帝竜戦役㉑〜竜脈禍焔戦線ガイオウガ〜
●焔竜降臨
ああ、おそろしいものが来る。
火焔を纏い、溶岩を身体から絶えず迸らせて。
それは火山そのもの。
地熱――言うなれば、星の熱を秘めた竜。
アレを打ち壊すには、それこそ、星を穿つだけの力が必要だろう。
かの竜が一つ尾を打てば、その周囲は根刮ぎ抉り薙ぎ倒され――その身体に開く無数の火口は、あらゆる方向に火焔岩礫を投射する砲門である。戦艦の対空弾幕すら凌駕する密度の岩礫を避けて近づけども、奴の身体から迸る炎は獣の形を取り、猟兵達に襲いかかる。
その天を衝くほどの巨体は、かつて猟兵らが相対した中でも一・二を争う巨大さだ。動き、足を踏み降ろすだけで大地が揺れる。
かといって鈍重なばかりかといえばそれも違う。奴はその身体を火砕流に変じ、俊敏に流動・回避行動を取ることも出来る。無論その変じた火砕流も超高熱。巻き込まれればただでは済むまい。
はては、己の姿を模した竜炎を放ち、相手を焼くこともあるという。かの竜を中心として無数の火竜が炎を噴いて飛ぶその様子は、最早終末の光景だ。
あげく、かの竜の攻撃は必ず、猟兵達の行動よりも先に行われるという。
それは純然たる火力。
一切を灼き尽くす焼尽の化身。
火山の竜脈を布き、全てを灼き尽くす帝竜が一。
その名は、垓王牙――ガイオウガ!!
危険である。一度飛び込めば、命の保証はない。
間違いなく、過去随一の危険性を孕んだ任務だ。
勝てるのか? 否、勝たねばならぬ。
勝たなければこの世界を救うことは敵わぬ!
「奴の攻撃に、適切に対処することが必要だ。如何に強力な攻撃が先に襲っても――それを防ぐか、やり過ごすことさえ出来れば、きっと活路は開けるはず」
少年――壥・灰色(ゴーストノート・f00067)は、硬い表情でガイオウガの特徴、想定される攻撃を全て並べ立て、深く息を吸った。
「――危険な敵だ。……でも、おれは知ってる。ここに立ったきみたちは、それでもアレを討ちに征くんだと。だから余計な制止はしない。……ただ、一つだけ」
灰色は右拳を突き出し、猟兵達に希うように言った。
「生きて帰ってくれ。また逢おう。きみ達なら――きっと討てると信じている」
灰色はスパークを上げる腕を一閃し、空間を斬り開いて“門”を開く!
むっとするほどの熱気が“門”の向こうから吹き、グリモアベースの空気を揺らす。
一度この門を潜れば、あの竜を殺すまで帰還は敵うまい。その覚悟が出来た者から飛び込むがいい!
竜殺しは、英雄の仕事だ。
猟兵よ、燃えろ。
世界を焼きたる邪炎さえ、勝る火勢で灼き尽くせ!!
敵対象:帝竜“ガイオウガ”!
グッドラック、イェーガー!
煙
お世話になっております。煙です。
●プレイングボーナス
本シナリオには、以下のプレイングボーナスがあります。以下の行動が盛り込まれたプレイングには、プレイングボーナスが付与されます。
☆プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
●注意
純然たる強敵との戦闘となります。
ダイス判定は定められた難易度(+プレイングボーナス)通りに行われますが、判定結果が成功以上でもフレーバーとして、かなりの欠損・破損・負傷描写を伴う見込みです。このため、『傷つき、尚諦めぬPCの活躍をご覧になりたい皆様』の参加を推奨します。程度としては、拙作『それでも君は征くというのか』をご参照下さい。
なお、本シナリオにおける欠損・破損・負傷描写は本シナリオ内のみ有効です。他に持ち出す事はPL様の裁量ですので、治癒するもそのままにするもご随意にお願い致します。
●プレイング受付開始日時
『OP公開ののち、断章投稿後より』
●プレイング受付終了日時
『2020/05/20 23:59:59』
●お受けできる人数について
基本的に一日三名様ないし二名様、『プレイング受付終了日時』までに送って下さった全ての方が失効するまで、書けるだけ書いてお返しします。
なお、プレイングの着順による優先等はありません。
また、お手数に思わなければ、『プレイング受付終了日時』までは再送を受け付けております。
それでは皆様、此度もよろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『帝竜ガイオウガ』
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POW : 垓王牙炎弾
【全身の火口から吹き出す火山弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【『炎の獣』に変身する】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 垓王牙溶岩流
自身の身体部位ひとつを【大地を消滅させる程の超高熱溶岩流】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 垓王牙炎操
レベル×1個の【ガイオウガに似た竜の姿】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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●焔に踊れ
ずぅん、
ずうん、
ずんっ――
グリモア猟兵が創り出した“門”を通り、アックス&ウィザーズの空に飛び出した君達の目に入ったのは巨竜の『腹』。
「――マジかよ。デカすぎる!!」
一人の猟兵が舌打ち混じりに叫んだ。転送位置は地上約五十メートル。だというのに顔が遙か上方にある。槍の穂先めいた岩膚がゴツゴツと連なる赤礫灼熱の山間に、帝竜『ガイオウガ』は立っていた。
全高、恐らく百メートルなど優に超える。怪獣映画のようなスケール感。その身体からは溢れんばかりの焔が迸り、只人ならば近づくだけで燃え尽き炭屑にならんかというほどだ。
――帝竜の眼が猟兵達を捉える。鈍く、焔の色に燃える眼。一切の焔を従え、世界を焼き貫く牙。牙列ががぱりと開き、地獄の蒸気めいた焔気を漏らして――
「ルウウウ、ウウウウォオオオオオオオオオオオオオオオオオォォオオオオオオオオオオオオオォォおぉオォォオオおぉぉぉッ
!!!!!!!」
天をも貫く咆哮を放つ。
周囲の山の火口が、戦いたように爆ぜて火砕流を吹き上げた。ガイオウガは既に猟兵達を捕捉、完全な戦闘態勢に入っている。
――君達は初手をしのぎ、あの邪竜へ渾身必殺の一撃を叩き込まねばならない!!
攻め切れねば死ぬ。退けども死ぬ、ならば、攻めきる以外他にない。
征け、猟兵!
貫く君の意思だけが、あの竜を殺す剣となる!!
羽堤・夏
◎
はは…情けねぇ
流石に震えるな
だからこそ防人夏が…行くぞ!!
【投擲】で日輪丸を投げ火山弾を撃ち落とし、炎の獣に変じる前に鉄拳で【怪力】で殴って粉砕、聖なる太陽で奴の炎を【焼却】
拳が焼けるのは太陽を扱う故の【火炎耐性】【激痛耐性】【継戦能力】…そして根性で我慢
火山弾を殴り続け、前進
足元だろうとどこだろうと、拳が接触すれば…コード発動
極小の太陽を、あたしの内側から地上に出現させる必殺の一撃
あたし自身が焼けるから普段は一発に限定しているけど…出し惜しみしてたら、負ける
【捨て身】の、【限界突破】の、拳をねじ込むための渾身のラッシュ
あんたが焼けるかあたしが焼けるかここが消滅するか…勝負だ、ガイオウガ!
●太陽の拳
天を衝くような咆哮に、身体が震えた。全高一〇〇メートル超の圧倒的な巨体。本能的な恐怖、生物としてのスケールの違いが、羽堤・夏(防人たる向日葵娘・f19610)の身体を震わせる。
「はは……情けねぇ。流石に震えるな」
自嘲気味に言う夏だが、しかし震えるだけでは終わらない。
「だからこそ防人夏が……行くぞ!!」
旅から旅の道すがら、立ち寄った人々を助け――防人を名乗る彼女は知っている。ここでこの竜を殺せねば、群竜大陸を制覇することかなわず。カタストロフが起きれば猟兵達の勝利は遠のき、畢竟、それはこの世界そのものの滅びを引き寄せることに他ならない。
ゆえに。いま、ここで恐れに足を竦ませている場合ではないのだ!
夏は背の翼を羽撃き、真っ直ぐにガイオウガ目掛けて吶喊する。
『グルルルルウウウウウウウアッ!!』
うなり声を上げたガイオウガは次の瞬間、無数の火炎弾を射出した。全身に火山の火口めいて芽生えた部位から噴火めいて火礫を撒き散らす。『垓王牙炎弾』。
「はああっ!!」
夏は迷いなく円盾『日輪丸』を投擲し、炎弾を立て続けに撃墜。円盾は夏の手の操作により鋭く軌道を変え、夏を狙った火炎弾を撃ち落としていく! これぞ日輪丸・向日葵の刃!
しかしただそれだけでは到底追いつかぬ。連射されるガイオウガの炎弾密度は、艦載の対空機関銃を遙かに上回る。夏は日輪丸でこじ開けた弾幕の隙間に身を躍らせ、両拳をがつんと打ち合わせた。
「だああぁあああっ!!」
少女に宿るは聖なる陽の力。
拳が、天に光る太陽のように眩く煌めく!
夏は振り被った拳を迫る火山弾に叩きつけ撃砕! 愛と勇気により固められたその鉄拳は、燃える火山弾さえ破砕する!
「ぐっ、う、うう
……!!」
歯を食い縛る。火山弾の重く固い手応え、そして焼き焦がさんばかりに伝わる焦熱が、夏の拳を、身体を責め苛む。焼け爛れる拳、しかし焼き尽くさんと襲う熱を、夏はそれを上回る出力、聖なる太陽の力にて焼き祓い、吼えながら羽撃き、空を翔る。
この程度では夏は止まらない。立て続けに火山弾を砕きながら前進する夏の前に、砕かれた火炎弾から立ち上った焔が獣として結実――
「させねえっ!!」
する前に、拳で殴り抜き、焼き祓う!
善戦する夏だが――
「……ッ!!」
不意に、凄まじい重圧と寒気を覚える。
見上げれば、ガイオウガの紅き双眸が、確かに夏を睨んでいた。
がぱあ、と開いたガイオウガの口が熱に輝く。――あれも、『火口』か!!
夏が目を見開いた瞬間、ガイオウガの口が爆炎を吹いた。拡散する火炎弾は最早巨大散弾砲めいている。夏は回避機動をとり、身に迫った火炎弾を拳で落とすが、腕の骨格に亀裂が走るほどの衝撃を受け横殴りに吹っ飛んだ。そこに更に、他の火口からの火炎弾が連続炸裂。夏は血を吐き、吹き飛ぶ。全身に重度の熱傷。間近での爆裂で、耳がイカれて、世界から音が消える。――罅の入った腕。恐らく肋骨も数本折れた。身体を焼くガイオウガの焔が、『諦めて死ね』と囁いてくるかのよう。
――けれどここで止まれるのなら、もっと前に歩くことなど止めている。
「あんたが焼けるかアタシが焼けるか……それともここが消滅するか。勝負だ、ガイオウガっ
……!!」
前へ飛ぶ。あれだけ攻撃を受けたのに今までよりなお速く、躊躇わず!
拳が赤く燃える。彼女の右拳に宿る輝きはまさに陽光そのもの――彼女のうちにある日の光を、極小の太陽として結実する秘技!
ユーベルコード『アライズ・サンシャイン』!
「ッだああああああああーーーーっ!!!」
尚も放たれる火炎弾を、極小太陽付きの拳の一打で迎撃! その瞬間、極熱、炸裂! 爆ぜた極小太陽が凄まじい赫熱の光となり、火山弾を呑み込み焼き祓う! ガイオウガが思わずと身動ぎするほどの熱量だ。
――焼けるのは夏とて例外ではない。この熱は彼女の身体をすら焼く。――だが、熱で焼かれながら。真っ白に輝く陽熱の中を、燃える翼を羽ばたかせ夏は飛ぶ!!
零距離。夏は腰撓めに引いた両拳の先に極小太陽を尚も浮かべる!!
「燃、え、ろぉおおおおおおおおおーーーーッ!!!」
ダメージ度外視限界突破、捨て身ここに極まる、アライズ・サンシャイン・ラッシュ!!
極小太陽が立て続けに爆ぜ、核熱が燃えた。ガイオウガの胸郭が抉れ、不快げな竜の叫びが響き渡る!!
夏は再び火山弾で吹き飛ばされるまでに八打の極小太陽を叩き込んだ。
――傷を顧みず光らせた彼女の陽熱が、この戦いのきざはしとなる!!
成功
🔵🔵🔴
真白・葉釼
◎
…いたな、特撮の怪獣に、こういうのが
生身で挑み、勝ったシーンはあまり覚えがないが
小細工は得手でない
大それたことが出来るわけでもない
だが、火の海に呑まれ尽きる程度と思ってもらっては困る
――吠えろ、《骨骸》!!
炎が追うよりなお迅く
地の消えるそれより前に
駆け上がりその顎喰い千切ってくれる
柔い一点、或いは裂け目であってもいい
それを作る為のただ一撃であってもいい
駆け抜け穿つことのみが使命であるならば
それをこなせずして何が猟兵か
己が骨身の一部、命の切れ端くらいくれてやる
好きなだけ俺を焼くがいい、好きなだけ俺を喰うがいい
この竜に“骨骸”、お前の方が化物だということ、叩き込んでやるがいい
これが俺の命の焔だと
●断罪骨剣
「……いたな、特撮の怪獣に、こういうのが。生身で挑み、勝ったシーンはあまり覚えがないが」
笑うしかない。何というサイズだ。
ガイオウガの巨体を前に、中天に開いた“門”を飛び出した少年が、ひらりと地に舞い降りた。彼の名は真白・葉釼(ストレイ・f02117)。無手にして、武器らしい武器も持たずに着地した彼は、しかし恐れも無く巨竜の身体を見上げる。
――確かに、小細工は得手でない。大それた事が出来るわけでもない。
「だが、火の海に呑まれ、尽きる程度と思ってもらっては困る」
葉釼は武器を持たず、体格としても特筆すべきものはない。いや、体格がそれより多少良かったところで、百メートル級の竜を相手にして何が変わろうものか。抗う術などあろうはずもない。
ない、はずだった。
「――吠えろ、《骨骸》!!」
葉釼は叫び、地面を抉って駆けた。それは、ガイオウガからしてみればほぼ消えたようなものだったろう。圧倒的な体躯のガイオウガの認識で言うなら、人間のサイズなど羽虫のようなもの。それが弾けるような速度で動いたとあれば、認識の埒外となってもおかしくはない。
だがそれはさしたるディスアドバンテージではない。認識していなくとも、ガイオウガが踏み潰せば、大抵のモノは死ぬ。ガイオウガは動揺した様子も見せずに一声吼えるなり、全方位に向け火炎弾を撒き散らしながら身を沈めた。――否、その下肢を溶岩へと換えた!
ああ、広がる溶岩が全てを焼く。赤砂焼け爛れ全て燃えていく。溶岩となったガイオウガの下肢が、地より取り付かんと駆ける猟兵らの進路を断つ……!
しかし!
「いいだろう。己が骨身の一部、命の切れ端くらいくれてやる。好きなだけ俺を焼くがいい、好きなだけ俺を喰うがいい。――だが代金は戴く。只で持って行けると思うなよ
……!!」
葉釼の全身は今や異様。白と血に掠れた、骨だけの魔物めいたフォルムの装甲に覆われている。これこそユーベルコード、『骨骸』。
葉釼の体内、肋骨に巣喰う異能の怪物『骨骸』を身体に纏った姿となり、己が命の灯火を代償として己を超強化する業である!
葉釼は峻烈に、溶岩広がる地をギリギリの位置で蹴飛ばし、掌下の砲門より硬質骨棘弾をショットガンめいて下目掛け激発激発激発、その反動を使って少しでも飛距離を稼ぎ、ガイオウガの身体へ飛びつこうと跳ぶ!
しかし――上から降り注ぐ、無慈悲なる火炎弾の雨。右腕を振り上げて骨棘弾を連射、撃ち落とそうと試みるが、出力も物量も圧倒的に異なる。骨棘弾で一つの火炎弾を落とす間に、数十の火炎弾が降り注ぐ、炸裂――炸裂炸裂炸裂ッ!!
「かっ、は、」
紅蓮の猛火と衝撃波が葉釼の身体を襲い、焼き砕く!! 骨骸装が砕け、圧倒的な破壊の雨の前に、鋼の身体は溶岩の中へと叩き落とされる。
落ちれば燃え尽きて死ぬのみ。しかし推進手段は既に無い。絶体絶命のその瞬間、葉釼は右腕に骨骸装を集中。がしゃ髑髏めいたフォルムの巨腕を成し、落下の力を乗せて力任せに地に叩きつける!!
――煮え滾る溶岩が飛び散り割れ、露わとなる焦げた地面を靴裏で咬み、
「お、お、おおぉぉっ!!!」
血を吐くように――否、損傷した内臓からこみ上げた血を、事実、口端から泡のように散らしながら――吼え、葉釼は跳んだ。骨骸装を再び全身に纏い、ガイオウガの身体を駆け上る。
葉釼は思う。たった一撃でもいい。或いは、誰かに続けるための、脆い部分を作るための布石となるだけでも構わない。
駆け抜け穿つことのみが使命であるならば。
それをこなせずして、何が猟兵か!!!
「“骨骸”、俺の命の焔!! この竜にお前の方が化物だということ、叩き込んでやれ!!!」
一歩ごとに最高速を更新する。体表の鱗の隙間から地雷めいた爆炎が幾度も噴き出し、葉釼の身体を焼き装甲を砕く!! 衝撃の余りに足の骨格が歪み、罅に軋む。踏み出すたびに激痛が襲う。
それでも葉釼は止まらない!
「喰い……千切れぇえぇええェッ!!!!
今一度、無事な骨骸を右腕に集中。右腕そのものが白き骨の断罪剣めいて変じた瞬間、葉釼は力の限り竜の鱗を引き裂きつつ、ガイオウガの胸郭の陥没――夏が作った最初の傷だ――を引き裂くように斬り上げるッ!!
『ガアアアアアアアァァァァア、アアァァッ!!』
蹈鞴を踏む竜の身体を蹴り離し、葉釼は宙に躍る。
「お前の『業』も喰らってやる、邪竜。猟兵を……舐めるなよ!!」
勝ったシーンに覚えがないなら、今日そのシーンを演じてやる!
成功
🔵🔵🔴
鳴宮・匡
◆クロト兄さん(f00472)と
英雄なんて善いものじゃないが
生きて帰る為に超えなきゃならないものならば
竜だって殺してみせるさ
生きているものなら、殺せない道理はない
……よし、行こうぜ
相手の目線、姿勢、立ち上る噴煙や熱
あらゆる情報から飛来する火山弾の順と数を見切り
発射されたそれの速度や大きさも加味し
対処する順番を策定して順次破壊
延焼した炎は面倒だが、燃える前ならただの物体だ
射撃で落とせないものじゃない
足先を断たれ態勢が崩れたなら
その隙を狙い【死神の咢】を撃ち込む
眼か、胸か――後続がいるなら片脚でもいい
相手にとって致命的となる部位を奪うべく先触れの一射を
――本命はあっちだからな
任せたぜ、兄さん
クロト・ラトキエ
匡(f01612)と。
英雄?
僕らは只の人。
指一本欠けても明日が危うい…
仕事を失うかも知れぬ、只の傭兵。
視覚、知識、経験…全てを以て。
眼鏡はオフ。全開で参ります。
弾道、速度、数…
見切り得たあらゆるより我々に向かう物と、接近の障害となる分を算出。
彼我を駆けながら――黒剣限定開展。
先制は火山弾の内に…
炎の獣となる前に、叩き斬り払い墜とし。
視線や体幹、前動作より尾等の攻撃は回避を図り。
灼熱何のその。避け切れずとも…生きて帰れば勝ち。
目指すはその足元。
どんな巨体だろうと…地に足あるなら狙えぬ道理は無い。
指に剣を。一瞬でも体勢を崩させれば…
彼は、決して逃さない。
僕の仕事は唯一つ…
其処へ叩き込む
――唯式・絶
●傭兵達の挽歌
溶岩流が竜の脚の形を取り戻し、再び直立したガイオウガが暴れ回る最中。
空に開いた“門”から、二人の猟兵が飛び出した。
敵との距離二百。距離を空けての転送を頼んだのにも意味がある。彼ら二人は、正面戦闘ではなく奇襲または狙撃でその性能を十全に発揮する、テクニカルな戦闘を行うタイプの猟兵だ。
周囲の猟兵が激戦を繰り広げる中、彼ら二人はごく静かに地に降り立ち各々の武器を構えた。凪いだ焦茶の眼をした男が、アサルトライフルのチャージングハンドルを引き、初弾を薬室に送り込む。黒コートに眼鏡の男が、コートの内側から黒柄の剣を抜き変形展開、空中に閃を描く。
英雄なんて善いものじゃない。そんな風にあれはしない。彼らはただの人だ。
ひたすら戦から戦を流れ歩き、その時々で河岸を変え、手向かう者を殺してきた傭兵なれば、彼ら二人の戦い方は、或いは生き方は似ている。決して才ある、万夫不当の豪傑になれはしない。指一本すら失えば武器を取れなくなり、引き金を引けなくなる、脆く儚いただの傭兵。
――しかし、それでも、生きて帰ると決めていた。
敵がどれだけ強大であろうとも、生還のために殺さねばならないのなら――たとえ天衝くような竜だろうと殺してみせる。既に死んでいるものならばこれ以上は殺せまいが、生きているのであれば、殺せぬ道理などありはしない。
銃で撃てば。
剣で斬れば。
生者は死ぬ。
「……よし、行こうぜ、クロト兄さん。デカいけど、付け入る隙は必ずある。俺が道を拓くよ」
「心得ました、匡。――では始めましょう。僕らの『戦場』を」
ライフルを持ち上げ、気負わぬトーンで言った鳴宮・匡(凪の海・f01612)に、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)が眼鏡を外してしまい込みながら答えた。軽く頭を振り、視界を改めるクロト。一切の束縛を切り捨て、自身の全開のスペックを発揮する構えである。
二百メートル先の彼ら二人――ガイオウガからすれば小虫のようなものだ――のことなど意識する間もないほど、ガイオウガ周辺では激戦が繰り広げられている。その隙を突くように、クロトが駆け出した。僅か遅れて、匡がその後ろを追う。
前衛となるクロトの進路を、匡が確保するコンビネーションだ。
――どこまで近づける? ヤツの意識はいつこちらに向く?
