帝竜戦役㉑~あの日の記憶が牙を剥く~
●炎と獣の王
――活火山が動いている。
……『それ』を目撃した者が居れば、まずはそう思っただろう。
けれど、観察を続ける内にその認識が誤りだと気が付くことになったはずだ。
溶岩を湛えた火口だと思った場所は――巨岩の如き牙が並んだ顎であり……。
そこから噴き上がるものも噴煙ではなく――紛う方無くその『生き物』の吐く息なのであったのだから。
空から墜ちてきた星の如く眩く燃える両眼は、一瞥しただけであらゆる獣から戦意を奪うだろう。
力強いという言葉では全く足りない大いなる二本の脚は、一歩踏み出しただけで大地を地震の如く揺らす。
……そんな巨躯の上を走り回る獣の形をした炎たちが、自分たちの王である彼の生き物を称えた。
「「「「「偉大ナル垓王牙
!」」」」」
「「「「「我ラガ偉大ナル垓王牙
!」」」」」
「「「「「「「「「「コノ群竜大陸ニ、ソノ威光ヲ知ラシメマショウゾ
!!」」」」」」」」」」
垓王牙……『ガイオウガ』。その名を努々忘れるなかれ。
其は炎と獣を統べる王。大いなる破壊をもたらす者。
……いつかの在りし日、闇を灼き滅ぼす勇者たちは、一度はこの暴威に敗北を喫したのだから……。
●獣を灼き、炎を滅ぼせ
「――皆ぁっ! ちぃとほんまに力を貸してほしいんやけどっっ!!」
どれだけ翻っても肝心の中身は見えそうで見えない……いつものように鉄壁スカートぶりを見せ付けてグリモアベースに駆け込んできたグリモア猟兵の灘杜・ころな(鉄壁スカートのひもろぎJK・f04167)を、猟兵たちは待ちかねたように迎える。
――新たな帝竜の予知が為されたことは、もう多くの猟兵に知れ渡っていたからだ。
彼らに向けて、ころなは前置きを抜きにして此度の帝竜の詳細を語る。
「今度の帝竜が現れたのは群竜大陸の火山地帯や。名前はガイオウガ。岩に覆われたような身体ん中に、マグマのような灼熱の炎を凝縮させた、とんでもない奴やで!」
とんでもないのは大きさもそうだ。流石にガルシェンには負けるが、女禍とは良い勝負と言えよう。体重に関しては、間違いなくガイオウガの方が上のはずだ。
「その分、純粋な破壊力は女禍以上やと思うで。……もしかしたら、今までに現れた帝竜ん中でも一番かもなぁ……」
悩ましげにころなは呟く。――そして、帝竜である以上、その察知能力は侮れない。戦域に侵入した猟兵は立ちどころに感知され、先制攻撃を喰らってしまうことは明白だ。……攻撃力が高いということは、それへの対策もこれまでの帝竜以上に重要となるかもしれない……。
「そうであっても、や。帝竜たちを撃破していかんと、ヴァルギリオスを守る結界を解除出来へんのや。ヴァルギリオスを討てんかったら、アックス&ウィザーズは……そこに住まう命は、オブリビオン共に蹂躙されてまう。そんなこと、うちら猟兵は看過するわけにはいかんのや!」
気炎を上げ、ころなは猟兵たちへ呼び掛ける。
「今度も勝つで、皆! ガイオウガに、帝竜たちに、猟兵の力……見せ付けてやろうや!!」
垓王牙……ガイオウガよ。我らの名を努々忘れるな。
我らは猟兵。数多の世界を渡り、オブリビオンを滅ぼす者。
その力でもって、お前の首に牙を突き立てる存在。
……いつかの在りし日に、闇を灼き滅ぼす勇者たちが、二度目の戦いでお前の首に牙を突き立て、喰い破ったように!!
天羽伊吹清
初めましての方は初めまして。お久し振りの方はお久し振りです。
そして、引き続き当方のシナリオにご参加下さる皆様はありがとうございます。
天羽伊吹清、帝竜戦役関連シナリオの第三作目です。
このシナリオは戦争シナリオです。一つのフラグメント、第一章のみで完結致します。
また、以下の内容をプレイングに盛り込むことで、判定にボーナスが与えられます。同時に、盛り込まれていないプレイングは問答無用で不採用となります。ご注意を。
『絶対に先制攻撃として放たれる敵のユーベルコードへの対抗策を編み出す』
また、申し訳ありませんが、今回のシナリオにおきましては、頂いたプレイングを全て採用することは出来かねます。
より優れた内容のプレイングを選んでリプレイ化し、最低限の執筆を終えた段階でシナリオを完結致しますので、ご了承下さい。
さて……この㉑の戦場の帝竜に関しては、『こいつ』ではないかと予想していた方も多かったのではないでしょうか?
そう、『ガイオウガ』。TW4『サイキックハーツ』にて、灼滅者(プレイヤー)側が初めて……そして唯一戦争(リアルタイムイベント)で敗北を喫した存在……。
その時のガイオウガと、第六猟兵のガイオウガが同じ存在かは、解りませんが――同等の難敵であることは間違いないでしょう。
努々、油断はなさらぬようにお願いします。
それでは――あの日の苦い思いを憶えている方も、知らぬ方も、ご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『帝竜ガイオウガ』
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POW : 垓王牙炎弾
【全身の火口から吹き出す火山弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【『炎の獣』に変身する】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 垓王牙溶岩流
自身の身体部位ひとつを【大地を消滅させる程の超高熱溶岩流】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 垓王牙炎操
レベル×1個の【ガイオウガに似た竜の姿】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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彩瑠・理恵
ガイオウガ……母さんたちが唯一戦争で負けた相手、そして決死戦で父さんが闇落ちした相手……
ごめんなさい、リエ。此処は私にやらせてください
先制攻撃は、上空から降ってくる火山弾をよく見てとにかく逃げ回ります
避けきれない分はバベルブレイカーで迎撃するか、盾にして受け流します
とにかく致命傷だけは避けるようにします
先手を乗り越えたら上空に指鉄砲を向けて【模倣再現・殲術再生弾(キリングリヴァイヴァー・コピー)】です!
例えこれで倒せなかった唯一の相手でも、再誕したばかりなら!
リヴァイヴァーの恩恵を皆に、そして私はリヴァイヴァーの力と回復力に任せてバベルブレイカーを構えて突撃です
慄け、今宵はアナタが串刺しです!
高原・美弥子
ガイ、オウガ……?
あ、れ?
なんだろ……あたし、知ってるような気がする
先制の垓王牙炎弾には、もう火山弾直撃しないように逃げ回るしかないね!
