帝竜戦役⑮〜山があるなら登りたい!
ゆっくりと転がり落ちてくる巨大な岩石群、それらをかわして山へ登ることは一見して簡単なように見える。
しかし、そう簡単に事は運ばないようだ。
なぜなら岩石は重力異常によってゆっくり転がり落ちてくるのだが、そこへ登ろうとする者もまた通常の数十倍に及ぶ重力負荷がかかり飛行は不可能、まともに歩行することすら覚束ないのだ。
だが狭隘な渓谷を通過するためには、山の頂上から最も安全なルートを探すほうが賢明である。
この異常な山を踏破し、回廊を安全に通過するため猟兵たちはどうするべきか? 答えは簡単である、重力の高負荷に耐えられる程度まで身体を鍛え上げるのだ。
「……ということですので、ここにある山の頂上を目指していただきたいのです」
タブレットPCで岩石回廊の地図を示しながら事情を説明するのはリンネ・ロート。その操作はまだ慣れないようであるが、どうにか他の猟兵たちに目的地となる山を指し示すことができた。
「気を付けて欲しいことは、転がり落ちてくる岩石の動きが不規則だということです。見えた時には手遅れで、押し潰されてしまうかもしれません。だからこそ、岩石が見えた時点で避けられる程度には身体を鍛えてから臨んでほしいです」
そう、転がる岩石の動きはでたらめで、岩石の動きまでは予知できなかった。
「それからこれは不要な情報かもしれませんけど、頂上では『へしつぶの種籾』というものが手に入るようです。高重力下でも壊れないぐらい、頑丈な種籾みたいですね」
『へしつぶの種籾』は収穫までにとてつもない時間がかかるが、上手く育てられれば収穫した米一粒で並みの成人男性が十日間は過ごせるほどの栄養価を持つ。そのため種籾一粒で金貨八十八枚の価値を持つ。地道に種籾を増やしていけば億万長者も目指せそうだ。
「どうかご安全に。怪我をして大切な方が悲しむといけませんから……」
篁佐登花
OPをご覧頂き、誠にありがとうございます。夏に向けて色々な部分が気になる篁佐登花です。
このシナリオは一章完結の『帝竜戦役』の一シナリオとなっております。
OPにございますように、重力異常が発生した狭く入り組んだ峡谷を突破するため山登りをお願い致します。
なお、このシナリオでは「重力異常に耐えられるようなトレーニングを実行してから、回廊に挑戦する」ことでプレイングボーナスが発生致します。何らかの方法で、高重力下でも動きやすくなるようなトレーニングをお願い申し上げます。
フラグメントの内容については参考程度で大丈夫です。
皆様の自由な発想のプレイングをお待ち申し上げておりますので、よろしくお願い申し上げます。
第1章 冒険
『そこに山があるから』
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POW : 体力や気力で山登り
SPD : 技や早さで山登り
WIZ : 魔法や知力で山登り
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戦場外院・晶
「よろしい、ならば鍛練です」
超回復という言葉を御存知でしょうか?
筋組織は破断から回復する際にこそ強く生まれ変わります
……故にこそ
「……はっ……はっ」
徹底的にこの身体を苛め抜く
特注のタングステン製のトレーニング器具を存分に活用して、朝から晩まで鍛練にあけくれます
「……回……復」
休息を挟まずとも超回復を行える、これ、正しいUCの使い方では?
「此処が岩石回廊……素晴らしい……全身が歓喜しております」
自重トレーニングが効くとは、なんと素晴らしい土地なのでしょう
……転がってくる岩に、拳を翳し
「……破ぁ!」
真っ向から迎撃です
避けるのが困難、武器が持てないほど重くなる……答えは一つ、岩を砕ける程に拳を鍛える
エルザ・メレディウス
アド〇連携〇
■訓練
宇宙飛行士の訓練施設で重力訓練
種籾を条件に施設を貸して頂ける様に【取引】します
・少しづつ重力負荷を増やしていきながら、最終的には数十倍の重力まで増やして【環境耐性】を会得します
・最初は日常動作を行える程度まで鍛え、その後は傾斜なども設定して、山道を想定した【地形耐性】も会得できるように
岩のかわりに大きめのボールを落として頂き回避の訓練も
訓練が十分と判断したら、回廊へ
■探索 WIZ
【地形の活用】を活かして、なるべく落石の少ない安全そうなルートを進みます
とっさの落石には、訓練を活かして回避を
万が一、重力に耐えられない時はUCを使用して緩和。
*種籾は可能なら回収。帰還後、訓練施設へ
大神・狼煙
つまり、動かなければ良いのでは?