ガイオウガの目線、姿勢、果てはその身体から立ち上る噴煙や熱、どうやら可変らしい体表の火口の向きを観察しつつ疾駆する匡の背中に、不意にビリビリとした危険信号が這い上る。
――いや。意識なんて、そもそも必要ないんじゃないのか?
「兄さん!! 来るぞ!!」
「やはりですか……!」
匡が精密に監視していたことが功を奏した。火口の一つ一つが全方位に向けて火炎弾を散弾の如く撒き散らした。岩塊をコアとした焔の弾丸、ただの岩礫ではない。当たれば炸裂し衝撃波と焔を撒き散らす死の炎弾!!
おそらくヤツは、ただ暴れ、己が力を周囲に投射すれば、何もかも死に絶えるのだと知っている。ならば、羽虫の二、三匹を狙うのにわざわざ視線をくれてやる意味も体勢を換える意味もない。舌打ちをしながら匡は銃口を上げ、思考速度を加速した。
飛来する火炎弾の嵐を脅威度分類。瞬時に自身らに飛来するものを狙い、そのコースをなぞるように銃口を滑らせる。アサルトライフルがけたたましい銃声を響かせ、飛来する火炎弾を撃ち落として空に爆光を咲かせた。
――散るかに見えた爆炎はしかし、空中で凝り固まって焔の獣となる。
匡は肩を竦め、コンバットブーツの其処で熱砂を蹴散らしながら立ち止まった。Metal Manipulatorをマガジン下に取り付かせ変形、弾丸生成機能付きのエクステンド・マガジンとする。
「二倍弾を使わせる気かよ。参るな、まったく。……兄さん! 駆け抜けてくれ!」
「承知しました!」
最早匡ですら、足を止めずに迎撃することは不可能。距離一〇〇、ここより先に近づけば更に弾幕密度が上がるだろう。匡は膝立ちの姿勢となり、両目を見開いたままアイアンサイトを覗き込む。五・五六ミリメートルNATO弾の甲高い激発音が響き、地に降り立たんとする焔の獣たちを蹴散らしていく!!
背からの援護を受けながらクロトが駆ける。
弾道、弾速、殺到する数、全てを両の目で見切り、己が正面――つまり、匡が援護しようとしてもクロト自身の身体が邪魔となって援護出来ぬと思われる者だけを、クロトは限定開展した黒剣にて次々叩き落とした。……しかし、
「ぐッ、う
……!!」
叩き落とすも、間近にて爆裂、爆裂、爆裂!! 巻き起こる凄まじい爆炎と衝撃波がクロトの身体を嬲り骨を砕き、膚を焼く。巻き起こった爆炎が凝ろうとする所を黒剣で裂いて吹き散らしつつ、クロトは速度を決して落とさぬように駆け抜ける。
「この程度で……止まれるものか!!」
近接武器では爆炎と衝撃波の反動を受ける。ならばと籠手内の短矢射出装置にて正面からの火炎弾を迎撃、空中で叩き落とし、爆炎が凝る前に跳躍、剣にて断って走る!!
業火灼熱、何するものぞ。避けきれずとも生きて帰れば、猟兵の勝ちだ。
クロトは只駆ける。距離五〇。三〇。――後ろからの援護が寸刻途絶える。南無三、後ろにまで攻撃が飛んだか。だが信じるほかない。信じて、援護が途切れた分自身に降り注ぐ火炎弾を避け――
避け、切れない。
小ぶりな、拳大の火炎弾が立て続けにクロトに炸裂した。凄まじい爆圧、そして熱量。右の肋骨が軒並み砕け、コートが千切れ飛んだ。肺に骨が突き刺さり、衝撃に圧搾された肺から、噴血が霧めいて気道に込み上げる。
「が、っ、……ァっ!!」
喀血。吹っ飛ぶも、しかしクロトは剣の柄で地面を叩き地面と平行に錐揉み回転四、ブーツの底で熱砂を咬むなり、獣のような低姿勢で直走る!!
距離一〇! あの巨大なる脚をまるごと両断することは困難、となれば狙うは一箇所。
クロトは最高速で駆けた。速力と魔力を存分に乗せ、渾身の一刀を振り下ろす。――狙いはガイオウガの足指の一つ!! 足指でさえ大樹めいた太さである。しかしクロトの渾身を込めた一撃が、強固な鱗を裂き、ガイオウガの身動ぎのその瞬間に合わせ――、指を一息に斬り飛ばす!!
『がアァアアァアアアアアアアアアアアアァアッ!?』
バランスが崩れる。人間ですら五指のうち一つ、体幹に近い指を喪っただけでバランスを大きく崩すのに、あの竜の巨体を支える三指の一つが消えたとあればその影響は計り知れぬ!
クロトは信じている。信じているが故に、後ろを確認することも無く鋼糸を放ち延ばした。
この自分が作った機を、匡が逃すわけが無いと。
だから、自分はまだ倒れるわけには行かないと。
そう信じて、竜の身体に撃ち込んだ鋼糸を巻き上げ、跳び駆け上がる!!
――全身に熱傷。左目が至近に着弾した火炎弾に焼かれた。匡の的確なカウンター射撃に気付いたように、火炎弾の密度が増したのだ。クロトに集中するものを優先して落としていたが、急激に増加した弾幕に対応しきれず射撃を貰った結果の負傷である。並の敵ならば完封出来たろうが、しかして敵は帝竜。散漫な攻撃ですら一猟兵では抗しきれぬか。
撃ち落としても火炎獣となる、という火炎弾の厄介な性質も相俟って援護再開まで三秒も空けてしまった。左目は靄の掛かったように曇り、生きた視界は右だけ。
周囲を見ながらの援護は最早困難。匡はしかし、満身創痍の様で、滑り込むように熱砂の地に伏せた。臥せ撃ちの姿勢。先程までのような援護が出来なくとも――ああ、そうさ。
――クロトが仕掛けた攻撃により、まるで火山めいたガイオウガの巨体が揺らぐ。
あの巨体の『死』がどこに現れたのか、くらい。残った右目一つですら見落とさない。
「返してやるよ。受け取りな」
匡が照準したのは奇しくも、己が焼かれた部位と同じ左目。たった一発の銃弾、しかしそれは死神・鳴宮の放つ一撃――破壊を意味する楔、『死神の咢』!!
秒速九九〇メートルで射出された豆粒めいた銃弾が、螺旋に空気を巻き込んで唸り飛び――匡が描いた死の弾道を、コンマ一ミリのブレもなくなぞって、ガイオウガの左目を穿った。
まるで硝子に罅の入るように帝竜の左目に亀裂が走り――苦痛に顎を逸らし天を咬む竜のその胸先を、嗚呼、今まさに。
鋼の糸に引かれるように、ボロボロの身体を無理矢理に駆動して、駆け登る黒い影がある。
跳躍。
告死鳥の翼めいた襤褸外套を翻し、クロト・ラトキエが跳んだ。
「――唯式・絶ッ
!!!!!!」
黒剣が蛇腹に裂け、焔気渦巻く緋天を斬渦で断つ。鞭めいて伸びる蛇剣による渾身の一閃が、ガイオウガの左目をチェーンソーめいて喰い斬り引き裂きズタズタに荒らす!
損傷に耐えかねたかの如くガイオウガの左目が爆ぜ、内側から紅蓮の猛火が吹き上げる――!!
ただの人。然れど人。
傭兵二人の通した意地が、巨竜の左目を今まさに穿ったのだ!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
金白・燕
アドリブ・アレンジなどは大歓迎です
大切なレディからのお願いです
それがどんなお仕事でもこなして見せましょう
せめてミートパイにされないように
アレの喉元に噛み付いてやりましょうか
【Anesthesia】を発動
飛翔能力があれば炎を躱す事ができるでしょうか
多少躱せなくても仕方ありません
お仕事に支障がなければそれで良いのです
はは、本当に大きいな
ジャバウォックなんて、目じゃ無いですね
さあ、脳天に一撃を食らわしてやりましょう
レディからの毒を賜ったこの体は多少、その図体にも響くと思いますよ
この毒まで喰らってみるがいい
…多少、痛む気がしますね
骨兎、そんなに喚かないでください
ああ……煙草の火が欲しいな
●穿つ毒茨
「――はは、本当に大きいな。ジャバウォックなんて、目じゃ無いですね」
詩に継がれる架空の怪物さえ、こんな巨竜には太刀打ち出来まい。
ロップイヤーの兎耳垂らし、白髪揺らして青年が言う。ネクタイの位置を正して、熱風舞う宙を揺蕩うのは金白・燕(時間ユーフォリア・f19377)。
「大切なレディからのお願いです。どんなお仕事だろうとこなして見せましょう。――さて、せめてミートパイにされて仕舞わないように――アレの喉元に咬み付いてやるとしましょうか、ね」
燕が歌うように言うなり、ガイオウガが全方位に向け火炎弾を発射した。狙いなどつけていない。否、狙うまでもないのだ。その射撃密度は圧倒的、狙わず放てども当たるだけの全方位攻撃!
燕はそれに遅れること一瞬、ユーベルコードを起動する。――『Anesthesia』。自信の寿命を薪にして焼べ、全身を毒茨の刺青で覆い――戦闘力を爆発的に増幅、飛翔能力を得るユーベルコード。得た速力、飛翔力により火炎弾の嵐を回避する策だ。
燕は火炎弾を掻い潜り、凄まじい速度で急上昇した。上空三百メートルまでを一息に翔け登り、ぐるり回頭して遙か下の竜の頭を睨む。左目を潰され猛り狂う竜の頭を睨む燕の瞳が、すいと刃の如くに細まった。
それでは、お仕事といきましょうか。
空を蹴飛ばすようにして、燕はユーベルコードにより得た飛翔能力を全て急降下の為に用いて、一筋の雷霆の如くに墜ちる。右拳にジャラリとウサギ時計のチェーン――『Paranoia』を巻き付けて、固く固く握り締める。その鎖は他者の肉体、そして己が心を縛る枷。たやすく砕けるものではない。
上空からトップアタックを仕掛ける燕だったが、それを感じてか感じずにか、ガイオウガは全身の火口より再び火炎弾を乱射する。まるで小規模な噴火が立て続けに起きているかのよう。火山そのものが猛り狂っているかのごとき暴虐。
燕はジグザグに、それこそ稲妻のように高速で翔け抜け、速力に任せて火炎弾の嵐を掻い潜る。
――だがしかし、それだけでは対策は不十分だ。
回避機動とは、回避する先のスペースが存在するから成り立つものだ。回避しようのない密度での射撃がくれば、それを叩き落とすための手も無くばならぬ。ただ速いだけでは、『避けるための空間』が無くなってしまえば落とされるしかない。
立て続けに数度、多数の火口が同時に火を噴いた。散弾めいた火炎弾が視界を埋め尽くす。
「――、」
燕は左腕を上げた。心臓と首だけは守るように。次の瞬間、圧倒的な熱量と衝撃が彼の身体を襲った。立て続けに着弾した火炎弾は間髪入れず爆裂し、燕の骨身を軋ませ肉を抉り、凄まじい高熱で彼の身体のそこかしこを炭化させた。盾にした左腕が、千切れ吹き飛び、燃え墜ちる。
煮え滾る血が口から迸る。死、という文字のちらつく負傷。
――だが。
「この……身体を、巡るは、レディより……賜った毒。あなたにも、味合わせて差し上げましょう。この毒まで……喰らってみるがいい」
焼け焦げ抉れた身体に、なおも毒茨の刺青が蠢く。
多少躱せないのは織り込み済み。攻撃を叩き込めればそれでいい。
燕は止まらない。一陣の火炎弾を喰らい、爆炎に包まれ、今なお衣の端々に焔を揺らしながら急降下!! 嗚呼、まるで死に向かい墜ちていくよう。無意識下に抱く恐怖と痛みが、バロックレギオン――骨兎の形となって彼のそばにはべり、軋るように鳴く。骨兎が振るう前肢が、砕けながらも弾幕の嵐を僅か掻き分けたその瞬間、生まれた隙間に身をねじ込むようにして燕は弾幕を抜けた。
勢いもそのままに、声もなく男は右拳を引く。チェーン巻き付けた右拳に蠢く毒茨の刺青がより多く浮かび上がり、力が集中する。
落着と振り被った拳の炸裂は同時。
渾身の力を込めて叩きつけた燕の拳が、ガイオウガの脳天を割り、大音を響かせる――!!
『ガ、アア、アアアアアアアアアアッ!!』
ガイオウガの脳天の亀裂から爆発的に吹き上がった焔の奔流に吹き飛ばされるように、満身創痍の燕の身体は木っ端めいて飛んだ。
軋るように喚く骨兎の声が耳に騒々しい。
「骨兎、そんなに喚かないでください」
うわごとめいて呟くと、燕は墜ちながら、暴れる竜をもう一瞥。
紫煙が恋しいが、砕けた拳と喪った腕では、今は咥える事もままならぬ――
「……ああ、煙草の火が欲しいな」
墜ちながら、夢見るように呟いた。その身体より、浮き上がった刺青がゆっくりと失せていく。
成功
🔵🔵🔴
シキ・ジルモント
◎/POW
敵の火口に注目、火山弾発射の前兆を見たら走る
おそらく火山弾に追尾性はない、火口の位置と角度・火山弾の速度から落下地点を『見切り』、回避を試みる
回避困難なら火山弾をピンポイントで射撃し砕く事で直撃を避けたい(『スナイパー』)
火山弾の炎の獣への変化は見届けずすぐに帝竜へ接近
当然獣は追ってくるだろうが、獣から身を守るより接近を最優先に行動し、帝竜を射程に収める
直後に迫る獣も巻き込んで、ユーベルコードによる『範囲攻撃』で帝竜へ反撃を仕掛ける
射程から漏れた獣の対処は後回しだ
危険は承知で帝竜へ一撃入れる事だけを考える
少しでもダメージを与えて後続に繋げたい
あの強敵を倒すには、多少の無理は必要だろう
●緋弾六連
ガイオウガは、さながら生きた火山のようだった。
前触れ無く撒き散らされる火炎弾。全てを見切り回避することは困難を極める。
予兆無く連続的に激発する敵の火山弾の斉射に、早晩シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、その前兆を察知するのを諦めた。直撃すれば即座に戦闘不能になりかねぬあの全方位射撃さえ、ガイオウガにしてみればまるで呼吸と同じだ。ほとんど前兆がない。ならば、いつ突っ込もうが大差は無い。
(出来れば前兆を掴みたかったが――仕方ないか)
内心歯噛みをするが、降下と同時に身を潜め、しばらく敵を観察して判ったこともある。ガイオウガの全身にある火口から射出される火炎弾は、何らかの対象に接触すると同時に爆炎を咲かせ、『焔の獣』を生み出す。また、火炎弾自体には追尾性はない。撃ちっぱなし、直進するのみのただの燃える岩くれだ。
(……それだけ解っていれば、やりようはある)
シキは愛車に跨がり、エンジンを始動する。カスタムバイク『レラ』が目を覚まし唸りを上げた。右手をアクセルにそえ、左手に銃を握り。エンジンの回転を上げ、降り注ぐ火炎弾の雨が途切れた瞬間に、シキは滑らかにクラッチをつなぎレラをロケットスタートさせた。
距離一〇〇。バイクを最大加速。みるみるうちに距離が縮む。ガイオウガの全身がまたも爆炎に光った。火山弾の斉射! シキは顎を上に突き出すように天を仰ぐ。噴煙の中、燃え盛る火炎弾が煙引き裂いて飛来する!
シキはすかさずその着弾地点を割り出し、アクセルを緩めぬままスラローム走行。凄まじい技量だ。次々地面に着弾・猛爆する火炎弾を回避回避回避、熱風と衝撃波に煽られながら、それすら車体を傾け柳のように流して駆け抜ける!!
後ろは決して振り返らない。見ている暇が無いし、見なくても解る。着弾と同時に生まれた爆炎が焔の獣となり、地を踏みしめ背後から追っていている。そのプレッシャーと熱気はシキのうなじを焦がさんばかりだ。
距離五〇。数度目の猛撃。火を噴いた火口から、それまでに倍する密度での火炎弾の雨が降る。まるで紅い空が墜ちてくるかのようだ。如何にシキのドライビングテクニックを以てしても、避けるだけの隙間が無ければ回避は不可能!!
「チッ……!」
舌打ちよりも跳ね上げた銃の引き金を引く方が速い。
シキは密度の最も高い辺りを狙って『シロガネ』を撃った。――爆裂!! 凄まじい爆風と衝撃波を撒き散らし、火炎弾が爆ぜる! 誘爆、誘爆誘爆誘爆!! 一つ爆発すれば瞬く間に爆炎は広がり、周囲の火炎弾を一挙に爆ぜさせる!
面的に押し寄せる火炎弾の嵐を銃の一つでは留められぬ。ならばとシキは固まって押し寄せる火炎弾を誘爆させることで一掃しに掛かったのだ。……しかし、直撃するよりマシとはいえ、押し寄せる火炎と衝撃波が消えたわけでは無論、ない。
「――!!!」
重く熱い風が天から吹き付けたようだった。服が燃え膚が焼け爛れ、細かな石塊が身体を幾つも穿ち、内側から焼く。焼け火箸を身体に突き刺されたような苦痛。バイクのカウルの塗装が沸騰する。タイヤの焦げる匂い。重圧に悲鳴を上げるフレーム。歯を食い縛り、シキはアクセルを全開にする。ギアはとっくの昔にトップだ。
距離三〇。
シキは手近な岩に向けハンドルを捌き、アクセルをフルに吹かしたまま前輪で岩に乗り上げる――最高速からの大跳躍!! 空中高く飛び、ガイオウガの懐に潜り込むように高々と跳躍。
レラをオートクルーズモードに切り替えるなりそのシートを蹴ってシキは二段跳躍! 右手を翻し、ガイオウガの胸先二十メートルの位置で銃を構える。ここから狙うべきは、先人が既に何度となく攻めた痕跡であろう胸郭の傷!
しかし銃を構えたシキを後ろから、翼羽撃き超高速で飛来する焔の獣が追う!
空中では逃げ場も無い。火炎の獣の爪牙がシキに届く方が僅かに速いかと思われたその刹那――
ぎゅ、おうっ!!
凄まじい速度でシキの身体が右手にスライドした。火炎獣らの虚を衝くスピードで。
右腕を振ったその刹那、火口の一つに射出したワイヤーを掛けていたのだ!
制動間に合わずそのままガイオウガの胸先に突っ込む火炎獣らの激突に合わせ、シキは穿つべき場所に連続してトリガーを引いた。
残六発。決して外さない。緋弾宙を裂く、『ブレイズ・ブレイク』。
機関銃めいた連続激発。研ぎ澄ました殺意の咆哮が巨竜の胸に飛び込み、火炎獣らと共に猛爆!! 巨竜の傷をまた一つ深く穿つ――!!
成功
🔵🔵🔴
月守・ユエ
【月守】
◎
ああ、巨大な敵に思わず立ち竦みそうになる
なんて熱いんだろう
掠めるだけでも焼け焦げてしまうね
…うん、大好きだ
想い出をいっぱい宿した大切な世界なんだ
この竜を倒さないと、みんな燃えちゃう
怯んでられないね!
うん…!いこう、世界を守るために
僕が持てる力で皆を守ってみせるよ
Lunaryを構えスピーカーを敵に全部向ける
マイクから放つ聲の音に乗せ
火炎耐性を織るオーラ防御展開
放つ音のオーラを周囲に響かせ
その反響、仲間を守る盾となれ!
先制攻撃を凌いだ後
UC高速詠唱、限界突破
全力魔法で臨む
ユアを中心に視界に認識する猟兵の治癒に専念
僕は唄い続ける
祈りと覚悟を宿して
――誰も死なせない、失わせない…守ってみせる
月守・ユア
【月守】
◎
そうだねぇ
まともに攻撃を喰らったら、ボクらなんて吹っ飛ぶだろうな
でも、とびっきりの敵を目の前にして逃げるなんて勿体ない!
