夜天の中へと消えていく。
「何かが動き始めているのは間違いなさそうですが……」
開けた街道ではあるが、整備する人がいないのか周囲の草木は伸び放題で、近づきすぎないようにさえ気をつければ存外に隠れる所はある。
その隙間から街道を眺めつつ、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)はフードを被りなおす。
吸血鬼は確かに強力だ。それ故にこの世界を牛耳り、そして君臨している。
時に興味ゆえに猟兵を誘い出すことはあれど、基本的に『上位者』として戯れに命を弄ぶばかり。
こうして人間を自発的に……それも相応の実力者を差し向けて捜索する、ということは今まではまず無かった筈だ。
相応に『脅威』と感じ始めているのだろうか。クロスは改めて、その火を見やった。
……大丈夫だ、まだ十分に距離はある。闇を纏った漆黒の衣が気付かれることはそうそうない。
これ以上接近する場合は、流石にその限りではないだろうが、なに、そうであれば手段を変えるだけだ。
「影より来たれ、来たりて征け。獣たちよ」
呟く。
小さな声で呼びかけられたその声に応じたのは、影から湧いて出たネズミや鴉と言った小動物たち。
よくよく見やれば、影でできたそれが尋常の動物でないと気付けるだろうが……この暗さであれば、逆に言えば『よくよく見なければ』即座に気付くのは難しいだろう。
五感を共有する彼らであれば、これ以上の接近しての偵察もお手の物だ。
「(……全員人型。魔獣の類は無し、……あの女が恐らく辺境伯)」
鳥獣の目を通してクロスが見たのは、松明を手に街道を往く人々であった。
闇夜でも目立つ白の衣に弓や槍で武装した、統一感のある一団の中心で、対照的に黒いドレスの女性が一人、数人を護衛につかせながら歩いている。
ガサリ、鼠の一匹が草を揺らす。
一斉に兵士の視線がそちらを向き、中には槍を構える者もいた。
「放っておきなさい」
女の冷ややかな声が聞こえ、構えが解かれる。
所詮鼠……たとえそれが人間であっても大して変わりはない。噛付いてきたときにだけ対処すればいい、と。
――掴みとしてはこんな所か。
眷属とのリンクを切り、クロスが一つ息をついたのと、背後で物音がしたのはほぼ同時。
はっと振り返ったものの、そこにいたのが猟兵であると知れたら警戒はすぐに解かれた。
「どうも、ジンライ・フォックスです」
「どうも」
挨拶ひとつ。実際大事。
木々の隙間に凪を手招きし、情報を交換し合う。
「遠目から見ていたけど、このまま街道沿いに進んでいくみたい」
進軍ルートとしては、奇襲をかけるような様子は見受けられない。あくまで、探していると言うだけで明確に人類砦の場所を把握しているというわけではないのか。
……もっとも、このまま進むに任せていればそれも時間の問題、ということになるのだが。
「術士らしき女に率いられた武装集団……火矢もあるみたい、あまり近付かれると厄介かもしれない」
ようやく人の住む場所としてよみがえり始めた廃村だ。
ここでまた焼き払われてしまったら、果たしてどれほどの苦労が無に帰す事か。
「なら、ボクは一度戻る。速さには自信がある」
「お願い」
飛脚、言ってみれば伝令要員だ。
高速で行き来が可能な凪にとってすれば適任だろう。
クロスが手に入れ、自身も目の当たりにした情報を土産に、再び黒い雷が天を往く。
雲間に光るそれは、これからの戦いを暗示する雷雲にも似ていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
朱酉・逢真
戦いにおいて何がいちばん問題かって、そりゃあ非戦闘員の味方なのさ。壊れ物だからなぁ。
ならどうすっかって決まってる。大事なもんはしまっておくのがいちばんなのさ。
隠の国にしまってしまおう。俺の神域の一部だ、怪物たちには手を出すなっつっとくから安心さ。やべぇナリしてるやつは宝物ごと隠れてな。
もってかれっとまずい。金銭的にはどぉでもいいが、たいてい呪われてるんでね。宝石に見える毒の結晶とかあっからさ。
代わりに一部の怪物たちはこっちに出てこい。墓地を守ってな。好きだろう、こォいうとこはさ。俺の子だもの。
眷属《虫》から小さくて気にされないような虫を飛ばして偵察しよう。囮として《鳥》からも飛ばしとくか。
ジュリア・ホワイト
拠点防御は得意中の得意だとも
ヒーロー・オーヴァードライブ、助けを求める声に応え此処に参上!
「というわけで人類砦に助力しに来た助っ人だよ。ボクもともに戦わせて欲しい」
同意を得られたら早速迎撃の準備に取り掛かろう
砦を目指して進軍してくる辺境伯軍を、砦から迎撃できるよう狙撃ポイントを用意しようかな(【作業完了、確認ヨシ!】)
「万が一抜かれた場合の立て直しを考えると、もう少し砦の前で迎撃した方が良いのだろうけど。あまり離れすぎると別働隊が心配だしね……。なに、ボクが抜かれなければ良いだけの話さ」
他に指示を出す猟兵が居ないなら
闇の救済者の皆には避難の準備をそのまま進めてもらおうかな
【アドリブ等歓迎】
エル・クーゴー
●WIZ
指定座標に現着
当該人類砦周辺に於ける構成員を友軍/支援対象として定義――タスク設定完了しました
これより作戦行動を開始します
躯体番号L-95
当機はタワーディフェンスの実施に高い適性を発揮します
・一般人避難の支援に注力
・【ウイングキャット『マネギ』】、マックス390体を召喚
・マニピュレーターから展開する【メカニック】で、マネギ各機から戦闘用途をオミット、物資運搬用途に特化させる
・マネギ各機を、避難に伴う傷病者や荷物の運搬にゾロゾロ参加させる
・また、すごい毒気を抜かれるようなツラとフォルムをしているので、一般人諸氏のストレスケアにでもなれば御の字
・エル自身はその辺で電脳世界をピコピコやってる
猟兵の協力の申し出は、拍子抜けするほどあっさりと受け入れられた。
かつてこの廃村を人の手に取り戻すにあたって、その際も猟兵が助けに来てくれたのだと闇の救済者のリーダーは言う。
助けてもらってばかりだと若干申し訳なさそうな彼を、ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)は笑顔で制する。
助けを求める声にこたえるのがヒーローだから、と。
「なに、拠点防御は得意中の得意だとも」
「躯体番号L-95。当機はタワーディフェンスの実施に高い適性を発揮します」
そんなジュリアの背中から、ひょっこり顔を出すエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)。
その表情からは感情が読みづらいが、敢えて被せて主張してきたのは……対抗意識の一つもあるのかもしれない。
まぁそれは良い。裏を返せばやる気があると言うことだ、頼もしいではないか。
「そっちの準備はどう?」
「タスク進行、順調です」
淡々とした声で、半透明ディスプレイをジュリアに放る。
友軍――すなわち、この人類砦における構成員の事だが――の避難準備は着々と進んでいることが詳細に示されており、その証拠にエルの後ろでは大量のデブ猫(を模した自律機械)が食料や日用品……時には、自力で動きづらい傷病人の介助をと、せっせと実行していた。
その行きつく先はと言うと。
「はいはーい、押さずに走らずに順番入っていってくれよー」
怪物たちには『手を出すな』っつってあるから安心しろよなー。
墓所の横の空間に大きく切り拓かれた次元の裂け目。
朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)と名乗る飄々とした青年が、闇の救済者たち(と、エルのデブ猫)をその中へと招き入れていた。
その実態は、陰の国への入り口。本来は生者が入るところでも無かろうが、他ならぬ『神』が赦した者であれば話は別なわけで。
それを考えれば、一時的な避難場所と言う意味でこれ以上の適所もあるまい。
なにせ物理的には発見も侵入も不可能なのだから。
「このグループが終了すれば、迎撃支援中の友軍を除いた避難は完了です」
「りょーかい」
「空間内でのマネギ(デブ猫機械のこと)の駐留許可を申請します。該当機のビジュアルは友軍諸氏のストレスケアに適性があると判断します」
「……あー、うん」
荷物をせっせと運ぶデブ猫を見やる。……まぁ確かに毒気が抜ける外見であることは同意できるが。
……まぁいいか。
疫病の神の陰の国に『毒気を抜かれる』ものが紛れ込むのも妙な話だが、そこはそれ。
触れるとヤバい財宝とかも陰の国にはあるわけだし、他に気が紛れてくれるのはこちらとしてもあり難い。逢真はそう納得することにした。
さて。
避難の進行については引き続きエルの猫の手を借りておけば問題ない。
万が一に備えて、陰の国の眷属が墓所の防備も固めている。
となれば、あとやることと言えば迎撃準備である。
他の猟兵の報告によればまだ接敵までには時間はありそうだが、それでもあまりもたついてはいられない。
鳥や虫のような逢真の眷属たちが、闇に紛れて偵察に飛び立っていくのを見上げながら、ジュリアはある廃屋の二階にその身を潜ませていた。
繰り返しになるが、この人類砦は元は廃村だったところに闇の救済者たちが上がりこんで生じたものだ。
復興自体は彼らも全力で取り組んでいるのであろうが、何分物資も人員も不足している現状では、未だ手つかずとなっている場所も少なくはない。
今ジュリアがいる村の南西部も、そう言う事情で復興が進んでいない廃墟区画であった。
「(本当は、もう少し砦の前で迎撃した方が良いのだろうけど……)」
仮にここが戦場になったところで、元々壊れているのだから多少増えたところで損害は大きくない。
だが、それは『ここに限った場合』だ。もしもここを抜かれてしまえば、その後ろには蘇り始めた人の営みがある。
それを思うと、ギリギリでの迎撃はリスクを伴う選択と言えなくはない。
だが、離れすぎて砦を留守にした場合、逆に別動隊がいた場合のフォローが効きづらくなるという問題がある。
迎撃に出る猟兵は他にもいる。そして自身が長距離砲撃が可能ならば、こちらの方がリスクは少ないと踏んだ。
「……なに、ボクが抜かれなければ良いだけの話さ」
鋼鉄のヒーローは、今は静かにその牙を研ぐ。
大成功
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メアリー・ベスレム
ふぅん
「砦」と呼ぶにはまだまだみすぼらしくて
木の家、いいえ藁の家?
それとも食い荒らされるお菓子の家かしら
いずれにしてもオブリビオンに踏み入られたら粉々ね
えぇ、もちろん
そんな好き勝手なんてさせないけれど
防衛準備や避難誘導なんてできないし
村を出て【目立たない】よう偵察を
出る時に街道の方角だけ教えて貰えば
あとは【聞き耳】立てて
【獣の嗅覚】働かせ
メアリ一人で辿り着いててみせるから
軍勢を見つけたら身を隠し
その臭いを嗅ぎ分ける
するの浴びた血の臭い? まとう鉄の臭い? それとも屍の臭いかしら?
