帝竜戦役㉘〜襲来! お宝持ちの巨蟹!
● 財宝持ちの巨蟹、現る!
白い砂浜。青い湖。
群竜大陸初期にも見たことがあるような景色の中に、ひときわ綺麗に輝く山があった。
金、銀、ダイヤに賢者の石。
ルビー、サファイア、エメラルド、琥珀に真珠にダークマター。
若干違うんじゃないかな? と首を傾げたくなるものもあるが、それらは全て最高級品。
ヴァルギリオスの財宝と呼ばれる、強力なモンスターに変身する恐るべき財宝なのだ。
変身方法は今の所不明だが、ただ美術品として鑑定しても、ひとつにつき金貨2000枚(2000万円)を下ることはない。
そして今回。ヴァルギリオスの財宝が変化したのは、二つ名持ちの巨蟹だった。
巨大な蟹の甲羅はヴァルギリオスの財宝でできていて、とても美しい。二つ名に示された財宝の特性を持つ蟹の身は、当然ものすごく美味しい。
煮てよし焼いて良し。蟹の身も売れるが、痛みやすいためここで食べてしまっても構わない。
帝竜戦役も最終盤。宝物庫に現れた蟹達との戦いが今、始まろうとしていた。
● グリモアベースにて
「帝竜戦役も最終盤。皆様には再び現れた『二つ名持ちの巨蟹』への対処をおねがい致します」
至極真面目な表情で猟兵達に訴えたアカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)は、グリモアによって映し出された巨蟹たちを示した。
竜の宝物庫と呼ばれるエリアに現れた巨蟹は皆二つ名を持ち、それに見合った能力があるのだという。
二つ名持ちの巨蟹自身がヴァルギリオスの財宝で、倒して持ち帰れば一財産築くことも可能だ。
「なんだか、カオスな気配もいたしますが気のせいですよね。皆様、どうぞお気をつけて行ってきてくださいませ」
アカネはにっこり微笑むと、グリモアを発動させた。
三ノ木咲紀
オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
今回は「二つ名持ちの巨蟹」再びということで、宝物庫でのバトルをご案内に伺いました。
今回はアドリブマシマシになる可能性があります。いわゆるカオスシナリオをご希望の場合は冒頭に「◎」をお書き添えください。
ない場合は通常の判定をさせていただきます。
どちらにしろ、アドリブ多めになるかと思われます。
プレイングボーナスは以下のとおりです。
プレイングボーナス……シナリオごとに提示された「財宝」の特性を考え、その弱点をつくような作戦を実行する。
二つ名はプレイングに書いていただければ、そんな能力を持つ蟹が現れます。
もし指定がなければ【黄金の十本鋏の大魔道士】が現れます。
以前使った二つ名ダイス表を使っていただいても構いません。財宝の指示がない場合は黄金になります。
パリピ島の宴 第ニ章二つ名ダイス表
https://tw6.jp/club/thread?thread_id=42220&mode=last50
プレイングは承認後すぐより5/24(日)18:00頃まで受付させていただきます。
その後も最大限対応させていただきますが、スケジュール的に無理な場合はお返しさせていただく場合があります。
それでは、よきカニハントを。
第1章 ボス戦
『二つ名持ちの巨蟹』
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POW : 二つ名特性
自身の身体部位ひとつを【常時】自身の二つ名に由来する【特性】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
SPD : 戦闘行動
【常時発動】砂の中を自由に行動できる【潜行】【自身の特性による攻撃】【水鉄砲】【大跳躍】【鋏】のいずれかで攻撃し、負傷による【怒り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : 狩猟生活
自身が【砂の中に潜行し、レベルの二乗m半径に気配】を感じると、レベル×1体の【実体を持つ「分身体(但し死ぬ程不味い)」】が召喚される。実体を持つ「分身体(但し死ぬ程不味い)」は砂の中に潜行し、レベルの二乗m半径に気配を与えた対象を追跡し、攻撃する。
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才堂・紅葉
◎
あんたは『至高なる大魔道士(蟹)』!?
非常に馬鹿馬鹿しいが、実際に危険な相手だ
奴の魔力は本物だと考えて掛からねばならない
攻撃は機構靴の機動力増加を活かし避けたい【野生の勘、メカニック、ジャンプ】
隙を見て懐に飛び込み、「ショベル」で【部位破壊】を行って魔術師の杖めいたハサミを切り落とそう【怪力】
後は対戦車杭打銃を、動きの鈍った蟹に叩き込もうとタイミングを計りたい
「そのコピーの腕は確かだけど、もっと頭を柔らかくなさい」
【戦闘知識】で相手の手を読みきり、小火器で牽制しつつ、スコップで相手の不慣れな魔導に対し、物理にて攻撃したい
報酬は黄金でもありがたいが、今は美味しくいただくことを考えるのも良い
● 至高といったら至高のメニ……おや誰か来たようだ。
目の前に現れた一匹の巨蟹の姿に、才堂・紅葉(お嬢・f08859)は思わず目を丸くした。
巨蟹の背中には、眼光鋭い男性の顔。もみあげと角刈り、四角い顎のラインが印象的で、不味い料理を食べるくらいなら躊躇なく餓死を選びそう(偏見)な、紅葉もどこかで見たことがある気がする芸術家兼料理研究家の顔が浮かび上がっている。
至高のメニューを作り上げそうな和風男性の顔の周囲から伸びる脚にはおたまじゃくしが握られ、湛えた魔力が今にも何かを召喚しそうに輝いている。
目を閉じ、眉根を押さえる。男の顔を浮かび上がらせる甲羅もおたまじゃくしを挟んだ大きな鋏も、おそらく黄金でできている。なんか変な蟹が出てきてしまった。出てきてしまったのならば仕方がない。まずは確認しなければ。
「あんたは【至高なる大魔道士(蟹
)】!?」
『うむ! 私こそが至高の料理人、海b……』
「あ、それ以上はいいから」
『自己紹介を途中でやめさせるだなんて、お前に食わせる至高の料理などないわ! これでも喰らえ!』
謎理論で杖を振り上げた【至高なる大魔道士(蟹)】は、食材の鮮度がどうとか微妙な風味の活かし方がこうとか薀蓄を垂れるとおたまじゃくしを振り下ろした。
魔力を帯びたおたまじゃくしから放たれる至高の白菜を野生の勘で避けた紅葉は、続けて放たれる至高の長ネギや至高の焼き豆腐に思わずつばを飲み込んだ。
至高の、と言われるだけあって飛んでくる食材はどれもこれも見ているだけで美味しそうだっていうことがハッキリ分かる。しかも、飛んでくるのは食材であって料理ではない。嘘はついていない辺り律儀と言おうかなんと言おうか。至高の食材を出す蟹として生け捕りにするだけでも、金貨2000枚は行くかも知れない。
そんなことを考えながら飛んできた至高の卵の入った籠ををやんわりキャッチした紅葉は、直後弾丸のように飛んでくる卵を辛うじて避ける。
頬に一筋の赤い筋をつけた紅葉は、続けざまに飛んでくる卵をジャンプで避ける。砂地に落ちた卵はすぐに割れて、ヒヨコになっているのはどういうことだろう?
「非常に馬鹿馬鹿しいが、実際に危険な相手だ。奴の魔力は本物だと考えて掛からねばならないな!」
砂を蹴った紅葉は、身体を低くし一気に間合いを詰めると高周波シャベルを振りかぶった。砂地に向けて対戦車杭打銃“楔“を打ち込み機動力を確保し加速度をつけて杖の裡懐に飛び込んだ紅葉は、下から上に向けてシャベルを振り上げた。
おたまじゃくしを握った蟹爪が砂地に落ちる。ムンクの叫びのような表情を浮かべた海……もとい【至高なる大魔道士(蟹)】は、裏返った声を上げた。
『なっ……! なんということを!! よりによって蟹を切るのにシャベルなどという包丁でもない品を使うなど言語道断もってのほか! せめてハサミを……』
「その薀蓄は確かだけど、もっと頭を柔らかくなさい」
言い放った紅葉は、対戦車杭打銃“楔“を打ち込むと次々に脚を落としていく。大魔道士は物理攻撃に弱いのだ。
ついに地面に倒れ伏した蟹の甲羅からは顔がなくなり、黄金に輝く甲羅が陽の光を受けて輝いている。これを持ち帰れば金貨2000枚の値がつくというのはとても理解できる。すぐに持ち帰って換金してもいいが、紅葉は散らばった食材を見渡した。
倒されても残る白菜や白ネギ達。蟹鍋をしてくれと言わんばかりの魔法の残滓に、落とされた蟹脚の透明感ある赤と白。プリプリで美味しそうな蟹肉は足が速い。
そして、鍋とは一人で食べると侘しさを覚えがちな料理でもある。
「報酬の黄金はありがたいが、今は美味しくいただくことを考えるのも良い」
若干季節外れの蟹鍋だが、旅団に持ち帰って皆で食べれば美味しさも倍増三倍増だろう。
ホクホク顔で食材を拾い集めた紅葉は、仲間の顔を思い浮かべながら帰途についた。
大成功
🔵🔵🔵
ナミル・タグイール
◎黄金美味なる大魔道士
でっかーいにゃ!金ぴかにゃ!最高デスにゃ!
しかも美味しそうにゃ!?色んな意味でよだれが止まらないデスにゃ!
こいつはナミルが独り占めにゃー!
カニのくせに魔法打つなんてなまいきにゃー!
…でもそれだけすごいお宝ってことにゃ?わくわくむふふにゃ!
呪詛の斧で魔法を弾きながら突撃にゃー!
UCで強化もするにゃ!素敵な金ぴか前に呪詛も欲望もmaxにゃー!
敵よりもでっかくなってハサミとか魔法使ってくる部分もいでやるデスにゃ!
にゃー!めっちゃ美味しいにゃ!肉も金ぴかももっと寄越せにゃー!
ただの金ぴかの殻になるまでもいで食べてやるマスにゃ!幸せにゃー!!
【怪力】【捨て身】【略奪】
● 黒猫は黄金の夢をみる
金色の柱があった。
砂の上から見上げるナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)が3人腕を繋げてやっと一周できるくらい太い黄金の柱がそびえ立っている。
柱には曲線を多用したエキゾチックな魔法陣が彫り込まれていて、ところどころ様々な色に塗られていた。
「まさかとは思うにゃが……これ、蟹の脚にゃ?」
思わずつぶやくナミルの声に応えるように、蟹脚は大きく動く。逸る気持ちを押さえたナミルは、全体像を見ようと高台に駆け上った。
果たして。それは確かに蟹だった。
黄金を主体に甲羅の隅々まで美しく味のある文様で飾った蟹は、大魔道士の名にふさわしく大きな杖を持っていた。
その黄金と美と魔法を絶対のものとして主張しまくる【黄金美味なる大魔道士】の姿に、ナミルは負けず劣らず目をキラキラさせた。
「でっかーいにゃ! 金ぴかにゃ! 最高デスにゃ!」
しかも、見た目が美しく味があるだけではなく、蟹の肉も美味しいのだという。自分で美味とか主張している辺り、その辺は信じて間違いがなさそうだ。
「色んな意味でよだれが止まらないデスにゃ! こいつはナミルが独り占めにゃー!」
虹彩を「金」の文字に変えたナミルの姿に気付いたのか。【黄金美味なる大魔道士】は丘の上に立つナミルに杖を振り上げた。
直後に魔法が放たれる。金ピカきらびやかな光とともに現れたのは、金ピカきらびやかな牛だった。
喉元に窓をはめた窓牛は、ナミルの姿を見ると鼻息も荒く猛突進を仕掛けてくるが、いかんせん牛は空を飛べない。しばらく宙を蹴った窓牛は、砂に落ちるとナミルのいる丘へ向けて怒涛の勢いで詰め寄ってくる。その姿は恐怖を呼び起こしてしかるべきもののはず。
だが、ナミルには逆効果だった。
「金ピカにゃ! 金ピカの牛にゃ! 金ピカな蟹だけじゃなくて金ピカの牛まで出てくるにゃんて、すごいお宝ってことにゃ? わくわくむふふにゃ!!」
全身の毛を金への欲望で逆撫でたナミルの身体が、みるみる大きくなる。黄金を生産する黄金の蟹。黄金尽くしの蟹に極限まで欲望を掻き立てたナミルは、丘を駆け下りると迫る窓牛に踊りかかった。
「カニのくせに魔法打つなんてなまいきにゃー! もっとやれにゃー!」
呪詛を込めた黄金の爪が、窓牛を引き裂く。黄金の置物に変わった窓牛に後ろ髪を惹かれるが、今回のメインディッシュは牛じゃない。蟹なのだ。
「むふふ、呪詛も欲望もmaxにゃー!」
その言葉は嘘ではない。みるみる大きくなったナミルは、ついに黄金の巨蟹よりも大きな猫のキマイラとなり、巨蟹と距離を取った。
大地を揺るがす五階建てのマンションくらいの大きさの黄金蟹 VS もふもふの毛に包まれた七階建てのビルほどの大きさの黒猫。
もはや怪獣大戦争のようになってくる光景だが、ナミルは目をランランと輝かせると【黄金美味なる大魔道士】に舌なめずりをした。
反撃に次々と窓牛達が襲いかかってくるが、そんなのは猫パンチだ。ぺしっと全部叩き落としたナミルは、お返しとばかりに巨蟹に駆け寄った。
「その腕もいでやる……のは最後にしてやるにゃー!」
間合いに入ったナミルは、鋭い爪で脚を掴むと強引にもぎ取った。殻をはぐ手ももどかしく蟹の身にかぶりついたナミルは、その美味しさに目を輝かせた。
「にゃー! めっちゃ美味しいにゃ! 肉も金ぴかももっと寄越せにゃー!」
一瞬の内に蟹脚を食べ尽くしたナミルは、蟹脚を投げ捨てると次の脚へと向かう。放たれる窓牛達は捕まえて食べてみる。窓の部分がパリパリしてて美味しいが、黄金にしてコレクションにするのも捨てがたい。
腕を振り上げ脚を略奪。受けるダメージなんのその。怪力で蟹脚をもいでは食べ食べてはもぎ、隅の隅まで食べ尽くす。
「ただの金ぴかの殻になるまでもいで食べてやるマスにゃ! 幸せにゃー!!」
金ピカ蟹を思う存分食べ尽くしたナミルは、黄金殻のベッドに横たわると丸くなる。
殻を堕落の寝台にしたナミルは、おなかいっぱいで黄金の夢を見るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
亞東・霧亥
・二つ名
ダイヤモンドの泡を噴く巨蟹
非常に硬い泡を身体中に纏う蟹だ。
【UC】
非常に硬いが結局は泡に代わりは無い。
音の塊で泡ごと蟹を吹っ飛ばす。
戦闘後に飛び散ったダイヤの泡を回収する。
● ダイヤモンドの蟹
砂浜にひときわ輝く蟹が現れた。
透明な殻に包まれた蟹は陽の光に照らされて美しく輝き、思わず目を眇めた亞東・霧亥(峻刻・f05789)は、大きなハサミを振り回す巨蟹を改めて見た。
ダイヤモンドの殻を持つ巨大な蟹は、ブクブクと泡を吹いている。口元から吐かれるダイヤモンドの硬度を持つ泡は、ついに蟹本体を包み込みバリアのように張り巡らせた。
「お前……【ダイヤモンドの泡を噴く巨蟹】だな?」
ありのままの名を見せる巨蟹は、泡バリアの向こうで じゃきん! とハサミを振り上げる。まずはこの泡バリアを攻略しなければ、本体へダメージを与えることはできない。霧亥は大きく息を吸い込むと、詠唱を開始した。
「!!!!」
竜の如き咆哮が砂浜に響き渡る。蟹のみを指定した【ソニックブラスト】の音波は蟹の泡を吹き飛ばす。
竜喰槍を手に駆け寄った霧亥は、甲羅に槍を突き立てる。ダイヤモンドを名乗るだけあって硬い甲羅だが、ダイヤモンドには割れやすい一点がある。
そこを突いた霧亥の槍は、硬い甲羅を貫き通す。
止めを刺した霧亥は、周囲に飛び散ったダイヤの泡と蟹本体を回収するとその場を立ち去った。
成功
🔵🔵🔴
月灘・うる
◎
宝物庫。浪漫溢れる、いや、浪漫しかない響きだよね。
しかも蟹とくれば海の生き物!