むしろ、その後のイフリート……炎の獣の攻撃喰らわないように注意しないと
どうしても避けられないなら白陽と黒陽を盾にして受け流してダメージを減らすよ
先制攻撃を乗り越えたら【サモンダークネス・イフリート】で炎の翼を持った白いグリフォンのイフリートを呼び出すよ
先制攻撃で傷負ってたら好都合だね、流れた血をそのまま代償にするだけだし
色々複雑だろうけど我慢してね!イフリートグリフォンに騎乗して空からガイオウガに挑みかかるよ
さて、尾からどうにかするか、それとも口内のヤツか
アイ・リスパー
「くっ、炎の竜ですか……
オベイロンの装甲も溶かされそうですね……」
ならば仕方ありません。
出し惜しみしていられる敵ではありません!
電脳空間から『ミサイルランチャー』を実体化して一斉発射。火山弾を迎撃です!
「私の全力の攻撃、受けて下さいっ!」
さらに『列車砲』を実体化して砲撃で範囲攻撃しましょう!
「その火山弾や炎の獣も、近づかなければ問題ありませんっ!」
というか、運動音痴の私がうっかり近づいたら溶岩に落ちそうですし!
【超伝導リニアカタパルト】に質量弾体として火山弾を装填!
「自分の火山弾、受けてみるのですねっ!」
全力の電脳魔術でガイオウガを撃ち抜きます!
「ダイオウイカか何だか知りませんが甘いですね!」
「……? 美弥子さん……?」
グリモアベースから現地へと転移するほんの刹那の最中、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は一緒に転移された猟兵の中に、同じ猟兵用女子寮・『恋華荘』に住む高原・美弥子(ファイアフォックスのファイアブラッド・f10469)を見付ける。
美弥子は、視線の先に見えてきた群竜大陸の火山地帯……そこを悠然と闊歩する巨躯から目を離せなかった。
――たった一歩、踏み出すだけで、周囲の火山が震えて山頂から火柱が上がる。
――その火柱にも負けないような猛炎が、彼の巨体のあちらこちらに生えた角状の突起から立ち昇っていた。
――両眼は地上に落ちた天の星のようで、顎の奥には太陽の如き輝きが見える。
……自分たちが今から相対することになる帝竜、その名は……。
「……ガイ、オウガ……? あ、れ? 何だろ……あたし、知ってるような気がする」
胸の奥で疼く何かの正体が解らない美弥子に対し、共に転移してきた三人目、彩瑠・理恵(灼滅者とダークネス・f11313)の反応はもっと明確だった。
「ガイオウガ……ごめんなさい、リエ。ここは私にやらせて下さい」
普段なら、戦闘を担うのは理恵の中のもう一人の人格たる『リエ』だ。だが、青い瞳に強い決意を灯した理恵は、理恵のままポニーテールをなびかせて煉獄のような戦場へと走り出す。
『……仕方ないねっ。今日のところは譲ってあげる!』
いつもなら理恵を押し退けてでも自分が戦おうとするリエも、そう言って理恵の胸の深淵へと帰っていった。彼女へ礼を述べ、理恵はガイオウガを凝視する。
理恵に遅れまいとするように、美弥子もポニーテールをなびかせて走り出した。先行する二人の少女に目を白黒させながら、アイも電脳空間から召喚した『機動戦車オベイロン』に乗り込んで後を追う。……UDCアースの現代戦車などとは比べものにならない性能を誇るオベイロン、その操縦席で、アイは冷や汗が滲んでくるのを止められなかった。
「くっ、炎の竜ですか……オベイロンの装甲も熔かされそうですね……」
オベイロンのセンサー類が感知したガイオウガの熱量……もしもアイが生身でそれに触れれば、跡形も無く蒸発してしまうと思えた。
――そんな敵へと、理恵と美弥子は生身で突っ込んでいく。……しかし、彼女たちがガイオウガへいくらかも近付けない内に、向こうの方が動きを見せた。活火山の如き巨大竜が身を震わせた瞬間……その身の各所に生えた角が、噴火を起こしたのである。
山なりの弾道で理恵、美弥子、アイの駆るオベイロンへと降り注いできたのは、燃え盛る岩石であった。その一つ一つが、最小でも大型トラック並みの大きさである。理恵や美弥子はもちろん、オベイロンでも直撃すればただでは済まない。
「あれは、もう……直撃しないように逃げ回るしかないね!」
頬を引き攣らせながら、美弥子はとにかく走り回った。理恵の方も同じように走り回りながら、火山弾を睨み付ける。……その向こうのガイオウガも。
(あれが……母さんたちが唯一戦争で負けた相手――)
理恵自身は、ガイオウガを直接は知らなかった。けれども、彼女のドイツ人の母は、いつかの在りし日にあの巨竜と戦ったのだと……理恵は聞いている。
(――そして、父さんが決死戦で闇堕ちした相手……負けられないです、絶対に
……!!)
日本人の父が、二度目の戦いでその全てを、本当に全てを懸けたのだと知っているから、理恵だって引けないのだ。
……幸いなことに、ガイオウガの火山弾は、それ自体はそこまで命中率が高いものではない。照準は大雑把らしく、理恵や美弥子のように動き回っている対象にはそうそう当てられはしなかった。だが――それの真価は、何処かに着弾した後にこそある……。
「……イフリート……!」
美弥子が、胸の奥から浮かび上がったその名を呟いた。地面へと激突し、そこ諸共砕けた火山弾が撒き散らした炎が……獣の姿へと変じて咆哮を上げる。狼のような、虎のような、獅子のような炎たちは、群れ成して美弥子と理恵を追跡し始めた。
「猟兵! 猟兵ガヤッテ来タゾ!!」
「殺セ! 一人残ラズ殺セ!!」
「我ラガ偉大ナル垓王牙ニ近付ケルナ!!」
「くっ……振り切れないか……!」
可能なら、炎の獣たちも振り切ってそのままガイオウガまで到達したかった美弥子だが、流石に獣の姿をしているだけあって、彼の生きた炎たちの俊敏さは美弥子を超えてくる。理恵の方も似たような状況だ。
(ここは、『バベルブレイカー』で迎撃――いえ、駄目です!)
