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帝竜戦役⑱〜灼熱の奴隷市場

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸


 暑い、暑い。
 息苦しい程に充満した蒸気が、鎖に繋がれ痩せこけた身体を襲う。
 暑い。喉が乾いた。腹が減った。
 誰か水を。何か食べ物を。
 そう、虚空へと伸ばされた手は――鮮やかな赤を散らした。



「皆、任務お疲れ様。さて、今回も『帝竜戦役』……アックス&ウィザーズの戦地へ向かってもらいたいんだ」
 集まった猟兵にそう告げ、早速説明を始めるネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)。彼女はさっとモニターを取り出し、画面を指差して話を続けた。
「転送先は『サウナ珊瑚』が生えた温泉地帯だ。これは水を温泉に変えるほどの高熱を放つ上、いつまでも劣化しない特殊なものでねぇ……親指程度のたったひとかけらでも金貨百枚分にもなるらしい。まあそれはさておき、湧いている温泉に浸かった者はもれなく『ある感情』が爆発する。まあサウナと言うくらいだから、蒸気を吸っても大体同じ効果が出てくるようだね」
 話通り、ネルウェザが掲げるモニターの映像には濃い蒸気がこれでもかと充満していた。
 そして画面の中心、白く霞んだその光景に――四つん這いで蠢く人の影が幾つも見える。よく見ればその首には頑丈そうな首輪がつけられ、錆びた鎖でどこかに繋がれているようだった。

 ネルウェザが画面に触れてその鎖の先を映し出す。
 鎖を纏めて握っていたのは小人――いや、ゴブリンの群れだ。
「これはオブリビオン『ゴブリン収穫兵』。見ての通り無力な人間を捕獲し、家畜のように飼い慣らしている結構残虐な奴らだよ」
 そして彼女は少し眉を顰めて。
「退治すべき理由としてはオブリビオンである、というのも有るのだけれど……今回皆に向かってもらう地の『温泉の効能』、それが『食欲を爆発させる』というものでね」
 ――心臓の弱い人は目を瞑ってくれ。
 そうネルウェザが呟いた瞬間、鎖に繋がれていた人の腕がスパッと切り落とされた。

 直後、ゴブリンはその腕に齧り付き、更には泣き叫ぶ人本体にまでその牙を向ける。みるみるうちに一人を食べ尽くしたそのゴブリンは、まだ足りないと言わんばかりにぎろりと鎖の先を睨んでいた。
「このままでは捕まった人々が皆奴らに食べられてしまう。一刻も早くゴブリンを退治し、人々を解放してほしいんだ」

 時間はない、とネルウェザはグリモアを浮かべる。転送の準備を整えながら、彼女は更に任務の説明を続けた。
「温泉の蒸気を受けても、ゴブリン達に唆されても、決してあの人間達を食べようと思ってはいけないよ。異常な程に食欲が湧いてくるだろうけれど、どうにか抑え込めるよう対策は考えておいてくれ」
 それでは、とネルウェザがふわりとグリモアを動かせば。
 猟兵は不思議な光に包まれ、アックス&ウィザーズの世界へと送られていった。



 降り立ったのは先程聞いた通りの温泉地。
 そして――先程見た通りの、ゴブリンとそれに飼いならされた人々の姿があった。
「うぅ……誰か……誰か、水を……」
「お腹すいたよぉ……」
 悲痛な声が響く中、ゴブリンは凶悪な牙の覗く口からだらりと涎を垂らして。
「ニク、タベタイ、タベタイ……ソウダ、ニク!!!!」
 笑い、ゴブリンは鎖をぐいと引っ張る。繋がれた人々は悲鳴を上げるも、やせ細った身体は抵抗出来ず簡単に引き摺られてしまった。

 ふと、ゴブリンは猟兵の姿に気づいてにたりと嗤う。
「ニク、クウカ? ウマイ、ウマイゾ……?」
 彼等を助ける為、そして『帝竜戦役』にてこの地を突破するため、あのゴブリン達を退治しなければ。


みかろっと
 こんにちは、みかろっとと申します。
 今回はアックス&ウィザーズ『冷静と情熱の珊瑚礁』での戦いです。
 こちらは集団戦一章のみの戦争シナリオとなります。

 温泉の湯や蒸気は『食欲』を増幅させます。
 『美味しいもの・好きなもの』もしくは『ゴブリン達が飼い慣らしている人々』を食べたくて仕方ありません。どうにかそれを抑えて戦ってください。

 また、今回のシナリオでは『サウナ珊瑚』という金貨百枚分のお宝が至るところに生えています。収穫するかどうかは自由です。
 プレイングお待ちしております!
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第1章 集団戦 『ゴブリン収穫兵』

POW   :    ヒューマンライド
自身の身長の2倍の【剣を装備した後、捕獲した人間(調教済)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD   :    ホステージシールド
全身を【隠す様に、捕獲した人間を固定した盾】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃を盾で受け止め、固定した人間の負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    食人肉料理~生~
戦闘中に食べた【捕獲した人間の血肉】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化し、自身の負傷が回復】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
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クトゥルティア・ドラグノフ
※アドリブ共闘大歓迎

分かりやすく外道!
ぶちのめしてやりたい!
だけど、この珊瑚の危険さも重々承知!
気を抜かずにいくよ!

ぅぁ……やっぱり、純粋に食欲に訴えかけてくるのは辛いっ!
視界が回って、何もかもが食べられそうに見えてくる…
だけど、それは敵も同じだ!
それに耐えれていない分、こちらより強化度合いは低い!
捕らえられている人たちのことを考えれば、こんな空腹!

【戦闘知識】で、効率的に敵を排除できるルートを導きだして、【野生の勘】便りに【切り込む】!
攻撃は直前で【見切り】するか、【オーラー防御】で防ぐ!
その後【カウンター】で月腕滅崩撃を叩き込む!
捕まえてブレーンバスターだ!
くたばれ、クソ外道!!