これはもう、うーちゃんが行かずに誰が行く、ってやつだよね!
ぜーったい、お宝げっとしちゃうんだから!
蟹の二つ名は【美味なる招き手】でお願いします。
二つ名からすると、でっかいシオマネキみたいなのかなぁ?
【第六感】を使いつつ、蟹のハサミの攻撃を躱しながら、
【プレシジョンファイア】で蟹の目とか甲羅の隙間を狙撃していくよ。
お宝は蟹の甲羅が第一ターゲットだけど、
ダメだったときは、第二ターゲットとして蟹の身。
それも手に入れられなくても【宝探し】で高そうなもの探してみよう。
せっかく宝物庫にきたんだもん、手ぶらでは帰れないよね。
● 招き手招くは潮と塩
竜の宝物庫。そのエリアはそう呼ばれていた。
竜というだけで大冒険のボスキャラとしても助言者的役割としても、大変美味しいを通り越して守らなければならない、お約束的地位を確立している。だというのに、それに続くは宝物庫。
宝の物の倉庫だなんて、これまた大冒険の目的にはもってこい!
目を輝かせた月灘・うる(salvage of a treasure・f26690)は、背中を駆け上がる興奮に胸を弾ませた。
「竜の宝物庫。浪漫溢れる、いや、浪漫しかない響きだよね!」
岩に足を掛けたうるの目の前には、一匹の巨蟹。黄金色も目に眩しい巨蟹は、大きなハサミを揺らしながらうるを睨んでいる。巨大なシオマネキを思わせる姿を見ていると、ここは湖畔じゃなくて海岸に見えてくるから不思議だ。
ここが海でも湖でも。深海人の冒険商人でオーシャンハンターなうるにとって、水辺はホームグラウンドそのもの。
「しかも蟹とくれば海の生き物! これはもう、うーちゃんが行かずに誰が行く、ってやつだよね! ぜーったい、お宝げっとしちゃうんだから!」
ビシィッ! と指を突きつけたうるに、【美味なる招き手】は素早く砂の中に潜行した。砂の中から出したハサミが、大きく振り回される。
蟹爪の動きに、周囲の空気が渦を巻く。蟹爪を中心に現れた渦潮は、荒れ狂う海のように轟音を立てると、周囲の空間を渦潮の海へと変えた。
「シオマネキって、渦潮を招くの……ってわぷつ!」
襲い来る潮がうるを飲み込む。周囲を渦巻く海に変えてしまった巨蟹の攻撃は、通常ならばそのまま行動を制限されて渦巻く潮に引き寄せられてしまうだろう。
だが、うるは違った。荒波を揺りかごとして育ったうるにとって、この程度の渦潮なんて所詮はそよ風。本物の渦潮なめんな。
貝殻服を身にまとったうるは、オックスブラッドを手に渦潮を泳ぐ。潮流を読み渦の中央に立ったうるは、狙いを定めると眉間があるであろう場所を狙撃した。
続けざまに放たれる【プレジョンファイア】に、蟹はたまらずユーベルコードを解除する。砂の中から出てきた【美味なる招き手】は、今度は塩を招き入れる。自身を塩で包み込み塩竈状態になった巨蟹に、うるは再びオックスブラッドを構えた。
伸びる蟹爪がうるを断ち切ろうと迫る。第六感で避けたうるは、その正確な攻撃に眉を顰める。巨大なハサミはうるの姿を正確に捕らえ、攻撃を仕掛けてくる。
これは見られている。そう自覚したうるは、ピョコッと飛び出したつぶらな黒い点を見た。黒い点? いやあれは目だ。まつ毛バチバチでパッチリおめめが、こちらをじっと見つめている。
見つめ合うことしばし。照れたように塩の中に目を引っ込めようとした【美味なる招き手】は、塩が目に染みたのか慌てて目を伸ばす。
「そこだぁっ!」
オックスブラッドの照準を目に合わせたうるは、再び【プレジョンファイア】を放つ。弱点である目を撃ち抜かれた【美味なる招き手】は、大きくおののくとそのまま沈黙した。
巨大な塩の塊になった巨蟹の身体に、うるはニンマリと微笑む。
第一ターゲットである黄金の殻は手に入れた。塩を剥いですぐに手に入れてもいいが、せっかくの塩竈だ。このまま火にかけて蒸し焼きにするのも悪くない。
「そうと決まれば、早速調理だ! 何か使えそうなものはないかなー? せっかく宝物庫にきたんだもん、手ぶらでは帰れないよね」
ついでに使えそうなお宝を物色したうるは、手に入れた成果に嬉しそうに火を熾した。
大成功
🔵🔵🔵
月宮・ユイ
◎【ルビーの金剛甲羅の歌姫】
※ヤドリガミ
財宝から生まれたある意味お仲間ね
ルビーが基の深い赤色の甲羅は金剛並に硬い、と
「歌姫…声帯あるのでしょうか
数増えた際はコーラス始めるのかしら
○念動+視力+第六感:超能力の念視用い遠隔知覚
○情報収集行い【潜行】した蟹見つける。
ルビーは強固で割れにくく、熱や化学的変化にも強靭
性質継いでいるとなると中々に面倒。
ここはあえて敵に【分身体】召喚させ、
その瞬間に◇精霊交感起動【地○属性】と【渦巻き】融合。
分身体である以上同等の硬さ持つ
本体と分身体をぶつけ合わせ削る。
ある程度砕ければ欠片が研磨剤の様にもなるはず、
後は○捕食○呪詛も混ぜ込み○生命力吸収しつつ術の維持に集中
ナイ・デス
◎
『だいぶ加減してナイくん』でとりあえず1匹即死させます(出オチ蟹
【生命力吸収】する光の一撃で経光摂取。それで、財宝になった……
……(ダークマターつんつん)
あ……えと「至高なる盗賊」さん?宝物庫に忍び込んだ、仲間を解放にきた盗賊さん、です?
違う?捕まってる。財宝の一部?
と、財宝盗まれながら【動物と話す】でお話します
なるほど……財宝に戻された仲間を、奪い還す
至高の名に恥じぬ、いい盗賊さん、ですね
けれど……死蔵されているより、外にでたほうが、いいと思います
どう、です?100年大事にしてくれるような、良い人、探してみようと思うですが
心臓とか色々盗まれても怯まないで、再生しながらきき
ダメなら光が喰らう
● 盗賊と歌姫の恋物語
「あなたが、今にいる為に、消費していい時間は、ありません」
出会い頭にユーベルコードの詠唱を完了させたナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は、現れた巨蟹に向けて生命力(質量ある時間)を喰らい尽くす光を放った。
世界を骸の海に沈められる危険な力の片鱗を秘めた光が、ダークマターを纏った【至高なる盗賊】に直撃する。
砂浜に何故かそびえ立つバスティーユ監獄さながらの不吉な塔。その壁を這い上がっていた【至高なる盗賊】は、引っ掛けていたフック形ワイヤー型の自前爪を外すと、ナイの隣にいた月宮・ユイ(月城・f02933)の足元に落下する。
腹を上にして、うごうご。動き疲れて一休みしたら、元に戻ろうとしてまたうがうが。そのあまりの健気な様子に、ユイは巨蟹をよいしょともとに戻した。
財宝の山と化すはずだった巨蟹を、つんつんつつく。夜闇に紛れるつもりだったのだろう。黒い靄のような暗黒物質を纏った蟹は、残念ながら昼間は逆に目立って仕方がない。
「融通が利かない蟹ですね」
至極素直な感想を述べたユイの声に抗議するように、巨蟹はフック付きワイヤー型自前爪を振り上げる。何かを主張したげな蟹に、一緒になってつついていたナイは語り掛けた。
「あ……えと【至高なる盗賊】さん? ひょっとして、宝物庫の財宝を盗みに来た盗賊さん、です?」
『財宝……。その通りさ! 俺にとっちゃあ、この塔の最上階にいる歌姫こそが、最高の財宝ってね!』
ニヒルな笑みを浮かべた【至高なる盗賊】が答えた時、塔の最上階から美しい歌声が響いた。
心を震わせる歌声だった。誰が歌っているのだろうか。透き通り澄み渡る歌声は風に乗って響き、見上げた猟兵達の心をも震わせる。
美しい歌声に耳を傾けた二人と一匹は、やがてやんだ歌声に同時にため息をついた。
「綺麗な歌声ですね……」
『だろう? 俺ぁあの歌声は、こんな塔のてっぺんにいるべきものじゃねえと思うんだ。もっと広い世界で歌わせてやりてぇ。そのために、俺はこの塔から歌姫を盗み出すのさ』
蟹爪を振り上げながら主張する巨蟹に、ユイは首を傾げた。
「でも、どうして壁を登ってたのですか? 失礼ですが、丸見えでしたよ」
「あそこに、扉ある。中から行く方が早い、よ?」
『そうしてぇのは山々だけどよ。俺は……段差、超えられねぇんだ』
うごうごする巨蟹は、巨蟹と呼ぶには小さく体高は50センチほど。ダークマターを晴らした甲羅は、財宝とは呼びにくい昔懐かしのレコードプレーヤーだった。
真四角の身体は柔軟性に欠け、塔の中にあるだろう階段を登るなどもってのほか。
『せめて外壁を登ろうと思ったんだけどよ、いつの間にか夜が明けちまって……』
「なるほど……囚われた恋しい歌姫を、奪い還す。至高の名に恥じぬ、いい盗賊さん、ですね」
心から同情して頷くナイに、ユイも深く頷いた。
「あの歌声は素晴らしかったです。あなたの気持ちも分かります。どうですか? 私達と一緒に歌姫に会いに行きませんか?」
「それ、いい」
ユイの提案に、ナイも頷く。囚われた歌姫を取り戻しに行く盗賊なんて、ロマンがある。巨蟹は倒すべきオブリビオンかも知れないが、この蟹と一緒に行くのも悪くない。
二人の提案に、巨蟹は目を丸くした。
『い、いいのかよ!』
「いいです。その代わりいい音楽、響かせてあげてね?」
『もちろんだぜ! ありがとよ!』
蟹爪を振り回す巨蟹に、ナイは塔のドアへと向かった。
● 互いになくてはならぬもの
それから、二人と一匹のダンジョンハックが始まった。
入り組んだダンジョンには多数のトラップが仕掛けられていた。落ちる床、転がってくる大岩、爆発するドアノブなどなど。
それらをチームワークと機転で乗り越えたユイは、背中に背負った蟹をちらりと見る。この蟹は確かにオブリビオンで倒さなければならないのだが、なんだか妙に仲間意識が芽生えてしまっている。
今はこの塔の攻略に専念しなければ。歌姫蟹の居場所を遠隔知覚し、情報収集しながら塔を進む。潜行する歌姫の居場所を探索したユイは、ついに最上階のドアにたどり着いた。
果たして。そこにいたのは【ルビーの金剛甲羅の歌姫】だった。
甲羅の真ん中に、黒と見紛うほど深い色の丸いルビーがあしらわれ、レコードのように溝が刻まれている。蟹本体も薄いルビー殻なのだろう。淡い紅色に輝く甲羅は、金剛石並に硬いことが予想された。
ルビーの歌姫は、現れた盗賊蟹へと駆け寄る。盗賊蟹も歌姫蟹に近づくが、二人の間は鉄格子が遮っている。
『歌姫!』
『盗賊さん!』
格子越しに何やらメロドラマを繰り広げる二匹の蟹に、ユイは深く頷いた。どうやらルビーの歌姫は、お宝としてこの塔の頂上に隠されたのだが、そのまま忘れ去られて時が過ぎる間に巨蟹として意識を得たらしい。歌姫なのは元の持ち主の特性だったのだという。
「忘れられた財宝から生まれた巨蟹。ある意味お仲間ですね」
「そう、です。お仲間、です」
