華は嫌いな毒を吐く
●
毒を撒き散らすだけの華だった。
あっちの世界のあたしはとっくに死んでる。無知で自分勝手な馬鹿共のせいで。
意地汚ねぇなぁ。それはスイセン、食用じゃねぇよ。
ベラドンナでおめめパッチリ美人さん? 幸せな甘い夢にラリって御陀仏か。
うちの庭で盗み働いて、痛い目遭ったらテメーのせいだ? 救いようがねぇな。
薬は用法用量を間違えれば毒にもなる。当たり前のことだろ。
古狸によるくだらない魔女裁判。見せしめの拷問、絶叫絶命カウントダウン。
……あ゛あ゛、いいよ、もう! ……さっさとくたばっちまえ。
思い出したよ。こいつが――絶望――っていうんだろ。
クソみたいな世界を捨てたつもりが、クソみたいな世界で生まれ変わってた。
そんでもって、クソみたいな能力を与えられた。
来た時は色鮮やかな花が溢れる国だったのに、今や白黒の死華の樹海。
籠から出したマンチニールの果実を放り投げた。
落ちた先から、周りの木々はみるみるうちに命を奪われ枯れ果てる。
あたしの毒は強くなり過ぎた。手遅れなんだろ、全部。
どうせ×××××××××にはなれやしねぇ。
そんなら化物は化物らしく、毒でも死でも撒き散らそうか。
●
「アリスラビリンスで、『オウガのゆりかご』になってしまった国を見つけたんだ。この国を壊しに向かってもらえるかい?」
グリモア猟兵、メリー・アールイー(リメイクドール・f00481)にいつもの笑顔はない。見つけてしまったひとつの不幸せな物語を終わらせる為に、淡々と猟兵達へ協力を仰いだ。己のやりきれない心を宥めながら、静かに説明を行っていく。
不思議の国へ落とされたアリスは、元の世界の記憶を思い出しても精神が耐え切れず、オウガによって自分達の仲間へ、オウガへと改造させられてしまう場合があるのだ。そんな元アリスのオウガによって、アリスだった頃に見つけた自分の扉、『絶望の扉』のある国は『絶望の国』へと変貌させられてしまう。それはオウガの揺りかご。絶望の扉が開けば、大量のオウガの群れが襲い掛かって来るはずなのだ。オウガはアリスへは戻れない。この国ごとまとめて壊すしかない。これはそういう、夢も希望も無いお仕事だ。
「オウガの名前は、『枯樹死華のアリス・エルヴィラ』。彼女は毒を操る能力に長けていて、その国は枯れ果てた死華の樹海となっとるよ。エルヴィラは扉の付近にいるはずだが、まずは樹海を抜けないといけないね」
しかし、その樹海は既に幻惑の毒に侵されているので、通常の手段で出口を見つけようとしても惑わされてしまうだろう。その攻略方法は定かではないのだが、予知でちらりと見えた、何故か樹海のあちこちに置き去りにされている『白いシーツに包まった何か』が鍵となっているのではないか、とメリーは予想する。
「『白いシーツに包まった何か』は、会話が可能な生き物のようでね。一緒に行動して、話を聞き出してみておくれよ。その国にいるものなら、エルヴィラについても樹海についても、何か知っているかもしれないだろ」
樹海を抜けて絶望の扉へ辿り着けば、エルヴィラが現れるはずだ。
オウガとなってしまった彼女は、猟兵達の手で骸の海に送るしかない。彼女を倒せば、絶望の扉は砕け散り、絶望の国は崩壊を始める。
だが、その崩壊と同時に、絶望の国の内側で生まれるのを待っていたオウガの群れが溢れ出てしまうのだ。このオウガの数はエルヴィラの絶望の大きさに比例する。
今のままなら、例え絶望の扉を壊しても、オウガの群れの大半を他の国へ逃がしてしまう事になるだろう。
「だから、そのためにも……エルヴィラと戦いながら、彼女の絶望を和らげるように語りかけてもらいたいんだ。彼女にしてやれる事は、もうそのくらいしかないから、ね」
もっと早く彼女を見つけられたら良かった。
けれど、これ以上遅くならなくて良かった。
今なら彼女がオウガとして罪を犯す前に、止める事が出来るのだから。
「それじゃあ頼んだよ! よろしゅうにー!」
ボタン型のグリモアが祈るように精一杯の光を放って、猟兵達を送り出した。
葉桜
OPをご覧いただきありがとうございます。葉桜です。
誰だって誰かにとって、毒にも薬にもなるかもしれない、なんて。
シリアスモードのアリスラビリンスを宜しくお願い致します。
第1章。冒険『迷子の迷子のおともだち』。
第2章。ボス戦『枯樹死華のアリス『エルヴィラ』』。
第3章。集団戦
『???』。
第1章は、眩惑の毒に満ちた死華の樹海の中に転送されます。
彷徨っていると、『白いシーツに包まった何か』と出会うでしょう。
会話可能なので、樹海やエルヴィラについて話しながら出口を探して下さい。
その何かと一緒にいれば、道は開かれるはずです。
第2章、第3章に関しては、OPでご説明した通りです。
エルヴィラの絶望を和らげて、オウガの群れの数をなるべく減らして下さい。
ユーベルコードは指定した一種類のみの使用となります。
プレイングはOP公開から募集開始です。
(ほんの少しですが、公開日中に第1章の断章を追加する予定)
必要最低限の青丸が集まりましたら、締切の日時をマスターページにてご連絡致します。出来れば少人数でサクサク進めていきたい思うので、参加者様の集まり具合によっては募集期間が短くなる可能性もございます。予めご了承下さいませ。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『迷子の迷子のおともだち』
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POW : 手を引いて連れて行こう
SPD : 障害を先に取り除いていこう
WIZ : こっそりと行き先を示してあげよう
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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●
猟兵達は、色の無い死華の樹海に降り立った。
幻惑の毒によって出口は隠されているようだ。
「だあれ? だれか、来てくれたの?」
どこからか幼い子供のような声が聞こえる。
枯木の隙間で立ちすくむ、白いシーツに包まった何かがそこにいた。
「アタシも迷子なんだ。一緒にいてもいい?」
それはシーツに包まったまま、顔を見せようとしない。
どこにもないはずの花の香りが、仄かに浮かんだ気がした。
ユヌ・パ
こんにちは、迷子のあなた
あなたさえ良ければ、一緒に行きましょう
はぐれないように、手を繋いで
……ああ、左手はだめよ
こちらの手は、あなたを護るために空けておくの
疲れたら言ってちょうだい
あなたの歩調にあわせて、ゆっくり歩くわ
樹海は、ずっとこんな様子だったの?
それとも、エルヴィラの絶望が彩りを奪ったのかしら
あたし、エルヴィラに逢いに来たの
話を聞いて、自分のことのように思ったわ
あたしも毒ばかり吐いてた
自分に絶望して、その果てにしんでしまったわ
どうして甦ったのか、わからないの
このことに、なんの意味があるのかも
もしエルヴィラの心を知っているなら
どんなことでもいいわ
教えてちょうだい
※子を護れるよう常に周囲警戒
●
「こんにちは、迷子のあなた。あなたさえ良ければ、一緒に行きましょう」
ユヌ・パ(残映・f28086)は普段通りに淡々と、白いシーツの塊に誘いの声をかけた。
「いいの? ああ、よろしく」
白の子はさらりと同意して、足音なくユヌに近づき彼女の左側に立とうとする。
「……ああ、左手はだめよ。こちらの手は、あなたを護るために空けておくの」
だからこちら側に来て、と。白の子を自分の右側に移動させて手を差し伸べた。
はぐれないように、シーツ越しに差し伸べられたものを掴むように、手を繋ぐ。
強く握ると、いや、気を付けないと潰してしまいそうなほど。とても柔い感触だった。
「疲れたら言ってちょうだい。あなたの歩調にあわせて、ゆっくり歩くわ」
白の子を護れるように、ユヌは周囲を警戒しながら樹海を歩いて行く。
「ありがと。アタシも迷子だから、道案内出来なくて悪いな」
今度はあっちに行ってみようか。行き止まりの道を回れ右して、また別の道を探す。この子が出口の場所を知っている、というわけではなさそうだ。
「樹海は、ずっとこんな様子だったの? それとも、エルヴィラの絶望が彩りを奪ったのかしら」
「……後者が近いかな。アイツの毒が、森の命も色も全部奪っちまった」
エルヴィラのことを『アイツ』と呼ぶこの子は、やはり彼女と関わりがあるようだ。
「あたし、エルヴィラに逢いに来たの。話を聞いて、自分のことのように思ったわ」
「アンタが? アタシの相手もしてくれるし、アイツより大分イイヤツだと思うけど」
ユヌは小さく首を振った。
「あたしも毒ばかり吐いてた。自分に絶望して、その果てにしんでしまったわ」
それは比喩ではなく、ユヌは一度確かに命を失っている。死後に憑りついたオウガごと悪霊として再構成された存在なのだ。
「どうして甦ったのか、わからないの。このことに、なんの意味があるのかも」
エルヴィラも一度死に、知らない世界で勝手に生み出された。
ほら、やっぱり似ている。
「もしエルヴィラの心を知っているならどんなことでもいいわ。教えてちょうだい」
「……さっき、毒ばかり吐いてたって言ってたけど。それって好きで吐いてたの?」
違うだろ。同じだ。揶揄うように。真剣に。
「最初はさ。オウガに襲われて、目覚めた毒の力で対抗するつもりだったんだ。そしたら、この国まで滅茶苦茶にしちまった。もう毒にしかなれない自分に絶望してた」
ああ、ここだ。白の子は何の変哲もない行き止まりで立ち止まった。
「じゃ、あとはよろしく」
すると、白の子が消えると同時に、行き止まりの道が開かれた。
ユヌの手には空のシーツが、足元には黒く変色していく白い花びらが残された。
成功
🔵🔵🔴
安寧・肆号
まあ、まあ!
ゆりかごですって。
望みを絶たれたアリスが眠る、不幸せのゆりかご。夢を見るのは楽しいけれど、毒を吐かれちゃ困っちゃうわ。
あら、可愛い!
シーツにくるまるアナタはだあれ?
小さな、小さいな白いアナタ。
怖いことなんてないわ。一緒に行きましょう。
帰り道がわからないのは困っちゃうわね。
どこに向かえば良いのかしら。
あたしも迷子の姉妹を探しているの。ここにはいないようだけど!
ここはどんな国だったのかしら。
白いアナタは知ってるの?
アドリブ・連携お任せします
スミンテウス・マウスドール
※アドリブ他歓迎
迷子の迷子の白毛布!おうちわかんなくても大丈夫。
スミンも迷子。一緒だね。
ここはどこだろ。ユー知ってる?
