帝竜戦役⑪〜無限瀑布の君臨者
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「どうやら、また新たな帝竜が現われたようじゃな」
次から次へと、よくもまぁ、とガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は言葉で呆れながら、表情は厳しい。それだけの連戦を猟兵達がくぐり抜けている事を知っているからだ。
「新たに現われた帝竜は女禍――全長十kmにも及ぶ巨体を持つ、金色の金属竜じゃ」
雨となって地上に降り注ぐ無限の瀑布に君臨する、恐ろしき存在だ。足場は水、加えて敵は黄金の飛翔竜だ。上空を舞っている、かなり厄介な敵だ。
「加えてヤツは、生命体を憎悪し、災厄を撒き散らし虐殺しようとしておる……帝竜だ何だという前に、決して放置はできん」
こちらが姿を見せれば、女媧は迷わず殺しに来るだろう。殺意のまま、帝竜と呼ぶのにふさわしい災厄がごとき力で、だ。
「しかも、女媧はこちらを必ず先手を取ってくる。全長十kmが、全身から放つ光線の範囲がいかほどになるか……もはや、それだけで暴力と言っても過言ではないじゃろう」
他の帝竜達と同じく、女媧のユーベルコードに対しても対処が必要だ。さもなければ戦場の優位と圧倒的範囲攻撃の威力で、押し切られて終わるだけだ。
「そうならないための策が必要じゃろう……しかし、わしはおぬしらなら倒す事のできない相手ではないと思っておる。今までの帝竜もまた、得意分野であればヤツに匹敵するかあるいは越えるほどの力を持っていたはずじゃ」
それに――そうガングランは、真剣な眼差しで続けた。
「間違いなく、帝竜ヴァルギリオスはあれを凌ぐ敵なはずじゃ。女媧を倒せねば、どちらにせよ先はない。いっそ、試金石にでもする勢いで戦ってくるがよい」
波多野志郎
でかい竜が続きますよ! どうも、波多野志郎です。
今回は水上に陣取る黄金飛翔竜帝竜女媧との戦いとなります。
プレイングボーナスは、『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』というものになります。女媧の圧倒的殺意と力にどう対抗するか? 戦場も加味して、考えていただければ幸いです。
それでは、殺意に満ちた竜が待つ戦場でお待ち致しております。
第1章 ボス戦
『帝竜女禍』
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POW : 抗体霊波光線
【宝珠から、知性ある生命体全てを殺す光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : まことのあるじ
【八尾を備えた、物言わぬ妖狐の女性】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : 災厄の嵐
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
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メイスン・ドットハック
【SPD】
停滞している奴に偉そうに言われるのは癪じゃのー
生きるというのは成長していると見せてやるけーのー!
二足歩行戦車KIMOYORIに搭乗し、揚陸艦ロストリンクに乗船して参戦
AI制御のロストリンクで、女禍の攻撃を予測しつつ自動回避を行い、こちらもミサイルやレーザー砲ユニットで牽制攻撃を試みる
いざとなったら戦車で脱出し、水上で機動戦を行う
先制後はUC「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」を発動して「操作している対象に破壊ウイルスを送り込む」電脳装置を創造し、LPLに装備
照準を定め、長距離狙撃を妖狐に叩き込み、破壊ウィルスで女禍を狙う
どんな相手でも弱点はあるものじゃけーのー
アドリブ絡みOK
雛月・朔
(ヤドリガミの器物本体の桐箪笥を念動力で宙に浮かせて接近)
武器:ヤドリガミの念動力
遅ればせながら私もようやく群竜大陸入り…と思ったら最初から面倒な戦場に面倒な敵ですね…。んー…空中へはいつもの念動力で宙に浮かせて接近は出来るけど、肉体だと先制攻撃にやられてしまいますね…仕方ないので器物の桐箪笥で戦場へ。
器物本体を戦場に出すのは気が引けますけどここを突破しないことにはヴァルギリオスまで行けませんし、戦うしかないですね。
『生き物がいて人がいて、私のようなヤドリガミが生まれるのです。それらを否定するならば、私が戦う理由としては充分です、月の下敷きにでもなっていてください』
先制攻撃を防いだらUCで攻撃
ブレイブ・ブレイド
※アドリブ歓迎、共闘可
・敵UC対策
水中から『海洋王』に騎乗して近付き『ブレイブシールド』でガード
水による敵の攻撃光の威力減少と偏光による回避力アップでしのぎ切る
(地形の利用、水中機動、かばう、盾受け)
・攻撃
そのまま水中でUC発動
敵射程外の遠距離から
敵の攻撃を受ける機会を減らしつつ『ブレイブカノン』で砲撃する
(敵が寄って来たら深く潜航して被弾を回避)
・セリフ
水面の偏光によって少しでも狙いがそれれば
何とかしのぎ切れるはず……、頑張ってくれ海洋王!