それに…ユエはこの世界が好きなんだろ?
ボクがついてる
君はいつも通り皆を守る歌を唄っておくれ
月魄幻影の煙にオーラ防御を纏って展開
ユエのオーラ防御と重ね合わせ二重の盾を形成
敵の攻撃を凌げたらダッシュ
背中は妹に預けた
己がやるべきは敵の殲滅!
UC展開
属性攻撃:氷
生命力吸収の呪詛を宿す花弁が刃となり放つ
敵の攻撃には傷口をえぐるカウンターを試みる
捨て身の一撃
――その命の悉を喰らってやる
この花は燃え尽きる事を知らない白き彼岸花
荒ぶる炎も咆哮も、全て凍りつかせて
その命を死へと誘おう
●月下花嵐
ああ、何と巨大な竜か。
あの竜の巨躯から見れば、全ては塵芥、羽虫のように儚く小さい存在なのだろう。
足が竦みそうになる。地面の赤い砂から影狼が立ち上る。立っているだけで体力を奪われていくかのような錯覚があった。
引っ切り無しに噴煙を迸らせ、その全身の火口から火炎弾を撒き散らし猟兵達を猛撃する帝竜、ガイオウガの威容を見上げ、美しい黒髪に金眼をした女がぽつりと呟いた。
「なんて熱いんだろう。――ああ、あんな焔の嵐。掠めただけでも焼け焦げてしまうね」
どちらかと言えば、不安、そして恐れが滲む声。無理もない。煮え立つような灼熱の地に立つ、生物としてのステージが全く違う巨体を前にして、恐慌せぬだけ立派なものだ。
「そうだねぇ。まともに攻撃を喰らったら、ボクらなんて吹っ飛ぶだろうな」
黒髪の女の横、対照的な白髪の女が、その態度までも真反対に、どこか楽しげに答える。
「でもとびっきりの敵を目の前にして逃げるなんて勿体ない! ――それに、ユエはこの世界が好きなんだろ?」
白髪の女は、傍らの女と同様の金眼をいたずらっぽく細めてナイフを抜いた。確かめるような声に、呼ばれた濡れ羽の髪の女――月守・ユエ(皓月の歌葬者・f05601)がこくり、と頷いた。
身体の震えは止まず、あの火竜に対する畏怖もまた消えぬ。
しかし、言われた言葉だけはすとんと胸に落ちる。だから迷い無く答えることが出来た。
「……うん、大好きだ。想い出をいっぱい宿した大切な世界なんだ。この竜を倒さないと、みんな燃えちゃう――怯んでられないね!」
「そーそー! なにも一人で征くわけじゃない。ボクがそばについてる! 君はいつも通り、皆を守る歌を唄っておくれよ、ユエ! だいじょーぶ、ボクらならできる!」
からっとした口調でユエを鼓舞する白髪の彼女は、月守・ユア(月夜ノ死告者・f19326)。ユエの双子の姉にして、月守の番人。
「うん、征こう、世界を守るために。僕が持てる力で、きっと皆を守ってみせるよ!」
対照的な二人。けれど、その意思は一つだ。
今この時、あの巨大なる竜を討ち――この世界が滅ぶのを、きっと防いでみせるようと。ただ、そうとだけ願う!
月守の双子は全く同時に地を蹴った。息を合わせたわけでも、示し合わせたわけでも無く。たとえユエの記憶が失せており、姉との記憶を覚えていなくとも――やはり彼女らは血を分けた表裏一体の存在なのだ。
駆け抜ける。距離七〇メートル。ユアの扱うユーベルコードを振るうには些か距離が開きすぎだ。ギリギリで届いたとて、敵の表面をなぞるだけではろくなダメージにならない。まだ踏み込まなくてはならない。
――しかし接近は、敵からの攻撃を食らうリスクと背中合わせである。
ガイオウガが天に一声高く吼えた。此度は火炎弾では無く、全身の火口よりバーナーめいて火炎が迸る!
噴き出した猛炎が瞬く間に、ミニチュアのガイオウガめいた形に凝り固まる。ミニチュアといえどその一体一体が成人男性ほどの体高を持つ。創り出された焔竜達が、四方八方に飛び散らばり、自律機動して猟兵達に襲いかかる!
当然それはユアとユエも例外ではない。駆け寄せる双子目掛け、焔竜が下肢から焔を噴き出しミサイルめいて飛来する!
「ユエ!」
「うん!」
翻したユエの手に、虚空より現れたスタンドマイク型シンフォニックデバイス『Lunary』が握られる。すかさず息を吸い、ユエはマイクを掻き抱くように強く握った。備えられた小型スピーカーが自律的に正面に向き、より強く声を響かせるよう音声を偏向する!
――次の瞬間、圧倒的な音律が宙を貫いた。月の魔力を扱うユエが紡ぐは音魔術。一息吸ってから歌い上げた一節は、火を拒む詩。白色光の障壁が広がり、降り注ぐ焔竜らを阻む!! 着弾、着弾、着弾着弾着弾、爆轟! 障壁が軋み、しかし破られる事無く、たえず降り注ぎ襲う焔竜の猛撃を食い止める!
広がる音は周囲の山々に跳ね返り響き渡り、聞いた猟兵全てを守る障壁となる。長くは続かないが、効果的な援護であることは間違いない。
……さりとてただそれだけで防げるほど、帝竜ガイオウガが惰弱なわけもない。殺到する焔竜らは止まぬ! 余りの攻撃密度に、ユエの障壁が軋み、ひび割れていく……!
「やらせるかってのっ!!」
しかしそれをユアがカバーする。家宝の煙管、『月魄幻影』を一つ打てば、迸る煙が見る間に広がる。その煙にオーラを伝わらせ、ユアの障壁を補強する!
――これも長くは保たない。守勢に回ったままでは、あの竜を殺すことなど絶対に叶わぬ!
「ユエ! ボクがあいつを――ガイオウガを斬り裂く! 背中は任せたっ!」
「――わかった!」
だから、ユアは踏み出した。降り注ぐ焔竜らが途切れた、ほんの一瞬を狙って。
彼女の広げた煙も、ユエが広げた障壁も、彼女がその内側より駆け出る邪魔はしない。それを利用し、ユアは両手に抜いた二本の刃を逆手に握り、障壁より飛び出すなり、獣がごとき低姿勢で駆け出した。
当然、焔竜らは飛び出し、今や何にも守られていないユアを優先して狙う。上空よりトップアタックを掛けてくる焔竜を躱し掻い潜り、少しでも前へと進む!
しかし無傷でなど、進めるわけもない。ガイオウガから迸る火炎が、今再び焔竜の群れを成す。第二陣。二人でやっとの事で防いだものが、今まさに再び襲おうとしている。
「――!」
ユアは足を止めない。止めるわけにはいかなかった。足を止めても、後ろに退がっても、回避出来る物量では到底無かったのだ。嗚呼、空が赤く燃えている。飛び襲い来る焔竜の群は、最早空を覆い尽くさんがばかり。
『ルウウウウウウウウウウァッ!!』
号令かのような一喝に従い、数千からなる焔竜が降り注ぐ。
一〇匹目までは避け、カウンターとして刃を繰り出し、斬り払い、捌けた。だがそれより後のことが解らない。気がつけばユアは爆炎と衝撃波と業熱の渦中に巻き込まれ、吹き飛んで転げていた。爆圧で骨が砕け、右耳がイカれて、左目が見えない。左腕も上がらない。咳と一緒に、口から熱い血が迸る。吹き飛んだ勢いのままに踵で地面を抉りブレーキ、蹌踉めく。
第三波が来れば、もう、防ぐ手立てなどないだろう。
――死という一語が、間近に見える。
「――、は、」
自分で驚くほどにか細い呼吸。肉体が、動き方を忘れてしまったように重い。鈍重な爪先を前に出す。ああ。焼けた筋肉が引き攣って、もう、先刻までのように走れない――
――いや、
歌が鳴った。
それはあの邪竜の咆哮に掻き消されてしまうような声だったけれど。
シンフォニックデバイスさえも破壊されたのか、最早肉声だけの歌だったけれど。
けれど、それは、ユアの最愛の妹の声だった。
振り向かないで
踏み出して
焔の雨が降り、世界逆しまに崩れても
君の命の煌めきを喪わせはしないから
まだ昼のはずの空に、夜が降りた。天に光る月。降り注ぐ月光が、ユアの身体の傷をたちどころに癒やしていく。ユアだけではない、月光を浴びた猟兵らの傷が塞がっていく! ユエのユーベルコード、月ノ祈歌【命煌】である!
癒やされながらユアは思う。
ああ、どれほどの傷を負ったのか。障壁は、きっと先程の攻撃で破られてしまった。
――今、どんな顔をして歌ってるの? ユエ。
訊きたくなる、振り返りたくなる。けれど、そうする暇はない。歌が背中を蹴飛ばしてくれた。身体は癒え、一撃をくれてやる力くらいはある。
妹が作ったこの機を無駄にしては――
ボクが付いているという言葉が、嘘になってしまう!
「咲き誇れ、命彩る月の花!」
ユアは吼え、熱砂蹴飛ばして踏み出した。両手の刃へ魔力を注ぎ込む。刃は魔力をすんなりと受け容れ、末端より銀砂に換わりはらはら崩れ――
――響く月歌姫の歌声に震える、無数の月下美人の花片に換わる。
「その命、悉く喰らってやる。この花は燃え尽きる事を知らぬ白き彼岸花。荒ぶる炎も咆哮も、全て全て凍りつかせて――その命を死へと誘おう!!」
駆け寄せる。距離三〇。ここからならば、あの巨竜の胴回りまでをも巻き込める。
ガイオウガが第三波を放つ前に、ユアは渾身の力と、氷の魔力を込め、無数の月下美人の花片を――『月下彼岸花』を刃の竜巻めいて放った。
刃鳴り軋り、歌声に震う銀の花弁が、天まで届くかのような渦を巻く。花弁の嵐がガイオウガの全身を斬り刻み、世界を割るような苦鳴を迸らせる――!!!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
佐々・夕辺
管狐の筒に口づけ一つ
決して負けない、と
暑さと痛みは耐える
耐え抜けなければ相手を倒せない
…来た!
「管狐!一撃くれてやりなさい!」
竜炎に氷精を仕掛ける
呪詛を織り交ぜ、勝手に広がる氷をくれてやるわ
火炎弾や溶岩を凍らせる自信はないけど
炎なら…まだ
――いいえ
本命は一筋
行軍に織り交ぜて放った5つの氷狐
彼らの向かう先は、ガイオウガの胸元…!
…痛い
熱い
何処が火傷しているのか
何処が無事なのかもわからない
暑さに悲鳴を上げる管狐
私を狙う竜は走って避けるしかない
何処かが燃えている気がする
もう判らない
判るのは敵のシルエットだけ
でも、私は負けない
負けられない!
私は、救える限りの命を…!
両手に溢れるほどでも守り通すんだ!
●氷風一陣
月下彼岸花舞い、下肢から胴回りを裂かれたガイオウガだが、血の代わりに迸る溶岩が瞬く間にその傷を埋めていく。そればかりではない。猟兵達が積み重ねた傷は瞬く間に修復され、その巨体は依然健在。強靱なる肉体に並外れた再生能力を併せ持つ、王の名に相応しき帝竜を前に、新たに“門”より飛び出した猟兵が地に降り立ち、構えを取った。
佐々・夕辺(凍梅・f00514)だ。管狐の筒に口付け落とし、深く息を吸う。
――決して負けない。負けられない。
ガイオウガが息を吸う。まるで鞴に空気を送り込まれた炉のように、溶岩めいて脈打つ火竜の胸が赤く赤く燃える。夕辺はそれに合わせて身構えた。
取れる手立ては多くない。彼女が選んだのは、真っ向正面からの迎撃だった。熱さと痛みはただ、己がユーベルコードを叩きつけて耐えるのみ。そう、耐え抜けなければあの巨体を打ち倒すこと叶わぬ!
夕辺が管狐を放つ前にガイオウガは赤熱した全身の火口より再び炎を噴き、焔で出来た己が写し身を多数形作る。
嗚呼、空が赤々と燃える。これが星の熱を抱いた竜の力だというのだろうか。
ともすれば数千に到ろうかという焔竜の群が、ガイオウガの咆哮に従い、再三降り注いだ。
「……来た!」
それは夕辺だけを狙った攻撃ではない。攻撃範囲の全てを焼き滅ぼさんとする無差別攻撃。
付け入るべき隙など、そこにしかない。ガイオウガの狙いはどこまでも大雑把で派手だ。
少しでも降り注ぐ竜の少ない位置に滑り込むように駆け、夕辺は両手を打ち振った。かろらっ、からっ、と竹の打ち合う音がして、翻した両手十指の間に狐竹筒が同時に八!
「管狐! 一撃くれてやりなさい!」
ユーベルコード、『管狐行軍』! 蒼白い冷気と光纏う管狐が次から次へと飛び出し、自動追尾ミサイルめいて、降り注ぎ襲う焔竜らを迎え撃つ!!
ど、どどど、っどどっどっどどどばあァンッ!! 氷炎爆ぜ凄まじい水蒸気と水煙が上がる! 夕辺が放つ氷管狐は、その名の通り氷の呪詛を纏い、空中に僅かに含まれる水蒸気を喰って膨れ上がった。放たれたときの数倍のサイズとなって次々と焔竜を貫いていく。全力を込めた夕辺が放つ管狐の数は一瞬にして三〇〇以上! 火炎弾、溶岩ではこうはいかぬだろう。しかし、純粋な焔であればこうしてより強い氷気にて貫くことも不可能ではない!
――だが、しかし。
貫き翔ける管狐らのその向こう。再び吼えたガイオウガが、次の一波を嗾けた。
夕辺は目を見開いた。氷気を目の敵にするように、焔竜達が複数寄り集まり、巨大な竜となって押し寄せる。
管狐らの悲鳴が聞こえた気がした。だがそれも一瞬。火炎の竜が顎門を開き、ばぐん、と一口で何匹かの狐を飲む。水の滴さえ残らずに熱で昇華する。燃え盛る竜を止められずに。
拮抗が崩れ、弾幕を越えた焔竜が夕辺へと襲いかかる。――最早夕辺を守るのは、一〇匹ほどの管狐だけ。細脚で駆け、竜から逃れようと走る夕辺の元へ、五体ほどの焔竜が殺到した。
――熱い牙が肩に食い込んだところまでは、意識が出来た。そこから先は解らない。夕辺へ取り付くなり、内側から破裂するように爆炎となって爆ぜる五体分の焔竜の焔、爆風が、夕辺の全身各所の骨を砕き、その身を手酷く焼いた。肺から残らず息が絞り出され、吹き飛んだ夕辺はそのまま地を滑り転がる。
身体のどこかが燃えている。感覚が薄い。どこだか解らない。耳が聞こえない。……視界も曇り、咆哮する巨竜のシルエットしか見えない。
ああ。死が、間近に見える。
――でも、私は。
夕辺は地に爪を立てる。熱砂を掴むように強く手を握る。
負けない。負けられない! 私は、救える限りの命を、
……両手に溢れるほどでも守り通すんだ!
歯を食い縛り、最後の呪力を竹筒に注ぐ。呪力届ける先は、中空、派手に膨れ上がり竜達と交戦した管狐らの影に隠れ、小さなまま飛び抜けた最後の五体の氷狐!
五体の管狐は、五体の力を一つに合わせ、夕辺から受け取った呪力の全てを使い、大杭めいた氷の槍となる! ガイオウガが防ごうとしても、焔竜の防御既に及ばぬ懐での急激な加速だ。防ぎようもない!
「……い、けっ
……!!」
熱に引き攣った唇で叫ぶ夕辺の声に頷くように、最後の管狐たちはまさに一丸となってガイオウガの胸を穿つ――!!
圧倒的な熱量に、氷はすぐに侵食され、熔け果てるだろう。
しかし確かにその攻撃が通ったのだと言う事を――不快げに歯を軋り身を捩る巨竜が証明していた。
成功
🔵🔵🔴
杜鬼・クロウ
◎
※ベルセルクドラゴン戦で剣に少し罅が入る
今の俺の剣(ちから)は最善じゃねェ
だが俺が選ぶ路は唯一つ
禍災の竜を倒す
死ぬかもって?さァな
俺には未だヤるべきコトが残ってるンでなァ
誰かが望む、この世界を救うのが俺の使命だ
(すまねェ玄夜叉
もうちったァ俺と戦ってくれ)
【沸血の業火】使用
紫電が体中走る
先制攻撃の火山弾はUCの効力と見切り・第六感で回避
炎獣へは剣に水の精霊宿し薙ぎ払うが途中から炎へ変更
剣に極力負荷掛けずここぞの時の為に
(取っておきたいが余裕無ェだろうな
…最悪、―)
高速移動し一点を光速で叩く
敵の外殻を剥がす(部位破壊
例え此の身が灼かれようと
朽ちて尚
手は止めず
敵の肚へ魂込めた渾身の紅焔の刃を轟かす
●最期の煌めき
転送され、世界が開ける。“門”の向こう側に座すは、凄まじい巨躯を誇る帝竜が一。竜脈炎帝『ガイオウガ』。
「ハ――呆れるほどデケぇな」
男は手近な、尖塔めいた山の頂点にしなやかに着地し、敵の巨体を見上げて笑った。
自分の状況が最善でない事は自覚している。
今隣には相棒はおらず、握る半身たる剣、玄夜叉には罅が入っている。
だがしかし、それでも彼が止まることはない。
あの火竜をここで止めなければ、きっとまた要らぬ血が、泪が流れるだろうから。
それを許せぬから、ここまで駆けてきたのだ。後退は無く、撤退もない。選ぶ道は唯一つ。
「禍災の竜――今からテメェをブッ倒す」
罅の入った玄夜叉を振り向け、不敵に言い放つのは杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。ぎょろり、と隻眼の竜がクロウを見下ろした。圧倒的な威圧感、意識を向けられただけで、まるで重力が数倍になったような息苦しさを感じる。
――ああ、こりゃ、死ぬかも知れねェなァ。
万全の状態であったとて命の保証がない相手に、ハンディキャップのある状況で踏み込まねばならない。状況の困難さは解りきっている。けれど、クロウの瞳は曇りなく、彼の剣、アスラデウスの切っ先めいて光っていた。
――けど、命をくれてやるにゃまだ早ェ。俺には未だヤるべきコトが残ってるンでなァ。誰かが望む、この世界を救うのが俺の使命だ!
「だから玄夜叉、すまねェ。もうちっとだけ――俺と戦ってくれ!!」
吼え、剣に水の精霊を宿し、魔力を注ぎ込む。戦闘態勢を取ったクロウを認識したように、ガイオウガは全身の火口より火炎弾を乱射した。
クロウは己が立った小山を、降り注ぐ火炎弾が崩壊させるその一瞬前に跳躍。空中にて印を切る。
ヘレシュエト・オムニス
「 獄 脈 解 放 ――、……ッ!!」
ユーベルコード始動。しかし発動よりも火炎弾の殺到の方が早い。数発は水宿す玄夜叉の剣先で流し払い、爆裂を避けて受け流したが、それでも身体に数発が食い込む。爆裂。頑健なはずの防刃ベストに容易く穴が空き、間近で爆ぜた焦熱が身を灼き、巻き起こる衝撃波が肋骨を砕いた。
破片に嬲られ裂けた膚から飛沫く血が、熱に炙られじう、と沸く。
――上等じゃねェか!!
口の端から流れる血を舌で拭い、流した血を捧げクロウはユーベルコードを完全発動させる。『沸血の業火』、顕現! クロウの全身に紫電が走り、精悍なその体躯の筋肉が尚も縄めいてギリリと引き絞られる。言うなれば身体能力、そして反応速度のリミッター解除!
続けて迫る数発の火炎弾を今度は全て弾く! 弾かれ後方で爆裂した爆炎から焔の獣が生まれ、クロウを背後から襲撃するが、
「おらァッ!!」
紫電纏うクロウはその身体能力を遺憾なく発揮し、空中でミキサーの刃めいて玄夜叉を振り回した。焔の獣が立て続けに断たれ、水の魔力に侵されて吹き消える!
――いつまでもこんなとこで、敵の攻撃とやり合ってる場合じゃねェ。
クロウは身体を廻し、剣に宿す魔力を切り替える。――ああ、本当ならば、ここぞ、と言うときのために温存しておくべきなのだろうが、では、ここ、とはどこか。
あの世まで剣は持って行けない。策を取っておけるような余裕はない。――クロウは直感する。この邪竜は、全身全霊を尽くさねば、傷つけることすら適わない!
「お前には無茶させてばっかだったなァ。……悪ぃ。付き合ってくれ」
クロウは己の最大の得手、焔の魔力を玄夜叉に注ぎ込んだ。その刀身全体が赤く輝き、罅割れが、まるで別れを告げるように色違いに明滅する。
男は振り返らない。ただ前だけを見て、玄夜叉を振るった。――爆炎! 剣の先から迸った爆炎が、その爆圧によりクロウの身体を上方に飛ばす!!
火炎弾が降り注ぐ、まるで焔の雨と見紛うばかりの数の火炎弾を、クロウは最早声を発すこともなく、玄夜叉を振り回して斬り裂いた。迸る火炎弾の猛爆を、無理矢理に焔に燃える玄夜叉の切っ先に獲り籠める!!
