●閉じた島の王
ここは群竜大陸にある、浮遊する巨岩群の密集地『浮遊岩諸島』。
この地で空中に浮かぶ浮島は、全てが独立した生態系を持ちそれぞれに『王』と呼ばれる一体のオブリビオンが支配しているという……。
そんなひとつの浮島で響く高笑い。
「ふふふ……あはははっ! 『王』として君臨するあたし、最高!」
椅子にふんぞり返るオブリビオンの頭には、この島の宝物である王冠型の宝石『天空の冠(ひとつ金貨850枚(850万円)の価値)』が輝いている。
「かつてのあたしは欲しい物を全部手に入れられなかった……この世のすべてを憎むほどの嫉妬に打ち震えたわ。でもね」
オブリビオンは手でちょいちょいと合図をする。
するとこの島に住む生物――ヒトの形をした全身黒タイツ風の生物――がスッと現れ、ひざまずきながらマイクを差し出した。
「ここでは、食べ物も、宝石も、服も、人気も、ほしいと思ったものは全部あたしのもの! さあ、王からのたまわりものよ!」
王が歌うと、全身黒タイツ風の生物たちは腕を光る不思議な棒へ変化させはじめた。
それはやがてリズムに合わせてゆらゆらと踊るように揺れていく。
流れるのは自作と思われる単調な繰り返しの音。歌詞もあたしかわいい、最高! としか言ってない。
それでも、この文化的に閉じた島では最高の娯楽らしく、宴は大いに盛り上がっていた――。
●島の支配者とステージ対決!
「集まってくださり、ありがとうございます!『帝竜戦役』へ参加するみなさんへユーノからのお願いです!」
グリモア猟兵のユーノ・エスメラルダ(f10751)はグリモアベースに集まってくれた猟兵たちにぺこりとお辞儀をすると今回の戦場の説明を始めた。
「皆さんのおかげで『帝竜』への道が開け、オブリビオン・フォーミュラー側の軍備の準備が整う前に攻撃を仕掛けることが出来ています。ですがまだ残る『帝竜』たちも健在でまだ軍備の準備は続いており、油断はできません!」
ユーノは持ってきたノートへ、ペンでざっくりした絵を描いていく。
それは、群竜大陸の大まかな地図だった。
その一角にある浮遊する巨岩群の密集地へとぐるりと丸を描く。
「今回、この『浮遊岩諸島』の一角にオブリビオンを見つけました。この浮かぶ島々は、それぞれが独立した生態系を持っていてひとりのオブリビオンに支配されているようです」
続けて描かれたのは、黒い人……人?
「こちらは今回予知した島に住む生物です! 彼らは歌や踊りに心を惹かれる性質を持ち、より心を揺さぶる相手を非常に尊い存在として敬う習性を持っているようです」
どうやらこの島のオブリビオン――『王』は彼らを味方につけているようだ。
「彼らは影のようにハッキリした実体が無い不思議で奇妙な生物で……彼らが『王』についたままでは戦いは厳しいものになるでしょう……」
物理的な妨害もそうだが、おそらく、かなり、ブーイングが飛ぶ。
「――ですが。先程も言ったように、彼らは歌や踊りが好きなようです」
つまり。
「彼らを魅了して味方につけてしまえば、『王』は丸裸も同然になります! さらにこの『王』は調子に乗ると勢いがありますが心は強くないので、ファンが居なくなると精神ダメージが追加で入ります!」
すべてを敵にまわし正面から戦うよりも、ファンを獲得しながらステージ対決をした方が倒しやすいだろう。
続けて描かれたのは、オレンジの明るい髪と赤い瞳の少女。
「この島を支配しているのは彼女、『『嫉妬』のステラ』さんです。けっこう器用な方なので、油断せず気をつけてください」
最後に、ユーノは説明を終えてノートを畳みながら、追加情報を加えた。
「あ、ちなみにこのオブリビオンさんはずっとこの島に居たため外の最新文化を知らないみたいです。あと宝石で出来た王冠が探せば複数あるので、もし興味のある方が居ましたらお宝として持ち帰ることもできます」
●未来を守る為に
「説明は以上です。侵攻をくわだてる『帝竜』たちの軍備の準備が整ってしまうと、オブリビオンたちの攻勢は強まりこの世界の危機がひとつ近づいてしまいます……。その準備を打ち砕くためにも、どうか皆さんの力をお貸しください」
そう言うと、ユーノは猟兵たちを転移さる準備を進めながら無事の祈りを捧げる。
「ユーノはみなさんを転移させなければならないので同行はできません。みなさまが無事でありますように……」
ウノ アキラ
はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。
音楽系で行けそう……と思い、気がつくとOPを書いていました。ウノ アキラです。
このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。
●
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プレイングボーナス……奇妙な生物達の支援を得る。
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現実に存在する楽曲の曲名や歌詞、替え歌等が記載されているプレイングは採用できません。
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●お得情報
この依頼については書けそうなタイミングで順にリプレイにしていくため、『連携の指定が無ければ』順番に入れ替わりながら一人ずつ戦う感じになると思います。
他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。
よろしくお願いいたします。
●依頼について
パフォーマンスで圧倒していくことで、敵は嫉妬に狂い自滅するでしょう。
あるいは尊みに浄化されて嫉妬が消えることで存在を保てなくなり消えていくかもしれません。
執筆開始は5/10(日)からで、一日につき、2人〜3人ずつというペースになる見込みです。
比較的ゆっくりした進行になりそうなので、お知り合いとの参加もお受けできると思います。
また、キャパシティの都合により、採用は最大12人までになる予定です。
『書きやすそうな方から採用する』ためプレイングは不採用になる場合があります。ご了承ください。
第1章 ボス戦
『『嫉妬』のステラ』
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POW : あたしすごい?ほんと?……でっしょー!(ドヤ顔)
戦闘力のない【動画撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【視聴者の応援】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD : そんなの、あたしだってできるんだから!
