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帝竜戦役①~その狂気を断て!

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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「うかつ、ね……エエ、とテも……フフ、ふふハハはははハ!!」
 狂気的な笑いをあげて、オブリビオンが炎の魔剣を振るう。切先の先にいたのは、疲弊しきってろくに身動きが取れない猟兵たち。

 過酷な作戦の中、戦略的な撤退をしていたところでの遭遇戦。不運だったのは、相手がとても『悪食』で、それでいて『理性がぶっ飛んでいる』ことであった。猟兵からどんな攻撃を受けようと、オブリビオンが追跡を止めることは無い。

 切先が猟兵たちへ襲い掛かる。それを唯一動けた猟兵が『鉄壁の防御でダメージも無く受け止める』。直後、その猟兵が糸が切れたように崩れ落ちた……魂を啜られて。
「アアアアア、とっテもイイわ、精霊タチよりモ、トてモ!!」
 オブリビオンがあげるのは、恍惚にして歓喜の雄たけび。

 魂喰らいの森。その森の番人と化したオブリビオン『精隷使いニクス』が猟兵たちの魂をすすり切る。それは避けられない事実であった。


「私が見たコレは予知なのか、あるいは起こり得る可能性のひとつなのかはわからないけど」
 緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)が力強い視線を猟兵たちに向ける。
「確かなことは今動けば確実に防げる、ってことよ」
 アックス&ウィザーズで始まった『帝竜戦役』。カタストロフが起こる前に『帝竜ヴァルギリオス』を倒すには、まず群竜大陸を攻略しなければならない。
 その群竜大陸の入り口に位置する『魂喰らいの森』。『生物の魂』を喰らう動植物の生えた森なのだが、ここには『森の番人』と呼ばれる存在がいる。
「簡単に言うと、この森に魂を喰われてしまったオブリビオンのことなの」
 そして魂を喰われたことで森に隷属している存在でもある。
「森の動植物と一緒で、出会った生物の魂を喰らうのね」
 森の番人となったオブリビオンのユーベルコードには『魂を啜る効果』が加わる。ダメージが無くともユーベルコードに触れれば、その魂を啜られてしまうのだ。
「ニクスは、魂を喰われ、生物の魂を啜る力を得たことによって、『狂ってしまった』わ」
 元々、鳥籠に捕えた炎の精霊を隷属させ、酷使する存在ではあったけれども。森に隷属したことで、精霊の魔力以外にも、魂という魔力源を得てしまった。
「いずれ尽きるであろう精霊の代わりになる魔力を探していたのね」
 ずっと見つからなかった代替魔力。それを見つけたこと、そしてそれを啜る快感に恍惚を覚えてしまった。結果、今のニクスは生物の魂を狩るだけの存在と化している。事実、魔力の燃費から考えれば、精霊よりも格段に効率が悪いというのに。
「魂に固執するがゆえに、魂を持つモノを見つけたら、どこまで追いかけてくるわよ?」
 戦争の作戦中にそんな敵を相手にしている暇はない。今のうちに叩くのが得策なのだ。


 通常のニクスなら、使用するユーベルコードに注意すれば戦いを優位に進められる。しかし、今回厄介なのは魂を啜る効果とニクスの執着心だ。
「防御しても、その武具や道具が肌に触れている限り、魂を啜られるの」
 そしてニクスは『倒すことよりも魂を啜ること』の方が重要だ。そのため、ニクスは『当たれば勝ち』という考え方で、命中精度をあげる努力をしたり、不意を打ってきたりする。
「回避できれば最高なんだけど、そうじゃない場合は『楽しい思い出を強く心に念じて』」
 戦闘の最中に難しいかもしれないが、『楽しい思い出を強く心に念じる』。これこそが魂啜りに対抗する手段なのだ。成功すれば魂啜りを無効化できる。
「それができれば、後は普段の対オブリビオン戦よ。皆が遅れを取ることは無いわ」
 それは冬香の確信にして、猟兵たちへの信頼である。

