帝竜戦役④〜狂い咲く獣の毒
●
「……主様……偉大なるヴァルギリオス様……」
その地に獣の耳と尻尾を生やした少女あり。
「我ら、ここから先、猟兵通さぬ事を誓います。必ず主様の恩に報い……あ、ぐ、ウォォォォォォォォォォォォォォォァアァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア
!!!!!!!!!!」
その少女、かの地に這わす不思議な毒にて獣に目覚めたり。
●
夏の如き暑さの春、帝流ヴァルギリオスとの戦いが始まった。
この戦いは、その一幕である。
「わ、みんな集まった?ポーラ!ポーラ(f06947)だよ!」
猟兵達を集めた冬の妖精は、グリモアベースの一角を氷の様な気温にする事で何とか耐えつつ、見た予知の事を話す。
「ポーラの故郷のー、アックス&ウィザーズのー、群竜大陸って所を今進んでると思うんだけど、ポーラもオブリビオンを見つけたの!見せるね!」
ぱっと両手を広げると、画面に映し出されたのはキノコの群生地。
「毒キノコばっかりのこわーい所なんだけど、『てーりゅー』さんに会いに行くにはここ通らなくちゃいけないんだよね。」
その映像に映る、獣耳獣尻尾の、サムライエンパイアの様な装いをした少女。……彼女達が突如奇声をあげ、体長2倍くらいの巨大な獣と化した。
「ここにある毒キノコは『月狂茸』!『獣になって暴れる毒』があって、胞子を吸うだけでも効果があって、毒に侵されるとこの人みたいに野生が目覚めて、大暴れしちゃうの!」
キマイラはそれに沿った獣に、それ以外は行ってみないと分からないが、目の前にいる者達は化け猫の様な怪物と化したようだ。
「この人達を倒して、次の戦場の道を作って欲しいのよ。」
どうやらこの毒の中で戦えという事らしい。
放っておけば自滅しそうだが、彼女達も分かっているのかできるだけ吸わないようにしながら猟兵達を待ち構えている。
しかし……対峙してしまえば確実にこの毒を利用する事だろう。
「毒が完全に回り切ったら猟兵さん達でも大暴れしちゃって最後にはだうーんして大変だから、できるだけ毒を吸わないで戦うと良いと思うよ。……あっ、それとそれとー、戦闘が終わって離れればよくなるからその辺りは気にしないでね?それじゃあ……」
ぱたぱたと冷房の冷気を利用して雪を作る羽で飛ぶ、妖精ポーラリアは早速グリモアを展開し、準備ができた猟兵達を転送していく。
「珍しいキノコもいっぱいあるけど、気を取られて獣の仲間入りしてもしらないからねー!気を付けてー!」
古塔
こんにちは!
戦争だね!
古塔と申します。
●なにこれ
A&Wの戦争『帝竜戦役』の戦場④『万毒の群生地』における集団戦闘です。
吸うとえらいことになる毒胞子をまき散らす毒キノコの戦場で戦います。
なおこの毒は対策していないと敵味方共に効きます。がんばれ。
●「ぷれいんぐぼーなす」と「毒」について
・この戦争では『月狂茸』と呼ばれる『獣になって暴れる毒』を持つキノコいっぱいの地で戦います。
少しでも吸うと興奮が高まっていき、全身に回り切ると、猟兵さんに応じた何らかの獣の怪物(プレ指定があればできる限りそれに、無ければこちらでおまかせの姿)になります。
そうなると理性がごっそりなくなって敵味方の区別なく大暴れしてしまいます。なので。
『獣化毒に対抗する方法を考える事』
今回のプレイングボーナスはこのように。
●敵について
『東方の武技に魅せられた者』
仕えた主……今回は帝竜ヴァルギリオスへの忠義で戦う、東の国のオブリビオンです。
忍術と刀術による達人級の技術を今回は獣と化した為、いつもよりパワフルに使ってきます。
●お宝情報
戦場のどこかに「宝石トリュフ」が生えてるそうです。
すごい香りと、宝石の様な美しさが自慢。売却値段は1つ44金貨(44万円)。
第1章 集団戦
『東方の武技に魅せられた者』
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POW : 主の為ならばこの身どうなろうとも……
自身の【忠義に生きることへの憧れ】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : この身がどれだけ汚されようと必ず達成します
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【忠義に捧げた身体】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : 我が忠義は屈せぬ。心までは奪えぬと知れ
【忠義を貫きたい】という願いを【自身の敵対者】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑7
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黒玻璃・ミコ
※スライム形態
◆行動
ふーむ、万毒の群生地とは実に素晴らしい響きです
こう言う場所は【空中戦】の要領で
ほよよんと群生地の中を【念動力】で跳ねつつ
毒の胞子やキノコを少しずつ【捕食】して
私の本領と巧手である【毒耐性】を更に適応させ攻略しましょう
毒食わば大地な果てまで【気合い】と【ドーピング】による勢いで乗り切るのですよー(キリッ)
オブリビオンにはこの地の霊脈を通じて【生命力吸収】をするつもりと見せかけ
その実態は【黒竜の遊戯】による圧倒的な物量で【範囲攻撃】として封殺しましょう
とは言え相応に厄介な強敵です
攻撃は【第六感】に素直に従って回避するとしましょう
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK
羽生・乃々(サポート)
●設定
UDCアース出身の極普通の女子高生
バイト感覚で仕事を安請け合いしては散々な目に遭い
涙目で切り抜けています
●口調補足
「きゃあ!」「いやぁ!」等の悲鳴の類が
何故か「こゃ!」「こゃぁ!」になってしまいます
●戦闘
「こゃ!あんなの当たったら、死んじゃいます…!」
「管狐さん、お、おおお、お願いしますっ」
「わぁん、た、助けてぇ!」
・涙目でばたばた逃げ隠れ
・他の猟兵等に助けを求める
・追い詰められたり助けに入って貰えた時は震えつつも頑張って交戦
使役UDC「管狐」の祟りで敵を不幸にします
あらゆる行動を上手く行かなくして
その隙に逃げたり、上記効果で仲間を援護します
他は全てお任せです
交流や連携等も歓迎です!
●転送前、グリモアベースにて
「……え?」
妖精の話を聞いた羽生・乃々(f23961)は複雑な表情をした。
「獣に、狐に、なっちゃうんですか…?あ、あの、えっと」
彼女の周りを舞う管狐達が『ついに仲間入りか』と言わんばかりに満足気な顔をして甘えている。
「わ、わたし……ごめんなさいわたしこの依頼保留にして頂いても!まだ心の準備がというかこの案件をサポートで済ませるわけにはこやあぁ!?」
問答無用。時は待ってくれず。
後ろから押し迫った他の猟兵達に押されて彼女もまた戦場に転送された。
●恐るべき獣のキノコの群生地、戦場
その地にうにょうにょと黒いスライムが這う。
「…ふむ。…ふむふむ。」
紳士的な口調に対し漆黒の内面を持つ、ブラックタールの魔女。
彼女の名は黒玻璃・ミコ(f00148)。
「ふーむ、万毒の群生地とは実に素晴らしい響きです。」
ふよんとひと跳ねすると、一気に戦場の上空に飛び上がり、見下ろして何処に対象のキノコがあるかを察知する。
彼女はこの場だけでなく他の群生地も行脚している。
「毒を食わるば大地な果てまで。この場の毒は、総て私の『糧』としましょう。……まずはあそこから。」
見かけた月狂茸。
彼女はあまりにも高い耐毒性を持つが、一気に全部食べてしまえば急性中毒を起こしかねない。
上空から覆いかぶさり、徐々に、徐々に月狂茸を吸い取っていく。
「ふむ。しかし……獣になる毒、ですか。」
黒きスライムの体躯が一瞬ざわりと震え、蜥蜴にも似たおぞましき怪物の姿をとる。
「このボクに『獣』だなどと!狂うだなどと!いやあ実に面白い!……おっと」
その獣とも形容しれぬ姿が元のスライムに戻った時、その場の月狂茸は消滅していた。
黒玻璃のスライム捕食が、獣の毒を全て吸収した証拠である。
「…むむ。しかしややこの感覚は…」
高揚する。獣にはならなくても、体の内から何か熱いものが。
このキノコは毒を薄め、それなりの調理をすれば滋養強壮にも役立ったのかもしれない。
その時である。彼女の鋭敏になった第六感が周囲の気配を感じ取ったのは。
「……囲まれてますね。」
ゴロゴロと猛獣の様な音を響かせて、巨躯なる猫の怪物が忍び寄る。
「いいでしょう。毒に慣れるまでの暇つぶし、かかってくるがいいですよ。」
「―シャアッ!」
「こゃぁ!」
群生地を駆け抜けてひたすら逃げ続ける、白い髪の女子高生がいた。
彼女こそは羽生・乃々。先の流れで押されるままに転送された方である。
既に狐の耳と尻尾が生えているが、毒のせいでもなくキマイラというわけでもない。
強化人間として身に憑依されている狐の霊による影響だ。
彼女は今、接敵から秒で猫の怪物と化したオブリビオン達に追われている。
「こやっ!吸い込むと危ない、ですっ…何か口を塞ぐものを」
飛んでくる剣閃をクラッカーの如く放つ管狐を放ち、白刃取りの如く受け止め、食い止めると、羽生はその管に思わず目が行く。
「…すみませんっ!」
すぅ、と。
管に口をつけて、漂う毒から身を守る。
「ん、ぅ……ふぉひゃぅふぉふぇんなふぁいふぉふぇんなふぁい!」
戻ってきた管狐にぺしぺしと叩かれ、口を離す。今や管は取り合いっこになっていた。
だがこれを止めると危ない。管狐は既に獣だが、彼女は取りつかれているだけでまだ完全に獣ではないのだ。
「こんな事を繰り返していては…だ、だれか他の猟兵さんを見受けないと」
その時である。天から無数の光が見えたのは。
「こ、こやぁぅ!?」
恐るべき数の矢が降り注ぎ、追っている獣のオブリビオンを貫く!
