名付けられた命と歪な虚像
●騙られた命
射干玉の髪を靡かせて、呪いの魔鏡を大事に抱える女が一人。
「おんしの忌み名はなんじゃろう……♪ おんしをおんしとするその命……♪
妾に教えてくだしゃんせ……♪ 妾の命にくだしゃんせ……♪」
うっそりと笑いながら、小さく歌う。
●ヤドリガミ、かく語りき
「やっほー。りんふぁだよー。キミのお名前なんですかっ!」
唐突に自己紹介をし、貴方に名前を聞く戴・凜風(浄化を祈る・f23661)は、耳に提げたペンデュラムを弄りながら言葉を続ける。
「名前、あるでしょ? キミをキミたらしめる呼称さ。今回のお願い事は、その名前を大事にしてほしいなってお願いだよ。
サクラミラージュに魔鏡の影朧が現れたんだ。その影朧は、キミたちの名前を鏡に映して、歪めて、騙ってくる。もしキミがキミ自身の名前を完全に忘れてしまったら、影朧に取り込まれてしまうかもしれない。だから、キミはキミの名前を大事に持って、魔鏡と戦って欲しいんだ」
もちろん、と凛風は続けた。
「無策ではないよ。とある地底湖を抜けた先に広がる空間があってね、そこに幻朧桜が一本だけ静かに佇んでいるんだ。誰かに愛でられることもなくひっそり咲き誇るその桜は少しだけ不思議なチカラを持ってるの。その幻朧桜に、キミの名前と、その名前の由来や意味を教えてあげて。寂しがり屋の桜の木は、きっと、キミのことを覚えてくれるから」
くすり、笑って凛風は翡翠色の瞳を細めた。
「りんふぁは、貰った名前。実は由来を知らないんだ。でも、幻朧桜はそれでもかまわないって感じで枝を揺らすと思うよ。魔鏡に歪められるのは所詮名前の音だけ。キミを形作る全てを、キミの意味を歪めることはできない。心にしっかりキミの名を刻めば、きっと魔鏡にだって打ち克てるさ!」
お友達や、恋人同士、名前を覚え合うのもいい手だと思うよ! と付け足して。
「さぁ諸君! キミの名前をしっかり刻んできてね! がんばって、いーってらーっしゃーい!」
八卦盤の形をしたグリモアを広げ、一人ひとり転送していく。
「名前を付けるのを、命名って言うよね。名前は命そのものでもあるんだ。……みんな、どうか自分を見失わないでね」
涼村
こんにちは、涼村と申します、よろしくお願いします。
今回は、日常、集団戦、ボス戦の3章構成となっております。1部参加でも、通し参加でも、奮ってご参加ください。
1章不参加であっても、そこに実はいました! という感じで描写させていただきます。その際は自分の名前の意味などを3章のプレイングに書いていただけると幸いです。
3章のボスの魔鏡は、キャラクター本人の名前のみを歪ませたり、忘れさせたりしてきます。お友達や恋人さんの名前を忘れることはありません。ソロでご参加の方も、幻朧桜が直接脳内に語り掛けてくれるので安心して下さい。
偽名でも大丈夫です。それが今の貴方を形作る名前なので、ご安心を。本名を伏せたい場合は伏字等でも!
プレイングは5/27の8:31以降に送っていただけると幸いです。
キャラメイクの時を思い出したり、今からこじつけたり! ご自由に楽しんでください!
それではみなさま、バーンとぉ!行っちゃってください!
第1章 日常
『桜幻想譚』
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POW : 花見を楽しむ
SPD : 花見を楽しむ
WIZ : 花見を楽しむ
👑11
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御園・桜花
「私の名前は御園桜花です。私は桜花精ですから、人のような親が居るわけではありませんもの。公園に咲く桜、何処にでもある幻朧桜、その程度の意味合いで、身元を引き受けた方が付けて下さいました。あの頃は私、言葉も話せませんでしたし身元が分かるようなものの持合せもありませんでしたから」
幹に手を当て小さく笑う
「自分の本質など、名前にならなくてようございました。転生気違い殲滅系など、常に名乗りたくはありませんもの」
「貴方から生まれる桜の精は…孤影咲良とでも呼ばれるようになるのでしょうか。何時かお会いできるのが楽しみです」
また軽く桜を撫でる
「それでは行って参ります。何時か此処にも幻朧桜の並木が出来ますように」
●人ならざる
シン、と静まり返った空間に、ひっそりと咲き誇る幻朧桜。
そこへ同じ桜色の髪をした御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)がそっと寄り添い、自己紹介を始める。
「私の名前は御園桜花です。私は桜花精ですから、人のような親が居るわけではありませんもの。
公園に咲く桜、何処にでもある幻朧桜、その程度の意味合いで、身元を引き受けた方が付けて下さいました。
あの頃は私、言葉も話せませんでしたし身元が分かるようなものの持合せもありませんでしたから」
そう言い、大きな幹に手を当て小さく笑う桜花。
「自分の本質など、名前にならなくてようございました。転生気違い殲滅系など、常に名乗りたくはありませんもの」
己の本質を覆い隠すように、平凡であれかしと願うかのように、言葉を紡ぐ。
転生気違い殲滅系。その醜い本質を、覆うような名前。
くすっと小さくまた笑い、その大樹を見上げる桜花。
「貴方から生まれる桜の精は……孤影咲良とでも呼ばれるようになるのでしょうか。何時かお会いできるのが楽しみです」
少しだけ、名残惜しそうにその幹を撫で、その場を離れる。
「それでは行って参ります。何時か此処にも幻朧桜の並木が出来ますように」
桜花の背中を見送る幻朧桜が、風もないのにざわりと鳴く。
その音に背を押されるように、一人の桜の精は歩みを進めた。
大成功
🔵🔵🔵
稷沈・リプス
アドリブ歓迎。
自称:人間な男。
こんなところにも幻朧桜あるんっすね。綺麗っす。
名前の由来っすか。あんま他の人に聞かれたかないっすねー。
『稷沈』と『リプス』。両方とも意味は一緒になるっすね。稷沈は『食尽』。リプスは『エクリプス』からっすし。
まあ、つまりは『日食』『月食』…『蝕』のことっすよ。
なんでそんな名前か…。それは俺自身がそうっすからね。
(神の本性だしつつ)
我は蝕司る神なれば、そこに通ずる名を名乗るは必定。
元の神名は、都とともに失われた。
なればこそ、今の我が名は『稷沈リプス』。
まあ、こんなところっすよ。
●光を蝕む者
一筋の光差し込む幻想的なその場所に、その幻朧桜は咲いていた。
「へぇ。こんなところにも幻朧桜あるんっすね。綺麗っす」
その大樹を見上げ、稷沈・リプス(明を食らう者・f27495)は間延びした声を上げる。そして、幻朧桜に己の名を告げた。
「俺は稷沈・リプスっす。由来は……『稷沈』と『リプス』。両方とも意味は一緒になるっすね。稷沈は『食尽』。リプスは『エクリプス』からっすし」
淡々とその名の意味を告げるリプス。幻朧桜に触れ、その花々の隙間から射す光に目を細め、また言葉を紡ぐ。
「まあ、つまりは『日食』『月食』…『蝕』のことっすよ。
なんでそんな名前か…。それは俺自身がそうっすからね」
そう言うと、今までののんべんだらりとした空気をがらりと変え、その緑の瞳を細めて言い放つ。
「我は蝕司る神なれば、そこに通ずる名を名乗るは必定。
元の神名は、都とともに失われた。
なればこそ、今の我が名は『稷沈リプス』」
己の本質をそのまま表した名なのだ、と人ならざるヒトガタは神々しく宣言した。
「……と、こんなところっすよ」
へにゃ、と人好きしそうな人間らしい表情に戻り、その幹を軽く撫でた。
んじゃ、行ってくるっすー、と言いながら、その背でひらりと幻朧桜に手を振る。
いってらっしゃい、と声にならぬざわめきを聞きながら、光を食む神は奥へと進む。
大成功
🔵🔵🔵
渦雷・ユキテル
フォーリーさん(f02471)と
ユキテルでーす
面白い影朧もいるんですね!
