●ハンドメイドマーケットwithインコ
ぬいぐるみ、パッチワークに刺繍、アクセサリー。
それから、最近流行りのハーバリウムまで。
可愛らしい商品にはしゃぎ声を上げる女子高生、自分の作品がコンテストで入賞していると知り、二度見をする男性。
とある都市で、ハンドメイドマーケットが開催されていた。一年に一回のハンドメイドマーケットということもあり、たくさんの民間人が会場で思い思いに楽しいひと時を過ごしている。
……そこに、不穏な影が差していることも知らず。
『ウサギヤクマヨリ、オレタチ……』
『カワイイノハセキセイ……。ワレラガイチバン!』
いつの間に搬入されていたのか、精巧な造りのふっくらとしたセキセイインコのぬいぐるみ? が。
愛くるしい彼らが民間人を襲うまで、あと少し。
●かわいはせいぎ
「ハンドメイド好きなら、是非とも参加したくなるイベントですよね!」
グリモアベースの片隅にて。
クリオネらしきぬいぐるみをモフりながら、曙・ひめ(羅刹の戦巫女・f02658)はそう力説していた。世間一般の少女の例に漏れず、彼女も可愛いものが好きなようだ。
「実はUDCアースで開かれるハンドメイドマーケットに、UDCが紛れ込む予知を見たんです」
このままではハンドメイドマーケットを楽しんでいる民間人が、UDCに襲われてしまう。
被害を未然に防ぐためにも、猟兵たちがハンドメイドマーケットを満喫し、UDCを引き寄せて欲しいとひめは告げる。
「そうですね……。まずは、ぬいぐるみ作りなんかはいかがでしょう? 自分の好きなぬいぐるみが作れるらしくて、なかなかに人気なんですよ!」
コンテスト入賞作品の展示、商品や素材販売の他に、マーケットでは体験教室も開かれている。
中でもぬいぐるみ製作の体験教室は、選べる素材が豊富で、自分の好きなぬいぐるみを作ることができるため、なかなかに人気があるらしい。初心者でも安心して参加できるように、教師によるサポート体制も整っている。
「ハンドメイドマーケットを楽しんでいたら、恐らく自然と敵の情報が入ってくると思います。緊張し過ぎずにいきましょう!」
頑張ってくださいね! とひめは猟兵たちを送り出した。
夜行薫
●
2作目となりました。
初めまして。もしくは1作目ぶりです。夜行薫です。
まだまだ不慣れですが、頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。
さて、今回はUDCアースでのゆるもふもふっとした依頼を一つ。
各章冒頭追加と共に、プレイング募集となります。
また、締め切り等はマスターページで連絡します。
●一章:パペットメーカー
ハンドメイドマーケットで、ぬいぐるみ作りの体験教室です。
ウサギやクマ、ヒツジなどお好きなぬいぐるみをお作りくださいませ。
モチロン、セキセイインコモカンゲイ!
思いきり楽しんで、標的が猟兵に向くようにしましょう。
●2章:ハンドメイドUDC
お客さんとしてハンドメイドマーケットを巡りながら、店員の方から上手く聞きだしたり、会場を調べたり、聞き耳を立てたりして、セキセイ様の手がかりを見つけ出しましょう。
●3章:セキセイさま
会場の何処かに潜んでいたセキセイさまとの集団戦です。
殴るもよし、モフるもよし。
第1章 日常
『パペットメーカー』
|
POW : かっこいいぬいぐるみを作る
SPD : 大きいぬいぐるみを作る
WIZ : 可愛いぬいぐるみを作る
|
●
見本として広げられた本には、簡単なものから複雑なものまで。
フェルト地に、ガーゼ、フェイクファーなどなど。様々な生地が並んでいる。
好きな物を選んで縫い合わせ、中に綿を詰めていけば。
ほら、世界に一つだけのぬいぐるみの出来上がり。
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:レイリ
「他の、ヒトが居るのは、ちょっと、怖いけど……ぬいぐるみ、作るのなら、ボクにもできる、から。がんばって、作ろう、かな」
UCを発動してアートでぬいぐるみを作る
(集中してると、あんまり、まわりのヒトが、気にならない、し。呼ばれてても、気づかない、けど。まだ、怖いの、いないなら、大丈夫、だよね?)
黒いフェルトでオオカミのような形の黒い獣を作る。サイズは40cmくらい。赤紫の目を付けて、蛍光塗料で目が光るように細工する
完成したらふうと一息。誰かに聞かれたら、少しビクビクしながら答える
「アノン、だよ。強くて、怖くて、ガオーってなるの」
他のヒトの、ぬいぐるみ、見せてもらおう、かな
●
楽しそうに、ぎこちなく、或いは、のんびりと。思い思いにぬいぐるみを作っている人々。
体験教室には、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)以外にも、人が何人も居て。
そんな人々の様子を伺うように、2つの黒い瞳が不安げに揺れ動いていた。
3人いるうちの人格の1人であり、人見知りしがちなレイリにとって、見知らぬ他人という存在は怖いもの。だけど。
「他の、ヒトが居るのは、ちょっと、怖いけど……ぬいぐるみ、作るのなら、ボクにもできる、から。がんばって、作ろう、かな」
レイリは意気込むと短く息を吐き、意識を切り替えていく。
レイリが選んだのは夜のように真っ黒なフェルト。チャコペンで型紙をなぞり、慣れた手つきでフェルトを裁っていく。
(「集中してると、あんまり、まわりのヒトが、気にならない、し。呼ばれてても、気づかない、けど。まだ、怖いの、いないなら、大丈夫、だよね?」)
一握りの不安を胸に、それでも少し柔らかな表情を浮かべ、レイリは型紙通りに裁ったフェルトをチクチクと縫い付けていく。
そうしてあっという間に仕上がったのは、40㎝ほどの大きさのオオカミのような黒い獣のぬいぐるみ。赤紫の目を縫い付けて、目が光るように蛍光塗料を塗ったら完成だ。
愛らしくも威厳に満ち溢れた黒い獣のぬいぐるみは、自分こそが王様なのだと誇らしげに胸を張っているように見える。それに、「喰ってやるぞ」と今にも言いだしそうで。雰囲気が別人格のアノンにそっくりだった。
「わぁ~! お兄ちゃんのぬいぐるみ、カッコいい! なんて名前なの?」
「アノン、だよ。強くて、怖くて、ガオーってなるの」
完成したぬいぐるみを一目見、ふうと息を吐いていたところ、突然声をかけられて。ビクッと肩を跳ねさせながらも、レイリは自分に話しかけてきた少女にどうにか返事を返した。
アノン(ぬいぐるみ)もレイリに続くように、がおーっと少女に挨拶を一つ。
「えっと、その子の、名前、は?」
「ミケって言うの! かわいいでしょ?」
「う、ん。かわいい、ねこさん、だね」
少女が手にしていたのは、綿が所々飛び出して少々不器用な仕上がりのねこさん。
微笑ましい仕上がりのミケと少女に、レイリは笑顔を返した。
大成功
🔵🔵🔵
英・明夜
◆■
可愛かったり、綺麗だったり。
眺めて通るだけで、足取りも心も弾んじゃう。
ぬいぐるみ、色んなものが作れて、逆に迷っちゃうねえ。
あれもこれも作ってみたくて、選べない、けど。
自分に一番、馴染みがあるものを作ろうかな。
明夜や、明夜の兄弟たちの毛色と同じ、藍色の狐さんにしようっと。
明夜の代わりに、側に居られるように。
お裁縫は、凄く得意、ではないけど、繕いものとか、布巾とかなら経験有りだよ。
でも、色んな縫い方…すてっちとか、縫い合わせたりとか、初めてだから。
教えてくれる「先生」に、宜しくお願いします! のご挨拶から。
可愛くなってね、って願いながら縫うね。
ふふー、兄弟たちも、笑顔になってくれるかな。
ふわふわ、もふもふ。可愛かったり、綺麗だったり。小さかったり、大きかったり。
テーブルの上に並んだ色も形も様々なぬいぐるみたちが、体験教室にやってきた英・明夜(啓明・f03393)を出迎えていた。
(「眺めて通るだけで、足取りも心も弾んじゃう」)
生地も型紙も、モチーフも全て選び放題で。ルンルン気分の金の瞳はあっちへひらひら、こっちへひらひら。まるで春の蝶々のよう。
一つ選ぼうとすると、他のぬいぐるみが引き留めるように明夜を見つめている気がして。なかなか選べなかった。それなら。
「明夜や、明夜の兄弟たちの毛色と同じ、藍色の狐さんにしようっと」
旅を続ける家族とはなかなか会えないけれど。ぬいぐるみが明夜の代わりに、側に居られるように。そんな思いで明夜が作ることに決めたのは、藍色の狐さんだった。
「今日は宜しくお願いします!」
「あらあら。可愛らしいお嬢ちゃんだこと。ええ、よろしくね」
縫いものや布巾の経験はあるけれど、ステッチや縫い合わせるといった作業は初めての明夜。にこっと笑顔で、先生に元気良くご挨拶。先生は微笑ましそうに、明夜に笑い返してくれた。
先生が優しく見守る中、明夜は早速藍色のふわふわとしたファー生地を裁っていく。毛まで切ってしまわぬように、丁寧に。
生地を裁ち終えたら、いよいよ初めてのステッチだ。一針一針、先生の指導の下ゆっくりと。
可愛くなってね、笑顔になってねと。そんな願いを込めながら縫い進めていく。藍色のファー生地が段々と狐の姿になっていった。
「ふふー、兄弟たちも、笑顔になってくれるかな。明夜の代わりに、皆を守ってあげてね」
ふわふわとした、藍色の狐さん。明夜と同じ金色のガラスの瞳が、きらきらと輝きを放っている。
出来上がった狐さんを目の前に、明夜はにっこり笑顔だ。明夜のお友達で家族でもあるたんぽぽも、興味津々な様子で藍色の狐さんにちょいちょいと触れている。