羽生は間一髪、いや運がいいのかかろうじて外れているが、危険だ!
「だ、誰が一体こんな事を……ああっ、あれは!」
黒い少女の姿が遠目で見えた。
彼女こそがこの矢を放つ正体だろう。
「合流、しないと……!」
時は少し遡る。
「遂に来たか侵入者。我が忠するヴァルギリオス様の為、この身どうなろうとも……」
月狂茸を口にして、体長は倍程の猫の獣人と化したオブリビオンらは、その手に器用に刀を持って、1体の黒いスライムに狙いを定める。
「いいでしょう。毒に慣れるまでの暇つぶし、かかってくるがいいですよ。」
「―シャアッ!」
するとその攻撃対象、黒玻璃は一瞬で地に広がり、地面を黒いスライムの沼と化す。
「私の力、幻想を鏖殺せし屠竜の極黒。私の身体に触れれば…あなた達も糧としましょう!」
「ブミャアアゴ!」
オブリビオンは一斉に飛び上がり、地を這うスライムを回避する!
そしていくらスライム、もといブラックタールでも核はあるはず。それを見つけられなければ風の術を使う。
オブリビオン達は手と刀に風の力を籠め、地面の黒玻璃を吹き飛ばさんとしていた。……だが。
「……なんてね。」
一瞬で中央にスライムが集まると、材質はスライムのまま、マフラーを巻いたポニーテールのニンジャの様な形が出来上がる。
「飛び上がると思ってましたよ。『くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ』……黒竜剣・第八圏『悪意者之地獄』及び第九圏『裏切者之地獄』、解放。」
黒きスライム少女の中から無尽蔵と思える数の弓と矢が生成される。
「『いあいあはすたあ あいあいはすたあ』……拘束制御術式解放。黒き混沌より第玖の竜よ、目覚めなさい!」
それは必殺の魔術、ユーベルコードの詠唱!
その身に恐るべき強さを秘めた黒玻璃・ミコの暗黒なる魔力矢が、死の閃光となって上空に放たれる!
「フガアアアッ!!」
その数、その数!およそ7700発!
凄まじい数の矢が、オブリビオンを貫き、貫通して上空にとどまった矢が戻り、雨となって再び降り注ぐ!
あまりにも暴力的な矢に、最早この時点で殲滅を完了し、決着がつくと思われたが……。
「ふーむ、やはりオブリビオン。相応に厄介な強敵です。」
黒玻璃はポやんとした顔で上空の敵を見る。
無数の金属音が鳴り響いている。
「フゥゥゥゥゥ……!」
四方滅方に刀を振り、オブリビオン箱の7千を超える矢を…はじいていた!
いくらかは被弾するものの、意にも介さず少しずつ上空から黒玻璃との距離を詰めていく。
「ですがまあこのコード、一度放てば終りまでは自動。……隙だらけですね?」
改めて人の形をしたスライムは、ゆっくりと弓に矢をつがえる。
「『第九圏:裏切者の地獄……遊戯であるからこそ裏切者は邁進する。』さあそこな猫達よ。上手く踊れますか?」
放つ。
「ギ、ニャアァァ」
心臓を貫かれた猫の者が消滅する。
放つ。
「ブ、ニャアァァ」
魔の雨の対応だけで手一杯の剣閃が、引き絞った弓の貫通を許す。
1体、また1体と、かのスライム魔女の黒竜の遊戯に弄ばれて、その命を散らしていく。
すると突如思わぬ方向から飛んでくるものがいた。
「おや」
「アルジサマノ…タメ…ウニャアアァァ!!」
先の脅しにもかからずに、無謀にも直線で突撃してくる猫獣人!
しかし黒玻璃は慌てる事も無く弓をつがえ、脳天に…討ち放つ!
「おや」
頭を貫かれて尚、オブリビオンは撃侵する。
2度、3度、4度…何度矢を放たれても、進み続ける。
「しょうがないですね。では回避の後こちらにも改めて矢を―」
その瞬間は訪れないと、第六感が察知した。
「(―!)」
時間が、鈍化する。スローモーションの時の中。
突如、オブリビオンの口がぐぱぁと開かれた。
中から、今まさに獣になろうとしている、追加のオブリビオンが吐き出され、突きの体勢で突撃してきたのだ。
「覚悟はできています。あなた方猟兵がここで戦いに来たのと同じように。……主の為ならば、この身どうなろうとも……!」
毛深く、力強き毒の力。そして何より【忠義に生きることへの憧れ】が生んだ、仲間に飲まれてチャンスを待つという無謀すぎる行動が、彼女の力と速さを爆発的に強めていた!
「こ、れは……どこに刺されますかね!厄介な―」
吹き飛ばし、燃えつかさんと、刀に火と風を纏った一撃が、黒玻璃の身体に達する―その瞬間!
「!?な、あっ……っぁ……」
「おや?」
そのオブリビオンは飲みこんでいた獣共々、砂になって消えた。
「ま、間に合いました…!?すみません危なさそうだったので!」
横から放たれた羽生のユーベルコードが、奇襲する彼女らに命中したのだ。
「ありがとう。あの攻撃はちょっと危なかったかもー。今のは一体何です?」
「管狐の、祟り…っ」
息を切らしている。相当急いで放ったらしい。
管狐の力により、身を滅ぼす程の不運で祟るユーベルコード。それがオブリビオンの毒の暴走作用にうまい具合に噛みあった結果、文字通り身を滅ぼす程の毒性を起こし、瞬時に相手の命を失せたのだ。
「こや……っすみません、失礼しまっ……!」
羽生は毒を吸う事も厭わなかったために改めて管に口をつけ、新鮮な空気を吸う。
「おっとそうだね。君は毒を吸ったら危ないのか。」
黒玻璃は飛び上がった最後の1体を矢で貫きながら羽生に近づくと。
「…ちょっと悪い事をするヨ?」
「!?んっ、んんっ
……!?」
スライムの一部を口に突っ込み、羽生に…飲ませた!
「けほっ、けほ…な、え!?ちょっ…ちょっと今の…は!」
「抗体だよ。私はもうここの毒を解析し、吸収したから、これで少しは大丈夫になると思うよ。少なくとも理性が飛ぶ心配は無い。」
「こ、抗体!そんなものが。あ、ありがと…うやぁ!?」
しかし毒は一旦羽生の身体を駆け巡り。その身を毛深くしていき…。
「あっ、うっわっ、こっこやぁぁ!!?」
「おっと。何とか完全な獣になる事は防いだけど…うーん改善改善。もうちょっと食べて解析しないとだね。」
「こ、こやぁぁ!?わたし今日このままなんですかぁ!?」
元からあった狐耳と狐尻尾が美しく合う、全身に毛深き獣の毛が生え、口も狐のマズル口となった、白い狐の獣人の羽生。
管狐達もどこか喜び気に羽入の周りを舞い、甘えるようにすり付いた。
「こやぁ!こやぁ!管狐さん!ちょっとストップですよぉ!」
「まあ戦場を離れたら元に戻るって事らしいし。でもいいねそのコード。もう少し付き合ってもらっていいかな?」
「こやあぁ!?」
即死に近い白き狐の祟りと、広範囲を覆う黒き竜魔女の呪い。
二人の戦いはこの地に潜むオブリビオンを倒すまで、もう少し続いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
秦田・麻弓
たぶんダメだとは思いますけど…
足元のキノコに触れて、出来るだけ広い範囲を電撃で焼きます。
衝撃とかで胞子が広がるかもなので、その間はしっかり息を止めて気をつけて、
見た目にマズそうならその場からすぐに離れて仕切り直し、呼吸を浅く短くしてしっかり吸わないようにします
忠義心とかはよく分からないし
痛い怖いよりは楽しい気持ち良いの方が、なので…多分分かり合え無さそうかなぁ
敵さんも難しく考えれない獣になってる方が、私は気が合うかもしれませんね
というわけで、近付いて避けて焼きます
獣は狐です。
最初のキノコ焼きで電撃の範囲を規定して見せて、私の方が区別つかなくなったら焼け跡から危険範囲を予測してもらえればな、と…
箒星・仄々
心情
帝竜さんへの忠義のため
危険な地で待ち受けるとは
ご立派ですが
御身を大事にされないご様子は
危うく哀れに見えます
海へ還して差し上げたいです
対毒
風の魔力を操作し
自分の周りの空気をぐるぐると渦巻かせ
エアカーテンとして
出来るだけ胞子を吸い込まないようにします
その上で命と未来を守る猟兵であることを
心に強く念じます
仲間を傷づけて堪るものですか
毒になんか負けません!
