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帝竜戦役⑮〜白日の夢

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸


 陽光照らす峡谷の中、それは静かに佇んでいた。
 かつて、ヒトの住んだ名残り。今は誰も居ない迷路のような廃墟の群れ。
 しかし、ヒトが居なくなって久しいというのに、家々の白さだけは健在。
 静けさの中、光を弾いて輝くその光景はまるで夢の中のような非現実。
 否、それだけではない。
 白の中に染み出した黒。ゆらりゆらりと揺れる人影。
 それは果たしてなんであるのか。
 かつての住人の末路か。それとも、新たなる住人か。
 だが、なんであれ、それが白の街の中を歩き回る唯一であったことは間違いない。
 ――唯一であった。
 そう、それは過去形。今、この地を踏むはアレだけではない。群竜大陸の奥深くを目指す猟兵もまた、この地を踏みしめているから。
 猟兵達は影を追わねばならない。影を追い、捕まえることが、この迷路のような街を抜け出す唯一の手段だと知っているが故に。
 しかし、踏み出す脚は重く、身体は重く、進む意思はあれども進む自由はなし。
 ゆらりゆらりと影が遠のいていく。
 追わねばならないのに、身体がは何倍もの重さになったかのような不自由さ。
 追えども追えども追い付けない、そんな悪い夢を見ているかのようでもあった。
 迷路をなす白の家々。揺らめく黒の人影。
 まるで白昼夢のような世界の中、猟兵達は影を追う。

「はぁ~い。みなさぁ~ん、お疲れ様ですよぅ」
 兎耳をぴょこりと揺らし、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)はその姿を猟兵達の前に見せる。
 間延びしたその声は、帝竜戦役のただ中に置いても変わらずを示していた。
「随分と群竜大陸の探索も進みましたねぇ」
 開戦からはや幾日。猟兵達の活躍により、群竜大陸はその謎の、障害の多くを踏破されていた。
「今回の御案内もですねぇ、その探索を進める一つですよぅ」
 紹介される依頼。それは群竜大陸におけるとある地域――岩石回廊と呼ばれる地のもの。
 そこは他の地域に比べても、数十倍にも及ぶ重力異常が発生しており、飛行は勿論のこと、ただ歩くをすら困難とさせる土地。
 そんな面倒な土地だが、群竜大陸の全てを探索しようというのなら避けては通れない場所でもあるのだ。
「私が紹介させて頂くのはぁ、そんな地域の一つ。峡谷に建てられた廃墟の迷路ですよぅ」
 そこはヒトが住まなくなって久しい廃墟。
 そして、入り組んだ土地に建てられたからか、その家々の並びや変わらぬ風景がまるで迷路のようにヒトを惑わす場所。
 かつて住んでいた者達であれば、その街の抜けだし方も分かるのだろうけれど――。
「普通に攻略しようとすればですねぇ、重力や迷路で時間も掛かるのでしょうけれどぉ、手がかりがないでもありませぇん」
 それはその街に現れる影。
 かつての残留思念なのか、それともまた別のなにかなのかは分からない。だが、その人影に追い付くことが出来れば街を抜け出せるのだと、ハーバニーは言う。
「ただですねぇ、猟兵の皆さんは重力の影響を受けるのですけれどぉ、その影は影響を受けないようなのですよぅ」
 つまり、猟兵側は何重にも枷を嵌められているというのに、その影は自由に動き回るというのか。
 だが、解決方法がないでもない。
「そのハンデ差を覆すにはぁ、今の内に重力異常へ耐えれるよう訓練するとかですかねぇ」
 ようは枷を枷と感じない程になればいいのだ。
 勿論、それが言うに易しだとは理解するところではあるが、それが今のところ取り得る最も有効な対策であることは間違いない。
「それとですねぇ、障害は重力だけでなくてぇ、影を皆さんが追うようにぃ、大岩が皆さんを追ってくるのですよぅ」
 まるで冒険映画の罠かとでも言いたくなる内容。
 だが、それがこの場所を岩石回廊と呼ぶ所以でもあり、重力へと対応して影を追うだけでなく、それへの対応を考えておかなければぺちゃんこの未来が待ち受けていることだろう。
「相も変わらず、障害ばかりが皆さんの前に立ち塞がりますね。ですが、皆さんならばそれでも越えられるものと信じています」
 ――どうか、お気をつけて。
 そして、翳す銀の鍵に世界の扉が開かれる。猟兵の準備が出来れば、すぐにでも世界を越えられるようにと。
 どのタイミングで扉を潜るかは、猟兵達の意思次第だ。


ゆうそう
 オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 今回の依頼は鬼ごっこ。
 白の街を動き続ける影。それに追い付き、迷路を抜け出すことが目的となります。
 しかし、オープニングでも触れましたが、この土地は重力異常により対策なしであれば行動に制限を受けます。
 また、猟兵の皆さんを圧し潰さんと転がり来る巨岩もありますので、対策なしでは厳しいかもしれません。

 プレイングボーナス……重力異常に耐えられるようなトレーニングを実行してから、回廊に挑戦する。

 どのような手段、方法で対策を取るかは皆さんの自由です。そして、かの人影をどう追いかけるかも。
 それでは、皆さんの活躍、プレイングを心よりお待ちしております。

 追記。
 なお、この戦場では探せば財宝を得られる可能性もあります。
 宝物「へしつぶの種籾」……高重力下でも破壊されなかった、頑丈な種籾です。生育に尋常でない時間がかかりますが、育てた米は、一粒1で成人男性が10日間過ごせる栄養価を持ちます。種籾一粒で金貨88枚(88万円)の価値があります。
 探すかどうかも、皆さんの自由ですので、御随意に。
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第1章 冒険 『白昼の逃走劇』

POW   :    自慢の足で、物で、とにかく追いかける!

SPD   :    街並みの構造を利用し、標的を追い込む!

WIZ   :    住人に被害が出ないように呼びかけたり、避難指示を出す!

👑3
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
エルザ・メレディウス
アド◎連携◎
■訓練
・宇宙飛行士の訓練施設では重力装置を使った訓練が出来ると聞きました。
へしつぶの種籾を入手したら渡すのを条件に【取引】して施設の使用について交渉してみましょう

重力を少しづつ増やしていき最終的には数十倍まで↑、高重力に対する【環境耐性】を手に入れます
日常動作→走ったり→咄嗟のダッシュと少しづつ運動強度↑
十分と判断したら、現地へ

現地でも岩場での【地形耐性】【足場の熟練】を会得するための実地訓練を

■探索
訓練で培ってきたことや【地形の活用】を活かし、咄嗟の落石に対応できるように心がけます

『影の追跡者の召喚』で静かに人影を追跡、私は【忍び足】で気づかれないように後を追いながら迷宮攻略を


ドゥアン・ドゥマン
重力。難題だが…新たなUCの訓練に、渡りに船
…余興だけでなく、実戦で使えるよう。身に馴染ませたい
【墓場影絵】
己も影となり、街陰の闇に紛れ、人影を追跡しよう
彼らのよう動けるかは判らぬ故、
特訓も無論、積んでゆく
疾く、かつ柔軟に。姿変えるイメージを反芻しよう
…竜の如く翼あれば、素早く街を見渡し探せるだろうか
クラゲの如き多腕あれば、目立たず忍び寄れるだろうか
どこまで、影絵の怪物となれるか。試したい

影の身で実体に干渉する術も、覚えねば
大岩の破壊は、鎖の如く、槍の如く
留め、鋭く貫くように、だ

■心情
…停止した街と、影には…親しみがある
猟兵として、攻略は最優先。…だが、
彼らに害意ないなら。できる限り手荒はせぬ



 踏み出す一歩。
 ずしりと重さを感じさせたそれは、常の軽やかさとは程遠い。
 だが、この地――岩石回廊と呼ばれるここであれば、それこそが常。
 この異常なる重力をこそ慣れ親しんだものとしなければ、立つことすらままならぬのだ。
「やはり、訓練とはまた違う感じですね」
「どれ程似せたとしても、自然と人工との違いなのであろうな」
「そのようですね。ですが、無意味ではなかった」
「その通りだ。こうして、我輩達がここに立っていられるのだからな」
 今も尚、その身を地に伏させんと苛む重力の鎖。
 だが、それに屈せず、ピンと伸ばした背筋も凛々しくと、エルザ・メレディウス(復讐者・f19492)はこの地に立つ。
 思い起こされるのは、この地を踏破するために重ねた訓練。
 始まりは日常動作すらも困難であったけれど、それでも少しずつ少しずつと馴染ませた身体は次第に高重力下においても、十全に近しい程にまで。
 もっと、もっとと高みを目指す彼女に、訓練施設の管理者がこれ以上は再現出来ないと泣きついたのは、まだ記憶に新しい。
「――確か、へしつぶの種籾でしたか。それも、ちゃんと持ち帰ってあげなければなりませんね」
 重力訓練施設の使用交換条件として提示したのもあるけれど、それでも泣きつかれる程に無茶をさせてしまったという負い目も、まあ、多少は。
 だからだろうか、それを口にしたエルザの口元に苦笑いが浮かんでいたのは。
「楽しそうにも、見えるな」
「そう、見えましたか?」
「ああ。だが、この重力下において、辛さへ眉を顰め続けるより、きっと良きことでも、あるのだろう」
 エルザの隣、同じくと重力へ抗い立つはドゥアン・ドゥマン(煙る猟葬・f27051)。
 ケットシーというその種族の特徴として、その背丈はエルザに比べて随分と低い。
 しかし、そこに宿るは歩んできた時間の重み。決して、小さき者だからと侮ってはならない迫力というものがあった。
 そんな彼もまた、この地へと立つにあたり、重力に対する訓練を忘れてはいない。
 だが、彼の場合は――。