対象のユーベルコードに対し【正確に全く同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ : 違っ……あたしそんなつもりじゃ……
【槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【召喚ドラゴン】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:つかさ
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リサ・ムーンリッド」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
モルツクルス・ゼーレヴェックス
「モルツクルス・ゼーレヴェックス!歌います!」
とは言うもののちょっとばかり
「唯一神に帰依し奉らん、貴方に捧げるに相応しい技量をば所望」
【高速詠唱】で歌唱力を高めましょう
【礼儀作法】を踏まえて厳かにステージに立つ
今、自分という個人は消失し芸に没頭した魂があるだけ
「――La」
アカペラで奏でる旋律は、普段詠唱で鍛えた発声器官を楽器とした音響芸術
歌詞は要らない、他の楽器も無粋
この【演技】は神に捧げるもの
だから、真摯に祈りを込めれば向こう側が意図汲んでくれる
そして高まった技量は、観衆達をも神域へと連れていってくれるだろう
音楽とは【コミュニケーション】相互に高めあうものだ
「……ふう」
歌い終われば、人に戻る
●その芸術は、神へ捧げる歌
ゆらゆらと光る腕が揺らめく『王』のライブ会場。
島全ての生物が『王』の歌を聞いていた。
そんな『『嫉妬』のステラ』の独壇場に差し込まれたのはひとつの大きな声。
「モルツクルス・ゼーレヴェックス! 歌います!」
ぴたりと音が止む。
静寂の中で集まる視線の先に立つのは、キューティクルが艶やかな癖ッ毛と黒ぶち眼鏡とハチマキが特徴的な人物。
その乱入に『ステラ』は手に持つ拡声器で抗議の声を上げた。
「な……なんなのよ、あんた!」
その声に彼――モルツクルス・ゼーレヴェックス(素敵魔術師・f10673)は、丁寧に一礼。
そのまま堂々とした佇まいでステージへ上がると周囲の観客……興味深げにジッと見てくる真っ黒な人型の生物たちへ目を配るとよく通る声で祈りの言葉を放った。
「唯一神に帰依し奉らん、貴方に捧げるに相応しい技量をば所望――」
言葉の後にモルツクルスはスゥと息を吸い、そして。
「LaLaLaLaLa――」
声による旋律が響き渡った。
奏でられるのは高速の旋律。
讃美歌を思わせる荘厳な音が発声のみによって生み出されていく。
その御業は芸の神から借り受けしもの――それはユーベルコード『芸神木星<<アート・オブ・ザ・ジュピター>>』。
神域に届かんとする音響芸術はそれを聞く者の心を惹きつける――黒い人型の生物たちもその美しさに聞き入っていた。
「ずるい、ずるいずるい……何そのすごい歌い方! 羨ましい!」
――ここでしばし心を奪われていた『ステラ』が我に返り嫉妬に心を燃やした声をあげた。
『ステラ』は拡声器を手に荒々しく歌い返しるが、しかし観衆の注意を向けることは出来てもその心を独占することは出来ない。
やけになった『ステラ』は苦し紛れに槍を出すが――ステージの上で暴力はご法度とばかりに島の住民から不服の声が上がる。
「――なんで、なんでよ! あたしはここの、『王』なのに……!」
「――La、LaLa、La、LaLaLaLa――」
自身の発声器官を楽器としたその技術は神に捧げる芸の技――そこに歌詞は要らず、他の楽器ですら無粋。
この時、モルツクルスの凛とした姿はまるで人々を神域へと導く天の御使いの様であった。
響く祈りの旋律は聞く者たちの心を通わせ相互に高めあうだろう。
「……ふう」
歌い終えたモルツクルスは再び一礼。
天の御使いは人に戻ると静かにステージを降りた。
やがて歓声が沸き上がる……ステージへの新規参入者の登場は、島の生物達を大いにワクワクさせた。
大成功
🔵🔵🔵
●崩れる独占
島の『王』による島の生物たちの支持の独占は早くも崩れ去る。
「うそ……そんな……」
これまでの様に自分に熱狂してもらえない。
そんな状況の変化に『『嫉妬』のステラ』の表情が曇る。
対して島の生物たちはステージへの新規参入者に盛り上がり、様々に光る腕を波のように揺らめかせ感動を現していた。
次はどんなステージになるのか?
島の生物たちの関心はその一点に注がれる。
アウレリア・ウィスタリア
&&&
ボクの得意分野です
【幻想ノ歌姫】を発動
ショルダーキーボード玉咲姫花忍を鳴らして
空を舞い踊りながら歌を奏でましょう
歌うのは自由と希望の歌
誰にも縛られず争わず
そして誰もが夢を追うことのできる希望の調べ
望めば誰でもリズムに乗れる
望めば好きに歌を奏でることができる
さあ、アナタたちも歌を、躍りを奏でたいのなら
ボクと一緒に歌って踊りましょう
えぇ、そうです
今、ボクが奏でるのは皆が参加して
皆で楽しむことで完成する
ボクのためじゃない、皆のためのパフォーマンス
ボクは不思議な住人たちが楽しめるよう精一杯音を奏でましょう
王とは
付き従う民を導くもの
ボクはこの地の住人へ最高のパフォーマンスを贈りましょう
アドリブ歓迎
●さあ、共に
(歌と踊り……これはボクの得意分野です)
アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)は愛用のショルダーキーボードを手に空を舞う。
薄い青紫色の色合いの楽器から奏でられるのは、風のような雄大な前奏。
音に気が付き見上げたならば、青い空でくるりと翻るアウレリアの姿が見えるだろう。
青い空に翻る白と黒――左右の非対称の色合いの翼と、白い肌と黒い仮面――の色合いがアウレリアの持つ神秘的な雰囲気を高めていく。
それはまさに幻想の如く――アウレリアのユーベルコード『幻想ノ歌姫』の能力も合わさり気持ちが浮き立つような解放感のある音が響き渡った。
(――歌は想いを伝えるもの)
アウレリアは歌う。共に分かち合いたい想いを。
アウレリアは伝える。自由と希望を。
「♪――」
親しみさえ感じる、軽快なリズムと歌が始まった。
(望めば誰でもリズムに乗れる。望めば好きに歌を奏でることができる)
――ボクと一緒に歌って踊りましょう。
乗りやすいリズムは踊りを誘う。
そのリズムにつられて島の生物たちは親しみのある軽いリズムに合わせてぴょこぴょこっと踊りだした。
光る棒に変化した腕が上下に揺れる。
踊りを見るとアウレリアは共に音に乗る集団の方へ降り立って、同じ歌を再び歌った。
今度はその目で島の生物たちの姿をひとりひとり見て、手を伸ばしながら。
するとその誘いにつられて島の生物たちは黒い姿を揺らめかせながら同じ歌を発し始めていく。
こうして生まれた多重の旋律は、新たな『歌』へと変化した。
(えぇ、そうです――)
黒い仮面から覗くアウレリアの金色の瞳が心なしか柔らかい眼差しとなる。
(――今、ボクが奏でるのは皆が参加して皆で楽しむことで完成する。ボクのためじゃない、皆のためのパフォーマンス)
この流れを面白く思わないのが『ステラ』だ。
「そんなの、あたしだってできるんだから!」
島の生物に未だにいるファンからキーボードを受け取ると『ステラ』はアウレリアのユーベルコードを完コピして演奏技術と歌唱力を高める。
「ふふん、どーよ? あたしだってやればでき――」
しかし、いちど離れたファンを取り戻すには至らない。
「――なんで!? どうして! ずるい!」
嫉妬を隠さずに吐き出す『ステラ』。
気持ちの揺れが現れその後の歌や演奏から勢いが失われていった。
そんな『王』の失墜をよそにアウレリアは不思議な住人たちと共に歌い、そして踊る。
(王とは、付き従う民を導くもの……。ボクはこの地の住人へ最高のパフォーマンスを贈りましょう)
共に歌う――それはこの島の生物たちにとって、全く新しい価値観であった。
この意識の改革はこの後に続くステージに大きな影響を与えていく。
大成功
🔵🔵🔵
キル・トグ
解き放て!われらの歌!
