帝竜戦役㉗〜竜にして文明なるもの
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群竜大陸の岩場に、それはいた。あらゆるものを融合してきたが故に歪な巨躯を持つもの――帝竜『ダイウルゴス』。
その竜の内部より声が響いた。
「我等ダイウルゴス文明は迫りくる猟兵達との交戦を行う」
淡々とした言葉に、同じ竜の内部から複数の声。
「この交戦は先の会議による選択に基づくものである」「選択に変更はない」
「ならば如何なる戦術を持って猟兵に対するか――」
それはダイウルゴスを構成する九十九の竜達の言葉。
ダイウルゴスの体内の竜たちは会議を続ける。生き延びるために、猟兵達を迎撃するために。
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グリモアベースで。ベッキー・ウッドは「はろー」と猟兵達に挨拶してから、表情を引き締めた。
「群竜大陸でのみんなの活躍の結果、新しい帝竜と戦うことが可能なったよ」
その帝竜の名は、『ダイウルゴス』。
99体の竜が一つに融合した存在。自分を「ダイウルゴス文明」と称する、奇妙な精神性と、あらゆる物質と融合する能力を持っている。
「この帝竜は危険なことを画策している。他の帝竜を取り込み、さらには私達が使っているエネルギー『グリモア』さえ狙っているようなんだ。
その企ての全貌は明らかではないけど、この帝竜を放置すれば、絶対に良くないことが起きる……。みんな、急いで帝竜を打ち倒してほしい!」
ベッキーは群竜大陸の地図を指さし、一点を指す。大陸の北方、ダイウルゴスと同じ体の色をした岩場が戦場となると説明。
「戦闘するうえで注意してほしいのは、ダイウルゴスは『必ず』先制攻撃をしてくるということ」
ダイウルゴスが使ってくる技は三つ。
時間をかけ、体内の竜同士の会議をすることで、自身の動きを向上させる技。
小型ドラゴンを大量に呼び出す攻撃。
浴びたものをダイウルゴスの一部になりたいと思わせてしまう、透明な波動。
「どれも非常に強力。対策を取らないで挑めば、反撃もできずに倒されてしまう。
だから、『どうやって敵の先制攻撃から自分を守り、反撃するか』、しっかり対策を考えて、敵に立ち向かってほしい」
説明するベッキーの顔は極めて真剣。
「ダイウルゴスやヴァルギリオスの思い通りにさせれば、とんでもないことになっちゃう。
世界を護るためにも、帝竜戦役で勝利するためにも、ここで頑張って欲しい。よろしくお願いね!」
猟兵達一人一人の目を見て激励し、ベッキーは転移を開始する。
支倉みかん
支倉みかんです。ご閲覧ありがとうございます。
このシナリオは『帝竜戦役』の一部であり、一章で完結します。
今回の敵は、あらゆる物質と融合合体する『帝竜ダイウルゴス』
ダイウルゴスは『必ず』先制攻撃し、ユーベルコードを使ってきます。
『敵のユーベルコードからどのように身を守り、反撃するか』をプレイングに書くことで、戦いを有利にできるでしょう。
皆さんの知恵と力を存分に発揮し、帝竜ダイウルゴスを討伐してください。
よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『帝竜ダイウルゴス』
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POW : ダイウルゴス会議
自身の【体内の無数のダイウルゴスによる合議制】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : ダイウルゴス文明軍
レベル×1体の、【眼球】に1と刻印された戦闘用【小型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 文明侵略衝撃波『フロンティア・ライン』
【四肢のどれか】から【見えざる文明侵略衝撃波】を放ち、【ダイウルゴスの一部になりたいと望ませる事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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ロラン・ヒュッテンブレナー
合言葉は【ファランビー】!なの
100体合体ダイウルゴス
ちょっと、かっこいいね
でも、議長不在で、その議長は別世界にいたって聞いたの
……色々気になる相手だね
なんか、動かないね?
それじゃ、動くまで待ってあげるの
「不利」は相対的な概念だから
相手に有利にしてあげれば問題ないの
トランプ?ぼく、得意だから負けないよ
油断も誘ってみるの
相手が動く気配を【第六感】で感じ取って二人の前に出て
【全力魔法】で結界魔術【オーラ防御】を【範囲攻撃】展開
受け止めて隙が出来たら、みんなで一斉にカウンターなの
大丈夫、耐えて見せるの
【高速詠唱】【全力魔法】【誘導弾】のロランバースト!