「呻き、唸り、囁き」

 自身が重力に適応するのは勿論だが、それ以上にその能力を馴染ませることを優先したもの。
 どろりと音もなくその身が崩れ、影となり、近くの――エルザの影へと溶けるように。
「思ったよりは、動けるようだ」
「あなたも、影を使われるのですね」
「で、あるな」
 自身の影に溶けたドゥアン。その動きは、エルザから見ても流れる水のように滑らか。
 それこそ、最初は影形となっても高重力下では粘菌のようにゆっくりとしか動けなかった。それが今では、だ。
 ドゥアンはその成長を改めてと感じ、故にこそ、彼は更なる高みを目指す。
 ぐにゃりと、影がかのイメージを形にせんと蠢き揺れていた。
「では、ひとまず慣らし運転からといったところでしょうか」
「同時に、探索も出来れば、上々であろう」
 如何に高重力下に慣れようとも、やはり訓練施設の内部で動くことと野外で動くことは異なる。
 そのためにも――。

「実地訓練の開始です」
「どこまで、影絵の怪物となれるか、試すとしよう」

 動きがてらに、まずは件の影でも探すとしようか。

 白の遺跡を影はゆく。
 ゆらり、ゆらり。ゆらゆらり。
 されど、それは件の影に非ず。
 影から影。白の中に生み出された建造物の影をドゥアンは翔ぶように。
 流石に竜の如くと空高くまで飛ぶことは叶わなかったけれど、それでも、街を駆ける獣にならば十二分。
「……停止した街と、影には……親しみがある」
 既に滅んだ街。静けさが支配し、誰も居ない街。
 そこにはもうかつての住人の姿はなく、埋葬すべき者もない。
 あるのは、ただ、白く白くと輝く建物のみ。
 ――いや、興味深げと街を見ていたドゥアンの視界の中を、彼ではない影が、白ではない黒が横切った。
 件の影か? 否。
「エルザ殿、であったか?」
 立ち止まり、確認すれば、まるでドゥアンを呼ぶようにして姿を現したエルザの影。
 何かを伝えたいのだろう。そして、それは恐らく――。

「ここに居ましたか」
 街の目抜き通りとでも言うかのような、遺跡の中の大通り。
 そこから僅かと内に入った小路に、それは居た。
 ゆらりゆらりと揺れる人影。その足取りは軽く、重力など端から感じていないかのよう。
 それを遠く、まだ形を残す建物の屋上より目視するはエルザ。まだ彼我の距離は遠く、近付くにもやや時間を要するだろう。
 ただし――。
「素直に下の道を往けば、ですが」
 トンと踏み出す屋上の縁。すかさずと重力の鎖が伸び来るが、それを振り切るようにその身は空へ。
 重力がその身を捉えた時には、彼女の身は既に次の建物の上。
 下の路――迷路の如き路を往くよりも、屋上を、壁を蹴って、直線的に近づくを彼女は選んだのだ。
 ふと、彼女の身に何かが触れた。
 ああ、きっと影が彼――ドゥアンと合流したのだろう。ふと覚えた感触は、恐らくは影に触れたドゥアンからの合図に違いない。
 ならば――。

「――急に出てきますね」

 思考を打ち切る重き音。
 ごろりごろりと転がって、だと言うのに触れる街並みは全く傷つけぬその巨塊。
 エルザが壁を跳び越えた瞬間を狙ったかのように現れたそれ。
 彼女の身を捕えんとするかのように、崩れかけた壁をジャンプ台としてその巌を宙へと躍らせるのだ。
「いきなり難易度があがるものです」
 その動きはまるで曲芸。だから、エルザのそれも同じくと。
 迫りくる巌。その刹那の交差を捉え、巌をこそ足場と代えて、エルザの身は宙にて動きを変える。
 ぶっつけ本番。だが、結果は上々。そして、影は未だと見失わず。
 だが、猟兵が影を追うように、巌もまた猟兵を追うが勤めと彼女を追う。
 十全であれば何度でも対応出来ようが、適応すれどもやはり僅かの違和感は常に付きまとい、幾度も幾度もと重なれば、それはいつかの終わりに辿り着いてしまうもの。

「――では、御願いします」
「これが彼らの害意なのか。それは分からぬが、今は猟兵として、だ」

 だから、その未来を、障害をこそ打ち砕こう。
 いつの間にか。しかし、当然のように、地面へ着地したエルザの傍らに姿を現すは、ドゥアンが姿。
 影を踏み、影を翔び、そして、瞬く間に辿り着いた彼。

「――鎖の如く、槍の如く」

 身を引き絞り、形成すは鋭き槍の穂先。
 今は影たるその身であるからこそ、その形は変幻自在。
 穿つは再びと迫りくる巌。その回転は、それだけで生半可な干渉など轢き潰すだろう。

「留め、鋭く貫くように、だ」

 限界まで引き絞ったその身を解き放ち、弾丸もかくやと影の触手にて穿ち抜くのみ。
 回転の防壁を越えて巌に影が突き立ち、されど、止まらぬ回転が影の穂先ごとドゥアンの身を巻き取らんとする。
 ――だから、彼は貫いた巌の中に潜り込んだ影の穂先を広げた。
 膨れ上がった影は巌の内にて根を張り、そして、巌を崩すのだ。
 ガラガラと砕ける巌の声を背に、エルザは影に追い付いて――。

「さて、あの影はなんだったのでしょうね?」
「墓守、であったのかもしれぬな」
「あの遺跡の?」
「ああ」
 追い付き、触れた影は特に抵抗もなく、そこで初めて二人を認識したかのようでもあった。
 そして、まるで何度もそうしてきたことがあるかのように、手招きする動作で二人を導くのだ。
 そこに敵意はなく、害意もなく、だから、二人もまたそれを影に返さなかった。
 そして、影はゆらりゆらりと二人の先を進み、迷宮を我が庭の如くと進み、遺跡の出口へと。
 もしも重力に適応していなければ、影に存在を認識されても、その案内へ付いていくことは出来なかっただろう。
 遺跡より一歩と踏み出せば、そこにはもういつもの重力。
 二歩、三歩――歩みを進めて遺跡は彼方。振り返れば、その姿はまるで夢幻のように峡谷の中へ隠れ消えていた。
 まるで夢のような儚さでもあり、呆気なさでもある。いずれ、この記憶も他の現実に塗りつぶされて埋没していくのかもしれない。
 だが、二人のその手に握られたへしつぶの種籾――案内の最中、群生していたそれから得たものだけは、確かな現実としてそこにあったのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

祇条・結月
異常重力かぁ……
考えたら過酷な環境だってそれなりに挑んできたつもりだけど、こういうのは初めてだ
ともあれ、やってみるしかないよね

特別な設備とかの前準備は難しいから、現地で訓練するよ
とはいえ僕は普通の学生
いきなり強すぎる重力の負荷とか掛かったら歩くとか以前に、骨とか内臓によくなさそうだ

……そんなわけで、自分自身に鍵を掛ける
これで少なくとも、肉体的には保護されてるし、探索中の岩の落下なんかも気にしなくていい
あとは、慣れない重力下で動けるように訓練するだけ

慣れてきたら鬼ごっこへ
影を見落とさないように【見切り】に集中して
後は根競べ、足の速さは自信があるから振り切られないように【ダッシュ】で一気に捕まえる


シキ・ジルモント
◆SPD
事前のトレーニングでは、重りを背負って歩いたり全力で走る事で、重力異常下で少しでも楽に体を動かす方法を確認したい
トレーニングは本番と同じ狼の姿に変身して行う
人の姿より四つ足で体勢を低く進んだ方が重力の影響を受けにくそうだからな

現地では狼に変身して影を追う
視覚だけでなく嗅覚や聴覚も利用して、ユーベルコードの効果と併せて『追跡』
周囲の地形を利用して追い詰め、近付いたら可能な限りの『ダッシュ』で接近し捕獲を試みる

同時に周囲も警戒
振動等で岩の接近を察知したら、脇の狭い通路に逃げ込んだり高所へ登ってやり過ごしたい
高所に登ったついでに、影の位置の確認と、袋小路に追い込む為に建物の配置を記憶しておく



 ずしりとのしかかるような重さ。
 それを支える筋肉が、骨が、関節が、まるで悲鳴をあげるようにぎしりと鳴いた。
「これでも、もしかしたら足らんのかもしれんがな」
 四つ足の獣が理知を呟き、その悲鳴を黙らせる。
 動かす足の一歩。駆ける脚の一歩。身体の全てをもって、その重さを受け流さんとして。
 準備は万端か?
 はてさて、それは現地に行かねば分かるまい。
 依頼の中身がいつだって予想通りであるとは限らないのだから。
 ただ、それでも考え得るに対して手を打つことだけは怠らない。そのための準備であった。