ポケットから取り出したカードより、巨大杭打ち機を取り出そうか迷った理恵だが……炎獣の数が多過ぎる。この状況下では、あの武器はむしろ大きさが枷になってしまうはずだ。
「ガイオウガに……!」
「……辿り着けてもいないのに!!」
理恵と美弥子の奥歯が、悔しさで砕けそうなほど噛み締められた――瞬間。
「出し惜しみしていられる敵ではありませんね!」
オベイロンの外部スピーカーからアイの雄々しい声が響くなり、機動戦車の各所へとミサイルランチャーが接続される。電脳空間から追加武装を受け取ったオベイロンは、直ちにその全てに火を入れた。
「私の全力の攻撃、受けて下さいっ!」
ガイオウガの配下の獣たちよりも速く宙を翔けたミサイルの群れは、理恵と美弥子を囲んでいたそれらを次々に吹き飛ばす。開いた突破口――二人の少女は一目散にその中を駆け抜けた。
「ありがとっ!」
「感謝します!」
連続する爆発音で、彼女たちのお礼の言葉はアイにはきっと届かなかったけれど……。
第一陣の炎の獣たちが痛手を喰らったことにより、ガイオウガは第二陣の炎の獣たち……火山弾の第二射を開始する。第一射と似た山なりの弾道を描くそれへ、アイはさらなる武装を電脳世界より招き寄せた。
「これはとっておきですよ……!」
――火山地帯に、電車のそれの如きレールが出現した。その上を走るのは、ガイオウガの火山弾にも負けぬ口径の砲弾を内包する巨大な砲身……それを背負った列車である。
「『列車砲』――撃てぇっ!」
一帯の火山の鳴動を掻き消す轟音を鳴らし、列車砲が火を噴いた。大質量の砲弾自体とそれが放つ衝撃波が、炎の獣となるはずの炎弾を空中にある内に迎撃する。
それだけでは止められなかったものも、再度発射されたミサイル群が撃ち落としていった。
「その火山弾や炎の獣も、近付かなければ問題ありませんっ!」
この距離での撃ち合いであれば、相手が帝竜であっても負けないとアイはうそぶく。
「……というか、運動音痴の私がうっかり近付いたら溶岩に落ちそうですし!」
……その本音を漏らした瞬間だけは、オベイロンの外部スピーカーのスイッチを切ったアイである。
さて、アイの援護を受けてガイオウガへと向かっていく美弥子と理恵であるが……流石に自前の二本の脚では埒が明かないと、美弥子は判断した。ガイオウガの火山弾の欠片で切った頬から、血を拭い取る。――それが代償だった。
「『我が内に眠る炎の幻獣、我が血を糧に今一時姿を現せ!』」
……いつもの『……なんちゃって』は、今日は言わない。美弥子の体内から、彼女特有の『燃える血液』が眩暈さえするほど失われ――代わりに、炎の翼を持った白いグリフォンが顕現する。
その姿を見た、ガイオウガの体表を駆ける炎の獣たちが、憎々しげな声を上げた。
「何故ソチラニ居ル?」
「何故垓王牙デハナク猟兵ニ従ウ?」
「裏切リ者! 裏切リ者!!」
「……色々複雑だろうけど、我慢してね? ――あなたも一緒に!」
白いグリフォンを労うように撫でて、美弥子はその背に跨った。理恵にも手を差し伸べ、引っ張り上げる。二人を乗せたグリフォンはなおも放たれる火山弾を掻い潜ってガイオウガへと迫った。
「さて……尾からどうにかするか、それとも口内のヤツか――」
「――待って下さい!」
ほぼ無意識に口に出していた美弥子へ、理恵が忠告の声を上げた。……一際高く空へと打ち上げられた火山弾が――その軌道が頂点に達した瞬間、卵から孵るように炎の飛竜と化す。翼で大気を捻じ伏せ、美弥子たちが乗るグリフォンへと牙を剥いた。
「くっ……このぉっ!!」
グリフォンの背に仁王立ちした美弥子が、『斬馬刀・白陽』と『妖刀・黒陽』を交差させて飛竜を受け止めるが、恐るべき剛力に彼女の両腕がミシミシと鳴く。加えて、放出される熱波も凄まじく、美弥子の肌はそれだけでジリジリと焦げた。
「こ、れは……ヤバい……かもっ
……!?」
押され、傷付いていく美弥子に……理恵は意を決した様子で右手の人差し指を天に向けた。
(たとえ、これで倒せなかった唯一の相手でも――再誕したばかりなら!)
「『キリング、リヴァイヴァーっ!!』」
理恵の想像力が胸の中を満杯にし……現実の世界にまで溢れ出た。具現化するは――在りし日の力。『殲術再生弾』と呼ばれた奥の手中の奥の手。
……かつて、これの力をもってしてもガイオウガは倒せなかったというが――ならばその敗北を、今こそ勝利へ変えよう。
戦場全域に降り注いだ理恵の想像力が、灼滅者……否、猟兵たちに無敵にして最強の力を付与する。
「ぅ――りゃぁぁああああああああっっ!!」
美弥子から見る見る火傷が消え、白陽と黒陽が燃え盛る飛竜を押し返し――十文字に叩き斬る。
その刹那、美弥子にも理恵にも、そして遥か後ろのアイのオベイロンのカメラにも、『それ』が見えた。微かに開いたガイオウガの顎……その奥にて動いた、その存在は……。
「――あそこに
……!!」
「解ってるっっ!!」
白いグリフォンが、全身全霊を翼に籠めて空を閃光のように走った。ガイオウガの、一本一本が塔のような牙の間を潜り抜け、その先に理恵と美弥子が捉えた存在は……。
……この、群竜大陸の炎の大地に足を下ろすそれとは、比べものにならないほど小さい……。
――だけれども、T-REXなど問題にならない程度の大きさはあろう……ガイオウガ!
それこそがこの帝竜の最大の急所なのだと、理恵は両親から聞いた話で、美弥子は本能的な何かから理解する。
「あれさえ倒せば……!」
そのことが解ったからこそ、美弥子は白いグリフォンを最大速度でそれへと突っ込ませた。……あっさり受け止められ、引き裂かれたグリフォンに心の中で詫びつつ、美弥子は白陽と黒陽を力いっぱい振り被る。
「……くそぉっっ!!」
二振りの刀は、確かに小さきガイオウガへと喰い込むが……殺すには至らない。反撃で振り払われた美弥子と入れ替わりに、理恵がバベルブレイカーを顕現させつつ突撃する。
殲術再生弾の力を巨大杭打ち機へと集束して、突き出す。
――同時刻、外でもアイが新たな奥の手を発現させていた。
「『電脳空間からリニアカタパルト展開。超伝導磁石の絶対零度への冷却確認。質量弾体を射出します!』――目標、ガイオウガ口内ですっ!!」
巨大な電磁カタパルトへと装填されたのは、ガイオウガ自身が放った火山弾の一発。拘束された炎獣が怒りの声を上げるのに耳を貸さず、アイはトリガーを引いた。
「自分の火山弾、受けてみるのですねっ! ガイオウガかダイオウイカか何だか知りませんが――甘いですねっ!!」
音速を超過したアイの一撃が、ガイオウガの頭部を激しく揺らす……。
――アイが生んだ一瞬の隙が、ガイオウガの急所へと理恵のバベルブレイカーを届かせた。
「慄け、今宵はアナタが串刺しです!!」
射出された杭が、小さなガイオウガの胸部へと炸裂して……。
「……足らないんですか
……!?」
……それは、確かにガイオウガの急所へ傷を刻んだが――撃破するには至らない。
この巨大な帝竜の命を取るには……届かない!
