●それは山のような。
ずしん、と大地が揺れた。音と共に影が差す。
日差しを遮りそびえるのは、甲殻を様々な鉱石、宝石で彩られた巨蟹。
「シュルルルル……」
鋏を振り上げ、山を砕く。
崩れ落ちた岩肌を食らいつくし、新たな獲物を求めてゆっくりと動き出した。
●飲み込んだもの。
「諸君! 帝竜戦役も終わりが見えてきた! だがまだ油断はできんぞ、今回向かってもらう場所にも危険な敵が待ち受けている!」
そう告げたのはゴッドオブザゴッド・ゴッドゴッドゴッド(黄金存在・f16449)であった。特に今日は眩しい気がしないでもない。
「行く先は、竜の宝物庫! ヴァルギリオスの蓄えた「無尽蔵の財宝」がばら撒かれたエリアだ!」
帝竜の集めた財宝となれば、その価値は計り知れまい。少なく見積もっても金貨2000枚はくだらない、とゴッドは続ける。
だが、それを手に入れることは容易ではない。なぜなら。
「ここに蓄えられた財宝はいずれも、それ自身が強大な防衛システム! 巨大なモンスターへと変貌し、宝を狙う者へと襲いかかってくるのだ!」
今回、猟兵たちに回収してもらいたいのは「星呑みの雫」と呼ばれる宝玉だ。
この宝玉は巨大な蟹へと変化し、あらゆるものを喰らい尽くすという。
その巨大さは山にも例えられるほど。とにかく大きいということは分かってもらえるだろう。
「特に鉱石や宝石を好み、食べたものを取り込んで甲殻へと変えていく! 元は鉄鋼蟹と呼ばれるオブリビオンだが、財宝の力か特性も変化しているようだ!」
巨大ながらその動きは鈍くない。
鋭く迫る鋏や牙を用いた攻撃は、喰らえば猟兵であってもただではすまない。
本来は純度の高い鉱石で構成されているらしいが、手当たり次第に取り込んでいるせいかその甲殻の見た目はちぐはぐだ。
あり得ないような防御能力を得ているかもしれないし、逆に通じなかったはずの攻撃が通じるかもしれない。
「堅く、厚い甲殻だが、どのようなものを取り込んで作り出したものかをよく観察すれば、大きなダメージを与えることも可能なはずだ!!」
例えば電気を通しやすい部分、熱に弱い部分……自分の技が通じる場所はどこか。しっかりと見極め、そこを狙う。
そうすることで堅い守りも打ち破ることができるに違いない。
「宝玉自体の価値も高いが、蟹が喰らった鉱石や宝石も手に入れることができれば一財産となろう! 危険で厄介な相手だが、見返りも大きい! しかと打倒し、無事に帰還してくれたまえ! 期待しているぞ!」
納斗河 蔵人
お世話になっております。納斗河蔵人です。
今回は帝竜戦役、龍の宝物庫での戦いです。
巨大な蟹に変化した財宝を討伐し、お宝を手に入れましょう。
今回は下記の通りプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……シナリオごとに提示された「財宝」の特性を考え、その弱点をつくような作戦を実行する。
OP中でほぼ答えは書いていますが、どのような弱点をどのようにつくか、を考えて戦ってみてください。
以上、プレイングをお待ちしています。よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『鉄鋼蟹』
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POW : 鉱石砕く牙
戦闘中に食べた【金属類】の量と質に応じて【全身が再生、より強靭性を増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 聳える鉄砦
【あらゆる物理攻撃を跳ね返す迎撃状態】に変形し、自身の【移動速度】を代償に、自身の【攻撃力】【防御力】【カウンター性能】を強化する。
WIZ : 木々断つ鋏
【あらゆるものを切断する巨大な鋏】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑8
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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才堂・紅葉
うわぁでかい
蟹でかい
思わず溜息が出るが、お宝であり貴重な鉱物資源の山だ。アポヘル当りに持っていけば大きなシノギになる
業務手順は金属の構造把握。蒸気バイクをロケットガジェットで一つ飛びし、素早く甲羅に乗り上げて強行偵察
リボルバーを各箇所に打ち込みながら、音響データを錬金端末に入力し、金属組成を情報収集する
狙い目は硬く重い金属層
こいつを超重力で打撃すれば、奴の殻を内から砕いて中身を打撃する巨大なハンマー代りになる
「コード・ハイペリア」
真の姿の封印を解き、蟹の反撃を気合で捌きながら、その場で跳躍
衝撃波を徹す浸透打撃として、渾身の超重力掌底を叩き込みます
お後は、宝石とレアメタルを回収して撤収しますね
月灘・うる
なんだか豪華な蟹さんだね。
でも、鉱石はまだしも、宝石まで食べちゃうなんて、
なんてもったいない!
蟹さんのごはんになるくらいなら、
うーちゃんがもらったっていいよね
相手の攻撃は【第六感】を使って回避していこう。
こっちの攻撃は【オックスブラッド】で
【ガイデッドスラッグ】を使って撃ち込んでいきたいな。
【乱れ撃ち】【制圧射撃】【範囲攻撃】
もいっしょに使って、徹底的に遠距離戦。
相手の近接攻撃力を生かさせないように戦うね。
蟹さん倒したら、ゆっくりお宝探索だね!
『星呑みの雫』がいちばんの目標だけど、
【宝探し】を使って、なるべく高そうなのをげっとして帰りたいな!
なるべく大きな甲羅の欠片、とか落っこちてないかな?
