帝竜戦役㉘〜飯テロで『暴食』を唸らせろ!
竜の宝物庫――群竜大陸の一画に存在する、一面が金銀財宝で輝く大地。
そこは帝竜ヴァルギリオスが蓄えた、『無尽蔵の財宝』がばら撒かれたエリアだ。
今までも様々な宝物を猟兵達は発見してきたが、ここにある代物の価値は桁違いだ。
例えば、ここに虹色に輝く釜がある。
これは至るところに美麗な彫刻が施されており、美術品としても高い価値を誇る。
何より、この釜で調理した料理は、どんなに雑な調理レシピでも美味しくなる。
まさに魔法の料理アイテムである。
だが、当然、防衛システムが仕込まれているわけで……。
「ふわぁ……んん~、お腹が空きましたぁ♪」
なんと、虹色の釜がオラトリオのゆるふわぽややんお姉さんに変身したではないか!
ここの財宝は皆、強大なモンスターへと変身してしまうのだ。
そしてお姉さんは何でも食べるらしく、そこらへんの宝物をガジガジかじってる有様。
あ、今、ペッて吐き出した!
「不味いですねぇ~。美味しい食べ物は何処でしょうか~?」
お姉さんはグルメのようだ。
――その名は『暴食』のフィーラ。
……その昔に『災害』認定された、七罪を冠する大迷惑な存在の一体である。
「……これが、今回のあたいが視た予知の内容だよ」
蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)はグリモアから投影した予知の映像を、集まってくれた猟兵達へ放映していた。
「今回の任務は、帝竜ヴァルギリオスの財宝を持ち帰っちゃおう~っていう、端的に言えば泥棒なんだけど……元はと言えば、ヴァルギリオスがアックス&ウィザーズ中から奪って群竜大陸へ持ち込んだモノのはずだし、そのヴァルギリオスも討伐できるようになったし、だったらこの財宝は地上へ返すべきだよねってことで!」
つまり、今回の猟兵は『義賊』のポジションだ。
レモン曰く、予知で視た宝物こと『魔法の虹釜』が変身したオブリビオンこと『暴食』のフィーラを撃破し、財宝を回収するのが任務なのだとか。
「財宝とはいえ、オブリビオンに変身する以上は猟兵の力で撃退しておかないと、思わぬ戦力として駆り出されかねないからねっ? そういう意味でも、猟兵の皆で群竜大陸から地上へ持ち帰ってきてほしいんだよっ!」
任務の趣旨は判ったが、あんな巨大なオラトリオのお姉さんを戦うのか?
猟兵の疑問に、レモンは即答した。
「予知によるとね、みんなの手料理をごちそうさせてあげればいいんだよっ!」
なるほど?
……意味が分からん。
「相手は『暴食』と冠するオブリビオン! 防衛システムが発動したばかりで、まともに戦ったらみんなを食べようと襲ってくるんだよね~っ? だから、現地で美味しい料理を作って、『暴食』さんに食べてもらえば、相手は隙だらけだし何なら戦闘も回避できた上で防衛システムを解除できる、かもっ?」
レモンの言葉に、猟兵達は同じことを考えた。
ま さ か の 飯 テ ロ !
しかも特攻付きかよ……。
確かに、財宝が御釜だから食べ物を欲するのかもしれない。
だとすれば戦闘が苦手な猟兵でも、今回は料理の腕を振るえば無双ができるのでは?
「そういうことだよっ! 帝竜戦役も佳境だし、みんな疲れたよね~っ? 出来ることなら穏便に済ませたくない? ……済ませたいよね? まともにお姉さんと戦うとすっごく強いっぽいから、料理ができない人はありあわせの既製品でもいいから持ち込むと良いよっ!」
レモンは早速、竜の宝物庫への転送を開始する。
「手の消毒は済んだ? 調理道具は持った? 食材の準備はOK? それじゃあ、出発!」
今、猟兵達のお料理バトルが幕を開ける……!!
七転 十五起
帝竜戦役も超大詰め。
戦闘シーンを書かなくても良さげなシナリオを今回はご用意しました。
ところで、最近のコンビニの麺料理のクオリティーの高さは素晴らしいですね。
なぎてんはねおきです。
プレイングボーナス……シナリオごとに提示された『財宝』の特性を考え、その弱点をつくような作戦を実行する。
今回の『財宝』は【魔法の虹釜】です。
謎の金属で出来た御釜は、闇の中でも常に七色に発光し続けています。
美麗な装飾が施されたこの釜で作った料理は、どんなものでも美味しくなります。
強力なモンスターに変身する恐るべき財宝ですが、変身方法は不明。
美術品として鑑定しても、金貨2000枚(2000万円)を下ることはありません。
そのせいか、敵は【やたらと美味しいものが食べたくなる】特性を持ちます。
猟兵達の作ったor持参した食べ物を与えれば、最終的に手懐けられます。
このお姉さん、チョロい。でも戦うと超強いのでご注意を。
御釜はお姉さんが複数個、お腹の中で保管しているので、猟兵全員に行き渡ります。
如何に美味しそうに料理や食材をプレイングで飯テロ出来るかが勝利の鍵です。
大成功判定では戦闘は発生しません。
成功以下は、お姉さんが差し出された食べ物に満足できないため戦闘が発生します。
それでは、皆様の気合の入った飯テロのプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『『暴食』のフィーラ』
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POW : あらぁ〜、食べて良いんですかぁ〜?やったー!
自身の【何かを食べたい欲望】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : わたし〜、おなかが空きましたぁ〜
自身の身体部位ひとつを【口のみが存在する伸縮自在】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : いただきまぁ〜す♪
【隠し持つ調味料】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑8
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才堂・紅葉
でかいですね
でかいですね
見上げるばかりの姿に圧倒されます
ですが、まぁお仕事
あの鍋は良い物です
「3時間だけ待って下さいね」
【礼儀作法】で告げて、蒸気王を召還して、脂の乗った歳のドラゴンを狩ってきます【情報収集、グラップル】
折角ですので、その身に合う【料理】を作って差し上げましょう
鱗を毟ったドラゴンに鉄串代りの六尺棒を通し、丸焼きにします
「機構召還符」で大型練金炉を召還しますので火力は問題ないでしょう【メカニック、属性攻撃】
後は、蒸気ギターで陽気なBGMを奏でながら、蒸気王にグルグル回させ、時折塩を軽く振らせ……【野生の勘】で火加減を見切り、お肉を彼女に差し出します
「どうぞ。美味しくできましたよ」
ナミル・タグイール
金ぴかいっぱいにゃー!
しかもなんでも美味しくできるお宝にゃ?それも欲しいにゃ!
全部寄越せデスにゃー!
にゃー!金ぴか食べるなデスにゃ!
代わりになにかあげるから金ぴかと窯頂戴にゃ!
でも料理なんてできないしにゃー。お宝パワーに頼るデスにゃ。
そこら辺に落ちてる金ぴかじゃないお宝を【呪詛】纏った斧でザックリ
怒らないでにゃー!ちょっと待っててにゃ!
材質変化の呪詛で切ったものをチョコとかゼリーとかお肉とか、食べれるものに変えるにゃ
誰か料理できるなら頼みたいけど、そのままでもきっといけるにゃ!
元がレア物ならきっと美味しいデスにゃ。いっぱいあるし満足するまであげマスにゃ。
だからお宝寄越s…ちょうだいデスにゃ!
シノギ・リンダリンダリンダ
……地上に返すんですか?
(まぁさりげなく持って帰れば多分ばれないですしここは話を合わせておきましょう。こんなお宝を逃すのは海賊の名折れです)
まぁとにかく何か作ればいいんですね。
ふふふ、よかったですね暴食の。お前が目にしているのは大海賊です
海賊と切っても切れない関係のもの……そう、宴会です!
食事作りなんてお手の物です!!
美味しい料理も必要でしょうが、量も必要でしょう
【飽和埋葬】でコック係の海賊の死霊を召喚
「宴会」慣れしてますので腕は確かです
「集団戦術」でドンドン料理を作ります
材料はやはり竜肉がいいでしょう
煮込み、焼き、揚げ、生
お酒は蜂蜜酒でどうでしょう
さぁ、ドンドン(共)食いしてください!
月宮・ユイ
アドリブ絡み◎
※ヤドリガミ
災害認定される程の食欲、ね
財宝の影響でさらに強化され
下手をすると物理的な意味で食べられる、と
「良いでしょう。貴方を満足させてみせます
◇機能強化
命懸かかる為○奉仕に全力投入
強化された○操縦術で【釜】使用、効果○限界突破させ強化。
『倉庫』から今回の戦争中入手したドラゴン食材用意。
○料理開始、音と匂いで○誘惑
まずは手早くドラゴン手羽先の塩唐揚げ
今回は片栗粉使用しサクッと仕上げ
味付けは塩・こしょうでシンプルに。
「お酒も樽で準備しましたよ
時間稼ぎ、追加のドラゴン肉唐揚げ大量に用意
今度はしょうゆベースのガツンとした物も作る。
満足し隙作れば『ステラ』ナイフ創生、サクッと○暗殺
イスラ・ピノス
財宝!しかも戦わなくてもいける!