「……今は退くしかないよ!」
「父さん……母さん
……!!」
後ろ髪引かれる思いで、美弥子と理恵はガイオウガの口から身を躍らせた。
……この恐るべき帝竜と猟兵たちの戦いは、まだ始まったばかりである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ルルティア・サーゲイト
【チーム:SB】
ガイオウガ、忘れもするまい。妾は貴様に敗北した……一団を率いた者の一人として。その後の決死戦も壮絶であった……あのような戦いは繰り返すべきでない。かつての灼滅者として、今は猟兵として。必ずや貴様を討ち取る。
「と、言う訳で対策は任せる。攻撃は任せよ」
先制攻撃対策は仲間に委ねる。妾はただ単純に、その首を頂いていく。
「死の閃きにて永きを断つ、すなわち死閃永断衝!」
その場にあるなら斬れる。それが火山弾だろうが、超高熱溶岩流だろうが。
「一閃で死なぬなら、死ぬまで斬り続けるッ!」
あの時は使えなかった切り札の半人半混獣の真の姿を晒し、今度こそ討ち取る!
メルティア・サーゲイト
【チーム:SB】
「任された、が任せはしねェ」
私も姉妹が世話になったようだしなァ。
「生半可な冷気じゃ効きもしねェだろうが、液体ヘリウムを詰め込んだ特製極低温弾頭を無効化出来る程デタラメじゃあねェだろォがッ!」
両手二挺のリニアレールカノンに極低温弾頭を装填、全身の火口から吹き出す火山弾を狙い撃ちにして撃ち落とす。
「こいつも持ってけ!」
両脚両肩のハードポイントに同じく極低温弾頭の五六連ミサイルランチャーを装備。落としきれなきゃこっちで補足して追尾弾、んでもって一斉発射の乱れ撃ちって所か。
「確かに、隙は作ったぜ!」
決定打には足りんだろうなァ。だが、一瞬でも極低温で制圧してやるぜ。
フォーネリアス・スカーレット
【チーム:SB】
「知らん。どの道オブリビオンは皆殺しだ。ドーモ、ガイオウガ=サン。オブリビオンスレイヤーです」
どんな相手だろうが必ず殺す。その為の挨拶だ。
メルティアの奴が隙を作る事に成功したら一気に距離を詰めて脚を斬り体勢を崩す。無論、その後も死ぬまで斬り続けるが、ルルティアは防御を捨てたか……なら、その援護はしてやる。
「その場にあるなら斬れる、確かにその通りだ」
私は落ちた炎の獣に対処する。垓王牙炎操も使うならそちらも斬り殺す。私も炎を使うからな、熱には強いつもりだ。
私の刀は元から使い捨てだ。無尽の鞘から何本でも鞘ごと出せる。一本で倒せぬなら千本の刀を使い捨てででも殺す。
紅月・美亜
【チーム:SB】
「むしろ、私を守って欲しいのだが」
こっちはか弱いんだぞ。メルティアの操縦席にでも勝手に入っておこう。乗り心地の悪さにもいい加減慣れた。
「では往くぞ。Operation;ASTERISK、発令!」
蒼星の改竄者でルルティアのアシストだ。現実改竄装置の力なら氷属性弾を撃つ位の事はする。火山弾をロックオンして無数の氷属性ビットを展開して張り付かせ、鋼鉄大剣で斬る。
「どうだ、私の腕も悪くはあるまい。今回は力押しだ」
ビットは張り付いた相手の動きを鈍らせる働きがある。少なくとも、原作では。
「トドメは譲ってやる、決めろ」
本体がビット間を高速移動して放つ斬撃乱舞で削りは入れるがな。
グリモアベースから、群竜大陸の火山地帯へ……。
グリモア猟兵の能力で転移させられる最中、ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)は深く、本当に深く息を吐き出していた。
その脳裏に、いつかの在りし日の記憶が鎌首をもたげる。
「……ガイオウガ、忘れもするまい。妾は貴様に敗北した……一団を率いた者の一人として」
一つの街が、裂けた大地より溢れた溶岩で呑み込まれた様を……ルルティアは忘れることは出来ない。
「その後の決死戦も壮絶であった……」
数多の戦友たちが、身体と心に癒し切れぬ傷を負った。死した者も少なくはなく……中には死体すら残らなかった者も居る。
「あのような戦いは繰り返すべきではない。かつての灼滅者として、今は猟兵として。必ずや貴様を討ち取る」
過ぎ去りしいつかと、ここにある現在へ、ルルティアは勝利を誓って炎と熱に塗れた戦場へと降り立った。
「――と、いうわけで対策は任せる。攻撃は任せよ」
ルルティアの指示に、今の彼女が率いる『装攻機傭兵団 ストライクバック』の面々が応じる。
「任された、が――任せはしねェ」
太い腕と脚を備えた、武骨なパワードスーツ……それの胸部へと搭乗した銀髪赤眼の娘が雄々しい口調で返した。メルティア・サーゲイト(人形と鉄巨人のトリガーハッピー・f03470)……実のところ、パイロットに見える女性は生体ユニットであり、本体はパワードスーツの如きゴーレムユニットの方であるという。
そのメルティアの本体の操縦席へと紛れ込み、ぶつくさと文句を言っている少女が一人……大いなる始祖の末裔 レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット――もとい、紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)だ。
「むしろ、私を守ってほしいのだが」
こっちはか弱いんだぞ……と主張する美亜を、メルティアの生体ユニットは邪魔そうに見遣る。
そんな軽口を叩き合っている内に、戦端は開かれた。彼方に立つ――それでもデタラメな巨大さであることが解るガイオウガが、身体を震わせて咆哮を上げたのである。巨竜の様々な部位から火柱が上がり、山なりの弾道を描いてストライクバックの一同へと迫るのは……火山弾。
美亜もその内に抱えたメルティアが、真っ先に飛び出した。
「生半可な冷気じゃ効きもしねェだろうが――液体ヘリウムを詰め込んだ特製極低温弾頭を無効化出来るほどデタラメじゃねェだろォッ!!」
メルティアが本体の両手に携えた二挺のリニアレールカノン、それの長大な砲身が稲光を帯び――次から次へと轟音を鳴り響かせた。音の壁を破る速度で飛んだ弾体が飛来する火山弾を一つ一つ正確に撃ち抜き、蒼白い凍気を振り撒いて凍結させる。-269℃という驚異の低温を誇る液体ヘリウムを内在した砲弾は、弾かれて落下した火山弾がガイオウガの眷属たる炎の獣へと変じることを許さない。
「美亜、舌噛んでねェかァ!?」
「乗り心地の悪さにもいい加減慣れた」
メルティアのおどけるような気遣いに鼻を鳴らし、美亜はユーベルコードを高めていく。
「では往くぞ。『Operation;ASTERISK』、発令! 『星の改竄者よ、宿命の剣で全てを斬り裂け!』」
美亜の胸の内で想像された人型起動兵器が、空想の枠を踏み越えて現実へと招来した。赤く焼けた大地を蹴り付け、メルティアよりもさらに前に出たその機体は、メルティアの放った液体ヘリウム弾にも負けぬ冷気を帯びた弾丸を射撃兵装より吐き出す。
今なおガイオウガより撃ち出され続ける火山弾が、射落とされ、氷漬けになり、炎獣となる前に沈黙した。
「どうだ、私の腕も悪くはあるまい」
堂々と言ってのける美亜。彼女とメルティアの奮闘で、ガイオウガからの先制攻撃は凌がれた。それを見て取った瞬間、フォーネリアス・スカーレット(復讐の殺戮者・f03411)は鎧兜に包まれた我が身を前へ、前へと進ませる。――ガイオウガ目指して。
彼女(彼女なのである)にも、ルルティアと同様に退けぬ記憶があるのか?