 ゆらりゆらりと揺れる存在感は、まるで影の様。
 漂泊の身であればこそ、存在を縛る重力の鎖より逃れうるは必定。
「良かったよ。上手くいって」
 異常重力。
 この岩石回廊と呼ばれる地域にのみ生じる、重力の偏り。
 それはそこにある如何なるを何十倍もの重さと変えて、圧し潰すものであった。
 だと言うのに、祇条・結月(キーメイカー・f02067)が姿は健在を示す。
「普通の学生に、特別な設備とかの前準備なんて無理なんだよね」
 だから、彼は自身に鍵を掛けて世界に踏み出た。世界と自身の存在を繋ぐ扉を、銀の鍵で施錠してから。
 故にこその、朧な存在感。故にこその健在。
 上手くいきはするだろうという想いはあれども、実際に上手くいくかは分からない。
 でも、上手くいったという事実に、結月はほっと安堵の息を零すのだ。
 これで、少なくともいきなりぺちゃんこの未来とはおさらば出来たのだから。
「……猟兵のネームバリューを使えば、協力を得られるところもあったのではないか?」
「いやいや、普通は高校生にそんなことや交渉なんて出来ないよ」
「……そうか」
 結月の隣、同じく――ただし、存在感は確として――とこの世界に足を踏み入れは、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)。
 彼の普通という言葉に、その異能を発揮しておきながらの言葉に、ややもすれば首を傾げる。
 だが、本人がそう言うのであればそうなのだろう、と、ひとまずは納得をするのであった。
「やはり、少し重いか」
 それはそれとして、自身の――今は敢えてと狼の姿を取り、四肢で支える身体の負荷を確認する。
 ずしりとのしかかる自身の重さは、重りを背負った時の比ではない。
 だが、訓練によって得た知見は確かであり、少なくとも圧し潰されることは避けられそうだ。
 あとはこの環境に合わせて、情報を更新していけば間もなく対応も出来よう。
 それは、恐らく結月も同じ。
「慣れない重力下、まずはこれで動けるようにならないとだね」
「そうだな。本格的な追跡をする前に、調べたいこともある」
 目指すは高みへ。

 ひょうと吹き抜ける風。
 まだ形を残す建物を探し出し、その屋上より下界を見る。
 広がる光景の、白、白、白。
 それはまるで墓標のようでもあり、此処が既に生きる者の都市ではないことを改めて認識させる。
「重力が発生したから居なくなったのか、それともそれより前に居なくなったのかな」
「さてな。そのどちらかかも知れんし、そのどちらでもないのかも知れん」
「……そっか」
 結月も気の利いた返答を期待した訳ではない。
 シキも気の利いた返答をしたつもりもない。
 それを互いに分かっているからこその何気ない会話。
 だけれど少しだけ、ここを居場所としていたヒト達はどこに行ったのか。新たな居場所は見つけられたのか。と、漂流者たる結月は思っただけのこと。
 それは、ほんの少しの感傷だったのかもしれない。
 僅かに醸し出されるその空気。そして、それを敢えてと壊す程、シキは無粋ではなかった。
 沈黙が場を支配し、シンと静まる空気が耳に痛い。
 それを壊したのは――。
「……居た」
「ああ。それと、俺達への歓迎も始まったようだ」
 白の中をゆらりと行く影を見つけた声。そして、転がる巌の近付く音。
 前者は結月の目視であり、後者はシキの鋭き聴覚。
 さて、追いつ追われつ、鬼ごっこの始まりだ。

 ごろごろと転がり来る巌。
 だがしかし、不思議とそれは白の街並みを壊しはしない。
「そういう仕掛けか、防衛装置の類なのか」
「それとも、何の関係もないのか」
 先程の会話の焼き直し。ちょっとアレンジを加えて。
 高所から確認した影の位置。例え動き回っていたとしても、街の地図は既に頭の中。ならば、多少動かれたところで追いつくが早い。
 それよりも何よりも、対応すべきは後ろでごろりごろりと存在感をアピールする大岩であろう。
「……任せて貰えるかな?」
「任せても、大丈夫なんだな?」
 朧な彼から、四つ足の彼へ。
 こくりと互いが頷いて、結月は立ち止まり、シキはその足を速める。
 迎える者と追う者と、役割の分担に言葉は要らず。

 ――ごろりごろり、ごろ、り。

 立ち止まった結月が何をするのか。その手には何も持たず、動作の素振りすらも見せずして。
 だから、この結果は当然のこと。
 ごろりと転がる巌が結月の身体を回転の中に呑み込んで、念入りに圧し潰すかのようにとその場で止まった。
 ただでさえの質量。それが何十倍もの重力で圧力を掛けてくるのだ。その下に呑まれた結月は――。

「ごめんね。踏み潰されるような居場所は、僕にはないんだ」

 五体満足でひょこりと岩陰より歩み出る。いや、正確に言うならば、巌の内より透過したかのようにと。
 かの身は朧。現世との結びつきを閉じるが故に、如何な干渉からも遠ざかるもの。勿論、それは自身の居場所からも。
 だけれど、この場合においては、結月の身を重力から守るだけでなく、巌の圧からも彼の身を守ったのだ。
 重力をやり過ごせた段階で、結月はそれを予期していた。
 故に、シキへこの場を任せろと言ったのだ。
「さて、あとはあの人が影に追いつくかだね」
 それまでは、この巌をこの場で足止めしようではないか。

 後ろは振り返らない。代わりに、地を踏みしめる脚の回転に拍車をかける。
 通りを駆け、小道を駆け、瓦礫の上を駆ける。
 それは今迄受け流していた負荷をあげることになるのだろうけれど、後を任せた以上、それが己の役割なのだとシキは自覚するが故に。
「どこだ」
 影に匂いなど期待していない。
「どこだ」
 必要なのは、それがあった痕跡を如何に捉えるか。
「どこだ」
 音、気配、名残りを一つとして逃さぬように。
 白の世界の中に残る黒の痕跡。それを読み取り、かの影を狩るが猟犬の為すべき仕事。
 そして――。

「――逃がすか」

 辿った痕跡の果て、小路より大通りに出んとするは影が姿。
 その背後を目掛け、矢のように、されど音もなくシキの体躯が躍った。
 影は最後まで、彼の接近に気付くこともなく――。

「――やっぱり、普通に地に足を着けるのがいいね」
「ああ。瞬間的であればまだだが、流石に延々とでは身体が持たん」
 ゆるりと歩みを進めるは群竜大陸の更なる奥へ。
 その歩みは常のものへと戻っており、重さは少しも感じられない。
 シキが影を組み敷くことで、影はようやくと彼らに気付いたのだ。
 そして、それが合図でもあったかのように、結月に纏わりついていた巌の動きは止まり、彼らは合流を果たす。
 その後はなんとも呆気の無いもので、敵意示さぬ影を解放してみれば、ぬるりと動いた影は二人を手招きするように。
 顔を見合わせ、警戒と共に付いていってみればなんのことはない。それは街を抜けるための案内であったのだ。
 白の墓標の中を歩み、この高重力下でも生きる植物の群生地を抜け、そして、迷路の終わりへと。
「あれはそういう存在であったのだろうな」
「迷った人を案内するための?」
「ああ」
「なるほどね。だから、用がある――接触をするまでは、こっちに反応を示さなかった、と」
 それはまるで何かの機能のようだ、と彼らは思う。
 もしかすれば、街を傷つけなかった大岩も同じで、あちらこそはいつかにシキが語ったように防衛機能の類であったのかもしれない。
 その二つ――もしかすればもっと他のモノもあったのかもしれない――が同時に動いているという状況が放置されていることこそ、この街が死んでいる証拠。
 そして、そんな終わった場所を延々と歩き続け、見守る影。それはまるで――。
「墓守か何かのようだね」
「それか、悪い夢か何かだ」
 終わりを迎え、終わらぬ夢の続く地は遥か彼方。
 だが、猟兵はいつまでもと夢に浸ってなどいられない。だから、彼らは現実を改めてと踏みしめるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戦場外院・晶
「……!閃きました!……ペロペロ」
流石はきなこ
普段の私では考えられぬアイデア
「先ずはサーカスですね」
玉乗りの修行を詰んでみせます
「サーカス団の皆様、尼です玉乗りを極めます」
特注の巨大金属球を拵えてもらい、背負って駆けたり、その状態でもうひとつ球に乗ったりと修行に明け暮れます……ペロペロ
サーカス団の制止を振り切って岩石回廊へ!