ゆくぞ!
ファイナルシュートッ!!
アイリ・ガングール
いやぁ、総ての生命体を滅ぼすとはまた大きく出たね。昔男が憎くてしょうがなかった程度のみどもじゃ、とてもとても勝てぬ気がせんわ。
それはさておき、こちとら腐っても九尾持ち。それが優れてるとは言わんけども、矜持は示したいものよの。
意図としては味方の支援じゃ。災厄の嵐?良かろうよ。みどもは敢えて沈没しやすい小舟に乗って、前に出て挑発しようぞ。そうしたなら、『弱いコイツから倒そう』という【誘惑】も出来ようよ。
そうしたならUCの出番じゃ。放つ霧は、『必ずこちらに一瞬注意を向けさせる』。それはつまり、制御が難しく暴走しやすい災厄の嵐を乱すことに繋がるじゃろ?
それで他の者が攻撃できる隙を作ろうかね
天都狐・華夜
何の気負いもすることなく、戦場を往く。
敵が居れば落ち着いて照準し、撃ち抜くのみ。
どうせ、攻撃が届く事はないのだから。
グリモアの短距離かつ超小規模転移により、位相の違う同一ポイントに逃げ込むことで敵を視認し続け、なおかつ敵が斃れるまで攻撃を継続する。
回避はグリモア側での完全自動発動な為、グリモア自体に影響を与えない限り阻害は困難と思われる。
雨咲・ケイ
ガングランさんの言葉通り凄まじい竜が次々と現れますね……。
流石は群竜大陸といったところでしょうか?
ですが退けませんッ!
【SPD】で行動。
戦闘力の向上した敵の攻撃は【オーラ防御】と【盾受け】で
守りを固め【第六感】にも頼りながら凌ぎましょう。
そして銀霊縛鎖を敵の身体に巻き付けて【グラップル】で取り付き、
敵の身体の上を移動しながら妖狐の女性を目指します。
女性を視認したらアリエルの盾を全力【投擲】。
弾かれても、そのままアリエルの盾を輝かせて【目潰し】を仕掛け、
怯んだ所でルミナスから放つサイキックエナジーで攻撃して分断。
更に【退魔集氣法】を使用して女禍に体術と衝撃波による
【2回攻撃】を仕掛けます。
緋神・美麗
アドリブ・絡み歓迎
足場が殆ど無い上に敵は強大でしかも飛んでるとかないわぁ。それでもやらないといけないのよね。全力全開でいくわよ。
オーラ防御を足元に展開して足場とし、フェイントを掛けながらダッシュして的を散らし時間を稼ぎ、周囲の雨を属性攻撃とオーラ防御、ライトニングセイバーの熱で蒸発させて霧状に変化させ、女媧への目晦ましと光を乱反射させる防御膜とし利用、更に水に潜って攻撃を凌ぎ超巨大電磁砲でカウンターを撃つ
千載一遇のチャンス、第六感・野生の勘・誘導弾で確実に当てに行き、鎧無視攻・捨て身の一撃・二回攻撃・衝撃波・属性攻撃・限界突破を乗せた正真正銘の乾坤一擲で女媧を狙い撃つ
「あんたはここで墜とす!」
村崎・ゆかり
生命を憎むか。これは正しく世界の敵! この場で討滅してあげる!
飛鉢法で戦場へ侵入。
災厄の嵐は、鉄鉢を着水させて上方に向け「全力魔法」の「オーラ防御」「盾受け」で過ぎ去るのを待つ。
さあ、反撃と行くわよ。
「地形耐性」「地形の利用」「先制攻撃」「高速詠唱」で不意を打たせてもらう。
「全力魔法」火の「属性攻撃」「範囲攻撃」「破魔」の不動明王火界咒!