幻朧桜とないしょばなし
フォーリーさんが覚えてくれてたら大丈夫ですけど……
あ、なんか心配になってきましたよ
それにおまじないみたいで楽しそう
桜に伝えるのは――
研究所で割り振られた番号、自分でつけた呼び名。どっちが本当?
"彼"でいなきゃいけないと思ったけど
名前を盗るのは嫌で少し変えたの
ユピテルなんて大仰な名前は背負えない
だから、あたしはユキテル
人から付けられた名前なんてただの鎖
自分で気に入ったのを選ぶ方がいいですよね
あたしたち、結構似たよな境遇だったりします?
笑ってかーるく訊ねるだけ
だって深入りは怪我のもとでしょ?
※アドリブ歓迎
フォーリー・セビキウス
ユキテル(f16385)と
記憶力には自信があるからな。任せろユキオ。ごめん間違えた。さっきアメコミ読んでたから…。
冗談だ、安心しろ。
名前を訊いて何になるというのか。
変な影朧も居るものだ。
名前なぞに意味はない、ただの識別記号だ。
などと言ってたオレが名前以外全て失うとはな。皮肉なものだ。
己を示す物は今やこの名前だけか。
だがこの名だけは…43という番号だけは地獄に落ちても忘れ難い。
理由?フン、フォーティスリーの略だよ。安直だろう?
さてな、名前なぞどうでも良い…何か嬉しそうだな。
フッ。似ていたとしても良い事は一つもない、というのもわかるだろう?似てるならな。
お前はお前だ。過去は必要ない。
アドリブ歓迎
●番号と記号
「名前を忘れさせるなんて、面白い影朧もいるんですね! まぁ、フォーリーさんが覚えてくれてたら大丈夫ですけど……」
足取り軽く、同行するフォーリー・セビキウス(過日に哭く・f02471)に微笑みかける渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)
「記憶力には自信があるからな。任せろユキオ」
それに呼応し、真顔で頷くフォーリー。
「あ、なんか心配になってきましたよ」
「ごめん間違えた。さっきアメコミ読んでたから……」
「そういう理由?! ひっどいなぁー」
「冗談だ、安心しろ」
あかんべ! とおどけながら舌を出し、フォーリーを置いて幻朧桜に駆け寄るユキテル。
信頼していないわけではないけれど、幻朧桜に名前を告げるのはなんだかおまじないみたいで楽しそうだったから。
だから、桜にその名を告げる。
「研究所で割り振られた番号、自分でつけた呼び名。どっちが本当?
"彼"でいなきゃいけないと思ったけど、名前を盗るのは嫌で少し変えたの。ユピテルなんて大仰な名前は背負えない
だから、あたしはユキテル」
己が己である為に、大事であろう名前を告げる。それは割り振られた番号ではなく、己がそうあれかしと願う名。
……雷を司る主神だなんて大層な名前は背負えないから、すこしだけもじって。
ごつごつとした幹に、額をくっつけて告げる。
――あたしは、ユキテル。
その幹の反対側で、フォーリーもまた己の名を告げる。
「オレは、フォーリー。フォーリー・セビキウス。
名前なぞに意味はない、ただの識別記号だ。
……などと言ってたオレが名前以外全て失うとはな。皮肉なものだ。己を示す物は今やこの名前だけか。
だがこの名だけは……43という番号だけは地獄に落ちても忘れ難い。
理由? フン、フォーティスリーの略だよ。安直だろう?」
幹に手を当て、その花を見上げながら自嘲気味に告げた。
安直であろうと、これが今のフォーリーを形作る唯一の名前である。過去つけられた『43』と、なくしてしまったそれ以外の数字。それをも包み込む、フォーリー・セビキウスという名。
終わったぁ~? と、少し間延びした声に、フォーリーは少しだけ笑い、その声の主を見る。
「ふふ、フォーリーさんは『どっち』を言いました?」
「……別に。自分だと思う方だ」
「人から付けられた名前なんてただの鎖。自分で気に入ったのを選ぶ方がいいですよね? あたしたち、結構似たよな境遇だったりします?」
すくすく笑うユキテルに呆れるようにフォーリーは、にべもなく言う。
「フッ。似ていたとしても良い事は一つもない、というのもわかるだろう? 似てるならな。お前はお前だ。過去は必要ない」
そのぶっきらぼうな言葉が少しだけ楽しくて、ユキテルは奥へ跳ねて進む。
「そーですねー、じゃあ行きましょ!」
その楽し気なやり取りを、幻朧桜はそっと見送ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルパート・ブラックスミス
我が名はルパート・ブラックスミス。
亡き故国の筆頭騎士『黒き鎧のブラックスミス』。
これしか覚えていない。
俺は故郷の滅亡と共に死した人間の、魂だけが鎧に宿り成り立ったヤドリガミだ。
肉体も記憶も。授けた親も過ごした日々も。想い諸共総て消え失せた。
廃墟の国を彷徨い"知"れたことはあれど。
覚えているのは己が黒騎士であることとこの名だけ。
桜よ、幻朧桜よ。この名を覚えてくれ。
鎧だけが独り歩きしてここまで辿り着いた俺の名を、永き時在り続けるお前が覚えてくれるなら、この猟兵としての旅路の意味の一つになるだろう。
記憶も栄光も既に無い、だがなお遺る炎がある。
ルパート、黒騎士ルパート・ブラックスミス。
【アドリブ歓迎】
●焔燈す鎧
「我が名は――」
光差す幻朧桜を見上げながら、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は訥々と語りだす。
「我が名はルパート・ブラックスミス。亡き故国の筆頭騎士『黒き鎧のブラックスミス』」
そう言い切り、言葉を詰まらせ、そのバイザーを下げる。
「これしか覚えていない。
俺は故郷の滅亡と共に死した人間の、魂だけが鎧に宿り成り立ったヤドリガミだ。肉体も記憶も。授けた親も過ごした日々も。想い諸共総て消え失せた。廃墟の国を彷徨い"知"れたことはあれど。
覚えているのは己が黒騎士であることとこの名だけ」
その木の根を見つめ、想いを告げていると、はらり、いちまいの花弁が降る。
その花弁に心をやわらげ、ルパートは言葉を紡ぎ、幻朧桜に願う。
「桜よ、幻朧桜よ。この名を覚えてくれ。鎧だけが独り歩きしてここまで辿り着いた俺の名を、永き時在り続けるお前が覚えてくれるなら、この猟兵としての旅路の意味の一つになるだろう」
黒金を打つような固く、熱い意志を桜に告げる。これはある種の宣言だ。
「記憶も栄光も既に無い、だがなお遺る炎がある。
ルパート、黒騎士ルパート・ブラックスミス」
ひとひらの花弁を拾い上げ、ルパートは背を向けて歩き出す。
その青い意志を、幻朧桜は静かに見送った。
大成功
🔵🔵🔵
尖晶・十紀
これが、桜……綺麗。初めて見る。
【code:spinel//010】通称検体10番。かつて、十紀はそう呼ばれていた。……何かの番号みたい、だよね。そういう場所だったんだよ、あの施設は。
今の名前をくれたのは、一時期行動を共にしてたある奪還者。
昔の名からもじって、【尖晶十紀】そういえばこの炎毒の血を【灼血】と名付けたのも、彼だった。
もしかしたら、名付けることで、実験体じゃない、一人の人間なんだ、て言いたかったんだろうね、彼は。
……いわゆる【中二】だったけど。彼の心遣いに。十紀が救われたのも、事実だし。名付けのお陰で、この力も、自分も、嫌いじゃなくなったんだから。
アドリブ絡み歓迎
●造り出されし命
わぁ、と小さく感動の言葉を紡ぐのは尖晶・十紀(紅華・f24470)である。
「これが、桜……綺麗。初めて見る」
差し込む光を透かせる花弁に心を奪われながら、ひっそり佇む幻朧桜に近づき、その幹に手を当てながら十紀は語り掛ける。
「【code:spinel//010】」
小さく言って、目を伏せる。
「通称検体10番。かつて、十紀はそう呼ばれていた。……何かの番号みたい、だよね。そういう場所だったんだよ、あの施設は」
伏せた目をそっと閉じて、額を当てる。想うのは、『彼』の事。
「今の名前をくれたのは、一時期行動を共にしてたある奪還者。
昔の名からもじって、【尖晶十紀】ってつけてくれたんだ。……そういえばこの炎毒の血を【灼血】と名付けたのも、彼だった
もしかしたら、名付けることで、実験体じゃない、一人の人間なんだ、て言いたかったんだろうね、彼は」
十紀は想像することしかできないけれど、でもきっと、あっているとおもう。
今の十紀を形つくっているのは、【code:spinel//010】ではなく、まぎれもなく彼がつけてくれた【尖晶十紀】だから。
額を離し、大樹を見上げる。
「彼の心遣いに。十紀が救われたのも、事実だし。名付けのお陰で、この力も、自分も、嫌いじゃなくなったんだから」
……いわゆる【中二】だったけど。と心の中で付け足す。
ゆるり、名残惜しそうに触れていた手を離した。
「じゃあ、行ってくるね。十紀のこと、憶えていて」
奥へ向かうその細い体を見送るように、幻朧桜は小さく揺れた。
大成功
🔵🔵🔵
ルリララ・ウェイバース
互いを姉妹と認識する四重人格
末妹のルリララ以外は序列なし
四つ子で生まれるはずが、母体の危機に瀕し、姉達の魂だけがルリララの体に避難した経緯あり
ルリララの名前は、精霊達からもらった物だと先代の婆様が言っていたぞ
精霊に聞いたら、ニュアンス的には、秋の実り的な、たくさん出来たよ、みたいな、豊穣的な物だったのだろうか?