僕にも凄い有難い機会、絶対ものにしなくちゃ!
でもごはんもそれなりに戦争。
島の子供たちに作ってたときとかほんと…だから全力出すよ!
異世界も美味しいもの沢山あるけどやっぱりその場で熱々がおススメ。
僕は串焼きバーベキューにするよ。
予め串の用意はしておいてどんどん焼いていくよ。
焼き音と匂いも大事だよね。火加減ついでにぱたぱた扇ぐね。
甘辛いタレに漬け込んだお肉たちにエビ、ホタテ。
玉ねぎ、かぼちゃ、とうもろこし、エリンギ、椎茸。
沢山あるから焼けた頃合いにスパイスもかけたりして味変えもしようね。
満足して貰って防衛システムも解除、お宝もお願いしちゃおう。
失敗したら…逃げよっか。
才堂・紅葉(お嬢・f08859)は巨大なお姉さんこと『暴食』のフィーラ(巨大化ver.)を見上げて呟いた。
「……でかいですね」
まぶたを擦る。見間違いかもしれない、と言い聞かせながら。
だがそこには、膝を抱えて三角座り、此方をよだれを垂らしながら見詰めるゆるふわな巨大なお姉さんがたしかに存在した。
「でかいですね。見上げるばかりの姿に圧倒されます」
感慨に耽っていると、その背後で毛玉が蠢いていた。
「金ぴかいっぱいにゃー! しかもなんでも美味しくできるお宝にゃ? それも欲しいにゃ! 全部寄越せデスにゃー!」
毛玉ではなかった。れっきとした猟兵であり、金ピカ大好き猫科キマイラことナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)だった。
最高ランクAAAのモフリティーを誇る黒い体毛をわっさわっさ揺らしながら、ナミルは地面に落ちている金貨を拾い集めていた。
だがお姉さんが金貨をスナック菓子のようにバリバリ噛み砕くさまを見て、慌ててナミルは制止する。
「にゃー! 金ぴか食べるなデスにゃ!」
「じゃあ、猫ちゃんを食べちゃおうかしらぁ?」
にぃ、と笑顔を見せるお姉さんの手がナミルに伸びる。
「にゃ!? 食べないでにゃー!? 代わりになにかあげるから金ぴかと虹釜頂戴にゃ!」
フシャーッと息を吐きながらナミルはお姉さんに訴えかけた。
「それじゃあ、美味しいご飯が食べたいでぇ~す!」
お姉さんは手を引っ込めると、涎を拭き取りながらステイを継続。
「良いでしょう。貴方を満足させてみせます」
月宮・ユイ(月城・f02933)の衣装がノースリーブかつビスチェ風のエプロンドレスを纏ったメイドへと早変わりしてゆく。
彼女の『共鳴型外部端末:生体衣装』は、あらゆる状況下での継続活動・着用を目標に開発され、任意に形状・機能等の変更が可能なのだ。
この場に最適な衣装……それは、コック服ではなく、お姉さんをもてなすメイド服であった。
(災害認定される程の食欲、ね。財宝の影響でさらに強化され、下手をすると物理的な意味で食べられる、と)
ヤドリガミとはいえ、肉片ひとつも残さず捕食されたら自己再生するかどうか怪しい。
(生命の危機を感知。奉仕活動に全力を傾注しましょう)
突然現れたメイドに、お姉さんはキャッキャと子供のように無邪気にはしゃいでいる。
「わぁ~、お洋服が変わるのねぇ~! 早くご飯を食べさせてほしいなぁ~?」
「では、まずは食前酒などいかがでしょうか?」
月宮は電脳空間倉庫の入口を出現させ、管理者人格『フラン』を呼び出す。
『マスター、ご所望の品目をお申し付け下さい♪』
「フラン、倉庫内のありったけのアルコールをここへ。あと、適当な酒樽を見繕ってくれますか?」
『お安い御用です♪』
「それと、この戦争中に確保したドラゴンの肉も全て使用しますので、ここへお願いします」
『かしこまりました♪』
早速、電脳空間からデータが解凍されると、忽然と目の前に大量の酒の瓶や酒樽、そしてグラス代わりの酒樽にドラゴン肉が現実世界へ現れた!
「すごい! これが電脳魔術!? すごく便利なんだね!」
蒼く透き通るソーダ水の髪を揺らしながら、イスラ・ピノス(セイレーンの冒険商人・f26522)は目を輝かせる。
イスラはグリードオーシャンが発見されてから本格的に猟兵活動を始めたまだまだ新人猟兵。
他の猟兵のユーベルコードにも興味津々の様子だ。
「その収納技能があれば、遠洋航海でも生鮮食品を腐らせることなく交易できそうなんだけどなぁ~?」
彼女は根っからの冒険商人でもあった。
「おっと、今は目の前に集中だね? 財宝! しかも料理するだけで戦わなくてもいける! 駆け出し猟兵の僕にも凄い有難い機会、絶対ものにしなくちゃ!」
イスラは張り切って鞄の中からゴソゴソと調理に使えそうな品を見繕い始めた。
そんな猟兵の動向を、ひとり冷静に静観する海賊がいた。
シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)である。
彼女はこの任務を受領する前のグリモアベースのブリーフィングでの言葉が引っかかっていた。
(あの財宝……地上に返すんですか?)
海賊たるシノギにとって、全世界のあらゆるお宝は最終的には自分の物だと思っている。
(それを、地上に返して、誰かの役に立ててもらおうと?)
理解不能だった。
(別に私が虹釜を持ち帰って、むにーの面々に『光るレインボー釜飯』を振る舞っても同じことではないでしょうか?)
そんな事になったら、また海賊船しゃにむにーが阿鼻叫喚に包まれそうだが大丈夫か? 何度むにー空間で死ねば気が済むんだ??
(そうです、私が使うか第三者が使うかに、大した違いはありませんよね。まぁさりげなく持って帰れば多分ばれないですしここは話を合わせておきましょう。こんなお宝を逃すのは海賊の名折れです)
と、自身の正当性を自負したシノギ。
だが、目の前の猟兵の面々はというと。
「前途多難ですが、まぁお仕事、もとい調理を開始しましょう。噂に聞く虹釜、あれは良いものです。是非、アルダワ学園で美食を堪能するためにも入手しましょう」
「料理はできないけど頑張るデスにゃ! だから金ピカと虹釜を寄越せデスにゃー!」
「島の子供達に虹釜を見せたら喜ぶだろうね。頑張って料理しちゃうよ!」
才堂とナミル、そしてイスラは堂々と『持ち帰る』宣言をしていた。
「どうぞ、お嬢様。此方のお酒は果実酒でございます」
「う~ん、口どけがとっても良いわぁ♪」
月宮はユーベルコード『機能強化『技:奉仕』(スキルマスター・テンプテーション)』で完璧にメイド業をこなしていた。
「お嬢様、ひとつよろしいでしょうか? 調理にお嬢様秘蔵の虹釜の使用を許諾願いませんか?」
「え~? でも、これは信頼できる人にしか使わせてあげませ~ん!」
「ですがお嬢様、その窯で作ったお料理は非常に美味しく仕上がります。お嬢様の美食の欲求も満たせるかと」
「そうねぇ~? じゃあ、ユイちゃんにだけ特別に貸してあげますねぇ~? ただし、美味しくなかったら、ユイちゃんを頭からかじっちゃうからね~?」
お腹から魔法のように虹釜を取り出したお姉さんは、それを月宮へと差し出した。
「はいっ♪ 大事に使ってね?」
「承知致しました、お嬢様。では私は調理に移りますので失礼します」
月宮はそそくさと即席の調理スペースへ移動する際、シノギとすれ違う。
「あの、このまま持ち逃げすれば済むのではないでしょうか?」
小声で囁くシノギ。
月宮は一瞬足を止めて逡巡する。
「……それも良いかもですが、あれはオブリビオンですので」
金平糖にような連星型共鳴コア『ステラ』を文化包丁へと変化させて冷徹に告げる月宮。
その真意にシノギは気付く。
「なるほど。あなたはアサシンでしたか」
「そういうことですので。失礼します」
虹釜を抱えて歩いてゆく月宮の背を見詰めるシノギ。
「……まぁ、そう簡単に行くとは思えませんけども。なにせ、猟兵はお人好しばかりですからね。というか、平然と皆持って帰ろうとしてますよね、これ?」
ブリーフィングなんて意味なかった。
「さて、シノギちゃんもそろそろ海賊を始めましょうか」
シノギはお姉さんの前まで来ると、胸を張って高らかに告げた。
「ふふふ! よかったですね暴食の!! お前が今、目にしているのは大海賊です! 海賊と切っても切れない関係のもの……そう、宴会です!」
すびしっと親指で自身の顔を指すシノギ、ドヤ顔である。
「食事作りなんてお手の物です!!」
「まぁ♪ お姉さん、期待しちゃうっ!」
「ということで、ちょっと時間をいただきます。食材の調達などがありますので」
「そうですね、私も3時間程戴けますか? 新鮮なドラゴン肉を調達してきますので」
才堂もすすっと歩み寄ってお姉さんに願い出てくる。
だがお姉さんはジト目で抗議する。
「3時間も待ったらお姉さんは餓死します! その前にみんなをかじっちゃうからねぇ~?」
「それは困るにゃー!?」
話を聞きつけたナミルが飛んできた。
「材料がないならこの場で作るデスにゃ! 見ててほしいデスにゃー!」
ナミルはおもむろに拾い集めたガラクタを山積みにしてみせる。
「そこら辺に落ちてる金ぴかじゃないお宝を、この呪詛まみれの巨大な金ピカ斧のカタストロフで、せーの、ざっくりにゃ!」
パッカーンとガラクタは真っ二つにカチ割られた。
まさかこれを食べろというのか?
