帝竜戦役⑦〜界渡りし災魔・帝竜オアニーヴ
●グリモアベース
「郡竜大陸に新たな帝竜の出現を予知しました。場所は蒸気魔法迷宮。帝竜の名はオアニーヴ。大魔王の仮面に操られている哀しき竜ですの」
ドラゴニアンのグリモア猟兵、ミネルバはグリモアベースで待機していた猟兵達に静かに告げた。その表情は険しい。彼女の内にある確かな怒りが感じられる。
「オアニーヴ様はかつてアルダワで人類と共に大魔王と戦ったドラゴン達の長であり、「賢竜」と称される程の叡智と優しさを持っていたドラゴンです。
なぜ帝竜として蘇ったのか、そもそもなぜアックス&ウィザーズ世界に現れたのか、分からないことだらけですが、一つ言えることは『災魔・帝竜オアニーヴ』はヴァルギリオンを守護する世界樹の結界の護り手の一体であり、世界の敵だということです」
かつての英雄だったものでも、オブリビオンと化したことで世界の敵となる。それは猟兵にとっては珍しい話ではない。たとえオアニーヴが大魔王やヴァルギリオスに利用されているだけの被害者だとしても、猟兵は彼を討たなければならない。世界を守護する者として。
「帝竜オアニーヴは自らの魔力で造り出した蒸気魔法迷宮の最深部で挑戦者を待ち構えています。帝竜の先制攻撃を防がなければ我々がダメージを与えることはできないでしょう」
竜神山脈の長と大魔王の仮面の融合体だけあり、帝竜オアニーヴは強大な魔力を持つ強敵である。攻略にはこちらの攻撃だけではなく、帝竜の先制攻撃に対する対抗策も必要となるだろう。
「生前のオアニーヴ様は大魔王に利用され、世界に災厄を撒き散らす事を防ぐ為に自ら命を断たれました。その誇りを守るためにも、どうかあの災魔の討伐をお願いします。皆様のご武運をお祈りいたしますの」
●アックス&ウィザーズ:蒸気魔法迷宮最深部
「テキキタ!テキキタ!」
侵入者の気配を探知し、オアニーヴの仮面がぼんやりと光った。ここは蒸気魔法迷宮。数多の魔導蒸気機械の罠と、魂無き機械兵士達が跋扈する難攻不落の迷宮である。
ダンジョンメーカーたる竜の肉体は完全に仮面に掌握され、賢竜と呼ばれた高潔なる竜の魂は完全に消滅している。この体に残る魂は、世界を滅ぼすべく行動する邪悪なる《災魔》のみだ。
「...…我が名は帝竜オアニーヴ。かつて大魔王ウームー・ダブルートゥと呼ばれしもの。
さあ挑戦者共よ、汝らの全てを喰らい、我が糧としよう」
仮面の奥で、竜の瞳が殺意にギラついた。
大熊猫
こんにちは。大熊猫です。数あるシナリオの中から本シナリオをご覧頂きありがとうございます。今回は帝竜オアニーヴとの戦いの依頼となります。
●先制攻撃について
帝竜オアニーヴは猟兵に対し先制攻撃を行います。POW、SPDのユーベルコードの場合は猟兵が蒸気魔法迷宮を抜けて帝竜と相対した瞬間に帝竜側が攻撃し、wizの場合はユーベルコードの効果により帝竜が迷宮の構造を組み替えるので、それに対して対抗する必要があります。
※判定上、POW、SPDのプレイングの場合は蒸気魔法迷宮への対抗策は不要です。
●プレイングボーナス
敵のユーベルコードへの対処法を編みだす。
●文字数省略用記号
アドリブ歓迎→☆、連携歓迎→★、何でも歓迎→◎(☆★と同じ)、ソロ描写希望→▲。
●合わせプレイングについて
合わせプレイングでのグループ参加の場合は、迷子防止の為プレイング冒頭にグループ名をご記載下さい。3名以上の場合はどなたか合計人数をご記載いただけると助かります。
●プレイング受付について
オープニング公開時~5/10(日)8時30分まで。
※判定が「成功」以上の方を優先してキャパの許す範囲内で採用したいと思います。お返しスピードはゆっくりめです。
第1章 ボス戦
『帝竜オアニーヴ』
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POW : 竜操の仮面
【頭部を覆う仮面が邪悪な光を放つ状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 賢竜オアニーヴのはばたき
【戦意を弱らせる聖なる光】【光輝く爪による引き裂き攻撃】【六翼の羽ばたきが巻き起こす浄化の風】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : ダンジョンメーカー
戦場全体に、【魔導蒸気機械と金属のパイプ群】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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ソラスティベル・グラスラン
◎▲
この世界でも出会うことになるとは思いませんでした
その方を解放しなさい、大魔王!
【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、
理性を失って単調になった攻撃を【怪力】で受け【見切り】受け流し!
今までの冒険の中で編み出した戦法です
戦いつつ前進!勇者に後退はあり得ませんから!
守りながらも一歩一歩前進
そうしなければわたしの刃は届かない
此処に誓うは不退転の意思!
これがわたしの【勇者理論】!(防御重視)
誰も傷つけたくないから呪いを受けた時、自ら命を絶った
ならばわたしも努力します、貴方が誰も奪わぬように!
ただ只管に前へ、前へ!
此処がわたしの間合い、そう思った瞬間【ダッシュ】し渾身の一撃を叩き込みます!
●魔王殺しの勇者
最初に蒸気魔法迷宮を突破し、帝竜の元に辿りついたのはソラスティベル・グラスランだった。
「この世界でも出会うことになるとは思いませんでした。
その方を解放しなさい、大魔王!」
邪悪な魔力を放つ仮面を付けた竜に対し、斧を向けてソラスティベルは告げる。
ソラスティベルはアルダワ魔王戦争で全ての形態の大魔王と幾度も戦い、葬ってきた猟兵だ。あの戦いで大魔王は滅び去ったとばかり思っていたが、まさか異世界であるこのアックス&ウィザーズで再び大魔王ウームー・ダブルートゥと相見まえるとは思わなかった。
「ムリダヨ!ムリダヨ!ナゼナラバ……。
賢竜の魂は既にこの仮面が喰らい尽くしたからだ。
貴様も喰らい尽くしてやろう、挑戦者よ!」
大魔王の第一形態・最終形態と同じ口調で話す帝竜オアニーヴは、ソラスティベルを嘲笑いながら頭部を覆っている仮面をぼんやりと紫色の光で包んだ。『竜操の仮面』。大魔王の呪いが込められた仮面はオアニーヴの力を限界を超えて引き出し、ソラスティベルへと襲い掛かった!