戦闘
獣化し理性をなくした敵の動きを冷静に見極め
同士討ちはそのまま放置
此方への攻撃は疾風で加速して回避したり
身に纏う渦で弾きます
UCは攻撃力強化
剣風をカマイタチと化してKナーゲルを一閃
忠義に酔い自分の身を大事にしなかったこと
それが貴女方の敗因ですよ
枸橘・水織
人狼病みたいな胞子だね
胞子対策
吸い込まないように口鼻を覆うマスク着用
その上で【オーラ防御】で毒胞子から身を守る
行動
忠義を貫きたいって言うならっ!!
魔導書やウィザードロッドを使用
指定UC(着弾時、高粘着力な粘着液と化す魔力弾(属性:拘束))で相手を拘束、命ではなく動く自由を奪い自滅を誘う
オラトリオなので『鳥』
骨格の変化や獣の部位の生成に痛みや熱を伴って身体が変化
腕は生え始めた羽毛が羽根へと変化して翼になり
足も靴を突き破って鉤爪に変わり、変化は下半身全体まで及び尾羽も伸びてくる
(服を着たハーピーのような姿)
まだ…理性が残ってるウチにここから離れないと…
芽生え始めた『鳥の本能』に従い飛んで撤退
鳴子・このは
毒キノコの胞子なんて私の風で吹き飛ばしちゃえばいいよね!
もし吸い込んじゃっても毒なんて効かないから平気平気!
早速【自己流・分身の術】で人数を増やして一気に突風を起こして胞子を散らしちゃおう!
ついでにオブリビオンも吹っ飛んでてくれたら尚良し。
「忍術の心得もあるみたいだし、いざ尋常に勝負ー!」
苦無を投擲したり空蝉の術も織り交ぜて各個撃破を狙ってくよ。
ふっふっふー。地を這う獣を急降下から蹴り込むのは楽しいなー!
もしかして吸い込みすぎた?いやいやそんなはず……。
あー、もういいや。辞められないし止まらないもの!
せめて理性が残ってるうちは敵を狙わないと怒られるよね。
そうでなくても怒られそうな気はするけど。
●狂い咲く獣の毒
「マスクよし。防壁……よし。これで対策完了っと。それにしても……人狼病みたいな胞子だね。」
青い髪に青いロリ服、魔女の帽子をかぶったなら、白い翼を羽ばたかせる枸橘・水織(f11304)がそこにいた。
「あとは敵がどこにいるかだけどっ…」
すると物陰が触りと動き出し、猫の獣人が現れる。
「うわっ、猫獣人…って、敵!」
「おっと失礼。敵じゃないですよ。私は箒星・仄々(ほうきぼし・ほのぼの)(f07689)。まあ、よくいるケットシーとでも思っておいてください。」
西洋の貴族めいたマジックナイトの服を装う黒猫のケットシーだ。
「ま、紛らわしいったら。所で気になってたんだけど、元から獣人ならここの毒大丈夫じゃないの?」
「いえいえ、そんな事はありません。気分を高揚させ、野生に近くする…理性を奪うだけでも立派な猛毒ですよ。これは。」
細身の魔法剣を手入れしながら、ふふんと鼻息吹いて先に進む。彼の周囲には風の魔力が渦巻いて、風のカーテンとして飛び来る胞子をガードしている。
「…それにこんなところで忠義の為に待ち受けている、人近き獣人に一言物申したくてね。」
すると近くで爆発が起きる。轟音の如き振動と光。彼女らは今度こそ敵かと驚いた。
「箒星さん!」
「うむ。…しかし気配と臭いが薄い。もしかするとこれは我々と同じ―」
「スカウト。感度レベル1、は、これだけ。次はレベル2、いえ全力の範囲として5を…んんっ」
轟音の発生地には一人の緑髪少女。
皮膚感染が心配になるほどの露出高きボディスーツを身に纏う、彼女の名は秦田・麻弓(f00217)。
息を止め、キノコに武器を当て、巨大な電気のフィールドを作り、今回の己の攻撃範囲を見定めていた。
ズドン!
再びの轟音。それに応じてキノコが爆発し、胞子が散る。それを吸わないようにとこらえるも、やや表皮が薄く毛で覆われる。
「って何やってるんですか!?」
慌てて枸橘達が駆け寄ると。
「あっ、猟兵さん?丁度よかったです。私は秦田・麻弓と申します。」
口を袖で押さえながら、話す。
「自己紹介よりも、そんな無防備な…すぐ獣になっちゃうよ!」
「はい。もし私が獣になりましたら、この攻撃範囲を覚えておいてください。これが最小で、これが全力の―」
地面には焦げ跡。スカウトと呼ばれる電磁ライフルをキノコに放った爆発範囲だ。
「……ふむ。自己犠牲が得意なようだね。私はあまり感心しない。」
「えっ、だってそんな事言われても。」
麻弓はロマンチックに悠々と、語る。
「ただ獣になるだけ。向こうがやってくるっていう忠義とか誇りとか良く分かりませんし…」
両手を広げ、胞子を受け入れるかのように、語る。
「楽しくて怖くなくて、気持ち良いのが一番ですよっ。」
「ふむ。獣になるのは怖くないと。…ですが先程も青の令嬢に話した通り。」
仄々は麻弓を自身の風のカーテンに引きずり込み、進む。
「御身を大事にされないご様子は、こちらとしては見過ごせぬもの。…相手方の獣とは違うはずです。」
「えっ、でもでも、本質的には―」
「これは戦争です。この先も、更にこの先も戦いは続きます。…どうかこの時点で果たし尽くされませんよう。」
「…風かぁ。大雑把に展開する分、防壁よりも楽、なのかな。」
水織がそう呟いた時だった。
「はっはっは、そうですよ。毒なんて風で吹き飛ばしちゃえばいいのです!」
天狗の如く翼を広げて現れた、彼女は鳴子・このは(f21783)。
彼女達が今回この群生地での猟兵軍団となった。
「というわけで早速コード発動!【自己流・分身の術】!胞子もオブリビオンも皆吹っ飛ばしてくよー!」
「えっ、ちょっといきなり…きゃあっ!」
彼女の分身による、身に纏った風は猟兵達も強風にあおらせながら、目についた茂みの奥のオブリビオンを…瞳に映す!
「にんにん。鳴子このはが隼忍者。お命ちょうだいにござる!なんてねっ」
現れたるは、サムライエンパイアの様な和装の猫獣人。オブリビオンだ。
片手に刀を、もう片手に月狂茸を持っている。
「帝竜ヴァルギリオス様に捧ぐ―この身がどれだけ汚されようと」
「隙ありぃー!」
このはの奇襲攻撃だ!
急降下からの蹴りで1体が倒れ、距離を空けたうちの2体が真空を手に宿し手裏剣を放つ!
「おっと聞いてた通り、忍者の心得もあるのね。でもそんな程度!」
それを苦無で打ち落とすと2体4体と分身を広げ、両側からのサイドキック!
刀で何度も、打ち、斬り、それを靴で受け止め、弾き、蹴る!
顎を割られた2体が力なく打ち倒れる!
1体のこのはの風纏っての突進に、瞬時に姿を消したかと思うと、後ろから刀を構えて出現するオブリビオンあり!
土遁の術からの刀剣一閃だ!完全にこのはをとらえたかと思ったが…。
「空蝉(かわりみ)の術!てりゃーっ!」
それは近くにあったただの木材!先んじて飛び上がった上空からの本体のこのはが、オブリビオンの脳天を蹴り落とした!
「ふっふっふー。急降下から蹴り込むのは楽しいなー!っと!」
そして目に見える内の、いかにも無防備そうなオブリビオンに向かって再度突進!
「あなたで最後かしらね?茫然自失?私の華麗な技に見惚れた?このまま一撃―」
そのオブリビオンが、覚悟を決めて微笑んだ。
「この身がどれだけ汚されようと…妨害は、必ず達成します。」
「えっ!?しまっ!」
オブリビオンは両手いっぱいにあるものを抱えていた。月狂茸だ!
