帝竜戦役㉑〜Raise Your Banner
沈黙におあつらえ向きの威厳ある響きを伴った言葉。
会話をするためではない。立ち向かう心、勇気を燃やし尽くすために。
「炎ト戦エバ勇者ハ程ナクシテて死ヌ」
空に巻き上がり、撹拌する炎は、傍らに控える異形の炎獣が恐れる『牙』を瞬く間に溶かすだろう。
「奴ラガ何ヲ掲ゲヨウトモ、コノ垓王牙ガ灰ニスルマデ」
山のごとき巨体が動く。火の山。一歩踏み出すたびに地面より炎が噴き出し、土塊が溶けて崩れていく。
「偉大トハ証明シ続ケル義務ヲ持ツ。コノ垓王牙は奴ラを迎エ討ツ者デハナイ。奴ラに挑ム者ダ」
背にある火口から一斉に炎を吹き出すと、冷たい空気は煮え、周りの全ては赤く染まっていった。
●決死戦のはじまり
「皆さま、お集まりいただきありがとうございます」
スペースノイドのシャーマンであるデナーリスが、事件の概要を告げる。
「私達の次なる相手は帝竜ガイオウガ、燃え盛る獣の帝竜です」
デナーリスは手に持っている端末の画面を空中に表示する。龍脈火山帯を上から見下ろす映像だ。
連なる火山に囲まれた一角に、炎を撒き散らしながら動いている山が一つだけ見える。
「この動いている山のような巨体、焦げた土色の体皮をしているのがガイオウガです」
周囲には溶岩が川のように流れており、動く炎の塊も映っている。
「これだけの巨体、私達の接近は遠くから気付かれます。そして隠れる場所も無ければ作ってもすぐ溶かされるでしょう。ガイオウガの先手は避けられません」
敵に有利な地形、有利な立場からの先制攻撃。どう避けるか、またはどう防ぐか。それができなければ攻撃の一発も通せないだろう。
体中にある火口から火山弾を放ち、炎でできた獣も引きつれている帝竜の姿には絶望すら感じさせる。どうやって壊していくのか。
だが、デナーリスは猟兵たちの勝利を疑っている様子はない。
「心の奥底にあるものを掲げてください。ガイオウガを苦しめる方法。それは皆さんの挑戦する姿。唯一の血を流させる方法です」
彼女は手にした端末を閉じ、深々と頭を下げる。
「来るべき未来を守り、世界に生きる人々に取り戻せるかは皆さん次第です。どうかよろしくお願いいたします」
そう言って送り出すのだった。
神田愛里
いらっしゃいませ。初めましての方もそうでない方もこんにちは、神田愛里と申します。
今回は帝竜ガイオウガと決着をつけるシナリオとなります。
巨体から放たれる先制攻撃にどう対処していくか。まずはそこから考えてください。
圧倒的な炎を凌ぎ、見事垓王牙を打倒してください、よろしくお願いします!
第1章 ボス戦
『帝竜ガイオウガ』
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POW : 垓王牙炎弾
【全身の火口から吹き出す火山弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【『炎の獣』に変身する】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 垓王牙溶岩流
自身の身体部位ひとつを【大地を消滅させる程の超高熱溶岩流】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 垓王牙炎操
レベル×1個の【ガイオウガに似た竜の姿】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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ビスマス・テルマール
●POW:対策
『激痛耐性』と『属性攻撃(味噌)』込めた『オーラ防御』と『火炎耐性』で備え
ガイオウガのUCと炎の獣の攻撃をコレらの技能を込めた実体『残像』を置きつつ『第六感』で『見切り』回避し『空中戦』で撹乱
『属性攻撃(味噌)』を込めた『一斉発射』の『砲撃』し
炎の獣やUCの勢い削ぎ
※とある寺の火事を止めた火除け味噌の逸話もあり
味噌は炎に強い
隙を見てUCで炎の獣や炎弾を備えた耐性系の技能と『鎧無視攻撃』の『大喰い』で食べ