 上がる悲鳴、舞う鮮血、その中で高く嗤うオブリビオン。
 あまりにも分かりやすい『外道』に怒りを燃やし、クトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)はゴブリンの方へと駆け出した。
 ゴブリンは乱雑に落ちていた人の腕を拾い上げると、まるでその主を冒涜するかのように、玩具のようにぶらぶらと振り回す。
 そして向かってくるクトゥルティアに視線を映し――これ見よがしに齧り付いた。

 ――酷い、許せない。ぶちのめしてやりたい!
 そう、クトゥルティアの心で割れるような声が響く。とは言え、周囲に生える珊瑚が、それが放つ熱や蒸気がどれだけ危険なものかを彼女は重々承知していた。
 ――だから、気を抜かずに。
 盛る感情の中でも冷静にそう頷くクトゥルティア。
 しかしその身体を――もわり、と濃い蒸気が包んだ。

「ぅぁ……っ!!」
 腹の中の空洞感。蒸気の熱が脳髄を襲い、ぐるりと視界が回る。ゴブリンの笑みや動きも相まって――『何もかも』が食べられそうに見えてくる。
「やっぱり、純粋に食欲に訴えかけてくるのは辛い……けど!!」
 ――それは敵も同じだ。
 この蒸気がゴブリンの腹を絶えず鳴らしているからこそ、目の前では残虐にして外道な食事風景が流れ続けている。しかしそれは、あのゴブリンが食欲に耐えられていない証拠でもあるのだ。
 クトゥルティアがこれに耐えきり、精神を保つことができれば。
 ――否、彼女はそれに耐えるまでもなく。
 捕らえられ、縛られ、挙げ句欲を満たすために喰われ――今も自分が喰らわれる恐怖に怯える人々のことを考えれば、惑わされず前へ進む意志は十分彼女の心に満ちていた。
「……こんな空腹に、負けてられないッ!!」

 一歩、クトゥルティアは強く地を踏み鳴らす。ゲハゲハと嗤うゴブリンを確りと視界に捉えながら、彼女は思い切り進路を右へ逸らした。
「――!?」
 ゴブリンは肉を齧る手を止める。
 クトゥルティアの殺気、そして自身の危機を察したのだろうか。ゴブリンは慌てて鎖を大きく振り回すと、人間達の中でも一際大きな体躯をもつ男を前に出した。
「イ、イケッ!! アレヲトメロッ!!」
 そう鎖を鳴らし、ゴブリンが男の背に乗る。
 ゴブリンは武装を強め、有利に立った気になっていたようだが――あまりにも、逆効果であった。
「あんな酷い扱い方をして、あんな酷い食べ方をして……戦いの道具にまでするなんて!!」
 まるで馬のように男の鎖をぐいぐいと引くゴブリンの姿に、クトゥルティアの怒りは沸点へと達する。彼女は歯を軋り、大剣を構えて一気に接近した。

 ゴゥッ!!! と勢いよく振り下ろされる拳。思考も朧気な男の殴打をクトゥルティアは難なく躱し、更にぐるりと男の後ろへ回り込む。
 狙うは男の背、外道を煮詰めたような悪――オブリビオンだ。
「ヒッ!!?」
 クトゥルティアの刃がゴブリンの腕を裂く。悲鳴と共にゴブリンが高く飛んだ腕を目で追う中、クトゥルティアは鋭く息を吸い込み、ユーベルコードを発動した。

 怒りを混ぜて噴き出すように、クトゥルティアの身から溢れる力。
 大腕の容を持ったそれは、蒼く、蒼く輝き――勢いよくゴブリンの胴を掴んだ。
「くたばれ、クソ外道!!」
 ――『月腕滅崩撃』。
 ゴブリンはいとも容易くその身体を逆さに返され、思い切り地面へと叩きつけられる。
 脳天砕きの一撃が全身を貫けば、ゴブリンは直後ぐったりと地に伏し動かなくなってしまった。

 オブリビオンが骸の海へと還っていく中、クトゥルティアは人々を縛っていた首輪や鎖を外していく。解放された人々は空腹や暑さも忘れて安堵の笑みを浮かべながら、掠れた声でクトゥルティアに礼を述べるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

護堂・結城
腹が、減る…食欲を、満たしたい
肉が、喰いたい…だがそれ以上に

『外道を殺せ』とこの魂が叫んでいる

理不尽に流される涙を止めるために、俺は生きているのだから

【POW】
戦闘開始と同時に【水上歩行】氷牙を刀に変化させ【怪力・なぎ払い】で敵を牽制
【歌唱・大声】に【生命力吸収】をのせて戦場に溢れた感情を喰らう【大食い・範囲攻撃】
自身の食欲を徹底的に喰らい、敵からは冷静にならない程度に加減して吸収だ

「――頭を垂れよ、死が貴様の名を呼び」

指定UCを発動、【焼却・属性攻撃】をのせた白き劫火の剣群を召喚
喰われた人の恐怖を喰らって復讐の劫火を更に強化
人間を巻き込まないよう【早業】の【切り込み】

「滅びが貴様を捕まえた」



 酷い熱気が喉を枯らす。濃い蒸気が腹を刺す。
 ――腹が、減る……食欲を、満たしたい。
 視線の先で豪快に舞い、穢れた牙に喰らわれていく血肉。
 赤く瑞々しい塊が舌を滑り、空を訴える腹の中へ落ちたなら――どれだけの欲が満たされるだろうか。
 ――肉が、喰いたい。
 珊瑚の熱と蒸気が倍増させる食欲の中で、そんな言葉が頭を過る。
 ――だが、それ以上に。
「『外道を殺せ』と……この魂が叫んでいる」

 あの人々を喰らおうなど、況してやあの悪に加担しようなど、思う筈がない。
 理不尽に流される涙を止めるために、彼は生きているのだから。
 護堂・結城(雪見九尾・f00944)は湯気立つ水面を強く蹴ると、傍で羽撃く竜『氷牙』に手を伸ばす。竜は頷くように刀へと姿を変え、瞬時に結城の手へと収まった。

 彼の手が氷牙の柄を強く握った、直後。
「ナニッ!!?」
 凄まじい威力を込めた斬撃。真横へと振るわれた刃は大きな衝撃を生み、低く空を鳴らした。
 ゴブリンは思わず目を見開き、咄嗟に身構えようとする。しかし地にしがみつく余裕など無く、ゴブリンはその身を軽々と吹き飛ばされてしまった。