ヤドリガミであるユイの言葉に、ナイも深く頷く。器物不明のヤドリガミであるナイも、歌姫蟹に思うところがあるのだろう。何度も頷く姿に頷いたユイは、なんとか鉄格子が破れないか試みた。
鍵開けも物理破壊も色々試すが、どれもうまくいかない。次は何を試そうか考えるユイに、歌姫蟹は鋏を振った。
『いいのです。ありがとう。歌を誰にも聞かれないのは辛かったけれど、盗賊蟹さんが聞いてくれたらそれだけでいいの』
『ダメだ! 歌姫の歌はもっとたくさんの……蟹に……』
言い募った盗賊蟹が、動きを止める。この世界に存在できる時間を奪われ、ロスタイムで生きていた盗賊蟹の時間がいよいよ無くなってきたのだ。止まりそうな蟹に、歌姫蟹は叫んだ。
『ダメよ! あなたが聞いてくれない歌に、何の意味もないの!』
「歌姫蟹……。あなた、分身体は出せますか?」
ユイの問いかけに、歌姫蟹は分身体を出す。一斉にコーラスを響かせる分身蟹の歌声に合わせて歌を歌った歌姫蟹に、ユイは詠唱を開始した。
ルビーは強固で割れにくく、熱や化学的変化にも強靭。加えてダイヤモンドの特性を持つ蟹の殻ならば、この鉄格子を破れるかも知れない。計画を伝えたユイに、歌姫蟹は頷いた。
目を閉じたユイは、精霊に呼びかける。地の精霊と共鳴・保管庫接続正常、能力強化。精霊種因子励起、元素・属性制御、精霊交感使役、現象指定。
一連のプロセスを高速でこなしたユイは、周囲を漂う精霊達へと語り掛けた。
「交わりて現れよ……地の大渦!」
その瞬間、地属性である分身蟹がふわりと浮く。高硬度を持つ分身蟹はユイが巻き起こした大渦に乗り、回転しながら鉄格子を攻撃する。交わる金属音と歌声が交錯する。まるで鈴を鳴らすような美しい音を立てる分身蟹に合わせて歌われる歌姫の歌声は、確かにこんな誰も来ない塔のてっぺんにあるのは惜しすぎる。
やがて、甲高い音を立てて鉄格子が破られる。中から出てきた歌姫蟹は、歌声に聞き惚れていた盗賊蟹に駆け寄った。
『盗賊蟹さん!』
『いい歌、聞かせてもらったぜ……』
「歌姫蟹さんも、盗賊蟹さんも。……死蔵されているより、外にでたほうが、いいと思います。どう、です? 二匹一緒に、100年大事にしてくれるような、良い人、探してみようと思うですが」
ナイの提案に、歌姫も頷く。歌姫にそっと触れたナイは、【だいぶ加減してナイくん(クラウモノ)】を詠唱した。
存在できる時間を奪われた歌姫蟹は、財宝と化しその場に落ちる。同時にただのレコードプレーヤーになった盗賊蟹の蓋を開けたユイは、歌姫蟹から背中のレコードを剥ぐとプレイヤーにセットした。
スピーカーから響く、美しい歌声。レコードとレコードプレーヤー。お互い欠けてはならない者同士だったにも関わらず共にいられなかった盗賊蟹と歌姫蟹。
二匹が奏でる音楽に、二人は静かに聞き惚れる。
「いい貰い手に、渡さなければですね」
「そうですね」
歌姫蟹の歌声が、塔の頂上に響く。
百年大切にしてくれる貰い手に引き取られた二匹の蟹は、どこかの世界の片隅で今もなおたくさんの人達に音楽を届けているのだという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
◎
な、なんと!?あれはまさか、伝説の【金銀金剛紅玉蒼玉翠玉琥珀真珠暗黒物質の大甲羅の巨蟹】!?
ゴテゴテしていていっそ下品すぎて評価が低いレア物!?
こ、これは略奪しませんと、大海賊の名が廃ります!!
無茶苦茶な名前してるだけあって硬いですねコイツ!
しかし宝石、金剛石等は割れやすい一点が存在します
それを私の「戦闘技術」、類まれな「宝探し」技術によって探し出し、
その一点を【殴る】!!
己の「怪力」で、「鎧砕き」で、「限界突破」し、数多の宝石を「略奪」せしめんと!
これは攻撃じゃないです、カッティングです!
十分略奪したら、もう特性もないでしょう
一撃粉砕、【殴る】です
いやぁ、お宝略奪は楽しいですねぇ!!
マリア・フォルトゥナーテ
◎
「蟹なんて久しぶりです!美味しくしなくちゃ!」
甲羅は固いのだろうが、こちらには鍛え上げた中国拳法がある。外より内へダメージを与える発勁の前では、防御力など無意味。しかも内部に衝撃を加えて身が解れ、より柔らかくすることも計算に入れてます!すなわち、これはバトル&クッキングなのです!
「瀑布に停泊してる船に持ち帰って、船員の皆と食べながら甲羅についた財宝を山分けパーティです!むふ!むふふ!」
一撃で倒れずとも、技能の「傷口をえぐる」により、同じ攻撃箇所を何度も攻めて倒します!
● どうせ狩るなら全部盛り!
静かで美しい湖畔だった。
群龍大陸という危険地帯にありながらも、静けさと美しさを保つ砂浜を持つ湖畔は、リゾート地と呼んでも差し支えない。
そんな湖畔に現れた一匹の巨蟹を前に、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)は目をキラッキラに輝かせた。
何せ目の前にいるのは、財宝の山。海賊ならば誰もが憧れる金銀財宝の山が目の前にあるのだ。
「な、なんと!? あれはまさか、伝説の【金銀金剛紅玉蒼玉翠玉琥珀真珠暗黒物質の大甲羅の巨蟹】!? ゴテゴテしていていっそ下品すぎて評価が低いレア物!?」
両手を合わせて踊りだしそうな勢いで見つめる先の、宝の山がふいに動いた。伏せていた身体を起こした巨蟹は、その背中に金銀金剛紅玉蒼玉翠玉琥珀真珠暗黒物質を載せているのだ。ちなみに本体は賢者の石らしい。具体的にどんな石なのかは知らないけれど。
「こ、これは略奪しませんと、大海賊の名が廃ります!!」
早速討伐を、と思ったシノギは、森の中から現れた金と黒の影に振り返った。
「待ってください、金の巨蟹! あなたの甲羅と蟹肉は、全て私達のものです!」
拳に聖痕を輝かせながらヒラリと飛び出したマリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)は、逃げの一手を打つ黄金の巨蟹の甲羅に向けて大きくジャンプした。
黄金の甲羅に、拳が突き刺さる。さすがに一撃で壊れることはないが、中国拳法の発勁は外側よりも内側にダメージがいくのだろう。黄金ガニは黄金の泡を吹きながら気絶している。
突然現れたマリアと黄金蟹の姿に思わず口笛を吹く。その音に気付いたのか、砂地にヒラリと着地したマリアに、シノギはにっこりと微笑んだ。
「こんなところで会うだなんて奇遇ね。幽霊船 フライングダッチマン号の船長さん」
「これはこれは。海賊幽霊船『シャニムニー』の船長ではないですか! 竜の宝物庫のお宝は全て私のものですから。ここにいるのは当然です!」
「へえ」
拳をぎゅっと握り締めて虚空に向かって宣言するマリアに、シノギは口元を歪める。もとより、世界中のお宝は最終的にはシノギのものなのだ。言うだけはタダなのだから言わせておこうか。
不穏な空気に気付いたのか、マリアはシノギに聖女の笑顔で会釈する。その表情で分かる。マリアもまた、ここのお宝は全て自分のものだと思っている。それを裏付けるように、マリアは言った。
「ですので、おたから蟹は渡しませんよ?」
「それはこっちのセリフです。隣でバトるのはいいけれど、邪魔しないでくださいね?」
それだけ言い置いたシノギは、砂を蹴ると【金銀金剛紅玉蒼玉翠玉琥珀真珠暗黒物質の大甲羅の巨蟹】へ向けて駆け出した。
拳にはめたメリケンサックを握り締め、巨蟹へ殴り掛かる。一気に間合いを詰めて急所と思われる顎の下に強かに打ち込んだが、返ってくる反動に眉を顰めて距離を取る。
「無茶苦茶な名前してるだけあって硬いですねコイツ!」
攻撃の意思を示した巨蟹は、大きなハサミを振り上げるとシノギの頭に向けて強かに打ち込んだ。反撃を腕で受け止めたシノギは、吹き飛ばされながらも砂地に勢いを吸収させる。
「さすがは【金銀金剛紅玉蒼玉翠玉琥珀真珠暗黒物質の大甲羅の巨蟹】。全部盛りなだけのことはあります。ですが!」
誰よりも財宝に詳しいと自負するシノギは、カットされていない財宝の山の一角に指を突きつけた。
「宝石、金剛石等は割れやすい一点が存在します。その一点を……」
巨蟹を睨んだシノギの姿が消える。蜃気楼のように消えたシノギの姿は、一瞬後には巨蟹の側に現れた。
単純で重い拳の一撃が、一点に叩き込まれる。その攻撃にまるで脳震盪を起こしたように動きを止めた巨蟹に、続けざまに拳を叩き込む。
金に、銀に、ダイヤモンドに。ルビーにサファイアにエメラルドに琥珀に真珠に暗黒物質に。
踊るように次々と叩き込まれる拳の連撃は、宝石たちに次々にヒビを入れる。怪力で繰り出される拳は宝石の表面を砕き、限界突破した衝撃は宝石たちを砕いていく。
「これは攻撃じゃないです、カッティングです!」
叫びながら、止めの一撃が叩き込まれる。単純で重い一撃は、衝撃に倒れ込んだ巨蟹に深く刻み込まれる。ものすごい轟音を上げてしばし。力尽きたように崩れた巨蟹のお宝は、見事にカッティングされた宝石の山となり砂の上に撒かれた。
● 黄金のシスターと黄金の蟹
時は少し遡る。
森の中で黄金の巨蟹を見つけたマリアは、獲物を追う黄金の塊に目を輝かせた。鬱蒼と茂る木々をなぎ倒しながら先を行く蟹は、爪の先に巨大な魔道士の杖を持っている。さしずめ【黄金の十本鋏の大魔道士】といったところか。杖の先端の魔法石を売り払うだけで、一財産築けるに違いない。だが。
「蟹なんて久しぶりです! 美味しくしなくちゃ!」
黄金の巨蟹を追跡するマリアが目を輝かせたのは財宝としての価値だけではない。ここにいる巨蟹は全て美味しいと予知されている。美味しい蟹は美味しく食べるのがこの世の摂理というものだ。
目を輝かせたマリアは、拳に聖痕を浮かび上がらせるとそっと巨蟹に忍び寄る。こちらに気付いた様子のない巨蟹の背中に音もなくジャンプしたマリアは、一瞬目を輝かせると甲羅に拳を打ち込んだ。
発生した激しい衝撃波が、巨蟹の背中に同心円を描く。木々をなぎ倒しながら撃ち込まれた発勁の一撃に、不意を突かれた巨蟹は倒れ込んだ。
単純で重い頸の一撃は、今まさに獲物を捕らえようとしていた巨蟹を驚かせるに十分に足るものだ。甲羅を中心にすり鉢状に破壊された森に、パニックを起こした巨蟹が腕の杖を振り上げる。十本足から乱射される魔法弾に甲羅を蹴ったマリアは、木々を飛び移りながら回避。
背中からマリアの圧がなくなったのを感じた巨蟹が、そのまま逃げ出す。その姿を追いかけながら、マリアは自分の拳に笑いかけた。
甲羅越しに感じた、あの手応え。内部に衝撃を加えて身が解れ、より柔らかくなっているのが分かる。
美味しいカニを更に美味しくしたら、どれだけ美味しくなるのだろう。美味しい蟹の身が詰まっていた甲羅にお酒を入れて飲んだら、蟹の風味が移って最高に美味しいに違いない!