「そうそう、戦闘には直接関係ないんだけど」
 と冬香が話し出したのは、戦闘後に得られるかもしれない財宝のことであった。
 『魂喰らいの森の核』。森の番人と化したオブリビオンの中に生成される、最高級の牛肉の味とサボテンの果肉のような食感を持つ球形の核である。半径25cm程度で金貨500枚(500万円)くらいの価値がある。
「もし見つけたら、拾っておくと何かの役に立つかも?」
 戦争に直接役に立つかどうかは別にして。

 全てを伝え終えた冬香が猟兵たちに笑顔を送る。
「それじゃ、皆よろしくお願いね」
 そう言って冬香は猟兵たちを送り出すのであった。


るちる
 こんにちは、あるいはこんばんは。お世話になってます、るちるです。
 やっぱり5月は戦争マンスリー。用意していてよかった。

 そんなわけでいつもの補足でございます。
 このシナリオには特別なプレイングボーナスがつきます。
(=============================)
 プレイングボーナス……楽しい思い出を強く心に念じ、魂すすりに対抗する。
(=============================)
 というわけで、魂すすりに対抗するためにも、ぜひプレイングにお書きくださいませ。

 戦闘場所は森の中となります。障害物などデメリットは存在しません。森ごと焼いてもいいけど、目的はニクスを倒すことです。彼女を逃がすとダメですよ?

 財宝については、ニクスの体を潰したり、消滅させたりしない限りは残ることとします。というか、これ何に使うんでしょうね?

 あとはやりたいことをプレイングにお書きくださいませ!
 それではお待ちしておりまーす。
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第1章 ボス戦 『精隷使いニクス』

POW   :    ムスペルの巨人
自身の【捕らえた精霊の思考力】を代償に、【作り出した巨大なゴーレム】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【燃え盛る両腕】で戦う。
SPD   :    魔剣レーヴァテイン
【捕らえた精霊の記憶力】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【炎を纏った大剣】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ   :    スルトの焔
自身の【捕らえた精霊の生命力】を代償に、【指先から凝縮された熱量】を籠めた一撃を放つ。自分にとって捕らえた精霊の生命力を失う代償が大きい程、威力は上昇する。

イラスト:Moi

👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はネージュ・ローランです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天星・暁音
大切な人と生きる世界は楽しいよ
過ごした時間もこれから過ごす未来さえも想像すればそれは何時だって全てに立ちむかう力になる
過ごした時間、先の未来、それらを吸い尽くせると思われるのは腹立つね
やれるもんならやってみるといいの
大切な人がくれた宝物(星屑の光明)といっしょにあるのだから楽しい心は何時だって思い浮かぶのだから

水晶華を操り集めて防御したりしつつ切り裂きます


テラ・ウィンディア
妹や姉との冒険の記憶
一緒に野営を行った記憶
そんな楽しい思い出をしっかりと心に刻む

精霊をもてあそぶか
シルが起こるだろうし
おれも炎や大地にいつも力を借りている

ならば
隷属の愚かさを教えてやろう

【戦闘知識】
で敵の動きと詠唱からの攻撃の癖を把握
そして周辺の状況確認
【属性攻撃】で炎を全身と武器に付与

成程な…お前はシルやおれとは大分違うタイプか
ならば…一つ証明してやるよ
おまえのやり方じゃ勝てないってな

【見切り・第六感・残像・空中戦】で空を飛び回りながら敵の猛攻を回避し
槍による【串刺し】
【早業】による剣と太刀による猛攻
そして属性攻撃で強化した紅蓮神龍波発動
全身を焼き尽くしにかかる
炎の龍よ…力を貸してくれ


アキカ・シュテルア
転送直後に夜明紫電を背丈の半分程まで巨大化させ、「ジャンプ」した勢いを利用して「なぎ払う」ように振るうことで【塗料】をニクスに向かって飛ばす
飛ばした【塗料】でニクスの攻撃を相殺することも視野にいれる

戦闘中には今までに訪れて楽しかった風景・場所を思い浮かべる
「UDCアースにキマイラフューチャー、アルダワ学園……依頼で行くことが大半ですが、それでも記憶に残っている場所はありますから。」
「勿論この世界にだって思い出の場所はあるのですよ。」「例えば、拠点の周辺とか。その場所を失いたくはないのです。」