それとは別の、一つだけ違う臭い
辺境伯とかいうのも探してみせる
もし見つかっても【逃げ足】で
お尻を振って駆け出しましょう
セフィリカ・ランブレイ
もっと集まって国を作りたいけど、周りの敵が多すぎる世界
状況を打破するために集まっても目を付けられちゃうんだから
『現状、多すぎる敵を削りつつ力を蓄える、しかないわね。どう攻める?セリカ。』
相棒の魔剣、シェル姉の声も何時もより硬い
偵察を兼ねて可能なら進軍を遅らせようか
飛竜形態への変形が可能なゴーレム【黄槍の飛竜】を呼び出す
今回はこれに乗って行動だ!
上空より今後の戦場を把握しておいたり、敵の規模や構成の情報を持ち帰らないとね
一通りの観察が終われば撃破されることを前提に量産タイプのゴーレムを複数体、一団にぶつけてみよう
これで攪乱になればよし。撃破されても相手の戦闘方法を把握できるはず
シルヴィア・スティビウム
相手は多数、こちらには守るべき砦……
幸いにして、準備する余裕がある
なるべく数を減らして、楽に倒せれば何よりだけれど……
ひとまず現場を見てみない事にはね
陸地から攻撃ポイントを探るなら、やはり元猟師のヘリアンサズの知恵を借りましょう
貴方なら、獲物に悟られる事無く偵察を行える地点に目星がつく筈
可能な限り情報を集めて頂戴
あとはそうね……セドナ、私を乗せて空から偵察しに行って
メガリスを得た貴女ならこの暗い空も泳げるはずだわ
見つからないようかなり遠くからの偵察になるけど、鳥瞰する視点から見えることもある筈
念のため、霧の属性攻撃で雲に紛れておきましょう
アドリブ等、お任せします
「ふぅん」
メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)は背後を仰ぎ見る。
広がっているのは、未だ手つかずの荒れ果てた廃墟。
その奥に見える復興の兆しも今はまだ脆く、吹けば飛びそうな儚さを湛えている。
狼に襲われゆく、豚の木の家か藁の家か。
はたまた留守を襲われ食べられてしまうお菓子の家か。
いずれにせよ、共通点は同じ。立ち入られたら粉微塵。
まぁもっとも……。
「(……そんな好き勝手なんてさせないけれど)」
ここにいるのは、豚でも羊でも兎でもなく、食い殺す側である狼なのだから。
……曇り空を、村の方角から何かが飛んでいくのが見えた。
魚のような……別のものは竜のような。
目を凝らせば、人が乗っているのが辛うじて見えた。
おおかた、誰か猟兵がまた偵察に出たのであろう。
――対抗意識、というわけではないけれど。やることが無いのもそれはそれで癪ゆえに。
メアリーの足も、たんと軽い音を立てて。
「もっと集まって、強い国をつくれたらいいのだけれど」
口にするのは楽なものだ。しかし、現実はそうまで単純なものではないことを、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)は知っている。
この世界には、敵が多すぎる。
中途半端に集まったところで、敵に目をつけられて潰されるのがオチなのだ。
『現状、多すぎる敵を削りつつ力を蓄える、しかないわね』
腰から聞こえる頼れる相棒の声も、どことなく固く感じられる。
「相手は多数、こちらには守るべき砦……ですが、準備する余裕があるのは幸いでした」
「そうだね」
その身を置くのは上空。
竜型の魔導ゴーレムの軍勢の中、一つだけ異質な、空を泳ぐ魔物の姿。
その背に掴まるシルヴィア・スティビウム(鈍色の魔術師・f25715)の言に、ひとつ頷きを返して。
守るべき人々は少なく、儚い。
対するオブリビオンは軍勢。まともに踏み込まれてしまえば、壊滅は不可避。
無論、黙ってそうさせる猟兵ではないのは当然ではあるが、それでも極力は万全の状態で迎え撃ちたいものである。
その為にも、地形や軍勢の把握は何よりも大切になってくる。
人類砦を発って、少し。
街道に繋がる出入り口である砦の南西部は、殆ど復興が手つかずの瓦礫の山。
そこから奥へと分け入るごとに、少しずつ人の手が加わり始めている。
……瓦礫に紛れ、狙撃体制を整える猟兵の姿があった。
恐らく、あれが最終防衛ラインとなる。……実際の戦場は、もう少し街道側で会敵することになるだろう。
そうして街道に目を向ければ、緩やかで見晴らしのいい丘陵地帯だ。
手入れのされていない草木はそれなりに多く、身を伏せればそれなりに隠れる所はありそうだが、それ以上を望むのは……少し難しい、かもしれない。
そして遠目に見える強い明かりが……。
「……あれね」
一様に白い衣をまとった、松明を掲げた武装集団。そしてその中央を往く、対照的に黒い衣の女。
遠目に見える分には、わかることはそれくらいなものだが……。
「今は雲に紛れているけど、これ以上近付くとなると……」
「構わないさ」
怪訝そうな顔を向けるシルヴィアに、セフィリカはニヤリと笑って見せる。
どうせここからさらに近付けば気付かれるのだ。
であるのなら、少しくらいこちらからぶつけてみせたって大きな違いはあるまい。
それに、目立たせてしまえば、他への注意は薄くなるものだ。
「さぁ、行きなさい!」
セフィリカが命ずれば、一斉に周囲の竜が急降下を始める。
造りは荒い、量産型の(自身が乗っているものに比べれば)粗悪品。
撃破されたところでそこまで惜しくもない。
読み通り、集団の注意が一斉にそちらに向くのを計画通りと見届けて、二人は雲間へと消えていく。
「くんくん、ふんふん……」
焦げ臭い。メアリーの第一印象は、それだった。
血のにおいも、鉄のにおいも確かに混ざっている。
これまで何人も殺した武具のにおいだ。
だがそれよりも、一番強いのは、脂が燃える火のにおい。
松明が煌々と燃えているのもあるだろうが、それ以上に彼ら……特に白装束の連中は、それが強く染みついているように思えた。
ただ、反対に……あの黒装束の女は対極に、『血のにおい』が特に強く感じられる。
そこまで考えて、においの流れが変わったことに、メアリーは気付いた。
灯が、空へと何条も走る。
火矢だ。一斉に、空へと火矢が放たれている。
降り注ぐ焼けた鉄塊。
鉄の焼けるにおいが鼻をつく。
誰かが威力偵察でも敢行したらしい。
まぁ良い、見るだけ見れたし、嗅ぐだけ嗅げた。
にわかに騒めき出す集団を横目に、メアリーは踵を返す。
草木の合間に揺れる兎の尻尾は、今はまだ誰にも気づかれることなく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リーヴァルディ・カーライル
…人類砦の攻略に本腰を入れてきたという事は、
それだけ人々の活動が活発化している証拠ね
…彼らの命運を此処で途絶えさせる訳にはいかない
必ず、守り抜いてみせる。この世界に灯った光を…
UCを発動して全身を自身の生命力を吸収する呪詛で覆い、
外部に漏れる怪力や存在感のオーラを防御して一般人程度まで封じ、
体内に限界を突破した魔力を溜めておく
その後は近辺の地理に詳しい闇の救済者の元へ向かい、
自身の戦闘知識から迎撃に適した地点を聞き出しておく
…篝火か鬼火かは分からないけど、敵は火を使う可能性があるわ
火攻めへの備えが万全ではないなら、籠城はおすすめできない
…それを踏まえて、迎撃に適した場所は何処?