ぼくたちが磨いてきた連携は、咄嗟でも鈍らないの
ハロ・シエラ
【ファランビー】!
ダイウルゴス……ドラゴンテイマーの配下か何かでしょうか。
この世界の為にも、借りを返す為にも一太刀浴びせたい所です。
敵が会議をしている間は「待ってあげます、存分に会議なさい!」とか【大声】で伝え、こちらは騒ぎながらババ抜きでもしましょう。
私達の騒ぎが邪魔になっても知りませんし、ある意味【恐怖を与える】事になるかも知れませんが。
会議が終わったら【早業】で戦闘態勢を取ります。
敵の動きを【見切り】ロランさんの結界で鈍る敵の攻撃を回避しながら前に出て、ロランバーストの後にチェリカさんに合わせ、ユーベルコードで【気合い】と共に下から斬り上げます。
私達には戦場での会議など必要ありません!
チェリカ・ロンド
【ファランビー】!
ドラゴンテイマー……キマフュに出た根暗なおじさんね!あいつの配下かー。
なんかざわざわ言ってるわね。竜の中で会議してるのが不利で、それで強くなるなら、待っときましょうか。
暇だし、三人で遊んでましょ。トランプする人この指とまれー!みんなでわいわい、笑って楽しむわよ!
ああーババ引いちゃったー!くやしー!
この悔しさは、会議が終わったダイウルゴスにぶつけるしかないわね!
てことで、敵の話し合いが終わったら、【全力魔法】で【光気】を爆発させて、【超聖者】に変身よ!
ロランバーストに合わせて、【光聖剣バルムンク】でハロと一緒に斬り込むわ!
くやしーーっ!!聖なる八つ当たりをくらえーっ!!
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皮膚の所々に亀裂の走る、歪なる姿のダイウルゴス。その帝竜は猟兵達を見下ろし、内部より無機質な声を出す。
『我等ダイウルゴス文明は眼前の猟兵達への最善手について討議――』
チェリカ・ロンド、ロラン・ヒュッテンブレナー、ハロ・シエラの三人は視線をかわし合い、
「トランプする人この指とまれ―!」
「ぼく、得意だから負けないよ」
「ではババ抜きにしましょうか」
その場に座り、トランプを取り出した。
『討議を開――』
会議を進行していた声がとまり、ざわ……ざわ……ダイウルゴス内から騒めき。
『不測の事態の発生を確認、会議の一時中断を要請』『賛成4、反対95、棄権1、戦術会議を続行――』
三人の行動の突飛さに困惑を漏らすダイウルゴス。ハロは赤い瞳で竜を睨み、一喝。
「待ってあげます、存分に会議なさい!」
そしてトランプを繰り出した。
ダイウルゴス内部の竜たちは意見を交換し合う。ゲームが魔術儀式であると推測するもの、即時攻撃を提案するもの……紛糾する議論。
一方、猟兵三人はゲームに興じ続ける
「2枚捨てて……これであがりなの」
ロランは穏やかな笑顔で最後の二枚を場に捨て、チェリカは
「ああーまたババ引いちゃったー! くやしー!」
上体を反らし叫ぶ。
一方、ダイウルゴスはあくまで真剣に会議を進めていた。
『賛成89、反対10、棄権1……我等ダイウルゴス文明は、猟兵達の不明行動への調査を兼ね攻撃を実施する』
遂に前脚を構え、猟兵達を刺さんと振り落とす。
ハロは瞬時にトランプをしまうと、レイピア・リトルフォックスを抜き放った。
襲い来る竜の爪の軌道と速度を見切り、
「させませんっ!」
腕を振る。火花。リトルフォックスの刃で敵の爪を弾き飛ばした。
ダイウルゴスは動きを止めず、首を猟兵達へと延ばす。食らいつくさんと口を大きく開ける。
チェリカとロランの赤と紫の瞳は、敵の動きを観察していた。
「不利な行動」をとることで、己を強化するのがダイウルゴスの技。
しかし、チェリカ等が遊びだしたことで彼等の不利はなくなった。故に技は不完全に発動、己を強化しきれていない。
「ロラン、いける?」
問い掛けるチェリカに、
「大丈夫。耐えて見せるの」