ナギ・ヌドゥー
オレの様な穢れた魂をも啜りたいのか?
悪食にも程があるぜ

触れられるだけで死に直結するなら距離を取るしかない
対抗策は……楽しい思い出を念じる?
咎人共を嬲り殺すのはこの上なく楽しい遊戯だった
恐怖を知らなかった極悪人が泣いて許しを請う姿は何より愛おしい
奴等の断末魔の叫びを聴く時はいつも絶頂していた
アンタも聴いてみるか?
ユーベルコード「咎鬼怨魂」発動
咎人共よ、哭けい!
同時に掌に【呪詛・殺気】を込め【呪殺弾・制圧射撃】の光線弾幕で攻撃

アンタは死に際にどんな貌で哭いてくれるんだ?
早くオレの楽しい思い出になってくれ


オウカ・キサラギ
魂啜りにハマりすぎて飲み込まれたって感じかな?
食べすぎてお腹壊すのに似てて不謹慎だけどちょっと笑っちゃうな
でも自分だけが笑顔のご飯じゃ本当の幸せを得られないよ!
大切な仲間や家族と食べるご飯の楽しい思い出は魂啜りなんかより絶対に強い!

敵が剣を使うならこっちも双短剣で戦うよ!
大剣なら小回りが利かないだろうから【ダッシュ】【ジャンプ】【見切り】を駆使して【2回攻撃】で防御を崩してからの攻撃でダメージを与えていく!
敵が焦れて大振りの攻撃で逆転を狙ってきた時が最大の好機!
大きく後退して距離を空けた後に【指定UC】で頭を【スナイパー】で狙撃する!
核を見つけたら戦争に勝った時の祝勝会の資金にでもしよっかな!


御狐・稲見之守
ワシはかつて人喰い魂呑みの外道と謳われるモノノ怪であった。黒い大狐姿……ある時村の子供達に請われ、その姿を見せた時は怖がるよりもカッコいいなどと面白がってくれたナ。ふふっまったく、子供とはよぅわからんのじゃ。

さて、これはまた……ふふ、ワシにおあつらえの奴じゃナ。

[UC化生顕現]、人喰い魂呑みの外道たる大狐姿となって彼奴に喰らい付こうか。[催眠術][呪詛][精神攻撃]――"汝、動くことなかれ" 彼奴を金縛りにしてやったらば、[生命力吸収]でその精気、そして魂を啜ってやろう。

ああ、此奴よりもよく知ってるさ。魂を啜るってのがどういうことか、な。


御桜・八重
【POW】

「楽しい思い出かあ」
思えば小さい頃から今まで沢山ありました♪
そう言や昨年のクリスマスは冬香さんとパイ投げしたっけ。
盛り上がったねー♪(衣装の悔しさは忘れた)

これからも楽しい思い出はいっぱい作っていきたいね。
だからこそ、人を不幸にするのは許せない。

「あきらめちゃダメだよ!」
捕らわれた精霊に気をしっかり持つよう呼びかける。
思考力が無くならなければゴーレムの力も弱くなるはずだけど、
それよりそんな酷いことをするなんて許せない!

「いざ吹き荒れん、花嵐!」
闇刀で燃え盛る腕を受け流し、そのまま踏み込んでニクスに迫る。
「その子をはーなーせーっ!!」
神速の八連撃でニクスを切り裂き、精霊の籠を破壊する!




 群竜大陸、魂喰らいの森。
 グリモア猟兵の転送によってその地に降り立った猟兵たちは目配せした後、素早く行動に移る。目標はこの森の番人と化した『精隷使いニクス』の撃破。帝竜戦役の後顧の憂いを断つ作戦である。


 その瞬間はすぐに訪れる。

 目標を視認した後、アキカ・シュテルア(グリッタークラフター・f09473)は素早く跳躍する。同時に手にしている丸筆『夜明紫電』を背丈の半分ほどまで巨大化させながら。
「はっ!」
 ニクスがアキカに気付くよりも早く。跳躍の勢いを利用して、なぎ払うように振り抜かれた夜明紫電の筆先から放たれるのはブルーブラックのインク。

 ――精霊が悲鳴を上げる。

 弧を描いて飛ぶインクの一部が蒸発する。それはニクスが精霊から吸い上げた生命力を変換した焔の一撃。ちょうどニクスに当たる部分だけが消し飛ばされ、アキカの【グラフィティスプラッシュ】は地面を染め上げるに留まる。

