帝竜戦役⑤〜風の魔女と孤独な少年
●風の魔女と少年
「そう…悲しいことがあったのね」
「…うん。でも大丈夫!今はお姉さんが話を聞いてくれるでしょ」
爽やかな風が吹く勇者の墓標。
少年と女性は和やかに対話を続けていた。
片方は既に命を無くし、持っている本の呪いに寄って彷徨い続けている少年。
もう片方は古き時代、勇者として帝竜と戦った風の魔女、フェリーナ。
フェリーナは感じていた。何れこの少年も帝竜の力に飲み込まれ孤独と恐怖のままにこの地を滅びに導くのだと。
だがそれで良いのかと、フェリーナは思う。穏やかに話しを続けるこの少年を壊していいのか、とも。
だから少しでも話を聞いて、少年の心を癒やし、帝竜の力から逃れさせようとしていた。
●グリモアベースにて
「…帝竜との戦いが続いているが、この予知もそうだ。」
樋島・奏弥(ノイズ・f23269)は集まった猟兵達に話しかける。
「今回倒すべき敵は、孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』本の呪いのままに死んだ身体を動かし続けている死人だ」
今はまだ己の意思を持っているように感じる。だが彼も帝竜の意思に呑まれ何れはこの地を滅ぼす為に力を使うことだろう。
「この戦場、勇者の墓標には古に戦った勇者が眠っている。今回力になってくれそうなのは風の魔女、フェリーナだ」
穏やかな笑顔がよく似合う、優しげな女性なのだという。そんな彼女の思念は風に吹かれていだが、その地を訪れた孤独の屍を哀れに想い、姿を表したのだと言う。
「そして今は、彼の話し相手になっている。…だから、風の魔女と協力をして何とか敵を倒してくれ」
…余談だが、と少しだけ繋げる。
「ここで手に入る宝は魂晶石だ。……かつての激しい戦いの余波で生まれた、高純度の魔力結晶体らしい。…一個に付き金貨600枚の価値だとか。とんでもないな」
それじゃ、いってらっしゃい、と奏弥はゲートを開き手を振った。
笹山ぱんだ
●笹山ぱんだです、こんにちは。
戦争シナリオですので一章だけのお話になります。
プレイングボーナスは
【勇者の残留思念と心を通わせ、そのパワーを借りる。】
です。
風の魔女フェリーナ・シルフィード
今回手伝ってくれる勇者です。
とてつもない大きな風を操る魔力を持っていますが優しすぎる性格故にこの地で息絶えました。
第1章:『孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』』
屍の少年です。
呪われし大きな本を持つ優しい少年でしたが、その力に目を付けられ捕らわれてしまいました。人を彫像に変える闇仕事をさせられていましたが逃げ出すも亡くなってしまいます。しかし自身が死んだことに気づいていないまま本の呪いによって生かされたまま彷徨っています。
そんな彼の悲しみをフェリーナは哀れに想いお話を聞き癒やして上げているようです。
彼を倒す前に話を聞き、その心を癒やしてあげれば穏やかに逝かせることが出来るかもしれません。
勿論問答無用で倒しても大丈夫です。
プレイングの応募期間はオープニング公開後から7日の22時くらいまでです。(暫定)
それでは、良き戦いを。
第1章 ボス戦
『孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』』
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POW : 召喚タイガー『スターチス』
自身が【孤独や恐怖】を感じると、レベル×1体の【黄金化能力を持った黄金のトラ】が召喚される。黄金化能力を持った黄金のトラは孤独や恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD : 召喚ハーピー『リンドウ』
自身が【孤独や恐怖】を感じると、レベル×1体の【石化能力を持ったハーピー】が召喚される。石化能力を持ったハーピーは孤独や恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ : 召喚スライム『ナズナ』
自身が【孤独や恐怖】を感じると、レベル×1体の【凍結能力を持った魚型スライム】が召喚される。凍結能力を持った魚型スライムは孤独や恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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ソラスティベル・グラスラン
この少年が…わたしたちの敵
ですが倒すことなど、わたしには…
【優しさ・コミュ力】で魔女さんと一緒にお話
今までの冒険や楽しかったことを話して警戒を解かせて…
此処にいれば帝竜の力で怖い思いをすること、
いずれ誰もを傷つけてしまうことを正直に伝えます
敵対されても全力で優しくします!