『まぁ、精霊達とルリ達じゃ、感覚も言葉も違うから、ルリ達の事を伝えたかったんじゃないかしら』
『婆様も話せるって言っても、リラ達ほど聞こえてないみただしな、仕方ねえよな』
『で、何時までたっても誰もララ達3人の名前をつけてくれなかったから、ルリララちゃんとお名前分けっこしたんだよね♪』
●分け合う名
乾いた土を踏みしめて、ルリララ・ウェイバース(スパイラルホーン・f01510)は幻朧桜を目指す。微かな水のせせらぎを耳に、火の気も、風の気配もない少しだけ寂しい場所に。
光差すその先に、はらりと花弁を落とす幻朧桜の姿。そこへ歩み寄り、少しだけ眩しそうに目を細めてルリララははきはきと自己紹介を始める。
「ルリララの名前は、ルリララ・ウェイバース。精霊術を司る巫女だ。先代の婆様が『精霊達からもらった物』だと言っていたぞ。
どういう意味なのだ、と精霊たちに聞いてみたら『秋の実り、たくさん出来たよ的な感じ』と言っていた。豊穣、のようなものなのだろうか?」
そう告げた後、姉である他人格の声音で幻朧桜に語り掛ける。
「ルリ達は、元々四姉妹だったの。でも、おなかにいるときに大変なことが起きたから、ルリ達の魂は、ルリララの中に避難したんだよね。
だから、ルリ達はルリララのひとつの身体に居るの。でもそれをみんなは知らない。
精霊たちはそれを教えようとしたのかもね。まぁ、精霊達とルリ達じゃ、感覚も言葉も違うからニュアンスが変わっちゃったけど」
「婆様も話せるって言っても、リラ達ほど聞こえてないみただしな、仕方ねえよな」
「で、何時までたっても誰もララ達3人の名前をつけてくれなかったから、ルリララちゃんとお名前分けっこしたんだよね♪」
「うん。ルリララを、ルリ、リラ、ララ。これでルリララの完成」
ルリララは布の下の刺青を指でなぞるようにして、それぞれの名を告げる。
「これが、ルリララの名前。ひとりじゃない、姉妹の意味」
覚えていて。そう言って、幻朧桜に背を向けて奥へと進んで行く。
幻朧桜はその名を忘れない、とでも言うように。風もないのにざわりと揺れてその背を見送った。
大成功
🔵🔵🔵
幻武・極
ボクは幻武・極。
幻とされた武術を極める者として名付けられたらしいんだけどね。
ボクはその由来は好きじゃないんだよね。
だってさ、その武術を極めたら終わりじゃん。
だから、ボクはボクの名前をこう解釈してるよ。
『武術の幻を極めんとする者』
武術なんて武術家の数、いやもっと多くの流派が生まれてくるんだから、それこそ幻のようだよね。
その幻を極めんとあがき続ける者。
なんだかあまりカッコよくないけど、武術家なんて永遠に自らの武を探求し挑戦し続けるものだからね。
ボクは最期の瞬間までも幻を追い続けるよ。
●命じられた名と、己の解釈
一本下駄で器用に歩きながら幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は幻朧桜に近づいていく。
その大樹を見上げ、極は己の名を告げた。
「ボクは幻武・極。
『幻とされた武術を極める者』として名付けられたらしいんだけどね。
ボクはその由来は好きじゃないんだよね」
かみしめるように、由来を告げる。
「だってさ、その武術を極めたら終わりじゃん。
でも、武術なんて武術家の数、いやもっと多くの流派が生まれてくるんだから、それこそ幻のようだよね。
『その幻を極めんとあがき続ける者』
ボクはボクの名前をこう解釈してるよ。
なんだかあまりカッコよくないけど、武術家なんて永遠に自らの武を探求し挑戦し続けるものだからね」
極は、ニっと笑ってその拳をコツンと幻朧桜の幹に当てる。
「ボクは最期の瞬間までも幻を追い続けるよ」
そう宣言し、極は奥へと進んで行く。
その背を応援するかのように、幻朧桜の花弁ははらりと舞った。
大成功
🔵🔵🔵
錦夜・紺
お前、こんな奥底にたったひとりでいたのか
人でも鳥でも何でも良い
誰か寄り添う者がいれば寂しくないのにな
こそり、誰にも聞こえないような
小さな声は桜の木へ
優しく触れ、額をこつりと幹に寄りかかり
瞳を閉じて語り掛ける
内緒話をするように
子供に話しかけるように
穏やかな声色
――コン。錦夜の紺
由来はわからないが、きっと己の容姿から
こう呼ばれるようになったのだろう。
気づいたらそう呼ばれていた、何てことない理由だよ。
色の違う瞳も紺色の髪も姿も
夜になってしまえば隠れてしまえる
俺の生業でいえば、大助かりの名だよ
アンタに名はあるのだろうか
呼ばれる名が、意味があればよいのだがな
それだけで存在の理由ができると、そう思うから
●夜に融ける
地底湖を抜けたその先、広い広い空間に、ぽつりと一本の幻朧桜の姿。
寂しげでありながらも幻想的なその姿に錦夜・紺(謂はぬ色・f24966)はそっと声をかける。
「お前、こんな奥底にたったひとりでいたのか。人でも鳥でも何でも良い。誰か寄り添う者がいれば寂しくないのにな」
どこまでも優しいその言葉は、幻朧桜にしか聞こえない。
黒曜石の爪で樹を傷つけないように、優しく触れて、不揃いの角が生えるその額をこつりと寄せた。
「――コン。錦夜の紺
由来はわからないが、きっと己の容姿から、こう呼ばれるようになったのだろう。
気づいたらそう呼ばれていた、何てことない理由だよ」
左右でその彩を違える眸を閉じて、子供に話しかけるような穏やかな声音で内緒話をするように小さく告げる。
「色の違う瞳も紺色の髪も姿も、夜になってしまえば隠れてしまえる。俺の生業でいえば、大助かりの名だよ」
この生業は、きっとお日様の元では出来ないからな。と少しだけ自嘲的になりながら。
そして、額を離してひとり咲き誇る幻朧桜を見上げ、優しく、少しだけ寂しさの色を滲ませながら言葉を紡いでいく。
「アンタに名はあるのだろうか
呼ばれる名が、意味があればよいのだがな。それだけで存在の理由ができると、そう思うから」
己がそうであるように、アンタにもそうであってほしい。そんな優しい言葉を投げかける。
「じゃあ、行ってくる。この日だけでも、俺のことを覚えておいてくれ」
名残惜しそうにその手を離し、奥へその足を進めていく。
そんな優しい優しいおにのひとを、幻朧桜は枝を揺らして見送った。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『影狼』
