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狙われた富豪

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●――怪死する者達
「うぅむ……やはり何度見ても素晴らしい。引き込まれていく様だ」
 とある屋敷の中で、満足げに顎を撫でる男。
 その視線の先には大枚を叩いて買った、巷で評判の【幸運の浮世絵】なるものが置かれている。
 曰く、手にした者の元に幸運が舞い降りる。
 曰く、手にした者の元に財宝が集まってくる。
「後はこれを上手く利用するだけだな」
 真偽は如何でも良い。
 大事な事は【幸運の浮世絵】が手元に有ると言う事。
 催しに貸し出したり店の宣伝に使ったりと、使い道には困らない。
 いざとなれば高値で横流ししてしまえば良い。
「しかし、手放すには惜しい……」
 そうは言いつつ、男はすっかり浮世絵に魅了されていた。
 雪原と蒲、そして翼を広げる丹頂が描かれた風景画。
 何とも美麗で、それでいて力強い色使い。
 塗料に特殊なものを使っているのか、ふっと香る甘い匂いがまた蠱惑的だ。
「ふっふっふ……これは今後が楽しみだな」
 男は夜遅くまで浮世絵を眺めて酒を楽しんでいた。
 そして数日後。
 男が行方不明となり、屋敷の中から炭化した死体が一つ見付かった。
 不思議な事に、死体以外に何かが燃えた様子は無かったと言う。
 現場からは浮世絵を含めた金目の物が一切合財消えていた事から組織的な強盗の犯行と疑われているが、未だ真相は闇に包まれている。

●――影を探せ
「そんな感じに、此処最近お金持ちの人が謎の死を遂げています!」
 鼻息荒くふんすふんすと意気込む巫女、望月・鼎。
 事件のあらましが解った所で、彼女は予知の内容を語った。
「誰が襲われるとかは解らなかったんですが、敵の正体は解りました」
 一度言葉を切る巫女。
 何やら珍しく真面目なその雰囲気を猟兵達は固唾を飲んで見守る。
 たっぷり十秒は溜めて、鼎は告げた。
「忍者です。それもとびっきりの美女集団、ドスケベくのいち軍団です……!」
 果たしてそれを聞いた猟兵の心中や如何に。
「いえ、単に格好がえっちぃってだけ何ですけどね。特殊な匂いのする塗料を使っている風景画を幸運の浮世絵として売り、後日匂いを辿って買った人の家を襲撃してお金を頂いているみたいです。資金難ですかね?」
 妙に世知辛い考察だ。
 とは言え相手の正体が解っているなら話は早い。
「皆さんは如何にかしてその忍者達を探ってください。絵を売った商人を調べるとか、絵を知る人に話を聞いてみるとか、その辺はお任せします。後は……そうですね。結構大所帯だったみたいなので、その辺を考慮してみると意外な発見が有るかもしれません」
 どうか宜しくお願いします、と鼎は腰を折った。


一ノ瀬崇
 くのいちってえっちですよね。
 一ノ瀬崇です。

 今回はくのいち軍団が相手となります。
 一章は情報収集。
 二章は集団戦。
 三章はボス戦です。

 シリアスになるかギャグになるかはプレイングを見て決めようと思います。
 多分シリアルか尻ASSか製糖派シリアスになると思います。

 どうぞ宜しくお願いします。
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第1章 冒険 『幸運の浮世絵』

POW   :    歩き回って手がかりを探す

SPD   :    関係者に聞いて回る

WIZ   :    絵の出所を調べる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

モルツクルス・ゼーレヴェックス
【WIZ】
「さて、捜査は足と……お色気っすね!!」

【世界知識】と【情報収集】を持ってすれば幸運の浮世絵を捌いた業者を探せるっす!

見つけたら誠意とお色気と黄金色のお菓子(カステラ)で交渉っす!
【存在感】と【礼儀作法】と【コミュ力】が火を吹くっす!

さあ、くの一とのアレやコレを洗いざらいネットリヌッポリ吐いてもらうっすよ!

何時何処で接触したか!
香料について!
金に対する態度!
どれくらいの数か!どれくらいドすけべだったのか!
えっちなサービスは有ったのか!

キリキリ吐けい!

……さもないと

「「「自分がセクハラしちゃうっすよ?」」」

増えるモルツクルスによるお色気拷問術を披露するのもやぶさかでないっすよ!!



「さて、操作は足と……お色気っすね!!!」
 午前十時頃。
 朝の慌しさを越えて一段落した時分に一人気合を入れる男。
 ぎょっと目を見開きそそくさと足早に避けていく人の視線を物ともせずに、モルツクルス・ゼーレヴェックスは燃えていた。
 今回の事件を聞くや否や、真っ先に現場入りしたモルツクルス。
 その本心は謎に包まれているし、今後も謎に包んでおくのが賢明だろう。
 何処か上機嫌なまま彼は聞き込みを開始する事にした。
 幸いにも幸運の浮世絵の噂で今は持ち切り。
 やれ富を得る為に皆が血眼になって探しているだの、やれ実は破滅を呼び寄せる呪われた品だの、やれ手にした者は浮世絵に惹かれて現れた天女としっぽりやったに違いないだの。
 玉石混交、と言うよりは年末の福引さながらの石の多さである。
 とは言え流石は猟兵。
 情報の捌き方も心得ており重要な所はきっちり押さえる。
 南方から来る行商人が扱っている事が有るとの話を聞き出したモルツクルスは、早速その行商人を探し回る。
 丁度今日露店を開いているらしい。
「さあ、くの一とのアレやコレを洗いざらいネットリヌッポリ吐いてもらうっすよ!」
 意気揚々と向かった先、珍品雑品何でもござれと言った風に荷物を並べている男を見付けた。
 話し掛けてみると、彼が目的の行商人らしい。
 先ずは黄金色のお菓子ことカステラを振る舞い、誠意を持って丁寧に聞き出していく。
 甘味に心を絆されたのか、彼は快く教えてくれた。
「あの浮世絵かぁ。余り詳しい事は知らんが実の所、書いているのは滅法美人なお方らしい。何でも身体が弱く人前に出られないから、御付の方が身の回りの世話をしているんだと。それで手慰みに絵を描いたりするが、これがまたお上手。折角だから売って生活の足しにしようと、おいらの所に持ってきたのが始まりって訳よ。まぁおいらんとこ以外にも売ってるみたいだし、他の奴に聞いても良いかも知れんな」
 ふむふむ、とメモを取りながら聞いていたモルツクルスは男に礼を言ってその場を後に……しようとして踵を返し、声を潜めて男に尋ねた。
「ちなみに、その際にこう、高く買ってくださいねと、役得みたいな事は」
 男は周囲に目を走らせ、静かに答えた。
「そう言うのは無かったが、絵を持ってきた御付の女中な……凄かったぞ」
「凄かったとは」
「あぁ。余り男慣れしてないのか警戒心が薄くてな。袷の間からこう……ぶるんっと」
「ほうほう」
 ニヤケ顔で何やら語り合う男二人を、鴉が阿呆、と鳴いて見下ろしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

月代・十六夜
「なるほど、ある程度の予測はついた。流石モルツクルス君」
「回収ができればベストなんだけど。足取りから追っていくか」

【SPD】
現物の流通路は判明したので、こっちは【幸運の浮世絵】の噂の出処が何処かを行商人や一般人から聞き込みをしよう。
できれば実際に幸運になったという人物を見つけられればいいが、そうでなくてもある程度の出処までは探っていけば、「幸運の浮世絵について探っている第三者」と相手が警戒してくれればヨシ。実力行使に来られたら全力で逃げを打つぜ!



「なるほど、ある程度の予測はついた。流石モルツクルス君」
 知り合いの猟兵が得た情報を耳にした月代・十六夜は必要な事以外をすっぱり思考から外して次の一手を撃つ事にした。
 浮世絵の流通に関しては或る程度解った。
 複数の行商人を介しての売買、その後誰に売るかは基本行商人任せ。
 特定の誰かを狙って、と言うよりは見込みの有る人物に届く様多方面から仕掛けるやり口。
 存外、一筋縄では行かない相手かもしれない。
「回収ができればベストなんだけど。足取りから追っていくか」
 腰を上げて十六夜は通りへ向かう。
 現物の流通路は判明したので、幸運の浮世絵の噂の出処を探ろうと言う腹だ。
 噂好きのお調子者の風体を装って人混みに紛れていく。
「そう言えば最初は誰が買ったんだろうな」
「旅籠の松吉が持ってて、祝言の費用に充てるってんで売り払ったとか聞いたな」
「私が聞いたのは問屋のトツさんからだねぇ」
 皆喋りたくてうずうずしていたのか、初耳と言った様子の十六夜に聞いた事から聞いても居ない事まで教えてくれる。
 その中で気になった、旅籠の松吉と言う人物を探す事にした。
 どうやらこの男、祝言に際して所持していた幸運の浮世絵を手放して大金を得たらしい。
 現時点で襲われずに生きている点からも、情報収集には打って付けである。
 探して数分もしない内に見付かったので早速話を聞き出してみた。
「旅籠なんてのをやってるだけあって色々と出歩く機会は多いんだが、その時はたまたま休みで昼から酒を呷ってた訳よ。そしたら隣の席に、うちのコレに負けないくらいの別嬪さんが居るじゃねぇの。物珍しさで話し掛けてみたら馴染みの行商人が腰をやっちまったとかで売りに出そうとしていた絵が捌けず、仕方無しに自分で売ろうと出て来たんだと。しかし売るって言っても如何したもんかと頭を抱えていた所に話し掛けて来たのがおいらって訳よ。これも何かの縁と買って暫く家に置いといたんだが、その絵に惚れ込んだお侍さんが金子包んで売ってくれと頼んできたのよ。丁度祝言を挙げる前だったんで金は幾ら有っても邪魔にならねぇ。喜んで譲り渡したって訳よ。そしたら何処でそれを聞き付けたのか、三日もしない内にその話で持ち切りでよぉ」
 割と話好きな男だったらしく、これまた色々と話してくれた。
 なお、話の半分以上は細君との惚気話だったので十六夜は祝う気持ち七分爆発しろと願う気持ち三分で聞き流していた。
 その別嬪さんとやらの話を詳しく聞き出そうとした所で、男は細君に引き摺られて行ってしまった。
 大っぴらに自分の自慢話をされれば恥ずかしくもなろう。
 思わぬ所で手掛かりが途切れてしまった十六夜だが、それ程の美人ならば方々で噂にもなっているだろうと思い直し、次の情報を得る為に再び人混みへ紛れて行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

神宮寺・絵里香
【WIZ】幸運の浮世絵か…。何かわざとらしい匂いがする。
まあ、女の勘だが。噂なんてものは工作しようと思えばいくらでも
作り出すことができるからな。実際に幸運になった人間を色々な
工作をして作りだして行ったんじゃねーか、コレ。
んで、工作資金が尽きたら持ち主を殺して絵と資産を回収。
次の工作スタートって感じ。
絵が評判になればなるほど、身分のいい奴につながる可能性があるし、
回収できる工作資金も増える。最終的には大名暗殺か?
ま、オレの予想というか仮説だがな。オレならこう攻めるってだけ。