船員の皆の笑顔を思い浮かべたマリアは、逃げる巨蟹に追いすがった。
「瀑布に停泊してる船に持ち帰って、船員の皆と食べながら甲羅についた財宝を山分けパーティです! むふ! むふふ!」
もとより、この宝物庫のお宝は全部マリア達のもの。金貨一枚に至るまで、誰にも渡すものか。
最高に美味しい蟹は至高なまでに美味しくして、船員たちとの宴に供するしかない!
追いすがったマリアは、浜辺に出た巨蟹の背中に一撃を食らわせる。そこにいた知り合いの海賊船船長と挨拶を交わしたマリアは、シノギの獲物に目を輝かせた。
あれが欲しい。だが今は、黄金の蟹を黄金の味に仕上げるのが先だ。
「蟹の身をほぐし、繊維を断ち切り旨味を最大限に引き出す! これすなわち、バトル&クッキングなのです!」
意識を取り戻し、湖の中に逃げ込もうとした巨蟹の背中に、再び発勁が叩き込まれる。全身の蟹肉の旨味を最上級にまで引き出された巨蟹は、その場に倒れ伏した。
● この先の展開は、多分こうなるんじゃないかな劇場
得物を仕留めたマリアは、迫る殺気に身を翻した。
頬をかすめる拳の一撃を回避したマリアは、楽しそうに攻撃を仕掛けてくるシノギの姿に目を見開く。
「何をするんですか!?」
「何って、りゃ・く・だ・つ! せっかくマリアが最高に美味しい蟹にしてくれたんだもの、美味しく略奪してあげないと黄金蟹が可愛そう」
心から楽しそうにファイティングポーズを取るシノギの攻撃に、マリアの被り物が落ちる。金の髪を顕にしたマリアは、凶悪な表情を浮かべるとシノギに向けて髪を振り払った。
「ほう、お前は私の獲物を横取りするつもりか。身の程知らずも程がある!」
「そっちが出ちゃいましたか。まあいいです。どのみち略奪することに変わりはありませんから」
「は! 貴様ごときに略奪を許すような私ではないわ! 這いつくばって許しを乞い、財宝蟹を差し出せば、貴様の非礼を許してやらなくはない!」
攻撃モードに入ったマリアの拳が、シノギに叩き込まれる。拳を腹に受けたシノギが繰り出すカウンターに頬を拭ったマリアは、シノギの笑顔に邪悪な笑みを浮かべた。
その笑顔に負けず劣らず、シノギは邪悪な笑みを刷く。
「いやぁ、お宝略奪は楽しいですねぇ!!」
「それだけは同意してやる!」
海賊船の船長同士が、プライドとお宝蟹を賭けて激突する。その戦闘の激しさに、カメラがそそくさとフェードアウト。いやだってほら、他の猟兵をご案内して無事に帰すという使命がね。
ユーベルコード同士が激しく激突する。
群龍大陸を揺るがしたその戦いの行方は、誰も知らない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クラリス・シドルヴァニス
◎
金貨二千枚…かなりの額ね
賞金稼ぎの真似事は気が引けるけど、わが家の家計が苦しいのも事実…ここは一攫千金を狙いましょう
あれが『ギョロ目の甲羅』ね。
名前の通り、普通の目に加えて甲羅にも大きな目がついているわ。
あれも宝石なのかしら。
ハサミの攻撃を〈武器受け〉で捌きつつ、手袋を投げつけて【デュエリスト・ロウ】を発動。〈決闘〉のルールを宣告するわ。
『私のことを見てはなりません』
敵は視覚に頼って攻めてくるから、ルールはこれで決まりね。このルールを破れば、私の聖印が蟹にダメージを与えるわ。蟹がルールに従っても、私は戦闘を有利に運べるでしょう。蟹の甲羅を傷つけないように、腹部を狙って下段から突きを入れるわ!
● 深淵を覗き込む者は……
白い砂浜の上を探索しながら歩く、一人の猟兵がいた。
予知を聞きつけたクラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)は、提示された金額に思わず腕を組んだ。
このエリアにいる蟹は、竜の宝物庫のお宝。どんなに安く見積もっても金貨ニ千枚は下らないというお宝が眠るという。
「金貨二千枚……。かなりの額ね」
金貨ニ千枚というと、UDCアースの通貨換算にしておよそ二千万円。大層な額である。
由緒正しき騎士の家に生まれ育ったクラリスにとって、正直に言うと賞金稼ぎのような真似は気が引ける。だが、父を失い傾きかけたシドルヴァニス家の家計が苦しいのもまた事実。
それにこれは猟兵として全うな仕事。後ろ暗い闇仕事ではないのだ。
「……ここは一攫千金を狙いましょう」
意を決したクラリスは、木陰にいた巨蟹の姿に足を止めた。
巨大な蟹は金色をしていて、陽光に輝いてとてもいい色をしている。シルエットだけを見るのであれば普通の蟹と変わりない。のだが。
その甲羅には、無数の目がついていた。
甲羅だけではない。鋏にも脚にも大小無数の目がついていて、それぞれ別々の方向を睨んでいる。
目の形は妙にリアルな人間のもの。そこだけ移植されたような不気味さに、まともな本来の目が逆に異様に見える。
「……あれが『ギョロ目の甲羅』ね」
生理的な嫌悪感を感じたクラリスは、思わず回れ右をしかける。そも、人間の目だけを抜き出した絵というのはシュールレアリスムを想起させ、見ていて爽やかな気持ちにはならない。それがいっぱい。イラストがなくて良かった。
だが、お宝蟹は探してもなかなか見つからなかった。こいつを逃せば次にお宝巨蟹に出会える保障なんて無い。
それに第一、こいつはオブリビオン。倒さなければ、いずれこの世界を滅ぼしてしまう危険な存在。
シドルヴァニス家の者として、また猟兵として退路を塞がれたクラリスは、大きく深呼吸すると巨蟹の前に躍り出た。
同時に詠唱。使うユーベルコードはこれ以外に考えられない。クラリスは急いで手袋を外すと、出会い頭に目玉蟹に叩きつけた。
「私のことを見てはなりません!」
いやマジに。
一斉にクラリスを見た巨蟹に、ダメージが入る。身体からプスプスと黒い煙を上げた目玉蟹は、目玉のついたハサミを振り上げた。
蝶番のところについた目玉と目が合う。目を逸しても、今度は甲羅の目玉と目が合う。目が合った相手をパニックにするのが、この巨蟹の特性なのだろう。何かを静かに訴える狂気の視線にパニックを起こしたクラリスは、辛うじてハサミを武器受けするとバスタードソードから手を離した。
噂に聞くUDCアースの狂気にも似た目玉に我を失ったクラリスは、後先考えず望む行動を取る。すなわち。
「私のことを、見ては、なりません
!!!!」
捨て身に突進したクラリスは、巨蟹の腹に手を入れると思い切り腕を上げた。女性の腕力では決して出せない力を火事場的に出したクラリスは、テコの原理も利用して一息にひっくり返す。
幸い腹には目玉はない。こちらをじーっと見つめる目玉から逃れたクラリスは、混乱のままバスタードソードを拾い上げた。
「目玉が! いっぱいって、気持ち、悪いか、ら!」
腹にあるふんどしと呼ばれる三角形にバスタードソードを突き入れる。生理的嫌悪から逃れるように攻撃を続けたクラリスは、静かになった巨蟹に大きく息を吐いた。
冷静になったクラリスは、改めて蟹を検分する。光を失った目玉は幸い嫌悪感を催すことはなく、色々な色の宝石のように輝いている。
目玉だけで売っても良いし、一体の蟹として売ってもいい。
精神的ダメージと引き換えに無傷の蟹甲羅を手に入れたクラリスは、早々に換金して相場より高い金貨を手に入れたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
スピネル・ティーローズ
◎
【ルビーの十本鋏の招き手】…!シオマネキのように大小セットの鋏を5組も持つなんて!
でもそのお陰で片方の方向からの攻撃に偏ってる上に、重心バランスも悪くなってる。大きな複数の鋏は脅威だけど、勇気をもって恐れずいこう。
動きを見切って分身で翻弄し、大振りを誘ってバランスを崩したところをクレセントディバイダ―による砲撃。そしてランスチャージで突撃して甲羅を砕きます。あとはパターンに嵌めて討伐。なんかこんなゲームをどこかで見たような気がするなぁ。
蟹の身は他の人と一緒に料理して食べようかな。上手に焼けました、と。それにしても綺麗なルビーだ。そう思わない?ケゾルツ。
イスラ・ピノス
遂に宝物庫に辿り着いたね
戦いも大事だけどお宝と聞いては見逃せない
狙いは黄金!いくよ!
大物相手ってことでこちらもサイズアップにそーちゃんおいで!
ソーダジャイアントで叩きに行くよ。。
鋏や体当たりで来てもソーダ水の身体はすぐ戻せるもんね。
砂の中を潜行されたら無理に追わず分身体の迎撃に集中、
距離を取りつつクリーピングコインなども使って撃ち落としていくよ。
距離が離れた時にとか水鉄砲を使ってきたらチャンス!
余さず吸収させて貰っちゃおう。
敵が巨人でなく僕本体を狙ってきたら一旦動きのトレースを止めて
巨人の中に潜り込んで回避。
泳ぎは得意!かわした所で反撃狙うよ!
上手く倒せたら勿論お宝は貰っていくね!
身もしっかり
● それは例えばコマのように
白い砂浜に、二匹の蟹がいた。
ひときわ大きな【黄金の十本鋏の大魔道士】は、十本鋏の全てに魔道士の杖を持ち、魔力を湛えてこちらを睨みつけている。
その甲羅の上には、少しこぶりなサイズの十本鋏の蟹。見事なルビー色をした蟹は、さしずめ【ルビーの十本鋏の招き手】か。右側の五本の爪はシオマネキのように大きく、反対側は逆に細くなっていて、全体的に扇形をしている。
バランスの悪いルビー蟹を見たスピネル・ティーローズ(海賊少年・f26425)は、上に乗った招き手蟹にクレセントディバイダーを構えた。
下の黄金蟹は、どっしりと構えて安定感があるが上の蟹はバランスが悪い。身体を斜めにしなければ立っていられないようだが、そこに付け入る隙があるように思えた。
重なった二体の蟹の姿を見たイスラ・ピノス(セイレーンの冒険商人・f26522)は、黄金とルビーのセットに目を輝かせている。
「遂に宝物庫に辿り着いたね。戦いも大事だけど、お宝と聞いては見逃せない!」
「僕も海に生きる男だ。お宝を見過ごすほど、甘くはないさ!」
砂地を蹴ったスピネルは、ルビー蟹の脚へ向けてクレセントディバイダーを繰り出した。軸となっている反対側の脚さえ削ってしまえば、起き上がることさえできないはず。
轟! と風を切る音を立てながら突き出されたクレセントディバイダーはしかし、急速回転を始めたルビー蟹の脚に阻まれた。
片側が大きく、反対側が小さい。そのバランスの悪さを逆手に取った蟹は、細い方の脚を軸にコマのように急速回転するとふわりと宙に浮いた。
黄金蟹の真上で回転するルビー蟹。思わずあっけにとられてしまったスピネルの目の前で、ルビー蟹が潮を招いた。
「シオォォォォォ!」
鋭く口笛を吹くような声は、きっと詠唱だ。回転により発生した風に乗った潮は、黄金蟹とルビー蟹の周囲を包み込み、水のバリアを張る。
続けざまにクレセントディバイダーの大砲部分から銃撃を繰り出すが、銃撃は水のバリアによって無効化されてしまう。
「……! まさか回転してシオマネキのように水バリアを召喚するだなんて……!」
悔しそうに次の一手を考えるスピネルに、黄金蟹から魔力弾が放たれた。大魔道士の二つ名に恥じない攻撃を分身で見切って回避を試みるが、避けきれずに被弾してしまう。
ユーベルコードを詠唱しようとしたスピネルよりも早く、イスラの術が完成した。
「ふっふっふ……。ちゃーんす! そーちゃんおいで!」
イスラの召喚に応じて現れた水を吸って強くなるソーダ水の巨人は、駆け出すイスラの動きをトレースして水バリアに突進を仕掛けた。
そーちゃんが水バリアを抱きしめる。突進自体は水バリアによって防がれてしまうが、バリアを吸収したそーちゃんは一段パワーアップしたように余さず吸収していく。
全ての攻撃を防ぐ水バリアを無効化されたルビー蟹が、再び回転を始める。だがそれを許すスピネルではなかった。
クレセントディバイダーの砲身を向け、一斉に射撃。連続して撃ち込まれた銃弾は細い方の脚を撃ち抜き、大きくバランスを崩させる。
隙を突いたスピネルは、中断した詠唱を再開した。
「力をここに。理不尽に抗う為に!」
スピネルの詠唱に反応したのか、魔道士が魔力弾を放つ。一斉に放たれた魔力弾はしかし、スピネルが纏った黒い鎧に防がれた。
クレセントディバイダーを握り締めたスピネルが、再び砂を蹴る。ランスチャージで突撃したスピネルの一撃が、ルビー蟹を直撃して背中から叩き落とす。
態勢を立て直したルビー蟹は、巨大な爪を振り上げるとスピネルに攻撃を仕掛ける。大振りの攻撃は重心も悪く、動きを見切ったスピネルの残像を噛む。
態勢を崩したところに、銃撃を仕掛ける。続いて突進したスピネルの突きに、ルビー蟹は沈黙した。
● イスラとそーちゃん
一方その頃。
ルビー蟹を失った黄金蟹は、怒りを込めた魔力弾をそーちゃんに向けて放った。放たれる魔力弾に、そーちゃんの身体が四散する。だが、元々ソーダ水でできた巨人。バラバラにされてもすぐに元通りになる身体だ。巨体を元に戻したそーちゃんは、イスラの動きをトレースすると黄金蟹にクリーピングコインを投げつけた。。
銃弾のような勢いをつけたコインが、黄金蟹の甲羅を穿つ。強烈な連打に息を飲んだ黄金蟹は、砂の中に潜行を開始した。
白い砂の中に、金の巨蟹の姿が消える。気配を探るイスラは、感じる殺気に身を翻した。
砂の中から、魔力弾が次々と放たれる。七色の魔力弾は、まるで見ているかのように正確にイスラを追尾してくる。
魔力弾の攻撃を身を翻して回避したイスラは、魔力が放たれた根本に向けてクリーピングコインを放った。
そーちゃんによって巨大化したコインは、砂を深く穿つ。だが砂の中を自在に移動する蟹に有効打を与えることがでできず、イスラは回避に専念しながら次の攻撃に備えた。
その直後、魔力弾が再び放たれる。術者に向けて放たれる魔力弾に、イスラは砂を蹴った。
「そーちゃん、ステイ!」
ソーダジャイアントとのリンクを一時的に切ったイスラは、そーちゃんの中に退避する。イスラを追って十本鋏から次々と放たれる魔力弾はそーちゃんの身体を吹き飛ばしながらもイスラを追いかける。巨大なソーダジャイアントだが、体長は3メートルほど。そーちゃんの身体を泳ぎきったイスラは、空中にジャンプする。
跳ねるイルカのように空中を飛んだイスラは、くるりと回転すると砂地に着地した。
戦意高く襲いかかってくる【黄金の十本鋏の大魔道士】の攻撃をよく見極めたイスラは、再びそーちゃんとリンクする。
砂の中から小さく飛び出る目玉にクリーピングコインを構える。とっておきのコインを構えたイスラは、さっき結界を吸収して得た魔力を一枚のコインに込めた。
「これは返すね! だから黄金、いっただくよー!」
狙いを定め、全力でコインを打ち込む。イスラの行動をトレースしたそーちゃんのコインと、イスラが放つとっておきのコイン。
二枚のコインは同時に巨蟹の眉間を穿つ。すり鉢状にえぐれた砂の中から現れた巨蟹は、巨大魔力弾を放つことなく沈黙した。
● 今日はカニすき!