「ギャオオオオン!」
嘶きと共に六枚の翼を広げ、ソラスティベルへと突撃するドラゴン。ソラスティベルは漆黒の鋼竜の力を秘めた黒翼の盾を構え、その突撃を受け止めた。盾の曲面を利用し、トラックとの正面衝突にも等しいほどの衝撃を拡散して受け流す!
「ギャオオオオ!ギオオオオオ!」
「くっ……!重い!」
受け流したにも関わらず、盾を握るソラスティベルの腕が痺れる。だが、退くわけにはいかない。雄叫びを上げながら暴れ回る帝竜の爪や牙を必死に受け流しながら、ソラスティベルはじりじりと前進していく。これは強大な敵と戦う為にソラスティベルがこれまでの冒険の中で編み出した戦法だ。並の神経ならばドラゴンの迫力と攻撃の激しさに後退してしまいそうなものだが、ソラスティベルは決して後退しなかった。
――勇者に後退はあり得ませんから!
ソラスティベルの後ろには常に守るべき弱者の存在がある。『勇者』を名乗る以上、敵に背中は見せられない!
「此処に誓うは不退転の意思!これがわたしの【勇者理論】(ブレイブルール)!」
ただ只管に前へ、前へ!帝竜の攻撃は凄まじい速度と破壊力だが、理性を失っている分攻撃パターンは単調だ。ソラスティベルは少しずつ敵の攻撃の軌道を見切り、段々と大きく踏み込めるようになっていった。そして、ソラスティベルはついに帝竜の爪の一撃を完全に受け流し、空振りで態勢を崩した帝竜の懐に潜り込んだ!
此処がわたしの間合い!
「誰も傷つけたくないから呪いを受けた時、自ら命を絶ったならばわたしも努力します、貴方が誰も奪わぬように!」
体にしみ込んだ、己の武器の射程圏内にまで踏み込めたことを直感したソラスティベルは、迷宮の床が砕けるほど強く踏み込みながら大斧を振り上げ、幾度となく大魔王を討ち果たした最強の一撃を叩き込んだ!
「これぞ我が勇気の証明、至る戦火の最前線!今こそ応えて、蒼雷の竜よ!!」
蒼き雷を纏った一撃が炸裂し、帝竜の白い体を切り裂いた。
成功
🔵🔵🔴
天御鏡・百々
◎
大魔王め、何たる悪辣な呪いをかけたものだ
賢竜よ、すぐに楽にしてやろうぞ
蒸気迷宮に囚われたところで
『合わせ鏡の人形部隊』を使用
鏡像兵たちを鏡の中より呼び出そう
そして鏡像兵たちの数をたよりに迷宮を探索させて(情報収集21)
迅速に脱出だな
鏡像兵の防御面は弱いが、これだけの数がいればなんとかなるはずだ
迷宮より脱出したならば
本体の神鏡より放つ光で目潰し10を仕掛け
できた隙に残る鏡像兵で攻撃だ
我も後方から
天之浄魔弓(武器:弓)から放つ光の矢にて
あの邪悪な仮面を目掛けて射撃するぞ
(破魔79、誘導弾20、スナイパー10)
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
ニコラ・クローディア
◎
肉体は魂の容器とはよく言ったもの…けれど、器の格と中身の格がここまで違うと滑稽ね、ウームー・ダブルートゥ!
竜の威を借りてご満悦でしょうけれど…竜の誇りを穢した貴方はニコラを怒らせたわ
賢竜オアニーヴの雪辱を果たすため、ニコラは何度だって貴方を討つ!
迷宮を組み替えるとは、余程ニコラたちを近寄らせたくないのね?
けれど…
バリスティカ、アクティブソナー!
魔力波を放つソナーガンとして運用し迷宮の最新情報を収集
ティヴェロン、誘導刻印弾装填!
幾ら迷宮を組み替えても無駄よ
ソナーの情報を元に最適ルートを征く弾丸は決して貴方を逃さない
刻印弾が1発でも届けば、刻まれたウィザードミサイルが雨のように降り注ぐわよ!
●竜の魔術師と神鏡の巫女
「肉体は魂の容器とはよく言ったもの……。けれど、器の格と中身の格がここまで違うと滑稽ね、ウームー・ダブルートゥ!」
「大魔王め、何たる悪辣な呪いをかけたものだ。
賢竜よ、すぐに楽にしてやろうぞ」
大魔王の迷宮を抜け、戦場に辿りついた天御鏡・百々とニコラ・クローディアだった。大魔王の悪辣なやり方に二人とも怒り心頭だ。
「マタテキキタ!マタテキキタ!
……ドラゴンの魔術師と神鏡の巫女か。手傷を負った状態で相手にするのは面倒だな」
オアニーヴがそう呟くと、突然辺りに張り巡らされていたパイプが凄まじい音と共に変形し、猟兵達と帝竜を分断した。オアニーヴが迷宮の構造を組み替えたのだ。
「再び迷宮を彷徨うがよい。もう一度我が元へと辿り着いたのならその時は相手をしてやろう」
●リスタート
「どうやら振り出しに戻されたようだな。しかも迷宮の構造がさっきまでと変わっておる」
「迷宮を組み替えるとは、余程ニコラたちを近寄らせたくないのね?」
構造変化した蒸気魔法迷宮の端へと追いやられた百々と二コラは溜息をついた。帝竜は自分達と直接交戦するのを避けたようだ。回復する時間が欲しかったのか、それとも二人を強敵と見たのかは分からないが。
ヒュイイイイイイン!ガシャンガシャンガシャン!
二人が気を緩める暇もなく、甲高いタービンの音が迷宮に響いた。二人の気配を察知し、蒸気機関を内蔵した機械兵士達が駆け付けてきたのだ。その数、ざっと三十。恐らく一度倒したはずの兵士も迷宮が変化した際に復活しているのだろう。
ガルルルルルルル!