浄化の炎で骸の海へ追い返してあげるわ。全身を焼けば、どこかに弱点があるでしょ。
見つけたら「全力魔法」の一点集中。過去の亡霊の思い通りになんてさせない! ここで、砕く!
防御は偶神兵装『鎧装豪腕』で「盾受け」し、飛鉢法の鉄鉢の機動性で回避。当たらないことが最優先。
秋月・信子
・WIZ
生命体を憎悪し、殺意のままに暴れる存在…
何故そこまで、憎むようになったのでしょうか
スーツの反重力制御装置を作動
これで【空中戦】【水上機動】に対応です
先制攻撃の嵐は、ショットガンに影を纏わせ【武器改造】を施した魔銃『鉄の嵐』で自然の嵐と散弾の嵐とで相殺し【吹き飛ばし】てみます
恨みの言葉は【呪詛耐性】で堪えつつ、嵐を止ませて日が差したのであれば、帝竜の影を触媒に影の迷宮で動きを封じます
成功したら、迷宮の外殻を足場にして【ダッシュ】と【ジャンプ】で竜の道を駆け上り、妖狐、二対の宝珠をハンドガンで射撃及び【援護射撃】
眼球まで辿り着けたら、魔銃『鉄の嵐』の残弾を【零距離射撃】で撃ち込み破壊します
セゲル・スヴェアボルグ
嵐などの天候操作か、あるいは海を荒れさせるか……
まぁ、それの上にいるなら前者の可能性が高いか?
いずれにしても、水が絡むなら凍らせてしまえば良い。
まずは攻撃に備えて、ぱっと装備を具現化して自重を増大させる。
そうすれば吹き飛ばされることもないだろう。
盾は多めの方がダメージも軽減できそうだな。
やり過ごしたら即座に攻撃に移るぞ。
出来る限り広範囲をブレスで凍らせる。
行動や攻撃を制限できれば僥倖だ。
まぁ、俺の場合は飛べるから足場についてはどちらでもいいが、海ごと凍らせられるならその方がいい。
あとは全力で攻撃を叩きこむだけだ。
あのでか物なら、斧でぶんなごったほうがいいかもな。
フルール・ラファラン
アックス&ウィザーズはルーの故郷
ルーはルーの故郷と全ての命を守るのよ
水の上なら、そうだわ、水を凍らせて足場にしよう
ちょっと滑るのを利用して、素早く移動ができるのよ
先制攻撃には、ルーも似た技ができるわ
同じタイミングで他の仲間放てば、きっと災厄の嵐にも対抗できると思うの
息を合わせて……今!
大気よ、風よ、水よ!ルーに力を貸して!!
エレメンタルロッドを振り上げて渾身の正面からの魔法
生命は尊く、脆く、美しいの
生命は優しく、でも時には荒々しく、そしてそれが輝きよ!
貴方も生きているのよ、動いているもの、自我があるもの
その心を鎮められれば、きっと貴方も美しい生命よ
鈍・小太刀
これまた随分大きいわね
狐の9本目の尾?
ちょっとはバランス考えなさいってのよ
なんて言いつつ仲間と連携
素早く防御態勢整える
【オーラ防御】で【氷結・火炎耐性】強化
氷の【属性攻撃】で足元から氷隆起させ
【地形の利用】で嵐凌ぎつつ【情報収集】
目は急所?
嵐の構成要素【見切り】
UC発動
ホワイトランス(巨大イカ)と
グレートアンコウ(巨大アンコウ)にウサミミ生やし
嵐にも耐え得る飛翔能力と戦闘能力付与
運命の糸を感じるのか彼らの士気も高い
そうよ反撃はここから
海の仲間達と共に
雨と海の【属性攻撃】を嵐にぶつけ
属性のバランス崩し暴走誘い
隙狙い女媧の目に【破魔】の【鎧無視攻撃】
生命の力を
未来への可能性を
消させたりしないから!
御剣・刀也
まるで蛟みたいな竜だな
水辺にいるとかまんまそれだろ?