「うわぁでかい。蟹でかい」
龍の宝物庫に足を踏み入れた才堂・紅葉(お嬢・f08859)は開口一番、そういった。
山にも例えられるほど、というのは伊達ではなかった。見上げても頂点は見えそうもない。
巨大な鋏が山を裂き、牙が崩れた岩肌を砕く。
ほぅ、と思わずため息がこぼれる。これを倒すのには難儀しそうだ。
だが。
「なんだか豪華な蟹さんだね」
月灘・うる(salvage of a treasure・f26690)の言うとおり、その甲殻はキラキラと輝く宝石や、光を飲み込む漆黒、あるいは妖しい光を放つ部分などと
様々な物質で構成されている。
本体に当たる「星呑みの雫」はもちろん、貴重な鉱物資源もこの「山」には存在している。
文字通り宝の山なのだ。この蟹は。流石は帝竜の財宝といったところか。
「アポヘル辺りに持って行けば大きなシノギになりますね」
ふむ、と紅葉は頭の中で計算する。稼ぎもそうだが、活用できればあの荒廃した世界の助けにもなるに違いない。
「鉱石はまだしも、宝石まで食べちゃうなんて……なんてもったいない!」
一方、うるは宝石の方に興味をひかれている様子。
実際、今も巨蟹がかみ砕く山肌からは、光を反射し煌めく宝石の姿が見え隠れ。
呑み込んだものは甲殻に変化していくとはいえ……それは見逃せない。
「蟹さんのごはんになるくらいなら、うーちゃんがもらったっていいよね」
「これはヴァルギリオスの財宝。となれば遠慮は要りませんね」
うるのオックスブラッドはブランダーバスと呼ばれる、広範囲に散弾をばらまくタイプの銃だ。
ばらばらと一斉に甲殻へと打ち付けるそれは、人間サイズであれば一撃で相手を粉砕したであろう。
「うーん、さすがに堅いね」
だが、堅牢な甲殻は容易にはダメージを通さない。
巨大な蟹にとっては足先に小石をぶつけた程度といえよう。
「おっとと」
と、彼女は何かに気付き、瞬時に跳び退る。
その僅か数秒後に風を切る音と共に土煙が上がった。
巨蟹は動きの兆候すら見せていなかったが、鋭い鋏が地面に突き刺さっていたのだ。
「言うだけあって素早いね」
ふう、と息をつく。あの早さで攻められては長くはもたない。
やはり距離をとって戦うべきかと、うるは鋏の届かない距離へと後退していった。
が、逆に懐へと入り込もうと言うのが紅葉である。
蒸気バイクを走らせ、蟹が食い散らかした土塊の間をすり抜けていく。
「フシュルルルル」
頭上に影が差す。蟹に気付かれたか。
「ロケットガジェット、起動!」
が、彼女は慌てない。爆発音と共にバイクは宙へと飛びだした。
甲殻へと乗り上げ、タイヤがギュルギュルと回転する。
ギリギリのところだったが、どうにか落下は免れたようだ。
「よし、行きますよ」
再びアクセルを回す。ゴツゴツとした甲殻の上でバイクが跳ねる。
ダン、ダンと銃弾の音が響いた。しかし貫くこともなく跳ね飛ばされ、傷一つつけることはない。
だが、これでいい。ぶつかり合い、響く音は僅かに違う。甲殻を構成する物質が違うからだ。
ホルスターに銃を納めた彼女は、その差を錬金端末へと打ち込んでいく。
「そう簡単には見つかりませんかね」
と、そこで紅葉は手を掲げ、合図した。
バイクから蒸気が噴き出し始めると同時。
無数の銃弾が降り注ぎ始めた。
その銃弾の主は、うるだ。
「そっちは鉱石、わたしは宝石。お互いの利益の為なら協力は惜しみませんよ」
少女商人としての面を覗かせながら、彼女は『ガイデッドスラッグ』で紅葉の行く先へと銃弾を撃ち込んでいく。
散弾は広範囲に降り注ぐが、バイクに乗って進む紅葉へは決して当たらない。
綺麗にすり抜け、甲殻だけに的確に衝撃音を響かせた。
「……」
銃弾の雨の中を紅葉が走り抜けていく。
カン、ズン、トン、ピン……
耳を澄ませても簡単には聞き分けられない音を頼りに、彼女はついに狙うべきポイントを見つけ出す。
「あった……!」
それは、硬く、重い。
バイクを滑らせ、甲殻を蹴る。
「コード・ハイペリア」
言葉と共に手の甲に浮かび上がる紋章。
焦げ茶色の髪が深紅に染まっていく。
「フシャーッ!」
巨大な蟹もこの動きには危険を感じたか。
体に乗り上げた紅葉を振り払おうと、その体を大きく震わせた。
体が宙に舞う。上下が逆転する。落下しながら、しかしその目はただ一点を見据えていた。
「決着はこの一刺し」
ずん、と手を突き出す。瞬間、音が、光が歪んだ。
その手に込められたのは超重力。『ハイペリア重殺術・天蠍(テンカツ)』が分厚い甲殻の奧へと浸透し、そこにあった金属ヘと到達する。
タングステン。融点が高く、電気を通しづらい。
そして、比重は19.3。
「フシュルルルル
!??!?!」
その巨体に含有されているのはどれほどの量なのか。
ただでさえ重いタングステンは紅葉の放った超重力で巨蟹を押さえつけ、甲殻ヘとめり込んでいく。
「それはもう、内から砕いて中身を打撃する巨大なハンマーのようなものですよ」
落下しながら紅葉が言い残すと同時、重量に耐えられなくなった甲殻の一部がはじけ飛んだ。
「シャ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!?」
「甲殻は堅くても、その下はどうかな?」
これは大きなチャンスだ。うるは再びオックスブラッドを構え、銃を放つ。
一度散った散弾は彼女の意のままに大きく穴を空けた甲殻へと集い、巨蟹の肉を抉った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
塩崎・曲人
小銭拾いでも出来るかと思って出張ってみたが……
金目のものは全部カニの餌になってるとはね
「まぁ、どの道オブリビオンは始末する予定なんだ。そっちを先に済ましゃ良い」
さて、あのカチカチカニにオレの攻撃な通じそうな場所ってーと……
あれか、宝石。特にダイヤモンドとか
硬い硬いって有名なアレだが、あいつの硬さって『2つの材質をこすり合わせた時どっちが削れるか対決』の硬さなんだよな
そして――衝撃に耐える力はむしろ弱い
ただの鉄の棒でスカンと一発殴れば、それで木っ端微塵間違いなしってわけだ!
「って訳で覚悟してくれや、番人さんよぉ。こちとら楽しいボーナスゲームに早く突入したい気持ち満々なんでな!」
リコリス・ミトライユ
絡み・アドリブ歓迎
鉱石とか、宝石とか……。
あんまりいっぱい食べられちゃうのも困りものですよね。
ホントは燃やしたりできるならそれが一番かもですけど、
出来ないからには、お食事の邪魔だけはしないと。
硬いとこを殴ったらあたしだって痛いかもですけど。
鉄くらいまでならへーきですし。
そだ、宝石は、特にダイヤモンドとか、とっても硬いけど割れやすいって聞きますし。
思いっきり殴って、叩き割ればいいですよね。
右のジャブでそういう、割れやすそうなとこをいっぱい叩いてみて
少しでもひびが入ったところに、本命の左の【ペネトレイトブロウ】をぶちこみますっ!
こう見えて、結構力もありますし、パンチの衝撃は奥まで響きますからね。
フィロメーラ・アステール
「なんかこの大陸蟹多くない?」
……まさか竜の食料として確保されてる?
コイツが本当に食べたいのは竜なのかもな!
『星呑み』なんてちょっとコワイので距離はしっかり取ろう!
【空中浮遊】して、できる限りの遠距離に陣取る!
移動速度が下がったら、この距離を詰めるのは難しいぞ!
そんなに離れて届くのかって? 届くさ、光ならね!
【星界式光速魔法術】を使うぞ!
敵が物理に強くなるなら、魔法【属性攻撃】だ!
光を吸収しやすい黒い所なら効果増大!
透明度の高くなっている所なら装甲無視?
何度か攻撃して反応を【情報収集】し、よく効きそうな所を探す!
良い感じの所を見つけたら【気合い】を込め【全力魔法】を込めたレーザー魔法で攻撃!