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POW : シャドーウルフ
【影から影に移動して、奇襲攻撃する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 復讐の狼影
自身の身体部位ひとつを【代償に、対象の影が自身の影】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : ラビッドファング
【噛み付き攻撃(病)】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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幻武・極
へえ、影の狼か
厄介な能力だけど、攻撃の方向が分かっていれば問題ないよね。
しかも、攻撃のタイミングもバッチリわかるからね。
キミたちのユーベルコードは自身の体を代償にするから、不自然に体が欠損したらボクの影から攻撃がくるってパターンがお見通しなんだよ。
そして、ボクはあえて攻撃を躱し続けてウォーミングアップしてきた。
さて、ボクの常在戦場のカウンターを受けてみなよ。
ボクの生命力を吸収するためにキミの頭部に変形したということは、痛覚もキミ自身と繋がっているということだよね。
噛みつき攻撃を躱したら、ボクの影を踏みつけるよ。
●影と幻
「へえ、影の狼か」
極はニィっと口角を上げると、己の拳同士を打ち合わせる。
グルルルル、と喉を鳴らす影狼を見据え、その動きを読んでひらひらと避け始める。
「獣だけに動きが単調だねっ! これなら楽勝じゃない?」
直線的に襲い掛かってくる影狼に、まるで準備運動をするかの如く軽くあしらい体を慣らしていく。左に飛んで、すぐ横を通り抜ける影狼に手刀を叩き込んでさらりといなした。
「何頭で来ようが無駄だよ。ボクには見えてる!」
その時、一匹の影狼がフっと消えて右後方に居た影狼の影が不自然に膨れ上がったのをその赤い瞳は逃さない。
「無駄だって、言っただろッ!」
左足を軸にぐるりと回転し、その勢いを使って奇襲を仕掛けようとしていた影狼に拳を叩き込んだ。間髪入れずに噛みつきにかかってきた影狼を肘鉄砲で怯ませ、その牙から逃げるためにポン、と高く飛んだ時、その影狼の頭部が歪む。
「見切った! ボクに繋いだなッ!」
極は不敵に笑うと、落下速度をそのまま活かして己の頭部の影に一本下駄を叩き込んだ。
瞬間、グアア、と声にならぬ声を上げて影狼は消え失せた。
「やっぱりな。痛覚は繋がってたんだ。この調子でガンガン行こう!」
ウォーミングアップで温まった体を使い、極はその手を、足を炸裂させていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルリララ・ウェイバース
アドリブOK
互いを姉妹と認識する四重人格
末妹のルリララ以外は序列なし
WIZ
「相手は格闘戦メインみたいね、近づけさせないで」(ルリ)
オルタナティブ・ダブルでリラ姉と分離
二人で距離を取りつつ、エレメンタル・ファンタジアを使用
「よっしゃ、任せろ」
リラは全力魔法、属性攻撃込みの炎の竜巻等で攻撃中心
「風さ~ん、リラちゃんを助けてあげて」
「おっと、そちらへは逃がさんよ」
本体は、状況に応じて、風で火勢を増したり、土の壁で敵の回避や移動を阻害したり、高速詠唱、戦闘知識、騙し討ち等でリラをサポート
接近されたら、もう一方、もしくは桜の下に精霊跳躍で回避
それでもダメならオーラ防御で耐える
●集うチカラ
闇の如き黒い瞳が、昏き影狼の姿を捉える。
「相手は格闘戦メインみたいね、近づけさせないで」
ルリララはこくりと頷くと、鏡写しのようにそっくりのもう一人の自分を呼び出す。その体にはリラの魂が乗り移っていた。火の精霊と仲の良いリラは、本体であるルリララと距離を取りつつ、影狼をすべて視界に入れる。
リラが火の精霊に呼びかけ、炎の竜巻を作り出して影狼へ解き放つ。
ルリララとリラの間の包囲を駆け抜けようとした影狼を目ざとく見つけたルリララは、地の精霊に素早く呼びかけ、行動を阻害する。
「おっと、そちらへは逃がさんよ」
逃げる隙間を失った影狼は、リラの操る炎の竜巻に焼かれ、消えていった。
ついでに、とばかりに高く築いた壁をわざとばらばらに崩して残る影狼たちに振らせていく。
「ルリララ、ナイスアシストだぜ! よし、最大火力だッ!」
視界内の動けなくなった影狼をすべて焼き尽くさんとリラが火力を上げる。
「ふふ、風さ~ん、リラちゃんを助けてあげて」
ララの呼び掛ける声に呼応して炎の竜巻の勢いが増し、全ての影狼が焼き尽くされた。
「次、向こうに行こう」
呼び掛けるルリララにリラも頷き返して未だ残る影狼の群れへ駆けだす。
ひとりではないから、何匹相手であっても大丈夫。確信めいた何かを胸に。
大成功
🔵🔵🔵
渦雷・ユキテル
フォーリーさん(f02471)と
あらま、急に賑やかになっちゃいましたね
狼さんにはさっさとご退場願いまーす
影を伝うみたいですね、この子たち
だけどどこから出てくるか――ああ、助かりました
怪我したくないんで回避最優先【見切り】【学習力】
逃がしたって他の猟兵さんもいますしー?
咄嗟に複数体の相手しなきゃいけない時は
【属性攻撃】【範囲攻撃】【マヒ攻撃】
手の先から電撃バチッとお見舞い、動き鈍らせときます
影から出てくるタイミング狙って蹴ったり
勢いあるようなら拳銃で対処します
フォーリーさんってもっとドライな感じかと思ってました
あたし、受けた恩は忘れないタイプなんでご期待くださいね
※アドリブ等歓迎
フォーリー・セビキウス
ユキテル(f16385)と
やれやれ、人気者は辛いな。これ位クラブでも女が群がってくれると助かるんだが。
…いやそうでもないか。多過ぎても良くない。
ああ。面倒だし、さっさと片付けるぞ。
見切り・第六感・情報収集・戦闘知識を使い熱源探知や攻撃パターンを編み出して奇襲を防ぐ
ユキテルにも伝えて避けさせる
攻撃は武器の投擲や、刃物で切り結んだり徒手空拳で対応
ユキテルをサポートしたり攻撃の注意を自分に向けさせたりして陰ながら庇ったりサポートする
レディの肌に傷はつけられんだろう?