まぁ、良い。どんな相手であれ俺に出来ることは一つ
愚直に前に出て、斬り捨てるだけだ
宝珠からの光線は狙いを定められないよう滝の裏側に隠れて気配を殺し、ダッシュで滝の岸壁を駆け上がり、勇気で攻撃を恐れず、岸壁の壁を蹴って女禍の上を取り、捨て身の一撃で斬り捨てる。
一度しか使えない奇襲なので、二回目以降は、普通に川や滝にある石、岩を足場に、光線からの射線に入らないようにしつつ闘う
「お前さんの殺意でも、俺の闘志は消せやしない!お前を倒してこの大陸を一気に突っ走る!」
水蓮・レン
なんだろう。あの竜を見ていると、失った記憶が疼くような疼かないような……。
考えてる暇はないか、とっとと狩ってしまおう。
◆先制攻撃への対策
『●災厄の嵐』への対策を行う。特技【属性攻撃】を用いて、敵ユーベルコードの持つ属性に干渉する。
氷ならば炎、炎ならば水。相反する属性で相殺して、「制御が難しく暴走しやすい」弱点を誘発させるのを狙うよ。
敵がユーベルコードの制御を失ったら反撃に移ろう。
◆戦闘
特技【属性攻撃】によって水上を凍らせ、『ウィザード・ミサイル』で一点を集中攻撃する。
如何に十kmの巨体でも、100発以上の焔の矢を一点に撃ち込まれれば少なくないダメージを受けるはず。
狙う箇所は頭、眼に見える部分。
クリスティアーネ・アステローペ
確定した存在である。と
ならあなたが滅ぶのも、
生命の存続もまた確定しているのでしょうにね?
足場は《属性攻撃》による《範囲攻撃》で水面を凍らせましょう
あまり丈夫ではないけど、壊れたらまた作ればいい、でしょう?
災厄の嵐は《破魔》の力を載せた《衝撃派》を周囲に《多重詠唱》で連打し相殺
抜けた分は《オーラ防御》と《呪詛耐性》で軽減ね
攻撃時には「対峙する相手がまことのあるじで召喚される妖狐の女性である」という幻覚を見せましょう
私の姿は彼女の姿、私の言葉は彼女の言葉、私の刃はさて、何に見えるのかしら?
彼女(わたし)に従うのもまた確定された事実ならばその主として命じましょう
さあ
"潰えなさい"
●無限氾濫瀑布
見渡す限りの青。視界を埋め尽くすほどの広大な水が、そこにあった。下は水、上は空。その青い世界を区切るように、巨大な黄金が空を飛んでいた。
「ガングランさんの言葉通り凄まじい竜が次々と現れますね……。流石は群竜大陸といったところでしょうか?」
雨咲・ケイ(人間の學徒兵・f00882)は呟き、黄金――帝竜女媧を見上げる。全長十km、言葉にすれば短いのに実際に目にすればその巨大さは圧倒的だ。緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)もまた、ため息混じりにこぼす。
「足場が殆ど無い上に敵は強大でしかも飛んでるとかないわぁ。それでもやらないといけないのよね。全力全開でいくわよ」
「遅ればせながら私もようやく群竜大陸入り……と思ったら最初から面倒な戦場に面倒な敵ですね……んー……空中へはいつもの念動力で宙に浮かせて接近は出来るけど、肉体だと先制攻撃にやられてしまいますね……」
桐箪笥のヤドリガミである雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)の選択は、最初から本体のみで念動力で浮くというものだった。確かに、ただ強いというだけではなく地の理さえ相手にあるのだ――苦戦は必至だ。
「まるで蛟みたいな竜だな。水辺にいるとかまんまそれだろ? まぁ、良い。どんな相手であれ俺に出来ることは一つ。愚直に前に出て、斬り捨てるだけだ」
御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)の言葉は、龍の格を考えれば子猫と獅子を比べるようなものだが、そこに気負いはない。刀也が獅子吼を引き抜いた、その時だ。
「来たか、生命」
その声は大気に染み込むように、猟兵達の元へ届いた。黄金の竜――否、ここではその形状らしく龍と評そうか――は、真紅の単眼で己に挑む者達を見下ろす。