原初のきょうふと飢えを思い出せ!
遠くらいめい響く鼓動に安らぎを!
そらを当てなくさまよう嵐のとうぼえを
おののくかりそめの王に波打つ蝗の群れ
インザパンク・ノイズに込めた追悼のうた
全てさざ波に飲み込み叫ぶ再生の津波を今ここに!
このこえとこころと歌えおおかみのうた!
「われら狩人に追われし獣、ちを吐きながら王を喰らうけもの!」
叫んで飛んでお空でダンスだこのこえが血塊で閉ざされようと叫ぶのをやめるものか、ロックは、反逆は潰えない、王がいるのなら。
ただのとうぼえを言わせない、かられゆく闇に残された獣の歌を聴け。
いつか消えゆく戯冠に何を願う、わたしがこいつの王冠さ。
●狩られても消えぬおおかみのうた
流れは猟兵たちが掴みつつある――。
続けてぴょんとステージへ飛び乗ったのは、あおのけものとあかのけもの。
探検家と語り部を兼ねるあかのけものは、叫んだ。
「解き放て! われらの歌!」
場の空気を一気に掴んだキル・トグ(青と赤のけものたち・f20328)はそのまま言葉とリズムで畳みかける。
それは与えられることに満足しきった島の生物たちへぶつける二匹のやせいのメッセージ。
♪原初のきょうふと飢えを思い出せ!
♪遠くらいめい響く鼓動に安らぎを!
♪そらを当てなくさまよう嵐のとうぼえを
♪おののくかりそめの王に波打つ蝗の群れ
二匹は翔んだ。
あおのけものにあかのけものが乗り空を駆ける。
そこに溢れるのは空を求める苛烈な意思。
「われら狩人に追われし獣、ちを吐きながら王を喰らうけもの!」
あかのけものは声を張り上げる。この島の隅々まで声が届くように。
あおのけものは空で踊る。大地さえ束縛だと言わんばかりに、その反逆の姿を。
空中機動の制御の負担で、げふっとせき込み血を流しながらも二匹は止まらない。
(叫んで飛んでお空でダンスだこのこえが血塊で閉ざされようと叫ぶのをやめるものか)
そこに示すのは反逆の言葉。
そこに示すのは己で決定する意志。
(ただのとうぼえを言わせない、かられゆく闇に残された獣の歌を聴け。いつか消えゆく戯冠に何を願う、わたしがこいつの王冠なのさ)
それは芸術的な美しさでは無く、自我が発する荒々しくも眩い輝きであった。
島の生物たちと『『嫉妬』のステラ』は新たな参入者が放つパワーに圧倒されていた。
「……血を吐いてるんだけどあれ!?」
それはキル・トグのユーベルコード『空を求める地蟲の足掻き』の代償の流血。
その代償と覚悟は、ちやほやされるためにステージを使う『ステラ』には払えないものだ。
地上へ戻った二匹のけものは、よろめくあかのけものをあおのけものが支えながら最後まで声を出し続ける。
♪インザパンク・ノイズに込めた追悼のうた
♪全てさざ波に飲み込み叫ぶ再生の津波を今ここに!
♪このこえとこころと歌えおおかみのうた!
今回『ステラ』とキル・トグの間で如実に差として表れたのは、技術ではなく魂。
その熱量の差が島の生物たちにカルチャーショックを与えた。
黒い人型の島の住人たちが騒めく中、歌い切った二匹のけものはその脚で大気を蹴って立ち去った。
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
・黒い人たち
『ローマの奔流』で今回は見目麗しい悪魔の音楽隊を召喚。
空中で音楽ショーを繰り広げて披露します。
様々な世界のアップテンポの曲から優雅で淑やかな音曲までバラエティに富んだものを魅せて心を掴みます。(踊りもあるよ!)