実際に【幸運】になった人間を【世界知識】と【情報収集】を使って捜索。
それを辿っていき、絵の出所を割り出していく。



 幸運の浮世絵。
 町人の間ではすっかり浸透した新たな縁起物だが、傍から聞いてみると酷く胡散臭い。
 実際の効力もそうだが、何よりその噂の内容。
 手にした人物が多ければ多い程、その手の話は客観的に否定されていくものだ。
 所がこの浮世絵、関わった人間の殆どに幸運が舞い込んでいると認知されている。
 幾人かは押し入られて怪死を遂げているが、それらの人物も生前に大きな富を手にしていたとの事。
「胡散臭ぇなぁ……実際に幸運になった人間を色々な工作をして作りだして行ったんじゃねーか、コレ」
 数日前にばら撒かれていた瓦版を眺めながら、神宮寺・絵里香は三食団子を片手に文字を追っていた。
 見出しは新たに浮世絵を手にした問屋の隠居が、試しにと始めた椎茸栽培で一山当てたと言う記事。
 隣には浮世絵を買った冴えない独り身の武士が、山で足を挫き遭難していた薬売りの女子を助けた縁で嫁に貰う事になったと言う記事。
「……胡散臭ぇ……」
 何とか石のパワーで億万長者に、と言った巻末の広告と似た様なものを感じる絵里香。
 絵里香にとっては使い古された怪しい宣伝だが、此処の人々には心揺さぶられる最新鋭の売り文句なのかもしれない。
「取り敢えずは……隠居から当ってみるか。ごっそさん」
 食べ終わった団子の串を皿を茶屋の店番に返して、すたすたと歩いていく。
 武士の方は一先ず置いておく。
 その手のロマンスは平常時でも無い訳では無い。
 しかし技術が確立されていない状態での椎茸栽培は文字通りの博打だ。
 当れば儲けではなく、もう首を吊るより他無い所まで追い込まれた者が最後の賭けに出て、なお当らずに朽ちていく様な博打。
 それが椎茸栽培だ。
 少なくとも二十世紀後半相当の技術力が無ければ一発目で成功はしない。
 惚れた腫れたの空騒ぎよりも、余程介入の疑いが強い。
 そう考えて件の隠居を探し回る。
 幸運にも、まだ殺されてはいないらしく話を聞く事が出来た。
 巫女服の絵里香を見て寄進の無心かと隠居が勘違いをしたくだりは割愛しておこう。
「で、なんじゃったかいのぅ……おぉ、椎茸が出来てた時の事だったの。流浪の画家を名乗る小僧から浮世絵を買ったその日のえらい別嬪な茸売りのお嬢ちゃんが夢枕に立っててのぅ、金子を二朱くれれば椎茸栽培用の原木を売ってくれるっちゅうんで勇んで買ったんじゃよ。そんで早速原木を軒下に埋めて寝て、起きて不思議な夢じゃったと思いながら戯れに軒下覗いたら小さな椎茸の生えた原木が有ってのぅ。大慌てで懇意にしとるお侍さんの所に持って行って、買ってもらったんじゃよ。そう言えば先日浮世絵の方も買って行ったのぅ。お陰で純金の墓でも立てられそうじゃわい」
 かっかっか、と笑う隠居に軽く頭痛を覚えながら絵里香は問屋を辞した。
「どう考えても仕込みじゃねぇか……」
 浮世絵の入手先と売り渡し先の情報は得た。
 次はどちらを辿るかだが。
「武士の方は放って置いても良いか。刀佩いてんなら自力で撃退も出来るだろ」
 と言う訳で、絵里香は入手先――絵売りの小僧を探す事にした。
 そして数十分後。
 蕎麦屋で適当に摘んでいた小僧は絵里香をちびっこい巫女と侮りちょっかいを掛け、浮世絵の出所を白状する前に悲痛な叫びを上げる事となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレヴィス・デュラクシード
■心情
ん、サムライエンパイアでの初めての活動になるんだよ!
気を引き締めなきゃ

■行動
ボクは浮世絵を見た事ある誰かを探して、特殊な塗料について調査しちゃおっかな
作り方が判ればクノイチを誘き寄せる事が出来るかもだしね

と言う事でボクは早速事件の起きた屋敷近くで日向ぼっこしてる【動物さんに聞き込み】を開始したんだよ(気合で意思疎通
匂いを辿って来れるって事は匂いに敏感な動物さんなら何か知ってる!・・・様な気がするんだよね、原材料とか(気合で意思s
いざとなったら【誘惑】してでも(気合d
「ちょっとくらいなら触っても良いんだよ~」

■特徴
歩く際は腕大振り靴から効果音出そうな雰囲気
「にゃはは」と笑う気楽元気娘



「さてさてー、サムライエンパイアでの初めての活動になるんだよ!」
 気を引き締めなきゃ、と気合を入れる少女が一人。
 セレヴィス・デュラクシードは初めて降り立ったサムライエンパイアの地を珍しげに見回しつつ、かっぽかっぽと靴を鳴らして歩いていく。
 今回の事件の捜査において、セレヴィスは特異とも言える方法で情報を得ようとしている。
 浮世絵に使われていたと言う匂いの有る塗料。
 それを主軸に辿っていく。
 当然、普通の人間に聞いていては行き詰る。
 ならば如何するか。
 答えは一つ、人間以外の鋭敏な嗅覚を持つもの達に聞けば良い。
 と言う事でセレヴィスは怪死事件の起きた屋敷近くの路地で、猫を相手に聞き込みを開始していた。
 動物と話す技能が有るとは言え、気紛れな猫達から決定的な情報を引き出すのは至難の技。
 筆舌に尽くし難い喧々諤々、丁々発止の遣り取りが有った。
「あら、かわいらしいわねぇ」
「これが癒しって奴かぁ」
 町人達は、そんなセレヴィスと猫達の遣り取りを微笑ましく見守っていた。
 傍から見ると見目麗しい少女が猫達に囲まれて楽しげににゃーにゃーとやっているのだから、それも当然と言えば当然か。
 にゃーにゃー、うにゃうにゃ、にゃおんにゃおん。
 基本的に人間の使う物の名称を知らない猫達との会話は難航したが、それでも有力そうな情報を得る事には成功した。
「町では嗅いだ事の無い匂い、それも幾つかの混ざったもの」
 ふむふむと頷きながら掌を肉球でぽむぽむされるセレヴィス。
 人間よりも鋭敏な嗅覚を持つ彼らの言う事だ、恐らく間違いは無い。
 となると材料は近隣の川や山々には自生していないものの可能性が有る。
「もしかして、自然由来のものじゃないのかな?」
 謎が謎を呼ぶ不思議な塗料。
 果たしてその正体は何なのか。
 首を傾げるセレヴィスの耳に重要な情報が飛び込んできたのはその時だった。
『あぁ、あの妙な匂いか』
『知ってるの!?』
 にゃにゃっと声のした方へ顔を向けると、ふてぶてしい顔付きの太った猫が居た。
 集まっていた猫達が口々に旦那、だんにゃー、と呼び掛ける。
 此処を仕切っているボス猫なのだろう。
『アンタ、噂の猟兵ってやつなんだろう。とっとと解決してくれや。チビどもが不安がっていけねぇ』
『妙にカッコイイ……!』
『で、あの匂いか。ありゃ狐の化生が良く使ってる香の類だ。詳しい原料は知らんが、辿るなら狐を探してみろ』
 それだけを言って、ボス猫は去って行った。
「にゃにアレ、ハードボイルド……!」
 若干猫語が残ってしまった口調で、セレヴィスはボス猫の消えて行った小道を見送っていた。
 衝撃の強い出会いだったが、ともあれ情報は手に入った。
 狐の化生が扱う塗料。
 うすぼんやりとだが徐々に敵の姿が浮かび上がって来ている。
 確かな手応えを感じながら、セレヴィスは路地を後にした。

成功 🔵​🔵​🔴​

パフィン・ネクロニア
こりゃまた物騒な話じゃな。
金品目的の強盗にしては手口が回りくどいような気もするんじゃが。


狙いは富豪と解っておるし、ここら一帯の富豪の屋敷を訪問販売しながら聞き込みをして行くかの。
絵を売っている商人や、絵を欲しがっている、もしくは買った富豪の
情報でも手に入ればいいんじゃがなぁ。


ところで、ここに霊験あらたかな壺があるんじゃが一つどうじゃ?
この壺を毎晩かぶって寝るだけで長命富貴が約束され……



 風の向くまま気の向くまま。
 数多の世界を渡り歩く、自由気侭な行商人。
 パフィン・ネクロニアは様々な商品を売り捌きながら、此度の事件の被害者になりそうな富豪の元を回っていた。
 金品目的の強盗にしては手口が回りくど過ぎる。
 となれば、何らかの作為によって富豪が狙われていると考えるべきだろう。
 絵を手にしていた者、絵を売った事の有る者、絵を欲しがっている者、絵を持っている者。
 それらを回って情報を得ながら時折店に立ち寄り商談を纏める。
 偶々立ち寄った井垣屋と看板を掲げた万屋で、パフィンは次々に持ってきた商品を売り払った。
 既に商品よりも得た金の方が重い始末。
 ほくほく顔で商談を纏めたパフィンは世間話の序に話を振ってみる。
「そう言えば幸運の浮世絵なるものが出回って居るとか。わしも肖りたいのぅ」
「アレは中々に人気ですからねぇ。前回の物は此方が気付く前に買われてしまいましたから」
「おやおや、そんなに人気なのかぇ」
「それはもう。出始めた頃は兎も角今となっては持っている事自体が富を表す証となっていますからね。藩主御用達、と書かれた看板と同じですよ」
「成程のぅ……客に見せれば更なる噂を呼べる看板、同業に見せれば伝手と資産を顕示する割符となるか。しかし、それならば皆挙って探し回ろうて。苛烈な競争ともなれば安定を好む役人からは疎まれそうな気もするのぅ?」
「はっはっは、そこはお上の方々も心得ておりまして」
 軽く笑った後、少し声を潜めて商人は言う。
「此処だけの話、浮世絵の売買にはお上も一枚噛んでましてね」
「ほほぅ?」
 予想していなかった情報に、身を乗り出すパフィン。
「様々な所から入ってくる浮世絵ですが、その伝手の一つを勘定方、高岡泉内様が握って居られましてね。何でも、絵師の世話回りの一人が以前面倒を見た者の妹だとかで」
「それはまた。やはり縁とは不思議なものじゃのぅ。……しかし、何故それをわしに話したんじゃ?」
 商談を纏める前ならまだしも、終わった後で此方に恩を売るのは些か疑問だ。
 その不審を感じ取ってか、商人は鷹揚に手を振って答える。
「数日前までは影も形も無かった、異国の服装を纏った人々が浮世絵についての情報を集めています。それも如何やら自身が買う為では無く、浮世絵の出所を探っている」
 すっと細められた目が、パフィンを見抜く。
「貴女様は猟兵で御座いましょう?」
「…………」
「いえ、お答えせずとも結構。となれば、私が協力するのは当然です」
「恩を売り、今後の商いの繋ぎとするか。君、中々の商売人じゃのう」
「お褒めに預かり光栄に御座います。今後とも、手前共の井垣屋をご贔屓に」
「……まぁ、色々と高く買ってくれたからの。今後何かを売りに来るには良さそうじゃ」
 思い掛けずに次の訪問先が定まった。
 パフィンは礼を言って万屋を辞し、軽くなった背嚢を背負って歩き出した。
 向かう先は勘定所。
 詳しく話を聞き出す為に、番兵に繋ぎを付けてもらう。
「ところで、ここに霊験あらたかな壺があるんじゃが一つどうじゃ?この壺を毎晩かぶって寝るだけで長命富貴が約束され……」
 勿論、商売も忘れない。
 かわいそうに、待っている間に商売トークを聞かされ続けた番兵の一人は大層財布を軽くしたそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

時雨・零士
販売元の行商人は突き止められてるんだから、張ってればまたその女中が売りに来るだろう。

とりあえず、行商人がいる近くの茶屋か路地裏から然り気無く監視して、女中が来たら【見切り】【第六感】を使って女中の仕種や行動に気を付けながら後を着けるぜ。

場合によっては身なりを良くした上で例の浮世絵買って
、女中に是非これを書いた絵師に会いたい!支援をさせて欲しい!って申し出て堂々と着いていくのも良いかもな。金品目当てなら支援の話を利用しようとするかもしれねぇ。幸い活動資金は十分ある。

…しかし、うん…凄いのか、ぶるんっと…。それは楽しみ…じゃなかった、けしからんなぁ(鼻の下伸ばしつつ)