明夜は元気にしているよ。兄弟たちも、きっと笑顔になってくれるから。
「お友達が増えて嬉しいね。たんぽぽもそう思う?」
明夜がそう尋ねると、たんぽぽは「きゅいっ!」と明るい声で鳴いた。
大成功
🔵🔵🔵
イミ・ラーティカイネン
【SPD】
ほう、ハンドメイドか。
スクラップビルダーとしては物をいちから組み上げるのは得意分野だ。是非とも楽しませてもらうとしよう。
作るぬいぐるみは猫をセレクト
「手直なところにモチーフがあるからな。構造が分かっているものは組み上げやすい」
俺自身の身体の構造を参考に、身長の二倍くらいのサイズがあるぬいぐるみをファー生地チクチク、綿をつめつめ。
あんまり綿を詰めすぎてムッキムキなねこさんにならないよう、注意しながら制作。
パーツを縫い合わせ、座らせて出来栄えを確認。
「……うん、まぁ、こんなものだろう。うん」
アドリブ・連携歓迎
「ほう、ハンドメイドか」
糸に縫い針、裁ち鋏といったぬいぐるみを作るための道具。スクラップを楽器として組み上げる際に使う道具とは、また異なった形状をしている。
縫い針を手に取って興味深そうに眺めているのは、イミ・ラーティカイネン(夢知らせのユーモレスク・f20847)だ。
スクラップビルダーであるイミ。物を一から組み上げるのは、彼の得意分野だった。楽器か、ぬいぐるみか。組み上げる対象が違うだけのことで。
「是非とも楽しませてもらうとしよう」
イミが選んだ型紙は、ねこのぬいぐるみのもの。ぬいぐるみの中でも一際大きいサイズで、90cm近くはあるだろう。
自分よりも大きく、もふもふとしたファー生地をえっちらおっちら運んでいく。イミはテーブルの上に乗っかると、身体全体を使って型紙を取っていった。
ケットシーであるイミがぬいぐるみのパーツを縫い上げていく光景は、まるで絵本のワンシーンのよう。
自分と同じねこのぬいぐるみで、自分によく似た灰色のファー生地。分身を作っているような、不思議な気分に浸りながらイミは手を進めていく。
「おっと。詰め過ぎたか?」
つめつめつめ。ぎゅうぎゅうぎゅう。
生地を縫い終えたら、ぬいぐるみのパーツにひたすら綿を詰める。詰める。
つい詰める作業に夢中で、ムッキムキになりかけていたねこさんの手足。イミはそこから、詰め過ぎた分の綿を抜き取っていく。
綿を抜いて形を整えれば、ムッキムキからスリムなねこさんに早戻りだ。
「良い感じに調整できたか。残るはパーツの組み立てだが……これは手直なところにモチーフがあるからな。構造が分かっているものは組み上げやすい」
自身の足を動かしたり、手を翻してみたり。自分の身体の構造を参考に、ぬいぐるみのパーツを組み上げていく。
胴体に頭部と手足を縫い付けたら、座らせて出来栄えの確認だ。
大きなねこさんは、座ってもなお愛くるしい存在感を放っている。思わず飛び込んで、もふもふしたくなってしまうほど。
「……うん、まぁ、こんなものだろう。うん」
余っていたアクセサリー用のパーツを貰い、ささっと人形用のシタールを組み上げたイミ。
ねこさんにシタールを持たせると、イミは満足そうに頷いた。
大成功
🔵🔵🔵
イフ・プリューシュ
◆■
ぬいぐるみさんの、てづくり…!(目をきらきらさせつつ)
…こほん。
切ったり縫ったりは得意よ!
おともだちを治すために縫ったりもするもの
でも、いちからぬいぐるみをつくるのは、とってもひさしぶり!
たのしみだわ!
どんな子をつくろうかしら…
……?
なぜか唐突にセキセイインコを作りたくなったわ!
うちには羽根のある子はあんまりいないし
せっかくだからそうしましょ!
特に難なく縫い上げるわ
出来上がったのはふっくらもふもふのセキセイインコさん
名前をつけてあげなくちゃね
あなたのお名前は…
そうね、エクレールがいいわ!
あなたの羽みたいな、きれいな緑色のバラのことよ
ふふ、これからよろしくね!
「ぬいぐるみさんの、てづくり……!」
ぬいぐるみを愛するイフ・プリューシュ(Myosotis Serenade・f25344)にとって、目の前に広げられた素材の数々や、並べられた沢山のぬいぐるみは、心から惹きつけられてしまうもの。
目をきらきらと煌めかせて眺めていたイフだったけれど、ふと我に返って。
きょろきょろと周りを見回し、こほんと咳払いを一つ。危ない。思わず、自分だけの世界に浸ってしまうところだった。
「いちからぬいぐるみをつくるのは、とってもひさしぶり! たのしみだわ!」
ぬいぐるみや人形がかけがえのないおともだちであるイフにとって、切ったり縫ったりの作業はお手の物。でも、一から作るのは本当に久しぶりで。その分ワクワクドキドキのぬいぐるみ製作だ。
「どんな子をつくろうかしら……?」
うーんと頬に手をあて、イフは考える。
きっとどんな子を作っても、今いる子たちと仲良くできるはず。新しい子は、どんな子にしようかしら。
悩んでいたところ、ふとイフの頭にアイデアとして湧いて来たのはセキセイインコ。
「うちには羽根のある子はあんまりいないし、せっかくだからそうしましょ!」
アイデアが湧いて来た理由は分からないけれど、これも何かの縁。
セキセイインコと決めた途端、脳裏に喜びの舞を踊るインコたちの姿が思い浮かんだけれど、気のせいよねと頭を振って、作業に取り掛かる。
流れるような手つきで、難なく生地を縫い上げていったイフ。久しぶりのぬいぐるみ製作でも、身体は染みついた感覚を忘れていなかった。
出来上がったのは、緑色の羽が綺麗なふっくらもふもふのセキセイインコさん。
「そうだわ。名前をつけてあげなくちゃね。あなたのお名前は……そうね、エクレールがいいわ! あなたの羽みたいな、きれいな緑色のバラのことよ」
くりっとまん丸な瞳でイフを見上げていたエクレールは、名前をつけて貰えてどこか嬉しそうだ。
余った布で名前の由来になった緑色のバラを作り、エクレールの胸元に飾ってあげれば。小さなインコは、先ほどよりも、より誇らしげに胸を張っているようにみえた。
「ふふ、これからよろしくね!」
後でともだちにも紹介してあげないと。イフはエクレールに、にっこりと微笑みかけた。
大成功
🔵🔵🔵
ノネ・ェメ
これまでは猫をもふれる機会にわりと恵まれてきたのだけど、犬と戯れる機会には乏しかったから、今回は犬のぬいぐるみにしてみようかな? それも、ハンドパペットのハンドドッグ! ハウンドドッグ? それは知らないけど、まそゆ感じで!
(サプラィフォンで検索し)ハウンドドッグって猟犬なんだ。わたし猟兵だから、わたしがお迎えすればみんな猟犬じゃない? よぉし。待ってて~……。
布から選べるのなら、触り心地で、これ! ガーゼ? 新品だとまた印象も違うけど、これがくたくたになってくるともう最高なんだよねぇ。
完成すればもち、そうなるまでとことんもふるよ~~。遊び方が違う? 両方楽しむので! ねっ?(目を合わせ)
猫と犬のぬいぐるみの間で、青い瞳が行ったり来たり。ゆらゆらと行き来している。
睨めっこするようにぬいぐるみを眺めているのは、ノネ・ェメ(ο・f15208)だ。
「今回は犬のぬいぐるみにしてみようかな?」
猫と縁があるのか、依頼でも何度か猫やネコ? と触れ合う機会があったノネ。
気まぐれなにゃんこも可愛らしいけど、今回は人懐こいわんこにしようと、ぬいぐるみを見比べて心に決めた。
「それも、ハンドパペットのハンドドッグ! ハウンドドッグ? それは知らないけど、まそゆ感じで!」
ノネが携帯端末――サプラィフォンで「ハンドドッグ」と検索すると、「もしかして:ハウンドドッグ」の一文が表示される。
そのまま画面を下にスクロールさせれば、ハウンドドッグが猟犬であることに加え、更に詳しい解説が述べられたサイトに行き着いた。
「ハウンドドッグって猟犬なんだ。わたし猟兵だから、わたしがお迎えすればみんな猟犬じゃない? よぉし。待ってて~……」
まだ形になっていないハンドパペットのハウンドドッグに想いを馳せつつ、ノネは生地を選び始める。
それほど迷わずに、触り心地の良いガーゼを見つけると、これ! と即決。
「新品だとまた印象も違うけど、これがくたくたになってくるともう最高なんだよねぇ」
少し柔らかくてハリのあるガーゼ生地が、段々とくたくたになってより柔らかく、肌触りの良いものに変化していく。
その過程を想像しながら、ノネは愛おしそうに製作途中のパペットを撫でていた。
「完成すればもち、そうなるまでとことんもふるよ~~。遊び方が違う? 両方楽しむので! ねっ?」
にこっと完成したハウンドドッグのハンドパペットに微笑みかければ、「よろしくね」と言い返すように、黒い瞳がノネを見上げている。
これからどんな思い出が作られていくのだろう。くたくたになっても大切にしていくから。
ノネは弾むように明るいハミングを口ずさみ、ハウンドドッグと少しでも長く一緒に居られるように、おまじないを一つ。
鮮やかな青い音符が、ノネとハウンドドッグを包み込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
シン・クレスケンス
アドリブ歓迎
【SPD】
UDCが関わる事件が予知されているならば、この世界に暮らす者として黙っている訳にはいきません。
裁縫を含め家事は一通りこなせますが、難しい箇所は先生に教わって。
僕が作ったのは黒いモヘア生地の狼のぬいぐるみ。
目玉の部分のボタンは黄金色で、仔犬くらいの大きさです。
―何をやってるのかと思えば、これは俺か?