 鎖を離された人々が今の内にと逃げる中、結城はその間を縫ってもう一撃を放つ。
 慌てて鎖に手を伸ばすゴブリンの胴へ同じ衝撃が叩き込まれれば――ゴブリンは一歩後ろの温泉の中へと、勢いよく沈められた。
 ザバァァッ!!! と間欠泉の如く高い水飛沫が上がり、蒸気を更に濃く、濃く増していく。

 全身で温泉に浸かったゴブリンは勿論、蒸気を浴びた人々や結城の胃は――突如、恐ろしい程の空腹感に襲われた。
「……ッ!!」
 目が回りそうなその感覚の中で、結城は深く息を吸い込む。
 ――腹が減った、喰いたい、飲みたい、今すぐにでもこの欲を満たしたい!!
 戦場に満ち溢れるその『感情』を喰らうように、結城はありったけの声を、音を響かせて。
 結城自身に溢れる食欲、そして無力な人々を襲う食欲。ゴブリンを苦しめる其れだけは喰らわぬよう音を整え、彼は思いの力で腹を満たしていった。

 空腹を振り払った結城は真っ直ぐに立ち、温泉から這い上がるゴブリンへと向き直る。
「――頭を垂れよ、死が貴様の名を呼び」
 言葉を紡ぐと共に、秘める力を解き放って。
 結城は先に喰らった感情を糧に、劫火の剣群を喚び出す。純粋な食欲は高純度の焔を生み、更には『恐怖』――ゴブリンに千切られ食い荒らされた人の想いを喰って、その熱を増した。

 白く燃え盛る剣が揃って切っ先を一点へ向ける。
「ヒッ……!!!」
 ゴブリンが命乞いに口を動かそうとした――その時。
「滅びが貴様を捕まえた」
 結城は剣群を一斉に動かし、ゴブリンの身体に無数の斬撃を放つ。
 濁った悲鳴と共に散ったゴブリンは、なす術もなく骸の海へと還っていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベール・ヌイ
元々食欲はあまりないけど、好きなものは大好きな人たちと一緒に食べる御飯
だから、ここでは食べること出来なくて
飼われてる人たちを助けずに、食べてにいっても、きっと美味しくないから
だから、ヌイは今感じる食欲を抑える
大好きな人と、美味しいご飯を食べたいから

【不死鳥召喚】を起動、詠唱は省略
自らを燃やし、食われ、癒やしの炎で治され、激痛に「激痛耐性」で耐える

「お前らが食いたがってる…餌がきたぞ…焼かれた肉だぞ」

あえて挑発し、人々から意識をそらし、こちらに向いたなら「捨て身の一撃」の地獄の炎で燃やします
人々には癒やしの炎で治癒、もしヌイが噛まれても激痛耐性と癒やしの炎で耐えます
アドリブ協力など歓迎です



 空腹を誘い食欲を刺激する蒸気の中、ベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)はゴブリンが群れて騒ぐ戦場へ向かっていった。
 血肉の匂いが鼻を刺そうと、脳裏を食べ物の影が過ぎろうと、ヌイは惑うことなく前へ進む。元より、彼女の食欲はそれほど旺盛ではない。
 何より――彼女が好きなものは、『大好きな人達と一緒に食べる御飯』だから。
 ゴブリンに捕らわれ飼い慣らされているあの人々を助けず、ゴブリンと同じように引き裂いて喰らったとしても、それはきっと『美味しい』と思えるものではないから。
 故に、ヌイは今感じるこの食欲を抑え、空腹を耐える。
 この戦いを終えて――大好きな人と、美味しい御飯を食べるために。

 ヌイはゴブリン達の前に立ち、ユーベルコードを発動する。
 彼女がその身から喚び出すは『不死鳥』。燃え盛る翼は周囲の蒸気を消し飛ばしながら――ヌイの身を激しく灼き始めた。
「――!?」
 ゴブリンは突如自ら燃え上がったヌイに目を見開き、肉を喰う手を止める。
 ヌイは凄まじい激痛に耐えながらこんがりと焼けていく四肢を、頭を、身体全体を見せつけるように広げ、ゴブリンの群れへ一歩近づいた。
「お前らが食いたがってる……餌がきたぞ……焼かれた肉だぞ」

 ゴブリン達はざわつきながらも、新鮮かつよく焼けたヌイの肉にだらりと涎を垂らす。最早彼等の視界に痩せこけた人々の姿は無く、揃ってヌイの四肢を切り落とそうと彼女の元へふらふら近寄り始めていた。
 ゴブリンの群れが残らずヌイの元へ近づいた瞬間――ヌイを燃やしていた不死鳥が、激しく『地獄の炎』を轟かせる。それはヌイの身を焼く『癒やしの炎』と違い、容赦なくゴブリン達を呑み込んでいった。
 ――その異変に気付いた頃にはもう遅い。
 ゴブリン達は瞬時に焼かれ、ヌイのように身を保つ事無く灰へと変わっていく。
 不死鳥の炎は捕らわれていた人々にも伸びていた――が、それはヌイを焼いていたものと同じ炎。彼等はゴブリン達に刻まれた傷や失った腕をみるみる内に治し、細く折れそうだった四肢に確かな筋力を取り戻していた。

 なす術もなく骸の海へ還っていく彼等を最後の一欠片まで燃やすと、ヌイは不死鳥をその身に戻す。殲滅と治療を一度に終えたヌイは、傷一つない身体で小さく息をつくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レオンハルト・ヴァイスレーベ
ヴォルクルス(f22576)と

・心情
よくもか弱き人々を!
白獅子の紋章に懸けて-貴様らを殲滅する! 