こういう時は棒が倒れた方に向かえば良いんだよね。
カモン。
全く困っちゃうね。こんなに暗い国だとお茶を飲む気にもならないよ。
ユーお茶どう?飲む?
きっとアリスもお茶を楽しむ時間がなかったから絶望しちゃったんだ。
アリスのこと知ってる?
アリスは何が好きだったんだろ。
どんなアリスなんだろ。
愉快な仲間はアリスのために。アリスを助けてあげなきゃいけないんだ。
そのために、まず迷子をやめようか。
●
安寧・肆号(4番目の人形・f18025)。『自律人形・アンネ』は死華の樹海で微笑んだ。
「まあ、まあ! ゆりかごですって。望みを絶たれたアリスが眠る、不幸せのゆりかご。夢を見るのは楽しいけれど、毒を吐かれちゃ困っちゃうわ」
「全く困っちゃうね。こんなに暗い国だとお茶を飲む気にもならないよ」
スミンテウス・マウスドール(だれかが視てる夢・f25171)。眠りネズミは笑わない。
「ユーお茶どう? 飲む?」
突然のお誘いに、今ここで? と安寧肆号は首を傾げるが、スミンテウスは空っぽのティーカップを指先でくるり、遊ぶだけ。元よりノらない意思疎通。やっぱり、この樹海の毒に邪魔されてしまうお茶会はちょっといただけない。
「きっとアリスもお茶を楽しむ時間がなかったから絶望しちゃったんだ」
迷子の二人が樹海を彷徨っていると、ちょこんと佇む白いシーツの塊を見つけた。
「あら、可愛い! シーツにくるまるアナタはだあれ?」
「アタシは迷子だ。お二人さんも?」
「迷子の迷子の白毛布! おうちわかんなくても大丈夫。スミンも迷子。一緒だね」
「小さな、小さいな白いアナタ。怖いことなんてないわ。一緒に行きましょう」
こうして迷子は三人に。
「ここはどこだろ。ユー知ってる?」
「いいや、言ったろ。アタシも迷子、この樹海からは出られない」
「帰り道がわからないのは困っちゃうわね。どこに向かえば良いのかしら」
オーケー。ぱきり。スミンテウスは枯れ枝を折って地面に立てた。
こういう時は棒が倒れた方に向かえば良い。決まらないなら決めてしまえ。
間違ったら3・2・1でやり直し。永遠に続く気狂い共のお茶会よりは早く終わりを見つけられるだろう。ぶかぶかの袖を振って、さあ行こう。
「カモン」
「まあ! いいですね。歌でも歌いたい気分です」
手でも繋いで行きましょうか。安寧肆号は白の子の手を差し出す。
シーツ越しに添えられたのは、握ったら簡単に潰れそうな柔い何かだった。
「あたしも迷子の姉妹を探しているの。ここにはいないようだけど! ここはどんな国だったのかしら?」
何度目かの棒を倒しながら、三人は情報収集という名のおしゃべりを交わす。
「アイツがああなる前までは、緑の木々に色んな花々、それなりに綺麗な国だった」
「綺麗なものは好きよ、残念ね。アイツ、はエルヴィラのことね」
「アリスのこと知ってる? どんなアリスなんだろ」
アリスのこととなれば、スミンテウスは興味津々だ。
「元アリス、な。知ってるも何も、アタシはアイツに切り離された一部だ。口が悪くて植物に詳しいだけの、普通のやつだった」
「ユー、アリスの欠片? アリスの欠片、良い匂い。お花? ユーはお茶好き?」
ぐいぐい白の子に近づくスミンテウスの鼻を甘い香りがくすぐった。シーツを覗かれないように中身を必死で守る白い子。……お茶にも合いそうなお花、何だろう?
「茶は飲めないけど、香り付けには使われてたかな。薬茶、アイツは好んで飲んでた。薬師だったんだ。庭で沢山の草花を育ててた」
だから、この国の植物をこんなにしちまって……思うところがあるんじゃないかな。
ねぇ。白の子が尋ねる。――アンタ達はアイツを止めてくれるんだよな?
「愉快な仲間はアリスのために。アリスを助けてあげなきゃいけないんだ」
「あたしは迷子探しの寄り道中だけれど、ハートのガラスが導くままに。毒が他の綺麗な国まで壊すのは困っちゃうから、ちゃんと止めるわ」
「そのために、まず迷子をやめようか」
でもまたもや、行き止まりで。ちょっとうんざり。
そして再び樹の枝を使おうとするスミンテウスの手は、白の子に何故か遮られた。
「ここで大丈夫。……後は任せた」
次の瞬間。白のシーツが、ふぁさと地面に落ちる。
白の子は消えて、行き止まりの道が開けた。
シーツの隙間から、黒色に染まっていく白い花びらがこぼれている。
こうして迷子はいなくなった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メルフローレ・カノン
樹海の中に放り込まれて、どちらに行けばいいか……
おや?
誰かが話しかけてきてますね。
シーツにくるまっているようですが……
もしもし、どなたですか?
私も[優しさ]をもって話しかけてみましょう。
ここはどこですか?
なぜここには色がないのですか?
どこに行けば出られるのですか?
などなど、この世界やいるであろうオウガについて聞き出しましょう。
あと、どちらに進めばいいのかもですね。
あ、情報収集は別として、純粋に仲良くお話ししていきましょうか。
その上で、出口なりオウガの元に進みましょう。
聞き出せた情報や[第六感]を用いて進めばいいでしょうか。
危険については【神が示す道標】で回避……できればいいですね。
●
右も左も前も後ろも、見渡す限り死華の樹海で埋め尽くされていた。
「どちらに行けばいいのか、見当もつかないですね……」
メルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)が途方にくれていると、
「だれか、だれかいるの?」
どこからか子供の声が聞こえる。声を頼りに木々の隙間を抜けて行くと、メルフローレは白いシーツの塊を見つけた。
「もしもし、どなたですか?」
「アタシもこの国の迷子だ」
「それでは私と一緒に出口を目指しましょう」
メルフローレはシスターとして、正体不明の生き物にも優しさをもって話しかける。
「どこに進めば出られるのですか?」
「アタシも迷子なんだって。どこへ行けばいいかは分かんない」
「そうですか、では……神よ、私に正しき道をお示しください」
メルフローレは【神が示す道標】で神の声を聞いてみた。どうやらこの辺りには道に迷わせる毒が満ちているだけで、他の危険は何も潜んではいないようだ。
「なにそれ。お祈り?」
「ええ、私は神に仕える身ですので」
「ふうん……悪いけど、アタシは神なんか信じてないんだ」
ふぁさふぁさ。シーツを揺らすと、白シーツの子の足元に一輪の白い花が落とされる。
「これは……」
「花は毒を浴びると黒くなる。神頼みよりは確実だ」
花の黒ずみを見ながら進めば、幻惑で閉ざされてる出口が分かるかもしれない。
「花が生きられない毒、ですか……だからこのような色のない世界になってしまったのでしょうか」
「ああ、色も命も、毒が奪っていった」
二人は花が黒くなる方を目指して歩いて行く。その途中で、ふと。メルフローレの頭を過ぎった疑問を白の子に投げかけた。
「このような方法があるのなら、どうしてあなたは迷っていたのですか?」
ひとりでも、花を頼りに出口を探せたはずなのに。
「へぇ、鋭いな。理由はふたつ。ひとつめは、アタシはこのシーツを被ってないと、その花と同じで毒の樹海で生きていけないから。この手は使えなかった」
既にメルフローレの手の花は黒く染まって、殆どの花びらを散らしている。
「ふたつめは……アンタ達を、アイツを止めてくれる誰かを、導く事が目的だったから」
到着した行き止まりで、最後の花びらが散った。
メルフローレは何やら嫌な予感が止まらず、胸がざわつく。
「待って下さい! 私は、あなたとも純粋に、仲良くしたくて……」
――あなたを救う事は出来ないのですか?
その先の言葉は言わせてもらえなかった。
「おありがたいね。……でも悪い。あとはよろしく」
白シーツが地面に落ち、行き止まりの道は開かれる。
足元には先程と同じ、幻惑の毒を精一杯吸い込んで黒くなった花びらが落ちていた。
成功
🔵🔵🔴
レパイア・グラスボトル
アポカリプスヘルの医者にとって此処は資源の宝庫。
故郷のロストテクノロジーで加工すれば使えそうな毒草薬草は回収する。
【WIZ】
ガキっぽいやつらの相手にゃガキの方が良いだろ。
ついでに実施研修だ。
【医術】で対毒、解毒準備をしつつ。
自身とUCの【医術】を使って毒性の強くなっている方向を調べる。
く。
危険な事をする子供はしっかり叱り、正しい用法を教える。
ちょっと痛い目に遭う程度はご愛嬌。
白いの:
異形でも物怖じしないガキ共は好奇心旺盛だから中を見ようとする。
産まれや、ここのアリスとの関係は確認する。
アンタらは何処に行きたいんだ?
ワタシらはここのアリスってのに会いに行くけどな。
そいつの事は知ってるか?