・嫉妬のステラ
黒い人たちの心を掴むまではこちらからは攻撃せず。
相手の攻撃は基本的に直感(第六感×見切り)で見切っての回避を行いますが、もしWIZUCを音楽隊の方に投げる事があれば、あえて受けさせて黒い人たちの人心を離れさせても良いかもしれません。(消えた悪魔は送還されるだけで死にません)
人心が離れるようでしたらあえて攻撃せず自滅を待つのが良いかもしれません。
●華麗なる悪魔の音楽隊
続けて現れたのは真紅のスーツに身を包んだ美形の偉丈夫――シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)。
「次は私の番だね。バラエティに富んだ空中での音楽ショーを披露しよう」
彼は礼儀正しく一礼をすると、明朗な微笑みを見せ空へと指を向けた。
その指につられて見上げればそこに現れるのは見目麗しい悪魔の音楽隊――ユーベルコード『ローマの奔流』。
「さあ楽しみたまえ」
悪魔の軍団による演奏が始まった。
戦闘用でもあるその軍団はシーザーの指揮のもと統率された動きで集団の演奏を行い、ハーモニーを生み出していく。
始めはアップテンポの明るいものから始まり、やがて優雅で淑やかな曲へ。
その短い旋律のメドレーが生む物語りは聞く者に楽曲の旅を体験させ、安らぎと楽しみを提供していく。
ここまでさも当然のように振舞うシーザー。
猟兵によるパフォーマンス発表の場という雰囲気になりつつあるが……しかしこのステージは元は島の生物たちに対し『王』が尊敬を集めるための場だ。
「――なに当たり前のように次の発表が始まってるのよ! ここはあたしのステージよ!?」
わめく『『嫉妬』のステラ』に対し、指揮を続けながら『何を言っているんだ? この娘は』という表情をするシーザー。
もちろんシーザーの反応は相手を煽るためにわざと行ったもの、しかし彼の自信とプライドから半分くらいは本気で『この私が指揮をしているのに?』と思っていたかもしれない。
「く……! 顔がいいからって調子にのって! そういうの、ちょーむかつく!」
アーサーは『ステラ』の持っていないものを多く持っていた。
それは嫉妬に身を焦がす彼女の頭に血が上るのに十分な理由でもある。
「その綺麗な顔に傷をつけてやる!」
槍を持ち出す『ステラ』。
しかし島の住民から、ステージの上で暴力はご法度だという不満を示すブーイングが放たれた。
「う……なんでよぉ! あたしは『王』なのに……!」
苛立たしげに槍を振る『ステラ』。
その時、シーザーが指揮する音楽隊の一部が演奏のパフォーマンスとして『たまたまちょうど』空中を舞って移動していた。
「……え?」
「おっと失礼、私の音楽隊がぶつかってしまった様だ」
シーザーが謝罪をする傍で槍が掠めた位置に魔法陣が浮かびだす。
「あ……勝手に召喚が……違うの、これは違うの」
それは標的を示す印。
召喚されたドラゴンは標的である悪魔の音楽隊をそのブレスで焼き払い始める。
「違っ……あたしそんなつもりじゃ……」
会場に巻き起こるブーイング。
発生した『不幸な事故』を、シーザーは意味深な瞳で見つめていた。
大成功
🔵🔵🔵
御倉・ウカノ
&&&
歌や踊り、か。彼らの趣味に合うかはわからんが、昔取った杵柄ってやつだ。神に奉納する神楽舞、見せてやろうじゃないか。…実家のやつだってのは気にいらんがね。
御倉の家に伝わる巫女神楽は大太刀を用いた剣舞だ。大太刀はその質量故扱いが難しく、剣舞に用いることは本来あり得ないが、御倉流巫女神楽は敢えて大太刀を用いる。それは御倉の家が武でもって神を守護する一族であり、奉納する神楽舞は神に自らの実力を見せるためのものであるからだ。故に神楽舞の最後には、邪を払うための武技を披露するのだ。
「我が劒はこれより禍者を打ち祓うものとなる!さあ御照覧あれ!これぞ御倉流巫女神楽『狐薊』なり!」
●邪を払う舞い
ステージで『不幸な事故』により召喚されたドラゴンが暴れていた。
いろいろとメンタルがグダってきている『『嫉妬』のステラ』は、自身が召喚したドラゴンを制御できずにただオロオロする。
「……そんなつもりじゃ……」
そこへ一人の妖狐が飛び込んだ。
「よっと!」
振り下される大太刀は刃長4尺ほどか――御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)の振るう『大太刀「伊吹」』が暴れる召喚ドラゴンを一刀のもとに斬り捨てた。
勢いのままくるりとひと回りしつつ大太刀を掲げてぴたりと止まれば、それはまるで舞いの決めポーズ。
「やあやあ初めまして。趣味に合うかはわからんが、折角だ。昔取った杵柄、神に奉納する神楽舞、見せてやろうじゃないか」
(……実家のやつだってのは気にいらんがね)
「我が劒はこれより禍者を打ち祓うものとなる! さあ御照覧あれ! これぞ『御倉流巫女神楽『狐薊』』なり!」
騒ぎの余韻が残る中でウカノのよる剣舞の巫女神楽が行われた。
掲げる大太刀がキツネアザミの細い花びらに変わるとウカノの周囲をふわりと舞う。
合わせてウカノもふわりと回ると、その花びらはやがてウカノの手へ集まり再び大太刀へ。
その質量は舞いに向かず剣舞に用いられることは殆ど無い。
だがウカノが修練を積んだ御倉流巫女神楽は敢えてその大太刀を用いている。
両の手で大きな柄を握ると、ウカノはその足さばきで身体を滑らせるように動いた。
質量を無理に御そうとせず滑らかに移動すると、その動きに独特な巫女装束の裾がひらり、ひらりと舞いはためく。
合わせてゆらりと動く大太刀の刀身は日の光を受けて色合いに表情を映し出した。
それは時に勇ましく振り下ろされ、時に巫女の身体へ優しく引き寄せられ、はためく装束の白き色合いの間で見え隠れする。
かと思えばその太刀筋はいつの間にか突き出され、重力に絡めとられる前に刃へとすり寄った巫女が添える手により支えられる。
その剣舞はただ美しいだけではなかった。
重量を巧みに操り、太刀筋に無数の変化を与える『武技』――。
その動きのある勇ましき美に島の生物たちは視線を奪われていく。
それは武で以て神を守護する一族がその実力を神へ奉納するための舞い。
「――是にて神楽舞を奉りました」
うやうやしく礼をしたウカノは最後に大太刀を鞘へ納める。
すると先ほどまでの凛とした空気は何処へやら。
「さぁて、なんか酒盛り始まってる所あるっぽいし、あたしも一杯もらってこようかな」
ウカノはふにゃりとしたゆるい表情でステージを降りていった。
大成功
🔵🔵🔵
●移り行く主導権
どうやら観客の集団のどこかへ酒類が持ち込まれ酒盛りが始まっている様だ。
その様子はまた後で改めて触れるとして……。
ステージについては召喚ドラゴンを暴走させ大ブーイングを受けた『『嫉妬』のステラ』は失意に沈んで大人しい。
場の空気は完全に猟兵たちが握っていた。
村崎・ゆかり
『嫉妬』のステラ……。あー、そっか。あいつってこの世界のオブリビオンだったっけ。仕方ない。もっかい骸の海へ叩き還しましょ。
巫覡載霊の舞で巫女装束を纏った神霊体に変化。
いつもの薙刀でなく、神楽鈴を手に神楽を披露するわ。
込めるは「破魔」。神降ろしの為の、祓い清めの呪術。
神のよりましとして静謐に、動作の端々まで自分で制御して。
孤立環境で最新の流行を知らないのは仕方ないけど、古典くらいは識っておきなさい。
『嫉妬』のステラが襲いかかってくるようなら、神楽鈴から「衝撃波」を放って「なぎ払い」。
今のあたしに下手に触ると、神気であなたなんか消滅するわよ?