「――知らん。どのみちオブリビオンは皆殺しだ」
オブリビオンは殺す、ただ殺す、必ず殺す。誰が呼んだか『オブリビオンスレイヤー』。フォーネリアスにとっては、視線の先にそびえる帝竜も、アックス&ウィザーズで途方もない数が狩られたゴブリンも、オブリビオンという意味で同列だ。
フォーネリアスの背を追ってこちらも駆け出したルルティアを見送り、メルティアと美亜は一拍の間を置いて再び火山弾をばら撒き始めたガイオウガの行動に目を細める。
「おいおい、馬鹿の一つ覚えかァ? ――ッッ!?」
「デカい割に脳みそは小さいと見え――違うまずいぞ!!」
メルティアと美亜が目を丸くした。こちらではなく、ほとんどガイオウガの真上へと飛翔した新手の火山弾は――空中で砕けて炎の飛竜へと変貌したのである。明確な意思をもって空を舞うそれらが、フォーネリアスとルルティアを目指した。
「ちィッ
……!!」
メルティアは液体ヘリウム弾頭での狙撃を試みるが――先程の火山弾とは違い、炎の飛竜たちは翼を羽ばたかせて鮮やかに回避してみせる。いくら速くとも、単純な直線軌道のリニアレールカノンの弾では、当たらない。
「なら――こいつを持ってけ!!」
メルティア(本体)の両肩、両脚のハードポイントに装着されたミサイルランチャー――そのサイロから蜂の巣をつついたかの如くミサイルが飛び出していく。一発一発の威力はリニアレールカノンに劣るものの、こちらも液体ヘリウムを満載し、かつ複雑な軌道を描いて炎の飛竜たちへ殺到した。
……何体かは撃ち抜き、凍り付かせる。けれど、全ては墜とせない。
「残りは私が何とかしよう」
美亜の想像力は伊達ではない――空想から現実へと具現化した人型機動兵器は、そのボディからより小さい機動兵器の群れを解放した。蜂か、蜻蛉か。飛翔能力に優れる昆虫のように縦横無尽の飛行を見せたビット群は、瞬く間に飛竜の炎の身体へと張り付く。そして、極北の如き冷気を放出した。
「ガァァッ! 忌々シイッッ!!」
「猟兵共ッ、忌々シイッッ
……!!」
「今度は力押しだ」
それによって動きが鈍った飛竜たちを、鋼鉄大剣を構えた人型機動兵器が撫で斬りにしていく。
「確かに、隙は作ったぜ!」
「トドメは譲ってやる、決めろ」
メルティアと美亜の声に背中を押され、ルルティアはより疾走を加速させた。
その前を進むフォーネリアスは、いよいよガイオウガの絶壁の如き巨脚へ肉迫しようとしている……。
「ドーモ、ガイオウガ=サン。オブリビオンスレイヤーです」
どんな相手だろうが必ず殺す――その為の挨拶を口に出し、フォーネリアスは腰の刀に手を掛ける。鯉口を切った瞬間、微かな火花が散って……。
「『コツを掴めば誰でも出来る』」
――稲妻でも切り落とせそうな速度で鞘走った斬撃が、ガイオウガの片脚と衝突、激音を上げた。ガイオウガの脛の部分に小さく……本当に小さく線が走り……次の瞬間、そこから亀裂が四方八方へと走って、崖崩れのような鳴動が巨竜の脚で連鎖する。
「その場にあるなら斬れる、確かにその通りだ」
耐え切れぬようにガイオウガが……その巨体が膝を突いた。それの分だけ少しだけ低くなった、だけれど未だ山のような帝竜を、ルルティアが駆け上っていく。
すれ違い様に視線を交わし合ったフォーネリアスは、兜に覆われた頭を振った。
「ルルティアは防御を捨てたか……なら、その援護はしてやる」
二太刀目――再度の『電磁居合斬り』をガイオウガの膝の辺りに叩き込むフォーネリアス。……それにて手にした刀は折れ飛んだが……。
「構うものか」
如何なる武器でも収納出来る不可思議な鞘――『無尽の鞘』より予備の刀を引っ張り出し、三太刀目の構えを取るフォーネリアス……だったが、それを抜くよりも先に、上から炎の獣たちが降ってきた。
「ヨクモ垓王牙ニ傷ヲ!」
「許セヌ! 許サヌゾ猟兵!!」
「死ヲモッテ償エ!!」
「……死ぬのはお前らだ」
三度目の電磁加速抜刀術は、炎の獣たちへ。火の粉を撒き散らして倒れるそれらの向こうからは、より多くの炎獣たちが駆け込んでくる。
数の暴威を真っ向から受け止める姿勢で、フォーネリアスは淡々とうそぶいた。
「私も炎を使うからな、熱には強いつもりだ。私の刀は元から使い捨てだ、無尽の鞘から何本でも鞘ごと出せる」
言葉通り、噴き付けられる炎に揺るがず、両手に握った刀をへし折りながら炎獣の群れを狩っていくフォーネリアス。
「一本で倒せぬなら千本の刀を使い捨ててでも殺す。必ず、確実に、絶対に殺す」
兜のスリットの奥で赤い眼を爛々と輝かせ、オブリビオンスレイヤーは死地を闊歩する……。
――フォーネリアスが炎の獣たちを引き付けてくれたおかげで、ルルティアの道程は驚くほど順調だった。時折現れる残りの炎獣を大鎌で斬り伏せ、時々ガイオウガの体躯自体にも斬痕を刻み、ルルティアが目指すのは巨竜の頭部。
……そこの顎の中に『それ』が居ることを、彼女の記憶は知っていた。
やがて……本当に登山のような長い時間を掛け、ルルティアは目的地へと辿り着く。遥か眼下でフォーネリアスが戦っていた音は、最早聞こえない。ビット間を高速移動してガイオウガの腹の辺りに突っ込んだ美亜の想像の人型機動兵器が、嵐のような斬撃を最後に消え失せたのは見届けていた。
「……妾はただ単純に、その首を頂いていく」
ガイオウガの口腔内へ侵入したルルティアは、そこが玉座の間であるように佇む恐竜の如きサイズのガイオウガを見据えた。
「『死の閃きにて永きを断つ、すなわち死閃永断衝撃!』」