無茶苦茶な前進。爆発によって加速し、被弾を恐れず突っ込み、敵の焔を喰いながら尚も加速する。当然全て防ぎ切れるわけがない。瞬く間にクロウの身体は衝撃波と火炎、食い込む破片によりズタズタになり焼け爛れる。
――しかし止まらぬ。例えその身が灼かれようと、朽ちようと、決して。
「オオオオオォォォオォォオォッ!!!」
真っ赤に燃え立つような叫びを上げたクロウの手の内で、臨界に到ったかの如くに玄夜叉が赫奕と輝いた。剣先より迸る紅焔が延長刀身を形作り、ガイオウガの身体を今まさに胴薙ぎ横一閃、深々と引き裂くッ――!!!
「――どうだよ。トカゲ野郎。これが俺と、玄夜叉の力だ」
不敵に笑う、声一つ。
落ちるクロウの身体より紫電が失せ、彼の手の内で――天命を終えたかの如く、罅から二つに、玄夜叉が砕けた。
大成功
🔵🔵🔵
弦月・宵
浮雲で少しは飛べるから、機動力と行動範囲を補う
溶岩流の特性というと、
高温、熱波、流動性、冷めたら固まる…他にも。
溶けた部位を溶岩で変形させたり、背中の噴出項からの射出も考えられるかな。
熱波や溶岩そのものの直撃を受けないよう、羅刹紋と血から出るブレイズで自身を覆って緩和
目と身体の追いつく分は全力で躱すよ
技を出した後の地形変化も把握して、
着地のタイミングや場所にも気を付ける。
避けられなければ斬撃を衝撃波として飛ばして、少しでも逸らす
攻撃は【UC:奏者の遺光】で手数を増やす。
腹や喉の一点に集中攻撃できればいいけど、
脅威を抑える為に尾を斬り落としに掛かることも考えとく
退かぬ心の大きさでは負けないから!
●光九重
グリモア猟兵の案内に従い“門”を飛び出し、弦月・宵(マヨイゴ・f05409)が最初に見たのは、火炎降り注ぎ周囲一体が真っ赤に燃え立つ様だった。圧倒的な火力。焔に捲かれた猟兵達がそれぞれの死力を尽くし攻撃を防いでいるのが見える。
宵は歯噛みを一つ、腰につけた尾鰭めいた比翼『浮雲』をはためかせ、空を泳ぐように舞いながら巨竜と対する。
――幼い見た目ながらに、宵の思考は沈着冷静であった。敵の出方をうかがう。ガイオウガのユーベルコード三種のうち、こちらの動きに呼吸を合わせて使ってくるとすれば『垓王牙溶岩流』に他ならぬ。その能力は身体の一部を灼熱の溶岩流に変ずる、というもの。
溶岩流の特性は明らかだ。高温にして流動性を持ち、近づいた可燃物を発火させるほどの熱波を伴う。流動体になり、かつ元に戻すことも出来るとあれば、本来の形ではない姿に変形させることも可能であるとみるべきだ。更には、表向きに変化がなかろうとも身体の内側を溶岩流に変化させ、噴出させることで周囲を攻撃することもあり得る。――めまぐるしく巡る思考。
すぐに確かに敵にダメージを与えたり、味方を救ったりという目に見えた効果には繋がらぬその思索の時間が、結果的に宵の命を救った。
がガッ、ごォんっ!!
ガイオウガの全身の各所が割れ、マグマが迸る。迸ったマグマは砲塔めいて伸張し固まり、更に多数の火口を形作った。――宵は目を見開く。それは彼女が予測したとおりの変形――否、
・・
直感する。アレは、進化だ!!
宵は考える前に力の限り浮雲を羽撃き、己に出来る最速で回避行動を取る。――次の瞬間、流動するマグマがガイオウガの全身の火口から迸った。炎熱の余りに空が焼ける。射出されたマグマは真っ赤に燃える火礫となり、全方位へ散弾めいて飛び散る!!
「く、うっ……!」
宵は既に抜刀していた大刀『幻鵺』で自身に迫るマグマを弾き断ち落とす。両腕に朱墨のたくったかのような紋、『弦月之珠』が浮き、迸る地獄の炎が火礫の熱に抗い爆ぜ、弾く!
しかし敵の手数はマグマだけではない。更に口をがぱりと開き――ガイオウガは、その己が最大の『火口』より息をひと吸い、咆哮とともに火炎弾を無数に吐き出す!!
「……ッ!!」
溶岩を凌ぎ体勢を立て直す最中の宵に浴びせかけられた火炎弾の嵐は、まるで超大口径の散弾砲めいて吹き荒れた。宵もまた最大速度で刀を走らせる。斬撃で斬り払うだけではない。その切っ先から衝撃波を飛ばし、可能な限りを着弾前に撃ち落とした。冴え渡る天性の技。ここまでできる猟兵はそうはいまい。
しかし、無数に迫る火炎弾を全て防げるわけもない。数発が身体に食い込み、後は芋づる式に着弾する。食い込んだ火炎弾が、零距離で爆弾めいて爆ぜた。宵の身体は凄まじい爆圧に吹き飛ばされ、十メートルほどを水平に飛んで岩壁に叩きつけられ、めり込み気味に止まる。
口から、煮えたような熱さの血が迸る。目がかすむ。
巨大な身体。固き膚。そして圧倒的なまでの熱量。再生能力、進化能力。勝ち目などないのではあるまいか。そう、疑ってしまうほどの戦力差。
……けれど。それら全てを合わせたって、諦めるための理由にはならない。
「確かに、……身体の大きさじゃ敵いっこない。……でも……、退かぬ心の大きさじゃ……負けない、からっ
……!!」
息も絶え絶え、声もぶつぶつと途切れる。全身からの出血が酷い。けれど、今この瞬間だけは好都合だ。この手傷では永くは戦えない。ならば一瞬に全てを懸ける。
彼女の千切れかけた帯飾りに絡むチョーカーが、ちかり、ちかり、と淡く白く光瞬いた。宵の金眼の奥に燐光宿る。――ユーベルコード、起動。『影絵の奏者の遺光』!!
より速く。より強く。より烈しく!
真っ直ぐに構えた幻鵺の切っ先を、狙うようにガイオウガの頸に向け!
「――征くよ!!」
宵はその身体から迸る血の全てを、地獄の炎に換える。壁を力の限り蹴り飛ばし、宵は跳んだ。――否。『飛んだ』。
なんということか。流れる血を瞬間燃焼、爆発させることでその反動を受け、跳躍後も加速加速加速!! 浮雲にて姿勢制御をしながらロケットめいて真っ直ぐに飛ぶ宵を、再びの火礫の嵐が襲うが――
一瞬で宵が振るう剣閃の数、実に先程の九倍。――彼女一人に向かう火山弾の嵐など、二斉射三斉射と続けばともかく、一射程度、潜り抜けるに不足なし!!
宵は力の限りに刀を振るい、月めいた斬弧を宙に無数に描く! その全てが衝撃波となってガイオウガの頸目掛け飛んだ。いくつかは火山弾と相殺、宙に爆炎を咲かすが――抜けた飛斬撃その数八が、ガイオウガの頸の一点に向けて唸りを上げる!
「はあああああああああああああっ!!」
宵は燃え尽きてしまうほどに叫んだ。咲いた爆炎を、未だ加速する己が身体で、肩で裂き、衝撃波に追いつくほどに加速――
全身のバネと羅刹の筋力の限りを尽くし描かれる無窮の剣閃が、先に描いた八つの衝撃波と重なり、今まさに巨竜の右頸を大きく裂く――!!
渾身の一閃を打ち込み飛び抜けた宵の後ろで、裂けた首から溶岩が爆ぜ噴いた。
――おお、羅刹の剣、帝竜に通ず。
大成功
🔵🔵🔵
ロカジ・ミナイ
あぁ?何だいここは…腹?へぇ!でーっけぇ敵さんだこと!
テメェの小ささに笑いがこみ上げてくるね!
圧倒的ってのは
弱者に腹を括らせる格好の要素なのよ
でかいもんには繊細さで勝負
第六感も駆使して軌道を読み
自慢の逃げ足であっちこっちに飛び回り
鱗なんかありゃいい盾になるけどね
当たったら当たったで
流れた血は妖刀の餌となり雷をよぶ
天の恵みてぇなそいつらは、地に怒り炎を往なし
天罰
雷のことを、いつか誰かがそう呼んだように
ちっぽけな僕がよんだ雷なんてちっぽけかもしれないけどね
虫に刺されて死ぬ哺乳類がいるように
狐に突かれて悶える竜もいるだろうよ
なんせ僕はツボに詳しい
ヘケケ
一閃喰らわせるためなら手足の一、二本くれてやらぁ
●天罰覿面
「なんだいこりゃあ、腹? へぇ――でーっけぇ敵さんだこと! テメェの小ささに笑いがこみ上げてくるね!」
“門”から飛び出すなり、剽げた口調で口にしたのはロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)。毛先につれて赤くグラデーションする髪が風に嬲られ踊る。
着地まで数秒。相対距離五十メートル余り。巨大なる竜は、ロカジが飛び出したことを意に介してもいない。羽虫が一匹増えた程度のことを、あの圧倒的な存在が意識するはずもない。
――そうだろうさ。だが、その方が僕にゃ好都合だね。夏の夜の蚊を殺すみたいに、躍起になられるより大分いい。
ロカジは数十メートルの高さを落ち、危なげなくしなやかに着地した。縮めた膝をすぐさま蹴り伸ばし、着地と同時に疾駆。獣めいた疾走体勢を取り、窈窕たる抜き身を抜刀する。
「ねぇ知ってるかい、窮鼠猫を噛むって言うだろ。圧倒的ってのは、弱者に腹を括らせる格好の要素なのよ。お陰さんで僕の肚も決まった。始めようじゃないかお祭りをさ。派手な花火が得意なんだろ?」
長広舌でつらつら並べ、妖刀閃かしにんまり笑う薬屋目掛け、竜の怒りが降り注ぐ。
爆轟。今やガイオウガに死角なし、猟兵らがつけた傷から溢れた溶岩が砲塔の形をなし、その尖端に火口としての赤が点る。傷を負った部分を『死角』と認識し、そこに固定の砲塔を生やすという、単純で力任せで即応的な進化だが、これほどの存在量を持つ帝竜がそれを成すとなれば、脅威以外の何物でもない。
再びガイオウガの全身の火口より、無数の火炎弾が火を噴いた。逃げ足と第六感にかけては少しばかり自信のあるロカジだったが、――
「はっは! 派手好きそうだと知っちゃあいたけど、こいつは――ちっとばかり派手すぎやしないかい?」
まさか初手より逃げ場を失うとは思わなんだ。
降り注ぐ火炎弾の嵐はたった一瞬で数千。一つの火口から数十という火礫が吐き出され、周囲の空間を猛撃する。狙いなどつける必要もない。ロカジは己目掛け降り落ちる流星雨めいた火礫の嵐を、駆けながら迎撃。一二三、四五六と受け流し軌道を逸らして避けたまではいい、七八辺りで丁寧に受けきれなくなり、九、一〇でついに刃を立て受けた。
張り詰めた手応えにロカジが舌打ちを打つ前に、受けた火礫が罅割れ手元で爆発する。間近で巻き起こる爆炎、衝撃波、飛礫がロカジの身体を焼き、骨を砕き、身体を穿った。転げる身体に、更に数発が直撃。錐揉みに吹っ飛びながらも、踵で地の熱砂を捉えるなり、ロカジは再び走り出す。無防備に足を止めては死ぬのみ。
降る火の雨の中を駆け抜ける。被害状況検分、全身の傷口からダラダラ血が出てる。左腕の骨と、肋骨が何本か持って行かれた。今も血肉を焼くような熱石礫が身体に幾つか食い込んでいる。ああ、珠肌が焼け爛れちまったじゃあないか!
「鱗がどっかに落ちてりゃあ……盾にでもしてやろうと思ったんだがねぇ」
減らず口一つ。僥倖には見舞われぬ。戦場にはままあること。端から幸運に頼ろうと思っているわけでもない。ロカジは腕からだらだらと流れ落ちる血を、相棒たる妖刀にたらふく呑ませ、手放さぬよう下げ緒を右手に巻き付けた。
刃帯電し、紫電鉄火めいて爆ぜる!!
バチ
「やり過ぎると天罰が当たるんだって知らない顔だ。母ちゃんから教わらなかったかい?」
――さあて、本気の出し処だ。
ロカジは歌うように言いながら、爆ぜるように駆ける。ガイオウガの全身の火口が再び熱高まり燃える。第二射が来る――その一瞬前、ガイオウガの足元二十メートル地点まで寄せたロカジが、渾身の力で突きを繰り出した。
――雷槍、宙を裂く。ロカジの刀から迸った雷が、二十メートルの距離をジグザグに飛んだ。ガイオウガの左膝横から突き刺さり、神経に触れる。神経は当然全身に繋がるネットワークだ。ガイオウガの全身が軋み音と共に強ばる。ダメージとしては僅少、復帰まで数秒のスタン。だがそれで充分。
「ちっぽけな僕が喚んだ雷なんてちっぽけかもしれないけどね。虫に刺されて死ぬ哺乳類がいるように、狐に突かれて悶える竜もいるだろうよ。――なぁんせ僕はツボに詳しい」
ヘケケ、と悪だくみの顔をして笑うロカジは、その声さえも置き去りに走った。
抜き身に這わせた雷引き摺り、ロカジは大山めいたガイオウガの身体を駆け上り――刀突き立て、引き走る!! 固い鱗と肉が裂け、傷口より溶岩飛沫く! 天を揺るがす竜の苦鳴!
叫びを聞きつつにやりと笑った薬屋が、刃を引いて駆け抜ける。巨竜の腹を掻っ捌くように、左から右、一直線に。
成功
🔵🔵🔴
ランツェレト・ドゥトロワ
◎
戦場に立つ
俺は堕ちた騎士であるとしても
王や、友
そして妹の愛したこの世界を
彼らの大切な人々を
──護りたい!
▼戦闘
奴の先制攻撃に備え抜剣
真一文字に構え、湖の妖精の加護を借りたオーラ防御を展開、武器受けする
膝は付かぬ
目は逸らさない
一瞬の隙をついて、ユーベルコードを発動
凄まじい反動さえ跳ね返して
俺は
──剣を、振るう!
_
…然し
死を宣告する様攻撃が降り注ぐ
(「…!」)
回避は既に間に合わず
覚悟したその時
展開した覚えのないオーラが俺を護る様障壁となった
それは妖精の加護ではない
──俺がかつてその命を奪った、友の纏う、眩き太陽の炎によく似て
竜の前ではそれでも無意味
けれどもその彩は、ひどく鮮烈に心を灼いた
●友よ、今何を思う
帝竜ガイオウガはその全身の火口より、引っ切り無しに全方位へと無差別攻撃を撒き散らす。此度火口から噴き出すのは、粘度の低い――それは恐るべき高温であるということだ――溶岩流であった。
溶岩流は吐出の圧力で飛び散り、空中である程度冷え、――ある程度の形持つ赤熱した岩として周囲に飛び散る。
想像してみるといい。四方八方に水を撒き散らす、巨大な散水機の前に立っていると。――そしてその散水機から飛び出すのは溶岩。降り注ぐ飛沫、否、溶岩の量、勢い共に無尽蔵。数人の猟兵が逃げ場を失い、燃え墜ち来る溶岩飛沫の中に消えていく。
無事かどうかなど、気にする余裕はない。ただ、己を守ることだけで精一杯だ。
だが、必ず――必ず、この果てに勝利を掴んでやると、全ての猟兵の目が燃えている。
そしてここにもまた一対の眼。ニミュエ・ブルーの瞳が、猛火の中に煌めいた。
「おお、おっ!!」
刀身を左手で支え、右手で柄を持ち、刀身で真一文字を描くように絶劍『アロンダイト』を突き出すのは、ランツェレト・ドゥトロワ(湖の・f22358)。湖の妖精より加護を賜り、力を揮う湖の騎士。
熱砂赤岩を踏みしめ、立つ。
――俺は堕ちた騎士であるとしても。王や、友、そして妹の愛したこの世界を。彼らの大切な人々を──護りたい!
かつて大事な人を守れずに失った。それを『あんな思いはもうしたくない』などと、ただの弱音に換えて吐き出すつもりはない。あれは死のその瞬間まで己が背負うべき宿業にして、忘れてはならぬ罪科と悔恨だ。
罪は、繰り返してはならぬもの。
同じ過ちを、罪を、二度とは積まぬ。
「無窮の湖光よ、我が身を守り給え!!」
捧げ持ったアロンダイトを中心として、ランツェレトの周囲に蒼白の光が球状領域を描き、押し寄せる溶岩飛沫を撥ね除ける! 湖の加護持つ聖剣の力により障壁を発生させたのだ。
しかし、ずんと重い手応えがあった。障壁が焼け削れ、侵食される。それを埋めるためにランツェレトがその身に宿す魔力、気力、活力とでも言うべきものが凄まじい速度で削れていく。身体が重くなる。
「ッグ、ううっ……!」
ランツェレトは頽れそうになるも、しかし膝は付かず、目も逸らさない。ここで倒れれば、一瞬と持たずに溶岩飛沫の下で灰となって尽きるのみだ。
耐える、耐える耐える耐える。永遠にも感じる長い時間、しかし実際にはただの十数秒。溶岩飛沫の一瞬の切れ目を目掛け、障壁を解除し駆け出す。
「吠え立てろ、絶劍……ッ!?」
一瞬で間を詰め、斬撃を放つ。その筈だった。しかし、溶岩飛沫が尽きたかに見えたその次の瞬間には火炎弾での砲撃が再開された。
あれほどの規模の攻撃を、休まず、絶え間なく連射出来るなど――まさに化物。ランツェレトの判断を誰が拙速と責められようか。
降り注ぐ攻撃は死の宣告に似ていた。敵目掛け解放するはずだった聖剣の一撃を防御に回し、魔力光放つ斬撃で軌道上の火炎弾を全て爆砕する。――しかし、しかしだ。それをして尚後続が降り注ぐ。何千発の火炎弾か、数えることも能わない。
降り注いだ火炎弾がランツェレトの身体を、着弾の威力、爆ぜる衝撃波、超高温の爆炎で貫いた。決して軽くはないはずの男の身体が木っ端のように飛ぶ。一瞬で着弾した火炎弾の数は十七。全身から迸る血が噴き出した瞬間から熱に湧く。身体の中で砕けた骨がジャリつく。ランツェレトの口から冗談めいた量の血が迸った。踵で熱砂を削り着地する。
――ああ、あの凄まじい竜を、如何すれば斃せるのだ。既に防御障壁を展開する力は残っていない。ランツェレトの脳裏を、死という一語が過ぎる。
救うと決めたのに。守ると決めたのに。ここで負ければ、あの帝竜はきっと何かを蹂躙する。誰かを殺す!
ランツェレトの嵐のような内情を嘲笑うように、帝竜は再三の火炎弾を吐出した。今一度炎の雨が降る。回避をしようにも、先程までのようには動けぬ。彼が、覚悟を決めたその時だ。
――誰かの声が――否。かつて手に掛けた、友の声がした気がした。
それは幻聴だったやも知れぬ。ランツェレトが竜の炎を剣で受けたために発露しただけの、ただの偶然だったのやも知れぬ。だが現実として、ランツェレトの周囲に余りに眩い、太陽めいた光の障壁が現れた。かつて友が纏った、蒼天に座す、世界を照らす光。
――ランツェレトは心の灼ける音を聞いた気がした。鮮烈すぎる光。もう届かざる者。友よ。守ってくれたのか。この俺を。余りに眩しくて、泪がにじみかける。
ああ。でも、
もし君がこの一瞬をくれたのだとしたら、俺はそれに応えよう。
太陽の障壁がランツェレトに注ぐ火炎弾を防ぎ、薄れていく。それが完全に消えてしまうその一瞬前に――禍焔の嵐の向こう側にいる邪竜目掛け、ランツェレトは剣を高く掲げた。
それは無窮なる湖光。加護を得し湖の騎士のみが振るえる絶劍!
「疾れ、吠え立てろ、アロンダイト!! ――“太陽、失墜”ッ!!」
高く掲げた剣の魔力を限界集束、只一陣の剣閃として放つ!
放たれた湖光の煌めきが、ガイオウガの右腿を大きく抉り立て――
おお、今まさに、あの竜の巨体が蹈鞴を踏む!!
成功
🔵🔵🔴
ニィエン・バハムート
◎
・先制対策
【空中浮遊】から翼を使用して【空中戦】状態に。更に常に身体中から全力で【衝撃波】を放ち移動に利用し続ける、体への負担を無視した【限界突破】空中機動で回避専念。当たりそうな攻撃は衝撃波で溶岩流を弾く、高熱を鮫魔術による水【属性攻撃】で少しでも軽減、それでも無理な分は自分を【鼓舞】して【激痛耐性】…痩せ我慢。大きなダメージを受けるでしょうが、できる限りのことは!
・反撃
ガルシェン、ベルセルクドラゴンにも打ち勝った【怪力】どころではない膂力で敵を【トンネル堀り】するように【部位破壊】!溶岩流への対処は先制と同様。
彼らを倒して来た私たちが!勝てない相手ではないんですのよ!