「何故、抗う。生命よ。偉大なるヴァルギリオスの「再孵化」によりて、我は全てを理解せり。我らオブリビオンこそが、この世界の真なる主――過去と死は、既に確定したものであるが故に、絶対の概念である。未来や生命のように、世界をおぞましき不確定要素で汚す事など無い」
ゆらり、と身をくねらせる黄金――視力の過剰にいい者なら見えただろう、その女媧の頭に降り立つ八尾の妖狐に。
「生命よ、消えよ! 汝に力あらば、そのおぞましき肉や意思を捨て、オブリビオンとなることもできよう。我らに勝つことなど出来ぬ。下らぬ児戯を辞め、潔く死を受け入れよ!」
女媧が動く。巨大さゆえ遠近感が狂っているためその動きは緩慢に見えるが、実際は凄まじく速い。そこに込められた殺意に、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は呟いた。
「生命体を憎悪し、殺意のままに暴れる存在……何故そこまで、憎むようになったのでしょうか」
「いやぁ、総ての生命体を滅ぼすとはまた大きく出たね。昔男が憎くてしょうがなかった程度のみどもじゃ、とてもとても勝てぬ気がせんわ」
クスリ、と笑うのはアイリ・ガングール(恋する女・f05028)だ。全てか半分かの差は大きい……が、規模を考えれば正しい五十歩百歩だが指摘する者はその場にいなかった。
「それはさておき、こちとら腐っても九尾持ち。それが優れてるとは言わんけども、矜持は示したいものよの」
「アックス&ウィザーズはルーの故郷。ルーはルーの故郷と全ての命を守るのよ」
確かな決意を込めて、フルール・ラファラン(森に住まう人・f00467)が告げる。声が届いたか否か、女媧はただ一言返した。
「消えよ、生命」
言葉と同時、雷撃の津波が猟兵達を襲った。
●帝竜女媧
雷の津波は、一呼吸で猟兵達を飲み込もうとする――それに対抗したのは、フルールとセゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)だった。
「……今! 大気よ、風よ、水よ! ルーに力を貸して!!」
「霜を履んで堅氷至る。最も、氷像となるのは避けられんがな」
フルールがエレメンタルロッドを振るい、セゲルが竜頭から絶対零度の息吹を放つ。フルールのエレメンタル・ファンタジアとセゲルの碧竜凜冽(ヴァーダン・フリスプント)が瞬く間に眼前の水場を凍てつかせ、雷撃の津波を受け止めた。
「嵐などの天候操作か、あるいは海を荒れさせるか……どちらにせよ、水が絡むなら凍らせてしまえば良い」
セゲルの言葉の通りだ。相手の攻撃と戦場での足場の確保。その両方を一気に解決する対抗手段であった。
「停滞している奴に偉そうに言われるのは癪じゃのー。生きるというのは成長していると見せてやるけーのー!」
メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は、O-Ⅶ型機動強襲用二足歩行戦車「KIYOMORI」のコックピットでそう叫んだ。ガシャン、と「KIYOMORI」の両肩に搭載された電脳ミサイル&多目的榴弾(HE-MP)が展開、上空の女媧へ向かって撃ち込まれた。
ヒュガガガガガガガガガガガガ! という発射音と榴弾の風切り音。ほんの一瞬の空白後、爆音が轟いた。爆炎が女媧の体表でいくつも花開くが、あまりにも小さく見える。実際は、女媧がただ大きすぎるというだけなのだが。
「大きすぎるっての!」
言い捨て、オーラ防御を足元に展開して美麗が駆け上がっていく。アリス症候群という物の大きさが大きく感じられたりするものがあるが、まさにそれだ。いくら駆けても近づいた気がせず、近づけばそこにあるのはもはや黄金の長城だ。
「ですが退けませんッ!」
銀霊縛鎖を伸ばし、ケイは女媧の体から伸びる棘の一つに絡ませる。その棘一つを持ってしても、まるでビルの支柱を巻き取ったかのように太かった。
「煩わしい」