その鎧装を纏い強化し
なめろうフォースセイバーに
『属性攻撃(味噌)』を込めた『鎧無視攻撃』の『2回攻撃』を『早業』で『切り込み』一閃し
一撃離脱を繰り返し
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
ガイオウガの全身にある火口から、絶え間なく火山弾が放たれる。
そして、火山の噴煙が濁す灰色の空を、ビスマス・テルマールの鮮やかな青が舞っている。
青い光をひたすらに追従する赤い光。炎の獣だ。獣たちは誘導ミサイルのようにビスマスに喰いつこうとする。
ビスマスは水平飛行で引き付けてから45度バンクし、上方宙返りで追ってくる獣の真上をとると、鎧装の主砲を向けた。
放たれるは、味噌の一斉射撃。無防備な背中に叩きつけられた味噌は獣の一群を飲み込み、戦場に似つかわしくないほどの香ばしい焼き味噌の香りと共に落ちていった。
射撃の隙を狙った火山弾が降ってくる。避けきれないと感じた彼女はそこにも一射。
だが、いくら味噌が火に強いといっても限度はある。勢いを全部削ぐことはかなわず、固まった壁を突き抜けてくる。
もっとも、これもまたビスマスの計算の内だ。突き抜けてきた火山弾を手で摘まみ、口へ運ぶ。
「垓王牙炎弾ヲ……食ベタノカ」
ガイオウガの顔面から表情は一切読み取れないが、声の調子が驚きを表現していた。
ユーベルコードを食べる技術。これが。
「これがフードファイトの極みですっ!」
鎧装が土色の岩、ガイオウガの表面のような形に変化していく。そこから伸びるなめろうフォースセイバー。
「ソレデ何ヲ斬レルトイウノダ」
「なめろうをバカにすると痛い目見ますよ!」
『なめろう』を理解しないガイオウガに理解させねばならない。見た目から伺える性能ではないことを。
強化された鎧装のパワーは取り込んだユーベルコードの強さに比例する。帝竜のそれは圧倒的なパワーを彼女に与え、迎撃のために撃ってきた火山弾を軽く斬り落とせるほどだ。
ガイオウガの表皮にある火口のうち、背中にあった最も大きな火口を狙い、一閃で切り抜ける。
一撃では足りない。急上昇し一閃、背中を飛び越え急下降、さらに一閃。
―― 見事ダ ――
魂の記憶を探ってもこのような相手は居ただろうか?否だ。
ガイオウガは溶岩と共に背を滑り落ちる火口を見ながら、未だ知らぬ戦いに快哉を叫んだ。
大成功
🔵🔵🔵
シン・コーエン
火山が生命体と化したような存在だな。
恐るべき強敵…そのような相手と戦える事、嬉しいぞ!
と、修羅の笑みを浮かべて垓王牙に挑む。
『敵UC対策』
身体に【オーラ防御】纏い、身体周辺に【氷の属性攻撃】を巡らして熱に対応。
直接攻撃に対しては、【空中浮遊・自身への念動力・空中戦】で自在に空を移動し、【第六感・見切り】で溶岩流や炎の軌道を読んで回避する。
避けきれない場合は灼星剣から放つ【衝撃波】で弾き飛ばして【武器受け】する。
UC使用可能になれば、【残像】を伴う高速移動で垓王牙を幻惑し、UCによる戦闘力上昇と灼星剣による【2回攻撃・風の属性攻撃・衝撃波・念動力・鎧無視攻撃】の連続攻撃で垓王牙を斬り刻んで倒す!
ガイオウガの巨体の動きはまるで火山が歩いているようなもの。
シン・コーエンは火山が生命体と化したような帝竜を前にしていた。
一歩の度に地面が揺れ、足元に響く音がする。
わずかに彼の姿を認めたガイオウガは、火山弾と炎の獣を同時に射出する。
シンの身体を氷のオーラが包む。上から火山弾、左右から獣。そして地面を這う溶岩が同時に彼を狙う。
どの一手も致死になる威力を持っているのは明らかだ。
小手調べもなしか。自然と彼の顔に笑みがうかぶ。余裕からではない。強き相手と戦える喜びがそうさせるのだ。
襲いかかる獣を一歩の距離までひきつけては避け、切り捨てる。
灼星剣、彼自身であり愛刀の輝きにはわずかな曇りもない。
意識を足の裏に集中させ、氷を固める。一瞬だけ耐えられればいい。向かう溶岩をあえて踏み、固まった地面を蹴って飛びあがる。
迫る火山弾。意識を即座に頭に切り替え、念動力で自らを押し出すようにすれば、胸の前を掠めて炎に包まれた岩はすりぬけていく。