機械兵士達の蒸気ガトリングガンが一斉に唸りを上げ、二人に襲いかかる。百々は神通力の障壁を展開して身を守り、二コラは身に付けていた外套を魔術で強化し、盾にして銃弾を防いだ。
「自分の手は汚さず、手下をけしかける……いかにも大魔王らしいやり方ね!」
「来るぞ、二コラ殿!さっさと突破してあの仮面を叩き割ってやろうぞ!」
百々は懐から小さな人形を取り出すと、掌に乗せ、左右に召喚した二つの鏡にその姿を映し出した。いわゆる「合わせ鏡」の儀式である。
「我が眷属、合わせ鏡に果てなく映りし鏡像兵よ、境界を越え現世へと至れ」
無限に続く鏡の回廊の内より、人形兵達の映し身が溢れ出る。
「人形兵は防御面は弱いが、相手が傀儡ならばこれで十分だ!」
百々の人形兵達は宙を舞い、機械兵士達に突撃していった。機械兵士達は人形達を迎撃せんとガトリング砲を発砲するが、的が小さすぎてろくに当たらない。逆に機械兵士達は人形の一撃を受け、次々と爆砕していく。
「バリスティカ、アクティブソナー!」
二コラは魔力装弾式拳銃杖【バリスティカ】を取り出し、アクティブソナーモードを起動した。バリスティカから放たれた魔力波が迷宮内のパイプを反響し、帝竜が組み替えた新たな迷宮の構造を解き明かす。
「ティヴェロン、誘導刻印弾装填!大魔王はあっちよ!」
二コラは自動詠唱式魔術銃杖【ティヴェロン】に迷宮のマップデータを入力すると、誘導刻印を刻んだ弾丸を乱射した。
「幾ら迷宮を組み替えても無駄よ。
ソナーの情報を元に最適ルートを征く弾丸は決して貴方を逃さない」
●仮面への一撃
「カイフクカンリョウ!カイフクカンリョウ!」
最初の猟兵に付けられた傷は既に癒えた。迷宮を組み替えて以降、猟兵達はここまで辿り着いてはいない。定期的に迷宮を組み替えておけば、恐らく挑戦者の姿を見ることはもはやないだろう。何しろ、この迷宮は竜神山脈の長、オアニーヴの叡智の結晶たる魔導迷宮なのだから――。
キンキンキンキンキンキンキンキン!
ウオオオオオオオオオオオオオオオ!
「……何の音だ?」
奥から、微かに金属の反響音が聞こえてくる。それに、地鳴りのような低い音が聞こえてくるような……。
「!?」
突然、帝竜の側にあったパイプから大量の銃弾と小さな人形の兵士達が溢れ出てきた。不意を打たれた帝竜は防御が間に合わず、銃弾と人形兵達の集中砲火を一身に受ける。さらに、通路の奥から先ほど追い払った二コラと百々が飛び出してきた。
「なんだと……っ!?まさかたった数分でこの迷宮を突破したとでもいうのか!?」
帝竜はすぐさま尻尾を一閃し、百々の人形兵達を蹴散らした。しかし次の瞬間、二コラの刻印弾に刻まれた「ウィザード・ミサイル」の術式が起動し、帝竜の頭上から千を超える数の火矢が降り注いだ!
「ぐうおおおおおおおおっ!?」
オアニーヴの体が炎に包まれる。
「この世界から立ち去るがいい!大魔王!」
「竜の威を借りてご満悦でしょうけれど…竜の誇りを穢した貴方はニコラを怒らせたわ。賢竜オアニーヴの雪辱を果たすため、ニコラは何度だって貴方を討つ!」
百々は本体たる神鏡から眩しい光を放ち、オアニーヴの視界を遮りつつ、【天之浄魔弓】からオアニーヴの仮面に向けて光の矢を放った!
二コラも大型拳銃「ドラゴハウザー.50」を構え、帝竜に向けて特大の魔力弾を叩き込む!
「ギャオオオ――ン!」
直撃を受けた仮面に一筋の罅が入り、帝竜は絶叫と共に大きく身をよじった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
黒川・闇慈
「まさかアルダワの大魔王の残滓をこんなところで見ることになるとは……興味深いですねえ。クックック」
【行動】
wizで対抗です。
オアニーヴは迷宮を展開し、それを組み換えるようです。対抗策としては第六感の技能で正しい方向を見つけ、迅速に抜けてしまうことでしょうか。
呪詛、高速詠唱の技能で呪力高励起体に高速変身し、飛行能力で迷宮内を高速移動しましょう。
迷宮を抜けたならば全力魔法の技能で呪力砲撃を発射し、オアニーヴを攻撃します。
「その仮面も調べてみたいのですが……今はそれどころではありませんか。残念ですねえ。クックック」
【アドリブ歓迎】
●闇の魔術師
「まさかアルダワの大魔王の残滓をこんなところで見ることになるとは……興味深いですねえ。クックック」
蒸気魔法迷宮に転移した黒川・闇慈は辺りに漂う懐かしい波長の魔力を感じながら呟いた。この迷宮は聖なる竜種の魔力によって形づくられたもののようだが、所々混ざっている邪悪な魔力は紛れもなく数か月前に戦ったアルダワの大魔王のものだ。この蒸気魔法迷宮の仕組みに、大魔王の呪いがかかっているという仮面。そして災魔は如何なる手段でこの世界へと渡ってきたのか。魔術の探求者として興味は尽きない。
「オアニーヴがいるのは……あっちのようですね」
直感でオアニーヴの居場所を察知した闇慈は早急に迷宮を突破すべく、ユーベルコードを発動する。ぐずぐずしていてはオアニーヴが迷宮の構造を組み替えてしまうかもしれない。
「我が内より湧き出るは漆黒の凶呪。漆黒を統べるは我が魂。ここに呪をもって力となさん。『カース・ブースト』」
高速詠唱と共に、黒く冷たい呪いが闇慈の体を満たしていく。一瞬にして呪力高励起体へと変身した闇慈は呪いを撒き散らしながら飛翔した。
――この蒸気魔法迷宮には『ダンジョンメーカー』の異名を持つ賢竜オアニーヴの知識の粋を集めた、様々な罠や機械兵が至る所に配置されている。侵入者の距離感を狂わせる呪力の廊下や、侵入者を自動迎撃する蒸気機関砲台、魔導機械兵士などが例だ。しかし、呪力高励起体となった闇慈が纏う強力な闇の呪いは迷宮の呪いを弾き、迫り来る砲弾を飴細工のように溶かし、襲い掛かってきた魔導兵士達を狂わせた。
蒸気魔法迷宮を容易く突破し、帝竜の姿を捉えた闇慈は背中に背負っていた十字架型の銃火器を素早く構えると、身に纏った全ての呪力を銃身に注ぎ込み、呪力砲撃を敢行した。
オオオオオオオオオオオ……!