フッ、冗談だ。
偶々攻撃方向に敵が居ただけだ。
本当だぞ。
それはそれとして、恩を感じたというのなら、きっちり返して貰うからな。
※アドリブ歓迎
●己のチカラ
幻朧桜に別れを告げ、仄暗い奥へと歩みを進めたユキテルとフォーリー。
ぞわりとした感覚がふたりの背筋を伝った刹那、わらわらと闇の中から黒き体が顕現した。
「あらま、急に賑やかになっちゃいましたね」
ちょっぴり肩をすくめてユキテルは迎撃態勢を取る。
「やれやれ、人気者は辛いな。これ位クラブでも女が群がってくれると助かるんだが」
ぽりぽりと後頭部を掻きながら言うフォーリーに、ユキテルが飽きれながら言う。
「フォーリーさん、この数の女の子捌き切るんです? スゴ~イデスネ」
向けられた半眼から逃げるように、影狼に向かった。
「……いやそうでもないか。多過ぎても良くない」
「ですよね~。じゃあ狼さんにはさっさとご退場願いまーす」
ぱちりとその体に雷の力を纏わせる。……が。
いざその力を振るおうとしたとき、ユキテルの眼前に居た影狼の姿が融けた。
「……! そういえば影を伝うみたいですね、この子たち。だけどどこから出てくるか」
きょろり、辺りを見回すも闇に融けた影狼の姿が見当たらない。
「ユキテル、背後。自分の影だ!」
第六感を働かせ、ユキテルの影が膨張したのを目ざとく見つけたフォーリーが鋭く叫ぶ。刹那、左足を軸にぐるりと回ったユキテルの踵が影狼のどてっぱらを穿つ。
「――ああ、助かりました。ちょっと厄介ですね」
言いながら拳銃をスライドさせ初発装填。2発の弾丸をお見舞いした。
「まだ来る。面倒だし、さっさと片付けるぞ」
刃を構え、襲い来る影狼を見据えて短く言うフォーリー。その声に頷いて群れる影狼に向き直った。
「よっし。気を取り直して行きましょ」
ふたりのコンビネーションは見事なものであった。ユキテルのやや後方を陣取ったフォーリーが戦場を把握し、不自然な影の膨張を見極め出現場所を端的に伝える。
複数の影狼にはユキテルの電撃が。撃ち漏らした影狼にはフォーリーの刃が、それぞれ飛ぶ。
何度目かの攻撃を庇ってもらったユキテルは、少し意外そうに言葉を紡ぐ。
「フォーリーさんってもっとドライな感じかと思ってました」
「レディの肌に傷はつけられんだろう? ……フッ、冗談だ。偶々攻撃方向に敵が居ただけだ。本当だぞ」
「本当ですかぁ? まぁ、あたし、受けた恩は忘れないタイプなんでご期待くださいね」
にしし、といたずらっ子みたいに笑うユキテルに、小さく笑ったフォーリーは残った影狼に武器を投擲しながら。
「そうか。恩を感じたというのなら、きっちり返して貰うからな」
少しだけ楽しそうに言うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
錦夜・紺
名残惜しいが幻朧桜のもとを離れ、
戦いの場へ向かおう。
……おや。
本命の前に、獣退治というところだろうか。
それともアンタらも件の鏡に
名を歪められでもしたか?
まあ、何でもいい。
肩慣らしにはちょうど良いだろう。
……かかってこい。
影には光を、などとは言うが
俺にはそんな眩しい力など持っているわけもなく。
それならば……
影を、口許から溢れる焔を、
さらにさらに深い色で覆いつくすような色で
「――深いぞ。これから引き摺り込む闇は」
『影踏み鬼』
漆黒の蠢く影を狼へ。
侵食し、動きを封じたのならば
腰の刀で切り裂いてしまおう。
ほら、もう身体を起こす事もままならないだろう。
●より昏き闇
幻朧桜とのあたたかい時間に別れを告げ、紺はひとり昏い道を歩く。
ふ、と闇の中に鬼火を見た気がした。よく見てみるとそれは鬼火ではなく、影狼が己の影を作り出すための光源だった。
「……おや。本命の前に、獣退治というところだろうか。それともアンタらも件の鏡に
名を歪められでもしたか?」
名を歪めるという魔鏡を想いながら、言葉を紡ぐ。
グルルルル、と低く唸るだけの影狼に、肩慣らしには丁度いいと考え、紺は身を低くして戦闘態勢に入った。
「影には光を、などとは言うが」
――俺にはそんな眩しい力など持っているわけもなく。
ならば、と。その影を作り出す焔を、その影すらをも深い色で覆いつくすような色で塗りつぶす。
「――深いぞ。これから引き摺り込む闇は」
左右で彩を違える眸を細め、見得を切るように踏み出した足から夜の闇よりなお暗く、昏い影を放つ。
其れは、鬼の影であった。其れは、鬼の手であった。其れは、鬼が抱く愛憎の感情であった。
その影に抱かれた影狼は、身動きが取れずその場で呻く。
童遊びに興じるように影狼に歩み寄った紺は、腰に差していた刀でその身を切り裂いていく。
「どんなに逃げても、藻掻いても。おにからは逃れられない」
倒れ伏すその影を見ながら納刀した紺は、最奥へと意識を向けた。
本命は、もうすぐそこに。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
「私はどちらかと言えば、こういう乱戦の方が得意です…強くないからかも知れませんが」
UC「桜吹雪」使用
術範囲内に出現した敵を桜吹雪で切り刻む
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
回避できないと判断した攻撃は盾受け
多少敵が減ったら高速・多重詠唱で破魔と光の属性攻撃
仲間の攻撃が当たりやすくなるよう補助する
「転生は未練を減らし真の望みを促して勧めるもの、言葉の通じない狼に話すのはそこそこ難しそうです」
「鏡に喚ばれたのか、それとも元々人に隔意があったのか。私達は貴方達を骸の海へ還すけれど、可能ならまた普通の命としてお戻りを」
転生願い破魔と慰め乗せた鎮魂歌で送る
「それでは生まれた鏡に今度こそ会いに行きましょう」
●さくらのうた
桜花が足を踏み入れたその場所には、影狼の群れが待ち構えていた。グルルルル、と低く唸る影狼の群れに、その新緑を宿した瞳を細める。
「私はどちらかと言えば、こういう乱戦の方が得意です……。強くないからかも知れませんが」
言いながら、小脇に抱えていた軽機関銃を無数の桜の花びらに変えてその場へ浮かせる。
「転生は未練を減らし真の望みを促して勧めるもの。言葉の通じない狼に話すのはそこそこ難しそうです」
困ったように笑いながら、飛び掛かってくる影狼にその桜の花びらを降らせていった。苦し気に藻掻く影狼に、胸を苦しくさせながら、唇を開く。
「鏡に喚ばれたのか、それとも元々人に隔意があったのか。私達は貴方達を骸の海へ還すけれど、可能ならまた普通の命としてお戻りを」
そして優しい声音でうたを紡ぐ。それは、破魔のチカラと慰めを乗せた鎮魂歌。
やさしいやさしい、さくらのうた。
恨みがましく鳴っていた唸り声は、いつの間にか消えていた。
魂を鎮め、送り出したその歌をうたいおわると、最奥の闇へ目を向ける。
「それでは生まれた鏡に今度こそ会いに行きましょう」
その魂を転生させたい。きっと、それが幻朧桜になる前身たる自分のお役目だから。そう信じ、歩みを進めた。
大成功
🔵🔵🔵
稷沈・リプス
アドリブ、連携歓迎。
まだ神だとは話さない、自称:人間。
相手、狼っすね。
「これは太陽神より借り受けた権能の一」
【ライオンライド】で対抗っす。
ライオン含めて、全身に【呪詛】張り巡らしとくっす。
俺の攻撃はもちろん、ライオンの噛みつきや前足パンチに呪詛。
さらに、噛まれて生命力奪われても、同時に呪詛ついてくるっすよ。
やー、呪詛まみれっすね。さっさと退場するっす…!