ホクホク顔で巨蟹を掘り出したイスラは、共に戦ったスピネルと一緒にバーベキューの支度を始めた。
お宝の甲羅はもちろんいただくが、身もしっかりいただかねば。黄金蟹のプリプリの身をカニすきに仕上げたイスラは、漂ってくる美味しそうな匂いに顔を上げた。
「上手に焼けました!」
「ありがとう美味しそう! こっちも黄金蟹のカニすきができたよ! 一緒に食べよう!」
スピネルが持ってきてくれる焼きガニに、大きな鍋を食卓に出す。
頬張る蟹は本当に美味しくて、甘くて柔らかくてほんのりとした磯の香りがたまらない。思う存分蟹を堪能したイスラは、殻だけになった黄金とルビーを見た。
陽の光を浴びた殻は、本当に美しい。蟹の身を剥いだ殻だというのにこれだけ美しいのだ。きちんと洗って加工してやれば、その美しさは類を見ないだろう。
同じことを思ったのか、スピネルは傍らに置かれたケゾルツ996に語り掛けた。
「それにしても綺麗なルビーだ。そう思わない? ケゾルツ。」
『ええ。さすがは竜の宝物庫、といったところでしょうか』
「この光景だけでも、来た甲斐があるよね」
クールに返す女性の声に微笑むスピネルに、イスラは心から同意して頷いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィロメーラ・アステール
◎ かに【鬼宿に座する死霊術士】
「な、なんだこの禍々しい蟹は!」
まさかコイツの元になった財宝とは!?
血塗られた歴史をもつ呪われた宝では!
よく見れば甲羅にも苦悶の死相が見える気がする!
美味しいというのも罪の味に違いない……なんてことだ!
こんな呪われた蟹は浄化しなくちゃ!
【黄昏翔ける黎明の流星】でパワーアップだ!
【破魔】の聖なる【オーラ防御】の輝きに包まれることで防御力を高め、敵の放つ呪いアタックや死霊ビームに対抗する!
そして謎のテキトーな必殺技名を叫びながら【全力魔法】の光【属性攻撃】を放ち、なんやかんやで倒すぞ!
聖矢・流星撃ち!(見開き演出)
戦いの後は食べて供養する。なむなむ。うまうま。
● イロイロギリギリ蟹の黄金セ……
白い砂浜に現れた黄金蟹の姿に、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)は警戒を強めた。
そこにいるのは、一匹の巨蟹。黄金に輝く蟹のフォルムは鋭く尖り、まるで一式の鎧を組み替えたように堂々たる身体をしている。
だが、異様なのはその蟹が纏う妖気。力こそ正義と信じて疑わない魔力は、まるで小宇宙を象徴しているかのように沸き立っている。
「な、なんだこの禍々しい蟹は! まさかコイツの元になった財宝とは黄金……」
触っちゃいけない領域にいそうな蟹の姿に恐れおののきながらも、フィロメーラはそっと蟹に近づく。さしずめ【鬼宿に座する死霊術士】という二つ名を持っているであろう黄金の蟹の背中には、無数のデスマスク。苦悶の死相を浮かべた罪もない人々の顔がレリーフのように浮かび上がった甲羅に、フィロメーラは唇を噛んだ。
「これはきっと、血塗られた歴史をもつ呪われた宝! こんな呪われた蟹は浄化しなくちゃ!」
フィロメーラの声に反応したのか、蟹がピクリと動く。ガシャンガシャンと脚を広げた黄金の蟹は、目をギョロリとさせるとフィロメーラを睨んだ。
直後に放たれる死霊ビームがフィロメーラを襲う。黄金の蟹に殺された人々の怨念が具現化した死霊ビームを回避したフィロメーラは、意を決するとユーベルコードを詠唱した。
「どうやら本気を出す時が来たようだなー!」
空中でくるりと回ったフィロメーラの身体を、なんだかよく分からないけれどもすごいエフェクトが包み込む。
世界ひとつに匹敵するほどの膨大な魔力と、因果改変にも等しい強力な幸運の加護と、気合いで自身を強化したフィロメーラは、まるで弓矢をつがえた黄金の鎧を纏ったような姿になると死霊たちを受け止めた。
黄金蟹に殺された人々の怨念が、フィロメーラの聖なる破魔の力に触れて浄化される。受けた死霊を逆に己の力としたフィロメーラは、恐れおののく黄金蟹に指を突きつけた。
「お前のような蟹は、黄泉平坂に送ってくれる!」
第七感的な力を発現させたフィロメーラに、黄金蟹は呪いタックルを仕掛ける。猛然と突き進む黄金蟹の突進を止めたのは、浄化された死霊達。隙を作ってくれた死霊達に感謝の視線を送ったフィロメーラは、弓をつがえると黄金蟹の甲羅に狙いを定めた。
「食らえ! 聖矢・流星撃ち!(フライング・シャイニング・シューティング・スター!)」
フィロメーラの真剣な表情が、大写しになる。手元がクローズアップし、矢羽から手を離した瞬間を描写。死霊達を螺旋状に纏わせることで、共に戦っているのだという演出を加えよう。死霊と共に放たれた矢は集中線と共に真っ直ぐ黄金蟹へ向かい、ついには甲羅に突き刺さる。必殺技名はゴシック体……いや、手書きの方が勢いあるかな。
黄金蟹の甲羅に刻まれた、苦悶を浮かべたデスマスクの表情が柔らかくなる。その直後、蟹の甲羅から一斉に黄金の鎧が剥がれ落ちた。
残された蟹は「あぎゃぱー!」という謎の叫びを上げて動きを止める。
別の意味でギリギリの戦いを制したフィロメーラは、消えゆく死霊達を手を振って見送った。
なお、残された蟹の身は罪の味かと思えるほど美味だったという。なむなむ。うまうま。
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル
美味しくて高値で売れる財宝って最高よね。
【ルビーの彷徨える大蟹】って色といい割と普通に蟹よね…。
とは言っても油断大敵。
まずは念動力で雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせておいて、敵の行動を阻害兼盾として使用するわ。
敵に気付かれぬよう隠密行動で動いて、敵を見つけたら関節部を狙って糸で絡めて火事場のなんとやらを使って鋏や足を切り落とすとするわ。
あとは穢れを知らぬ薔薇の蕾も切り落とした関節部や目や口あたりに投げて行動阻害するわ。
狙えるならいっそひっくり返すのもありかしらね。
身はその場で調理して美味しく頂くわ。不死蟹の抜け殻もあるからカニしゃぶしましょ。
殻もちゃんと持ち帰るわ(風糸で網を編む)
● ルビーのカニハンター
砂の中から出ている一対の蟹の目玉に、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は思わず目を輝かせた。
白い砂浜の上にひときわ映える、真紅の甲羅。丸みを帯びた三角形のぽてっとした胴体といい、そこから伸びるスラリとした脚といい、確かに芸術品として評価できるのは頷ける。
しかも高い。最低金額は金貨2000枚というのだから恐れ入る。
「美味しくて高値で売れる財宝って最高よね」
陽の光を浴びて輝く、この大陸ではいっそ珍しい大変オーソドックスなシルエットをした蟹の二つ名は【ルビーの彷徨える大蟹】。
「って色といい割と普通に蟹よね……。とは言っても油断大敵」
なんといっても、通称蟹シナリオの蟹なのだ。油断できないしないほうがいい。
巨蟹を発見してしばし。巨大な蟹の姿に、フェアリーの小さな身体も功を奏したのだろう。
巨蟹に気づかれることなくそっと近づいたパルピは、雨紡ぎの風糸を自らの周囲に張り巡らせた。
透明な糸は、それと思ってよく見なければその存在に気づかないだろう。光の反射と空気の動きで存在を視認できる程度の極細糸の鎧を纏ったパルピは、後ろから近づくと一気に風糸を放った。
蟹の脚に、透明な糸が絡みつく。異変に気付いた蟹が、慌てて砂の中に潜行しようとユーベルコードを発動させる。思わずそちらに引っ張られるが、ここで負けてはいけない。
「フェアリーの力、なめないでね!」
【火事場のなんとやら(フェアリーナメタラアカンゼヨ)】を発動させたパルピは、巨蟹と盛大な引き合いを演じる。
最初蟹の甲羅にかかった糸が関節に移動する。鋭い糸は蟹の関節を落とし、鋏が砂の上に落ちる。開放された巨蟹は、砂の中に潜行しようと甲羅をうごめかせた。
「逃さないわ!」
続けざまに放たれた穢れを知らぬ薔薇の蕾が、甲羅を捕らえる。白い薔薇を咲かせる薔薇棘鞭が蟹の目に絡みつき、勢いを利用してひっくり返す。
腹を上に向けた蟹に止めを刺したパルピは、勝利の拳を握り締めた。
● 美味しい蟹は美味しくね
落とした脚を拾い上げ、早速調理を始めたパルピはカニしゃぶを前にホクホク顔の笑みを浮かべた。
以前倒した不死蟹の甲羅もある。美味しい出汁が出る蟹の甲羅の中で煮える【ルビーの彷徨える大蟹】の身。他の具材も美味しく揃って、いい匂いが立ち込める。
「さて、食べましょうか。いただきます!」
プリップリの蟹の身を頬張ったパルピは、その美味しさに目を細める。蟹本来の甘味と旨味が口の中で爆発して、口にした瞬間ほどける蟹肉と相まって一言でいうと最高かな?
一緒に煮た白菜もしいたけも、蟹の出汁を存分に吸ってカニ風味になりながらも、それぞれの風味が生きていて飽きさせない。
締めの雑炊まで美味しく平らげたパルピは、風糸で編んだ網にルビー蟹の殻を乗せると満足そうに帰途についた。
大成功
🔵🔵🔵
ケイラ・ローク
◎
【トーゴ・f14519】を誘って行くわ
蟹は【獰猛たる歌姫】
お宝ですってお宝♡
きゃー見て見て見てトーゴ!あれサファイアよ!
ゲットできればあたしも孤児院のチビさん達もしばらくご飯に困らないわ!
独り占めなんかしないよ勿論山分けしましょう♪
ものは相談なんだけどキミ戦うのって慣れてるよね?
あたし応援頑張るから出来ればあんまり甲羅を壊さないで欲しいなって…いやぁね
戦わないわけじゃ無いわ
その、ちょっと、不慣れで自信が無いのよ
歌姫蟹…あたしも得意な歌で応戦!