●
ぱきり。死華の樹海で、レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)は真っ白に枯れた樹の枝を折った。黒く染まった花も詰むが、どちらもすぐにボロボロと崩れてしまう。
「使えそうな毒草薬草があれば回収するつもりだったが、全部死んでるか」
アポカリプスヘルの医者にとって、探索する別世界はどこも資源の宝庫だ。故郷のロストテクノロジーで加工すればもしかしたら使える方法があるかもしれないので、一応枯木の欠片も萎れた花びらも保管しておく。
「だれ? 何してるの?」
不思議な行動をしていたレパイアに、白いシーツを被った何かが話しかけて来た。
「アンタか、噂の白いのは。ガキっぽいやつらの相手にゃガキの方が良いだろ」
ついでに実施研修だ。レパイアは【レイダーズ・チルドレン】を召喚した。子供世代のレイダーの集団は、白い子の対応をするもの、樹海を探索するもの、レパイアの作業の手伝いをするものに分かれる。
「ぎゃあ!? やめろ馬鹿! これ剥いだらアタシが死んじまうだろ!」
突然白い子が悲鳴を上げた。異形でも物怖じしない好奇心旺盛なチルドレンが、白い子のシーツの中身を覗こうとしたらしい。
「ん? そうだったのか。おい、止めとけ。中身は足元のもので予測しろ」
暴れたシーツの裾から、白い花が零れ落ちていた。
「これはガーデニアか? ……端の方が黒ずんでるな」
その黒ずみはじわりじわりと花を侵食していく。これは……。
そこで、探索に出ていたチルドレンが戻って来た。あっちもこっちもどこも行き止まりばかりだったらしい。報告を聞きながら、レパイアは花から抽出した成分から対毒と解毒が出来るように準備を進める。素人が見ても何をどうしているのかさっぱりだが、これで毒性の強くなっている方向を調べる事が可能になったそうだ。
「へぇ、医者ってのはそんな事も出来るの」
「アンタらは何処に行きたいんだ? ワタシらはここのアリスってのに会いに行くけどな」
「ああ、それなら毒の強い方へ進めばいい。アタシが向かう先も同じだ」
感心する白の子を連れて目的地へ進みながら、レパイアは情報収集も並行して行う。
「アンタは何者だ? 生まれは? アリスの事は知ってるか?」
「さっき見ただろ。アタシは花だ。アイツから切り離されちまった残りカス」
辿り着いた先は行き止まり。けれど、レパイアにはここが一番濃厚な毒が漂っていると分かる。対毒を身に付けているレパイアは恐れずに木々の壁へ手を触れてみるが、先へ通り抜ける事は出来ない。
「この樹海はアタシを排除する檻。そして鍵はアタシ。出るにはアタシを使うしかない」
アイツ、もう薬にもなりたくないんだとさ。苦笑がシーツの中から漏れる。
「それじゃ、あとはよろしく」
すると、白い子は消えて、行き止まりの道は開かれた。
そういえば、ガーデニアの別名はクチナシだ。薬効成分を持つ花。
クチナシは真っ黒に染まり、口無しに。それ以上の情報はもう得られなかった。
成功
🔵🔵🔴
バジル・サラザール
出口の鍵になるかもっていうのもあるけど、単純に放っておけないわね
『毒耐性』で幻惑の毒を極力軽減、『野生の勘』も用いつつ、シーツの子と探索しましょう
まず気になるのは、この子の体調ね。幻惑の効果だけだと思うけど、体調を尋ねたりして、一応『医術』『毒使い』の知識も使って調べてみましょう。念のため『白蛇の鎖』も使えるようにしておくわ
樹海の出口やエルヴィラについて知らないか聞いたあとは、この子自身のことを聞いてみようかしら。どうしてここにいたのか、無理に聞き出さず、尋ねるというよりは、自分の事も話しつつ、雑談する感じで
枯れても美しさを感じられる世界ね。本当は壊したくないのだけれどね……
アドリブ、連携歓迎
●
バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は毒の扱いに長けている。樹海に満ちる幻惑の毒をすぐに体内に取り込んで毒耐性を獲得し、極力軽減して動けるように適応した。
しかし、入り組んだ枯れ樹の迷路は本物のようだ。まずは地道に進むしかない。
「だれかいるの?」
野生の勘に従って進んだ道で、予定通り白シーツに包まる子と出会えた。
「ええ、あなたも迷子ね。よければ一緒に行きましょう」
バジルの誘いに二つ返事で頷いた白の子は、白衣の隣に並んで歩く。
(出口の鍵になるかもっていうのもあるけど、単純に放っておけないわね)
「こんな毒の樹海にずっといて、体調は大丈夫なの? 私は薬剤師だから、医術と毒についての知識はあるわ。念の為、あなたの事を調べさせてくれない?」
「心配どうも。このシーツが毒から守ってくれるから平気だ。でも脱いだら死んじまうから、診てもらうのは無理だ。悪いな」
「そう、じゃあ具合が悪くなったら言ってね。治療もすぐに出来るようにしておくわ」
「……ああ」
何故少し口籠ったのかは気になるが、歩みも口も止めずにバジルは話を続ける。
「白ちゃんは樹海の出口の場所は知らないのよね?」
「ああ、アンタと一緒の迷子だからな」
「それなら毒の濃度が高い方を重点的に探していきましょうか。あとは、エルヴィラについて、何か教えてもらえないかしら」
「アイツの何が知りたいの?」
シーツ越しに、バジルを、猟兵を、観察している。
「彼女を絶望から救う為に必要な情報が欲しいのよ」
「この国に来る前、元の現実は散々だった。その過去に絶望して、この国で得た力も周りを傷つけるしか出来ない毒で、どうしようもなくて、更に絶望した」
――絶望から救える正解の言葉が、特効薬なんてものがあると思う?
静かな問いに、バジルは一考し、そして頷いた。
「……ええ、きっとどこかにあるわ。私、誰もが誰かの特効薬だと思っているの。ねぇ、白ちゃんのことも教えてもらえないかしら。あなたは、だあれ?」
当ててみましょうか。バジルは面倒見のいい姉のように、そっと微笑む。
おそらくエルヴィラと白の子は――。
「アイツは『毒』、アタシは『薬』。毒にも薬にもなれた花は、毒の力が爆発して、薬の力を切り捨てて閉じ込めてしまった」
「やっぱりね。それなら、彼女の特効薬は白ちゃんだと思うのだけれど……」
「アタシは無理だ。ここから出られないから」
二人は行き止まりに辿り着く。引き返すしかないはずなのに、白の子は動かない。
そこは最も幻惑の毒の濃度が高い一角だった。
「でもそう思うなら、伝言を頼めるかな? 『先に逝ってる、次は……』」
その直後、シーツがふわりと落ちる。黒色に侵された花が地面に散った。
白の子と引き換えに幻惑が解けて、道が開かれたのだ。バジルは花びらを拾う。
「枯れても美しさを感じられる世界ね。本当は壊したくないのだけれどね……」
終わらせるしかない世界で、次を願う。
――次は、毒にも薬にもならない、ただの綺麗な花に生まれ変われるといいね。
成功
🔵🔵🔴
イリス・ローゼンベルグ
●POW
絶望に満ちたパンドラの箱、果たしてそこに希望は残されているのかしら
人の姿は保ったまま、死華の樹海を彷徨いながら話にあった『白いシーツ』の存在を探す
目論見通りその子を見つけられたら手を引いて、話をしながら歩を進める
ねえ、聞いていいかしら?
あなた、迷子だと言っていたけれど、何処に行くつもりだったの?
もしかして誰かを探している、とか?
答えが返ってこないならそれでもいい
ただ答えが返ってきたのなら、可能な限り彼女の意向に沿うつもり
私は……エルヴィラという人を探しているの
何か知らない?
この子が私の考えている通りの存在なら、その話を聞くことがエルヴィラの絶望を和らげる鍵になるはずよ
●
枯れた木々で埋め尽くされた色の無い迷い路を、イリス・ローゼンベルグ(毒を喰らうモノ・f18867)の薔薇色の瞳が見つめていた。
「絶望に満ちたパンドラの箱、果たしてそこに希望は残されているのかしら」
独り言を零して、少女は死華の樹海を彷徨う。
まず見つけるべきなのは出口ではなく、この物語の鍵となる存在……。
――いた。事前に情報を得ていた白シーツの塊との接触に成功する。
「迷子ね、一緒にいきましょう?」
イリスの差し伸べた手にシーツ越しの何かが重なり、ひどく柔い感触が伝わってきた。
きっとこのシーツの中身も人ではないのだろう。イリスと同じで。
「アンタも……植物? よくこの樹海を歩けるな」
「あら、今は人の姿なのに、よく分かったわね」
アタシと似た匂いがするから。そう答える白の子も何かの花なのだろうか。
「この森の幻惑の毒は、植物を枯らす。アタシもシーツを被ってないと、周りの樹みたいに死んじまうんだ」
「そう……私は毒のある花だから。毒にはそれなりに耐性があるの」
なら安心だ。白い子の幼い声から心配の色が消えた。
「ねえ、聞いていいかしら? あなた、迷子だと言っていたけれど、何処に行くつもりだったの? もしかして誰かを探している、とか?」
「探してたのは、アンタみたいな人だよ。後はアンタと一緒に出口を見つければ、アタシの役割はおしまいだ」
私を、猟兵を探していた迷子。役割とは道案内の事か? 今現在も特に進む道は示されず、適当に歩き続けているだけなのだが。
しかし、白の子の役割は恐らくそれだけではない、とイリスは予測する。
「私は……エルヴィラという人を探しているの。彼女を絶望を和らげる為に、あなたから何かを教えてもらえないかと考えているのだけれど」
「和らげる、か……うん。アイツはもう救えないし、終わるしかないところまで来ちまったけど。……ドロドロの毒沼の気持ちのままよりは、少しは安らかに死んで欲しいわな」
次は、もう少しその口の悪さを直せ。余計誤解されやすくなるから。
次は、失敗しても自暴自棄になるな。諦めないでくれ。
「そんな事言っても素直に聞くような奴じゃないけどさ。あと、アタシを捨てるな馬鹿って、ぶん殴っといてくれない?」
『毒』になってしまった彼女に切り捨てられた、『薬』だった欠片が笑った。
何度目かの行き止まりで、白の子との手が解かれた。
「じゃあ、あとはよろしく」
すると、目の前の行き止まりに新しい道が生まれる。
白の子は文字通り、この樹海の出口を開く為の鍵だったのだ。幻惑を解除する為の毒を引き受けた花びらは、白から黒に変わって地面に散っていた。
「あなたは彼女の『絶望』に捨てられた『希望』だったのでしょう?」
捨てられたはずの言葉を拾い集めたイリスは、答え合わせに向かう。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『枯樹死華のアリス『エルヴィラ』』
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POW : 魔女殺し
【猛毒の呪詛】を籠めた【マンチニールの果実の投擲】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【生命力】のみを攻撃する。
SPD : 狼殺し
【スナバコノキの実の破裂】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【高速でまき散らされる種子】で攻撃する。
WIZ : 悪魔殺し
自身の装備武器を無数の【ゼラニウム】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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樹海を抜けると、今度は白の枯樹と黒い死華が折り重なる灰色の海が広がっていた。
燃え尽きた跡のような死灰にの上に、黒色の扉――絶望の扉が立つ。
そして、その扉の前で座り込んでいるそばかすの少女がひとり。
『枯樹死華のアリス『エルヴィラ』』が、猟兵達を待ち構えていた。
「……ああ、来ちまったのか、面倒くせぇ」
死人のように顔色が悪い彼女は眉間の皺を深めて、心底嫌そうに猟兵達を睨む。
オウガはアリスを殺すもの。そしてそれを邪魔する猟兵を殺すもの。
彼女の身体の中に流れる毒が、殺せ殺せと五月蠅く騒ぐ。
うるせぇ。ゆらりと立ち上がった少女は、絶望に染まった瞳を猟兵達へ向けた。
「おら、殺し合いをしに来たんだろ……さっさと終わらせるぞ」
エルヴィラは猟兵達がどのように死華の樹海を越えて来たのか、一切知らない。
彼女の絶望を少しでも和らげる言葉を、猟兵達は見つける事が出来たのだろうか。
毒花に染み込んだ絶望に効く薬を届けられるのは、もう君達だけなのだ。
想いを託された猟兵達は武器と言葉を携えて、エルヴィラへ挑みかかる。
レパイア・グラスボトル
よぉ、薬屋さんよ。
馬鹿の相手は大変だよなぁ。駄目だって言ってんのに食って腹壊したりよ。
産まれる世界が悪かったってのは今更か。
【POW】
触れると危険な果実なら、全身を世紀末的防護服で覆った連中をぶつける。
世紀末的ゴーグルをしていたら果実の煙も防げるだろう。
食ったヤツは知らん。ホームに還って治せ。
家族を盾に接近、【医術】により炎症効果を抑える抑制剤をアリスに投与。
対処療法なら用意は出来そうだな。
毒:
薬草も毒草も配合次第と考える。
毒のまま役に立つ物など尋ねてみる。
科学薬剤の製造は兎も角、古式な薬剤はあまり知らない故に。
己は人を治す生き物として造られた。
彼女はどうして医療者になったのだろう。
●
Let's go! 【ショウタイム・オン・ザ・ファイアワーク】!