※このライオンは、太陽神から借りて返せなくなったライオン。のんびり屋。
●太陽神のライオンと光食む狼
昏い影を見据えて、リプスは大きな黄金のライオンを呼び出した。どこかのんびりとした雰囲気のその借り物のライオンに騎乗すると、己の身体とライオンへ呪詛を纏わせる。
「これは太陽神より借り受けた権能の――」
言っていると、話を聞かない影狼が襲い掛かってきた。
「話を聞くっす。こらえ性のない狼っすね」
少し拗ねたように言いながら、襲い掛かってきた影狼に食らいつくように指示を出した。呪詛を纏ったその牙が、深々と突き刺さり、どろどろとした血のような影を滴らせる。
「ラグナロクにはまだ早いっす。どこかで寝ててくださいっすよ」
影から出て来た影狼に噛みつかれ、生命力を吸われてもなお、リプスはその態度を変えずに呪詛を流し込む。
「やー、呪詛まみれっすね。さっさと退場するっす……!」
ぶぅん、と腕を振り払い、影狼を地面へ叩きつけると、その個体は影に融けて消えて行った。残った影狼の数も、もう数えるほどだ。借りたまま返せなくなってしまったライオンの爪で切り裂きながら、最奥へと駆け抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵
ルパート・ブラックスミス
人を襲う狼退治も騎士の領分だ。
造作もなく始末してくれよう。
UC【燃ゆる貴き血鉛】を短剣に纏わせ自身の周囲に【投擲】。
炎上した【地形の利用】、光源として敵の移動経路である影の形を固定。
後は【カウンター】戦法だ。
のこのこと出てきて攻撃してくるのを【見切り】【グラップル】。
同じくUCを纏わせた大剣で【串刺し】にし【焼却】する。
影の中には帰さん。このまま我が炎の中で朧と消えるがいい。
【アドリブ歓迎】
●騎士として
じゃり、と足裏で地面が鳴く。ルパートが見据える先、その闇の中に、影狼は居た。
狼退治も己の領分だ、と決意を固くし、鎧内に格納している短剣を握る。――造作もなく始末してくれよう。
短剣に、己の血潮のような鉛を纏わせ投擲する。轟々と、しかし静かに燃えるその青い炎はその場を照らし、影狼の不規則だった影を固定させた。
グルルルル、獣の声が響く。低く伏せた影狼が、ルパートに飛び掛かった。
愚直に飛び込む影狼に、ルパートは大剣を振るうわけでもなく、ただ構えて、その刀身に炎を纏わせた。
飛び掛かる勢いを殺せるわけもない影狼はその炎の大剣に突き刺さる。大剣に纏う炎がひときわ輝いたかと思うと、影狼はどろりと溶けて消え失せた。
視界左端に居たはずの影狼がフ、と消えたのを捉えたルパートは、不自然に膨れ上がった己の影を見逃さなかった。光源を作り、影を固定したのが功を奏したのだ。注目すべき影の数は数個。それを見逃すほど、ルパートの目は曇ってはいない。
振り向きざまに大剣を横に薙ぎ、その巨躯を切り伏せる。影狼の傷口から青い炎が噴き出し、その身を焼いて行く。
「――影の中には帰さん。このまま我が炎の中で朧と消えるがいい」
残る影狼をねめつけ、炎纏う剣を握り直した。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『雲外鏡『大鏡魔』』
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POW : 地獄万華鏡
戦場全体に、【囚えた相手が死ぬまで反転体を出し続ける鏡】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD : 魔鏡写取法
【呪われし魔鏡】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、呪われし魔鏡から何度でも発動できる。
WIZ : 呪鏡殺
【相手を映した魔鏡】を向けた対象に、【致死の呪い】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●騙る命
君たちが最奥へ進むと、呪いの魔鏡を大事に抱える女が一人居た。
うっそりと笑いながら、魔鏡を向ける。
そこには、きみの姿が映っていた。
しかし、そこに映るきみは何処かがおかしい。
どこか虚ろだったり、何処かが欠けていたり、変に笑っている。
「おんしの忌み名はなんじゃろう……♪ おんしをおんしとするその命……♪
妾に教えてくだしゃんせ……♪ 妾の命にくだしゃんせ……♪」
鈴を鳴らしたようなその声を聞いた時、きみから何かが抜け落ちた。
「つかまえた」
自分という記述が抜け落ちたようだった。
自分はどう戦っていたか。
自分を自分たらしめるものはなんだったのか。
ざわ、と。
どこかで枝葉の擦れる音が聞こえた。
ルパート・ブラックスミス
魔鏡に映る自分の姿は欠けているものを強調する。
兜のバイザーを上げて。腕をぐるぐると捻り回して。
『中身は空っぽだ』と。
『騙るも何も、初めから何も無いではないか』と。
『その名が示すものなど何処にある』と。
…聞こえる幻朧桜の枝葉の音に、応える。
応とも。
総て喪った亡霊騎士だが。
それでもお前の下まで歩んだ旅路が、手にした縁と力が在る。
行くぞ、ニクス。
UC【夜鷹の不知火纏う騎身】起動。
敵UCは【呪詛耐性】で凌ぎ、ニクス(爆槍フェニックス)の【ランスチャージ】で騙られた己の姿諸共敵を貫く!
刻め、我が名!
記憶も栄光も既にない、だがなお遺る炎が在る!
ルパート…黒騎士ルパート・ブラックスミス!
【アドリブ歓迎】
●からの器を満たすモノ
嗤う声が聞こえる。女の嗤う声が。
虚ろに光るその鏡面に、己が映る。
甲冑が映っている。これはなんだ。
これは少なくともヒトではない。
モノが動くだなんて、普通ではない。
ルパートが身動ぎもできず、その鏡を見つめていると、鏡の中の甲冑が動き出す。
バイザーに親指をひっかけて、その中身を露にする。
『中身は空っぽだ』
誰かの声がした。
『騙るも何も、初めから何も無いではないか』
ぐわんぐわんと伽藍洞の鎧が鳴く。
『その名が示すものなど何処にある』
――自分の、名前……?
黒騎士の鎧のヤドリガミは、己を己たらしめる固有名詞を失う。
指先一つ動かせなくなり、ただただその場に立ち尽くしてしまう。
眼前の女が、楽しそうに笑いながらこちらに手を伸ばすのを、ぼんやりと眺めることしかできないでいると。
不意に、枝葉の揺れる音が聞こえた。
――失くしても、なお遺る炎がある。その名は、ルパート・ブラックスミス。
かしゃん、と。硬質な音がした。
それは黒い籠手と槍が擦れた音。
――大丈夫だ、動く。
「行くぞ、ニクス」
指先に力を込めて、槍を握り直す。手を伸ばしてくる女に向かい、その切っ先を突きつけた。
「我が血はもはや栄光なく。されど、未だ夜空に燃え続ける!」
己の虚像諸共葬り去る為に、青白い炎を超新星のように輝かせる。
かしゃん。
大きな魔鏡に罅を入れたかと思ったが、その魔鏡はぴかりと光ったかと思うと何処かへ転移してしまったようだ。
己を取り戻したルパートは、ニクスを握りその後を追った。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
他者は私の書割で
私は他者の書割だ
私は私は
誰だった?