そんな空気が漂い、不信感が周囲を支配する。
「み、みんな怒らないでにゃー! ちょっと待っててにゃ!」
ナミルの言葉通り、しばらく時間が経過すると……?
「これは、ドラゴンの肉ですね!? しかも鱗を剥いだ下処理済み!?」
「こっちは牛肉や豚肉、鶏肉もありますし、調味料まで……」
才堂とシノギが驚愕! ガラクタが食材に変化したのだ!
ナミルがえっへんと猫背を反って誇らしげである。
「これがナミルのユーベルコードにゃー! 『変化の楔(カタラ・スフィナ)』って言いマスにゃ。呪いを纏った攻撃で出来た傷から材質変化の呪詛が発動して、なんやかんやでナミルの思い通りの物質に変化するデスにゃ!」
「これでわざわざ狩りに行かなくてもですね。ありがとうございます、ナミルさん」
「せっかくなので私もこの牛豚鶏竜のお肉を使わせていただきますね」
才堂とシノギはこうして、ナミルのユーベルコードで無限に食材を獲得することに成功した。
「他の猟兵のためにも、もっと材質変化させておくにゃ! あ、お姉さん! これなんかそのままでもイケるはずにゃー!」
ガラクタが巨大なリンゴに変化してゆく。
「あらぁ~、ありがとう! いただきまぁ~す!」
お姉さんな元ガラクタの巨大リンゴをそのまま丸かぶり!
シャクシャクと小気味いい音を立てると、中から濃密な甘さが詰まった果汁が溢れてくる。
「美味しい~っ! ガラクタが美味しいリンゴになっちゃった~っ!?」
「まだまだいっぱい作れるにゃ! 料理ができるまで、いくらでも作ってあげマスにゃー!」
「嬉しい~っ! あ、これ、虹釜あげちゃうっ♪」
お姉さんのお腹から虹釜がコロンッと地面に転がった。
ナミルはまっしぐらに虹釜に飛び付く!
「やったにゃー! これはナミルのものにゃ! 絶対誰にも渡さないにゃー!」
「だぁかぁらぁ~、もっとリンゴ、つくってねぇ?」
ナミルの頭上から垂れる生暖かい粘液……これはお姉さんの唾液!
「ぎゃあ~っ!? ばっちいデスにゃ! 食べられたくないからナミル頑張るデスにゃ~!?」
それからというものの、ナミルは任務が完遂するまでザックザックとガラクタを斧で叩き割る仕事を延々とこなし続けるのだった。
だが、そのおかげで猟兵側はどんな食材でも現地調達できるようになったのは非常に有利な展開だ。
その甲斐あって、まずは才堂とイスラの合作料理がお目見えした。
「やはり目の前で調理するのが一番ですね」
「異世界も美味しいもの沢山あるけどやっぱりその場で熱々がおススメ! 僕らは串焼きバーベキューを提供するよ!」
ナミルに頼んで作ってもらった巨大な金網を敷き、才堂の用意したアルダワ特殊鋼の六尺棒(※三節棍)にドラゴン肉や野菜を串刺しに。
金網の下は、これまた才堂の機構召喚符で召喚した大型練金炉を設置、蒸気魔導の大火力が特大バーベキューを演出する。
「さあ、ドラゴン肉を焼いてゆきましょう。いでよ、蒸気王(スチームジャイアント)! ゴッドにもデモンにもなれる魔導蒸気文明の申し子……あのマッド共、いつか締める
……!!」
蒸気バイクが突如ロボへと変形、巨大化!
ユーベルコードで蒸気ゴーレムを出現させた才堂は、六尺棒に刺さったドラゴン肉を起用にぐるぐると回し焼きさせてゆく。
その傍らで、通常サイズのバーベキューを行うのはイスラだ。
「小さいから量は満足できないだろうけど、焼き音と匂いも大事だよね。食欲がそそられてもっと美味しく感じられるから」
蒸気魔導の炎の加減を団扇で扇ぎながら調節してゆき、手際よく何本も同時に焼いてゆく。
「甘辛いタレに漬け込んだお肉たちにエビ、ホタテ。玉ねぎ、かぼちゃ、とうもろこし、エリンギ、椎茸! 沢山あるから焼けた頃合いにスパイスもかけたりして味変えもしようね!」
「う~ん、焼き立ては最高ですぅ♪」
巨大な指でチョコンと通常サイズの串を摘みなら、王道のバーベキューを堪能するお姉さん。
「王道の料理はやっぱり素敵ですねぇ~。あえて奇をてらわないその真っ直ぐなハートに、お姉さん感激っ! これ、あげちゃう♪」
お腹の中から取り出した虹釜を指で摘んで、お姉さんがイスラにプレゼントオフォーユーシてくれた。
「ありがとう! これで島の子供達が喜ぶよ!」
笑顔で虹釜を抱えるイスラ。
内心、戦闘に発展しなくてよかったと安堵していた。
一方、才堂は蒸気ギターを爪弾き、軽快なメロディーを奏でながら蒸気王に調理を任せっきりだ。
(あの肉の質量からすると、あと32小節後が頃合いですかね……)
しかし、その目は肉を見定める巨匠の眼差しだった。
蒸気王がぐるぐると肉を回し、楽曲もそろそろ一曲終えようとするまさにその時、才堂が叫んだ。
「今です、蒸気王! ドラゴン肉を火から下ろしなさい!」
全身の蒸気を噴き上げながら、蒸気王の腕が六尺棒と共に天高く掲げられた!
「やりました! ウルトラ上手にドラゴン肉が焼けましたよ!」
才堂の巧みな観察眼や考察力が、最高の火の通りでのドラゴン肉の提供を実現させたのだ。
「どうぞ。美味しくできましたよ」
「ありがとうございます~! あんむ……んんー♪ 外は香ばしくてパリパリ、中は肉の旨味でもっちりジューシー♪ これはもはや、職人の域に達してるわぁ♪」
目を輝かせながらドラゴン肉を貪るお姉さん。
その姿は全然ゆるふわではない。むしろ虎か何かを彷彿させる獰猛さだ。
こうして才堂もまた、魔法の虹釜を無事に入手することに成功した。
残るはシノギと月宮だ。
「お嬢様、おまたせしました。此方、ドラゴン手羽先の塩唐揚げでございます」
「あーっ、これ、さっきから気になってたのよねぇ~? 揚げてる時の油裂音といい香りで、お姉さんは待ち遠しかったのよぉ?」
「ちょっと待ってください。美味しい料理も必要でしょうが、量も必要でしょう」
ドンッとお姉さんの目の前に現れたのは、牛・豚・鶏・竜の肉の豪華フルコース!
「海賊ですから、宴会慣れしています。料理の腕は確かです」
くいっと後ろを指し示すシノギ。
そこにはユーベルコード『飽和埋葬(リッチ・システム)』で呼び出したコック係の海賊の死霊たち73体が、皆総じて腕を組んで勢揃いしていた。
よく有名料理店のポスターやテレビの取材で、何故かこぞって料理人は腕を組みがちなのだが、彼らも例外なく腕を組んでいた。
「ナミルさんが量産してくれた食材を余すことなく使用しました。その塩唐揚げとの相性も抜群でしょう」
棒々鶏に酢豚、ローストビーフにドラゴン刺し身にドラゴン照り煮!
その他etc……!
「私の記憶が確かならば、シノギちゃんのコックたちに作れないものはありませんので。惜しげもなく、リッチにいかせていただきました」
「ふたりとも、ありがとう~っ! それじゃ、いただきまぁ~す♪」
まずはドラゴン手羽先の塩唐揚げを大胆に一口でがぶり!