「小銭拾いでも出来るかと思って出張ってみたが……金目のものは全部カニの餌になってるとはね」
龍の宝物庫という名前に反し、辺りには荒野が広がるだけ。
その惨状に塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)はため息をついた。
蓄えられていた宝石類は山のようなサイズの巨蟹に食い尽くされ、その甲殻を彩っている。
あそこから拝借、となると容易には行かない。
「鉱石とか、宝石とか……あんまりいっぱい食べられちゃうのも困りものですよね」
同様に巨蟹を見上げ、リコリス・ミトライユ(曙光に舞う薔薇・f02296)が薄く笑った。
大きい体だからエネルギーも必要なのかな、とも思うが、元は「星呑みの雫」呼ばれる宝玉。
それとはまた違った理由があるのだろう。
「それにしても星呑み、なんておっかないよな」
と、そこでフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)が震え上がった。
「幸運の流れ星」を自称する彼女だ。ひょっとしたら触れただけで吸い込まれてしまうのかもしれない。
とはいえ、巨蟹はあらゆるものを食い荒らす。
小さな彼女どころか、巨大な岩をもかみ砕く姿は星ごと食い尽くしても不思議ではないほどだ。
「ところでさ、なんかこの大陸蟹多くない?」
「あ、私も見ましたよ! 不死蟹!」
「おお、確かにな」
フィロメーラの言葉に二人も同意する。
確かに、これまでを思い起こせば不死蟹海岸での戦いもあった。
目の前のモンスターの元になった鉄鋼蟹の他にも、蟹の姿をしたオブリビオンは多数目撃されている。
「……まさか竜の食料として確保されてる?」
「あー、あいつらならこのサイズの奴でも食いそうだなぁ」
「焼き蟹とか、茹で蟹でしょうか」
そんなふうにいいながら、リコリスは鍋に入れられた巨蟹を思い浮かべていた。
「こいつが本当に食べたいのは竜なのかもな!」
「どんどんおっきくなってますし、お食事の邪魔だけはしないと」
こうしている間にも宝物庫の財宝はどんどん食い荒らされていく。
それを手に入れるためには。
「まぁ、どの道オブリビオンは始末する予定なんだ。そっちを先に済ましゃ良い」
曲人が鉄パイプを肩に乗せ、蟹へと向けて歩き出した。
「さって……あのカチカチカニにオレの攻撃な通じそうな場所ってーと……」
「何処も硬そうですよね。殴ったらあたしだって痛いかもですけど」
「え、アンタ素手で殴る気なの?」
弱点を探る曲人はリコリスの言葉に驚きの声を上げる。
いくらなんでも少女の拳とあの巨体がぶつかり合えば、反動で拳が壊れそうなものだ。
「あはは、ちゃんとナックルガード付きのグローブをはめてますよ。だから鉄くらいまでならへーきですし」
「それにしたってなァ。ま、とにかく何処をぶん殴るか考えなくちゃあな」
巨蟹は様々な物質を取り込んでいるが故に、場所によって強度の差がある。
食べているのは鉱石、宝石……となれば。
「あれか、宝石」
緑、赤、青……様々な色が光に反射し、甲殻を彩っているそこを狙えば。
「そだ、宝石は、特にダイヤモンドとか、とっても硬いけど割れやすいって聞きますし」
「だな。硬い硬いって有名なアレだが、あいつの硬さって『2つの材質をこすり合わせた時どっちが削れるか対決』の硬さなんだよな」
そこでチンピラ風の見た目に似合わず豆知識を披露する曲人。
詳しいんですね、とはしゃぐリコリス。
「で、ダイアモンドはどこでしょうか!」
「そりゃ見ればわかるんじゃねーの? だってダイヤだぜ、ダイヤ」
大きな蟹をきょろきょろと見渡し、ダイヤを探す。しかしそれらしき場所は見つからない。
まさか宝物庫にダイアモンドが存在していなかったとは思えないのだが……
「そりゃそーでしょ。甲殻になってるんだから、原石に近い状態なんじゃない?」
と、そこで大声で口を挟んだのはフィロメーラだった。
「アンタずいぶん遠いな! そこからで戦えるのか?」
「届くさ、光ならね!」
ふふん、と胸をはる彼女だったが二人からも巨蟹からもずいぶん遠い位置に陣取っていた。
やはり星呑みの名を気にしていたらしい。
「とにかく、お前らはダイアモンドを探してるんだな! だったらあたしにまかせろー!」
巨蟹へ向けて指をさすフィロメーラ。
その指先の遥か向こう、甲殻の一点から小さな煙が上がった。
「おっ……と。効いてねぇみたいだな」
「ちょっと焦げただけみたいですね」
が、ダメージは通らない。『星界式光速魔法術(フラッシュキャスター)』の光は、どうやら熱に強い部分に命中したらしい。
「いいのさ! これは運試し! さあどんどんいくぞー!」
彼女はそんな声を気にもせずに次々と光を放っていく。
変わらず小さな焦げを作るだけの場所。反射してあらぬ地面を抉った場所。そして。
「おっ、ここは効いたみたいだな……」
「フシュルルルル
!!!!」
どうやら光を吸収しやすい黒い部分に命中したらしい。
物理攻撃には高い防御力を誇る巨蟹だったが、蓄積された熱に焼かれた一撃はたまらない。
身を縮こまらせ、迎撃状態に移る。
だが、それが逆に猟兵たちにチャンスを生んだ。
「ラッキー! 見つけたぞ! この屈折率は……」
向きが変わったことで今まで狙えなかった場所をさらけ出すことになったのだ。
そして、フィロメーラの指先は狙うべき場所を指し示す。
「あたしが援護する! お前らはあそこをぶっ壊せ―!」
「ほんとに見つけやがったぜ。」
「助かっちゃいましたね!」
曲人とリコリスは示された場所へと駆ける。
巨蟹はフィロメーラの攻撃にじっと耐え、攻撃するものを待ち構えている。
この状態ならば彼女が襲われることもあるまい。
しかし、接近する二人が危険へと足を踏み入れていることも確かだ。
反撃を受ければただではすまない。
余裕の態度こそ崩さないが、その事実はリコリスの心に緊張感を植え付ける。
「うおっ……でけぇな。これそのまま持って帰ったら財宝より価値があるんじゃねぇのか?」
「でも、攻撃するならここなんですよね……」
それは巨蟹の足の一つを覆っていた。
人一人分ほどのサイズに膨れ上がったダイアモンドは、カットされた姿とはちがい白くくすんで光を吸い込んでいた。
「うっし、覚悟はいいか?」
「はい、いつでも!」
曲人は鉄パイプを掲げ、リコリスが拳を握りしめる。
巨蟹は、まだ動かない。
「ヒャッハー! ブッ込み行くぜオラァ!」
まず動いたのは曲人。
右から左から。必殺の『喧嘩殺法(ケンカサッポウ)』で鉄パイプはガンガンとダイヤを削り取っていく。
はじけ飛ぶ原石が大地に転がった。
「それっ!」
対するリコリスは右のジャブでまずは様子見。
ダイヤが割れやすいとはいえ、殴りつける場所によってそのもろさにも差があるはずだ。
打ち付ける拳に手応えを感じる。ここだ。ここをつけば一気にこの甲殻が吹き飛ぶはずだ。
「フシュルルルルッ!」
しかし巨蟹も攻撃を受けて黙って見てはいない。迎撃のために待ち構えていたのだ。
振りかぶった鋏が曲人へ、リコリスへと、鋭く迫る。
「知るかオラァ!」
「シャッ!?」
が、曲人の一瞬の反応によって、鋏はほんの少し軌道を変えた。
難しいことを考えるのをやめた彼の素早さは、巨蟹の速度を上回ったのだ。