・行動
UCを使用し盾となった人を助けつつ、誓いの剣で攻撃。
(可能なら)捨て身の一撃で切り伏せる。
(人を惹きつける様な、澄んだ鈴の音の声で)
「どんな時でも他人を見殺しにしない-それがボクの騎士道ですから」

敵の反撃にはオーラ防御やかばう、武器受けからのカウンターで対応
(防御時、誓いの剣を眼前に翳しつつ)
「ボクは進む-“救世”の道を…。ここで倒れる訳にはいかない!」

蒸気にはWIZ&勇気・鼓舞・環境耐性で対抗する。
耐えられなかったら、希望の灯光で左手を突き立てる
「…獅子の魂がこの程度で屈してたまるかぁ!」


ヴォルクルス・ブラックエッジ
レオンハルト(f23015)と

・心情
…虫唾の走る連中だ。一匹残らず駆除してやる!
ファング『-全くだぜ。ああいう連中、オイラ、いっちばん嫌いなんだ!』

・行動
まずは先制攻撃からファングが挑発の為に体当たり
黒剣を多尾鞭状に変えてからUC発動
ルール「人質を使うな」

破った敵から順に攻撃(生命力吸収、呪詛、2回攻撃)
『相棒を怒らせたからだ。バーカ!』

第六感と戦闘知識で敵の行動を予測し、
救助活動でできるだけ多くの人を助けられるように動く

蒸気にはPOW&サバイバルで抵抗
耐えられそうになかったら、ファングに噛みつかせて(鎧無視攻撃)阻止
『オイラは“武器”だぜ。ンなもん利くかっつーの♪…ってかしっかりしろ相棒!』



 血肉が舞い、穢れた嗤い声が響く。人々の悲鳴や涙も意に介さず――寧ろ其れすらも楽しむように笑い、愉悦に浸るゴブリン達の姿は『外道』にして『悪』そのものであった。
「よくもか弱き人々を……!!」
 レオンハルト・ヴァイスレーベ(白の従騎士・f23015)が怒りに眉を顰める中、ゴブリンはまた膨れ上がる欲を満たそうと捕らえた人間に目を向ける。
 錆びた剣がぎらりと陽の光を返した瞬間――レオンハルトは思い切り駆け出した。
「させない!!」
 ――ガギッ!!! と重い金属音がゴブリンの剣を跳ね返す。
「ッ!?」
 体勢を崩したゴブリンが目を見開く中、レオンハルトは鋭く息を吸い込み――言い放った。
「白獅子の紋章に懸けて――貴様らを殲滅する!」

 その瞳の光に、ゴブリンはギリと歯を軋らせる。直後、笛のような高い音を鳴らしたかと思うと、周囲の岩陰から数体のゴブリンが沸くように這い出してきた。
 ――真っ先に目を奪うのはその盾。
 それは乱雑な造りの板に呻く人々が強く縛り付けられた、文字通りの『肉の盾』であった。
「……!!」
 周囲の蒸気が膨らませる『食欲』など忘れさせるようなその感情に、レオンハルトは小さく息を呑む。
 ゲタゲタと嗤い、その盾ごと突進してくるゴブリンへ――黒鎧を鳴らす猟兵が、同じく怒りを燃やしていた。
「……虫唾の走る連中だな」
「全くだぜ。ああいう連中……オイラ、いっちばん嫌いなんだ!」

 飛び出した竜がゴブリンを押し返すように、その身を正面から叩きつける。
 竜の来た方、レオンハルトが振り向いた先に居たのはヴォルクルス・ブラックエッジ(黒鴉の黒竜騎士・f22576)であった。
 ゴブリンは大きくよろめき、ぶつかって来た竜――ヴォルクルスの相棒、ファングをぎろりと睨みつける。ファングが挑発するように宙を飛び回る中、ヴォルクルスはレオンハルトの背を押すように叫んだ。
「――今だ!!」

 その瞬間、レオンハルトは頷き――誓いの剣を握り直す。
 強く踏み込み、狙うのは盾の『向こう』。人々を苦しめる『悪』ただ一点。
「ナッ!?」
 盾を攻撃しないレオンハルトに、ゴブリンは素っ頓狂な声を上げる。盾にされていた人々も斬りつけられると思っていたか、その刃が自分達に向かないことに目を見開いていた。
 レオンハルトは強く踏み込み、そして澄んだ鈴の音の声にて紡ぐ。
「どんな時でも他人を見殺しにしない――それがボクの騎士道ですから」
 盾を躱して背後へ回り込んだレオンハルトは、思い切りゴブリンの背へと刃を叩き込んだ。
「クソッ……!!!」
 ゴブリンが振り向き、錆びた剣で反撃を試みる。
 ――小さな体躯に反した、重い一撃。
 レオンハルトは剣でそれを受け止め、柄を握る手に力を込めて。
「ボクは進む――『救世』の道を……ここで、倒れる訳にはいかない!」
 そう、凛と言い放てば――ゴブリンの刃は高く弾かれ、そのまま盾と共に武器を手放す。
 レオンハルトはすかさず人々の縛られた盾を抱えると、ゴブリンから大きく距離を取った。

 仲間を斃されたゴブリンは剣を振り上げ、盾を構えてレオンハルトを追う。
「キサマァァッ!!!!」
 しかし――それを阻むように、ヴォルクルスが黒剣を掲げて。
 剣を多尾鞭状に変え、彼はユーベルコードを発動する。
「――『人質を使うな』!」
 そう宣言した瞬間、周囲の空気がふっと変わった。
 しかし、それでもゴブリン達は構わず進む。仲間を斬られ、手に入れた人間を奪われ、その上食欲で思考を乱されている彼等に、まともな判断など出来る筈がなかった。

 故に――彼等は、当然のようにその盾を使う。
 ――『人質を使う』。

「ウ、グッ!?」
 突如、一体のゴブリンが呻き出した。
 同じように周囲のゴブリン達も声を上げ、醜悪な顔を更に歪める。
 そして――バツッ!!! と不可視の力がゴブリンを襲った。

 群れはヴォルクルスの宣言した『ルール』を破った者から順に倒れていく。訳も解らず腕を裂かれ、肌を爆ぜさせていくゴブリン達へ、頭上のファングが笑うように告げた。
「相棒を怒らせたからだ。バーカ!」
 その意味を理解したか否か。ゴブリン達はがくりと地に伏し、掴んでいた盾を手放す。
 ヴォルクルスは盾に縛られている人を解放し、更に向かってくるゴブリン達に向き直った。