最後に神楽鈴を一振りし、足を踏み鳴らして仕舞いとします。
●場を祓い清める舞い
続けてステージへ現れたのは同じく巫女装束の姿の人物。
ステージへと上がった村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は隅で半ば放心状態の『『嫉妬』のステラ』をちらりと見た。
(『嫉妬』のステラ……。あー、そっか。あいつってこの世界のオブリビオンだったっけ)
ゆかりにとっては過去に戦った憶えがある相手。
(仕方ない。もっかい骸の海へ叩き還しましょ。……とはいえなんだかそのまま消えていきそうね)
あらかじめ『巫覡載霊の舞』で巫女装束を纏っていたゆかりは、ステージの真ん中に立つと手に神楽鈴を持ち水平に降ろす。
(――神のよりましとして静謐に、動作の端々まで自分で制御して)
――シャン、と清涼な鈴の音が響く。
その音は時に神を慰め、または辺りを祓い清める鈴の音。
――シャン。
その音は、幻覚や魅了など現実を覆い隠すものを討ち祓う破魔の音。
ゆかりは伸ばした背筋を崩さないままに、ゆるやかに、静かに足を運び一定のリズムで鈴を振る。
――シャン。
そこに生じるのは楽しみや勇ましさによる高揚では無く、凛とした静寂による安穏。
時に鳴り響く足踏みが減り張りを生み、静けさをより一層強調させて時間の流れを緩やかにしていく。
――シャン。
それはこれまで歌舞と異なり『動』ではなく『静』に軸を置いたもの。
それはこの島の生物たちにとって初めて触れるものだった。
異世界からもたらされた根底から異なる舞踊に島の生物たちは息を飲む。
「異世界の知識や技術を持ち込むなんて……」
『ステラ』羨ましそうな目線をゆかりへ向けていた。
しかし下手に動けばまたブーイングの嵐をうけて島の生物たちを敵にまわしてしまうだろう。
特に静寂が作り出すこの空間は、衣擦れの音や足を擦る音すらメロディとなり、場を乱しかねない状態だ。
(これ以上不利にならないためにも、動けないじゃない。ずるい、ずるい――)
そんな状態でゆかりへ投げかけられる『ステラ』の攻撃は恨みがましい視線のみ。
元よりステージで歌い踊ることで島の生物たちを味方につけ支配していた『ステラ』。
島の生物たちを敵に回せば『王』と言えど居場所が無くなることは理解している。
――シャン。
最後に神楽鈴を一振りし、再び足を踏み鳴らすと静かに姿勢を整え、一礼。
「――仕舞いとします」
祓い清める舞いはそれを見聞きした者たちの気持ちを清め整えた。
その静寂による癒しは黒い人型の島の生物たちに新たな満足をもたらしたことだろう。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・源三郎
謎の生物を見て「やはり観客が多い方と楽しいのう」と【源三郎の表の顔】を使って旅芸人としての顔となり【たぬき人形たろう】と【はな】を操りつつ歌、踊り、技能【宴会】による楽しさを披露して謎の生物達を仲間の引き入れるよう立ち回ります。
敵の攻撃は【第六感】と【たぬき人形】達による【武器受け】で回避しつつ隙を見て【たぬき人形】で攻撃をします(一応踊りメインで戦います)
宇良潟・伝助
高柳・源三郎(零細旅芸人一座の酔いどれ座長・f15710)と連携
謎の生物を見て「おやっ、同業者でしょうか?」「違うようですが私と似てますね」と他の猟兵達がいつも以上に【技能】を発揮するように【不思議な三味線】を手にし【見せ場は人それぞれ】を使い、猟兵に合ったBGMを演奏します。
これで謎の生物を仲間に引き入れるにしても敵を攻撃するにも有利になるでしょう。敵の攻撃は【目立たない】を駆使して敵に見つからないようにします。
伊坂・和良
高柳・源三郎(零細旅芸人一座の酔いどれ座長・f15710)と連携。
ひょっとこの面を付けて現場に登場します。「おいらと一緒に楽しく踊るべ。飛び入り歓迎だべ」と謎の生物と敵に【飛び入り歓迎のひょっとこ踊り】を使うべ。
敵には効果が薄いかも知れないが謎の生物には効果があると思うべ。
高柳さんと一緒に踊れば皆んなの注目を浴びる事は間違い無いべ。
ひょっとこ面の口調は(おいら、お前さん、だ、だべ、だべさ、だべ?)です
熊猫丸・アカハナ
【旅芸人一座の舞台裏】
ここは見たことないギャグで注目を集めなアカンか。
よし!ここはわしらの出番や!
まずは『イケメンモード』に変身して、青い薔薇を使って一発ギャグでアピールや!
ステラが槍とかドラゴンとか飛ばして来たら、元の姿に戻って『ユーベルジャック』に植物芸を組み合わせて、魅せながら反撃や!