「ほわぁ~! お肉にいいお味が染みてるわぁ~! あんな短時間にどうやって?」
「シノギさんがユーベルコードで肉を叩いてくれましたので」
「コック達がカットラスで思う存分お肉をぶっ刺してくれたあと、私が375回拳で殴りました」
シノギ、勝利のサムズアップ。
「こっちは……うんうん♪ 棒々鶏も酢豚もさっぱりしてて、塩唐揚げの美味しさを引き立ててくれるわねぇ! ローストビーフは、また違ったお肉の旨味が味わえて、唐揚げとの往復が止まらないわぁ! あと、ドラゴン肉のお刺身って凄い歯ごたえがあるのねぇ~! 照り煮もホロホロっと身が崩れて、これは新境地だわぁ~!」
大満足のお姉さんに、2人は酒をどんどん注いでゆく。
「さぁさぁ、お嬢様? お酒も樽で準備しましたよ。今度はガツンとしたにんにく醤油ベースのドラゴン唐揚げをご用意致しましょう」
「バッカニアミードはいかがです? 甘い口触りと馥郁たる香りが自慢の蜂蜜酒です。ささ、グイッと一杯!」
「ふふっ、ありがとねぇ~♪」
アルコールが回ってふにゃふにゃ感が増すお姉さん。
「はーいっ、海賊さんにもこれあげるぅ~♪」
「ちょ……割と雑に寄越すんですね!?」
ぽいっと投げ捨てるように渡された虹釜をシノギはコックたちと一緒にキャッチ!
「メイドちゃんも~、そのままお釜をあげちゃうわぁ~♪」
「ありがとうございます、お嬢様。光栄に極みです」
にんにく醤油ベースのドラゴン唐揚げを調理中の月宮へ、シノギが歩み寄る。
「……で、いつ仕掛けるのです?」
月宮は眉尻を下げながら答えた。
「……目的は果たされましたし、あれは放置しても害悪じゃなさそうです。というか、防衛システムとして、あれはバグってるのではないでしょうか……?」
「確かに、餌付けをすれば解除できる防衛システムって欠陥そのものですよね……」
設定したヴァルギリオスのセンスを疑う月宮とシノギであった。
大成功
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月灘・うる
ごはんとおたからを交換ってことでいいのかな?
それならうーちゃん、全力でお料理しちゃうよ。
こうみえてもうーちゃん海の子だから、
海鮮には自信あるんだもんね。珊瑚だし!
相手は『魔法の虹釜』なんだよね。
お釜といったらやっぱり白米。白米といったらお刺身!
ということで、うーちゃんはおにぎりとお刺身で勝負するよ!
白身のお魚を昆布でしめた『昆布締め』と、
赤身のお魚をお醤油につけた『漬け』なら、
お塩で握ったシンプルな白米のおにぎりとぴったりだと思うんだ!
つけ合わせは、トサカノリとワカメの和え物にしよう。
たっくさん用意して、お姉さんにたーっぷり食べてもらいたいな。
お代はもちろん……財宝でお願いします!
鹿村・トーゴ
料理かー
オヤジ殿が得意だな
1個2個お得意料理でも聞いときゃ良かった
醤油かけごはんは美味いけど呆気ないかー
(相棒のユキエがチンゲンサイ、とぼそり)
あ。UDCで覚えた青梗菜あんかけちゃーはんてのはどう?
溶き卵絡ました冷や飯をごま油とネギと鰹節と醤油、塩こしょうで炒めてー、と
あんは
お湯にがらスープ、薄口醤油、刻み生姜と生姜汁を入れて温めたらざく切り青梗菜と厚めのベーコンも
火を止めて薄めた片栗粉でとろみつけるだろ、仕上げに卵白を流し入れて…勿体ないから残りの卵黄も丸のまま投入な。卵白が固まったらこれをチャーハンにかけて完成
火傷すんなよ?
うん、しかしこの釜?使い勝手いーねェ
一応UCは準備しとく
アドリブ可
マリア・フォルトゥナーテ
アドリブ・連携歓迎
「これでもバーの経営者!味を欲するなら、敵でもお客様!是非とも満足してもらわなきゃ!そして、海賊と言ったらやっぱり海賊肉だよね!」
フィーラの目の前で調理開始!
脂の乗った牛と豚の挽肉に香辛料やハーブを練り込み、それを太めの骨の周りに纏わせた後、贅沢な厚さで切り落とした豚バラ肉を巻き付けてじっくりと火で炙っていきます。
肉をぐるぐる回して満遍なく焼きながら、途中でガーリックソースやレモン果汁、ワインを垂らして肉に味を染み込ませ、その香りでまず楽しんでもらいます!
そして、肉の旨味と脂をたっぷり閉じ込めた海賊肉に、ネギ、ブラックペッパーをふりかけ、赤のワインと共にフィーラに提供します。
秋山・軍犬
●使用食材(料理)参照シナリオ
帝竜戦役⑮〜パワーアップ・イベント
お料理バトルか~
思えば今回の戦争では屋台出すか
飯作るかしかしてないっすね…いやマジで
という訳で、戦場に現れる蟹料理屋台!
出される料理は
生命の書片よりなお熟成された不死蟹(成体)の甲羅の
胃や体全体…いや魂にすら染み渡る芳醇な香りの出汁と
調理してなお力強い生命力を感じさせる
ぷりっぷりの不死蟹の肉を使用した不死蟹鍋!
そして〆の、へしつぶの種籾を使用した群竜蟹雑炊!
ちなみに〆には、ちゃんぽん麺とかもあるぞ!
理由? 自分が色々〆食いたいから
そんな訳で自分は先に鍋で一杯やりながら待ってるから
あ~、良い釜が手に入ったら蟹釜飯とかも良いっすねーと
インディゴ・クロワッサン
「僕もお腹空いちゃったし、何か作ろーっと」
一旦UC:無限収納 で扉を出してダイニングキッチンに移動したら、【早着替え】で外套と手袋を外して【料理】をー…おや?
「あれ、入ってきちゃった?」
ま、いっか。お茶請けのクッキー多めに出しとこ
「はい紅茶。後はお好みで夜糖蜜入れてねー」
お肉入れてる業務用の冷蔵庫の中身を確認して…
「んー…牛豚鶏羊全部乗せの贅沢焼きで良いかな」
鶏は中にピラフを入れて丸々1羽をオーブンに突っ込んで、羊と豚は骨付きのスペアリブにして…
「牛は分厚いステーキで焼き上げて…っと」
はい、完成ー!
「で、お味は如何かな?」
あ、フライパン浸けておかなきゃ…洗うの面倒になっちゃう…
「ごはんとおたからを交換ってことでいいのかな? それならうーちゃん、全力でお料理しちゃうよ」
他の猟兵達の飯テロを目の当たりにした青珊瑚の深海人こと月灘・うる(salvage of a treasure・f26690)。
「こうみえてもうーちゃん海の子だから、海鮮には自信あるんだもんね。珊瑚だし!」
「わぁ! 今度はお魚ですかぁ~?」
機体に胸が膨らみに、目が輝くお姉さん。
月灘は自信たっぷりに自分の胸元をどんっと叩いてみせた。
「うーちゃんにまかせて!」
「では、私はお酒が進む品々をご提供しましょう!」
マリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)は修道服に身を包む美女だ。だが敬虔な容姿からは信じられないほどの酒好きである。それもそのはず、彼女は海賊でもあるからだ。
「これでもバーの経営者! 味を欲するなら、敵でもお客様! 是非とも満足してもらわなきゃ! そして、海賊と言ったらやっぱり海賊肉だよね!」
「海賊肉、ですかぁ~?」
お姉さんは聞き慣れない単語に首を傾げた。
マリアは意味ありげに含み笑い。
「ふふふ! まぁ期待していて下さい! あっと言わせてみせます!」
マリアもまた自信満々で持ち場へ付いた。
一方、料理に不安を覚える猟兵がいた。
「料理かー。オヤジ殿が得意だな。1個や2個くらい、得意料理でも聞いときゃ良かった」
鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は頭を抱えてしまっていた。
あまり自身で自炊をしたことがないのか、思い付く料理はと言えば……。
「醤油かけごはんは美味いけど呆気ないかー」
「それは料理とは言いませ~ん!」
お姉さんが胸の前で腕をクロスして駄目出ししてみせた。
「だよなー。じゃあ卵がけ醤油ごはんは……」
「TKGは美味しいですけど、お姉さんはもっと凝ったものが食べたいで~す!」
再び駄目出しを喰らってしまう。
このままでは、鹿村は物理的に食べられてしまう!