油断のし過ぎで中断出来ぬままこのはは突っ込む!
爆発、舞い散る胞子!……これは!風によるガードさえも間に合わず……!
「けほっ、けほっ、…し、しまった!」
めきめきと音を立て体が、変質していく…ハーピーのような、グリフォンのような、四足の隼のキマイラに。
「うっ、わっ、こんなっ、変わっていってるのにっ、興奮が収まらない…!」
「鳴子さん!」
「…ちょっ、早すぎ……うっ、遅かった!?」
「……あー、もういいや。辞められないし止まらない!後の事は任せたよ!せめてオブリビオンを狙うようにはする…け……ぐ……クエーッ!!」
その頭部までもが完全にハヤブサの獣と化した…!
「フシャアァァ……ゴ……」
それと同時にもう1体、戦場には恐るべき巨躯の猫の化け物が現れた。
このはを止める為にキノコの胞子を抱えたオブリビオンもまた、盛大に獣に目覚めたのだ。
「これが…あなた達の終局…帝竜への忠義の証」
箒星のケットシーは、カッツェンナーゲルと呼ばれる細見剣を、静かに構える。
「しかし、御身を大事にされないご様子は、危うく哀れに見えるもの。…私が海へ還して差し上げましょう。」
己に纏う風のオーラが剣にも、鎌鼬の如き真空でエンチャントされる!
「アワレナダト、ヌシラガイエタコトカ……フギャーッ!」
獣のとびかかりと同時、物陰から追加で複数、同じく獣となったオブリビオン達が飛び掛かる!
「ぐっ、無謀無理な突撃に関しては、私から言える事はありませんが…!」
「気おされないっ!私達もいくよっ!」
ここで現れる猟兵は一人ではない。水織も麻弓も突撃にかかる。
「ワガチュウギ、ココデツラヌカセテモラウ…ヌシラゼンイン、コレヨリイッポモサキエススマセヌコトヲネガウ!」
「良く分かりません。そういう事」
麻弓が近くの1体と組みつき、ハグにかかる。
「難しく考えれない獣になって、とっても気持ちよくなれたら。私はそれでいいなって思うの。」
「キサマ…!」
「あなた、獣になっても理性があるんだ。すごいね。じゃあ合わないわ。」
スーツを通してすさまじい電流が高圧のものとなって駆け巡る。これは麻弓のユーベルコード…。
「【ランポ】!」
「フギャアアアァ
……!!!」
全身から伝わる高圧電流に、オブリビオンの1体が焼死した!
「そんなに忠義を貫きたいって言うならっ!!」
四方八方から飛び掛かる猫獣人をなんとかして回避しながら、大砲の如くウィザードロッドを抱える水織!
「ケミカルスロット『拘束』!属性を粘着液のものに変換―【アルケミィ・マジック・ミサイル】っ!」
放たれた魔法の弾丸がトリモチの様に広がると、オブリビオン獣人の全身を覆う!
「フギャッ、ギャアァ!ギャアアァァ!」
ねばねばした粘着液に着弾した獣人たちは身動きが取れない!
「そこで動けずもがきながら、忠義に費やした命を散らすがいいわっ!」
「忠義に酔い自分の身を大事にしない…そんな捨て鉢の心で」
仄々は風遁による猫獣人達の真空波を、同じ風の波動で受け流しながら懐に潜り込む。
「我ら猟兵を倒せると思っていたのですね。」
斬撃、一閃。二閃。通り抜けざまに十字に斬られたオブリビオンが、血を散らしながら倒れる。
「ワガチュウギハクッセヌ…カヨウニツムグコトダマ、イカニアロウト…!」
獣人の一体がその場で回転し、遠くまで届く様な鎌鼬の回転斬を放つ!これを仄々は空高く飛んで回避すると。
「我ら猟兵。命と未来を守る者…その差を今、思い知らせてあげましょう。」
なびき、カッツェンナーゲルから天高く伸びる鎌鼬が、空中で縦に回転し、敵の脳天を切り落とす―。
「グ…ガ、ア…!」
仄々が着地した瞬間、二つに分かれたオブリビオンの最期の姿が、音を立てて地面に落ちた。
「さてのっぴきならない状況ですね。一人完全に毒に侵されるとは…誰か彼女に回っている者はいますか!」
「クエーッ!」
隼の怪物が羽を広げ、爪を突き立てる。
「フギャーッ!」
猫の怪物がもがくように爪を伸ばし、羽毛を切り裂く。
「クアッ、クアアアアッ!」
嘴が肉をえぐり、四本の爪は二本が猫の前足を掴み、もう二本で腹を裂かんとする。
「ギャーオ!フギャアァオ!」
猫の噛み付きが入る。
「クエーッ!」
隼の嘴が。
「フギャーッ!」
猫の爪が。
羽を折り、返して腕を握り、喰らい、裂き、叩き、蹴り、啄み、噛み、転がり、鳴き。
獣と獣の血みどろの死闘がそこで繰り広げられていた。
「そこまでーっ!これ以上の狼藉は!」
水織がウィザードロッドを構えて突撃する!
「クエーッ!」
「うぐっ!し、しまっ…」
隼の一撃が水織の防壁ごとマスクを弾き飛ばす!
たちまち毒に侵されていき、水織の腕が、皮膚が、熱を帯びて羽毛へと変化していく……。
「う…装填は、済んでる、のに……まだ…理性が残ってるウチ、に、ここから、離れないと…」
痛みや熱を伴って、めきめきと骨が変わっていき、獣の部位が出来上がる。
「あ、ああああっ!」
「枸橘さん!くっ…毒になんか負けるな!今私が風で中の毒を!」
「だめえっ!」
咄嗟に防御しようとした剣さえも早くかぎ爪と化した水織の一撃が仄々へ!
「あぶないっ!」
それを麻弓が庇い、高圧電流ではじき返す!
「くええエッ!」
「秦田さん!…傷が!君だけでも守る!」
麻弓のスーツが、電気の防御を不可能にするほどの傷をつけられている。
「…いえ、大丈夫です。こうして獣になった方が、私は理性を外して戦える…」
「駄目だ!くっ…仲間を傷つける戦いなど、私はしたくなかったというのに…!」
「…さっきの電撃の範囲、覚えておいてくださいね。其処から私の危険範囲を…う、ぐ、クォォォォォォォォォォォォォォォゥアァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア
!!!!!!!!!!」
「秦田さん!」
その身が全身緑色毛でおおわれた、狐の怪物に瞬く間と変貌する!
「クアアァァァァァァァアアァァァァァアアァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアア
!!!!!!!!!!」
それと同時に水織も変貌を果たしてしまう…!
靴を突き破った鉤爪の足、すらりと伸びた尾羽がなびく、美しき青のハーピー、鳥の獣。
今この場に、完全に人であるものは、消えた。
「どうする。どうすれば…組み付いて、できる限りの毒を吐かせるか…そのためには動きを…当身…くっ!」
思考を巡らせる間も無く、まず飛んできたのはこのはの隼グリフォンだ!
既に元凶のオブリビオンを喰らい尽くし、嘴に血を貼りつかせた勢いで仄々に襲い掛かる!
「同じ風使い…この場よりはもう少しちゃんとした場で戦いたく思います。御免!」
カッツェンナーゲルを風に纏わせ、風の鉤爪と剣が打ち鳴らし、何度も何度もはじき、鍔迫り合いに持ち込まれる!
「ぐっ…」
「クエーッ!」
手が剣で塞がれれば嘴が飛んでくる!伸びたこのはグリフォンの嘴が、地をえぐるように一撃!
「させるものか!」
避ける!
更に一撃!
「まだですよ!」
更に―。
「ぐ、うにゃあっ!」
仄々が潰された!鍔迫り合いにいきなり過度の力が加わり、力負けしたのだ!
「一体何が…」
「クエエーッ!」
「コュオオォーン!」
このはの背には、鍔迫り合いの隙をついて飛び掛かった麻弓の狐が!
「クエーッ!クエエーッ!」
「コヤアァァ!クワアァァアァ!!ウォォ!」
「ぐっ、うむぅ!抜け出さなければ」
かろうじて抜け出した時、暴れ出る二体の獣は飛び上がる!このはのグリフォンが麻弓を乗せたまま空へと飛んだのだ!
「まずい…この喧嘩、どの様にして止めるべきか。」
その時である。仄々の背を啄んで、後ろに乗せる鳥が現れたのは。
「枸橘さん!」
「キュイィィ…!」
その眼は野生に狂ったにしてはとても澄んでいた。
「最早人語を喋れなくなりましたか。でも何となく分かります。…トリニティ・エンハンス・ウィンド!今は攻勢に纏え!」
カッツェンナーゲルを振りかざし、その風を広範囲にわたらせると、二体の獣にもわかる程の突風を巻き起こす!