荒谷・ひかる
【竜鬼】
とりあえず、襲撃前に察知できたのは幸いでした。
最悪人的被害だけでもゼロにできるよう、みんなで力を尽くしましょう。
主に避難誘導の支援をします
偵察の式神さんを放っているリューさんから周辺の状況……回り込んだり潜伏している敵が居ないかどうかを確認
わたしは【本気の草木の精霊さん】を発動し身体能力を強化、非戦闘員の護衛に当たります
また怪我で動けない人にも使用し、治療と身体強化で移動の補助をします
希望があれば戦闘要員の方々にも使用、樹木の外骨格と蔦の筋による強化は生存性の向上に役立つはずです
身体に直接根を張るので見た目がアレですけど……安全性はわたし自身が使ってるのを見て信じてもらうしかないですね
リューイン・ランサード
【竜鬼】
この村の人達とは、以前にご縁が有りましたから、今回も助けられるよう頑張ります。
ひかるさんと一緒に、戦闘に巻き込まれそうな人々の避難を行います。
UC:式神具現で式神達を放ち、
①火を灯して近づいてくる敵の位置確認。
②①の敵が来るまでどのくらいの時間の猶予があるか。
③避難する方向の安全は確保されているか。
を調査させます。
荷物運び等の力仕事が求められれば、【怪力】で手伝います。
得た情報は、ひかるさん・闇の救済者達・村民達に随時連携して、知らない事による不安を解消し、皆が落ち着いて効率的な避難をできるようにします。
「調査は怠りませんから、皆さんが落ち着いて行動すれば大丈夫です。」を繰り返します。
避難の進捗は順調そのものと言ってよかった。
他の猟兵によって、安全な避難場所も人手も十二分に確保されている。
それに加えて、的確な指示さえ下せば応じられる程度の冷静さを、砦の住人たちが持ち合わせていたというのも大きいだろう。
指導者の手際か、猟兵の手際か……あるいはその両方か。
どちらにせよ、闇の救済者たちのたくましさは、以前に見た時と何ら変わるところはない。
「とりあえず、襲撃前に察知できたのは幸いでした」
「そうですね。今回も助けられるよう頑張りましょう」
その様子に多少なりとも安堵しながら、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)とリューイン・ランサード(竜の雛・f13950)は互いの顔を見合わせる。
最悪の場合でも、人的被害はゼロにしたい。
建物は手間をかければ作りなおせるが、人の命は戻って来ないのだ。
「それで、どうですか?リューさん」
「南西から来る集団以外には……潜伏や別動隊はいないみたいです」
戻ってきた式神の一体を腕に止まらせながら、リューインが応じる。
この一体だけではない、数多くの式神を既に周囲に解き放っている。
他の猟兵の目の存在も考えれば、警戒網の死角はほぼゼロに等しい筈だ。
わかる話ではある。
どうにも、今近付きつつある集団は最初からこの砦を目的として進軍しているわけではないらしい。
最初からここを攻める前提であれば偵察や伏兵の存在はあってしかるべきだが、そうでなければ軍勢を小分けにするメリットは薄い。
おおかた、拠点の有無を探る『視察』の進路上に、たまたまこの場所が重なってしまった、といったところなのだろう。
もっとも、万が一と言うことを考えれば、今のようにひかる達が護衛についていることも全くの無意味ではない。
偵察で得た情報の共有、また、そこに『護ってくれる人がいる』という事実が目に見えるだけでも、安心感は変わってくるものだ。
「歩けますか?……そう、よかった。それじゃあ、そのまま列に沿って真っすぐ」
「まだ十分時間はありますから、落ち着いて行動してくださいね」
足が不自由であるらしい女性に応急処置を施しながらひかるが促せば、リューインが笑顔で言葉を継ぐ。
二人の親身な対応もあって、空気は相変わらず緊張こそしていたが、悲壮感はずいぶんと和らいだようにも思えた。
――こちらは、任せておけば問題ないだろう。
その様子を、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそう結論付けた。
少なくとも、彼らの『命』はこれで守ることは出来よう。
自分がやるべきことは、それ以上のものを守るための準備だ。
……生きていくには、命だけでは足りない。
雨風や飢えをしのぐ、生きるための基盤があって、初めて生きていくことができる。
ようやく灯った、生きていくための光を、ここで吹き消されるわけにはいかない。
こうしてオブリビオンが主体的に潰しにかかっているということは、逆に言えばそれほどまでに人々の『生きる意志』が活発化し始めている証拠なのだから。
その為に振るう力は、今は胸の内に秘して。
見極めるべきは、それを振るうに相応しい場。
「敵は火を使う」
予知の段階、遠目で見えた時からその可能性は大いに感じていた。
その上で、他の猟兵が偵察を行った結果と照らし合わせれば、それは確定と言って差し支えない。
殿を務める意思を示した闇の救済者の戦闘要員。そのうちの一人に告げれば、重々しい頷きが返る。
「誘い込んで戦うのは、あまり得策ではないわ」
「そうだな……」
敵が進んでくる街道に面した村の南西部は、まともに復興も進んでいない廃墟だ。
言ってしまえば、既に燃え落ちた後の状態。
ここをさらに燃やされる程度であればそこまで問題も無かろうが、直す余裕もないと言うことは、その奥の火攻め対策など当然されている筈もない。
相手は火矢を使うという情報もある。仮に奥までその凶弾が届くとなれば、大きな被害は免れないだろう。
廃墟に狙撃手を潜ませることは出来るだろう、と彼は言う。瓦礫や廃屋の内部、身を隠す場所は多い。
「その上で、交戦するとなれば……そこを出た街道上でぶつかることになるだろうな」
荒れてこそいるが、一度は舗装された広い道。
その左右は、見通しこそいいものの、手入れのされていない草木が点在する丘陵地帯。
隠れて進軍するには身を隠す場所が少なく、素早く回り込むには足場が悪い。
必然的に、正面から進んでくるほかない地形だ。
「今の内なら脇に少人数くらいは隠れることもできるだろう。
正面で待ち構えるにしても、連中が迂回するのは難しいだろうよ」
「なるほど……」
情報は出揃った。それをどうするかは、あとは己次第だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アウレリア・ウィスタリア
……はい
ボクは少しでも避難する人たちを助けましょう
ボクの歌で少しでも癒すことができるなら……
【空想音盤:愛】
あぁ、呪われたこの世界
この世界に光が差し込みますように
今は小さな光でも
ここにある光が世界をあまねく照らし輝かせますように
そう、闇なんて
人々がそんなものを抱く必要がない世界に
避難を終えるか、護衛など必要のない状況になれば
ボクも戦いの準備に入りましょう
個人的には思うところのある場所
ですが、今の人々とは何の関係もない
だから……守りましょう
アドリブ歓迎
歌が聞こえる。
これから先、そう遠くない未来に戦火に脅かされる場にはあまり似つかわしいとは言えない、静かで、清らかな。
アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)が愛を歌う。
踏みにじられ、失ったとばかり思っていた、心の奥底の光を救いあげて、音に乗せて世に放つ。
――あぁ、呪われたこの世界。
――この世界に光が差し込みますように。
「(今は小さな光でも、ここにある光が世界をあまねく照らし輝かせますように)」
今はまだ、世界は闇に覆われている。
世界を覆う絶望の闇を払うには、とても小さく、儚い光。
それでも、確かに光はここに在る。
いつか、その光が遍く広がっていくことが出来たのなら。
人々が抱く闇も、消し去ってくれるのだろうか?
そうであってほしいと、アウレリアは願う。
「……ありがとう」
「いえ」
礼を告げる闇の救済者に、小さく会釈を返す。
最後まで猟兵達と共に迎撃準備を整えていた、闇の救済者の戦闘要員も、今はもう避難を終えつつあった。
貯蔵庫から残りの食糧を担ぎ出して、他の面々の下へと歩いていく彼が、最後の一人の筈だ。
アウレリアの紡いだ命へ捧ぐ歌は、きっと彼らの活力へとなってくれたことだろう。
「…………」
アウレリアが見やる、貯蔵庫へとつながる地下の入り口。
もう物音はしない。耳を澄ませて聞こえてくるのは、遠くで猟兵達が歩き回る音だけだ。
――いこう。
引きつけられそうになる視線を、半ば無理矢理逸らす。
そうだ。かつての有り様と、今を生きる彼らの有り様には何の因果関係も無い。
今はただ、今を懸命に生きる彼らのために。
「……守りましょう」
この力を、振るおう。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『信仰し進軍する人の群れ』
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POW : 人の群れが飲み込み、蹂躙する
【槍を持ち一斉突撃を行うこと】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 全てを焼き払い、踏みつけ進軍する
【持ち帰られた弓から放たれる斉射】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【火矢】で攻撃する。
WIZ : 守るべき信仰の為に
対象のユーベルコードに対し【集団による防御結界】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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●灯が燃ゆる
規則正しい音を立てながら、軍靴が崩れかけた石畳を踏みしめる。
黒衣の女性――彼女が恐らく辺境伯なのであろう――に率いられ、軍勢は進軍する。
彼らが纏った白き衣は、かつて何を主と仰いだのだろうか。
どのような存在の名のもとに、武具を手に取ったのであろうか。
……だが、それもとうに昔の話。
骸の海に沈み、淀み、とうに歪みきってしまった彼らにとっては、些末なことだ。
今はただ、吸血鬼の名のもとに。
それは信仰するものが変わっただけの事。
それだけの事で、彼らのありようは今も昔も変わらない。
即ち、『進軍し、蹂躙する』者。
ただ、己の信ずるもののために。
クロス・シュバルツ
連携、アドリブ可
あの黒衣のが辺境伯……いえ、今はそれよりも軍勢を止める事を考えなければ
仮にも指揮官に率いられた、多数の敵を相手にするのは少々厄介な状況ですが、乗り越えてみせましょう
【紫の慟哭】を発動して機動力を強化。矢を放たれる前に『残像』と共に『ダッシュ』で接近。大鎌状態の黒剣から衝撃波を、腕輪から鎖を飛ばして『範囲攻撃』で薙ぎ払う
接敵後も随時移動を続けて狙いを絞らせないようにしながら、出来るだけ多数を巻き込むように攻撃
一撃で倒しきれなくとも攻撃を阻害できれば良し
敵の攻撃を回避できない場合は『オーラ防御』で防ぎつつ『激痛耐性』『継戦能力』を活かして戦闘を続けながら『生命力吸収』で回復
叢雲・凪
連携・アドリブ大歓迎
クロス=さんの情報のおかげで敵戦力の規模は分かった。特に『松明を持っている』というのは非常に有用な情報だ。
相手は吸血鬼とはいえ視界を確保するだけの光が必要だという事…
ならば ゲリラ戦を挑んで『松明だけ』を狙って動けなくしよう。この作戦は事前に仲間の猟兵に伝えておく。
忍び足+目立たない で身を隠し敵が射程範囲に入ったら奇襲だ。(ダッシュ+リミッター解除+ジャンプ+残像) 疾雷で腕を雷にして松明を瞬間的に切断する。相手が動揺している間に電撃で何人か無力化しておこう(マヒ攻撃+気絶攻撃) 仲間が攻撃しやすくなるはずだ。あくまでボクの役割は奇襲 頃合いを見てオタッシャだ。
シルヴィア・スティビウム
なるほど。目を覆い、個人すらなくして、ただ蹂躙するために前に進もうというのね
崇めるものの首がすげ替わっていても気づかないなんて、本当に盲目になってしまったのね
まあ、何が来ても、ここから先へは行かせないのだけれど……
セドナ、貴女は下がっていて
ここから先は、神の助けは届かなくてよ
そんなに戦争がしたいなら、その流儀に従いましょう
土の属性攻撃により、石つぶてを浴びせる
戦列が少しでも崩せればよし。シネレウスを呼び、乱戦に持ち込みましょう
統制が取れていても、一斉攻撃できねば力は発揮できないでしょう
私も斧とシェオルの光輝を発現させ、戦うとしましょう
術だけが本分ではないのよ
「(あの黒衣が辺境伯……)」
草木に紛れ、クロスが軍勢を見やる。
流石に『迎撃態勢が整っている』というのは向こう側も気づいているのだろう。
油断なく周囲を伺い、既に武器がその手に握られている。
その中で、黒衣の女性は悠々と彼らを率いていた。
その根底にあるのは、その力への絶対的な自信か、或いは……?