 転送直後からの奇襲はアキカの作戦。ダメージを与えることはできなかったが、しかし、奇襲は成功だ。何故なら、アキカがニクスの注意を引き付けている間に、仲間たちが既に戦闘態勢を整えている。

「導きの星よ。数多の希望という薄明かりを、夢という心の剣を集いて固め成せ。須らく暗闇切り裂いて、我が紡ぐは星命の旋律!」
 天星・暁音(貫く想い・f02508)の声が高らかに詠う。暁音が手にしていた扇が、神楽鈴が、星光で七色に輝く水晶の花びらに姿を変える。ユーベルコード【清浄たる恩恵・星華繚乱】。それは人々の夢と希望を集め、暗闇の様な現実を切り開くための、星と命の鼓動の具現。
「星よ、舞え!」
 暁音の意志に従い、水晶の花びらが嵐となって、ニクスの体を切り裂いていく。

 ――精霊が悲鳴を上げる。

 ニクスの指先から放たれる焔の一撃。それが水晶の嵐を破壊せんと放たれる。
「くっ!」
 咄嗟に水晶の花びらを自身の前に集め、華の形に展開。炎を受け止め、弾き返す暁音。どうやら、手から離れている武具なら魂啜りの効果は及ばないようだ。

「さて、これはまた……ふふ、ワシにおあつらえの奴じゃナ」
 ニクスとその攻撃が自然と放つ炎の残り香。それを火炎耐性で振り払いながら、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)が霊符を飛ばす。次なる焔の一撃を放つ暇など与えぬと放った霊符。

 ――精霊が悲鳴を上げる。

 直後、ニクスのその手に炎を纏った大剣を生み出される。それは精霊から奪った記憶力を糧とした殺戮の剣。稲見之守の霊符を切り捨て、近くにいた猟兵に向けて炎の魔剣を振りかぶる。
 しかし、その一撃は猟兵の掌から放たれた光線に剣ごと弾かれた。
「オレの様な穢れた魂をも啜りたいのか? 悪食にも程があるぜ」
 冷静に、戦況を見極めていたナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)のひと言に、再び戦場に緊張が走った。


 ニクスと猟兵たちが睨み合う中。

 アキカ、暁音、ナギとの攻防を観察していたテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は唇をかみしめていた。
 ニクスの攻撃の際、精霊たちが悲鳴を上げている。それは精霊の力を搾取している証左に他ならない。
(精霊をもてあそぶか)
 静かな怒りとともに、炎玉の竜騎士は全身と手にしている紅龍槍『廣利王』に炎を纏う。それはテラが自然から借り受けているもの。
 普段より炎や大地に力を借りているテラが見ても非道なら。精霊術士たる彼女の姉、シルが知れば怒るだろうことは火を見るより明らかだ。

 その所業、見逃すわけにはいかない。ならば。
「隷属の愚かさを教えてやろう!」
 張り詰めた緊張を切り裂くがごとく、テラが地を蹴る。ニクスが炎の魔剣を振りかぶる。それを視認したテラは残像を生み出しながら肉薄。廣利王による刺突を繰り出そうとするが、ニクスの大雑把すぎる斬撃が炎をまき散らす。
「ちっ」
 廣利王の切先を地面へ突き刺し、その反動で。炎と斬撃を見切って見切って空へと飛びあがるテラ。背後を取る、と見せかけて、空中で態勢を変え、そのまま頭上から槍を突き下ろす!
「くらえ!」
 しかし、鋭い槍の一撃はニクスが片腕を犠牲にして受け止める。既に狂った身、痛みなど気にせず、そのままテラを地面に振り落すニクス。不時着したテラを仕留めるべく、炎の魔剣を再度振り上げる。
「やらせるかー!」
 テラとニクスの間に素早く割り込むオウカ・キサラギ(お日様大好き腹ペコガール・f04702)。両手に構えた『サンライト・ハート』と『ししょー印の万能ダガー』で巧みに炎の魔剣を弾き返す。
(大剣なら小回りが利かないはず!)
 その隙に。ダッシュで懐まで飛び込み、素早く2回斬り裂くオウカ。そのまま息を突く間なく、連続で斬りつけ、防御を崩しかかる……だが、ニクスは痛みで止まらず。いまだオウカの頭上にあった魔剣を振り下ろす、刹那。
「よそ見とか余裕かよ!」
 テラが廣利王を真横に振り抜き、柄でニクスを吹っ飛ばす。
「ありがとう!」
「どういたしましてだ!」
 オウカとテラが素早く距離を保ち、態勢を整える。