そして生まれた隙が、リコリスの技を完成させた。集中した魔力が拳へと込められていく。
「って訳で覚悟してくれや、番人さんよぉ。こちとら楽しいボーナスゲームに早く突入したい気持ち満々なんでな!」
「ちっちゃいからってナメると、痛い目見ますよっ!」
すさまじい音と共に、ダイヤの中心に大きな亀裂が走った。『ペネトレイトブロウ』の一撃によって砕かれた甲殻がバラバラと辺りに転がる。
「フシューッ! フシュッ!」
その衝撃で巨蟹の体も大きく揺れる。
「そうだぞ! ちっちゃいからってなめると痛い目を見るんだぞ! ぴっ!」
大きく空いた穴をフィロメーラが指さす。
これまで以上に収束した光の魔力が甲殻に守られていた肉を焼き、巨蟹が悲鳴をあげる。
巨大な体を支える足の一本を攻められ、体勢を崩した。これでは反撃どころではない。
「オラァ! 今なら殴り放題だぜ!」
「思いっきり殴って、叩き割りますよ!」
追撃を加えるべく、猟兵たちは再び巨蟹へと駆け出していった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
久遠・翔
アドリブ絡み歓迎
ふむ…金属を食べているという事は電気を通す可能性大っすね
ただそれだけでは倒せそうにないっすから…使役獣の力も借りますか
UC使役獣召喚で妖狐忍達とヒラーガを召喚し潜伏してもらうっす
選択UCで蟹の視線をこちらに向けている隙に妖狐忍達が火遁で一気に温度を上げて撤退させ、その後ヒラーガに薬品を投げてもらい撤退。中身は一気に凍らせる液体と濃度高い塩水で
相手が出てくるのは想定内。ただ、一気に冷えたから金属疲労が起きている部分があるはずっす
そこめがけてククリナイフを突き刺して電撃を一気に流します
塩水も含まれているから電撃の通りもいいっすね
倒した後は財宝を手にして急いでその場を後にします
「ふむ……金属を食べているという事は電気を通す可能性大っすね」
久遠・翔(性別迷子・f00042)は繰り広げられる戦いを目にそんなことを考える。
先行した猟兵たちはどちらかというと甲殻そのものを砕き、内部へとダメージを届かせていた。
だが、電撃ならば。甲殻そのものを伝って直接巨蟹へとダメージを与えることができるはずだ。
「と、なるとある程度は距離を詰めないと……使役獣の力も借りますか」
懐の触媒を握りしめ、彼女(彼?)は崩れた山の陰へと降り立った。
「出てこい! 妖狐忍! ヒラーガ!」
現れた獣達とともに、翔はじわじわと敵へ近づいていく。
巨蟹は足の一本を失いこそしたが、その甲殻は既に再生を始めている。
と、そこで。
「フシュルルッ!」
「げっ、この距離で気付くっすか」
巨蟹の目が翔を捉えた。鋏を振り上げ、新たに現れた侵入者を撃退するべくその切っ先を突きつける。
そこからの判断は速い。
「お前たち、俺があいつの視線をひきつけるっすから……」
後は頼むっすよ、とだけ言い残し、翔は使役獣たちとは反対側へと飛び出した。
一歩踏み出す度に紫電が走り、蠱惑的な香りが漂う。『雷光一閃(セツナ)』の煌めきが宙を駆ける。
「さあ、捕まえられるものなら、捕まえてみるっす!」
「シャーッ!」
ぶん、と鋏が空を切る。翔の姿は既にそこにはない。
その素早さは、身を隠すことをやめたことによって向上している。
さらに、纏うオーラは巨蟹さえをも、一時の惑いに誘っていた。
当たらぬ攻撃を続けるその間にも、使役獣たちは気付かれることなく甲殻をよじ登っていく。
「よし! 妖狐忍達! そこで火遁!」
「フシャ!?」
流石の誘惑も突然の炎の前には吹き飛んだか。
妖狐忍たちの放った術が火柱を上げ、辺りを熱する
しかし、その程度で燃えたり溶けたりするほど柔ではない。その炎はさしたる効果も上げず、妖狐忍たちも引き下がったかのように見えた。
だが。
「ヒラーガ! 熱した部分にアレを!」
続くヒラーガが放った薬瓶が割れると、その狙いは明らかとなった。
一瞬にして凍り付く甲殻。急激な温度差で堅牢な甲殻にもヒビが入る。
そして、追い打ちをかけるようにぶちまけられたのは、塩水だった。
「一瞬で、決めます」
それを確認すると同時、翔の雰囲気が変わる。
愛用のククリナイフを手に一気に巨蟹へと突っ込んでいく。
そのままでは刃を通すこともなかったであろう甲殻が砕け、その切っ先が押し込まれた。
「……っ!」
指先から紫電がナイフを伝わり、辺り一面に広がっていく。
「シャアアアアアアッ!?」
「やっぱり塩水は正解だったっすね。電撃の通りがいいっす」
そして、その身を灼く電撃に巨蟹は悲鳴をあげたのだった。
成功
🔵🔵🔴
ナミル・タグイール
どでかいにゃ!きらきら蟹にゃー!
何でも食べてるなら金ぴかゾーンもあるはずデスにゃ!ナミルに任せろにゃー!
(金ぴか欲しいだけの猫)
一番乗りして独り占めするために【捨て身】で突撃
ハサミは頑張って勘で避ける。無理なら斧で弾くにゃ!
くっついて乗り込んじゃえばこっちのもんデスにゃ!
【宝探し】で幸せ金ぴかゾーンを探すにゃー!きらきらどこにゃ!
見つけたら略奪タイムにゃー!ここらへんのはナミルのにゃ!
【呪詛】で斧強化して思いっきりどっかーん地形破壊にゃ!
金色甲羅部分だけえぐり取って持って帰るにゃ!むふふにゃ!
にゃ?再生したにゃ?取り放題にゃー!!
硬くなってもイライラと欲しい気持ちで呪詛を強化してどっかんにゃ
シノギ・リンダリンダリンダ
いいですね、こういうアンバランスで醜悪な物は好きです
一体どれだけの財宝を取り込んだのでしょう
どこを削ればそれが手に入る?雫以外も削れば略奪はできるか?
いいです、何も言わなくて結構です
いろいろ試しますので
宝石や鉱石。それらは魔力が籠りやすい性質を持ちます
「宝探し」、そして「戦闘知識」でそれらの部分を見極めます
見つけたら、あとは「呪詛」を込めた、死の闇の命の「属性攻撃」を「全力魔法」で宝石に注ぎ込みます
溢れるほどに注ぎ、限界突破させて爆破させます
後は脆くなった部分を重点に「傷口をえぐる」ように【殴る】
どれだけ硬い宝石も脆い一点があります
再生しようが硬かろうが関係ありません
お前の全てを「略奪」します
「どでかいにゃ! きらきら蟹にゃー!」
鉱石や宝石を取り込んだ巨蟹の姿にナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)は目を輝かせた。
帝竜の財宝だけでなく、あれも手に入る可能性があるのだ。
金ぴか財宝を愛してやまない彼女が、この展開を喜ばないはずもない。
そして、もう一人。この光景に笑みを浮かべるものが。
「いいですね、こういうアンバランスで醜悪な物は好きです」
それはシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)であった。
海賊らしきジャケットをはためかせ、あらゆる宝石、鉱石が入り交じる甲殻に想いを巡らせる。
「一体どれだけの財宝を取り込んだのでしょう」
「あれなら絶対金ぴかもたくさんにゃー!」
「そうですね、ナミル様。星呑みの雫とやらも気にかかりますが……」
どこを削ればあの莫大な財宝が手に入る? 削れば略奪はできるか?