エルヴィラが待ち構える灰色の一帯に召喚されたのは、モヒカンや棘付肩パットに爆薬の導火線を仕掛けたイカれたレイダー集団だ。世紀末的防護服&世紀末的ゴーグルの対毒装備でエルヴィラを囲んで飛び掛かる。毒を乗り越え死なば諸共神風特攻隊!
「おいおい、随分とクレイジーな客が来たもんだな」
エルヴィラは顔を顰めてマンチニールの果実を投げ付けた。導火線が爆発する前に果実が弾け、レイダー集団を襲う。普通の毒であれば世紀末的防具で事足りただろう。しかし、
「これは呪いだ。テメーらの命はここで朽ちる」
猛毒の呪詛は服に触れただけでも持ち主の命を奪う。バタバタと倒れて行く集団に背を向けてエルヴィラは遠ざかっていく。後ろで爆発音が響いた。
――ブスリ。突然、首元に鋭い痛みが走る。
「よぉ、薬屋さんよ」
「……っ!!」
勢いよく振り向いた先には、注射器を構えるレパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)が立っていた。レイダー集団を盾に猛毒の呪詛を防いだレパイアは、エルヴィラに接近出来る隙を狙っていたのだ。
エルヴィラはすぐに毒の果実を投擲しようとするが……身体が思うように動かない。よろけるように一歩二歩とレパイアから距離を取り、怪しげに笑う白衣姿の女を睨み付ける。
「……テメー、あたしに何を打ちやがった……っ!」
「なぁに、ただの抑制剤だ。対症療法なら出来そうだったのでね」
根本的な解決が難しいのなら、現れた症状に対応して処置を行えば良い。彼女の中で強くなり過ぎてしまった毒を、炎症を少しの間だけ抑えつけてやっただけだ。
「ワタシと少しだけおしゃべりしてくれよ。科学薬剤の製造は兎も角、古式な薬剤はあまり知らないから興味がある」
「生憎、あたしはただ毒女に成り下がっちまってね。お薬については語れねぇなぁ」
「なに、薬草も毒草も配合次第だろ。馬鹿の相手は大変だよなぁ。駄目だって言ってんのに食って腹壊したりよ。毒のまま役に立つ物などはないのか?」
こいつは自分の過去について何か知っているのか。エルヴィラは露骨な舌打ちをする。
「……スイセンとベラドンナは、アルカロイドっちゅう有機化学物が他の生き物にとって毒になる。誤食すれば毒だが、スイセンは排膿消腫の外用薬に使えるし、ベラドンナは用法用量を守ればいい。鼻炎薬になるし有機リン剤中毒の解毒剤にもなる」
「使い方次第という事か、流石詳しいな。……産まれる世界が悪かったってのは今更か」
今更だな、と鼻で笑い飛ばされる。その瞳は世界に何の希望も抱いていなかった。
「ワタシは人を治す生き物として造られた。アンタはどうして医療者になったんだ?」
「育ちの親だったばーさんが薬師だったから……嫌々継いだだけだ」
それだけだ、と。そうか、と。最後にそれだけ交わして、レパイアはエルヴィラと距離を取った。彼女の毒性がどれだけのものかは分からないが、そろそろ薬が切れる可能性がある。毒を防ぐ盾は品切れなので、一旦引き下がるしかない。
彼女のルーツを探る会話も、彼女にとって薬になっているとよいのだが。
成功
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バジル・サラザール
世界を救う治療とはいえ、一人を切り捨てるようで少し気が重いわね
『毒使い』『医術』を生かして『ハイパーデトックス』を使うわ
『ヒュギエイアの薬箱』も使って自分や仲間の治療もしましょう
エルヴィラにも使って、弱らせたり……苦しみを和らげたりできないかしら
攻撃を『野生の勘』も用いつつ回避や相殺、『毒耐性』で耐えたりしつつ、懐に潜り込んで注射してみましょう
毒と薬は表裏一体、分けられるものじゃないと思うのよ。それだけの毒が使えるのならきっと誰かの、あなた自身の薬になれるはず
伝言を預かってるのよ。私の言葉じゃ薬になるかは分からないけれど、あの子の、あなた自身の言葉ならきっと……
アドリブ、連携歓迎
メルフローレ・カノン
エルヴィラさんと対峙ですね。
まずは、「白の子」の案内でここまで来たことは伝えます。
エルヴィラさんを止めるよう頼まれましたが、
単純に殺し合いだけのためもないと私は思いました
「白い子」と道中でしていた話の続きのつもりで、
エルヴィラさんと話をしましょう。
彼女に生い立ち、思い、その他色々話してもらいたいなと。
純粋に言葉を交わし、理解しあえれば、少しは絶望感も紛れるかもしれません。
本当は、あの「白い子」とも話し会うことができれば
よかったのでしょうけど。
話し合うために、【無敵城塞】は準備してきました。
話し合う間、多少は攻撃にも耐えられるでしょう。
※戦闘に際しては、私の得物はメインがメイス、サブが剣です。
●
それはまるで悪性腫瘍のようだ。
正常で在れるはずだったのに幾つもの傷がついて発生してしまった異常。
周りを巻き込み壊れて壊して、増えて広がって止められなくて。
治療の手段などひとつしかない。分かっていた事だ。
「世界を救う治療とはいえ、一人を切り捨てるようで少し気が重いわね」
けれど、一猟兵として一医療従事者として。アリスラビリンスの世界に毒が浸透する前に、エルヴィラとこの国を切除しなければならないから。バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は治療を開始する。
「さて、こいつを打ち込む隙が欲しいところだけれど」
ヒュギエイアの薬箱から必要なものを取り出したバジルが思案していると、
「私もエルヴィラさんを止めるように頼まれてここまで来ました。これは単純に殺し合いをするだけの戦いではありません。共に参りましょう」
同じように死華の樹海を抜けて来たメルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)はバジルにそう声をかけて、エルヴィラへ駆け出していく。
「そんなに毒されてぇなら……ほらよ」
エルヴィラは直進してくる猟兵達へマンチニールの果実を投げ付けた。けれど、果実が猛毒を撒き散らす前に、メルフローレは全ての災厄から身を守れるように神へ祈りを捧げる。
弾ける毒と命を奪う呪詛――、しかし、その全てを一身に受けたメルフローレは【無敵城塞】で守られていた。すると、メルフローレの背後に隠れていたバジルが飛び出し、猟兵達を仕留めたと油断しているエルヴィラへ極細の注射針を打ち込んだ。
「くっ……お前も毒使いかよ……っ」
「甲の薬は乙の毒、生かすも殺すも薬師次第、なんてね」
バジルが【ハイパーデトックス】で注射したのは、味方を癒やす事も毒や病を宿す敵にダメージを与える事も出来る、毒にも薬にもなる薬剤だ。毒性の強い彼女にとってはきつい薬だったのか、一瞬苦悶の表情を浮かべる……だが、暫くすると。
「なん、だ……これ……」
「やっぱりね。これならあなたの毒を、あなたの苦しみを、少しの間だけでも和らげたりできないかしらと思ったの」
先程までの周りにいるものは全て敵だと認識しているような棘だらけの表情が和らいでいる。まるで麻薬性の鎮痛薬を受けた患者のようだ。意識も朦朧としているのか、エルヴィラは焦点の定まらない眼差しで虚空を見つめていた。
「エルヴィラさん。私の声が聞こえますか。私達は、白の子の案内でここまで来ました」
「白の子?……あいつ……あたしが、捨てたのに……」
「あの子にあなたの事を止めて欲しいと頼まれました。あなたを恨んでいるようには見えませんでしたよ。本当は、あの子とも話し会うことができればよかったのでしょうけど……代わりに、お話させてください。あなたの事を教えてください」
「あたしは……あたしは……本当は。毒になんて、なりたくなかった……」
メルフローレは無敵城塞を解いてエルヴィラの手を握った。毒性を封じられている今なら、彼女に触れられる。
「ええ、分かります。エルヴィラさんは薬師だったのですか?」
「ああ……ばーさんが、薬師で……継いだ……けど。上手く出来なくて……あたし、こんなんだから、口悪ぃから……嫌われてて……あいつら、人の話聞かなくて、余計……」
紡がれる言葉に棘は無く、ぽつりぽつり頼りなく零されていく。
「そうでしたか。……他の人達とも、こうやって純粋に言葉を交わし、理解し合えれば良かったですね」
「『先に逝ってる。次は、毒にも薬にもならない、ただの綺麗な花に生まれ変われるといいね』」
エルヴィラの顔がバジルへ向けられる。
「白ちゃんからの伝言よ。あの子の、あなた自身の言葉なら、あなたに届くかしら」
バジルがエルヴィラに出す処方箋。
それは自分自身が閉じ込めて殺してしまった心の声。
「毒と薬は表裏一体、分けられるものじゃないと思うのよ。それだけの毒が使えるのならきっと誰かの、あなた自身の薬になれるはず」
もしも次があるのなら、もう誰も傷つけないように――。
毒を吐かないように生きたい、とエルヴィラは掠れた声で願う。
凝り固まった捻くれ者の表情筋は、酷く不器用に歪み。笑顔に見えなくもなかった。
成功
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毒を強制的に押さえつける薬を立て続けに投与されたせいか、エルヴィラは霞がかる頭を押さえてふらついていた。あっちの世界もこっちの世界ももう全部どうでもよくて、抑えきれない毒を垂れ流していたというのに。
――もしも次があるのなら――。
そんな下らない願いを引き出されてしまった。情けない。唇をぐっと噛み締める。
心の奥底に閉じ込めて殺した声を、今更連れて来られるなんて……。
ああ、また奴らが来る。
猟兵の気配を察知したエルヴィラは静かに毒の息を漏らした。
どうせ終わりにするのなら、今ここで……。華は嫌いな毒を吐く。
八岐・剛牙(サポート)
竜神の悪霊×神器遣い、42歳のおっさんです。
普段の口調は「気さくなおっさん(おら、お前さん、だ、だべ、だべさ、だべ?)