あくまでも、歩きにくいだけであって歩けないわけではない
なにより、見えた時点で避ける必要があるという事は、見えてから当たるまでに一瞬、間がある
弾丸みたいな速度で飛んでこないのなら、岩という無機物を変換して、骸骨に変えた岩の方に自分を躱させればいい
一体でも変換できれば、その骸骨に自分を運ばせてもいいし、転がる岩を受け止めさせてもいい
まぁ、射程まで転がってきた時点で変換して避けさせるだけではありますが
後はゆっくり歩いてでも骸骨に運ばせてでも、登るだけ
岩が有機物なんてオチが待っていたなら、山道の岩を変換
もし頂上にたどり着けたなら、是非とも種籾を持ち帰りたいところ
●訓練施設にて
とある世界のとある訓練施設を利用するため、足を向ける猟兵たちがいた。その訓練施設とは、宇宙飛行士を目指す者たちが利用する重力訓練施設であった。
なぜそのような施設を猟兵たちが利用できるのか? それはエルザ・メレディウスが『へしつぶの種籾』を得られた暁に、施設へ引き渡す取引を持ち掛けていたからだ。この交渉は特に何の滞りもなくまとまった。
『へしつぶの種籾』は特徴を聞いた施設関係者たちの興味を引き、その興味の誘惑に勝てなかったためである。宇宙で活動する際、大いに役立つことは想像に難くなかったからだ。
さて、交渉をまとめたエルザは当然として、他にも戦場外院・晶と大神・狼煙といった猟兵も共に施設へと入っていく。
重力制御室へエルザと晶は足を踏み入れ、軽く準備運動を始める。狼煙はというと、重力制御室のコントロールルームにて分厚いガラス越しに準備運動中の二人を笑顔で見つめている。……やや怪しい視線ではあるのだが。
準備運動を終えたエルザと晶はコントロールルームにいる狼煙と施設職員に身振りで合図を送る。エルザの考えは少しずつ重力負荷を増していきながら、最終的には数十倍の重力に慣れる身体づくりを目指していた。
まず手始めに二倍の重力負荷がかけられる。これに対し晶は喜ぶように、
「これが重力負荷……よろしい、ならば鍛錬あるのみです」
と拳をポキポキと鳴らし、特注のタングステン製トレーニングマシンを存分に活用し始める。エルザもこの程度ならば日常動作に大きな支障はないようだ。
二人の余裕ぶりを見た狼煙は合図を送ると、徐々に負荷を大きくしていく。
「……はっ……はっ!」
実は負けず嫌いな晶はエルザより先に音を上げないよう、しかし徹底的に身体を苛め抜く。根負けしたエルザは先にその場へと倒れこむ。狼煙は相変わらず笑顔を絶やさず二人を見守るのみ。
やはり変t……いや、そうではない。狼煙には狼煙の考えがあるのだ。
倒れこんだエルザの筋繊維はおそらくボロボロだろう。それは晶も同じなので、晶はエルザと自らへ【生まれながらの光】によって聖なる光を当てる。晶は疲労を増しつつも、二人の筋繊維は以前より素晴らしいものへ超回復していく。
説明しよう、超回復とは!? エネルギーの枯渇や筋線維の損傷を起こした際、回復時に筋力の向上などが効率よく行われることである。
「……回……復……休息を挟まずとも超回復を行える、このユーベルコードの正しい使い方では? 素晴らしい……全身が歓喜しております!」
とは晶の弁。回復したエルザは山道も想定した訓練を晶へ提案する。これに晶も同意し、何度も同じように倒れては超回復を繰り返していく。時には岩石に見立てたボールを回避する訓練も交える。
二人の女性が苦痛に耐え、立ち直るのを眺めていた狼煙はご満悦の様子。だが、ただ楽しんでいたわけではない。二人の訓練が充分なものになるまで見極めていた。
「お二人とも、もう充分だと思いますよ。すでに数十倍の負荷をかけているにもかかわらず、こちらへ来る前と遜色のない動きができていますから」
そう二人へコントロールルームからマイク越しに声をかける狼煙。しかし彼自身はどのようにして重力異常の山を登るというのだろう。
●いざ登山へ
「ここが岩石回廊……トレーニングの成果を発揮するには丁度いい場所です。なんと素晴らしい土地なのでしょう!」
晶が嬉々としているのはエルザと狼煙にも見て取れる。その横でエルザは地図を取り出すと、
「このルートが最も安全よ。二人とも異存はないかしら?」
エルザの提案に頷く晶と狼煙。
さて、重力負荷の訓練を受けなかった狼煙だが、余裕の表情を浮かべている。なぜなら(あくまでも歩きにくいだけであって、歩けないわけではない。つまり、私自身の足で歩かなくとも良いのでは?)と考えていたからだ。
狼煙は【古代機械兵器・機巧師団(エンシェントギア・ディヴィジョン)】を発動して手近な岩石群を古代機械兵器の武装兵団に変換しようと試みる。そこへ早速、ユーベルコードの発動準備に入っていた狼煙へ向かって岩石は転がり落ちてくる。重力負荷の訓練を受けていなかった彼に、ゆっくりとはいえ岩石をかわす余裕がない。
エルザも【アンチグラビティレイン(アンチグラビティレイン)】で反重力作用を持つ雨で低重力状態と同じ環境に変化させようとするが間に合いそうもない。
だがここで晶が動く。転がってくる岩石に拳を翳し、
「……破ぁ!」
鍛え上げた拳で岩石を打ち砕く。
「……晶さんのおかげで助かりました、少し油断が過ぎたようです。ですが、もう大丈夫でしょう」
武装兵団の一体に狼煙は自らを抱えさせ、同じように他の二人も同様にさせる。その後はエルザのユーベルコードで低重力状態と同じ環境に変化した山を登っていくだけとなった。
咄嗟の落石は晶が全て打ち砕き、視認できる範囲の転がる岩石は狼煙がユーベルコードによって避けさせていく。エルザの地図のおかげもあって、無事に山頂へ辿り着くことができた。
山頂へ辿り着くと、狭隘な渓谷を通過するための最も安全なルートを探し出す。
そしてエルザにとって最も肝心な『へしつぶの種籾』は……
「これのことよね? 生育にとてつもなく時間がかかるということであまり期待はしていなかったけれど、平等に分けた後に約束通り施設へ引き渡したとしても十分な数が私の手元に残りそうね」
「ええ、私にもかなりの数が頂けそうです」
「栄養価が高いということですが、試しに一粒口にしてみましょう。……これは本当にしばらく何も口にできそうもないでしょう」
それぞれ満足な数の『へしつぶの種籾』を手にし、渓谷を安全に突破することに成功した。
大成功
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