【勇者理論】(防御重視)で身を守り、【怪力】で黄金の虎を抱きとめ
痛みを【気合い】で耐え、あくまで全力の無抵抗
よーしよし、怖くないですよ~…わたしは貴方をいじめませんっ
フェリーナさん!
わたしは、これが本当に正しい選択だったのか分からないのです
だから、これから天に送る彼に付き添ってあげてくれませんか
彼がもう…悲しくならないように
●優しさに触れる
荒れた地に僅かに残る木々、その木々の影に腰掛けていたのは少年と女性だった。
古の勇者、この地にて命を落とした風の魔女、フェリーナは本当はここに居るべき者では無い。死者なのだから当たり前だ。
それは、少年テイマー・ヘリオトロープも同じだ。
「…もう、大丈夫だよね」
怖い事はもう、訪れない?
「…えぇ。大丈夫よ」
そっとフェリーナは少年の頭を撫でる。
「そうですよ!怖い事は私が退治しちゃいますから!」
ヒョコリ木の影から顔を出した女性の姿に2人はびっくり顔をしたのだった。
(この少年が…わたしたちの敵…ですが倒すことなど、わたしには…)
ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は2人の隣に座り今までの冒険や楽しかったことを話す。
話を聞くテイマーも楽しんでいるようで笑みがこぼれていた。こうして見ると普通の穏やかで優しい少年の様に見える。無遠慮に倒すことなど出来なかった。
「テイマーくん。ここに居れば怖い帝竜の力で、怖い思いをしてしまいます。…あなたの力が、皆を傷付けてしまう」
真摯に向き合うことが最善だと、ソラスティベルは思った。テイマーは最初は驚いた顔をしつつも、少し怯えた顔をして
「…うん。…知ってる。…頭の中で誰かの声が聞こえるんだ」
それが時期に大きくなっていけばテイマーは抗えなくなるのだろう。
「…でも、もう少し…皆とお話していい?」
テイマーーが指差した先、ソラスティベルの後ろには数名の猟兵達が話をしたそうに待っていた。
「勿論です!」
ソラスティベルは大きく頷いて、笑った。
大成功
🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
以前別の場所で、この子と同じ姿をした敵に会ったことがあるの
本来は優しくて、それでいて臆病で……フェリーナ様が憐れむのも分かりますわ
だからわたくしも、この子の話を聞いてあげたいの
いずれ呪われた宿命を終わらせると分かっていても……
彼の境遇に、自らの過去が重なる
闇に覆われた世界に生を受けた
多くの死を、人の悪意を見た
怖かった
孤独だった
それでも手を差し伸べ、守ってくれた人がいた
悲しみを受け止め、寄り添ってくれる人がいれば
それだけで凍てついた心は癒される
これ以上過ちを繰り返さぬように
せめて最期は苦しまないように
優しさと慰めを込めて祈る
【主よ、哀れみ給え】
この子の彼岸への道行きが安らかでありますように……
●少年のこころを
ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)にはこの少年テイマー・ヘリオトロープと同じ姿をした敵に出会ったことがあった。もちろんテイマーはそれを知ってはいないが。それでもテイマーの心根が優しく穏やかな少年であることは解っていた。
テイマーの過去は凄惨で苦しい。死んだ今も悪意に苛まれ、心が泣いている。
そんな過去をヘルガは自分のものと重ねていた。闇に覆われた世界に生を受け、多くの死を人の悪意を見た。孤独を感じた。それでも手を差し伸べ、守ってくれた人がいた。今も、これからも隣に居て己を愛してくれる人が居る。
彼にもきっと悲しみを受け止め、寄り添ってくれる人がいればそれだけで凍てついた心は癒されるはず。
(彼がこれ以上過ちを繰り返さぬように。せめて最期は苦しまないように。祈りを捧げましょう)
「天にまします我らが神よ。その御心の許、我らに加護を。かの者に懺悔の時を……!」
ヘルガの背の純白の羽からまるでお日様のような、穏やかな神聖な光があふれる。
「…きれいだね」