耳障りな低い音と共に空間がぐにゃりと歪み、忌まわしき呪いがオアニーヴを直撃した。帝竜の体が内側から軋み、全身から血が噴き出していく。
「イタイ!イタイ!
……ぐうっ!これは怨念呪詛か……!この狂おしき憎悪、我も喰らい切れぬ!」
大魔王の力を宿すだけあり、帝竜を支配する仮面は星の数ほど人や竜の恨みを買っている。呪いは効果抜群だった。
「ようやく会えましたねえ、オアニーヴ。初めまして。いや、お久しぶりというべきでしょうか?罪深いあなたには因果応報の呪いは効果覿面でしょう?クックック」
闇慈は帝竜の動きを縛る怨念呪詛にさらに力を注ぎ込み、ギチギチと帝竜を締めつけた。
「その仮面も調べてみたいのですが……今はそれどころではありませんか。残念ですねえ。クックック」
そろそろ潮時だ。ありったけの呪力を使い、散々オアニーヴを痛めつけた闇慈は再び迷宮の闇に消えた。
大成功
🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
◎
洗脳さえされていなければ別の道があったのかもしれませんが……現実は残酷です。
私にできるのは大魔王の仮面諸共葬る事だけです。
聖なる光、浄化の風は漆黒の【オーラ防御】を展開して耐え、引き裂き攻撃は【武器受け】で防ぎます。
清き聖光の力に穢れた暗黒の力がどこまで対抗できるか……ですが負けられません。
たとえこの身がどんなに傷ついても世界を……人々を必ず護る。その【覚悟】を戦意に変えてなんとか耐えましょう。
反撃の機会が訪れたら展開していたオーラを暗黒剣に集約。UC【暗黒の煌刃】を発動。【重量攻撃】で大魔王の仮面ごと両断します!
●暗黒の騎士と堕ちし聖竜
「洗脳さえされていなければ別の道があったのかもしれませんが……現実は残酷です。私にできるのは大魔王の仮面諸共葬る事だけです」
迷宮の奥に身を潜め、傷を癒していたオアニーヴの前に、また新たな猟兵が姿を現した。暗黒の力を操る黒き騎士、セシリア・サヴェージである。戦うことに迷いはない。たとえ相手が聖者であっても、世界に仇為すならば斬り捨てねばならない。暗黒の騎士である彼女にはその覚悟があった。
「その力……闇の力か。汝の力、我が喰らおう」
帝竜は六枚の翼を大きく広げると、聖なる光と共に浄化の風をセシリアに向けて放った。この技の名は『賢竜オアニーヴのはばたき』。かつて聖なる竜であったオアニーヴの肉体に宿りし力である。
「くっ……!」
セシリアは身に纏った漆黒のオーラを全開にし、オアニーヴの聖なる力に耐える。
(清き聖光の力に穢れた暗黒の力がどこまで対抗できるか……ですが負けられません)
「ムダダヨ!ムダダヨ!」
聖竜オアニーヴ、否、オアニーヴの肉体を支配する大魔王の仮面は必死に耐えるセシリアを嘲笑いながら飛び掛かり、光輝く爪を幾度も振り下ろした!
キィン!キィン!ザシュッ!
「がはっ……!」
セシリアは帝竜の爪を大剣で受け止めるが、聖なる力で弱っていたセシリアの力では全ての斬撃は防ぎ切れず、鎧の一部を砕かれた。鮮血が零れ、セシリアは苦悶の声を上げる。
「ぐうっ……!」
(たとえこの身がどんなに傷ついても世界を……人々は必ず護る)
自分が呪われた暗黒騎士で、相手が聖なる竜であっても。今この場の善悪は逆だ。世界を護る為には、たとえ相手が何者でも負けるわけにはいかない。
セシリアは覚悟を戦意に変え、血まみれになりながらもオアニーヴの猛攻に必死に耐えた。そして、ついに反撃のチャンスがやってきた。さすがに疲れたのか、爪を振るい続けていたオアニーヴが攻撃を止め、大きく後ろに下がったのだ。
「今です!」
セシリアは防御に使っていたオーラを全て剣に収束すると、帝竜を追って前に飛んだ。暗黒剣から闇の力が膨れ上がり、帝竜を仮面ごと両断せんと巨大な闇の刃を形成する!
「マダソンナチカラガ……!」
「煌めく暗黒の刃で仇なす者を打ち払う!『暗黒の煌刃』(ダークセイバー)ァアアアアア!」
特大の両手剣とセシリアの全体重を乗せた闇の斬撃が帝竜の仮面に食い込む。一瞬の静寂の後、ぱきん、と音と立てて仮面の一部が欠けた。
成功
🔵🔵🔴
フェルト・フィルファーデン
◎
大魔王の残滓と、それに操られた哀れな竜……だとしても、わたしはこの世界のため、アナタを打ち倒すわ。その命、終わらせてあげる。
迷路で惑わすというのなら、人海戦術で突破するのみよ。
UCで74の電子の蝶を生み出し迷路に放って視覚を共有。
分岐を一つずつ潰していって正解のルートを導き出すわ。
構造を書き換えても同じこと。出口がある以上蝶達が導いてくれるわ。
同時に、敵に幻を見せ罠を仕掛けましょう。
迷路に迷うわたしの幻を見せ、同時にわたしは幻の応用で景色に紛れ姿を消すわ。そう、敵にわたしは出口にたどり着く事はないと誤認させるの。
その油断を突いて奇襲を仕掛ける。
わたしの騎士人形よ、その一閃で竜を斬り裂いて!