「じゃあ、今日はこの辺で」
「あいよー、お疲れさん。次は六日後だったかい?」
「えぇ、それくらいです。着いたらまた顔を出しますよ」
 馴染みの客と挨拶を交わして道を行く行商人。
 その姿を追って一人の猟兵が歩いて行く。
 彼は時雨・零士。
 今回の事件を探る為に、行商人を尾行して女中を探し出そうと考えていた。
 割と長丁場になりそうな選択だが、確実性は高い。
 着かず離れずの距離を保ちながら零士は行商人を追っていく。
 幸い、此方に気付く気配は無い。
 街道を行き山道を越え、畦道を渡り宿場町へ。
 行商人の入っていった宿の向かいに部屋を取り、風呂で疲れを癒し料理に舌鼓を打って就寝。
 朝風呂で寝汗を洗い流し朝食を腹に収めて再び行商人の後を追う。
 気付けば丸一日過ぎていたが、零士に油断は無く気配を薄くしながら道を行く。
(……しかし、うん……凄いのか、ぶるんっと……。それは楽しみ……じゃなかった、けしからんなぁ)
 想像を膨らませながら歩く事数時間。
 昼時に辿り着いた川辺の町で、遂に行商人と話をする女中を見付けた。
 言わずもがな、その判断材料は容姿である。
「おっほぅ」
 思わず鼻の下を伸ばす零士。
 当初は遠巻きに監視をする予定だったがこれは予定を変更せざるを得ない。
 路地に入ってパパっと身なりを整え小奇麗になった所で女中に歩み寄る。
 なお、彼の為に言っておくと浮世絵を売買していた所もしっかり押さえた上での判断である。
「もし、そこのお嬢さん」
「はい……?」
 声に反応して、振り返る女性。
 淡紅藤の小紋に白練の帯を結び、黒の髪を後ろで結い上げた、美女と呼んで差し支えない風貌。
 年の頃は十八、九つと言った所か。
 薄く紅を引いた口許が妙に色っぽい、華奢ながら艶やかな女性だ。
 頭の位置は丁度、零士の胸元。
「良い」
「はい?」
「あぁ、いや。失礼。俺は貿易商を営んでいるものだが、先程の貴女と行商人の遣り取りを偶々見掛けてね。ちらりと見させて頂いたんだが、実に素晴らしい浮世絵だったじゃないか。出来れば、俺の所でも扱わせてもらえないかと思ってね」
 こんな事も有ろうかと、金子は十分に用意してある。
 じゃらりと重みの有る袋を一つ掲げてみれば、女性は驚いたように口許へ手をやった。
 歯がむず痒くなりそうな出来るだけ紳士的でお上品な言葉を発しながら、零士は女性を淀みなく観察する。
 見た限り、妙な筋肉の付き方はしていない。
 予知で忍者が敵との情報を得ていたが、この女性は暗器を帯びている様にも、その暗器を扱える様にも見えない。
 恐らく外界との便りと情報収集を主として、疑われる事の無さそうな最も忍びに向いていない者を選んだのだろう。
「まぁ、その若さで番頭でいらっしゃいますのね!」
「まだまだ小さな店だがね。それで、如何だ?良ければあの浮世絵の絵師にも、幾らか援助する用意は有る」
「まぁ、それはそれは……!」
 顔を綻ばせて指を組む女性。
 その動作で、たわわな稔りがたゆんっ、と揺れる。
(オゥ……イェス)
 オーバーな外国人の様な感嘆の念を抱きつつ、零士は油断無く、そう油断無く女性の言葉を待った。
「それは願っても無い事です!あ、でも……確か今は筆を置いて療養に入った所でして……」
「おや、それは残念だ。会って話をしてみたかったのだが……」
 溜息を吐きつつ右の尻の筋肉を軽く持ち上げ、下ろす。
 腰元の巾着からじゃらりじゃらりと音が鳴る。
 解り易く女性の視線が揺れ唾を飲む音が聴こえ、身動ぎに合わせてたゆんっ、ぷるんっと揺れる。
 解り易く零士の視線が揺れ唾を飲む音も聴こえる。
「あ、あのっ!良ければ十日後、此処へいらしてください!その時に詳しいお話をさせて頂ければと……!で、では、失礼します!」
「え?あ、ちょっと!?」
 此処で逃すには惜しい獲物と思ったのか、彼女は懐から一枚の地図を取り出して零士に持たせた。
 そのままたたたっと走り去って行く女性。
 しばし呆然とそれを見送って、零士は地図を広げてみた。
 何やら甘い香りが広がり、近隣の地形が書かれた簡素な線が目に映る。
 一際目を引くのは山の中程に打たれた紅の丸。
 恐らく、此処が彼女達の住処なのだろう。
「こりゃ……大当たりを引いたか?」
 思わず敵本拠地の情報と言う収穫を得た零士。
 地図を畳み、大事そうに懐に仕舞い込んだ。
 他意は無い。
 他意は無いが、地図の温もりが消えるまでの暫く、零士は上機嫌だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『妖狐忍』

POW   :    魅了の術
【全身】から【魅了の術】を放ち、【幻惑】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    小刀一閃
【小刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    狐火
レベル×1個の【狐火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「…………ふむ、こんな所か」
 固まってしまった身体をぐぐっと伸ばして凝りを解す女性。
 彼女の前には大きめの机と、たった今書き上がったばかりの浮世絵が置かれていた。
 趣味が高じて売り物になり始めた浮世絵。
 それに一族に伝わる特殊な香を塗料として使い、俗世に流す。
 暫くしてから匂いを辿り、金持ちの財産を頂いて行く。
 そうして得た資金は各地で暗躍する仲間達の活動資金になったり、自分達の偶の贅沢として油揚げや稲荷寿司、甘味等に使われる。
 解り易くご褒美が貰えるとあって、配下達の士気も高い。
「ふっ……我ながら完璧過ぎる作戦だ。天は二物を与えず、と言うが如何やら私は神々の寵愛を受けてしまっているらしい。美しさとは罪だな」
 また、この作戦は配下達の婿探しとしての一面も有る。
 誠実で真面目で此方を大事にしてくれそうならば、気の合った配下の婿として更なる拠点掌握の足掛かりとする。
 まさか嫁が敵性分子とは疑わぬが故に、気付かれず水面下でひっそりと我等の支配の手は伸びて行く。
 時折、狼藉を働こうとする者は術で焼き殺しているが。
 兎も角人間共の資金と人心を着実に掌握出来る会心の一手には違いないだろう。
(これは世界を手中に収めた際に披露する格好良い構えを今の内に練習しておくべきか……!)
 姿見の前まで行き、何かしら格好良い構えを決めようとした所で、どたどたと廊下を駆けてくる配下の声が響く。
「姐さん姐さん、大変です!」
「うおあぁーっ!?急に入ってくるな急に!それと私の事は姐さんじゃなく頭って呼べって言ってるだろ!」
 驚きの余り珍妙な構えを取りつつ配下の少女に声を飛ばすが、少女は息を切らせながら怒鳴るように答えた。
「それ所じゃないんですってば!猟兵!猟兵達が攻めてきます!」
「な、なんだってーーー!?」
 齎された急報。
 まさに青天の霹靂とでも言うべき知らせに顔を青くした女性。
(拙い……腹の出た成金や顕示欲の強いへっぽこ侍しか相手にしてなかったから、うちの陣営に切った張ったをこなせる様な腕の立つ奴は居ないぞ……!?)
 工作に特化した部隊ばかり抱える自軍の構成に歯噛みする女性。
 眼前ではどうしましょうと涙目でおろおろする少女。
「…………えぇい、全員で迎え撃つんだよ!猟兵ったってこっちみたいに百人近くも居るもんかい!倒せば一日中団子でも摘みながら引き篭もっても文句を言われないだけの大手柄だ!」
「一日中、お団子食べ放題……!?」
 欲に塗れた少女の喉が、ごくりと響く。
「ほら、ボサっとしてないで出陣だよ!猟兵を倒した奴には油揚げの鍋を振舞ってやる!」
 女性の声を聞き付けたのか、意気揚々と集まり始める配下達。
 今此処に、ぽんこつくのいち大決戦の幕が開く。
クラウス・ハントハーベン
「やる気はあるようですが、少々へっぴり腰ですね。少し涙目ですし…」

くのいち達の様子から攻撃のし辛さを感じ、できるだけ傷つけないよう行動します。

UC『die Zwang(ディーツヴァング)』を発動して、くのいち達を拘束します。また同時に『錬成カミヤドリ』も発動し、操作板の分身を17個作り、この操作板でも『die Zwang』を発動させ拘束する為の手数を増やします。
拘束してもなお抵抗するようならローゼによるUC『zerschlangen(ツェアシュラーゲン)』を地面にたたき込み、周囲の地面を陥没させ脅すことで抵抗の意思を摘もうと行動します。

アドリブ・共闘大歓迎です。


アマータ・プリムス
ネロが暴れさせろとうるさいのでひと暴れさせてあげましょう。できるだけ怪我はさせない方向で鋼糸で拘束して無力化を狙います。
ネロを取り出し【範囲攻撃】で配下諸共攻撃。武器は使わせず驚かせたところを当機が【敵を盾にする】要領で鋼糸で拘束します。
いたずら好きのネロですから張り切ってケラケラ笑いながらやってくれるはずです。
拘束したら歌【属性攻撃】と【歌唱】を使って子守唄を歌って寝かしつけましょう。
こうすれば無力化できそうですね、当機は子守も得意です。
「よい子は眠るお時間ですよ」
もし怪我をした方がいればUCで回復もしておきます。

※アドリブ、連携歓迎です。自由に動かしてください


時雨・零士
あー…オブリビオンってのは解ってるし、盗みや殺しやらしてるのもわかってるが…どーにも憎めねぇ…可愛くてスタイル良い子も多いし…ゲフンゲフン…。
まぁ、それ抜きにしてもくの一の割りに荒事に慣れてそうにもねぇし戦い辛い…。

一応、降伏を呼び掛けて、戦闘突入したら即座に「変身」。
狐火や小太刀はブラスターのバーストで撃ち落とし、【見切り】で攻撃回避。
【ダッシュ】で素早く接近し可能なら【グラップル】【2回攻撃】でできるだけ怪我させねぇように意識刈り取って寝かせていくかな…可能なら更正させる。…どうしても倒さなきゃならないなら仕方ねぇが…。女の子殴るのは主義じゃねぇんだよ…。面倒みてやるからさ

※アドリブ歓迎


モルツクルス・ゼーレヴェックス
……やりづらいっすねどーも
このポンコツ具合、ほっといても勝手にポシャってくれそう、とか

「うーん……こういうとこ、ダメダメの、エゴもエゴっすけども」

オブリビオンだし、ヤってること普通に極悪だし
……手加減する理由には、ならないんすけども!

「魔なる力よ、安らぎよ、深く暗き眠りを与えよ……」

【地形を利用】すれば、【睡眠雲】を霧や靄に紛れさせての奇襲ができるはずっす!

【戦闘知識】で戦ベタくのいちを誘導して効率よく寝かしつけてやるっす
【範囲攻撃】は得意っすから、静かに、穏やかに

「……はあ、いいお婿さん捕まえて、平和にこの世を謳歌ってぇ訳には……いかないんすよねえ、きっと」

全く、オブリビオンってのは嫌いっす


セレヴィス・デュラクシード
ネズミの隠れ家み~っけた、猫に代わってお仕置きだよっ!(決めポーズ
にゃははは~!やっぱりボクは身体動かす方が好きなんだよ♪
迫り来る極悪ぼいん軍団をキックキック!両手は添えるだけ(足技主体

【ジャンプ】や【狐百まで踊り忘れず】で空中をぴょんぴょん跳ねて【空中戦】を仕掛けるよ、身軽さには自信があるセレス…ヴィスさんなのだ~♪

頭【踏ん付け】攻撃から【疾風斬鉄脚】(膝・踵何でもあり)の【二段攻撃】、時には背が低いのを利用して低姿勢で走り回って足下攻撃もね(武道着ばさばさ

刃物で斬られるのは嫌だかんね、小刀は蹴り上げ【武器受け】させて貰うんだよっ!