 立ち上がってくるニクスを見てオウカは思う。
(魂啜りにハマりすぎて飲み込まれたって感じかな?)
 その様子はまるで『食べすぎてお腹壊すのに似ている』とも思う。そこだけ見れば、不謹慎ながら思わず笑っちゃう事態なのだが。しかし、目の前のニクスの狂い方はちょっと笑って済ませられるものではなさそうだ、と改めて両手の双短剣を構え直すオウカ。

 直後、鳥籠の中の精霊たちの絶叫が響き渡った。


「ちからヲ、たまシイを、ヨこセぇぇぇぇッ!!!」
 続いてニクスの叫び。
「……っ!」
 息を飲んだのは誰であったか。

 直後、精隷使いが特大にして膨大な炎を放つ。

(まにあわな……っ!)
 『敵が焦れて大振りの攻撃で逆転を狙ってきた時』を狙っていたオウカにして、そのカウンターが間に合わないほどの。まるで動物が疾走するかのような速度で、炎が森を這っていく。
 森すらも焼き尽くさんとする勢いに、その上に立つ猟兵たちもかわす術がなく、炎に飲みこまれていく。その炎に触れた猟兵たちからニクスが命を啜ろうとした、その瞬間。

「とりゃー!!」
 炎を突っ切って飛び込んでくる影。ひとり遅れて転送されてきた御桜・八重(桜巫女・f23090)である。躊躇うこと無く【スクワッド・パレヱド】の一撃でニクスに叩き付ける八重。その衝撃でニクスが態勢を崩し、炎の勢いが緩む。

 その瞬間こそが、反撃のチャンス。魂啜りに対抗する刹那。


 アキカが思い浮かべたのは『今までに訪れて楽しかった風景・場所』。UDCアースにキマイラフューチャー、アルダワ学園……その多くは依頼で行くことが多いのも事実だが、それでも。
(それでも、記憶に残っている場所はありますから)
 そう、この世界にだって。

 テラの脳裏に思い浮かぶのは、姉や妹との冒険の記憶、そして一緒に野営を行った記憶。そんな楽しい思い出をしっかりと心に刻む。
 そう、離れていても。いつも大切にしている彼女たちはテラを支えてくれる絆。

(大切な人と生きる世界は楽しいよ)
 炎に耐えながら暁音が思い出す。大切な人と過ごしたこれまでを。そして、これから過ごすであろう未来だって、想像すれば。
(それは何時だって全てに立ちむかう力になる……!)
 そう、魂啜りを弾き返す力にだって!

「クッ、ククク……」
 ナギの顔に笑みが浮かぶ。楽しい思い出と言われ、思い出すのは。
(咎人共を嬲り殺すのは……この上なく楽しい遊戯だった)
 それはナギのこれまでの人生。ナギが殺す人間は『暴力を厭わない者』だけ。その対象、恐怖を知らなかった極悪人が泣いて許しを請う姿は、何より愛おしい、とナギは感じる。
(奴等の断末魔の叫びを聴く時はいつも絶頂していた)
 それほどにまでに強烈に、刺激的な、『愉悦』。
 ああ、今だって……そう、手が届く場所にあるはずだ。

「……」
 目を瞑り、オウカは思い出すのは過去のあの日。自分の人生を変えてくれた温かいスープ。生まれて初めて心が満たされたその瞬間。
 先に思った、ニクスの『お腹を壊している』発言は彼女だからこそ出てきたものかもしれない。そんな彼女だからこそ、言える。
(自分だけが笑顔のご飯じゃ本当の幸せを得られないよ!)
 オウカの想いが炎を弾き返す。まだ、ニクスに叩き付ける言葉がある。