「あーもう、どうすりゃいいんだ? って、何だ? このすげぇいい匂いは……」
くんくん、と香ばしい匂いが鹿村のみならず、お姉さんの鼻腔をくすぐる。
臭いのもとを辿った先にあったのは、特設の屋台であった。
「へい、らっしゃい!」
秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)がグツグツ煮えたぎる壁の前で腕を組んで仁王立ちしていた。
こだわる料理人は皆揃って腕を組んで仁王立ちをしがち説。
「ここは、蟹料理? って、蟹は何処から仕入れてきたんだ?」
鹿村の疑問に、秋山は力強く答えた。
「不死蟹海岸で入手した不死蟹っす!」
「は? あの、振動や音なんかで暴れだすあの蟹かよ、これ?」
鹿村はその海岸へは赴いてはいないが、帝竜戦役に携わった猟兵であるなら、各戦場の情報くらいは目を通している。
ただでさえ、あそこの戦場は蟹を刺激せずにオブリビオンを撃破することに注力していたはずだ。
それをまともに仕留めにいくという狂行に、鹿村は言葉を失ってしまう。
だが秋山はつぶらな瞳をギラリと輝かせて言い放った。
「スバリ、不死蟹の寝込みを襲ったっす! 奴らも生物っすからね!」
それはまさに灯台下暗し、コペルニクス的発想の転換!
刺激して暴れだす生物だからといって、睡眠が不要なわけではない。
だったら、熟睡中の蟹を一撃必殺で仕留め、そのままフードファイターの怪力で担いで逃走すればいい。
それを有言実行で秋山はやってのけたのだ。
「ともかく、戦場に現れる蟹料理屋台をご堪能あれっす! ……にしても、お料理バトルか~。思えば今回の戦争では屋台出すか、飯作るかしかしてないっすね……いやマジで」
今までだったら美味い料理を食べてから敵をぶん殴ってたりしていたので、今回は本当に料理専門猟兵として活動している秋山だ。
「さて、不死蟹の甲羅である『生命の書片』からいい出汁が出るっす! 完成を楽しみにしてほしいっすよ!」
「すげーなぁ……。俺が腹が減ってくるんだが」
鹿村はゴクリと唾を飲みこんだ。
「うーん、俺にも簡単にできる料理ってなんだろうな?」
「チャーハンとかどうっすか?」
秋山は素早くフライパンを振るって米を炒っていた。
あっという間に蟹チャーハンの完成だ。
「腹が減っては戦が出来ないっすよ! まずはこれを食べるっす!」
「おー、助かる。腹が減って思考も回らねェや」
差し出された蟹チャーハンを食べた鹿村、その旨さに全身を痙攣させている!
「なんだこの美味さは……!」
まさに晴天の霹靂であった。
「俺もこれ作ろうかねェ……? でもここまでの味が出せるか不安だが……」
鹿村が再び思考の迷路に迷い込もうとしたその時、頭上に白い鸚鵡の相棒こと『黄芭旦のユキエ』が降り立った。
「おいユキエ? 俺の頭に止まるなよ……」
「チンゲンサイ……チンゲンサイ……!」
「ん? ああ、青梗菜……そうか、それがあったなァ」
ユキエの助言を得た鹿村は、急いで自分の持ち場へと戻ってゆく。
途中で振り返り、秋山に手を振る。
「ごちそうさんー! 俺も“ちゃーはん”作ることにしたよ」
「健闘を祈るっす!」
出汁を取る秋山は鍋の前から動かない。
だが、その場にい続けた彼だからこそ、ひどく違和感を覚えた。
「そう言えば、あのお姉さんは何処行ったっすか?」
あの巨体が、忽然と消えていたのだ。
その頃、お姉さんは、インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)がユーベルコードで顕現させた茨が纏わりついた扉に吸い込まれていた。
「あれ、入ってきちゃった?」
お姉さんがユーベルコード内の屋敷を模した物品保管庫に足を踏み入れてきた事に気が付いたインディゴ。
ダイニングキッチンから玄関へ出てくると、その大きな巨体を見上げていた。
「まだ料理はできないから、ここで待っててね?」
「あなたは何を作ってるんですかー?」
お姉さんの問いに、インディゴは肩を竦めてしまう。
「いやー、献立はこれから考えようかと。冷蔵庫の中身次第だからね? あ、そうだ」
インディゴはそそくさとキッチンに戻ると、しばらくして大容量のボウルの中に何かを注いで持ってきた。
「はい紅茶。後はお好みで夜糖蜜入れてねー」
差し出された小瓶の中には、アルダワダンジョンのオブリビオンから譲り受けた甘い蜜が詰まっていた。
そこにお茶菓子を各種揃えれば、ちょっとしたお茶会の始まりである。
「ふぅ~、落ち着きますねぇ♪」
「それじゃあ、料理ができるまでもう少し待ってて。僕もお腹空いちゃったし、何か自分用にも作ろーっと」
インディゴはキッチンへ戻り、冷蔵庫の扉を開けて中を検分。
業務用の肉専用冷蔵庫の在庫を確認した彼は、ある結論にたどり着いた。
「んー……牛豚鶏羊、全部乗せの贅沢焼きで良いかな」
早速、調理開始。
「まずは鶏の丸焼きからだね。中にピラフを入れて、水を薄く貼ったバットに入れた鶏一羽丸々をオーブンに突っ込んで……あとは焼き加減を見ながら、肉から出てきた油を鶏に掛けつつ焼き上げてゆこう」
こうすることで、鶏の皮がムラなくパリッと焼き上がり、鶏肉全体の乾燥も防げるのだ。バットに水を薄く張るのも乾燥を防ぎ、スチームで中まで蒸し焼きにするためだ。これを怠ると、肉が乾燥して固くなり、食感もパサパサになってしまう。
「続いて、羊と豚は骨付きのスペアリブ。食べやすい大きさにカットして、ハーブで下味と一緒に揉み込んで、臭みを取ってゆくよ」
特に羊はその独特の風味が苦手だという場合も多い。香辛料を活用することでパンチの効いた味付けになる上に、独特の臭みを和らげてくれるのだ。
「最後に、牛は分厚いステーキで焼き上げて……っと」
それらをひとつのプレートに全部盛り合わせたら……!
「はい、完成ー!」
早速、お姉さんのところへワンプレートを運んでゆく。
インディゴ自身も出来上がった皿を玄関前まで持ち込み、お姉さんと一緒に実食タイムを迎える。
「「いただきまぁ~す!」」
互いに肉を頬張る。
インディゴは会心の出来に心の中で歓喜の声を上げていた。
(これは自己ベストの出来だね!)
チラリ、とインディゴはお姉さんの顔を見遣る。
お姉さんは一心不乱にラムチョップの骨をしゃぶっていた。
「で、お味は如何かな?」
「大勝利~♪ もう優勝ですっ!」
「え、僕、優勝しちゃった?」
「もちろん~♪ はい、トロフィー代わりに私をあげちゃいま~す!」
差し出された魔法の虹釜をインディゴは受け取り、これで彼は任務完了だ。
「それじゃ、他の子達のお料理も食べるので~、ばいば~い♪」
お姉さんは最後まで自由に振る舞って外の世界へ飛び出していった。
「おー、これが魔法の虹釜かー、っていけない、フライパン浸けておかなきゃ……洗うの面倒になっちゃう……」
そそくさとインディゴは後片付けに戻ってゆくのだった。
財宝の価値よりも洗い物の面倒臭さが勝ってしまった。
竜の宝物庫に戻ってきたお姉さんが見たのは、ずらりと並ぶ料理の数々だった。
「別の世界……UDCあーすってところで覚えた『青梗菜の餡かけちゃーはん』ってどう?」
できたてホカホカのチャーハンにかかる白く半透明の餡から生姜の匂いが立ち込め、お姉さんの食欲をそそる。
「溶き卵絡めた冷や飯を、ごま油とネギと鰹節と醤油、塩こしょうで炒めてー、と、餡はお湯にがらスープ、薄口醤油、刻み生姜と生姜汁を入れて作ってみた。あとはざく切り青梗菜と厚めのベーコンを餡と絡めてみたんだが、どうかねェ?」
「美味しそうです~! 餡にこだわりを感じちゃいますねぇ?」
「お、分かるか? 火を止めて薄めた片栗粉で餡にとろみつけるだろ、仕上げに卵白を流し入れて……勿体ないから残りの卵黄も丸のまま投入な。卵白が固まったらこれをチャーハンにかけて完成だ。熱いから口の中、火傷すんなよ?」
「大丈夫でぇ~す! いただきまぁ~す! あむっ♪」
お姉さんの図体には小さすぎる蓮華を摘みながら、ちまちまと味わうように餡かけチャーハンを口に運んでゆく。
その顔はみるみるうちに綻び、喜色で満ちていった。
「美味しいですねぇ~! 餡に入れた刻み生姜と青梗菜の食感が楽しいですし、チャーハンのお米の炒め具合も完璧ですぅ~! それに、餡のお味がお米の旨味を更に後押しして、これは無限に食べられちゃいます~♪」
もう我慢できないとばかりに、最後は皿ごとペロリと一気に舐め取るお姉さん。
少々行儀が悪いが、それくらいに夢中になる美味さだったのだろう。
「次は自分っすよ! 群竜大陸蟹料理フルコースっす!」
どどんっと屋台から運ばれてきたのは、巨大な鍋だった。
「生命の書片よりなお熟成された成体の不死蟹の甲羅の、胃や体全体……いや魂にすら染み渡る芳醇な香りの出汁と調理してなお力強い生命力を感じさせる、ぷりっぷりの不死蟹の肉を使用した、これぞ絶品の不死蟹鍋っす!」
「お鍋っ! こういうのも欲しかったのよねぇ~!」
さっそく、お姉さんは酒樽を器代わりにして、そこらに刺さっていた槍の柄2本を箸代わりにして不死蟹鍋をすすり始めた。
「はぁ……これは幸せのお鍋ですぅ~♪ 濃厚な不死蟹のお出汁と、旨味が詰まった蟹の身っ! 魂にすら染み渡るのは、本当ですねぇ~♪」
「まだまだここからっすよ! 鍋が終わったら今度は雑炊っす!」
秋山はへしつぶの種籾を精米した超高カロリー白米を蟹鍋に投入!