二発目、三発目と避ける彼にさらに降る火山弾。だがこれも灼星剣の前には問題ない。剣から放たれる衝撃波で弾の軌道を逸らすだけだ。
「成ル程。小手先ノ芸は無駄デアッタカ」
ガイオウガが地面をひとたび踏み鳴らす。すると、炎の獣は隠れ、溶岩は海の波が引くようにスッと地面へ消えていった。
「どういうことだ?」
訝しむシンの態度を気にせず、ガイオウガは話し始める。
「誇リ高キ敵ト戦ウ時、古イ友人ト再会シタヨウナ楽シキ心ヲ感ジルコトガアル」
「……!」
「汝ラ、ヒトヨリ聞イタ言葉ダ。サア、行クゾ」
向けられた多数の火口から火山弾が一斉に放たれる。
轟音。溢れんばかりの弾をすり抜け、飛び越えてシンは走る。
俺も垓王牙も同じ『戦人』か。再び笑みがこぼれる。そして喜びが彼を加速させる。
その速さに火山弾では追えなかった。
迫るは巨体の足元。踏みつけようとするガイオウガ。
避けはしない。ガイオウガは小手先の技を善しとしなかった。ならば己もそうあるべき。
振り上げた剣とぶつかり、衝撃が辺りを包む。
弾かれても巨体に任せ、なお踏みつぶそうとしてくる脚にさらなる斬り上げ。
聞こえる叫びはどちらのものだったか。飛び散る岩の中、灼星剣は曇らずに赤い輝きを成していた。
大成功
🔵🔵🔵
ワルゼロム・ワルゼー
WIZ
味方との連携・アドリブ歓迎
ガイオウガ…、ヤツの姿を目にすると何やら懐かしさを覚えるのは何故であろうな
だが今は、ヴァルギリオスへの道を切り拓くのみ
退いてもらうぞ、猛き竜よ
先制攻撃に対しては【オーラ防御】【残像】を使って回避。周囲の遮蔽物の利用も忘れない。垓王牙炎繰の炎がガイオウガに似てるならば、左右の側面が死角になりそうだから、基本的な位置取りはそこで。尻尾の一撃に警戒しつつ、UC「恨みつらみ全て我が糧となれ」を【高速詠唱】で展開
被弾したダメージを我が力へと変換した後は反撃である。胸元の真核っぽい点を狙い、【範囲攻撃】【2回攻撃】で大ダメージを狙おう
再び大地へ還れ、其が本来の運命なれば
土塊が滝に落ちる水のように流れて落ち、わずかに残った木も焼けて横倒しになる。
震える山麓。割れる岩。
移動の妨げだったのだろうか。
龍脈火山帯に着いたワルゼロム・ワルゼーは、おあつらえ向きの遮蔽物と考えていた山が崩れるのを目の当たりにしていた。
崩れ落ちる山の向こうにガイオウガが見える。
彼女はその巨体になぜか懐かしさを覚えていた。だが、記憶を探る間もなく、垓王牙炎繰の炎が放たれる。
ガイオウガの形を取った炎が近づくのをいったん大きく距離を取って離れる。
見た目どおりなら、左右の側面は死角になりそうだ。残像を用いながら、向かってくる炎をきっちりと躱していく。
「コノ垓王牙ガ何モシナイト思ウタカ」
幾多の火口が彼女を向いていた。炎を使うだけではなかったのか。
ハッとしたワルゼロムに一斉射撃が降りかかる。火山弾もろとも近くの山肌に叩きつけられる彼女。打ちつけられた山は先ほど見た光景を思い出せるように崩れていく。
衝撃で空中へ飛ばされた岩々が霰のように落ちてくる中、霊気の鎧でかろうじて死を免れた彼女が立ち上がってくる。
「存外、シブトイ」
トドメを刺しに炎の竜が向かってくる。だが彼女の眼は死んではいない。
「我をよくも死にかけさせてくれたな?おぬしの攻撃、痛みと合わせて倍にして返すぞ」
高速の詠唱が展開される。
―― 再び大地へ還れ、其が本来の運命なれば ――
<<恨みつらみ全て我が糧となれ>>
受けたダメージを自らの強化に使えるユーベルコード。両手より撃たれた邪術は大きな塊となり、向かってくるガイオウガの炎を打ち破り、そのままガイオウガの胸元に炸裂した。
再び震える山麓。今度は山ではない。山のようなガイオウガの巨体が地面より衝撃で浮かび上がり、横倒しになった音で震えたのだ。
「ふふ、やはり我はこのように煌びやかでなくてはな。ボロボロなのは合わん」
同時に体力を吸収し、すっかり傷も消えた体で微笑んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
はっはっは、歓迎しよう! 邪神に挑む偉大なる炎の獣よ!