 炎に飲まれる刹那。稲見之守が思い出したのは遠い日のこと。
(ふふっ、まったく……子供とはよぅわからんのじゃ)
 脳裏をよぎるのは、かつて都を追われて流れ着いた村でのこと。『人喰い魂呑みの外道と謳われるモノノ怪』であったがゆえに、稲見之守は都を追われたというのに。村の子供たちに請われ、その姿――黒い大狐姿を見せた時の子供たちの反応ときたら。
(その姿を怖がるよりもカッコいいなどと面白がってくれたナ)
 稲見之守の顔に笑みが零れる。そうだ、自身の姿は決して忌むべきだけのものではない、と。その軛を今、解こう。

 炎を突っ切って他の猟兵たちを合流をはかる八重。
「楽しい思い出かあ」
 グリモア猟兵の話を聞いたのはつい先ほどのことだ。反芻するように呟いたその言葉に引きずられるようにして、思い浮かぶ様々な思い出。
(思えば小さい頃から今まで沢山ありました♪)
 その中に、ひとつ。
(そう言や、昨年のクリスマスは冬香さんとパイ投げしたっけ)
 とっても盛り上がった、と思う。とりあえず衣装の悔しさは、今は忘れることにする。楽しい思い出があり、それはきっと先にも続く。
(これからも楽しい思い出はいっぱい作っていきたいね)
 と八重は心に想いを抱いて。

 精隷使いの眼前に燃え盛る炎。それらが不意に、振り払われる。森から、大気から……猟兵たちから!

 それは、アキカの筆による一閃だった。空中へ飛びあがり、巨大化させた夜明紫電を振り抜く。風に炎がなぎ払われ、迸ったインクが炎を鎮め、その上に立つアキカの力を増強させる。
「勿論この世界にだって思い出の場所はあるのですよ」
 例えば、拠点の周辺とか。『その場所を失いたくはない』と、夜明紫電を握るアキカの手に力が籠もる。

 それは、暁音の操る水晶の花びらが巻き起こした風であった。炎を練り上げるようにして吸い込み、空へと霧散させる。
「過ごした時間、先の未来、それらを吸い尽くせると思われるのは腹立つね」
 かざした手に集う、星と命の鼓動たる水晶華。それを操る暁音の言葉は力強く。

 廣利王を回転させ、炎を絡め取るテラ。手に届く炎から伝わってくる精霊の悲鳴。そのまま廣利王を旋回させて、周囲の炎を掻き消していく。
「成程な……お前はシルやおれとは大分違うタイプか」
 槍の回転を止め、その切先をニクスに突き付ける。
「ならば……一つ証明してやるよ。おまえのやり方じゃ勝てないってな」

「大切な仲間や家族と食べるご飯の楽しい思い出は魂啜りなんかより絶対に強い!」
「だからこそ、人を不幸にするのは許せない!」
 オウカと八重の叫びが重なる。その叫びは異なる想いを元にした、それでいて同じ方向へ向かう魂の咆哮。

 そして炎が吸い込まれていく。その先に在るモノ。それは。
「さて、人喰い魂呑みの外道たる大狐姿となって彼奴に喰らい付こうか」
 ユーベルコード【化生顕現】。『神にしてモノノ怪』たる真の姿――黒き大狐の姿を顕した稲見之守の御業。魂啜る炎が何程のものだと言うのだ?

 炎が消え去った森の中。ニクスの正面に立つ猟兵はナギ。
「アンタも聴いてみるか? いや、アンタは死に際にどんな貌で哭いてくれるんだ?」
 悠然と佇むナギはユーベルコード【咎鬼怨魂】を発動して。今まで殺してきた咎人達の怨霊を纏い、不敵に笑う。

 7人の猟兵たちが魂啜りに弾き返し、猟兵たちの反撃が始まった!