テイマーはぽつり呟いて、小さく涙を落とした。それは悲しみではない。それは、きっとーー。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
幾人かの勇者は、猟兵が来ることに気づいていた。
……フェリーナさんも気づいてるんじゃないかな。
もう、テイマー君は長くない。私達に牙を剥くようになるだろう。
……だからって、この子の気持ちをないがしろにしていい理由にはならない。時間があるのなら、めいっぱい話そう。少しでも楽しもう。彼がこれ以上呪われないように。竜の力に引きずられないように。
破魔と祈りの力を籠めて、せめてもの加護を彼に。
……フェリーナさん、結局私は彼を殺すのかもしれません。
でも私は少しでも彼に幸せでいて欲しかった。
呪いにも竜の意志にも負けて欲しくない。その為に私は来た。
どうか力を貸して頂けませんか。
UC発動。呪いが、どうか解けますよう
●やすらぎをきみに
「…貴方達が来るのを、待ってたわ」
フェリーナは猟兵達を見回し微笑んだ。
あぁ、やはり、と鈴木・志乃(代行者・f12101)は納得した。幾人かの勇者は、猟兵が来ることに気づいていたからだ。フェリーナがこんな木陰で少年と話をしていたのも、猟兵達に見つかりやすいように、だろう。
少年…テイマーはもう長くないだろう。帝竜の意志のままに牙を剥くようになるのだ。
悲しい過去を少年は紡ぎだす。それは、重くて、辛い、心の淀み。
彼がこれ以上呪われないように、竜の力に引きずられないように、楽しい話もした。沢山の冒険の物語を。
「……フェリーナさん、結局私は彼を殺すのかもしれません」
「…えぇ、わかっているの」
志乃はフェリーナにこっそりと話しかけた。フェリーナは苦笑しながらも頷いた。猟兵がここに来た時点でどうなるかはフェリーナにも理解が出来ていた。
「でも私は少しでも彼に幸せでいて欲しかった。呪いにも竜の意志にも負けて欲しくない。その為に私は来た」
「…あなたは強いのね」
フェリーナは決して弱いわけではない。寧ろ勇者と呼ばれる程の力はある。
それでも猟兵達の信念と呼べるその美しい心がとても羨ましくて、恋しかった。
「どうか力を貸して頂けませんか」
「…私の力を?」
きょとりと風の魔女は首をかしげる。志乃は力強く頷いた。
「はい。彼をこの忌まわしい此処から助けるために」
志乃の周りを光の花びらが舞う。それは呪詛を祈りと変える浄化のはなびら、志乃の希望の光。
「……きれい…きれいだね、お姉さん」
魔女は少年の手を握り微笑んだ。
「えぇ、そうね」
それは悲しみを希望に変える光。
孤独な少年を救う、一筋の光。
大成功
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ルテネス・エストレア
いつつめの物語は、少年と魔女の優しくも悲しい物語
考えてもわたしが導き出せる結末は唯ひとつしかないのよ
フェリーナ、あなたの優しさをひと時分けて欲しい
彼を、わたしは『終焉』という名の優しい眠りに導きたい
彼の孤独も恐怖も優しさで包みたいの
彼にはフェリーナの知り合いだと言ってお話を聞かせて貰えるようにお願いするわ
彼が安心出来るようにそっと手を繋いで
「頑張ったんだね」って安心出来るように微笑むの
悲しい物語は此処で御仕舞い
あなたの物語の終わりはこの花で結びましょう
孤独も恐怖も無い優しい世界に包まれて、おやすみなさい
最後のその時まで、わたしは彼の手を離さないわ
心優しき少年と魔女の物語をわたしは生涯忘れない
●ものがたりをかんけつさせる
(いつつめの物語は、少年と魔女の優しくも悲しい物語)
ルテネス・エストレア(Estrellita・f16335)は木陰に座る少年と魔女を見、息をついた。
(考えてもわたしが導き出せる結末は唯ひとつしかないのよ)
そう、彼の悲しい物語をここで終わらせること。
「フェリーナ、あなたの優しさをひと時分けて欲しい。彼を、わたしは『終焉』という名の優しい眠りに導きたいの」
ルテネスはそうフェリーナに話しかけた。フェリーナは目を伏せながら苦笑する。
「…私は、私が優しいと思ってはいないの。周りはそう言って居たけれど…。…でも、あなたがそう言うなら、力を貸しましょう」