「クエーッ!」
「コヤアウオォ!」
空中で喧嘩している二体の獣の矛先が、仄々とハーピーの水織に、向いた!
「キュイィィー…!」
仄々を乗せて空中へ飛び立つ水織。その先は戦闘圏外。戦場の離れた地である。
「グリモア猟兵は言っていた。戦闘を終えて離脱すれば良くなる…毒の無き所であれば、自然に収まる、はずだ。」
わずかな希望を、誘導という形で。
倒すべき敵は倒した。自身はよくやったと、そうごちながら、離れるまでの間も毒を吸わぬと、仄々は水織の背の羽毛に、顔をうずめた。
苦戦
🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
シエナ・リーレイ
■アドリブ・絡み可
「■■■■■!とシエナは『お友達』候補にじゃれ付きます。」
お友達のポーラリアから毒には注意しろと言われていたシエナ。ですが、沢山の猫さんな『お友達』候補を一目見たら一瞬にして忘れてしまいます
お陰で猫さん達と接近する頃にはシエナは濃密な呪詛を纏った立派な獣と化していました
獣となり気分が高揚としたシエナは『お友達』候補は勿論の事、それ以外の者にも[怪力]混じりにじゃれつき遊びます
そして、激しく遊べば遊ぶほど毒と呪詛と怨念がシエナを蝕み、より悍ましい姿へと変化してゆきます
遊び疲れる直前には動くだけで周囲を[なぎ払い]地形諸とも壊す[範囲攻撃]となる強大な怪物となるでしょう
●魔獣シエナの誕生
「■■■■■!とシエナは■■■■■!■■■■■!」
銀髪の如き白がかる灰の髪に、人形のようなドレスを身に纏ったヤドリガミの少女、シエナ・リーレイ(f04107)。
彼女はここが毒の胞子の地であるにも関わらず、対策を全て放り捨てて全速力で駆けていた。
「シエナはお友達のポーラリアから、毒には注意しろと言われていました。ですがシエナは、あの映像のお友達候補を一目見た時から夢中になりました!と報告します。」
さて、少々の疑問に今答える形となって申し訳ないが―。
毒。
キノコの胞子を介して紡がれるこの毒が、果たして有機物以外に効くか、という疑問だ。
ともあればミレナリィドール、ブラックタール、ウォーマシン、そしてヤドリガミ……。
答えは、効く。粘菌である。
キノコの胞子がまとわりつけば、そこから果肉の如き毒の皮膚が全身を形成し、やがて体内に寄生。
神経中枢を乗っ取って、動く無機物であろうとその体を変貌させてしまうだろう。
転送開始数分。
シエナ・リーレイの全身は、もう手の施しようがない程、月狂の毒に侵されていた。
「止まりなさい!」
獣耳獣尻尾のままでいるオブリビオン達が現れた。
「猟兵の者よ、そこで引き返しなさい。さもなくばここで命を散らしなさい。」
刀とキノコを構え、脅すようにじりじりと近づく。
目の前の少女は、素面であっても逆効果であろうというものだが。
「我が身体、我が使命、我が忠義。どれだけの危機、破滅に晒されようと、ここから先は一歩も通しません、引きま―」
めきり。
シエナの肉体が変貌する。
「!毒にやられていましたか。」
「そうですね。離脱しましょう。そのような体に成れば、後は最早自滅するしか。」
距離を取ろうとするオブリビオン達。だが。
めきり めきり めきり
「自滅する……しか……」
「……………………え
…………………」
その変貌が、これまでに見た事のない程に、異常だ。
呪いの人形の如きヤドリガミの意思がそうさせるのか。身に既に或る怨念が毒と化合してそうさせてしまったのか。
シエナが でかい。
具体的には既に八メートル近い巨躯となり、手はもう地につき、四肢となって獣の如き態勢を取っている。
その顔だけはいつものシエナの顔をして、ぎょろりとオブリビオンを見据え、目の前の「素敵なお友達」に、キノコによる夥しい興奮作用を持ってすさまじい息の荒さを見せていた。
「………ひ………」
「ば……ばけ……もの……」
「■■■■■!とシエナは『お友達』候補を見て■■■■■!」
めきり めきり
シエナに秘めたる怪力が、ぼこぼこと音を立てその腕に、体に肥大させていく。
筋骨隆々、体の在り方はメスのライオンを髣髴とさせ、それでいて顔だけはいつものシエナのままだった。
体長は30メートルを超えた。
毒と己に秘めたる怨念、そしてこの戦いに持ってきたユーベルコード【お友達との楽しい遊びが引き起こす気分の異常な高揚】が、シエナの身体に奇跡的な異常をもたらしていた。
「怯むな!この程度の獣、我々も同じことができる筈だ!」
「然り!獣1体。我らが主、帝竜様に勝るはずも無し。我らがここで身を挺して食い止めるに、価して易し事柄である!」
オブリビオンは一斉に月狂茸を食した。
「あ、ぐ、ウォォォォォォォォォォォォォォォァアァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア
!!!!!!!!!!」
1体、また1体、3倍も5倍も大きくなった猫の怪物が姿を現す。
だがそれら全員、今のシエナには足元にも及ばぬサイズ。
「「「「「フシャアアアゴ
!」」」」
一斉に吠え、威嚇し、強さを見せつけるオブリビオン達。
彼女らの目の前にいるシエナは。
「 し゛ え゛ な゛ は゛ 」
最早彼女らを子猫サイズの人形としか見えない程に、巨大化し。
「 お゛ と゛ も゛ た゛ ち゛ と゛ あ゛ そ゛ ひ゛ ま゛ す゛ 」
次の瞬間、暴力の嵐が巻き起こった。
成功
🔵🔵🔴
ネルウェザ・イェルドット
到着と同時にUC発動。
ええと…姉様。もし私が暴れ出したらその時は頼むよ
頬でも何でも叩いてくれて構わないから
呼吸が要らない人形なら良かったのだけれど
生憎この身体、無駄に人間寄りに作られていてねぇ…息、止められないんだよ
という訳で呼吸は浅く、口や鼻は袖で覆っておく
戦闘は基本姉様に任せて大人しくしておこう
姉様が敵の願いに流されそうなら一回喝入れに行くよ
その時胞子を吸い込んでしまうかな
なんか耳とかそういうのが生えて来るのだろうけれど
気にしない気にしない。暴れてしまうなら取り敢えず勢いで共闘だ
最初に頼んだ事、姉様は忘れてない…はず。
ベム・クラーク
アドリブ連携歓迎です!
「獣に…。」
そもそも自分の体に毒が効くかという疑問はあるものの、ウォーマシンはどんな獣になるのでしょう。
念のため浄化フィルターとコーティングを施して向かいます。
「忠義に生きるのは人間の美徳ですが、帝竜は世界の敵です。あなたを排除します。」
忠義の獣を狩ります。【スナイパー】で四肢を狙って【部位破壊】、ミサイルの【誘導弾】とマシンガンの【制圧射撃】で釘づけにして【一斉発射】します。
【忠義に生きることへの憧れ】を使用されたら、【ベルセルクトリガー】で対抗します。
「主のためとはいえ、ウォーマシンに立ち向かうには兵装が全く足りていません。忠義だけでは無駄死にです。」
●集団戦
「現場到着。…おいで、姉様」
焦茶色の髪をした、黒いうさ耳の様なリボンが映える少女が戦場に降り立った。彼女はネルウェザ・イェルドット(f21838)
実験用にと作られていた筈の、人間型ミレナリィドール(機械人形)だ。
「…あぁ、呼吸が要らない人形なら良かったのだけれど」
彼女は早速呼び出した、同型の……『姉様』と呼ぶ戦闘人形と会話している。
「生憎この身体、無駄に人間寄りに作られていてねぇ…息、止められないんだ。…本当の人間同様に毒が効くかは分からないけれど、もしもの時は頼むよ。」
心配を露わにした動作で『姉様』と呼ばれる人形はネルウェザの顔を伺う。
「頬でも何でも叩いてくれて構わないから…うん。呼吸は浅く、なるべく覆えるもので口を覆うよ。」
そして袖を口で噛みこむようにしながら、毒が回る前、一刻も早くとオブリビオンの元へと駆ける。
道中、キノコを踏み砕き、舞う胞子には目を細めて屈み走り、なるべく風向きを『姉様』の背後でしのぐ。
「姉様、お願いね…ユーベルコードと断じるつもりはないけれど、今一番毒が回らなくて、頼りになるのは姉様なんだ。」
作り物であったものを無理矢理染めたという緑色の瞳が輝く。
彼女はもし自身が獣に成ったら何になるのか、それに意識を少し取られながらも、注意深く、不意打ちを受けないように『姉様』と共に回り、走る。
毒が回れば人形操作もままならぬ以上、ネルウェザ・イェルドットは本人での戦いを良しとしない。
戦闘は確実に『姉様』頼りになってしまう……。
「獣に、か」
彼女から少し離れた場所だ。重厚な鎧を身に纏う自立兵器が音声から、己の有機物たる獣の姿を記録に想像し、ごちた。
機体名【ベム・クラーク】(f27033)。辺境探索に特化した自機の身体は、しかし注意深く排気孔から猛毒浄化用フィルターによる気圧の膜、更に耐胞子滑降コーティングを施しての参入。
このカスタムの為にグリモアベースで時間をかけた結果、出撃が遅れる事となった。
「そもそも自分の体に毒が効くかという疑問は」
排出、剥離。地を削って自身のコーティング塗装の一部が、フィルターの防護から離れて飛んだ時だ。
菌糸が塗装の欠片に瞬く間に組み付くと、その欠片はベムに内蔵される有機・無機判別システムで「有機物」との判定が出た。
「なるほど、茸胞子による菌の繁殖で無機物も絡めとられてしまうと。対策を万全にしたのは正解だったようだ。ウォーマシンはどんな獣になるのでしょう」
その時である。前方からオブリビオンの集団が現れたのは。
「我ら、ここから先、猟兵通さぬ事を誓います。」
抜刀。その胸には月狂茸が挟まれ、豪快にかぶりついて、魅せられた者は己の獣を覚醒させる。
「帝竜ヴァルギリオス様、どうか我らが勇姿を……ウ。ググ、フギャアアァァァァァァァァァァァァ
!!!!」
「戦闘開始、忠義の獣を狩ります」
ベム・クラークの機械の身体から音を立てて次々と内蔵兵器が飛び出る。
スナイパー・ライフル、ミサイルポッド、制圧用に2連で横並んだマシンガンが、獣人と化したオブリビオンに一斉に向けられる。
マシンガンの容赦無き絨毯乱射が戦場を襲う!