「ペロペロ……正確に岩が影を追う我等を追うのなら」
その岩に乗ってしまえば早いのでは?
「……よ!……は!」
むう、凸凹した形が難易度高めですが花形に成れると乞われた私ならば乗りこなせましょう
「ペロペロ……」
不足の事態はきなこのもたらす智慧で対応
「万事において抜かりなしペロペロ」



 ぐっどないす、きなこ。
 大豆を原材料とするからこそ、それには蛋白質を始めとした栄養素を含むだけでなく、脳を活性化させる効能もあるのだ。
 まして、そこに砂糖も加わっているのなら、脳の栄養源としてもバッチリと言う他にない。
 だからこそ――。

「……! 閃きました!」

 ペロペロ、ペロリ。
 きなこを――ユーベルコードにまで昇華されたそれを摂取した、戦場外院・晶(強く握れば、彼女は笑う・f09489)に閃けぬものなどない。
「先ずはサーカスですね」
 何がまずはサーカスなのか謎ではあるが、それがどんな奇抜な発想であったとしてもきっと間違いではないのだ。
 きなこは答えを間違えない。ええ、きっと。
 貴女、そんなキャラクターでしたか。と、どこかで誰かが首捻った気もしたけれど、年月は人を変えるもの。きっと、色々あったのだ。あったのだろう。
 そして、晶は意気揚々と足を踏み出す。玉乗り修行をこなすために。

 それは並大抵の努力ではなかった。
 その身にはずしりと伸し掛かる重石の圧。
 その状態で乗りこなすは、特注の巨大金属球。
 幾度と乗り損ねたことだろうか。幾度とサーカスの敷地を荒らしてしまったことだろうか。
 だが! だが、彼女はなし得たのだ。
「サーカス団の皆様、お蔭で私は玉乗りの極意を得ました」
 最早、如何な重石を纏おうとも落ちること無き足捌き。
 悪路の上をすらも華麗に球を乗りこなす姿は、まさしく玉乗り技術の深奥へと至った者の姿。
 同じ芸を修める者が見た時には、晶の背後に後光すら見えたという。
「返したき恩もありますが――」
「……行くと言うのかね?」
「はい。私には、これをもってなさねばならぬことがあるのです」
 引き留めたきはサーカス団の長。されど、晶は後ろ髪惹かれる思いもあれど、そうはいかない。断腸の思いを持って、断る場面。
 それはともすれば、シリアスな場面であったのだろう。
 ただ、晶がきなこを舐め続けるという絵面さえなければ。
 なんだか色々と残念な光景を繰り広げながらも、しかし、遂にと晶がかの世界へと挑む時が来たのだ。

「……よ!……は!」
 纏わりつく重さもなんのその。
 そのハンデを背負ってもなお、晶の足捌きを鈍らせるものではない。
 玉乗りの深奥に至った技術は伊達ではない。
 ごろごろと転がり来た巌。その上に見事と乗った晶は、それを己の足と代えて影を探す。
「……ペロペロ。影を追う我らを岩が正確に追うというのなら、それに乗ってしまえば早いのでは?」
 それが彼女の思考。そして、きなこの知啓が齎した答え。
 特注の金属球に比べれば、凹凸こそあるけれど、そんなものは関係ない。
 サーカス団に誘われる程の腕前をもってすれば、それは些細なことでしかないのだ。
 ごろごろごろ。
 巌もまさか自身を乗り物にされるなど、思ってもみなかったことだろう。
 彼女を圧し潰さんと瓦礫などを利用して、時折跳びはするけれど、その重さは全くと言っていい程意味をなさない。
 そんな意思でもあるかのような巌の動きすら、きなこの知啓篤き晶にはお見通し。
「万事に置いて抜かりなし」
 ぺろぺろ。
 だから、その後のことも全てお釈迦様の掌の上ならぬ、戦場外院晶の掌の上。
 人を圧し潰せるほどの巌の高さ。そこから眺め見る白の街並みの中から影を探し当てるなど、時間の問題でしかなかった。
 そして、戸惑うような、困ったような影の案内を受けて、彼女は一路、街の外。
 ぶっちゃけた話、影の案内がなくても、彼女であれば独力で街の外に出れていたのかもしれない。

「やめられません、とまりません」
 ぐっどないす、きなこ。

成功 🔵​🔵​🔴​

塩崎・曲人
うーんこの
重力が狂った空間ってか、まぁ大陸が空浮かんでりゃこういうのも有っておかしくねぇけどよ

さて、そんな所に挑むに当たってだが……
素晴らしいことに、対策は準備済みだ。というか実行済みだ
オレ様のあんまし普段使ってない秘密兵器【カラビヤウ・シックス】を使ってだな
ここに来るまで数日、過荷重状態で過ごしてきたのよ
おかげでここの重力もちょっと体が重いぐらいにしか感じねぇ
山に登る前に高地トレーニングして低酸素に慣れるアレと同じような感じって訳だな!

元から体力はそれなりに自身があるんでな
あとはガチで鬼ごっこさせてもらうぜオイ
あ、大岩は流石に死ぬので同じくカラビヤウ・シックスで空中浮遊して回避な



 滅んだ白の光景。
 踏み入ったそこで瓦礫の小さな破片の一つでも試しに持ってみれば、明らかに見た目とそぐわぬ重さの感触。
「うーん、この……重力が狂った空間ってか」
 少し体を傾けてみれば、大地が塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)の身体を抱擁せんと強く引き寄せる。
 それに逆らわず、抱擁を受け止めるようにごろりと地面の上へ。
 重い体で寝返りを打ってみれば、そこには抜けるような青空。
 ずしりと掛かり続ける重力は、明らかに常ではない空間の摩訶不思議。
 どのように成り立っているのか。どのように成り立ったのか。
「……まぁ、大陸が浮かんでりゃ、こういうのも有ってもおかしくねぇけどよ」
 深く考えたところで、そういうものはそういうものなのだ。
 だから、曲人はそこで考えを打ち切った。元より細かい事には拘らないからこその思考。
 それを器が大きいと取るか、それとも、思考が足らないと取るか、それは評価の分かれるところなのかもしれない。
「だが、だ」
 両足を上げ、振り下ろす反動を持って曲人は起き上がる。
 それはまるで大地の抱擁を無理矢理にと振りほどくかのように。
「素晴らしいことに、対策は準備済み……というか、実行済みなんだよなあ」
 高重力下の中であるというのに、曲人の身体はなんなくと重力を振りほどいて起き上がる。
 ぱんぱんと衣服を叩いて砂落とし、合わせてチェーンがちゃらりと揺れた。
「オレ様、ここに来るまでの数日を過荷重状態で過ごしてきたのよね」
 ――カラビヤウ・シックス。
 それは曲人の持つ機械球の名前であり――重力をも制御する機械の名前。
 それがあるからこそ、彼はこの地へと辿り着く前から高重力下でも影響を少なく動けるよう、身体を慣らしていたのだ。
 だからこその軽々とした起き上がりでもあったと言える。
 既に高重力は克服した。走るも跳ぶも、十二分。ならば――。

「ガチで鬼ごっこさせてもらうぜ、オイ」

 あとは影を捕まえるか、接触を持つかするのみだ。
 気合を入れるようにぐるりと腕廻し、曲人の鬼ごっこが始まりを告げた。

「って、おおおぉぉぉ!?」
 白の街並みを騒がして、ドタドタと喧しく走る音。
 気合十分と駆けだしたけれど、その割にはまるでそれは悲鳴のような――。
「ちょ、こっちに来るんじゃねぇよ! 流石に潰されたらオレ様でも死んじまうぜ!?」
 ――実際、悲鳴であった。
 ドタドタと鳴らす曲人の足音を掻き消すように、その背後からはごろごろと巌の音。
 振り返るまでもなく、そこにあるのが何であるかは曲人が誰より知っていた。
 ガチの鬼ごっこ。だが、自分が追いかけられる側になろうとは。
「聞いちゃいたが、この大きさは洒落にならん!」
 逃げ続けて幾時。彼が高重力下でも通常時と遜色ない程に動けるからこそ、未だ彼の命が繋がっていると言える状況。
 元より体力に自負がある彼であっても、いつまでもいつまでもとはいかないだろう。
 だから、曲人はそれを撒くことを優先すべく動くのだ。
 曲がり角を使い、遺跡の壁を障害物と使い、時にパルクールのように宙を駆ける。
 そこまでして、ようやく背後が静かになった。
「……撒いた、か?」
 荒い息整えるように身を屈め、身体に酸素を回していく。
 だが、その言葉はフラグである。

 ――影が差した。

「おいおい、それは嘘じゃん」
 曲人の見上げた宙の先、そこには何故か飛んでくる巨岩の姿。
 逃げるは可能。だが、どこに。まだ走れるが、いずれと限界が来ることは自明の理。どうする、どうする、どうする――。

「……あ!」

 逆境の中の閃き。外してはならない時にこそ、曲人の運命の骰子はよく回る。

 ――ズシンと重い音を立てて、巨岩が曲人のあった場所に落ちた。

 衝撃に土煙が舞う。
 そして、巌の下からじわりと白の街に赤が――。

「最初から、こうしとけばよかったぜ」

 ――広がることはなく、先程とは逆に巌の上から差す影の黒。
 そこにあるのは優雅に浮かぶ曲人の姿。
 その空中からは、巌がまるで悔しがるかのようにごろりと小さく転がるのが良く見えた。
「しっかし、走馬灯が見えるかと思ったぜ」
 いつまで経っても彼の姿は空の上。
 何故か。
 それこそはカラビヤウ・シックス――その重力制御を負荷から軽減へと切り替えたから。
 重く出来るのなら、軽くも出来る。だから、彼はそれを用いて空中へと跳び、巌の追跡を断ち切ったのだ。
 そして、空浮かぶ手段を得たのなら、最早、この地にある如何なるも彼にとっての障害にはなり得ない。
 空の上からなら影を見つけるは容易いものであり、また、出口まで辿り着くことも当然のように。

「たまには、普通に大勝ちが出来ないもんかね」

 己の歩く道の波乱万丈。だが、逆境にて輝く帳尻合わせの人生。それこそが、塩崎曲人の道なのだ。

 そして、ほんの少しの後日談。
 白の街を後にする際、彼のポケットにはお土産代わりとへしつぶの種籾が幾つか。
 さて、それを元手にどうするかは、彼次第。
 ただ、どこかで帳尻合わせがあることだけは、想像に難くない――のかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
重力、なんてよくわからないけれど……
身体が重くなるんでしょう?
だったらその分、軽くなれば良いかしら
【私を飲んで】で小さくなるわ

(メアリ自身はよくわかっていませんが
小さく軽い生物ほど重力の影響は小さい……ハズ)

あぁ、だけれど
この短い脚じゃ追いかけっこはできないから
そうね、かくれんぼにした方が良いかしら?
【目立たない】ように身を潜め
廃墟なら隠れる場所もきっと多いでしょう?
それに岩からだって身を守れるもの
影と岩なら【息止め】る必要はないかしら
【聞き耳】立てて何か聞こえるものかしら

なるべく高くて見やすいところに陣取って
影が見えたら上から【ジャンプ】で跳び付くの!
それでこの後は……
殺せばいいの? 違う?