『帝竜』ガイオウガ!
●竜王絶翔
「畳みかけ時ですわねッ……!! 征きますわよ!!」
空中、“門”から飛び出した一人の猟兵が、よろめいたガイオウガを視界に捉えて吼えた。
緑の眼、紫の髪に透き通るような美しい白肌。世界魚……おっともとい、『竜王』バハムートを奉ずる一族の一人。ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)、推参である!
ガイオウガは一瞬よろめくも、二本の脚で再び地を踏みしめ、負った傷から噴き出した溶岩により火口を成し、そこから今一度散弾めいた溶岩飛沫を全方位目掛け放つ!
「喰らいませんわ!」
ニィエンは即座に背の翼で羽撃き、身体より衝撃波を発露することで溶岩飛沫を寄せ付けぬばかりか、その爆ぜる衝撃波を移動に用いてジグザグに方向転換しながらガイオウガへと迫る。飛沫は質量としてはさして大きくない。鮫魔術により水属性を身に纏い、溶岩流への対処を確実に整えてきたニィエンの行動は、まさに大物殺しの模範とでも言うべき動きだった。
――今この瞬間までは。
「あら、あら、えっ……」
ニィエンが唖然とした風な声を上げた刹那、言ってみれば腕もない芋虫めいたフォルムをしていたはずのガイオウガに、
――両腕が生えた。
いや。違う。アレは両腕ではなく、それを摸して溶岩流で作り上げた偽肢だ。そんなことは解っている。解っているのだが、
「っそ、そんなのアリですの――っ!?」
悲鳴じみた叫びを上げたニィエン目掛け、ガイオウガが右腕を振るった。
溶岩は元々流動体。腕は骨が入っていないように、撓るように動き、軌道が恐ろしいほど読みづらい。
「っく、うっ!」
ニィエンとて元々対処をしっかりと考え様々な攻撃を想定していた。それ故に、その予測不可能だった攻撃にもギリギリのところで対処する。衝撃波による限界を超えた無理矢理な方向転換、超高速での移動。無茶苦茶な機動で、内臓がひっくり返る。圧し潰された臓器が圧壊しかけ、口の中に血の味が広がる。
――右腕、左腕の順番で力任せのコンビネーションが来る。ニィエンは力の限り、足下に衝撃波を放ち、それを踏んで飛び駆けた。横薙ぎの右腕。振り下ろしの左腕。潜り、躱し、懐へ飛び込む――
その刹那。避けたはずのガイオウガの両腕から、針めいて溶岩が伸びた。
ガイオウガからすれば爪楊枝ほどの太さ。しかしニィエンからすれば、人の腕ほどもある炎の柱。
「――は、」
溶岩は不定形。如何様にでもその形を変ずる。
狙い定めたかのようなフレイム・ピラーが伸び、四方よりニィエンの身体を貫いた。
「っあ、ああああああああああああああああああアッ
!!!!」
口から絶叫が迸る。余りの痛みに声を堪えることすらままならぬ。しかし貫通は防いだ。鮫魔術を応用し水属性を纏っていなければ貫通されていただろう。血が沸騰する。全身に熱が回る。噴き出たそばから血が焼け焦げる!!
何本刺さった? 右脇腹、左肩甲骨付近、右太腿、右翼は貫かれ焼損、嗚呼もう数えている時間が惜しい。ニィエンは奥歯が砕けるほどに食い締めて、血を吐くほどに叫ぶ。
「ガルシェンにも……ベルセルクドラゴンにも……私たちは、負けませんでしたのよ。――ここで……こんなところで……終わりになど、するものですかっ!!」
気丈に叫ぶ。嗚呼、その片翼が灼け墜ちても。身体が抉れ、焦げた血が煙を上げても。
ニィエン・バハムートは――気高き竜王は決して折れぬ!!
ニィエンは水属性を最大出力に解放、瞬刻、身体に突き刺さった溶岩流の楔を侵食して凝固! 激痛堪えて、足下に衝撃波を発した。凝固した溶岩楔が折れ飛び散り、血が飛沫き舞うその中を竜王が飛ぶ!
「彼らを倒してきた私たちが!! あなたに勝てない道理などありませんわ!! 滅びなさい、帝竜、ガイオウガ――ッ!!!」
右拳に水属性と、世界魚『バハムート』の持つ膂力の一端を集束する。更に二つの衝撃波を踏み、ニィエンは只一発の砲弾かのようにガイオウガの胸先に飛び込んだ。
「はああああああああああああああっ!!!」
『ッガアアアアアアアアアアアアアアアアァアアァァッ!!』
帝竜と竜王の咆哮が重なった刹那、ニィエンの拳がガイオウガの胸に突き刺さった。
それは奇しくも、複数の猟兵が攻撃を重ねた胸郭の陥没を――今まさに、そこを穿った全ての猟兵の想いとともに貫いたのだ。
溶岩が、まるで鮮血のように噴き出した。余りの噴圧にニィエンは熱傷を負いつつ凄まじい速度で吹き飛ばされる。
――だが墜ちながら彼女は見た。
己の一撃が。蹌々たる猟兵達の想いの結晶が。
あの巨竜を一歩、二歩と後退らせたところを。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「忌々しい太陽とどっちが熱いかな?」
まあ、これぐらいを喰らい尽くせないと太陽には勝てないか。
敵さんへの最短ルートを見極め一気に駆け抜ける。
敵さんからの炎は暴食外套に喰らわせつつ、悪魔の見えざる手も借りて自身の手足が燃え尽きても良いから敵さんの懐へ。
敵さんに近づけたらUCで吸血鬼化。火山並みの生命力を食らって自身の強化と再生に充てる。
僕は燃えるだろうけど、再生し続けて殴り続ければ敵さんも死ぬでしょ。
「ありとあらゆる生命がある限り、生き続けるのが僕。生命の簒奪者である僕の悪あがきに付き合ってもらうよ」
●赫熱を呑む
「星の熱……ね。忌々しい太陽とどっちが熱いかな?」
地に降り立ち、肩を竦めて長身の男が呟いた。陽の下さえ歩くダンピール、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)である。
「まあ、これぐらい喰らい尽くせなきゃ、太陽には勝てないか」
空に光るあの恒星とは違う。この竜は生きている。ならば殺せる、如何に巨大であろうとも、強大であろうとも。
莉亜は熱砂蹴りつけ走り出す。上空で竜の吼声一つ、敵の身体にある無数の火口より迸り出た炎が、無数の焔竜の形を取って、ミサイルめいて降り注ぐ。
莉亜が繰り出される攻撃に取った対策はといえば到ってシンプル。その身に纏ったあらゆるモノを喰らう外套――『暴食外套』と、己を守る悪魔の両腕、『悪魔の見えざる手』による最低限の防御を張っての、最短ルートの強行突破であった。
禍焔の竜が幾体も殺到する。外套が自動的に動き、目も口もない顎門を形取って幾つも伸びた。暴食外套が食らいつけば焔竜はまるで爆雷めいて爆ぜ、周囲に爆風と爆炎を撒き散らす。
「ハッ、タダじゃ消えてくれないか……!」
爆風に嬲られ爆炎に焼かれ、転げつつも、莉亜はすぐさま爪先で地面を捉え、再び駆け出す。足を止めればそれこそ終わりだ。降り注ぐガイオウガの写し身、焔竜共の眼はこちらをはっきりと捉えている!
距離三十。攻撃に移るには間近に近付かねばならない。莉亜は悪魔の両腕を限界まで伸ばし、爆風に巻き込まれぬ位置から焔竜を屠り、走る。ガイオウガに近づけば近づくほど、焔竜の攻勢は熾烈となる!
一息で、十五体の焔竜が襲いかかった。五つ目までは悪魔の腕で薙いだが、漏れた十体が至近に飛び来る。覚悟を決めて暴食外套で残りを受けんとするが、それで潰せたのも七体まで。間近での焔竜爆発に巻き込まれ、骨が軋み、全身が灼ける。
「ぐ、ッ
……!!」
残り三。襲いかかった焔竜を止める術なし。悪魔の腕を引き戻す前に、炎の牙が、守ろうと上げた莉亜の手脚のそこかしこにめり込んだ。食いついてきた焔竜の牙のなんと熱いことか。咬まれた部分から血が沸騰するような感覚。一瞬で全身に熱が回る。莉亜は歯を食い縛り、吐き捨てる。
「いいさ、……手脚の二・三本が燃え尽きても……僕の本命はこっちだからね」
ゆらりと、莉亜の身体から赤きオーラが立ち上る。にいと笑った口元に牙が覗いた。莉亜は咬まれたまま、手脚裂けるのにも構わずに無造作に踏み出した。裂傷を無視、無事な右手に『極無』を抜剣、今なお後ろ髪引くように手脚に食いつく焔竜を一閃して断つ。
そんなことをすれば、当然焔竜は爆ぜる。今までで一等近くで。骨が砕けるほどの衝撃波と、外套が炭化し皮膚が変色するほどの炎熱が莉亜を襲う。しかしその衝撃波を受け、莉亜は前へ飛んだ焦げて軋む脚で地を蹴る。――食いついた焔竜達を真逆、推進剤のように用いたのだ。
満身創痍の状態で、莉亜はそれでも駆けた。ガイオウガの巨体、その足元に迫る。最後の一歩。悪魔の見えざる手を使い、自身の身体をカタパルトめいて飛ばす。十メートル近くをそれで埋め、ついに莉亜はガイオウガの足元に辿り着く。
爪を蹴り登り、人で言うならくるぶしの辺りに達して、莉亜は竜のくるぶし目掛け不可視の剣、極無を突き立てた。同時にその吸血鬼として本性を露わとする。
――解放。『不死者の血統』!!
「ッ、っ……あああああああああああああああっ!!!」
不死者の血統とは、他者の生命力を奪うユーベルコード。簒奪のオーラで身を包み、己が傷を癒やして敵の生命力を奪い取る。そして吸い上げた力を我が物とし、傷を癒やし、戦闘力を増強する――という業だ。
しかし此度の敵は規模が大きすぎた。星の熱を秘める強大なる竜から流れ込むエネルギーは、一人の猟兵が受け容れるには途方もなく巨大。莉亜の追った負傷は一瞬で修復され、快癒を通り越して過回復を引き起こす。流れ込むエネルギーの巨大さに、莉亜の身体が燃え始める。燃えて失われる体組織を、溢れるエネルギーで癒やす――莉亜はまさに、熱抵抗めいて敵のエネルギーを空費させる機構となる。
『ガアアァア、アアアァッ!!』
ガイオウガの怒りの声。禍焔竜が莉亜目掛けて今一度殺到する。動けぬ莉亜に直撃する禍焔竜、その数五。極無が抜け、爆炎と衝撃波に捲かれて十数メートルを飛ぶ莉亜だが――空中でその身をひねり、しなやかに着地する。今の一撃で折れた骨を、傷を、過剰供給された生命力で癒やす。
「――その様子だと効いたらしいね。なら、殺せるな。ありとあらゆる生命がある限り、生き続けるのが僕。生命の簒奪者である、僕の悪あがきに付き合ってもらうよ」
莉亜は恐るべき竜を前に、しかし最早一歩も退かぬ。
身体が灼けようと、力を奪い取り癒やせばよい。簒奪者は次の接近の契機を計り、再び走り出す!
成功
🔵🔵🔴
叢雲・源次
※負傷度合いお任せ
(アナライザー、インターセプターで常に攻撃に対して警戒、火山弾を見切り躱し、炎の獣は対神太刀で斬る。しかしこのままでは押し切られる…帝竜をやらなければ、と距離を取り)
あれほどの熱量…体躯…やれるのか、俺に…
いいや…思い出せ叢雲源次。これまでの道程を…戦いを。
魔を滅し、鋼を斬り、神を殺した。
(心臓の地獄から対神太刀へエネルギーを回せるだけ回す)
>inferno_cylinder over_drive
ならば、竜を屠れぬ道理はない…!!
>RDY MAXIMUM_BURST
此処が貴様の地獄と知れ…!!
(プラズマ化した蒼炎が光条となり、その巨体を消し飛ばさんと太刀から放たれる)
●屠龍一閃
頭頂までの距離、地上一〇〇メートル超に及ぶ。圧倒的な巨体が、猟兵達に砲撃を繰り返す。帝竜ガイオウガの前に、猟兵とは何と矮小なることだろう。
火炎弾を見切りジグザグに走り躱し、着弾した火炎弾の爆炎から出ずる炎の獣たちを、片っ端から輝く対神太刀で斬り捨てる。しかしその都度、間近で爆ぜる炎の獣の爆炎を浴びる。衝撃波と炎熱が、男の――叢雲・源次(DEAD SET・f14403)の身体を焼き、骨を軋ませた。煤ける程度で済めばよかったが、あの巨竜が手心を加えるわけもない。耐衝撃ベストの生地が劣化しだしている。攻勢防壁は機能しなくなって久しい。アナライザーとインターセプターをフルに活用することで、ここまで辛うじて戦ってきたが、インターセプターが過酷な環境での演算過多により熱限界を迎えダウン。舌打ち混じりに飛び退く源次に、尚も火炎弾が嵐の如く降り注いだ。
彼とて、己のうちより溢れる地獄の炎を操る凄まじき能力者だ。しかしその牙でさえ、あの竜の王からすればか細く小さいもの。呼吸する如くガイオウガが放つ火炎弾さえ、策を講じ必死に動かねば凌げはしない。
天より降り注ぐ、まるで流星雨めいた火礫の群。源次は対神太刀『黒ノ混沌』を霞に構え、墜ち来る火炎弾を斬り払う。初弾はどうにか斬った。着弾と同時に発生するはずの爆炎と衝撃波を――黒の混沌の特質、エネルギー蓄積により吸い上げ未然に防ぐ。しかしそれもいつまでも続けるわけにはいかない。二度、三度も同じ事をすれば黒の混沌に溜めおけるエネルギー量は限界を迎える。振り被った対神太刀に集積したエネルギーを一気に放出、爆炎剣として降り注ぐ火礫をまとめて薙ぐが――
「っぐ、ああぁぁぁあぁっ
……!!」
間近に来たものをまとめて切れば、それ即ち爆薬庫に火を放つようなもの。今度こそ炸裂した火炎弾が燃える石礫を散弾めいて撒き散らす。一発二発ではない、源次が一息に炎剣に巻き込んだ数は百を超える。それが一斉に炸裂し、源次目掛け爆炎と超高速の石礫、そして衝撃波を撒き散らしたのだ。
源次の身体は木っ端のように飛んだ。一瞬意識が途切れるほどの爆圧であった。吹き飛び背中が地面にバウンド、その衝撃で息が詰まり覚醒する。下肢をぶんと上に振りバックフリップ。
全身、被弾していない箇所はほぼない。貫通した傷さえある。体内に停弾した石礫は今なお燃えるように熱く、傷口でジュウジュウと燻る音を立てている。骨は……幸運にも、まだ辛うじて折れていない。ならば。
納刀。ざ、と源次は腰を落とす。距離五十。すぐに次の砲撃が来る。
――やれるのか。俺に。
源次は自問する。今からしようとしている無茶は正気の沙汰ではない。いや、確かにこれに類する無茶を、俺はアポカリプスヘルの荒野でもしてのけた。――だが、あのときは隣に頼れる友がいただろう。俺一人で出来るのか。
――いいや。やるのだ。俺が。
思い出せ、叢雲源次。これまで走ってきた道を。戦いを。
無茶などアレ一度きりではない。
魔を滅し、鋼を斬り、神を殺したこの剣に。
竜を屠れぬ道理があるものか!!
インフェルノシリンダー ・ オーヴァードライブ
「炎 獄 機 関 、神 殺 絶 刀
……!!」
アナライザーの内側に流れるコンソールが、答えるように最大出力の表示を走らせる。
心臓から込み上げる地獄の蒼炎、その全てを対神太刀に突っ込む。他の存在からではない、他でもない源次自身の炎を、圧縮し、増幅し、刀身に込める。
その結果対神太刀は真っ青に、まるでガスバーナーめいた蒼き炎を纏って輝く。否、その温度は既に常識の埒外か。刀身を覆う炎こそ蒼、しかし芯となる対神太刀の温度は今までよりも遙かに高い! 白蒼に煌めく光がその証座である!
レディ・マキシマム・バースト
「 此処が貴様の地獄と知れ――!!」
源次は最高速で地を蹴った。突っ込んでくる雑魚は無視だ。襲いかかる炎の獣達が、軌道を予測して道を塞いでくる、その反応速度よりも尚早く駆ける。ガイオウガを潰さねば、雑魚共をいくら屠ろうが元の木阿弥だ。
――この一刀、傲慢なあの巨竜に必ずや叩き込む!!
炎の獣たちが体当たり気味に源次に突っ込み爆ぜる。凄まじい爆炎が巻き起こる。だが吹き上がった火柱の横っ腹を突き破り源次が飛び出す!! その様はまるで弾丸だ。確たる意思の下に、竜殺しのために吐き出された銀の弾丸だ!!
地面を軋むほど強く踏み、事実クレーターを作りながら源次は跳んだ。跳躍高八〇メートル。身体を捲き引いた対神太刀のその尖端より、
「帝竜ガイオウガ!! 貴様を斬るッ
!!!!」
――プラズマ化した蒼炎が迸る!!
ガイオウガが反応する前に源次が振り下ろした蒼きプラズマの一閃が、まるで天裂く大刀のように唸り、ガイオウガの巨体を袈裟懸けにざっくりと断った。――傷口より迸る溶岩流と、鼓膜が破れるほどの絶叫。神殺しの太刀が、今まさに、竜の中の竜たる帝竜を断ち斬ったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
如何な巨竜であろうが斃さねばならん
ならば為すべき事なぞ決まっている
――1歩たりとも引かん
第六感を集中し、捉え得る総ての情報を以って攻撃の方向を見極め
衝撃波のカウンターで威力を削ぎ、或いは軌道を逸らし
致命に至る場所にはオーラ防御を重ねて、極力見切り躱す
如何な損傷を受け様と激痛耐性にて捻じ伏せ、行動への支障は出さない
――壱伐覇壊、躱させはせん
其れ迄の攻撃時の動き、受けている損傷等からの戦闘知識に拠る読みを重ね
怪力加えた鎧砕きの斬撃で蹂躙してくれよう
お前が焔の竜であるならば尚の事、負ける訳にはいかん
嘗て私の総てを奪ったのは焔、しかし我が身の従えるも又炎
膝を付く事なぞ、此の身が砕かれ様ともして堪るか
ヒト
●竜が猟兵を識る刻
神殺絶刀の一撃がガイオウガの身体を袈裟懸けに断った瞬間、次なる刃の主が疾る。この一瞬を狙っていた、と言ってもいい。
露を掃う清廉たる刃『秋水』を抜き身に提げて疾るのは、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)。敵は今、確実にダメージを負っている。続けざまに強力な攻撃が叩き込まれ、体勢が崩れ、間断なく続いていた砲撃が停止した。またとない好機だ。
ガイオウガは怒りの余りに凄まじい吼声で吼え、肩口より噴き出たマグマで擬似的に前肢を創り出す。垓王牙溶岩流の応用、或いは進化か。
――関係ない。今更姿を一つ二つ変えようが興味はない。すべきことも変わらない。
いかなる巨竜であろうと、それが骸の海より這いだした、殺すべき存在ならば、初めから為すべき事など決まっている。どれだけ恐ろしかろうと。どれだけ強かろうと。嵯泉の右手に秋水があり、その心が折れず真っ直ぐに在る限り――
「一歩たりとも退かん」
嵯泉は撓めた膝を爆発的に伸ばし、凄まじい速度で駆けた。第六感を、今までの戦闘経験から来る予測をフル動員し、竜の次の行動を予測する。
火口が赤く光る。嵯泉が刀の握りを改める間に、火口から溶岩の飛沫が散った。撒き散らされる溶岩は空中で赤熱した溶岩弾となり雨霰と降り注ぐ。刀で受ければ刃が鈍る。
ならばと嵯泉、刃に衝撃波を纏わせ、刃風走らせ宙にて断つ。刀が宙に閃を描くたび溶岩が飛び散る! 当たらぬ溶岩に業を煮やしたように、ガイオウガが腕を振り下ろした。
ど、っずううううんっ!! 凄まじい音を立てて地面が爆ぜ、ガイオウガの溶岩肢が地面を焼き焦がし溶かす。当然大振りのその一撃など嵯泉が受けるわけもない。転がるようにして回避している。しかし、
「むっ
……!!」
次の瞬間、焼かれぬよう数メートルを空けて回避した嵯泉目掛け襲うモノがあった。――ガイオウガの溶岩脚から凄まじい速度で飛び出した、溶岩の棘とでも言うべき造形物である。垓王牙溶岩流は変幻自在。それにより作られた前肢もまた然り!!