いずれにせよ。
その力は周囲とは比べ物にならないことは明白だ。仕掛けるまでもなく、それはわかる。
であるならば、余裕ぶっている今のうちに取り巻きを仕留めるのが得策。
息を潜め、時を待つ。そしてそれは、何の予兆も無く。
――バチリ。
雷が奔ると同時、最前で揺れる灯が消える。
悲鳴も無い。血も無い。ただ、灯だけが消える。
誰かが倒れれば『奇襲』と判ずるのは容易だったことだろう。だが、そうでないが故に、『何が起きた』という困惑を与えることができる。
黒雷が、駆ける。その度に灯が消える。
白衣達が手に持つ松明の、その半ばから先だけがバッサリと切り落とされていた。
雷が奔るたびに灯が地に堕ち、世界に闇が戻る。
「(相手は吸血鬼、とはいえ……)」
松明を手にしている、ということは。それは即ち視界の確保に灯が要る、ということだ。
無論、威嚇という側面もあろう。松明の明かりがなくなったところで、全盲と言うわけにはいかないだろう。
だが、それでも多少なり頼っていた灯が軒並み消えてしまえば、その影響は大きい。
たとえ一瞬だろうと、認識能力は極端にまで低下する。
それが故に、凪は皆に告げたのだ。
「灯が消えた瞬間に仕掛けろ」と。
それが攻撃すべき合図なのだと。
闇の中で、白衣達の視線が黒雷の狐を捉えた。
構わない、退く。
追いたければ追えばいい。どうせ自分の仕事はここまでだ。
注意が向くなら、その分『他』が仕掛けやすくなる。
――何かが空を切る音がした。
それが放たれた石礫だと知れたのは、それが何人かの側頭部を強かに叩き、砕けたからだ。
「――本当に盲目になってしまったのね」
声がする。
灯が消えた今を指すものではない。指摘したのは、その有り様だ。
目を覆い、個人すらなくして、ただ蹂躙するために前に往く。
ただ、蹂躙するために。
崇めるものの首がすげ替わっている事にも気づかずに。
……そうであるならば。シルヴィアは宣告する。
「ここから先は、神の助けは届かなくてよ」
少なくとも、かつての信仰の先にいた者は、彼らに祝福を授けはしないだろう。
白銀の重騎士を伴い、突入する。
シルヴィア自身もプラズマを走らせ、出足を崩された軍勢に、殴り込みをかける。
乱戦は勢いが物を言う。
特に初動の混乱は、少なからぬ被害を強いる。相手の勢いを抑えることもままならないからだ。
二振りの戦斧が閃き、雷光が迸る中で、次々と倒れ伏す白衣の軍勢。
その中でも、槍を構え、矢を番える者は確かにいる。
たとえ吸血鬼には劣ると言えどオブリビオン。尋常の兵士とは違う、厄介な敵であることに違いは無い。
混乱の中でも、態勢を立て直すくらいの力は持っている。
……だが、凶刃はその中にまだ潜んでいることに、彼らは気付かなかった。
曇天の夜空よりもなお昏い闇の刃が、幾人かの首を落とす。
新手の奇襲。
白衣の男たちは躊躇わなかった。首の落ちた者が貫かれるのにも構わず、それごと槍を突き入れる。
首を落としたのならそこにいる筈だ、と。
だが、手ごたえは一人分。白衣に新たな血が滲むだけで、あとは空気が揺らめくだけ。
じゃらり、鎖が揺れる。
金属が擦れ、大鎌が薙がれる。
捉えさせはしない。戦場に渦巻く怨念のを宿し、紛れ、クロスは駆ける。
――奴らが蹂躙を由とするならば。
その流儀を以て抵抗としよう。
蹂躙の火を吹き消す大嵐が、到来した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ジュリア・ホワイト
出自は知らないけど、この砦を蹂躙しようというならただの排除対象さ
一歩たりとも踏み込ませたりはしない
「ヒーローが守る場所に襲いかかることの意味、たっぷり教育してあげるよ」
前衛も厚いから恐らく突破されることはないけど
砦や周囲に火を掛けられたら後が厄介か
よし、あちらの射撃兵を優先して潰していくことにしよう
ちょうど薄暗い中、火矢はよく目立つ光源だしね
「おかげで狙いがつけ易い。――圧縮蒸気、チャージ完了。援護射撃を開始する!」
(砦の狙撃ポイントで膝立ちで精霊銃『No.4』を構えながら)
敵がいる限りは射撃を継続しつつ、戦況を観察していようか
万が一砦に攻撃が迫ったらその迎撃を最優先ということで
エル・クーゴー
●POW
敵群の接近を目視で捕捉しました
これより積極攻勢を開始します
躯体番号L-95
当機は離発着の自己管制_及び_空爆の敢行に高い適性を発揮します
・人類砦の物資をちょいと拝借
・マニピュレーターから展開する【メカニック】で簡易的なカタパルトを形成
・【嵐の王・空中行軍】発動
・【空中戦】用バーニアによる発進速に耐え得る足場を使い切り前提で用い己を【吹き飛ばし】出陣、敵上方に布陣し旋回滞空
・アームドフォートほか搭載武装をフル展開
・ヒトの足と槍の穂先の届かぬ高度より一方的に【砲撃】と【爆撃】の【一斉発射】による【範囲攻撃】
・真なる【蹂躙】のなんたるかをここに知らしめん
・常夜の世界の空を、鉄の火で染め上げん
「射角よし、方角よし」
廃墟の中に紛れるように組み上げられた、木組みの射出装置。
その足元でマネギがニャーニャーと忙しなく駆け回る。
そして装置に鎮座するのは、一体のミレナリィドール。
「躯体番号L-95――」
急ごしらえの簡易的な装置は、一回作動させただけでどこかしらガタは出るだろう。
構わない。どうせ廃材だ。その一回が動いてくれれば問題ない。
「――これより積極攻勢を開始します」
スラスター、点火……出撃。
デブ猫たちの敬礼を背に受けながら、エル・クーゴーは曇天の夜空へと飛翔する。
上昇と加速の二つの要素が達成されれば、『空を飛ぶ』というのは案外難しいものではない。
航空力学を駆使したエアロパーツ群が生み出す揚力で、高度の維持は存外少ない燃料消費で済む。
もっとも、戦闘機動を行う場合はその限りではないが、何が言いたいのかと言うと『戦場まで飛んできたところでまだ余力は十分ある』ということだ。
敵影確認。他の猟兵の先制攻撃で浮足立っているのが見える。
上方への警戒は緩い。ならば仕掛けるには都合も良い。
ブラスター、アンチマテリアル、ミサイルシステム、ガンポッド、全兵装、セイフティアンロック。
照準合わせ省略。数が数だ。味方の第一波の退避も完了している。狙わずとも当たる。
――人域を蹂躙せんとする侵略者共よ。
真なる蹂躙のなんたるかを、此処に知らしめん。
「Fire.」
それは罪深き者を焼くメギドの火にも似た。
全弾発射、ありとあらゆる砲火が空より落ちる。
常夜の世界が、紅く紅く染まる。
石畳を抉り、土を穿ち、肉を砕き白衣を焼く。
その様は天より降り注いだ天罰にでも映ったか。……あるいは、この期に及んでも己の信ずる『何か』は揺らぎなどしないのか。
過剰なまでの火力と言えど、あくまでエルは単騎。軍勢を一人で処理するには流石に攻撃範囲には限界がある。
殲滅爆撃から逃れた一団の手に、熱が入るのをセンサーが捉えた。
火矢だ。
成程、確かに高所では人の手も、槍の穂先も届かない。射落とそうとするのは当然の帰結だろう。
だが、その火がエルに届くことはない。何故なら――。
「命中確認……っと」
弾丸が、最前列の射手の胸を正確に貫いた。
今まさにその矢を放たんとしていた弓兵隊が、思わずその手を止めて何が起きたかと犠牲者に目線を向ける。
――隙だらけだ。
もう一発、二発。二人目、三人目。
廃屋の中から戦場を見やるジュリアの手には、一挺の拳銃。
狙撃にはおおよそ不向きに一見見える銃身長。だが、その成果はこの通り。
なにせ、火矢と言う目立つ得物だ。的の位置は遠目であれどはっきりと目に入れられる。
あとは、正しい姿勢で正しく撃つだけ。外す道理が何処にあろうか?
にわかに浮足立つのが見える。
長距離射撃と上方からの範囲爆撃。
敵は目の前に襲い掛かってくるだけではない、四方八方がすべて敵と言う状況に放り込まれたと知ってしまえば、信仰心だけで無謀な突撃は流石に出来まい。
「(別動隊はいない。他の猟兵も仕掛ける準備は出来つつある……)」
少しもすれば、落ちつきは多少なり取り戻すだろう。
だが、そのころには別の攻撃が彼らに襲い掛かる。
であるならば、その時が来るまでは精々、存分にやらせて頂くとしようじゃないか。
彼らの出自は知らねども、こうなってしまえばただの排除対象。
であるならば、やるべきことはただ一つ。
「ヒーローが守る場所に襲いかかることの意味、たっぷり教育してあげるよ」
我らがいる限り、この場には一歩も足を踏み入れること叶わずと知れ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セフィリカ・ランブレイ
後ろは仲間のおかげで避難順調。後は、叩き返すだけ!
『セリカ、量産型、だいぶ落ちたけど。成果は?』
相棒の魔剣、シェル姉の問い
やり口は大体わかった。量産型フェインナルドの仇は取る!
通帳的な意味では難しいけど
目立つ奴が近づけば火矢による一斉攻撃
それに耐えて後が続きやすくすること、そして的確な反撃
これを満たせる私の手持ちは……
【黒鏡の奇術師】、これだね
ピエロマスクに巨大な鏡の装甲を持つゴーレム
出撃まで、手持ちありったけの資材を使って装甲を強化
後は飛び出して、攻撃を一身に受けて、そいつをそのままお返しだ!
『けど、ピエロ面VS白マスクって……嫌な絵面ね……』
後ろの美少女で若干緩和されてると信じたいナー
レナ・ヴァレンタイン
◎アドリブ歓迎
よし今だ、この戦車を敵陣頭上から落とせ、質量攻撃だ
…なに、そこまで都合よくいかない?転送先は決まってる?
………うむ、仕方ない。では昔ながらの騎兵突撃といこうか
敵集団の一番まとまりが大きいところに突撃
戦車の装甲任せに走行不能になるまで突進で蹴散らす
戦車が壊れたら中から飛び出して「まだ両手が無事」な奴からユーベルコードで複製した銃器でぶちぬき、フォースセイバーと黒剣のナイフで片っ端から斬り捨てていく
敵からの遠距離攻撃は散弾砲とガトリングの弾幕でひたすら迎撃
物量差?それがどうかしたかね?