●電子の蝶
「大魔王の残滓と、それに操られた哀れな竜……。だとしても、わたしはこの世界のため、アナタを打ち倒すわ。その命、終わらせてあげる」
迷宮を抜け、帝竜オアニーヴの元に辿りついたフェアリーの猟兵、フェルト・フィルファーデンは哀しみに満ちた目でオアニーヴを見つめながらそうこぼした。
「この身を憐れむか、小さき者よ。
ならば、身の程と汝の無力さを知るがいい……!」
帝竜の仮面が妖しく輝き、またしても迷宮の構造が組み替わっていく。変化が終わった時、フェルトは再び迷宮の入口へと追いやられていた。
「迷路で惑わすというのなら、人海戦術で突破するのみよ。
さあ行きなさい、創られし幻の蝶よ。……頼りにしてるわね?」
フェルトは決然とした表情で呟くと、ワイヤーフレームで構成された蝶を召喚した。その数、七十四体。仮初めの命を持った電子の蝶はひらひらと舞い飛び、迷宮中に広がっていった。
●バタフライ・アサシン
「やはり、無理であったか」
帝竜オアニーヴは遠見の魔術を行使し、迷宮の様子を探っていた。此度の挑戦者たちはみな精鋭揃いで未だ脱落者はいなかったが、どうやら先ほどのフェアリーが最初の脱落者となりそうだ。
「チイサイ!チイサイ!」
予想通り、あのフェアリーは蒸気魔法迷宮に仕掛けられた罠に引っかかり、魔力を封じる牢獄に封じ込められて立ち往生していた。あのまま蒸気に晒され続ければ放っておいても蒸し焼きになるのは時間の問題だろう。
そもそも、あのような小さな体躯の者が賢竜オアニーヴの蒸気魔法迷宮を突破できるはずがないのだ。一度ここまで到達できただけでも十分賞賛に――。
ぞくり。
帝竜オアニーヴが背後に脅威ありと直感し、振り向いた時にはもう遅かった。オアニーヴが見たものは、いつの間にか背後に出現していた甲冑の騎士が大剣を振り上げている姿だった。先ほどまで見ていたものは電子の蝶が見せた幻。本物のフェルトは「人間では決して通れないサイズのパイプ」を通り、電子の蝶達が探り当てた常識外れのショートカットルートでここに戻ってきたのだ。
「わたしの騎士人形よ、その一閃で竜を斬り裂いて!」
騎士の名は【fairy knights doll-02 Great sword】。人形遣いにして電脳魔術士たるフェルトが召喚した絡繰り人形だ。実体化する直前まで電脳空間に存在する騎士人形には、攻撃するその瞬間まで感知することは叶わない――!
ザンッ!
帝竜の翼の一枚が宙を舞う。強大なドラゴンの肉体を得て慢心した大魔王の仮面は、フェルトを侮ったツケをその身で支払うことになったのである。
成功
🔵🔵🔴
ルネ・プロスト
風と爪はビショップ介しオーラ防御で結界形成、遮断
光はクイーン介し高速詠唱&全力魔法で結界内に黒煙生成し遮光
最悪『安寧』介し魔術行使、暴風ぶつけて風だけでも相殺する
死霊達は勿論、核に死者の魂使ってるルネも破魔・浄化系の直撃貰うのはまずい
先制攻撃凌いだらUC発動、翠玉を代価に風精の力借りて風魔術強化、風刃乱れ撃ち
不本意だけど帝竜相手に死霊ダメ、人形も手動のみとなると少しキツいしね
余裕あればクイーン介し多重詠唱&範囲攻撃で帝竜周辺を爆撃
同じアルダワの出だから、というのもあるけれど
それ以上に意味ある死、その決意を侮辱する行いを見逃すわけにはいかない
無理押し通してでも一撃かましてやらないと気が済まない
●弔いの風
ガシャンガシャン!白く輝く十六騎の騎士達が陣形を組み、帝竜オアニーヴの前に立ち塞がる。人形騎士団【駒盤遊戯】。チェスの駒の趣きが色濃く映し出されたソレらの姿は、芸術品と見紛うほどに美しかった。
「テキイッパイキタ!テキイッパイキタ!
……この魔力……汝はミレナリィドールか」
ルークの肩に乗ったまま、駒盤遊戯の殿に陣取る騎士達の長の名はルネ・プロスト。アルダワ文明が生み出した神秘の結晶たるミレナリィ・ドールの少女の姿は、駒達に比してなお美しかった。
「消えてもらうよ、帝竜」
「戯言を。消えるのはそちらだ、人形!」
帝竜は翼を広げ、聖なる光と浄化の風を放った。すぐさまビショップが結界を展開し、光と風を遮断する。
ピシピシピシ……!
しかし、結界は一秒ごとに軋み、ひび割れていく。ルネはクイーンに命じ、結界内に黒煙を立ち込めさせ、光を遮断した。
バリィン!
次の瞬間、距離を詰めてきた帝竜が光り輝く爪を振るい、結界に穴を開けた。もう一撃。帝竜はさらに爪を振りかぶった。
(分かってはいたけど、あれはまずい)
大魔王に呪われ、正気を失っているとはいえオアニーヴは聖なる竜。死霊を操るルネとの相性はっきり言って最悪だ。その聖なる力の直撃を受ければ死霊はおろか、核に死者の魂を使用したミレナリィドールであるルネの命すらも危うい。
ルネは蒼白き月の鍵を掲げると、暴風の魔術を行使した。すると結界に空いた穴から猛烈な勢いで風が吹き出し、浄化の風と帝竜を押し返すことに成功した。ギリギリだったが、帝竜の初撃はなんとか凌いだ。ここからはルネのターンだ。
ルネはクイーンの爆撃で帝竜の視界を遮りながら、大粒のエメラルドを取り出した。
「“地の宝、煌きの石を介して希う。世を巡る万象、その一端。精霊の力を我が下に”」
詠唱が完了すると共に、ルネが手にした翠玉がぱきん、と砕け、風精が姿を現した。
「精霊召喚、だと!?いつの間に!」
「――正真正銘奥の手だよ。これを使わせた報いを受けろ!」
『魔宝消費・精霊契約』(ジュエルサクリファイス・コントラクトエレメント)。正当な精霊術士ではないルネが精霊術を行使するには代償として契約の宝石が必要だ。今回消費した翠玉も、本来は使い捨てるようなものではない。だが、それでもルネはこの帝竜に一矢報いたかった。それは今は亡き賢竜への弔いの為だ。
「同じアルダワの出だから、というのもあるけれど、それ以上に意味ある死、その決意を侮辱する行いを見逃すわけにはいかない。無理押し通してでも一撃かましてやらないと気が済まない」
「ウオオオオオオッ!?」
ルネが風精の力を借りて放った風の刃の群れは帝竜の全身を切り刻んだ。
成功
🔵🔵🔴
別府・トモエ
◎
「要するに、無理矢理ダブルス組むのを強要ってか許せん!」
来るのが分かってればどんなに早くて重い弾だってやりようはある
突撃動作を【視力】で【見切って】【ダッシュ】でボジショニング
体勢を整えての【レシーブ武器受け】で防御
「ぬぅ……強い!」
恐ろしく速いしデカイ!けども!