「咎人共よ、哭けい!」
 ナギが叫ぶ。裂帛の気合と共に掌に集う呪詛と殺気、それらを籠めた掌をナギが突き出す。
「アンタも早くオレの楽しい思い出になってくれ!」
 嬉々とした声とともに、ナギが掌から呪殺弾が放たれる。一発では無く、無数に。制圧射撃のごとく放たれる呪殺弾の光線弾幕。
 炎による迎撃を行おうとしたニクスであったが、それを阻んだのは稲見之守であった。
「『汝、動くことなかれ』」
 それは稲見之守による言霊。言葉そのものに力が、呪詛が宿り、精神に直接働きかけ、ニクスを金縛りの状態へ陥らせる。
 回避敵わず、ナギの呪殺弾の弾幕がニクスに直撃する。
「ぎ、ぃぃアァぁぁアア!!!!」
 痛みでは無く、身を削られていく感覚に。ニクスが叫び、ナギの表情が愉悦に染まる。

 間髪入れず、アキカが再び仕掛ける。それは最初の奇襲の如く、上空から。巨大化させた夜明紫電を大きく振るって、渾身の【グラフィティスプラッシュ】! 今度こそインクがニクスに直撃し、その身に痛烈なダメージを叩き込む。

「あ、ア、アあアア!!」
 ――精霊が悲鳴を上げる。

 最後の断末魔の如く。ニクスの目の前に巨大なゴーレムが作り出された。それは精霊の思考力を贄とした燃え盛る巨人。精霊から搾り取った最後の力でゴーレムが暴れ出す。

「愚かナ」
 しかし、そのゴーレムは十全に動くこと能たず。稲見之守が立ったからだ。
 稲見之守に向けて振り下ろされた燃え盛る両腕。それを黒き大狐は怯むことなく受け止め。身を翻して多数の尻尾による打撃で巨人そのものを難なく弾き返す。

 稲見之守が巨人を抑えているその隙に。
 八重が愛刀『陽刀・桜花爛漫』と『闇刀・宵闇血桜』を両手に突撃する!
「あきらめちゃダメだよ!」
 その声は精霊に語りかける言葉。巨人が精霊の思考力を元にしているならば。思考さえ取り戻せれば。
 しかし、声だけではそこまでの力は無く。されど八重の声に精霊が小さく揺れる。まだ、その命は尽きていない!
(こんな酷いことをするなんて許せない!)
 怒りに刀を握る手に力が入る。速度を緩めず、ニクスに肉薄する八重。ニクスが炎の魔剣で八重をなぎ払う!
「いざ吹き荒れん、花嵐!」
 一手、八重の方が動きが早い。ユーベルコード【花嵐】、闇刀が魔剣を受け流して弾きあげ、完全に無防備になった懐へ、八重はもう一歩踏み込む!
「その子をはーなーせーっ!!」
 二刀による神速の八連撃。返す刀に乱れ舞うは桜の紋。八重の攻撃がニクスを切り裂きつつ、精霊の籠をたたっ斬る。

 ぱきっ、と小さな音がして。それは解放の合図。ふわりと空中に零れ出た精霊たちを八重が受け止め、そのまま駆け抜け、離脱する。

「……ア? あ、い、ヤ、あ、アアァァァ!!!!」
 それは絶望の絶叫。魂啜りも出来ず、精霊の力も失った。巨人が崩れ落ち、魔剣が消え、噴き出る焔すら消え去った。
「あアああ! タマしいヲ、ヨこせェェぇぇッ!!」
「やれるもんならやってみるといいの」
 狂乱するニクスに暁音が相対する。二人の間にあるのは、星光に煌めく七色の輝き。暁音の水晶の花びらたちが、風すら切る刃となってニクスを切り裂いていく。
 魂を啜ろうとするニクスに対して、暁音は怯まない。それは、大切な人がくれた宝物が今も共に在るから。
(一緒にあれば……楽しい心は何時だって思い浮かぶのだから)
 暁音の首元で、月型の金属、丸型水晶の星屑光る御守りが揺れた。

 暁音の攻撃に押され、退くニクス。ふらつきながらも視線で捉えたのは、精霊を抱えている八重。
「せい、レイ、よ、こ、セェぇぇぇ!!!」
 もはや本能だけの獣と変わらない動作。八重から精霊を奪い返そうとするニクスを、その隙を逃すオウカではなかった。
(ここが、最大の好機!)
 仲間が猛攻している隙に大きく後退してニクスの死角に回り込んでいたオウカ。狙い澄ますはこの一瞬、あの一箇所。
「これがボクから贈る冥土の土産だ!」
 オウカの叫びとともに、発動するのはユーベルコード【輝き放つ金剛の弾丸】。オウカの手から、膨大な魔力を込めたダイヤの原石が放たれ、ニクスの頭部に直撃する。

 直後。ダイヤが爆発を起こしながらニクスの頭部を吹き飛ばす!