足下で伏せていたぬいぐるみのモデル、闇色の狼の姿のUDC「ツキ」が起き上がり、念話で話し掛けてきます。
「丁度良いモデルが目の前に居たもので」
小声で返す僕。
ツキだけじゃ可哀想なので、ノクスも今度作ってあげましょうか。
留守番をしているもう一羽の相棒を思い浮かべながら。
(「UDCが関わる事件が予知されているならば、この世界に暮らす者として黙っている訳にはいきません」)
この世界に住む者として、自らの世界を守ることは当然のこと。それがUDCエージェントともなれば、なおのことだ。
そんな使命感を胸に、シン・クレスケンス(真実を探求する眼・f09866)は事件現場となるマーケットへと赴いていた。
シンの瞳に写るのは、事件とは程遠い平和なぬいぐるみ教室の風景。だがこれも民間人を守るという立派な任務のうちだと、気を引き締めていく。
「モデルはどうしましょうかね」
本を見ながら決めるもの良いが、如何せん種類が多すぎる。どのようなぬいぐるみを作ろうか悩んでいたところ、シンの目に留まったのは、足元で伏せている闇色の狼の姿のUDC――ツキの姿だった。
シンはふむ、と一考すると、闇色狼によく似た色合いの黒いモヘア生地を選び出す。
「あら、お兄さん覚えるのが早いわね」
「そうでしょうか。少し、コツが掴めてきた気がします」
裁縫を始め、家事は一通り熟せるシン。難しい箇所は先生に教わりながら進めていたが、基礎があった分、技術を直ぐに身につけたようだ。
すいすいと縫い上げて、出来上がったのは仔犬ほどの大きさの狼のぬいぐるみ。夜空に浮かぶ満月のように、黄金の瞳が2つ、静かな輝きを放っている。
『何をやってるのかと思えば、これは俺か?』
「丁度良いモデルが目の前に居たもので」
不意に念話で問いかけてきたぬいぐるみのモデルこと、闇色狼のツキに、シンは小声で返事を返す。
ツキ(ぬいぐるみ)を一瞥したツキは、さして興味無さげに再び床に伏せた。
「ツキだけじゃ可哀想なので、ノクスも今度作ってあげましょうか」
『ノクスの八つ当たりは勘弁だぞ』
「……それもそうですね」
ツキだけ作ったと知られたら、ノクスの機嫌によっては、嘴で突かれてしまうかもしれない。
八つ当たりは勘弁だと告げるツキに、シンも苦笑いで同意を返した。
留守番中の梟の姿を思い浮かべながら、シンはラメの入った深藍の生地を見つけ出す。
程なくして出来上がったのは、星空のような翼を持つ梟のぬいぐるみ。
これならノクスも喜んでくれるだろうか。シンの呟きに、ツキは『多分な』と返すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
五条・巴
◆
七結(f00421)と一緒に
ぬいぐるみだって
僕初めて作るよ。
七結は作ったことある?
分からないから教えて欲しいな。
作りたいのは相棒の春風、を、デフォルメしたもの。
フェルトに針を通していく
あっねえ待って、春風の頭がゆがんだ
ああ、助けて七結…たてがみがしぼんでる……。
仕事であることを忘れて真剣に
少しずつ進める針、それでも何とか完成させたくて七結に助けを請いながら手を進める。
肝心の目の部分は慎重に。
ちょっといびつだけど愛嬌のある、とても愛嬌のある顔になったんじゃないかな。
イルルもかわいいね。
後で春風に見せよ。
イルルも春風も喜んでくれるといいな
蘭・七結
トモエさん/f02927
なゆもはじめてよ、トモエさん
ひとつきりのぬいぐるみ
縫い繕ってゆくのはとてもたのしそう
一緒に進めていきましょうね
まあ、ハルカゼさん
ならば、と浮かべたのは使役する白蛇
ふふ。なゆも決めたわ
イルルの姿をかたちにしましょう
針にしろい糸を通して玉結び
おんなじ色の布同士を縫いつけてゆく
嗚呼。曲線を紡ぐのはむつかしいのね
あいらしいハルカゼさん
しぼんだたてがみに触れて、そうと撫ぜる
トモエさんの真心がぎゅうと詰まったよう
どんな表情をみせてくれるのかしら
ひとつ、ひとつと共に進めてゆくわ
眸に選ぶのはまっかな、あかいろの硝子
真白いからだによおく映えるわ
おはよう、イルル
あとであの子に会わせましょう
「ぬいぐるみだって、僕初めて作るよ。七結は作ったことある? 分からないから教えて欲しいな」
「なゆもはじめてよ、トモエさん。一緒に進めていきましょうね」
仲良く並んだ藍の瞳と紫の瞳が捉えるのは、色も形も様々なぬいぐるみの数々。そのどれもが世界に一つしかない、特別な存在で。
世界にひとつきりのぬいぐるみを生み出していく過程はとても楽しそうねと、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)が瞳を細めれば、五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)も「そうだね」と頷きを返す。
初めて同士でも、一緒に進めていけば、きっと。想いの詰まった、世界にひとつだけのものが出来上がるから。
「僕は、相棒の春風をディフォルメしたものを作ろうかな」
「まあ、ハルカゼさん」
巴が思い浮かべるのは、自身の相棒でもある黄金の獅子。美しいたてがみを持つ王は、愛らしいぬいぐるみになってもなお、その威厳を失わぬだろうから。
「ふふ。なゆも決めたわ。イルルの姿をかたちにしましょう」
トモエさんが己の相棒を作るのならば、と。七結が脳裏に描いたのは、自身が使役する白蛇の存在。
美しくも危うげな色香を持つ白蛇のイルル。それがぬいぐるみとなれば、どのような印象を与えてくれるのだろう。
それぞれの想いを胸に、2人は布を選んでいく。
巴は光の加減で白銀にも黄金にも見えるフェルトを。七結は雪のように真白い滑らかな布を。
「嗚呼。曲線を紡ぐのはむつかしいのね」
針にしろい糸を通して玉結び。おんなじ色の布同士を縫いつけて。
曲線は一等慎重に、糸を通して紡いでいく。
「あっねえ待って、春風の頭がゆがんだ」
静かに針を進めていた七結の隣で、ふと巴が慌てたように春風の頭をもふりもふり。
見れば巴の手元には、へにゃっと一部がしぼみかけの風船のようになってしまった、春風の頭部が。
「ああ、助けて七結……たてがみがしぼんでる……」
「まあ、あいらしいハルカゼさん」
あらあらと、七結はそっとしぼんでしまった春風のたてがみに触れ、そうっと撫ぜた。
七結と共に巴は春風のたてがみを修正していくけれど、それでも完全にとはいかないようで。
でも、少し不格好になってしまった春風の頭部も、巴が真心をぎゅっと込めて、一生懸命向き合った証なのだから。
「どんな表情をみせてくれるのかしら」
「早く会いたいね」
親愛? 歓喜? それとも、幸福?
手元の彼らにおはようを告げるとき、どんな表情を見せてくれるのだろう。
それが今から、楽しみだった。
「七結、このまま進めて大丈夫かな?」
「ええ、トモエさん。そのまま、まあっすぐよ」
仕事であることも忘れて真剣に。何とか完成させたいその一心で、手元の春風に向き合う巴。
時折、七結に導かれながら。少しずつ、ひとつずつ。足並みを揃えて、歩んでいく銀の針。
「嗚呼。まっかな硝子ね。真白いからだによおく映えるわ」
「イルルの瞳によく似た綺麗な赤色だね。瞳の部分は、より慎重にしていかないと」
「ええ。ハルカゼさんの眸は、どんな色をうつすのかしら」
七結がイルルの眸に選んだのは、まっかなあかいろの硝子。曇りない澄んだあかいろがふたつ、七結をじぃっと見つめている。
巴も慎重な手つきで、春風の瞳に取り掛かっていった。一つ一つ手を進める度、春風の瞳に光が宿っていく。
「――できた。ちょっといびつだけど愛嬌のある顔になったんじゃないかな」
巴の手から生まれたのは、ちょっと歪だけど、威厳と愛嬌を併せ持った黄金の獅子で。ふわりとたてがみを撫ぜれば、柔らかい感触が指先を通して伝わってくる。
「おはよう、イルル」
七結におはようを返したのは、穢れない白をその身に宿す蛇だった。じっと七結を見つめる双眸には、凪いだあかいろが灯っている。
「イルルもかわいいね。後で春風に見せよ」
「そうね。あとであの子に会わせましょう」
小さな自分たちを見た春風とイルルは、どんな反応を返すのだろう。
彼らの反応が脳裏に浮かぶようで、待ち遠しくて、巴と七結はそうっと微笑み合うのだ。
2人の笑みに応えるように、手元の春風とイルルもゆらりと揺れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『ハンドメイドUDC』
|
POW : 体験型のアクセサリー作りに参加する。
SPD : マーケットをハシゴする。
WIZ : マップで目当てのショップを探して効率よく回る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
●
コンテスト作品の展示、体験教室、ハンドメイド作家の講演会に、商品や素材の販売。
端から見ればごく普通のハンドメイドマーケットだ。
でも、このマーケットの会場となるこの建物の何処かに“彼ら”が潜んでいることは間違いないだろう。
イミ・ラーティカイネン
【WIZ】
作成したぬいぐるみのねこさんを台車に乗せて、その台車を押しながらハンドメイドマーケットを見て回る
「ケットシーの体格だと、展示物が見にくくて仕方が無いな……いっそ、ねこの上に乗った方が見やすいか?」
金属系の作品を扱う展示や、金属部品を販売するショップをマップで確認しながら見て回る
UDCアースの高度な部品成型技術と組み立て技術を学ぶべく、熱心に観察、質問
「ミリ単位で部品の削り出しをしていると聞くが……なるほど?そこまで精密に設計するのか」
建物のどこかに潜んでいるセキセイさまも探さないとな
羽やらなんやら、落っことしたりしていないかな?