ロランは首肯し、一歩前へ。服の装飾に擬態させた魔術回路を作動させ、結界を構築! ダイウルゴスの頭はロランの結界に激突。動きが止まった。
「会議が上手くいかないと力を発揮できないダイウルゴス……ですが、私達には戦場での会議など必要ありません!」
「ぼくたちが磨いてきた連携は、咄嗟でも鈍らないの」
言葉を紡ぎながら、ハロはレイピアに宿る炎を滾らせた。ロランはさらなる術を行使すべく精神を研ぎ澄ます。
チェリカもオーラを金に輝かせ、髪をブロンドに変えながら、敵に指を突きつけた。
「あー。さっきババ抜きで勝てなかったのくやしーーっ! ダイウルゴス、絶対に許さないんだから!」
『一人だけ違う趣旨の発言を――』
ダイウルゴスの抗議など、三人は聞かない。
ロランは【飲み込み喰らい尽くす破滅の鉄槌(デストロイ・ロランバースト)】を発動。
「対消滅術式展開、マジカ圧縮、臨界、高密度魔術弾装填完了。レディ」
人工的な声で言い終えた途端、膨大な魔力の塊が発生、敵めがけ飛ぶ。
回避せんと翼を動かすダイウルゴス。だが、ロランの魔力は敵の皮膚を掠めた。ロランの魔力が敵の皮膚を瞬時に消滅させる!!
大きくバランスを崩すダイウルゴスの左右に、チェリカとハロが回り込む。
【超聖者】に覚醒したチェリカは、光聖剣「バルムンク」を軽々と掲げ、
「聖なる八つ当たりをくらえーっ!!」
理不尽な宣言。
チェリカは超巨大な刀身を敵に叩きつける! ダイウルゴスの体を大きく震わせた
ハロはチェリカに呼応し、
「ちぇえすとぉおぉおぉおぉぉぉぉ!」
ダイウルゴスの巨体へ大きく踏み込んだ。
自身に存在する生命力と魔力のほぼ全てを注ぎ込み、巨大化させたレイピアで【スターブレイカー】! 敵の肌に大きな一文字の傷をつける。
三人の連携は、ダイウルゴスの体中に幾つもの傷をつけた。が、
『猟兵の危険と理不尽さの認識を上方修正することを要請する』『賛成、生き延びるために認識の修正が必要』
内部の竜たちの声には、依然として生存への強い意志。
ロラン、チェリカ、ハロは、敵に追い打ちをかけ、その命を断ち切るため、戦場を駆けた。
「生き延びるためにみんなで頑張る100体合体ダイウルゴス。ちょっとかっこいいし、色々気になる相手だけど――」
「それでも負けないわよっ。ババ抜きでは負けたけど、この戦いは絶対に勝つんだから!」
「ええ、この世界の為にもここでの勝利を。このまま攻め続けましょう!」
大成功
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ケルスティン・フレデリクション
竜が、いっぱい、体の中にいる…?
99ひき…数え切れないね…
…でも、負けられないから…わたしも、いっぱいがんばる、ね。
先制攻撃には【ひかりのまもり】
他の猟兵達を守る無敵の盾。
みんなを、まもるの。それがわたしのすべきこと。
先制攻撃じゃなくても、皆が怪我をしそうになったら、使うよ。
攻撃は、氷の【属性攻撃】【範囲攻撃】【全力魔法】
相棒の氷の精霊、ルルにお願いしておてつだいしてもらうね。
ルル、おねがい…!
氷の雨を、敵に向かって降らせるよ。
この世界のみんなを、猟兵のみんなを、守るのが私のしたいこと。すべきこと。
…だから、がんばるね。
アリス・セカンドカラー
ほほう?合議制の為に敢えて不利な行動をすると?
目立たない存在感に更に迷彩を施してしれっとぬらりひょんの如くにダイウルゴス会議に参加しても案外許されそう?あ、これ脳内会議?ならテレパシー(第六感/ハッキング/読心術)で思考の送受信すればイケるでしょ。
ブームの仕掛人で票が割れるように場を操縦し議論を紛糾させて時間稼ぎするわ。最終的に『シャーマンたるアリスと心通わせるのが生存への最善。なに、小娘一人後でどうとでもなる』という方向へ誘惑フェロモン(毒使い)も駆使した催眠術も用いてハートと思考を盗み攻撃で略奪し誘導しましょ。
ま、うまくいったらサクラメントで破壊の衝動を消すので再起なんてさせませんけどね?