その問いに、巨蟹は答えるはずもない。
「いいです、何も言わなくて結構です。いろいろ試しますので」
「何でも食べてるなら金ぴかゾーンもあるはずデスにゃ! ナミルに任せろにゃー!」
二人の思考はいかにして欲するものを手にするか。ただそれだけである。
「シノギ、金ぴかを手にするのは早い者勝ちだにゃー!」
「ええ、そうですね。略奪と蹂躙の限りを尽くしましょう!」
「どこにゃーどこにゃー! 金ぴかはどこにゃー!」
先陣を切って駆け出したナミルは突き進む。
金ぴかを手に入れる、そのためだったらどんな危険も何のその。
幸いにしてシノギ以外の他の猟兵が金を狙っているという事はないようだ。
それこそ山のように、価値ある宝石や鉱石もある。全てを手にするのはいかに彼女たちだって難しい。
ならばわざわざ見知ったもの同士で同じものを奪い合う必要はないのだ。
つまり、見事金の甲殻を見つけ出せたならば、独り占めすることだって!
だが、巨蟹もただでやられるわけにはいかない。帝竜の財宝にも意地がある。
「フシュルルッ!」
「にゃっ! あぶないにゃ!」
すさまじい大きさの鋏が横薙ぎに振るわれる。
ダイヤやアルミで覆われた鋭い刃は、触れれば彼女をふさふさの毛皮ごと両断するだろう。
「金ぴかじゃないにゃ! 邪魔するんじゃないにゃー!」
ぶん、と音を立てて金色の斧が振るわれる。斧と鋏がぶつかり合い、火花が散った。
反動で跳躍。巨蟹の力も利用して、ナミルは空高く跳びあがった。
ふう、と息をつきながら彼女は言う。
「おっそろしいにゃ……でも、幸せ金ぴかゾーンはもうすぐだにゃー!」
そう。いかに鋭い鋏でも、その腕には届かない。
「くっついて乗り込んじゃえばこっちのもんデスにゃ! さあ、きらきらはどこにゃ!」
蟹の腕に降り立ち、金ぴかを求めて駆け上がるナミルであった。
「さて……宝石や鉱石。それらは魔力が籠もりやすい性質を持ちます」
誰に説明するでもなくシノギは言う。
それは人類の歴史においても枚挙に暇がない。
持ち主の命を奪い、人から人へと渡り歩く宝石。
手にしたものに災いをもたらし、終わりなき苦痛へと誘う金貨。
魅力的であるからこそ、そこには魔が宿るのだ。
「見つけましたよ……」
ナミルと同様、彼女もまた巨蟹の背へとたどり着いていた。
辺りは大小様々な宝石で彩られ、これを持って帰るだけでも一財産築けるだろう。
だが、それだけで満足はしない。もっと、もっと。
この巨大な蟹の背にはこの何倍もの財宝が眠っているのだ。
「少々もったいないですが……これもさらなるお宝を手に入れるため」
手を押し当て、目を閉じる。
その体に渦巻く死が、闇が、命が。青く輝いていた宝石を、黒く染めた。
にい、と思わず口元が歪む。だがこれで終わりではない。もっとだ。
海賊としてではない、死霊を操るものとしての顔がそこにあった。
「ふ、フシャッ!?」
どん、という鈍い音と共に何かが弾けた。巨蟹が驚きと共に体を震わす。
シノギの呪詛に耐えきれず、限界を超えてあふれ出した魔力が暴発したのだ。
甲殻にヒビが入る。
「さて、これならば奧までとどきますよね。痛いので気をつけてくださいね」
その一点に向けて、シノギはただ抉りこむように『殴る(ナグル)』。轟音と共に宝石がちりばめられた甲殻が剥がれ落ち、大地を揺らした。
「にゃー! みつけたにゃー! 」
その頃、ナミルもまた目指すべき金ぴかを見つけ出していた。
そこにあったのは、金。金鉱ではない。純度100%、精錬された金である。
「ここらへんのはナミルのにゃ!」
金もまた、呪いをためこめやすいものである。
シノギは甲殻の宝石に向けて呪詛を放ったが、ナミルは違う。
己の手にした斧へと、その力を流し込んでいくのだ。
巡る呪いは金色を怪しく光らせ、あらゆるものを砕く一撃となる!
「そーれ、どっかーんにゃ!」
「シャァーッ!?」
大地をも割る『グラウンドクラッシャー』の一撃が甲殻を震わせた。
その衝撃に巨蟹も揺らぎ、離れた場所にいるシノギにもその振動が伝わる。
だが、そんなことは関係ない。彼女は今、満面の笑みに包まれているのだ。
「むふふにゃ!」
一抱えほどもある金の塊。これ一つでどれほどの価値があるのか、想像もつかない。
大きく抉られた甲殻の上で輝きにしばし酔いしれた、その時だった。
「にゃ?」
いつの間にか、甲殻が再生している。しかも。
「これは……取り放題にゃー!」
その手にあるものとは別に、新たなる金甲殻が存在しているではないか!
斧を手に呪詛を込める。
高く掲げ、もう一度振り下ろす!
「にゃっ!?」
しかし今度は衝撃だけで砕けない。巨蟹の甲殻は再生する度に強靭性を増していくのだ。
ナミルの顔に怒りがにじむ。目の前に金ぴかがあるというのに。
「……生意気だにゃー! 金ぴかはナミルのものだにゃー!」
そしてシノギもまた、再生していく甲殻を前にその拳に力を込める。
「再生しようが硬かろうが、関係ありません」
「略奪タイムにゃー!!」
「お前の全てを「略奪」します」
すさまじい衝撃と共に巨蟹の体が左右に揺れ、再生したばかりの甲殻が二カ所同時にはじけ飛んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
桃登勢・サラスティ
あちゃー、なんてもったいない
あの輝きはルビーかな、あっちの鉱床は銀?
いやー、宝石類がこんなに混ざり合うなんて、壮観だねー
ま、わたしの物じゃないし、ここの宝物が罠なんだから、遠慮はいらないね
支援重視、敵の甲殻を鑑定して弱点範囲を探し出して皆に伝えるよー
通信用に【金霊】をみんなに配っておく
借りた望遠鏡と【心得の智慧【宝物】】で甲殻を鑑定して【失せ物探し】
比較的脆い宝石や鉱物の場所を列挙していくよ
割れやすい大理石
熱に弱いラピスラズリ
衝撃が弱点なトパーズ
他にも狙っている鉱物があれば一緒に探そう
大体知らせ終わったら【指定UC】を敵に張り付け
全身おたから、それにその貪欲な食欲
さあて、どれくらい燃えるかな?