見知らぬ風景として雲外鏡を眺め首を傾げる
生えた枝から桜の花びらが散り
目の前に流れるそれを思わず掴む
孤影の桜が呼ぶ声がする
「そうでした、私は幻朧桜から生まれた桜花精。この地を統べる偉大な方と、それに連なる幻朧桜を守る者。この世界を骸の海から守るため、影朧に等しく転生を促す者」
「多少の呪詛耐性は嗜んでおりますもの」
UC「桜吹雪」使用
高速・多重詠唱で更に破魔属性上乗せし雲外鏡を切り刻む
「此の世をまだまだ写してみたいなら。どうぞ転生を望んで下さい。身を清く保つため、本来の貴女の助力を望む者は、此の世にたくさん居りますから」
慰め乗せた鎮魂歌を歌い送る
●舞台装置
嗤う声が聞こえる。女の嗤う声が。
虚ろに光るその鏡面に、己が映る。
『他者は私の書割で』
鏡に映る、誰かが見つめてくる。
『私は他者の書割だ』
虚ろな新緑が見つめてくる。
『私は私は』
私? 私って……。
『誰だった?』
桜色の髪を靡かせた誰かの口角が吊り上がった。
桜の精は、己を己たらしめる固有名詞を失う。
なにかの映像を見ているかのように、眼前の風景を見知らぬ風景として眺め、首を傾げた。
首を動かした拍子に、視界の端を、ひらり。何かが動く。
なにかの本能だったのだろうか。その桜色のひとひらを、思わず掴んだとき、枝葉の揺れる音を聞いた気がした。
――ああ、その声は。
――公園に咲く桜。御園・桜花。
「そうでした、私は幻朧桜から生まれた桜花精。この地を統べる偉大な方と、それに連なる幻朧桜を守る者。
この世界を骸の海から守るため、影朧に等しく転生を促す者」
その顔に、光を取り戻す。手にした武器を、爛漫と咲き誇らせてその身に纏い、こちらに手を伸ばしてくる女へ降り注がせた。
「多少の呪詛耐性は嗜んでおりますもの」
向けられた鏡から発せられる致死の呪いを笑って耐えて、さらに花弁を叩きつけていく。
かしゃん。
転生を促すべく歌を紡ごうとしたとき、その魔鏡はぴかりと光ったかと思うと何処かへ転移してしまったようだ。
己のすべきことを取り戻した桜花は、その後を追った。
大成功
🔵🔵🔵
ルリララ・ウェイバース
アドリブOK
互いに姉妹と認識する4重人格
末妹で主人格のルリララ以外、序列なし
ぬ、自分の名なのに靄がかかった様だ
これは困ったぞ
どうしよう、ルリ姉
『ルリ達の名前は大丈夫なのね?』
『なら、話は早ぇ』
『ルリちゃんとリラちゃんとララと一緒でルリララちゃんだよ』
そうか、そうだったな。
鏡の精よ。姉達に手を出さないとは手抜きだぞ。
我が名はルリララ
水のルリ、火のリラ、風のララを姉に持つ、地のルリララだ
全力魔法、属性攻撃込みのエレメンタル・ファンタジアで攻撃
飈の土石流で、叩き割ってくれる
呪いはオーラ防御と呪詛耐性で耐えるぞ
●一緒の名前
嗤う声が聞こえる。女の嗤う声が。
虚ろに光るその鏡面に、己が映る。
鏡に映る黒髪の少女。
己の名前を思い出そうとするも、頭の中に靄がかかったかのように不鮮明で出てこない。
困ったな……。
「どうしよう、ルリ姉」
口を衝いて出た声。
『ルリ達の名前は大丈夫なのね?』
水のせせらぎのように優しい声が聞こえる。
『なら、話は早ぇ』
火のように力強い声が聞こえる。
『ルリちゃんとリラちゃんとララと一緒でルリララちゃんだよ』
風のようにたおやかな声が聞こえる。
――そうか、そうだったな。
「鏡の精よ。姉達に手を出さないとは手抜きだぞ
我が名はルリララ
水のルリ、火のリラ、風のララを姉に持つ、地のルリララだ」
精霊の力を手繰り、飈の土石流をその魔鏡に叩きつける。
一人ではない、このチカラ。そのありったけをお見舞いする。
かしゃん。
一筋の罅を入れたかと思ったその時、魔鏡はぴかりと光ったかと思うと何処かへ転移してしまった。
己の内に居る姉と共に、ルリララは魔鏡を追った。
大成功
🔵🔵🔵
稷沈・リプス
…歪みっすね。
俺の名前、何だったっすかね。神名ではない、俺の今の名前。
『蝕神■■■■』ではない名前。
我の名前、は…。
声が聞こえるっす。ライオンの声と、たぶんこれはあの幻朧桜。
そう、俺は稷沈リプス。(自称)ただの人間、いや(自称)人間の猟兵っす。
というわけで、行くっすよ、ライオン…!あの鏡を割るっす!
呪いには【呪詛】で。呪いには呪いをっす!!
大丈夫っすよ、ライオン。俺は俺のままでいるっすから。
桜には、あとでお神酒持って話に行くっすかね…。
※元々は【巨大な蛇神】なリプス。
ライオンの名前はない。
『リプスさまー』
●ヒトとしての名
嗤う声が聞こえる。女の嗤う声が。
虚ろに光るその鏡面に、己が映る。
映る男の顔が、邪悪に歪む。
歪んでいる。そう思った。
己の名前が蝕まれていく。
嗚呼、なんだったかな、今の俺の名前。
神の御名を誇るような、傲慢な顔が映っている。
『蝕神■■■■』ではない名前。
「――我の名前、は……」
ざわ、と。
何処かで枝葉の揺れる音がした。
ぱちり、瞬きをひとつ。
――光を蝕む者、稷沈・リプス。
傍らのライオンが鳴く。
我のではなく、俺の名前を呼んでいる。
「そう、俺は稷沈リプス。(自称)ただの人間、いや(自称)人間の猟兵っす
というわけで、行くっすよ、ライオン……! あの鏡を割るっす!」
ライオンの爪に呪詛を乗せ、その鏡を叩き割らんと襲い掛かる。
かしゃん。
魔鏡に爪を深く沈みこませたその時、魔鏡はぴかりと光ったかと思うと何処かへ転移してしまった。
リプスはライオンに笑いかけると、その鏡を追った。
大成功
🔵🔵🔵
錦夜・紺
アンタが魔鏡の影朧か
鏡に写した名を歪め存在を取り込むという
出来る限り素早く倒せれば良いが
……チッ、遅かったか。
鏡に写るは自身の姿
表情は虚ろ、そしてなにより
纏う紺色、色の違う瞳は無く
そこには色が無かった
俺は何故此処に居る?
俺は……何者だ?
そんな最中、
動かぬ身体に、頭の中に響く音
枝葉の揺れる優しい音
名も知らぬ桜の….…
……ああ、アンタが覚えてくれたのか
失った欠片が元に戻る感覚
内に眠る幽鬼の力を解放する
取り出した苦無は魔の力を宿して
真っ直ぐに放つ
行き先は女の持つ鏡へと
残念だが……くれてやる命は、ない。
●おにを彩るもの
嗤う声が聞こえる。女の嗤う声が。
虚ろに光るその鏡面に、己が映る。
声をかける間もなく、虚像を見つめる。
虚ろな己に見つめられる。
こちらを見つめるそのおにには。
何故か『彩』と言うものが欠如していた。
己から何かが抜けていく感覚。
頭の中に霞がかかったような、もどかしさを覚える。
『アンタは何故此処に居る?』
虚像が問いかける。
『俺は何故此処に居る?』
『アンタは誰だ?』
鏡像が追い打ちをかけてくる。
『俺は……何者だ?』
身動ぎすら許されないこの身体に、誰かの声が聞こえる。
――夜に融けるおにのひと。錦夜・紺。
聞こえた、受け取った。
名も知らぬ桜の、優しい音。
「……ああ、アンタが覚えてくれたのか」
己を取り戻した紺に、色彩が戻る。失った欠片が、音を立てて組みあがり、錦夜・紺を作った。
紺を形作るものの一つ、幽鬼の力を解放し、その身に宿した。闇色の苦無を握りしめ、女の持つ魔鏡目掛けてまっすぐに投擲する。
「残念だが……くれてやる命は、ない」
左右で彩を違える眸で大鏡魔を見据え、さらに苦無を投げつけた。
その切っ先が鏡面へ沈み込む。
そのまま叩き割れるかと思ったその時、魔鏡はぴかりと光ったかと思うと何処かへ転移してしまったようだ。
眼前から消えてしまったその姿を追い、紺は闇を駆け抜ける。
大成功
🔵🔵🔵
渦雷・ユキテル
フォーリーさん(f02471)と
影朧に教えようにも自分に名前なんてありましたっけ
アッハイ。ユキオさんの親戚ですか???
さっさと倒しちゃいましょと手を伸ばし――
なんだっけ。何か抜け落ちた感覚
魔法でも使うつもりだったのかって少し可笑しくて
違和感の正体は戦いながら探します
鏡めっちゃ禍々しいですね
映らないよう位置に気を付けながら【見切り/学習力】
射撃で動きを制限。腕でも狙いましょうか
……変な質問ですけど。あたしに名前ってありました?