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『文明の消耗は甚大』『状況を打破するため……』
ダイウルゴス内部から複数の声。
アリス・セカンドカラーは敵の会議を聞き、首をこくんと傾け思案。数秒後、悪戯気な微笑を浮かべた。
アリスは腕に嵌めたワンダーリングを擦り、竜の声に似せたテレパシーを発信。
(戦いの継続が、生存への最善だろうか?)
ざわ。ダイウルゴス内の竜たちは新たな声に驚き、どよめく。
アリスは思考を鈍化させる甘いフェロモンを発しつつ、アリスはさらなるテレパシーを送る。
(そこにいるのは猟兵にしてシャーマン)(シャーマンと心を通わせることが生存への最善)
『疑問』『交戦は決定事項の筈』
アリスのテレパシーに混乱するダイウルゴス内部。が、
『ダイウルゴス文明内に百一体目の声を確認。眼前の猟兵の妨害工作である可能性を提示』
竜の一体が、アリスの介入に気づいた。
やがてダイウルゴスはアリスへの攻撃を決め、翼を広げた。アリスへ体をぶつけようと突撃してくる。
アリスは迫りくる竜を見る。思考と会議をかき乱したために、その動きは遅い。目を細め、笑みを濃くするアリス。
ケルスティン・フレデリクションは、アリスの横に並ぶ。
手には小さな精霊銃・きらめき。そのグリップをケルスティンは硬く握る。力を使う準備はできている。
オレンジの瞳を寸前に迫った敵に向け、動きを読みとり、
「きらめき、まもって!」
【ひかりのまもり】にて、光の壁を敵前方に創造。
集中力を鈍らせていたダイウルゴスは、光壁に衝突。頭を強かにぶつける。今までについた傷から零れる体液。
「たくさんの、数え切れない、竜……でも、負けられないから……いっぱいがんばる、ね」
仲間への言葉はたどたどしいが、強い想いがしっかりと感じられた。
ケルスティンは光壁を次々に創造していく。
ダイウルゴスは爪で尾で牙でなお猟兵達を攻めたてるが、ケルスティンは光壁でその全てを防ぎきった。
ケルスティンの額に脂汗。力を使い続けた故に疲労は大きい。けれどケルスティンは言う。
「この世界のみんなを、猟兵のみんなを、守るのがわたしのしたいこと、すべきこと。だから……がんばりつづける、よ」
アリスはワンダーエナジードレスの裾をふわり靡かせ、消耗したダイウルゴスに近づいた。
『テレパシーを警戒せよ』
聞こえてきたダイウルゴスの言葉に、アリスは芝居がかった口調で、
「これから披露するのは先程のテレパシーではありません」
精霊の変化した魔術刻印に霊力を注ぎ、
「オブリビオンと心通わすシャーマンの秘技をご覧遊ばせ♪」
【不可思議な祈祷師の秘蹟】で、ダイウルゴス内の竜の攻撃衝動を破壊!
ぴたり。ダイウルゴスの動きが止まった。
アリスの力は敵の破壊衝動を完全には消せなかったが、それでも暫く攻撃できない状態に追い込むことに成功したのだ。
「ケルスティン、後はお願いできる?」
ケルスティンはアリスにこくん、小さく頷く。そして傍らの白き鳥の姿をした精霊ルルに、呼びかける。
「ルル、おねがい……!」
ケルスティンとルルの魔力が、大量の氷を空中に生成。氷は動きを止めたダイウルゴスへ降る。
ケルスティンの氷はダイウルゴスの翼に刺さり、背や頭部を打ち、全身を凍えさせ――その命を奪いとる。
戦闘の終った岩場は静まり返っていた。猟兵の他、動く者は誰もいない。
アリスは敵が完全に消滅したことを確認してから、皆に呼びかける。
「さあ、急いで戻りましょう」
アリスに同意し、猟兵達はグリモアベースへの帰路を急ぐ。
ケルスティンは呼吸を整えながら仲間たちに続いた。そして、
「……まもれて、よかったの……ルルも、みんなも、ありがとう」
と、仲間たちに感謝の言葉を口にするのだった。
大成功
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