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
宝探しね…ロマンのある話だが、
この巨大な蟹を相手にするのは骨が折れそうだ
まずは敵の弱点を探らねばなるまいな
山のような巨体の上をダッシュやジャンプで駆けて、銃弾を一斉発射
当たった部位ごとの反応を見切りつつ物理攻撃が通用しそうな部分を探す
食べた物の特性を取り込むと言うのなら、衝撃に脆い宝石の特性を持つ部分もあるだろう
なるほど…そこだな
では、カニ料理といってみようか
弾丸の衝撃で欠けた部分を見つけたらUCを発動
蹴撃による一撃を叩き込み部位を破壊する
怯んだ隙に関節部を狙って追撃を行う
脚の一本でも持っていければ儲けものだ
フン、デカいだけあって食い出はありそうだ
…食えるかどうかは知らんがな
「あちゃー、なんてもったいない」
山を喰らい、数々の宝石で甲殻を彩る巨蟹の姿に、桃登勢・サラスティ(金神喚びの厄使い ~神魔の眼鏡~・f27163)は嘆きの声をあげた。
食料として消費されるのもそうだし、蟹が着飾るというのも滑稽というもの。
節操なく取り込まれた鉱石、宝石は巨蟹を守る鎧と化している。
「あの輝きはルビーかな、あっちの鉱床は銀? こりゃまるで宝探しだね」
「宝探しね……ロマンのある話だ」
そんな桃登勢の言葉に反応したのは、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。
蟹自体が財宝の山と化しているし、その本体たる星呑みの雫を手に入れられればまさに一攫千金。
群竜大陸に挑戦するに十分な見返りと言えるだろう。
「いやー、それにしても宝石類がこんなに混ざり合うなんて、壮観だねー」
「同感だ。これはなかなか見られるものじゃない」
だが、とキリカは続ける。
「この巨大な蟹を相手にするのは骨が折れそうだ」
「だよね。と、言うわけではいこれ」
そう言いながら桃登勢が渡したのは小さなコイン。
なんのために、とキリカが日にすかせてみると、そこから声が聞こえてくるではないか。
「それは金霊。そいつを通じてわたしが敵の弱点になりそうなところを伝えちゃうよー」
桃登勢は望遠鏡をのぞき込み、巨蟹の甲殻を眺める。
物の価値を見極めるその眼力は、この距離からでもその部位が何でできているのか言い当てることができるのだ。
「あれはラピスラズリ……熱によわい」
「なるほど、手間が省けそうだ」
コインを弾き、ポケットへとしまい込みながらキリカは巨蟹ヘと駆け出していった。
「そこは大理石でできてるよ! 割れやすいから気をつけて!」
桃登勢の声に従いキリカは拳銃を一発。
衝撃と共に砕け散る大理石の甲殻。
「フシャッ!?」
「どうやらその眼力に間違いはないようだな」
「もちろん。さあ、次はどうする―?」
足を止めず、彼女はさらに巨蟹へと接近する。
いかに敵が再生すると言っても、それにはエネルギーが必要だ。
仕留めるならば大きく。
「足の一本でも持って行ければ儲けものだ」
「よーし、だったら衝撃に弱いところはどうー?」
「問題ない。どの脚だ」
振り下ろされた鋏の弱い部分に弾丸を撃ち込みながら跳躍。
暴れる巨体の上を、キリカは駆ける。
「ま、わたしの物じゃないし、ここの宝物が罠なんだから、遠慮はいらないね」
望遠鏡の向こうから、桃登勢はその行く先だけを見つめていた。
「よし、そこだよー」
「ここだな。では、カニ料理といってみようか!」
ダン、という音と共に銃弾が甲殻へと突き刺さる。衝撃に弱いのならばこれで亀裂くらいは入るはずだが……
「……ここ一番で眼力が鈍ったのか?」
しかしそこには、小さな傷がついただけ。
そんなキリカの疑問に桃登勢は笑ってみせる。
「あはは、まさかー。そこはね、熱すると一気に衝撃に弱くなるんだ。だからまずは……」
その時、ポケットからコインが勝手に飛び出した。
高い音を立てて甲殻の上を転がる。そして。
「金霊の炎で焼き尽くすんだよー」
瞬間、金霊を中心に火の手が上がる。
「全身おたから、それにその貪欲な食欲。さあて、どれくらい燃えるかな?」
これが金霊の力。強欲を燃やす、『金運炎上・凶【金霊】(カナダマ・フレイミング)』だ。
資産と欲に比例して強く熱く燃える炎は主である甲殻を焼いていく。
はじめは小さかった炎が大きく広がり、天を灼くが如く立ち上る。
ほう、とキリカがため息を漏らす。
桃登勢の言うとおり、その資産も欲も、この炎を燃え上がらせるには十分すぎた。
「シャアアアアアアッ!」
甲殻の内側までは届いていない。だがそのまま放置している訳にもいかない。
巨蟹は体を弾ませ、炎を消し去ろうと暴れ回る。
そして、その熱が最高潮を迎えた瞬間。
中心部の炎だけがかき消えた。
「なるほど、そこがお前の弱点か」
キリカの言葉に、もう答えは返らない。
しかし炎は揺らめき、火の粉を舞い上がらせる。
彼女は、跳んだ。
「吹き飛べ」
風を切り、ブーツのつま先がに突き刺さる。『サバット』の一撃は単純で、重い。
先ほどまでは銃弾を容易くはじき返していた甲殻に、いくつもの大きな亀裂が走る。
「フシャァァァ!?」
甲殻がめくれ上がり、はじけ飛んだ。その下に隠されていた柔らかい肉をさらけ出す。
「フン、でかいだけだって食い出はありそうだ」
食えるかどうかは知らんがな、というつぶやきと共に爆音が響く。
ありったけの銃弾を叩き込み、肉を裂く。
「フシュルルッ!」
巨大な脚の一本が千切れた巨蟹は倒れ込み、大地を揺らした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月宮・ユイ
アドリブ連携◎
※ヤドリガミ
財宝基に現れ、なんでも食べて取り込む、ね
在り方に少し親近感を覚える敵なのだけれど…
「だからこそ危険性もまた確か、ですか
大きさ故に○情報収集容易で動き見切り易いが、
鈍くはない為強力な【鋏】の一撃には常に警戒。
その技の特性上遠距離からの攻撃に徹する。
◇捕食兵装起動
力呪と為し編んで杭を多数成形し○捕食○呪詛付与。
杭は成形物資化している、まずは敵に食べさせてみる。
取り込まれても自身の力である為、繋がり通し把握可能。
内側から○捕食:生命力吸収できれば最善だが、
出来ずとも呪が通りやすい箇所を見つけ出し照準合わせ、
杭撃ち込み呪詛侵蝕
「捕食者がどちらか、決めましょう
マリア・フォルトゥナーテ
アドリブ、連携歓迎
「私に属性攻撃なんてないからね!手数手数手数!!上手い大砲も数撃てば物理が弱い急所に当たるでしょう!」
UCで幽霊船フライングダッチマン号と巨大イカのクラーケンを召喚した後は、ただただ、大砲を撃ち込み、クラーケンの10本の剛腕を叩きつけ、物理と衝撃で滅多打ちにします。
そして、物理と衝撃に弱い箇所が見つかったら、技能の「傷口をえぐる」により、そこを重点的に攻め続け、攻殻を突き破ります!
