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バレンタインに神は無く

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「なぁ、バレンタインって知ってるか?」
「詳しくは知らねぇなぁ……どっかの聖者が由来だって聞いたけど。」

 ダークセイヴァー。絶望に鎖された世界では、贈り物を贈る余裕のある者がどれだけ居るというのか。風のうわさで耳にするバレンタインの話はこの世界の話ではなく、他の世界の事かもしれない。他愛なく話をする男二人も心の内ではどこか遠い世界の事と思っていた。
「親しい人や愛しい人にチョコレートっていう甘いお菓子を贈るんだとさ。」
「へぇ、そんな美味いモンを贈ったりするのか。」

 ――明日の食事もあるか分からないのに。

 現実を口にすれば今想う甘やかな幻想も崩れ去ろう。たとえ日々が辛くとも、せめて幸せを夢想するくらい誰が咎めようか。だが、希望無き夢想への逃避は偽りの神を呼ぶ。

 ――現実が絶望しかないのなら、いっそ。

 男は切り裂かれた自分を見下ろし満ち足りた顔で畑仕事に戻っていった。村のあちこちから響く声など気にもせず。その顔に、どこか虚ろな笑みを張り付かせて。

 グリモアベースで祈りを捧げていたアルトリンデ・エーデルシュタインは手にした聖典のグリモアをぱたんと閉じた。
「皆さん、もうすぐバレンタインですが、オブリビオンが現れるのを予知しました。」
 またチョコか、今度はどんな怪人?などと猟兵が集まる中、アルトリンデの表情は真剣そのものだ。
「違います。チョコでも怪人でもありません。ダークセイヴァーでオブリビオンが村一つを滅ぼそうとしているんです。」
 触手の群れのようなオブリビオンが村一つを覆い尽くし、そこに住む人々を襲うというのだ。その触手はまず、村人を“エサ”で釣る。それはバレンタインによく贈られる、チョコのような甘い幻想。
「実際それが何なのかは分かりませんが……暗示誘導に長けたオブリビオンのようで、村人はそれをチョコと認識し口にします。感じる味わいも甘いチョコそのもの。」
 普段甘味など口にすることもない村人にとっては極上の体験だろう。だが、それを味わったが最後。村人は触手に感情をすべて吸い尽くされるという。ただ一つ、絶望を残して。
「こうなっては生活を送ることもままならないのですが……奇妙な事に、この触手は積極的に人を殺そうとはしません。」
 それに加え、統率の取れた行動。どこかに統率をしているオブリビオンが居るのかもしれない。
「予知で微かに触手とは違うオブリビオンの存在を感じました。誰が、どのような意図でんな事をしているのかまでは分かりませんが。」
 どのような目的であっても看過できるものではない。黒幕を引きずり出す為にもまずは配下であろう触手の群れを倒してほしい。触手群をすべて倒せば、黒幕も出て来ざるを得ないだろうとアルトリンデは語る。

「それと、オブリビオンをすべて倒してからなのですが。」
 まだ何かあるのだろうか、と身構える猟兵たちにアルトリンデはそうではなく、村人たちの心を癒してほしいと言う。
「せっかくのバレンタインですし、誰かに何かを贈られるというのもいいと思うんです。」
 普段が厳しいなら尚の事。贈り贈られる経験などないだろう村人たちに、何かを贈ってほしいと。
「ささやかな物でも構いませんし、物でなくても構いません。誰かのために何かを贈る、それはきっとダークセイヴァーにはまだ足りないものだと思うので。」
 よろしくお願いします、と言葉を重ね、アルトリンデは猟兵たちを村へと誘うのだった。


こげとら
 皆様こんにちは。バレンタインのシナリオをしようと思ったこげとらです。

 猟兵が到着した段階でスレイヴ・スクイーザーは村を襲い始めており、村人も捕まり始めています。ただし、まだ死者は出てませんので助ける事は可能です。OP最初のは予知した光景です。

 第3章ではバレンタインらしく村人に何か贈ったりできます。無論、猟兵同士で贈り物をしあうのもOKです。贈り物がなければ村の手伝いをするとかでもいいでしょう。その気持ちは村人にとっては十分贈り物になるでしょうから。

 では、猟兵の皆さんのご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『スレイヴ・スクイーザー』

POW   :    テンタクル・スクイーズ
【美味なる極上 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【おぞましくのたうつ肉色の触手】から、高命中力の【感情を吸収する数十本の触腕】を飛ばす。
SPD   :    スラッジ・スキャッター
【全方位に汚濁した粘毒液 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ブレインウォッシュ・ジャグリング
【幹触手の先端 】から【暗示誘導波】を放ち、【洗脳】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ビビ・クロンプトン
何、あれ…気持ち、悪い…
でも…なんであろうと、敵ならば、倒すのみ…

SPD
後方から、クイックドロウ。ブラスターで【援護射撃】…撃ち抜くよ…
逃げ遅れてる人がいるみたいだから…その人を守りながら言うんだ、「逃げて」って…
私の声は小さいけれど、きっと届いてくれる…届かせてみせる…!
かつては人を守ったことなんてなかった私だけれど、今なら、人を助けることの大切さがほんの少しだけ、わかった気がするから…!
粘毒液を放ってくるみたいだけれど、村人を巻き込むようなら【かばう】よ…
大丈夫、私には【毒耐性】も【激痛耐性】もあるから…

触手で村人を捕まえてるのなら、ブラスターで撃ち抜けばいいだけ…
大丈夫、私が守るから…!