私個人が“軍隊”だ。この程度、撃ち負けるものかよ
さて、後ろの避難は滞りなく片付いた。前情報も十分以上に仕入れることが出来た。
であるならば、セフィリカが……猟兵がやるべきことはただ一つ。
連中を叩き返す。その一点に尽きる。
『そのために量産型、だいぶ落ちたけど。成果は?』
腰から聞こえる彼女の声。
成果?バッチリだ。
やり口は見え、時間も十分稼いだ。これ以上を望むのは流石に贅沢と言うものだろう。
あとは、それを活かして支払いに見合った戦果を挙げてみせればいいだけだ。犠牲になった量産型ゴーレムの仇は取る。
「……まぁ、通帳的な意味では難しいけど」
『あぁそう……』
報酬でどこまで埋め合わせできるかなぁ、という考えは一旦頭の隅に追いやることとして。
実際のところ、猟兵の奇襲によって敵軍は少なからぬ被害を強いられている。
だが、それも何度もは上手くいかないだろう。敵だって慣れるものだ。そろそろ本来の持ち味を活かしてくるには違いない。
即ち、火矢による迎撃と集団の槍陣形。
必要なのは……それを物ともせず、強引に突き進むだけの防御力だ。
『それを満たせるのは……』
「この子ってわけ!ありったけの素材で更に装甲上乗せしてあるしね」
鏡面のように磨き上げられた装甲を備えた、道化師面のゴーレム。
こいつの防御力であれば、そうそう軍勢の斉射を矢面に受けても当たり負けはするまい。
突撃する。雨あられと火矢が降る中を、鏡の道化師が猛進する。
受け止め、或いははじき返し、どんどん押し返す。純粋な力と力のぶつかり合い。
ただ一つ、強いて欠点を上げるとするならば……。
『ピエロ面VS白マスクって……嫌な絵面ね……』
「後ろの美少女で若干緩和されてると信じたいナー」
「なぁに、もっとひどい絵面にすれば気にならないさ」
「『え?」』
唐突に割って入った声は、側方から。
セフィリカは目を見張った。魔剣のシェルファも、もし表情というものがあれば似たような顔をしていたことだろう。
戦車一個部隊が、列をなして、突っ込んでくる。
誰だこんなとんでもないことをしでかしたのは。
「私だ」
「いや誰よ」
レナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)さんです。
無論、こんなド派手極まりない戦法が感づかれない筈もなく、特に後方に控えていた連中は退避を済ませている。
だが、それ以外は。こと、セフィリカのゴーレムとの圧し合いを演じていた連中であれば。
この物量からそうそう逃がすことはできまい。
火矢の迎撃も、最後の抵抗にと突き込まれた槍も諸共に巻き込んで、踏み荒らしていく。
「ふむ、流石に無理矢理の前進だとどこかしらイカれるか」
本当なら頭上から落としたかったところだが、転送地点が決まっている以上は贅沢は言うまい。
実際のところ、蹂躙には蹂躙を。やっていることは他と大して変わりはない。どうせやるなら徹底的に、というだけで。
「さて、無事な奴らはどれほどいるかね?」
よっこらせ、と言わんばかりのテンションで戦車の天板を開けて上体を出すレナの姿に、敵軍隊は当然としてセフィリカもちょっとだけ恐怖を覚えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アウレリア・ウィスタリア
【空想音盤:追憶】の花弁を纏って上空から強襲します
花弁の嵐を打ち消すのなら
どうぞ打ち消してください
その間にボクの鞭剣がアナタたちを切り裂きます
打ち消さずにボクを迎え撃つのなら魔銃がアナタたちを貫きます
防御結界が乱れたのなら
再度ネモフィラの花弁を纏いましょう
あとは花弁の嵐が敵の群れを引き裂きましょう
人々の安寧を脅かす敵
この場所には思い入れがあります
(悪い意味ではありますが)
今の人々が明るい未来を紡ぐため
そのためにボクは力を奮いましょう
アドリブ歓迎
メアリー・ベスレム
あぁ、厭な臭い
誰かを温める灯じゃない
お腹を満たす竈でもない
何もかもみんな燃やしてしまう、ただそれだけの
血と灰が入り混じった炎の臭い
【凍てつく牙】の冷気をまとって熱を遮断し
放たれる火矢を【野生の勘】で回避しながら
高速移動で敵陣へ
こうやって懐に跳び込んでしまえば、弓での対処は難しいでしょう?
敵が槍に持ち替えて態勢を整える前に
【ジャンプ】【踏みつけ】に肉切り包丁の【重量攻撃】も織り交ぜて
思う存分、引っ掻き回してあげるから
信仰なんてメアリはわからないけれど
信じるものを挿げ替えられたあなた達
その姿が哀れな事だけはわかるから
えぇ、だからここで皆殺しにしてあげる
――あぁ、厭な臭い。
耳元を掠めていく火矢に横目の一つもくれず、メアリーは眉をひそめた。
眼前には、雨あられと降り注ぐ火矢に、煌々と燃え盛る松明の灯。
明るい。
その火は、その灯は、確かに常夜の世界に光を与えていた。
だが、この臭いは違う。
あの灯は、誰かを温めるものではない。
腹を満たす竈でもない。
ただ、焼き尽くすだけの、血と灰に塗れた炎の臭い。
熱は遮断できても、それだけはきっと彼らが滅ばない限り消えることはないのだろう。
「(あぁ、遠い)」
歯噛みする。
目にもとまらぬ身のこなしは、そう簡単には被弾を許さない。
だが、それを掻い潜って懐に飛び込むには、火矢の物量は多量が過ぎる。
背中で草の燃える臭いがした。
焦げ臭い、むせかえるような臭いが、戦場に染みついて行くかのよう。
その中で。
メアリーの鼻は、それとは違う『香り』を確かに捉えた。
「花……?」
ほのかに甘い、炎の中には似つかわしくない、優しい香り。
風が吹く。
戦火を吹き消し、花弁が舞う。
それは、白衣の軍勢を覆い、閉じ込めるかのように渦を巻く薄青のネモフィラ。
その花嵐の中に、羽根が二枚、踊る。
片割れは雪のように白く。
もう片方は、月夜のように黒く。
「――ボクは」
花嵐を従えて、アウレリアが翼を広げた。
――ボクは、此処に良い思い出は無い。
だけど。それでも。
それは確かに、『思い入れ』というやつなのだろう、とも思う。
そんな場所で。
今を生きる人々が、懸命に新しい道を紡ごうとしている。
それならば。
「(ボクは、力を奮いましょう)」
その花のように許し、愛し。
そして、それを脅かすのであれば、護り抜こう。
記憶の奥底に小さく揺蕩う、勇気ある者のように。
可憐な中に、確かな鋭さを内に宿し、花嵐が狂信者を引き裂いていく。
魔女め。そんな声が、嵐の合間に聞こえた気がした。
「……ふん」
メアリーが鼻を鳴らす。
彼らが一斉に、上空のアウレリア目掛けて火矢を構えるのが見えた。
それは明確な隙だ。今のメアリーであれば、矢の密度が下がってしまえば容易に飛び込める。
気付いたときにはもう遅い。
体重を乗せて押し倒した一人の胸に、肉切り包丁を突き立てる。
ネモフィラの香りの中に、血臭さが混ざる。
――メアリーには、信仰というものはわからない。
だけれど、盲目的に、信仰する先も、その意味も分からないまま、ただ『信じ続ける』だけの有り様が憐れなことはわかるから。
だから――。
「だからここで、皆殺しにしてあげる」
安らかな眠りの夜に、狂信の火は明るすぎる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
【竜鬼】
相手は軍勢。それも信仰を同じくする事で価値観まで共有した恐るべき群体。
まずは敵軍の集団戦闘能力を崩す所から始めましょう。止めはひかるさんの力を以ってすれば可能!
(尤もらしく言っているが、要は敵に嫌がらせして、後はひかるさんに丸投げ、です)
最初にUCでスズメバチの巣を敵軍の中に発生。
スズメバチ達は敵に張り付いて、防御の薄い所から毒針を刺したり、強靭な顎で噛みついて、毒と激痛で個々人を弱体化継続。
更に【多重詠唱】で【土の属性攻撃と水の属性攻撃】起動。
【全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃】で敵軍周辺から自軍前面までの地面を泥濘化して突撃を困難にする。
尚、戦闘ではひかるさんを【かばい】つつ戦います。
荒谷・ひかる
【竜鬼】
恐ろしい相手です……けれど、敵わない相手じゃありません。
行きましょう、リューさん、精霊さん!
【風の精霊さん】発動
彼らは風故に不可視、なので襲われてもそれを「見る」のは困難でしょう
更にリューさんのUCで攪乱した所に襲い掛かれば、「見える」スズメバチによる攻撃だと誤解するはずです
総勢395体で以て、鎌鼬や空気遮断による窒息攻撃、体内に潜り込んでの自爆などを仕掛けます
徹底的にスズメバチさん達を囮に闇討ちと行きましょう!
更に大地の精霊さん、水の精霊さんにお願いしてリューさんの属性攻撃を支援してもらいます
わたしも精一杯彼らを「鼓舞」し、常以上の力を発揮できるように応援します
ヴヴヴヴヴ。
文字に起こすとこんな感じだろうか。
耳障りな音が、白衣の集団の鼓膜を揺らす。
……虫だ。
スズメバチの群れが、彼らの周囲を飛び回っている。
いったいどこからやってきたのか。それはわからずとも、今こうして群がられている事実に変わりはない。
鬱陶しそうに手で払っても、小さな蜂はひらりひらりと中空を舞い、矢で撃ち落とすこともままならない。
そうこうしているうちに、ばたりと一人、音を立てて倒れ伏す。
毒か。
この世界の決して高いとは言い難い医療水準では、ただスズメバチの一刺しで即座に倒れ伏すと言う違和感に気付く者は少ない。
こうして飛び回っているこの羽虫共に原因があると考えるのは、当然の帰結だっただろう。
……それが、彼らの思う壺だとも知らずに。
確かに、蜂がもたらす毒は白衣の軍勢を少なからず蝕んではいた。
しかし、いくら振り払い、いくら叩き落としても、倒れ行く兵は後を絶たない。
何故か?
理由は単純。『他に原因があるから』というだけの話だ。
「相手は軍勢。それも信仰を同じくする事で価値観まで共有した恐るべき群体です」
リューインは、その白衣の軍勢をそう評した。
策も無く、正面からぶつかり合えば、猟兵と言えど多少の被害は覚悟せねばならなかったかもしれない。
それに……と。リューインは傍らに控える少女を見やる。
彼女……ひかるは、お世辞にも直接的な戦闘力は高いとは言えない。
彼女を守りながら、死をも恐れぬ狂信者の攻勢を相手にするのは、いささか無謀にも思えた。
だが。それはあくまで『正面からぶつかれば』の話だ。
手段を選ばなければ、戦い方はいくらでもある。
スズメバチはリューインが使役しているものだ。
だが、あくまでもそれは囮。弱体化こそになっているが、実質的に敵を仕留めている存在は他にある。
それは『風』。戦場を流れる『空気』そのもの。
ひかると共に在る風の精霊が、白衣の軍勢を次々に斬り伏せ、或いは呼吸すらも鈍らせて屠っているのだ。
連携すらもままならせない大混乱。
それでも、こうまで悪意のある動きを見れば、彼らとてそれを使役する存在には流石に気づく。
身を隠す場所の少ない街道、いくら目立たぬように潜んでいても、二人の存在が気付かれるのは必然だ。
だが、それは覚悟の上。
「リューさん!」
ひかるを庇うよう、リューインが前に立つ。
槍を手に踏み込んでくる者が数名。
……踏み込みが遅い。既にこの場は、彼ら二人と精霊たちの領域である。好きに動けるはずがない。
そして何より、たかだか数名であれば……彼女に指一本触れさせることは己自身が許さない。
一閃。
リューインの剣が、また一人、白衣を血に染める。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
朱酉・逢真
さて、さて。大事なもんはしまっちまったし、あとは戦うだけかいね。
群れには群れさ。俺のかわいい眷属たちよ、突撃しろ。ああ、強化もしちゃいねえからさっくり死ぬだろう。だがそいつらみィんな生きた爆弾さ。狂ったように突撃してくる爆弾たちさ。やっかいだろう?