「クラーケン!攻殻が砕けたら全部回収ですよ!それらも価値あるお宝ですからね!」
「財宝を基に現れ、なんでも食べて取り込む、ね」
月宮・ユイ(月城・f02933)は猟兵たちを相手に大立ち回りを演ずる巨蟹に向けて、そんな言葉を漏らした。
「在り方に少し親近感を覚える敵なのだけれど……」
彼女はヤドリガミだ。本体は呪物兵器の核。
捕食吸収能力で取込学習成長する、という性質は確かに、あの巨大なモンスターに近しいとも言える。
だが、猟兵とオブリビオン。その道が交わることは決してない。
「フシュルルッ!」
視線の先では巨蟹が吼え、はじけ飛んだ甲殻を再生する。
ひとたび守りを固めれば、見た目に似合わぬ素早さで迫り来る敵をなぎ払う。
鋭い鋏は、捕らえられればたとえ猟兵であろうとただではすまないだろう。
「だからこそ危険性もまた確か、ですか」
それは蟹ヘ告げたのか、それとも自分自身に向けたものか。
ともあれ、戦いは続いている。あの巨体を討ち果たすにはまだまだ戦力が必要だ。
と、その時。
「さあいきますよ! 上手い大砲も数撃てば急所に当たるでしょう!」
そんな情緒を吹き飛ばすような砲声が響いた。海がなくとも『神に呪われた幽霊船(フライングダッチマン)』はここにある。
マリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)が、狙いもつけずに巨蟹へと大砲をぶち込みまくっていたのだ。
「……」
絶句。
いくら巨蟹が巨大とは言え、その背には取り付いた猟兵たちだっているのだ。
抗議の声も上がっている。彼女は聞いちゃいないようだが。
「とにかく手数手数手数! 手数で攻めるの!」
「どちらが敵だか分かったものではありませんね」
傍若無人とも呼べる所業。ユイもあの砲火の中に飛び込む気はない。
迫る砲弾を瞬時に巨蟹の鋏が切り裂き、宙に爆煙が上がった。
「あの鋏も厄介。私も距離を取って戦うべきですか」
「『捕食兵装(イーター)』、起動……」
(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。並列処理、知覚拡張)
脳内に声が響く。内を巡る呪が力を為す。
編み上げ、編み上げ。形となるは数多の杭。
籠められた呪は深い。小さきものならば一つ触れただけで命脈を狂わせるほどに。
だが、あの巨大な存在にどれほどの効果をなしえるか……
「さあ、クラーケン! 蟹を滅多打ちにしてやりなさい!」
そんなとき、マリアの声が響いた。
「グォォォォッォン」
「フシュ! フシュ!」
彼女が呼び出したのは幽霊船だけではない。深海の怪物クラーケンも付き従っているのだ。
巨大な蟹と、巨大なイカ。怪獣決戦ともいうべき状況は、実のところ膠着している。
何しろ、大砲もクラーケンも物理的な攻撃しかできないのだから。
堅牢な甲殻はそのことごとくをはじき返し、ダメージはほとんど通っていない。
対する巨蟹の方も絡みつく触手を相手に有効な手を打てずにいたが、一つ状況が変わればその鋏は10本の足を容易に切り裂くであろう。
「まだまだ行きますよ!」
とにかく、マリアは宣言通り撃って撃って撃ちまくる。
そうする内に、偶然か。一発の砲弾が巨蟹の甲殻を大きく抉った。
「フシャアアアア!」
が、巨蟹はすぐにその傷を再生するべく岩山へと牙を突き立てる。
「あれだ……!」
その光景に、ユイは一つのひらめきを得た。
巨蟹は山を喰らう。そこに潜むモノに気付くことなく。
ユイは作り出した杭を操作し、その口元へと差し出していたのだ。
それは暴食の下に取り込まれ、体内を巡り、甲殻と化す。
その行く先を、ユイははっきりと感じていた。
「頑張ってクラーケン! 甲殻を砕けば私たちのものよ!」
「船長さん、きちんと狙うべき場所を示せば当てられますか」
「えっ? え、ええ! もちろんですとも!」
幽霊船に飛び乗り、ユイはマリアに語りかける。
杭は体内で生命力を吸い続けるが、あの巨大な蟹の前では微々たるもの。
呪の力だけでは倒しきれない。だが。
「甲殻は私が砕きます。イカで押さえ込んで、そこを狙ってください。いいですね」
「よく分かりませんが、いいでしょう! 私にお任せなさーい!」
マリアの返事も聞かず、ユイは目を閉じる。
「ロックオン……」
(捕食吸収能力制御)
甲殻と一体化した杭ヘと命ずる。圧縮された呪を解き放てと。
「喰らいつけ……」
「フシャーッ!?」
言葉と共に甲殻がはじけ飛ぶ。
マリアが大砲の照準を合わせる。
指先で一点を指し示しながら、ユイは言った。
「捕食者がどちらか、決めましょう」
「それはもちろん私! クラーケン! しっかり押さえつけるんですよ!」
クラーケンが10本の足を振るう。急所がダッチマンへと晒される。
「集中砲火! ぶちかましますよー!」
「シャァァァァアァッ!」
マリアの号令と共に大砲が火を噴き、その爆音はしばらく止むことはなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジノーヴィー・マルス
アイシャ(f19187)と。
POW
蟹、蟹、蟹……分かっちゃいたけど美味そうに見えねーなこいつ。
それに、流石に硬いよなぁ。けど、正直…第666式機鋼剛拳に頼るしかねえか。
さて……砕くとなると問題は靭性な訳だが……これも鉱物によって色々あるわけで、それを【見切り】で見つけていく。最悪でもダイヤぐらい…あわよくばエメラルドかトパーズ辺りか。
見つけたら、そこを「単純にブン殴ってみる」
一撃で割れなくても、何度もブン殴るさ。
財宝は、まぁ…どっかに寄付するか。
アイシャ・ラブラドライト
f17484ジノと
口調→華やぐ風
SPD
ジノの肩に乗って戦場へ
とっても大きな蟹さん…
私には全体像が掴めないくらい大きいけど
キラキラしてて綺麗
私も宝石なら多少の知識があるけど
ジノ、すごく詳しいんだね…
ダイヤモンドは、とっても硬い…
ターコイズ辺りが色が特徴的で見つけやすいかも
【Bottled feelings】に入った飴玉を一緒に食べて時間を遅くする
ジノがくれたとっておきの飴玉…えへへ、美味しいね
糖分補給して、集中していこう
動きがゆっくりになれば壊しやすい場所も見つけやすいはず
私も一緒に探すね
財宝は、やっぱりしかるべき所に寄付したいなって思う
これだけあれば、沢山の人を喜ばせることができるはずだからね
「蟹……蟹。蟹ねぇ」
天にそびえる巨大な蟹。ジノーヴィー・マルス(ポケットの中は空虚と紙切れ・f17484)と、その肩に乗るアイシャ・ラブラドライト(煌めく風・f19187)はその姿を見上げ、ため息を漏らした。
「とっても大きな蟹さん……」
「分かっちゃいたけど美味そうに見えねーな、こいつ」
あらゆるものを食い尽くし、取り込んだ甲殻は鉱石や宝石に彩られ、日を受けて輝く。
人間から見てもその大きさには圧倒される。
ましてや、小さなアイシャからしてみれば全体像がつかめないほど。
「キラキラして綺麗」
「確かに綺麗だけど、流石に硬いよなぁ」
巨蟹は物理的な攻撃に対して圧倒的な防御力を持つ。
打ち破るには魔術などの力を使うか、守りをぶち抜く圧倒的な一撃を加えるかだ。
しかし情報通り、本来全身を鋼鉄で包んでいたはずの蟹は様々なものを取り込んでいる。
その中には脆い部分も必ず存在しているのだ。
「正直……こいつに頼るしかねぇか」
アイシャとは反対の肩にかついだ第666式機鋼剛拳ヘと目をやる。
人の身には不釣り合いな巨大な腕。これならば十分な破壊力を発揮することができるはずだ。
「砕くとなると問題は靭性な訳だが……」
「じんせい?」
アイシャの声にジノーヴィーはああ、と続ける。
「例えばダイヤモンドなんかはすごく硬いけど、脆い。硬度は高いけど靱性は低いって訳だ」
「へぇ……」
他にも、エメラルドやトパーズ辺りを見つけられれば勝機はある。
そんなことを語る彼に、アイシャはにこりと微笑む。
「ジノ、すごく詳しいんだね……」
「そうでもねぇよ。俺だって、知ってるのは今言った奴くらいだし」
「私も宝石なら多少の知識があるけど、詳しいのは見た目とか、そういう方面だから」
と、そこで彼は気付いた。ダイヤモンドはいい。流石に分かる。
「特徴的で見つけやすいのだと、ターコイズとかかな。空みたいな色をしてて……」
他の宝石も色は分かるが、この巨体の何処に在るかも分からないのに、見ただけでわかるだろうか?