で、拾ってきた王冠は源さんのたぬき人形たちプレゼントやな。
●~幕間~
「おやっ、盛り上がっていますね」
声を上げたのは、ここまでステージの裏方として猟兵たちを支えていた宇良潟・伝助(裏方大好きな黒子猟兵・f21501)。
ひと休みをしようといちど仲間の元へと戻るとすでに酒盛りが進んでいた。
すでに何人かの黒い人型の生物も巻き込んでいる宴会の中心で酒を飲むのは、彼ら旅芸人一座の座長である高柳・源三郎(零細旅芸人一座の酔いどれ座長・f15710)。
「伝助殿はお疲れ様じゃ。どうじゃ、ここらで一杯どうかのう」
「ありがとうございます。私はお酌をする方にまわりましょう。お酒は嗜む程度ですので、本格的に頂くのは全ての舞台が終わってからにしたいと思います」
「すまないが宇良潟さん、わしも一杯いただきたいでござる」
お酌をしてまわる伝助へ追加の一杯を求めたのは伊坂・和良(面の力を借りるオッサン猟兵・f22018)。
そして一人未成年である熊猫丸・アカハナ(花咲かコメディアン・f23154)はウーロン茶を飲んでいた。
この四名が今回この島へと訪れた旅芸人一座だ。
「いやはやしかし、この島の生物たちを見たときはおやっ同業者でしょうか、と思ってしまいましたね」
「わしも宇良潟さんの親戚かと思ったでござる」
「でもこうして飲み交わせばこの島の生物たちもわしらと友達や!」
アカハナの言葉に源三郎が頷く。
「現にこうして共に呑めているからのう。彼らもわしらの仲間じゃ」
「さて、一息つけましたし……高柳座長、そろそろ我々も行きますか」
「そうじゃのう。旅芸人一座として、本業も頑張るとするかのう」
源三郎は顔を引き締めると芸人としての『源三郎の表の顔』になる。
続いて和良が面を取り出した。
「始めるでござるか。ならば」
面を付けることで意識が遠のき別の人格となる和良――今回はひょっとこの面の様だ。
「さて、行くとするべ」
人格が変化した和良は手首をひらりひらりと舞わせながらステージへ。
アカハナもまた『イケメンモード』という名の人間の姿となる。
陽気で楽しい踊りのために、一座は舞台へと上がった。
●そして『儀式』は『宴』へ
テケテン、トンチントン、ピーヒョロロ。
篠笛、三味線、摺り鉦の三種の音がテンカラテンと陽気に小気味よく鳴り響く。
それは伝助が持つ『不思議な三味線』から発せられる音色。
その音に乗り思い思いに踊りながら旅芸人一座の四人はステージへと上がった。
「やはり観客が多い方と楽しいのう」
舞台上から見渡した座長の源三郎はニコニコしながらたぬき人形の『はな』と『たろう』を踊らせる。
この流れに待ったをかけたのが、『『嫉妬』のステラ』だ。
「ちょっと待ったー! あたしでも解かるわ。美の欠片も無いダサさで良い歌や踊りになるわけないじゃない!」
そう言い放つ『ステラ』は勝ちを確信する表情を浮かべた。
しかし――。
「歌や踊りは美しさだけでなく『楽しい』ものもあるんじゃ。ステラ殿も一緒にどうじゃ」
源三郎は『ステラ』の発言をさらりと受け流すとたぬき人形を纏わりつかせる。
すると場のBGMのテンポが上がりコメディのおどけたシーンの様な雰囲気になった。
(見せ場は人それぞれ、この演出でどうでしょう)
テケテンテン、テケテン、ヒョロロロ。
伝助の三味線の音がそのシーンを援護し、さらに和良やアカハナも加わってテケテンと踊りながら『ステラ』のまわりをぐるりとまわる。
「えっ、ちょ、なに、何なのよ!?」
たじろぐ『ステラ』へアカハナが迫る。
「よろしくな! わしは花咲かにいさんのアカハナや! そんでもってこれはアオハナ!」
アカハナは青い薔薇を取り出しながら自己紹介をする。
「えええ……調子狂うんだけど……」
嫉妬する要素が見当たらないおどけた状況に『ステラ』は毒気が抜かれていった。
「ここは見たことないギャグで注目を集めなアカンか。よし! ここはわしらの出番や!」
源三郎のたぬき人形とアカハナは、ダンスまたは無声映画のようなリズミカルなジェスチャーでコントを始める。
その横では源三郎が寸劇の状況を歌で解説しはじめた。
そしてさらにその横ではテケテンテンとコミカルに踊り続けるひょっとこ仮面の和良。
彼らの歌と踊りは、これまでの『儀式』の側面を持つ芸術あるいは捧げものとは全く異なるものだった。
それは座長本人が先ほど言ったように『楽しむ』ことを主目的にしたもの。
――それは大勢の民衆が腹の底から笑うための『宴』の芸。
●さあさ、みなさんご一緒に
テケテン、トンチントン、ピーヒョロロ。
舞台前にすでに宴会が始まっていた一角からやんややんやと歓声が響く。
残る島の生物たちもまた、和楽器の軽快な音楽に乗ってぴょこりぴょこりと体を揺らしていた。
これまで歌や踊りを敬うものとして捉えていた彼らだったが、その固定概念はこれまで代わる代わるパフォーマンスを行った猟兵たちにより緩いものへと変化している。
そして、彼らは既に『皆が参加して皆で楽しむことで完成する』歌と踊りがあることを知っていた。
そういった経緯で十分に温まったこの場において、旅芸人一座の芸は島の生物たちに快く受け入れられていく。
楽しさを披露して注目を集めたならば、次は誘い。
旅芸人一座は舞台から観客たちと同じ場に移動して、さらにくるくると踊りだす。
「おいらと一緒に楽しく踊るべ。飛び入り歓迎だべ」
ひょっとこ仮面の和良が行う魅力の有る滑稽な踊りが、一緒に踊りたいという感情を刺激していく。
テケテン、トンチントン、ピーヒョロロ。
元より音楽に合わせてゆらゆら踊る習性があった島の生物たちが、つられて一緒に踊るようになるのにそう時間はかからなかった。
ステージの下の観客席で始まった踊りは、やがて全体へと広がっていく。
テケテン、トンチントン、ピーヒョロロ。
囃子に乗って踊りが広がる。
源三郎が持ち込んでいた酒もいつの間にやらいき渡り、宴会の輪が広がっていく。
「――あれ、これもしかして島の生物たちもうあたしのこと眼中に無い感じ……?」
ちやほやされる手段として歌と踊りを『与えて』きた『ステラ』には、この共に楽しむ状況で人気を奪い返す手段が無い。
なぜならこの島の生物たちは様々な歌や踊りの楽しみ方を知ってしまったのだから――。
●宴会はさらに続く
すでに盛り上がりはステージの上ではなくステージの下へと移っていた。
伝助が奏でる音と演出に合わせて、和良と源三郎が踊る。
その動きに合わせて黒い人型の生物たちも踊る。
島の果物や魚なども提供されツマミもばっちり。
「わしこんなん拾ったわ」
周辺をふらりと探索していたアカハナが両手に抱えてきたのは、複数の宝石で出来た王冠。
「あー!? それあたしの!」
叫ぶ『ステラ』をよそに王冠はたぬき人形の『はな』と『たろう』の頭にちょこんと乗せられた。
「そこの高いとこの椅子の裏にたくさんあったわ。予備なんかなぁ」
王冠の持ち出しに対して『ステラ』がアカハナに飛び掛かる一幕もあったが、ステージの上でなければ喧嘩も構わない様で島の住人達は気にしていない様子。
無礼講な雰囲気の中、飲めや歌えや踊れやと騒がしくにぎやかに時間が過ぎていく。
「なんだか恨みとか羨ましいとかどうでも良くなってきた……」
いろいろと精神的に存在を保てなくなってきた『ステラ』。
心なしか色が薄くなってきている気がする。
けれどステージを中心としたこの宴は、まだもうちょっとだけ続く。
大成功
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アリルティリア・アリルアノン
&&&
【アリ☆エル】
歌って踊れるバーチャル魔法少女アリルちゃん、ログインなう☆
早速撮影用ドローンを展開して、エルナちゃんと可愛らしく歌って踊ります!