ファランス・ゲヘナ
【心境】
「チョコも好きに食べれない世界とはナ…。征くゾ。俺たちがいつかチョコレートを好きな時に食べれる当たり前の世界を作ル為ニ…。」
ダークセイバーの世界は初めてきたナ。
こんな世界があったとハ…話には聞いていたが想像以上だゼ。

【戦闘】
貴様の触手…もとい食事もここまでダ。
UC大軍団を使用。
数の暴力で捕まった村人を確保ダ。
そして懐から取り出した熱線銃:戦士の銃で『スナイパー』で村人を捕まえようとする触手を狙撃。
すばやい『二回攻撃』で分身が村人の保護を『援護射撃』

触手の攻撃は『残像』のある『ダッシュ』で回避。
当たらなければどうということもなイ。
当たれば痛いがナ。


サフィリアリス・エレクトラガント
バレンタインの甘い誘惑に漬け込み、貧しいダークセイヴァーの人々を絶望に陥れるなんて、なんて嘆かわしい事件でしょうか……
ダークセイヴァーの事件ともなるととても心が痛みます、自分のことのようで


使うユーベルコードは「光の女神様はあなたの味方」
人々を蹂躙し絶望を与える存在となっているようですが……ふふ、本当に絶望し、恐怖するのはどちらか、はっきりさせないといけませんね。

技能【恐怖を与える】によって、きっと恐怖してくれるはずです
あなたたちの前にいるのはかつて魔王であった身
恐怖してくれたら後は簡単

恐怖を感知し、光の女神様が光刃で切り刻んでくれます
死ぬ間際まで恐怖し絶望してくださいね?
虐げられた人々の分まで



 そこはどこにでもあるような村だった。ヴァンパイアの影に怯えながらも痩せた畑を耕し、日々を何とか食いつなげるだけの食料を得る。貧しくともささやかな幸せもあったであろうその村は今、異形によって喰らわれようとしていた。戸口の影から、畑の作物の間から、染み出るように。
「ん? なんか、ええ匂いが……」
 村人が匂いを追って物陰を見ると、小さな箱に詰まったチョコトリュフ。初めて見るチョコだが、鼻孔をくすぐる甘やかな香りは村人に極上の甘味を想像させる。喉を鳴らして一つ摘み、口へ運ぼうとしたその刹那。灼光が手を延ばそうとしていたモノに突き刺さった。

「何、あれ……気持ち、悪い……」

 ブラスターを【クイックドロウ】で撃ち放ったビビ・クロンプトンの視線は奥で蠢く異形を捉えていた。ぽかんとする村人。自らが手を延ばしていた先を見れば。
「ひっ!?」
 熱線で焼き飛ばされながらものたうつ触手があった。暗示で捕えられなかったと判断したか、暗がりから次々と触手が這い出てくる。ビビはへたり込んでしまった村人をかばうように駆け寄った。

「逃げて。」

 その小さな声は、恐怖に呑まれようとしていた村人の心にしっかりと届いた。慌てて立ち上がり逃げようとする村人に触手が粘液を放とうとその身を震わせる。ただ敵を倒すならばその隙に少しでも多くの触手を撃つべきだろう。だがビビの心には別の想いがあった。

「大丈夫、私が守るから……!」

 かつての自分ならしなかっただろう。だが今は、人を助ける事の大切さがほんの少しだけ、わかった気がするから。周囲一面に向かい放射される汚濁した粘液から村人を守るべく、ビビはその身を盾にした。

 村のあちこちには十字架が立っていた。まるで罪人を磔刑にするが如く。だが、そこに縛られているのは罪なき人々だった。四肢を触手によって十字架に括られ、全身に絡みつく触手に感情を吸い取られていく人々の声が村に響く。

「チョコも好きに食べれない世界とはナ……」

 村の惨状を見てファランス・ゲヘナは話には聞いていたが想像以上だゼ、と形作った眉をしかめる。正義の海賊であるファランスには看過できない状況だろう。

「征くゾ。俺たちがいつかチョコレートを好きな時に食べれる当たり前の世界を作ル為ニ……」

 この世界を覆う絶望を掃う為に。まずは村人たちを救わなくては。決意と共にファランスの身体が膨れていく。否、増えているのだ。【大軍団(ムレルモノ)】により増殖した分身はたちまち辺り一面を覆うほどになった。

「貴様の触手……もとい食事もここまでダ。」

 流動する黒い群れが村人たちを拘束していた触手に襲い掛かる。多勢に無勢、まさに戦いは数だと言わんばかりの物量により引き剥がされていく触手。だが、触手も黙ってやられるばかりではない。獲物を取り返そうと汚濁した粘液を放とうとする。だが村人に注意を向けていた触手をファランスの熱線銃、戦士の銃が狙い撃つ。反撃とばかりに襲い掛かる触手だが、高速で動くファランスを捉えられず残像を貫くのみ。

「当たらなければどうということもなイ。」

 当たれば痛いがナ、と嘯きながら囚われていた村人たちを解放していった。だが触手の群れは衰える事を知らず、その数は増していくようにも思えた。今はまだ拮抗しているが、このままだといずれは……その状況の中、サフィリアリス・エレクトラガントが足を進める。

「バレンタインの甘い誘惑に漬け込み、貧しいダークセイヴァーの人々を絶望に陥れるなんて、なんて嘆かわしい事件でしょうか……」

 我が事のように心を痛めるサフィリアリスが愁いを帯びた視線を向ける。新たな獲物が来たかと取り囲む触手群だが、暗示誘導波を放とうと幹触手を向けようとした動きが躊躇うように止まる。触手の中で、何かが警鐘を鳴らす。オブリビオンをして畏怖を覚える何かをサフィリアリスから感じ取る。それは遥か過去から刻まれている記憶か。竦むように揺れる触手にサフィリアリスが微笑みを浮かべる。

「ふふ、本当に絶望し、恐怖するのはどちらか、はっきりさせないといけませんね。」

 不意に触手に覆われた大地に光が射す。ふわりと光が舞い降りる。それはサフィリアリスの【光の女神様はあなたの味方(ヒカリスラミカタニスルマオウノサバキ)】により召喚された聖霊である光輝く聖女。柔らかな微笑みを浮かべる聖女がその手を差し伸ばす。絵画の一枚を切り取ったような光景だが、その手から伸びる光は刃となって触手を切り刻んでいった。

「死ぬ間際まで恐怖し絶望してくださいね?虐げられた人々の分まで。」

 その刃に裂かれるたび、触手から声なき声が上がる。それは恐怖の叫びか。のたうつ触手の群れを蹂躙するが如く聖女が手にする光輝の刃を舞うように振るっていった。

「よシ、このまま押し切るゾ!」

 この流れを逃す手はない。蹂躙劇から逃れる触手に向かいファランスが分裂した分身を率い戦士の銃を撃ち込んでいく。サフィリアリスの聖女が飛ばす光刃、ファランスが分身と共に数で押す射撃。この連携を崩すため、ユーベルコードを操る者を倒そうと触手たちも動く。だが、その触手を熱線が撃ち貫く。

「なんであろうと、敵ならば、倒すのみ……」

 助け出した村人たちを背に守り、ビビが猟兵たちの後方から援護射撃を放っていたのだ。たとえ村人を触手が狙おうとビビの身体は痛みや毒に強い耐性がある。故にその身を盾にして守り、触手を的確に倒していた。お互いをフォローしあう事で触手たちの反撃を許さずその数を大きく減らしていった。
「ああ……まさか、こんな人たちがいたなんて……」
 村人たちを背に守り、邪悪に立ち向かう猟兵たちの姿は確かに、この世界にも希望はあるのだと示していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
青く燃える鉛で形成した翼を展開。
他の猟兵たちと対峙する敵陣へ後方から【空中戦】を仕掛ける。

UC【燃ゆる貴き血鉛】を短剣・大剣に纏わせ接敵前に短剣を【投擲】。
間合いに入ったならば大剣にて【なぎ払い】をかける。
同時に斬撃に乗せた燃える鉛を撒き敵陣を炎上。

触手が来たならば大剣で【武器受け】ないし【串刺し】。
そのまま鉛の炎を移して焼き尽くす。

触手に捕らえられている村人は……できれば助けたいが、明らかに手遅れならば触手諸共焼却する。

しかし美味とな。肉体、味覚を持たない身体の自分に通じるのか?
貴様らが思い描く甘味を心に直接流すとでも?
笑止。貴様らの施しに何の想いがあるというのだ、汚らしい。



 猟兵たちの攻勢に追い立てられるように残る触手は開けた畑に集まっていた。数が減ったとはいえ、まだ一面を覆い尽くさんばかりに触手が蠢いている。それらは一様に、猟兵たちの追撃を警戒して逃げてきた方を向いていた。
 と、その後方から空を舞う翼持つ影が迫ってくる。鳥にしては無骨、その翼の運びも冷えた鉛のように固い。それは鳥では無く後方より空から攻め込むルパート・ブラックスミスの姿だった。

「我が血はもはや栄光なく……」

 ルパートの鎧から短剣が放たれる。滴るは燃えるほどの高温の鉛。【燃ゆる貴き血鉛(ブレイズブルーブラッド)】の鉛を纏う刃が突き刺さった触手はたちまち炎に包まれた。

「されど未だ闇に消えず……!」

ルパートに気づき、迎撃しようと伸びる触手に向かい手にした大剣を横薙ぎになぎ払う。鉛で熱せられた高温の刃に焼き切られる触手の群れ。その後方にも剣風に乗った鉛の飛沫が撒かれ、さらに多くの触手を巻き込み焼却していった。広がり、燃え盛る炎に呑まれる触手群を見やり、ルパートは独り言ちる。

「しかし美味とな。肉体、味覚を持たない身体の自分に通じるのか?」

 ギリ、と籠手で握る剣の柄が音を立てる。触手は幻とはいえ村人に食べた事のない極上の美味を味あわせていたという。だがそれは、誰の思い描く物なのか。

「貴様らが思い描く甘味を心に直接流すとでも?」

 炎を裂いて躍りかかってきた触手を大剣の柄頭で叩き潰す。

「笑止。貴様らの施しに何の想いがあるというのだ、汚らしい。」

 斯様な相手など、騎士道を語るに及ばず。外道が絶えるまでルパートの炎は燃え盛る。捕まり、手遅れになるような村人が居なかった事はせめてもの救いか。炎が消え去った後には動く触手は一つとしてなく、そのこと如くが焼却されていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『救済の代行者・プレアグレイス』

POW   :    黒死天使
【漆黒の翼】に覚醒して【黒死天使】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    鏡像の魔剣・反射
対象のユーベルコードを防御すると、それを【魔剣の刃に映しとり】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    鏡像の魔剣・投影
【魔剣の刃に姿が映った対象の偽物】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーヴァルディ・カーライルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちにより触手の群れは全て排除された。気づけば日も暮れようとしている中、村人たちも安堵のため息を漏らす。これでもう大丈夫だ、と。その様子を労わるかのように、優しげな声が響く。

「絶望を抱かねばならぬ世界、それは悲しい事です。あなた方がもう絶望など抱かずとも良いよう、私が救済いたしましょう。」

 まるで天使か、いやそれよりも貴い存在を思い描かせる純白の翼。舞い散る紅い花弁は神の祝福の如し。だが、その手にあるのは。

「黒い、魔剣……」

 予知で伝えられていた、切り裂かれた男。触手ではありえないその斬撃は誰が放ったものか。

 救済の代行者を名乗るオブリビオン、プレアグレイスは己が救う為の絶望をこの地に満たすため、舞い降りたのだった。
ビビ・クロンプトン
絶望…?
私は絶望なんて抱いてない…
そう、普通の人よりも寿命が短くても、私は…
…私は、そういう運命なのだと、受け入れるだけ…

SPD
引き続き、ブラスターで遠距離から【援護射撃】と【クイックドロウ】を使い分けて攻撃…
狙えるなら、翼を落としたいな…まず機動力を落としたい…
とにかく動き回りながら、【地形の利用】をしつつも、距離を取って戦うよ…
相手の攻撃は【第六感】とミライヲミルメで予測して、回避…
私の新たな力で、全て、見通す……!
実戦で使うのは、初めてだけれど、ね…

…さっきの戦いで、多少傷を負ったかな…
でも、関係ない。私の最優先事項は、オブリビオンを倒すこと…
回避を優先しつつ、隙あらば、【2回攻撃】…!


ルパート・ブラックスミス
死の救済……否定はせん。自分にも覚えはある。
だが、貴様の齎すその先には何が遺る……!

UC【燃ゆる貴き血鉛】は短剣にのみ付与。敵に奪われかねない大剣の方の炎は消す。

【空中戦】を継続、頭上から急降下し大剣にて斬りかかる。制空権はとらせんぞ黒死天使。
【フェイント】を混ぜての牽制や【怪力】での鍔競り合いなどで魔剣の能力を使わせないように立ち回る。

短剣は投げずに鎧内に格納しているのを斬り結ぶ最中に関節部から【誘導弾】として射出し攻撃。

単独では攻め切れる気がせん。他の猟兵との連携を意識する。

【共闘・アドリブ歓迎】


サフィリアリス・エレクトラガント
救済の代行者。
そう名乗りましたね、プレアグレイス。
私は今、とても不愉快です。ええ、珍しく、とてもとても。
あまたは此処で私が断罪します


使うユーベルコードは「光の女神様はあなたの味方」
本当に救済すべきはあなたです
技能【恐怖を与える】。感じますか、あなたには?
かつて魔王であった私から発せられる恐怖が。
あなたも所詮はオブリビオン、きっと一瞬でも恐怖を感じるはず。

そうであったならば、最後。
一かけらでも恐怖を感じたならば召喚した光の聖女はあなたに光刃を振るい、その恐怖を何倍にも増大させながら切り刻んでいく

偽りの救済を振るった罪、絶望しながら悔いなさい、そして恐怖しなさい
あなたの目の前に立った存在に


ファランス・ゲヘナ
【心境】
「紛い物の救世ほど質の悪い話はないナ。」

【戦闘】
まずはUC:天通頑を発動。
懐から【∞ロ-ロ】眼鏡を取り出して攻撃力を強化。
さらに懐からダブルヘッドハンマーを取り出シ、オブリビオンに強化した攻撃力と自慢の『怪力』から繰り出す『鎧砕き』の一撃をお見舞いすル。

敵の攻撃は『第六感』を信じタ『見切り』による回避。
当たらなければどうということもなイ
回避不可能な攻撃は『オーラ防御』で防グ。
オーラバリアーダッ!!

猛攻をつづけるゾ。



 黄昏時の薄闇に白い翼が広がる。時折ひらひらと舞い散る花弁は赤く、降っては儚く消えゆく。呆然と見上げる村人たちに向け、優しげな微笑みを浮かべる口の端が言葉を紡ぐ。
 ――さぁ、心安らかに過ごせるよう私が救済しましょう。
 プレアグレイスは己が信ずる救済を行うべく、その手の魔剣を振り上げた。

「死の救済……否定はせん。自分にも覚えはある。」

 村人を狙った剣が振り下ろされるより早く、ルパート・ブラックスミスが上空より斬りかかる。先の触手との戦闘から空を飛び、状況をいち早く把握したルパートは落ちる速度も乗せた剣撃をプレアグレイスの魔剣に打ち合わせたのだ。

「だが、貴様の齎すその先には何が遺る……!」

 かつての自分の所業、それは如何なものであったか。たとえ眼前の救済を謳う者の行いがそれを彷彿させたとして、その先に求めたのは違う結末だったであろう。だからこそ、ここで。

「制空権はとらせんぞ黒死天使。」

 墜とす。己の鉛の身体をも重石として振り下ろされた大剣は魔剣もろともプレアグレイスを大地に打ち付けた。だが。
「あなたももう、絶望する事はないのです。」
 地に足をつけ、微笑みを浮かべながら鍔迫り合う剣を押し返されていく。単純な筋力ではない。プレアグレイスの翼が黒に染まり、ルパートの剣が打ち払われる。独りでは攻め切れない、彼我の戦闘力を比較しそう判断したルパートが距離を離すのに合わせてプレアグレイスの翼を一条の熱線が撃ち貫いた。

「絶望……?私は絶望なんて抱いてない……」

 ビビ・クロンプトンは物陰へと滑り込みながら自分の身体を確かめる。先ほどの戦闘で多少、傷を負ったか。

「そう、普通の人よりも寿命が短くても、私は……」

 だが、そんな事は関係ない。最優先事項はオブリビオンを倒す事。地形を確認し、次の身を隠す場所を決めると走り出す。プレアグレイスの翼を狙い放った熱線が魔剣で切り裂かれる。

「……私は、そういう運命なのだと、受け入れるだけ……」

 それは諦観ではない。全てを投げ出すのではなく、今を受け入れ、出来うる最善を尽くす事。サイボーグとなったこの身でなら出来る事を躊躇わずにするのだ。剣の間隙を縫うように間髪入れずに放たれた一撃が翼を撃ち、黒い羽根が舞う。
 と、その時。ビビは身を投げ出すように転がった。その後を黒い剣閃が通り過ぎる。一瞬で距離を詰めて突き込まれた黒い魔剣、【ミライヲミルメ】の予測と予感がなければどうなっていたか。ビビが身を起こすより早く、プレアグレイスはその剣先を向けた。その背後から特徴的な声が響く。

「紛い物の救世ほど質の悪い話はないナ。」

 ファランス・ゲヘナは懐から四角いフレームの眼鏡を取り出し、かけた。ゆるりとプレアグレイスが振り向く。
「私の救済があれば、必ず人々は救われます。苦しみのない世界になるでしょう。」
 自分に向けられる黒い魔剣に臆することなく、ファランスは懐からダブルヘッドハンマーを取り出す。懐から取り出せる大きさではない巨大なハンマーを構え、ファランスは打ちかかった。

「その世界にハ、幸せもないだろウ?」

 たとえささやかでも人々が幸せになれる世界を。当たり前の幸せを、当たり前に享受できる世界にするために。正義の宇宙海賊は渾身の力でハンマーを叩き付けた。スクラップで構成されたハンマーなど持ち手ごと砕かんとプレアグレイスが魔剣で迎え撃つ。だがその時、ファランスのかけた眼鏡がきらりと煌いた。【天眼通(ミツメルチカラ)】でかけた眼鏡がファランスに力を与える。拮抗を押し切り、振り抜かれたハンマーがプレアグレイスを吹き飛ばした。

「救済の代行者。そう名乗りましたね、プレアグレイス。」

 飛ばされながらも軽やかに着地したプレアグレイスの身をその声が浸した。サフィリアリス・エレクトラガントはその反応を確かめるように言葉を紡ぐ。

「私は今、とても不愉快です。ええ、珍しく、とてもとても。」

 一歩、足を踏み出す。その度に空気が重く感じる。息が詰まるような重圧を、その魂が感じ取る。

「あなたは此処で私が断罪します。」

 サフィリアリスが再び【光の女神様はあなたの味方(ヒカリスラミカタニスルマオウノサバキ)】により輝く聖女の姿をした聖霊を召喚する。その手には輝けし光の刃。それに貫かれれば何者も抗する事は出来まい。そう感じさせる力に満ちた存在を前に、しかしプレアグレイスは微笑みを浮かべる。
「なにも。なにも憤る事はありません。貴女のその心も、私が救済しましょう。」
 プレアグレイスがかざす黒い魔剣、磨き抜かれた鏡のような刃に写るは光輝く聖女の姿。水鏡に写る鏡像の如く、されどその姿は影の如し。空間が揺らめき黒衣の闇を纏う聖女が現れる。その手には黒き闇の刃。その偽物を一笑に付し、サフィリアリスは光の刃を解き放つ。

「本当に救済すべきはあなたです。」

 対する黒の聖女もその刃を放つ。光と闇、双方の力がぶつかり、余波が衝撃となって大気を震わした。縦横に放たれる光刃を闇刃が迎え撃つ。神話の再現もかくやと思うほど激しい戦いが続いていく。

「あれだけの大技、複製した本体にも影響が出ているようだな。」

 攻め込む隙を探っていたルパートがプレアグレイスの動きを見て、そう判断する。確かに、黒死天使により染まっていたその翼は白に戻っている。加えて翼に受けた傷の影響か、先ほどから空へ飛ぼうとしていない。

「ならバ、今が攻めるチャンスだナ。」

 ファランスがダブルヘッドハンマーを担ぐ。殴り飛ばした感触から、直撃させれば十分ダメージは入るはずだ。ならば攻め続け、相手の守りを崩すせばいい。その言葉にビビも頷く。自分のユーベルコードならたとえ狙われたとしても対処できるのは分かった。ならばあとはやる事をやるだけだ。
 相手の注意を分散させるよう、ビビが駆けだしながらプレアグレイスを狙ってブラスターの引き金を引く。即座に反応し斬りかかろうとするプレアグレイスの斬撃がどう振るわれるかを瞳に写しとりながら。

「私の新たな力で、全て、見通す……!」

 【ミライヲミルメ】がビビに示す未来、黒死天使の力がない今ならば十分躱す事ができる。そして、繰り出される攻撃を予見できるという事は、攻める隙を見つけれるという事。

「その魔剣の力、使わせはせん。」

 ビビを狙って繰り出そうとした剣の軌跡を読み、ルパートが大剣を振う。鍔迫り合う魔剣はユーベルコードすら写し取る。だが魔剣の刃に写るルパートの大剣には先の戦いで纏っていた鉛はない。動きを止められたプレアグレイスめがけてファランスが再びハンマーで打ちかかった。

「猛攻をつづけるゾ。」

 一度では終わらない。オブリビオンが倒れるまで、己が力の続くまで。ファランスは【天眼通】で強化した自慢の怪力をハンマーに乗せて叩き続ける。ここまでされて無視はできない。プレアグレイスがファランスを切り裂こうと剣を振う。己の第六感を信じ見切って躱す。しかし続けざまに追い込むように振るわれる剣閃がファランスを捉える。斬りつける魔剣が激しい光に阻まれた。

「オーラバリアーダッ!!」

 オーラの光が受け止める魔剣を見て、ルパートがさらに大剣を打ち付け魔剣の動きを封じる。【燃ゆる貴き血鉛(ブレイズブルーブラッド)】を使うならば、魔剣に写らぬ所から。ルパートの鎧の関節から燃ゆる鉛を纏う短剣が撃ち出された。内部に格納していた短剣はプレアグレイスの不意を突き、その身体に吸い込まれるように突き刺さる。燃え広がる炎に包まれ、プレアグレイスがよろめくように一歩、後ろへ下がった。その心に染み出るのは何か。

「恐いですか?大丈夫、恐いのも痛いのも一瞬。本番はそれからですから。」

 ふと見れば、サフィリアリスの聖女が放つ光の刃は黒い聖女の闇刃を圧していた。威力は互角のはず。ならば、それを操る者の心の差か。光が闇を切り裂くたび、プレアグレイスの心を恐怖が塗りつぶしてゆく。黒い聖女は瞬く間に光の中に消え、その光輝の刃がプレアグレイスを切り裂いていった。
「ああ、なぜ。どうして。世界は絶望に満ちているというのに……」
 炎に包まれ、光輝の刃に裂かれながらなお、プレアグレイスは魔剣を振わんと振り上げる。その腕を熱線が吹き飛ばした。

「私は絶望なんて抱いてない……」

 未来を見通す目で攻撃に先んじてブラスターを放ったビビはぽつりとつぶやいた。世界に絶望を見ていたのは誰だったのか。光が収まる頃には燃え落ちる花弁が舞う中、崩れ消えゆく魔剣だけが残っていた。

 猟兵たちは、偽りの救済を語るプレアグレイスをついに討ち倒したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ささやかな華やぎ』

POW   :    料理をいただく

SPD   :    会場作りを手伝う

WIZ   :    様子に想いを馳せる

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオンの脅威は去った。村人たちも救われた事に安堵し、口々に猟兵たちにお礼を言っていた。
「本当にありがとう。あなたたちが来なければどうなっていたか。」
「何か、お礼でもと思ったんだがねぇ……村も荒れちまって。」
「そういうのはあとにしよう。ささやかな宴ぐらいなら何とかなるさ。」
 そう言ってせめてものお礼にと祝い事の席で振舞われるような食事を用意する。だが、それも普段は食卓に並ばないような肉や薄めていないワインが出る程度の物。
 この宴で村人の好意を受け取るのもいいだろうし、彼らに何か贈ってもいいだろう。バレンタインも近いのだから、どういう物か教えてもいいかもしれない。

 どう過ごすかは猟兵たち次第だ。
ビビ・クロンプトン
WIZ

早く帰ろう、そう、思っていたのに
…なんで私は、あの宴の場を、離れた所から眺めているのだろう…

村の人たちは感謝しているみたいだけれど、私には感謝される理由なんてない
オブリビオンを倒すことだけが、私の存在意義なのだから…
…でも、本当に?

私は、絶望なんか抱いてないと、戦いの時に言った
私の寿命が…最長で後残り19年でも、絶望しないと
…でも、本当に?

私は戦いの時、あの村人たちをかばった
でも、そんなことする必要はないはずなのに
…私の、オブリビオンを倒すという使命には、関係ないはずなのに…

…もう少しの間だけ、ここにいよう
心が暖かくなるのを…感じているから

※絡み、アドリブOKです
※ビビは食事ができません


ルパート・ブラックスミス
予めアルトリンデ殿に用意してもらったチョコとチョコに関する本を配る。
猟兵の報酬は言い値なのだ、これぐらい融通は利くだろう?

贈りたいのは今日限りの甘美ではない、明日へ進む為の夢だ。
絶望ばかりの今をどうか生きてくれ。
いつか今日のような日を、次は自分が誰かに親愛を贈れる日を迎えられるように。
その日こそ、我々がこの村を救った意味そのものなのだから。

許されるなら他の猟兵も巻き込んでしまいたい。
口下手どころかチョコを食す口も無い自分では本当の意味でその喜びを分かち合えなくてな。すまない。

事が済んだら村の様子を遠巻きに見守り、魔剣の残骸を手に呟く。
「この光景にも絶望しか見出せなかったのか、黒死天使よ」


サフィリアリス・エレクトラガント
うふふ、お礼を言われることなど何も……私達はあなたがたを救いたくて尽力いたしましたので
でも、お礼をしていただけるとなれば好意を受け取るのが礼儀という物でしょう


【WIZ】で判定
どんなに貧しく、苦しくても感謝の念を忘れず、救ってくださった救世主の方々にお礼をするなんて……素敵ですね
ダークセイヴァーと言えど、人の心にはちゃんと良心がありますし、血も通っています
ついつい会場の様子に想いを馳せてしまいましたが……

私、チョコレートを作ってまいりました。
沢山作ってまいりましたので村人の皆さんに配ることにいたします
バレンタインとは一般的には愛しい人に贈り物をする日、と教えながら……。



 それは本当にささやかな宴だった。冬の備蓄も少なくなってきた時分、村人たちに用意できた料理は簡素な物と言えるだろう。だがそれでも、猟兵たちに感謝を伝えようと並べられた料理を前にサフィリアリス・エレクトラガントは微笑んで応えた。

「うふふ、お礼を言われることなど何も……私達はあなたがたを救いたくて尽力いたしましたので。」

 聖女らしくたおやかな笑みを湛えながら、それでもと村人が勧める食事を共に楽しむ。好意は受け取るのが礼儀という物。せっかくのお礼を無下にする事はない。

「どんなに貧しく、苦しくても感謝の念を忘れず、救ってくださった救世主の方々にお礼をするなんて……素敵ですね。」

 ダークセイヴァーはいまだオブリビオンに支配され、闇と絶望に閉ざされている。だが、そこに生きる人々はどうだろう。人の心にはちゃんと良心があり、暖かな血が通っている。サフィリアリスは会場に集い、猟兵たちへと感謝を伝えに来る村人たちに想いを馳せた。

「……なんで私は、あの宴の場を、離れた所から眺めているのだろう……」

 早く帰ろう、そう、思っていたのに。ビビ・クロンプトンの瞳は、その想いとは裏腹に慎ましくも暖かな宴を見ていた。傍らには村人が持って来たのであろう料理が置かれている。離れた場所にいたビビに気を使ったのかその村人はお礼を伝え、よかったらどうぞと料理を置いて戻っていった。けれどもビビは感謝をされる理由は無いと思っていた。

「オブリビオンを倒すことだけが、私の存在意義なのだから……」

 自分の胸の内を確かめるように言葉が零れる。

 ……でも、本当に?

「私は、絶望なんか抱いてない……」

 戦いの中で絶望を写す天使に言った言葉。たとえビビの寿命が長くて残り19年だとしても。

 ……でも、本当に?

 自分の言葉が胸の中でぐるぐると回る。当たり前と思っている事、それでいいと思って来た事。疑問に思う事などないはず。それなのに。

「どうした、宴にはいかないのか。」

 不意にかけられる声に心の裡に沈んでいた顔を上げる。見ればルパート・ブラックスミスが立っていた。ルパートはビビの傍らにある食事をちらと一瞥し、視線を戻す。長い戦闘の後だというのに、その食事には手を付けた様子はない。遠巻きに宴を眺めていたビビに、ルパートは自分が持ってきた物を差し出した。

「チョコとチョコに関する本をアルトリンデ殿に用意してもらった。一緒に配らないか?」

 雰囲気を変えるようにルパートはそう言ってビビを誘った。その手には小分けにされたチョコと本が入ったカバン。しかしビビの手は心の迷いを示すように揺れただけだ。

「でも、私は……」
「なに、自分も口下手でな。その上、チョコを食す口も無い。」

 ルパートは軽く嘯き、ビビにカバンを握らせる。そのままビビを宴の会場へと誘った。そのころ会場はちょっとした盛り上がりを見せていた。
「おお!? なんだこの……お菓子か? すげぇ甘い!」
「おいしい! わたし、こんなおいしいの、はじめてたべた!」
 サフィリアリスが作ってきたチョコレートを村人に配っていたのだ。普段どころか一生のうちに初めて食べる極上の味は口の中を仄かな苦みと芳醇な甘さで満たす。紛いの幻など比べるべくもなかろう。

「うふふ、たくさん作ってまいりましたので、どうぞ遠慮なく。」

 配るのが聖女であれば尚の事。子供は目を輝かせ、大人も天に上るような心地だろう。男衆は特に。
「バレンタインってぇのはこういうのを食える日なんだろうなぁ……」
 味わうチョコに夢見心地の男が呟く。それにサフィリアリスがいいえ、それだけではありませんよとバレンタインの事を教える。

「バレンタインとは一般的には愛しい人に贈り物をする日。チョコレートを贈るだけではありませんよ。」

 ささやかな贈り物であっても愛しい人に気持ちを伝える事は出来るだろう。チョコが普通に食べれるのはまだ先かもしれない。だが、バレンタインがどういう日なのかは村人たちの心に残っただろう。

「先を越されたかな。」
「あら、お二人もチョコレートを配るのですか? 気持ちを贈るのに先も後もありませんよ。」

 やって来たルパートとビビの手にある物を見て、村人たちとの輪へと誘いながらサフィリアリスが微笑む。

「ああ、贈りたいのは今日限りの甘美ではない、明日へ進む為の夢だ。」

 そう言ってルパートはビビの背をそっと押した。その様子に村人たちもこぞって歓迎する。
「お嬢ちゃんも来てくれたんだね。ありがとう。」
「おおっ! こっちのチョコってのもうめぇ!」
「チョコってこうやって作ってるんですね……いつか自分で作ってみます!」
 ビビは流されるままチョコを手渡し、本を配る。皆、笑顔だ。
 ふと、戦いの最中に村人をかばった事を思い出す。自分の存在意義に照らし合わせれば、それは必要のない事だったはず。

 ……私の、オブリビオンを倒すという使命には、関係ないはずなのに……

 でも、自分に笑いかける村人たちの楽しげな顔を見ると、不思議とそれで良かったと思えた。言葉では表せない想いが自分の中に浮かんでくる。
 
 ……もう少しの間だけ、ここにいよう。

 心が温かくなるのを感じるビビの表情は、いつもよりも柔らかく見えたかもしれない。

 宴の灯が遠くに見える。サフィリアリスが村人たちと楽しげに話す輪にビビもいるようだ。

「あの様子ならば、もう大丈夫か。」

 暖かな光に包まれたような宴を遠巻きに見守るルパートは村人たちの笑顔を見ていた。たとえ今が絶望ばかりだとしても、どうか生きて欲しい。いつか今日のような日を、次は自分が誰かに親愛を贈れる日を迎えられるように。その日こそ、我々がこの村を救った意味そのものなのだから。宴の様子を見ればそれも夢物語ではないだろう。

「この光景にも絶望しか見出せなかったのか、黒死天使よ。」

 ルパートは手にした黒い魔剣の残骸に呟く。ひび割れ、折れた剣はもはや何も写す事はない。その崩れかけた柄から一片の白い羽根が風に舞い、夜空へと消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月05日
宿敵 『救済の代行者・プレアグレイス』 を撃破!


挿絵イラスト