御形・菘
はっはっは、たかが数十倍の重力など余裕よ! …と見せかけんとな!
いや、無様に潰される絵面って残念すぎるであろう?
とゆーことで、キマフュのなんかすごい施設で訓練してきたぞ!

妾の得意分野、鬼ごっこを挑もうとは勇ましいのう
相手によって加減を調整しておるが、此度はアルティメットモードでゆくぞ?
妾にとって、身を伏せた状態はむしろ移動が速い! 這うのに上半身や手も使えるのでな!
そして殺気とか存在感とかフル発揮! 真っすぐ追いかける!

岩石など、ささやかな抵抗の演出にしかならんよ
重力もハンデと思えば楽しいもの!
左腕でブン殴り、頭突きを入れ、適宜映える感じにブチ砕く!
全力で逃げるがよい、果たして何分もつかのう?



 起動音。
 しばらくお待ちください。という文字と共に映し出されるは砂嵐。
 そして、暗転。画面は黒から彩を描き出す。
 映し出されたそこは白の街。ミュート機能をオンにしているかのような静けさの遺跡。
 暫くその光景が映し出されていたが、突如としてそれは動く。
 次いで見せられるは、白の街道に描かれる尾の道筋。
 ゆっくりとその道筋を辿れば、そこには――。
「はっはっは、たかが数十倍の重力など余裕よ!」
 蛇。否、蛇なる異形、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)の高笑い。
「待たせたな、我が民達よ。知っている者もいようが、敢えて名乗ろう。妾は御形菘。邪神なり!」
 ドンと効果音の付きそうな自己紹介。
 胸張り、高笑い。合わせて、口元から赤がちろりと顔を出す。
「此度はここ、アックス&ウィザーズと呼ばれる世界ある、この白の遺跡を踏破する姿を見せてやろうと思うのだ」
「ねえ、そろそろ姿を見せてもいいのかしら?」
「いや、待て、妾がお主を呼んでから……いや、もう良いか。このようなハプニングも面白きの内よ」
「メアリ、貴女が何を言っているのかよく分からないわ」
「――コホン。だが、此度は少しばかり趣向を変え、妾の降臨だけでなく、共にと探索する者がある。その紹介をしてやろう」
「あ、もう出ていいのね?」
 ひょこりと菘の頭部、髪の毛の間より顔を見せたはメアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)。
 だが、その姿は常の大きさではなく、まるでフェアリーかそれ以下の大きさ。
「この者が此度の協力者、メアリー・ベスレムである」
「これに挨拶するのかしら? 不思議なことをするのね。まあ、いいけれど」
 不思議そうに、それでも、ご機嫌よう。と小さくご挨拶。
 合わせて、兎耳のフードが微かに揺れて、儚き衣も微かと揺れて。
 その魅力的で蠱惑的な姿に、画面の向こうは色めき立つこと間違いなし。
 だが、そんなことなどお構いなしにと映像は進む。
「ところで、画面映えしそうだから乗れと言われて頭に乗らせてもらってるけれど、重くないのかしら?」
「はっはっは、お主程度の重さなど、妾からすれば無きにも等しい」
「そうなの。なら、小さくなった意味もあったのね。重力、なんてよくわからないけれど」
 そう。彼女の常の大きさは150cm余り。だが、今は彼女が力を行使したが故に、彼女の身はかく小さく。
 重力で身体が重くなるのなら、その分軽くなればいい。
 そんな思いつきでの行動であったけれど、偶然にもそれが良い方向に作用したのだ。
 重力の影響は小さく軽ければそうである程に影響は少ないが故に。
 では、翻ってさしたる何かをしていないように見える菘はどうなのか。
 簡単である。この世界へと足を踏み入れる前に、みっちりと訓練してきたのだ。キマイラフューチャーの技術力を持ってして。
 堂々とした立ち振る舞いからは、その努力を微塵も感じさせはしない。
 配信者としてのプライドとキャラ作りのプライドがそこにはあった。
「では、今回の趣旨を説明しよう」
「此処にいるっていう影に追いついて、殺せばいいんでしょう?」
「いきなり物騒であるな、お主」
「え、違うのかしら?」
「まあ、状況によってはそうなるのかもしれんが、まあ、最初は追いかけるのみに留め置こう。鬼ごっこのようなものだな」
「あら、それじゃあ、メアリのこの短い脚じゃ、追いかけっこは出来ないわね」
「いいや、それはそれで需要……ん、役割もある。故、そこは妾に任せよ」
「そうなの? じゃあ、それまではメアリは貴女のお上で影探しでもしようかしら」
「ああ、それは是非とも頼もうか」
 準備の程は万端にして、それではいざ、おにごっこ配信のスタートへ。

 始まりはゆるりとした立ち上がり。
 雑談交えて、世界を見て、二人は『ソレ』の登場を待ちわびる。
 そして、『ソレ』はさしたる時間を置かずと現れるのだ。
「居た。居たわ」
「おぉ、そのようだな」
「こっちには気が付いていないのかしら。それなら、丁度狩り時ね。ふふ、メアリが追う側だなんて、ドキドキしちゃう」
「まあ、追うのは妾――待て」
「あら、貴女も気付いたの?」
「当然であるな。そして、これは良い機だ。このままでは盛り上がりに欠けると思っていたところでもある」
 影をその視界に納めながら、それでもピタリと止まった蛇の進行。
 何故か。
 その疑問へと応えるかのように、背後より近付く重き音。
 そう――。
「これが大岩なのね。小さなアリスのままだと、あっという間に押し花ね!」
「ふははははっ、安心せい。この程度の岩、妾が押し留めてくれよう!
「まぁ、頼もしい」
 雑談の花咲くをその重さで押し花に変えんと、ごろりごろりと岩は近付く。

 ――ざわりと世界がさざめいた。

 それはただの風であったのだろうか。それはただのノイズであったのだろうか。
 ――否。それこそは声高らかと示す、邪神の存在感。
 びりびりと響くそれに巌だけでなく、影が初めて彼女らに気付いたかのようにと振り向く。
 普段であれば特に敵意も何も示さず、接触をすればそれだけで出口へと案内してくれる影ではあったけれど、流石に菘の殺気と存在感には腰も引けたのであろう。ゆらりゆらりと輪郭を揺らして遠ざかっていく。
「あら、あっちは逃げてしまっているわよ?」
「む……脅かし過ぎたか? だが、追いかけるにしても、ここまでしたのだから……ええい、そっちはお主に任せよう」
「あ、これが私の役割?」
「若干想定とも違うが、まあ、その通りである!」
 だが、メアリーの脚で影に追いつくには、少しばかり距離も遠い。
 故に――。

「ふふふっ、メアリったら、本当に飛んでいるみたいだわ!」

 菘の尾のしなりを利用した大跳躍。それをもって、彼我の距離を埋めんとするのだ。
 メアリの影が――元々小さかったけれど更に――小さくなっていく。
 それを尻目に、菘は転がりくる巨岩へと向き合うのみ。
「あまり時間もないでな。早々に、しかし、映えるようにブチ砕く!」
 そして、黄金の左腕が降り抜かれ、巌に亀裂が刻まれた。

 飛んで、跳んで、とんで。
 加速がメアリの身を後押しすれば、あっという間に埋まる距離。
 さて、どうするか。飛びつき、組み付き、致命の刃を御馳走するか。
「――そうそう、そういう風にするのではなかったわね。今回は」
 だから、選択肢はごく単純。
 ――弾丸の如くと跳び込んで、その身を地に伏せさせるのみ。
 狙いを違わずメアリーの身体は影の胴体に突き刺さり――。

「いやはや、やり過ぎたな」
「そうね。ちょっとやり過ぎてしまったかしら」
 片や巌をぶん殴り、頭突きし、尾で薙いで、跡形もなくと派手に菘。
 片や影の胴体目掛けて跳んだは良かったが、勢い余って気絶させてしまったメアリー。
 さてはて、どうしたものかと互いに困り顔。
 巌はさておき、思った以上に影の行動に敵意もなく、呆気なく、これはもしかしなくとも住人の類であったのか、と。
 だから、影が目を覚まし、逃げようとするそれへ懇切丁寧な事情説明が行われるまで、あともう暫し、互いに困ったような、何とも言えない顔を見合わせるしかなかった。
 だが、とりあえず、遺跡の外には出られた、と此処に一文を加えておこう。

「妾の今回の活躍は如何なであったか。面白きと思ったのであれば、右下のボタンを押して、チャンネル登録をするが良いぞ」
「ええと、これを読めばいいのね? ――あと、高評価ボタン? とか言うのを押してくれると、嬉しいらしいわ」

 ――以上、『菘とメアリーのアックス&ウィザーズの遺跡で鬼ごっこをやってみた。』コラボ配信は終了しました。
 さて、実際の評価の程がどうであったかは、それこそ邪神様のみぞ知る所である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