その様子のあまりの尊さに、オブリビオンもたまらず消滅する事でしょう!
(女児向けアニメのED曲っぽい曲調)
『ゆびきたす☆りんかー』
誰かのまぶしいスマイルが ボクをキラキラ照らして
ぽかぽかハートで今度は キミをあっためたげる!
ほら こうやって優しさがリンクすれば きっとみんなハッピーだネ☆
だから キミたす ボクたす ユビキタス!
いつもいつでも つながっちゃお
今日も ボクたす キミたす ユビキタス!
とびっきりの笑顔で さあ ログインなう☆
エルナリア・アリルゼノン
&&&
【アリ☆エル】
訳も分からずアリルに連れて来られましたが、戦場で歌って踊るのですか?
戦争とは一体……
よく分かりませんが、これが必要な事なのは理解しました。協力しましょう。
撮影用ドローンを展開後、アリルが準備した曲を一緒に可愛らしく歌って踊ります。
戦いに直接影響するのは現地住民のみですが、それ以外の観客の存在を意識させる事で多少なりとも精神的に優位に立てるのではないでしょうか。
無論、客席に手を振るなどのファンサービスも忘れません。
(基本的に無表情で淡々と喋りますが、
パフォーマンスの間だけ表情豊かでノリノリの歌と踊りを見せます)
●魔法少女、参上!
いろいろあって場がかなり盛り上がってきたころ、バラバラバラと大きなプロペラの音が鳴り響く。
空を見上げるとそこには大量の動画撮影ドローン!
そしてそのドローンたちが紐で釣り上げたブランコには二人の美少女(※片方は男の娘)ユニットの姿が!
その名は――『アリ☆エル』。
「歌って踊れるバーチャル魔法少女アリルちゃん、ログインなーう☆」
ばっちりウインクを決めたアリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)はドローンを降下させながら眼下にいる黒い人型の島の生物たちへと手を振る。
その隣のブランコに座るのが、こんなにかわいい子が女の子なわけないだろ的なエルナリア・アリルゼノン(ELNA.net・f25355)。
「訳も分からずアリルに連れて来られましたが、戦場で歌って踊るのですか? 戦争とは一体……」
眼下の島のステージを見降ろしながらエルナは不可解そうな顔をした。
なおいかにもアイドルユニットといった雰囲気だがあくまで二人は魔法少女(?)である。
さらにこの二人、互いに相手のことを妹分だと思っている様だ。
そんな感じでいろいろ属性が渋滞したキュートな二人がこのステージにポップした。
ステージへ着地するとアリルは早速、乗ってきた動画撮影ドローンを四方へと展開する。
「アリルちゃんはこれから妹のエルナちゃんと可愛らしく歌って踊りまーす!」
カメラを意識してキラッ☆キラッ☆と決め顔を作るアリルの横でエルナも冷静に動画撮影ドローンを展開した。
「いいえ、エルナの方が姉だと主張しておきます。アリルよりもかしこいです。ところでこのドローンたちは現地住民以外の観客の存在を相手に意識させる事で精神的に優位に立つのに使えそうですね」
「失礼な! アリルのほうがかしこいですよ!?」
性別への言及はさておき、わちゃわちゃしながら準備を進める二人。
その賑やかな様子は、先ほどまで酒宴で盛り上がっていた観客たちの意識を再びステージへと集めていった。
●ゆびきたす☆りんかー
「いきますよー☆ アリルとエルナちゃんのあまりの尊さに、オブリビオンもたまらず消滅する事でしょう!」
「もうすでに消滅しかかってる気もしますが、追い打ちとトドメは大事ですね。これが必要な事なのは理解します」
これまでステージで繰り広げられた音楽とは異なる新たな参入者の登場に観客側の島の生物たちから期待の声を上がる。
やがて女児向けアニメのED曲っぽい調子の曲が鳴り始めた。
島の生物たちは腕を光る不思議な棒へ変化させるとリズムに合わせてゆらりゆらりと揺れていく。
♪誰かのまぶしいスマイルが
♪ボクをキラキラ照らして
♪ぽかぽかハートで今度は
♪キミをあっためたげる!
♪ほら
♪こうやって優しさがリンクすれば
♪きっとみんなハッピーだネ☆
明るい表情と元気な歌声のアリルティリアと穏やかな微笑みと優しい歌声のエルナリア。
二人のハーモニーがステージに響き渡る。
特に歌いだすまで淡々として表情の変化に乏しかったエルナリアが柔らかくにこりとほほ笑むギャップは、一部の界隈には破壊力が高いことだろう。
♪だから
♪キミたす ボクたす ユビキタス!
♪いつもいつでも つながっちゃお
♪今日も
♪ボクたす キミたす ユビキタス!
♪とびっきりの笑顔で さあ
♪ログインなう☆
互いに手をつないで最後にぴょこんと飛び跳ねた二人は、着地をすると観客席へ元気よく手を振った。
――アイドル。
それはこの島において在りそうで無かった概念。
ここまでのステージも芸術だったり寄り添う歌だったり魂の叫びだったり神への捧げものだったり楽しむものだったりと色々あったものの、はっきりと『歌い手の個性』に重点を置いたものはこれが初めて。
それ故に、島の生物たちはこの日に何度目かのカルチャーショックを受けた。
なおここまでの数々のステージ対決で『『嫉妬』のステラ』のライフポイントはもうゼロなので二人の独壇場である。
「ネガティブハートにスマイル配信♪」
アリルティリアが魔法のステッキ『エレクトロ・ルミネイト』を掲げると、バーチャル魔法によって暗くなった空に花火が咲いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御狐・稲見之守
[&&&]
[UC歌う御狐さん]
(マイクを掲げステージ上にせり上がってくる水着姿の御狐さん)
『今宵は召しませ御狐さん』
おめめがギラギラ 吐息がはぁはぁはぁって!
ちっちゃな女の子 DA☆DADA大好きなんでしょ?
ほらほら『生きてるだけでごめんなさい』って
ちゃんとごめんね言えたね(えらいね)
さあ犯罪(こい)をしましょ しましょしましょ
さわってこやこや 胸がキュンキュン
キミの病気(すき)を いっぱい教えてね
今宵は召しませ御狐さん!(Yeah!)