 ――殲滅、救出。レオンハルトとヴォルクルスがその戦場を駆け巡る中、ふと濃い蒸気が二人の身を襲う。
 目が回るような空腹。人々の肉を喰いたいなどという欲望までは浮かばずとも、その感覚は確実に思考を乱していく。
 ぐらり、と視界が歪みかけた瞬間、レオンハルトは己の左手へと剣を突き立てた。
 ――鋭い痛み。
 汗が噴き出すような其れが思考を正常に引き戻せば、レオンハルトは今戦う理由を――この『帝竜戦役』にて勝利を収め、世界を救うという意志を強めて。
「……獅子の魂が、この程度で屈してたまるかぁ!」
 そう、『希望の灯光』を強く引き抜く。レオンハルトは再び立ち上がり、ゴブリンに捕らわれている人々を救うために進み出した。

 ヴォルクルスは咄嗟にファングを呼び戻し、一際大きく伸びるサウナ珊瑚へと向かわせる。
 まるで意志でもあるかのように、珊瑚がもわりと濃い蒸気を放って欲を駆り立てる――が、しかしファングは顔色ひとつ変えずに珊瑚へと噛み付いた。
「オイラは『武器』だぜ。ンなもん効くかっつーの♪」
 バギッ!!! とサウナ珊瑚が大きく砕け散る。そのまま破片が周囲の温泉へと沈めば、ヴォルクルスを包む蒸気は少しばかり薄まっていた。
 くら、と身を僅かに傾けるヴォルクルスに、ファングはばさばさ羽撃いて駆け寄る。
「しっかりしろ相棒! まだゴブリンが残ってる!」
 ヴォルクルスは息を整え、確りと地を踏みしめると――残るゴブリンを一匹残らず駆除するべく、再び駆け出して行った。



 確認できる範囲のゴブリンを殲滅したヴォルクルスとレオンハルトは、互いを労うようにふっと目を合わせる。ゴブリンの屍が骸の海へと還り、そして人々が感謝を述べる中、二人は静かに帰路へつくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
……流石にどれ程空腹を感じても、私は
ひとを食べたい、とはならぬ気が致します
トラウマか判りませんが、……血の香も味も、苦手ですし

代わり、大事な金平糖をひと粒
口内にひと粒ある程度でしたら戦いの支障にはならぬでしょうし
何もなく食欲を抑えるより多少気を紛らわす事も出来ましょう

人々を助けつつ彼らを斃すなら、
手は多い方が良さそうです
ムーンストーンを手に騎士を創造
心癒す石であり、この蒸気の中、その姿は見難い

自身は愛用の杖を手に
人々への騎乗阻止、人質阻止に動きつつ
騎士には霧に紛れた各個撃破を命じます

戦闘後人々には応急処置と
人里までお連れした方が宜しいでしょうか

終わったら、折角ですし珊瑚を少し頂いて行きましょう



 蒸気に混じり鼻を刺す、熱を帯びた鉄の臭い。
 粘つく音を立てて肉に齧り付くゴブリン達は、美味い美味いと繰り返してはそれを猟兵に見せつけるように掲げていた。

 食欲を駆り立てるこの戦場に於いて、瑞々しく光を返し、豊かに汁を垂らす肉は誘惑そのものであったが――それを喰らう光景を眺めても、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)が彼等を『羨ましい』などと思うことは決してなかった。
「……トラウマ、かは判りませんが」
 ゴブリン達が嗤い啜っている血液のあの色も、漂うこの香も――嘗て舌に染みたことのあるあの味も、苦手なのだ。
 己に眠る血統の力を使う事はあれど、少なくとも、今此処に立つ彼は自ら好んでひとの血を飲みたいなどとは思わない。
 温く生臭いあれを、ひとを苦しめてまで再び口にしたいなど。
 どれ程空腹を感じようが、きっと望むことは無い筈だ。

 それでも蒸気の所為だろうか、ファルシェは血肉の前で空腹感を覚える。
 くらり、と頭の奥が歪む感覚。加えてゴブリン達に捕らわれた人々の甲高い悲鳴が耳を劈き、頭蓋を揺らすようだった。
 息を整え、ファルシェは小瓶をひとつ傾ける。
「此れならば、戦いの支障にはならぬでしょう」
 ほろりと手に転がるのは金平糖。
 彼は湧き上がる食欲を抑えるように、気を紛らわすようにそっとその甘味を口に含むと――愛用の仕込み杖を手にゴブリンの群れへと踏み出した。

「!!」
 ゴブリンの群れはファルシェの接近に気がつくと、すぐに身構えて剣を掲げる。その刃が大きく伸び、虚ろな目をした大男がゆらりと立ち上がる中――ファルシェは掌の上、柔らかな色に輝くムーンストーンへと魔力を伝わせユーベルコードを発動した。

 喚び出された騎士が纏うは、媒体となった石と同じ薄く透ける白の鎧。
 濃く蒸気の漂う戦場でその姿を捉えるのは難しく、ゴブリン達は途端に周囲を警戒して身を寄せ始めた。

 ファルシェは彼等が人の背に乗ろうとするその瞬間を狙い、仕込み杖の刺突を放つ。
「チッ……!!」
 ゴブリンが反撃をと錆びた剣を振り上げたその時、ふっと近くの空気が揺れた。
 直後、白い剣がゴブリンの胸を深く貫く。一瞬姿を現した騎士は素早く屍を地に放ると、再び蒸気の中に溶けてゴブリンの死角へ回り込んでいった。

 一箇所に纏まった群れを捌くのは容易い。次々にゴブリンの身を裂き、貫いていけば、みるみる気配が数を減らしていく。
 後少し――ファルシェが杖を握り直し、見えたゴブリンの影へと一直線に突き出せば。
 ばらり、と束ねられていた鎖が離され、ゴブリン達は骸の海へと還っていった。