さあさ、行けや行け。俺のちびどもはいくらでも湧いてでらぁ。《虫》も《鳥》も《獣》も尽きるこたぁねえぜ。
ひとり殺すならひとりが死ぬのさ。さあ、蹂躙に蹂躙を返せ。
リーヴァルディ・カーライル
…かつての貴方達がどのような信仰を抱いていたかは知らないけど、
吸血鬼の下僕となり今を生きる人達を襲うのならば容赦はしないわ
戦闘が始まれば【血の鎖錠】を解除し空中戦を行う“血の翼”を広げ、
“写し身の呪詛”を用いて無数の残像を残して火矢を避け、
自身は闇に紛れて敵陣に切り込み、
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して魔力を溜めUCを二重発動(2回攻撃)
…来たれ、星々を震わせる大いなる力よ
せめて痛みを感じる暇もなく消え去るがいい
両掌に“闇の重力”を宿して怪力任せに両手を繋ぎ限界突破
超重力のオーラで防御ごと敵を圧し潰す“闇の渦”を放ち、
敵陣をなぎ払い乱れ撃つ重力属性攻撃を行う
…道は開かれた、次はお前よ辺境伯
虫が、獣が、鳥が。
闇色の身体を暗夜の世界に溶け込ませ、白い蹂躙者に襲い掛かる。
斬れども突けども穿てども、その数は留まるところを知らぬ。
いくらでも、いくらでも湧いて出る、陰の軍勢。
「なんせ、俺のかわいい眷属たちよ」
くっくっと、病毒の神は喉奥で笑みをこぼす。
彼らがかつて何を信仰していたかは存ぜぬ。まぁ、少なくとも己ではなかろうが。
正義のためと嘯いてすべてを踏み荒らす白き暴威。
その末路は決まっている。
即ち……逃れ得ぬ『天災』による破滅。
己ら以外を顧みぬ者が、より強い暴威にどうして対抗できるものか。
掃えど、退かせど、無尽蔵に湧き出る彼らの暴威は、留まるところを知らない。
その眷属は、言わば『生きた爆弾』だ。死ねば爆ぜ、諸共に塵と化す。己の命を顧みることも無い。
ある種、似た者同士かもしれない、白と黒の信仰の駒。
蹂躙には蹂躙を。戦いは泥沼の様相を見せていく。
――そして。
そんな戦場を照らし出していた、雲間に見えた月の光が、ふと途切れる。
空にあるのは血の翼。
「……かつての貴方達がどのような信仰を抱いていたかは知らないけど」
吸血鬼狩りの黒き執行者が、戦場に降り立つ。
火矢が飛ぶ。
疎らなものだ。目ざとく彼女を見つけた一部の連中が射掛けたものの、それらは気を抜けば、間もおかずに黒の獣に食いつかれることだろう。
均衡を崩す余裕はないのだ。蹂躙者のぶつかり合いは、そこまでに微妙なバランスで成り立っている。
そして、そうであるならば、崩すのは容易い。
「吸血鬼の下僕となり、今を生きる人達を襲うのならば……容赦はしないわ」
一本の火矢が、リーヴァルディの身体を貫いたように見えた。
だがそれは、ふわりと空気に溶けていくただの残滓、残像に過ぎない。
バチリ、両掌に集った魔力が音を立てる。
吸い上げる。溜めに溜めた力、戦場に満ちる力。星々を震わせる、大いなる力。
敵陣の中心に降り立った彼女を止める者はいない。
止めようと動いた者はいても、漆黒の眷属に食われるか、或いはソレを退けたとしても。
もはや、止めることは叶わない。
「せめて痛みを感じる暇もなく消え去るがいい……!」
両掌の力を、ぶつけ合う。解き放つ。
解き放たれたエネルギーは漆黒の奔流と化し、総てを押し流し、押しつぶす。
防ぐ手立てはない。咄嗟に放った防護障壁などは物の数でもない。
危ういバランスの上に成り立っていた均衡を崩すには、その一撃は十二分に過ぎた。
巻き起こる闇の渦。治まるころには、侵略の火は最早なく。
「……道は開かれた、次はお前よ」
あとに残るは、辺境伯ただ一人。
大成功
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第3章 ボス戦
『朱殷の魔術師』
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POW : その技、興味深いわ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【鮮血の石が煌く杖に記録し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD : 美しく踊って頂戴?
自身が装備する【硝子瓶から追尾能力を持つ鮮血の刃】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 朱く赤く紅く咲きましょう
全身を【薔薇が香る瘴気】で覆い、自身が敵から受けた【喜怒哀楽の感情の強さ】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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●血を捧げよ
「嗚呼、勿体ない」
地を覆い尽くさんとばかりの白き狂信者たち。
その総ては倒れ、自らの血に沈んだ。
その様を、黒衣の女は――辺境伯はさも残念そうな顔で見つめる。
……しかし、そこに悲哀は無い。
そこにあるのは、自らに付き従う者の離別を惜しむものではない。
「これほどまでの血を、ただ流すだけで無駄にしてしまうだなんて」
それは、『材料』を無駄にしてしまった研究者の目であり、そしてそれ以上の何物でもなかった。
まぁ良いでしょう。そう彼女は言う。
「抗いの意思……その希望が絶望に変わるとき、人の血はどのような感情で満たされるのかしら」
女の唇の端が吊り上がる。
さぁ、人の子らよ。その内にある感情を垣間見せるがいい。
「強い感情の下で流れ出た血……それこそが、私の求めてやまないものなのだから」
女の胸元で煌めく深紅の宝石が、脈動する。
ジュリア・ホワイト
抵抗が絶望に変わる時、か
きっと例えようもない喪失感があるのだろうね
「ボクも沢山見てきたよ。――犯罪者が愚かな抵抗を挫かれ、逮捕される運命が不可避なのを悟った様をね」
キミの知りたい事は、実体験で確かめると良いさ!
精霊さんに作って貰った石炭を食べ【圧力上げろ!機関出力、最大開放!】を発動
強化した身体能力に任せて辺境伯に向かっていこう
「ヒーロー・オーヴァードライブ参上!観念するんだね、吸血鬼!」
相手は術士タイプのようだし、スコップと動輪剣で接近戦を主体に仕掛けていこう
射撃タイプの猟兵が居るなら、その援護の為に足止めをしても良い
こちらは自己強化技だ、コピーなんてさせない
ボクの動きについて来れるものか
クロス・シュバルツ
連携、アドリブ可
仮にも配下を使い捨てて高みの見物とは、随分いい身分な事ですね
残念ながら此処にあなたの求めるものはありません
早々に骸の有無へと戻ってもらいましょうか
【噛み砕く黒蛇の牙】を使用、鎖で互いを繋ぐチェーンデスマッチ状態に持ち込み『傷口をえぐる』事で『継続ダメージ』を与えると共に『生命力吸収』を行う
仮に防がれて敵に使用されても双方を繋ぐ目的は果たせるので良し
後は黒剣を短剣状態にして、接近戦に持ち込む
後は『フェイント』を織り交ぜ、隙があれば紋章を狙って攻撃、『部位破壊』の要領で切り離して強化解除を狙う
被ダメージは【オーラ防御】で防ぎ【激痛耐性】【継戦能力】と【気合い】で耐える
「仮にも配下を使い捨てて高みの見物とは……」
あの白装束の集団が、どのような経緯で彼女に付き従っていたのかはわからない。
洗脳か、あるいは、オブリビオンと化したことで思想そのものが何かしらの歪みを生じさせてしまったのか。
その事実が如何様なものにせよ、たとえ歪な形であったとしても……確かに、彼らはこの女を主と仰いでいた。
だが、この女はどうだ。
オブリビオンと言えども、所詮人という存在は、吸血鬼にとっては物と変わらぬと言う事か。
「随分いい身分な事ですね」
クロスが吐き棄てる様を、辺境伯は感情のこもらぬ目で見つめ返すだけだ。
所詮は、彼の言うこともこの女にとっては取るに足らぬ音に過ぎないのだろう。
彼女にとって必要なのは、そんなものではないのだから。
「残念ながら、此処にあなたの求めるものはありません」
「あら、そう思う?」
「ええ」
希望が絶望に変わるその瞬間。
だが。希望など、奪わせない。人々のも、そして己のも。
敢えて言うのであれば。
「キミの知りたい事は、実体験で確かめると良いさ」
クロスの言を継いだ言葉は、辺境伯の横合いから。
高速で肉薄する白い影。
動輪剣とスコップを握り込んだジュリアの口元で、噛み砕かれた石炭がパキリと音を立てる。
速度と体重を乗せて振り降ろされた一撃が、辺境伯の杖とぶつかり合い、耳障りな音を響かせた。
「ボクも沢山見てきたよ。――犯罪者が愚かな抵抗を挫かれ、逮捕される運命が不可避なのを悟った様をね」
そして辺境伯もすぐに同じ道を辿ることになる。ジュリアはそう宣言する。
だが、女はただ笑みを深くするだけだった。
「感情そのものに興味はないわ。欲しいのは、血なのよ」
「同じことです」
杖を振り抜いてジュリアを弾き飛ばした辺境伯へ、間髪入れずにクロスが放った鎖が飛ぶ。
そう、同じことだ。感情も血も、くれてやるものなど一滴たりとてあるものか。
身体を狙った鎖を、辺境伯は器用に杖で絡め取る。
鎖から生じた刺を杖の魔力で砕きながら、辺境伯はへぇと小さく吐息を漏らした。
「逃げられない毒棘ね……なかなか面白いじゃない」
ニヤリと笑った女の手にした杖の宝玉が、不気味な光を帯びる。
次の瞬間、そこから放たれたのは、クロスのそれと全く同じ鎖。
「っ……!」
左腕を巻き取られる。
相手に対して強いる筈だった毒棘が、自らの腕を通して流し込まれるのを感じる。
――安いものだ。
クロスは己に言い聞かせる。
お互いを繋ぐ鎖。
ダメージを強いられたのはこちらの側であれど、最大の目的……『逃がさない』という目的は、これで達した。
逃げられないのは己の側ではない。辺境伯の側なのだ、と。
……辺境伯の名は、決して飾りなどではない。
魔術師然とした外見でありながら、クロスとジュリアの二人の猛攻を前に一歩も退かぬ杖捌きを見せる。
それが元々の吸血鬼の力なのか、あるいは辺境伯の紋章とやらの力なのかは知れぬが、自由に戦わせていたら苦戦は必至であったことだろう。
……だからこそ、この鎖が効いてくる。
ジュリアが踏み込み、動輪剣を振り上げに行く。
辺境伯の靴が石畳を叩き、軽い音と共に身を翻させる。
ただそれだけであったならば、ジュリアの一撃は空を切るだけで終わっていただろう。
「……っ!?」
杖先から伸び、クロスの腕を蝕む鎖をクロス自身が思い切り引く。
胸元の紋章目掛けて突き込んだ短剣を嫌がった辺境伯が身を捩る。
捌かれた。だが構わない。
射程外に逃がすことなどさせはしない。ジュリアの間合いの中に強引に留まらせる。
「観念するんだね、吸血鬼!」
であるならば、『超過駆動(オーヴァードライブ)』を名を冠する者が、追いつけぬはずがない。
咄嗟に杖を割り込ませる暇は与えない。ついてこさせはしない。
渾身の力で振り抜いた鋸刃が、辺境伯の肉を抉り、鮮血を飛び散らせる――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
叢雲・凪
ついに黒幕の登場か…
「どうも 辺境伯さん。ジンライ・フォックスです」(礼儀作法)
※ 敵とはいえ大物なので挨拶は忘れず行う
安易にユーベルコードを使うとコピーされる可能性がある。
できる限り技能のみで戦闘を行おう。
ダッシュ+残像+マヒ攻撃+リミッター解除 を用いた白兵戦を挑む。
マヒでヤツの動作を鈍くできれば攻める隙がうまれるはず。
頃合いを見て一気に攻め立てる。『夜天九尾』を発動し防御動作に移るよりも早く拳を叩き込む!