氷雫森・レイン
【紫雨】
椅子…じゃない、魅蓮を連れてきて正解だったわ
「あら、重力異常なら私は飛べないもの」
仮に走れてもこんな矮躯で鬼事なんて無理よ
とはいえ重力だけ浴びに行く訳無いわ
「落石は私がどうにかしてあげる」
お気に入りの椅子を壊されちゃ敵わないもの
但し力の方向を正確に定めるには手を上げて対象を指す事が一番
だから
「私もトレーニングには付き合うから安心なさい」
って貴方まさか
「…レディに体重訊く気なの」
とはいえやむをえないわ
浮力が機能しないからと念押しして少し重めの数字を告げ、自分も腕に重りをつけて上下に動かす練習を
本番は魅蓮の肩に座った状態で念動力を使って降ってくる岩を壊しては欠片も当てない様に排除していくわ


白寂・魅蓮
【紫雨】
さりげなく失礼な一言が聞こえた気がするけども?
これは相当な重りを抱えて動くことになりそう
君の分も抱えて移動するんだ、落石はどうにかしてもらわないとね

レインさん込みの重さで鍛錬って事は体重と同じ重りを使うのがいいと思うんだけど…デリカシーないのはわかってるけど状況が状況だからね

僕はレインさんを肩に乗せて落とさないようにして、移動や足捌きに専念する
練習では重りを着けて体のバランスや足の移動に注力する
本番では落石をよけつつ、避けられない岩は鋭牙で捌いて影に追いつくとしよう

肩回りは少し痛むけど…ま、君との冒険も案外悪くないね
せっかくだし、旅の思い出に種籾は貰っていかないかい?



 聞いた話によれば、かの地では重力が何十倍もあるのだとか。
「椅子……じゃない、魅蓮を連れてきて正解だったわ」
「さりげなく失礼な一言が聞こえた気がするけども?」
 宙に浮かんだ雨滴。地に濡れ落ちることもなく、ふわりふわりと漂い、遊ぶ。
 それをじとりと見遣るは花咲く蓮華。端正なる彩を今は歪めて、落ちぬ雨粒に恨み言。
 だが、そんなものはどこ吹く風と『彼女』は言うのだ。
「あら、重力異常なら私はきっと飛べないもの」
 仮に走れたとしても、妖精の体躯で駆けては日が暮れるどころではあるまい。
 ならばこそ、誰かさんの肩を使うのが効率の良い方法。なんて、悪びれもせずに宣う氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)。
 だから、白寂・魅蓮(蓮華・f00605)もそれ以上は言うだけ仕方のないこと、と肩を竦めるのみ。
 しかし、それで二人の間の空気が悪くなった訳ではない。あるのは、いつも通りで変わらぬ空気。
 それだけの付き合いが、二人にはあるからこその。
「――でも、これは相当な重りを抱えて動くことになりそうだね」
「言ってくれるわね。私がそんなに重いと?」
「重力分もあるだろうからね。しっかりと鍛錬しないとってことだよ」
「勿論よ。まあ、でも、落石は私がどうにかしてあげる」
「それこそ勿論だよ。僕は君の分も抱えて移動するんだ、落石はどうにかしてもらわないとね」
 丁々発止。
 だけれど、そのやり取りは互いが互いであるからこそ。
 片や、口には出さぬがお気に入りの椅子――ともすれば男に厳しい筈が、魅蓮をそのようにと捉えている。
 片や、その内側に踏み込ませるを苦手とする筈が、レインが相手であるから明け透けとモノを言える。
 その二人の間で交わし合う感情は、きっと悪いものではないのだろう。
「そうね。だから、私もトレーニングに付き合ってあげる」
「それはありがたいね」
 なんだかんだと言いつつも、レインがただお荷物のままであろう筈もない。そして、それは魅蓮もまた理解をするところ。
 だから、その言葉自体に驚きなんてなかった。当然として受け入れるのだ。
「――ところで、さっき重いとかどうとか言っていたけれど、実際のところはどうなんだい?」
「……貴方、まさかレディに体重訊く気なの?」
「デリカシーがないとは思うけれどね。でも、訓練をするなら同じ重りを使うのがいいと思うんだけど」
「……よ」
「――え? なんだって?」
「本当は聞こえてるでしょう!? 二度も言わせない!」
「それは残念」
 なんて、対レインの手札を一枚増やしながら、高重力への備えは進んでいく。
 勿論、素直に手札を渡すレインでないから、そこに多少の色――かさ増しした数値を言ったのだけれど。
 さて、その手札を切る時が果たしてあるのかは、まだ見ぬ未来のことである。

 白の世界に華が咲く。
 いつものようにトンと踏んだ筈の足音は、ズシリと思った以上の感触を返す。
「なるほどね。これが此処なんだ」
「これは確かに、飛べそうにもないわ」
 訓練と現実はやはり違うもの。だけれど、その訓練自体に意味がなかった訳ではない。
 ずしると感じる重さがありながらも、その身を倒すこと無きが何よりもの証拠。
 そして、そのズレを二人はすかさずと修正するのだ。その足捌きに、その身のこなしにと。
「でも、情報通りに何もないところだわ」
「この静けさ……まるで白色が全部を塗りつぶしてしまったみたいに見えるよ」
「彩も音もない世界だなんて、私はどうもね」
 いつかの昔。冬を捨てて、常春に自ら身を任せた記憶と想いが僅かと滲む。
「なんて言ってたら、ご希望通りになったみたいだ」
 指し示す先、薄紙のような静寂を破るはごろりごろりと巨岩の音。
 それは明らかに二人を目掛けて転がり来るものであり、明らかなる脅威。
「だからって、こういうのも御免なのだけれど」
「仕方がないよ。冒険って、こういうものだろうからさ」
 しっかりと掴まっていて。と、語る魅蓮の頼もしき。
 その肩の重さを感じればこそ、その重さが嫌いではないからこそ、その重さをなくすまいと。
 だが、それに甘えてばかりもいられない。だって――。
「落石は任せなさいって言ったわよね?」
 そういったのはレイン自身なのだ。
 蝶よ、花よと愛でられるためにだけ彼女があるのではない。

「――天泣、私の願いを潤して」

 鉛のように重い手をそれでもと掲げ、指し示すは転がりくる巨岩。
 きらりとその指に煌めく蜜色の雫が輝けば、レインの願いに『ソレ』は応じる。
 ――ふわりと、梅の香りが漂った気がした。
 それはきっと気のせいで、でも、気のせいではなく、その気配は見えざる念動の手と形を成す。
 そして、見えざる輝き――絆を宿した手であれば、たかが転がりくる石ころの一つや二つ、止めるに不可能などある筈もなし。
「見事なものだね」
「これぐらい、当然よ」
 眼前にて停止した巨岩の存在感。
 されど、それがもう自分達を害なすことなきと魅蓮は知っている。
 だけれど、念には念を込めて。

「――絡めとる」

 はらりと舞った指先はまるで舞い散る花弁。
 重力の中でも損なわれぬ、指先にまで神経の通った嫋やかさ。それでもって放たれ、振るわれるは、空気へ溶け込む程に鋭く、繊細なる白金の糸。
 ふわりと巻き付けば最後、魔をすらも断ち切る糸ならば、岩をも断つは容易き事。
 するりと指引く所作に合わせて、響くはばらりの音幾つ。
 見れば、土煙をあげて巌が幾つもの欠片になり下がっている。最早、それが転がりくることは万に一つも無いと分かる。
 そして、唯一と動ける土煙もすら、もう二人には届かない。
「岩の対応は私って言ったわよね?」
「邪魔だったから、つい、ね?」
 ――念動の壁がそれを遮るからこそ。
 くるりと巨岩の残骸から向きを変え、歩き出す魅蓮の歩み。
 吹き抜けた風が土煙を攫っていき、後にはなにも残しはしない。
 二人の前に、巌などそもそもとして障害とすらなり得なかったのだ。
 だから、そこから先はある種の散策。
 遺跡の中で二人が影と接触をするまでは、ゆるりゆるりと白を踏みしめるのだ。
 障害を早々に排除して、駆けることのなかったこの一幕。
 その駆けることなかったのは、果たして肩の住人を気遣ったからか。それとも、ただの偶然か。それは当人のみが知るところ。

「肩回りは少し痛むけど……ま、君とのこういう時間も案外悪くないね」
「静かは静かだけれど、それでも誰かが傍にあるというのは――悪くないわ」
「……折角だし、旅の思い出に種籾でも貰っていかないかい?」
「それ、ここにあるっていう財宝だったわよね?」
「そうだよ」
「いいわね。なら、あっちの方にも行ってみましょうよ」

 会話は弾み、白の世界の静寂を塗り替えていく。
 レインは歩みの先を導きの指先で指し示し、魅連は導きの先へと歩みを向ける。
 さて、影を見つけるのが先か、新たなる目的――へしつぶの種籾を見つけるが先か。
 二人の冒険に終止符が打たれるのは、もう少し先のこと。
 ただ、それでも言えることが一つ。出会えた影の案内を受けて遺跡を出る時には、二人ともが種籾を――同じ思い出を持っていた。それだけだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

さながら白亜の迷宮か
何とも情緒溢れる風景だが…死がそこら中に転がっているな
油断せずに行こう

まずは影に当たりを付けて探し出す
影を発見、あるいは巨石に遭遇したら即座にUCを発動
自身を念動力の力場で包み、高重力を緩和
さらにナガクニで巨石を切り刻む

出口を見つけるのが先か、私が果てるのが先か
フッ…命がけの鬼ごっこだな

高速で建物の上を飛び回り、影達の動きを見る
動く影は一つではない…ならば、影の行く先にも影があるはずだ
そうした影の動きを全体で把握して、出口を目指して走る
種籾は拾えたら拾っておく、後々何かに使えるかもな