 蒸気の薄い地点に場所を移し、ファルシェは解放された人々の無事を確認する。
 彼等の鎖や首輪を外したファルシェは、ゴブリンに斬り付けられた者、引き摺られたり打ち付けられたりといった怪我をした者に出来る限りの応急処置を施した。
 口々に感謝を述べる彼等に何時もの調子で微笑を浮かべると、ファルシェは遠く――人の気配が集まる方をふと見遣る。
「……人里までお送り致しましょうか」
 そう問えば、皆始めは遠慮しながらもこくりと首を縦に振る。
 手負いの彼等があのゴブリン達のような輩に再び襲われれば、次こそ命は無いだろう。
 ファルシェは頷き、人里を目指して歩き始める。折角ですしと採った珊瑚の欠片を仕舞うと、彼は口の奥で小さくなっていた金平糖を静かに飲み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】 (連携・アドリブ可)
「フィオ姉ちゃん。この作戦、本当に大丈夫なの?」
戦闘前に大量に水分補給して、おしっこ我慢して食欲抑える作戦だって。
だ、大丈夫かな
【行動】
セーラー水着で温泉地帯へ
「お腹パンパンなのにお腹空いたよ」
蒸気に触れるとハンバーグにカレー、甘いジュースが食べたくなるよ
シュークリームとかケーキも食べたい!! でもおしっこも…
これ二重の枷になってないかな? 
苦しいから、食への欲求が少し削がれるかも??
「とにかく早くやっつけようよ」
フィオ姉ちゃんとゴブリン収穫兵に狙いを定めたら(高速詠唱)で
ロンギヌスの槍だね(スナイパー)で狙い撃ち
「うわー、トイレどこー」


フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携・アドリブ可)
「今、話しかけないで」(顔真っ赤)
■作戦
予め大量の水分補給で尿意を感じた状態で戦い食欲を抑制する
■行動
お気に入りの水着姿で温泉へ地帯へ
蒸気を浴びると確かに食欲が沸々とわいてくる
「わざわざ声に出さなくていいから」
弟を窘めつつも、食欲への渇望、美味しいスイーツ、パンを、フルーツを…
食べたい飲みたい
でも一方で体のダムは決壊寸前。口にできない羞恥心が湧き上がり
食欲を少しだけセーブする
「す、素早く倒すしかないわね」
オートフォーカスでゴブリン収穫兵をロックオンしたら[高速詠唱]で
【ロンギヌスの槍】は発動し、まとめて[串刺し]にする
「お花摘んでくるわね」



 ――『湧き上がる食欲をどうにか抑えなければいけない』。
 それが、今回の戦場に於ける重要事項の一つだ。
 フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)とフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)は『ある作戦』を練った上で、アックス&ウィザーズの珊瑚礁を訪れていた。
 フォルセティはセーラー服を模した水着、フィオリナはひらひらのフリルに飾られたお気に入りの水着。その身軽な装いは、このまま温泉の湯で遊ぶことも出来そうだが――
「フィオ姉ちゃん。この作戦、本当に大丈夫なの?」
「……今、話しかけないで」
 声を出すことすら限界、と言わんばかりにフィオリナは顔を真っ赤にしてそう告げる。
 一方フォルセティの方も、この暑い戦場で何故か一瞬震えて下腹部をきゅうと抑えていた。

 二人が食欲に抗う為に考え、実行した作戦。それは『戦闘前に大量の水分補給を行い、それによって引き起こされる尿意を我慢することで食欲を上書きする』というものだった。
 万が一我慢に失敗したときが恐ろしいものだが、それ故に有効な作戦――かも、しれない。

 フォルセティはふと流れてきた蒸気に触れる。途端に胃が空腹を訴えて小さく縮むのを感じれば、フォルセティの頭の中にはぽんぽんと食べ物の姿が浮かんでいた。
 肉汁溢れるハンバーグ、温かく香ばしいカレーライス。この暑さの中甘いジュースで喉を潤すことが出来れば、なんと幸せなことだろう。
 よく冷えたふわふわのシュークリーム、クリームたっぷりのケーキも良い。
「お腹パンパンなのにお腹空いたよ……」
「……わざわざ声に出さなくていいから」
 そう窘めつつも、同じく蒸気に触れたフィオリナの脳裏にも食べ物や飲み物の姿が過る。
 美味しいスイーツ、パンを、フルーツを――食べたい、飲みたい。

 食欲への渇望がひどく湧き出る――が、しかし。
 二人は今別のことで精一杯だ。既に身体のダムが決壊寸前なのだ。
 有る意味では二重の枷とも言えるかもしれないが、少なくとも今の二人は『純粋に食欲だけを満たしたい』という気持ちにはならない。
 故に、幾ら目の前でゴブリンが屍肉を美味そうに食べようと二人が『自分もあれを食べたい』などと思うことはないのだ。

 ――作戦は間違いなく成功だ。
 しかしその代わり、フィオリナの胸には口に出来ない羞恥心が強く湧き上がる。
 二人はちらと目を合わせ、一度身を震わせて。
「フィオ姉ちゃん、ボクそろそろ限界……とにかく早くやっつけようよ」
「そうね……す、素早く倒すしかないわね」
 食欲を耐えきった――というより一刻も早くお花畑へと走りたい二人は、急いでゴブリンの方へ踏み出した。

 ゴブリン達は大声で騒ぎながら、手にした肉に次々齧り付く。彼等はフィオリナとフォルセティの姿に気がつくと、それをぶんぶんと振り回してにたりと嗤った。
「ニク、クウカ?」
「ウマイゾー?」
 そう見せびらかすように、手元の肉に大袈裟な動きで齧り付く。
 しかし当然、二人がそんなものに惑わされない。
 フィオリナとフォルセティは揃って肉から目を逸らすと、素早く魔術詠唱を始めた。
「フォルセティ、行くわよ!」
「――任せて!」
 確りと狙いを定めた二人は雷と氷の槍――ユーベルコード『ロンギヌスの槍』を合わせ、思い切りゴブリン達へと放つ。
 人肉を喰らい身体を強化したとはいえ、神をも貫くその閃槍をゴブリンが防ぐことなど到底出来るはずがなかった。
 光り輝く槍がゴブリンの群れを纏めて貫けば、その風圧で周囲の蒸気も吹き飛んでいくのであった。



 フィオリナとフォルセティは捕らえられていた人々を解放するや否や、ぐるりと急いで辺りを見渡す。珊瑚の影、岩陰、草むらの中――考える内に遂に限界が来たか、フォルセティはどこかを目指して走り出した。
「うわー、トイレどこー」
 途端、フィオリナも別の方向へと踏み出して。
「……お花、摘んでくるわね」
 救われた人々はそんな二人の背を不思議そうに見送りながら、笑顔で礼を述べるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オスカー・ローレスト
お、俺、そもそも肉はあんまり、好きじゃない、し、ましてや、人、なんて……そんな、オウガみたいなこと、したくない……!(半泣き小雀

でも……殺人衝動も相まって……いやだ、おれは、人を殺したく、なんて

……人じゃ、ないなら……そうだ、助けるために、俺は、来たんだし……だったら、敵を殺すことに集中すれ、ば……幸いとは、言いたくないけど、あっちも人型っぽいし……だから、衝動も、問題ない、はず

ひ、人を食べようとしてるゴブリン目掛けて、【暴風纏いし矢羽の乱舞】を放つ、よ。蒸気の中でも、持ち前の【視力】と【スナイパー】技能でよく、狙って、絶対人には、あ、当てないし、寄せ付けさせない……!