火山弾の直撃は左腕でガード、更に邪神オーラを全身に纏い、熱の遮断を試みよう
息を止め、呼吸器へダメージを防ぐぞ
覚悟を決めて激痛は我慢、耐えきってみせる!
右手を上げ、指を鳴らし、さあ降り注げ流星よ!
一発二発程度なら、たとえ星とて触れる前に溶かされるかもしれん
だが数が何十、何百、何千と増えればどうであろうな?
狙いをつける気はない、弾数重視でひたすらにブチ込み続ける!
さて妾は、眼前の炎の獣と全力でバトるとしようか
まさか熱いから殴れん、なんてはずがなかろう?
妾が焼き尽くされるのが先か、お主らが潰されるのが先か、さあ熱く楽しい我慢比べだ!
噴煙が光を遮って成した雲。雲から雨のように降る灰。その灰が音響で揺らぐほどの高笑いがどこかから聞こえてくる。
ガイオウガが巨体の首を回らせれば。傍らの小山の頂に御形・菘が偉そうに立っていた。
「はっはっは、歓迎しよう!邪神に挑む偉大なる炎の獣よ!」
挑戦的な視線。あえて受け止めず、鷹揚に言葉を返すガイオウガ。
「コノ垓王牙、汝ノヨウナ神ヲ知ラヌ」
「ならば覚えてもらおう、真の蛇神にして新たな時代の超新星を!」
「蛇ハ時ヲ得テ竜ト成ル。ナレバ、未ダ蛇デアル内ニ散リユケ」
火口から噴出された火山弾が上から菘を狙う。とっさに左腕で受け止めれば、衝撃で足元の地面が割れ、乗っていた山は崩れ落ちる。
ドンドン、ドンと吹きあがる火山の音。数秒後に幾つもの火山弾が落ちてくる。
彼女はそのことごとくを左腕だけで受け止める。オーラが熱を遮っても、熱い空気はどうにもならない。肺に入り込んだ熱を吐き出し、歯を食いしばって息を止める。
この勝負を菘は我慢比べと定義していた。熱く楽しい我慢比べ。
ガイオウガに比べ非常に小さい体躯に、その身以上の大きさを持つ火山弾が何発も撃ち込まれる。岩の間に身体は埋まり、すっかり外から見えなくなった。
ガイオウガには疑問があった。なぜ右腕を使わぬ?
このまま踏みつぶせば決着はつくであろう。しかし疑問が躊躇させた。炎を獣の群れと変え、獣に追い打ちを任せようとする。
「妾を潰しきれんかったのう?挑む者に不要な慎重さが命取りだ!」
彼女が埋没した辺りから高笑いが聞こえる。そして土塊の間から右手だけが空を指し、指が鳴る。
灰の雲を切り破り、流星が落ちてくる。尋常でない数だ。
自らを守るために火山弾を打ち上げるガイオウガ。相殺で身を守れる自身は良いが、炎の獣たちはそうはいかない。次々と流星の下に潰されていく。
高笑いの声はより大きくなり、流星もその数を増していく。ガイオウガも我慢の一手だ。増える流星に火山弾を打ち合わせて動かず耐える。
驟雨のような流星が止んだ。すでに炎の獣はどこにも見えない。
穴だらけの体躯を揺すり、ガイオウガは言った。
「素晴ラシイ。コウデナクテハ、コノ垓王牙ガ挑ム相手ニ不足デアル」
「褒めても加減はせぬぞ!まだブッ倒れるまでは互いに早いであろう」
雲が裂け、陽光の差し込める空に向かって、また指が鳴った。
大成功
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疋田・菊月
ユスト(f24320)君と一緒にいきますよー。
いやはや、熱いですね。とんでもないところに来てしまいました
それにあの威容、とてもじゃないですが近づけないですねー
さてさてどうしましょうかねーユストくん
とはいえ、まずはこの炎をどうにかしなくては
火器しか持ち歩いていない現状、炎が相手では分が悪いですね
ですが、爆風消火というものをご存知ですか?