やれやれ…廃墟と言えども、美しい街並みだが
少々刺激が強すぎる場所だな、此処は



 白の世界に足を踏み入れる。
 途端、耳に聞こえるはぎしりぎしりと軋む音。
 されど、その足取りに澱みはなく、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)はその視界をぐるりと回した。
「さながら、白亜の迷宮か。何とも情緒溢れる光景だが」
 ヒトの気配がなくなって久しい廃墟は、新たな主を迎えることもなく静かに佇むのみ。
 白で統一された建物群は、ともすれば風光明媚にも見えることだろう。
 だが、キリカが迷宮と例えたように、どこへ視線を巡らせても変わらぬ色の世界は、自分がどこに居るのかを見失ってしまいそうになる。
「……死が、そこら中に転がっているな」
 その美しさに隠された棘。
 それこそは、この地にある異常――高重力の澱み。
 何も知らずに踏み入れば最後、それに囚われ、白の迷宮を構成する朽ちた白になる他ない。
 今、ここに立ち、無事であるのはキリカであればこそ。その身に念動力の力場を纏うからこそであった。
「もしかすれば、この重力は何かの念でもあるのかもしれんな」
 ここで何があって住人が居なくなったのかは分からない。
 高重力が原因でヒトが居なくなったのかもしれないし、ヒトが居なくなったから高重力が発生したのかもしれない。
 もしも後者であったとするなら、それはもしかして、遺跡となった街がヒトを求めているのではないか。と、キリカには思えたから。
「……ふ。この光景に、少し感傷的になってしまったか? 我ながら詩的なことだ」
 それは、彼女も喪うを知るからこその。
 だが、今はその感傷に囚われ続ける訳にもいかない。

「――油断せずにいこう」

 喪うを知るのみではなく、僅かな緩みが死につながることをも、彼女は知っても居るからこそ。
 踏み出す一歩の重さは重力によるものではなく、彼女の歩んできた時間の重さを示すものであった。

 カツリカツリと静寂に打ち響く靴の音。
 薄暗い階段を上れば、動きに合わせて積もった埃が揺れ動く。
 此処は迷宮の片隅。まだ形残していた建物の内部。
 その屋上を目指して、キリカは歩を進めていた。
 そして、程なく、その視界に白の遺跡を照らす輝きが戻る。
「思ったよりは広いな」
 吹き抜けた風に髪を遊ばせ、見据える先の遺跡の光景。
 立ち並ぶ家屋。入り組んだ小路。上がっては下がる不規則な街並みは、まるで騙し絵か。
「建物の上から見れば出口の検討もと思ったが、そうもいかんか」
 ここの住人はこれで不便ではなかったのだろうか。
 思わず、そんな愚痴も頭を過る。
 だが、これこそが迷宮の様相を見せる所以。
 重力に耐えても、この迷宮のような街に迷い、囚われれば、待つのは住人とならざるを得ない未来のみ。
 そして、この街にあるのはそんな受け身的なものだけではない。
「――来るか」
 僅かな振動音。『ソレ』は情報として既に聞いてはいたけれど。
 キリカが向けた視界の先、僅かと立ち昇る土煙は次第に濃く、近く。
「随分と斬り甲斐のありそうな図体だ」
 『ソレ』は巨大な岩であった。
 ごろりごろりと転がって、しかし、不思議と街を一つも傷つけず、キリカへと向かって真っすぐに迫る。
 そして、巨岩が跳ねた。
 そのままでは屋上に辿り着くことなどできなかった筈が、瓦礫をジャンプ台と代えて、宙を舞ったのだ。
 それはある意味での予想外。されども――。

「コード【épique:La Chanson de Roland】承認。リミッター全解除」
 ――起動しろ、デュランダル。

 キリカはそれへ呆気に取られて潰されるようなタマではない。
 纏うバトルスーツのリミッターを解除し、重力の鎖を引き千切って舞う紫の花。
 巨岩を迎え撃ち、交差する瞬間に奔る剣閃は高重力下にあっても衰え知らず。
 すたりと宙から地面に降り立てば、遅れて墜ちる岩の花弁。
 だが、彼女はそれで警戒を解きはしない。
 何故なら――。
「出口を見つけるのが先か、私が果てるのが先か。フッ、命懸けの鬼ごっこだな」
 まだ幾つもと転がりくる振動の音に気付いていたからこそ。
 だから、彼女は駆ける。
 いつまでも続くか分からない岩への対処ではなく、宙に跳んだ際に捉えた、街を動く影の下へと。
 白亜を駆け、宙を跳び、巌の壁を切り崩し、ただただ真っ直ぐに。
 起動限界時間が彼女に追いつくか、それとも、彼女が影に追いつくか。
 その結果は――。

「……廃墟と言えども、美しい街並みだったが」
 ゆるりと吹き抜ける風は遺跡のそれとは違うもの。
 最早、重力の鎖は普通のそれに戻り、彼女の身は遺跡の外。
 パワードスーツを用いて限界以上を引き出した彼女であれば、影へと追い付くを叶えるは自明の理。
 だが、それまでに幾つの路を駆けただろう。それまでに幾つの巌を土塊と変えただろう。それでも彼女は影へと辿り着き、敵意なきそれに導かれて出口へと辿り着くをなしたのだ。
 やれやれと仕事の一つをこなした達成感に肩を廻せば、限界を超えた反動か、身体から僅かな抗議の痛み。
「――少々、刺激が強すぎる場所でもあったな」
 普段であれば痛みなど気にも留めないが、依頼の終わりを実感するが故に眉根に僅かと皺一つ。
「これで割りに合ったんだか、合わなかったんだか」
 懐より取り出すはへしつぶの種籾。出口への案内を受ける最中、群生するそれより得た財宝。
 それを陽光に掲げ照らしながら、愚痴零しながら、それでも彼女は歩みを止めることなく、新たなる戦場へと向かっていく。
 帝竜戦役は、彼女の現実は、終わってなどいない。
 あの遺跡のように終わりへ淀むにはまだ早いと、彼女は知っているからこそ。

成功 🔵​🔵​🔴​

雨音・玲
もう何度この地に足を運んだのやら
流石に重力に慣れちまったよ
(重力異常下で更に異常と言える過負荷を掛ける修行の成果で、結構ケロッとしています。)
こんな環境でも以前は人が住んでいたのか?
もしかしたら昔はこんな環境じゃなかったのかもしれないな
(廃墟を進みながら感慨深げに眺めます)
彼らが口が利ければ何かわかるかもしれないけど…
(もしかしたら重力以上の原因が???)
まぁ流石に無理そうか?

UC「一握りの焔」を使用
『限界突破』『環境耐性』『地形耐性』『ダッシュ』『情報収集』
をLv770へ強化、状態異常力を重視します

情報収集で回りを索敵し
マッピングしながら
重力を物ともせずにダッシュで走り周ります



 さて、この感覚は幾度目であろうか。
 ぎしりと軋む身体の声に、雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)は目を細める。
 少なくとも、記録に残る限りは三度。修行の時を思えば、はてさて両の指ですら足りるかどうか。
「もう何度、この地に足を運んだのやら。流石に重力に慣れちまったよ」
 軋む身体の声など気にも留めずとけろりけろり。
 己の二つ名を宿したパーカーを翻し、玲は歩き慣れた道を歩くが如く。
「しっかし、こんな環境でも以前は人が住んでいたのか?」
 静寂に支配された白の遺跡。
 風雨の侵食を受けながらも残された建物は、確かにそこへヒトが居たという証。
 だが、今はヒトの気配も遠い。
「もしかしたら、昔はこんな環境じゃなかったのかもしれないな」
 まるで散策するような足取りは変わらず、遺跡を見る赤の瞳は感慨を宿して揺れる。
 その瞳が見るのは遙か彼方、かつて賑わいを見せていただろう街の光景。
 それは空想でしかないのだろうけれど、それでも玲にははっきりと見えていた。
 ――瞬き。
 白日の夢は儚く消えて、遺跡としての現実が戻ってくる。
 さて、今の光景は誰が見せたものであったのか。
 玲の類稀なる情報収集能力が街に残る断片を拾い上げたのか、それとも、街自体が誰かに知ってほしかったのか。それとも、その両方か。
「……そう言えば、此処には影が居るんだったな。口が利ければ何かわかるかもしれないけど……」
 それが叶えば、街にヒトが居なくなった原因も分かるかもしれない。
 少しだけ、情報屋としての血が騒いだ。
「まぁ、流石に無理かもしれないが、出口探しがてらだ」

 ――掲げた掌の内には焔。

「選択」
 ゆらりゆらりと揺らめくそれに、彼は自身の内面を映し出す。
 今、何が必要で、何が不必要か。
 思考し、選び出し、そして――。

「――解放!!」

 掌の焔を握りつぶすと共に、舞い散るは火の粉。
 ちらちらと宙に踊るそれはゆるりと彼を取り巻いて、その身の内に輝きを灯していく。
 ――そして、世界が広がった。
 彼が宿す技能。その限界越えるを付与する焔は、彼の身をこの重力下での更なる適応を促し、身体能力を磨く。
 それだけではない。音が、匂いが、空気が、世界の全てが、濁流のように彼の中に流れ込む。
 元より高い情報収集能力を持つ玲であったけれど、限界を超えた今、それは遠く彼方の情報までもを拾い上げる程のものとなったのだ。
「おー、おー。良く聞こえるし、よく視えるな」
 軽く走れば千里を行けよう。
 動かざるとも千里を視えよう。
 彼の言葉を借りるなら、今なら何だって出来そうだ。まさしく、そのような状態であった。
 だから――。