嵯泉は衝撃波纏う秋水にて、不意打ちで放たれた溶岩棘の七つを打ち落とす。しかし残りは止められぬ。両脚が、右脇腹が、左肩口が、左胸が――否、左胸だけは白いオーラを障壁めいて集中させて防いだが――立て続けに射貫かれ、肉の焼ける音と焦げた匂いを立ち上らせる。
「ぐッ、ううぅ……おおおッ!!」
しかし何たる精神力か。痛みには慣れている。激痛をねじ伏せ、嵯泉は刀を尚も振り、自身を貫いた溶岩の棘――棘と言っても指を三本束ねたほどはある――を太刀風纏わせ断ち切った。突き立った溶岩棘を抜く間さえ今はない。肉を焦がす音を誰より近くで聞きながら、しかし嵯泉は止まらぬ。
「――お前が焔の竜であるならば尚の事、負ける訳にはいかん」
踏み出す。
ここまで観察した限り、ガイオウガの動き自体は鈍い。対する強みは、砲撃を初めとする範囲攻撃が凄まじい威力であり、攻撃を命中させても一切動じぬタフネスを見せているということ。
距離二〇。もうほぼ敵の足元だ。
・・・
ここからならば、――狙える。
「嘗て私の総てを奪ったのは焔、しかし我が身の従えるも又炎――膝を付く事なぞ、此の身が砕かれ様ともして堪るか。――その鈍重な身で躱せるなどと思い上がるなよ。見るがいい――“壱伐覇壊”ッ!!」
何の変哲もない刀に、嵯泉はその氣を込める。特殊なのは武器ではなく遣い手だ。嵯泉が念じその刃を振るえば、距離を問わずに斬撃が『飛ぶ』。知らぬ相手からすれば初見殺し、この竜相手とてそれは同じ!
ユーベルコード、壱伐覇壊。――再び砲撃が盛んに始まるその前に。懐に潜り込んだこの一瞬を決して逃さない。嵯泉は全身に溶岩棘を受けたその後とは思えぬほどの速度で刀を走らせた。一呼吸の間に三十二の剣閃が炎熱滾る山間に光る。
決して躱させぬと放たれた飛斬撃の群が、視認さえ許さずに瞬く間に、ガイオウガの胸元に炸裂した。そこは幾度も猟兵達の攻撃が炸裂し、今や瘡蓋のように盛り上がった凝固溶岩で歪に変形している部分だ。
嵯泉は見ていた。幾度もそこに、猟兵達が渾身の一撃を叩き込むのを。己が牙もその列に加えるべしと、虎視眈々と狙っていたのだ。
どこでもいいから単純に叩き込めばよい、などという雑な考えならこの距離まで潜り込まぬ。危険を冒そうとも――こうすることが次の猟兵に繋がる。そう信じたのだ。
彼の考えを裏付けるように、殺到した飛斬撃がガイオウガの胸を穿ち、今一度噴水めいて溶岩流を飛沫かせる。ガイオウガは、今や右しかない眼を爛々と煌めかせ、真下を睨み付けた。個体への認識。眼に燃える増悪。
「――ようやく気付いたか。お前を取り囲んでいるのは虫などではない。――お前を殺す、兵の群だ」
視線を一身に浴び、嵯泉は刃を構え直いた。口を開いた巨竜の口より迸る、散弾砲めいた火礫の嵐を真っ向真っ直ぐに迎え撃つ――!!
成功
🔵🔵🔴
三咲・織愛
◎
ムーくん(f09868)と
熱い、ですね
炎ばかりの熱さではない
威圧感と言えばいいでしょうか
私、的が大きいのは嫌いではないですよ
業火に灼かれようとノクティスの煌きは劣りません
行きましょうか、ムーくん
炎繰された竜は各個撃破を目指します
退いて防戦一方になるよりは、前に出て槍を突き立てる!
炎は余裕があれば回避、もしくは地形利用で抉った岩を盾にするなど対処します
攻>守で行動を
敵の攻撃予備動作を認めたら即座に討ちます
攻め落とすことによって、彼への攻撃の手も緩ませてみせますから!
攻め時は逃さず、【覚悟】を決めましょう
合わせます、ムーくん!
無茶をするのはお互い様ですけど……
もうっ、起きたらお説教しますからね
ムルヘルベル・アーキロギア
◎
同行:織愛/f01585
獣の王、大地そのもの……なんたる凶悪さよ
突破口があるとすればあの竜の炎であろう
あれはあくまで「本体に似た」炎でしかない
つまり戦力においては本体に劣るはず
希望的観測だが、命を賭けるには十分だ
『魔力結晶・胡蝶装』を活用しワガハイも前へ
これまでの幹部戦では、常に片方だけが無茶をしてきた
しかし今は肩を並べ戦う時である
ヒットアンドアウェイを保ちながら敵の動きを〈情報収集〉
竜炎が減れば本体が突出するだろう
あるいは此方が追い詰められるか……そこで【蔵書票・離落急昇】だ
過剰代謝によって魔力を一時的に増強、竜炎を蹴散らす!
織愛、合わせよ!
これが戦いを経てきた、我らの力であるッ!!
●ジュエルバレット・シューティングスター
遊色の賢者と星の娘が、巨大なる竜――ガイオウガを見上げている。
一〇〇メートルを超えるサイズ。それは、三〇階超の高層建築を尚上回る巨大さであることを意味する。ビルディングとは異なり、横幅もまた巨大だ。足先の爪ひとつだけで、成人男性を遙かに凌駕する質量と体積がある。
「獣の王、大地そのもの……なんたる凶悪さよ」
「はい。――熱い、ですね。炎ばかりの熱さではない。威圧感とでも言うのでしょうか――
星の熱、とあの人は言いました。私たちは――星と向かい合おうとしている」
距離六〇メートル。“門”から出ての着地地点がここだった。近すぎれば、攻撃の最中に転送した場合即座に撃破されてしまう可能性がある、との配慮だ。
――一番槍の者たちを除き、猟兵達は悉く、遠距離から接敵しての攻撃を強いられている。彼と彼女においてもそれは例外ではない。
「なんとも詩的な表現よな。……しかし詩を紡ぐのは戦の後でも事足りる。行けるか、織愛よ」
「はい。いつでも。――私、的が大きいのは嫌いではないですよ」
永久の少年、ムルヘルベル・アーキロギア(宝石賢者・f09868)の言葉に応じ、三咲・織愛(綾綴・f01585)が槍を構える。夜を意味する煌めきの閃、noctis。
「頼もしいことだ。しかしまずは小粒な敵からのようだぞ」
ムルヘルベルが顎をしゃくる。その先――ガイオウガの身体から炎が溢れ出た。
燃える炎はやがて帝竜より分離し――無数の、小さな――といっても成人男性を越えるサイズ感の――ガイオウガを創り出す。垓王牙炎操、炎により無数の写し身を創り出すガイオウガのユーベルコードだ。
「突破口があるとすれば、あの炎を打ち倒した先であろう。アレはあくまで『本体に似た』炎でしかない。戦力においては本体に遙かに劣るはず。希望的観測に過ぎぬが、命を懸けるには十分だ」
「同意します。――たとえ業火に灼かれようと、ノクティスの煌めきは陰りません。貫き通してみせましょう。行きましょうか、ムーくん」
「うむ」
通常、この二名のコンビネーションは、織愛が前衛、ムルヘルベルが後衛を支えるという布陣で行われる。まれにムルヘルベルが前衛を張ることもあるが、賢者の得手は本来格闘戦ではない。その明晰さは頭脳労働と戦術指示、援護により発揮されるところが多い。
しかしそれが、此度は二人肩を並べる。織愛の圧倒的な筋力、身体能力に追いつくべく、ムルヘルベルは呪装『胡蝶装』を起動。その身より溢れる魔力全てを運動能力に変換、まるで極彩色の蝶が如くに全身に光を纏う。
――そうせねばならぬ。肩を並べ戦わなければ。片一方が無茶をするだけでは、此度の戦は通らぬと、そう考えたための行動である。
ムルヘルベルが織愛を、織愛がムルヘルベルを見た。視線交錯、頷き一つ。
二人は、熱砂蹴り飛ばし、全く同時に踏み出した。
二人は加速し、襲い来る火炎竜と対峙した。
そこまでに複数の猟兵が対処した過程を見ていたムルヘルベルは、直接の格闘攻撃ではなく、地の岩礫を蹴りつけての遠隔攻撃で応ずる。人の頭ほどの岩がまるでカタパルトで弾き出されたように飛び、火炎竜の一体を顔面から叩き潰す。猛爆!! 空中に紅蓮の火炎が裂き、衝撃波が散る。
「織愛よ、油断するな! 至近で迎え撃てば巻き込まれるぞ!」
「はいっ!」
ムルヘルベルが岩を蹴りつけ作る弾幕を抜けてくる炎竜を、織愛は身を弓なりに反らせてノクティスを真っ直ぐに投擲し迎撃。三体を一手に貫き爆裂させる。迎撃を成した槍は空中でドラゴンに化け、蜻蛉返りを打って織愛の手に戻る。
「岩を!」
「承知しました!」
ムルヘルベルの求めに応じ、足を止めた織愛が手近な大岩を槍の石突きで突き砕けば、破片を拾い蹴り投げ飛ばし、集まり寄り来る炎竜を片端から撃ち落としていく!
――しかしそれも、いつまでもは続かない。胡蝶装に込める魔力は無限ではなく、全力で動き続ければ織愛の息も切れる。
胡蝶装の輝きが薄れかけ、織愛の息が荒れたその時、一体にいた炎竜達はその隙を見逃さぬかのように急降下、一斉に襲いかかった。
「……!」
ムルヘルベルは瞬時に状況を判断する。最早宙に残る炎竜共の姿は疎ら、襲いかかってきた者達がこの一波の最後の攻撃と思ってよい。しかし数が多すぎる。数えきれぬ。まるで空が燃えて墜ちてきたかのような密度の攻撃。
遠距離で撃ち落とすのが最善。しかし、投石ではこの数は落とせぬ。胡蝶装を解き、魔術に切り替えるか? 否。そうしたところで撃ち漏らしは出る。そして身体能力がなければ、寄った敵には即応出来ぬ!
――ならば!
「織愛よ、耐えよ!! ここが正念場だ!!」
「――はいっ!!」
あの敵を前に無傷を通せるなどとは、二人とも思ってはいない。
故に彼らは迷いなく、降り注ぐ炎竜らの群に突っ込んだ。
前に出た織愛が、手近な岩を凄まじい槍の薙ぎ払いで叩き、石礫をショットガンめいて飛ばす。十数体を一手に爆裂させるが、すぐさま後続が来る。ムルヘルベルが投石で二体落とすが、それ以上のことは出来ない。
織愛は口元を引き結び、間近に迫った炎竜達を夜の槍を大回旋して薙ぎ裂いた。ちかり、攻撃的な赫が瞬き、至近距離で爆発、爆発、爆発!! 炎が織愛の衣服を膚を超高熱で灼き、衝撃波でその骨さえ砕かんと猛撃する!
そしてそばにいたムルヘルベルとてそれは同じ。彼はそれに加え、己に側方より襲いかかった炎竜を手刀と蹴撃で捌いている。叩きつけられる爆炎と暴圧が、宝石の躰に亀裂を入れる。
押し寄せる竜は止まらぬ。無限に思えるほどの波状攻撃。一陣が爆発して散ればその次の瞬間には同じだけの次陣が来る。いつ終わるとも知れぬ竜達の連続攻撃。
――ムルヘルベルは眼を遊色に煌めかせ、その攻撃の隙間に、ガイオウガの姿を見通す。
短跳躍。
「織愛、合わせよ!!」
爆炎の盛る音さえ斬り裂き賢者の啓示が閃く。
「任せてください、ムーくん。――無茶した分、後でお説教ですからね!」
ヴ、ォウッ!! 煤煙を捲いて夜の槍が翻り、渦状に裂けた焔煙の中に織愛の姿が露わとなる。全身に痛々しい火傷の跡、美しい服は灼け、露わになった膚も焼け爛れ。――だがその瞳は、決して勝利を疑わず、またこの苦境に折れることもない。
彼女の『覚悟』を示すような溜めの姿勢。躰の捻りと踏みしめた二足は、まるで装填された攻城弩――バリスタのようにさえ見えた。制止した『力』から放たれる威圧感が周囲の空気を張り詰めさせる。
ムルヘルベルがまるで蝶が止まるかの如くにふわりと槍に降り立った。一瞬のタイムラグもなく、織愛の細腕が張り詰め、その最大の筋力を発揮。この二名だからこその完璧なタイミングでの連携。
そのまま織愛は躰のひねりを解放、一転二転と槍の先にムルヘルベルを乗せたまま回転、遠心力でエネルギーを増幅――槍が大きく撓るほどに勢いをつけて、
「はああああああああああああああああああッ
!!!!」
文字通り、ムルヘルベルをガイオウガ目掛けて『射出』した。
「ッ――おおおおおおっ!!」
きゅ、どウッ!!
ムルヘルベルは合わせて、『蔵書票・離落急昇』により全身の珪素細胞群を活性化、過剰代謝により生まれた全ての魔力を突っ込んで胡蝶装を最大稼働、肉体強度を上げ、槍を蹴って跳躍している。
息を完全に合わせることにより、ムルヘルベルの躰は最初の一瞬で音の壁をブチ破った。軌道上にある全ての竜炎はムルヘルベルの特攻を喰らい、抉れ飛んだ己が身体を見下ろしてから爆発する。反応さえ許さない。
――何度も彼女と戦を共にした。だからこそ可能となった連携攻撃。傷を負えど、もう阻める者はここにはない。ガイオウガがたじろぐようによろめくのを、逃さない。
躰を捻り空気抵抗により姿勢制御、射入角調節。内部停弾の危険性僅少。斜めから抉り抜けるコース!!
「去れ、獣の王よ。オヌシの在るべき場所へ!! ――これが戦いを経てきた我らの力であるッ!!」
叫ぶ宝石賢者の右拳が、彼を象徴する遊色に輝き――炸裂ッ!!!
今一度、ガイオウガの胸の傷跡を大きく抉り飛ばし、鮮血めいた溶岩を迸らせる!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
穂結・神楽耶
◎
滅ぼす炎の威を知っている。
焼かれる熱さと痛みを覚えている。
恐ろしいと、思う。
…けれど。
それが過去なら、倒せぬ道理はない。
超えさせて頂きます。
参りましょう――【尅珀燠手】!
攻撃が炎であるならば、
それ自身が向かう先を教えてくれる。
こちらからも炎熱を放てば多少は紛れられるでしょう。
足と刀さえ届くなら残りは盾に用いるのも選択肢です。
ただ、これだけの熱…
刀の方も持って一発でしょうね。
可能なのはただ一撃。
それだけで致命に至らせる手際。その方法。
――勿論、知っていますとも。
影に紛れ、
死角を取り、
不可知の速度で、
只、薙ぎ払う。
否応無く――断ち散れ、帝竜ガイオウガ!!
●一閃、否無
滅ぼす炎の威を知っている。
焼かれる熱さと痛みを覚えている。
恐ろしいと、思う。
――況してや、敵は、星の熱。
悉くを灼き、灰燼に帰せしめる焦熱の権化。
脚が震えぬ訳もない。普通の刀はその身が焼ければ死ぬ。
そうなれば、二度と元の通りには斬れぬ。
なまくらとなり捨てられ、もう顧みられることもない。
かつてただの太刀だった彼女が、それを恐れぬ訳がない。
――、ああ、でも。
わたくしは、多くの――本当に多くの人の子と出会って。
諦めず戦う、愛おしくも勇ましいかれらの勇壮な英雄譚の一端になって、今ここにいる。
彼らから教わった。それがどれだけ、恐ろしく、絶対に斃せないような強大な存在であろうとも。
――それが過去なら、倒せぬ道理はないと。
誰かが背中を圧してくれている。ここにいずとも、幾人もの友が背に立っている。
故に迷いなく、左手に鞘を、右手に柄を。ゆるり躰を背を見せるほどに巻き、
「帝竜ガイオウガ。超えさせて頂きます」
緋色の瞳をまさに焔の如くに煌めかせ、穂結・神楽耶(舞貴刃・f15297)、抜刀す。
同時に天より急降下して襲いかかる焔の竜が十体余り! 神楽耶は抜いた刀の切っ先から焔迸らせ、火炎の刃を飛ばした。どおうっ、どうっ!! 炸裂した焔の刃が竜を空中で爆ぜさせ、凄まじい爆炎と衝撃波を散らす。五体を遠間から断ち、蜘蛛めいた身の熟しで低姿勢、飛び退がる。間を一瞬稼げればそれでよい。
――赤き神楽耶の眼がギラリ煌めく。発動、『尅珀燠手』!
神楽耶の知覚に、温度のレイヤーが追加される。周囲の炎熱、その全ての効果範囲が明らかとなる。それは敵、ガイオウガが喚び起こす炎竜の群とて例外ではない。――そう、攻撃が焔であるのならば、熱を知覚するこの能力を発現さえすれば、その熱自体が危険安全の別を教えてくれる。
神楽耶は己を焼くことのない、己から溢れる焔を身に纏い、敵の熱を見詰める。スウ、と息を吸う。ヤドリガミである彼女には不要のはずの動作。しかし、そうしなければいけなかった。同じいろの眼をした彼が、闇に熔けるその一瞬前の真似をした。
刃のごとき呼吸。地を這うがごとき低姿勢。撓めた脚に従って袴の裾がふわりと舞い広がり、橙の裏地が焔のように揺らめく。一瞬の後、神楽耶は消えた。――消えたと、錯覚するほどの速度で駆け出した。
まだだ。まだ速く。想像の中の『彼』は、これよりも早い。己より数歩先を悠々と駆ける詰め襟の背中を幻視する。
幻が背を伺った。
“もう少しゆっくりにしときます?”
(気遣い、無用!!)
刀引っ提げ神楽耶は疾る。幻を追い越さんと。最早、間近に迫った竜を、火炎纏わせた刀で斬った。当然爆ぜる、衝撃波と爆風が神楽耶を嬲る。しかしそれすら踏み抜ける、血を流し、その流した血さえ炙られ焦げる焦熱の中を、己が焔を燃やして散らし、足下に爆炎を爆ぜさせて駆ける。
手にした刀は当然本体ではなく、神楽耶が己を模して創り出した仮初めの剣身。熾烈なるガイオウガの熱に耐えられるのは一発で限度。
だがそれで構わない。摸したこの技は、その一発で敵に最大の被害をもたらす、千代紙の忍びを真似たもの!!
尚も襲いかかる炎竜共。これ以上速度は犠牲に出来ぬ。最低限を斬り、熱の間を縫い走り、左腕が咬まれたのに頓着せず、神楽耶は歯を食い縛り、咬まれ抜けぬ左腕を己が刃で斬り捨てて駆け抜ける。尻尾斬りめいた動きに対応しきれなかった炎竜が、神楽耶の背後で遅れて自爆、熱風追い風背に浴びて、神楽耶の脚は幻に追いつく。
最高速に到るその瞬間。
彼女は、全ての認識の埒外に到る。
余人から見ればそれは消えて見えたことだろう。
影に紛れる、とはそういうことだ。忍びの隠形、認識を盗む無二の御技!!
狂嵐の熱に浮かされたように、神楽耶は地を蹴った。一足でガイオウガの膝に達する。蹴る、蹴る蹴る蹴る、蹴り上る!! 己に込められる最大の熱を刃に込め、胸に差し掛かったその瞬間に――神楽耶は刃を逆手に握り、岩膚めいた帝竜の鱗に、力の限りに突き立てる!!
「否応無く――断ち散れ、帝竜ガイオウガ!!」
駆け抜け描く亀裂、二五メートルに渡る。刀身長いっぱいの深さに、大きく裂けたガイオウガの胸より、最早何度目か解らぬマグマの奔流が迸る!!
天を貫く竜の苦鳴。その動きが鈍り出す。
竜の胸を蹴り離し天を舞う神楽耶の焔は、日輪めいた希望の焔。
続く猟兵達が、気勢を湧かす!!
大成功
🔵🔵🔵
サン・ダイヤモンド
【森】◎
僕はこの世界が好き
自然豊かで、生き物は自由で
そして、生と死を繰り返し命を繋ぐ
生命の営み、息吹を感じるこの世界が
護ろう、僕達の大切な世界を
ブラッド、信じてる
ブラッドへ『天使の抱擁』を介し火炎耐性と破魔の祈り籠めたオーラ防御の加護を施す
自身も同じく加護を纏い備える
敵の動き・攻撃を注視、見切り
空気の流れを読み野生の勘で回避する
僕の役目は歌結実させ竜の炎を静め浄化する事
ブラッドから離れず、魂練り上げ
彼に何があっても目を逸らさずやり切ってみせる
ブラッドは僕を信じてくれた
僕もブラッドを信じてる!
黒の竜へ白き破魔の光宿らせて
彼とこの世界への愛と想い籠め歌うは
生命に仇なす竜を縛り炎静める【滅びの歌】
ブラッド・ブラック
【森】◎
嗚呼、絶対に
そして必ず生きて、共に帰ると約束しよう
俺達の森(家)へ
サン、信じている
自身の「火炎耐性」+『天使の抱擁』を介しサンの加護を纏う
敵の攻撃は極力「見切り」回避、UC発動までの時間を稼ぐが
回避が間に合わないもしくは
サンの危機には『貪婪の腕』で「武器受け」、敵の炎を「薙ぎ払う」
武器がもたなければ俺の躰全てを使い
たとえ躰が爆ぜようともサンを庇い切る
俺を信じろ!