一言で言い捨て、女媧は二つの青い宝珠を輝かせ知性ある生命体全てを殺す光を放ち、薙ぎ払う! ドォ!! と水地の表面を打った光が大きな水柱を上げ――それに混じって、ブレイブ・ブレイド(異世界勇者ブレイバー・f26959)が跳んだ。
「こい! 海洋王、海洋合体だ!」
ブレイブの呼びかけに応え、ウミガメタイプのサポートメカ海洋王が水柱から出現。ガシャン、と変形しながら海洋王はブレイブの両肩へと合体した。
「海の勇者マリンブレイバーッ!!」
ドドン! と二門のブレイブカノンから放たれたオーラの砲撃が、黄金の体表に着弾する。女媧はその爆発に、尾を振るった――ブレイブにとっては、高さ数十メートルの壁を叩きつけられたに等しい一撃だった。
「ブレイブシールドッ!!」
バチン!! とへクス状の防御フィールドが尾を受け止め、ブレイブが弾き飛ばされる事で退避に成功させる。だが、尾の一撃はそれで終わらない――足場となった凍った水面へと振り下ろされたのだ。
「これまた随分大きいわね。狐の9本目の尾? ちょっとはバランス考えなさいってのよ」
鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)の足元から、氷が隆起し尾の一撃を回避する。だが、尾が通り過ぎただけで起きる突風は回避しきれない。
「行くよみんな!」
突風に煽られる中、小太刀に召喚されウサミミを生やしたホワイトランスとグレートアンコウが小太刀を支え飛翔した。
「なんだろう。あの竜を見ていると、失った記憶が疼くような疼かないような……」
水蓮・レン(ダンピールのウィザード・f12940)は失った記憶が、自分に何かを訴えて来るのを感じていた。しかし、今は深く考えるだけの時間と余裕はない。
「考えてる暇はないか、とっとと狩ってしまおう」
レンは足元を凍らせながら、水地を走る。その度に、レンは文字通り『布石』を撒いていった。
「猪口才な」
女媧は言い捨て、再び災厄の嵐を巻き起こす。今度はすべてに降り注ぐ、凍てつく豪雨――そのはずだった。
「両儀より流れ出て、堕ちて至った羽化登仙。ここは桃源、悦の園。どうか呑んで飲まれて、頂に至りましょう?」
女媧にとっては、ただの小舟だったはずだ。道端の石ころに等しい、ただの小さきモノ――しかし、単眼がその小舟に乗るアイリを捉えた瞬間、意識が外れなくなった。
芳香妖艶・武陵桃源――仙境桃源の一部、一瞬アイリに注意を逸らす霧が成した効果だ。しかし、細心の注意が必要な災厄の嵐にとってその一瞬こそが致命的だった。
アイリが微笑む。その頬を打ったのは氷ではなく、ただの雨粒だった。
「生き物がいて人がいて、私のようなヤドリガミが生まれるのです。それらを否定するならば、私が戦う理由としては充分です、月の下敷きにでもなっていてください」
女媧より上、念動力によって高く飛んだ朔が言い捨てる。その直後、ボッ! と空を覆った雨雲に大穴が空いた――背天ノ呪詛・『冬月』によって墜とされた隕石だ。
「ぐ、ぬ――!?」
嵐の制御を取り戻そうとした間隙を突かれ、女媧に隕石が直撃する。ドォ! と砕けた隕石が水面にバラけて落下していく――その中を、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)が跳んだ。
「ノウマク サマンタ ブッダナーム バーヤベ スヴァーハー。風天よ! 天吹き渡る其の風の効験を、ひととき我に貸し与え給え! 疾っ!」
飛鉢法によって華麗な戦巫女の盛装に変身したゆかりは、鉄の大鉢の上に立つと一直線に上昇する。
「生命を憎むか。これは正しく世界の敵! この場で討滅してあげる! ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
放たれた呪符『白一色』から、強化された不動明王火界咒が放たれる! それを女媧は宝珠から放つ光で相殺、打ち消していった。
「なお抗うか、生命」
「確定した存在である。とならあなたが滅ぶのも、生命の存続もまた確定しているのでしょうにね?」