一粒で10日分のエネルギーを賄える稀少な種籾を、ふんだんに使用したカロリーおばけ雑炊がここに爆誕する!
「群竜蟹雑炊、完成っす! 〆にぴったりっすよ!」
「いただきまぁ~す! あふあふっ! う~んっ! このお米、噛めば噛むほどお米の甘さが感じられますねぇ~! お出汁を吸っても負けないお米の甘さに、お姉さん、びっくりです!」
その後も一心不乱に食べ続けるお姉さん。
その傍らで、なぜか秋山は持ち込んだ缶ビールをカシュッと開けて自分も鍋をかっくらっていた。
「他にも〆はちゃんぽんもあるっす。理由は自分が色々〆食いたいからっす! というわけで、ちゃんぽんが欲しい場合は声かけてほしいっす。自分は先に鍋で一杯やりながら待ってるっすから」
完全にただのオッサンキマイラに成り果てた秋山、完全に独り宴会を開始してしまった。
「それでは! 真打登場ですね!!」
マリアはお姉さんに調理の段階から見てほしいということで、目の前で作業を始めてゆく。
「まずは! この霜降り赤身A5ランクの高級和牛と北欧豊かな自然の中で育ったブランド豚を、贅沢にも合挽き肉にします! そして、そこへ私が調合した秘密のスパイス調味料をふりかけ、よく揉み込んで味を馴染ませます!」
ビニール袋に入れた合い挽き肉とハーブ調味料をよく手捏ねしてゆくマリア。
と、ここで取り出したるは、さきほど合いびき肉を作る過程で肉を削ぎ落とした牛骨。
「ここに、先程の合い挽き肉を骨の周りに纏わせた後、贅沢な厚さで切り落とした豚バラ肉を巻き付けてじっくりと火で炙っていきますよ」
牛骨に肉が付けられ、豚バラ肉で巻かれた形は、食いしん坊ならば誰もが憧れた、あの形の肉の塊の姿であった。
「肉をぐるぐる回して満遍なく焼きながら、途中でガーリックソースやレモン果汁、ワインを垂らして肉に味を染み込ませていきます。ほら、この香り! たまりませんよね!?」
「匂いだけでお腹が空いちゃいますぅ~!」
お姉さんに空腹という精神ダメージを与えてゆく作戦は、見事にハマった。
焼き上がった肉塊を更に盛るマリアは、最後のもうひと手間掛ける。
「この肉の旨味と脂をたっぷり閉じ込めた海賊肉に、ネギ、ブラックペッパーをふりかけ、赤のワインと共にご提供します! さあ、召し上がれ!!」
「もう我慢できませぇ~ん♪」
お姉さん、空腹度MAXでお肉にかぶりつく!
「ほわぁぁ~っ!!」
あまりの美味しさに語彙力が飛んでしまったお姉さん。
そのお腹から、虹釜が3つゴロゴロとこぼれ落ちてゆく。
「3人全員、同時優勝です♪ 私をどうか大切に使ってね♪」
虹釜を受け取った3人は、これから何を作るか談義で盛り上がる。
「うん、しかしこの釜? 使い勝手良さそうだねェ。やっぱり米を炊くのが一番か?」
「あ~、良い釜が手に入ったら蟹釜飯とかも良いっすねー」
「早速、私のバーで活用しましょう!」
3人各々が宴会モードに入ったその時、ひとりの少女が包丁を持って声を上げた。
「真のメインディッシュはここからだよ! うーちゃんの海鮮料理をたべてね!」
ここで月灘・うるの極上海鮮飯がようやく完成!
「お姉さんはまだまだ食べられますよ~っ! お肉ばかりだったし~、期待しちゃいます!」
「うーちゃん、頑張ったよ! お姉さんに食べてもらいたいのは、これとこれ!」
巨大なお姉さん用に大皿へ盛り付けられたのは、おにぎりとお刺身といったシンプルなものだった。
「おねーさんはは『魔法の虹釜』なんだよね。お釜といったらやっぱり白米。白米といったらお刺身! ということで、うーちゃんはおにぎりとお刺身で勝負するよ!」
お皿に乗ったおにぎりは、海苔を巻いていない塩おむすび。ごまかしの効かないそれは、月灘の自信の顕れが伺える。
更に、お刺身にはひと手間加えられていた。
「白身のお魚を昆布でしめた『昆布締め』と、赤身のお魚をお醤油につけた『漬け』なら、お塩で握ったシンプルな白米のおにぎりとぴったりだと思うんだ!」
「しっかり食べ合わせまで考えているなんて、偉いわぁ~!」
シンプルながらも練り込まれた味の戦略に、お姉さんは拍手で月灘を褒め称えた。
だが、まだこれだけではなかった。
「つけ合わせは、トサカノリとワカメの和え物! たっくさん用意して、お姉さんにたーっぷり食べてもらいたいから、あえてシンプルに、でも飽きない味わいをチョイスしたよ! お肉ばかりだと重たいだろうし、こういう味も恋しいかなって?」
「お姉さんの事を気遣ってくれる優しさに、百万点あげちゃう……っ!」
感動して目頭を熱くするお姉さん。
そのまま、塩おむすびを掴んで口に運んだ。
……お姉さんの頬を、涙が一筋伝った。
「なんて優しい味なんでしょう……。お米本来の美味しさが最大限に引き出されているわ。なにより、オブリビオンの私に、猟兵であるあなたがここまで心を尽くしてくれたこと、お姉さんは全身全霊で感謝するわ……!」
お刺身にも箸を伸ばすお姉さん。
「昆布の締め加減と、お醤油の漬け具合が絶妙……まって、どこで修行してきたのかしら? そんな小さい子なのに、将来が末恐ろしいわ……! お姉さん、食べすぎて太っちゃいそう……!」
「あのね、お姉さん? お代はもちろん……財宝でお願いします!」
「もちろんよ~♪」
お腹から飛び出した虹釜をお姉さんは掴むと、優しく月灘へ差し出してくれた。
「私を使って、これからも美味しい塩おむすび、作ってね?」
「うん! うーちゃん、お姉さんでいっぱい、おむすび作るね!」
巨大なお姉さんと青珊瑚の深海人の少女が小指同志をくっつけ、約束を取り交わした。
こうして、ここでも戦闘は発生せず、猟兵達は平和に財宝を持ち出すことに成功するのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
私もかなり食べる方ですし、少し共感出来る気がしますぅ。
何とか頑張ってみましょう。
そういうことでしたら、比較的珍しい品の方が良いですかねぇ?
少し前に「他の世界(=サクラミラージュ)」で流行っておりました「揚げいも飴」をお持ちしましょう。
あまりの美味しさに、買えない方が出る程の行列が出来たり、食べたさの余りオブリビオン化して復活される方が現れた程の品ですよぉ。
此方は「実際に購入してきた品」と「それを元に再現した品」、「『蜂蜜入』等のアレンジした品」になりますぅ。
宜しければ、それぞれご賞味下さいませ。
[料理]と万一の交戦の際は【霊結】使用、集中力や対応力を高めておきますねぇ。
ナイ・デス
せっかくの、素晴らしい器物なのに
100年大事に使われたり、せず。ここで死蔵、にゃんて
可哀想、ですね……(ヤドリガミ感性)
回収できたら、大事にしてくれる人、探しましょう
しかし、料理……ですか
ソラとは交代で、料理している、ですが
戦争中。料理道具を持ってくる余裕は、ありませんでした
戦って、倒すしか、かにゃあ
……食べます?(手を差し出す)
もちろん冗談。本当に食べられても
【激痛耐性、継戦能力】再生するので、驚きはしても大丈夫、ですが
食べ物……食べ物?そう、いえば
『蜜ぷに召喚』甘くて、美味しい。いくらでも増えて、食べたら疲れがとれる『蜜ぷに』さんは
どうでしょう?
戦闘?
UC『いつか壊れるその日まで』
で、倒す
フィロメーラ・アステール
「それじゃ宴会だー!」
宴会なら多少暴れても余興のうち!