遠心力を乗せるだけ乗せた大鎌が、旋風と化してガイオウガの急所――『垓王牙焔炉』を襲う。
「その場にあるなら斬れる! それが火山弾だろうが超高熱溶岩流だろうが!!」
ガイオウガそれ自体のように、しかしサイズに見合った火山弾を、溶岩流を放ってくる相手に、ルルティアは宣言通りの鎌技を披露した。その流れのまま、鎌刃が小さきガイオウガの表面を撫でる。……浅い。
「一閃で死なぬなら、死ぬまで斬り続けるッ!」
敵の放つ炎に、本体よりは小さいとはいえこちらよりも遥かに大きい体躯を利用しての重撃に身を傷付けながら、それでも一歩も引かずにルルティアは気炎を上げ続けた。
……『あの時』は使えなかった力さえも振り絞りながら、強くも繊細な戦士は死の舞踏を宿敵と踊り続けて――その時は来たる。
「……ッッ!?」
「どうなったんだ!?」
「解らん――いや
……!!」
ガイオウガの足元で今なお湧き出る炎の獣たち相手に奮戦を続けていたメルティア、美亜、フォーネリアスは、遥か上のガイオウガの顎から、火炎を羽衣のように纏ったルルティアが吐き出されたのを目にする。意識の無い様子の彼女を睨め付けていたガイオウガの双眸から、燃えるような光が消え……。
「「「……いや
……!?」」」
――否、輝きが失せようとしたガイオウガの眼に、再度火が灯った。大気を破るような咆哮を上げ、炎の帝竜は再び立ち上がろうとする。
「……ルルティアを回収、退くぞッ!!」
「殿は引き受けた」
「……クソがっっ!!」
僅かに、届かなかった――ストライクバックたちが撤退に移る。
……ガイオウガの口腔内では、一度は確かに息の根が止まった……そうだとルルティアが確信したガイオウガの急所たる焔炉が、周りに集まってきた炎の獣たちより炎を分け与えられ、再生しつつあった。
一度はルルティアの鎌が届いたかに見えたガイオウガの命脈は――まだ絶たれてはいない……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
フレミア・レイブラッド
【高速詠唱、属性攻撃、全力魔法】凍結の魔力弾で敵の炎を迎撃。更に霧と水の魔術で高温環境化で水蒸気により目晦ましでUCの隙を作るわ。
【ブラッディ・フォール】で「生み出すことを許さないというならば」の「イーギルシャトー」の力を使用(竜の翼や尾が生えた姿へ変化)
【白銀の世界に君臨す】の絶対零度ブレスで攻撃しつつ、自身に有利な領域を作成し、逆に敵に有利な地形を潰す。
更に【世界を絶つ氷翼】の「周囲に存在する熱を代償にする」特性を逆手に取り、敵の炎や炎獣、溶岩流等から熱を奪う事で無力化させ、氷翼の刃とブレスで追い詰めて行くわ
…流石の力と威圧感よね…。悪いけど、搦め手でもなんでも使って全力で倒させて貰うわ!
ジル・クリスティ
今度の帝竜は、でかいうえに熱いと来たかっ
ほんと、この世界、私の種族の故郷のくせに、私の種族に不利過ぎない?
色々と、大きさとか!
何て愚痴ってばかりはいられないね
飛んでくるのが火山弾なのか炎の獣なのかは知らないけども
来るとわかってるなら、とにかく回避に専念するよ!
鎧装の出力全開で超高速で飛びまくってね!
そのでかい図体で、私みたいな高速で動く小さい的、狙いきれるかなっ?
…一瞬でも気を抜いて、僅かでもかすったら私なんかひとたまりもないから必死で逃げるわけだけど!
そして回避して回避して高速で火山弾の間を縫うように飛びまわしながら隙を窺って
チャンスと見たらハイパーメガバスターを出力全開
撃ち抜いてあげる!
備傘・剱
デカい蜥蜴だな
こいつは食いでがあるそうだ
高温には水ってな、オーラ防御全力展開と青龍撃発動
炎弾
高速移動で回避して、できそうにない弾には水弾と念動力で軌道を変えて被害を逸らすぞ
溶岩流
オーラ防御と水弾で高温やわらげつつ、空中移動で回避
火炎耐性も全力で展開するぞ
炎操
水弾と衝撃波、誘導弾、呪殺弾と一足りないのダイス攻撃で相殺を図るぜ
それも抜けてきた奴は爪で引き裂く
回避で来たら、接近して、鎧無視攻撃と鎧砕きを重ねた二回攻撃を胸の熱が高そうな所に叩き込んでやるぜ
ついでに、その体の肉を爪でえぐり取って持って帰ってやる
これだけデカい蜥蜴の肉だ
大味じゃなければいいんだがなぁ…
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
才堂・紅葉
恐ろしい奴ね。ビビッたわ負けだわ
威容を前に心を鎮める
「私を奴まで連れて行きなさい、蒸気王」
「蒸気王」の肩に乗り空中から接近を目指す。分厚い装甲に出来るだけの耐熱装備を重ねている。そこに私の腕を足して先制を凌ぐ。乗り捨ても覚悟だ【メカニック、火炎耐性、操縦、野生の勘、気合】
接近までの足や盾のない味方がいれば協力したい
「コード・ハイペリア!!」
接敵後、真の姿の【封印を解き】UCを発動する
蒸気王を送還しステゴロだ
熱及び火山弾は纏った超重力場で防ぎ、あるいは廻し受け【オーラ防御、グラップル】
獣は力と飛翔速度で振り切り、本体の芯まで響かせる超重力打撃で勝負する【怪力、属性攻撃、衝撃波、頭突き、激痛耐性】
火奈本・火花
「精神を汚染する邪神とは違う……これは、災害そのものに近い暴威だな」
■先制対処
はっきり言って相性は最悪か
機動部隊も、ヤドリギも、私の武器も、こんな暴力の塊を真正面から相手にするようには出来ていない
似た形状の炎なら相応の巨体だろう