手投げ弾を使って、消火はできずとも延焼を阻むことに挑戦してみる価値はあると思います
火が全てを侵略すると思ったら大間違いですよー
さて、反撃です。カミオさん、ユスト君を援護しますよ
どれだけ硬い鱗でも、銃弾の連射を浴びればたじろいでくれますかね。えへへ
ユスト・カイエン
「お菊、先に行ったようだけれど大丈夫だろうか……?」
「僕が心配するまでもないかも知れないが……いや」
「考え込んでいる余裕は無さそうだな」
【目立たない】よう行動しつつ、飛んでくる火山弾を【第六感】で【見切り】、【念動力】で狙いを逸らす。逸らせないものは【武器受け】で切り払い先制攻撃を凌ぐ。
遠距離から雷の【属性攻撃】もといフォースの電撃で牽制しつつ【念動力】で自身を【空中浮遊】させ接近。UC一切斬滅宿業両断の【鎧無視攻撃】でガイオウガを斬ろうと試みる。
「大きいな、ガイオウガ。しかし、僕の剣は彼我のサイズ差など関係なく斬り捨てる。そしてこの剣で斬れないものは割と少ない。お前はたぶん斬れるほうだ!」
「いやはや、熱いですね。とんでもないところに来てしまいました」
熱に覆われ、溶岩が地面より噴き上がる戦場に、鮮やかな金の瞳。
殺伐さなど無いかのように疋田・菊月がにこやかに歩み進んでいた。
溶岩の流れをまるで噴水程度にしか思ってないような気軽さで同行の仲間に声を掛ける。
「さてさてどうしましょうかねーユストくん」
「いねぇよ!オメーが勝手にどんどん進んで置いて行っちまっただろ」
即座に彼女の肩に止まっていたクロウタドリの悪魔、カミオがツッコミをいれる。
とはいえ、ガイオウガに認知された以上、引き返せもできない。
「心構エ、汝ニアルカ、否ヤ」
迫る竜の形をした炎。戦うほかはない。
彼女は手にした手投げ弾、ポテトマッシャーの安全キャップをねじって外し、放り投げる。
手を貸してくれと言われるまでもない。何もしなければ焼き鳥だ。
カミオは疾風の術で手投げ弾の爆風を大きく広がらせる。
爆風を用いて延焼する場所をなくしてしまう森林火災などでよく使われるやり方だ。
竜の炎は壁にぶつかったように押し戻され、後退した。
だが。炎を一時の間、凌ぐしかできない。
「お菊、先に行ったようだけれど大丈夫だろうか……?」
ユスト・カイエンは先行した菊月を心配しながら走っていた。
聞こえる爆発音。炎が広がる光が向かう先に見える。
「お菊!」
考え込んでいる余裕は無い。フォースの電撃を放ち、彼女に向かっている炎を打ち砕く。
もう一人の接近を感知したガイオウガは火山弾を放出した。
敵として認識されていようがいなかろうが、火山弾は戦場一体に降り注ぐ。俯瞰するように視界を広げ、近い弾を選別して避けていく。
地面でバウンドし、自らに向かってくる火山弾の上に飛び乗り、さらにユストは飛び上がる。
低く立ち込める噴煙の上まで上がると、ガイオウガの全貌が見えてきた。
「大きいな、ガイオウガ」
こんな山のような巨体など斬れるのだろうか?だが手にするフォースセイバーを敵に見せた今、必ず相手を斃さねばならない。
自分への誓いで逡巡を両断し、彼はフォースの出力を上げていく。
一方、地上の菊月は全力で機関銃を撃ちまくっていた。
ガイオウガの胸部にある皹。他の猟兵が付けた傷に向けて射撃し、けん制していく。
銃身の熱が手へ伝わり、熱さで顔がゆがむ。だが、ここで手を止めてガイオウガをフリーにすれば、攻撃に転じようとしている無防備なユストが狙われる。
「ここでがんばらんと!」
「ワヤだがや!」
カミオが灼けた銃身を嘴で支えてくれている。弾倉を換え、さらに撃ちまくる。
フォースセイバーが伸び、降ろせば地面へ届かんばかりの長さとなってきた。
……頃合いか。
「僕の剣は彼我のサイズ差など関係なく斬り捨てる。そしてこの剣で斬れないものは割と少ない」
鮮やかな金の髪が翻り、ユストは下降する。
「お前はたぶん斬れるほうだ!」
デッドエンド・フラットライン。袈裟の斬撃がガイオウガの胸を切り裂く。衝撃で溶岩が跳ね上がる。
着地と同時に胸の裂け目へ最大出力のフォースセイバーを突き入れる。
「グオオ……!ダガ、マダ……!」
響く地鳴りの中、彼がゆっくりとフォースセイバーを引き抜くと、ガイオウガの巨体は波の泡のように大気の中に消えていった。
未だ、なんだというのか。答えはなく、二人を包むのは焦げる土の匂いだけであった。
大成功
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