常用する技能:ダッシュ、見切り
※アドリブ・キャラ弄り大歓迎


ウィルトス・ユビキタス
過去を過去のままとする。それが猟兵に求められる役割。
相手がどんな姿だろうと容赦はしない。

【高速詠唱】で【先制攻撃】をしかける。
工作の余地など残さずに炎属性の津波の【範囲攻撃】で全てを焼き払おう。
オブリビオン自体は逃しても構わん。小細工さえ出来なくなればいい。
敵の反撃が来ても動かずに【二回攻撃】で【カウンター】を叩き込む。
そこまでやれば他の猟兵も動きやすかろう。

障害物を利用したいって猟兵がいたのなら……パイプオルガンでBGMを奏でよう!
UCで風属性の風を起こして音色を乗せるぜ。
戦闘が良い感じになってきたらボーカルも乗せて雰囲気アップだ!
演奏中に襲われたら、「うるせー!俺の歌を聴けー!」


月代・十六夜
「俺が言うのも何だけどもうちょっと真面目にやれよ!?」
「その物騒な得物、戴くぜ!」

【SPD】
そこまで腕が立つ奴がいないんなら、突っ込んで撹乱すれば無差別な魅了だの狐火だのの抑制にはなるんじゃねぇかな。多少の怪我は承知の上でスカイステッパーと韋駄天足で一気に潜り込んで、隙が生まれた相手には虚張盗勢で小刀を掠め取って、一時的に無力化に努めるとしましょうね。。


神宮寺・絵里香
≪心情≫
まあ思った通りの展開だな。藩の上層部にまで食い込んでいるとなると
結構面倒な状況じゃねーか
取りあえず、ここにいるやつらは全員ぶちのめして、残った奴らも残らず
倒しとかねーと禍根が残るな。んじゃ、やるか

≪戦闘≫
折角だから新装備を試すか
黒蛇剣ウルミと偽槍蛇乃目をメイン武器に戦闘
基本的には中遠距離からのウルミを使った【薙ぎ払い】をメインに戦闘。
ウルミと蛇乃目には【水属性】を纏わせておく
近づかなければ魅了からの小太刀一閃のコンボも平気だろ
狐火については蛇乃目で【武器受け】して対処
実戦で得た【戦闘知識】を基に戦いを組み上げ、危険な攻撃は【見切る】
UCは【フェイント】も交えつつ【高速詠唱】【範囲攻撃】


立花・桜華
【妖狐忍との戦闘】
忍が相手だとどんな手を使ってくるかわからないね
ここは先手必勝を心掛けていこう!
【忍び足】で【目立たないよう】に敵に気付かれないギリギリまで接近
その後は鍛えた【ダッシュ】力で敵の行動前に接近し、持ち前の【怪力】を乗せた剣刃一閃で【先制攻撃】、返す刃で【2回攻撃】を行いトドメを刺す
倒した忍が持っていた小刀を【盗み攻撃】に使用、近くの敵に【投擲】し怯ませた隙に鬼震脚(ユーベルコード)で攻撃を仕掛け周囲の敵を【衝撃波】で吹き飛ばす!
その後は直ぐに後退し味方と合流、連携する
後退時は【残像】による【フェイント】を交えた移動で的を絞らせないように心がける

※アドリブや他者との絡みOKです


パフィン・ネクロニア
ひいふうみいよいつむっと。なんやかんやで結構儲かっちゃったのう。
とまれ、連中の拠点も見つかった事じゃし、後はサクッとぶっ潰すだけじゃな。

ふむ…数は揃えているみたいじゃが、なんかこう、何とも言えぬ残念な感じのオーラが見えるのう。
小細工は不要な気もしてきたし、リトルを召喚して正面から突っ込む事にするぞ。
2回攻撃を駆使して効率よく斬り伏せ
残像を大量に作って戦場を撹乱し縦横無尽に駆け抜け
得意の掃除技能で文字通り敵を一掃してくれよう。

掃除違い?細かい事は気にするな。



「うぅー、戦いかぁ……」
「でも、勝ったらお団子と油揚げだよ!」
「数はこっちのが多いんだから大丈夫よ……多分」
 不安げな仲間を鼓舞しながら、くのいち達は猟兵達を迎え撃つべく待ち構えていた。
 戦場となるのは彼女達の根城である古惚けた砦跡。
 崩れた壁や石段、倒れた杉を利用して防ぐには丁度良い。
 惜しむらくは彼女達に碌な戦闘経験が無い事だろう。
「き、来たよっ!全部で十人!」
 見張りからの報告に、一気に緊迫した雰囲気が溢れ出す。
 各々が武器を構え、崩れ去り門の体を成さなくなった入り口を見据える。
「勝つ……絶対勝つんだ……」
 悲壮な想いを胸に秘めた狐耳と尻尾を持つくのいち達。
 最早どっちが悪役なのか。

「おーおー、数だけは一丁前に揃ってるな」
 新装備を携えた神宮寺・絵里香が右手を目の上に翳して眺める。
 それ程強い気配は感じないが、兎に角数が多い。
「一人十体くらい倒せば行けるか……?」
 ウィルトス・ユビキタスが敵の数を数えながらポツリと呟いた。
 有象無象とは言え、数で攻められると多少面倒では有る。
「数は揃えているみたいじゃが、なんかこう、何とも言えぬ残念な感じのオーラが見えるのう」
 背嚢の商品を戦闘用装備に変えて戦いに望むパフィン・ネクロニア。
 なんやかんやで結構儲かっちゃったのう、と情報収集の際の売り上げに意識を半分近く持っていかれてはいるが。
「このポンコツ具合、ほっといても勝手にポシャってくれそう、とか」
 余りの戦意の低さに、モルツクルス・ゼーレヴェックスは思わず呆れを乗せて呟く。
 纏まりを欠いたくのいち達の様子を見るに、然程苦戦はしなさそうな予感……いや、確信さえ覚えてしまう。
「とは言え相手は忍、油断は禁物だね!」
 立花・桜華は油断無く敵陣を見詰めている。
 ともすれば、あの戦場に不向きな雰囲気すら此方を惑わせる陽動かもしれない。
「此処は先手必勝で攻めるよっ!」
 先ずは桜華が動き出す。
 気配を周囲に同化させ意識の盲点に入り込み目立たなくさせ、忍び足を駆使して一気に近付く。
「はえっ?」
 気付いた時にはもう遅い。
 右足に力を込めて石床を踏み切り、前へ送った身体を左に捻る。
 持ち前の怪力と遠心力を込めた全力の一撃。
「あっ、や」
 右手に持ったサムライブレイドで胸元を横一文字に両断され、さらさらと崩れる様に消えていくくのいち。
 そちらを見る事無く、返す刃で右側のもう一人を薙ぐ。
 咄嗟に構えた両腕ごと胴を断ち切られくのいちは崩れ落ちる。
 落ちる腕からもぎ取った小刀を左手で放ち、前方のくのいちへ。
「かふっ」
 何事か言い掛けた彼女は喉に小刀を生やして後方へと倒れる。
「て、てっ、敵襲ぅっ!!」
 此処に至り漸く動き出すくのいち達。
 しかし統率が取れているとは言い難い緩慢な、或いは焦燥した様子で武器を構える。
「遅いっ!化生が一歩を踏み出す前に、鬼の一歩は大地を踏み砕く!」
 桜華は左足を力強く地面へと踏み降ろした。
 単純で重い闘気を纏わせた震脚の一撃。
 衝撃波と振動、それと細かな瓦礫を打ち散らして周囲のくのいちを吹き飛ばす。
「きゃあああっ!?」
 誰一人として踏ん張れず受身も取れずに転がっていくくのいち達。
 それを見て桜華の心に疑念が宿る。
(あれ……もしかして、本当に場慣れしてない……?)
 いやいやそんな筈が無いと、残像とフェイントを駆使しながら距離を離し、油断無く敵を見据える。
 相変わらず敵の考えが読めない。
「下手な考え休むに似たり、此処は先手先手で仕掛けるよっ!」
 再度ダッシュとフェイントを巧みに使い分けて突撃する。
「はやっ!?」
「うそっ、残像!?」
 小刀を構えて突っ込んで来た桜華へ闇雲に振るうも、切っ先は空を切るばかり。
 前から迫って来たと思えば背中から蹴り砕かれ、飛び上がったと思えば股下から斬り上げられる。
 見る間に塵となる仲間達を前に有効打所か掠り傷さえ付けられない。
 くのいち達にとっては正しく鬼神の如き動きを見せる桜華。
 果たして彼女達の心中や如何に。
 そんな悲壮感溢れる戦場の隣では、パフィンが縦横無尽に駆け巡っていた。
「盟約に従い来たれ以下略!リトル、出番じゃ!」
 ややおざなりな詠唱に応えて現れたのは、パフィンの身長の二倍はあろうかと言う白ドードーのリトル。
 ささっと騎乗し人馬一体……人鳥一体?の動きでくのいち達を翻弄していく。
「ちょ、速いー!?」
「きゃーっ!?こっち来ないでよ!」
「早く捕まえ……ちょっとー!?」
 小学生のサッカーもかくや、と言った様子でパフィンを追い掛け回すくのいち達。
 しかし一向に捉える事は出来ず、擦れ違いざまに彼女の愛刀『曇天』で斬り付けられる始末。
 胴体を狙えば跳んで交わされ、頭を狙えば摺り抜けられる。
 おまけに大量の残像をばら撒かれ時間が経てば経つ程パフィンを捉えるのは難しくなっていく。
「もう、こうなったら奥の手よ!ほら皆、狐火!」
 一人が果敢に狐火を放ち攻撃する。
「おおっと、よっ、ほっ」
 華麗に避けられてはしまうが、パフィンからの攻撃は止んだ。
 それを見た他のくのいち達も狐火を出して一斉に放つ。
 全方位から向かい来る攻撃。
 派手な着弾音と爆炎が舞い、勇んだ一人のくのいちが思わず声を上げる。
「やった!?」
「ちょっ、それ姐さんが言うなって言ってた台詞ー!」
 案の定やってない。
 一斉攻撃とは言っても浮き足立ったくのいちの攻撃には、穴が幾つも有った。
 擦る様なルートを辿って無傷で炎を躱したパフィンが愛刀を振り翳す。
「得意の掃除で一掃してくれよう。……掃除違い?細かい事は気にするな」
「いやーっ!?」
 あわれ、くのいちは露と消える。
 賑やかな戦場の背後では、更に賑やかな戦いが起きていた。
 いや、これを戦いと言って良いのかは多少疑問の余地が有る。
「悪行なんてくだらないぜ!俺の歌を聴けー!!」
「「「「「きゃぁーっ!!!」」」」」
 ウィルトスは先ず、モルツクルスの援護を行う為にパイプオルガンを奏でていた。
 ユーベルコードで発生させた風に音色を乗せて、注意の散逸と攻撃の仕込みを行う。
 そうやって生まれた隙を突いてもらう予定だった。
 そう、だった、である。
 パイプオルガンを弾くウィルトスの前には十五人程のくのいち達が、手を振り身体を揺らし飛び跳ねながら演奏を楽しんでいた。
 日頃、余程娯楽に餓えていたのであろう。
 最初は戸惑っていたものの、今ではすっかり曲に魅了された観客だ。
「えぇ……っす」
 その様子を額にタマネギ型の汗を浮かべて見守るのはモルツクルスだ。
 嫌な予感、と言うべきか懸念していた以上のへっぽこくのいち達を前に、この上無いやり辛さを感じている。
 幸か不幸か、そちらに混じらず交戦の構えをしてきたものは既に片付きつつある。
「魔なる力よ、安らぎよ、深く暗き眠りを与えよ……」
 ユーベルコード、睡眠雲。
 手に持つ杖から催眠効果が込められた雲を放ち、睡眠状態に陥れることにより対象の動きを一時的に封じるものだ。
 音色が乗せられた風を使い、瓦礫や壁の後ろに回り込んだくのいちへと送る。
 そして今、最後の一人が意識を失い崩れ落ちた。
「よし、こっちはこれで完了っすね」
 倒れたくのいちを一箇所に纏めて合図を送る。
 ウィルトスは頷いて、観客と化したくのいち達に語り掛ける。
「皆、今日は俺の歌を聴いてくれて有難う!」
「「「「「きゃぁーっ!」」」」」
「悪いが、残念ながら今日は此処で中断だ」
「「「「「えぇーっ!?」」」」」
「俺達は猟兵、つまりオブリビオンたる皆を倒しに来た。これは覆らない」
 しかし、と演奏する手を止めてウィルトスはくのいち達と目をしっかり合わせて言った。
「いつの日か君達が罪を償い、普通の人として生まれ変わってくれる事を、俺は願おう!その時は是非、今回の続きを皆に聴いて欲しい!最高のステージをお届けするぜっ!!」
「「「「「わぁーーーーっ!!!」」」」」
「それじゃあ皆!来世で会おうぜ!」
 謎の盛り上がりを保ったまま、ウィルトスは再びユーベルコードを放つ。
 生まれるのは炎の津波。
 全てを焼き払う燎原の火がくのいち達を飲み込んで行くが、彼女達は誰一人恨み言を口にせず、ただ静かに身を委ねていた。
「過去を過去のままとする。それが猟兵に求められる役割。相手がどんな姿だろうと容赦はしない」
 何処か空虚な響きを孕んだ声が、炎に掻き消されていく。
 やがて全てを燃やし尽くした炎が空に溶ける。
「任務…………完了」
 ぽつりとウィルトスが呟く。
 いつの間にか隣に立っていたモルツクルスは小さく首を振った。
「……はあ、いいお婿さん捕まえて、平和にこの世を謳歌ってぇ訳には……いかないんすよねえ、きっと」
 全く、オブリビオンってのは嫌いっす、と吐き捨てる様に言葉を地に落とす。
 二人の寂しげな背中が、陽炎に揺蕩っていた。
「何をおセンチ決めてんだぁ……?」
 そんな彼らの様子を、呆れた顔で見詰める絵里香。
 新装備の黒剣『黒蛇剣ウルミ』と仕込み杖ならぬ仕込み傘『擬槍蛇乃目』を振るい、調子を確かめたのは良い。
 が、如何にも歯応えの無い連中ばかりでイマイチ振り甲斐が無い。
「藩の上層部にも食い込んでるとは随分と面倒な状況を作るじゃねーかと思ってみれば……腕っ節はてんで駄目、ぺーぺーの素人みてぇなもんじゃねぇか」
 強敵らしい強敵も居らず暴れ足りないと些か不満は残るが、早く片付くならそれはそれで良いかと思い直す。
「取りあえず、此処にいる奴等は全員ぶちのめして、残った奴らも残らず倒しとかねーと禍根が残るな。んじゃ、やるか」
 傘を閉じて腰元に下げ、黒剣を構える。
 それだけで威圧された様に一歩下がるくのいち達。
 中には涙を滲ませて口許を引き攣らせている者も居る。
 さもありなん、先程果敢に攻め入ったくのいち二人が木の葉を散らす様に一蹴されたのだ。
 一人は何時抜き放ったのか解らない短槍に貫かれて塵と化し、もう一人は急に伸びた黒剣の刃に一閃され首が飛んで行った。
 訳の解らない強さの猟兵を前に、彼女達は自分が貧乏くじを引いた事を悟ったのである。
 向こうは曲を聴いて満足そうに逝ったのに、何故自分はこんな恐怖に晒されないといけないのか。
 この瞬間、彼女達は生まれて初めて神に祈りと怨嗟をぶつけた。
「動かないならこっちから行くぞ」
 ヒッ、と誰かの声が漏れる。
 次の瞬間には黒剣の刃が一番左端に居たくのいちの胴を上下に切り離していた。
 そのまま空へ消えていく仲間を見て、彼女達に残っていた勝とうとする気力は霧散した。
 苦しまずに逝ける、と言う点においては絵里香の相手も悪くは無いのかも知れないが、そんな事はもう如何でも良さそうなくらいに彼女達の絶望は深い。
「……う、うわぁぁあああっ!!」
 そんな中、遂に一人のくのいちの精神が限界を迎えた。
 狂った様に狐火を生み出し、絵里香へとぶつけに行く。
 それを見て僅かばかりの勇気でも生まれたのか、次々に攻撃を仕掛けるくのいち達。
 延々と続く炎の連鎖に動けないのだと、彼女達は全力で火を放ち続ける。
 やがて妖力も尽きたのか炎も途切れ、黒煙が少しずつ薄くなって行く。
 そうして現れた焦げ目一つ無い紅い蛇の目を見て、彼女達は怖気立った。
「何なんだぁ、今のは……?」
 鬱陶しそうに傘を払って熱を逃がす絵里香。
 水属性を付与していた為、傘は何の憂いも無く狐火を打ち払っていた。
「……あはは」
 遂に全てを観念したくのいちの喉から笑いが漏れた。
「あー……、ま、苦しまねぇ様に送ってやるわ」
 左手の黒剣を振り、刃を一週させる。
 それだけで、周囲に動く者は居なくなった。