「負けらんねえな、負けらんねえよ」
だってウームー・ダブルートゥは凄かった
オアニーヴさんは今も苦しんでんだ
互いが互いに損ない合うような急造ダブルスは終わらせてやる!
「星よ」
究極のスイングで迎え打つ
【カウンター】で振ったラケットが相手をテニスボール化す
「吹き飛べぇ!!」
【ショット誘導弾】迷宮ごと壊すつもりの渾身の一撃
「……まだまだだね」
●ライバルと認めるからこそ
「要するに、無理矢理ダブルス組むのを強要ってか許せん!」
別府・トモエは猟兵テニスの第一人者である。帝竜オアニーヴの事情を聞いたトモエは大魔王の仮面と賢竜オアニーヴの強制ダブルスチームを解体するべく、この蒸気迷宮にやってきた。アルダワの大魔王とは知らぬ仲ではない。できることならば再び大魔王と楽しくテニスをしたかった。けど、このダブルスは許せない。『大魔王ウームー・ダブルートゥ』を強敵(ライバル)と認めるからこそ、トモエは『帝竜オアニーヴ』を認めるわけにはいかない!
「私と勝負しろっ!大魔王の仮面!」
魔導機械の罠と機械兵士達が張り巡らされた迷宮をラケット一本とテニスボールだけで突破し、帝竜オアニーヴの前に現れたトモエは朗々たる声で勝負を挑んだ!
「……滅びよ……」
だが、帝竜は冷たくトモエに告げると、ひび割れた仮面を不気味に輝かせた。竜操の仮面の力で肉体の性能を限界まで引き出したオアニーヴは、常人では視認できぬほどの速度で飛翔してトモエに突撃した!
「見える!」
トモエはテニスで鍛え抜かれた動体視力で帝竜の突撃の軌道を見切ると、ポジショニングを整え、レシーブの態勢で帝竜の突撃を受け止めた!
ドガァッ!
しかし、巨体と翼による加速が乗った帝竜の渾身の一撃はとてつもなく重く、トモエはラケットを構えた姿勢のまま宙を舞い、数十メートル後ろに吹き飛ばされた。もしこれがテニスの試合ならばコートの端どころか観客席の最上段まで吹っ飛ばされていた。それほどの一撃だ。
「ぬぅ……強い!」
「ギオオオオオオオ!」
なんとか受け身を取り、迷宮の壁に叩きつけられるのを回避したトモエに、オアニーヴが追撃で放った竜の波動が迫る。トモエは波動をラケットでなんとか捌きながら、帝竜の元へと駆けた。だが、帝竜は爪と尻尾、牙のコンビネーションを凄まじい速度で繰り出し、トモエに反撃の隙を与えない。帝竜は猟兵達との激闘で既に満身創痍であるにもかかわらず、その攻撃はすさまじく苛烈だった。トモエの肌が切り裂かれ、鮮血がぼたぼたと迷宮の床に落ちる。
――恐ろしく速いしデカイ!けども!
「負けらんねえな、負けらんねえよ」
だってウームー・ダブルートゥは凄かった。
オアニーヴさんは今も苦しんでんだ。
互いが互いに損ない合うような急造ダブルスは終わらせてやる!
トモエは大きくバックステップし、帝竜と距離を取った。
ギュオンッ!
即座に帝竜はトモエを追い、爪を振り上げて襲い掛かってきた。その時、トモエの眼に強い意志の光が灯る。
「星よ」
トモエは火花が散るほどの速度で迷宮の床をスライディングして爪を躱し、巨体の下に潜りこむと、オアニーヴに向けて渾身の力でラケットを振り抜いた!
「吹き飛べぇ!!」
「コレハマズイ!コレハマズイ!
……うおおおおおおおおッ!?」
『星河一天の極み』。あらゆる概念、事象を捉えるトモエの究極のスイング。その一撃は帝竜オアニーヴを超巨大テニスボールと化し、天空に向かって凄まじい速度で打ち上げた!