抗体霊波光線をオーラの障壁で受け止め、クリスティアーネ・アステローペ(朧月の魔・f04288)が言い放つ。クリスティアーネは駆ける先から足場を凍らせ、足場を確保していった。
「当然です。私達は生き抜くためにここにいるのですから」
影をまとわせ、信子は魔銃『鉄の嵐』となったそのジョットガンの散弾を撃ち込んでいく。影の銃弾が、女媧に次々と着弾する――的は巨大だ、射程範囲なら目をつぶっても当たるサイズだ。
「ええ、撃ち抜くのみです」
そして、その銃弾に紛れ、天都狐・華夜(ロジックエラー・f01491)の多目的型バスターライフルの狙撃を重ねていく。超超遠距離からの狙撃、それは戦場を駆け巡る仲間達の動きを把握した上で、狙いをすませて行われていた。
「――――」
だから、華夜は小さなうなずきで示す。それを見て、刀也が走り出した。天空の長城に等しい女媧を相手に、簡単に攻略する手段は存在しない――だからこそ、全員が理解していた。
あまりにも遠い一瞬、細い細い攻略の糸口――それを確実に掴むための戦術をそれぞれが携え、帝竜女媧へと猟兵達は挑んでいった……。
●それは、落城するかのごとく――
帝竜女媧の頭上で、八尾の妖狐がオーケストラの指揮者のように女媧を導き続けていた。女媧にとっては、まことのあるじ――その自身の死角を埋めてくれる、頼もしい存在だった。
「そら、どうした? こっちじゃぞ?」
その指揮を見切って、アイリが適切なタイミングで芳香妖艶・武陵桃源の霧を展開する。わずか一瞬、されど一瞬。その意識のずれが、女媧のみならず妖狐の判断も少しずつ狂わせる。だからこそ、女媧はその妖狐の動きが一瞬止まったのを決して見逃さなかった。彼女をして、即座に判断を下せない事態が進行しているのだと、目敏く悟る――。
「ならば――!」
女媧が、急降下する。その上で二つの宝珠を構え、螺旋を描きながら水面へ迫った。全方位に放たれる生命を滅ぼす光――それは間断ない攻撃であり、絶対の防御だ。八尾の妖狐が次の判断を下す時間を作る。
「他の者が攻撃できる隙を作れれば十分じゃ」
アイリが笑う。女媧の判断は間違いではない――ただ、その女媧の一手を猟兵達が越えて来た。それだけだ。
「敵性ユーベルコードもしくは攻撃を感知しました。グリモア所持者に近位相遷移による緊急避難を実行。回避終了後元の位相へ再遷移します」
華夜の私は何処にもいないのかもしれない。(グリモアパッシブエフェクト・マドラックス)が、光を一瞬の転移を利用して回避する! 螺旋を描く光、その針の穴を通すような『隙間』を――華夜の狙撃が、すり抜けた。
「――ッ!?」
狙いは、頭上の妖狐だ。肩に狙撃を受けた妖狐が、大きくのけぞる。その間隙に、信子が駆けた。
「闇に覆われし影の迷宮よ……迷い込んだ者を彷徨わせなさい」
女媧が生み出した螺旋の光が生んだ影を利用した、影の迷宮(シャドウ・ラビュリントス)を信子は走り抜ける。ガシャン、と魔銃『鉄の嵐』の残り全弾を零距離で女媧の単眼へと撃ち込んだ。
「おのれ!」
単眼から、鮮血が吹き出す。視力を奪われたが、女媧は構わない。八尾の妖狐という『目』が自分にはあるからだ。撃たれた肩を掴み、妖狐は身構える――。
「まだです!」
しかし、その妖狐へケイがアリエルを投擲した。投擲や白兵戦に適した小型の盾は、妖狐の眼前で閃光を放つ。ほんの一瞬、その光に妖狐の目が眩んだ刹那。ケイは、影の迷宮の外壁を駆け上がった。
「破邪の闘氣……、その身で味わってみますか?」
ケイの退魔集氣法による連続蹴りと、それに伴う衝撃波が女媧を打った。黄金の長城は揺るがない――だが、次に繋ぐには十分すぎた。
「どんな相手でも弱点はあるものじゃけーのー」
彼を知り己を知れば百戦して殆うからず(ブレイク・メイカー)によってメンカルは「操作している対象に破壊ウイルスを送り込む」電脳装置を創造、長距離プラズマレーザー砲――LPLに装填した。O-Ⅱ型改良電脳ゴーグル「KONOMI」に浮かぶ照準、LPLを構える「KIYOMORI」とシンクロしたメンカルは、その引き金を引いた。