真剣な時は 竜神(我、お主、言い捨て)」です。
日常・冒険では気さくな感じで一般人に話しかけたり、コミカルな感じな行動をとります。
集団戦・ボス戦では竜神口調となり竜神の威厳を見せながら前衛に立ち、敵に神罰を下すと言う気持ちで敵と戦います
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「お前か、アリスラビリンスに毒を撒き散らそうとしている輩というのは」
白と黒の死灰が広がる一帯に、威厳に満ち溢れた三つ首の竜神、八岐・剛牙(竜神の悪霊・f28093)が降り立った。
「我が来たからには、そのような悪行は許さん。例えどのような理由があったとしても、お前はここで止める。神罰を下してやろう」
「はっ、許してもらおうなんざ思っちゃいねぇよ。御託はいいからさっさとかかって来いよ、おっさん!」
神罰なんてクソくらえ。エルヴィラはゼラニウムの毒刃を剛牙に向かって吹雪かせた。彼女の扱う猛毒は呪詛の領域に達している。毒に触れれば、神も悪魔も悪霊も関係なく朽ちさせるだろう。
「小童が。ここにはいつもの気さくなおっさんはおらぬ。さあ、神の掌で転がされる体験でもしてみるか」
何を言ってやがると口に出すよりも先に、エルヴィラの視界がぐにゃりと歪んだ。受け身を取る暇も無く無防備に身体が地面に打ち付けられる。彼女が操っていた毒刃の花びらも途方もない場所へと飛んで行ってしまった。
「テメー、な、にをした……!」
「なあに、【神の悪戯心】が働いただけのことよ」
剛牙は既に空間認識力の欠如をもたらす罰をエルヴィラに下していたのだ。地面を這いずって何とか立て直そうとするが、
「ほら、罰は続くぞ」
剛牙が手をギュッと握る仕草をしてみせると、
「あ゛あ゛――――っ!!」
エルヴィラの絶叫が空虚な世界に響き渡った。足に走る激痛は生前の拷問を思い出させる。
「ち、っくしょう……! 死ねっ! お前も! 地獄に落ちろ!! ×××!!」
操作不能な花びらをどんなに量産されても、避ける事は容易い。最早何と言っているのかも聞き取れない罵詈荘厳を受けても、剛牙は心を揺らさず佇んでいた。
「そうだ、吐け吐け。あがけ。全部どうでもいいなどと投げ出さずに、今その命があるうちに、全ての毒を出し切ってしまえ」
お前もそう思っていたのだろう?
エルヴィラの思惑までも掌握していた剛牙は瞳を細めた。
竜神の悪霊が下した罰は、長く溜まり続けた膿を無理矢理出すという荒っぽい処置でもあったようだ。
成功
🔵🔵🔴
エウトティア・ナトゥア(サポート)
※アドリブ・連携歓迎
負け描写、引き立て役OK
キャラを一言で言えば、なんちゃって部族じゃよ。
精霊と祖霊を信仰する部族の巫女をしておる。
自然が好きなお転婆娘じゃ。
あとお肉が大好きじゃよ
活発で単純な性格で事の善悪にはあまり興味はないのう。
自分とその周囲の安寧の為、オブリビオンが害になるから戦っておる。
専ら【巨狼マニトゥ】に騎乗していて、移動や回避・近接戦闘等は狼任せじゃよ。
ボス戦時は、動物や精霊を召喚しての行動(実は未熟ゆえ精霊や動物たちにフォローされている)で数で対抗しつつ、自身は後方で弓矢や術で援護するスタイルじゃ。
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――ヒゥンヒゥンヒゥン。
風精霊の力を授かり風術を付与された矢は、狙い通りの的を射抜く。猟兵の攻撃で弱っているエルヴィラへ放たれた複数の矢は、彼女の服を捕らえて地面に縫い付けた。
「随分痛めつけられたようじゃのう。毒はしっかり吐き切れたか?」
エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)は巨狼マニトゥに騎乗して、遠距離から手製の短弓を引いていた。ほとんど人型である彼女がキマイラである事を証明する獣耳が、ピクリと動く。後方の死華の樹海から音が近付いてくる。
「もうすぐ樹海を越えた猟兵達がここへ辿り着くはずじゃ。何やら貴殿に届けたい言葉があるそうでのう。それまで少し休んでいると良いじゃろう」
「はっ、余計なお世話だ。あたしの毒はまだ……残って、る!」
身体は動かせなくても毒は自由に操れる。エルヴィラは残る力を振り絞ってエウトティアを睨み付けると、籠の中からゼラニウムの毒刃が飛び出し、辺り一面に舞い散った。花びらは意思を持ったようにエウトティアとマニトゥに襲い掛かる。
「手負いの獣が危険なのは承知しとるよ。――精霊よ、森羅を育む恵みの雨を!」
エウトティアが精霊に祈りを捧げると、戦場に恵みの雨が降り注ぐ。雨は死を招く毒刃の花びらを包み込み、流してしまう。そして――。
「あ、あ……」
エルヴィラは言葉を失っていた。
死灰色に埋め尽くされていた一帯は、緑の草原に塗り替えられていたのだ。
自分の毒に侵されて枯れて死んでしまうはずの緑が、どうして……。
「これはわしの故郷の草原じゃ。精霊が誘う幻想に過ぎないが、なかなか良いもんじゃろ」
幻なら奪ってしまう命も持たないから。高度な幻想は見る者の感覚にも作用する。
手に触れる草の瑞々しさが、青々とした命の匂いが、エルヴィラの心を癒やしていく。
「終わりの時は近いのじゃろう。あとは――あるがままを受け入れるのじゃ」
成功
🔵🔵🔴
安寧・肆号
あら、あら!
殺し合いだなんて、恐ろしいことしたくないわ。
でも、そうよね。オウガなアリスなら、戦わなくちゃいけないのよね!
鮮やかな色が綺麗なゼラニウム!
綺麗な庭園には音楽が必要ね。
骸骨さんたちに演奏してもらいましょ!
花びらは演奏の衝撃波で防御、骸骨さんたちは楽器自体を鈍器として攻撃してくれるの!
アナタ、お花好きなのよね!
お庭で沢山の草花を育てていたのでしょう?
他でもないアナタ、アナタが教えてくれたの!
名残惜しいけど、音楽ももう終わりね。
綺麗なお花をありがとう、アリス。
●
緑の幻想は跡形も無く消えて、元の死灰色が辺りに広がる。矢で地面に縫い付けられた服を引き千切って、エルヴィラは死華の樹海を越えて来た猟兵と向かい合った。
「あら、あら! 殺し合いだなんて、恐ろしいことしたくないわ。……でも、そうよね。オウガなアリスなら、戦わなくちゃいけないのよね!」
戦場には不釣り合いな子供っぽい明るい声。安寧・肆号(4番目の人形・f18025)は、エルヴィラに向かって笑顔で小首を傾げる。
「ああ、そうだ。テメーも仲良しこよしをしに来たわけじゃねーだろ。ほらよ!」
挨拶代わりに放たれるのは、ゼラニウムの花びら。それはエルヴィラの呪いの毒刃となって襲い掛かるはずだったのだが……舞い散る花びらは、夕焼け色に染まっていた。
いつもはもっと毒々しい色のはずなのに、と。エルヴィラも驚いていた。どうやらエルヴィラの毒は、猟兵達へ応戦し続けたせいで一時的に弱まっているようだ。
「鮮やかな色が綺麗なゼラニウム! 綺麗な庭園には音楽が必要ね。骸骨さんたちに演奏してもらいましょ! 『まぎあ・むーじかもるてぃす!』」
そんな事情など知らない安寧肆号は、【少女指揮・骸骨楽団】の巨大な骸骨の霊を召喚した。オーケストラに使われる楽器をそれぞれ構えた骸骨楽団が演奏するのは、オウガのアリスを骸の海へと送る餞の楽曲だ。打楽器の衝撃波が叩き落した花びらを木管金管の音色が集めて、弦楽器が空の彼方へと運んでいく。
「アナタ、お花好きなのよね! お庭で沢山の草花を育てていたのでしょう? 他でもないアナタ、アナタが教えてくれたの!」
飛んで来る衝撃波に撃たれながら、エルヴィラは安寧肆号に目を見開く。
「っ、……テメーも、あいつに会ってたのか」
「ええ、色んなお話をしたの。アナタは口が悪いけど植物に詳しい薬師だったって。沢山のお花を枯らしてしまったのは哀しかったでしょうけど。今アナタが見せてくれたお花はとても綺麗だったわね」
「……きっと、今だけだ、今終わりに出来なきゃ、また毒を吐いちまう」
それでも――最期に出せた花の色を思い出しながら、エルヴィラは瞳を閉じる。
「そうね、名残惜しいけど、音楽ももう終わりね」
終止の和音がエルヴィラを撃つ。倒れるエルヴィラに安寧肆号は別れを告げた。
「綺麗なお花をありがとう、さよならアリス」
成功
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イリス・ローゼンベルグ
同類の先輩から一つアドバイスよ、自分を責めない事
自分を責めても苦しむだけ、自分勝手でも開き直りでもいいから
自分に何を出来るかを考えなさい
あの子のような希望を自分から捨てる必要なんてない、そうでしょ?
話をしながら【茨の触手】を解放し、エルヴィラと対峙
攻撃は避けない【毒耐性】で彼女の毒に耐え、【薔薇は散らず】でそれを取り込み回復
そして触手を振るい、苦しまないように心臓を【串刺し】で貫く
あなたは毒になりたくないと言ったけど、私は毒も嫌いじゃないの
もう少しあなたと会うのが早ければいいコンビになれたかもしれないのに、残念だわ
あーもう、やっぱりこういう相手は苦手だわ
どうせ殺すなら悪党がいい
心からそう思った
ユヌ・パ
白いあなたに会ってから
ずっと考えてた
なんて言ったら、あなたの『絶望』が和らぐか
でも、なにも思い浮かばなかった
だって
何を言っても気休めだって、わかるんだもの
鏡写しみたいなアリス、エルヴィラ
あなたは、オウガに成り果てたあたしだわ
だから
あなたを終わらせる
そのために、あたしは来たの
今度こそ
本当の眠りを、あなたにあげる
攻撃も回避もしない
悪霊に生命力なんてないから
あなたの毒でも殺せないわ
それで終わり?