俺は誓った
この世界を護ると!サンと伴に生きると!
「限界突破」【柔軟な泥】
奴の炎も死の運命さえも全て喰らって己の力と変え躰を再生
奴の炎でも灼き尽くせぬ熱き誓いとサンの破魔の光宿し力増幅した黒竜放ち
奴の内側から喰らい尽くしてみせよう
●祈り歌に黒竜は哭く
ああ、天に太陽のように燃える猟兵の炎がある。それに勇気づけられたように、一人の猟兵が口を開いた。
「ねぇ、ブラッド。僕はこの世界が好きだよ。自然豊かで、生き物は自由で、そして、生と死を繰り返し命を繋ぐ。生命の営み、息吹を感じるこの世界が」
白髪の少年だった。まるで天使のように整った容貌、翼を模した絹羽織を纏い、金の瞳を瞬かせ、強大なる竜とヒトとの死闘を見上げている。服に至るまで白く、無垢な印象を与える少年――サン・ダイヤモンド(apostata・f01974)である。
「その輪廻を歪めるあんな竜は許せない。守ろう、僕達の大切な世界を」
「ああ」
重い声で応ずるは身長一九〇センチに届こうかという偉丈夫だった。そのシルエットは異形の一言。まるでそこだけ違うパーツが組み込まれているかのように、巨大に膨れ上がった左腕が目を引く。『貪婪の腕』。顔もまた、ヒトのそれとは思えぬものである。悪魔めいた大角に、髑髏。落ち窪んだ眼科の奥に鈍く光るは朱き眼の煌めき。
悪魔めいた外見の男は、名をブラッド・ブラック(LUKE・f01805)という。
「嗚呼、お前がそれを望むのならば、守り通そう。――そして必ず生きて、共に帰ると約束しよう、俺達の森へ。サン――信じている。お前を」
「うん。僕もだよ、ブラッド。信じてる」
信を託し合う友と共に往くならば、死地とて何を恐れよう。サンとブラックは、巨大なる邪竜を真っ向見据える。
竜は確かに巨大で、強く、恐ろしいものだった。
しかしサンは、ブラックは見た。猟兵の攻撃が何度となく、敵の巨体を揺るがすその瞬間を。あの巨竜が、攻撃を恐れたように下がった瞬間を!
サンは祈りを捧げる。唱え上げるは地獄の業火の権化たる、ガイオウガの炎の元へ向かう勇者に捧ぐ祈歌だ。火を避け魔を穿つ祝福の歌は、ブラッドを覆う薄靄めいた光のヴェール――『天使の抱擁』に宿り、その加護にさらなる堅牢さを追加する。ユーベルコードの力を持たぬ歌ではあったが、しかしないよりも遙かにいい。サンは己にも耐火と破魔の加護を宿し、ブラッドへ一つ頷く。
「征こう」
「ああ」
二人、同時に地を蹴った。
一つきり残ったガイオウガの目が、地を駆ける二人の猟兵に向く。
ガイオウガの全身より炎、迸る。もう幾度となく放たれたそれは、炎により己の写し身を象る術、『垓王牙炎操』! 数千から成る焔竜が構築され、サンとブラッドだけではない、周囲の猟兵全員を一挙に猛撃する!
サンとブラッドの作戦は至極単純だ。一撃耐えてのカウンターという一言に集約される。その一撃を耐えるために、二人は己の五感をフルに使った。爆ぜる炎の温度、殺気、襲い来る敵の速度、距離、死の匂い――戦場にあるあらゆる概念を、己の目と鼻と耳と心にて聞き取り嗅ぎ分け見取り見切り、ガイオウガの喉元へ食らいつこうというのだ。
――しかしそれは、想いだけで、感覚だけで踏破できるような易い道ではない。
「……!」
雲霞の如くとはまさにこのこと。サンとブラッドの往く手を、埋め尽くすほどの焔竜が迫る。『避ける先がない』。回避とは、脅威のない場所に移動することをいう。では、『脅威のない場所などない』のだとしたら?
これでは勘の働かせようもない。今や眼前の全ては押し寄せる焔竜に塞がれ、進む限り逃げ場などどこにもない!
「サン!! 俺の後ろに!!」
ブラッドが怒鳴り、前に出た。彼はこうなることを悟っていたのかも知れぬ。サンに危機が迫れば、初めから庇うと決めていた。異形の左腕、『貪婪の腕』をぐうんとバックスイングし、眼前に迫った十数体の焔竜を一挙に薙ぎ払う。
――腕が薙いだ焔竜が、まるで焼夷弾のように爆炎を撒き散らす!! 衝撃波と熱波がブラッドの身体を軋ませ焼いた。間近で炸裂する焔波を避けられるはずもない。よしんば避けたとして、彼の背にはサンがいる。己が逃れれば焼けるのはサンだ。
――それだけは、それだけは罷り成らぬ!
「ブラッドッ!!」
背に庇われて友を案ずる聲に、右腕を制止するように上げるブラッド。
「俺は問題ない。信じろ、サン! 謳え!!」
「ッ――」
力強く言い、ブラッドは次々襲いかかる焔竜を薙ぎ、潰し、その爆炎を間近で浴びる。焼け焦げ、瞳が明滅する。纏った鎧は瞬く間に赤熱し、数十体目を打ち壊すときには左腕は自壊寸前。人型を維持できなくなりかけ、蹌踉めく。ブラッドは炸裂の度に己の躰――ブラックタールとしての黒泥めいた躰を広げ、サンを庇い続けている。その甲斐ありサンは未だ軽傷に過ぎないが、耐火の加護も虚しく、ブラッドの躰は既に限界寸前だった。いつ動かなくなってもおかしくない――そんな折だ。
煙燻る躰を引き摺り、壊れかけの腕を構え直すブラッドの耳に、――不意に歌が届く。
いや、それはきっと、彼が決死の覚悟で戦う最中から鳴っていた。間違えるわけもないサンの歌声。すぐ後ろから、魂を練り上げ絞り出される歌は。常世の言葉にあらざる響きで奏でられた。破魔の魔力が高まる。
信じろと叫んだブラッドの声の通りに、サンは彼を信じ、彼の背だけを見つめ、歌い続けたのだ。力ある聲が鳴り渡る。それは、愛の歌だ。ブラッドも幾度か聞いたことがあった。この世界を、ブラッドを想い歌い上げる愛の歌。ブラッドの信に応えるように、僕も君を信じていると返すように唱う!
――そして、愛とはもっとも激烈で熾烈な感情である。
愛を謡う歌の効果を反転させる。斯くて天使の歌声は、愛を壊す破壊者を、帝竜ガイオウガに枷を填める『滅びの歌』――アトーニアとなる!
紅蓮の帝竜に白き破魔の光が疾る! 宙に浮く焔竜達がコントロールを失ったようにばらばらに飛ぶ。滅びの歌の真価とはそれだ。敵の動きを封じ、そのユーベルコードのコントロールを奪い封じる!
視界が開ける。まるで行き場を失ったように逃散する焔竜の向こう側、動きを封じられ棒立ちとなったガイオウガが見える。
「ブラッド!!」
「任せろ!!」
ブラッドはサンの声を聞くなり、最後の力を振り絞る。とうに限界だった。動けるはずもない。しかし想いが、心がそれを凌駕する。限界を踏み越える!!
ブラッドはここまで喰らってきた炎の全てを解放する。ユーベルコード開帳、『柔軟な泥』!
――俺は誓った。この世界を護ると、サンとともに生きると!!
その誓いを、帝竜の火焔ですら焼き滅ぼすことが出来なかった。ブラッドは喰らい続けたあの帝竜の炎の熱を、その体内で己のエネルギーとして循環加速増幅し、ただ一撃の為に機を見計らい、溜め続けたのだ!
吸収できるわけもない圧倒的な帝竜の熱を、である。事実身の裡を巡る炎は彼を止め処なく焼いた。後ろにサンがいなければ、発狂するほどの痛みだった。しかしそれを押してなお耐えた。驚嘆すべき精神力、そして胆力!
「刮目しろ、帝竜。これがサンと俺の……想いの力だ!!!」
ブラッドは叫び、壊れかけの左腕を引いて、――力の限りに繰り出した。
突き出した左手の先から、黒き焔竜が迸る。
ブラッドが増幅した炎の力、そしてサンから託された破魔の力が宿った竜だ。のたくり迸る炎の黒竜は、進路上にいたガイオウガの炎操竜を食い千切り、声もなく大口を開けて嘶いて、今や塞がりきらぬガイオウガの胸の傷口に飛び込み――その身体の中で暴れ回り、力を喰らい尽くしていく!!
『アァアアァァァァアァ、ガアアアアアアアッ!!!』
咆吼迸り、ガイオウガの躰のそこかしこに亀裂が走る。吹き迸るマグマは崩壊の予兆。終わりが、近い――!!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ユーゴ・アッシュフィールド
◎
【リリヤ(f10892)】と
なぁ、最近少しハードすぎやしないか?
文句を言っても仕方ないか、精々頑張るとしよう。
俺が立つのはリリヤの前だ。
あの帝竜がどれだけ速く、どれだけ苛烈な攻撃を行おうとも
きっちり二人分、受け切りリリヤが動くまでの時間を稼ごう。
だから、お前はお前が考える方法で帝竜に一泡吹かせてみろ。
さて、見栄を切ったがどうしたものか。
斬るか?いや、巨大な炎は無理だな。
小さい炎は斬り、大きい炎は受け流す。
どうしようもない物は、まぁどうしようもないな。
……途轍もなく痛そうだが、リリヤの策を信じて好機を待つか。
ふぅ……その時に俺が動ける状態ならいいのだが。
ああ、この先に続く道を拓こう
リリヤ・ベル
◎
【ユーゴさま(f10891)】と
もう。しゃんとしてくださいまし。
今日のわたくしたちは、冒険者なのですよ。
あかくてあつい。まるで、星のよう。
気圧されそうになっても、ユーゴさまの背中が見えるなら。
わたくしはちゃんとできるのです。
はい。おまかせください。
鐘を鳴らして呼ぶのは水、――それと風。
篠突く雨は、竜を閉じ込める檻のように。
蒸発した水は風で浚ってまた空へ。
作ってくださる時間のうちを、何度だって廻らせて。
わたくしは導き手ではなく、この鐘も英雄譚ではありません。
けれど、どんな物語も未来を望む意志からはじまることを、わたくしは知っています。
道をひらきます、ユーゴさま。
星を冷やす嵐を落としましょう。
●嵐去れば、道残る
「……なぁ、前回と言い今回と言い、最近少しハードすぎやしないか? どう考えてもオーバーサイズだろう。人の戦える限界というものを、どうやら連中は弁えていないらしい」
距離四〇。肩を竦めながらくすんだ金髪に、アイスブルーの瞳をした男――ユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)が口にする横で、「もう、」と窘めるような声を上げる人狼の少女。愛らしい翡翠の目を細め目尻を上げて、リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)が応じる。
「しゃんとしてくださいまし、ユーゴさま。今日のわたくしたちは、冒険者なのですよ。竜をたおすのは、冒険者のほまれでしょう」
「にしても割に合わない仕事だ。――はあ、文句を言っても仕方ないか、精々頑張るとしよう」
ユーゴは頭を掻きながら溜息を漏らし――すう、と息を吸う。調息。剣を抜く。何の変哲もないルーンソード――『灰殻』。
「リリヤ、俺の背から離れるなよ」
「はい。――あの竜は――おおきくて、あかくて、あつい。まるで星そのもののよう。おそろしいです、けれど。――ユーゴさま、」
リリヤはユーゴの後ろに回り、広い男の背に外套の上から触れた。確かめるように、ほんの数秒の間だけ。
「気圧されそうになっても、ユーゴさまの背中が見えるなら、わたくしはちゃんとできるのです」
「……随分買われたもんだ。なら、無様なところを見せるわけにはいかないな」
ユーゴは笑い、背からの言葉に応えた。
「ナイアス、力を貸せ。――防ぎきるぞ」
マントに宿る水の精に声を掛け、ユーゴは剣を隙なく正眼に構える。
ガイオウガが吼えた。その身体は最早傷だらけ、ひっきりなしに各所から溶岩が飛沫を上げ、身体前面に点っていた炉心めいた色の耀きも今や陰りを見せつつある。――それでもあの怪物は未だに動く。手負いの猛獣ほど、恐ろしいものはない。
「俺が時間を稼ぐ。リリヤ、お前はお前に出来る最高の方法で、奴に一泡吹かせてみろ。――心配要らん、思い切りやれ」
「はい、おまかせください。――おいで、おいで、天のしずく。幾度もそそいで、空へ還って」
リリヤが謳い、『真鍮の鐘』を鳴らす。それを疎むようにガイオウガは吼えた。同時に、全身の火口より火炎弾を乱射、乱射、乱射! 回避能わぬ程の密度の火炎弾幕!
ユーゴは剣に水を纏わせ、火勢を押さえながら火炎弾を斬り弾く。幾許か減衰するとは言え、着弾と同時に炸裂するその性能は健在だ。しかして後ろに反らせばリリヤが傷つく。故に決して、避けも退きもせぬ。
ど、どどど、っどどどどっどおうっ!!!
立て続けに殺到する火炎弾を斬り爆ぜさせ刻み墜とすその絶技、吹き荒れる『絶風』、精強なり! 炸裂する衝撃波と熱風でユーゴは焼かれ、時折弾ききれぬものをマントを盾にその身で受け庇う。マント腰に着弾した右腹で、火炎弾が爆ぜる。ナイアスによる水属性防御を抜けて右の肋骨が三本ばかりへし折れるが、脚を地面に突き立て不動に立つ。瞬く間に傷だらけになり、その金髪の所々を血で染め、服にじとりと染みる血の不快さを感じようとも、ユーゴが道を空けることはない。
「――どうした、存外、大したことないな。俺一人も退けられないか、帝竜」
息も絶え絶えの調子でしかし挑発めいた言葉を吐くユーゴに怒りを覚えたか、ガイオウガが吼えた。唸り飛ぶ火炎弾が宙で一息に爆裂、猛炎を巻き起こし――宙に渦巻く炎は凝り固まって焔竜となる。垓王牙炎操!
「次から次へと……芸の尽きないことだ」
ぼやくように言いながら構えを改めるも、ユーゴの残る手札は決して多くはない。シルフの風だけであの竜を散らすのは至難だろう。そして火炎弾と違い、奴らには機動力がある。回り込まれればリリヤを危険にさらすことになりかねない。
どうする、とユーゴが考えた瞬間、彼の鼻先を水滴が叩いた。
「――雨?」
数滴の水滴は、瞬く間に服を重く濡らすほどになり、司会を悪化させるほどの大雨となる。雨に晒されたガイオウガが不快げに一声吼え、その全身より炎を吹き上げた。竜が浴びる水滴は瞬く間に蒸発。周囲の焔竜もまた同様に炎を強く燃やす。効いた様子はない。
――それが、一度であれば。
「風よとどけて。絶えぬしずくを、雲にあるふるさとまで」
謳う声。リリヤのものだ。ガイオウガ達が上げた熱波による強烈な上昇気流の勢いを取り込み、天目掛け吹き上げる。短時間に幾度も水を天と地で循環させ雲により多く雨粒を集中させる――気象に干渉する魔術だ。
「ユーゴさま。道をひらきます。星を冷やす嵐を落としましょう」
ユーゴはリリヤが気象すら操り、水の魔力を大気に満たしていることを悟り、気難しい水精ナイアスをなだめながら、その権能を借りて雨を剣に纏わせる。
「おまえは本当に賢い娘だな、リリヤ。風を貸せ。――すぐに戻る。おまえが作った道を、俺が固めてこよう」
「はい――ごぶうんを。おまちしています」
猛雨は止まぬ。リリヤが起こす上昇気流もまた同じ。蒸発する水が猛烈な蒸気となり、周囲に靄を立ちこめさせる。厭うように地を踏みならし吼えるガイオウガの眼が、ユーゴとリリヤを射竦めた。高らかに響く猛き咆哮に従い、焔竜達がユーゴら目掛け殺到する!!
ユーゴは、向かってくる炎竜らの間を鋭く駆けた。その内情はズタズタのボロボロ、骨は何本も折れ、斬り損ねた岩の破片が今も身体のうちに留まり、込み上げる痛みは蹲りたくなるほどに強い。だが決して、その何れをも表に出さぬ。背で見詰めるリリヤに、そのようなところは見せられない。
ただひたすらに速く、鋭く。ユーゴは水を帯びた刃を翻し、襲い来る炎竜達を片っ端から斬り捨てる。リリヤが降らせる雨のお陰で、今やナイアスの力を振るうには絶好の環境。注ぎ込む水の魔力が炎竜の力を削ぎ、爆発を抑えて両断、そのまま掻き消す!
駆けるその背を見ている。時折立ち止まろうとも、折れかけようとも、決して膝を折ることなく彼女の前を進むかつての騎士。最もそばで、戦うのを見詰めてきた。
――わたくしは導き手ではなく、この鐘も英雄譚ではありません。……けれど、どんな物語も未来を望む意思からはじまることを、わたくしは知っています。
リリヤは鐘を鳴らし音色を紡ぐ。道を切り拓き直走る、あの大きな背中を押すために。守って貰うばかりの仔狼である時分は、随分前に通り過ぎた。
ユーゴが身を撓める。
それに合わせ、リリヤは下に下げるように構えた鐘を、ぐん、と振り上げて高らかに鳴らした。
風よ、運んで。あのひとを。
あの剣がとどくところにまで。
――マントの裾が風を受けて、ばう、と音を立てて翻る。それを合図に、ユーゴは膝を縮めた。一瞬して、高らかな鐘の音。ユーゴは力の限り地を蹴った。次の瞬間、足元より衝き上げるような暴風に乗って、彼の身体は追い縋る炎竜らを置き去りに、翼得たかのように飛翔する。己だけでは決して到達し得ぬ高度で、己だけでは決してあり得ぬ速度で。
ユーゴはナイアスに命じ、剣にありったけの水を集める。雨水が集まり固まり、地上では振り回すのも難儀しそうな、常の三倍ばかりの刀身長持つ水の刃となる。
「――持っていけ、帝竜。冥土の土産に丁度良い曲芸だろ」
上昇の頂点。静止したその一瞬に、刹那、邪竜の眼と騎士の青瞳、重なる。
ガイオウガが口の中に溜めた火炎弾を吐き出すその前に――ユーゴは渾身の力を込め、剣を振り下ろした。ユーゴの膂力で放たれる絶風に、水の魔力帯びた水刃が乗る。
名付けるならば絶嵐。水の刃は鞭のように撓り伸び――先端が音の壁を易々と食い破り、破裂音を奏でる。
波打つ刃の軌道はまるでのたくる水龍のそれ。暴れる刃がガイオウガの残る右目を、顔面を、牙を、顎を食い荒らし裂き抜けるッ!!!
『ガ、アアア、ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
爆ぜる右目が爆炎と火柱を上げ、焔の帝竜が嵐に噎ぶ――
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
玉ノ井・狐狛
◎
見る限り、チップをたんまり抱えてそうな帝竜サマだなァ
大口勝負だ、加減はないぜ?
🛡️
►旭そのもので炎を払う
コレ自体は、炎熱のたぐいでどうこうはならねぇ、というか吸収できる
ま、数も多いし、サイズがそもそも違わァな
防ぎきれるほど甘い見通しじゃない
余波は術で軽減
⚔
吸収した炎熱を手形に、火山の龍脈に不正アクセスといこう
成立したらそこから引き出せるだけ引き出す
あんなデカブツが好き勝手できるくらいだ、残高はまだまだあるだろ?
↓
喋れれば真言、喋れなければ挙措で印を刻んで代用――オン・ガルダヤ・ソワカ
種目(ゲーム)は炎(そっち)に合わせてやるよ、帝竜サマ
負けたときの言い訳なんざ、聞いてやる気はねぇんでな
ユヴェン・ポシェット
◎
熱いな…
帝竜ガイオウガによる熱気なのか自身の闘志なのか、否。…両方だな。
炎になんざ、負けたくねぇ。
布盾「sateenkaari」を構え、躱しきれない分の炎を受け止め、燃焼を防ぐ
布盾は盾の役目を一通り終えた後、竜槍「ミヌレ」へ巻き結び刃へ変える。燃焼防ぐその穂先で炎の獣を裂き、そのまま帝竜へと攻撃を定める。あの帝竜に届かなければ意味がない。
今までだって、この間の戦いだって…乗り越えてきた。
それに、やられりゃその分だけ好都合。
UC「revontulet」
失くした俺の部分が全て武器となって相手へ降り注ぐ。同じ箇所を集中して狙い、その中に槍を紛れ込ませる。奴を貫く一撃となるように。
打ち噛ます…!
リンタロウ・ホネハミ
◎
こーいうただただ「強い」バケモノには狙わねぇのが信条だったんすけど……
いや、信条じゃあねぇな、ただの諦めだ
けれど、逃げてばっかってわけにもいかないっすしね
だって、強敵に挑んでこそ真の騎士っぽいっしょ?
つーわけで、闘牛の骨を食って【〇〇四番之玉砕士】を発動!
ブルって逃げちまいたくなるほどの敵なら、何も考えずただ破壊だけを考えるっす!