「フギャアアアオ!!」
弾丸を飛び潜り、爪と刀の二重攻撃で迫るオブリビオン!
ベムはその四肢に、的確にスナイパー・ライフルを放つ!
「ギャアアアア!!」
肘、膝、手首、生物が動くべき四肢の関節が澄まし撃たれた銃弾によって破砕していく!
「アルジサマノタメ、コノミ、ドウナロウ、トモ……!」
1体のオブリビオンが銃弾の中を力任せに突撃!
「アラート、ロックオン、筋力のデータを視認部分で予測、1体につき2発だ。釘付けにしましょう」
ベムから放たれるミサイルがどてっぱらに直撃!
「フギャアアア!!」
衝撃で吹き飛んだ所に、追い打ちの2発目が空中発破される!
「アアアアアア!!!」
「ヒ…怯むナ!陣形を整エ!彼奴は砲者、釘付けになったのは敵の方ヨ!」
無数とも思える程に続くマシンガンの制圧射撃にも怯まず、残りのオブリビオン達が密集し、各々で刀を構える!
それらの刀は火、水、風、雷、土などの属性を纏い、重火器に忍びの属性術で対抗しようとしている。
「データには忍術・剣術を使うと記載。現敵、それを全て刀剣による攻撃で発揮するとの仮設を建立。投網・爆弾等の対抗も用意してきたのだがな…期待外れだったようだ」
ベム・クラークも内蔵兵器を更に露わにした。その場で目立つのは弾丸だった。
装甲の隙間の至る所に仕掛けられた無数の弾薬が、今までの兵器に一気に装填される。ここで勝負をかけるつもりだ。
「【ベルセルクトリガー】発動 // 【ベルセルクトリガー】発動 // 本機体は最終武装モードにて殲滅を開始する。」
「「「「ウオオオオォオオ
!!!」」」」
「忠義に生きるのは人間の美徳。ですが、あなた達が従う帝竜は世界の敵です。排除します」
BATATATATATATATA!!!
「排除します」
戦場に凄まじい土煙を発しながら、兵器に発する高熱処理すら物ともせず、ベム・クラーク一斉射撃が襲う!
「「「フ、ギャアアアァァ
!!」」」
属性を纏った突撃は、弾丸の暴力、炸裂する爆発の暴力、ウォーマシン(戦争兵器)のもたらす無差別にして暴威的な破壊の中で、無力にも散り、破砕していく!
戦場にオブリビオンの屍が1体、また1体と作り上げられていく……!
「主のためとはいえ、ウォーマシンに立ち向かう為の兵装が全く足りていません。あなた達の敗因は忠義だけで戦いの全てを貫こうとした事。以て、無駄死にです」
BATATATATATATATA!!!
この場全てのオブリビオンの屍が積み重なっても、この弾丸の暴力は尽きない!
屍、屍なのだ。それすらも微塵の砂に変えんと、この場の胞子の毒を全て焼き尽くさんと、最終武装モードは止まらない。
「! 異常発生、回避行動を、否、この程度の力に押し負けるつもりは、ないが、これは」
屍、屍なのだ。
突如として屍の山が、ベムに向かって動き出したのは。
「フルルルルルゥ……」
異常ではない!これがオブリビオンの!忠義を以て選択した作戦!
弾幕を己の身の死体で重ね、壁として防いでいる!
当然屍の山の向こう、ベムと反対側の先には!
「ブゥゥゥゥゥ!フシャアアァァァ!」
今まさに壁ごとベムに刀を突き立てんと、新たに加わった獣人オブリビオン達が力任せに押している!
そうだ、ウォーマシン。異次元の兵器が現れ、対処にやって来た時、掠め手では通じぬとした彼女達の力の知恵!
今、彼女達は月狂茸の強化と、【不利な行動の為に増大した力】が宿っている!
オブリビオンの死体の壁が、今なお爆発し続けるミサイルの嵐に滅び切るのが先か!
「熱源探知、該当死体の幾つかを跨いで突撃体制で迫る対象、複数。回避行動を、否、攻撃に裂き過ぎて直ぐ脚部に力を加える事は、!」
壁越しの刀に光が宿る。
今まさにオブリビオンの、レーザーの様な光の居合が筋力任せにベムを切り裂こうとした。
その瞬間!
「(『姉様』)」
「ッギニャア!!」
屍の壁から更に背後、彼女達に突き立てられる剣。
「(先に来た猟兵かな?いい感じに釘付けになっていたみたいだ。…忠義に生きる君達は卑怯と思うかな。ごめんね。)」
戦闘人形の『姉様』が、不意喰らった彼女達に激突する。
「フシャアアア!」
刀を剣でいなし、銃弾が胸を貫く。
放たれる手裏剣が『姉様』の銃撃で落とされると、それを縫ってって突撃、刃を突き立てる。
ネルウェザはポーズを取り、まるで操り人形の如く『姉様』を指示、戦わせる。
それはおどろおどろしい群毒の生地でさえも美しく舞い続ける戦闘舞踊。
「(さあ―【愛おしき最高傑作(メルル・メイフ)】)」
『姉様』が跳んだ。
「ブニャアアァァ!!」
がら空きになったネルウェザに猫獣人が突撃する。
「(いこう)」
開いた空間に、天からの銃撃の雨。
「ガッ、グ、ギャアアァァァ……!」
空に輝く白き『姉様』の人形は、的確にオブリビオンの脳天を撃ち抜いていった。
「ありがとう。感謝する。大口径レーザーが必要だったか」
「…ん。」
ネルウェザは喋れない。喋れば毒を吸い、どうなるか分からないからだ。
「引き続き補助を頼む。熱源反応多数。第二陣が……なんだ、あれは!」
今の戦いにつられて獣人達が現れる。
「……!?」
だが……ベムでさえも驚きを隠せぬ恐るべき影が、その背後にあった。
「まだです。まだ私達は―」
「この身滅ぶとも、必ずや帝竜様には一歩もももももも」
破砕。オブリビオンの下半身が瞬時に消し飛ぶ音。直後に上半身も吹き飛んだ。
一瞬の暴力であった。傍目にはただの獣のフックだ。
「 し゛ え゛ な゛ は゛ 」
巨大な何かがそびえたっていた。
「 し゛ え゛ な゛ は゛ お゛ と゛ も゛ た゛ ち゛ と゛ あ゛ そ゛ ひ゛ ま゛ す゛ 」
人形の様な顔、それ以外は超巨大で、荒れ狂う大蛇を思わせるような筋肉が体中に這った、白き壁とも思わせるような、メスのライオンの体躯。
サイズは最早戦場の全てを飲み込まんとするほどで。
「 し゛ え゛ な゛ は゛ 」
美しく明るい翡翠の目玉が、ネルウェザ、『姉様』、ベムを見やる。
「 し゛ え゛ な゛ は゛ あ゛ た゛ ら゛ し゛ い゛ お゛ と゛ も゛ だ゛ ち゛ に゛ か゛ ん゛ き゛ し゛ ま゛ す゛ 」
その顔が仰々しく、大きなしわを寄せて微笑むと。
「しまっ―『姉様』!」
「緊急回避モードに移行!」
間に合わない。本人はハグを試みたつもりで放つ、両前足のプレスが―。
「危ない!」
轟音、鳴り響くと同時に衝撃波で周囲のキノコが爆散する。
●それは本来、ありえなかったはずの作戦。
「大丈夫ですか!」
「っ…ここは、っ!」
目が覚めたネルウェザは、はっとなって口を塞いだ。
「うっかりした。毒が、体に…!いや、『姉様』だ。『姉様』は今どこ…うっ!?」
耳を、撫でられた。
白い人形が、興味深げにネルウェザの耳を。新しくできた頭の猫耳を撫でている。
「…無事だった…いや、『姉様』、待って。…なぜそこを撫でられるとくすぐったいのだろうな。」
「ひとまず、こちらは回収完了か。いや災難だったね。」
そちらの声の主は、オブリビオンとは一回り小さい猫獣人。ケットシーだ。
後ろには緑のキツネと、茶と白の混ざる隼頭のグリフォンのようなのがいる。
グリフォンは「私が運びました」と言わんばかりの自慢顔だ。そういう事なのだろう。
ケットシーが歩み寄る。
「私は箒星・仄々。…ああ。ここで戦っていた猟兵だよ。敵じゃない。いささか大変な事になっていたのだがあるブラックタールに助けられてね。」
「……。」
「いや、喋ってもいい。私の風を今は分けるし、もうすぐで彼女が帰ってくる筈だ。……その、ちょっと辛い目に逢うかもしれませんが。」
「…大丈夫、なのか?これ以上は毒が回らないと?」
「そういう事になります。そして力を貸して欲しい。『シエナ・リーレイ』という、暴走猟兵の鎮圧に」
「『シエナ・リーレイ』……さっき見た巨大な白猫のようなの、もしかしてあれかな。」
「はい」
「ここは」
ふと見渡すと、その地は真っ白な森林だった。
やや灰がかった色の木々と、どこまでも続く白い大地。地面はぱっと見ツルツルしているようで、蹴るとそれなりに凸凹しているのが分かっ……ん?