楽しい雰囲気になれば料理だって美味しくなる!
でも、あたしは難しい料理できないし?
ミニサイズじゃ巨大なお姉さんは満足できないかも!
かつて入手した『スターフルーツのお寿司』をご馳走する!
さくさく不思議な食感と、あっさりめの味に乗せて、鮮やかな海の幸、芳しい山の幸、そして果物を合わせた数々のお寿司の詰め合わせ!
ごはんとしてもデザートとしてもいける!
不思議な力で超増えるので量もある!
さらに【運命導く希望の星】発動!
追加でフルーツ召喚!
フルーツには色々なラッキーの要素がある!
フルーツソースを作って添えると彩り豊かになり、色々な味を旅して楽しめるぞー!
フィーナ・シェフィールド
桜下・鈴鹿(f26972)さんとご一緒します。
サクラミラージュのお料理で、魔法の虹釜さんの胃袋を満足させてみせます!
さて、何を作りましょう…?
鈴鹿さんのサポートをしつつ、食材を捌いて調理を進めていきます。
帝都のパーラー御用達のお店で購入したリンゴ、梨、苺、メロン、さくらんぼ…色々な果物を使って、綺麗で美味しそうなタルトを作りましょう♪
クリームも果物の良さをひき立てる、ほどよい甘さで。
仕上げに溶かした砂糖を糸状にして飾り付け。
さぁ、おあがりください!
鈴鹿さんと二人で揃って、歌と共にお料理を虹釜さんにお出ししますね。
無事に魔法の釜を手に入れたら、お宿に持って帰って有効活用させていただきましょう♪
桜下・鈴鹿
フィーナさん(f22932)さんと一緒に参加致します。
仲良くお料理をして、楽しく食べて頂けたらな、と♪
料理は、タルトなど如何でしょう。果物を盛り合わせれば見栄えも綺麗かと♪
二人で生地を作ったり、果物を切ったり。
生地を綺麗に焼き上げて、綺麗にクリームを絞って♪回りに粉糖を掛けると綺麗でしょうか♪
口の中を幸せいっぱいにする果物を盛り付けて、
自分でも頬っぺたが落ちちゃいそうなくらいに美味しそうなものに仕上げて♪
フィーナさんと一緒に、声を揃えて虹釜さんの前へ♪
【花妖】を使って周りに綺麗な桜を咲かせて、
桜の奏でる幻の音楽と共に、華やかな気分で召し上がって頂きましょうv
今までの猟兵の猛攻(りょうり)に、お姉さんは一方的にやり込められていた。
「そろそろ、デザートが恋しいですねぇ~?」
甘味を欲するお姉さんのリクエストに、待ってましたと飛び出す猟兵達がいた。
「それじゃ宴会だー!」
フェアリーのフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)が元気よく宣言する。
「宴会なら多少暴れても余興のうち! 楽しい雰囲気になれば料理だって美味しくなる!」
「それに、私もかなり食べる方ですし、少し共感出来る気がしますぅ。何とか頑張ってみましょうか~」
自身も大の甘党である夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、お姉さんの言動に理解を示し、その欲求を満たそうと意欲を燃やす。
更に、桜を思わせる2人の女性コンビが得意気に語る。
「サクラミラージュのお料理で、魔法の虹釜さんの胃袋を満足させてみせます!」
フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)はサクラミラージュ出身のオラトリオだ。歌手として様々な世界を渡り歩きながら猟兵活動を行うフィーナは、桜が咲き誇る森の宿の女将を見遣る。
「そうですね。仲良くお料理をして、楽しく食べて頂けたらな、と♪」
桜下・鈴鹿(花びら深く隠したひみつ・f26972)はニコニコと微笑みを崩さぬまま、巫女服姿ではなく割烹着を着込んでの参戦だ。
そんな中、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は目の前のオブリビオンに対して、様々な想いが浮かび上がっては消えていた。
(せっかくの、素晴らしい器物なのに。100年大事に使われたり、せず。ここで死蔵、にゃんて。それはとっても、可哀想、ですね……)
ヤドリガミであるナイには、調理器具でありながら芸術品かつ奇跡の魔道具にまで至った虹釜がこの場所にずっと野ざらしになっていたことに、悲しみを覚えていた。
だから、ナイは思わずお姉さんに尋ねた。
「いままで、寂しかった、です?」
お姉さんは目を伏せ、ゆっくりと首を縦に振った。
「とっても、寂しかったなぁ……お腹は空くし、だぁれも私を必要としてくれないのかなぁって。だから、今まで寝てたの」
「それは……」
器物にとっては最悪の結末だ。
忘れ去られ、放置され、朽ちてゆくなんて。
「そんなの、悲しい、です……」
「……同情してくれて、ありがとう」
「約束、するです。回収できたら、大事にしてくれる人、探しましょう」
ナイの真剣な眼差しに、お姉さんは再び笑顔を取り戻す。
「ええ。お願いね?」
こうして、残る5名の猟兵は、お姉さんを満足させるためのデザート製作に取り組み始めた。
だが、真っ先に行き詰まったのはナイだった。
「しかし、料理……ですか」
夕陽のような髪の勇者志望の竜の娘――ナイの大親友と共同生活している平時は、交代で料理番を行っていたのだが。
「今は戦争中。料理道具を持ってくる余裕は、ありませんでした」
頭を抱え込むナイ。
他の猟兵は事前に用意していたようで、既に調理に入っている猟兵達もいる。
「このままでは、私、食べられるです? 戦って、倒すしか、かにゃあ」
料理ができない場合は捕食される……ブリーフィングでの言葉が脳裏に過ぎる。
「……それで、いいのです?」
ナイはおもむろにお姉さんへ右手を差し出した。
「あの、……食べます?」
「え?」
お姉さんはナイの右手を凝視。
ナイの顔を二度見した。
「えーっと、甘いのかしらぁ?」
「普通に、お肉の味だと思う、です?」
「うーん……?」
お姉さんは困惑していた。
「猟兵のみんなが私に、お料理を振る舞ってこなかったら、貴方を何の躊躇なく食べちゃってたかもだけど……お姉さんはグルメだから~」
「もう人肉は食べたくない、かにゃあ?」
「そうねぇ~? 今はお肉じゃなくてぇ、あま~いお菓子が食べたいわぁ♪」
「そう、です?」
ナイは右手を引っ込めた。
(ちょっと安心した、です。食べられても、痛みを耐えれば再生します、けど)
ナイの仮初の肉体は瞬時に自己再生・自己修復される。
だから帝竜相手にも捨て身で望めるのが長所なのだ。
だが、自分の肉体の味を尋ねられたのは初めての経験。
ナイも内心では困惑していた。
(私の肉体の、味とは……? いや、それよりも、料理をどうにかしないとです……)
ナイは仕方がなく、他の猟兵のスイーツを観察することにした。
フィロメーラはフェアリーだ。
人間の1/6サイズで、食べる量も人間の1/6だ。
「しかもあたしは難しい料理できないし? ミニサイズじゃ巨大なお姉さんは満足できないかも!?」
あれ、これピンチじゃないか?
だがフィロメーラには秘策があった。
「かつて入手した『スターフルーツのお寿司』をお姉さんにご馳走するよ!」
以前、不思議な経緯で入手した摩訶不思議な巻き寿司。
お姉さんに差し出すと、途端に倍々に増殖し始めた!
「さくさく不思議な食感と、あっさりめの味に乗せて、鮮やかな海の幸、芳しい山の幸、そして果物を合わせた数々のお寿司の詰め合わせ! ごはんとしてもデザートとしてもいける! 不思議な力で超増えるので量もある! というか早く食べて食べて! 放置すると2乗で際限なく増えて、この場所がお寿司で埋もれちゃうから!」
とんでもない自己増殖をするお寿司のようだ。
お姉さんは慌てて、目の前で増えてゆくお寿司を次から次へと頬張ってゆく。
「うん! うん! こんなお寿司、食べたことないわぁ~♪ でも本当にどんどん増えるのねぇ?」
「まだまだいくよ! 出ろー! 美味しいフルーツ盛り合わせー!」
ユーベルコード『運命導く希望の星(フォーチュンマスタリー)』で美味しいフルーツを山盛りで召喚!