「この我が喰らい尽くせぬほどの力が
……!!」
トモエの渾身の一撃を受けたオアニーヴは蒸気魔法迷宮のパイプをバキバキと何本もへし折りながら迷宮の天井を何層もぶち抜いて飛んでいき、やがて見えなくなった。トモエは大きく息を吐きながら呟く。
「……まだまだだね」
成功
🔵🔵🔴
●手負いの竜
解呪の魔法を使い、テニスボール状態から復活した帝竜は深く息を吐きながら呼吸を整えた。猟兵達の度重なる攻撃により、仮面には無数の傷が刻まれ、翼の二枚を失い、魔力も残り少なくなってきている。決着の時は近いだろう。
「……だが、負けぬ……。我は帝竜オアニーヴ。
全てを喰らうもの……!」
傷を癒した帝竜は、再び挑戦者を待つのだった。
メンカル・プルモーサ
◎
んー…つまりあの仮面は…賢竜を利用している、と…
…ふむ…さて、あのクソ仮面をどうやって割ったものか…
(表情は変わらないが静かに怒気がみなぎる)
…ともあれ、まずはこの迷路を抜けるのが先か…まともに抜けるよりは…
…【尽きる事なき暴食の大火】を使用…硬度があろうが…白い炎の燃料にして燃やして一直線で抜けるとするよ…
…そしてその炎を凝縮して弾丸に込めて…術式銃【アヌエヌエ】に装填…
名乗ってたり喋ってる間にクソ仮面を狙い撃って着弾地点から吹き出す暴食の大火に仮面を喰わせるよ…
…ただ利用してるだけのお前がその名前を名乗るな…炎に喰われて骸の海に帰るといい…
●魔女の怒り
「んー…つまりあの仮面は…賢竜を利用している、と……。
ふむ……さて、あのクソ仮面をどうやって割ったものか…」
転移が完了し、蒸気魔法迷宮に降り立ったメンカルは思案した。その眠たげな表情は普段と変わらないが、その心の内では怒りの炎が静かに燃え上がっていた。
――かつてアルダワの人々と共に戦い、大魔王を封印した後、呪いに敗れるよりも自ら命を断つことを選んだという賢竜オアニーヴ。その高潔な最期を汚し、あまつさえその叡智を大魔王が利用しているというのなら、許し難い暴挙だ。
「…ともあれ、まずはこの迷路を抜けるのが先か…まともに抜けるよりは……」
このアルダワの地下迷宮に酷似した蒸気魔法迷宮には恐らく罠や侵入者よけのゴーレムが山ほど仕掛けてあるに違いない。まともに抜けるならば、メンカルとて骨が折れるだろう。だが、この迷宮が魔法によって作り出されたものだというのならもっと簡単な対処方法がある。メンカルは杖を構えると、呪文の詠唱を始めた。
●白き焔の魔女
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔。『尽きる事なき暴食の大火』(グラトニー・フレイム)」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「ナンダ!?ナンダ!?」
突然、白い炎がパイプから噴き出し、迷宮の壁がごっそりと焼失した。驚いた帝竜が炎が発生した方を振り向くと、灰色の髪の少女が遥か遠くに立っていた。
――まさか、入口からこの最上層までの障害物全てを灼き尽くしたというのか?
どこからそんな魔力を持ってきたというのだ。それほどの業火を生み出すには、このオアニーヴをも超えるほどのとてつもない魔力が必要なはずだ。
「汝は一体――」
ダキューン!
帝竜が何か言い終わるより早く、術式銃【アヌエヌエ】を構えたメンカルは大魔王までの障害物を燃やした術式『尽きる事なき暴食の大火』を弾丸に込め、大魔王の仮面に向けてぶっぱなした。
「ぐおお!」
着弾した大魔王の仮面に白い焔が灯る。「如何なる存在も燃料にする白色の炎」は大魔王の仮面を蝕み、チリチリと仮面を焦がし始めた。
「モエル!モエル!」
メンカルは別段、ドラゴンの長や大魔王に匹敵するほどの人類を超越した魔力の持ち主というわけではない。魔力は豊富ではあるが、常識の範囲に収まる程度(自己申告)である。にも拘わらず、迷宮を貫通するほどの大火を生み出せたのはなぜか。それは燃やしたものそのものを燃料とする術式を組んでいるからである。この方法ならばメンカル自身の魔力消費は規模の割に小さく済む。本来の賢竜ならば、その叡智でこのぐらいのトリックは見抜けただろうに。
「この、帝竜オアニーヴを舐めるな……!」
ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!
メンカルは大魔王の口上を意に介さず、ひたすら魔弾を撃ち込んでいく。
「…ただ利用してるだけのお前がその名前を名乗るな…炎に喰われて骸の海に帰るといい…」
「グオオオオオオオオ!」
魔女の逆鱗に触れ、大火傷を負った帝竜は、悲鳴を上げながら下の層へと落下していった。
大成功
🔵🔵🔵
●帝竜オアニーヴ
「テキキタ!テキキタ!」
傷付いた全身に鞭打ち、トドメを刺しに現れた挑戦者達を威嚇するように戦闘態勢を取る帝竜オアニーヴ。オアニーヴは激闘に次ぐ激闘により、もはや回復に回す魔力は残されていないようだ。だが時間をおけば帝竜は再び魔力と傷を回復し、万全の態勢へと戻ってしまうだろう。この機を逃すわけにはいかない。
「我が名は帝竜オアニーヴ。かつて大魔王と呼ばれしものにして、全てを喰らうもの。来るがいい、挑戦者共よ」
エルザ・メレディウス
◎
これは、偽善かもしれませんけれど...あなたの気高い魂をこの剣で取り戻します
■POW
・UC対策:【残像】で回避の精度を高めながら、【地形の活用】を活かして地形の起伏や周囲の建物を上手く使って、敵へ迫ります。致命的な攻撃は回避しながら、軽症程度の攻撃は【覚悟】を決めて受けます。小さな傷は物陰に隠れながら、【医術】で治療。相手のもとへ少しづつ迫ります
・相手に接近したら、【集団戦術】を活かして、仲間との連携の質を高めながら、敵へ攻撃を。数で攻めます...!
相手が態勢を崩したら、【捨て身の一撃】の【覚悟】で、白王煉獄を使用。
狙うは大魔王の仮面。命は救えないまでも、せめてその仮面は砕かせて頂きます
レナータ・バルダーヌ
オブリビオンさんになっても操る必要があるとは、賢竜さんには特別な何かがあるのでは?
速く動く物を追うなら考えがあります。
敵のUCが発動したら私自身はあまり動かず、近くで噴き出す蒸気を利用し、外しておいた包帯を風に流して注意を逸らします。
失敗して攻撃されても【痛みに耐え】るのは得意なので何とかなるでしょう。
その隙に両翼の痕からロケットのように炎を噴出し、【C:J.ディストラクション】で攻撃を惹きつけ囮になります。
ところであの仮面、賢竜さんは強化できても自身はそのままなんてことはないでしょうか?
可能性に賭けて敵の頭部に突撃し、歪曲力場で仮面の破壊を試みます。
正常な意識が少しでも残っているのなら……!
マックス・アーキボルト
◎
この世界でその姿を目にすることになるなんて…
賢竜オアニーヴ、そしてそれを操る大魔王!
どれほど強力になっても、理性が無ければ対策は打てる!
グローブガジェットの〈念動力〉を使い、メカニック・世界知識をもとに機械群の地形の利用をして歯車などの部品を速く動かす!
注意はそちらに向いてくれるか…!?
反撃の隙が伺えたら、【解除魔法式】を発動!
呪い自体へと攻撃を加えるディスペル…賢竜を倒す事と同義だとしても!