■サウンドオブパワー
優しく甘いメロディに北欧風の言葉でエールを乗せて
子守歌じゃないって応援歌よ!
自分も鼓舞してダガーで関節や甲羅の継ぎ目を狙っていくわ!
鹿村・トーゴ
◎【ケイラf18523】と参加
【獰猛たる歌姫】とかいう二つ名の蟹退治…え、どしたん?
(ケイラのテンションに若干びびる)
へぇ、あの翠っぽいのがさはいや(言えてない。鸚鵡ユキエが『サファイアよ』と嘴でツッコミ)つーお宝なワケかよ
ああ孤児院の資金にするんだ?
あは。いーよ助太刀しよう
儲かったらオレにも分け前ちょうだい
や、ひと月暮らせるぐらいで構わねー(価値の解ってない顔)
んー戦うの慣れてるって程でも…
UCは空嘴
Σあっ
甲羅ちょっと割ったらごめんっ!
蟹の身茹でて食べたら美味かった…
持ち帰ろうかなー
と思ったら
わ、わわわヤバっ
うわすげー匂いがする!忍びは匂い付けたら駄目なんだよー(慌て何とか密封)
アドリブ可
● 忍術はケイラを救う
白い砂浜の上に、真っ青な甲羅の蟹がいた。
割とオーソドックスな見た目の蟹は鋏の先にマイクを持っていて、時折口元に持っていってはヘヴィメタルのような激しい歌を口ずさんでいる。
よく見れば青い甲羅の上にはトゲトゲのレザージャケットを羽織り、モヒカン風の金髪と星型のメイクがけばけばしくも攻撃的だ。
「あれが【獰猛たる歌姫】ね。確かに獰猛って言われるだけのことはあるわ」
物陰からそっと様子を伺ったケイラ・ローク(トパーズとアメジスト・f18523)は、ライブ直前のヘヴィメタルバンドのボーカルみたいな歌姫蟹の姿に目を丸くした。
なかなかに個性的な見た目の蟹だが、ここは竜の宝物庫。青く輝く甲羅が、陽光を反射してキラキラ輝いている。
「見た目はともかく、お宝ですってお宝? きゃー見て見て見てトーゴ! あれサファイアよ!」
見た目への驚きが過ぎてしまえば、次に目につくのはそのお宝蟹としての価値であって。ケイラははしゃぎながら、隣に立つ鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)をつついた。
忍びの性か、蟹をお宝ではなく退治すべき敵として観察していたのだろう。つんつんつつtくケイラに、トーゴは不意を突かれたように隣のケイラを見た。
「……え、どしたん?」
「もう。お宝よお宝! ゲットできれば金貨2000枚は下らないんですって! ゲットできればあたしも孤児院のチビさん達もしばらくお金に困らないわ!」
「へぇ、あの翠っぽいのがさはいや、つーお宝なワケかよ」
『サファイアよ』
鸚鵡のユキエが、言えてないトーゴをつついて指摘。真面目な顔をしたトーゴは、ユキエの指摘に改めて言った。
「さ、さふあいあ?」
『サファイア。ファの発音、分かる?』
「ううむ。練習しよう。それはともかく、あのさはいあ蟹、孤児院の資金にするんだ?」
「そうよ。たまには珍しいもの見せてあげたいじゃない」
キマイラフューチャーという、衣食住に困らない世界の下町の孤児院で育ったケイラだったが、やはり土地柄。皆が見ている面白いものが見られないというのは、あの世界にとっては死活問題なのだ。それを理解してくれるトーゴは、ぱっと微笑むと頷いた。
「あは。いーよ助太刀しよう。儲かったらオレにも分け前ちょうだい」
「独り占めなんかしないよ勿論山分けしましょう♪ やっぱり五分五分……」
「ああ。や、ひと月暮らせるぐらいで構わねー」
「ひと月って……」
「それよりも、どう戦うかだよなぁ。歌姫ってことは、歌ってくるのか? 獰猛だから殴ってくるとか?」
忍びの顔で作戦を練るトーゴに、ケイラは改めて蟹を見た。のし歩く蟹は竜の宝物庫という最深部にいるだけあって強いだろう。戦闘に慣れていないケイラの手に負えるだろうか?
思わず不安がせり上がったケイラは、トーゴの服を引っ張った。
「ものは相談なんだけど。キミ戦うのって慣れてるよね?」
「んー戦うの慣れてるって程でも……」
「あたし応援頑張るから、出来ればあんまり甲羅を壊さないで欲しいなって……。いやぁね。戦わないわけじゃ無いわ。でもその、ちょっと、不慣れで自信が無いのよ」
言いながらも俯いてしまう。トーゴと比べると力量に差があるのは自分でも分かっている。他のことならさておき、単純な力比べになると勝てる自信がないのだ。
「ケイラが応援してくれるなら百人力だ」
うつむきかけてしまったケイラに、トーゴは明るい顔で笑いかけた。
● 歌はトーゴを救う
砂浜にヘビメタロックが響いた。
先端を開いてしばし。【獰猛たる歌姫】はその名に恥じぬ耳をつんざくような歌声でトーゴを攻撃してきたのだ。
召喚された分身体も、歌姫を援護するように音楽を奏でる。ギターやベース、キーボードやドラムを手にガチャガチャとした音楽は圧を持っているようで、なかなか近づくことができない。
歌姫は防御力がない。一撃入ればトーゴの勝ち。音波に屈すれば蟹の勝ち。わかりやすいと言えば分かりやすい戦いだが、飛ばした苦無も手裏剣も音の壁に阻まれてしまうのだからなかなかの難敵だ。
幾度目かに攻撃を仕掛けるが、全て分身体と音波に阻まれる。頭がだんだん痛くなってきて、精神鍛錬を積んだトーゴでさえ、獰猛な気持ちに支配されかける。
頭を抱え辛うじて振り払ったトーゴの耳に、音楽が響いた。
ヘビメタロックに染まらない、優しく甘いメロディ。美しく響く歌声は傲慢なヘビメタロックの中にあっても存在感を失わず、トーゴの耳に届いた。
北欧風独特の言葉が、美しく響く。優しいメロディに音波を忘れたトーゴは、傍らで歌い続けるケイラに笑みを投げた。
「子守歌?」
「じゃないって応援歌よ!」
歌を止めて思わずツッコミを入れるケイラに、トーゴは頷く。歌が止むと、世界はヘビメタロック一色になって、歌の世界観に巻き込まれてしまう。ケイラの歌が、トーゴをトーゴでいさせてくれる。その心強さは、どんな歌よりもトーゴに力をくれる。
「分かってるって。そのまま歌ってくれよな!」
ケイラの肩を叩いたトーゴは、再び流れてくる美しい歌声に心を預けた。あの歌が聞こえる限り、トーゴはトーゴでいられる。忍にとって何より大切な平常心を取り戻したトーゴは、苦無を構えると精神を集中させた。
「“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に”」
いかに歌姫とはいえ、連続して歌い続けることはできない。必ず息継ぎをするはずだ。
空気の割れ目を見切ったトーゴは、目を見開くと駆け出した。
「……穿て大鉄嘴!」
一気に距離を詰め、苦無を穿つ。武器に纏わせたツルハシ状の超圧縮した空気は歌姫の音波の壁を叩き割り、同時に腹の甲羅に深く突き刺す。
目を開けたトーゴは、放射状にひび割れた甲羅に大慌てでケイラを振り返った。
「あっ! 甲羅ちょっと割った! ごめんっ!」
「そんなのいいよ! ありがとうトーゴ!」
駆け寄るケイラに、トーゴは鼻の頭を掻いた。
● 美味蟹は二人を救う
せっかくだからと広げたキャンプセットで蟹を茹でたトーゴは、茹でたて熱々の蟹をテーブルに置いた。
「さあ、食べよう!」
「いただきます!」
茹でたての蟹は、本当に美味しかった。
青い甲羅は茹でても青く、食卓にあまりない色だが皿だと割り切ればそれもまたアリ。そんな色のマジックを補って余りある蟹肉はジューシーで柔らかく、頬張る度に口の中が蟹の幸せで満たされていくのが分かる。
二人で黙々と蟹を食べてたが、さすがに巨蟹。食べ切るには量がありすぎた。
「おいひい! 孤児院の子どもたちにおみやへにしよう!」
蟹を頬張り満足そうに目を細めるケイラに、トーゴも頷く。お土産にしてもいいな、と思った時、慌てて自分の腕の匂いを嗅いだ。
嗅覚がマヒしてしまっているので分からなかったが、自分、蟹臭くないか?
そう思って嗅ぐと、確かに蟹の匂いがする。
「わ、わわわヤバっ! うわすげー匂いがする! 忍びは匂い付けたら駄目なんだよー」
「今日くらいはいいんじゃないかな? ほらもう今さらだし」
慌て何とか密封するトーゴに、ケイラのもっともなツッコミが響いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニコ・ベルクシュタイン
【うさみ(f01902)と】◎
蟹…大魔道士…ウッ頭が
そうだなうさみよ、俺達にとっての最終決戦は今此れから始まるのだ
カタストロフを防ぎ、スーパーその日暮らしから脱却する為にも…!
蟹の甲羅を財として手に入れつつ、身は美味しく頂く
中々の難題だが、まずはひっくり返さねばならないか
…ヒッ(どやされて恐妻ムーブ)わ、分かった分かった
双剣を構えて【時計の針は無慈悲に刻む】を発動だ
炎と氷の「属性攻撃」で切断面が綺麗になるよう細心の注意を払い
返す刀で「2回攻撃」、ご注文通りに脚や鋏を切り落とす
切った部位はうさみの方へと放り投げる
そうすれば良い感じに料理してくれるだろう
焼いた身を食べながら財宝も手に入れような
榎・うさみっち
【ニコ(f00324)と!】◎
フッ、戦争終盤にしてまたこいつと相見えるとはな
こいつが俺達にとってのクライマックスというわけか
行くぞニコー!!世界平和の為にも!
そして一攫千金の為にも!!
また美味しいのか、じゃあ食うしかねーな!
前回はさむらいっちで斬って踊り食いだったからな
今回は…焼きガニの刑に処す!
ニコ!お前先に行ってハサミや脚を斬って狩ってこい!
もうクッキングは始まってんだよ!
UC発動し、さむらいっちとまほみっちの
ゆたんぽを半々ずつ複製
まずはさむらいっちがスパーンと
ニコが狩ったカニの殻を斬って剥がし
すかさずまほみっちが炎の属性攻撃魔法で
カニの身をこんがり焼くぜ!
んーっ焼いて食っても最高ー!
● 大魔道士蟹、みたび
目の前に現れたのは、大魔道士だった。
かつて、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は大魔道士を名乗る巨蟹とニ度、相まみえた。
一度目は手伝ってくれた親切な大魔道士蟹をニコの魔法が誤って追加食材にしてしまった。そんな大魔道士蟹を美味しいカニグラタンにしたところ、ギョロ目で睨まれたために成仏するよう祈りを捧げた。
ニ度目はつい最近だ。群龍大陸の戦いが始まった直後に相まみえた巨蟹もまた、大魔道士だった。大魔道士を名乗る蟹が信仰するのは仏ではなく神と気付き、成神するよう祈り直した。
……なんだかろくでもない出会い方しかしていない気もするが、それはそれ。蟹とはそういうものである。知らんけど。
そして、三度目。
ニコの前に現れた巨蟹は、やはり大魔道士蟹だった。しかも、最初にニコが魔法で倒してしまった恩蟹魔道士に瓜二つだ。蟹の個体差をどこまで見分けられるのかを問われればさすがに自信はないのだが。
「蟹……大魔道士……ウッ頭が」
脳裏をよぎる走馬灯のような記憶に、思わず頭に手を当てる。
他にもたくさんの二つ名を持つ巨蟹はいるはずだ。なのに何故、大魔道士蟹ばかりと出会うのか。
「まさか、これが宿敵フラグメント……!」
などとそれ絶対に違うだろな天啓を得かけたニコを、頭上から響く榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の明るい声が救った。
「フッ、戦争終盤にしてまたこいつと相見えるとはな。こいつが俺達にとってのクライマックスというわけか」
ニコの頭の上で腕を組み、ドヤ顔で笑みを浮かべるうさみっちの姿が目に浮かぶ。思い浮かべただけで、混乱しかけたニコの思考が整っていくのが分かる。
そうだ。二度あることは三度あるというではないか。裏を返せば四度目はない。ここできちんと決着をつければ、大魔道士蟹との宿縁も断てるというものだ。
「そうだなうさみよ、俺達にとっての最終決戦は今此れから始まるのだ。カタストロフを防ぎ、スーパーその日暮らしから脱却する為にも……!」
言いながら、今回の目的も思い出す。ここの蟹は、売れば金貨2000枚になるのだ。日本円でおよそ2000万円。これだけあれば少なくとも当面は、うさみっちに楽をさせてやれるのだ。
狩(や)るしかない。
そんなニコの気持ちを読んだかのように、うさみっちはニコの頭の上から飛び立つとゆたんぽをずびしぃっ! と突きつけた。
「行くぞニコー!! 世界平和の為にも! そして一攫千金の為にも!!」
「無論だ。ニコ・ベルクシュタイン、参る!」
時刻みの双剣を構えたニコは、砂地を蹴ると大魔道士蟹へと駆け出した。
● 精神攻撃って結構やっかい
双剣を手に駆け出したニコの背中を見送ったうさみっちは、今回も現れた大魔道士蟹の姿にホクホク笑顔を浮かべた。
あの大魔道士蟹は旨かった。何をどうしても美味かった。カニグラタンはもちろん、サラダだろうが踊り食いだろうが、どうしてこうなった? と言いたくなるくらい美味しかった。
帝竜戦役も最終盤。不死蟹海岸にはいなかったが、まさか宝物庫にいるとは思わなかった。今回の蟹も、もれなく美味しいのだという。美味とお宝、両方ゲットできるのならば、これは食べなくてはなるまい!