「向こうは随分と盛り上がっていらっしゃいますね」
「そろそろ此方も始めましょうか。ネロ、出番ですよ」
 悲喜交々と言った様子の向こうの戦闘風景を眺めていたクラウス・ハントハーベンとアマータ・プリムスはお互いの相棒に目をやる。
 片や青薔薇の姫、宛ら童話の世界から飛び出して来た見目麗しき人形ローゼ・ブラウ。
 片や南瓜頭の案山子、アマータの弟として扱われる悪戯好きの人形ネロ・フラーテル。
 色々と対照的な相棒だが、戦闘スタイルも対照的だ。
「失礼。少々自由を奪わせて頂きます」
 クラウスは練成カミヤドリで操作板を増やし、操作板と自身から操作糸を繰り出した。
 ユーベルコード【die Zwang】によって放たれた操作糸が、くのいち達を次々に捕らえ拘束する。
「ひゃあっ!?」
「やっ、ちょ」
「うーごーけーなーいー!」
 あっさりと捕まりくねくねと身を捩るくのいち達。
 バランスを崩してそのまま地面に倒れ込んで行く姿がまた何とも。
「やる気はあるようですが、少々へっぴり腰ですね。少し涙目ですし……」
 緊迫感は有っても切迫感の無いくのいち達の様子に、攻撃し辛い何かを感じ取ってしまうクラウス。
 取り敢えず抵抗の出来ない様に両足首と両手首は縛り上げたが、中には拘束を解こうと試みる者も居る。
 そんな彼女達の眼前で、轟音と共に地面が凹んだ。
「彼女の一撃は痛いですよ?」
 青薔薇をイメージして作られたゴシックロリータのドレスに身を包んだローゼが、冷たく澄んだ瞳でくのいち達を見下ろしている。
 その手には長身のクラウスと同じくらいは有ろうかと言うハルバードが握られており、先程の陥没の原因が事も無げに振り下ろされた刃によるものだと示されている。
 青褪めた彼女達が見上げる先には青薔薇の姫と、付き従う執事。
 見た目や服装は主従のものだが、雰囲気は正に比翼連理。
 二人の妙技を打ち破る事は、例え奇跡を寄せ集めても叶いはしないだろう。
 そんな事を不意に思ったくのいち達に、クラウスは優しく語り掛ける。
「大人しくして頂ければ、此方としても有難いのですが」
「あ、はい。ごめんなさい」
 くのいち達は大人しくなった。
「ひぃやぁぁぁーっ!?」
「こわっ!?なにこれこわっ!?」
 打って変わって阿鼻叫喚の戦場。
 ケタケタと笑いながら迫り来る南瓜頭の案山子に追い掛け回され、悲鳴を上げて逃げ惑うくのいち達。
 いつの間に奪ったのか、ネロの両手にはくのいち達が使う小刀が握られていた。
 それを振り上げて当るが幸いとばかりに振り回してくるのだから恐ろしい。
「随分と楽しんでますね。まぁ怪我はさせない様に言い含めておきましたし大丈夫でしょう、多分」
 伸ばした鋼糸で小刀を取り上げ、手近な所からさくっとくのいち達を拘束していく。
 玩具代わりの小刀を取られたネロが不満げな様子で見てくるの手を振ってあしらい、転がしたくのいち達には子守唄を聴かせる。
 勿論、ただの子守唄ではない。
 属性攻撃と歌唱の技能を存分に使って丹念に仕上げた珠玉の一曲である。
 その優しげな声色と落ち着いたメロディーに意識を沈ませていくくのいち達。
 安らかな寝息を立てる彼女達を見つつ、アマータは小さく溜息を零した。
「とは言え相手はオブリビオン。滅するのが当機を始めとした猟兵の使命ですが……」
 如何しましょうかね、と頬に手を当て首を傾げる。
 此処が戦場でなければ見惚れてしまいそうだが、油断していると鋼糸が飛んでくるので気は抜けない。
 事実、思わず見惚れたくのいちが一人、拘束されていた。
「敵ながら絵になるわねぇ……」
「お褒め頂き恐縮です。さ、よい子は眠る時間ですよ」
「あー、もうちょっと、もうちょっとだけー……ぐぅ」
 気の抜けたくのいちを眠りに誘い、次の獲物を探していく。
 前方ではネロがくのいちの尻尾に噛み付こうとケラケラ笑いながら走り回っていた。
 片や、自ら場を作り上げ相棒に戦場を支配させる。
 片や、相棒に場を乱させ自らが戦場を支配する。
 対照的な戦いは、同時に幕引きとなった。

 別の戦場では、悩む男が一人。
「あー……オブリビオンってのは解ってるし、盗みや殺しやらしてるのもわかってるが……どーにも憎めねぇ……可愛くてスタイル良い子も多いし……ゲフンゲフン」
 ぷるぷる震えた様子で、それでも懸命に小刀を胸の前に構えるくのいち達。
 毒気を抜かれる彼女達の様子に、時雨・零士は如何にも戦意を保てずにいた。
 おまけにもう一つ、彼にはやり難さを感じる事が有る。
 戦闘で小刀を構えるくのいち。
 彼女は先の情報収集において言葉を交わした女性だったのだ。
「一応、言っておくが……降伏する気は無いのか?」
 徒労とは知りつつも、彼の内に宿る信念がそう呼び掛けさせる。
 偶像の英雄を志す者として、女子供に手を上げるのは本意では無い。
 出来る事なら更生させてやりたい。
 猟兵として戦う中でも、彼は幼少の頃に見た画面の中の英雄達と同じく在りたいと願っている。
「女の子を殴るのは主義じゃねぇんだよ……。面倒みてやるからさ」
 右手を差し伸べるが、くのいち達はぐっと堪える様に手元の小刀を握る。
 一歩、先頭の女性が前に出て震えた声で言う。
「その申し出は嬉しいですが……これも宿命。どうか、お手合わせを願います」
 震え、怯えながら。
 それでも彼女は目を逸らさずに真正面から零士を見据えた。
「そっか……」
 小さく笑い、視線を落とす。
「容赦はしねぇ。せめて一思いに、送ってやるぜ」
 視線を上げた零士に、迷いは無い。
 敵として、倒す。
「行くぜ……変身!」
 右の拳を握り締め、天を突き刺す様に高く掲げて叫ぶ。
「デオルム!コンバットフォーム!!」
『フュージョン。フォームチェンジ、コンバット』
 デバイスから電子音声が放たれ、幾つもの光輪が彼の身体を包み込む。
 弾ける様に光が分かれ、中から戦闘形態となった零士が現れる。
 目の部分が大きく強調されたマスク、幾何学的な構造に編み込まれたスーツ、右の腰元に吊り下げられたブラスター、輝きと共に顕現したベルト。
 画面の中に居た英雄達の様に、気高きスピリットを持つ英雄が、今此処に。
「てめぇの罪……この俺が裁く!」
 仁王立ちで佇む零士へ、くのいち達が仕掛ける。
 しかし精彩を欠いた太刀筋では彼を捉える事は出来ない。
 上段から斬り掛かってきたのを半身捻って避け、蹈鞴を踏んで倒れ込んだ無防備な背中へブラスターで一射。
 無へと還す姿には目も向けず、ゆっくりと歩み続ける。
 左右から同時に突っ込んで来たくのいちは飛び上がり同士討ちさせた所へ二射。
 的確に頭を打ち抜かれ、さらさらと溶けていく。
 着地と同時に狐火を放ってきたくのいちへは、炎の隙間を縫って跳び蹴りをお見舞いする。
 背後から飛んで来る幾つもの狐火を感じ、零士はブラスターの側面をなぞる。
『モードチェンジ。バースト』
 単発威力重視のマグナモードから、連続射撃が可能なバーストモードへ。
 振り返りながらトリガーを引き絞る。
 光弾が狐火と衝突し爆炎を撒き散らしていく。
「きゃああっ!?」
 光弾に撃ち抜かれたくのいちは糸の切れた凧の様にくるりくるりと回って倒れ伏した。
 次々に倒れ行くくのいち達。
 気付けば、立っているのは零士と、先頭に居たくのいちだけになっていた。
「…………参ります」
 胸元に構えた小刀を真っ直ぐに突き出して飛び込んで来るくのいち。
『モードチェンジ、マグナ』
 再び単発に切り替えて、零士はブラスターを構える。
 ゆっくりとトリガーに指が掛かり。
「じゃあな」
 発射音と共に、くのいちの胸に穴が開く。
 何事か呟いて微笑みを浮かべたくのいちが、ゆっくりと崩れ落ち、塵と消える。
 それを見送り、零士は静かにブラスターを下ろした。
 思えば最初に出会ったあの瞬間、零士は彼女に魅了の術を掛けられていたのかもしれない。
 しかし、それも今となっては詮無き事。
 誰も居なくなった戦場に、風が吹き抜けていく。
「儘ならねぇな……戦いってのはさ」