アドリブ・連携歓迎
ガラガラガラ。ゴロゴロゴロ。
一見すると大きなねこさんぬいぐるみを乗せた台車が独りでに動いているように見えるけど、実は見えないだけで人がしっかり押しているというもの。
「ケットシーの体格だと、展示物が見にくくて仕方が無いな……いっそ、ねこの上に乗った方が見やすいか?」
台車とねこさんに遮られ、上半分がちらりちらりと途切れて見える。
イミ・ラーティカイネンは一人ごちながら、彫金にシルバーアクセサリー、ワイヤーアート等の金属系ブースが立ち並ぶマーケットの一角に来ていた。
アルダワの蒸気機械とUDCアースの先端技術を組み合わせることが出来たのなら、創作の幅も広がるだろう。
UDCアースの高度な成型技術と組み立て技術を学べる機会だと、イミはマップを確認しながら、目星をつけたショップを片っ端から回っていく。気になることがあれば、人を捕まえて質問だ。
「ミリ単位で部品の削り出しをしていると聞くが……なるほど? そこまで精密に設計するのか」
「コンマ以下の誤差が、致命的なズレに繋がることもありますからねぇ」
ねこさんの上に乗っかりながら、ああでもないこうでもないと男性店員と熱心に議論を交わすイミ。
「細部まで拘ることで、あの高度な技術実現を可能にしているのか。勉強になった」
いつの間にか、思いきり意気投合していたようだ。だが、そのおかげで様々な知識を聞き出すことができた。
収穫も多く、足取りも自然と軽くなる。男性店員に礼を告げてショップを後にしたところで、セキセイさまのことを思い出した。
「羽やらなんやら、落っことしたりしていないかな?」
キョロキョロと辺りを見回し台車を押していたところ、ガクンッと突然台車が止まって躓きそうになる。
「なんだ?」
よくよく見れば、台車の車輪に絡まるふわっとした羽毛が。コレが原因で、車輪が動かなくなってしまったのだろう。
イミは近くのショップを確認するが、どこも扱っているのは金属類だ。ファンシーな羽毛は、聊か場違いに思えた。
「ん? あれは……出入口か?」
行き交う人々の巻き起こす風に煽られ、ふわりとイミの方に飛んできた2つ目の羽毛。
目線で羽毛の飛んできた先を辿れば、『―関係者用出入口― 搬出入作業が行われますので、周辺に物を置かないでください』と張り紙の張られた扉が目に入った。
成功
🔵🔵🔴
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:ロキ
セキセイインコのぬいぐるみ型UDC、でしたか。地上はレイリさんにお任せして、上空から探してみることにしましょう。UCを発動し、20cmほどの妖精人形に意識を移します。空中浮遊して黄色いぬいぐるみを中心にチェック(情報収集)し、レイリさんに確認してもらいましょう
人格:レイリ
アノンのぬいぐるみを抱えながら、ロキに言われた場所をキョロキョロ。店員さんに話しかけるのは怖いので、どうしようかと思案し
「さっきの、子。聞いてみようかな」
ミケちゃんを連れた少女を見かけ、勇気を出して話しかけます
「セキセイインコ、の、ぬいぐるみ。探してるの。黄色くて、まぁるくて、ふわふわの。知らない?」
(「セキセイインコのぬいぐるみ型UDC、でしたか」)
ひらひらと人波をかき分け飛んでいく愛らしくも精巧な造りの妖精人形に、道行く人々も思わず振り返ってしまうもの。
「ドールブースの宣伝か? 凝ってるなぁ」
妖精のような何か――その正体は意識を移したロキが操る機械仕掛けの妖精なのだが、妖精の正体を訝しむ者はこの場にいなかった。お陰で、堂々と空中からUDCを捜索することができる。
地上はレイリに任せて、ロキは上空からの捜索だ。
ショップに展示品に、先ほどの体験教室も。ちらちらと、ぬいぐるみたちに視線を移していく。
「あのぬいぐるみ……動いてますね」
ひよこに、キリン。黄色いぬいぐるみを中心に探していくなかで、ふと目についたものが一つ。
人目を伺うようにして、コソコソと動いている――ぬいぐるみと呼ぶには、再現度の高いインコが1体。
インコはすぐ物陰に隠れてしまったが、位置はしっかり把握している。
「レイリ、今から伝える場所に来てください」
「う、ん。分かった」
電子機器を通してロキはレイリに連絡をすると、程なくしてレイリがやってきた。
(「店員さん、に、話しかける、のは……怖い、し……」)
不安そうに周囲の様子を伺いながら、アノンのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめるレイリ。
ハキハキと明るく接客を行う店員さんは、人見知りの自分とは真逆の存在。話しかけるのも、躊躇ってしまう。
それにロキを頼ろうにも、既に他の場所を探しに行ってしまっていたから。
「あ……。さっきの、子。聞いてみようかな」
どうしようかと辺りを見回していたところ、レイリの目に留まったのは、先ほど体験教室で一緒だった少女の姿。
店員さんよりは、先ほど少し会話した少女の方が話しかけやすいから。
勇気を振り絞って、震える声で少女に話しかけた。
「さっきぶり、だね。セキセイインコ、の、ぬいぐるみ。探してるの。黄色くて、まぁるくて、ふわふわの。知らない?」
「あ、狼のお兄ちゃん! インコさんを探しているの? それなら、さっき見たよ?」
「あっち!」と少女が指を指す。
「じりつしこーのぬいぐるみ、お兄ちゃんも気になっていたんだ。むこーに行ったよ」
「ありがと、う。お兄ちゃんも気になってた、から。見てくる、ね」
少女の指し示した方向には、コソコソと動くインコの後ろ姿が。
ロキにも連絡を入れると、レイリはインコの追跡を始めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
英・明夜
◆■
縫いぐるみさんと、たんぽぽを抱っこして歩くね。
可愛いお供が増えちゃった!
UDCの噂がないか、お店を覗きつつ、聞き耳立てつつ歩くね。
うーん、噂になるとしたら、用意してない縫いぐるみが在ったとか、
数が増えた気がするとか…、動く縫いぐるみを見た、とかかなあ。
気になる噂をしてる人達が居たら、
「何のお話?」「七不思議みたいだよね」って、お話に交ざりたいな(コミュ力)。
そうそう、鳥の縫いぐるみのお店を中心に見るね。
噂とか雰囲気で、怪しい場所を絞り込めたら(第六感)、
わざと「可愛いぬいぐるみだけど、明夜の可愛い子達が一番可愛い!」ってお店の人には聞こえない様に言うね。
セキセイ様、怒って出て来ないかな?
「可愛いお供が増えちゃった!」
指先に伝わる、2つのふわふわとした柔らかい感触。縫いぐるみさんと、たんぽぽを両手で抱いて。
るんるんと足取り軽やかに歩むのは英・明夜だ。
可愛いお供が増えたことに、明夜もたんぽぽもご機嫌な様子。
(「噂になるとしたら、用意してない縫いぐるみが在ったとか、数が増えた気がするとか……、動く縫いぐるみを見た、とかかなあ」)
人差し指を顎に当てて、「うーん」と推測しながら歩いていたところ、気になる声が飛び込んできた。
「あれ? ……こんなぬいぐるみあったっけ?」
「用意した中には、なかったはず」
明夜は狐耳をひょこひょこさせながら、会話の聞こえるショップの方へと向かっていく。
かわいい鳥さんぬいぐるみがふわもふと並べられている店頭で、店員さんがぬいぐるみの数を何度も数え直しているみたい。
「こんにちは! 何のお話?」
「あ、こんにちは。実は、覚えのない商品があってね」
店員さんが指差したのは、まるっとしたインコのぬいぐるみ。ふわふわしているけど、どことなく本物のような感覚が……。
「そうなの? ぬいぐるみが増えてるなんて、七不思議みたいだよね」
「七不思議かぁー。確かにそうかも」
「別のショップのヤツ持ってきちゃったかな? でも、箱にはうちのロゴ入ってるし……。あ、お客さん来てる!」
明夜に「ゆっくり見ていってね」と告げると、慌ててレジの方へと向かっていく店員さん。
店員さんを見送って、再びインコのぬいぐるみを見ようとしたところ――。
もぞっ。ピタッ!
(「……きゅい?」)
(「ねぇ、たんぽぽ。今、動いたよね?」)
先ほどよりも少し斜めを向いているインコさん。ぴたっと何事もなかったように固まっているけど、どうにも怪しい感じがして。
明夜とたんぽぽは顔を見合わせると、お芝居を一つ。
幸い、お店の人たちは皆レジの対応に忙しいみたい。だったら、今がチャンスだから。
ぐるっと鳥さのぬいぐるみを見渡して。それから、腕の中のたんぽぽと藍色の狐さんに視線を落として。
「たくさんぬいぐるみがいるね。可愛いぬいぐるみだけど、明夜の可愛い子達が一番可愛い!」
にこっと愛らしい笑顔でそう言いきる明夜に耐えきれなかったのか、バサバサとインコが動き出した!