「巨人のお姉さんなら、これくらいの量、余裕だよね?」
「わぁ~! 全部食べちゃいますからね~っ?」
無限増殖するお寿司とフルーツに夢中になるお姉さん。
そこへフィロメーラが悪魔的助言を行う。
「フルーツには色々なラッキーの要素がある! フルーツソースを作って添えると彩り豊かになり、色々な味を旅して楽しめるぞー!」
「そ、その手がありましたっ!」
早速、お姉さんは果実を潰して果汁をお寿司にかけて食べ始めた。
「このお寿司は完全にスイーツですぅ♪ はい、これ、御礼です♪」
「やったー! ありがとう、お姉さん!」
差し出された虹釜にフィロメーラは頬摺りして喜んだ。
夢ヶ枝はグリモア猟兵に頼んで、事前にサクラミラージュへ転送してもらって食料を調達していた。
「おまたせしましたぁ。きっとお気に召すと思いますよ?」
夢ヶ枝が差し出したのは『揚げいも飴』だ。
「あまりの美味しさに、買えない方が出る程の行列が出来たり、食べたさの余りオブリビオン化して復活される方が現れた程の品ですよぉ?」
「そんな凄い食べ物なのぉ
……!?」
お姉さん驚愕! 紙袋に包まれたそれをしげしげと見詰めていた。
「此方は『実際に現地で購入してきた品』と『それを元に私が再現した品』、そしてこれが『蜂蜜入等のアレンジ品』になりますぅ。宜しければ、それぞれご賞味下さいませ」
「い、いただきます……!」
紙袋をめくり、飴が絡まった揚げ芋をひとつ口の中に放り込んだ。
「ほわぁぁ~!? 油の香ばしさに、飴の甘さが調和して、お芋のホクホクした甘さを引き立てているのねぇ~! 再現品も良く出来てるし、アレンジしたものも絶品~♪」
「気に入ってくださったようで、何よりですぅ」
夢ヶ枝は他にもミルクセーキを持ち込み、口の中が水分取られがちな揚げ芋飴のお供として差し出した。
「栄養満点でしかもいくら飲んでも飽きのこない甘さ。揚げ芋飴のお供に最適ですよ?」
「この組み合わせを考えた人は天才だわぁ……!」
お姉さんは異世界の食べ物に衝撃を受けていた。
(本来ならば、異世界のことをオブリビオンに知らせるのは良くないのでしょうけど……)
ただでさえ『持ち帰る』云々うるさい妙なオブリビオン達が出て来ているのだし、警戒すべきだと夢ヶ枝は考える。
しかし、目の前のお姉さんはただの食い意地の張った巨大なだけの精神年齢5才児だった。
その証拠に、お姉さんは夢ヶ枝へ虹釜を何の疑いもなく差し出してきた。
「はい♪ 私をもっと美味しい食べ物のある場所へ連れて行ってね♪」
「わかりましたぁ。色々ご案内しましょう~」
まぁ、お姉さんなら世界を渡ったとしても無害のはずだ、と夢ヶ枝はなんとなく確信した。
そして、サクラミラージュの美女コンビは、ガチでスイーツを作りに来ていた。
「さて、何を作りましょう……?」
フィーナの言葉に、鈴鹿は微笑みながら返した。
「料理は、タルトなど如何でしょう。果物を盛り合わせれば見栄えも綺麗かと♪」
「名案ですね! 帝都のパーラー御用達のお店で材料を購入してよかったです!」
フィーナは持参した紙袋の中から、リンゴ、梨、苺、メロン、さくらんぼ等など、色鮮やかな果物を並べてみせた。
「これらを使って、綺麗で美味しそうなタルトを作りましょう♪」
「ええ、想像するだけでわくわくする一皿をつくりましょう♪」
2人はテキパキと作業を分担し、時には協力して下ごしらえを勧めていった。
「フルーツを切り終えたら、生地を作りましょうか」
鈴鹿は計量カップで小麦粉を計り、レシピを忠実に再現してゆく。
「鈴鹿さん、生クリームの甘さはどうしますか? 私は生クリームも果物の良さをひき立てる、ほどよい甘さでどうかなって」
「果物が主役ですから、生クリームの甘さは控えめにしましょう。そうそう! 生地を綺麗に焼き上げたら、綺麗にクリームを絞って♪ まるで花嫁がお化粧をするように、可憐に、清廉に、美しく♪ 回りに粉糖を掛けると、より綺麗でしょうか♪」
「うわぁ! 鈴鹿さん、それ素敵ですね! あっ、仕上げに、上から飴状にした砂糖をふりかけて、ガラスのように透明な飴細工を乗せませんか?」
「まぁ♪ お砂糖のドレスね♪ 口の中を幸せいっぱいにする果物を盛り付けて、自分でも頬っぺたが落ちちゃいそうなくらいに美味しそうなものに仕上げて♪」
「最高にキラキラのタルトが出来上がりそうですね!」
こうして、乙女要素がふんだんに詰め込まれたフルーツタルトが遂に完成した。
「さぁ、おあがりください!」
「どうぞ、華やかな気分で召し上がって頂きましょう♪」
そう告げると、鈴鹿はユーベルコードで桜の奏でる幻の音楽を奏で、フィーナがその音楽に合わせて歌い上げる。
お姉さんは目の前のキラキラ輝く宝石のようなフルーツタルトと、2人の桜の演目にうっとり。
「もう、これは芸術だわぁ……食べるのがもったいないけど、いただきまぁ~す!」
ナイフを入れると、その断面はこれまた虹を思わせる色とりどりのフルーツの階層がお目見え。
「虹釜さんらしいタルトにしたくて、頑張ってみました!」
「こういうサプライズも素敵かと♪」
フィーナと鈴鹿の粋な計らいに、食べる前からお姉さんは大感激!
そして、いよいよ口の中へタルトを運べば……。
「……あぁん♥」
一撃で昇天してしまうほどの破壊力(あまさ)を誇ったのだ。
無論、文句の付け所なくお姉さんはタルトを手放しを大絶賛!
2人はそれぞれ、魔法の虹釜を無事に獲得することが出来た。
「お宿に持って帰って有効活用させていただきましょう♪」
「今度は何を作りましょうか♪」
美女2人の愉しい作戦会議は、ここからが本番のようだ。
ここまで、ナイは様々なスイーツを観察してきた。
「つまり、珍しくて甘ければ、問題ないです?」
甘い食べ物……甘い食べ物?
「そう、いえば」
ナイはユーベルコードで『蜜ぷに』を召喚できる。
アルダワ魔法学園世界ではおなじみ、学園生の演習相手でありダンジョン飯のおやつである『蜜ぷに』。
「甘くて、美味しい。いくらでも増えて、食べたら疲れがとれる『蜜ぷに』さんは、どうでしょう?」
「蜜ぷに……?」
お姉さんは首を傾げる。
ナイは実物を見てもらったほうが早いと判断し、目の前で蜜ぷにを召喚した。
「ぷにぷにタイム、です」
すると、虚空からカラフルなスライムのようなオブリビオンが降り注いできた!
『デバンプニー!』
『オナカスイタプニー?』
『オイシクタベテプニー』
『モットキテクレプニー!』
『プニプニー!』
たちまち周囲は蜜ぷにだらけ。
更にはフィロメーラのお寿司の増殖が未だに止まっていない。
『スシフエタプニー?』
『コッチモフエルプニー!』
『ムシロガッタイプニー!』
『ミツプニズシプニー!』
なんと、蜜ぷにとスターフルーツ寿司の悪魔合体が発生!
『ワタシハ、スターミツプニズシ。コンゴトモヨロシク、プニ』
「なん……です?」
合体事故が起きたんじゃね、と疑いの眼差しを向けるナイ。
だがお姉さんはハングリー。
恐れずスター蜜プニ寿司に齧り付いた!
そして時間が停止したかのように微動だしないお姉さん。
「……美味いわぁ!」
テレテレッテレー!
お姉さんの背後が一瞬光った気がした。
「本当に、おいしい、かにゃあ?」
ナイも恐る恐る悪魔合体フードを口に入れてみる。
途端、ナイも全身が硬直!
「……そんな、美味しいです!?」
ナイの背後も光った。
「この、チープな甘さの駄菓子感が、癖になるです……!」
「なんだかお姉さん、童心に返っちゃうわぁ~! お姉さんに子供の頃があったかどうか分からないけどぉ……」
「気に入ってくれた、ですか?」
ナイの問いに、お姉さんはにっこり。
「もちろんよぉ♪ 外の世界には、お姉さんの知らない美味しい食べ物が溢れているのねぇ~♪」
そんなつぶやきを漏らしたお姉さんの身体が、徐々に萎んで通常の人間サイズへ戻ってゆく。
「オブリビオンと猟兵は敵同士、だけど、目的が同じなら無理して戦う必要はないと思うの。だから、お姉さんに外の世界を見せて? もっと美味しいものを、私で作って欲しいなぁ?」
ナイに懇願したお姉さんは、虹色に輝く魔法の釜に戻っていた。
もはや物言わぬ釜になってしまったお姉さんとの約束をナイは胸に刻みこむ。
「必ず、大切に使ってくれる人に、あなたを託します……」
こうして、猟兵達の華麗なる飯テロ爆撃によって、魔法の虹釜の防衛システムは解除された。
ここから持ち出された虹釜は、世界線を超え、きっと様々な味覚を堪能しつつ、その釜の魔力を発揮することだろう。
15人の猟兵たちは、それぞれ達成感とともに、小脇に虹色に輝く御釜を抱えながら竜の宝物庫を後にするのであった……。
大成功
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