あ、イエスかノーかで。答えは自力で探したくて
枝葉のざわめきを切欠に思い出したら
名前に相応しい力も元通り【属性攻撃/マヒ攻撃】
行きましょうか、フォーリーさん
※アドリブ歓迎
フォーリー・セビキウス
ユキテル(f16385)と
あるだろう流石に。
いいか、ユキエだ。※ユキテルです
ーー伸ばした手が欠けている
おい見ろ、手が映ってない。
心霊写真ってヤツじゃないか?これ。
笑えるな。面白いぞこの鏡不良品か?
ーーむ、今何考えていたか忘れた。
いや、考えていた事だけじゃないな。他の事まで忘れている。特に自分に関する情報がごっそり抜け落ちている様だ。
だがまあ、問題はない。既に忘れる事には慣れている。
痴呆じゃないからな?そもそも私が忘れる事自体あり得ないんだからな本来。
鏡に映らない様転移を繰り返しながら死角から切り結ぶ
さて、どうだったかな。
ハッ、イエスに決まっているだろう。
ほら行くぞ、ユキテル。
※アドリブ歓迎
●番号でも、記号でもなく
歌う女が居た。名前を乞う女が。
「影朧に教えようにも自分に名前なんてありましたっけ」
ユキテルの緩い声に応える、硬質な声。
「あるだろう流石に。――いいか、ユキエだ」
「アッハイ。ユキオさんの親戚ですか?」
そんな軽口をたたきながら、2人は戦闘態勢に入る。
鏡に向かい手を伸ばしたその時。
嗤う声が聞こえた。女の嗤う声が。
虚ろに光るその鏡面に、己が映る。
――すとん。
指先から、電撃が抜けていく。同時に何かが抜け落ちた感覚を覚えた。
「……あれ?」
何をしようとしたのだろうか。魔法でも使うつもりだったのかって少し可笑しくて、小さく笑う。
何をどうしようとしていたのか分からないけれど、己がすべきことは体が覚えている。――戦わなくちゃ。倒さなくちゃ。
――どうやって?
違和感を覚えながらも、その金髪を揺らして戦う。
整った顔が鏡に映っている。しかしその伸ばした手が欠けていた。
「おい見ろ、手が映ってない。心霊写真ってヤツじゃないか?これ」
軽く言いながら、己の力を振るおうとした、その時。
違和感に顔をしかめる。――力の振るい方が、分からない。
自分に関する情報がごっそり抜け落ちている様だ。
しかし、問題ないと断じる男。忘れる事には慣れているから。
刃を握りしめ、影朧を睨みつけた。
「……変な質問ですけど。あたしに名前ってありました?」
鏡に映らないように変則的に動きながら、金髪を揺らし問う。
答えは自力で探したいから、イエスかノーで、と付け足して。
「さて、どうだったかな」
握った刃で影朧を傷つけながら、軽口をたたいた。
「ハッ、イエスに決まっているだろう。そんな簡単なことも忘れたのか?」
愉快そうに口の端を歪めると、2人の耳朶を不意に打つ音。
幻朧桜の、声。
――"彼"の名前を少しだけ変えて、ユキテル。
――"43"と、その他の数字、全てを包み込んだ、フォーリー。
「そうだった。あたしはユキテル」
「ようやく思い出したか。ほら行くぞ、ユキテル」
自分も忘れていたようなことを悟らせないように、影朧に向かってデッドコピーした刃を投擲するフォーリー。それに合わせるように、ユキテルも己の電撃をお見舞いしていく。
ばちばちと迸る電撃の隙間を縫って、刃がその鏡を捉えた。
その切っ先が鏡に沈み込んだかと思ったが、その寸前、魔鏡はぴかりと光ったかと思うと何処かへ転移してしまったようだ。
「行きましょう、フォーリーさん。終わらせちゃいましょう」
「フッ、言われなくとも」
そうして、顔を見合わせたユキテルとフォーリーはその身を走らせた。
大成功
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幻武・極
ボクの名前を奪うか。
この喪失感は夢の時と似ているね。
名前を奪われてもボクがボクであることに変わらないし、奪われたのなら奪い返すだけだよ。
さて、その鏡を向けられるとヤバいから隠密しておくかな。
イシコロ気流で姿を消して、鏡を向けられないように気を付けるよ。
●奪われたもの
嗤う声が聞こえる。女の嗤う声が。
虚ろに光るその鏡面に、己が映る。
すぅ、と。何かを失う感覚を覚えた。
この喪失感は、夢に似ているな。
何処か他人事のように思う。
嗚呼、なんだったっけ。
ボクの名前。
目を閉じて、深呼吸。
「名前を奪われてもボクがボクであることに変わらないし、奪われたのなら奪い返すだけだよ」
赤い目で鏡像を見つめる。
虚ろな目で見つめ返されたが、知ったことではない。
しかし、次々と何かを奪われてしまってはたまらない。
その時、木の葉の擦れる音を聞いた。
――その幻を極めんとあがき続ける者、幻武・極。
「ああ、そうだったね。それがボクだ!」
拳を握り、不可視のオーラを身に纏う。
角の先から一本下駄まで、その色彩が消えていく。
鏡像の姿もすっかり消えたのを確認し、素早く動いた。
身を低くし、魔鏡の直線に入らぬよう肉薄する。
女の後ろに回り込み己の拳を叩きつけた。
苦悶の表情を浮かべながらよろめく女。
その隙を逃さず、さらに追い打ちをかける。
●己を取り戻し者たち
「ニクス! 往くぞ!」
雄たけびと共に、ルパートが炎を纏う槍を構え突撃をする。
声にならぬ声を上げ、女はルパートに魔鏡を向けた。
呪いがルパートの身を焼くが、お構いなしに槍を深々と突き刺す。
その足場を崩さんと、ルリララは土の精霊に呼びかけて土を操った。
女の足元の土がぼこんと抉れ、バランスを崩す。
「ルリララ達を、猟兵を甘く見ないほうが良い」
「そうっすよ。俺たちはひとりじゃないっすからね」
ライオンに騎乗し、抉れた地面を駆け降りるリプス。
下る勢いそのままに、その爪で女の胴体を抉った。
「あはっ。総攻撃ってやつですね。出し惜しみせず行っちゃいましょ、フォーリーさん!」
「フッ、言われずとも、だ。遅れるなよユキヒコ」
「ユキテルですっ!」
ばちばちっと雷を迸らせながらユキテルがぷぅと頬を膨らませる。
フォーリーは片頬だけで笑いながら、デッドコピーの刃を降らせた。
既に立っているのがやっとな影朧に向かい、桜花が語り掛ける。
「此の世をまだまだ写してみたいなら。どうぞ転生を望んで下さい。身を清く保つため、本来の貴女の助力を望む者は、此の世にたくさん居りますから」
しかし女は罅だらけの魔鏡を向けるだけ。
桜花は悲し気に目を伏せて、鎮魂歌を歌う。
ざぁ、と微かなそよ風に乗り、ルパートが持っていた幻朧桜の花弁がひとひら、魔鏡に向かい飛んで行った。
影から飛び出した紺が、手にした苦無でその花弁を押し付けるように魔鏡へ投擲する。
闇色のその苦無が、ぐぐっと魔鏡に沈み込み、パンッと割れた。
さらさらと、その女の姿が消えていく。何かを求めるように、手を伸ばす女。
伸ばされた手は何も掴むことなく消え去った。
鎮魂歌だけが、静かに響いていた。
●それぞれの道を行く
女の最期を看取った猟兵たちは、すぐにその場を立ち去る者もいれば、名残惜し気にとどまる者もいた。
その行動は、誰に縛られることもない。それぞれの意思の元、基づいた行動。
それぞれの想いを胸に、猟兵は己の道を歩んでいく。
大成功
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