『イヤ、ワレラコソガイチバンダ! ……ア』
交差する視線と視線。翼を広げたまま固まるセキセイさま。
セキセイさまは怒ることよりも、逃げることを選んだみたい。
『シマッタ』と逃げ出したセキセイさまと、明夜たちの追いかけっこが始まるまで、あと少し。
成功
🔵🔵🔴
シン・クレスケンス
◆□
【SPD】
―早く敵のUDCを見つけろよ
人混みを想定し仔犬程度の大きさにして服の懐に入れていた闇色狼の姿のUDC「ツキ」が、出番はまだかとばかりに急かしてきます。
(あなただって探知は得意でしょう?オブリビオンの匂いを嗅ぎ分けてください)
ツキにだけ聞こえるよう小声で。
僕の方はマップを見て、効率的に通路全てを巡回します。
敵に悟られないよう、客を装いショップを覗いたりしながら【聞き耳】【コミュ力】【第六感】などを駆使し【情報収集】します。
会話内容にさり気なく目を惹くものはなかったか等の質問を混ぜながら。
襲うつもりなら人を引きつけようと目を惹く(可愛らしい等)容姿をしている可能性が高いでしょう。
『早く敵のUDCを見つけろよ』
「ええ。可能な限り早急に見つけ出しますよ」
ひそひそと胸元だけで交わされる秘密の会話。
シン・クレスケンスは、服の懐にもにゅっと入れている、現在は仔犬ほどの大きさの闇色狼ツキに向かってそっと囁いていた。
ツキは自分の出番がないことに対し、不服そうな視線をシンに寄せているが、敵にこちらの動向を知られてしまっては元も子もない。
調査は急ぐことなく、地道に着実に進めていくことが何よりの近道なのだから。
(「あなただって探知は得意でしょう? オブリビオンの匂いを嗅ぎ分けてください」)
(『今しているところだ。人間の匂いが多くて敵わんな』)
匂いの探査は懐のツキに任せ、自らはマップを片手にショップを巡るシン。
気の向くまま行動しているように見せかけながらも、その実通路全てを効率的に回り、時には店員と1、2の会話を行うシンの姿は、何処からどう見ても一般客の装いだっただろう。
「へぇ。少々変わった宣伝方法をされているのですね。他のショップの方々も面白い宣伝をされていますが、上手く差別化されているようで」
「うちも宣伝には力を入れているのですけどねぇ……。あの愛らしいインコちゃんには敵いませんよ」
店員曰く、動くぬいぐるみのインコを見たらしい。「インコちゃん、その辺りにいるんじゃないですかね?」と話し始める店員に、シンとツキは内心で警戒を強めていた。
(「ツキ、どう思いますか? マップで把握した限り、そのようなショップは無かったはずですが」)
(『少し匂うな。可愛い見た目のインコチョイスといい、オブリビオンかもしれねぇ』)
通路全てを巡回していたシンたちだが、通路に並んだ店の中に「動くインコのぬいぐるみ」を販売していたショップはなかったはずだ。
民間人を襲うつもりなら、人を惹きつける可愛らしい容姿をしている可能性がある。愛らしいインコである時点で、この点も気にかかった。
店員の話に黒かもしれないと推測を立てたシンは、インコを見かけた場所を聞き出すと、お店を後にする。そして。
「ツキ、どうでしょうか」
『ビンゴだ。匂いが残っている。あの店員に接した時に感じたヤツと同じものだな』
やはり、あの店員が見たものはUDCであったようだ。
ようやく自分の出番が来たと張り切るツキを前に、シンは「頼みましたよ」と声をかける。
『任せておけ。すぐに追いついてやる』
追跡なんて朝飯前だと言いたげなツキが、UDCの匂いを辿り始めた。
大成功
🔵🔵🔵
ノネ・ェメ
◆■
それじゃあ早速、うちの愛犬にはくったくたになってってもらわないとねっ。(ちょっとわたわたしてみせる愛犬)
終始ハンドパペットしたまま、回れるだけあちこち見回ります。次から次へと興味をもって飛びつくけど、どれも思いきり心惹かれてのことなので、大目にみてもらえたら。(去り際にはちゃんと?愛犬と揃って一礼するなどして)
ぇ。だぁいじょぶだってば。主を信じて。これだけあちこち見回ってるんだもん、文字通り警備的な見回りにもなってるでしょ?(言いくるめかと思ったら疑問形で締める主人にいよいよ訝しむ愛犬をよそに、楽しむ主人)
これでもUCは澄ませてるから、僅かな羽ばたきや囀りも逃がさない。つもりだよ?
「それじゃあ早速、うちの愛犬にはくったくたになってってもらわないとねっ」
にこっと明るい笑顔のノネ・ェメを前に、愛犬のハンドパペットはわたわたと慌てた様子を見せている。
先ほど生まれたばかりなのに、もう調査でくたくたになるなんて。そんな気持ちが伝わってきそうだった。
「そこまでくたくたにならない……と思うから、大丈夫だって。たぶん」
「それじゃあ、レッツゴー!」と左手をグーにして突き上げるノネと反対に、ハンドパペットは心なしか、早くもぐったりな様子。
ハンドパペットを片手のお供に、あっちこっちを見て回るノネ。展示されている作品を「おおー!」と瞳をキラキラさせて眺めたり、「これ、どんな作りなんでしょーか?」と積極的に質問したり。
興味の赴くままに駆け回るノネの姿は、まるで小さな嵐のよう。
「へー。こんな小さなビーズを編んでいくんだ。すごい!」
「ふふ。皆に言われるのよ。そうやって」
ビーズステッチで編まれた小さな楽器たちを興味深々な様子で手に取り観察していたノネに、おばさんが微笑みかけてくれる。
きらりと光を反射させている手のひらサイズの楽器。普段は手に収まることのないそれらを手に、ノネは不思議な感覚で楽器を眺めていた。
「良ければ、一つ持って行ってちょうだい。これも、何かのご縁だから」
「あ、良いんですか? ありがとーございます!」
目上の人へ丁寧な言葉遣いに、愛犬も少し見直したと言いたそうな反応を見せた。
頂いた楽器のキーホルダーを仕舞い、きちんと礼儀は忘れずに。
愛犬と共に一礼し、ノネは再び興味の惹かれるままマーケットの探索へ!
「ぇ。だぁいじょぶだってば。主を信じて。これだけあちこち見回ってるんだもん、文字通り警備的な見回りにもなってるでしょ?」
疑問形で締め括った主人ことノネに対し、いよいよ訝しげな視線を向ける愛犬のハンドパペット。
ジト目で見つめる愛犬には構わず、ノネは何処に行こうかとマップを覗き込む。
そんな時だった。ノネの耳に、微かな囀りが聞こえてきたのは。
『……ソロソロコロアイダ』
『シタミハオワリ。イチドモドルゾ』
楽しみながらも、実はしっかり〝音聴〟を発動させていたノネ。人々の話声や雑音に紛れ、本来なら聞き取れないほどの囀りも、ノネの発達した聴力は明瞭にその音を聞き取っていた。
「うーん。こっちぽい?」
お楽しみの時間も、これまでのようだ。ノネは声の聞こえる場所へと向かい始める。ようやくやる気になったかと、そんな表情の愛犬をお供にして。
大成功
🔵🔵🔵
五条・巴
七結(f00421)と共に
自分たちでハンドメイドした次は
他の作品を見て回ろうか
こうしたマーケットも慣れないからゆっくりした足取りで、一つ一つ手で作られた愛らしいそれらを眺める
ねえ七結、見て見て
白いキツネのキーホルダー
透けた空色の瞳がキラリ、目が合ったような気がして
のんびりした顔がかわいいね
ああ、忘れないように”彼ら”の様子も見ないとだね。
夢中になって忘れるところだったよ。
そうだった、七結はかくれんぼが得意だったね。
見つけたら先にこっそり教えて?一緒にみつけたって言いたい
どこにいるかな?
このキーホルダー買うついでに作者の人に聞いてみようか
蘭・七結
トモエさん/f02927
手作りしたものを買うことも出来るのね
どんな作品が並んでいるのでしょう
こうした催し物ははじめてなの
なんだか心が踊るようね
歩を刻む速度も増してしまいそう
彼方も此方も精巧なつくりのものばかり
ひとの紡ぐものはとてもステキね
その指さきで、いのちさえ与えられそう
まあ、とてもかわいらしいのね
ふわふわと柔らかな毛の触感
此方を見つめる円かな瞳はあいくるしい
ふふ。そうね、トモエさん
愉しくて忘れてしまうところだったわ
何処かに隠れているのかしら
鬼ごっこも隠れ鬼も、得意よ
みいつけた、は必要かしら
ええ、もちろん
一緒に告げましょう
何処にいるのかしら、ね
あいらしい作品を見ながら探す
嗚呼。とてもたのしい
見慣れぬハンドマーケットの賑わいは、初めて訪れる2人にとって圧巻の一言に尽きた。ぐるりと見渡して、ほうっと息を一つ。
「手作りしたものを買うことも出来るのね」
「そうみたいだ。七結、ゆっくり見て回ろうか」
まだ見ぬ作品たちとの出会いを待ちわびて、心も踊り出す。
見渡す限り、精巧なつくりのものばかり。今すぐ動き出しそうな、指先で紡がれるいのちの魔法。
ひとの紡ぐものはとてもステキに感じられて、それにこうした催し物ははじめてなのと、蘭・七結の足取りも自然と早くなる。
歩みを刻む速度が増していく七結に、五条・巴は「急がなくても逃げないよ」と微笑むのだった。
「ねえ七結、見て見て。白いキツネのキーホルダー」
「まあ、とてもかわいらしいのね」
「うん。のんびりした顔がかわいいね」
同じ速度で寄り添い合って、一つ一つ真心を込めて作られた愛らしい作品たちを眺めていくふたり。
そのなかのひとつ、白いキツネのキーホルダー。夏空のように透けた空色の瞳がキラリと輝いて、自分の夜色の瞳と視線が交わったような、不思議な感覚を巴は感じていた。
ふわふわと指先に伝わる柔らかくてくすぐったい感覚を楽しんでいた七結も、円かな瞳をじぃっと見つめ返して。
「あおい円かな瞳もあいくるしいわ」
蕾が綻ぶかのように、ふんわりと柔らかく微笑んだ。
白いキツネに、ミケ猫、柴犬。色とりどりの、掌に広がる小さな存在。
手に取り撫ぜて、感嘆の息を漏らして。
革らしく佇む彼らは今にも命が宿りそうで、暫くの間眺めていたふたり。
見知らぬ素敵な世界に、思わず依頼のことを忘れてしまいそうになるほどだけれど、“彼ら”のことをふわりと思い出した。
「ああ、忘れないように”彼ら”の様子も見ないと。夢中になって忘れるところだったよ」
「ふふ。そうね、トモエさん。愉しくて忘れてしまうところだったわ」
マーケット巡りは楽しいけれど、会場の何処かに潜んでいるセキセイさまの捜索も入ってくる。
名残り惜しいけれど、そろそろ頃合いだ。巴は白いキツネに視線を落としたまま、「何処にいるかな」と思案して。
きっと何処かに隠れているはずだから、と七結はぐるりと周囲を見渡すのだ。
「何処かに隠れているのかしら。鬼ごっこも隠れ鬼も、得意よ。みいつけた、は必要かしら」
「そうだった、七結はかくれんぼが得意だったね」
広い会場も、2人揃って探せば家の庭のようなもの。それに、かくれんぼが得意な七結にきっと直ぐに見つけ出してしまうだろう。巴はそっと瞳を細めた。
「見つけたら先にこっそり教えて? 一緒にみつけたって言いたい」
「ええ、もちろん。一緒に告げましょう」
「どこにいるかな? 作品の中に隠れていたりして」
白いキツネのキーホルダーをしっかりちゃっかりホールドしていた巴。
空色の瞳が愛らしい彼を購入するついでに、何か目を引く作品が無かったかと尋ねてみれば。
「ああ、それなら。なんか、生きてるように動く作品が一部で話題になってるらしいっスよ?」
「技術力パネェっすよね~」と何でもないように話す店員をよそに、ぱちくり、巴と七結は目を合わせて。
これは、もしかして。
物にいのちが宿ることは滅多にないこと。でも、そもそもその物が生きていたとしたら?
店員から生きているように動く作品の場所を聞き出して、作品を見ながら、そちらの方へと歩みを進めていく。
「トモエさん」
「うん。七結」
もふっと愛らしい作品の中に埋もれた、ふわふわとしたセキセイさま。
ぬいぐるみになりきっているようだけど、時折ピクリと動いてなりきれていない姿が何ともおかしく、可愛らしかった。
人差し指を立てて、顔を見合わせて微笑んで。
鬼に見つかっているというのに、隠れたふりをし続ける“彼ら”にみいつけたと指を指す。
「「みいつけた」」
さあ、次は“彼ら”が鬼になる番だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『セキセイさま』
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POW : ガブリジャス
【嘴で噛み付くこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : あわだまおいしい
戦闘中に食べた【あわだま】の量と質に応じて【全身の羽毛】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : セキセイまみれ
【沢山のセキセイインコ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●セキセイさまの巣
通路を通り抜けたり、手掛かりを辿っていったり、セキセイさまの後を追いかけたり。
そうして思い思いに辿り着いたのは、マーケットの出展者用倉庫だった。
マーケット開始前には商品が所狭しと詰まれていたであろうこの場所も、今は少しの段ボール箱を残すだけとなっている。
そんな少しの段ボール箱に詰まっていたのは……。
『テイサツグミモ、モドッテクルジカンダ』
『イヨイヨダナ』
たくさんのセキセイさまだった。
恐らく、段ボールの中に紛れて忍び込んだのだろう。
もふもふもと何やら民間人の襲撃について、現在進行形で話している様子。
猟兵たちが侵入してきているというのに、気付かないぐらいには熱中して……あ。こっちを見た。
『スマナイ、ミツカッテシマッタ!』
『テイサツガカリ、ナニヲヤッテイル!?』
『……ジャマサレルワケニハイカナイ』
『ワレラコソガ、イチバンカワイイノダ!』
幸い、夜間の搬出入作業を想定して倉庫内部は防音壁で囲まれている。それに、商品も置かれていない。
殴るもよし、モフるもよし。
思い思いにやってしまおう。
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:アノン
倉庫を前に、瞳は黒から赤紫へと塗り替わる。UDCで狼耳と尻尾を象るぜ。
「インコってことは喰えるかな……ってさっきのガキ」
倉庫の様子を窺うネコを抱えた少女を見つける。
(ロキが煩せェから喰うわけにもいかねーし……)
「あ?オレは狼じゃねーよ。……犬でもねー」
持って大人しくしてろ、と手にしていたぬいぐるみと妖精人形(ロキが入ったまま)を押し付ける。戦いの邪魔されたくねェしな。何かあればロキが止めるか護るかするだろ。
「大量だなァ」
目についたインコに噛みつくも、モフッとした歯ごたえに顔をしかめる。
「肉まで届かねェ……燃やしてやる」
火属性の触手を巻き付けて、羽毛をまとめて焼き払う。
黒から赤紫へと塗り替わった2つの瞳で、じっと倉庫の方を見据えている影が一つ。
壁越しに伝わる無数の気配に、狼耳と尻尾がゆらゆらと反応した。戦闘が近いことが本能的に感じ取れる。
セキセイさまの巣と化している倉庫を前に、水鏡・怜悧――現在の人格はレイリからアノンへと交代していた。
「インコってことは喰えるかな……って、さっきのガキ」
ニワトリやカモなら喰えるが、同じ鳥とはいえ、果たしてインコはどうか。まあ、鳥だし喰えないことはないだろう。
自身の中で結論を下し、倉庫に突入しようと構えたところで――先ほどの少女が興味津々と倉庫の様子を伺っている姿が目に入る。
(「ロキが煩せェから喰うわけにもいかねーし……」)
少女には戻るように伝えたはずなのだが、好奇心に勝てなかったのか。
倉庫を覗き込んでも、迷子になられても。どっちに転んだって、面倒くせぇことだ。アノンは頬をかくと、少女の方へと歩み寄る。
「あ! 狼さん! それとも、ワンちゃん?」
「あ? オレは狼じゃねーよ。……犬でもねー。これ、持って大人しくしてろ。オレはちっと、倉庫に用事があっから」
「わぁ! 妖精さんだ! 分かったー」
見た目は犬科っぽくとも、アノンはアノンである。それ以上でもそれ以下でもない。
不機嫌そうに少女に言葉を返すと、グイっとぬいぐるみと、ロキ入りの妖精人形を押し付ける。
万一があったとしても、ロキ入り妖精人形が少女を守ってくれることだろう。
「大量だなァ」
『オオカミダト!? ニゲロ!?』
「だから、オレは狼じゃねぇよ!」
入ってきた侵入者が、自らの天敵に似ているのだ。微かに残っていた鳥類の性質か、セキセイさまたちは一斉に逃げ出そうとその翼を広げる――前に、アノンの腕がセキセイさまの身体を床に叩きつけた。
腕の下に捕えたセキセイさまにガブリと噛みつくも、返ってきたのはむぎゅモフッとした歯ごたえ。
羽毛の生えたゴムを噛んでいるかのような感触に、アノンは顔をしかめている。
「肉まで届かねェ……燃やしてやる」
肉まで届かないのなら、邪魔な羽毛を無くすだけだ。
火属性の触手をセキセイさまに巻きつけ、羽毛に火を放つ。
セキセイさまも抵抗しようと慌てて手下のセキセイインコたちを放つが、羽毛ごとたちも焼き払われてしまった。
「肉が増えたな」
一羽から大量に増えた羽毛のないインコ。それらを目の前に、アノンは獰猛な笑みを浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ノネ・ェメ
◆■
思い思い。じゃぁ遠慮なくやってもらおーか。ふふふ……。
(熟れてきた一人二役は腹話術まで取り入れ始め)(わらわらと蠢き迫る猟犬パペットの両手)
? こわがらなくていーから。遠慮なくやって“もらお”ってだけだから。さ、すきにして? 周囲のあまねくセキセイさま皆に構(もふ)ってもらえたら幸い。
ありがとありがと……。それじゃ、感謝のしるしに……!
(一人と一匹がかりで全セキセイさまを相手取り、持ち前のSPDを活かした早業で丁寧にもふって廻り)
鳥さんもいーよねぇ。せっかく作り方から習ったのだし、今度はセキセイさまも作ってみよかな?
(遊び相手の地位が危ぶまれてガタッ!となってる愛犬を一笑し愛でて)
目の前にもふるっと団子よろしく固まっているのは、セキセイさまである。
右も左も、見渡す限りセキセイさまの群れ。一斉に視線をノネ・ェメの方へと向け、出方を伺っているようだった。
「思い思い。じゃぁ遠慮なくやってもらおーか。ふふふ……」
『ナニヲスルトイウノダ!』
にじりにじり。じりじりとノネはセキセイさまの方へとにじり寄っていく。
わきわきと指を動かしながら、わらわら蠢き迫るのは猟犬パペットの両手。
猟犬パペットの扱いも熟れてきた今、ノネは腹話術まで取り入れ始めていた。
ジト目で見つめるような猟犬の視線もどこ吹く風か、セキセイさまに迫るにっこり笑顔のノネ。もふもふは正義である彼女にとって、避けるという選択肢は存在していなかった。
「こわがらなくていーから。遠慮なくやって“もらお”ってだけだから。さ、すきにして?」
『アトデヤメロトイワレテモ、シラヌカラナ?』
セキセイさま直々の忠告の後、ノネに向かうのは大量のセキセイインコの群れ。彼らは一生懸命ノネを攻撃しているつもりらしいが、やはりインコである。
ノネは幸せそうな表情でセキセイインコのもふり攻撃を甘受していた。もふもふっと柔らかいインコの身体が全身を埋める、くすぐったい感覚が身体を包み込んでいく。
……一方の猟犬ハンドパペットはと言うと、体当たりされ、嘴で摘ままれ、インコたちの攻撃にウンザリした様子を見せていたが。
「ありがとありがと……。それじゃ、感謝のしるしに……!」
インコたちによるもふり攻撃を一通り堪能したノネは、ツヤツヤご機嫌なようす。
今後は自分たちがもふる番だと、一人と一匹がかりで全セキセイさまを相手に、持ち前の素早さを活かした早業で丁寧にもふって廻っていく。
『コレハ……ナカナカダナ!』
なでなで。もふ、むにぃっと。過去に猫をも虜にした撫で術は、セキセイさまにも効果覿面なようで。
気持ち良さそうにお腹を見せるセキセイさまに、自然と表情も綻んでしまう。
「鳥さんもいーよねぇ。せっかく作り方から習ったのだし、今度はセキセイさまも作ってみよかな?」
何やら、聞き捨てならぬ台詞を聞いた気がする! ライバルの登場か!?
遊び相手の地位が早くも危ぶまれてガタッ! となった愛犬ハンドパペット。
「冗談だってばー」
ノネは愛犬のリアクションを一笑し、鳥の次は愛犬を優しく撫でて愛でるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シン・クレスケンス
「…このまるい鳥、前も見たことあるぞ」
「セキセイさま、ですね」
戦闘形態の巨狼の姿になったツキとひそひそ話。
「まぁいい。喰ってしまうか」
飛び込んだツキに驚いて逃げ回っているセキセイさまを一羽そっと捕まえて、もふもふ。
個体ごとに触り心地は違うのか、気になりますね。
「シン、探究心覗かせてる場合か!」
とツキはご機嫌斜め。
苦笑し、最後にひと撫で。
セキセイさまを解放し、ツキに指示を出します。
ツキが軽やかに倉庫内を飛び回りセキセイさまの数を減らしつつ、羊の群れを囲い込む牧羊犬のように巧みに一箇所に誘導しています。
少し惜しいですが、骸の海に還っていただきましょう。
誘導地点に業火を撃ち込んで。
「焼き尽くせ!」
『……このまるい鳥、前も見たことあるぞ』
「セキセイさま、ですね」
『今回は、あのデカいのはいないみたいだな』
「いたとしたら、もっと厄介なことになってますよ」
ひそひそひそ。
まるい鳥ことセキセイさまを前に、シン・クレスケンスと戦闘形態の巨狼の姿をとっているツキは内緒話を繰り広げていた。
そういえば、過去に依頼で同じ鳥を相手に戦ったことがあったのだ。何処かで見たことがあると思ったら。
セキセイさまの既視感に納得がいったのなら、もう彼らに用はない。さっさと倒してしまうに限ると、ツキは吠える。
『まぁいい。喰ってしまうか』
『クウカモフルシカ、センタクハナイノカ!?』
セキセイさま。残念ですが、猟兵たちにそれ以外の選択肢はないようです。
短く吠え終わるが否や、セキセイさまの群れに飛び込んだツキ。突然襲ってきた巨狼に、翼を広げて逃げ回っているセキセイさま。
逃げ惑うセキセイさまをツキから庇うように、そっと捕まえて胸元に抱いた人物が。他でもないシンだった。
『……タスカッタ』
セキセイさまはほっと溜息を一つ。
そんなセキセイさまに向かって、そうっと忍び寄る手が。
「……ふむ。個体ごとに触り心地は違うのか、気になりますね」
『シン、探究心覗かせてる場合か!』
「なるほど。やはり個体差が……」
触るとふわっとした柔らかい感覚が返っている。
シンの足下を歩いていたセキセイさまの方は、若干手触りがゴワゴワとしていた。
もふもふとシンにこねくり回されるセキセイさまは、災難は去っていなかったのかとげんなり顔。
『さっさと倒してしまうぞ』
「分かってますよ」
ご機嫌斜めなツキにシンは苦笑を浮かべると、セキセイさまを一撫でした後、解放してあげることにする。
「ではツキ、よろしくお願いしますね」
『ようやくか』
噛みついたり、前足で抑えたり。
シンの指示の元、ツキはセキセイさまたちを牧羊犬よろしく追いかけながら、軽やかにセキセイさまを狩っていく。
そうして倉庫の角に追いやられた時には、半分ほどの数に減っていた。
「少し惜しいですが、骸の海に還っていただきましょう」
触り心地の個体差など知りたいことはまだ山ほどあるが、そろそろ良い頃合いだろう。
名残り惜しさを飲み込むと、シンは誘導地点に業火を撃ち込んで。
「業火よ、我が命に従い、立ち塞がるモノを焼き尽くせ!」
混沌の深淵から喚ばれた超高熱の炎は、最後の足掻きとセキセイさまが放ったインコごと、彼らの身を焼き尽くしていった。
大成功
🔵🔵🔵
英・明夜
うん、セキセイさま達も、すっごく可愛いよ。
だけどね、自分だけの『一番』は、自分だけが決められるし、
誰かの『一番』を、否定したらいけないんだから!
たんぽぽは袷に、ぬいぐるみさんは袂に。
大丈夫、怖くないからね。
セキセイさまがいっぱいのうちは、神桜爛漫(UC)を使うね。
敵が跳ねたり飛んだり(?)した時とか、走った先を少しだけ
予想したり先回りして、霊符を【早業】で投げて攻撃。
ただ、集まってた時は、薙刀で【なぎ払い】。
攻撃されたら、【ダッシュ】や【見切り】で避けるようにするね。
…えっと。
後ろを取る機会があったら、むぎゅっと抱き締めてみたいな。
もふもふかな、ふわふわかな…
ごめんね、可愛い子たち(短く合掌)
『オレタチコソ、イチバンカワイイノダ! イロンハミトメナイ!』
「うん、セキセイさま達も、すっごく可愛いよ」
戦闘になってもなお、ピーチクパーチクと囀りたてるセキセイさまたち。
そんな彼らを前に、英・明夜はぐぐっと両手に力を込めて、真剣な表情でセキセイさまを見つめていた。
「だけどね、自分だけの『一番』は、自分だけが決められるし、誰かの『一番』を、否定したらいけないんだから!」
ビシッ! と明夜の伸ばした人差し指が真っ直ぐにセキセイさまたちに向けられる。
「押し付けるのはいけないんだよ!」とセキセイさまに向かって、メッ! をする明夜に、セキセイさまも思わず『ウ……!』と返事に詰まってしまったよう。
セキセイさまたちも、考えを押し付けている自覚はあったみたい。
袷からひょっこり顔を覗かせたたんぽぽも、明夜に同意するように「きゅいきゅい!」と鳴いていた。袂からも、ぬいぐるみさんが様子を伺うように顔をちらり。
「大丈夫、怖くないからね」
明夜はたんぽぽとぬいぐるみさんに微笑みかけると、薙刀を構えてセキセイさまたちに向き合った。
「御神木の裔よ、霞の如く嵐の如く、桜花咲かせませ!」
セキセイさまには悪いけれど、オブリビオンである以上、倒さないといけないから。
明夜の薙刀が、はらりはらりと神の力を宿す山桜の花びらに変化していく。
サアァァッと倉庫内に一際強い風が吹いて、舞い上がった山桜の花びらがセキセイさまたちを包み込んでいった。
『サクラノハナテイドデ、』
言い終わらないうちに、光の粒子となって消えていくセキセイさまたちの姿。だいぶ数は減ったけれど、それでもまだまだいるようで。
「逃がさないよ!」
羽毛を舞い散らせながら、跳ねたり飛んだりして逃げるセキセイさま。明夜はセキセイさまの逃走経路予測して、霊符を投げて骸の海へと還していく。
集まって向かってきた時には、薙刀で思いきり薙ぎ払って。
『ヤラレテバカリデハイカヌゾ!』
「……っと、危なかったぁ!」
セキセイさまの放ってきたセキセイインコたちを走って躱して――躱した先に居たのは、明夜に後ろを見せているセキセイさま。
そのままの速度で背後からむぎゅっと抱きしめたら、セキセイさまの羽毛が驚いたようにもふっとなった。
「ふわふわしてたけど、驚いた時はもふって膨らむんだね」
ひとしきりもふもふの感触を楽しんだ後は、名残り惜しいけれど、お別れの時間。【神桜爛漫】で残っていたセキセイさまにさよならを告げる。
「ごめんね、可愛い子たち」
最後の一羽を見送った明夜は、セキセイさまたちに向かって短く合掌をした。
大成功
🔵🔵🔵
イミ・ラーティカイネン
ふん、そんなところに隠れていたか。
だがこうして見つけた以上、放置するわけにはいかん。大人しく退治されるんだな。
ビルドロボットでねこさんを巨大化、乗り込んで戦う
「いくぞ、ねこさんMk-2。お前のもふもふ度合いを見せつけてやれ」
ねこさんMk-2のもふもふぱんちでセキセイさまを殴りつける