炎の光で出来る影の『闇に紛れ』た『忍び足』で、足元を縫って本体に近付けないだろうか
近付くほどに環境は灼熱だ。『激痛耐性』でも耐えきれるものではないだろうし、『早業』でなるべく早く動きたいな
■戦闘
射程範囲まで近付けたら
我々の技術を信じて『クイックドロウ』で記憶消去光を投光する
記憶を消せれば最善、『目潰し』でも出来れば良しだ
他の猟兵に繋げられればそれで良い
■
アドリブ、絡み可
紅蓮の帝竜・ガイオウガとの戦いは、猟兵たちにとって壮絶な死闘となっていた……。
――在りし日の闇を灼き滅ぼす勇者たちにとって、そうであったように。
その戦いを存じぬ猟兵たちとて、ガイオウガの脅威を肌で感じ取っていた。
「今度の帝竜は、でかい上に熱いときたかっ」
ガイオウガが雨あられと降らせる火山弾の中を、ビュンビュンと飛び回る小さい……本当に小さい影が一つ。ジル・クリスティ(宇宙駆ける白銀の閃光・f26740)は、銀のツインテールを右へ左へとなびかせながら、口早に文句を紡ぐ。
「ほんと、この世界……私の種族の故郷のくせに、私の種族に不利過ぎない!? 色々と、大きさとか!」
ジル自身はスペースシップワールド育ちだが……確かにガイオウガ、それに女禍やガルシェンまで目にすれば、彼女の言いたいことも良く解る。とはいえ、現在ジルは、その『小ささ』故にガイオウガの攻撃を凌げているのだ。
これ以前の猟兵たちとの戦闘からも解る通り、ガイオウガの火山弾は狙いが割と大雑把なのである。装備した鎧装の出力も全開にして飛び回るジルのような小さい的を、正確に狙えるものではなかったのだ。
「……一瞬でも気を抜いて、僅かでも掠ったら、私なんかひとたまりもなさそうだけど!」
ジルのその考えは事実であり……そして、彼女の命を奪いかねない隙だった。ジルが回避した火山弾――それが着弾と同時に炎の豹と化し、フェアリーの鎧装騎兵へと襲い掛かる。
「……あっ――」
自分に迫る燃え盛る爪に、ジルは息を呑んで……。
「――行きなさい、『蒸気王』」
その爪を、白い蒸気を噴き上げながら進む武骨なゴーレムの腕が弾いた。さらに、それの肩に乗った才堂・紅葉(お嬢・f08859)がアサルトライフルより放った冷凍榴弾で、炎豹自体も沈黙する。
「……あ、ありがとう」
「お礼はいいです。この段階でこちらの戦力が減ったら、本当に倒せなくなりそうだから……」
猟兵である以前に歴戦の傭兵である紅葉は、冷静にこの戦場における彼我の戦力を分析していた。……その眼差しは、まだ遥か遠いガイオウガから逸らせない。
(……恐ろしい奴ね。ビビったら負けだわ)
紅葉の知り合いがその技術を駆使して造り上げた、大きい、重い、強いと三拍子揃った傑作ゴーレム……蒸気王。今はただでさえ分厚い装甲に、幾重もの耐熱装備を重ねていた。――が、先の豹の炎の爪を受け止めた左腕は、既にだらりと下がったまま動かなくなっている。……このゴーレムで、果たしてどれだけガイオウガへと近付けるか……?
(乗り捨ても覚悟の上よ……!)
再び降り始めた火山弾の驟雨の中を、紅葉とジルは表情を引き締めて突き進む。
彼女たちとは別の方向からガイオウガへ駆け出した猟兵も居た。備傘・剱(絶路・f01759)である。……色黒の顔に浮かんだ表情も、ジルや紅葉と違い不敵なものだった。
「デカい蜥蜴だな。こいつは食いでがありそうだ――ちっ
……!?」
しかし、即座に不敵な表情は苦々しげなものに変わる。ガイオウガの片脚が、丸々溶岩流へと変じたのだ。……先の戦闘で、とある猟兵から相当な痛痒を与えられていたからだろう。そのまま歩行や直立に使うよりも、猟兵の迎撃に用いた方が有効だと判断したようだった。
「くそっ
……!?」
溶岩流の速さと熱量も然ることながら、そこに『脚』の特性も残っていることが致命的であった。溶岩の流れに合わせ、大地が鳴動する。踏み締める地面の不安定さに、剱の走る速度が目に見えて落ちた。――そこに迫る、マグマの奔流……。
「舐めるな! 『天よ、祝え! 青龍、ここに降臨せり! 踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!』」
この一帯のなけなしの水分を掻き集め、剱の身体にそれを凝縮させた爪と牙が纏われる。次いで、さらなる加速を見せた剱の両脚が空中自体を蹴り付け、溶岩流を跳び越えた。……やり過ごした溶岩が流れる向きを180度変えて追い掛けてくる気配を感じたが、彼にはそれを待っていてやるつもりは毛頭ない……。
「……引き離して一気に肉迫するぜ……」
火炎耐性を全力で籠めたオーラを、限りなく防御に回しても滝のように流れ落ちる汗に、剱は帝竜の力の大きさを改めて噛み締めるのだった。
だが、帝竜の力の大きさを本気で噛み締めたのはこちらだったかもしれない。――ガイオウガに酷似した形の炎が、群れ成して襲来した地点である。
その地に立つ二人の猟兵の一人、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は本気で絶叫を上げていた。
「いくら何でも限度があるでしょう!?」
……何せ、彼女たちに向かって駆けてくる、本体と比べれば大分小柄なガイオウガたちは……それでも100m以上の身の丈を誇っていたのだから、揃いも揃って。
UDCアースの日本の某名作アニメで、世界を焼き尽くした巨大なる神の兵士のようだった……。或いは、初代からシンまでの特撮の怪獣王の揃い踏みか?