「代用品の石ころじゃない、高純度の宝石弾だからね!」
 高純度の宝石は魔力許容量が大きい。それを着弾の瞬間にすべて放出したのだ。その威力は一撃必殺、とオウカが得意げに胸張って述べるのも自然のこと。

 オウカの狙撃を薄く開いた片目で見つつ。テラは両手で構えた廣利王の石突きを地面に立てる。目を閉じて話しかけるのは。
「炎の龍よ……力を貸してくれ」
 大地の中に脈動する大いなる力。廣利王を通じて伝わる鼓動。それを感じてテラが詠唱を紡ぐ!
「母なる大地よ、闇夜を照らす炎よ……。赤き龍神の怒りに応え、我が前の敵を焼き尽くせっ」
 ユーベルコード【紅蓮神龍波】。大地を割って現れたのは龍。溶岩の炎が形成したもの。四方八方から出現した炎の龍がその咢でニクスを飲みこみ、その全てを焼き尽くしにかかる。

 思考する頭が吹き飛び、この世に形を留める肉体が焼き尽くされ。

「その精気、そして魂。我が啜ってやろう」
 最後に残るであろう、形無きニクスの残骸を稲見之守が食らう。皮肉にも森の番人たるニクスが行ってきた『魂啜り』のごとき術で。
(ああ、此奴よりもよく知ってるさ。魂を啜るってのがどういうことか、な)
 それは相手の命を己が力とする、忌むべき行為かもしれない。稲見之守が過去に疎まれた要因のひとつかもしれない。されど、今は『未来を紡ぐ』ために。

 そして。『精隷使いニクス』という存在を構成していた全ての要素がこの世から消えて。森の番人はここに討伐されたのである。


 ニクスが消え、炎が消え、森が静けさを取り戻す。戦闘終了、緊張の糸を解く猟兵たち。

 その時、不意にオウカが声をあげる。
「はっ!? ニクスを燃やしたら『魂喰らいの森の核』は!?」
「あっ?!」
 テラがハッと思い出す。そういえばグリモア猟兵が財宝が手に入るかもとか何とか言ってたような。
「『核を見つけたら戦争に勝った時の祝勝会の資金にでもしよっかな!』って思ったのに……」
 がっくりと崩れ落ちるオウカ。そう思って頭を狙ったのに。
 補足するなら、今回の作戦の目的はニクスの撃破であって、財宝の回収は余力があれば、である。テラに非は無い。
「ワシは……せーふじゃろうか?」
 稲見之守はニクスの肉体に関与してないのでセーフです。

 崩れ落ちたオウカの姿があまりにも悲しげだったので。
「えーと……この辺かなー?」
 八重とアキカがニクスであったモノを探しにいった。なんとか消し炭が残っている。この中に、残っていれば、いれば……。
 がさごそと中を探る八重。
「八重さん、どうです? 残っていますか?」
 アキカの声に、八重が首を横に振ろうとした瞬間。彼女の手が何か触れた。思っていたよりは小さな、しかし確実に灰とは違うもの。
 慎重に灰の中から取り出したそれは、半径7cmくらいの『魂喰らいの森の核』。
「わぁっ!」
「あ、あったー!」
 発見を告げるアキカと八重の声に。
「うそー! やったー!」
 オウカが飛び上がって喜ぶのでした。

 そんな様子を見守っていたのは暁音とナギである。ふぅ、とついたため息は目の前の騒動を思うものか、あるいは戦闘から日常に切り替えるためのものか。
「あれは猟兵の活動資金とか軍資金とかになるのかな?」
「さぁ。ぼくには見当もつきませんよ」
 実際のところ、本当に祝勝会の資金くらいにしかならないのかもしれないけれど。

 ともあれ、ニクスの撃破と財宝の回収完了。魂喰らいの森における作戦は成功に終わったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月04日


挿絵イラスト