「前回はさむらいっちで斬って踊り食いだったからな。今回は……焼きガニの刑に処す!」
エプロンを身に着けたうさみっちは、ゆたんぽを両手に持つと詠唱を開始した。
右手にはさむらいっちゆたんぽを。左手にはまほみっちゆたんぽを。
それぞれ35体ずつ複製して両翼に従えたうさみっちは、前回の蟹よりも増えたゆたんぽシリーズを誇らしげに見た。
「よーしお前ら! 今回も腹いっぱい蟹食うぞー! ……って、何やってんだニコ!」
ゆたんぽシリーズ達の士気を上げたうさみっちは、先に戦闘開始したはずのニコの背中をどやしつけた。
もう決着がついていてもおかしくないか、と思ったのだが、ニコは大魔道士蟹を前に攻めあぐねている。どうやら、この大魔道士蟹は真正面に立った敵を混乱させて動きを一時的に封じるらしい。ニコはまるで世界一の難題に取り組む学者のように、眉間に皺を寄せて考え込んでいた。
「蟹の甲羅を財として手に入れつつ、身は美味しく頂く。中々の難題だが、まずはひっくり返さねばならないか。この巨蟹をひっくり返すには、まず蟹の形状を把握して……」
「ニコ! お前先に行ってハサミや脚を斬って狩ってこいって言っただろ! もうクッキングは始まってんだよ!」
『蟹の殻を剥く準備はできてるでござるよ!』
『後はニコ君が、脚を持ってきさえすれば、この僕が華麗に焼いてあげるよ!』
うさみっちのどやしと、その後ろに控えるゆたんぽシリーズ達の励ましとも何ともつかない声に、ニコは飛び上がった。
「……ヒッ。わ、分かった分かった」
71人の恐妻ムーブに首を竦めたニコは、混乱から立ち直ると双剣の切っ先を大魔道士蟹へ向けた。
「過去は過去に、未来は我らに」
【時計の針は無慈悲に刻む(ルースレス・クロックワークス)】を発動させたニコは、炎と氷の属性攻撃を使い分けながら大魔道士蟹へと駆け寄る。
ユーベルコードが破られたことに気がついたのか。大魔道士蟹は実体を持つ分身体を放った。魔法使いとサムライに対抗するのならば、戦士とショーグンだろうと言わんばかりに、バスタードソードとヒノマル扇を構えた蟹が次々とニコに襲い掛かるが、彼に打撃がいくことはなかった。
一斉に飛び出したさむらいっちゆたんぽがショーグン? 誰それと言わんばかりにバッサリ切り払い、まほみっちゆたんぽが遠距離から戦士蟹を焼き尽くす。
死ぬほどまずい蟹に用はない。情け容赦なく迎撃したゆたんぽシリーズ達の間を通り抜けたニコの双剣がひらめく。
切断面が綺麗になるよう細心の注意を払われた斬撃は、美しい放物線を描きながら宙を舞った。
● 大団円な蟹宴
「いくぞ!」
『承知!』
予告してからニコが投げた蟹脚に、さむらいっちゆたんぽが素早く飛び寄った。
居合斬一閃。装備した日本刀で飛んでくる蟹脚の殻をスパーンと斬って剥がされる。
更に高く宙を待った蟹脚に、炎の属性魔法が迫った。
『ふっ。まずはレアでいいね?』
宙を舞う蟹脚を追いかけるように、まほみっちゆたんぽ達の魔法が蟹脚をこんがりと焼く。
いい感じに焼けた蟹脚が飛ぶその先に、大皿を構えたうさみっちがいた。
「おーらいおーらい!」
飛んでくる蟹脚を残さずキャッチしたうさみっちに、全員で健闘を称え合う。
刀で斬られ、炎で炙られてなお輝きを失わない大魔道士蟹は、皿の上でこんがり山盛りになっている。
胴体の蟹肉で作ったカニクリームグラタンも、爪肉で作ったサラダもスタンバイ。パーティーテーブルの上に所狭しと並べられたカニ料理の数々に、全員目を輝かせた。
「それじゃ! 帝竜戦役おつかれ! かんぱーい!」
「「「「かんぱーい
!」」」」
それぞれのグラスが高らかに打ち鳴らされ、楽しいパーティーが始まった。パフォーマンスしながら焼いた焼きガニは間違いなくジューシーでプリプリで、カニクリームグラタンは目玉がなくても最高に美味しい。
「んーっ焼いて食っても最高ー!」
「蟹殻は売るから、一箇所にまとめておいてくれ」
大魔道士蟹コンプレックスを克服したらしいニコが空の皿を差し出すと、次々に美しい蟹殻が入れられる。
賑やかで楽しい宴は、いつまでも続いたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
秋山・軍犬
◎
よーし、皆でワイワイと蟹パーティを楽しむ為
【指定UC】の二人を連れて
特別、美味しい蟹を見つけるっすよー!
二つ名:◎っぱい評論蟹
ああ、ナンシーがゴミを見るような目で蟹を!
よし、次行ってみよう
二つ名:金銀ダイヤお◎ぱい評論蟹
財宝要素を盛れば良い訳じゃないの、次
二つ名:黄金の十本鋏の大魔道おっ◎い評論蟹
その二つ名を汚す事は許されない…次!
二つ名:帝竜プラチナ(本体)の下半身の
防御力について熱く語るおっぱ◎評論蟹
ちょっと透けてるよね…次ぃッ!
二つ名:竜玉の覇竜蟹
…キタコレ!そうそう!
こーゆう僕の考えた最強で美味しい蟹で良いんすよ
よーし、軍犬 戦闘も料理も頑張るぞい!
(UC:黄金の厨房+料理+空中戦)
ビッグ・サン
◎
ここに、伝説のジャイアンツ・ゴールデンクラブとタイガー・ゴールデンクラブというカニが出るそうですね
仲の悪いカニと聞いていますので、私が不死蟹の殻から作った蟹ゴーレムをおとりにして二匹を引き合わせ、喧嘩させてから、弱った方を狙いましょう
どちらも高い守備を持っていますが、打撃も爆発すれば一気に蹴りがつくんじゃないかと思っているのですよ
とりあえず私はこの二匹の蟹だと、タイガーのほうが好きですからね
タイガーを応援しましょう
同じA&Wの蟹ですが、タイガーのほうが私の地元のあたりをなわばりにしてたそうですからね
風船飛ばしたり、「吹っ飛ばせ~タイガー、ジャイアンツ倒せ~よ」を応援歌を歌っておきますよ
● それゆけ! カニカニ評論家!
晴れ渡る空には雲ひとつなく、澄み渡る初夏の太陽は野球場を照らし出し輝かせている。
客席を埋め尽くすファンは、もちろん蟹。無数の蟹達は熱狂的なまでに盛り上がり、蟹野球の始まりを今か今かと待っている。
宿命のライバルと呼ばれる伝説のジャイアン・ゴールデンクラブとタイガー・ゴールデンクラブという野球蟹の一戦が今、始まろうとしていた。
そんな伝統の一戦の前座として始まるショーに、秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)は楽しそうに腕を組んだ。
球場の真ん中に設置された特設ステージ脇の審査員席に陣取ると机をてしてしと叩く。
「よーし、皆でワイワイと蟹パーティを楽しむ為にも! 特別、美味しい蟹を見つけるっすよー!」
「美味しい蟹の審査ですか。私も参加しますよ」
当然のように軍犬の隣に座ったビッグ・サン(永遠を求める研究者・f06449)は、何食わぬ顔で風船を飛ばした。
それを皮切りに、観客席からも次々と風船が飛ばされる。ついでにヤジやら座布団やらも宙を舞う。そのカオスな状況に、ユーベルコードで召喚されたジョンが肩を竦めた。
「HAHAHA! ナンシー見てごらん。まさか軍犬と組んでも大丈夫な猟兵がいるとはね!」
「本当に意外よジョン。単独だと書きにくいからって合わせてみたら、まさかこんなに相性がいいだなんて誰も思わないわ」
金髪気のいいメリケン兄ちゃんなジョンが両手を挙げた時、ボン・キュッ・ボン美少女のナンシーがWAO! と言わんばかりにメタなことをいう。二人ともお久しぶりです。
無数の風船が飛び交う中、ついに美味蟹審査が始まった。MCからマイクを奪った軍犬が、ノリノリで音量を最大にする。
「さあ、エントリーナンバー1! 二つ名:◎っぱい評論蟹」
舞台袖から出てきた蟹は集団で行動し、すれ違う雌ガニの◎っぱいをジロジロ見ては仲間内で点数を付けあっている。
「Oh! セクハラよ! 連邦裁判所に訴えて勝つわ!」
「ああっ、ナンシーがゴミを見るような目で蟹を! よし、次行ってみよう! エントリーナンバー2! 二つ名:金銀ダイヤお◎ぱい評論蟹」
続いて現れたのは、黒いタキシードを着て全てのカニ足と爪に金銀ダイヤの指輪……足輪? をつけたゴテゴテしい成金蟹。
「HAHAHA! あの指輪、全部指輪物語の……」
「財宝要素を盛れば良い訳じゃないの、次! エントリーナンバー3! 二つ名:黄金の十本鋏の大魔道おっ◎い評論蟹」
冷静なツッコミとともにコールされ現れたのは、甲羅の真ん中に彫りの深い青年の顔をつけ、こめかみから頬にかけてカニ足をあしらったヘルムをまとう、黄金の……ではなく。
「おやおや。懐かしいですねぇ」
「その二つ名を汚す事は許されない……次!」
あっさり却下された蟹が引っ込んだ時、蟹かな? と見紛う美少女が現れた。それに続いて現れる蟹。
「エントリーナンバー4! 二つ名:帝竜プラチナ(本体)の下半身の防御力について熱く語るおっぱ◎評論蟹」
https://tw6.jp/gallery/?id=91869
「プラチナって、まさかデ……」
「ちょっと透けてるよね……次ぃッ! エントリーナンバー5! 二つ名:竜玉の覇竜蟹」
今まで出てきた帝竜達の特徴をうまいこと合わせた蟹の周囲に、七つの竜玉が飛び交う。少年の心をくすぐるカッコいい蟹の姿に、軍犬は目を輝かせた。
「……キタコレ! そうそう! こーゆう僕の考えた最強で美味しい蟹で良いんすよ。よーし、軍犬 戦闘も料理も頑張るぞい!」
「では、私も手伝いましょう。野球はVIPルームを用意しましたからそちらで」
いそいそと立ち上がったビッグが、軍犬の隣で得物を構える。
始まる激戦を制しカニ肉を手に入れた軍犬とビッグは、万雷の拍手の中VIPルームへの階段を登っていった。
● ジャイアンとタイガーは群体だそうです
もはや前座だかなんだか分からないショーが終わり、一息ついたビッグはホクホク顔で生ビールを片手に竜玉の覇竜焼きガニをつついた。軍犬作のカニ料理は、どれもこれもでたらめに美味い。
不死蟹の殻から作った蟹ゴーレムを使って、なんやかやしてこの一戦を実現したビッグだったのだが、途中で知り合った軍犬と意気投合。せっかく整えた舞台だからと美味しいカニ探しをした甲斐があるというものだ。自然、応援にも熱が入る。
「吹っ飛ばせ~タイガー、ジャイアン倒せ~よ!」
「おっさん、タイガーファンなんすか?」
同じくVIP席で野球を肴にジャンボ蟹串焼きをつつく軍犬の問に、ビッグは大きく頷いた。
「ええ。私はこの二匹の蟹だと、タイガーのほうが好きですからね。タイガーを応援してるんですよ」
「へえ、なんか思い入れでもあるんすか?」
至極ごもっともだが、ツッコミところはそこじゃない軍犬の問いに、ビッグは深々と頷く。
「同じA&Wの蟹ですが、タイガーのほうが私の地元のあたりをなわばりにしてたそうですからね」
「じゃあ自分はジャイアンを応援するっす! いけいけジャイアンー!」
「ねえジョン。軍犬ったら、また蟹退治を忘れて脱線してるわ」
「HAHAHA、相変わらずじゃないか。それでこそグンケーン・アッキヤーマだね!」
Oh、No! とナンシーが肩を竦めると、白い歯を見せつけて笑うジョンのリーゼントが揺れる。
相変わらず深夜のテレビショッピングのようなノリで語り合う二人の姿に、ビッグは何事もなかったかのように甲○園竜玉の覇竜カレーと甲子○竜玉の覇竜焼きそばを勧めた。
「野球観戦は人数が多いほうが盛り上がりますからね。ささ、冷めないうちにどうぞ。私が作ったんですよ。ぜひ実験台……もとい、新薬の試食をしていただきたい」
「新薬って、ちょっと怖いわジョン」
「なぁに。言っても僕たちはユーベルコードさ。多少の毒なんて……」
メタなことを言いながらもカレーと焼きそばを食べたジョンとナンシーは、しばらくすると目を輝かせて野球の応援を始めた。全員ノリノリでツッコミ不在な空間に、楽しい声だけが響いた。
「いい勝負だねナンシー! まるでこびりついた油汚れをみるみる溶かすスーパー洗剤のように点が入っていくじゃないか!」
「そうねジョン! 高い枝も切り放題のハサミみたいね。さすがはカニだわ!」
もはやハイテンションが留まることを知らないジョンとナンシーに、ビッグは満足げに頷く。どうやら狙った効果が出たようだ。
「どちらも高い守備を持っていますが、打撃も爆発すれば一気にケリがつくんじゃないかと思っているのですよ」
「がんばるっすよジャイアンー! 自分の全財産をジャイアンの勝ちに賭けたんすからね!」
「負けるなタイガー、今年こそ優勝です!」
一進一退の、手に汗握る勝負が球場で繰り広げられる。
9回裏。2アウト満塁。
53対50の最後の投球に、ホームランの高い音が響き渡る。
その後。試合に応援に疲れたカニたちを全員倒してしまうほどの絶叫が球場全体に響いたが、歓喜か絶望かは定かではない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レフティ・リトルキャット
◎詠唱省略OK
【美味なる武道家ルビー】
おぉーまっかにゃ。おいしそうにゃん。調理はどうしよう?。アカネにゃんはできるかにゃ?。
僕は子猫に変身し髭感知で動きを見切り、くるりふわりとダンスを舞う様に呪いのオーラ防御を纏った爪や肉球を武器に盾に、武道家の連撃を受け捌くにゃん(武器・盾受け)
うにゃ?コレは。ルビーって硬いのにゃ?ますます解体のし甲斐がありそうにゃん。(爪の手応えに)
蟹が潜行したらチャンスにゃ。近くまでおびき寄せ肉球を打ち合わせる、ねこだまし!。(実は大音量のヘビメタなミュージックエナジーによる重量・気絶攻撃を叩き付けて)
跳び上がってきたところを限界突破の爪舞、【ブラッディダンシング】。
● 白い子猫と紅い蟹
白い砂浜の上に、紅い蟹が現れた。
ルビーの色を湛えた真っ赤な蟹の姿に、レフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)は目を輝かせた。
「おぉーまっかにゃ。おいしそうにゃん。調理はどうしよう? アカネにゃんはできるかにゃ?」
白い砂の上できょとん、と首を傾げるまんまるおめめの子猫にせがまれたら、ぜひともお料理してあげたくなってしまうが、ここは我慢。我慢なのです!