「――――!」
ドォ! と、撃ち抜かれて妖狐が女媧の頭から落下する。女媧はすかさず受け止めようとして――その動きを止める。
奪われた視界、その中で妖狐の気配を二つ感じたからだ。権能覚醒「月の鍵」(アフィプニスィ・ゼラキエル)、クリスティアーネの現実と区別がつかない幻覚が彼女を妖狐だと気配を誤認させたのだ。
「彼女(わたし)に従うのもまた確定された事実ならばその主として命じましょう。さあ、"潰えなさい"」
「澄み渡る、空へ手招く、荒涼の月」
「あんたはここで墜とす!」
クリスティアーネの命令と同時。上から朔の背天ノ呪詛・『冬月』による隕石が、下から美麗の超巨大電磁砲(ハイパーメガレールキャノン)による電磁加速によって射出された巨大な鉄塊が、女媧に直撃した。動きを止めていた女媧は、不意の衝撃にかろうじて踏ん張る。そこへ、空飛ぶ巨大イカと巨大アンコウ――ホワイトランスとグレートアンコウを従えた小太刀が突撃した。
「生命の力を、未来への可能性を、消させたりしないから!」
小太刀の決意の叫びに乗せて、ホワイトランスとグレートアンコウが女媧の巨体を水面へと叩きつける! ドォ!! と天高く上がる水柱――全方位への津波が巻き起こった。
「生命め、この後に及んで――」
水面から顔を上げて、女媧が激高する。先に落ちた妖狐の気配が近いことを察してそちらへ見えない視線を向けようとした。
「お前さんの殺意でも、俺の闘志は消せやしない!お前を倒してこの大陸を一気に突っ走る!」
滝の岸壁を駆け上がり、刀也が獅子吼を構える。一度しか使えない奇襲――それを最大限の効果が発揮する瞬間を狙って、刀也が斬撃を放つ!
「ッ!」
妖狐を両断した雲耀の太刀の一閃が、女媧の身も切り裂いた。完全に視力を失ってのたうつ女媧に、レンが右手を振りかぶる。
「如何に十kmの巨体でも、100発以上の焔の矢を一点に撃ち込まれれば少なくないダメージを受けるはず――」
ヒュガガガガガガガガガガガガガガガガガ! と不規則な軌道をもって、レンがばらまき続けていたウィザード・ミサイルが一点へと集中していった。狙いは単眼、グ! と開いていた右手をレンが握った瞬間、タイミングを合わせて百を越える炎の矢が女媧の単眼に直撃した!
「舐めるな、生命!」
苦痛にのたうちながら、女媧が飛び立つ。だが、それをフルールは許さなかった。
「生命は尊く、脆く、美しいの。生命は優しく、でも時には荒々しく、そしてそれが輝きよ! 貴方も生きているのよ、動いているもの、自我があるもの――その心を鎮められれば、きっと貴方も美しい生命よ」
「――黙れ!」
フルールのエレメンタル・ファンタジアが水面を凍らせ、女媧が飛び立つのを防ぐ。バキバキバキ! と氷漬けにされていく女媧へ、セゲルが踏み込んだ。
「このでか物なら、斧でぶん殴ったほうがいいかもな」
錨斧【イースヴィーグ】を振りかぶり、横殴りにセゲルが女媧を殴打する! バキバキバキと氷に亀裂を走らせ、女媧がのけぞった。
「浄化の炎で骸の海へ追い返してあげるわ。全身を焼けば、どこかに弱点があるでしょ」
そして、ゆかりの不動明王火界咒が女媧に巻き付いていく。それは二匹の巨大な蛇が、互いに食らい合うような姿だった。
「首の下、そこよ!」
ゆかりが見つけた女媧の脆い場所――その指示を受け取って、ブレイブが水中でブレイブカノンを構えた。既に度重なる酷使で、自身も海洋王も限界が近い。
「頑張ってくれ海洋王! ゆくぞ! ファイナルシュートッ!!」
放たれるブレイブカノンの砲撃――それが女媧の首を撃ち抜いた。それがついに止めとなる。ボロボロと崩れていきながら、女媧の巨体が水面を打って水の中へ沈んでいく。
それはまさに、過去という空中の長城が未来という猟兵達によって陥落した瞬間だった……。
大成功
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