少年の孤独も恐怖も優しさで包みたい。ルテネスはそう思う。勿論、フェリーナも同じ気持ちだった。
少年は話す。過去にあった出来事を。己が受けた仕打ちを。恐怖に満ちた思い出も、ルテネスとフェリーナが手を握り「大丈夫」と声をかけてくれれば、何とか話を続けることが出来た。
「頑張ったんだね」
そうルテネスは言って微笑む。それだけで、テイマーは心の重りを少しだけ取り除くことが出来た。
「悲しい物語は此処で御仕舞い。あなたの物語の終わりはこの花で結びましょう
」
無数の桃薔薇がルテネスの周りを舞う。不意に風が吹き、大地に咲く数多の花びらがそれに交わった。フェリーナの風の魔法だ。ルテネスは少し驚いた顔をするが微笑みを浮かべた。
「孤独も恐怖も無い優しい世界に包まれて、おやすみなさい」
ルテネスはテイマーの手をぎゅっと握る。その姿が消えさるまでーー。
(心優しき少年と魔女の物語をわたしは生涯忘れない)
大成功
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隠・籠
私も、一緒にお話…したい。だって…倒せない、よ。私には…。
わかってる。私は猟兵、だから…。
みんなへの攻撃、は、召喚したガジェット達がかばう、よ。守る、から。
痛いことは嫌だ、よね。
UC【眠りウサギの声】使用して白兎のガジェットを召喚、ヘリオトロープの周りに放ち眠らせる
お願い、ウサギさん。この子に、楽しい夢を、見せてあげて、ね。
眠っていれば、怖い思いもしない。
…本当は、傷を治すものだけど…それは、ごめんなさい。
倒すのは、みんなに任せる、ね。
ごめんね…ごめんね…。
私も、もっと強くなる、から。ちゃんと、見てる、から。
※連携、アドリブ大歓迎です
●きみとねむろう
魔女と少年と猟兵が木陰で話していた。そこへ恐る恐る近づいた姿があった。
「私も、一緒にお話…したい」
(だって…倒せない、よ。私には…)
少年と魔女は籠を快く受け入れる。そっとテイマーの隣に座った隠・籠(踏み出した一歩・f20526)は微笑んだ。その微笑みは緊張で少し硬いものではあったが。
悲しみに満ちた少年を倒すのは籠の心が痛んだ。でも本当は解っている。猟兵だからこそ、彼を倒さなければいけない。だからこそ、悲しくて、辛いのだ。
少年の辛く重い話は人の悪行の最たるものだ。籠もそれは理解が出来た。己も死しては居ないものの、人の手で外界から閉ざされ暗闇の中で生きていたのだから。
(痛いことは嫌だ、よね)
籠は少年の手を握り、ユーベルコード【眠りウサギの声】を発動させる。
3体の白ウサギ型のガジェットが現れ、少年を眠りへと誘う。
「お願い、ウサギさん。この子に、楽しい夢を、見せてあげて、ね」
こてんと夢の世界に潜ってしまった少年の髪を魔女が優しく撫でる。
(眠っていれば、怖い思いもしない)
「あなたは優しいのね」
魔女は、フェリーナは柔らかく微笑んだ。
籠の優しさはフェリーナにも少年にも届いていた。だからこそ抵抗しなかったし、穏やかに眠っていられる。
それでも、籠には少年を倒すことは出来なかった。
(ごめんね…ごめんね…。私も、もっと強くなる、から。ちゃんと、見てる、から)
心は尊い。籠の優しさもすべて。
「…この子のことは、私が。…風の精霊よーー、」
フェリーナが呟けば、ふわりと風が舞う。それは少年の身体を攫い、空に向かわせた。
沢山の光が少年の周りに集まり、少年も光になって空へと消えていく。
少年の物だった光が消えればフェリーナの周りに光が集まる。
「…さようなら、小さな猟兵さん。…悲しい顔をしないで。…笑った方が素敵よ」
瞬きの間、小さくぱんっと音がして、小さな光の余韻だけ残し消える。
後に残るのは、籠の髪を撫でる柔らかい風だけだった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年05月08日
宿敵
『孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』』
を撃破!
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