 耳触りな金属音、背筋の凍るような粘つく水音。
 人の屍を切り裂き喰らうそのゴブリン達は、愉悦に浸りながら嗤う。
「アア、ウマイ、ウマイ……!」
 呟いた口は、直後ぐちゃりと肉を噛み潰していく。
 湧き上がる食欲を存分に満たす彼等は、珊瑚の影に潜む猟兵の姿に気付いていなかった。

 ゴブリン達が立てる音、人々が上げる悲鳴。それらに胸の奥をざわつかせながら、オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は震える口をどうにか開く。
「お、俺、そもそも肉はあんまり、好きじゃない、し……」
 ――況してや、人なんて。
 オスカーは薄布の下で涙を浮かべながら、目の前の敵を嘗ての記憶に重ねる。
 幾ら腹が減ろうと、喉が乾こうと、そんな真似はしたくない。
 無力な者を苦しめ、殺し、喰らうような――
「……そんな、オウガみたいなこと、したくない……!」
 そう首を横に振った瞬間、突如オスカーの視界が霞む。

 真っ白な蒸気が周囲を覆うと同時、彼は己の身がひどく空腹を訴えていることに気付いた。
「……!!」
 ゴブリン達がぐちゃぐちゃと噛み砕く肉が、血の臭いが、食欲を刺激するのは。
 たすけて。ころさないで。いたい。いやだ、しにたくない。そう叫ぶ人々に、ずっと胸がざわつくのは――心惑わすこの蒸気の所為、その筈なのに。
 ――殺したい、?
「い、いやだ……おれは、人を殺したく、なんて……」
 そう否定すれば、千切れた翼が小さく痛む。
 嗚呼、殺さないと。駄目だ、違う、でも、殺、人を、嫌だ――

「……そうだ」
 ぐらつきかけた思考を戻すように、オスカーはその瞳を前へ向ける。
 幸い、とは言い難いが――あのゴブリンも、小さいとはいえ人に似た姿ではないか。
「そうだ、助けるために、俺は、来たんだし……」
 今この衝動を向けるべきは、捕らわれた人々ではない。
 彼等を苦しめ、いま正にその肉を食らおうとしている――あの、外道の鬼だ。

 霧のように蒸気が立ち込める中、オスカーは腕の洋弓銃へと魔力を込める。己の欲を満たすべく新たな屍を生もうとしているゴブリンの影へ、彼は確りと狙いを定めた。
 ――『暴風纏いし矢羽の乱舞』。
 小雀の羽は鋭い風を纏い、真っ直ぐにゴブリンの首へ放たれる。
「ッ!?」
 微かな音にゴブリンが振り向く――も、既に。
 完全に油断していたゴブリンは一瞬にして首を飛ばされ、呆気なくばたりと地に伏した。

「ヨ、ヨクモ……ダレダ、ドコダァァァッ!!!!」
「ぴっ……!?」
 仲間を討った何者かを仕留めようと、周囲に群れていたゴブリンが怒りを露わに立ち上がる。
 しかし――霧の中で隠れる猟兵の姿は簡単に見つからない。オスカーは小さく声を漏らしながらも、気配を殺したまま再び洋弓銃の引き金に触れた。

 ゴブリン達が人を盾にしようと、馬のように乗って走り回ろうと、オスカーは決してその矢を人に当てることなく放っていく。

 人でないとはいえ、『楽しい』などと感じてはいけない。そう分かっていても、次々射られ堕ちるゴブリンの姿に――その感覚に、彼は僅かに瞳を震わせていた。



 ――ようやく、戦場が静かになる。
 ゴブリンの支配から逃れ、自由を得た人々は自分達を救った『誰か』に感謝を述べ、嬉し涙を浮かべていた。
 それを聞くべき彼は身を潜めたまま、静かに弓銃を収める。
 珊瑚の熱や蒸気は収まっていない。敵が居なくなった今、これ以上この衝動に抗えなくなれば――どうなってしまうことか。
 無事人間達が救われたことに胸を撫で下ろしながらも、オスカーはそっと戦場を後にするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クシナ・イリオム
アドリブ歓迎

今回は感情を抑えるのが簡単そうだね
…むしろ増幅させるほうが難しいかも

極限の飢餓環境を想定し、自身がそうあると思いこむことで無理矢理にでも人々への食欲を駆り立ててから戦闘に入る
なるほどね、確かに弱っていてとても喰らいやすそうな肉だ
ただ…一つ言っておくけど、人の肉は死ぬほどまずいよ

【邪影の謳】で人々の中に偽人質を混ぜ、会話している間に偽人質を操作して敵を【暗殺】
敵が偽人質に意識を向けたら自分に傷をつけ解除
一瞬の隙を突いて本体でも暗殺する

なんで肉の味を知ってるかって?
逆に聞きたいんだけど知人の亡骸を口にしないと飢えて死ぬって時あなたはどうする?
…あくまで想定の話
今の私は食に困ってないから



 す、と小さな妖精が戦地を駆ける。
 その視線が捉えたのは人肉を喰らうゴブリン――の足下で、痩せこけた身体を震わせる人間達の姿であった。
 見れば彼等の四肢は折れそうなほどに細く、肌はがさがさと荒れている。ゴブリンに抵抗するどころか、立ち上がる力すら残っているか危うく見える程だ。
「なるほどね。確かに弱っていてとても喰らい易そうな肉だ」
 そう呟くクシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)の胃は、ぎゅうと小さく鳴って空腹を訴える。極限の飢餓環境を想定して此処へ来た彼女は、嫌でもあの人間の肉への食欲を湧き上がらせていた。
 しかし――食べたい、とは思わない。
 如何しようも無い程に腹が減っていても、クシナは『今すぐあの肉に齧り付きたい』などとは思えなかった。