「木々……いや、違う。これは、そうなのか?『毛』…なのか?」
「……ええ。」
苦々しく首をもたげる仄々。
「オブリビオンを殲滅するために、ヤドリガミの少女『シエナ』はあえてこの場のキノコを過剰摂取する道を選んだようです。それが…彼女の何かと合致して…オブリビオンのような、巨大な獣になりました。」
「…肥大化にしても度を超えている。」
「このままでは万毒の群生地を暴れ回り、戦場そのものを潰しかねない。そうなる前に食い止める為、まずはシエナの身体の上に君達を運び、乗せました。」
「今の私達はさしずめ―」
攻撃の衝撃で倒れていたベム・クラークが再起動して起き上がった。
「回路内部に混入した虫。アース的に言う所の『猫の皮膚に入り込んだノミ』という所か?」
「変な言葉だねそれは。でも的を得ている気がする。……大丈夫?」
「軽傷、大丈夫だ。少々獣が入ってもよかったと今思うが、まあ問題ない」
すると青いハーピーのような鳥に乗って、ブラックタールが飛んできた。
「あぁ、無事だったようだね。…新顔かな?」
「ああ。こちらはこれで最後のようだが、そっちは。」
「こっちもこれで。というか、途中からはぐれちゃいまして。すたこら逃げるから大変でした。」
「こやあぁ!…こやあこやああぁ!私死んでません!?まだ大丈夫ですか!?これ夢とかじゃないんですよね夢であって欲しいんですが!」
ブラックタールの腕に抱えられじたばたしている、白い狐の獣人がいた。
「いやいや夢じゃないんだよ。君だってもしかしたらこうなっ…可能性の話は今やめておこっか。」
彼女は羽生。管狐使いの女子高生である。
「それとちょいとそこなお3人…じゃないね2人でいいのかな。ほーい」
「えっ、何…んぐっ!?」
「ごめんねこれ以上暴走者でると危険だからねまたちょっと悪い事するよー」
ネルウェザの口にブラックスライムが躊躇なく流し込まれる。
ベムには回路の中を這うように、黒い何かが再コーティングされていく。
「これ、は、粘液?大気中の胞子の活動が、止まっていく。」
「うん。私こと黒玻璃・ミコの特製抗体ですねー。今は時間が惜しいので理性を戻して進行を止めるだけですが。皆様には実験おっと。注ぐことによりもうキノコに悩まされることは無いという。」
「ぐっ…何とも言えない、味だね。…『姉様』?飲みたいの?」
自身がされた腹いせか悪戯に残ったスライムを『姉様』に運ぶ。さすがにいやいやしたのを見て引っこめると、ネルウェザに生えた黒猫の尻尾も安堵したように動く。
「そろそろ作戦といこうか。」
仄々が割り込んだ。
「私達はこの暴走猟兵『シエナ・リーレイ』を取り戻す。黒玻璃さんのいう所では、この巨大な皮膚は全部月狂茸による粘菌が皮膚で出来たものらしい。」
「こやあぅ?」
緑の狐、麻弓が割り込んで何かを話す。「神経繋がってないんですか?気持ちよく暴れているのじゃなくて?」みたいな。
「ああ、いや、彼女の意思で動かしてはいると思うのだけどね。故に中枢神経となっている…本体が体のどこかに埋まっているはずなんだ。」
後はそれを探すだけ。あの不気味な顔の事もあり、頭部であるとは勘を入れているが。
「それならば、私がやろう。こう見えても私は、辺境探索用に製造されている。このように」
ベムが割り込み、身体の中から何かを取り出す。
ドリルをはじめとする土木用の機械が、ずらりとその場に展開された。
「拠点作りからトンネル掘りまで。専門ではないがバイオ(生物)サーチも可能。実際に近くまでくれば、詳しい座標を突き止められるだろう」
「そして最後の仕上げとしてボクがー。それとこの狐さんが役に立つというわけですな」
ミコがスライムの腕を作り、持ち上げたのは羽生。
「こやっ!?わ、私ですか!?」
「そのシエナってヤドリガミさんは怨念めいたもので動いてるみたいで、ボクの力の領域外にあるかもしれないんだ。…でもキミの管狐の祟りパワーなら、アレに近い気がするんだよね。最後の引っ張り、やってくれるかな?」
「え、え、え無理ですよぅ!こんな揺れる所で、しかもそんな…怨念って、祟りに祟りで対抗するって事ですか…!?」
「そうなるねー」
「そんな!」
「仕事外業務だから、特別ボーナスも出るのは難しそうだねー」
「こやっ!?や、ややややっぱり戻りま」
「でも今この状況で無事に転送してもらえるかな?」
「こやあぁ!?」
管狐達もくぉんくぉん鳴いて、羽生をたしなめる。「その姿は惜しいけど覚悟を決めえや」みたいな。そんな言葉が聞こえてしまいそうな程に、羽生のマズルな口を舐めたり、ぽふりと前足を乗せたりしている。
「きゅーん…」
青いハーピーも同意を促しに行く。否。その瞳は自信に満ちていた。
「…水織、さん?…足止めは私達に任せて、って…」
「ああ、それで私は彼女の護衛といったところかな?…うん。猫耳もなんだか慣れてきた気がするし。」
ぐいっとネルウェザが羽生の顔に近づく。
「こやっ!?」
「いいかい。君はここで離脱することも、反抗することも自由だ」
「え、…えっ?それはその、ここから降りてもいいという…」
「そうだ。かつての私の様に、嫌な事があったらいつでも逃げ出す権利は、誰にでもね、誰にでもあるんだ。」
「………そ、そんな話、この流れでされても。」
「いいかい。重要な事だ。君は逃げ出してもいい。でも『なんで猟兵になったか』なんだ。」
「…わたしは、バ、バイトなんですっ。こんな大役をする為に来たわけでは。」
「くすっ、そうなんだ。凄いね君は。」
「へ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「オブリビオンを倒すのは大役ではないんだ。人に害を成し、世界を壊す脅威よりも、目の前で獣の皮を被った女の子一人助けるのは、それよりも難しい事だったかな?」
「―っ!?」
「簡単な事から始めよう。」
ポンと羽生の背中を押して、最早毒を気にしなくなったネルウェザと『姉様』は行く。
「土地を壊すだけの世界の脅威、君の祟りならすぐに終わる。すぐに終わるんだ。…さくっと行って。何なら後でバイトの打ち上げとしゃれ込もう。じゃあ、行くよ。」
「…お、オブリビオンじゃないなら、簡単……」
そうして羽生が見上げた先は、ぎょろりと動き、地上を前足で叩きのめすシエナの姿。
だがここでもう覚悟する時間は過ぎた。各々が動き始め、後ろに回ったグリフォンが羽生を啄み、背に乗せて…!
「こやぁ!も、もう、こうなったらヤケですようもー!グリモア猟兵さんに特別ボウナスおおぉぉこやぁーーーん!!」
●ボス戦
「 し゛ え゛ な゛ は゛ 」
大地をえぐる一撃が。
「 し゛ え゛ な゛ は゛ 」
地面に居るオブリビオンを残さず蹴散らしていく。
一瞬の暴力で、塵も残さず消えていく、オブリビオン。
この戦場の上、魔獣シエナの身体の上から、影が飛び立った。
「クエーッ!(頭の経路までは任せてーっ!)」
グリフォンとなったこのはが、風纏い、低空飛行でシエナの頭まで飛ぶ!
「 し゛ え゛ な゛ は゛ 」
「キュオーッ!(悪いけど、じゃれるのは一旦ストップしてっ!)」
ウィザードロッドでなくかぎ爪からで勝手が違うが、青きハーピーと化した水織の粘着弾が口から、爪から、魔術で練り上げ放たれる!
「 し゛ え゛ な゛ は゛ あ゛ た゛ ら゛ し゛ い゛ お゛ と゛ も゛ だ゛ ち゛ と゛ じ゛ ゃ゛ れ゛ あ゛ い゛ ま゛ す゛ 」
じたばたと恐ろしい暴力の獣の手は、トリモチにやられて地にへばりつく!
だが恐るべき筋肉には時間の問題か…いや!シエナの前足の地面には!
「キュウゥーッ!(あーっ!それ私の!)」
粘着液が垂れ流されたままのウィザードロッドが、トリモチの沼を形成していた!
「フイイィーン!(あ、後で取りに行かなくちゃ…!)」
「クエエーッ!(身も心も隼体験なんて初めてかも!ちょっと気前よく、分身の術ー!)」
このはがシエナの恐るべき頭上に到着すると、3体に分身!
そのまま渦を巻き、ドリルの様に回転し…!
「クエーエッ!(まずは一撃!ここからベム!お願い!)」
急降下のドリル台風がシエナの脳天に突き刺さった!
「 し゛ え゛ な゛ は゛ !゛ 」
恐るべき速さで頭を回転、振り払おうとする!
「しっかりつかまってください。私は、ドクターマシーンではありませんが、あえて、手術の様に言います。粘菌という名の頭皮を、切開。」
このはが付けた傷穴をミサイルで爆破、アンカーを取り付け、土木マルチアタッチメントで掘削していく!
「…!来ましたよ」
仄々がこのはから降りると、皮膚を縫って現れる者がいた。オブリビオンだ!
「我が忠義…屈せぬ!ここで、このような形で終わってなるものか…!」
だが彼等とて恐らくこの妨害が来るであろう想定はしていた。そのための護衛役!
「この獣は、暴走させる!万毒の群生地の新たなる守護者となれば、最早この地を通れる猟兵無し!」
オブリビオンは月狂茸を食べ、獣へと変質、……来る!
「ネルウェザさん!」
「ああ、大丈夫。いこう『姉様』」
ネルウェザの剣が、仄々のナーゲルが、風を纏い、シエナの樹木の如き毛を切り裂きながら、オブリビオンに突撃!
その瞬間、地に刀を突き立ててオブリビオンが吠えた!
「キケェ!リョウヘイタチヨ!ワガチュウギ、サイゴマデツラヌカス!」
「何を…」
「ワガジンドウ、ホコリノタメ、サイゴマデノコリシワレワレト、1タイ1でケットウシテモライタイ!」
「!!?」
これは!オブリビオンのユーベルコードか!?
「まるで往生際の悪い…時間稼ぎといったところですか!」
見ればオブリビオンの数は少ない。ここが最終波といったところだろう。
「そんなものに今付き合ってる暇は…『姉様』?」
『姉様』。誇り高き騎士の如きその振る舞いに、ただ一人、突き動かされる。
「『姉様』、飲まれちゃだめだ。恐らく流れを掴んだ方が強いタイプだよあれは。」
だが、だがしかし、『姉様』は喋らず、剣を縦に構えて進撃する。
「自身を大事に…いや、無謀な突撃でここまで来たのなら…地上がああであれば…」
必死に否定の言葉を想う仄々と裏腹に、1対1の形式が整っていく。
「なんだ、この雰囲気は…」
参道人数は『姉様』の一人。
だがその願いに応じて、敵の、オブリビオンの士気が上がっていく!
―その時!
「きゅわわわうーんっ!」
「緑色の…狐!あれは!」
仄々は思い出す。
麻弓の電撃の範囲を。あの雷はどこまで届くかを。
「―危ない!」
素早く身を挺して姉様とネルウェザを庇う!
緑の狐の口には、最大出力のライフルが咥えられていた!
「こやーーーんっ!!」
「ふぎゃああああああーっ!!」
巨大な電撃が、シエナの皮膚ごと敵を、焼き切った…!
「熱源サーチ成功。やはり頭の中。このままいけば…何!」
頭の皮膚を掘り進むベム達!その周囲の皮膚が、菌糸が、壁の如く迫りくる!
「粘菌が、増殖、している。まずい、『シエナ』に、取り込まれるのでは。」
「位置は分かったんだね?」
「ここから後100メートル先に」
「おっけー。じゃあ私の出番だ。…出来るだけボクを見ない事をお勧めするよ?」
「…こゃ?」
ミコの身体が異形の蜥蜴に、毒を纏う極黒の怪物へと変貌していく。
「筋肉神経、幻覚、同じような獣の毒、洗脳毒、中毒、凝結毒!…ふふふ、今現在でおよそ29の毒。君の毒でおよそ30になるかな。ボクの毒の力が、キミの獣の毒にどこまでやれるか!実験してやろうじゃないか!」
黒い力が、シエナの中で渦巻いて、菌を、別の菌が、毒が練り混ぜられ…腐食していく!
「む、う!?機内回路が異常、暴走域まであと…待て、その毒が私のフィルターを…!」
「細かい事いうんじゃなーいの!ほら、溶けて来た、あと少しだ。羽生!」
「こ、こゃ…!」
タンブラーを、見えた、少女、シエナに向けて、放つ!
「…そうですよね」
シエナの恐るべき怨念が、飛ばされた管狐の祟りで中和されていく…。
「この戦いが、まだオブリビオンより楽なのかどうかは、分からないけど…!」
人形のように眠る少女に、手を、伸ばし。
「(バイト)仲間が帰ってこなくなるのって…よくない事ですから…!」
掴む!
瞬間、爆発。
シエナが本体を引きはがされ、ミコによる抗体が注入、菌糸が破壊されると。
魔獣シエナは恐るべき轟音と共に、まるでそこに無かったかのように姿を消した。
●―機械でも、夢は見るのか。
破壊される衝撃で吹き飛ぶベムは、着地時までに映像を見た。
この場に至るまでに見た、大破した輸送船からこぼれた宝石の川。
天の川ににた、きらめく宝石の―。
「回路修復、完了。完了。……ここは?」
ベムの意識が戻った時、その戦場は荒廃としていた。
高所から落ち、転送されていく者達。
オブリビオンはシエナの暴力と、先程の電撃によって、最早見る影もなく消え去った。
任務、完了である。
「ひん、ひん…」
「うまくできたじゃないか。」
「こゃぁ、こんなのもうこりごりですよぅ!」
「それでもまた、何かあれば来るんだろう?」
「うっ…まあ、とりあえず」
両手で抱えた、意識をうしなったヤドリガミの少女を見る。
「しえなは…おともだち…つく…うにゃ」
まるで眠っているかのようなそれは、今日助けた命だった。
「あっ、あったー!」
羽毛がそぞろに抜け、遂に言葉を放せるようになった水織がウィザードロッドを回収すると。
「…あれ?ここ…菌糸の布みたいなので、おおわれっ、んんっ」
「―!」
ベムは見た。日に輝くそれを。
月狂茸のカーペットから、トリモチで遂に引きはがされた下にあるそれは。
「宝石の、川……」
戦場の見渡す1か所、そこに大量の宝石トリュフが輝いた。
月が落ちれば日が昇る。万象に輝くその光景。
猟兵達がこの先の戦争へと繋げ、続く、光の川。
「あれ?ベムさん?でしたっけ?それ…」
「いえ、泣いてなどいません。いませんがこの光景は保存しました。それでは―」
「そうじゃなくて、えっ泣いてたの!?…じゃなくて、その頭!」
水織にさっと手鏡で、見せられる。
「?…私は、ネズミ、だったのですか。」
どんな極限の地でも繁栄し、生き延びる。人が猿の前に元となったと言われる哺乳類、げっ歯目の代表。
ベムの頭部には今日一日、ネズミの耳が生えていた。
成功
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