「お前の動きよりも速く動けばいいだけだ!」(マフラーを解いて夜天九尾状態に。90秒間のみ人外の速度で動く)
もし夜天九尾を奪われたとしても【時間制限】がある ヤツはそれを知らない。
エル・クーゴー
●POW
最終撃破目標を目視で捕捉しました
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します
・敵のコードは、こちらの攻撃を防御することから始まる奇跡の類
・先んじて仕掛けることは容易と踏む
・アームドフォートより各種【砲撃】を敢行、間断無く畳み掛ける
・【狩猟の魔眼】を「状態異常力重視」にて発動
・状態異常力は、弾体の発射時、射出装置に対する動作不全を誘発する「電脳魔術により生成したウイルス(ハッキング+蹂躙)」を高濃度で含ませる形で運用
・己にはウイルスの攻撃性が向かぬよう【暗号作成】により細工を
・以上の段取りで『辺境伯がPOW使用時、ウイルスが「鮮血の石が煌めく杖」へ自壊を強いる』ことを狙う
「どうも 辺境伯さん」
――ジンライ・フォックスです。
ざり。凪の靴底が、削れた石畳を擦る。
遂に現れた元凶。大物相手だ。
敵ではあるが、名乗るのがヒーローとしての礼儀というものだろう。……もっとも、相手がどう思っているかは知らないが。
猟兵の一撃を負った辺境伯は、自らの傷を忌々し気に指でなぞると、怪訝そうな顔を凪に向ける。
「覚える気はなくてよ」
「そうか」
問答はごく短く。礼儀としての挨拶は済ませたのだ、あとは余計なことを考えることもあるまい。
手甲にバチリと稲光が奔り、それが交戦の合図と化す。
打ちこまれた拳が、辺境伯の杖とぶつかり合う。
手ごたえが固い。押し込むにはもうひと押しが足りない。
払われる。無理に鍔迫り合いは演じない、その勢いをそのまま受けて、距離を取る。
もう一撃、と踏み込もうとした凪の視界の端に、紅いものが映った。
……血だ。
辺境伯が放り投げた硝子瓶。その中に満たされた鮮血が、まるで意思を持つかのように紅のウォーターカッターとなって凪に襲い掛かる。
「くっ……!」
頭上から叩き込まれた血の槍が、一瞬前まで凪の立っていた石畳を抉る。
間髪入れずに、その進路を阻むように第二の刃がなぎ払われる。
攻め入る隙は無いわけではないが、少ない。
この防御陣形を抜けて肉薄する手段は……ある。
だが、これは確実に打ちこむところで使いたい。仮に防がれたときを思うと、いささかリスクが大きい。
さて、どうすべきかと、凪が次の一撃を避けようと身を翻したところで、何かが高速で飛来する音を聞いた。
「弾速、ホーミング精度、フィードバック完了。更なる誤差修正は不要と判断」
飛来したそれは、血の刃を貫き、雫へと変える。
エルが放った大口径の狙撃銃弾。
縦横無尽に飛び回る血の刃を、正確な一撃で叩き落としたのだ。
所詮、血は液体だ。散らせたところで、復元は容易いだろう。
だが、一時的にでも砕けると言う事実が重要なのだ。その間隙は、凪が踏み込むには十分であり、そうなれば辺境伯自身が迎撃に回らざるを得なくなる。
そして、辺境伯が凪の迎撃に意識を裂かれるのであれば……。
「ザミエルシステム、起動」
いくら辺境伯と言えど、この一撃を避けるのは難しかろう。
ユーベルコードを仕込ませたハッキング弾頭。叩き込む。
それでもなお、己の杖で弾き飛ばしてみせたのは、その辺境伯たるに値する実力のなせる業か。
だが構わぬ。『避けさせずに』『防がせた』のだから。
少し黙っていろと言わんばかりに、凪の一撃から身を翻した辺境伯がエル目掛けて杖先を向ける。
ユーベルコードをコピーしての反撃。
撃ちこまれた銃弾をそのままエル目掛けて返そうとし……このタイミングで、エル自身のユーベルコードが牙を剥く。
撃ちこまれた対象への動作不全。それこそが仕込んだウイルスの実状だ。
強力なオブリビオン故に次回にこそ持ち込めなくとも、意図せぬ反撃の不発は、辺境伯にとって最大の隙を晒すことになる。
であるならば。
「出てこい……!」
その『札』を切る。
外装【鳴雷】、封印解除。解放、【夜天九尾】!
黒雷の軌跡を尾のように残し、凪が走る。
体勢など立て直させない。
防がせる気は毛頭ない。単純なことだ。
「お前の動きよりも速く動けばいいだけだ!」
黒雷の断罪の拳が、辺境伯の身体を宙に舞わせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
あら、珍しい
あなた達(ヴァンパイア)にとっては無駄な流血なんて
ほんの嗜みみたいなものだとばっかり思っていたけれど
だったら、あなたが流させた血は
メアリが有効利用してあげるから
周囲に流された「群れ」の血から
臆病者の刃に【血の声の武器】を形成
信じるものをすり替えられたあなた達
だけれどそれでも、信じるという事だけはやめなかった
喜びでも怒りでもない
哀しくも楽しくもない
ただ「信じる」という行為
あなたにもメアリにも理解なんてできないけれど
直接教えてくれるそうだから
一つ勉強していくと良いんじゃないかしら
声に取り込まれないよう【狂気耐性】で耐え
【野生の勘】【継戦能力】で致命傷を避けて
【部位破壊】で解体してあげる
朱酉・逢真
人の子じゃねぇんでやなこった。あのべっぴんさん、シャレた瓶持ってんなあ。入ってンのがぶどう酒とかなら、平和でよろしいことっつって終われたんだがな。
血の刃は俺が止めよう。いくら増やしたっておんなじさ。血は流れるもの、液体だ。腕力にゃあトンと自信がねえが、堕ちて腐れど神なんでね。神威はそこそこ残っているさ。
《過去》に負ける気は毛頭ねえしな。
そっちはひとり、こっちはたくさんだ。俺が防御を防いでりゃ、つえぇおヒトらが攻撃に専念できるのさ。
隙を見せていいのかい。血の刃で宝石ぶっ壊しちまうぜ?
ゆらりと辺境伯が立ち上がる。
こぽりと、石畳中に広がった夥しい血が湧きたつような、そんな錯覚を覚えた。
勝てると思ったか、その思い上がりを正してくれようと言わんばかりの殺気が、辺境伯から溢れ出る。
その勝機が絶望に変わる様を見届けてくれよう、と。
だが。
「やなこった。《過去》に負ける気は毛頭ねえ」
そも、逢真は人の子ではない。神の座に名を連ねる者である。
たかだか吸血鬼の言いなりになる義理が何処にあると言うのか。
……辺境伯が、手にした瓶を放り投げる。
その中から……いや、それだけではない。そこかしこから、鮮血が刃となって、逢真へと降り注ぐ。
小洒落た瓶に、鮮やかな紅い液体。あれが葡萄酒か何かであれば、平和的だったものだが、などと逢真は思う。
――あるいは、吸血鬼にとってすれば人の血も似たようなものか。
まぁ、それは別にいい。
問題の本質は、そこではない。
ぱしゃり。血の刃が、眼前でその形を崩す。逢真の身を裂くものは、一つたりとも無い。
怪訝な顔を浮かべる辺境伯に対し、逢真の表情には軽薄な笑みが張り付いたまま。
――血とは『液体(ナガレモノ)』、命の水。
留まらず、逗まれず。堕ちて腐れど神の一柱、残った神威でも、あるべき有り様に戻す程度であればこの通り。
……そして、移りゆくものであればこそ。
「――メアリが有効利用してあげるから」
声を発する黒兎。
逢真自身は腕力はからっきしでも、相手は一人、対するこちらは複数なのだ。
首狩り兎(めあり)の手に握られた、紅が滲む肉切り包丁。
流れ出た血が、纏わりつく。その持ち主たちの『声』と共に。
そこにあったのは、怒りでも、憎しみでも、或いは悲憤の、そのいずれでもなく。
そこにあったのは、ただの『信仰』。
ただひたすらに、己の定めた道を突き進み、阻むものを踏み砕くための、エゴイズムに溢れた意思。
メアリーにも、吸血鬼にも……いや、それ以外でも、理解できるものはごく少数なのかもしれないが。
その狂えるほどの感情は、確かに阻むものを穿つ力となりうるものであろう。
……もしかしたら、その『感情が生む力』の有用性に目をつけたからこそ、この辺境伯も、それを宿した血を求めていたのかもしれぬ。
利用はさせなくとも、勉強していくくらいなら良いだろう。
メアリーが包丁を握り込む。
移ろう血が、逃がさぬと辺境伯にまとわりつく。
それは、神の権能か、あるいはただのナガレモノの気まぐれか。
いずれにせよ。
矛先を変えた信仰の血の刃は牙を剥いて、自らの紅に辺境伯のそれを加えていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
荒谷・ひかる
【竜鬼】
そんなこと言ってはいけませんよ、リューさん。
アレは人の姿をしていますが、害獣みたいなものですから。
「性格の悪いおばちゃん」達に失礼です。
……さあ、害獣は粛々と処理しましょう。
当初はリューさんに前衛を任せ、わたしは精霊銃での援護射撃を担当
リューさんを狙う鮮血の刃を拡散水流弾で纏めて撃ち落とし、或いは薄めて「鮮血」でなくして威力低下を狙う
リューさんが斬り込み、隙ができたら【武装憑依・闇の精霊さん】発動
精霊銃からマイクロブラックホール弾を放ち、超重力で圧し潰してやります
彼女に喜怒哀楽の感情を向ける事はありません
害獣に対して一々怒っても仕方ないですし、淡々と駆除するのみです
リューイン・ランサード
【竜鬼】
性格悪いおばちゃんですね、嫌だなあ~。
さっさと倒して、胸元の宝石(紋章)を回収しましょう。
敵一人なので前衛で戦闘。
【第六感】で敵攻撃を予測して【見切り】で躱し、躱しきれない攻撃は【ビームシールド盾受け】と【オーラ防御】で受け止める。
鮮血の刃など数が多い攻撃は【風の属性攻撃・高速詠唱・範囲攻撃】による迎撃で【吹き飛ばす】。
エーテルソードと流水剣を【怪力】を以って軽々と振るい、二刀流による【2回攻撃】に【光の属性攻撃】を上乗せして斬ります!
敵UCは、使用時をしっかり見た上で自分のUCで相殺する。
これらの行動を以って敵行動を抑え、ひかるさんの攻撃で止め。
尚、ひかるさん危険時は【かばい】ます。
「性格悪いおばちゃんですね、嫌だなあ」
「そんなこと言ってはいけませんよ、リューさん。アレは人の姿をしていますが、害獣みたいなものですから」
はてさて、そんなやり取りは。気の置けない間柄故の軽口か、或いは挑発か。
傷を受けてもなお立ち上がらんとする辺境伯の眉根がピクリと動く。
……吸血種たる辺境伯にとって、人ごときが吸血鬼の歳を語ることにいちいち青筋を立てる意味などない。
ただの僻みだ、矮小な命が、上位存在である吸血鬼を僻んでいるだけなのだ。
それはいい。
「……さあ、害獣は粛々と処理しましょう」
「命が惜しくないようね、小娘」
だが、あまつさえ人ごときが我らを獣と同類に扱うなどと。
辺境伯の握りしめた杖がミシリと音を立てた気がした。
ぞわりと、血が湧きたつ。
それは信仰に殉じた狂信者たちの血であり、これまでに積み重ねられてきた犠牲者たちの血であり……あるいは、彼女の憤怒が混ざった血でもあったのかもしれない。
血の刃が、一斉にひかるへと向かう。
だが、それをただで見逃すリューインではない。
誰が、大切な相手に獣の牙が突き立てられるのを黙って許すだろうか。
「邪魔よ、小僧!」
盾に弾かれ飛沫となった血が、再び槍を形作る。
この場に流された血は膨大だ。故に、その刃の物量は尋常ではない。
それはいくら猟兵と言えど、一人で対処できる許容量を大きく超えている。
……無論、一人で無理なのならば、二人で処理すればいいだけなのだが。
ひかるに向くものはリューイン自身が身を躍らせ、盾になる。
リューインを狙うものは、それこそ自身が捌き、防げばいい。
そして防ぎきれぬものは……。
「援護しますっ!」
ひかるが精霊銃を正面に構え、しっかりと握り込む。
リューインが飛び退く、射線が空く。彼を追うように血の刃が弧を描く。
的は正面、あとは反動に負けぬように撃つだけ。
放たれた霊水の弾丸が血の刃を弾き落とす。弾幕が緩んだ。
リューインが双剣を手に肉薄する。阻むものはない。
ぎゃりぎゃりと、杖と刃がぶつかり合う耳障りな音が響いた。
吸血鬼の膂力、それも紋章により増幅したそれは、ドラゴニアンの剛腕を以てしてもそう簡単に打ち負けるものではない。
だがいい。一瞬でも拮抗させられたならそれでいい。
己だけが戦っているわけではないのだから。
「今です!ひかるさん!」
「はいっ!」
一瞬でも、動きの止まった相手であれば照準はつけられる。
――情を乗せるな。淡々と、教えられたこと、覚えたことだけを遂行しろ。
正面に構え、腕を、足を支え、引き金を、引く。
銃口から打ち出される漆黒の弾丸。
光すらも飲み込む、圧縮された超重力。
リューインは他ならぬ辺境伯が弾き飛ばした。であれば巻き込まれることはない。
解き放たれた重力の闇が、大地に罅を入れながら辺境伯を圧し潰す……!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セフィリカ・ランブレイ
私偉いし強いもん!何で言う事聞かせちゃダメなの!
「強くて偉いから、他人の事を考えなきゃならないんだ」
調子乗りまくりの昔の私を諭す為、
ロートルの体を鍛え直し、私を叩きのめしてくれた父の言葉を思い出す
あのままの私をもっと趣味悪くしたら、目の前の吸血鬼になるのかな
うん。綺麗な所以外褒める所ないな!
シェル姉、行こう!全力だよ!
『そ。結構腹に据えかねた訳だ』
まあ、ね。これでもいい女王様になりたいとは、思ってるんだよ。
【神薙ノ導】で行くよ!
一呼吸すら見逃すな。撃ち合う挙動から、
敵の技能を、知識を、意思を組み立てろ
相手を紐解き上回る。これはそういう剣だ!
リーヴァルディ・カーライル
…成る程、人の生命を何とも思っていない
毛色は違えど典型的な吸血鬼のようね
ならば、どれだけ力が強くても私が敗北する事はない
…吸血鬼狩りの業を知るがいい、辺境伯
生命力吸収の瘴気は全身を覆う呪詛耐性のオーラで防御
戦闘知識を元に敵の気合いや殺気を暗視して攻撃を見切り
呪詛を纏う大鎌を怪力任せになぎ払い迎撃
…もっとも、私が使うのは業だけでは無いけどね
第六感が血刃の発動を捉えたら
カウンターでUCを発動
限界突破した魔力を溜め血刃の支配権を奪い武器改造
血刃から血杭を乱れ撃ち紋章を狙い隙を作った後、
地面から無数の血杭を放ち傷口を抉る2回攻撃を放つ
…どうやら、踊るのはお前の方だったみたいね?
さぁ、美しく踊って頂戴?
「人の子如きが」
大きく拉げ、抉れた街道。
その中心でなおも立ち上がる辺境伯の忌々しげな呟きは、交錯の途切れた一瞬に耳に届く。
それを聞き届けたリーヴァルディは、一つ、呆れたような溜息を洩らした。
「……成る程、人の生命を何とも思っていない」
少しばかり毛色の違うところはあったが、結局はこいつも吸血鬼。その傲慢さは他と何ら変わることはない。
そして、下々の――果たして吸血鬼に対する人が事実そうであるのかは別問題として――存在を顧みることのない、その傲慢は……。
「(あの時のままの私をもっと趣味悪くしたら、目の前の吸血鬼になるのかな……)」
辺境伯を見やり、セフィリカは嘗ての自分を思い起こす。
力……権力にしろ、才覚にしろ……に胡坐をかき、他者など思いのままにできると信じて疑わなかった小さなころ。
「強くて偉いから、他人の事を考えなきゃならないんだ」
そう戒めた父の言葉が蘇る。
……であるならば。目の前のこの吸血鬼は、支配者に足るに相応しいか否か。
応えは当然、NOだ。
『そ。結構腹に据えかねた訳だ』
「まぁ、ね!」
魔剣を抜き、踏み込む。
クレーターの中心になおも立つ辺境伯に、一撃を振り下ろす。
同時に、リーヴァルディもまた、大鎌を手に肉薄する。
杖と剣と大鎌が、二度三度と乾いた音を響かせる。
傷ついても尚、高位の吸血鬼の力はそう簡単には有効打を許さない。
穿たれた街道に、血が流れ落ちてくる。
底に溜まろうとしていたそれらは、然しゆっくりと鎌首を擡げ、猟兵へとその切っ先を向け――。
――リーヴァルディの口角が、僅かに上がった。
今まさに牙を剥かんとした血刃が、杭へとその姿を変えて、辺境伯へと襲い掛かる。
彼女の顔が驚愕に歪むのを、リーヴァルディは確かに見た。
「……どうやら、踊るのはお前の方だったみたいね?」
ただの人と侮ったか。
目の前の紫の瞳の小娘が、その実吸血鬼殺しの狩人であると知るのがもう少し早ければ、或いはこんな事にはならなかっただろうに。
血石の杖が振り抜かれる。
砕かれた杭は辺境伯の身体に届くことはない。
辺境伯の顔に、驚愕に加えて安堵と勝利への革新の色が見えた気がした。
そして、その瞳に彼女の姿は見えていなかったことだろう。
――この辺境伯は、回避を由としない。
身を翻すにしてもごくわずか。自身へ向けられた攻撃の事如くを、杖で以て打ち払う。
それは恐らく、力を誇示しているのだろう。抗っても無駄だと。下等な者とはこうも力の差があるのだと。
事実、それを可能とする力は、確かにあるのだろう。
そして、そこに『隙』がある。
不意の血の杭による一撃は、確かに辺境伯の虚を衝いた。
こういう予想外の事態にこそ、身に沁みついた『癖』が出る。
故に渾身の力で打ち払ったのだ。そしてそこには余裕はない。
その一瞬に生まれた間隙に、セフィリカが飛び込む。
……これでも、立派な指導者にはなりたいと思っている。
だからこそ、こんな奴は許しておくわけにはいかない。
故に――!
「終わらせるっ!!」
魔剣シェルファを薙ぎ払う。
がら空きの辺境伯の胴を断ち切る。
歪んだ辺境伯の顔はそこから一切を変えることはない。泣き別れになった上下の身体が、塵となって夜風に乗り、骸の海へと消え去っていく。
――からん。
穿たれた街道の中心に落ちた宝石が乾いた小さな音を立て、一つの戦いの終結を告げた。
大成功
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