「謳え、偽りの正義。その影を見て正道に殉ぜよ」
 クシナは物陰からユーベルコード『邪影の謳』をゴブリンの群れへ放つ。
 彼女の力は俯いたまま動かない人質の姿を借りて、自然と人々の中へ紛れていった。

 濁った声で笑い、会話と食事を続けるゴブリン達。偽の人質は戸惑う人々にしっと小さく人差し指を立てると、小さなナイフを握ってそろりとゴブリンの背後へ回る。
 ゴブリン達も、これだけ弱った人間達が反逆を企てるなど予想していなかったのだろう。
 偽の人質が刃を突き立てるその時まで、彼等は『暗殺』に気づくことは出来なかった。

 ――ぞぶり、と一体のゴブリンの頭部が貫かれる。
「……!!?」
「キサマ……ナニヲ!?」
 戸惑いながらも武器を握り、ゴブリン達は偽の人質をぎろりと睨む。
 だが丁度いい、見せしめにこいつを殺せば――彼等がそう企み、剣を振り上げたのも束の間。

 様子を伺っていたクシナが、自らの腕に小さく傷を付ける。
 その瞬間、ふっ、とゴブリンを殺した人質が繋がれていた鎖ごと姿を消した。
「ドコヘキエタ!?」
「サガセ、サガ――、ッ!?」
 騒ぎ出したゴブリンの群れは、一瞬にして沈黙する。混乱した彼等は背後から近づいていた妖精の姿に気づかぬまま、ただその胸を一突きされてばたりばたりと地に伏していった。

 ゴブリン達が骸の海へ還る中、ふわりと降り立ったクシナに人間達が小さく悲鳴を上げる。
「……食べないよ。人の肉は死ぬほどまずいから」
 ぽつりとそう零したクシナに、人々は安堵すると共に――何故その味を知っているのか、という疑問を浮かべる。クシナはそれを口に出そうとした男の顔を覗き込むと、囁くように問いかけた。
「逆に聞きたいんだけど。知人の亡骸を口にしないと飢えて死ぬ、って時……あなたはどうする?」
「……え」
 目を丸くする男へ、クシナは答えを待たずに。
「……あくまで想定の話。今の私は人の肉を食べるほど食に困ってない、それだけだよ」
 そう告げて、クシナはふわりとその場を後にする。
 人々は一度怯えたことを詫びながら、去っていくクシナの背に感謝を述べるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
まぁ、とても熱くて血が沸騰してしまいそう
いいえ、熱さだけのせいではないかしら
オウガと同じ、人食いを愉しむオブリビオン
メアリが必ず殺すから

誘う食欲には【狂気耐性】で耐えてみせ
オウガみたいにはならないと意思を保つ
さらに余計な蒸気を吸ってしまわないよう【息止め】て呼吸は最低限に
敵の血の臭いを楽しめないのは残念だけれど

繋がれた人達から引き離すように
アリスの身体で敵を【誘惑】する
煽情的な服と肉感的なお尻はオウガのお墨付きだもの
こちらに新鮮なお肉があるわよ、と示して見せながら
【逃げ足】で捕まらないよう立ち回る
それでも追いつかれて、哀れ捕まってしまうのなら
その一瞬に【復讐の一撃】を叩きこんであげるから



「まぁ、とても熱くて血が沸騰してしまいそう」
 しゅうしゅうと上がる熱気の中、メアリー・ベスレム(Rabid Rabbit・f24749)はゴブリンの群れを目指して歩く。
 ――いいえ、熱さだけのせいではないかしら。
 そうかぶりを振るメアリーの視界へ、宴の如く騒ぎ、血肉を撒き散らすゴブリン達の姿が映り込めば――彼女はゆらりと小さく赤の瞳を揺らす。
「オウガと同じ、人食いを愉しむオブリビオン……」
 ふ、と笑んで。メアリーは更に一歩踏み出し、呟いた。
「――メアリが必ず殺すから」

 その声が聞こえたか、否か。ゴブリン達はピクリと尖った耳を震わせ、メアリーの姿を目で捉える。彼等は各々の武器を手に取りながら、これ見よがしに手元の屍肉を齧った。
「クウカ、ウマイゾ」
「アア、ウマイ、ウマイ……」
 そう口々に述べ、彼等はメアリーに肉を見せびらかす。
 あれを食べたい、彼等が羨ましい――?
 そんな訳がない。

 食欲を刺激されながらも、彼女は『オウガと同じようにはならない』と強く意思を保つ。
 敵の血の臭いを惜しみつつもこれ以上思考を乱されないようにと呼吸を浅くして、メアリーはくるりとゴブリン達に背を向けた。
「……?」
 何だ、とゴブリン達が首を傾げると同時。
 煽情的な服に肉感的なお尻――オウガのお墨付きを得たその身で誘惑するように、メアリーはゆらゆらと腰を揺らし始めた。
 ――こちらに新鮮なお肉があるわよ。
 そう示すように揺れるもっちりとした白肌は、ゴブリン達が手にする屍肉の何倍も魅力的に輝いて見える。
 彼等が齧りかけの肉を棄て、一歩ぺたりとメアリーの元へ歩み出した瞬間――メアリーは背を向けたまま、逃げるように駆け出した。
「マッ……マテ!!!!」
 ゴブリン達は慌てて体勢を整え、メアリーを追ってばたばたと駆け出す。
 メアリーは岩陰や珊瑚、そこかしこに湧く温泉を駆使してゴブリンの追手から逃れていった。

 だが、仲間を呼んだのかゴブリンの数はいつの間にか増え、回り込んでメアリーを捕らえようとする。哀れ、遂にぐるりと周りを囲まれたメアリーはじりじりと寄ってくるゴブリン達にきゅっと目を瞑った。
「オトナシク……クワレロッ!!!」
 ――その瞬間。
 一斉にメアリーに飛びかかったゴブリン達は、彼女の『復讐の一撃』を喰らって吹き飛ばされていく。
 駆り立てられた食欲を漏れなくメアリーへと向けていた彼等は次々に地面や珊瑚に叩きつけられ、そのまま骸の海へと還されていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月17日


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#アックス&ウィザーズ
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト