【Q】強欲の海へ至れ~嵐を裂く水軍旗
●黒い船団、鉄甲船に迫る
「くそっ、船が傾いてる! このままじゃ沈んじまいますよ!」
「馬鹿野郎、口を動かす暇があれば手を動かせ!」
轟々と風雨の吹き荒れる嵐の海。
その上を、巨艦であるはずの鉄甲船が小舟のように揺れ動いている。
既に帆柱は下ろされ、乗組員が船を沈めまいと右往左往する中、船から放たれる「紫の光」のみが、泰然自若と沖の彼方の一点を指し示していた。
その向こうから現れる「もの」に、一人の船員が気づき、叫ぶ。
「船長! 『光』の向こうから複数の安宅船! こっちに来ます!」
昼なお暗い鈍色の空と嵐の中。
それよりも黒い船影が、彼らの進路を塞いでいた。
●鉄の船、強欲の海へ
「帝竜戦役も終わって一安心ね。ところで、鉄甲船については覚えているかしら?」
クリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)はそう言った。
かつて、サムライエンパイアの戦争において魔軍将『日野富子』が多数建造し、村上水軍の怨霊に運用させて戦線に投入したという、曰く付きの軍船である。
だが、それは戦後になって別の役割を有するようになった。
鉄甲船から一斉に放たれた「紫の光」は、それに乗って漕ぎ出した猟兵たちを、乗艦もろとも海と戦乱の世界『グリードオーシャン』へと導いたのだ。
「グリードオーシャンでは、グリモア猟兵の予知や転移が阻害されているから、鉄甲船が猟兵の足代わりに使われていると聞くわ。そこで、新たにサルベージされ、やはり発光現象を起こした鉄甲船に乗って、グリードオーシャンまで行ってほしいのよ」
動かせる鉄甲船が増えれば、現地での行動の自由度は増す。
それは、コンキスタドールを名乗る現地のオブリビオンに抗する力となるだろう。
「名前は、『アン・ヌーベル・エスポワール』。新たなる希望、という意味で私が付けさせてもらったわ」
ちょっと得意げに、クリスティーヌは微笑んだ。
「さて、今まで旅立った鉄甲船がそうだったように、この船にも海洋災害が襲いかかってくるわ。……嵐の吹き荒れる、大荒れの海域よ」
逆巻く波が巨艦を揺るがし。
吹き荒れる風が進路を狂わし。
猛烈な雨が視界を遮る。
鉄甲船は帆柱を下ろして櫂でも航行可能だが、それでも道行きは困難を極める。
が、猟兵の力や指揮があれば越えることができるだろうとクリスティーヌは言った。
「そして、この嵐に乗じてオブリビオンの水軍が襲いかかってくるわ。戦闘員の多くはオブリビオンの浪人たちね」
彼らは嵐をものともせず航行し、鉄甲船に斬り込んでくるようだ。
しかし、その猛威を従えているわけはないため、嵐への対処や、逆にその猛威を利用するような戦い方をすれば、有利に戦いを進めることができるだろう。
「その後にもオブリビオンの襲来があるみたいだけど、こちらは詳細不明。ただ、今までを考えると強大なオブリビオンの襲来が予想されるわ。注意して」
「今回の予知と、先発した猟兵のもたらした情報を総合すれば、船旅は極めて困難よ」
そう言って、クリスティーヌは真剣な目を猟兵たちに向ける。
「けれど、あなたたちならきっとこの海原を越えられると信じてる。よろしく頼むわね!」
一転して柔らかい表情を浮かべると、彼女はグリモアでゲートを開くのだった。
西野都
帝竜戦役お疲れ様でした、西野都です。
今回は、サムライエンパイアから鉄甲船で漕ぎ出す依頼となります。
嵐の海を越えてグリードオーシャンを目指しましょう!
第1章は冒険です。オープニングの通り、嵐の海が待っています。
この嵐をどう切り抜けるか、自由な発想でプレイングを頂ければと思います。
オープニングに書いてないようなことでも歓迎です。
第2章は集団戦です。変わらず海洋災害は続いています。
この海洋災害への対処をしたり、逆に上手く戦闘に利用できればプレイングボーナスが得られます。
第3章はボス戦です。詳細不明です。
それでは、プレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『脅威の海洋災害』
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POW : 肉体の力で体力任せに海洋災害に立ち向かいます
SPD : 素早い行動力や、操船技術で海洋災害に立ち向かいます
WIZ : 広範な知識や、素晴らしいアイデアなどで海洋災害に立ち向かいます
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オヴェリア・ゲランド
まだ見ぬ未来への航海、波を斬り裂き世界すら超える旅!
者ども、猛るがいい!この旅にはゲランド帝国が皇帝オヴェリアが共にある!
●鼓舞、そして砲撃支援
まずは乗組員達を鼓舞しやる気を出させねばいかなる状況にも立ち向かえぬ。
剣帝の覇気を纏い甲板にて仁王立ちで堂々と冒頭の演説を行なって乗組員達の士気を奮起させつつ【魔導砲ドーラ軌道】を発動。
「雲を切り裂け!波を薙ぎ払え!我らの邪魔をする全てを蹂躙するのだ!魔導砲、撃てぇぇぇ!」
本国より次元を超えて魔導砲の支援砲撃を到来させ、その砲撃で雲を吹き飛ばして雨を一時的に遠ざけ、波を薙ぎ払って船を安定させる。
力業、しかしそれこそが剣帝の航海なり!
●力業こそ剣帝の航海なり
鉄甲船『アン・ヌーベル・エスポワール』号は喧騒の中にあった。
数刻前から一向に鳴り止む気配を見せぬ暴風の轟々とした響き。
風と共に降り来たった驟雨が、甲板を連弾し、濁流へと変える音。
呑まれれば人も物も攫っていく大波が、鉄甲船の装甲を打ち据え、揺らす音。
渦中に揺られ、今にも沈みそうに見える鉄甲船の軋む音。
それに抗しようとする人々の怒号。
まさに、混沌(カオス)としか言いようのない光景。
だが、その混沌を、一つの声がそれを遮った。
「恐れるな!」
後に、乗組員の一人はこう語ったという。
雷鳴の中でも、その美しく力強い声は仲間たちの耳に届き、皆が振り返ったと。
乗組員たちの視線が、一斉に声の主へと向けられる。
近代軍艦ならば艦橋に相当する櫓の上。
オヴェリア・ゲランド(銀の剣帝・f25174)は、刻一刻と風向きを変える暴風にマントと長い銀髪を揺らしながらも、その姿は一切揺らぐことはなく、まるで嵐など存在しないかのように屹立していた。
まるで彼女の纏う威風堂々たる覇気が、あらゆる災厄を退けているかのように。
再びオヴェリアが、朗々とした声を上げる。
「其は、まだ見ぬ未来への航海、波を斬り裂き世界すら超える旅!」
そして、彼女が乗組員たちをぐるりと見回した。
そのアイスブルーの瞳に射抜かれた乗組員たちから、震えが拭われていく。
尊大な、しかし災厄の中においても超然とした声。
それが骨身に響く度に、雨風や波に打たれて冷え切った身体の奥が熱を帯び、疼く。
忘れかけていた使命が、呼び起こされる。
(そうだ、俺達は上様に命じられたんだ。この鉄甲船を海の向こうに届けるってな!)
その使命とともに、綱を、あるいは櫂を握る手に力が蘇る。
彼らは、オヴェリアがどういう者かはよく知らない。幕府から天下自在符を授けられた猟兵の一人であり、この船旅の主導者の一人である、という認識だ。
だが、そのよく知らぬ者の言葉一つで、ここまで心が揺るがされるとは、乗組員の誰もが考えもつかぬことであったし、事実、彼らはオヴェリアの言葉ひとつで気力を取り戻そうとしていた。
そしてその彼らの背を、手慣れたもののように、銀の剣帝は更に押して促す。
「者ども、猛るがいい!この旅にはゲランド帝国が皇帝オヴェリアが共にある!」
自らの築き上げた帝国と、それを統べる自らの名を高らかに謳い、オヴェリアは乗組員たちと共に在ることを宣言する。
既にその心を掴まれていた乗組員たちが、一斉に喝采の声を上げた。
「さぁ、見るがいい! 無明の嵐すら切り裂く我が武威を!」
オヴェリアはそう言うと『覇剣シグルドリーヴァー』を天高く掲げた。
乗組員たちの視線が、それに続く。
切っ先の向こう側の空が揺らぐのを、彼らは見た。
その向こう側に、銀嶺のそびえる白い大地を幻視した者もいただろう。そして、その白い大地に据えられた、巨大な黒鉄の砲身も。
そう、それがゲランド帝国の大いなる力にして、皇帝オヴェリアのユーベルコード。
「雲を切り裂け! 波を薙ぎ払え! 我らの邪魔をする全てを蹂躙するのだ!
魔導砲、撃てぇぇぇ!」
声と同時に、揺らぎの向こうから、幾条もの七色の光が大海へと押し寄せた。
魔導砲の砲撃によって放たれた、巨大な熱量を持つ魔力光である。
太陽にも等しいその光条は、まるで草を刈るかのように、鉄甲船の行く手を薙ぎ払う。
厚く垂れ込める黒雲が消し飛んだ。
雨の全てが蒸発し、一瞬だけ白い靄となって散った。
切り裂かれた荒波が、光を恐れるかのように退いて、海は静まった。
かくして、嵐は完全に切り払われ、一筋の航路が生まれたのである。
「よし、今のうちに進めるだけ進むぞ! 帆を立てろ!」
完全に安定した鉄甲船は、再び風を受けて全速力で進み始めた。
そして、前方より吹き付ける風に銀髪とマントを揺らし、
「力業、しかしそれこそが剣帝の航海なり!」
銀の剣帝、オヴェリア・ゲランドは満足そうに笑うのだった。
成功
🔵🔵🔴
静宮・あかね
※【アドリブ・連携・絡み歓迎】
※感情設定者には京言葉、他は原則標準語
ウチは元々セイレーンの冒険商人
この手の荒れた海にも何度か出た事はありますね
操船はプロ任せですが、出資者の義務は欠かしません
あ、船酔いも大丈夫ですので
というわけで『オオモノヌシの護符』を用意しましたよ
願うは勿論『航海安全』ですが、ただの気休めとは違います
ウチの【ゴーイング・マイウェイ】…その力を護符に籠めました
祈祷時の初穂料(【幾月島の護り銭】10本分)が代償です
流石に大嵐を消し去るのは無理ですけど、
『鉄甲船の難破防止』を成功させる足しになるはず
コレでも足りないなら【航空貨物輸送鯨『綾』】に
海中から支えさせて転覆を防ぎましょうか
●
「また嵐が来るぞ! 帆を降ろせ! 櫂出せ、櫂!」
「漕ぎ方はじめ! 銀髪の皇帝様がくれた時間を無駄にするなよ!」
「水をかき出せ! 生きてかかあに会いたかったら手を休めるな!」
鉄甲船『アン・ヌーベル・エスポワール』号は、再びの嵐に果敢に立ち向かった。
切り開かれた空は再び黒雲に覆われ、暴風や荒波が横隊を組んで一斉に襲いかかる。
乗組員の士気は、先の檄によって高まっていたが、それでどこまでこの永劫の嵐の海に抗えるかは、彼ら自身にも分かってはいなかった。
「これは……まるで戦場ですね」
桃色の髪を揺らし、額の蒼い宝石を煌めかせつつ現れたのは、静宮・あかね(海慈屋の若き六代目・f26442)であった。
暴風雨に動じることも、右に左に揺れる甲板にたたらを踏むこともなく、まっすぐに眼前の光景を見据えている。
「海慈屋さん! ここは危ないです、船室に戻ってください……!」
一人の男が、あかねの屋号を叫びながら、慌てて駆け寄ってきた。
確か乗組員の頭の一人だったろうか。
航海の開始前、乗り組む際に挨拶をされたのを覚えていた。
「ウチのことは気にしないでください」
あかねは、頭に対してにこやかに微笑みながら答えた。
淑やかに、しかし有無を言わせぬ迫力を感じさせる微笑みと口調に、頭は若干気圧されたようであった。
それに乗じて、彼女は言葉を続けていく。
「ウチは元々セイレーンの冒険商人。この手の荒れた海にも何度か出た事はありますね」
「しかし、この忙しい中で、船酔いとかをされては、我々の面目がたちません」
頭は真剣な表情で食い下がる。
確かに、あかねの営む「海慈屋」は、この鉄甲船のサルベージや航海の準備にいくばくかの投資を行っている。乗組員たちにとってはスポンサーだ。
それを危機に晒しては、彼らの信用に関わると考えるのは、理解できた。
しかし、あかねにも、ここで引き下がるわけには行かない事情があった。
「あ、船酔いは大丈夫ですので。それに、これは出資者の義務ですから」
そう言って、彼女は懐から一枚の護符を取り出した。
白地に墨で書かれた文字は「三輪明神大神神社守護」。雨に濡れながらも、その文字は全く滲む気配すら見せなかった。
その文面に、頭は見覚えがあった。
「これ、もしかして三輪山の」
「はい、そうです。『オオモノヌシの護符』です」
オオモノヌシ……大物主命は、大和国は三輪山を神体とする神であり、サムライエンパイアの国造りにも大きく関わったとされている。そして、霊威の強さから、厄や方位の吉凶を退ける神としても崇敬を集めているのだ。
「ウチが願うは勿論『航海安全』ですが、ただの気休めとは違います。ほら、行き先を見てください」
にこやかに、頭を促す。
言われるがままに船の向かう方向に目を向けた頭は、その光景に目を見張った。
「こりゃぁ、本物だ……!」
その眼前には、垂れ込める黒雲の中にあって、僅かに雲が切れ、光条の差し込む航路が見えていたからだ。
「よし、あの切れ間を縫って漕ぐぞ! 行けるか!」
「いけます! なんか、下から支えられてるみたいに安定してます!」
「よし、オオモノヌシ様のご加護だ! 無駄にするな、進めぇ!」
頭の景気のいい声に、乗組員たちは奮い立った。
「航海安全、何とかなったみたいやね」
あかねは小声で一息ついた。
口調が京言葉に変わっているが、これが彼女の素である。
先の護符には、彼女のユーベルコード【ゴーイング・マイウェイ】の力が込められていた。祈祷時に捧げた初穂料を代償に発動した力は、嵐の暴威をもひとときながら退けたのだ。
そして、あかねの仕込みはもう一つ。
「綾もありがとな、重いもん支えて堪忍やで」
あかねの耳に、暴風を縫うように微かに謳うような鳴き声が響く。
航空貨物輸送鯨『綾』。メガリスによって飛行能力と大量の荷物の輸送能力を得た、あかねに従う白鯨である。
嵐が止んだとしても、時化がすぐに収まるわけではない。
その間隙を埋めるため、海中で綾に鉄甲船を支えさせたのだが、予想以上に上手くいったようだ。
「さて……ここまで来たんやし、この船がグリードオーシャンに入るとこ、ウチの目で見届けんとなぁ?」
雨の弱まった甲板の上で航路の先を見据え、あかねは温かく微笑んだ。
成功
🔵🔵🔴
華日・煙志朗
アドリブ絡み歓迎
俺は海の事なんて何一つ知らんが…ひとつやってみるか
【粒子変幻】開始だ。極小粒子機械起動、回れスパイラー!
船の甲板でスパイラーを回しプラズマエアー炉心に【力溜め】、嵐に飛び込める好機を待つ
「船長、少しの間嵐が激しくなるかもしれんが耐えてくれ。じゃあな!」
ここだ!と思ったら言うだけ言って右腕を変形させたナノロケットドリルを点火
暴風雨の空に飛び
【早業】+【武器改造】でさらに左腕のナノマシンをドリル化
背中に推進装置を形成し、態勢を無理やり安定させ…ドリルを嵐とは真逆の咆哮に回転
「プラズマ出力最大…!ドリルの嵐を受けてみやがれ!!」
消し去るのは無理だろうが…一時的にでも相殺して見せる!
●怪奇こそ粒子人間の突破口なり
暴風雨は未だ吹き荒れていた。
黒雲は低く垂れ込め、海原は破城槌のように幾度も鉄甲船を打ち、まるで空と海が船を押しつぶそうとしているかのようだ。
その海を、華日・煙志朗(粒子人間ナノダイバー・f22636)は甲板上に立ち、一心に見つめていた。
その瞳の中に、抗う者たちの姿が映っている。
「猟兵さんたちが繋いでくれた航路だ! ここで途切れさせたら船乗りの名が廃る!」
「向こうにあるって新天地見るまで死ねるかよ!」
「入るより早く水を出せば船は沈まねえ! どんどん掻い出せ!」
鉄甲船の乗組員たちは、嵐と必死に戦っていた。
その武器は刀でも銃でも、ましてユーベルコヲドでもない。
己の血と肉と骨、そして船乗りとしての技術と矜持だ。
(俺は海の事なんて何一つ知らんが……)
それでも、彼らが戦士であることは分かる。
海と超常の戦場、場所と形は違えども、彼らと煙志朗たちは同じなのだ。
ならば、手を貸すのに何の躊躇があろうか……!
「ひとつやってみるか! 極小粒子機械起動、回れスパイラー!」
煙志朗の意志に応じ、腰のベルトのバックル【ブレーンスパイラー】、その中の風車めいた機械が高らかに唸りを上げ、彼の心臓に熱を与え始めた。
「船長!」
煙志朗は、鉄甲船を率いる船長へ走り寄った。丸めた頭にねじり鉢巻を巻き、次々と乗組員たちに指示を飛ばしていた船長は振り返ると、その異相に一瞬目を見開いた。
煙志朗の革(だろうか)の腰紐の留め金の風車が回転して唸りを上げ、その右腕には、怪奇なことに、巨大な火箭のようなものが付けられていた。
平時ならば二度見したかもしれない異相である。
しかし、今は非常時。船長にそんな余裕も、まして必要もなかった。
「ああ、どうした猟兵さん! おい、左の櫂、テンポ上げろ!
すまねえ、なんだって!?」
嵐に負けないような大声で返事をする船長。
煙志朗の声はそれより遥かに小さかったが、存在感はそれに負けなかった。まるで、彼自身の声が「重い」粒子でできているかのように。
「船長、少しの間嵐が激しくなるかもしれんが耐えてくれ」
「まさか、あんたも何かやるんじゃないだろうな! ……なら、少し待て」
彼は煙志朗の前に太い腕をかざし、制止する。そして、空の一点を指差した。
その先も黒雲に覆われていたが、そこは少し色が薄くなっているようであった。
「嵐ってのは濃淡がある。あそこがもう来るから、やるならその時にしな」
そう言い終えるや否や、にわかに雨が甲板を叩くテンポが遅くなった。
風の唸りも弱くなっている……船長の言う通り、今が好機のようだ。
「感謝する、じゃあな!」
そう煙志朗が言うと、彼の右腕の火箭……ナノロケットドリルが火を吹いた。
生み出された推進力と気流が、船長の視線を一瞬遮る。
次の瞬間、煙志朗は煙を従えて、嵐の向こうへと飛び去っていった。
「やっぱり猟兵さんってのはすげえな……」
船長の零した言葉とともに、ロケットの航跡が風に吹き散らされた。
風雨が煙志朗の顔を打ち据える。
だが、彼は決して視線をそらすことはしない。まっすぐ進路を見据える。
薄くなっていた黒雲に突っ込み、嵐を飛び。
そしてその視界が突然開けた。
「こいつは……!」
それは、巨大な渦であった。
ぽっかりと開けた円状の青空を中心に、黒雲が轟々と唸りながら渦を巻く。
これこそ嵐の「目」と呼ぶべきものであり、ここから放たれた嵐が、周辺の海域を暴風雨に包んでいるのだと、煙志朗は直感的に理解した。
「なら、これをどうにかすれば……!」
煙志朗は、右腕のナノロケットドリルの組成に干渉した。コーン状の先端が微粒子となって解け、その姿を変えていく。
彼の身体は、極小機械群の集合体である。その構成を分解し、再構成したものこそが、右腕が姿を変えたナノロケットドリルだ。
その構成をさらに変化させる。より鋭く。万難を穿てる力の象徴として。
煙のように輪郭がぶれ、再び顕れたそれは、ドリルであった。
更に、背中にいくつもの推進装置を生成、気流の逆方向に噴射を繰り返し、渦の中に立って浮遊するように、無理矢理姿勢を安定させる。
風の唸りとは違う、高い音を立ててドリルが回転する。
回転するドリルから、無数の電光が発せられる。周囲の大気が電離し、プラズマ化して膨大なエネルギーを帯び始めていたのだ。
そのエネルギーの渦の流れは、「目」の流れとは真逆……!
「プラズマ出力最大……! ドリルの嵐を受けてみやがれ!!」
プラズマ化した人工の嵐と、嵐の目が正面からぶつかりあった。
相克する形で放たれたそれは、嵐とぶつかり、喰らい合い……。
ドリルの回転が止まった時、煙志朗の頭の上に、青空が一面に広がっていた。
プラズマの嵐が、海域の嵐を一時的に相殺したのだ。
仰いだ空に背を向けて、彼は鉄甲船へと降下する進路を取る。
その道行きを、無数の歓声が出迎えていた。
成功
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第2章 集団戦
『浪人』
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POW : 侍の意地
【攻撃をわざと受け、返り血と共に反撃の一撃】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 怨念の返り血
【自身の返り血や血飛沫また意図的に放った血】が命中した対象を燃やす。放たれた【返り血や血飛沫、燃える血による】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 斬られ慣れ
対象のユーベルコードに対し【被弾したら回転し仰け反り倒れるアクション】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:箱ノ山かすむ
👑11
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●嵐に煌めく白刃
「見えたぞ、猟兵どもの船だ!」
「よし、斬り込むぞ! 雨に足を取られるな!」
一切の紋を掲げぬ何隻もの安宅船。
鉄甲船のように装甲化こそされていないが、紛れもないサムライエンパイアの軍船であるそれは、彼らの進路をも遮っているであろう嵐をものともせず、ぶつかってきた。
鉄甲船に衝撃が走り、同時に相手の安宅船の舷側から、無数の刀を持った男たちが鉄甲船へと移乗してくる。
着流しを身にまとった彼らは、例外なくオブリビオン。
どうあっても、血を見ることは避けられない。
「よし、船員も猟兵も皆殺しにしろ! 行け、行け、行け!」
嵐の中で、猟兵とオブリビオンたちが激突しようとしていた。
※戦闘中も、嵐は変わらず吹き荒れています。
ですが、この嵐はオブリビオンに味方しているわけではないため、嵐への対処、もしくは嵐を逆用した戦術をもってすれば、プレイングボーナスをもって、優位に戦闘を進めることができます。
プレイングの際はご留意ください。
天星・雲雀
「大海原行きの鉄甲船!まだ出港してないのが残ってたんですね。ちょうど前の船団に乗り遅れて、置いてけ堀を食らっていたので、自分も乗せてもらいましょう」
「この船の行き先は、海の世界。徘徊するは、コンキスタドール。今まで戦ってきた敵とは、どのように違うのでしょうか?・・・あっ、カモメさん」
【行動】嵐と敵の船団に遭遇したら、UC光の粒子を凝縮した操り糸を伸ばして、敵の船の竜骨を真っ二つに、切断します。
「この嵐では、1時間と持たずに全部海の藻屑ですね」
「さて、乗船して来た客の御相手でもしましょうか?」
「初めて見るタイプばっかりですね。警戒して【追跡】スニーキングキルで一人ずつ確実に斃していきましょうか」
静宮・あかね
※【アドリブ・連携・絡み歓迎】
※素は京言葉、普段は標準語
先のお二人、正面突破が得意技のご様子
ならウチは船員を護る『待ちの構え』で行きます
ウチ自身を囮に【おびき寄せ】ての【カウンター】です
『綾』は引き続き鉄甲船を支えて
『舞』を逆巻く風の中へ呼び出します
次に『舞』は【衝撃波】による【空中戦】
(及びイルカ特有の超音波による早期警戒)
ウチは愛刀『九龍桜華』を抜き【船上戦】
各々覚えのある戦い方で陣取りますよ
暴風雨には【シェイプ・オブ・ウォーター】も混ぜ
複雑な戦法の成功率や『舞』との連携効率を高めます
ソーダ水の雨が薄まらない様に全力維持しますが
この雨なら仕込みの発覚も遅い筈です
ええ、ウチは確実に行きますよ
オヴェリア・ゲランド
ふん、この私がいる船へ白兵を仕掛けてくるとは笑止!
その無明、貴様らの血で贖うがよい!
●嵐の中の戦法
嵐に見舞われ揺れる船上での戦いは剣士にとって難しいものとなる、足捌きを封じられるからだ。
「愚かなサムライ達よ、この悪天候で攻勢に出た事…後悔せよ」
無論、私ならば揺れる船上でも問題なく足捌きを披露出来る…しかし今はより有利を得る為に待ちの戦法を取ろう。
風や刃すら逸らす剣帝の覇気(オーラ防御・念動力・覇気)を纏い【野性の勘】で寄ってくる敵の位置を捕捉し、揺れに足捌きを乱し斬り込んで来た敵を【皇技・百華剣嵐】にて【薙ぎ払い】【蹂躙】する。
※アドリブ歓迎
華日・煙志朗
まったく次から次へと…皆殺しと言うからには、皆殺しにされる覚悟はあるんだろうな!
コード発動、極小機械群、再起動
まだ嵐が吹き荒れているなら好都合だ
ナノロケットドリルの推進装置を噴射
嵐に乗り、自分ですら予測のつかない軌道で甲板を跳び
ナノマシンを【武器改造】して刀の様に鋭くしたドリルで斬りつける
わざと受けてくれるとはご苦労なことだ…例と言っちゃあなんだが返り血を浴びる前に一撃離脱の【早業】を披露させてもらおうか
とはいってもどこかで反撃されちまうよなぁ、意地はあるだろうなぁ?
だがなナノダイバーの俺に、斬撃はそう通じん!
極小機械の連結を切り離し、反撃をすり抜けさせドリルを元の円錐形に戻し【串刺し】だ
●汝、旗を裂く白刃となれ
時間を、しばし遡る。
「大海原行きの鉄甲船!まだ出港してないのが残ってたんですね」
サムライエンパイアのとある港。
荷物の積み込みで乗組員たちが忙しく動く桟橋で、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)は眼前の巨船を見上げて大きな声を上げた。
鉄甲船『アン・ヌーベル・エスポワール』号である。
浮揚され、再艤装を施された鉄甲船には、諸肌脱いだ乗組員たちに担がれた荷物が大量に積み込まれていた。米俵が、水が、数々の雑貨が黒い巨船へ消えていくのが何となく面白い。
雲雀は金の瞳と赤の義眼を大きく見開きながら、桟橋を歩いていく。
「ちょうど前の船団に乗り遅れて、置いてけ堀を食らっていたので、自分も乗せてもらいましょう」
船団とも言える規模の鉄甲船が旅立ったのは、しばらく前となる。
彼らはその果てに、海と戦乱の世界であるグリードオーシャンを見出したが、多くの地域でグリモアの予知とテレポートが阻害されており、そのまま猟兵たちの移動拠点として用いられているのが現状だ。
そのため、鉄甲船を追加投入し、グリードオーシャンのオブリビオン、コンキスタドールに対抗する力としよう、というのが今回の航海の目的となる。
待ち受ける貪欲なる海での戦いに、雲雀は思いを馳せた。
「この船の行き先は、海の世界。徘徊するは、コンキスタドール。今まで戦ってきた敵とは、どのように違うのでしょうか?」
「そうですね、海に根ざした海賊や生き物の敵が多い、とは聞いています。それと、様々な世界から至った者が多い、とも」
鈴が鳴るような女性の声が背後から聞こえ、雲雀は振り向く。
そこにいたのは、海風にピンクの髪をなびかせる一人の女性であった。帯刀し、和服をアレンジしたと思しきロリータ風の衣装に身を包んでいる。
そして、女性の額にハッとする。額に嵌った涙滴型の宝石に、一瞬だけ気泡が現れたのを。そして、かの世界の深海のソーダ水から生まれる種族のことを。
「あの、もしかして」
「はい。ウチはセイレーンです。とは言え、グリードオーシャンの出身ではありませんけど」
ピンクの髪の女性……静宮・あかね(海慈屋の若き六代目・f26442)は、雲雀に静かに微笑んだ。彼女は海慈屋という卸問屋の六代目である。
あかねにとって、グリードオーシャンとは実感として遠いのだ。
とは言え、雲雀にはそこまでを知りようもない。
「あ、もしかして余計なこと言いました?」
「そんなことはありませんよ。私はセイレーンですけど、今は出資者であり、あの海を見に行きたい一人の猟兵ですから。
よかったら一緒に行きますか? 今なら鉄甲船の上から遠くも見えますよ」
そして、あかねと雲雀は船上の人となったのである。
そして、嵐の海の現在。
「行け! 行け! 行け! この海を渡る猟兵どもは皆殺しだ!」
「じゃぁ船員どもは放っておくか?」
「馬鹿者、どうせ船も沈めるのだ。今斬れば面倒はなかろう!」
「それもそうか! よし、目につく者は皆殺しだ!」
暴風雨の中を突き進んできた黒い安宅船の船団は、鉄甲船を取り囲むと、そのまま接舷してきた。
黒い安宅船から現れたのは、やはり黒い着流しを着た男たち。月代を剃っていないことを見ると、浪人たちなのだろう。
着流しが雨を吸い、更に黒くなることにも構わず、刀を抜き、鉄甲船に飛び込む。
だが、その黒い奔流に対し、立ちはだかる者がいた。
「ふん、この私がいる船へ白兵を仕掛けてくるとは笑止! その無明、貴様らの血で贖うがよい!」
オヴェリア・ゲランド(銀の剣帝・f25174)は、風雨の吹き荒れる中、その存在を無視するかのように、決然とそびえ立っていた。
覇剣シグルドリーヴァーを甲板に突き立て、尊大な視線を浪人の軍勢にぶつけるその姿は、まさに北の覇王と呼ぶに相応しい。
その背から発せられる金色の覇気の前に、オブリビオンたちは躊躇する。
「この女……強い!」
「くっ、警戒しろ! 奴は猟兵だ、どんな手を使うか分からん! 囲め!」
白刃を抜いた浪人たちが、円を描くようにオヴェリアの周囲を取り囲む。その包囲網にも全く動じぬオヴェリアであるが、それには理由があった。
揺れる船上での戦いは、剣士にとって難しい。動かぬ地面の上で使う足捌きが封じられるからだ。暴風雨の中ならば、尚の事。
事実、浪人たちは自らの足の位置を頻繁に変えている。
揺れや悪い足場への対応に気を取られているのだ。
(無論、私ならば揺れる船上でも問題なく足捌きを披露出来る)
だが、彼女はあえて動かない。ある狙いがあっての事だ。
しばらくの膠着状態も覚悟していたが……戦局は予想に反して動くこととなる。
「な、なんだっ……ぐぁぁっ!」
包囲網の一角で、突如浪人の一人が袈裟懸けに斬られ、倒れた。
そのまま黒い塵となって崩れ去ると、周囲の浪人が算を乱す。
「くっ、あの女か!?」
「違う、上だ!」
浪人たちの頭上に、一人の男が空を舞っていたのだ。
黒い衣装に白いネクタイをはためかせ、右腕を変化させたナノロケットドリルから青い炎を噴射し、縦横無尽に空を駆ける彼の名は、華日・煙志朗(粒子人間ナノダイバー・f22636)。
「まったく次から次へと…皆殺しと言うからには、皆殺しにされる覚悟はあるんだろうな!」
ドリル先端の円錐部がつかの間輪郭を失うが、次の瞬間には刀を思わせる鋭利な形状に姿を変え、そのまま上空から斬りかかる。
「ふざけるなっ! 上空からの奇襲程度でいい気になりおって!」
襲いかかられた浪人は刀を下段に構えるが、その肩口へと鋭く変化したドリルの一撃が突き刺さる。深手を負った裂傷から血しぶきが上がる。
「馬鹿め、かかりおったな……!」
だが、その一撃を受けるまでがオブリビオンの狙いであった。手傷によって発動したユーベルコードの力が浪人の膂力を爆発的に増大させ、刀の冴えを最大限に増大させて煙志朗を叩き落とす……はずであった。
「一撃離脱の早業、披露させてもらおうか!」
「何ぃ、逃れた……だと……!」
だが、刀ならぬドリルを返した瞬間、推進のベクトルそのものが大きく変化。暴風にも煽られ、煙志朗自身にも分からぬ軌道で、浪人が放った超高速の一撃を回避してのけたのである。
無念の断末魔を上げ、一撃を受けた浪人が崩れ去る。
更に頭上からの猛禽の如き一撃で、もう一人。
煙志朗のヒット&アウェイは、確実に敵の数を減らしていた。
「いつまでも、調子に乗るなぁっ!」
一人の浪人が、斬られるその瞬間に、更に一歩踏み込んだ。狙いはドリルの根元。
煙志朗のドリルは円錐形を基本とする。鋭くしてもそれは変わらない。
つまり、根元に近づけば近づくほど太くなり、僅かながら力のかかる点が大きくなる。
結果として、この浪人は紙一重ながら自らの肉体でドリルを止めたのだ。
「とどめっ……!」
機動力を封じられた煙志朗に、半ばを切り裂かれた浪人の最期の一撃が迫る……!
「だがな。ナノダイバーの俺に、斬撃はそう通じん!」
先のドリルと同じように、煙志朗自身の輪郭が失われ、煙のように解ける。
その体は極小機械の集合体であり、ドリルも自らの体の一部なのだ。
ドリルを変化させたのと同じ要領で、彼は自らの身体の組成を解き、斬撃を透過したのである。
煙を、白刃で斬ることはできない。
浪人がそれを悟るのは、自らの身体が再結合を果たしたドリルに貫かれ、消滅する瞬間であった。
「くっ……こうなっては仕方ない。上空は無視し、まずあの女を押し潰せ!」
ついに彼らは煙志朗の攻撃をあえて黙殺し、未だ動かぬオヴェリアへとターゲットを変更したのである。
暴風雨に足を取られぬよう慎重に、だが確実に殺到する。
だが、それこそがオヴェリアの狙いであった。
「愚かなサムライ達よ、この悪天候で攻勢に出た事……後悔せよ」
重ねて書くが、オヴェリア程の達人であれば、船上に最適化された足捌きを披露することは造作も無い。そして、彼女にとって浪人たちのそれは、ただの小細工に過ぎなかった。
「ゲランド帝国を統べる剣帝の一撃、受けてみよ!」
ここまで不動であったシグルドリーヴァーが、ついに振るわれた。
浪人たちの打刀よりも遥かに重厚かつ巨大な剣が、一撃、二撃、三撃。
いや、もはや視認できぬ速度で更にその数倍。
振るう剣は肉を斬り、骨を砕き、空を裂き、刹那の後に衝撃波を巻き起こした。
これぞ、【皇技・百華剣嵐】。
再び、シグルドリーヴァーが甲板に突き立てられた時。
巻き込まれたオブリビオンたちは、肉の一片すら残すことなく消え去った。
「まったく、派手な一撃だ」
「当然だ、これが剣帝の覇道である」
空から降り立った煙志朗の一言に、オヴェリアは悠然と頷いた。
一方、船の反対側では、また別の戦いが繰り広げられていた。
「先のお二人、正面突破が得意技のご様子。
ならウチは船員を護る『待ちの構え』で行きます」
船首側で繰り広げられる戦いに目を向けながら決意の言葉を呟き、愛刀『九龍桜華』を抜いたあかねは、単身で浪人たちの包囲の中にいた。
「女とは言え、猟兵だ! 油断はするな!」
浪人たちは、十重二十重とあかねを包囲する。揺らめく白刃はいつでも斬りかかれるよう、油断なく構えられていた。
だが、あかねはその浪人たちに凛と言い放つ。
「戦い慣れてるようですけど、ウチみたいな女一人を踏み潰す自信もないんですか?」
それは慎重策を取るオブリビオンたちへの、煽りであった。
「言わせておけば……! よかろう、ならば望み通り潰してやる! かかれぃ!」
白刃を揺らしながら、浪人たちが一斉に殺到し始めた。
猟兵ではあるが、数の優位は浪人にあり、また船首側のオヴェリアのような覇気を発しているわけでもない。「ただの女」だ。
ならば潰せる。武士のプライドを傷つけたあの女を、八つ裂きにできる。
逸った浪人たちは、数人がかりで一気にあかねを切り伏せようとした。
だが。
「頼みます、舞!」
声とともに、あかねに殺到していた浪人のうち、数人が吹き飛んだ。幸いにも飛ばされなかった浪人たちはたたらを踏んで踏みとどまる。
あかねの傍らには、鳥の翼を持つ桜色のイルカが現れていた。
衝撃波を放ち、浪人たちを吹き飛ばした張本人である。
だが、それは余計に浪人たちのプライドを逆撫でした。まさか、イルカ如きにしてやられるとは、と憤慨したのである。
「イルカが増えようと同じこと! 潰すのは変わらん、かかれっ!」
再び浪人たちが殺到するが、今度はあかねが動いた。
「ウチは確実に行きますよ」
一人の蜻蛉の構えからの雲曜の一撃を舞うようにかわすと、その背に一撃。すぐに屈むと、回転しながら別方向から殺到した浪人の腱を斬って態勢を崩し、今度は首に一撃。
二人のオブリビオンがどうと甲板に倒れ、塵となって消えた。
「は、速い……! 何だこの女……!」
「数はこちらが上だ! 一気に攻めかかって対応する暇をなくせ!」
殺到する白刃の群れをかいくぐりながら、あかねは思う。
(仕込みは上々……この分なら発覚は遅いはず)
首を狩る一撃を上体を反らして回避し、そのままバック転。
斬りかかった浪人の顎を砕く。
この動きの秘密は、彼女のユーベルコード【シェイプ・オブ・ウォーター】。
彼女の額の宝石に充填されたものと同じ、ソーダ水の雨を降らせることで、深海と同じ環境に戦場を変化させる、というものである。
通常の状況ならすぐにバレてもおかしくはないが、幸い、暴風雨が吹き荒れる艦橋であれば、それに紛れさせれば気づかれることはほぼない。
この状況なら、深海適応したあかねが一方的に動き、殲滅することが可能になるのだ。
そして。
(あとは、「もうひとつの仕込み」がいつ動くか、やね)
確かな足取りで甲板上を舞いながら、あかねは「彼女」に思いを馳せた。
その頃、雲雀は船上にあった。
「上手く行き過ぎて、ちょっと拍子抜けですね」
鉄甲船ではなく、オブリビオンの乗っていた安宅船である。スニーキングに徹していたとは言え、全く発見されることがなかったのだ。
そして、船上にも敵影は皆無。
船内には運行要員がいるのかもしれないが、そこまで突っ込む気は流石にない。
「まぁ、あかねさんに頼まれた仕事はこなしましょうか!」
雲雀の手に、光の粒子が集まっていく。それはユーベルコード【光の粒子を凝縮した操り糸】。不可視の糸を放ち、攻撃や操作を行うもの。
その糸は船体に絡みつき……。
次の瞬間、船体ごと真っ二つになった。
「あれ?」
予想外の状況に、流石に目を見開きながら別の安宅船へ雲雀は飛ぶ。
安宅船に限らず、和船は板をつなぎ合わせて作るため、西洋船と違って竜骨のような骨格が存在しない。このため構造としては脆弱である。
故に、雲雀としては竜骨という弱点を突くつもりが、ユーベルコードの切れ味故に過程を飛ばして船体全体を破壊してしまった格好である。
「まぁ、結果オーライです。この嵐では、1時間と持たずに全部海の藻屑ですね」
バイタルパートもへったくれもない船体輪切りでは、1時間どころか30分も持たない気はしたが。
そして、鉄甲船では。
「馬鹿な、俺たちの船が沈んでいく
……!?」
乗ってきた安宅船が次々と輪切りになって轟沈するのを目撃した浪人が、愕然とした声を発した。
その次の瞬間、その首がころりと落ち、そのまま風に吹き散らされ消滅した。
「貴様、何をした……!」
怒りを込めた浪人の言葉を、あかねは笑顔で受け流す。
「だから言ったじゃないですか。『ウチは確実に行きます』って。
その仕込みが実になった、ってとこです」
「だから何、を……」
浪人は、その言葉を続けられなかった。
「客の御相手でもしましょうか」
全身に絡んだ糸が、その五体を千千に引き裂いたからであった。
その背後には、不可視の糸を展開する雲雀の姿があった。
「雲雀さん、お疲れ様です」
「ちょっと拍子抜けでしたけど、仕事の方はちゃんと済ませましたよ」
そう言って、雲雀は海の方へと目を向ける。
浮かんでいたオブリビオンの安宅船は、その全てが船体を両断され、半ば以上が波間に没していた。その割れた船体に波が海水を補充し、沈む速度はさらに加速する。
こうして、オブリビオン浪人の脅威は排除されたのであった。
大成功
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第3章 ボス戦
『灰都の将・焔影』
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POW : 覇壊
【大太刀と其の鞘に因る斬撃と乱打】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 獣往
【鞘を捨てる】事で【背水の陣を敷く手負いの獣状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 瀑怨
【大太刀の叩き付け】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を燎原へと変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:敷島あや
👑11
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●血嵐の亡将、黒嵐に踊る
「鉄甲船ねぇ。流石にこれは相手したことねぇや」
その男は、気づくと鉄甲船の甲板に立っていた。
焔の紋の刻まれた羽織に、不敵な笑み。
そして、黒鞘に仕舞われたままの巨大な大太刀。
その全てから、焔の香りがする。
全てを焼き尽くした後の火事場の香りだ。
目の前のオブリビオンは、それを為す力を持っていることを、それを為すために現れたのだと、猟兵は確信する。
「まぁ、出会ったもんは仕方ねえ。海の藻屑になってくれや」
亡将は、狂気を隠すことなく口角を上げて笑った。
オヴェリア・ゲランド
ほぅ…ほう!大太刀!溢れる闘気!鋭い剣気!
貴様が大将首だな、私が相手をしよう!
●剣士
「我は銀の剣帝オヴェリア!
貴様は並々ならぬ剣豪であると見受けるが、我が極みの剣…受け切れるか試してみるがよい!」
これ程の強敵に出し惜しみはしない…【リミッター解除】で全力を尽くして戦おう。
「私と踊れる栄誉を賜るのだ、死力を尽くすがいい」
相手の間合いの外から【次元斬】を放って一撃を入れ次元断裂から【切り込み】肉薄、【野生の勘】で攻撃を見切り、斬撃を逸らす【念動力】と防ぐ【オーラ防御】の力を持ち合わせた剣帝の【覇気】に加え【武器受け】流しも駆使して攻撃を捌きながら、渾身の一刀で【薙ぎ払う】。
「ハァ!」
●アドリブ歓迎
●覇剣と壊刀
「呼ばれて来てみれば、そこには強者たち……こりゃぁ運がいい」
その男は、手にした大太刀を揺らしながら、くつくつと愉快そうに笑った。
未だ嵐は鉄甲船の甲板の上を吹き荒れている。
雨は黒塗りの木床を打ち付け、鉄砲の一斉射撃のような音を立てる。
だが、眼前の男は、微動だにしていない。
浪人たちのように、足運びがぎこちなくなりもしない。
無造作に、だが泰然自若。嵐など存在しないかのように立っている。
「さて、お前らが死ぬ前に名乗っておくか。俺の名は灰都の将・焔影」
焔影と名乗るオブリビオンが、大太刀の柄に力を込める。
猟兵ならば理解できるだろう。
「さぁ、殺し合おうぜ……!」
そこに込められた力は、嵐よりも力強く、効率的にこの船を破壊できると。
「ほぅ……ほう! 大太刀! 溢れる闘気! 鋭い剣気!
貴様が大将首だな、私が相手をしよう!」
オヴェリア・ゲランド(銀の剣帝・f25174)は、豪奢な装飾の施された、覇剣シグルドリーヴァーを構え、宣言した。
彼女の率いるゲランド帝国において、その宣言は絶対であり、敵手の敗北及び征服と同意である、と捉えられている。剣一本から大帝国を切り拓いた北の覇王、その実力への信頼は絶大なものがあるのだ。
その快哉をもって陣に迎えられたことは一度や二度ではない。
だが、この敵は簡単に征服できぬだろう、とオヴェリアの直感は告げている。
強敵の予感を前に、アイスブルーの瞳が細められ、端正な表情は僅かに笑みを浮かべていた。
「我は銀の剣帝オヴェリア! 貴様は並々ならぬ剣豪であると見受けるが、我が極みの剣……受け切れるか試してみるがよい!」
「応よ、俺は灰都の将・焔影! ならばお前の総てを受け切り、我が灰燼の剣をもって、仕留めてやるぜ!」
シグルドリーヴァーが、大太刀が、奔った。
焔影は、その長大な大太刀を抜き放つと、驚異的な脚力で跳躍し、あっという間に間合いを詰める。そのまま余人には支えることすら叶わぬであろう重量の大太刀を、片手で振りかざす。
驚異的な膂力であると言えよう。
だが、更にその間合いの外。切っ先すら未だ届かぬ距離から、オヴェリアはシグルドリーヴァーを振るった。
「そこは……既に私の間合いだ!」
黒と金の大剣の一撃が、文字通り次元を裂いて焔影へと迫る。
「……ちぃっ!」
焔影は振り下ろそうとした大太刀を、無理矢理軌道変更して自らの前に立て、その一撃を受け止めた。未来を切り開く覇剣が切り裂いた次元断裂と、斬り伏せ壊し過去へと還す大太刀が激突し、甲高い金属の悲鳴が上がる。
「遠当てか! やるじゃねぇか!」
愉しげに焔影が笑う。
予想外の一撃を面白がっているかのように見えた。
だが、オヴェリアの攻撃が終わったわけではない。
「私と踊れる栄誉を賜るのだ。もう一幕、死力を尽くすがいい」
その声は、「焔影の近くから」聞こえた。
焔影が受け止めたはずの次元断裂から、銀の髪が現れた。
次元の裂け目同士を出入口と見立てることで、オヴェリアは懐へと飛び込んだのである。
「なるほど、これは一幕踊ってやらにゃぁならんな! 俺からの返礼も食らっておけ!」
その一撃に対し、彼は逆手に持った鞘を振るった。
超重量にして鋭利を誇る大太刀を収める鞘は、それそのものが打撃武器となるのだ。
その一撃を覇剣の腹で捌くと、今度は脳天を割るべく大太刀が襲いかかり、回転して回避し、焔影の脇腹を狙う。
その一撃を鞘で受け止めた焔影は、この一点を重心として、再び斬撃を浴びせる。
肉体のリミッターを外し、物理的な力すら持つ覇気を発しながら、縦横無尽に覇剣シグルドリーヴァーを振るうオヴェリアと、大太刀と鞘をもって斬撃と乱打の返礼を行う焔影。
その様は、さながら舞踏会のダンスのようでもあった。
だが、それも終わりを告げる。
「ハァッ!」
渾身の一撃をもって、オヴェリアが横一文字の一撃を放った。
「くぅっ!」
焔影は、ついに十文字に大太刀と鞘を構え、その一撃を受け止めた。
北の覇王の剣圧を前に、オブリビオンは雨に濡れているはずの甲板に煙を上げながら後退する。
「くくくっ……これだ! この緊迫感こそ戦いだ!」
「どうした、まだ踊り足りぬか。……私は構わぬぞ?」
視線が交錯する中、剣のみで敵を過去に沈めたオブリビオンと、多くの臣民の未来を切り拓いた覇王は互いに笑みを浮かべるのであった。
成功
🔵🔵🔴
宴・段三郎
大太刀に炎か…ふむ…
ではこちらも
大太刀に炎と鎚、
車太刀に核、
打刀に時
で行かせて頂く。
使用妖刀は
号 『化生炉』
号 『獄悶』
号 『斃』
まずは斃で【早業】による居合抜きを行う
刀身を見られたら自壊してしまう恥ずかしがり屋ゆえ、抜刀時の音も光も見えぬ居合を、刀が手に触れてない格好のままノーモーションで行う。
敵の炎に対しては【炎耐性】と【見切り】で受け流して対応するのじゃ
間合いが狭まったれ獄悶で擦り傷程度でよいから敵を切る
そうすれば敵の体内で核爆はが起こるからの。
最後は化生炉でゆーべるこーど、地国炉開闢を使い奴の炎との格の違いを見せつけてやるのじゃ
斃と獄悶は今回が初のお披露目。盛大にやらせていただく
●妖刀鍛冶と焼刀の獣
「ほう、猟兵ってのには刀鍛冶もいるのか……待て、お前本当に刀鍛冶か?」
甲板に立った宴・段三郎(刀鍛冶・f02241)に対し、オブリビオン・焔影は訝しげな視線を向けた。
白装束を纏う銀髪の少年は、事実『地国』の号を持つ刀匠である。
だが、焔影には彼の背に、無数の「何か」の残滓を見ていた。
それは想いのうねり。
嘆き、怨嗟、あるいはそのいずれでもあり、いずれでもない未分化の感情。
それは、こう呼ぶ方が相応しいだろう。
妖気。
「そんなモンを背負うのは、本来戦を渡り歩いて恨みを背負った武者どもだ。刀鍛冶なんぞが背負っていいもんじゃねえ。何者だ、お前……?」
その焔影の視線に、段三郎は謎めいた笑みを浮かべる。
「何、わしは見ての通りの刀鍛冶よ。……専門は、荒魂を宿す妖刀じゃがな」
風に依らず、段三郎の携えた刀がカタカタと震えて音を立てる。
その総てが妖刀。行き逢ったオブリビオンを鍛刀し、鍛え上げた代物だ。
その答えに合点したかのように、焔影は頷いた。
「なるほど、道理で気味悪い気配を背負っているわけだ。お前、行き逢う者を妖刀として『打ち直して』やがるな。ハハッ、面白え。血が騒ぐっ!」
笑みを浮かべて、焔影は鞘から大太刀を抜き放った。
現れた巨大な刃から焔が生じ、赤い軌跡を雷鳴の空に描く。
一方、段三郎もまた、この過去より現れた敵と相対するに相応しい、己の得物を見定めようとしていた。視線が、焔影の大太刀に注がれる。
「大太刀に炎か……ふむ……。
ではこちらも大太刀に炎と鎚、車太刀に核、打刀に時で行かせて頂く」
三振の妖刀が『解き放たれる』。
妖刀はただ抜くに非ず。その力を、あるいは業を解き放つことで現を侵す。
その号は、『化生炉』、『獄悶』、そして『斃』。
「斃と獄悶は今回が初のお披露目。盛大にやらせていただく」
幼き顔に、段三郎は凄絶な笑みを浮かべた。
「では……止めてみやがれっ!」
焔影が、手にした鞘を投げ捨てた。
抜身の大太刀を両手で構え、極めて低い姿勢から跳躍する。
その姿は、さながら獲物に牙を閃かせて飛びかかる獣のようだ。
「戦いにも用いる鞘を投げ捨て、背水の陣で臨むか。面白い、面白いが――」
段三郎は、そう言いつつも刀に手を掛ける素振りを見せない。
その姿を不可解に思いながら、段三郎の懐に焔影が肉薄する……直前、槌のような打撃音を立てて踏みとどまることで、その疾走を無理矢理止め、遠ざかるように跳躍する。
暴風に翻った焔影の髪が、一房散った。
段三郎は、その勘に思わず息を漏らす。
「ほう、斃の居合を躱しおったか」
「鞘鳴りの音も、刃の閃きもない居合だと……!? しかも刀に手も触れずか!」
「斃は刀身を見られたら自壊してしまう恥ずかしがり屋ゆえな」
号『斃』。天下に二つもなき切れ味を持つ妖刀であるが、段三郎の言う通り、刀身を見られたが最後、自壊してしまう。
神速の居合は代償を超えて用いるための、必然なのだ。
「だが、一度見た以上、二度は使わせねぇよ。居合を抜き放つ練気をさせる間も与えなければいいだけだ!」
炎を纏った大太刀が、神速をもって振り下ろされる。
その一撃を、その次を、更にその次を、段三郎は懐から取り出した反りの大きな小ぶりの刀……車太刀をもって受け流していく。
よく見れば、その刀身は翡翠……号は『獄悶』である。
「なるほど、油断すれば焼かれかねんが……炎をもって刀を鍛える刀鍛冶が、炎で焼かれては格好がつかぬのじゃ」
「流石は妖刀鍛冶よ。引き出しが多い……だが、押し切ってやるぜ!」
焔影の大太刀の速度が更に増す。
金属の弾ける音を響かせながら、打ち合いは加速していく。
だが、打ち合いの数が多くなれば、必然的に隙も生じる。
そこに、彼は『獄悶』を差し込んだ。焔影はすぐに身を翻して距離を取るが、その腕に、浅い傷が刻まれた。
「はっ、油断も隙もありゃしねえや。だが、掠り傷程度で……」
「いや、それで十分じゃ」
段三郎の言葉と同時に、その腕が爆発を起こした。
「なっ
……!?」
腕そのものが消し飛び、失われた手から大太刀が回転しながら弾け、甲板に突き刺さった。
これこそ、『獄悶』の妖力。
傷つけた敵の体内の原子核を崩壊させ、超小型の核爆発を起こすのである。
そう、段三郎の言う通り、掠り傷で十分だったのだ。
そして、その段三郎は巨大な大太刀を構えた。号は『化性炉』。
焔影のものにも劣らぬ大型のものであり、矮躯も相まって一層巨大に見える。
刀身に、超高温の炎が灯り、渦を巻く。
「これぞ、わしのゆーべるこーど、【地国炉開闢】。炎の格の違い、見せつけてやるのじゃ」
段三郎が、『化性炉』を振り下ろした。
玉鋼や妖物すら溶かす超高温の炎の渦が、炎を纏った大太刀ごと、焔影を呑んだ。
炎の中の影が、膝をついた……が。
「ちぃぃっ、これで終われるかっ、俺はまだまだ戦えるっ!」
焔影の裂帛の気合が、その炎を打ち払った。
その後には、刀を杖に、どうにか立つオブリビオンの姿。
しかし、その闘気は未だ健在である。
「いやぁ、妖刀鍛冶……本当に面白えな、お前。もっと手を見てえもんだ」
「見せても良いが……その場合、妖刀に鍛え直される覚悟はあろうな?」
オブリビオンと段三郎は、お互いに笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔴
天星・雲雀
「船が沈むと船長は船に残り、共に逝く。と聞いてたのですけど。甲板に立つ彼は、船長では、なかったということでしょうか?」
鉄甲船を挟んで、ちょうど反対側から、【装備】機械式の赤い義眼の望遠機能で、敵の様子をうかがう。
「どのみち斃さねば、航路を往かせてもらえませんか・・・」
「見た所、武器と思しきは大太刀のみ、自分の現在位置は距離は離れているし、よしんば斬撃を飛ばしてきたとしても、障害物が多くて届かないはず」
「オトモ!UC獅子の座流星弾で、敵の手首より先、大太刀にかけてを集中攻撃。大太刀を手放したら、大太刀が海に落ちるまで、大太刀を攻撃して。破壊できれば、なお良し!」
「武器だけでも使え無くしましょう」
華日・煙志朗
アドリブ絡み歓迎
…こいつはまずいな、相性が最悪だ
とはいえ、海の藻屑をこれ以上増やすわけにもいかん
この航海、無事に乗り切らせてもらうぞ!
あの乱撃を今までの様に避けるのは厳しいだろう
迎撃に徹する
学ランを翻しドリルを振るい乱打の隙を伺う
【武器改造】左腕が変形したチェーンを飛ばし拘束
右腕のドリルに点火、切り離して奴に撃ち出す【早業】で畳みかける
【串刺し】だ!…もっとも、拘束も早業も奴に通じるかはわからんがな
だからこそ、最後の切り札ってもんがある
プラズマエアー炉心もいい加減限界か…
コード発動
残っている俺の燃料、極小機械のエネルギーをかき集め…暴走、凝縮したプラズマの塊を投げつける
後の事は、他の連中に託す
火土金水・明
「相手が刀を使うのでしたら、こちらは剣で受けて立ちましょう。」銀の剣を右手に持って構えます。
【SPD】で攻撃です。
攻撃方法は、【破魔】と【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀の流れ星】で『灰都の将・焔影』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】でダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
静宮・あかね
※【アドリブ・連携・絡み歓迎】
※素は京言葉、普段は標準語
雲雀さん、先程は中々のお点前
オヴェリアさん(あ、皇帝陛下とお呼びする暇が…)と
ドリル使いの煙志朗さんもお美事です
そして灰の匂いで咽そうなお侍さんが…
ですが折角出資した船を沈められては困ります
焼畑農業は陸で実践して頂けませんか?
…先の様に軽口が響く方なら楽ですけどね
ここはウチも技を見せますよ、【天洞院陰舞・凍月桜】を
※構えた赤珊瑚の刀身を桜色の氷刃で覆う
必殺の『動』でなく備えの『静』たる剣ですが
燎原の炎を鎮めるのに放水は強すぎますから
※桜の雪を甲板へ積もらせ【火炎耐性】&WIZユベコ対策
(綾、もうひと頑張りなんよ。舞、船員はんを護ってぇな)
未だ荒れる海に翻弄される鉄甲船。
揺れは先よりもかなり収まっているが、それでも風雨は変わらず打ち付けている。
だが、それが問題にならない災厄が、眼前に立っていた。
「やれやれ、吹き飛ばされた腕はどうにか元通りだな。とはいえ、形だけだが……まぁ、刀が握れねえより、マシか!」
別の猟兵に吹き飛ばされたはずの腕をさするは灰都の将・焔影。
その手には、名の通りの炎をもたらす一振りの大太刀。
その嵐をも上回る猛威は、未だ晴れぬようであった。
華日・煙志朗(粒子人間ナノダイバー・f22636)は、敵オブリビオン・焔影の出で立ちに対し、強い危機感を覚えていた。
「……こいつはまずいな、相性が最悪だ」
煙志朗の身体は極小機械群の集合体である。
それにそなわった「機能」である分解再構成によって、攻撃の透過を行ったり、各種武装を生成して戦闘に利用するのが彼の戦術である。そのポテンシャルは、浪人オブリビオンを翻弄した手腕を見れば明らかであろう。
だが、焔影の得物は、刀身だけでも1メートルは越えるであろう長大な大太刀だ。
ただでさえ攻撃範囲の広い武器である上に、オブリビオンの膂力と組み合わされば、その一撃は強い気流の流れを巻き起こす。更には、ユーベルコヲドによる追加効果もあるかもしれない。
そうなると、煙志朗の極小機械は結合を阻害される恐れがあるのだ。
(そうなると、俺の攻撃はどうしても後手に回る。吹き散らされたら最悪だ)
最悪、元に戻れなくなる危険すらある。そう考えた矢先。
「ドリル使いの煙志朗さん、先程はお美事でした」
印象的なピンク色の髪の女商人……静宮・あかね(海慈屋の若き六代目・f26442)が煙志朗へと声をかけた。
その柔らかい労いの声は、張り詰めた煙志朗の心を、どこか弛緩させるものがあった。
「ありがとよ。だが、その続きはこの戦いの後に……」
振り払うように、素っ気ない言葉を紡ぎ出す煙志朗。
その言葉をも包み込むように、あかねは微笑んだ。
「あのオブリビオンは確かに強敵です。一人では勝てないかもしれません。ですが」
決然とした言葉とともに、愛刀『九龍桜華』を抜き放つ。
珊瑚を鍛えたと言われる紅一色の刃が、ひぃん、と震える。
「私もいますし、煙志朗さんもいます。持てる資本を……力を合わせれば、越えられない難局はないと、私は信じています」
「あかねさんの言う通りだと思います。それに、持てる道具を持って、戦うしかないんです」
嵐にハイレグ仕様の際どいウィザードローブをはためかせながら現れたのは、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)だ。
その手には、銀色の剣が握られている。
「だから、相手が刀を使うのでしたら、こちらは剣で受けて立ちましょう。そして、至らぬを補い、揃えられる範囲で、互いに歩を揃えて戦いましょう。ですよね?」
「はい。協力して頂けますか、煙志朗さん?」
明の黒い瞳が、そしてあかねの赤い瞳と額の藍玉が、煙志朗へと向けられる。
柔らかな、しかし真摯なふたりの視線。
煙志朗には、それから目をそらす選択肢などないのだった。
「……まぁ、海の藻屑をこれ以上増やすわけにもいかんしな」
苦笑すると、自らの肉体を組み替え、生成していたドリルを、焔影へと向けた。
オブリビオンは、顔を笑みの形に歪めた。
音を立てて、大太刀を握り直す。
「話は決まったかい、猟兵さんよ?」
「ああ、お陰でな。この航海、無事に乗り切らせてもらうぞ!」
困難な戦いの予感を振り払うように、煙志朗は叫んだ。
「おお、吠えたな若人! なら、俺を倒してみろ! まぁ、ただで倒されてやる気は微塵もないんでな、やりたいなら押し通れ!」
応えるように、焔影が獅子吼する。
戦いの気配が満ちていく中、一人あかねは別の方向に目を向けていた。
(雲雀さん、先程のお点前、今回も期待していますよ……?)
一方その頃。
半ば沈み、高々と船首のみを掲げた安宅船の上に立った少女――天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)は、その視線を彼女の母艦である鉄甲船へと向けていた。
視界に映るは、ドリルに刀、剣を構える3人の猟兵。
そして、大太刀を背負い、今にも飛びかかりそうなオブリビオン……焔影。
視線を移す度に、赤い左目が機械音を立て、その瞳孔を駆動させる。
「船が沈むと船長は船に残り、共に逝く。と聞いてたのですけど。甲板に立つ彼は、船長では、なかったということでしょうか?」
その口から飛び出たのは、どこかとぼけた言動。
あかねがいれば「いえいえ」と否定したかもしれない。
慣習としての船長の最後退船は、洋の東西を問わず存在しているが、絶対というわけではないのだ。そもそも、あの焔影と名乗るオブリビオンは、オブリビオン水軍が壊滅してから現れたものなのだが……。
だが、そんな呟きを漏らしつつも、雲雀は油断なく焔影の出で立ちを観察している。
服装は、比較的軽装。炎をあしらった羽織は羽織るだけで、防具は無し。
手には大太刀。本来騎乗用のものであるが、それを膂力をもって完全に制御している上、片手でも素早く振るうことができる。
更に、刀身からの発火は傷を灼くのみならず、周囲を燎原と変える可能性もある。
何よりも無視できないのは、旺盛な戦闘への欲求だ。
「どのみち斃さねば、航路を往かせてもらえませんか……」
雲雀はそう結論を下さざるを得ない。
先の浪人などとは格が違う。下手をすると吹き荒れる嵐よりも余程危険だ。
そう結論してからの、雲雀の思考は早かった。
「見た所、武器と思しきは……」
「自分の現在位置は距離は離れているし……」
「よしんば……障害物が……」
舳先の上で、彼女は戦い勝つための思案を組み立てつつあった。
「はっはぁ、威勢が良かった割には、随分しょっぱい打ち合いしてんじゃねぇか!」
「くっ、言ってろ!」
炎を上げる焔影の大太刀に、骨をも砕くその鞘を、煙志朗はドリルを振るって迎撃する。
円錐形という形状が幸いし、横滑りさせることで刃を受け流すことは難しくない。そのアドバンテージを最大限利用した形である。
(あの乱撃を今までの様に避けるのは厳しいだろう)
実際に刃と鈍器の只中に躍り出ることで、自身の判断が正しいことを痛感していた。
雨水を蒸発させて白い煙を上げながら振るわれる斬撃、打ち合う度に暴力的なまでの衝撃をもたらす鞘の打撃、そのひとつひとつが非常に重い。
加えて、振るわれる度に嵐を裂いて生まれる猛烈な気流の流れ。浪人戦のような分解と結合を繰り返していては、手数そのものが制限され、存在自体が散らされていただろう。
だが。
「それだけじゃ終わらねえ。だろ!」
「その通りです。……流れる星に、魔を断つ力を!」
無数の星の如き白銀の煌めきが、焔影を包み込んだ。煌めきはフェイントを交えながら、破魔の力を纏って恐るべきオブリビオンの将へ殺到する。
それは明のユーベルコード【銀の流れ星】による、無数の突きだ。
足捌き、手首のスナップ、剣のしなり。
その一撃一撃には、旧くはグリュ=ヴォの名でも知られたオリオン座α星・ベテルギウスの力を享けた破邪術式が込められ、対オブリビオン戦における破壊力を増している。
ユーベルコードへと昇華された剣技と魔術の合わせ技と言えるだろう。
「なるほど、二人がかりか! だが、それじゃ足りねえ!」
対する焔影は、煙志朗と鞘で打ち合ったまま、大太刀を明へと向けた。
両手持ちにも関わらず、その速度は明の剣にも劣らぬ疾さ。フォマルハウトの焔とも言える燃える大太刀の連撃が、銀の流星を次々と捉えていく。
「なるほど、二人がかりか! 面白えが、俺を捉えるにはまだ足りねえな!」
だが焔影の嘲笑に、明は微笑んだのだ。
「そんなことは分かってます。まだ私の動きは、ガンズ&ローゼスや紺碧の刻印(アイスブランド)の連携には至りません……」
明が、目標とする男と、その弟にして相棒の通り名を挙げる。
彼女にとっては、掴もうとして届かぬ遠き星である。
しかし、星を掴めぬとしても、やれることはある……!
「ですが、ならば別のものを積み重ねればいいのです。私が及ばぬとも!」
「続く者がそれをなします。――【天洞院陰舞・凍月桜】」
桃色の髪を風になびかせ、あかねが愛剣・九龍桜華で斬り上げた。
赤珊瑚の刀身は桜色の氷に包まれて氷刃と化し、リーチを伸ばしていた。その長さは、焔影の大太刀に勝るとも劣らない。
3人目の攻撃に、初めて焔影が表情から笑みを消す。
「付け焼き刃の氷で、俺の炎を消せると思うなっ!」
横に振り抜いて明の斬撃を退けると、そのまま大太刀を九龍桜華へと叩きつけた。
炎と氷がぶつかり合い、桜色の氷が、砕けた。
「やるな……あえて砕けることで打撃を殺しやがった。だが、炎の燎原の上で俺に勝てると……」
焔影の言葉が途中で止まる。
オブリビオンが放ったユーベルコードは【瀑怨】。たとえ一撃が躱されようとも、散った大太刀の炎が周囲を燎原と化し、焔影に力を与えるというものだ。
だが、現実には。
「桜色の雪景色……だと? 俺の燎原が、書き換えられている!?」
「折角出資した船に放火されても困ります。焼畑農業は陸で実践して頂けませんか?」
静かに切っ先を下に向けたまま、あかねが微笑む。
この戦いの間も、船を支える鯨『綾』と、乗組員の護衛に回ったイルカ『舞』の分の想いも背負い、この船を、人々を護り切ると決意を込めて。
その「静」の剣気に、微かに焔影が気圧された。
その一瞬で、明には十分だった。
「隙ありです! ……我が始祖にして力の始源、”荒廃の魔王”よ、加護を!」
銀の剣の一撃が、炎の大太刀を大きく跳ね上げた。
焔影が大きくのけぞり、胸が反らされる。
それでも、焔影は自信を込めて笑っていた。
「この隙は確かに俺の落ち度だ。だが、胸を貫こうと考えるなら、飛び込む間にお前の頭蓋が割られる方が早いぜ……!」
焔影が強引に大太刀を振り下ろそうとする。筋肉に力が籠る。
確かに、今までの剣速であれば、この隙は、彼にとって隙の内にも入らない。
「この隙に飛び込む」のならば。
「ウチらは誰も、そんな事考えてません。……雲雀さん!」
鈴を転がすようなあかねの声が、嵐の空に響いた。
「オトモ! 攻撃を!」
焔影の認識の外、鉄甲船の甲板の更に外から、青と赤の狐火が乱入した。
狐火は物理的な衝撃を纏いながら、焔影の高々と掲げられた手首へと激突。
焔影の態勢が大きく崩れる。
「なっ……ここで外から、だと!?」
「敵の手首より先、大太刀にかけてを集中攻撃!」
高熱を放ちながらオトモは舞い踊り、連続で衝突。攻撃に集中していた焔影は、それに対抗する手段を持たなかった。
何度も炎熱と打撃を受けながら、ついにその手から大太刀が離れた。
「大太刀を手放したら、大太刀が海に落ちるまで、大太刀を攻撃して」
青いオトモが大太刀を跳ね上げた。炎が吹き散らされた大太刀は車輪のように回転し、海へと飛んでいく。
赤のオトモもそれに続き、猛禽の狩りの如く、何度も大太刀へ襲いかかる。
「破壊できれば、なお良し!」
そして、大太刀が砕けた。
銀の輝きが舞い散ったかと思うと、次の瞬間には黒い塵となって嵐に舞い散る。
「良いお手前でした、雲雀さん」
それを見て、あかねは雲雀のいるであろう方に視線を向け、微笑んだ。
だが、焔影はそれでも止まらなかった。
「ま、まだだっ! 俺は戦える!」
「いいや、お前はもう終わりだ」
煙志朗は、チェーンに変えた左腕を鞘へと伸ばした。
分銅となった先端ががっちりと鞘へと絡み、その動きを拘束する。
「次はこいつだ!」
左腕のドリル基部が点火、ロケットとなって飛び出した。
左手の鞘は絡め取り、無手の左腕では止める手段がない。
「戦えると、言ったはずだっ!」
飛来するドリルを、焔影は右手で受け止めた。
先端が掌を貫き、突き抜けようとするが、焔影が基部のロケット部分を握りしめたため、それは叶わない。
次の瞬間、基部ごとドリルが焔影の手の中で握り潰された。
右手から夥しい血を流しながらも、なおも焔影は凄絶に笑う。
「だから戦えると言っただろう?」
「ああ、全くお前はすごい。それでまだ戦えるってんだからな。
……だからこそ、最後の切り札ってもんがある」
ドリルを切り離し、顕になった右手を、煙志朗は自分の腰、ブレーンスパイラーへと押し当てた。その右手に、煌々と輝く光の塊が握られる。
電光を放ちながら、彼の手の中で暴れる光の塊はプラズマ。自身を構成する極小機械のエネルギーをかき集めた、凝縮した生命そのものとも言える力だ。
これが煙志朗の切り札【プラズマスパークボンバー】。
限界に近づいている自らの心臓部たるプラズマエアー炉心を、第二の脳とも言えるブレーンスパイラーと直結することで、直接エネルギーを取り出したのだ。
半ば暴走したそのエネルギーに、前方への指向性を与える……目標は、焔影。
「こいつで消し飛びやがれぇっ!プラズマスパーク、ボンバー!!」
光の塊が、まるで猟犬のように焔影へと踊りかかった。
「おおおおおおおおおっ……!」
焔影もまた、獣のような吠え声を上げて、それを受け止めようとする。
だが、万全の状態ならばともかく、大太刀を失い、鞘を封じられ、右手も機能しない状態で、それをするには、焔影は消耗しすぎていた。
「おおおおおおおおおっ……」
着弾し、広がる光の中で、焔影は声ごとエネルギーに還元され、ついに消滅した。
力尽きた煙志朗が、膝をつく。
だが、彼が甲板とキスをすることはなかった。
「お疲れ様でした。最後の一撃、見事でしたよ」
「本当に。でも無茶はダメですよ?」
その身体を、明とあかねが抱きとめ、支えたからだ。
「あっ、嵐が止んだみたいですよ」
鉄甲船の甲板へと戻ってきた雲雀が、進路の向こうに視線を向ける。
意識の途切れそうな煙志朗も、それを見た。
雲が裂け、青空が覗き、その向こうに巨大な紫色の光があるのを。
(その向こう側の海は、どうなってるんだろうな)
浮かんだ疑問を抱きながら、煙志朗の意識は闇へと沈んでいった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年06月20日
宿敵
『灰都の将・焔影』
を撃破!
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