だが、協力すればきっと見つけ出せるはずだ。
「いや、見た目に詳しいのは助かる。一緒に探してくれ」
「うん、わかった。頑張って探そうね」
甲殻を打ち砕くべく二人は巨蟹へと近づいていく。
しかし敵も黙ってはいない。
振り回された巨大な鋏が、鋭さをもって襲いかかる!
「フシャーッ!」
「おっと……聞いちゃいたが、結構速いな」
巨体に似合わぬ素早さ。無策ではとてもかわしきれるとは思えない。こっちが真っ二つだ。
どうしたものか、と額にしわが寄る。近づかないことには攻撃もできないのだ。
「うーん……んっ?」
しかしその思考は、突然口の中に広がった甘味によってかき消された。
アイシャの腰につるされた、小さな瓶。薄緑のリボンで飾られたそれは、彼自身が贈ったものだ。
「えへへ、とっておき」
アイシャの指先が、ジノーヴィーの唇に触れる。押し込まれたのは飴玉だった。
自分も小瓶……Bottled feelingsからもう一つ取り出し、口に含む。
「アイシャ、今は……」
「慌てないで。糖分補給して、集中していこう」
彼女は笑った。それは『Happiness medley(ハピネスメドレー)』
楽しい時間はあっという間に過ぎるというけれど。
小さな幸せは、そこら中に転がっている。
「……なるほど。相手が速いなら……遅くすればいい、って事か」
「ね? これなら大丈夫でしょう?」
先ほどとは違う、まるでスローモーションの世界。
飴玉を楽しむものだけが、この世界を楽しむことができる。
「はい、もう一つどうぞ♪」
「ああ、これならいける……後は脆い場所を見つけ出すだけだ」
ゆっくりと迫る鋏を潜り抜け、二人は蟹の背へと足を踏み入れていった。
そして。
「ジノ!」
「ああ、分かってる!」
二人は見つけ出した。この巨蟹の急所を。
他の猟兵たちの活躍により何本もの脚を、体力を失い、甲殻の再生も遅れつつある。
万全であれば多少のダメージに過ぎなかったかもしれないが、今ならこれが決め手になってもおかしくはない。
ぽきぽきと、手を鳴らす。背負った二本の機械腕が音を立てて動き出す。
特別なことは何もない。自分にできるのはこれだけだ。
だから、拳を握りしめて叩きつけるのみ!
「ブッ潰れちまえ!」
「フシャーッ!?」
気合いと共に放たれた『単純にブン殴ってみる(モンドウムヨウ)』の一撃が宝石を打ち砕く。
舞い上がる欠片がキラキラと煌めく。
「もう一発!」
「ジノ、頑張って!」
ごうん、と重量感のある機械の腕が巨蟹を揺らす。
甲殻に生まれた亀裂が広がり、混乱をもたらす。
「何度でも、ブン殴る!」
「フシャッ! フシューッ!」
そう、彼が殴りつけているのは巨蟹の頭部。その中心部。
脳を揺らし、大地を揺らす。
この蟹が財宝を守るという意思で動き続けているのならば、それを断てば!
終わりは突然だった。
最後の一撃が打ち付けられると同時。
山にも例えられるその巨体は一瞬にして消え失せ、収束する。
あらゆるものを呑み込んだ巨蟹は、嘘のようにほんの小さな雫となった。
他に残されたのは剥がれ落ちた甲殻と、猟兵たちだけ。
********
「だめにゃー! 金ぴかは全部ナミルのものだにゃー!」
「クラーケン! 全部回収ですよ! それも価値あるお宝です!」
マリアがクラーケンに檄を飛ばす。その先には山と積まれた黄金の甲殻。
しかし、その前で斧を振り回すナミルには近づけない。彼女が一度手にした金ぴかを他人に譲るはずがあるものか。
そんな光景をよそに、シノギはまだ誰も手をつけていない甲殻から宝石をもぎ取っていた。
「マリア様も無謀な真似はやめた方が良いかと思うのですがね」
戦いの終わりと共に巨蟹は宝玉へと戻ったはずだ。
だが、それを目にしたものはまだ誰もいない。どうせならば帝竜の財宝も手に入れたいものだが……
同様に甲殻を漁る紅葉も見つけてはいないようだ。
「おっ、この鉱石は使えますね」
宝石やレアメタルは十分な価値を持つ。
龍の財宝は確かにたった一つで莫大な富を産み出すが、彼女はそれを奪い合うよりも確実かつ有用な物資を手に入れることを優先していた。
「わっ、おっきい! うーちゃんはこれを持って帰ろうかな!」
と、そこで大きな声。うるがお気に入りを見つけたらしい。
宝石がちりばめられキラキラと輝くこれもまた、お宝には違いない。
「楽しいボーナスタイムは終わりが見えないね。取っても取っても次が出てきやがる」
一方、曲人は散らばった宝石を拾い集めていた。
確かに一つ一つの価値は劣るかもしれないが、集めれば大きなもうけになる。
小銭稼ぎと考えれば十分だ。
そんな風に作業を続ける彼の背後から、一つの影が過ぎ去っていく。
「欲張っちゃいけないっす。必要な分だけ手に入れて帰るっすよ」
翔は持ちきれるだけの財宝と共に大地を蹴る。
回収は他の猟兵に任せればいい。行動は迅速に。
「これだけあると本命を見つけ出すのも大変だな」
あの巨蟹から見れば一部に過ぎない宝石の山を前にキリカはため息をついた。
だが、帝竜の財宝だけは回収しなくては。
再びモンスターが現れれば、せっかく群竜大陸を制圧しても憂いを残すことになる。
と、その時。何やら相談するジノーヴィーとアイシャの声が聞こえてきた。
「なあどうする、アイシャ?」
「うーん、やっぱりしかるべきところに寄付、かな」
「だよなぁ」
その手にはこぶし大ほどの宝玉。
星の煌めきが内に輝き、見るものを魅了する。間違いない、星呑みの雫だ。
「わぁ、それが財宝ですか!」
「おおっ、見られるとはラッキーだな!」
リコリスとフィロメーラがその美しさに目を丸くする。
二人とも多少の宝石拾いはしてきたようだが、財宝を手にしようとまでは考えていないらしい。
「よこせー、っていう人がここにいなくてよかったねー」
桃登勢も財宝そのものに興味はないようだ。
よく観察するようにじっと見つめるばかり。
「同感です。私も見られたので満足しました。どう扱うかは手にしたあなた方にお任せしましょう」
ユイも感じ入るものはあったが、それだけだ。
あの蟹は自動的に、命じられたままに財宝を守っていただけだとはっきりと分かった。彼女とは同じようで、違う。
「取り合いになってまたあの蟹に出てこられても困るし、まずはちゃんとしたところに買い取ってもらうか」
「うん。そのお金があれば、沢山の人を喜ばせることができるはずだからね」
猟兵たちの言葉を受けたジノーヴィーの結論に、アイシャはにっこりと微笑んだ。
この地にあふれた財宝も帝竜にとってはほんの一部に過ぎなかった。
だが、猟兵の中にはこの戦いで莫大な富を手にした者も多い。
それをどう使うかは、個人個人の考えに委ねられている。
大成功
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