逝く覚悟ができたなら
青白い炎で弔うわ
安心して
あなたの『絶望』は
これ以上、どこへも広げたりしない
ここで、すべて終わりにすると誓うわ
あなたの『真実』は、あたしが持っていく
だから、あなたはさっさと『次』を生きなさい
●
エルヴィラは絶望の扉に寄りかかって立っていた。
その表情は想像していたよりかはずっと、荒んではいなかった。
既に到着していた猟兵達が彼女に『何か』を届けたのだろう。
後から来た猟兵達には、彼女に何があったのかまでは分からない。
けれど、彼女は今自分達を待っているのだと。
静かな彼女と対峙して、そう思ったのだ。
毒を吐かずに口を噤む彼女へ、最期に伝える言葉は――。
「白いあなたに会ってからずっと考えてた。なんて言ったら、あなたの『絶望』が和らぐか……でも、何も思い浮かばなかった。だって、何を言っても気休めだって、わかるんだもの」
沈黙を破ったのは、ユヌ・パ(残映・f28086)だ。しかし、ユヌが考えて考えて考えて出した答えは、『自分に届けられる言葉はない』だったのだ。
自らの毒に飲み込まれたアリスのオウガ、エルヴィラ。
「あなたはあたしの鏡映し、オウガに成り果てたあたしだわ」
私は、私を救う言葉を知らない。だから、あなたを救う言葉も持たない。だけど、
「だからこそ、あなたを終わらせる。そのために、あたしは来たの」
エルヴィラ、あなたは終わりにしてくれる人を待っていたのでしょう?
そんな哀しい望みしか抱けない痛みまでも、ユヌにはわかってしまうから。
「今度こそ、本当の眠りを、あなたにあげる」
エルヴィラは返答の代わりにマンチニールの果実を放り投げた。
それは本来なら生命力を奪う猛毒の呪詛を撒き散らすはずなのだが……一時的に毒気が薄れているその攻撃は、微かな絶望の念を漏らすだけだった。
もともと生命力のない悪霊として存在しているユヌは初めから避ける気などなく、自ら崩れていく果実を変わらぬ表情で見届けている。
「あたしの毒は今はこれっぽっちだ。けど、回復したら……また毒を吐くしかなくなる。分かるんだ。だから……テメーの言うように、終わりにするしか、ねぇ」
「……そう、毒のコントロールが出来るようになったのかと思ったのだけど。そんな都合の良い奇跡なんてものは起こらないのね」
ユヌとエルヴィラの話を隣で聞いていたイリス・ローゼンベルグ(毒を喰らうモノ・f18867)は、エルヴィラの攻撃のタイミングで茨の触手を解放し、【薔薇は散らず】の防御態勢を取っていた。不発した毒に一縷の希望を掴みかけた気がしたが、すぐに掌から零れ落ちてしまう。心苦しいが……それなら、自分のやるべき事は決まっている。けれど、その前に。
「あなたは毒になりたくないと言ったけど、私は毒も嫌いじゃないの。もう少しあなたと会うのが早ければいいコンビになれたかもしれないのに、残念だわ」
予想外の言葉を投げかけられたエルヴィラは、無防備なきょとんとした顔を見せる。そういう顔をしていれば、普通の少女と変わらないのに。
「は? 何言って……くっ、ははっ……テメー、趣味悪ぃなぁ」
不器用に顔を歪めて笑うエルヴィラに、イリスも薄く微笑み返す。
いいのか、毒でも。綺麗なだけの花でなくても。こんな口の悪い愚かな女でも。
「同類の先輩から一つアドバイスよ」
自分を責めない事。自分を責めても苦しむだけ。
自分勝手でも開き直りでもいいから、自分に何が出来るかを考えなさい。
「あの子のような希望を自分から捨てる必要なんてない、そうでしょ?」
白の子の伝言を、彼女が捨てた心の声を、イリスなりの言葉で彼女へ返す。
「ああ……そうだな」
こうして、絶望に捨てられた希望の欠片は持ち主の元へと届けられた。
「逝く覚悟が出来たなら、送り届けるわ」
彼女の心は和らいだ。けれど彼女が胸に抱えている絶望が無になったわけではない。
元の世界で経験した思い出したくもない記憶。暴走してこの国を滅ぼしてしまった罪。
無かった事には出来ないそれらへの想いは、絶望の扉に詰まっている。
「安心して。あなたの『絶望』はこれ以上、どこへも広げたりしない。ここで、すべて終わりにすると誓うわ」
「ああ……」
頷いたエルヴィラは、不意にユヌと視線を合わせる。
そして、届くか届かないかくらいの微かな声で、何かを囁いた。
――あたしとあんたはひとつだけ違う。あんたはまだ、終わってねぇよ。
それ以上の事は言わずに、エルヴィラは口元を小さく歪めた。
「あとはよろしく」
両手を広げたエルヴィラの心臓を、イリスの触手が貫いた。
苦しまないように、一瞬で逝けるように。
そしてその身体を、ユヌの【オウガ・ゴースト】の青白い炎で焼き弔っていく。
「あなたの『真実』は、あたしが持っていく。だから、あなたはさっさと『次』を生きなさい」
エルヴィラが完全に消えると、イリスは長くて深い溜息を吐く。
「あーもう、やっぱりこういう相手は苦手だわ。どうせ殺すなら悪党がいい」
心からそう思い知る、荷の重い仕事だった。
大成功
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第3章 集団戦
『共有する者達』
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POW : 遊ぼう!遊ぼう!
自身の【食べたアリスの悲しい記憶】を代償に、【食べたアリスの楽しい記憶にあるもの】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【その姿に見合ったもの】で戦う。
SPD : 見て見て!そっくりでしょ?
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【食べたアリスの記憶にあるもの】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ : お茶会しよう!色んなお話し教えて!
【食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物】を給仕している間、戦場にいる食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
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エルヴィラが完全に消えると、『絶望の扉』にヒビが入り一気に砕けた。
扉の破片が飛び散るのと同時に、扉の中で誕生を待ち構えていたオウガの群れが飛び出した。猟兵達の足元を潜り抜けたそれは、小動物のようなオウガ『共有する者達』だ。
オウガを追おうとする猟兵達は、突然の激しい地震に一瞬足を取られる。
絶望の国が崩壊を始めて、死華の樹海が崩れ落ちたのだ。
一目散に飛び出したオウガの群れは、樹海の出口に溜まって何かを口にしている。
もぐもぐと咀嚼しているのは――白の子が残した花びらだ。
共有する者達はアリスを食べる。ここではアリスだったものの欠片に反応したようだ。
この国には花びらしか残されていないが、彼らが他の国のアリスを求めて飛び出してしまうのも時間の問題だろう。
わかるよわかるよ。キミのかなしみ。わすれたいきおく。
ちょうだいちょうだい。ボクらがみんなたべてあげるから!
甘い言葉に騙されたら、命ごとぺろりとまるかじり。甘い毒はアリスを殺す。
誰にも理解されなかった絶望は、そんなオウガを生み出していた。
花びら、エルヴィラの一部だったものの欠片には、彼女の『悲しい記憶』も『薬師としての記憶』も含まれている。彼女の記憶を悪戯に利用するオウガが他の国のアリスを殺す。そんな事態は絶対に防がなければならない。
猟兵達がエルヴィラの絶望を和らげてから倒したおかげで、その総数は少ない。
今なら完全に殲滅させる事が可能なはずだ。
崩壊する国の中でオウガの群れを全て倒し、この国を終わりへと導こう。
メルフローレ・カノン
エルヴィラさんから後を任されましたので
オウガを余所に撒き散らすことはさせません。
ましてや、彼女の記憶をオウガに利用させるなどもってのほかです。
オウガは一匹残らず殲滅します。
それでは、全力で行きますよ!
私の得物はメインがメイス、サブが剣です。
[怪力][力溜め]の上で、[2回攻撃][なぎ払い]で
たくさんの敵を薙ぎ払い蹴散らして行きます。
さらに、【神の見えざる手】により、遠距離に敵や逃げ出す敵を
念動力で捕まえ、叩き潰します。
「神よ、その奇跡の御手を、暫しお貸し下さい……」
敵の攻撃は、
[武器受け][盾受け][オーラ防御]をもって堪えます。
ピンチの人は[かばう]で守りましょう。
●
崩壊する国の中で、メルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)は足元を駆け抜けて行くオウガの群れを目で追っていた。
「神よ、その奇跡の御手を、暫しお貸しください……」
メルフローレが捧げた祈りは彼女が信仰する神へと届き、
――ダンッ、ダンッ、ダダダダダダッ――
オウガが逃げる方向へ地を穿つ穴が次々と生まれる。不可視の神の拳が悪しきものを捕らえに来たのだ。小動物型のオウガは四方八方へちょろちょろと逃げ惑うが、見えない追跡者は一匹一匹確実に殴り、叩き潰し、その存在を消していく。
「オウガは一匹残らず殲滅します。全力で行きますよ!」
しかし、もう既にアリスの欠片を食べてしまったオウガ達もいる。
悲しみがたっぷりと詰まった記憶を食べて、共有する者達が創り上げたのは――ひとりの老婆。エルヴィラが『ばーさん』と呼んでいた薬師だろうか。老婆はエルヴィラと同じように、籠から取り出した花を操ってメルフローレを毒で侵そうとしてくる。
「エルヴィラさんから後を任されましたので、オウガを余所に撒き散らすことはさせません。ましてや、彼女の記憶をオウガに利用させるなどもってのほかです」
メルフローレは神の手で旋風を巻き起こし、毒の花びらの進路を変えて自分を素通りさせる。そして、メイスを握りしめて老婆の元へと駆け出した。
「あなたはオウガがエルヴィラさんの記憶から生んだもの……その身体に元の魂は無いのでしょう。その身体はあなたが気安く操っていいものではありません」
共有する者達はアリスの『悲しい記憶』を代償に、『楽しい記憶』にあるものを戦わせるという。薬師の師匠であるこの老婆が現れたという事は……。彼女達の記憶をこれ以上汚してはならない。
投げられた毒の果実はメイスで薙ぎ払い、破裂する毒にも被弾しないようにラウンドシールドで身を守る。そして、自身の射程圏内に潜り込んだメルフローレは、全力の怪力をメイスに込めて振りかぶる――。身体を二つに折られた老婆だったものは枯れた樹となり、崩壊する国に飲み込まれていった。
――カサカサ、――ひょい。
戦闘の隙を見て脱走を図っていたオウガが、首根っこを掴まれた姿で宙に浮かぶ。
「逃がしませんよ」
神の手がオウガ握り潰し、彼女の記憶を悪用した罰を与えた。
成功
🔵🔵🔴
カズマサ・サイトウ(サポート)
普段の口調は「あっし、お前さん、でさぁ、ですぜ、だよ、ですぜ?」、お偉いさん「わたくし、~様、です、ます、でしょう、ですか?」
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、連携の際はライオットシールドで味方をかばう優先。
基本的に己の能力を武器として使用し手に負えない状況にUC使用。
防衛系の戦闘の場合は守備を優先。ただの殲滅の場合、単独または味方が援護系なら突撃する。
近接攻撃を主とする味方が多い場合はライオットシールドで防御しつつ囮になるように行動する。
ガスマスクを装備し耐毒能力を底上げ。
スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!