その動きが俊敏で良かったっす、荒ぶる牛が突っ込むに足る対象になるっすからね
吐き出される火山弾も炎も、この身を焼かれる前に突っ切っちまえば問題ねぇっす!
肺腑を炙る熱気なんぞ耐えりゃあいいっす!
この骨剣をヤツに突き立てる、それができりゃあそれでいい!!
ユウイ・アイルヴェーム
◎
痛くも怖くもないのです
前へ進むのです、それが、ここに私が来た理由なのです
命のない、壊れてもいい人形。それが私なのですから
とはいえ、何の役にも立たないまま消える訳にはいきません
避けられないものは切り捨てます。立ち止まる時間はありません
大丈夫です、動けば、それでいいのです
顔を狙って【光】を撃ち落とします
うるさく感じられるでしょうか、それに集中していただければいいのですが
おかしいのでしょうか。本当は、あまり近付くべきではないのです
でも、この手で斬(さわ)りたいと、そう思ったのです
痛いのでしょうか、あなたに心はあるのでしょうか
…いいえ、あったとしても、変わらないのなら。考えることも無駄なのでしょうか
●竜脈禍焔戦線ガイオウガ
竜が吼えた。
まるで、星そのものが叫んだかのように地面が揺れる。
今や、ガイオウガは両目を失い、四方八方に己の持ちうる全ての力を撒き散らすだけの暴力機構となった。――逆に言えば、ヤツはもう猟兵一個体一個体に注意を払っての迎撃を成すことは困難。
初めはそれでも、力を垂れ流すだけで十分な脅威だった。只人ならば近づくことすら叶わず燃え尽きる程の熱量を孕んだ、牙の王だ。数々の猟兵が挑み、傷を負い退がることを余儀なくされ――絶望的な戦いを繰り広げた。
――そう、あれほど圧倒的な存在を前に、誰一人として、希望を捨てずに戦い抜いた。ここに到るまで数十名の猟兵が命を懸けて、あの邪竜の力を削り続けたのだ。そこに来て最後に作りだされた、絶好の機。
周囲の山々の火口から溶岩流が吹き上がり、火礫降り注ぐ末法の光景の中。天を揺るがし吼える帝竜を恐れることなく、最後の猟兵達がザリ、と踏み出した。
「ッハ……見る限り、チップをたんまり抱えてそうな帝竜サマだなァ。大口勝負だ、加減はないぜ?」
すさぶ熱風の中、はっとするほど眩い金の髪をさらりと翻し、玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)が言った。琥珀の瞳をいたずらっぽく細め、羽ペン――『旭』をひらひらと振る。迦楼羅天に縁を持つそのペンは、焔気を吸い持ち主の力へと変える。
「まったく、熱いな……あの竜の熱気なのか、俺自身の闘志なのか、――否。両方、か。炎になんざ、負けたくねぇ」
その傍らで布盾『sateenkaari』を構え、ドラゴンランス『ミヌレ』を執るはユヴェン・ポシェット(ඛනිජ・f01669)。緋色とピンクパールのオッドアイを真っ直ぐに、暴れ狂う暴虐の帝王へと注ぐ。
「お、兄さん、燃えてるねぇ。それじゃあチョイと勝負と行こうじゃないか、これが最後の大一番だ。乗ってくれるだろう?」
「ああ。これ以上奴に好きにさせてはおけない。ここで倒す!!」
と
「熱いっすねぇ。じゃあ、オレっちも並んで殺りにいきますか」
二人の横で牛骨をがりり、と咬む、使い込まれたレザー・アーマーの男が呟いた。バンダナの位置を直し、ぼやくように言う。流浪の傭兵、ヨウタロウ・ホネハミが一子、リンタロウ・ホネハミ(骨喰の傭兵・f00854)である。
「こーいうただただ『強い』バケモノは狙わねぇってのが信条だったんすけど……いや、信条、じゃあねぇか。……ただの諦めだな。――そんでも、逃げてばっかってわけにゃあいかないっすしね。皆が死ぬ気で戦ってんだ。強敵に挑まず引っ込んでいるなんてのは、真の騎士のやるこっちゃねえ」
困難に挑み、弱きを助け強きを挫く。いかなる邪悪にも膝を折らず戦いを挑む。
それこそ真の騎士だろうと謳うリンタロウに、からと笑って狐狛が応える。
「なんだい、アタシたちのことばっかり言えないじゃねぇか、アンタも」
「供行きが増えるのは助かる。――一人では無理でも、力を合わせればきっとアレにだって勝てる」
ユヴェンが歓迎するように言紡ぐその横で、最後の猟兵がすらりと剣を抜いた。全ての色を拒絶するような純白のロングソード――『白蓮』を抜剣し、少女は訥々と語り出す。
「――前へ進むのです、それが、ここに私が来た理由なのです。痛みはなく、恐怖もなく、命もない、壊れてもいい人形。それが私なのですから」
透き通るように白い少女だった。髪も、服も白く、褪せかけた夕焼け色の瞳をした、儚げな容貌の娘――名を、ユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)という。
「随分寂しいこと言うっすねぇ。……大丈夫。皆で生きて帰るっすよ。居合わせたのも何かの縁、四人で力を合わせりゃあ、出来ねぇ事なんてあんまりねぇ!!」
リンタロウが笑い飛ばすように言えば、狐狛がきゃらきゃらと笑う。
「アッハハ! 控えめな宣言だねぇ! ――あの竜をブッ飛ばすのは出来ることの内に入るかい?」
混ぜ返す狐狛にユヴェンが応じる。
「入る。――否、入れてみせるさ」
絶対はない。確実に出来る保証もない。それでも笑って、死地に踏み出す三人の猟兵。
誘われてその後を追うように、ユウイはとつ、と小さな靴音を立てて駆け出す。
――彼女とて、何の役にも立てないまま、消えて良いと思っているはずがない。
「それなら、私も――あなたたちの役に立てるように、全力を尽くします」
リンタロウの声に確かな口調で応え、走る三名に駆け並ぶ。
「よしきた!! そんじゃぁ役者も揃ったところで――竜殺し!! 始めるっすよ!!」
ばきん! リンタロウの口元で牛骨が割れ、噛み砕かれた骨はそのまま喉の奥に消える。ぼ、ごッ、と筋肉の蠢く音。決して細身というわけではない、実戦向けのしなやかな筋肉を纏ったリンタロウの身体に異変。突如として闘牛めいた筋肉が乗る。『〇〇四番之玉砕士』――闘牛の骨を喰い、その力を宿すユーベルコードだ!
「は、面白い曲芸を持ってるねぇ! ならアタシらは道を拓くとしようか!」
「了解だ!」
狐狛が笑い、ユヴェンが応じる。
一行からガイオウガまでの距離、五〇メートル。全員が理解している。この距離からでは有効打は叩き込めない。遠距離攻撃はあのやけくそな出力の暴走の前に叩き落とされてしまうだろう。
――ならば近づくのみだ!
天を貫く竜の咆哮。ガイオウガは全身の火口から火炎弾を撒き散らし、同時に身体より立ち上る炎から火炎の竜を生み出して四方八方に嗾ける。凄まじい攻撃密度。
狐狛は軽やかに前に出て、襲い来る火竜目掛け羽ペン――旭を振るう。まともな武器とも言えぬ羽ペンごときで何が出来ると笑う者がいれば刮目せよ、これは迦楼羅天縁の加護を持つ逸品。ありとあらゆる熱で焼けず、それどころか吸収するという代物だ。彼女がぶんと一振りするたび、顎門開いて襲い来る炎竜が祓われ、ずるりと吸い込まれ、掻き消える!
しかしいかんせんリーチが短い。彼女の手の届く範囲の竜は打ち消し祓えるが、襲い来る炎竜の数は圧倒的だ。それを補うように、ユヴェンが水の魔力帯びる布盾を振り、狐狛を側撃せんとした炎竜を打ち払った。
――炎竜だけではない。飛ぶ炎竜を巻き込むことすら辞さぬとばかり、火炎弾が立て続けに降り注ぐ。
「くっ
……!!」
手数が多い、多すぎる。ユヴェンは布盾を翻し、竜槍『ミヌレ』に巻き付けた。ミヌレ全体に水の魔力を帯びさせ鋭く回旋! 着弾地点で爆裂し衝撃波を撒き散らすはずの火炎弾の破壊力を削ぎ落とし、次々と貫き斬り弾き打ち落とす!!
奮戦しつつ駆ける二人の横から加勢するのはユウイ。彼女が白魚のような手を翻し指を差し向ければ、天から落ちる光が炎の竜を次々貫く。空に爆炎が咲く!! ユヴェンと狐狛が対応しきれなかった炎竜を、火礫を、足を止めずにユウイが捌く!
おお、蹌々たる猟兵らの堂々たる戦振る舞い、見事なり! 防御しながら彼らは尚も駆け抜ける、距離三〇!
――だが!!
『アアァアアァァァァアァアァァアア、ガァアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア
!!!!!』
潰れた両目から、落涙めいて止め処なく溶岩を流し、炎帝慟哭す。
その全身、ありとあらゆる傷から溶岩が盛り上がり、火口を成した。
獄炎、吹き上がる。ヤマアラシめいて構築された火口から、一斉に火炎弾が噴き出した。
攻撃の密度は今までで最大と言って良かった。狐狛の、ユヴェンの、ユウイの防戦は実に見事だったが、――しかしそれでも追いつかぬ。次々襲いかかる炎竜と火炎弾に、最早被弾は避けられない。
ショットガンめいて面的に放たれた火礫が降り注ぐ。連射ならば或いは弾けるやも知れぬ。しかしそれは『斉射』。しかも、炎だけではない、石塊をコアとした火炎弾だ。旭による熱吸収だけでは傷を受ける。打つ手を考えように狐狛が逡巡したその瞬間、ユヴェンが前に出た。
ミヌレを回転させ、まるで風車めいて火礫を弾く弾く弾く!! しかし、その攻撃密度を前に無傷で済むわけがない!
「がっ、は
……!!」
防ぎ漏れた火炎弾がユヴェンの全身に炸裂し爆ぜた。骨を軋ませるほどの威力。左腕が千切れ駆け、全身に凄まじい熱傷を負いながらユヴェンの身体が後方に吹っ飛ばされる。槍を落とさぬので精一杯、という様相!
「……!」
「兄さんっ、」
それに気を取られた狐狛とユウイに、更に後続の砲撃が降った。火炎弾の嵐が吹き荒れる。霊力障壁『紗』にて自身とユウイ、退いては後ろのリンタロウを守ろうとする狐狛だが、しかし一瞬で構築する障壁程度で、炎帝が繰り出す死の嵐を防げるわけもない。炸裂するなり、細身のユウイと狐狛の身体は木っ端のように吹っ飛んで地を舐める。
「ぐッ……!」
「……は、」
立ち上がろうとする二人の横を――〇〇四番之玉砕士を使ったリンタロウが吼えながら駆け抜ける。襲い来る竜を力任せに骨剣で叩き潰し、襲う爆炎と衝撃波をもろに受けて全身を焼け爛れさせながらも、しかし踏ん張って猛進する!! それはまるで一度崩れた三人の態勢を立て直す隙を作るための突出にも見えた。
――ブルって逃げちまいたくなるほどの敵なら、ここより先はただ破壊だけを考える!!
そのための狂化、そのためのこの術だ!
「さァオレっちが相手だ、こっち見やがれクソトカゲ!! 目ぇ逸らしてみろ、その瞬間に突き殺してやるっすよ!!」
炸裂するたび衝撃波が骨身を軋ませる。だが今まで喰った骨たちを固めたようなリンタロウの強健な骨はそれでも砕けぬ、火炎弾に肉が抉られ、襲う炎竜の炎が爆ぜてその総身を灼いても、リンタロウは決して止まらない!! 吸う息が肺を灼き、身体も焼け、動きが鈍ろうと、しかしリンタロウは決して骨剣を手放さぬまま駆け抜けた。距離二〇。目と鼻の先。跳ぶ。
「っらああああああああああああああああ!!!」
剣を突き立てようと跳躍したリンタロウの殺意に反応した様に――ガイオウガの火口がリンタロウに向けて集中する。
轟音。再三、火口が嵐のように火を噴いた。至近より火炎弾の猛撃を受け、リンタロウの身体が裂け、右脚が、左脚が吹き飛ぶ。
「ッが、げうッ、」
天に舞うように吹っ飛ぶリンタロウの躰――
その後方でそれを見ながら、熱砂掴んで立ち上がったのはまず、狐狛であった。
「――ッ、」
リンタロウが突出し、吹き飛ばされた。しかし彼が突出しなければ、あの大火力は残る三人全員に炸裂していたものだ。
――今一瞬、術を挟むための時間が生まれた。この隙を逃してはならない。
彼女は地に手を衝き、旭の切っ先を突き立てた。
深く、深く意識を延ばす。目指すはこの地の底――ガイオウガと繋がり、無限の力を供給しているであろう『竜脈』だ!!
狐狛は過去最大速度で『潜行』。己の霊力のパスと、竜脈を繋げる。無論容易に繋がるわけがない。アクセスは即座に拒否される。しかし、竜脈に向け狐狛は――通行手形を突きつけた。
……先ほど吸った垓王牙炎操の炎熱を、だ!
おうとも、これが手形さ。――だから貸しておくれよ、いつもそうしてくれてるだろう?
ヒトの裏を掻き、巧みに誘導し、代理賭博師として時には命をチップにして張ってきた彼女が、此度騙すは『竜脈そのもの』!! パスが繋がった瞬間、狐狛は引き出せるだけ力を全て引っ張り出す。突如溢れる霊力に躰がパンクしそうになる。キャパシティを越えた出力に、こふ、と血を吐く。
「残高はまだまだあると思っちゃいたが――なるほど、コイツはまた、随分と溜めたもんだね。使わせてもらうよ……オン・ガルダヤ・ソワカ!!」
力ある言葉、真言を唱え、更には印を切る。
狐狛が揮うは黄金の焔――『迦楼羅天招来・陰』!! 彼女の周囲に浮かび上がる金色のほむら、その数一瞬で四〇〇弱!
ゲーム そっち
「よう、種 目は 炎 に合わせてやるよ、帝竜サマ。負けたときの言い訳なんざ、聞いてやる気はねえんでな!!」
狐狛は刀印とした右手を差し向けるようにビッとガイオウガに繰り出す。瞬間、金色の炎嵐が吹き荒れる!! ガイオウガの操る炎竜を撃ち落とし、またも発射される火炎弾を相殺し、ガイオウガの全身に次々と金の爆炎が咲いてその身体を揺るがす!!
「ガアアァァッ、アアアアア!!」
「今だ、行きなっ!!」
叫ぶ狐狛の声が響く前に、彼女の意を酌んだ二人が駆け出している。
ユウイとユヴェンである。
まだ躰は動く。大丈夫。動けば、それでいい。
狐狛が乱射する金色の火炎が、ガイオウガの注意を奪った。その意識を更に散らす。ユウイは真っ直ぐに指を差し向け、最早穿たれ溶岩を垂れ流すだけとなったガイオウガの眼を天より落ちる光で射貫いた。――牽制程度の一射。眼球が無事であったならば、あの巨竜は恐らく涼しい顔で受け流したことだろうが、空の眼窩に光注ぎ灼くとなればその苦痛は想像の埒外。益々暴れ狂い、しかし何から対処して良いのかも解らずに火炎弾と炎竜を乱射するガイオウガ。
ああ。本当は、このように、光を使い、或いは敵のユーベルコードを写し取り、遠間から戦うべきだったと思う。近づくべきではなかった。近づいて戦うように、ユウイはデザインされていない。華奢な躰、白く細い腕。
――ああ。私はおかしくなってしまったのかも知れない。
さわ
あの竜を、この手で 斬 りたいと思ってしまうなんて。
痛みを感じるのだろうか。心はあるのだろうか。
――ああ、あったとしても変えられないのならば、こうして考えることも無駄だろうか。
疑問は尽きず、けれど距離は詰まる。
「左から、行きます」
「わかった!!」
ユヴェンから歯切れの良い応答。頼もしい狐狛からの援護が尽きぬうちにと、二者は散開し襲いかかる。
ユウイは剣を、白蓮を強く握った。跳躍、でこぼこの竜の躰を蹴り駆け登る。
暴れる竜を登るのは至難の業。しかし彼女はそれでもやってのけた。地雷めいて噴炎する体表の火口に焼かれながら、間近で炸裂した火炎弾に脇腹を抉られ息を詰めながら。
ユウイは、止まらない。
震える左手の指で、己が剣を示す。天からの光が注ぎ、剣に移って赫奕と煌めく!
「――さようなら」
ユウイはかそけく言って、駆け抜けながら突き立てた白蓮で、竜の胸元を、力の限りに駆け斬り裂いた。幾度となく裂けた胸がまたも開き、溶岩が噴き出る!!
そうだ。今までの戦いだって。
この間戦ったあの竜との戦いだって。
俺は、俺達は、乗り越えてきた。
どれだけ強い敵であろうとも、越えられると信じている!
「ッお、おおおお!!」
ユヴェンは吼えた。最早左腕を失い死に体だというのに、右手に槍を執り竜の躰を跳び登る。ヒビ割れた彼の身体から零れる破片が、遊色に煌めく。
――ああ、これは切り札。彼が傷つけば傷つくほどにその出力を増すユーベルコード。
……『revontulet』!!
地に落ちていたユヴェンの左腕が爆ぜ、無数の欠片となった。ここに到るまで攻撃により零れた彼の欠片がそれに呼応し、極彩色の極光嵐となって舞い上がる!!
俺の槍は届くか。この帝竜に。――否、届かせる!!
遊色の欠片の嵐を、ユヴェンは先行したユウイが切り拓いたガイオウガの胸の傷目掛け降り注がせた。吹き出す溶岩を掻き分け、欠片が傷の内側に潜り込み、ガイオウガの躰を裂く!! 宝石は溶岩の中にあって尚燃えず、その身体を内側から裂いていく!
ガイオウガが余りの苦痛に、天を裂くような咆哮を上げ躰を揺する。振り落とされる前にユヴェンは跳躍。ガイオウガの顎先まで跳び上がる。
ミヌレに、力の限りに魔力を注ぎ込んだ。失われた躰は多く――槍の先に宿る極光は、最早止め処ない!!
「征くぞ、ガイオウガ……!! 打ち噛ませ、ミヌレ――っ!!!」
ユヴェンは力の限り叫び、己の全ての力を込め竜槍を投擲した。最早遊色に光る流れ星のようになったミヌレが、ユウイが開いた胸の傷に飛び込み――炸裂!!!
胸郭が抉れ、骨が露わになるほどの爆発――!!!
『ガアアア、アア、アアア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああアアッ!!』
竜が吼える、吼える、吼える!! ユヴェンの躰が音に推されて下がるほどの大音声!!
しかし、それでも、ガイオウガはまだ動く。
ああ、ここまでやって、これ程やって、まだ足りぬのか。
否、あと一息、一押しのはずなのに!!!
――開いた胸郭に、ど、と音を立てて狐狛の炎が突き刺さり爆ぜる。
骨の欠片が一片飛んだ。――それは、その場に要る他の誰もが見逃しそうな、小さな変化だった。
飛んだ骨の欠片はほんの僅か。人間の指先ほど。
嗚呼、それは奇跡に似た偶然だったやも知れぬ。或いは、彼のしぶとさが、狐狛たちの連係攻撃が成した偉業だったのやも知れぬ。
確かな事は一つだけ。
天高く吹き飛ばされ落ち来た、満身創痍のリンタロウが、その骨に食らいついたことだけだった。
飲み下す。
――その眼が炎の色に染まり、瞳孔が竜めいて縦に割れる。
リンタロウ・ホネハミは骨喰・リンタロウ。
骨を喰らい対象の形質を承継する能力者!!
「っっっっっっっがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああらぁあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあっ
!!!!!!!!!!!!!!」
リンタロウは、ガイオウガのその大音声すら凌駕する声で吼えた。もげた脚から炎が噴き出し、落ちる勢いをロケットめいて加速、開いた胸郭目掛け音速を越えて落ちる!!!
右手に残った骨剣に、その身体から溢れ出る炎の全てを込める!! 一五メートルの炎の柱なった剣を真っ直ぐに突き出し――
この場で抱いた最初の意思。
この骨剣をヤツに突き立てる、それができりゃあそれでいいと、定めたその意思のままに!!!
「ブ、チ、抜、けえええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇええええええええぇええええっ
!!!!」
――魂を燃やす叫びと共に、ガイオウガの心臓を穿ち貫く――!!
閃光。筆舌に尽くしがたい大爆轟。その場にいた四人の猟兵のみならず、全ての猟兵が爆圧に巻き込まれて遙か後方に吹き飛ばされる。
――しかし、嗚呼、散逸し、終わるだけの炎は、猟兵達を傷つけるに能わぬ。
今まさに。轟炎の魔竜、帝竜ガイオウガは。
天を貫き、或いは星の外から見えるほどの火柱を上げ――
今度という今度こそは、叫びも残せずに爆ぜ散ったのである。
猟兵達がその全力を懸けて繋いだ、力の鎖が――かの星を灼く竜の命に終止符を打った、その瞬間であった。
大成功
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