「ハッ、何かシリアスな気配を感じるっ!」
「そう言うのは良いから、ってあぶねぇ!?」
 一方此方は異色のコンビ。
 自由気侭、天真爛漫と言った様子のセレヴィス・デュラクシードと、それに振り回される月代・十六夜の二人だ。
 腕っぷしに自信の無い十六夜は撹乱と煽動を主として動き回り、スカイステッパーと韋駄天足を駆使して正しく縦横無尽に駆け巡っていた。
「あっ、そっち行ったわよ!」
「もう、ちょこまかと!そんなんじゃモテないわよ!」
「うっせぇ!隙有りだ!盗ったっ!!」
「あっ、私の小刀ぁ!」
「その物騒な得物、頂くぜ!」
「ちょ、私の鎖鎌がー!二週間もお団子我慢して買ったのよそれ!」
 ぎゃーぎゃーわーわーと何とも賑やかな戦闘風景。
 武器を奪い去り挑発してくのいち達を一纏めにして、セレヴィスの元へ導く。
「おらっ、お膳立ては完璧だ!早い所ぶっ飛ばしてくれ!」
「おぉっ、ありがとね~♪」
 有名スターと熱狂的なファンの様な追い駆けっこを繰り広げる十六夜に笑いを返し、セレヴィスは砦の壁の上でビシィッとポーズを決めた。
「ネズミの隠れ家み~っけた、猫に代わってお仕置きだよっ!」
「とっととやれぇーっ!?」
 悲痛な叫びを上げながらもすいすい攻撃を躱していく十六夜。
 要所要所で足払いやダガー投擲による牽制を行い、くのいち達を見事に捌いて行くその技術は中々のもの。
 全力で攻撃に回れば普通に倒せそうな気もしてくる、そんな体捌きだ。
 とは言え流石にこの人数差は辛いか、とセレヴィスは飛び降りながらくのいち達へ迫っていく。
「ふえっ!?」
 突然目の前に落ちてきた猟兵を前に驚きの声を上げるくのいち。
 次の瞬間、身体が宙に浮き後方へと吹き飛ばされる。
「うわっ……」
 余りの威力に思わず引いてしまうくのいち達。
 外壁に叩き付けられ塵へと戻っていく姿を満足げに眺めて、セレヴィスは笑った。
「にゃははは~!やっぱりボクは身体動かす方が好きなんだよ♪迫り来る極悪ぼいん軍団をキックキック!両手は添えるだけ」
「……そ、そっちのちっこいのから狙えー!」
 誰かが張り上げた声に従い、狙いを十六夜からセレヴィスに変えるくのいち達。
 しかし悲しいかな、全員無手である。
 おまけに走り回って息も上がりつつある。
 そんな状態で身軽に動き回る彼女を捉えられる訳も無く。
「ほらほら、こっちだよ~♪変幻自在、千変万化な狐の舞だよっ♪」
 ジャンプやユーベルコード、狐百まで踊り忘れずで空中を跳ねる様に飛び回るセレヴィスを追い掛ける事すら儘ならない。
 そうしている合間にまた一人のくのいちが、頭を踏まれてバランスを崩す。
 そこへ放たれる、眩い光の軌跡を描く追撃の膝。
 ごきりと鈍い音を響かせて、くのいちは砂に同化していった。
 セレヴィスはその勢いのまま前転する様に手を地面に付き、反時計回りにぐるぐると回転しながら両足で蹴りを放つ。
 顎を蹴られ脳を揺さぶられたくのいち達がその場に倒れ込んで行った所へ、十六夜がダガーを突き立て斃していく。
「えぇい、こうなったら!」
「おぉっ?」
 四人のくのいちが前後左右からセレヴィスを取り囲み、同時に飛び掛る。
「甘い甘い♪」
「きゃっ!?」
「いたっ!誰よこの石頭は!」
 しかし跳ばれ、四人はもみくちゃになりながら折り重なっていく。
「これはオリジナルセレスの得意技、悔しいけど……ボクの全力!勝負だよっ!」
 再び放たれるユーベルコード疾風斬鉄脚。
 目も眩む様な光に包まれたセレヴィスの踵が、半月の軌跡を描いて振り下ろされた。
 周囲に土埃を巻き上げる程の威力。
 折り重なっていた四人のくのいちが、全員空に溶けて行く。
「にゃははっ、瓦四枚抜きならぬくのいち四人抜きだね♪」
 にこやかに笑うセレヴィス。
 その時後方から、一つの影が迫っていた。
「隙有りぃぃっ!」
「にゃにゃっ!?」
 袖に隠していた守り刀を抜き去って一直線に突っ込もうとするくのいち。
 丁度意識の間隙を突かれたセレヴィスは回避を試みて身を捻るが、恐らくそれより早く刀の切っ先が届く。
 焦りと共に目を見開いた瞬間、くのいちの胸から刃が生えた。
「え……あ、なん……」
 動きを止め、塵と消えるくのいち。
 その背後から、奪った小刀を逆手に構えた十六夜が現れる。
 不審な動きを感じ取った彼は、くのいちの意識から出来るだけ逃れつつ、必殺の機会を待っていたのだった。
「……ふぅー……っ、慣れねぇ事はするもんじゃねぇな」
 緊張の糸が切れたのか、大きく息を吐き出す十六夜。
 投げ捨てられた小刀がからんと音を立てて転がっていく。
 紆余曲折有ったが、如何にかくのいち軍団を退ける事に成功した。
「や~助かったよ!ありがとねっ♪」
「良いって事よ。さって、他の奴等は……って、もう片付いてんのか」
 軽く十六夜が手を振ってみれば、皆思い思いの反応を返す。
 猟兵対くのいち、此処に決着。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『邪忍軍の女棟梁』

POW   :    闇闘技・流血乱舞
【手裏剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血濡れの鉤爪の連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    邪忍法・身代わりの術
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【呪いの木偶人形】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    禁術・影分身
レベル×1体の、【胸元】に1と刻印された戦闘用【妖艶なる分身体】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルシー・ナインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ぜ、全滅?百人ものくのいちが全滅!?十分も持たずにか……!?」
 万一に備え、胴元へと鳩で密書を飛ばした頭目が見たのは一矢報いる所か一合も果たせずに敗れ去った配下達と、消耗らしい消耗も無い猟兵達の姿だった。
 それを見て、やはりこの場を抑える事は不可能だと悟る。
「駄目だ……猟兵達は強い……!」
 最早この地での活動は不可能と見て良いだろう。
 既に建て直しが効く範疇を越えてしまっている。
「…………ならば此処は一人でも多くの猟兵を道連れにしてくれよう」
 腹は括った。
 後は全力で参るのみ。
 猟兵達の快進撃の裏で、今一人の悪鬼が目覚める。
神宮寺・絵里香
〈心情〉
さて頭目は歯応えがあるといいがな
ちっと追い詰めすぎているからな。死ぬ気で来るだろ
だからこそきっちりとここで殺し切る。さあ、殺し合いの時間だ

〈戦闘〉
UCを使い雨を降らしてから戦闘に入る。
傘と短槍をメイン武器にして戦闘。【戦闘知識】で相手の流派や
行動を分析、危険な行動を【見切り】、傘で【武器受け】をして受け流す。
特に手裏剣の一撃には注意。身代わりの術を狙っていたら、【雷属性】【麻痺攻撃】の痺れる雷を纏った短槍を【槍投げ】して対応。体が痺れれば完全な脱力は無理だろう。影分身はすぐ数を減らすに限る。【高速詠唱】【範囲攻撃】を使った『因達羅乃矢』で攻撃。空には雨雲。万全な態勢でのUCはよく効くぞ



「さて……頭目は歯応えが有ると良いがな」
 些か気の抜けた戦いを終えて、神宮寺・絵里香は仕込み傘、蛇乃目を左腰の後ろへと提げる。
 右手の黒剣は右腰の短槍と持ち替え、更にユーベルコードの詠唱を始める。
 使うのは【我等雨雲と共に舞い踊る巫女也】だ。
 雨雲を召喚し、自分が為した行動に合わせて恵みの雨を降らせ武具を強化していく。
 万全の態勢で敵頭目を迎え撃つ心算だ。
「大いなる水を司りし白蛇の神よ!汝が巫女たるこの我に……、っ!」
 詠唱は突如飛来した手裏剣によって遮られた。
 咄嗟に眼前に翳した短槍から火花と高い金属音が散らされる。
 土埃の舞うその向こうで、一人の女が絵里香を見据えていた。
 豊満でしなやかな肉体を覆う黒の小袖に紫の忍装束。
 額の両脇に生える一対の黒い角、親指と小指以外を覆う様に取り付けられた大きく伸びる鉤爪を装着した両手。
 そして深い闇を湛えたその鋭い相貌が、絵里香を捉えている。
「へぇ……」
 有象無象の寄せ集めとは違う強者特有の気配に、思わず口の端が歪む。
 不退転、それも決死の覚悟を匂わせているのだから此方も気合が入ると言うもの。
(ちっと追い詰め過ぎているからな。死ぬ気で来るだろ)
 だからこそきっちりと此処で殺し切る。
 握った右手から人差し指と中指を揃えて立て、高速詠唱でユーベルコードを放つ。
「恵みの雨を与え給え!急急如律令!」
 唱え終えると同時に晴天の上空が、俄に曇り始める。
 黒い雲が立ち込め、周囲がどんよりと暗さを増していく。
「さあ、殺し合いの時間だ」
「見縊るなよ、小娘」
 柄尻に程近い場所を握り直し、左手の傘を前に出す。
 小さな衝突音。
 頭轆轤で手裏剣を受け、即座に右足を踏み抜き前方へと躍り掛かる。
 頭目も動き出し、左手、傘を持っている側へと回り込む様に走り出した。
「オラァッ!」
 左足で急制動を掛けつつ時計回りに身体を回し、逆手に持ち替えた短槍で引っ掻く様に薙ぐ。
 予想していたのか、素早く飛び退いて避ける頭目。
 再び手裏剣を投げて牽制してくるが傘を振るって叩き落す。
「禁術・影分身!」
「繰り出してきたか……!」
 頭目の周囲に妖艶な分身体が次々と召喚されていく。
 胸元に【1】と刻印されている為本体との識別は可能だが、流石に数が多い。
「因達羅の矢よ!!」
 ならば減らすまで。
 高速詠唱を行い傘ごと指を向け、天からの青白い稲妻を迸らせる。
 恵みの雨が地面を濡らす中に打ち込まれた天雷。
 広範囲に稲光をばら撒きながら走り抜ける一撃で、多数の分身体が消えていく。
 しかし残ったものも居る。
 それらは合体し胸元の数字を加算させて能力を上げ、攻撃を耐え切っていた。
「予想以上に削られたか……!」
 呪いの木偶人形を身代わりとして天雷を受け流した頭目が苦々しげに口を開く。
 直ぐ様残った分身体を全て合体させ、数字を重ねる。
 二十を大きく越えた数が胸元に刻印された分身体。
 袷をきつく締め、互いに胸元を隠した頭目と分身体が鉤爪を構える。
 対する絵里香も、自身の武器に雷を纏わせて応じた。
「仕切り直しってな」
 左右に跳び分かれ、挟み撃ちにしようと動く頭目。
 それを見た絵里香は迷う事無く右手側、短槍を持つ方へ飛んだ。
 分かれると言うのなら各個撃破で片付ける。
 背後から迫る手裏剣は傘で弾き、右手の短槍を操りながら仕掛ける。
 対する頭目は鉤爪で打ち払いながら身を捻り直撃を避ける。
 しかし短槍から纏わせた雷が鉤爪を伝い、徐々に頭目の両腕を蝕んでいく。
「ちっ!」
 図らずも雷が神経を惑わし頭目の右肘を跳ね上げた。
「貰った!」
 右の指を突き付ける絵里香。
 天雷が来ると反応した頭目は再び受け流すべく脱力の姿勢に入る。
「甘いんだよ!」
 二度目ともなれば種は割れる。
 脱力する事で此方のユーベルコードを受け流していると見切った絵里香は、因達羅乃矢を放つ代わりに左手で持ち替えた『飛槍 曼荼』を投擲した。
「なにっ!?」
 ユーベルコードでは無いただの物理攻撃。
 鋭い切っ先は頭目の胸元を容易く貫き、その身ごと崩れ掛けの砦外壁を吹き飛ばした。
 煙と共に頭目の姿は掻き消える。
 振り返りざま右手の短槍で背後からの双撃を受け、膂力で払い退ける。
「残念、向こうは分身か」
「油断ならぬ奴だ……!」
 必殺を狙っての一撃をいなされ、頭目は舌打ちする。
 互いに痛打は与えられていない情況。
 だが時間は絵里香に味方する。
 先程から降り続く恵みの雨が短槍をより鋭く、傘をより硬く強化している。
「ふっ」
 短く息を吐いて頭目は飛び退く。
 その意図を見抜き、絵里香は思わず声を上げた。
「てめぇ!」
「猟兵は貴様だけではない。ならば厄介なものは捨て置き数を減らすまでよ」
 くのいちを倒す為に各々は散って攻撃を仕掛けていた。
 言わば、連携が取り辛い状態。
「小物の癖に悪知恵だけは回りやがる……!」
 投擲した短槍を回収して、絵里香は頭目を追い掛けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

立花・桜華
【女棟梁との戦い】
部下とは違ってかなりの力を持っているみたいだね
最初から全速力で行くよ!
シーブズ・ギャンビットを用いて高速戦闘、上着を脱ぎ敵へ投げつけて【目潰し】をしつつ、身軽になることで更なる加速を行う
その上で複数本のナイフを【投擲】、【毒使い】としてナイフには毒を付加しておき、少しでも完全な脱力状態になれないように阻害する
また、敵の攻撃のタイミングを【第六感】や【野生の感】で【見切り】、【残像】による【フェイント】で当たったと見せ掛ける事で敵の隙を誘い【だまし討ち】気味の【カウンター】を狙う
持ち前の【怪力】と【ダッシュ】で鍛えた脚力を込めた燐火裂蹴(UC)を叩き込み【吹き飛ばし】ちゃおう!