「どうだ、もふもふだろう? 俺が手ずから選んだ生地だ。お前らのもふもふとは比較にならん」
でも消える前にちょっともふっておこう、折角だし
「……マーケットを邪魔しようとしなければ、よかったのにな、お前たち」
アドリブ・連携歓迎
「ふん、そんなところに隠れていたか」
こそこそこそと少数の偵察組を送りこんで、襲撃計画を企てていたセキセイさまたち。
セキセイさまの巣、もとい本拠地はここだったのかと、イミ・ラーティカイネンは何処となく呆れたように呟いた。
その計画性を他のことに使おうとは思わなかったのだろうか。
「こうして見つけた以上、放置するわけにはいかん。大人しく退治されるんだな」
『タイジサレルワケニハイカナイ!』
ばっさばっさっと羽毛を舞わせ、風を巻き起こし戦闘体勢に移るセキセイさまたち。
セキセイさまたちがその気ならばこちらも戦うだけだと、イミは台車の上のねこさんにぴょんと飛び乗った。
途端、眩い光に包まれ巨大化するねこさん。イミは大きくなったねこさんに乗り込むと、セキセイさまたちに向かってねこさんの拳を繰り出していく。
「いくぞ、ねこさんMk-2。お前のもふもふ度合いを見せつけてやれ」
シュッシュっと本物の猫にそっくりなねこさんMk-2のもふもふぱんちによって、殴りつけられるセキセイさま。
ねこさんMk-2がもふもふねこぱんちを繰り出す光景は何とも微笑ましいが、威力を侮ってはいけない。1羽、また1羽と殴られては、衝撃を受けてもふんもふんと転がって消えていく。
「どうだ、もふもふだろう? 俺が手ずから選んだ生地だ。お前らのもふもふとは比較にならん」
『バカナ……!? ワレラノウモウヨリモ、モフモフダト!?』
羽毛のもふもふさ具合には、とても自信があったらしい。ショックを受けたように固まるセキセイさまに対して、勝ち誇ったように笑みを浮かべるイミ。
イミが直接自分で生地を選び、丁寧に作り上げたのだ。もふもふ具合がセキセイさまと比べものにならないのは、当然のことだった。
『コンナモフモフ、カミツイテシマエバ――!?』
がぶりとねこさんMk-2の腕に噛みついたセキセイさまだったが、返ってきたのはもふっとした反発と噛み応え。
嘴に力を込めるも、もふんもふんと暖簾に腕押しならぬ、ねこさんMk-2に噛みつき。全く攻撃が通らない。
「ちょっともふっておくか。折角だしな」
セキセイさまがねこさんMk-2の腕に気を取られている今のうちにと、イミはもう片方の腕を操作してセキセイさまにもふもふと触れる。
もふっとしたほど良い反発の触り心地に、イミも満更でもない様子でセキセイさまをもふもふもにゅっ。
「この手触りはこれで有りだな」
暫くセキセイさまの羽毛をもふり倒しているイミ。ねこさんまでとはいかないが、セキセイさまはセキセイさまで癖になりそうな触り心地を持っている。
「……マーケットを邪魔しようとしなければ、よかったのにな、お前たち」
イミはもふっていたセキセイさまの頬をうにょーんと伸ばしてみる。
民間人の襲撃計画さえ企まなければ、別の道もあったのかもしれない。そんなことを思いながら。
成功
🔵🔵🔴
五条・巴
七結と(f00421)
ふふ、セキセイさまがいっぱい。かわいいね。
七結と一緒に、
みいつけた。
1番になりたいのはわかるけど、やり方がちょっといけなかったね。
1番になりたいなら自分の力でならなきゃ。
物理的な襲撃じゃなくて、心を鷲掴みにしたりとか、売り出し方を変えていけばよかっただろうに。
暴れて僕につついてきたり七結の髪を食む子達が出てきてる
僕はいいけどこの子はダメだよ、レディには優しくしないと。
殴らず襲いかかるセキセイさまをちょっと強めには撫でる。
撫でたりつついたり、指先で戯れるけど、言ってることは本気だよ。
一緒に頑張ろうよ、各々目指す1番になるために。
蘭・七結
トモエさん/f02927
まあ。あいらしい姿たち
告げる時がきたようね、トモエさん
続いてご一緒に。みいつけた
ふふ。お上手だわ
民間の襲撃だなんて
その光景もかわいいのでしょうけど
嗚呼、いけないことを考えるのね
その姿を見せてひと鳴きしたのなら
心を寄せるひとが居たでしょうに
あら、とても元気がよいのね
わたしの髪は美味しくないでしょう
トモエさんをつついてはダメよ
あなたに好意を持つひとが悲しむ
なゆだって、傷つくのはかなしい
ちょきんと断ち切ることも
毒に蕩かすことも思いのまま
だけど、彼らに触れて心を通わせたい
まろくてやわい頭部を撫でましょう
あたたかくて、ふわふわね
こんなにもかわいいのだもの
もっと誇りに思ってよいのよ
もっふるもっふると身体を寄せ集めているセキセイさまたち。
「ふふ、セキセイさまがいっぱい。かわいいね」
「まあ。あいらしい姿たち。告げる時がきたようね、トモエさん」
困ったマーケットの襲撃計画犯たちは、こんなところに潜んでみたい。
五条・巴と蘭・七結はセキセイさまたちを前に微笑み合うと、「みいつけた」を告げた。
「ふふ。お上手だわ」
『ソウデアロウ?』
上手くかくれんぼしていたセキセイさまを褒める七結。七結の言葉に、セキセイさまもドヤァっとその胸を張っていた。
民間人を襲撃しようと考えていたとは思えないほどの愛くるしさに、思わず2人の表情も綻ぶのだけど。
「民間の襲撃だなんて、その光景もかわいいのでしょうけど――嗚呼、いけないことを考えるのね」
翼をばさばさはためかせ、嘴で民間人を突いて回る彼らの姿はきっと、端から見ればかわいい光景で。だけれど、鋭利な嘴で突かれたのなら、痛みはかなりのものだろう。
そっとしゃがみ込んで、視線を合わせて。でも、誰かを傷付けるなんていけないことだと、七結はセキセイさまたちに言い聞かせる。
「1番になりたいのはわかるけど、やり方がちょっといけなかったね。1番になりたいなら、自分の力でならなきゃ」
巴も七結の言葉に相槌を打つ。1番とは自分の力で勝ち取ってこそのもの。それに1番になるためには、その過程も重要だ。モデルを務める巴は、そのことがよく分かっていたから。
「物理的な襲撃じゃなくて、心を鷲掴みにしたりとか、売り出し方を変えていけばよかっただろうにね」
「その姿を見せてひと鳴きしたのなら、心を寄せるひとが居たでしょうに」
七結と巴から告げられた計画の一例に、セキセイさまたちは、『……カンガエツカナカッタ』と嘴をあんぐり開けている。どうやら、そこまで考えが及ばなかったみたい。
セキセイさまたちは顔を見合わせて何かを囁き合うと、瞬間、巴と七結に向かって飛び掛かっていく――完全な八つ当たりだった。
『モットハヤクシリタカッタゾ!』
ツンツンと巴を突いたり、はむっと七結の髪を食んだり。好き放題に振舞っているセキセイさまたち。
「あら、とても元気がよいのね。わたしの髪は美味しくないでしょう」
『……オイシクナイ』
想像通りの返事に、七結はくつりと笑みを零す。
「トモエさんをつついてはダメよ」
「僕はいいけどこの子はダメだよ、レディには優しくしないと」
同じタイミングでそれぞれの口から紡がれるのは、似たような言葉。お互いがお互いを思いやる想いに、ハッと顔を見合わせれば。「傷ついて欲しくない」という感情が、2人の顔に現れていて。
セキセイさまも、『ナカヨシナンダナ』と感想をポソリ。
どんな時でも、相手を思いやる心は大切だから。
「言っていることは本気だよ。本当の意味で1番になりたいのなら、ね」
襲いかかってくるセキセイさまを強めに撫でたり、指先で突いたり。じゃれ合いながらも、巴はぴしゃりと言い切った。
1番のなり方もそれぞれあるけれど、どうせなら皆に好かれるような方法で1番を目指して欲しいから。
その為にも、思いやる気持ちは大切だとセキセイさまに言い聞かせる。
「あたたかくて、ふわふわね」
彼らは小さく、また、その攻撃も猟兵にとっては脅威だとは思えないほど。
ちょきんと断ち切ってしまうことも、毒に蕩かしてしまうことも七結の思いのまま。
だけど、彼らに触れて心を通わせたいと。七結はその愛くるしい頭部に優しく触れた。
まろくてやわい頭部。指を介して伝わってくる、柔らかな温もり。
「こんなにもかわいいのだもの。もっと誇りに思ってよいのよ」
ふわっと微笑みかけると、誇らしげに羽毛をもふもふとさせるセキセイさま。
愛らしい姿は、オブリビオンとは思えないほどで。
「一緒に頑張ろうよ、各々目指す1番になるために」
セキセイさまの頭を撫ぜ、可愛らしい嘴を指先で優しく突いて。
巴もセキセイさまに、そう語り掛けていた。
誇れるものがあるのだから、そこを磨いていけば良いと、巴はセキセイさまにそっと囁く。
『ワカッタ。ホカノホウホウデイチバンヲメザスゾ!』
「応援しているよ。1番を目指して、頑張っていこう」
「こんなにもあいらしいのだもの。きっと目指せるわ」
彼らはオブリビオンだ。過去から染み出した存在。きっと何か心残りがあって、今回の襲撃事件に踏み切ったのだろう。
もし、彼らに次が訪れるのならば。今度こそは、自分の力で1番になってもらいたいと、巴と七結はそう願うのだった。
●
セキセイさまたちを元の居るべき場所に還し、マーケット襲撃事件を未然で防いだ猟兵達。
大盛況のまま幕を閉じたマーケットに仕事の終わりを実感しつつ、彼らはそれぞれの場所へと帰路に就く。
小さな事件を一つずつ防いでいくことが、平和のための一歩になるのだと信じて。
成功
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