夜神・静流(サポート)
「夜神の剣は魔を討つ刃。悪しき魔物が出たならば、何時でもこの剣を振るいましょう」
破魔技能に特化した退魔剣士。あるいは悪い人外絶対殺す女。
妖怪や悪霊、魔物、邪神等を討つ事を得意としており、その手の依頼には積極的に参加する。
一般人や仲間、友好的な相手には礼儀正しく接するが、討つべき邪悪に対してはとことん冷徹非情で、一切の慈悲を持たない。
戦闘中は抜刀術と退魔の術を合わせた独自の剣術(ユーベルコード)を状況に合わせて使用。
逆に戦闘と退魔以外の事に関しては不得手で、機械や横文字が苦手。
シナリオ中の行動に関しては、魔を討ち、人々を護るという自分の使命を第一に考える点以外は全てお任せします。
崩壊する世界の最期の大掃除。残るは絶望の扉から飛び出してしまった小さなオウガ達の殲滅だけだと聞いて、三人の猟兵達が駆けつけてくれた。
「私は世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をする為に戦っています。この国のオウガを他の世界へ逃がすわけにはいきません」
「夜神の剣は魔を討つ刃。悪しき魔物が出たならば、何時でもこの剣を振るいましょう」
スピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)が精霊印の突撃銃を、夜神・静流(退魔剣士の末裔・f05903)が愛刀十六夜を手に構えて、死華の樹海の跡地に溜まるオウガへ駆け寄ろうとすると――。
「さあ、一気に片付けてしまいやしょうかねぇ!」
毒マスクを装備した巨漢、カズマサ・サイトウ(長きに巻かれる、おにぎり大好き風来坊・f26501)が真っ先に飛び出した。丸太のような腕を振るうと、【クライシスゾーン】により崩れ落ちた死灰が超次元の竜巻に変化して、オウガの集団へ襲い掛かる。
「どうせ崩壊しちまう国なら何を使ってもいいはずでさぁ」
竜巻に巻き上げられた小動物型のオウガ達は、スピレイルの炎の精霊の力を宿した弾丸によって正確に撃ち抜かれ、消滅した。
「後方支援はお任せください!」
「おぉ、感謝しますぜ。代わりに盾役はあっしが担いやしょう!」
敵の攻撃はまだ読めないので、カズマサは後方の仲間も守れるようにライオットシールドで防御しつつオウガの集団へ突っ込んで行く。すると、
――パラパラパラ。
シールドに何か軽いものが当たる音がする。足元に落ちるこれは……小さな赤い実?
――せっかくわけてあげたのにね。ボクらのオヤツ。
それはイチイの実。種こそ毒だが、熟した実の部分なら毒は無く味は甘い。
エルヴィラの好物だったというそれを盾で拒否したカズマサは、一時的に行動速度を五分の一にされてしまった。
毒種マシンガンに毒の前歯。ガスマスクにより毒ガス対策をしていたカズマサだったが、その露出した傷だらけの肌に新たな生傷が次々と刻まれてしまう。
「光あれ。この者の傷と痛みを癒し給え」
すると、後方から届いた青白い月の光がカズマサの傷を癒やしていく。静流の左手の聖痕から【月光の癒し】が放たれたのだ。
「こちらにまで給仕が行き届かなかったようですね」
光が収まると同時に前線へ跳んだ静流は、目にも留まらぬ抜刀術でカズマサに群がるオウガを微塵に斬り捨てた。
そんな中、スピレイルの猫耳がぴくぴく動く。三名の猟兵と敵対するのは分が悪いと判断したのか、こそこそと逃走しようとするオウガの群れを精霊の瞳が見つけた。
「そっちに行っては駄目です。土の精霊さん。力を貸してください!」
スピレイルにお願いされた【土の精霊は阻む】。死灰色の一帯を精霊の力を宿した土で迷路に作り変えてしまったのだ。これでもう暫くの間オウガは逃げられなくなったので、後は袋の鼠を狩ればいいだけなのだが、
「こっちに溜まってるオウガがいましたぜぇ!」
迷路の奥からカズマサの声が聞こえる。速度が元に戻った彼は盾を前にかざし、まとめて排除してしまおうとオウガの群れをブルドーザーのように掻き集めて、静流とスピレイルのいる方へ向かって来ていた。
「まだこんなに潜んでいたのですね。このオウガは人を騙して人の記憶と身体を喰らい利用する邪悪。今ここで全てを討ち滅ぼしましょう」
狭い迷路の中なら此方の方が操りやすい。静流は脇差の白夜に持ち替えて、オウガの群れに刃を振るった。破魔の力が込められた霊刀は、神秘的な純白の光を残しながらオウガを骸の海へと送り還していく。
――そろ、り。猟兵達の背後に一匹だけ潜んでいたオウガが、今のうちに出口を目指そうと後退りした。しかし、
――サクッ。スピレイルの精霊の護身用ナイフが、オウガの背中を貫いた。
「お掃除は隅々まで行いましょう!」
鼠一匹逃さない。猟兵達は狩人のように瞳を光らせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
スミンテウス・マウスドール
※アドリブ他歓迎
迷子のアリス。迷子は終わったのか。
君が満足なら、それは何より。
愉快な仲間は君のため。
…君のためだけど、お茶会は別。
お茶会するなんて、聞いてないよ。
いやあ、困ったな。嬉しいな。今日は持ち合わせ少ないけど良い?
アリスの好物?なんだろ。
喜んで頂こ。お茶はあるからね。お茶があれば何でも合うさ。
茶菓子に白い花?
やめろ、やめろ。それはあの子のだ!
口にしたやつはドードーの餌だよ。
ちれ、ちれ。急いで回らないと体は乾かない。
君たちを餌にして、おしまいさ。
●
「迷子のアリス。迷子は終わったのか」
スミンテウス・マウスドール(だれかが視てる夢・f25171)は死華の樹海を出たところで、エルヴィラが猟兵達に骸の海へ案内される最期の瞬間を見届けた。
彼女はハートの女王みたいに怒りっぽくってどこか寂しそうな顔をしていたけれど、最期は鼻にジャムを塗られたヤマネみたいに穏やかだった。
「君が満足なら、それは何より。愉快な仲間は君のため」
君を助けたかっただけだから。
そして、砕けた絶望の扉からオウガが溢れ出した。
国の崩壊で樹海が崩れて、地震でよろめく。すると、サーッと足元まで駆けて来た小動物型のオウガが、スミンテウスを見上げた。
――ネズミさんネズミさん。おちゃかいしようよ!
「お茶会するなんて、聞いてないよ。いやあ、困ったな。嬉しいな。今日は持ち合わせ少ないけど良い?」
――いいよいいよ、アリスのすきだったオヤツをわけてあげる。
「アリスの好物? なんだろ。お茶はあるからね。お茶があれば何でも合うさ」
――こうちゃには、イチイのジャムを! ジャムクッキーもいっしょにね!
ジャムだって!? 手に取った瓶には赤いジャムの中に黒の粒と白の花びら。
……。……。白の花びら?
――もしゃもしゃ。どうかした? アリスのきおくはおいしいね。
黒の粒はイチイの種。食べたら猛毒。
そんなこと、スミンテウスは知らないけれど……それでもこれは食べられない!
「やめろ、やめろ。それはあの子のだ! 口にしたやつはドードーの餌だよ」
バッシャン!
スミンテウスが大きなティースプーンをぐるりと回すと、オウガに水が降りかかる。
給仕を拒否したスミンテウスの時間は五分の一にされてしまうけれど、後はドードー鳥にお任せだ。。水浸しのオウガは周囲を回り続けるドードー鳥につつかれる。
「 ち れ 、 ち れ 。
君 た ち を 餌 に し て 、 お し ま い さ 」
スミンテウスは少しばかり目をつむる。
目覚める頃には、【Caucus Race】のおしおきも終わっているだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ユヌ・パ
エルヴィラに託されたんだもの
後始末までぬかりなく、ね
あら
エルヴィラの好物なら、喜んでいただくわ
それも併せて、憶えておくから
害のないものならそのままもらって
害があっても…給仕をしてもらっている間に髪の毛針をはなつ
命中したなら、【連鎖する呪い】を発動させるわね
※「不慮の事故」の内容はお任せ
――でも、その前に
ねえ、あなたたち
エルヴィラがなにを好んで、どんな風に過ごしていたのか
記憶を食べた時に見たコトを教えてちょうだい
相棒の左手や、髪の手でオウガの首根っこを捕まえて
さよならするわね
あたしの相棒も、あたしの記憶を食べるの
さぞ美味しいんでしょうね
でも、ここにはもう、だれもいやしないわ
さあ、海へお還りなさい
●
「エルヴィラに託されたんだもの。後始末までぬかりなく、ね」
あなたの絶望はここですべて終わりにすると約束したから。
ユヌ・パ(残映・f28086)は崩壊する世界の中で、眉一つ動かさない冷静さを保ったまま、真直ぐとオウガの元へと向かう。
死華の樹海だった場所で、もしょもしょと花びらを喰らう小動物型のオウガを見下ろすと、赤い実がたくさん集められた小さな籠を差し出された。
――アリスが好きだったオヤツ。キミもたべる?
「あら。エルヴィラの好物なら、喜んでいただくわ。それも併せて、憶えておくから」
小指の爪先ほどの赤い実はイチイの実。指先でひとつ潰してみると、中から黒い種が出て来た。薬と毒、どちらにもなる植物ばかり育てていた彼女の事だ。この実も正しい食べ方というものが存在するかもしれない。ユヌは小さな籠を胸に抱えて、そう言えば聞きたい事があるの、と。エルヴィラの記憶を共有する者達に語り掛けた。
「ねえ、あなたたち。エルヴィラがなにを好んで、どんな風に過ごしていたのか。記憶を食べた時に見たコトを教えてちょうだい」
――おばーさんとケンカしてたね。
――いろんなハナをいじっておこられてたね。
――あかいみのジャムつくってたべてたね。
――くろいたねまぜちゃっておこられてたね。
――それでも『うれしい』キオクなんだよね。
――ふしぎだね。――ふしぎだね。
ユヌは赤い実を潰した指先を口元へ持って行き、舐めた。
黒い種を除いた赤い実は食べられるところなんてほとんど無くて。水っぽくてあまり味はしなくて。けれどほんの少しだけ、甘さが舌に広がった。
「ありがとう。お返しをあげるわね」
ユヌはそう告げてオウガへ放ったのは髪の毛針だ。霊力と呪詛を宿す髪の毛は、癒えない傷と共に【連鎖する呪い】を与える。
――うわあっ、なにするんだっ。
オウガはお返しのお返しに毒種マシンガンを撃とうとするが、どうにも上手く吹き出せなくて、仲間のオウガに当ててしまったり、間違って自分で飲み込んで泡を吹いたり。
「あたしの相棒も、あたしの記憶を食べるの。さぞ美味しいんでしょうね。でも、ここにはもう、だれもいやしないわ」
混乱するオウガたちを、相棒の青い炎が燃える左手と髪の手でオウガの首根っこを捕まえた。どの子も逃がさない。彼女の記憶は悪用させない。
「さあ、海へお還りなさい」
あの赤い実と同じように、ぷちりと潰した。
大成功
🔵🔵🔵
イリス・ローゼンベルグ
あの子は私達によろしく、と言った
だから、最後まで付き合ってあげるわ
【茨の触手】を展開し、体の大半を茨の怪物に変えてオウガに挑む
私、今ちょっと機嫌が悪いのよ
だから……消えなさい!