「さって、色々と調べてみますか」

 彼が如何な危険をも回避して、白の遺跡をくまなくと歩き回れるは、当然の事であった。
 その手に握られた白紙の地図。それが瞬く間に埋められていくのも、そう遠くはない。

「つまるところ、重力が原因で誰も居なくなった訳じゃねえんだな」
 ゆるりゆるりと影との同道。
 出口なんて既に分かってはいたけれど、折角だからと玲は影とも接触を図ったのだ。
 影――街に迷い込んだヒトを出口へと案内する機能は、決して言葉を語らない。
 だが、如何な情報をも拾い上げる今の玲であればこそ、街の状態、放置された機能からそれをほぼ確かな情報として推測する。
 残された建物には諍いの形跡はなかった。崩れている建物も、どちらかと言えば経年劣化によるもの。
 建物の内部が綺麗であったのも、ここに住んでいたヒトビトが、計画的に、古くなりゆく街を捨てたからだろう。
「だから、街が人恋しで重力を発生させちまったのか。それとも、ただの偶然かまでは分からねぇが、人恋しなら悲しいもんだ」
 遺跡に足を踏み入れた時に見た幻影があればこそ、そう思わざるを得ない。
 そして、それがためにより一層とヒトが寄り付かなくなると言う事実も。
 ――出口に、辿り着いた。
 今は絆結ぶ相手がいる玲であるが、そうでなければ愛を求め続け、もしかしたらこの街と同じくとなっていたのかもしれない。
 そんな奇妙なシンパシー。
 だけれど、いつまでも彼はここに居る訳にはいかないのだ。
 出口へと踏み出し、慣れた重力が彼を包む。
 一歩、二歩、三歩……遺跡を次第に遠くとしながら、ふと、彼は振り返る。
「……それに、人はいなくてもそいつは居てくれるみたいだしな」
 来た道――出口であった場所を見れば、影がゆるりゆるりと動いているのが視える。
 その動きは、まるで玲に手を振り、見送っているかのようでもあった。
 それが影の元々の機能の一部なのか、それとも、長い年月の中で得た自我のようなものがそうさせているのか、既に能力を止めていた玲には分からない。
 だが、終わりに微睡む街を彷徨い、見守り続ける影は、まるで墓守のようだと思えたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
私はウォーマシン
肉体鍛錬はそもそも不可能な機種なので…

SSWの高重力ガス状巨大天体付近での船外作業用パワーアシストツール
それを調整したUCを装着(四肢、特に脚が分厚い宇宙服を付けた状態)

上手く機能しているようですね、工場の方々には感謝しなければ

先ずは高所に上り街の構造をスナイパー用の光学センサーで情報収集
電子頭脳内に地図作成(世界知識、地形の利用)
センサーで音と振動を中心に巨岩の接近を見切って予め避けたり回避しながら影の追跡や先回りに専念

しかし御伽のような眩しくも幻想的な街並みです
経年変化によるものか、それとも特有の文化だったのか…

帝竜戦役の探索でなければ興味のままに足を止めたかもしれませんね



 生身であれば、その身体を鍛えも出来よう。それに応じ、環境に適応することも出来よう。
 では、生身ならざる者であれば?

「上手く機能しているようですね」
 踏み出す足の重さはずしりと地に跡を残す程。
 元より巨躯。元より装甲厚きトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)ではあるけれど、此度の姿は輪をかけて。
 その姿は負担の騎士然としたものに加えて、その体躯を覆う追加装備――高重力下に適応するための装備の数々。
 重力の圧にも砕けぬ装甲。抑え込むを跳ねのける程の力。それでもなおと失わせぬ機動力。
 それらはまさしく人類の叡智。スペースシップワールドという、高重力、無重力を当たり前にする世界を生き抜くヒトビトの生み出した技術がそこにはあった。

 ――そう。足らぬものを己に足して、足るに届かんとするのだ。

 試しにと腕を、脚を動かせば、トリテレイアの意志のままに四肢は動く。
「……工場の方々には感謝しなければ」 
 そして、ひとえにこの装備の数々を用意できたのはバックアップがあってこその。
 勿論、使いこなすトリテレイアもなければ、技術は宝の持ち腐れとなるのだろうから、どちらも欠けてはいけない。
「それでは、惑星探査……ではありませんね。遺跡探索を始めましょう」
 白亜の世界の中、白銀はその彩に埋もれず輝きを照り返しながら、その重き一歩を刻むのだ。

「しかし、地表でもこのような高重力空間があるとは、不思議なものですね」
 局所的な重力の偏り。多少ならそういうこともあり得るのかもしれないが、何十倍の規模で、しかもそれが地表で起こっているなどと。
 今迄も不可思議を感じることはあったが、きっと、これが言うならばファンタジーというものであり、別世界の法則ということなのだろう、とトリテレイアは己に掛かる重力を検知しながら思う。
 そんな思考を片隅に奔らせながら、彼は高きへと至る。
 そこは白の建物の中で一際高き屋上。未だ形を残すその上から、この遺跡の全容を少しでも把握せんとするため、トリテレイアはそこへと足を進めていた。
 ――ぐるりと、緑の輝きが捉える白の世界。
 乱立する建物。その間を縦横無尽にうねる道筋。
 電子頭脳の内部で地図が描き起こされ、未だ視えぬ場所はひとまずと空白に残す。
「……竜帝戦役の探索でなければ、興味のままに足を止めたかもしれませんね」
 白で構成された街並みは陽の光を浴びて眩しく、まるで輝きの都のように。
 されど、そこに住まうのは静寂のみであり、街は沈黙のみを貫く。
 その光景はまさしく非現実的であり、幻想そのものであった。
 だからこそ、今がヴァルギリオスとの雌雄を決する戦いの最中でなければ、とトリテレイアは思うのだ。
 この地に根付いていた文化はどんなものであったのか。この地に何があったのか。きっと、様々なことが知れたことだろう。

 ――動体感知。それも、複数。

 一つは転がる岩の振動。そして、もう一つは――。
「あれが、そうなのですか」
 ――白の世界に動き回る影。
 捉えたそれに視線が注がれ、熱を、成分を、かの存在を解き明かさんとモニターの中を情報が奔る。
「熱源、中央部に僅か。どうやら、核とも言えるものがあるようですね。ですが、これは――」
 生物というよりは、機械仕掛けのトリテレイアに近い様な。
 ゆらりゆらめく影。その正体も気になるところではあるが、今はひとまず――。
「接触を持ってみましょうか。妨害の手が伸びる前に」
 重力の鎖とすら拮抗しうる大推力。
 何十倍にも膨れ上がっているトリテレイアの質量をすら支えるそれは、彼の身を支えながら、その動きの十全を常に保証する。
 轟と炎が尾を引けば、白の街並みが溶けて流れる視界の中。
 電子頭脳の内部にて描いた道。その地図内に打った動き回る光点――影と巌の動きを想定しながら、トリテレイアは翔ぶ。
 加速。地図修正。会敵予測。突破の是非を問う。力場による防衛機能にて突破可能と判断。再加速。
 情報が波のように彼の頭脳に押し寄せては捌き、押し寄せては捌き。
 時に柔軟に回り道を選び、時に強引に突破を選ぶ。
 臨機応変。なればこそ、如何にその道程が遠かろうとも、目的を達成できぬ筈もなし。
「――さあ、追いつきましたよ」
 そして、白銀の彩は影を踏んだ。

「道案内、御苦労様でした」
 遺跡の出口。踏み出し、振り返った先に揺れる影へ恭しく一礼を。
 接触した影――実際に間近で観察することで理解を得た、迷ったヒトを街の出口まで案内する機能は、その機能に反することなくトリテレイアを出口まで案内したのだ。
 機能が機能通りのことを為しただけで、本来であればそのお礼は必要ないのだろう。だけれど、トリテレイアはそうしなければならないと、どこかで感じたのだ。
 暫くと輪郭を揺らした影は、特にそれ以上の反応を示すこともなく、また来た道を戻っていく。
「……私も、もしかしたら同じであったのかもしれません」
 思考することは、もしも起動時に記憶データを喪失していなければ。
 そうであったのなら、トリテレイアは今のトリテレイアでなく、かの影と同じくこの世にはもうない銀河帝国の残滓を守り続けるだけの機能であったかもしれない。
 だから、あの影はもしかすればの自分なのではないか、と。
「――考え過ぎなのでしょうけれどね」
 街の中に溶けゆき、小さくなっていく影。それが完全に溶け消えた時には、トリテレイアもまた行くべき道だけを見る。
 もう二人が同じ道を歩むことは無い。
 影は終わった街でそれを守り続け、トリテレイアは『今』を守り続けるために歩むがために。
 そして、トリテレイアも他の猟兵達と同じくと、白の街を後にする。群竜大陸。その深奥に座すモノとの決着を付けんとして。
 さて、この体験が彼の書き記す本へと新たな一頁として加わったかどうかは、彼のみぞ知る所であろう。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年05月21日


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト