帝竜戦役⑩〜そのキュンこそが崩竜を穿つ!!
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「これから皆さんを浮遊岩諸島への戦いへ転送します」
慌ただしいグリモアベースの片隅で、上里・あかり(あかりを照らすもの・f06738)は猟兵達へと声をかけた。
猟兵達が戦う帝竜ヴァルギリオスとの戦い――『帝竜戦役』の中、あかりもまた戦場の一つである浮遊岩諸島へ向かおうとしているのだ。
浮遊岩諸島は浮遊する巨岩群の密集地で全ての浮島が独立した生態系を持っている。そこには『王』と呼ばれる1体のオブリビオンが存在しており、全てを支配しているのだ。
「そこにいる『王』は崩竜・ヴァッフェントレーガー。崩竜というその名の通り、全てを崩壊させる程の力あるオブリビオンだそうです」
「全てを崩壊させる程の力……」
「強敵との戦いになりそうだな」
猟兵達はあかりの説明に言葉を交わして息を飲む。
そんな強敵相手に果たして戦い抜くことができるのか。口に出さずとも不安を隠せぬ表情を前にあかりは大丈夫ですと言い切った。
「確かに相手は強力なオブリビオンですが、浮島にいる奇妙な生物達の支援を得ることができれば『王』との戦いを有利に出来るはずです」
「奇妙な生物達」
「はい! 皆さんを私は浮島へと転送しますので、そこに生息する奇妙な生物達の支援を得て戦えばオッケーです!」
なるほど大体わかった。
で、生息する奇妙な生物達にどうやって支援をもらえばいいのか。
「そこに生息する生物はとても友好的で、ならないタイプもいるそうですが、対面する相手と同じ種族の外見になる特徴があります。みなさんはそこで『キュン』させればオッケーだ、との事です」
キュン。
「キュンとな」
「はい、キュンです! キュンです、キュン! 生物達は心ときめくキュンを求めているのです!」
真面目か顔でキュンとか言い出すあかりはメモ帳を取り出すと、調べたらしいキュンを読み上げる。
ぎりっと拳を握りながらのあかりんの力説は尺の都合上省かせて頂くが、壁ドンとか顎クイとか恥じらい告白とかツンデレやオレサマとかバラの花束とかモエキュンとかときめきサプライズとか等々エトセトラ。
「いろいろな本を読んでキュンを調べたので間違いありません!」
どんなジャンルの本を読んだんですか。
まあ、ときめくのならラブキュンからプレゼント、可愛らしいキュンからサプライズ演出など方向性は問わないとの事だ。
「あっ、でも成人指定なキュンだけはだめですよ! 私……その、17歳なので……」
ギリギリを狙えばいいわけですね。
「えっと……その……ええと……私、皆さんを信じてます……」
歴戦の猟兵達にお任せください。
「そろそろ時間ですね、それでは皆さんよろしくお願いします!」
グリモアキューブを展開させたあかりの背には浮島の地があった。
猟兵達はそれぞれのキュンを携え、戦いに赴くのだった。
カンナミユ
カンナミユです。
再び浮島での戦闘です。
今回のシナリオにもプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……奇妙な生物達の支援を得る。
オープニングで説明されていますが、プレイング次第なので皆様のキュンをどうぞ。
それではよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『崩竜・ヴァッフェントレーガー』
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POW : ネーベルヴェルファー
【自身の周囲に生じた魔法陣】から【何もかもを“崩壊させる”火球】を放ち、【超遠距離からの面制圧爆撃】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : ヴィルベルヴィント
【顎】を向けた対象に、【消失や崩壊を与える速射のブレス】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : ホルニッセ
【自身の“崩壊”すらも省みない状態】に変形し、自身の【射程距離】を代償に、自身の【巨体による攻撃力や機動力】を強化する。
👑8
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フランチェスカ・ヴァレンタイン
まあいわゆる死亡フラグ立てまくりなやりとりなど?
「アナタが生きていてくれるなら、わたしはそれで――」などと悲しげな瞳で微笑んで死地へと向かうシチュエーションを演出してみたりと
…ええと。こんな感じでいかがでしょう?
無事にご協力いただけましたら、崩竜との空中戦ですか
放たれる火球へシールド化した飛翔ビットをぶつけることで軌道を逸らしながら、こじ開けたわずかな隙間を縫うように最大戦速でクロスレンジへと
すり抜けざまに斧槍の一撃を叩き込み、周囲を変則軌道で旋回しながら砲撃と爆撃の乱れ撃ちなど浴びせていきましょう
そのまま機動のついでに張り巡らせたUCの不可視の爆導索を急上昇で巻き絞めての一斉起爆、ですかね?
シーザー・ゴールドマン
・奇妙な生物達
さてさて、なかなか難しい事を言うね。
情熱的な薔薇の花束を用意。
生物達のリーダー的な存在がいればそれに、いなければ適当に、だが多くの奇妙な生物達が見える形で花束をプレゼントしつつ、「君達の為に王を倒し、君達の住むこの島に平穏をもたらそう」とか何とか真顔で言いきって支援を得れる状態にします。
・崩竜
『ウルクの黎明』を発動。超音速の高速機動戦闘で翻弄しつつ戦います。
大技は巨大な衝撃波(衝撃波×なぎ払い×範囲攻撃×全力魔法)
敵POWUCについて
魔法陣の出現を見切り、火球の発生前に魔力弾を放って魔法陣をかき消します。(見切り×先制攻撃×属性攻撃:魔力×投擲)
ネージュ・ローラン
『キュン』とはまた難題ですね。
どうしたら喜んでいただけるのでしょう。
必死に考えた結果
ええと、とりあえず友好の証としてお菓子を……手作りのクッキーを用意してみたのですが……。
あまり慣れていなくて、美味しくなかったらごめんなさい……。
とアタックしてみます。
演技ではなく本気で恥ずかしくてモジモジしています。
ヴァッフェントレーガーには、可能であれば先程の方にも撹乱してもらいつつ【天かける軌跡】で自由に跳びまわり戦いましょう。
ブレスは強力ですが、その首がどこまで自由に動きますか?
無理な方向へと誘導したり死角に潜り込んだりしながらスカートの下に隠したダガーで少しずつ攻撃していきます。
モルツクルス・ゼーレヴェックス
「キュン……キュンすか」
よく分かんないっすけど、魅力的に口説けってことっすかね
ちょいと不誠実な気はするっすけど勝つためっすから全力っすよ
「ちょ、ちょっといいっすか」
生物さん達を誘って話を聴いてもらうっす
何をどう伝えたらいいか、迷ってるそぶりの【演技】
「あ、貴殿方は、あの崩竜に悩まされてるとみたっす……そうでなくっても、この島を崩されたら、おしまいっす」
実際、首を突っ込んでる立場
大きな御世話もいいところ……けど
ここで本心をグッと押し出す。ギャップで凛々しく見えますように
「貴殿方を助けたいっす。どうか力を貸してください」
どんな力を生物さん達が持ってるかは分からないっすけど自分は【全力】尽くすのみ
テラ・ウィンディア
きゅんってなんだよきゅんって!
ぅううう…とりあえずおれが焦がれるもので行ってみるか
という訳で…魔法少女スタイルで行くぞ!
全てを滅ぼす邪悪な竜よ!
この魔法少女・グランディア・テラが倒すぞ!(【属性攻撃】で炎を全身と武器に付与。炎のきらめきを纏いながらポーズ
【戦闘知識】で敵の動きを解析
【見切り・第六感・空中戦・残像】で飛び回りながらその崩壊の猛攻の回避に努める
お前が滅びを齎す龍というのであれば
滅びによって倒される事こそ宿業と知るがいい!
(ここは魔法少女っぽく)
モード・アサルト!(決め台詞と共に上空へと飛び上がり
今こそ星々の力を我が身に宿す!
メテオブラストぉ!
【踏みつけ】で破壊力増強だ!!
アリス・セカンドカラー
「力が欲しいか? ならば、我が手を取るがいい。口付けにて契約は成就せん」
素のままだとアレな方向にいくので、眼帯つけて自己への催眠術で厨二病な性格になっております。多分、『情熱の堕天使』とか名乗ってるんじゃないかな?
アドバイスに従い壁ドン顎くいからのキスで契約を迫ります。
結果、奇妙な生物達は私の所持技能を技能値780で扱えます☆
団体行動&集団戦術による多重詠唱での合体全力魔法でエナジーを盗み攻撃で略奪し捕食する大食いな吸収属性攻撃の重力球(重量攻撃)で火球の崩壊エネルギーを奪い吸収(魔力溜め)。
更には『情熱の堕天使』の力の封印を解くことでリミッター解除、限界突破して崩竜すら呑み干しましょう。
キル・トグ
そらから落ちる時はキュンとするらしいぞ!誰かが言ってた!わたしにはよくわからないけどな!でもこいつのその脚を全速力で回してスカイダイビングするのはとても気持ちがいいんだ!
さあ、じっくりその瞳の蒼で見つめて瞳孔をキュンとさせよう!光は絞れば絞るほど解像度を増していく!カメラのレンズのように!
「見極めろ!クレイジーキャッツ!」
さあ空を弾け、画角に鮮明全てを見逃すな。次にシャッターを閉めるときはその爪を届かせる時だ。伏せるけものは空を駆け静かに獲物を待つ。
どいつもこいつもその瞳のフレームに収めてやるぞ、ワンショット・エスケイプ!ツーショットグッド!スリーショットゲット!ハートをちぎってやる!
ロア・メギドレクス
なに。ときめきとな?
……まあよい。ここは余の威厳という男性的魅力で従わせてくれよう。余は王である故な。
うむ。
では、余のもとに下るがよい。――支配される悦びを教えてやろう。
逃れるな。受け入れよ。くく。余は肉食系であるぞ?
そう。【王は此処に在りて】、汝のときめきに牙を突き立てよう。
よし。ときめいたな。
では往こう。王位簒奪の時間だ。
余こそかつて星を支配せし王竜メギドラウディウス・レックスが化身であるぞ。――頭が高い!
GGGGggGgrrRrRRwWWwW!!《レイジングロア》にて、奴を怯ませる。付け入る隙をこじ開けるッ!
その間隙に叩き込もう。一気に間合いを詰め、メギドランスにてそっ首落としてくれる!
●
「オオオオオォォォォォ
……!!!!!」
巨岩群の密集地――浮遊岩諸島の一角にある浮島に轟咆が轟いた。
ず、があんんっ!!
「あ、危なかったっす」
ぱらぱらと降り注ぐ小石や土ぼこりを払いながらモルツクルス・ゼーレヴェックス(素敵魔術師・f10673)は新たな攻撃を跳び避けた。
浮島に到着した猟兵達を出迎えたのは、生息するという奇妙な生物ではなく、ここを支配する『王』――オブリビオンだった。
「これが崩竜の力か」
ずしんずしんと追いかけてくる王、崩竜をちらりと見たシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)はひとりごちる。
猟兵を狙ったはずの攻撃は運悪く外れ、遠く離れた山を頭半分吹っ飛ばした。
すさまじい威力は崩竜という名の通りである。受ければひとたまりもないだろう。
「おや、あそこに何かがいますわね」
ばさりと翼を広げ、火球を跳び避けながら指さすフランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)が示したのは森の入り口あたり。ネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)もそこをじっと見つめると木々の間を何か、ヒトではない何かがこちらを伺っているように見えた。
「あれか? ここに生息するっていう奇妙な生物って」
「そうじゃない?」
攻撃を避けながらテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)とアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は言葉を交わし、
「よしキュンだ! キュンさせるぞ!!」
地を踏みキル・トグ(青と赤のけものたち・f20328)はダッシュで一直線。
「遅れるなよ、急げ!」
なびくマントを背にロア・メギドレクス(獄竜暴君・f00398)もまた森へと駆ける。
キュン。
そう、キュンである。
キュンが猟兵達の力となるのだ。
●
標的を見失ったのか崩竜は低く唸りながらも猟兵達を探している。
どれくらい隠れていられるだろうか。恐らくそう長くはもたないだろう。
木々の間を抜け、ヒトではない何か――奇妙な生き物達は猟兵達へその姿をはっきりと現した。グリモア猟兵が説明したとおりの外見をしており、こちらをじっと見つめている。
――生物達は心ときめくキュンを求めているのです!
(「さてさて、なかなか難しい事を言うね」)
真面目な顔で言い放ったあの声を思い出し、シーザーは前に出る。この為に用意した花束を抱え歩み出しながら生物達でリーダーと思しき前に立つと、すと優雅に膝をついて見せた。
見上げる瞳の先にあるのは、年頃の可愛らしい少女。
手渡すのは情熱的な薔薇の花束。
「君達の為に王を倒し、君達の住むこの島に平穏をもたらそう」
「あ、ありが……とう……」
その情熱は少女の顔を覆い隠してしまうが、花弁の間からちらりと朱に染まる顔が見えた。ああ、なんと可愛らしい。
なるほど、これがキュン。
ずしずと、もじもじとネージュも学生服の男の子へと近づいた。
「ええと、とりあえず友好の証としてお菓子を……手作りのクッキーを用意してみたのですが……。あまり慣れていなくて、美味しくなかったらごめんなさい……」
そっと差し出すそれは、可愛らしくラッピングされた手作りクッキーである。
「いいの? ぼ、ぼくに? て、てて手作りっ?!」
恥ずかしそうに見ると、男の子は初めてプレゼントをもらったらしく顔を真っ赤にして喜んでいるではないか。
「あ、ありがとう。すごく嬉しい」
「よかった……」
恥じらいアタックは大成功だ!
スカイダンサーであるネージュであれば、どのような表現も可能であろう……え、本気で恥ずかしがってたんですか?
ついと視線をそらすと、ぶつぶつとモルツクルスが呟いている。
「キュン……キュンすか」
仲間達のキュンを見た限り、やはりここは魅力的に口説くのがベターか。
ちょいと不誠実な気はするが、勝つ為ならばここは全力で挑むしかない。
「ちょ、ちょっといいっすか」
振り向いたのはロングヘア―の女の子。何をどう伝えたらいいか、迷うそぶりを見せつつ真っ直ぐな瞳を少女へと向ける。
「あ、貴殿方は、あの崩竜に悩まされてるとみたっす……そうでなくっても、この島を崩されたら、おしまいっす」
実際、首を突っ込んでる立場であり、ここに生息する生物にとって大きな御世話もいいところかもしれない。
……けど。
「貴殿方を助けたいっす。どうか力を貸してください」
「…………!」
見つめ返る瞳は涙で溢れ、頬を伝い落ち――、
グオアアァァァアアアアアア
……!!!
木々をも震わせる激しい咆哮。ついに敵は気づいたか。
向かわねば、決着をつけに。
眼帯を付けたアリスはこの瞬間の為に自己暗示をかけると学生服の男の子の前へ。
――くすり。
「な、なんだよお前……」
木を背に男の子はぷいっとそっぽを向くが、興味津々なのがバレバレだ。
「我は『情熱の堕天使』」
「だ、堕天使?!」
慌てる男の子へと堕天使はぐいと迫り――顎へと触れる。おおっと、壁ドン&顎クイを合わせた胸キュンコンボが大炸裂!!
これは効果てきめんだ!!
「力が欲しいか? ならば、我が手を取るがいい。口付けにて契約は成就せん」
「は……はわ……」
ピュアな男の子の結末はともかく、ロア――あまねく竜の王は王たる威厳を見せつけ両手を広げると生物達へと語り掛ける。
「では、余のもとに下るがよい。――支配される悦びを教えてやろう。逃れるな。受け入れよ。くく。余は肉食系であるぞ? そう。王は此処に在りて、汝のときめきに牙を突き立てよう」
――ざわ。
そのひと声は聞くものすべての心を震わせた。
「よし。ときめいたな。では往こう。王位簒奪の時間だ」
王は戦うべく力強い一歩を踏み出し、
「アナタが生きていてくれるなら、わたしはそれで――」
「お姉様
……!!」
涙で滲む声を背に、踵を返し歩きだすフランチェスカは振り向かない。振り向いてはいけない。その顔を見ればきっと足が止まってしまうから。
「ご武運を――」
様々な力と共に、猟兵達は決着へと向かう。
「そらから落ちる時はキュンとするらしいぞ! 誰かが言ってた! わたしにはよくわからないけどな! でもこいつのその脚を全速力で回してスカイダイビングするのはとても気持ちがいいんだ!」
キルは駆ける。あおいこいつと共に駆ける。
崩竜めがけて一直線、そこから高台へと向かって走って一気にダイブ!!
「さあ、じっくりその瞳の蒼で見つめて瞳孔をキュンとさせよう! 光は絞れば絞るほど解像度を増していく! カメラのレンズのように!」
子供の姿をした生物の瞳に映るのは、キラキラ輝く蒼。
グルォオオオオアアアアアァァァ!!!
連射のブレスを飛び越えて、輝く蒼が瞳を染める。
「きゅんってなんだよきゅんって!」
仲間達と飛び出すテラは思わず言ってしまった。
きゅん。そう、キュン。生物達が求めるキュンとはいったいなんぞ。
「ぅううう……とりあえずおれが焦がれるもので行ってみるか」
そんなこんなで炎玉の竜騎士は魔法少女へとクラスチェンジ!
「全てを滅ぼす邪悪な竜よ! この魔法少女・グランディア・テラが倒すぞ!」
纏う炎は燃え上がる闘士。煌めく炎と共に魔法少女、キラッと降・臨!!
「「「「がんばれテラりーん☆」」」」
「?! テラりんっ?!」
なんか野太い声が後方から聞こえてきたがテラは振り向かないことにした。振り向いたらだめだ絶対に。
不思議な力がぐんぐん沸き上がってくるが、どんな姿の生物達が力を送ってくれているのかも考えてはいけない。イメージとは大切なのだ。
「お前が滅びを齎す龍というのであれば、滅びによって倒される事こそ宿業と知るがいい!」
「「「「いけいけ僕らのテーラーりーん
!!!」」」」
野太い声にまじって幼い子供の声援も聞こえた。聞こえた気がする。間違いない。
よし戦おう。
ありがとう、王を討ちに来たヒトタチよ。
共に戦いましょう。我らの力と共に。
一人一人の力では敵いませんが、全員でなら必ず――!
「オオオオオオオオオオオォォォォォオオ!!!」
ずう、んっ!!
崩竜の爪は大地を抉り、木々をなぎ倒す。
あんな攻撃、一度でも受ければ致命傷どころではない。
ばがんっ!
「とうっ」
ががが!
「よっと」
モルツクルスは暴力的な一撃をかわしてみせた。
成せば成る。そう、成せば成るのだ。
「全ての始原、全ての終焉……其は炎、其は光……汝が力を此処に乞う!」
オオオ、オオオオオ……!!
生み出すそれは自在太陽。煌々と輝くそれはいくつも宙に浮かび上がる。
「いくっすよ!」
さあ、乙女の涙を止めるのはこの一撃にかかっているのだ。
「くらえ!!」
ゴオオォオオゥッ!!
全力で放つ炎はオブリビオンの肉をじりじりと焼き上げる。
ギャアアアアアアアアアアアアア!!
「行ったっすよ!」
焼ける嫌な臭いを纏うが、まだアレは戦う意思を持っている。
ずれた眼鏡を直しながらの声に応じるのはキルだった。
あかいわたちと青いこいつ。赤と青は駆け抜ける。
ゴオォオウッ!!
放たれるブレスを軽々と超え、キルは迫る。どんどん迫る。
さあ空を弾け、画角に鮮明全てを見逃すな。次にシャッターを閉めるときはその爪を届かせる時だ。
伏せるけものは空を駆け、静かに獲物を待つ。
グ……グオオオオォォォォァァァァァァア!!!
「どいつもこいつもその瞳のフレームに収めてやるぞ、ワンショット・エスケイプ! ツーショットグッド! スリーショットゲット! ハートをちぎってやる!」
さあ、いまだ!!
「見極めろ! クレイジーキャッツ!」
グオアアァァァアアア!!!
崩竜は声を上げた。
ズドオオォォン……! ガァアンン……!
放たれる火球は猟兵達へ次々と襲い掛かる。
絨毯爆撃かと思うほどの勢いだが、それごときでひるむ者は誰一人としていない。いるはずがないのだ。
「余こそかつて星を支配せし王竜メギドラウディウス・レックスが化身であるぞ。――頭が高い!」
出身世界の歴史において最大級の肉食恐竜とされ、畏敬と憧憬の念を一身に受けていた獄竜暴君は高らかに宣言する。
風を受けはらむマントは雄々しくなびき、胸を張り堂々と立つそのさまは正に王。
――GGGGggGgrrRrRRwWWwW!!
崩竜をも打ち震わせる、ヒトならざる咆哮はその動きをも鈍らせる中、
「テラりーん!」
「がんばれー!」
子供達の声援を受け、魔法少女も駆け抜けた。
降り注ぐ火球をかいくぐり、たんと地を蹴り宙を舞う。軽やかなその姿はまごうことなき魔法少女。
「お前が滅びを齎す龍というのであれば、滅びによって倒される事こそ宿業と知るがいい!」
魔法の力で迫る火球を打ち払い、
「気をつけろ、そっち行くぞ!」
テラの声を聞いたシーザーは能力を解放する。
「楽しませて貰おうか」
ずずんと地を穿つ火球を避け、ぐんと飛翔し周囲を見回した。
あの火球は竜自身の周囲に生じた魔法陣から放たれている。ならばそれを見極めればいいわけだ。
「――そこか」
すと放つ魔力弾で魔方陣をかき消し、さらに飛び、翻弄。
グルル……。
「こっちだ」
苛立つ唸りを聞きながらもシーザーは少しでも優位になるよう魔方陣を打ち消しながら動いていると、あの生物達も戦っているのが見えた。
「ふむ、ならばできるだけ火球を打たせないようにするか」
新たに生じる魔方陣を打ち消し、舞い上がる。
「一緒に戦ってくれるの? ありがとう」
ネージュへ頷く男の子が次の瞬間に見たのは天駆ける美しい姿。
火球をうまく避けては動く。男の子へかく乱を頼み、狙うは崩竜の首である。
「ブレスは強力ですが、その首がどこまで自由に動きますか?」
ぐんと大きく飛び上がり、こちらへと迫る首を大きく超え。さらに飛ぶ。
大きく動かそうとしても追いきれない。死角へ回り込むことに成功したネージュはすとスカートをめくると隠していたダガーを閃かす。
ざくり。一閃は肉を裂き、血が噴き出すが、まだまだだ。
フランチェスカはネージュの動きを上空から見ていた。降り注ぐ火球をへシールド化した飛翔ビットをぶつけて軌道を逸らす。
ばさりと翼を広げて空を駆け――今だ!
オオオオオォォォォオオオオ……!!
見出す一瞬の隙を逃すことなく大型の機殻斧槍は崩竜へと牙を剥がくが、それだけではない。フランチェスカは周囲を変則軌道で旋回しながら砲撃と爆撃の乱れ撃ちを浴びせ、隙あらば斧槍を振るい断つ。
「……おや」
戦いながらふと違和感を感じた。先ほどより崩竜の勢いが落ちているような気がするのだ。ダメージで弱るにはその勢いは急すぎた。
見下ろすと、アリスが生物達といる。
「生物達は私の所持技能を技能値780で扱えるようになったのです☆」
くすりと笑うアリスはにっこり笑顔。
壁ドン&顎クイの威力は絶大で、アリスの能力を与えられた生物達の攻撃により崩竜はエナジーを盗まれていたのだ。
「臆する必要はない。情熱の堕天使であるこの我と契約したのだ。さあ、我が与えた力を存分に発揮するがいい!」
急激にエナジーを吸われ力を失いつつある崩竜はそれでも魔方陣を展開し、火球を放つ。だが、その火球のエネルギーでさえも奪われてしまう。
「ふふ、我等へ牙を剥いた事を後悔するがいい」
堕天使が見つめる先ではエネルギーを吸収されつくし、悲鳴を上げるドラゴンの姿があった。
「よし! ここで一気に決めるっす」
とどめとばかりに一撃を放つモルツクルスとキルに仲間達は応え、一気にオブリビオンの元へ。
「これで最後だ」
輝く真紅のオーラを纏うシーザーはここぞとばかりに巨大な衝撃波を崩竜へと放ち、
「モード・アサルト!」
きらきら輝く炎を纏い、魔法少女の体は上空へと駆けのぼる。
見下ろせばダメージを受け続けた王。ここで決着をつける!
「今こそ星々の力を我が身に宿す! メテオブラストぉ!」
ドゴオォオンン!!
固い地面が沈み変形するほどの一撃にお友達は大歓喜!
大ダメージを受けてもなお戦おうとするが、封印を解いた情熱の堕天使の前ではすべてが無駄だった。限界突破したアリスは崩竜すら呑み干すほどの勢いでエネルギーを奪い、まるで舞い踊るかのように翻る手がざくりざくりと崩竜を刻めば戦淑女が空を駆け、
「制御は少々手間ですけれど、と。――アンカービット、射出……!」
ズドドドドドドドド……!!
一斉起爆によってあたり一面が炎に包まれ、悲鳴に近い唸りが響き渡るたる。
焼き包む炎は徐々に収まり現れるのは、ボロボロに傷ついたオブリビオン。
「このメギドランスにてそっ首落としてくれる!」
それは槍であり剣。竜槍剣を構えたロア。
命のともしびは既に消えかけ、長くはないだろう。だが、だからこそ、この一撃ですべてを決める!
ぐっと剣を握り構え――。
グオオオオォォォォァァァァァァア
……!!!
――斬!
ああ、沸き立つ歓声が上がる。
●
「ありがとう!」
「あの竜を倒してくれるなんて……本当にありがとう!」
「もう怯えながら生活しないですむわ」
「わーい! やったー!」
浮島を支配する『王』は遂に倒れ、生物達は涙を流して喜んだ。
そう、もう苦しめられることなく、これからは平和に生きていけるのだから。
「ありがとう、このご恩は一生忘れません」
「ありがとう、本当にありがとう」
涙をぬぐいながら感謝の言葉を幾重にもかけられるが、戦いはまだまた続くのだ。
感謝の言葉はいつまでも消えることなく送られ、猟兵達はグリモアベースへと戻っていくのだった。
大成功
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