この【ドラゴン】型の魔力弾で、仮面へと〈スナイパー〉、狙い撃ちだ!
●仮面を打ち砕け!
「この世界でその姿を目にすることになるなんて…
賢竜オアニーヴ、そしてそれを操る大魔王!」
オブリビオンと化してなお清澄な魔力を放つ賢竜と聖なる竜を操る仮面を睨み付け、マックス・アーキボルトはキャノンを構えた。仮面の放つ禍々しい魔力は数か月前に戦った大魔王のソレと酷似している。目の前にいるオブリビオンは紛れもなく『災魔』だ。
(オブリビオンさんになっても操る必要があるとは、賢竜さんには特別な何かがあるのでは?)
レナータ・バルダーヌは激しく傷付いてなおも凄まじい迫力を放つオアニーヴを見つめながら考える。通常、オブリビオンは過去で世界を埋め尽くす為に行動する為、わざわざ理性を奪う必要などはないはずだ。アルダワからアックス&ウィザーズに世界を渡って出現したことといい、オアニーヴは、他のオブリビオンとは異質な存在なのかもしれない。
「ゴアアアアアアア!」
どうやら、物思いに耽る時間はないようだ。レナータは作戦が実行しやすいよう、蒸気機関の側に移動した。
「これは、偽善かもしれませんけれど...あなたの気高い魂をこの剣で取り戻します」
エルザ・メレディウスは刀を構え、静かにオアニーヴへと告げた。すでに故人であり、大魔王の仮面に支配されたオアニーヴの命を救うことはもはや叶わない。だが、賢竜と呼ばれた高潔な竜の体を操る災魔を討つことならばできる。エルザはそれが賢竜が本当に望んでいることなのか確証は持てなかったが、大魔王の仮面を斬ることに迷いは無かった。
「ミナゴロシダ!ミナゴロシダ!」
竜操の仮面が妖しく輝く。限界まで身体能力を引き出され、殺戮機械となったオアニーヴは、残像が見えるほどの速度で猟兵達へと襲い掛かった。
「ギャオオオオ――――ン!」
嘶きと共にオアニーヴの爪が閃く。最初に狙われたのはエルザだ。エルザは残像を発生させてオアニーヴの攻撃を空振りさせると、迷宮の柱や歯車の影に隠れながら移動し、帝竜から距離を取った。
「ギオオオ!」
突然、オアニーヴが向きを変え、今度はレナータの方へ移動した。しかし、オアニーヴが攻撃したのはレナータ本人ではない。彼女が蒸気機関を利用して流した包帯だ。目に映る者全てを攻撃する状態にある今のオアニーヴは、猟兵と物の区別すらついていない。
ガコンガコンガコンガコン!
その時、部屋の片隅にあった歯車が物凄い音を立てて高速回転し始めた。マックスがグローブガジェットの念動力を使い、歯車に干渉したのだ。歯車に反応したオアニーヴはまた方向を変え、今度は歯車を攻撃し始めた。
ガシャン!ガシャン!
限界を超え、己の体が崩壊することも厭わずに繰り出されるオアニーヴの猛攻に晒され、歯車たちは瞬く間にスクラップと化していく。だが無酸素運動の限界が来たのか、ついにオアニーヴの勢いが弱まった。いよいよ反撃のチャンスだ。
(あの仮面、賢竜さんは強化できても自身はそのままなんてことはないでしょうか?)
あの罅割れ、焼け焦げた仮面こそがオアニーヴの体を操っている呪いそのものだ。もしあの仮面を破壊できればその時点で決着が着く可能性もあるし、正常な意識が少しでも残っているのなら、破壊まで行かずとも帝竜の動きが鈍る可能性もある。レナータは念動力場で全身を覆うと、両翼から炎をロケットのように噴射して帝竜に突撃した。
「わたしが囮になります!皆さん、あの仮面に攻撃を!」
目にも止まらぬ速度で帝竜に肉薄したレナータは帝竜の頭に跨り、大魔王の仮面をしっかりとその手に掴んだ!
「ハナセ!ハナセ!」
「離しません……!」
レナータに掴まれ、力場の力で仮面がギシギシと軋む。仮面に少しずつ亀裂が入っていくが、帝竜はレナータを振り落とさんと全力で抵抗する。レナータは決して振り落とされまいと、力場を全開にして必死に耐えた。
――あと少し。もう少しでこの仮面は……!
「頼む、そのまま抑えていてくれ!」
「ありがとうございます!……いきます!」
レナータが作ってくれた千載一遇のチャンス。マックスは呪い自体へと攻撃を加える『ディスペル』を込め、光を湛えるアームキャノンの銃口を帝竜の仮面へと向けた。解き放つは竜の魔弾。マックスが今この場で撃てる最強の一撃だ。
――あの仮面を破壊する。それが賢竜を倒す事と同義だとしても!
「命は救えないまでも、せめてその仮面は砕かせて頂きます」
エルザのサムライブレイドが炎で包まれる。エルザは多重発生させた残像で帝竜を幻惑しながら刀を振り上げて空高く飛翔し、大魔王の仮面に向かって渾身の一刀を叩きつけた!
「その幻想を狩り獲る!『解除魔法式:攻性』(ディスペルマジック・ハンター)!」
「その刃は罪を断ち切り、その炎は魂を浄化する。『白王煉獄(ハクオウレンゴク)』!」
マックスが放ったドラゴン型の魔力弾と、エルザの浄化の炎を纏った一太刀が同時に大魔王の仮面に炸裂した!
「ギャアアアアア!」
パキィイイイイイイイイイイイイン!
ガラスが砕けるような音が響き、大魔王の仮面が砕け散った。
●守られたもの、守るべきもの
猟兵達がその最期を見守る中、オアニーヴの体が薄れていく。大魔王の仮面が破壊されたことで賢竜オアニーヴは忌まわしき呪いから解放されたのだ。だが仮面が失われた今、もはや魂無きオアニーヴの肉体は滅びゆくのみだった。
この結末は悲しいものかもしれない。しかし、猟兵達によりオアニーヴが生前に抱いた「誇り」だけは守られたのだ。
そして、彼が命を捨ててまで守りたかったもう一つのもの、「世界の平和」が守られるかどうかはこれからの猟兵次第だ。群竜大陸の戦いはまだ、続いていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