[催眠術][呪詛]――フフッ、おにいちゃん達を
このぺたんこボディでめろめろにしちゃうからナ!
(ウインク☆バチコーン)
●合法と違法の境目
続いて引き続き薄暗いステージと空。
たぶん今度は呪術的な奴だと思います。
その薄暗いステージを狐火がふよふよと漂いながら中央に集まるとパァと弾けてスポットライトのように一か所を明るく照らす。
その照らされた場で下からせり上がってくるのは……。
「わしじゃよ☆」
ふりるで飾った水着姿のちっこい妖狐、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)がマイクを掲げつつステージからせり上がってきた。
いつの間にこんなステージの改造をしたのかが謎だが機会と時間はたっぷりあったので不可能ではないだろう。
稲見之守は尻尾をふさふさ振りながらくるりとまわった。
水着で見せつけるそのきめ細かい肌は、実年齢に負けない永遠の10台前半お肌。
いわゆるロリババアな彼女は『対決? 知らん! 歌いたいから歌う!』とばかりに極一部にのみ深く突き刺さりそうな自作ソングをノリノリで歌いだした。
♪おめめがギラギラ
♪吐息がはぁはぁはぁって!
♪ちっちゃな女の子
♪DA☆DADA大好きなんでしょ?
♪ほらほら『生きてるだけでごめんなさい』って
♪ちゃんとごめんね言えたね(えらいね)
Aメロを歌い切った稲見之守はカメラへ誘うような視線を送りながら尻尾をフリフリと振って見せる。
歌詞も含めてだいぶ挑発的でサディスティックな方向である。
一方で黒い人型の島の生物たちは――。
この尖った楽曲を非常に困惑しながら聞いていた。
――曰く、これはこれで新しい。
――曰く、難解すぎてよくわからない。
――曰く、未知の興奮が止まらない。
一部のココロ(性癖)に深い傷を残しながら稲見之守の歌は続く。
♪さあ犯罪(こい)をしましょ
♪しましょしましょ
♪さわってこやこや 胸がキュンキュン
♪キミの病気(すき)を いっぱい教えてね
♪今宵は召しませ御狐さん!(Yeah!)
「――フフッ、おにいちゃん達をこのぺたんこボディでめろめろにしちゃうからナ!」
稲見之守が締めのウインクをバチコーン☆と加えると、空は元の青空に戻っていった。
大成功
🔵🔵🔵
刑部・理寿乃
貴方にも色々あったのでしょうし
ちやほやされたいという気持ちは分かりますが、これも世界の為
悪く思わないで下さい
ユーベルコードで竜達を呼び、ライブ開始!
爽やかで疾走感のある曲調と前向きな歌詞で黒い人達を魅了します(歌唱)
敵からの妨害も予想されます
竜達は演奏中は無防備なので、敵の攻撃動作が見えたらしっかり防ぎます(見切り 第六感 武器受け)
歌詞っぼいもの
『上を見て羨んでも 下を見て嗤っても どうしようもないから 私は前だけ見て 進むよ 君がいるから どんな暗闇も歩いていける』
●ステージはフィナーレへ
歌い手の個性に重点を置いたアイドルという楽曲――。
最後に現れた新たな流れに、黒い人型の島の生物たちは沸き立っていた。
その流れの中、このタイミングでステージに上がる刑部・理寿乃(暴竜の血脈・f05426)。
アイドル枠としての期待を向けられながら理寿乃はマイクを握りしめる。
「勝利への楽譜は今記された。同胞よ――」
理寿乃はユーベルコード『勝機を奏でし竜の楽曲』によって竜の楽団を召喚する。
二足歩行の竜たちはそれぞれ身に付ける楽器は、エレキギター、ドラム、キーボード(いずれも竜サイズ)。
――ライブの準備は整った。
がっつりアイドル活動をしているわけではないが、元より歌うのは好きな理寿乃。
彼女はいちど深呼吸をした後に、歌った。
竜の楽団が奏でるのは爽やかで疾走感のある曲。
その曲に合わせて理寿乃の高い歌唱力で歌詞が紡がれていく。
♪上を見て羨んでも 下を見て嗤っても
♪どうしようもないから
(敵からの妨害も予想されます……竜達は演奏中は無防備なので、敵の攻撃動作が見えたらしっかり……)
理寿乃は歌いながらも周囲をきっちり警戒していく。
しかし、やがて一つの違和感に気が付いた。
(……そういえば、敵であるオブリビオンはどこでしょう?)
歌いながら『『嫉妬』のステラ』を探す理寿乃。
そして彼女はやがてステージの下で酔っ払った島の生物に絡まれながら消えかけている『ステラ』を見つけた。
(ええっ、すでに虫の息です……!?)
ここまで精神ダメージを喰らいまくってフルボッコだった『ステラ』。
最後の最後で自分を支えていた嫉妬心さえも宴会に揉まれて疲弊しており、今まさにトドメ待ちである。
(貴方にも色々あったのでしょうし、ちやほやされたいという気持ちは分かりますが、これも世界の為)
相手がオブリビオンである以上、情けはかけられない……。
(――悪く思わないで下さい)
♪私は前だけ見て 進むよ
♪君がいるから
♪どんな暗闇も歩いていける
理寿乃は前向きで爽やかな曲を歌い切った。
それは自分の未来を信じる歌。
それは共に歩む人を信じる歌。
素直で清らかな歌が草原を吹き抜ける風のようにこの場に響き渡った。
その歌はこの島の生物たちの心にも清涼剤となって吹き抜ける。
「綺麗な歌だわ……あたしも、誰かが居れば……」
理寿乃の歌でトドメの浄化が入った『『嫉妬』のステラ』は、そう言い残しながら骸の海へと還っていった……。
●
この戦いにより群竜大陸の探索はまた一歩進むことだろう。
これまでの戦いで猟兵たちは群竜大陸の約半数――時蜘蛛の峡谷と古竜平原まで進み、五体の帝竜を引きずりだしている。
このまま攻略を進め、帝竜たちの準備が整う前に全てを討ち倒せばこの戦いは猟兵たちの勝利で幕を閉じるはずだ……。
この帝竜戦役に勝利してアックス&ウィザーズからオブリビオン・フォーミュラの脅威を除くため、猟兵たちは戦う。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年05月10日
宿敵
『『嫉妬』のステラ』
を撃破!
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