【成長する災厄】を発動、こいつらに手加減はしない
先端を尖らせ、先ほどよりも質量を増した触手で貫き、叩き潰す
敵の反撃は【茨の盾】で【盾受け】、さらに傷口から【致死の体液】を撒き散らす
そんなに食べたいならたっぷり味合わせてあげるわ
でも……私の毒はあの子のものより強力よ
ふふっ、やっぱり殺すならこういう奴らがいいわね
●
――あとはよろしく。
白の子と同じ台詞で二度目の生を終えたあの子はもういない。
後は刻一刻と崩れ落ちる世界と共に、絶望を広める子らを終わらせればいいだけ。
「あの子は私達によろしく、と言った。だから、最後まで付き合ってあげるわ」
イリス・ローゼンベルグ(毒を喰らうモノ・f18867)の少女の身体が本来の姿――身体の大半が茨の触手の集合体で作られる茨の怪物に変わる。左目の赤い瞳には深紅の薔薇が咲き誇っていた。
「私、今ちょっと機嫌が悪いの。だから……消えなさい!」
あの子の記憶を悪用するこいつらに慈悲はいらない。手加減などしてやらない。
嫌悪の感情を【成長する厄災】の力に変えて、暴れる触手は尖端をドリルのように尖らせて、オウガの群れを押しつ潰すように貫き穿ち叩き付ける。
イリスの触手から逃げ惑うオウガは、先程食べたアリスの記憶の欠片からひとりの老婆を生み出した。エルヴィラと同じ籠を手にしている老婆は毒の果実をイリスに向かって投げ付ける。
「あの子の記憶から生まれたものなら、一緒の場所まで送ってあげないとね」
果実はイリスの茨の盾に当たって飛散した。直撃は免れたが、毒の飛沫が降り注いだイリスの触手一部はじゅくじゅくと溶けてしまう。しかし、イリスはその傷口から致死の体液を周囲に撒き散らした。
「毒の勝負をしたいなら構わないけれど、私の毒はあの子のものより強力よ」
バイオモンスターであるイリスの身体には猛毒の体液が流れている。あらゆる物質を腐食させる毒は、オウガもオウガに生み出された老婆も溶かして、地面の死灰と同化させてやった。
「ふふっ、やっぱり殺すならこういう奴らがいいわね」
イリスはうっすらと嗜虐的な笑みを浮かべた。
おいでなさいな、悪い子ら。みんなみんな殺めてあげる。
刺殺絞殺斬殺圧殺毒殺、どれがお好み?
ねぇ、どうか少しでも長く辛く苦しんで逝ってちょうだい。
先程の後味の悪さを払拭するように、猛毒の薔薇姫は死灰のフロアで触手と毒を振り撒き、オウガがいなくなるまで踊り続けた。
大成功
🔵🔵🔵
安寧・肆号
まあ、まあ!
びっくりしちゃったわ…そんな急いで飛び出して。
小さくって可愛らしいのね!
ワルツカードの[弾幕][誘導弾]を放って1箇所に集めていくわ。
ほら、こっちへ!
美味しく食べるのはアリスの欠片?
そんなに美味しいなら、食べてみようかしら!
ーあてぃっしゅ!あてぃっしゅ!
お花が好きなら、食べると良いわ。白いお花はアリスに残してあげてね。
あなたたちは赤いお花を召し上がれ!
世界が終わるまで、あと少し。
一緒に遊びましょ!
●
砕けた絶望の扉から、ぱぁっと何かが飛び出した。
「まあ、まあ! びっくりしちゃったわ」
安寧・肆号(4番目の人形・f18025)は目を丸くして、白兎を追うアリスのように、小動物型のオウガの後を付いて行く。
「そんな急いで飛び出して。小さくって可愛らしいのね!」
バラバラに散ってしまって、他の世界に逃げてしまったら大変だわ。
安寧肆号は『Waltz*Score』のカードを取り出して、音符にもオウガを追いかけてもらう。リズミカルに軽やかに。まんまるなアナタは全音符みたいよ。
「ほら、こっちへ!」
音符もオウガも皆並んで、ひとつの曲にまとめてしまいましょう。
「あら、アナタは何を食べているの? 美味しく食べるのはアリスの欠片?」
オウガの群れの中で、花びらをもしょもしょ食べている子が安寧肆号を見上げた。
――いっしょにたべる?
小さなお手手に差し出されたのは瓶詰のジャム。
赤いジャムの中に浮かんでる黒い粒と白の花びらはなあに?
イチイの実のジャムだけならきっと美味しい。
けれど、これはオウガが毒もアリスの欠片も交ぜてしまったものだから。
「白いお花はアリスに残してあげてね」
ジャムの瓶は受け取って、もうアリスの欠片を食べないように、代わりのお花を出してあげる。カラの両手に『あの子たち』を呼ぶわ。
【薔薇の花輪だ 手をつなごう】!
「――あてぃっしゅ!あてぃっしゅ!」
安寧肆号の両手に繋がれたのは白のネコ風船。にんまり笑って薔薇を吐く。
真っ赤な花びらが、はらりはらり。
「お花が好きなら、食べると良いわ。あなたたちは赤いお花を召し上がれ!」
――たべてもいいの? うーん、これはアリスのあじはしないけど。
パァン!! ……なんの音? 花びらを食べた子の体が弾けた音!!
赤い薔薇は毒入りだ。
逃げ惑うオウガも花びらは追いかけて――ぴとり、触っただけでも弾けてしまう。
今度は追いかけっこね。安寧肆号とネコ風船がにっこり笑う。
「一緒に遊びましょ!」
世界の終わりまで。
大成功
🔵🔵🔵
バジル・サラザール
記憶を奪うなんて、見た目に反してえげつないことするのね
今度は倒すのを躊躇わずに済みそうだわ
主に『毒使い』『属性攻撃』を生かした『バジリスク・スモッグ』で攻撃するわ
ポーションやウィザードロッド等で敵をいなして潜り込んで極力仲間を巻き込まず、オウガや偽物をたくさん巻き込める位置で使いましょう
もし本人だったら、毒で倒すのはもう少し苦労したかもね
敵の攻撃は『野生の勘』も用いつつ回避や防御ね
記憶が自分を蝕むなら忘れたくなる気持ちもわかるわ、だからこそそれを利用するなんて到底許すわけには行かないわね
アドリブ、連携歓迎
●
わかるよ。キミのきもち。つらいきおくはボクらがみんなたべてあげる。
共感で開かれた穴に種を植え、記憶を養分として喰らい、気付いた時には中身全てが奪われる。そうして生まれた実はまた種を生み、次なる獲物を求めて世界に広がる。
「記憶を奪うなんて、見た目に反してえげつないことするのね」
甘い香りで生き物を騙す毒花のようなオウガだ。早速アリスの欠片である花びらを摂取する小動物型のオウガにこれ以上世界を食い荒らされないよう、早急に余さず排除しなければならない。
「記憶が自分を蝕むなら忘れたくなる気持ちもわかるわ。だからこそ、それを利用するなんて到底許すわけには行かないわね」
あなたの為だという薬に見せかけた毒を仕掛ける輩の性根を直す薬はあるか?
バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は冷たく笑った。
「今度は倒すのを躊躇わずに済みそうだわ」
治療の山場は既に超えている。バジルは世界を救う為の最後の処置に取り掛かる。
崩壊した死華の樹海。その出口で散った白の子の欠片を求めてオウガは集まっていたはず。しかし、今はもうその姿はほとんど見当たらない。もし、あの小動物型のオウガが枯れた樹や死華の屑に埋もれて隠れていたら……見逃してしまったら厄介だ。
バジルは宙にバジリスク・ポーションを放り投げると、ウィザードロッドで魔法弾を撃って広範囲に毒の雨を降らせた。ジクジクと死灰の屑が溶かされていくと――。
――いたいいたい! いじめるのはだあれ!?
ぽこぽこ。隠れていた共有する者達が次々と顔を出す。
「あら、そんなところにいたのね。こっちよ。毒の雨が嫌なら止めてみなさい」
バジルがポーション入りの瓶を揺らして挑発すると、オウガはエルヴィラが使用していたマンチニールにそっくりな偽物の果実を生成して、その小さな身体で抱えた。
――みてみて! そっくりでしょ? みんなでいくよ! せーの!
オウガの群れは一斉に毒の果実を放ろうとするが……ぱたり、ぱたり。一匹、また一匹と地面に倒れて、落とした果実がその場で破裂して毒を撒く。
オウガの群れは大混乱だ。
「毒を盛って毒で制す、たっぷり味わいなさい」
バジルはすでに猛毒のガス【バジリスク・スモッグ】を放出していたのだ。目には見えない死神が、次々とオウガを捕らえて死を伝染させていた。
「もし本人だったら、毒で倒すのはもう少し苦労したかもね」
毒に詳しい彼女なら、きっと毒使いと分かった時点で対策されていただろう。
けれど、ここにはもう彼女はいないから。バジルの毒は静かに確実に広まって、死灰の海にオウガの死骸が埋まっていく。そうして共有する者達は、全て息絶えた。
●
毒が蔓延した国は完全に崩壊する。
猟兵達は絶望の底にいたエルヴィラに希望の欠片を届けた。
絶望を広めるオウガをこの国の中で食い止めて、世界を救った。
彼女の絶望の扉が無くなっても、彼女の絶望が無かった事にはならないけれど。
――湿っぽいのは嫌いなんだよ。テメーらもさっさと次へ行け。
そんな声が聞こえてきそうだから。
猟兵達はそれぞれの想いを胸に、次の物語へと進んで行く。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年08月01日
宿敵
『枯樹死華のアリス『エルヴィラ』』
を撃破!
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