セレヴィス・デュラクシード
ん(深呼吸)‥‥それじゃあ少し真面目で行くんだよ(真顔

姿勢は低く動作は最小、攻撃は必ず虚実を付けた【2回攻撃】、飛び道具は避けず【見切って】両手で【武器受け】払い落とす‥‥行くよ

敵の攻撃の隙を見つけ【狐の威を借る狐】の分身を正面から攻めさせ、ボクはその肩を蹴って頭上から【空中戦】、【疾風斬鉄脚】で体重を乗せた踵落しを!

これはボクの奥の手、近接状態で相手を掴んで【千里狐跳ね】(緑の瞳、身体にノイズ、透けて見える狐耳姿な擬似真の姿)での連続蹴撃を嫌って言うほど叩き込むよ

ニセモノ(=バーチャルキャラクター)のボクには記憶しかないけど‥‥これでも一応死線を幾つも潜って来てるんだよ、なめないでよね


月代・十六夜
「結局お前は何がしたかったんだよ?いや、煽りでも何でもなく素でわっかんねぇんだけど」

え?使えない部下を時間稼ぎに使ったんなら普通そこは全力で逃げじゃねぇの?
まぁいいや、強者を避けて数を削りにくるってのは意外に冷静なことで。
まぁ向こうの狙いがそれならこっちの動きとしても分かりやすいな、味方が連携を取れるだけの時間を稼げばそれだけで順当に詰みだ。
【韋駄天足】と【スカイステッパー】で相手の動きを邪魔するように動いて【パターン化】につとめて、【回避盾】をすることで味方の援護を待とう。
手裏剣は初動を見たら全力で逃げ。
ちょこちょこフェイントを絡めて脱力状態になれないように味方のサポートに務めるましょうかね



「ええい!もう、てぃやっ!」
 蹴りを放ち、伸びて来た鉤爪を躱し、ナイフを投擲する。
 手裏剣で此方のナイフを弾いた相手へ、立花・桜華は次の一手を考える。
(部下とは違ってかなりの力を持っているみたいだね……!)
 突然宙から降って来たくのいち達の頭目。
 何事かと構える間も無く仕掛けて来たのを回避し、考えるのは後だと攻撃に移り、蹴りを中心に立ち回った。
 初撃を回避した事で相手の攻撃は見切ったが、その後が続かない。
 此方の攻撃は防がれ間合いは好きに動かせず反撃も厄介。
 自分のスピードには追い付けていないが持ち前の勘と経験で追い縋ってくる頭目に、桜華は先程のくのいち達とは違ったやり難さを感じていた。
「動きが読まれてる……?ならっ!」
 更にギアを上げて、全速力で挑む。
 目の動きを見る限り此方を完全に捕捉出来ている訳では無い。
 それなら、その読みを上回るスピードで仕掛けるのみ。
「くっ!?」
 ナイフの投擲と同時に上着を脱いで頭目へ投げ付ける。
 流石に視界を覆われるのを嫌がって素早く飛び退いて行く。
 そこへダッシュで詰め寄り、回し蹴りを放つ。
 鳴ったのは肉を打つ音では無く、鈍い金属の音。
 鉤爪で受けた頭目が力任せに振り払い、追撃の手裏剣を放ってきた。
 それをナイフで撃ち落として体勢を整える。
 息吐く間も無い連撃の応酬の余波で周囲は土埃が煙っていた。
「てぇぇいっ!」
 その白い煙幕の中から飛び出し、迫り来る小さな影。
 偶々近くに居たセレヴィス・デュラクシードが異変を感じ取り救援に駆け付けたのだ。
 新たに加わった猟兵に鬱陶しそうな視線と手裏剣を投げ掛ける頭目。
 真正面から向かう少女へと手裏剣が風を切って奔り。
「そこっ!」
「なっ!?」
 両手を打ち鳴らして手裏剣を挟み込み、攻撃を受け止めた。
 これには頭目も驚きで目を剥いた。
 その驚愕は一瞬の隙を生む。
 少女の後ろから飛び上がり肩を足場にして宙を駆けるのは、同じ姿形の少女。
 最初に飛び出したのはセレヴィスの分身。
 二人の戦いの気配を感じ取った時に、先んじて発動したユーベルコードによるものだった。
 頭上を舞い右足を伸ばしながら前方へ宙返りをするセレヴィス。
 右足の踵が眩い光を放ち、弧を描いて円と成す。
「ちぇすとぉぉぉぉーっ!!」
 裂帛の気合と共に振り下ろされる踵落とし。
 衝突音と地響きが返るが、そこに頭目の姿は無い。
「味な真似を……!」
 後方へと跳んで踵落としを躱して、距離を離しつつ手裏剣をばら撒く。
 着地の勢いを殺せぬならそれは狙うべき隙となる。
 足に手裏剣が刺さった所で追撃を仕掛けようと両腕を持ち上げるが、割り込んで来た猟兵に手裏剣は弾かれる。
「させっか!」
 そう、セレヴィスが来たのなら当然もう一人も居る。
 月代・十六夜は手にしたダガーで手裏剣を打ち払い仲間のカバーへ回った。
 担うは囮役と仲間への援護。
「へいへい、鬼さんこちらってなぁ!」
「愚弄するか!」
 嘲る様に笑みを浮かべて宙を蹴り、付かず離れずの距離を保ちながら相手の動きを見定めていく十六夜。
 時折飛んで来る手裏剣を何食わぬ顔で避けて行くが、内心は一杯一杯だ。
 とは言えそう言った動揺はおくびにも出さない。
 囮をこなす上で最も重要な事は、常に相手より精神的優位に立ち続ける事。
 故に、十六夜はふてぶてしく笑う。
「結局お前は何がしたかったんだよ?いや、煽りでも何でもなく素でわっかんねぇんだけど」
 桜華の蹴撃を受け流し鉤爪を振り、セレヴィスの脚撃をいなし手裏剣を見舞う頭目へと語り掛ける。
 あくまで日常会話をするテンションで、しかし言葉尻に笑いを含ませつつ。
「やるんなら最初っから全員で足並み揃えて突撃してくりゃ良かったろ。そうじゃないってんなら部下で足止めか?」
 鉤爪を振るえない様に位置取りに注意しながら空を飛び跳ねる。
 部下のくだりで僅かに目を鋭くしたような気がした十六夜は、その直感に身を委ねる。
「え?使えない部下を時間稼ぎに使ったんなら普通そこは全力で逃げじゃねぇの?」
「小蝿風情が……!」
「まぁあんな雑魚共じゃ時間稼ぎも無理か。同情するぜ、あんなゴミみたいな部下を持ってた、だなんてよぉ?」
「その口を閉じろと言っているだろうがぁぁ!」
 掛かった。
 目を剥き此方へと飛び上がって来る頭目。
 予想以上に機敏な動きに翻弄されぬ様しっかりと目で追いながら駆けて行く。
 飛び上がった先へ最短距離で向かい来る分、動きは読み易い。
 それならと十六夜が二人へ視線を向けようとしたその瞬間、頭目が印を切った。
「禁術・影分身!」
「げっ」
 即座に空は頭目の分身体で埋め尽くされる。
「月代、真下へ!せぇぇぇい!」
 声と同時に、桜華が高く飛び上がった。
「魂まで燃やし尽くしてあげるよ!」
 声に導かれた十六夜が天上を蹴って真下に沈んだ瞬間、蒼い流星が空へと舞い上がった。
 蒼炎の闘気を纏って天高く伸び行く桜華の蹴りが、多数の分身体を巻き込んで空へ空へと龍の如く駆け登る。
 余りの威力に周囲の分身体も動きを止める最中、飛び去った方向に影が舞う。
「足裏を合わせて!」
 分身を生み出していたのは何も頭目ばかりではない。
 セレヴィスは分身を高く打ち上げ、桜華が反転する際のアシストへと向かわせていた。
「ありがとっ!もういっちょぉぉぉぉっ!!」
 サーカスの様に互いの足裏を足場にして、桜華は反転する。
 再び、今度は上空から一筋の流れ星となって大地へと降り注ぐ。
 迸る蒼い炎が分身体を包み、次々に消し飛ばしていく。
 絶望的なまでに増えた分身体も、最早片手で数える程しか居ない。
「油断は禁物なんだよ!」
 分身が空を舞うなら、本体は大地を疾る。
 セレヴィスは桜華が飛び上がった瞬間の隙を突いて、本体たる頭目へ猛攻を仕掛けていた。
 跳び蹴り回し蹴り踵落とし。
 蹴り技の見本市の様に次々と技を放って行くその機敏な動きに、頭目は防戦一方となっていた。
 スピードだけで見るならば、先程切り結んだ桜華の方が遥かに速い。
 だがセレヴィスは磨き上げてきた野生の勘で、次に頭目が取るであろう行動を予測して対応してくる。
 流石に百発百中とは行かないが、そのブレが余計に動きを読み難くしていた。
「余所見してんなよなぁ!」
 そして十六夜の存在も大きい。
 決定的な打撃力こそ持っていないが、挑発していた時とは打って変わって頭目の間隙を縫うように動き回っている。
 地上での攻防の中で頭目は一度、セレヴィスの放つ疾風斬鉄脚を邪忍法・身代わりの術で躱した。
 その時の動きを見て、十六夜は頭目が脱力状態に移行するタイミングを掴んだ。
 後は適時、実に厭らしいタイミングで攻撃を仕掛けるだけである。
 得意のフェイントも織り交ぜて攻撃する事で的を絞らせず、セレヴィスと連携しながら着実に追い込んで行く。
「鬱陶しい……!合!」
 頭目の声に、残っていた分身体が一つに合体する。
 直ぐ様分身体に合図を出し、十六夜をマークさせた。
「厄介な真似を!」
 流石に一対一を強制されては満足に動き回れない。
 となれば再び数的有利を生み出せるよう、桜華の到着を待つしかない。
 短いようで長いこの時間。
「良いぜ、味方が連携を取れるだけの時間を稼げばそれだけで順当に詰みだ。猟兵舐めんなよ!」
 幸い、事前に数を減らして置いたお陰で合体した分身体の実力は月代と同程度。
 後は己の意地を張り通した方が勝つ。
「ん」
 対峙するセレヴィスは頭目を油断無く見据えながら、静かに深呼吸をした。
 いつも楽しげに弧を描いていた目元が、鋭く引き絞られる。
「……それじゃあ、少し真面目で行くんだよ」
 雰囲気の変わったセレヴィスを、最大限の警戒で迎える頭目。
 先に仕掛けたのは頭目だった。
 これまでと違い手裏剣を身体の中心に向かって投げるのでは無く、面を制圧するように広くばら撒いた。
 左右にも空中にも逃れられぬ様な広範囲への投擲。
 対するセレヴィスは、真っ直ぐに突っ込んで来た。
 姿がブレる程の急加速。
「甘いわ!」
 手裏剣を投げた後の隙を狙っての特攻、言わば捨て身の戦術。
 だがそんなものは通じないと、覆面の下で頭目は薄く笑った。
「闇闘技・流血乱舞!」
 手裏剣が突き刺さったセレヴィスへ、鉤爪での二連撃が放たれた。
 容易くその顔へと切っ先が突き刺さって、そのままぼふんと消え去る。
「なっ!?」
「油断大敵ぃっ!」
 完全に空を裂き切った双腕の向こうに、無傷のセレヴィスが見える。
 上空で桜華を援護した分身を戻し、再度ユーベルコードで召喚を行っていたのだ。
 動き出した時のブレが、召喚の証。
 それを見抜けなかった時点で頭目はセレヴィスの術中に嵌っていた。
「くっ!」
 咄嗟に全身の力を抜き脱力を図る頭目。
 しかし突如走った感覚に両足が僅かに硬直する。
「おまたせっ!」
「待ってたぜ!」
 見れば戻って来た桜華が分身体を牽制しつつ、十六夜と共にナイフを投擲していた。
 二人が放ったナイフは両膝の裏を掠める様に跳び、装束ごと皮膚を裂いて行った。
 それが引き起こした、ほんの僅かな反射的な怯み。
「……ン、これ結構疲れるんだけど出し惜しみしてらんないんだよ」
 何処か遠くで呟かれた様な声が聴こえ、セレヴィスの身体が変化していく。
 瞳の色は青から緑へ、全身に走るノイズの様なブレ、透けて見える狐耳。
 全身の気を瞬間的に高め、擬似的な真の姿となった少女が飛び込む。
「千里狐跳ね!」
 両手首を捕らえ無防備となった腹へ、跳び蹴りを放つ。
 一、二、四、八、十六、三十二――。
 最早動く両足が目に見えない程の速さで打ち込まれていく。
「とぉどめぇっ!」
 最後に両足を揃えてドロップキックを放つ。
 勢い良く吹き飛んで行く頭目を見ながら、セレヴィスは息を整えながら言った。
「これでも一応死線を幾つも潜って来てるんだよ、なめないでよね」
 分身体も桜華と十六夜のコンビネーションであっさり撃破され、三人の間に弛緩した空気が流れる。
 しかし、まだ終わっては居なかった。
「……成程、流石と言った所か」
 声に振り向けば、頭目は未だ健在であった。
 先程のラッシュで真面に食らったのは最初の四撃まで。
 一気に攻撃が加速していく一瞬の溜めを見切り、頭目は無理矢理全身から力を抜き去っていた。
 その影響で若干動きが十全では無いが、分の悪い賭けには勝利していた。
「禁術・影分身!」
 そして生み出される多数の分身体。
 何度来ても打ち破るまでと構えた三人を尻目に、頭目は駆け出した。
「んなっ!?逃げんのかよ!?」
 思わず上げた十六夜の叫びに、二人も同調する。
 しかし即座に切り替え、桜華が声を上げた。
「頭目がそっち行ったよ!気を付けて!」
「わわっ!?」
 隣に立っていたセレヴィスが驚いて耳を塞ぐ程の声量。
 一先ず仲間達への急報を告げた三人は、残った分身体を処理する事に決めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アマータ・プリムス
上演時間も長引いてしまいましたしそろそろ幕引きといきましょう