「精神を汚染する邪神とは違う……これは、災害そのものに近い暴威だな」
スーツの袖口に点いた火をはたき落とし、火奈本・火花(エージェント・f00795)は悩ましげな顔をする。そもそも――彼女はガイオウガと極めて相性が悪かったのだ。火花が率いる『四葉のクローバー』という機動部隊も、銃や鋼糸といった武装も、何より……その身に宿すヤドリギの如き異形の植物も、ガイオウガのような暴力の塊と真正面から戦う為のものではない。
必然的に、この場はフレミアが鍵となる。
「このわたしがここまで働く羽目になるなんて……!」
彼女の口から紡がれる呪文は、速過ぎて既に人間の聴覚では聞き取れない。前方に突き出された手のひらを中心に、蒼、白、銀の色を湛えた魔法陣が加速的にその大きさを増していった。――そこから迸るは、凍結の魔力。豪雨のようにガイオウガ型の超弩級の炎を打ち据えたそれは、彼の軍団の足を鈍らせると同時に水蒸気爆発を引き起こした。濃霧のように蒸気が立ち込め、フレミアを、火花を覆い隠す。
(考えていた策とは、若干違いますが――)
白い闇のような霧に忍び足で紛れ、火花は炎の巨竜たちをやり過ごして進む。フレミアもまた、この隙に乗じて『奥の手』を発動させたのであった……。
「『骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!』」
……水属性といえば、彼もそうである。――剱。スピードに長けた彼は、今回の猟兵たちの中では最も早くガイオウガへと到達していた。
「間近で見ると本当にデカいな……!」
溶岩流から戻した脚も使い、直立し直した帝竜は、体高だけで1000mは確実に上回っていた。前屈気味な姿勢や尾の長さも考えれば……驚異の大きさである。女禍と良い勝負、体重ならば間違いなく上……納得であった。
ただ、だからこそ、ガイオウガの許へ到着しても、剱の狙いたい部位が遠い。
「あそこまでよじ登るのか
……!?」
ガイオウガの胸部、一際熱が高そうに見える部位。舌打ちしつつ、剱は改めて一歩を踏み出す。
そこに、何かが崩れる重々しい音が響く。……全身を融解させ、ついに力尽きた蒸気王。それから飛び降りるが早いか、ガイオウガへと疾駆を開始した紅葉。
――彼女の姿が、一歩ごとに変容していく……。
「コード・ハイペリア!」
『コード:ハイペリア承認。出力限定解除ランク100』
ケブラージャケットを脱ぎ捨てた紅葉の背中に、彼女が真の姿となった時と同じ紋章が輝いた。続けて重力を無視するようにふわりと浮かび上がった紅葉が、一瞬で剱を追い越し、ガイオウガの頭部目掛けて小さくなっていく。
「……凄ぇな」
驚嘆の顔で、剱は紅葉を見送った。
紅葉は飛翔の速度を落とさず、頭からガイオウガの顎へ衝突する。スーパーヘビー級の帝竜の頭部が、その衝撃で跳ね上がった。晒された喉元に、ミサイルの如き紅葉の拳が突き刺さる。……それでも、だ……。
「……硬い……!」
紅葉の秘める超絶的な力の一端を発露させるユーベルコード・『ハイペリアの姫』。この姿になり、超重力の力場を纏うようになった紅葉が、体内へと浸透する系統の打撃を打ち込んでいるのに……ガイオウガに対する手応えは悪い。それに加え……。
「……っっ!? 重いっっ
……!!」
反撃とばかりに横に振られたガイオウガの上顎が紅葉へ激突。彼女をあっさりと吹き飛ばす。
大きさの問題もあるのだろうが……超重力場に包まれてなお、紅葉とガイオウガにはそれだけの馬力の差があるのだ……。
だからこそ――この援軍は大きい。
今の紅葉と同等の速さで、白銀の竜の翼を生やしたフレミアが乱入した。その口から吐かれたブレスが、ガイオウガの鼻先を蒼氷色に染める。不愉快そうに顔を振ったガイオウガが、さらに身を捩った。周囲の気温が……ガイオウガという圧倒的な熱源があるにもかかわらず、急速に下がっていく……。
「わたしの『ブラッディ・フォール』は、過去に戦ったオブリビオンの能力をこの身で再現するものよ。ダークセイヴァーで討ち取った『白竜の異端神イーギルシャトー』の力……あなたにとっては天敵よね……?」
絶対零度のブレスを放ち、周囲の温度を代償として殺戮をもたらす白き竜……。もちろん、本来のイーギルシャトーでは、オブリビオン・フォーミュラに次ぐ力を持つガイオウガに対抗出来るはずも無いが……歴戦の猟兵であるフレミアがイーギルシャトーの能力を振るうのであれば、その限りではない。
自身に痛手を与えたフレミアに、ガイオウガの眼が一段と強く燃える。それだけで、一旦は下がった周囲の気温が元に……いや、元に戻って、余計に上昇していく。
「……流石の力と威圧感よね……。悪いけど、搦め手でも何でも使って全力で倒させてもらうわ!」
灼熱の巨竜と極寒の姫竜が、赤と白の嵐を巻き起こす。超高熱と極低温を数秒ごとに行き来する大気が、この世の終わりのような悲鳴を上げた。
……なのに……それでもまだ、決定打には足りなかった。ここまで猟兵たちが死力を尽くして、それなのにガイオウガを倒すには、まだ一手足りない……。
……それを、ようやくガイオウガの足元にまで来た火花も痛感していた。荒く息を吐き、スーツの胸ポケットから『それ』を引き抜く。
「……本当に、こんな物があの帝竜に効くのでしょうか……?」
自分でも半信半疑な顔で火花は呟く。――が。
「……いえ、私たちの世界で作られた私たちの技術です。――信じましょう」
だから火花は、声の限り叫んだ。
「こちらを――向けぇぇええええええええええっっ!!」
その声は、ガイオウガばかりか、今はその体躯を登る剱を取り囲んでいた炎の獣たちの目すらも引いた。そこに迸ったのは――アンダーグラウンド・ディフェンス・コープが誇る記憶消去用ペンライトの光。普通は使われない、最大出力で灯されたその光が、この場のオブリビオンたち全ての目を灼く。
「『――何もかも、忘れてしまえ』」
……そして、彼らは止まった。
炎の獣たちは元より――ガイオウガでさえ。炎と獣の王たる帝竜はその刹那、己が一体何だったのかを見失ったのである。
――その一瞬が、勝負を分けた。
「こ、のぉぉおおおおおおおおおお~~~~~~~~っっ!!」
フレミアが全身全霊で周囲の温度を奪い取り、ガイオウガの全身が赤と白のまだらに染まる。
「ああああぁぁああああああああああ――――――――――っっ!!」
そこに再度飛翔してきた紅葉の鉄拳が、ガイオウガの横っ面を殴り飛ばした。牙が何本も折れ飛ぶ。……その隙間から見えた、T-REXサイズのガイオウガ――彼の帝竜の急所中の急所。それに、針のように研ぎ澄まされた殺意が走った。
「『ロングレンジライフルモード変形! バレル展開! エネルギー充填120%! ハイパー・メガ・バスター最終セーフティー解除! 発射!』」
ガイオウガの攻撃を避けて、避けて、避け続けながらチャンスを待ち続けていた小さき射手――ジル。彼女の全ユーベルコードが籠められた荷電粒子の帯が、垓王牙焔炉と呼ばれる存在を撃ち抜いた。
同じタイミングで、剱の青龍の爪と牙も、ガイオウガの胸部へと叩き込まれる。鎧を貫通する衝撃が、鎧を粉砕する重撃が、その部分のガイオウガの体表を打ち砕いた。
「……んなっ? こ、こいつは何だよ! 食える所が無ぇのか!?」
外殻を打ち砕いて覗いたガイオウガの中には――肉も骨も無かった。存在するのは粘度すら帯びるほど凝縮された火炎のみ。マグマのように見えてマグマを遥かに超越する熱量を発するそれが……剱の開いた穴より爆散する。
一目散に退避した剱は見た。ガイオウガが仰向けにひっくり返りながら、崩壊していくのを。他の猟兵たちも満身創痍の身体に鞭を打って全速力で離脱していく……。
……その日、その時、群竜大陸の火山地帯にて、想像を絶する大爆発が起きた。それは群竜大陸全体を激震させ、発生した爆炎は群竜大陸のどの場所からも目撃出来たという……。
成功
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