誰かが拳をギュッと握り締めたような気配はさておき。レフティは子猫の姿のまま、ルビーの巨蟹を見上げた。
十本の脚を素早くシュシュシュ! とシャドーボクシングのように振りまくる【美味なる武道家ルビー】は、ふいに動きを止めると胴体の周囲で脚を回転させ始めた。
ベアリングでも仕込んであるのか。なんてなめらかに回転するカニ足は、そのまま宙に浮くとびっくりするレフティに向けて滑るように飛んでいった。
「にゃにゃ! 武闘家って竜巻旋風なんとかにゃ!?」
慌てて回避したレフティに、空中でUターンした蟹が再び襲いかかってくる。こんな風に飛んでくるのは蟹じゃなくて亀だったかも? などという疑問を抱きつつ、初見を凌いだレフティはおひげに感じる微妙な風の変化から武闘家蟹の動きを察知した。
飛んでくる方向と角度を正確に読み取り、くるりとジャンプ。ふわりと舞ったレフティは、ふいに自身の回転を鋭くすると蟹の回転軸の真ん中に猫パンチを繰り出した。
一瞬の打撃。そこから感じる衝撃に、レフティは空中でくるくる回ると砂地に着地した。
「うにゃ? コレは。ルビーって硬いのにゃ?」
攻撃を仕掛けた手が、じんじん痛む。ダイヤモンドの次に硬い鉱物であるルビーは、さすがに猫パンチ一発で破壊できるほど柔らかくな無いようだ。だが、それならそれで楽しみ方はある。
「ますます解体のし甲斐がありそうにゃん」
ワクワクの笑顔を浮かべたレフティに、回転を早めた武闘家蟹が再攻撃を仕掛ける。
またもや回避するレフティに、武闘家蟹は戦法を変えたのだろう。砂の中に潜行するとその身を隠した。
静かになった砂浜に、レフティはにんまりと笑う。子猫の鋭敏な感覚ならば、砂の中に潜っていても近づけば分かる。目を閉じ、おひげの先に神経を集中させる。砂の中を泳ぎ回る武闘家蟹は、レフティが追ってこないのを感じたのだろう。一撃で仕留めようと猛スピードで近づいてくるのが感じ取れた。
「ひっさつ……ねこだまし!」
砂の中深くから急上昇する蟹の気配に、レフティは肉球を打ち合わせる。たす、という小さな音に込められた大音量のヘビメタなミュージックエナジーが、砂面近くまで浮上していた武闘家蟹に重量・気絶攻撃を叩き付ける。
カウンターも込めて叩き込まれた攻撃に武闘家蟹はたまらず宙に舞い上がる。好機と見たレフティは、鋭い惨殺爪を伸ばした。
「武闘家さん、一緒に踊るにゃ!」
舞い踊るような連撃が、甲羅に叩き込まれる。縦に横に斜めに、幾度となく放たれる惨殺爪は、武闘家蟹の甲羅だけでなく魂をも切り刻んでいく。
恐怖に怯えた武闘家蟹は、食べやすい大きさにカットされて砂の上に落ちる。なかなかに恐ろしい攻撃で蟹をカットしたレフティは、「お料理してにゃん♪」と言わんばかりのキラキラな目で見上げた。
大成功
🔵🔵🔵
ハヤト・ノーフィアライツ
【黄金を吐きし半漁獅子(ルビ:マーライオン)】カニ
アドリブ歓迎
灯璃嬢(f02585)と参戦
…また頓狂なカニだな。
まぁ、意外とアレをブン撒かれるのは厄介かもな。
【戦闘知識】を駆使して連中の動きの予測を立て立ち回りを決める。
お嬢さんとは死角を補うよう動こう。
外装は頑丈なんだろうが、中身はどうかね。
…まぁ、金なら溶かせば売れるだろ。
【グラップル、怪力、2回攻撃】を駆使して接近戦を行い、殻の薄い部分を探る。
敵の攻撃は【早業】でかわし【武器受け】で防御、可能なら【カウンター】する。
目測がついたら指定UCを使用。【鎧無視攻撃】を駆使して殻の薄い部分に撃ち込み、電撃で攻撃する。
攻撃後は鎖を排除、次の鎖に交換
灯璃・ファルシュピーゲル
【黄金を吐きし半漁獅子(ルビ:マーライオン)】カニ
アドリブ歓迎
ハヤトさん(f02564)と参戦
確かに警備機構としては優秀かも知れませんね…
竜のセンス自体はちょっと理解できないですが;
戦闘はまず(情報収集・戦闘知識)で蟹達の動きと
攻撃手段を把握しつつ相方と死角を補い合うよう連携
石像系な体は硬い代わりに機動力は低めと予測し動き回りつつ。
足回りの関節を集中狙撃(スナイパー・鎧砕き)で機動力を削ぎ
相方の戦闘を支援する
敵が連携して来た場合は指定UCで黒霧と狼達を展開
し敵の視覚を霧で奪いつつ狼達を片方に四方から襲撃させ
連携を阻害する様戦う
ですね。溶かした方が運搬も楽ですしね…銀なら弾丸作れたんですが…。
● マーライオンは突然に
崖の下をゆっくり蟹が移動する。
森に身を隠したハヤト・ノーフィアライツ(Knight Falcon・f02564)は、崖下の砂浜を悠々歩く蟹の姿に思わず絶句した。
蟹の背中に、石像があった。
上半身はライオン、下半身は魚でできた細長いフォルムの石像は巨大な蟹の上に乗せられてゆっくりと移動する。
放射状に吐かれ続ける黄金は蟹がいままで移動してきた経路を示すようにずっと長く続いている。
一体どこから黄金を吐き続けるのか。蟹の身は黄金でできているのか。【黄金を吐きし半漁獅子(ルビ:マーライオン)】に対する疑問は尽きないが、その姿と行動にハヤトは眉間に寄った皺をほぐした。
「……また頓狂なカニだな。まぁ、意外とアレをブン撒かれるのは厄介かもな」
実際、撒かれた黄金は光熱を発していておいそれとは近寄れない上に、直接黄金を被ったら相当な被害がでるだろう。
これだけ黄金を吐き続け、市場に流通し続ければ希少価値を失い、ただのドロドロとした液状金属となる。そこまで考えたのかは分からないが、ハヤトの隣に立った灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)は深く頷いた。
「確かに警備機構としては優秀かも知れませんね……。竜のセンス自体はちょっと理解できないですが」
苦笑いで答えた灯璃は、先程から収集した情報をもとに作戦を立てると手短にハヤトへと伝えた。
Hk477K-SOPMOD3"Schutzhund"のX1-4スコープを覗き込み、精神を集中させ狙撃。狙い違わず放たれた銃弾は蟹の関節に直撃し、脚を一本吹き飛ばす。
突然の狙撃に警戒を強めた巨蟹は、大きく後ずさり距離を取る。半漁獅子の目が赤く輝いた瞬間、灯璃は銃を構えながら素早く移動した。
垂れ流されていた黄金が、レーザービームのように細く吐き出される。攻撃を引きつけながらも狙撃を続け蟹の機動力を削いだ灯璃は、お返しとばかりにユーベルコードを詠唱した。
「Sammeln! Praesentiert das Gewehr! ……仕事の時間だ、狼達≪Kamerad≫!」
灯璃の背後から、漆黒の森のような霧が現れた。蟹とマーライオンを包み込み、その視界を塞ぐ。
そこへ、狼達が襲い掛かる。影でできた狼達が四方から一斉にマーライオンに襲いかかり、その身体を喰らい尽くすように牙をむく。
射撃をやめ、黄金の霧で防御したマーライオンは、なんとか狼達の猛攻から逃れると灯璃に向けて黄金を溜めた。
灯璃へ向けて放たれるはずだった黄金バズーカはしかし、放たれることはなかった。
灯璃が引きつけている間に死角に回り込んだハヤトが、グランドファルコンを駆り一気に距離を詰めたのだ。
グランドファルコンのエンジン音が響く。タイヤの轢き潰しでマーライオンを排除したハヤトは。周囲に撒かれた黄金をものともせずにバイクを走らせる。
インパルスブレードを手に巨蟹の殻を叩き割ろうとするが、硬い殻を破ることはできない。それでも何度も繰り出すハヤトの攻撃にじれたのか。巨蟹は大きなハサミを振り上げるとグランドファルコンのタイヤを攻撃した。
転倒するバイクから、受け身を取りながら砂地を転がる。跳ね起きたハヤトの頭上に巨大なハサミが迫る。
「ハヤトさん!」
灯璃の声が射程外から聞こえる。目前に迫る蟹爪に、ハヤトは口の端を歪めた。
「狙い通り」
不敵に笑いながら、振り下ろされる蟹爪をインパルスブレードで武器受けしたハヤトは、足元に落としたマイクロチェーンの柄をかかとで踏んだ。
「コイツにはこういう使い方もあるんだぜ! さあ、痺れるほど楽しみな!」
その直後、巨蟹の身体に電撃が走った。バイクで攻撃を仕掛けながらマイクロチェーンを巻きつけ、脆くなった甲羅から先端を体内に叩き込んだのだ。
巨蟹の身体に、電撃が走る。
高圧電流を流された巨蟹は、ぐにゃりと溶けると熔けた黄金の山となり沈黙した。
● 金の弾丸 銀の弾丸
文字通り金の山と化した蟹を前にしたハヤトは、帽子を拾い上げると頭に載せた。そのままワシャワシャと髪を掻く。
「外装は頑丈なら、中身はどうかと思ったが、まさか全部金だったとはね」
このエリアの蟹は全て美味しいと予知されていた。おそらく食べても大丈夫だが、熔けた黄金の山を敢えて食べようとは思わない。
無限に黄金を吐き出せば値崩れもするだろうが、今目の前にある程度の量ならば金相場に影響はないだろう。
「……まぁ、金なら高値で売れるだろ」
「ですね。溶かした方が運搬も楽ですしね。……銀なら弾丸作れたんですが……」
「作ってみるか? 金の弾丸」
ハヤトの軽口に、灯璃はふと考え込む。金は鉛よりも比重が重いため、とても優秀な銃弾ができるだろう。銀の弾丸のようにアンデッド等に効果が高いかは分からないが、純粋に火力としてはアリである。実際、もし金が鉛並に価格が安く入手が容易なら金の弾丸が主流になっていただろう。
「そうですね。それもいいかも知れません」
「まじかよ」
まじめに検討を始める灯璃に、ハヤトは苦笑いしながら天を仰いだ。
大成功
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