各個撃破をされぬよう頭目の目を盗み【目立たない】ようにトランクからもう一体の人形。アウリスを取り出し当機の姿に【変装】させます

当機自身は外套で姿を隠しその場に落ちている武器を拾わせアウリスで頭目と近接戦闘。頭目の動きを止めたところでUCでアウリスごと鋼糸で拘束します。分身体を召喚されても合体する前に【範囲攻撃】で拘束してしまいましょう。

「―――カーテンコールのお時間です。アンコールはありませんよ」

※アドリブ、連携歓迎です。自由に動かしてください


パフィン・ネクロニア
さすがに頭目までぽんこつなんてうまい話はなかったか。
こりゃ最後ぐらいは真面目にやらんと痛い目見そうじゃのう。


リトルを召喚してスピードで勝負じゃな。
わし以外の猟兵とも戦っているはずじゃしそれなりに消耗しとるはず?
まあピンピンしてたら無理に攻勢に出ず持久戦に持ち込み消耗させて次にパス、弱ってたらそのまま仕留める。ンな感じで。


スピードは多分こっちのが早いはず。
機動力を生かして残像をばら撒き撹乱し、隙を見て接近して刀で斬り伏せる。2回攻撃できればなおよし。
敵の攻撃は見切りで回避、特にあの手裏剣には注意しておかねばの。


モルツクルス・ゼーレヴェックス
「モルツクルス・ゼーレヴェックス参上っす!あんたにゃ恨みはないっすが、その陰謀は見過ごせないっす!」

素早い敵っすから、自動攻撃っす!
【光翼】を展開して【空中戦】

「はっはっは!見切れるっすか自分の、自分で良く分かってない動きが!?」

不可思議な動きで困惑させたりして【存在感】醸せば、自動的に光線を撃つ優れもの!

回避しきれない攻撃は【オーラ防御】っす!

全く、私利私欲で動くオブリビオン、見下げたもんではあるっすけども

「あんたの浮世絵、偉いもんっすね!人の心を動かしたのは、香りじゃなく、絵の良さっすよ!そこだけは、尊敬するっす!」

戦い終わったら、家捜ししてみるっす!
浮世絵を持って帰るかは……ノリっすね!


時雨・零士
頭の方も覚悟はできてる、ってみたいだな…ったく…過激な事せずに平和に絵だけ売って暮らしてりゃ、良かったのによ…。

敵の動きを【見切り】【第六感】で捕捉し、手裏剣や分身を【2回攻撃】ブラスターのバースト連射で迎撃しつつ【ダッシュ】で接近。
そのまま【グラップル】【2回攻撃】での蹴り、拳での連撃から、素早くマグナモードのブラスターを抜き放ち【クイックドロウ】【零距離射撃】で接射して吹き飛ばす!
更に吹き飛ばした敵を【ダッシュ】で追撃。【力溜め】【捨て身の一撃】による必殺の【カオス・ストライク】発動。全力の一撃で眠らせてやる…!

「さぁ、フィナーレだ!これが、俺の全力の一撃だ!!」



「来ましたか」
 迫り来る気配を前に、アマータ・プリムスはぽつりと呟いた。
 先程聞こえて来た仲間の声。
 それに合わせて迎撃の態勢を整える事が出来た。
 言うなれば十分に罠を仕掛ける猶予は有った訳だ。
「さて、終幕へ向けてラストダンスですね」
 両手に構えた小刀を打ち合わせる様に前へ出すと、甲高い音が鳴り響く。
 届いたのは鉤爪の一撃。
「これはっ!?」
「掛かりましたか――観劇の最中はお静かに。カーテンコールはまだ先です」
 頭目が仕掛けたのを見てユーベルコード【Festina lente】を発動させる。
 指先から放たれた鋼糸が、頭目を切り結んでいた『人形ごと』結び上げて行動を阻害する。
 そう、頭目の奇襲を受けたのはアマータ当人では無い。
 アリウス・プーパと言う予備の人形だ。
 日頃使われる事が無いが、背格好を自在に変化させる事が出来る為汎用性は高い。
 自身の姿に変装させてしまえば、実際に相対するまで影武者とは気付けないだろう。
「今じゃ、掛かれぇ!」
 そしてこの瞬間を待っていたのはアマータだけでは無い。
 息を潜めていたパフィン・ネクロニア、モルツクルス・ゼーレヴェックス、時雨・零士が物陰から飛び出し、一斉に頭目へと躍り掛かった。
 「モルツクルス・ゼーレヴェックス参上っす!あんたにゃ恨みはないっすが、その陰謀は見過ごせないっす!」
 先ず名乗りと共に気勢を上げたのはモルツクルス。
 ユーベルコード【光翼】を発動し、空を舞う様に跳躍する。
 持ち前の存在感と地形を利用した不規則な動き、そして挑発的な高笑いで頭目の気を引く。
「はっはっは!見切れるっすか自分の、自分で良く分かってない動きが!?」
 多少なりとも相手の『興味を引く』事が出来れば十分。
 光翼から弧を描いて放たれる光線が頭目を狙い撃つ。
「ちっ!」
 対する頭目は無理矢理に身体を捻った事で鋼糸が肉に食い込むが、着弾箇所を調整した事で被弾しながらも拘束から逃れた。
「盟約に従い来たれ以下略!リトル、出番じゃ!」
 態勢を立て直す前に突っ込んだのは白ドードーに跨ったパフィン。
 人鳥一体となった素早い動きで距離を詰め、愛刀『曇天』で駆け抜けざまの一撃を見舞う。
 鉤爪で受ける頭目だが反撃に移ろうとした瞬間には、既にパフィンは離脱を終えている。
 ならばと手裏剣を放つが、どれも紙一重で避けられていく。
 ばら撒かれた残像に惑わされる頭目では無いが、動き出しの挙動を覆い隠す様に生み出されるのは厄介だと感じていた。
 三度目の交差で大きくバランスを崩され、飛び退き仕切り直そうとした所へ光弾が殺到した。
「甘いぜ!逃がすかよっ!」
 此方へと駆け抜けながら手にした銃『デオルム・ブラスター』を連射する変身状態の零士。
 手裏剣で光弾を打ち返すも、零士の勢いは止まらない。
 そのまま近距離戦闘に縺れ込み互いに体術を駆使しての攻防が開始される。
『モードチェンジ、マグナ』
 正拳突き、上段回し蹴り、胴体への射撃と流れる様なコンビネーションを放つ零士。
 鉤爪受け、しゃがみ回避、左へ側転回避と如何にか避け切る頭目だったがその動きに冴えは無い。
 最初に受けたアマータの鋼糸がまだ絡んでおり、間接の動きを阻害していた。
「わしを忘れてもらっては困るのう!」
 そこへ飛び込んで来るパフィン。
 立ち上がりの踏ん張れないタイミングに合わせて刀を振るう。
 受ける事も出来ない為、転がって逃れる頭目。
 しかし擦れ違った無防備な背中へと手裏剣を投げる。
 当った、と思ったが背中に突き立てられる筈の手裏剣はそのまま空を切って飛んでいく。
「残像か……!」
「ご名答じゃ。商品は刀傷で良いかのう?」
 大きくぐるりと輪を描いて戻ってくるパフィン。
 立ち上がり体勢を立て直して再度交差のタイミングを見計らう。
 パフィンが刀を握り直した瞬間を狙い、手裏剣を放つ。
 それは打ち払われるが、その一瞬を突き前方へ転がる様に飛び込んだ。
「ぬっ!?」
 頭目が視界から消えた事に声を上げるパフィン。
 遠ざかり始めるその背中を狙って、必殺の投射を行う。
 本来ならば避け切れない一撃。
「はっはっはー!丸っとお見通しっす!」
 割り込んで来たのはモルツクルス。
 展開したオーラで防御し手裏剣を防ぎ、意識を持って行った事で光翼から光線が放たれる。
「くっ、邪魔だ……!」
 身を焦がす感覚に眉を顰めつつ頭目は眼前のモルツクルスへと双撃を仕掛けに行く。
 妖しげな闘気で手裏剣は弾けても、直接押し込まれれば防ぎ切れまい。
 矢鱈と不可解な動きをして読めない動きをしていたが、この距離ならば外す事は無い。
 上と下、噛み合わせる様に振るわれた双腕の一撃が飛翔する姿を捕捉する。
「どこ見てんだ!」
 だが、寸前で頭目の視界は大きくズレた。
 左後方から放たれた光弾で勢い良く吹き飛ばされる。
 転がる視界の中、零士がブラスターを構えているのが見えた。
 体勢は悪く鋼糸の影響で脱力状態を維持するのも難しい。
 それならと、頭目は分身体を生み出す。
「禁術・影分身!」
「させませんよ」
 凛とした声が響く。
 分身体は召喚された傍から次々に鋼糸の波に飲まれ、身動きが取れない状態にされる。
 合体する事で力を増す分身体だが、その分一体一体の力はそう高くない。
 身動きする事すら儘ならず拘束された分身体を見る間も無く、頭目にも鋼糸が絡む。
「これは……っ!?」
「――カーテンコールのお時間です。アンコールはありませんよ」
 静謐な夜を思わせる黒の外套を纏ったアマータが姿を見せる。
 最初の仕掛けで姿を見せなかったのは更なる罠を仕掛けて居たからだ。
 動き回りながら発動させるには集中を要するが、気を払っていない相手の間隙を突くくらいなら訳は無い。
「貴女では及びませんよ。――当機、優秀ですので」
 優雅にカーテシーをして見せる彼女へ呪詛を吐く暇も無く、真正面から迫る影。
 零士が助走を付けて両足で踏み切り、空高く舞い上がる。
「では皆様、離脱を。時雨様、後は宜しくお願いします」
「任された!さぁ、フィナーレだ!これが、俺の全力の一撃だ!!」
 三人がその場を離れたのを確認して、空中で静止したまま蹴りの構えを取る。
 零士のベルトを中心として渦を巻き始めた混沌の魔力が放たれ、頭目を飲み込んで行く。
「ぐっ!」
 危険を察知して如何にか回避しようと身を捩るも、鋼糸が食い込むばかり。
 そうしている間にも混沌の魔力はその密度を高めていく。
『フルチャージ。コール、カオス・ストライク』
「コイツでトドメだ……!カオス・ストライク!!」
 猛き雄叫びが響き渡る。
 全身に混沌の魔力を纏った零士の跳び蹴りが、一直線に頭目へと向かう。
 一瞬で行われた交差。
 眩い光を放ちながら空間が歪んで行き、やがて耐え切れず爆発した。
 立ち上る黒煙と荒れ狂う魔力の奔流の中で、着地した零士はゆっくりと立ち上がる。
『フィニッシュ。エネミー、ロスト』
 電子音声が、頭目の撃破を静かに伝えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月29日


挿絵イラスト